法制審議会 商法(運送・海商関係)部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  平成26年7月23日(水)自 午後1時31分                      至 午後5時39分 第2 場 所  法務省 第1会議室 第3 議 題  商法(運送・海商関係)等の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山下部会長 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会商法(運送・海商関係)部会の第4回会議を開会いたします。本日は,御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   初めに,前回会議から本会議までの間に委員等の交代がありましたので,御紹介いたします。御紹介いたしましたら,その場でお名前と所属等の簡単な自己紹介をお願いいたします。   まず,萩本修前委員に代わりまして,金子修委員でいらっしゃいます。 ○金子委員 7月18日付けで民事法制管理官から大臣官房審議官になった関係で,こちらの部会でも幹事から委員になりました。この部会との関わりは変わりませんので,引き続きよろしくお願いいたします。 ○山下部会長 よろしくお願いいたします。   ただいまの金子修前幹事に代わりまして,筒井健夫幹事でいらっしゃいます。 ○筒井幹事 筒井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山下部会長 よろしくお願いいたします。   続きまして,賀嶋敦前幹事に代わりまして,川﨑直也幹事でいらっしゃいます。 ○川﨑幹事 最高裁判所民事局の川﨑でございます。よろしくお願いします。 ○山下部会長 よろしくお願いいたします。   次に,澤田孝秋前関係官に代わりまして,谷口礼史関係官でいらっしゃいます。 ○谷口関係官 澤田に代わりまして着任しました谷口と申します。国土交通省物流政策課の企画官をしております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山下部会長 よろしくお願いいたします。   最後に,吾郷進平前関係官に代わりまして,野村栄悟関係官でいらっしゃいます。 ○野村関係官 7月4日付けで吾郷の後任で参りました経済産業省流通政策課の野村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山下部会長 よろしくお願いいたします。   本日御欠席の方は真貝委員と岡田幹事でいらっしゃいます。   それでは,まず本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○松井(信)幹事 お手元の資料について御確認いただきたいと思います。いずれも事前送付で,まず,部会資料4として「商法(運送・海商関係)等の改正に関する論点の検討(3)」がございます。そして,参考資料5「物品運送についての総則的規律と国内航空運送約款例との比較対照表」,参考資料6「複合運送に関する外国法」,参考資料7「海上運送状に関する外国法」がございます。お手元にない方がいらっしゃいましたら,事務の方からお渡ししますけれども,よろしいでしょうか。 ○山下部会長 それでは,本日の審議でございますが,本日は部会資料4について御審議いただく予定でございます。具体的には,休憩前までに第1から第3の1(3)までを御審議いただき,午後3時30分頃をめどに適宜休憩を入れることを予定しております。その後,部会資料4の残りの部分を御審議いただきたいと思います。   それでは,「商法(運送・海商関係)等の改正に関する論点の検討(3)」のうち,「第1 航空物品運送の特則」について御審議いただきたいと思います。まず事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 御説明いたします。   「第1 航空物品運送の特則」につきましては,物品運送についての総則的規律に関しまして,既に本部会第2回会議で御審議いただきましたが,かかる総則的規律を商法に設け,国内航空物品運送についてもその適用があるものと整理した場合には,その規律の内容と実務上利用される国内航空運送約款例との異同は,参考資料5のとおりでございます。   この参考資料5によれば,基本的に国内航空運送約款例における各種約定は,任意規定としての物品運送についての総則的規律に関して別段の合意をするものと整理すれば足りるようにも思われますが,航空物品運送に関する特則として商法に設けるべき規律の有無について御審議いただきたいと思います。 ○山下部会長 それでは,この部分につきまして御自由に御意見,御質問を頂ければと思います。 ○菅原委員 この論点に関し,事務当局である民事局には,私のコメントの詳細をペーパーにまとめて事前にお出ししたところでございますが,結論から申し上げれば,国内航空貨物運送に関しまして,概ね総則的規律の適用で足りるのではないかと思います。   ただし,特則を設けるべきと考える項目が一点,それから,是非特則を設けてほしいというような積極的な意見ではありませんが,そうした特則の設定の可否を含めて一応御検討いただければという項目が三,四点ございますので,それについて簡潔にお話を申し上げたいと思います。   まず,特則を設けてはどうかという項目でございます。この点は第2回の議論と重複するようで恐縮ですけれども,お配りいただきました参考資料5の1ページにある「危険物に関する通知義務」については,やはり航空運送の特殊性から,国際的な規律,規則とも平仄を合わせて,商法の特則に無過失責任を明記すべきではないかと考えるところです。  約款上は,荷送人の申告に虚偽があり,その虚偽によって生じた損害については,運送人が免責となることが明記されるのが一般的でございます。また,国際航空運送を規律するモントリオール条約では,荷送人は,航空運送状の記載の不正確,不備による損害に対して責任を負うということになっております。これらは,航空機運航の安全性確保の観点から,いずれも申告内容に関する荷送人の過失を要件としないのが実務の取扱いでございます。   言うまでもないことですが,危険物の航空輸送によって,ひとたび事故が起きますと,地上第三者を含めて甚大な損害が発生する可能性がございますから,荷送人による危険物の申告には,やはり正確性,完全性が重要であり,危険物による事故が発生した場合の荷送人の責任は,無過失責任とすべきではないかと考えます。この点については,是非御検討賜れればと思います。   それから,積極的に特則を設けるべきであるという強い意見があるわけではございませんが,委員,幹事の先生方には,特則の設定の可否を含めて一応御検討いただければという点を申し述べたいと思います。   参考資料5の2ページ下に「運送品に関する損害賠償の額」に関しての記載がございますけれども,滅失等の損害額については総則的な規律で足りると思います。ただし,延着時の賠償額については,やはり当事者間の契約に委ねるべきでありまして,商法に特段の規律を設ける必要性は低いのではないかと考えているところでございます。ちなみに,航空貨物の実務では,到着日時に関する特約がある場合を除きまして,貨物の引渡日時を確約するものではないという取扱いが定着しており,明らかに運送人の故意・過失にのみ起因し,かつ合理的な期間を超えて到着する場合でない限り,実務上も賠償に応じることはまれのようです。   また,参考資料5の4ページに「運送品の受取による責任の消滅」という項目がございますが,これに関し,損害賠償請求権を留保するための通知,いわゆる苦情の申立ては,本資料の右側の1(1)(2)にありますとおり,現在の約款上7日間と定められております。これを商法の総則的規律で2週間に延長することになりますと,仮に任意規定だといたしましても,約款の効力の正当性が問われる危惧といいますか,懸念が残りますため,その点に関する御配慮を御検討いただければというのが,ある意味,事業者側の本音でございましょう。   参考資料5の5ページの「期間の経過による責任の消滅」でございます。仮にこの提訴期限の規律を国内航空運送にも及ぼしまして,その請求期間を1年間にしたといたしましても,実務への影響は小さいと考えます。現実には,先ほど申し上げたとおり,苦情の申立てが7日ないし14日の期間内に励行されているからでございます。   むしろ問題は,合意による期間延長を認めるべきか否かという点であります。この点,モントリオール条約では提訴期間を2年としておりまして,私自身の実務経験から申し上げると,合意による延長を認めた例はございません。かかる国内・国際の差異を回避するための工夫を御検討いただきたいところです。例えば,延長の期限の上限を2年とするなどの検討もできるのではないかというふうに考えるところでもございますが,この点について,先生方の御意見等を賜れればと思います。   それから,ちょっと長くなって恐縮でございますが,最後に,資料5の2ページの「運送賃及び留置権」の運送賃の点です。他の運送手段と比較いたしますと,航空貨物運送の実務では,航空機搭載前に運賃が支払われる事例が大半であるため,ここにありますように「運送品の引渡しと同時に」を原則と定めることには若干の違和感がございます。もちろん,運送契約を請負と解した場合に,報酬の前払いを定めることが難しいことは重々承知をしておるところですが,あくまで実務からの感想ということで申し添えさせていただきます。 ○山下部会長 ありがとうございます。ただいま幾つかの点について御意見を頂きましたが,ほかの委員,幹事の皆様はいかがでしょうか。 ○山口委員 今の菅原委員からの意見について,ちょっと私の考えるところを申し述べます。   まず,危険物についてですが,無過失責任にするのか過失責任にするのかについて,運送一般について議論のある所でございまして,私自身は全て同じ規律にして,一般の推定された過失責任でよいのではないかというふうに思っております。航空については特別な規定を要するのではないかという菅原委員の意見は理解できないわけではございませんが,運送という大きなくくりにするのであれば,全ての運送形態において同じ規律でよいのではないかというのが私の意見でございます。   それからもう一つ,通知期間について,これは強い意見ではないということでございましたが,総則的規定によりますと,通知期間が14日というふうになっております。現在においても,私の個人的な考えとしては,陸上運送の規定というのは航空運送にも適用があるのではないかと思っておりまして,なおかつ,7日という国内航空運送の約款の規定はそれに違反しているのではないかというふうに前々から考えております。今回もし総則規定を設けるなら,やはり運送の形態に応じて変えるべきではなくて,通知期間を一般的な14日として適用されるべきであろうと思います。   これは歴史的なものかもしれないんですけれども,なぜこれは7日になっているかというのを考えてみますと,多分ですが,もともとのワルソー条約の規定が通知期間を7日としておりまして,それがワルソー条約が改定になってワルソー・ヘーグになったときに14日になったんですが,国内の運送約款の変更をしなかっただけではないかなというふうに思っております。ですので,やはりこれを機会に,できれば14日にされてはどうかなというふうに思うわけであります。   ただ,国内の航空運送ではそれほど事故がございませんので,実際問題としてはあまり14日でもめることもないだろうと,それほど特別扱いする必要は特にないかなというふうに思っておる次第でございます。   最後におっしゃった出訴期限の問題についてなんですけれども,正に,現在のモントリオール条約は2年の出訴期限を定めておりまして,ほかの海上あるいは陸上の1年と違う規律でございます。これについてなんですけれども,国内の運送一般に合わせるのか,それとも航空運送ということでモントリオール条約に合わせるかというのは,この審議会で判断すべきことであろうかと思います。どちらがいいかというのはちょっと難しい判断で,菅原委員がおっしゃった2年というのも十分に考え得ることであろうかと思います。合意で延長を認めるのであれば,いずれにしても2年以内に片付くのであまり変わらないかなという気はしますけれども,この点,1年でも2年でもいいと思いますが,1年の出訴期限を定めて他の運送形態と合わせて合意による延長を認めるのであれば,同じような範囲で合意による延長を認めるという形がよいのではないかなと思います。 ○山下部会長 ありがとうございます。ほかにはございませんでしょうか。 ○箱井幹事 私の聞き違いかもしれませんが,菅原委員の発言の中で合意延長の上限というお話が出ていたかと思います。この合意延長は基本的に両者の合意がなければ延長できないわけですが,上限というのはどういったお考えなのか,参考までに聞かせていただければと思います。 ○菅原委員 合意による延長につき2年を上限とするというのは,内際の差異を回避するための一つの工夫として思い付いた案です。仮に合意による提訴期間の延長を認めるとしても,その上限を2年とするなどのアイディアが検討できないものか,といった趣旨で申し上げたにすぎず,一定の確たる考えに至っているわけではございません。 ○山下部会長 よろしいでしょうか。   それでは,この点についてはいろいろ総則のところで議論した点と今日頂いた御意見を合わせて,なお事務当局の方で御検討いただければと思います。   それでは,先へ進みまして,「第2 複合運送及び相次運送」のうちの「1 複合運送」の部分について御審議を頂きたいと思います。まず事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 「1 複合運送」について御説明させていただきます。   商法には,陸上運送,海上運送又は航空運送のうち二以上の運送を一つの契約で引き受ける複合運送契約に関する規律は存在しませんが,現在の取引実務では,このような複合運送契約は一般的であり,諸外国の法制においても複合運送契約に関する規律を設けるものが見られることなどに照らすと,複合運送契約をめぐる法律関係を明らかにするため,新たに商法に規律を設けることが考えられます。   具体的な規律の内容としましては,先ほど御紹介いたしました物品運送についての総則的規律を商法に設け,複合運送契約についてもその適用があるものと整理した上で,本文(1)のように,いずれの運送の期間中に運送品の滅失等の原因が生じたかが主張・立証される場合に,運送人は当該滅失等の原因が生じた運送に係る法令又は条約の規定に従い,損害賠償の責任を負うこととすることが考えられます。これは,モントリオール条約第38条第1項の規定にもなじみ,オランダ,中国,韓国,ドイツなど諸外国の法制でも採用されるなど一般的であると思われること,我が国が批准するヘーグ・ヴィスビー・ルールズの片面的強行法規の内容と整合的な法適用をすることが相当であること,複合運送人の荷主に対する賠償責任の範囲と,実運送人の複合運送人に対する賠償責任の範囲とを一致させることが可能となることなどの理由によるものであります。   そして,陸上運送,海上運送又は航空運送のうち運送人の損害賠償責任について商法と異なる法令又は条約の規律があるものについては,本文(3)のとおり,それぞれ別の運送とみなして本文(1)の規律を適用する必要があると考えられます。本文(3)によると,例えば,いずれも陸上運送に該当するトラック運送と鉄道運送を一の契約で引き受けた場合の複合運送契約については,トラック運送には商法が適用され,鉄道運送には商法に加えて鉄道営業法が適用されることから,本文(1)の規律が適用されることとなります。   このような考え方を前提とした訴訟の場面では,複合運送人の注意義務違反による責任を追及する荷主が,請求原因として,物品運送についての総則的規律に基づいて,運送期間中に損害の原因が生じたことを主張し,次に,例えば,運送人が国際海上物品運送法に基づく航海上の過失免責を主張するときは,抗弁として,本文(1)の規律に基づき,契約が複合運送契約であること及び当該損害の原因が国際海上運送区間で生じたことを主張して,国際海上物品運送法に従って,運送人自らの賠償責任の有無や内容が決せられることを主張することになると考えられます。   また,荷主が,請求原因として商法第738条の堪航能力担保義務違反という国内海上運送の特則の適用を主張する場合には,本文(1)の規律に基づき,自ら損害の原因が国内海上運送区間で生じたことを主張することになると考えられます。   そして,本文(2)は,いずれの運送の期間中に運送品の滅失等の原因が生じたかが明らかでない場合,いわゆるconcealed damageと呼ばれる場合に関する推定規定を設けるという御提案でございます。concealed damageの場合,原則として物品運送についての総則的規律を適用し,異なる取扱いを望む当事者は特約をすれば足りることから,本文(2)のような規律を設ける必要がないという御指摘もございますが,我が国の現状における複合運送契約は国際海上運送や国際航空運送に伴って多く利用されていると言われるところ,このような複合運送契約につき,コンシールド・ダメージの場合に常に陸上運送の規律を中心として構成される総則的規律を適用することは妥当ではないとも考えられ,また,諸外国の法制においても,このような場合につき,運送品の滅失等の原因が生じた運送区間を推定する規定を設けるものが見られることから,任意規定として商法に一定の推定規定を設けることが考えられます。   具体的な規律の内容としては,陸上運送,海上運送又は航空運送のうち様々な組合せの複合運送契約に適用することを念頭に置きながら,可能な限り明確かつ公正な基準とするため,例えば韓国の複合運送法草案第150条の5第2項を参考に,本文(2)のとおり,いずれの運送の期間中に運送品の滅失等の原因が生じたかが明らかでないときは,当該滅失等の原因は当該二以上の運送のうち,その運送距離が最も長いものの期間中に生じたものと推定するという規律を商法に設けることが考えられます。   御参考までに,オランダでは,最も高い賠償額を定める法規によって複合運送人の責任を定める旨の規定があり,中国では,海上運送を含む複合運送について海上物品運送契約の章の規律により複合運送人の責任を定める旨の規定があるようです。   なお,陸上運送,海上運送又は航空運送のうち,運送人の損害賠償責任について商法と異なる規律があるものについて,本文(3)のとおり,それぞれ別の運送とみなして,本文(2)の規律を適用することは,先ほど御説明しました本文(1)の場合と同様でございます。   以上の点につき,併せて御審議いただきたいと思います。 ○山下部会長 それでは,ただいま説明のありました部分につきまして,御質問,御意見を頂ければと思います。 ○松井委員 日弁連の方でも議論がありまして,それを御紹介しながらお話をさせていただきたいと思います。   今回,複合運送で御提案いただいている本文(2)については,先ほど,推定規定を置かないということについては世界的な潮流から難しいのではないかというお話がありました。しかし,事故原因が分からないということが実務上必ずしも多くはないと思われますので,推定規定を置かないというのも一つの賢明な選択肢ではないかという話がございました。   それから,ユニフォーム・システムではなくてネットワーク・システムを採用するということは,在るべき姿としては,原因の起こった場所の運送人が責任を果たすべきであるということが価値判断としてあると思います。論理的帰結として当然に分かることですけれども,運送人側の方にその証拠と情報が偏在しているという実態からいけば,仮に推定規定の対象となる賠償額が最も安いとすれば,運送人の側は真実を追及するよりも最も安い推定規定を利用するというところへ流れる可能性が高いことになります。その中で,今回の御提案は韓国法に近い最も長い区間ということですが,韓国法には,最も長い区間と同時に,区間の長さが分からなければ最も高い方というルールがあるわけです。この点,弁護士会の観点からいくと,先ほど御紹介いただいたオランダ法とともに,少なくとも最も高い方というのが,証拠を持っていない側が立証を促されることがないという意味において,一つの在るべき形ではないかという話も出ておりました。あえて金額の基準を外された理由を教えていただきたいことと,仮に金額の基準を入れた場合には,これは強行法規にやはりなるのでしょうか。そうでないと意味がないとも思っているのですが,その辺りについての御感触を教えていただきたいと思います。   それから,頂いた資料からよく分からなかったのですが,ドイツ法が適用される場合はどうなるのでしょうか。今お話を頂いたような総則的規定があると,複合運送のどこかで事故が起こったというだけで請求原因としての主張は足りるのであれば良いのですが,少なくともこの規定の書き方からいくと,特定の区間で生じたことについては,請求する者がこれを主張・立証しなければならないとも読めます。抗弁のときに利用するのか,請求原因のときに利用するのかはともかく,とりあえず総則に複合運送の場合の一般的根拠規定が別途あれば良いのですが,総則に根拠規定がないのであれば,陸上なのか海上なのか,どこで事故が起こったのかというところまで主張して,それに対して,相手方は陸上ではない,海上での事故ですというようなことをまた主張しなければいけない形にも見えるのですけれども,その点について資料があったら教えていただければと思います。 ○松井(信)幹事 1点目の御質問について,まず,韓国法では,二次的な基準として,損害賠償額の高いものではなく,運送賃の高いものという基準をとっており,オランダ法とは異なっています。そして,推定規定を設けるとした場合に,損害賠償額が高い運送区間による,言い換えれば,運送人の責任が最も重い区間にするという法制も確かに考えられるところでございますが,運送人の責任の重さについては,損害賠償の額だけではなく,苦情の申立て期間が2週間に限られるのか,それとも限られないのかといった点など,様々な考慮がございます。例えば,国際海上物品運送法は,損害賠償額は陸上運送より低くなっておりますが,苦情の申立て期間という観点から見ると,2週間以内の申立てを要しないという点で陸上運送よりも要件が緩和されております。このように運送人の責任の重さという判断が一様にはできないということから,このような基準を提案しなかったというものでございます。   2点目のドイツ法の具体的な法適用の在り方につきましては,部会資料の6ページに商法第452条aの規定を記載しておりますが,これとは別に,第407条以下に運送の総則的な規定がありますので,そちらの規定で請求できるのではないかなというふうに考えております。この辺り,研究者の方々でお詳しい方がいらっしゃれば,補充していただければと思います。 ○山下部会長 ドイツ法について何か情報はございますか。 ○増田幹事 ドイツ法に関しては,先ほどの御説明でおおよそ正しかったかと存じます。ドイツ法の場合は総則規定がございまして,責任原則にしても責任限度額にしても,基本的に,複合運送契約にも総則の規定が適用されるということが,まず前提になっております。したがって,総則の規定の適用を排除したい人といいますか,特定の区間で損害が発生したことを証明して,総則の規定ではなくて別の運送手段の法が適用されるということを,それを主張することについて利益がある人が,立証するという形になっております。 ○山下部会長 ドイツの場合は,総則の規定でも,日本の今考えているような陸上運送とは違って,責任限度額の定めがあるという前提ですね。