法制審議会 民法(債権関係)部会 第70回会議 議事録 第1 日 時  平成25年2月19日(火)自 午後1時03分                      至 午後4時54分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法(債権関係)の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○鎌田部会長 それでは,法制審議会民法(債権関係)部会の第70回会議を開会いたします。   本日は,御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   本日は,安永貴夫委員,福田千恵子幹事,山川隆一幹事,森英明幹事が御欠席です。   本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いします。 ○筒井幹事 事前送付資料として部会資料58,「民法(債権関係)の改正に関する中間試案のたたき台(1),(2),(3)(概要付き)【改定版】」をお届けしております。これには,正確には「たたき台(4)」の一部まで含まれております。切りのよいところまでということで,「相殺」,「更改」,「免除」まで含む形でお届けしております。また,机上にはその補訂版を1枚紙でお配りしております。前回会議で審議された「たたき台(5)」の一部の項目を,場所を異動させて今回の(1)(2)(3)の改訂版に盛り込みました関係で,その該当箇所の記載を追加変更したものです。ウエブサイトで公表する際には溶け込ませて公表したいと考えております。 ○鎌田部会長 本日は,部会資料58について御審議いただく予定です。具体的には休憩前までに部会資料58のうち,「第13 受領(受取)遅滞」までについて御審議いただき,午後3時40分頃を目途に適宜,休憩を入れることを予定いたしております。休憩後,部会資料58の残りの部分全体について御審議を頂きたいと思います。   それでは,まず,「第1 法律行為総則」から「第3 意思表示」までについて御審議いただきたいと思います。一括して御意見をお伺いいたしますので御自由に御発言ください。 ○大島委員 2の「公序良俗」について,第64回会議でも申し上げましたが,(注)に二つの案を記載するのは分かりづらいと思いますので,例えば(注1)(注2)のように書き分けるよう,御検討をお願いいたします。また,規定を設けるべきではないとする考え方の理由を(概要)に盛り込んでいただきたいと思います。   今回の部会資料では,(2)で公序良俗の具体化として暴利行為が取り上げられていると思いますが,両者の関係が一層明確になるように記載ぶりを御検討いただければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 それでは,検討させていただくということでよろしいでしょうか。 ○筒井幹事 頂きました御意見のうちの(注)を一つの案ごとに分けて記載するという提案を頂いた点ですけれども,たたき台の検討の冒頭でも大島委員から同様の御発言を頂きましたので,それを踏まえて改訂版では,対象とする事項が変わる場合には,(注)の項目番号を分けて(注1)(注2)などと記載するようにいたしました。その限度で大島委員の御意見を採用させていただき,手当てをしております。ただ,同じ事項について複数の意見を紹介する場合については,この改訂版のような書き方も一つの分かりやすい記載の仕方としてあり得るのではないかと考えて,現在の案を提示しておりますので,そのような方向で御理解いただければと考えております。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○能見委員 中身に関わることではありませんけれども,「意思表示」の「心裡留保」のところですが,これと代理権の濫用の関係について,「代理権の濫用」のほうには十分記載があると思いますけれども,「心裡留保」を見たときに,従来この規定がその本来的な適用場面におけるよりは,権限の濫用とか代理権の濫用の場合に多く使われていたと思いますが,今後は代理権の濫用については代理権濫用の規定で対応するということだと思いますので,その点を「心裡留保」のところにも明記する方がよいのではないかと思いました。 ○鎌田部会長 それは(概要)欄の記載としてということですね。 ○能見委員 そうです。 ○潮見幹事 より専門の方がたくさんいらっしゃるので,そちらの方から御発言いただくのがしかるべきことだとは思いますけれども,1点,お願いがございます。2ページ目の取り上げなかった論点というところに,「法令の規定と異なる意思表示」,それから,「任意規定と異なる慣習がある場合」と二つ並んでおりまして,特に「任意規定と異なる慣習がある場合」については,前回では取り上げるべき論点という形で上げられておりました。その際に私がお配りしたメモのところでは,そこで上げられている案とは違った別案,つまり,原則・例外を逆転する案というのを少なくとも上げてほしいということを申し上げたつもりでした。   そこで申し上げた趣旨は,この論点というものを取り上げるなということではなくて,むしろ,この論点こそ取り上げるに値する重要な論点である,そうであれば,どのように考えたらいいのかということで複数の考え方があるから,それをパブコメに掛けて判断を仰ぐというのもよろしいのではないか,そういう観点から発言をし,また,メモを出したつもりです。今回,出ているところからは恐らく意見が両様あるから,取り上げないという御判断をされたのだとは思いますけれども,今,申し上げましたように非常に重要な論点ですから,どちらを成案あるいは別案という形で書くかということは,私はこれ以上,申し上げませんが,何らかの形でこれを取り上げなかった論点ではなくて,取り上げるべき論点という形で掲げていただけないかと思います。 ○筒井幹事 御指摘いただいた点は,私どもも「たたき台」を御提示する段階から,非常に悩んできたところです。恐らく,論点として取り上げるべきか取り上げるべきでないかという形で意見を聴取すると,この部会では多くの方が是非取り上げるべきであるとお考えなのではないかと考えております。しかしながら,「たたき台」を提示する際にも,どのような案を合意形成が可能なものとして据えるかという点で非常に悩みましたし,それほど意見の分布が多岐に分かれている論点であろうという認識をしております。   そのような場合に,様々な立法提案があることを単純に提示して意見を問い,更に議論を喚起するということは,中間論点整理の役割であったと私は認識しております。それを踏まえ,第2ステージで時間をかけて議論をして,この段階にまできたときに,成案を得る見通しがあるのかと改めて問い直すと,私は極めて難しいであろうという判断をし,今回の改訂版では,取り上げない論点とする案を御提示することと致しました。それは,決してここで議論を打ち切ろうという趣旨ではありませんが,しかし,現在の議論状況の下で今回の中間試案の役割を考えたときに,このような選択はやむを得ないのではないかと私は考えております。 ○潮見幹事 1点だけ確認ですが,「時効」のところでは,甲案,乙案というのが出ております。こちらのほうは,そこまでには至らないという理解で,このような整理をされたということですか。 ○筒井幹事 「時効」の複数案については,この論点とは別に「時効」に即して御説明したほうがよいと思いますが,職業別の短期の消滅時効を廃止することについてコンセンサスがある,そのことを前提としたときに,原則的な時効期間の見直しについては,現在は大きく意見が分かれているとしても成案を得ることを目指して議論せざるを得ないであろうと判断し,複数案を提示しております。確かに今後,単純に意見がまとまる見通しが立たないという点では,甲案,乙案を併記しているところにも同様の問題があるわけですけれども,しかし,そこでは議論を避けて通るわけにはいかないという判断をしたということです。 ○山本(敬)幹事 この論点については,潮見幹事がおっしゃるところに私も基本的には賛成しているところなのですが,前回に上げておられた案に対して疑問があるということは,そのときにも申し上げたかもしれません。その意味では,元の案を削除したのは妥当だったのではないかと思いますが,ただ,そのことと現行の民法92条がそのままでよいかどうかは別問題です。   特に現行民法92条については,法適用通則法3条との関係が,一見すると両者は抵触するように見えますので,以前からずっと議論されていたところです。正確に言いますと,主として問題があるのは法適用通則法3条のほうかもしれませんですし,そしてまた,この部会では法適用通則法を改正することは諮問の範囲に入っていないということも,よく理解するところです。ただ,慣習の効力をどのように捉えるかという,その意味では私法に限らない,法体系全体の根幹に関わるような問題について,現在のように立法の態度がよく分からない,矛盾しているかのように見える状態をこのまま放置するのは,私は適当ではないと思います。   その意味で,ここで92条については取り上げないというのは,これでよいという判断をしたかのように受け止められる可能性があり,この状態が今後もずっと続いていくのは,極めて問題が大きいと思います。法適用通則法を含めて,もう一度見直す必要があるということをこの段階で明らかにしておく必要があるのではないかと思います。最終的に成案が得られるかどうかは,もちろん,議論の余地はあるかもしれませんけれども,ここで下ろすということの持つ意味が少し大き過ぎるように思う次第です。 ○筒井幹事 御意見の趣旨は大変よく分かります。そのことに対して異論があるわけではないのですけれども,中間試案のまとめ方としては,このような方向で御理解をいただきたいということを繰り返し申し上げたいと思います。その上で,補足説明という文書は,様々な作成上の工夫の余地があると考えておりますので,取り上げなかった論点についても,問題の所在や議論の経緯などを積極的に御紹介していくことは,あってよいのではないかと思います。そのような工夫を事務当局において引き続き行っていくことをお約束した上で,このような形で進めることで御理解いただけないでしょうか。 ○鎌田部会長 よろしいでしょうか。 ○松岡委員 今の筒井幹事の御説明に関連して,もう少し,御説明いただきたいことがあります。補足説明に工夫をして,こういう議論があると紹介し,それでパブリックコメントにおいても議論を喚起したいということですと,第3ステージでは,引き続き議論をする余地があると理解してよろしいのでしょうか。先ほどの最初の御説明ですと,時間の関係もあり,議論を絞る必要があることから,中間論点整理で漏れた問題は,第3ステージでは基本的にはもはや取り上げないと聞こえました。だからこそ,潮見幹事や山本敬三幹事はかなり強くそれに反対されているように感じるのですが,その点はいかがでしょうか。 ○筒井幹事 第3ステージでどのような論点を取り上げるかについては,パブリックコメントの結果を踏まえて改めて考えたいと思います。その際に,取り上げるべき論点について,パブリックコメントで新たな提案があることも,当然に想定されているのだと思いますので,この段階で中間試案に載っていない論点は,今後は一切取り上げないという扱いをするとは考えておりません。しかし,必ず取り上げるのかといえば,今の段階でお約束するような性質のことでもないと思っております。正にパブリックコメントを踏まえて,次のステージの進め方という問題として考えるべきであろうと思います。 ○鎌田部会長 ということでよろしくお願いします。 ○鹿野幹事 別の点なんですけれども,よろしいですか。大きく2点について申し上げたいと思います。   まず,第1点は(前注)についてですけれども,(前注)を今回,付けていただきまして,これで試案の意味ということが比較的分かりやすくなったとは思うのですが,なお,あと一歩踏み込んで書いていただけないだろうかという意見でございます。以前からの御説明ですと,本文に取り上げたものは,現時点において部会で意見の一致を見たとか多数意見を占めたものとは限らないということであり,特に現状維持を支持する意見がむしろ強かったものもあるかもしれないが,現状維持の意見がかなり強かったところについては,本文以外の箇所でその点を明らかにするということだったと思います。そうであれば,そのような点を,もう少し分かりやすく,ここに書いていただけないかと思います。   といいますのは,確かにここで議論をしているメンバーの間では,そのような性質のものだということは共通の認識になっていると思うのですけれども,中間試案という形で公表されたときには,受け取る側としては,これが法制審の部会の議論の中であたかも多数意見を占め,それ故,まだ最終決定ではないとしてもこの方向でいこうということで示された提案であるかのように,誤解をされるおそれがあるのではないかと思うのです。大学に勤めている人の中にも,そのような趣旨で試案が出てくるものだと思っている方がいらっしゃる旨を耳に挟むことがありますし,ましてや,広く国民一般には,さらに誤解を招くおそれがあるのではないかと思うのです。そのようなことから,この点につき,更に一歩,踏み込んで書いていただくことにつきご検討をお願いしたいと思います。   それから,もう1点は具体的なところですけれども,4ページの「錯誤」の記載についてです。4ページの2の(2)のところで,イではいわゆる不実表示型の錯誤,要するに相手方が事実と異なったことを表示したために,表意者が錯誤に陥ったというような場合が掲げられています。その際,ここには,「相手方が」事実と異なることを表示したと書かれているのですが,相手方の代理人や媒介受託者による不実表示があったという場合に,その取扱いがどうなるのかということについては,本文では必ずしも明確にされていません。そして,5ページの解説のうち,4段落目の「また」から始まるところを見ますと,「表意者の錯誤が相手方又は相手方の代理人等の不実表示によって引き起こされたとき」という書き方がされていて,これによれば,相手方だけではなくて代理人等による不実表示の場合も含むのかとも思われます。   他方で,6ページには「詐欺」についての提案が記載されていますが,「詐欺」については,6ページの3の(2)のところで,相手方からの詐欺だけではなくて,相手方からの契約の締結について媒介をすることの委託を受けた者又は相手方の代理人が詐欺を行ったときも,同様とするということが本文に明確に書かれています。こちらには書かれているのに対して,錯誤の不実表示型の錯誤については書かれていないということの意味がどういうことなのか,詐欺とは違う取扱いになる可能性があるという趣旨で,あえてここに書いていないのかについて確認させて頂きたいと思います。もし同じように取り扱う趣旨であれば,錯誤のところにも明確に書いたほうがよいと思いますし,意図的に違う記載をしているのであれば,それを説明に書いたほうがよろしいのではないかと思います。   なお,9ページのところには「代理行為の瑕疵」に関する提案がありますけれども,恐らく「代理行為の瑕疵」のこの規定提案によっては,今の問題が直ちにカバーされるわけではないと思いますので,こちらの4ページのほうに,その点は書いたほうがよいのではないかと考えた次第です。 ○鎌田部会長 今,御発言があった2点のうち,前半については中井委員の以前からのお話とも関連するのですが。 ○中井委員 前回,確か岡崎幹事からもお話があり,今日,また鹿野幹事からも御発言があったのですが,基本的に同じような危惧といいますか,考えを持っております。(前注)に二つ記載されておりますが,この(前注)は,少なくとも部会決定をする中間試案の対象に含まれるという理解をしているわけです。そうだとすれば,この部会における共通認識をできれば,(前注)の中に簡潔に表示していただきたいと思っております。その共通認識については,筒井幹事から御説明があり,それを受けて岡崎幹事,そして,鹿野幹事の御発言があったと認識しておりますので,それが表現されるほうが中間試案を受け取る国民一般に対する誤解を防ぐのではないかと思っております。   その表現をどの程度のものにするか,弁護士会の中でも程度の差はあるのですが,私のメモの1項として,(前注)に3として今のような趣旨を記載していただけないかと思っております。少なくともまだ確定はしていない,現段階で合意が得られる見通しの立つ項目について取りまとめたものであって,まだ,確定したものではないし,議論が残っている,現行法維持という考え方の意見も必ずしも全てについて網羅的に表記されているわけではない,今後,このパブコメの結果を踏まえて,更に第3ステージで議論が進められるということを国民に知らせておく必要があるのではないか。   これまでの法改正について,私はそれほど詳しく知りませんが,中間試案が出た後,基本的にはその線にのって要綱試案に進むことが多かったと聞いております。今回の民法改正については,更に慎重な手続が採られる,中間試案に対するパブコメの結果を踏まえて,場合によっては,新たな項目の審議もあり得る,そういうことも知らしめる何らかの文言を記載いただけないか,メモに書いたものは一つの案でございます。これでも書き過ぎだ,不十分だという両方の御意見があろうかと思いますけれども,一つのたたき台として御検討いただき,この部会ではこのような文言を入れるかどうかも含めて,是非,御審議を賜ればと思っております。 ○筒井幹事 御意見をありがとうございます。前回の会議の最後にも,今,御紹介がありましたように岡崎幹事,そして中井委員などから御発言いただいたところであり,御趣旨は大変よく理解できるところですので,私どもとしてもどのような方策があり得るのか,考えてみたのですけれども,私ども事務当局から中間試案として案を提示するに当たっては,一定の方針を持って作業を行っております。つまり,今後コンセンサスが得られる見通しがあるかどうか,それに足りる十分な論拠が示されているかどうかといった観点から,論点の取捨選択をし,原案を提示しております。それは,事務当局の方針としては幾らでも説明できることであり,それは繰り返し申し上げてきたとおりなのですけれども,他方で,事務当局の方針をどのように受け止めて,どのような理由で取りまとめに御協力いただくかというのは,部会メンバーそれぞれのお考えがあろうかと思います。そのために,中間試案という文書の中に,その一般的な作成方針を一定のコンセンサスを得られる形で書き込もうとするのは,それは極めて難しいであろうと私は感じております。   中井委員からは,本日の会議用のメモとして,仮の案ということで具体的な文案を御提示いただきましたけれども,そのような文案で,この部会のコンセンサスを得ることができるかというと,異論があろうかと思います。(注)が置かれていることの意味についても,どのように理解するかは,それぞれの立場の違いもあって一様ではないと思いますので,それを部会決定の対象となる文書にどのように表現するのかというと,これも大変難しい問題があろうかと思います。   このように考えてきますと,部会でコンセンサスを得ることが可能なのは,恐らく,これは飽くまで中間的な合意であり,現段階での部会の到達点として一応の合意が可能なものを取りまとめたものであって,次のステージでパブコメを踏まえて更に議論を続けていくことが予定されていること,この程度ではないかと思います。もっとも,これは,中間試案とはおよそそういうものであるという当たり前のことを言っているにすぎないわけであります。このような一般的な中間試案の意味を冒頭に記載するというのは,これまでの法制審議会の先例との対比でも極めて異例のことであり,私は必ずしも適当ではないという考えを持っております。   今回の中間試案がその精密度において,これまでの法制審議会の他の部会のものと比べて異例であるかというと,決してそんなことはなくて,中間試案がどれぐらい練り上げられたものであるかは,それぞれの部会の進捗状況によって様々であったと思います。今回のものがそういう意味で特に突出していることはないと思います。取り分けバックアップ団体をお持ちの部会メンバーにとって,現時点で強い反対意見を持っている項目についても,なお,(注)を書くという限度で御了解を頂いているという場面を想定したときに,もう少し,その(注)の趣旨をはっきりさせてほしいという御希望があることはよく理解いたしますけれども,それを(前注)という形で文言化して,それについてのこの部会でのコンセンサスを得るのは,大変難しいのではないかと考えております。 ○佐成委員 私も,前回の部会の最後のほうで,今日,鹿野幹事がおっしゃったような意見を岡崎幹事がおっしゃったのに賛同という形で申し上げました。今,筒井幹事のほうから御説明いただいたんですけれども,バックアップ委員会のほうでは,今回,反対意見を(注)で書くということではなく,本来は両論併記で書いてくれというような意見もあった中で,敢えてまとめに協力しているんです。けれども,さはさりながら,今回の中間試案についてはそれほど納得しているわけでもないわけでして,私自身,全体的に納得しているわけではないんですね。ですから,相当,いろいろある中でやむを得ずといいますか,不本意ながら,今回,まとめに協力しているという部分が相当強くあるということでございます。ですから,そういった趣旨で,多分,鹿野幹事なり,岡崎幹事なり,あるいは弁護士会の中井先生なりが言っているんだと思うので,そこら辺をかたくなにそう言われると,今後,どう対応すべきかなどということにも非常に困るので,何らかの形で若干でも,そういうことを書いていただけないのかなというのは,重ねてお願いしたいと思います。 ○岡崎幹事 余り足を引っ張るようなことを申し上げるのは本意ではないのですけれども,前回も発言させていただきましたので,一言,付加したいと思います。今,筒井幹事から事務当局のお考えを拝聴いたしまして,立法の御経験豊富な筒井幹事のおっしゃることですから,尊重しなければいけないとは思います。しかし,他方で,(前注)に何がしかのコメントを書くことは,異例なのかもしれませんけれども,今回の中間試案の集約度合いが,これまでの民事系の立法の中間試案のレベルと同程度であるということができるのかに関しては,いかがなものかという感想も持つところでございます。   この点を正確に踏まえた上で国民に意見を付けていただくことが,あるべき姿ではないかと思っております。文言の集約が非常に難しいという御発言もありましたけれども,今回,中井委員がお出しいただいた文言を拝見しますと,非常にマイルドで大人の表現といいますか,上手にお書きになっていると感じます。これまでの筒井幹事の御発言である,ゴシック体の部分は必ずしも部会の多数ではないということを正面からお書きになることは,難しい部分もあるのではないかというのは分からないでもありませんけれども,中井委員は,非常に上手にお書きになっておられると思います。このようなマイルドな表現でも,なお,部会の中でコンセンサスが得られないというのであれば,別の表現を検討していく必要があるかもしれませんけれども,私としては何らかの形の(前注)がないと,誤解を招くのではないかと思います。 ○山野目幹事 中間試案の文書としての性格は,可能な限り正確に表現をして説明を添えた上で,パブリックコメントを実施するということが極めて大切なことであって,期待されていることなのではないかと感じます。そのことについては,中間試案の策定の主体である私たち委員・幹事に共通の思いがありますし,事務当局も同じお考えで,これを支援なさってくださっているのではないかと感じます。そのような意味で,この文書の性格を丁寧に説明した文章を補足説明の中に入れて,中間試案に係るパブリックコメントを実施していただくということが重要ではないかと考えます。   