法制審議会 民法(債権関係)部会 第97回会議 議事録 第1 日 時  平成26年12月16日(火)自 午後1時00分                       至 午後6後04分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法(債権関係)の改正に関する要綱案の原案(その1) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○鎌田部会長 予定していた時刻になりましたので,法制審議会民法(債権関係)部会第97回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。本日は,岡田幸人幹事,餘多分弘聡幹事が御欠席です。   本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○筒井幹事 事前送付資料として,部会資料84-1から84-3までと部会資料85をお届けしております。それから,部会メンバーの方には,部会資料84-1について修正履歴付きのものもメールにて送らせていただいておりますけれども,こちらの方は事実上の資料ですので,もしページ数などを引用して御発言される際には,正規の部会資料84-1のページ数を引用していただきますようお願いいたします。このほかに委員等提供資料といたしまして,まず,安永貴夫委員から意見書を提出いただいております。それから,弁護士の委員・幹事の御紹介ということになると思いますが,日弁連の会長声明と,複数の弁護士名の連名による「意見書」及び「意見書(補充)」と題する書面を提出いただいております。 ○鎌田部会長 本日は部会資料84-1及び部会資料85について御審議いただく予定です。具体的には休憩前までに「第1 公序良俗(民法第90条関係)」から「第29 第三者のためにする契約」までについて御審議いただき,午後3時30分頃をめどに適宜,休憩を入れることを予定しています。休憩後に部会資料84-1の残りの部分と部会資料85について御審議いただきたいと思います。   具体的な審議に入る前に,事務当局から幾つか説明をさせていただきます。 ○筒井幹事 前回のこの部会の会議が8月26日でしたけれども,その際に要綱仮案の御決定を頂きました。その後,その日にお約束いたしましたとおり,部会長の指示の下で事務当局において所要の作業を行いまして,9月8日に法務省ウエブサイトにおいて要綱仮案を公表いたしました。まず,以上の経過について御報告いたします。次に,その後でございますけれども,法務省事務当局におきまして要綱仮案として取りまとめられた内容を民法の規定として落とし込む条文化の作業,それから関係法律の整備に関する作業,そして経過措置についての検討などを行ってまいりました。   部会資料84-2には,逆綴じで上下段の対照表が添付されていますけれども,その上段はこの部会資料の発送時において作業中の改正民法の条文案でございます。他方,対照表の下段には適宜の位置に要綱仮案の各項目を配置して,要綱仮案と条文案との対応関係を分かりやすく整理いたしました。その他,部会資料84-2の対照表につきましては,これをお読みいただく際の留意点を資料の1枚目に記載しておりますので,これをお読みいただきたいと思います。   この対照表について更に説明いたしますと,法制審議会の審議の過程におきまして,事務当局において検討中の条文の案文をそのままの形で審議の参考として御提示するというのは,恐らく初めてのことではないかと思います。このようなことを行いましたのは,これまでの審議の過程で民法の改正を考える上では規定の配置も非常に重要であるという指摘があったこと,そして今回の諮問事項との関係でも,民法という法律の分かりやすさを追求することも非常に重要であると考えられることから,できる限り検討中の条文案をお示しして御意見を伺うのが適当であると考えたからでございます。   その反面におきまして,このような資料は,一見すると条文の体裁として見た目が整っております関係で,これがすぐにそのまま改正後の民法の条文であるかのような誤解を招くおそれを感じないではありません。この点につきましては,飽くまで作業の現状をお示ししたものでありまして,今後も修正があり得るということを是非,御理解いただきたいと思いますし,部会メンバーでない方からの問い合わせなどがあった場合には,そのように是非,お伝えいただきたいと思います。   この部会資料84-2につきましては,部会資料としての通常の取扱いに従って,法務省ウエブサイトで公表しようと思っておりますが,公表に当たっては誤解を招かないように資料1枚目の注意書きなどをもう少し丁寧に書き足す方向で,微修正を加えたいと考えておりますので,その点について御了解くださいますようお願い申し上げます。   その上でですけれども,84-2という資料は,現段階での検討中の条文案を示すものですが,法制審における審議の対象あるいは答申の内容といたしましては,実質的にどのような改正をすべきであるのか,その実質的な改正内容を適切に示す文章がふさわしいのではないかと考えております。そういう意味では,最終的な要綱案という文書の体裁については,基本的に要綱仮案のスタイルを維持するのが適当ではないかと考えております。   そこで,部会資料84-1におきましては,「要綱案の原案(その1)」と題しまして要綱仮案の形式とその案文をそのままベースとして,その後の事務当局における主に法制的な観点からの検討結果に基づき,若干の修正を要すると考えたところを手直しして,本日,御提示しております。その際に修正理由が分かりにくいと思われたところにつきましては,部会資料84-3で説明を補充しております。したがいまして,本日の審議では参考資料である84-2につきましても,規定の配列その他の点について御意見を賜りたいと考えておりますけれども,主な審議対象は84-1であるという整理をさせていただきたいと考えております。なお,要綱案の原案(その1)となっておりますのは,その2として本日は取り上げていない定型約款を取り上げることを予定しているためでございます。その定型約款については,次回会議の資料で取り上げることを予定しております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,部会資料84-1の「第1 公序良俗(民法第90条関係)」から「第5 無効及び取消し」までについて御審議いただきます。事務当局からの冒頭の説明は省略させていただき,直ちに議論に入りたいと思いますので,御自由に御発言ください。 ○松岡委員 中身ではなく,筒井幹事の今の御説明に関連して1点だけで質問があります。84-2の条文案に付けられている見出しと,要綱案原案に付けられている見出しとが時々一致しておりません。その場合,先ほどの御説明ですと要綱案の原案の方,84-1を中心に議論してほしいということでしたが,不一致の場合にはどうするのでしょうか。条文案の見出しだとこうなっているから,要綱案の原案の方も,むしろ,そう修正すべきではないかというような意見の出し方をするべきでしょうか。見出しの不一致の場合の扱いについて,御説明をお願いします。 ○筒井幹事 84-2の上段における条見出しは,先ほどの説明のとおり,現段階において検討中の条文案ですので,現段階においてはそのような条見出しを付することを検討しているという意味でございます。これに対しまして要綱案の原案の方の見出しにつきましては,基本的にこれまでの審議経過を反映して付けられてきたもので,特にそれについて修正の必要があると考えたものについては,今回,修正したところもございますけれども,従前からの議論の経緯を表しているという意味で,特に修正する必要がないと考えたところは,要綱仮案のままにしております。ですから,最終的に取りまとめる文書としての要綱案の見出しは,従前から申し上げてきたように必ずしも条見出しを意味するものではないという整理になろうかと思います。そういう整理でよろしければ,要綱案の方の見出しについては特に御意見を賜る必要はなくて,ただ,実際の条文として条見出しでこれは適切ではないという御意見があれば,参考資料としての84-2に対する御意見として自由に御発言を頂ければと思います。 ○松岡委員 質問の趣旨をうまく表現できず申し訳なかったのですが,実は要綱仮案の段階で見出しについて必ずしも適切はないという御意見が幾つかありまして,それが何か所かは条文案のところで修正されています。ところが,要綱案の見出しは元のままになっているので,これはむしろ条文見出しを直すのであれば,要綱案の見出しも直した方がいいのではないかと感じるところがありました。御説明では,該当するところで適宜発言させていただければよろしいということですね。ありがとうございます。 ○鎌田部会長 それでは,先ほど申し上げました第1から第5までに関しての御意見をお伺いいたします。 ○道垣内幹事 「行為能力を有しなかったとき」というところが「行為能力の制限を受けていなかったとき」と変更するということが,原案として出ているところが何か所かあるように思います。完全にフォローできていないかもしれませんけれども,一つは「無権代理人の責任」のところの9の(2)のウですし,また,原状回復義務のところの第5の1の(3)もそうですね,これらにつきまして,どうしてこれが制限行為能力者一般に拡大されるということになったのかということについて,御説明を伺えればと思います。 ○金関係官 制限行為能力者一般という御指摘でしたので,ひょっとすると事務局の意図と異なる前提でおっしゃったのかもしれないと思いますので,まずその点から説明いたしますと,ここでは飽くまで当該行為との関係でといいますか,当該行為についての行為能力が制限されている場合を想定してこのような表現をしております。要綱仮案から表現が変わった理由につきましては,要綱仮案の決定がされる前の部会で,他の類似の箇所,例えば現行法の525条や97条に相当する論点の箇所で行為能力の制限という表現を使っていることとの平仄を合わせて,ここでも行為能力の制限という表現を使うべきであるという趣旨の御指摘を頂いていましたので,それを反映してこのような修正をいたしました。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○道垣内幹事 ある行為に着目したときにも行為能力はあるかないかではないでしょうか。つまり,数量で表せるわけではありませんが,100の行為能力があるというときに,ある一定の行為が制限されていて60になっているというのは確かに「制限」なのでしょうが,ある行為に着目するときに,それができるかできないかというのは行為能力の有無なのではないですか。 ○金関係官 事務局としましても,要綱仮案の段階では,そのような理解があり得ることなどを踏まえて,行為能力を有しないという現在の民法117条の表現を維持する方向で考えておりました。ただ,要綱仮案の決定がされる直前の部会で,潮見幹事から先ほど申し上げた趣旨の御指摘を頂いて,それに対して今の道垣内幹事のような趣旨の御指摘は特になかったので,部会でのコンセンサスという観点からは,むしろ行為能力の制限という表現を使うのが適切であるという判断をするに至ったところです。もしその判断に誤りがあるのであれば,この場で御議論いただく必要があるのではないかと思っております。 ○道垣内幹事 解釈がはっきりして,ここで,そのような場合を含めて「制限」という言葉を用いているということについてコンセンサスが得られれば,それでもいいのかなと思いますので,あえて今の段階で直さなければならないというわけではないのかもしれません。 ○鎌田部会長 ほかの御意見は。 ○沖野幹事 「意思表示の効力発生時期等」について部会資料ですと2ページの第3の4ですけれども,97条に関しまして「意思表示は」と改められています。それ以前は「相手方に対する意思表示は」となっておりましたし,現行法は隔地者間ということになっておるわけですけれども,相手方のない意思表示ということも存在すると考えられまして,元々の「相手方に対する」ですとか,あるいは「相手方がある」意思表示はという表現の方がより正確に思われますところ,このように改められた趣旨は何であるのかについて御説明いただけないでしょうか。 ○脇村関係官 97条に関しまして確かに仮案では相手方に対する意思表示ということで,相手方があることを前提にしたことを明示しておりました。今回,条文作成等を検討するに当たって98条につきましては,特に相手方がある意思表示と書かずに,単に意思表示と書いていること等を踏まえまして,98条では当然,相手方があることを当然の前提にしてきてなんですけれども,そこでは相手方にあると書いていないことから,97条についても同様に書くべきではないと考えました。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○沖野幹事 98条というのは現行法で改正になっているところではない部分ですか。 ○脇村関係官 改正対象ではございませんので,今回の資料には出てきておりませんが,現行法の98条,公示による意思表示に関する規定では,単に意思表示はという出だしになっているところについて御指摘させていただいたところでございます。 ○沖野幹事 御趣旨は分かりましたが,私は仮案の方が適切ではないかとなお思いますけれども。 ○道垣内幹事 相手方に到達したときからその効力が生ずるということだから,相手方がある意思表示であるということが97条1項は明らかであるということは,それはそれでもよいのかもしれませんし,97条3項に関していえば,とにもかくにも相手方がない意思表示であっても同じ規律になりますので,これはこれでよいと,そういう説明なら私は理解可能です。しかし,98条も理屈上は相手方のない意思表示を公示によってすることはできるわけであって,98条のところに書いていないからというのを理由にするのは適切ではないと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですね。 ○大村幹事 今日,冒頭に筒井幹事から資料84-2について御説明を頂きました。これ自体が今日の中心的な審議対象ということではないけれども,条文の配列等について意見があれば,それも申し述べてほしいということでございました。その件について一つ質問,一つ意見がございます。   れを拝見しますと基本的には現行の民法典の編成を尊重するという形での配置がされていると思いますけれども,配置についての基本的な考え方を御説明いただければというのが質問でございます。   それから,もう1点は個別の規定の配置についてでございます。配置の理由は御説明いただくとして,今から大きく動かすことはいろいろな意味で非常に難しいのだろうと想像いたします。ただ,現在,議論の対象になっている項目との関係で申しますと,意思能力に関する規定の位置がここでいいのかということについては,なお御異論があるのではないかと思います。従前,審議してきた際にも法律行為の枠内で公序良俗と意思表示の間に項目が置かれて検討されてきました。比較法的に見ましても法律行為のところに規定を置くという例もあろうかと思いますので,ここについては最終的には現在の配置を採用するとしても,これでよいのかということについて一応,検討した上で先に進むことが必要ではないかと思います。私自身はどちらもあり得るとは思いますけれども,法律行為のところに置くというのが一つの考え方ではないかと思います。 ○筒井幹事 規定の全体的な配置につきまして,もし特に御発言がなければ最後の方の「第40 その他」といった項目で,こちらから問題提起して御意見を伺おうと考えていたところですけれども,大村幹事からお尋ねをいただきましたので,ここでお話しさせていただこうと思います。この部会におきましては審議の各段階において,改正した場合の規定の置き場所について,全体的な配置の組み替えを行うといった提案も含めて,御意見を承ってまいりました。   その上で,要綱仮案が取りまとめられたことを踏まえて,いよいよどのように規定を配置するかを考えたときに,これまでの審議経過を振り返ってみますと,必ずしも一定の考え方でこの部会としてのコンセンサスが形成されていたとは言えないだろうと思います。一方には現在の条文の配列をできる限り動かさない方がよいという実務界等の御意見があり,他方,配列を変える方向について抽象的なレベルでは比較的多くの賛同を得ている意見があったにせよ,最終的な細かい配列まで見通して,合意が形成される見通しのある考え方が提示されているかといえば,必ずしもそうではないのではないかと理解しております。   その上で,配列についてのコンセンサスが形成されなければ改正しないというわけにはまいりませんので,基本的には現状を出発点として新たな規定を配置していく,そういう作業方針を採らざるを得ないのではないかと考えて,作業を進めてまいりました。その検討結果が,本日お示しした案ということでございます。全体のポリシーに関してのお尋ねに対するお答えは,そういうことになろうかと思います。それ以外に,細かいところでは,例えば典型契約の配列がどうかなど,様々な議論をしてきましたけれども,その一つ一つについても必ずしもコンセンサスがあるわけではないという理解を前提に,現状からスタートした規定の配列という作業方針を採ったということでございます。   それから,特に意思能力の規定をどこに配置するかということについて言及がございました。この部会でもその点についてはこれまでに御意見があり,今,大村先生も言及されたように,本日お示しした案とは異なり法律行為のところに規定を置くべきであるという御意見も頂いておりました。ただ,その点についてもこの部会でのこれまでの議論の中では必ずしもコンセンサスがあるわけではないという理解の下に,改めて考えてみましたときに,理論的な分析ももちろん重要であると思いますし,それとともにといいますか,規定の配列を考えるに当たっては分かりやすさということも重要な考慮要素になってこようかと思います。意思能力の規定の配置に関しては,様々な教科書類や判例付き六法などにおける配置も参照しながら,一般的な理解のしやすさということを考えますと,「第二章 人」の中の「第一節 権利能力」と「第二節 行為能力」,この間に配置をするというのが一つのあり得る姿ではないかと考えて,このような案を提示したということでございます。 ○山本(敬)幹事 正に今の点について過去の部会でも発言したことがありますので,改めて意見だけは述べさせていただきたいと思います。編成については様々な考え方があり,コンセンサスが得られないので,基本的には現行法の編成を維持するというのは,結論としてはやむを得ないのかもしれないと思うところはありますが,そうかたくなに考えず,変えられるところは変えるという工夫は更に試みてもよいのではないかと思います。   しかし,それはひとまず置くとしましても,意思能力の位置付けについては,仮に現行法の編成を維持するのであれば,考え直す必要があると思います。現行法の「人」に関する規定は,人の属性に関する規定として位置付けられていると思います。それに対して,意思能力は,人の属性ではなく,一時的に意思能力を欠いている場合も含むものですので,行為の時点での能力の有無を問題にするものです。これを「人」のところに置くのは,現行民法が前提にしている編成の考え方とは相容れないのではないかと思います。それだからこそ,これまで,規定するとすれば,法律行為の部分に規定すべきだということを主張してきました。前段で述べられた,基本的には現行民法の編成を維持して規定を配置していくという考え方と,そごがあるのではないかということは申し上げておきたいと思います。   分かりやすさという観点ももちろん考慮すべき事由だとは思いますが,今,申し上げましたように,一時的な意思能力の喪失を含んでいることから,かえって分かりにくくなってしまうのではないかという側面もありそうです。その点は再考の余地があるのではないかと思います。 ○潮見幹事 個人的な意見としては,私は大村幹事や山本敬三幹事と同じですが,先ほどの筒井幹事の発言について1点だけ確認のために御質問させてください。今回のこの規定の位置付けについて,いろいろ,教科書や,それ以外の一般的な理解というものを考慮に入れて,このようにしたんだという部分については,そういう説明もあろうと思うんです。その中で,この部会の中でコンセンサスを得ることができなかったというような趣旨の発言があったのですが,それは要するにこれから申し上げるようなことかということの確認と,それから,質問です。   意思能力に関して,最初の辺りの部会からずっとこれは私的自治と結び付けられた能力なのか,それとも事理弁識能力という形でこれを捉えるべきなのかというところで,理解のずれというものがこの部会の中にありました。後のような理解をするのであれば,この部分の規定について,その規定の位置付けについても法律行為や意思表示のところとは違ったところに置いた方が好ましいのではないかということが,その考え方の中には含意されていたというところを含めて,この部会の中ではコンセンサスを得られなかったと御理解されたのでしょうか。   というのは,実際に今回の部会でいろいろ規定の編成で,この規定をどこに置くかということ自体を議論した際には,今回,94の2で示されたような形で置くべきだという積極的な御発言というものは,この部会の幹事あるいは委員の方々からは,余り出なかったのではないかというように記憶しておりますから,そうしたこともあって,発言の御趣旨というものをお聞かせいただければ有り難いなと思っているところです。 ○筒井幹事 コンセンサスがあったかどうかに言及したのは,コンセンサスがあればそれで直ちにどうなるといった意味で申し上げたわけではないのですけれども,大方の異論のないところであれば,それが部会としての意思決定の対象になる事項かどうかはさておき,基本的に尊重すべきであろうという趣旨でその発言を致しました。意思能力に関する議論については,この部会でいろいろな御議論があり,どこまでの理解が一致していたのか必ずしもはっきりさせていないところが多々あろうかと思います。そういった中で,意思能力に関する規定は,要綱仮案のような内容で設けることについてのコンセンサスがあり,その配置について複数の考え方があるけれども,一つの分かりやすい配置としてこういう案があるのではないかという限度で案をお示ししたつもりでございます。 ○中田委員 潮見幹事からの御発言で,今回の案のような意見は出なかったのではないかということでしたが,私は前々回8月5日の会議でむしろ「第3 意思表示」とは独立させる方がよいという意見を申し上げました。その理由につきましては,ここでは繰り返しません。今回,もし,ここに置いた場合に今,大村幹事,山本敬三幹事,潮見幹事のおっしゃっているような解釈が封じられるかというとそうではなくて,その解釈はこの場所に置いたとしてもなおあり得ると思います。両方の考え方が成り立ち得ると思いますので,そこはそういう考え方を否定したということにはならないと理解しております。 ○鎌田部会長 ほかの部分も含めて御意見をお伺いします。 ○岡委員 部会資料84-3の20ページで法定追認のところでございます。今回,要綱仮案にはなかったけれども,125条に関する大正12年の判例を明示的に否定する趣旨ではないことを理由として,「前条の規定により」という文言を削る案が提示されております。この明示的に否定する趣旨ではないという言葉が分かりにくいという意見が出ました。その上で,部会資料84-2の15ページの125条の新しい案を見ますと,追認をすることができるとき以降という裸の言葉が出てまいります。これは素直に読むと,改正後の124条の取消権を有することを知った後という解釈になるんだろうと思います。そういう意味では,「前条の規定により」というのを削ったところで文言の意味は変わらないのではないか,変わらないとしたときにわざわざ明示的に否定する趣旨ではないことを示すために,削るという作業をする必要があるんでしょうかと,そういう意見でございます。 ○村松幹事 この点に関しましては,これまでの部会の議論との兼ね合いもあろうかと思いますけれども,ここで今,趣旨が分かりにくいとおっしゃいました上記判例まで明示的に否定する趣旨ではないという,この部分ですけれども,ここは平たく言えば,125条に関する判例法理がどうなるかについては,解釈に委ねるのであるということがよろしいのではないかということを申し上げようとしております。まずは恐らくそこの点がどうなのかということが一つあろうかと思います。   これまでの部会の議論では,125条についても併せて既存の判例が変更を余儀なくされる可能性がありますよということは,申し上げていたつもりですけれども,その点については若干,異論もあると事務当局としては認識しておりましたところ,部会ではその点が余り議論がされないままに来ておりました。果たしてそれでよいのかという点を最後の条文化の段階で,もう一度,見直したときに,125条まで決め打ちしない方がよいのではないかと考えたと。その点がどうなのかという点が1点あろうかと思います。   仮に事務当局が今,申し上げましたように,この点については決め打ちをしないという方策を採ろうと考えた場合に,条文の方をどのようにしておくのが適切なのかという点で,少なくとも「前条の規定により」という部分を今回,削りましたけれども,その部分について削っておく方がなお解釈論の展開がしやすいだろうということで削ったというのが趣旨でございます。ただ,この点は部会の従前の議論で必ずしも明瞭な議論あるいは結論が出ていたかについて,若干,不安がありましたので,ここでも御説明した上で,これを削ったのはこういう趣旨でありますということを申し上げようとしておりまして,経済界の方から既存の判例について,これを修正するのはよろしくないのではないかという御指摘があるやに個別に聞いておりましたので,そういった辺りとの兼ね合いで判例法理がどうなるか,この点についてはなお解釈に委ねるということにするのかどうかというのがまず一つあるところかなと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○岡委員 趣旨は分かりましたが,しかし,新しい125条を読む限り,取消権を有することを知ったとき以降としか実務家としては読めないのではないかと思うんですが,そうではないと,解釈の余地はあり得るということを一問一答は書かれるんでしょうか。 ○中井委員 審議の経過について,私は124条の議論をして,知った後でないと駄目だという理解をしたときに,法定追認についても右へ倣えの理解をしていましたし,中間試案における解説文でもその趣旨だったか,それに近い記載になっていたのではないかと思います。したがって,実質的にもこの法定追認の場合においても,124条の要件を充足したときに初めて法定追認の効果が生じるものと思っていたものですから,それが今回の説明で明示的というか,そこは空白にして解釈に委ねるとまで書かれたので,本当にそうだったのかと。仮にそうだとすると,ここで今,経済界を含めて実務界ともおっしゃったので弁護士会は言っていないと思っているものですから,ここは解釈に委ねるべきなのだという意見が多数なのかどうか,確認していただいた方がよろしいのではないでしょうか。 ○村松幹事 部会の議論に関しましてはおっしゃいましたように,どちらかといいますと125条について連動するというニュアンスで,こちらの方もそうなりますよということで御説明していたところ,それでよいのかどうかについて伺っていたつもりでしたけれども,それは正直,こちら側の議論の進め方がよくなかったような気がしますが,余り議論がされなかったような印象を抱いておりました。それは事前に私どもの方で個別に行っている説明等での反応と,若干,そごしていた部分があったというところでした。   したがって,それも踏まえて今回,解釈に委ねるということにした方がいいのかどうかということで,こういう提案をさせていただいていますけれども,もちろん,今,中井委員がおっしゃいましたように,その点についてはなお,ここで今,議論をすることは可能だと思っておりますし,こちらからしても,この点についてはむしろ決め打ちをしてしまった方がいいのではないかと部会でコンセンサスができるのであれば,そのようにするべきであろうと思います。そのような意味でこの時期になって申し訳ないのですけれども,この点に関してお考えがおありでしたら,それぞれ委員・幹事の方から頂けるとよろしいのではないかと,中井委員がおっしゃったのと同じですけれども,思います。 ○佐成委員 確か我々のバックアップ委員会でも,この改正によって法定追認の方の判例に影響することを懸念するという声は,あったかと思います。以前に部会でここの議論をしたときにもそのような趣旨の発言をしたと記憶してるんですけれども,いずれにしてもここを決め打ちされるというのは実務界,取り分け経済界の中では異論が出てくる可能性がありますので慎重にお願いしたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかの御意見はいかがですか。 ○筒井幹事 御発言をありがとうございます。この点について先ほど来,村松から説明したとおりなのですけれども,事務当局としての認識は,「前条の規定により」という言葉をそのまま残すと文理上124条と同じ要件が125条の方にもかかってくるので,それでよいのかどうかについて部会資料の中でも注意喚起をしたことがあったのですが,それについて日常的に意見交換を行っている中では異論があるという認識をしておりましたけれども,部会の中の議論では必ずしもはっきりしないまま,要綱仮案に至っていたという認識でございます。   はっきりしない状態だったので,今回の条文化作業の中でどうするかということを考えたわけですけれども,この段階でどちらか一方に決め打ちするような案を提示するのは適当でないだろうと思います。「前条の規定により」という文言をそのまま残すと,一方の考え方を採ったものと概ね決まってしまうのではないでしょうか。そこで,判例を明示的に変えるというコンセンサスがあったわけではないという理解の下で,125条の「前条の規定により」という文言を削除し,なおその点については両様の読み方があり得るという状態にしておくのが,これまでの審議経過に照らして最も素直な解決ではないかと考えたわけでございます。そういう次第ですので,できましたら今の御議論,御発言などを踏まえて,このような案で御了解を頂ければと思います。 ○岡委員 新しい125条で両様の解釈が本当にできるんでしょうか。やむを得ないということであればやむを得ないような気もしますが,どう見ても「知ったとき」というのが入ってくるように私には思えます。 ○金関係官 もちろん,そういう解釈があり得るとは考えております。ただ,現行法の下での判例は,124条については取消権を有することを知っている必要があるとしつつ,125条については,前条すなわち124条の規定により追認をすることができるときはという文言であるにもかかわらず,取消権を有することを知っている必要はないという解釈を基本的にはしておりまして,それはそれで一応整合的なものとして運用されているのだと思います。そのことを前提とすれば,今回の改正で124条に取消権を有することを知っている必要がある旨を書いたとしても,125条に単に追認をすることができるときはという要件を書いておけば,現在の判例を維持する解釈が成り立たないとまでは言えないのではないかということを考えております。ですので,岡委員の読み方を否定する趣旨では全くないのですが,そこは今後の解釈に委ねたいということで,できればこの案文でよろしくお願いいたします。 ○岡委員 一問一答をうまく書いてくださるようお願いいたします。 ○鎌田部会長 ほかの点は。 ○中井委員 先ほど意思能力の議論を聞かせていただきました。中田先生から前回,どういう理由で発言されたのか,記憶がないのですが,先ほど敬三先生がおっしゃられた人の方は属性に関する事柄であり,意思能力に関しては当該具体的行為についての有効,無効を決める基準だという御説明をお聞きして,また,かねてのこの部会での議論の流れもそうだったように思うんのです。実務家ですから理論的な整合性で申し上げることができるわけではないですが,法律行為の中に位置付ける方が正直,素直に思えるんです。それでも人に関する規定の中に置く積極的な理由がもう一つ分からなかったものですから,中田先生に再び言ってくださいというのも申し訳ないのですが,議論が対立すると,このままになってしまいそうな気もしたものですからあえて蒸し返しました。 ○中田委員 前に申し上げましたのは,意思能力に関する規定が要綱仮案の第2次案の段階では5か所ぐらいに出ていますが,それぞれ表現が微妙に違っておりまして,それらを統一する上位概念として,意思能力がない場合には,その者の行為は無効であるというものがあって,それが5か所ぐらいでばらばらに現れているとも理解できるのかなと思ったということがあります。ただ,そうしますと法律行為のところに置いた場合に,そういう不文の前提のようなものが,かえって分かりにくくなるのではないか,むしろ,最初のところに置いて,それを法律行為との関係でどう位置付けるかについては,解釈に委ねるということでいいのではないかということを概略申しました。今回は条文案では表現はかなり整理されておりますけれども,基本的な考え方は前に申し上げ,今,申し上げていることが妥当するのではないかと思っております。   元々,意思能力がない場合に無効とするか,取消しとするかということで大きな対立があって,その際の議論に先ほど潮見幹事の御発言とも若干関連いたしますけれども,意思表示がされたその時点に着目して意思表示の効力の問題として捉えるという視点と,意思能力の欠如している人の意思表示であるという捉え方と両方があって,その両方を調和させるという形で規定ができてきて,現在のような規定ぶりでコンセンサスができたのだと理解しております。そういたしますと,広い解釈を可能にするという意味でも「第3 意思表示」のところに置くのではなくて,それと離したところに置いた方がいいのではないかということを申し上げました。 ○鎌田部会長 よろしいでしょうか。必要がありましたら,また,戻っていただくということで,次に「第6 条件及び期限」と「第7 消滅時効」について……。 ○山本(敬)幹事 皆さんが感じておられることだろうと思いますけれども,この場で確認をしておいた方がよいと思うのが,「第4 代理」の「1 代理行為の瑕疵-原則」の部分です。ここでは,101条1項の規律を改めるとして,要綱仮案では,「意思の不存在,詐欺,強迫」となっていたところに「錯誤」を付け加えておられます。悩まれた末に付け加えられたのだろうと思いますが,この場で説明があった方がよいのではないかと思いますので,御説明をお願してよろしいでしょうか。 ○金関係官 現在の101条1項の一般的な読み方としては,意思の不存在という文言の中に心裡留保,虚偽表示,錯誤が入っていて,その後に詐欺,強迫という文言が続くというものだと思いますけれども,その前提には,現在の95条は意思の不存在ではない錯誤,いわゆる動機の錯誤を直接には規定していないという理解があると思います。しかし,今回の改正で,動機の錯誤も95条に明文で規定することになりますので,現在の101条1項のように,意思の不存在,詐欺,強迫とだけ書きますと,動機の錯誤に相当する部分が抜け落ちていることになります。そこで,意思の不存在と詐欺の間に,錯誤という文言を入れることにしました。ただ,今申し上げた理解を前提としつつ,単に錯誤という文言を入れるだけですと,逆に今度は,動機の錯誤ではない意思の不存在に相当する錯誤が,改正後の101条1項の意思の不存在という文言の中に入っているのか,錯誤という文言の中に入っているのかどちらなのかという疑問が生じ得ることになると思います。しかし,事務局としてはその点は余り大きな問題ではないと考えておりまして,むしろ,例えば「意思の不存在,錯誤(動機の錯誤に限る。),詐欺,強迫」といった複雑な書き方をするよりは,シンプルに書いた方が分かりやすいのではないかという観点から,最終的な案文としてはこのような表現を用いることにしております。 ○山本(敬)幹事 あえて「意思の不存在」という言葉を残された理由を付け加えて御説明いただけるでしょうか。これは元々,意思の欠缺と意思表示の瑕疵を区別し,意思の欠缺は無効,意思表示の瑕疵は取消しという元の民法典の考え方を表そうとした言葉だったわけですが,錯誤に関しては,今回,取消しに改めることになっていますので,この考え方自体は崩れているのではないかと思います。その中であえて「意思の不存在」を残す意味はどこにあるのだろうか。「心裡留保,虚偽表示」と言葉を置き換えると,何か抜け落ちるものが出てくると心配されたのかもしれないと思いましたが,そういうことでないのであれば,なぜ,残されたのかという理由を御説明いただければと思います。 ○金関係官 その点につきましては,意思の不存在という文言を積極的に残そうという意図でこの案文になっているわけでは必ずしもなくて,中間論点整理,中間試案,要綱仮案と続いた審議の過程で,意思の不存在という現行法の文言を修正するという論点が改正項目としては取り上げられなかったからというのが端的な理由だと思います。ただ,何か抜け落ちるものがあることを心配したのかという御指摘も頂きましたので,その観点から考えていたことを少し申しますと,現行法の下では,意思の不存在という文言の中に意思無能力を含めて読むという解釈があるところで,もちろんその解釈が適切かどうかという問題はあり得ますけれども,しかしその解釈を正面から否定することになりかねない案文とすることにも問題があったという点が一つの理由としてはあります。 ○道垣内幹事 要綱案について,これを直してくれと言うつもりはないのですが,先ほど私が発言させていただきました制限行為能力の問題です。要綱案の第4の9の行為能力の制限を受けていたときという第4の9の(2)のウというのは,他人の代理人として契約した者がという言葉がございますので,先ほど御説明いただいたように,当該契約締結行為との関係での行為能力の有無の問題であるということが,比較的読み取りやすいのだろうと思います。それに対して,第5の1の(3)の「制限行為能力者についても同様とする」という箇所については,「制限行為能力者」というのが類型的に捉えられるという感じがどうもしてしまうんです。   そのようなことを申しますと,それは現行法からそうであり,現行法の解釈としても当該給付に関連する能力の問題であると考えられるのだから,そのままでいいではないかということになりそうにも思いますし,また,要綱仮案の決定時とか,これまでの議論の過程でそれについて議論してこなかったというのは,そそのとおりですけれども,実際に条文に起こすときには,なお少し検討の余地があるとお考えいただけないだろうかと希望します。本日は改正条文案の文言自体は審議の対象ではないのですが,第121条2の第3項で「制限行為能力者についても同様とする」と書かれますと,およそ保佐人,補助人が付いているというときには,同様になりそうな感じがいたしまして,条文作成にあたりましては,再度,御考慮いただければと思います。 ○鎌田部会長 事務当局からコメントはございませんか。 ○村松幹事 条文の中でまたもう少し考えてみたいと思います。どうなるかまではあれですが,検討はさせていただきます。 ○鎌田部会長 その他の点についての御意見はよろしいですか。よろしければ,「第6 条件及び期限」と「第7 消滅時効」について御審議いただきます。 ○中田委員 要綱案の方にも関係するんですが,前回,164条,占有の中止等による取得時効の中断についてどうなるのかという御質問を致しました。今回の条文案を拝見しますとそれが入っておりませんので,現行規定のままになるということだと思います。その結果,民法には時効の更新と時効の中断と二つの概念が併存することになるのだろうと思います。確かに164条の中断は自然中断であって,法定中断とは区別される特殊な概念であるという理解があると思います。そうしますと,今後,中断という言葉はそういった特殊な意味のみを持つ概念として民法に残ると理解していいのか,それとも中断という概念にもう少し一般性を持たせるという趣旨なのか,やや分かりにくいように思います。なぜ,164条を現行規定のままにして中断という言葉を残されたのか,その辺りの御説明を頂ければと思います。 ○鎌田部会長 それでは,事務当局から説明してください。 ○村松幹事 御趣旨にうまく答えられているかどうかはありますが,今回,消滅時効を中心に中断概念を更新に改めますが,他方,ここの点については今,おっしゃいましたように自然中断なので,そこは現状の表現を残すことにした。併せて表現をいろいろ工夫するということも,考えようとしてはあるかなというところはあろうかと思いますけれども,諮問との関係でいいますと,なかなか,そこまでできないだろうということで,今回の改正の範囲外ということで,基本的には現状の表現をそのまま維持する,その結果,中断の意味というのは縮小して,ここで残るという整理になるかと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですか。ほかにはいかがですか。   それでは,「第8 債権の目的(法定利率を除く。)」から「第11 債務不履行による損害賠償」までについて御意見をお伺いいたします。 ○松岡委員 簡単な質問を一つさせていただきます。「第9 法定利率」の「変動制による法定利率」ですが,基準の月が5月から4月となっていたのが1月から12月に変更になっております。その点については特に御説明がなかったと思います。どういう理由で基準を変えたのかについて御説明願えればと思います。 ○村松幹事 申し訳ございませんでした。この点については,元々,仮案の段階でも確かブラケットを付していて,その後,詳しくどういう立て付けにするのがよいのかを実務界に伺って決めようと思っておりました。今回,基準の取り方が6年前の1月から前々年の12月までというような形になっておりますけれども,これは結局,どういうことを意図しているかといいますと,例えば4月1日を基準として4月1日から期が切り替わるというようなことを前提としますと,6年前の1月から前々年の12月までを参照すべき期間とするとします。そういたしますと,その結果が公表されるのが数カ月ちょっと遅れますけれども,その数カ月遅れたものを全部足し合わせまして,そうすると変動があるのかどうかが最終的に分かる,その結果が公表されて,そうするとその1年後の例えば4月1日から新しい法定利率の割合が適用されるということがある意味,確保されるということを考えてございます。   つまり,今回,変動制を採りますけれども,かなり緩やかなものにはなると。その上で,それは実務界への影響がそれなりに大きいからであるということですので,そういたしますと,相当の周知期間を取る,あるいは準備期間を取る必要があるということがございますので,こういった形で周知期間を1年程度は取るということを確保しようということで,このような記載がされているというところでございます。おっしゃいましように解説をよくしておくべき点でした。申し訳ございませんでした。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがですか。 ○潮見幹事 私は形式的なことでの確認だけの質問です。原始的不能の規定についての条文案に関わるのですけれども,考えられている方向では412条の2で履行不能というものが立てられて,2項に置かれるということのようです,現在,準備されているところによれば。これも立法の立て方としてはあり得る方向の一つかもしれないのですが,1点だけ確認したいのは,これは契約に特化されたルールですよね。契約に特化されたルールであっても,こういう債権総則の部分に規定を置くということについて特段の違和感はないという,そういう御理解の下にこのような考え方をお採りになっているのかいうところをお教えいただければと思います。別の点に関わりますので,あえてここで質問させていただきました。 ○金関係官 違和感はないのかと問われると難しいところではありますけれども,事務局としては,ここに配置する案を出しておりますので,こういう配置が十分にあり得るという理解をしております。それはこの規定に限らず,例えば部会資料84-2の上段のところの415条2項3号,これも契約に特化した規律ですけれども,こういうものも債権総則の箇所に置いておりまして,その配置には合理性があると考えております。  一つの考慮要素として,先ほど潮見幹事は原始的不能の規定と一言でおっしゃいましたけれども,しかし今回,案文としては飽くまで415条の規定による損害賠償請求を妨げないという規定になっております。そうしますと,この規定は415条の損害賠償請求との関係で把握せざるを得ない面が少なからずあって,その観点からは,むしろ契約総則に相当する箇所に配置するよりも,415条に比較的近い箇所に配置するのが相当ではないかということを考えております。もう一つには,今回の原始的不能に関するルール,すなわち原始的不能というだけでは直ちに契約は無効とはならないというルールは,この412条の2第2項を新設したことのみから導かれるのではなくて,選択債権に関する410条で原始的不能と後発的不能とを区別しない表現ぶりに改めたことや,解除に関する543条で履行が不能となったときではなく履行が不能であるときという表現に改めたこと,これらを含む今回の改正全体から導かれるものであるという整理をしております。つまり,412条の2第2項が今回の原始的不能に関するルールを示す唯一の規定というわけではないので,したがって必ずしも契約総則に相当する箇所に配置する必要はないということも,考慮要素の一つとしてはあり得るのではないかと考えているところです。 ○潮見幹事 私はここにこの規定を置くことが絶対におかしいということを申し上げているつもりではございません。ただ,そういう御発言がありましたので申し上げますと,この規定に関していったら,今,金関係官がおっしゃったようなことであるのならば,前の要綱仮案とかからも出ていましたように原始的不能という場合の効果がここに置いて,損害賠償ですよというところだけが独り歩きしないようにしてください,飽くまでも要綱仮案では損害賠償というのは代表的効果であるというようなところを繰り返しておられましたので,その辺りの誤解のないような形での説明というものを,一問一答等でお願いできればと思います。   それと同時に私はこちらの方がむしろ聞きたかったところで,ここで言うべきなのか,あるいは後の方がいいのかもしれませんけれども,今,金関係官がおっしゃったような考え方でいくのならば,なぜ,契約上の地位の移転,契約引受あるいは契約譲渡,これを債権総則の債権譲渡,債務引受,その後につなげて置かなかったのか,なぜ,これだけを今回の84-2の方では契約総則の第三者のためにする契約の後ろに置いたのか,それが分かりやすいのか,むしろ,歴史的あるいは沿革的あるいは理論的な連続性というものを考えた場合には,むしろ,今,おっしゃられたように幾つも随所に契約に関する規定というものが債権総則に置かれていることであるならば,なおさら契約上の地位の移転というものについては,債務引受の後の辺りに少し置くことをお考えになられた方がいいのではないか,それをあえてこっちにおいたということが分からない,解せないというところで,後で債務引受や契約引受を扱たうときにでもまたお考えをお聞かせいただければと思います。 ○鎌田部会長 契約上の地位の移転に関してコメントはありますか。 ○村松幹事 確かにおっしゃるように,債権譲渡の後にというのもあるのかというのはなるほどと思ったのですが,我々の中での検討では契約上の地位の移転は契約の問題だということで,向こうに置くというので余り違和感がなかったと。ある意味,それが正しいかどうかはあれですけれども,今回,債権総則の中に幾つか契約のものが入っておりますけれども,先ほどの説明にもありましたが,幹があって,そこにくっつくというような形のものは,あえて契約の方に分離しないというぐらいの相場観もあるような気がしておりましたところ,契約上の地位の移転については,むしろ,これ単体で一つの節だか款だかを与えておりますけれども,1条で一つの契約上の地位の移転ということで,そういった独立性が高いのだろうから,これは契約の方にというぐらいのことを考えていたということです。 ○潮見幹事 ここで話をさせていただいてよろしいですか。本来であれば債務不履行のところの議論に集中していただいた方がいいのかもしれませんが,申し訳ありません。村松さんがおっしゃったところでいくと,要するに債権譲渡,債務引受というものと,それから,契約引受といいますか,契約上の地位の移転というものは幹が違う異質な構造のものであるという観点から今回は立案されているという趣旨,つまり,債権譲渡,債務引受のルールというものは,基本的には契約引受といいますか,契約上の地位の移転のところにスライドするようなものではない,あるいは関連性もないというような,そういう御理解なのかなと受け取ったんです。   それはあり得るのかもしれませんけれども,ただ,今,おっしゃられたような構想というものは,一つには従来の日本の議論の契約引受あるいは契約譲渡の捉え方を前提としている人たちからすると,なかなか,分かりにくいのかなというところと,ある意味では債権譲渡,債務引受と契約上の地位の移転というものは異質なものであるという強いメッセージをこの体系編成は示しているんだともとられかねないし,本当にそれでいいんだろうかというところもございますし,更に申し上げますと,昨今のいわゆるモデル準則等で言われているものも債権譲渡,それから,債務引受と契約譲渡というものについては,連続性のあるようなものとして少なくとも規定上,編成上は位置付けておるというところもありますので,かなり比較法的にも特殊な独特な体系をここで改正法は選択したものと受け取られる可能性が極めて高いと思いますので,これらのことを意識して編成作業をこの形でお進めいただくなり,あるいは変更されるなりしていただければと思います。 ○村松幹事 また,検討いたします。 ○鎌田部会長 ほかの御意見はいかがですか。 ○岡委員 実務家としての形式的な質問でございます。84-2の31ページの412条の2のところで,履行不能というのは契約その他の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断するというのが明示されておりますが,解除とか損害賠償とか,この後の履行不能についてはこういう形容詞がなく,単に履行の不能という言葉がばんばん出てきております。恐らく解除だとか損害賠償の履行の不能というのは,412条の2のこの概念で判断することになるんだろうと思いますが,412条の2のところだけに「照らして」というのが出てきて,あと,一切出てこないというのは不安に思うんですが,それは大丈夫なんでしょうかという質問でございます。   実務家的に見ると,本法において履行の不能とは契約その他の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断するものとすると,そんな定義規定がどこかに一つあって,それ以降は損害賠償も解除も追完請求もその言葉を使ってくれると分かりやすいんですが,そんなことはしなくても今のこのような書き方で本法における履行の不能というのは,412条の2で判断するんだということが明確になるんでしょうか。 ○村松幹事 おっしゃるとおり,履行の不能についての定義のような規定を設けるという方が分かりやすいと思うのですが,現行の民法もある程度,一番最初のところで詳しく書いて,その後はこういう趣旨で読んでくださいという条文の作り方がされている部分があるので,それに乗っかろうかと考えたんです。ただ,もう一つ,民法は必ずしもほかの法律と違って定義規定は余り置かない方がよいのであると,現状はそのように作られているという認識も尊重してというところであるんです。もちろん,それについては多々,例外もあるので必ずしも決定的ではないと思いますけれども,一番最初で詳しく書いて,それ以降については似たような趣旨であるということで読んでくださいというのが趣旨ではございます。それが分かりやすいかどうかというのは確かにあるのかもしれませんが,現行はそういう作り方で作られているのでということです。 ○岡委員 今,似たような趣旨でとおっしゃいましたが,似たような解釈でいいんですか,同じ解釈ではなく。 ○村松幹事 すみません,同様の解釈だと思います。失礼しました。 ○大村幹事 今の岡さんの個別の御質問について賛成とか,反対とかということではないのですが,民法は定義規定を置かないという趣旨であるので,それを尊重するというコンセンサスはこの部会にはなかったと思います。 ○中田委員 定義規定を置くかどうかは,民法の現代語化のときもかなり議論になったと記憶しておりますけれども,現在の民法の定義が他の法律に比べてそんなに多くないというのも事実だと思います。その上で,412条の2の書き方については岡委員がおっしゃった御懸念は分かるんですけれども,同様にということで理解するしかないと思います。と申しますのは,412条の2の1項は履行不能の定義をするというだけではなく,履行請求権についても裏から規定しているという趣旨があったと思います。それが薄らいでしまうというのがまた反面,懸念されるところであります。   もっと申しますと,前回の部会でも私も含めて何人かの委員・幹事から意見がありましたように,82-1までのような規定の仕方の方がよかったのではないか,履行請求権や原始的不能について正面から書く方がよかったのではないかということが根底にあると思います。現在の412条以下の規定を拝見しますと非常に分かりにくいという気がいたします。むしろ,履行請求権があるということを債権の効力の冒頭に書いて,412条の2の2項は415条の3項にするとか,よほど,その方が分かりやすいと思うんですけれども,ただ,これについては非常に残念ですけれども,受け入れていただけないということですので,改めて残念だということだけ申し上げます。   関連する形式的なことをもう一つなんですが,84-2の35ページの419条の金銭債務の特則についての規定で,括弧の中に「第六百二十二条の二において「金銭債務」という。」というのが挟まっているんですが,これは非常に分かりにくいと思います。これも法制的な観点から入れているのだと思いますけれども,419条を理解する際にどうしてこれが必要なのか,むしろ,理解を妨げるのではないか,必要であれば622条の2の方で適切な対応をすればいいのではないかと思います。これは法制的なことなのかもしれませんけれども,分かりやすいということとは逆になっていると思います。   それから,最後に内容的なことについてですが,84-1の第8の「債権の目的」について御質問があります。401条2項の債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときについて,部会資料82-1までは合意によって給付すべき物を定めたときというのが入っていたのですけれども,かつ,それについて異論もなかったと思うんですけれども,83-1でこの改正はしないという方針が示されました。それについて第96回会議で私が82-1までの方がよいと発言しまして,複数の委員・幹事が賛成してくださいましたが,今回も入っておりません。   関係官からは,合意のある場合も現行規定で読み込めるという御説明を頂きました。改めて起草者である梅博士の説明や教科書などを検討しましたところ,関係官のおっしゃるような趣旨とも読めるところもあるんですけれども,非常に微妙な書き方になっておりまして,学説はかなり早い時期から401条2項について,これは指定権が与えられた場合の規定だと理解するものが一般的になっていると思います。それをあえて不明瞭なままにしておくというのは適切ではないと思います。   別にどちらかの学説を採るべきだということを申し上げているのではなくて,内容については多分,コンセンサスがあると思うんです。合意によって特定する,それから,指定権によって特定する場合もある。そこは一致しているわけで,ただ,それが現在の401条2項の表現から適切に読み取れるかというと,非常に読み取りにくいのだと思います。そうすると,実質を表すような表現を工夫した方がいいと思います。ですので,例えばですけれども,債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときとあるのを,当事者の同意により給付すべき物を指定したときというように改めることによって,いろいろなケースが読み込みやすくなるのではないかと思いますので,御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 では,その点は検討してください。   ほかにいかがですか。ほかにないようでしたら「第12 契約の解除」から「第14 受領遅滞」までについて御審議を頂きます。御自由に御発言ください。 ○山川幹事 「第13 危険負担」のところで,これまで現行の536条2項によって,雇用契約における債権者の責めに帰すべき事由による履行不能の場合の賃金請求権が根拠付けられるということをできれば,より明確な形で定められないかというお願いないし御提案をしておりまして,従前の案が現在でも維持されているわけですけれども,見出しが「債務者の危険負担等」と現行法と同様のものになっているということで,現行法における解釈も維持できるということがある意味では見出しの方で示されていると理解できるかなと思っております。あとは1項と2項の整合性との関係でも,現在の536条1項,第13の2の(1)についても,言わば元々反対給付の債権,履行請求権が最初から発生している場合,つまり,契約締結当時から発生している場合に限らず,言わば勿論解釈として雇用契約のように報酬請求権が元々発生しない場合も含めて履行を拒むことができると解釈すると,1項,2項の整合性もよりとれるかなというような感じもしておりますので,解説等の際にはその辺りも御配慮いただければと思います。 ○鎌田部会長 その点はよろしくお願いします。 ○山本(敬)幹事 今の「危険負担」に関する点なのですが,山川幹事のような御意見があり,そして,その御意見の内容自体については私もかつてから賛成してきたところですが,表題を「債務者の危険負担等」という形に変えれば,現行法の理解がそのまま改正法の解釈としても主張可能になるよすがになるという点については,少し問題があるのではないかと思います。結論はそれでよいと思うのですが,この点についてはたくさんの議論を経た上で,最終的に現在の案のように,「反対給付の履行を拒むことができる」という定式に結着をしたわけですけれども,これは従来理解されていた危険負担の効果とは変えるということが含意されていたと思います。   にもかかわらず,現在と全く同じ表現を今後もあえて使うのは,理解に混乱を来すのではないかと思います。元の反対給付の履行拒絶という表現がベストかどうかは分かりませんが,少なくとも内容を表した表現であって,従来とは表現が変わったということを前提にした上で,しかし,様々な議論があって,山川幹事のような意見を私も主張しましたし,そして,現行法の理解を変えないということであれば,それは解釈として導いていけばよいわけであって,それを裏付けるために「危険負担」という表現を使い続けるのは,本末転倒だろうと思います。むしろ,同じ言葉を使い続けることによって,解釈がゆがむ可能性もあるだろうと思います。その意味では,この表現を使うことに反対したいと思います。 ○鎌田部会長 事務当局からコメントはありますか。 ○金関係官 表題を「反対給付の履行拒絶」としていた当時から,部会資料の説明の部分では,危険負担による履行拒絶といった表現を使ったりしておりましたけれども,事務局の理解としましては,危険負担の効果が反対給付債務の消滅なのか,反対給付債務の履行を拒絶できることなのかという効果の違いはあっても,しかしそういう効果が生じる場面設定の問題として,その場面を危険負担と呼ぶことにはそれほど問題がないのではないかと考えております。今回の改正は,危険負担の効果の部分について,反対給付債務の消滅から反対給付債務のいわゆる履行拒絶権に改める,すなわち契約の解除の要件として帰責事由を不要とすることに伴い解除と危険負担の両制度の効果の重複を避ける観点から危険負担の効果をそのように改めておりますけれども,しかし危険負担という制度それ自体を抜本的に改めるとか,制度そのものの名称を変更するほどの改正をするというものではないと理解しております。 ○鎌田部会長 ほかの御意見はよろしいですか。   では,「第15 債権者代位権」及び「第16 詐害行為取消権」について御審議いただきます。御自由に御発言ください。 ○中田委員 424条の表現ぶりなんですけれども,現在の受益者が債権者を害すべき事実を知らなかったときを,今回,その行為のときにおいて債権者を害することを知らなかったときに改めました。これについては第96回会議で混乱が生じないか,更に慎重に検討をお願いしたところでございますが,その御検討の結果,そのまま維持するということになったのだと理解しております。そこで,確認をしたいんですけれども,424条1項のただし書なんですけれども,その行為によって利益を受けた者がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときという表現の二つ目の「その行為の時」というのは何を指すのかということと,それから,債権者を害することというのは何が債権者を害するという趣旨なのか,この2点について御説明いただければと思います。 ○金関係官 まず,「その行為の時」というのは,詐害行為の時,つまり取消しの対象となる行為の時を指すと理解しております。次に,何が債権者を害するのかという点につきましては,正にその取消しの対象となる行為が債権者を害するという理解をしておりまして,ひょっとすると御質問の意図に答えていないかもしれませんけれども,文言としてはそういう意味で用いております。この改正点は,「害すべき事実」という表現を「害すること」に改めることで何か条文の意味内容等に変更を加えようとする趣旨ではありませんので,そういう前提で御理解いただければと思っております。 ○中田委員 趣旨が確認できれば,これ以上,申し上げることはやめますけれども,そうしますとただし書にその行為という言葉が2回出てきますけれども,これは同じ内容であるということですね。 ○金関係官 はい。 ○中田委員 二つ目の「その行為の時」というのは直前に利益を受けた者というのが出ますので,受益者の行為と間違って読んでしまう可能性もあると思うんですけれども,今の点がそういう趣旨なんだということを明確に解説などでお示しいただくことが必要かと思います。 ○松岡委員 申し上げたいのは「債権者代位権」について部会資料16ページの「7 訴えによる債権者代位権の行使」の言葉遣いの問題です。案は,1のところで被代位権利を債務者に属する権利と定義して,以下の債権者代位権のところでは全部,被代位権利に置き換えています。表現を簡単にする意味で大変結構ですが,7の個所で「債権者は,訴えにより被代位権利を行使したときは」と表現されることにはたいへん違和感があります。この規律の趣旨は,訴えを起こしたときに告知せよということではないかと思います。つまり,訴えを起こした者が実際に被代位権利を行使できるかどうかは分からず,審理の結果,被保全権利がなければ訴えは却下されます。権利があるかないかは,訴訟告知をした結果,債務者の補助参加等によって初めて分かる場合もあるわけで,「被代位権利を行使したときは」と表現することには問題があると思います。詐害行為取消権における訴訟告知がどう規律されているかと見てみますと,部会資料19ページの7の(4)では「債権者は,詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは」と表現されております。そうすると,債権者代位権の行使についても同じような表現を採る方がより正確ではないかと感じるのですが,いかがでしょうか。 ○金関係官 表現を合わせることについては検討いたします。念のため,表現が異なっている理由だけ説明いたしますと,詐害行為取消権は訴えの提起しか行使の方法がない,他方で債権者代位権は訴えの提起以外の方法でも行使することができるということを前提に案文を作成した結果として,専ら表現ぶりだけのことではありますけれども,このような差異が生じているということです。ただ,債権者代位権の場合においても,訴訟告知が必要なのは訴えを提起した場面のみですので,そこは表現ぶりを合わせる可能性はもちろんあると思います。改めて検討させていただきたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがですか。よろしければ「第17 多数当事者」と「第18 保証債務に」について御審議いただきたいと思います。御自由に御発言ください。 ○松岡委員 質問させていただきたいことが「詐害行為取消権」の個所で残っておりました。転得者に対する金銭の支払請求が要綱仮案には入っていたところ,それが確か脱落していたように思います。理由の想像はできますが,勝手に想像するよりは御説明いただいた方がよろしいかと思って質問します。場所は分かりますか。 ○金関係官 恐らく部会資料84-1の20ページの9(1)のところで,取消債権者の受益者又は転得者に対する直接の引渡請求の論点だと思いますけれども,従前の案では,受益者に対しても転得者に対しても,金銭の支払又は動産の引渡しを求めることができるという表現を用いていたのに対して,今回の案では,受益者に対しては金銭の支払又は動産の引渡しを求めることができるという表現,転得者に対しては動産の引渡しを求めることができるという表現を用いておりますので,その点についての御質問ではないかと思います。   それを前提に申しますと,そのように変更をした趣旨としては,金銭というのは転々譲渡されることはないという理解,もちろん金銭でも特定の動産として扱われる場合がありますけれども,そうではない金銭は転々譲渡されることはなくて,転々譲渡されるのは常に特定のものであるという理解を前提として,そのような特定のものが債務者から転々譲渡された場合における二番目以降の取得者のことを転得者と呼ぶという整理をしますと,転得者に対して金銭の支払を求める場合というのは,価額償還請求の場合しかないということになると思います。そうしますと,価額償還請求の場合については9(2)のところで独自の規律を置いておりますので,価額償還請求の場面を除きますと,9(1)のところでは転得者に対して金銭の支払を求める場面は存在しないことになります。以上の整理を前提として,転得者に対しては,金銭の支払又は動産の引渡しではなくて,動産の引渡しを求めることができるという表現を用いることにしました。 ○松岡委員 ありがとうございました。大体,考えたとおりでございます。 ○潮見幹事 私の方は多分,決してかなえてくれないようなことを発言するということになると思うのですが,「多数当事者」のところです。中身というよりは規定の編成の方で読みにくい,頭に入りにくい。不可分債権が最初にきて,連帯債権の規定,性質上不可分である場合について一定の場合に準用,それから,不可分債務についても連帯債務の規定を準用とある。従来,この部会のところで議論していた要綱仮案に至るまで,あるいは要綱仮案,それから,今回の原案についても連帯債務があり,不可分債務があり,連帯債権があり,不可分債権があるという,こういうスタイルであえて言うなら,こちらの方がものすごく分かりやすいような感じがいたします。   もちろん,款が変わるとか,あるいは条文番号が若干変なところにいってしまうなんていうことで,そっちの方で分かりにくくなる人が,従来の民法典に慣れ親しんだ方には多いであろうということもあろうかと思うのですが,これから先のことを考えた場合に実務もそうですし,教育もそうですし,あるいは外国に対する発信というのもそうでしょうけれども,そのようなことをいろいろ考慮した場合に,この部分について編成を現在の規定に合わせて立てるということが本当にベストの選択なのか,あるいはベターな選択なのかということについて私自身は若干疑問を感じるところがございます。決して受け入れてはいただけないと思いますけれども,しかし,こういうことも考えている人間がいるということだけは記録にとどめておきたいと思います。 ○山野目幹事 保証の第18,部会資料84-1で申しますと29ページの一番下のところです。第18の6の(3),いわゆる経営者の概念を問題にするアの号の最後のところに残っております,「又はこれらに準ずる者」という概念がどのような具体的な想定のものであるかということを,資料作成の趣旨をお教えいただければ有り難いと考えます。 ○脇村関係官 趣旨といたしましては,特殊法人も含めますと名称等がなかなかいろいろございますので,ここで言いたかったのは正にここで言う理事とか取締役,執行役,名前は違えども,そういった役割を果たしている者についてくみ取りたいということでございます。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○道垣内幹事 順序が先後しまして誠に申し訳ないのですが,「詐害行為取消権」についての発言です。先ほど,中田委員から,「債権者を害すべき事実」というのを「債権者を害すること」と変えたことにはどういう意味があるのかという質問が出まして,それに対して,あまり意味はないと,変わらないということで,「その行為のとき」というのはそういう意味だというふうなことで,それはそれで結構です。しかし,日本語の問題として,それが転得者のところに及びますとますます分からない,分かりにくいと思います。   第16の6,部会資料84-1ですと19ページの上から4行目ですが,「その転得者が,転得の当時,債務者かした行為が債権者を害することを知っていたとき」という文言であり,要綱仮案のときには「債務者がした行為について」となっていたのを「債務者がした行為が」に直されたということなんですが,理屈上どうなるべきかということと切り離して,これを読みますと,転得の当時に害するという意味だと説明したくなる文だと思います。私は,要綱仮案において,「ついて」になっていることによって,誤読の可能性は若干緩和されていたような気がしますし,また,「害すべき事実」という現行の条文は,事実というのが債務者の行為の時点における一つの塊みたいなものを表すので,その当時のその事実がどういう意味を持っていたのかということを知っていたというふうに読みやすかったのだと思います。   しかるに,「転得の当時,債務者がした行為が害することを知っていたとき」としてしまうと,日本語としては転得の当時に害するかどうかということではないかという気がします。要綱案としてはこれで仕方がないかもしれませんけれども,それを条文に起こす際に,なお,もう少し分かりやすくなるように御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですね。ほかの御意見はいかがですか。   次に,「第19 債権譲渡」から……。 ○中田委員 すみません,保証なんですけれども,これも前回の会議で御質問したことなんですけれども,個人保証に公正証書の要求をすることについて,裁判上の和解や調停の場合には不要とするべきではないかということを申し上げました。御検討いただけるということでしたけれども,いかがでしょうか。最終的には整備法で対処するということでしょうか。 ○村松幹事 今の御指摘の点についても検討いたしましたけれども,最終的には特に特例を設けることとはしないという対処をしようかと考えております。確かに裁判上の和解を行うような場合に裁判官が真意をある程度,確認するということは行われるとは思うんですけれども,それと公証人のところでの意思確認というものを今回,厳密に行おうということにしておりますけれども,同じかというと必ずしも制度的には同視するのは難しい部分があるだろうということもあり,今回の制度趣旨も鑑みまして裁判上の和解をする場合には,事前にそういったことをやっていただくという整理でいくのがよいのではないかと考えております。 ○中田委員 趣旨は理解しました。