日本法とはそこの点などが違うということではないかと思います。 ○増田幹事 ドイツの運送法総則は,強行法規に近いといえると思います。規律の内容としても,CMR,すなわち1956年の国際道路物品運送条約に準拠した内容となっておりますので,比較的運送人責任は厳しい。ただ,責任限度額としては8.33SDRということで,そこまでは高くはないという状況でございます。 ○山下部会長 ありがとうございます。 ○箱井幹事 1点質問をさせていただいた後,意見を述べたいと思いますが,質問からさせていただきます。   この(2),今問題になっている点でありまして,文章としては「当該二以上の運送のうちその運送距離が最も長いもの」とありますけれども,例えば,三以上の運送手段がA,B,Cとあった場合に,当該損害が生じた可能性があるといったところで,例えばB,Cに限って比較をするのか,それに限らず運送手段のうち最も長い所で考えておられるのか,この書き方からはちょっと分かりにくいのですが,その点,質問させてください。 ○松井(信)幹事 これは推定という形で作っておりますので,全くこの区間では損害が発生しなかったということが明らかであれば,その区間は除いて考えていただいて結構だというふうに考えています。 ○箱井幹事 その上で,意見でございますが,やはり最も長いというのはあまり理論的ではないなという印象を持っております。航空運送などの場合,先ほど,山口委員からも,飛行機に乗っている間には,あまり事故がないという意見がございました。私も,飛行機の機内で事故が生じるのは,海上運送と比べましてもあまりないだろうと思うのですが,ただ,飛行機がちょっと飛んでいれば相当に距離が出ることは容易に想像が付くわけでございます。距離こそ長いのですが,そこで損害が生じた蓋然性が高いというような関係には恐らくないのではないかなというふうに考えます。そういたしますと,先ほど松井委員が言われたように,これは任意規定ということですので,適切な約款に誘導していけばいいわけですけれども,そうしますと,デフォルト・ルールとしては運送人に有利とならない責任を負わせるということが一つの見識だろうと私も考えております。   その際,やはり先ほど事務当局から説明がありましたように,損害賠償の額だけでは考えられないので,荷主に最も有利とかいった形になるのかなと思うのです。もっとも,実務における実態はよく分かりませんが,恐らく相当程度これは約款で解決されているのではないのかと思われ,そういった解決をさせていく方向に持って行くべきなのではないかとも考えますので,結局は総則規定で足りるのではないかというのが私個人の意見でございます。 ○松井委員 今,事務当局から御説明があったように,弁護士会でも,やはり金額の多寡と,有利・不利というのは違うのではないかという話が出ておりました。そこを突き詰めて被害者の救済を最も厚くすると言うと,一番有利なのは,被害者側はどの条件でも選択して使えるというの考え方も極論としては一つあるのだと思うのです。それも選択肢としてはあってしかるべきかもしれませんが,国際的にいうと,あまりにも変わった規定になるので,それがお勧めできるかどうかは分かりません。しかし,何らかの形で被害者救済は確実に可能とする制度にしたいという意見がございました。 ○藤田幹事 2,3点質問と,その答え次第で,若干の意見を申し上げたいと思います。箱井幹事の最初の質問にちょっと似ている点なのですけれども,中国国内を陸上運送,上海から九州まで国際海上物品運送,日本国内は陸上運送という複合運送を想定してください。中国国内の陸上運送は700キロ,上海から九州は890キロ,国内運送は200キロとします。中国と日本の国内運送を足せば900キロで一番長いのですけれども,この場合は,この本文(2)はどういうふうに適用されるか。これは,別々の運送区間が3つあるので3つを比較するのか,それとも中国国内,日本国内の陸上運送を足して陸上運送とし,それと海上運送とを比較し900対890と考えるのか,いずれとお考えなのでしょうか。   それと,中国国内の陸上運送であったとしても,日本法が準拠法なのだとすれば日本の商法を適用される陸上運送なので,「陸上運送」というのは,国内のそれと中国国内のそれを足し算するというのも成り立つような気もするのですが,ただ同じ種類の運送でも適用される法制が異なる場合もあり得て,そうなると足し算してよいかという疑問もあります。実際,後の方を見ると,適用される法制が異なると,海上運送,航空運送もさらに細分化して独立に考える発想があるようにも見えます。これが1点目です。   2点目は,滅失損傷などの原因発生区間を問題とされていますが,原因発生区間と現実に損害が発生した区間がずれる場合,これは原因発生区間の方を優先的に適用するという御趣旨でしょう。これが2点目。   3点目は,国際海上物品運送法の場合附随的な陸上運送等が前後についても,これは国際海上物品運送が入っていれば,その部分には国際海上物品運送の強行法規が適用されて,ただ,陸上部分は特約自由の原則が適用されるという扱いだと思います。つまり複合運送であれば,その一部を構成する国際海上物品運送について国際海上物品運送法は一切適用がないということかと思うのですけれども,提案されているような複合運送のルールを作った場合には,その辺りはどう考えるのか。つまり前後に陸上運送を伴う国際海上物品運送があった場合には,それはもう国際海上物品運送の適用範囲だけで考えるのか,それともここで提案されている複合運送のルールに乗せた,一番長い区間で損害が発生したと推定することになるのか,いずれなのでしょうか。結論次第では強行法規の扱いが従来と変わるような可能性もあるので,質問させてください。 ○松井(信)幹事 まず,1点目につきましては,より単純化して,国内運送でフェリーを使う事例,すなわち,トラックで陸上運送した後に,フェリーで海上運送をし,更にその先もまたトラックで陸上運送をする事例で考えますと,事務当局としては,荷主と運送人との間の責任を陸上運送と海上運送のいずれの規律によって定めるか,総体として陸上危険と海上危険のいずれが大きかったかという基準としては,二つの陸上運送を合算してもよろしいのではないかと思っておりました。もっとも,この点は疑問な点の一つでありましたので,韓国法の解釈などを調べる必要があるというふうに考えていたところでございます。   2点目につきましては,原因の発生場所か損害の発生場所かという点でございますが,部会資料に書いてあるように,原因の発生場所が重要な基準と考えているところでございます。   3点目につきまして,今,付随的な運送が前後に付く場合との御指摘がありましたが,我が国の国際海上物品運送法は,法律の題名や,法律の中で船荷証券の記載事項として陸揚港を掲げるだけで,陸揚港から遠い陸地に運送することは予定していないということから,基本的には,海上運送をメインにするものを前提にしていると考えております。もっとも,部会資料にも書きましたが,国際海上運送の前後に若干の附随的な運送というのが入ることはあり得て,その区間まで国際海上物品運送法の適用があるとは考えられますが,その附随的なものを超えて,陸揚港から遠い陸地に運送する陸上運送についてまで国際海上物品運送法の適用があるわけではなく,そのような適用関係は,今回の提案により変更するものではないと考えているところでございます。 ○藤田幹事 例えば,日本とアメリカの国際海上物品運送が含まれているが,それに加えて相当長い区間―――例えばアメリカ国内の長い陸上区間―――を含むような複合運送契約において,仮に日本法が準拠法だとすれば,海上物品運送部分について国際海上物品運送法が適用されるのではないでしょうかということです。そして,それは複合運送のルールを経由して入るのではなく,国際海上物品運送法の適用範囲という形で議論されるのだと思います。提案されたルールを設けることで,今後は,このような運送についても複合運送のルールに乗せて国際海上物品運送法の適用の有無を考えることになる,従来とは適用の仕方が変わるのでしょうかという確認です。附随的な運送を含む,含まないはまたそれは別問題,完全な複合運送と性質決定できる場合についての質問です。 ○松井(信)幹事 完全な複合運送については,いわゆるネットワーク・システムの考え方が有力な現在では,恐らく複合運送の中の国際海上物品運送区間だけに国際海上物品運送法の適用があるというふうに考えていると思います。今回の提案によっても,そのような運送契約が部会資料の1(1)の複合運送に当たるという性質決定をした上で,損害の原因発生場所が判明すれば,その区間における法律の規定,すなわち国際海上物品運送法の規定に従って賠償責任を負うということになるので,その範囲では同法の強行規定の適用関係は変わらないというふうに考えております。 ○藤田幹事 分かりました。 ○山下部会長 そのような理解でよろしいですか。 ○藤田幹事 いや,現行法のもとでの問題整理については,よく分かりません。ネットワーク・システムを採用する契約は,国際海上物品運送を含む複合運送には全区間国際海上物品運送法が適用されることを前提に,船積前・荷揚後の特約自由を利用してそのようなアレンジメントを作っていると見る余地もあります。ただ,このルールを作る前提として事務局が現行法をどう理解されているかはよく分かりましたので,それはそれで結構です。以上は質問でしたが,次に若干意見を申し上げます。  まず発想の時点で根本的に違和感を持っているのが,規定の表現に係る点です。第1回会議で,ここで検討している運送法の規律の適用は,「運送」に対して適用されるのか,「運送契約」に適用されのかといった疑問を提起したと思います。その際の答えは,運送契約について適用するということでした。どういうコンテクストで聞いたかというと,横浜からアメリカまで海上物品運送するときに,港湾内で事故が起きたら,たとえ港湾内の運送は陸上運送とみなすという条文が置いてあったとしても,国際海上物品運送契約に関する事故であって,国際海上物品運送法は当然適用される,それは契約ベースで規律の適用を考えるからそうなるという流れでの議論でした。   ところが御提案の規律では,複合運送の場合にその辺りの発想が何かやはりはっきりしないまま,その運送に適用される規律が適用されるというような書き方をしています。そうなると複合運送についても同じような疑問が生じて,複合運送で例えば港湾の所で事故が起きたときに,港湾の運送に適用される法令となると陸上運送ですねとなりかねない。それはやはり発想がおかしくて,事故が起きた場所の運送手段で運送がなされる区間について,単独の運送契約を締結したならその規律が適用されると考えるわけでしょう。   それを抜きに「運送に適用される」といった書き方をすると,無用な混乱が生じる可能性がある。先ほどの足し算という話も,実はそこから来ている面があります。中国・日本間の複合運送の例だと,日本国内で物品の滅失が生じたら,日本国内について陸上運送契約を結んだとしたら適用されるであろう法律―――おそらく日本の商法でしょう―――,上海の港から九州までの海上物品運送契約を結んだとすれば適用される法律―――国際海上物品運送かもしれません―――が適用される。そういう考え方のはずです。最後の部分は難しいのですが,中国国内の運送について,独立の運送契約を結ぶとすれば適用される法というのは,中国法かもしれないですが,仮に日本法を準拠法だとすると,日本の商法となります。こういう考え方で責任の内容が決まるとすれば,一番長い区間の規律に従うという場合も,足し算という話にはつながりにくい。契約ベースで考えたらそうなりそうな気がするのですが,事実行為としての運送ベースで考えたりすると,陸上,海上,航空ごとに合算ということが出てきかねない。諸外国のルールには,そもそも事実ベースで適用するルールもあるかもしれません。ただドイツ法等ははっきり契約ベースの書き方をしています。提案の趣旨も,今申し上げた契約ベースで考え,仮にその区間について独立の契約を締結したらという発想なのですが,いわば略式でその区間に適用される法令・条約と書いているのかもしれません。書き方,言葉遣いかもしれませんけれども,かなり適用関係も考え方の根幹に関わる部分ですので,書けるものならきちんと書いたほうがいいと思います。JIFFAの複合運送約款をみても,このあたりは明確に意識して,「滅失又は損傷が発生した特定の運送区間の運送人と荷主が別個かつ直接の契約を締結し・・・」たら適用されるであろう規定を適用するといった文言を使っています。   なお,先ほど,最も長い距離の運送の区間で損害が発生したと推定するという規律で,複数の区間の同一種類の運送を合算するかという話について,韓国の法律を参考にして再検討するということを言われましたが,よその国で合算しているかどうかといったことを見るのではなくて,われわれの考えている法律の基本的な考え方としてどっちが整合的なのかということをまず考えるべきだと思います。   なお細かなことかもしれませんが,契約ベースで考えるというのであれば,モントリオール条約第18条第4項第2文という規定があって,これは,本来その区間は航空運送でやると約束していたのに,別の手段を代替して,それはもう契約上許されない形で代替手段を使った場合は,これは航空運送区間だとみなしているものです。先ほど言った,問題の区間について当該運送人と単独の運送手段の契約を結んだとすれば適用されるであろう法令という考え方であれば,現実に何で運んだかということというよりは,本来何で運ぶべき約束だったかということが決め手となるのは当然ということになります。このあたりも,曖昧に運送に適用される法令というような書き方をすると,考え方そのものがはっきりしなくなってしまい,そうなると,今申し上げたようなケースの考え方について,いらない解釈の対立が出てくるかも知れない。そういう意味では,作り方,言葉遣いだけかもしれないですけれども,正確に表現されるべきと思います。   最後に推定規定ですが,私はこういう規定を導入することにもあまり気乗りしないというのが率直なところで,別に要らないのではないかというふうに思っております。そのときに複合運送の多くが国際海上物品運送・国際航空運送を含むものであるということを最初の説明で言われたのですけれども,まず,国際海上物品運送に附随的な陸上運送がついているだけものについては,この複合運送のルールの適用がないので関係ないことになります。これに対して本来の意味での複合運送を締結する場合に,日本の多くの業者は,海上運送のルールが適用されることを漠然と期待しているかもしれませんが,普通はやはり運送約款でその旨はっきり書いてあると思います。そういうことを前提とした場合,国際海上物品運送法が適用されるのをデフォルト・ルールとなるようにすべく,一番長いから適用されるといった理屈を用意することが本当に必要なのかどうかは必ずしもよく分かりません。   また,諸外国の法制で何らかの推定規定があることが多いといった参照の仕方はやめていただきたいと思います。法制によっては,この種の推定規定がどうしても必要であることもあります。つまり,複合運送は単なる個々の運送手段の組み合わせとは違う契約類型であるという発想を採り,かつ,個々の運送手段―――陸上,海上,航空――についての規定しかないような国であれば,推定規定がないと,損害発生区間が特定されない場合にはルールの適用の仕方に困ってしまう,複合運送人の責任追及が不可能になるおそれすらある。これに対して,現在われわれが検討している法制のように運送手段を問わず適用される総則規定があることを前提とすると,損害発生区間が適用されない場合であっても,適用されるルールがなくなってしまう,運送人が不当に免責されるという問題は生じません。運送法の総則的な規定がある世界だと,そうではない世界と比べると,この種の推定規定の存在意義というのは大きく変わってくる。しかも,任意法規をベースに我々は考えているので,推定が欲しいのであれば契約で書くこともできる。こういう推定規定は,やはり単独モードの運送についての規定しかなくて,かつ,それらが強行法規であるような法制を想定すると,その存在意義が非常によく分かるのですけれども,そうでない場合には,無理に人為的なルールを作ることもないような気がいたします。 ○松井(信)幹事 今,運送を契約ベースで考えるのか事実ベースで考えるのかというお話がございました。前回までの会議でもお話ししましたとおり,単一の運送手段を用いて運送するという場合には,現在の商法でも,当然ながら運送契約という契約ベースの規定となっておりますので,それを維持したいと考えております。   ところが,複合運送になりますと,契約というのが1本しかないというのがそもそもの前提でございます。1本の契約の中で,複数の運送区間に分けられるということになりますと,その場所を特定する概念は,おのずから事実を前提にせざるを得ないというふうに考えております。その事実が生じた場所,これを前提とした上で,先ほど藤田幹事がおっしゃったように,仮に契約があったとしたらという想定をして,適用になる任意規定や強行規定を考えていくというふうな手順になろうかと思います。   そのような観点で,部会資料6ページのドイツの法制を見ますと,「滅失等の原因となった事由が特定の区間で生じたことが確定された場合には,この区間についての契約に適用されるであろう法規定に従い」というふうに仮定的な契約というものを想定しているものでございます。今回の部会資料の太字で書きました本文についても,この意図としては同じ実質を書こうといたしまして,滅失等の原因が生じた運送区間に係る法令又は条約というふうに書いたところでございます。ドイツの法制で議論がされておりますのは,この仮定的な契約が誰と誰との間の契約を仮定するのか,また,準拠法がどのように影響してくるのかということが複雑に絡み合って,非常に難しい解釈論争を呼んでいるというふうに聞いております。   そして,諸外国の法制を見ますと,そこまで詳細に規定をしていない国が多うございます。ですので,私も,藤田幹事と同様に,契約をベースにするべきだと考えておりますが,その表現の仕方については難しい面も多いと考えております。 ○藤田幹事 ドイツで今言われたような論争が起きているのはそのとおりですけれども,仮定的な契約で考える以上は,それは避けられないもので,条文から契約という言葉を消したらなくなる問題ではありません。逆にこれを書かないと,事実ベースで適用されるかのように誤解されるおそれがある。しかも,第1回会議の最初のところでも陸上運送,海上運送,航空運送を定義し適用範囲を決めるかのような書きぶりをしていると,適用範囲が契約ベースで判断されるということをうかがわせる文言がどこにも出てこなくなってしまって非常に気持ち悪いです。「その場所を特定する概念は,おのずから事実を前提にせざるを得ない」と言われたことについては,確かに「適用されるであろう契約」を特定するのは,事実として損害が発生した地点であることはそのとおりですけれども,それは先ほどから言っている,契約ベース/事実ベースということとは全然次元が違う話です。   規定の仕方が難しいということについては,現実にJIFFAの約款なんかでも明確に書かれているので,無理だと決めてかかるほどのことはないと思います。仮定的な契約につき,その準拠法は何かとか,細かいことを言い出すと幾らでもあるとしても,およそ契約という要素をどこにも出さないことがいいかというとまた別で,一切そういう表現が出ない形の条文は今後やはり違った解釈をされる,仮定的な契約を考えないで,事実としての運送の適用があって,その区間につきどう約束しようが,とにかくそこで運んでいる手段のルールを適用するんだというふうに裁判所は素直に読んでしまう可能性は高いと思います。先ほども引用しましたJIFFAの約款は,「滅失,損傷が発生した特定の運送区間の運送人と荷主が別個かつ直接の契約を締結したとすれば適用されるであろう法」という書き方ですが,そのぐらいのことはそれほど無理なく書けるように思います。仮定的な契約というのは確かにほかの法令であまりないテクニックかもしれませんけれども,できるだけ明確に書く可能性を考えていただければと思います。 ○山口委員 私は意見を述べさせていただきますと,最も長い運送区間に適用される法律によるという考え方には反対でございます。正に,こういう規定自体が必要ではないのではないかと,先ほど藤田幹事がおっしゃったように総則規定がありますので,それで十分であろうと思います。あえてこれを入れることによって非常に複雑なことを考えなければいけませんし,先ほどおっしゃいましたように,議論があり得るものでございますし,最初に藤田幹事がおっしゃった例を少し変えますと,例えば上海から揚子江をずっと上って船で運んできて,つまり中国国内の運送がかなり長い期間あって,その後,国際海上物品運送があって,なおかつ日本の陸上運送があるというような例になってきますと,一番長いのはどこかというと,揚子江が一番長いというような話になってきます。そうすると,その揚子江に適用される法として,中国国内運送法が適用になるのかというようなことも考えないといけなくなって,非常に難しい問題が生ずる。   それからもう一点は,先ほど藤田幹事がおっしゃった航空運送の場合の運送形態の変更がございましたけれども,もうちょっと簡単に言いますと,単にトラック運送契約を結んだ場合に,運送会社が途中からフェリーを使って運送したとします。そうすると,フェリーの区間が一番長くなって陸上運送がその両側の短い区間になるという場合に,一番長い区間はそうしたら結果的に見たらどうなるかというと海上運送になるんですが,それは当事者が別に望んでいるものでも何でもなく,突発的な,非常に当事者の予想を超えたような適用が行われることになりますので,結果が起きてみないと分からない,つまり運送が終わってみないと分からないような,それで終わってみて初めて適用される法規が決まるような,そういうふうな規定の仕方というのは,法律としては予測可能性を欠いていますので,あまり適当ではないのではないかというふうに思っております。そのために,こういう推定規定を置くことについては,強く反対したいと考えております。   多くの場合は,今先ほどから御紹介がございますように,約款等で手当てが行われていますので,あまり大きな問題にはならないだろうと思うんですが,ただ,こういうものを置くこと自体については,私個人としては反対したいということでございます。 ○菅原委員 先ほどから議論が出ておりますモントリオール条約第18条第4項第3文について,この場で一応御紹介だけさせていただきたいと思います。   運送人が,荷送人の同意を得ることなく,当事者間の約定の上では航空運送によることを意図していた運送の全部又は一部を他の形態の輸送手段による運送に替えた場合には,当該他の形態の運送手段による運送の期間も,航空運送中とみなす。こういう規定になってございます。これが藤田幹事から御指摘のあったところです。   それから,意見というほどではないのですが,本文(2)の「運送距離が最も長いものの期間中に生じたものと推定する」という点につきまして,山口委員も反対とおっしゃいましたが,私もこれは必要ないのではないかと思います。部会資料を拝見すると,こうした規定を設ける根拠として「明確かつ公正な基準とするため」との御説明があります。この趣旨は非常に理解できるところでありますが,果たして「運送距離が最も長いものの期間に生じたものと推定する」という規律が「明確かつ公正な基準」かどうかという点については,よく御検討いただくべきではないかと考えます。   と申しますのは,損害発生の原因となる事故の可能性ないし蓋然性を,運送距離で見るのか,あるいは運送に要した時間で測るのか,何が公正で明確なのかが少し分かりにくいところだからです。