法制審議会 民法(相続関係)部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  平成28年6月21日(火)自 午後1時33分                      至 午後4時23分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法(相続関係)の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,法制審議会民法(相続関係)部会第13回会議を開会いたします。   まず,最初に新しい関係官の御紹介をさせていただきたいと思います。 ○小川関係官 法務省民事局付の小川敦と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 どうぞよろしくお願い申し上げます。   続きまして,本日の配布資料についての説明をお願いいたします。 ○満田関係官 関係官の満田から,配布資料の確認をさせていただきます。   本日,机上に配布しました資料としましては,まず,参考資料といたしまして,1枚ものの表がございます。これはA4サイズのものでございますが,表題が「遺言による権利移転に関する対抗要件の要否等の整理表」となっております。詳細については後ほど御説明いたします。   また,A4サイズの表紙が青い,カラーで印刷された資料がございますが,これは後ほど浅田委員の方から御説明があろうかと存じますが,「可分債権の取扱い等に関する意見の補足」となっております。   机上に配布した資料は,以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,本日は今御説明がございました部会資料13,「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案(案)」につきまして御議論を賜り,取りまとめをさせていただきたいと考えております。   資料は,「第1 配偶者の居住権を保護するための方策」から始まりまして,「第5 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」まで,5点に分かれております。この第1から第5につきまして,五つに分けまして順次御意見を伺ってまいりたいと存じます。第3の途中で休憩を入れることを予定しております。   それでは,まず「第1 配偶者の居住権を保護するための方策」につきまして,事務当局の方から御説明を頂きます。 ○小川関係官 それでは,部会資料の「第1 配偶者の居住権を保護するための方策」について御説明いたします。   まず,1の短期居住権ですが,本文につきましては若干表現を改めたところはございますが,内容的には部会資料12からの変更はございません。   なお,注におきまして,配偶者以外の者が居住建物を取得した場合における短期居住権の消滅請求権者などについての記載を付加しております。   続いて,2の長期居住権について御説明いたします。部会資料12では,遺言や死因贈与によって配偶者に長期居住権を取得させる場合には,併せて,その居住建物の所有者を定めることも要するものとしておりました。   しかしながら,この点につきましては前回の会議において,仮に遺言で配偶者に長期居住権を取得させる旨定めていても,居住建物の所有者を定めていない場合には遺言が無効となるおそれがあることや,所有者の定めがあった場合でも,当該所有者が遺言者より先に死亡した場合等について別途規律を設ける必要があるところ,そうした規律を設けてまで遺言時に居住建物の所有者を定めることを要求する意義に乏しいのではないかとの指摘がされました。   そこで,本部会資料におきましては,居住建物の所有者を定めることについての記載を削除して,遺言や死因贈与によって配偶者に長期居住権を取得させる場合にも,必ずしもその居住建物の所有者を定める必要はないこととしました。   また,配偶者が支出した有益費の償還について,短期居住権におけるものと同様に,裁判所が相当の期限を許与することができる旨の記載を加えるなどの変更がございます。   そのほか,後注の長期居住権の買取請求権などにつきまして,前回会議における御指摘を踏まえ,表現ぶりを修正しております。   第1についての御説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   「第1 配偶者の居住権を保護するための方策」は,短期の居住権と,それから長期の居住権に分かれておりますけれども,短期については大きな修正はないということでした。長期につきましては,主として前回御指摘がありました点,4ページの補足説明の冒頭に出ている点でございますけれども,この点につきまして御意見に従って改めたというのが中心的な修正かと思います。   この修正の点を中心に,その他も含めまして,御意見を頂ければと思います。いかがでございましょうか。 ○増田委員 今回修正の入った点について,まず,「居住の目的及び」という文言が加えられたことの意味。それから,従来「転貸」となっていたところを,「第三者に使用又は収益させる」と変更されたことの意味について,お伺いしたいと思います。   まず,居住の目的については,これが入ったことによって事業を営むことはできなくなるのかどうかということです。   特に「居住の目的及び」がなければ,以前から店舗であった所で居住している,店舗兼居宅の場合には引き続きその店舗を店舗として使用する,元からと同じ種類のものであるか別のものであるかにかかわらず,店舗として使用することは差し支えないものだろうと考えられるわけですが,「居住の目的及び」が入ったことによって,店舗としての使用はできないという解釈も成り立ち得ると思います。   それから,後の方の転貸についてですが,転貸というためには第三者が独立して占有を行うということが必要であって,単に使用・収益をしているだけでは足りないと理解されております。今度,「転貸」という文言が「第三者の使用又は収益」に変わったことによって,独立の使用・収益に至らないものでも禁止されるのかという点について,お伺いしたいと思います。   それからもう1点は,今さらと言われるかもしれませんが,短期居住権の消滅の効果に関してです。短期居住権に関しては,少なくとも(1)の場合に限って言えば,配偶者は少なくとも2分の1の持分権を有していて,その持分権に基づく占有は妨げられないと,これは物権法の解釈として変わらないと思うのですが,それを前提とすると消滅させるということの意味がどれだけあるのか,その消滅の効果はどうなるのかというのをお伺いしたいと思います。   以上3点,お願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○堂薗幹事 それでは,御説明いたします。   御指摘の点は,確かに若干実質的な修正が含まれているかと思います。まず,「居住の目的」のところですが,現行の使用貸借や賃貸借では,契約又はその目的物の性質に従った用法となっているのに対し,短期居住権では,従前はそのうちの目的物の性質の方だけを書いていたわけでございますけれども,そうすると,元々ずっと居住用で使っていた場合に,それこそ,この短期居住権取得後に店舗にするとか,そういった管理方法の変更があるような場合も用法遵守義務違反にはならないことになりますが,そこまで認める必要はないのではないかということで,こういった修正をしたということでございます。   ただ,元々短期居住権,あるいは長期もそうですけれども,その成立要件の中に相続開始の時に居住していたことというのがありますので,その意味で居住の目的というのを入れているわけですが,従前から店舗兼居住建物として利用していたという場合で,その従前からの利用方法に変更がないような場合までこれに違反するというところまで想定しているものではないのですが,その点がこういった表現で書けているかどうかという辺りは検討したいとは思います。   それから,転貸を修正した理由ですけれども,短期居住権の場合,賃貸しているわけではないので,そういった意味で転貸ではないのではないかということで,ここは使用貸借契約に関する条文を参考にしてこういう形に修正したわけでございますが,ただ,ここでの第三者の使用・収益には,占有補助者として行うものは含まれないという理解ですので,独立にそういった使用・収益をさせた場合を念頭に置いたものということでございます。   それから,短期居住権の消滅の効果でございますが,この点については,確かに御指摘のとおり,通常は配偶者であれば短期居住権がなくなっても2分の1の持分はありますので,それに基づく使用はできるということだろうと思いますが,少なくとも短期居住権が消滅しますと,通常の共有状態と同じように,その持分権者に対してはその持分に応じた対価を支払わなければならないと。要するに,相続分の指定などでその実際の相続分が変わっているような場合はそれに基づく使用しかできないということにもなりますので,実際に明渡し請求までできる事案がどの程度あるのかというのは別にいたしまして,一応の効果はあるのではないかと考えております。   特に,短期のうち(1)の場合は御指摘のように余り実益がない場合が多いのですけれども,(2)については,明渡し請求ができるようになると,明渡しまでの間の賃料相当損害金も発生するということになるので,一定の効果があるのではないかと考えているところでございます。 ○大村部会長 増田委員,よろしゅうございますか。 ○増田委員 ということは,転貸に関しては従来と表現が変わっただけで,実質的に変わるものではないということですね。   居住の目的の方は,これは変わったという理解でいいのですか。 ○堂薗幹事 従前から,元々住んでいる状態のままで使用を続けるということで考えていたのですが,そこが建物の性質により定まった用法というだけだと,少なくともそこは読めないのではないかということで「居住の目的」を加えたものですので,こちらが元々想定していたものとは変わってはいないのですが,先ほど申し上げたとおり,従前の案だと,管理形態が変わった場合でも用法遵守義務違反にならないというような解釈がされてしまうことになるのではないかという懸念があり,そういった解釈を前提にしますと,実質的な中身を変えたということにはなろうかと思います。 ○増田委員 それと,最後の点なのですけれども,共有持分権による場合でも賃料は払わなければならなくなるということですが,平成8年の最判の射程は今後は配偶者には及ばないという理解でいいのでしょうか。   というのは,以前,配偶者以外のその他の相続人に関しては,その平成8年判例の到達点を変えないということだったと思いますが,配偶者にそれが及ばないということになると,配偶者がその他の相続人より逆に不利益な立場になる可能性もあるのですが,そういう案だという理解でよろしいのでしょうか。 ○堂薗幹事 元々の判例は御承知のとおり,被相続人の通常の意思としては,元々被相続人所有の建物に住んでいた場合には,その死亡時点で使用貸借契約を成立させるという意思だろうということで解釈がされているわけですが,短期居住権という権利が創設されますと,基本的にはそこで実現できていた内容というのはこの短期居住権によって実現できることになりますので,そうすると,被相続人の通常の意思としても,こういった場合に使用貸借契約の成立を推認するというところまではいかなくなるのではないかと。その意味では,配偶者との関係では,従前の判例が変更されることにつながるのではないかと考えております。   他方,御指摘のとおり,短期居住権を設けても,それ以外の相続人は適用対象外ですので,従前の判例の考え方がそのまま妥当するのではないかと考えております。 ○大村部会長 よろしいですか。   そのほか,いかがでしょうか。 ○中田委員 ただいまの続きの確認的なことなのですけれども,まず,1(1)イの(ア),「居住の目的及び」というところですが,これを読んだときの印象ですと,居住の目的にも幾つかの態様があって,それによって定まった用法とも表現上は読めてしまうので,少し分かりにくいかなという気がしました。居住の用に供するために,かつ,建物の性質により定まった用法に従ってとするとクリアだと思いますが,その分,増田委員の御指摘になられた変更というのは余計際立つことにはなると思います。それも併せて表現を検討いただければと思います。   それから,同じイの(ウ),これも増田委員御指摘のところですが,ここでの第三者というのは占有補助者のようなものは含まれないということを,補足説明などで書いておいていただくとよろしいのではないかと思います。と申しますのは,元々配偶者が他の子供たちと一緒に住んでいた場合であるとか,あるいは新たにその介護のために誰かを同居させるというような場合は入らないのだということを,はっきりさせた方がいいのではないかと思いました。   この(ウ)の見出しを「賃貸等」と変えられたのですが,これもちょっと分かりにくいかなという感じはしますが,これは別にこのままでもいいかもしれません。   それから,長期の方も併せて申し上げてよろしいでしょうか。   2の(4)の③ですが,以前は「長期居住権を取得した時の原状に復する」となっていたのが,今回,「相続開始時の原状に復する」と変わっています。ちょっと私はどういう議論があったか記憶していないのですけれども,長期居住権を取得するのは相続開始の後しばらくたってからという場合もあり得るわけですね,遺産分割協議などによって。そうしますと,相続開始時からその取得時までの間に目的物に損傷などが生じた場合も,このままですと,その配偶者はその前の状態に戻さなければいけないということになってしまうのですが,それは余り適当ではないように思うのですが,そこはどうでしょうか。 ○堂薗幹事 そこは,実は,短期居住権のウの③で(注2)を付けたところと若干関係するのですが,ここは事務当局における検討の結果このような形に修正させていただいたのですが,基本的に短期居住権から長期居住権に移行するような場合,その場合には短期居住権が消滅した場合でも,その時点で原状に回復させる必要はないのではないかと。少なくとも消滅した時点で直ちに原状回復義務を負わせる必要はなくて,結局そういった場合は長期居住権が消滅したときに原状回復請求権を負わせれば足りるのではないかという理解の下に,そういたしますと,長期居住権の発生根拠のうち,遺言によるものは相続開始によって長期居住権を取得することになりますので,いずれにしてもその原状回復の時点は相続開始時となりますし,遺産分割によって取得するような場合は,基本的には短期からの移行になるのではないかと思います。