法制審議会会社法(現代化関係)部会第2回会議 議事録 第1 日 時  平成14年10月23日(水)  自 午後1時30分                         至 午後4時30分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題    会社法制の現代化の基本方針等について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 ● まだお見えになっていない委員・幹事の方がおられますけれども,予定した時間が参りましたので,第2回の会社法(現代化関係)部会を開会することにいたします。  本日は御多忙の中,御出席いただきましてありがとうございました。  それでは,本日の議事に入りたいと思いますが,配布資料につきまして事務局から説明をお願いします。 ● それでは,お手元の資料を御確認いただきたいと思います。  事前に当方から配布させていただきました資料は,配布資料目録記載のとおりでございます。部会資料といたしまして,資料番号1の「会社法制の現代化の基本方針について」と題するもの,資料番号2の「改正検討事項について(議論のたたき台)」と題するもの,以上の2点でございます。  それから,参考資料でございますが,前回の部会の席上で少し触れさせていただきましたとおり,この8月に,公益法人制度の抜本的改革に向けて,政府の行革推進事務局において論点整理が行われたところでございますけれども,その内容及び概要ペーパーを,資料番号6-1,6-2としてお配りしております。  また,改正検討事項の議論に資するものとして,資料番号7と8とを用意させていただいております。資料番号7は「日米間の「規制改革及び競争政策イニシアチブ」に関する日米両国首脳への第一回報告書」,この仮訳の抜粋でございまして,合併手段の柔軟性ということについて触れられている部分がございます。資料番号8は「日本の規制改革に関するEU優先提案」の仮訳の抜粋でございます。  また,本日の議事に関しまして,各委員・幹事の方々から御提出いただきました意見書等の資料も席上に用意させていただいております。  確認させていただきますと,まず○○幹事からお出しいただきました「商法の現代化-組織モデルの選択的進化-」と題する書面,○○幹事からお出しいただきました「中小企業政策の視点からの商法改正」と題する書面,○○委員からお出しいただきました「中小企業の立場からの会社法改正に関する意見」と題する書面,○○関係官からお出しいただきました「法制審議会会社法(現代化関係)部会における改正検討事項について」と題する書面,○○委員からお出しいただきました「会社法現代化見直しに関する意見」と題する書面,○○委員からお出しいただきました「会社法改正の検討事項」と題する書面,最後に○○幹事からお出しいただきました「定款自治の範囲の明確化:強行法規性の限界」と題する書面,以上7点を席上に配布させていただいておりますので,御確認いただきたいと思います。これらの資料につきましては,後ほどそれぞれ御説明を賜りたいと存じます。  配布資料につきましては,以上でございます。 ● それでは,今御説明いただきました配布資料につきまして,何か御質問等ございますでしょうか。--よろしゅうございますか。  それでは,本日の審議に入りたいと思いますが,まず部会資料1につきまして,事務局から御説明いただきます。 ● それでは,部会資料1について御説明いたします。  当部会の設置に係る法制審議会に対する諮問,すなわち会社法制の現代化に関する諮問の理由につきましては,前回の部会で御説明いたしましたとおりでございます。今後の作業を進めていく上で,その方針の一応の確認という意味でこの書面を取りまとめさせていただいた次第でございます。  前回の繰り返しになりますけれども,現代語化に関する作業,これはかなり技術的な作業でございますけれども,この作業にあたりまして,ここに掲げてありますような3点を基本的な考え方としてはどうかということでございます。平仮名口語体を図る,用語の整理,解釈の明確化等を図る,それから前回の部会で御指摘がありましたけれども,分かりやすい編別に再編成した上,一つの法律として取りまとめるという方向での検討を行う,以上が現代語化に関する基本的な方針と言えようかと思います。  それから,この現代語化の作業に合わせて,実質的な改正検討事項としてどのようなものを考えるべきかという点が2に掲げてあるところでございます。この現代語化の作業においては,会社法制に係るすべての条文について点検を行う必要があるわけでございますけれども,そのような作業の中で必然的に行われるべき諸制度間の規定の調整などの体系的な見直し,これは実質的な改正事項を伴うものですけれども,不可欠の作業であろうと思われます。それとともに,前回も,また今回もこれからいろいろな御提言をちょうだいする予定でございますけれども,これまでの会社法制の改正作業の積み重ねの上に立った現在の会社法制の姿を前提にして,さらに実質的な改正テーマとして新たなテーマに取り組み,新たな改正検討事項の検討を行うべきであるという御提言があるところでございまして,そのような内容のうち,どのようなものがこの現代化の作業の中でふさわしいものと言えるのかということを,またここで検討していくべきであると思われます。この現代語化の作業と,それに伴う実質的な改正事項の検討ということが,この部会における現代化という作業についての大きな方針と言えようかと思います。この作業を進めていく上で,部会決定というほどではないですけれども,このような方針にのっとって作業を進めていくということについての一応の御確認をちょうだいしたいと思います。  法案の国会提出予定についても,前回の部会で御説明いたしましたとおり,平成17年の通常国会への法案提出を目指すということとしたいと思います。  部会資料1については,以上でございます。 ● 今,御説明いただいた部会資料1について,何か御質問等ございますでしょうか。 ● 商法第2編の有限会社等を一つにまとめて別の法律にするということは非常に現実的な提案だと思いますので賛成でございますが,商法のほかの部分につきましての現代語化は見送るという趣旨でございましょうか。  もう一つ,中身の問題ですけれども,会社法制の議論をしておりますと,商法総則の一部の規定についてはあわせて直した方がすっきりするのではないかと思うような規定が少しあるような気がするのですけれども,そういうことは,多少のことなら立ち入るというふうに考えるのか,もうこの際はそういうことは一切行わないというふうに考えるのか,どちらの方針でいくのかということでございます。 ● 会社法制の現代化として必要不可欠な作業というのは,部会資料1に書かせていただいているものでございます。それに伴って関係法律にどのような手当てを施すべきかは当然問題となりますし,その中で最も重要なものは,御指摘のとおり商法本体についてどういう手当てを施すべきかということでございますけれども,商法本体についても現代語化を図るかどうかについては,現段階でやるともやらないとも決めない方がよろしいのではないかと思われます。また部会において御相談を重ねていきながら,最終的な着地点を見出したいと思いますが,少なくとも会社法として規定をくくり出した場合に,商法総則の実質的な内容の吟味というのは欠かせないだろうと思われますし,これは多分皆様も所与の前提として考えておられるのではないでしょうか。商業登記の規定ですとか,商号の規定ですとか,商業使用人の規定ですとか,会社法に取り込む--取り込むといっても,個人商人の部分は取り込めないわけですけれども,会社法に取り込むとしたらどういう規定になり,個人商人の規定としてはどういうものを残しておくべきか,これらの検討は避けられないと思います。その際に,その部分,あるいは商法のその他の規定について現代語化を図るかどうかについては,さらに法制的な検討が欠かせないものですから,そこはまだペンディングということで御了解いただけないでしょうか。 ● そういうことだということでよろしゅうございますか。 ● 一応,法制審議会としては,「会社法制の現代化」の諮問をちょうだいしているということを付言させていただきたいと思います。 ● 商行為法等々の現代語化は,この際見送るという趣旨ですね。 ● 見送るかどうか,ちょっとペンディングということでございます。 ● それも含めてペンディングということですか。 ● 基本的には,基本法である商法全体についての現代化というのはやらなければいけないとは思っているのですが,実際に,いつ,どういう手順でできるかというのは,それに投入できるこちらのマンパワーとの関係があるものですから,現段階で具体的に会社法関係を除く部分をいつどうやるというところまでとても詰められない。当面は,最も必要性の高い会社法の部分を先に御議論いただこうという趣旨でこれを始めたわけでございまして,その他の部分について見送ると決めたわけではありませんので,私どもとしては,できればそこについても追いかけられるものならとは思っております。そういう意味で,この部会で御議論その他がほかの部分に及んでも一向に差し支えないと思っておりますので,それはお含みおきいただきたいと思います。 ● ほかに,御質問,御意見ございますでしょうか。  それでは,今,事務当局から説明があった部会資料1のような方針で,会社法制の現代化の作業を進めていくということで御了解いただけますでしょうか。        (「異議なし」と呼ぶ者あり) ● ありがとうございました。  では次に,部会資料2につきまして事務局から御説明をお願いいたします。 ● 前回の部会でも御議論いただきましたとおり,今回の作業の中での実質的な改正作業についての基本的なスタンス,あるいは具体的な改正検討項目として,様々な御意見をちょうだいし,あるいは部会以外でも公式・非公式にいろいろな御意見をちょうだいしつつあるところでございますが,本日の議論に資するために,前回の部会で出された意見等をこちら限りで取りまとめさせていただいたものがこの部会資料2でございます。もちろん,事務局においてこのような改正検討事項を取り上げるべきであるという判断のもとに記載させていただいたものではございません。御意見等がこのような点に比較的集約されているのではないかと思われるものを羅列したものでございますので,これにとどまらず御議論をちょうだいできればと思います。  簡単に御説明いたしますと,まず総論的事項として,これが現代化を図る上で実は非常に大きな論点となるわけですけれども,会社の類型,区分の在り方,特に有限会社の位置づけですとか,現行の株式会社における大・中・小の区分の在り方をどう見直していくのかという問題。それから,合名会社,合資会社という類型を株式会社等とどういう形で切り分けたまま残していくのか。特に合名会社,合資会社については,従前ほとんど見直しがされてきた経緯がございませんので,この際,何か見直すべき点があるのかどうかという点も含めて議論の対象になり得るところだろうと思われます。  それから,近時の会社法改正の作業の中で,傾向として指摘できるところが,事後規制化,任意法規化に向けた動きでございます。様々な規定について,それが事前規制,あるいは強行法規であるということについての見直しの必要性があるのかどうか,個別の規定についての吟味が欠かせない作業になるのではないかと思われるところでございます。  各種登記事項についてですが,登記事項は度重なる改正を経て増えつつあるわけでございますけれども,登記の意義に照らして事項の見直しが必要なのではないかという点も議論の対象になり得るところであると思われます。  先ほど御指摘がありましたように,商法総則で会社法に適用される規定についてですが,例えば類似商号規制については,いろいろな御批判もあり,これを根本的に見直す必要があるのではないかという御指摘もあるところでございます。  それから,会社の能力。これは,かなり基本問題ではありますが,いわゆる目的に係る民法43条の会社法における適用関係の問題,あるいは商法55条の見直しの要否といった点について,既に改正検討要望的な御提言をちょうだいしているところでございます。  設立につきましては,前回も御説明いたしましたとおり,近時,最低資本金制度の在り方,あるいは検査役制度を中心とした設立手続に係る制度の在り方について,近時の経済情勢を反映してかなり強く見直しの必要性を説く御意見があるところでございます。また,それとともに,あるいはそれとは別に,事後設立規制について,それ自体が果たして現段階でなお合理的なものとして存置されるべきかどうかという点も,議論の対象になり得るところであろうと思われます。  株式につきましては,いろいろと改正検討の御提言があるのですけれども,特に有限会社の位置づけとの関係で,有限会社の持分の譲渡制限の在り方と,譲渡制限株式会社における譲渡制限の在り方とが異なるということもありまして,両者を仮にすり合わせるとした場合に,どういったすり合わせが可能なのかということも検討されるべき問題であると考えられるところでございます。  また,関係部会において検討が進んでおります株券の不発行制度というものを前提にした場合,譲渡制限規制がいかにあるべきかという点も,その検討いかんによっては大いに影響を受け得る論点であろうと思われます。  子会社による親会社株式の取得規制について,見直しを求める御意見があることは,御承知のとおりでございます。  それから,端株制度,単元株制度でございますが,単元株制度につきましては単元株主の権利についていろいろな改正要望があるところでございますが,そもそも端株制度が導入されたことに伴って設けられた単位株制度は,暫定的なものであり,将来終結される予定であったところ,それが終結されることなく単元株制度に生まれ変わったといういきさつを考えますと,果たしてこの両制度をこのままの形で未来永劫存続させるべきかどうかという点については,基本的な御議論を今の段階でちょうだいするのも有意義なのではないかと思われるところでございます。  機関につきましては,詳細は避けますけれども,前回の部会でも機関相互間の権限分配について実務的な要望としていろいろな御提言がある一方で,昨今の様々な事象を背景にして,経営の効率性,コンプライアンスの確保のための制度を現代化の作業の中できちんと再検討すべきではないかという御意見も強くちょうだいしたところでございます。  また,親子会社における会社管理の在り方,あるいは小規模閉鎖会社における機関の在り方については,本日も御提言をちょうだいできると思いますけれども,既にいろいろな改正提言が寄せられているところでございます。  計算につきましては,これまた近時の会社法の一連の改正作業の積み重ねによりまして,資本制度,準備金制度の在り方が大きく変容しつつあるところでございます。いずれにしても,現行法における資本制度,準備金制度の在り方を維持し続けるのかどうかという点について,抽象的な言い方で恐縮ですけれども,現段階で基本的な観点から検討する必要があるのではないかというように考えられる次第でございます。  開示の在り方についても,いろいろな御意見があることは言うまでもありません。  社債については,特に社債発行会社の倒産事例にかんがみ,社債をめぐる社債権者集会ないし社債管理会社の在り方が現行法制のとおりでよいのかどうかということについて,会社更生法の見直しの議論の中でもいろいろな御提言があったところでございますけれども,更に会社法本体としても再検討する余地があるのではないかと思われるところでございます。  組織再編に関しましては,現代化の作業の中で制度間の整合性を図るべき部分として最も重要なところですけれども,それとともに,例えば現在の営業譲渡,営業の譲受け規制における特別決議の必要性等についても,再検討する必要があるのではないかという御指摘もあるところでございます。  合併等における対価の柔軟化については,先ほどの参考資料7にも掲げられているような御要望が既に寄せられているところでございます。  その他ですけれども,資本減少あるいは組織再編行為における様々な債権者保護手続について,それらが必ずしも統一的な内容とはなっていないという御指摘があるところでございます。関係部会における公告の電子化に伴う債権者保護手続の在り方の見直しという範囲にとどまらず,知れたる債権者に対する個別催告の要否自体等も含めて,合理的な債権者保護手続の内容をどのように構築すべきなのかということも議論の対象になり得るところではないかと思われます。  また,近時の会計に関する主要な問題として,ストックオプション会計に関する論議が進んでいることは御承知のとおりでありますけれども,会社法の立場からこの議論に対してどのようなアプローチをすべきなのか,会社法についての実質的な見直しを行う必要があるのかどうかという検討自体は,多分避けられないのではないかと思われるところでございます。  