法制審議会 新時代の刑事司法制度特別部会 第1作業分科会(第9回) 第1 日 時  平成25年12月11日(水)  自午前9時59分                         至午後0時29分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  時代に即した新たな刑事司法制度の在り方について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○吉川幹事 それでは,ただいまから,法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会第1作業分科会の第9回会議を開催いたします。 ○井上分科会長 本日も御多用中のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。   本日は,お手元の議事次第のとおり,配布資料の説明の後,「通信・会話傍受」及び「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」について,順次議論を行うことといたします。   なお,本日の議論におきましては,あらかじめお申出がありましたので,小坂井幹事に代わって,「通信・会話傍受」については神幹事に,「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」については青木委員に,それぞれ御出席いただくことといたします。また,同様のお申出により,露木幹事に代わって,坂口幹事に御出席いただくことといたします。   まず,本日の配布資料について事務当局から説明してもらいます。 ○吉川幹事 御説明いたします。   まず,特別部会の第21回会議で配布されました資料63のうち,本日議論が予定されております「通信・会話傍受」及び「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」に関する部分を抜粋したものを再配布しております。   また,参考資料として,今回,神幹事から提出のあった「通信傍受の合理化・効率化」に関する資料,当分科会の第7回会議において坂口幹事から提出のあった「会話傍受」に関する資料,特別部会の第21回会議において青木委員から提出のあった「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」に関する資料のほか,各検討事項に関する参照条文も再配布しております。   資料の御説明は以上です。 ○井上分科会長 御承知のように,各作業分科会においては,各検討事項の残された課題について詰めの検討を行い,制度設計に関する「たたき台」を策定し,それを次回の特別部会に報告することとされました。   そこで,当分科会では,本日と次回の会議において,「たたき台」の策定に向けて,残された検討課題を中心として,ポイントを絞った議論を行いたいと思います。皆さんには,積極的な御議論をお願いしたいと思います。   それでは,早速,「通信・会話傍受」について,特別部会の資料63に基づいて,議論を行いたいと思います。   最初に,「通信傍受の合理化・効率化」の「第1 対象犯罪の拡大」について,その検討課題(1)に記載されています「○ 罪名に加えて何らかの限定要件を付すことの要否・当否」,つまり,何らかの組織性の要件を設けるか,仮に設けるとした場合,具体的にどのような要件とすることが考えられるのかについて,御議論いただきたいと思います。   御意見等ある方は御発言をお願いします。 ○坂口幹事 大変恐縮でございますが,対象犯罪の拡大につきまして,もう一つ犯罪を追加していただけるようにお願いをいたします。それは,刑法の第246条の2に規定されております電子計算機使用詐欺罪です。   この対象犯罪の拡大につきましては,振り込め詐欺への対処ということを一つの眼目として検討を進めてきていただいているところでありますが,御案内のとおり,振り込め詐欺と申しますのは幾つかの手口の総称でありまして,その幾つかの手口の中の一つには,私どもで還付金等詐欺と呼んでおります手口がございます。この還付金等詐欺というのは,罰条としては刑法の246条の詐欺罪ではなく,246条の2の方の電子計算機使用詐欺罪を適用しておりますので,これも通信傍受の対象犯罪として含めていただきたいという趣旨でございます。   若干,還付金等詐欺という手口について御説明いたしますと,これは,犯人が「市区町村の職員です。」ということで市区町村の職員になりすまして,被害者の家に電話をしてまいります。「あなた,医療費を払い過ぎていますからお返しします。」と,還付しますというふうに申し向けてだますわけですね。犯人は被害者の家の場所を知っていますから,家のそばに無人のATMがどこにあるというのも知っていて,「あなたの家のそばの何とか駅前の何とか銀行のお店へ行ってください。携帯電話を持って行ってください。お店に着いたら,その携帯電話から私のこの番号に連絡を下さい」と言って,犯人側の電話番号を教えます。そうすると,だまされてしまった人は,そのお店へおびき出されてATMの前まで行って,犯人にまんまと電話をしてしまい,電話を受けた犯人は,「では,あなたにお金を振り込みますから,まずATMの振り込みというところを押してください」と言って,言葉巧みにだまし始めるわけです。そうすると,言われるがままに被害者はATMを操作してしまって,結局,犯人側が用意している受皿口座に被害者の口座からお金を振り込ませるという手口なのですが,これは,被害財物の占有の移転が起こらないので,適用罰条としては246条ではなくて246条の2の方を適用して処罰をしております。捜査をする場合も,その被疑事実で令状を取って捜査をいたしますので,246条の2の方も通信傍受の対象犯罪としていただくようにお願いをしたいということでございます。   細かい話と思われるかもしれませんが,決してそうではございませんで,この還付金等詐欺という今のやり方の手口の被害だけで,昨年1年間で全国で10億円以上の被害が出ている手口でございます。是非ともよろしくお願いいたします。 ○井上分科会長 今の御発言は,元々振り込め詐欺を対象にすべきであるという御意見であり,実質的にはその中に含まれていたけれども,具体的な条文を挙げていなかったので,それを明示的に確認してほしいという御趣旨ですね。 ○坂口幹事 そういう趣旨でございます。 ○井上分科会長 この(1)の「ウ」の詐欺の中には元々そういうものも入っているということだと思うのですが。最初に申し上げたように,何らの組織性の要件を設けるのかどうか,設けるとすれば具体的にどういう要件とすることが考えられるのかという点が重要なポイントですので,その点についても御意見を頂きたいと思います。 ○神幹事 お手元に今日の資料として,1枚めくっていただくと,「通信傍受の令状要件」というペーパーがございます。これは,本年7月に私の方でお出しした,令状要件について全体としてまとめて作ったものを,条文の形式にしたというものであります。要するに,「数人の共謀による」というところを,ここのアンダーラインを引いたような形で,「団体の活動として当該罪に当たる行為を実行するための組織による」という形に変更して,全ての対象犯罪について,この要件の下で行ったらどうかということを提案するものであります。   これを作ってみて,ちょっと感じたのは,元々対象犯罪になっている組織的殺人というのは,構成要件のところで判断されるので,事実上,二つの要件はかぶるけれども,立証は一緒だろうということで,それも含めてという形で提案するものであります。 ○井上分科会長 御趣旨を確認したいのですが,以前の御提案は,新たに対象犯罪とするものについては,何か組織性の要件が必要なのではないかという御趣旨であったと思うのですけれども,今回の御提案ですと,既存の対象犯罪についても,数人の共謀ということでは足りず,この組織性の要件,ここに書かれているような,かなり固い要件を加えるという御趣旨なのでしょうか。 ○神幹事 はい。確かに,今日のペーパーでも前回の特別部会のペーパーでも,その方針で枠囲い等がされているのですが,元々日弁連としては通信傍受そのものに反対をしてきたという経緯があります。もし作業分科会として対象犯罪を拡大するのであるとれば,それなりに厳しい要件を付ける必要があるのではないかという趣旨で提案するものでございます。 ○井上分科会長 既存の対象犯罪についても更に要件を絞るべきだとする理由は何かあるのでしょうか。 ○神幹事 基本的には,同じ通信傍受を行うについて,私どもの言っている組織性というものが全部かぶる形で問題ないのではないかというふうに考えたということであります。 ○井上分科会長 現行の対象犯罪との関係で何か不都合があるのかということをお尋ねしているのですけれども。 ○神幹事 元々今ある数人共謀というのは,もっといろいろな犯罪がある中で組織性に近いものだけを取り上げて,最終的に立法化されたというふうに理解しています。そうだとするならば,この際,要件もそういう形に全部してしまった方が良いのではないかということです。ちょっと大きな網をかぶせるという形になってしまってはいますが。 ○井上分科会長 要件としては違いますよね。 ○神幹事 はい。 ○井上分科会長 元々,現行制度についてもトータルに反対なので,更に要件を厳しくして使いにくくしようというお考えに傾くのは分からないでもないのですけれども,今回は現行の制度では使い勝手が非常に悪いから,もう少し有効に活用できるようにしようではないかということで,対象犯罪の拡大や合理化・効率化が提案されているのですから,それとは方向性が真逆なのです。ですから,そのような御提案をされるのであれば,現行制度について,そのような要件を付加しないといけないような不都合が現に生じているといった立法事実あるいは根拠が示されないと,理屈に合わないような気がします。それで御趣旨を伺ったわけです。 ○神幹事 要は,そもそも反対だという形のものであって,実際上,それを先に推進するという立場では日弁連はないものですから,ある意味で厳しくなっても,それは私たちの立場からはしょうがないのかなというふうに考えているわけです。 ○井上分科会長 この作業分科会での検討の趣旨に沿うかどうかは分かりませんけれども。御意見の趣旨は分かりました。 ○岩尾幹事 前から申し上げているとおりで,なぜこの組織犯罪処罰法の団体要件をここに持ってくるのかという理由がよく分からないんですね。これは元々法定刑の加重にふさわしいような形で団体要件が設けられていて,通信傍受の許容性だとか必要性との関係でどういう意味があるのかというのがよく分からないわけです。   この議論の出発点で,対象犯罪自体を組織的詐欺にするのでは,その罪が犯されたことを疎明することは非常に難しいというところからスタートして,これに対しては,十分な理由ということではなくて,疑うに足りる状況という形で通信傍受法第3条第1項に書けば,その程度の疎明は可能ではないかという議論もありましたけれども,その際にも申し上げたところで,こういう団体要件というのは,多少疎明の程度を下げたとしても,事実上困難であるということを申し上げてまいりました。   そして,そもそもこの団体の要件の組織のところを見ていただきたいのですが,一例だけ申し上げますと,「指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って」というような要件があります。これは縦の指揮命令系統があることを要件としているんですけれども,通信傍受をやろうとするときに,縦の関係なのか横の関係なのかをあらかじめ疎明するということはほぼ不可能に近いわけです。数人が関わって何らかの役割分担をしているというところまでは疎明できたとしても,それが縦の関係にあるということ自体を疎明することは非常に難しいですし,捜査を遂げたとしても,結局は縦の関係まで立証できずに横の共謀でしか起訴できない,実体法の適用として,最終的に単なる詐欺であって,組織犯罪処罰法上の組織的詐欺で起訴できないということも多くあるわけです。   しかし,そういう集団でやっていた,数人共謀してやっている計画的な詐欺に対して通信傍受という手法を使うことが許されないのかというと,決してそうではないように思われるので,そういう意味で,どうしてこの要件を借りてくるのかという理由が,もう少し説明していただく必要があるのではなかろうかと思っております。 ○坂口幹事 今の岩尾幹事の御発言に賛同いたします。それ以前に,この作業分科会では自由な議論をしてよいわけではないと理解しておりまして,一定の特別部会からの付託に基づいて議論をしているわけですから,そういったことは共有されなければならないと思います。   その上で,岩尾幹事がおっしゃったとおり,現状を申しますと,振り込め詐欺の場合は,捜査を尽くした後の処罰段階でさえも,ほとんど組織犯罪処罰法上の組織的な詐欺として処罰されることはないという御説明を以前したと思いますけれども,そういう実態です。