法制審議会会社法(現代化関係)部会第5回会議 議事録 第1 日 時  平成15年5月14日(水)  自 午後1時00分                        至 午後5時20分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題    会社法の現代化に関する改正検討課題(3)について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 ● まだお見えになっていない委員・幹事の方がおられますが,予定した時刻が参りましたので,第5回会社法(現代化関係)部会を開会することにいたしたいと存じます。  本日は御多忙の中を御出席いただきましてありがとうございます。また,本日から時間が変わりまして,従来より1時間長く御審議いただけますので,よろしくお願いいたします。  それでは,まず配布資料につきまして,事務局から説明をしていただきます。 ● 本日の配布資料は,事前にお配りいたしました部会資料5「会社法の現代化に関する改正検討課題(3)」というもののみでございます。本日は,これにつきまして御審議をちょうだいできれば幸いでございます。 ● 何か配布資料につきまして御質問ございますでしょうか。--よろしゅうございますか。  それでは,本日の審議に入りたいと思いますが,この部会資料5は,大きく分けますと「第1 計算関係」,「第2 社債」,「第3 外国会社等」に分かれておりますが,「第1 計算関係」につきましては,1,2,3と大きく三つに分かれますので,一つ一つについて説明を事務局からしていただいて,それについて審議し,次に移るということがよいのではないかと思いますので,そのようなやり方でよろしいでしょうか。  それでは,まず,「第1 計算関係」の「1 資本金・準備金」の部分について説明をお願いいたします。 ● それでは,第1の「計算関係」のうちの「1 資本金・準備金」に関する項目につきまして御説明いたします。(1)から(5)までありますが,一括して御説明いたします。  まず,(1)の「新株の発行の場合の資本金の積立て」に関する見直し点の存否でございます。  株式を有償で発行する場合のうち,設立又は新株発行の際の資本金の積立てにつきましては,商法168条ノ2,284条ノ2等で当該株式の発行価額を基準とする旨が定められているところでございます。他方におきまして,この発行価額とは別に,それを上回る形で現実の引受価額が決められて,発行価額と実際に払い込まれるべき額との間に乖離が見られるという扱いが実務上されているようでございます。この場合に,文字どおり発行価額を基準に資本金の積立てを考えるべきなのか,あるいは実際に払い込まれるべき額--これは発行価額を上回る額であることが前提になっていると理解してよろしいかと思いますけれども--この払い込まれるべき額を基準として資本金の積立てを考えるべきなのか,という点について見直しの必要があるかどうかの御議論をちょうだいできればと思います。  それから,米印の二つ目でございますけれども,現代化の検討に当たりまして,制度間調整というものをどの程度考えるべきかという観点から問題となる点は,この資本金の積立てに関する商法における様々な場面での規律の違いでございます。ここでは,歴史的経緯も踏まえまして,新株の発行の場合の積立基準と合併等の場合の積立基準とについて,その平仄が合っていないとすれば,合っていないということを前提にいたしまして,現行制度について殊更変更を加えないということでよろしいかということの確認をさせていただこうとするものでございます。  それから,米印の3番目は,株式会社と有限会社との規律の一体化を図ることとした場合に,有限会社における出資一口の金額の制度を廃止するかどうかという点について前回御議論いただいたと思いますけれども,その場合におきまして,現行の有限会社に相当する会社における資本の積立基準というものを現在の株式会社と同様に考えてよろしいかどうかという点についてでございます。これは,仮に現行の有限会社に照らしてみますと,出資一口の金額そのもので増資をするという場合には,現行ですとその出資一口の金額そのものがすべて資本に組み入れられるということになっているわけですけれども,株式会社と同様ということになりますと,従前の出資一口の金額に相当する額の払込みがされたという場合にも,その2分の1までを資本に積み立てれば足りるということになるわけでございます。