例えば箱井幹事がおっしゃっていたとおり,概して航空運送のような長距離,高速度の輸送手段に推定が及ぶことになりますが,たとえ任意規定であっても,そうした規律を設けることには若干の違和感がございます。  それから,韓国の法制にも見られるようですが,運賃を基準にするというのも一つの考え方ではありましょう。しかし,いわゆる公示運賃といいますか,タリフレートと実収受運賃額との間には大きな差があるという貨物輸送の実務に鑑みますと,むしろ運賃を基準に持ち込んだ途端に,立証責任の問題も含めて不明確さが付きまとうような気がいたしますので,これも賛成しかねます。   ○松井(信)幹事 今,菅原委員から御紹介のありましたモントリオール条約第18条については,部会資料4の4ページの(注5)にも記載したところでございます。この(注5)では,今御紹介のあった運送人が荷送人の同意を得ることなく,他の形態の輸送手段に替えたという場合の取扱いについて,もともとの契約中であったとみなす規定でございますが,私どもとしては,一般的な解釈というのがちょっと自信が持てなかったものですので,「なお解釈に委ねざるを得ない」というふうに書いたところではございますが,先ほど,特に契約ベースであることをはっきりさせるためにも,こういう規律が適切ではないかという御意見もあったところでございます。   このような規律を商法上明文化することが適切なのか,それとも世界的な動向から見てあまり適切でないのかの点について,もし御意見がございましたらお願いしたいと思います。 ○山口委員 このモントリオール条約の規定は一見非常に明確なようにも見えるんですが,実際ヨーロッパで争いになっている事案は,事前に約款に運送人は運送形態を替えることができるという条項を入れておく場合があります。そのように約款に入れてある場合,すなわち契約で変えられる場合は,この荷送人の同意を得て変えたということが考えられますので,勝手に変えているんですけれども,ヨーロッパの国際航空運送の部分を陸上運送に替えること,これは非常に多いんですが,突然,航空運送を陸上運送に替えた途端にCMRの適用になります。そして,CMRの適用になりますと,責任限度額と,それから,国によって責任限度額を打ち破れるかどうかの議論が出てきまして,モントリオール条約は責任限度額を打ち破れなくて,キログラム当たり19SDRですが,CMRですとキログラムで8.33SDRで,国によって重過失とみなされる重さの程度が大きく違いますので,ばらつきがあって,これが実はヨーロッパにおけるフォーラム・ショッピングの大きな問題になっております。   ですから,今おっしゃったような規定は一見明確なように思えますけれども,解釈によって大きくずれも生じますので,その規定を置くこと自体も,あまり私自身は賛成できないなというふうに思っておる次第です。 ○入来院委員 二つありまして,一つは今もう何度も皆さんがおっしゃっている推定規定につきましては,任意規定であれば約款で処理できるということではあるんですけれども,例えば,外国でいいますと,恐らくconcealed damageについては海上部分の法によるというものが多いと思いますので,実務に照らすと,一番距離の長い区間によるというものだと,ちょっとやはり違和感がありますねということを申し述べたいと思います。   それから,二つ目は質問なんですけれども,本文(1)のところで「運送人が当該二以上の運送のうち当該滅失等の原因が生じたものに係る法令又は条約の規定に従い」とありますが,この条約なんですけれども,日本法が準拠法で,日本で裁判になったときに,例えばCMRによって裁判をすることになるのかどうかということについて,ちょっと確認をしたいと思います。 ○松井(信)幹事 この条約に我が国の批准していない条約が入るかどうかというのは,非常に悩ましい問題でございます。例えば,我が国の批准しているヘーグ・ヴィスビー・ルールズとは別に,国際海上運送にはハンブルグ・ルールズという条約もございまして,アフリカ諸国ではそれに入っている国も多うございます。そして,日本の商社が日本の大手運送人との間でアフリカのハンブルグ・ルールズ批准国間の海上運送を経由した上で,更に日本に空輸するというような複合運送があったといたします。そのアフリカにおけるハンブルグ・ルールズ批准国間の海上運送については,我が国の立場からしますと,それに適用される法令といいますと,我が国の国際海上物品運送法が考えられますし,他方,現地法,この場合であればハンブルグ・ルールズによるという考え方もあり得ると思います。   荷主側の予測可能性という観点を強調しますと,我が国の法令は予測できるけれども,外国の法令や我が国が批准していない条約については予測可能性がないということになり,部会資料の本文(1)にある法令や条約というのは,我が国の法令と我が国の批准した条約ということになろうと思います。   他方で,その運送が下請運送人を使っている場合に,求償の関係で損害賠償額がずれないようにしようという観点を強調しますと,むしろハンブルグ・ルールズを適用した方がいいのではないかということも考えられます。事務当局としては,もう少しいろいろな調査をしてみたいと思っているところでございますが,一つの考え方としては,一定程度荷主の予見可能性を重んずるということで,この本文(1)については我が国の法令及び我が国が批准した条約というものをまずは前提としておいた上で,仮に実運送人と利用運送人の損害額を同じにしたいと望む当事者がいるのであれば,ハンブルグ・ルールズを利用運送契約の中で摂取するなどの方法によって,そのずれを回避するというふうな在り方もあるのではないかと思っていたところですが,その両者のバランスとしてどのような在り方が適切なのか,この場にいらっしゃる皆様の御意見を伺いたいと思っております。 ○山下部会長 今の点に関してよろしいでしょうか。 ○道垣内委員 今の松井(信)幹事の御説明は,ここに書いてあるルールは準拠法を決めるルールであるということですか。 ○松井(信)幹事 準拠法は飽くまで我が国の法であるという前提のもとの議論でございます。 ○道垣内幹事 そうですか。 ○山下部会長 よろしいですか。 ○増田幹事 先ほどの,アフリカで現地法としてハンブルグ・ルールズが適用される可能性があるようなケースというのは,実務的にはどのように考えて処理しているのかということを,まずお聞きしたいと思います。   第2点は,先ほどから出されている,ここで日本の法令が適用されるのか,あるいは外国法令を含むのかといったような話というのは,正にドイツ法では,仮定的契約の解釈の部分で行われていることでございます。この部分の議論が難しくなるのは,結局のところ,荷主の予測可能性を重視して自国の法制に引き付けて考えるべきなのか,あるいは,求償を容易にするためにできるだけ現地法に引き付けて考えるべきかという,この点についてのポリシーの対立が,正に仮定的契約の解釈論として現れてくるからです。ですので,そのポリシーについて決定ができないというのであれば,仮定的契約的な構成をここに入れ込む方が一応中立的な立場ということにはなるのかなという印象は受けました。 ○藤田幹事 今の補足ですけれども,日本が法廷地の場合に日本が締約していない条約が適用されるのは,基本的には,その条約が準拠法として指定された国の法律の内容となっている場合です。   まず複合運送契約そのものについて外国法が準拠法になっていれば,そもそも今議論している規定そのものが適用にならないので,まずそれは度外視します。そこで,複合運送契約については日本法が準拠法になっているということを前提にしますと,この規定が適用されて,それに従って各モードについて規律する法を適用します。それらの法として日本法しか想定しなくていいのであれば,松井(信)幹事が言われたように,ここで言っている条約とか法令という文言は日本法ということにとなるのですが,そこがそう限らないのは,今,増田幹事が言われたとおりです。それは仮定的契約というのをどう考えて,その準拠法をどう考えるか次第です。例えば先ほどの私の申し上げた日本と中国の間の国際複合運送の例で,中国の国内の運送中に事故が起きた場合,中国国内の運送契約を想定して,それにはどのような法が適用されるかと考えるわけですから,仮に準拠法を中国と考えれば,中国の国内陸上運送に適用される法――どんな法律があるか知りませんが――ということになる。先ほどのアフリカの例でいえば,アフリカの国の法あるいはハンブルグ・ルールズということも論理的にはあり得る。   ただ,仮定的契約の準拠法をどう考えるかは議論があって,元の複合運送契約と別のものを想定するか否かというところはよく分からないところです。私は,ロッテルダム・ルールズとの関係で,基本的にもともとの複合運送について選択された準拠法があれば,仮定的契約にもそれが適用されるということを書いたことがあるのですが,そういう考え方に従えば,日本法が複合運送に適用されるケースでは仮定的契約も原則日本法で考えていいという結論になります。しかし,仮定的契約と複合運送契約の準拠法が違ってもいいと考えるなら,当然にはそうなりません。いずれにしても,ここの実質法の中身として,この法令なり条約という文言は日本法に限るとかいったそういう議論の仕方はよくなくて,文言の解釈としては無限定とした上で,あとは増田幹事が言われたような思考様式で適用されることもあるかもしれないし,ないかもしれない,それは仮定的契約についての解釈次第であるということがよいかと思います。   直前の山口委員に対するコメントをも今併せて申し上げてよろしいでしょうか。モントリオール条約第18条第4項のような規定を設けると,かえってそれが曖昧で,紛争を引き起こすのではないかという話ですが,私の理解した限り,山口委員が指摘された不確実性は,別にこの条項自体の問題ではなくて,運送手段を自由に選べるというふうな形で複合運送契約を結んだために結果的に適用される運送モードがいろいろなものがあり得て,適用されるルールが変わるということです。それは,当事者がそのような選択を与えたからそうなっているのであって,モントリオール条約第18条第4項が,新たに不確実性をもたらしているという話では決してないと思います。むしろ,どんな結果が出るか分からないということでは,当事者が明示的に選んだ契約にもかかわらず,事実上選んだモードによってルールが適用されると考えた方がよほど予見可能性を害すると思います。当事者がオプションを与えた場合に不確実というのは,当事者が呼び込んだものなのであって,手当てする必要がある問題ではないように思います。 ○山下部会長 入来院委員の御発言から議論が続いているのですが,よろしいでしょうか。 ○遠藤委員 先ほどの議論にちょっと戻ってしまうのですけれども,松井委員の方からもお話がありましたように,あまりどこの区間で事故が起こったのか分からないというケースは少ないと思われるものの,ケースとしては,受け取ってみてダメージがあったがどこの区間か不明の場合というケースもあろうかと思うのです。推定規定を設けない場合に,そういう事故があったときに何を根拠に損害賠償請求をするのかというところがいまいち議論をずっと伺っていてはっきりしません。先ほど,JIFFAの約款ではそこをうまく手当てしているというお話があって,部会資料にも5ページのところで,JIFFAの約款は,最終的に運送品の滅失又は損傷が発生した区間の証明がないときは,滅失又は損傷は海上運送中に発生したものとみなすということなのですが,これは推定規定ではないのですか。ちょっとそこがよく分からないものですから。 ○藤田幹事 私が答える立場ではないと思うのですけれども,時間の関係で発言させていただきます。推定規定を置かなかった場合であっても,損害発生区間のはっきりしない事故があったときに何を根拠に損害賠償請求をするのかについて,ルールははっきりしています。それは運送法の総則規定が適用されます。損害がどこで起きたか分からないけれども,運送契約である以上は,運送法の総則の規定は全て適用がありますので,複合運送期間中に損害が発生したなら,総則の責任規定に基づいて責任追及できることは間違いなくて,更に特定の区間の特則―――それは運送人に有利なこともあれば,荷主に有利なこともありますが―――を主張したい場合は,その適用を主張したい側が特定しなければいけない。推定があれば,特定しなくてもそういうことができる場合が出てき得るという違いがあるだけです。JIFFA約款は,明示的に海上運送区間で損害が発生したとみなすという規定ですが,これはもちろん新しい提案の下でもこういうのはできるし,私を含めて推定規定が要らないという立場の方は,こういう規律を望むのであれば,むしろ契約でこういうふうに明示的に書きましょうと言っているのだと思います。 ○柄委員 先ほどから言われている推定規定の件ですけれども,荷主の立場から申しますと,中小の荷主にとっては,どこで壊れているか,滅失劣化というのは立証というのは難しいと思うんですね。私どもが例えばワインをフランスから輸入してきて,届いてみたら壊れていたと。これを私どもがどこで壊れたのか,海上なのか陸上なのか証明しろと,これはまず不可能に近い。荷主の立場としては滅失劣化の場所はどうしても明らかでないということにならざるを得ないのかなと。ケースが少ないと言われますけれども,本当にケースが少ないのかなと。不明な場合もたくさん出てくるのではないかなという気がしております。もしこの推定規定を残すのであれば,是非ともここにオランダの規定がございますけれども,荷主の立場としては,やはり損害賠償額が高額で有利なことを前提にやはり規定していただきたいと思います。 ○山下部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○石井委員 国内の複合運送での考え方についてです。先ほどのトラック運送とRORO船の海上運送があるという例ですが,運送契約はトラック運送ということで引き受けて,運送事業者さんの方がRORO船を使うという例が多いと思います。その場合,標準貨物自動車運送約款の規定では,利用運送を認めていて,その場合も運送人の責任は単一になっていますので,荷主の方から見ると,別にRORO船を使ってもトラックで運んでも,その責任は変わらないことになっています。これから先は仮定の話ですが,陸上運送と海上運送で運送人の責任,例えば責任限度額が違ってきたような場合に,今の柄委員の例のように貨物を受け取ってみたら全損だったが,荷主の方としては海上運送されるというようなことは全く予想もしておらず,どこで事故が起きたか分からないこともあると思います。その場合陸上輸送中だったら全額賠償されるけれども,海上運送区間の距離が一番長いので,海上輸送中の責任限度額が適用されるとなると,先ほど来の国際運送の場合とは別にして,現行の国内運送での責任との関係でどういうふうに理解すれば良いかが疑問としては残ります。 ○松井(信)幹事 この部会資料の案といたしましては,今のような場合も,RORO船の運んでいる区間において滅失,損傷が生じたという場合には,海上運送の規律が妥当するということを考えております。ですので,もし海上運送などで損害賠償額が低くなってしまうということを荷主として適切でないと思われるのであれば,荷主と利用運送人との間の契約の中でそのような責任制限をしないというルールを合意するということになろうと思います。 ○石井委員 すみません。私が申し上げたのは発生場所が分からない場合です。もちろんRORO船で起きたというのが分かっていて,内航の責任制限額が定められていればそういうことだろうと思います。問題は,どこで起きたか分からない場合に,当然トラックで輸送されてきただろうと思って損害賠償請求をしたところ,実は内航でも運んでおり,その期間が長かったので責任制限が低くなるというようなことも起こり得るということです。 ○松井(信)幹事 分かりました。今の御指摘のようなケースですと,請求原因としては運送法の総則の方で,陸上運送の並びで請求をして,この運送人側が部会資料の本文(2)の推定規定を適用するとなると,適切ではないのではないかというふうな御意見と承りました。 ○山口委員 今,石井委員がおっしゃった例としては,よく似たことが今現在起こり得るとすれば,トラックで運んで,途中を鉄道運送に切り替え,鉄道運送が最も長く,その後またトラックに乗り換えて運んだと。それを単一のトラック運送約款で引き受けたというような場合,鉄道運送の場合は鉄道運輸規程が適用になりますので,要償額の申立てをしていなければキログラム当たり4万円でしたか,最高額400万円という責任制限が掛かるわけですけれども,運んだものが非常に高額なコンピューターであるというような場合に,荷主からすると損害額である1億円を請求できるにもかかわらず,どこで起きたか分からないと。実は鉄道運送が一番長かったですよと。そうすると,今の推定規定が働きますと,鉄道運送が一番長いので鉄道運輸規程が適用になって400万円ですねというふうなことになるのがやはり不当ではないかなというのが私の感覚でございます。 ○藤田幹事 今の問題はよく分かるのですけれども,これは,今議論している複合運送の条文の話として整理するべき問題ではないと思います。トラックの運送,陸上運送で荷卸しをしないまま,トラックに乗せたままそれを船などで運んだ場合に,その区間を陸上運送とみなすというふうなルールを置くことが適切か否かという角度から議論すべき問題だと思います。CMRにはそういう規定があります。CMR第2条第1項は,物品を積卸ししないままの状態で,その車両ごと船等で運送する場合には,CMRを適用するという趣旨のルールです。そういうふうにフェリーやRORO船の場合の特別なルールとしていいかどうか,この複合運送のこの問題とは切り離して,実体的なルールの是非として検討するべき話だと思います。 ○山下部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○松井委員 ちょっと観点が変わって恐縮なのですが,やはり先ほど山口委員がおっしゃった,後から結果として法的責任が決まるという問題点の御指摘がありましたけれども,距離という言葉について思うところがあり,通常よくナビゲーションの特許のクレームの記載等で問題になるのですけれども,距離とは,実運送距離なのか,それとも道路等の最短距離なのか,単なる直線距離なのか,が不明確である点が懸念されます。多分,本当に裁判になったときには900キロと950キロは,高速道路を通ったのか,それとも一般道を通ったのかというようなレベルの話になりますので,距離というのは,やはり金額とか他の基準に比べると余り安定性のないものという意味においても,推定規定自体の是非の議論ももちろんありますけれども,やはり距離を基準とすることはやめた方が良いのではないかと考えております。 ○山下部会長 様々な御意見を頂きましたが,よろしいでしょうか。 ○松井(信)幹事 今日いろいろ御審議いただき,ありがとうございました。この推定規定はなかなか難しい面が多いなという実感を持っているわけですが,この(1)と(3),要は代表的なネットワーク・システムの規定だけを置くというだけでも,やはりそれなりの意味があるのではないかなと事務当局としては思っておるのですが,今日は議論が(2)に随分集中したような印象を受けておりまして,(1)や(3)の点についてももし御意見等があれば,よろしくお願いします。 ○山下部会長 では,いかがでしょうか。 ○山口委員 (2)を除く(1)と(3)について,複合運送の規定を置くことについては賛成でございます。やはり複合運送というのが陸上,海上,航空とは別にもう一つ独立したものとして,それを兼ね合わせた運送としてかなり定着しておりますので,それをどのように考えるのか,それをここではネットワーク・システムで考えるという大まかな,非常に大きな原則的規定を置かれているわけですから,それについては大きな意味があると思いますので,それを置くこと自体は賛成でございます。 ○藤田幹事 先ほどから批判的なことばかり言っているので念のため申し上げますが,(1)と(3)だけでも意味があると思います。より正確に言えば,(1)と(3)だけでも意味があるというよりは,運送法の総則規定を設けるということに併せて,(1)と(3)の規律を設ければ意味があるということだと思います。 ○雨宮幹事 推定規定については,日弁連の会議においても先ほど松井委員から御紹介がありましたように様々な議論が出ました,複合運送規定を設けること及び(1)と(3)のような規定を設けることについては,出席者の大半が賛成していました。ただ,この(1)について,私の理解が不十分なので,御教示いただきたいのですが,(1)の規定は強行規定になるのか否か,また,先ほど来推定規定に関する議論の中で取りあげられていましたが,運送人が荷送人から了解を得ずに勝手に運送手段を変えてしまったような場合,例えばトラックからフェリーに運送手段を変えたところ,海上運送中に事故が発生したことが特定された場合,本来の契約ではトラックで運送するはずがフェリー運送中に事故が発生したことが後ほど分かったとなると,海上運送中の規定が適用されるということになるわけですね。そこでモントリオール条約第18条第4項と同趣旨の規定を置くべきか否かという議論がされたものと理解しているのですが,そのような理解でよろしいのでしょうか。 ○松井(信)幹事 御質問のうち,まず(1)のようなルールが任意規定なのか強行規定なのかという点ですが,この点,オランダなどは部会資料5ページにあるように,強行規定として異なる定めを一切許さないということにしているようでございますが,現在,JIFFA約款において損害発生場所のみなし規定があるということも踏まえると,そこまで厳格に強行的に適用しなくてもよいのではないかと,これを任意規定と考えればよいのではないかと考えているところではございます。   御質問の後半の御趣旨がちょっと分からなかったので,もう一度お願いします。 ○雨宮幹事 私の説明が悪く申し訳ありませんでした。藤田幹事の御発言の延長になるかもしれませんが,単一の陸上輸送モードで引き受けていたところ,荷送人に断りなく結果的に複合運送になってしまったときに,例えば海で事故が起きた場合には,海上運送の規定が適用されるのか,もともとはトラックで運送を引き受けていたことから陸上運送の規定のみが適用されるのかという問題なのですが。 ○松井(信)幹事 それが,正にモントリオール条約第18条第4項に相当する規定を作るかどうか,作らないとしたらどのような解釈になるのかというところだと思いますが,なかなか文献等もないという状態で,事務当局としてもこの(注5)に書きましたとおり,世界的な動向なども踏まえる必要があるというので解釈に委ねざるを得ないと考えたところでございますが,更にこの点,皆さまの方で御意見があれば頂きたいというふうに,先ほど申し上げた次第でございます。 ○石井委員 今の(1)の点の強行規定にするのか任意規定かというところですが,強行規定にした場合にはネットワーク・システムが常に適用されるということで良いかという点です。先ほどの国内の運送の例を考えたときに,荷主の立場から見ると,今まで私が申し上げたようにユニフォーム・システムの単一責任というのが非常に分かりやすい方式だと思います。これが常にネットワーク・システムとなると,その辺の責任関係が分かりにくくなりますので,ここは,もしそういう方法を採るにしても任意規定にしておくべきではないのかなと考えます。先ほど申し上げました標準運送約款などはそうなっていますから,その辺のことも考慮した方が良いと思います。 ○藤田幹事 今,雨宮幹事の言われたことと石井委員の言われたことを併せて,指摘されている問題の考え方について若干コメントさせていただきたいと思います。