法制審議会 第170回会議 議事録 第1 日 時  平成25年10月15日(火)   自 午後1時57分                          至 午後3時01分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題   1 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部改正に関する諮問第97号 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○松本司法法制課長 ただいまから法制審議会第170回会議を開催いたします。   本日は,委員20名のうち15名に御出席いただいておりますので,法制審議会令第7条に定められました定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   本日は公務のため,谷垣法務大臣を始め政務三役が当会議に出席できませんので,大臣から託されております挨拶を西川克行事務次官が代読いたします。よろしくお願いします。 ○西川事務次官 事務次官の西川でございます。谷垣法務大臣,それから副大臣,政務官とも現在衆議院の本会議に出席しておりますので,私から谷垣法務大臣の挨拶を代読させていただきます。   法制審議会第170回会議の開催に当たり,一言,御挨拶を申し上げます。委員及び幹事の皆様方におかれては,御多用中のところ本会議に御出席いただき,誠にありがとうございます。また,この機会に法制審議会の運営に関する皆様方の日頃の御協力に対し,厚く御礼申し上げます。   さて,本日は一つの議題について御審議をお願いしたいと存じます。議題は新たに御検討をお願いするもので,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部改正に関する諮問第97号についてでございます。法務省では,同法律附則第9条において,「法律の施行後3年を経過した場合において,この法律の施行の状況について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて,所要の措置を講ずる」とされていることなどから,平成21年9月,有識者からなる「裁判員制度に関する検討会」を設け,検討を加えていただいたところ,平成25年6月,同検討会において,長期間の審判を要する事件を裁判員裁判対象事件から除外することができる制度を導入すべきなどとする取りまとめがなされました。   法務省におきましては,同検討会の取りまとめ結果等を踏まえ,要綱(骨子)記載の事項についての法整備を行う必要があるとの考えに至りましたので,そのための法制審議会の御審議をお願いするものでございます。   それでは,この議題についての御審議をよろしくお願いします。    (事務次官の退出後,委員の異動紹介があり,引き続き,本日の議題につき次のように審議が進められた。) ○伊藤会長 それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   先ほどの法務大臣の挨拶にもございましたように,本日の議題は一つでございますが,その議題であります,新たな諮問事項「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部改正に関する諮問第97号」の御審議をお願いしたいと存じます。   初めに事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○東山参事官 刑事局で参事官をしております東山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   それでは,諮問を朗読させていただきます。   諮問第97号。   裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の施行の状況に鑑み,裁判員の参加する刑事裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるようにするため,早急に法整備を行う必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。   別紙 要綱(骨子)。   第一 長期間の審判を要する事件等の対象事件からの除外。    一 地方裁判所は,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「法」という。)第二条第一項各号に掲げる事件について,次の1又は2のいずれかに該当するときは,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で,これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならないものとすること。     1 公判前整理手続における当該事件の争点及び証拠の整理の経過又は結果により,審判に要すると見込まれる期間が著しく長期にわたること又は裁判員が出頭しなければならないと見込まれる公判期日若しくは公判準備が著しく多数に上ることから,法第二条第二項に規定する員数の裁判員及び必要な員数の補充裁判員を選任することが困難な状況にあるとき。     2 法第二条第一項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じた場合において,審理の経過により,その後の審判に要すると見込まれる期間が著しく長期にわたること又はその期間中に裁判員が出頭しなければならないと見込まれる公判期日若しくは公判準備が著しく多数に上ることから,不足する員数の裁判員を選任すること又は新たに必要と認める員数の補充裁判員を選任することが困難であるとき。    二 一の決定又は一の請求を却下する決定は,合議体でしなければならないものとすること。ただし,当該法第二条第一項各号に掲げる事件の審判に関与している裁判官は,その決定に関与することはできないものとすること。    三 一の決定又は一の請求を却下する決定をするには,最高裁判所規則で定めるところにより,あらかじめ,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならないものとすること。    