他方,プレミアムつきで増資がされるという場合には,従前ですと出資一口の金額までの積立てで足りたというところが,プレミアムも含めてその2分の1が積み立てられるべき金額となるという違いをもたらすことになりますので,実務上の観点からこの辺りについての御意見があれば,お聞かせいただきたいと思います。  (2)は,「自己株式の処分の場合の取扱い」でございます。  自己株式の処分差益につきまして,現行法のもとではこれを配当財源から除外する手当てが格別講じられていないということについては様々な御批判もあるところでございます。現代化に当たって,この自己株式の処分差益について,例えば資本準備金と同様の取扱いをするということが可能かどうか--資本準備金と同様の取扱いといいますのは,米印の一つ目に書いてありますような,資本の欠損のてん補には使用することができ,債権者保護手続を経なければ配当財源とすることができないということを原則とするという形での取扱いですが--そのような取扱いに変更すべきかどうかという点が,米印の一つ目でございます。  米印の二つ目についてですが,この自己株式の処分差益が正に差額を問題にすることから,処分差益が計上された後に処分差損が生じたという場合に,その処分差損については差益から差し引くなり,何らかの形で簡便に資本の部から控除する方法を認めるべきではないかというのが,ここでの問題意識でございます。差損について債権者保護手続を経ずに差益相当分から減ずるということになりますと,資本準備金と全く同様の扱いではないということになりますけれども,この点についての御意見をちょうだいしたいと思います。  なお,米印の三つ目についてですが,仮に自己株式の処分差益について配当拘束をかけないという現行の行き方を維持するとした場合には,配当拘束をかけるという方法以外での何らかの弊害防止措置を講ずる必要があるかどうかという点について,例えばここに掲げられているような御指摘もあるところですので,御意見をちょうだいしたいと思います。  引き続きまして(3)の説明に移らせていただきます。  組織再編の際の資本金の積立てに関しましては,現在,株式交換・株式移転の場合の積立基準につきまして,それぞれ商法357条,367条で所要の規律が設けられているわけでございますけれども,それらの規律においては,完全親会社となる会社の資本金の積立基準に関して,完全子会社となる会社の純資産額が基準とされる旨規定されているところでございます。会計の考え方との平仄を合わせようといたしますと,完全親会社となる会社が受け入れるべき純資産額を基準とすることがより適切ではないかと思われるところでございますので,ここでは,完全親会社となる会社が取得する株式の価額,すなわち,完全親会社となる会社の方で実際に受け入れるべき純資産の額を基準として,当該会社における資本金の積立基準等を定めることとすることについて,御意見をちょうだいしたいと思います。  それから,(4)でございます。  準備金についてですが,会計の在り方の変更等に備え,準備金として積み立てるべきものについて法律での限定列挙にとどめず,一部を省令委任とすることとして機動的な対応を可能にすることはいかがかということでございます。(4)の米印の1番目はその趣旨でございます。  (4)の米印の2番目についてですが,現行法のもとでは,利益準備金と資本準備金について,積立ての契機についてはもちろん差がありますし,実際の経済的な意味についても,払込みがされた資本であるのか,会社の経営によって得られた利益であるのかという違いがありますが,その処分の順序,方法,使途については格別差異がないことから,少なくとも商法上これを別の科目として区分しておくべき実質がなく,このような利益準備金という科目を廃止することとしてはどうかということでございます。もとより,現在,利益準備金として積むべき場合について積まなくともよいとする趣旨の提案を含むものではございませんが,従前の資本準備金及び利益準備金について,どのような経緯で積まれたものであっても,いずれも法定の準備金,一つの準備金として計上するということでいかがかという趣旨でございます。  それから,(5)は「資本金・準備金の減少手続」でございます。株主総会の決議を要するというのが原則でございますけれども,例えば①,②のような場合には株主総会の決議を省略することを認めてもよいのではないかという意見を紹介するものでございます。  ①は,前回御議論いただきましたとおり,組織再編時において一定の場合に株主総会の決議を省略し得る余地を認めるとした場合に,それにあわせて,本来増加すべき資本金等の額を減ずるという場合においても,あわせて株主総会の決議を省略することとしてよいかどうかという点についてでございます。  ②でございますけれども,取締役会限りで損失処理をすることができる会社--この会社の範囲についてはまた御議論をちょうだいすることになると思いますけれども--このような会社が期中において欠損てん補のために準備金を取り崩すというような場合には,殊更株主総会の決議を要しないものとしてよいのではないかという意見を御紹介するものでございます。  第1の1につきまして,御説明は以上でございます。 ● それでは,今,御説明いただきました「1 資本金・準備金」の部分について,まず,何か御質問等ありましたら,どうぞお願いいたします。--特に御質問はございませんか。  それでは,各項目につきまして,順次御意見をいただければと思います。  まず,「(1) 新株発行の場合の資本金の積立て」に関する部分ですが,これにつきましてはいかがでしょうか。米印が三つありますが,全体を通じてでも結構です。 ● 米印三つにつきまして,いずれも賛成でございます。  特に,発行価額と払込金額というのは,これは実務でもよくもめるのですけれども,発行価額の2分の1を資本に入れて,それで,支払金額,払込価額が発行価額より多い場合においても,発行価額の2分の1だけを資本に入れて,あとは資本準備金にするということになると,払込価額からすると半分が資本金には入っていないという状況になっていて,それでも適法であるというふうになされていると思うのですけれども,やはり考え方からするとおかしいだろうと思いまして,当社の場合,あるケースの場合において,発行価額云々ではなくて,払込価額でもって実務を実施したケースがあるわけでございますけれども,2分の1を資本金にという建前からすると,やはり払込価額とすべきではないかというふうに思うものであります。 ● よろしければ,ほかの点につきましても。米印の2番目,3番目につきましても。 ● いずれにもにも賛成だということでございます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 私も,米印の最初と三つ目は賛成でございます。  最初の米印については,○○委員御指摘のような問題があって,このように払込金額に改めた方が明確になると思いますので,この点は賛成です。  2番目の点が若干引っかかるところがありまして,結果的にはこうせざるを得ないかなとも思うのですけれども,最近,合併が一種の減資の手段として使われている嫌いがありまして,わざと小さい会社に吸収合併される形を使って,今までの自分の会社の資本を大幅に減らしてしまうということがかなり行われている。非常に有名な銀行などがそういうことをやったわけですけれども。そうしますと,両方の間に違いがあるのは妥当かという気もしますし,一方で,本当は建前から言うと,私は,むしろ合併を現物出資に近く見て,2分の1まで資本をふやすのが本筋ではないかという気もしているのですけれども,それをおくにしても,現在,合併がそういう手段に使われている点に若干危ぐを持っておりまして,少なくとも,現在,債権者保護手続が減資と合併で違っている点などは今後見直してほしいというふうに思っております。  ただ,2番目のところを,2分の1まで資本を積み立てるようにということは実務に非常に大きい影響を与えて,多分強い反対が出るでしょうから,変更するのは現実には難しいと思いますけれども,そういう問題はあると考えております。 ● 私もこの三つでよろしいかと思うのですが,今,○○委員がおっしゃったこととの関連ですが,平成9年までは合併の債権者保護手続は減資の債権者保護手続と全く一緒でしたから,要するに通常の合併と減資を一緒にやったらいいのだから事実上いかにでもできると,こういう解釈だったのですが,平成9年以降,実質的に減資になるような場合についてはやはり100条の債権者保護が要るのか要らんのかとか,そこら辺の解釈論もありますので,そこの整理は必要だろうと思いますが,前回でしたか,債権者保護手続についても簡便なという言い方がいいのか,合理化されるようですので,そういう点を整理されたらこれでよろしいかなと思いますが,現行法をベースにすると少し整理は必要かなと思います。 ● 二つ目の点なのですけれども,今,合併に関する会計基準が大詰めになってきていると思うのですけれども,やはり企業結合会計ということで,これは今ちょっと○○委員がおっしゃった,小さい方が大きい方を合併するということはできなくなる方向だというふうに思うのです。大きい方が小さい方を,つまり強い方が弱い方を合併する,そういう仕分けにされていくのではないかと。