法制審議会 商法(運送・海商関係)部会 旅客運送分科会 第4回会議 議事録 第1 日 時  平成27年7月8日(水) 自 午後1時31分                      至 午後3時56分 第2 場 所  東京地方検察庁 15階 総務部会議室 第3 議 題  商法(旅客運送関係)の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた検討         (1)         第1 旅客に関する運送人の責任 1 商法第590条第1項関係 2 商法第590条第2項関係         第2 旅客の携帯手荷物に関する運送人の責任 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山下分科会長 それでは,予定した時刻でございますので,法制審議会商法(運送・海商関係)部会旅客運送分科会の第4回会議を開会いたします。   本日も,御多忙の中を御出席いただきまして,ありがとうございます。   初めに,前回会議から本会議までの間に参考人及び関係官の交代がありましたので,御紹介いたします。   御紹介いたしましたら,その場でお名前と御所属等の簡単な自己紹介をお願いいたします。まず,西塔謙二前参考人に替わりまして,中嶋邦夫参考人でいらっしゃいます。 ○中嶋参考人 中嶋です。よろしくお願いします。日本バス協会の常務理事をやっております。よろしくお願いします。 ○山下分科会長 次に,小田桐俊宏前関係官に替わりまして,金子佐和子関係官でいらっしゃいますが,まだお見えになっていません。   次に,小倉佳彦前関係官に替わりまして,有吉真哉関係官でいらっしゃいます。 ○有吉関係官 有吉と申します。航空局航空事業課に所属しております。よろしくお願いします。 ○山下分科会長 最後に,宗宮英恵前関係官に替わりまして,落合英紀関係官でいらっしゃいます。 ○落合関係官 消費者庁の落合でございます。どうぞよろしくお願いします。 ○山下分科会長 では,どうかよろしくお願いいたします。   本日は,菅原貴与志委員,道垣内弘人委員,野村修也委員が御欠席とのことであります。   では,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いします。 ○松井(信)幹事 それでは,御確認いただきたいと思います。まず,事前送付といたしまして,分科会資料4,「「商法(運送・海商関係)等の改正に関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要」と,分科会資料5,「要綱案の取りまとめに向けた検討(1)」がございます。このほか,席上配布資料といたしまして,民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の新旧対照表も置いております。これは,本年3月31日に民法の一部を改正する法律案及びその整備法案が閣議決定され,同日,国会に提出されましたが,この整備法案のうち,この分科会に関係するものとして,商法,保険法及び船主責任制限法の新旧対照表を御参考までに配布したものでございます。 ○山下分科会長 それでは,本日の審議に入りたいと思います。   本日は分科会資料5について御審議いただく予定でございます。審議の進行次第でございますけれども,午後3時30分を過ぎるようであれば,その辺りで適宜休憩を入れることを予定しております。   それでは,審議に入りたいと思います。まず,「第1 旅客に関する運送人の責任」,「1 商法第590条第1項関係」の「1 議論の経緯等」,「2 パブリック・コメントの結果」,「3 検討」のうちの「(1)商法第590条第1項の規律について」に関し,御審議を頂きたいと思います。この部分に関しまして,事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 まず,パブリック・コメントの結果について御説明いたします。分科会資料4の本文1ページに記載いたしましたとおり,商法(運送・海商関係)等の改正に関する中間試案に関して意見募集を致しました結果,企業や大学等を含む団体から135団体,商法学者,弁護士及び海事代理士を含む個人から8名の意見が寄せられ,その意見の概要につきましては分科会資料4にお示ししたとおりでございます。パブリック・コメントの結果につきましては,単純な数だけで判断するものではなく,その内容の合理性や意見提出者の属性等も踏まえながら,要綱案の取りまとめに向けた今後の審議において参考にさせていただきたく存じます。   なお,この分科会資料4は次回会議以降も適宜参照する可能性がございますので,お荷物にはなりますが,事前送付する分科会資料などとともに御持参いただきますようにお願いいたします。   それでは,分科会資料5の「第1 旅客に関する運送人の責任」の「1 商法第590条第1項関係」の4ページの「(1)商法第590条第1項の規律について」までを御説明いたします。   これまでの審議では,590条1項の規律の実質的内容が分かりにくく,中間試案の乙案にいう590条1項の規定に反する特約の内容や,このような片面的強行規定を新設することによる影響も判然としないとの御指摘がございました。   また,乙案のような片面的強行規定の新設については意見が分かれ,甲案を支持する立場からは,その理由として,行政的規制として運送約款につき主務大臣の認可を受けるなどの必要があること,消費者契約法や民法の一般条項に基づいて,裁判手続において事案に即し柔軟かつ適切に不当な運送約款が制限されてきたこと,実務上,一般には旅客の生命又は身体の侵害に係る運送人の責任に関し旅客に不利な特約はされていないこと,大規模な地震や火山の噴火などのような緊急時において,記者やボランティアの方々を輸送するに際しては運送人が責任を負わない旨の誓約書を交わすことがあるが,そのような誓約書が無効となると運送人が運送の引受けをちゅうちょするおそれがあること,消費者の生命又は身体を害するおそれがある事業が多数ある中,旅客運送に限って片面的強行規定を設けることは疑問であること,さらに,旅客の生命又は身体の侵害が運送の遅延によって生じた場合にまで運送人の免責が一切認められないのは酷であることなどが指摘されました。   一方で,乙案を支持する立場からは,その理由として,旅客の生命・身体という重要な法益については,たとえ一部の免責であったとしても認めるべきではないこと,一部の国内航空運送において,旅客の生命又は身体の侵害に係る運送人の責任を一定程度に制限する旨の契約条項が見られること,また,乙案は消費者契約であるか否かを問わず,事業者の軽過失による責任を免責する旨の特約を一律に無効とするという点で予測可能性に優れること,さらに,法人が契約の当事者となる場合や個人が事業のために契約の当事者となるなどの場合には,消費者契約法の適用はなく,旅客が同法による保護を受けられないことなどが指摘されました。   パブリック・コメントの結果を見ますと,商法第590条第1項所定の「旅客カ運送ノ為メニ受ケタル損害」の範囲が不明確である旨の指摘がありましたが,その範囲をどのように明確化するかについて具体的に意見を述べるものはありませんでした。   また,商法第590条第1項の規定に反する特約の効力について,甲案も乙案もそれぞれ支持する意見が多数寄せられ,その理由としては,ただいま御説明いたしました内容と重なる部分も多く見られたほか,海上旅客運送事業者からは特に妊婦,重病人などの旅客に対しては,船内では出産,急病等に対応する能力がないことを説明した上,なお乗船を希望する場合には,旅客船事業者に一切の責任を問わないなどの誓約書等の提出を求めることが多いという実務の御紹介もございました。   以上を踏まえまして,仮に片面的強行規定の新設の当否を議論するとしても,その前提として,運送人がどのような場合にどのような損害の賠償責任を負うかについて可能な限り明らかにすることが望ましいという考えの下に,特に他の旅客の関与に起因して損害が生じた場合や旅客自身に一定の事情があった場合などについては,運送人が賠償責任を負うかどうかが争われることも多く,我が国においても分科会資料5の5ページの(注1)に掲げるような裁判例がございます。   例えば,アは,運送人の注意義務の程度に関するもので,通常予想されるタクシーの走行によって生ずる身体の揺れ等による危険については,乗客において危険防止に努めるべきであり,危険回避が可能と認められる場合にまでタクシーの運転手に安全配慮義務違反があったとはいえないと判断されております。   次に,イは,運送中に他の旅客の関与に起因して損害が生じたもので,aでは,鉄道会社が,駅構内で発生する犯罪行為について警察への通報を基本的対策とし,それ以上の特段の防止策・抑止策をとっていなかったとしても,旅客に対する債務不履行となるものではないと判断され,また,bでは,列車内の網棚上の旅行用かばんの落下による乗客の負傷事故について,国鉄が義務を負う運送の安全については,鉄道営業法その他の関係法規の趣旨からして,専ら鉄道事故の防止,列車運行上の安全をいうものと解すべきであり,旅客相互間の事故までをも含むとは必ずしもいえないから,国鉄には運送契約上の債務不履行責任はないと判断されました。   そして,ウは,運送中に旅客の病気に起因して損害が生じたもので,大型フェリーの旅客が乗船中に気管支喘息の発作を来し死亡した事故について,社内の非常時用マニュアルを斟酌しつつ,海上運送人に陸上医療機関への連絡義務違反があったものと認め,また,素人目にも危篤状態にあると認識した時点から巡視艇の出動要請をするまで約35分が経過したことについても,陸上医療機関への搬送義務違反があったものと認めた上で,当該旅客の気管支喘息は重症であり,かつ,薬を携帯していなかったことなどを勘案して,過失相殺により損害額の8割を減じた範囲で海上運送人の賠償責任が認められました。   最後に,エは,運送中に障害者である旅客に損害が生じたもので,aでは,鉄道会社が障害者である旅客から乗車駅から下車駅までの所要の介助などの対応を引き受けたことを前提に,駅員は,当該障害者が車椅子のブレーキを自ら操作できないことや,他の旅客との接触衝突により車椅子が線路の方向に押し出される危険があることを認識し得たのだから,そのような危険が生じないよう,少なくとも車椅子のブレーキを掛けて,その傍らを離れるべき注意義務があると判断しましたが,他方,bでは,視覚障害者が市営地下鉄のホーム上で車両と接触し線路脇に転落受傷した事故につき,事故当時,ホームに常時駅員等が配置されていなかったからといって,市の法的義務違反はないと判断されました。   また,航空運送に関するワルソー条約について,実質的には厳格責任であり,過失推定責任を採用する商法の規律と同一ではございませんが,運送人の賠償責任が否定されるべきかという価値判断の点では共通する側面があるものとして,条約締約国である米国では,6ページの(注2)に掲げるような裁判例があります。   例えば,イは,運送中に他の旅客の関与に起因して損害が生じたもので,aでは,旅客の座席上の手荷物収納扉をほかの者が開けたところ酒瓶の入った袋が当該旅客の頭に落下した事案につき,条約上の事故に該当するとされた一方で,bでは,旅客が乗員の指示により座席の上に荷物を入れようとした際,通路側の者が急に立ち上がったため肩を負傷した事案につき,条約上の事故に該当しないとされました。   また,ウでは,運送中に旅客の病気に起因して障害が生じたもので,aでは,旅客が心臓発作で倒れた際,近くの空港に緊急着陸をせず,また,機内や到着地で手配した救急車に必要な設備がなかったため当該旅客が病院で死亡した事案につき,条約上の事故に該当しないとされた一方で,bでは,旅客に心臓発作が生じた際,航空会社が緊急着陸をしなかったため3度のバイパス手術を受けることとなった事案につき,航空会社が業界のスタンダードに反して緊急着陸をしなかったことは事故に該当するとされました。   このように,第590条第1項において,「旅客カ運送ノ為メニ受ケタル損害」に該当するか否か,「運送ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明」したか否かについて,最終的には列車・自動車・船舶・航空機などによる旅客運送の実態,旅客が被害を受けた具体的な状況,その状況に関する運送人側の認識及び具体的な対応の在り方などを総合考慮して判断せざるを得ないものとも考えられますが,この規律内容の明確化をどのように考えるかについて御審議いただきたく存じます。 ○山下分科会長 それでは,ただいま説明のありました部分,すなわち,部会資料5の4ページから7ページにかけて,「(1)商法第590条第1項の規律について」までの部分についての御審議を頂きたいと思います。どの点からでも,御自由に御発言をお願いいたします。 ○河野参考人 今御説明いただいた部分に関して,意見を申し上げたいと思います。   資料5ページから,(注1)というところに,今御紹介いただいたように裁判例がたくさん書かれております。