ここから先はそれで実際上の支障がないかどうかということで,私にはよくわかりませんけれども,何となく混乱が生じそうだなという気がいたしますが,もしそういうことであれば裁判上の和解をしたけれども,公正証書がなかったので効力がないというような事態が起こらないように,様々な方法で周知する必要があると思います。 ○村松幹事 周知に関してはおっしゃるとおりですので,しっかりやってまいりたいと思います。裁判官ですのでそこは大丈夫だと思います。 ○鎌田部会長 ほかによろしいですか。 ○中井委員 人の発言を聞いて気になってという繰り返しですが,先ほどの山野目幹事の質問に対して関係官が答えられた「個人保証の制限の例外」の経営者のアの概念,これに準ずる者について,重複になって申し訳ございませんが,ここの理解は法人のうち必ずしも理事,取締役,執行役と,こういう名前の付いた者がいない他の法人,こういうものについてそこでの代表者,たとえば政党がどういう法人組織になっているのか分かりませんけれども,そこで仮に総裁という方がいらっしゃったら,その総裁がこれに準ずる者だという理解をしています。   その反面,例えば会社でいうならば執行役員がいて,執行役員は場合によっては取締役以上に会社の実情をすべからく知っていることもあるわけですけれども,執行役員はもちろん入らない。つまり,法人の縦についての拡張として準ずる者はあるけれども,法人の理事や取締役を横に拡大する意味では,決してないということを念のために確認しておきたいのです。そういう理解でよろしいでしょうか。 ○村松幹事 おっしゃるとおりでして,ここで挙げている理事,取締役,執行役はいずれも法令上,業務執行権限を持つものとされておりますけれども,そういった者はほかの法人形態では別の名前で呼ばれることがあるのでそういうものを入れる。逆に言いますと,例えば株式会社についての執行役員であるとか,こういった地位を与えられていないという者については入らないという整理でございます。 ○中井委員 ありがとうございます。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。では,「第19 債権譲渡」から「第22 契約上の地位の移転」までについて御意見をお伺いいたします。 ○潮見幹事 今回の原案のところで随所に対抗要件具備時という言葉が使われております。実際には最初に出てくるのは「将来債権譲渡」,33ページの2の(2)のところでして,いわゆる元の仮案では権利行使要件とされていたもので,債務者対抗要件を指すものとして捉えられていたものですけれども,これが単純に対抗要件具備時という形に略称され,以降,これが正に権利行使要件を指すものとして使われています。   御案内のとおり,債権譲渡の場合には普通一般の言い方をすれば,債務者に対する対抗要件と第三者に対する対抗要件というものがあって,それは別のものであり,質も違うと考えられています。そういう場面でこれを対抗要件具備時という形で,いわゆる権利行使要件というものを置き換えて説明するということは,現在の債権譲渡のシステムとも違うし,誤解も招くのではないかということをものすごく危惧しております。この略称については強く再考をお願いしたいところです。権利行使要件という言葉を使ってくださいとは申しません。しかし,このままの形では私は賛成できないということを強く申し上げたいと思います。 ○鎌田部会長 事務当局からコメントはございますか。 ○村松幹事 恐らく今,おっしゃったのは略称の点だろうと思います。確かに分かりにくいということもありつつ,案文の方を見ていただきますと,実は対抗要件具備時というものの定義としては467条の規定による通知,あるいは467条の規定による承諾という言葉を受けて,このような表現になっております。それで,権利行使要件としての467条1項を指すような場合に関しても,債権譲渡特例法等では467条全体といいますか,467条の規定によるというような言い方で,ここを表現するというのが既存の法令で使われております。その関係で,案文としてはそういう467条の規定による通知あるいは承諾というものを受け,それをある意味,総称した形で書いてしまったものですから,対抗要件具備時ということでそろえたということになってございます。   ただ,この点はその意味で既存の法令の表現を参照するとそうなるという問題であり,それが非常に分かりにくいのではないかという御指摘は分かるところではございまして,民法で表現を改めれば他の法令を直しにいかなくてはいけないというふうなところがあり,どうしようかなというところで正直に申し上げて,こちらでも悩んだところではありました。御指摘を踏まえてまた検討させていただきたいと思います。 ○中田委員 今の点の実質の確認なんですけれども,対抗要件具備とだけあって467条一般ということは,債務者対抗要件か第三者対抗要件かを問わないということなんでしょうか。 ○村松幹事 つまり,債務者対抗要件で足りるということで理解されているんだと思います。 ○中田委員 そうしますと,動産債権譲渡特例法で第三者対抗要件のみが備えられた場合にどうなるのでしょうか。その後の譲渡制限の意思表示は効力を有しないことになるのか,ならないのか,これは実質の問題だと思うんですけれども。 ○村松幹事 その点は譲渡特例法の方でまた別途,規定を整備することになろうかと思っております。 ○松岡委員 再検討していただけるという御回答があったので,あえてもう一回言わなくてもいいかもしれませんが,私も,今お二人から御発言があったとおり,ここは非常に問題があると感じました。このままですと,467条全体に対抗要件という制度の名前が付されていて,確定日付のある証書による通知又は承諾をしないと,抗弁切断の効果が生じないかのような誤読が生じやすいという気がいたします。私は,動産債権譲渡特例法4条3項をなるべく修正せずに,民法を改正するだけにとどめたいという御趣旨なのかと思いましたが,実質的な影響が大きすぎるような気がしますので,是非ともここは改めていただきたいと希望いたします。 ○道垣内幹事 よく分からないところもあるんですが,先ほど村松幹事がおっしゃった場面,すなわち,第三者対抗要件だけが動産債権譲渡特例法によって具備されたときにの後に譲渡制限の意思表示がされたときというのは,動産債権譲渡特例法の問題なのでしょうか。関係法令として整備されるということの意味がよく分からなかったのです。それは466条の6の3項というか,要綱案の19の2において,まだ,債務者が知らないうちに譲渡の対抗要件が備えられているけれども,その時点で譲渡制限の意思表示をしたときに,債務者は対抗要件具備をまだ知らなかったのだから保護するか,それとも,ここは諦めてもらうかという話なのではないでしょうか。そうすると,民法の解釈として解決されるか,民法の条文として規定され,解決されるか,という問題のような気もしますが。 ○村松幹事 私も頭が混乱しているような気がいたしますが……。 ○山野目幹事 内容のことと表現のこととについて感ずるところを意見として述べさせていただきます。   内容の方から申し上げますと,中田委員が問題提起をされた論点,つまり債務者対抗要件が備わっていないけれども,第三者対抗要件が備わる場合の規律の実質的内容がどうなるかということは,債権譲渡の対抗要件に関する特例を定めている法令の中に手続規定に加えて実体規定もあるところであり,その実体規定について今般の民法の改正に合わせて見直しが恐らく避けられないであろうと思われますから,そこで手当をしていただくことになるのではないかと私は理解していました。内容の点です。   それから,表現の点ですけれども,村松幹事がおっしゃったこと,つまり他の法令での既存の表現との関係で,対抗要件具備時という言葉をお使いになったという御苦労というか,経過は理解いたしましたけれども,いずれにせよ債権譲渡登記に関する法令の整備をするのであれば,そちらも含めて分かりやすい表現にしていただくことがよろしいものではないでしょうか。   自分が教育の場面に立たされたときのことを想像すると,対抗要件というものは債権譲渡のときに2種類あるけれども,言わば本質的な意味での対抗要件は対第三者対抗要件であって,債務者対抗要件と異質であるというふうなことを今までも講じてきたし,これからも講じなければいけませんですが,ここで対抗要件具備時という言葉を使われると,潮見幹事がおっしゃったような意味でのすごく困った言い回しというか,説明をしなければならなくなります。分かりにくいということは確かですが,という御発言ですが,分かりにくいのではなくて有害ではないかと感ずる部分もございますから,是非,債権譲渡の対抗要件の特例に関する法令の準備をなさる担当官に御苦労を一つ増やすことになると思いますけれども,どうせするのならしていただきたいというお願いです。 ○松尾関係官 先ほど村松から申し上げたとおり,略称の問題は別途,また,御意見を踏まえて考えたいと思いますが,略称とは別の問題がございまして,現在の要綱案は,2の(2)で,譲渡人が3の規定による通知をし,又は債務者が3の規定による承諾をしたときと書いてあります。ここでは3の規定と書いてあるので,第467条第1項だけを指しているので,ここが誤解を招いていると思われるところはあるんですけれども,条文案では467条全体を受けて,要するに467条の規定による通知,又は467条の規定による承諾をしたときというふうな書き方をしようと思っているところです。略称を債務者対抗要件とすべきであるという御指摘は,この前提として,規定振りそのものも修正した方がよいという御意見になるのでしょうか。そういう御意見だとすると,今も468条では,前条の承諾という表現となっていまして,これは要するに467条の承諾という言葉になっております。これを直さないといけないということも含めて御意見を頂いているのかというのがまだよく分かっていないのですけれども。 ○山野目幹事 松尾関係官がおっしゃったことをきちんと理解して申し上げることができるかどうか分かりませんが,現在までの要綱仮案の3のところは,467条1項を次のように改めるとなっていて,それを前提にその上の2(2)のところが3の規定による通知,承諾とありますから,確定日付のある証書は要らないという理解で今まできたのではないかと思います。そのような理解がより平易に表現されるように,対抗要件具備時という表現はやめていただきたいという議論をしていると理解していました。松尾関係官が後半でおっしゃったような仕方で,つまり現行法のほかの部分が467の1項と2項を区別しないで,包括的に引用表記等をしていることまで,全部,見直さなければいけないかという問題については,そのようなことまで求めている趣旨の議論がされてきたものではないであろうと理解しています。 ○松尾関係官 御指摘はよく分かりましたので,それを踏まえてもう一度,検討したいと思います。 ○鎌田部会長 よろしくお願いします。   ほかにはよろしいですか。 ○大村幹事 先ほど違うところで潮見さんがおっしゃった「契約上の地位の移転」の場所の問題ですけれども,潮見さんの発言に同調いたします。契約総則にこれを置くことが望ましいのだという積極的な意見があればむしろ伺いたいと思います。私が申し上げているのは委員・幹事の中でということです。 ○鎌田部会長 事務当局の考え方は先ほど説明があったところですが,委員・幹事の間に事務当局の説明に同調する意見がないと……。 ○村松幹事 同調する意見がなければ逆にコンセンサスがあるということになりそうなんですが,さはさりながら,形式的に見れば契約に置けばいいではないかと,法制的な観点からは言われてしまいそうなところがあり,よく理論武装をすべく御相談させていただければと思います。 ○道垣内幹事 事務当局の見解に賛成をするというわけではないですが,「契約上の地位の移転」の規律を,仮に債権譲渡及び債務引受の次に移すとなったとしたときに,村松幹事がおっしゃったように,債権譲渡の流れとして契約上の地位の移転を考える考え方と,そうでない考え方とがあり得るというときに,どちらに置く方がより性質を決めつけている感じがしないかを考えて,債務引受の後に置きましたという説明をすべきだろうと思うのです。つまり,私は歴史的な今までの議論の由来等で債権譲渡,債務引受と並んで考えられているというふうなこと自体には賛成しませんが,しかし,場所を移すということになったとしても,別にそれに対して文句を言うつもりはありません。それはどうしてかというと,性質決定をニュートラルにするためには,今までの理論とか,他の国ないしはモデル法とかに合わせていることがニュートラルな感じになっているのだと考えるからでして,検討の結果,債権譲渡,債務引受,契約上の地位の移転の三つは並ぶものであると考えて,それで移すというのならば,私は,事務局原案を維持してくれと言いたくなります。 ○鎌田部会長 ほかの御意見はよろしいですか。 ○松岡委員 この問題ですか,別の箇所でも良いですか。 ○鎌田部会長 別の箇所でも。 ○松岡委員 「債権譲渡」の1の(4)及び(5),特に(4)に係るところです。前回の第96回会議で確か沖野幹事が御指摘になったと思うのですが,案では強制執行と限定しているけれどもそれで良いかという問題です。つまり,約定担保が譲渡制限によって制約を受けるのはいたし方ないですが,法定担保,とりわけ先取特権の実行に対しても譲渡制限を対抗できるように読めてしまいます。そういう御指摘がありました。解釈で対応するという御趣旨かもしれませんけれども,譲渡制限の効力が及ばない例外を定めるという理解によりますと,例外規定は限定的に解釈することになるおそれがかなり高くなります。先取特権の実行については譲渡制限によって制限されてもやむを得ないのでしょうか。 ○鎌田部会長 事務当局からコメントをお願いします。 ○松尾関係官 御指摘のような意見を踏まえて検討したのですけれども,確かに法定担保権の実行について全て特約を対抗されるという結論がよいのかという点には疑問があると思うんですけれども,法定担保権の実行について特約を対抗することができないと書いて果たしてよいのかという問題があって,例えば物上代位によって履行を請求した場合に特約を対抗することができるのかとか,そういった問題も含めて考えると,結局,厳密に書き切ることは難しいのではないかと考えております。そうすると,特約を対抗することができない例外の場合を広く取りすぎるのはよろしくないのではないかと考えられますので,現在,判例で特約を対抗することができなくなると明示的に言われているところだけをまずは明文化し,あとは解釈に委ねざるを得ないと考えた次第です。 ○鎌田部会長 ほかの御意見は。 ○中田委員 先ほどの「契約上の地位の移転」なんですけれども,私は両方あり得るとは思うんですが,先ほど潮見幹事がおっしゃったようなモデル草案ですとか,あるいは外国の立法提案とかを見ていますと,債権譲渡と債務引受の次にくるのが自然だなという感じがいたします。ただ,それは結局は債権総則と契約法との関係をどう編成するのかということに関わることであって,モデル草案が必ずしも日本と同じような仕切りをしているのではないと思いますので,日本民法の現在の構成を前提とした上で,なお,こちらがいいということを,先ほど理論武装とおっしゃいましたけれども,より説得力のあるような形で御説明していただくのがよろしいのではないかと思います。 ○中井委員 戻って申し訳ないのですが,「将来債権譲渡」の(2)の規律で,ここの表現については皆さんで御検討いただくとして,先ほどのやり取りの中でこれも村松幹事が譲渡特例法で第三者対抗要件のみが付された場合について言及されました。ここの規律は債務者に通知するか,承諾した,これを起点にして,その後にした合意は駄目ですよ,その前の合意だったら全て対抗を認めますよという,こういう簡単な規律になっているわけですけれども,特例法で第三者対抗要件のみ備わった場合に,そちらで手当てするとおっしゃられたように思うのです。その手当というのは,第三者対抗要件を備えても駄目だ,債務者対抗要件が必要だ,という結論になるという理解でよろしいでしょうか。その確認だけをさせていただきたいと思います。 ○松尾関係官 今,検討しているところでは現在の特例法の4条3項と同じような規定を設けることを考えております。つまり,第三者対抗要件を備えただけではこの規定は発動しなくて,債務者対抗要件まで具備してくださいという規定を設けることを考えています。 ○岡委員 単なる質問でございますが,84-3の4ページの譲渡制限意思表示の供託のところの括弧書きでございます。債務の履行地(履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては譲渡人の現在の住所を含む)と,全く当たり前のように思うんですが,ほかでも括弧して何々を含むというのがちょこちょこ出てきますが,ほかの場面は念のために書いたら分かりやすいなと思ったんですが,この部分は全く当たり前のように思うんですが,なぜ,これを書いているんでしょうか。 ○松尾関係官 今回の改正で譲渡制限の意思表示が付いていても,債権が完全に移転するという建前を採っているので,債権者は形式的には譲受人になってしまい,譲渡人は債権者ではないのではないかという疑義があり得るので,債権者そのものではないといえる譲渡人の住所地の供託所も含まれますよと規定することには,意味があるのではないかと考えたということです。 ○鎌田部会長 よろしいですね。  ほかにはいかがですか。よろしければ,次に「第23 弁済」から「第25 更改」までについて御審議いただきます。御自由に御発言ください。 ○沖野幹事 「弁済による代位」のところですけれども,10の「弁済による代位」の要件のところでして,仮案を見直していただいたのはよろしいかとは思うんですけれども,500条はそのまま維持されるということになりますと,関係が非常に分かりにくいのではないかと思われます。どこを引いたらいいのか,条文案を見ていただいた方がよろしいのかもしれません。84-2の86ページなんですけれども,499条1項を改められて弁済をした者は債権者に代位するとなっていまして,弁済をするについて正当な利益を有する者は,弁済によって当然に債権者に代位するという,これが全く重複しているのではないかと思われます。   現行法は499条1項にかなりの限定が付いていましたので,その限定を外すということで「当然に」に意味があったんですけれども,今の形ですと499条2項を外すところに意味があるのではないかと思われまして,前回,確か御議論があったときには499条2項のところを500条を入れる形で制限すれば足りるのではないかというような御指摘があったかと思います。そういうような形にする方が疑義がないのではないでしょうか。それが1点目です。   もう1点は「弁済による代位」の効果のところで,第三取得者について新たに加えられたみなし規定ですけれども,条文案でいきますと88ページの501条3項5号です。第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は,第三取得者と見なしてということで転得者に対応するということなんですけれども,債務者からの転々譲渡の場合ですが,二つありまして一つはこれを第三取得者とみなすという整理が適切なのかということで,物上保証人から譲り受けた者を物上保証人とみなすというのはみなすという感じがするのですけれども,むしろ,第三取得者に含むようなというか,元々,第三取得者の概念に通常は包摂されるような話ではなかろうかとも思われます。   それから,転々譲渡ということを考えると,更なる譲受人ということも登場しますので,そういうことを考えるならば表現だけの問題ではありますけれども,むしろ,3項1号の括弧書きの中に債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者,又はその者から順次譲り受けた者をいうとか,又は特定承継人をいうとか,あるいはその者から順次譲り受けた者あるいは特定承継人を含むなどの形にする方がより適切ではないかと思います。これは表現だけの問題です。 ○松尾関係官 まず,1点目で御指摘を頂いた500条を維持したことによって重複感があるのではないかというのは,おっしゃるような御指摘はあり得るのかなとは思いますが,できる限り,現行法の形を生かしつつ改正するということを考えると,このような整理もあり得るのではないかと考えた次第です。現在も500条によって,先ほど御指摘があった499条1項の債権者の承諾を不要とするだけでなく,2項の対抗要件も不要としているということになると思いますので,500条は現状を維持するということも整理としてはあり得るのではないかと考えたということです。   もう一つ,2点目で第三取得者に関する改正点に関して御指摘を頂いた点ですが,確かに第三取得者からの譲受人は第三取得者ではないかとも一般的にはそうだと思うのですけれども,今回は第三取得者の定義について債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいうと書いていることとの関係で,債務者以外の者から担保目的物を譲り受けた者が第三取得者の定義に当たるかというと,形式的には当たらないことにもなりかねません。そのような定義をおくことがいいかどうかという御指摘かもしれませんが,第三取得者の意義を明確にする以上は,このようなみなし規定を置く必要があるだろうということです。   なお,その後に現れる転々取得者がどうなるのかというのを念のために御説明しておきますと,みなされた結果の第三取得者から譲り受ければ,転々取得者も,同様に,第三取得者となっていくという整理でよいのではないかなと思います。特定承継人と書くというのも,一つの考え方としてあり得るのかもしれませんけれども,そうすると一般承継人はどうなんだということもあり得るような気がしますので,このような形で5号で整理した方が,不要な反対解釈をめぐる問題なども生まない形になるのではないかと考えたということでございます。 ○道垣内幹事 二つともそうなのかなあという疑問を感じます。これは要綱仮案のときからそうなので,要綱仮案のときにきちんと発言をしていないのは問題だと言われると返す言葉もないんですが,500条における「当然に」というのは何を意味しているのかというと,これは承諾が要らないという意味だと思うのです。代位をするということと,それを対抗できるというのは別問題ですので,そうすると500条に「当然に」と書いて何で当然になのだろうか,499条1項も同じく当然にではないかという話になってくるわけであり,現行法を直さないというのは無理があるのではないでしょうか。「当然に」というのは,対抗要件が不要であるという意味ではないということは明らかであろうと思います。   「第三取得者」のことにつきましては松尾関係官も苦しそうだったので,余りしつこく言う必要もないのかもしれませんけれども,「第三取得者」はそういう言葉遣いではなかったですから,それも余りよくないのではないかなという気がします。 ○鎌田部会長 そこは検討してもらうということでいいですか。   ほかに御意見はいかがですか。 ○中田委員 「弁済」について二つあります。   一つは「第三者の弁済」について第23の2の(3)で,以前は「債権者は,その受領を拒むことができる」だったのが,今回,「債権者の意思に反して弁済をすることができない」と改められた点です。これは例えば一方的な振込みなどに対応できないからだという御説明です。それはそれで理解できるんですけれども,債権者の意思に反していたかどうかというのは,弁済をした第三者には分からないことなので,非常に不安定になるのではないか,また,後から意思に反していたと言われたりすると,ますます混乱が生じるのではないかと思います。一方的な振込みに対応できないという問題点が前の案にあることは理解できるんですけれども,今回の案についても法律関係の不安定という別の問題があるのではないか,更に検討する必要があるのではないかと思います。   それから,もう1点は「10 弁済による代位」の「(5)担保保存義務」です。前回にも発言したんですけれども,元々,504条の規定は沿革的には保証人保護という趣旨も入っている規定で,債権者側の事情と保証人など代位権者の保護の両方の要素を考える必要があると思いますし,判例もそういう立場だと思います。