法制審議会国際裁判管轄法制 (人事訴訟事件及び家事事件関係)部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  平成27年8月7日(金)  自 午後1時31分                       至 午後6時46分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  要綱案の取りまとめに向けた議論 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○高田部会長 では,予定した時刻になりましたので,国際裁判管轄法制(人事訴訟及び家事事件関係)部会の第16回会議を開会いたします。   本日は,お暑い中かつ御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   なお,岡田幹事,北澤幹事,小池幹事は,本日御欠席です。   まず,配布資料の確認をします。お願いします。 ○内野幹事 本日の配布資料といたしましては,議事次第,配席図等,それと,事前配布として,部会資料の16を配布させていただいております。   以上でございます。 ○高田部会長 よろしゅうございますか。   では,本日は,これまでの部会の審議を踏まえた人事訴訟事件及び家事事件の国際裁判管轄法制に関する取りまとめに向けた検討を行いたいと存じます。   では,順次,事務局から資料の説明をお願いします。 ○内野幹事 それでは,部会資料「第1 人事訴訟事件関係」です。   まず「1 人事に関する訴えの管轄権」という形になっております。   これは,前回,人事訴訟事件については,個別の検討の結果,管轄原因が事実上そろってきたというところを踏まえまして,一つの単位事件類型としてまとめるという方向での議論がありました。   これを反映いたしまして,人事に関する訴えにつきましては,ここで列挙いたしました管轄原因の規律1項目で全て対応するという方向で考えるということになろうかと思われます。   個別の管轄原因につきましては,これまで議論したところの反映でございます。   (1)が,いわゆる身分関係の当事者である被告の住所地という管轄原因を表現しようとしているもの,(2)と(3)が,いわゆる死亡時住所というもの,(4)が双方国籍の管轄原因と,(5)が最後の共通住所地,そして,(6)が一方当事者の行方不明等の事情によって管轄を認めるとするものという類型になろうかと思います。   ここで指摘申し上げたいところといたしましては,1の(1)であります。   部会の中では,いわゆる身分関係の当事者でない第三者が身分関係の当事者の双方を訴える場面,例えば,子が両親を被告といたしまして協議上の離婚の無効の訴えをするというようなものにつきまして,併合管轄の規律で対応するのかどうかという議論がありました。   ただ,部会における実質の議論といたしましては,このような身分関係の当事者の双方を被告とする訴えについて,そのうちの一方が日本に住所を有するなどの管轄原因がある場合は,それは,いわゆる共同訴訟として日本で裁判をすることができるようにするべきだという実質については,基本的に争いはないというところでありました。   そこで,今般案をお示ししているものとしましては,1の(1)でございますが,身分関係の当事者の双方に対する訴えであって,当該当事者,つまり身分関係の当事者の双方のうちの一方の住所が日本にあれば,日本の裁判所の管轄権があるということで,1の(1)の規律の中で対応してしまおうというものです。   表現ぶりは法制上の問題もございますので,その辺はまた今後,検討課題になり得るとは思いますけれども,実質におきまして,1の(1)で対応しているというところです。   それと,(6)の規律について,検討すべき点があります。   前回の議論の中では,いわゆる総論的な緊急管轄の規律について,民事訴訟法でそれに相当する規定が存在しないということなども踏まえまして,今回の法整備にあたっては規律を設けることを留保するという方向になって,今日に至っております。そこで,(6)の規律と,解釈で認めようとしている総論的な緊急管轄の規律との関係が,一つ問題になり得るわけであります。   この(6)の記載でいきますと,「その他」以下におきまして,ある国の裁判所に訴えを提起することが困難であるときという,若干バスケットクローズ的な規定になっております。してみると,この規定が緊急管轄の部分を,ある意味で,一部切り出していると評価され得ることはないかという点が,法制上の問題として議論され得るわけです。   この点につきましては,(6)の管轄規律の位置付けの検討において,緊急管轄とは別の類型なのだというような説明も可能ではないかとも思われますけれども,規定を設ける場合には,包括的な規定が一部存在しているということになります。   そうしますと,後半のバスケットクローズ的な部分が,いわゆる反対解釈として,他の事件類型については緊急管轄を,認めないというような影響を与え得るのではないかを検討する必要があると思われます。   この部分について,以上のような考え方が成り立ち得るとしますと,それを避けるため,(6)の「その他」以下の規律を削除し,身分関係の当事者の一方が他方に対する訴えということであって,被告側とされた身分関係の一方の当事者が行方不明であるときというような規律とすることも検討しなければならないのではないかと考えております。   この第1の1に関しましての資料についての御説明は以上でございます。 ○高田部会長 (6)については,新たに議論すべき点が出てきておりますが,その点も含めまして,「1 人事に関する訴えの管轄権」についての御意見を承りたいと存じます。 ○道垣内委員 確認のために伺いたいと思うのですけれども,今回の改正は,恐らく人事訴訟法の中に盛り込まれる可能性が高いと思います。そうしますと,人事訴訟法2条の定義規定をそのまま受けているということになろうかと思うのですが,その中に,民法773条の規定により父を定めることを目的とする訴えというものがあって,同条を見ると,民法の婚姻無効の規定を引用して規定されていて,準拠法が日本法であるときに限定された規定のように見えるのですけれども,国際裁判管轄ですから,外国法が準拠法となる場合のこの種の訴えも対象にしているはずではないかと思います。   形式上民法の条文を引用しているのは父を定めることを目的とする訴えだけなのですが,かつて部会資料の中では,いろいろなところで,「相当する外国法上の事件を含む」とかという表現があったのですが,それに相当するようなことが書けないのかについて伺いたいと思います。 ○内野幹事 多分に法制上の問題を含むところもあろうかと思いますが,今般の措置は,もちろん当然のことながら,日本法制の問題であるということや,また,その内容は,利用者に対して,なるべく対象としている事件はどういうものかということを示そうという,言ってみれば,予見可能性を高めようという要素も一つあったところです。   それをどのように表現しようかというところはあるわけですけれども,今般の措置の中では,やや民法に引きずられたような文言遣いがあるかもしれませんが,今,道垣内委員が御指摘のとおり,外国法が準拠法となったような事件にも対応し得ることを前提として,このような規律を今般,国際裁判管轄の規定としては設けようと考えております。   したがいまして,人訴法の規定ぶりは,こうなっておるわけですが,少なくともその解釈適用の在り方といたしましては,そういった外国法を準拠法とするこういった相当する訴えも含んでいくということを前提としております。 ○道垣内委員 当然,前提としていただいていると思うのですけれども,例えば,人事訴訟法3条の枝番で規定が入るとすれば,その枝番を含んでいる,款については,括弧書で,「外国法上これらの訴えに関するものを含む。以下,この国際裁判管轄の規定について同じ。」という趣旨のことを書けば足りることなので,それくらいは書いたらどうかと思いますが,いかがでしょうか。 ○内野幹事 そのような措置が必要かどうかというのは,他の法制とのバランスもあろうかと思います。一つの考えとしては,書くという考え方も,当然否定されるべきものではないと思っておりますが,あえてそういうことを書かなくても,当然に現行の人訴法の国内規定でも,外国法が準拠法になる場合に対応した手続は存在しているという認識ないし解釈を前提とすれば,あえてそういう明文措置を設けなくても問題ないのではないかとも考えられるわけでありまして,今のところ,その辺りは法制上の問題なのかなと考えております。 ○高田部会長 法制上の問題であるというのがこれまでの整理であり,かつ,国際裁判管轄を認めた上で,さらに国内裁判管轄の問題をはじめ人事訴訟法の適用問題が起こりますから,そうした外国法で相当する事件も人訴法の適用があるということを明らかにするために国際裁判管轄のところにだけ,「相当するものを含む」という規定を設けるのは不適切だというのが,これまでの整理だったように理解しておりますが,いかがでしょうか。 ○道垣内委員 そうすると,人訴法2条に書くべきということかもしれません。   教えていただきたいのは,2条は,わざわざここだけ民法が引用してあるのは,相当な理由があってのことなのですか。ここを変えるという手もあると思いますけれども。 ○高田部会長 法制上の問題かもしれませんが,2条は,規定の中に「その他身分関係の形成又は存否に関する訴え」を含んでおりますので,その解釈によるという理解はあり得るのではないでしょうか。これも解釈上,争いがあったところだとは存じますが,これまではそうした解釈もあったと理解しております。   御指摘は貴重な御指摘だと思いますし,法制上の問題にも関わりますので,そうした問題として受け止めさせていただければと存じます。   そのほかの点,何か御意見ございますでしょうか。 ○道垣内委員 (6)は,前に申し上げましたように,いずれかの国の独裁者に無理やり結婚させられて逃げてきた男性なり女性が日本に定住するに至り,とにかく日本で,離婚した上で再婚したいといったときに,本国,あるいは被告の住所地で,独裁者の住む国ではとても裁判できないという場合があります。そういう人を救ってあげればいいではないですかということを申し上げており,この(6)でそういうことができるようになったなと思っていましたので,これを元に戻すということについては,私はネガティブです。本当ならば,今言ったような特殊な場合ではなくても,被告が住む国の判決が日本では効力がないという場合もあるので,そこで幾ら裁判しても日本では再婚できないということもあります。そうであれば,単に訴えを提起することが著しく困難なだけではなくて,要するに,日本では所期の目的が達成できないような場合を全部含むような,もっと広い表現でもいいかなと思っております。 ○内野幹事 貴重な御指摘だと思っておりまして,ただ,今の道垣内委員のおっしゃったような場面というのは,実は人事に関する訴えの場面だけなのかということも,やはり考えなければならないのではないかというところもあるのではないかと思います。本来管轄を認めようとしている国の裁判所で判断を得ても,日本で意味がないというような場面というのは,ほかの事件類型であっても,あらゆる場面でも存在し得るのではないかといった考え方もあり得るところです。   そうすると,それを,人事に関する訴えについてのみ明文化するということが逆効果にならないかということも,確かに説明の仕方の問題かもしれないですが考えなければならないと思います。 ○高田部会長 いかがでしょうか。 ○池田委員 実務的には,圧倒的に離婚事件の数が多いわけで,先ほど道垣内委員がおっしゃったような事例も,特に次の再婚ということがありますので,非常によく起きます。そういう意味ではニーズとして,離婚事件についてそのことを明確に分かるようにしておきたいということがあるのではないかと思っています。   総論的な緊急管轄に関しては,全体を幅広く定める文言についての検討も不十分だったというような理由で,明文化を見送ったという経緯があるという理解なのですが,総論的な緊急管轄はともかく,ここにはそういったものを入れるという前提でこれまでずっと来たのに,これを更にとってしまうというのは,実務的にはかなり問題があり得ると考えています。特に,今,道垣内委員がおっしゃったような例などについて,現行法上,裁判所で疑問が呈されていたりするといったことも考えますと,明示したい部分がかなりあると思っております。 ○竹下幹事 (6)のところですが,「その他当該当事者の住所」以下を除くという考え方も検討することが示されたわけですが,それを除くとすると,恐らく昭和39年判決よりも狭まるのではないかと思います。その他これに準ずる場合という部分が入らないことになってしまうわけですが,これまでの議論との関係でいえば,その他これに準ずる場合は含むという政策判断をしてきたと理解しておりますので,そうすると,やはりそこのところは狭くなり過ぎるように思います。ここの(6)の後半部分があることで,一般的な緊急管轄の議論に影響があり得るという考え方が論理的に成り立ち得るというのは,事務局の御指摘のとおりですけれども,ここの(6)の規定があったとしても,個人的には,一般的な緊急管轄のようなものというのは,正に裁判を受ける権利などとの関係で,当然に認められるものというものだと思いますので,ここの「その他」以下の文言は,今までの議論どおり,残してもいいのではないかというのが私の意見です。 ○大谷幹事 今日,事務局から,(6)の「その他」以下を削ることも検討に値するという,新しい指摘があり,それに対する道垣内委員や池田委員,竹下幹事からの御意見がありました。それに対する私の意見として申し上げると,結局,今まで昭和39年判決のその他準ずるが適用されたケースというのは,実はそれほどは多くないのです。そして,それが適用されたケースを見てみますと,やはり原告が日本人の事案なのですね。   今まで,国籍管轄を入れるかということについては,(4)で,双方が日本国籍を有するという形になっているんですが,私は,(6)の「その他」以下で,救いたい場合と皆さんが念頭に置きながら話しているケースというのは,原告が日本に住所を有していて,かつ日本人であるというケースではないかと思うのです。その人の離婚を求める権利,更には再婚ということについて,要は原告が日本に住所を有し,かつ日本国籍を有するという類型なのだろうなと,今まで実務的には感じています。   なので,一般的に緊急管轄との関係で問題があり,(6)の後半を削ってしまうことがやむを得ないのであれば,離婚に関して,住所プラス国籍という類型を端的に認めるという整理もあり得るのではないかと思います。それによって,過剰に広く管轄が認められるという過剰管轄の心配があるかと思うのですけれども,それはどこでも出てくるので,特別事情の却下という規律がありますから,それで対応するという整理もあるのではないかなと思います。   ただ,この段階での発言ですので,これをとても強く提案しようという意味ではなく,議論の整理として,一つ考え方として述べさせていただきます。 ○高田部会長 ありがとうございます。   念のためですが,離婚事件に限ってという理解でよろしゅうございますね。 ○大谷幹事 はい,そうです。 ○高田部会長 (6)に限定した場合,離婚に限っては問題が残るのではないかという御指摘を頂いているところではございますが,ほかに御意見ございませんでしょうか。 ○大谷幹事 (6)の行方不明なのですけれども,これも議論のかなり最初の段階でも繰り返し発言した点なのですが,(6)のいわゆる昭和39年判決のくくり出しのときに,委員幹事の皆さんから,行方不明は明確だから入れるべきだという意見がいつも出ていたのですけれども,私は実務で,いかにこれが明確ではないかという例をたくさん申し上げました。   行方不明を残すなら残すでもいいのですけれども,ただ,もう一回,最後の取りまとめの段階で委員幹事の方々に御理解いただきたいのは,この行方不明の管轄原因で管轄が認められるということは,すなわち,外国公示送達になることを意味します。そうすると,被告には全く分からないまま,離婚判決になります。しかも,昭和39年当時と違いまして,今はメールとかフェイスブックとか,いろいろな形で,実は連絡が取れるというケースがたくさんあります。そのような場合でも,実務では,行方不明であると結局は整理されて扱われることがあります。   今回の議論の大きな柱として,被告の応訴の利益,被告の住所というものを基準にするという大きな枠組みの中で議論をされていながら,私はこの行方不明が,実は被告の応訴の利益を守らない形で機能するということについては,整合性がないというか,実務上の運用として問題が起きていることを感じています。   その現状を踏まえた上でも,これを残すということであれば,あとは実務の側の問題で,どこまで原告に被告の住所の調査を求めるのかということになりますけれども,例えば外国では,最近は,Eメールアドレスが分かっていればEメールでの送達を認めるというところまで実務が進んできている中で,この管轄原因を置くことについては,御留意をお願いしたいと思います。 ○高田部会長 ありがとうございます。   御指摘いただいたとおりの事情もありまして,行方不明を例示に挙げることが適切かどうかもこれまで御議論いただいたところですけれども,従来の議論を前提に,この段階でどうするかということを御判断いただければと存じます。 ○山本(和)委員 (6)ですけれども,私自身は,これは必ずしも緊急管轄という趣旨だけではなくて,元々,国内管轄は原告,被告の住所が全くイーブンになっているものを,国際裁判管轄では,被告側の防御権,手続保障のために被告側の住所を重んじたというものですので,やはり一定の場合には,公平の観点などからそれを原告の住所に引き戻せるような場面というのがあり得るのではないかということで,それをこの(6)で書こうとしていたのだと理解しています。だから,当初の案では当事者間の公平というようなことも入っていたわけで,私自身はそれを支持していたわけですけれども,最終的にはいかにも緊急管轄的な形になってしまって,それが総論の緊急管轄が削除されたことの一種の巻き添えになってしまうという可能性があるという御説明で,そうであるとすれば,その議論の経緯自体,私は非常に遺憾です。もちろん今,委員,幹事が言われたように,私も残せればとは思っています。   それはさておいて,今の大谷幹事の御発言の関係で,行方不明というのは,今までそれほど詰めた議論が余りされていなくて,部会長がおっしゃったように,それだけが独立の管轄原因として出てくるということになれば,どういう解釈がされるのかという懸念がややあるので,ちょっと伺いたいのですけれども,(1)との対照からすれば,住所又は居所がない場合又は知れない場合というのが,(1)の対にある概念だと思うんですが,それが行方不明なのか,それとも,それよりも広い場合,あるいは狭い場合があるのか。その行方不明の概念というのが,住所,居所というものと連続性がある概念なのかどうかということをちょっと確認させていただければと思います。 ○内野幹事 それに尽きるのかと言われるとお答えに窮するのですけれども,基本的に想定しているのは,居所すら不明というものを行方不明の中心として,それに含まれ得るものとして考えていたということだろうとは思います。 ○山本(和)委員 しかし,そう書かないということは,そこは解釈に委ねようという,何らかの含意があるという理解でよろしいのでしょうか。 ○内野幹事 これまでも,この部会でも議論されたとおり,行方不明の概念は何なのかというところは,ぎりぎりのところでは,やはり解釈に委ねざるを得ない部分があるのではないかということではあったように思います。   ですので,解釈に委ねる部分があるということを含意した上での,行方不明であるときという文言ぶりを考えているということであります。 ○高田部会長 いかがでしょうか。   念のためですが,それは解釈に委ねるというのは,昭和39年大法廷判決の判旨が認めている範囲で管轄を認めるということを明らかにするという御趣旨ということでしょうか。 ○内野幹事 その趣旨も含んで,解釈に委ねるということです。 ○山本(克)委員 念のために確認ですけれども,行方不明には,先ほど大谷幹事がおっしゃった,フェイスブック等で何らかの通信は取れるという場合も含む,つまり,失踪宣告の要件としての生死不明よりは緩やかに認め得る概念だと位置付けておけばよろしいのでしょうか。 ○内野幹事 その点については,これまで,ぎりぎりのところは解釈に委ねざるを得ないのではないかというところで推移しているものですから,事務局として直ちにお答えをするのはなかなか難しいところもございます。もし今の山本克己委員の御指摘に何か御示唆いただけるような御意見がほかにありましたら,それを前提にまた考えてみたいと思っております。 ○大谷幹事 住所がない場合又は住所が知れない場合,あるいは居所が知れない場合と行方不明概念の関係性は,私も正直よく分からなくて,そこの整理をしていただけると大変有り難いのです。これは概念整理とはちょっと関係ないのですが,実際にどういう場面があるかということについてだけは,もう1点だけ情報提供させていただきたいのですが,例えばアメリカの場合,州にもよりますけれども,普通の私たちの感覚で,住所が分からない,本人が教えてくれないといっても,名前だけが分かっていれば,ほぼ皆さん免許を持っていますので,簡単に調べてもらおうと思えば調べてもらえるとか,軍関係者であれば,日本から去っても問い合わせですぐ出てくるとかいうことがあって,そういうことを知っていて,真面目に調査した人はアメリカで裁判をやらなくてはいけないことになり,知らなかったと言って,最後の知れている住所に手紙を送ったけれども届かなかっただけで,行方不明であるとして裁判を起こすと,行方不明として日本で裁判をすることができ,公示送達になるというようなことになります。   これは概念整理の話ではなくて,正に実際の適用場面の話だとは思いますけれども,今回の法制化で管轄原因として残すのであれば,そこの運用は人によって違いが出てこないように,きちんと明確にした形でやらないと,アンバランスな状況が生まれるだろうと思います。 ○畑委員 念のための確認ですが,今,規定としては行方不明だけを残すという案も検討してはどうかという話が出たので,行方不明に議論が集中しているのですが,事務局の御趣旨としても,その他の場合を実質的に削ろうという御趣旨ではないという理解でよろしいのでしょうか。   私自身も,この(6)は,今まで一部の委員幹事がおっしゃったように,もうちょっと広くていいのではないかという感触を持っているので,この規定が痩せ細っていくことにはちょっと抵抗があるのですが,しかし,規定の文言自体は狭いものになっても,実質はそうではないという御趣旨だと理解してよろしいのでしょうか。 ○内野幹事 実質は,いわゆる解釈論によって認める緊急管轄といいますか,そういった部分に委ねられる部分が広くなるという説明でいるわけですけれども,今回の(6)で管轄原因として明示する部分については,このように限定することも考えられるのではないかということです。   広いとか狭いとかいう表現がいいのかどうか分かりませんけれども,解釈に委ねられる部分が,現在の案よりも広くなっているということになろうかと思います。 ○村田委員 行方不明の概念については今正に御議論に出ているとおり,解釈に委ねられると思うのですが,送達という観点からすると,外国送達の場合でも,住所,居所が知れないときに,就業場所送達をすることが時々あります。住所,居所は分からないけれども,働いている所は分かるという場合に,就業場所に送達してくれといわれたときは,基本的には就業場所に送っています。   もう1点は,全然別の観点からの質問なのですが,もし仮に(6)で「その他」以下を落とすことにした場合に,昭和39年判決と,残った(6)の関係をどう説明するのか,例えば事務局の方が一問一答等を書くとしたら,どういう形で説明をすることになるのかというところをちょっとお伺いしたいと思います。 ○内野幹事 本日と次回の議論を踏まえて,どのような説明をすべきかを検討していきたいところでありますが,いずれにしても,どのような解説を書くかというのは,今,具体的に何か考えがあるわけではありません。ただ,(6)の後半を削るとしても,それは,いわゆる昭和39年を否定する趣旨ではないことは示していくべきかとは考えています。少なくとも,部会の議論としては,解釈に委ねられるところの緊急管轄との関係性への影響という部分を踏まえて,後半部分を削除するという案もあり得ることを今申し上げている次第ですので,(6)が行方不明であるときとだけなったとしてもその他これに準ずる場合という部分について解釈による緊急管轄を認めることを否定する趣旨ではない,そういう推移をしたものではないというところは少なくとも,明確に言えるのではないかと,事務局としては考えております。 ○山本(和)委員 今の村田委員の例は興味深かったのですが,それはつまり,住所,居所は分からないけれども,就業場所が分かっているというのは,行方不明とは言えないというご趣旨で挙げられたと理解していいのですか。 ○村田委員 先ほど大谷幹事のお話に,具体的な効果としては,公示送達に結び付くという御指摘がありましたので,公示送達にいくかいかないかというところから,逆に遡って考えると,就業場所が分かっていれば公示送達にはいかないわけですので,そういう機能的な概念として行方不明を捉えるとすると,そういう解釈もできるという趣旨で申し上げました。 ○山本(和)委員 そうすると,(6)には当てはまらないし,(1)にも当てはまらないということになると思いますが,それは緊急管轄で,日本でやるということなんでしょうか。 ○村田委員 厳密に言うとそうですね。行方不明を公示送達になるか否かという機能的な概念として考えるとすれば,住所も居所も分からないけれど,就業場所が分かっているという場合は,(1)にも(6)にも当てはまらないということになる可能性はあるかと思います。 ○山本(和)委員 そこに隙間を空ける,(1)でも(6)でも認められない場合があるというのが,ちょっと私自身,違和感があります。 ○高田部会長 仮に行方不明のみにしたときに,どういうことになるかということですが,先ほどの事務局の説明ですと,ある種,法制上の問題と申しますか,解釈上の緊急管轄に影響を与えることへの危惧という観点からの限定ということですので,言い換えれば従前の議論を根本から変えるつもりはないという御指摘ですので,そうした解釈論は残る余地があるということかもしれません。 ○大谷幹事 今のような事例というのは,結構今までよくありまして,ただ,日本に管轄を認める根拠としては,「その他これに準ずる場合」を実務でお使いになることはほとんどなくて,遺棄がかなり容易に認められている,圧倒的に遺棄が使われているというのが,私自身の,あるいは周りの同種事件を扱う弁護士たちからの情報での印象です。 ○高田部会長 遺棄の場合には,(5)に相当するような事例が多いということですか。 ○大谷幹事 いえ,外国で婚姻生活を送って,帰ってきた場合もあります。 ○高田部会長 そうした場合も含めて遺棄で対処されているということですか。 ○大谷幹事 例えば生活費を送ってもらっていない,音沙汰がないから遺棄,といった感じです。 ○高田部会長 遺棄で対処されているということですね。   繰り返しになりますが,事務局の懸念は法制上の問題にあるようですので,仮に(6)の後半部分を削るとしても,これまでの議論の実質を変えるということを目的としたものではないという趣旨だろうと思います。ただ,文言が違いますから,解釈の余地と申しますか,解釈については,異なる解釈が展開される可能性があるわけでありますが,その点からいえば,行方不明という要件をどのような考慮をもって根拠付けるか,より広い観点からすれば,原告住所地管轄をいかに評価するかという問題について,従来もある意味,解釈に委ねていたところですが,結果として解釈の余地が若干広くなるのかもしれません。   そうした問題点があるということも含めて御指摘いただいたと存じますが,他方で,行方不明のみを挙げた場合に,行方不明の解釈がなお明らかでない点も問題となり得るということも,貴重な御指摘としていただいておりますので,これらの点を踏まえて,事務局になお御検討いただいて,次回もう一度御提案いただくということになろうかと思いますが,この段階で,なお御意見があれば承りたいと存じます。 ○大谷幹事 再度整理されるということですので,整理の仕方として,(6)を逆に行方不明を落としてしまって,「その他」以下を残すという整理の仕方というのはあり得ないのかということも,一度御検討いただけると有り難いです。 ○高田部会長 貴重な御指摘で,御検討いただきたいと思いますが,事務局は,「その他」以下を規定することについてやや懸念がある,そのため,従来からの議論を踏まえ,かつ昭和39年判例と一定の整合性をもって規定することができるのは,行方不明であるときしかないのではないかという御指摘だったではないかと,個人的には理解しております。代替案についていいアイデアがあれば,なおこの段階で承って,次回までの検討の参考に供していただければと思いますが,いかがでしょうか。 ○池田委員 今の(6)からちょっと離れますが,ここで整理された規定だけになるときは,被告がどんなに日本で裁判をしてもいいと言っている場合もできないという整理なわけですね。   しかし,それであれば,先ほどの御指摘もありましたが,住所が分からないことにしてしまいましょうとやれば日本で裁判ができてしまうという,何かおかしな話になりかねないなと思うので,それも何かちょっと割り切れない気がします。 ○高田部会長 ありがとうございます。   (6)については,ほかに御意見ございますか。 ○道垣内委員 私も確認ですが,ある国に生きていて,しかし住所は特定できないという場合も含むのですね。 ○内野幹事 いずれにしても,次回,この行方不明概念について,また解釈上の問題として御議論いただければとは思っておりますが,現状としては含まれ得るというような解釈も許しているとは思っております。 ○高田部会長 では,(6)については,取りあえず今回は,この程度でよろしゅうございましょうか。   それでは,(6)以外について御意見があれば,承りたいと思います。 ○平田幹事 1点ちょっと確認させていただきたいのですけれども,(1)なのですけれども,先ほどの御説明だと,第三者が当事者双方に対する訴えのときに,当事者のどちらか一方の住所があればいいということでした。   ただ,当事者の一方が他の当事者に対する訴えを提起したときに,当事者一方の住所が国内にあればいいというのを一つの条文でやってしまうと,原告住所地管轄が入ってきてしまうので,これを二つに分けないと誤解を生じるような気がするのですけれども,いかがでしょうか。 ○内野幹事 先ほど,いろいろ分かりにくさもあるかとご説明した点にも関わりますが,誤解を生じないような工夫を考えていきたいと思います。   身分関係の当事者の一方が他方を訴える場合と,それ以外の第三者が,つまり身分関係の当事者双方を訴える場合と,規定を分けた方が分かりやすいのではないかと,こういう御指摘だと承っておりますので,そういった部分も含めて,今後検討してまいりたいと思います。 ○高田部会長 御指摘のとおり,読み取りにくい条文かと私も感じておりますので,御検討いただければと思います。 ○道垣内委員 (5)なのですけれども,離婚の際に,最後の共通の住所というのは,最後に一緒に住んでいなければいけないというお話で,私の理解とは違ったんですけれども,それはそれとして,これは認知とかでも全部,一緒に住んでいなければいけないのですか。その辺りの解釈はいかがでしょうか。 ○内野幹事 これまでの部会の中で御指摘の点は議論はされておりますけれども,管轄原因として規定しておりますのは,最後の共通の住所,一緒に住んでいるという部分を管轄原因として採用しているということです。 ○高田部会長 今後の解釈論の展開は否定できませんが,従前の議論はそう推移してきたという御説明だと存じます。   ほかに御指摘いただく点はございますか。   では,(6)についてはなお御検討いただくということで,「1 人事に関する訴えの管轄権」については,今回はこの辺りでよろしゅうございましょうか。   では,続きまして,「2 併合請求における管轄権」について御説明いただきます。 ○内野幹事 併合請求における管轄権につきましては,従前の部会の検討を踏まえると,いわゆる併合請求という文脈で管轄原因を議論すべき事件として,おおむね三つのようなことが言われていたと認識しております。   すなわち,まず,身分関係の当事者間で当該身分関係について複数の訴えがされる場面,例えば夫婦A,B間で,AがBに対して離婚の訴えをするとともに婚姻の取消しの訴えを起こすといったようなもの,いわゆる併合請求に係る管轄規律を肯定してもいいのではないかという議論がありました。   二つ目は,子が提起する両親の協議離婚の無効など,いわゆる主観的複数を含むような場面についても同様の議論がありました。   そして,三つ目は,共同養子縁組をした場合の子からの両養親に対する離縁の訴えというような場面についても,併合管轄を認めるべきではないかというような議論がありました。   どういう文言を使うかというのは,かなり法制上の問題もありますので,比較的大らかに推移してきたわけですが,概要,同一の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴えという概念で表現できるのではないかという議論をしてまいりました。   ただ,同一の身分関係の形成又は存否という言葉に,今の3類型が全部本当に入っているのかについて,その後検証を重ねてきたわけですけれども,まず一つ目に申し上げた場面ですが,これは,確かに同一の身分関係についての形成又は確認という形にはなり得るのだと思うんですが,同一の身分関係の形成又は存否を求める訴えかというと,やはり若干,文言的に困難な部分があるのではないか,という考慮があり得るところです。   二つ目の子の提起する両親の協議離婚の無効の訴えは,先ほど申し上げましたとおり,部会資料第1の1の(1)で対応することを予定しています。これまでは請求の個数などというようなところにも着目しつつ,併合請求として規律するかという議論をしたのですが,身分関係が一つだと考えられる場合の請求の個数については,いろいろな解釈論もあり得るだろうという指摘がありまして,むしろ管轄権の肯否について採るべき結論がはっきりしているのであれば,第1の1の(1)の規律の中で管轄権を肯定することが考えられるのではないかということで,本日の資料の形になっています。ですので,このような方針で対応すれば,この場面については,いわゆる併合請求に係る管轄権の規律ではない方法によって一つ対応することができたということになるかと思います。   そして,三つ目の共同養子縁組の離縁という場面については,これは母子関係,父子関係と別々の養子縁組関係がありますので,さすがに身分関係が同一とは言い難いだろうというような考え方に至ったわけです。   そして,実質において第1の1の(1)で対応できていないところを含むものとして規律しようとした場合,人事訴訟法の第5条の国内管轄の併合の規律と,いわゆる請求の密接関連性に着目した民事訴訟法における併合管轄の規律をある程度参考にし,このような部会資料になっているというわけであります。このような規律であれば,先ほど申し上げた残る二つのものも,併合管轄の規律よって日本の裁判所に管轄権が認められ得るのではないかと考えたものであります。   そこで,実質的な議論としましては,いわゆる共同養子縁組の離縁を念頭においた併合管轄の規律を置いた方がいいと考えるのか,それとも,規律として管轄を認めることとなる場面が広すぎることになってしまう懸念があるというのか,やはり同一当事者間の,最初に申し上げた事例,場面についてのみに対応するような規定を置いておくべきなのかという,そこが判断の分かれ目ということになると思われます。仮に部会資料のような規律を設けますと,国内の管轄規律に関する解釈論を参考などにすれば,結果として,離縁と離婚が同時にされるような場面,例えばAとBが婚姻をした,BがAの親と養子縁組をしたといったような場面において,AとBが離婚をし,BがAの親と離縁をするというときにも,併合請求による管轄権を認められ得るような規定としてなってしまいます。   ただ,この場合においても,個別の事案において,特別の事情による却下による調整はあり得,管轄規律としては民事訴訟法と同様の規律であるからということで許容しておくという判断もあり得るところでありますし,他方で,共同養子縁組の子の離縁については,こういった併合請求による管轄権のような形で受けることをやめてしまっていいんだという決断をして,同一当事者間における客観的併合の場面だけの規律を設けておけばいいんだという判断も一つあり得るのかもしれません。   したがいまして,ここはまず,実質においてどちらの方針を採るのかというのが,ここの併合請求における管轄権の議論かと思っております。   資料の説明としては以上です。 ○高田部会長 従前ここで御議論いただいた,併合請求を認めるべき事件を包含しようとすると,こういう規定になるのではないかという御提案を頂いたということかと存じますが,御意見を承れればと存じます。 ○山本(和)委員 中身というよりは形式的な質問なのですが,今,内野幹事が言われた最初の例,同じ婚姻について,離婚と婚姻取消しを求めるという場合,これも,身分関係はやはり複数だという前提でしょうか。 ○内野幹事 恐らく,身分関係それ自体を取り出せば,一つの婚姻ですので,一個なのかもしれないと考えています。 ○山本(和)委員 そうであるとすれば,数個の身分関係,数個というのは恐らく二個以上のことを数個と呼んでいるのではないかと思うのですが,そうすると,今の第一の例は,この規律に入らなくなってしまうのではないでしょうか。もしそれを入れるのであれば,一個又は数個と書かないといけなくはないでしょうか。 ○近江関係官 「数個の身分関係」というところで切らずに,「数個の身分関係の形成又は存否の確認」をするということで一単語と読むことはできないでしょうか。例えば離婚と婚姻無効ですと,婚姻の解消という形成を目的とする離婚請求と,それから,性質に争いはあり得ますが,無効の確認という請求とがあり,形成又は存否を求めている対象は二つになるのではないかということです。 ○山本(和)委員 それは,請求が複数だということを言われているのではないですか。それは数個の請求というのは,私もそのとおりだと思うのですが。 ○高田部会長 山本和彦委員は,その場合には,数個の請求の「数個の」が要らなくなるのではないかという御趣旨ですね。 ○山本(和)委員 前の「数個の」をやめてしまっていいのかもしれません。 ○高田部会長 数個の請求の「数個」をやめるか,前の方の「数個の」をやめるか,どちらかということですね。「数個の」が両方あると,山本委員のおっしゃるような誤解が生じる可能性があるということかもしれません。 ○和波幹事 今の点に関係する質問なのですが,人事に関する訴えが一個の単位事件類型になって,管轄原因が全く一緒になった場合に,一つの婚姻関係についての離婚と取消しのうち一方について管轄があって,他方について管轄がないという場面は想定できるのでしょうか。 ○内野幹事 これまでの議論といたしましては,訴え提起の時点がずれた場合があり得るということであったと思います。離婚の訴えを提起した後に,被告が引っ越してしまったというような場面では,一方に管轄があり,他方に管轄がないという場合があり得ます。そういう場面まで対応しますかという議論は,実質においてあるのだと思いますけれども,これまでの部会の議論の中では,そういう場合もあるので,同一当事者間の請求についても規定を設けておくことも考えられるということだったかと認識しております。 ○高田部会長 内容的には,先ほど三つ挙げていただいた例をどこまでカバーするかであり,今御指摘いただいたように,先ほどの三つ目の例で申しますと,日本法でいう共同養子縁組,類似の外国法上の制度があり得るのであればそれを含むということを前提に,その受け皿として併合管轄を認めるとすれば,このような規定ぶりになるのではないかという御指摘かと思います。先ほどの御説明ですと,もし三番目の共同養子縁組のようなものは併合管轄を認めなくていいという判断をすれば,別の規定の仕方もあり得るという御指摘を頂いたということだと存じますので,実質論の方を御検討いただくのがよろしいのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○大谷幹事 実質論ですけれども,離婚と離縁の実質論の話なのですが,私も今まで渉外案件で,離婚と離縁の両方出てくるケースをやったことがありますが,これを併せてやった方がいいというのは,多分に日本的感覚だと思っています。   日本的感覚と申し上げたのは,再婚するときに子供を養子にした場合,離婚する以上は離縁もするという発想で,そこは,私は,養子縁組についての外国の考え方が日本とかなり違うと思いますので,日本的には実際も実務でセットにする場合が多いですが,果たしてそれが,国際裁判管轄のときに受け皿を作っておかなくてはいけないほどの,一般的に一体的に扱うべき問題なのかと言われると,そうではないのではないかという気がします。   むしろやはり,それは別の法律関係であって,夫婦間が離婚するとしても,一旦養子縁組をしたそこの関係は別途の考慮なのだと考えるのが,一般的な元々の考え方だと思いますので,私は実質論を尋ねられているのであれば,併合管轄を認めるような規律にしておかなくてもいいのではないかと思います。 ○内野幹事 そういう議論はあり得るかと思っておりまして,これまでの議論を踏まえますと,やはり,むしろ共同養子縁組の離縁の場面で,どのように考えるのかというところの実質をどうするかというところを明確に議論していただければと思っております。 ○高田部会長 今,大谷幹事から御指摘いただいた離婚と離縁の例については,途中では議論はありましたけれども,これまではどちらかというと消極の方の御意見が強かったと理解しております。先ほどの事務局の御説明も,離婚と離縁の例まで含められてしまう文言になってしまうのではないか,今の大谷幹事の御指摘は,それを避ける言葉遣いをした方がいいという御指摘として承りたいと思います。   より事務局が御議論いただきたいと考えている事項は,従前,ある程度の賛意を得ていた議論として,共同養子縁組の父子関係,母子関係について,同時に訴えたいという場合には併合管轄を認めていいのではないかという御意見があったという理解をしておりまして,そうした場合について,本日,併合管轄を認めることが適切かどうかという点について特に御意見が賜りたいということのようでございますが,いかがでしょうか。 ○大谷幹事 その,特に意見を聞きたいとおっしゃった例を,もうちょっとどこに誰がいるという形で教えていただいてもいいですか。 ○内野幹事 養子が両親を被告として,夫婦共同養子縁組をしている共同養子縁組の離縁を訴えるわけですが,例えば,養親である父親の方が日本にいて,母親の方が外国にいるという場合です。こういうときに,こういった外国にいる親も併せて,日本で裁判管轄が必ず確保されるとするかどうかであります。 ○山本(弘)委員 結局,併合裁判籍を認めるメリットというのは,離縁原因が共通するような場合であれば,要するに,判断内容も統一性が確保されるし,ばらばらに国を変えてやるよりも,経済性という意味でも正当化されるということだと思うのですが,私は,そもそも共同訴訟において,その程度のことで被告側の併合裁判籍を認めるということに対して,財産関係も含めて最近非常にネガティブになっておりまして,ですので,私は,その場合は含めないという方向で考えていくべきではないかと考えています。 ○山本(和)委員 もう一回確認ですけれども,中間試案の補足説明の注では,今の例は,共同縁組における縁組を一体のものと解する見解からは,その離縁の訴えは固有必要的共同訴訟であると解することになるが,その場合は,共同縁組の関係全体が同一の身分関係に該当すると考えられるので,この中間試案の案で対応できるというのが注に書かれている事務局の見解だったと思うのです。   要するに,必ずしもそういう場合,同一の身分関係には当たらないと見解を見直され,しかし,固有必要的共同訴訟であるというところはなお見解としては維持されているという理解でいいのですか。 ○内野幹事 結局,固有必要的共同訴訟に該当するという考えもあり得るものですから,こういった受け皿を用意しておく必要があるかと,こういうことになっているわけであります。 ○山本(和)委員 もしそうだとすれば,今,山本弘委員が言われた,ばらばらにするということは難しいのではないですか。 ○山本(弘)委員 ばらばらにできないのであればそうですけれども,私はそもそもばらばらにできないのかが,疑問であるということです。 ○内野幹事 ばらばらにできるかできないかが,何によって規律されるのかという問題があり,これが場合によっては準拠法によって規律され得るという話になってまいりますと,そういった部分を想定して,管轄原因を予定しておくべきという議論もあり得るわけで,その辺りが非常に難しいという,これまでの部会の議論も,そういったところに悩みを持っていたんだと思っております。 ○山本(弘)委員 最低限必要な管轄規律というのは,特に被告側に固有必要的共同訴訟の関係が成立するような場合には,どこかでできるようにしておかないと,原告の訴権が侵害されるので,その場合だけをカバーすればいいということだと思います。個別の解釈論として,現在の日本法の夫婦共同養子縁組の離縁が本当に固有必要的共同訴訟なのかという点については,私としても定見を持っているわけではないけれども,何となく,それは固有必要的共同訴訟ではないのではないかという程度の感覚しか持っておりませんけれども,申し上げたいことはそういうことです。 ○畑委員 今の場合が固有必要的共同訴訟だとすると,1の(1)でカバーされるということはあり得ないのでしょうか。先ほど二番目の類型として,子の提起する離婚無効が1の(1)でカバーされるという御説明だったと思うのですが,似たようなことが妥当しそうな気もするのですけれども。 ○高田部会長 事務局のお考え次第ですが,1の(1)は身分関係の当事者双方が被告となっている場合で,共同養子縁組の離縁の場合には,身分関係をどう捉えるかによりますが,必ずしも身分関係の当事者双方が被告となっているとは言えないというのが事務局の御発想なのかも知れません。 ○山本(克)委員 今の夫婦共同養子縁組の場合の固有必要的共同訴訟性について議論があるということを前提にした場合には,もし固有必要的共同訴訟と解するのであれば,今,畑委員がおっしゃったように,1の(1)の類推適用という形で,適用そのものは無理だと思いますけれども,類推適用という形で対応できるので,余り無理をしない方がいいのではないでしょうか。無理をして,先ほど,離婚と配偶者の連れ子についてした養子縁組の離縁が入ってくるかのような規定は置かない方がいいのではないのかと思います。   ですから,併合管轄については,従来どおりの案でよろしいのではないのかなと思います。ただ,それが本当に,それも本当に必要かどうか,ちょっと怪しそうな気もしますけれども。 ○内野幹事 今の御指摘にそのまま従えば,仮にやるとすると,同一当事者間の,同一の身分関係についての離婚と婚姻の取消しというような場面について,規定を置いておくかどうかというような議論ということですよね。 ○山本(克)委員 はい。 ○内野幹事 承知しました。 ○高田部会長 ほかに御意見いかがでしょうか。 ○内野幹事 正に大谷幹事が御指摘いただいたような問題も発生するので,その部分はどうするかという議論がありますので,実質において,これまでは夫婦共同養子縁組の離縁というのを中心に,部会では具体的に議論してまいりましたが,その上で,今,山本克己委員のおっしゃったような考え方で規定がなくても対応し得るということで,この部会が実質をそのようにするんだということであれば,そういう選択肢も一つの考え方かとは事務局としては考えておりますが,いかがでしょうか。 ○畑委員 今お尋ねになったので,一応お答えということですが,私も,せいぜい同一身分関係でよいのではないかと思っております。内野幹事がおっしゃっておられるように,今日の御提案だと,幾ら特別の事情による却下があるとしても,広すぎると思います。この感触は恐らく,今までの委員幹事の御発言に大体共通のものではないかと思いますけれども。 ○山本(和)委員 私自身は,この部会では少数派だと思っていますけれども,今の離婚と離縁のような場面でも併合管轄を認めていいのではないかと考えています。同一の事実上及び法律上の原因という限定が掛かっている限りにおいては,離婚,離縁というものを併せてやる余地はあってもいいのではないかということです。かなりの程度,それは特別の事情で却下されるのだろうとは思いますけれども,そういう意味では,私自身はこの原案に,それほどの違和感は持っていないということです。 ○高田部会長 ありがとうございます。   山本和彦委員の御意見はございますが,全体としては,この文言ではやや広すぎるのではないかという御意見を承っているように認識しておりますが,いかがでしょうか。 ○山本(和)委員 先ほど山本弘委員が言われた,固有必要的共同訴訟の場合に限るというのは,それなりに私も魅力的だと思っていますし,財産関係訴訟の立案の過程でも,そういう案が出ていたと記憶しているのですが,ただ,そういうふうに考えると,管轄を決める前に,それが固有必要的共同訴訟かどうかというのを決めなければいけないということになって,それが実体法によって決まるんだと,準拠法をまず決めないといけないということになるというのは,かなり難点としてはあるのかなと思っています。   それから,山本克己委員が言われたように(1)の類推適用というのは,私自身,余り考えたことはなかったですが,かなり違うような場面のような気もちょっとします。 ○山本(克)委員 (1)は,事実上,固有必要的共同訴訟を決め撃ちしているわけですよね。第三者が身分関係の当事者双方を訴える場合というのは,それは固有必要的共同訴訟だと捉えているのではないのかなと私は前から思っておりましたけれども,違うのでしょうか。それは通常共同訴訟の場合もあり得ると考える,あるいは類似必要的共同訴訟の場合もあり得るということなんでしょうか。 ○内野幹事 部会での議論を前提にしますと,念頭に置いていますのは,典型的にはやはり固有必要的共同訴訟を念頭に置いてはいるとは思うのですが,管轄規律としては,少なくとも身分関係の双方を訴えている場面では,一緒に管轄原因をまず肯定してしまおうという管轄規律としての政策判断を定義しているということなろうかと思います。   なので,訴訟類型がどうだということまでを確定しないと,このような管轄規律が書けないのかというと,必ずしもそうではないのではないかと考えています。一つの管轄政策として,こういうものを採ったという説明も可能ではないかと思っております。 ○高田部会長 いかがでしょう。固有必要的共同訴訟をカバーすることを目的としているという面は否定できないにせよ,取りあえず管轄として,こうした場合には管轄を認めるという規律は準備しておくということを目指した規定であるというのが,当局の御説明かと思いますが。   したがいまして,同じように考えれば,固有必要的共同訴訟をカバーできるような最低限の規定というのを設けるという試みは,整合的に成り立ち得るところですが,それはどういう規定にすればよいかという問題かと存じます。   いかがでしょうか。山本和彦委員からは,この文言でもいいのではないか,あとは特別の事情による調整ということを図ることで十分ではないかという御意見を賜り,他方,この文言では,併合管轄が認められる場合が広がりすぎる可能性があり,特別の事情に過度に委ねることは適切ではないとすれば,より限定した文言を設けるべきではないか,その場合に,共同養子縁組の離縁については解釈の余地を残すということになるかもしれないという御意見を承っていると理解しておりますが。 ○山本(克)委員 仮にこの文言,原案を活かすとすると,密接な関連性のある請求であって,38条前段に該当しないものというのは,どういうものがあるのでしょうか。つまり,ただし書は限定機能を果たしているのかどうか,そこをちょっとお教えいただければと思います。 ○内野幹事 すみません,今直ちに,これだというものはありません。 ○高田部会長 財産関係自体にも生じ得る問題だと思いますが,取り分け人訴において,どういう場合を想定するかということですね。 ○山本(克)委員 財産関係の場合も,本当にあるのかどうかよく分からないのですけれども,一応,「保険」を掛けておくという意味はあったのですが,人訴のように,考え得る請求が極めて限定的な場合において,ただし書による限定が必要なのかどうかというところが分からないところです。   つまり,逆に言えば,38条の縛りによって更に限定を加えるんだという立場を採ると,密接関連性は非常に広くていいと取られかねないわけでして,そうすると,先ほど来何人かの委員幹事がおっしゃるような懸念というものが広がる可能性も,なきにしもあらずということだと思います。 ○高田部会長 貴重な御指摘ありがとうございます。 ○山本(和)委員 今の点ですけれども,私もよく分からないのですが,そもそも客観的併合で,先ほど私は,身分関係は一個又は数個ではないかと申し上げましたが,複数個の身分関係が同一当事者間で請求される自体というのが,そもそもどの程度あり得るのでしょうか。私は今,例は思い浮かびませんが,そもそもそれがあり得るのかということが問題で,一個の身分関係であるとすれば,その請求は,通常は密接な関連性があることは明らかではないかという感じがするので,先ほどの離婚と婚姻取消しのばあいもそうですがだから,そもそもこの本文自体に客観的併合との関係ではどの程度の意味があるのかということ自体,そもそも私自身は,やや疑問に思っているところがあるということです。 ○内野幹事 今,山本和彦委員の御指摘は,全く個人的には同感なのですが,結局,ここで管轄規律をどうするかと決めていかなければいけないところがありまして,そうだとすると,正にこういった併合管轄という部分は,ある意味,本来的な管轄の個別の規律によっては,当該請求に管轄がない場面でも管轄を認めていく規定ですので,どこまでそのような領域を用意しておくかという判断になるわけです。   そうすると,若干繰り返しですけれども,本当に同一当事者間の場面だけ置いておけばいいんだとするのか,それとも,具体的には共同養子縁組のような場面で,固有必要的共同訴訟とされ得る場面などを,準拠法の姿などをある程度想定しながら,管轄規律としてそもそも想定しておく方が良いのかというようなところを決めていかなければならないということです。 ○高田部会長 山本和彦委員は,今,御自身がおっしゃられた同一の身分関係の当事者間の形成又は存否の確認を目的とする数個の請求という規定では,やはり狭いというのが,先ほどの御発言の趣旨ということですか。 ○山本(和)委員 いや,そういうことではありません。本文とただし書の関係をどういうふうに捉えるのかという山本克己委員の御意見だったので,それについての若干の私の所感を申し上げただけでありまして,結論的には,私は先ほど申し上げたとおり,この原案でよいのではないかということでございます。 ○高田部会長 そうですね。原案でいくか,今おっしゃられたように,同一の当事者間における数個の請求という場合のみ併合管轄を認めるという規定で,あとは解釈等に委ねるという,いずれが管轄規律として適切かというところまで詰まっているのではないかと理解しておりますが。 ○大谷幹事 山本和彦委員の原案とおっしゃっているのが,離婚と離縁が入る,それが不適切な場合には,特別の事情による却下で対応すればいいという御意見だとすると,私はやはりそこが広いと思っていまして,といいますのは,先ほどの発言の繰り返しになりますが,離婚,離縁がセットというのが日本法的発想だと思っていまして,やはりそこは非常に日本法的発想に引きずられていると思っているのです。   離婚のときに親権者を決めなくてはいけないというのも,あれも日本の法制ですけれども,ちょっと似たような発想で,連れ子を養子にしたら,親が離婚するときには子供の養子縁組を外すという,そこは本来,子供と親の関係というのは別途,例えば経済的な扶養の関係とかも含めて,本来,別途考えられるべき問題だと思っています。   にもかかわらず,それを一旦含める形にしておいて,特別事情による却下といったときに,やはり弁護士も裁判官も,恐らく日本法的発想で,そこは特別事情による却下というのは,ほとんど認められなくなるのではないかと思っていまして,それは余り想定できない以上,今ここで含めてしまうと,それは原則的に本当に取り込んで,余り却下もないことになりそうに思われるので,やはりそれは,管轄原因が養子縁組の離縁の方もあるときにはできるけれども,併合で引っ張ってくるということではない法制の規律の仕方というのが私は理想的だと思います。   そうだとすると,共同養子の離縁のところを何で拾うかという議論が残るわけですけれども,それは,類推とか,先ほどからいろいろな御意見が出ているもので拾えるのなら,私はその整理の方が好ましいと思います。 ○高田部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見ございますでしょうか。 ○山本(和)委員 余り反論してもしようがないのかもしれませんが,飽くまでも同一の法律上,事実上の原因というのは要件にはなっていますので,全く違う理由で離婚と離縁をするというのでは,そもそもこの規律にはのらないということなので,例えば,子供に対する虐待が離縁の事由になり,同時にそれが,婚姻を継続し難い事由として離婚の事由になっているという場合など,つまり争点が,基本的には相互に共通しているという場合に,前提としては限られるということだけは申し上げておきたいと思います。 ○大谷幹事 議論になってしまうのですけれども,最近,例えば配偶者間の暴力であっても,子供に対する虐待と認識されるようになってきていますので,そこは非常に,やはり重なり合って,今のような,子供に対する虐待が離婚の原因になっているというような場合だけではなくて,多分,ドメスティック・バイオレンスという離婚原因を挙げれば,子供との関係でもと,普通,主張としては当然出てきて,やはり両方セットでという話が非常に広がるだろうなと思います。 ○高田部会長 いかがでしょうか。   時期も時期でございますし,できればこの会で意見を統一できればというのが事務局の御希望のようでございますが,いかがでしょうか。 ○山本(和)委員 少数派だということは認識しておりますので,別に私自身の意見にこだわるわけではありません。 ○高田部会長 では,少数派かどうか分かりませんけれども,山本和彦委員も,意見としてはそうであるが,まとめのためならばこだわらないということでございますので,規定としては,原案ではやや広すぎるという御意見を頂いたということでよろしゅうございますか。  規定としては,また法制問題に関わりますが,現段階では同一の当事者間の数個の請求という案を頂いていると理解しておりますので,特に御異論がなければ,それを前提に,事務当局になお御検討いただくということになろうかと思いますが,それでよろしゅうございますか。   では,恐縮ではございますけれども,その方向で検討していただくということにさせていただければと存じます。   では,続きまして,関連請求につきまして御説明いただきます。 ○内野幹事 関連請求の併合による管轄権という部分につきましては,今回の部会資料において提示しておりますのは,端的に申し上げれば,人事訴訟の当事者間でのみ関連請求の損害賠償請求を認めているという,そういう規律になっております。   これまでの関連請求の併合による管轄権では,いわゆる人事訴訟の当事者でない者に対する損害賠償請求については別にあえて管轄を付け加えて認める必要はないんだというところまでは議論として推移しておりました。他方,人事訴訟の当事者に対するもの,つまり人事訴訟の被告側に対するものに対する損害賠償請求については,つまり原告側が複数になっているような場面で,その併合による管轄権,これは認めてもいいのではないかというぐらいのところで推移していたかと思います。   しかし,今回,取りまとめの作業をしていく中で,果たして,では,そもそも第三者が訴えていく場面まで付け加える積極的な必要性があるとまでの御意見があったかというと,必ずしもそういう部分ではなかったのかなと考えるに至ったところでありまして,元々,この場面の損害賠償請求は民事訴訟でありますから,民事訴訟で起こせるなら民事訴訟法上の規律に従えば,それで足りるのではないかという考え方も十分成り立つのではないかと考えています。   こういうことで,今般の取りまとめの叩き台といたしまして御提示したものは,第三者が損害賠償請求を人事訴訟の被告側に対して訴える場面について,特別な規定は設けないというものです。あえてそこで管轄原因を増やしていくことまではせずには民事訴訟の規律に委ねれば足りるというようなものとして,まとめの叩き台を作成したというところであります。   このような規律でよいかどうかというところが,次の3のところの項目ということになります。 ○高田部会長 御説明いただいた点,従来の内容と若干異なっておりますが,御意見を賜れればと存じます。 ○大谷幹事 具体的な事例で考えると,離婚のときに不貞行為の相手方,第三者が外国にいる場合を引き込むかどうかというところを,含めないと整理したと考えてよろしいのですよね。 ○内野幹事 まず,被告側として巻き込む場面は,先ほど,冒頭に申し上げましたように以前の案でも抜かれていたところですが,それは維持しております。今回新たに除外しているのは,人事訴訟の当事者でない第三者が原告となる方の訴えまで許容するかという部分でありまして,併合請求の併合による管轄権として肯定する部分は要らないのではないかと,併合による管轄を認めるまでの積極的な必要性はないのではないかというところで,原案を示させていただいているというところであります。 ○高田部会長 余り想定できない事例なのかもしれませんが,従前の議論だとそれが入っていたので,排除したという御説明と理解してよろしいのではないかと思いますが。 ○山本(和)委員 この文言の読み方として,排除されているというのはどういうことなのでしょうか。例えば,今まで議論された私の記憶では,親に対する虐待で,それが離婚事由になったときに,離婚の訴えと,親が相手方に対して損害賠償をするというような場合を念頭に置かれていたような気がするんですが,これが3で排除されているというのは,どこで読むのですか。 ○内野幹事 人事訴訟に係る請求と損害賠償請求とをする,一緒にしているというところで読んでいるということです。 ○山本(和)委員 原告側の共同訴訟は,一の訴えでしているということにはならないのですか。 ○内野幹事 文言が追い付いているかどうかという議論はあるのかもしれませんが,実質は,一応そういうものとして御議論いただきたいと思います。 ○畑委員 私も,民事訴訟法の一般的な言葉遣いとしては,原告側の共同訴訟も一の訴えだということだと思いますので,文言については,ちょっと御検討いただく必要があると思います。 ○高田部会長 実質論はよろしゅうございますか。そこまで広げる必要はないだろうということでよろしゅうございますか。あとは法制上の問題ということで,文言を工夫していただき,誤解のないようにしていただければと存じます。   確認ですが,最初の大谷幹事の御発言である被告側については,早い時期から排除しておりますので,入ってくることはないという理解と存じます。   ほかに,関連請求について御指摘いただく点はございますでしょうか。   では,4,親権者の指定等についての裁判の管轄権についての御説明を頂きます。 ○内野幹事 まず4の(1)の部分であります。   これまでの議論を踏まえまして,子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分と子の親権者の指定についての裁判という部分は,いわゆる人事訴訟法の32条で想定しているような場面については離婚裁判所の管轄権を認めるというような規律を(1)で示しているというところでございます。   これに関連して,若干,外国法制について,西谷幹事に御検討いただいておりますので,もしここで御紹介いただけるならば,御紹介いただきたいと思っているんですが,いかがでございますか。 ○西谷幹事 前回,外国法制が少し話題になりましたので,簡単に御紹介させていただければと思います。   離婚事件の裁判所に,親権者指定及び監護処分の併合管轄を認める例が幾つか見られます。特に子の福祉にかなうことを要件とする例として,1996年のハーグ子の保護条約とEUのブリュッセルⅡbis規則があります。   96年条約とブリュッセルⅡbis規則では,次の二つの場合に併合管轄を認めています。その一つが,親権者指定及び監護処分について原則的な管轄をもつ子の常居所地国の裁判所が,離婚事件が係属する締約国の裁判所において併せて審理した方がよいと考え,子の最善の利益にかなうことを要件に管轄を譲ることで,併合管轄が認められるものです(8・9条)。もう一つは,離婚事件の裁判所が,その国に一方親の常居所があり,両親が管轄を受け入れる場合に,子の最善の利益にかなうことを要件として,併合管轄が認められるものです(10条)。いずれにおいても,条約ないしEU規則という枠組みの中で,締約国又はEU構成国間の協力関係があることが前提となっており,例外的に離婚事件が係属する締約国に併合管轄を認めるに当たって,それが事後的に子の常居所地のある締約国では争われないことが確保されています。   ヨーロッパの国々の国内法上の法制を見ますと,イギリス,それからドイツ,オーストリア,スイス,ベルギーといった国々では,子の福祉にかなうという要件を課すことなく,端的に離婚事件の裁判所が親権者指定及び監護処分についても併合管轄を持つというルールになっています。それ以外には,アメリカやオーストラリアのように,そもそも離婚事件の裁判所に併合管轄を認めない,端的に子供の親権者指定及び監護処分の管轄だけを想定している例も見られます。   結論的には,子の福祉を要件として併合管轄を認めるのは,96年条約ないしEU規則という枠組みがあるところで行っているもので,それ以外のヨーロッパの法制は,端的に併合管轄を認めていると見ることができます。それを踏まえますと,日本の裁判所が離婚事件について管轄を持つときに,併せて親権者指定及び監護処分について判断した場合にも,おそらくこれらの国々では間接管轄を肯定し,日本で下した判決を承認するものと思われます。 ○内野幹事 ありがとうございました。   話題に出ました外国法制の状況を踏まえまして,この原案のようなやり方がいいかどうかというところが今日の議論ということになります。   なお,あわせて次に,特別の事情による却下の議論が出てまいりますけれども,これは部会の議論を踏まえまして,子の利益という部分を例示として示していくということになっているところです。   4の(2)ですけれども,これは後に,財産の分与に関する審判事件についての管轄原因が第2の12の(1)から(4)というところに出てまいります。実質におきましては,その規律の管轄原因があるときには,離婚の裁判所において,人訴法32条第1項に規定する財産分与についての管轄権を持つというような規律で,(2)は置いているということでございます。   つまり,単独で財産分与だけ申し立てられた場面での管轄規律を拡大するような措置は採っておらないというのが,この4の(2)というところです。 ○高田部会長 では,4について,御意見を賜りたいと思います。 ○大谷幹事 今日,西谷幹事から外国法制の御紹介があったのですが,実際の実務で,私自身の経験では,ヨーロッパの国が,例えば対日本との関係で,EU加盟国ではないからということで,EUの管轄規則ではない,本来の国内の管轄規則でやってくるかといいますと,実際そこは,私もどうしてなのかよく分からないんですが,そうでもないという経験を今までしたことが何度かありまして,ですから,もしも4の(1)のような規定ぶりをしても,ヨーロッパの国では,日本がEU加盟国ではないから,それを承認してくれるだろうという予測あるいは期待の下に,よいのではないかということであるとすれば,私は,それはそうでもない,そのように承認されるかどうかは分からないと思っています。   実際,例えば今,日本に離婚の管轄はあるけれども,子供がいなくて,子供が例えばヨーロッパのどこかの国にいるという場合にどうかということを想定して議論していると思うのですが,その場合に,他方当事者はその国において,子の親権,監護権の裁判を起こして決定を得るという形で紛争が起こるというのが実態です。   ですから,単純に日本の裁判を承認してくれるかどうかというよりは,その国においても管轄権が行使されて,矛盾したものが二つ併存するというのが,いわゆる一般的に多く起きている現状でして,そういう状態になることが想定されても,なお日本の方でも決定をするということが,総合的に見て,管轄の規律の在り方として子の福祉にかなうという判断であるならば,私はあえて反対しないのですが,こういう管轄規定を置くことで,外国においてもそれは承認されて,むしろ統一的に解決が図られるだろうという予測だとすれば,そんなことは余りないということは申し上げておきたいと思います。 ○高田部会長 いかがでしょうか。 ○道垣内委員 私,法制的というのはよく分からないですが,この「人事訴訟法第32条第1項に規定する」という表現は,なくてはならないことなんでしょうか。2項の方も,今度は「に規定する」ではなくて,後半部分は「の」と書いてありますけれども,いずれにしても,これで何かが特定されるようにも思えないんですけれども,教えていただければと思います。 ○内野幹事 正に併せてする場合ということを含意しようとしているということであります。これがないと結局,抽象的に離婚等の管轄権があれば,附帯処分等も管轄権があるということで,離婚訴訟が起こっていなくても,そういった監護に関する処分等がやれるようになってしまうような文章になってしまいますので,飽くまでこういった,併せてやるような場合ということをどのように法制的に表現するかということで,現状は,こういうふうな表現ぶりになっています。 ○高田部会長 限定がないと,離婚事件について管轄を有すれば,離婚と無関係に争う場合についても,親権者指定等についての管轄が得られる規定になってしまうので,附帯処分等としてする場合に限定するというのが,この限定の趣旨だというのが御説明です。 ○道垣内委員 分かりましたが,そもそも32条の構造と違いますから,非常に分かりにくいと思いますけれども。そのようなことであれば,別の表現もあり得るのではないかと思います。 ○高田部会長 おっしゃるとおりかと思いますが,法制的な問題もあるのかもしれません。 ○和波幹事 今の道垣内委員の質問と,重なるところがあるのですけれども,第2の12の(1)から(4)までで管轄があれば,それで財産の分与に関する処分の審判事件の管轄は当然あるわけですので,4の(2)のように附帯処分としてされるときに管轄を持つという規定をあえて設けるとすると,それは附帯処分と審判とでは性格が異なるということを前提にしているようにも読めると思うのですが,その点について,どのようにお考えかというのが一つです。もう一つは,第2の14には,婚姻の取消しの場合に,家事法282条についての規定を設けるというものがありましたけれども,離婚について,仮に調停で合意管轄を認めるとした場合には,親権者の指定等についての管轄が認められない場面も出てくると思うのですが,そのような場面に備えて,親権者の指定等についてどのような規定を設けるかということについても,併せて考える必要があるのではないかと思っております。 ○内野幹事 まず前段の,いわゆる個別に申し立てられた財産分与に関する処分の審判事件と,いわゆる附帯処分としてされた場面での裁判というものが,同じなのか違うのかという部分について,必ずしも一定の解釈論を採用する趣旨で,こういった規定を設けようとするものではありません。国内規律に関する議論として,これは同一なのか違うのかという論点があることは認識しておりますが,この国際裁判管轄に関する規定を設けることによって,国内規律に係る部分,議論について何らかの解決を図ろうということを意図したものではないというところです。   後の方,8ページの14の部分を,今,御指摘いただいたと思うのですが,ここも今のような事件性質そのものとして捉えるのかというところと関連して,評価のされ方はあるのかとは思われます。ですので,こういった規定が要らないのではないかという立場というのは,一つの考え方としてあり得るのかもしれないとは考えております。 ○高田部会長 後半部分は14のところで御議論いただくということでよろしいですか。実質,調停管轄ですね。前半部分はいかがでしょうか。   (1)は,従前よりかなり御議論いただいたところで,議論が分かれていたところですが,前回の御議論では,仮に設けるとすれば,子の利益という文言表現を入れない方がいいだろうという方向で,多数の委員,幹事の方から賛同する御意見を賜ったと理解しておりまして,それを基にこの原案ができているところですが,いかがでしょうか。 ○山本(克)委員 意図されているところについて異論があるわけではないのですが,読み方についてお教えいただきたいのですが,まず,4の(1)の主語は裁判所になっていますので,これは,受訴裁判所という趣旨であるわけですね。ということは,これは,国際管轄と国内管轄と両方併せて規定しているのだという趣旨で読むべきだということになるわけであるということでよろしいのでしょうか。   