その裁判例を拝見いたしますと,現行の商法590条1項の下にあっても,その事案ごとに旅客が運送のために受けた損害であったかどうか又は運送人等が運送に関して注意を怠っていたかどうかについて,適宜判断されていると受け止めました。それを考えますと,現在の590条1項の規律というのは,明確化というその言葉の内容というよりは,現行のまま維持するということで差し支えないのではないかと考えました。 ○加藤参考人 日本旅客船協会の加藤でございます。   590条1項の規律の明確化ということについてでございますけれども,これは後に出てくる論点とも大きく関わってくるかと思います。現行維持ということで甲案ということになれば,特に,適宜判断されているということで,適切に裁判の中で判断していくというこれまでの考え方でいいのではないかと思います。   ただ,乙案というものを採用するということが原則になりますと,やはりこの590条1項,その本文そのものを,もう少しやはり規律の明確化をしていくということが望ましいのではないかと考えます。そもそも590条1項というものの範囲,そして責任の範囲なりというものが不明確であるままこれが強行規定化されるということになると,一体何が強行規定となるのかというのがいま少しぼんやりしているままで,輸送の現場がやはり混乱するというのが懸念されるところでございます。   今回の新幹線内の案件もありましたが,例えば,第三者の悪意により発生した損害についての運送人の責任の範囲については,この際,明確にしていただければと思う次第でございます。 ○田中幹事 私も,甲案,乙案いずれかという意見ではないんですけれども,今,加藤参考人がおっしゃったように,仮に乙案にするとすれば,法律の条文の解釈について様々な問題が出てくると思っています。   具体的な例を挙げますと,船舶だけとはもちろん限りませんが,船舶の場合は,やはり高度な危険があっても旅客を輸送せざるを得ないような状況というのはあります。割と直近での大きな事案ですと,昭和61年に大島の三原山が噴火をした際は,噴火から約13時間の間に,どたばたの中で全島避難を決行し,約1万人が避難をしました。この1万人の輸送の多くは,現在就航している東海汽船が大型船を出して,これを避難させたわけですけれども,このような旅客輸送で,要するに火山弾が飛んでくるような,そういう本当に緊迫した非常に厳しい状況の中で,非常に大きな賠償責任を負いかねないというような状況が,法的に,法律でそういう義務が余りに過度に課されてしまうと,本来,人命救助ということで,当然そこに就航する船員も大変危険な状況になるわけですけれども,正義感を持って人命救助のために赴くと,それがたまたま旅客船で旅客輸送だという形態であるがために賠償責任が出てしまう。これが一方で,例えば保安庁の船に救助されれば旅客船でないので,旅客事業でないので,それに該当しないのかもしれませんけれども,そういったことがその法律の条文の中で解釈が分かれてしまうというようなことは避けていただきたいなと思います。   意見としては,決して危険な海象あるいは危険な地域に船舶の運航というのは通常は想定していないんですが,気象・海象で平穏であったものが危険になったり,あるいは,ある程度危険が予測をされていても,それは人道的あるいは人命の救助というような大きな意味で運航をせざるを得ない,そういった場面もままあるということも十分想定をして,規律の設定をしていただければと思います。 ○山下分科会長 ほかにいかがでしょうか。   加藤参考人も田中幹事も,乙案をとるということになると特に何らかの明確化が必要だという御趣旨だと理解してよろしいでしょうか。 ○加藤参考人 はい,そうです。 ○田中幹事 はい。 ○山下関係官 先ほど,加藤参考人の方から,第三者の悪意や故意について責任を負わないという条文の明確化を乙案をとった場合にはすべきだという御意見がございまして,それについては現行の590条も,運送人が運送に関して注意を怠らなかったことを立証すれば免責されることを規定しておりますので,その第三者の行為につき,運送人が止められるのに止めなかったなどという事情がない場合には,通常,注意を尽くしたけれども損害が発生してしまいましたということで免責されることになるのかと思います。そうなると,現行法の条文でも,第三者の犯罪行為とか,悪意,故意行為について責任を負わないということは,十分明確化されているのではないかという気はいたします。 ○加藤参考人 要は,個別事情判断でということになってしまうというところが問題ではないかと存じます。もちろん,おっしゃるとおり裁判の中でそれが論点となれば,明らかにされるとは思いますが,少なくとも何らかの基準は何か明確にしておく必要があるのではないかと思う次第です。   ちょっと後ほどの論点でも申し上げたいんですけれども,やはり公共交通機関というものは,一つの空間を様々な方々で共有するというのが大きな特色であるかと思います。したがって,サービスを提供する側にとって義務があるのは当然のことでございますけれども,サービスを受ける者についても,危険物の問題など,やはりきちんと果たすべき義務というものはあるのではないかと存じます。   今回の事案のようなものについて,単純にこれは第三者の行為だから運送人には責任がないということにはならないのが590条1項の考え方ですので,裁判になれば,当然それが防げたか防げなかったか,運送人として防ぐための適切な注意を果たしていたかどうか,これが問われるということになると存じますが,その辺が少し漠然としているので,運送人としてどの程度まで防ぐ手立てを講じていれば,590条1項の注意義務を果たしたことになるのか,そのあたりのメルクマールが何かないかなということでございます。 ○河野参考人 今の御意見なんですけれども,利用者側にも何か義務が生じるというふうな御意見に聞こえました。運送契約を結ぶにおいて,利用者側は常識の範囲内で,公共の空間であるということに対して配慮はしますけれども,こちら側がその移動に関して義務を負うかどうかというと,今の御意見は少し違うかなと感じました。   それで,590条,私自身は様々な条件をしっかり勘案していただいて,先ほどの新幹線内の事故においても,当然のことながら,私のような一般人があの事故を見ても,運送人に大きな責任があったかといいますと,運送人の方が逆にある意味,被害を受けているのかなと受け取られるような事例だと思っておりますので,そこを拡大して,こういった商法のような広範な法律のところに,より細かいところを入れるのはどうかなと思っています。   私自身は,この後,片面的強行規定,つまり乙案の方を支持したいと思っておりますので,今のような,先ほどから2例お話しになられましたけれども,そのような事例は特例として,このようなことをどう考えるかというふうな部分で,つまり,いわゆるただし書のところで検討すべきことであって,590条の1項で検討すべきではないと感じました。 ○田中幹事 先ほどの発言の趣旨というか真意を含めて,もう少しお話ししたいと思いますけれども,私の言いたかったのは,正しくは,通常時の問題ではなくて,非常時における船舶の運航,旅客運送,そういった場合も全て損害の責任を負うということであれば,そういう人道的,あるいは人命救助的なそういう措置が,旅客輸送が必要な場面に,事業者あるいはそれに従事する者がちゅうちょしてしまう,逆にそういう正義感を持って行動ができなくなるような規律では余りうまくないだろうと思っています。   したがって,甲案の場合でも乙案の場合でも,これら非常時の船舶による旅客輸送に関しては責任は負わないとか,あるいは責任が軽減されるとか,そういったルール,規律が必要なのではないかということが私の意見でございます。 ○山下分科会長 ほかの委員,幹事,あるいは参考人,いかがでしょうか。 ○塚越参考人 すみません,ちょっと論点がずれてしまうのかもしれませんけれども,私も基本的には,甲案である限りは今の590条1項の規律のまま,すなわち解釈で検討されるという内容でいいと思うんですが,乙案にする以上は今の590条1項の規律がどういう規律であるかというのを明確にすべきだというのは,同じ意見です。   ただ,どういうふうに明確化するかということについては,特にこういう場合は免責されますとか,こういう場合は運送人の責任がありませんとか,そういう明確化というよりは,私のイメージは,いわゆる590条1項が掛かる範囲,どこまでが運送人の義務なのかとか,それとか,基本的に債務不履行責任とどう違うのか,運送人の義務の程度みたいなものを,乙案を採用するのであれば明確化すべきなのかなと思っています。   ですから,どういう場合に免責になるかとか,そういうのはもちろん明確化した方が望ましいのかもしれませんけれども,乙案とセットで考えた場合は,もっと違うことを明確化すべきなのかなと思います。 ○山下分科会長 具体的なところは,少し何かサジェストはありますか。 ○塚越参考人 例えば,ここにもあるんですが,遅延の場合は入りませんとか,それとか,運送に付随する義務がどこまで入るかですね。ここの例にもありますけれども,食堂車とか,鉄道の場合だったら,例えば駅で急病になって倒れてしまう方とか,それを救急車で搬送したりすることはよくあるんですけれども,そういう場合にも590条が掛かって片面的強行法規の対象になるのかとか,そういう義務の外縁みたいなもの,そういうのを,もし乙案を採用するのであれば,明らかにしていただかないと,ちょっと難しい状況になる場合があるのかというふうな気がします。 ○山下分科会長 ありがとうございます。 ○田中参考人 今のをちょっと逆戻りしてしまうかもしれないんですが,運送人の定義というのをどの辺りまで広げていくのかということなんですけれども,実は新しくタクシー業界の方に新経連というところが提案しているのは,ウーバーとかリフトとか外国の無線システムを使った個人同士を結び付ける運送というのが出てきているんですね。   要は,何かというと,学生でも主婦でも,例えばA方面に行く人は登録しておいてという,それで登録して,A方面に行く人は何人いるから誰が乗りますかみたいなのをマッチングして,乗った人は寄附を払うというような状況になっているんですね。今のところは道路運送法上,駄目だとは言われているんですが,シェアリングエコノミーだとかライドシェアとかという名の下に,一般のタクシーや車と同じように同じ道を走って,結果的には寄附がされているのかもしれませんけれども,そこで,例えば福岡ではウーバーという会社が実証実験をして,そこの責任範囲というのは500ユーロだったんですね。事故が起きても7万5000円しか面倒見ないよと,あとは個人同士の問題だからやってくださいよという中でのその運送人,それが運送人なのか,では,そのウーバー,間に入ったところが運送人の役割をしているのかというところをもうちょっとしていかないと,これからどんどんいろいろな輸送が出てきた中で,利用者が選んだものが結局,旅客運送ではなくて,そういうもので事故が起きたときに賠償が得られないとかということがかなり外国では出てきているので,その辺のところの運送人の定義とかいうところを何か,元に戻ってしまうかもしれませんけれども,もう少しこっちの方で縛っておかないと,いわゆる業界で白タクというんですけれども,白タクを解禁しろということを今言われているんですね。   となると,二種免許を持たない人間が,主婦でありお年寄りであり,要は酒屋の配達の人が,空いているからあそこまで乗っていって,それに対して寄附を頂戴よというのが,これは運送ではないでしょうという理屈でそれを実施しようとしているという事実があって,もうこれは日本以外の国では全部行われてきて大きな問題が起きて,それぞれの国でいろいろな法律改正がなされているんだけれども,日本はまだそこら辺までいっていないので,だから,ちょっと逆戻りかもしれないけれども,運送人の定義というのをもう少し明確化した中でやっていかないと,同じ道路で同じ輸送手段を使っているにもかかわらず,片方は運送人ではなくて片方は運送人だという中での乗った人たちへの不利益というのが多分選べないと思うんですね。その辺のところをもう少し何か入るような,網を掛けられるようなものにしておいていただきたいという意見でございます。 ○山下分科会長 ありがとうございます。 ○河野参考人 今の田中参考人の御発言には大いに共感するところでありまして,いわゆるシェア経済といいましょうか,その考え方が入ってくる。ICTの発展に伴って,旅館業の方で言えば,Airbnbという形,それから,運送の方で言えば,今おっしゃっていたようなウーバーのような方式が今後,日本の社会の中に入ってくる可能性があります。そのときにCtoCな形を一見はとるわけですけれども,そのときに利用者側はどのような補償を受けられるのか,飽くまでもその一対一の契約の中でしか補償が受けられないという状況になりますと非常に不安でございます。今の日本の法体系の中でいうと,それは受け入れられないという状況になっていますけれども,いつ何どき状況が変わるかもしれませんので,今のようなところは是非考えておいていただければと思っております。 ○山下分科会長 ほかにいかがでしょうか。   