第69回会議の議事の末尾におきまして,岡委員と岡崎幹事から,そのような観点からの御心配の御発言がありましたし,本日,鹿野幹事,中井委員,佐成委員からも同じ方向の趣旨の御発言があって,中井委員から具体的な文案を示した提案も頂いているところであります。ここに頂いているこの文案を更にもう少し委曲を尽くして,説明を添えた内容を補足説明の中に入れていただきたいということを望むものであります。 ○大村幹事 私の意見も今の山野目幹事の意見と基本的には同じでございます。ただ,何人かの委員・幹事の方々から前回も含めて別の文章ではなくて,(前注)の中に書き込んでほしいという御要望も多数寄せられていることもよく理解できます。それで,先ほど筒井幹事のほうからお答えがございましたけれども,中井委員が出されたものも含めて,今回の中間試案の熟度についてどういう評価をするのか,これはかなり難しいところがあるのではないかと思います。ただ,これも御指摘がございましたけれども,今回の立法の重要性に鑑みると,少なくともこれをパブリックコメントに付して,国民の皆様の御意見を伺って,さらに慎重に審議をするという手続がこの後に残されている,その種のことを書き込むということはあってもいいと思っております。 ○中井委員 1点だけ。山野目幹事からこの趣旨を更に敷衍して,補足説明でとおっしゃいましたけれども,その考え方には弁護士会は反対です。部会決定をする文書の中に,つまり,中間試案の中に入れていただきたいというのが本意です。その上で,それを更にかみ砕いて補足説明に書いていただくことについては,全く異存はございませんけれども,本文,(前注)は中間試案,この委員・幹事で決定する対象事項と思っております。委員・幹事からの表明があること自体,非常に重要であると考えております。 ○山野目幹事 中井委員のお話を伺って,このドキュメントの正確な趣旨を国民一般に伝えていきたいということの思いを強く感じましたし,それは委員・幹事の責任においてされるべきであるということもおっしゃられて,それらのことはごもっともであると感じます。それとともに,私は中間試案の本日の部会資料58の文書の1ページ目を拝見していて,特に(前注)のところを見て,少し心配であると感ずることがございます。提示されている(前注)の1及び2は,いずれもそこから後で述べられ始める中間試案の内容の論理的な伝達のために設けられている注記でございます。   言い換えますと,価値的な内容の何かコミュニケーションをしようとしている部分ではありません。1番は,事務的にこれから取り上げる内容範囲を示しているものでありますし,2番も,これから並べられる各項目の繰り返しですが,論理的な意味を伝えようとしているものでありまして,(前注)2の案の最後のところに現状維持が想定されていると書いてありますのも,現状維持がよいのだという価値を述べているのではなくて,この文章は,ここに書いていないものについては現状維持という趣旨で書いているものですけれども,そのことを含めて,国民一般に対していかがですかということなのですよ,ということをニュートラルに説明している文章であると,受け止めることができるであろうと思います。   中井委員から,メモで(前注)の3の案としてお出しいただいている内容は,中間試案の案にある1及び2と大きく性格を異にし,ここの委員・幹事の間における意見交換の経過の説明を踏まえて,このドキュメントについて更に価値的に踏み込んだ内容の伝達をしようとしているものですが,そういうことをするというのは,腫れ物に触るようにしないときちんと国民に伝わらないものですから,もっと長い行数を費やして説明しなければいけなくて,(前注)で処理をすることができるような短いフレーズで伝えようとすると,かえっていろいろな誤解が起こるということが,併せて非常に危惧されるところなのではないかと感じます。そのようなことから,現在の(前注)の1及び2を記しておいた上で,中井委員が御提案の3に当たる内容は,この文章よりも更にもっと厚みのある文章で,補足説明に付けていただくことが相当ではないかという意見をもう一度,申し上げさせていただきます。 ○深山幹事 ただいまの議論を聞いていて,(前注)の在り方について,今,山野目先生がおっしゃったこと自体は理解しているつもりなんですが,(前注)の1は正に価値的なものを含まないロジカルな話にとどまると思うんですが,(前注)の2というのは,そういうロジカルな部分とともに,価値的な内容を意図していると読まれるおそれは十分にあると思います。すなわち,「民法の規定のうち改正が検討されているものを取り上げている」という表現は,取り上げていないものは改正が検討されていないと読めるわけで,主観的な意図はともかく,読み手はそう読むと思います。弁護士会の中でもそういう感覚を持って議論を致しましたし,潮見先生や山本先生が取り上げるべきだと言った趣旨も,ここに取り上げられていないものは検討の対象から外れるわけではないというお考えなんだろうと思います。   最終的にそれが改正事項になるかどうかはともかくとして,今,掲げられているゴシック体というのは,筒井幹事がおっしゃるように,合意が形成できる見込みがあるものとして土俵に乗っているものですが,恐らくここに載っているものについても,一定の項目につき落とすべきだと考えている委員・幹事なり,バックアップの団体もいるでしょうし,逆に,ここにはないけれども,なお,取り上げるべきだという意見のある項目もあり,もっと項目が増える方向と両方の議論が残っているというのがこの部会の今の現状だろうと思います。最終的にまとまらなければどんどん落ちていくんでしょうけれども,この段階でどこまで提示するかということ自体が一つの提案でしょうから,更に落ちるものもあれば,拾われるものもあるという含みを残すということは,この段階では必要なのではないかなと思います。その意味では,(前注)の3というのを記載する意味は十分にあるのではないかと考えます。 ○道垣内幹事 深山幹事のおっしゃるとおりなんですが,そうなりますと,中井委員から出された3の案というのは,改正事項が増える可能性を必ずしもお書きではないですね。筒井幹事は3の文章はまとまるのかという懸念を示され,そのご懸念どおりの発言をすることになり恐縮ですが,中井委員が今回出された3の文については反対です。もちろん,まとまれば,そのことを書くということに対しては,私は必ずしも反対するものではありません。 ○能見委員 今まで出た議論に新しいものを特に付け加えるものではありませんけれども,我々の使命といいますか,我々が中間試案としてこれを国民に提示して議論してもらうときに,先ほど,どなたかがおっしゃいましたけれども,そこでどういうメッセージを伝えるかということが重要で,そういう意味では,(前注)について中井委員が提案されたことは適切であると思います。その文章表現がそのままでよいのか,若干修正する必要があるかも分かりませんけれども,それはともかくとして,こういう趣旨のことを記載するということに私は賛成であります。   恐らくこのご提案の文章ですと,鹿野幹事が言われたこと,あるいは私も含めて他の委員からもご指摘がありましたが,この中間試案の個別の項目のところでゴシック体で書かれているところが必ずしも常に多数意見ではないということについてまでは,中井案の表現では出ていないかもしれませんけれども,しかし,最低限,これであれば全員が妥協しつつも合意できる案として,こういうものを前注に載せるのがいいのではないかと思います。更に詳しく説明しなければならないものは個々の項目のところで,補足説明として必要な説明をすれば一層,よろしいかと思います。ただ,全体に渡ることとして,前注で書くことがやはり重要だと思いますので,私としては,中井案を支持したいと思います。 ○中田委員 (前注)の2について先ほど深山幹事の御指摘になられた点,つまり,単に論理的なことだけではないんだという御指摘はそうだなと思いました。そこで,この2の書き方を若干,工夫することによって中井委員の御提案を盛り込むことができないだろうかと考えました。  具体的に申しますと,2の第1文のほうは,あたかもここで取り上げられているものは,改正するという方向で合意ができているのだと読まれてしまうと,現状維持が多数である部分については,おかしいのではないかという御指摘が出てまいります。そこで,第1文については改正が検討されているもの,例えばですけれども,括弧して改正の当否が検討されているものを含むというような補足を加える。   第2文のほうですけれども,今度は逆にここで取り上げられていないものは変更しないという趣旨なのかとも取られるおそれがあります。そこで,第2文の「中間試案で取り上げられていないものについては」という,この中間試案というのはこの文書そのものを指すわけですけれども,例えばここで取り上げられていないものというように,少し,それを軟らかくすることによって,まだ,パブリックコメントの結果,対象が広がる可能性があるんだということを示唆するということも可能ではないかと思いました。 ○筒井幹事 様々な御意見を頂きましたので,本日の会議では余り議論を引き取らないようにしたいと思っておりましたが,この点は今一度よく考えざるを得ないと思います。限られた時間の中で成果物をまとめていくのが審議会の使命ですので,その範囲内で合意形成が可能なものを盛り込むことができるのかどうか,再考させてください。その上で,次回会議にまたお諮りしたいと思います。現在お示ししている(前注)に関しては,価値的な内容を含んでいると受け取られるのだとすると,文章の書き方が適当でなかったのだろうと思います。そういう趣旨では全くなくて,これは元々,中間試案についての検討を始めるときに,ここで取り上げられていない民法の規定は,現状のまま存置されることが想定されていて,そのことを前提に読まないと論理的に提案の趣旨が理解できないから,その説明を何らかの形で補う必要があるという問題意識に基づくものです。これは,複数の部会メンバーから御指摘を頂いていたことであり,それをそのまま反映させる意図で作文したものであります。その作文が適当でなかったという御指摘を頂いたのだと思いますので,その点も含めて検討いたします。 ○松本委員 本日の部会の冒頭で私は大変驚きました。テレビの取材が入ったわけですね。こんな地味な議論に何でテレビが取材するんだろうと,大臣でも来られて何か重要な発言をされるのかなと思っていたんですが,大臣も来られない。ということは,昨日,一昨日でしたかね,新聞が幾つか報道したのを受けて,テレビも取り上げるということになったんだろうと思うんです。そういうマスコミが取り上げるということは,かなり方向が固まって,こう変わるんだということを記者が感じていて,それを国民に訴えようとしているということだろうと思われます。   もし,そうであれば,ここの部会の大方の意見,意思とは必ずしも一致していないわけです。したがって,そういう報道によって誤解が助長される可能性を審議会の文書としてきちんと打ち消して,客観的な審議の状態を示すような形にする必要があるのではないかと思います。そういう意味で,中井委員の追加提案を若干修正する,すなわち,更に復活する論点もあるんだという形を加えて,中井第3項目を入れるなり,あるいは中田委員のおっしゃったように,第1項,第2項を修正する形で実質的に中井委員の御意見を入れるなりする,どちらかの形で誤解をさせない方向に,既に今,誤解で動き始めているわけですから,そうでなく逆方向のベクトルを少し文章の中に入れる方向でお考えいただきたいと思います。 ○潮見幹事 筒井幹事がさっきおっしゃったように,引き取って検討していただくということで,私は基本的にその方向に委ねたいと思います。その際に,私も幹事の一人として少しだけ自分の意見をここで申し上げさせていただきたいと思います。今回,書かれている(前注)の2の後段部分については,もし,再考されるのであれば,避けていただきたい。それから,鹿野幹事の御意見にあったようなゴシックのところは多数ではないなどということを書くことには私は反対です。それから,中井委員が書かれている多くの注記を残しており,注記のない項目についても現行法を維持する意見もあるということを書くのにも反対です。   むしろ,2のこの中間試案では,上記1の民法の規定のうち,改正が検討されているものを取り上げているということと,それから,中井委員が3のところで書いている部分のうちの2行目でしょうか,その中にはいまだ本部会内においても意見の分かれている項目も少なくないということと,それから,最後に,今後,中間試案に対するパブリックコメントの結果を始め,国民各層の意見を十分に踏まえて,第3ステージの審議を行うこととし,広く国民の合意を得られる要綱案の作成を目指す予定である。これだけを書けば必要にして十分であると思いますし,先ほどから出ているような懸念に対しては十分に対応できているのではないでしょうか。それ以上に書こうとすると,今度はかえってここでいろいろ委員・幹事の先生方がお持ちの,それぞれお一人お一人の意見とずれたメッセージを伝えることにもあるのではないのかと思った次第です。後は筒井幹事以下にお任せしたいと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございます。   私は潮見幹事のおっしゃったことに賛成ではあるんですが,一番最後の点は,中間試案を提出してパブリックコメントをして,パブリックコメントの結果を踏まえて第3ステージを行うというのは,中間試案を取り巻く全体の審議のスケジュールであって,中間試案の(前注)に記載すべき内容ではないと思っています。中間試案を発出するについて,あるいはパブリックコメントをするについて,この中間試案をどう取り扱うかという説明を前に付けて,その中に今の御趣旨を入れるというふうなやり方があると思いますが,(前注)というものの性格とは違う内容が含まれ過ぎているような気もするので,その点も含めて,事務当局に御検討いただき,また,部会長としても事務当局と相談をさせていただいて,次回に改めて御提案を差し上げるというようなことで引き取らせていただければと思います。その間に御意見があれば,また,お寄せいただいて,それを踏まえて御検討させていただければと思いますが,よろしいでしょうか。 ○鹿野幹事 一言だけ蛇足ですが,先ほどの私の発言は,多数意見を占めているわけではないということを,そのような表現で直接的にここに書くべきだということでは必ずしもありません。ただ,意見が分かれているのだということ,この示された案は大勢を占めた考え方というわけではないということが分かるような内容の文章を付けてほしいということだったのです。そういう意味では,潮見幹事が先ほどおっしゃったことと私が申し上げた意見は,その部分について基本的には変わらないと私は認識しております。 ○野村委員 先ほど鎌田部会長のまとめられた方向でお願いすればよろしいと思いますが,二つのことを考えなければならないと思っています。一つは多分,パブリックコメントを求められている国民が,これを読むときにどう読むのかというための必要な情報を与えた方がよいのではないかということです。多分,最後の基本的には取り上げられていないものについては,現状を維持するということが想定されているというのは,そういう趣旨だと思います。もう一つは,この部会として出す中間試案がどういう性格のものかということをある程度,伝える必要があるということです。ただ,そのときにこれは多数意見でないということを明示的に言うのかどうかということについては,僕も疑問を感じていまして,その辺も含めて事務当局で御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 多数かどうかというのは,どの提案についても厳密に諮ったことはないと思うので,多数,少数という言葉は少なくとも使うべきでないと思っていますし,他方で,意見が分かれているし,論点をもっと出してもいいと言って,中間的な論点整理の次元に完全に戻すわけにはいかないわけですから,そこのところの微妙な段階をどううまく表現し,かつ,うまく受け止めてもらえるようにするかということについて,事務当局と協議をさせていただいて,また,次回に御意見を伺わせていただければと思います。 ○松本委員 今の点については以前,何回か前の議論の中で筒井幹事が事務当局としてここには,将来,更に議論をすることによって多数派を形成できる可能性のある案を残しているんだという趣旨のことを確か発言されていて,可能性がないと事務当局が判断したものは落としているんだということでした。今まで,ある案が多数かどうかということは誰も諮ったことがないわけで,将来多数あるいは全員一致にできる可能性があると,事務当局が審議を聞いて判断をした事項が残っているんだというのが多分,客観的には正しい言い方になると思います。 ○岡委員 私も(前注)か端書か,何らかの形で本文にいい文章を残していただきたいと今日は思っていますので,議事録に一つ残させていただきたいと思います。   それから,もう一つ,今回,たたき台の議論を通じて現行法維持の(注)をかなり多く復活していただきました。相殺の遡及効については撤回もされておりまして,非常に法務省さんに考えていただいているというのが分かります。その反面,現行法維持の考え方があるという(注)がないところは,そういう考え方がないとどうしても読めてしまいます。弁護士でもこれだけ量が多くて読むのに疲れるときに,ざっと斜め読みしたら現行法維持の(注)があるところとないところがある。(注)の書き方としては「という考え方がある」という表現ですので,そうではないところに何か考え方はないという反対解釈をどうしても普通の人は持つと思いますので,それは誰しも本意ではないと思いますので,それがそうではないんだということを端書なり(前注)で,是非,分かりやすく書くべきだと思っております。 ○鎌田部会長 分かりました。その点も含めて検討させていただきます。   第1から第3についてのほかの御意見,鹿野先生からの御質問について,説明してください。 ○笹井関係官 鹿野先生から,不実表示の第三者のところをどう考えているのかという御質問がありましたので,その点について御説明をさせていただきたいと思います。この点については,(概要)の5ページの,先ほど引用された「また」のパラグラフの一番最後の箇所で,詐欺におけるのと同様に,相手方と同視される者の不実表示によって錯誤が生じた場合について規定を設けるという考え方の中で御紹介をしております。   不実表示と詐欺を全く同一に扱ってよいのかということについては,いろいろな考え方があり得ると思いますけれども,一方で,関連性もあるところだと思いますので,整合性に配慮しながら,今後,更に検討を進めていくべきだと思っております。第三者の詐欺あるいは不実表示についてどう扱うか,またその第三者の範囲をどのように考えるかという問題は,詐欺の部分とかなり共通していると思いますので,本文レベルでは「詐欺」のところで代表して(注)という形で書き込んで,不実表示のところについては(概要)欄で御紹介するという形にしております。 ○中田委員 「錯誤」について今の点を含めて2点ございます。今の笹井関係官の御説明であります5ページの第4パラグラフの「また」で始まる文章ですが,その1行目には「表意者の錯誤が相手方又は相手方の代理人等」というのが入っていて,そのパラグラフの最後のところで,「このほか……相手方と同視される者」というのが入っていますので,この二つがどういう関係にあるのかが分かりにくいのではないかと思います。それで,このパラグラフの記載と,それから,錯誤と詐欺との関係とを整理して書いていただくと,よろしいのではないかと思いました。   それから,もう1点ですが,本当に表現だけのことなんですけれども,「錯誤」の(1)と(2)に「通常人であってもその意思表示をしなかったであろうと認められるとき」という表現が出てまいります。この規律の実質には賛成なんですけれども,通常人という言葉を使うのがいいのかどうかというのは,検討の余地があるのではないかと思います。通常人という言葉は大正3年の大審院判決で出ておりますし,現在の教科書でも広く使われているわけですけれども,資料で引用されています大正7年の大審院判決では使われておりませんで,一般取引上の通念というような表現になっております。   その後の判例でも通常人という言葉は余り使われていないようですし,法令の言葉としても使われていないようです。通常人という言葉が独り歩きしますと,何か通常でない人もいるようにも読めてしまって落ち着きが悪いものですから,もちろん,ここに書いているのは法文上の言葉ではないわけですけれども,この表現については,取りあえず,中間試案はこうするにしても,今後,引き続き検討するというような留保を付しておいたほうがいいのではないかなと思いました。 ○山本(敬)幹事 「錯誤」について意見を述べたいと思います。   まず,(1)と(2)の関係についてですが,(2)では今回,新たに修正をされて,(2)でも「錯誤」という言葉を使われるようになっています。これによりますと,(1)でいう「錯誤」という言葉と(2)でいう「錯誤」という言葉の意味がどのような関係にあるのかということが問題になってくるように思います。この点については,差し当たりこの段階ではこのような形でパブリックコメントに掛けて,そこで出てきた御意見を踏まえながら,両者の関係並びに文言としてどう書くのが適切かということを更に詰めるべきではないかと思います。そのような問題提起をここでさせておいていただきたいと思います。   もう1点は,この表現は変えたほうがよいのではないかということです。(2)のアで,前回の御指摘を踏まえて今回,「意思表示の前提となる当該事項が法律行為の内容になっているとき」と改められています。これでよいのかなとも思いましたが,よく考えてみますと,例えば自動車の売買で,この自動車の走行距離は5万キロだと思って買ったら,実は10万キロだったというようなケースを想定しますと,「意思表示の前提となる当該事項」というのは,(2)の柱書きを見ますと,目的物の性質,状態などがその例とされていますので,当該車の走行距離が「当該事項」ではないかと思います。   しかし,走行距離が法律行為の内容になっていることが重要なのではなくて,この自動車の走行距離は5万キロであることが法律行為の内容になっているという場合に,錯誤取消しの要件を満たすことになるのではないかと思います。その意味では,正確に言いますと,アの部分は,「意思表示の前提となる当該事項」に続いて,当該事項について表意者が理解を誤り,その理解が法律行為の内容になっているときという意味合いではないかと思います。正確にどう書けばよいかは難しいのですが,強いて言いますと,「当該意思表示の前提となる当該事項に関する表意者の理解が法律行為の内容になっているとき」と書き改めるのが正確ではないかと思う次第です。この点については余り議論し出しますと,また,紛糾するかもしれないのですが,このままではすんなりと理解できず,当てはめがうまくできない可能性があるように思いました。 ○大村幹事 今の点については,文言については事務局のほうで御検討いただくということで,実質についてですが,これでは言葉が足らないように思いますので,修文していただければと思います。ですから,山本さんの御指摘に基本的には賛成です。 ○鎌田部会長 用語について事務局で考えろと言われても,なかなか難しいところがあるので,適当な表現の御提案があれば,それを踏まえてどうするかを考えたほうがこの時点ではいいと思いますので,何か御提案がありましたら出していただきたいと思います。 ○大村幹事 先ほど御意見も出ましたけれども,用語についてはなお検討を要するということをどこかに書いていただくということでもよいかもしれません。 ○内田委員 山本敬三幹事の御指摘の点なのですが,実質の議論は今日はしないほうがいいとは思うのですけれども,走行距離5万キロの車について走行距離5万キロであるという点が法律行為の内容になるというのは,言い換えると契約内容になるということですね。それが契約内容になると,結局,5万キロの車を給付する債務を負うということになって,5万キロでなければ売主の債務不履行の問題になるのであって,買主の錯誤の問題ではないという議論も出かねないと思います。そこで,ここはやや曖昧な表現を使っていて,最終的に条文にするときには,もちろん,曖昧なままではいけないと思いますので,もっと明確にする必要があるとは思うのですが,今のような点も考えて,完全には山本さんのおっしゃるとおりの表現になっていないということかと思います。 ○山本(敬)幹事 実質の議論はここまでにしたいと思いますけれども,今のような形での理解,つまり,債務不履行が認められる場合には債務不履行だけの問題であって,錯誤の問題にはおよそならないという考え方もあり得るかもしれません。しかし,これまでも,錯誤と従来で言う瑕疵担保との関係が議論されていて,考え方としては,両方の要件を満たす場合はどちらも選択可能であるという考え方もあります。私自身は,そのような考え方を前提にすれば,先ほど申し上げたような形で書かれても,何ら問題はないと考えていますが,そのような点をおくとしましても,先ほど申し上げたような形で,走行距離が5万キロであることが法律行為の内容になったと評価できるときに,従来の判例理論からしても,錯誤無効が認められていました。その上で,瑕疵担保が優先するか,あるいは両者が選択的に認められるかというのは次の問題であるということだったのではないかと思います。その意味では,少しでも了解が得られるようにという,その配慮は非常によく分かるところですけれども,ほかの方々から特に違和感がないというのであれば,微修正を考えてもよいのではないかと思います。 ○道垣内幹事 山本幹事に対する賛否ではなく,どちらかといえば大村幹事に反対するのですが,字句についてはなお検討を要するというのは当たり前のことで,そんなものを(注)に書くべきではないと思います。 ○岡崎幹事 本日の審議の冒頭で大島委員から,暴利行為に関する規定を設けないという考え方の根拠を(概要)欄に書いてはどうかという御提案がございましたけれども,この点については私も賛成です。どう書くかに関しては,この後,議論の対象になる11ページの「自己契約及び双方代理等」の記述が大変参考になると思います。ここで(注1)として当然に効果不帰属になるのではなくて,本人の意思表示によって効果不帰属とすることができるという構成が取り上げられておりますけれども,これに関しまして(概要)欄の4行目の「もっとも」以下で,その根拠が非常に端的に分かりやすく説明されています。このような端的な根拠の説明がありますと,読者にとって非常に分かりやすいというような印象を持ちました。   同じように暴利行為のところを手当てするとすれば,部会資料の2ページの(概要)欄の末尾のところに,「そもそも規定を設けないという考え方があり」という結論だけ書いてあるところを少し補うことが考えられると思います。例えば,「提案されている要件が不明確であり,従来の判例よりも無効とされる範囲が広がり,取引界の混乱を招きかねないし,規範の固定化は社会状況の変化に即した判例の発展にも障害になるとして,規定を設けるべきではないという考え方があり」というような,すこし長過ぎるかもしれませんので,ワーディングは事務当局にお任せしますが,このようなフレーズを入れてはどうかと思いました。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。 ○岡委員 前々回も申し上げましたが,かなり分量が多くて弁護士会として,これに全部きちんと対応するのが非常に難しい状況にありますので,今日もゆっくりめにやっていただければと思います。そういう観点から,もし,誤解であればすぐ却下していただければ結構なんですが,「意思能力」の(概要)の書き方でございます。全体的には「意思能力」のゴシック体,(注)の書き方に反対ではないんですが,今までの理解ですと,抽象的,一般的に事理弁識能力,7歳,8歳の能力で今まで考えてきたのを法律行為ごとに考えるというふうに,大きくここで変えるんだというふうな理解をしておる弁護士が多いところでございます。   しかし,(概要)の第2段落を見ておりますと,ゴシック体は多くの学説の理解にも合致すると考えられ,多数説を採用するので,そう大した変更ではないですよと読まれます。それが実態だったら結構なんですが,何となく実務家としては今まで,7,8歳の能力と考えていたのをここで大きく切り替えるんだと認識しておりますので,もし,その認識が正しいとすれば,そのようなことが分かるような,今まで漠としてこう考えられてきたけれども,今回,こういう多くの学説に従って舵を切るんだということが分かるようにしたほうが国民には分かりやすくなると思いました。前提として,その認識が間違っているんだということであれば結構ですが。 ○潮見幹事 今日は(概要)の書き方まで審議の対象にするということではなかったのではないですか。そうであれば,ほかのところでも私は(概要)のところで言いたいことが幾つもありますので,それが言いたいわけではないですが,(概要)について何か,こういうふうな形で工夫をしたほうがよいということであるのならば,後で(概要)をまとめるときに,いずれ,委員・幹事の先生方に回覧していただく段階で少しいろいろな各方面からの意見を参考にしながら,書いていただいたらいいのではないかと思いました。 ○筒井幹事 (概要)の書き方は審議対象ではないというのは潮見先生の御指摘のとおりであり,なおかつ,岡委員から本日の審議をゆっくり進めることを期待するかのような御発言があったので,危機感を持って発言いたしますけれども,これまでの「たたき台」に関する3回分の議論を今日は一日で終えようという計画です。「たたき台」については,もちろん十分だとは言いませんけれども,取りまとめに必要な時間を掛けて審議をしてきて,それを踏まえた手直しについて確認をしていただくというのが,基本的な本日の会議の趣旨です。   ですから,既に(概要)について幾つかの御意見を頂いたのは,それはそれで理解いたしましたし,それを受け止めて考えていこうと思いますけれども,今後はできる限り,本文と(注)の手直しをするかどうかというところに議論を集中していただきたいと思います。その上で,本文について幾つか修正の御意見も頂きましたけれども,その発言をされた多くの方に言葉を添えていただきましたように,今回の改訂版に更に手直しをして御議論いただくということを基本的には想定しておりませんので,中間試案としてはこれでまとめて,ただ議論の経緯について補足説明などで丁寧に紹介してパブリックコメントを経た上で,次のステージで更に議論していくことにさせていただきたいと思います。その限度での議論に,是非,集中していただけますよう重ねてお願いいたします。 ○中井委員 1の「法律行為の意義」のところですけれども,前回たたき台では(2)の定めがあって,そこに遺言が加えられた。(1)で一般的な定義を置いたわけですから,(2)の実質は例示に意味を持つのではないか。そうだとすると,(1)と(2)を合体したほうが分かりやすくないのかというのが私の考え方です。ただ,メモの2項に記載したものについては,誤解を生む表現になっていることは確かなようですので,契約のほか,取消し,遺言その他の単独行為というのが例示として,後ろに続けるのが,分かりやすさからは良いのではないかと思った次第です。御検討いただければと思います。 ○山野目幹事 今,中井委員がおっしゃったところの変更の提案ですけれども,中井委員がお示しになっている文が日本語として不可思議だと思います。 ○中井委員 だから,読み上げなかったですが,この文章ではおかしいものですから。 ○山野目幹事 それでは,これ以上,言いませんけれども,今の原案がよろしいと考えます。 ○山本(敬)幹事 私も結論としては原案でよいのではないかと思います。(1)の中に(2)を組み込もうとしますと,異質なものが交じり合うことになり,結果として伝えようとすることが不透明になるのではないかということを恐れます。 ○鎌田部会長 それでは,続きまして「第4 代理」と「第5 無効及び取消し」について御意見をお伺いいたします。御自由に御発言ください。 ○松岡委員 質問と意見の両方があります。「無効な法律行為の効果」の17ページの2(1)から(3)までで2点で,49ページの「契約の解除の効果」と平仄を合わせてあるので,どっちにも当てはまる問題です。   1点目は,果実と利益についてです。前回までの提案では,給付を受けたもの及びそれから生じた果実ではなくて利益となっておりました。189条が給付利得の関係には適用されないというのが通説的ではありますが,判例は果実には使用利益も含んでいると理解しています。しかし,そのことは条文からは読みにくいので,その判例の趣旨を表現するため,果実に限定せず,利益と規定することにしていたと思います。   しかし,今回,「果実」,しかも「生じた果実」とかなり限定的に書いてしまう案になっておりますので,およそ無形の使用利益については返還対象にならないかのような誤解が生じるおそれがあります。それでいいのかが気になります。もっとも,元の案のように利益と書きますと,今度は転売収益のようなものにまで広がってしまうという逆の誤読のおそれがあります。だから,果実に書き直されたのかと推測しています。その辺りの問題については,具体的な議論がなかったところですので,前回の案からなぜ変わっているのかをお聞かせ願いたいと思います。   もう1点も,同様に案がなぜ変わっているのかについてです。(2)と(3)に関する表現ぶりにはいろいろ工夫の余地があり,まだ案としてまとまっていなかったと思うのですが,第1ステージのときから,このように給付を受けたものの価額の返還を原則に置くとすると,例えば詐欺や強迫の被害者あるいは消費者契約法によって取り消した消費者にとって苛酷なルールになってしまうのではないかという御意見が,弁護士会や岡田委員その他からたくさん出されていました。その折に,詐欺や強迫の場合は例外を設けるとか,あるいは無効・取消しの規範の趣旨を考慮して返還請求権の内容に制限が加わるという歯止めを設けてはどうかという意見を私は申し上げました。詐欺・強迫の例外を具体的に書くのがいいのかどうかは,私も自信がありませんけれども,第2ステージや中間試案の取りまとめの議論のおりにも,ほとんど議論がなかったところが大きく変わっており,大変気になります。担当していただいた事務当局からそのような変更の理由についてご説明をいただければ有り難いと思います。   そして,そのことが問題なのは,そのような変更があったことが,(概要)欄の説明からは全然読み取れないことで,これでいいのか疑問に思います。   現在提示されている案に絶対に反対というわけではなく,この案でもいいのかもしれないのですが,従来の提案からの変化が結構大きいという気がいたしますので,まずはご説明をお願いします。 ○岡田委員 同じような質問になるかと思うのですが,「無効な法律行為の効果」の(2)のところで上限は書いてあるのですが,下限が書かれていませんが,ゼロというところも消費者紛争の場合,あり得るのですね。だまされたとか,強引な契約。その辺がどうなるのか不安だという声が周りから出てきたもので確認させて下さい。 ○鎌田部会長 では,今の2点について説明をお願いします。 ○笹井関係官 まず,松岡先生からの「生じた利益」を「果実」にしたのはなぜかという御質問ですけれども,松岡先生からも御指摘がありましたように,「生じた利益」としてしまうと単に使用利益だけではなくて,転売利益などいわゆる超過利得のようなものが含まれてしまうという読み方がむしろ自然ではないかと感じたものですから,ここでの案はそういったものを含まないという趣旨で「果実」に限定したということです。使用利益を返還対象から除外するというつもりはありませんで,今まで使用利益も「果実」の解釈で読み込まれてきた,それを前提にして読めば,果実として評価できるような使用利益はこの「果実」の中に含めて,読むことができるのではないかと考えていたところでです。   それから,(2)と(3)の修正についてですけれども,余り実質を変えたつもりはありません。なぜ変わったかといいますと,「善意」とか「悪意」の対象を変えたことに伴うものでございます。これについては,前回のたたき台の審議において,善意,悪意の対象が従来の考え方とは違うのではないかという御指摘が複数ございまして審議を踏まえて,善意,悪意の対象についての考え方を改めました。この点については,20ページの一番上の(備考)欄で御説明をしております。以前の資料では,取り消し得ることを知っていても取り消されたことを知らなければ善意であるという考え方でしたので,(2)(3)のただし書で,詐欺をした人,脅迫をした人について例外ルールを設ける必要があったわけですけれども,今回の資料では,善意,悪意の対象を変えて,取り消すことができることを知らなかったときは善意であることを前提としておりますので,そもそも自分で詐欺をしたとか,自分で脅迫をした人というのは,(2)(3)の善意者ではなくなってしまう。そのために,ただし書は不必要になったということで,実質はそういう意味で何も変わっていないつもりだったのですが,表現としては修正をしたということでございます。   それから,岡田委員の御質問ですけれども,本来であれば客観的な価値の返還義務を負うのが原則ですが,(2)は,その本来的な返還義務よりも現存利益が小さいときには,そこまで減少するという趣旨です。もし,現存利益がゼロであるということになれば,そのゼロが上限ということになるので,現存利益が何もなければ返さなくていいという結論になるということでございます。 ○岡田委員 分かりました。 ○山本(敬)幹事 先ほどの松岡委員の1点目ですけれども,私も松岡委員と同じような感想を持ちました。笹井関係官の答えを聞きましても,考えている中身については異論があるわけではなく,表現の仕方の問題ではないかと思いました。もし,そうだとしますと,「その給付及びそれから生じた果実その他の利益」というか,あるいは,それでも広がり過ぎるというのであれば,「それから生じた果実その他のその利用に係る利益」とか,そのような表現で適切に中身を表せるのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○松岡委員 全く私も同じ意見です。189条の解釈・適用をこの文言に読み込めというのは,プロ向きの発想にすぎます。今,山本敬三幹事が御提案になった程度ぐらいは書き込んでいただくのが望ましいと思います。   それから,2点目につきましては私が誤解をしていたのかもしれません。ただ,解除の効果にせよ取消しの効果にせよ,学会でも正直に申しますと必ずしも議論が十分尽くされているわけではなく,文言も含めてなお議論をかなり重ねなければ,きちんとした案にはならない問題ですので,中間試案で案としてこう決まったという印象がかなり強いと,誤解を招くのではないかとの危惧を,私は抱きます。 ○松本委員 私もここの改訂版を読んだときに,何でこんなに限定するんだろうという疑問を大変持ちました。使用利益あるいは法定利息に当たる部分は一体どうなるんだろうと。果実の解釈で読めということかもしれないけれども,もし,そうだとすると分かりやすい民法という今回の審議のスタート時点と逆行するのではないかと思います。したがって,もう少し分かりやすく,こういうのが入るんだということがはっきりするような表現に直すべきだろうと思います。果実という言葉以外は入れないということであれば,せめて,現行の189条1項は「占有物から生ずる果実」という書き方をしていて,「生じた果実」という言い方をしていないところに恐らく若干意味があるんだろうと思うんです。   使用利益というのは,あるいは法定利息相当分というのは本当に生じたと言っていいのか,曖昧かもしれないけれども,規範的に見て生じていると評価していいものということを「生ずる」という言葉で,ひょっとしたら意味しようといているのかもしれないので,単純な過去形は大変誤解を与えるだろうと思いますし,使用利益という言葉あるいは法定利息という言葉を書き込めれば書き込んだほうがいいんだろうと思います。 ○内田委員 果実という言葉が分かりにくいという御指摘はそうかなと思います。ただ,ほかにうまく表現できる言葉がないということで,一応,民法上の用語として法定果実,天然果実を含むものとして,果実という言葉をここでは使っているということだと思います。   使用利益であるということがストレートに分かるような表現をなぜ使わないかということなのですが,物の価値そのものは返還するわけですね。物には使用によって減価していくような物と,使用しても価値の変わらない物,土地のようなものとがあるわけですが,使用によって減価していく物について,その物の価値の評価時点をいつにとるかいかんによっては,使用利益の返還が不要であるというか,使用利益を返還させるとその分が重複してしまう場面も出てくるわけですね。したがって,常に使用利益が物の価値にプラスして返還されるというルールを正面から書いていいのかどうかというところに,なお,確信が持てなかったというところではないかと思います。そこで,一応,解釈の余地のある果実という表現で,どこまで含めるかを解釈に委ねるような表現に今はなっているのだと思います。   ただ,いずれにしても松岡委員がおっしゃったように学界で確立した見解がないといいますか,意見が一致しているというわけでは必ずしもない問題なのですが,しかし,現実に必ず問題になることですので,ルールを示さず全部解釈に委ねるというのは余りにも不透明だろうと思います。そこで,今のような点も考慮しながら,一応,これを原案としていますけれども,どういう用語で表現するのがいいかというのは,当然,更に検討すべき課題だろうと思います。 ○能見委員 いいですか,別の点に移って。「自己契約及び双方代理等」の6のところですけれども,(3)のところで利益相反行為というのを取り上げることになった関係で,上記(1),(2)を準用するとなっていますけれども,(2)のうちのアは準用されていいと思いますけれども,イのほうは利益相反行為という実質概念で既に判断が含まれてしまうと思いますので,したがって,(3)の一番最後の文章は,上記(1),(2)アを準用するとするほうがよろしいのではないかと思ったんですが,どうなのでしょうか。繰り返しになりますけれども,(2)のイというのは恐らく(3)のところで利益相反行為であるということを判断する中で,そもそも最初に判断されてしまうということではないんでしょうか。 ○金関係官 今の点につきましては,(3)の利益相反行為というのは,飽くまで外形的にと言いますか,客観的な行為者の地位に着目した概念であるのに対して,(2)のイというのは,(3)で外形的,客観的に見て利益相反行為に当たると判断されたものの中から,更に実質的な判断で本人の利益を害さないと評価される場合があり得るという観点から組み立てられた要件であると考えております。 ○能見委員 もちろん,そういう考え方も分かりますので,そういう趣旨でできているということであれば,別にいじる必要はありませんけれども,卒然と読んだときに重なるように思いましたので,これも本文の訂正ということではなくて(概要)でも結構ですけれども,触れていただければ結構かと思います。 ○三上委員 同じところですけれども,今回の提案ですと,後半の第三者保護規定の部分がばっさりと落とされていますが,自己契約とか双方代理に比べると,本人と代理人の間で利益相反がある,なしというのは外からは非常に見えにくい,質的に違うぐらい見えにくい取引であろうと思います。例えば会社法の利益相反ですと,会社側が利益相反取引があったことと取締役会の承認がなかったことの双方を証明して,初めて会社への帰属を免れるという考慮がなされることと比較しますと,これをばっさり落として,利益相反の一般規定を入れてしまうと,取引の安全を害することになるのではないかと思っておりまして,単に「反対の意見がある」では済まされない変更ではないかと思います。こういう意見が前回に強く出たのか余り記憶にない,私が聞き逃しただけかもしれないんですが,本来は代理権の濫用のアナロジーで考えてもいいような規定でございますから,もし,第三者保護規定を落とすという提案があるのであれば,それ自体を注記にするとか,もし,どうしてもこのとおりにするんだったら,第三者保護規定を入れるという案も注記に入れると,そういう形の配慮をお願いしたいと思います。 ○鎌田部会長 今の点について何か。 ○金関係官 前回のたたき台では,自己契約及び双方代理についても効果不帰属の意思表示によって初めて効果不帰属になるという考え方を本文とし,(注)のところで自己契約及び双方代理を無権代理とみなして効果不帰属の意思表示を待たずに当然に効果不帰属とするという考え方を紹介していましたが,今回は,その(注)と本文を入れ替えております。これは,前回のたたき台の審議の際に,無権代理とみなす考え方のほうが合理的だという御指摘があったことなどを踏まえたものです。この無権代理とみなすという考え方は,現在の判例法理でありまして,先ほど三上委員がおっしゃった会社の取締役が利益相反行為を行った場合における会社側の主張立証責任についても,利益相反行為を無権代理とみなすということを前提に,第三者保護の観点から,三上委員がおっしゃったような判例法理が積み重なっております。今回,無権代理とみなすという判例法理が本文になりましたことは,第三者保護に関する現在の判例法理もそのまま維持されるということを前提としております。   効果不帰属の意思表示構成が本文に記載されていた前回のたたき台には,第三者保護規定が明示的に書かれていましたけれども,それは効果不帰属の意思表示によって初めて効果不帰属になるという新たな構成を採ったことに伴い,第三者保護の問題も併せて規定しておかないと,新しいルールがどのようなルールなのかが分からないという観点から,そのように明文の規律を設けておりました。現在は,繰り返しになりますが,判例法理をそのまま採用したことに本文はなっておりますので,従来の第三者保護の発想もそのまま生きているという前提です。 ○三上委員 そういうことなら,そういう趣旨を(概要)にでも書いていただかないと,余りに広範にこのようなものが入ると,それだけで拒絶反応を起こしそうになっていまして,私個人的には利益相反の一般規定が入ることに関して必ずしも反対ではないんですが,それは飽くまで第三者保護が図られるという前提の上であって,もし,それが入らないのだったら,本来,私は代理権の濫用の一場面だろうと,むしろ,こちらのほうに合わせて規定すべきだという意見です。ここで内容については変更うんぬんは申しませんが,少なくとも第三者保護については,今までの判例を維持するという趣旨ですということは書くべきだろうと思います。 ○筒井幹事 説明を補充せよという御指摘はよく理解いたしました。 ○山本(敬)幹事 金関係官にまず確認した上で意見を述べたいと思うのですが,自己契約・双方代理について,今回の案では,前回と違って,基本的には代理権がない無権代理として扱うことになっています。しかし,学説では,自己契約・双方代理について,確かにそのような考え方が支配的だったかもしれませんが,その場合の第三者保護は,自己契約・双方代理ですと,相手方が代理人自身ですので,問題にする必要はほとんどなかっただけですけれども,今回のように(3)で利益相反を含めてきますと,相手方が第三者のケースが出てきますので,第三者保護が問題になってきます。ここで無権代理と同じ扱いにしますと,本来ならば,表見代理の規定が第三者保護規定として登場してくるはずです。