したがって,その場合は相続開始時から短期居住権者として住んでいるという場合が通常想定されるので,そういった意味で結果的に相続開始時になるのではないかという理解の下に,このような形に修正させていただいているということでございます。 ○中田委員 分かりました。ありがとうございます。   そうすると,例外的にその隙間があいているような場合については,解釈運用で補うという趣旨でございますね。 ○堂薗幹事 はい。 ○中田委員 では,それも何か説明をしていただいたらいいかもしれません。 ○大村部会長 ほか,いかがでございましょうか。 ○沖野委員 今の点ですけれども,説明でも結構かと思いますけれども,本文のほうに書いてもいいのではないかと思います。短期居住権から継続する場合はこちらとかいうことは,割と簡単に書けそうな気がしますので。   それから,もう一つ,2ページの(注2)なのですけれども,2か所に同じ(注2)が付いておりまして,(注2)は「配偶者が遺言又は死因贈与により」取得した場合を除くということになっておりますので,(1)の(ウ)の③に付いている方は,分割によって長期居住権を取得した場合は,短期居住権消滅によって一旦,原状に復する義務が発動してしまうというふうに読めてしまいますが。 ○堂薗幹事 それは趣旨としては逆で,この短期居住権が消滅した時のうち,遺産分割で長期居住権を取得したことによって短期居住権が消滅したときを除くという趣旨ではあるのですが。 ○沖野委員 遺言又は死因贈与の場合には,そもそも原状に復する必要は,短期居住権というのがそもそも生じないから除くということで,これは,除かれている趣旨が(注2)の二つの付き方で違っているのかなと思ったものですから。 ○堂薗幹事 御指摘は分かりましたので,検討させていただきます。 ○沖野委員 もう一度考えてみますが,念のため確認していただければと思います。形式的なことですので。 ○堂薗幹事 はい。 ○大村部会長 中田委員,沖野委員の御指摘の点は,実質はおそらく差はないと思いますので,紛れがない形でもう少し字句については修正をお願いをする,具体的な修文はお任せするということにさせていただきたいと思います。   そのほか,いかがでしょうか。前回の御指摘を受けて削除された部分がございますけれども,これにつきましては特に御意見はないということで,よろしいでしょうか。   「第1 配偶者の居住権を保護するための方策」という点につきまして,今,中田委員,沖野委員から御指摘があった点につきましては,事務当局に字句の修正をお任せいただきたいと思いますけれども,そのほかの点につきましては,いかがでございましょうか。よろしゅうございますでしょうか。 ○沖野委員 本当に今さらながらなのですけれども,念のため確認をしておきたいところとして,長期居住権の買取請求の権利ということで,これ自体は一定の対価をもって長期居住権を取得しているはずなので,その回収を図る手法として入れるということで,この効果は,買い取るという話ですけれども,所有権と一体になるので結局は消滅するということでよろしいですよね。それだけ確認をさせてください。 ○堂薗幹事 はい。 ○沖野委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ほかにいかがでございましょうか。   それでは,第1点につきましては,先ほど申し上げましたような修正をさせていただくということで,先に進ませていただきたいと存じます。   「第2 遺産分割に関する見直し」につきまして,事務当局の方から御説明を頂きます。 ○下山関係官 それでは,関係官の下山の方から,「第2 遺産分割に関する見直し」について御説明させていただきます。   まず,資料の5ページ,「配偶者の相続分の見直し」についてでございますけれども,前回会議において頂戴した御意見を踏まえて,特に乙案について記載内容を整理したというものでございます。   次に,資料の6ページ最下段から,可分債権の遺産分割における取扱いについてでございます。   甲案につきましては,前回資料から特段の変更はございません。   乙案につきましては,相続人に例外的に可分債権の行使を認める方策について,前回会議の結果を踏まえて検討をしております。   まず,預貯金債権について一定の管理処分権限を有する預貯金管理者を通じて相続人に預貯金債権の行使を認める制度,これを提案しておりますが,これは現行の遺産管理人,この制度の特則として位置付けるということを想定しております。すなわち,預貯金管理者は民法第103条に定める保存行為等を行う権限を有し,預貯金の管理に際して生じた費用の償還請求権,また報酬請求権を有することになりますが,預貯金管理者制度,これを設けた趣旨に鑑みますと,預貯金管理者が選任された場合には,預貯金管理者に預貯金債権の行使について一定の裁量を認め,その判断に基づいて預貯金の払戻しを受け,生計の維持等のためにこれを相続人に交付,あるいは相続債務を弁済することができることとする必要があるものと考えられますため,預貯金管理者には民法第28条を適用しないこととして,法律上預貯金債権についての包括的な処分権限を付与することとすることや,預貯金管理者を選任する際に,家庭裁判所が事案に応じて一定範囲の権限を付与することとするといったことが考えられるかと思われます。   また,預貯金管理者の義務といたしましては,遺産管理人と同様に,預金の管理についての善管注意義務や預金目録の調製義務,相続人及び家庭裁判所に対する報告・管理計算義務を課し,家庭裁判所による監督に服することとすることが考えられます。   ところで,このような預貯金管理者の制度を設けた場合には,相続人は,その都度裁判所の判断を求めることなく,必要に応じて預貯金の仮払を受けることが可能になりますが,他方,預貯金管理者の権限や家庭裁判所の監督権限の範囲,この要件の定め方次第では,かえって相続人間の公平を図ることができなくなるほか,預貯金管理者及びこれを監督する家庭裁判所に過大な負担が掛かり,制度の適切な運用が困難となるといったことも考えられるところです。   そこで,預貯金債権につきましては,乙案(注2)㋐記載の銀行窓口における仮払の制度を設けました上で,これによって対処することが困難な場合につきましては,現行の仮分割の制度における「事件の関係人の急迫の危険を防止するために必要があるとき」といった厳格な要件を緩和して,ある程度柔軟に仮分割を認めるといった方策によって対処することも考えられます。これらの点についても,御議論いただければと考えております。   最後に,資料の9ページ,一部分割の要件及び残余の遺産分割における規律の明確化等についてでございます。   前回会議では,一部分割をする場合に審理の迅速化を図る観点から,中間決定によって遺産の一部を除外することができるようにすべきではないかとの御指摘がございました。この点については,一部分割の要件を明確化した場合に,一部分割をすることが許容される場合かどうかについて当事者間に争いがあるときには,この争いは家事事件手続法第80条に規定しています「審判の前提となる法律関係の争いその他中間の争い」に該当することになるものと考えられます。したがって,特段の手当てをしなくとも,家庭裁判所は争点を整理するために必要がある場合等には,中間決定をすることによって審理の迅速化を図ることができるものと考えられるところです。   なお,この中間決定につきましては,取消し又は変更の対象になることなどから,争点整理としての効果は限定的なものではないかといった御指摘もございます。ただ,中間決定がされた場合には,通常はその判断に従って終局審判がされることから,なお争点整理としての事実上の効果を期待することができるのではないかと考えております。   他方,現行法の中間決定とは異なり,遺産の一部を審判の対象から除外する法的効果を有する決定の制度を新たに設けるということも考えられますけれども,このような制度を設けた場合には,当事者の手続保障の観点から,当該決定に対する不服申立てを認める必要があるものと考えられます。そういたしますと,遺産の一部を審判の対象から除外する旨の決定がされた場合に,これに対する不服申立てが提起されたときには,上級審の判断がされるまでの間,事実上遺産分割の手続を行うことができないといった場合も考えられ,かえって審理の迅速化の要請に反する事態を招くおそれもあると考えられるところです。   こういった点につきましても御意見を頂ければと存じます。   説明は以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   「第2 遺産分割に関する見直し」につきましては,3項目がございます。そのうちの一つ目の「配偶者の相続分の見直し」につきましては,字句の修正等はなされておりますけれども,実質的な内容には変更はないという御説明でございました。   「2 可分債権の遺産分割における取扱い」につきましては,甲案については特に変更はない,乙案につきまして,預貯金管理者制度等による手当てにつきまして,御説明があったわけでございます。   そして,3番目の「一部分割の要件及び残余の遺産分割における規律の明確化等」につきましては,前回出ました手続上の疑義につきまして,一定の御説明があったと承りました。   この「第2 遺産分割に関する見直し」につきましては,浅田委員の方から資料が提出されておりまして,これにつきまして御発言があると伺っております。 ○浅田委員 ありがとうございます。本日は中間試案の取りまとめの段階であることを認識しつつ,その上で,恐縮ながら少々お時間を頂戴しまして,私どもにおいて作成し手元に配布させていただいた資料に沿いまして,説明させていただきたいと存じます。   すなわち,2の可分債権の取扱いに関し,今回修正がなかった甲案でございますけれども,従前の会合でも申し上げた,いわゆる勝手払い問題について,再度意見を申し上げたいと思います。   なお,今回の資料では,乙案については,前回の検討に加えて更に仮払制度等につき検討を進めていただいた点は有り難く受け止めております。乙案になった場合には,銀行界としても実務対応が可能となるよう検討をしてまいりたいと思います。   それでは,お手元に配布しました「可分債権の取扱い(相続預金)等に関する意見の補足」という資料を御覧ください。   1枚おめくりいただきまして,2枚目から3枚目は,第9回会合において私が配布しました資料を再度お付けしたものです。繰り返しとなり恐縮ですが,本論点は甲案の目指す預金の円滑な払戻しを実現するために重要な論点であります。そのため,銀行界が従前来主張しています別途の免責規定の設置が可能である場合は別として,本中間試案作成に当たり,その前提となる本論点に係る解釈について,その問題関心を改めてここで申し上げ,委員の皆様,事務当局,ひいてはパブコメを頂く方々の間に,この問題関心,及び,可能であればこの解釈論について共有していただければ有り難いと考えております。   それでは,1枚おめくりいただいた右下1ページ目を御覧ください。   本論点は,具体的ケースを想定しなければ分かりづらいと思いますので,第9回会議で御説明したものと同じ想定事例にて御説明いたします。すなわち,A,B,Cと3名,かつ相続分が均分の相続人がいる相続事例を想定いたします。   相続人のうち1名たるAが,その相続開始の事実を秘して,被相続人のキャッシュカードを用いてATMで被相続人の預金60万円のうち40万円を引き出したとします。一方,BとCは被相続人の死亡時の残高60万円の3分の1である20万円の払戻しを請求したとします。ここでBとCからの請求時においては,預金残高は20万円しかありませんので,銀行としてはBとCに対して幾ら払い戻せばいいのかという問題に直面することになります。   ページをおめくりください。今申し上げたケースにおいては,BとCの請求時の預金残高を法定相続分で分ける方法など,三つの考え方があります。ここに①,②,③があるわけですけれども,この点,定説はないと考えておりまして,銀行は相続人間の紛争に巻き込まれ,また二重払いリスクを回避するため,円滑な払戻しができなくなるということになります。   そこで,これまで私どもは,請求時残高で払戻しを行う限り免責される旨の規定の創設や,銀行に相続の事実を告知しない間に行われた払戻しの部分については支払いを求めることができない旨の規定を設けることを提案してまいった次第です。   これに対しては,前回の会合におきまして事務当局より,本問題については立法措置による必要はないということを前提だと認識しておりますけれども,要約いたしますと,勝手払い事案においては,銀行側に民法478条の免責が適用される限り,実際には請求時の債務残高でのみ弁済義務を負うこととなると考えられるのではないかとの御見解が示されたという認識でございます。   そこで,ページをおめくりください。ここからが今回意見を述べさせていただきたいところです。   前回の事務当局の見解については,結論として異論はありません。ただし,それを一般化することで将来の解釈リスクを減らし法的安定性を高めるという観点からは,その法的構成について整理を行っておくことが有用ではないかと考えております。   そこで,先日の事務当局の御見解を敷衍して,今回,問題意識を整理してまいりました。そこで,今から,まずは私どもが整理したところを述べさせていただき,その議論が御異論なく広く共有され得るものなのか,この場で皆様にできれば確認させていただきたいところでございます。また,共有され得るものであれば,事務当局において,補足説明等においてその旨,御解説を頂くことを御検討いただければ幸いでございます。   それでは,整理したところを述べさせていただきます。   この問題を検討するに当たっては,詰まるところ,銀行が相続開始の事実を知らない間になした被相続人の名義預金の払戻しが相続人間の関係でどのように充当されるのかという問題に帰着すると理解しています。   判例理論によれば,相続開始とともに預金債権は当然に分割され,法定相続人に帰属することになります。先の事例で言えば,下の図のように,A,B,Cにそれぞれ20万円帰属することになります。この黒字で書いてあるところですね。左も右も同じです。ここで銀行が40万円払戻しをしたときに,その払戻しがどの相続人のどの部分に対するものとして充当されるのかというのが問題であると思います。   ここでは図のとおり二つのパターン,すなわち左のパターンαにおける緑太字のように按分して,すなわち40万円割る3の13.3万円ずつ充当される考え方が一つあります。それと,真実はAの払戻しなので,パターンβのように,右側でありますけれども,黄色い点線のように充当される考え方があり得るのではないかと思いました。   これは,言わば分割複数債権における準占有者に対する免責の充当方法に関する問題ですが,この点については私が思うに,判例もなく,また従前,学説も見受けられない論点だと思います。