法制審議会 刑事法(性犯罪関係)部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  平成28年 3月25日(金)   自 午前 9時15分                          至 午前11時48分 第2 場 所  東京地検会議室(1531号室) 第3 議 題  1 要綱(骨子)第三について         2 要綱(骨子)第七について         3 要綱(骨子)第四について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○中村幹事 予定の時刻になりましたので,ただ今から法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会の第5回会議を開催いたします。 ○山口部会長 おはようございます。本日は御多用中のところお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。   本日,北川委員,松尾関係官,小林関係官におかれましては,御欠席と伺っております。   本日は,要綱(骨子)第三と第七について審議する予定となっておりますが,このほかに要綱(骨子)第四の適用範囲に関しましても御審議いただきたいと考えております。   具体的な内容につきましては,後ほど事務当局から御説明いただくことになっております。   まず初めに,事務当局から配布資料の説明と御報告をお願いします。 ○中村幹事 本日,新たに配布する資料は3点ございます。資料31から33までです。これらは要綱(骨子)第四の非親告罪化の適用範囲に関する資料ですが,その内容につきましては,後ほど御説明させていただきます。   また,いつものとおり,前回までの配布資料を机上に置かせていただいております。なお,第1回の部会でお配りいたしました資料5の内容に関わることでございますけれども,3月7日に国連の女子差別撤廃委員会の最終見解が示されました。当部会で御審議いただいております諮問に関係する内容も含まれておりますので,日本語訳が出来次第,資料の更新をさせていただきたいと考えております。   併せまして,事務当局から,当部会におけるヒアリングに関する御指摘,御要望について,御報告申し上げます。   最近における国会の御審議の中で,「性暴力の被害者に寄り添った刑法の見直しの議論を行うために,法制審議会の部会で被害者や支援者のヒアリングを行うことが必要ではないか」などとの御指摘がありました。また,これまでに当部会あるいは部会長宛てに送付され,皆さまにもお配りしております要望書等の中にも,被害当事者からの被害実態のヒアリングを求める御意見が含まれておりますので,御報告,御紹介させていただきます。 ○山口部会長 ありがとうございました。   ただいま御報告のあったヒアリングの件につきまして,皆様の御意見をお伺いしたいと考えております。ヒアリングにつきましては,既に御案内のとおり,「性犯罪の罰則に関する検討会」におきまして,12の個人・団体からのヒアリングが実施されており,検討会にも参加されていた委員・幹事の皆様は,そのときに直接聴いておられるわけでございますし,その議事録がこの部会の資料10-1,10-2としても配布されております。したがいまして,検討会に参加されていない委員・幹事の皆様もこれをお読みになっているわけでございますが,その上でこの部会においても更にヒアリングを実施する必要があるかということについて,御意見をお伺いしたいと思います。 ○角田委員 私は基本的に実施した方がよいのではないかと思っておりますので,そのことをちょっと説明させていただきます。この要望書が出た時期はもう法制審当部会の審議が終わりに近付いている頃なので,普通の慣行で考えれば,もうそんな時期に言っても駄目ではないかと思われるかもしれません。そういうことをわきまえた上で,やはり終わる前に是非と,この要望が出されたことはとても切実な問題ということを表しているのではないかと思います。   それで,日程の問題とかいろいろあると思うのですけれども,ただ時間的にはこの会議はそれほどきつくはないということだと思うのです。時間的に多少のヒアリングを受けるぐらいの余裕があるのではないか。いつまでに答申をしなければいけないとなっているとも思いませんし,何しろ100年以上遅れてきた問題ですので,ここで1回や2回の時間を急がなければいけないということは多分ないだろうと思うのです。それで,ヒアリングを聴くことの必要性・メリットということで,確かに私も検討会とは重ならないようにするということは必要なことだと思っています。ですから,もし聴くとすれば検討会では聴かなかった人を対象にするということが必要だと思います。   こちらの委員についても,確かに検討会の委員であった人は聴いておりますけれども,新しく法制審になってから委員になられた方は,議事録でお読みになっていると思いますけれども,こういう切実な話は文字で知るよりは,やはり当事者の具体的な声を通じて,生の発言を聴くということはとても大事ではないかと思っております。それでは,やることに何かデメリットがあるか。それは特に私はないのではないかと思いますし,議論が振出しに戻る心配もないと思っています。では誰に聴くかということになってくるのですけれども,「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」の要望書の最初に出てくる団体で,「性暴力と刑法を考える当事者の会」,この会の人たちのシンポジウムの報告とか,それからその代表者の山本さんの新聞でのインタビュー記事が載っておりますので,私はこの方を聴くのであれば意味があるのではないかと思っております。もし時間的余裕があれば,支援団体の人から聴くということも,もちろんよいと思うのですけれども,どうしてもそれほどたくさん時間をとれないということであれば,当事者の中で山本潤さんを中心にすることはどうかと思います。   検討会でも当事者としては小林美佳さんのお話を私たちは直接伺ったのですけれども,小林さんの場合は,強姦として割と理解しやすいと言ったら変な言い方ですけれども,状況だったと思うのですね。知らない相手,夜,それから野外であったということなのですが,要望書をお読みになっていると思いますけれども,山本さんは13歳の頃から7年間,実の父によって性的虐待を受けたという体験で,そういう体験については,私たちは直接には聴いていないと思いますし,要綱(骨子)第三の事例を取りまとめるに当たって参考になるのではないかと思っておりますので,スケジュール的に特に問題がなければ,例えば山本さんから聴くということで,御検討いただいたらどうかと思っております。 ○小西委員 私も角田委員の意見に賛成です。なぜこのような要請が時期外れというのですか,そういう時に来るのかということをやはり考えていただきたいと思います。   私はこの部会からの参加ですので,以前の聴取には参加しておりませんけれども,法律を改正する議論をするときにいる人たちは,当然現在の社会の実情とか,被害の実情,心理について,あるいは本人の社会的な問題について知った上で議論するというのは当然のことなのだろうと思うのですね。ところが,やはりこの中では実際にそういうケースはたくさんあるのですかと。直接はそうは聴かれませんけれども,そういうようなことが問題になったり,それから私と齋藤幹事が基本的には実際にしょっちゅう被害者に会って支援している者なのですが,この2人が述べていることが,単に一つの主張として捉えられてしまうような状況というのが,非常におかしいと思うのですね。自分としては実情を伝えているにすぎないわけです。それもちょっとパワー足りないぞと言われていると思うのですけれども,そのことを考えますと,特に,生の声で実際にどういうふうに困っているかということを,間接的ではなく聴いていただくということも,是非必要なのではないか。現実が見えていないのに法律の改正を議論する。とても危ないことなのだと思うのですよね。私はそういう意味では,やはり何度でも聴いていただくこと,それから時期もいつでも聴いていただくことが必要なのではないかと思っております。 ○宮田委員 この部会での議論は,要綱(骨子)についての議論をすると理解しております。「性犯罪の罰則に関する検討会」の際のヒアリングで,今,角田委員がおっしゃられたような類型についても,支援をなさっている方々の御意見は頂戴しています。   そして,私たち委員も,様々な要望書,当部会に送られてきたもの,検討会の際の委員はその時に送られてきたものに目を通しておりますし,私の事務所には個別に書籍や意見書が送られてきております。   私はそれに目を通した上で意見を述べております。私の意見がそういうものを無視していると理解されているとすれば,非常に遺憾です。私は弁護をするという切り口から意見を述べています。   被害者団体などから出てきている御意見を拝読しておりますと,刑法の大原則,刑事訴訟法の大原則,刑事政策的な重要な視点などについて,共通の理解がないように思います。更に,検討会でのヒアリングは12団体中,2団体が加害者の支援に関わる方のものでしたが,残りは全て被害者に関わる方々の御意見です。今般,新たにヒアリングをするということであれば,別な視点からのヒアリングも必要なのではないかと私は思うのです。この国民の多くがこの部会の議事録に注目しています。刑法は謙抑的でなければならない,構成要件は明確でなければならない,刑罰の機能はどういうものか等の刑法の大原則や,あるいは検察官に立証責任があって,その証明の程度は合理的疑いを超える高度なものでなければいけないという,刑事訴訟法の原則は,本来であれば常識として国民全てが共有しなければならない問題です。こういうことも,この機会に御説明申し上げることも必要なのではないかと思えるのです。   また,刑事政策の在り方について,重罰化が刑事政策の中でどのような意義を持つのかという視点も必要ではないかと思うのです。刑罰の持つ意味,刑務所での受刑の実態,保護観察の実態等の,我が国の状況についての知識の共有も必要でしょうし,海外で刑が重くなっているという話こそ紹介されましたが,実際には,判決では刑務所に入れるのではなく,治療等の代替処分を言い渡したり,刑務所に入れずにGPSで監視して,社会の中で更生する方法を選択するという国もあるのです。刑罰を重くする視点しかない政策についての見直しも本当は必要なのではないかという気がします。   そして,何より弁護の立場から言わせていただければ,被害者供述を信用する余りに,えん罪が起きているという事実については,何度繰り返しても,繰り返しすぎることはないと思っています。客観証拠が出てきて覆された性犯罪の事案,今年は幾つかの事件がありました。これから検討する要綱(骨子)第三の監護者の類型の危険性そのものにもつながる論点かと思われますけれども,先般,大阪で出た再審無罪の事件,これは同居の親族間の事件でございます。あるいは被害者供述の問題については,先般,福岡高裁宮崎支部で鹿児島で起きた事件がDNA鑑定によって被害者供述の信用性が否定されて破棄された事件も出てまいりました。更に,今月,大阪地裁堺支部で強姦事件の無罪事件が出されたとの報告を受けております。この1年ほどでも,性犯罪について複数の無罪事件が出ております。なぜ,こういうえん罪が起きてしまうのかのメカニズムなどについて,知識が共有されるべきではないかと思います。更に言えば,被害者供述が持つ問題性についての心理学的な分析なども必要でしょう。   また,全く違う視点の問題もあります。加害者の立ち直りのためには加害者が加害行為を行う心的メカニズムなどについても,知識として共有すべきと思います。   被害者からのヒアリングの要請はたくさん出てきています。それは被害者団体,被害者の支援の団体の方たちが声を上げているからですが,加害者側からの声は,まず上がりません。事件を起こして立ち直っていれたとしても声を上げることはできません。問題を起こし続けているのであれば,そんな人の意見は聴く必要もないのかもしれませんが,なぜそうなのかを知る必要があります。要請の意見が出てこない部分についても,聴く必要があると思いますし,声が上がっているからといって,必ず聴かなければならないのかともいえるかと思います。 ○小木曽委員 既に検討会で2回のヒアリングが行われておりますが,それで全ての意見を聴くことができたというわけではもちろんありませんし,他方,ここでもう一度ヒアリングをしたから,それで全ての声が拾えるというわけでもないということだろうと思います。しかし,そのような御希望が寄せられていて,検討会では聴くことのできなかったカテゴリーのと言いますか,皆様の意見を聴くことができるということであれば,今の,宮田委員の御発言も含めて,そういうバランスのいい人選を考えた上で,ヒアリングを実施することが検討されてよいのではないかと思います。 ○小西委員 今の宮田委員の御発言に私が言ったことに幾つか誤解があったのかなと思ったので,そこは訂正させていただきたいと思います。   この場で法律的な議論がなされ,法律的な知識に基づいて本当に専門家の皆様が議論されることに何の異議もありません。もちろん,逆に言えばここの場でどんな発言が,どんなヒアリングがあったとして,皆様そういうことに影響されないぐらいの知識はお持ちだから,ここにいらっしゃるのだと思います。