ところが,この案では代位権者側の面が落とされて専ら債権者側に着目した表現になっています。この表現でも保証人などの事情も読み込めるんだという御説明なんですけれども,現行法に比べるとある一面が落とされてしまったという印象があります。前回,「代位権者が正当に有すべき期待及び取引上の通念に照らして合理的な理由があると認められるとき」とする案はどうでしょうかということを申し上げまして,御検討いただけるということだったんですが,その結果と,それからこの規定で,保証人保護の観点が後退していないんだということをどうやって言えるのかについて御説明いただければと思います。 ○松尾関係官 まず,「第三者の弁済」については今回,案を修正するに当たって正に御指摘のような問題があり得るということを含めて検討いたしました。ただ,要綱案の原案でいうと,2の(2)と(3)の言葉の違いがどういう意味を持つのかという解釈問題が生ずることを考えると,ここをそろえた方がよいのではないか。他方,中田委員が御指摘になったような問題,つまり,後から弁済が意思に反していたという主張をされるリスクは確かにあり得るのですけれども,振込み以外の場面では,受領した後で,後から意思に反したといっても,その主張が認められるということはなかなかなかろうという気もいたしますので,そういったことを考えると,今回の案のように修正した方がよりよいのではないかと考えた次第です。ただ,ここはもしほかに御意見があれば承りたいと思います。   あと,10の(5)のイのところは,御指摘を踏まえて考えてみたのですけれども,結局,取引上の社会通念と並べて何を書くのかということになると,要するに取引上の社会通念の中に中田委員が御指摘になられた事情が入らないのかどうかというところの整理がなかなか難しく,そこは説明で対応させていただくほかないのかなと思います。それで,現行よりも保証人の保護が後退しないのかというところは,現在の理解を変える趣旨ではございませんということを丁寧に御説明させていただくことで,対応させていただければなと考えておるというところでございます。 ○松岡委員 私も2点ございまして,まず,第三者弁済についてです。(4)が新設されましたが,新設は474条1項ただし書を移動させただけであるという御説明です。一応,理解はできるのですけれども,この点は,余り議論しておりませんでしたので,本当にこれで大丈夫かと不安になりました。第三者弁済を禁じる特約がある場合において,弁済をするについて正当な利益を有する第三者がそういう特約を知らずに弁済に行ったところ債権者が特約について黙っていて受領したときに,第三者弁済は無効なのでしょうか。   特約とは場面が違うのかもしれませんが,正当な利益を有する者でない第三者の弁済であっても,債務者の意思に反する場合でさえ(2)では有効になるわけです。また,債権譲渡制限特約や相殺制限特約は善意・無重過失の第三者には対抗できないとして今回の改正で規律を揃えます。これらと第三者弁済にずれが生じてくるように思います。今更申し上げてもしようがないのかもしれませんが,(4)の規律を設けるということで,弁済としては無効なのか,それとも,ここもまだ引き続き解釈論に委ねられる余地があるのか,その辺りが不安になっておりますので,御説明をお願いします。これが1点目です。   もう1点,申し上げますと483条の「弁済の方法」のところです。これは御確認いただきたいだけです。前回の第96回会議でもこれに関しては多少の議論がありまして結着済の話かもしれませんが,法律行為の無効・取消しの場合において,受領した給付が後で両当事者の責めに帰すべき事由なくして滅失・損傷したときはどうなりますか。債権の発生原因及び別のところに規定がある原状回復義務によって給付受領時を基準として現物又はその価額で返還するべきだと債務内容が決まっていて,本条によって滅失・損傷した現状で返せば足りることにはならないと思います。483条の新たな書きぶりが契約その他の債権の発生原因としたことで,その点が明らかになると理解してよろしいでしょうか。これは御確認を頂きたいだけです。 ○金関係官 先に後半の御確認とおっしゃった点についてですけれども,法律行為の無効又は取消しの場合については,部会資料84-1の第5の1に独自の規律を置いておりますので,その規律が適用されると整理しております。その第5の1の(1)では,給付受領者には原状回復義務があるとされていますので,正に原状の回復,滅失又は損傷した現在の状態で返せば足りるのではなくて,その場合には価額で償還する義務があるという理解をしております。 ○松尾関係官 第三者弁済について御質問いただいた点ですけれども,正当な利益を有する者についても第三者弁済禁止の意思表示があったときにどうなるのかというのは,現在でもその弁済は無効になるのではないかという理解をしており,今一応,我妻先生の本なども見てみたところ,そういう趣旨であるようですので,これを維持する趣旨で案文を作成しておりました。確かに御指摘のように相殺禁止の意思表示とか,譲渡制限の意思表示とルールの内容にずれがあるということかもしれませんが,それは現在もある問題ですし,そこを積極的に正しにいく必要性まではないのではないかと考えておるということです。 ○鎌田部会長 よろしいでしょうか。ほかにはいかがですか。   それでは,「第26 契約に関する基本原則」から「第29 第三者のためにする契約」までについて御審議を頂きたいと思います。御自由に御発言ください。 ○安永委員 まず,意見書を出させていただいておりますが,訂正があります。「第29 第三者のためにする契約」の1の部分に対する意見のような記述になっておりますが,これは2の方に対する意見ということでお受け止めを頂けたらと思います。訂正をよろしくお願いいたします。   この「第三者のためにする契約」ですが,第三者のためにする契約について,まず従来の条項を改訂する意図に関して,任意規定としての条項の整備であって,強行規定としての条項を設けるというものではないということを確認したいと思います。その上で,第三者のためにする契約は労働分野では少なからず使われておりますので,その内容について御紹介をしながら意見を申し上げたいと思います。   例えば事業所内で労働組合の組織率が75%に届いていない状況で,労働組合法第17条による工場,事業場内での労働協約の拡張適用ができない場合でも,職場内の労働者に適用される最低賃金を定める労働協約を締結することがございます。これは労働組合と使用者が締結する契約ではありますが,その適用対象は組合員だけではありません。むしろ,パートとか,有期契約社員などの第三者である非組合員のためにする契約であることの方が多いのが実体です。   もしも今回,提起されている条項について強行規定であるという解釈がなされ,適用対象労働者の同意を得なければ契約解除ができないということになりますと,労働協約の形式を採る契約での職場内最低賃金を定めたりしますと,不特定多数の適用対象者全員の同意を得なければ契約解除ができなくなるということになりまして,契約の硬直性が高くなることが考えられます。そのために契約を新たに締結することを躊躇せざるを得なくなるといったようなことにもなりまして,結果として現行の制度を維持するのが困難になるのではないかと危惧を致しております。このため,当該条項につきましては,任意規定であって強行規定ではないことについて誤解が生じないように,部会資料83の文言に戻した方がよいのではないかと考えます。 ○鎌田部会長 その点についてのコメントをお願いします。 ○筒井幹事 安永委員の御発言の点について,事前にお問い合わせていただいたときには任意規定である,強行規定に変える趣旨ではないと回答しておりまして,本日はその確認を求められているのだと思いますけれども,結論として,御心配されているような設例については御心配いただく必要はないだろうと思っております。ただ,そこで問題となっていることが第三者のための契約という位置付けで議論されるべきものなのかどうかという点,それから,第三者のためにする契約が任意規定か強行規定かというときの意味内容について,もう少し考えさせていただきたいと思っておりますので,答えぶりについてはまた別途,御相談させていただければと思います。 ○鎌田部会長 ほかに御意見はございますか。   特にないようでしたら,ここで一旦,15分間の休憩を取らせていただきます。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,再開をさせていただきます。   少し順番が入れ替わるような形になりますけれども,大島委員が早めに御退席される関係で経過規定に関する御意見をお述べになってから御退席されたいということですので,御発言をお許しいただければと思います。よろしくお願いします。 ○大島委員 すみません,恐縮でございます。部会資料85の3ページですが,第3の「債権総則の規定の改正に関する経過措置」の3で,債権譲渡の規定に関する経過措置の部分で発言をしたいと思います。債権譲渡については,中小企業が債権譲渡による資金調達を行いやすい環境整備を図るという観点から,経過措置は不要なものではないかと考えております。中小企業は継続的な取引を行う際,最初に取引基本契約書を交わし,その後,個別取引については発注書や受注書をやり取りして取引を行っております。   譲渡制限の意思表示については,最初に交わす取引基本契約の中に記載されていることが多いようです。この取引基本契約は取引が継続している間は有効であることが通常です。仮に御提案いただいた経過措置を置くとすれば,現在の債権譲渡禁止特約の効果が実質的に永続化し,このような取引基本契約を交わしている中小企業が債権譲渡による資金調達を行う際の障害になることが想定されます。そこで,譲渡制限の意思表示については特に経過措置を置かないでいただきたいと思います。 ○鎌田部会長 特にコメントあるいは関連の御発言はございますか。 ○中原委員 大島委員が発言された点の問題意識は,銀行界も同様に有しています。銀行界としても流動化を促進するためには,少なくとも施行日以降に新規に発生した債権については,新法による譲渡制限の意思表示の効果が及ぶようにしていただきたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかに関連の御発言はございますか。 ○佐成委員 内部で今回議論をしたということではないんですが,お寄せいただいた意見の中にはこの御提案どおりの考え方を支持する意見が複数あったということはお伝えしたいと思います。 ○鎌田部会長 事務当局からどうですか。 ○村松幹事 今,問題になっております譲渡禁止特約の経過措置に関しましては,確かに立法趣旨をより強めようということにいたしますと,経過措置を置かないとおっしゃいましたけれども,ある意味,あるいは債権が発生したタイミングで新法と旧法を切り替える。施行日後に発生した債権については新法適用するということにいたしますと,かなり広い範囲で新法が適用されて,結果的に流動化が促進されるという側面があるのは確かでございます。   他方で,そのことはある程度認識しつつ,現段階の整理ではむしろ譲渡制限の特約時だというような整理にいたしましたのは,ある意味,今回の経過措置の定め方全般に通ずる考え方ですけれども,基本的には新しい法律は合理的なものであるとはいえ,既存の法律関係に対して影響を与えるということ,特に当事者が契約をした場合が典型ですけれども,その契約関係に介入していくのはそう簡単にはできないよというのが一般的に理解されているところでございまして,そういった関係で全般的に例えば契約に関する規定については,契約締結時を基準といたしますというような規律を設けておりますけれども,譲渡禁止特約についても単純に今,申し上げたような考え方を当てはめると,恐らくは譲渡禁止特約時というのが一つあり得る回答だということになろうかと思います。   ただ,とはいえ,新法の適用範囲を若干広げるということがおよそ難しいのかといいますと,その辺りはある意味,ここでいえば債務者に与える負担の大きさがどの程度,軽減されるような形で新法もルールが作られているのかといったような辺りが考慮された上で,最終的にどうするのかというところを考えなければならないということでございまして,そういったところでどういった御意見が出るのかというところは,正に今日,知りたいというところでございましたけれども,その意味では賛否両方ありましたので,もう少し実務に与える影響等も含めて丁寧に見て,最終的にどのような経過措置のするのかというのは考える必要があると認識いたしました。 ○鎌田部会長 関連する御発言は。 ○中田委員 今の点に関連するんですけれども,取引基本契約書に譲渡制限特約がある場合に,その基本契約書は2年とかで更新されるということがあると思うんですけれども,その場合についてはどうお考えでしょうか。と申しますのは,4ページで,賃貸借の更新については更新があった場合には新法が適用されるとなっていて,借地借家法の附則6条とはあえて異なる規律を提案しておられます。それとの関係で契約の更新をどう考えるのか,お考えをお聞かせください。 ○村松幹事 更新あるいは延長的な取扱いと,恐らく譲渡禁止特約に関しても基本契約の方である意味,変更があった場合にどう取り扱うのかということが問題になると思っておりまして,ただ,今回は経過措置が問題になっており,経過措置の趣旨からいえばどういう法律が適用されるか,予測した状態で正に契約の延長なり,変更なりをすると,あるいは更新をするということであるとすれば,そこでは新しい法律が適用されるんだという理解は十分あり得るのではないかなとは考えております。更新等が問題になる類型はいろいろありますので,あるいは個別の趣旨に応じてという部分があるかもしれませんけれども,譲渡禁止特約に関していえば,今,申し上げたように,更新等をすればその時点で新たな合意されているということを重視して,新法が適用されると理解すればよいのではないかと考えておりました。 ○鎌田部会長 ほかに関連した御意見がありましたらお出しください。よろしいですか。   それでは,元の順番に戻ります。「第30 売買」及び「第31 贈与」について御審議いただきます。御自由に御発言ください。 ○山本(敬)幹事 「売買」の11の「目的物の滅失又は損傷に関する危険の移転」について御質問させていただきたいと思います。2点あるのですが,まず,1点目だけを質問させていただきます。  要綱仮案に対して,(1)で,元々,「売主の責めに帰することができない事由によって滅失し」とあったのを,「当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し」と変更しておられています。これは,買主の責めに帰することができる事由によって滅失又は損傷したときは,どうなるのでしょうか。買主の責めに帰することができる事由による場合は,追完請求等はできないのではないかと思うのですが,これでは読み取れないのではないかと思います。   説明を見ますと,第13の2「危険負担」に関するところ,ないしはその次の第14の2の表現に合わせたと書いておられるのですけれども,第13の2ですと,更に(2)で債権者の責めに帰すべき事由による場合は履行拒絶ができないという手当がされていますので,そこは明確なのですが,「売買」の11の方ではそのようなものがありませんので,不明確になってしまうのではないかと思いますが,この点はいかがでしょうか。 ○金関係官 その点につきましては,部会資料84-1の第30の3(2)のところで,買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは追完請求をすることができないという規律,それから,第30の4(3)のところで,買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは代金減額請求をすることができないという規律を置いておりまして,基本的には,この二つの規律によって,先ほど危険負担の場合には第13の2(2)の536条2項があるから大丈夫だとおっしゃったことと同様の処理がされるという整理をしております。それを前提に,第30の11のところでは,当事者双方の責めに帰することができない事由による場合のみを規律すれば足りるという整理をしております。 ○山本(敬)幹事 御趣旨は分かりましたけれども,分かりにくい規定の仕方であることは変わらないのではないでしょうか。元の「売主の責めに帰することができない事由によって滅失し,又は損傷したときは」で全く紛れがなかったものが,ほかの規定を,それも離れたところにあるものを見なければ本当の意味が分からないというのでは,困ったものだという気がいたします。しかし,それは元々の危険負担に関する規定にもあった問題がここにも現れているだけであって,この11だけの問題ではないかもしれませんが,非常に不親切な,そして誤解を呼ぶような規定の仕方ではないかという思いを禁じ得ないということを申し上げておきたいと思います。もう一度,考え直すということはできないのでしょうか。   もう1点,11についてお尋ねしたいことがあります。これはもっと前に気が付いておくべきことだったのですが,その後,分からなくなったことがありまして,ここで質問させていただければと思います。401条2項に種類債務の特定に関する規定があって,これは現行法を維持することが想定されています。401条2項によりますと,現行法の下では,種類債務が特定する,例えば債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了したときは,以後,その物が債権の目的物とされる。そうすると,特定後にその目的物が滅失すれば,引渡債務は履行不能になると今まで言われてきました。つまり,債務者は,ほかの種類物を調達して履行する義務は負わない。その意味で,給付危険が移転するという説明をしてきました。もちろん,損害賠償責任を負うかとか,解除は認められるかというのは別問題だけれども,履行請求は少なくとも拒絶できると理解してきたと思います。   その上で,この11によりますと,売主が買主に目的物を引き渡した場合は,それ以後にその目的物が滅失・損傷しても履行の追完請求等はできない。その意味で,危険は売主から買主に移転することになります。これは,目的物を引き渡す前に滅失・損傷したときは,危険はまだ買主に移転していないので,買主は売主に対して履行の追完請求等をすることができると読むのだろうと思います。   このように,引渡し前に滅失したときには,まだ危険は移転していないので,追完請求等はできるとしますと,先ほどとの関係で問題になってくるのは,種類物売買で目的物が特定した,例えば物の給付をするのに必要な行為を完了して目的物が特定した後に,それを引き渡す前に,損傷したというときに,特定しているので給付危険は移転しているのであれば,売主は履行請求がされても,特定の効果としてそれを拒絶できるはずです。少なくとも代物請求は拒絶できるはずです。しかし,この11によりますと,引渡し前に損傷しているときは,履行の追完の請求はできると読める。一体,どうなるのでしょうかということです。仮に11のルールによるのだとしますと,種類物売買で目的物が特定するということは,一体どのような意味を一体持つのだろうかということが分からなくなってきました。  このような問題が生じるのは,これまで危険の移転が語られるときには,通常,主として対価危険の移転が想定されてきたからだと思います。それに対して,11では,追完請求等が含まれていますので,それだけではなく,給付危険の移転に当たるものもカバーされています。その結果として,種類債務の特定のルールとの抵触というのかどうかわかりませんが,その関係が問われることになっているのではないかと思います。これは何らかの調整をしないと混乱するのではないかと思うのですが,私自身,どう調整すればよいかがまだ分からないまま,ここで問題提起だけをしているのは大変恐縮なのですけれども,どなたか,お知恵を拝借できないでしょうかという質問です。 ○鎌田部会長 事務当局から。 ○金関係官 種類物である目的物を売主が買主に引き渡す前,引渡しの提供をする前に目的物の特定が生じて,その後にその目的物が滅失した場合ということだと思いますけれども,その場合には,第30の11の規律を反対解釈するというより,むしろ,いわゆる履行請求権の限界についての規律,すなわち第10の1の履行が不能となった場合には履行の請求ができないという規律が適用されて,買主は履行の請求ができないという結論が導かれることになると一応考えております。 ○山本(敬)幹事 今のお答えは,要するに,特定のルールがここでは適用されて種類債務が特定するので,その後,滅失すれば履行不能になる。したがって,履行請求に対しては履行不能の抗弁が出せるという御説明だったのだろうと思います。ただ,追完請求の中でも代物請求の場合が一番分かりやすいのですけれども,それについては今,おっしゃったようなことにならないと,おそらく単純な滅失の場合との対比を考えるとおかしくなってしまうだろうと思います。しかし,損傷の場合ですと,代物請求ももちろんあり得るかもしれませんが,修補請求に当たるものも登場してくるだろうと思います。修補請求に関しても履行不能の抗弁が出せるのかというと,直ちには分からないことではないでしょうか。そして,代物請求と修補請求で区別すべきなのかどうかということも含めて,非常に悩ましい問題が生じているような気がしますが,いかがでしょうか。 ○金関係官 難しい問題ではあると思いますけれども,種類物が引渡しの前,引渡しの提供をする前に特定して,その後にその目的物が損傷したものの,その損傷については修補が可能であるというのであれば,先ほどの第10の1の規律は適用されないと整理されるのではないかと思われます。飽くまで履行が可能か不能かで処理が分かれるということですので,そこは滅失か損傷か,代物請求か修補請求かで区別をしているというよりは,履行が可能か不能かで区別をしているということだと思います。もちろん,ここは飽くまで解釈論の問題ですので,様々な今後の解釈論について何かを否定しようとする趣旨ではありません。一応そのように整理することも可能ではないかという趣旨で申しました。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○内田委員 金関係官が言われたとおり,解釈の問題ですけれども,「売買」の11のところで危険の移転の規定が置かれているのはもちろん任意規定で,どういう場面で危険が移転するかについて当事者が特に定めていないときには,この規定で危険が移転するというルールを置いているというわけですが,これとは別に当事者が特定について合意をすれば,通常はそれが危険移転時期と解釈されるのではないかと思います。ですから,特定したけれども,まだ危険が移転していないという事態は,通常の契約解釈では生じないのではないかと思います。これは実際の事案の具体的な処理の中での解釈問題かと思います。 ○山本(敬)幹事 結論としては,代物請求の場合は履行不能が語れるので,代物請求の履行請求は拒絶できる。しかし,特定すると,あとは修補が不能か,不能でないかが問題になるだけであり,修補が可能である限りは,履行不能の抗弁は出せない。それがデフォルトルールであるというのが事務当局の理解と理解すればよろしいのでしょうか。それとも今の理解は違っていたでしょうか。 ○金関係官 先ほど私が申し上げたのは,今山本敬三幹事がおっしゃったとおりの理解ですけれども,事務局の理解といいましてもなかなか難しいところがありますので,再度十分な検討をさせていただければと思います。 ○潮見幹事 特に何かを言うというわけではありませんけれども,恐らく従来の種類債権で特定をしたということに結び付けられる最大の効果と言われていたのが,先ほども山本幹事からも話がありましたが,対価危険の移転と同時に給付危険も移転するということでしたかが,金関係官がおっしゃったような枠組みで考えていった場合には,もはや特定という問題と危険の移転あるいは危険負担ということについては,切り離して考えるべきであるということを今回の改正法が基本に据えている。