法制審議会会社法(現代化関係)部会第4回会議 議事録 第1 日 時  平成15年4月16日(水)  自 午後1時30分                        至 午後5時11分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題    会社法の現代化に関する改正検討課題(2)について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 ● まだお見えになっておられない委員・幹事の方がおられますけれども,予定した時間が参りましたので,第4回会社法(現代化関係)部会を開会することにしたいと存じます。本日は御多忙の中を御出席いただきましてありがとうございます。  本日の議事に入ります前に,臨時委員・幹事の異動につきまして御報告いたします。        (委員・幹事の異動紹介省略) ● それでは,まず,配布資料につきまして事務局から説明をお願いします。 ● 事前に配布させていただきました資料は,部会資料4「会社法の現代化に関する改正検討課題(2)」と題するものでございます。前回の部会において取り上げさせていただいた項目に続きまして,組織再編,株式等の論点につきまして,事務局限りで,改正検討課題ではないかということで拾い上げさせていただいたものを整理したものでございます。  それから,本日,席上に参考資料11,12をお配りしております。  参考資料11は,政府の対日投資会議におきまして,去る3月に決定がされておりますけれども,その対日投資会議の専門部会の報告の抜粋でございます。  対日投資会議は,総理を議長とし,経済財政政策担当大臣を副議長とする閣僚レベルの会議でございますけれども,そのもとに設けられました専門部会におきまして,昨年の後半からこの3月にかけて検討の上,報告書が取りまとめられております。それを受けて3月27日に対日投資会議決定がなされ,この報告に基づいた基本的な考え方及びそこで示されておりますプログラムに基づいて各施策を着実に推進するという趣旨の決定がされておるところでございます。  お配りしましたものは,その対日投資促進プログラムの中で74項目の施策がうたわれているところでございますけれども,この現代化部会における検討に関係すると見られる3点に関する部分の抜粋でございます。重点5分野のうちの第2,企業の事業関係の整備に関する部分におきまして会社法関係の3つの論点の提示がされておるところでございます。  1点目は,本日の検討項目の一つとして掲げさせていただいております「合併等対価の柔軟化」についての指摘でございます。  2点目は,社外の取締役,監査役の在り方について,平成14年,昨年の商法改正の動向を踏まえつつ,更にその在り方について検討を行うべきであるという御指摘でございます。  3点目は,いわゆるLLC問題についてでございます。  続きまして,参考資料12は,事務局の方で大ざっぱに取りまとめさせていただきました,現行法における端株主の権利と単元未満株主の権利との比較表でございます。  本日の当該項目の審議の際に参考にしていただければ幸いでございます。  それから,あと3点の書面をお配りしております。  1点目は,部会の開催予定の変更のお願いについてでございます。前回の部会でいろいろと盛りだくさんの検討事項を御議論いただいたのですが,かなり時間不足が否めなかった点を反省いたしまして,恐縮ではございますけれども,御審議におつき合いいただく回数を若干追加させていただきたいということと,1回当たりの検討時間を1時間ほどふやさせていただきたいというお願いでございます。変更後の予定ですが,従前お示ししていた日程のうち,6月25日分は,諸般の情勢にかんがみまして取りやめということにさせていただき,かわりに5期日を追加させていただいております。会場は,今のところそこに掲げさせていただいている場所を予定しておりますけれども,変更があり得るかもしれませんので,開催通知には御注意いただきたいと思います。  あとの2点ですが,前回の御議論に関係いたしまして,○○委員,○○委員からそれぞれ意見書が出されております。機関に関する幾つかの論点につきまして,それぞれのお立場からの御意見を述べられているものでございます。第二読会の際に,またこれらの御意見,前回の部会での御議論を踏まえまして,突っ込んだ御審議をしていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。  配布資料の紹介は以上でございます。 ● 以上の配布資料につきまして何か御質問はございますでしょうか。  特に開催予定,開始時刻が1時ということでありますので,どうか御留意いただければ幸いでございます。1時から5時までというのは,ほかの部会では例がないわけではないようであります。  それでは,本日の審議に入りたいと存じますが,部会資料4が本日の審議事項でありますけれども,大きく分けますと,「第1 組織再編関連規制」,「第2 株式会社・有限会社間の資本・株式制度の調整」,「第3 株式等」という三つに大きく分かれております。したがいまして,各部分ごとに審議をお願いしたいと思います。  まず,第1の「組織再編関連規制」関係につきまして,事務局から説明をお願いします。 ● ここ数次にわたる商法改正におきまして,組織再編関連に関する様々な規律の整備が図られてきたことは御承知のとおりでございますし,それらの御審議に当たりまして度重なる御協力をちょうだいしたことにつきまして感謝の意を表する次第でございますが,この第1の「組織再編関連規制」において掲げております幾つかの問題は,いずれも,現行の組織再編関連規制に対して更にこのような見直しをすることが一層の実務的なニーズに資するものであるという御要望に即した問題意識からくるものでございます。  まず,第1の1は,合併等の対価の柔軟化の問題でございます。  御承知のとおり,現在の組織再編におきましては,合併について言えば,消滅会社の株主に対して交付されるものは,合併交付金を除けば,存続会社又は新設会社の株式に限られているわけでございます。これに対し,諸外国に立法例が見られますように,消滅会社の株主に対して,金銭あるいは親会社株式その他の財産の交付をもって,現行法のもとにおきます株式の交付に代えるという形の合併の形態を認めるべきではないかという御意見がかねてよりあったところでございます。先ほどの対日投資会議の専門部会におきましても,対日投資促進という観点からこのような合併等の対価の柔軟化の施策が是非必要であるという御指摘がされているところでございます。また,産業再生法におきまして,この種の特例的な組織再編の方策が既に先行実施されているところでございます。  仮に,この合併等の対価の柔軟化を図ろうとする場合には,幾つか検討すべき論点があるわけでございます。  その一つは,米印に掲げておりますように,交付することができる財産について何らかの法律上の制限を設けることとすべきかどうかという点でございます。この問題は,現在解釈にゆだねられております配当あるいは残余財産の分配における財産についての規制というものをどうするのか,仮にこの場面で何らかの制約を設けるとすれば配当等の場合についてどのような制約を設けるべきかどうかという議論にも発展するものでございます。何らかの柔軟化を認めることの可否とともに,認めるとした場合,実務上のニーズの所在はさておきまして,財産の範囲を法律上何らかの基準をもって画するかどうかという点が一つ目の論点でございます。  もう一つは,これは,もし柔軟化を認めるということであれば御異論はなかろうかと思いますけれども,当該組織再編行為の手続の中で,柔軟化された対価の種類ないしその内容を相当とする理由,そのような財産を選択することを相当とした理由といったものを情報開示すべきではないかという点でございます。  このほかに,人的分割におきまして株式以外の財産が交付されるということになりますと,財源規制問題というものを考える必要があろうかと思いますけれども,これにつきましては,次回以降の部会におきまして,一般の配当財源規制の見直しの要否とともに,別途御議論をちょうだいしたいと思っておりますので,本日のところは,この対価の柔軟化の可否,柔軟化を可とする場合の財産についての法律上の制限の要否等につきまして御議論をちょうだいできれば幸いでございます。  第1の2は,簡易組織再編行為の要件の見直し等に関するものでございます。  (1)は,現行法上認められております簡易合併等の基準,いわゆる5%基準につきまして,その基準の引上げを求める実務上の御要望にどう応えるか,応えることの可否についてでございます。現在,この括弧の中にありますように,存続会社等の譲受け側につきましては発行済株式総数の5%,分割会社については総資産の5%という基準のもとに,簡易的な手続での組織再編行為が認められているわけですけれども,この5%という基準についてもう少し引き上げるべきであるという御意見が有力でございまして,例えばということで,20%程度に引き上げるというような考え方も一部に示されているところでございますけれども,この点についての御意見をちょうだいしたいと思います。  米印の二つ目は,現行法上手当てがされていない部分ではございますが,譲渡制限会社のように,株主の割合的な権利を保障するタイプの会社におきまして,このような簡易組織再編行為が総会での決議なしに認められるということになりますと,株式を発行するタイプの組織再編行為については,いわば抜け道といいますか,通常の株式の発行よりも緩やかな形で株式が発行されるということになりますが,譲渡制限会社のような会社における株主の割合的な権利の確保というものを重視するとすれば,簡易組織再編行為であろうとも,そのような会社に限ってはやはり株主総会の決議を要するということを原則と考えるべきではないか,そのような手当てをすべきではないかという趣旨での御提案であります。  米印の3番目は,現在は,営業譲受けにつきまして,簡易組織再編行為の基準と同様の基準で株主総会の特別決議の要否が定まっておりますけれども,例えば営業の重要な一部の譲渡につきましても,同様の要件設定のもとに株主総会の特別決議を不要とするというようなアプローチが考えられるのではないかという点についてでございます。譲渡を行う会社は分割における分割会社と同様の立場に立つわけでございますので,そのような規律を設けることが平仄を合わせるという意味で適当なのではないかという趣旨の御提案でございます。  それから,事後設立につきまして,前回の部会では検査役の調査の要否という観点から御議論をちょうだいいたしましたが,特別決議の要否という観点から,246条の要件も簡易組織編成行為の要件と同じようにそろえるべきではないかというのが,あわせて御提案させていただく点でございます。  (2)は,諸外国の立法例で見られる,いわゆるショートフォーム・マージャーという類型の簡易的な手続を設けるべきではないかという御意見についての御審議をお願いするものでございます。支配会社・被支配会社間の組織再編行為について,被支配会社の側において格別株主総会を開くまでの必要がないというほどの支配関係があるという場合には,被支配会社における株主総会決議の省略を認めてもよろしいのではないかという趣旨の御意見の紹介でございます。ここでの御意見の紹介は,株主総会決議の省略を認めるかどうかという点のものでございまして,総会決議の省略を認め得るとした場合に,株式買取請求権による反対株主の保護というものをも省略させようという趣旨のものではないわけでございます。この点についてもいろいろと御意見があろうかと思いますけれども,反対株主の株式買取請求権があるということを前提に株主総会決議を省略させてもよいのではないかという御意見が有力ではないかと思いますので,それについての御議論をちょうだいできればと思います。  この「支配関係にある」というものをどう規律するかということになるわけですけれども,例えば90%ないしは95%というような,非常に確固とした多数派がいる場合がこれに当たるとして,90%ないし95%というラインを引くというのが一つの考え方であろうかと思いますが,それについての御意見をちょうだいできればと思います。  それから,(2)そのものの問題ではありませんけれども,発展する問題として米印の二つ目を掲げさせていただいております。このような考え方の是非につきまして是非御意見をちょうだいしたいと思います。  ①と②とでは若干局面が違っておりまして,まず①は,(2)のような手当てを置くとした場合,あるいは置かないとした場合であっても,一定程度の多数派が構成されている場合における少数派の株主の投下資本の回収手段の一つとして,支配株主あるいは会社に対する株式の買取請求といったものを認めることとしてはどうかという点についてのものでございます。従前,昭和61年の改正試案の折にも,不当に冷遇されている株主の保護という観点から同様の議論があったところでございますけれども,改めて(2)のような論点についての検討をする際には,検討が避けられない問題ではなかろうかと考えられるところでございます。  ②は,(2)のように組織再編行為の場面で被支配会社における少数派が排除され得るというシステムが仮に是認されるといたしますと,それが組織再編行為という機会に限られるべきかどうかという問題でございます。組織再編行為というイベント時以外におきましても同様の処理を可能として差し支えないといことであれば,②は是認されるということになりますが,この点についていかが考えるべきかということについて御意見をちょうだいしたいと思います。  それから,3の「組織再編時の剰余金の計上・引継ぎ」でございます。  やや技術的な議論でございますが,現在,組織再編時の資本・資本準備金の在り方については,非常に大ざっぱに言えば,増加する純資産額は基本的には資本あるいは資本準備金にしなければならないという原則のもとに,合併と人的分割との場合においては,配当可能利益,利益準備金をその限度において資本ないし資本準備金ではなく利益準備金ないし配当可能利益として引き継ぐことができるというように仕組まれているわけでございますけれども,これを例えば--3の本文中の「吸収分割」は「物的分割」の誤りでございますので,訂正いただきたいと思いますが--物的分割や株式交換等の別の組織再編行為の場面でも同じような手当てをすることができるかどうかということでございます。組織再編時における規律の統一化,規定の平仄という観点からすると,例えば米印の①,②のような考え方で整理することができるわけでございますけれども,このような考え方についての御意見をちょうだいしたいと思います。  ①についてですが,合併・分割の場合において,法律上増加すべき資本あるいは資本準備金,これについて--現在のルールを前提にいたしまして,ただその資本・資本準備金をいわばあわせて減ずる手続を行うというふうにイメージしていただければよろしいかと思いますが--減資をするということを,あわせて債権者保護手続がとられているということを前提に認めることとしてはどうか,そうすることによって,組織再編行為一般について,資本・資本準備金,あるいは剰余金,配当可能利益,利益準備金の計上の仕方,引継ぎの仕方の規律を統一することができるのではないかということでございます。②は株式交換・株式移転についてでございます。現在では格別,配当可能利益,利益準備金の計上引継ぎに関する規定はないわけでございますけれども,債権者保護手続を行うということを前提に減資的な考え方を取り入れて,そのような配当可能利益,利益準備金の計上引継ぎということを認めることとしたらどうかという提案でございます。  4番目は,「組織再編行為の場合における新株予約権の取扱い」でございます。  株式交換・株式移転については,その性質上,新株予約権の帰趨が大きな問題となりますので,これらの制度設計に当たってその引継ぎについての規定が設けられていることは御承知のとおりでございますが,合併・分割の場合につきましては,そのような規律は現行法のもとにおきましては設けられておりません。必要とあらば,その承継が可であるということと,可であるとした場合の具体的な手続について,株式交換・株式移転の場合と同様に規定を明確に設けるということが考えられるわけでございますし,その種の御意見が出されているところですけれども,これについての御検討をお願いしたいと思います。  その場合に,仮に組織再編行為一般の場合について予約権の承継を認めるということになりますと,承継されることに伴うその承継の条件ということが問題になるわけですけれども,その承継に係る条件に不服がある予約権者の保護のために,例えば買取請求権などを認めるかどうかということも考えられるわけでございます。この点についての御意見もちょうだいしたいと思います。  それから,現在の法制のもとでは,株式交換・株式移転の場合であっても,新株予約権付社債については,その承継を認める旨の規定が設けられておりません。株式交換・株式移転におきましては,債権債務,資産関係の承継が行われないということがその前提になっているわけですけれども,100%親子会社関係の創設という制度趣旨を踏まえれば,新株予約権付社債の承継を認めるという余地を設けるということも成り立ち得る考え方であろうかと思われます。  仮にそのようなニーズがあり,法制的にそのような余地を認めることができるとした場合に,これは新株予約権付社債といえども社債でありますので,社債権者の保護手続,つまり債務者交代に伴う債権者保護手続--債権者の消極的な同意を取得する手続といってもよろしいかと思いますが--そのような手続を設けることが不可欠ではないかと思われるという点が,米印の①の点でございます。  ②についてですが,現在,株式交換においては,資産の承継が行われないということを前提に,債権者保護手続が必要とはされていないわけですけれども,新株予約権付社債の承継が行われ得るといたしますと,その前提が変わってくるわけでございます。債務の引受け一般については必ずしも債権者保護手続が必要なわけではありませんので,株式交換の場面で新株予約権付社債の承継が行われ得るとした場合に完全親会社となる会社の側で直ちに債権者保護手続が必要となるかどうかという点については自動的に答えが出るわけではございませんけれども,例えば,少なくともその社債に係る債務が完全親会社となる会社の負債の中で一定程度の割合を占める大きなものとなるような場合には債権者保護手続を要するという考え方もあり得るところでございますので,この点,御検討いただきたいと思います。  説明を急いで恐縮ですが,第1については以上でございます。 ● 今,第1の「組織再編関連規制」について御説明をいただきましたが,第1全体について何か御質問はございますでしょうか。--もし,ないようでしたら,個々の項目について御審議をいただきたいと思いますが,それでよろしゅうございますか。3と4は若干技術的な問題とも言えるのですが,1と2はかなり重要な問題かと思いますが。  それでは,まず1からお願いしたいと思いますが,御意見をどうぞ。どなたからでもお願いいたします。 ● 合併等の対価の柔軟化でございますけれども,経済界もかねてより要望しているところでございまして,是非こういう制度を設けていただきたいというところなのでありますけれども,ただ,現金等にした場合の,少数株主といいますか,少数でない場合もあるのかもしれませんけれども,株主の締出し問題があるという中で,恐らくこれは公開会社と非公開会社とではインパクトが違うのかもしれません。株式と現金との単に評価だけの違いなのだという考え方があるかもしれません。ではそのときのシナジーをどう考えるのかというふうな問題もあるかもしれません。  という中で,こういう少数的株主の締出しということの弊害があり得ることも考えた上で産業再生法が今回できているということ,これは恐らく内閣法制局も入って,そういう弊害の防止措置がちゃんと,弊害がないということの前提の上でこういう制度設計がなされていると思うので,問題ないと思うのでありますけれども,念のため,立法の推進に当たられた経産省からそのあたりの御説明をいただければ有り難いなと思う次第でございます。したがって,本件は質問であります。 ● それでは,○○幹事,お願いできますか。 ● 今回の産業再生法の改正の大きな主要眼目が,実はこの合併対価の柔軟化であったわけです。その中で,一応,産業再生法は,対価として金銭又は他の会社の株式という形で今回特例を設けたと。そういう仕組みであるならば,今,○○委員から御指摘のあった問題点は恐らく回避できるであろうと,こういうある種の,実体上,それから制度上の判断をしたということでございます。  そうすると,問題になってきますのは,一つ目の米印で書いてございます財産の範囲をどうするのだというところに実は議論が及ぶのだと思います。これは,産業再生法では,今申し上げたように対価として金銭又は他の会社の株式ということに限定はしているのですけれども,いろいろな考え方があろうかと経産省自身はちょっと迷っていまして,あえて財産の範囲を限定しなくても,デラウェアの会社法における運用から見れば,おのずとそれぞれ当事者間で,株主の平等原則だとかマーケットの監視を踏まえた上で,現金とか株式とか妥当なものが選ばれている実態があるということから考えれば,あらかじめ余り財産の範囲を限定する必要もないのではないかという考え方もあろうかと思います。ただ,一方で,だとすれば現金とか株式だけでいいではないかという議論もあるのですが,恐らくこれからいろいろな金融商品の開発とかも進んできますし,なるべくそういう制限的な発想ではなくて,対価のところも財産の範囲を極力制限しない方向でやったとしても,ほぼ,産業再生法で予定しているような円滑な合併対価の柔軟化ということの実現は可能ではないかというふうに判断をしております。  それから,先ほど,○○幹事の方から対日投資会議の御紹介もございました。産業再生法というのは,別に対日投資の促進を目的としてやっているわけではないのですけれども,別途行われた対日投資会議においても,本件については重要課題ということでとらえられておりますので,なるべくこういう合併対価の柔軟化が,少数の株主の方々の権利を害さない範囲の中で,成立する方向で皆様の前向きの御検討をお願いできればというふうに考えております。 ● ○○幹事に対しまして何か御質問ございますか。よろしゅうございますか。  産業再生法の場合は主務大臣の認可か何かが要るわけですか。 ● そうですね。個別に,要するに,経営が若干へたっているのだけれども,こういう計画をすればV字回復をするという計画を出していただいたところに対して,こういう形で認定をしていくというスキームをとっております。 ● 米印の上の方だったかの説明のところで,こういうふうに対価を広げると財源規制の問題もあるけれども,それは次の回にというふうにおっしゃったかと思うのですが,この財源規制の枠組みの中で,財源規制というのは広い意味で債権者保護にかかわると思うのですが,債権者保護一般ももう少し後でという御趣旨なのか,狭い意味での財源規制だけなのか。  具体的に言いますと,ヨーロッパでも,債権者保護に限定されたわけではありませんけれども,合併について専門家の調査というか鑑定制度もありますので,こういう多様化をしますと,そういうことも考慮の一要因になるのかと思いましたので,まずは御予定だけをお聞かせいただければと思いますが。 ● 確かに問題があるので。株式交換について,先ほど来,債権者保護手続はどこまでかというあれがありましたけれども,ここでも問題になってくるはずなんですよね。 ● 先ほど,ちょっと言葉足らずでありまして,恐縮でございます。  財源規制が深刻に問題となりますのは,人的分割の場合でございます。分割会社から見れば,承継させる資産の対価が,分割会社にではなく,その株主に対してストレートに行ってしまいますので,正に払戻しが行われたのと同じ状態となり,財源規制がストレートに問題になり得るわけです。その人的分割における財源規制問題は財源規制一般の問題として御議論いただいた方がよろしいかということで,次回以降御議論をちょうだいしたいと思います。  それとは別に,対価の正当性等につきまして債権者保護的な発想が必要だということであれば,ここは一般的な御議論として本日ちょうだいしたいと思います。 ● そういうことだそうですので,先ほどの人的分割の点を除いては本日御議論いただいた方がいいと,そういうことかと思います。 ● 大変重要な問題であり,かつ,株式交換や株式移転を設けましたけれども,国際的なM&A等々の場面で,やはりそれだけでは済まない需要があるという問題が突きつけられているとなると,一応真剣に考えなくてはならない問題であるというようには思います。  その場合に,例えば財産の範囲が他社の株式,特に親会社の株式に限定されるのであれば,余り深刻に考えなくてもいい問題だろうと思うのですけれども,たとえ限定するとしても,金銭が入るということになりますと,○○委員もおっしゃったとおり,やはり締出しという問題があり,株主としてみれば,投資していたつもりが,自分が望まない時期に,自分が必ずしも納得しない価格でもって締め出されるという結果につながるわけですから,今,皆さん大勢の方になるべく株主になっていただいて投資をしていただこうという時期に,余りにも足元から不安を抱かなければならないような,そういう改正というものにはやはり慎重でなければならないという一般的な状況もあると思いますし,少し要件等は慎重に考える必要があるのではないか思います。  その際に,米印の2番目に書かれておりました,「消滅会社の株主等に対して交付する合併対価等の価額及びその内容を相当とする理由を記載した書面」を開示すべき資料に加えるということは当然のことだろうと思いますけれども,それ以外にも,例えば○○委員がおっしゃいましたように,専門家の調査とか鑑定というような,納得していただくための,第三者が公正に判断してこれで妥当だというふうに思っているのだという,そういうものを加える必要がないのかということが,もう一つ問題になろうかと思います。  それから,もう一つ気になっておりますのが,特別利害関係人の議決権の排除の制度というものを大きく変えてしまって,不当であれば後から決議取消しをすればよいという制度に一般的に変えてしまったわけですけれども,同じように投資を継続するということであれば,何のかんのと言いましても,経営がなされたその成果が平等に分配されるという関係が続く,そういう関係の中での特別利害関係人の扱いと,それから,運命が分かれてしまう,片方は金銭をもらって追い出される,片方は,親会社等々はそのまま事業をやっていって後の収益を自分が享受する立場にある,こういう関係における特別利害関係の扱いというものが,一般的な,改正後の今のような扱いでよいのかという点を,この際,見直すことも含めて検討する必要があるのではないかというふうに考えます。 ● ここには,対価といいますか,要件の話しか出ていないわけですが,おっしゃるように,手続の問題,それから事後的な,特別利害関係を含めた救済の問題,いろいろな論点はあると思いますが,具体的な御提言もいただければ余計有り難いのですが。 ● 質問なのですけれども,だとすると,対価となる財産の範囲というよりも,どのぐらいの総額の対価を出すかという問題の方が重大ではないのでしょうか。つまり,財産分割の上で正当な権利が保障されるのかどうか。それはどういうふうな解決になるのでしょうか。 ● どれぐらい出すかというのは,一つは,先ほど来ほかの委員が言われました専門家の調査という問題もあります。それから財源規制にもかかわってくる問題かと思います。 ● そういうことも含めて合併の討議をするというようなことはあり得ないのですか。つまり,合併なり何なりするに当たっては,両方の会社の株主総会なり何なりの決議を経ないといけないと思うのですけれども,ともかく合併は決めちゃった,条件は後でねということでいいのかどうか。 ● いや,そういうことではありません。合併決議でもちろん合併条件,この場合は対価,金銭の場合は金銭幾ら,1株について幾らと,そういうふうに決めるわけです。今ですと,合併比率1対1とか1対1.5とか決めるわけですが,それが,1株500円とか,そういう決め方になるということです。 ● それから,時間の経過とともに変わるということもあり得ますね。合併だけ決めておいて,その後,細目が決まっていったことによって,最終的に企業の価値が変わってくるということも大いにあるわけです。そういうことに対して柔軟に対応できるような合併条件の決め方ということになっているのでございましょうか。 ● いや,今の制度は,合併が新聞に出た時点と合併決議をする時点とは相当違いまして,合併決議をする時点で条件が決まるわけですね。ですから,そこから先はタイムスケジュールは法的に決まっておりまして,そこのところを現在の制度と変える,つまり株式対株式の交換という形の合併と変える趣旨ではありません。ですから,その点は,こういう対価の柔軟化をしても恐らく変わらないだろうと私は考えておりますが。 ● だとしたら,対価が正当であるという前提に立って言えば,株主総会というのは,株主的な多数決というのでしょうか,多数が決定していくというルールができているわけでございますから,それを決議の重要性に応じて過半数であったり,3分の2であったり,いろいろすると思うのですけれども,そこを決めればいいだけのことではないのでしょうか。 ● いや,それは,その決議要件等は今と変えないという趣旨であります。  ただ,今議論になっておりますのは,例えば株式に対して現金を渡すという形を認めますと,特に閉鎖会社ですね,つまり,株が上場されておれば,株主になりたい人はその現金でまた株を買えばいいわけですけれども,そうではない非公開会社の場合には,いったん追い出されますと,そこで市場がないわけですから,会社から出ていかなければならない。そのことが,最初に○○委員が言われたように,ここで一番変わってくる問題だと思います。 ● ○○委員がおっしゃられたことについて確認の意味でお教えいただきたいのですけれども。  ○○委員は,合併対価を柔軟化する場合には,あるものには株式,あるものには金銭というような,そういうものでもいいという前提でおっしゃられたのでしょうか。 ● いえ,そうじゃないです。 ● それから,○○委員,○○委員がおっしゃられた専門家の調査の関係ですが,これは対価を金銭とする場合にも必要というお考えなのですか。それとも,親会社株式とか関係会社株式とか,そういう金銭以外のもので,しかも,吸収する側,存続する側でない株式を配る場合だけ必要という御趣旨でございましょうか。 ● 正に金銭のときに,一番皆さん,評価の額の相当性について慎重であるということがむしろ必要になるのではないかと思います。 ● 問題点は二つありまして,合併比率の公正さの観点から,株ではなくて現金の場合に,この会社についてこれだけというのが,これはその対象会社の株の評価にもかかわりますから,それでのチェックが一つあると。それとともに,合併比率は正しいとしても,金銭の場合には--まあ,円の不信任とかあるとややこしいですから,円は信頼しなければ我々はやっていけませんから,それは括弧に入れると--今度は合併比率は公正だとしても,その合併比率に対応する物がそれに合うかどうかと,両面ある。○○委員の場合には,前者の方が締出しの観点からより重要だと言われるし,私の発言はむしろ後者の方に力点があったと思います。しかし,両面があるということは○○委員のおっしゃるとおりだと思います。 ● そういたしますと,今も合併交付金という制度がございますよね。そのときに専門家の調査とかは要求されていないわけでございます。それから,営業譲渡の場合にとりわけそういうものは要求されていないわけですが,それらについてもあわせて導入しろという御趣旨でございますか。 ● 合併交付金については,わずかな端数処理の分であるから,この程度はいいであろうという判断で今まできたと思うのですけれども,全部の投資が金銭に置きかえられてしまう。その投資をしている者というのは,今の市場価格よりもまだ投資価値が高いだろうと思うから持っているというようなところがあるわけですね。皆,投資家が行う株価の評価というものはばらばらであって,それが突き合わされることによって市場価格というものが生まれるわけですから,もっと高いから持っている価値があると思うものまで,多数決に敗れたことによって金銭にかえられてしまうという,その部分についてはやはり締出しという問題になるわけですから,そのような個々の株主の評価を尊重するところから立つ市場というものを重視するのであれば,締出しについては要件を特別に厳しくする必要があるのではないかということだと思います。 ● 私なりに先ほどの○○幹事からの御質問に答えますと,一つは,株主ごとに対価の種類を変えていいのかという問題は,これは種類株がある場合には問題になり得ると私は考えております。  それからもう一つ,なぜ○○委員が,対価の柔軟化をした場合に専門家の調査が必要だとおっしゃったかという一つの理由は,株対株ですと,いわゆるシナジーは余り考える必要はないんですよ。もらう合併新株に反映しますから。だけど,現金になりますと,現金をもらった人はそのシナジーは失ってしまうわけで,その点についての公平の問題,従来の合併にはない問題が出てくるというところが,恐らく○○委員が,この場合については専門家の調査が必要なのではないかというふうにもし提言されとしたら,そういうことではないかというふうに理解しております。  それから,特別利害関係の点も確かに,現在の247条1項3号ですか,あの文言はあれでいいかということはあると思うのです。アメリカだと,正当な目的がない合併であるというような争い方をするわけですね。だから,決議取消しとか。もうちょっと247条1項3号の文言を工夫する余地はあるのかなという気がしておりますが。 ● 大変難しい問題で,○○委員や○○委員,○○委員御指摘の締出しの観点というのは非常に重要だろうと私も思います。  ただ,非常に突き詰めて考えていきますと,現行法のもとでも,営業の全部譲渡をやった上で解散してしまえば現金でしか受け取れないということになることも確かで,かつ,一方で,現金のニーズが実際上かなり高いということであれば,先ほど御指摘があったような,対価の点でそれが公正かということは非常に重要なので,鑑定意見その他の適切な評価を経た上で,金銭についてはまずこういった合併対価として認めるということを考えてもいいのかなと。締出しの問題はありますけれども,対価がフェアだということが十分配慮されれば,実務のニーズが高ければやむを得ないのかなという感じがしております。  そのほかの,親会社の株式とか,それ以外の会社の株式ということ等の問題ですけれども,この場合は更に評価が難しいので,それがきちんと評価されて,株主がちゃんと理解した上でそういったものを合併対価として受け入れられるような手続がうまく組めれば,それを対価に加えてもいいのではないかと。したがいまして,手続との相関で考えてはどうかなというふうに考えております。恐らく,先ほどの,鑑定の手続を工夫したりして,将来性等も含めた親会社の価値との比較等がきちんと分かるようにするといったようなことが多分必要なのではないかと考えております。 ● 鑑定なのですけれども,実際問題として,今,普通の株式対株式の合併の場合においても,取締役が責任を果たすために通常やっているのですね。これを,こういうふうな場合には鑑定を要するとかなってきますと,せっかく検査役の調査云々なんていうものをやめようとしている中で,ちょっと実務界の動きにも逆行するのであり,そこはやはり実務界の株主に対する説明責任の充足状況をよく見ていただいて,これでよし,今のままでよしと,こういうふうにしていただければと。法律で規制されるということになりますと,どういう小さな案件であっても要りもしない専門家に余計なコストを払わなければならない,こういうことは絶対避けたいと思うものですから,そこだけよろしくお願いしたいと思います。 ● 今の点に関連してですけれども,この問題は,冒頭に○○幹事から御説明がありましたように,対外的な問題でございます。もともとアメリカが,日本が株式交換・株式移転制度をつくったときに,親会社の株式は使えない,外国の会社が日本の会社を子会社にしようとする場合には使えないということが非常にアンフェアであるということを強く言って,それがヨーロッパにも浸透して,アメリカ,ヨーロッパ両方から言われ,それが,先ほど御紹介のあった対日投資会議にも反映しているわけでございます。したがって,アメリカやEUが求めておりますのは,できるだけ簡便な方法で,つまり日本の株式交換・株式移転で行われているものと実質的な内容としてほぼ同じものをトライアンギュラー・マージャーという形で導入することを求めているわけでございますので,その手続が非常に重たくなるということは,せっかくやっていただいても,またぞろアメリカから非難されるということになりかねないということも御検討の際には御留意いただければと思います。 ● アメリカの非難は心配する必要がないと思います。どうしてかというと,国益を考えればいいからですよ。  今の投資ファンドというのは早い話が日本を買いたたきにきているということがありまして,それに対して金融庁やなんかが非常に譲ってしまっていて,アメリカにもうけさせるために投資ファンドをつくろうというふうに金融庁の幹部とか財務省の幹部が話し合ったというのはもう週刊誌ですっぱ抜かれて,メモまで流布しているわけです。そういう中でつくられた産業再生機構でありまして,しかも日本の銀行を締め出してやるわけですよ。そういう観点から,これが本当に単なる哲学論争ではなくて,今,日本の国益をどう守るかということもどこか置きながらお考えいただければと思うのですね。アメリカなんか文句を言ったら勝手に言わせておけばよろしいと私は思っております。 ● この先ほど来問題になっている鑑定は,米印の二つ目との関係なんですよね。  ○○委員がおっしゃったのは,こういうことであると結局は鑑定書のようなものをとっていると,現在でも,実際上は。だから,規定としてはこういうことで実際上はうまくいくのだと,こういう御議論だと思います。 ● 今日は4時半までですので,余り議論をしてもどうかと思いますけれども,一言申しますと,アメリカは確かにこういうことだけれども,ヨーロッパでは合併等について専門家の鑑定書を要求しております。