そのことに何も反対していません。ただ,そもそも法律の元になる社会の実情ということについて,知識がないまま,あるいは類推だけでやってしまうのは問題があるのではないかということをお話ししているだけです。   それから,えん罪のお話がありましたけれども,もちろんそういうケースは防がなくてはいけないと思います。そういうことをどうやっていけばいいかということも,大いに議論の対象だと思いますけれども,一方で日本で被害を受けた人の通報率が非常に低いこと,法務省の統計でも十数パーセント,性犯罪に関してはそうですね。実情はもう少し低いのではないかと思われます。そういう状況の中で,えん罪のケースだけが取り上げられること,実際には被害を受けているけれども,うまく法律にのせてもらえない人がたくさんいること。そのことも忘れないでいただきたいと思います。   国連からたくさん女性に対する暴力に関して文章が出ていますけれども,それを読んでいると,最近はこの性暴力被害問題への対策として開発途上国で資源のないところではどうしたらいいのか,先進国ではどういうふうに関してやっていけばいいのかと,広い視野で政策が書いてあるように思うのですが,その中で見ていますと,日本の法制というのは,決して先進国ではない。何か中進国というような気がしてしまいます。そこだけ遅れているということはどうしてなのか。そういう問題も法律的な議論とは違うでしょうけれども,やはり見識としてお持ちいただけたら有り難いなと思っています。 ○山口部会長 ありがとうございました。ただいまヒアリングをやるかどうかという点について,御意見をお伺いしておりますので,実体的なことについての御意見も意味があることではございますけれども,ヒアリングの点について,まだ御意見を述べておられない方から御意見を頂きたいと思います。 ○佐伯委員 小木曽委員の御意見と重なるところが多いのですけれども,検討会でお話を伺い,この部会では小西委員,齋藤幹事からいろいろお話を伺い,決して主張として捉えられているということはなくて,被害の実態を正確に伝えていただいていると思っております。いろいろ御要望書も頂いて,読ませていただいていますので,我々は知識がないまま議論しているということではなく,実態を踏まえた上で議論していると考えております。   そういう意味では,是非ともヒアリングをしないといけないということではないと思いますけれども,先ほど角田委員から御発言ありましたように,これまで出ていないような視点からの御意見を伺う,それも被害者だけではなくて,いろいろな角度から伺うことができるということであれば,ヒアリングをすることも考えてよいのではないかと思います。 ○齋藤幹事 基本的には角田委員,小西委員と同意見です。私も,被害者の実情ということでお伝えしているのですが,やはり要綱(骨子)第三に当たる監護者であることによる影響力を利用したわいせつな行為等に関しましては,虐待の専門家からの話を聴くということが必要なのではないかと思っております。もちろん小西委員も専門家でいらっしゃいますし,ヒアリングでも児童精神科医の先生からの話を聴きましたが,それに加えてもし叶うのであれば,当事者の方や小児科医,男児の性犯罪被害をよく見ていらっしゃる先生からのお話を加えて聴いていくということは,これまでのヒアリング,これまでの議論に足りない点を補うということになるのではないかと考えております。 ○山口部会長 ありがとうございました。まだ意見をお述べになっていない方で是非おっしゃりたいという方があれば,お願いしたいと思います。 ○武内幹事 私も角田委員の御意見と同じです。被害者支援に関わる弁護士として,数多くの性犯罪の被害者の方と接しておりますが,今回の要綱(骨子)第三の類型に当てはまるようなカテゴリーの被害者の方と接した経験が少ないものですから,そういった方のお話が聴けるのであれば,是非ヒアリングを実施していただきたいと思っております。 ○山口部会長 ありがとうございました。   まだ言い足りないという部分はあるかもしれませんけれども,この問題は大体これぐらいでまとめさせていただきたいと思います。ヒアリングは実施すべきだという御意見が複数述べられましたが,検討会でも既にヒアリングをやっているわけですので,それと重なるようなヒアリングは必要ないので,補足的にやったらよいのではないか,あるいは,もしやるとすれば,もう少し幅広く加害者の更生支援等に関わっておられるような方々に意見を聴くべきではないかといった御意見をお述べいただいたわけでございます。   私といたしましても,「性犯罪の罰則に関する検討会」において既に一度12の団体・個人の方々からヒアリングを行っているわけでありまして,そのようなヒアリングと重複するヒアリングをここで更に実施する必要はないというようには考えておりますけれども,足りなかった部分を補足するという観点でヒアリングを行うことについては,検討してもよいのではないかと考えております。   もっとも,例えば被害当事者の方に実際にこの場にお越しいただけるのだろうかという問題もございますし,実施するとしてもいつどのような形で実施するのがよいのかということについても検討しなければならないと思いますので,恐縮ですが,事務当局と私との間で検討させていただきまして,その結果につきましては,別途皆様にお知らせするという運びとさせていただけないかと思うのですが,よろしゅうございましょうか。 (一同異議なし) ○山口部会長 ありがとうございます。特にヒアリングを実施する必要があるという御意見を述べられた委員の方に,先ほど具体的なお名前も出ておりましたけれども,候補者について御意見等をお伺いするかもしれませんので,その節はよろしくお願いしたいと思います。   では,ヒアリングの件につきましては,ここまでとさせていただきまして,本日予定しておりました審議の内容に入りたいと思います。   本日は要綱(骨子)第三及び第七について2巡目の議論を行います。まず,要綱(骨子)第三についての審議を行いたいと思います。要綱(骨子)第三につきましては,1巡目の議論を簡単に振り返りますと,まず第三のような類型の罪を新たに設ける必要性につきましては,準強姦罪で対応できるので新たに設ける必要はないという御意見もございましたが,多数の方は,新たな類型の罪を設ける必要があるという御意見でございました。   次に,第三の罪の主体を「18歳未満の者を現に監護する者」としている点につきましては,より広く,教師,あるいは祖父,おじまで含めるべきであるという御意見,更にはスポーツのコーチなどまで含めるべきであるという御意見,それから客体を「18歳未満の者」としている点につきましては,16歳以上の女子が婚姻可能であることとの関係で疑問があるといった御意見がございましたが,要綱(骨子)のとおりでよいという御意見が多数でございました。   また,第三の罪の法定刑を強制わいせつ罪や強姦罪と同じ法定刑としている点につきましては,より軽い法定刑とするべきであるという御意見もございましたが,要綱(骨子)のとおりとすべきであるという御意見が多数でございました。   なお,「現に監護する者であることによる影響力を利用して」という要件につきましては,これに該当しない場合としてはどのような例が考えられるのかという点について,事務当局への御質問や御意見があり,この点については事務当局において更に検討していただくこととしておりました。   本日はこのような1巡目の議論を踏まえまして,まず事務当局から1巡目の議論の後に検討していただいたことについて,御説明をお願いしたいと思います。 ○中村幹事 第3回会議におきまして,要綱(骨子)第三の「現に監護する者であることによる影響力を利用して」との要件に関しまして,御質問などを頂いておりました。そこで,改めまして,事務当局において要綱(骨子)第三の罪の趣旨や各要件の意義について,検討・整理いたしましたので御説明申し上げます。   まず,要綱(骨子)第三の罪を設けようとする趣旨などにつきまして,改めて御説明申し上げます。まず,そもそもこのような罪を設ける必要性があると考えたのは,現実に発生している事案の中に,強姦罪や強制わいせつ罪と同じように,性的自由ないし性的自己決定権を侵害しており,同等の悪質性,当罰性がある事件だと思われるにもかかわらず,現行法の強姦罪や強制わいせつ罪などでは処罰できていないものがあると考えられたためでした。   その典型例としては,実親や養親等の監護者による18歳未満の者に対する性交等が継続的に繰り返され,監護者と性交等をすることが日常的なことになってしまっていたり,さらには,18歳未満の者が監護者と性交等をすることが良いことであると思い込んでしまっているなどして,事件として日時場所などが特定できる性交等の場面だけを見ると,暴行や脅迫を用いることなく,抗拒不能にも当たらない,そのような状態で性交等が行われているという事案が挙げられます。   そこで,このような事案をその実態に即して,強姦罪や強制わいせつ罪と同様の法定刑で処罰するために設けようとするのが,要綱(骨子)第三の罪でございます。   その上で,この要綱(骨子)第三の罪の考え方を改めて整理して御説明申し上げます。   一般に,18歳未満の者は,精神的に未熟である上,生活全般にわたって自己を監督し保護している監護者に,精神的・経済的に依存しております。そのような依存・被依存ないし保護・被保護の関係にある監護者の影響力がある状況下で性交等が行われた場合,18歳未満の者が監護者との性交等に応じたとしても,その意思決定は,そもそも精神的に未熟で判断能力に乏しい18歳未満の者に対して監護者の影響力が作用してなされたものであって,自由な意思決定ということはできないものと考えられます。   したがいまして,監護者がその影響力を利用して,18歳未満の者と性交等をすることは,強姦罪や強制わいせつ罪などと同じく,18歳未満の者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであるということができ,強姦罪などと同等の悪質性・当罰性が認められると考えたものです。   そして,このようなことから,要綱(骨子)第三の罪は要綱(骨子)第一の罪や強制わいせつ罪と同じ法定刑としているものです。   次に,要綱(骨子)第三の罪で用いられている文言の意義について御説明申し上げます。まず,「監護する」でございますが,「監護する」とは,第3回会議でも申し上げましたとおり,民法に親権の効力として定められているところと同様に,「監督し,保護すること」を言います。法律上の監護権に基づくものでなくても,事実上,現に18歳未満の者を監督し,保護する関係にあれば,要綱(骨子)第三の「現に監護する」に該当し得ます。そして,民法上の監護が親子関係を基本とする概念であることから,要綱(骨子)第三の「現に監護する者」と言えるためには,親子関係と同視し得る程度に,居住場所,生活費用,人格形成等の生活全般にわたって依存・被依存の関係ないし保護・被保護の関係が認められ,かつ,その関係に継続性が認められることが必要でございます。なお,「現に監護する」とは,法律上の監護権に基づくものでなくてもよい反面,法律上,監護権を持っている者でも,実際に監護しているという実態がなければ,「現に監護する者」には当たらないこととなります。   次に,「影響力」ですけれども,「影響力」とは18歳未満の者の意思決定に作用し得る力を言います。   そして,「影響力を利用して性交等をした」の要件について,御説明申し上げます。18歳未満の者を現に監護する者であれば,日頃から自分が保護し,自分に依存している18歳未満の者の生活全般にわたって,その意思決定に作用する影響力が常にある者と考えられますところ,このような18歳未満の者に対する影響力が一般的に存在している状況において,監護者と18歳未満の者とが,性交等を行った場合には,通常はその性交等についても一般的に存在している監護者の影響力が作用しており,18歳未満の者の自由な意思決定に基づくものとは言えないと考えられます。   ここで,影響力を利用して性交等を行ったと認められるためには,監護者からの影響力を利用する積極的な働き掛けなどの行為が必要不可欠だとすることは,先ほど申し述べましたとおり,本罪により処罰することとすべき事例の中には,特に積極的な働き掛けなどがなくても,性交等に応じてしまうようなものも含まれることから,適当ではないと考えられます。むしろ,監護者の影響力が一般的に存在している関係においては,通常,その性交等について監護者の影響力が作用しており,18歳未満の者の自由な意思決定に基づくものとは言えないと考えられますから,そのような積極的な働き掛けなどがなくても「影響力を利用して」に該当すると考えられます。   ただ,18歳未満の者に対する監護者の影響力が,一般的に存在している状況であっても,監護者と18歳未満の者との間で行われた性交等が,監護者の影響力が遮断されて行われたと言える場合が全くないとまでは言えないと考えられます。例えば,監護者の18歳未満の者に対する影響力が一般的に存在している場合であっても,暗闇の中,相手方を判別できない状態で性交等が行われた時や,18歳未満の者から脅迫されるなどして監護者が性交等を強いられたとき,このような場合には性交等との関係では影響力が遮断されており,影響力とは無関係に性交等が行われたものと考えられます。   