最後に,「過料等」についてですが,会社法には御承知のとおり様々な過料規定があるわけでございますけれども,実効性が高い過料規定というのはそう多くはないわけでございます。過去において過料制度の実効性を高めるべきであるという議論もあったわけですけれども,なかなか妙案が見つからないところでございまして,その議論を仮に引き継いだとした場合に,実効性のある制度を目指すのか,あるいは実効的な過料規定以外は過料規定を設けておくことの要否自体をも再検討すべきなのか,いずれにしても現代化,現代語化をするに当たって,現行の過料規定をそのまま片仮名から平仮名にするというだけでは足りないのではないかと思われるところから,掲げさせていただいている次第でございます。  前回の部会で,これ以外にもいろいろ個別的な論点について御意見をちょうだいしておりますが,別にそれを拾う,拾わないというたぐいの性質の文書ではございません。大きな項目として,こちらの方で本日の議論のたたき台として掲げるに適当ではないかと思われるものを,思いつくままに並べたというものでございますので,その程度のものとして御了解いただければ幸いでございます。 ● 御質問等もあろうかと思いますが,各委員・幹事から御提出いただいて,本日,席上配布になっているものもこの改正検討事項にかかわると思いますので,御質問,御意見いただく前に,それらの資料について御説明いただくことが適当かと思います。提出者の委員・幹事の方から御説明をいただきたいと思います。  先ほど御紹介をした順序でまいりたいと思いますが,まず「商法の現代化-組織モデルの選択的進化-」と題するものにつきまして,○○幹事から御説明いただけますでしょうか。 ● 私の御説明は,これに続く○○幹事の中小企業の実態から見た商法への期待とかなり連続性を持つものだとお考えいただければと思います。  まず,このタイトルですが,「組織モデルの選択的進化」というのは,経済産業省において,実は90年代,端的に言うと細川内閣が成立して以降,相当程度産業政策の考え方を変えて,市場の機能を強化をして,その中でいい組織が市場の中で選ばれるという方向で,いわゆる経済構造改革をずっと進めてきたわけでございます。その中で,商法に対する役割,期待というものが大きく変質をしているのではないかという筋でちょっと御説明申し上げたいと思います。  次のページをあけていただくと目次でございますが,ざっと御説明しますと,一番最初の1で商法改正の経緯,経済産業省の目で見るとどういう形で改正を行うと見えているのか,あるいは現在まだ改正が期待されている事項を幾つか御紹介申し上げた上で,まず発想の原点として,会社の分布というところを見ていった上で,その中で公開会社あるいは非公開会社,更には新しい有限責任組合,あるいは有限責任法人みたいなニーズの増大と,三つをとらえてみたいと思っております。  公開会社を取り巻く様々な環境の変化の中で,公開会社をめぐっては市場の監視機能が相当強まっているという現実を3で御説明申し上げたいと思います。  4のいわゆる非公開会社と書いているところについては,詳しくは○○幹事の方から,かなり個別具体的な実態に即した説明があるということでございます。  それから5番目で,新たな有限組織に対する必要性のお話を申し上げた後で,6でいわゆる三つの類型に即した検討ということで,大ざっぱに言えばマーケットによる組織選別機能の充実という方向で議論の整理ができないだろうかということを御紹介申し上げます。  7番目は,そうした抽象的な議論ではなくて,そうした筋で見たときに,どういう規定について最低限見直しが求められているのかという事例を御紹介申し上げます。この中には,過去御提案申し上げて積み残しになっている案件,あるいは現在の産業再生法等々で次期通常国会,あるいは今行われている臨時国会で改正の作業の俎上に上っている案件等々も含めて御提示申し上げたいと思います。  8は,規制法から会社モデル法へということで全体の話をもう一回まとめさせた上で,全体の終わりにということに続いております。  次のページをあけていただいて,まず最初,「商法改正の経緯と更なる改正に向けた先行的試み」ということでございます。  経済政策的視点の枠の中で要約を書いてございますが,戦後我が国,恐らく組織内で資源配分を変更する,こうしたことに非常にたけたいわゆるシステム,あるいは組織を築き上げてきたと言われております。いわゆる日本型システムと言われたもので,これは80年代後半,世界最高だと言われたのは有名な話でございます。  当然,キャッチアップ型の成長局面で大きな成功をおさめたということですが,90年代以降,情報技術,金融技術,様々なマーケットの機能を高める技術革新が進む中で,一方で中国といったキャッチアップが現実のものとなっているということでございまして,そうした中で,組織の中で資源配分を変更するのではなくて,市場を通じた資源配分機能を高めるということが経済政策上の大きな課題となったというふうに認識をしております。これをくくって「経済構造改革」と言っているのですが,これは市場の機能強化,その中で組織再編を促していこうという試みでございまして,これは逆に言えば新たな日本的なシステムや,あるいは新たな日本的な組織のモデルのありようを模索する試みだというふうに考えております。  こうした構造改革の一環として,組織法制ということについて経済産業省が非常に明示的に取り上げたのは,実は持株会社の解禁の議論でございます。これが表にありますけれども,平成9年に行われております。当時,独禁法のリバランスという議論をしていまして,カルテルについてはどんどん規制強化をしてもらってもいいのだけれども,いわゆるトラスト,組織再編に関しては相当程度緩めた議論をしてほしいという議論をずっとやってきたプロセスで,持株会社の解禁が平成9年に行われる。それ以降,商法につきましては組織再編の柔軟化という一連の動きが平成9年の合併法制から始まりまして,会社分割で大きなうねりが起こる。実は,この大きなうねりが左側に関連する諸制度ということで,いわゆる退出・再生を促す環境整備ということで様々な倒産法制の整備が行われているというふうに理解しておりますし,あるいは税制につきましては右側の方に枠がありますけれども,様々な税制の整備が進められている。  その次に出てきたのが資金調達の柔軟化,こういう議論でございまして,その経緯ができ上がった後に,いわゆる資金供給形態の多様化ということで,例えば有限責任につきましては中小投資事業等有限責任組合法ができる等の改革が行われたと。右側に,それに関連する税制改革も行われる。近時,それを仕上げる形でコーポレート・ガバナンス,情報開示という形でのいわゆる組織法制の整備が行われ,それが現在コーポレート・ガバナンス・ルール全般の議論というところにつながっているのかなというのが我々の理解でございます。  こうした流れの中で,更にどういう期待が行われているかというのが,次のページをあけていただくと,こうした市場機能の強化の中で新しい組織モデルを確立しようという中で,商法改正の具体的なアイテムを並べております。例えば,下の表の中にあります「産業活力再生法の改正」,これは次期通常国会で予定しておりますけれども,商法関係でございますと簡易組織再編の拡充,合併対価の柔軟化,現物配当の許容,それからいわゆる検査役調査の適用除外,減資関連手続の緩和等々の特例的な規制改革を先行してやってもらえないだろうか,こういう議論をさせていただいております。  それから,新規事業創出法の改正,これは今の臨時国会でかかっておりますけれども,いわゆる最低資本金規制につきまして一定の緩和というものを法律上特例的に求めるという議論でございます。  それから,右側には中小企業関係が若干並んでおりますけれども,中小企業の会計に関する研究会報告というのが出ておりまして,公開会社に導入されている新しい会計基準の任意適用,こういう議論が行われております。  それから,中小企業等投資事業有限責任組合法制,これはLLC,LLPに絡む議論でございますけれども,これは臨時国会で改正をして,その範囲を拡充するという試みが行われております。  それから,先ほど御紹介がありましたが,総合規制改革会議等々におきましては,例えば一番下にありますように規制改革特区における商法関連の一番多い要望は,実は最低資本金規制の要望だという,こういう議論がございます。それから,2番目にあります「私法上の事業組合形態の検討」というのは,実はLLC,LLPのことだと我々は理解しております。こうした先行的な改革の提言が現在なされているということをまず御理解いただければと思っております。  続きまして,議論の前提の会社の分布ということなのですが,次のページをあけていただきたいと思います。  ここで,会社の分布の状況を一つの表にしているのですが,大会社,中会社,小会社と縦に割りまして,大きく分けて公開と非公開という簡単な割り方をしております。見ていただきますと,大会社の中の公開大企業というのは,ここで書いてございますように,東証第一部上場企業1,600,二部上場1,100,店頭上場1,000社で約4,000社,正確に言うと3,600社ぐらいあると言われております。この中に,実は中会社が大体200社ぐらい,それから小会社は1社あるということらしいのですが,ほぼ大会社でございます。こういう企業群は,大体付加価値ベースで,下の方にちょっと書いてございますが,大胆な推計をすると約2割,人員ベースで1割のウエートを占めている,こういうことでございます。  一方,非公開の方に移りますと,大会社の関係での非公開というのは2種類に分かれておりまして,グループ内の大企業,日本IBMとかNTT東日本等いろいろあります。それから,独立の非公開大企業ということで,サントリー,竹中工務店,出光等々,あるいは地方に行きますと自動車のディーラー会社は名門の方々が,地元の方が出資をして非公開,こういう企業群がございます。それが大体6,000社ぐらいあると言われておりまして,付加価値ベースで約3割,人員ベースで約2割のウエートを占めている。他方で,この非公開の中で中小企業関係でございまして,約240万社,中小株式会社が100万,有限会社が140万ということで,付加価値ベースで約6割,従業員ベースで7割の大きなウエートになっているということでございます。  枠の中をちょっと見ていただきますと,2番目の丸でありますように,我々の感じでは会社組織というのはこういう公開企業,いわゆる4,000社の公開企業で大企業がほとんどで,経済に占める割合は約2割のところと,いわゆる非公開と呼ばれているところとが大きく分かれるのかなという感じがしております。  それから,組合組織形態,一番右下に書いてございますけれども,最近LPS,LLP,LLCといったところのニーズが出ている,したがってこの三つの組織形態に即した実態ということで,あわせながら制度の見直しをやっていただこうという視点でございます。  次のページをあけていただきますと,公開関係,企業の関係ですが,ここでは公開会社を取り巻く市場の監視が非常に強まっている事例を幾つか集めさせていただいております。  最初は,まず株主構成の変化なのですが,御承知のとおり10年間,公開企業の株主構成は大分変わっておりまして,いわゆる金融機関とか事業法人が持っている株主のウエートは大きく減っております。一方で,外人株主,機関投資家は増大しております。下の表を見ていただきますと,91年当時,上が金融機関,事業法人,真ん中が個人,黒塗りが外人,一番下が機関投資家ということですが,3割だった機関投資家,外人等が,現在約5割に近くなっている。一方で,金融機関,事業法人等の割合が5割から3割に減っている,こういう実態でございます。したがいまして,いわゆる株主に対する経営の監視機能というのは,実態上相当向上しているのではないか,この傾向は今後とも続くと見込まれるのではないかということでございます。  更に次のページでございますが,こうした株主の構成が変わると同時に,証券取引所の機能も大分向上しているのではないかというふうに考えております。英米におきましては,ここに書いてございますように,いわゆる公開企業に対するガバナンスとして証券取引所のルールが一定の機能を果たしているというふうに言われております。法律の方で具体的な組織のありようを示すということよりも,あるいは法律上で許される範囲はなるべく広げておいて,証券取引所のルールの中でいい企業が選ばれていくという慣行が定着していると考えております。経済環境を大きく変化する中では,法的な規制で企業の選択を縛るということではなくて,企業が行う選択の幅をなるべく広げて,マーケットサイドのルールで新たな企業のガバナンスが機能するというのも注目に値するのではないかということでございます。  我が国におきましても,証券取引所,右側に書いてございますけれども,従来以上にルール形成に積極的に取り組んでいる傾向にあるというふうに考えておりまして,我が国においてもこういう取引所ルールを重視したような形で,あるいはそれを前提として法律上の規定のありようを考えていってはどうかということでございます。  東証の話は,ざっと御説明していますが,金融庁もおられますので立ち入ったことは省略しますけれども,ありていに言えば,上場については入口も広げて出口も広げる,赤字企業でも上場ができる,だけどパフォーマンスが悪くなったら出ていただく,こういうある種新陳代謝重視型のルールができているというところだというふうに考えております。  他方,次のページでございますが,証券取引所だけではなくて,いわゆる企業をめぐっては様々な監視機関が出てきている状況になっていると思っておりまして,幾つか表が書いてございますけれども,左側にあるのはコーポレート・ガバナンスの差が株価の差につながっている,こういう議論が大分明示的に出るようになってきているわけであります。これは,第Ⅰグループ,第Ⅱグループ,第Ⅲグループ,第Ⅳグループと書いてございますけれども,第一部上場企業会社362社をコーポレート・ガバナンスの観点から分けてみて,コーポレート・ガバナンスの透明性が高いグループは株価も高い,こういう議論が例えばどんどん出てくる。この中に,第Ⅰグループはたった14社だという議論があるのですけれども,こういう議論が例えば監視の目として出てくると。それから,右側に書いているのはいわゆる社会的責任投資という議論でございまして,単なるコーポレート・ガバナンスだけではなくて,倫理性,社会性,そういったところをめぐった指標で株価のパフォーマンスを割ってみたらこうなるというような情報が提供されているということでございます。右上の図は,上位100社で,真ん中が平均値,それから2番目のダウ・ジョーンズのやつは,いわゆる上が立派な企業,下がそうでないということ,右書きのところは全く同じような観点でございまして,いわゆる公開企業についてはこうした市場評価が多様になる中で,一層の改革の試みが事実的にやらざるを得なくなっている,こういうことでございます。  次のページでございますが,株主構成だけではなくて,実は資金調達環境が激変していることは皆さん御存じのとおりでございます。これは80年代から大きく変わっているようでして,これは1980年と2000年の比較をしておりますけれども,資金調達につきまして間接金融,借入れに対するウエートが6割から4割に下がり,一方で株式による調達,あるいは社債による調達というのが相当程度増えているということでございます。当然,株式とか社債ということになりますと,マーケットにおける格付け,あるいはそうした監視が直接に経営に対して働いていくというウエートが相当増えているというふうに解することもできるわけでございます。  その次のページでございますが,いわゆる株主の構成,それから資金調達の構成の変化だけではなくて,実は取引マーケットの競争関係も相当程度進展している。これは経済産業省が一番力を入れてきたところでございますけれども,下の表を見ていただきますと,製造業につきましてはもともと自由化された分野でございますけれども,輸入のウエートが格段に上がり,空洞化も進む中で,競争はどんどん激化をする。一方で,非製造業,全体の経済に対するウエートが約4分の3でございますけれども,その4分の3の事業分野におきましては,ここでちょっと書きましたが,電力については2000年に小売りの自由化が行われております。更なる自由化の範囲が2003年。電気通信が,NTTの再編が99年。電気通信事業法の抜本改正が来年予定されております。金融ビックバンが98年以降,大店法の廃止は2000年,国内航空の自由化2000年ということで,相当程度,非製造業部門にも規制改革が進むということでございます。  文章の方で書いてございますけれども,こうした非製造業の自由化は,実は関連する事業分野の競争も相当程度促します。電力の自由化が重電分野の競争を促すとか,そうした効果は非常に大きくて,日本経済全体でいうとマーケットがカバーする分野は相当多くなっているということです。  