ほかの,例えば3のところで見ると,日本の裁判所に訴えを提起することができるという形で,純粋に国際裁判管轄の問題であるという書きぶりになっているかと思うのですが,4の(1)は「裁判所」が主語ですので,これは国内管轄と両方含んでいる,つまり,人事訴訟の受訴裁判所が審判事件の一部について管轄を持つんだという趣旨も含んだものとして,ここが書かれているということになるのでしょうか。   5の場合は,日本に管轄があるとして,原則として,訴えを提起されて,その受訴裁判所が特別事情で却下できるという趣旨なので,これはこう書かざるを得ないと思うのですが,4の(1),(2)の場合は,どうもそうではなさそうな気もします。それから,4の(2)の場合の裁判所もそうなんですが,この場合に,審判事件としての管轄がなければ管轄がないということは,日本の裁判所に管轄がある場合に限り併合できると言っているわけですので,要らない規定なのではないかなという気もします。   確認のためにこう書いてあるのだったらいいのですが,これを法律の条文にすることは,そもそも国際裁判管轄という観点から,要らないのではないのかという疑問があります。あとは純粋に,国内の人訴の受訴裁判所の権限の問題というものとして処理すればいいだけの話であって,国際裁判管轄とは無関係の規定ではないかと思います。それは書かなくても,当然そうなるのではないのかなという気がするということで,ちょっと御検討いただければと思います。 ○内野幹事 全てを,ここで今,御回答するつもりはございませんが,当方の趣旨といたしましては,国内管轄規律を含んだような規定として想定しているわけではなくて,飽くまで国際裁判管轄規律の規定として設けていこうというものであります。   その適否については,様々な御評価はあるのかもしれませんが,貴重な検討課題として御指摘賜ったと認識しております。 ○早川委員 今の山本克己委員の御質問の趣旨についてお教えいただけますか。御発言内容をきちんとフォローできなかったため、大変恐縮なのですが‥‥‥。これは,日本がある事案の婚姻取消し,離婚の訴えについて一般的・抽象的に国際裁判管轄を有する場合には,日本の裁判所に当該事件の婚姻取消しや離婚の訴えが係属していないときであっても管轄権を持つ,とするのはおかしいと,そういう御趣旨なのでしょうか。 ○山本(克)委員 いや,規定ぶりとして,民訴法の3条の2の普通裁判籍的な国際裁判管轄については「裁判所は」となって,ほかの国際裁判管轄に関する規定は大体「日本の裁判所は」と書かれているので,(1)が「裁判所は」で始まること自体に違和感を持っているということです。(2)については,要らない規定ではないかということを申し上げました。 ○内野幹事 民事訴訟法の3条の2は「裁判所は」で始まりますが,3条の3は「訴えは…日本の裁判所に」となっています。 ○山本(克)委員 訴えの提起をする場合については「日本の裁判所」であって,管轄権を持つときは「裁判所」なんですか。そういう法制的な使い分けがされているということでしょうか。 ○内野幹事 3条の2と3条の3の規定ぶりなども考えつつ,こういった文言を選んでいるわけですが。 ○山本(克)委員 (2)の方はどうなのでしょう。第2の12の(1)から(4)までのいずれかに該当する場合には,日本の裁判所は管轄権をそもそも有しているので,当たり前のことであって,要らないのではないかなという気がするのですが。 ○内野幹事 御評価はあると思いますけれども,御指摘に直ちにこうだと答えを持っているわけではありませんが,正に和波幹事が先ほどおっしゃったことと同趣旨のものなのかなと認識しております。 ○高田部会長 法制上の問題という側面もございますが,貴重な御指摘を頂いたということにさせていただければと思います。 ○池田委員 この時点で,要するにこの規定をどうしても入れたいというのは,結局どの辺にその趣旨がありますでしょうか。 ○近江関係官 先ほど和波幹事や山本克己委員からも御指摘があったところと同様の御疑問だろうと思いますが,附帯処分としてされる場合の財産分与の裁判等が,審判事件としてされているのかどうかということには,複数の考え方があると認識をしております。仮に別のものであるという考え方に立った場合には,こういう規定がないと,附帯処分としてされる場合の管轄権がなくなってしまうのではないかという危惧もあり,こういう規定を置いているということです。他方,附帯処分としてされるときでも,正しく審判事件としてされているのだという考え方によれば,この規定というのは確認的な規定にすぎないという説明になるとは思います。 ○山本(克)委員 確認的だということでしょうか。 ○近江関係官 先ほど申し上げたように,考え方は分かれるところでしょうが,そのうちのある考え方によれば確認的な規定だというふうな説明になるのだろうと思います。 ○道垣内委員 この「裁判所は」という主語を,次の「日本の裁判所が婚姻の取消し又は離婚の訴えについて管轄権を有するときは」の後に入れて,「当該裁判所は」と書いてあるのと同じ意味なのですか。違う裁判所ではないのでしょう。その裁判所でなければいけないのですよね。 ○高田部会長 そうですね。 ○道垣内委員 今の文章だと,違う裁判所でもよさそうに読めますけれども,そういう趣旨ではないですよね。 ○山本(克)委員 しつこいようで恐縮ですが,先ほどの民訴の3条の2は「裁判所は」とあっても,特定された官署としての裁判所を指していないわけですよね。むしろこれは,官署としての裁判所というより,裁判機関としての裁判所は指していないわけですよね。これは,裁判機関としての裁判所とも読まれかねない条文ですよね。 ○内野幹事 表現ぶりはありますけれども,飽くまで国際裁判管轄規律として置こうとしておりますので,「受訴裁判所は」と書かずに,この規定するこういう事件についての管轄権を有するという部分で表現をしようとしているというところです。 ○高田部会長 飽くまで離婚事件の管轄と,いわゆる附帯処分の管轄の関係についてのみ述べている文章であって,それが附帯処分としてできることは,人訴32条で初めてできるという御説明なのだろうと思います。受訴裁判所は後者にのみ関わる問題であるというのが事務局の御説明だろうと思います。 ○山本(克)委員 受訴裁判所は後者のみというと。 ○高田部会長 受訴裁判所しか附帯処分等ができないというのは,人訴法32条によるということだと思います。この案は飽くまで日本の裁判管轄について,離婚等の訴えと,いわゆる附帯処分等の管轄の双方の関係を述べているということではないでしょうか。 ○山本(克)委員 大分分かってきましたけれども,ただ,3のときの対比からすると,併合だという趣旨に限ってという趣旨が,必ずしも明確ではなくなっているのではないのかなという気がするのですが。 ○高田部会長 そのとおりかもしれません。 ○山本(克)委員 そこがよく分からないところで,3は一の訴えでということで,併合だということははっきりしているわけですね。3は請求が二つあるということが分かるような書きぶりになっているのに対して,この4の(1)と(2)の場合には併合ということが書かれていないことが,よく分からないところです。 ○高田部会長 附帯処分だということをどう表すか,条文を引用することによって,その趣旨を表そうとされたということではないかと推測しますが。 ○山本(克)委員 それは分かりますが,きちんとそれが読み取れるような文章が本当に法文で作れるのかどうか,ちょっと不安なような気もしますので,御検討ください。 ○内野幹事 承知いたしました。 ○西谷幹事 4の(1)につきまして,前回御議論がありましたように,子の利益にかなう場合という文言を入れますと,管轄の場面で争いが生じてしまい,端的に併合管轄を認める御意見がまとまりつつありますので,御提案どおりで結構かと思います。   また,先ほど御紹介させていただきましたように,ヨーロッパ諸国の国内法上の法制とも整合的であり,比較法的にみた管轄ルールの妥当性という観点からも,受け入れられるルールではないかと考えております。   それとの関係で,大谷幹事にお伺いしたいのですが,日本で離婚事件と併合して親権者指定あるいは監護処分を行ってもヨーロッパ諸国においては,承認されないことがあり得るのではないかと御指摘いただきました。このような場合に,これらの国々では,間接管轄がないことを理由に承認を拒否するのか,あるいは,行った処分の内容がその国の公序に反することを理由に承認を拒否するのか,どちらなのでしょうか。 ○大谷幹事 確かにヨーロッパの国内法制としては,附帯処分のような管轄が出てくるのですが,そこは先ほども発言したときに,どうしてか分からないのですがと付けたんですが,理由はよく分からないのですが,実際の実務では,離婚の管轄があるから子の管轄も引っ張られるというような単純な処理は,実はやはりなされていなくて,実際に日本との関係であっても,EU内の処理のような,EU規則の管轄の考え方で処理されているという実態というのを実は経験しています。それもあって,いわゆるヨーロッパでまだ残っている国内の対非EU国との関係での規律に沿っているからという理由には,私はちょっとすとんと来ないものがあったのです。この部会で従前からずっと議論されているように,日本の考え方として,離婚と子の親権者指定は一体で在るべきなのだという日本における離婚時の子の親権者指定についての考え方,若しくは離婚というものについての考え方を,実体法だけではなくて,管轄規則においてもそれを貫くのだという説明なら,私自身は従来反対ですが,やむを得ないとは思っているのです。ただ,外国法制がそうなっているからと言われると,それはちょっと,かなり実務の感覚と違いますと申し上げたかったのです。   それから,ここからは西谷幹事の御質問の答えになるのですが,では,日本でこういう決定をしたときに,なぜ承認されないのかという御質問をされたのですが,実際の紛争では承認するかしないかという形での争いにならないのです。外国に子がいるという場合を念頭に議論していますから,向こうは向こうで管轄権を持っていますから,日本で決められたことに不服のある当事者は,向こうで決定を取るんですね。それで日本の裁判と内容が違えば,内容の違うものが併存してしまい,きれいに承認するとかしないとか,そもそもそういう紛争にならないまま,併存するという形の紛争がずっと継続してしまうのです。   ですので,そういう事態にもなり得るということを御理解いただきたくて,その上でも,離婚に併せて日本に子の監護の管轄を認めるということが,日本の管轄規則として子の利益にかなう,若しくは離婚する家族に対する日本の管轄の規律としてよいのだとおっしゃるのであれば,私はそれは反対しませんという,そういう意味です。 ○高田部会長 よろしいですか。 ○西谷幹事 はい,ありがとうございました。 ○高田部会長 4の(1),従前から御議論いただきましたが,子の利益を配慮しなければいけないという点については意見の一致を見ているところでありますが,それを規定の中に明示するか否かはいくつかの御意見があったと思いますが,いかがでしょうか。 ○大谷幹事 その点なのですが,前回も私は4の(1)で,私は意見は違うけれども,これが皆さんの多数意見であれば反対はしないということで,仮に規律を設けるとすれば,ここに子の利益を入れると管轄自体のところでも争いになるので,ここに子の利益を入れることについては私も消極で,特別事情による却下でいいと申し上げました。   ただ,今日お示しいただいた案の5の中に,成年に達しない子の利益とか証拠の所在地ということが出てくるんですけれども,子供が日本にいない,外国に子の住所があって,日本に離婚管轄があるから,引っ張って日本でやるという場合,恐らく,外国にいる方の親は,特に単独親権法制を持っている日本の裁判所が,子が日本にいないのに,親権者指定についても管轄権を行使して定めるということが子の利益に反するから又は証拠がないから,特別事情によって却下しろという主張は相当出てくると思います。 ○高田部会長 それはおっしゃるとおりですが,大谷幹事は,正にそういう問題があるので,その結果は不適切だから排除しておいた方がいいという御意見をなお維持されるということになるのでしょうか。 ○大谷幹事 私自身のそこの意見は変わらないのですけれども,ただ,この時点においては,その意見が多数にならないことは分かっているので,結構です。 ○高田部会長 繰り返しますが,4の(1),子の利益について,何らかの形で配慮しなければいけないという点については意見の一致を見ているところであり,規定としてどのような規定を設けておくのが妥当かという点から,最終的な御判断を頂ければということになっていると存じております。   今,4の(1)に掲げられている事項について,日本の離婚等の事件が係属している裁判所に同時に判断する可能性を残しておくという規定を準備しておくのが妥当ではないか,その上で,特別の事情による却下という規定によって処理することが,今回の法制としては妥当ではないかというのが事務局の御見解だと思いますが,そうした方向で要綱案を作成していただくということでよろしゅうございますでしょうか。 ○山本(克)委員 今の実質については何の異論もないんですが,細かいことを言って恐縮ですが,5が「訴え」を却下するとなっていまして,却下の対象は訴えですが,附帯処分の申立ては訴えではないと少なくとも私はそう考えてきましたので,何かすごく抵抗があります。   多分,先ほどの私の違和感も,訴え並びで附帯処分についての規律をするということ自体に全部帰着しているのだと思います。つまり,審判事件と訴訟事件における附帯処分が別物だと完全に考える考え方に違和感がすごくあるということに帰着しそうな気がします。ここも「訴え」を却下するというので,そこまで普通の人なら読むだろうかと,ちょっと気になるところです。 ○高田部会長 御趣旨は承りましたし,32条の解釈自体について議論があるところかと思いますが,その辺りにも御注意いただいた規定ぶりにしていただくことを御検討いただければと存じます。   よろしゅうございますか。   では,続きまして,5,特別の事情による却下について御説明いただきます。 ○内野幹事 若干,既にこの5の部分につきましても御議論が出ておりますけれども,それ自体について,これまでの議論と実質において変えているところはないものとして,特別の事情による却下の規律を規定していこうというものであります。   例示として挙げるところの子の利益の表現ぶりについては,分かりやすさといいますか,典型的といいますか,配慮しなければならない子としてどういうものがあり得るのかという観点から,ここの当該訴えに係る身分関係の当事者間の成年に達しない子の利益というものを例示として挙げているものです。 ○高田部会長 いかがでしょうか。御意見を賜りたいと存じます。 ○和波幹事 考慮要素としての子の利益のところは,文言について,まだこれからもいろいろ議論して検討されるのだろうと思いますけれども,要件ではなく,考慮要素であったとしても,どういうものがここで配慮されるべき子の利益なのかというのは,これを実際に運用する裁判所としては非常に重要なところかと思っております。   そういう意味では,考慮要素にしたことによって,若干その程度は低くなったのかもしれないのですが,ここに,いわゆる実体的な子の利益が入ってくるのかどうか,手続上のものに限られるのかどうか,そういったところについては,一定程度,共通の認識といいますか,御議論があった上で,最終的には解説等に書いていただくことが必要ではないかと思っておりますので,その点について御配慮いただければと思っております。 ○高田部会長 その点は御配慮いただくということで,従前御発言いただいたところかと存じますが,この段階でもし御意見があれば承りたいと思います。 ○山本(克)委員 今の点で,先ほど来,大谷幹事が問題にしておられる子の住所地国において,日本の裁判が承認されないことによって,子の身分関係上の地位が不安定になるということは,これは手続的な問題だと考えてよろしいんでしょうか。考慮すべきだというのが,先ほど来,大谷幹事がおっしゃっていることなのではないのかなという気がするのですが。 ○高田部会長 いかがでしょうか。私の理解は,従前,考慮され得るという御意見があったという風に理解しておりました。 ○山本(克)委員 それは手続的利益だと言っていいのでしょうか。そこがよく分からないのです。そこが微妙な感じがしておりまして,少なくとも裁判を受ける利益ならば,手続的なものだと言えると思うのですけれども,承認されないことによって実体的に混乱するという不利益がどうなるのか。和波幹事は,先ほど,実体も含むのはどうも望ましくないのではないかという御趣旨でおっしゃったのかなと推測したので,でも今のような事情は,やはり入らないとまずいのではないかという趣旨で申し上げました。 ○高田部会長 分かりました。それはそのとおりだと思いますが,いかがでしょうか。 ○大谷幹事 私の先ほどの発言を,少し自分でクラリファイしておきたいのですけれども,離婚のときによく,承認されるかされないかという話が出ますよね。それは多分,次に再婚ということがあったりして,外国裁判所の離婚判決又は日本の離婚判決が,外国において承認されるかされないかというのが割と分かりやすいのですね。ところが,子の親権者,監護者,面会交流等につきましては,実は承認という手続を踏む場面というのがそれほどないのですね。   例えば,実例を申し上げますと,子供が日本にいてもいなくてもいいのですが,要は二つの国が,それぞれの管轄規律からして管轄を持ち得るという事態がしょっちゅう生じます。そのときに,それぞれの管轄地で決定を得た方がいいと思う側が,それぞれ決定を得ているという併存状態が起きます。それをどちらかに統一するということが起きないで,例えば日本の親権者指定というものを持って外国に行っても,それはある意味通用しないというか,その国ではその国の裁判所が出したものがあるので,そちらが通ってしまうということになります。それを承認されないと呼ぶのかと言われれば,そうなのかもしれないのですが,そこに裁判手続が入ってこないことが非常に多くあります。 ○山本(克)委員 いや,承認自体はオートマチックで,少なくとも日本の建前はそうですから,承認の手続は入らないはずなので,なくてもオートマチックに承認されているはずなので,私の言う承認は,今,大谷幹事がおっしゃったような状態が生ずることが承認されないんだということを先ほど申し上げたつもりです。 ○大谷幹事 なるほど。そうだとすると,そういう場面は非常に多くあるということです。それを全て子の利益に反すると言い出すと,かなりの場合が子の利益に反することになると思います。 ○高田部会長 貴重な御指摘ですが,管轄判断において考慮されるべき子の利益は何かという問題が残っていることは残っておりますが,ある程度,これまでの議論でクラリファイできていると思いますので,その点も含めて,必要があれば事務局からの説明等で明らかにしていただくということでいかがでしょうか。それを表す文言としては今回少し変わり,「当該訴えに係る身分関係の当事者間の成年に達しない子の利益」ということで,ある面で限定し,ある面ではオープンのままということですが,このままこの文言でよろしいかどうかについて,なお御意見があれば承りたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○村田委員 文言自体はこれで結構だと思うのですけれども,大谷幹事からお話があったようなケースを念頭に置いて,日本の裁判所で判断をしても,承認の可能性が極めて低いというようなことは,やはり,ここで出てくる重要な考慮要素,却下すべきだという方向に働く考慮要素になるのかならないのかというところについて,どの程度のコンセンサスがあるのかを,今後の現場のために少し知りたいという気がするのですが,いかがでしょうか。   特別の事情で却下する場合に,外国で当該事件の手続が現に行なわれているようなケース,あるいは既に外国の裁判が終わっているようなケースというのは,比較的考えやすいところだと思うのですけれども,まだ外国ではそういう手続は行われていないものの,いざ外国でもされたら日本の判断は承認されないのではないかという予測の主張というのは,これは結構,実際には出てくることが多いと思うのですが,それをどの程度考慮するかというのは,非常に現場では悩むところなのです。その辺りについて委員幹事皆様方のお考えを,少しお聞かせ願えればと思うのですけれども。 ○高田部会長 いかがでしょうか。 ○大谷幹事 直接の回答になっていないのですが,今の御質問を聞いていてちょっと気が付いたのですけれども,離婚のときは,いわゆる国際管轄競合の規定はなく,それ自体がいけないとは言わないですけれども,日本の管轄規則であれば,外国で同じ当事者間について離婚事件をやっていても,一応入口としてはあるということになります。ところが,先に外国の方で離婚判決が出て確定してしまい,それが日本において承認される離婚判決の場合には,そもそも婚姻関係がなくなったということで,日本で管轄自体は,一旦,国際管轄的には認めたものを,訴えの利益がないということで却下をするという形の実務にはなっているのですね。   今と同じことを考えますと,日本にこういう広い管轄原因を認めても,子の住所がある国も管轄を行使しますから,違う判断が併存して,それが本当に子の利益になるのですかということが,先ほどから私が問題指摘をしたかったことなのですが,そうすると,今のような場面で,日本は日本で,離婚と併せて管轄を認めるからといって,日本にいない子について,例えば決定をすると。外国は外国で先にやっていた場合,外国に子の住所があれば,それは間接管轄として,日本から見れば管轄はあるわけですよね。そうであるとすれば,それは,日本でもし承認されるのだったら,外国で先にされてしまった判断について,今度は変更でやるという整理を今からしようとすることになるのか,そこの詰めがちょっと曖昧なまま,この規律を置いておくと,どういう出口処理をするのかというところは,今の御質問を聞いていて気になりました。   今の御質問は,例えばそれで,日本の判断が承認されないのだったら,逆に特別事情で却下するという処理なのかもしれませんし,でも,今度は外国の判断が日本にとっても承認できる親権者指定なのかという方向での検討もあると思うのですよね。離婚の場合は,外国裁判所の判断が先に出て承認できるのだったら,訴え却下ということなのですけれども,親権者指定でも競合はよくあって,外国のが承認できるときには変更という形で対応することになり,それは附帯処分等ではできないので,別途の審判でやることになりますし,そうすると,果たして裸の監護者の管轄原因があるのかと言われると,今度はないかもしれないとか,そういうちょっと複雑な状況が生まれると思います。 ○高田部会長 御指摘の限りでは,そのとおりのように思いますが,いかがでしょうか。 ○早川委員 いろいろ難しい問題があって,きちんと整理ができていないのですが,今,大谷幹事がおっしゃった事例でいうと,まだ離婚していない状態で,子の監護に関する何らかの裁判が外国で出ていましたということですね。今,日本で離婚の裁判があって,それに伴って,子供をどうしましょうかということを附帯処分等の形で決めましょうということなので,やはり4の(1)の場合は,両親の関係が変わる,実態としては元々別居をしていたのかもしれませんけれども,法的にも離婚するという状態に変わるので,それに伴って,やはり子の監護等について,どういうふうにするかということを考えて,新たに子の監護等についてどうするか決めるという機会を与えることは,それほどおかしくないのではないかなという気がいたしますが,それはいかがですか。 ○大谷幹事 実際には,外国は離婚の管轄が非常に広く認められているので,外国でも離婚の管轄があり,外国で決めているのも,別居中のではなくて,離婚後の親権者指定をやっていて,それが競合するということは割とよくあります。   早川委員が挙げられた例だと,外国の当初の判断は飽くまで別居中の監護者指定であって,日本のはもうちょっと終局的な離婚後の親権者指定だから,オーバーライドするみたいな整理という考え方で,先ほどおっしゃったのかなと思うのですけれども,もちろんそういう場面もありますけれども,実際には,両方が離婚管轄を持ち,親権者の管轄も持って,両方,離婚後の親権者指定を日本と外国がやるということはよくあります。 ○高田部会長 御議論は尽きないのかもしれませんが,立法後の解釈論を展開していただくというのも重要かもしれませんが,不当な解釈が出るような文言は避けたいと思いますけれども,解釈論の余地を残すこと自体は立法の宿命でございますので,そうした議論を含めて,この文言での立法でよいかどうかということについて御意見賜れればと存じますが,いかがでしょうか。   念のためですが,この文言ですと,親子関係事件における身分関係の当事者たる子の利益が,直接の考慮事項に書かれていないということになりますが,それはそれでよいという御理解でよろしいでしょうか。   