四 一の決定又は一の請求を却下する決定をするには,あらかじめ,当該法第二条第一項各号に掲げる事件の係属する裁判所の裁判長の意見を聴かなければならないものとすること。    五 刑事訴訟法第四十三条第三項及び第四項並びに第四十四条第一項の規定は,一の決定及び一の請求を却下する決定について準用するものとすること。    六 一の決定又は一の請求を却下する決定に対しては,即時抗告をすることができるものとすること。この場合においては,即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用するものとすること。   第二 重大な災害時における裁判員となることについての辞退事由の追加。  法第十六条第八号の裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として法第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者として,裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる事由に,「重大な災害により生活基盤に著しい被害を受け,自らその再建のための措置を講ずる必要があること。」を加えるものとすること。   第三 非常災害時において呼び出すべき裁判員候補者等から除外する措置の追加。  裁判所は,法第二十七条第一項又は第九十七条第二項の規定にかかわらず,裁判員候補者又は選任予定裁判員を裁判員等選任手続の期日に呼び出すに当たり,著しく異常かつ激甚な非常災害により,交通が途絶し若しくは遮断され又は郵便物の取集,運送若しくは配達が極めて困難である地域に住所を有する者については,法第二十七条第一項又は第九十七条第二項の呼出しをしない措置を採ることができるものとすること。   第四 裁判員等選任手続における被害者を特定させることとなる事項の取扱い。    一 裁判官,検察官,被告人及び弁護人は,刑事訴訟法第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があった事件の裁判員等選任手続においては,裁判員候補者に対し,正当な理由がなく,被害者の氏名,住所その他の被害者を特定させることとなる事項を明らかにしてはならないものとすること。    二 裁判員候補者又は裁判員候補者であった者は,一の事件の裁判員等選任手続において知った被害者の氏名,住所その他の被害者を特定させることとなる事項を公にしてはならないものとすること。   以上です。 ○伊藤会長 ありがとうございました。   続きまして,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由のほか,配布資料につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○稲田幹事 それでは,諮問第97号につきまして,提案に至りました経緯及び諮問の内容などにつきまして,御説明を申し上げます。   裁判員の参加する刑事裁判に関する法律附則第9条におきましては,「政府は,この法律の施行後3年を経過した場合において,この法律の施行の状況について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて,裁判員の参加する刑事裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるよう,所要の措置を講ずるものとする。」とされていることから,法務省におきましては,平成21年9月,法曹三者,刑事法研究者,その他の一般有識者からなる「裁判員制度に関する検討会」を設け,裁判員法の施行状況やそれを踏まえた措置の要否などにつきまして検討を加え,平成25年6月の第18回検討会におきまして,その検討結果が取りまとめられたところでございます。   この検討会におきましては,法改正を要する事項として,公判審理の期間が極めて長期に及ぶ事案につき,例外的に裁判官のみによる裁判を実施することができることとする制度を導入すべきであるとの意見,甚大な災害などによって,一定の候補者が辞退の申出をすればこれが許可されることがおよそ明らかであるものの,その申出自体が著しく困難である場合に,裁判所が例外的にそのような候補者に呼出しをしないことを可能にする規定を設け,また,非常事態にあるが故に出頭が困難であるとの辞退事由を新しく設けるべきとの意見,裁判員等選任手続における被害者のプライバシー等の保護を通じてその負担への配慮を図るために,裁判員等選任手続における被害者に対する配慮義務を定めるような規定を設けることが望ましいとの意見が大勢を占めました。   法務省におきましては,この検討会での取りまとめ結果などを踏まえ,裁判員制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるようにするため,所要の法整備を行う必要があると考え,今回の諮問に及んだものであります。   次に,諮問の内容について御説明いたします。   初めに,要綱(骨子)第一の「長期間の審判を要する事件等の対象事件からの除外」についてであります。裁判員制度の趣旨は,仕事や家庭を持つ一般の国民が幅広く裁判に参加することで,その感覚が裁判内容により反映され,司法に対する国民の理解が増進し,その信頼の向上が図られることにあります。その趣旨からすれば,現行の裁判員裁判対象事件につきましては,できる限り裁判員の参加する合議体で取り扱われることが望ましいこととなります。しかしながら,審判に要する期間が著しく長期にわたる事案などにおきましては,裁判員の負担が過重となる事態が生じ得ますが,そのような事態はできる限り避けるべきでありますし,審判に要する期間が著しく長期にわたるなどした結果として,仕事や家庭を持つ一般の国民が幅広く裁判員となることが困難となれば,裁判員制度の趣旨にももとることとなります。加えて,審判に要する期間が著しく長期にわたるような事案におきましては,裁判員候補者の辞退が相次ぐなどして,裁判員等の選任が困難な状況に陥るような場合などが生じ得ますが,そうなると,迅速な裁判を受けるべき被告人の利益を不当に損なうことにもなりかねません。