特定というのは正に当該物が当該物に集中するというレベルの話ぐらいとして,所有権の移転とかは別として,金関係官は理解しているのかなと感じました。   ただ,そうであってもちょっとだけ気になるのはマージナルな話ですけれども,先ほども少し話題に出ていましたが,修補が不能の場合あるいは可能な場合の代物請求はややこしいですよね。理論的に考えるとこの辺りの部分は法が改正された後で,私たちも悩まなければいけないのかもしれませんが,何らかの形で分かりやすい形で説明をしていただけた方がいいのではないかと思いますので,その辺りはよろしくお願いいたします。 ○内田委員 一言だけ追加ですけれども,事務当局の統一的な見解があるのかどうか分かりませんが,私は特定と危険の移転を分離して,別のものとして考えるというスタンスで改正しようとしていると断定することはできないのではないかと思います。そこは個別の事案の解釈だと思いますけれども,多くの場合,種類物の売買について特定の合意をすれば危険移転の趣旨を含んでいて,修補についてもリスクは買主に移ると解されるのではないかと思います。特定と危険移転を切り離すという改正であると断定するのは行き過ぎではないかと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。 ○潮見幹事 別のところですが,受領拒絶,それから,受領不能のところを受領しないという言葉に改めていますよね。これは実質的な変更を意図しておられるのですか。つまり,「受領しない」場合というのは,もちろん,受領拒絶の解釈によりますけれども,拒絶と不能というよりは若干広いものが,受領しないというところで捉えられていたのではないかという感じもいたしましたものですから,それはどうお考えになっているのかというところを少しだけ御説明いただければ有り難いと思います。 ○金関係官 ここは実質的な変更を意図しているわけではありません。ほかの箇所の表現と平仄を合わせる観点から,このように変更いたしました。 ○潮見幹事 「受領しない」という要綱仮案の言葉が今回の受領拒絶,受領不能を意味していたのだという理解でしょうか。 ○金関係官 はい。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○岡委員 表現というか,実務家サイドの質問でございますが,84-2の114ページで二つ質問がございます。   一つは568条の競売の場合の,検討中の案のところで568条4項ですが,種類又は品質に関する不適合と書かれています。契約の内容に不適合という言葉を使えないからだと思いますが,突然,裸の不適合という言葉が出てきておりますが,これはどんなふうに解釈していくことになるんでしょうか,というのが一つでございます。   もう一つは572条の担保の責任という言葉についての質問でございます。562条の追完義務,563条の代金減額義務,564条に書いてある損害賠償債務及び解除を受け入れる義務,この四つの義務ないし責任を,担保の責任という言葉で読むと理解していいんでしょうか。担保の責任というのが債務不履行の一定の場合における責任であると,そういう理解でいいのかという質問でございます。 ○村松幹事 まず,1点目の568条4項ですが,おっしゃるように,なかなか,ここはどのように置き換えるのか,非常に悩ましいところでして,ここでは端的に不適合と書く案を提示しておりますけれども,競買においてどのようなものを想定するのかというところを考えつつ,不適合については解釈していただくということにならざるを得ないのかなと考えております。   あと,2点目の担保の責任については債務不履行責任のうち,一定の場合かという点はおっしゃるとおりで一定の場合を指していると言おうとして,現行にあったものをここは残すという判断をしたと。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○中田委員 「売買」について1点と「贈与」についてございます。   「売買」については,説明の仕方だけの問題ですが,84-3の13ページの9についての説明で,533条に括弧書きを入れるという部分なんですが,実質はこれでよろしいと思うんですけれども,入れる根拠として実務上はこれこれと解されているという説明になっているんですが,実務上という意味がよく分かりません。下級審裁判例のことなのかどうか。むしろ,学説でもそういう学説があると思いますので,こういう曖昧な書き方でない方がいいのではないかと思います。   それから,「贈与」の方なんですけれども,第31の2,書面によらない贈与の撤回を解除に変えるという点でございます。これは中間論点整理の段階でも,最後の用語における問題だと整理されていて,それを受けたものだと思います。研究者グループの立法提案の中でもこういう案がありまして,これ自体は十分あり得ると思います。それから,要物契約が諾成化されたことに伴う引渡し前の解除という制度とも,恐らく平仄が合っているんだろうなとは思いまして,これでいいのかなという気もします。ただ,1点,気になりますのは,解除に変えると548条の適用を受けることにならないだろうかということです。つまり,贈与者が過失で目的物を滅失・損傷させたときには,もはや解除できなくなるんだとすると,現行法よりも贈与契約の拘束力をより強めることになるのではないかと思います。単に用語の調整というだけではなくて,実質的な変更も伴うことになるのではないかと思いますので,その当否というのは検討する必要があるのではないかと思います。 ○深山幹事 今の「贈与」の点です。撤回を解除に変えるということについて,私はこの部会の当初,議論が始まった頃に,解除の方がいいのではないかという趣旨で,撤回という用語はあまりよくないということを申し上げた記憶があります。そのときは,ここは16年改正で変えたばかりなんだという御指摘を頂いて一蹴されて残念な思いをした覚えがあって,それで諦めていたところ,この土壇場で敗者復活したことについて非常に喜ばしく思っています。一つ申し上げたかったのは,もし変えるということになると,条文全体の表現がどうなのかということです。   現行法が書面によらざる贈与は,各当事者が撤回することができるという言い方になっていて,今回,ミニマムの改正という意味で,撤回を解除に置き換えているので,文章としては同じ文法になっているんですけれども,日本語として必ずしもこなれていないような気がします。ほかの各契約のところで出てくる解除の規定は人が主語になって,誰々は契約の解除ができるという言い方になっています。今,中田先生からも御指摘のあったように,諾成契約化した消費貸借や寄託での解除の規定が設けられ,それから使用貸借のところも返還時期の定めを解除と整理したりしています。幾つかの契約各論で契約解除ができる場面について,いずれも,契約当事者が解除できるという表現であり,「貸主は」などと,人が主語になっています。そこで,もし変えるのであれば,ここも書面によらざる贈与をした各当事者は,契約を解除することができるとした方が文章としていいのではないかなという気がいたしました。   そのことを申し上げようと思っていたところ,直前に中田先生の方から,そもそも,改めるべきことについて慎重にという御意見,御指摘があって,なるほどなと思ったんですが,ただ,御指摘の点については,548条における,加工等をした場合に解除権は消滅するという規律自体が,今回,現行法よりは整理がされ,ただし書が付いているということもありますので,私はただし書が付いたこと自体はもちろん賛成ですが,そのことも踏まえて考えると,その御指摘の点を踏まえてもなお解除という表現に改め,なおかつ文章も整理をするというのがよろしいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 事務当局から何かコメントはありますか。 ○金関係官 中田委員が先ほどおっしゃったのは,贈与者が受贈者に目的物を引き渡す前に,その目的物を贈与者が過失で滅失・損傷させた場合ということだと思いますけれども,そうしますと,それは目的物がまだ一度も相手方に引き渡されていない段階の話だということになると思います。ただ,一般的に548条は,その条文の文言はともかく条文の趣旨としては,目的物の引渡しを受けた者が,仮に契約を解除したとすれば原状回復をすべき目的物を自ら改造したり,自らの故意・過失で滅失・損傷させたりした場合に適用されることを想定したものだと思います。そのような548条の趣旨を前提とすれば,贈与者が受贈者に目的物を引き渡す前に,贈与者の過失でその目的物を滅失・損傷させたという御指摘の場合については,そもそも548条の想定外の場面なので548条の適用はないといった解釈があり得ると思われます。そのような解釈をして,妥当な結論,すなわち安易に解除権の消滅を認めないような結論を導く余地もあるのではないかと少し思いました。いずれにせよ,御指摘を踏まえて再度検討したいと思います。 ○鎌田部会長 ほかの点について。 ○中井委員 松岡先生がおっしゃられた要綱案の表題と84-2の条文の頭書きとの関係ですが,「売買」のところには何か所かで担保責任という言葉が使われている部分が要綱案では全く使われていない。先ほどの松岡先生に対する応答では,まず,ずれていてもいい,方向性としてはこれから考える,こういう整理になるのでしょうか。もし,この辺りについて,もう少し補充的に教えていただければ。 ○筒井幹事 条見出しについては現在検討中の案を部会資料84-2でお示しし,これについて本日,御意見を伺い,引き続きまた検討したいと考えておりますが,要綱案の方の各項目の見出しについては,従前からの議論の経緯もあるので,特に御意見がなければこのままにしようかとも考えておりました。ただ,先ほどの松岡委員の御発言もありましたので,要綱案についても直した方がよいという御意見がありましたら,御発言いただければと思います。 ○松本委員 質問ですけれども,担保責任と債務不履行責任の一元化ということで立法が行われるわけで,私は担保責任という言葉は民法から抹消されるんだと理解をしていたのですが,かなり残っているようなので,条文化をしている担当者としてはどういう意識で担保責任という言葉を残しておられるのか,そこでいう担保責任は債務不履行責任なんだけれども,売買のところで特に付け足されたところの代金減額と追完請求の部分を加えた,つまり,売買において拡張された債務不履行責任を指す場合に,担保責任という用語を特に残すという趣旨なのかという辺りを御説明いただけますか。どういう趣旨で残されたのか。 ○村松幹事 不用意に発言するとまたいろいろあるかもしれませんが,私どもで今,考えていることを申し上げますと,債務不履行責任の中に担保責任は全て含まれている,そういう意味で,その一部であると捉えていくのかなと整理しております。債務不履行責任と一番端的に違うだろうと思っておりますのは,全く履行しない場合でも債務不履行責任はもちろん発生するわけですけれども,ここで担保責任として切り出そうとしているのは,典型的に売買でいえば引渡しがあったけれども,それについては不適合な部分があったというのが典型的に出てきますけれども,その意味で,性質としては債務不履行責任だということで今回は整理したつもりでおりますし,規定ぶりも全般的にそのような整理に合うような整理がされているとは思うんですけれども,その中でもある一場面が切られているというような理解で作っております。 ○松本委員 それで,担保責任という場合は売買のところでのみ規定されたところの代金減額と追完請求の部分だけを特に指していう場合に使うのか,それ以外の損害賠償なども売買という局面であれば,全部,担保責任という言葉でカバーしてよいという話なのか,いずれなんですか。 ○村松幹事 全部であるということで,特別な救済方法だけではなくて,債務不履行の一般原則の方から導いてくるようなものも含めまして,今,申し上げたような場面で生ずるようなものは,差し当たり,全部含んでいるという用語法にしてはどうかと。 ○松本委員 売主の債務不履行責任のほとんどを指す言葉として使うと。 ○村松幹事 そういうことです。 ○内田委員 全く一研究者としての発言ですけれども,現行法は担保責任という言葉を使っていますが,現行法の起草者は担保責任について法定責任説など採っていなかったわけで,元々,請負でも同じ言葉が使われていますけれども,売買とか請負で引き渡したものの権利とか品質について一定の内容を売主なり,請負人は担保していると考えていた。その担保していることについて義務違反があれば,責任を負うという趣旨で担保責任という言葉が元々は使われていたのだと思います。それが法定責任説が出たために,瑕疵担保責任というと債務不履行ではないものという意味で担保責任が使われるようになりましたけれども,今回の案の中で使われている担保責任というのは,元々の民法の用語法の担保責任という言葉の使い方と同じだと思います。売買とか請負で物の品質とか権利についての広い意味での瑕疵,つまり契約への不適合があった場合の責任を担保責任と呼んでいるということで,私は全く何の違和感もないように思います。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○中井委員 今のお話を前提にして,そうだとして562条の表題も買主の追完請求権となっていますね。572条は担保責任を負わない旨の特約としては,562条と565条を引っ張ってきている。565条は権利移転についての内容不適合を担保責任としていますが,だとするならば表現だけの問題ですけれども,562条の柱書きについても平仄を合わせてもいいのではないかという印象は受けました。 ○村松幹事 今の御指摘は562条,563条,564条辺りに担保責任という表現を入れた方がいいという。 ○中井委員 入れた方がいいというわけではないのですが,572条の担保責任を負わない旨の特約のところで引っ張っているのが562条と565条で,物についての不適合が562条以下で,権利についての不適合が565条,こういう形で整理していると思うのです。だとしたときの表題のことだけですが,562条の表題で良いのか,と言う平仄の問題です。ここは買主の追完請求権を規定しているのだと思いますけれども。 ○鎌田部会長 562条,563条,564条は担保責任で具体的にどういう請求ができるかを追完,代金減額,損害賠償解除と,こう挙げていくことに意味があるので,これをただ担保責任というと。 ○中井委員 ただ,単に担保責任というわけではなくて,562条の表題に担保責任という言葉が入っていてもおかしくないですねということを申し上げたのですが。 ○鎌田部会長 「買主の担保責任-代金減額」というようなことですか。 ○筒井幹事 中井委員のおっしゃりたいことが何となく分かってきたように思うのですが,ただ,572条の現在の条文案で使っている第562条第1項に規定する場合という表現は,562条1項全体の規定内容ではなくて,562条1項において「場合」とか「とき」という言葉を使って表現している部分だけを引用するときの法文の書き方ですので,先ほどの見出しの議論は話がやや食い違っている感じがするのですけれども。 ○松本委員 私は誤解していたのかもしれないですけれども,572条が第562条第1項と限定しており,追完義務だけを負わない特約が対象として切り出されているので,すごく違和感があったんですが,ここはそう読んではいけないということなんですね。代金減額も損害賠償も解除もみんな入ると読めと。 ○筒井幹事 そこは誤解されるかもしれないと思いましたので,部会資料84-3の補充説明を御覧いただきますと,その21ページ,新第572条関係というところに書いたことが,今,申し上げたことでございます。ですから,第562条第1項に規定する場合と書きましたのは,第562条第1項の条文の方を御覧いただきますと,「引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」とあり,この部分を指しているということです。これが分かりやすいか,分かりにくいかという議論はもちろんあり得るとは思うのですけれども,条文を書く場合に一定の約束事がないと簡潔に文章化することが困難になるという問題がありますので,その約束事に従えばこういう書き方になるということだと思います。 ○岡委員 その場合,563条の頭のところを562条1項の場合と書かなかった理由は何なんでしょうか。ここも前条1項に規定する場合と書いてくれると,563条は562条の場合における一つの救済手段で,564条は前2条の規定と書いていますから,すんなりつながっていくと思うんです。563条の冒頭の2行だけを繰り返したのは,何か法制上の理由があるんでしょうか。 ○村松幹事 すみません,今,おっしゃるように,ここだけをぱっと見ると,それでもよいのではないかと言われると,そうだなという気がします。少し考えさせていただきます。 ○鎌田部会長 ほかに。 ○潮見幹事 要綱の原案の「贈与」の51ページの3の見出しですが,条文案の方では「引渡義務等」となっているのに,要綱の原案の方では,なお,「贈与者の担保責任」という言葉が維持されているので,冒頭で松岡委員が一般論としておっしゃったのと同じ理由から,ここは変えていただけないものでしょうか。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。 ○山本(敬)幹事 「売買」のところの「6 権利移転義務の不履行に関する売主の責任等」についてです。要綱仮案では,売主が買主に権利の全部又は一部を移転しないときをカバーしていたのですけれども,全部を移転しないときは通常の債務不履行そのものであるとして,ここでは一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときに限るとされています。これはここだけの問題ではないのかもしれないのですが,そうしますと,権利の全部が他人に属する場合は,追完請求というべきなのでしょうが,要するに権利の移転請求は一般原則どおりによるとなります。権利の全部を移転することができない場合は履行不能ですが,それが買主に責めに帰すべき事由によるとき,例えば買主が自分で買い取ってしまったというようなときは,履行請求はいずれにせよ不能だからできないということなのでしょうか。   要するに,一部が他人に属する場合については,先ほどの契約不適合責任に関する規定が準用されますので,3の追完義務の規定が適用され,ただ,(2)で,不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときには,追完の請求をすることはできないというルールが適用されてくる。それに対して,全部が他人に属する場合は,ここから外れるということは,一般原則による。ただ,履行請求権に関しては,履行請求権の一般原則で,債権者側の責めに帰すべき事由により履行不能になる場合については特に規定がない。その結果として,全部の場合と一部の場合とで結論が違ってくる。それで構わないということで提案がされている理解してよろしいのでしょうかという確認なのですが,いかがでしょうか。 ○金関係官 その点につきましては,それで構わないという理解ではないのですが,以前は,追完請求権の根拠規定そのものを第10の1の履行請求権の箇所に置くべきであるという議論があったところで,通常の履行請求権の一種として追完請求権の規定を置くという議論ですけれども,もしそのような規定の置き方をしていたのであれば,その箇所に,債権者の帰責事由による債務不履行の場合には追完請求権を含む履行請求権を行使することができないと一言書いておけば,うまく整理ができたようにも思われます。ただ,そこは,最終的にこの部会では,追完請求権の規定は売買のいわゆる瑕疵担保責任の箇所に置くということになりました。確かにそれでも場合によっては,今回の第10の1の箇所に,例えば,債権者の帰責事由による目的物の滅失等の場合には履行請求権は行使できないという規定を置くという選択肢はあり得て,今の山本敬三幹事の御指摘はそういう結論にも行き着き得るものだと思います。ただ,そこは結局,山本敬三幹事も少しおっしゃったように,権利の全てが他人に属する場合だけの問題ではなくて,もっとほかの場面,売買以外の契約類型を含むほかの場面でも,追完請求権ではない履行請求権について債権者側の帰責事由による債務不履行がある場合にどのように処理をするかという問題があって,それらを包括的にカバーし得るような内容の規定を第10の1の箇所に置くことは難しいということで,そのような規定を置くには至らなかったという経緯があるのだと思います。  しかし,今申し上げたような経緯を前提にしますと,履行請求権の箇所には明文の規定はないものの,売買の追完請求権の箇所に買主の帰責事由による債務不履行の場合の規定が置いてありますので,その規定の類推適用なのか,拡張解釈なのか,単なる応用なのかはともかく,追完請求権ではない履行請求権についても,実質的には同様の規律が妥当する,実際の裁判の場面では信義則とか権利濫用といった攻撃防御方法として現れることもあるかもしれませんけれども,しかし実質的にはそういう規律が同様に妥当するという整理をしているのだと思います。そのような明文の規定を置かない方向での整理が最善であったと申し上げているわけではありませんけれども,ただ,少なくとも今申し上げたような整理はしているということで,一応の回答とさせていただければと思います。 ○中井委員 部会資料84-3の6の13ページの説明もよく分からなかったのですけれども,権利の全部が他人に属する場合において,その全部を履行しなかったら,ここでは対象外,権利の一部が売買対象でその全部の不履行もここでの対象外,括弧書きは,権利の一部が売買の対象のときで,その一部の一部の不履行を書いている。つまり,全部を対象としたときの一部と,一部を対象としているときのその一部なのか,そこが読んだときに非常に分かりにくいのです。 ○金関係官 売買の目的物がもともと何らかの権利の一部である場合については,その部分がその売買契約においては全部だという前提だと思いますけれども。 ○中井委員 それはもちろん,そうですよね。前の方でも権利の一部とあって,後ろのその権利の一部というのは一部の更に一部を指しているのではないのですか。それはそうではない。しかし,一部と一部が一致したら全部ではないのですか。 ○鎌田部会長 「権利の一部」というワンワードに「その」がくっついている。 ○村松幹事 普通の法律ですと,「当該」という言葉を使いますと,その直前に出てくる言葉そのものを受けるということで,普通の法律で書けば当該権利の一部を含むという表現になることが多いんです。それであればある程度は分かるかもしれないと思うんですが,民法は「その」という言い方を使っていて「当該」は使っておりませんので,こういうふうにその権利の一部といったときに,その権利というのはその前の権利を指しているのか,それとも権利の一部という,そのままで指しているのかというのが若干分かりにくいようにはなっているのですが,ここでは権利の一部が他人に属する場合の,その権利の一部の譲渡を含みますということを正に言いたいものですから分かりにくいような気もしつつ,これしか言いようがないかなということだったのですが。 ○鎌田部会長 「権利の一部が他人に属する場合を含む」だけで,通じてしまうような気もしなくもないんですけれども,ほかによろしければ,「第32 消費貸借」から「第34 使用貸借」までについての御意見をお伺いいたします。 ○中田委員 前回,発言したことについて今度の条文案で見て感じたことなんですけれども,通常損耗や経年変化について使用貸借の場合にどうなるのかということがあります。今回の条文案を拝見しますと,84-2の128ページの622条ですけれども,この622条が597条1項と599条1項,2項,そして600条を準用しています。問題となるのが599条なんですけれども,599条の1項と2項だけを準用するということは,3項は準用しないということを明示しているわけです。   599条3項に対応する賃貸借の規定は621条でして,599条3項と621条を比較すると,違いはどこかというと621条には括弧書きがあって,通常損耗と経年変化を除くということが明示されている。