では,その点も含めて,規定としてはこの方向で要綱案を作成していただくということでよろしゅうございますか。   では,ここで休憩を入れたいと思います。           (休     憩) ○高田部会長 では,時間がまいりましたので,再開させていただければと存じます。   続きまして,「6 反訴」から御説明いただきます。 ○内野幹事 次,6の反訴です。   部会資料でお出ししておりますのは,先ほど御議論いただきました併合請求における管轄権の規律,具体的なイメージといたしましては,民事訴訟法での併合管轄の規定などを参考にしたものだったわけですが,それに対応させて,反訴についての規律を議論してきたところです。ここでお示ししておりますのは,民事訴訟法における反訴に係る規律に合わせているものです。   ですが,先ほどの御議論の中で,併合管轄に係る規律を,いわゆる同一身分関係というものの範囲に限定していこうというような大きな方向性のようなものを御提示されておりますので,それに伴って,反訴の方の規定も併せて変更され得るというところが,ここでの議論かと思われます。   併せまして,3ページの方の(2)の方でございますけれども,これが,いわゆる反訴的なものと申しますか,いわゆる人事訴訟を本訴といたしますと,本訴被告の方から提起される訴えが,(1)は反訴も人事訴訟だったわけですけれども,(2)の方は,いわゆる関連損害賠償請求と言われているものの場面での規律であります。   続いて,7,8の方まで触れていきますと,これは従前お示ししていたものと実質においては全く同様でございまして,日本の裁判所の管轄権に関する職権証拠調べ,管轄権の標準時,これは民訴法3条の11や12と,これと同様の規律になっていくものであることを示しております。そして,人事訴訟を本案とする民事保全命令の国際裁判管轄規律については,民事保全法11条の規律に委ねていくというものであります。結論として,ここの7,8の部分については,これまでの部会での議論をそのまま維持しているということになります。 ○高田部会長 ありがとうございます。   では,御意見を伺いたいと思いますが,便宜,「6 反訴」からお願いできればと存じます。 ○山本(弘)委員 現在の国内人訴法の前提とは,かなり違うのではないかという気がするのです。つまり,人訴法は反訴で密接関連性の要件を適用除外していますよね。つまり,密接関連ではなくても反訴ができるという前提なんですよ。それを踏まえて,正に反訴ができるんだから,別訴禁止をかぶせましょうというのが,国内法のというか,国内人訴法の規律のはずなので,それとの関係がどうなるかという問題があるように思います。これは,国際裁判管轄でも,正に別訴禁止のような,確定判決にそのような効果を認めるかということで,私もかつて一度発言した記憶があるのですけれども,正にその問題とも絡んでくるようにも思われます。 ○山本(和)委員 確かに,国内で再訴禁止が掛かるかどうかというのは議論があり得るのですけれども,外国の本来の管轄地国では,当然反訴というか,婚姻取消しかというのはできるわけですよね。それでいいというのが,この判断なのではないですか。 ○内野幹事 山本弘委員の問題意識は,ここで,例えば国際裁判管轄を絞るのであれば,例えば判決効の25条の再訴禁止効みたいなものも,むしろそちら側を絞るべきではないかという議論になるのではないかという御指摘のように理解しました。いずれにしても,この反訴の部分につきましては,先ほどの併合請求の考え方が一つ再考を求められておりますので,それとの関係で考えなければいけませんし,現状のままでいく場面においては,今の山本弘委員の御指摘も一つの課題であろうかとは,認識しております。 ○高田部会長 議論を進めるためにこちらから申しますと,併合請求につきましては,先ほど,密接関連性から,同一の身分関係について数個の請求をする場合に限定すべきという方向性でしたので,反訴も同様な限定をするという選択肢はあり得るところですが,その点はいかがでしょうか。 ○山本(克)委員 もしかしたら法制的な話に立ち入っているのかもしれませんが,人訴の国内管轄については専属管轄であるということが明示されておるわけですが,この国際裁判管轄についての専属管轄性という規定を置く予定はあるのでしょうか。   民事訴訟法では明らかに,専属管轄でない場合について,反訴についての管轄を認めているし,客観的併合の場合にもそうなのだろうと思うのですが,かといって,これまでの議論では,合意管轄は排除する,応訴管轄は排除すると言ってきているのではないかと思うのですが,その辺りはどういうふうに整理していけばよろしいんでしょうか。 ○近江関係官 ある事件類型については日本の裁判所にしか管轄を認めない,他国の管轄を拒否するという意味での専属という規定は置きません。ただ,通常の民事訴訟とは異なり,合意管轄や応訴管轄は認めないという趣旨で,その適用除外は置くということになります。ですので,合意や応訴はできないという意味での専属性はありますが,では,間接管轄を拒絶するといった意味での日本の裁判所に専属するというふうな規定は,今のところは置かないつもりでいるということです。 ○山本(克)委員 了解しました。 ○早川委員 併合請求との関係ですが,併合請求の方がどうなるかによりますけれども,反訴と併合請求とは,請求の方向は違いますけれども,要するに,本来は管轄がないのに関連があるので認めるという点で同じですから,併合請求の方がもし狭くなるようだったら,こちらもやはり狭くなるのが自然かなという気が,一般的な話ですけれども,いたします。 ○内野幹事 同じ問題意識を持っております。 ○高田部会長 いかがでしょうか。ほかに御意見ございますか。   今の早川委員の御意見ですと,併合請求について限定するならば,反訴についても限定することになるのではないかという御意見を賜ったと理解しておりますが,異論のある方は御意見賜れればと存じますが。   では,その方向で御検討いただくということでよろしゅうございますか。   その他,反訴について御意見があれば承りたいと思います。 ○村田委員 意見ではなくて,確認的な質問なのですけれども,日本法で言うところの附帯処分の反対申立ては,使い方としては反訴的なものになるわけですが,これについての規律は,先ほどの附帯処分の4の規律に従うという理解でよろしいでしょうか。 ○内野幹事 その御理解でよろしいかと思います。 ○高田部会長 では,7,8について,御意見があれば承りたいと思います。   よろしければ,ここで人事訴訟関係を終わりますので,人事訴訟関係事件全体を見通して,なお指摘し残したこと等があれば承りたいと思います。   ございませんようでしたら,「第2 家事事件関係」に移りたいと思います。資料の説明をお願いします。 ○内野幹事 家事事件関係でございますが,部会資料においては,家事事件手続法の別表の順番で,早いものが含まれ得る単位事件類型から,順に並べております。   そうしますと,まずは後見開始の審判事件などの管轄権でございます。ここで取り上げておりますのは,後見開始の審判事件,保佐開始の審判事件,補助開始の審判事件です。これについては,従前議論されておりましたとおり,成年被後見人等となるべき者が日本国内に住所又は居所を有するとき,又は,成年被後見人等となるべき者が日本の国籍を有するときは管轄権を有するものとするというものになっております。   これまで中間試案での御議論では,いわゆる保護措置に関する審判事件というものも併せてここに列挙して,管轄権を規律したらどうかという議論で推移してまいりました。ですが,今回の取りまとめの叩き台といたしましては,いわゆる保護措置に関する審判事件やその取消しに関する審判事件については,明文の規定を設けないということを叩き台として示しているわけでございます。従前,外国裁判所のした成年後見の開始等の審判事件の承認可能性については,大きな議論の対立があり,否定説もあるということを,部会の中で資料等でもお示しし,この部会の議論の中でも,承認可能性については解釈に委ねざるを得ないのではないかというようなところで進行してまいりました。   このような議論の状況を前提としますと,保護措置に関する審判事件について成年被後見人が日本国内に住所を有するときなどというような管轄規律を列挙してしまいますと,承認可能性に係る見解の対立と両立するのかが問題となってきます。これまでの部会の議論では,このような管轄規律を設けたとしても特定の考え方を採用することにつながるわけではないのではないかというようなところで,推移していたんですが,しかし,いわゆる取りまとめとして記載をしてしまいますと,やはりそれは外国裁判所の,後見開始の審判事件等を承認することを前提とした規律になってしまうわけです。言ってみれば,このように,承認可能性についての解釈を限定することになるのではないかというような指摘も踏まえ,このような考えに至ったところでございます。   その辺りの弊害を除去するための考え方ないしは規律ぶりを検討してきたのですが,事務局としては,なかなか難しいというような結論に至った次第でありまして,そこで,当部会としては,いろいろ御議論あるかと思いますけれども,外国裁判所のした後見開始の審判事件についての裁判の承認可能性について一つの結論を得ないということであれば,現行の通則法の規定として記載されているところまでの管轄規律を維持するという以外に方法はないのではないかというところに考えが至ったというわけでございます。   資料の御説明としては以上でございます。 ○高田部会長 では,「1 後見開始の審判事件等の管轄等」について,御意見を賜りたいと思います。 ○和波幹事 後見等開始の審判事件については,通則法に管轄規定がありますので,これと同内容であるということであれば,実務的には問題がなく,今までは保護措置について規定がないという中で,解釈上どういう管轄になるのかというところに争いがあったわけですが,この国際裁判管轄の規定を設ける中で,そこのところが整理されれば,実務的には非常に明確になってよいのではないかということで議論が進んできたものと理解しております。   承認のところについて解釈が分かれ得るということは,この部会でも明らかになったところでございますので,その承認の解釈に影響を与えるという御説明があると,そこのところは我々としては考えなければいけないと思うのですが,ここで議論してきて,実務的に一つ明確な指針ができるということであれば,これは,裁判所にとっては当然ですが,当事者にとっても非常に望ましいということから,この規定を設けることは一定程度,やはり必要ではないかと思っているところでございます。   仮に,今おっしゃったような理由から,本当に規定が設けられないということであれば,今後の実務で判断をする上で手掛かりになるような解釈について,何らかの形で明らかにしていただく必要はあるだろうと思っておりますので,そういう観点からの御議論を是非お願いしたいと思っております。   更に,保護措置について,解釈に影響を与えるということではあるようなのですが,一方で,離縁後の未成年後見人となるべき者の選任の審判事件という特定の場面については,管轄規定を特出しで設けるというような提案が後ろでもされておりますが,それとの関係も整理をする必要があるのではないかと思っているところでございます。 ○内野幹事 今の御指摘に全てお答えするところではございませんが,少なくとも未成年後見等の管轄規律,部会資料でいきますと5ページの下の方,9というところでございますが,ここにつきましても,その手続,性質としては保護措置というべきものなのかもしれませんけれども,日本法の手続を参考にしつつ,時系列に並べると最初に位置付けられる事件についてのものだけの規定を置いているという実情にあります。   未成年後見に関する審判事件についても正に,日本の手続法を一つの参考としまして,いわゆる後続の事件についての規定を設けてしまいますと,成年後見と同様に承認可能性が問題となってきます。つまり,我々の部会としては,時系列に並べると最初に位置付けられるべきものと考えられる事件についての承認可能性という部分については,依然として解釈に委ねられるというふうな規律も,法制としてはあり得るということを前提とする議論をしてまいりまして,いわゆる後続的なものについての管轄原因も考えてきたわけですが,しかし,やはりここも後見開始の審判事件の承認可能性と同様の議論があるわけです。そこで,未成年後見に関する審判事件の管轄規律を成年後見に関する審判事件の規定ぶりとそろえるというという観点から,部会資料にお示ししたような規律にしたという状況です。   そこについては,後ほどまた,御議論,御発言を頂いてもよろしいかと思います。 ○高田部会長 ほかに,いかがでしょうか。   特に御意見がないようでございましたら,これまでせっかく御議論いただき,一定の規定を設けることを御検討いただきましたが,誠に残念なところでありますけれども,解釈論に委ねるという趣旨をよりはっきりさせるためには,こうした方法しかないというのが事務当局の御判断のようでございますので,そうしたものとして,今回はこの方向で取りまとめを図るということでいかがでしょうか。   これまでの議論の成果は,何らかの方法で事務当局等から明らかにしていただくということにしていただきまして,今回は,この方向で取りまとめるということで,御判断を頂いたということにさせていただければと存じます。   では,続きまして,2,不在者の財産の管理について,資料を御説明いただきます。 ○内野幹事 不在者財産管理につきましては,議論としては若干の御指摘,御異論等もあったところかと思いますが,大きなところでは財産所在地を管轄原因とするという方向であったものと認識しています。   したがいまして,取りまとめとしては,この方向で対応したいと考えております。 ○高田部会長 御意見を頂きます。この点も,従前の御議論を踏まえ,この方向で取りまとめを試みるということでよろしゅうございますか。 ○竹下幹事 強く反対するものではないのですが,この「別表第一の55の項の事項についての審判事件をいう」というところをクラリファイしたいのですが,これは,準拠法が日本法となることを前提にして規定を作っているという趣旨ではないと理解してよいですか。道垣内委員が最初におっしゃられたことに近い話ですが,不在者財産管理については,財産所在地法が準拠法となることが前提となるようにも思われますが,この「別表第一の55の項の事項についての審判事件」というのが,要するに民法のものだけを念頭に置いているのか,それともそういう趣旨ではないのかについて,お教えいただければと思います。 ○内野幹事 準拠法については,民法だけに限る趣旨ということを前提にしてはおらず,依然として,様々な解釈があり得ることを前提としています。 ○竹下幹事 ありがとうございます。 ○高田部会長 別表一の項の番号が入っておりますが,それに相当する外国の制度は全て含むという理解で一貫しているということでよろしいですか。 ○内野幹事 実質的な規律としては含み得るということです。この部会においては,外国の相当する事件が入るのかという御指摘を何度も受けておりますが,実質的には入り得るという前提での管轄規律ということです。 ○高田部会長 貴重な御指摘,御確認ありがとうございます。   では,3,失踪宣告について,資料の説明を頂きます。 ○内野幹事 この3の(1),(2),(3)に書いている管轄原因というのは,これまでの部会の御議論を整理したもので,実質においては,従前の部会においておおむね支持されてきた結論そのままです。3の(1),(2)は,通則法における管轄規律をそのまま維持するもので,(3)は,失踪宣告の取消しについての管轄権について,今回新たに規定を置くものです。この失踪宣告の取消しの管轄権についての規定を置くということに関連して,先ほど申し上げたように,前提として,外国裁判所のした失踪の宣告の承認可能性について,どのように考えるのかが問題となります。この点については,従前の部会の御議論によりますと,承認し得るものとされ,承認され得ないという御見解はありませんでした。したがって,当然にこの(1)の管轄規律が間接管轄としても採用され,それによって,外国の裁判のした失踪の宣告については,その効果が日本で承認し得るものがあるということが前提となって,失踪宣告の取消しの審判事件の管轄規律を設けることになっていたものと認識しています。   ただ,若干ここのところが様々な,果たして本当に失踪の宣告の取消しのような管轄規律を設ける必要性があるのかというような御指摘も,あり得るところです。   ですので,こういった取消しの管轄権の規定を設けていくこと,この必要性について御発言いただける部分があれば御発言いただきたいと思っております。 ○高田部会長 御意見賜ればと存じます。 ○山本(和)委員 後見開始とは規定ぶりがそもそも違っていて,財産所在地管轄が認められるときは日本国内の財産についてのみ効力を生じるという規定があるということは,(1)は,その場合は外国の財産にも効力が及ぶということが,現行法自体,当然の前提にしているのだと私は理解しています。そうだとすれば,外国で外国住所に基づいて失踪宣告の裁判がされた場合は日本でも承認しますということになるのであって,日本でされた失踪宣告だけ外国に効力が及び,外国でされた失踪宣告の日本国内における効力は全部拒みますというような鎖国主義的な制度ではないのだろうと思っています。失踪宣告については,現行法自体が承認の可能性を前提にしているのだというところでは,後見開始とは随分前提が違っていて,そこがネックで,先ほどの後見開始のところでは,後見処分についての規定が置けないのだということであるとすれば,失踪宣告の場合は,(3)の規定は置けるし,置くべきだろうというのが,私の意見です。 ○高田部会長 もしよろしければ,置くべきだろうというところを若干敷衍していただくと,事務当局としては助かるということのようですが。 ○山本(和)委員 私は,基本的には,規定を置けるところは置くべきだろうと思っています。先ほど和波幹事も言われましたし,全般的には,これは家事事件手続法以来の話ですけれども,人訴や家事事件については,利用者の属性を考えれば,書けるところはできるだけ明文で書いていくというのが,私のずっと主張しているつもりのところです。だから緊急管轄についてもこだわったわけですが,ほかにどうしても弊害があるということであればしようがありませんけれども,そうでなければ,やはり書いていくのが筋だろうというのが一般的な私の認識です。 ○高田部会長 いかがでしょうか。   では,その点も,そのほかの点も含めて御意見賜りたいと思いますが。御意見がないようでしたら,現在の案文で取りまとめを考えていくという方向でよろしゅうございますか。   では,続いて御説明いただきます。 ○内野幹事 次は,「嫡出否認の訴えの特別代理人の選任の審判事件の管轄権」です。   これは,従前議論していたものから実質的な変更はございません。嫡出否認の訴えについて管轄権があるときは,事件としては訴えとは独立の家事審判事件について,このような規律になっておるということでございます。 ○高田部会長 では,4について,御意見を承りたいと思います。 ○和波幹事 先ほどのお話でも出ているように,明確性の観点から規定を設けるというのは十分あり得る判断かと思いますし,審判事件として独立に規定されているということも考えると,管轄の規定を設けるということはあり得ないわけではなく,内容について全く異論があるわけではないのですが,結局,嫡出否認の訴えの手続の中での特別代理人の選任ということを考えますと,独立の管轄規定を設ける必要性があるのかどうかということについては,若干疑問があるということを述べさせていただきたいと思います。 ○高田部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。   では,貴重な御意見を賜ったということで,それも踏まえて御検討いただくことにさせていただきたいと思います。規定を設ける場合には部会資料に記載されたとおりの内容でよいということでよろしゅうございますか。   では,続いて,「5 養子縁組をするについての許可の審判事件等」について御説明いただきます。 ○内野幹事 この5に関しましても,中間試案等で議論されていた内容を維持しています。   便宜上,併せて6の方も申し上げておいた方がよろしいかもしれません。「死後離縁をするについての許可の審判事件の管轄権」の議論でございます。   前回の議論におきましては,いわゆる国籍管轄の部分の取扱いについて議論をさせていただきましたが,おおむね国籍管轄を認めることもあり得るという御示唆を賜ったと認識しております。そこで,中間試案以後の検討を踏まえまして,(3)に当たる部分が加わっているところです。   したがいまして,この二つの養子縁組の成立の場面,そして死後離縁という場面については,従前の議論を如実に,書きぶりはいろいろあろうかと思いますけれども,それをそのまま整理して表現をしたということになると思います。 ○高田部会長 では,5及び6について御意見を賜りたいと思います。   5及び6は,原案どおりということでよろしゅうございますか。   では,続いて,7について御説明いただきます。 ○内野幹事 「特別養子縁組の離縁の審判事件の管轄権」についてです。   これまでの部会の議論を振り返れば,実質的には身分関係の当事者間における争訟性があるものだというふうな評価が妥当するのではないかという御示唆を賜っておりました。その意味でいけば,人事に関する訴えのところの管轄原因をある程度参照すべきだというような議論,より別の表現をすれば,普通養子縁組における離縁の訴えの管轄原因等を十分に考慮に入れた上での規律があり得るのではないかという御示唆を賜ってきたところでございます。   したがいまして,部会資料の記載は,今日の部会が始まる前の段階のものでございますが,それらを整理したものということになります。   ただ,今日の部会の冒頭でかなりの御議論を頂きましたとおり,この(4)という部分が,同じく人事に関する訴えにおける議論と同様の影響を受けるということになっておりまして,そうしますと,方向性といたしましては,養親が申立人になるという事例が基本的にはなかなか考えられないというところもございますので,申立人である養子の住所が日本にあるときで,養親が行方不明であるときというような規律として,(4)が変わっていくということが考えられるところです。この部分の議論は,人事に関する訴えのところで皆様方に御議論していただいたところが基本的には当てはまるのかとは思っております。 ○高田部会長 「7 特別養子縁組の離縁の審判事件」について,御意見を承りたいと思います。   (4)につき,人事に関する訴えと同じ問題があるということでございますが,その点について,特に御発言があれば承りたいと思います。   御意見ございませんか。   では,人事に関する訴えの(6)がどうなるか,まだ確定しておりませんので,それにもよりますけれども,それと同じ考慮の下に要綱案を考えていただくということでよろしゅうございますか。   では,よろしければ,「8 親権に関する審判事件」について御説明いただきます。 ○内野幹事 親権に関する審判事件でございますけれども,この実質的な内容は,これまでの中間試案までの議論をそのまま維持するものとして,取りまとめて整理してございます。   なお,括弧で目立っているところもございますけれども,子の監護に要する費用の分担に関する処分の審判事件を除いておりますのは,これは部会の議論を前提といたしますと,6ページの10の方の事件として取り込んでいるという実質を賜りましたので,このような形で整理をして「除く」と書いておるということでございまして,この部分について,規定が全くなくなっているということではございません。   8の資料の説明としては以上でございます。 ○高田部会長 8について,いかがでしょうか。   8についても御議論いただきましたところですが,かつ,従前の規定よりはかなり複雑な規定ぶりになっているところでございますが,実質は変わっていないということでございますので,この方向で要綱案を作成していただくということでよろしゅうございますでしょうか。   では,続きまして,9について御説明いただきます。 ○内野幹事 9は,これまで未成年後見に関する審判事件と呼んでいた部分です。   日本の家事事件手続法では,養子の離縁の前にあらかじめ未成年後見人となるべき者を定めておく審判事件と,未成年後見人の選任の審判事件があります。別表第一でいきますと70と71という項目になります。