EUの会社法に関するディレクティブで要求されておりますので。日本の上場会社も,事実上,取引所なり何なりのルールをベースに専門家の意見を聞かれる。ただ,無意味なものについてはやらないという弾力的なことをやっておられると思うのですが,ここではそういう公開会社だけではなく,非公開会社についても考えるとなると,ある種の最低限のガイドラインというものを法定化する必要もあるということにも配慮して,リーズナブルなものにしていただきたいと思います。私も,あらゆる合併について常に鑑定が必要かというと,ケース・バイ・ケースだと思いますけれども,原則は鑑定を設けることをベースに,どういうふうに実務の合理性との関連で例外を設けるなり何なりのことをするかという方向で議論していただければ有り難いなと思います。 ● 財産の範囲については,何か今まで出た以外に御意見はございますでしょうか。 ● 今の財産の範囲の問題ですけれども,恐らく実務的な需要としては現金と親会社なり子会社の株式と,そういうことだと思うのですけれども,先ほど○○幹事がおっしゃったようにこれからいろいろと金融商品が開発されてくるということになると,そういうことも実需が出てくる可能性があると思います。その場合に,前回もある部分で議論いたしましたが,市場価格ある株式とか,そういうものに限定するかどうかという議論も恐らく出てくるかと思うのですね。その場合に,もちろん私は,市場価格ある株式とか,そういう市場価格に限定することが必要だという意見を今持っているわけではないのですけれども,もし仮にそういった議論になった場合に,今,市場価格というのは非常に多様になってきておりますので,取引所の相場のある株式ははっきりしていますが,それ以外にも,店頭,あるいは最近はグリーンシートという証券市場もありますが,そういうものを全部含めるということになってまいりますと,市場価格ある株式,あるいは市場価格ある投資信託,それの市場価格というものの意味づけをはっきりさせておかないと,どの市場を言うのかということが不明瞭になる可能性がある。その点だけちょっと,多様化してきておりますので,指摘だけさせていただきたいと思います。 ● では,第一読会ですから,1については以上ぐらいでよろしいですか。  それでは,次に,2も大きな問題ですので,まず2の(1)からいかがでしょうか。現在の5%を緩和すべきであるとの意見があるが,どのように考えるかということであります。 ● 賛成です。 ● ありがとうございました。  ほかに。 ● (1)の米印の2番目に賛成したいと思います。譲渡制限会社の場合はやはりここら辺のところをきちんと詰めておかなければいけないという問題,もしも5%から20%に広げるなんてことになりますと,より深刻な問題になるので,大変重要な問題を提起していただいたということで,これに賛成したいと思います。  ここにあらわれているように,新株発行によって事実上の簡易組織再編というものができる状況に現在あるという問題になるわけですね。第三者割当増資によって,事実上,簡易な,取締役会限りの組織再編が行われ得るという状況との平仄をやはりここら辺で考えなくてはいけないのではないか。経済界からしますと使いなれた既得権みたいな感じになってしまっているのかもしれませんが,こうやって詰めて考えてみますと,第三者割当増資によれば,あっという間に子会社になってしまうような組織再編まで取締役会限りでできてしまうという問題,世界的に会社法を比較しても日本の物すごい特色となっているこの問題に取り組む必要性をますます感じさせる状況だと思いますので,もしも5%を少し引き上げることによって簡易的な組織再編一般をもう少し使いやすいものにするという方向を検討するのであれば,その大きな穴をふさぐこともあわせて行うということが強く求められているのではないかというように思います。 ● この問題は前から議論のあるところですが。 ● これも,この前のあれで見送りになったことの蒸し返しを,たまたまこの簡易合併の見直しで再燃しようとしているのですけれども,○○委員のおっしゃった公開会社--譲渡制限会社の場合についてはそういうことはできないわけですから,あくまでも公開している会社のことだと思うのですけれども--そこはもう授権資本制度のもとで,授権資本を幾らにするかというのは株主が定款で決めているわけですから,その範囲において取締役会がどういうふうに新株を出そうが,これはもう授権をしている。それから,もう授権資本制度,株主が,4倍とかするのではなくて,1倍しか認めないと株主の自治で決めればいい話であって,いったん株主総会で決めた新株発行の枠なるものは,これは取締役会が授権して決めているわけですから,そこはもうそういう自由の中でやれというのが株主の意見になっているわけですから,それに新たな規制を加える必要はないのではないでしょうか。繰り返して申させていただきます。 ● ほかに,この(1)については御意見ありませんでしょうか。 ● まず質問なのですけれども,私は,5%から一遍に20%と,そこまでいくのはどうかなという気はちょっとしているのですけれども,それはさておき,仮に引き上げるとした場合,例えば現在の413条ノ3の8項の,株主の反対が6分の1に及んだときに簡易合併ができなくなるという規定,多分これは当然連動して見直さなければいけないことに,特に20%ということになればそういうことになると思うのですけれども,それについてどうお考えなのか。  それから,413条ノ3の5項の株式買取請求権については触れないということなのか。  その2点について,この問題を提起した事務局としてのお考えを伺いたいと思います。 ● この資料の作成に当たっては,特に御指摘いただきました413条ノ3の5項あるいは8項に当然手をつけるべきだという考え方ではないですけれども,5%を20%程度に,--まあ20%かどうかはともかくとして--引き上げることを是とした場合に,更にこの413条ノ3の各項に掲げられているような手続規制に見直しを加えるべきかどうかということもあわせて御議論いただければよろしいかと思います。  株式買取請求等につきまして特段の提案を含むものではございません。 ● という前提で御議論をいただければと思います。 ● 米印の三つ目の営業譲渡の問題というのは,多分,これに手をつけた以上は同じように問題なりますし,営業譲渡の割合は従来から随分議論になっていたところで,確かに413条ノ3の5%というのはちょっと厳し過ぎるかなという気は私もしておりまして,緩和化は考える。ただ,どこまでいくのかというのは非常に問題だとは思います。仮に,かなり思い切ったというか,20%ぐらいまで行くことになりますと,正に○○委員の御指摘になったような,新株の発行の割合が高い場合に株主総会の特別決議の承認が必要ではないかという問題とどうしても連動してきてしまうのではないか。特にここでは5%というのが,存続会社の譲受け側については正に新株の発行割合で決められているわけですから,論理的に言ってやはりこれは両方のバランスを考えざるを得ないことになるのではないかと考えております。 ● 今のお話に関連するのですけれども,御紹介だけなのですが,今回できた改正産業再生法は,この点についての特例ルールということで,営業譲渡の話も含めて一応20%という基準を設けて制度設計をしております。既存の一連の制度の上に20%という制度ができているということも念頭に置きながら御議論を深めていただければというふうに考えております。 ● 何で20%にしたんだというのは言わないと,これは疑問ではないかという。 ● 過去の議論が20%という議論もあったからとか,いろいろな議論があって,これはなかなか……,20でいいのか,25でいいのか,15だったらいいのかと,なかなか難しいところだったようですけれども,従来よく俎上に上っていた実態上の要請が20だというところを軸にして,それだったらどういう制度が可能かということで認められたということだと思います。 ● ○○委員は,6分の1ぐらいならいいと,そういうことですか。 ● 考えているわけではないのですけれども。 ● 5%というのは,特に平成11年の株式移転・交換のときから問題になりましたときに,5%よりは10%の方がいいのではないかという議論もその当時からあったと思うのですが,一応そのときは,私の記憶では,246条が5%だからここら辺に並んだらというような,これも目分量にならざるを得ない面もあろうと思いますので,その当時は5%というふうに消極的な形でするのが合理性があるとしても,ある程度運用の実態があるときに,もう少し拡大する必要はあろうかと思いますので,それが10か,15か,20か,25か。50というのはないと思いますから,25ぐらいが,あるいは3分の1が最大限度だという気はしますが,そのときにしばしば産業再生法の話が出ますが,先ほど部会長もおっしゃいましたように,産業再生法というのは,特殊な状況のもとの,特殊の産業政策に基づき,かつ主務大臣の認可を付け加えた,そういう特殊な制度だということも理解する必要があって,あれが20だから当然こちらもという議論は,ややバランスが--もう少し慎重になりながら,結論として20になるのはいいのですが--あれが20だからこれも20というのは少し乱暴かなという感想だけを申させていただきます。 ● 確かにおっしゃるとおりで,産業再生法は日本経済の一番うみがたまっているところを前提にした制度だという言い方もできます。ただ,一方で,そういううみがたまりやすい,その典型的な現象をとらえて制度設計をしているということですので,私の感じでは日本経済全体が相当疲弊している状況にありますので,皆様方,そういう現状も踏まえていただいて御議論いただければ非常に有り難いと思っております。 ● 数字は最後まで決まらない問題だと思いますので,ここでそう決めてしまうわけにはいかないと思いますけれども。  ほかの点,いかがでしょうか。--これについてはよろしゅうございますか。  それでは,(2)についてはいかがでしょうか。 ● こちらにつきましても賛成でございます。  「支配関係のある」というのは9割以上という一つの御提案ですけれども,産業再生法では3分の2ということで,事実上3分の2を持っていれば,それで株主総会でも,利害関係人として不公正なことをしない限りは認められるわけですので,ショートフォームということであれば3分の2にしていただきたいと思います。  それから,少数化してしまった少数株主からの,支配株主とか会社に対する株式の買取請求でありますけれども,一方,支配株主からの売渡請求を認める以上,少数株主からの買取請求も認めるべきだということはよく分かるのでありますけれども,実務上どうしていいのかというのが非常に悩ましいところであります。  例えば,9割を正しいといたしますと,9対1ということでジョイントベンチャー会社をつくったと。そのときの10%に入れる人,特殊な技術を持っているとか,いろいろな要素で決まる。例えば,今,政府の何々タウン補助金であるとか,そういうふうなときには1社ではできないのであって,必ず合弁にしなさい,合弁の場合には少数株主を入れて中小企業にしなさい,そうすればこういう新規事業についての補助金を与えますと,いろいろなそういう制度がある。そういうふうなときに,そういう要因の中で9対1のジョイントベンチャーをつくったら,あくる日に買取請求が来て,土俵が全部崩れてしまう。こういうふうなことをどう考えればいいのか。それから,連結納税制度が導入されていますけれども,100%子会社ということになると,すべて連結納税の対象になってくる。ところが,その会社というのはまだ税法上の繰越欠損をいっぱい抱えている。そういうふうな会社は例えば95%ということで運用していきたいというふうに思っているところ,その5%のところから買取請求が来て,一挙に連結納税の対象になってしまって,欠損金の利用ができなくなる。こういうことがあるものですから,一律に認めるということになると,ジョイントベンチャーの運営が非常に難しくなる。  したがって,定款に規定がある場合に限ってこういう権利を少数株主に認めるというふうなことぐらいしか解決策はないのではないか。一方,90%を持った者が一方的に買い取るところというのは法律上自動的に認めていいのではないか。虫がよ過ぎるのかもしれませんけれども,考えてみると,そういう制度設計しかできないのではないかなと思ったものですから。別にいい知恵があるのであれば,またお教えいただければと思うのでありますけれども。 ● 多分また反対の方向からの意見を言わせていただくということになるかと思います。  まず,基本的に,このような簡易手続を認めるということの方向性自身は賛成でございまして,簡易手続というよりは略式の手続とか,少し名前を,「簡易合併」,「略式合併」というように,性格の違うものですから,名称も変えた方がいいのではないかと思いますけれども,基本的にこういう方向はいいのではないかと思います。  問題は,①,②に書かれているようなことだというふうに思うわけですが,○○委員の反対の方向だというのは,正にここであるわけです。  ①の点なのですけれども,一般的に,確固たる多数派がいる場合に,不当に冷遇されるようになった少数株主の立場というのは大変に弱いものでして,この話は一般的に大会社から小会社まで全部の話だと思うのですけれども,とりわけ小規模閉鎖会社において,法律問題の一番深刻な問題はここにある。ですから,そういう少数株主になるということが分かり切っているような投資はだれもしないという意味で,なかなか出資が得られないという,そういう問題にはね返ってきてしまっているような実情にあります。これはアンケート調査などをいたしましても非常にはっきりしておりますし,私,中小企業の判例などを子細に裁判所に行って見たこともあるのですけれども,本当に深刻な問題があります。中小企業の問題を扱っていらっしゃる弁護士さんなどにお話ししましても,これは非常に深刻な問題だというふうにおっしゃいます。  ですから,ここの手当ては,一般的にもう本当に真剣に考えないといけないのではないかということを考えているわけですけれども,今回,①のような形の提案であれ,確固たる多数派がいる場合の少数派の一つの救済の方法というものが認められるようにしていくということは,少なくとも一歩前進になるということで,いいのではないかというふうに思います。  先ほど○○委員の方から,突如言われて困る場合があるということですけれども,突如奥様から離婚を突きつけられて,それでうろたえる夫はもちろんいるでしょうけれども,そうならないように仲良くするように,公正な扱いをするように,奥様の人権も認めてつき合うようにするのが,やはり解決の策なわけでございますから,そういう例を出して,それでは困るというのは一方的になるのではないかというふうに思うわけでございます。  今度は逆に②の方なのですけれども,これはいかにも一方的過ぎるのではないかというように思うわけです。  確かに先ほどのような合併等の対価の柔軟化等々の問題と絡む問題だと思いますが,特に,合併等の対価の柔軟化によって金銭による締出しというものの要件がどのように定められるかにもよりますけれども,ほとんどの人がこれでいいと言っているのだからこの条件でともかく売れと,簡単な手続でもって締出しをするというまた別の方法というのは,例えばイギリス法等々が認めているところであり,そのような強制買取制度というものは考えてもいいのではないかと思います。  その場合に,9割の人がオーケーと言えば,あとの人も同じ条件で出ていくということで,全部買い取って締め出してしまうという方策は検討の余地があるかと思いますが,既に9割持っている者がいて,あとの1割の者の条件を勝手に決めて,これで出ていけという,こういうことをやったのでは,本当にだれも株式に投資する気がなくなってしまう。そういう意味で,市場の振興は全く図られないようなことになってしまうのではないかとすら思いますので,②については,別の形での要件,効果というものを考える方向にして,このような形のものはよくないのではないかというふうに思います。 ● くだらない言葉の説明を求めて申し訳ないのですが,この二つ目の米印について,「このような考え方は正当か」ということで,ほかは,「どうか」とか「どのように考えるか」になっているのですが,なぜここで「正当か」とされたのか。それがお二人の白熱した議論に関係するのか。ふと思いましたので,一言御説明をいただければと思います。 ● (2)の問題から派生はしますけれども,(2)の問題そのものではなく,議論として更に深みを持った検討が十分必要なのではないかという思いを込めたつもりでございます。 ● 今,いろいろな御意見が出ましたけれども,この問題は,中小企業もそうですし,それから大企業の子会社の問題をとっても事案としていろいろなケースがありまして,私が関与した限りにおいても,例えば,ある大企業の子会社が,親会社が95%持っていて,その子会社で長年役員を務めてきた人が,株を5人ぐらいでほんの少しずつ持っていると,そういうような状態で推移しているときに,老練のその元役員が,好業績なものですからその株の配当でもってそれなりの収入になっているというときに,買取請求したいというときに買取請求ができるというのは,その元役員にとっては便宜なわけですけれども,売渡請求を認められますと,その収入の糧を断ち切られると,そういうケースもございます。それから,先ほど○○委員がおっしゃったように,ジョイントベンチャーをするときの会社としての連結納税その他に対する対策という面から見ますと,また別の観点からの考え方ができるということですから,なかなか一般化して,この①,②が正当かという議論をするということは非常に難しいと思います。  私自身も必ずしも確たる見解を持っているわけではありませんし,また,恐らく弁護士会でも,持ち帰ると,中小企業の案件をやっている先生とかいろいろな方から相当多様な議論が出てくるだろうということで,今日,私の方で一律な結論をお示しするということはなかなか難しいと思うのですが,ただ,私がちょっと調査した限りでは,欧米では,売渡請求を認める支配比率が90%の国と95%の国とありまして,その辺の数字を,5%の違いですけれども,支配比率のレベルのところで何らかの妥協をするという考え方で,この①,②を,例えば95%の支配なら②まで認める,90%の支配であれば①限りとか,いろいろな選択肢があるような気持ちがいたします。  ですから,今日の議論ではっきりした結論を申し上げることができなくて恐縮なのですけれども,中小企業,あるいは大企業,いろいろなケースにおいて多様な株主の需要あるいは立場があるということを踏まえて結論を出していく必要があるような気持ちがいたします。はっきりした話でなくて恐縮なのですが,そのような気持ちがいたします。 ● ○○委員はジョイントベンチャーの話だけされたのかどうか分かりませんが,ジョイントベンチャーならジョイントベンチャーでまたジョイントベンチャー契約に別個の定めをすれば,それはそれで有効なのではないかという気がいたしますけれどね。 ● こういう点では,上場会社あるいは証取法適用会社という観点で,少ない事例になるかもしれませんけれども,経営者が経済合理性を追求して,その会社の存在を継続させていこうということを考えたときに,この②というのは,私は是非あってもいいものではないかという意見なのです。ただ,中小会社とかそういうところではどうなるのだということになると,私も答えがすぐには出ませんけれども,9割というのは私もちょっとあれで,やはり95%ぐらいというのが実感としては納得できるところなのですけれども,こういう考え方があってもいいのではないか。そうすると,私が知り得るケースでは,その会社はより一層合理的なことが進められるということを思ったことがございます。 ● これも数字についてはいろいろ御意見がありますが,少なくとも,こういう略式手続といいますか,それを導入することについては特に御反対はなかったように見受けますが。 ● 質問なのですけれども,平成9年のときにも,外国で言う略式合併だけではなくて,こういったショートフォーム・マージャーの導入もやはり検討の対象になって,そのときに現在のいわば略式合併だけを認めて,ショートフォーム・マージャーを入れなかった理由は,実際には,こういうショートフォーム・マージャーの要件は,略式合併,我が国で言えば簡易合併を認めればほぼカバーされるのではないかということが,あのときにショートフォーム・マージャーを入れなかった理由としてたしか法務省の方から御説明があり,またそういう理解で見送ったように思うのです。  今回も,先ほどの(1)の方,これは20%にするかどうかという話と結びつきますけれども,少なくとも5%より少し上げれば,実質的には(1)の方の簡易合併の要件もほぼ満たす。支配株主の場合,大部分の株を持っているわけですから,新たに発行される株式の割合というのは発行済株式の中では非常に少なくなるのが普通だと思うのですけれども。ですから,(1)の方を認めれば,実際上はそちらでほぼカバーされますから,逆に言えば大議論する必要もないように思うのですけれども,それならば逆に規定を入れてもいいということではないかというふうにも思います。その点についてどのようにお考えになってこの案をつくられたのか,伺えればと思いますが。 ● 必ずしも完全に一致するというわけではないのですけれども,例えば,支配関係にある会社間,支配会社と被支配会社の場合,支配会社の方について,簡易合併的な,つまり支配会社の方にさほどの影響を与えないものについては支配会社において特別決議を要するまでもないというのが,このスモールスケールの問題でありまして,被支配会社において支配会社が大多数の株式を持っているがために株主総会をやるまでもないというのが,ショートフォームの問題であるというふうに理解しておったのですが。 ● 手続を省略する意味があるということですね。株主総会を。 ● ええ。ですから,被支配会社において,形式的といえども総会をやるまでもないという理解でよろしいかと思うのですが。 ● ですから,その意味で言えば実質的にはほとんど違いがないわけですから,認めても差し支えないということになるかと思います。 ● 総会をやる必要がないというのは,○○委員の3分の2というのはちょっと極端でありまして,どうせ決議が通るではないかというのと,総会はやれというのとは話が違うので,もし○○委員のあれが通るのであれば,51%だれかが持っておれば総会を開かずに取締役を選任できますという話にまで行きますので,それはちょっと……。総会はどこまで開かなければいけないかという話だと思います。  これについても,今日のところはこれぐらいでよろしいでしょうか。  それでは,3についてはいかがでしょうか,米印のような案について。かねてからいろいろ苦労があるところですが。 ● 賛成でありますけれども,表現ぶりなのですけれども,②ですけれども,「株式交換・株式移転の場合においても,債権者保護手続を行い」と入っていますけれども,「株式交換・株式移転の場合においても,増加すべき資本金又は準備金を減少することを認め,この場合には債権者保護手続を行う」と,こういう趣旨でございますね。すべての株式交換について債権者保護手続を要求するようにも読めるのですけれども,そういうことではないですね。 ● そうではございません。御指摘のとおりの趣旨でございます。 ● この点はちょっと表現に問題があったかと思いますが,趣旨はそういうことでございます。 ● 物的分割のケースで剰余金の引継ぎを認めろということなのですけれども,物的分割の一番分かりやすいケースというのは,多分,自分の会社の一部を分離して子会社にしてしまうケースだと思うのですね。そのときに,子会社が,分割した方の親会社の剰余金を引き継いだとしまして,その剰余金から配当を親会社に払ったらどうするかというケースを考えてみたいのです。その場合に,その剰余金が仮に留保利益だとしますと,親会社が過去に計上した利益を留保して,それを子会社に持っていって,親会社に配当しますと,親会社がもう一度受取配当金という利益を計上しますけれども,それで構わないかということは,一応御検討いただきたいと思います。現在は,配当財源というのは必ずしも利益の留保分だけではないですから,まあいいではないかという議論も当然あり得ると思いますけれども,念のために,その辺をどうお考えかということをお聞かせいただきたいと思います。 ● 3のところはややミスリーディングなところがあるのですが,この際,引継ぎという考え方はもうやめようというのがまず根底にありまして,新たに設立する若しくは吸収する承継会社の方で,増加するであろう資本金を見込んで減少するというだけの手続になりますので,一見,○○委員のような説明のしぶりをすると,二重に,何重にも何重にも配当することができるように思いますが,それはそれぞれの会社で独立して,減少して,減少してという手続に変えようと。したがいまして,これは,今ですと,いったん資本金・準備金として計上する効力が発生した後,再度減少手続をとらないといけないというふうになっているのを,組織再編のときにたまたま債権者保護手続をやるので,その機会に同時に行えるようにしておきましょうという制度なので,確かに引継ぎという考え方をそのまま--この文脈でとりますとそういう説明になりますけれども--そこは引継ぎという考え方はやめて,いったん計上して減らすという手続を一遍にできるという制度に変えてはどうかということでございます。 ● 分割された方の子会社で,物的分割のケースでも,最初から配当財源がなくなるというのは確かに不便なものなので,アイデアとしては私は特に違和感はないのですが,今のようなところで妙な議論が出ないように配慮していただければと思います。 ● ほかにこの問題については。 ● ①の米印の,「資本減少と合併等の債権者保護手続の要件が同一となることを前提とする」というのは,これは先ほどの○○委員と違って,一般論としてこうなることを前提とするという理解でよろしいかと思うのですが,その際,どちらに合わせることを前提にお考えになっているのか。それはまだブランクということですか。 ● これは株券不発行の方で検討中でありますけれども,要するに通知をどうするかという話ですよね。 ● そうです。 ● 今御紹介がありましたように,株券不発行等関係部会におきまして,このあたりの規律の一体化,統一化を図るかどうかということが議論されているところでございますけれども,仮に資本減少と合併等の債権者保護手続がずれたままであるとした場合であっても,重畳的な要件のもとに同種のことはできるであろうと考えられます。債権者保護手続の要件が一本化されれば,規律が非常に簡便になって,考え方も分かりやすいということでございまして,一体化することが法制的に絶対条件だというように考えているわけではございません。そのような議論がされておりますことから,ここであわせて紹介させていただいているという趣旨でございます。 ● 株券不発行の方は私が担当でございますので申し上げますけれども,先日,中間試案を公表いたしまして,その中間試案と補足説明とを部会長の御指示によりまして当部会の各委員・幹事にもお送りしておりますので,もうお読みいただいているものと思いますけれども,この部分につきましては三つの案を掲げて意見照会をしております。どの案におきましても,合併と準備金減少とで区別するということはしないで,どういう形にするかは案が分かれているのですけれども,一本化して考えようというのが株券不発行部会の現在の考え方でございます。 ● よろしゅうございますか。そういうことですが。  ほかに,この点については御意見ございませんでしょうか。  それでは,第1の最後ですが,4についてはいかがでしょうか。(1),(2)とありますが,どちらでも結構ですが。  (1)は,現在も,合併のときには承継しなければならないという学説が有力なのですが,じゃあ不満があったらどうするのだということについては,どうも条文を読んでもはっきりしないのですね。これは,結局は新株予約権について,今の株式買取請求と同じように評価して,その値段で買取請求をするということを考えているのだと思いますが。 ● (1)について,米印の部分を含めて賛成です。  (2)の方ですけれども,これでいいのではないかとも思うのですが,ちょっとお教えいただきたいのは,簡易合併の場合などでも一応債権者保護手続を要求していることとの関係で,20%を越えるときだけ--②のことを申し上げているわけですけれども--完全親会社となる会社において債権者保護手続を要するものとするということの説明をどのようにするのか,違いをどのように説明するのかについて教えていただきたいと思います。 ● 先ほどは,20%というようなラインを引くということの理由の説明はしづらいという趣旨で御説明したかと思います。つまり,現在の株式交換では1円たりとも債務は承継されないわけですから,1円でも承継させるということであれば,合併や分割と同じように債権者保護手続が要るという整理もあり得るわけでございますし,また,債務の引受け自体については一般に債権者保護手続が必要なわけではありませんから,幾らであっても要らないという仕切りもあり得るわけでございます。多分このいずれかの方が法制的にはスマートであろうと,私個人的には思っておるのですが,ただ,どちらもかなりドラスチックなものですから,理屈をある程度捨てつつより穏当なところというのがあるかどうかということで,とりあえず御提案をさせていただいているところでございます。 ● そうなんですね。理屈で考えたら,全部債権者保護手続が要る。現在の株式交換は,とにかく入ってくるのは株式ですから,マイナスということはないし,発行するのは株式交換新株だとすると,資産は何も出ていかない。それを前提に債権者保護手続は要らないと言っていますので,理屈から言いますとそうなのですが,およそ常に要るということになるのかというのが,ちょっと苦しいところだと思うのですが。 ● 今の議論に多分関係すると思うのですけれども,実は株券不発行部会の方で,債権者保護手続の催告がどこまで省略できるかということの議論をしている中で,ある学者の委員から出された議論として,今,個別の債権者ごとに考えて,ある債権者の利益を害さないときには弁済等はしなくてもいいということになっているわけでございますが,もっと一般化して,すべての債権者の利益を害することがないような場合はそもそも債権者保護手続は要らないというような規律はできないかというような御意見がありました。ただ,これは株券不発行部会で議論する問題を超えていると思ったものですから,そこはそれ以上取り上げていないのですけれども,こちらで御議論いただく問題かと思いますので,参考にしていただければと思います。 ● 1点だけ,表現で確認させていただきたいのですが。もちろん反対する趣旨ではなくて。  (1)ですけれども,新株予約権が承継される場合には,条件に不満があれば買取請求と書いていますが,承継させないというような選択肢を会社が合併条件で決めたときには,この文言どおり読むと,何も言えない。まさかそんな趣旨ではないと思うのですが,これは,それが前提条件ではないということなのか,もっと深読みすると,およそ承継しないというふうな合併条件の定め方が許されないという前提で,当然何か承継の仕方を書かなければいけなくて,不満があればということなのか。私はそれはちょっとやり過ぎだと思うのですけれども,いずれにせよ現在の書きぶりはちょっとよく分からない点がありますので,若干説明をいただければと思います。 ● これは分割も含んでいるからじゃないんですかね。合併ならば当然承継ではないかと。 ● まず,新株予約権の発行条項には何も決まっていないということを前提にしていただいて,合併の場合には,基本的には承継されてしまうという頭にまずなっています。何もなければ。制度の設計の前提としては。したがって,合併の場合には,もし承継しないというようなことを書けば,それも承継しない。ちょっとその書きぶりの問題は別として,承継対象ですので,その条件に不満があれば反対の買取請求権を行使することができるというように,仕組み自体はそうしたいとは思っております。  分割の場合は,非常に分かりにくいところがありまして,そもそも分割に従っても分割会社に残ったままというものもあり得ますので,そのときに,どちらに振られるときに反対できるかというのは少し検討させていただきたいという感じではありますが,基本的には承継条件が変わり得るときには買取請求権を与えましょうということでここは書いておりまして,残るは,分割するときに分割会社に残ったままの場合に,承継会社に移れないのは変だという請求が認められるかどうかというところが多分残ると思うのですけれども,済みません,そこら辺までは,まだこの時点では詰め切れてはいないということです。 ● 念のために確認ですが,新株予約権の発行条件に書いておけば,これは何でもオーケーというのが前提で,何も書かなかった場合の処理であって,それが本当に引き継がれたかどうかは,厳密にはそれが要件とは必ずしも,恐らくはならないような話だろうと,そういうふうな整理でよろしいですか。 ● そうです。 ● (2)の20%は,これは確かに,こういうあれになりますと,どういう場合に債権者保護手続が要るのかという説明は非常に苦労すると思います。なぜ合併についてはすべて必要で,この場合は20%かという。合併の場合は入ってくる資産がマイナスである可能性もあるからだとか,いろいろな説明を考えなければいけないことになると思います。  この点もなお御検討いただきたいと思います。  いかがでしょうか。ほかにありますか。--よろしいですか。  それでは,本日のところは,第1については以上にさせていただきまして,第2に入る前に休憩したいと思います。            (休     憩) ● 再開いたしたいと思います。  3ページの「第2 株式会社・有限会社間の資本・株式制度の調整」のところでありますが,事務局から御説明いただきます。 ● 第2の部分は,前回,冒頭で総論的に御議論いただきましたとおり,実質的に有限会社と同等な,有限会社類似の株式会社,小規模な株式会社と有限会社との実態における共通性にかんがみまして,両者間の法制度の調整,一体化を図ることとしたらどうかという基本的な問題意識に基づいて,株式会社・有限会社間の資本・株式・持分に関する制度を一体的に規律するということとした場合には,どのような規律の仕方,調整の仕方が考えられるかという観点から論点を整理したものでございます。  1番目は,資本制度でございます。有限会社につきましては,かつての株式会社と同様に,額面的な出資一口の金額という概念が用いられ,その出資口数の総和が資本の総額になるという,固い資本制度がとられているところでございますけれども,仮に株式会社とその規律を一体化するといたしますと--その一体化の是非自体も御議論の対象だと思いますが--例えば,定款記載事項については(1),(2)のような考え方がとれるのではないかという趣旨の提案でございます。  (1)は,株式会社と同様に,資本の額,--有限会社は資本の総額という表現をしておりますが,--資本の総額を定款記載事項から削除するかわりに,株式会社における発行予定株式総数というものを記載するということとしてはどうかということでございます。すなわち,資本の額の変動が必ずしも定款変更と同様の手続ではない,場合によっては一致しますけれども,場合によっては一致しないこともあり得るという形を認めようとするものでございます。  (2)は,先ほど申しました額面的な概念を有限会社についても廃するということでいかがかという御提案でございます。  なお,現在の有限会社における,資本の在り方は,この額面的な概念であります出資一口の金額によって縛られておりますけれども,この概念をなくするということになりますと,いかなる基準をもって有限会社において資本を積むかということが問題になるわけでございますが,それについて株式会社と同一の規律にするかどうかということは,次回以降,また御議論をちょうだいしたいと思います。  2でございますが,株式会社における株式,有限会社における持分の制度について幾つかの違いがある部分について,このような調整を図るという考え方がとれるかどうかということについて御意見をお伺いしたいと思います。  まず,(1)についてですが,有限会社におきましては,利益配当,議決権,あるいは残余財産の分配に関し,社員平等を定款によって修正し得る余地が認められております。これについて,どの程度の修正ができるかという点は解釈にゆだねられているところですけれども,いずれにしましても,法文上は,定款によって別段の定め,社員平等とは異なる定めを認め得ることとなっております。これは,講学上,社員の属性に基づく定款の定めというふうに言われておるようでございますけれども,このような概念を,株式会社,少なくとも譲渡制限株式会社に導入することができるかどうかということの御検討をお願いしたいということでございます。これは,種類株式,種類株主とは別の概念として取り入れ得るかという問題意識のもとに提示させていただいているところでございます。  2の(2)は,新株発行ないし増資の手続に見られる幾つかの相違点の調整を図るということを考えた場合に,例えば譲渡制限株式会社における発行手続を有限会社的な規律に寄せて考えることができるのか,あるいは有限会社における増資手続を譲渡制限株式会社における新株発行手続に寄せて考えることができるのかという点につきまして,幾つかの御指摘をさせていただいております。  ①は,譲渡制限株式会社における新株の発行手続の見直しの要否についてでございます。現在の法制のもとでは,譲渡制限会社における第三者に対する発行決議--特別決議が必要なわけですけれども--それと有利発行決議というものとは概念が異なるわけでございまして,第三者に対する発行決議を経たからといって有利発行が許容されるわけではないわけでございます。一方で,第三者に対する発行決議においては,本来であれば,どのぐらいの価格で発行すべきかということの意思決定もされてしかるべきであろうかとも思われますので,この両者の決議を一体化するということを,条文の整理という観点から行ってはいかがかという点が,①でございます。第三者に対する発行決議において,発行価額の下限というものを新たに定めることによりまして,有利発行決議がされたと同じ効果を認めるということでどうかということでございます。  ②は,株主割当ての制度に関する見直しの要否についてでございます。米印の一つ目と二つ目とは全く別々のことに触れているわけですけれども,まず一つ目につきましては,現在,譲渡制限株式会社におきましては,株主の割合的持分比率の確保という観点から,株主に株式の引受権が与えられているわけですけれども,他方において,一株に満たない部分,あるいは申込期日までに申込みがされなかった部分については,取締役会において適宜新株の発行ができるということになっているわけでございます。譲渡制限株式会社における株主の割合的な権利を確保するということを重視いたしますと,果たしてそのような取扱いが適当かどうか,むしろ申込みがされなかった部分,一株に満たなかった部分については,株主以外の者に,第三者割当てという方法によらないで再募集するということは認めるべきではないのではないかというのが,米印の1番目の提案でございます。  2番目の米印は,現在の自己株式の処分に関しましては常に特別決議が必要であるということになっておりますけれども,株主割当てという方法による規律に服さしめることによって,普通の株主割当てによる新株発行と同じような形での自己株式の処分というものの余地を認めることとしてはどうかという点についてでございます。解釈上可能かどうかはともかくとして,条文上そのような余地がないことになっておりますので,そのような取扱いを認めてはいかがかという提案でございます。  ③は,有限会社におきまして,譲渡制限株式会社的な増資の自由度を認め得るかどうか,授権資本的な制度の採用もあり得べしかどうかという点についての御提案でございます。持分比率の保護のための規律を維持するという意味では,譲渡制限株式会社における新株発行手続というのがそれに当てはまるものであるわけですけれども,他方において,株式会社におきましては,現在,所有と経営とが分離するという形での機関設計がとられており,その資本政策は基本的には取締役会の判断にゆだねられているわけでございます。有限会社におきましてはそのような機関における権限分配がされていないということにかんがみまして,どの程度自由度を高め得るのかどうか。譲渡制限株式会社における機関設計の変容の仕方,取締役会がない会社におきます社員総会と取締役との間のこの種の意思決定に関する権限分配いかんということにかかわる問題でございます。  米印の一つ目は,有限会社におきましても,社員総会の決議によって,一定程度,その増資に関する意思決定を取締役に委任するということを認めてはどうかということでございます。第三者割当てに関するものでございますが。  米印の二つ目は,社員割当ての方法をとる場合には,社員総会の特別決議の必要性が薄らぐのではないかという問題意識に基づくものでございます。定款で格別に定めをした会社にありましては,社員割当ての方法による増資の場合には社員総会の特別決議を不要とする余地を認めることができるかどうかということについての御意見をちょうだいしたいと思います。  (3)は,株式・持分の譲渡制限制度の調整についてでございます。御承知のとおり,株式会社と有限会社とにおきましては,その株式持分の譲渡制限の手続の在り方のデフォルトルールについて異なりがございます。  米印のA案に書かれておりますのが,譲渡制限株式会社におけるデフォルトルールでございますし,有限会社におきましてはB案のような考え方,社員間の譲渡については原則として承認が不要であるという考え方がとられているところでございます。仮に,株式会社と有限会社とにおきまして,定款の定めによってそのどちらの選択肢もとり得ることとした場合であっても,何も定めがない場合にはどうするかというデフォルトルールを定める必要があるわけですが,そのデフォルトルールとして,A案,B案のいずれが適当かということでございます。これは決めの問題でもあろうかと思いますが,他方において,譲渡制限制度の理念の説明ぶりにもかかわることでもございますので,この点についての御議論をちょうだいしたいと思います。  それから,②についてですが,株式会社であれ,有限会社であれ,この譲渡承認の手続に関して--解釈上許容されているものもあれば,立法論としてこのような柔軟な制度を設けられたいという御要望があるものもございますけれども--幾つかの御提案がございます。米印はそれを列挙したものでございますけれども,このような取扱いを定款の定めをするということによって認め得るかどうか,柔軟な制度とし得るかどうかということについての御意見を賜りたいと思います。  米印の一つ目は,特定の属性を有する者に対する譲渡については承認を全く要しない,あるいは代表取締役等の承認をもって足りることにするということが可能かどうかという点についてでございます。  米印の二つ目は,法定の取締役会がある株式会社について,定款の定めをもって株主総会を承認機関とすることを認めるということを規定上明らかにしたらどうかという点でございます。  米印の三つ目は,現行法の解釈上,いわゆる包括承継による株式・持分の移転につきましては,この譲渡承認の対象外であるというように理解されていると思いますけれども,現行法のもとでは承認を要しないこれらの移転につきましても,定款の定めによって承認を要する対象とするということが可能かどうかという点でございます。  四つ目は,この譲渡承認に係る手続における先買権者,指定すべき先買権者について,あらかじめ定款で指定しておくということを認めてよいかどうかという点でございます。  両制度の調整,譲渡制限株式会社と有限会社との調整の問題であり,比較的技術的な問題でございますけれども,もし調整をするとなれば,いずれにしても決めを打たなければいけない問題が幾つかございますので,今回お諮りする次第でございます。 ● それでは,今説明いただきました第2全体につきまして,何か質問ありますでしょうか。--よろしゅうございますか。  それでは,個々の項目について御議論いただきたいと思います。  まず,1の「資本制度の調整」,この部分についてはいかがでしょうか。このような制度になりましても,これは,当然にこの範囲内で取締役がどんどん増資できるというわけではなくて,2(2)の③のようなあれはかぶってくると,こういうことだというふうに理解しておりますが,いかがでしょうか。 ● 一つ質問です。  (1)の,資本の総額を定款記載事項から外した場合,登記事項はどうなるのでしょうか。 ● これはその点についての株式会社の規律とは変えるという趣旨を含んでいるものではありません。 ● 登記はするということですね。 ● その点について何か御意見があれば。 ● では,ついでに。  前回の最低資本金のあの問題とも関係するのですけれども,実は,私ども弁護士会の中では,最低資本金の規制を余りに緩和することについてはどちらかというと消極意見が多くて,資本金そのものがどれだけ債権者保護に機能しているか,あるいは資本金の会社における純資産の確保の機能としてどれだけの意味があるかという議論は非常にたくさんあろうと思いますけれども,ただ,やはり会社を立てるに当たってある程度の財務基盤を確立するという,そういうような経営者としての気持ちの上での堅実性というものを確保するという意味で,資本制度というものは確保しておく必要があるのではないかと,そういう意見がどちらかというと弁護士会では多いという感じがいたしますので,その点を踏まえて考えますと,定款の中から資本というものを削除するということについては,私自身もそうですが,弁護士会の中では消極意見が多いのではないかということを,今現在はちょっと感触として持っております。 ● そうなりますと,次の2の(2)③のような緩和措置も難しくなるわけです。手続の簡素化ですね。これは定款の定め等が必要なわけですけれども。例えば③の二つ目の米印は,定款で定めれば特別決議を経ずに取締役が社員割当ての方法で増資できると,こういうことを提案しているのですが,定款の記載事項だということになりますと,常に社員総会特別決議が要ると。そういうところが違ってくるわけですね。 ● そういうふうにつながってしまうことになるわけですけれども,その辺,もう少し議論を詰めてみないと,何とも確たることが申し上げられませんけれども,資本制度そのものに対する感覚として,今現在,余りに緩和することについて若干消極意見が多いということだけ,ちょっと指摘させていただきたいと思います。 ● ここで議論されているのは,基本的には登記で資本総額が示されていれば,通常の取引の際に会社の資本の総額を知るのにはそれで十分であって,定款の記載事項から落とすかどうかというのは,どちらかといえば変更の手続を簡易化するということだと思うのです。有限会社について株式会社より重い手続を要求する必要があるかどうかということで,資本の機能そのものの見直しということではないのではないかと思っておりますが。 ● まあ,手続が同じでいいかどうか,これは問題でしてね。だれが決定するのか。やはり原則は,2の③の案でも,定款で何も定めていなければそれは社員総会で決定すると,こういうことですから。  ほかに,1については御意見ございますでしょうか。ほかの委員の方は格別御異論ないというふうに考えてよろしいでしょうか。  それでは,2はいろいろありまして,まず(1)を御議論いただくのがいいのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ● 有限会社と譲渡制限のある株式会社との規律を一緒にしていくという観点からはもちろん検討に値することだと思うのですけれども,改めてこうやって有限会社法を子細に見てみまして,果たしてこれでいいのだろうかという疑問が出てくるものもないわけではない,そのうちの一つのような気がするわけですね。つまり,定款でこのように決めた場合,定款変更によって変えられるわけですね。 ● それは解釈論。 ● それは解釈問題ですね。いったんあれしたものを単なる定款変更で変更できるのかというのは,解釈上は問題あるところだと思います。 ● その点は,種類株式の場合は,そういう問題が一応起きないように,細々とたくさん規定がございますが,整備されていると。その種類株式では足りない問題がもう一つあって,こういうものも認めてもいいのかどうかということが一つありますし,需要があるかどうかということですし,それから,こういうものを認めた場合に,変更を単なる定款変更でいいのかどうかということを解釈問題に任せておいていいのか。要するに,こういうことは全員が一致すれば全く問題なくできるということだと,それは解釈でもはっきりしていることだと思うのですが,そういう解釈に任せないで,あえて片面的にだけ定款でできるというふうに書いたときの問題点というものを,もう一度慎重に考えなくてはならないのではないかという気がするということでございます。 ● 重要な御指摘,ありがとうございました。確かに規定の不備な点はあると思います。 ● 同じような方向からの意見だと思うのですが,これは一通りすべてを整理してから,閉鎖的株式会社と有限会社とを併存させる意味とかいろいろなことを,最後はもう一度,えいやっと考えなければいかんと思いますので,そのときに議論すべきだと思いますが,やはり株式会社の場合には株式をベースにいろいろ制度設計をしてきた。それに対して有限会社の場合には,もちろん持分という形でいろいろ考えるけれども,人もベースに考えている。とりわけ,特別決議事項として頭数の過半数ですか,そういう人をベースにしたものもあるという形でいきますと,もちろん現行の有限会社法の規定の不備ということはありますけれども,そういうものをすべてある程度株式会社の属性をベースに弾力化をどんどんしていっても,人ごとにということまで一挙に行くことは,これまでの有限会社と株式会社を一緒にするという理念を少し超える話になるのかなと思ったりもしまして,そこら辺,最後のときにもう一回整理させていただきますが,そういう角度からも慎重に御検討いただきたいと思います。 ● 私も,ちょっとこの「株主ごとに」という表現はミスリーディングなのではないかという気がしているのですけれどね。現在の有限会社法だってこうは書いていないんですよね。それでどこまでできるのかと。例えば,持分,出資口数10を超えたら頭打ちとか,そういう定め方はできると一般に言われているのですが,それ以上に,例えば一人一人,Aさんは何出資口数持とうと議決権は10だとか,そういう定め方ができるとはまさか考えていないと思うんですね。ですから,これは,「株主ごとに」といいますと,何かそういうことを許すように読めますので,ちょっとミスリーディングだなと私も思っておりますが。  ちょっとこれはなお検討ということで,いろいろ技術的にも検討すべきことはあるということでよろしいでしょうか。  次に,(2)でありますけれども,できれば一つ一つ,①からやっていただければ幸いですが,全部まとめでも結構ですが,後ろの方からでも結構ですが,(2)についていかがでしょうか。 ● ①についてちょっと確認させていただきたいのですが,失念したので申し訳ないのですが,14年改正の議論のときにも同じようなことを一時期議論して,結局これは二本置いたような経緯だったかと記憶しているのですが,そのときの議論はどういうことだったんですかね。そのときも,一緒にしたらいいじゃないかという議論が一部あったはずなんですね。 ● 提案はさせていただきましたが,当時,いろいろとそのほかにも検討すべき事項が多く,かつ,先ほど○○幹事の方から申し上げました,極めて技術的な修正に係る部分でもございますので,あのときは,あえてそこまでひっくり返して手をつけないでもいいのではないかということで,自然に,ということでございます。 ● (2)の①ですが,株式の発行価額の下限を定めるということで,発行価額そのものでなくて下限でいいということにした趣旨ですね。譲渡制限会社でない場合であれば,マーケットがあって株価はフラクチュエートしますから,ある程度取締役会に裁量性を与えたいというようなことは分かるのですが,果たして譲渡制限会社の場合で,このような下限さえ定めればいいというふうにする必要があるのかなというのはちょっと疑問に感じたものですから,それを伺いたいと思います。 ● これは14年改正の議論のときから下限でしたっけ。 ● ええ,有利発行規制とかは同じにするということでした。  有利発行規制は,現在,最低発行価額を決議することになっておりますので,それに倣っていると。  問題は,今,譲渡制限会社ですと,決議後1年間発行できることになっておりますので,その間の価格変動を見込まないか見込むかの問題でありまして……。まあそういうことです。 ● 確かに市場価格がフラクチュエートするということは余り考えられないのですが。あるいはベンチャーなどではこういうことがあるんですかね。1年内のあれは決めない方がいいという……。 ● 質問なのですが,有限会社で,出資証券を他に譲渡する,譲渡制限がついている場合に譲渡していくときに,A出資者がB出資者に譲渡するわけですよね。Aが持っている価値をAが幾らで売ろうと,Aが損するだけでありまして,ほかの出資者に損失は与えないんじゃないですか。 ● 社員同士で譲渡するわけでしょうか。 ● 社員同士でも,社員外であっても,持分は変わっていないわけですよ。会社の内容も変わっていないわけです。 ● 有限会社の場合は,いわば信用できる人だけを社員にしていますので。社員外,今まで社員でない人に売るについては,現在の制度では,社員総会の決議が必ず要ると。社員同士につきましては,これは要らないということになっているのですが……。 ● それは承知しているのですが,発行価額の問題について,幾らで売ろうと,売った社員が損をするだけでありまして,他の社員に損失は及ぼさない。 ● それは会社が発行する場合だけで,会社が発行する,しかも第三者にというのは,これはそういう比例的にではなくて。 ● 第三者割当てみたいなケースということですか。 ● そういうことです。 ● 失礼いたしました。ありがとうございます。 ● 先生方に教えていただきたいのですけれども,譲渡制限がある株式会社というのは,譲渡するときは取締役会の譲渡承認が必要なんですよね。なのに,発行するときは何で株主総会の決議が必要なんでしょうか。それはどうしてなのか教えていただければ。 ● 新株引受権が認められているから,この新株引受権を排除するという観点がここに入っていると思うのです。既発行の株式の移転ではなくて新発のときに,新株を引き受けるぞという権利を排除することを株主に認めてもらうと。 ● 希釈化の防止ということですか。 ● それも含めて。半分は,だれに割り当てるということでしょうけれども,先ほどの質問のAさんからBさんへではないわけですね。ゼロをプラスにしてだれに割り当てるかは,やはり取締役会でなくて株主総会で決めるべきだと。そうでない限りは,新株発行においては持分比率でやれという理念があるからという。 ● 持株比率の変動,それができたのは平成2年改正。要するに,株式譲渡制限がある会社の株主については総会特別決議で排除しない限りは新株引受権があるということにしたのは,その前にさんざん乱用がありまして,つまり経営権を握れば勝手に自分の味方にだけに新株発行をするということが相当行われていたから,こういうことになったわけですね。  これは,それをするのと,どうせ市場価格がないのだから価格もどうせ特別決議しなければいけないでしょうというので,決議は一緒にしましょうと,こういう案だと思いますけれども,先ほど来,なぜ下限なのかというような細かい議論が出ていると,そういうことだと思います。  ちょっとその下限のというのがどれほどニーズがあるのかは……。 ● 先ほど,ベンチャーについての御質問がありましたけれども,ベンチャーにおきましては,先ほど○○委員から閉鎖会社については大体決めておけばいいではないかという趣旨の御発言がありましたが,やはり結構フラクチュエートするものでありますし,実際,投資先との交渉によっていろいろと価格が変動するということがあります。ですから,特別決議で価額まで全部ぴったり決めなければいけないというのは,やはりかなり実務的に問題がありまして,その最終的価額,それから,取締役会において割当先が決められるということが非常に望ましいと思います。 ● では,これはそういうことで,なお検討するということでよろしいでしょうか。  では,②でありますけれども,現在はこれは本当にやっていいのかどうか分からないのですが,実際上は再募集をやっていて,かなり価格も不透明だと言われているのですが,それを認めないことにしてはどうかということなのですが,これはいかがでしょうか。  実務的には困るという御意見はありますか。実情を一番御存じなのは○○委員かと思いますが,何か御意見ございますか。 ● いえ,特にありませんが,今,大変不透明だというお話がありまして,私も弁護士としてはその点にかかわったことが幸いにしてないものですから。実際には,非常に実務的には困って,その結果様々なやり方がされているということだと思いますから,その中には恐らく弊害も多分出てきてはいるだろうという気持ちはいたしますので,その弊害を排除するという意味で,これははっきり決めるという方が望ましいのかなという気持ちがいたします。