一方で,自己監視型の体制強化ということが相当進んでいるという認識でございまして,それが右側に書いてございます。公正取引委員会のスタッフ数,あるいは証券取引等監視委員会の機能強化,あるいは司法制度改革ということで,そうしたところになるべく多くの人員を割くという改革は,相当程度これから進んでいくと思います。したがって,競争環境を取り巻くこうした環境変化も注目をしておいていただきたいということでございます。  次のページは,最後残されたマーケットとして雇用でございますけれども,実はこの10年間,大企業における雇用慣行は相当程度流動化の方向でございます。IT関連企業,ちょっと私,前職で関係があっので調べてみたのですけれども,この表を見ていただきますと,主要IT企業のホワイトカラー,バックオフィスとその他に分けて,バックオフィスを見ていただきますと,10年前はほとんどが新卒採用,現在は半分が新卒採用,ウエートが下がってきております。技術者についても,8割ぐらいが中途採用になっているということでございまして,従来22歳の労働マーケットしかなかったという現実が,こうしたところを中心にだんだん変わりつつあるということでございます。  枠の中をちょっと見ていただきますと,こうした現象は経営者の方に伺ってみますと,経営の在り方次第では優秀な雇用がどんどん逃げていくということでございまして,ある種労働マーケット,厚みのある労働マーケットが経営に対する監視を新たに担いつつあるという現状になりつつあるのかなということでございます。  右側の方に表がありますけれども,模式的に書いてございますが,現在の我が国の労働マーケットは従来は拘束性が高くて,組織内で異動するということが前提になっていた正社員約5,000万人と,市場を通じて異動するパート1,000万と,こういう二分化された世界だったのですけれども,これが将来,下の方にありますようにかなりとけ込んだ形で,労働市場の中で企業が選ばれていくという事態が出てくるのではないかということでございます。  以上のように,株主,株式関係,資金調達関係,取引マーケット,雇用マーケットの競争の激化という中で,公開企業の自己改革が進んでいるという御紹介でございます。  組織選択の多様化につきましては,これは左側にグループ内再編とグループ外再編と分けておりますけれども,90年との比較で前者については約9倍でございます。後者については約5倍ということでございますが,ちょっと見づらいのですけれども,上の方に株式移転,株式交換,会社分割という手法が導入されて以降,そういう手法も活用しつつ,こうした形でマーケットの環境に合わせて企業は組織をどんどん変えていくということが如実にあらわれているかと思います。  それから次のページでございますが,資本構成につきましても,マーケットの動向を受けながら商法の改正のメリットも活用しつつ,自己株についての活用だとか,あるいは下の方にあります種類株式の活用ということが進み,資本構成の適正化に向けた企業の自己改革がやりやすくなってきているということがうかがえるかと思います。  更に次のページでございますが,いわゆる機関の関係でございます。機関については,これも相当程度バリエーションが増えてきていると思っておりまして,2種類の動きがございます。一つは,迅速な意思決定という観点から,取締役の人数を絞り込む,あるいは執行役員制を導入するというのが本格的な流れになっております。見ていただきますと,左側の方のアンケート結果がありますけれども,過去5年間,取締役の人数は減少した企業が大体約6割,執行役について前向きな企業が約6割という結果が出ております。  更に,もう一つの流れとして,経営に対する外部監視,これは積極的に入れようということの流れが見てとれます。社外取締役につきましては,5割のところが前向き,増員済み,あるいは今後入れていく,あるいは社外監査役を選任した企業のうち,経過期間中,17年5月までの間に既に強化された社外要件の社外監査役を選任している企業は9割に上っているということでございます。  最後のところに,委員会等設置会社を決めた企業数というのは,実は非常に少ないわけでございまして,下の方にアンケート調査,複数ありますが,大体数パーセントに満たないところが委員会等設置会社の検討という答えで,あとは決めていないか,あるいは現状維持ということではあるのですが,ちょっと右側を見ていただきますと,経団連の主要会社55社というところを調べてみますと,上に書いてございますように,そのうち,取締役と執行役を分けて,役会の中で委員会を設けていこうという議論が約6社においてございます。それから,当然執行役と取締役会を分けていくという企業は約23社,具体例が書いてございます。更には,従来型なのだけれども,監査役につきまして専属スタッフの強化だとか,実地調査の強化だとか,常務会の出席等々,いろいろな工夫を凝らしている企業群が26社あるということでございます。したがいまして,恐らく公開会社におきましては監査役,委員会等設置会社,2類型ということではなくて,多様な試みがマーケットの監視の中で選択する動きが加速化しているというふうに見ていただきたいということでございます。  次のページは,そうした改革と連動する形で,恐らくこれから業績連動型報酬というのが相当増えてくると思っております。左側の表は相当程度年俸制の導入が進んでいるという議論,右側はストックオプションの議論でございますけれども,右下の方に取締役の報酬としてオプションを導入約3割,執行役の報酬として導入約4割,こういう議論がございますけれども,あえて言えばこうした業績連動型報酬は,株主の利害と経営者の利害を一致させるある種の究極の手段でもございますので,こうした議論が進めていけば,公開会社に対する別途の形でのガバナンスがきいてくるのではないかということでございます。  最後の,公開会社関係ではなく全体なのですけれども,倒産現象というのは相当増えてきておりまして,これは民事再生法,会社更生法案件が相当程度増えてきているということでございます。倒産現象が,かつての高度成長期にはある種の病理現象ということでとらえられてきて,経済産業省もこうした企業群についての関心は余りなかったのですけれども,恐らく新陳代謝が激しくなれば,非倒産と倒産という境目はだんだんとけてくる,そうした中で商法の果たすべき債権者保護の役割だとか,そうした議論が再度見直しをしていくような論点になってくるのかなということでこれを掲げさせていただいております。  以上,取りまとめて公開会社関係のことを言いますと,次のページですが,文章で書いてございますけれども,公開企業をめぐってはマーケットに監視機能が相当程度強化されて,この傾向は今後とも継続すると思われます。図表は,日本型のある種のシステムというのは,労働者との関係では本来ならば労働市場を通じて経営が選ばれるということが,ある種終身雇用に合致した年功賃金という壁があって,なかなか働いていなかったかもしれない,投資家との関係では,メーンバンクというシステムがあることによって,ある種それが遮断されていたかもしれない,それから取引先顧客については,規制とか系列という議論が強固にあり過ぎて働いていなかったのかもしれない。それが雇用システムの慣行の是正だとか,金融システムの改革,あるいは下の方に規制改革という議論がありますけれども,そうした中で壁がどんどん打ち払われて,企業全体をめぐってはこうした多様なマーケットが監視をする,その中でいい組織が選ばれていくという環境が整っているのではないかということでございます。したがいまして,この一番上の枠の2番目で書いてございますけれども,こうした環境の中で商法の果たすべき役割というものを,どちらかというと事前規制型から市場監視型へシフトしていただければいいのではないかということでございます。  以上が公開会社系です。  続きまして,非公開会社の関係でございますが,これは先ほど御紹介申し上げましたように,○○幹事の方から御説明がありますから簡単に申し上げておきますと,先ほど御紹介申し上げましたように,規模でくくるのではなくて,ここにつきましてはある種株主に対するガバナンスがきいている企業群という大きな割り切った考え方でその在り方を議論していただけないだろうかということでございます。グループ内企業は親会社のガバナンスがきくと,独立の非公開大企業はたまたま中小企業の形態が大きくなったものと。一方で,240万社という日本経済の活力の大宗になっている方々の実態を踏まえた会社法,あるいは有限会社法の見直しということが期待されるということでございます。  次のページでございますが,いわゆる従来の会社組織ではなくて,今度は新しい有限組織の議論なのですけれども,現在,日本の法制は有限責任組織として株式会社,有限会社があるのですが,その場合には,一律に組織構成などが法的に厳密に規定されて,税法上では当然それは課税客体だということになっているのですが,他方,下の方にありますようにいわゆるファンド,あるいはベンチャービジネス,ジョイントベンチャー,リーガルサービスという様々な側面で,有限責任なのだけれども柔軟性が許容されて,かつ税務上のパススルーといったような有限責任組織の幅を拡大するというニーズが増えているのではないだろうかという議論でございます。  ファンドにつきましては,幾つか表がありますけれども,下の方に活用形態が書いてございますけれども,民法上の任意組合を使ったり,中小企業等投資事業有限責任組合を使ったり,あるいはケイマンという海外のやつを使ったりということなのですけれども,そうしたところについて,新しいこういう有限責任なんだけれども緩やかなものというのができるかできないか,それから右の方にベンチャービジネスとありますけれども,日本では余りないのですが,アメリカでは調べていくとベンチャービジネスがLLCという組織形態を活用する形態もあると。それから,アメリカでやはりジョイントベンチャーをつくり上げるときに,いわゆるLLCという形態を活用する事例もある。それから,一番下の方にある,リーガルサービスにつきましても,有限責任性を兼ね備えたような新しいニーズがこれから出てくるのではないかということでございます。したがいまして,有限責任組織の幅を拡大するという意味合いで,御議論が進められればということでございます。  以上が実態でございますけれども,次のページはそうした実態に即して検討していただくときのある種の大くくりの一つの考え方を示しております。括弧の中に書いてございますが,市場による企業の選別という実態,これは公開会社系でございます。それから,株主による経営支配という実態,これは非公開会社系でございます。それから,有限責任組織の幅の拡大というニーズ,この三つを踏まえて非公開,公開,新たな有限責任組織の3類型での検討が望まれているのではないだろうかということでございます。  全体をざくっと言えば,事前規制を簡素化して経営の自由度を高め,市場の選別を合理的にするための監視型のルールに重点を置くという方向で制度が見直せないだろうか,この結果として,多様な組織モデルが提案されて,それが競争のプロセスで選別され,結果的に効率性にすぐれた組織が定着するということを期待したいということなのですが,下の表をちょっと見ていただきますと,まず現在の体系というのは商法で株式会社ということで大会社と中小会社があって,商法特例法というのは大会社を規律する,一方で有限会社がその下にあり,それ以外が任意組合,匿名組合,合名,合資とあるということなのですが,この真ん中のいわゆる非公開の株式会社と有限会社というところにまず着目をし,ここは先ほど申し上げましたように日本経済の全体の付加価値の8割,人員で約9割を担っておるわけでございまして,ここにつきましては株主支配の実態に即しながら,有限会社法と株式会社法とを統一的な視点から見直しながら,定款自治と任意法規化の原則ということでルールを考えていってはどうだろうかということでございます。  それから,その上にあるいわゆる公開系の企業につきましては,公開企業を取り巻く市場監視の充実という実態を踏まえながら,極力事前監視型から事後監視型への転換というのが望まれるのではないだろうかと。  それから,一番下の任意組合,匿名組合,合名,合資等々につきましては,組織形態のニーズの高まりを踏まえて,有限責任がありながらも組織構成等の柔軟性,パススルーの要件を兼ね備えた新しい組織の確立という芽があるのではないだろうかということでございます。  一番下に(注)がございますけれども,これはあくまで視点でございまして,現段階で会社法制を三つに分割してくれと言っていることでは当然ございませんし,特に制度設計に当たりましては中小企業,あるいは規模による差別ということがないように是非御配慮をいただきたいと思っております。規模はあくまで結果でありまして,物事を律する出発点ではないというのが我々の考え方でございます。  次のページでございますが,そうした具体的な論点について,幾つかの候補を挙げております。  1で書いているのは,事前規制から市場監視へという転換の中で,(1)で書いているのは実態に即した三つの類型の把握ということで,先ほど御説明申し上げたことが原則として書いてございます。  (2)は,まず①で,非公開会社を念頭に置いた制度設計,これが一番大きなウエートを占めておりますので,ここにつきましては株主支配の実態とか,公開に向けた努力がもたらす規律が存在しているとか,あるいは有限会社法の規定に即しながら,定款自治と任意法規化を原則として検討をしていただきたいということです。公開会社を念頭に置いた市場設計につきましては,るる御説明申し上げましたような市場の機能の強化という現実を踏まえながら,事前規制を簡素にして,経営の自由度を高めていただきたい。その上で,提示される経営の選択に対して,マーケットが合理的に選別できるような開示ルールの在り方とか,自己監視型ルールの充実を図る方向で検討を進めていただければということです。それから,新たな有限責任組織については,先ほど申し上げたように,有限組織なんだけれども,より柔軟性があり,パススルーがあるような組織の確立に向けて,関連する法制,これはたくさんあると思って,どこから出発するのかというのはなかなか議論が決め切れないのですけれども,民法,匿名組合,合名,合資,あるいは中小有責法等々,そういうところについての有効性を是非検証していただきたいということでございます。  それから,2以降は,幾つか具体的な規制改革の個別論点でございます。この表をちょっと見ていただきますと,一番左側に期待される改正の中身が書いてあって,真ん中に背景があって,一番右側に備考ということで,産業再生法で既にお願いしていますとか,産構審で昔言いましたということが書いてあるのです。細かくは言いませんが,ざっと御紹介すると,組織再編の対価の柔軟化,これは産業再生法で実はお願いをしている案件でございます。それから,子会社による親会社株式の取得保有制限の廃止,これは産業再生法で既にお願いをしている話でございます。現物配当の許容,これについても産業再生法でお願いをしている話でございます。それから,組織再編関連の取締役会への権限委譲ということでございますが,これは従来から産構審の報告書でもお願い申し上げておりますし,産業再生法でも一部手をつけているということです。この中で書いてございますが,営業譲渡の重要性基準を明確化するアプローチもあるし,簡易の基準の5%という数字を明示的に20%に上げるという議論もあるだろうし,もしかすると定款の範囲内で自由に決めてもいいというアプローチもあるかもしれない,こうした中で組織再編の取締役会への権限委譲を進めてほしいということです。  それから次のページ,定款記載事項の規制緩和につきましては,組織再編自由にできるようになったとしても,やはり登記実務で会社目的の記載が具体性を求められてしまうと,そのための定款変更のために総会開催が必要になる。こうなってくるとちょっと迅速性に欠けるので,目的の包括的記載というのが必要だろうと。それから,そうなってくると実は類似商号規制というのが過剰規制となるおそれがありますから,ついでにそこの見直しもお願いできないだろうかという議論です。  それから,自己株取得の取締役会決議化の議論,これは既に産構審の報告書で前から申し上げている話でございます。  それから,組織再編時の種類株主総会の開催義務につきましても,実は損害の概念があいまいなので実務的にはどうしても何でも開いてしまうという議論になってしまうので,これは過剰な規制となっているのではないか。あるいはグループ内取引規制につきましても,グループ経営の合理性の追求の観点から意義が認められないので,ここはなるべく緩めてもらえないだろうか,こういう議論でございます。  次のページ,資金調達関連は,従来相当程度株式の多様化という御議論がございましたが,それ以外に,例えば社債の種類の多様化という議論ができないだろうかと。