いずれにせよ,適用される法令が任意法規であるとすれば,複合運送の規定にしても,任意法規と考えるかどうかはあまり重要な意味を持ってきません。しかし,例えば適用され得る単一のモードについて強行法規が存在すると,複合運送の規律を任意法規と考えていかようにでも好きに変えられるとしてよいかということで,先ほどからの疑問が出てくるわけです。例えば国際海上物品運送区間を含む複合運送を引き受けたときに,国際海上物品運送区間で物品の滅失が生じたとはっきり立証できたにもかかわらず,国際海上物品運送は適用されませんというふうな内容の複合運送契約を結んでよいかということです。  しかし,これは複合運送の規律が強行法規か否かという問題というよりは,国際海上物品運送法の方の強行法規性の要求する範囲がどこまでか,複合運送の一部に含まれる国際海上物品運送についても,必ず国際海上物品運送を適用しなくてはならないかという問題だと思います。したがって,複合運送に関するルールの強行法規性とか性格論で解決できないし,してはいけない問題だと思います。   雨宮幹事の指摘された問題の本質は,実はこれと似たところがあります。国際航空運送で運ぶと約束していたのに国際海上物品運送で運んでしまった場合どうなるかという話は,事実上国際海上物品運送をやってしまった場合であっても,本来の契約条件とは無関係に国際海上物品運送法が強行的に適用されるのか,それとも元々の契約が国際海上物品運送でなければ適用されないのかという国際海上物品運送法の強行的な適用についての議論がはっきりしないと,答えは出てこない。これは複合運送に関する外国法の規定の任意法規性について比較法的な研究をやって何か分かる話ではなくて,調べるべきことは,国際海上物品運送法あるいはヘーグ・ヴィスビー・ルールズの強行的適用について日本法としてどう考えるかについて,必要なら比較法的な見地も踏まえて,よく検討すべきであるということなのだと思います。 ○松井(信)幹事 今,藤田幹事にまとめていただいたとおりでございまして,商法の規定より条約の規定の方が優先して適用されます。ですので,(1)で一番分かりやすいのは,日本国内の陸上,海上,航空が組み合わさった場合に,これと異なる合意ができるかどうかという意味で,任意規定というふうに先ほど私が申し上げた次第でございます。これと異なる条約上のルール,ヘーグ・ヴィスビー・ルールズやモントリオール条約が複合運送の一部に掛かってくる場合には,条約の解釈の問題として強行的に規律されるかどうかというのが別途問題になり得ます。 ○山下部会長 よろしいでしょうか。 ○野村(美)委員 先ほど(1)につきまして,これは準拠法が日本法の場合に適用されるんだという御理解をお示しだったのですけれども,その場合の準拠法というのが,この(1)で何の準拠法なのかちょっとよく分からなかったんですが,つまり単一の契約で引き受けたと言っているその単一の契約なのか,それとも事故が起きたと言っているんだから不法行為の話なのかということでして,どの法が適用されるかということと,日本法になったから(1)が適用されるということの整理をまた御検討いただいたらいいのではないかと思います。 ○山下部会長 よろしいでしょうか。 ○道垣内委員 野村(美)委員の話に続かない話で恐縮ですが,松井(信)幹事が最後にまとめられた話についてです。例えば,国際的な海上運送において,その海上運送に伴う危険の発現によって生じた損害について誰がどういった責任を負うのかという問題が国際条約ないしは類似のものによって決定されるというのは,それはそのとおりだろうと思います。   しかしながら,先ほどから出ている例ですが,例えば陸上で運ぶと言っていたのに船で運びました,航空で運ぶと言っていたのに船で運びましたというときには,契約上の債務不履行の問題は別個あるわけであって,その債務不履行において一定の損害額を算定して認めることが条約に違反することになるのかというのは,なお考える必要があることではないかと思います。したがって,国際海上物品運送と定めていない場合でもその法律は適用されるのだ,強行法的に適用されるのだとしても,そのことが締結されている契約の債務不履行に伴う何らかの効果を当然に排除するものではないという観点も必要なのではないかという気がいたしました。 ○山下部会長 よろしいでしょうか。非常に多くの問題点があるということを今日御指摘いただきましたので,事務当局においては,次の段階に備えて問題を少し整理して,なおいい案を検討いただければと思います。とりあえず,複合運送については以上にさせていただきまして,次の相次運送の方へ続きます。まず,事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 「2 相次運送」につきましては,商法上,各相次運送人に連帯して損害賠償責任を負わせる旨の任意規定等が存在しますが,陸上運送における連絡運輸等の実例は確認できているものの,総体としては実例に乏しいところではあります。   もっとも各相次運送人に連帯して損害賠償責任を負わせることには一定の合理性が認められると思われますし,これらの規律は任意規定であることを踏まえますと,同一運送手段の相次運送として,相次運送の規律を海上運送や航空運送に及ぼすことが考えられます。   他方で,海陸相次運送のような異なる運送手段の相次運送については,いずれの運送手段に適用される規律に従うこととすべきか明らかでなく,大審院判決が各相次運送人の連帯責任を規定する商法第579条の準用を否定したことからすれば,現在の相次運送に関する規律を異なる運送手段の相次運送に及ぼすことには困難が多いものと考えられます。   以上の点につき,相次運送の実例の御紹介等も含め,皆様の御意見を頂きたいと存じます。 ○山下部会長 それでは,ただいま説明のあった部分につきまして,御質問,御意見をお願いいたします。特に実務の方で今どういう状態なのかという辺り,もし御説明いただける点があれば有り難いと思います。 ○菅原委員 恐らく最も実例数が少ないであろう航空について,御紹介の口火を切らせていただきます。   私が調べた限りでは,国内航空におきまして,相次運送の実例は極めて少ないというふうに申し上げられると思います。ただし,ANAにも相次運送の取扱いに関する社内規程はございます。また,日本航空さんとANAとの間には,相次運送契約も存在しております。  この相次運送契約書を見ますと,自社ではない相手方の運送区間で発生した損害の賠償について,いわば寄与過失に応じた負担をする旨の規定はありますが,各運送人の連帯責任を定めた規定が存在しておりません。その理由ははっきりといたしませんが,恐らく国内の相次運送の場合,小口貨物が大半でございまして,どの区間で損害が発生したかが比較的明らかであるため,連帯責任を負うべき事例が見当たらず,契約上の規律の必要性が低かったのではないかと思います。  そのため,国内航空に商法第579条の規律を及ぼすことに何となく違和感はありますが,かといって,特にこれについて強く反対したいということでもございません。一応の御紹介でした。 ○山下部会長 ありがとうございます。 ○松井(信)幹事 今の相次運送契約の御紹介について1点伺いたいんですが,今のは,二つの航空運送事業者間の契約の話でしょうか。もしそうであれば,今おっしゃった寄与過失に応じて負担するというのは,内部割合だけを定めたものであって,顧客に対しては連帯責任ということが前提にあるのではないかなとも思ったのですが,いかがでしょうか。 ○菅原委員 それは松井(信)幹事のおっしゃるとおりで,まさに運送事業者間の契約ですので,自分の区間に生じたものは自分で負います,その発生について相次運送の相手方が何らかの関与をしている場合には応分に負担します,という内部割合の規律でございます。  顧客が運送人に対して賠償請求をする場合には,連帯責任の問題がありますが,先ほどの繰り返しになりますけれども,そもそも連帯責任を追及された事例が見当たらないことと,航空の場合には,到着地空港で航空機から貨物を一旦積み下ろして,これを別の航空機に積み替えるに際し,破れや潰れの破損を確認・通知してから搭載する実務が励行されているため,相次運送において連帯責任の問題が生ずる場面が少ないのではないかと思います。 ○山下部会長 ありがとうございます。ほかの業態ではいかがでございましょうか。あるいは立法論として考えたときに,部会資料の6ページ,7ページに指摘してあるような論点についていかがでしょうか。 ○藤田幹事 こういう種類の契約が本当に世の中にあるかどうかよく分からないのであまり強い意見はないのですが,仮に立法するとすればという前提での質問なのです。まず第一に,陸上運送だけ相次運送の規定を置くというのはおかしいので,残すのであれば,それはほかの運送手段のルールとして妥当するものは残すという発想はよく分かるのですが,そこから先が少しよく分からないところです。陸上運送,海上運送,航空運送について準用すると書いてあって,複合運送のときには更に1(3)というところで運送手段,つまり陸上運送であっても鉄道と道路運送は別運送とみなすという規定が入っているんですね。ルールが違うなら連帯責任にしたとき効果が分からないというのであれば,同じようなことはここでも当てはまるような気がするのですけれども,あえてこれは入れておられない。これはどういう趣旨なのか教えていただければと思います。つまり,違う法令が適用され得る限りにおいて,違う運送とみなすというのが1(3)ですね。相次運送については,単位が道路と航空と海上だけで,それ以上細かく分けないのは,それはどうしてなのかということです。 ○松井(信)幹事 相次運送については,同一運送手段を相次いで行う場合ですので,その運送手段に関する法律や条約の規定の中で,自足的に規定を設けることができます。例えば,モントリオール条約第36条のような規定でして,特殊な運送手段に関する規定は,商法ではなく特別法に規定されるべきという原則に従うものです。これに対して,複合運送については,異なる運送手段にまたがる場合ですので,個別の運送手段に関する法律や条約に規定を置くことが困難であり,そのために,商法に規定を置くよりほかに方法がなく,1(3)の提案をしています。具体的に,商法上,内航と外航との関係について言いますと,例えば名古屋から横浜を経由して海外に行くというものは,名古屋から海外へと向かう外航運送の一部を相次いで行うという意味で,それ自体がもう外航の相次運送というふうに評価されるということになりますので,内航と外航をまたがる相次運送というのを考える必要はなく,1(3)のように複数の運送手段をまたがるような規律を置く必要がないというふうに思っております。すみません,御質問の趣旨が分かっていないのかもしれませんが。 ○藤田幹事 論理的にあまり一貫していないような気がするのですね。ルールが違うなら連帯というのは意味が分からないというのであれば,せっかく複合運送でルールの適用単位ごとに運送を別々に想定するという規定を置いたのであれば,相次運送については同じような発想で,そういう1(3)のような単位ごとに同一のもの同士であれば相次運送が適用されるとなるのが論理的なのではないかと思ったのですけれども。 ○松井(信)幹事 ですので,もう一度申し上げますと,論理的な可能性として,日本国内の港を結ぶ航路と,そこから更に外国に結ぶ航路の全体につき運送が引き受けられ,その一部について相次いで運送がされたという事案があったとすると,その一連の航路全体が国際海上物品運送法第1条による国際海上運送に相当してしまうので,このように,陸上相次運送に関する規定を海上運送について準用するといいましても,実際には内航の準用の話と外航の準用の話しか観念できないというふうに思っており,あえて1(3)のような規定を設ける必要はないと考えています。また,モントリオール条約について見ましても,日本の飛行場から日本の飛行場を経由して,更に外国に飛び立つときは,その全体がモントリオール条約の全面的な適用になり,条約の相次運送の規律の適用がありますので,1(3)のような規定の必要はないというふうに考えている次第でございます。 ○藤田幹事 明示的に私が聞いたのは,鉄道と道路ですけれども,モントリオール条約等にそのような規定があるのを知っています。ただ,わざわざ複合運送について商法でこういうふうな規定を置くのなら,ここでも同じように扱わないと一貫しないのではないかという気はしませんか。理由が責任の内容が違う以上は,連帯は考えられないということであれば。複合運送の1(3)では,責任の内容が違うから違う運送区間とみなしたわけでしょう。 ○松井(信)幹事 鉄道営業法については,この(注)で書いておりますように責任の内容が違うのですが,鉄道運送に関する鉄道営業法の規定を通し運送を行う船舶や自動車について準用しているという形によって,実質的に規律の内容が同じとして,原告側としてはどこの区間で損害が生じたかを問うことなく訴えることができるということになっていると思います。ですので,鉄道営業法の規定によって,鉄道と通し運送を行うトラックは実質的に同じルールになっているというふうに考えているところでございます。 ○山下部会長 そこへ一遍に行く前に商法のレベルでどうするかをまず決めたほうがいいのではないかというのが藤田幹事の御意見です。 ○藤田幹事 そうです。相次運送というのはルールの適用単位ごとに考えるという考え方を商法ではとっているのか,それともそれと全く無関係に陸海空なのだということなのか,そこのところがどうもはっきりしないような立法提案になっているのが,考え方がはっきりしないという点で気持ち悪いと申し上げているのです。最終的に業法とか条約とかの規律を通じて結果が同じになるからいいというのとは,ちょっと話が違うような気がするのです。それはまたゆっくり検討していただければと思いますけれども。 ○山下部会長 その点はちょっと考えていただければと思います。ほかにいかがでしょうか。 ○増田幹事 この相次運送については何か実態がさっぱり分からないので,私も特に強い意見を持っているというわけではないのですけれども,先ほど藤田幹事がおっしゃったように,やはりルール単位で区別するということなんですかね。この第579条の趣旨は,連帯責任を負うというところに主眼があるのであるとすれば,確かにルールが違う相次運送については別の扱いにするというのは理由があるのだろうと思いますけれども,先ほどの鉄道営業法の規定とも関連する点ですが,むしろどこの区間で発生したかにかかわらず,荷主が損害賠償を請求することができるという点に第579条の効果として主な効果があるのであるとすれば,輸送手段ごとというか適用されるルールごとに相次運送の規定の適用を限定するという意味もあまりないのではないかといいますか,適用されるルールが異なる相次運送について第579条の連帯責任というルールがあっても,それほどおかしくはないのではないかなという印象を持っております。ただ,よく分からないので,それほど強い意見ではございません。 ○山下部会長 ほかにございませんか。 ○松井(信)幹事 すみません。今,増田幹事がおっしゃったような法制にすると,原告側がどこで,どの区間で損害が発生したかが分からないけれども,陸海のどこかで損害が発生したという場合に,幾らの損害賠償を請求することができるのでしょうか。 ○増田幹事 そこは運送人の側で証明するという話になってくるのかなという気はするんですけれども。そもそも相次運送の特則は要らないという話になるのかもしれないですね。 ○松井(信)幹事 請求原因として幾らというふうになるのかが分からないのではないかなと事務当局としては思った次第でございます。まず,今の鉄道営業法の仕組みなどは,同じルール,トラックと鉄道は鉄道営業法の適用があるかないかで本来違うわけですけれども,通し運送をする場合には鉄道運送のルールをトラックにも準用するという形にして,同じルールにしておりますので,請求原因としては,もう鉄道営業法の世界の中で一律に請求ができるということになっております。   ですので,相次運送の規律は,どこで損害が発生したかを問うことなく賠償額が定まるという点に利点があるのですが,そこの責任原因が違うものを組み合わせようとすると,何を基準にしたらよいか分からないというのが難点だと思った次第です。 ○増田幹事 複合運送の話になってしまうんですかね。総則の規定があることを考えると,それに基づいて請求を立てればいいのかなという気もするのですが。 ○松井(信)幹事 複合運送の方は立証責任の問題で処理をしておりまして,原告側としては総則の適用を主張して,海上運送区間における損害を主張したい被告は抗弁を主張していただくという仕組みになっているんですけれども,この相次運送で,被告が2人あるようなときにどの金額で請求をして,どのような結論になるのか,本来相次運送の制度は,損害発生場所を問わず全額の連帯責任とするという制度なのですが,そのような制度の性格を変えることになるのではないかとも思ったのですが,また議論をさせていただいて,考えていきたいと思います。 ○増田幹事 私の方もあまり十分に整理ができていない段階で申し上げてしまいまして,失礼いたしました。 ○山下部会長 よろしいでしょうか。   それでは,予定ではもう少し進むはずだったのですが,複合運送の議論が盛り上がりましたので,この辺りで15分休憩を取りたいと思います。3時35分まで休憩にいたします。           (休     憩) ○山下部会長 それでは,再開したいと思います。   次は「第3 運送証券及び海上運送状」の「1 船荷証券」,「(1)総論」,「(2)船荷証券の交付」までを御審議いただきたいと思います。まず事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 御説明いたします。   まず,「1 船荷証券」の「(1)総論」では,国内海上運送に関する商法上の船荷証券の規律に関し,これを国際海上物品運送法上の船荷証券の規律に併せて整備することの当否について御議論いただきたいと考えております。   商法には,国内海上運送の船荷証券についての規定がありますが,その後に制定された国際海上物品運送法上の船荷証券とは規律の異なる部分がございます。この点につきまして,近時の国内海上運送実務では,船荷証券の利用例は確認できておりませんが,諸外国の法制において国内,国際海上運送を実質的に区別せず船荷証券の規律を定めるものが多いことなどを踏まえますと,商法上の船荷証券の規律を現代的な国際海上物品運送法上の船荷証券の規律に合わせて整備し,同法第6条から第10条までの規定を削除して,国際海上運送の船荷証券についても商法の新たな規定を適用することが考えられます。   次に,「(2)船荷証券の交付」の本文アにつきまして,商法においては,海上運送は船舶所有者が行うものとして規律され,船舶所有者若しくはその代理人又は船長が船荷証券を交付することとされておりますが,第3回会議で御審議いただきましたとおり,海上運送契約の一方当事者を示す用語を船舶所有者から運送人に改める場合には,船荷証券が運送契約上の債権を表章するものであることを踏まえて,本文アのとおり運送人又は船長が船荷証券を交付することとすることが相当であると考えられます。   また,これに関連して船長が船荷証券を交付するという規律につきまして,現行法上は,船長は,船籍港の内外を問わず,船荷証券を交付する代理権を有するとされておりますが,これを前提として,例えば,一般的な定期傭船契約書式に規定されておりますように,傭船者が船長に代わって船荷証券に署名をする権限が付与されるなどの実務が形成されていることを踏まえますと,船長が船荷証券を交付するという規律は維持することが相当であると考えられます。   続きまして,本文イでは,商法と国際海上物品運送法に規定する船荷証券の記載事項を比較すると,9ページの表の下線部のとおりの相違点があることから,船積船荷証券と受取船荷証券の区別の点をも含めて,商法上の船荷証券の記載事項を国際海上物品運送法上の船荷証券に合わせて整備することを提案しております。   また,これに関連して,実務上「for the Master」,つまり,「船長のために」という記載と共に傭船者の署名がされる場合のように,運送人の氏名又は商号が船荷証券上に明確に記載されない場合に,どのように取り扱うべきかという論点がございます。このような場合につきまして,いわゆるジャスミン号事件では,船舶所有者を運送契約上の請求権についての債務者と認定した原審の判断を是認していることを踏まえまして,ドイツ法などを参考に,船舶所有者を運送人と推定する旨の規律を設けることが考えられますが,一方で,いわゆるカムフェア号事件では,定期傭船者を運送人と認めていることも視野に入れた上で,この点についてどのように考えるかを御審議いただきたいと考えております。   最後に,本文ウでは,実務上は,船長等から傭船者又は荷送人に対して船荷証券の謄本の交付請求がされることはないようでありますので,商法第770条の規律を削除することを提案しております。以上の点につき,併せて御審議いただきたく存じます。 ○山下部会長 それでは,ただいま説明のあった部分につきまして御質問,御意見をお願いいたします。 ○山口委員 基本的に商法の規定はあまり使われてございませんので,国際海上物品運送法の規定の方にそろえるという考え方でよろしいかと思いますし,実務的にも国際海上物品運送法に従って船荷証券が出され,それが使われているということが多くの場合でございますので,その考え方でよろしいのではないかと思っております。   ただ,1,2点御指摘させていただきたいところですけれども,一つ目は国際海上物品運送法第7条第1項第7号において船舶の名称及び国籍と書いてありますが,実務上,船舶の国籍が書かれた船荷証券は多分存在しないかなと思っておりますし,実際上,これは守られておりませんし,また,必要性もありませんので,この国籍の部分は削除されたらどうかなと思います。もともとのヘーグ・ヴィスビー・ルールズにもこの規定はございませんので,必要のない規定ではないかと思います。   それから,これは別途お願いなんですが,先ほど,複合運送が一つの運送類型として取り上げられているという状況がございます。それで,また条文化しようとされているわけですけれども,JIFFAのB/Lを中心としまして,複合運送船荷証券が多々使用されている状況がございます。この場合は,受取地が陸上で引渡地がまた陸上という場合もありまして,国際海上物品運送の前後に陸上運送が含まれた複合運送を予定した船荷証券,有価証券ですね,これが発行されて,実際上それが流通しているという事実がございますので,この国際海上物品運送法第7条第1項の規定の中に入れられるかどうかはちょっと分からないんですが,複合運送については,例えば,受取地あるいは引渡地を船荷証券の記載事項として取り込むというような,つまり複合運送船荷証券を条文として認めていただけるような規定にしていただければというふうに思うわけであります。   というのは,実態上,複合運送証券が今,船荷証券として出回っておるというのと,それから,先ほど申し上げましたように複合運送の船荷証券というものは条文上存在しないのですが,有価証券として確実に現在出回っておりますので,これを機会に現代化を考えられるのであれば,しかも,複合運送という一つの運送形態を条文上入れられるのであれば,その証券の発行を予定した記載事項を含めた規定にしていただきたい。具体的に言いますと,ロッテルダム・ルールズ第35条だったと思うんですが,そこの契約明細の中に記載されているような規定ですね。例えば,運送契約で決められている場合は受取地あるいは引渡地もその船荷証券に記載してもよいと。常に入れる必要はないんですけれども,そのような規定を設けていただければというのが我々の希望でございます。 ○石原委員 今の山口委員の御意見に,私も賛成でございます。やはり,実務的に見ておりましても,今,船会社のport to portの責任からむしろdoor to doorの責任の方に移ってきています。特にアメリカやヨーロッパの場合は内陸地までコンテナを持っていく場合が結構多いわけですね。その間でも逆に運送人としての責任が生まれてきています。したがって,やはり“place of receipt”,“place of delivery”,これをやはりきちっと入れたほうがより責任が明確化されてくると思う次第です。 ○松井(信)幹事 先ほど複合運送船荷証券のお話がございましたが,確かに今回,複合運送に関する契約類型を一つ商法の中に入れますと,それに対応する運送証券というものは考えられるところでございます。そのように考えたときには,船荷証券という海上運送を中心にするものではなくて,陸海空の複合運送に関連する運送証券というふうな形になるようにも思われます。そうすると,商法の海上運送に関する特則の中の船荷証券の規律に一つの号だけ追加すればよいというものではなくて,むしろ複合運送というところの直後辺りに複合運送証券というものを認知して,その上でほとんど船荷証券と同じような規定をずらっと並べ,また,効力についても同じような規定を置くなり準用するなりという形になることが一つ考えられるところでございます。商法典として似たようなものが二つあってもよろしければその方向でも考えたいと思いますし,ただ,あまりに似ているようなものがあるというのはいかがなものか,現実に,慣習上の有価証券としてうまく回っているのであれば,もうそれについては皆さん認知しているということでよいのではないかという考え方もあり得るかと思いますので,この船荷証券に類似する複合運送証券というものについて,運送法の総則に一連の規定を設けるのかどうかという点について,御意見があればお願いしたいと思います。 ○山口委員 誠に申し訳ございません。私も,複合運送証券というのを別途設けてはどうかなというアイデアも考えたんですが,ただ,船荷証券は有価証券でありますが,国際航空運送に使われている航空運送状は有価証券ではございませんで,単なる運送状であると。だから,航空運送と海上運送とでは,運送状か有価証券かということで性質が全く違うというところがございますので,その複合運送証券というものを一律に定めてしまいますと,航空運送の実務と海上運送の実務とで大きく違ってしまいますので,非常に難しいかなというのがございましたもので,特に海上運送の場合は有価証券で使われていて,なおかつ,船荷証券の延長線上にplace of receipt,先ほどおっしゃった受取地と,それから,引渡地を足すことによって容易に複合運送船荷証券が作れるものですから,ここの記載事項の所に落とし込むことによって,それが可能になるのであれば比較的よいかなと,そう思ったもので,ここで申し上げたわけでございます。   総合的なものを設けるというのは,かなり技術的に難しい,菅原委員が国際航空運送の専門家でございますけれども,正にこれは有価証券ではなくて,荷送人が作成する運送状として規定されております。モントリオール条約でもそうなっておるんですけれども,一方,船荷証券は運送人が発行する有価証券という形になっておるので,これは全く性質が違いますものですから,それを統合するというのはかなり法律上難しいのではないかなというふうな感覚を持っております。 ○藤田幹事 山口委員の言われたこととほぼ重なるのですけれども,まず,複合運送証券についてやはり条文を置いたほうがいいと思います。慣習法上の有価証券などという説明は,現在は何も条文がないからそういわざるを得ないからなされているわけで,法律を作るときに,わざわざブランクにすることはないと思います。   ただし,規定の作り方としては,一般複合運送の有価証券化のような規定を置く必要は全然ありません。想定される複合運送証券というのは,あくまで海上運送,ほとんどは国際海上物品運送を含んだ複合運送に限定されていると思います。一般的な複合運送について規定を置くとすると,今度は単品の運送については,およそ有価証券が想定されないような運送の組合せについては,組み合わせるとなぜか突然有価証券を出せるかのような条文になって確かにおかしい。だから規定を置くとすれば,複合運送の所に海上物品運送区間を含むような複合運送契約については複合船荷証券なる有価証券を発行できるような規定を置き,それには,海上運送の特則のところに置かれている船荷証券の規定を準用すると,その上で記載事項等については一定の読み替え規定を置くというぐらいにして,海上運送を含む複合運送の特則として置けば,それほどおかしくない置き方ができるのではないかと思います。そうすれば,実務ニーズ,少なくとも現在のニーズはくみ取れ,かつ全体的な体系にもあまり齟齬をきたさないものになると思います。山口委員の御指摘から始まった点については,以上でございます。ほかにちょっと別にあるのですけれども,取りあえず,ここで切らせていただきます。 ○山口委員 私は別にここにこだわることはなくて,藤田幹事のおっしゃったような形でもよろしいかと思います。実務上はもうほとんどの複合運送証券は国際海上運送を含む複合運送でありまして,航空運送を含む運送状は多少ございますけれども,極めて数が少なく,また,有価証券として判断されておりませんので,条文を置くとすれば国際海上運送を含む複合運送だけを置けば十分だと思いますので,それをどこに置くかというのは特にこだわりございません。 ○石原委員 一つはやはりB/Lのフォームについて,昔のフォームとコンテナになってからのフォームが違うわけです。表面約款が昔の古いものは最初からShipped B/Lになっていますので,船積みしたということは前提になっていますけれども,コンテナはReceived B/Lですから,逆に受取を前提にして,船積みはその後に来ていますので,やはり藤田幹事,それから,山口委員のおっしゃるとおりの形の方がむしろ望ましいと思います。 ○山下部会長 事務当局,よろしいですか。では,ほかの点で。 ○藤田幹事 これは実質に関わらないコメントで申しわけないのですけれども,今の提案とされている部会資料の8ページ,本文(2)の船荷証券の交付の提言です。後に書かれている説明も含めて実質的な内容に別に違和感があるわけではないのですけれども,こういう形でこの内容を表現することには疑問があります。ここで書かれていることは,論理的に3種類全く違う問題が含まれております。第一は,誰が発行者か,誰が有価証券である船荷証券上の債務者となるかという問題で,これは言うまでもなく運送人であって船舶所有者でないことを今回明らかにするわけです。二番目は,荷主は物理的に誰に対して紙を渡せと言うか,誰が渡さなければいけないかという問題です。提案でははっきり書かれていませんが,船長は運送人の代理人として,運送人を債務者とする有価証券を交付することでしょう。国際海上物品運送法第6条第1項には運送人の代理人という文言も含まれているのですけれども,代理人が本人のためにやるのは当たり前だから,多分ここでは除いているのだと思いますが,いずれにせよ要するに誰が交付するかということを書く。3つ目は,船長は常に運送人を代理して有価証券である船荷証券に署名し,運送人を債務者とする船荷証券を発行する権限があるということです。提案では,運送人又は船長が船荷証券を交付すると書くことでその代理権を示そうとしているわけです。考えてみると面白くて,運送人が誰であるかにかかわらず,それが船主であろうが傭船者であろうが,あるいは証券上明示的に特定されていない場合であろうが,船荷証券の上に船長が署名すれば,それは有価証券になるというのは,普通の代理法理からするとかなり変なルールですけれども,そういうルールです。   この3つの話を「運送人又は船長が船荷証券を交付する」という一言で示そうというのは,いくら何でも立法技術としてどうかと思います。船荷証券の発行主体は運送人であるということと,船長の船荷証券発行権限は,そういうものとして別途書く方がいい。ただし,船長の船荷証券発行権限―――船主であろうが誰であろうが,運送人を代理する権限があるという―――については,その現代的な適否を私はかなり疑問に思っています。船長が船荷証券に署名したりするのでしょうかということから疑問があります。「for the Master」と書かれたB/Lについても,船長の船荷証券発行権限が法律上明文で書かれないと効力がなくなるというわけではないと思います。ただ,もしどうしても船長の船荷証券発行権限を実質として維持したければ,権限の規定として,荷主が誰に船荷証券を交付せよと言えるかというふうな規定とは別に分けて書いた方がいい。今は一文しかない規定を一生懸命解釈して,3つの全く違う法的効果を導くような解釈をしているのですけれども,一から立法するのであれば整理できると思います。   ちなみに,国際海上物品運送法第6条第1項は,もととなっているヘーグ・ルールズがありますので,あまり訳文である国際海上物品運送法の書き方にこだわるのもどうかと思います。ヘーグ・ルールズは,issueというふうな言葉を使ってあって,本来,交付というふうに訳していいかどうかもよく分からない条文です。少なくとも今現在,他の国際条約で船荷証券の発行主体を書くときに船長を書くものは全くありません。その辺りもちょっと参考に,適切な立法の仕方を考えていただければと思います。 ○山下部会長 ほかにいかがでしょう。 ○箱井幹事 細かいことで恐縮ですが,記載事項について一つ御検討いただけたらというところがございます。もともと国際海上物品運送法第7条第1項は,御承知のように,これは商法第769条に基づいて作られているものでございますので,それを商法に戻すというのは違和感があまりないということで,これ自体は賛成でございます。ただ,条約との齟齬の関係で国際海上物品運送法を修正するかしないかという話があり,むしろ商法の方に戻すと,これを修正しやすくなるのかもしれませんが,――準用するということなので,条約と異なったらまずいわけですが――,この条約との相違という点では,条約第3条第3項(a)の「記号」のところが気になります。これは,もともと商法第769条が部会資料の9ページに資料として挙がっていますけれども,種類,重量,容積,荷造りの種類,個数並びに記号という規律があり,国際海上物品運送法でも「運送品の記号」と規定されていて,商法に近い形になっています。けれども,条約第3条第3項(a)はもうちょっと書いてあるわけでございまして,それの片割れがなぜか国際海上物品運送法第8条第2項の方に行って,条約の趣旨とは大分違っているのではないかと思います。これは,考え方の違いもあるのかもしれませんけれども,私などはそう思っております。   確かに第3条第3項(a)は梱包外装の記号と証券記載との一致ということを書いておりまして,片一方は荷主の義務のような書き方をしておりますから,記載事項としてまとめて書くのは,確かに大陸法のこういったきっちりした立法の中では書きにくいだろうとは思いますが,もう少し検討の中で,条約の趣旨を例えば「主要記号」といった書き方にする必要がないのかというような点を含めて御検討いただけたらと思っております。 ○山下部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○野村(修)委員 9ページの(2)のところも発言してよろしいでしょうか。先ほど藤田幹事の方からもお話がありましたけれども,運送人,要するに債務者が誰であるのかということを特定するに際して,諸外国も含めて,我が国の判例でもいろいろ議論があるところだというふうに思いますが,私は,例えばドイツ法などのように推定規定を設けるという必要性はないと思います。といいますのは,むしろこのジャスミン号事件で示されたのは,多くの方の間ではジャスミン号事件の結論がいいか悪いかという議論がよくありますけれども,ジャスミン号事件自身はむしろ契約の解釈によって決めるんだということを示したことに価値があるというふうに思うわけで,そういう意味では,いろいろな事情がある中で,今回の契約は誰が債務者だったのかということをその都度確定していくというのが望ましいのではないかなと思います。   ですから,例えば船荷証券のヘッダーを重視するということで今回こういう結論になりましたというのもあるかもしれませんし,あるいは「for the Master」やデマイズ・クローズを見て,そこで今回はこういうことだったのではないかというふうに解釈するということの余地があるというような形にしておくのが望ましいと思います。それぞれの運送の必要性に応じていろいろな意味で,保険との関係とか,あるいはアレストとの関係等を含めて,今回は船長に寄せましょうとか,今回は傭船船でいきましょうというようなことがその都度決められていくというような実務の方が柔軟性があっていいと思いますので,必ずしも一方に推定するということは必要がないのではないかなと思います。 ○山下部会長 ほかはよろしいでしょうか。 ○遠藤委員 「for the Master」のB/Lについては,荷主としては非常に問題が多いB/Lだと認識しています。基本的に,やはり我々,特に荷受人の場合で運送を手配していない場合,運送の契約当事者でない場合については,B/Lのレターヘッドが運送人であると推定するのが一般的ではないかと思います。ここの資料には記載されていないようなのですが,今,お話にございましたジャスミン号事件のように,デマイズ・クローズも最終的に運送人を判断する上で大きな要素であったと認識しています。裏面約款のデマイズ・クローズを見て,ああ,最終的な運送人はレターヘッドの運送人とは異なるというようなことを判断するのは非常に難しく,やはりレターヘッドが付されていれば,それを運送人と推定するというのが一般的なのではないかと思います。デマイズ・クローズについては,有効性の問題もいろいろ各国でも解釈が異なっているようですので,「for the Master」のB/Lについては,デマイズ・クローズも併せて検討する必要があるのではないかと考えております。 ○野村(修)委員 特に意見があるわけではないんですが,確かにある特定の国では,もうレターヘッド一本で,それを基本に解釈をするというので判例が固まっていくということはあるかもしれませんが,私自身としてはとりあえずどっちかに寄せるということを今必要としているのかどうかということを議論していただくことがまず大事かなとは思います。むしろ,逆にドイツ法はここに書いていますけれども,船舶所有者を運送人に推定してしまうということになると,恐らくこの結論に違和感をお持ちの方も多いわけなんですよね。ヘッダーの方が,恐らく例えば定期傭船契約で「for the Master」,デマイズ・クローズというのが付いていても,ヘッダー自体は定期傭船者の書式ではないですかということを議論しているはずですから,そういう意味では,逆に船舶所有者の方に寄せられてしまうというルールを作ることには違和感があるのだというふうには思います。   ですから,ある意味ではそういうことの推定規定を決めておく必要があるのかどうかという点で,私の意見としてはブランクにしておいて,その都度契約解釈によって定めるというのがいいのではないかということを申し上げただけで,もちろんほかの意見があることは分かっています。 ○山下部会長 いかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,この点についての御議論を踏まえまして,なお検討していただければと思います。   続きまして,「(3)文言証券性」について御審議をお願いします。まず事務当局より説明をお願いします。 ○山下関係官 「(3)文言証券性」の本文アにつきまして,国際海上物品運送法上の船荷証券につき,その記載事項のうち運送品の種類,容積,重量又は個数及び記号につき,運送人又は船長は荷送人等の書面による通告があった場合には,当該通告が正確でないと信ずべき正当な理由があるときなどを除き,当該通告に従って記載しなければならず,荷送人等は運送人に対し,当該通告が正確であることを担保するという内容の規律が存在しますが,商法上の船荷証券については,このような規律はありません。   今御紹介いたしました一つ目の規律の趣旨は,荷送人の通告に従って運送人に船荷証券を作成させ,その文言責任を負わせたいという荷送人の利益と,一定の場合に船荷証券に不知文言を記載して責任を免れるという運送人の利益との調整を図ったものとされております。また,二つ目の規律の趣旨は,船荷証券所持人に対して,賠償責任を負うこととなる運送人が誤った通告をした荷送人への求償を可能とするものとされておりますところ,これらの趣旨は商法上の船荷証券についても妥当すると考えられますので,本文アのような規律を商法にも設けることが考えられます。   次に,本文イにつきましては,商法上の船荷証券の文言証券性に関する規律は,平成4年改正後の国際海上物品運送法第9条と同様の規律であると解するのが一般的でございますので,同条に合わせ本文イのように文言を整備することが考えられます。したがって,この整備によって商法の文言証券性に関する規律の内容が実質的に変更されることはないものと考えております。   また,関連して,ヘーグ・ヴィスビー・ルールズでは,船荷証券の文言性の認められる記載事項として,物品の識別のための必要な主要記号,個品の数・容量・重量,外部から認められる物品の状態の3事項を列挙しておりますが,国際海上物品運送法においては,当該3事項に加えて文言性の認められる範囲を広げることは各国の取扱いに委ねられているという理解を前提に,記載事項によって効力に差を設けることには合理性がなく,法律関係を複雑にしてしまうことなどを理由に,船荷証券の記載事項につき一律に文言性を認めており,フランスや中国においても,我が国と同様のようでございます。この点につきましては,イギリスやドイツなどの他の諸外国の法制も多様であることを踏まえて,国際海上物品運送法第9条の規律を見直すことの要否につきましても,御審議いただきたく考えております。 ○山下部会長 それでは,ただいま説明のあった部分につきまして御質問,御意見を頂ければと思います。 ○遠藤委員 御説明があったように,国際海上2こう物品運送法とヘーグ・ヴィスビー・ルールズと異なっているというお話があったのですが,問題提起としては国際海上物品運送法が条約を逸脱しているというか拡張しているので,条約に戻そうという御提案なのでしょうか。ただ議論を全般にするということでよろしいでしょうか。 ○松井(信)幹事 ヘーグ・ヴィスビー・ルールズでは,部会資料11ページの3つの事項についてのみ規定しておりますが,その余については国内法に委ねられている部分であると考えております。国際海上物品運送法の平成4年の改正の際に,この点について様々な議論がされた結果,現在のような条文になっているというところでございますが,このまま国際海上物品運送法第9条を維持して差し支えないのかどうかという点を改めてもう一度確認をしておきたいという趣旨でございます。 ○遠藤委員 国際海上物品運送法第7条で荷送人が申告するのは商品の種類と,あと記号とか数量とかの2項目だけで,残りは基本的に運送人サイドの記載事項ではないかと思うのです。もしこれをヘーグ・ヴィスビー・ルールズに合わせるとすると,国際海上物品運送法で列挙している項目の中で運送人さんが記載する運賃,運賃の額に関連して,通常,国際海上運送においてはB/L上にフレイト・コレクトとか,またはフレイト・プリペイドということを記載することになっておりまして,そこのところについては文言証券性を維持していただきたいと思います。 ○山下部会長 ほかはよろしいですか。 ○藤田幹事 細かなことですが,フレイト・プリペイドとかそれを書いた場合の効果について明文でこういうのを書くかどうかについて,ちょっと今,賛否は留保したいと思います。考えていただきたいのは,運賃についての記載というのは,この不実記載のルールに乗せていいものかどうか私にはよく分からないからです。つまり,荷送人が運賃を払っていないのに運送人がフレイト・プリペイドと書いた船荷証券を出した場合に,船荷証券の所持人に,いや,運賃を払っていないことを知っているでしょうと言って請求できるかというと,私はこれを認めるべきではないと思います。これはどういう意味かというと,それはフレイト・プリペイドと言ったのは,荷受人には請求しませんという意思表示をしているのであって,実際に払われていない場合にも,不実記載の問題にならないと思うのです。ところが,こういう規定の中にこれを入れてしまいますと,一般的な物品の記載の効力,対抗の問題になってしまって,何かちょっと違和感がある気がします。そうすると,フレイト・プリペイドの話は切り離しておいたほうがいいような気がします。フレイト・プリペイドという記載の性格についての解釈次第ですけれども,普通の物品の記載についての不実記載とはちょっと私は違った問題だというふうに理解しています。 ○遠藤委員 そうすると,今の国際海上物品運送法の運賃というところには,フレイト・プリペイドあるいはコレクトというのは含まないと。 ○藤田幹事 今は含んでしまっているのですけれども,本来は不実記載の効力のルールに乗せてはいけない話だったのではないかというふうに思っています。知らなかった場合には対抗できないというルールの話とは本来違うものを一見それが乗るかのようなルールを作ってしまっているのが気になるところです。 ○遠藤委員 ただ,実務ではまれにですけれども,例えばこちらが買主で,売主からCIFで買って,CIFの品代を払う場合ですと,CIFで買っているものですから,当然売主の方が運送契約を締結して運送人さんに運賃を払うことになります。こちらは運賃込みで品代を払っているのですが,この場合に,B/L上はフレイト・プリペイドになっているにもかかわらず,何らかの都合で実際は運送人さんに支払われていなかったということに遭遇する場面が,まれにですがあります。そういう場面において,やはり有価証券ですので,運送人さんも書くからには,やはり文言証券性を維持していただかなくてはいけないと思います。,現行法の国際海上物品運送法は,その意味で,我々,特に荷受人の立場からすると,実務にかなっていると考えています。 ○藤田幹事 誤解を避けるために言いますけれども,私が言ったルールの方が,荷受人にとっては,有利です。たとえ悪意であっても運賃を請求されることはないからです。実は,ロッテルダム・ルールズには,フレイト・プリペイドの条文が別途置かれています。ロッテルダム・ルールズ第42条は,有価証券の不実記載のルールと別に,フレイト・プリペイドと書いたら荷受人には運賃は請求できないという内容を規定していて,それは不実記載のルールであれば船荷証券所持人が不実記載と知っていれば内容が違うということを対抗できるのですけれども,フレイト・プリペイドについては,これは荷受人には請求しないという意思表示なので,それは書いた以上,運賃が本当に払われていようが払われていまいが,運送人は荷送人にしか請求できない,そういう意味で違う内容の話なのだという法律の整理なのです。こういう整理についての賛否はあるでしょうが,むしろ,今遠藤委員が言われた感覚からすると,これは不実記載のルールに乗せないほうがいいようなタイプのルールなのではないかいう気がしていて,記載事項に加えるというような話とは,ちょっと違うような気がします。 ○山口委員 フレイトの問題は非常に難しい問題ですけれども,基本的には国際海上物品運送法第9条は維持していただいて,同じように全ての記載事項について善意の第三者を保護すべきであろうと思います。