それでは,もし他にないようでしたら,次の論点も密接に絡んでくることは間違いないと思いますので,また(1)の点でも,関連する点でも,この後,御意見があればそこでいただくことにして,取りあえず次に進みたいと思います。   次は,(2)の「片面的強行規定の新設の当否について」でございますが,これも少し分けて御議論いただければと思います。まず,(2)のうちの「ア 国内航空運送における責任制限約款の撤廃に向けた動き」と,「イ 仮に片面的強行規定を設けることとする場合のその適用範囲」のうちの(ア),遅延に関する責任を免除する条項について御審議いただきたいと思います。   まず,事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 それでは,7ページのアと,イの(ア)について御説明いたします。   まず,アの「国内航空運送における責任制限約款の撤廃に向けた動き」につきまして,現在,国土交通省では一部の国内航空運送において見られた旅客の生命又は身体の侵害に係る運送人の責任を一定程度に制限する旨の契約条項の撤廃に向けた取組を行っているとのことでございまして,この点は,後ほど国土交通省の担当官から御説明いただきたいと存じます。   次に,イの「仮に片面的強行規定を設けることとする場合のその適用範囲」につきまして,仮に片面的強行規定を設けることとする場合に,その適用範囲をどのようにするかについても並行して検討しておくことが今後の審議の充実に資するものと考えられますので,まずは実務上想定される各種の契約条項を念頭に,信義則上,旅客の利益との均衡から見て,そのような条項が許容されるべきかという実質的な価値判断について議論させていただきたく存じます。   その一つ目として,「(ア)運送人の注意義務違反により到着が長時間遅延し,これにより旅客が体調不良に陥り,又はその病状が悪化した場合について,運送人の損害賠償責任の全部又は一部を免除する条項」を挙げておりますが,(注)のとおり,鉄道旅客運送につき同種の条項を有効とする旨の裁判例がございまして,当該条項を一律に無効とすることは相当でないとも考えられますところ,この点につきましても皆様の御意見を頂戴いたしたく存じます。 ○山下分科会長 それでは,まず,国内航空運送における責任制限約款の撤廃に向けた動きにつきまして,国土交通省航空局の有吉関係官から御説明をお願いいたします。 ○有吉関係官 では,私,有吉の方から,国土交通省の方で責任制限約款の撤廃に向けた動きについて説明させていただきます。   まず,昨年の冬にこの責任制限約款というものが国内運送事業者にあるかということを調査しました結果,41社の約款につきまして責任制限条項がありましたというのが事実でございます。この41社というのは,JALやANAといった大手のエアラインではなくて,ヘリコプターを使うような中小の会社ということになります。こちらの41社につきまして,昨今の消費者契約法の趣旨ですとか,保険とかということから,この責任以上の金額が支払われているといったような昨今の事情を御説明しまして,約款の改訂をお願いしましたところ,先週の金曜日(7月3日)現在の段階で41社の約款につきまして改訂が行われまして,全てについて認可がおりております。ですので,現状でこの責任制限約款というものは,航空運送事業者におきましては,ないということになっております。   以上,説明になります。 ○山下分科会長 ありがとうございました。それでは,ただいまの有吉関係官の御説明と,事務当局から説明のありました部分につきまして,御審議いただきたいと思います。御自由に御発言をお願いいたします。 ○松井委員 松井でございます。有吉関係官,ありがとうございました。   ちょっとお伺いしたいんですけれども,今,日本の国内航空運送の方ではもう,そういう約款,責任制限の約款はなくなったという御説明があったんですけれども,これは,この時点ではなくなったけれども,法規制があるとか,そういったことではないんでしょうか。それから,先ほどお話のあった大手と中小で,私も詳しくないんですが,何か規制が違うのか,例えばJRさんとかはそれほど数のある会社ではないので,そういうところの約款と国土交通省の今の規制というかお願いというのは,どういう関係になるんでしょうか。法的な拘束力があるのか,法的な拘束力は特にないのか,それによって,約款等に対する行政上の規制が働いているのであれば,それを勘案するという判断もあるかということで,お伺いしている次第です。よろしくお願いいたします。 ○有吉関係官 では,私の方から回答させていただきたいと思いますけれども,まず最初に御容赦いただきたいところは,私の所管は航空になりますので,今JRというお話がありましたけれども,鉄道に関しましては所管外ですので,今日は説明を割愛させていただきます。航空エアラインにつきましては,まず,大手と中小で法律規制が違いますかということに関しましては,違いはございません。同じものになります。   続いて,こういった責任限度額を付けるような約款につきまして法制度がありますかという御質問ですが,現状,約款につきましては許認可制ということになっております。ですので,約款が改訂される場合には,国土交通省航空局において許認可の判断がされることになります。この判断に際しましては,公衆の利益に反するかどうかを検討するということが,これが航空法で規定されております。この判断におきまして,この責任限度額を設けるということが公衆の利益に反するという判断がされましたら許認可がおりないということで,今後,約款には出てこないということになります。 ○山下分科会長 よろしいでしょうか。 ○松井委員 ありがとうございました。恐縮ですが,塚越参考人,もしJRさんの約款がお分かりになったら教えていただきたいんですが,約款はやはり認可制ということでしょうか。 ○塚越参考人 いえ,鉄道については,約款は,認可制ではないです。 ○松井委員 特に標準約款というものはなくて,ただ,JR各社さんは同じものを事実上使っていらっしゃるという御趣旨ですか。 ○塚越参考人 そういう理解です。国鉄時代からのものを引き継いで,事実上同じものを使っているということです。 ○河野参考人 先ほど御説明いただきました,まず,鉄道等の旅客運送における遅延等をどう考えるかということで御意見を申し上げたいと思います。   ここに示されている例なんですけれども,これは7ページのところに示されている,裁判例もあるということでここに書かれていますけれども,この引用された範囲で判断しますと,急行が遅延した場合の損害賠償について,急行料金をその上限とするという規則がいいかどうかということを争った事例であると読めてしまいまして,人身損害に関わる事案であったかどうかがちょっと分からなかったものですので,今回は重大な法益である片面的強行規定は人身損害に関してどう考えるかという検討をしていると思っておりますので,ここに書かれている事例との関連について,これは,この遅延が人身損害といいましょうか,それに関わる事案であったかどうかというのを説明していただきたいというのが1点目で,その上で,長時間遅延した場合は,やはり車内に閉じ込められた状態になることから,旅客が体調不良に陥ったり,御病気の方の病状が悪化したりする場合というのに関して言うと,やはり運送人の責任というのは,私は,免れないのではないかと考えます。   先日のJR北海道における青函トンネル内の事例などもあります。長時間閉じ込められて,あと自力で線路を通って外に出たというふうなこと,あの事例もございますし,それから,今後,非常に高齢化社会が進んでいきます。高齢化が進んで,公共交通機関を含めて旅客運送に頼る者がどんどん多くなると思うんですね。これからの世の中のことをそういうふうに考えますと,例えば長時間遅延した場合の旅客への配慮というのは,恐らくこれまで以上に必要ではないかと思うんですね。2時間遅れて,それに対しては責任を負わないという,もちろんその遅れた事由をどう勘案するかという大前提はあると思うんですけれども,旅客への配慮というのは本当にこれまで以上に必要になると思っています。長時間遅延の場合の免責条項というのを有効と示すことは,私自身は適切ではないと考えています。 ○山下分科会長 判例について,どうでしょうか。 ○山下関係官 今,御質問のあった判例につきましては,特に人身損害の賠償を請求したものではないです。 ○松井(信)幹事 この点,JRの塚越参考人にもお伺いしたいのですけれども,実際には,人身損害といった場合に,軽微な頭痛辺りから非常に重篤な障害までいろいろな場合があろうと思うのです。この約款で全て免責になるという実情なのか,それともやはりそれは程度に応じて個別に判断されていらっしゃるという実情なのか,そこを一つお伺いしたいという点がございます。   そして,今回の部会資料で書きましたのは,7ページの(注)の少し上にありますとおり,遅延の場合に賠償責任を免除することを全て無効としてしまうと,軽微な人身損害についても全て賠償責任を負わざるを得ないこととなり,そこが果たして大丈夫なのであろうかと思いました。むしろ,商法でその点を全て一律に決めるよりは,この(注)の判決の最後の方にもありますが,個別の事情で民法90条の適用によって公序良俗に反するとの判断がされる場合もあり得るかなと,そのようなことも考え,商法の中でこのような遅延による損害の免責条項を一律に無効とするというのもちょっと行きすぎかという印象を持ちまして,このような資料を作っているところでございます。ですので,実務上の取扱いにつき,もしお分かりでしたら,塚越参考人にお教えいただければと思います。 ○塚越参考人 実務上の取扱い,基本的に建前と本音みたいなのがやはりどうしても出てくるんですが,建前としてやはり遅延の場合は2時間以上で特急券を返す,それだけですよという説明をしています。ただ,実際上,当社の責任,例えば車両故障とかで車内に長時間閉じ込められてしまって,冷房が切れてしまってすごく蒸し暑くなってしまって倒れる方が出ているという場合は,これはもう実態としては,治療費とかお見舞金とか,そういうような,法的責任とは別にという言い方をしているんですが,そういうところで配慮はしています。   ですから,これぐらい遅れてこれぐらいの重篤な病気になったからこうやるんですという基準は全くないんですけれども,やはり事故の原因とか遅延の度合いとか車内の状況とか,病気の性質とか,それによって個別に判断させていただいて,当社としてサービス上すべきだと思うことについては,やはり治療費とか,そういうのは負担しているというのが実態です。余り答えにはなっていなくて申し訳ないです。 ○山下分科会長 ありがとうございます。この点,いかがでしょうか。 ○松井委員 今,松井(信)幹事と,それから塚越参考人がお話しになったこと,日弁連の委員会でもその点かなり議論されました。遅延の場合に,確かにケースはいろいろありまして,飛行機とか船とか新幹線に代表されるような特急の電車で比較的余裕のあるところであれば,病状が分かるとか,お医者さんがいるとか判断ができるんですけれども,遅延で言いますと,日常の通勤電車,いつも遅れているという言い方は失礼かもしれませんが,遅れていることは大変多いわけですけれども,その中で今,塚越参考人が言われたような事態が起こった場合に,全くその交通機関に責任がない停電であるというようなケースと,それから,信号事故のようなもので交通機関の方にも責任があるというケース,ただの遅れではあるんですけれども,駅間で止まったがために問題が拡大したケース,お話のあった,電気が切れて温度が上がったというようなケース,いろいろなケースがあります。それから,重篤かどうかというのが,正に飛行機であれば,お医者さんがいて診れば分かるんですけれども,満員電車の中では多分,おなかが痛いというお客さんが出たときに,そのおなかが痛いというお客さんは腸捻転なのか腹膜炎なのか,それとも食べすぎなのかというのは分からないので,その辺については結局,結果責任になるのかというところもあります。元々私どもとしては,人命人身についての責任というのは大変重いものであると考え,片面的強行法規という可能性は否定しません。ただ,法律として作る以上は,責任の範囲はやはり明確にしなければ片面的強行法規とはなり得ないとは考えておるのですけれども,中間試案の前までは,漠として過失責任の免除は駄目だと,責任の上限は駄目だと,純粋に運送の業務でなければいかんと考えておりました。と申しますのは,食堂車等,そういった付随的な業務というのは入らないだろうというようなことを漠とは考えていたのでありますけれども,この遅延,それから後で出てくる例を見ますと,果たしてきれいに条文で除けるのかというところで,今,松井(信)幹事のおっしゃった非常に悩ましいというのが今の段階での議論です。もし補足すべきことがあったら雨宮幹事にお願いしたいんですけれども,私どもの方の議論もそのような状態で,いずれの可能性も否定はしないんですけれども,条文として一般の人にも分かりやすく,また,運送機関の方にも,前回のような新幹線の不幸な事故があったがために,飛行機と同じようにセキュリティチェックをして乗るようなことになるのが果たしていいのかどうか,そういったことからも,私どももそうですけれども,皆さんにもお考えいただければというのが日弁連の委員会の検討途中の御報告でございます。 ○山下分科会長 ありがとうございます。 ○加藤参考人 今の塚越参考人のおっしゃるとおり,なかなか一律,全ての特約を禁止というのも難しいし,一律,遅延だから全部セーフというのも,これも難しいだろうという意見ももっともだなというところもあろうかと思います。   松井委員が先ほどおっしゃられた中で,上限を設けるのは駄目だというのが漠然とというお話がございました。旅客船協会としては,これまで申し上げてきたとおり,甲案をベースに考えるべきではないかという意見ですので,この点は誤解のないように申し上げておきますが,仮に乙案となった場合のこの遅延の話ということで今,議論が進んでいるんですが,その議論の進め方として,旅客に不利な特約は一切認めないとした上で,そこからどういうふうに適用除外を設けようかという議論で今回の議論は進んでいるわけですけれども,そもそも,まず片面的強行規定を掛ける範囲,これをもう少し明確化して,その上で,適用除外の話に移っていくというのが適正な議論の進め方ではないのかなと思います。   というのは,元々その片面的強行規定を置くことについていろいろな問題があるというのは,これまでも審議会の中で複数の先生がおっしゃっておられますけれども,その中で,上限を設けるのは駄目というのは少なくとも明確なのではないかというような意見もあったかと思います。甲案ではなくて乙案だと仮になった場合に,旅客に不利なものは駄目と漠然と規定するのではなくいうことではなくて,まずは,少なくともこれとこれは駄目というように,強行規定にする範囲をもう少し絞って明確にし,その上で,こういうものだけは認めていいのではないかという適用除外の範囲の議論に移っていかないと,そういう議論の進め方の方が建設的なのではないのかなと思います。   元々,前回までの分科会の最後のところで申し上げましたが,片面的強行規定を置かなければいけない必要性というものをもう少し明確化するべきではないのかと存じます。何か具体的に現状でこういう特約がある,こういう約款がある,これは大変問題であると,だからそこについてこういう問題事例が起こらないように法律の方で対処していくんだというように,法律や制度を変える以上,問題になる事例というものをきちんと踏まえた上で前に進んで議論をしていくという姿勢が大事なのではないのかなと思います。遊覧飛行の賠償金額の上限の問題はまさに一つの事例ですけれども,その他の部分について,何か問題のある事例というものがもしあれば,パブリック・コメントの結果,何かこういう事例があったと,こういう問題があったというのがあれば,少し教えていただきたいのと,議論の進め方として,先ほどのような数点から,いかがなものかという意見でございます。 ○山下関係官 ありがとうございます。まず,パブリック・コメントの結果から申しますと,先ほどのとおり,航空運送で2300万円の責任限度額を定める約款が存在するという具体的な御指摘はありました。それ以外に必要性といいますか,旅客の人身損害について,そういった旅客に不利な約款とか特約があるかどうかというところに関しましては,基本的には,正に旅客船協会様からいただいた意見の中にあった,妊婦の方とかの誓約書という実態以外には,具体的なものとしては,分科会資料4をご覧いただいてもお分かりのとおり,パブリック・コメントの中ではなかったです。   あと,議論の進め方につきましては,加藤参考人がおっしゃるとおりであろうと思います。仮に,旅客に不利な特約を無効とすることとする場合には,乙案のように人身損害に関するものは全て無効とする考え方がある一方で,全てではなく,旅客の権利侵害の程度が大きい特約に限って無効とすることも考えられ,後者の考え方を採る場合には,具体的にどのような内容の特約を無効とすべきかというのを決めないといけないかと思います。この点につき,旅客に不利な特約で旅客の人身損害の全部又は一部を免除するものについては,やはりその重大性という観点から,原則として無効とする考え方が皆様の御理解を得やすいであろうという考えの下,そのような特約のうち,遅延を原因とするもの,食事提供に関するもの又は被災地における運送に関するもの等についても,この原則に従って無効とすべきか,若しくは,例外的に有効とすべきか,という議論の進め方をさせていただいております。やはり,旅客の権利侵害の程度が最も大きい特約というのは,旅客の人身損害についての責任の全部又は一部を免責するものであろうかと思いましたので,そこをベースに議論をスタートすることが,皆様の納得感を得やすいかというところでございました。このような考えではございますが,更に加藤参考人の方から,こういう特約は有効とすべき,又は,こういう特約は無効とされてもやむを得ない等の御意見がございましたら,頂戴できればと思います。 ○加藤参考人 私の意見は,恐らく松井委員のおっしゃるのと違わないと思うんですけれども,要は,旅客の生命・身体に関し不利なものは駄目というのが漠然としているから,では,遅延で気分が悪くなったり頭痛がしたときの軽微なものはどうしよう,ちょっと気分が悪くなったものまで本当に全部それがそうなのかといったら,もう輸送の現場が混乱するから,それは一律,急行券のところまでというのが有効で,あるいは,それを越えるような重篤なものが発生したら,それは当然対応しなければいけないとか,何か結局,漠然と旅客の生命・身体に関し不利なものというだけでは,やはり漠然としているのではないのかと。金額に上限を設けるような特約は駄目とか,そういうようなことであれば,また更に次の議論に移っていけるのかなとは思うんですけれども,漠然と旅客に不利な特約は一切駄目というような規定ぶりになってしまうと適用除外の議論が更に難しくなってくると思う次第です。 ○山下関係官 加藤参考人がおっしゃるとおりで,私も前提としても,責任を全部又は一部免除するというふうな意味は,それは正に損害賠償責任の話をしておりますところ,賠償金額を2000万円に制限するというのが一部免除であり,ゼロにするというのは全部免除なので,まずはそこを無効にするというのがスタートでいいのかなという考えではおります。それ以外の何かいろいろなものを,注意義務の話とか立証責任とかそういったものは,そういう特約が現状見られないということもあり,過去に見られたということも余り聞かないので,今の時点ではそういうものは対象とはしているわけではないです。 ○加藤参考人 甲案,乙案の中の乙案の方が旅客に不利なものというような書きぶりでございますので,それが上限を設けるようなとか,上限を設ける特約は駄目とか,そういうような何か明確になっているのであれば,その次のステップの議論に移っていけるのかというふうな感じがいたします。 ○松井(信)幹事 今日はこれから,(イ)からまた後に,いろいろな場合について,その責任の減免が適切なのかどうか,そういう特約が許容されるべきなのかどうか議論させていただきますので,それを含めて,全体としてどのような実質の特約について強行規定を課すのがいいのかを踏まえた上で,また規律の明確化というところを考えさせていただきたいと思います。 ○山下分科会長 ほかにいかがでしょうか。 ○塚越参考人 遅延に関する強行法規については,当然,鉄道事業者としては反対の立場なんですが,まず一つは,どういう場合の,どの程度の遅延で債務不履行になるかという基準が不明確なのではないのかなと。もし強行法規にしてしまうと,どういう場合に債務不履行になるかということ自体が,まず不明確なのではないかという気がしています。例えば,鉄道に限っても,先ほど松井委員から御指摘のあったように,通勤電車の場合と特急の場合では,大分違うでしょうし,例えば5分ならよくて10分なら駄目とか,そういう基準も全くない状況で片面的強行法規にするというのは,非常に事業者としては明確性が薄れると考えています。   鉄道だけではなくて,例えば飛行機とか船とか,そういう交通手段によっても,どれぐらい遅れたら駄目とか,どれぐらいならいいとか,そういうのは全く違うでしょうし,もしこれが許されるのであれば,例えば時刻表の時刻は全く保証しませんと一つ書いてしまえば,もうそれでいいのかという議論にもなりかねないので,そこの部分をはっきりしないうちにそういう免責条項を無効にするというのは,ちょっと賛成できないなと思っています。   それから,基本的に,その遅れによって生命・身体が侵害された場合に,因果関係があるのかという議論もあって,裁判になればそこも争うことになるんですけれども,当然,相当因果関係がない損害については免責規定があろうがなかろうが賠償はしないということにはなるんですけれども,やはりそれだけでは個別に裁判で判断されるのでいいのではないかと言われると苦しい面があって,そこは一律,免責ですよと言えないと,個別的対応になってしまうと,大量輸送という性格上,実務は回らなくなるのかなと思っています。   主にそういう2点から,遅延に関する免責規定を無効にするというのは賛成できないと考えております。 ○落合関係官 タイミングが遅くなってしまって恐縮ですが,先ほど松井(信)幹事から民法90条の話がされていたと思います。戻ってしまって恐縮ですが,分科会資料5の3ページの2行目から3行目にかけて,「消費者契約法第8条及び第10条や民法第90条に基づき,裁判手続において事案に即して柔軟かつ適切に不当な運送約款が制限されてきたこと」とありまして,民法90条はあるかと思いますけれども,消費者契約法8条及び10条というのは,これは本案を支持する立場の御意見ということで引用されていると思うんですが,多分消費者契約法8条から10条までの規定に基づき運送約款を無効とした裁判例はないのではないかと,もちろん理論上あり得るわけですが,実例はほとんどないのではないかと感じております。   あと,中身のある紹介ではなくて恐縮ですが,消費者庁の方でも,昨年度の分科会の御審議を終えた後,消費者基本計画という政府全体の基本計画,消費者行政の基本計画を作っておりまして,これは政府全体でも閣議決定されていますが,そこに民法,商法の見直しにおいても,消費者の利益に与える影響も含めて多角的な観点から見直しや検討を行うとありますので,既にそういう観点で御審議してくださっているものと承知していますが,引き続きその観点でお願いできればと思います。 ○山下分科会長 ほかにいかがでしょうか。   取りあえず,(ア)のところは,以上で御意見を伺ったということで,よろしいでしょうか。また次に別の類型も出てきますので,繰り返しということになるかもしれませんが,取りあえず先へ進めたいと思います。   続きまして,今度は(イ)の妊婦に関する責任を免除する条項と,(ウ),重病患者に関する責任を免除する条項についての御審議をお願いいたします。事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 8ページの(イ)と(ウ)について御説明いたします。   まず,「(イ)旅客である妊婦の体調が運送中に突然変化した場合について,運送人の損害賠償責任の全部又は一部を免除する条項」につきまして,この場合には,そもそも通常予想される運行態様であったか,運送人側が妊婦の体調の急変につきどのような認識をしたか,当該運送事業者又はその業界において要求される措置が講じられたかなどを総合考慮して,運送人の賠償責任の有無が決せられるところ,運送人が賠償責任を負うべき事情がある場合に,その賠償責任の全部又は一部を免除する条項は許容されるべきか,御意見を頂きたく存じます。   また,「(ウ)旅客である重病患者の病状が運送中に悪化した場合について,運送人の損害賠償責任の全部又は一部を免除する条項」につきましても,妊婦の場合と同様の事情を総合考慮して運送人の賠償責任の有無が決せられ,さらに,旅客の疾患の態様,程度等を斟酌して賠償額が定められるところ,そのような賠償額を超えて運送人の賠償責任の全部又は一部を免除する条項は許容されるべきか,御意見を頂戴したく存じます。   なお,航空運送実務においては,国内・国際を問わず,妊婦又は重病患者の運送につき運送人が責任を負わない旨の誓約書等を取得することはなく,一定の場合には医師の診断書の提出を求め,当該旅客が航空機に搭乗することが可能である旨の確認ができることを条件に運送を引き受けているようでございます。   このような事情を踏まえて,(イ)や(ウ)のような条項の許容性につきまして御審議いただきたく存じます。 ○山下分科会長 それでは,ただいま説明のありました部分について御審議をお願いします。また御自由に御発言をお願いいたします。 ○河野参考人 ありがとうございます。まず,(イ)の場合なんですけれども,御提案の8ページにあるように,事故後の判断として,諸事情を総合考慮して運送人の損害賠償責任の有無が判断されるべきであって,運送人が賠償責任を負うべき事情があるにもかかわらず,免責とする契約条項を先に置くことということは,やはり私自身は少し問題ではないかなと感じているところです。