このような一般的に存在している監護者の影響力が遮断されているような場合には,「影響力を利用して」性交等を行ったと言えず,第三の罪が成立しないこととなるものと考えております。   このようなことから,「影響力を利用して」とは,18歳未満の者に対する監護者の影響力が一般的に存在し,かつ,その影響力が遮断されていない状況で性交等を行ったことをいうものと考えております。   次に,被害者の同意の点でございますけれども,18歳未満の者に対する監護者の影響力が一般的に存在している状況においては,その影響力が遮断されない限り,18歳未満の者が監護者との性交等に応じたとしても,その意思決定は,そもそも精神的に未熟で判断能力に乏しい18歳未満の者に対して監護者の影響力が作用してなされたものであって,自由な意思決定ということはできないということですから,要綱(骨子)第三の罪の成否を論ずるに当たり,被害者の自由な意思決定による同意の有無は直接問題とはならないものと考えております。もっとも,当該性交等が監護者の影響力を「利用して」行われたこと,すなわち,一般的に存在している監護者の影響力が遮断されていない状況で性交等が行われたことの立証責任を検察官が負うものであることに変わりはありません。 ○山口部会長 ありがとうございました。それでは,ただいまの御説明を踏まえまして,御議論いただきたいと思います。ただいまの御説明に対する御質問,あるいは御意見も含めて御発言いただきたいと思いますが,よろしくお願いします。 ○香川幹事 新しい刑事罰の類型ができるということでございますので,実際に適用する裁判所の立場から若干,今の事務当局の御説明を踏まえて,3点,この時点で事務当局のお考えをお聞かせいただけないかと思います。   まず,「18歳未満の者を現に監護する者」ということにつきまして,親子関係と同視し得る程度にというようなお話があったかと思います。親以外で監護するという者に当たりそうな者といたしまして,例えば18歳未満の者が児童養護施設等の施設に入所している場合を考えた場合,この施設に所属している職員皆さんがこれに該当するのか,あるいは施設の中で一定の範囲の職員の方が該当するということになるのか,もちろん具体的な事案ごとに裁判所が検討するということになるのかもしれませんけれども,例えばどんな要素を考えるべきなのか,事務当局の方でもしお考えのところがあれば,お聞かせいただきたいということでございます。例えば施設の職員の中でも,正にその児童の身の回りの世話をしている方と,例えば管理職とでは,児童との近さというのは大分差があるのかなと思います。この辺どんなふうに考えたらいいのか,一般論でも結構でございますので,今お考えがあればお聞かせいただきたいというのが1点目でございます。   2点目は,同じく「18歳未満の者を現に監護する者」の御説明の中で,事実として現に監護している者ということが重要であるとお伺いいたしました。裁判所の方では,例えば家庭裁判所ですと時々ございますけれども,子供の親権を争って別居しているような親御さんの間で,お子さんが事実上,移動するというようなことがございまして,その場合,後から法的に評価すると,これは一方の親が一方的に子供を連れていったのだと評価されるような場合がありまして,場合によりますと,違法だ,損害賠償だみたいな話が出てまいります。これと,この犯罪における現に監護するということが関係するのかしないのか,通常は恐らく事実として監護しているかどうかというところに着目すると,連れ去ったかどうかとか,監護に至った経緯が違法かどうかというのは,余り関係しないようにも思うのですけれども,そういう理解でいいのかどうか,現時点の事務当局のお考えで結構ですので,お聞かせいただければと思います。   最後3点目,ちょっとこれは技術的な話になりますけれども,実際,実務上見てまいりますと,今回問題になっているような類型の一部は,従前,例えば児童福祉法違反というような形で処罰してきたものもあるのではないかと思うのですけれども,今回,要綱(骨子)第三の罪に当たるようなものの中で,同じく児童福祉法違反の罪にも当たるというようなものもあるのではないか。そうした場合,この罪数関係がどうなるのかということをどうしても実務家は考えてしまうわけですけれども,ここについて,何か今の段階で事務当局のお考えがあればお聞かせいただきたい。   以上,3点でございます。 ○中村幹事 それでは,今の3点について,お答え申し上げます。   まず,養護施設等の施設の職員の点についてでございますけれども,「現に監護する者」に当たるか否かにつきましては,個別の事案における具体的な事実関係によって判断されるものですけれども,その施設等の場合につきましても,同居の有無や居住場所に関する指定などの状況,指導状況,身の回りの世話などの生活状況,生活費の支出などの経済的な状況,未成年者に関する諸手続などを行う状況などの要素を考慮して,個別に判断されるものと考えております。   管理職などについて御指摘がございましたけれども,管理職を含む養護施設の職員でありましても,このような要素を考慮して,親子関係と同視し得る程度に生活全般にわたって,依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められ,かつ,その関係に継続性が認められる場合には,「現に監護する者」に該当する場合もあると考えております。   また,管理職か又は身近な世話をする人かといった御指摘がございましたけれども,その身の回りの世話につきましても,その考慮要素となり得ると思われる一方,直接身体的な接触があるかどうかの一事をもって,直ちに「現に監護する者」と認められるか否かが左右されるものではないと思われます。   また,職員が施設に居住しているかどうかといういろいろなそれぞれのパターンがあるかと思いますけれども,その施設に居住しているかどうかという点については,同居の有無として考慮対象となる要素となるものと考えております。   続いて,2点目でございます。2点目の親権の争いがあるような場合についてでございますけれども,「現に監護する者」に当たるかどうかにつきましては,個別の事案における具体的な事実関係により判断されるものでございますけれども,先ほど御質問の中で御指摘がありましたとおり,ここでいうところの監護関係は,法律上の監護権に基づくものであることは要せず,事実上,現に監督し保護していれば足りると考えておりますので,先ほどの御指摘のような場合であっても,「現に監護する者」に該当することはあり得るものと考えております。   次に,児童福祉法違反の罪との罪数関係の点でございます。この要綱(骨子)第三の罪と,児童福祉法違反の罪との関係でございますけれども,これは現行法の強姦罪ないし強制わいせつ罪と,児童福祉法違反の罪との関係と同様であると考えております。したがいまして,18歳未満の者を監護する者であることによる影響力を利用して,性交等又はわいせつ行為に及んだことが,同時に児童に淫行させる行為に当たる場合には,要綱(骨子)第三の罪と児童福祉法の淫行させる罪との関係は,併合罪となるのではなく,両者は一罪となるものと考えております。 ○宮田委員 この点についての意見の前に,先ほど小西委員の御意見の中で誤解があると感じましたので,1点言わせていただきたく存じます。私は,この部会での議論に文句を言っているのではなくて,部会や事務所に送られてきたものを拝読していると,どう考えても判例の読み方が違うのではないか,法的な理解が誤っているのではないかと思われるもの等があったためあのような発言をいたしました。私の申し上げ方が悪かったのかもしれませんが,私は部会の議論をどうこう言うつもりは全くなく,そこはご理解いただかないとこれからの議論が不必要にぎくしゃくしそうに思いましたので,大変申し訳ありませんが,御指摘申し上げます。   事務当局への御質問も幾つか含めて,私の方の意見も申し述べたいと思います。お伺いしたいことは,3点ございます。前回のこの要綱(骨子)第三について検討する際に,母親と男性の関係にはいろいろなグラデーションがあるということで,幾つかの場合について質問しました。経済的に全く母親に依存している男だったら,これには当たらないか等,いろいろな事例を挙げたと思います。そういうものについては,今御説明になったように,ケース・バイ・ケースでよいのかどうかという確認です。   2つめです。監護をする者と同居している者との関係についてです。先ほどの山口部会長のおまとめの中でも,要件の中には祖父とかおじ・おばというのは原則として入らないという趣旨になっていたかと思いますけれども,これは両親あるいは片親がいる家庭という前提でよろしいのでしょうか。親がいて親が監護していれば,祖父とかおじやおばは入らないという理解でよいのかどうかということでございます。   というのも,想定されているのは,両親がいて母親が面倒を見て,父親が経済活動をして,というような,典型的な中流家庭のように思えるのです。両親がいても両親が非常にハードに働いていて,祖父母に子育てを丸投げという家族もありますし,片親家庭で祖父母に子育てを任せている場合や,親の兄弟,子供にとってはおばさん,おじさんに当たる方たちに子育てを任せている場合,あるいは年齢の上の子供,子供にとっては兄や姉に監護を任せているというような家もあるかと思います。   そのように家族が大家族的な家庭,親と子供だけという家族ではなくて,ほかの親族が子育てに関わりのある形での同居をしている場合に,祖父母やおじ・おば,兄弟・姉妹は,監護する者の中に入れられるのでしょうか,入れられないのでしょうか。というのも,少年事件などでよく見るのが,育児放棄的な家で,父親も母親も子供の面倒を見ないで,朝,500円渡して食事を買えという。たくさん家族が住んでいて,両親だけではなくて,祖父母やおじ・おばも一緒に住んでいるような家の子供は,一体誰が育てているか分からないような状況であったりします。そういうところで性的被害が起きたときに,監護者は一体誰なのだろうかと感じてしまうわけです。   3つめです。先ほどの香川幹事からの御質問の中で,施設の話が出ましたけれども,施設から子供を預かっている里親は,これは法律的なものではないけれども,事実上の同居している親と見ていいのかということでございます。更に,全くの他人が事実上監護している場合は当たるのかどうかということです。法律的には養子縁組もしていないが,事実上,子供の面倒を見ている場合は,これは事実上の監護に当たるといってもよさそうに思われます。しかし,例えば,中学生くらいの子供が家出をした場合を想定し,その子供が声を掛けてきた男性の家に転がり込み,相当長期間,そこの家で暮らしていたとします。男性がいろいろと面倒を見てくれる状況下で生活をし,具体的には,同居して生活費も出してもらっているし,携帯の契約や雇用の保証など,いろいろな形で法律的・対外的にその男性が面倒を見てくれている場合に,性的な関係を持ったとすると,これは監護者類型に当たるのか当たらないのかということです。転がり込んだ先の男性が,例えば祖父とかおじとか親族であればなるのか,全くの他人であってもなるのかというところがわかりません。   全く他人の男性のもとに,高校生ぐらいの女子が転がり込んで結婚してしまえば,適法な関係になることとの均衡はどうなるのかという疑問もあります。   ここからは意見になります。今申し上げたたくさんの家族が住んでいるような例を考えるなどしていますと,この類型については,私はやはり児童福祉法とか虐待防止法の中での対処を検討した方がよいと考えます。その家族から離すことと,監護していると称している人たちの影響力を排除するための措置を抜きにして,子供の保護は図れないと思うのです。被害者の救済や加害者への対処などについて総合的な配慮をしなければ,こういう事件の解決にはならないのではないでしょうか。もちろん,強姦罪に当たるような罪を創設して,親をしょっ引くのが一番手っ取り早い方法かもしれないですけれども,私は他の虐待を含めて,総合的な検討ができた方がいいと考えているのです。   それから,この要綱案の条文には,民法の親子関係やそれと同視できるものとは明示的に出てきません。条文の中に,監護者というのは親子に準じる関係にある者だということまで含んだ文言にしておかないと,解釈が無限定に広がるのではないかという危惧を持っています。   そして,この条文は刑法第177条,第178条では網を掛けられない場合を想定したものであるとの御説明がありましたけれども,条文ができてしまえば,親族等の近い関係にある人が影響力を利用していると考えられる案件については,第177条,第178条でいける案件でもこの類型で処罰され,慎重に監護者性等を考えなければならない案件についても,解釈が広がっていくのではないかと危惧します。少なくとも,この規定については,第177条,第178条の補充的な性格であることが,何らかの形で明示される必要があるように思われます。   更に今の事務当局の御説明を伺いますと,監護者であれば影響力はほぼあるということになります。影響力の利用については,検察官が立証されることにはなりますけれども,この人が監護をしているということ,こういうような生活実態があるということを立証すれば,ほぼ影響力があるということ,ちなわち,同意は瑕疵があるというのとほぼ等価だと思われます。