そのような場合にまで,あえて裁判員の参加する合議体による審判を行おうとすることは,かえって裁判員制度の趣旨に反するとともに,刑事訴訟法の目的からしても問題が大きいといえます。   そこで,審判に要する期間が著しく長期にわたるような場合には,裁判員の参加する合議体ではなく,裁判官のみの合議体で審判を行うことを可能とする規定を置くこととするものであります。   次に,要綱(骨子)第二の「重大な災害時における裁判員となることについての辞退事由の追加」についてです。このたびの東日本大震災の経験などに鑑みれば,重大な災害により生活基盤に著しい被害を受け,自らその再建のための措置を講ずる必要がある方々につきましては,裁判員となることについて辞退が認められるのが相当であると考えられます。   しかし,現行法には,これを明確な辞退事由とした規定は存在していません。そこで,重大な災害により生活基盤に著しい被害を受け,自らその再建のための措置を講ずる必要がある裁判員候補者につきましては,これが辞退事由に該当することを明確に規定しようとするものであります。   次に,要綱(骨子)第三の「非常災害時において呼び出すべき裁判員候補者等から除外する措置の追加」についてです。現行法では,裁判員候補者又は選任予定裁判員については,裁判員等選任手続の期日に呼び出すことが原則とされておりますが,極めて重大な災害の被害を受け,交通が途絶するなどした地域に住所を有する裁判員候補者又は選任予定裁判員の方々については,裁判員の職務を行い又は裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難であることが明らかであるといえます。そして,仮にこれらの方々が辞退の申立てをした場合には,これが認められることも明らかでありますが,交通が途絶するなどした状況においては,そもそも辞退の申立てを行うこと自体が困難であるのが通常であると思われます。そのような方々に対して,過料の制裁を伴う出頭の法的義務を生じさせる呼出しの措置を講じることには問題があり,被災者に対して過度の負担を強いるものであって,相当ではありません。そこで,著しく異常かつ激甚な非常災害によって交通が途絶するなどした地域に住所を有する裁判員候補者等に対しては,一律に呼出しをしない措置を講じることができる規定を置くこととするものであります。   最後に,要綱(骨子)第四の「裁判員等選任手続における被害者を特定させることとなる事項の取扱い」についてです。現行法上,裁判員等選任手続におきましては,裁判員候補者が不適格事由に該当しないかなどの判断をするために,裁判員候補者に対して被害者の氏名などを明らかにせざるを得ない場合があります。しかしながら,そのような正当な理由がないのに,被害者の氏名などが裁判員候補者に明らかにされてしまうことは,被害者のプライバシー等の保護の観点からは,可能な限り避けるべきであります。この点,刑事訴訟法に規定されている被害者特定事項の秘匿決定の効果は裁判員等選任手続には及ばないため,被害者特定事項の秘匿決定がなされるような被害者のプライバシー等の保護の要請が一般に高いといえる事件についても,現行法上,裁判員等選任手続に関しては,その保護を図るための法的根拠に欠ける状況にあります。そこで,要綱(骨子)第四の一において,被害者特定事項の秘匿決定がなされた事件について,裁判官や検察官等は,裁判員候補者に対し,正当な理由がなく,被害者を特定させることとなる事項を明らかにしてはならない旨の規定を設けることとするものであります。また,そのような規定を設けたとしても,正当な理由が認められるなどして,被害者の氏名などが裁判員候補者に伝えられる場合があり得ます。しかし,裁判員又は補充裁判員に選任されなかった裁判員候補者については,現行法上,いわゆる守秘義務は課せられておりませんが,裁判員候補者又は裁判員候補者であった者が裁判員等選任手続で知った被害者の氏名などを公にするなどということがあれば,当該被害者のプライバシー等の保護の関係から大きな問題が生じるといわざるを得ません。そこで,そのような場合についても,被害者のプライバシー等の保護を十全なものにするため,要綱(骨子)第四の二において,裁判員候補者又は裁判員候補者であった者は,被害者特定事項の秘匿決定があった事件の裁判員等選任手続で知った被害者を特定させることとなる事項を公にしてはならない旨の規定を設けることとするものであります。   要綱(骨子)の概要は以上のとおりです。十分御審議の上,できる限り速やかに御意見を賜りますようお願いいたします。 ○東山参事官 引き続きまして,本日の配布資料の説明をさせていただきます。   まず,番号1でありますが,これは先ほど私が朗読いたしました諮問第97号であります。続きまして,番号2は,事務当局において作成した資料であります。平成21年9月から本年6月まで,18回にわたり開催されました「裁判員制度に関する検討会」において取りまとめられた報告書の概要をまとめたものです。続きまして,番号3ですが,こちらは裁判員裁判対象事件の起訴件数を,地検別,罪名別に集計したものであります。番号4は,審理期間が比較的長期に及んだ裁判員裁判対象事件の概要を取りまとめたものであります。最後の番号5ですが,こちらは諮問第97号に関連いたします,裁判員法及び刑事訴訟法などの条文の抜粋であります。   以上,簡単でございますが,配布資料の説明をさせていただきました。 ○伊藤会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま説明がございました諮問第97号につきまして,御質問,御意見がございましたら,お願いしたいと存じます。 ○古賀委員 時間の関係もございますので,お手元に私の意見についてはお届けをしていると思います。全般的に今回の3点の諮問事項というのは,いずれも裁判員制度のより良い運用と定着のために行われていると判断をいたしております。