妊産婦に限り事故時の免責条項を置くとすると,同じ交通機関を利用して同じ原因で事故に遭った旅客でも,妊産婦については免責されてしまい,その他の旅客については賠償する責任が生ずるという,実情に合わないような結果も招き得るのではないかなと考えるところです。   ですから,実務的には免責条項として定めるのではなくて,妊産婦の方が当該交通機関を利用中に産気づいたりとか体調が悪くなった場合の対処ができる範囲をあらかじめ説明して,その上で利用するかどうかというのを妊婦当人の判断に委ねるということで足りるのではないかなと思います。ですから,基本的には先ほどの航空機の対応と同様かなと感じているところです。   (ウ)の場合もやはり,病気の方の場合ですけれども,やはり妊婦の方と同様に,その事故後の判断として諸事情を総合考慮して運送人の損害賠償責任の有無が判断されるべきであって,事前に,運送人が損害賠償責任を負うべき事情があるにもかかわらず免責とすることを書かれるということに関しましては,私は反対したいと思っています。   それから,ちょっと話が横にずれるかもしれませんが,今現在,タクシー適正化・活性化法というのが施行されていまして,特にタクシーの活性化の中の具体的な内容として,マタニティタクシーとかUDタクシーというのが非常に積極的な取組がされています。妊婦さんは予約をとって積極的に乗せて病院に移送するということなんですけれども,そういった事例も考えますと,そこでこういった事前の一部免責のような契約条項が書かれていますと,それこそ事業活性化のために新たな手法として取り入れるものも,そもそも利用したいと思っている妊婦の方が萎縮してしまうというか,利用が進まないということにもなりますので,是非そういうふうな今の状況も考え合わせて,今申し上げたような形で免責とする契約条項を有効とするということには反対したいと思っています。 ○山下関係官 ありがとうございます。今,マタニティタクシーというお話が出ましたけれども,もし田中参考人が御存知であれば,そのマタニティタクシーでこういった妊婦の方の免責等を定めているかどうかについても御教示いただきたいなと思っております。 ○田中参考人 特に免責だとか事前説明だとかというのは,タクシー業界はしていません。ただ,タクシーの場合は任意保険で8000万,自賠責で3500万という,もうこれは入ることが決まっているので,その中で賠償できるものはしているという状況で,例えば,当社もママサポートタクシーというのをやって,会員が今7万人いるんですね。要は,月1回の定期検診と,急に産気づいたりなんかしたときには,最初に登録していただいた,いつも通っている病院と緊急連絡先,旦那様の携帯を聞いておいて,それで,奥さんがうちに電話してくると,うちが同時に病院と旦那様のところに電話をして,そして病院に搬送すると。実はその中で8人ぐらいタクシーの中で子供が生まれているんですけれども,一応,会社によっては違うんですけれども,例えば助産師だとか,それから産婦人科の簡単な研修,2時間とか3時間ぐらいの研修をしている会社が結構あって,その範囲でケアをしていいということをやっている会社と,ただ利便性を考えてその登録だけをしている会社と二つに分かれているんですけれども,基本的にはそれほど,もしここで流産してもうちの責任ではありませんよというような免責をやっているような会社はないし,たとえそれがママサポートとか妊婦サポートとかではなくても,通常のお客さんとしてタクシーにお乗りになる妊産婦の方はたくさんいらっしゃいますので,その人たちに,おなかを見て責任持ちませんよと言ったら,きっと誰も乗らないと思うので,最初からの免責というのはちょっとどうかなと思います。 ○加藤参考人 妊産婦さんの場合で,先ほど河野参考人がおっしゃったとおり,正に船の上では対応がとれる範囲というのが限られています。そもそも旅客船に医師は配乗しておりませんので,船の上で医療的な対応はほとんどできませんし,当然,海の上ですから,すぐに救急車が来るというわけには参りません。   先ほどのマタニティタクシーの事例がありましたけれども,陸上のタクシーであれば,仮にタクシー内で産気付いてもすぐに車を飛ばして病院に急行することができ,そしてそうした行動自体が運送人のとり得るべき最大限の措置となるわけでございますけれども,船の上では当然,産気づいた場合,すぐに病院に行けるかといっても,正直言ってかなり難しいわけです。気象・海象の条件にもよりますけれども,例えば,気象・海象が穏やかであれば,保安庁の高速船に乗りかえるとか,ヘリコプターを呼んで移しかえて病院に急送するというのもできるかもしれません。ところが,やはり波があったり風があったりすると,そうした措置もなかなか難しい。   だから,実際問題として,海の上では,医療的な対応というのが陸上と同じように図れないというのは,これは厳然としてあるわけでございます。そうした制約を当然,お客様にはご説明して,なおかつ乗りたい,どうしても乗りたいんだという方もやはりいらっしゃるわけでございまして,そうした場合に,確認書のようなもので対応していくことになろうかと思います。   ですので,いきなり妊産婦さんであれば全て免責ということを申し上げているのではなくて,いろいろなリスクをきちんと御説明した上で頂戴した確認書的なものまで,果たしてそれが一律に無効になるのかどうなのかというのが,ちょっとそれが特約がもう無効だよと言われてしまうと,なかなか輸送の現場の実務が回らないなという気がするというのが1点ございます。   ただ,では,それは有効になるかもしれないし無効になるかもしれないということであれば,現状の590条1項の中で,その特約が有効なのか無効なのかというのは当然,今ももちろんあるわけでございますので,今と同じ現状であれば,それはいいんですけれども,当然,乙案をとるとなった場合には,より無効になる範囲というものが拡大してくるのではないのかというふうな気もいたしますので,そうした場合には,これは大丈夫だよ,これは駄目だよというような何かわかりやすいメルクマールがないと,輸送の現場が混乱するのではないのかなと思います。   それと,乙案をとったことにより,今後そうした特約というのが無効になるという可能性が高まりますよとなった場合に,運送人としてはどういう対処が考えられるかというと,結果として,やはりリスクのある方々の受入れというものをやめておこうかという,輸送のリスクをとる範囲というのがどうしても縮まってきてしまう可能性があります。果たしてそれでいいのかどうかということがございます。   それと,強行規定,もし乙案をとるとした場合ということなんですけれども,最初の発言で申し上げたことにも関わるんですけれども,やはりお乗りになる旅客の側にも申告義務といいますか,そういうものをしっかりと商法の中に是非位置付けて書いていただきたいと存じます。強行規定化については,妊婦さん,あるいは外見からは分からないけれども容態が急変すると命に関わるような持病を抱えておられる方,そういった乗船によるリスクのある方の取扱いというのが,これまで申し上げているとおり,一番問題になろうかと思うわけでございますけれども,もし乙案ということで強行規定ということになるのであれば,そうしたリスクのある方々の申告義務というものを,是非商法上で明記していただければ,現場としては大変有り難いと存じます。   旅客の安全な輸送というものは,やはり旅客の一定の協力というものがあって初めて実現できるわけでございまして,出産予定日まであと何日しかないというよう妊婦の方などについては,お客様自らの申告があって初めて運送人もその事実を把握することができ,その情報をベースとして運送人としての注意義務の責任というのが当然,果たされていくわけでございます。強行規定化というものとセットで,是非そうしたリスクのある旅客の申告義務というものを検討していただければと思う次第でございます。 ○松井委員 ちょっと確認したいのですが,田中参考人からお話を頂いたように,タクシーという交通機関は多分,大量運送という側面からはほかの交通機関とちょっと違うところがあるのかなとお話をお伺いしました。その中でお話のあった保険の話なんですけれども,自賠責と自動車保険ということだと思いますので,タクシーの場合ですと,例えばブレーキ,通常のお客さんについては大きな事故にはならないブレーキ等で破水して流産したとかというケースだと自賠責の対象にはならないので,それはタクシー会社の方とお客さんの問題になり,もっと荒唐無稽な話かもしれませんけれども,病院へ行こうと思ったときに,ドライバーの方が高速道路に乗りなさいという,その方が早く行くからと言ったら渋滞になってしまって,やはり同じように流産してしまったという話になると,多分保険は出ないということで,それはタクシー会社とそのお客さんの間での問題になるという理解でよろしいわけですね。 ○田中参考人 保険会社が中に入りますので,そこでの事象の取引というか,確認する分の多分,交渉事になると思いますね。 ○松井委員 自賠責と自動車保険なので,後者のケースで事故がないので,それは保険会社が入るということはないと思うんですけれども。 ○田中参考人 任意保険の部分です。 ○松井委員 任意保険の自動車保険以外の損害賠償保険も入っていらっしゃる。 ○田中参考人 そうです,人身が8000万だったかな。 ○松井委員 交通事故でなくても払われる保険ということですか。 ○田中参考人 通常の自動車任意保険というやつと一緒ですから,その払われる範囲というのは,それぞれの事象によって,これは払うとか払わないとかですね。例えば,具合が悪くて車の中で心臓で倒れてしまった人が,乗った瞬間に倒れてしまったらこれはどっちの責任だという裁判があって,それは,あるときはタクシー会社が負けたことがあるんですよね。そのときは,では,それを任意保険で払うのか自賠責で払うのかというのをそこで検討された事例はあります。   これは妊婦だけではなくて,今それよりも高齢者の方が非常に多くて,高齢者を運んでいる介護タクシーというものが結構走っているんですけれども,この介護タクシーもホームヘルパーの資格を持っている人と,持っている人は乗っているけれども運転手は持っていないとか,いろいろな状況があって,またNPOもそれに加担しているとか,とにかく個別輸送というのがものすごくいろいろな事業者個人がなっていて,どれに乗ったらどれだけ要はその補償が受けられるのかというのはまるで明確化されていない。分かっているのは,タクシーが要は保険に入っているから,今のところははっきり分かっているのはタクシーだけだよという世界なんですね。 ○山下分科会長 ほかはいかがでしょうか。   取りあえず,この(イ)と(ウ)は以上でよろしいでしょうか。 ○松井(信)幹事 加藤参考人に少しお伺いしたいのですが,部会資料の5ページの裁判例の中のウというところにフェリーの旅客の気管支喘息の事案があるわけですけれども,例えば,妊婦の方でも重病人の方でも,このように社内の非常時用マニュアルに違反していたとか,あと,通常すべき作業もしていない,陸上への連絡もしていないというような場合にも,誓約書によって免責になってしまうということについては,いかがお考えでしょうか。その辺りの御感触を一ついただきたいのと,もう一つ,タクシーの方では保険の話があったわけですけれども,恐らく旅客船も保険に入っていらっしゃるのではないかと思うのです。仮に,誓約書で免責ということになると,その妊婦さんには一切保険金すら支払われないということになりかねないですが,そこは運送人が賠償責任を負うことがあり得るとした上で保険による解決を図ることはできないのか。この2点をお伺いしたいのですが。 ○加藤参考人 ここに書かれている事例の詳細については,すみません,私は把握していないですけれども,当初この船会社自身は自らに責任が掛かってくるというのは想定はしていなかったという話は聞いております。この判決というものは地裁の判決でございますが,恐らく船会社としては尽くすべき注意義務は尽くしたという主張はしていたと思いますが,地裁の段階においてはこういう判決になっているわけですけれども,どこまでこれが確定したものかというのが承知はしておりません。   ただ,おっしゃるとおり旅客船業者は全て保険というものにきちんと入っております。鉄道あるいは航空会社のように大きな企業であれば,裁判を係属して最高裁まで主張するべきことは主張して,確定した時点で対処していくということになろうかと思いますが,旅客船事業者は中小零細企業が多いものですから,最高裁の確定判決まで争うことは事業面で差支えが出かねないということで,恐らく地裁の判決をもって,保険で対処したということであろうかと思います。   ですので,先ほどの御質問については,なかなかこの判決で認められた事実というものを前提に,それがいいか悪いかというのは,ちょっと今ここで申し上げることはできかねるということでございます。 ○山下分科会長 ほかはいいですか。(イ)と(ウ)につきまして,取りあえずないようでしたら,更に進みたいと思います。   次は,(エ)の災害が発生した地域において運送する場合等について,責任を免除する条項についての御審議をお願いします。