前回,立証責任が事実上転換されているのではないかと申し上げましたが,そうはいえず立証責任が検察官にあると言っても,事実上,反証は許されない,不可能な形の犯罪類型なのではないかと感じた次第です。   なお,このついでに,大変申し訳ありませんが,以前の私の発言についての訂正をさせていただければと思います。前回の議論の時にドイツの抗拒不能の第178条については,第177条と罰条が一致していないとの指摘をしましたけれども,被害が姦淫の類型については抗拒不能の類型について,ドイツでも懲役2年で第117条と同じでした。ただ,ドイツでは,要綱(骨子)の第一,第二の類型とも懲役2年だというところは再度指摘しつつ,訂正させていただければと思います。 ○中村幹事 それでは,今何点か御質問があった点についてお答え申し上げます。この「現に監護する者」にどのような場合が当たるかどうかという点についてでございます。先ほどケース・バイ・ケースかという御質問がありましたけれども,やはりこれにつきましては,個別の事案における具体的な事実関係によって判断されるものでございますので,なかなか一概にお答えすることは難しいところではございます。まず,この「現に監護する者」に当たるかどうかというところでございますけれども,この現に監護するというのは,法律上の監護権に基づくものでなくても,事実上,現に監督し,保護する関係にあれば,この「現に監護する」に該当し得る。逆に言いますと,法律上の監護権があったとしても,事実上,監督して保護していなければ,この「現に監護する」には当たらないということになります。   先ほど幾つか大家族的なもの,里親,また,家出して声を掛けた場合と,幾つかの事例というのを御指摘いただきましたけれども,この「現に監護する者」の「監護」につきましても,「監護する」というのが民法において親権の効力として定められているところと同様に,監督して保護することを言いまして,またこの民法上の「監護」というのは,親子関係を基本とする概念でありますから,この「現に監護する者」と言えるためには,親子関係と同視し得る程度に居住場所,生活費用,人格形成等の生活全般にわたって,依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められ,かつ,その関係に継続性が認められることが必要であると考えているということでございます。   具体的にどのように判断していくかというところにつきましては,先ほど香川幹事の御質問に対してお答えしたような要素を考慮して,個別に判断していくことになるものと考えております。   また,この条文上,「監護」という言葉を用いているけれども,これがどんどんその範囲が広がっていかないかというところでございますけれども,この「監護」という用語でございますけれども,これはるる御説明申し上げてきておりますとおり,民法上の「監護」というところを頼りにこの用語を使っているということでございますので,この「現に監護する者」という意義につきましては,先ほど申し上げたようなところで明確となっていると考えております。   また,罪数の点でございますけれども,こちらも御説明してきておりますとおり,要綱(骨子)第三の罪というのは要綱(骨子)第一の罪や,強制わいせつ罪を補充する趣旨で設けようとするものでございます。したがいまして,仮にある行為が外形的には強制わいせつ罪ないし要綱(骨子)第一の罪と要綱(骨子)第三の罪との双方に該当するように見られる場合には,強制わいせつ罪又は要綱(骨子)第一の罪のみが成立するものと考えております。   なお,立証責任の点について,御指摘がございましたけれども,これも冒頭の説明と同様となってまいりますけれども,検察官がこの監護者の影響力を利用して行われたこと,当該性交等が監護者の影響力を利用して行われたことについて,立証責任を負うこと自体は,当然変わりはありませんので,立証責任の転換はないと考えております。 ○加藤幹事 ただいまの説明に若干補充させていただきます。宮田委員の御質問の最初に提示された母親と男性との関係をグラデーション的に御提示されたことにつき,ケース・バイ・ケースでよいのかという御質問だったと思いますが,それは中村幹事がお答えしたように,もちろん基本的にはケース・バイ・ケースです。具体的に申し上げれば,例えばお母さんの彼氏と言われているような方がたまに家に帰ってくるということがあっても,同居しているとも言えず,生計も別であり,意思疎通も18歳未満の者とはほとんどないということになれば,通常は監護しているとは言えないだろうと考えられますし,一方,法律上の監護権者でなくても,実親との関係,お母さんとの関係がいわゆる内縁といわれるような実態的な夫婦関係にあって,またその18歳未満の者との関係も実の父子と変わらないというような関係にあれば,監護している者と言える場合もあるだろうと考えられます。その中間もいろいろなケースがあるだろうという意味で,ケース・バイ・ケースだと申し上げているわけでございます。   また,監護者であるか否かの認定は,先ほど来,御説明しているとおり,現に監護する者であるかどうかという事実関係の問題でありまして,事実上の問題として実の親子であれば監護者であることが多いということは言えたとしても,親子であるから監護者である,あるいは親族であるから監護者に当たるという,そういう関係にある要素ではないということは,これまでの御説明で御理解いただいていると思います。   大家族の場合というのも,事実認定の問題になるので,個々のケースを分析してみなければ分からないところはありますが,例えば御提示いただいたように,実の親は養育にはほとんど関わっておらず,実際に子育てをしているのは祖父母あるいはおじ・おばであるという場合に,その祖父母やおじ・おばが監護者に当たるということはあり得るということは言えると思われます。したがって,実親がいるからその祖父母やおじ・おばは決して監護者には当たらないという関係にはないであろうとは考えているところであります。   一方,里親の例を挙げられて,親族でない人,全くの他人が監護者に当たることもあるのかという御質問もあったように思うのですが,それもあり得るという意味では,正に先ほど来,御説明申し上げている監護者に当たる者であれば,当たるということになるものと考えております。すなわち,血縁関係がないことが監護者であることの関係を排斥することにはならないとは考えています。例えば,里親として18歳未満の者の生活全般の面倒を見ており,親子関係と正に同視し得る程度に,生活全般にわたって依存・被依存,あるいは保護・被保護という関係があるものについては,それは監護者に当たる場合があると考えていただいてよろしいかと思います。   最後に,検察官の立証責任を事実上,転換するものなのではないかという御指摘につきましては,中村幹事からも御説明申し上げましたけれども,この犯罪の構成要件は監護者である者がその影響力を利用して性交等に及べば成立するというものでありまして,逆に言えば監護者ではないこと,あるいはその影響力を利用していないことについて,その弁護人,あるいは被告人の立場として主張することは可能であるわけであります。事実の問題として反証の余地が狭いのではないかという御指摘については,それはそういう構成要件を設けることの適否の問題に正に帰着するわけであり,そうした規定を設けることについて,それが適切であるか否かについては,正に委員・幹事の皆様の御意見を伺いたいと考えているところでございます。 ○塩見委員 「影響力を利用し」のところで,1点質問をさせていただきたいと思います。   影響力の遮断があった場合には,この要件を満たさないということで,影響力の遮断がまれにあるとされる例としまして,暗闇の例ですか,それからあと,被監護者の側が脅迫を行った場合,性交に応じるように求めた場合という例を挙げられました。もう少し一般的に言えば,監護する者であることを被害者に認識させなかった場合,あるいは被監護者の側から性交等を求めた場合,この場合には影響力の遮断があるということになるかと思います。そうしますと,被害者は行為者が監護する者であることを認識していたのですけれども,行為者の側は被害者が認識していないと誤信していた場合,あるいは被監護者の方から性交等を求めたと行為者が誤信をしていた場合,こういう場合は影響力の利用についての認識が欠ける,故意がないということになる,という気がするのですが,そういう理解でよろしいのですかというのが質問です。 ○中村幹事 影響力が遮断されているか否かの判断でございますけれども,これは個別の事案によって判断されるものですけれども,要は,性交等が一般的に存在している監護者の影響力とは無関係に行われたかどうかというところでございます。その例としましては,先ほど申し上げましたとおり,暗闇という例を申し上げましたけれども,これは18歳未満の者の側で行為者が監護者であるということを認識していなかった場合ということでございますけれども,それ以外の場合であっても客観的に性交等が一般的に存在している監護者の影響力とは無関係に行われたと認められる場合には,この影響力が遮断されるということになろうかと思います。   今,御質問の中で御指摘のありました18歳未満の者が監護者に対して性交等を求めた場合,どうなのかという点がございますけれども,18歳未満の者に対する監護者の影響力というのが一般的に存在している場合におきまして,仮に外形的にはその18歳未満の者から監護者に対して性交等を求めたということがあったといたしましても,そのような行動というのを18歳未満の者がとるというのはどういうことかといいますと,例えば監護者において幼い頃から継続的に性的な行為を行ってきたこともありまして,要は18歳未満の者としては生活全般を監護者に依存しているということから,性交等を求めることによって監護者を喜ばせる,ないしはその機嫌を損なわないようにしているような場合というのがあり得るというところでございまして,そのような18歳未満の者の方から性交等を求めた場合であっても,そのような行動をとるに至ったこと自体が,精神的に未熟で判断能力に乏しい18歳未満の者に対して,監護者の影響力が作用した結果であると考えるべきではないかと考えております。   そうしますと,18歳未満の者の方から性交等を求めたにすぎないような場合というのは,影響力とは無関係に行われたとは言えず,その影響力が遮断されている場合には当たらないと考えております。   先ほど,故意の点,錯誤の点について御指摘がございましたけれども,影響力の利用というところにつきましては,当然これについても行為者において認識,故意がないといけないということでございますけれども,要は「影響力を利用して性交等をした」について,故意があると言えるためには行為者におきましてその18歳未満の者に対する監護者の影響力が一般的に存在することを基礎付ける事実の認識,また,その影響力が遮断されていない状況で性交等を行った事実の認識というところが必要であると考えられます。したがいまして,これらの認識に欠けるという場合には,故意犯である以上はこの罪は成立しないということになるのではないかと考えております。 ○今井委員 私も中村幹事の御説明に賛成するところです。前提といたしまして,今日の冒頭,角田委員から改めて実情についての御説明を頂きました。齋藤幹事からも同じような御説明があったわけですけれども,この要綱(骨子)第三の罪が念頭に置いている典型的な事例といたしましては,先ほど角田委員もおっしゃったように,例えば幼少期から親が性交を子供に対して繰り返すということで,そういう18歳未満の者としては特定の行為がなされた段階では,自分がどういうふうな被害に遭っているのかを認識できないような場合も多く含まれている。そういった根の深い事例をも視野に入れて,立案しようとしているものだと思います。   そうしますと,この要綱(骨子)ですと,影響力を利用してという文言が使われておりまして,これですと直近の被害者に向けられた特定の行為の立証が必要になるようにも読めるわけでありますけれども,その影響力が遮断されているか否かということがこの犯罪を否定する大きな要素であるという御説明があり,私もそれに賛成するものであります。そして,そのことをもう少し的確に表現するならば,「影響力があることに乗じて」というふうな,他の表現ぶりの方が適切ではないかと思ったところですので,意見として申し上げたところです。 ○小西委員 暗闇の中で判別されないということが,影響力の遮断の典型例として出てくることが,ちょっと私はどうかと思っております。というのは,多くの例えば性的虐待の例で,夜,暗闇で真っ暗にした中で性交が行われるというケースがあるんですね。だけれども,もちろん目では誰だか分からないけれども,実際すぐ分かりますよ。それは人間の認識は視覚だけではないので,触覚も聴覚も体感もあるわけなので,当然誰だかは分かるわけですね。というようなケースが結構あり,更に小さい時からの繰返しがあってここに至って,そのケースが事件化される,その事例が事件化されるということになるとすると,真っ先にこの暗闇の例が出てきてしまうのが,ちょっともう少し適切なものに変えていただけないかなと思います。