ただ,国民の権利行使が安易に制限されないよう,当然のことですけれども,配慮が必要であろうという点から,法改正を要する事項のまず第1点について,対象事件からの除外についても現在までの実態をきちっと認識しながら,厳格な書きぶりにする必要があるということ,あるいは,起訴すべき罪を絞るなど,長期間の審判とならないような工夫をした上でなお,国民参加が困難かどうかを判断すべきであることを要望として書かせていただきました。   加えまして,第2点については,先ほど言いましたように,原則として候補者の辞退,すなわち権利放棄の問題として考える観点からの改正が必要であると思っております。   せっかくの機会ですので,その他の件につきましても,3点,裁判員制度の国民への定着の促進並びに裁判員候補者の辞退率についての現行からの考察,そして,最後に守秘義務の範囲についても要望を書かせていただいておりますので,是非御参考にしていただければ有り難いと思います。 ○伊藤会長 ありがとうございました。ただいまの古賀委員の御意見,当審議会の本件諮問事項に関する御意見のほかに裁判員制度の運用面に関する内容も含んでいるものと存じますが,今の時点で何か事務当局から御発言がありますでしょうか。 ○稲田幹事 幹事の稲田でございます。   まず,法改正に関する事項についての御意見は,正にこれから御議論をいただきたいと思っているところでございまして,その中で御検討いただきたいと思います。   さらに,その他の事項につきましては,私どもも裁判員制度の運用に責任を持つ機関でございますし,また,この場にはほかにも法曹三者の委員の方もいらっしゃいます。それぞれの部門において,御指摘の点を踏まえて,今後,裁判員制度がより司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することになるように努力をしていくものと考えていますし,私どもといたしましても,そのように努力をしていきたいと思っております。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。 ○古賀委員 ありがとうございます。 ○能見委員 私は民法が専門であり,門外漢ではありますけれども,一言感想を申し上げたいと思います。この裁判員の参加する裁判というものは,陪審とは恐らく違うのかもしれませんけれども,ある種,国民の権利,被告人が陪審裁判を受ける権利というような観点から制度が作られている国などがあると思いますけれども,この裁判員裁判に関する制度も,この第2条に書いてあるような事件について,被告人が裁判員の参加する裁判を受ける権利があるというような考え方がとられているのか,とられていないのか,私は門外漢ですから,分かりませんけれども,そういう観点から今回の改正などをどう考えたらいいかということを見る必要があるのではないかと思いました。仮にある種の権利があるんだと,法律の条文上はそういうことは書いてありませんけれども,公正な刑事手続を保障するための制度でありますと,被告人がこういう裁判,裁判員の参加する刑事裁判を受けたいというような希望を持っているときに,今回の要綱では被告人の意見を聴かなければならないとは書いてありますけれども,できるだけその希望が尊重される必要があるのではないかと思いました。そういう意味で,別にこの制度に反対とかいうことではありませんけれども,今のような,裁判員が参加する裁判についての基本的な考え方,それとの関係でこの長期の審理を要するという理由でもって,これが受けられなくなる場合があるということについて,どう考えたらいいかということについて,考え方を聞かせていただければと思います。 ○伊藤会長 能見委員の御発言,正に本件諮問事項に関係するものと思いますが,今の段階で事務当局から何か御発言ございますか。 ○稲田幹事 裁判員制度が導入された際の考え方についてだけ,私の方から御説明を申し上げたいと思います。裁判員制度は,広く国民の司法参加を求めるという制度趣旨によって導入されたものでございまして,裁判員候補者は,辞退事由が認められない限り,裁判員の職に就くことを拒むことができないという意味では,裁判員となるということは,これは法律上の義務とされているところでございます。これに対しまして,裁判員は衆議院議員の選挙権を有する者の中から,裁判員法の定める手続に従って,無作為に選任されるものであることなどからいたしますと,裁判員になることが明示的に法律上の権利として保障されているとはいえないと考えられているところでございまして,そういう意味で,裁判員になることが法律上の権利として保障されているかということについては,私どもとしては,必ずしもそうではないと考えているところでございます。 ○能見委員 今お答えいただいた点もお聞きしたかったのですけれども,私の今の質問の趣旨は,被告人の立場から見て,こういう裁判員制度を受ける権利のようなものがあるのかどうかということでございます。 ○稲田幹事 すみません,ちょっと私,今,誤解しておりましたが,被告人の立場というものにつきましても,それは同じことでございまして,最初に申し上げましたように,裁判員制度というのは,飽くまで司法の在り方に関する制度を定めたものと理解しておりまして,そういう意味では被告人の方に裁判員裁判を受ける権利があるとは考えておりません。その一つの現れといたしましては,裁判員制度によって裁判を受けることを拒む権利があるかというと,それもない,これは明示的にないわけでございます。そういう意味ではやはり権利性はなかなか認め難いのではないかと思っております。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。本諮問事項について,どのような審議の仕方をするかにかかわらず,本諮問事項に関します重要な御発言と理解させていただきます。   ほかにいかがでしょう。 ○佐々木委員 これから審議をしていく上で,是非こんな視点でも考えていただけないかというのが,やはり裁判員制度に参加する国民の参加できる可能性を増やすということなんですね。今までこの裁判員制度は,想定以上にという表現がいいのかどうか分かりませんが,想像以上にうまく機能してきて,専門家の方々に御意見を伺っても,大変うまく機能していますということでございますし,資料も拝見いたしましたけれども,100日間に及ぶ裁判においても,国民が一人残らず参加されて,この裁判員裁判が全うできたということも御報告いただいております。