事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 9ページの(エ)について御説明いたします。   「(エ)災害が発生した地域において運送をする場合等について,運送人の損害賠償責任の全部又は一部を免除する条項」につきまして,必要性や緊急性等が認められる場合には,国土交通大臣の権限として事業者に旅客運送を命ずることができるなどとされ,また,これまでの審議では,雲仙普賢岳の噴火後,タクシーが報道関係者を運送する際に火砕流に遭った事例において,地元に詳しい運送事業者は危険を察知し得る立場にあり損害賠償責任を負うとの司法判断があったことや,このような運送については原則として保険適用がないために,運送事業者が高いリスクを負うことになるなどという御指摘がございました。   このような場合には,災害が発生した地域の具体的状況を前提に,当該運送事業者又はその業界において要求される措置が講じられたかなどを総合考慮して,運送人の損害賠償責任の有無が決せられるものでありますが,被災地における運送という特殊性に鑑み,運送人の損害賠償責任の全部又は一部を免除する条項は許容されるべきか,御意見を頂戴いたしたく存じます。   このほか,当該運送の特殊性に鑑み,運送人の賠償責任を免除する条項を許容すべきか否かについて議論すべき事例があるかも含めて,御審議いただきたく存じます。 ○山下分科会長 ただいま説明のありました部分について,御審議をお願いします。また御自由に御発言をお願いいたします。この点も前々から議論があるところでございますが,いかがでしょうか。 ○河野参考人 ありがとうございます。片面的強行規定を考えるときに,やはりこの提案文書の(エ)の部分ですね,災害が発生した地域において運送する場合等についてなんですけれども,これはある意味,別のものとして考えるべきかなと感じました。運送人の損害賠償責任の一部を免除する条項を有効とすることはあり得るのではないかと思います。運送事業者の方は通例,その業務を行えないという状況下であるにもかかわらず,先ほどの三宅島の例ですとか東日本大震災のときですとか,そういったときにもかかわらず,旅客の意思,片方は人命救助ですけれども,旅客の意思に基づき,やむを得ず運送を行う場合には,その運送以前の段階で旅客に対して運送に伴う危険性を十分に説明することを条件に,一部免責条項を有効とするということは考え得ると思っています。   それで,一部免責条項に限り有効と考えている理由なんですけれども,災害が発生した状況下であっても,運送人の方の故意・重過失というのも起こり得ると考えます。ですから,もし運送人の方の故意・重過失の場合にまで免責とするのはやはり妥当ではないと思いますので,これは合理的な理由があったとき一部免責条項に限り有効と考えるべきだと感じました。 ○山下分科会長 ありがとうございます。 ○田中参考人 普賢岳のときと,例えば今の箱根みたいなのは,ちょっと状況が違うと思うんですね。火砕流が起きて,ここだったら写真とか動画がきれいに撮れるというところに行ったら巻き込まれてしまったというのと,要は,ここから先に入ってはいけませんよというところに入ったときの差は,かなり大きくあると思うんですね。今なんかも結構そういう取材が来ていて,例えば箱根だったら,ここから先は絶対行ってはいけませんよというところは,幾ら報道が行けと言っても行かないし,やはりそういうところによって,それを免責するとかしないとかということではなくて,やはり一個一個の事例で見ていくのが適当なのかなと。   ただ,とにかくそこで何が話されているかということが,要は乗る前から分からないもので,例えば普賢岳は,これは当社が買った会社の前の会社の話で,ここの賠償金を支払うために売らざるを得なかったという状況になった会社のことなんですね。それは,結果的には会社が運転手さんの補償をしたと,それは,会社が止めなかったから,うちの旦那が報道陣を連れて一緒に被災してしまったんだと。それと,もう一つは,当初は,報道からそんなところに連れていったお前が悪いだろうと言われたけれども,それは,ある程度話をしながら,どうもそこのところははっきりしないんですけれども,要は,もう大分前のことで,みんな高齢者ばかりなので,その当時の人が全部いなくなってしまって,どうなったのかもよく分からない状況だったんですけれども,話を聞いてみると,結局,最終的には報道の方も,ほかの報道で,あんなところに行った報道陣が悪いんだという報道になったから,その世の中の流れとして,タクシー会社がかわいそうだねといって賠償金が逆に支払われた,多少の賠償金が支払われたと。というのは,やはりそういうところの規定がはっきりしていなかったし,当時はまだタクシーも全部が任意保険だとかに入らなくてもいいという状況,法律で決まっていない状況だったので,だから今の状況とはかなり変わってきているのかなと。   だから,やはりそれぞれの災害時の状況というもの,ここから先はいいよとか悪いよという判断を一般的にされているところで見ていかないと,いいから行けと言って境界線よりも先に行ったものに対してどうするのかというものに関しては,行ったお前が悪いだろうと言われると,どっちもどっちかなという感じはするんですね。だから,やはりそれぞれの中で免責があってもいい部分もあるし,その状況に応じて,いや,免責は必要ないよという部分もあるということだと思いますけれども。 ○山下分科会長 ありがとうございます。 ○田中参考人 東北の震災のときも,お客さんを乗せて,津波に飲まれたんですね。これは崖っぷちの一本道で,左側が崖で真っすぐ一本しか道がなかったと。それで,ほかにもいい道は,回り道はあったんですけれども,お客さんの要望で,こっちの方が景色がいいから海沿いを通りましょうと言って通っていったと。そんなときに津波が来て,運転手もろとも車が飲み込まれてしまって,3か月見付からなかったんですけれども,そのときに,何であんな道を通ったんだというようないろいろな問題が起きて,それで,その無線の記録なんかの中で,お客さんがこっちへ行きたいと言ったからこっちへ回っていくよという無線が入っていたので,あっ,これは景色を見に行ったんだなというので分かったと。ただ,それに関しては,裁判が起きそうな雰囲気だったんですけれども,結果的には,ああいう状況だったので,逃げようと思っても逃げられない状況だということで,どっちもその賠償はなかったということもありました。 ○山下分科会長 よろしいですか。   それでは,この点,ないようでしたら,もう一つ残っておりますので,そちらの方へ進みまして,(オ)の食事に関する責任を免除する条項についての審議をお願いします。まず,事務当局より説明をお願いします。 ○山下関係官 9ページの(オ)について御説明いたします。   「(オ)運送人が運送中に提供した食事により旅客の身体を侵害した場合について,運送人の損害賠償責任の全部又は一部を免除する条項」につきまして,前提として,旅客に対する飲食物提供の法律関係については,①その提供者との売買契約である場合,②運送契約とは別のサービス提供契約である場合,③運送契約の一内容である場合などが考えられますが,実務上の契約の取扱いはどのようなものか,御紹介いただきたく存じます。   また,仮に③運送契約の一内容である場合がありましたら,食中毒等により旅客の身体を侵害した運送人の賠償責任の全部又は一部を免除する条項は実務上存在するのか,また,存在する場合にはこれが許容されるべきかにつきまして,御意見を頂戴いたしたく存じます。   なお,航空運送実務では,機内での飲食物の提供は,運送契約上の本来的債務の履行というよりは,運送利益の提供に付随する別個のサービス提供契約の履行という位置付けで実施するものであり,また,LCC等における有料の飲食物の提供につきましては売買契約と考えているようでございますが,ANA国内旅客運送約款及び国際旅客運送約款において,食中毒等により旅客の身体を侵害した運送人の賠償責任を免除する条項などは存在していないとのことでございます。   以上の点について御審議いただきたく存じます。 ○山下分科会長 それでは,ただいまの部分につきまして,御自由に御発言をお願いいたします。実務の方の話もいただければと思います。 ○塚越参考人 鉄道に関してですけれども,基本的に分かりやすいところから言うと,新幹線とか特急で車内販売をして食事を買っていただく,これは明らかに,この中でいえば①と考えております。基本的には,当社の場合は運送人とは別のグループ会社がやっていますし,JRのほかの会社もそういう場合が多い。ほかの私鉄さんとかは同じ会社がやっている場合もあると思います。   それから,普通の食堂車ですね。最近余りないんですけれども,例えば,前まであった北斗星とかカシオペアとか,そういう東京から北海道に行くような列車の中で提供するような食堂車の場合は,実務としては②のように考えています。切符を買ったからといって,食堂車の食事の提供がセットで付いてくるわけではなくて,お客様の任意で別に買っていただくことになっていますし,物理的には切符も別の紙になっていますので,実務ではこれは運送契約とは別という理解をしています。   ただ,ちょっと微妙なのは,今,新幹線で,当社だとグランクラスといって,グリーン席の上のクラスの車両があって,そこを買っていただいたお客様には例えば飲み物は飲み放題で提供したり,あと,軽食ですね,サンドイッチみたいなものを提供しております。これはもうグランクラスという切符を買っていただくとセットで付いているものですので,ちょっとこの①とか②とは違う,運送契約と一体としてパッケージとして考えているものもあります。ただ,いずれにしても,特に免責条項みたいなものは,実務としては置いてはおりません。   あと,これはまた別なのかもしれませんが,運送契約の一内容というよりは,例えば,その旅行のパッケージの中に運送があって,そこに車両の中での食事も付いているとか,そういうような場合はあって,例えば当社では,食事ではないんですが,新幹線の車内で足湯みたいなのを置いて,旅行の商品として新幹線での運送契約と足湯を楽しんでいただくセットを付けたり,あと有名なところではJR九州さんのななつ星という豪華列車の旅行があって,それは旅行商品の中に,ななつ星に乗る運送契約と,その中での食事とか,あるいは高級旅館での宿泊とか,全部セットにしてパッケージングしているという例はあります。だから,③で運送契約の一内容というよりは,全体のパッケージの中の一つが運送契約だという,そういう形態もあるという御紹介です。 ○山下分科会長 ほかの運送事業形態ではいかがでしょう。タクシーは,余りないでしょうが。 ○田中参考人 バスでよろしければ,お花見バスで,バスの中でビアガーデンみたいなのをやったりして食事を提供して,4時間コースとか,そういうのもありますし,タクシーでも,例えば京都の観光をするときに,時間がないときは,お弁当をタクシー会社が用意して,車内で食べていただくということもあり得ますね。バスは結構,中をお座敷に変えて,そこで,今の季節だったら夜景を見ながらビアガーデンが動いて走るとか,それから,お花見のときに,要は桜の隣に止まって,バスを川土手に止めて,ライトを当ててライトアップしながらお花見をするというのは,普通にやっています。ビールとおつまみと軽食付きで,例えば1人1500円とか2000円とかで,そういうようなものを普通にやっていますね。ただ,そのときに食中毒になっても知りませんよというのは,当然言っておりません。 ○山下分科会長 (オ)については,給付の性質をどう見るかはともかく,余り免責とする必要はないという理解でいいのでしょうか。 ○塚越参考人 今時点では,特に免責を置いているというわけでもないし,それで特に困っているということはないんですけれども,例えば足湯を作るときには,それで滑って転んでしまったりとか,そういう場合はどうするんだという議論もありましたので,免責条項を一律に無効とされてしまうと,今後いろいろなサービス形態を考える際に何か障害になる可能性はあるのかなという気はします。それは可能性だけで,今現在,特に必要かというと,そうではないかもしれませんが。 ○山下分科会長 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。   それでは,(ア)から(オ)まで順次御意見を頂きました。それぞれ免責の必要性とか,関係する論点,多少違うところもあるかなというところで,それからまた委員,幹事あるいは参考人の皆様方の受け止め方も条項によって若干違いはあるのかなというところかと思いますが,今日いただいた御意見を参考にして,引き続き検討していただければと思います。   それでは,先に続きまして,4の堪航能力担保義務及び安全性担保義務についての御審議をお願いいたします。まず,事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 10ページの「4 堪航能力担保義務及び安全性担保義務について」,御説明いたします。   