これらは,未成年後見において一連の流れの冒頭に来る事件ということができますが,これまで部会の議論でありましたように,後続の事件についてまで,未成年被後見人の住所等が日本にあるときは管轄権を有するというような規定を設けますと,外国でされた未成年後見人となるべき者の選任の審判や未成年後見人の選任の審判を承認した上で,未成年被後見人となるべき者や未成年被後見人の住所でもって,日本がそれらの後続の事件についての管轄権を有するのか,つまり,前提として,外国でされた未成年後見人となるべき者の選任の審判や未成年後見人の選任の審判の承認可能性を前提としているのではないか,という点が問題となります。   この点は,部会においては,依然として解釈に委ねるという前提であったものと思われますが,そのこととは異なる規律となることが考えられるところです。実質において,成年後見に関する審判事件について今日も紹介させていただいた議論と同様の考え方から,未成年後見についても,9で示している事件についてのみ,これまで部会において御意見をいただいた日本との関連性を担保し得る管轄原因,すなわち未成年者の住所や国籍を管轄原因と採用して,この部分についてのみ規定を設け,その余については依然として解釈論に委ねるというような方向性を採用せざるを得ないのではないかということです。 ○高田部会長 では,9について,御意見を頂きたいと存じます。 ○和波幹事 規定の必要性ということについては,先ほど申し上げたとおりでございます。   ただ,この一部だけを切り出したときに,今,事務局の方からは,手続の開始,冒頭に当たる部分についてのみ切り出したというお話があったと思うのですが,一般的には,後見人の選任というもの自体が保護措置の一部と考えられているということからしますと,この規定を設けることによって,やはり保護措置についての一部について管轄を設けているということになるのではないかという疑問がございまして,そこの切り分けについて,手続の開始の部分ということだけで説明ができているのかどうかというのは,問題になり得るように思います。   仮に未成年後見について,それができるとしますと,当然,成年後見についても,後見人の選任の部分だけ取り出すということも,理論的にはあり得るように思えまして,そことの整合性というのも,やはり何らかの形で考えておく必要があるのではないかと思っております。 ○内野幹事 未成年後見に関する外国でされた先行的な審判の承認可能性について,一定の立法的解決を図っているかのように受け取られるのではないかという点を考慮したものです。その部分について,解釈上,この部会においてコンセンサスが得られる範囲で立法措置をすべきだという御指摘であれば,反論すべくもありませんが,解釈に委ねる部分がそれなりにあるとすれば,条文で書くことによる弊害についても見なければならないものと考えています。御指摘としては非常に重く受け止めております。 ○久保野幹事 今のような御趣旨で,後続的な事件については省いておくということで線引きをするときに,細かい点ですが,別表第1の71の項の事件には民法840条の2項の事件が含まれています。この事件は,未成年後見人がある場合においても,更に未成年後見人を選任することができるという場合の事件ということになるので,それは後続の事件に当たるのではないかという疑念が生じるのですが,その点の切り分けとか整理については課題があるのではないかという意見です。 ○内野幹事 先ほどの説明は,外国でされたものの承認可能性という点について,解釈論上の争いが現実として残っていることに配慮したということです。お答えになっているかどうか分かりませんが,御指摘の部分については,こういった規定を設けたとしても解釈論上大きな影響があるものではないと評価するのかどうかによるものと思われます。いずれにしても,ご指摘の事件の切り分け等といったところは解釈に委ねている部分があるとは思います。 ○高田部会長 貴重な御指摘ありがとうございます。   事務局はそうした表現は使っておられませんが,実質的には,開始決定に対応するような審判のみを規定したものと理解していただくということを前提に,この規定を設けるのはいかがかという御提案だと存じますが,和波幹事は,ない方がよいというということを言われましたか。 ○和波幹事 いえ,先ほどおっしゃったような理由から保護措置について規定を設けないとすれば,この部分だけ切り出すということが,本当に成年後見の後見開始の審判と対応するという説明ができるのだろうかというところについては,慎重な検討が必要ではないかという趣旨でございます。 ○高田部会長 ありがとうございます。   では,副作用があり得る規定だという御指摘を頂いたところであり,文言上も含めて御検討いただくということでよろしゅうございましょうか。   では,よろしければ,10に移りたいと思います。御説明をお願いします。 ○内野幹事 これまでは,簡単に扶養義務に関する審判事件という程度の呼び方だったかと思いますが,部会資料には「夫婦,親子その他の親族関係から生ずる扶養の義務に関する審判事件」と書いてあります。念頭に置かれている事件は,従前,部会で取り上げてきたものと変更はございません。   そして,これにつきまして,扶養義務者と扶養権利者の住所によって管轄規律を考えていこうという部分については,これは従前の議論をそのまま反映しているところです。しかも,扶養義務者の者については,申立人でない者という,いわゆる被告的,相手方的な人が日本にいればできますというような規律,扶養権利者についてはそのような限定を設けていないというようなところも,これまでの部会における議論を維持した整理になっております。このように,これまでの議論を整理して,そのまま維持した上での10の記載ということになっております。 ○高田部会長 実質論は維持した上で,文言の整備を行ったという御説明でございますが,文言上御注意いただく点も含めて,御指摘いただく点があれば承りたいと思います。   扶養に関しては,この10に掲げた案を基に要綱案を作成していただくということでよろしゅうございますでしょうか。 ○大谷幹事 確認なんですが,前からも問題意識としては申し上げていたんですけれども,減額請求の場合に,義務者が日本にいるけれども権利者が外国にいる場合は,これだとできないですよね。ところが,減額の必要があるときに,それでは日本でできないから,権利者のところでやりなさいということにならざるを得ないんですけれども,権利者の住所地の方では,理由は分かりませんけれども,管轄がないという場合というのがあり得ると思うんですね。そのときには,明文の規定はないけれども,緊急管轄の考え方で申立てをすることができるという理解でよろしいんでしょうか。 ○内野幹事 もちろん,緊急管轄として要求されるべき事情というのは,解釈に大きく委ねられてしまっているわけですけれども,そのような考え方の余地というのはあるという前提の10の記載ということになります。 ○高田部会長 よろしゅうございますか。   では,「11 相続に関する審判事件」について御説明いただきます。 ○内野幹事 (1)は被相続人の住所地等の管轄を認めるもので,これについては特段,部会では御異論はなかったと思われます。単位事件類型としての相続に関する審判事件に含まれる事件の内容も,部会のこれまでの議論をそのまま維持しています。   続いて,(2)ですが,日本の家事事件手続法に規定されている一定の事件には,相続開始の前にすることが可能な事件が含まれております。この部分について,適用関係を明らかにし,被相続人の住所地等に管轄権を認め得るということを明示するために,読み替えをする規律を設けています。   続いて,この部会で何度か議論してきましたが,財産所在地管轄についてです。この点については,まず,認めるか,認めないか,という大きな議論がありました。ただ,相続に関する審判事件に含まれる全ての事件について財産所在地管轄として認めると,過剰管轄の弊害が生じ,その点について合理的な解決が図ることができないのではないかという議論もあったかと思われます。   一方で,財産所在地管轄を全く認めないのは,目の前に財産がありながらもそれについて日本の裁判手続を利用することができないことになり困るという御指摘もありました。必ず被相続人の住所地などでやらなければいけないというのは問題であり,財産があるということのみであっても,日本との関連性が全くないとは言えないのではないか,という御指摘です。   そういった議論の中で,財産の管理を内容とするような事件については,日本に管轄権を認める必要性もあるし,(1)の規律を念頭に置くと管轄権の併存が生じますが,そのことをもって大きな弊害があるとまではいうことができないとする御意見もあったところです。   このような御議論を経て,今回,(3)として記載しているのは,財産の管理に関するものと評価し得る,日本の家事事件手続法上の事件類型だけをピックアップし,それらについて財産所在地管轄を認めるという規律です。この範囲の事件は,相続財産の最終的な処分まではその内容としないわけで,これらを称して暫定的なものと表現するかどうかは日本語の問題ですが,これらのような相続財産の管理に関する事件だけをピックアップして,これらについて財産所在地管轄を認めるという内容です。   (4)から(7)は,遺産の分割に関する審判事件についてで,民事訴訟法における国際裁判管轄に関する合意管轄と同様の合意管轄を認める内容です。現在の案は,付加的合意を許容するものですので,(1)との関係では,遺産の分割に関する審判事件について,管轄原因が並立することになるわけですが,管轄原因が全く並立し得ないものとするまでの必要性があるかどうかは,検討すべき点です。   ただ,この叩き台の考え方としては,通常の遺産分割で合意管轄をする場面を主に想定しています。管轄の合意をする以上は,合意した土地で管轄を認めて,そこで遺産分割をすることが通常の姿であると考えられることから,付加的合意を一切排除するまでの必要性はないのではないかと考え,先ほど申しましたとおり,民事訴訟法における合意管轄と同様の規定を,遺産の分割に関する審判事件について設けることを内容としています。 ○高田部会長 11について,御意見を承りたいと思います。 ○山本(弘)委員 合意がされる時期については,解釈に委ねられているということなのでしょうか。いつの合意なのか,被相続人生前の合意でもよいのかといった,合意がされる時期についてはどうなるのかと,その点の感触を聞かせてください。 ○内野幹事 合意がされる時期については限定を付しておりません。解釈による限定はあり得るのかもしれませんが,規定としては,特段の限定はしていないということです。 ○高田部会長 従前御議論いただいたところですが,規定で限定するまでもないという御意見を承っていると了解しておりますが,いかがでしょうか。 ○池田委員 ただ,生前は相続人が確定しないので,最終的に同じ人かもしれませんけれども,生前の合意というのは認めるべきではないと思います。 ○内野幹事 今の案では,結局,ある具体的な合意が,管轄合意として適格性を有するか,という合意の解釈に委ねられると思います。つまり,一定の時期などを法定するまでのことはなく,また,効力があり得る合意とは何なのかについても解釈に委ねるということを前提としています。 ○高田部会長 ほかに御意見があれば承ります。 ○山本(和)委員 この合意管轄のところの基本は,専属的合意も認めるという趣旨でしたたか。 ○内野幹事 そのとおりです。 ○高田部会長 議論がございましたけれども,認めるということで,(7)はそれを前提としているという理解かと存じます。   付加的合意については,前回御議論ありましたが,事務局の説明では,明文で効力を否定するまでもない,場合によっては,特別の事情での考慮はあり得るということかと存じますが,そうした方向で規定するのはどうかというのがこの文章でございますが,その点も含めて,いわゆる合意管轄について御意見を承れればと思います。 ○山本(克)委員 付加的合意管轄を一応は認めておいて,特別事情による却下で対応するということは,法定管轄が日本にあって,それを却下することもあり得るし,合意管轄が日本にあって,それを却下することも両方あり得るということでよろしいですか。 ○内野幹事 部会資料の15の特別事情却下のところを見ていただきますと,合意の内容がどのような性質のものかにもよりますが,却下できる対象が必ずどちらかに限られるという部分は書いておりません。特に付加的合意のような場面などを想定されますと,両方とも,どちらかが却下され得るかという点は,議論があり得るということです。 ○高田部会長 解釈論はともかく,規定上は優先関係は設けないということだと存じます。   今話題に出ましたが,15の括弧書きで,専属的合意については特別事情による却下の適用を受けないですよね。 ○内野幹事 はい。 ○高田部会長 このような規定が,民訴並びで入るというのが原案でございますが,この点も御議論あり得そうに思います。今回初めての御提案ですので,便宜,ここで御意見承れればと存じます。 ○内野幹事 ここでこのような括弧書きを入れているのは,遺産の分割に関する審判事件については,家事事件ではありますが,部会の中で何度も,合意管轄を認めるニーズがあるという御指摘を賜っています。それは,実質において,財産権に関する事件に近いという性質があり,その点を相当程度重視することがニーズに対応することになると理解し,(4)以下では,民訴並びの合意管轄を認めることとしています。   そのことを受けて,特別事情却下においても,括弧書きを記載したものです。 ○高田部会長 したがいまして,山本克己委員の御発言との関係では,日本に排他的な管轄合意がある場合においては,外国の被相続人の住所地管轄は劣後するということになるということかと存じますが。   この括弧書き自体,民事訴訟法の段階で議論があったところではございますが,遺産分割にそのまま適用してよいかどうかということについても,御異論があるかもしれませんので,御意見を承れればと存じます。   特に御意見はないということでしょうか。   その他,今の点も含めてでも結構ですが,便宜,合意管轄について,先に御意見を承れればと思います。   特に御意見がないようでございましたら,民事訴訟法並びの合意管轄の規定を設けるということでよろしゅうございますか。   では,なお残された論点である,いわゆる財産所在地管轄について,御意見を承れればと存じます。前回の御議論を踏まえて,改めて,呼び名はいろいろあろうかと思いますが,財産管理に関する事件類型というものについて,財産所在地管轄を認めるという御提案を頂いております。いかがでしょうか。 ○和波幹事 質問になりますけれども,今回,規定を設けるという形で入れていただいたものは,実質的には不在者財産管理人と同様の制度と理解をしております。そうであるとすると,不在者財産管理人について議論がございましたが,その審判の効力がどこまで及ぶのかというようなところが,同様に問題になってくるのではないかと思っております。その点については,結局,不在者のところでは,解釈に委ねるというようなことになったかと思いますので,基本的には,こちらについても同様の解釈になるということでよろしいかという確認でございます。 ○内野幹事 実質的な説明は,今御指摘いただいたとおりで,結論は同様に解釈に委ねられるということです。   もっとも,その解釈の内容が全く同じなのかどうかについては,不在者財産管理という場面と内容は類似しているところはありますが,これは相続の場面であるということから,解釈に幅があり得ることを全く否定するものではありません。 ○高田部会長 その点も含めて解釈に委ねるということかと存じますが,その点については,そのような方向,御理解でよろしゅうございますか。   仮に財産所在地管轄を設ける場合には,ここに掲記されている事件類型で過不足ないかという問題が残っておりますが,法制問題も絡むのかもしれませんが,御指摘いただく点があれば御指摘いただく必要があろうかと存じます。   特に御意見ございませんか。   では,和波幹事のお言葉を用いさせていただければ,不在者財産管理とパラレルに考えられるような事件で,前回の御議論によりますと,相続統一主義とは直ちに抵触するとは言えない類型を想定して,その限りで財産所在地管轄を設け,更に,場合によっては特別の事情による調整を想定するということを前提に,こうした方向で取りまとめを図るということでよろしゅうございますか。 ○池田委員 相続の放棄の申述の受理は,どのような位置付けか確認させてください。 ○内野幹事 現状は,(1)の規律,被相続人住所地等に管轄権を認めるという規律によることになります。 ○池田委員 そうすると,かねがね言われていた問題の場合は,相続人は気の毒な地位にあるままというわけですね。 ○内野幹事 その辺りは,相続にまつわる権利義務関係と利害関係をどのように評価するかということですが,部会においては,相続の放棄等々の場面においても,例えば,債権者やその他の相続人といった関係者に対する配慮が必要なのではないかという御議論がありました。独自に相続人の住所地に管轄権を認めるという御議論もあり得るとは思いますが,明確に管轄原因として法定してしまうことについては,問題もあるのではないかという御指摘もあったように認識しております。   その結果,基本的な管轄原因といたしましては,(1)に規定しているところの管轄原因が採用されるものになるのではないかと考えて,このような取りまとめになっています。 ○池田委員 その場合も,緊急管轄は観念できるものなのですか。 ○内野幹事 今,池田委員のおっしゃった緊急管轄と,この括弧書きがどういうものかによるわけですが,解釈に委ねざるを得ない部分があると思われます。当然に観念できるのかというと,その辺りは今後の学説等に委ねざるを得ないと考えております。 ○高田部会長 よろしゅうございますか。 ○池田委員 実務的には非常に困った事態があり得るというのは,なお申し上げておきます。緊急管轄その他で認めなければいけない場合があるのではないかと思っております。 ○高田部会長 御趣旨は理解しましたし,今後の学説の展開は否定しませんが,相続統一主義の範囲内に属する事項だという整理をした上で,今回の立法はするということかと存じます。   ほかに,相続に関する審判事件の管轄権について,御指摘いただく点はございますでしょうか。   では,よろしければ,「12 財産の分与に関する処分の審判事件の管轄権」について御説明いただきます。 ○内野幹事 これまで,財産分与に関する処分の審判事件の管轄原因につきましては,そもそも財産分与に関する処分の審判事件をどのように評価するのかという点を中心に御議論を賜ってきたところでした。様々な御意見はあったわけですが,やはり前提となっているところの身分関係,例えば婚姻の清算の場面であり,正にそこが基本的な事件性質として着目すべきであるのではないかというところが,おおむねの御意見だったかなと考えております。   そうしますと,管轄原因については,人事に関する訴えにおいて採用された管轄原因にそろえていくということになるということが,これまでの部会の経緯,推移でございました。   したがいまして,そうなりますと,(4)というのがやはり問題になってまいりまして,ここでも基本的な方向性といたしましては,「その他」以下を検討する必要があるのではないかが問題となるわけです。   したがいまして,ほとんど(4)の部分での御議論なのかなと思っておりますが,もし人事に関する訴えとは別に,財産分与について御意見がありますれば,御指摘を賜れれば幸いでございます。 ○大谷幹事 確認のための質問になるのですけれども,今の御説明にあったように,財産分与の事件性質をどう見るかというときに,婚姻解消の一つの並びのようなものだから,管轄の規律としては離婚のときと同じにそろえることとし,離婚を含む人事に関する訴えの管轄権の並びの書き方にしてあるということでした。   そこまでは分かるのですが,離婚と財産分与を一緒にやるときは,先ほどの,ちょっと戻りますけれども,例の併合管轄のところで議論がありましたが,規定を置かなくてもこちらでできるとする見解からは,あるいは確認的なのかという議論がありましたよね。例えば,離婚の管轄が日本にあり,離婚だけをして,そのときには財産分与はしなかったという場合,後になって,2年以内に財産分与だけをやろうとしたというときを想定します。今回の日本の規律の仕方というのは,被告住所地を原則的な管轄にしていますので,どちらから起こすかによって,管轄がある場合とない場合と出てくることがあるのですね。それで,離婚の管轄は日本にあったのだけれども,財産分与をやろうとすると,財産分与については管轄がないということがありますよね。その場合,財産分与の管轄はないけれども,離婚は日本でやったんだという場合がもしあったとすると,それはこの規定からは落ちると読むということでよろしいのですかという確認なんですが。 ○内野幹事 規律としては,そのとおりです。やはり,離婚と一緒であれば日本でやれたのにという部分はあるのかもしれませんけれども,財産分与自体単独で起こされる場合というのは,やはりそこで当事者間の対立も,争訟的にあり得るもので,そこは軽視できないのではないかと考えたところですので,例えば過去,離婚の訴えが提起できたというような場合というのは,更に附加して管轄原因として加えることを考えることはしていません。 ○大谷幹事 そうすると,今の実務では,財産分与の審判だけを独立にやるときには,いわゆる離婚の管轄があるかないかをまず議論して,離婚の管轄がある場合には財産分与の管轄があるという頭で,今やっているんですけれども,それとはちょっと違うということですよね。この規定に合うかどうかというのを見ていくという,今度からそういう発想になるということなんですね。 ○内野幹事 それは,離婚が先にされて,後に,財産分与を独立にやる場合ということですか。 ○大谷幹事 はい。 ○内野幹事 このような規律ぶりは,正に独立で財産分与に関する処分審判事件を申し立てた場合の管轄権を規律しておりますので,今後はこの管轄規律に従った検討がされていくと考えています。 ○大谷幹事 はい,分かりました。 ○池田委員 今の点でも明確になっているように,日本に財産がたくさんあって,しかし,どうしても離婚だけ先行したかったのでやってしまったという場合があります。その後に,例えば住所が変わってしまったといった場合には,日本では財産分与ができなくなってしまうというようなことにもなるわけですし,そういった点の問題というのがあると思いますので,それをここに書くのかどうか,その場合も緊急管轄でやるのかということかとも思いますけれども,むしろ,少なくとも離婚後に独立に財産分与をやる場合に,財産の所在地でできるんだというような規定が必要になってくるのではないかとは思っております。特に先般の保全処分との関係もございますので,もう一度ここで,その点は言っておきたいと思います。 ○高田部会長 いかがでしょうか。 ○山本(和)委員 非常に細かいことなのですけれども,今のように,離婚後に財産分与の申立てがされるというのがこの場合だと思うのですが,離婚後に一方の配偶者,前配偶者が死亡した場合にも,一般には財産分与の申立てはできると解されているのではないかと思います。つまり,財産分与の請求権という,相続の対象になるというのが一般的な理解だと思うのですが,その場合のこの規律の適用なんですけれども,「申立人」,「相手方」と書いてしまうと,申立人とか相手方が前配偶者の相続人であったりすることも出てくると思うのですが,恐らくそれは念頭に置いていないと思うんです。   国内管轄を見ると,「夫又は妻であった者」と書いてあって,それは今申し上げたような点をちょっと意識しているのかなという気もしているんですけれども,この書きぶりでいいのか,検討の必要があるかも知れません。しかし,そういう例外的な場合は,別途解釈に委ねるということでいいのかもしれませんけれども,ちょっとその点を確認させていただければと思います。 ○内野幹事 ちょっと今すぐ,直ちにその点については,御回答を用意しておりません。 ○高田部会長 貴重な御指摘ありがとうございます。   どこまでうまく書けるか分かりませんが,カバーする必要がある場合には,カバーできるような文言にしていただくということになろうかと存じます。   ほかに御指摘ございますでしょうか。   (4)については,繰り返しになりますけれども,人事訴訟事件について規定内容がまだ確定しておりませんので,それ次第ということになりますけれども,そこでの考慮と同一考慮に基づく規定ぶりになるのではないかというのが事務局の御説明ですが,その点はそれでよろしゅうございますか。   池田委員からは御指摘をいただきましたが,従前の議論からいたしますと,財産所在地管轄を規定として設けるというのは必ずしも適切ではないという御指摘を頂いていると思いますので,山本和彦委員から御指摘いただいた点を別にして,基本的に原案の方向で先に進めるということになろうかと存じますが,そうした方向でよろしゅうございますか。   