ですので,この著しく長期というのがどのぐらいに当たるのかということを明確にしていかないと,例えば今後,90日の裁判が予定されていたときに,5人しかいないと。だけれども,これは著しく長期ということは,6人目を探しているがちょっと時間が掛かりそうだから,これは著しく長期ということでなくしてもいいのではないかみたいなことになってしまうと,本末転倒になってしまうので,100日ができたということは,100日以下は含まれないのかも含めて,これは今,別に御回答いただく必要はないのですけれども,そして,あえていろいろな事情があって,数字を書いていないのだとも察しますけれども,だからこそ曖昧になってしまう。この著しく長期というのが一体何なのかというのは,もう少し議論をしていただけるとうれしいなと思っております。   それから,もう一つ,2点目なんですが,要綱(骨子)の第一に関してですけれども,この著しく長期であった場合に,6人の裁判員を選ぶことが困難であった場合に,仮にゼロになるという,そういうことを認めるものだと思うんですが,いろいろなケースがあるのかなと想像いたします。例えば,初めは6人プラス補欠の6人がいらっしゃって,一人,二人,仮に欠けていって,最後に何か80日目になったら,5人になってしまったと。例えばそういうときに5人の人たちも,6人欠けたし,著しく長期で,これはうまくいかないので駄目ですよと言って,なくなってしまうというのではもったいないですし,あるいは初めから200日という裁判が想定されていて,5人の方は見付かったけれども,どうしても6人目がやはり見付からないというときに,この5人の人は,やりますと,コミットメントを表現しているにもかかわらず,参加することができないということにもなるのかなと読んでおりました。   ですから,例えば1人から5人になった場合も,それが今の法制度の裁判員制度には成り立たないのかもしれないのですけれども,例えば国民アドバイザーみたいな違う名前で,参加の意思があるならば,1人から5人の場合も裁判に立ち会ったり,考えたり,同じルールにのっとって,参加ができて,裁判官の方々に対してもコメントができるというようなこともあり得るのではないか。これは全く皆様,法学の専門の方からすると,随分素人の発想だと思われるかもしれませんけれども,国民の参加という視点で考えると,著しく長期の場合だからといっていきなりゼロというのは,ちょっと私からすると不自然な感じがするのです。是非そんな目線も今後の審議に加えていただいて,5人以下の場合にどういった参加があり得るのかということを御議論いただけたら有り難いと思います。 ○伊藤会長 佐々木委員の御発言も,正に本件諮問事項に関わるものと存じますが,何か事務当局から諮問の趣旨に関連して,今の段階で御説明いただくことはございますか。 ○稲田幹事 ただいま頂きました御意見につきましても,今後更に御審議を深めていただく際に考えていきたいと思っているところでございますし,御検討いただきたいと思います。 ○松尾関係官 御審議の最初に,まず能見委員からこの裁判員裁判をすることについて,それは被告人の権利かという御趣旨の発言がありました。この点について,私は制度を構築する審議会の初期の段階にほんの少しばかり関与しただけでありますが,そのときの考え方としては,被告人の権利ということは考えておりませんでした。この陪審裁判を受けるのが被告人の権利であるという考え方は,アメリカ合衆国において非常に強く,連邦の憲法等に書き込まれているわけですが,これはアメリカという国の建国の事情にもよるもので,イギリスが,植民地であったアメリカに対して,陪審裁判をする権利を剥奪しようとしたということが独立戦争に至る一つの原因であったと指摘されております。そのようなことの反映として,アメリカでは刑事裁判で被告人が陪審裁判を受ける権利ということを非常に強調しているわけでありますが,それは日本には必ずしも当てはまらない,のみならず,被告人の権利という観点を入れますと,被告人はそれを辞退できるのではないかという疑問を生じ,その点が現実の問題となってまいります。   大正陪審法の際の経験として,被告人に陪審裁判を辞退できるという明文を置きましたところ,被告人は次から次に,その辞退の権限を行使して,結局,陪審裁判は年間数件しか行われないというような惨状を呈したのがかつての歴史の教える経験でありましたので,今回の裁判員制度の立案に際しましては,これは被告人の権利として認めるのではない,国の立場で,あるいは国民の立場で刑事裁判をより良くするためのものであるという認識を徹底していたつもりであります。先ほど古賀委員の御発言の中には,国民の権利というお話があったと思いますけれども,その立場に立った立案だったつもりでございます。もっとも,権利だ,義務だということを詰めていきますと,いろいろ問題が出てまいりますが,広やかな意味で日本刑事裁判をより良くするための制度である。被告人の権利として立案したものではないということは申し上げられると思います。 ○伊藤会長 ありがとうございました。 ○佐久間委員 今回の諮問のベースとなった「裁判員制度に関する検討会」の取りまとめ報告書については,先ほど概要を御紹介頂きましたが,総論として,裁判員制度の運用状況はおおむね順調であるという評価につきましては,多くの裁判員が属したであろうビジネスの人間としても,同様の感想を持っております。制度開始以前は,裁判員制度に絡む実務上の問題が何か起こるのではないかと想定していたのですが,私の知る限りでは,現時点では特段の問題は起きていないというのが実態でございまして,総論部分の評価は同感でございます。   その観点で,今回,裁判員制度が順調であるという認識に立って,法改正を要する事項として諮問された事項がこれらの3点ということでございますので,逆に言えば,それ以外の事項については,検討会では特に指摘されなかったという理解でよろしいでしょうか。 ○伊藤会長 この点は事務当局より説明をお願いします。 ○稲田幹事 検討会の結果につきましては,公表もさせていただいているところでございますが,そこで述べているとおりでございまして,法改正という観点から,取りまとめられたのは,今,委員御指摘のありました3点だけでございました。