この点,私は,銀行側が相続開始の事実を知らずになされた払戻しは,言わば概念的に被相続人の預金についての払戻しとみなされ,民法478条の対象も被相続人の預金への払戻しとなるのが合理的ではないかと考えます。むしろ,こういった見方をするほかないのではないかと思います。   そして,これを可分債権の理論に引き戻した場合,考えてみますと,各可分債権に充当されなければならないのですが,この点を考えるに,パターンαの緑太字のように按分されて払戻しがなされ弁済充当がなされることになるものが妥当ではないか。まず,このように考えるほかないと考えます。   そして,このような整理を前提としますと,銀行は残額20万円の払戻し請求があった際に,A,B,Cそれぞれに20万円から13.3万円を引いた6.7万円を払い戻すことになります。   なお,民法478条の効果については,御案内のとおり,判例は弁済の効果が確定的なものであると判示しておりますけれども,学説では相対的効力と捉え,抗弁権的に解するものが有力とされています。しかしながら,弁済の対象及び範囲を,弁済後に判明した事実関係に従って,弁済者すなわち銀行がその裁量で変更することの可否についての議論は見当たらないと思っております。この点,私は裁量で変更することは合理的ではなく,不可と考えております。   したがって,本事案において,当初ATMでの払戻しの際には認識していなかった銀行が,その後にAによる払戻しとの事実を認識するに至ったとしても,Aには6.7万円を支払うことになるとの解釈になると思います。   ちなみに,最近の東京高判平成27年11月26日判決において,本資料4ページ下段のパターンαに沿った結論が判示されております。この判決は,店頭払戻し事案における下級審判決であり,また,判決文において本論点についての詳細な理由は見当たらないものなのですが,本論点に関する数少ない高判された判決例であり,参考になるかと思います。   この結論につきましては,本資料3ページで挙げた3案のうち①,一番上の考え方と同じになります。この考え方でよいとすると,銀行は同じページの記載の②,③とするか迷ってしまうことなく,準占有者弁済が主張可能で,かつ,銀行がその主張を行う場合においては一義的に①の処理を行い円滑に払戻しが可能となることになります。そして,勝手払いによりAが不当に利得した部分は,不当利得の返還請求等により終局的な解決を図ることになると思われます。   以上,述べさせていただいた考えに違和感がないか事務当局にお伺いしたいと同時に,また,可能であれば委員の皆様のお考えを伺うことができれば有り難く存じます。   私からは以上です。お時間を頂戴しまして,ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,今のような御発言がありましたので,まず事務当局の方から。 ○堂薗幹事 前回は,基本的に預金契約上の工夫をすることによって,要するに,相続開始の事実,被相続人が亡くなったということを金融機関に知らせずに権利行使をした場合には,死亡前に,被相続人の生存中に払い戻された場合と同じような取扱いをするという約定を設けた上で,そのような取扱いをするということが考えられるのではないかということで,お答えさせていただいたところでございます。   特段,それ以上更に付け加えて申し上げることはございません。 ○浅田委員 約款上の手当てにつきましては,もちろんそれが必要,有用ということであれば,今後における検討の一つとなりますけれども,今回の説明資料からは落としています。この約款上の手当てについては,そもそも民法的にどうなのか,またその預金約款上の位置付け,さらにそれは免責のための前提となるような銀行の善意,無過失を推定するのに有用なのかも併せて検討していく必要があろうと考えます。ないしは,いわゆるその充当の方法における特約として,その約定が必要なのかということも,多分議論になろうとは思いますのでその点も併せて必要であれば検討していきたいとは思っております。まずは,今回御説明した資料に沿って,充当の点についての皆様の御意見が伺えれば大変有り難く思っております。 ○沖野委員 立法をするという前提ではなくて,取りあえず当面は現行法の解釈として,複数の考え方のうち,提示された解釈についてどのように考えるかということと思われ,その点をどこかで明らかにする,あるいは確立できれば,非常に実務的にも円滑に進むということと理解しました。   それで,今回の問題の前段階というか場面設定といいますのは,銀行なり債務者は相続の事実を知らず,そのためにあたかも被相続人による権利行使という形で払出しがされたというときに,その後,相続が判明し,その際に共同相続人からの請求に対してどのような支払いをすべきかという場面の問題である。更に,その前提としましては,相続の開始を知らないでなされた払出し自体については,478条による準占有者弁済によって有効な弁済とされるという前提ですので,金融機関の支払い義務は残額のみについてあるところ,その残額をいかにして支払うのが金融機関の義務なり債務者の義務なのかという問題だと理解しました。   そして,これはもちろん全く個人的な見解ですけれども,私は,解釈としては浅田委員がおっしゃった考え方が説得的ではないかと考えております。   478条によって免責されることの意味ですけれども,飽くまで被相続人,実際には権利能力はなくなっているわけですので,形式としては被相続人に対するということにならないのかもしれませんが,もし被相続人に対するのでないならば,例えば相続人全員を代表してとか,相続のための費用ですとか,あるいは葬儀費用とかは費用負担者はよく分かりませんけれども,そういったものに必要であるという場合の払出しである場合や,あるいは相続債権者が預金の一部について権利行使をしたような,その被相続人が負担する,被相続人が死亡している時点では相続財産全体で負担する部分というか,その部分として正当な権利行使がされる場合と同様に考えられるのではないかと考えられ,それがしかし,実は権限を欠いたことによって準占有者弁済になってしまうのだけれども,有効なものとなるという場合に比して考えられるのだと思います。被相続人があたかも権利行使しているかのような形で有効になるのだとすると,それは相続財産全体なり相続人全体でその部分は払い戻されたというふうに,債務者との関係ではなるのではないか。そうすると,残っている残額については相続分によって払い出されるということで,①の解釈になるのではなかろうかというように現在は考えております。   細かく言えば,2ページの(注2)も,そうすると,「出金者がAと特定できていれば」と書かれていますが,それも,Aがどういう地位において払出しを受けているかということによるということかと思います。私個人はそのように考えております。 ○大村部会長 何かほかに御発言ございますか。   浅田委員の御趣旨は,甲案をとったときに,その後の取扱いの安定性を確保したいという趣旨ですね。特別な規定を置かずに解釈で対応するという場合に,解釈についてどのくらいの幅があるのかということに関心をお持ちでおられると理解しました。478条が何らかの形で適用されたとして,その後の債権の状態がどうなるのかということについて御意見を伺いたいという御趣旨だったかと思います。   沖野委員からは,478条が適用される際の考え方をてこにして,その後の債権の状況について一つの考え方をお示しいただいたわけですが,委員の皆様に解釈論を伺って,だからどうなるのだというものでもありません。しかし,何かこの場で御発言があれば伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○潮見委員 現行法の解釈としては,Aが被相続人の預金として払い戻したということであれば,沖野委員がおっしゃられたとおりではないかと,私も思います。   ただ,問題なのは,浅田委員が出された例はATMで払い戻しているのですよね。そのときに被相続人の預金だという形で払い戻した,自分はその何らかの関係者だといって払い戻した場合と,いや,自分にはもうこれだけの持分があるのだという形で,共同相続人の一人であるAとして払い戻したという場合かというところが,なかなかその具体的な事案において,確認ができないのではないかと思うのです。窓口に出てくればまた別かもしれませんが,設例で出しておられるようなATMの場合には難しいので,そういうこともあって,堂薗幹事の先ほどの発言にもつながっていっているのではないかというような感じもいたしました。   そういう意味では,具体的に478条とか現行法の下での解釈がどうかということをもちろん踏まえた上で,その上で,更に銀行業界としても何か対策なり,あるいはその思案をするところを更に深めていっていただいた方がいいのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。解釈論として沖野委員がおっしゃっているのと一致する御意見を頂いたと思いますけれども,しかし実際の事案の出方によって,その解釈論が妥当するかどうかということが分かれてくる場合があるので,その辺りについては手当てが必要なのではないかという御意見だったかと思いますが,ほかに何か御指摘ございますでしょうか。   浅田委員,差し当たり,今のようなことでよろしゅうございますか。 ○浅田委員 はい,ありがとうございます。この論点について解釈論で処理するからにおいては,別に判例がない限り終局的な解決とはならないということだと思います。そこで,立法論での解決も一法かと思われますけれども,これを行わないということであれば,どこまでその解釈によって実務上の論点を乗り越えられるのかどうかということについて,銀行界としても判断することだと認識しております。今回の御議論により,その許容度を,ちょっと感触をある程度つかめたのかなと思っております。   この点については私どもも,もちろん自らの問題として検討してまいりたいと思いますけれども,ひいては国民にとって非常に利便性に関わることでございますので,御意見等がございましたら引き続きお寄せいただければとは思っております。   また,繰り返しになりますけれども,もしこの議論の中で書けるものがあるのであれば,補足説明等で反映していただければ,私どもとしては有り難いと思います。   以上でございます。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   今の可分債権の取扱いも含めまして,この「第2 遺産分割に関する見直し」につきまして,他の御意見を伺えればと思います。いかがでございましょうか。 ○潮見委員 甲案の(1)の⑦の㋒ですが,⑥の相続人とあるのですが,以前のものであれば,⑥を見れば,「相続人が遺産分割により法定相続分を超える割合の可分債権を取得したときは,その相続人は」ということでしたよね。今回は,その「法定相続分を超える割合」を消していますよね。ということは,法定相続分を超えない割合で可分債権を取得した相続人,それもこの⑥の相続人に入るのかどうかということだけ,ちょっとだけ教えてください。 ○堂薗幹事 この⑥を修正した趣旨は,第3の,遺言による権利変動のところでも同じような規律を設けているのですけれども,そこと表現の平仄をとったという趣旨でありまして,実質を変えるつもりはありませんでした。   したがいまして,この⑥の相続人というのは,本来は法定相続分を超える割合の可分債権を取得した者を指している趣旨だったのですけれども,そのような趣旨で修文をした関係で,そこが読みにくくなっているところはあるかと思いますので,表現については工夫させていただければと思います。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○村田委員 預金管理者の関係なのですけれども,ここの資料にも今回お書きいただいたとおり,なかなか預金管理者の制度を正面から定めようということになると課題も多いところですので,これを本文からは落としていただくということには賛成ですし,そういう意味で,預金管理者の制度は今回,意見を広くお聞きする主たる対象ではなくなるということだと理解を致しましたが。他方で,預金管理者の制度については補足説明に記載されておりまして,補足説明に記載されることによって意見を出しても構わないという位置付けになるのであれば,預金管理者の持つ裁量の性質なり範囲なりということについて,もう少しイメージを持ちやすいような説明をしていただけたら有り難いなと思っております。   この点,補足説明では,預金管理者の制度について,遺産管理人の制度に近づけて規定するという考え方が示されているのですけれども,財産管理を目的とする既存の法制度のうち,どういったものに近づけたらイメージしやすいかということを考えたときに,遺産管理人の制度や相続財産管理人の制度と言われているようなものにおいては,基本的に財産を使わせないで保全しておくということが想定されている一方で,預金管理者の制度では,むしろ,ある程度の裁量を預金管理者に与え,その裁量の範囲内で預金管理者をして預金の払戻しを受けさせるなど目的財産を使わせることが一定程度想定されているように思われます。このように目的財産を使わせるという前提で考えると,遺産管理者の制度というのは,むしろ成年後見制度ですとか,一部代理権を与えられる保佐,補助の制度など,ある意味,財産をいかに有効に使ってくかという観点から財産を管理する制度に近いと考えることもできるように思われます。   預金管理者の制度については,まだ詰められていないところも多く,既存の法制度のうちどれに近づけた方がイメージしやすいのかというのは,なかなか難しい問題ですけれども,単に遺産管理人の規定がある程度使えるのではないかというだけで預金管理者の制度を遺産管理人の制度に近づけて考えるというのは,ややミスリーディングかなという気もするものですから,この点については慎重に検討して頂ければ有り難いかなと思います。   また,制度を運用する裁判所の立場からしましても,預金管理者に一定の代理権を付与する,あるいはその裁量を認め,その行使について監督をしていくということになったときには,そもそもどういう範囲のことができる人として預金管理者が想定されているのかということをイメージできないと,適切な代理権付与や監督ができませんので,その点についても,もう少し御説明を頂けたら有り難いなと思ったところです。 ○堂薗幹事 はい,検討させていただきます。そこは正にこの預金管理者をどういった場合に選任できるようにするのか,どういう目的で選任できるようにするのかというところと密接に関連するものと思いますが,正直なところ,まだそこが十分に詰め切れておらず,具体的に書くことが難しい面がございます。