すると,その場合には今のこの規定がどうなるかということはやはり検討の中に入れておいた方がいいのではないかというふうに思いますので,必ずしも現行だけで維持できるかどうかということについては若干疑問があるかなと思っていますけれども。 ● ほかに御意見ございませんでしょうか。  それでは,1番目の米印と3番目の米印については,皆さん御異論がないと。それから,2番目につきましても,今後いろいろ制度の変更はあり得るが,現行制度をどうするかということについてこう改正すべきだという積極的な強い御議論も今のところはないという,そういったことでしょうか。  確かに,合併等の場合についても2分の1規制というのがかかるのかという解釈論が昔はあったのですが,これにつきましては,もしそれだとすると,留保利益が非常に大きい場合などには問題も出てきてということで,そういう解釈はとらないというのが一般のあれだったと思うのですが,ところが,額面もなくなってしまいましたので,非常に極端な状況が現在は生じているということなのですが,まあ,一応現在のところ現行制度を維持するしかないといいますか,今後周辺の制度が変わるかもしれませんが,これ自体については現在のところは維持するということでよろしいでしょうか。  それでは,そういうことで,(2)に進ませていただきたいと思いますが,「(2) 自己株式処分の場合の取扱い」,これにつきましても,どうぞ御自由に御意見をお願いしたいと思いますが。 ● (2)の本文でございますけれども,「……であるとの意見があるが,どうか」ということでございますけれども,どういう理由かということ。恐らく○○幹事が説明されたのか,私が理解できなかったのかもしれませんけれども,どうしてなのかなと理解に苦しむところでございまして,これは現在の制度のとおりにしておいてほしいと。そもそも自己株式の取得に当たっては,利益でやるか,減資差益を使う場合においても債権者保護手続を済ましているわけでございますので,それを処分したときの差益をどう使うかということにつきましては,今と同様に,資本準備金扱いにするのではなくて,債権者保護手続にすることなく,支払うことができるという現行制度を維持していただきたいと思います。  といたしますと,二つ目の米印は関係なくなるわけでございますけれども,最後の米印につきましては,今,現物出資類似だということでこういう御意見になるのでしょうけれども,規制が強化されてしまうなあ,困るなあという印象ではありますけれども,そもそも現物出資規制について規制緩和がなされることとの兼ね合いでまた議論をしていただければと,そう思います。 ● ほかの委員の方,どうぞ。 ● 今,○○委員の最後に触れられました三つ目の米印の部分なのですけれども,これは,現行法を眺めましたときに,解釈論としてもやはり何か,現物出資規制がカバーされると解した方がいいくらいにおかしな部分になっているというふうに思うのですけれども。したがいまして,何らかの措置を講じるということは望ましいことだと考えるのですが,その最初の部分に「仮に,現行制度を維持する場合には」と書いてある部分がどういう趣旨なのか,ちょっとよく分かりません。上に御提案になられているような改正をしない場合にはという趣旨なのでしょうか。 ● そういうことだと思いますね。資本準備金扱いをしないで,現在はその他資本剰余金として直接配当できるわけですね。そういう形を維持する場合はということだと思います。 ● 資本準備金にしないのであればこれでよろしいのでしょうかという今度疑問にもなるのですけれども。つまり,上の改正をする,しないにかかわらず,ここはやはり手当てをした方がよろしいのではないでしょうかという疑問なのですが。 ● 現在は,自己株式を処分したときについて,現物を対価とした場合でも,あの条文は,争いはありますが,現物出資類似の手続はないという解釈がとられているのではないかと思うのですが。 ● しかし,条文を見るとそのように見えるわけですけれども,それは大変おかしなことなので,これはかかると解した方がむしろいいぐらいなのではないかと思っているほどなのです。 ● 解釈論としてかかるという,そう考えておられると。 ● でさえおかしいので,穴を埋めた方がいいと思うぐらいですから,上の改正をしようがしまいが,次の改正ではここを手当てした方がよろしいのではないでしょうかということです。 ● 御趣旨は分かりました。  ほかの委員の方,いかがでしょうか。 ● 今の点もありますが,順次意見を申し上げます。  最初の米印ですが,私は,ここに書いてあるように資本準備金と同様の扱いをする方が筋論ではないかと思います。