それから株式につきましても,種類の更なる拡充を検討すると同時に,例えば報酬の一環としてオプションとか株式を発行する場合には,有利発行規制等関連する規制を見直すということはできないだろうかと。  それから,(2)で社債制度の合理化ですが,これは実は先ほど○○幹事の方からも御紹介がありましたが,社債権者集会とか社債管理会社について,本当に債権者保護の制度として機能しているのだろうか,証取法等代替的な手段が整備されている中で,本当に必要な制度は何だろうかということで見直しをしていただければということでございます。  次は,コーポレート・ガバナンス関係ですけれども,機関選択の更なる多様化,これは産構審報告で前から言っている話ではあるのですが,現在の監査役設置会社と委員会設置会社,二者択一なんですけれども,委員会の設定の方式についてアラカルト方式とかカフェテリア方式でもっと自由にしても問題ないのではないだろうか,こういう議論がございますし,非公開会社につきましては,機関設計は原則定款自治に委ねて,取締役会とか監査役の非設置という選択肢も認めてはどうか,こういう議論もございます。  あるいは,利益処分につきましては,監査役設置会社についても委員会等設置会社と同様に,取締役会決議にはできないだろうか,あるいは書面決議の許容につきましても,迅速な意思決定とか,あるいは社外取締役,海外の方々を招聘したいといったときの基礎的なインフラとして書面決議という議論はないだろうか,こういう議論でございます。  そうした中で,5でまとめているのは,開示のルールだとか自己監視のルールの充実という議論になるのですけれども,開示関係は恐らく証券取引所だとか証券取引法等々,あるいは会計制度といったところの制度の方がより有効なのかもしれないというとも頭に置きながら,商法における開示の在り方ということを議論していただければということなのですが,そのときに,恐らく機関選択,会社機関が多様化するにつれてそうした情報は重要になってくるだろうとか,取締役の報酬については個別情報の開示というのは余り興味がなくて,どちらかというと業績連動型か否かということが分かるような開示の在り方があるかどうかとか,あるいは最近の不祥事防止という意味合いで,内部統制情報ということをどういう形で開示していくのが合理的なのかとか,あるいは「キャッシュフロー」と書いているのは債権者保護の観点から,大体よく考えてみると皆さんキャッシュフローを見ながら債権者自らの保護を図っているという意味合いで見ると,そうした情報の開示の在り方がどうだろうか,こういう議論がこれから開示ルールとしては出てくるのかなということでございます。  それから,登記制度につきましては,恐らく情報開示制度の一翼を担っているという認識でございますけれども,その有効性をもう一度見直していただいて,必要な形でより有効な登記制度ということで考えていただければということです。  それから,取締役の責任につきましては,これもよく言われているのですが,過失責任化の議論,あるいは代表訴訟制度をより合理化するための訴訟委員会制度の導入の議論,それから取締役の責任限度額の引下げ,その限度額についての合理性の再検討,更に次のページ,いわゆる原告適格の合理化ということで,行為時株主原則に基づく原告適格ということにしてはどうかとか,株主移転等によって原告適格がなくなることがないように検討してはどうかとか,そういう議論でございます。  内部告発の議論は,最近非常に多いのですが,あれは恐らく基本的には労働者保護制度,あるいは一部消費者保護制度として今検討が進められているということでございますので,これは商法固有の話というよりも,横断的な制度で検討するのが妥当かなということでございます。  それから,会計監査人の義務と責任強化でございますが,背景としましては,会計監査人は第三者ということで非常に市場の合理的な選別の上で重要な機能を果たしていると,アメリカではその責任が強化されているという中で,過去,産構審の報告書では,会計監査人の代表訴訟化という議論がなされております。そのときに,監査法人の組織形態の在り方とあわせて,それを対象とすることを検討してはどうかということなのですが,これは例の有限責任性の導入という意味合いでございまして,今の組織法制を前提として入れるということではなくて,そうしたことのパッケージで入れてはどうかという議論が提示されております。それから,第三者通報義務,企業の違法行為をしたときの通報義務を,会計監査人にお願いしてはどうかという議論であります。  それから,罰則体系につきましては,リバランスという議論で,先ほど過料についてはどこまで役に立っているか分からないという御議論がありましたが,過料は合理化していただいて,真に抑制すべき行為につきましては罰則を強化すると。ただこれは,商法上の罰則なのか,それとも違う法律の罰則なのかということが議論になるところであると思いますが,そうした御検討をお願いしたいということでございます。  6番目,創業と早期再生ということですが,この創業を促進するとか事業の再生を速めていくという議論をしていくと,大体突き当たるのが債権者保護制度とか,あるいは資本制度そもそも論という議論になるかと思います。例えば,新規事業促進という視点から,先ほど申し上げましたように,最低資本金制度というのが過剰な規制になっているのではないか,ノウハウだけで,小資本でも創業可能な事業がある中で,最低資本金ということは過剰な規制ではないか。それから,検査役の調査につきましても,弁護士による調査制度が導入されてはおりましたが,更に廃止を含めた検討ができないだろうかと。  それで,済みません,備考の「新事業創出促進法」はミスプリで,正しくは「産業再生法」でございます。  それから,会社設立手続の大幅な簡素化,ちょっと違う観点からですけれども,定款認証制度の合理化だとか,電子政府化の一環としてのIT化という議論があるのではないかということです。  それから,事業の早期再生という議論は,ここにつきましては枠で書いてございますけれども,取引先とか金融機関,債権者が企業選別するについては,資本という概念よりもキャッシュフローなどに着目している実態があるし,あるいは倒産に至った場合に,本当に資本制度というものが機能していたのかなという,こういう議論がある中で,もう一度資本制度の有効性を再検証していただいて,有効な債権者保護制度の構築を検討していただければということでございます。先ほどの,事業早期再生に関するキャッシュフロー関係の情報開示制度という方が,例えば一つの有効な手段としてはあり得るのではないか,こういう議論です。  それから,倒産時における社債権者集会の定足数の引下げの議論だとか,あるいは減資における債権者保護手続の合理化,そうした別の観点からの規制緩和の要望というのはあるだろうなと,こういうことでございます。  以上,大ざっぱにまとめると,私は事業法しかやったことなくて,かなり大ざっぱなまとめ方しかできないのですけれども,恐らく債権者保護のための制度,株主保護のための制度,両者に共通する制度というのは用意されていて,事前規制的に縛っているものと事後的に治癒するための制度というのは大きく分かれるのかなと,大体マッピングするとこういう感じになっていて,今,様々なところで論点に挙がっている項目をずっと色づけしてみると,この薄いグレーは規制緩和の議論が提示されている案件ということだと思っております。資本関連規制の最低資本金等含めて,こうした感じで規制緩和の議論が進められており,一方で右側の開示及び事後監視につきましては,黒枠は制度拡充の方向で今回提示させていただいておりますけれども,どちらかというと充実強化の方向で議論されているのかなと。個別具体的にどういう形のものができ上がるかということは予断を持つつもりはございませんけれども,こうした流れで会社法の体系を見直すということはどうだろうかということでございます。  最後,「終わりに」でございますが,いずれにいたしましても組織の実態,ニーズに即して制度の設計を大くくり化していただきたい。公開・非公開,より柔軟な有限組織という3類型での検討を出発点としてはどうかという議論でございます。  それから,制度が組織を選別,規制するということではなくて,市場が組織を選別する,制度は市場の選別を合理化するという考え方の中で,規制法的な体系からモデル法的な体系への転換が図れないだろうか,結果として過剰な事前規制をなくせば,多様な組織モデルの実験が可能になる。これは,選択に際しての説明責任を逆に重くするという効果もあろうかと思います。  一方で,市場の合理的な選別を促すために,開示だとか事後監視のルールを軸として制度を組み直す,その際,恐らく他の関連する諸制度との関係で商法固有の役割を明確にしてはどうか,結果としてそういうことをやっていけば,マーケットが組織の見直しを不断に要請する仕組みができ上がっていくだろうと,その中で経済活力を担う新たな日本的な組織モデルが実現していくのではないかというのが,現段階での我々の問題意識でございます。  これに連続して,○○幹事の話を聞いていただければと考えております。 ● それでは,いろいろ御質問等はあるかと思いますが,今日はたくさん委員・幹事の方から資料を出していただいておりますので,それらの方々の御説明を全部お伺いしてから議論ということにしたいと思いますので,続きまして○○幹事からお願いいたします。 ● 私の方からは,「中小企業政策の視点からの商法改正」という横長の資料をお出しさせていただきました。今,○○幹事の方から全体について御説明がありましたので,私の方からは中小企業ということに着目してお話をさせていただければと思います。  1ページでございますけれども,中小企業政策の立場から今回の商法改正にどういうことを期待するのかということでございますが,冒頭○○幹事からも御説明がありましたように,非常に論点として広いところが掲げられており,21世紀の会社法制を決定する大改正だということでございますので,法務省の事務局も大変な御苦労だろうというふうに思っておりますけれども,私どもとしては是非中小企業の政策の観点から,活力ある中小企業が日々円滑に事業ができるように,全体として総点検をしていただけたらということを考えております。会社法の目的については,債権者保護とか経営者との利害調整とかございますが,もともとのところで,個人を超えて,法人として経済活動を活発化させるというところがございますので,そういったところにも目配りしながら,改正をお願いできればと思っております。  大企業と違いまして中小企業の場合は,コーポレート・ガバナンスとか市場の監視とか規制緩和というよりも,自動的につぶれるものはつぶれるとか,そういう世界が現出しておりますし,それ以外のところで,例えば相続とかそういったところの問題もありますし,普通の方がベンチャー企業として将来株式公開を目指す方もいますし,しばらく会社に務めて独立して自分の事業を興すという方もいますし,あるいは場合によってはのれん分けみたいな形で会社をつくるという方もいますし,そういった多様な中小企業の方々が,ベーシックなルールとして商法がそういうことをうまく,そういう経済活動を支えるような形で商法の見直しが行われたらということで,私どもは期待をしております。  2ページでございますけれども,私どもの立場から現在の商法の問題点,これは皆さんもよく言われていることですので改めて言うまでもないことでございますけれども,何点かにまとめさせていただいております。  1点目は,枠組みの画一性と言っておりますけれども,これは有限会社は小さくて閉鎖的な会社,株式会社は比較的規定の整備の仕方が大規模公開会社を念頭に置いた形になっていますので,入口のところでどっちかを選ぶと,すべてのメニューがそれに合わせなければいけないということで,非常に最初の資本金の要件のところの入口を入ってしまうと,そのほかの規定が全部大きいものによるのか小さいものによるのか,どっちかになってしまうということで,選択がある意味ではメニュー方式になっていて,自由に選べないというところがございます。  具体例として幾つか挙げておりますけれども,有限会社というものの自由度の設計から有限会社を選んでくだされば社債が発行できないとか,あるいはネットビジネスなんかはパソコンがあって商売ができるので,非常に小資本から設立できるわけですけれども,公開をするに当たっては,もう一度会社の再編成をしなければならないとか,そういった声も聞こえてまいります。  それから,それぞれの株式会社なりあるいは有限会社を選択した後で,個々の規制についてはやはり実態に照らして過剰になっている部分があるのではないか,あるいは重荷に感じる分にはまだいいのですけれども,そういう規定があること自体認識されない,あるいは必要性を感じていないというものもございます。例えば,取締役の任期につきましては,株主と取締役が一致している場合なんかは再任の手続というのが余り実質的な意味を持たないという議論もありますし,あるいは株主が少数の場合は,日々連絡をとっているので,株主総会の招集手続というのが株式会社の場合は2週間前に発出しなければいけないとかというのが非常にリジッドに感じられると。そういう制度と実態が合っていないことによって,例えばトラブルが起こったときに,株式の譲渡制限があるのをだれかに売った場合に,その決議がちゃんと行われていなかったのではないかとか,あるいは取締役の解任に要したときの総会の手続に瑕疵があるのではないかとか,そういったところで,自由度がない割にトラブルの場合にはもともとの原則が持ち出されて,紛争の処理としては非常に問題が多いということもございます。  それから,3点目でございますけれども,これはイメージという問題で,制度上の問題ではないのですけれども,実態上,受けとめ方として,やはり有限会社については有限責任なんですけれども,会社の成長が有限ではないかという受けとめ方もされるので,要するに大手企業だと有限会社は取引相手にしてくれないとか,自治体の発注のときに有限会社だと不利になるとか,これは実態として切実にそういう声がありますし,あとは株式会社に無理してなったけれどもなかなか手続とかが大変で,名目的な機関を置いているということになっているということもございます。  そういった問題点を踏まえまして,私どもからお願いをしたいのは,できるだけ資料の5ページになりますけれども,制度選択を自由に多様化できないかということでございます。もちろん,商法が期待する目的というものをきちんと達成するということは必要だろうと思いますけれども,できるだけその前提の上で,企業の運営ルールについては個々の事業に合わせてできるだけ柔軟にプランニングができるような仕組みとしていただけたらと考えております。  具体的には,株式会社と有限会社というのを統一的な視点から見直しまして,債権者保護との関係については中小企業の実態を踏まえて,そういう保護の規定が実効性があるのか,あるいはコストとの関係で見合ったものになっているのかということで総点検をしていただけたらと思います。特に,有限責任で仕事をするという一つの整理からすると,現行の有限会社法の規定ぶりなんかを参考として検討を進めていかれたらいかがかと思っております。  それから,内部での機関の問題,出資者と経営者の利害調整の規定につきましては,できるだけ選択肢をふやしていただいて,定款自治というのを進める形で自主的に組織や運営方法について制度設計できるような形にしていただけたらと考えております。  それから,3点目でございますけれども,名称とか法形式において,対外的な印象によって企業形態の選択にひずみが出ないようにしていただけたらというふうに考えております。実際,有限会社は百数十万ございますけれども,新しい商法をした後,この百数十万の有限会社を強制的に名称変更させるとか,そういうところは実態上結構配慮しなければいけないのではないかというようなことも,私どもは考えております。  6ページに具体的な改正項目がございます。これについては,先ほど○○幹事の方から御説明したものと大分ダブるところがありますので,細かい説明は省略をさせていただきますけれども,それぞれ書いてある項目,いわゆる公開大企業が直面しているものと別の切り口で,こういったものの過剰感というのはそれぞれ中小企業にも出てきておりますし,できるだけ例えば最低資本金規制なんかも撤廃するというと,入口論としての有限会社と株式会社との選択の意味というのもなくなりますし,そうすると自動的に個々の規定についても見直しがされていくのだろうと考えております。  時間もありませんので,私の方からは以上でございます。 ● それでは,続きまして,○○幹事の今の御説明にも関連しますので,○○委員からお願いできればと思います。 ● お手元に,2枚紙のごく簡単なものをお届けしております。  