藤田幹事がおっしゃったように,フレイト・プリペイドの問題について,なお強い保護を要するかどうかは少し難しい問題かなとは思うんですけれども,具体的な事案として,先ほど遠藤委員がおっしゃったようなことが起きるのは,傭船者が荷送人で,傭船契約をしていて運賃を払うべきものなんですが,運賃はプリペイドとしているんですが,実務的には5%ぐらいをコレクトといいますか,本当に荷物が着いた段階で払うこととし,95%を積んだときに払っているというのが実務的に多いものですから,最後の5%がたまたま傭船者が倒産するあるいは経済的に厳しい状況になったために払われないために,最後到着した段階で荷受人の貨物を引き渡さないというようなことが実務の問題として生じてくるんですが,その際に,荷受人側としてはフレイト・プリペイドの船荷証券を盾に引渡しを要求して,通常裁判あるいは仮処分なりでもそれがあれば勝てるというのが現状なんですけれども,場合によっては5%が実務的によく払われていないということを知っている場合もないではないとは思います。ただ,別の条文を置かないのであれば,このまま維持していただいて,荷受人保護の規定は置いていただきたいなと。すなわちヘーグ・ヴィスビー・ルールズに比べて,より強い荷受人保護の規定は残した方がいいだろうと思います。 ○山下部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○箱井幹事 記載事項に関してではないので黙っておりましたが,このタイミングがよろしいかと思いまして,一言申し上げます。運送法制研究会の資料でも恐らく検討されていなかったのではないかと思いますけれども,船荷証券のいわゆる不実記載に関する立法例などもございます。私も今日特に具体的な提案を持ち合わせているわけではございませんけれども,よく国際海上物品運送法第9条の規定に不実記載という見出しが付いていて,不実記載規定があるかのように見られますけれども,これは,飽くまで証券記載が事実でないことをもって,善意の証券所持人に対抗できないということであって,船荷証券に運送人が不実の記載をして,それを取得した者に損害が生じたといった場合の運送人の責任に関する一般的な規定ではありません。恐らく一般法の問題として,今でも問題になり得るんだと思うのですけれども,これは運送契約法の中に置く必要があるのかないのか。必要があるとしたら,また可能だとしたら,どういう整備ができるのかというようなことは,これまで恐らく検討されていないように思いますので,この点についても,今後事務当局の方で御検討いただければというふうに思っております。 ○松井(信)幹事 すみません。具体的には,例えばどういう記載の不実記載について責任があるとか,どのような点の検討をしたらよろしいかだけ,御示唆を頂けたらと思いますが。 ○箱井幹事 文言証券性で解決できないもの,もちろん文言証券性の問題になるような場合の不実記載でも,これは不実記載である以上対象になり得るとは思いますけれども,いわゆる文言証券性に親しまないと言われているところですと,例えば日付違いの事例,先日付,後日付の問題など,これは運送人としては記載どおりだと主張しますので,文言証券性が問題になっても,どうにもならないところでございます。それから,もう一点,これは理解の違いもあるかもしれませんが,クリーンB/Lなどの問題ですね。要するに,船積み前の損傷があったにもかかわらずクリーンB/Lを発行したというような場合で,揚げ地でもって外観の異常とそれに関連する内部の損傷が発見されたというようなときは,これはクリーンで受け取ったと書いてしまった以上,クリーンで受け取っていなかったということの主張はできないことになります。   これは,第9条の問題だということになりますが,その効力として一般に言われているところですと,運送人の運送品保管中に損害が生じたことを推定させ,荷主の立証を助けるというように言われていまして,そういった推定が生じることは,これは第9条で否定できないところです。けれども,それに対して運送人が推定を覆す反証を挙げることは,私は可能ではないかと思うわけですが,これは,裁判例では,もう一回そこで第9条を使ってこの反証も駄目だとされた例もございます。そういったような場合,諸外国では文言証券性とは別に,私はフランスの議論は古くから見てまいりましたけれども,債務不履行であったり不法行為であったりということで不実記載発行責任そのものを問題にするというような判例法理が形成されてきて,それを立法化した例もあるように思います。いわゆる保証状とクリーンB/Lの問題については,御案内のようにハンブルグ・ルールがフランス法に基づく規定を置いておりますが,それの是非はともかくといたしまして,私が言っているのもその規定というわけではありませんが,もっと一般的な不実記載責任の根拠規定といったものを運送契約法に置く必要があるのかどうかの検討がなされていないように思います。その点,検討事項にはなり得るのではないかという趣旨でございます。 ○松井(信)幹事 分かりました。 ○藤田幹事 今の点とほとんど同じですが,同じことを考えたかどうかよくわからないので,念のため追加で発言させて頂きます。今の法制でも,また,今回の提案でも,本文アのところで書かれているのは,荷送人,傭船者の通知が正確でないと信ずべき正当がある場合以外はそのとおり書けということで,例えば,通告がうそであることを百も承知で,そのまま書いた場合というのは別に何も規律していないのですね。でも,そういう場合にうそと知っている物品の記載のある有価証券を発行していいかという問題が当然あるはずです。今の箱井幹事が言われたのは一部そういう場合を含んでいるのですが,その場合,運送人はやはり何らかの責任は免れないのかもしれません。ロッテルダム・ルールズ第40条第1項は,そういうときにはきちんと留保しろ,中身は知りませんよと書けという形で,留保文言を入れる義務を課しています。荷送人からの申告が不正確だと知っていてあえてそのままの内容の船荷証券を出していいかということについて規律した方がいいかどうか検討は必要なのかもしれませんけれども,現在の提案で書かれていることはヘーグ・ヴィスビー・ルールズにもともとあるような極めて限られたものであることについては,やはり留意する必要はあって,これで十分かよく考える必要はあると思います。   次に,留保条項あるいは内容不知約款について,提案では明示的に書いていません。荷送人の通告どおりに書かなくていいとだけ書いてあり,内容不知文言を入れられるのは,ここで通告どおり書かなくてよいとされている場合に限定されるということなのでしょうけれども,明確化するというのであれば,どういう場合に留保条項を入れて文言証券性をいわば減殺することができるかということも,現在若干判例あるのですけれども,明文の規定を置いてもよいか思います。むしろ,荷送人から受けた通知と違うものを積極的に書くようなことは,実務的に通常ではないような気がしますので,条文の書き方だけかもしれませんけれども,先ほど申し上げたことと合わせて,不知文言を入れなくてはならない場合及び入れることができる場合という形で整理したらいいかもしれません。 ○野村(修)委員 先ほど箱井幹事がおっしゃられたのとほとんど同じことですが,国際海上物品運送法の成り立ち自体を考えてみますと,もともと英米法のいろいろな法理論を日本法の大陸法的な概念に当てはめるときに,文言性という概念にはめ込んでしまっていますけれども,実際は,例えば外観上良好であるという旨の記載のB/Lが出ているということによって生ずる本来の考え方は,証明責任につき一定の推定があって,その期間中に事故があったものと推定される。ただ,もちろん反証ができるというのが普通の考え方になっているんだと思うんですが,それがなかなか今の我が国の国際海上物品運送法ではそういうふうに読めない部分があります。そのため,これを参考にしてしまいますと,何か歪んだものを持ってきてしまう可能性がありますから,原点に立ち返って必要な記載は何なのかということをちょっと考えてみていただいた方がいいのではないかなと思います。 ○遠藤委員 この関係で,文言証券性と現実に行われている不知文言,やはりこれも併せて議論すべきではないかと考えます。文言証券性を担保しながら,一方で不知文言を書くということで問題があり,いろいろ判例とかもあるようですけれども,やはりちょっと根本的なことを言いますと,ヘーグ・ヴィスビー・ルールズも古い条約なので,そのときはもちろんコンテナは登場していませんでしたので,要は陸側と海側がメーツを立てて,メーツ・レシートで双方が確認できていたという状況のもとに,このヘーグ・ヴィスビー・ルールズがあったわけです。やはり,コンテナの登場というのは革命的だったと思うのですけれども,コンテナはシッパーズパックと称されて,荷主がコンテナをシールして運送人さんに渡すことが一般的なので,その意味からすると,運送人さんは中身を全く知らないということになります。ですから「said to contain」という不知文言を書かざるを得ないというのはよく分かるのですが,本来は,やはりコンテナとその他のものとを書き分けるのが理想形ではないかなと思います。これを立法するのは非常に難しいところなのでしょうけれども,ただ,現状のままでは非常に曖昧だと思います。ちょっとこれは感想なのですけれども。 ○山下部会長 よろしいでしょうか。 ○箱井幹事 今の件ですが,確かにコンテナは1950年代から出てきて60年代に普及したということで,1924年のヘーグ・ルールには規定がありませんでした。ただ,一般的に言いますと,ばら積みの場合は全然違いますけれども,海上運送されるというのは過酷な環境になりますので,相当厳重な梱包がなされるということですと,海上運送の場合,個品運送であれば一般的に運送人には中身が分からないといえるだろうと思います。だからこそ条約も記号,要するに,物品の識別に必要な記号を書けと,そして物品外装にも記号を書けと,その一致で判断するとしているわけですね。我が国では,あまり学説がその辺を意識していなかったように思いますけれども,これは,コンテナか非コンテナかの問題ではないように思っております。 ○藤田幹事 遠藤委員が言われたことを仮に立法するのであれば,次のようになると思います。コンテナで分けるということもあり得るのですけれども,それは別として,やはり現在の提案の書き方がよくない。現在の書き方は,正確ではないと信ずべき正当な理由がある場合,例えば中身が荷送人の通告と違うと知っていた場合は,通告内容と別のことを書くことができるとありますが,そんな場合はむしろ通告どおりの内容は書いてはいけない,不知文言を入れろというルールにすべきだと思うのですね。それに対して遠藤委員が言われているケースは,正確ではないと信ずべき正当な理由がある場合というよりは,中身を確認する合理的な方法がない場合には,内容不知文言を入れることによって文言証券性を減殺することができるというルールである。これ違う性格のルールなのですね。  やはりそのまま書いてはいけない場合及び不知文言を入れられる場合は,各々要件も違いますので,できれば区別した立法をすべきなのだと思います。ロッテルダム・ルールズ第40条は,両者を書き分けて,しかも,コンテナの場合の特則を置いているのですけれども,コンテナの場合に特則は合理的にチェックする方法がない場合という一般的な規律の適用で処理できるかも知れません。結局,本文アの作りそのものに関わる修正になると思いますね。作業が面倒かも知れませんが,可能性としては考えていただけると思います。仮にこういうことをすると,国際海上物品運送法との違いがかなり際立って,船荷証券に関する規定が二本立てにならざるを得なくなってくるかもしれませんが,新しいルールとしては,その方がいいのかなという気もいたします。 ○山下部会長 よろしいでしょうか。   それでは,この点も,頂いた御意見を参考に,なお検討していただければと思います。   それでは,続きまして「(4)法律上当然の指図証券性」,「(5)受戻証券性」,「(6)船荷証券を数通発行した場合の取扱い」,この3点につきまして御審議を頂きます。まず事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 まず,「(4)法律上当然の指図証券性」につきまして,現行法上,船荷証券は法律上当然の指図証券とされ,記名式であるときであっても裏書禁止やNon-negotiableなどの裏書を禁ずる旨の記載がない限りは,裏書によって譲渡することができることとされております。この点について諸外国の法制を見ますと,韓国及びフィンランドなどは我が国と同様,法律上当然の指図証券性を認めておりますが,他方で,イギリス,フランス,ドイツ,中国などはこれを認めておらず,各国が独自の特色を有している状況にあると言えます。   現行法の規律を前提としましても,海上運送状を発行したり船荷証券に裏書禁止と記載したりすれば,船荷証券が裏書譲渡される状況を回避できることから,法律上当然の指図証券性を認めないように現行法を改めるまでの必要性は認められないとも思われますが,現行法の規律を見直すことの要否について御審議いただきたく存じます。   次に,「(5)受戻証券性」につきまして,現行法上,船荷証券には受戻証券性が認められ,船荷証券と引換えでなければ運送品の引渡しを請求することができないこととされており,この規律を維持することにつき御意見を頂きたく存じます。   また,この点に関し,船荷証券の到着が運送品の到着より遅れた際に,銀行や荷受人等の保証状を得た上で,船荷証券と引換えでなく,運送品の引渡しをするいわゆる保証渡しについても,損害額の定額化に関する規律や責任限度額に関する規律の適用はあるのか否かなどが議論されているところではありますが,これは条約の解釈の問題でもあるので,なお解釈に委ねざるを得ないものと考えます。   最後に,「(6)船荷証券を数通発行した場合の取扱い」につきまして,現行法上,船荷証券を数通発行した場合において,複数の船荷証券所持人から運送品の引渡しを請求されたときは,運送人は,遅滞なく運送品を供託し,各所持人に対してその通知を発しなければならないという義務供託の規定がございますが,かかる規定の趣旨は,複数の船荷証券所持人があるために引渡しが遅れて,損害を被ることになる運送人を保護することにあると説明されていることなどに鑑みると,これは,義務供託ではなく,債権者不確知と同様に権利供託を認めれば足りるものと考えられるので,本文(6)のように規律を改めることが考えられます。以上の点につき,併せて御審議いただきたく存じます。 ○山下部会長 それでは,ただいま説明のありました部分につきまして御質問,御意見をお願いいたします。 ○松井委員 本文(4)の指図証券性なのですが,日本の法制が既に少数派になっているということは理解しているのですけれども,金融の場面とか輸出の場面でもごくまれに,唯一の方法ではないにせよ,指図証券としての船荷証券があることで,確実な担保又は譲渡の方法として実務上その必要性は存続している部分もありますので,是非指図証券としての性格は残しておいていただければと考えております。 ○山口委員 実際,やはり指図証券性が実務の社会で定着をしております。それで,荷主さんの中でも,やはりこの条文が生きておりまして,当然の指図証券性があるということが取引社会において強く受け入れられている現状において,今これを変更いたしますと,日本の取引社会が混乱を起こすだろうと思いますので,是非にこれは維持していただきたいというのが意見でございます。 ○水口幹事 (4)1のところに法律上当然の指図証券とされ,Non-negotiable,裏書を禁ずる記載がない限り裏書によっても譲渡できるというんですけれども,今銀行で何をやっているかというと,Non-negotiable,つまり裏書禁止の記載があっても当然に譲渡できるんです。これは,法律上当然の指図証券とあるんですけれども,Non-negotiableと書いていても銀行は構わず右から左へ譲渡していくと。それは三菱東京UFJだけでなくて,他の銀行でもみんな同じです。ですから,これは少し誤解があるということだけ,ちょっと申し添えたいと思います。 ○山下部会長 そこはどういう理屈になっているんでしょうか。 ○水口幹事 Non-negotiableというふうに入っていても,銀行の方は,譲渡することについては問題がなかろうというふうな形で,特にお客さんからも反論がないので,そのまま長年譲渡してきたというのが実態ですけれども,これは法律上当然の指図証券ではあるけれども,裏書によって譲渡をすることができるというふうにされてきたんです。要するに,指図証券なんですけれども,Non-negotiableと入っていても,もうそのまま譲渡してしまいますよというのが実態なんです。それだけちょっと申し添えておきたいと思います。 ○山下部会長 日本国内の銀行の実務としてはそうなっているということですか。 ○水口幹事 そうです。 ○山下部会長 本文(4)のように,法律上当然の指図証券性に関する規律を維持すること自体がおかしいというわけではないですね。 ○水口幹事 そうではないですね。 ○山下部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○入来院委員 水口幹事に質問なんですが,Non-negotiableでも譲渡されているとするのは,記名式の場合でもですか。 ○水口幹事 記名式の場合は,通常はお客さんからお客さんへ直接わたるようになっているので,最後のコンサイニー,つまり受取人が誰に渡すかというのは,これは銀行は関知しません。 ○入来院委員 いや,私,記名式の場合は裏書がコンサイニーから始まるものだと思っていましたので,そこで銀行が関与するというのはよく分からないんですけれども。 ○水口幹事 コンサイニーが自分たちの取引先であった場合には,それはそのまま引き渡しているといったところです。ですから,彼らが更に裏書をして,ほかの第三者に渡すかどうかというのは彼ら自身の問題と思います。 ○入来院委員 そうすると,そのコンサイニーに渡る前に銀行間で裏書が行われているということですか。 ○水口幹事 だから,例えば,コンサイニーがどこどこバンクとかというふうに入っていた場合には,構わず裏書します。そういう意味です。 ○入来院委員 恐らく船会社がNon-negotiableで書くとすると,単純な記名式の場合で,これ今ちょっと発言しようと思ったんですけれども,外国の場合,実はほとんど英米法の世界に則ってやっていますので,アメリカやイギリスでは記名式のB/Lは裏書ができないということになっていますので,大体我々もそうですけれども,記名式についてはNon-negotiableと書いて対応しているということです。 ○水口幹事 記名式ではないことが多いんです。記名式であることもありますけれども,「to order 何とかバンク」というふうになっていることも多いんです。ですから,それでバンクというふうになっていれば,リリースオーダーを出せよということになるんですけれども,そこは,銀行がストップ判を押して裏書します。 ○入来院委員 バンクオーダーであれば,バンクのオーダーですから,そこは指図式でも同じだと思うんですけれども,要するに記名式でコンサイニーが1人しかいない場合には,基本的には裏書できないと思っていまして,我々の感覚でもコンサイニーから裏書されて,それが船会社に回ってくるというのはほとんど経験がないんですけれども,そういう理解で,要するに,バンクオーダーの場合のことをおっしゃっているということですか。 ○水口幹事 そうですね。 ○入来院委員 それなら分かりました。一方で,我々外国の船会社としましては,一部立法例で記名式でも裏書譲渡できる国があるというのは理解しておるんですけれども,できたら余計なことはできるだけ書かなくて済むように,記名式については実務に合わせて裏書できない,譲渡できないというふうにしていただいた方がすっきりするなと思っております。 ○山下部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○松井(信)幹事 ちょっと入来院委員に御質問なんですけれども,先ほど山口委員の方からは混乱が起きる可能性があるかもしれないというお話がございました。実務界としては,法制度の切替えのときとかその後とかにおける混乱というのは大丈夫だというふうにお考えなんでしょうか。 ○入来院委員 記名式について譲渡できるところで,要するに,記名式のB/Lがコンサイニーから譲渡されるということはまずないと思っていますので,山口委員のおっしゃったのは,指図式の証券を含めて基本的には譲渡できるということを維持してほしいと理解しておりますので,記名式についてのみ譲渡できないということであれば,混乱はほぼないのではないかと思っております。 ○松井(信)幹事 それともう一点なんですけれども,先ほど船荷証券については基本的に英米法を準拠法としてやっているとおっしゃったので,日本法を変えることにどれだけの意味があるかというのがちょっと心配になったんですが,日本法を準拠法として出されることも,ある程度はあるという理解でよろしいんでしょうか。 ○入来院委員 B/Lの準拠法は日本法と書いておりますので,ですから,我々は,海外と取引をする場合に,日本では日本法に準拠すると記名式であっても譲渡できるということになってしまうので,Non-negotiableと書いて対応しているということです。 ○山口委員 実運送人さんとNVOCCとでは立場が違うかと思います。NVOCCが間に入っている場合,おっしゃるように記名式でNon-negotiableで,そういう場合はWaybillで対応される場合が多く,あまり問題がないかと思うんですが,ハウスB/Lの場合は,例えばコンサイニーが特定されていても,実際最後の場面で証券売買が行われる場合があって,それが裏書譲渡されることがありますので,それで対応しているという事実がございますので,やはり日本法としてはNon-negotiableと書かない限りnegotiableであるという今の法制を維持していただいた方がいいかなというのが私の意見でございます。 ○山下部会長 よろしいでしょうか。ほかにございませんか。受戻証券性,それから,数通発行した場合についてもいかがでしょうか。これはこういう方向でよいということでしょうか。 ○山口委員 すみません,受戻証券性については,もう正にこのとおり維持していただきたいと思います。その効果については解釈に委ねるというこの記載で結構かなと思います。ここにもありますように,除斥期間については最高裁の判例があって,適用があるということになっております。責任制限が適用になるのか,あるいは到達時の価格限度というのが適用になるのかというのは,今のところ解釈論に委ねられておりますけれども,個人的な見解を申し上げれば,ここに書いてあるとおり,第13条の2の故意又は無謀に損害が発生することを認識しながら行った行為に当たるのではないかなと。すなわち,船荷証券所持人がいるのであれば,必ずそこに損害が生じるわけですから,それを認識しながら船荷証券の受戻しをせずに渡せば,船荷証券を持っている誰かに責任が生ずるおそれがあることを知りながらやっておりますので,責任制限は適用にならないのではないかなとは個人的には思いますけれども,それも解釈に委ねれば十分かなと思います。   それから,数通発行された場合の取扱いについては,供託義務ではなくて権利供託の方にするのは結構かなと思うんですけれども,前も申し上げましたけれども,この供託自体ができないという現状ですので,仮にこのように置いたとしても,実際問題使えない条文かなと。もし法務省の方で,法務局で本当に供託できるようにやっていただければ,それはこれで動くのではないかとは思いますけれども,それは別として,この規定についての提案自体には賛成をいたします。 ○藤田幹事 受戻証券性も,ここで書かれている内容は賛成ですが,今の書き方でいいのかということだけ少し考えていただけたらと思います。引換えでなければ引渡しを請求できないと規定しているのですが,引き渡してしまうことが運送人の義務違反かどうかというのは必ずしもはっきり書かれていない。これは,当然受戻証券性ということで,引換えでなくて引き渡すことは運送法の義務違反であるということを当然の前提として解釈していますけれども,明文の規定はないといえばないのですね。この辺りは別になくても解釈が確立しているから問題ないというのが一つの見方かもしれません。ただ,船荷証券を出したら,船荷証券と引換えでなく引き渡すことは運送人の重要な義務違反であることがはっきり分かる明文の規定を置くことは検討していただければと思います。   仮に義務を書く場合,違反の効果まで書く必要があるかということも問題となるかもしれませんが,意見も非常に分かれるなら,これは解釈でいいと思います。ちなみに,私の解釈は,山口委員とほぼ同じで,これは枠組みとしては責任制限阻却事由である故意又は損害の発生を認識しながらした無謀な行為の問題として考える,つまり責任制限は一般論としては適用があって,あとは責任制限阻却事由の有無の問題と捉えるのが正しいと思います。ちょっと山口委員とニュアンスが違うかもしれないのは,保証渡しが当然にこれはそれに当たるかどうかは,はっきりしないという点です。荷主側に非常に説得されて,当然にその人は受け取る権利があると信じた場合というのを全て損害の発生を認識しながらした無謀な行為と言い切ってしまえるか若干疑問に思います。その辺りを含めて解釈の問題というふうに考えたらいいと思うのですけれども,その考え方の枠組そのものを明確に条文で表現するのはなかなか難しいとすれば,この辺りは仕方ないのかなという気はいたします。   数通発行は正直言って,数通発行みたいな慣行をいつまでも維持するのがいいのかなということがよく分からないのですけれども,ただ,規定がないと困るでしょうから,最低限こういうのを置くのは,いいとは思います。 ○道垣内委員 藤田幹事のおっしゃったことで,大変細かい話なのですが,船荷証券と引換えでなければ渡してはならないと書くことの意味がちょっとよく分からないのです。それは誰に対する義務なのですか。 ○藤田幹事 船荷証券所持人に対する義務で,その所持人との関係では当然に義務違反なので,その人が請求してくれば,それはもう当然責任を負うということですね。いかに債務者が引渡請求権を持っている人がほかにいると信じようが,免責されないとことを明らかにするということです。 ○道垣内委員 いや,だから,所有者と思われる人に引き渡すという形で弁済をしても,船荷証券と引換えでなければ,たとえば民法478条のような保護は受けられないという形で書くというのは,それはよく分かるのですが,そこにおいて,条文の技術の問題として,引き渡してはならないという義務という形で書くというのがちょっとどうなのかなという感じがいたします。藤田幹事のおっしゃっている内容は全くそのとおりだと思いますけれども,御検討いただければと思います。 ○山下部会長 義務違反になるということから,その効果として一定のインプリケーションがあるのでしょうね。 ○藤田幹事 責任制限との関係のインプリケーションは中立的でいいと思うのですが,少なくともこれ解釈上,所持人との関係で当然に義務違反になるというのはもう確立して,異論がないところは明文にしたほうがいいのではないかと思います。それ以上のインプリケーションはちょっと書きようもないし,あまり明示的に出てこないとは思います。 ○遠藤委員 今の点で義務違反になるというふうに明文化すると,現行の保証渡しというのができなくなってしまうということになるのではないかと思うのですけれども,違いますか。 ○藤田幹事 それは,もし船荷証券所持人が別にいたとすれば,被るべき損害賠償責任は無条件で引き受けるという前提で保証渡しをしているということで,単純に船荷証券所持人との関係で義務違反になるというのは,これはもう争いがないところでしょう。これは書こうが書くまいがルールとして厳然として存在しており,ルールを明示的にするか否かで,実質的に変えるものではありません。 ○山下部会長 よろしいですか。 ○道垣内委員 その点が,どういうふうに書くかという文言技術の問題に気を付けなければならないと申したところでして,引き渡してはならない義務があるということになったら,本当は船荷証券を所持しているのだけれど,忘れてきてしまったという人に対して引き渡しても,「船荷証券と引換えでなければ引き渡さないということになっているだろう」と言って,義務違反になりそうですが,もちろんそうではなくて,その人が本当の所持人ではなく,ほかに船荷証券を持っている人がいるという場合に義務違反になるという話ですよね。そうであれば保証渡しの場合でも現在でも同じだろうというのは藤田幹事のおっしゃるとおりです。そうしますと,そこを単純に引き渡してはならないという義務があるという形の文言化をすると,表そうとしていることがきれいに表せないのではないか。これが先ほど申し上げたことであります。 ○山下部会長 その点は,なお詰めて御検討いただきたいと思います。ほかにいかがでしょうか。 ○箱井幹事 保証渡しについて,中国の司法解釈など結論だけ書いてあるものがありますが,私も,解釈に委ねるところは賛成でございます。先ほど具体的解釈がお二方から示されていますので,余計なことを申し上げますが,国際海上物品運送法第13条の2の責任制限阻却事由を介する枠組ですが,私は保証渡しの場合にはそもそも第13条の2には当たらないと考えております。これは,法制審でお二人の一致した解釈が議事録に載りますと異論がないように見えてしまいますので,一言申し上げさせていただきたいと思います。失礼しました。 ○山下部会長 よろしいでしょうか。   それでは,この点も御意見を踏まえて御検討いただければと思います。   続きまして,「2 貨物引換証」について御審議いただきます。まず説明をお願いします。 ○山下関係官 「2 貨物引換証」につきまして,商法には陸上運送の貨物引換証に関する規定が置かれていますが,近時においては,船荷証券以外には,陸上運送及び航空運送において貨物引換証等の運送証券の利用例は見当たらないところでございます。諸外国の法制では,アメリカ,ドイツ及び韓国には陸上運送における運送証券の規定がございますが,他方で,イギリス及びフランスにはそのような規定がないようであり,加えて,昨今の運送事情に鑑みて,陸上運送及び航空運送において,運送品の到着より先に荷受人に貨物引換証を送付することが十分に可能であるかなども検討した上での将来的な貨物引換証の利用可能性をも踏まえて,貨物引換証の規律を存置することの当否について,御審議いただきたく存じます。 ○山下部会長 では,ただいまの説明のあった事項につきましての御意見,御質問をお願いいたします。是非残してほしいという御意見はございませんか。 ○菅原委員 それでは,簡単にコメントを申し上げます。   航空運送の実務では,貨物引換証は利用されておりません。それは御指摘のとおりでございます。したがいまして,航空運送につきましては,かかる規律を存置する必要性を感じませんし,仮に他の交通機関で貨物引換証の規律を維持した場合でも,これを航空運送に及ぼすという必要はないと考えます。 ○山口委員 陸上運送については,全く使われていないと私も理解しておりますので,やはり航空運送と同じように貨物引換証は必要ないというふうに私は思っています。加藤委員,それでよろしいでしょうか。 ○加藤委員 私も25年間で見たことありませんので,要らないと思います。 ○松井(秀)幹事 理論的に考えても,運送証券の規定が全く商法から消えてしまうと,その型を示すことができなくなりますけれども,先ほどの議論で船荷証券の規定は商法に残すという方向での議論もありましたので,その点で貨物引換証の規定をなくすことへの懸念は小さいかと思います。そもそも貨物引換証については,全く利用例がないにもかかわらず,請求があれば発行する義務が発生するという形になっていますから,こういうものを残す意味はあまりないのだろうという気がしております。 ○山下部会長 この点は,では大体意見一致ということでよろしいでしょうか。 ○増田幹事 実質的な話では全然ないのですけれども,部会資料の「この点につき,諸外国の法制を見ると・・・ 」というところが,比較対象として適切かどうかが若干微妙な記載になっているという点だけ指摘させていただきたいと思います。というのも,アメリカの場合は,陸上でも海上でも全部bill of ladingで,Non-negotiableで Waybillに近いものでもbill of ladingと言っているかと思います。ドイツ法には確かにLadeschein(貨物引換証)に関する規定がありますけれども,複合運送証券がこちらにカテゴライズされるので,実際にかなりの適用例がある立法例ということになると思います。したがって,ここに挙げられている貨物引換証の規定のある立法例の中でも,かなり実質には違いがあるという点だけ指摘させていただきたいと存じます。 ○山下部会長 ありがとうございます。では,この点,方向性はよろしいでしょうかね。   それでは,以上のようなことで大方意見が一致しているということであろうかと思います。   それでは,続きまして,「3 海上運送状」について御審議を頂きます。まず説明をお願いします。 ○山下関係官 「3 海上運送状」につきまして,現行法上,我が国では,海上運送状に関する規定は存在しませんが,近時の船舶の高速化やコンテナ化によって,船荷証券の危機と呼ばれる,船舶が目的地に到着したときに船荷証券が荷受人に届いていないケースが現れ,その対応策として,近時の実務では,特にグループ企業間の取引や北米航路の取引などにおいて,船荷証券に代えて,受戻証券性を有しない海上運送状が利用されることが多いようでございます。   加えて,1990年には海上運送状に関するCMI統一規則が採択され,このCMI統一規則を摂取する海上運送状が相当数見られる中,イギリス,中国,韓国,ドイツなど諸外国の法制においても海上運送状に関する規律を設けるものが増えていること,また,海上運送状の荷受人を信用状の開設銀行とするなどの方法により,海上運送状が信用状取引にも用いられ得ることなどに照らすと,商法に海上運送状に関する規律を設けることが考えられます。   次に,本文(1)アからウまでにつきまして,海上運送状は,船荷証券とは異なり,有価証券ではなく,受戻証券性等を有しておらず,運送人の引渡しに際し,海上運送状の回収を必要としません。仮に海上運送状に関する規律を設ける場合には,荷送人又は傭船者は,その選択により,船荷証券に代えて海上運送状の交付を請求することができるとすることが相当であると考えられますし,実務上用いられている海上運送状の記載事項は,船荷証券と同様であるようでございまして,貿易取引の迅速化,合理化等を目的として電子化の動きが活発化している近時の状況からすれば,海上運送状の記載事項を電磁的方法により送受信することも許容すべきであることなどから,韓国商法やドイツ商法を参考に,本文アからウまでのような規律を設けることが考えられます。   続きまして,本文(1)エ及びオにつきまして,先ほど御紹介したCMI統一規則は,荷送人と運送人との間の契約において摂取した場合に限り適用される自主ルールでございますところ,荷送人は,運送品に関して自己が提供した明細が正確であることを担保すること,運送人と誠実な荷受人との間では,海上運送状はこれに記載された数量及び状態の運送品を受け取ったことの確定的な証拠となり,反証が許されないという文言性を有することを規定しております。そこで,CMI統一規則にならい,海上運送状を発行する場合には,常に本文エ及びオのような法律関係により規律されるとすることも考えられ,そうすることでCMI統一規則の摂取の有無にかかわらず,海上運送状の効力を画一化することが可能とはなりますが,他方で,諸外国の法制には,荷送人の明細の正確性担保義務及び海上運送状の文言性について規定するものは見当たらないことなどをも踏まえて,本文エ及びオの規律を商法に設けることの当否につき,皆様の御意見を頂きたく存じます。   そして,仮に本文エ及びオの規律を設けることとする場合には,海上運送状の記載事項のうち文言性が認められる範囲については,CMI統一規則第5条第2項を参考にした本文オのような考え方と,船荷証券を参考にして記載事項につき一律に文言性を認める考え方とがあり得るものと思われますので,この点につきましても,併せて御審議いただきたく存じます。   最後に,本文(2)につきまして,実務上,海上運送状に関し,ほかに新たに設けるべき規律があるかどうか皆様の御意見を頂きたく存じます。以上の点につきまして,併せて御審議いただきたく存じます。 ○山下部会長 それでは,ただいま説明のありました事項につきまして,御質問,御意見をお願いいたします。 ○鈴木委員 海上運送状は国際関係で使われていると思うんですが,これを国内・国際双方に導入するということですか。国際海上物品運送法に入れるということではないのですか。 ○松井(信)幹事 事務当局といたしましては,商法にこのような規定を置いてはどうかというふうにまず考えたところでございます。 ○山下部会長 この点,いかがですか。 ○鈴木委員 御存じのように,内航では船荷証券すら発行されていませんし,この海上運送状自体もまず発行されることがないという理解なんですが,それでもなお双方に入れるという理由といいますか,お考えをちょっとお伺いできればと思うんですが。 ○松井(信)幹事 船荷証券につきましても,内航と外航の規律が分かれているという現状があり,その中で,諸外国の法制などを見て,商法の中に船荷証券に関する規律を置いてはどうかと,そういう議論が先ほどされたところでございます。海上運送状というものは,やはり船荷証券の危機という状態から発したものでございまして,法体系的には船荷証券に代わる書類という位置付けになりますので,規定の置く場所といたしましても,船荷証券を商法に置くのであれば,海上運送状も商法にというのが一番自然な成り行きではなかろうかというふうに思っているところでございます。 ○鈴木委員 ありがとうございます。分かりました。 ○山口委員 幾つかお願いをと思っております。海上運送状の発行主体でありますけれども,運送人又は船長というふうになっておりますが,海上運送状は,やはり運送人だけが発行するものと考えております。正に「for the Master」というような記載で海上運送状が発行されることはあり得ませんし,そういうものを認める必要もないだろうと思いますので,運送人だけが発行するという形でよいのではないかと。船荷証券のように船長が伝統的に発行しているというものではありませんので,ここは明確に運送人だけとすべきではないかというふうに考えます。   それから,電磁的方法でございますけれども,これはどの程度のものを考えられているのかがよく分からないわけで,単に情報だけで運送状だというのであれば,正にそれ運送状とはちょっと言い切れないものでございますので,どの程度のものを考えるかによってちょっと記載を考えないといけないだろうと思いますし,現状確かに使われつつあるのかもしれませんけれども,どの程度使われているのかが明確ではない状況からいうと,わざわざこれ規定を置く必要がないのではないかなというふうに思っておりまして,やや時期尚早かなというふうに思っております。   もし電磁的方法ということであれば,何かもう少し電磁的方法における様式とかそういうものも書かないと,単なるeメールの情報で運送状と言えるのか,あるいはそれに何かプラスしなければいけないのか,少しまだ議論の余地があるかなと思います。   それから,文言証券性のところですけれども,これはCMIルールに即してということですかね,ここの本文オのところは。CMIルールと同じルールということであれば,それで私は結構かなと思います。 ○道垣内委員 実務についてはよく分かりませんので,海上運送状という制度を今ここで置くべきかどうかということについては語ることはできないのですけれども,そして,先ほどこそ申し上げるべきだったのですが,本文エが私にはよく分からないのです。と申しますのは,先ほど船荷証券のときにも同様の規定があって,そして,それは,国際海上物品運送法上の船荷証券について,例えば当該通告が正確であることを確認する適当な方法がないときということも含めて書いているのであり,それが,「正確でないと信ずべき正当な理由がある場合等を除き」の「等」に表れているということが説明のところを読むと分かります。しかし,私は,正確であるか否かを確認する適当な方法があるのに,それをしなかった場合と,そのような方法がなかった場合とでは,発行者の責任の根拠がかなり違うのではないかという気がするのです。  つまり,正確であることを確認する適当な方法があるにもかかわらず,正確であることを確認しないままに,こういう荷物がありますよと書いたというときには,記載者の責任は自己がそのようなものを引き受けたと外部的に表示をしているというところに帰責根拠が求められているような気がするのです。   これに対して,確認することができないが,正確でないと信ずべき正当な理由がないので,そのまま書かなければいけないというのは,例えば,取引の円滑化とかのために,みずから積極的に責任を引き受けなければならないという政策的な意味を持っているような気がします。  そうすると,この本文の記載における「等」において,帰責根拠が違うものを読み込むことになり,それが可能なのかというのがどうも気になります。私自身がうまく説明できていないようにも思いますが,意のあるところをお汲み取りいただきたいと思います。 ○山口委員 やはり,CMIルールの記載が参考になるのではないかなと思うんですが,CMIルールの第5条,日本語に訳して読みますと,荷送人は物品に関して自己が提供した明細が正確であることを担保し,かつ,その明細が正確でないことから生ずるいかなる滅失,損傷又は費用について運送人を免責するものとするというのが第5条第1項で,第2項が運送人が留保しない限り海上運送状又はこれに類似する書類における物品の数量又は状態に関するいかなる記載も,(a)運送人と荷送人との間においては記載されたとおりの物品を運送人が受け取ったことの推定的証拠になるとして,(b)が運送人と荷受人の間においては,荷受人が善意に行為した限りにおいて記載されたとおりの物品を運送人が受け取ったことの確定的な証拠になると,こういう記載になっておりまして,今,道垣内委員がおっしゃった帰責の問題とかというのが,もっとニュートラルな書き方をしてあるんですけれども,そういうニュートラルな書き方の方がやはりよろしいのではないかなと思います。 ○道垣内委員 今のお話がニュートラルかどうかよくわからないのです。と申しますのは,今の話はどちらかといえば債権譲渡における異議をとどめない承諾みたいな話のような感じがするのです。というのは,先ほど留保しない限りとおっしゃいましたが,それは留保はできるというところから始まっているのだと思うのです。しかるに,この本文エのルールというのは正当な理由がない限り留保はできないというところから始まって,その責任を負わせるという形になっているので,拒否もできないのになぜ責任を負わされるのかということになります。留保はできるのだとしますと,しかし,ゴチックの文言からは,そうは読めないだろうという感じがします。 ○山下部会長 その問題は,先ほど来指摘のあったところですね。 ○野村(修)委員 話が同じことになりますけれども,先ほど船荷証券のところでも申し上げましたけれども,文言証券性というのは,今正に山口委員がおっしゃられた「prima facie evidence」の話,一応の推定的な証拠と確定的証拠という本来証拠法制として規律されている諸外国の規律を文言証券性に押し込めてしまっていいのかどうかという問題は,やはりもう一度,ここでSea Waybillについての実務を踏まえた上で,どう規律するかというのを考えておいた方がいいような感じがします。後々解釈がいろいろと出てこないような形で,もし証拠法制で書けるのであれば証拠法制で書いていただくという方法も検討していただければと思いますが,ちょっと日本法にはなじまないのかもしれませんけれども,無謀な行為というのも日本法にはなじんでいないと思いますので,少し御検討いただければと思います。 ○石原委員 先ほど電磁的な方法によりという書き方をしてありますけれども,現実には問題があるわけです。特に最近はグループ企業間等ですとL/Cが使われなくなってきており,むしろ海上運送状を使うケースが多くなってきているわけです。そういった中で,船会社さんと特定の大手荷主との間では,特別な契約でもって船会社さんが逆にSea Waybillの印刷を荷主の所でも出せるというようなソフトを組んで,それをやっているところがあります。ただ,これをやはり無条件で誰でもできるというような形では,船会社さんも困ってしまうので,ここのところはやはり何らかの形で縛りが要るのかなという気はします。   実際にここのところは,財務省さんがやっていますNACCSでもSea Waybillを打ち出せるということで盛んに売り込みを図っていますから,やはり電磁的というところはあってもいいのかなという気はいたします。 ○松井(信)幹事 今回の部会資料で電磁的方法により提供と書きましたが,その具体的中身については,詳細に書いていないところでございます。これは,むしろ皆様から実務の状況などをお伺いして,また,今,石原委員から少し縛りを掛けた方がというお話もございましたが,どの程度のものを要求するべきなのかという問題をここで検討していきたいというふうに思っております。一番厳しくしようとすれば,電子署名を要求するというところまでいくのかもしれません。他方で,この本文エにあるように正確性担保義務のもとになる通知というのは,特に署名まで要求されていないということを見ますと,もう少し緩くてもいいのかもしれません。実務的にどの程度の電磁的方法による提供を求めるのが適切なのかどうか,皆様にまたお考えいただければというふうに思っております。 ○石原委員 注に書いてありますけれども,やはりサレンダーB/Lとの絡みがすごく出てくる所だと思います。結局,サレンダーB/Lが一つの慣習として既に動いてしまっているわけですけれども,非常に曖昧だから,むしろ明確化するためにSea Waybillということが盛んに言われていますので,そこのところも重ねて検討する必要があるのかなと,こういう気がいたします。 ○松井委員 2点あるのですが,先ほど山口委員からお話のあった発行主体のお話はおっしゃるとおりだと思います。受け手の側については,現在の御提案では,荷送人又は傭船者とありますけれども,今般の改正ににおいては傭船者が運送人の定義の方に入るということを前提に考えますと,これほとんど航海傭船のみが対象になっているかと理解しているのですが,航海傭船を定義するのであればその旨明示すべきであり,航海傭船がもし商法上で定義語にならないのであれば,ここの傭船者という言葉の使い方についてはかなり慎重に御検討いただく必要があるのではないかというのが1点目でございます。   2点目につきましては,先ほど来お話がありましたように,CMI統一規則を摂取した形の海上運送状が広く使われているということは理解しておりますが,海上運送状が広く使われている理由は,実務上柔軟な対応が可能なところと,あまり法的拘束がないというところであるとすると,今回のような形,本文アからウまでは問題ないかと思いますけれども,エは道垣内委員がおっしゃるとおり,いろいろな問題があって,私もちょっと引っ掛かるものがありますが,少なくとも外観上分かるものであれば取り込んで良いのかもしれませんけれども,オについてまでの規制を入れるということはいかがなものかと思っております。