今回,第三者保護について書かれていないのは,表見代理の規定によるという趣旨なのかと理解していましたが,そのような理解ではないという御趣旨だったのでしょうか。 ○金関係官 山本敬三幹事がおっしゃった表見代理の規定による場面というのは,利益相反取引の相手方のことだと思いますけれども,三上委員がおっしゃった第三者保護に関する判例は,その相手方から更に転得者が出た場合の判例のことを指しておっしゃったのだと誤解しておりました。少なくともその限りで申しますと,転得者については表見代理の規定の問題にはそもそもならず,転得者の保護に関する判例法理についてどのように考えているのかという三上委員の御質問に対しては,本文の立場を採った場合には,その判例法理はなお生きているという趣旨を申し上げたつもりでした。 ○山本(敬)幹事 そうしますと,ますますややこしいのですが,表見代理で相手方がいて,更に転得者がいるというケースと違う扱いをするということなのでしょうか。そもそも,無権代理を前提とした判例法理なのかということだと思いますが。 ○金関係官 すみません,第三者が相手方の場合と第三者が転得者の場合とで異なる扱いをするという趣旨ではありません。利益相反行為を無権代理とみなすという判例法理と,第三者保護に関する判例法理との整合性の問題はあるのかもしれませんが,少なくとも現在の判例は,利益相反行為を無権代理であるとしつつ,第三者が相手方の場合を含む第三者保護に関する判例法理を形成しているのだと思いますので,利益相反行為を無権代理とする判例法理の現状が維持されるのであれば,第三者保護に関する判例法理もそのまま維持されるという説明をせざるを得ないのではないかと考えております。 ○山本(敬)幹事 現行法のように,ぴたりと当てはまるようなルールがない中で形成されている判例法理が,今回のように一部分について明確化したときに,そのまま使えるように本当になるのかというのは疑問があるように思います。特に無権代理であるという前提をしますと,本来,表見代理の問題になって,そこから先の転得者が現れた問題と同じ扱いにならないとおかしいはずですので,それをこのまま放置するのは,この案を前提としたとしても問題であるように思います。これは,三上委員が本来言われたかったことを確認しただけのことかもしれませんが,そのような問題があると思います。   ただ,私が言いたいことはそれではなくて,本来の意見としては次のところにあります。といいますのは,6で今回,無権代理のような扱いにすることを本案にされて,(注)で前回に出ていた効果不帰属を主張するという形での構成を上げられております。ただ,次の7の「代理権の濫用」に関しては,本文と(注)が逆転した形になっています。しかし,この限りでも三上委員と同じ意見なのですが,代理権の濫用と取り分け自己契約・双方代理等として付け加わった利益相反とは,基本的には連続的なものだと思います。これは,  代理権があるけれども,その中で代理人に当たる者が善管注意義務ないしは忠実義務に違反して行為をしたという場合に関する問題です。確かに利益相反は,現在の判例によると,外形説に従って理解されていますけれども,それは,そのような内部的な義務違反が定型的にうかがわれるという限りにおいてであって,証明責任を転換する可能性はあるかもしれませんけれども,一方が無権代理,他方は有権代理プラス内部的義務違反が第三者にとってどの程度明らかだったかによって考えるというように完全に仕分けてしまうのは,極めてまずいことだと思います。   その意味では,次の7の「代理権の濫用」については,少なくとも従来の判例・学説では,これを無権代理と構成するのはごく一部の学説ではありますけれども,圧倒的多数は有権代理構成を採った上での議論だったことからしますと,6で,自己契約・双方代理に加えて利益相反とするのであれば,「代理権の濫用」に構成を合わせるべきだろうと思います。少なくとも構成を両者で分けてしまうのは,すこぶるまずいのではないかと思います。その意味で,これは修正提案をあえてさせていただきたいと思います。 ○筒井幹事 この点について更に議論を促していくと,7の「代理権の濫用」のほうも変えるべきではないかという別の御意見も出てくると思いますし,この6と7の取扱いについてなお議論は尽きないのであろうと予測しております。前回の議論を踏まえて両論があることはよく理解した上で,現時点での取りまとめとして,6について本文と(注)を入れ替え,7については当初の案を維持するという形を採りました。これらの二つを区別することの当否という問題があり得るということは,山本敬三幹事からの御指摘のとおりであろうと思いますけれども,しかし,外形基準による区別が一応可能ではないかということは,山本幹事も言及してくださったとおりであろうと理解しております。ですので,結論的には,本日,この議論を更に深めるというよりも,中間試案としてはこれでまとめた上で,更に議論を継続することにさせていただくことを提案したいと思います。 ○山野目幹事 6の(3)につきまして,この部分を前回,議論した際に,その段階で出ておりました本文の案と注記の案を逆にしてほしいという意見を私は申し上げました。同種の意見をおっしゃった方が複数おられて,その審議の成果を反映してこのようにしていただいたものであると認識いたします。6の(3)については動かさないでいただきたいという意見を重ねて申し上げます。7についてどうするかということについて,その会議の際,意見を留保すると申し上げました。中井委員からは本日,6の(3)と7をむしろ7を変更する方向で平仄を合わせたらどうかという御意見も出ています。その点は御審議いただいたところの帰すうを踏まえて,今日,また御検討いただければ有り難いと感じます。 ○道垣内幹事 構成について意見があり,両方を一緒にしなければいけないのではないかというわけですが,その点は,中間試案に対する意見を踏まえて,今後,議論をしていけばいいことだろうと思います。したがって,私は筒井幹事のおっしゃったことには異論はございません。しかし,6の(3)を仮に無権代理の構成だとするのであるならば,表見代理の規定の適用はあるということは書いてあげないと分からないと思います。更にその転得者の話だけを念頭に置いて,みんなが理解するとは思えませんで,相手方はどうなるのと普通は思うわけですので,そうマニアックなところについて判例法理をうんぬんする間には,相手方が,本人と代理人の実質的な関係が分からないときも,表見代理で保護されることがあり得るのだということは,何らかの形で書くべきではないかとかと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。   それでは,続きまして「第6 条件及び期限」と「第7 消滅時効」について御審議いただきます。御自由に御意見をお出しください。  この段階での取りまとめの仕方としては,異論はないと思ってよろしいでしょうか。 ○鹿野幹事 「消滅時効」についてですが,よろしいですか。24ページの第7の2の「債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点」のところについて,確認をさせていただいた上で,若干の意見を申し上げたいと思います。確認というのは,甲案と乙案の前半のほうに「権利を行使することができる時」という言葉が共に出てくるのですが,この意味は両者で違ってくるのではないかと私は思うのですけれども,そういう理解でよろしいのかということです。   つまり,もう少し言葉を足しますと,御承知のとおり,現在の民法の166条1項の「権利を行使することができる時」の意味について,かつては法律上の障害がなくなった時という解釈が判例および学説により採られていたものと理解されてきたようですが,現在ではこれについて解釈が分かれています。また判例でも,少なくとも例えば供託金の払戻請求権の消滅時効の起算点に関する最高裁の昭和45年7月15日判決であるとか,あるいは交通事故の被害者が国に対して当時の自賠法72条1項前段に基づき損害填補請求をしたケースに関する平成8年3月5日の最高裁判決であるとか,あるいはさらに,これは直接的には約款条項の解釈に関するものではありますが,被保険者が行方不明になってかなりの期間が経って被保険者の遺体が発見され,既に行方不明になった時に死亡していたことが判明し,その後に保険金の請求権を行使したというような事案に関する平成15年12月11日の最高裁判決などにおいては,たとえ法律上の障害がなくなった時点でもなお権利行使の期待可能性がおよそない場合においては,権利行使の期待可能性が生じたときに初めて時効が進行するという考え方を採ることが明確にされているように思われます。   そこで,あらためてこの甲案,乙案に関していうと,甲案は恐らく現行法の166条に関するそのような解釈を特に変更する趣旨ではなく,したがって,従来どおり,解釈にその点は委ねるということなのだろうと思うのです。けれども,乙案では,後段のほうの「債権発生の原因及び債務者を知った時」という概念が,むしろ,権利行使の現実的な期待可能性の部分を捉えており,これについては特に短期の3年,4年ないし5年の期間で時効が完成する旨の規定を置いているようにも思われます。もしそうであれば,逆に乙案の前半に書かれている「権利を行使することができる時」というのは,後段とは異なり,権利行使についての法律上の障害がなくなった時という意味で用いられているのではないかとも思われるのです。そのような理解で果たしてよろしいのかどうかという点を,まずお聞きしたいと思います。また,もし,そのように両者において同じ文言で意味するところに違いがあり得るのだということであれば,その点はどこかに触れておいていただいた方がよいのではないかと思います。本文に書くのか,説明に書くのかというのは両方あり得るような気がしますが,同じ言葉を使っていても,その意味は違い得るのだとすると,そのことをどこかに書かないと,分かりにくいような気がしますが,いかがでしょうか。 ○筒井幹事 最後の御意見だけを御意見として承っておこうと思います。これまでの時効をめぐる議論の中で,繰り返し出てきた話題でありまして,乙案による場合に「権利を行使することができる時」という文言についての解釈は,現在とは異なるものとなる可能性があるということは,そのような御指摘があるという点ではそのとおりであろうと認識しております。 ○鹿野幹事 それでは,是非,その点につき解説で少し触れていただければと思います。   それから,補足説明については基本的に意見を言う場ではないと認識しているのですけれども,ごく簡単に一言だけ申し上げたいと思います。25ページの下から2行目のところに,「事務管理・不当利得に基づく一定の債権などには現状と同様に10年の時効期間が適用され得る」と書かれています。ですが,新しい時効制度の下で,請求権者が債権発生の原因及び債務者を知らなかったときは10年でよいのかもしれませんけれども,これらについて知っていたときは3年ないし5年の短期の期間が適用されるということにはならないのですか。もし,一般の債権の消滅時効の規定が適用されるという趣旨だとすると,ここに「現状と同様に10年」と書かれると誤解を招くかもしれないと思いました。その点についても,ご検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 そこはまた,検討させていただきます。 ○山本(和)幹事 28ページの2行目のイのところですけれども,ここに裁判上の和解が確定したこととか,調停が確定したことという表現ぶりが出てきます。これはかなり違和感が私にはありまして,もし,可能であれば民法174条の2は,確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したという表現ぶりを採っているように思います。まだ,この段階で文言を詰めるところではないということは,重々,承知していますが,やや,手続法の学者から見たらかなり引っ掛かる表現ぶりであるので,もし,この段階で何らかの手当てが可能であれば,お考えいただければと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。 ○三上委員 「時効の停止事由」のところで,今回加わりました「この場合において,その期間中に行われた再度のこれらの手続については」というところですが,「再度の手続」というのは例えばア,イ,ウ,エ,オ,カのうちの違うものについては,適用されないという理解でよいのでしょうか。例えば仮差押えをした後,5か月以内に債務者が破産の申立てをしたとして,そこで仮差押えは失効するけれども,破産自体は債権調査期日を設けられないまま手続が廃止されて,手続廃止決定前に時効期間を迎えたというようなことを考えると,破産手続の参加のときから6か月という期間を計算しないといけないのではないかと思うんですが,そういう意味で,違う項目であれば再度には当たらないという理解でよろしいのでしょうか。 ○川嶋関係官 そのような議論を意識して「再度の」という文言を用いたわけではないのですが,御指摘のような問題があるのだとすれば,本文の記載を改めることになるかどうかは分からないですけれども,少し考えてみたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。 ○中井委員 同じ「時効の停止事由」の最後の(6),私のメモの4項ですけれども,イの部分が前回の審議を受けて,山本和彦幹事からのお話があり,一部,賛成もあって修正されているのかと思います。ただ,上記合意があったときから1年という形で多数になったのかどうか,前回の議事録をきちっと見ないまま来ていますが,確認していただいて,最後の協議が行われたときから1年にそれほど反論はない中で,終期が曖昧だから終期を明らかにするには,上記合意があったときから1年という考え方もあるのではないかという,ある意味で,そういう提案で終わっていたのではないかと思います。合意から1年というのも,仮にそういう考え方があるとしても,原案に戻して注記でもいいのではないかと思います。御確認いただければと思います。 ○筒井幹事 難しいところなのですが,最後の協議を基準時とすることについては,協議そのものを認定の対象とする点で非常に難しい面があるが,協議の合意についての認定であれば,協議そのものを認定するよりは,比較的容易であろうといった議論があったものと理解しております。そういった議論を踏まえたときに,合意があった時から1年という定め方は,終期に関する一つの合理的な案であろうと思います。そうすると,問題は,これが実務的な利便性を大きく損なうことになるのかどうかといった辺りの議論に入っていくことになるだろうと思うのですけれども,その辺りについては引き続き検討するという含みで,今回はこのような修正案お示ししたわけです。議事録の確認といっても判断は難しいので,何かあればこの場で御発言いただきたいと思いますが,できれば,このような形で進めてはどうかと思います。 ○深山幹事 今の点ですけれども,仮に「上記合意があったときに」とした場合に,この上記合意については,(6)の本文のところで書面によるかどうかということがブラケットになっております。私自身はこの規定を設けること自体に消極的であり,個人的な意見としては,設けないという考え方なんですが,仮に設ける場合には書面によるべきだと考えております。そのような考え方に立つと,イのところの上記合意も書面による合意と読むことになるんだろうと思います。   そうなりますと,規律としては明確になるんですけれども,(概要)の説明のように,協議が継続しているときには,その都度,合意がなされたものと認定可能であるという理解をしたとしても,毎回,協議する度に合意書を結ぶということはまず考えられませんので,実務的にはどうも現実的でない規律になるのではないかと思います。そういうことを考えると,確かに最後の協議が行われたときというのも曖昧で,それはそれで混乱を呼ぶような気がするんですが,もう少し検討の余地があるような気がいたします。 ○中井委員 中身の話になるのかもしれませんけれども,(6)の規定を仮に時効の停止事由として新たに設けるのであるとすれば,債権者,債務者の間で協議が続いていた場合に,ある日,突然,時効成立と言われることを阻止するというのが本来の出発点だったと思うわけです。そうだとすると,元々の提案であった最後の協議から1年というのが,その制度趣旨を実現するには恐らく素直であろうと。その認定について困難な問題があることは,御指摘のとおりだと思いますけれども,原則は最後の協議から1年,1年はブラケットですけれども,その考え方に基本的には賛成したい。それに対して,最後の協議に対して批判が強いとすれば,サブの提案として合意から1年ないし2年なのか分かりませんけれども,やむを得ないと,そう考えております。 ○鎌田部会長 ほかに関連して御意見はございますか。 ○筒井幹事 過去の議論も精査して,もう一度,考えてみたいと思います。本文をどちらにするかという問題を決めた上で,そのような細部にわたる対案を一つ一つ丁寧に(注)で紹介するというのは,必ずしも中間試案という文書の性格に照らして必ずしも適当ではないと思いますので,そういった議論を深めていく必要があるところは,議論の経緯も含めて補足説明で適切に紹介して,議論を続けていくことが大切ではないかと理解しております。 ○鎌田部会長 それでは,そのような取扱いとさせていただきます。   続きまして,「第8 債権の目的」から「第10 債務不履行による損害賠償」までについて御意見をお伺いいたします。御自由に御発言ください。 ○潮見幹事 基本的に今回,おまとめになられている方向で多くは是としたいのですが,1点だけ,相談をかねての提案をさせていただきたいと思います。42ページの「契約による債務の不履行における損害賠償の範囲」の太字です。内容についての議論を蒸し返す意図は全くありません。それだけはお断りを最初にしておきます。   何を申し上げたいのかと申し上げますと,(1)のア,前に意見書も出したところにも若干書いたのですが,このままですと何に基づいて通常か否かを判断するのか分かりません。前回,私が出した意見書の一部の部分,本質の部分について私とは全く発想が違うであろうと思われる中井委員から発言がありました。それを踏まえて今から申し上げますけれども,アの「通常」の前に当該契約の趣旨に照らしてということを書き加えるということでどうでしょうか。   もちろん,そうすることによって,この賠償範囲に関する考え方がどのようになるかということについて,一義的に明確な回答が得られるわけではありません。そこで,理論的な考え方もいろいろ出てこようかと思います。しかし,今,申し上げたような少し補正を加えることによって,例えば私のような立場を採っている者からも,あるいは中井委員のようなお立場を支持されておられる方々からも,それほど違和感のない結論というものが導かれるのではないかと思って,少し申し上げさせていただいたわけです。そうすることによって,アのほうでは正に契約から典型的に生じる損害と,それから,イのほうでは,そこに主観的な事情を考慮に入れて,また,賠償範囲というものが広がるというようなことにも読めるというようなことでございます。 ○道垣内幹事 それはまとまるとは思えません。ですから,私は原案支持です。 ○岡崎幹事 部会資料の33ページの「3 外国通貨債権」に関して,一言,発言したいと思います。第一次案の審議の中で,山野目幹事,畑幹事から執行手続との関係について御発言があったと記憶しております。特に畑幹事からは強制執行をどうするかという点に問題があるので,そのことを注記してはどうかという御意見があり,それを受けて今回の(概要)欄の末尾のなお書が加えられたと理解しております。しかし,(概要)欄だけでなく,(注)に何か書かなくてよいのかに関しても御検討されてはどうかと思います。一つの考え方としては,強制執行の場合にこの規定がどうなるのか,要するに適用されるのかどうかについての(注)を書くことがあり得ますし,更に一歩進めて申し上げるならば,民法403条は,日本において履行される金銭債権については,強制通用力を持つ日本の通貨で支払われることを阻止すべきではないという,国家主権の一つとしての通貨高権を規定したものであり,これに反する特約は認められないという見解もありますので,そのような見解もあることを踏まえて,何らかの(注)を設ける必要があるのかどうかを検討する必要があるのではないかと思います。 ○山本(敬)幹事 別の点でよろしいでしょうか。10の「賠償額の予定」,46ページです。(2)で前回でも議論があったところなのですが,予定した賠償額が著しく過大であるときは,債権者は,相当な部分を超える部分につき,その支払を請求することはできないものとすることとされています。この部分は,従来の裁判例でも,公序良俗違反で一部無効で減額したものが多いということが(概要)にも書かれています。ただ,(2)のこの書き方ですと,未履行の場合はこれでよいのかもしれませんが,既履行の場合に相当な部分を超える部分について払い過ぎた分の返還請求ができるということが,直ちには読み取れないことになるのではないかと思いました。その意味では,超える部分について「その効力を生じない」というような書き方にするべきではないかと思いますが,いかがでしょうか。少なくとも払い過ぎた分の返還請求を否定するつもりは全くないのだろうと思いますが,これも併せて確認できればと思います。 ○新井関係官 本文の規律の趣旨としましては,今,山本敬三幹事から御示唆いただいたとおり,払い過ぎたということであれば,取り戻すというところまで含意しております。「請求することができない。」という書きぶりにしており,「失効する」とか「効力を生じない」と書いていないという理由というのは,本文(2)の中に表れているように,事後的に判明した損害額と照らして「著しく過大」であるという評価がなされるであろうことから,事後的な事情に照らして判断する建て付けと,無効ないし失効という考え方がしっくりくるのかどうか,従来の法律で「効力を失う」と規定しているものとここの規律との平仄が合うのかどうか,現時点でなお躊躇を覚えるところがあります。効力を失うのかそうではないのか,権利が消滅するのかそうでないのかについて,立ち入ることを避けつつ,実質的な規律内容のみはきちんと明らかになるように書けないかということで,こう書いているということでございます。 ○山本(敬)幹事 不当利得を認めるとするならば,法律上の原因がないということを言わざるを得なくなります。「無効」という言葉がしっくりこないという感覚に対しては,いろいろな意見があるかもしれませんが,先ほど私が申し上げたのは,その点も多少意識をして,「その効力を生じない」というような書き方で納得が得られないかと考えたわけですが,いかがでしょうか。 ○鎌田部会長 検討させていただくということで,ほかには。 ○中井委員 その前の「過失相殺」と「損益相殺」の部分,私のメモの6項ですが,まず,「過失相殺」のところについて「相当と認められる措置を債権者が講じなかった」という,この表現ぶりについては,(概要)を見ますと更に引き続き検討する必要があるという御指摘がありますが,この表現だけであると不作為にのみ注目されるような危惧がございます。ある一定の作為をして,その結果として債権者側に損害が発生したり,拡大する場面もあり得るので,その点も分かるような表現ぶりを更に検討する必要があるのではないか。   それから,8の「損益相殺」,私のメモの7項ですが,この結論部分,「裁判所は,これを考慮して,損害賠償の額を定める」と。これは「過失相殺」の部分の「これを考慮して」と同じ文言を用いているんですが,果たしてそれでよいのか,確かに損益相殺については「損益相殺的」なものがあって,それは賠償されるべき額から常に控除するとは限らないという点が議論になって,そこをこのような裁量的な表現を用いたのかと推測されるところですけれども,過失相殺における損害額の賠償を定めるという「考慮」と,損益相殺の「考慮」が全く同一かというと,それは異なるのではないか。