もっとも,もう少しイメージがしやすいようにという御趣旨を踏まえて,少し考えてみたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。よろしゅうございますか。 ○村田委員 はい,結構です。 ○大村部会長 そのほか,いかがでございましょう。 ○石井幹事 資料の10ページの3の(1)②の「一部分割の審判において,特別受益に該当する遺贈又は贈与の全部又は一部を考慮することができなかった場合はこの限りでない」という部分については,記載ぶりが従前のものから変更されております。   前回の部会の際,この要件の位置付けについて,実体法的な概念であるというような御説明もあったかと思うのですけれども,この書きぶりからすると,必ずしもどのような場合が想定されているのか明らかでないようにも思われるので,補足説明等では,この意味するところを少し明確にしていただければなと思っています。   例えば,一部審判がされた手続において,客観的に主張はできたのだけれど主張しなかった特別受益等や主張はしたけれども認められなかった特別受益等を残部審判の手続の際に主張することができるのか,できないかとかいった点等をもう少し明確にしていただけますと有り難いなと思います。 ○堂薗幹事 検討いたします。 ○大村部会長 ほかにいかがでございましょうか。   「第2 遺産分割に関する見直し」について,字句の修正と,それから補足説明の中での記載について御意見ありましたけれども,そのほかの点につきまして,いかがでしょうか。 ○村田委員 中間決定については,今回,補足説明をしていただいているのですけれども,一部除外はしないという中間決定がされれば,遺産として認められる財産全体が分割対象になることをその後の手続の前提にできますので,それはそれで意味があることだと思います。他方で,一部除外をするという中間決定をすることがその後の手続にどのような意味を持つことになるのかということを考えたときには,少し分からないところがあります。この点に関しては,前提として,一部除外をするという中間決定をしたとしても,そのことによって審判対象からの除外という効果が直ちに生じるわけではなく,審判対象から一部を除外することが最終的な判断の中で改めて示されるという理解でよろしいのでしょうか。   すなわち,その最終的な判断のところで,改めてこの部分が除外されるという判断が出ることによって,はじめて審判対象からの除外という効果が生じ,その点についての不服は最終的な判断に対する不服として申し立てられるという構造になるのか,それとも,そうではなくて,中間決定により直ちに審判対象からの除外という効果が生じ,それ自体が独立して不服申立ての対象にされるということまで含めて言っておられるのかというところを確認させていただきたいのですけれども。 ○堂薗幹事 基本的には後者の方で考えておりまして,ただ,中間決定で,この部分は除外するという判断をしても,その後,裁判所がそれに拘束されるわけではないという面が家事事件の場合にはありますので,先ほどのような説明をさせていただいたところです。中間決定においては,除外すべき財産を特定せずに一部分割し得るとか,そういったことは想定しておらず,基本的には除外すべき財産を全部特定することを想定しておりますが,そのような前提の下で,争点整理の目的のために中間決定が利用できるのではないかという趣旨でございます。 ○村田委員 今おっしゃられたとおり,正に争点整理で,言ってみれば民事訴訟で弁論を制限するような位置付けのものと理解するとなると,そのこと自体にも不服があるときには,それはもう最終的な終局決定の中で併せてといいますか,不服申立てができるという形で不服申立権を確保すると理解すればよろしいでしょうか。 ○堂薗幹事 はい。 ○村田委員 分かりました。 ○大村部会長 ほかにいかがでございましょうか。   それでは,「第2 遺産分割に関する見直し」につきましても,表現につきましては所与の修正を加えていただきまして,この内容で取りまとめをさせていただくということにいたします。   続きまして,「第3 遺言制度の見直し」につきまして,事務当局の方から御説明を頂きます。 ○満田関係官 それでは,関係官の満田から,「第3 遺言制度の見直し」について御説明させていただきます。   まず,「1 自筆証書遺言の方式緩和」につきましては,前回の部会資料からの変更点はございません。   続きまして,「2 遺言事項及び遺言の効力等に関する見直し」につきまして,前回会議では特段の異論はございませんでしたが,債券取得の対抗要件の具備に関し,より簡易な通知方法の要否について今回,補足説明に記載させていただきました。これは部会資料12ページの(1)②アに記載されております「相続人全員による通知」に代えて,「権利を取得した相続人が,遺言の内容を明らかにする書面を示してする通知」という方法を設けること。このことが可能かつ適切なのか検討したいというのが,その趣旨でございます。   この点につきましては,本日机上に配布しました1枚紙の表,「遺言による権利移転に関する対抗要件の要否の整理表」というものを御覧ください。   この表は,不動産と債権について,相続分の指定,遺産分割方法の指定,これは相続させる旨の遺言でございますが,それと遺贈等の遺言による権利取得において,現行法上の対抗要件の要否とその方法がどうなっているか,今回新たに規律する改正後の対抗要件の要否及び方法,これをどうなるかというところを整理したものでございます。   これまでは遺言による権利の承継に関する,部会では規律として特定承継,これは遺贈でございますが,遺贈であるか,相続分の指定や遺産分割方法の指定のような包括承継であるかを問わず,法定相続分を超える部分の権利取得については一律に対抗要件の具備を要求することとした上で,債権を取得した場合の対抗要件の方法について特則を設けるということとしておりました。これは,その表の債権というところの改正というところの一番下に記載されてあるものでございます。   しかし,この点については,現行法上は相続分の指定や遺産分割方法の指定等の相続による債権の取得については,対抗要件が不要と解されているにもかかわらず,改正後はそのいずれについても対抗要件の具備が必要となることになりますし,その場合に,その方法として,相続人全員による通知か遺言執行者による通知かしかないことになりますと,このような通知方法では権利の取得者の負担が相当重くなるのではないかという点が気になったというところでございます。   また,不動産の権利取得につきましては,その表の参考というところに書いてありますように,対抗要件の具備については権利取得者による単独での登記申請を認めることとされている部分もございますので,その場合や,その表の一番下の米印に書いてありますとおり,遺産分割協議による債権の取得については,権利取得者による単独での通知を今回の中間試案でも認めているということとの関係で,遺言による債権の取得についてもそのような権利取得者単独での対抗要件の具備を認めることがどうかと,これを認めないことはこれらのほかの規律との整合性とどのように整理すればいいかという点も問題になるように思われましたので,このような権利取得者による単独での通知を認めることができるのかどうかに関し,中間試案の補足説明に記載することの是非について,是非御議論いただければと存じます。   続きまして,3番の「自筆証書遺言の保管制度の創設」につきまして,説明をさせていただきます。   この方策の内容に実質的な変更はございませんが,表現ぶりの修正等を施しております。   前回会議におきましては,遺言保管業務を行う公的機関について,今後も議論が必要であるとしても,現時点で既に特定の機関,例えば市区町村を想定しているのではないかといった誤解を招かれないように,中間試案においても丁寧な説明が必要であるとの御指摘がなされました。また,仮に市区町村で保管業務を行うとした場合には,情報漏えいのリスクや転居時における対応の困難さ等の問題がございますので,難しい面があるのではないかという御指摘も頂いたところでございます。   そこで,このような御指摘を踏まえまして,本部会資料では(注1)のところに記載がありますとおり,保管業務を行う公的機関については,設備や実務の面において,全国で統一的な対応が可能な機関を想定している旨を記載しております。   なお,従前記載しておりました(注5)の部分につきましては,内容がやや細かいところに及びますため,こちらからは削除しておりますが,この点は中間試案の補足説明において同様の記載をする予定でございます。   更に,4番の「遺言執行者の権限の明確化」に関して,更に説明をさせていただきます。   まず,遺言執行者が負う一般的な義務の内容に関して,従前から遺言執行者が忠実義務を負うことを明示することが考えられるのではないかとの御指摘を頂いていたほか,少なくとも民法第108条が適用されることを明確にすべきであるなどの指摘も頂いておりました。   この点については,遺言執行者は現行法の下でも法定代理人であると解されておりますところ,一般的な権限の見直しはこれらの考え方を変更するものではございませんので,民法第108条が適用されることを当然の前提とするものでございます。   もっとも,この点を条文上どのように明確化するかに関しましては,法制上の問題もございますので,忠実義務の明文化も含め,遺言執行者の一般的な義務,この内容の定め方については今後の検討課題である旨を注記することといたしました。   更に,預貯金債権につきましては,その行使権限に関して,従前から遺言執行者に原則的に権利行使の権限を認めるべきものは預貯金債権に限られないのではないかなどの御指摘も頂いておりましたので,前回の部会資料では,継続的契約から生じる遺産に属する権利につきましても,解約事由に着目した上で一般化できないかという考え方を取り上げさせていただいたところでございます。   このような考え方については特段問題点の指摘はございませんでしたが,遺言執行者に対して,その遺産についての処分権限を付与すること,これが濫用の危険性があるのではないかという懸念が従前から示されたところでもございますので,この点については,遺言執行者に処分権限を付与する場合がどういう場合にあるのか,どういう場合に正当化されるのかといった観点から慎重な検討が今後とも不可欠であると思われますので,今後の検討課題であるとの注記を致しました。   最後に,遺言執行者の復任権・選任・解任等につきましては,前回会議におきまして,遺言執行者に相続人全員の同意を得て辞任することを認めるなど辞任の要件についても緩和すべきではないかとの御指摘を頂きましたが,現行法上,代理人の復任権と辞任の要件については一定の関連性があると思われますし,復任権と辞任の要件のいずれにおいても一定の制限が課されていること,遺言執行者の自由な辞任を認めますと,遺言執行者の存否に関し家庭裁判所の判断が困難になるおそれがあることなどがありますので,その復任権に関する要件の緩和に加えて,更に裁判所の許可を得ずに辞任を認めることについては,必要性及び相当性になお疑問があると思われましたので,今回の辞任要件の緩和については注記をしないことといたしました。   なお,この点につきましては,中間試案の補足説明においては記載する予定でございます。この点についても御指摘等を頂ければと存じます。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   遺言制度の見直しにつきましては,4項目がございます。   1点目の「自筆証書遺言の方式緩和」については,特に変更はないということでございました。   2点目の「遺言事項及び遺言の効力等に関する見直し」につきましては,債権についての対抗要件の具備について,補足説明の中で問題提起をしたいという御趣旨だったかと思います。   それから,3点目の「自筆証書遺言の保管制度の創設」,これは13ページの(注1)で保管を行う公的機関について一定の記載をしたというのが中心かと思います。   4点目,「遺言執行者の権限の明確化等」につきましては,15ページの(注1)で,「遺言執行者が負う一般的な義務の内容をどのように定めるかについては,なお検討する」という記載をするということが中心的な修正だったかと思います。   あわせて,16ページの(3)の(注2)に,「遺言執行者に権利行使を認める債権の範囲については,なお検討する」という記載を加えるということだったかと思います。   以上の点,あるいはその他の点も含めまして,御意見を頂ければと思います。いかがでございましょうか。何か御指摘ございませんでしょうか。 ○浅田委員 それでは,幾つかあるのですが,まず,2の「遺言事項及び遺言の効力等に関する見直し」に関して,意見というほどでもないのですけれども,感想を申し上げておきたいと思います。   この中で,「簡易な通知方法」ということが今,御検討されるということでございます。この点に関しては,銀行預金も含めて関心を持つところでありますけれども,どれがいいのかということについては,銀行界としてまだ確定的な意見を述べる段階にはありません。ただ,私見としては,簡易な通知の方法が盛り込まれることについては前向きに検討できるのでないかと,相続人又は受遺者の負担感にも鑑みて,思っております。   ただ,やはり悩みどころというのは,全員からということで,権利義務関係が明確であったことが,それが簡易化されるわけですから,その確認の確実性というのがいかに担保されるのかということであろうと思います。   これは,この表でお示ししていただいたとおり,ある意味,確認というのは非常にまだら模様になっているわけですから,そもそも全て確認するのかというところのバランスの問題だと思っております。この点について,引き続き検討していきたいと思っております。   ただ,現状は多分に中間的なところがあるかと思いまして,簡易な方法ということを追加する場合でも,何らかの留保といいましょうか,例えばその相続開始の事実や,自ら受遺者であるということを示す資料とともに通知した場合とか,何かそういう条件というものの追加を今後検討する必要があるのかなと思っております。これは意見でございます。 ○堂薗幹事 どうもありがとうございました。   こちらで是非,今日御意見をお伺いしたい点といたしましては,先ほど満田の方から御説明したとおりなのですけれども,遺産分割の場合の対抗要件具備につきましては,その権利を取得した人が遺産分割の調停調書,あるいは審判書,あるいはその遺産分割協議書と,その相続人の範囲を明らかにする書面を示して通知すれば,対抗要件の具備を認めるということにしておりますので,それとパラレルに考えますと,こちらの遺言の方も,その遺言書なり,あるいは自分の身分を明らかにするような書面を添付することによる対抗要件の具備を認めることが必要かどうか,あるいはそれが相当かどうかという点について,何らかの御意見がございましたらお伺いできればと考えております。