できないならできないということをですね。 ● これは譲渡制限会社ですから,総会決議をやる場合には,そこで再募集の方法を決めておけば,これはいいんでしょうね。そういうやり方はできるわけですよね。絶対に再募集できないのではなくて,特別決議で再募集のやり方を決めておけば,それはできるということだと思います。 ● 株主割当てですから,総会決議を経ていない場合を想定しているのではないでしょうか。 ● そういうケースもあります。  ただ,これは,恐らく株式会社も取締役会を置かなくていい類型というのが出てきますから,その場合には,株主割当てでも原則はやはり株主総会決議が要るのだと。それで,③の米印の2番目のように,定款で定めてある場合には,取締役会のない株式会社でも取締役の決定で株主割当ての増資はできると,そういうかなり複雑な制度になりますけれども,そういうことだと私は理解しておりますけれども,それでいいですか。  では,②は大体こういうことでよろしいでしょうか。 ● 二つ目の米印の「株主割当による自己株式の処分を認めることにしては,どうか」,これは特別に問題ないと思うのですが,ここまで明確に言われると,この自己株式って何なんだということも少し議論しなければいかんのではないかと。また事務的整理を混乱させて申し訳ないのですが,そうすると金庫株って何なんだということもある程度頭に入れながら最終的な取りまとめをしていただくと,理論的にはすっきりするなと思うということだけ申させていただきます。 ● 何かありますか。  自己株式については,また後ほど議論の機会はあるかと思いますので,その際によろしくお願いします。 ● 有限会社について一つだけお尋ねしてもいいでしょうか。  有限会社も所有と経営の分離ということになっているのですか。 ● それはないという前提で。 ● そうだとすると,有限会社が有限責任ではないという問題が今ありますよね。今じゃなくて,ずっとあるわけですが。つまり,個人保証を求められているような小規模株式会社と有限会社の問題というのは,実は現実的には非常に大きいわけです。そういうことをきちんと保護する方が,会社をきちんと存続させて日本経済のためにという点からは重要なのではないかと思うのです。そういうことはここの議論の対象ではないのでしょうか。 ● 個人保証の話は,ちょっと会社法上の制度ではありませんので,ここで……。 ● 個人保証をとってはならないとかいうふうにすることはできないですよね。 ● 会社法でそれを定めることは難しいと思うのです。  ただ,そういう個人保証をとらなくてもいいようなシステムとして会社法のシステムを組んでいくことの議論は必要だと思うのです。例えば,財務内容のディスクロージャーがあるから個人保証は今のような形で求めなくてもいいとか,そういうようなことはあり得ると思うのです。ですから,ここで議論できるのは,恐らくそういうディスクロージャーの話まででありまして,個人保証をとってはならないとか,それはちょっと……。 ● 有限責任の思想に物すごく反することが現実問題としては行われているなというふうに思ったものですから。  分かりました。ありがとうございます。 ● では,③はいかがでしょうか。特にこの米印が問題だと思いますが,御意見いかがでしょうか。  一つ目の米印は,これは先ほど○○幹事が言われたベンチャーみたいなことを考えているのではないかと思うのですけれども,はっきりどれだけ発行するか決まっていないというケース,割当先は決まっているけれども出資口数等は決まっていないというケースかと思いますが,これについてはよろしゅうございますか。  二つ目の米印はいかがでしょうか。これは,有限会社では所有と経営とが分離していませんから,増資も社員総会で決めるのだというのが原則ですが,定款で定めておけば,その点,持分割合を変えないものは取締役が決定するということも認めていいのではないかということだと思いますが。 ● やや懸念されるのは,資力のある取締役の側が,自分の持分,支配権を強くするために,こういう制度を利用して取締役限りで増資をすると。その結果,引き受けることのできない側の株主は,上の方の制度で,結局それは割り当てられずに終わるということになって,非常に閉鎖的な一部の会社の内紛をやや助長するおそれはないことはないかという点だけがちょっと気になります。 ● 閉鎖会社では,増資をするのは株主・社員が決めるのだというのは,これは当然で,合弁契約なんかには必ず,株主全員の合意がないと増資はできないと書くと思うのです。ですから,それが原則であることはもう間違いないんだと思いますが,確かに,定款で定めをするときはそんな不公正なことが行われるとは思わなかったけれども,ということですね。 ● 多分,モデル定款みたいなのがつくられて,こういうのが入ると思うのですけれども,何年かたつと事情が変わるものですから,いわば閉鎖会社の火種をふやすことにもなるかなというおそれはあると思います。 ● 確かに,どこまでニーズがあるかというのは私も疑問だと思うのですけれどね。  では,これもなお検討ということで。  次に,(3)につきまして,まず①ですが,これは,原則をどうするかと,A案,B案,これが問題なんだと思いますが,いかがでしょうか。 ● 原則はやはりA案の方がよろしいんじゃないかというふうに思います。 ● つまり,株主間,社員間の持株比率が変わるというのも,これはほかの株主にとってもやはり利害関係はあるということですね。 ● はい,賛成です。 ● ほかの委員・幹事の方,御意見いかがでしょうか。 ● 私も,ともかく中小企業,閉鎖会社の案件をいろいろ扱っておりますと,要するに中小企業経営者としては,A案でなければ困ると,そういう感覚で受け取られると思います。ですから,私もA案に賛成いたします。 ● よろしゅうございますか。  現在の有限会社法はB案なのですが,これは有限会社法の現在のあれがちょっと問題があるという,皆さん,そういう理解でしょうかね。  よろしゅうございますか。大体A案ということで,皆さん,御異論ないでしょうか。--では,これは大体皆さん,A案であったということで。  次に,②でありますけれども,この点はいかがでしょうか。 ● 米印四つありますうちの三つ目の米印というのは,かなり実質的な意味を持つと思いますし,まあこういう方向でいいのではないかというように考えます。  二つ目の米印でございますけれども,これも解釈で当然だと思いますけれども,明文化しておくということでよりはっきりするのであれば,これで結構ではないかと思います。  これに対して,米印の一つ目と四つ目は,そもそもこれは解釈でも可能なのではないかと思われる上に,今,解釈によれば,これは取締役会規則で決めておいても可能なことというふうに解することはできないでしょうか。つまり,取締役会は承認しないこともできるわけですが,こういう場合には承認するということを自分たちのルールとして決めてしまっておいて,そう運用するというだけのことだろうというように思うのです。あるいは,その譲渡を承認しない場合の先買権者を取締役会のルールとしてあらかじめ決めてしまっておくということだって,これは解釈で可能なのに,こういう立法を設けますと,定款に定めないとそういうことができないのかという疑問がかえって生じるのではないかというふうに思います。 ● 確かに,最初の米印は,これは取締役会限りでできるのかもしれませんが,最後のはどうですかね。これは取締役会の決定を排除してもあれということですよね。定款で定めている者に先買権があるということなので。 ● だから解釈で,もちろん定款で定めてもいいと思うのですけれども。 ● いや,これは,もう定款で先買権者が決まってしまうということでしょう,取締役会がどう決めようと。取締役会はもう選択の余地がなくなってしまうわけです。 ● それは,承認機関を株主総会にできるのと同じような意味においてですね。より重いものは定款で決められることがはっきりしていると思うのですが,定款で決めなくても,取締役会規則でもって,買取請求権者はいつも会社というふうに例えば決めておいたって,それは自由なのではないかと。 ● いかがでしょうか。 ● 譲渡承認の制度が非常にフレキシブルになるということは非常によい方向だと思っておりますが,一つだけ,もう一つ提案させていただきたいと思いますのは,定款の定めによってできることの中に,買取対価の定め方について,これも定款で定められるようにしていただけないかということであります。  その理由というのは,まず一つは,ベンチャー企業ないしジョイントベンチャーの実務からするところでありますが,御承知のように,とりわけジョイントベンチャーの株主間契約では,いわゆるファーストアプレイザーとかファーストオプションといわれる,取得価格をあらかじめどうやって決めるかを契約に書いておくという実務がなされております。そのような実務が現行の商法では定款に盛り込めないために,定款の譲渡制限の規定と実務上行われている契約との間の乖離が生じておりまして,その間の法的不安定性というのが実務的に問題になっているというふうに思われます。  さらに,一般的に言いましても,そういった株主間の契約によっていろいろなことを定めていくような企業におきましては,一番出口のところについて,どういう価格設定,評価がされるのかということをあらかじめ契約で定めておきたいというニーズは非常に強いわけでありまして,それを御検討いただけないだろうかということです。もちろん,それについては,同族会社における少数株主の保護等でも問題がなくはないということも承知しているのでありますけれども,この際,やはり閉鎖会社におきましては基本的には株主間でそういったことを決められると。それで,もし余りにも不合理な定款規定等がなされた場合は,その後に公序良俗等の問題として対処するという方向の方がよろしいのではないかというふうに思うわけです。  更にもう一点つけ加えさせていただきますと,この譲渡制限にこだわりますのは,この譲渡制限の定めが,会社区分の閉鎖性基準になることが一応今前提として進められているわけでありまして,そういう意味で非常に重要なものであって,できるだけ実務との乖離を少なくしていただきたいと,そういう趣旨の意見であります。 ● いかがでしょうか。 ● 一つの御提案としては分かるのですが,ここにある四つの米印は,いろいろ議論があろうかと思いますけれども,三つ目を除いて,まあ解釈でも何とかできるかもわからないという,現行制度をベースにした事態の明確化ないしは一歩進めるという程度のものなのですが,買取価額を定款で決めるというと,現行の制度の抜本的見直しになって,その場合,買取価額を定款で定めるのだったら,もう少し--つまり,現行の譲渡制限制度というのは,対価の回収は絶対的に保証しようという形の制度なんですね。それに対して,買取価額ももちろんある程度の公正さを要求されるのでしょうけれども,そういう譲渡自由の原則の代替措置として設けられている現行制度との違いということで,少し別建てで議論する必要があるのかなと思います。否定するつもりはありませんが,この②の延長線上の問題としてはちょっと異質の提案をなさったというふうに感じました。内容を云々するつもりはありません。 ● これは非常に重要な点で,確かにジョイントベンチャーははっきり契約で明示的にそう決めているわけですから。買取価額の決定とか。  それと,○○幹事もおっしゃいましたけれども,同族会社等と同じにできるのかというのは,これは非常に大きな問題かと思いますので,その点はなお御議論いただきたいと思います。 ● ○○委員とここは意見が合ってうれしいのですけれども,米印の三つ目のところでありますけれども,相続,合併等の場合に譲渡承認の対象とするという制度を是非導入していただきたい。組んでいる相手方が敵対的会社に買収されて吸収合併されるというふうな場合に譲渡承認手続もしていただきたいと,こう思うのですけれども,譲渡承認とは関係ない話なのかもしれませんけれども,例えば,そのジョイントベンチャーを組んでいる閉鎖会社の株主の支配が,株式交換によって全然別の人のところの支配になった,ないしは,テンダーオファーによって,株主になっているその上の,それを支配している人が完全に変わってしまうという場合があるわけですね。そういうふうな場合に,なおかつその人を同じ組織の中にとどめておかなければならないのか。そういうときのコールオプション制度なり--これは合弁契約ではしょっちゅうあるわけですね。株主にチェンジ・オブ・コントロールがあったというふうな場合に,プットオプションなりコールオプションというのが大抵の契約には入ってくるわけですけれども,それが定款上保証されるような措置とかいうのが,今の○○幹事の対価の問題もそうですけれども,どの程度定款に記載できるのかというふうなことも考えていただきたいなと思います。 ● 「合併等」と書いてありますが,これがどこまで含んでいるのか,確かに……。問題点はよく分かります。  一番大きな問題は3番目の米印だと思いますが,この点についても,基本的には,皆さん,この方向に賛成だという理解でよろしいでしょうか。相続等についても。--これについてはよろしいでしょうか。  では,なお技術的には検討すべきところはあるかと思いますので,詳細を詰めるということをお願いしたいと思います。  第2については,以上のようなことでよろしゅうございますか。  それでは,続きまして,第3の説明を事務局からお願いいたします。 ● 第3は,株式等に関する項目で,かなり技術的な論点を多く含むものでございます。  1番目は,譲渡制限の定めを株式会社が置く場合,外す場合の手続についての見直しの要否についてでございます。  現在は,御承知とおり,片面的な形での要件設定になっておりますけれども,現在,この部会で御検討いただいておりますように,譲渡制限の有無によって会社の機関設計の在り方がかなり大幅に変わるということであれば,双方向いずれにしましても,株主にとっては,基本的な会社の性格の変更という意味では同じ程度の意味を持つというようにも理解できるわけでございます。また,仮に機関設計の別を離れたといたしましても,現在の譲渡制限のシステムのもとでは株主に投下資本の回収手段がある程度確保されており,一方で,譲渡制限会社ではない会社におきましては,そのような機会の確保は任意に売却先を探すしかないという実質にかんがみますと--上場されていれば別ですけれども--上場されていない非譲渡制限会社と譲渡制限会社との間で片面的に要件の差を設けておく必要が果たしてあるのかどうかという点について,現行法におけるそもそもの疑問というのもあり得ようかと思います。ここでは,384条の特別な特別決議を,一般的な特別決議--その特別決議の要件をどうするかという点についてはまた御議論があり得るかもしれませんけれども--いずれにしても双方向とも同じ要件にするということでいかがかということでございます。  それから,譲渡制限を置く場合,外す場合,いずれについても会社の基本的な性格の変更ということがあり得るとすれば,どちらの方向についても,変更に当たっての反対株主については株式買取請求を認めるべきではないかというのが,米印の二つ目で御指摘している点でございます。  2は,単元株と端株制度についての見直しの要否についてでございます。  一つ目は,現在の単元未満株式の株主の権利につきまして,端株主の権利に接近させるべきではないかという実務上の御指摘について,どのようにお応えすべきかという点でございます。権利内容を同一にすべきかどうかというのも,それはそれで一つの見方でございますけれども,端的に単元未満株式に係る株主の権利を現在の端株主の権利とどこまで近づけ得るのか,あるいは端株主の権利を単元未満株式に係る株主の権利にどこまで近づけるべきなのか。双方から接近させていきますと,最終的には,場合によっては両方とも同じになるかもしれませんが,これらが株主の管理コストの軽減という観点から設けられた制度だといたしますと,それは同じになってしかるべきかもしれないということから,一応,もし同一にするとした場合として,A案,B案,C案,いろいろ考えられるところを提示させていただいているところでございます。  A案は,現在の端株の権利内容と同様にするというものでございます。最も実務的ニーズに応え得るのかもしれません。  B案は,自益権については保護し,共益権については,原則認めつつも,定款で排除し得るという形にしたらどうかというものでございます。  C案は,現在の単元未満株式に係る株主の権利に統一することとしたらどうかというものでございます。  このような両者の統一の可否自体も含めて御議論いただければ幸いでございます。  それから,株式の分割・併合について非常に自由度が高まった今日において,そもそも端株制度を単元株制度とは別に維持しておく法制的な意味がどの程度あるのかということもあわせて御議論いただければというのが,(2)の趣旨でございます。  3は,基準日に関する見直しの要否についてでございます。  株主総会における議決権行使のために,例えば期末を基準日と設定した場合におきまして,その後,組織再編や新株発行などで大がかりに株式が増加し,新たな株主が登場したという場合に,それが株主総会の前であれば,当該株主総会においてその新たな株式に係る株主にも議決権の行使を認めるということもあり得べしではないか。その場合に基準日の設定をし直すということが実務上かなり煩瑣であるといたしますと,何らかの形で,基準日を動かさないままで,ある程度の新たな株式に係る株主について追加的に株主総会における議決権行使を認めることとすることができるかどうか。できるとした場合には,例えば定款又は基準日公告においてそのようなことを記載する方法をもってそれを許容することができるかどうか。これらが米印の一つ目の問題でございます。  米印の二つ目は,仮にそのような方向性があり得るとした場合に,新たな株式に係る株主として議決権の行使を行い得る株主の種類,株主の範囲を,一定の事由に基づいて生じた株式に係る株主に限ることができることとすべきかどうか,新株主が登場する事由はいろいろとあり得るわけですけれども,組織再編や通常の新株発行ということであればともかく,例えば新株予約権の行使という形で随時登場してくるような株主についてもそのような議決権行使を認めるべきかどうか,そのような制度設計をすべきかどうかという問題でございます。  仮に,随時行使するであろう新株予約権者についても議決権行使を認め得るということとした場合には,恐らく総会開催の事務手続上,一定の期日前までに登場した者に限るということになるのではないかということからいたしますと,米印の三つ目のような条件設定をするという選択肢も更に認めるかどうかが問題となります。これは,米印の二つ目において,例えば合併等の組織再編や通常の新株発行に限るというようなことであれば,考えなくてもよい問題かもしれません。  4は,種類株式について--種類株式については先般までの改正で様々な改善が加えられているところでございますけれども--更に今回の現代化に当たって見直しをすべき点があるかどうかということから,幾つかの点をお諮りするものでございます。  