つまり,この括弧書きの準用の有無だけが違うということが条文上,明らかになっております。そうすると使用貸借については反対解釈が非常にしやすくなってしまって,通常損耗と経年変化は原状回復の対象に含むんだというように読むのが素直だということになりますが,それが適切でない場合もあるということは,前回,御指摘したとおりです。そうすると,それを解釈に反映させようとすると,どの点を手掛かりにするということを想定しておられるんでしょうか。 ○金関係官 事務局としましては,賃貸借の規定との関係での反対解釈はせずに,括弧書きがない「損傷」という文言をニュートラルな状態で解釈することを想定していると,以前説明したところですけれども,ただ,括弧書きがあるものとないものとがある以上は,反対解釈がされて,使用貸借の原状回復義務には通常損耗や経年変化の回復が含まれるとの解釈がされてしまうという御指摘には,ごもっともな面があるとも感じております。ただ,この論点については,賃貸借のところでは最高裁の判例があって,明確な特約がない限りは通常損耗や経年変化の回復は含まれないということが実務上も定着しているのに対して,使用貸借のところではそのような判例はありませんし,実務上も,原則として通常損耗や経年変化の回復は含まれないということになっているのかというと,必ずしもそうとまでは言えないと思います。無償で貸してあげる以上は通常損耗や経年変化も含めて完全に回復して返してもらうという趣旨であることもあれば,逆に,無償で貸してあげるのは借主に何らの負担も課さずに使用したものをそのまま返してくれればよいという趣旨であることもあり得ると思います。賃貸借と違って,借主が賃料を支払っているわけではありませんので,通常損耗や経年変化の回復が原則として不要とまでは言えなくて,個々の使用貸借ごとに決めざるを得ないことから,結局,使用貸借のところに括弧書きを書くという決断ができなかったということだと思います。  ただ,そのことを前提としても,例えば中田委員から前に御指摘いただいた事案,新築の建物の使用貸借の事案だったと思いますけれども,そういう事案については,当該使用貸借の契約において,少なくとも黙示的に経年変化の回復は不要とする旨の合意があったと認定することによって,適切な対応をすることも可能だと思います。実際にはそのような明示の特約がされる事案もあると思いますし,そのような方向で適切な対応をしていくことによって,中田委員から御指摘いただいた不都合を回避していくという道しかないのではないかとも考えているところです。 ○中田委員 条文に書きにくいというのはそのとおりだと思います。ただ,結果としてできたものは,要綱仮案よりも更に反対解釈の力学が強く働いてしまっているものになっているものですから,今,金関係官がおっしゃった個別の使用貸借の契約の解釈でいくという方法しかないのかもしれませんけれども,ただ,これが任意規定であるということは事務当局の御説明というよりも,むしろ,将来の解釈をする人たちが意識して,そこを明らかにする必要があると思っております。取り分け,使用貸借については契約書なんていうのはない場合がむしろ多いと思いますので,その場合のデフォルトルールが通常損耗や経年変化も元に戻すんだというのは変だなという感じがいたしますが,条文化が難しければ,今後,解釈に当たってそれを我々が留意するということしかないんでしょうかね。残念ですけれども。 ○山本(敬)幹事 違うことですけれども,関係することを申し上げたいと思います。要綱案の原案の方でいいますと,今の点なのですけれども,13の「賃貸借終了後の収去義務及び原状回復義務」,要するに附属物を附属させた場合は使用貸借の規定を準用して,損傷の場合は賃貸借で明文の規定を置くという今の中田委員が指摘されている点についてですが,申し上げたい点は幾つもあるのですけれども,今の点に絞っていいますと,現行法が,使用貸借の規定が前にあるので,それを準用しているので,それを踏襲しているわけなのですけれども,結果として賃貸借のルールが使用貸借の規定のしかも後ろの方にある準用規定を見ないと分からない構図になっていて,すこぶる分かりにくいのではないかと思います。   賃貸借の場面での終了後の収去義務及び原状回復義務については,たとえ賃貸借のルールの内容が使用貸借のルールと同じであったとしても,きちんと書き下すことによって明確に見えるようにする必要があるのではないかと思います。あえて前の使用貸借の規定を準用しなければならない理由があるのかというのが私にはよく分かりません。現行法がそうしているので踏襲しているだけではないかと思います。そのような準用をするから,中田委員のおっしゃるように,準用していないものは別ルールであるとして,反対解釈の力学がより一層働きやすくなっていると言える面もあるように思います。ここは,民法典を見ればすぐにルールを読み取ることができるようにするという最初に言われていた観点からしますと,使用貸借の規定を準用するという形式ではなく,賃貸借のルールとして規定するということもあってよいのではないかと思います。   更に言いますと,最初の編成問題ですけれども,当初から,改正の際には,現代では有償契約のルールを先に置き,無償契約はその後に置くことにしてはどうかということも語られていたわけですけれども,恐らく,現行の条文を大きく変えるのは不適当であるなどの考慮から,現行法どおり,無償が先,有償が後になり,そして結果として使用貸借の規定が賃貸借に準用されるという形式が踏襲されていることになっているのだろうと思います。それ自体,私は再考の余地があるのではないかと思いますが,しかし,せめて準用を多用することは考え直す余地があるのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○鎌田部会長 その点は少し検討してもらうことにします。 ○道垣内幹事 中田委員と金関係官との間で議論があって,いかにも仕方がないみたいになってしまったのですが,それが確定するのが嫌なので一言だけ申します。少なくとも経年変化は使用貸借人の責めに帰すべき事由によるものではありませんから,使用貸借の場合と賃貸借の場合との双方で,損傷に当たらないという概念で否定される場合と,帰責事由がないという形で否定される場合があるわけであり,経年変化の場合にもそれも直せという場合ももちろん契約としてはあるんでしょうけれども,デフォルトルールとしても帰責事由がないという理由で排除される可能性は,あると考えるべきだということ記録にとどめるために発言しておきたいと思います。 ○中田委員 実は前回,その点も発言いたしまして,ただし書についても使用貸借と賃貸借と同じ規律になっていて,そのうえで賃貸借の方にはそれとは別個に括弧書きがあるので,なかなか,その解釈もとりにくいのではないかなと思った次第です。ただ,今,おっしゃったような解釈論も含めて妥当な結論を出すようにすべきだと思いますので,そういう解釈論もあり得ると思います。 ○高須幹事 同趣旨の発言でございますが,「賃貸借」のところで経年変化と通常損耗,これを合わせて規定すべきではないかということを私自身が3回ぐらい,この部会で発言させていただいた記憶がございます。それは国土交通省の不動産賃貸借契約における原状回復の有り方についてのガイドライン等がこの部会でも資料として提出され,そのガイドライン等に通常損耗と経年変化という言葉が出てまいります。つまり,この問題は不動産賃貸借契約において,既にそういう扱いもあるものだから明確にしていただきたい,取り分け,通常損耗だけ規定して経年変化を落とすと,何か違う取扱いを試みているかのような誤解を招く危険があるので併記していただきたいと,こういう経緯で発言させていただいたところでございます。要は不動産賃貸借の場面に限定して申し上げたのであり,使用貸借との対比で格別の意見を申し上げた訳ではないということを,これも記録に残していただきたいという趣旨ですが,一言,付け加えさせていただきます。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。 ○山本(敬)幹事 もう1点,別の部分で表現のみについてなのですが,検討をお願いできないかという点があります。「賃貸借」の「4 不動産賃貸借の対抗力,賃借人たる地位の移転等」についての(2)です。今回,(1)が,「借地借家法10条,31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において」として,「その不動産が譲渡されたとき」は,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転することが提案されています。借地借家法を入れるというのは,私自身は別に異論はないのですけれども,この文章の順序なのかという点については疑義があります。   といいますのは,論理的な順序としては不動産の賃貸借において,その不動産が譲渡されたときは,原則として売買は賃貸借を破る。しかし,賃貸借の対抗要件を備えた場合は,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転するというはずではないか。そうすると,書き方としては,不動産の賃貸借において,その不動産が譲渡された場合に,しかし,その不動産が(1)の賃貸借の対抗要件を備えているときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転すると定めるのが内容としては的確ではないのかと思います。書かれている要件は全く同じなのですけれども,論理の順序としては逆になっているのではないか。そこは正していただけると,今後,教育等を行う場面でも説明しやすくなるということで,その程度のお願いをできないかということです。 ○鎌田部会長 検討してもらいます。   ほかにいかがですか。よろしければ,「第35 請負」から「第37 雇用」までについて御審議いただきます。 ○岡委員 請負について随分,条文を節約したことについての異議申立てでございます。636条は恐らく売買の先ほどの追完請求権,代金減額請求権,損害賠償,解除,この担保責任の規定が包括準用の条文で請負に飛んでくるくる,それを前提にした上で,それらを制限する場合だけを636条で書いているのだろうと思います。これはいかにも実務家から見て分かりにくいという印象を非常に強く受けます。売買と請負がよく似ているから同じようなことは書けないという御説明も受けましたが,562条で修補,代替物の引渡し,不足分の引渡しという例示のある追完請求が書かれておりますが,請負のところは少し違うのではないか。表現がどうなるか分かりませんが,請負の場合にも追完請求権,代金減額請求権があるということをきちんと書いていただきたいという要請が弁護士会において相当強くございました。   この改正作業に入る一番最初のときに,当たり前の原則は書かないで例外から書いている,これを直そうよとおっしゃっていた。それなのに例外だけを書くという旧弊が636条に出ていると思います。分かりやすい民法にするために,この請負のところで,随分,条文を書略していることは何とかならないんでしょうか。 ○村松幹事 御指摘の御趣旨はよく分かっているつもりではございまして,そういう観点から例えば現行法の条文についてはそのまま維持するというような考え方がないか,ただ,それについてはもちろん中途半端に現行の条文をそのまま残すと,逆によく分からなくなるという問題もあるので難しいかもしれない。そうしましたら恐らく今,おっしゃいましたように,であれば,562条以下の条文と似たような条文をもう一度,書けないのかというようなことが確かに考えられなくはないというところだろうと思いますが,仮にそういたしましたときに恐らく二つばかり問題がございまして,一つは562条の以下の細々した条文を請負の方に移動させたときに,どのように表現したらいいのかという点についての検討がもちろん必要になりますけれども,直ちにここはきっとこうなっていくだろうというのが必ずしも判然としないような気もするという部分と,あと,それから,これは技術的な問題に過ぎないのですけれども,結局,包括準用規定が掛かっていて,そちらで読めるもの,読めないものというものについての線引きをある程度しなくてはならないというところがあるわけですけれども,そういった点が全く同じような条文が仮に並ぶとすれば,なぜ,これは包括準用ではないか,そうすると,この条文については例えば売買,請負以外の典型契約については包括準用ではないという整理になるのかというような問題が一応出てまいりまして,それらをクリアしようとすると,結局,各典型契約を全部,いろいろ書き込むのかというような話にもなりかねないんですけれども,なかなか,それもまた,難しいような気もいたします。事務当局としては,この点は非常にどうしたものかなというのはかなり悩みまして,いろいろな書き方を皆で考えておったんですけれども,なかなか,いい解がなかったというのが検討経緯です。 ○岡委員 せめて包括準用ではなく,先ほどの使用貸借の条文を賃貸借に準用すると,そういう規定の方式もあるわけですから,636条の本文を,引き渡したとき,終了したときに適合しない場合は,562条,563条,564条を準用するという条文にはできませんか。包括準用よりはそういう個別準用でもあった方が分かりやすいと思うんですが,それはいかがでしょうか。 ○村松幹事 あり得るとは思うんですが,そうすると請負以外もそういうことを考えなくてはならなくなるのですが,直ちにそれがうまく書けるのかなという点が気になったということでございます。 ○中井委員 岡さんが申し上げていることは,弁護士の多くがきっとそう思うであろうことで,この条文,取り分け,636条を見たときに契約不適合の場合,注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合のみをここで取り上げて,できない,ということで結ばれている。そうだとすると,売買のところと同じように不適合があれば,その不適合を理由とする履行の追完請求,報酬の減額請求,損害賠償請求及び解除ができるとまずあって,ただし書で注文者に帰責事由があったらできない,帰責事由がある典型例というか,一番端的な例として指図に違反があればできない。構造はそうだろうと思うのです。   その構造がすぐに分からないというのは,弁護士内部からいろいろクレームがくるのではないかと思われるところです。では,委任はどうする,役務提供契約的はどうするという御趣旨なのかと思うのですが,売買の条文を準用するよりは,結論としてできる,というのが何とか書けないものかとか重ねて思います。 ○潮見幹事 ちょっとだけお尋ねしたいことがあります。要綱仮案の場合には現行法の634条1項本文は維持するということでやっておられました。今回はこれが消えました。   消えた結果として,しかも,売買の規定が包括準用されるということになった場合に,若干,気になりますのは修補請求,追完請求で,注文者の責めに帰すべき事由による不適合が生じた場合に仮案でいきましたら,この問題については独自の規定がありましたから,売買の規定にはよらなくても仮案で予定されていた規定で処理をし,更に次の(2)のところの先ほど中井委員が言及された規定によって,指図があった場合には修補だの,何だのというのはできないということになるので,比較的見通しはつきやすかったのではないかと思うのですが,今回,包括準用ということになりましたら,契約不適合で注文者の責めに帰すべき事由による場合については,修補請求はできないですよね。他方,(2)の方では御丁寧にといったら言いすぎかもしれませんが,指図によって生じた不適合については追完請求することはできないと書かれています。この二つの関係はどう理解をしたらいいのかというのが私には分からないところがあります。   もちろん,今は追完請求だけを申し上げましたけれども,それ以外の報酬の減額の請求についてもそうですし,それから,契約の解除についても同じようなことが言えるのではないでしょうか。つらつら考えてみますと,(2)の規定というものに,一体,どれほどの意味があるのでしょうか。少なくとも注文者に帰責事由がある場合の準用規定との適用関係が明確にならないと,説明が難しいのではないのかなと思います。少しお時間があるようでありましたら御検討いただければと思います。 ○道垣内幹事 要綱仮案を十分に理解できていないのかもしれないんですけれども,要綱仮案の第35の2の(1)というのは「634条1項関係」と書いてあって,1項をこう直すとありますから,2項はそのままあるというものだったのでしょうか。もし,そうであるならば,要綱案になって2項がなくなったわけですね。そこの理解はよろしいでしょうか。   よいとしたときに,現行法の634条2項の損害賠償に関して,先日の部会で,山本敬三幹事と私との間で若干,議論があったところです。つまり,請負の場合に,例えば色が違うといったりするように金銭的な損害は発生しないが,修補は求め得るというような場合があり,そのときに修補に応じない場合,あるいはそのような請負人は信用できないので自分でやるといった場合には,修補費用が損害賠償になるという形になっており,通常の損害賠償としての減価分という考え方とは違う規律になっているのではないかと思うわけです。そして,それが現行法の634条2項の「瑕疵の修補に代えて,又はその修補とともに,損害賠償の請求をする」という文言に現れているのではないかと思います。   そのような解釈を前提とした場合に,634条2項を要綱仮案からの変化で削除してしまって,一般的な損害賠償請求規定である売買の規定の準用としてしまったときに,そのような請負における損害賠償の特殊性というものは,もはやなくなるということになってしまうのでしょうか。そして,それは要綱仮案からの変化だと私は思うわけですが,そのような変化はなぜ是とされるのでしょうか。 ○村松幹事 恐らく今回の整理は,そのような意味では売買の場合と請負の場合とで基本的な差は恐らくないであろうというのが考え方としての前提であり,であれば,このような問題が生じますねということを多分,申し上げているはずでして,その部分がそこは違うので,その違いを際立たせて残した方がよいというような議論になりますと,むしろ,そういう特質上の違いがあるので,それに応じて条文をここで書かなければならないんだというような話にはなるはずです。実質としてどこにどういう違いがあるかというのがまずあり,違いがあるのであれば,その違いに応じた条文をむしろ,おっしゃいましようにここに書くということになるはずですし,逆に,そういった違いは基本的にはなかなか説明しづらかろうということでありますと,全く同じルールであるということになり得ますので,そうであるとすると,売買と重ねて書くというのはなかなか難しくなってくる。 ○道垣内幹事 筋道は分かりましたが,その筋道においてなぜ634条2項が要綱仮案には存在していたのに,現在,削除されたのか。削除されるということが原案として出て,これがなかなか難しいということになりますと,損害賠償というものは例えば色が違っているというふうな場合で,価値の原価がないという場合には損害賠償できないとするのか。 ○村松幹事 ここに実質的に差があるのかないのかというところがございますので,またよく考えたいと思います。 ○内田委員 前回も発言したことですので,一応,リマインドの意味で申します。634条2項の,今,道垣内幹事がおっしゃった部分の後の533条の準用の部分ですけれども,この部分について山本敬三幹事から削除すべきであるという御意見があり,私はそれで本当にいいのかという懸念を述べました。一番の懸念は実務界なので,この部会で実務界で特に異論がないということであれば,私自身は異存はないのですけれども,一応,確認をしたいという趣旨です。   634条2項後段で同時履行の抗弁権の規定が準用されていて,損害賠償について同時履行だということが規定されている。571条,売買のところにも同じような規律があります。今は損害賠償との同時履行については,原則規定の533条では明確には定められていなくて,売買と請負にそれぞれ規定が置かれている。今回はそれぞれの規定の損害賠償という部分をパンデクテン式に総則に抜いて,533条に括弧書きで入れることによって各則部分を消そうという,そういう提案で,それはそれで一つの筋だと思います。   ただ,634条2項後段は独自の解釈がされていて,判例がこれについて請負特有のルールを形成しています。そのときにこの規定を消してしまって一般原則の適用ですということで本当に判例を維持できるのか,あるいは,一般原則の適用であっても請負に対応した形での適用になるので,請負にふさわしい形での解釈に基づく判例として完全に維持できるのだと,そういうことであれば問題はないのですけれども,手掛かりの規定があったからこそ展開した判例ではないかという考え方もあり得るかと思います。一応,部会でリマインドさせていただいて,そのうえで削除するということを部会として判断をする方が望ましいのではないかと思い,発言させていただきます。 ○岡委員 弁護士会としては今回の533条に包含させて括弧書きで対処するというには不満といいますか,理論的なことはよく分かりませんが,分かりやすさの観点からいえば,売買にも請負にも残してほしいというのが本来の意見でございます。ただ,法務省さんが533条でまとめて括弧書きで書いて,一問一答でしっかり書けば影響はないんだと,そう言われたら,そうかなと思って強い異論を述べていないだけであります。したがって,研究者の方から見ても533条に吸収させるのに疑念があるということであれば,実務界としても反対意見を申しあげます。 ○高須幹事 今の部分でございますが,同じような危惧というか,不安を持っています。一般的に条文の遠い,近いということを実務の場面において強く思うことがございます。理論的には確かにその条文に行き着くと説明はできるのだけれども,現実の裁判の場においてはなかなか理屈通りには行かないという場合がある,条文との距離があると,なかなか,それを縮められないという実感がございます。請負の関係では,今,内田先生から御指摘があったように平成9年に大きな判例が同時履行の関係で出ているわけですが,あれも634条2項に533条の規定を準用すると書いてあったことが,遠いところにある533条との距離を縮める一つの大きな材料になったんだろうと実感として思っています。ですから,それを考えると今のような御指摘を受けたときに,本当に遠い,近いは関係ないんだということで,果たして実務が回っていくのかな,それならいいと思うんですが,そう簡単には行かないのではないか。やはり条文は近いところにあった方がいいというのはそのとおりだと思いますので,今,岡先生からも御指摘があったことは私も同じような感覚を持っております。 ○鎌田部会長 ほかに関連した御発言はございますか。 ○中田委員 私も先ほどの内田委員のおっしゃることは全く同感です。ただ,恐らく今回の原案がそうなっていないのは,売買と請負とがかなり接近していて,どちらか,はっきりしないものがある場合に規定を置くとかえって不明確になるのではないかということであったり,あるいは売買の規律のうち,どの部分だけを請負に置くのかということについてはっきりしないという,そういう御懸念によるのだと思います。それはそれで理解できるんですけれども,中間的な領域の問題というのは常にあるわけで,そちらを重視するのか,それとも代表的と申しますか,典型的なものを想定するのかという大きな選択の問題だとも思いますので,それほど境界問題について神経質にならなくてもいいのではないかという気もいたします。ですから,もし置ければ置いた方がいいと思います。 ○深山幹事 私も今の点について皆さん方の意見の補足をさせていただきたいんですが,売買は,元々,対価関係にある反対給付の同時履行が原則の類型と言えると思うんですが,他方,請負の方は仕事が完成してから初めて報酬請求権が生じる類型であるという意味で,その部分は売買と明らかに構造が違うわけです。しかしながら,この場面では同時履行関係に立つというのはそれなりの意味がある,請負契約固有の意味合いというのがそこにあるような気がいたします。