損益相殺の場合はある利益については,本来,損害賠償額の確定の問題として常に控除すべきであって,裁量によって控除しないということはないのだろうと。それ以外の社会給付的なものについて控除するか,控除しないか,これは議論のあるところですから,控除できる場合,できない場合がある。でも,「過失相殺」と同じ「考慮して」という表現ぶりでいいのかということについては危惧のあるところです。   ここはどのような表現がいいのか,適切な案は示せてはいませんけれども,結局は得た利益の額を損害から控除できる場合とできない場面があるということを少なくとも表記することによって足りるのではないかというのが,ここで私の書いた提案でございます。 ○筒井幹事 御指摘がありましたように,「損益相殺」のところは前回の議論を踏まえて表現ぶりを改めたのですけれども,(概要)欄の手直しまでは作業ができていないのが現状であり,その点についていろいろ御意見があるということはよく理解いたしました。その点については,(概要)欄の記載の充実ということで対応させていただきたいと思います。   それから,少し前の岡崎幹事から「外国通貨債権」の見直しのことについて御発言がありまして,場合によっては(注)を付けるという御示唆もあったわけですけれども,提示されている403条の改正が直接影響することなのかどうかはともかくとしても,実質において強制執行の現場に混乱が生じないようにする必要があるという問題意識について全く異存はありませんし,是非,そのようにしていきたいと思います。当面の対応として(概要)欄に一言,書き加えましたけれども,その問題意識を共有しつつ,今後,是非,裁判所のお知恵もお借りしながら検討を続けていきたいと考えております。 ○道垣内幹事 中井委員の御発言と,それに対する筒井幹事の回答の関係がよく分からなかったのですが,7と8において,「過失相殺」と「損益相殺」は同じ書きぶりになっていないのですね。7は「定めることができるものする」であって,8は「定めるものとする」となっている。したがって,中井委員がおっしゃるような形で,損益相殺は必ず行うということが,この中間試案のたたき台に示されているのではないかと思うのです。そうしますと,中井委員が,今日,配られたペーパーにおいて,社会保障給付などは控除する場合と控除しない場合があることを指摘され,それを表すためにはどうしたらいいのかというのが難しいと指摘されたわけですが,そのご意見を踏まえますと,逆に8のところに裁量性があるような書き方をするという方向につながるのではないかという気がいたします。8の中の損益における益というものがどういうものであるかということにつきまして,今後,(概要)において書くというのが筒井幹事のお返事ではなかったかと思うので,それはそれで構わないのですけれども,7と8が一緒とおっしゃったのが少し気になりまして発言させていただきました。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。   もし,よろしいようでしたら,ここで休憩を取らせていただければと思います。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,再開いたします。   「第11 契約の解除」から「第13 受領(受取)遅滞」までについて御審議を頂きます。御自由に御発言ください。 ○潮見幹事 「解除」のところですけれども,1の(1)ですが,今回,直された部分ではただし書の冒頭のところに,「その期間が経過した時の不履行」となっています。前は「その不履行」でしたよね。こういう催告解除ということが原則として認められても,例外的に認められない場合というものをどう捉えるのかについて,当初の不履行の態様を捉えて,こんな場合は無催告解除なんてそもそも認められないと考える捉え方と,催告をして相当期間が経過した後の状態を見て判断する考え方,つまり,相当期間経過後にレスポンスをしていないという状態を踏まえて考えたときに,しかし,それでもなお,契約の目的を達成することができないというような場合には,催告解除というのは意味をなさないのですよという考え方の二つがあり,実際にこの二つの考え方は既にいろいろなところで出ています。   今回,こういう形でただし書の冒頭を書き換えたというのは,つまり,「その期間」の「その」というのは相当期間ですよね。相当期間が経過したときの不履行がこうこうだということであれば,それは飽くまでも先ほど私が申し上げた前と後の考え方でいったら,後の考え方をここで示して,そして,それについての御意見を伺おうという趣旨に出たものと理解してよろしいのでしょうか。   それに併せて,仮にそうであれば,その考え方というのは別に,今日,席上配布で中井委員からのメモにございますところの文言自体に私がどうこう言うことはありませんが,2ページの8のところで,ただし書でこういう下線を引いてお示しになられている見方とは,違ったものを(1)のところでただし書で示しておられると理解してよろしいのでしょうか。もちろん,その上で,どちらで聞くかは,ここで判断したらいいことですから,特に私の意見は申し上げません。 ○新井関係官 今,潮見幹事から御質問いただきました,前者の考え方と後者の考え方のいずれの整理かということで言えば,後者のほうの整理,すなわち,相当期間が経過して,その時点でなお残る不履行,これが契約の目的の達成にとってどのような意味を持つかということでもって,解除の可否を判断しようという考え方を,基本的には前提にしております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○中井委員 よく聞いていなかったのですが,もう一度,前者と後者で,前者が私の考え方というのでしょうか,変な質問になっていますが。 ○新井関係官 私から申し上げるのがいいのか,よく分かりませんが,恐らく潮見先生がおっしゃる前者の考え方というのは,催告をする前の時点である不履行,それ自体で解除の可否が決まる,つまり,催告をする前の時点で生じている不履行が契約の目的の達成にとってどういった意味があるかということで判断するという考え方である。他方,後者,すなわち,今の本文で提示している考え方というのは,不履行があって,その後,債権者のほうが催告をして,催告後の「相当の期間」が経過して,その間に債務者から何らかの応答があったりなかったりして,それでもなお残るその不履行が契約の目的の達成にとってどういう影響があるかということで解除の可否を考える。より単純に,図式的にいえば,催告の期間の前の時点の不履行のみで判断するというのが第1の考え方で,第2の考え方というのは,相当の期間を経過して,その時点でなお残る不履行を問題にするということになろうかと思います。本文の考え方は,繰り返しますが,後者の考え方を前提にしております。今,潮見先生から御指摘があったのは,本日中井先生がお出しくださったペーパーというのは,むしろ,私が前者と称したような考え方を前提にしているのではないか,という御疑問だったように理解いたしました。 ○中井委員 私は,メモの8項のとおり,催告期間が経過した後の不履行が未来永劫続いても,契約の目的を妨げられることはないと,そういう理解をしているんですね。それはごく一部の数量的な不足であったり,付随的な義務違反で,その付随的な義務違反がそのままであっても,契約の目的は達成できる。そういうことを表現すべきではないか。そういう意味では後者の立場で,後者だとして,修正提案は相当期間が経過したときの不履行,それがずっと残っていても,契約の目的達成が妨げられないということが表現できていないように思うんです。   その時点のみに注視しているように思ったものですから。典型的には,軽微な,数量的にもほんの少しの,主たる債務ではなくて付随的な債務,それが残っていても契約の目的は達成できるとき,それが原案で表現できているんでしょうかという疑問です。だから,考え方は一緒だけれども,表現できているかどうかの違いと私は理解しているんですが,潮見先生がおっしゃっているところを勘違いしているんでしょうか。 ○潮見幹事 中身を議論するつもりは余りないですが,一言だけ申し上げますと,中井委員がお書きになっているものは,恐らく概要説明というものを基礎にして,これを展開しているのではないかと思ったのです。概要説明のところに書かれているというのは,正に48ページの第1行目のところからに書かれていますように,当該最初の義務違反,言葉は悪いですけれども,当初の義務違反自体が軽微な場合には,もはや,これは催告解除という枠組みに乗らない,履行遅滞でも何でも付随義務違反でもいいんですけれども,当該義務違反というものが軽微であった場合には,そもそも,そんなものは催告をして,相当期間が経過して解除できるというスキームには乗ってきませんよという,その時点でアウトとですよという捉え方で概要説明が書かれていて,中井メモというものは,それにのっとった形でお書きになられているのかなと思ったのです。そうであれば,催告をして相当期間が経過して,その時点で返事がなかったということを踏まえて,そこで,契約の目的達成ができるかどうかという評価をしているのとはちと違う。   他方で,先ほど後者と言われた,正に新井関係官がおっしゃられたゴシックで今回,書かれたような書き方というのは,正に催告後の相当期間が経過して,それでもなお,何も反応がなかった場合に,その時点の状況を評価したときに契約目的達成ができる,できないということを問題にしているのであって,それは中井委員が前提にされていたものとは,少し見方が違うのではないかということを申し上げたかっただけです。 ○鎌田部会長 ただ,実際にそんなに差が出ますか。 ○潮見幹事 変わらないとは思います。 ○松本委員 私も,そこの第11の1の(1)の「目的の達成を妨げる」と,(2)ア及びウの「目的を達することができない」ということで,「目的を達する」という同じ表現を使っているんだけれども,全く同じなのか,違うのかというところが引っ掛かっていて,今の御議論と少し関係があるかと思うんです。(2)のアの定期債務というのはそのときでないと意味がないというものですが,例えば住宅の売買における不動産の引渡しという債務は,これはもう非常に重要なものだから,当然,不履行であれば解除ができて当たり前です。しかし,この場合に相当期間を定めた催告をして,期間が経過をして,それで目的が達成できないのかというと,それから1か月後に引き渡されれば,十分,住まうという目的は達成できるではないかという議論もやれなくはないんですね。   となると,(2)のアでいうところの定期債務ではないタイプのもので,それが永遠に履行されなければ,全く目的を達成できないというのは明らかです。しかし,そうでない,今,言ったような引渡債務のような場合は,最終的に引き渡されれば目的は達成できるのであって,それ以外は遅延損害の話なんだという整理もやろうと思えばやれなくはないんですが,従来はそういう考え方はしていなかったと思うんです。すなわち,催告期間満了時点において,引渡しをしないということが目的達成を妨げるかどうかという,そこだけで,多分,見ていたんだろうと思います。 ○鎌田部会長 多分,このままで大丈夫ではないかという気がしますけれども,御主張を踏まえて再点検をさせていただくようにします。ほかに。 ○高須幹事 今のところでございますが,解除のところは非常に紛糾したところでございますから,恐らく適切な表現をここでこれ以上,詳しく書き込むことは難しいのだろうと思います。その意味では,(1)のところと(2)のウのところの表現ぶりの違いというものが今回,明らかであることというで,そのキーワードで違いを意識させるような表現になった中間試案を作成して,パブリックコメントに掛けると,ともかくも手掛かりができたわけですから,ここは余りこれ以上,踏み込まないで,あとはパブリックコメントの御意見を伺って,もう一度,第3読会で考えればよろしいのではないかと,それぐらい難しい問題ではないかと思っております。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。 ○岡崎幹事 今の高須幹事の御発言と関連するところですが,1の(2)のウの表現は,「履行の催告をしても契約をした目的を達することができないことが明らかであること」となっているわけですが,そもそも,催告によって契約をした目的を達成するわけではないと思われますので,この表現でよいのか疑問に思いました。   また,この部分は特に重要な文言の選択になる気がするものですから,第一次案のときにも(1)について発言をしましたけれども,契約をした目的の達成を妨げるかどうかという辺りの表現について,例えばブラケットを付すとか,何らかの工夫をすることによって,更によい案がないかを問うてもよいのではないかと思いました。 ○松本委員 ほかの論点でよろしいですか。50ページの4の「解除権の消滅」というところでありまして,ここは解除権の消滅という規定ですが,実は解除と危険負担の問題と密接に関係しているのではないかと思われます。(1)で547条の規定は,解除権を有する者の履行請求権につき履行請求権の限界事由があり,かつ,履行に代わる損害賠償につき免責事由があるときは適用しないという規定です。適用しないということは,解除権が存在する状態が続くという話ですよね。大変不安定な状況を存続させる可能性がある。解除しようと思えばできるのに解除しない,それに対して相手方は催告もできない,そういう状況が果たして望ましいのかということでありまして,現行法であれば実は危険負担の問題だから,こんな難しい議論は必要がないんです。危険負担を廃止するという前提に立つと,不当な結果になりかねないから,こういう手当てをしなければならないということなので,危険負担の制度の存在の必要性を一つ立証している事例ではないかと思います。   それとの関係でもう1点,実は先ほどの損害賠償のほうの40ページの債務の履行に代わる損害賠償として,(1)のウというのが入っているわけです。従来だと,履行不能の場合と,それから,契約を解除した場合が債務の履行に代わる填補賠償だと一般的に整理されていたんだけれども,ウで解除しなくても相当期間の催告をして履行がなければ,解除せずに填補賠償が取れるという制度を今回,明文の規定で入れましょうということになりました。   その理由,解除すればいいのになぜ解除しないで損害賠償なんですかという理由が(概要)のところに書いてありまして,41ページですね。継続的な供給契約の場合に供給契約の解除はしたくない,しかし,個別の受発注の部分について填補賠償で清算するというニーズがあるからだという説明がここに書いてあります。確かに継続的供給契約の場合には継続的供給契約自体を解除しないで,個別の取引部分について損害賠償で処理をする,填補賠償で処理をする実益はあるということで,私は納得をしました。   ところが,危険負担のところでは,解除の要件が変わるんだから解除と危険負担とが完全に重複するので,危険負担は不要なんだという一刀両断の理由付けがしてあるわけです。確かに典型事例の場合は重複するではないかと言われると確かにそうかもしれない。それは,先ほどの契約解除と填補賠償の場合も,典型事例では,解除して填補賠償を請求すれば問題ないでしょうというのと全く同じことだろうと思うんですけれども,継続的な供給契約で個別の受発注の部分で履行請求権の限界が発生し,かつ損害賠償も取れないという事態に至った場合に,現在の危険負担を廃止しての解除一元化論だと継続的供給契約自体を解除するしかないんですよね。   となると,継続的供給契約を解除するしかないという話になってきて,そこまではしたくないにもかかわらず,個別の受発注の部分だけなしにするという選択肢が使えなくなるということに私は,最近ようやく,気が付きました。そのように考えると,今回の中間試案における改正提案は,一貫性が欠けているのではないかという印象を持ちました。危険負担の制度は全く存在価値がないということはないんだという説明を(概要)できちんとお書きいただきたいし,本文の書き方も先ほどの解除せずして填補賠償請求を認めるという書きぶりと,随分,違ったアンバランスな書きぶりだと思います。 ○鎌田部会長 検討させていただくということにします。   ほかにいかがでしょうか。「受領遅滞」等についてはよろしいでしょうか。   よろしければ,「第14 債権者代位権」と「第15 詐害行為取消権」について御審議いただきます。御自由に御発言ください。 ○高須幹事 (注)の書き方の問題なのですが,「代位行使の範囲」という55ページのところと,それから,「詐害行為取消しの効果」の65ページのところ,それぞれについて取りあえず表現としては似たような規定がある,つまり,いわゆる全部について行使ができて,被保全債権の額に限定されないという書きぶりになっていて,55ページの「代位行使の範囲」については(注)が付されていて,限定するという考え方がありますと,これが載せられている。そういう考え方があるということは(概要)にも載っていると。それに対して65ページの「詐害行為取消しの効果」のほうは(注)が全くない。   直接請求ができないということであれば,その書きぶりは分かるんですが,詐害行為のところでも今回,金銭債務のような場合については直接請求というか,債権者の元へ請求することを認めるという,一部,その取扱いを残しているようにも見えますので,この場合には同じような(注)も成り立ち得るのではないかと思ったのですが,こちらについては載せないという何か根拠があってのこういう割り振りなのか,あるいは必ずしもそうではないとするならば,両方に載せるとか,両方に載せないとかということもあってもいいのではないかと思ったのですが,なぜ,このような違いがあるのか教えていただければと思いますが。 ○金関係官 理由は,前回のたたき台の審議の際に債権者代位権についてのみこのような(注)を入れるべきだという御意見があり,詐害行為取消権についてはこのような(注)を入れるべきだという御意見がなかったからということですけれども,実質的には,恐らく訴訟を必ず経なければならない詐害行為取消権とそうではない債権者代位権とでは違いがあるということなどを踏まえて,そのような意見の出され方になったのではないかと理解しておりました。 ○高須幹事 訴訟で詐害行為取消権を行使するという場合に,被保全債権の額の範囲に限定されるということは,およそ考えなくてよろしいのでしょうか。 ○金関係官 論理的に考えられないと申し上げているわけではなく,必要性の程度の問題でありまして,債権者代位権の局面のほうが,こういった限定を加えるべき必要性の程度が高いという趣旨で申しました。もちろん,論理的には高須幹事がおっしゃったとおり,詐害行為取消権についてもそのような(注)を入れることは可能であるとは思います。 ○高須幹事 もう,この段階ですから余り強い意見を言うことは差し控えようと思っておりますが,今までの議論の中で特に「詐害行為取消しの範囲」のほうでは,限定すべきという考え方についての意見が出なかったというところを強調されているとするのであれば,第2読会の最初の案は,詐害行為取消権について行使の範囲を債権者の債権額に限定するという案を,部会資料としては御提案いただいたと記憶しておりますので,私はそれ自体はいい案ではないかと思っておりましたから,そういう意見もあるということも御考慮いただいて,最終的にはお任せでございますけれども,検討いただければと思います。 ○中井委員 「債権者代位権」の2「代位行使の範囲」の(注),私のメモの9項ですけれども,被保全債権の額の範囲に限定するという考え方があるのは御指摘のとおりですけれども,この考え方は専ら直接の引渡請求を認めた場合には,ということではなかったのかと思います。現に(概要)の説明の最後の3行では,その旨の御指摘があるものですから,ここは平仄を合わせておくほうがいいのではないかと思われます。仮に詐害行為取消しについても先ほどの高須幹事の御意見に従って,7の「詐害行為取消しの範囲」について限定を入れるとしても,債務者に引き渡す場合については恐らく限定の必要説は少なかったのではないか。少なくとも取消債権者に渡すという考え方を認めた場合についての議論ではなかったかと思いますので,併せて御検討いただければと思います。 ○筒井幹事 現在の案文で御指摘のような書き方をしていない理由は,現在は直接の引渡しを認める案が本文に掲げられているので,本文や(注)のレベルでの平仄としては,直接の引渡しを認める場合にはとわざわざ書く必要がないという整理をしているからです。ただ,それでは内容の説明として不十分であろうということで,(概要)欄でその旨を補っているということです。 ○岡委員 (概要)についてしゃべると,また,潮見先生からお叱りを受けますので,ゴシック体と(注)のところに限定させていただきます。第13の3の「代位行使の方法等」の(注2)の書き方でございます。相殺は禁止しないという考え方の紹介のところですが,前回も申し上げたと思いますが,全面的に禁止しないという説もあるとは思いますが,最近は検討委員会が出されていた一定の猶予期間後には認めるべきであるという考え方ですとか,部会では債務名義があるときにはいいではないかと,そういう一定の条件の下に相殺を許すという案も,それなりに有力であったと思います。二つも三つも書くのは煩雑ではないかという意見もあると思いますが,かなり大きく実務を変えるところでもありますし,有力な論点として(注)として書いていただきたいと思います。 ○筒井幹事 岡委員御自身も触れられたことですけれども,いろいろな考え方があるときに,(注)でその一つ一つを拾って紹介すると非常に煩雑になると思いますので,できれば主要な枝分かれを示すところまでにとどめたいと考えております。異なる考え方があるということさえ注記されていれば,その詳しい内容は,(概要)欄や補足説明を読んでいただくことが可能だと思いますので,このような形で御理解いただければと考えております。 ○深山幹事 「詐害行為取消権」の第12項「受益者が金銭の返還又は価額償還をすべき場合における受益者の反対給付」のところについて申し上げたいと思います。前回の提案は,債権者が受益者に対して金銭の額ないし価額償還額と,その反対給付の額の差額のみを請求できるという規律が示されておりました。それが今回変更されて,受益者は差額を請求することができるという表現になって,その趣旨は金銭の全額の返還か,差額の返還かを受益者が選択できるという規律だという説明になっております。   前回,私がここについて,差額のみを請求できるというのは合理的ではないのではないかと言い,全額返還をするか差額返還をするかという選択肢を設けるべきだという意見を申し上げて,今回の提案ではその選択肢を認めていただいているんですが,主語が「債権者は」から「受益者は」に変わってしまっております。つまり,その選択肢を持っているのが従来は債権者だったのが受益者に変わっております。私はもちろん,そんなことは申し上げていないんですが,私の個人的な意見としては,受益者が選択肢を持つというのは妥当ではないと思います。そういう意見が少なからず出たのであれば,この部会の議論の結果ということなんですが,私の記憶では受益者が選択肢を持つべきだという意見は出た記憶がございません。そういう意味では,部会の議論を反映していないのではないかという観点からも,不適切ではないかという気がいたしますので,ここは再考していただけないでしょうか。 ○金関係官 まず今回の変更は,前回のたたき台の審議の際に中井委員から頂いた意見の反映であると理解しています。