では,その方向で,次の段階に進ませていただきまして,「13 家事調停事件の管轄権」について御説明いただきます。 ○内野幹事 「13 家事調停事件の管轄権」につきましては,これは部会のこれまでの議論をそのまま維持しておるものでありまして,中間試案等でお示ししたものと実質において変わりはございません。   いわゆる合意管轄という部分について,(1)のウという部分において,これを認めていくというようなものを規定しております。一部,(3)において,管轄原因の限定というものはしておりますけれども,これの議論も中間試案,これまでの部会の議論で置かれた実質をそのまま維持した形で整理しているというところです。 ○高田部会長 家事調停事件の管轄について御意見を承りたいと思います。   この点も従前の議論どおりでございますので,記載のとおり要綱案の作成をしていただくということでよろしゅうございますか。   では,続きまして,「14 親権者の指定等の処分についての管轄権」ですが,この,「等」は必要でしょうか。 ○内野幹事 誤記です。失礼しました。14についてですが,これは親権者の指定についてのみですので,部会資料の14の見出しは「等」が余分です。   調停事件につきましては,家事事件手続法282条の場面で,また別途,親権者の指定がされるという部分があるわけでございますが,この点について国際裁判管轄規定を設けておくというものです。   そもそもこういった場面について,規定が要るのかという議論を,既に附帯処分のところで御指摘を賜っているところでございます。 ○高田部会長 御意見を承りたいと思います。 ○和波幹事 先ほど附帯処分のところで申し上げたことと大分重なってしまうのですけれども,仮に,先ほどおっしゃった規定が附帯処分として,本体の訴訟が提起されている場合の管轄であると考えるならば,調停について別途規定を設けるというのは,当然,考えられるわけですが,そうであるとすると,婚姻の取消しの場面だけについてかつ親権者の指定の処分だけの規定を設けることで足りるのだろうかというところは疑問があるのではないでしょうか。整理ができていないのですが,その他の場面についてはどのように考えればよいのかということについて,少し教えていただければと思います。 ○内野幹事 具体的には,その他の場面というのはどういう場面を想定されておられるのですか。 ○和波幹事 離婚調停の場面です。それと,婚姻の取消しで,先ほどの附帯処分では,親権者の指定以外の部分についても,附帯処分の場合には管轄があるとされていたわけですが,その場面についても取り入れる必要はないのかという質問になります。 ○内野幹事 親権者の指定以外の処分については,それ自体,必ずしなければいけないというわけではないので,それを認める規律をあえて設ける必要はないのではないかということから,本来の管轄規定の適用によって対応するということを,まず想定しているということになろうかと思います。 ○和波幹事 ただ,そうだとすると,人事訴訟の場合にも,親権者の指定以外の附帯処分というのは,当然に義務的にする必要があるわけではなく,当事者の申立てがあった場合にも管轄権が認められるように管轄を広げたと理解をしているのですが,調停の場合には,当事者がそれを調停の中でやろうと思っても,附帯処分について合意管轄がある場合以外はカバーしないでよいと,そういう理解でよろしいということでしょうか。   十分整理できていないのかもしれないのですが,まず婚姻の取消しについて,訴訟と同じ管轄がある場合には調停もできるという規律になっております。それに対して,親権者の指定以外の附帯処分についての管轄が審判としてはないような場合について,調停の中でも同様に扱いたいとした場合に,合意管轄以外で,当然に広げてカバーしておく必要性はないのかという問題です。人事訴訟の場合と違う考慮というのは,調停については合意管轄を認めるので,それで対応できるからということになるのかというのが,質問の趣旨なのですが。 ○内野幹事 前提として,それは一緒にやるべきだという判断があるということなんでしょうか。 ○和波幹事 人事訴訟においては,一緒にできるということを前提に管轄を広げたということからすると,調停の場合にも同様の価値判断はあり得るのではないかという趣旨です。 ○内野幹事 国内手続規定自体がそういう価値判断だったかどうかという点を,もう一回ちょっと確認させていただきたいと思ってはいるんですが。国内では,調停という場面において,必ずそれを一緒にしないといけないという価値判断になっていたかというところかと思われますけれども,一応今の御指摘は,やはり一緒にというふうになっているのでしょうか。 ○和波幹事 そこは,先ほど申し上げたように十分整理できていないのですけれども,国際裁判管轄という平面においては,当事者が離婚あるいは婚姻取消しと一緒に,附帯処分に相当するものをやろうと思った場合には,管轄を広げて拾うという価値判断を採ったとすると,調停の場面でも同様に考えることはできるのかなと思って質問しているのですけれども。 ○内野幹事 そこはいろいろな評価があるかなということで,今回のところでは,特段の規定は設けていないというところですが,国内の規律自体を含め,再度検討いたします。 ○高田部会長 自信がないのですが,国内規律は,合意に相当する審判で婚姻の取消しをするときに,親権者指定以外の附帯処分についての調停管轄は,いわゆる調停管轄の規定によらないでできるかという問題があり,手当がないからできないというのが,恐らく当時の事務局の御理解だったと思います。必要があれば合意管轄を得る必要があるということですね。 ○和波幹事 こちらも,ちょっとそこは整理できていないので御検討いただきたいのと,ただ,そうすると,離婚調停の場合の親権者指定の問題は残るのではないかと思いますので,そちらの点も併せて御検討いただければとは思います。 ○高田部会長 取り分け,調停に代わる審判で離婚をする場合において,親権者指定がどうなるかという問題が残っているということですね。   御指摘のとおり,合意に相当する審判と調停に代わる審判における附帯処分等の扱いについては,若干整理が必要な点が残っているかもしれませんので,その点,御検討いただくことにしたいと思います。   その点も含めてですが,14の規定の要否に係っているのかもしれませんが,ここで婚姻の取消しの合意に相当する審判において親権者指定が問題となるのは,国内手続上予定されているからだろうと思いますが,合意に相当する審判等において,附帯処分について,どの範囲で管轄を認めるかという点は,私の記憶では今回初めて出てきた論点ですので,御指摘いただく点があれば是非御指摘いただきたいと存じますが,いかがでしょうか。 ○池田委員 これは,少なくとも国内は,離婚の場合は当然できるということになってくるので,問題にしていないから条項がなくて,合意に相当する審判の場合にだけ,この条項を付けておく必要があるという,そういう状況なのですよね。ですので,価値判断として,訴訟の場合にそのようにしたという考えは,その考え自体は私は支持はしておりませんが,もしそちらに並ばせたいということであれば,入れる必要が出てくるのかなと思います。   ただ,そのような規定は,国内法上は考えられないので,そもそも存在しないのではないですかね。 ○高田部会長 いかがでしょうか。 ○大谷幹事 ただ,ニーズという意味からいいますと,離婚についての調停を日本でやることについての合意をして,離婚自体は調停管轄があるけれども,出口のところで調停に代わる審判をしようとしたときに,親権者の指定の管轄がないので,その部分ができないみたいな話になるという話ではないんですか。 ○池田委員 調停管轄が合意管轄ではない場合ですよね。日本に住所がある外国人同士が日本で離婚するというような場合ですよね,想定されるのは。 ○大谷幹事 そうなのですか。何か想定している場面が,ちょっと分からなくなってしまったんですけれども,日本に外国人同士がいる場面ですか。 ○池田委員 はい。だから,日本法が適用されない離婚であって,しかも合意管轄ではなくて日本に管轄がある場合なので,日本に住んでいる外国人同士の離婚のような場合ではないでしょうか。 ○山本(克)委員 当人同士,つまり両親が日本にいて,子が外国に住所を有しているときが主として念頭に置かれているように,私は理解しましたけれども。 ○池田委員 でもそれは,離婚の話だとすれば,日本法が準拠法になりますよね。 ○山本(克)委員 だから,調停に代わる審判の際に,調停の管轄でいくので,親権についての管轄がないとまずいのではないかというお話が一番大きな問題ではないかということを,今,議論されているのではないかという気がします。 ○大谷幹事 もし,今みたいな場合を想定されているのだとしたら,日本人,親が両方とも日本にいる場合だとすると,何かそれは中身の話になってしまうのですけれども,未成年の子が外国にいても,子の住所自体を日本だと認定する場合がありますので,何かそれほど問題に感じなかったのですけれども。 ○山本(克)委員 なるほど。ただ,それを言われてしまうと,附帯処分のときに何のために議論してきたか分からなくなってしまうので,それはどうなのかなという気がしますけれども。 ○池田委員 すみません,日本人親だと,日本でやる場合は必ず日本法で,必ず一緒にしなければならないということになるので,そもそも附帯処分の話は出てこないのではないですかね。 ○山本(克)委員 私はそういうふうに言ってきたんですが,14は,それを恐らく否定する趣旨に読めるのではないかと思います。 ○池田委員 これは離婚ではないからですよね。 ○山本(克)委員 いいえ,婚姻取消しであっても,私は同じように考えていますので。   14の規定があっても,私のような考えは完全には否定されていないのかもしれないけれども,かなり否定されたニュアンスが濃いなと思っています。282条は,職権でできる場合,職権でしなければならないという規律でしたか。 ○高田部会長 合意に相当する審判の中で親権者の指定もするという整理だと思います。これも議論があり得るところですが。 ○山本(克)委員 ああ,そうですね。でも2項で,合意がなかったらできないということになっているからということですか。 ○高田部会長 そうです,合意がなければできないし,異議が出れば失効することになります。 ○山本(克)委員 だから,ちょっと違うかもしれないですね。   ともあれ,問題になっているのは,先ほど申しました場合だと思います。 ○高田部会長 問題状況は山本克己委員の言うとおりで,御指摘のとおり,離婚については山本克己委員のお考えを採ると,規定なくして日本法でできるという解釈が可能だということですね。 ○山本(克)委員 はい。そのような解釈を採っていただけるんだったらよろしいですけれども。 ○高田部会長 了解しました。   ということで,解釈上の問題点も含み,かつ規定が必要か否かという問題も残っていそうですが,今日御指摘いただいた点を踏まえて,取りまとめの文章を確定していただきたいと存じますが,それでよろしゅうございますか。   では,続いて,「15 特別の事情による申立ての却下」について御説明いただきます。 ○内野幹事 特別の事情による却下については,既に若干議論もしていただいておりますが,部会における議論をそのまま反映して,こういった規定を家事事件に関しても設けていこうという提案です。   ここでは,先ほどの括弧書きの部分については既に御議論いただいたものといたしまして,特に御指摘申し上げたいのは,子の利益の指摘のところです。ここでは,「未成年者である子の利益」とだけ書いてございます。   家事事件については,多種多様な事件が含まれており,その利害関係を有する子が,どのような立場にあるのかを特定するというのは,必ずしも容易ではなく,少なくともその事件に関係のある未成年者である子の利益というのを明示しておけば,例示としては一定程度機能するのではないかという考え方から,「未成年者である子の利益」と,このように書かせていただいているというところです。   特別事情による却下のその余の点の部分につきましては,既に訴えに関して議論されたところとほぼ同様の議論が当てはまるものだと考えております。   あわせて,管轄権の標準時につきましては,これも訴えと同様のものを,ここでは書かせていただいております。 ○高田部会長 ありがとうございます。   では,まず「15 特別の事情による申立ての却下」について,御意見を承りたいと思います。 ○大谷幹事 人訴の方,それから,管轄の標準時の議論ともちょっと関係がある質問なのですが,管轄の標準時自体は,訴えの方は訴えの提起時,それから,審判又は調停は申立時という規律なのですが,特に子供が関わる事件で,裁判をやっている間に,例えば,子供は最初ここにいたのだけれども,どこかへ行ってしまったとか,帰ってきたとか,結構いろいろ起きるんですよね。特別の事情による却下は,その考慮要素というのは,管轄の標準時におけるものによって判断するのか,それ以後の最終の判決や決定までの事情の変化も考慮要素に入ってくるのか,それは確認の質問です。   それから,もう一つ,管轄の標準時について,これも確認の質問なのですけれども,日本に離婚の管轄があるとなった場合,日本の手続法が適用され,調停前置で,本来調停をやらなくてはいけないことになります。調停をやっていったときには,例えば,相手方が日本にいたけれど,そのうちにいなくなってしまって,調停不成立になって,訴訟を起こす段階ではもういないという場合があります。その場合でも,最後の共通住所地が日本にあって,原告がいれば拾えますから,余り問題ではないのかもしれないのですけれども,一応概念の整理としてお聞きするのですが,そういう場合に,今の規律だと,離婚訴訟の管轄は,離婚訴訟の提起時で判断されることになるのですよね。ただ,一方で,家事事件手続法で,調停前置の類型の事件については,調停が不成立終了になった後2週間以内に訴えを提起したときには,調停の申立て時に訴えの提起があったこととみなすという規定があることとの関係で,そこは,あれは飽くまで国内の手続の話なので,今回のこの国際裁判管轄の規律の話としてはそうは読まないということでしょうか。飽くまで調停は,調停の申立時に管轄があるかないかを調停の管轄規律で見て,調停前置の事件についても,訴えのときに,訴えの管轄としてあるかないかを見るという理解でいいのかどうかというところを,ちょっと整理としてお伺いしたいと思います。 ○近江関係官 まず,例えば子供が途中でいなくなった場合,特別事情の中にそういった要素を取り込めるかどうかという点については,以前,確か本部会でも,子の親権監護に関する事件を念頭に,特別の事情による却下の規定にも管轄の標準時の規定が及ぶのかという議論がされ,特別の事情による却下については標準時後の事情も考慮できるのではないかという考え方と,特別の事情による却下にも標準時の規定が係ってくるので訴え提起又は審判の申立て時の事情でないといけないのではないかという考え方と,両方あったかと思いますので,そこは議論があり得るところだと思っています。   もう一つの調停前置の場合はどうかというのは,民事調停や家事調停が不成立の場合に訴え提起の時期が擬制されるものがありますが,注釈書等では,国内手続についての整理ですが,この訴え提起の時期の擬制というのは,時効の中断や期間遵守との関係で遡及効を認めるものですので,管轄については現実に訴えを提起したときで判断されると,国内事件の方ではそう整理されていますので,国際裁判管轄についても,あえてそれと違う整理をするのは難しいのかなと考えています。 ○高田部会長 よろしゅうございますか。 ○大谷幹事 はい。今度の新しい管轄規律の下では,現在の実務より少し広くなるのかなという印象を受けていますので,そこはちょっと実務は変わってくるかもしれないのですけれども,現在の実務では結局,被告も日本にいるから,今訴訟を起こせば離婚の管轄はあるのだけれども,調停前置でやっているといなくなってしまうみたいなときは,実際には訴訟を先に提起してみたいなやり方を今やっているところがあって,もちろん後で付調停とされれば,それはそれで仕方ないんですけれども。今後どうなるか分かりませんけれども,それで付調停にされたとしても,そのとき訴え提起をしてしまって,そのときに管轄があれば,それは離婚訴訟の管轄はあるという前提の中で調停に回されるという整理でよろしいのですよね。 ○内野幹事 何らかの解釈論はあるのでしょうか。いずれにしても,そういうふうになり得るものだと考えております。 ○山本(克)委員 既に議論済みのことなのかもしれませんけれども,確認だけさせていただきたいのですが,15の特別の事情による申立ての却下の「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し」という要件は,相手方のある事件に限定されてしまうのか,それとも,例えば成年後見開始の場合の被後見人などの利害というものも,ここの当事者間の衡平というところに読み込めるのか,どちらなのでしょうか。 ○内野幹事 基本的に想定しておりますのは当事者間でありますので,相手方のある事件の衡平ということになるのかもしれませんが,相手方がないような事件について利害関係人との関係で衡平というのがあるのかどうかということなんですけれども,今のところの規定ぶりであれば,それも一つの解釈論になってしまうというところはあろうかと思います。   ただ,そういった部分の考慮をするのであれば,相手方のない事件については,むしろ「適正」で読んでしまうという考え方もあるのかもしれないと思います。そういった部分について,きちんとした判断ができないようであれば,それはむしろ不適正だという考え方も許容し得るのかなとは考えております。 ○高田部会長 よろしゅうございますか。   ほかに御指摘いただく点,ございますでしょうか。 ○山本(和)委員 この考慮要素の中の「申立人以外の事件の関係人の負担」ということですが,中間試案では「申立ての相手方である当事者の負担」となっていたと思うので,ここは中間試案から変わっていると思うのですが,所詮例示なのでどちらでもいいといえば,どちらでもいいのかもしれませんが,訴訟の場合は被告の負担だけを考慮していて,ここで事件の関係人というのがそもそもどれぐらいの範囲の人を指しているのかというのがよく分からない,みんなの負担を考えろということなのかもしれませんけれども,ちょっと何か関係人という概念を使うというのは,やや引っ掛かりがあるということだけ申し上げたいと思います。 ○内野幹事 ここには様々な事件が入り得るものがありますので,当該事件に関係する者,家事事件手続法の中には意見を聞かなければいけない者であるとか,審判の効力を受ける者であるとか,いろいろな様々な人がいまして,そうすると,当該事件が最終的に,当事者間の衡平であったり,適正迅速というところで考慮すべき人というのは,比較的様々な人がいるのではないかと考えられ,これをまとめる概念として,どういう概念を用いるかと,悩ましいのですが,ここは一応,広く大きく捉えていこうというようなことで,このような文言選びをしております。 ○高田部会長 いかがでしょうか。 ○内野幹事 今日,実質において,ある特定の領域の人は排除すべきだというような議論でありましたら,それは御示唆賜れればと思っております。 ○高田部会長 相手方を含めるかという論点と,関係人という概念が妥当かという,二つのことを御指摘いただいたのだろうと理解していますが,いかがでしょうか。   関係人というのは,他でも使われていた概念ですね。 ○近江関係官 事件の関係人という言葉は,家事事件手続法ですと,例えば47条4項や51条などで使用されている概念で,相手方に限られない,手続に巻き込まれる者を指す言葉として,この言葉を使ったということになります。 ○山本(和)委員 別にそのことを否定しませんし,そういう関係人の負担の程度を考えてはいけないとは言っていませんけれども,恐らくここは,先ほど出てきた「当事者間の衡平を害し」というところと関係したものとして民事訴訟法なんかでは考えているので,だから被告の負担と言っているんだと思うんですよね。だから,それとパラレルにすれば,むしろ中間試案の方がぴったり来るのではないかという程度の意見です。   しかし,別にこだわるわけではありません。例示ですので。 ○高田部会長 ほかに御意見ございますか。 ○竹下幹事 細かいところで大変恐縮なのですが,人事訴訟の方で,この未成年者のところが成年に達しない子となっていて,こちらで未成年者となっていますが,これは何か含意があるのであれば,是非教えていただきたいのですが。 ○近江関係官 特別な意図があるわけではなくて,人事訴訟法では既に,31条などで「成年に達しない子」という言葉を使い,家事事件手続法では「未成年者」や「未成年者である子」という言葉を使っており,二法で既に使われている言葉が違っているので,各法律の中での平仄をとるという意味で言葉を使い分けているものです。あえて違うものを意味しようとしているわけではありません。 ○久保野幹事 その未成年者である子の利益を例示として挙げる点につきまして,立場性に関わらず多様な事件があることから,こちらでは一般的な形で入っているということは理解いたしまして,特に反対ということではないですけれども,そうなりますと,人事訴訟の方で先ほど少し御指摘がありました点が,改めてちょっと気になってまいります。人事訴訟の方では,身分関係の当事者である成年に達しない子の利益というのが例示の中に入っていない形になっていますが家事審判の場合に比べて,身分関係の当事者である未成年の子について,何か類型的に考慮により値しないといいますか,そのようなバランスにもなってしまうように思えまして,むしろ人訴の方にも身分関係の当事者である子の利益を入れた方がよいのかという気がしてきましたという意見です。   補足しますと,人事訴訟についても,実親子関係不存在確認訴訟を第三者が起こす場合ですとか,認知無効というようなことですとか,いろいろな類型を想定していったときに,身分関係の当事者である子が明示されていないというのが目立つというのは,ちょっと慎重に考えてみた方がよいのではないかという趣旨です。 ○近江関係官 御指摘は理解しました。ただ,人事訴訟では,当事者である子の利益は「当事者間の衡平」の中で考慮されるわけでして,つまり,未成年者が被告になる場合は被告として応訴負担が考慮されて「当事者間の衡平」が決まるわけですし,未成年者が原告となる場合については,被告の応訴の負担との関係で,原告となる未成年者の子の利益を考慮して「当事者間の衡平」が決まるという整理ではあります。御指摘のとおり,人事訴訟では身分関係の当事者である未成年者の利益を軽く見ているという趣旨ではありません。 ○内野幹事 結局,当事者であれば,そちらの当事者の衡平とか他の文言の中で議論されるのではないかというところがあるので,例示として書くべきところは何かと考えたという,それぐらいの整理ということです。 ○高田部会長 当事者間の衡平だけでなく,適正の方に関わるという理解も十分あり得るということかと存じますが,御指摘は貴重な御指摘だと思いますので,なお御検討いただきたいと思いますが,今の点,何か付加的に御発言があればお願いします。 ○平田幹事 例示なので,余りこだわっている話ではないのですけれども,審判事件では,関係人の負担の程度というので,人訴とパラレルに書いてあるんですけれども,審判の場合には,成年後見における事件本人の利益だとか,扶養義務者間の紛争における扶養権利者の利益だとか,負担ではなくて利益の面も重視しなければいけないところからすると,未成年者である子の利益というのが家事審判事件でも一番,子の福祉というのが重要ではあるので,ここを例示して,関係人の利益というのもその他に読み込めばいいといえばいいかもしれないのですけれども,もう少し広くとってもいいのかなという気がしております。   以上です。 ○高田部会長 ほかに何か御指摘いただく点はございますでしょうか。   では,種々御議論いただきましたので,考慮事項の部分については,今日の御議論を踏まえて,修正が必要かどうか,なお御検討いただくということで,その点を別にすれば,基本的に,ここに書かれている趣旨の規定を設けるということでよろしゅうございますか。   では,管轄の標準時については,先ほど御議論いただきましたが,なお御議論いただく点があれば承りたいと思います。   よろしければ,第3,裁判の承認執行についての御説明を頂きます。 ○内野幹事 まず,「外国裁判所の家事事件についての確定した裁判の効力」という部分です。   従前の部会資料では,実質的に,民事訴訟法118条に相当する内容のものを各号に列挙する形で記載してきました。   