捜査を尽くした後でさえ,普通の刑法上の詐欺罪として処罰するところまでしか解明ができないというのがほとんどの場合でありますので,ましてやこれから捜査をしようという令状請求段階で,組織的詐欺の組織性みたいなものを疎明しろというのは,これは実態に対して全くもって無理な注文ということになろうかと思います。   何らかの組織性の要件ということについて,ずっと議論をしてきているわけですけれども,その何らかの組織性の要件というのは一体何だろうかというのを私も一生懸命考えているのですが,それは説明的に,もうちょっと言葉を砕いて表現してみると,恐らく,数人の犯人が意思を通じ合って何らかの役割分担の下に実行行為を共同して行っているという感じなのかなと理解しております。そういうような要件なのかなと理解していますが,そのように言葉にしてみると,それは正しく,実は現行法の数人共謀要件にほかならないというか,数人共謀要件で既に尽きてしまっているのかなというところに今考えが行き着いております。何かそれ以上に実質的な意味があって制限を掛けられるような組織性の要件というのを追い求めているわけですが,やはり余り適当なものはないのではないかというふうに今は考えております。 ○髙橋幹事 私としては,組織性の要件は必要なのではないかという立場から意見を述べたいと思います。確かに疎明の関係で,実務上難しいのではないかというようなお話も出ていますが,それは個別個別の事件で令状請求を受けた裁判所が考えることなんですが,被害者からの聞き取りだとか,あるいはそれ以外の捜査官のいろいろな活動で得られた資料からすれば,裁判所としても,これはいわゆる振り込め詐欺であり,かつ,一定の指揮命令系統があって,かつ,役割分担もあらかじめ定められているからこそできるような形態の犯罪なのではないかと,分かることも結構あると思うんです。そういう意味で,組織性をかけたからといって本当に実務が動かなくなるかというと,そうでもないのかなと思います。   一方で,何も網をかぶせていないと,従来から言っていますとおり,ほかの類型の詐欺事案にも広がりを持ってしまうことが懸念されるので,やはり何か縛りをかけておきたいというのが裁判所の立場からの意見です。   ただし,組織犯罪処罰法上の団体の活動要件まで設けますと,それこそ本当に疎明が尽くせるのかというと,これはかなり難しくなってきますので,ここまで重くするのはどうかなというふうに考えています。 ○井上分科会長 髙橋幹事の御意見だと,神幹事の提案の組織性の要件をかけても令状実務は動き得るという御趣旨ですか。 ○髙橋幹事 そうですね。 ○井上分科会長 まだよく分からないのですけれども,現行の数人共謀と補充性の要件だけで,そのような組織性の要件をかけないと,どういう不都合が生じるのでしょうか。 ○髙橋幹事 それこそ組織的ではない,数人のチンピラがちょっと相談して,誰かから金を巻き上げようではないかという程度の詐欺なども条文上入ってき得るんで。実際の運用でそういうものまで通信傍受の請求はしないとはおっしゃるんですけれども,そこはやはり今回,何をターゲットとして捉えようとしているのかという,その立法事実ですかね。それを踏まえて作るんであれば,やはり何か組織性みたいなものを入れておいた方が,これは相当なのではないかと,そういう意味です。 ○井上分科会長 今言われたような例で現行の補充性の要件が満たされるのでしょうか,そういう場合に。通信傍受をしなければ解明が難しい,検挙も難しいという事態というのがあるのですかね。そこが私,抽象論ではなく具体的に,今一つ分からないところなのです。この点は,現行の通信傍受法を作るときにも議論し,その末に現行規定のような要件になったわけで,組織性や団体要件も検討したのですが,先ほど岩尾幹事が言われたように,それらは飽くまで刑を加重をするための要件であって,通信傍受を許容するという趣旨での制限として適合するとは必ずしも言えないと判断されたという経緯があるのです。そういうことも背景にあるので,おっしゃっていることに疑問が感じられるのです。 ○岩尾幹事 実際,薬物犯罪は,ものすごい数起こっているんですけれども,傍受の対象になっているのはせいぜい年間10件前後なわけですよね。だから,現行の通信傍受法上は薬物犯罪について何も組織性もかかっているわけではなくて,補充性と数人共謀という形の要件しかないんですけれども,そもそもそういったものは捜査機関側も令状請求していませんし,仮に請求したとしても明らかに出ないということで了解されていると思うんです。   先ほど,髙橋幹事が言われたところで,振り込め詐欺であったら指揮命令系統があるということは通常疎明できるというのが,そこがよく分からないわけですよ。縦の関係って,どうやって令状請求のときの疎明資料に入れられるのかというのが分かりません。実際は断片的な被害者から得られた,こういう電話がかかってきたという情報であったりとか,何人か,劇場型のような詐欺であれば,役割分担はしているだろうというのは分かるんですけれども,それがこの団体要件に当てはまるかというと,ちょっとそれで疎明できていると言われるのが,どうも理解できないところでございます。 ○後藤委員 先ほど坂口幹事が,組織性とはどういうものかを考えたと御紹介くださいました。そこでおっしゃったことは,突き詰めていくと,共同正犯と同じことになってしまうのではないでしょうか。   しかし,元々組織的犯罪とは共同正犯の全てを含むものとは考えられていなかったと思います。通信傍受法を立法するときにも,組織的犯罪に対応することを目的にしていたわけです。そこでは共同正犯の全てを含むとは考えていなかったでしょう。何らかの継続的な組織があって,同じような犯罪を計画的に繰り返すようなものが組織的犯罪として想定されていたのだと思います。ですから,先ほどのような定義は,組織性の実質からは,広過ぎるのではないでしょうか。   以前の会議でも確認したように,今回の改正案でも,組織的犯罪への対応として通信傍受という手段を設けるという基本は動かさないことが了解されていると思います。そうすると特に新しく加えようとしている(1)の「ア」の部分については,やはり組織性要件を入れる必要があるのではないでしょうか。そこは分科会長がおっしゃったような補充性要件では,必ずしも対処できない部分だと思います。例えば,1回的な共同正犯による行為でも補充性要件はあり得るでしょう。 ○井上分科会長 抽象的に理屈の上だけで考えるとそのようにも思えるのでしょうが,具体的に考えて,単発的に何人かが共謀して詐欺を行ったという場合に,補充性の要件が満たされるのでしょうか。 ○後藤委員 満たす場合もあるのではないですか。 ○井上分科会長 それはどういう場合かを具体的に示していただきたいのですよ。どういう場合が,組織的なものではないのにここに引っ掛かってくるということを具体的に示していただきたいということと,「たたき台」を作っていく段階に来ていますので,何らかの組織性の要件をかけた方が良いということなら,具体的にこのような要件にすべきだという提案を是非していただきたいのです。そうでないと,先には進まないと思うので,あえてうかがって言っているわけです。 ○後藤委員 要件の案としては,神幹事からの提出資料のように「組織により反復して行われる」などが考えられます。その「組織」も,ここで一応定義されています。 ○井上分科会長 その「組織」の定義について言えば,「指揮命令系統に基づき」というところが一つのネックになっているというのが,岩尾幹事の言われていることです。そして,この定義の中には,継続性というものは入っていないのだけれども,「あらかじめ」というところで一定程度の継続性が要求されている。ですから,継続性ということが重要なのか,指揮命令系統というのが重要なのか,役割分担ということが重要なのか,それとも,それら全てが入っていないと,何人かの方がイメージしている組織ということにならないのか,その辺を是非具体的に提案し,議論していただきたいのです。 ○髙橋幹事 先ほども御指摘を受けて答えたと思うんですけれども,私のイメージは,正に組織犯罪処罰法の2条で定義されている,「指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として活動する」という要件が,正に今回も同じ形で入れればよいのかなと思います。 ○井上分科会長 それは法律に既にあるので,恐らく飛び付きやすいと思うのですが,先ほど指摘のあった指揮命令系統の疎明の困難性という問題については,どうお考えですか。仮にそこに問題があって変えるとした場合,どういうふうに修正すれば,実務的な要請に応えると同時に,懸念されている濫用・逸脱のようなことも防止できるのか,そういう形で議論していかないと,まとまっていかないと思うのですよ。 ○髙橋幹事 疎明が難しいのではないかという実務的な観点からなんですけれども,例えば,被害者に対してある者が電話をかけてきて,別の者が受け取りに行って,引き出すのは別の者だと,役割があらかじめ定められていたからこそチームワークが整ってそういう犯罪ができたと。かつ,それも事案にはよると思うんですけれども,そういうようなチームワークが保てているのは,やはり一定の指揮がなされていたからこそできていたのではないか。そういうことが分かるような事案も,それはあるのかなと思うんですけれども。 ○井上分科会長 裁判所はそういうふうに推認されるということなのですか。 ○髙橋幹事 いや,ゆるゆるにやると言うつもりではございませんけれども。 ○井上分科会長 ですから,裁判所としては,そこは推認するとも言い難いでしょう。 ○髙橋幹事 はい。 ○井上分科会長 個別の事案で,それを裏付けるものがあればそう認定するだろうという答えしかできないと思うのですよ。 ○髙橋幹事 そのとおりです。 ○坂口幹事 現行法の数人共謀要件のハードルというか,運用,適用はものすごく厳しいと承知しています。今,薬物犯罪で傍受令状を請求させていただいて,年間数件,数山程度のものをやっていますが,あの令状請求をするに当たっては,ものすごい人手を,ものすごい期間費やして内偵を続けて証拠を集めて,彼らの行動をしっかり把握して,こういうことをやっているから数人共謀して密売をしているんですよということを御説明して,ようやく令状を出していただけております。しかも,請求してから現に令状が出るまで相当期間掛かるというのが現実ですので,現行法の解釈,運用もそういうふうに行われているところでありますから,それ以上に組織性というものの要件がはまった場合には,恐らく裁判所の方の解釈,運用も今以上に厳しいことになり,令状もなかなか出してはいただけないことになるのではないかと思われます。 ○神幹事 これは別に日弁連の意見ということではないのですが,諸外国の例なんかを見てみると,例えば,共同して行動する多数の者により計画され組織された継続的犯罪活動の一環であると信ずるに足る合理的な理由がある場合というようなことが,この訳が正しいかどうかは別にして,井上分科会長の過去に書かれた本の中にも,カナダの例として出ているんですね。 ○井上分科会長 ありがとうございます。ただ,よく読んでいただきたいのですけれども,それは,全ての対象犯罪にかかっている要件ではないのですよ。 ○神幹事 5年以上の自由刑に処せられる可能性がある刑事法典の罪等についてですよね。 ○井上分科会長 ですから,そういう要件がかからない対象犯罪が多数列挙されていて,その上で,それに加えて,一定の法定刑以上の刑に当たる犯罪について,そのような付加的要件の下で対象犯罪としているということなのですよ。 ○神幹事 私が言いたいのは,その要件があるということは,5年以上の刑に関連して,その要件でも通信傍受が現実に行えているのではないかというふうに考えたわけです。私個人の意見ですよ。もちろんそういう枠のないものが一杯並んでいるのも承知した上で言っています。ただ,あえてその部分があるということは,それ以外のものであっても,そういう疎明ができて,傍受ができている,できるということでもって作られているんだとすると,私が日弁連のこの案でもって言った場合よりは,もうちょっとフレキシブルに何かできるのではないですかと,こう思ったわけです。 ○井上分科会長 具体的な要件の中身も大分違いますね,よく読んでいただくと分かるのですけれども。もしそういう外国の例を持ってこられるなら,それを基に,また新たな提案をなさってみてはいかがですか。   それと,そこで書かれている「信ずるに足る合理的な理由」というのと,神幹事の御提案に書かれている「疑うに足りる状況」とがどう違うのか。「合理的な理由」というのは,我が国では,警察官職務執行法の職務質問の要件などに使われている概念で,逮捕の要件の相当な理由よりはずっと程度が軽いという位置付けだろうと思うのですけれども,そのように文言を変えることによって,実際に疎明ないし裁判所の認定の仕方が容易になるのかどうかということなども,検討に値するかもしれません。   