第1番目でございますが,私どもが特に主張したいことは,まず中小企業というのは会社制度の最大のユーザーであると,いろいろな議論をするときに,特別な大きな会社を当たり前のものだということで議論をするのではなくて,中小企業という120万社のうちのほとんどが資本金1億円未満の中小企業であるわけでございますが,これが最大のユーザーであり,この人たちが一番使いやすいものにしてもらいたい,こういうお願いでございます。中小企業にとって使い勝手のよい法制度,これをつくっていただきたい。簡単で,分かりやすいものということでございます。  中段あたりに書いてございますけれども,むしろ上場企業といった大きな企業,いろいろな様々な複雑な保護規定等が適用されるそういった企業がむしろ非常に特別なものであって,そうではない,私どもが担当しておるようなところが当たり前のものだと,こういうことであろうと思っております。  二つ目の丸でございますが,非常に使い古された言葉でございますが,正に規制緩和を是非お願いしたい。今,中小企業の経営者というのは何が大切かといえば,事業をいかにして存続をし,いかにして拡大をするか,商売をどうやってするのかが一番大切なわけでございまして,法律をどうやって守るかとか,法律に従って何を手続をしなければいけないかということが実は非常に大きな負担になっております。どうしても人任せにしたり,そういうことが起こりまして,やっていなかったということも起こるので,可能な限りディレギュレーションをお願いをして,ハードルを下げていただきたい。とにかくコストがかからない,コストというのは,時間的にも,お金としても,それから何といっても心の負担が今非常に大きいものですから,非常に簡便にすべてが進むというやり方に是非していただきたいなと,こういうふうに思っているわけでございます。  一番下のところにございますが,「例えば」というところ,これがいいのかどうかはまだこれから検討を要するのではないかと思いますが,一定の要件に当てはまるような会社については,ドラスティックに規制緩和をしていただけないだろうかと,こういうようなお願いでございます。  2ページ目に例示が出ておりますが,これは単なる1例でございまして,もう少し検討を細かくしなければいけないと思います。  それから,最初の丸でございますが,皆様方がお思いになるよりははるかに経営者あるいは企業というものはバラエティーに富んでおります。余り合理的ではない選択さえしかねない面もありますが,それは彼らにとって合理的なのであって,はたから見ているとそうではないのかもしれません。したがって,いろいろなやり方が自由にできる,先ほど経済産業省,中小企業庁からも御説明がありましたが,多様な選択肢が用意されていてほしい。既に現在存在をしている様々な形態,これはできればそのまま継続をしていただいて,例えば法論理的に整理をして,こうすればいいのではないか,ああすればいいのではないかという大きな変更が起こると,それに対応するだけで社会経済的なコストが膨大なものになりますので,そこはそういう変更については私どもは賛成できないという立場でございます。  余り中小企業と大きな企業とが違う違うと言いますと,2ページ目の二つ目の丸でございますが,では截然と分けて議論をしてしまえばいいではないか,こういう議論に発展をするわけでございますが,多くの経営者は,会社を始めるときにはなるべく簡単な方法でさっと始めたいわけでございますが,大きな夢を描いておって,10年以内に大会社になるのだというような青雲の志を抱いてやってくる方が多いわけでございまして,そういう意味で具体的に言えば小さい企業が小さいままでいることもあれば,小さい企業が巨大な企業になることもあって,そこは連続的なものであるというふうに考えております。したがって,先ほどもちょっと指摘がございましたが,名称の区別,外形的な差別というようなことは可能な限りやめていただいて,みんなイコールな,フェアな取扱いで,大きくなる可能性というものを残すということにしていただきたいということでございます。  ここに,「成長の視点を持った制度」と,こう言っておりますが,企業は生き物でございますので,小さくなったり大きくなったり,いろいろな動きをする,それに柔軟に対応できるようなフレキシブルな仕組みを持っていただきたい。一律に,それはこの形態ではできないのだということはだめでございまして,例えば何らかの制限をすれば次のステップに進めるとか,いろいろなやり方があるのではないかと思います。  それから,中小の小さな企業につきましてのガバナンスの話でございますが,これはもう正に規制緩和の一つの特徴になろうと思いますが,自治にお任せをする,後で紛争解決の手段をきちんと用意しておけばいいということで,緩めの規制をなるべく導入をしていただきたい,こういうことでございます。  具体的な問題につきましていろいろ書こうかと思ったのでございますけれども,議論の最初の段階でいろいろなことを言いますと,あのときこう言ったああ言ったということになるのもちょっと問題がありますので,今回はこのぐらいにさせていただきます。 ● それでは,まだ何人かの方に御説明いただくわけですが,休憩に入ります前に,金融庁の御説明をいただきたいと思います。 ● お手元に,「法制審議会会社法(現代化関係)部会における改正検討事項について」ということで1枚の紙を配らせていただいております。私どもとしましては,資本市場への信頼の向上といった観点から,開示制度,それから公認会計士を始めとする監査制度,この見直しの作業に現在も取り組んでいるところでありますけれども,是非この商法の現代化という中で,各論になりますけれども3点はこれを御検討を是非お願いしたいということでございます。  まず1点目でございますけれども,計算書類虚偽記載等に対する罰則の強化という点であります。詳細については,時間の関係もございますので簡単に補足をさせていただきますけれども,現在の商法特例法における過料という規定でありますが,これについて刑事罰の導入も含めて見直しを検討していただければと考えております。  また,風評のような話ではございますけれども,100万円以下の過料ということで,会計監査人を選任しなくても,そのようなレベルの額でございますので,監査報酬を支払うよりも過料を払った方がよいという,誤った認識があるとも言われております。そういうようなことも背景としながら,この罰則の強化という観点で,この見直しというものについて是非御検討をお願いしたいと思っております。  2番目は,会計監査人の欠格事由についてであります。これは,ある監査方針,その社員である公認会計士の一人に,例えば業務の停止の処分であるとかいうことが行われました場合に,この会計士が社員として所属をする監査法人全体が現行の商法特例法の規定に基づいて会計監査人としての資格を失うというのが今の制度上の現状となっております。一方で,監査法人の巨大化が進んでおるという現状もございますけれども,この監査法人全体が会計監査人の資格を失うというふうになってしまうことによって,ある意味では多くの善意の被監査会社に対する影響ということにも著しいものがあるということであります。これは,先ほども触れましたけれども,公認会計士監査制度の見直しの中で,他方手当てをしながら,この商法特例法における規定についての見直しも是非ともお願いいたしたいというように考えております。  3点目は,会計監査人の会社に対する責任についての株主代表訴訟でございます。これはもう既に御案内のとおり,中間試案の1項目として挙げられておりました点の検討でございますけれども,昨年の御検討に引き続き会計監査人の株主代表訴訟における被告適格性の問題,それから被告適格ありと仮にされた場合の責任の限定の在り方について,是非とも御検討をお願いしたいと考えております。先ほど,経済産業省,それから中小企業庁からも今回の商法の現代化に対する期待の表明があったところでございますし,私どもといたしましても大いに期待をいたしておるところでございます。何とぞよろしくお願いいたしたいと思います。 ● それでは,ここで少し休憩をとりたいと思います。休憩が終わりましてから,あとの委員・幹事の方から御説明をいただきたいと思います。  それでは,休憩いたします。            (休     憩) ● 時間の関係もありますので,再開させていただきたいと思います。  お手元に資料をお出しいただいている方といたしましては,○○委員,お願いできますでしょうか。 ● 私どもの提案は,日ごろ監査業務を通じて実務的に問題として理解してきたところを取りまとめたものでございます。そういうつもりでお聞きいただければと思います。  お手元のペーパーに沿って簡単に御説明申し上げます。  まず,「Ⅰ 商法総則関係」ですけれども,1として,商法総則(第32条第1項)に定める商業帳簿には,会計帳簿及び貸借対照表のほか,損益計算書も含めるべきである。  これは,古くして新しい問題といいますか,前からいろいろ議論があってこうなったことは存じておりますけれども,また改めて今の世の中で損益計算書の重大性をもう一度議論していただきたいと思っております。  「Ⅱ 会社組織形態関係」で,2といたしまして,株式会社については大会社と中小会社を区分し,それぞれ適用される規定を分けるべきである。これは,説明を要しないと思います。  3として,合名会社及び合資会社の出資額に下限を設けて,米国のLLP的な会社の組織形態(有限責任事業共同組合)を創設すべきである。これを提案したいと思います。  これは,私ども会計士業界で監査法人という組織がありますけれども,これにつきましては非常に独特な組織形態ですが,一応合名会社という法理を利用してできておるというふうになっておりますけれども,アメリカの制度等を考えますと,やはりLLP的なそういう組織形態がなじむのではないかというふうに思っておりまして,その根元的なものとして商法にこのような規定があれば有り難いと思います。  Ⅲの「株式会社の機関関係」ですが,4として,大会社については経営者責任を強化する観点から,商法に取締役の内部統制組織構築業務を明記し,かつ,粉飾決算に関する罰則を定めるなど,罰則の強化を図るべきである。  最近,特にいろいろな粉飾事件が起きておりますけれども,これについて私ども常に疑問に思うのは,経営者が内部統制システムを必ずしもきちんと構築していないということで,経営者の不正が割としやすかったということがありましたし,またそういうふうに実際に粉飾が起きた場合でも,まずは商法上粉飾を起こした経営者に対しての追及ということが,民事上の追及監視しかなくて,刑事上の責任が余りなされていないということで,この辺についてはやはり問題があるのではないかというように思っております。  次に,5番目といたしまして,委員会等設置会社以外の大会社についても,取締役会での利益処分,損失処理の確定を認めるべきである。  これは,委員会等設置会社以外でもこういうことをしても特に弊害はないのではないかということで,このようにしていただけると,私どもの監査と非常に整合性がとれると思っております。  6番目として,大会社については,監査役の業務から会計監査を除外し,会計監査人の監査を監視する機能のみを付与するべきである。  この度,商法特例法の改正で,大会社について連結決算書類制度が導入されましたけれども,この連結財務諸表の作成は,会計的に大変高度なテクニックということが用いられるというふうに思っておりまして,ここの部分まで会計の専門家でない監査役に会計監査の判断の責任を負わせることは大変な負担ではないか,また実効性があるとは私どもとしても思っておりません。そこで,監査委員会等の委員会等設置会社と同様の仕組みとして,監査役会,あるいは監査役が業務監査とともに,会計監査ではなくて会計監査人を監視する役割という形のものをつくれば,そういうふうな責任あるものにすればいいのではないかというふうに思います。  7番目として,会計監査人の欠格事由のうち,現行の商法特例法第4条第2項第4号の前段の規定(社員に業務停止処分者がいる監査法人)は削除すべきである。  これは,先ほど金融庁が御提案されましたので,同じような趣旨でございますので説明は省かせていただきます。  8番目といたしまして,小会社については,取締役の人数は1人以上で任期の規制なしとし,監査役の設置は任意としてはどうか。  これは,有限会社でも同様のことになっておりますので,本当に小会社は場合によっては有限会社よりも小さいというような具体的なケースがあるかと思われますので,そのような規定でいいのではないかということを提案するものであります。  次に,「Ⅳ 株式会社の計算関係」ですが,9番といたしまして,連結計算書類の商法上の扱いは,証取法の扱いに全体的に統一すべきである。  具体的に申し上げますと,連結財務諸表では,連結キャッシュフロー計算書,あるいは連結剰余金処分計算書,そういうものがあるわけですけれども,これも投資家,商法上の商法関係書類の関係者にとっても大変重要な書類だというふうに思いますので,証取法ベースで扱った方がいいのではないかということで提案申し上げます。  10番目といたしまして,連結計算書類を作成すべき会社の個別計算書類の作成上,連結の範囲(持分法も含む)に含められる子会社及び関連会社の株式等の評価を持分法で行うこととすべきである。  持分法といいますのは,会社の持っている子会社等の株式について,子会社等の純財産の増減状況を持分として,その株式の評価に反映させるということでありますけれども,低価法でありますとマイナスの方は費用化されるわけですけれども,利益が上がったときのプラスの方の評価はされないということで,そこにおいては現在のところプラスの方の評価が反映されない形になっております。連結決算をいたしますと,子会社の,あるいは関連会社の損益が全部親会社の連結決算に反映されるわけで,そのままで放置しておきますと連結決算は多額な赤でありながら,あるいは黒でありながら,個別決算は逆の赤若しくは黒ということになるわけで,そういう決算が往々にしてあります。ですから,連結とそれから個別の決算のいわば離れたままの形のものを出した場合には,やはり利害関係者に対して誤った情報を提供するということですので,これは個別の計算書の上でも子会社及び関連会社の持株に対しての評価に相手の損益が反映するというものを採用しないと具合が悪いのではないかということで,提案するものであります。  それから,11番として,計算書類と附属明細書の提出時期は一元化すべきである。  現実には,現在監査の上で計算書類と附属明細書が違わないように同時にチェックをしております。したがって別々に提出するということは現段階ではもう必要がないのではないかというふうに思っております。むしろ同時期に提出していただいた方が,整合性が持てると思います。  12番として,商法の監査報告書を,この度,企業会計審議会で監査基準の改訂,今年1月だったと思いますが行われましたので,是非これに合わせる規定にしていただきたいということです。  今回の監査基準の改訂では,非常に重要な改訂がありまして,その中でもとりわけ企業の継続する前提についてのチェックが行われることが入っております。いわゆるゴーイングコンサーン情報と言っておりますけれども,継続企業の前提となる情報の記載,これを監査報告書が受けて追記情報として記載することになっておりますけれども,これは商法においても私は絶対的に必要な事項ではないかと思いまして,商法上も是非同種の規定を入れていただきたいと思います。  次に,13番といたしまして,継続性の変更に関する監査報告書での記載内容を証取法と同じベースにするとともに,変更の理由は附属明細書の記載事項ではなく計算書類に記載させることとすべきである。  これは,情報の透明性といいますか,より一層幅広く情報を提供するという意味では,これは当然のことと思います。  14番として,「その他資本剰余金」を財源とする配当の場合,又は配当以外で「その他資本剰余金」の増減取引が生じる場合に,これらを利益処分に記載するのかどうか取扱いを明確にすべきである。  現在の状況では,利益処分案に記載するのか,どこへどのように記載するのか明確でありません。企業会計基準委員会の方で,適用指針第2号として利益処分計算書の内容に準じて記載するというふうな,通常の利益処分とその他の剰余金の処分とを分けて記載するような,そういう様式になっておりますけれども,この点が現在商法上は明確でないということであります。施行規則で明文化するように私どもとしてお願いしたわけですけれども,これは省令に委任するということが本文にないと,そういうふうにできないというふうなお答えをいただいておりますので,法改正でお願いしたいということであります。  それから15番として,建設利息配当の規定は廃止すべきである。  これは,私ども現実にこの建設利息配当というものを見たことがありませんので,恐らく現実には使われているところはないのではないかということで,廃止してよろしいのではないかというふうに思います。  