それから,取消債権者に選択権を与えるべきかどうかについては,倒産手続における否認権の場合には管財人が選択するということで問題はないのですけれども,詐害行為取消権の場合には複数の取消債権者がそれぞれ独自の詐害行為取消権を行使し得ることになりますので,取消債権者に選択権が与えられると,取消債権者ごとに請求の趣旨が異なるということになって,かつ,この全額の返還か差額の返還かという問題はその後の受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権などの帰すうに影響を及ぼしますので,それらを考慮しますと,取消債権者に選択権を与えるのは適当でないのではないかという問題意識を持っております。その観点から,前回のたたき台の提案では,取消債権者が主語ではありましたけれども,選択権はないという提案をしていたわけですが,それに対して深山幹事や中井委員から硬直的にすぎる旨の批判があり,かつ,中井委員から受益者の側に選択権を与える方法についての御提案がありましたので,それをそのまま反映させたのが現在のたたき台の案であると認識しています。 ○中井委員 今の問題ですけれども,その内容の提案をしたことは間違いがございません。それをしんしゃくして,修正していただいたことには感謝を申し上げます。選択権について受益者と申し上げたのでしたか,昨日の日弁連バックアップでその点の批判を受けまして,今日のメモ13項では取消債権者に認めるべきではないかとしています。前回の私の意見と違う意見がメモになっているのかもしれませんが,ここで修正のメモを作ったのは,先ほど深山幹事からの御指摘があったことを受けたもので,私こそ,もう一度考え直さなければいけないのかもしれません。   それ以外にも詐害行為取消権については少し細かいんですけれども,私のメモの二つ目の12項,13項,14項で,たたき台の第15の11,12,13に限って先に申し上げます。前回,11の(2)の隠匿等の処分意思がある場合ですけれども,現存利益があったときにどうするのかという問題を御提案し,議論し,結果として採用しないということですから,既に議論済みの中身のことかもしれません。詐害行為取消権全体について,どこまで倒産法との平仄を合わせるのかという問題とも絡みますが,倒産法では現存利益の返還が認められるのに,詐害行為取消権では基本的には認めないという考え方が11の(2)で,また,12の(1)のただし書きもそうですが,果たしてそれでいいのか,もう一度,申し上げておきたいと思います。   それから,13の「転得者の前者に対する反対給付等」です。これについても前回,意見を申し上げましたが,採用されていないので,検討の結果かとは思います。それでも,最後のゴシックの2行で,転得者の前者に対する権利の限度でという,この「限度」を付ける必要があるのか,改めてどうかと思います。この「限度で」というところまでの文章は外してもいいのではないか。また,逆に,(注)で,前者に対する権利を無条件で認めるという考え方が記載されていますが,これは,追奪担保的なことを認める意見だろうと思いますけれども,当初の段階で,そういう考え方も提示されたものの,その後,部会の中では積極的には取り上げられないままきたのではないか。ここになって(注)で,前者に対する権利が書かれているわけですけれども,これはむしろ一般的な理解,解釈に委ねるという方向なのかとは思っておりました。  ○金関係官 まず最後の点については,取り上げられないまま来たとは事務局は認識しておりません。畑幹事など,ずっとこの趣旨の御意見をおっしゃっていた方はいらっしゃったと認識しております。   それから,現存利益で区別する考え方につきましては,部会で松本委員から倒産法の規定においても現存利益の意義がそれほどはっきりしない中でそのような区別をするのは相当でないという御意見があり,それが今回取り上げなかった主な理由ですけれども,ほかにも,倒産の手続ですと,現存利益があれば財団債権と扱うという規律になっていて,財団債権とすることによって優先権を与えるという仕組み方が可能ですけれども,詐害行為取消権の場合にはそれができませんので,今回,中井委員からも現存利益に対する特別の先取特権という御提案を頂いております。ただ,そうした場合には,一般財産に混入してしまった現存利益,典型的には一般財産に混入してしまった金銭に対する特別の先取特権ということになって,それはなかなか難しいのではないかと思います。さらには,そもそも,現存利益で区別する必要が本当にあるのかというところも問題意識としては持っておりまして,すなわち,隠匿等の処分の意思を債務者が有していて,受益者がそれを知っているという場合に,それでもなお受益者に優先権を認める必要があるのかというところも,問題意識としては持っております。これらの観点から,現在のたたき台でも,現存利益の有無では区別しないという考え方を採っております。 ○中井委員 内容に関わりますので,これ以上,申し上げないでおきます。   併せて詐害行為取消権についてあと3点ほど,申し上げてよろしいでしょうか。   まず,3の「特定の債権者を利する行為の特則」,メモの10項で,これも前回の議論で排斥されたと理解をしているのですが,ここも倒産法との平仄ということで,(1)のアとイの二つの要件のうちのイの要件を外すという考え方については,一定の支持があったのではないか。ここでは特段,(注)もないわけですけれども,(1)のイ,(2)のイ,つまり,通謀害意についての要件を外すという考え方も一定の支持があるとすれば,(注)に残すことができないのか,パブコメの対象とする価値があるのではないかと,ある弁護士会の強い意見がございましたので,もう一度,申し上げておきたいと思います。   6の「詐害行為取消しの効果」,メモの11項ですけれども,ここも(注)ですが,債務者を被告とするのかという議論で,その前の部分では債務者に対して訴訟告知をするという考え方を(注)で載せていただくことになりました。そちらを修正した関係で,6の効果についても,仮に債務者に対して訴訟告知という考え方を採る場合に,確定判決の効果が債務者に及ぶことを明らかにしておいたほうがいいのではないか。債務者に対する訴訟告知をするという案を御主張される方はセットでおっしゃっていますので,1の(3)で訴訟告知ということを(注)で記載するとすれば,6においても(注)において,確定判決が債務者に対してその効力を有するという考え方を指摘していただくほうが,平仄が合うのではないかと思いますので,御検討いただけないかと思います。   もう1点,「9 詐害行為取消権の行使に必要な費用」について,これも前回申し上げて,結論としては取り上げられなかったこと,内容に関わることかもしれません。メモで示しているということだけ申し上げておきたいと思います。 ○鎌田部会長 今の点について何かありますか。 ○金関係官 まず3についてですけれども,中井委員が一定の支持があるとおっしゃったのは,恐らく第2読会の部会資料35に関する議論においてのことだと理解しております。部会資料35では,今回のたたき台の3の(1)のアの支払不能基準で要件を画するというのが乙案で,イの通謀詐害意図で要件を画するというのが甲案で,この二つの提案が対立しているという状況でした。その中で,いわゆる逆転現象が生じないようにすること等を根拠に,支払不能基準で画する乙案を支持するという意見があったのだと理解しております。ただ,今回のたたき台では,支払不能基準と通謀詐害意図という二つの要素を合わせた形で要件化するという考え方を提示しておりまして,この考え方を前提としてもなお,支払不能基準一本で判断すべきだという御意見は,少なくとも部会の中で明示的には出されていなかったように思います。もちろん,中井委員から大阪弁護士会の御意見として紹介をしていただいたことは認識しておりますけれども,しかし中井委員御自身は,むしろ,今回のたたき台の考え方のように少なくとも通謀詐害意図の要件は入れておくべきだという御意見であったと思います。そのような認識の下で,現在のたたき台の提案のような示し方をしております。   次に,6についてですけれども,これは前回のたたき台の審議の際にも議論がありましたとおり,考え方としましては,債務者を被告にする説を採ろうと,債務者に対する訴訟告知で足りるとする説を採ろうと,債務者に詐害行為取消しの効力が及ぶということは当然の前提となっております。ですので,6のところに中井委員の御指摘のような(注)を設けますと,あたかも6のところで考え方の対立があるかのように見えてしまいますので,中井委員の御指摘の点は,概要や補足説明で十分に説明をすることで対応したいと思っております。   最後に,9の(2)につきましては,詐害行為取消権の取消債権者が支出した費用と,受益者の反対給付の返還請求権との優劣の問題ですけれども,少なくとも部会では,取消債権者の費用を優先させるべきだという意見しか出ていないと認識しています。中井委員から大阪弁護士会の御意見として,受益者の反対給付の返還を優先させるという考え方を御紹介いただきましたけれども,部会,分科会ではむしろ逆方向の意見,現在のたたき台のとおりの意見しか出ていなかったと認識しています。また,この点につきましても,倒産手続における否認権の場合との違いがあるのだろうと思っておりまして,否認権の場合ですと,受益者が管財人から反対給付の返還を受けない限り自分の受益したものを返さないという同時履行の抗弁権を主張することができるという理解がおそらく一般的で,それを前提にすると,受益者の反対給付返還請求権が最優先であると理解することになると思いますけれども,しかし民法の詐害行為取消権の場合には一般の債権者が詐害行為取消権を行使しますので,そのような一般の債権者の一人にすぎない取消債権者が支出した費用を最優先で回収させる必要性は非常に高いのではないか,部会や分科会で取消債権者の費用を最優先で回収させるべきだという意見しか出ていない理由も,そこにあるのではないかという判断をして,現在のたたき台のような考え方を示しております。 ○道垣内幹事 私が理解できていないだけかもしれないのですが,中井委員の御意見に対する金関係官の御返答において,その11に関係する部分なんですが,一般財産に利益が混入した場合に,先取特権構成が難しいのではないかとおっしゃったように思います。しかし,これは返還した目的物に対する特別の先取特権ですよね。他方,現存利益についてのみ有するというのは被担保債権額の問題ですよね。そうすると,別に財産が一般財産に混入しているから,先取特権の目的物が分からなくなるという理由は,成り立たないのではないかと思いながら伺っていたのですが,私はどこかに大きな勘違いがあるのでしょうか。 ○金関係官 いえ,申し訳ありません。御指摘のとおりです。中井委員のメモの御趣旨も読み間違えておりました。 ○道垣内幹事 11ですから現物を返還するべき場合の話で,現物が返還できない場合には,幾ら悪気がない場合であっても,金銭に対する特別の先取特権とはいきませんので,所詮,先取特権は与えられない。与えられる場合というのは,本日の資料の69ページの11の(2)においても,現物を実際に返還する場合ですよね,それならば,別に現存利益の場合にも同じではないかなと思います。ただ,現存利益が取れるということ自体が問題であると判断したり,債務者が隠匿等の意思を有することを受益者が知っていたという場合には,もはや,一般債権として律するべきであって,現存利益についても特別の先取特権を与える必要はないという判断をするのであれば,それはそれで分かります。しかし,御意見と返答が理解できなかったものですから。 ○金関係官 ありがとうございます。大変失礼しました。 ○沖野幹事 繰り返しで,既に3度目なのですが,岡委員が御指摘になったので最後に念のため,教えていただきたいという趣旨で申し上げます。例の相殺で55ページの債権者代位と詐害行為取消しとの両方にあります,(注)の書き方です。「規定を設けない(相殺を禁止しない)」という書き方については,可能性としては「相殺を禁止しないという考え方がある」という書き方にする選択肢が考えられます。そうしますと,それが全面的なのか,部分的なのか,民事執行と整合的な範囲でという考え方で画するのかなどが,その書き方であれば出てきやすいと思います。   もう一つ,理念的に対立する考え方という点ですが,確かに,余り複雑なルートを設けるのはどうかというのはそのとおりで,その考え方に即していると思うのですが,これまでのところ議論が少し変遷してきているように思われます。むしろ,一定範囲で民事執行の規律と兼ね合いを付けながら,どこかで線を引けないかという考え方が,あるいは,そういう考え方も有力にこの部会の中で言われるようになってきているように思われます。その認識が正しいとしますと,理念的な分かれ目を書いたほうがいいのか,それとも,そうではないものを書いたほうがいいのかということを考えたときには,(注2)の書き方について規定を設けないということではなくて,相殺を禁止しないという考え方があるという書き方もできるし,そのほうがその中身を更に書いていただくのによろしいようにも思うのです。   そういう書き方ができないかというのは,以前にも伺ったところなんですが,恐らく(注)自体は規定を設けるのか,設けないのか,設けるとすると,どんな規定を設けるのかまで書くというのを基本線にされているために,こうなっているんだと思うんですけれども,ただ,それを貫くと必ずしも議論の反映にならない場面は,少し例外的な書き方も考えられるのではないかと思いますけれども,いかがでしょうか,というのが一つです。   もう一つは転得者のところについて,念のため,申し上げてよろしいでしょうか。「転得者の前者に対する反対給付等」という71ページのところでして,これはお願いないしリマインダー的なものです。(概要)に関わることであって本体ではないものですから。ただ,(注)を付けることによって(概要)の書き方に大分影響が出てくるように思われます。   例えば(概要)の最初の部分というのは,断定的というよりは相対的取消の下ではこうなるとか,そういうような書き方になるかと思われるということと,もう一つは(注)を付けることによって,本文自体の理由付けを少し補足する必要があるのではないかと思われます。具体的には詐害行為取消,あるいは更に倒産のときも想定に入ってくるかと思うんですけれども,その後に続く民事執行における権利行使を確保する,あるいは倒産であれば倒産手続の中でその権利行使を確保するということに意義を見いだすという点があるかと思いますので,恐らくその点を少し補足していただくことになるのではないか,(注)が入ることによって,そういうことが出てくるかと思うので,的外れでなければ勘案していただければと思います。 ○鎌田部会長 事務当局から何か御発言はありますか。よろしいですか。   ほかにはいかがでしょうか。   それでは,「第16 多数当事者の債権及び債務(保証債務を除く。)」と「第17 保証債務」について御審議いただきます。一括して御意見をお伺いします。 ○三上委員 「保証債務」のほうにいってよろしいですか。「保証人保護の方策の拡充」の,6の(1)で「主たる債務者の」という言葉が入りましたけれども,例えば子会社の役員になっていない親会社の役員が保証するといったときには,経営者という概念でそこをカバーするのか,それは入らないと考えるのか,入らないと考えるときには,親会社の経営者が親会社の債務について保証を入れたときに,その親会社が子会社の保証をすると,保証の保証も保証責任に入ってくるというのは脱法行為にならないと考えてよいのかという点の確認と,それから,イのほうの保証契約というときに,民法465条の5の解釈でいきますと,住宅ローンのように保証会社が保証して,その求償権を個人が保証しているときの求償権は貸金等債務には入らないことになりますが,こう言ってしまうと脱法行為が横行するような気もするんですが,465条の5のような例外の例外規定は設けないのかという,この2点を確認させていただきたいと思います。 ○筒井幹事 「主たる債務者の」という言葉を補いましたのは,いわゆる経営者という文言がどういう立場の人のことを問題にしているのか,主債務者なのか,それ以外なのかというところについて,読み方がよく分からないという御指摘があったことを踏まえたものでありまして,この言葉を補ったことによって,いわゆる経営者という概念について今後検討していく上で,あらかじめ一定のものが除外されるといったことは全く意図しておりません。   2点目の求償権についての保証については,基本形についての検討を終えた上で,更に求償権についても同様の規律を及ぼしていく必要があるかどうか,恐らく必要があるだろうというのは,三上委員が御示唆されたことだと思いますけれども,そういった検討の手順になると思いますので,そのことが分かるように説明を加えておこうと思います。 ○佐藤関係官 今と同じところなんですが,「個人保証の制限」のところで前回,1月に審議をした際に私は欠席しまして書面を提出させていただきました。その際に,いわゆる経営者というところで,経営者だけに限定するのか,あるいは事業の協力者とか支援者的なものも含めるのか,その点の工夫をお願いしたいという意見を出させていただきました。この点には, 恐らくいろいろな面から関心が高いところであろうと考えておりまして,個人保証人の保護を図るという目的と同時に,実務上,問題があるならば,そこのところをどう考えてベストミックスといいましょうか,バランスのとれた方策の検討をしていく必要があると思いますので,本文の修正等に拘泥するわけではありませんが,何らかの形で経営者の範囲,純粋に経営者でいいのか,今の「主たる債務者の」というところも含めて,その点についていろいろな検討が必要であると,そういうことを説明で補っていただければと考えております。よろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○中井委員 同じ場所でメモの18項ですけれども,イの貸金等債務について(概要)のところの最後のほうで括弧書きですけれども,「例えば」以下で債務者が事業者である債務一般を主たる債務とする保証契約であってもと,こういう拡大する意見があるという整理をしていただいています。このように整理していただくことは大変結構なことだと思いますが,ここまで整理していただくのであればですが,本文中の貸金等債務の貸金等にかぎ括弧マークを付けていただくと,その論点が明確になるのではないかと思います。御検討いただければと思います。(概要)に書くのであれば,(概要)の趣旨がより明確になるという意味で,本文にかぎ括弧を入れていただければどうかと思います。そうすると,今の三上委員のおっしゃられた求償債務についても,仮にかぎ括弧をとれば当然に入ることになろうかと思います。 ○松本委員 83ページ,「根保証」なんですが,根保証の定義をしないでいいんでしょうかということです。今までの議論の中でも賃借人の将来の賃料債務の保証についてはどうなんだという議論が,保証のところでいろいろあったかと思いますが,現在の民法の貸金等根保証の場合は貸金の根保証というのが中心なので,それ以外に何かが入っていても余り議論する必要は多分ないのではないかなと思うんですが,今回,「貸金等」を外してしまうわけなのです。根保証と言われているものに何が入り,何が入らないのかというところの伝統的な議論が昔からあるわけですが,その点を定義しないで判例に任せますというスタンスなんでしょうか,これは。 ○鎌田部会長 定義自体は現行465条の2に一般的定義がありますが,もっと具体的にこれとこれは根保証に該当するということを明示しろという趣旨でしょうか。 ○松本委員 つまり,信用保証と賃料債務の保証と身元保証の関係をどう整理するんだという議論が昔からあるわけなんです。信用保証だけに根保証を限定するという考え方もありますが,465条の2の定義らしきものは,信用保証に限定しているということなんでしょうか。筒井幹事はこの立法に関与されたわけですが。 ○筒井幹事 条文の文言どおりですが,そのような限定をしないで根保証を定義した上で,それとは別に,主債務の範囲に貸金等債務が含まれるものという要件を設定しておりますので,今回の改正で根保証の定義を見直すことは想定しておりませんでした。現在の定義に従って,一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約に該当するか否かという判断がされればよいと思いますし,それでは適当でない具体的な問題があるのであれば,それを御指摘いただいて更に議論していただければよいと思います。少なくともここまでの審議では,根保証の定義を変えなければならないという議論は,出ていないと認識しておりました。 ○松本委員 ここで根保証と書いてあるのは賃借人の債務の保証も含むものとして立法を考えているという理解でよろしいですか。つまり,信用保証に限定する趣旨ではない。 ○筒井幹事 それはそのとおりだと思っております。 ○鎌田部会長 ほかの点はよろしいですか。 ○山本(敬)幹事 今日の最初のほうに述べたのと少し共通した問題なのですが,86ページの「(4)その他の方策」のイの部分で,保証債務の内容が過大であるときには,過大な部分の履行を請求することはできないものとするとされています。先ほどと違うのは,このケースでは,過大な部分の履行をしてしまっている場合は余り現実にはなくて,実際には請求することはできないということで終わるケースが多いだろうと思います。しかし,場合によっては,他から無理な借入れをして,保証債務を履行するというケースもあるだろうと思います。いろいろな状況があり得ると思いますが。この種の場合でも,払い過ぎた分については,返還請求ができるということは認めるべきだろうと思います。そうしますと,ここでも「履行の請求をすることはできない」だけですと,その点については疑義が残る可能性があると思います。したがって,この部分についても,先ほどの表現に合わせるような形で修正をする必要があるのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○筒井幹事 御指摘があった「その他の方策」のところに関していえば,ここは引き続き検討するという項目であって,実質を根本的にもう一度よく考えてみる必要があるとされているところですので,余りブラッシュアップしていくよりは,引き続き検討という趣旨に従って検討を続けていくのがよろしいのではないかと考えております。   もう1点,中井委員から先ほど保証のところで貸金等債務に限定しない案を注記するなどしてはどうかという御提案も頂きましたけれども,この点については,内容にわたる話になりますけれども,今回の改正でそれを実現することには私は相当の困難を感じていると,以前から分科会で強調して申し上げ,部会の場でも申し上げました。御提案の趣旨は理解いたしますけれども,貸金等債務という限定を外して,様々な種類の債務が対象として入ってくることになると,除外するものが必要になってきて,その適切なリストアップは極めて困難な作業になるであろうという認識を持っております。   現時点で異なる考え方を一切排除する意図ではありませんので,(概要)欄では他の考え方があることを紹介して,御意見を伺おうと思っておりますが,しかし,中間試案の本文に掲げる案としては,現在の案文を維持することが,成果を得るための数少ない道ではないかと私は認識しております。 ○山野目幹事 6の(1)と6の(4)について,それぞれ意見を申し述べさせていただきますけれども,ただいま,筒井幹事から御示唆があったところと結論が一致しますけれども,本日,部会資料の形で中間試案の原案としてお出しいただいているこの文言をそのまま保った上で一般の意見を問い,この論点についての議論を深めていくことが相当ではないかと感じます。   まず,6の(1)に関しては,中井委員の御提案は理由のあることであって,ごもっともなことであると感じます。