前回の御議論において,家事事件についてはいろいろな性質のものがあるのではないか,典型的には,相手方がない事件について,いわゆる手続公序と言われているところの要件については,様々な考え方があるのではないか,といった御指摘がありましたが,実質において,民事訴訟法第118条の要件が参照される点については,おおむねコンセンサスを得られているところだと認識しております。   ただ,それ自体を書き下すとなると,いろいろと問題があり得るのではないかという議論があり,具体的には準用するということではどうかという御指摘も受けたところです。また,それは,「外国裁判所の家事事件における裁判」の事件の性質によるということの御指摘でもあったものと理解した次第です。   以上を踏まえ,方向性としては,民事訴訟法第118条の規定を,外国裁判所の家事事件についての確定裁判について準用するという規律とし,解釈の余地を許容する形として,記載したのが1の承認の要件の部分です。   次に,家事事件についての確定した裁判について,具体的に執行力を付与する手続をどのようにするか,という論点があります。   手続としては,決定手続を支持する御意見もありましたが,民事事件に関する外国裁判所の判決の場合は,現状は,執行判決を求める訴えによるものと整理されており,同じく日本国内において財産的な給付を満足するための執行力を付与すべき手続についても,既存の手続との平仄を考慮せざるを得ないと考えたところです。   そうしますと,手続としては執行判決を求める訴えを選ぶことになりますが,この点に関しては,外国裁判所の家事事件における裁判についての執行判決を求める訴えの管轄を,家庭裁判所に移管をするかどうかという議論もありました。この移管については,支持する御見解もあった一方で,否定的な御意見もあったと認識しています。そこで,この部分については,これまでの部会の御議論を踏まえた内容で提示しております。   (2)以下は別の話になりますので,まずは,承認要件について,外国裁判所の家事事件についての確定した裁判の部分の承認要件については民事訴訟法第118条を準用し,そのような裁判に執行力を付与する手続は執行判決を求める訴えとして,その管轄を家庭裁判所に移管する,という方向でよいかどうか,御意見を賜れればと思います。 ○高田部会長 では,第3,1の,承認要件に関する規定につき,お諮りしたいと思います。   いかがでしょうか。いろいろ御議論いただき,いろいろな条文案を御検討いただきましたけれども,先ほどの事務当局の御発言によりますと,準用規定として解釈の余地を残すというのも一つの選択肢ではないかということかと存じますが,いかがでしょうか。 ○西谷幹事 前回の案ですと,人事事件と家事事件を区別することで性質決定の問題が生じうる等の議論があったところです。準用としてすっきり整理していただくのは,あり得る方向性かと思いますので,御提案に賛成いたします。 ○高田部会長 ありがとうございます。 ○山本(和)委員 中身は異論がなく,純粋に書きぶりだけの問題ですけれども,確定した裁判,の「裁判」という概念が使われている点が,前回までは「終局裁判」になっていたこととの関係で,少し気になっています。文言上は,いわゆる審判以外の裁判も含まれるような書きぶりになっていますが,なぜ文言を変える必要があったのかということを,伺えればと思うのですけれども。 ○内野幹事 経緯としては法制的な問題になるのですが,終局的な裁判であることは,当然,前提としています。実質としては,手続上の中間的なものについて議論しているわけではなく,判決に相当するような終局性のあるような裁判を念頭に置いているというところではあります。 ○山本(克)委員 今の点で一番問題になるのは,審判前の保全処分に相当する外国裁判というものをどう見るのか,承認対象にするのかどうかということだろうと思います。手続上の裁判については,おっしゃるとおり,解釈論上排除できると十分思えますが,一般の保全処分,民事保全法上の保全処分に相当するような裁判を承認できるかどうかについて,民事訴訟法第118条の確定判決と読むべきかどうかという点については議論があるところで,ここで単に「裁判」としてしまうと,審判前保全処分に相当するような裁判は承認できるということになりはしないか,民訴での議論との関係が微妙かなという気がします。 ○内野幹事 家事事件における裁判は,その種類に応じたいろいろな性質のものがあり得るもので,その点に鑑みて,承認対象とされるべき「裁判」は何かということが考えられるのではないかと思っています。「終局」であるということが「裁判」の修飾詞として付けば解決されるのか,それとも,それぞれの事件ないしは裁判の性質に鑑みて,という部分が文言上表現されれば,その問題が解決されるのか,ということは,検討はしてみたいと思います。 ○高田部会長 御検討いただくということでよろしゅうございますか。 ○大谷幹事 今の点ですけれども,文言で解決できるかどうかという話は別として,審判前の保全処分も承認対象になるかどうかという中身の議論としては,どのような理解なのでしょうか。例えば,特に子供の関係ですとか,迅速に,日本で言うところの審判前の保全処分のようなものを出して,それを子供のいる国で執行する必要性は高いし,そういうことは一般に渉外事件では多くあるのですが,そこはどのように考え方を整理しているかということをまずお伺いしたいと思います。 ○内野幹事 前提としては,様々な見解があるという評価をしており,解釈に委ねられている部分があるものと思っています。この部会において,一定の結論が得られるのであれば,そのような法制として立案して解決するということを否定はしませんが,これまでの部会の御議論を踏まえると,そこは論点であると見ていますので,解釈に委ねるという部分があるということを,部会資料の前提としています。 ○大谷幹事 そうすると,この文言は,それを排除するものではないと,取りあえず読んでよいということですか。明確に入れているわけではないかもしれませんが。 ○内野幹事 最終的には解釈なのでしょうが,外国民事保全処分の承認については,基本的には否定されているという認識ですので,審判前の保全処分がそういったものと実質において同じという評価を受けるものであれば,承認されないという方向になるものと思っています。 ○高田部会長 いや,解釈に委ねるということを前提に,従前は終局裁判という形で,その範囲を確定しようとしていたということかと存じますが,そこも解釈に委ねるというのも一つの選択だということかもしれません。   議論が分かれる点は,委員,幹事の間でそこまでは設けてよいという意見の一致が見られる範囲で立法するという選択をせざるを得ないわけですが,今の点の文言等は,なお御工夫いただくことになるのかと思いますが。 ○大谷幹事 解釈に委ねられるという前提の上で,記録にとどめる上でも,民事保全の保全と,いわゆる子供等の事件における保全とは,かなり性質が違いますので,そこだけは発言として残させてください。 ○高田部会長 では,その点,文言については,なお御検討いただくということのようですので,基本方針としては,民事訴訟法第118条準用ということについては御了承を得たと理解しております。   続きまして,2の(1)で,いわゆる執行判決を求める訴えの管轄裁判所につきまして,いろいろ従前から議論があるところですけれども,今回は家庭裁判所という御提案を頂いておりますけれども,この点について御意見を承れればと存じます。   いかがでしょうか。   念のためですが,ここで言う外国裁判所の家事事件における裁判というのは,何を想定されていらっしゃるんでしょうか。 ○内野幹事 日本法におけるところの家事事件とされるものについての裁判ということで,前回の部会までの議論はなっていたものと思っており,それに相当するものを想定しています。 ○高田部会長 家事審判事件に該当するもの,ですか。 ○内野幹事 具体的には,そのようなものが,ここに入り得るということです。 ○高田部会長 それで限界設定はできているというのが,事務局の御判断かと存じますが。   前回,家庭裁判所の管轄とすべきだという御意見と,地方裁判所の管轄でよいという御意見に,拮抗かどうか分かりませんが,少なくとも分かれていたということでありまして,この方向で取りまとめるということについて,なおこの段階で御意見があれば,承る必要があろうかと存じますが,いかがでしょうか。 ○早川委員 一つ考えられるとすると,区別がうまく付くのかということだろうと思うんですね。ですから,もしこうするのであれば,例えば,間違えたときの処理が利用者にとって大変でないというような,何かうまい措置を用意する必要があるだろうという気はいたします。 ○内野幹事 2の(2)について,区別がつかない典型的な場面として部会で議論が出ていたのは,外国裁判所の判決とされるものと,今申し上げたような家事事件における裁判が,一個の裁判書きに記載されている場面で,当事者が一番迷うかもしれないというものでした。こういう場面では,それぞれ,地裁に起こしても家裁に起こしても,いずれも権限があるということを,前回の議論をそのまま表現したものとして,部会資料として提示しています。   ただ,先ほどの早川委員からの御指摘にありました,そもそも区別できるのかというところからしますと,今の例においても,そもそも二つのものが一つのものに書いてあると判断できることが前提になっているので,今の御指摘は,このような規律ではやはり駄目だということにつながり得るものなのかもしれないと,伺っていて思いました。   したがいまして,そもそも移管すべきかという点も含めて,こういった管轄,権限を移管する措置の妥当性等とともに,この(2)のような,なかなか判断がし難い場面において,利用者である国民に負担が掛からないようにするために,どのような措置をとればよいのかということも併せて,アイデアや問題意識を賜れればと思います。 ○山本(克)委員 家裁に管轄をすべきだという論拠の一つが,専門性ということだったと記憶していますが,執行判決事件は,地裁と家裁にばらけさせた上で,しかも全国津々浦々ということで専門性を高めるべきような性質のものではなく,別途,その後移送するということはあり得ると思いますけれども,むしろ全国の一つないしは少数の地裁に管轄集中をしてでも,そういう形で専門性を高めるべきような事件ではないのかという気がします。つまり,結局,ふだん渉外的なものにほとんど出会わない裁判官は,地裁にも家裁にもたくさんおられるわけでして,本当に専門性というのであれば,そういうことにしばしば出会う裁判所に集中すべき話だろうと思います。更にばらまくというのは,むしろ逆行することで,私としては余り賛成できない。   もう1点は,今,早川委員がおっしゃった点で,果たして,この(2)においてある程度救えるにしろ,そもそもどちらなのか分からないというときには,これでは対応できないわけですから,やはり当事者,利用者に対する分かりやすさという点が,かなり欠けているのではないのか。前にも言ったような気もしますが,特に扶養などは,日本の分け方は独特なんですね。そういう辺りを考えると,利用者,判決をもって給付の裁判を取った当事者にとっては,日本での執行というものについて,非常に見通しが付きにくいことになる。無論,移送で解決できますよというのは,それはそうなのですが,移送があれば結論は一緒ですが,それはプロの発想で,当事者から見れば,それはやはり妙なことでしかないのではないのかという気がします。 ○村田委員 今の山本克己委員のお話の前段のところは,国内管轄の問題としては,考え方として,もちろんあり得るだろうと思いますし,家庭裁判所が言っている専門性というのはそれほどのものではないという御指摘も従前頂いていて,それも余り確たる反論ができない部分もあることはあるんですが,むしろ,だからこそ,そういう専門性の面よりは,当事者に対して負担を掛けないという面を,この局面においては重視すべきかと思いまして,その意味で,(2)の手当を御提案いただいていることは,非常に歓迎すべきことと考えております。   他方で,これで足りるかという面においては,そもそも一つの裁判書に一つのことしか書いていないけれども,それがそもそも民事か家事か分からない,こういう事態に,これでは対応できていないのではないかという御指摘も,それもそのとおりかと思いますので,その場合には,最低限の手当として移送が考えられると思います。   移送について,明確な規定が置ければ,それはベターかと思いますけれども,そのような規定がなくても,例えば民訴法16条の職分管轄に基づく移送などは間違いなくできますということは,この場で確認をさせていただきたいと思います。 ○内野幹事 移送の措置につきましては,御指摘いただいたとおり,現行の民事訴訟法の規定で対応できることを前提としています。 ○大谷幹事 2点あります。一つは専門性の話ですけれども,私は,やはり専門性の観点から,今後は家庭裁判所に管轄を置いていただきたいと思っています。   山本克己委員の御指摘の点ですけれども,私自身,全国の事件の相談とか依頼を受けますし,私自身が共同代表になっている,渉外案件,外国人が関係する案件を扱う弁護士のネットワークというのがありまして,そこでいろいろ寄せられている相談,質問等を見ていましても,本当に全国津々浦々,いわゆる渉外家事事件というのがあるんですね。その中で,外国裁判所の判決の執行というのがどのぐらいあるかというの,それはまた絞られるとは思いますけれども,実は家事事件において渉外案件というのは,非常に比較的高い割合を占めておりまして,しかもそれは全国であります。したがって,それを,ふだん中身の点について扱っていない地裁の裁判官にやっていただくというよりは,私は,やはり家裁の方で,ふだん,中身の部分,例えば財産分与であるとか,養育費であるとか,子供の監護権,面会交流であるとか,それらを扱っているところの方たちがされる方が,判断において適切であると思っています。   それから,かえって当事者がどちらか分からなくて困るのではないかというお話ですが,部会資料に,外国裁判所の家事事件,と書いてあることについて疑問があります。要するに,ここで念頭に置いているのは,日本で言うところの家庭裁判所が扱う事件という意味だろうと理解しています。つまり外国では,それを民事裁判所が扱っているのか,名前の違う治安判事裁判所が扱っているのか,裁判所の名称はともかくとして,その類型が,今ここで議論しているような,日本では家庭裁判所が扱っているような事件,という理解でよいのであれば,そう読めるような文言に整理していただくのが分かりやすい。また,せっかく外国で判決を取った人が,日本で執行しようと思ったときに,どちらに行ったらよいか分からないという御議論がありますけれども,そのときには,日本人か外国人か分かりませんが,外国にいる当事者は,当然,日本の弁護士に依頼するしか手続はしようがないですよね。そこで,その分け方として,日本であれば家事事件として家庭裁判所が扱う類型の事件は,執行も家庭裁判所,という切り分けができるのであれば,それほど難しいことではないと私は思っています。ただ,その表現の仕方は,私の理解では,日本では家庭裁判所が扱うことになる類型の事件は家庭裁判所が執行判決の管轄も持つというような書き方にしていただけないのかなと思っています。 ○内野幹事 組織を基準として規定するのか,それとも,事件の性質,家事事件手続法上の概念を使って定義するのかというのは,アプローチの違いでしかないと思っています。いずれにしても,今の御指摘は,外国裁判所でされるものについて,家裁の現状を踏まえれば判断できるのではないかということかと思いますが,その辺りが,移管をしても大丈夫ではないかという考え方の大きな論拠になるであろうと感じておりますので,今日の御議論を踏まえて,引き続き考えなければいけないと思っています。 ○山本(和)委員 個人的には,前回申し上げましたとおり,私は全部地裁でよいのではないかと思っていますが,こういう規定にするのであれば,先ほど来出ていますように,当事者が間違った場合の救済が,この(2)で十分なのか,あるいは移送だけで十分なのかという感じもします。どうしてもやはりこれは,地裁に起こされたとして家裁でやってもらうべきだというのは移送で対処するにしても,それほどでもなくて,当事者に不便を掛けるということであれば,厳密に言えば管轄は家裁かもしれないけれども,地裁で処理をするということがあってもよいのかなと思っていますので,一つの考え方としては,この(2)をより一般化して,自庁処理のような規定を設けるなどの方向性もあるのかなと思っています。 ○高田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○内野幹事 移管できるかどうか,移管すべきかどうかという部分について,今日の御議論も,こういった救済措置によりどこまで対応できるかというところに掛かっているかと思いますので,そういった部分と併せて,引き続き,事務局としては検討したいと思います。 ○高田部会長 続いて,具体的な御提案について御説明いただきます。 ○内野幹事 (4)の部分については,一応議論されたということで,(3)以下,(3),(4),(5)は,現在の外国裁判所の判決について,民事執行法第24条で執行判決を求める訴えについて規定が設けられている内容を,外国裁判所の家事事件における裁判についても同様の扱いとするという内容です。現行法を前提とすると,それとの平仄や整合性から,この(3)から(5)のような内容となるのではないかと考えています。 ○高田部会長 これは家裁移管に直接関係ないわけですが,全体として執行判決について,御意見があれば承りたいと思います。 ○池田委員 執行決定の話も出ましたが,執行をするという場合は,圧倒的に家事審判,日本で言う家事審判の関係の方が多いと思われますところ,判決を選択された事情について御説明いただけますか。 ○内野幹事 場面としては,外国裁判所による財産的な給付を命ずる裁判について,我が国として執行力を付与するという手続ですので,外国裁判所の判決について,執行判決を求める訴えという判決手続がとられていることに鑑みると判決手続がとられるべきではないかと考えたところです。 ○池田委員 子の引渡しの関係が,相当程度,問題になりそうな気がしますが,これは多分外国でも,かなりプライベートにやっている場合が多いと思っています。それが家事の全体の中でかなり大きな位置を占めるような気がしており,財産というのは,実はそれほど大きくないのではないかと思うのですが,その点はいかがでしょうか。 ○内野幹事 その点については,部会でも議論があって,決定でやるべきだという議論の根拠になっていたかと思っておりますが,部会の全体の議論を評価して,このように対応したところです。 ○高田部会長 いかがでしょうか。これも御議論いただいたところですが,承認要件を執行に先立って確認するという手続を前提にすれば,従前の制度を変えるだけの理由があるかどうかということについて,なお全体の一致が得られなかったということかと存じますが,いかがでしょうか。   ほかに御指摘いただく点がありますでしょうか。   では,本日のところは,取りあえず御意見を賜ったということで,本日の御議論を踏まえて,執行判決の手続,取り分け利用者に過度な負担を負わさないような手当について,もし必要があれば,なお事務局に御検討いただくということにさせていただければと存じます。   では,最後,「第4 その他」について御説明いただきます。 ○内野幹事 その他の部分については,整備に関するところということになります。ただ,通則法に関しては,管轄規律を取り出す措置をすることから,管轄規律以外の部分のみ通則法に残存させることになります。書きぶりは,法制的な観点が中心になろうかと思います。実質的には,日本の裁判所が,今回議論しました管轄規定に基づいて,後見開始等の審判をするとき,又は失踪宣告の審判をするときの,その準拠法が,通則法に残されるべき規律なのではないかという考え方から,部会資料には書いておりますけが,別異の解釈を許すような,問題があり得る点があれば,御指摘をお願いします。 ○高田部会長 いわゆる準拠法に関する規定ということでございますが,そうしたものとして,この表現が適切かどうかということについて,もし御意見があれば承りたいということのようでございますので,御意見があればお願いいたします。 ○道垣内委員 100年以上前の法例の時代から一緒になっていたものが二つに分かれたわけで,国際私法としては画期的な条文になるはずで,国際私法学者に言わせればこれだけでも相当な議論の対象になるかもしれません。ただ,この「審判」というのは,日本の裁判所による審判を当然意味しているわけですよね。これを英語に訳したりするときに,従来も「裁判所は」と書いてあったので,それも日本の裁判所のことを意味していたわけですが,それはまだ,ザ・コートと書けば分かるかなと思うのですが,この「審判」を英訳すると,なかなか難しいのではないかなと思うので,本当は,日本の裁判所による,とか,何かがどこかにあると,分かりやすい。そうでないと,世界中で行われる後見開始等は日本法によれと命令しているようなふうにも見えるものですから,趣旨は分かるのですけれども,それはどうかなと思います。 ○高田部会長 ほかにいかがでしょうか。   特に国際私法の委員,幹事の方,御発言いただければと思いますが。 ○竹下幹事 私も,道垣内委員と同じく,日本の裁判所における後見開始,保佐開始,又は補助開始の審判については,などの,限定を付した方がよいのではないかと思います。今まで国際裁判管轄も書くことによって,日本法の適用範囲がある程度,管轄によって明示され,ある意味抑制的にされていたものが,これだけ裸で見たとすると,本当に全世界のあらゆるものについて,日本法と言っているようにも見えてしまう可能性があるように思われますので,何か限定があった方がよいのかなというのが1点です。   もう1点は,日本法による,ということだけであるとすると,外国法の適用の可能性がゼロになるわけですが,通則法の条文から落ちるという可能性はあるのですか。すなわち,考え方にもよるのですけれども,わざわざ外国法の適用を想定するからこそ,準拠法の条文を作っているとも考え得る。外国法の適用の可能性がなくなったときに,なお日本法によるということを規定しておくのか,今までとの議論のつながりでいうと,日本の裁判所における,これこれこれは日本法による,ぐらいの条文は残しておいた方が安全な気はするのですが,落ちる可能性というのは特に考えていらっしゃらないということでしょうか。 ○内野幹事 失踪宣告や後見開始の審判等については,今管轄規律を家事事件手続法の中に移すことが可能かどうか,検討,議論をしているところです。それが可能な場合において,準拠法ルールまで通則法から削除してしまうという御趣旨でしょうか。 ○竹下幹事 削除すべきということではないのですが,どの裁判でもいいんですけれども,例えば,いわゆる専属管轄の規定を設けるべきか,かつて議論してきた類型というのは,日本法が当然に適用されて,日本法以外考えられないものが多かったかと思いますが,多分それらの事件類型は,準拠法規定はない……あるのかもしれないですが,ないとする考え方もあり得るように思われます。 ○内野幹事 成年後見と失踪宣告について,管轄規定を通則法の外へ移設することが仮にうまくできるとした場合に,更に,通則法の中からこれらの点に関する準拠法の規定までを全てなくしてしまうということは,事務局としては考えておりませんでした。管轄の規律と準拠法が一緒になっていたところ,今回は管轄の規律について議論をした,失踪宣告は効力についてもかもしれませんが,そういった部分について整理をするということですので,通則法の中に準拠法ルールは残存するのではないかということを念頭に置いています。規定の仕方が議論の中心なのかなと思っていた次第です。 ○高田部会長 ほかに御指摘いただくことはございますでしょうか。   取りあえず,御指摘いただく点は御指摘いただいたということでよろしゅうございますでしょうか。   本日予定していた議事は以上のとおりですけれども,全体として,御意見等ございますでしょうか。   それでは,最後に,次回の議事日程等について説明いただきます。 ○内野幹事 次回の議事日程でございます。予定といたしましては,8月28日金曜日午後1時半から5時半まで,場所は法務省第1会議室ということになります。   次回も要綱案の取りまとめに向けた御議論を頂くことを予定しております。 ○高田部会長 何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。   本日の審議はこれにて終了させていただきたいと存じます。   本日も御熱心な御審議いただきまして,ありがとうございました。 -了-