自分が持っているケースで,たくさんそういうケースが思い当ります。父親は夜誰か別の人が忍び込んできたのだろうと言ったりするのだけれども,実際にはそうではないというケースが複数あります。ですので,それはちょっと考えていただけないかなというのが私の気持ちです。   それから,実はこの問題に該当するケースを私は持っておりまして,御本人がどうして抵抗できないか,この会議で話していいと言われたので,聞いたまま今日持ってきたのですね。なのでちょっとどういうことが行われているか,具体的に1分ぐらい御紹介させていただいてもいいですか。   この人は,実父からの性的な虐待の被害者で,18歳でようやくそこから逃れた人です。当初は全て自分が悪いから,父を自分が誘ったから,こういうことが起きたとしか考えられていませんでした。2年たってようようちょっと話せるようになってきているのですけれども,「何か抵抗するとかやめるとかいうことを考えなかったのか」と質問したら,「そんなの全く無理。怖いからそういうこと自体を考えないようにしていた。被害を受けていた当時は,自分はその記憶を切り離していて,日常生活は何もないように過ごしていた。だから嫌だとも思っていなかった。夜になったり,家に戻ったりすると多少思い出したけれども,それでも考えないようにし,昼間はその虐待について意識さえしていなかった。性行為について意識さえしていなかった。」と言っています。   「子供にとって親は全てだから,言うことを聞かないといけないと思っていた。親が性交することが普通だと親が言えば,自分は普通だと思う。他の家でもみんなやっていることだけれども,言わないだけなのだと親に言われて,自分もだからそうかと思っていた。そういう環境でしか育っていないので,それは普通だと思っていた。」ということです。   最初がいつから始まったのか覚えていない。中学の時も高校の時もあったけれども,それより前からあったかもしれない。記憶が出てこないのですね。親は,性的虐待にこんな理屈をつけていました。「性行為に慣れていないと痛いから,将来の練習としてやるのだ」と言われた。本人は屁理屈だと思ったが「そうなんだ」と父に言うしかなかった。高校の時,人を助けたくてリハビリの職に就きたいと思い,そのことを家族に話したことがあったが,父と二人きりになった時に,風俗嬢みたいなことをやることを父が提案してきた。「そういう職について,対象者の家を訪問する時もあるだろうが,別料金でやると喜ばれるのではないか」と父は言ったそうです。そういう性的処理の練習をしているのだ,好きな人相手に気持ちよくなってもらうテクニックの練習だと言われた,と言っています。本人にこのことについて聞くと,今は複雑な気持ちで,2年たった今でも,「父は自分の欲望を正当化していた」とは思うところまでは来ましたけれども,なかなか本当に自分は悪くないと思えない状況です。「父が悪くて,自分が被害者だと納得しにくい,言い換えれば心理的な納得がなかなかできないのです。もしかして自分が悪いのじゃないかという気持ちからなかなか逃れられません。虐待から逃れて2年でここまで言えるのは,むしろ治療としては順調だと思います。実情を語れるようになったこと,御本人が話してもいいということ,そのものが治療の成果です。   こういう形で本人は嫌とも言わず,むしろ良いことかもしれないと思い,そういうことをしたのは自分の責任だと思い,行われているというのが性的虐待の典型例です。ちょっと御紹介したいと思ってお話ししました。 ○森委員 今,小西委員の方から具体的な被害者の声の御紹介がありましたけれども,私も検察官として実務の現場でこのような事案を経験してきた立場から,若干申し上げたいと思います。   以前にも申し上げましたけれども,実の親,あるいは養親などが,子に対して性的行為を繰り返し日常的に行っているという事案では,暴行も脅迫もなく,抗拒不能という状態もない,そういった状況の中で性交等が行われているという事案がよくございます。そのような事案の中には,被害者が普通こういうことはやるものだと思っていて,それでもできるだけやられたくないので,お父さんの機嫌をとるためにプレゼントをねだったり,あるいはどこかに連れていってくれと言って外にお父さんを連れ出して,そのときに積極的に腕を組んで歩いたりしたというような事案もありました。   それからまた,姉妹がいて,最初は姉の方が被害に遭っていて,父親が妹の方にも手を出そうとしたので,その姉が妹をかばうために積極的に自分が父親に働き掛けて,自分が性行為の相手をしていたという,非常に痛ましい事案もございました。現実にそのような事案があることを考えますと,先ほど事務当局の説明にもありましたように,監護者の側から必ずしも積極的な働き掛けがなくても,影響力の下で行ったと見るべき事案というのはたくさんあると思っております。   先ほど今井委員の方から,「乗じて」という表現の方が適切ではないかというような御意見がありましたけれども,私もその御意見を伺いまして,その方がしっくりするなという感想を抱いたところです。 ○中村幹事 先ほど小西委員から,影響力が遮断されている事例として挙げました暗闇で行われた例につきまして再考を要するのではないかという御指摘を頂きましたけれども,これは確かに御指摘として受け止めたいと思います。ただ,ここで申し上げているのはどういうことかと申し上げますと,影響力が遮断されているかどうかというのは,つまりは影響力とは無関係に性交等が行われたかどうかということであると。その一つの典型的な例として,18歳未満の者の側が,その行為者が監護者であることを認識していなかった。それが影響力とは無関係,つまり影響力は遮断されているということの一つのパターンであろうと考えた次第でございます。その上で,暗闇の中,相手方を判別できない状態という,一種机上の事例というのを考えてみた次第でありまして,それを御紹介したというところでございます。 ○加藤幹事 事務当局の想像力の欠如を露呈してしまったというところでありまして,恐縮なのですが,中村幹事が申し上げたように,暗闇の例は暗ければ犯罪が成立しないと言っているわけではなく,それによって相手方が監護者であることを認識できないという,そういう例ですので,先ほど小西委員から御指摘いただいたように,例えば挙動とか,それから見えなくても声が聞こえればその声ですとか,そういうものから判別できていれば,この例には当たらないというところでございます。 ○小西委員 それは承知しております。よく分かります。 ○佐伯委員 要綱(骨子)第三の罪というのは監護権の影響力がある状況下でなされた18歳未満の者の意思決定は,外見上,自由なもののように見えても自由な意思決定ということはできないと法的に判断するということだろうと理解しております。そうすると,先ほど来,御意見がありましたように,影響力を利用したという文言はちょっと強すぎる。他にどんな文言が適切かというのは難しいのですけれども,「乗じて」というのも候補だと思いますが,「利用した」というのはちょっと強すぎるように私も思います。   それからそのように,法的に規範的に判断するという観点から考えますと,先ほど来,問題になっております現に監護する者の範囲につきましても,法的な監護権に限られないということは確かにそうなのですけれども,先ほどからの御議論を伺っていますと,限られないというところにちょっと力点が強いのかなという印象を受けまして,やはり法的な監護権に基づいた影響力であるということは,監護権者の範囲を判断する際には,非常に重要な要素ではないかと思います。   それから最後は,要綱(骨子)第三の規定が補充規定であるということの意味についてですが,先ほど事務当局から刑法第177条,第178条に当たる場合には,それのみが成立するという御説明があったのですけれども,私は第177条ないし第178条に当たり得る場合であったとしても,要綱(骨子)第三の罪で処罰することは可能であると考えます。 ○加藤幹事 ただいまの佐伯委員の御指摘の中にもございましたが,要綱(骨子)第三の書き方については,これまで御説明してきたような具体的な内容を表現するものとして,「利用して」という文言を要綱に用いていたものでございます。しかし,ただいま,別の表現を検討するべきではないかという御指摘がございましたので,この点につきましては更に事務当局においても,十分に検討させていただきたいと存じます。 ○委員 1点,事務当局の方から補足させていただきます。   ただいま,佐伯委員の方から,要綱(骨子)第一の罪と要綱(骨子)第三の罪の関係について御指摘がございましたが,第一の罪のみが成立すると申し上げた趣旨は,意味としては佐伯委員のおっしゃるものと同様の意味であると考えておりまして,実体法の関係の罪数の整理としては第一の罪のみが成立するという場合があろうかと思いますが,訴訟法的な観点を加味して,この要綱(骨子)第三の罪だけで処罰できるかといいますと,それは可能であると事務当局としても考えているというところでございます。 ○齋藤幹事 宮田委員がおっしゃったように,現在の家族の関係というのは多様だと感じております。例えば両親と同居していても,日中,両親は仕事でおらず,実質的には祖父母が面倒を見ているとか,おじ・おばが面倒を見ているとか,若しくは家族の中のほかの者が面倒を見ているというような家庭はありまして,その中で祖父・孫間の性的虐待ですとか,親族間の性的虐待ということが行われているという事例も経験しております。従いまして,これまで説明のございましたように,監護という観点につきまして,実質的な状況について,個々に判断していただけるということがとても重要なのではないかと考えております。   また,自由な意思決定ということに関してですけれども,これはもう既に幾つも御意見が出ているものではございますが,私も臨床の中で出会った事例には,養父から大変言葉巧みに,自分たちが恋愛関係であると思い込まされる,若しくはこれを断ると,母親若しくはこの今の暮らしに影響が及ぶのだということを言葉巧みに刷り込まれるなどし,性的な関係に持ち込まれ,性的虐待が継続され,そして加害者が逮捕されて安全な状況になって初めて,自分の傷に気付いて,本当にその後,大変苦しむという事例も幾つもありました。そういったことを考えますと,やはり影響力が行使されている段階で,自由な意思決定というのが大変難しいということを考えてはおりますので,今,御説明のあったことが個々に本当に判断されることを願っております。 ○橋爪幹事 要綱(骨子)に賛成する方向で2点申し上げたいと存じます。既に議論がございましたように,本罪は,精神的に未成熟な18歳未満の者が,現に監護する者の影響力を受けて,性交等をすることについての意思決定に至った類型をカバーする規定ですので,18歳未満の者の意思決定は自由な意思決定とは言い難いという観点,つまり意思決定過程に瑕疵が生じていることが処罰の根拠をなすと考えるべきかと存じます。そして,このように考えますと,やはり監護する者の概念については,意思決定に重大な影響を及ぼしうる者という観点から,ある程度限定的に捉える必要があると思うのです。したがって,基本的には,法的な監護権が認められるような事情を前提としながら,場合によっては更に限定するような理解もあり得るように考えております。そうしますと,例えば教師や,あるいはスポーツのコーチなどが,仮に18歳未満の者に一定の精神的影響を与える関係があるとしましても,それだけで,これを監護する者に含めることは難しいと思います。   もう1点でございますが,このように行為者が監護する者という地位にあることが処罰の根拠として重要であると考えますと,本罪につきましては,本来ならば被害者を保護しなければいけない者,すなわち,被害者を保護し,監護すべき立場にある者が,その立場や機会を濫用して,本来ならば保護すべき者の性的自由を侵害するという意味において,悪質性が高いと考えられます。このように行為者に対する非難可能性が高いことを併せ考えますと,やはりこの類型については,通常の強姦罪,強制わいせつ罪と同一の法定刑で処罰すべきであると考えております。 ○塩見委員 余計な一言かもしれませんが,先ほどからお話を聞いていますと,被監護者の側が,妹を救うためとか,そういう本心ではないのだけれども,表面的にはむしろ監護者に迎合するような態度を取っているような場合があるというお話だったのですけれども,先ほどちょっと故意を問題にしましたのは,そうすると監護者の側から,被監護者の同意がある,向こうから求めてきたと認識していたという主張が出やすくなってくるのではないかと思ったからです。先ほど,遮断の認識があれば,やはり故意が否定されるという御趣旨の御回答もありました。具体的に何か提案があるわけではないのですけれども,やはり立法化された際に認定をどうするのかという点は慎重でないと,本来処罰対象に入れるべき行為が,故意の観点で落ちてしまうということになりかねないのではないかと,ちょっと思いましたので,一言申し述べさせていただきました。 ○加藤幹事 ただいまの塩見委員の御指摘について,承って検討いたしたいと存じますが,1点,先ほど中村幹事からお答えした趣旨ですけれども,18歳未満の者の側から監護者等に対して性交を求めることがあったとしても,それはその行為自体が監護関係による影響力を受けていると考えられる方が一般的であろうと考えられるので,18歳未満の者の側から求める行為があっただけでは,影響力が遮断されたことにならないという理解をしております。