売買ないしは契約総則のところまで遡って,当然に適用があるという解釈になるかどうかというのは疑義が生ずる余地があるので,私もここに規定を置いておく意味はあるのではないかという気がいたします。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいですか。複数の御意見を頂いたところでありますので,その点を踏まえて検討してください。 ○内田委員 請負にだけ置くというわけにはいかなくて,ここに置くと売買にも置かなければいけない,そうすると,この2か所だけでいいのかという問題もあります。いろいろな問題がまだあると思いますので,更に考えたいと思います。 ○鎌田部会長 よろしければ,「第38 寄託」「第39 組合」についても御意見を伺います。特にないようでしたら,「第40 その他」に進ませていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。「第40 その他」につきましては,まず,事務当局から説明をしてもらいます。 ○筒井幹事 「第40 その他」という項目は,元々,要綱仮案にはなかった大きな項目でございますけれども,要綱仮案に基づく条文化作業を進める中で,本日,参考資料として84-2の上段でお示ししましたように,民法の中の規定につきましても要綱仮案に基づく改正に伴って形式的な手直しを要すると考えられる規定が多数あることが判明しました。こうした整備的な改正の受け皿として,これまでの法制審議会の民事系の部会の先例なども参照して,「第40 その他」という項目を立てることにしようと考えた次第でございます。   これに含まれる具体例につきましては,先ほども申しました部会資料84-2の対照表の上段記載の各規定を御覧いただければと思いますし,それについて分かりにくいと思われる規定については,部会資料84-3の補充説明の後ろの方,19ページ以降でございますが,要綱案の原案とは別に参考資料にのみ登場する改正項目についても若干の補足説明を書き加えてあります。この中の幾つかにつきましては,既にこれまでの議論の中で言及があり,御意見も伺ったところでございますけれども,それがこの項目で御議論いただきたいところでございます。   それからもう1点,追加で御説明いたしますと,部会資料84-2の対照表の上段の中に根抵当権に関する民法398条の2と398条の3におきまして,被担保債権の範囲に電子記録債権を追加するという改正案を盛り込んでおります。これは,この部会におけるこれまでの審議の過程で出てきた話題ではなく,諮問事項そのものでもないという整理をすべきなのだろうと思いますけれども,事務当局において検討しております中で,この被担保債権につきましては電子記録債権も含むという解釈がされ,それに基づく運用がされているのが現状であると思いますので,それについて条文上も明確にした方がよいのではないかと考えました。この点につきましては,現に民法の改正について検討している部会がありますので,この部会にそのことを御報告し,御意見などがありましたらお伺いしておいた方がよいのではないかと考えて,このような案文をお示しすることとしたわけでございます。   以上につきまして,本日,もちろん御意見をお伺いしたいと思いますが,時間の関係もございますので,この場で御意見を聴くというだけではなく,今後も,本日お配りしたものについて何かお気付きのことが出てくるかもしれないと思います。そういったときには,できる限り速やかに事務当局まで御一報を,御質問ということで結構ですけれども,御一報いただければということをこの機会にお願いしておきたいと思います。   説明は以上でございます。 ○鎌田部会長 ただいま説明のありました点につきまして御意見等をお伺いいたします。  今すぐにということでなくても御意見をお寄せくださいということでしたので,そのような取扱いにさせていただければと思います。   次に,部会資料85について御審議を頂きたいと思います。事務当局から説明をしてもらいます。 ○筒井幹事 部会資料85は,今回の改正に伴う経過措置について取り上げたものでございます。従前,法制審議会におきましては,経過措置まで検討対象に含めるということは,多くの部会でしてこなかったと思いますし,この部会におきましても最終的な要綱案に盛り込むかどうかということで整理すれば,盛り込まないことになろうと思います。しかし,現実の今後の実務運用を考えたときには,経過措置がどのようなものになるかは大きな影響を与えるであろうと思いますし,したがって,今後,大きな関心を呼ぶところであろうと思います。そういうこともありまして,今回はこの点を部会資料で取り上げることといたしました。   もっとも,ここに書きました内容は,飽くまで現段階で検討中の基本的な方針ということでございまして,今後,方針を修正することも大いにあり得るわけでございます。そういう意味でも,現時点でお示ししているものについて御意見を承ることができればと思っております。個別の項目の内容につきましては,資料を事前に送付いたしましたので,説明は省略させていただこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 それでは,ただいま説明のありました点につきまして御意見を頂きます。御自由に御発言ください。 ○岡委員 今日,配布させていただきました柳沢先生ほかの意見書1通と意見書(補充)というのがございます。この補充の方の裏側,2ページ目を見ていただきたいと思います。部会資料85は2ページの2の少し上のところでございます。要するに部会資料の書き方について誤解を招くので,このような表現はやめていただきたいという意見でございまして,私も同意見でございます。   問題となった表現は2ページの「ただし」からですが,既に経過している場合についてまで改正後の民法の規定,20年は時効であるという規定を適用すると,法律関係の安定を著しく害する結果となることから,経過してない場合に限って適用するのが合理的であると考えられると書かれてあります。これは読む人が読めば,時効であるという考え方を経過しているものについて適用すると,安定を著しく害すると読めてしまって,これはこの部会及び法務省さんの意図と違うのではないかということでございます。   具体的には意見書(補充)の2ページ目の上の方のアンダーラインを引いたところでございますが,反対解釈として,20年が経過している場合には除斥であるという解釈が,本改正によって確定されたということではないはずでございますので,これを踏まえた表現をしていただきたいということです。下の方のブロック体で書いてあるところですが,この4行目で20年が経過している不法行為債権には除斥として消滅しているという反対解釈を認めるものでない,表現はともかく,新法の適用があったとしてもなお従前の例によるという言葉によって,判例及び解釈に委ねられているということだろうと思いますので,もし,その考え方でありましたら,そのようなものに表現を工夫していただきたい,そういう意見でございます。 ○鎌田部会長 関連した御意見はございますか。 ○道垣内幹事 結論として今のお話に反対するものではありませんが,司法に委ねられているというとき,「反対解釈を認めるものではない」という明言も司法に委ねないということですので,このような表現は避けていただければと思います。 ○佐成委員 今のお話は,時効に関する不法行為の特則についてだったかと思いますので,関連で申し上げます。基本的に部会資料85のうち,消滅時効の期間及び起算点に関する規定については,債権の発生時が施行日前か後かということで規律するとなっておりまして,当事者の予測可能性に資するということで提案されていますので,これについては経済界の中では非常に評判がいいということでございます。ですから,債権発生時が施行前か施行後かということで規律するというのは,非常に実務的にも対応しやすいというところです。けれども,部会資料84-1の第7の4の規定と第7の5(1)の規定に関して,施行日前に生じた債権についても改正後の規定を適用するという,そういう考え方もあり得るということで検討されているところについては,余り評判がよくないというところであります。   つまり,一つには,非常に分かりにくくなるということでありまして,今,ありましたけれども,施行日前に時効期間が経過したため,改正後の規定が適用されない債権,施行日の時点で時効期間が経過していなかったために改正後の規定が適用され,時効期間が延長される債権,それから,施行日の時点で時効期間が経過していなかったけれども,改正後の規定が適用されない債権と,三つの類型の債権が生じてしまうのではないかということです。そうすると,非常に時効管理が複雑になるのではないかという指摘がされております。   それから,二つ目の指摘として,自社のサービスについて事故等が発生した場合に,不法行為に基づく損害賠償請求権と,債務不履行,安全配慮義務等に基づく損害賠償請求権の両方の債権が主張される場合が想定されるけれども,この考え方だと不法行為に基づく損害賠償請求権が施行日前にまだ時効期間が経過していなければ,改正後の規定が適用されるというようなことになり,他方で債務不履行に基づく損害賠償請求権の場合には,時効期間が経過していなかったけれども,改正後の規定が適用されないということになってしまって,非常に当事者に混乱が生じるのではないかということがございます。そういったことで,一律に債権発生の前後で区別するような扱いにしてほしいという意向がありましたので,御報告させていただこうと思います。 ○中井委員 今,時効のところについて意見が出ましたので,そこにまず限って申し上げると,時効の起算点と期間の問題と時効障害事由の問題とは分けるべきではないか。時効の起算点と期間の問題は原則的には施行後に発生する債権について適用されるという限りで,佐成さんの意見のとおりになるのだろう。ただ,時効の更新とか,完成の猶予についてはいまだ施行時で時効が完成していない債権,つまり,過去に発生した債権についても当然適用されていいだろう。これが原則論ではないか。   その上で,不法行為については別段の考慮をするという,この部会資料の考え方には十分合理性があると思いますので,人身損害について3年を5年とする考え方,724条後段について時効が成立していない20年前,18年前に発生したものについて新法適用して時効であることを明らかにする,20年経過しているものについては現行民法が適用されるので現行民法の解釈に委ねられる。こういう整理は十分あり得るだろうと思っています。   その上で,なお,債務不履行に基づく人身損害については,ここでは特例に入れていない。それは恐らく不法行為ではないからということだろうと思います,契約に基づく債権だからと。ただ,果たしてそこはそうだろうかという意見が弁護士会の中で出ました。債務不履行に基づく損害賠償請求権について当事者の予測可能性というものを問題にする必要があるのか。ここは長期の適用を認めてもいいという考え方が十分成り立つのではないかという意見があったことを申し上げます。つまり,20年です。   不法行為についてはその程度にさせていただいた上で,弁護士会でもこれだという見解が出ているわけではありませんが,部会資料85に対して幾つかの論点で別の考え方ができるのではないか,更に検討を続けてほしいという意味で,順番に申し上げます。  一つは代理に関する部分ですけれども,代理行為の授与時を基準にする考え方ですが,代理行為をするとき,契約時を基準時とする考え方はあり得るのではないか。その理由として,代理行為の相手方は代理権の授与が施行日前にされたか,施行日後にされたかは知り得る立場にあるとの説明ですが,本当にそうだろうかという疑問です。代理行為時を基準にするという考え方が十分あり得るのではないか。   それから,債権者代位権について,被代位権利を基準にするという考え方になっています。ただ,これも被代位権利がいつ発生したかということを代位行使する債権者が分かるのかというと非常に分かりにくい。この結果として訴え提起してからも訴訟告知をするのかしないのかも,被代位権利の発生日如何で変わることになる。それは不安定ではないか。これは行使時を基準にしていいのではないかという意見がありました。   それから,ここでは明示していませんけれども,第21「債務引受」の部分では債権発生時という考え方を示していると思います,3ページの一番上によれば。債務引受についても果たして債権発生時で切り分けるのか,それよりも債務引受行為が行われた日の方が合理的ではないかという意見がありました。   それから,支払いの差止めを受けた債権と受働債権との相殺の部分についても,自働債権の発生日,原因日を基準にするという考え方のようですけれども,それで安定するのか。差押え時を基準にしていいのではないかという意見がありました。   今,対案として申し上げたことについて,そうあるべきだというところまで議論が煮詰まっているわけではありませんが,提示された問題点ついて,そういう別の意見があったことを申し上げておきたいと思います。引き続き,是非,検討していただければと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。 ○道垣内幹事 1点だけ申し上げますが,債権者代位権について中井委員がおっしゃったように,行使時ではないかという御意見があるというのは分かります。一番ありえないのが,被代位権利が生じた場合という現在の整理なのではないかなという気がします。と申しますのは,代位する債権者の債権の効力の問題であると考えますと,代位債権者の債権の発生時というのが基準になるというのは理解できるのですけれども,代位される債権の発生時というのが問題になるというのが私には分かりませんでした。 ○金関係官 差し当たり趣旨だけ説明いたしますと,御指摘のとおり代位行使時を基準に区別をする考え方も,被保全債権の発生時を基準に区別をする考え方も,もちろんあり得るところだと思いますけれども,ただ,例えば代位行使時を基準に区別をする考え方を採用することを前提として,ある被代位権利を二人の債権者が競合して代位行使した場合を想定しますと,施行日前に債権者Aが代位行使をして,施行日以後に債権者Bが代位行使をした場合には,債権者Aが代位行使をしている限りでは旧法が適用され,債権者Bが代位行使をしている限りでは新法が適用されることになります。被保全債権の発生時を基準に区別をする考え方を採用しても,同様の問題が生じ得ることになります。しかし,それでは,被代位権利を行使される立場にある第三債務者や債務者にとってみれば,代位債権者ごとに適用される法律が異なることになりますので,それは相当ではないと考えられます。そういう問題が生じないのは,代位行使の対象である被代位権利の発生時を基準とする考え方です。しかも,この考え方は,詐害行為取消権に関する経過措置において,取消しの対象である詐害行為がされた時を基準としていることとも整合的です。それらのことを踏まえて,このような経過措置としております。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○山野目幹事 事業のためにする貸金等の債務について,いわゆる第三者保証が行われるに際して導入されようとしている公証人への口授及び公正証書の作成に係る措置が要求される保証契約は,施行日以後に法律行為としての保証契約がされる場合について適用されるという理解でよろしいであろうと考えますところ,その前提でいったときには,その一月前に口授をして公正証書を作成することになりますから,施行日前であっても公正証書の作成をすることができるという,内容的にはそういう規律であるべきだと考えますけれども,それを法制上,それができると明らかにする必要があるかどうかということは,御検討いただければと思います。   考え方によっては,公証人法の規定の一般的な運用として事実を確認する証書を作ることができるものですから,特に規定を設けなくても,それでできるという考え方もあるかもしれません。それでいったときには運用上の問題として公証人に対する啓発等,裁判官は分かっているというお話もありましたが,公証人も分かっていていただく必要があり,そのよううな措置をしていただくことでよいのかもしれませんけれども,いずれにしても論点として御検討いただければ有り難いと感じます。 ○佐成委員 時効のところでもう1点ありまして,先ほど申し上げた意見とは若干,矛盾する面もあるかもしれないんですけれども,時効の完成猶予のところで協議による時効の完成猶予というのが今度,新しく制度として入るということで,これをできるだけ実務としては活用したいという意向が非常に強いものですから,本来,施行日前の債権に関してこの制度を使うというのは,先ほど言った事務処理の観点から考えるとおかしな話なんでしょうけれども,ただ,時効の当事者同士が両方ともいいという状況でやっているというところで,予見可能性という面では少なくとも余り問題にはなりにくいのではないかと思いますので,先ほどの我々の意見が採用されなかったような場合には,こういうような方向性もあり得るかなということで,御検討いただきたいという意見でございます。 ○道垣内幹事 そこだけを,早めに適用する,あるいは,既存の債権にも適用するというのは反対です。 ○岡委員 債権総則については債権が生じた時,契約総則各則については契約締結時と,この大原則で分かりやすいんですが,契約締結後に,改正民法施行日を迎え,その後損害賠償請求権が契約に基づいて発生した場合,損害賠償請求権が生じたのは施行日後なので,損害賠償請求権の範囲については,債権総則なので新法の適用になるんでしょうか。契約に基づく損害賠償請求権の場合には,損害賠償の範囲などの債権総則については契約締結時基準の方がいいようにも思うんですが,どうでしょうか。債権総則の基準時において契約に基づく債権をどう考えるかという質問でございます。 ○鎌田部会長 説明いただけますか。 ○村松幹事 確かに幾つか契約ベースの場合に,債権発生時とルールを立てた場合にどうなるかという問題はありますけれども,基本的には法律行為によって発生するものに関しては,法律行為のときなんだというルールが作られる予定になっておりますので,今の例でいえば契約時になるということで理解するということになります。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○中井委員 先ほど時効の起算点と期間については,債権の発生と申し上げましたけれども,同じ問題があると思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。 ○畑幹事 債権者代位等について,先ほどのお話は債権者が複数出てきたときに,調整がどうなるかということだったと思いますが,詰めて考えているわけではないのですが,例えば債務者に訴訟告知をしなければいけないというようなルールは,別にばらばらになっても全く差し支えないような気もしますし,むしろ,訴え提起がいつかということで分ける方が自然なような気もします。検討の余地があるのではないでしょうか。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。 ○山本(敬)幹事 確認だけなのですが,契約総則・各則の規定に関しては,施行日以後に契約が締結された場合は,改正法によるが,施行日前に契約が締結された場合には従前の例によるというのはそうなのだろうと思うのですが,例えば組合契約のようなものの場合,従前の例にずっとより続けるということに,これだとなるはずなのですが,本当にそれでよいのだろうかというのが少し気になります。賃貸借に関して,更新については特別に考えるということが出てくるわけですけれども,組合に関してはそれでよいという御判断なのかもしれませんが,本当に問題はないのでしょうか。特に組合に関する規定については,今回,たくさん見直しをするのですけれども,多くは従前の不備を補ったものであって,合理化したというのがむしろ適切なのかもしれません。その意味では,本当にこれでよいのかどうかはよく分からないのですけれども,事務当局のお考えをお聞かせいただければと思います。 ○村松幹事 今の点で申し上げますと,組合について何か特に特別な取扱いをしようとは考えてはおりませんでしたけれども,一つは御指摘のように基本的には解釈の明文化に近いものが多いというものあり,仮にとはいえ,新法で規律される方が望ましいから,新法の適用を受けたいというようなことが組合契約の当事者間で議論されることはあり得るかと思うんですけれども,その場合には新しい施行後にそれぞれ契約上,措置をしていただくということが一つ,一応は考えられるのではないかなとは考えておりました。 ○中井委員 今の組合においてもそうだろうと思うのですが,規定によってはより合理的だから改正をしたわけですから,その条項については改正法が適用されてもいいのではないかという意見があり得ると思います。同じようなことを考えると個別に検討しなければならなくて,それが果たしていいのかというそもそも論になるだろうと思います。しかし,弁護士会から出た典型例を一つだけ御紹介しますと,既に成立している保証契約について契約成立後の情報提供義務に関することは,過去の保証契約に適用されていいはずではないか,請負と破産のところで破産手続が開始した場合の請負人の解除権の制限についても,合理的規定と思いますから,それは適用されていいのではないかとか,そういう個別に拾っていくと意見が出てくるかと思います。そういう考え方は普通はしないのかなと思いつつも,組合の中でも特定の規定はそういうものもあるとすれば,どう考えるんだろうかという意見が出たことを申し添えておきます。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。   それでは,本日の審議はこの程度にさせていただきますが,既に何度か,御説明がありましたように84-2あるいは85という資料は,言わば暫定版であり,検討の途中経過の説明資料ということですので,くれぐれも取扱いに御留意いただければと思います。また,本日,いろいろ御意見を頂きましたので,それを踏まえて84-1についても検討を進めますけれども,連動してかなり数多くの部分を変えなければいけないというふうなことになるのは,非常に無理が多いと思いますので,可能な範囲内での検討ということを御了解いただければと思います。   最後に,次回の議事日程等につきまして事務当局から説明をしてもらいます。 ○筒井幹事 次回会議でございますが,来年,平成27年1月13日,火曜日,午後1時から午後6時まで,場所は法務省地下1階大会議室を予定しております。会議の日程のことについて更に付け加えておきたいのですが,1月13日の会議についても更に延期させていただく可能性がございます。私どももまだ走りながら検討している最中でございますので,場合によっては延期をお願いするかもしれません。いずれにしても年内には次回会議の見通しについて必ず御連絡を差し上げるようにしたいと思います。   それ以外の開催予定日ですけれども,既に御案内しているとおり,13日火曜日のほか,20日火曜日と27日火曜日については開催の可能性がありますので日程の確保をお願いいたします。更に2月につきましても,2月3日火曜日は現時点で既に開催の可能性がないわけですが,2月10日火曜日については念のために追加で日程確保をお願いできますでしょうか。改めて整理して申し上げますと,1月13,20,27,それから2月10日,この四つの日にちについて開催の可能性があるということで,日程確保に御協力いただきたいと思います。具体的な開催日については,できる限り早目に御連絡を差し上げるようにいたします。   次回の会議の議事内容につきましては,本日の会議の冒頭でも御案内いたしましたように,要綱案の原案(その2)といたしまして,定型約款について取り上げることを予定しております。その他,必要に応じて今回の審議の補充ということで取り上げる項目が出てくるかもしれませんけれども,少なくとも定型約款については次回会議で取り上げたいと考えております。 ○鎌田部会長 以上をもちまして,本日の審議を終了させていただきます。   本日も熱心な御議論を賜りまして誠にありがとうございました。 -了-