場合によっては中間試案の補足説明に書くことも考えたいと思いますし,今後我々の方で検討を進めていく上でも,もしこの段階で何か御意見がございましたらお聞かせいただければと考えている次第でございます。 ○浅田委員 認識を明確にしたいための確認なのですけれども,パラレルということにつき,こういう問題認識があるのではないかということを指摘させて頂きます。両者は,理念的にはパラレルに考えられるとは思います。ただ,現実的な信頼性のレベルということからすると,遺産分割は,その分割協議が成立して全員合意しているわけですから,印鑑証明とかによる確認ということも事実上は安易に取られるという状況です。他方で,この場面は,遺言でありますから,遺言に関連しては様々な無効とか偽造とか信頼性に対する疑義が呈されるものに関してあるわけです。そこで,それを同列に論じていいのかどうかというところは,これはどちらかというと実証的な観点から検討されるべきではないかなとは,今,思いました。 ○堂薗幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 御意見として承ります。   そのほか,いかがでございましょうか。今の点について何かございましたら,是非お聞かせいただきたいと思いますし,その他の点でも結構出ございます。 ○山本(克)委員 私もちょっと公務,本部の関係でなかなか出席できずに乗り遅れていますので,場合によってはもう既に議論済みのことをお伺いすることになるかもしれませんけれども,遺言執行者の権限の15ページの(1)の②は,「遺言執行者の行為の効果は相続人に帰属する」というのは,これは代理的なことを考えているということですよね。   それで,16ページの(3)のアの①で,ここは「遺言執行者が遺贈義務者となる」というのは,何か矛盾しているような気がする。実体法的な義務者になるということになっているように思って,何か矛盾するような気がするのですが,そこはちょっと私の勘違いでしょうか。 ○堂薗幹事 遺言執行者の場合,基本的に相続人の代理人的な立場で行為をするということにはなるわけですが,ただ,実際に遺言執行者が何らかの法律行為をする場合に,本人の代理人になることを示してというよりは,遺言執行者の身分を示して法律行為をするということだと思います。そういった意味において,特定遺贈がされた場合には,当然,遺言執行者がいなければ相続人が遺贈義務者になるわけですけれども,遺言執行者がいる場合は,遺言執行者が言わば独立の立場で遺贈義務者になりますが,その行為の効果は本人に帰属するということだと思います。したがって,遺言執行が終了した後に何か問題が生じた場合には,効果としては本人に帰属し,本人に対して責任追及をするということになると理解しております。もっとも,御指摘のような問題はあるように思いますので,もしよろしければ,民法の実体法の先生の方から何か補足がございましたら,是非お願いしたいと思います。 ○大村部会長 どなたか,何か,ありますか。いかがでしょうか,今の点につきまして。あるところは言葉遣いの問題なのだろうと思うのですけれども。 ○沖野委員 私も余り考えていないので誤ったことを言うのかもしれませんけれども,遺贈義務者の意味ですけれども,これはその義務履行責任を負うということが主眼で,登記などをするときも遺言執行者が義務者として登記をするということで,では,そのときに財産はどうなっているのかという,遺贈で直接行くとすれば,被相続人から直接行っているわけですが,その権利の帰属の主体がどうかといった話と,履行責任を負うかというところを一応区別し,その義務者としての責任を負うかという観点から「遺贈義務者となる」という言葉が使われているのではないかと理解しているのですけれども。そういうふうに考えますと,そのした行為の効果というか,それが帰属していくという,した効果が帰属するという話と,義務者としてそのような履行義務を負うというのは,一応は両立し得るのかなと思っておりますが。 ○山本(克)委員 それに気になったのは,13ページの上の方の(3)の「遺贈義務者」というもの,ここで「遺贈義務者」と使っている言葉の内容と,16ページの方の(3)アの①の「遺贈義務者」という言葉がイコールなのかどうかというのが気になって,16ページの方は,恐らく遺言の執行の一環として特定遺贈の履行行為をする義務を負うと,職務上の義務だという趣旨ですよね。ところが,13ページの(3)の①の遺贈義務は別の意味で使われているような気がしたので,正に部会長がおっしゃったように言葉遣いの問題なのですね。   ですから,私が言いたいのは,16ページの方をちょっと表現をお変えになった方が望ましいのではないかということなのですが。 ○堂薗幹事 御趣旨はよく分かりましたが,この13ページの方も恐らく,遺言執行者がまだ職務を終えていない段階では,遺言執行者が履行義務を負い,ただ,その行為の効果は相続人に帰属するのだと思いますが,その後,遺言執行者がその職務を終了した後に担保責任を負うような場合には,相続人が責任を負うのではないかという気がいたします。また,16ページの方は,正に遺言執行者がいるときに遺言執行者が遺贈義務者となるというところがこの肝となる部分ですので,変えるとすると,どちらかというとその13ページの方を,誤解がないように変えた方がいいのかなという気もしているのですけれども。 ○大村部会長 いずれにいたしましても,言葉の使い方として,紛れが生じるのではないかという御指摘がされているので,実質をよく表すような形で表現を調整するか,同じ言葉を使うのであれば,少なくとも補足説明の中で明確な区別をする必要があるのではないかと,こういうことでよろしゅうございますでしょうか。 ○山本(克)委員 あとはお任せいたしますので。 ○大村部会長 今の点,よろしいですか。 ○潮見委員 変えるのであれば,やはり今おっしゃったように13ページの遺贈義務者という表現がまずいのではないかという感じがします。 ○大村部会長 最終的には事務当局の方で御検討いただくということにしたいと思いますけれども,今の御指摘もありますので,変えるとすれば見え消し版で13ページの方を考えていただいてはどうかという,御意見として承ります。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○浅田委員 遺言執行者の権限の明確化ということで,部会資料の15ページの(3)「個別の類型における権限の内容」に関して,再度御質問させていただきたいと思います。   遺言執行者の権限の明確化に関連しましては,従来,何回か御質問を差し上げており,この点についても繰り返しになって恐縮なのですが,遺言執行業務の観点から重要だと考えておりますので,従前私どもが関心を有していた事項について,今回の中間試案の内容を明確化するということの観点から,更に大きく2問,質問させていただきたいと思います。   大きな1問目としまして,この同じページ,4の(3)のイの②で適用があるところの,その①ですね。遺産分割方法等の指定がされた場合における特定財産について,特定の相続人に取得させる旨の遺言がある場合,遺言執行者は対抗要件具備のための必要な行為をする権限を有するとされていますということでありますけれども,この点について細かく2点質問します。   なお,この質問については,一般的な遺言執行者に関する議論に関しては,15ページの一番上の(注1)で「なお検討する」とは書いてありますけれども,個別の事案についてどこまで今後検討を予定されているのかということがちょっと分からなかったものですので,今この機会で質問させていただきたいという趣旨でございます。   その細かな1点目というのは,遺言執行者は受益相続人が対抗要件取得を行わないことが判明した場合において,初めて,遺言執行者による対抗要件取得が必要なときに就任後の合理的期間内に当該権限を行使し登記を行えば,注意義務を果たしているものと考えてよいかという点です。   すなわち,遺言執行者は本案のとおり,対抗要件具備を行う権限を有するということでありますけれども,受益相続人がその対抗要件具備を一義的に行うべきものと考えて,その遺言執行者の注意義務の発生というのは,同人が,受益相続人が行わないことが判明した場合に,言わば二義的に発生するものだと考えてよいかということであります。   細かな2点目というのは,遺言執行者の登記前に共同法定相続人が遺言の存在を秘するなどして,その持分を勝手に処分するなどによって受益相続人に損害が発生した場合であったとしても,受益相続人には,そもそも単独で登記申請をすることにより自分で当該処分を回避する手段があったため,受益相続人等から遺言執行者に対する損害賠償請求権は原則として認められないということでよいかということであります。   まず,この大きな1点目,遺言執行者の義務の,ないしは責任の二義的か一義的なものなのかどうかということについて,お答えいただければ有り難いと思います。 ○堂薗幹事 御質問の点につきましては,若干この点は,現在は判例の考え方を変えている面はあろうかと思いますが,遺言執行者に対抗要件具備についても権限を認めていますので,その点については当然,善管注意義務を負うということになり,必ずしも受益相続人がしない場合に義務を負うということを考えているわけではありません。こちらとしてはそういう認識です。   ただ,対抗要件具備が遅れたことによって何らかの損害が生じ,損害賠償請求がされた場合に,当然に遺言執行者がその責任を負うかどうかという点については,受益相続人の方でもそういった手段がとれたということが考慮されるのではないかということで,ここは従前からそういう御説明をさせていただいているかと思います。したがって,その場合には損害賠償は認められない,あるいは責任の範囲が縮減されるということの理由にはなるのではないかと考えているところでございます。 ○浅田委員 ありがとうございます。   続きまして,大きな2問目を挙げたいと思いますけれども,同じく4の(3)のイの②の特定物の引渡しが対抗要件となる場合です。その特定物の引き渡す権限を有する点についての御質問であります。   ここも細かな2点の質問があります。すなわち,この点もお尋ねしたところでありますけれども,その点について,事務当局からは,本規定案というのは,第三者が占有しているケースにおいて,指図による占有移転を行うことを想定しているとおっしゃったと私は記憶しているのですが,ちょっと私の記憶間違いかもしれませんけれども,この点について,提案内容の明確化のために,もう少し確認をさせていただきたいと思います。   細かい1点目は,こういうケース,つまり被相続人が占有していた特定物について相続させる遺言がなされた場合は,受益相続人は相続により被相続人の占有を取得し対抗要件を備えることができるため,相続人が対抗要件を備えるために必要な行為はないと理解してよいかということです。直接占有の場合には,相続によって対抗要件が承継されるから,改めて遺言執行者が何かをする必要がないということと考えていいかどうかということであります。   そして,このことは,例えば,第三者が占有権限に基づき倉庫で保管している等の場合を考えますと,この場合であったとしても,受益相続人というのは被相続人の占有権たる間接占有を相続するため,相続人が対抗要件を備えるために必要な行為はないということと理解してよろしいかという話であります。第三者の倉庫等に入っている場合であったとしても,間接占有というのは相続で承継されるから,改めて遺言執行者が何かする必要はないのではないかということになります。   次に,細かい2点目でありますけれども,今回その試案で,4の(3)のイの②のただし書で,同①の規定を適用すべしとしていますけれども,この同①の規律が想定しているのは,結局は指図による占有移転を行う必要な場合,すなわち第三者が権限なくして被相続人の財産を占有するケースに限られるのではないか。その場合においてのみ,遺言執行者は第三者から引渡しを受け受益相続人に引き渡す権限を有するということと理解していいのかということについて,ちょっとケースとして入り組んでいるかもしれませんけれども,について明確化のためにお尋ねしたいと思います。   質問は以上です。 ○堂薗幹事 ただいまの点ですが,前回の私の説明が不十分だったのかもしれませんが,私としては,ここで言う引渡しは,要するに動産の対抗要件としての引渡しをしなければならないということですので,基本的には民法で書いてある四つの類型のいずれかの方法で引渡しが必要だという前提です。   ただ,被相続人が現実にその目的物を支配していたというような場合につきましては,判例があったかと思うのですが,相続によって観念的に相続人がその占有を取得すると。占有は事実状態を示す概念なので,それが承継されるかどうかというのは争いがあるかと思うのですが,先ほどの判例によって引渡しがされていると見られるのであれば,それで足りているのではないかということを前回は申し上げたつもりでございまして,間接占有の場合に同じようなことが言えるかというと少し難しい面があるのではないかと考えております。その点については十分に検討できておりませんが,必ずしも被相続人が現実に支配していた場合と同様ということにはならないのかなというのが現時点での印象ということになります。 ○浅田委員 ありがとうございました。 ○大村部会長 ほかにいかがでございましょうか。 ○増田委員 直接この中間試案に関わることではないのかもしれないのですけれど,恐らく整備法において,不動産登記法が若干いじられるのかなと思っているのですが,その場合に,いわゆる遺産分割方法の指定,遺言に関する単独申請というのは,それを維持されるのかどうか。   それから,今のイのところなどを見ると,遺言執行者がある場合には,遺言執行者が登記義務者になるというような立て付けも考えられるのではないかと思いますので,その辺どうお考えなのかということと,先ほどちょっと山本克己委員などからお話があった遺贈義務者に関してですが,従前,相続人の代理人という構成の下に,遺言執行者が相続登記をした上で移転登記をしていたところ,それが相続人の代理人ではなく遺贈義務者となることによって,その辺りの,変更をお考えなのか。つまり,遺言者から直接,受贈者に対して登記をできるようにするのか,あるいは,遺言執行者にその相続登記をするための何らかの権限を認めた上で従前と同じような移転をするのかという,その辺り,ちょっと,直接これに関係なくて不動産登記の関係なのですけれど,今の段階でどのようにお考えなのかという点だけ,お伺いしたいと思います。 ○堂薗幹事 まず,遺言による権利変動についても対抗要件が必要だということをした場合に,相続させる旨の遺言の場合には,現行制度の下でも単独申請になっているわけですが,そこを変更する必要はないのではないかと考えております。むしろそこを変更しなければならないということになりますと,現行よりかなり手続的に負担が増えることになりますので,こういった改正をすることも難しくなるのではないかと考えておりますし,このような改正をすることと,単独申請なのか共同申請なのかというのは,もちろん関連性はないとは言いませんけれども,このような見直しをするのであれば,共同申請にしないと理論的に整合性がとれないとか,そういったものではないのではないかというのが現時点でのこちらの整理です。   それから,すみません,2点目の御質問についてもう一度おっしゃっていただいてよろしいでしょうか。 ○増田委員 遺言執行者は,今は相続人の代理人として相続登記をした上で,それを受贈者に対して移転登記をしているわけです。登記義務者の代理人として移転登記をしているわけですね。今度,相続人の代理人ではなく遺贈義務者ということになった場合に,直接の移転登記になるのか,従前どおりとしたらいかなる権限を持って相続登記をするのかという辺りのことです。 ○堂薗幹事 その点は,現行のやり方についても十分な検討ができていませんので,今後検討したいと思います。事務当局としては,遺贈義務者になるので,直接移転登記ができてもいいのではないかという問題意識は持っているのですが,その辺りの手続をどうするかというのは,正に不動産登記を所管する民事二課と共に検討しなければいけない事項ですので,現時点では,確たることは申し上げられないという状況でございます。 ○増田委員 私も直接,移転登記ができる方が実体法上の物権変動を反映するものと思います。よろしく御検討をお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。今の点は御意見として承って,更に事務当局の方で御検討いただきたいと思います。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○水野(紀)委員 具体的な,こうすればいいという提案ではないのですが,不安だけを少しお話しておきたいと思います。   建設的な提案が出来ないのは,日本相続法では,遺産分割手続に関与する公的な主体がおらず,それを全部,私人である相続人たちに委ねてきたという構造的な困難を抱えているためです。そういう相続法であるにもかかわらず,なんとなくやりくりしてきたのは,戸籍と住民登録と登記のおかげでしょう。印鑑証明で意思確認ができることと,相続人がわかることから法定相続分を頼りに,なんとか動かしてきたわけですが,実際には相続人の濫用や放置という危険があって,そのリスクは取引相手方あるいは共同相続人に負担させてきました。このたび遺言をかなり活性化するという提案になっていて,日本の相続法は,遺産分割を管掌する,先ほどの預貯金管理者的な発想の存在がないのですが,条文上は,遺言執行者が置かれたときには,遺言執行者と裁判所が共同する形で,ある種それに代わるような存在として動く仕組みになっています。   これからもし遺言を活発化して,例えば銀行実務がこの遺言活性化を利用して,遺言執行者が付いている遺言相続が一般に相当数存在するということになりますと,民法の条文通りに動き始めたときに,それだけの負担,動かす負担について,家庭裁判所の実務の方で対応できるのか,いささか不安です。前回,遺言執行者の復任権・選任・解任などについて,もう一度お考えいただく必要はないのでしょうかと発言しましたのは,そういう趣旨がありました。家庭裁判所が成年後見の管理監督義務を課せられて,その負担に耐えられない体制規模なのに国賠請求が認められてしまったので,慌てて信託銀行と協力して管理体制を作り,監督できないから親族後見人を選べなくなってしまう,という動きに似たようなことが,この遺言執行者の管理についても起きてしまうのではないかという不安感がございます。   具体的に建設的な提案をできなくて申し訳ないのですが,遺産分割を管轄する公証人というような要を欠いたため,構造的な困難を抱えている日本法の中で,遺言がなされたときだけ,遺言執行者と家庭裁判所のタッグによって遺産分割手続が動かされるという構造になったときのリスクや負担を,もう少しお考えいただく必要があるように思いました。   先ほどから議論されている債権取得の対抗要件問題なども,これも同じ構造であるように思います。つまり,基本的には法定相続分を信用して取引した相手方を守るという形で,それが守り切れなくなった部分については今度の改正で手当てしましょうという改正です。公的な遺産分割手続関与者がいない中で日本法が何とかやってきた従来の手法を重視する改正をなさったので,それに伴って,債権の方で若干の齟齬が出たということなのだろうと思うのです。その手法で行かれるのであれば,行くべきだと思っているわけではありませんが,どこまで手当てが可能かは判断で,もう債権については切るという判断もあり得るかもしれません。でも個別の法定相続分で決定するのであれば,債権についても手当てをする必要があろうと思います。   漠然とした不安を述べるばかりで申し訳ありませんが,個別の論点の背景にそういう構造的な困難があって,そして今回の改正が大きく,遺言の活用の方向に,遺言執行者と家庭裁判所が関与して動くという方向にかじを切られたように思うので,十分にそこの手当てをお考えいただく必要があるように思います。 ○堂薗幹事 今後の検討においても,御指摘を踏まえた検討をしたいと思います。1点,遺言執行者の法的地位につきましては,弁護士委員からの問題提起を受けて検討を始めたところですが,基本的には遺言者の意思を実現するということですので,後見人のように公的な立場で財産を管理する人とは違って,家庭裁判所が遺言執行者に対して後見人と同じような監督をしなければならないとか,そういったものではないのではないかというのがこちらの考えでございます。   ですから,この遺言執行者の見直し,選任や解任の辺りにつきまして見直しの提案をしておりますので,その点について家庭裁判所の負担がどうかというところは慎重に検討していく必要があるかと思いますが,遺言執行者の監督を現行法よりも強化するとか,そういったところまでは想定していないというところでございます。 ○大村部会長 水野委員の御意見ないし御質問と,堂薗幹事の答えの中で,遺言執行者の位置付けについて,多分,認識の重点の差があるように思いますけれども,水野委員の御発言は,堂薗幹事がおっしゃったような観点とともに,遺言執行者の公的な職分についても考えていただきたいという御要望として受け止めさせていただくということで,よろしゅうございますでしょうか。 ○水野(紀)委員 はい。 ○中田委員 今,水野委員が最後の方におっしゃったことで,戻れるのですけれども,部会資料12ページの補足説明にあります債権取得の対抗要件具備に関する簡易な通知の方法について,途中で切れてしまったように思うものですから,2,3申し上げたいと思います。   ここでの問題は,債務者対抗要件であるということが,まず押さえておくべきことだと思います。   それから,2番目に,利益を受ける当事者からの通知ということに伴う不安定さがあるのだろうと思います。これは事実上の問題として,例えば古い遺言書を使うインセンティブを与えるとか,あるいは債務者に対して通知をした上で,直ちに弁済を受けてしまうということで,事実上,他に比べると問題が生じやすいということがあると思います。   それから,もう一つ,法制上の問題として,民法の債権譲渡の通知は譲渡人がしなければいけないというのは,これは損失を被る側からの通知だというところに真実性の担保があるのだろうと思いますが,他方で,動産・債権譲渡特例法では,譲受人からもできるのは,登記事項証明書という公的なものがあるからだと思います。そうすると,この場合に,受益相続人がする通知の真実性の担保として,遺言書があるということで十分だと評価するかどうかという問題なのだろうと思います。遺言書があるということで登記事項証明書と同じレベルとみるのか,あるいはまた,遺言執行者のする通知と同じレベルなのかという,そこをどう評価するか。仮にそこに差があるとすると,その差を埋める方法がないだろうかというのが検討課題かと思います。   3点目として,これは債権一般についての規律ですので,金銭債権以外の場合も含まれると思いますので,その場合にどうなるかということが検討対象かと思います。   今,それぞれについて具体的な解決方法を持っているわけではないのですけれども,補足説明で御検討されるということですので,一応考えられる検討事項,思いついたことを申し上げた次第です。 ○堂薗幹事 どうもありがとうございました。 ○大村部会長 補足説明の中で御検討いただきたいと思います。 ○浅田委員 先ほどの中田委員の意見と,それから従前の私が申し上げたことに,ちょっと併せて,1点だけ,その遺言書の簡易な通知の方法に関するコメントでございます。遺言書の真正性については先ほど申し上げたとおりでございますけれども,他方で,その真性でない遺言書に基づいた預金債権の弁済に関しては,また民法478条の問題で処理されるというところです。銀行においては,その遺言が真実,複数あった場合であったとしても,最初に持ってきた人に払うということで,原則準占有者に対する弁済の要件は満たされているということで処理されているという現実があるわけです。   その利益考慮ないしはその割り切りというのが,この本制度においてもどうワークするのかということについて,改めてちょっと整理が必要だとは思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。   そのほか,いかがでございましょうか。   それでは,第3の遺言執行の見直しにつきまして,補足説明で整理すべき事柄について,一定数の御指摘を頂きましたけれども,それらにつきまして事務当局の方で御対応いただくということで,この内容で取りまとめをするということにさせていただきたいと存じます。   第4と第5がございますが,ここで休憩を入れさせていただきたいと思います。現在,3時25分を少し回ったところですので,3時40分に再開ということにさせていただきます。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開させていただきたいと存じます。   第3まで終わりましたので,「第4 遺留分制度の見直し」につきまして,まず事務当局の方から御説明を頂きます。 ○神吉関係官 それでは,関係官の神吉から,「第4 遺留分制度の見直し」について御説明させていただきます。   まず,「1 遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し」について,従前の部会資料からの変更点を中心に御説明させていただきます。   基本的には第4の1の補足説明に記載したとおりですが,部会資料12でお示しした甲案と乙案を整理いたしまして,従前の乙案を本文に,従前の甲案を(注2)で取り上げさせていただきました。   なお,(注2)の考え方を採用した場合の判決主文についてですが,前回,委員から十分な記載ができていないのではないかとの御指摘を頂きましたので,その御意見の内容を踏まえ,補足説明の(注1)で想定される判決主文を記載させていただきました。今回も十分な記載ができているかどうか若干自信がないところではございますが,いずれにせよ,(注2)の考え方を採用した場合には相当複雑な主文にならざるを得ないものと思われます。   また,今回の乙案につきましては,受遺者又は受贈者がすることができる現物返還の主張を,金銭請求のときから3か月までとすることを明らかにするため,②の規律を付加するとともに,金銭債務の消滅時期については現物返還の意思表示がされたときであることを明確にすることといたしました。   引き続きまして,第4の「2 遺留分の算定方法の見直し」につきまして,御説明いたします。   まず,補足説明の1の部分ですが,従前の甲案につきましては,前回の会議におきまして,中間試案として維持するのは相当ではないとの意見が大勢を占めましたことから,本部会資料では従前の甲案は削除することといたしました。   次に,補足説明の2の部分になりますが,部会資料12では(3)の遺産分割の対象財産がある場合の規律につきまして,A案,B-1案及びB-2案の三つの考え方を提示しておりましたが,A案及びB-1案につきましてはそれぞれ問題があるという議論を踏まえまして,本部会資料ではB-2案(具体的相続分説)を中心に取り上げることといたしました。   第4の3につきましては,特段の変更点はございません。   後注も併せて御説明させていただきます。   後注の1につきましては,これまでの会議におきまして委員から御指摘がありましたので,遺留分権利者の範囲につきまして,直系尊属には遺留分を認めないことの検討を提案するものでございます。委員の皆様から特段の御異論がなければ,こちらにつきましても中間試案に盛り込み,パブリックコメントに付したいと考えております。   また,後注の2についてですが,少し細かい論点となりますので,この段階で皆様に御提示するかどうか少し悩んだのですが,遺留分の法的性質の見直しに伴い,いずれは検討しなければいけない項目であり,また,これまで学説上も議論が余りなく,裁判例も少ない論点となりますので,併せてパブリックコメントに付し,国民の御意見を伺いたいと考え,今回,後注として付け加えさせていただきました。   簡単に御説明いたしますと,現行法の1038条に負担付贈与がある場合の規律がございますが,この条文の解釈として,遺留分算定の基礎となる財産の価額を算定するに当たって,負担部分を控除するかどうか,学説上も見解が分かれているようでありまして,この際これを明確にする規律を設けたらどうかということを提案するものでございます。   また,同様に,民法1039条に不相当な対価による有償行為がある場合の規律がございますが,遺留分減殺請求権の行使により生ずる権利を原則金銭債権化することに伴い,同条に関する規律も改めたらどうかということを提案するものでございます。   これらの論点は本日新しく御提示する論点であり,本日できれば中間試案の取りまとめを行いたいと考えておりますので,本日は,これらの論点は今後部会で検討したらどうかという問題提起にとどめたいと思いますが,中間試案の後注として載せるに当たり,特に配慮すべき点等があれば御意見を頂戴できればと考えております。