したがいまして,18歳未満の者の側から求めてきたという認識があるだけでは,故意を欠くことにもならないと考えているという点を確認させていただきます。 ○宮田委員 他人の類型のことで一つ確認です。今,橋爪先生のおっしゃったスポーツ等の指導者の例ですけれども,親がスポーツのコーチに子供を託すような場合があります。あるいは学校の寮などに契約をして入れる場合もあります。そのように,親権者からの委託を受けて子供を預かっている全くの他人は,同居して生活の面倒を見ている場合に,この類型には,含め得るのか得ないのかというところでございます。先ほどの他人の類型はどこまでか,というところにも関係してまいるかと思います。 ○中村幹事 「現に監護する者」に当たるか否かにつきましては,正に個別の事案の具体的な事実関係によって判断されるものですので,先ほど来,申し上げているような要素から,今のようなケースについても当たるかどうかというのを判断していくということになると思うのですけれども,いわゆる単なる教師と生徒とか,単なるコーチと教え子というだけであるならば,通常は,その現に監護する者には当たらないということになると思いますけれども,更にそれが言わば親代わりになっているような場合には,その関係性というのが親子関係と同視し得るような場合にまで至っているということであれば,「現に監護する者」に当たるということもないわけではないのではないかとは考えております。 ○武内幹事 質問に当たりますけれども,イメージの整理をさせてください。そうしますと,現に監護する者と被監護者との間では,具体的な局面において,例えば抗拒不能状態にある時と,抗拒不能でない時というのは,それぞれ存在し得る。他方,現に監護する者と被監護者の間における影響力というのは,基本的には常に存在する,すなわち常態的に存在するものである。ただ,例外的にその影響力と無関係に性交が行われる場合も考えられ,そのようなケースを,影響力の遮断という用語で説明されていた。このように理解しましたけれども,大筋において間違いないでしょうか。 ○中村幹事 基本的に,今御指摘になったようなところで,間違いはないものと考えております。この「現に監護する者」に当たるということであれば,その18歳未満の者に対する一般的な影響力があるものと考えておりますので,そのような影響力が一般的に存在する下において性交等が行われたということであれば,通常はその影響力を利用したと言えるのだろうけれども,ただ例外的に影響力とは無関係に行われた場合がないとは言えないだろうと。そのような場合を遮断という言葉で先ほど来,申し上げているとおりでありまして,そういう場合は影響力を利用したとは言えないということでございます。 ○武内幹事 そうしますと,故意の要素,すなわち主観的な認識の対象としても,自らが現に監護する者であることを認識していれば,一般的には当該性交が影響力を利用ないしは影響力の存在するところで行われたものであるということの認識を伴うという理解でおおむねよろしいでしょうか。 ○中村幹事 現に監護する者であることによる影響力を利用して性交等をしたということでございますから,もちろん故意犯でありますので,いずれについても認識が必要となるということでありますけれども,現に監護する者であるという点については,現に監護する者であることを基礎付ける事実の認識があれば,この現に監護する者であるという要件についての故意があるということになります。   また,その影響力を利用して性交等をしたという点でございますけれども,先ほど来申し上げていますとおり,この影響力を利用して性交等をしたという意味ですけれども,18歳未満の者に対する監護者の影響力が一般的に存在しており,かつ,その影響力が遮断されていない状況で性交等を行ったという意味であると御説明申し上げてきているところでございますけれども,故意については,今申し上げたとおり,監護者の影響力が一般的に存在するということを基礎付ける事実の認識,また,その影響力が遮断されていない状況で性交等を行った事実,この認識が必要であるということになってまいります。 ○山口部会長 今回は2巡目で,1巡目の時にも大分御議論いただきました。今日もいろいろな観点から御議論を頂きましたが,この辺りでまとめさせていただいてもよろしゅうございましょうか。   「影響力を利用して」の要件につきましては,18歳未満の者に対する監護者の影響力が一般的に存在し,かつ,その影響力が遮断されていない状況で,性交等又はわいせつな行為を行った時には,影響力を利用したと言えるというのが基本的な事務当局の御説明であったわけでございますけれども,これに対しては立証責任の事実上の転換になるのではないか,あるいは処罰範囲が広がっていってしまうのではないかというような趣旨の御疑問をお述べになる御意見もございましたけれども,多数の方は事務当局のような説明でよいのではないかという御意見であったと理解させていただきました。   なお,そのような理解を前提とした場合に,「影響力を利用して」という文言につきましては,更に検討が必要だという御意見もございまして,先ほど事務当局からもそれに関して御発言がございましたけれども,事務当局において更に御検討をお願いしたいと思います。   要綱(骨子)第三につきましては,大体この辺りで終わらせていただきたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。   それでは,若干休憩をここで挟みたいと思います。それでは,11時まで休憩とさせていただきます。 (休     憩) ○山口部会長 それでは,会議を再開いたします。   ここからは,要綱(骨子)第七について審議を行います。要綱(骨子)第七につきまして,1巡目の議論を振り返っておきますと,まず第七のような,先後を問わず,同一の機会に強盗と強姦を犯した場合に現行法の強盗強姦罪と同様に重く処罰する規定を設けることの必要性につきまして,必要でないという御意見もございましたが,多数の方は必要であるという御意見でございました。   また,第七の一ただし書及び第七の二につきましては,要綱(骨子)に賛成する御意見が多く述べられましたが,第七の一につきましては,現行法の下よりも減軽される範囲が狭くなるという点,第七の二につきましては,現行法の下では中止未遂として必要的減免となるものが要綱(骨子)では必要的減免とならない場合があるということ,第七の二につきまして,これを適用する方が単純な併合罪よりも処断刑が軽くなる場合があり得ることについて,検討が必要であるという御指摘がございましたので,事務当局において検討していただくこととしておりました。   第七の三につきましては,死亡の結果が生じた場合の規定ですが,このような規定を置くこと,またこの規定には殺意を持って行った場合をも含み,殺害が未遂に終わった時には,第七の三の罪の未遂犯として罰すること等につきましては,特に反対の御意見はございませんでした。   このような1巡目の御議論を踏まえて,本日は2巡目の御議論をお願いしますが,まず,事務当局から,先ほどの点について検討の結果の御説明をお願いいたします。 ○中村幹事 この部会の第3回会議におきまして,要綱(骨子)第七に関しまして,現行法では強盗が既遂であっても,強姦が未遂であれば強盗強姦罪の未遂となり,強姦を任意に中止すれば中止未遂の規定が適用されるのに対し,要綱(骨子)第七の一ただし書では,強盗が既遂であれば刑は減軽されず,酌量減軽をしても執行猶予を付することができないこととなるという点,また,強盗が既遂の場合には,強姦を任意に中止しても,第七の二による刑の減免が認められないこととなるという点,また,第七の二,すなわち強姦行為と強盗行為のいずれもが未遂に終わった場合において,いずれか一方を自己の意思で中止した時は,必要的に刑を減免するという規定については,強姦と強盗とを併合罪として処理する場合よりも,第七の二が適用される場合の方が刑が軽くなる場合が生じるのではないかという点につきまして,検討の必要があるとの御指摘を頂いておりました。   これらの点につきまして,事務当局において改めて検討いたしましたので,御説明申し上げます。   まず,1点目の問題と2点目の問題ですけれども,いずれも要綱(骨子)第七の一ただし書におきまして,強盗と強姦の両方が未遂であった場合にのみ,刑の減軽を認めることとしていることによる問題であると考えられます。   このように,両方が未遂であった場合にのみ,刑の減軽を認めることとしたのは,強姦行為と強盗行為とが同一の機会に行われ,そのいずれか一方でも既遂であった場合には,同一の機会にそれぞれ単独でなされてもなお悪質な,強盗に向けた行為と強姦に向けた行為とがともになされ,少なくともそのいずれかは行為の目的を達しているわけですから,その悪質性・重大性は,いずれも未遂の場合と比べて大きいと思われ,あえて刑の減軽をする必要はないと考えたためでございます。   第3回会議におきまして,強盗にも様々なものがあることを考えると,酌量減軽をしても執行猶予を付し得ないこととしてよいのかという御指摘や,中止未遂の適用範囲が狭くなることは,被害者保護の観点から問題があるのではないかとの御指摘を受けました。これを受けまして,改めて検討いたしましたが,仮に,同一の機会に行われた強盗行為と強姦行為のいずれか一方が既遂で,他方が未遂の場合に,刑の減軽を認めることとしたり,一方が既遂で他方が任意に中止したという時に,刑の減免を認めるということとしたりしますと,一方の罪のみが行われて既遂となった場合,処断刑は懲役5年以上となりますが,そのような場合よりも,一方の罪の既遂後,他方の行為に着手し未遂に終わった場合,この場合は処断刑が懲役3年6月以上となり,この場合の方が処断刑は軽くなるという不均衡が生じることとなります。   また,要綱(骨子)第七の罪におきましては,強姦行為と強盗行為のその先後を問わないものとしていますところ,一方の行為に先に着手し,それを任意に中止した後,他方の行為に着手し,既遂となったような場合,つまり,例えば強姦行為に着手したものの,かわいそうになって中止し,引き続き強盗行為に着手して既遂に達したような場合,このような場合を考えますと,このような場合にまで先行行為,先の行為を中止したことをもって刑の減免を認めることが相当であるとは思われません。また,この点につきまして,後の方,後行行為を中止した場合にのみ,刑の減免を認めることとすればよいという御意見もあり得るかと思われますけれども,現実の事件におきましては,どちらの行為が終わったのが先だったのかということを認定することが困難な場合も多いと思われますので,行為の先後によって決めることは,適切ではないと考えております。   このようなことを考えますと,事務当局といたしましては,やはり要綱(骨子)のとおり,強姦行為と強盗行為のいずれもが未遂に終わった場合にのみ,刑の減軽を認めることとするのが適切であると考えている次第でございます。   次に三つ目の御指摘について申し上げます。   第七の二において,強姦行為と強盗行為のいずれもが未遂に終わった場合であって,いずれか一方を自己の意思で中止した時は,必要的に刑を減免することとしている点につきまして,強姦罪と強盗罪とを併合罪として処理する場合よりも,第七の二が適用される場合の方が刑が軽くなってしまう場合が生じるのではないかという御指摘を頂いておりました。   この点につきましては,第3回会議におきましても御説明申し上げたところでございますけれども,確かに御指摘のとおり,まず強姦に着手したものの,被害者がかわいそうになって中止し,新たに強盗の犯意を生じて強盗に着手したものの,抵抗されて未遂に終わったというような事案を想定しますと,処断刑におきましては,強姦の中止未遂と強盗の障害未遂の併合罪とした方が,第七の二を適用するよりも重いこととなる場合があり得ることになります。   もっとも,そのような事案が発生すること自体がかなりまれではないかとも思われますし,そのような事案が仮に生じたといたしましても,その場合にも第七の二の適用による処断刑,すなわち有期懲役を選択した場合,3年6月以上10年以下の懲役という処断刑の範囲内で適切な量刑が可能なのではないかと考えております。   したがいまして,第3回会議で申し上げましたとおり,このような場面が生じ得るとしても,いずれか一方でも中止すれば刑を減免するとすることによって,結果の発生を防止するという政策的な目的を達成する趣旨というのを重視しまして,この要綱(骨子)第七の二のとおりとするのが適切であると考えているところでございます。   以上が事務当局による検討の結果でございますけれども,委員・幹事の皆様方の御意見を頂ければと存じます。 ○山口部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいまの御説明も踏まえまして,御審議を頂きたいと思います。ただいまの御説明に対する御質問や御意見をも含めまして,御発言のある方はお願いしたいと思います。 ○今井委員 ただいまの御説明に賛成する方向で改めて確認のために発言したいと思います。   第七の一のただし書のところでありまして,いずれの罪も未遂罪であるときはその刑を減軽することができるものとすることという案になっております。