そのほかにも運用面などにつきましては様々な御意見を頂戴しているところでございまして,今後,関係するところにおいて,運用のさらなる改善に向けた努力をしていくようにしていきたいと考えているところでございます。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。   ほかにいかがでしょうか。 ○岩間委員 私も皆さんが御発言なさっている点については,少し気掛かりがあります。裁判員裁判を外すという決定する際の手続に関して,客観的な条件と適正な手続が導入されるように,十分審議を尽くしていただきたいと思います。この要綱を見ます限り,地方裁判所は,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により,又は職権でと書いてありますが,本来,国民が主体となって運営する裁判員裁判ですから,それを取りやめるという決定にも,やはり裁判員が関わるような形が望ましいのではないかと,私は素人考えですけれども,思います。これはやはり裁判所側だけというのではなくて,何らかの形でそれを外すというのであっても,やはりそこに裁判員が関わるような形のほうが望ましいのではないかなという気が私はいたしました。 ○伊藤会長 分かりました。ありがとうございます。 ○初宿委員 もう既に議論があったところですので,繰り返しの意見ですけれども,私もやはりこの裁判員については先ほどの古賀委員の冒頭の総論のところで,国民意識に基づく国民の権利というような言い方をしていますが,それはやはりちょっと制度の元々の趣旨とは違うんだろうということで,先ほど松尾先生がおっしゃったふうに私自身も考えております。やはりこの制度はこれまでの,司法が国民から遠いというようなイメージがあったということから,できるだけ国民の参加を通じて,裁判が国民に近い制度というか,そういうことにしようという趣旨だったと思うのです。ですからやはり国民の権利というような,そういう制度の趣旨ではなかったのではないかと私も思います。   それから,これも先ほどから出ている意見ですけれども,権利放棄という形で捉えるというのは,私もちょっとどうかなという気がします。ただし,もし自分が選ばれたら,裁判員になってみりたいと思っていらっしゃる方が,事情で参加ができなくなるわけですから,今,岩間委員からもおっしゃったように,そういう参加したいと思っている人の意向が一方的にというか不必要に裁判官なりの側から否定されてしまうようなことがないような仕組みを実際どうするのか分かりませんけれども,その手続をやはりきちんと定めていくべきではないかと考えます。   それから,これも先ほども出てきた意見ですけれども,「著しく長期」というのは,どのぐらいのことをイメージされているのか。これは事案によっても違うのでしょうが,この辺がやはりやや抽象的な言い回しなので,具体的な制度を作られるというか,改正されるときには,この辺をもう少し詰めていただきたいなという点は,私もほかの委員と同じ意見でございます。 ○山﨑委員 ただいまの御意見に関連して,私も諮問事項の要綱骨子第一の長期間の審判を要する事件等の対象事件からの除外という点について,要望を述べたいと思っております。これは通例ですと,部会が設けられて,審議される運びになるんだと思いますが,そのときの検討方法に関して若干述べたいと思います。冒頭,稲田幹事が言及されました「裁判員制度に関する検討会」で,この事項が対象になって議論されているということで,関心を持って見ておりました。その結果,検討会の取りまとめ報告書というのが出まして,本日の資料は,その本当のエッセンスだけ抜き出しておられますが,その報告書の全体を拝見しますと,「検討のまとめ」として,こういった長期の事案は,例外的に裁判官のみによる裁判を実施することができることとする制度について,これを導入すべきであるとの意見が多数を占めたという結論になっておりまして,それを受けて,今回の諮問に至ったということは,非常によく理解できるわけです。ただ,その報告書の「検討状況」の部分を拝見しますと,実に様々な意見が記載されておりまして,これは多角的に検討がされたということはよく分かるわけですが,その検討の結果として,どのような観点からこうした除外制度を設けるのか,あるいは長期間の審理を要するとして除外すべき事件として,どのような事件を想定するのかといった点について,こういう記載からは,大方の共通理解が形成されているのかどうかよく分からないという感じがいたします。   それから,「検討のまとめ」の部分を拝見いたしましても,これまで裁判員裁判が実施された長期間審理事案のような場合まで,例外的に裁判官のみによる裁判を実施することができることとすべきであるとの意見は特に見られなかったという記載がされているだけでありまして,極めて長期間に及ぶ事案とは,どういう事案をいうのかということについては,積極的な言及はございませんので,その点からもどうも一致した意見,あるいは共通のイメージといったものが浮かんでこないというのが率直な感想でございます。  もちろんこれは飽くまでも例外的な措置と位置付けられておりまして,極めてまれにしか起こらないことであろうと思いますが,そうでありましても,立法過程において対象事件の範囲,あるいはその判断基準について議論が十分に煮詰まっていないということで,共通理解のないままで法文化されますと,いざそれが現実化したときに,裁判官が法律の適用の可否について,迷ったり,困ったりすることにならないんだろうか,ひいては,この除外制度の適正な運用を期し難いのではないかという,そういう心配もちょっと出てまいりますので,そうした事態は極力避けていただきたいと思う次第であります。   今回の要綱(骨子)を拝見しますと,具体的なものとして作られておりまして,それは一定の法文のイメージを持って作成されているのだろうと思いますが,今後,検討していただくに当たりましては,その今示されております要綱(骨子)の具体的な検討に先立って,先ほど申し述べました除外対象となる事件の範囲をどのように考えるのか,あるいはその除外対象事件に該当するか否かの判断基準は何かといった点について,十分議論を詰めていただいて,関係者の間で共通理解を形成していただきたいと思っております。その上で,そのことを明確な法文として書き表わすとどうなるかという検討に進んでいっていただくように希望いたしたいと思います。 ○伊藤会長 ありがとうございました。 ○川副委員 議論が白熱しておりまして,時間の足りないところ機会を頂き恐縮でございます。短かく要点を申し上げます。   今の御議論と関連するわけですけれども,検討会の取りまとめによりますと,公判の期間が著しく長期あるいは回数が著しく多数回の場合に除外するという結論になったわけですけれども,今回の要綱(骨子)を拝見しますと,前段の著しく長期又は多数に上るというだけではなく,その後に,このことから,裁判員若しくは補充裁判員を選任することが困難な状況ということが追加されている。このように二つの要件が定められています。したがって,ここは少し検討会と違った書きぶりになっている。そうすると,恐らくこれから部会で御議論される際に,この二つの要件がどう関連するのか。長期又は多数回にわたるということから,すなわち裁判員の選任が困難と認めるのかどうなのか,あるいは,そこからもう一つ何らかの手続を持った上で,選任が困難という手続をそこに入れるのか入れないのか,それは先ほどの裁判員の意見を聞いてくださいという岩間委員のお話もありましたけれども,そこらの手続的なものももう少し詰める必要があるのではないかということを,今の御議論を聞きながら考えました。   そういう意味では,この条文を具体的な実務で動かしていくときに,めったにないことではあるにせよ,この二つの要件をどう関連させていくのかという,手続的な観点も部会のほうでは是非御議論をしていただきたいと思います。 ○白田委員 お時間を頂戴しましてありがとうございます。白田でございます。   何度か御意見が出されたこととほぼ同じことでございますけれども。長期にわたるということが予測に基づいて事前に,これは長期にわたるであろと想定するというのと,実際に今まで経験してきた結果,長期にわたり,補充が難しかったという過去の事案とはちょっと同じではないのではないかなと思うのです。ですから,このような規定を設けて,先ほど山﨑委員からも指摘ありましたが,裁判員裁判の対象外とすることと,どの程度の期間を対象とするかというのは,また別のことではないかと。さらに,それを予測する期間を定めたとして,では誰が予測をするのかということになってしまいます。つまり結果裁判が長期にわたった,若しくは補充が難しかったことにより,それ以上継続できなかったことがこれまであったとしても,だから事前に除外してしまう,若しくは,特定の事案については,全ての案件について期間を予測し,それらを除外してしまえば,非常に難しい問題が後で起こるのではないかなと思います。つまり,誰がそれを判断して,事前に,これは長期にわたるであろうと決めるか,またその責任問題であるとか,各々の判断というのが非常に難しくなるのではないかと思われますので,その辺のところを十分に御議論いただければと思います。 ○山根委員 様々な意見がございましたし,手続の観点等々を含め,今後議論を深めるということには賛成です。裁判員制度に関する検討会でも,この辺りで様々なやはり意見が出ておりまして,極めて長期というのはどういう考え方でまとめるか,また,裁判員を務める者に関して,過度な負担とはどの程度のものを考えるかとか,長期を務められる裁判員に偏りが起きないかであるとか,相次ぐ交代や選任のやり直しが続けば,適正な,公平な審理に影響があるのではないか,様々な意見が出まして,今回の取りまとめにはなっているわけですけれども,今後,議論を深めるのに賛成です。   1点,この検討会の中でも意見も出ましたし,私も言及しましたけれども,ただ長期か,長期ではないかということではなくて,地方においていろいろな季節であるとか,様々な実態がございますので,そうした地方における特性,例えば豪雪地帯であれば,冬はなかなか,度々通うことが困難になるとか,そういった実情も十分配慮して,今後議論をしていただければと思います。 ○今田委員 この判断は公判前整理手続というところで恐らく行われるんだろうと思うんですけれども,元々この裁判員制度そのものの中で,公判前整理手続の在り方というのはいろいろ問題もあって,改善の余地もあるというような議論もされている,直接この法律の改正の枠組みの中に,公判前整理手続の問題は含まれないことには,整理はなっているんですけれども,恐らくそこで,この今いろいろ御議論があった難しい問題が処理されるということになろうかと思いますので,この枠組みを,改正案を作るというのは,結局公判前整理手続の議論もせざるを得ないということになって,大変難しい問題が山積しているのではないかなということがあって,恐らく部会で十分議論されるんだろうと思いますけれども,今,出されたいろいろな課題をうまく処理できるように,有益な議論が蓄積されることを期待したいと思います。 ○伊藤会長 ありがとうございました。ただいま本諮問事項に関連して,多数の貴重な御意見を頂戴いたしました。そこで,そういった御意見を踏まえまして,諮問第97号の審議の進め方につきまして,御意見があれば,承りたいと存じます。 ○早川委員 ただいまの議論を伺いましてもよく分かりますように,この諮問につきましては,専門的,技術的な事項,あるいは検討すべき理論的,実務的な問題がかなり含まれていると思います。そこで,通例に倣いまして,新たに部会を設置して,そこで審議,調査し,その結果の報告を受けて,今後,総会で更に審議するとするのが適当なのではないかと考えておりますが,いかがでしょうか。 ○伊藤会長 ただいま早川委員から部会設置等の御提案がございましたけれども,これに関して,他の委員の方から御意見ございますでしょうか。 ○佐々木委員 その場合の期間とか,中間報告などはどのような予定になりますでしょうか。 ○伊藤会長 これは事務当局から説明を御願いいたします。 ○稲田幹事 今回の諮問事項,大きく言って3点なんだろうと思います。まだもちろん部会の設置自体,決めていただいているわけではありませんが,仮に設置された場合,今も種々御議論がありましたように,いろいろな御議論が,また部会の中で出てくると思います。