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   「第4 遺留分制度の見直し」につきましては,1から3まで,三つの項目がございますが,それに後注が2点加わっております。   まず,第4の「1 遺留分減殺請求権の法的性質の見直し」という点につきましては,前回までは甲,乙,丙の3案が併記されていたという状態でございましたが,今回のものは甲案,乙案をまとめ,乙案を本案とし,甲案を(注)とする,従前の丙案を乙案という形で,三つあったものを二つにまとめるという形で整理がされております。それに伴いまして,判決主文の書き方について一定の説明が加えられているということかと思います。   それから,2番目の「遺留分の算定方法の見直し」につきましては,前回までは甲案,乙案の併記になっておりましたけれども,甲案は削除することに前回決しましたので,今回の案では乙案を本案として掲げて,これに必要な補正を加えているということであるかと思います。   第3点,「遺留分侵害額の算定における債務の取扱いに関する見直し」については,特に修正はございません。   そして,後注として二つのものが加えられておりますけれども,かなり性質が異なるものでございます。後注の1は,委員の方から御指摘があった問題につきまして,これを後注という形で取り上げて意見を求めるという趣旨であると承りました。2の方は,これに対してかなり細かい問題でございます。現行の1038条と1039条につきまして,この際,一定の整理をすることができないだろうかということでございます。   関係官の方から御説明がございましたけれども,この補足説明の2につきましては今回初めて資料にお出しするものでありまして,なお,これから議論をする必要があろうかと思いますけれども,これを中間試案の後注の補足説明という形で提示するということにつきまして御意見を頂き,もしこの段階で補正すべき点がありましたら,それも御指摘いただければと思います。   以上につきまして,御意見を頂ければ幸いでございます。いかがでしょうか。 ○増田委員 1の甲案に関してなのですが,私自身もいまだに,手続について理解が十分ではないように思います。   判決主文等については明らかにしていただいていますが,それまでに至る権利関係がどのように変動しているのかというところもお書きいただけたら,その方が有り難いです。   ②の段階で,このままだと遺留分減殺請求者としてはどういう手段がとり得るのだろうかということを考えてみても,なかなかよく分からない。   例えば,この段階で何か財産の保全手段がとれるのかということを考えたときに,減殺者は金銭債権をこの段階では少なくとも有していると。ただし,それが相手方から何らかの目的財産を返還するという主張がされている以上は,金銭債権を持っていても,多分,仮差押えということはできないのではないかとも思われるし,逆に,この段階ではまだ具体的な物の引渡請求権とか登記手続請求権なども有していないわけですから,処分禁止仮処分という形で権利を保全することもできないだろうと思われます。   また,この段階で,ここまでは保全の話でしたが,今度は訴訟を提起する場合に,恐らく請求の趣旨は金銭を支払えということになろうかと思いますが,抗弁が出た場合にどういう形で訴えを変更するのか。それもかなり複雑なことが予想されまして,例えば受遺者側が別紙物件目録1の物件で返還するという主張をした場合には,その物件そのものが要らないという場合には,予備的請求として別紙物件目録2の物件について引き渡せとか,移転登記手続をせよというようなことになるのかなと思ったり,あるいは,その受遺者側が提示したものの価額について争いがある場合には,その別紙物件目録1の物件についての引渡しなり移転登記手続の請求に加えて,幾らか支払えという金銭請求をするのかと思ったりするのですが,そこのところが実体法上の権利関係として,どうなっているのかというのが非常に分かりにくいように思います。できれば補足説明を付けていただければと考えております。   いずれにしても,裁判所は請求に拘束されないというようなことですので,そこのところも申立てに拘束されないことと,拘束されない範囲はどの範囲なのかというようなことも明示していただかないと,裁判所が自由に物を選択できるようにも見える。一定範囲でやはり拘束を認めないと,要らないものを渡したりもらっても困るだろうし,予想もしないことを引き渡せと言われても困るだろうしと思いますので,何らかの形の拘束力を認めるのであれば,その範囲についても明らかにしていただきたいなと思います。   いずれにしても,余りまだ練れていないのかなとは思っているのですけれども,時間も時間ですので,これを中間試案として載せること自体には異論はありませんが,今後もいろいろな検討が必要だという点は付け加えていただかないといけないのかなと思います。 ○堂薗幹事 御指摘は今後検討する上で参考にしたいと思いますけれども,現時点でどういうことを考えているかということにつきまして,若干説明を補足させていただければと思います。基本的には,遺留分権利者の請求の性質としては,遺留分侵害額に相当する価値の返還を求めるというものだろうと考えており,ただ,遺留分権利者の方にこの財産が欲しいとかそういう選択権を認める必要はないのではないかということで,基本的には遺留分権利者の側からは金銭請求しか選択できないということでございます。したがって,他方,受遺者あるいは受贈者側は金銭請求がされた場合にも,いや,現物で返したいということで,その選択権を認めるわけですが,例えば,受遺者又は受贈者側で,一部は金銭で支払いますと,それ以外の部分について現物で返しますという主張がされ場合には,その金銭で払うといった部分については,権利者も義務者も意見が一致していますので,その額で基本的には確定するのだろうと。   そうすると,その余の価値についてどういう形で返すのかというところが問題になるわけですが,それについては,当事者間の協議が調わない場合には最終的には裁判所が決めるということでございまして,ですから,本来的には元々の訴訟の性質としては,やはり形式的形成訴訟なのではないかということで考えております。   もちろん訴え提起をする時点では幾ら幾らの金銭を支払えということになるわけですが,それについて抗弁が出てきた場合には,その金銭に相当する価値を有する現物を支払えというような形になります。共有物分割において,訴えを提起する場合にはある程度抽象的な請求に応じて,裁判所が最終的にその人に取得させる財産を選ぶわけですが,それと同様の性質を有しているのではないかというのが,現時点でのこちらの整理ということになります。   他方,現物で返す場合にどういう基準で裁判所がそれを判断するのかという点につきましては,もちろん現行法と同じように決めるわけではありませんが,その点については④のところで考慮要素として書いております。その中で考慮要素を幾つか挙げておりますが,「遺贈又は贈与がされた時期のほか」ということで,この部分を言わば特出ししているということでございまして,この特出しをすることによって,考慮要素としては遺贈又は贈与がされた時期が最も重要な考慮要素であることを示しているという趣旨でございます。   この意図するところといたしましては,現行法と同じように,できるだけ新しいものから減殺する方が受遺者あるいは受贈者の法的安定性には資するという面がありますので,その点が一番重要な考慮要素であることを示すことによって,裁判所の自由裁量ではなく,考慮要素について優劣を付けているという趣旨でございます。   ただ,最終的にはもちろん裁判所の判断で返還する物が決まるわけですが,ただ,遺留分権利者というのは飽くまでも相続人と同等の地位にあるわけですので,相続人であっても,遺産分割の場合に自分の希望どおりに財産が取得できない場合はあるわけですので,そういった形で必ずしもその意に沿わないもので価値の返還を受けるということになったとしても,それはやむを得ない面があるのではないかということでございます。   したがって,受遺者あるいは受贈者から抗弁が出されたことによって,必ずしも訴えの変更が必要になるというものではないのではないかと,この点はもう少し検討する必要がありますが,こちらとしてはそのようなことを考えているというところでございます。 ○大村部会長 更に検討していただくということでございますけれども,差し当たりのお答えとして今のようなことですが,増田委員,何か,よろしいですか,取りあえず。 ○増田委員 そういうお答えはお答えとしていいかと思うのですけれども,それが本当に適切な手続として機能するかどうかとは別の問題ですので,そういう辺りは今後の検討で含みを持たせて,幾つか,やはり選択肢を考えていかねばならないのだろうなと思っています。 ○大村部会長 では,今の点につきましては更に検討していただきたいと思いますが,何か。 ○山本(克)委員 今の点は私も関心があって,形式的形成訴訟だとした場合に,裁判所が給付命令ができるのかどうかという点が非常に私は疑問だなと思って,債務名義性を作ることができるのかどうかと,あるいは意思表示に代わる裁判というものになり得るような主文を書けるのかどうかという点が非常に疑問だなと思いますので,そこは御検討いただきたいのですが,それとは違うことをお伺いしたいと思います。   この同じところで,「主張」という言葉が,「受遺者又は受贈者が主張する」という言葉が使われているのは,なぜ「主張」なのかというのは私はちょっと理解ができなくて,これは実体法上の意思表示ではないのですか。先ほど堂薗幹事は選択と,選択権を行使するということをおっしゃいましたので,これは意思表示,相手方に対する意思表示ではないのでしょうか。そういう,なぜ「主張」という言葉をわざわざここで使われているのかというのがよく分からないなと思いましたので,その点ちょっと御説明いただければと思います。 ○堂薗幹事 確かに,訴訟法的な言葉の使い回しかと思いますけれども,今御指摘がありましたとおり,こちらとしては実体法上の意思表示,現行法の価額弁償の抗弁などと同じような形で考えておりますので,表現については検討させていただきたいと思います。   それから,形式的形成訴訟とする場合の問題点についても,引き続き検討させていただければと思います。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。 ○垣内幹事 今の点にも若干関連するかと思うのですけれども,その見え消しの資料ですと19ページの,今,山本克己委員から御指摘のあった「主張」という表現は②のところだったかと思いますが,関連しまして,その協議が調わない場合について,③のところで,受遺者又は受贈者はその目的財産を定めることを求めることができるというふうになっておりますので,これは物で返すという意思表示なり主張なりがあったとしても,それが協議できない場合に,裁判所に誰が目的財産の決定を求めることができるかというと,これは受遺者又は受贈者ということであり,これは意思表示があったからといって,その請求者の方が決めることを求めるというわけにはいかないという立て付けなのだろうと思いまして,「主張」という表現は何かその辺りと,つまり,一種の権利抗弁というのか分かりませんけれども,意思表示があっただけで十全の効果が生ずるというものとも違うというニュアンスが込められているのかなとも従前は理解していたところで,その辺りも含めて整理を頂けるとよいのではないかと思います。 ○堂薗幹事 はい,ありがとうございます。 ○大村部会長 では,今の点も併せて整理をしていただきたいと思います。   そのほか,いかがでしょうか。 ○潮見委員 別のところで構いませんか。見え消し版の20ページの下から6行目の「また」の段落のところで,「今回の乙案については」と,②を追加するとともにとあり,「金銭債務の消滅時期については現物返還の意思表示がされた時であることを明確にしている」というふうに書かれているのですが,どこで明確になっているのですか。 ○神吉関係官 事務当局から説明します。乙案の③で,受遺者又は受贈者が②の主張をした場合には,目的財産が1033条から35条までの規定に従って減殺されて,金銭債務が消滅をすると,現物返還の主張がされたときに減殺の効果が生じ,かつ,その金銭債務が消滅をすると,整理させていただいております。 ○潮見委員 それは,この文章では読めないのではないですか。別にこだわりませんけれども,要するに,その主張した場合にこうこうこうで消滅するというのと,それから,いつ消滅するのかということは,論理的には直結しない。御検討いただければと思います。 ○神吉関係官 御意見を踏まえて表現ぶりは検討させていただきます。 ○堂薗幹事 要するに,条件節しか書いていないのでという御趣旨だと思いますので,そこは検討したいと思います。 ○大村部会長 今の点は表現を,あるいは説明を御検討いただくということにしたいと思いますけれども,ほかにいかがでしょうか。   今回新たに後注という形で付け加えられた点もございますけれども,それにつきまして何かございましたら,御指摘を頂ければと思いますが,いかがでございましょうか。   特にこの点につきましては,このような形で意見を聴取するということについて。 ○石井幹事 見え消し版の21ページの(3)では,遺留分侵害額の算定において遺産分割による取得額として控除する額を遺留分権利者の具体的相続分に相当する額とする案が採用されており,(注)のところでは,この控除する額を遺留分権利者の法定相続分に相当する額とする案が記載されております。その上で,後者の案の抱える問題について補足説明で御説明いただいているのですけれども,前者の案で遺産分割による取得額とされている具体的相続分相当額と実際の遺産分割による取得額とは必ずしも一致するわけではなく,実際の遺産分割による取得額との間で齟齬が生じるという意味では,両案の差というのは相対的なもののように思われます。また,前者の案では具体的相続分相当額を算定するに当たって相当以前の特別受益も考慮することになるため,前者の案を採用したならば,遺留分算定の基礎財産として加算する特別受益の時的範囲を一定限度に制限するという(1)の御提案のメリットを減殺することになるようにも思われます。両案の差異を補足説明で御説明いただく際には,これらの点についても少し詳し目に記載していただければなと思っております。 ○堂薗幹事 その点も検討したいと思いますが,ただ,具体的相続分説では,寄与分は考慮しないわけですが,その点についてはそれなりに合理的な説明ができるのではないかと思われるのに対しまして,法定相続分説の場合には,その逆転現象について合理的な説明をするのは難しいのではないかというのがこちらの整理でございまして,そういった関係でこういうような書き方にしているというところがございます。