会計的には○○委員に教えていただきたいと思いますが,こういう自己株式の処分というのは,処分差益,処分差損はその他資本剰余金の項目で扱う性格のものと理解できますし,もともとこの自己株式の制度について金庫株の改正をやったときの考え方は,取得した自己株を処分するというのは基本的には新株発行とパラレルに考えるということでありますから,その考え方から言えば,この(2)の本文に書いてある考え方,資本準備金と同様の扱いにするというのが本来の考え方ではないかと思います。  また,実質的に考えましても,自己株式の売買によって利益を上げて,それを利益として計上し,配当等に使いたいというインセンティブを与えないということが本来望ましいのではないか。それによってインサイダー取引等の誘引を与えないと。もともと自己株式取得を認めた趣旨は,余剰資金の返却を簡易な方法でやるということだったわけでありまして,会社が自己株式の売買をやってなるべく利益を上げようということを考えていたものではないと思いますので,そういう趣旨から言っても,この本文に書いてあるような考え方をとるのが筋かなという気がいたします。  ただ,その場合,二つ目の米印については,実務的な観点からこういう考慮はあるのかもしれないという気がします。  三つ目の米印でありますけれども,ここは,○○委員は解釈論としても現物出資規制があるべきではないかという考え方も示されて……。たしかこれは,この法改正をやったときの民事局参事官室の解説は,自己株式を処分するときにはその対価は金銭に限られると解されるような解説を書いていらっしゃいました。○○さん以下3名の方の連名の解説を見ますと。私も,現物出資規制がないのはおかしいということをドラフティングの過程で申し上げたところ,○○さんからのこれは金銭しか対価とできないのだという説明で納得したという経緯がございまして,それを考えると,今更こういうことをやるのは,非常に裏切られたという感じもするのですけれども。せめて,部会長の教科書ですとか○○幹事の論文なんかで,解釈論としてはそうは言っても,金銭しか対価にできないというのは難しいという御指摘がありますので,そういうことを考えて,そういうことも認めるのでしたら,せめて,正に○○委員が御指摘になったように,現行制度を維持する,維持しないにかかわらず,適正な対価を確保する措置を講ずるのは当然ではないかというふうに思っております。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● 私は,今,○○委員がおっしゃったことに全く論理的には同感です。もう間違いなく自己株式というのは資本の一部を構成するものだと思います。  ただ,私の実務で見ていると,結構自己株式の売買というのはあり得るので,細かい金額でもあり得るので,実務的に煩雑さがどうかということについて,損益一緒に扱ってしまっていいのではないかというふうな考え方がなくはないということで,そういう延長から行くと,資本準備金ではなくてもいいのかなということを実務的には考えられなくもないという程度で,本質的にはやはり資本準備金と同様の扱いというふうに考えるべきだと思います。 ● ○○委員,○○委員の御意見は,この最後の米印は,現行制度を維持しようとしまいと現物出資と同じ規制をかけるべきだと,こういう御意見ですね。分かりました。 ● それこそ私も論理的にはそのとおりだと思うのですが,そういう形でいろいろとこういう現行の,13年の自己株式改正をもう少し理論的に合理的なものにしようという形で詰めていくと,前回か前々回かにも申したかと思いますが,要するに金庫株って何なんだと。あるいは,金庫株の処分と新株発行は,まあ一部準用しているけれども,今のところ,その三つ目の米印も問題もありますように,いわゆる資本充実についての規制はないのだと。何でないのかがよく分からない,やはり入れるべきだというのが,この三つ目の米印の一つの主要な論点だと思うので,こういう細かなこと,という言い方をすると失礼ですが,細々と整理するよりは,ばさっと金庫株制度をやめてしまって,消却するということをベースに,ただ,それについては,例えば株券の印刷費用だとか,それに基づくいろいろなものとか,そういう別のコストの問題があるかも分かりませんから,すべてしろというわけではないですけれども,消却と一緒にするような形にして,金庫株を残すことについて合理的な理由があるかどうかというのを少し精査した方がいいような……,純理論的には,消却してしまって,あとは新株発行ですとした方がいいと思うのですが。税金,それから印刷費用その他もろもろのコストを考えて金庫株を残すとしても,何か統一的にきちっと説明する論理を考えていただけたらという気がするのですが。