16番として,企業会計審議会から公表されている「研究開発費等に係る会計基準」の「研究開発費に係る会計処理」では,「研究開発費」について資産計上を否定しており,商法においても同様な取扱いとする必要がある。  これは,既に計算規定の大部分は施行規則の方に落ちたというふうに聞いておりますので,あるいは商法改正の問題ではないかもしれませんが,商法にあった条文をそのまま施行規則に落としたということでありますので,やはり従来の商法の考え方がまだ施行規則に残っているということであれば,一応商法の法の上でも,そういうものはないのだという考え方を示さないと規則の方が直らないのではないかという心配をしまして,あえてここに提言する次第でございます。 ● それでは,続きまして○○委員から御説明いただきたいと思います。 ● 私の書面は,必ずしも弁護士会のオフィシャルな見解に基づくものではございませんで,一応私個人ないしはごく少数の会社法をやっている弁護士と議論した結果を,私の責任でまとめたというものでございまして,非常に限られた部分的な事項が書いてございますし,また改正の提言と申しますよりは,どちらかと申しますと今後改正の審議をするに当たって制度のバランスを維持するために留意すべき点を心覚えにピックアップしておきたい,そういうつもりでつくったものでございます。  ごく簡単に,要点だけ御説明申し上げますが,まず会社法全般の体系的構成という意味から考えた場合に,第1回の部会でも申し上げさせていただきましたが,現在の会社の経営の実情,あるいは経営が抱えている課題という点から申しますと,株式を公開した企業と非公開企業,この両者で非常に本質的な違いがあるのではないかということを感じるわけであります。  まず公開企業でございますが,これは先ほど来いろいろと御指摘がされているように,非常に企業を取り巻く大きく言えばガバナンスの様々な要素,これが非常に多様で,また強力になってきているということがございますから,やはりコーポレート・ガバナンスの重要性というものが公開企業においては非常に高いという点を感じるわけであります。  そういう点から,今回委員会等設置会社ができたわけでございますが,まだ改正法が施行されていない段階でこれについて冒頭にコメントを申し上げるのは大変恐縮でございますが,やはり委員会等設置会社自体がいわばワンパターンの制度になっているという状態で,これはもちろん3委員会と執行役を設けるというのが有機的な一体の制度ということでつくられたということは十分理解しているつもりでございますが,やはり人事評価,あるいは監督というものは取締役会の中の委員会,すなわち指名委員会と報酬委員会がやるということはそれといたしまして,業務に対する日常的な監査の部分が,何と言いますか常勤監査委員というものが要求されていない,そういう状態でどれだけ可能かという問題について,企業関係者の中からもその点についての不安を申される方がいらっしゃるという点から考えまして,ここに書きましたように取締役会なり3委員会によるガバナンス体制,現行法の制度に,もう一つ選択肢を追加いたしまして,人事評価と監督は指名・報酬の各委員会が行って,業務監査そのものは既存の監査役会制度をシフトさせて,監査役会によるガバナンス体制の選択肢を追加するということを検討してみる価値はあるのではないかなというのが第1点でございます。  それから,第2といたしまして,公開企業の場合,当然企業内容開示の重要性というものが非常に大事なことでございまして,285条の改正によって計算関係が法務省令に委任されることになった,そして今後法務省令で商法上の会計基準というものができてくるということになると思いますが,その場合,少なくとも従来の商法の計算規定の目的というのは,配当限度額の規制と会社債権者保護という目的からできているというふうに理解されると思いますので,こういう観点から,現在企業会計基準委員会の方で審議されて,また続々と新しい会計基準がつくられている,それが商法の中に取り込むについて,今の目的に適合するかどうかという観点から,一つ一つを検証して採用していくということにしていくことが必要ではないかと。特に,今,企業会計基準委員会ができまして,新しい会計基準が矢継ぎ早に公表されておりまして,それがまた慣行化する前に企業が採用せざるを得ないという形になってきておりますので,商法の面からそういった状況をどう考えるかということを審議していくことが必要ではないかという気持ちがしております。もし,商法の目的に照らして各種の企業会計基準,これが適合するということであれば,開示に伴う企業の負担を軽減するということも考えられるのではないかということで,当面の検討課題というところに,有価証券報告書提出会社の商法上の決算公告義務の廃止ということも,あるいは将来的に検討するということも可能ではないかということを記載してございます。  それに対して,非公開企業の場合ですが,これは先ほど来いろいろと中小企業庁,あるいは○○委員がお話しになっておられますように,非常に多様でありまして,また実態がなかなかまだ間接金融依存ということで商法の規定を遵守するという体制が整わないという会社も多々あるという実情でございますので,それを実情にあわせる改正をするか,あるいはある程度の強行法規的な最低限度の規制を設けて,それを遵守してもらうように,そういったインセンティブを与えるという方向でいくかという選択の問題があると思いますが,少なくともここに書きましたように,企業内容の開示の重要性,これは物的会社である限りはどうしても非公開企業であっても同様に要求される部分であろうと思います。特に私ども,債権者の立場で取引先企業の財務,決算内容を把握するという方法が非常に限られているというのが実情でございまして,商工リサーチとかそういうリサーチ機関に頼んでも不明という回答が返ってくるというのが非常に多いわけでございまして,そういう意味で2ページ目の冒頭に書きましたように,決算書類の登記所における公開制度,これは前にも審議された経過があるようでございますが,特に現在は登記所のコンピュータ化によりまして企業から決算内容をEメールで登記所に送って,債権者側からも検索することができるというシステムが十分考えられ得ると思いますので,むしろ非常に費用のかかる公告義務よりは,こういったシステムの方がインセンティブになるのではないかということを提言させていただきたいと思います。  それから,ガバナンス体制については,現行商法及び商法特例法第3章の小会社のこの程度の強行法的な手続は,中小企業であってもやむを得ないのではないかという気持ちは実はいたしておりますけれども,ただやはり商法の中に有限会社も含めて統一的な会社法をつくっていくという観点から見ると,株式会社の非常に小規模なものと,有限会社の組織体制というものをある意味では一致させるという方向での軽減化ということも,株式会社についても可能性はあるだろうという気持ちもいたしておりますので,統一的会社法の中に株式会社をどういうふうに区分して,有限会社もそこに盛り込んで,有限会社と小規模会社の組織の手続的規制というものをどういうふうに振り分け,あるいは統合していくかということを考えていくという方向はあり得るだろうという気持ちがいたします。  会社法の構成でございますが,今,公開会社と非公開会社が非常に実情が,あるいは経営上の課題が異なるということを申し上げたわけですが,公開会社に関する独立法を制定することができれば,これは非常に分かりやすい法制になるだろうという気持ちはいたします。ただ,公開会社でなくても非常に社会的に影響力が大きい大規模企業というものは多々あるわけでございますので,こういった会社についても公開会社と同等のガバナンス体制,あるいは企業内容の開示ということを求める,これは必要性があるだろうと考えますので,少なくとも基本法たる会社法という意味では,公開・非公開という区分よりは,それらを包括した大会社,大規模企業というものを対象とせざるを得ない,これは立法技術的にそうせざるを得ないのではないかなというのが,私の今の時点での感想でございます。  米国では,公開会社に関する規制は今回新しくサーベンス=オクスリー法という形でできておりますし,イギリスあるいはアメリカでは,証券取引所の上場基準により実質的に公開会社規制というものができたということが言われておりますので,そういった方向もあるいは公開会社に対する規制の一つの方向だという感じがいたします。基本法しては,公開会社に限らず,大・中・小を区分した株式会社法というものをつくらざるを得ないのかなということでございます。  それ以外に,有限会社を独立法とする根拠に乏しいので,有限会社法を廃止して,統一的会社法の中に取り込む。それから,合資会社,合名会社,これは実は実態がよく分かりませんので何とも申し上げられませんが,実はこの間台湾の著名な法曹と懇談する機会がございまして,その方から指摘されたのですが,日本では合資会社の数が若干増えつつあるようだという指摘がありまして,実は私も全然統計資料を見ておりませんでしたので,いきなりそういう指摘をされてちょっと戸惑ったのですが,合資会社が増える理由は何ですかという質問がありました。これは,統計資料を見ればすぐ分かるとは思いますが,そういう意味で実情を,どういう需要があるのかということを調査して,この点は考えていくことが必要だろうと思います。立法技術的には,こういった株式会社,大・中・小の区分をいたしまして,それに有限会社,それから合資,合名会社という人的会社を含めた統一的な法律にいたしまして,個別の会社にとって,我が社にはどの条文が適用されるかが分かりやすい法律にするということが経済界の非常に大きな要望になるのではないかという気持ちがいたします。  あとは,個別改正検討事項で,本当にこれは当面私の能力の範囲で思いつくことを書き並べたわけでございますが……。 ● 重点的に個別事項については説明願いたいと思います。 ● それでは,自己株式取得制度の整備は,これはもうお読みいただければ十分に御了解がいただけると思いますので,3点ばかりここに書きましたけれども,こういった検討事項を考えておるということです。  それから,取締役の責任につきましては,これも皆様方が御指摘になっていらっしゃいますように,委員会等設置会社における執行役の責任と実質的には変わらない形で統一するのが望ましいのではないかということであります。  3番目の利益処分,損失処理の確定権限,取締役の任期の法定。これは,当面衆参の附帯決議で述べられておりますように,委員会等設置会社における運用,それが果たして取締役会の投資政策に合致した利益処分という形で取締役会が確定していくか,あるいは株主から提案権などの行使があった場合に,それが取締役会の投資政策と余りかけ離れたものばかり出てくるという実情なのかということを見極めないと,何とも言えないと思いますけれども,今の段階ではこのように考えているということでございます。  それから,4番目の重要財産委員会への監査役の出席義務の法定。これは○○委員の前回の御書面の中にも書いてございましたので,社外監査役の出席義務というものがちょっと困難を強いるという面があろうかと思いますから,この点は改正の必要があるのではないか。  それから,5番目の親子会社の関係でありますが,これは親子会社関係におきまして特に完全子会社の運営,これを簡素化するという要望が非常に強いと思いますし,これは適切だと私も考えております。例えば,それがどういう点に言えるかと申しますと,ここに書きましたように,グループ企業間の取締役兼任を理由とする自己取引規制の撤廃ということが必要だと思います。機関の簡素化ということもいろいろと提言されておりますので,こういった方向での規制緩和といいますか,任意法規化していくということはよろしいかと思います。ただ,最後のページに書きましたように,その場合に制度のバランスを保つという意味で,子会社の機関を簡素化する場合,やはり親会社による子会社に対するガバナンスというのは非常に重要性を増すだろうという点が一つと,子会社配当連動トラッキング・ストックなどが普及するとすれば,やはり親会社によるガバナンスというものが非常にトラッキング・ストックの株主に影響を及ぶということなどを考えまして,そういったことを補強するという意味で,平成10年の親子会社法制に関する問題点で検討された経緯のあります親会社株主による子会社取締役に対する代表訴訟提起権とか,あるいは一定の会社法上の訴えの提起権,そういったものを検討しておく必要はあるのではないかということを考えております。ただ,代表訴訟は特に濫用の危険性もございますので,この特別の代表訴訟については株主資格を少数株主権にするとか,あるいはその他の株主資格を限定するとか,そういった立法をいたしまして,一方で規制緩和がなされた子会社の運営の簡素化というものとバランスを保つ意味で,親会社によるガバナンスの補強を図るということを念頭に置いておいた方がよろしいのではないかということでございます。とりあえずは以上でございます。 ● 最後になりましたが,○○幹事からも参考資料が出ておりますので,この説明をお願いいたします。 ● 今日お配りいたしました資料ですが,これは前回の会議におきまして,分かりやすい会社法をつくるという今回の作業の趣旨からいたしますと,強行法規と任意法規との区別がいま一つ明確でなく,それが実務上の障害になっている部分があるので,その明確化の方向で努力をしていただけないかということを申し上げましたところ,○○委員から,それでは具体的に示すようにという宿題をいただきまして,それについて一応何とか一つの資料を御提示させていただいたということでございます。  この資料の趣旨でございますけれども,まずはこの資料の内容なのですが,これは実は幾つかの大手法律事務所及び監査法人にお願いをいたしまして,実際の実務において定款自治の範囲の明確化,あるいは強行法規性の限界というような観点から,一度は悩んだことがある,こういうことができるかどうかという点で悩んだことがあるという事柄をお寄せいただいたものを,私の方でまとめさせていただいたというものでありまして,これは私の頭の中で考えたというものではありませんし,かつこのようなことを可能にしていただきたいという趣旨で申し上げたものではないということであります。  この中には,かなり既にもうできるかできないかということが解釈上決着がついているというような部分もある程度あるかとは思いますが,ただ条文を卒然と読んでみますと,確かにできるのかできないのかというのが必ずしも明らかではないというようなものをニュートラルに列挙させていただいたということでございます。また,条文の解釈が不明確なものをすべて網羅的に出したというものではなくて,強行法規性の限界というような観点から議論があり得る点を,実務でニーズがある点というものに限ってリストアップしたというふうに御理解いただければと存じます。  幾つか補足させていただきながら,御説明させていただきたいと思います。  まず一番多かったのは,今回の改正との関連で種類株主総会関連のものでございまして,第1点,345条,346条の法定種類株主総会を排除して--ちょっと次のところに抜けがございます。任意種類株主総会です。--任意種類株主総会で代替することを定款に規定することはできるか。これは,趣旨といたしましては,組織変更に対する種類株主の拒否権を定款で排除することができるかという観点であります。これは,かなり実務上ニーズが高いものだそうであります。  それに関連いたしまして,1で種類株主の組織変更に関する議決権を排除した場合に,それにかわるものとして定款の規定によって種類株主に株式買取請求権を与えるということはできるかという点。  3点目,任意種類株主総会の決議要件を過重することはできるか。  4番目,種類株主総会決議事項(222条9項)として,定款で具体的な契約等に言及することはできるか。例えば,当会社が何年何月何日に何々会社との間で締結したライセンス契約の変更又は解除について,これを定款決議事項として変更が難しいものとし,拒否権を少数株主に与えるというようなことはできるかということであります。  5番目が,複数の種類株式につき,単一の種類株主総会を設定することができるか。これは複数の種類株式を出したとしても,その利害関係はかなり一致しているものがあるので,むしろまとめた方が合理的であるという場合が多いということです。  6番目に,これもちょっと誤植ですが,任意種類株主総会--「任意」の後に「種類」を入れていただきたいと思いますが,任意種類株主総会を一定期間のみ存続するものと定めることができるか。このような点が出されております。 ● 重点的にお願いできますか。 ● それでは,Ⅱ番目は,読んでいただければ分かると思います。  