その辺り,具体的な要件を考えるに当たっては,先ほどの指揮命令系統だとか,継続性だとか,そういうものを入れるのか,入れないのかといったことや,疎明のレベル,どこまで疎明しなければいけないのかといったことなどをも合わせて,検討していく必要があると思います。  ○後藤委員 先ほどの岩尾幹事がおっしゃった「指揮命令に基づき」の部分の疎明が難しいという意味についてです。その意味は,通信傍受による捜査によって摘発することを目的とする犯罪として,必ずしも指揮命令がなくて,仲間同士でしているようなものでも含めるべきだということでしょうか。それとも,本当は指揮命令系統があるようなものにターゲットを絞るべきなのだけれども,それを条文に要件として書いてしまうと余りにも令状取得が難しくなるからいけないという意味でしょうか。どちらの意味ですか。 ○岩尾幹事 仲間同士と言われているものでも非常に幅があるわけですよね。だから,いわゆる振り込め詐欺と思われているものだって,結果的に実体法の適用,刑罰法規を適用しようとしたときには,最終的に組織的詐欺では立件できない。指揮命令系統が解明できない。誰がトップでどういう形で指示が下りてきたのかが解明できない。下の人たちは一杯いるわけですが,結局トップが判らない。しかしながら,その下の人たちだけを起訴したとしても,そこだけを見たとしても,それは単に仲間内で,例えば,少年数人が集まって何か詐欺をしたというのとはやはり違うわけですね。だから,組織犯罪処罰法上の組織的詐欺罪でない限り,軽微な犯罪だということにはならないわけで,その点は結局,繰り返しになりますけれども,補充性の要件でも十分限定はできて,本当に数人の仲間だけでやっている軽微な詐欺なんかは,補充性で切れて,令状が出ないですよということを申し上げているわけです。   今,分科会長からも言われていますように,要件をパーツパーツで見ていくことも可能なわけです。指揮命令系統のほか,あらかじめ定められた任務の分担という部分,あるいは継続的結合体という部分もあって,皆さん,今言われていますけれども,あらかじめ定められた任務の分担があるかどうかということについては,実は誰も反対していないわけです。それは,外形的にというか,外側から見たとしても,それは見えるわけなんですね。役割分担はしているだろう。しかし,指揮命令系統というのは内側から見ない限りは見えてこないわけですね,これから捜査を始めましょうという段階では。だから,指揮命令系統があるということを疎明しないと傍受令状を出すのが許されないということになるんでしょうか。   そうすると,あらかじめ定められた任務の分担だとか,何らかの結合体とは見える程度の組織を想定して,それがうまく限定的な要件として付加することができるだろうか。数人共謀という補充性という要件の下においても,実質上はそれと同じレベルの審査が既にもう行われているのではないんでしょうかという意味で,これ以上の要件をかけるのも難しいので,現状でも足りるのではないでしょうかという御提案を申し上げているということでございます。 ○井上分科会長 ほかに,付加して御発言ございませんでしょうか。   特にないようですので,この点についてはこの程度にしたいと思います。   それでは,次に検討課題の(2)に記載されている犯罪について,これらを対象犯罪とすべきか否かについて議論をしていただきたいと思います。この点については,それぞれの犯罪について,その重大性や対象犯罪とすべき必要性の程度に差はないのか,また,その重大性や必要性について疑問があるのであれば,その疑問の程度に差はないのかといった点に留意しつつ議論していただければと思います。御意見等のある方は積極的に御発言をお願いいたします。 ○後藤委員 対象犯罪の問題について分科会長の見通しをお聞きしたいのですけれども,今度部会に出すときには,ある程度これとこれというふうに固めたものを案として出したいというおつもりでしょうか。単にこういう可能性がありますと並べるのではなくて。 ○井上分科会長 皆さんの御意見が一致すれば,固めたものとして出せますが。 ○後藤委員 目標としては,一致したものを案として出したいということでしょうか。 ○井上分科会長 対象犯罪を拡大すべきだという御意見もあれば,拡大すべきでないという御意見もあるので,一致するという見込みがどれだけあるかは,現段階では分かりませんけれども,「たたき台」をどういう形で出すかは,皆さんの議論を踏まえ,私なりに考えて,こういうものでいかがかという案を御提示して御相談したいと思っています。現段階で「たたき台」のまとめ方についてこれ以上申しますと,議論を誘導したり,逆効果になったりしかねませんので,あえて申しません。ですから,余り戦略的にお考えにならないで,率直な御意見,生の声をお聞かせいただいた方が,「たたき台」の作成のためには良いと思います。 ○後藤委員 では,生の声として戦略的なことを考えないで申します。多くの罪種に広げたいという要求と広げたくないという要求がせめぎ合うので難しい問題です。けれども,今回の議論の経過を見て,国民の間に,ある種の犯罪に対して危機感があって,そのために新しい捜査の手段が欲しいという要求があるというのは,そうなのだろうと思います。その観点から考えると「考えられる制度の概要」の(1)に挙げられているようなものは,先ほどの組織性要件の問題がクリアできれば,それを入れる。それに対して,(2)その他の方には,いろいろなものが挙がっていますけれども,差し当たりは暴力団関連犯罪を対象に入れる。これも,暴力団の構成員がその暴力団の目的のためにしたといった要件は,絞り込みができそうだということが前に議論されたと思います。それを要件にして入れるというのが,素直な発想としては出てくる案です。 ○岩尾幹事 1点御質問なんですけれども,この暴力団関連犯罪というのは,暴力団がこういう犯罪を犯しており,必要性が高いということで,警察庁の幹事の方から御提案があったわけですが,これの対象犯罪としての切取り方としては,必ずしも暴力団を主体として書くという方法だけには限られないような気もするわけですね。   そうすると,今,組織性を何らかの形で要件に加えるべきだというところで,良いアイデアは出ていないんですけれども,これは組織性が加わるならば,あえてそれは主体が暴力団という限定でなくても,こういう対象犯罪が入ってもよいということなのか。やはりこれは暴力団でないと駄目だという御趣旨なんですか。 ○後藤委員 私の意見は,後の方です。ここでは,先ほど議論した組織性の問題とは別に,暴力団の構成員がその暴力団の利益のためにしたことを傍受対象犯罪の要件にするという考え方です。 ○岩尾幹事 ただ,いろいろここにも並んでおりまして,賭博のような犯罪もありますけれども,爆発物取締罰則とか,現住建造物等放火だとか,傷害致死だとか,非常に重大な事件があって,これは,数人共謀して行われているという状況を考えると,相当傍受の必要性は高くなるんではなかろうかと思われますし,マネー・ロンダリングなどは,暴力団に限らず,組織的な犯罪グループからすると,その犯罪により得た収益を蓄積し,隠匿し,それをまた次の犯行に利用するという形で犯罪が繰り返されるという意味では,かなり必要性の高い。暴力団が行ったからこれに対処する必要があるというのではなくて,その他の犯罪グループが行ったとしても必要性の高い類型のものかなという気がいたします。   それからもう1点,「ア」の③に書いてある人身取引関連犯罪の中に人身売買というのがあるんですが,これはむしろ,制度概要に入っている逮捕・監禁だとか略取・誘拐等と関連する犯罪なので,これは検討課題の(1)の「イ」の類型に本来一緒にまとめて議論してもよいような犯罪かなという気はしております。 ○神幹事 その他の重大犯罪というところについては,なかなかそこまで拡大するのはいかがなものかと考えています。   今の話の中で,暴力団要件のようなものでという後藤委員の御意見あったのに対して,岩尾幹事がおっしゃるように暴力団に限らないのではないかという形になってしまうと,一般の人たちの場合でもそういう場合は対象になるということになります。そうすると,例えば暴力団関連犯罪の①,刑法223条,234条,261条も対象になります。これらは全部3年以下の懲役になっていますので,これが重大な犯罪と言えるのかどうかという問題も出てきます。先ほど岩尾幹事の方でおっしゃられたように,その中の重大なものという意味で切り取ろうという趣旨であるのかもしれませんけれども,これ全部入れるという形になると,反対せざるを得ません。結構3年以下の懲役ものが,前にも述べましたけれども,一杯あるんですね。賭博関連犯罪でも,常習賭博は3年以下の懲役,そういうものも全部入れてしまうのかどうかという。暴力団だから重くなるという形になるのかというところには懸念を持っています。   そういう意味では,いずれにしても検討課題の(2)に掲げられた犯罪は,私どもとしては入れるべきでないというふうに考えています。 ○井上分科会長 入れたくない。暴力団であってもということですか。 ○神幹事 ええ,そうです。少なくとも暴力団要件ではなくて組織性要件ができるならば要らないという形で入れるという形については,かなり問題があると思っています。 ○井上分科会長 神幹事の提案されている組織犯罪処罰法の組織性の要件をかぶせたとしても,それは落ちるということですか。 ○神幹事 そうですね。 ○井上分科会長 例えば,放火とか爆発物使用とか,それ自体,法定刑はそんな重くはないけれども,社会的には非常に危険な行為,脅威を与える行為ですよね。それらがなぜ落ちるのか,よく分からないところがあるのですけれども。素朴な疑問を呈するとですね。 ○神幹事 元々この「基本構想」がまとまる前の議論というのは,抽象的にはありましたけれども,基本的には組織的な,いわゆる振り込め詐欺だとか組織窃盗に対して,非常に大きな問題になっているので何とかしたいという意見が強くて,その際に,それと関連して,そういうものがあればといってほかのものが,並べてみたらこんなにあるというのはやはり驚きだというしか考えられない。   むしろ素朴な意見として,組織的詐欺と組織的窃盗を何かカバーできる組織性のようなものが入ることによって,一応の目的を達成することができるのではないか。もちろん分科会長がおっしゃるように,今対応できても,将来のことも考えてやらないと,法律は一回作ってしまうとすぐには対応できないということは分かった上で言っております。 ○髙橋幹事 私も素朴な意見として,暴力団関連犯罪のうち,①の一般国民が標的となり得る犯罪とか,あるいは③のマネー・ロンダリング関連犯罪,これはやはりかなり必要性が高いのかなという気がします。   それからもう一つ,今まで御意見は出ていなかったんですが,組織を背景とした犯罪のうちの児童ポルノ関連犯罪というのも,かなりこれも組織的で,かつ,なかなか実情が分かりにくいし,児童にとっての被害の甚大さという意味でも,これはなかなか無視できないものですので,どういう要件をかぶせるかにもよるんですけれども,あってもよいのかなと思います。 ○井上分科会長 児童ポルノと人身売買については,我が国の対応が遅れていると国際的に批判されているところです。外国から言われるからというだけでなく多分実態としても,見過ごせないという気がします。 ○川出幹事 何を対象犯罪とするかについては,それを対象犯罪とする必要性が高いものに限るということと,それと重なり合う面がありますが,先ほどから問題になっているように,基本的に組織的に行われるようなものに限定するという二つの観点から考えるべきであろうと思います。その点からは,まず,暴力団関連犯罪というのは,必要性は高いですし,正に組織によって行われるものですから,対象とすべきものであると思います。テロ関連犯罪も,同様の性格を持ったものですので,同じように考えてよいと思います。   それから,児童ポルノ関連犯罪や人身売買,マネー・ロンダリング関連犯罪もそうであると思いますが,これらについては,国際的な要請ということがあり,その面からも必要性が高いということが言えると思います。ただ,他方で,児童ポルノ関連犯罪について言えば,必ずしも組織的に行われるわけではないものもありますので,何らかの形で組織的なものに限定するような切取りが必要であろうと思います。 ○井上分科会長 ほかに御意見がなければ,この点はこのぐらいでよろしいでしょうか。   次に,「第2」の「立会い,封印等の手続の合理化」についての議論を行いたいと思います。ここでは,検討課題「1」から「3」まで,まとめて議論を行っていただきたいと思います。検討課題「2」につきましては,特に(3)の鍵の生成装置の管理について,まだ議論が十分尽くされていないと思いますので,議論をしていただきたいと思います。どこからでも結構ですので,御意見等ある方は御発言をお願いしたいと思います。 ○神幹事 まず,「新たな仕組み自体の適正担保方策の在り方」ということで,誰がどのように担保するかというところなのですが,第三者による認証,仕様の公開・監査というようなことが出ているのですが,具体的には,これももう少し詰めて,ここで部会の方に上げるということになるんでしょうか。 ○井上分科会長 詰まれば,でしょうけれども。 ○神幹事 一つは,やはり捜査機関でない第三者が装置が適正に作動するということを担保する方策は必要だろうと思うんですね。可能かどうかは別にして,通信事業者はやはり,今度こういう形で立会い,封印がなくなるということについて,もちろん自分たちの立会いという負担が減るということについては感謝しているんですが,同時にまた,通信事業者として,そのままもう捜査機関に任せ切りでよいのかどうかということを言っておられる方もおいでになるので,例えば通信事業者,特に技術者を含めたその団体が,何らかの形で関与するということが考えられないですかね。 ○井上分科会長 何についてですか。 ○神幹事 装置が適正に作動しているかどうかということについてですね。 ○井上分科会長 その点について,そういう何か団体が認証すると。 ○神幹事 はい,そうですね。 ○井上分科会長 検証して認証するということは考えられないかということですね。 ○神幹事 そうですね。どこまで検証するかという問題については,前にも申し上げましたけれども,リバース・エンジニアリングという形で逆解析をして,いろいろやるというのは一番良いのでしょうけれども,それはものすごい費用が掛かって,かなり無駄でしょうから,そうではない形で行うということを何か考えて。   例えば,発注した機械がそのとおり作動するかどうかを,ソフトウエアの受け取りの前に誰かがチェックするというようなものが考えられないでしょうか。その際に,同種の機械が一杯あると思うので,それ全部調べるというわけにはいかないでしょうから抜取りでやっていくとか。例えば,同じ抜取りでやると同時に,その作業については,ある行為をした,入力をした場合に,ある出力が出るというような形の挙動が分かっているということであるならば,その挙動不審なところがないかを徹底的に調べ,これは何度も何度もやるらしいんですよ。ものすごく泥臭いことだけれども,やるという形のものをしていくとか,そういうことが考えられないかなと思っています。   それから,製造業者そのものは,恐らく大手でないとこういうものは作れないと思いますので,大手とすれば,それが通信の秘密を侵すようなものを作るというわけにいかないでしょうから,いろいろな設計なり,いろいろなものが検討されて作られてくると思うので,そこを,間違いないということを製造業者が同時にそれを保証するというか宣誓するという形をとって,それも第三者機関のようなものに認証させるという制度が考えられてもよいと思います   この第三者機関というのは実際上,今,IT関係ではISMSとかISO27001とかという,そういう番号でもって外形的に,そういうテストをする機能が整っていますよということを証明する機関があるようなんですね。そういうところにきちっとしたものをやってもらうとか,そんなことが考えられるのではないのかなというふうにちょっと思っています。 ○井上分科会長 まず最初に,一応こういうものを作ろうということで,仕様書が作成され,製造業者がそのとおり作り,製造業者としてチェックをして,そのとおり作動することを確認する。これはメンテナンスも同じだと思うのですけれども,それだけではまだ懸念が残るので,既存の,いろいろなことを認証している団体に頼んで認証してもらう。そういう御趣旨ですね。 ○神幹事 そうですね。 ○井上分科会長 法律事項かどうかは別としてですね。 ○神幹事 ええ。それから,納入した後に定期的に,全てではなくて抜き打ち的に何か検査をして,きちんとそのとおり作動していますねということも,やはり必要ではないのかなと思っています。 ○井上分科会長 まだ具体的なシステムとか機器のイメージが掴めないのですけれども,素人が操作してそれを変更できるというものであっては当然いけないわけですね。 ○神幹事 もちろんそうですね。 ○井上分科会長 そういうものでないものを作る。 ○神幹事 はい。 ○井上分科会長 そういうものでないものだとすると,定期的なメンテナンスでも足りるのかなという感じがするんですけれども。 ○神幹事 そうですね。例えば,その装置そのものが,簡単な定期的な検査としては,触ってはいけないところに全部封印なりシールを貼って,それが剥がされているかどうかをチェックに行くとか。 ○井上分科会長 それは随分アナログの発想ですね。そこはアナログでは多分駄目で,触ろうと思っても触れないようなハードでないと駄目だと思います。 ○神幹事 もちろんそうです。 ○井上分科会長 ですから,前に神幹事が言っておられた,誰でも分かる平明な機器やシステムというのとは全く逆でなければならないように思うのですね。専門家でないと分からない,そういうものでないと多分駄目だと思います。   ほかの方,いかがでしょうか。 ○坂口幹事 警察としても,国民に要らぬ御心配をお掛けしないということ,安心していただくということは重要だと思っておりますので,神幹事の御提案も分かるのですが,ただ,その技術的な見地,純粋に技術的な見地からすると,今おっしゃったような御提案というのは恐らくほとんど意味がない。というのは,機械が正常に作動しなければ,音は聞こえないというシステムを作るからです。誰かが意図的に改造を加えるなり,あるいは偶発的な事故なり,何であっても設計と違うような状態に機械がなってしまえば,もう音が届いてこないということになるだけである,そういうシステムである,という説明をこの作業分科会の第1回目のときに差し上げたつもりです。不正は起こらないというところだけは担保できていますので,それ以上に何かやってみたところで,恐らく意味はないと思います。 ○井上分科会長 その御説明が十分浸透していないということなのかもしれません。 ○坂口幹事 すみません,それであれば,簡単にもう一度リマインドさせていただきたいと思います。要は,何が起こってはいけないのか,どういう不正が意図的に,あるいは偶発的に起こってはいけないのかということを全部想定して,それを封じるためにはどのような技術的な手段を用いればよいのかということを純技術的に設計すると,今回御提案しているようなシステムになるわけです。要は,何か変なことをすれば傍受ができなくなる,音を聞くことができなくなるということさえしておけば,それ以上の不正なり不都合なりというのはないはずですから,それ以上に何か機械の適正を担保しなければならない,その場合の適正とは何なのか分かりませんが,それ以上に機械の状態を第三者が恒常的に継続的にチェックし続けなければならない理由も必要も特にないということを申し上げているつもりです。 ○後藤委員 今の議論はかみ合っていますか。坂口幹事がおっしゃったような装置を付けるのはよいとして,神幹事は,具体的な機械が本当にそのような装置になっていて,その状態が保たれているかどうかをチェックする必要があるとおっしゃっているわけですね。 ○坂口幹事 本当にそういう装置ではないならば……。 ○後藤委員 最初にきちんとできていて,誰もそれをいじらない,変な細工しないことを前提にすれば,チェックは要らないということになるでしょうが。 ○坂口幹事 いえ,細工の可能性も含めて私は申し上げているつもりです。最初に設計したものと,すなわち仕様書と違うものが納品されてしまっていたり,あるいは,仕様書どおりのものが納品されたけれども,その後,それと異なる状態になってしまっていたりすれば,傍受はできないということです。物理的に音が届いてこないからです。それが担保されていれば,不正の防止という意味では十分なのではないですか。 ○神幹事 例えばスポット傍受機能を組んでいたのが,全然それがもうなくなってしまっていて,全部聞けている状態になっているとか,そういうことというのはあり得ると思うんです。もう全く聞こえなくなるというのは,それは使い物にならないからというのは,おっしゃるとおりだと思うんですけれども,そうではなくて,逆の方向でおかしな形になっているということがないかどうかという意味合いで定期的に検査する必要が,メンテナンスの際でよいのですけれども,そういうことをやるというものがあってよいのではないかと言っているだけですね。 ○坂口幹事 その点についても十分に検討して,御説明もしたつもりですが,スポット傍受については,機械がどういう動作をしたかということについては,原記録に改ざん不能な形で残りますので,裁判官に原記録をお届けし,事後的なチェックも可能です。それで十分だと思いますが,事後的チェックだけでは不十分だという御意見もあり得ることを想定して,最初に送信装置をセットするときに,事業者の側で遠隔で,受信装置の方がスポット傍受についてどういう動作をすることになっているかを確認できるようにいたします,という御説明を第1回のときにしました。   そのようにしたいと思います。ですから,事前に,これから傍受を始めようとするときに,受信側の装置がスポット傍受についてはどういう動作をすることになっているのかというのは,通信事業者側でも確認することができるようにするつもりです。そのとおり動いたのかどうかということについては,事後的に原記録の中で確認ができるというシステムにする予定です。 ○井上分科会長 送信する側が,受信側に組み込まれているプログラムなどを確認できるということですよね。 ○坂口幹事 はい。 ○井上分科会長 それが改ざんされていたり,違うものになっていたら,それは違うわけだから確認できるということですね。 ○坂口幹事 確認もできますし,音はもう届かないということです。 ○井上分科会長 確認した上で送信するので,そもそも届かないということですね。 ○坂口幹事 そのとおりです。 ○井上分科会長 その辺が多分,技術的なので,本当かなと思っておられる方もいるのではないかと思うのです。ですから,それは何度も何度も説明していく必要があるのだろうと思いますね。ほかに,どうぞ。 ○後藤委員 この鍵の生成と,生成装置の管理は,裁判所にしていただくということで,前回ほぼ意見が一致したような気が私はしたのですけれども,そうではなかったですか。 ○井上分科会長 いや,確認をしたわけではありません。そういう意見が多かったことは事実ですけれども。 ○髙橋幹事 裁判所の意見は,この枠内の制度概要に書いてある方です。部会でも今崎刑事局長がその趣旨の発言をしたのですが,捜査機関が作成し,裁判所としての関与としては職員の立会いというのが限度かなと。そうすると,今話が出た生成装置の管理についても,作成をする捜査機関の方で管理をしておいていただくというのが,やはり整合性があるのかなと。鍵を作るときには,捜査機関が裁判所の方に来られるんですかね。そこで書記官が立ち会うという形になるので,ちょっとハードがどれぐらいの大きさか,運搬にどれぐらい支障があるのか,よく分からないんですが,鍵を生成したらまた捜査機関が持ち帰ると,こういうイメージが裁判所としての意見です。 ○井上分科会長 よく分からないのですが,なぜ裁判所に機械が置いてあって,それで作ることが問題なのでしょうか,裁判所の在り方として。そこが,まだ結論しか伺っていないので,十分納得できないのです,私自身。 ○髙橋幹事 そこは,また理論的な面も詰めたいとは思いますけれども,飽くまでも執行の場面の話ですので。そうすると,そこは裁判所ではなくて捜査機関が行うものだと思います。 ○井上分科会長 前から申し上げているんですけれども,令状を出すときに,条件を付けられますよね。 ○髙橋幹事 はい。 ○井上分科会長 その条件を物理的あるいはフィジカルな形で付けると考えれば,裁判所の権限でできるという整理もできなくはないと思うのですが。 ○髙橋幹事 はい。 ○井上分科会長 それに,機器の管理の問題はもちろんあると思うのですけれども,別に裁判所の庁舎内に置いておいても構わないのではないか。裁判所の一角を借りて置くということだってあるので,そこは余りこだわらなくてもよいような気がするのですよ。むしろ鍵の生成を裁判官が主体としてやることに何か問題を感じておられるのかという気がするのですが,それは本当にそうなのですかね。 ○髙橋幹事 こちらとしても,皆さんの御意見を踏まえて,引き続き検討していきたいと思います。 ○井上分科会長 後藤委員が言われたように,裁判所に期待しているわけですから,その期待を受け止める度量が裁判所にあってよいのではないかという気がするのですけれども。 ○神幹事 やはり裁判所は中立的ですから,裁判所で作るというのは非常に良いと思うのです。しかも,通信傍受に使う鍵は裁判所でしか作れない,その機器は裁判所にしかないというのが一番国民の皆さんも安心できるのではないかなと思うんですよね。そこで鍵自体も,作ったものについて,三つなら三つ,通信事業者と裁判所に1個残して,それから捜査機関という形をとればよいのかなとは思っているんですけれどもね。 ○井上分科会長 逆の面から見ると,正に捜査上の処分なので,やはり捜査機関がやるのが筋だというイメージになるのだと思うのですね。 ○神幹事 先ほど,条件としてということで分科会長から話がありましたけれども,場合によっては,この場合,今度新しい制度で通信傍受を行う場合には,裁判官が生成した鍵でもって行うという形のものを令状の中にも書き込むという形にして,制度として作ってしまえばよいのではないですか。 ○井上分科会長 正にそのように制度として作るのが正当かという議論をされているわけですよ。立法ならば何だってできると思われるかもしれないけれども,やはり正当性がないと駄目だろうと思います。 ○神幹事 基本的に暗号というのは,もう総務省と経産省でいろいろな研究してきていて,電子政府推奨暗号というのが決まっているようですから,それを使えば,要するに複製とかいろいろなことができないという形になっていますので,そういうことの作業を裁判所がやるって,それほど難しいことではないような気がするんですが。 ○井上分科会長 その点について,裁判所の方でもなお御検討いただければと思います。   もう一つ,裁判官に対して原記録を遅滞なく提出するという点についても御意見をお伺いしたいと思います。その都度でなくてもよいが,遅滞なくということですが,この点は特に問題はございませんでしょうか。 ○神幹事 問題があるかないかというよりも,終わったものを捜査機関にとどめておく必要はないのではないかなと思いますし,現状で行っているものについても,もうそこで終わったものはすぐ送っているわけですよね。終わってしまった原記録が捜査機関にあっても,それ以降はそれに触れないような仕組みを作るとか何かして,まとめて送るというなら分かるんですけれども。触ったところで改ざんできるかどうか,それは分かりませんけれども,むしろ終わった原記録はその都度裁判所に提出するという形にしておいた方が良いのかなと思います。 ○坂口幹事 今,正に神幹事がおっしゃった,終わったものはそれ以上もう触れないようにしておくというのが,それが正に暗号なのであって,理論的には,傍受が終わった後,原記録がどこに置いてあっても,誰にも触れられませんから,改ざんは不可能です。あるとしたら唯一,暗号を持っており,復号することができるのは裁判所だけということになりますが,それはあり得ない。   捜査機関も,正におっしゃるとおりで,傍受が終わってしまっているのに原記録を持っている必要は全くありません。持っていると保管・運搬リスクが生じるだけですから,持っていたいわけでもありません。ですから,合理的なタイミングで早くどこかに移したい,裁判所へ持って行きたいというのが実情です。   ただ,現状は非常に負担になっているという御説明をしましたが,あれは勘弁してもらいたい。してみると,傍受が終わった段階で一括してお届けするというのが誰にとっても一番不都合がなくて,御納得がいただけて安心なのではないか。ですから,傍受が終了すれば,しかるべき期間内に裁判所へ一括してお届けするということで十分なのではないでしょうか。 ○髙橋幹事 裁判所としても,それに異論はありません。 ○井上分科会長 「通信傍受の合理化・効率化」についての議論はここまでとさせていただきます。   次に,「会話傍受」についての議論に移りたいと思います。   まず,検討課題の「1 令状発付の要件」と「2 傍受の実施の開始までの手続」について議論していただきたいと思います。特に「2」については,傍受の実施の開始までの手続,これまでも,令状提示の要否とか傍受機器を設置する際の立会いの要否に関して,いろいろな御意見を頂いたところですので,それを踏まえて御議論を頂きたいと思います。どの点からでも結構ですので,御意見等のある方は御発言をお願いいたします。 ○岩尾幹事 今,分科会長から御指摘のあった「2」のところの,傍受機器の設置の適正を担保するための令状の提示や立会いをどうするかという問題なんですが,これまでも申し上げてきたとおり,コントロールド・デリバリーの場面については,税関の職員なり,配送業者がいるということから,これは実現可能ではなかろうかと思います。それ以外の場面については,やはり特に対立抗争中の暴力団事務所に,例えば自治体の職員に入っていってもらうかというのは,余り現実的だとも思えないので,そういった現実に非常に困難な場合には,他の代替する適正を確保するような措置というものを許容する仕組みが必要ではないのだろうかなという気はいたします。   ただ,具体的にどうすればよいのかというのは,アイデアがあるわけではないんですけれども,例えば,設置している場面の写真撮影をするとか,機械の力を借りて,ここに必ず設置されて,この装置から飛んできている音を拾っているんだというようなところを自動的に記録化するとか。何かここは具体的なアイデアがあるわけではないんですが,この適正を担保するための措置は,必ずしも令状提示や立会いに限る必要はないのではないかと思います。 ○坂口幹事 私も今,岩尾幹事に指摘されて,そのとおりだなと思ったのですが,確かに観念的・理論的には,どうにかして立会いを求めるということが不可能ではないかもしれないが,現実には非常に困難だという場面は確かに想定されますし,令状で許容されている場所に正しく傍受機器が設置されたのだということを担保する手段としては,何も人間が立ち会うだけには限らないというのも正しくそのとおりだと思いますので,技術的な方法なり何かがあるのであれば,そういう方法も許容されるような制度設計というのは望ましいと私も思います。 ○井上分科会長 その指定された場所に傍受機器を設置せず,違うところに設置していると,目的として許されているのとは異なった会話を拾うということになりますよね。 ○坂口幹事 そうですね。 ○井上分科会長 それを記録しているわけですので,それによりチェックすることは可能ではないでしょうか。違った場所に設置して,偶然に同種の会話が拾われるとはちょっと思えないのです。そうすると,ほとんどスポットのところではねられると思うのですが。 ○坂口幹事 確かに事後的に,何かどうもとんちんかんで,想定されたのとは違う会話ばかりが行われているということは確認できますので,分科会長がおっしゃるような方法での確認はできるかもしれません。 ○井上分科会長 立会い等については,普通の捜索・差押えには必要としているヨーロッパ大陸法系の国々でも,通信や会話の傍受などの処分には必要としていません。そういうことからも,そもそも立会いを必要とする趣旨は何なのかといった原理的なところから考える必要があり,立会いはどういう機能を果たすことが想定されており,それがないとどういう不都合が生じるのかを,抽象的ではなく,具体的に詰めて考えてみる。そこを詰めて議論されていないのではないかと思うのですね。   この点について,ほかに付け加えることがございませんでしたら,会話傍受の検討課題の「3」の「傍受の実施をしている間の手続」について御議論いただきたいと思います。この点については,スポット傍受の要否及び立会いの要否について,これまでもいろいろな御意見があったところですけれども,それを踏まえて,それの要否あるいはその代替措置等について,より具体的に踏み込んで議論していただければと思います。また,傍受の実施期間につきましても是非御意見を伺いたいと思っています。どなたからでも結構ですので,御発言をお願いします。 ○岩尾幹事 傍受ができる期間について,若干,坂口幹事にお尋ねしたいというか,前に御説明があったのは,制度概要の①と②の場面については10日程度以内,③についてはそれより短い数日以内という御提案があったわけですけれども,①と②の10日以内という趣旨は,通信傍受と同じという意味なんですか。それとも,もう少し限定して,10日以内のより短い期間とかいう趣旨だったのかというところなんですが。 ○坂口幹事 10日以内というふうに申し上げましたのは,余り論理的ではないかもしれませんが,通信傍受よりも長いということは制度設計として考えにくいのであろうという趣旨です。逆に,通信傍受と同程度の最長期間として,10日程度。最長として10日以内ということを許容していただけないかという御提案です。 ○井上分科会長 それでよろしいですか。 ○岩尾幹事 延長も含めてということですか。 ○坂口幹事 必要があれば延長していただけるような制度であるべきことはもちろんです。 ○井上分科会長 具体的な数字はなかなか書きにくいですよね。確かにおっしゃるように,通信傍受より長いとすることの正当性は言いにくいかもしれません。ただ,だから,それより短く,例えば半分にするという正当性も逆にないような気もするんですけれども。 ○坂口幹事 今の点ですが,いずれにしても証拠の収集に必要な期間であって,他方,権利制約等のことも勘案しながら,裁判官の方で期間を定めていただけるんだろうと思いますが,やはり上限は通信傍受と同じ程度で10日間程度。長くても10日間程度ですが,ただ,対立抗争なんかの場合は非常に長期間続くということもありますので,やはり延長ということも必要なのではないかと思われます。   それから,だからそうなるという話ではないかもしれませんが,実態としては,振り込め詐欺の拠点なんていうのはもう一発で分かるというか,それほど長期間やらなくても,十分な証拠が短期間で収集できる場合が多いのではないかと思われます。 ○髙橋幹事 とはいえ,延長も通じて30日を超えることはできないという今の通信傍受と同じで,最大そこまでの枠組みということですかね。 ○坂口幹事 それもやはりそうだと思います。通信傍受の最大を超えるほどの必要性は説明できるかもしれませんが,許容性を説明するのはなかなか難しいかもしれません。 ○井上分科会長 ほかの方はいかがでしょうか。期間の点だけでなくても結構ですけれども。大体これまで伺った意見で,ほぼ尽きているというふうに考えてよろしいですか。 ○坂口幹事 以前にも申しましたが,傍受の際の立会い,封印等につきましては,通信傍受と同様の,今御提案しているシステムを使えば十分に適正を担保することはできますので,通信傍受と同様の取扱いとすべきだと思います。 ○後藤委員 スポット傍受的なことをするかどうかが議論になっていました。会話傍受はスポット傍受的なものには適さないという考え方は,つまり,通信の場合と違って単位を区切ることが難しいとことだったと思います。よく考えると,それは会話がどこで終わったかを確定するのが難しいという問題ではないでしょうか。   そうだとすると,例えば,10秒間音声がなければ,そこで一応終わったものとみなすようなやり方を取り入れると,通信傍受の場合と同じような仕組みでできるのではないかと考えます。 ○岩尾幹事 会話の終わりも難しいのかもしれないんですけれども,逆に,始まりの方がもっと難しいわけですよね。通信傍受は,電話がかかってくるから,そこのスタートを必ず捉えて適切なスポットをすれば,犯罪関連通信かどうかというのは見分けられるんですけれども,一旦途切れた会話が,では,どれくらい後に再開するのかというところが,そこは会話傍受の場合の難しさなんだろうという気がしますけれども。 ○井上分科会長 何か技術的な違いがありそうな感じはするのですけれどもね。   この点はそのぐらいでよろしいですか。それでは,ここで10分程度休憩を頂きたいと思います。           (休     憩) ○井上分科会長 それでは,再開させていただきます。   次に,「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」について,特別部会の資料63に基づいて議論を行いたいと思います。   「第1 勾留と在宅の間の中間的な処分」につきましては,検討課題の中でも「4」の「中間処分の内容・勾留への移行」が中心的な課題になるものと思われますし,これに関連して,「2」の「勾留との関係・中間処分の要件」についても議論を行う必要があると思われます。それでは,これらについての御意見等のある方は御発言をお願いしたいと思います。 ○後藤委員 前回これを議論した際には,特に遵守事項のところで,出頭を求められたら出頭するという項目を入れるかどうかで議論になりました。その問題を理論的に詰めていくと,正面衝突になってしまうのだろうと思います。けれども,だからといってこの案を諦めるのは,もったいないと私は思います。この機会を外すと,別の機会にこれを作るのは難しいだろうと思うので。   もう一つ,実際問題として,被疑者の立場に立って考えると,例えば2か月間毎日警察と検察庁に通えと言われたら,それはたまらないけれども,何度か取調べに協力すれば勾留されないで済むのであればその方が有り難いというのが,現実的な感覚だと思います。なので,何とか原理的な対決を避けながら,そういうほどほどの運用に落ち着くような条文の作り方ができないものか,もう少し粘り強く考えたいと私は思いました。   そこで,例えばの案ですけれども,今の案のように一般的な遵守事項として,求められたら必ず出頭しろという趣旨を書くとなると,非常に抵抗が大きいです。そこで,遵守事項にはそれを書かないでおいて,勾留への移行のところで,例えば現在の条文の表現を借りると,正当な理由がなく出頭の求めに応じないことがあって,そのために罪証隠滅とか逃亡すると疑うに足りる事由が生じたときに勾留に移行することができる,といった書き方をしたら,運用でほどほどのリーズナブルなところに落ち着けることができないだろうかと考えました。 ○井上分科会長 反対の立場では,それでは満足しないということでしょう。要するに,出頭を確保したいということからすると,それでは間遠になるわけですからね。だから,それで本当に折り合いが付くのかどうか。本当に突き詰めないで,頬被りすることで,できるのかどうかですね。ほかの方はいかがでしょうか。 ○青木委員 今の点ですけれども,前回の部会のときに村木委員が言われていたように,今,後藤委員も言われましたけれども,確かに2か月間毎日毎日出頭するというのはとても耐えられないことでしょうし,恐らくそういうことを考えられてこれを作られたわけではないのだと思うのですね。   ただ,村木委員も言われたように,この案文そのままを見ると,それも可能なように見えてしまうということがあります。そこで,取調べ受忍義務を認めるつもりはないですけれども,今の後藤委員の御発言につなげて,このように制度を考えるとしたらという意味で,少なくとも2か月間連日のように取調べに出頭しなければならないようなことが想定されているわけではなく,在宅で一般的に普通に行われているような取調べに応じるということが想定されているということを,ここに書くかどうか,遵守事項に書くかどうかは別として,どのように表すことになるのでしょうかという質問なんですけれども。   要するに,これだとやはり毎日でも,場合によってはあり得るということになってしまうと思うので,そこら辺はどうなんでしょうか。 ○岩尾幹事 結局,正当な理由がある場合には当然出頭義務はなくなるという前提として,そもそも出頭の求め自体が,60日間毎日呼び続けることが正当な理由がある求めになっているのかなということだと思いますね。だから,そういうような出頭しないこと,出頭義務を解除する正当な理由というのは,前提として,出頭を求めること自体も正当なものであるということが当然前提になっているのではなかろうかという気はします。   後藤委員が言われた,出頭しないということは,今の刑訴法の199条でも一定の軽微な事件の逮捕の要件になっていますけれども,それ自体は罪証隠滅や逃亡のおそれの徴表として,その事実自体でそういう処分を可能にしようという考え方だと思うんですね。そうではなくて,そういった出頭しないことによりこういうおそれが認められるという要件の書き方をすると,その因果関係といいますか,出頭しなかったことによって罪証隠滅のおそれが高まったということを疎明するのが非常に難しいのではなかろうかと思いますし,かつ,元々罪証隠滅や逃亡のおそれがあることを前提にしてこういう処分がとられているということからしても,それによって罪証隠滅や逃亡のおそれが高まったかどうかというようなことまで要件として求める必要はないのではなかろうかと思います。   実際,何らかの理由で罪証隠滅や逃亡のおそれが高まったようなケースは,当然今の制度概要のところでも,「4」の(1)の「エ」のような形で,バスケットとして設けられているわけですね。そういうバスケットとは違って,こういった一定の事実が生じたときに,もうその事実のみをもって移行できるという事由が必要なのではないかという考え方に基づいて,そもそも出頭義務を遵守事項の中に入れるべきではないかと考えております。 ○後藤委員 岩尾幹事がおっしゃったのは,刑訴199条1項ただし書の場合の要件としての不出頭ですね。これも逮捕の必要性の徴表として捉えられていると思います。逮捕の必要性があるとみなすわけではないですね。みなしあるいは自動的な要件ではなくて,それがあるために,逮捕要件としての逃亡のおそれが推認できることが,最終的な要件にはなっているのではないでしょうか。徴表というのはそういう意味でしょう。私の先ほどの案は,それと同じです。 ○岩尾幹事 結果的に,これが勾留に移行するのですから,勾留を認めるためには勾留の理由や必要性というのは求められるわけですね。最終的に裁判所の勾留裁判を経るわけですから,そこでは必ず担保されるわけですね。その移行事由のきっかけとして,まずは引致をして勾留請求をするというきっかけとしては,その事実のみをもってそれが発動される,要は,勾留請求できるという要件が必要なのではないかという発想なのです。 ○井上分科会長 そういうふうに裏から書けば,青木委員の方も耐えられるのですか。 ○青木委員 いや,今直ちに何か返事をするのは怖いのですが。けれども,一般論として,裏から書くかどうか,書き方は別として,実際問題として,在宅の場合も含めて,取調べに応じないで頑張りましょうというものがすごくたくさんあるかといったら,そうではないのだと思うのですよ。   先ほど後藤委員が言われたように,もうその20日間,10日にしろ20日にしろ,100パーセント身体拘束をされるよりは,取調べに応じてでも,そういう中間的なものがあれば,そちらを使いたいという人がいることも多分間違いないだろうと思いますから,それを何らかの形でうまく入れるようなものがあればよいなという思いは変わらないです。だから,その工夫は,今ので良いのかどうかはちょっと別としまして,何らかの工夫はあってもよいのかなとは思っています。 ○井上分科会長 提案されている立場ですので,その工夫を形に表していただきたいのです。議論が堂々巡りになっており,結局,表から書いたら取調べ受忍義務を肯定することになるので,これは認められないということを言われるわけですが,他方,現行法において勾留の場合にはそのような義務が認められているから,その一部に替えて中間処分を設ける場合も,それは外せないと主張されるわけで,にっちもさっちもいかなくなっている。後藤委員のは,それを裏から書いたらどうかということですが。 ○青木委員 それも一つの案だとは思います。 ○井上分科会長 裏から書いても,結局,同じことではないでしょうか。 ○青木委員 全く同じかどうかということになると,どうなんでしょうね。 ○井上分科会長 見かけはちょっと違う。しかし,受け取り方がソフトになるという違いに過ぎず,実体としては同じですよね。 ○後藤委員 理屈は違うのではないですか。私が先ほど申したような考え方は,取調べに応じないこと自体が勾留の理由になるわけではないです。そこから逃亡の可能性が強まった場合に勾留に移行できるという考え方ですから。 ○井上分科会長 でも,正面から出頭する義務があると言って,それに違反したときに直ちに勾留ということにはならず,裁判所が勾留の必要を認めなければ勾留にならないわけなので,同じことだと思いますね。そういうことなので,どのように書こうと,結局,実質的に折り合えるのかということになると思います。 ○坂口幹事 そういうおつもりではないのだと思いますが,被疑者側に選択権がある,あるいは,選択権とは言わないまでも,被疑者側のニーズに応じて身柄の処分の在り方が決まってくるみたいなものは,そもそもこれは捜査の在り方を規律しようとしている場面なのでしょうから,議論がそもそもおかしいと思います。   それはともかく,出頭義務の問題,それから更には滞留義務,取調べ受忍義務の問題を曖昧にしたままで特別部会に,この作業分科会として何らかの報告をするということには反対です。その何か難しい部分を覆い隠したままで,ある意味中途半端で,ある意味無責任なものを特別部会に報告するというのは,誠実ではないのではないでしょうか。 ○髙橋幹事 正当な理由があるかどうかというのが,最終的に引致の要件にもなりますし,勾留の要件である遵守事項違反になるのかどうかというところで,実際の場面では相当せめぎ合いが生じると思うんですね。先ほど言われた,例えば60日間ずっと毎日呼出しをかけること自体が正当な理由のある求めなのかということになる。そこは,裁判所としてはどう判断すればよいのですかね。例えば,もうしゃべらないというふうに決め込んでいるのに,毎日毎日,今日も来てくれ,今日も来てくれ,こういう場合とか,あるいは,もう既に十分しゃべったと思っているのに,さらに捜査側が根掘り葉掘り,あれもこれも聞きたいという場合。被疑者側からしたら,もう行く必要がない。捜査側としては,いや来てもらう必要がある。かなりせめぎ合いが生じると思うんですけれども,その辺りもきちんとここである程度議論しておかないと,運用の場面でいろいろ混乱が生じるのかなという点が一つ。   それからもう一つが,仮にその判断が難しいことが想定されるのであれば,この2か月間という設定自体がそもそもどうなのかなと。例えば,今勾留されている人をこの中間処分に落としたいというのであれば,ある程度それなりの負担も甘受しないといけないと考えると,例えば原則10日,あるいは延長があれば20日までとしておいて,その期間は求めがあれば出頭することにすると。それは,留置されているよりはまだ自由が利くだろう。そんな発想も一つのアイデアとしてはあり得るのかなと思うんですけれども。そういった観点からの議論とかもできないのかなと思うんですけれども。 ○井上分科会長 今の御趣旨は,中間処分の期間自体を10日,20日にするということですか。 ○髙橋幹事 飽くまでも一つのアイデアとしてですが。 ○井上分科会長 ただ,勾留とのバランスという点で,それでよいのかということが,別の観点からは問題になり得ますね。確かに,取調べのために出頭を求めるということからすると,元々勾留の場合だって10日,あるいは20日ではないかということになるかもしれませんけれども,勾留ではなく,身体の拘束は解く,その場合に,そういった処分を継続すべき期間自体の問題として,10日,あるいは20日でよいのかという問題は生ずるのだろうと思うわけです。 ○青木委員 今の髙橋幹事の御発言に触発されて言うのですけれども,中間処分という言い方ではあるのかもしれませんが,今の話だと,むしろ勾留代替というのですかね。勾留そのものなんだけれども,勾留代替処分として何か別の義務を課して,だから,正に勾留なんだと思うんですね。だけれども,自宅監禁ではないかもしれませんが,20日とかという限定をするのであれば,そういう限定付きの勾留,勾留というか中間処分で,むしろ性質としてはかなり勾留に近いもので,ただ,留置施設なり拘置所に泊まる代わりに自宅に帰るというようなものとして,そういう意味では,かなり違う形になるんでしょうけれども,そういう制度設計は,それはそれとしてあるのではないかという気はします。だからむしろ,どちらかというと勾留に近いんだけれども,その一部が解除されているようなものという感覚だと思うんですけれどもね。   そうだとすると,今現実に実務としては,勾留されている場合には,出頭・滞留義務があるとされているわけですから,それにかなり近いもので,ただし,そこの部分を除くと,一部だけ自由があるというものだということであれば,多少,取調べ受忍義務との関係では説明がしやすいかなという気はします。 ○井上分科会長 それで弁護士会が納得するなら,多分ここまで激しい議論にはならなかったのではないかと思いますけれども,今の青木委員のイメージというのは,……。 ○青木委員 取調べのための出頭義務があるかないかということではなくて,実際の実務としてそうなっているということを前提にして……。 ○井上分科会長 でも,法規に明示する必要があるわけですから,それでは済まないでしょう。 ○青木委員 勾留だとすると,要するに勾留の一種であるとすると,今の条文はそのままでよいわけですよね,逮捕又は勾留と言えば。 ○井上分科会長 それは,この前の議論のときにちょっと要約させていただいたのですけれども,刑訴法198条1項のただし書のところに,「勾留」と書いてある,そこに「(勾留に代わる処分も含む)」と付記するのと同じアイデアですよね。 ○青木委員 そうですね。 ○井上分科会長 しかし,そういったことにも抵抗を感じておられるのかと思ったのですが,弁護士会の方は。   それに,今おっしゃっている処分のイメージは,これまでおっしゃっていたのとはまた違う,強度の強い中間処分を提案なさっているように見えます。例えばアメリカなどで用いられているハウス・アレスト,被疑者に発信機か何かを付けて所在を常に確認できるような仕組みですが,そのようなイメージですけれども,今までおっしゃっていたのはそうではなく,勝手にどこかに行かないとか遵守事項に反しないという限りでの不自由を負担させる。そのような処分をイメージされていたように思いますので,前提がずれてきているような感じがするのですけれども。 ○青木委員 必ずしも自宅監禁的なものでなくても,形は今までの中間処分で,別に取調べのためということではないのだとは思いますが,ただその期間は短いので,その間に,実際上はもろもろのことを,もっと詰めた形で,2か月間毎日というのではなくて,その期間に行うという,やはり多少,取調べの問題に入らざるを得ないのですけれども。 ○井上分科会長 そうでしょう。ですから,勾留のところに「中間処分も含む」と書くとすると,やはり,その問題は出てくるわけですよ。