海上運送状という定義を多分置かなければならなくなると思います。先ほど山口委員から御紹介のあったCMI統一規則の方はそういう形になっていませんが,海上運送状という厳格な定義を置き,これに適用される規制を定めると,かえってより柔軟な第三のカテゴリーに当たる運送状がまた別途出てくるような実務を誘発する可能性もあります。そういう意味では,現在のように,CMI統一規則を摂取した形の海上運送状とするか否かは当事者の判断に任せ,規制のない,あまり規制の厳しくない海上運送状を原則とした方が実務上柔軟な運用ができるのではないかと考えております。 ○藤田幹事 いろいろ議論されていることは,ほぼ皆さんのおっしゃるとおりだと思うのですが,海上運送状と船荷証券とで同じ部分と違う部分を整理して考えた方がいいと思います。先ほどの本文エの話は,船荷証券についても同じ問題があって,先ほどいろいろ私の方でも申し上げましたけれども,不知約款に入れられる条件と,正確でないことを知ってわざわざそれを書いた場合と,それといろいろ荷送人との関係で正確性をどう担保させるかと,そういった問題の構図は全く同じようにあるので,両方合わせて整理し直していただければと思います。   これに対して,海上運送状と船荷証券で違う話かどうかがよく分からないのは,署名のところです。私は,基本的に同じだと思っているのですが,ただ,山口委員のいわれたように,海上運送状について「for the Master」みたいなものがないからというのでルールを変えるのであれば,それはそれで一つの説明でしょう。ただ,「for the Master」の話というのがこの条文で処理されているというのは非常に気持ち悪く,そこは船荷証券の方でも違和感があることは申し上げたとおりで,いずれも運送人が発行するということでよいと思いますが。   電子化の規定がこの書類についてだけ商法に設けられるということの意味もちょっと気になるところで,将来的にこんな規定を置くと,これ以外の文書というのはおよそ電子化できない含みが出てきかねないような懸念があります。そういう意味でちょっと気持ち悪いところがあって,現在の実務を否定するという趣旨はありませんが,こんな規定置いたから実務がバックアップされるとも思いませんし,要件がきっちり書けるとも思えませんし,具体的なセキュリティのような要件というのは,商法で書くには最もなじまないことだという気もしますし,どうもあまり規定を設けること,検討することは結構ですけれども,現段階ではややネガティブな印象を持っております。   最後,一番気になるのは証拠力の話というか,対抗と書くのか証拠力というふうな言い方をするかはともかく,この効果のところです。船荷証券についての文言性とは,強行法規だと思うのですけれども,こちらはどうお考えなのでしょうか。つまり,証拠力の弱い海上運送状というのを出すことは可能でしょうか。内容不知文言を入れれば同じような結果になるので,それほど議論の実益はないかもしれませんが,証拠力の弱い海上運送状はあり得るという発想なのか,それとも,これはやはり強行法規であって,そういうことを出したいのであれば,第三の書類を作れという趣旨なのか,いずれでしょうか。 ○松井(信)幹事 事務当局といたしましては,荷送人と運送人の間の約束だけで荷受人に対する効果を勝手に変えられないというふうに思っておりまして,その意味で,まず強行規定ではないかと思っておりました。また,これを仮に任意規定として考えてしまうと,今CMI統一規則はそれを摂取した人にだけ効力が及ぶということになっておりますが,そのデフォルト・ルールをひっくり返すというだけの立法になります。しかし,通常の立法においては,強い効力を求める人がその旨を摂取したとき,そのような意思表示を示したときに当該効力が認められるというのが通常ですので,この本文オのルールを任意規定として立法するというより,むしろ立法しないで今のCMI統一規則の摂取ルールのままとするというふうな方がよろしいのではないかと考えております。 ○入来院委員 このルールですと,例えば,本文アのところで,運送人又は船長は,海上運送状を交付しなければならないとなっていますが,実際には紙で作った運送状を取りに来ない荷主さんも一杯いて,コピーだけでいいとかPDFでくださいとかということで,もう実務が回ってしまっていますので,単純に交付しなければならないと書かれてしまうと,ちょっと実務と違うなというのがありまして,例えばPDFで送るものを含めて電磁的方法というふうに定義するのであれば,それはそれで意味のあることだと思いますし,実態はいろいろあるということを前提に規定を考えていただきたいなと思います。   それから,本文エのところで文言証券性の話がありましたけれども,こういった話をするのであれば,規定に入れていただきたい内容として,国際海上物品運送法第13条第3項のいわゆるコンテナ条項のようなものも,規定を作るのならば入れていただいたほうがいいのではないかと思います。 ○藤田幹事 少なくとも交付に関するルールは強行法規ではないと私は理解していた。少なくとも慣習なんかでも船荷証券も海上運送状も出さないという慣習があれば,運送人はいずれも交付しなくていいと思います。強行法というふうに考えると,少なくとも船荷証券か海上運送状かいずれかは要求があれば出さなければいけない,そういうふうに取られかねないのですけれども,そういう趣旨でないわけですか。 ○松井(信)幹事 私が申し上げたのは,本文エとオの部分,そのルールについて申し上げたところです。 ○道垣内委員 細かい話ですみません。その強行法規だということの妥当性というのは分からないではないのですが,その理由として,運送人と荷送人との間の合意によって,荷受人の権利というのを変更するのはできないのではないかというのですが,海上運送状という名前にしなくて,「荷物のお知らせ」とかという紙にすればいいだけですよね。荷送人と運送人は違う種類の紙を発行することは自由にできますよね。だから,この紙に書いていますが,これは荷受人が実際に何がもらえるかを保証するものではございません,とその紙に書くことも自由なはずです。強行規定だと言うのはいいのですけれども,そうなると,他の荷物情報のペーパーと区別されるところの海上運送状とは何かという問題が先行して存在するということになるのかなという感想をもちます。 ○松井(信)幹事 今,道垣内委員がおっしゃったとおり,本文エやオのように強い効力を認めますと,一般の紙と海上運送状との区別をしっかり付けなければならない,そして,当事者間において一定の情報,紙をやりとりするときには何の紙なのかをしっかり認識しなければならないということになろうと思います。現在のCMI統一規則は,この点,摂取した場合にのみ適用されるルールでございますので,摂取するという行為によって,これが海上運送状だということが当事者間で分かるということになっておりますが,その点につき,これを摂取しないという利益が適切でないという御意見もあったことから,まずこのような提案をしてはおりますけれども,このような提案自体の当否について,更に御議論がされるべきではないかというふうに思っております。 ○野村(修)委員 私が先ほど申し上げたことは,基本的には,本文オのような効果が復活せずに,一種の証拠証券としてこのように存在しているという形で,その証拠証券の強さを例えば強めるためであれば,このCMI統一規則を摂取するというような形の実務で十分なのではないかということで,そういうことぐらいにとどめておいていただいた方が今のところの状況としてはいいのではないかと。そうしないと,結局,船荷証券をもう一つ作るみたいな感じの規律になってしまうような感じがしますので,先ほど正に藤田幹事がそういう点を御指摘されているのだと思いますけれども,あまりにも同一類似のものであるとすれば,結局,実はまたもう一枚別なものをただ作っていくだけのことになるのではないかなと思います。 ○山下部会長 運送法制研究会報告書の方ではそういう意見があまり出てこなくて,本文オのような案については,事務当局も気になっておられたのではないかと思いますが,今日の御意見は,報告書とは大勢として大分違うということでよろしいでしょうかね。 ○雨宮委員 海上運送状に関して本文オの規定を設ける場合には,国際海上物品運送法第15条第4項に規定する特約禁止の対抗についても検討されたほうがいいと思います。これは明文で船荷証券となっていますので,海上運送状についても同様の効果を認めるのかどうかという問題です。本文エもオも規定しないということであれば,検討する必要はないと思いますが,気になりましたので申し上げておきます。 ○山下部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,今日の御意見を踏まえて,更に御検討いただければと思います。   最後でございますので,進みたいと思います。「第4 運送取扱営業」についての御審議です。まず事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 「第4 運送取扱営業」につきましては,運送取扱営業に関する規律を存置することの当否につきまして,御審議いただきたく存じます。   運送取扱人は,委託者である荷主との間で運送取扱契約を締結した上,運送人を選択し,荷主のために自己の名をもって運送人との間で運送契約を締結することになりますが,実務においては,日本海運集会所様において内航運送取次契約書の書式が,また,国際フレイトフォワーダーズ協会様において運送取扱営業又は利用運送の事業者のための貨物受領証フォームが用意されていることなどを踏まえると,その利用実態がないとも言い難いという状況があり,これらも参考に,運送取扱営業に関する規律を存置することの当否について,御審議いただきたいと思います。   また,運送取扱営業に関する規律を存置するとした場合には,運送取扱営業に関する規律について見直すべき点があるか否かにつきましても,併せて皆様の御意見を頂きたく存じます。 ○山下部会長 それでは,この点につきましての御意見,御質問をお願いいたします。あるいは実務の実態など御説明いただけるようなことがございましたら,お願いしたいと思いますが。 ○加藤委員 ちょっとこの貨物取扱営業というものの実態がよく分からないんですけれども,ここにあるように,海運関係でいくとあまり実態がないかもしれないというんですけれども,今日,真貝委員がいらっしゃらないんですけれども,いわゆる鉄道の運送取扱事業の面でいうと,当社もやっているんですけれども,請求のやり方が交計請求というちょっと特殊なやり方でやっています。どういうことをやっているかというと,お互い通運事業者同士で債権債務の清算をするときに,相殺みたいなことですね。例えば,我々が別の通運業者さんに500万円の債権があって,向こうがうちに対して300万円の債権があれば,交計請求で300万円を相殺して200万円の片方の請求にするようなことで,交計請求というちょっと特殊な方法をやっているんですけれども,大きな組織で,当社の方から全国通運さんというJRさんの資本の入った会社があって,ここは車両も多分持っていないはずなんですね。交計請求だけやっているんですけれども,ひょっとすると,その会社の運送取扱事業の形でやっているのかもしれないですね。要は,もとの話をしますと,当社がもともとは通運事業を100%独占していたんですけれども,終戦後に独占は駄目ということで,戦後に新免といって新しい運送業者さんがたくさんできたんですけれども,小さい業者さんだけだったので,それを全国通運という上方機関を作って束ねた経緯があります。ひょっとすると全国通運さんはこれに該当するかもしれないので,ちょっと調べてみます。 ○山下部会長 ありがとうございます。 ○山口委員 この貨物取扱営業なんですけれども,正にフォワーダーというのは,最初は貨物取扱営業から入っておりまして,実運送人さんに対して運送を委託して,実運送人から船荷証券を頂いて,それを荷主さんに渡すと,それがフォワーダーの原点なんですが,現在はフレイトフォワーダーが運送人としてハウスB/Lを出して運送人として行動しているということがかなり多いわけであります。しかしながら,そのフレイトフォワーダーとしての本来的業務であります取次業が完全になくなっているわけではなくて,実は存在していまして,荷主さんから依頼を受けて実運送人さんの船荷証券を直接荷主さんにお渡しして,荷送人の欄も実際の荷送人さんが名前を荷送人として書いてあって,間に入っているフォワーダーさんが契約上全然現れてこないというようなものも中にございます。   問題は,荷主さんから言いますと,フレイトフォワーダーに頼んでいるにもかかわらず,実運送人のB/Lが来て,それで事故が起きたときに自分は運送取扱人で全く責任を負わないよというふうに言われることがございまして,ただ,請求の形は,確か運送賃プラス取扱料という形ではやっていなくて,フレイトフォワーダーさんが運送賃ということで請求をしているという非常に中間的な形で現在営業が行われておりまして,かつては利用運送事業法にこの運送取次業というのはあったんですが,それの規制が外れてなくなってしまいまして,規制上は運送取次業というのは存在しないことになっておりまして,非常に実務が分かりにくい状況になっていて,荷主さんにとって運送人と思って委託した相手方が,突然最後になって運送取扱人だと御主張になることがあるということがありまして,だから,今ちょっと実務の説明をしているんですが,実際それをどうしたらいいのかというのはかなり難しいところで,取次業としてなくしてしまえというのも一つのアイデアではありますし,今みたいなコウモリのような動きをされるのを何らかの形で規制して,取次業であれば取次業と明確に言わない限り,取次業にならないような規定を置くというのも一つのアイデアかなと。   つまり,そういう中間的な,どっちとも取れるような形をして,いざ事故が起きたときになると,運送人ではなくて運送取扱人だと主張するような形を何らかの形で不正であるとし,運送取扱人と運送人を明確化するような何か規定を置いていく必要があるのではないかなというふうに思っているというところでございます。 ○山下部会長 契約書とか,何らかの取り交わされる書面の上では,それでも分からない。 ○山口委員 書面は交わさずに,見積書などを出して契約をしてしまうんですね。例えば,どこからどこまでの運送ということで見積書を出して,運賃をもらってしまうわけですけれども,お渡しするのは,例えば,実運送人の船荷証券をお渡ししてしまって,自分は運送人として証券上は何ら出てこないと,そういう実態があるときに,彼は運送人なのか取扱人なのか,そういう問題なんですね。見積書を見ると,正に運送人なんですけれども,運送状らしきもの,船荷証券とか運送状らしきものは一切出さないで,実際の運送人は実運送人ですよと御主張になると,こういう形の営業実態をなさっている場合があって,これはかなり問題ではないかというふうに思っているわけであります。   こういうものについては,外国ではやはり争いがあって,そういう形で契約なさった方々が運送人として取り扱われるのか,あるいは運送取扱人として運送責任を負わないのかということは,国によって少し判例にずれが出てきて,争いになっているところであろうと思います。もし我が国でこれが争いになれば,先ほどの見積書とかを重視して運送人として認定する場合もあり得るかもしれませんし,実際,船荷証券が出ていますから,運送取扱人として最終的に運送に関する責任を負わないという結論になる可能性もないではないだろうとは思いますけれども,荷主からして運送取扱というものを明確化しなければ運送人責任を負うような形の何か規定を設けるというのが必要かなというふうに思っているというところでございます。 ○道垣内委員 運送取扱営業という章が残るべきかどうかということに対しては,全く意見がありません。しかし,そういうふうな意見も持たない程度の認識の者が第559条を読んだときに,その意味がよく分からない。つまり,例えば第560条と第566条に運送取扱人の責任が書いてあるのですが,これまで散々運送人の責任についていろいろな期間制限があったり,いろいろな主観的な帰責事由についての制限があったりするところ,これらの条文だけを一見しますと,運送取扱人は非常に大きな責任を負うというふうに読めます。これは本当にそうなんだろうか,運送人も責任を負わないような場合に,運送取扱人だけ責任を負うのだろうかという疑問が生じるわけですが,もちろんそうではなさそうでして,そうではないのであれば,そのことがわかるようにきちんと書いてほしいと思います。それが第1点。   第2点は,昔の条文は見出しというのがなかったわけですが,改正をしていくと,最初に見出しが付くと思います。しかるに,例えば,この有斐閣の六法においては,第565条について「介入権」という見出しが付いているのですが,介入権と一般的に言うのは,契約当事者を変えるということを意味しているのではないかという気がするんです。商法の取締役のところにあった介入権は,また意味が違うのですけれども,どちらかといえば利益だけを吐き出させるという意味の介入権と,ここでいうのは代理人の自己契約みたいなもので,整理する際には,介入権という見出しは付けないでいただきたい,という希望をもちます。 ○山下部会長 昔からそう言ってきたかと思いますが。 ○道垣内委員 ただ昔からおかしいだけです。日本法なのですから,商法だけではないんですから,全体に整合的な言葉を用いてほしい。 ○山下部会長 多分,外国語の翻訳だと思うのです。 ○道垣内委員 駄目ですよ。 ○野村(修)委員 もう既に今,山口委員の方からも議論がありましたけれども,重要な問題として,運送人なのか運送取扱人なのかという議論がフォワーダーの位置付けとして問題がありますけれども,立法技術的にこの規定をなくしたときには,恐らく取次業というのは存在していますので,準問屋ということになるんだと思うんです。そうだとすると,その規定一本で大丈夫なのかということを,もうちょっと慎重に吟味しないといけないのではないかなというふうに思います。もともとの立法は,取次業を3種類ということで,問屋と準問屋と運送取扱人ということで,準問屋は包括的な規定になりますから,そうすると問屋営業と同じ扱いになるわけですけれども,本当にそれでいいのかなと。消滅時効等いろいろあると思いますので,検討が必要ではないかなと思います。 ○山下部会長 山口委員の御指摘のような紛らわしい取引の問題は,それはそれとして,取引類型としてこれを残すということについては,今,野村(修)委員の御意見のような方向でよろしいでしょうか。 ○松井(秀)幹事 お話の途中で申し訳ありません。運送取扱営業のような取次の形態は,中間形態として様々にグラデーションがあるのですね。たとえば,先ほどの山口委員の話にも表れておりますとおり,純粋な意味での取次ではないけれども,かといって代理なのか,あるいは仲立なのか,分類の難しいものが多々あるのだろうと思います。ドイツでも,そのようなことを踏まえて,運送取扱営業に関する規定は,具体的な実態に合わせるのではなく,理念型を作っていかざるを得なかったというところがあるわけです。この場合,一つそのような理念型を作っておいて,運送に関する取次とはこういうものであると示して,中間的なややこしいものはそれぞれ性質決定をしていって,取次に当てはまるか当てはまらないかを見ていく。それとは別に,契約形態の選択について濫用的なものがあれば,それはむしろ業法的な対処をしたほうがいいのかもしれません。このように私法上一つの理念型を示して,多様な実態への対処は多面的な法整備の可能性を考えるとすれば,商法に運送取扱営業の規定は残した方がいいのではないかという気がします。 ○石原委員 すみません。実務的に見ていきますと,やはり昔,フォワーダーがちょうど国際物流を始めた頃は,実は書類を3つ作っていました。つまり,「利用運送」,「取次ぎ」,それから,「代理」というか「代弁」の3つを作っていました。代弁行為に関しては,逆にフォワーダーのレシートを使っていたわけです。それで,取次ぎに関してはフォワーダーB/Lというのを作っていました。利用運送に関しては,最初からコンバインド・トランスポートB/Lという形で,完全に船荷証券に準ずるキャリアーという形でのB/Lを作っていました。それから,取次ぎに関してはフォワーダーとしての取扱人としてのB/Lを作った,こういう経緯があります。   それが1990年に,俗にいう物流二法がまとめられたときに,取次業というものが逆になくなったというか,集約がされました。そして,利用運送事業法の整備がなされたわけです。その時点でフォワーダーというものは誰でもできるようになった。それに伴って,逆に従来外航だけだったものが国内の利用運送事業その他にも膨らんできたと,こういった経緯があります。   したがって,今言った運送取次ぎになりましても,例えば我々の業界ではFIATAという国際フォワーダー協会がありますけれども,そこでも取次ぎのB/Lというのは,彼らは今でも持っています。それから,利用運送としてのB/Lも別に持っています。そういう点でいきましても,やはりフォワーダー業務としての取次ぎは残っていますので,これはこれとして残していいのではないかと思います。 ○野村(修)委員 あまり付け加えることはないんですけれども,今やはりこういう実務の議論をしていますと,運送取扱業,フォワーダーを念頭に置いた議論になると思うんですけれども,この運送取扱業という業自体は,ほかの形で発展していく可能性ももちろんあるわけです。例えば,ネットでいろいろなネットオークションみたいなもので物を出したりするというような実務が出てきますと,それを人の所にデリバリーしなければいけないわけですが,結構それは面倒であって,一人一人がパッキングをしてどうのこうのという話になりますから,商品を出しておいて,それをネットでオークションに出して,そして,それを全部運送契約まで結んであげますよと,そういう業務がもし仮に出てきたとした場合,そういう新しい業が生まれてきたときに,ではこれは何なんだろうという議論をしたときに,やや昔だったら運送取扱人と言ったんだよね,というようなことになりかねない部分もあると思います。かつてであれば,運送契約が非常に高度な専門的技術が必要であるために,それをサポートするという話でしたが,世の中というのは必ずしもそうとは限らずに,別な形で業が生まれてくる可能性もあると思いますので,私は,先ほど松井(秀)幹事がおっしゃられたように,型としてこういう業が存在するということを残しておく必要があるのではないかなと思います。 ○山下部会長 それでは,意見の大勢は一致しているのかなと思います。なお細かいことについては,御検討いただければと思います。   それでは,大変申し訳ございません。時間が少し超過いたしましたが,今日の審議事項は全て終わることができました。ありがとうございます。   次回日程等につきまして,事務当局から説明をお願いします。 ○松井(信)幹事 次回は,9月10日水曜日,午後1時半から5時半までとなります。場所につきましては,未定ですので,おって御連絡を差し上げたいと思います。   次回の議題につきましては,共同海損,船舶の衝突,海難救助,海上保険を予定しております。運送法制研究会の報告書で申しますと,79ページから109ページ辺りということを予定しております。 ○山下部会長 それでは,よろしくお願いいたします。   本日はこれで終了いたします。   どうもありがとうございました。 -了-