それから,Ⅲ番目は,種類株式を用いないでも取締役会選任権限の分配が定款自治の範囲でどこまでできるかという,要するに種類株主総会でかなりできるようになったところを,その反映として普通株式だけを発行している場合であってもかなり定款自治を広げてもいいではないかという,そういうような動きが出ているということだと思います。  Ⅳ点目,異なった議決権の定めですが,2点目はこれは趣旨といたしましては,議決権制限株式について222条4項に列挙される事項以外について制限を課せないのかと,そういう趣旨であります。  Ⅴの利益配当額の定めですが,これも大体読んでいただければ分かると思いますけれども,これに関連いたしましてもう1点補足させていただくとすれば,利益配当だけではなくて,残余財産分配請求権に関する種類株式についても,算定の基準の要綱を定めることで足りるというようなことは可能かどうかというような点が出てきております。  Ⅵ点目,強制転換条項関係ですが,1点目は既に法務省の方から民事月報において見解が出されておりまして,一応これは実務上は問題解決していると思われる点であります。  Ⅶ点目も,新株予約権の消却関係ですが,これもお読みいただければお分かりになるかと思います。  Ⅷ点目,株式譲渡制限関連ですが,これはそもそも定款自治の範囲がどこまで及ぶかということに関して,最初に問題が学会等でも議論がなされた部分でありますけれども,いまだにいろいろな解決されていない問題があるように思われます。例えば,譲渡制限を普通株式のみに定めて種類株式は除外するということができるか,あるいは株主間の譲渡は自由だとすることができるかというのがありますし,更に有限会社はそうなっているのだから,取締役会でなく株主総会決議事項にすることはできないか,更には種類株主総会決議事項とするのはどうかというような議論が出ております。  それから,特に実務的に需要が高いと思いますのは,5点目の先買権条項を定款に規定できないかと。要するに,この需要というのは,定款による譲渡制限というのが一つの形態しか認められていなくて,非常にフレキシブルでない,そこをもう少し実務界で実際に使い勝手がいい,実際にジョイントベンチャーなんかで使われている先買権条項等をそのまま定款で定めるというような方向での定款自治の拡張というものが実務で求められているということであるかと思います。  それから,次の解散関連の2点目につきましては,これはベンチャー企業の出資契約でよくアメリカで使われているものでありますけれども,残余財産の分配に関する種類株式について,合併,企業買収等をみなし解散事由として定めることができるかというような観点。  それと,株主総会,取締役会関連はお読みいただければ分かると思いますので飛ばさせていただきます。  最後のXI番目の,これは必ずしも特定の条文があるということではございませんが,株主平等原則等の一般原則との関係で問題となる--問題となるといいますか,実務が大丈夫かなといつも思っている点ということで,第1点目のこれはよく出てまいりますが,ディスクロージャーに関連いたしまして,特定の株主だけに,例えば当社は○○会社に月次試算表を交付するというようなことを定款に規定することができるか,あるいは定款に規定しないまでも,そのような契約をした場合において,それは株主平等原則違反であるというようなことになるのかどうかというようなことでありまして,そういうようなものがございます。  2点目は,これはちょっと杞憂かなと私なんかは思うのでありますが,ベンチャー企業の実務で極めて需要が高い,いわゆるスウェット・エクイティーに関連いたしまして,優先株式の発行価格を普通株式の発行価格の例えば10倍にするというような場合については,これは1株1議決権の原則等に反するのではないかという議論があるそうですが,こういうようなところ,できればこういうことは問題ないというような定めができないかというような需要であるかと思います。  一応,重点的に以上申し上げましたが,全体といたしましては,今回種類株式のかなりドラスティックな自由化によって,ほとんどのことができるようになったという実務の認識があるわけですけれども,その中で,改正に絡んで過渡的な問題として解釈が揺れているという部分と,それから更に種類株式の自由化に伴って,ここまでやったのであれば普通株式に関してももう少し定款自治の範囲を広げてもいいのではないか,そういうことが実務上求められているということがこのあたりから読み取れるのではないかと思います。 ● 一渡り御説明いただきましたが,それではこの部会資料2,それから各委員・幹事からお出しいただきました参考資料を含めまして,フリーディスカッションの形で御自由に御意見をいただきたいと思います。  前回の部会でも述べましたように,本日の部会が終わりますと来年3月まで事務当局でいろいろ検討作業をするということになりますので,是非この辺は見逃さないでくれというような御意見をいただければ幸いであります。どの点でも,どうぞ御遠慮なくお願いいたします。 ● 関連することですが,2点,部会資料の2をベースに意見を述べさせていただきます。  総論的事項の2番目のアステリスクに,事後規制化・任意法規化の当否の検討ということが出ていまして,最初両方並べられるのが違和感があったのですが,経産省の方の説明などを聞きますと,事後規制というのは,ここの趣旨がそうかどうかはともかく,市場監視型ということを事後規制化と代替すれば滑らかなのかなと思ったのですが,やや事後規制イコール市場監視型でもなかろうというような感じがいたします。具体的には,市場とは異なる個別の取締役の責任追及を厳格化する意味の市場監視でない,しかし事後規制だと。  そして最後のところに過料等がありますが,これについても経産省の方がおっしゃいましたように,過料の合理化も必要だけれども,刑罰を厳格にする,ないしは近代化する。特に489条の,これは公認会計士協会の方から,無配の場合でもいわゆる粉飾決算イコール違法配当でありませんので,そういう合理化も必要ですけれども,これを少し整理する必要があり,かつ罪人をつくるのが法の目的ではありませんが,合理的な刑罰規定にするというようなことも事後規制化になると思いますので,事後規制化の意味を少し整理していただいて,任意法規化の裏返しとしての事後規制というと少し狭過ぎるのかなと思うということが第1点です。  そして,任意法規化ないしは市場監視型と申します場合には,一つの理念的なものとしては美しいというか,魅力的なのですが,現実にどう機能するか,合理的に機能するために理論上もいろいろな前提があるし,その理論上の前提が現在の日本の社会でうまくいくのか,10年後はともかく,この一,二年はどうなのかとかいう形の,事後規制化ないしは市場監視型を進めていくための前提条件として何があり,その前提条件が現在どのような状況なのかというのをアメリカやヨーロッパの事情と比較しながら検討していかないと,理念的な夢で現実を推し量ってはいけないというようなことが出てくるのではないかというのがこのコンテクストの感想であります。  2点目は,前回も発言させていただいたことなのですが,機関の4番目の親子会社における会社管理の在り方で,親子関係の規制,例えば264条,265条を,あるいは子会社の取締役の員数,監査役等々,合理化する必要があろうかと思いますが,経営の効率性を追求する必要がありますが,そういうときには,今度は利益相反をきちんとしなければいけない。とりわけ日本の場合には,会社を食い物に自分の利益を図るというのは,例えば公開会社では相対的に少ない。会社のために違法な行為をする,ないしは自分の会社のために不公正なことをするということで,前回も○○委員の名前を挙げましたので今回は挙げませんが,例えば264条,265条を違うことにしたら,親子会社,つまり親の,あるいは他の兄弟会社の利益のために不当に影響力を行使して,子会社あるいは兄弟会社の不利益な行為をする。間接的に全体の利益になると思っても,当該子会社にとっては不利益になる。そういう場合の責任も含めて,この会社管理の在り方にそういう責任規制もあると思うのですが,広い意味での利益相反ないしはフェアネスの観点からの規制もあわせてやっていただきたい。265条適用除外するなら,開示等を充実し,不当な影響力行使があった場合には的確に親会社ないしは親会社の取締役に責任を追及できる規制がなければ,ちょっとアンフェアなことになるのではないか。この2点でございます。 ● 前回,欠席しておりまして,今日まで流れがよく分かっておりませんでした。そのために,現時点で検討すべき課題について網羅的に,若しくは体系的に申し上げるだけの準備はございません。ただ,この間,会計基準の整備を進めておりまして,その過程で問題になったこと,あるいは非常に近い将来に問題になりそうなことについて,二,三気のついたことだけ申し上げておきたいと思います。  第1点は,この部会資料2に触れられておりますストックオプション会計問題への対応であります。現在の改正商法は,ストックオプションというものをいわゆる有利発行の一形態と見ているわけでありますけれども,会計上これが問題になります場合には,有利発行とは見ないケースでございますので,その点についての検討は非常に大事だと思いますし,かつ緊急の問題だろうと思います。緊急と申しますのは,このストックオプションの会計基準の検討が急速に進む見通しでありますので,いつ基準が出るかどうかは別にして,なるべく早い過程でこれへの対応はお考えいただきたいと考えております。  第2点は,いわゆる合併の問題であります。この問題は,商法上企業合併をどう考えるかということに関連いたしますけれども,今般,連結が商法にも入ってまいりました。会計上の連結の考え方と,現在の商法の合併の考え方の間にはややそごがあるような気がいたします。その点を少し考えざるを得ないだろうというのがこの問題に関する私の印象であります。同時に,この合併に関しましては,例えば実質的な被合併会社が法律上の合併会社になっているケースをどう扱うか,あるいは被合併会社の資産,負債等を評価替えしたときの再評価差額の取扱いの問題,あるいはのれんが計上された場合ののれんの扱い等々について,商法上の概念と会計基準との間の関係を少し詰める必要があるだろうと思っております。  第3点は,これは部会資料2の中に出てくる資本制度ないし法定準備金制度の在り方とも関係するのですけれども,直接には自己株取引の問題であります。特に,自己株取引についての制限が撤廃されまして,今後は自己株の処分差益が出てくる可能性が幾らもありますけれども,自己株の処分差益というのは基本的には払込剰余金と同じ性格を持っておりますが,法律上の扱いは全く違っておりますので,これをどうするかという問題が一つあると思います。  それから,自己株の問題であると同時に合併の問題であるという点で,ややこの間,私どもが悩みましたのは,合併に当たっていわゆる抱き合わせ株式がある,つまり被合併会社の株式をあらかじめ持っている,その抱き合わせ株式に対して合併新株の自己割当てをする,これは長いこと商法上も論争の焦点であったようでございますけれども,現在それはできることになっておりまして,できるということが非常に難しい問題を引き起こしますので,その点についても,もし可能であれば検討する機会があればと感じております。  差し当たり思いつくのは,その3点でございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 先ほど,○○委員が指摘なさっていた点は,私も非常に興味がございまして,この事前の規制を緩和するということになりますと,やはり事後の救済というものを,例えば会社債権者,あるいは少数株主に対して保障してやるという必要は非常に高いのではないか。経済産業省の方の御報告の中にも,かなり事前規制を緩めるという,こういうことが入っていたわけですが,しかし事後救済を本当に実現しようと思うと,被害者といいますか,少数株主なりあるいは会社債権者なりが不適切に扱われた場合にどうやって保護をしてやるべきなのか,単に株式買取請求権を認めればそれで十分に保護されるのか,その辺を考えてみなければいけないのじゃないかとか,あるいは損害賠償を請求する場合に,やはり割に合うといいますか,つまり少ない額だと結局裁判を起こすとかえってお金がかかるので,したがって泣き寝入りするという,こういう状況が起きやすいのじゃないかという気もいたしまして,是非この事前規制を緩和していただくときには,どうやって少数株主なり小規模な債権者がその受けた損害を効果的に回復できるかということを検討していただければと思います。 ● 今,○○委員と○○委員と御発言がありましたところに関連してのことなのですけれども,私も賛成でございますが,それについて少し改正検討事項の議論のたたき台の項目について,意見を言わせていただければと思います。  ほとんど重要な問題がきれいに,網羅的に述べられておりますので,私もこれで賛成でございますけれども,そのうちの5の機関のところの最後の部分,親子会社における会社管理の在り方,それから小規模・閉鎖会社における機関の在り方の二つの項目が並んでおります。親子会社における少数株主の問題と,小規模閉鎖会社における少数株主の問題等々,共通した問題もございます。支配的な株主がいる場合の利害関係の調整の難しさと同時に,一方では簡便な機関構成であっていいのではないかという,そのあたりのところ,両方共通した問題があると思いますので,ここに並べて挙げてあるということは大変意義深いものがあるというふうに思うのですけれども,ただこれを,機関の問題としてだけ親子会社の問題,小規模閉鎖会社の問題を考えるのがいいのかどうかという問題が一つあるように思うのです。  先ほど,○○幹事の方からの御報告にもございましたけれども,事前規制は緩和して,開示及び事後監視ルールは厳しくしていくという方向を考えた場合に,事後的な処理として裁判というのが最終的にはございますけれども,それが果たして小規模な,持分的にも非常に小部分しか持っていないような者にとって,それが果たして実際法律的に機能するのかという観点からいきますと,セルアウトというようなことを○○幹事がおっしゃいましたけれども,こういうものもあわせて考えていった方が実は効果的な制度設計ができるのではないかという面があるかと思います。買取請求権だけで大丈夫かというのは本当にそのとおりでございますけれども,買取請求権もなくて大丈夫かという問題もあろうかと思いますので,この問題をあわせて議論していくという趣旨からしますと,この機関のところというよりは,例えばこの二つセットでその他のところに移すとか,そういうことも考えられるのではないかと思ったりした次第です。 ● 今日はフリーディスカッションですので,どんどん御意見をいただければと思います。 ● 2点申し上げます。  1点は,今日の経産省からの御説明,それから公認会計士協会からの御説明,そして私も要望いたしましたけれども,例のLLC,LLPでございますけれども,この議論のたたき台,拾う拾わないの議論ではないという前提になっているということでございますけれども,ここに何も書いてくれないと,そもそも検討の俎上にも全く上がらないでほっておかれた気もするものですから,新たな事業組織形態の議論がその是非を含めてできるような表現ぶりを,その他ないしは総論的事項のところの,これは既存の会社のくくり直しの問題ですけれども,新たな会社形態の創出とか,そういうことも含めて,これが法制審議会の事項なのか別途の法律の事項なのかということもあるかもしれませんけれども,長年の要望でもございますので,御配慮願いたいというのが1点でございます。  2点目は,正に規制緩和の要望が今日は経産省からも中小企業団体からもなされているわけですけれども,全くその趣旨に賛成なのでありますけれども,一方において極度の規制緩和ということになりますと,今度取引をする相手方がかえって,例えば中小企業にお金を貸す場合に,自分の権利の保護のために,アメリカ社会に見られるような融資契約等において,かえって純資産基準条項を課してくるとか,財務制限条項を細かくするとか,かえって資金調達コストというのが高くなるような面もあるだろうということも危ぐされますので,その規制緩和に当たってそういう融資する方,取引先が本当にそれで資金調達としてそれでもいいのだと,ガバナンスというのがルーズであったとしても貸すのだというふうなことに本当になっていくのかどうか危ぐするものですから,車の両輪になるような感じもしまして,そのあたりやはり議論を深めませんと,かえって高コストの取引,経済運営になるのではないか,そのあたりのバランス,それをお考えいただかなければいけないのかなという気もいたしております。 ● まず最初に,○○委員の先ほどの御意見,全面的に賛成するということを申し上げておきます。  