正にその規定をめぐって,取調べ受忍義務があるとする説と,そこまではないけれども出頭・滞留義務はあるという説,そのような義務は全くないという説が分立していて,相容れないわけで,そういう状況の中に飛び込むことになるし,飛び込まざるを得ない。それを避けるわけにはいかないと思うのですね。 ○青木委員 別に弁護士会なり日弁連を代表するわけではなくて,私の個人の意見としては,少なくとも今よりも在宅的なというんですかね,施設に勾留されるのではない形のものが広がるのであれば,ある程度実務を前提として,その延長でやるというのもあってよいのかなと個人的には思います。 ○井上分科会長 何度も申しますが,問題は,法文に明記する必要があるというところなのです。 ○川出幹事 中間処分の期間についてですが,それを勾留期間よりも長期にしている,この制度案は,二つの面から説明ができるのではないかと思います。その一つは,身柄拘束されている場合には被疑者の負担が非常に大きいので,勾留については20日を最大限としているのに対し,中間処分の場合は,身柄拘束されていないので,その分,期間を延ばしてもよいのだという理由です。そして,もう一つは,逮捕・勾留中の被疑者には取調べ受忍義務があるという前提ですが,身柄拘束されている場合というのは,インテンシブに被疑者の身柄を利用した捜査ができるのに対し,中間処分になると,それができなくなるので,その分,期間を延ばすことが必要であるという理由です。   その上で,先ほどから出ている,中間処分の期間を勾留期間と一緒にするという提案ですが,それは,捜査を,勾留されている場合と同様に行うのだということが前提になりますので,そうなると,中間処分の期間中,10日なら10日,毎日呼び出して取調べをするというようなことになってしまうように思います。それは,先ほど申し上げた,中間処分の元々の発想とはずれてきますので,その意味では,期間を一緒にするのではなく,勾留よりも期間を延ばすという形にした方が良いのではないかという気がします。   先ほどの議論に即して言えば,この制度は,期間を2か月にした上で,毎日被疑者を呼び出して取調べをするということはそもそも想定されておらず,むしろ,それができないからこそ,期間が延びているという面があるのではないかということです。 ○井上分科会長 理屈でそう言えるかどうかですね。実際問題としては,2か月もあるんだから,それほど毎日みっちり調べることはないでしょう。最初の方は密でも,少し間を置いてということもできる。そういうことに事実上なるかもしれないけれども,理屈として,毎日取り調べるということができないから,長くてしかるべきだということが言えるかというと,無理ではないでしょうか。 ○川出幹事 確かに,その問題はあるのですが,ただ,被疑者は,正当な理由があれば出頭を拒めるわけです。例えば,仕事があるので,毎日出頭することはできないというのは,恐らく正当な理由になると思います。その意味で,身柄拘束されている場合と比べると,中間処分の場合は,取調べができなくなるということは言えるのではないでしょうか。 ○井上分科会長 なるほど,正当な理由に当たる事態が事実上多くなる,在宅の場合に近くなるということでしょうか。 ○川出幹事 はい。だからこそ,中間処分は期間が長いという面もあると思います。被疑者に与える不利益が小さいということだけが理由ではなく,捜査上の観点も考慮されているのだということです。 ○井上分科会長 捜査がやりにくくなるということですか。 ○川出幹事 はい。そういう発想だと思いますので,勾留と期間を一緒にしてしまうというのは,やはり制度の前提が崩れてしまうのではないかなという気がします。 ○岩尾幹事 実務的な面から見ても,どういう事件をターゲットにするかという議論も最初ありましたけれども,これはやはり,罪証隠滅や逃亡のおそれはあったとしても,こういった一定の遵守事項を課すことによって,その程度はかなり低くなる,そういった比較的軽微なものをターゲットにするというところは,ある程度共通認識だったように思いますが,その軽微な事件について,本当に60日間毎日呼ぶなんていうことは,この前,部会でそういう議論が出て驚いたというか,私は全く想定もしていませんでした。   実務的に今,在宅の事件がどれぐらいの期間で処理されているかというと,おおむね軽微な事件だと送致後1か月,2か月というのが平均的な処理期間で,そういった平均的な処理期間に合わせて中間処分の期間を設定すると,ある程度呼出しを受ける被疑者にとっても合理的に出頭でき,通常の生活と呼出しに応じるという義務の履行とが折り合いの付くようなものになるのではなかろうかという,これは実務的な観点から,そういうふうにも言えるのだろうかと思います。 ○井上分科会長 ほかに,今の「4」と「2」について御意見はございませんか。 ○青木委員 「2」に関して,よろしいですか。今のにも関連するんですけれども,結果として,この中間処分が設けられた場合に,そこでターゲットになるのは比較的軽微な犯罪,軽微な刑ということになるのかもしれませんが,ここに書かれているように,最初から法定刑で区切るというのはやはりおかしいと思うんですね。   裁判所は,勾留請求された場合に,ここに書かれているようなものについて却下することはあり得るわけですよね。却下するということはできて,要するに在宅になってしまうものはあっても,中間処分には一定の法定刑のものはできないというのはおかしいような気がするので。いずれにしても,それぞれの事案事案によって変わってきて,結果として軽微なのものに落ち着くことはあるにしても,法定刑で最初から区切ってしまうということは必要ないのではないかと思います。 ○井上分科会長 新たな争点を提示されましたけれども。 ○髙橋幹事 確かに,この制度概要の「1」には「ア」から「オ」まであるんですが,例えば「ア」のような事案,これは強盗とかも入ってきますかね。事案によっては,軽微な強盗だと必要性がないしということで却下することもあり得ますし,例えば「イ」でも,前科として殺人未遂の前科が仮にあったとしても,次に窃盗か何かで勾留請求がされた場合に,その窃盗だけを見れば必要性がないなということで勾留請求を却下するということ,これは実際にあり得ますので,もし例えばこの「ア」とか「イ」みたいなものを入れてしまうと,勾留請求却下ができるものでも中間処分はできないと。何かちょっとアンバランスな感じになるなというのは,実務の運用から見てもそこは,なるほど,そうかなという気はいたします。 ○坂口幹事 「4」のところの遵守事項の遵守をどのようにして担保するかという問題ですが,私は,既に1回御指摘いたしましたが,これは基本的には逃亡のおそれがある人,罪証隠滅のおそれがある人を対象として議論しているのだと思っていますので,そもそも逃亡や罪証隠滅を防止できるような遵守事項というのは定められないのではないか,仮に定められたとしても,では,それを誰がどうやって担保するのかということについては,ますます不可能ではないかというのが私の主張です。どのようにして担保するのかについては,どなたからもアイデアが出ていないと理解しています。担保できないのであれば,制度もあり得ないと思うのですが,何かアイデアはあったのでしょうか。 ○井上分科会長 今の御意見は,この制度の採否自体に関わる問題であり,ここでももちろん担保の方法が考えられるなら考えなければならないですけれども,アイデアが出ないとすると,特別部会の場でその点が議論になり,採否の判断に影響してくることになるのだろうと思いますね。 ○岩尾幹事 坂口幹事がおっしゃるとおり,罪証隠滅・逃亡のおそれがある人を前提にした制度ですので,その遵守事項の遵守を担保するというのは非常に制度としては難しい。一時期,罰則を設けるというような案もありましたけれども,では,一体どんな行為に罰則を科すんだろうと。遵守事項も,これは当面考えられるものを遵守事項として挙げているだけであって,当初想定した遵守事項とは違う形の罪証隠滅行為に及ぶということもあり得るわけですね。そうすると,それにまで罰則をかけようとすると,単純に自己の罪証隠滅行為に罰則をかけるのとほぼ同じになるという問題点がありますし,罰則というのを遵守事項違反に対してかけたときに,ある意味形式犯に近いようなもので,青木委員の御提案も,非常に軽い法定刑のものしか御提案されていなかったように,それほど重い法定刑を科すというのは難しいわけですね。そうすると,元々嫌疑をかけられた罪より軽い法定刑の罰則を設けることによって遵守事項の遵守を担保しようというのが,ちょっとナンセンスな感じがします。   そこで,今の制度概要案というのは,なかなか罰則での担保というのは難しいのではないかということから,それならば,やはりできるだけ類型的に罪証隠滅や逃亡のおそれのあるものは入口で切って限定して,比較的軽微なものにとどめるということが,むしろ画一的で分かりやすい制度ではないかということで,先ほど反対の意見もありましたけれども,「ア」,「イ」,「ウ」など,そこに掲げられている権利保釈の除外事由のようなものを規定するという方法がよろしいのではないかと考えているところです。 ○青木委員 前も同じ議論をしたような気がするんですけれども,要するに勾留しなければ罪証隠滅のおそれが消滅しないような人は,それは勾留せざるを得ないのだと思うんですね。これは,遵守事項を課すことによって,そういうのが軽減されるような人を中間処分にしましょうということなわけで,一方で却下するというのもあるわけですから,それだって100パーセント防げるかどうかなんていうのは分からないわけで,そういう意味で,本当に100パーセント防ぐのだったら全部勾留するしかないとなるんでしょうけれども,却下があって勾留があって,その中間がないというのは,やはり逆におかしいと思うんですね。   だから,それを担保する,もうぎちぎちにしなければならないというのであれば,それはどんなことをやっても無理なのですから,勾留するしかないというふうになるのであって,中間処分にふさわしい人というのを,それは遵守事項を課すことによって守れそうな人というのを決めればよいだけの話だと思います。それで,それが法定刑で一律に,類型的に決まるかといったら,そういうものではないと思うので,ここで先にそれを入れたからといって,余り意味はないような気はしますし,むしろ矛盾するようなことになると思いますので,それはどうやって適切な人を選ぶかというだけの話のような気がします。 ○井上分科会長 「だけ」とおっしゃるけれども,正にそれが難しいのですよ。そこが正にポイントなのであり,それを入口のどこでどのように仕分けるのか,形式で切るのか,それとも裁判所にお任せするのか,そういう問題だと思うのです。 ○坂口幹事 青木委員は最後のところで,そういう人を選べばよいというお話をされましたが,皆さん,終わった事件のことばかり考えてこの制度のことを考えているから,そういうふうに言えるのだと思いますが,今,正に捜査をやっている最中というか,これから逮捕して,これから捜査をやろうとしている立場の捜査官の視点で是非考えていただきたい。確かに結果として,振り返ってみれば,この人はこういう身柄の処分でよかったかもしれないということを思わないではないときもありますが,これから捜査しようというときに,この人は身柄をとらなくてもよい人なんだ,大丈夫な人なんだって誰が分かるのですか。このような話を随分前に,青木委員にしたと思いますが,私,何人も死なれています。何人も逃げられています。何人も隠れられています。見分けはつきません。 ○井上分科会長 時間の都合もありますので,次に進ませていただいてよろしいでしょうか。   次に,検討課題「3 勾留請求時及び勾留中の中間処分の選択」について議論していただきたいと思います。御意見等のある方は,御発言をお願いいたします。 ○青木委員 検察官が勾留を請求した場合にも中間処分を可能とするかというところですけれども,これはやはり可能とすべきだと思います。検察官が勾留請求した場合に,先ほどと同じような話ですけれども,裁判所は却下もできるわけですね。でも,却下までするのはどうかと思うけれども,何らかの遵守事項を課せば中間処分でも足りるという判断は当然あり得るわけで,それができないというのはやはり,その場合には勾留するしかないとなるのか,却下するしかない,どちらかしかないというのは好ましくないのではないかと思います。   もちろん,勾留請求された場合に検察官の意見を聞くんでしょうから,中間処分にふさわしいかどうかということに関しても,何らかの意見は恐らく聞くことになるのだろうとは思います。 ○井上分科会長 裁判所は,そうすると,請求のない処分を職権で課すことができる,ということになるのでしょうか。 ○髙橋幹事 職権になるのか,あるいは勾留より,より制限的でない,要するに中間処分が勾留の中に含まれるというんですかね。勾留請求の中に,勾留が駄目だった場合は中間処分でもありですよと。 ○井上分科会長 検察官の請求に含まれているということですか。それは理屈としてはちょっと変ではないですか。検察官としては,中間処分では不十分だと考えるので勾留を請求しているというのに,中間処分の請求も含んでいると言えるのでしょうかね。