この案につきましては,私,前にもお話しさせていただいたかと思いますけれども,配布資料18というところの12ページ辺りでしょうか。現在の強盗強姦罪の量刑の分布がございます。この表の読み方については,以前も御説明を受けたと思いますけれども,既遂・未遂の区別は特にされていないのかと思いますが,ここを見ましても,仮にどちらかが未遂類型を含むものがあったとしても,3年以下という執行猶予が付し得るものは,率にして,例えば0.41%という場合もあるようで,非常に小さくなっております。ということは,現在の量刑判断におきましても,いずれかが既遂に至ったような場合というのは,当然この中に含まれているわけですけれども,大変悪質なものであり,重たい刑に相当するという理解がとられているものと思います。そのことを踏まえますと,仮に任意的な刑の減軽をするとしても,御提案のようにいずれの罪もという仕切りがよいのではないかと思うところであります。 ○佐伯委員 私は以前の会議におきまして,現行法より狭くなることについて,もう少し検討が必要ではないかと申し上げました。その後,自分でも考えてみて,後の行為を中止した場合に適用するというようなことも考えたのですけれども,今,事務当局から御説明がございましたように,どちらが先か認定することが難しい場合があるということで,結論として事務当局の御提案に賛成したいと思います。 ○香川幹事 今の事務当局の御説明とはちょっと関係ない話になってしまうのですけれども,こちらも新しい類型でございますので,裁判所の立場から気になっていることをお聞きしたいと思います。   現在は強盗強姦罪という罪のみがあるわけでございますけれども,これは強盗が強姦するという形になってございますので,実務上,強盗と強姦とどっちが先なのか,あるいは犯意がいつ発生したのかということが,裁判の現場で争われることがございます。   今回の要綱第七の一の一に掲げる罪と,二に掲げる罪というのが,今の御説明でも同一の機会ということで,それは両方あるということが要件だというお話であったと思います。そういたしますと,要するに同一の機会に両方あるということが大事なのであって,特に犯意の点でございますけれども,初めから両方の罪の犯意を有していたか,あるいは一方の罪を犯した後に他方の罪の犯意が発生したかということは,余り関係ないと言いますか,どちらの場合もこの要綱第七の一の罪が成立すると,こういう理解でよろしいのかどうか,確認させていただきたいということでございます。 ○中村幹事 ただいまの御質問の点でございますけれども,初めから強盗と強姦,両方の罪の犯意を持っていた場合,強盗と強姦,どちらか一方の罪を犯した後に,他方の罪の犯意が生じた場合,そのいずれにつきましても,この要綱(骨子)第七の罪が成立するという理解でよろしいかと思います。   また,先ほど今井委員から御発言のありました資料18の強盗強姦の最近の量刑分布のグラフと表についてでございますけれども,若干,補足的に申し上げますと,平成12年から平成26年までの間に,強盗強姦罪,これは未遂も含みますし,もしかすると中止未遂というのが入っているのかもしれず,その点は分かりませんけれども,そのような強盗強姦罪につきまして,量刑分布を見ますと,3年以下となっているものがこの平成12年から平成26年の間に3件となっていまして,平成12年から平成14年の間に2年以下だったものが0.44%,平成15年から平成17年の間に3年以下だったものが0.41%,平成18年から平成23年の間はゼロ,平成24年から平成26年の間は2年以下が1.02%という数字が書かれているとおりでございます。また,この強盗強姦罪には,先ほど申し上げたとおり,未遂も含まれており,また,この表の中では執行猶予に付された場合には,括弧書きで数字が書かれるわけでございますけれども,括弧書きでの数字がないことから明らかなとおり,この強盗強姦罪に問われた事案の中に,執行猶予に付された例はないということになります。補足的に申し上げました。 ○山口部会長 ほかにいかがでございましょうか。   1巡目で御指摘いただいた問題につきましては,先ほど事務当局の方から御説明がございまして,それで了解したという御発言もございましたが,この要綱(骨子)第七の罪に関連して,ほかに疑問点などはございませんでしょうか。 ○木村委員 2点,確認させていただきたいのですけれども,一つはこれは前に議論があったかもしれませんけれども,「際に」というのがどの程度の範囲を示しているのかというのは,ここで了解が取れているのかどうかの確認と,あともう一つ,いずれかの未遂でも未遂という点なのですけれども,三のところで死亡させたというところで,殺意があるというのは,強盗と強姦のどちらでも殺意があり得るということでよろしいでしょうか。現在は,強姦致死は殺意がある場合は含まないと理解されているのかと思うのですけれども,それとはちょっと違う理解でよろしいのかという点を確認をさせていただければと思います。 ○中村幹事 「際に」という文言の意義でございますけれども,こちらは現行の強盗強姦罪と同様の理解でございます。強盗強姦罪につきましては,強盗の機会に女子を強姦するという場合にこの罪が成立すると一般に理解されておりますけれども,要綱(骨子)第七の一の「際に」というのは,それと同様の理解でございますので,いわゆる同一の機会にこの二つの罪がなされた場合ということでございます。   この機会についてでございますけれども,この機会につきましては,裁判実務上,どのように判断されているかというところでございますけれども,時間的,場所的な乖離の程度,その被害者が同一かどうかなどなどの考慮要素というのを総合的に勘案して,その機会であったのかどうかというのが判断されているものと思われますけれども,この強盗強姦罪と同様な考え方で,この第七の同一の機会についても判断されるものと思われます。   それから殺意の点でございますけれども,この殺意というのは,強盗行為ないし強姦行為,そのいずれかのときに殺意を持って行為がなされた場合には,この罪が成立すると考えております。 ○宮田委員 同一機会という問題との関係で,前回も述べましたけれども,強盗の場合にはこの暴行脅迫が,かなり強いものである一方,強姦自体の暴行脅迫要件はかなり弱いものになっておりますし,性的行為に対する抗拒不能が,直ちに財産に対する抗拒不能になるかどうかという問題もあるかと思います。場合によっては新たな暴行脅迫要件が必要な案件もあるように思われますし,あるいは窃盗が同時に,従来,強姦の現場で窃盗にしかならないとされた事件もございます。   この機会性の条件を新たに作ることで,従来は窃盗で処罰されていたものまで,認定を緩められてしまう危険はないのかという危惧感を持っているというところでございます。   あと,重い行為について中止未遂で判断することがより罪が軽くなって問題だという考えもありますけれども,逆に,より重い罪を犯さないなら刑を軽くするという機会を与える政策的な判断自体は,あり得ることなのではないでしょうか。要は,あえて政策的に,そういう判断をすることもあり得るのではないかという2点です。 ○加藤幹事 ただいま,御指摘の点について,事務当局の考え方のみ確認的に申し上げます。   最初の御指摘であります強姦については,暴行脅迫の程度が若干弱い場合もあるのであるが,機会性というその概念を持ち込むことによって,本来窃盗として扱われていたものまで強盗として扱われるのではないかと,こういう危惧を述べられたわけでございますね。しかし,これは既に御説明いたしましたとおりで,従来の強盗という罪の成立範囲を緩めようという意図はありませんので,御懸念は当たらないと考えております。   それから,より重い,片方が既遂に達している場合でも,政策的にもう一方が中止になっていれば,必要的減免を認めてもよいのではないかといった御指摘だったと思います。もとよりそういった政策をとるかどうかは,評価の問題ではございますけれども,事務当局の考え方としては,既遂に達しているその片方の罪が,強盗であっても強姦であっても非常に重い罪が既遂に達しているにもかかわらず,更にもう片方が中止であったからといって,必要的な刑の減免といった恩典を与えて,そのような恩典を与えれば,本来の既遂に達している罪の法定刑を下回る処断刑となるといったことが,政策としても適切ではないと考えているというところでございます。 ○山口部会長 ほかに何かございますでしょうか。特に御発言がない方は,要綱(骨子)のとおりでよいという御趣旨であると理解してもよろしゅうございましょうか。 (一同異議なし) ○山口部会長 ありがとうございました。   そうしますと,問題があるという御指摘があったわけではございますけれども,多数の方は要綱(骨子)のとおりでよいのではないかという御意見であったと理解させていただきたいと思います。   それでは,要綱(骨子)第七についての議論はここまでとさせていただきますが,冒頭で申し上げましたように,残りの時間で要綱(骨子)第四の非親告罪化に関する御議論をお願いしたいと思います。   まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○中村幹事 事務当局から,要綱(骨子)第四につきまして,御議論をお願いしたい点がございますので,御説明申し上げます。   要綱(骨子)第四の強姦罪などの非親告罪化につきましては,前回までの御議論におきまして,要綱(骨子)のとおり,非親告罪化するべきであるという御意見が多数でありましたけれども,仮にこの要綱骨子のとおり答申を頂き,法改正をすることとなった場合に,その時的な適用範囲が問題になると考えられます。   すなわち,改正法施行後に犯された強姦罪などが非親告罪となるのは当然といたしまして,改正法の施行前に犯された強姦罪などについても,改正法施行後は非親告罪として取り扱うべきかどうかという問題です。   事務当局におきまして検討しましたところ,告訴をするか否かの判断をしなければならない被害者の負担を軽減するという今回の非親告罪化の趣旨に鑑みますと,改正法施行前の犯罪行為についても,非親告罪として取り扱うことを検討する意義があるものと考えるに至っております。この点,親告罪とする規定,つまり特定の罪について告訴がなければ公訴の提起をすることができないとする規定は,訴訟手続に関する規定ですので,親告罪とされている罪を非親告罪とする改正は,訴訟手続に関する法律が改正された場合には,新法を適用するという原則に従うものでありますし,親告罪とされている強姦罪などの罪を非親告罪とすることは,「実行の時に適法であった行為」について遡って刑事責任を問うものでも,行為の違法性の評価,責任の重さを遡って変更するものでもありませんから,憲法第39条にも反するものではないと考えられます。   また,改正法施行の時点において,将来的に告訴がされる可能性がある事件につきましては,告訴がなされれば公訴が提起され,有罪判決がされる可能性があるものですから,これを非親告罪化したとしても,その被疑者・被告人の法律上の地位を著しく不安定にするものとは言えないことから,改正法施行時に告訴がされる可能性があるものについては,改正法施行前の犯罪行為を非親告罪として取り扱っても,被疑者・被告人の利益を不当に侵すものではないと思われます。   もっとも,改正法施行前に既に告訴がされる可能性がなくなっているような場合,例えば全ての告訴権者の告訴が取り消されて,更に告訴をすることができないような場合などが,これに当たり得ると考えられますけれども,このような場合につきましては,一旦,告訴がされる可能性がなくなり,その結果として起訴される可能性がなくなった被疑者の地位の安定性を考慮し,また,その当時の法に従って意思表示をした被害者の意思を尊重して,非親告罪化しないこととするのが適切であると思われます。   したがいまして,改正法施行時において既に告訴がされる可能性がなくなっているものを除き,改正法施行前の犯罪行為についても新法を適用し,非親告罪として取り扱うこととするべきであると考えるに至ったところでございますけれども,この点につきまして,委員・幹事の皆様の御意見を賜りたいと考えております。   なお,参考になる例といたしまして,本日お配りいたしました配布資料31の2ページ目にございます刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成22年法律第26号),公訴時効の廃止及び延長などを内容とするものですけれども,この附則の第3条におきまして,この法律の施行前に犯した罪であっても,その施行の際,公訴時効が完成していないものについては,公訴時効の廃止・延長等に係る改正後の規定を適用するものとしているものがございます。この点につきましては,配布資料32の最高裁判所の平成27年12月3日の判決では,公訴時効の廃止や延長は,行為時点における違法性の評価や責任の重さを遡って変更するものではなく,被疑者・被告人となり得る者につき,既に生じていた法律上の地位を著しく不安定にするようなものでもないとして,憲法第39条,第31条に違反せず,それらの趣旨に反するものとも認められないとしていることが参考となると思われます。 ○山口部会長 ありがとうございました。   