この義務につきましては,これまでの審議では,第590条の規定により,運送人は旅客を安全に目的地に運送する債務を負っており,同条とは別に堪航能力担保義務の規律を維持する意義に乏しいなどとして,堪航能力担保義務の規律を削除する考え方が示されましたが,これに対しては,運送人が過失責任として自動車,船舶,航空機などに関する安全性担保義務を負うとの規律を設けることが,旅客の保護に資するなどの考え方も示され,また,仮に590条1項の規律に関して片面的強行規定を新設しない甲案を採用する場合には,この安全性担保義務の範囲内で,これを強行規定とすることにも意味がある旨の御指摘がございました。   パブリック・コメントの結果を見ますと,ただいま御紹介いたしました考え方のほか,無過失責任としての堪航能力担保義務及び安全性担保義務に関する規律を設けるべきとの御意見も寄せられましたが,このような義務に関する規律を設けるか否かについては,まずは590条1項の規律の在り方を検討し,その上で引き続き検討することが考えられます。   以上のような事情を踏まえて,御審議,御意見いただきたく存じます。 ○山下分科会長 それでは,ただいま説明のありました部分についての審議をお願いいたします。590条1項の責任の在り方についてこれまで議論したところが分かってこないと,なかなかこの点をどうするかというのは議論しにくいところであろうかと思いますが,今日のところで何か御意見がございましたら,伺えればと思います。 ○河野参考人 ありがとうございます。私も,今整理してくださったとおり,590条第1項の規律の在り方というのがどうなるかということを前提に置いて,このことは今後も引き続き検討ということでいいと考えております。   ただ,旅客側,私たち利用する側としますと,やはりどのようなときに運送人の方がどのようなことに責任を負ってくださるかということが,今回は海運のみですけれども,書かれていて,一つ一つ条項を拝見しますと,こういうことにおいて運送人の方は運送責任を負ってくださっているんだなということがよく分かる条項だと思いましたので,何らかの形でこういうふうなものを置いていただけるのであれば,その事業者の方の予見性,それから内容の明確化というところで有効かなと感じたところではあります。   実は,国土交通省さんの海事局から出されている,これはホームページにアップされていたものなんですけれども,海上輸送の安全に関わる情報ということで,平成25年度の報告がございました。その中で,身体・生命には関係ないんですけれども,旅客船が起こした事故ということで,その事故の内容は,例えば乗上げとか衝突とか転覆とか浸水とか様々なんですけれども,旅客船においてもかなりの事例が報告されていまして,かつ,その事故の原因ということで書かれている内容が操船不適切,見張り不十分,船位不確認,気象・海象不注意,船体機器整備不良,居眠り運航ですとか,こういう内容を拝見しますと,やはり商法の中に何らかの形で堪航能力担保義務のようなことが書かれていることも必要,いわゆる安全性担保義務というふうな観点で,そういった視点も書かれていると有り難いのかなと思ったところです。 ○加藤参考人 これまで旅客船協会としての意見は述べているので,ちょっと重なりはあるかもしれませんけれども,やはり船の安全というのが一番重要であることは間違いないことでございます。その安全の確保の仕方というのが,果たして船の安全ということについて商法が責任を持つべきものなのか,あるいは国土交通省の様々な安全規制が責任を持つべきものなのか,そのそれぞれの持つ法域というものをやはり今一度整理していくべきではないかと存じます。実は,明治の制定当初の商法の規定の中から,相当程度の規定が,船舶法なり船員法なりに移されてきた経緯もございます。   というのは,元々明治に作られていたこの商法の規定というものは,安全法体系と権利義務の規定の関係というものが渾然一体となっておりました。そもそも,商法の制定時には,国土交通省による様々な安全規制,安全行政というのが存在していなかったのでそれは当然のことですが,その後,船員法なり船舶法なりというものがきちんと整備されるようになって,徐々にそれぞれの法域というものが整理されていくようになったという経緯がございます。ですので,輸送の安全を向上させるためにそれぞれの法律,それぞれの法域がどこまでその機能を果たしていくべきなのかというものをやはり今一度きちんと整理して,今後の議論に移っていただければなと思います。 ○田中参考人 国土交通省の方で,多分いろいろな事業者向けに運輸安全マネジメントという制度がきちんとできていて,そこでその監察官みたいな方がいらっしゃいまして,ちょっと前まではある一定の事業規模以上の事業者に対して入っていたんですけれども,最近では,タクシーでは新しい法律が変わってから,これを全事業者に適用するということになって,指導が入って,改善命令が出て,改善報告まで出さなければいけないという状況がここのところでは整備されてきているんですね。多分これはトラックにも鉄道にも,同じような運輸安全マネジメントのそれぞれの事業法に基づいた安全管理義務というのが多分できているのではないかと思うので,それをやったかやらないか。やってもそれが机上のものならどうかということはありますけれども,それを守っているか守っていないのかということが非常に大きなその分かれ道になるような気がすると思います。   だから,それぞれの事業法の中でもそれぞれの安全基準というのはあるかもしれないけれども,国土交通省の方でも,ちょっと前の,前回ツアーバスの事故とか,ああいうのを受けて,安全だとかこういうところに対する管理とか監察というような部署もきちんとでき始めて,それに対して厳しい監査が入ってきているんですね。ただ,この事業法以外の事業者で同じようなことをやっている人たちは無法状態ということは,いまだに間違いないことだと思いますけれども,一応,国土交通省の中では,特にタクシーに関しては今,全事業者が運輸安全マネジメントの適用範囲内になっているということで,これは定期的な監査と検査と指導と命令が来るというような状況になっています。 ○山下分科会長 ありがとうございます。ほかはよろしいですか。   では,この問題も引き続き検討していただくようにお願いします。   それでは,続けて御審議をお願いしたいと思います。続きまして,2の商法第590条第2項関係についての御審議をお願いします。事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 御説明いたします。これまでの審議では,第590条第2項を削除しても,旅客運送契約に基づく損害賠償額の算定の実務に影響を及ぼすものとは言い難いこと,同項の規律を存置しても,その適用結果は裁判所に一任され,旅客の予見可能性が高まるとも言い難いことなどを理由に,同項を削除するものとされましたが,他方で,この規律があることにより,旅客が安心し,その予見可能性が高まるとの御意見もございました。   パブリック・コメントの結果を見ますと,中間試案に賛成する意見が比較的多く,その理由としては,ただいま御紹介したもののほか,運送事業者から590条2項の規律の有無に関わらず,被害者やその家族の状況等に十分配慮して補償を行っているとの御意見も寄せられました。これに対し,中間試案に反対する意見の理由としては,この規律があることにより,旅客が安心し,その予見可能性が高まること,特に弊害がない以上は規律を存置すべきであることが挙げられていました。この規律につきましては,これを存置すると旅客運送に限り特殊なルールが存在するように見えるというデメリットがある一方で,その存在意義に乏しいことから,これを削除することが考えられますが,皆様の御意見を頂戴いたしたく存じます。 ○山下分科会長 それでは,ただいま説明のありました部分について御審議をお願いいたします。御自由に御発言をお願いいたします。   パブコメでは,590条2項は削除するという方を支持する意見が多かったようでございます。特にこれを残した方がいいのではないかという御意見は,このメンバーの中ではございませんか。ないようでしたら,この分科会の今のところの意見としては,そのような状況だということでよろしいでしょうか。   ございませんようでしたら,次へ進みまして,最後ですが,「第2 旅客の携帯手荷物に関する運送人の責任」についての御審議をお願いします。事務当局から説明をお願いします。 ○山下関係官 御説明いたします。これまでの審議では,中間試案(1)については特段の異論はなく,中間試案(2)については,旅客の保管の下にある携帯手荷物に関する責任が運送人の保管の下にある受託手荷物に関する責任より重いのは不均衡であるため,基本的に物品運送人の責任の減免に関する規定を準用するが,高価品に関する特則は性質上準用すべきではないとして,中間試案の取りまとめがされました。   パブリック・コメントの結果を見ますと,中間試案に賛成する意見が大勢を占め,運送事業者からは,旅客の身回り品を含む携帯手荷物について,時価による賠償を基本としてきたとの御意見も寄せられました。これに対し,中間試案に反対する意見の理由としては,市場価格を算定し得ない場合が多い手荷物について,商法の定額賠償の規律はなじまないこと,携帯手荷物について,第588条や消滅時効に代わる除斥期間の規律を準用することは旅客に酷であることなどが挙げられていました。   この点につきまして,現行法は,運送人の保管に委ねた受託手荷物について定額賠償の規律を及ぼしており,市場での取引が想定されないことをもって定額賠償の規律になじまないものとは見ていないことや,実務上も,携帯手荷物について時価による賠償が基本とされていることなどを踏まえますと,携帯手荷物について定額賠償の規律を及ぼすことが相当であると考えられ,また,携帯手荷物の運送については別途運送賃を支払わないのが通常であることを考慮しますと,この責任に物品運送人の責任についての規律を準用することも一定の合理性があるものと考えられますが,これらの点について御審議いただきたく存じます。 ○山下分科会長 それでは,ただいま説明のありました部分について御審議をお願いいたします。御自由に御発言をお願いいたします。 ○田中参考人 すみません,何度も。今,タクシーの活性化法という中で,地方公共交通における貨客混載というややこしい問題が起きてきていまして,要は,トラックが人を運んでもいいではないか,旅客運送人が荷物を運んでもいいではないかと。例えば,過疎地で宅配のトラックが1日に1回上がってくると,そのところにはタクシーも車も何もないから,おばあちゃんが乗って町までおりたいと言ったら乗っけていってもいいよというような法律を作ろうという話に今なってきているんですね。そのときに,例えばタクシーだったら,人を乗せれば当然,人を乗せるから保険に入っているけれども,トラックの場合は人を乗せても人に対する保険は入っていない,ただ,荷物の保険は入っているというようなところが,地方に行けば行くほど,そういうややこしい,両方やるような仕事というのがどんどん増えてくる,それを推進されているんですね。多分,地方でそういうことが始まってくると,今度は都市部でも,では,その時間帯に,時間帯別に,例えば宅配便が夜9時で終わってしまったら,夜の9時から朝の9時,宅配のない時間帯はタクシーが運んでもいいよみたいな話にもなりかけてきているので,そうしたときに,ある程度はっきりとした何か基準がないとですね。   それともう一つ,今,買物代行というのをタクシーが結構やっていまして,要は,お弁当を買ってくるとか,おむつを買ってくるとか,そういう普通の日用品のほかに,例えば薬を取りに行ってとか,それから,例えばこういうものを書類を届けに行ってきてとかというような仕事も一部の地域ではできるようになってきていると。こういうものに関して,やはり何かある一定の,預かったものなのか携行品なのかという。例えば,場所にも,この前の話だと,トランクに入れたら預かったもので持っていたら携行品というんですけれども,今はワンボックスカーなので,トランクというものがない車が実際出てきていますし,それから,これから先は,例えば軽自動車でタクシーをやっていいというような話になると,完全にそんなものはない。そのときに,御本人が後ろに入れたのか自分の横に置くのかによって,それが預かったものが携行品かというものの,その見分けをどの辺で付けるのかなというのがちょっと悩みの種かということだと思いますね。全部横に置いてしまえば携行品,全部後ろに置いてしまえば預かった荷物,人によって,運転手さんによって,トランクに入れてもらいたい,横に置きたいという人がいたときの,では,横に置いた人が得するのかとかというような変な話にもならないかなということで,余り差は付けない方がいいのではないかなと思います。 ○山下分科会長 ありがとうございます。ほかには特にございませんか。   今御指摘のあったような新しいタイプの問題というのはあろうかと思いますが,比較的,パブコメでも中間試案の方向でよいのではないかという御意見が多かったとは思いますが,その点いかがでしょうか。 ○加藤参考人 ちょっと議論が戻って誠に恐縮ですけれども,今回,論点として提示されているのは(1),(2)ということで,論点を提示されておるんですけれども,やはり旅客の携帯手荷物の問題について,これについて,この危険物を車内あるいは船内に持ち込む場合には事前に申告しなければいけないということで,申告義務の問題というのが一つあるかと思います。これをもう一度,ちょっと議論が戻って恐縮なんですけれども,商法上明記すべきではないのかなと考えているところでございます。もちろん標準運送約款等で危険物の持込み禁止とは書いているんですけれども,それで十分ということでは,なかなか安全が確保されないということになろうかと思います。   やはり危険物を車内あるいは船内に持ち込むということになると,万が一の場合,大変な事態ということが当然あろうかと思います。安全重視というのが今回の商法改正の趣旨ということであれば,やはり携帯手荷物について,危険物については商法上で申告義務を課すというのが必要なのではないかと思います。いや,それは標準運送約款でと,片やいろいろな事案,論点で,標準運送約款では不十分だからやはり商法で書こうと言い,やはり片や,いや,それは標準運送約款でというようなお話というのは,ややダブルスタンダード的で,いかがなものかというような気がいたします。   そうした危険物の申告義務というものが貨物については今回いろいろ議論されているようでございますけれども,携帯手荷物については旅客がそのまま持ち込むんだからちょっと別だねということになっているようでございますけれども,商法で書けない理由の一つが,輸送モードによって危険物の範囲というものが違うから,なかなか一律に書き難いというのも一つの理由とお伺いしておりますけれども,少なくともガソリンとか揮発性の油とか,各モード共通するような危険物については,商法で申告義務をきちんと規定して,その後で,各モードの運送約款などで個別的に必要な品目を書くというようなもの,そういう流れというのが通常の安全重視の考え方ではないのかと思います。やはり根本的で各モード共通する部分については,商法の中できちんと書いていくと,その上で更に各モードに独自のものについては標準運送約款に任せていくということが当然の流れかなと思います。   ライターとか,何かそういう細かい部分のところの整理が難しい,できないから全て約款で対応すべきということではなくて,やはり人の生命・身体というのが一番重要なわけでございますので,今一度原点に立ち戻ってこの問題というのを整理していって,書ける部分については書いていくという努力を今一度するべきではないのかなと思っている次第でございます。   やはり危険物の話というのは,輸送の安全にとって一丁目一番地ということだろうと思います。旅客の申告義務は,その危険物の持ち込み禁止の担保となるものです。   無断で危険物を船内,車内に持ち込まれると,運送人だけではなくて,周りにいる全く知らない善意のお客様というものが,それによって大変な被害を被る可能性があるわけでございます。お客様の利便を第一に考えるのか,あるいは公共の空間である車内あるいは船内というもの,そこにいる周りのお客様の身体生命というものを第一に考えるのか,どちらを優先して考えるのかということについて,今一度御議論をお願いできればと思う次第でございます。 ○山下分科会長 ありがとうございます。 ○箱井幹事 588条の準用がここに出ていますが,588条と566条につきましてはこの資料にありますように,今後,商法部会の方で物品運送の関連でまた慎重に審議されるものと思っております。特に,早稲田大学で検討しましたときも,この566条につきましては,非事業者,消費者などが荷送人であるような場合には,1年の除斥期間にして裁判上の請求を求めるという点については,参加した研究者の中でも違和感の指摘が多くありました。当然これは旅客運送についても,ほとんどの場合が消費者契約ということで考えますと,同じような問題が出てくるのだろうと思います。   ですから,部会の審議を見守りたいと思っております。ただ,旅客運送の問題として,部会資料では別途運送賃を支払わないことが強調されておりまして,何か旅客の場合にはそれだから合理性があるかのように読めなくもない叙述がありますけれども,この言い方は違うのではないのかなと思っております。一定の身の回り品でありますとか携行品は,これは旅客運送の場合には当然,前提になっておりますので,一定のサービスに費用が掛かれば,これは旅客運送賃の中に含まれていると思われますし,更に規定を超える追加があれば一定の割増運送賃の支払が求められるということだと思いますので,物品運送と比べて,物品運送では許容されないルールだけれども,それは運送賃を払うからであって,旅客運送の場合,携行品は運送賃を払わないから許容してもよいのというような話ではないだろうと考えます。そういう趣旨ではないかもしれませんけれども,ここを見ていますと,運送賃を支払わないということが一つ,主たる理由のように書いてありましたので,1点,コメントさせていただきたいと思いました。 ○山下分科会長 ありがとうございます。 ○山下関係官 先ほど加藤参考人から,危険物の通知義務を旅客運送にも設けるべきだという御意見を賜りまして,一応,旅客運送分科会の分科会資料1の方では,(注)という形でしたけれども,通知義務を設けないということで書いており,特にこれに反対する御意見はなかったものと承知しておりますが,昨今の新幹線の事故もございまして,危険物運送についての安全対策というのは非常に重要な点かと思います。この点につきまして,ほかの参考人や委員,幹事の皆様の中で,商法の中に通知義務を設けるべきだ,若しくは設ける必要がないとか,そういった御見解がございましたら,是非この場でいただきたいと思っております。 ○山下分科会長 いかがでしょうか。 ○田中幹事 その法律にした場合に他にどう影響するかという視点は全くございませんが,実務をする立場からすれば,通知義務があれば非常に有り難いですね。しかも,危険物というのはいろいろな製品が出てきていると思いますし,その範囲も時代時代によって異なると思うんですが,要は,そういう輸送機関に乗る場合は,そういう危険なものを持ち込まない,あるいはそれを一定程度制限をするという規律があることは非常に望ましいと思っています。ただ,そういう規律を入れることで実務上他にどんな問題が起きるのかということは想定していません。安全に輸送,運送するという運航者の立場からすれば非常に望ましいことだということを意見として申し上げます。 ○河野参考人 先ほどの加藤参考人の御意見では,運送に関しては旅客の生命・身体の安全が最重要であると。その際,危険物持込みに関する旅客の責任をしっかりと法に書くべきだという話でした。危険物持込みに関しては,私自身も旅客側は持ち込むべきではないと思いますし,それはきちんと制限されるというか担保されるべきだと思いますが,堪航能力堪航義務ないしは安全性担保義務の先ほど意見交換をしたときに,そちらの方は業法ですとか約款で担保されているから十分であるというお話もありました。それを考えた上で,旅客の責任の方だけ法に書かれるというのはどんなものかとちょっと感じたところです。ですから,同等に,旅客の生命・身体の安全が最重要であるとするならば,同じようなバランスで考えていただきたいと思います。 ○加藤参考人 補足なんですけれども,危険物の持込み禁止は国交省の法律や標準運送約款などに規定がございますが,危険物の申告義務というのは今現在どこにもないんですね。堪航能力担保義務については,そもそも船舶安全法の先頭に明記されていますし,船舶安全法なり何なりという様々な安全行政の中で,堪航性能を担保するのに必要な規則が,具体的には例えば手すりの高さはこうしなさいとか細かい基準まで全て決まっております。危険物について私が申し上げたかったのは,その持込みに際する申告義務が国交省の法律上も標準運送約款にもどこにも担保されていないということが問題なので,ただ,おっしゃるとおりその議論の中で,いや,それは国交省の法律の中で書くべきだということになれば,是非法制審の意見として,そうした参考意見でも付けていただければ,それはそれでいいのかもしれません。   ただ,危険物を持ち込もうとする場合は申告しなければいけないというのは,今どこにもない状態ですので,どこかで書いておく必要があるのではないかと思い,商法の方で書くべきというふうなことで意見を申し上げている次第でございます。 ○山下関係官 ありがとうございます。分科会資料1を作成するに際し,事務当局内部でもその点については理由も含めて議論はしておりました。そもそも物品運送で危険物の通知義務をあえて認めた理由というのは,これは,荷送人が危険な物の運送を委託するときには,それをきちんと危険な物であることやその取扱方法等をしっかり伝えることによって,運送人は危険な物を運送するときの取扱方法を十分に把握でき,運送中の適切な取扱いが可能となる,このように,物品運送では,危険なものを運送するということが大前提になっているわけです。一方で旅客運送というのは,一言で言うと,人と手荷物が一緒に運ばれるので,基本的には,危険なものを運送するということが念頭に置かれていないということが両者の大きな違いかと思います。   それで,分科会資料1にも記載いたしましたが,各種業法,特に国交省が作成する各業法の国交省規則,具体的には,旅客自動車運送事業運輸規則や鉄道運輸規程,それから,危険物船舶運送及び貯蔵規則,航空法施行規則,このようなところで危険物の通告義務,告知義務は定めていないですし,更に申しますと,旅客運送の場合には,こんな危険物をそもそも持ち込んではいけませんという持込み制限若しくは持込みの際にはこの量しか駄目ですという持込み条件等が書かれておりますので,そういった意味からすると,告知義務,危険物の通知義務というのがそもそも必要ないと考えていると言えるかと思います。それはなぜかというと,そもそも危険物の持込みが念頭に置かれていないから,予定されていないからであると思いますので,そういった観点から言うと,余り通知義務というのが旅客運送にはなじまないのではないのかという理解の下で,分科会資料1には書かせていただいておりました。 ○加藤参考人 危険物は持込み禁止になっているから通知義務は意味がないということでは,ちょっと納得いたしかねる感じがいたします。   船の場合について言えば,危険物は一切駄目ということでは元々ないわけです。このフェリーはこういう危険物までであれば積んでいい,このフェリーは積んでは駄目というのがきちんと決まっていまして,危険物積載エリアというのがフェリーの中できちんと設けられていたりします。ですから,貨物の方は元々危険物を積むことを予定されているから,予定されているものについては申告義務があるというのであれば,全く同じような観点で旅客フェリーについても申告義務が必要なのではないかと思います。元々持って入らないのが前提になっているから要らないんだということでは,ちょっとそれは違うのかという感じがいたします。 ○松井(信)幹事 恐らく,船舶と飛行機ではまた違うのかもしれません。ちょっと国交省の関係部局にもその旨を伝えて,また,どういう状況なのかを聞いてみたいなとは思っております。 ○山下分科会長 ほかはいかがでしょうか。 ○塚越参考人 新幹線の話題があるので一言だけ言っておくと,鉄道の場合は鉄道営業法に一応,爆発物とかを手荷物に収納しているという疑いがある場合は申告を求めることができるというような準用規定が確かあったと思うので,基本的にそれで担保されていると思っています。山下関係官がおっしゃったように,鉄道の場合は危険物は持ち込んではいけないというのが前提ですので,私は危険物を持っていますので乗りますと言われても,乗らないでくださいというだけで,どうしようもないというのが正直なところで,そこはもう黙って乗る人がいないようにチェックする体制を整えるしか法的にはしようがないのかなとは思っています。意見というよりも,ちょっとこれは御紹介だけなんですが。 ○山下分科会長 ほかにございませんか。   危険物のところは若干議論がございました。あと,除斥期間について,御意見がございました,なお引き続き検討していただければと思います。   そういたしますと,一応,予定していた論点について御審議を頂いたのですが,全体を通して何か御意見等ございませんでしょうか。   もしなければ,本日の審議はこの程度にさせていただきます。   最後に,次回の議事日程等につきまして,事務当局から説明をお願いします。 ○松井(信)幹事 本日はありがとうございました。次回は9月30日水曜日,午後1時半から午後5時半までの予定となっておりますが,恐らく終了時刻は今日と同じ程度になろうかと思います。場所は未定でございますので,決まり次第,御連絡を差し上げます。議題については,本日御議論いただいたこと,特に商法の590条1項,この辺りを中心に,当方の方でまた資料を作成いたしまして,皆様の御意見を伺いたいと思います。資料作成の過程で,皆様にまたお伺いしたいことがありましたら,御連絡差し上げるかもしれませんが,どうぞよろしくお願いいたします。 ○山下分科会長 それでは,本日の審議はこれで終了とさせていただきます。本日も熱心な御議論をありがとうございました。 -了- - 30 -