したがいまして,そのこと自体について何か御意見があるのであれば更におっしゃっていただければとは思いますが,一応,御指摘を踏まえて補足説明をどう書くかというのは検討いたしますけれども,こちらとして具体的相続分説と法定相続分説について違いを設ける形でお示しした趣旨は,今のような考え方に基づくものでございます。 ○大村部会長 いいでしょうか。 ○沖野委員 後注の1の方なのですけれども,直系尊属に遺留分を認めないということについて,意見を問うことは,していただいたらいいと思います。ただ,補足説明での記載ですが,例えば一致してこの考え方が支持されたとか,恐らくそういうことは必ずしもないという認識でおりまして,むしろ余り議論がされていなくて,確かに直系尊属に遺留分を認める必要はないという事情も分かるようにも思いますけれども,他方で,血族の方に一部はとどめておくということが現実には家産的なものがあったり,上の世代に一旦とどめることによって,兄弟姉妹等を通じた形でその後の相続を予定しているというようなこともありますので,そういったことも含めて今後,慎重な検討が要ると思っております。繰り返しですけれども,こういう形で聞いていただくのは結構なことと思いますけれども,補足説明の書き方については少し考慮していただければと思います。 ○大村部会長 その点は説明の際に工夫をしていただきたいと思います。   そのほか,いかがでございますか。   後注2については,よろしゅうございますか。何か御指摘があれば伺いたいと思いますが。   後注2も更に検討しなければいけないという問題であろうと思いますけれども,今回は後注2そのものはこのような形で,なお検討するという形で提示し,補足説明の中で一定の考え方を示す。それも留保付きで,こういう考え方があり得るのではないかという形で御意見を伺うということにはなろうと思いますが,そういう形でよろしゅうございますでしょうか。 ○石栗委員 1の遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直しについて,甲案を採用した場合の判決の主文を考えていただいたのですけれども,この主文であったとしましても,問題は残るように思います。すなわち,部会資料20頁の(注1)の例でいいますと,遺留分減殺を原因とする所有権移転登記手続をするという条件と200万円等を支払うという条件のいずれもが満たされたときには1000万円等の執行ができないということしか主文は言っておりませんので,そのうちの片方の条件は満たされていても,双方の条件が満たされていない限り,依然として1000万円等の強制執行ができてしまうことになります。そのような強制執行が申し立てられた場合には,その後,片方の条件が満たされていることを理由として,請求異議訴訟が提起されることになると思うのですが,その場合に,どの時点で請求異議訴訟が裁判所に提起されることになるのかというようなことも含めて,お考えいただかなければいけないことがたくさんあるように思われます。甲案を採用した場合の主文に関しては,このような問題があることも記載していただけると有り難いかなと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 今の御指摘を踏まえて,御検討いただくということにしたいと思います。   そのほかは,いかがでございましょうか。   それでは,この「第4 遺留分制度の見直し」につきましても,表現ぶりにつきましては幾つかの指摘を頂きました。それらにつきましては所要の修正をすることにして,これもお認めいただくということで,よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。   それでは,最後の点になりますけれども,「第5 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」につきまして,事務当局の方から御説明を頂きます。 ○満田関係官 関係官の満田の方から説明させていただきます。   第5については,部会資料に記載のとおり,実質的な変更点はございませんので,そのような説明になるかと思います。   以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   第5につきましては,前回資料から特に修正はないということでございますが,この点につきまして御意見を頂ければと思います。 ○増田委員 甲案についてなのですけれど,ちょっとこれまで見落としていたのかもしれないのですけれども,「二親等内の親族で相続人でない者」ということになると,親とか配偶者の親が入ってくるわけですよね。そこで財産上の給付について,金銭の支払いを請求することができるということになると,子や子の配偶者のために不動産の購入資金を贈与したものを後で返せというような話になりかねないのですけれども,余りそういう想定はしていなかったように思うのですが,そのような財産上の給付を本当に入れていいのかどうかということと,もし入れるのであれば,そういう場面もあり得るということをどこかに書いた方がいいのかなと思っているのですが,いかがでしょうか。 ○堂薗幹事 御指摘のとおりだと思いますが, その点については,そういったものをうまく控除できるような形にするかどうかを含めて,今後検討するということにさせていただければと思います。 ○大村部会長 増田委員,よろしゅうございますか。 ○増田委員 はい。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,この点につきまして御意見があれば伺います。よろしゅうございますか。   それでは,「第5 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」につきましては,御指摘がありました点につき,補足説明で対応していただくということで,このままの形ということにさせていただきたいと存じます。   以上で,この部会資料13,「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案(案)」につきまして,御検討を頂き,御意見を賜ったということになります。御指摘がありました点につきまして,表現につきましては修正をする必要がある部分がございますけれども,その点につきましては部会長に御一任を頂くということで,本日この中間試案について御決定を頂くということで,よろしゅうございますでしょうか。 ○垣内幹事 今さらのことで恐縮ですが,内容についてちょっと発言をさせていただいてもよろしいでしょうか。最後に全体について何かまだあればという機会があるかなと思っておったのですけれども。よろしいですか。大変申し訳ありません。   最初の方に戻ってしまうのですけれども,見え消しの方,いずれもそうかと思いますが,2ページのところの長期居住権のところの書きぶりに関して,今,「長期居住権の内容」という(1)のところで,「配偶者が相続開始の時に居住していた被相続人所有の建物」ということが書かれているのですけれども,これが恐らくその成立要件の一部をなしているということではないかと理解しているのですが,他方,(2)のところの成立要件のところでは,この点が必ずしも明確でないようにも思われまして,そこはどうでしょうか。ちょっと成立要件のところだけを拝見しますと,今一つ,その当初の相続開始時に居住していたということが必ずしも明瞭でないような感じもして,その点が少し気になるということと,仮に,そういう理解だと思うのですけれども,元々居住しているということが要件だというときに,短期居住の方では,1ページの(1)のアの①のところで,「相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた」とあるのですけれども,こちらについてはその無償性うんぬんということは問題になるのか,ならないのかといったような,両方並べて要件という形で考えてみたときに,若干分かりにくいところがあるようにも感じますので,その点についても,併せてその表記の仕方の御工夫をお願いできたらという印象を持ちました。   すみません,以上です。 ○大村部会長 では,今の点につきましても,表記につきまして見直しをしていただくということにしたいと思います。   全体を通じてということで,もし何かございましたらお伺いいたしますけれども,ほかにございませんでしょうか。 ○沖野委員 大変申し訳ありません。今,垣内幹事の御指摘を受けて,先ほど中田委員から御指摘のありました,4ページの長期居住権が消滅したときの原状回復の基準の時点なのですけれども,その間があるというような場合がどうかというようなことでして,本文に簡単に書けるのではないか,そのときには長期居住権を取得したときとして,括弧をして,短期居住権が先行するときは相続開始時とか,そういうことを書けるのではないかと考えていたのですけれど,ちょっと今御指摘の点なども含めると,そう簡単に書けるのかどうかが,いささか細かい場合分けもあり得るかと思いましたので,撤回させていただいて,どういう形で書くかも含めて事務局にお任せしたいと思います。   すみません,失礼しました。 ○大村部会長 御意見として伺って,可能性は検討していただくということにしていただきたいと思います。 ○沖野委員 拘束するものではないということで御検討いただければと思います。 ○大村部会長 はい,分かりました。   そのほか,何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。   では,もう一度確認させていただきますが,表現ぶりにつきましては,部会長に一任いただくということで,本日,民法(相続関係)等の改正に関する中間試案につきまして,お決め頂くということにさせていただきたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。それでは,そのように決めさせていただいたということにさせていただきます。   それで,今後のスケジュール等につきまして,事務当局から御説明を頂きたいと思いますが,それに先立ちまして,1点お諮りしたい点がございます。それは,部会長代理の指名についてでございます。   法制審議会令第6条というのがございまして,これによりますと,部会長に支障があるときにその職務を代行する者をあらかじめ部会長が指名しておくことができるとされております。   本来であれば第1回の会議の際にこの指名を行うべきであったとも思われますけれども,これまで指名をしておりませんでした。そこで本日,審議の一区切りがついたこの段階で,指名を行っておきたいと思います。   以下,具体的な提案でございますけれども,窪田委員に部会長代理をお願いしたいと思います。窪田委員におかれましては,法制審議会の児童虐待関連親権部会の委員も務められ,民法の分野における優れた御業績,御経歴をお持ちでありますので,窪田委員に是非お願いをしたいと思っておりますけれども,よろしゅうございますか,窪田委員。 ○窪田委員 はい。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは,部会長代理は窪田委員にお願いさせていただくということにいたします。   先ほど申しましたように,今後のスケジュール等につきまして,事務当局より御説明を頂きます。 ○堂薗幹事 それでは,本日は中間試案の取りまとめをしていただきまして,ありがとうございました。   今後の予定でございますが,まず部会長に一任を頂いた修正点につきまして,部会長の御了解を得た後,事務当局の責任において作成する中間試案の補足説明とともに,中間試案を公表いたしまして,パブリックコメントの手続に付すことを予定しております。   補足説明の性質なのですけれども,飽くまでもこれまでの部会における御議論を踏まえまして,国民の皆様に中間試案の内容を適切に理解していただくということを目的として,事務当局の責任において試案の各項目の内容を補足的に説明するというものでございます。   これまでの審議においても度々御指摘を頂きましたとおり,補足説明につきましては,これまでの議論の経過ですとか,そういったことを含め,なるべく分かりやすい内容にするよう努力いたしますし,補足説明で触れるように御要望がありました事項につきましては,可能な範囲で御要望に沿えるよう努力したいと思いますけれども,先ほど申し上げましたような補足説明の目的等を踏まえますと,余り分量が多くなりすぎますと,かえって国民の皆様に読んでいただけないというようなことにもなりかねませんので,場合によっては御要望に沿えないこともあろうかと思いますが,その点は御理解を賜れれば幸いでございます。   次に,パブリックコメントの期間でございますが,中間試案の公表のために若干時間を要しますので,7月上旬頃に公表した上で,9月末頃までパブリックコメントの期間を設けることを考えております。相続法制の見直しにつきましては,国民の生活に直接影響するものですので,通常の場合よりも多少長目に期間を取る必要があるのではないかと考えまして,今のような期間を考えているということでございます。   それから,パブリックコメントの期間中につきましては,この部会の方はお休みさせていただき,次回は10月から審議を再開させていただければと考えております。   次回以降の日程でございますが,これはまだ確定しているものではございませんけれども,10月18日火曜日を予定しております。   次回の場所につきましては,現時点では未定でございますので,追って御連絡をさせていただければと思います。   それでは,次回以降も,どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   本日,中間試案の取りまとめを頂きましたので,補足説明等を付してパブリックコメントを行うということで,この部会の再開は10月18日ということでございました。先ほど繰り返し御案内がありましたけれども,10月18日,11月22日,12月20日,1月24日の4回を御予定いただければ幸いでございます。   補足説明につきましては,皆様から様々な要望が寄せられたところでございますが,堂薗幹事の御発言の中にもありましたが,この中間試案は国民の生活に直接影響するものでございますので,多方面の関心の対象になることと思います。   他方,相続法に関するということで,かなり技術的な制度が含まれておりますので,なかなか一読して理解するというのは難しいところがあろうかと思います。分量の問題は確かにありますけれども,その辺り,事務当局において工夫をしていただくということになろうかと思いますが,どうぞよろしくお願い申し上げます。   以上でございます。本日も非常に活発な御意見を頂きまして,ありがとうございました。これで閉会をさせていただきたいと存じます。 -了-