更に日本弁護士連合会が意見書を採択して問題提起をしておられるところは,6の(1)よりも制限を考える範囲が広いものである,そういう御意見を一貫しておっしゃっておられるということも理解をしております。6の(1)の制限をする範囲については,ここに提示されているものよりも,もっと広いものを考える向きもあれば,もっと狭いものを考える向きもあって,様々な議論がこれから深められていくことがよろしいのではないかと考えます。今の文言のアとイの形を提示し,これに対して日本弁護士連合会も含めてアとイよりも更に広げた制限,反対にアとイよりも更に狭めた制限の様々な御意見をお出しいただくことが相当ではないかと感じます。   6の(4)でございますけれども,イについて「履行を請求することができない」という文言との関係で,山本敬三幹事から御注意いただいたことは,ごもっともであると感ずる部分があります。このイの提案は筒井幹事がおっしゃったように,これから更にパブリックコメントの後で検討を深めていかなければならない問題もありまして,その中の一つに,履行請求があったときには資力が悪化していることから履行請求をすることは認めないという帰結が妥当するとしても,その後,資力が回復したときには履行請求に応じなければいけないという解決になるものであるというのが,イの参考にされた元々のフランス法の解決でありまして,そういうことを考えると,本日,別のところで問題になった支払を請求することができないという場面とは,問題の様相が更に複雑な部分がございます。   山本幹事の御注意は内容としてごもっともでありますとともに,今,提示されているイの文言はこのままとした上で,今のような御指摘の論点も,更にこの後の調査審議の段階で検討していくことが望ましいということはもちろんでございますから,その検討がなされるべきではないかと感じます。 ○山本(敬)幹事 念のためですが,私自身はこの(4)のイの案がこのままでよいかどうかという点については,なお,検討の余地があるという意見をこれまでも述べてきたことがありますので,その点はもちろん前提とした上で,しかし,書くのであれば,先ほどのような趣旨が前提になるので,このような書き方でよいのかという問題提起でした。しかし,今後,引き続き検討しなければならないという点については私も全く賛成ですので,これでよいと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。 ○中田委員 細かい言葉だけの問題なんですけれども,80ページの「保証債務の付従性」の中に,「主たる債務の目的又は態様」という言葉が出てまいります。この目的という言葉なんですが,他方で,85ページの(2)のウでは「主たる債務の内容」となっておりますし,86ページの(4)のアでも「主たる債務の内容」となっています。目的という言葉をどう使うのかというのは,中間試案全体を通じて検討していただいているところですけれども,債務の目的については債務の内容とされているようですし,契約の目的という言葉についても契約の達成すべき目的という場合と,契約の内容という場合とに使い分けをしておられるわけです。ところが,ここに「主たる債務の目的」という言葉が残っていますと,やや混乱が生じるのではないかと思いますので,ここも「主たる債務の内容」と変えることも検討してはどうかと思いますが。 ○筒井幹事 一般論として,内容や対象といった意味では「目的」という言葉を使わない方向で試みの作業をしてきたというのは,中田委員の御指摘のとおりですので,ここも大方の御異論がなければ,そのように変えることは決してやぶさかではありません。ただ,現在の民法には,中間試案で取り上げていないところにもそういった意味で「目的」を使っているところがあり,「目的」という文言の使い方を変えるならば民法全体を通じて作業をすることが必要になると思います。現時点ではそこまで踏み込んで,一貫した方針で文言を見直そうとしているわけではないものですから,ふぞろいなところが目に付いたということではないかと思います。 ○中田委員 おっしゃるとおり,全体を通じて更に適切な言葉を選ぶということでよろしいと思います。ただ,17の「保証債務」の中に「主たる債務の目的」という言葉と「主たる債務の内容」という言葉が両方入っているのは,分かりにくいかなという気がしましたので申し上げた次第です。 ○高須幹事 お願い事になる部分なのですが,今日の議論の初めのほうで任意規定と異なる慣習の部分について,取り上げなかった論点に落とした経緯の中で,そうしてもその重要性については,何らかの形で説明をすることもあり得るというような御趣旨の御説明があったと思うんですが,取り上げなかった論点については何らかの形で説明があると思ってよろしいのかどうか,教えていただければと思うんですが。 ○筒井幹事 全てを取り上げることは到底困難であると思いますけれども,できる限り,議論の経過をお伝えできるような方向で作業をしたいとは考えております。 ○高須幹事 そのことで申し訳ないんですが,今回,出ている「保証」のところでございます。取り上げなかった論点の中で根保証の場合の履行請求の随伴性の問題,これは昨日の弁護士会のバックアップの議論でも強く存続を求める意見もあったものですから,存続するかどうかは別としても,今のような中で,御苦労いただいている中で大変心苦しいんですけれども,ここについては最高裁判例が新しく出たりもして,議論が今後,なされる可能性もあると思いますので,やや将来につながるような書きぶりを残していただければと思います。お願い事でございます。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。よろしければ,「第18 債権譲渡」から「第21 契約上の地位の移転」までについて御審議いただきます。御自由に御発言ください。 ○松本委員 「債務引受」のところなんですが,1が「併存的債務引受」,2が「免責的債務引受」で,それぞれの(1)と(2)がほとんど同じことが書いてあるように思えるんです。2があれば1は要らないのではないかと。特に「免責的債務引受」のところはそういう感を強くします。ひょっとすると,(1)は定義のつもりでお書きになっているのかなとも思うんですが,一体,今回の改正は定義を積極的に入れていくということになったのか,そうではないのかというのも,結局,議論は曖昧なまま終わっているんですが,ここは明らかに定義であり,かつ成立要件であるというのを2回,繰り返しているところがあると思われます。その辺はいかがなんでしょうか。もちろん,実際の条文に落とすときにどうなるかが一番重要なんですが。 ○松尾関係官 定義ではなくて(1)は効果を書いており,その効果を発生させるための要件を(2)(3)で書き分けているということです。ここでの記載が,全般に定義を置く方針かどうかということについて,何らかの態度決定をしているわけではありません。 ○松本委員 ただ,免責的債務引受の効果は(1)であると,免責的債務引受の要件は(2)であると,それなら,一緒にしてこれこれのときは,これこれの効果が発生すると書くのが普通の民法の条文の書き方だと思うんですが。 ○筒井幹事 原案の意図は松尾関係官が説明したとおりなので,あとは条文化に向けての書き方の問題ですので,引き続き検討させていただくということで御理解いただければと思います。 ○松本委員 こういう質問をすることの趣旨は,当事者が免責的債務引受をしますという表現で合意をする場合と,それから,具体的に(2)で書いてある,あるいは(1)で書いてある細かい部分についての合意もしないと駄目なのか,この言葉を使えば,それでほかはいいのかというところがよく分からないところがあるんです。 ○山野目幹事 しかし,それを今,議論しなくてもいいのではないですか。 ○松本委員 どこで議論するんですか。 ○鎌田部会長 その点は別に債務引受だけではなくて,売買契約でも,売買と言えばいいのか,売買の要素が全部きちんと書かれていなければいけないのかという同じ類いのことがありますなので,要件効果をいかに明確にするかというところで,この段階では御容赦いただければと。 ○松本委員 分かります。当事者が併存的債務引受ということの意味を分かっていて,そういう表現を使えば,それでいいんでしょうけれども。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。 ○中井委員 第20の「債務引受」の1の「併存的債務引受」,メモの21項ですけれども,(1)から(4)までの提案がある後に(注)があって,この(注)は以上に付け加えてという追加的提案と思うんですが,この類型の(注)はここが初めてではないかと思います。まず,内容的にもこの中身については(注)ではなくて(5)として提案するのが,ほかとの平仄が合うのではないか。その上で,この中身について,そこまで設ける必要はないという考え方があるのだろうと思いますので,そういう考え方を(注)で指摘するというのが,整理の仕方としては平仄が合っていると思うんです。ここでは,(1)から(4)以外の別個の新たな提案を,(注)の中に入れるという形式を特別に書かれた何か理由があるのか,確認のためですが。 ○筒井幹事 これは,(注)に書いた考え方を非常に熱心に御主張されている方がいるので,本文や(注)のレベルで取り上げるのが相当であろうという判断をしたのですけれども,その際に,内容的にはまだ十分に練り上げられていない面があると思いました。そういう意味では,幾つかのところで使っている「引き続き検討する」に近いタイプの熟度ではないかとも思ったわけです。ただ,そこには程度問題がありますので,折衷的な解決として,このような注記という方式を提示しております。こういう整理の仕方もあるということで御理解いただければと思います。 ○三上委員 戻って「債権譲渡」のところの「将来債権譲渡」の(3)というのが今回,新設されておりまして,前回,こういうのがなかったところを具体的に指針か,何か付けたほうがいいのではないかという意見を出した手前ではあるんですけれども,いきなり対抗できないという方向の意見が出ているのですが,これは理論的帰結として例えば対抗要件が具備されているんだから,あとは負けるという前提で,こういう方向の意見を出されたのか,私の印象としてはむしろ譲渡人が当事者間の契約を破って禁止特約を付ければ,第三債務者が譲渡されていることについて,悪意とかいう場合を除いては有効ではないかと,むしろ,逆の方向で考えていたんですけれども,こういうコンセンサスでよいのかどうか。   もし,これが入るとしても,例えば預金債権のように,将来,発生しても必ずそれには譲渡債権が付くのは当然であるという種類の債権について,当事者が悪意ないし重過失があれば,それは対抗できるということになるのか,もし,そうであれば,そういう注書きみたいなものが要るのではないかと思うんですけれども,その辺はどうなのでしょうか。 ○松尾関係官 前回,この論点を取り上げない案を御提示したのは,三上委員が御指摘されたとおり,会議においてコンセンサスが得られた案はなかったように思われたので,取り上げなかったということです。ただ,この論点について,復活し,ルールを明確にすべきではないかという御意見を複数頂いたので,こちらで新たに提示させていただいたものです。   なぜ,このような案に落ち着いたのかということなんですけれども,部会の中で対立していた御意見があったことを踏まえて,利益調整の在り方として,このような形であればコンセンサスが得られないかと考え,一つの試みとして出したものであり,また,理論的にも,抗弁の切断の問題と同様に扱って,権利行使要件の具備時点を一つの基準としてすることで,この結論を正当化することが容易なのではないかということを考えて御提案しているものです。以上の次第ですが,三上委員の御意見の御趣旨が,本文の考え方が議論の経過からいってふさわしくないということであれば,やはりこの論点を取り上げないことを検討することも必要かとは思います。   もう一つ,最後に,預金債権についての御質問を頂いたと思うのですけれども,もう一度,伺ってよろしいでしょうか。 ○三上委員 預金債権のように,将来に発生しても必ず譲渡禁止が付いている,普通付くものということについて譲受人が悪意ないし重過失であれば,それは対抗できるのかどうかという点について,そうなのかどうか。もし,対抗できるのであれば,その旨を明確にすべきではないかという提案です。 ○松尾関係官 今,三上委員からは,基本となる預金契約すら契結されていない段階で預金債権が譲渡された場合を念頭に,お尋ねいただいているということでしょうか。 ○三上委員 あるいは,例えばある当該支店と自分との間で発生する将来の預金債権全部という形で,譲渡された場合を想定しております。 ○松尾関係官 要するに債務者との間で譲渡制限特約が権利行使要件具備前に付されているかどうかだけで判断するということですので,今,三上委員がお尋ねいただいた例について,権利行使要件が具備された段階で譲渡制限特約が付されていなかったと解されるのであれば,それは譲渡制限特約を対抗することができないというのが論理的な帰結にはなろうかとは思います。 ○三上委員 そうすると売って対抗要件を備えたほうが100%勝つわけですよね。いかに必ずこの取引には譲渡禁止特約が付くと分かっていても,先に譲渡してから契約をすれば,譲渡禁止特約が外れるということになってしまうわけですね。そうすると,恐らくいろいろなところで由々しき問題が出てくると思います。 ○鎌田部会長 そこは多分,解釈問題だと思うんですけれども,将来発生する預金債権という譲渡対象の将来債権の内容がこれこれの預金契約上の債権として特定されていて,その預金契約には譲渡禁止特約が付いていれば,私はそれは譲渡前に譲渡禁止特約が付いていた場合と解されるのではないかなと思うので。 ○三上委員 そう解されるのならよろしいですけれども,契約時点で譲渡禁止があったら負けというような御説明をされたように聞きましたので。 ○松尾関係官 譲渡禁止特約がいつ付されたと考えられるのかということが問題だと思うのですけれども,先ほどの私の答えでは譲渡制限特約が個別にどの段階で付されたのかということについては,仮定の上でお答えしていて,結論を申し上げたつもりはありません。預金債権に譲渡制限特約が付される時期について,ただ今鎌田部会長がおっしゃったような解釈があり得るのであれば,その解釈によって譲渡禁止特約を債務者は対抗できるということになろうかと思いますが,個別の事案ごとの解釈によるのであって,一般論としてどういう結論になるというのは申し上げづらいのかなと感じております。 ○三上委員 そこがはっきりしないと,取引全体について場合によっては取引に入るときに,将来債権が売られていないかをまず調査してからでないと取引に入れない,売られていたらもう取引しないという,そういう可能性も出てくると思うんです。譲渡禁止特約が付いている約款の分野の問題にもなりますけれども,約款には必ずそういうのが入っていると分かっていれば,それについて相手方が悪意ないし重過失があるのであれば,たまたま,預金債権自体の預金契約の発生が将来であったとしても,対抗できるというようなことにしておかないと,取引に入るときのコストが余計に掛かるのではないかという危惧を持っておりますので,こういう点を申し上げた次第でございます。 ○筒井幹事 御懸念の内容は大変よく理解できました。そういたしますと,どうしたらよろしいのでしょうか。前回の議論を踏まえて今回の案を御提示し,(注)を付しているというのが現状ですが,中間試案としてはこれでよくて,ただ今の点を説明として明記すればよいと受け止めておけばよろしいでしょうか。 ○三上委員 私個人だけの意見なのかが分からないんですけれども,こういう対抗できないというのをデファクトスタンダードにするという意見と,対抗できるというのをデファクトスタンダードにする意見とは,恐らくこの場で真剣に議論していないので,両意見があると思うんです。単に規定を設けないというのが対立いかんではなくて,もし,設けるとしたら二方向あると。更に,今,ここで提案してあるようなことがあったら,当該債権について将来の債権についても譲渡制限特約が付くであろうことに関して,悪意,重過失があればという注記もすべきではないかと,こういうことになると思います。長くてすみません。 ○鎌田部会長 さらに検討していただくこととしますが,しかし,私は基本的には後から付いた特約は対抗できないのが原則で,今の問題の提起は将来債権の特定の仕方の問題でしかないと思うんです。どんな債権か分からないけれども,将来の債権を譲渡しますではなくて,これこれ,こういう内容の将来債権の譲渡というところがきちんと定まっていれば,具体的な債権の発生の時期は譲渡の後でも別に構わないわけですけれども,将来発生する賃料債権を譲渡しておいて,その翌日に譲渡禁止特約を付ければ,全部,それが対抗できるというふうな,こうことは基本的にはあり得ないのだろうと思っていますので,一般的には後から付けた制限が先行する契約の効力を制限していくことはないという原則でよろしいのではないかという気がします。 ○三上委員 理論的にはおっしゃるとおりなんですけれども,ただ,それを突き詰めてしまうと,取引に入る前に自分の債権が譲渡されるのかを調べていかないと,安心して取引できないと思う人が,恐らく,今,譲渡禁止特約を使っている企業のほとんどは,そういう発想になってしまうと思うんですね。ですので,それが妥当なことなのかどうかを考える以前に,拒否反応が出てくるかもしれないと気になったので申し上げました。 ○沖野幹事 今は95ページの4の(3)の規律でよろしいでしょうか。これは権利行使要件が具備された場合には,その後に譲渡禁止特約がされたときであってもという提案になっておりますので,第三債務者に対して通知等がされた後という限定で調整を掛けるという考え方ですので,三上委員がおっしゃる,第三債務者が取引に入るときに将来債権譲渡がされているかを調査しなければならなくなるという場面というよりも,より制限的に考えているということではないかと思います。そういう御提案で,それに対して466条型の善意無重過失で,かつ,それは将来の予想みたいなものを掛けていくという代案があるのかという話かと思いますけれども,ご懸念の場面は提案とは必ずしも合致していないのではないでしょうか。 ○道垣内幹事 合致しているのではないですか。つまり,三上委員がおっしゃったのは,例えばA銀行に対して将来有する預金債権を譲渡するという形で,A銀行に対して何からの取引関係があってもよいわけですけれども,通知がなされるという場合を念頭に置いているわけですから,そのときには当該具体的預金債権が発生する以前に,権利行使要件が具備されるわけです。私は4の(3)が前提としている話と三上委員の話はずれていないと思いますが。 ○沖野幹事 三上さんのご趣旨を誤解していたのかもしれませんが,そこでおっしゃる調査というのは通知が来ているという前提で,通知が来ているかどうかを調査しなければいけない,それが問題であるという想定だということですね。それまでに将来債権譲渡がされているかの調査というよりは,そういう通知が来ているかという調査をしなければいけなくなるということでしょうか。 ○三上委員 今の登記は非常に曖昧な登記もかなりできるので,恐らく今回,譲渡についての登記を一般化すると,我々の要求は曖昧な登記を認めてくれという方向にありますので,そうすると,どこが登記されたのかという問題もありますし,通知があってもそれが組織内で長期間周知され得るかどうか,どちらの場面もあると私は思っております。 ○道垣内幹事 登記では駄目なのでしょう。つまり,登記だけされたのでは第三者対抗要件しか具備されていないから。 ○三上委員 登記の記載の内容が広かったら,実際,自分の債権が売られているかどうかはっきり分からない,それでは新しい取引ができないという反応も出てくるのではないでしょうか。 ○鎌田部会長 御指摘の問題状況を前提にして検討させていただきます。   ほかにいかがでしょうか。 ○松本委員 101ページの「4 免責的債務引受による担保権等の移転」という部分なんですが,第三者が設定しているところの担保については,その第三者の承諾を得ない限り移転しないと。これは当然でよく分かりますが,債務者本人が設定している例えば抵当権のようなものの場合には債務者の同意は要らないと,債権者の判断のみで一方的に債務を引き受けたものの債務の担保として,そのまま移転することができると書いてあるんです。   100ページのほうの「免責的債務引受」を見ると,免責的債務引受は基本的に本来の債務者の同意は要らないわけです。債権者と引受人との間でその趣旨の合意ができて,あと,債権者が債務者に免責の一方的な意思表示をすれば,それでいいんだということなのです。ということは,このままだと債務者は必ずしも同意していないのに免責的債務引受が行われて,債務は免除されるんだけれども,責任だけが残って余り自分として信頼できない第三者が債務者となって,債務不履行による担保権の実行のリスクが高まるようなことになってしまうのではないか,それでいいのかなと。物上保証人のような感じになるのだから,第三者弁済をすればいいではないかということで,全く保護に欠けるところはないという説明をされるのかもしれないんだけれども,(概要)のところを見ると,ここで債権者の単独の意思表示で担保を移転させることができるのは,更改に関するところと同様の趣旨であると書いてあるんですね。   確かに「更改」のところでも同じ規定があるんですが,「債務者の交替による更改」という117ページの2を見ると,債権者,債務者,第三者の三者間契約で債務者の交替による更改は行われると書いてあるわけだから,担保を設定している債務者としては,更改の当事者として担保は移転する,債務は消えるという,そういう変わった形の更改でもいいんだという判断に加われるわけなんですが,免責的債務引受はそれができないという構造なので,同様の趣旨であるでは説明にならないのではないかと思います。すなわち,免責的債務引受における債権者の一方的判断で担保が移転するということの政策的判断は,別途やらないと駄目なのではないかという気がいたします。 ○鎌田部会長 この点について何か説明はありますか。 ○松尾関係官 免責的債務引受の債務者が,当事者になる場合とならない場合があると思うんですけれども,4の(2)によって成立する場合は,債務者は免責的債務引受の当事者にならないので,先ほど松本先生が御指摘になられた4の(3)が適用されて,免責的債務引受の合意の当事者以外の者が設定したものである場合には,承諾を得なければならないということになり,担保権の移転についての債務者の承諾が必要になると考えております。他方で,(4)の場合には引受人と債務者との間で合意をすることになるので,4の(3)で承諾が必要となる対象にはならないわけですけれども,その場合には結局,自らが設定していた担保権が移転する可能性があるということを含めて,免責的債務引受の合意をするかどうかというところを判断するということが可能なので,4の(3)の対象にする必要はないと理解をしております。 ○松本委員 分かりました。私が4の(3)を読み違えていたようで,物上保証人とか保証人の場合だけを念頭に置いて承諾が要るんだと読んでいた誤解です。 ○山本(敬)幹事 次の第21の「契約上の地位の移転」についてです。ただし書の部分ですが,前回のときに,法令に特別の定めがある場合には,相手方の承諾を要しないものとするとした場合には,法令に規定がないけれども,争いの余地のあるものについて,全て相手方の承諾が必要であるという立場決定をしてしまうことになるのではないか,それは十分な検討を経た上で行われているわけではないので,問題があるのではないかという指摘をさせていただきました。