一つ目は,これまで,「譲渡制限会社」と申し上げているものにつきましては,その発行する種類の株式が複数ある場合においては,そのすべての種類の株式に譲渡制限がかかっている,これを「譲渡制限会社」というふうに概念して御説明を差し上げているつもりでございますけれども,非譲渡制限会社においても,定款をもって一部の種類の株式について譲渡制限をかけるということを可能としてよろしいのではないかとういう点についてです。この場合に,一部の種類の株式の譲渡について承認を要するという会社であっても,他の種類の株式について譲渡制限がかかっていないということであれば,この会社は,結論において非譲渡制限会社ということになるわけですけれども,非譲渡制限会社においても,一部の種類の株式の譲渡について承認を要するという形を認めてよいのではないかというのが,(1)の問題でございます。  米印は,それを可とした場合に,譲渡承認の手続やその株式の発行手続については,譲渡制限会社における株式の譲渡承認手続,発行手続と同様の取扱いをするというような基本的な方向性で検討すべきではないかということを確認させていただこうとするものでございます。  (2)は,種類株式の利用が進む中で,種類株主総会の開催が義務づけられる場合の要件の明確化を求める実務的な要望にどのように応え得るかという論点でございます。  商法345条,346条が種類株主総会の開催が必要な場合について規定しているわけですけれども,例えば345条1項について,米印の一つ目のような規定ぶりにすることによって,この345条1項において要求される場合というものの外縁が,ある程度はっきりするのではないかと考えられるわけでございます。米印の一つ目はそのような趣旨でございます。  米印の二つ目は,346条におきまして,定款で一定の定めを設けることによって種類株主総会の決議の省略というものを認め得るかどうかということについての御意見をちょうだいしたいということでございます。もし,これを認め得るということになりますと,種類株主について何らかの保護を図る必要性があるというようにも考えられるところでございまして,買取請求権を付与する等の保護を図るということも検討対象になり得るかどうかということでございます。  また,翻って345条1項のような場合についても同様の取扱いを認め得るかどうか,定款に明示的に定めることによって,種類株主総会の省略を--345条1項の規定ぶりを仮に明確化したとしても,その上で更に--認め得るかどうかという点も論点でございます。  (3)につきましては,かなり技術的な論点で恐縮ですが,強制転換条項付株式について,米印のような見直しをすることの当否についての御意見をちょうだいしたいというふうに思います。  米印の一つ目は,現在は,強制転換条項付株式の転換については,常に222条ノ9第2項において要求されております公告・通知に係る期間の満了を必要とするわけですけれども,定款でその転換時期が明らかに定まっておるということであれば,そのような公告・通知等を要することなく強制転換の効果を認めるということでいかがかということでございます。  米印の二つ目は,強制転換条項付株式の転換条項につきましては,常に定款での定めが要求されておるところでございますけれども,転換予約権付株式と同様に,その条件について,発行の際における総会あるいは取締役会の決議において定め得るという柔軟性を持たせることとしてはいかがかという御提案でございます。  (4)でございますが,現在,種類株式の利用がかなり進んできたことに伴いまして,様々な種類の株式の発行事例が見られるところでございますが,その内容が日々複雑化しておりまして,この種類株式の具体的な内容が登記事項とされておりますが,この登記事項がかなり膨大となっているところでございます。この株式の内容をどのような形で公示すべきかという点について,例えば,登記事項とすることなく,株主名簿への記載をもって開示するというような別途の開示の方法を用意することによって,登記事項については簡素化するということが考えられるかどうか,この点についての御意見をちょうだいしたいと思います。 ● それでは,今説明いただきました第3について,全体について何か御質問ございますか。--よろしゅうございますか。  それでは,一項目ずつ御検討いただきたいと思います。  まず,1についてはいかがでしょうか。 ● 譲渡制限会社における利害の調整方法等についてかなりきめ細かな制度が整ってきたがゆえに,こういう御提案が出るほどになってきたということとは思いますが,米印の2番目の方については,これは全然認めて差し支えないといいますか,大変結構なことではないかと思うのですけれども,米印の1番目のものについて,今はやはり何といっても頭数の要件が入っているがために,株主数がある程度少人数のところでないとこの決議はできないであろうと言われているわけですね。それがなくなるというところまで踏み切っていいものかどうかという懸念がちょっと残るように思うのですが。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。 ● 譲渡制限会社になりますと,特に,現在検討しているガバナンスの問題との関係で,ガバナンスの在り方が,いわば,こういう言葉を使っていいのかどうか分かりませんが,閉鎖会社のルールに入ることになりまして,かなり根本的に違うことになりますので,ある意味で現在以上に差が大きくなるわけで,やはり譲渡制限会社になるというのは相当重い意味を持つということになると思いますので,今,○○委員が御指摘のように,この手続はやはり慎重にした方がいいのではないかと考えております。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。  大体皆さん,今のをあえて変更する必要はないんじゃないかという御意見ですか,大勢は。そう理解してよろしいでしょうか。  それでは,米印の一つ目については,そういう形で否定的な見解が強いというふうに理解させていただきます。  1については,よろしゅうございますか。  それでは,2でありますが,この点,(1),(2)とありますが,どちらでも結構ですが。 ● 是非A案にしていただきたいのですけれども。  そもそもこれは,2年前の議員立法におきまして単元未満株式制度が導入されましたときに,単元未満株式の権利設定はどうなるんだということにおきまして,立法サイドからの御説明は,端株と同様であると,こういうふうに聞いていたわけでありますけれども,いざ法案を見せていただきますと,何だ違うということで,その議員立法につきましてそこの修正を強く要請したのでありますけれども,金庫株制度を導入するということが急がれていたものですから,いったん法律にした後で直ちに直していただくということになっていたと思うものですから,これはA案ということで是非やっていただきたいと思います。  両制度の存続の要否でありますけれども,いずれにしろ一緒ということになりますと必要性は乏しいとは思うのでありますけれども,端株を分割したり単元株を併合したりするときに,これは当然,株券不発行制度の中でやっていくのだろうと思うのですけれども,そういう中においてもなおかつ,株主に対しての通知であるとか,保振機構における何かの書類の作成に伴う費用であるとか,ある会社からしますと,端株制度を単元株に持っていくというようなことを考えてみた場合に,数億円の費用がかかるということも言われているものですから,そのあたり,やはりコストとの兼ね合いだろうと思うものですから,変える場合については,コストがかからないような仕組みがどうなるのか,そのあたり,やはり並行的に考えていただきたいと,こう思います。 ● (2)は,コストとの兼ね合いでかなり技術的な問題かと思いますが,(1)につきましてはいろいろ御意見があるかと思いますが,いかがでしょうか。 ● また質問ですが,この場合,端株というのは,1株未満というふうに思ってよろしいのですか。 ● はい。 ● それで,今,○○委員がおっしゃったのは,単元未満株を1株未満と同じにしてしまうということなんですか。 ● 参考資料12というのが,今日ついておりまして,これに対照表が出ております。今は若干権利内容が違っているのですね。  いかがでしょうか。 ● これは考え方で,激論する問題であるのかないのかは分からないのですが,古い方の学者のおしかりをいただくかも分かりませんけれども,やはり単元未満株というのは,株だけれども少し小さくまとまったのだと。これに対して端株というのは,今,○○委員がおっしゃいましたように1株未満のものを例外的に助ける制度だと,こういう出発点があったと思うのです。そういう出発点からいたしますと,やはり差があってしかるべきだと。特に,単元未満株主の権利をすべて端株主同様に,とりわけ利益配当もだめにしてしまうのだと,定款の定めがあればだめにしてしまうのだと,こういうことは余りにドラスチック過ぎるというふうに思います。とりわけ,小株主を大事にしなければいけないということが言われているときに,単元未満株主の権利をそれなりに守るという姿勢も重要なのではないかと思います。  ただ,同じようなことで実質ほとんど違わない二つの制度があって,それが非常にややこしいということで一本化するということで,例えばどちらかに一本化するというのは一つの態度でしょうけれども,少なくとも二つの制度を残しておく以上,スタートラインの理念はやはり維持することの方が合理性があるのではないかと思います。私は,一本化する方向でどちらに一本化すべきかと言われたときにはまた議論しますが,いろいろなコストでこの二つの制度を残さざるを得ないとするなら,現状をベースに,むしろ単元未満株主をもっと手厚く保護することも考えてしかるべきだと,極端に言えば,思います。 ● 自益権につきましてはこだわるものではございませんので。こだわっておりますのは共益権の問題ですので,申し上げておきます。 ● 私も○○委員の御意見に賛成で,やはり二つの制度は違うところから出発しているわけですから,もしも2本の制度を平行して走らせるのがむだであって一本化するというのであれば,やはりC案のように単元株制度の方に一本化すると。これだったら株主の方からの不満は何もないということかと思います。 ● ○○委員の御意見は,自益権についてはこだわらないと。つまり,自益権は保障して,共益権,株主代表訴訟やなんかですね。だとしたら,私は○○委員の御意見に賛成です。 ● 私は,やはり現在圧倒的に多いのは単元未満株式の方ですから,現状を考えると,これを大きく動かすような立法はやりにくいのではないかというふうに思います。  それから,もともと端株制度というのをつくったのは,株式単位を引き上げていこうということでこれを考えてつくったわけですけれども,それは例の13年改正のときに,基本的にその方向はもうとらないということになったわけですから,そうしますと,実質的に残すべきはいわば単元未満株みたいな制度を残すということになったのではないかと思います。端株に移していくときの正に古いタイプの商法学者の大議論としては,株主の権利がそんな中途半端なものをつくっていいのかということが,あれが大議論だったわけですけれども,そこのことは考えずに,実務のニーズを考えていくのであれば,実質的には単元未満株式というものが残っていくということになるのではないかと思います。  そこで問題になるのは,その単元未満株式の内容として,○○委員のように,代表訴訟等の共益権についてどうするかということですけれども,もともと単元未満株あるいは端株なりの議論をやったときは,小さい単位の株式のコストを引き下げるということだったはずで,そのコストの中心は,株主への通知とか,あるいは場合によっては配当の支払とかそちらの方,特に株主総会への招集通知とかの問題であって,共益権のこと,代表訴訟とかそちらの方は問題になっていなかったわけですから,その趣旨から言うと,そちらの方が残るということはおかしいことではない。単元未満株主の権利保護のために,違法な行為についてのいわばチェックする機能はやはり残ってもいいのではないかと思いますが,理屈としては,私は,やはり現在の単元未満株式の権利内容でいいのではないかと考えております。 ● 私どもは,単位未満株式制度が単元未満株式制度に変わったというときに,自益権の取扱いをどうしようか,共益権の取扱いをどうしようかというのは全く議論がなされていないと思うのですね。特に議員立法でもあったことはございますけれども--まだ2年前,実際に制度が発足したのはおととしの10月1日ですけれども--そのときに,単位未満株式制度と同じような概念で単元未満株式制度を想定していたにもかかわらず,法案を見てみると,共益権等においてはがらっと変わってきた。何十年続いてきた制度を何の説明もなくがらっと変えているということについては非常に不満を持ったわけでありまして,本来,単元株制度というのはぬえ的に出てきた問題であって,やはり単位未満株式制度を長くやってきたわけだから,それを正として,それをなぜ変えなければならないのかというのを,1年半後の今,議論すべきときに来ているのではないかと,こう思うわけです。  それから,零細株主の問題ですけれども,株主管理コストの問題もありますけれども,昔よく議論されたのは,反社会的勢力による,少しのお金でもって株主になって会社をかき回そうとしている,それについての問題もあったと思うものですから,それが株主総会に出て暴れるということと同様に,書類閲覧でございますとか代表訴訟提起権なんかも同じような問題があるものですから,やはり一定の単位を持った者についての共益権であってしかるべきだと,こう思うものですので,よろしく御議論をお願いいたしたいと思います。 ● この点は,当初から予想したことなのですが,非常に意見の対立があるというのが現在の状況だと思います。  (2)につきましては,先ほど来,何人かの学者委員の方から,現在圧倒的に行われているのは単元株制度だという御指摘がありましたが,○○委員がおっしゃったような,コストの問題が解決できれば端株制度というのはなくしてもいいという,そういうニュアンスでしょうか,学者委員の方。  ○○委員はそうですね。コストの問題さえなければ,単元株制度に統一しても,端株制度はなくてもいいんじゃないかという御意見だと理解しましたが,大体,○○委員,○○委員,○○委員等,御発言された方もやはり……。 ● はい,C案であれば一本化でいいんじゃないかというふうに申し上げました。 ● 単元株制度に統一されるのであれば,別に端株制度にこだわるものではない,端株制度がないと困るということはないというふうな御意見だと理解してよろしいでしょうか。 ● 私は,それこそ○○委員が言われたもっと古いところの議論なのかも分かりませんが,争いはしませんが,どちらかに一本化するなら,どちらがいいかはもう一回考える必要もあるだろうとは思っております。ただ,現状,つまり56年以降単位未満株制度があり,それに対する愛着もあって,この単元未満株制度がありましたので,単元未満株制度で一本化するという意見が支配的になるだろうという客観的事実は理解しておりますので,あえてそれに反論するつもりはありませんが,個人的に言えば,そのメリット・デメリットを最終的にもう一回考えたいなとは思っております。 ● 併存自体に異議があるという御意見ではなくて。 ● 一本化した方がいいだろうけれども,今はコストの関係で併存せざるを得ないなら,単元未満株主の権利を現状よりも縮減すべきでないと。これは先ほど主張させていただいたことです。一本化するときには,大勢は単元未満株一本化論だろうけれども,どちらがいいかは,またそのことを集中的に議論する機会を与えていただきたいなと思うということです。 ● では,単元未満株にどういう権利が与えられるかはともかくとして,その権利内容に納得がいけば,とにかく一本化は皆さん特に異論ないと,こういうことでよろしいでしょうかね。  それでは,今日はこれ以上議論しても平行線だと思いますので,この点はこれぐらいにさせていただきます。  次に,「3 基準日」の点でありますが,この点はいかがでしょうか。 ● 一見,技術的にこんなことにしてもいいのではないかと見えそうなのですけれども,一定の日を決めまして,それでもうだれしもがそこで決まった勢力範囲でもって株主総会に臨むというのと違いまして,こういう制度を設けますと,いったん,例えば49対51ぐらいの分布になったと。それで,これじゃいけないということで経営者側の方でいろいろ画策ができると,こういう余地が認められることになる。これは,そんなケースというのは非常にまれではございましょうけれども,やはり不信感を招くような一方的なルールだという印象を与えることによる弊害ということも考えなければならないのではないか。  これに対して,こういう後からふえてきた人も含ませようと思えば,何も基準日の日にちは期末の日にちでなくてはならないわけではなくて,株主総会の直前の日に変えてもよろしいわけですね。どうなんでしょう。そこのところ,踏み切れるかどうかという問題はあるかとは思うのですが。  いずれにしましても,今のような,片方だけが操作できるというような制度にすることによる不公平感を残すような制度をつくってよいのかどうかという点では,やはりちょっと検討する要素があるのかなというふうに思います。 ● 現在は,基準日制度を採用しているときについては解釈がいろいろあるようですが,名簿閉鎖制度をとっているときは,新株発行をしてしまうと議決権はどうも与えているのが実務のようなんですね。だから,現在でもその問題はあるんだと思います。  それから,組織再編の場合は,これはひょっとして基準日後にどうしても株主が出てくる場合があるんじゃないですかね。ちょっと私,実務のことはよく分かりませんが。 ● 臨時株主総会の場合の基準日というのは,期末とは限らないわけですよね。だから,今,○○委員がおっしゃったように,事前に基準日を設定してやるということでも構わないわけですね。 ● 実務的にすぐ考えられるのは,株式交換なり,あるいは合併もそうなんでしょうが,4月1日に,要するに変わり目がいいから4月1日に効力を発生しようとすると,基準日が3月31日だったら,極端に言うと半分近い株主が議決権を行使できないような状況にあると,これを何とかしたいというのが最低限の実務の要請だと思うし,その要請にはこたえなければならない。そういうことでまずこれがあるのかなと思いますので……。米印の二つ目ですか。  それから,合併等の組織再編の問題で,やはりこれはそれなりの対応をする必要があるのかないのか,それから,新株発行の場合には○○委員のおっしゃったような問題があるから,これをどうするかということ,あと,新株予約権とか,これはぼろぼろと出てくるもの。更には3番目のことになりますと,したければ定款で書けばいいのかということになりますが,ちょっと三つに分けて議論する必要があるのかなという気がいたします。  もう一つは,基準日制度は,どうも実務の場合には期末を定時総会の基準日,具体的には利益配当の基準日と同じにするということで,利益配当イコール定時総会の議決権イコール期末と,こういう論理になりましたけれども,委員会等設置会社になりますと,利益配当・利益処分は定時株主総会の決議事項ではありませんので,そのイコールがなくなってしまいますので,期末にしなくてもいいという形ですると,先ほどの組織再編の場合だって,これだけの近代化したあれだったら基準日を4月30日にしたって悪くはないので,提案権とか何かある関係で,それよりも前はちょっと無理だと思いますけれども,そういう対応でも不可能ではなかろうと思いますが,米印の三つにも配慮して,三つぐらいに分けて,実務の需要とそれに対する合理的対処方法を含めて整理していただくと,非常に議論がうまくいくのかなと思いました。 ● 何か○○委員から。 ● 組織再編をしたいというときに,相手方が,4月5月にどうしても早くやりたいと。それで,相手方の方が6月の定時株主総会でもってやはり議決権を行使したいと,株主のためにそういうふうにしたいと相手の会社が言うようなときに,そもそも法律上,基準日を過ぎた後の新株発行になるので議決権がありませんよというふうなことはやはり困るなと,こう思うものですから,譲渡以外の事由でもって新しく株主になったという者の議決権をどうするかは,法律に事細かく書くと非常に難しいですから,認められるかどうかですけれども,定款で取締役会に取扱いを一任することができるというふうにしていただいて,もう各社が取締役会で自由に判断すればどうかと。その取締役会での判断がおかしいというのであれば,争えばいいのですけれども。ないしは,定款で授権をするときに,そういう包括的な授権であればむりだと株主が言えば,それは認められないわけでありますから,事細かく定款に書けと言う株主もいるかもしれませんし,いや,そういう場合の取扱いについてはもう取締役会に任せてもいいと,取締役会規定,株式取扱規則ですかね,そこに定めてもいいというふうに株主がおっしゃっていただけるのであれば,それでもいいのではないか。定款による取締役会への授権というのはいかがなものか,御検討願えないかと言いつつ,余りにも株主の議決権にかかわる問題について,幾ら株主総会の特別決議だとはいえ,取締役会に包括授権をするということについて問題があるのも承知しているのですけれども,まあ,解決はこの程度じゃないかと,こう思うものですから。 ● かつて時価発行増資が非常に盛んに行われたときには,4月1日とか3月31日の基準日以後,5月ごろに増資の効力が発生するということがありまして,それの議決権がどうなるかというのが非常に問題になりまして,実際には,定款の基準日と,それから臨時総会のときに任意に定める基準日と,その両方を実は採用しないで,事実上証券会社が買取引受けしますから,その増資の効力発生の日に株主であった者に議決権を行使させますという基準日公告を事実上いたしまして,それでその証券会社が議決権行使をすると,そういう形で事実上の基準日を基準日公告で決めたという扱いをしたことがかなりあったと思います。  ですから,そういう意味では,今,○○委員がおっしゃったように,合理的な基準日が定められるような新株の発行事由,そういうものにある程度限定して,米印の二つ目に書いてあるような,基準日公告でそういうものについて基準日を定められるという方法をとることができれば,基準日以後の,3月31日以後の株主について,合理的な範囲で議決権を行使させるということが可能な制度になるだろうという気持ちがいたします。  それに対して,個々の新株予約権とか,あるいは新株予約権付社債とか,そういうものの行使については,基準日を設定するといってもなかなか難しかろうという気持ちがしますので,そういう意味で,米印の二つ目の「事由を明示して」という方法が,企業にとっては非常に合理性があるかなという感じがいたします。 ● ちょっと定款の定め方がどこまで認められるか……。 ● この問題は,前から解釈で議論があって,解釈の中ではむしろ,こういったことが可能だという解釈も有力だったのが,たしかちょっと前に法務省の方が,できないという解釈を出されたという話も聞いたのですが,そうではないんでしょうか。 ● 名簿閉鎖の場合と,基準日の場合と,いろいろありまして。 ● それはそうなんですけれども。  私は,この問題に関しては,むしろフレキシブルに考えていいのではないかと思っているわけです。  そもそも,224条ノ3の基準日の制度というのは,会社側が基準日の制度を決めることができて,会社が実務のいわば便宜を考えて決め得るように現行法もなっているわけですね。○○委員の話にもありましたけれども,株主平等原則を守るという枠はあると思うのですけれども,その中で実務的にやりやすいように,そもそも基準日自体をフレキシブルに定めるということもあり得ると思いますし,ですから--大体,基準日を3月末日なり4月1日にするということ自体,これは単に実務がそうやっているというだけのことでして,法律自体は,会社がいつに定めるということは別に何も要求していなくて,会社の方で決めることができるわけですから。確かに○○委員がおっしゃるように,作為的に会社がそういう決め方をするという,これは許されないと思うのですけれども,正に先ほどの株主平等原則とか,あるいはそういった作為的な面がなくて,合理的な理由で,基準日のいろいろな処理をかなりフレキシブルに,会社の方で決めるということもあっていいようにも思います。ですから,そもそも定款でなくて,取締役会の決議でそういうことをあらかじめ決めてやるということもあり得ると思いますし,実質論から言って,もう本当に株主になっているのであれば,会社の方から認めて権利行使させてやるということは,先ほどの株主名簿の最高裁の考え方なんかですと,会社の方からは認めることができるという考えをとっているわけで,差別的に扱ってはいけませんけれども,平等に扱った上で,すべて同じ立場の株主については同じように,例えば新株発行が後であった場合についても議決権を行使できるようにするということはあってもいいんじゃないかなというふうに考えているのです。 ● 今の○○委員のお話ですと,議決権だけではなく,配当金もいいということですね。 ● そういうことです。 ● まあ,この場の議論は,かなりフレキシブルなあれでよいのではないかという御意見が有力ですが,何か法務省が制限的に考えたんじゃないかという御指摘もありましたけれども,その点は後で調査いただくとして,大体ここではかなりフレキシブルな解決を認め得るのではないかという御意見が大勢であったということでよろしいでしょうか。 ● 余りフレキシブルじゃない方がいいと思うのです。株主権の行使ですから,できるだけ広い範囲の株主が議決権を行使し得るようにすべきだと思うのですが,事務コストというのも大きくて,これも株主権を侵害いたしますので,その辺の兼ね合いだと思うのですね。ただし,経営者側が恣意的に基準日を勝手に動かしていいんだということになると,それは少しまずいかなということですので,事務的な手続を考えた上で,最大限,議決権の行使ができるようにするというような思想のもとに組み立てていただくのがいいのではないかと思いました。 ● 今の御意見と基本的に同じなのかと思いますけれども,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,3月末が期末の会社の場合,通常の株主は,3月31日の株主構成で3か月後の定時総会で議決権を行使できるんだと思っているわけですね。それを恣意的に,株主の知らない間に5月ごろにいろいろと変わると問題なので,今まで,昭和40年から50年ぐらいの実務も,3月中に例えば新株発行なら新株発行を考えて,その効力発生日が4月の後半から5月初めのときに,議決権を与えようかどうしようかの話で,やはりその意味で,例えば組織再編,先ほどの三つに分けていただきたいというのはそういう趣旨で,組織再編なんかについても,2月の臨時株主総会で組織再編が決まったときの効力発生が4月とか5月1日になると。その場合の新株主は議決権を行使することができるし,そして組織再編の場合の原則形態は特別決議ですから,それである程度処理,何の問題もないという形になるだろうし,新株発行でも,そういう形でやっておれば,そういう条件で新株発行いたしますということを基準日以前に公告しておれば,それで結局基準日の公告をやったと同じようになりますから,そういう形で,少なくとも基準日以前にある程度の議決権の変更が分かる場合に認めるのはいいけれども,それ以外の場合にはやはりいろいろ問題なのかなというようなことも含めて論点を整理していただければ幸いです。 ● いろいろ御意見をいただきましたので,それでは,この点はなお第二読会に向けて事務局で検討していただきたいと思います。皆さんの方からも,こういう形でという御意見がありましたら,是非,事務局の方に御連絡ください。  4についてはいかがでしょうか。  まず,(1),この点はよろしゅうございますか。 ● 当該種類株式の譲渡承認の手続及びその発行手続だけについて,例えば譲渡制限があるのだから株主割当増資が中止になりますよ,それ以外の種類の株式についてはもう第三者割当てで自由にやってよろしいよというふうに扱うとしますと,議決権全体がどうなるのかということが問題であるときに,そういう処理まで認めてしまうということに踏み切っていいのかという問題は残るように思うのですが。つまり,米印の仮に認める場合の扱いなのですけれども,当該種類株式の譲渡承認の手続はよろしいとしまして,発行手続,ここだけについて譲渡制限会社のルールに従うとすることの問題点というのはないのでしょうかということです。  逆に言いますと,この一部の種類の株式についての譲渡制限の定めというのは,譲渡制限はかかっているとしながら,この種類については当然に取締役会は承認するということを取締役会規則で定めて済んでしまう程度の,そういう需要なのではないかということでもあるわけですが。 ● 何かありますか。 ● 今のような場合における,当該種類株式以外の株式の発行に係る当該種類株式の株主の権利保護として,拒否権の付与というような取扱いで足りるのか,あるいは,それを越えた何らかの予防的な措置が必要なのかということもあわせて検討していただきたいと思います。 ● ほかに何か御意見ございますか。 ● この言っていることの確認なのですが,このような定めをした譲渡制限会社ではない株式会社というのは,譲渡制限会社ではないということで,例えば取締役会の設置強制がかかるか,かからないかとか,会社区分の問題についてどう扱われることになるのか,ちょっとそれを確認させていただきたいのですが。ちょっと私,誤解しているかもしれません。 ● それは,例の定款自治が機関構成について非常に自由に認められるのは,すべての株式について譲渡制限がかかっている場合だと理解しています。 ● では,この場合は取締役会の設置強制なんかがかかるという前提ですね。 ● そのような趣旨でございます。 ● では,これは,○○委員御指摘の点はなお検討させていただくことにしまして,次に,(2)についてはいかがでしょうか。  米印のようにするのはどうかと。これで明確化されないかというのは,米印の一つ目はそうですね。それから,米印の二つ目は,現在は種類株主総会はいわば当然に拒否権も一定の事項については持っているという形なのですが,それについて定款で別段の定めを認めることはできないかと,こういうことだと思います。 ● 米印の二つ目に関係するのですけれども,いずれにいたしましても,種類株式を使い出しますと,その後の事態の変更によってなかなか難しい問題が生じ得る。その際に,やはり株式買取請求権的な保護が一応は最低限の保障としてあれば,このような解決の方向というものも考えていいのではないかという,そういう相対関係になるのではないかと思うのです。大きな会社などがしっかりとしたジョイントベンチャー契約を結んだりとか,そういう中でこの種類株式を使いこなすとかいうような話の場合は,皆さん,手落ちなくなさるでしょうけれども,一般的に種類株式の利用を小さな会社に至るまでみんな広く認めて,大いに使ってくださいというようなことを言いながら,最後のどうにもならなくなったときの手当てというのが法律上ちょっと薄い点を大変懸念しているわけです。したがいまして,最低限,株式買取のような,あるいは条件付きといいますか,やむを得ない事情があるときというようなことであっても,出口だけは確保した上で,少しは動きやすい制度の方向へ切りかえていくということも認めるという姿勢がよいのではないかというふうに思います。 ● ○○委員は,米印の二つ目の最後の文章はいかがですか。345条1項の方についても認めるのかと。つまり,346条の方は,合併等についての拒否権までは与える必要はないんじゃないかということですよね。 ● 私は,ここら辺になってくるとちょっと苦しいのですけれども,いずれにしても,買取請求権が割合にしっかりしたものであれば,発言権の方は少し薄くなってもよいという,そういうバランスの中でやはり考えていくべき問題ではないかという,まあ一般論で,最後の文章にまでなりますと,ちょっとやはり慎重になる話じゃないかと思います。 ● ほかに。 ● 定款というとき,これは原始定款だけでなくて,定款変更でこういうふうにしてもよいということなんでしょうか。そうだとすると,ちょっと私も,○○委員がおっしゃったような,特に345条1項に関しては,強い懸念を感じる次第であります。 ● これは発行時の定款ということなんじゃないですかね。 ● そうでないとおかしいと思うんですけれどね。 ● 当該種類株式を発行するときの定款なんじゃないかと思いますがね。 ● この書き方だけではそれは出ていませんので。 ● しかし,それ自身定款変更なんですよね。発行時の定款を変更するということになると。 ● それはそうですね。ただ,そういう形の,将来のルールの決め方をまたそれで変えてしまうことの重さということはあると思いますね。 ● どうも御注意ありがとうございます。  では,どこまでかは別にして,そういう手当てができれば,ある程度の,現在のような完全な拒否権というものは緩和しても一応はいいというお考えでしょうか。○○委員は。 ● 今よりは柔軟化はあり得るとは思いますけれども。 ● 今の点なのですけれども,発行時の定款という理解のもとに,この米印どおりの改正をお願いできれば,特にベンチャーの関連からは非常に実務上の問題点になってきたことでございますので,買取請求権を認めるということで,この方向で行っていただければ大変有り難いと存じます。 ● ほかに何か御意見ございますか。--よろしいですか。  それでは,(3)はいかがでしょうか。これは,現行法でも認められるんだという解釈はあるようですけれども,一応はっきりさせるということだと思いますが,これは特に御異論ありませんでしょうか。 ● 教えていただきたいのですが,どういうケースにこれが必要になるのですか。公告・通知等の期間の満了を待たずに。 ● 現在,条文上は,常にそういう,例えば取締役会が強制転換を決定したときには公告・通知をして,その1か月以上たって初めて効力が発生すると。しかし,これは最初から定款に定めておけば,もう取締役会が決定した日に転換されると。 ● 公告・通知をしておいて,その期間を待たずにということではなくて……。 ● 効果発生時が前にできるようにする。 ● 公告・通知自体を行わないということなんですね。初めに定款に書いてあって。 ● そうですね。 ● ですよね。そうじゃなかったら詐欺みたいですものね。  分かりました。ありがとうございます。 ● ちょっと教えていただきたいのですけれども,これは,株券不発行の問題なども出てきた場合には株券提出をしていただく必要もなくなるわけだし,ということも含めての御提案ということになるわけですか。 ● 必ずしもそうでもないようなんですけれども。現在は,これはいいという通達が出た……。 ● 現在は,確定的に定めている場合は強制転換条項付株式というのではなくて,法改正前の解除条件付の種類株みたいなものとしていまだ発行され続けているものがありまして,そういうものであればこの強制転換の手続に乗らずに,解除条件でほかの種類の株式に転換するというか,移り変わるというか,そういう取扱いが行われています。 ● 株券の交換は必要ないのですか。 ● 株券の交換は,従来からずっとそこは何も書いていないので,どうされているんですかねというところなのですが,多分,実際上は交換しているんだと思いますけれども。 ● 発行後5年でぱっと普通株になってしまうとか,そういうのは現にあるわけですね。 ● ここは,公告・通知の期間が要求されているのは,確かに株券転換の話はあるのですが,もともとの定めが,取締役会決議で日を定めるという仕組みにもなっているものですから,そうするとある程度お知らせをしないといけないでしょうという配慮がある期間設計でもありますので,そういう必要性のおよそないもの,定款の定めがあらかじめ決まっているようなものについてはこの手の手続をとらなくてもいいのではないかと。  別途,株券が出ていない場合にこの期間をどうするかという問題は,また別の問題として検討されていると承知しております。 ● 逆に,株券がある場合に,こういうことをさっさと認めてしまって,株券交換手続というものをかませなくて混乱は生じないでしょうかという心配なんですけれども。 ● 確かに,上場されているようなものについては混乱はあるのではないかという気はするのですが,現に出てしまっているのですね。つまり,強制転換条項というのがないときに出てしまったのがあるわけですよね。  よろしゅうございますか。どうも既にこういう現状があるようですので。  (4)はいかがでしょうか。 ● 別途の開示の方法いかんではないかと思うのです。これがきちんとしていれば,これで差し支えないのではないかと思うのですけれども,今まで登記事項であったものが,株主名簿への記載ということになりますと,相当アクセスの容易さという点で違いが生じるのでないか,そこら辺が心配でございます。 ● この点につきましてはもう少し慎重に御検討いただけないだろうかということで,むしろ取引関係諸般,それから,これから投資しようというような投資家にとって,こういった情報が,どういう株式が出ているのかというのが簡単に情報にアクセスできないということは取引を阻害する危険があると存じますので,ちょっとこの御提案には,はっきり言えば反対ということであります。 ● これは何かどうも,登記事項を減らしたいというのは,登記申請が電子的になされるのであれば,もう全然問題ないのだそうですけれども。ですから,種類株を出す場合には,もう登記申請はそうしろという,そういうのになってしまえば,こういう登記を作ることに何ら事務的な煩瑣さはないようなのですけれども。  確かに,おっしゃるように,登記ではこの情報が分からないというのは問題があるかもしれないですね。  そういう御意見がありますので,なおこれは検討していただきたいと思います。  それでは,一通り御議論いただきまして,どうも時間が超過いたしまして申し訳ありませんでしたが,大体今回は少なくとも御意見の開陳は十分していただいたのではないかと思います。  それでは,事務局から連絡事項がございます。 ● 次回は,5月14日,水曜日,法曹会館高砂の間で午後1時から開催したいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● それでは,本日の部会は閉会させていただきます。本日は熱心な御議論をいただきまして,どうもありがとうございました。