ただいま,御説明がございましたように,事務当局において要綱(骨子)第四のとおり法改正をする場合,その適用範囲をどのようにすべきかという問題について検討され,改正法の施行前に行われた行為につきましても,一定の場合を除いて非親告罪として取り扱うこととするのがよいのではないかと考えるに至ったということでございます。   この点につきまして,改正法施行前に行われた行為についても,非親告罪として取り扱うことの当否等を中心に御意見のある方はお願いしたいと思います。   いかがでございましょうか。 ○小木曽委員 今の事務当局の御説明をなぞるようなことになりますけれども,一つは憲法の問題があります。遡及適用の問題ですが,新たな罪を作るわけではなく,また,告訴がなければ裁判ができないということであったもの,すなわち国家の刑罰権自体はあるけれども,被害者への配慮からその処罰意思が確認できなければ裁判をしないという制度であったものを,被害者の処罰意思を訴訟条件としないという制度にするという変更ですから,これは憲法第39条の規定する事後法の禁止条項には触れないと思います。   そうすると,あとは立法政策の問題になるわけですが,この資料31を見ますと,従来の法制度では,遡及適用しないというものもありますし,それから今回は大きな改正でもありますので,法が施行されるときを基準に将来的に適用するという考え方もあるだろうと思いますけれども,他方で,改正の趣旨が被害者の負担軽減ということであれば,施行前に犯された罪についても適用するという提案も否定されるものではないと考えます。   また,罪は罪として成立するわけですので,告訴がなければ訴追されないという被疑者の期待を保護する必要があるかというと,そのような必要はないと考えることができるのではないかと思います。 ○井田委員 今の小木曽委員のお考えと基本的に同じだと思うのですけれども,一言私の意見を申し上げます。手続法規定の適用に関する原則論から言えば,やはりそれは法律の施行と同時に,今現在,進行中の手続にそのまま適用するというのでなければいけないと思います。たとえ犯罪自体は施行日以前の出来事であったとしても,実体法ではなく手続法に関する法改正なのですから,遡及適用ということにならない。また,それは「改正」であり,非親告罪化という形でよい方向に法の規定を変えるという前提で考えるのですから,それはもう施行と同時にすぐ適用するのが当然で,そうでなければ筋が通らないことになるだろうと考えます。これが原則論ではありますが,ただし,仮にそれが行為者の側の正当な法的利益を侵害するというのであれば,ただちに施行するのは適切ではない,ちょっと待ちましょうということになるのだと思います。   そこで,ここでの問題は,果たして行為者側にとって自分の犯罪が親告罪であるということが,果たして正当な法的利益であるとして主張できるものであるのかどうかということになります。   確かに,一定の事実上の利益があることは否定できないかもしれません。しかしそれは法改正により実現される被害者側の正当な利益と拮抗して,それを凌駕するような正当な利益とは言えないでしょう。公訴時効期間の延長とか,そもそも公訴時効の廃止とかでさえ,潜在的被疑者の正当な法的利益を害するものではないというのが,平成22年の刑訴法一部改正の前提であり,またそれは最近の最高裁の判例によっても支持されているのです。そうであるとすれば,親告罪であるということはますます法的に保障されているような利益ではないと考えなければならないと思います。   ただもう既に施行前に告訴の可能性がなくなっているようなものについてはどうかということになると,確かに公訴時効の場合とは違います。既に公訴時効が完成している場合にはそもそも公訴権がない,訴訟追行権が消滅しているということで,これを法改正により復活させることはできないとも考えられる。これに対して,告訴の可能性が事実上なくなったという場合だと別に公訴権がなくなるとか,訴訟追行権がなくなるということではないということにもなりそうなのです。それはそうなのですけれども,法的安定性という見地から,それを再び動かすまでのことはないので,そういう事件については除きましょうというのが一つの考え方であり,政策的な判断としてはそれが適当であろうと考えられるのです。 ○宮田委員 私は逆に,これは実体法の条文ではないとしても,刑法典の中に定められている部分であり,その重要な変更であるということを考えますと,過去の昭和22年改正,昭和33年改正の例などもございますので,同様に不遡及でいくべきではないかと考えます。   確かに実体法上の条文ではありませんが,例えば立件されていない事案について示談がされる,あるいは告訴しないと話が付いているような事例などは,十分あり得るかと思います。こういうものは絶対に掘り起こさないという政策についての確約でもあればよろしいのですが,非親告罪化されることによって,一旦示談してもうお話が付いていたものについて,あまりいい例ではないかもしれませんが,示談金を更に取得しようとする乱用的意図で被害が届けられることも出てき得るのではないでしょうか。加害者が,自ら進んで被害者との関係を修復する動きをしたものについて,それが掘り起こされて起訴されるというようなことがあってはいけないのではないか。   そういう意味で,非親告罪化は,公訴時効と違って,実体的な判断に関わってくるような部分もあるように思われるのです。   犯罪を犯した方の側の立場の不安定性というのが免れないことを考えますと,遡及には反対の立場を取りたいと思います。 ○橋爪幹事 1点,質問がございます。今,宮田委員の方からも御指摘がございましたが,本日配布の資料31番では,刑法の一部改正につきまして,非親告罪化に関する先例を2点御紹介いただいておりますが,昭和22年改正も昭和33年改正も,ともに非親告罪化については「なお従前の例による」旨の経過規定が設けられておりますので,今回の改正については,これらの先例とは趣旨が異なるという説明が必要になってくるかと存じます。もし事務当局の方でお分かりであれば,昭和22年改正,昭和33年改正の趣旨につきまして,ご教示いただければと存じます。 ○中村幹事 それでは,事務当局から御説明申し上げます。この親告罪であったものが非親告罪化されるという改正があった場合に,改正法施行前の行為についてそれを適用するかどうかといいますのは,先ほど申し上げたとおり,理論的な問題というよりも,むしろ政策的な判断の問題ではないかと考えているところでございますけれども,その上で個々のそれぞれの法改正の際に,それぞれの政策判断がそれぞれなされたということかなと思っております。   その上で申し上げますけれども,昭和22年の刑法改正についてでございますけれども,これは現行の日本国憲法が制定されたことに伴いまして,刑法が改正されたというところでございます。そのうちの一つとして,暴行罪につきまして,従前は親告罪であったものが,非親告罪とされるとともに,法定刑につきまして引き上げられるという改正がされています。これにつきまして,経過規定では,この改正以外の部分につきましても含めた上で,なお従前の例によるとされたものでございます。   このときの暴行罪の非親告罪化の趣旨でございますけれども,当時の説明などを見てみますと,このように要は単なる暴行でとどまる場合については,その訴追というのを被害者の意思如何に係らしめるのを適当とするという考え方に立っていたということなのですけれども,この憲法が新しいものとなり,民主主義体制の下においては,暴力というのはやはり否定する必要があろう,傷害を伴わない暴行と言えども軽微な罪ということではなく,国家として処罰する必要があるだろうという趣旨から,非親告罪化し,法定刑が引き上げられたというものであると承知しておりまして,そうであるとするならば,今回の非親告罪化につきましては,被害者が告訴するかどうか判断を迫られるというその負担の軽減であるというところとは,非親告罪化の趣旨が異なるという説明は可能なのかなと思っております。   また,昭和33年の輪姦的形態による強姦罪につきまして,非親告罪化されましたけれども,このときもこの法律の施行前の行為については,なお従前の例によるという形で,施行前の行為については非親告罪化しないという扱いがされたところでございます。このとき,このように判断されたのがなぜであったのかというところにつきましては,必ずしも明確でないところもあるわけでございますけれども,当時の輪姦的形態でなされる強姦罪等が非親告罪化された趣旨につきましては,この輪姦的形態でなされる強姦罪というのは,非常に凶悪なものであり,その訴追については被害者の利益のみによって左右することは適当でないと考えられたものと説明されているところでございまして,先ほど申し上げた今回の非親告罪化の趣旨とは異なるということは言えるのではないかと考えるところでございます。 ○橋爪幹事 ありがとうございました。今,御説明を伺いますと,これまでの先例が統一的な論理的根拠に基づいているわけではないよう,過度に先例を重視する必要はなく,飽くまで今回の立法趣旨に従って個別的に判断をすれば足りるように思いました。 ○池田幹事 先ほど宮田委員からも御指摘がありました,告訴がされて取り消されたわけではないけれども,告訴をしないという取決めが被害者との間でなされているという事案は,確かに存在するのだと思います。ただ,そういう事件について,非親告罪化したからといって,検察が被害者の意思の如何を問わず起訴するということにはならないのだということが,非親告罪化をする方針について賛成する際にも議論されていたと思います。つまり,そのような事案が仮にあるとしても,実務上,個別的に対応がなされるのであって,全ての事案が直ちに起訴されるということにはならないものと理解をしております。 ○森委員 今,池田幹事に代わりにお答えいただいたような気がいたしますけれども,確かに以前も申し上げましたとおり,検察官としましては非親告罪化されたとしましても,被害者の意思を尊重して処分を考えていくという点は,何ら変わるところがないと考えております。ですので,ちょっと宮田委員がおっしゃった事案とは異なりますけれども,例えば被害者がもういいですと言って告訴しませんと言って不起訴になった事案につきまして,検察官の方がそれを新たに掘り起こして,被害者の意思に関係なく起訴してしまうというようなことはまずないと思っていただいていいと思います。   それから宮田委員がおっしゃったのは,被害者がもう告訴しません,示談が成立しているので告訴しませんと言って事件化されなかったような改正法施行前の事案について,被害者がやはり処罰してほしいと言い出した場合,その事案が立件されることになるとしたら,被疑者の立場から見た場合問題ではないかということだったかと思うのですけれども,その点につきましては,現行法の下でも告訴が一旦なされて取り消されたのではなく,元々告訴がないのであれば,改めて被害者がやはり処罰してほしいということで告訴をすれば,それは処罰の対象になりますので,現行法の下と非親告罪化した後の対応とで何ら変わるところはないと考えております。 ○塩見委員 私も非親告罪化して,それを遡及させるという御提案に賛成を致します。こだわるというか,細かいことを申しますと,暴行罪のときと非親告罪化の趣旨が異なるというお話が出ましたけれども,刑罰を引き上げて,それに伴って非親告罪化しているという点では,やはり今回も一緒ではないのかという気はしております。   第1回目の刑事法部会におきまして,私が申して佐伯委員から御批判を受けたことなのですけれども,非親告罪化を支持する理由としまして,やはり重く処罰される,そういう重い責任評価を受けるに至った性犯罪であることが挙げられると思います。そういう場合にはやはり刑事訴追を被害者の意思に委ねるのは妥当でないという点がやはり私はあると考えますので,暴行罪の場合と今回の場合とは違いますと割り切るというのは,ちょっと抵抗感を感じないわけではありません。   いずれにしましても,結論的には,被害者保護の観点から,親告罪ではなくて非親告罪にするという要請が政策的判断として強いということで,すぐに適用した方がよいという判断は支持できると思います。そういう意味で御提案に賛成したいと考えております。 ○山口部会長 ほかにいかがでしょうか。   今日のところはこれでよろしゅうございましょうか。ありがとうございました。   それでは,事務当局におかれましては,ただいまの御意見を参考に更に御検討いただきたいと思います。   では,本日の審議はこれをもちまして終了ということにさせていただきたいと思います。   次回でございますが,次回につきましては冒頭で御議論いただきましたように,ヒアリングについて,日程等を含めて事務当局と検討させていただきたいと思いますので,委員・幹事の皆様には,追って御連絡することとさせていただきたいと思います。   なお,本日の会議の議事につきましては公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することにさせていただきたいと思いますが,そのような取扱いでよろしゅうございましょうか。 (一同異議なし) ○山口部会長 ありがとうございました。では,そのようにさせていただきます。   では,これをもちまして終了といたします。本日はどうもありがとうございました。 -了-