今回,(注)で,第2文については規定を設けないという形で,少なくとも法令に特別の定めがある場合に限定するという趣旨は消してしまうということが,一つの案として出ているわけですけれども,ただし書の部分が全くありませんと,承諾が必要であるということだけが出ていますので,同じような疑問が残るように思います。もちろん,解釈の余地はあるだろうと思いますけれども,少なくともベストの案ではないだろうと思います。   この点については,今回,(備考)の形で上げていただいて,103ページまで書かれてあります。取り分け最後の「なお」の部分の一番下から3行目ぐらいまでの辺りですが,このような形で,例えば「契約上の地位が承継されないことについて相手方に利益がない」,少し分かりにくいですが,要するに契約の相手方がそのまま残っていることに特に利益があるとは言えない,むしろ,契約の相手方が移転するほうが利益になるというような場合については,必ずしも承諾を要求しなくてもよいだろう。では,どのような場合がこのように相手方に利益がないと言えるかは,解釈に委ねるという考え方があるということです。このままですと,(備考)欄は中間試案から消え去る運命にあると思いますので,せっかくですから,このような考え方を(注)に格上げするという形で,なお,このただし書のような書き方でよいかどうかの検討の余地を残していくのが適当ではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○筒井幹事 考えさせていただきますけれども,基本的には現在の案を維持した上で,議論がつながっていくように説明を付け加えることにさせていただきたいと思っております。 ○深山幹事 一つ前の「免責的債務引受による担保権等の移転」のところで,松本先生と松尾さんのやり取りについては,その限りでは解決をしているので,それはよろしいんですが,担保移転について免責的債務引受と同時にする意思表示によってしなければならないという具体的な意味合いが分かりにくいように思います。先ほどの説明にもあったように,免責的債務引受の当事者というのは,2の(2)と(4)との2パターンがあるわけですね。そのため,誰の誰に対する意思表示なのかというのが必ずしも画一的ではなく,そのパターンによって違ってくるような気もいたします。   債権者と引受人との間で合意する場合には,債権者がする意思表示なのだろうと思いますし,それが誰に向けられた意思表示かというところについては,合意の当事者である引受人に向けてなのかなと思います。これに対し,債権者が必ずしも合意の当事者でない(4)の場合には,誰の誰に対する意思表示を同時になされると担保が移転するのかというのが分かりにくい気がいたします。意思表示のところにもう少し言葉を補足していただいて,誰が誰に対してということを,それぞれのパターンを意識して書いていただいたほうが分かりやすいのではないでしょうか。 ○松尾関係官 少なくとも(概要)で趣旨が明らかになるように,検討させていただきたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。   それでは,「第22 弁済」から「第25 免除」までについて御審議いただきます。御自由に御発言を頂ければと思います。 ○松本委員 前回の提案から削除されたところとして,弁済の提供の効果の部分があるんですが,これはどういう趣旨で削除されたのでしょうか。当たり前だから削除したのか,こういう効果は認めるべきでないから削除したのか,どっちですか。 ○松尾関係官 前回,弁済の提供の効果として,例えば損害賠償の責任あるいは契約の解除を例示として挙げた上で,債務不履行によって生ずべき一切の責任を免れるものとするという案を提示したところ,契約の解除をその例示として挙げるのは適切ではないのではないかという御意見が前回の会議の際に山本敬三幹事からありました。その御意見を踏まえますと,松本先生がおっしゃったように,これによって何かが明確になっているようには感じられず,果たして改正をする必要があるのかどうなのかということが疑問になりましたので論点から落としたということです。 ○山本(敬)幹事 そのような趣旨だろうなと思いましたが,私自身が前回のときに申し上げたのは,責任の中に契約の解除が含まれているのが,少なくとも今回の中間試案でゴシック体で提案されるものからすると,必ずしもそぐわないのではないかということで,削除したほうがよいということでした。その際,弁済の提供をしたときに解除ができないことは,もちろん,否定されないわけであって,その点については,例えば契約の解除の部分の要件のところで明記するなどしてよいのではないかということも併せて申し上げました。現在の492条のままですと,結局,解除について明示的に定めた文がないということになりかねないと思います。それもまた,行き過ぎかもしれないという気がします。   そうしますと,492条を維持した上で,一つの案としては,その(2)として,債務者が弁済の提供をしたときは,債権者は少なくとも,前のほうに出ていた11の1の(1)の部分だと思いますが,(1)による契約の解除をすることはできないということを定める提案として維持することは,あり得ると思います。解除の要件のほうに書いたほうが分かりやすいのか,こちらにまとめるほうが分かりやすいのかという点は両論があり得るかもしれませんが,これまでの議論の流れからしますと,弁済の提供のところで,現行法の規定と並ぶ形で,解除はできないことを明記するということがあり得ると思うのですが,いかがでしょうか。 ○中井委員 同じ部分,メモの23項ですけれども,前回の山本敬三幹事の発言を受けて削除になったのかと推測しますが,今,山本敬三幹事御自身がおっしゃったように全て削除するのは私も反対で,現在の492条で足りるというよりは,それをもう少し丁寧に説明していただくほうがいいのではないか。今,おっしゃったような形で解除ができないことを明らかにしておく意義は十分あると思いますので,1項,2項という形にするかどうかはともかくとして,何らかの形で残していただくほうがよろしいかと思います。 ○筒井幹事 何人かの方から御発言いただいた趣旨はよく理解いたしました。元々,492条について若干の言葉を付け加える改正提案をお示ししていたところですので,御示唆を頂いたような方向で,改めて修正案を提示すると,その文言はどうかという議論が再び出てきてしまいます。契約の解除をすることができなくなるという規律を単に付け加えるという修正にとどめてはどうかと思いますけれども,それでよろしゅうございましょうか。では,そのような案で準備いたします。 ○三上委員 478条関係の4のところで,一つ,お願いなんですけれども,「正当な理由」について表見代理における「正当な理由」と紛らわしいうんぬんは,同じことは繰り返しませんので,(注)の表現について,書いてある趣旨は下の説明を見ても今の文言ではというようなことで,問題点がいろいろ上げられておりますので,例えば(注)の言い方を「上記イの要件について善意無過失という478条の文言を維持すべき」という表現に変えていただければ,その内容を変えるわけではなくて,表現をより判例理論を含み得るものに変えるという趣旨が出るのではないかと思います。今の書き方ですと何か要件を変えたように提案されているようなイメージを受けますので,こだわるようですけれども,ご検討をお願いします。 ○筒井幹事 検討させてください。 ○鎌田部会長 ほかに御意見はありますでしょうか。 ○三上委員 更改関係の6の「三面更改」ですけれども,前回,(4)を入れる,入れないということに関して意見を申し上げて,結局,今回も入っているわけですが,今のこの提案だと三面更改という,この一つの提案自体をこの四つの要件で設けるか,設けないかという二つの提案がなされているような印象を受けます。前回も言いましたけれども,三面更改というのは当事者間だけの特殊な契約ですので,必ずしも更改と一緒に考える必要はなくて,(4)だけを解釈に委ねるという方法もあると思います。そもそも,更改というのは「債務の消滅」のところに入っているのに,弁済にも相殺にも混同にも免除にも対抗要件は必要とされていないのに,なぜ,更改にだけ対抗要件が要るのだというのは議論があってしかるべきだと考えております。そういう意味で,名前は三面更改ですが,更改とは一種異なる取引というのもあり得るという意味で,(4)だけを外すという提案もある,解釈に委ねるという提案もあるということを是非,記載していただきたいと思います。 ○山野目幹事 三上委員の御心配はごもっともであると感じますとともに,(4)を単純に外して解釈に委ねるというのは,法的な規律としての安定性が著しく損なわれて,制度として成り立ち難いと感じます。それとは別に,私は6の(1)から(4)に注記を添えた提案で,今後,この提案を育てていったときに,最終的に(1)から(4)の規律を民法に置きつつ,特別法で様々な手当てが既になされるような見通しが立つものについては,(4)については別途の手当てを考えるという解決は十分にあり得ると感じますし,現在の御提案もそういう議論を妨げる趣旨ではなくて,今後,そういった視点も含めて幅広く議論を喚起するという趣旨なのではないかと理解しておりました。 ○松本委員 1点,分からないからお教えいただきたいんですが,更改というのは既に発生している債権には限定されなくて,将来債権の更改,すなわち将来債権の債権者の交替,債務者の交替,債務の内容の交替もありという前提で議論されているのかどうかということです。というのは,三面更改というのが決済のための制度だとすると,既発生のものについてその度に三面更改の合意をするというのはすごく煩雑だから,将来の部分について包括的な合意をするのではないかと想像するんですが,ということは,更改そのものも将来債権について自由にできるという前提なんでしょうか。 ○松尾関係官 直接のお答えになるのか分からないですけれども,6の(3)では,発生の都度,消滅させるということを事前に包括的に合意をするという規定の仕方をしています。松本委員の問題意識は発生していない債権を消滅させるという更改の合意が可能なのかという点にあるのかと推察したのですが,少なくとも債権の消滅原因であるということと両立し得る案となるためには,一度,債権は発生した上で消滅するという構成を採らざるを得ないのだろうと考えています。このような規定をほかの更改にも設けることが可能なのかどうなのかという点については,必ずしも難しいということはないと思いますけれども,ただ,実態として,将来発生する債権に関する合意が使われているのは正に三面更改の場面であろうと思いますので,ここだけで規定を設けることを提案しているということです。 ○松本委員 6の(3)の意味は,将来債権について現在において三面更改をしておけば,改めて更改の契約はしなくていいと,将来発生する債権について自動的にこういう扱いができるという趣旨ですね。 ○山野目幹事 松本委員がお考えのとおりであると考えます。 ○鎌田部会長 ほかに御意見はありますか。 ○三上委員 最後に「免除」に関してですけれども,免除による損害について確認の依頼がありましたので伺いますが,例えば債務免除すると免除益課税が発生するというときに,免除益課税は損害にはならないという,当たり前とは思うんですが,つまり,免除によって得た利益を超える損害があったときに初めて損害が認識されるのであって,例えばよく引き合いに出される出演契約で準備をしていた場合であったとしても,出演料をもらっても,なお,それで補えない損害があるときにのみ発生する,こういう理解でよろしいのかどうか,確認させていただきたいと思います。 ○鎌田部会長 どなたから。 ○筒井幹事 私が答えることかどうか分かりませんけれども,そういう理解で私は特に違和感は感じません。 ○岡委員 弁護士会でも,この表現にどきっとする人間は数多くいまして,元の案でもよくはないんですか。利益を害することはできないがクリアにはなったとは思いますが,少し刺激的すぎる感想を持ちます ○高須幹事 この前,私が質問して,もし,そうであれば免除ができないというふうに取られるおそれのある表現ではなくて,損害賠償を意味しているんだということであれば,そう書いたほうが分かりやすいと意見を言った覚えがあります。そういう意味で,今日,それに固執するつもりは全くありませんので,岡先生の御意見を踏まえていただいて,考えていただければいいと思うんですが,経緯としては多分,そういうことで今回,加わったのだろうと思いますので,御説明だけさせていただきます。 ○筒井幹事 複数の意見が出たところではありますけれども,元々,136条の期限の利益の放棄のところを参考にして,何らかの規律を設けることを検討し,より内容をクリアにしたほうがよいという議論の経緯でこのような案になっております。賛否の意見を伺う上では内容がクリアになっているのは一つのあるべき姿かなとも思いますので,できましたらこの形で進めたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○道垣内幹事 本文の議論ではありませんが,相殺の効力の発生時期につき遡及効をやめるという内容が中間試案に入らないのは残念です。 ○中田委員 質問になるかもしれませんが,111ページの「(2)法定代位者相互間の関係」のエ,保証人の一人が他の保証人に対して代位するという規律ですけれども,前回の部会資料55ではただし書が付いていまして,当該他の保証人に対して求償することができる範囲内に限るというのが入っていて,それが現在の一般的な理解によるものだという説明が付いております。これを削った理由はどういうことでしょうか。むしろ,一般的な理解ということであれば,前回の案のほうがいいような気もするんですが,お教えいただけますでしょうか。 ○松尾関係官 前と基本的な理解を変えたというわけではないのですけれども,エのただし書で規定していた部分が501条の「自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において」という規律と重複しているのではないかと,松岡委員から意見書の中で御指摘を頂いていたと理解していまして,その御意見を踏まえて削除したという次第です。 ○中田委員 分かりました。 ○中井委員 審議が6時までぎりぎり掛かるかと思ったので,私がメモで述べなかった部分がございます。番号のみ読み上げて陳述に代えておきたいと思うので,15,16,17の項目,19,20,22,24の項目です。内容に関わる点が幾つかあって,既に審議を経ているという理解はしておりますけれども,もう一度,注意喚起のために申し上げておきたいと思います。なお,そのうち20ですけれども,「債権譲渡と債務者の抗弁」のところの「異議をとどめない承諾による抗弁の切断」部分,書面によらなければならないという,この提案内容について異論が別にあるわけではございませんけれども,先般からも加納関係官を含め,個別具体的に特定して行わなければならないのではないかという指摘をさせていただいております。放棄の中身の問題ですから,提案の中身を左右するものではないとは思っておりますが,そういう問題のあることを,補足説明なりで尽くしていただきたいと,希望しておきます。 ○鎌田部会長 ほかに全体を通じて御意見は。 ○岡委員 時間が多少あるので発言します。第5の「無効及び取消し」のところで,新しい2の「無効な法律行為」の後に括弧して,取り消された場合も含むと書いてあるんですが,新しい1の「法律行為の一部無効」のほうには,この括弧書きがありません。この括弧書きがこのままだと及ばないように見えるんですけれども,1にも括弧書きは及ぶという趣旨なんでしょうか。もし,そうだとすると1のほうに括弧書きを付けたほうがいいように思いました。 ○鎌田部会長 これは,1と2の順番が入れ替わったことによるんでしょうか。表現がうまく収まるかどうかも含めて,検討させていただくということでよろしいですか。   ほかに特に御意見がないようでしたら,本日の審議はこの程度に……。 ○鎌田部会長 それでは,最後に次回の議事日程等について事務当局から説明してもらいます。 ○筒井幹事 次回は来週2月26日,火曜日,午後1時から午後6時まで,場所は本日と同じ法務省地下1階大会議室でございます。次回の議題ですけれども,部会資料59として「たたき台」の(4)(5)の改訂版を新たに配布して御議論いただこうと思います。この資料は電子メールにて本日中には皆様のお手元に届くであろうと思います。   本日,御審議の進行に御協力いただきましたお陰で,当初から第2ステージにおいては,2月末を目途に中間試案の取りまとめをすると申し上げてきましたが,それを実現することが可能なところまで来ております。私としては,その目標に従って来週の会議で,取りまとめまで審議を進めていただくことを是非,お願いしたいと思っております。議論を制限する趣旨ではないので,3月に持ち越しとなれば,それはそれで仕方がないことですし,それで議論を続ければよいとは思いますけれども,まずはできる限り,来週の取りまとめが可能となるように御協力をお願いできればと考えております。   それに当たりましては,次回会議では,新規に配布する部会資料59のほかに,本日,審議をしていただいた(注)を含む本文について必要な改訂を施したものと,次回にお配りする部会資料59のうち(注)を含む本文のみを抜き出したもの,それを「中間試案(案)」という標題の部会資料60として,遅くとも席上配布するようにしたいと思います。   次回につきましては部会資料59に基づいて,たたき台(4)(5)の改訂版についての御議論をしていただくとともに,そこでの修正の有無について,できる限り,その場で確認をしながら進めるようにした上で,最終的に慣例によりまして,部会長にその日の議事内容に基づく修正を御一任いただく形で,併せてお配りいたします中間試案(案)についての御了解を頂くという段取りを目指して,審議をしていただきたいと考えております。御協力をどうぞよろしくお願いいたします。 ○中井委員 今,筒井幹事から,今日の取りまとめと次回の審議の考え方については御説明いただき,理解を致しました。ただ,弁護士会も若干懸念をしておりますのは,今の話からすれば,今日,審議した結果については速やかにそれを反映させた修正版が次回,来週までに出る,若しくは当日に出るということなので,今日の審議の結果がどの程度,反映されているか,また,それに対するコメントもできるかと思います。それが来週中には間に合わないとすれば,弁護士会としては,是非,その修正版を見た上で部会決定をしていただきたいと考えていたものですから,それに対してしかるべき対応をしていただけると,理解を致しました。   それであっても来週26日に審議されるものについては,当日審議をして,その反映版を見ないで,場合によっては部会長一任という御提案があったと理解いたしますが,その点についてはできれば修正版を原則としては見たい,見た上で,部会決定をするのが筋ではないかと,事前の弁護士会での協議では,そういう方向性の意見が強く出ております。そういう意見が強いこと,弁護士会内部にあることを念頭に置いて,次回の審議を進めていただけないかでしょうか。要望として申し上げておきます。 ○鎌田部会長 できる限り,次回の審議の中で修正内容も確定していくということを目指したいと思っていますけれども,場合によっては修正内容が広範であったり,あるいは非常に重要であるので,出来上がりの姿をもう一度,確認する機会を設けなければいけないというようなことも出てくるかもしれません。その場合には,それに対してどのように対応するのが適切かということについて,また,協議をさせていただければと思っております。そういうことでよろしいですね。ほかに。 ○岡委員 3月,4月に予備日を入れろと言われて入れておるのを,それから解放してあげようというお気持ちは有り難いんですが,量も多く,消化不良になっているという不安がございますので,3月12日の予備日は覚悟しておりますので,できたら,3月12日に最終的に決めるという方向でやっていただきたいと個人的には思っております。 ○鎌田部会長 早目に内容を確定させて,できるだけ,事実上,パブリックコメントのための準備をしていただく時間を長く取れるようにしたいということが,我々としては優先的に考えていたことでございますので,その辺との兼ね合いも含めて少し考えさせていただければと思いますが。 ○中井委員 鎌田部会長から,早く確定することによって,パブコメ開始までの時間を少しでも取ることに意義があるのではないかという御意見かと思います。その考え方も十分理解できるところではありますが,たたき台(1)から(5)が既に出ており,今回,その改訂版が出ております。日弁連の具体的な準備というならば,既にたたき台(1)のところから各単位会に全て配布をして,そこからの意見聴取を始めることにより,中間試案に対するパブリックコメント対応しております。そういうことからいえば,既に始めさせていただいていると御理解いただきたいと思います。その上で,中間試案として確定するものについてはむしろ慎重さを求めたいというのが先ほどの私の意見であり,岡委員の意見です。その両立の問題ではありますけれども,消化不良のまま,まとめたものよりはもう一度,慎重に見た上で確定したもののほうがよろしいのではないかというのが弁護士会の現段階での意見ですので,重ねて申し上げておきたいと思います。 ○筒井幹事 ありがとうございます。決して拙速に進めようとしているわけではございません。必要な審議時間を十分に掛けて,しかし,2月末という目標を掲げてここまで取り組んできたので,私としてはできることなら目標を達成したいという希望を持っているとお伝えしたにとどまっております。次回の会議結果を適切に反映させることが実質的に一番大事なのだろうと思います。その方策であればいろいろ工夫の余地もあり得るので,そういった方策も含めて来週までよく考えて,その上で当日の審議の中で最終的にお決めいただくといった段取りを考えてはどうかと思います。少なくともそれが可能となる準備だけは整えて会議に臨もうと考えておりますので,よろしく御協力いただきたいと思います。 ○岡崎幹事 中井委員,岡委員の御発言がありましたので,私も一言と思いますけれども,せっかく,ここまで充実した審議をしていただいて,あと,2週間掛ければ部会の委員・幹事がそれなりに得心のいく中間試案になるというのであれば,最終版ができるまで2週間待って,皆さんが納得いくような進め方をしていただくように御配慮を頂ければとも思います。 ○鎌田部会長 2週間掛けて何をやるかということとも関連をしますので,次回,どの程度の修正提案が出てくるかということも考慮に入れないと何とも言えないところだとも思いますし,日弁連は大変周到に御用意していただいていますけれども,関連団体が非常に多くて,その中には中間試案が確定してから本格的に検討を,と考えているところもないわけではないので,その辺,総合的に考えて事務当局と相談をさせていただければと思いますので,よろしくお願いします。 ○松本委員 審議の時間と中間試案の検討期間をなるべく長く取ったほうがいいというのは,正にそのとおりだと思うんです。私は中間試案の検討期間をどれぐらい取られる予定なのかという点がよく分からないのですが,むしろ,そこをたっぷり取っていただくのがいいのではないかと思っています。特に研究者の場合はきちんと研究して論文を書こうと思うと,半年ぐらいはないと駄目なのではないかと思うんですね。本格的な論文できちんと各論点をみんなに書いてもらおうと思うと。それぐらいのゆとりを持って百年に一度の大改正ですから,臨んでいただきたいと思います。 ○鎌田部会長 その点も考慮させていただきます。   ほかに特に御発言がないようでしたら,本日の審議はこれで終了とさせていただきます。   本日も長時間にわたりまして,熱心な御議論を賜りまして誠にありがとうございました。 -了-