含んでいると言えないとすると,やはり裁判所の職権による処分ということになるのではないですか。 ○後藤委員 検察官の立場から見れば,勾留請求が認められないときに,単純に却下されるよりは,中間処分にしてほしいと考えるのが普通ではないですか。だから,そういう予備的請求が普通はあると考えてよいでしょう。 ○井上分科会長 そういう場合もあるかもしれませんけれども,検察官としては飽くまで勾留でなければ困ると考えていて,裁判官が勾留にはできないと判断した場合,それでは中間処分でも構わないということに当然になるかというと,そうはならない場合も多いと思うのですが。 ○後藤委員 検察官は,中間処分にも付してほしくないと思うわけですか。 ○井上分科会長 検察官としては飽くまで勾留してくれと請求しているのですから,予備的とはいえ中間処分の請求を含んでいると常に言えるかどうか,理屈としてちょっと無理があるように思われるわけです。 ○川出幹事 私も同じ意見なのですが,この制度案では,まず,検察官が勾留請求をするのか,中間処分を請求するのかを選択することになっていますので,検察官が,中間処分ではなく勾留を請求している場合というのは,当該事件は,中間処分では,逃亡や罪証隠滅は防止できないという判断のもとに請求をしてきているわけですから,そのときに,裁判所が検察官の意思を中間処分でも良いというふうに考えていると解釈するというのは,制度の仕組みからしておかしいように思います。   それから,実際問題として,裁判所が,勾留は認められないけれども,中間処分なら良いという判断ができるのかという問題もあろうかと思います。裁判所としては,どのような遵守事項を付ければ,中間処分でも大丈夫なのかということを考えて,決定することになりますが,それを判断する際に,検察官の意見を聞くとしても,検察官は,この被疑者については遵守事項を付けても逃亡や罪証隠滅は防止できないという前提で勾留を請求したわけですから,検察官としては答えようがないと思います。検察官が,捜査の段階での様々な事情を考慮した上で,中間処分ではだめだとして勾留請求をしてきたときに,裁判所がこの人は中間処分で良いというような判断をすることは,実際上はかなり難しいのではないかという気がします。 ○髙橋幹事 まず,川出幹事が最初に言われた点ですが,検察官が中間処分でも良いと,常にそう考えるわけではなくて,却下されるよりは中間処分の方が捜査側としてもまだ良いだろうというのは,考えとしてはあり得るのかなということです。   それからもう一つ,遵守事項に関してですが,現在でも,勾留請求があったときに必ず検察官に意見を聞くわけではないです。その請求が正しいと思えばそのように判断しますが,むしろ却下を検討しているときに,これはどうして勾留請求したのかと,本当に罪証隠滅・逃亡のおそれが,具体的にどこにあると思っているんだと,そういうことを聞くことはありますので。そうすると,中間処分の関係も,ちょっと似たようなやり取りはあり得るのかなと。裁判所では勾留までは難しいと考えていると,具体的にどういうところを恐れて勾留請求をしているんでしょうというようなことを聞くと,例えば被疑者はこんなことをやりそうだと。では,そこを遵守事項として網かぶせておきましょうか。実務の運用としては,そういうやり取りの中で遵守事項を定めるということは,可能だと思います。 ○川出幹事 もう一点,疑問なのは,ここで,勾留請求があった場合にも中間処分を認めるという場合に,どういう事案が想定されているのかということです。今のお話では,勾留請求がそれ自体として認められないという場合に,裁判所が中間処分を言い渡せるのかという問題設定のように思いました。   ただ,検察官が勾留請求をした場合に,裁判所が中間処分ができるとした場合には,勾留請求自体をとってみれば要件を充たしているけれども,中間処分でも逃亡や罪証隠滅を防止できるというような事案も,その対象に含まれることになると思います。そうでなければ,被疑者にとっては意味がありませんので。ただ,それを認めることになると,検討課題の「2」のところで,補充性を要求するのと同じことになってくるように思いますので,その点と整合性も考えなくてはならないと思います。 ○岩尾幹事 髙橋幹事がイメージしているのは,要は,検察官は勾留でないと駄目だと思って勾留請求して,裁判所が,何か遵守事項を付けて中間処分でどうかと考えた場合に,そこで検察官が納得すれば,そういう手続に移行もできるでしょうし,それは何らかの解決策はあるような気はするんですけれど,これは絶対勾留でないと駄目だと,もう勾留却下してもらって,準抗告した方が良いと思っているときは,どういう手順で今のような打合せができるんでしょうか。 ○後藤委員 勾留請求したけれども中間処分に付すという決定をもらったら,それに対して準抗告ができるのではないですか。 ○髙橋幹事 別に検察官と打ち合わせして判断するわけではないので。要するに,情報をいろいろ収集した上で,裁判所は中間処分が適当だと思えばそういう判断をするということです。 ○岩尾幹事 いや,検察官の意見を聞いて,適切な遵守事項が定められますという御説明だったから,勾留でないと罪証隠滅や逃亡の防止はできず,そういった適切な遵守事項はあり得ないと検察官が考え,準抗告して争いますと言っているときに,裁判所としては,その段階でもう中間処分にするわけですから,そのときの遵守事項というのは適切に定められるんでしょうかという,そういう質問なんです。 ○髙橋幹事 そこは一件記録を当然裁判官も見ますので,具体的にこういう人物と接触することが罪証隠滅につながるのではないかということを裁判所が判断することは可能といえば可能ですけれども。 ○保坂幹事 今の御発言についてですが,一件記録を御覧になって,罪証隠滅を防ぐためには,この人との接触を禁止すればよいと裁判官が判断できるのは,多分,起訴後の保釈のイメージだと思うんですね。ところが,捜査の段階というのは,まだ調書も取れていない人,これから取ろうとする人というのが一杯いるわけで,捜査の進め方を分かっていない裁判官が,記録だけ見て判断ができるかどうかというところが問題なのではないでしょうか。 ○髙橋幹事 それはもちろんケース・バイ・ケースですので,比較的単純な事件であれば裁判所が判断できることもありますし,複雑で背後にどんな人間関係があるのか分からないというような場合は,むしろ中間処分にふさわしくないということになるのではないでしょうかね。 ○井上分科会長 今の点について,さらに追加の御意見がなければ先に進みたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。   次は,検討課題の「5」ですけれども,「起訴後における中間処分の必要性」についてです。この点について御意見等がある方は御発言をお願いいたします。 ○岩尾幹事 これは青木委員に質問なんですけれども,起訴後の中間処分の必要性がよく分からないんですけれども,そのまま何か中間処分を続けたとしても,意味のある中間処分になるのかどうなのかということなんです。要は,遵守事項がそのまま,起訴前のものと起訴後のものが共通して妥当するのかどうかという点もあって,仮に2か月間経って,きちんと出頭し,きちんと供述をして起訴できたという状況を考えると,要らなくなる遵守事項というのは相当多数あるわけで,そういう意味で,起訴後についても必ず中間処分が必要になるという事情がよく分からないのです。そこはいろいろな事態があって,むしろ罪証隠滅や逃亡のおそれが高まっているというような事情があるのであれば,それは正に求令状起訴するという事態もあり,それで,それに対する保釈という仕組みもあるわけですから,基本的には起訴後に保釈と併存するような形でこれを認める必要性がないのかなと思っております。 ○青木委員 起訴前に,確かに取調べの関係とか捜査の関係は,もしかしたら遵守事項は関係なくなるかもしれませんけれども,出頭の確保ということでいえば同じですよね,裁判所への出頭とか,そういう部分で残るものは当然あり得ると思うんですね。それでもちろん,それも要らなくなったら,何らの処分もかかっていない形になるのでしょうし,逃亡のおそれが高まれば勾留になるのでしょうけれども,では,何らかの,逃亡しないという出頭確保のための遵守事項があって,それは引き続き起訴後もあった方が良いという場合がないわけではないでしょうから,そういうものも残るのではないですかというふうには考えられますけれども。主に出頭確保のところだと思いますけれども。 ○井上分科会長 保釈との関係は,どういうふうに整理されているんですか。 ○青木委員 あえてそこでまた別の形で保釈というふうにしなくても,中間処分が続いているという状態で賄えるのではないかということなのですけれどもね。勾留はそのまま続くわけですよね,もし勾留であるとすれば。勾留が続いている場合に保釈ということになるのでしょうけれども,中間処分であれば,元々身体拘束されているわけではないんですから,そのまま引き続きということもあるのではないかと思いますし,あって困るものでもないのではないかと思います。実際に中間処分に付されたままというのが多いかどうかは別ですけれども,そういうものも残るのではないかと思うのですが。 ○井上分科会長 ほかの方はいかがでしょうか。   それでは,次に,「第2」の「身柄拘束に関する適正な運用を担保するための指針となるべき規定」についてでございますけれども,この検討事項に関しては,「考えられる規定の概要」の「1」と「2」において,それぞれについて,2つの案が併記されていますが,検討課題にありますように,他に適切な規定があり得るかという点を中心に議論していただければと思います。   御意見等のある方は,御発言をお願いします。 ○青木委員 前回こちらの出した案について,いろいろ御意見を頂いて,指針としての書き方とか,その書きぶりについてなどなど含めて,このままの形で良いのかどうか,もうちょっと検討してみたいとは思っているんですけれども,趣旨を変えるつもりは基本的にはないのですが。   あと,「2」の方についても,若干御指摘いただいた点について,このままで全てカバーできるのかというような御指摘もあったかと思いますので,言葉として何か足す必要があるのかもしれないと思っているんですが,今日までにまだ良い案が思い浮かびませんでしたので,もうこれでがちがちに固められるということであれば,そうではない形をちょっと考えたいと思います。 ○井上分科会長 いつ頃までに出していただけるのでしょうか。 ○青木委員 次に議論する機会があるのかどうか分かりませんが,次の分科会より前には考えたいと思います。 ○井上分科会長 なるべく審議の予定に合わせて出していただいた方が生産的だと思いますので,お忙しいでしょうけれども,お考えください。   ほかに御意見等がなければ,このぐらいにしたいと思います。一応予定した議事はこれで終わりです。   本日議論した「通信・会話傍受」と「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」について,次回の会議でも更に議論するか否かにつきましては,早急に検討させていただきたいと思いますけれども,基本的に次回は,「取調べの録音・録画制度」及び「刑の減免制度,捜査・公判協力型協議・合意制度,刑事免責制度」についての議論を中心に行いたいと考えております。   なお,部会に報告する「たたき台」の具体的な内容につきましては,次回会議の議論も踏まえて検討させていただきたいと思いますけれども,いずれにせよ,次回会議の後に「たたき台」の案を策定し,それを皆さんにお示しして御意見を頂きたいと考えております。もっとも,これは前にも申し上げましたが,飽くまで特別部会での議論のための「たたき台」であり,叩かれて潰され,あるいは叩かれて形を変えるということはあり得るというものですので,そういう性質や,特別部会までの時間的な制約ということもあろうかと思いますので,最終的な調整や取りまとめは分科会長である私の方にお任せいただければと考えております。その過程で皆様の御意見は十分お伺いするつもりです。   予定した事項は全て終了しましたので,本日の議事はこれまでとしたいと思います。   本日の会議の内容につきましては,特に公表に適さないものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにして議事録を公表するということとさせていただきたいと思います。また,これまでと同様に,議事録ができるまでの暫定的なものとして,事務当局において本日の議論の概要をまとめたものを全委員・幹事に送付してもらうことにしたいと思います。   次回の日程は,来年1月22日水曜日の午前10時から午後零時30分までを予定しております。場所については,追って御連絡させていただきます。   年内はこれで一応終わりですので,年末年始,英気を養われ,次回の会議に臨んでいただければと思います。   どうもありがとうございました。 -了-