それから,今,○○委員の御指摘になった第2点は非常に大事だと考えておりまして,規制緩和したことによって,ある一方の側の自由化は進んでも,相手方の方の期待の方はどうなるかということもやはり十分考えておく必要があると思いまして,例えば株式会社の要件を非常に緩くする,それは非常に自由化が進んで経済にプラス効果があるかもしれませんが,一方ですべてが株式会社になって,非常に自由にだれでもなったときに,正に融資する側が従来の株式会社と同じように扱ってくれるかというと,多分そうではない,○○委員がおっしゃったように,むしろ実質的な要件を課してくることになると思いますので,ですから単に緩和すればいいというものでもないということは,やはり頭に入れておく必要があるかと思います。  それから第2に,これは先ほど○○委員の御指摘になった点で,いろいろ会社法と会計の考え方がやや食い違うところがあるという御指摘をいただいたわけであります。私が正確に理解しているかどうか分かりませんが,例えば合併ですと,アメリカ等の合併会計の考え方というのは,株式のやりとりによる組織再編と,法律的な合併等をむしろパラレルに考えた扱いになっていまして,そこが日本と非常に大きく違う。例えば,のれんの計上にしても,日本は法律上の合併の場合だけ5年ですか,かなり厳しい消却要件を決めておきながら,株式で相手方会社を取得したときについては,少なくとも商法上は何もない。こういうアンバランスはやはりまずいように思いまして,どうも日本の会社法というのは法律上のそういう変動,法律上の形式の変動と株式をやりとりしたときの実際上の効果とを従来余りにも截然と分けてきたところに問題があるように思いまして,これは前回申し上げたことの繰り返しなってしまうのですけれども,かつての中間試案に含まれておりました子会社株式を譲渡したりしたときの手続の問題,それから大量の新株発行を行ったときの問題なども,これもどうも従来株でやった場合と法律上の形式が変わった場合で違い過ぎていたということ自体が会社法の法制にややゆがみを生んでいたのではないかと思いまして,この際,是非そういった点も見直してほしい。そのことが,逆に例えば簡易株式交換とか簡易合併なんかの要件をもっと柔軟に見直すことにもつながっていくと思いますし,その方が合理的な法規制になっていくのではないかと思いまして,多分そういった問題はこの検討資料の2の5の機関の中の「各機関相互間の権限分配等」に含まれているのだろうとは思うのですけれども,先ほどの○○委員とやや同じ懸念を持っておりまして,そういうところも是非今後取り上げていただきたいということを最後にお願いしたいと思います。 ● 先ほど,○○委員から御指摘があった,規制緩和を余りゆるゆるにすると信用判断でいろいろトラブルというか,逆に厳しくなるのじゃないか,こういうことについて一つ御判断の材料を提供したいと思うのですが,かつて私どもの組織,全国中央会が実施をいたしました調査結果で,新たに取引を開始しようという場合の信用判断の方法というのがございます。これは金融機関だけではないわけです。一般的にということなのでございますが,複数回答でございますが,一番多かったのは業界における評判55.7%,経営者個人の信用度35.4%,3番目が既にその企業と取引関係にある企業の評判33%,4番目が信用調査会社の情報30.3%,貸借対照表,損益計算書によって信用判断をしているというのは,何と8.9%と。現状においても,例えば過去1年間,それももう数字が出てから大分たっておれば,相当昔の業績とか信用状況をこの法律に基づいて出した財務諸表,とてもじゃないけれどもそれで今動いている状況の中で信用判断ができるかというと,それはやはりできないわけでありまして,当然のことながら金融機関,あるいは取引先は,こういういろいろなところに情報を入手をして判断しているわけでございまして,はっきり申し上げると法律の規制が仮にゆるゆるになったとしても,こういった相手方のビヘービアというのは恐らく変わらない,そこは余り気にする必要はないのかなというのが私どもの感じです。これが世の中の実態だということではないかと思います。 ● 変わらないかどうかというのは,また御議論があると思いますけれども。現行制度のもとではという……。 ● ただ,金融機関なんかと私どももよくおつき合いをするのでございますけれども,それはやはり当然相当いろいろ調べておりまして,取引をやるときには例えば現物はどこにあるのか,そこを現実に見に行くとか,土地は本当にあるのか,そこがどうなっているのだとか,やはり相当チェックをしてやっておりますので,数字だけもらえばやる,あるいは登記所にある書類を見にゆけばいい,あるいは電子的に資料をとって,それを見て判断をすると,恐らくそういうことで判断して失敗をすると,その担当者は多大なる責任を問われる,これが社会の実態だろうと思いますので,そこら辺のことは少し御勘案をいただきたい,こう思います。 ● ややマイナーなことですが,1点だけ,事後的な救済ということについて触れられた方がいらっしゃいますので,その論点として一つだけ付け加えさせていただきたいと思うのですけれども。  エクイティー・ファイナンスが自由化され,エクイティーが非常に多様化した場合の取締役の行為規範の在り方と,責任のエンフォースメントの在り方は,本当に条文が書けるかどうかという点には最後まで面倒な問題がありそうなのですが,考える必要はあるのではないかと思います。現状では,例えばトラッキング・ストックみたいなものを出したときや,種類株も非常に多様なものが出たときに,取締役がどう動けるか分からない,また会社全体として損害がないから責任ありませんと言われるのかもしれない。266条ノ3のような責任を強調すると全く身動きがとれないのかもしれない。266条ノ3は,しかしエンフォースメント・コストが高いから,事実上はワークしないから弊害になっていないだけかもしれない。その辺はかなり検討を要するのかもしれません。  また,実際にエクイティー・ファイナンスが多様化したときに,今,事前の有利発行規制という形で利害調整している部分というのは,事実上ワークしなくなっている危険もあると思いますが,これが事後救済として本当にうまく利害調整できているかどうかもいろいろ疑わしい面があるのではないかと思います。  それだけではありませんが,これは親子会社における会社管理の在り方や,取締役,企業結合関係になった場合の行為規範なんかとやや似た側面を持つ問題でもあるのですけれども,1点,場所は株式の方でも他の方でも結構ですので,検討事項に追加していただければと思います。 ● ちょっと細かな点で,先ほどお話のあった点で一つだけコメントをさせていただきたいと思います。  ○○委員の方から出された10番目の点で,連結範囲に含められる子会社及び関連会社の株式等の評価を個別計算上も持分法で行うことにすべきであるという御提案がございます。これは,昔から公認会計士協会から繰り返し出ている議論でありまして,○○委員もそれを受けて御発言なさっていると思いますが,これは先般の改正の議論のプロセスでも多少議論になったことでございます。  差し当たって問題となりましたのは,持分法を使いますと,利益に関しては連結と原則として同じになりますので,単体に持分法を使うということは,単体は要らないということにもなるわけで,つまり連結と同じになりますので。連結にプラスして,単体のデータを出すことの追加的な意味は何であろうかということが問題になるということが1点でございます。  それから,○○委員がさっきおっしゃいましたように,配当制限との関係がございますが,子会社,関連会社が損失を出していて,それが親会社の投資勘定なり利益なりに反映されていないから,そのまま配当されてしまうという心配は確かにございます。それは持分法の持分損失が無視されているケースでありますが,持分法を使うということは,さっき○○委員もおっしゃいましたように,持分評価益も出るわけでございますね。そうしますと,子会社,関連会社が利益を上げていれば,それが投資している方の会社の利益にもなる,それが現在の商法の規制のもとでは配当財源に入るということが当然問題になったわけでございまして,親会社の債権者が子会社,関連会社の財産を取りにいけない以上,そういう配当制限はどうなのかということが当然問題になるわけでございますね。これは,もし個別について,子会社,関連会社の株式に持分法を適用した場合には,恐らく配当制限上は現在のシステムを前提にする限り,持分利益を除かなければいけない問題になってくる可能性はあると思うのです。それは,現在のアメリカなどの,例えば契約上,財務制限契約上の配当制限でも,通常は持分利益は配当の財源から差し引くという契約が多うございますので,そういう問題もクリアした上でこの問題は同時に考えなければいけないと思っております。 ● この持分法の問題は,持分法で単体の名において連結子会社の株式を評価するということになると,これが監査にも連結計算処理と同じだけの時間がかかるのだということになってきますと,ちょっと例の連結計算書類の監査期間について,今回の改正でもいろいろあったような問題も残っているのではないかという気もいたしますし,これは御検討いただく点ではございます。 ● ここで別に論争する気はありませんけれども,ただこれから連結決算を商法上も開示していくとなると,必ず個別と連結の比較が出まして問題になるケースが出てくるのではないかという予感がするわけです。ですから,これは過渡期ですから,将来的には連結が主になって,そこを重点として配当してもいいよという可能性も出てくるかもしれませんけれども,今の段階では連結情報として提供するというふうな位置づけでしょうから,そうすると連結が赤なのに個別で配当していいのといったときの問題というのは,私はかなり大きい問題になってくるのではないかと。そういう意味で,それを避ける意味では,あるいは注記事項みたいな形でもいいのかもしれませんけれども,とにかくそれは考える必要があるのではないか,そういう意味で申し上げて,是非御検討いただければと。 ● もちろん,検討対象であることは事実だと思います。  いかがでしょうか。 ● 先ほど,○○委員から親子会社における少数株主の保護,及び閉鎖会社における少数株主保護を別建てにして議論した方がよろしいのではないかという御議論がございましたけれども,それとちょっと関連いたしまして,1点,このあたりで検討事項として取り上げていただけないかと思いますのが,多数株主の忠実義務という議論なのですけれども。これは,御承知のとおりアメリカにおきましては判例法として長い間確立しておりますが,我が国にはそのような概念がございませんので,多数株主が少数株主を圧迫するというような事例については様々な抜け道的といいましょうか,多数株主を直接攻撃する手段がないということで,例えば株主総会決議取消しの訴えであるとか,あるいは266条ノ3であるとか,様々なちょっと迂遠な紛争解決手段がとられてきていることが,閉鎖会社等における紛争の問題混迷につながっているというような指摘がされてきたところであります。  多数株主の忠実義務を法制化するということのプラス・マイナス様々考えられますので,一概に入れるべきかどうかというのは,私の頭の中で是非入れていただきたいということを申し上げるべきかどうかということは確立していないのでありますけれども,例えばの話が,これを入れますと現在の我が国の実務でよく使われております子会社上場というものがかなり難しくなるという問題もあるかとは存じます。ただ,このあたりで一度真剣に議論する価値はあるのではないかと思いまして,検討課題としていただければ幸いでございます。 ● 大変根本的なところに及ぶ御意見,多数いただきましたが,ほかに何か御意見ございますでしょうか。 ● かなり大ざっぱなくくりをして御議論申し上げたので,ちょっといろいろな議論がこれから出てくると思うのですけれども,先ほど○○委員等がおっしゃった前提条件としての市場の監視だとか事後規制を支えるようなマーケットのインフラというのは本当に整備されるのだろうかという御議論は,非常に重要な論点だと我々も思っています。  私,電気事業法の改正で自由化という議論をやったのですけれども,事業法をなくした後,全く独禁法に委ねるのか,それとも自由化された中でもある程度事業所管官庁が対象事業者を管理をしていくのかという二つの道があったときに,我々は独禁法に委ねようという決断をした経緯がございます。実は,電気通信法は違う決断をして,日本の法体系で混乱をしているのですけれども。  そのときに考えたのは,事業法みたいなところである種規制改革をし,独禁法を強化をしてくださいという形で議論をした方が,独禁法のエンフォースメントという議論が恐らく加速をするだろうと,こういう問題意識でやってきた経緯がございます。だから,今あるマーケットのインフラを前提にして,今ある規制が大事なのだという議論ではなくて,まず商法等でも必要な規制改革をやっていただいて,それを前提として市場のインフラの方を改革を進めていくという,こういう議論をしていった方がいいのかなと思っております。  一番最初に申し上げたように,ある程度ここ10年間は商法改革が関連する制度改革を先導してきた歴史だと私は思っておりますので,是非マーケットのインフラを強化する,その要するにきっかけとしてこの商法の現代化が働くというふうに期待をしたいと思います。  それから,○○委員も御指摘がありましたが,全部緩めると実はいろいろな形で当事者がいろいろなやり方を模索をし,結局取引コストが上がるのじゃないか,こういう議論はあると思います。ただ,恐らく一度緩めてみたときに,当事者は何を選ぶのだろうかという議論をしてみて,その議論が結果的に今の商法で押さえている規定と一致するのであったならば,それは合理性がある,こういう議論だと思います。資本関係の規制も,恐らくそういう形でチェックをしていただければ,今ある資本関係の規制とは違ったものが,取引フォーマットとしては有効だと,こういう議論になろうかと思います。先ほど○○委員がおっしゃったように,現実に今,債権者は自ら保護するために何をやっているかという現実の議論も踏まえて御議論いただければと思います。  そういう意味で,この中で有効性を検証してくださいと,抽象的に言っているのはそういう項目でございまして,アプリオリに今ある規制を全部取り払って云々かんぬんという議論ではなくて,そういう形で現実を見ながら,新しいルールというものをつくっていただきたい,こういう趣旨でございます。よろしくお願いいたします。 ● いろいろ御議論いただきまして,それでかなり重なっている論点もありまして,もし議論を本格的に始めれば,これは大分ばらばら議論が発展すると思うのですが,そろそろ時間でありますので,一応本日予定していた改正検討事項について,このようなことが重要だということの御指摘をいただくという点につきましては,御意見をいただけたかと存じますので,本日の審議はこれぐらいにさせていただきたいと思います。  なお,事務当局から今後の予定等について連絡がございます。 ● どうも本日は多数貴重な御意見ちょうだいいたしまして,ありがとうございました。  非常に基本的な事柄,体系的に重い事柄から非常に技術的に細かなことまで,多々改正検討項目について御意見をちょうだいしたところでございます。私ども事務局は現代化の主要な部分であります現代語化の作業を技術的に進めていくべき立場にありますが,対象となる条文数が非常に多数であり,商法第2編,有限会社法,商法特例法合わせますと形式的に八百数十ぐらいに及びます。これらの条文について現代語化の検討を網羅的にしていくべきことになりますが,これらの作業の中で,前回,今回とお示しいただきました実質的な改正検討テーマも含めまして,論点を十分洗い出し,整理した上で,今後の審議を進めさせていただきたい,その間しばらくお時間をちょうだいして事務局において同時並行的にいろいろな検討作業を進めていくことにしたいと思っております。恐らく研究会方式をとらせていただくことになると思いますけれども,またここに御参加いただいております委員・幹事の皆様方の御協力をいろいろな形でちょうだいしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。  その準備的作業にどのぐらい時間がかかるかというのは今の時点で申し上げにくいのですけれども,この作業自体の締め切りが決まっていることから,次回の部会は,3月に予定させていただき,それまでの間に鋭意こちらの方で作業を進めさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。  次回の日程は,来年3月19日の水曜日,午後1時半から,場所は同じくこの高砂の間で行わせていただく予定でございますので,よろしくお願いいたします。 ● ただいま事務当局から御説明のとおり,しばらくの間は事務当局において準備作業を進めるということでございますが,それでよろしいでしょうか。--ありがとうございました。  それでは,本日の第2回会社法(現代化関係)部会を閉会させていただきます。  本日は,熱心な御審議を賜りまして大変ありがとうございました。