そのような状況で,まだ現時点において,今後の御審議がどのような進行になっていくかということは分かりませんが,当然,時期に応じて部会での御審議について中間的な御報告をする,あるいはその結果の御報告をするというようなことになると思いますけれども,具体的にどのように進めていくかということについては,仮に部会が設置されれば,部会のほうと御相談をさせていただいて,御報告をしていきたいと思っております。 ○佐々木委員 毎回申し上げているんですけれども,部会で決まったものをこちらで報告されても意味がないと思います。途中で,私たちが議論にきちっと加われるようなタイミングで御報告いただきたいと思います。 ○伊藤会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。   それでは,諮問第97号につきましては,新たに部会を設けて調査審議するということにいたします。そして,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事に関してでございますけれども,これにつきましては,会長である私に御一任いただければと存じますが,よろしゅうございますか。           (「異議なし」の声あり) ○伊藤会長 ありがとうございます。それでは,今の点につきましては,私に御一任いただくことにいたしたいと思います。   次に部会の名称でございますけれども,諮問事項との関連から,諮問第97号につきましては,「刑事法(裁判員制度関係)部会」という名称にいたしたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。           (「異議なし」の声あり) ○伊藤会長 ありがとうございます。それではそのようにいたしたいと存じます。   そのようなことで,諮問第97号につきましては,刑事法(裁判員制度関係)部会で審議をしていただくことになりますが,先ほど来,この会議におきまして,様々な御意見,内容に関するもの及び審議の在り方に関するものを頂戴いたしましたので,それを踏まえて,部会で審議をお願いし,更に総会で審議をすることにいたしたいと存じます。   本日の予定しましたものは以上になりますが,他にこの機会に御発言いただくことがございましたら,お願いいたします。いかがでしょうか。 ○竹下関係官 本日のただいまの議題とは無関係でございますけれども,御承知のように,本年9月4日に最高裁判所大法廷の決定が出ました。非嫡出子と嫡出子の相続分の不平等の点について,違憲の決定が出たわけでございます。あの決定の中でも,お分かりのように,こういう問題を判例で解決しようと思いますと,いろいろ難しい問題が出てまいりまして,やはり立法でいたすのと,判例による改正というものとの一種の広い意味での役割分担といいますか,あるいは協調関係といいますか,そういうものが必要だなということを,恐らく皆さんお感じになっておられると思うわけです。   そこで,民法を当然改正するということになるんだと思いますけれども,その点についての現在の状況について,民事局長あるいは法制部長,突然の発言を求めるようなことで,あるいは御迷惑かもしれませんけれども,何か一言説明をしていただければと思います。 ○伊藤会長 ありがとうございました。深山局長から説明をお願いいたします。 ○深山幹事 今,竹下先生から御指摘があったとおりで,皆さんも御案内のとおりの9月4日の大法廷の決定で,民法900条4号ただし書の前段部分が憲法14条1項違反であるという判断が示されました。法令違憲の判断ですので,最高裁で違憲と判断された以上,それは統治機構の原理からしても,また,民法は基本法ですので,それをそのまま放置しておいて,違憲無効状態のまま置くというのは,国民生活に甚だ法的に不安定な状態が生じますので,法務省としてといいますか,政府として,速やかに民法900条の当該部分を削除する旨の民法改正の法案を提出したいと思って準備をしております。   マスコミ等でも報道がされていますけれども,それに関連をする改正として戸籍法の出生届についての記載事項についても,嫡子,非嫡の別を書かせるのを削除するかということも検討しておりますが,いずれにせよ,今日からちょうど臨時国会が始まっておりますが,この国会に提出できるように法案の準備はしております。ただ,あとは政治の世界の問題で,必ずすぐに是正できますと,私の立場で言うことはできません。政府側として,法案の提出,そして早期の成立に向けて最大限努力をするということしか申し上げられませんが,振り返れば,この内容は平成8年の法制審議会で答申を受けた民法の家族法改正についての様々な答申事項の一つでもありますので,そういう意味では法制審議会でのこれまでの議論と無関係というわけではもちろんございません。成立に向けて,一所懸命努力したいと思っております。 ○伊藤会長 ありがとうございました。それでは,本日の会議はこれで終了といたします。本日の会議の議事録の公開方法につきましては,審議の内容等を考えまして,私といたしましては,議事録の発言者名を全て明らかにして,公開することといたしたいと存じますが,いかがでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○伊藤会長 よろしゅうございますか。それと,本日の会議の内容につきましては,後日御発言いただいた委員の皆様には,議事録案をメールにて送信させていただき,御発言の内容を確認していただいた上で,法務省のホームページに公開したいと存じます。よろしくお願い申し上げます。   最後に事務当局から連絡事項がございましたら,お願いいたします。 ○小川関係官 次回総会の開催予定について御説明申し上げます。法制審議会は2月と9月に開催するのが通例となっておりますが,次回の総会につきましては,例年どおり2月に御審議をお願い申し上げる予定でおります。具体的な日程につきましては,後日改めて御相談をさせていただきたいと存じます。つきましては,委員・幹事の皆様方におかれましては,御多忙のところとは存じますが,今後の御予定につき御配意いただけますよう,よろしくお願い申し上げます。 ○伊藤会長 ありがとうございました。   それでは,これにて本日の会議を終了といたします。本日は御多忙のところをお集まりいただき,また,多くの委員の方々から熱心な御意見を頂戴し,充実した審議をいたすことができましたことを心より御礼申し上げます。ありがとうございました。 -了-