過激なことをして申し訳ありませんが,一言だけ。固執するつもりは毛頭ありませんが。 ● 私も今の○○委員の意見に賛成でして,本当にここがなぜ違いがあるのか,そしてその違いはどの程度適切なものであり,どの程度もう少し近づけなければいけないものなのか,あるいは,もう一本化して全体として動きやすいものを一つ考えればいいのかというあたり,しっかり検討してみる必要があるのではないかという気がいたします。何しろ,やはりこのあたりは,授権株式制度の問題であるとか,資本金への組入れの問題であるとか,随分難しい問題も絡んでくる話だというふうに思うのですけれども,もう少し整理されないと,本当に学生に教えるときなんかでも大変苦労するというのが実感です。 ● まあ,これは非常に大きく意見が分かれておりますが,ある程度予想できる意見の分裂なのですが。  ほかに何か御発言ありますでしょうか。 ● いわゆる金庫株の廃止ということは,実現可能性を抜きにすれば,現代化の作業に当たって,事務局としては非常に魅力的なアイデアといいますか,御指摘されるまでもなく考えたいところなのですけれども,仮にそうすることとした場合の実務上のデメリットというものが最大限どのぐらいなのかということを推し量る必要がありますので,その点についてもいろいろと御指摘いただければ幸いでございます。 ● まあ,今日は,意見はそういうことであったと,各委員からそういう意見の開陳があったということでよろしいでしょうか。ちょっと今日のところで何か詰めていくということは難しそうですので。各委員の御意見の感触は分かりましたので。  「(3) 株式交換・株式移転の場合の資本金等の積立て」の部分についてはいかがでしょうか。 ● いつも皮切りであれでございますけれども,議事進行という意味から。  本件,賛成なのですけれども,これは会計的に完全親会社となる会社が取得する株式の価額ということなのか,完全親会社の方が身代わりとして発行する株式の価額ということの方が適切なのか,それは同じことなのか。時系列によって,ある時点での,株式交換比率を発表しない前における株式の価額と,交換比率を決定したときにおける株式の価額と,時点で株式の価額の相違がいろいろ出てくるだろうと思うのですけれども,取得する株式の価額なのか,発行ないしは移転する株式の価額なのか,どちらがいいのかというのはちょっとよく分からないところでありまして,御検討願いたいなと。思想はこれがよろしいのではないかと,そういうふうに思いました。  債務超過の会社を株式交換するときに,もちろん実質上の債務超過ということではなくて,帳簿上は例えば200億円の債務超過であるとか,DCF算定をすることによって300億円の会社の価値であるというふうなのを株式交換していっているわけでございますけれども,そのときに子会社の純資産額ということになりますと,ゼロでしかあり得ないということになってしまうものですから,今の実務においても,そういう債務超過会社を完全子会社とする場合においては,完全親会社となる会社が発行する株式の価額というふうなことでやっている,それが今,公認会計士協会のお勧めだろうという気がしたものですから,今のようなことを申し上げたわけでございます。 ● この点については,どなたから御発言いただくのがいいのでしょうか。今の最初の○○委員の御意見につきまして。  ○○委員,お願いできますか。 ● ○○委員のおっしゃるとおりだと思います。 ● これは,事務局は,こういう表現になっていることについては,何か積極的な理由は。 ● 会計との親和性を考えれば,対価ということが適切なのだろうと思いますけれども,株式交換・株式移転以外の組織再編のときの規定ぶりとの兼ね合いもあり,とりあえず受け入れる純資産という形でこういう表現をとらせていただいているということで,基本的な考え方は同様でございます。組織再編における資本金の積立基準に関する規律の全般について平仄をとらせていただきたいという趣旨を出るものではございません。 ● これも,意見というよりは,教えていただきたいというレベルの話でございますけれども,こういう問題提起がなされるに至っている事情というのをもう少し教えていただけると有り難いと思います。  といいますのは,これまでの状況の中では,株式交換・株式移転であるとかいうものは,合併等とそのほかの会社組織再編のものと,非常にきれいに合わせた形で立法がなされているというところが,私はあれはなかなか美しいデザインになっているなということで感心してきたところでございますし,非常に分かりやすいわけですね。それが,株式交換・株式移転の資本金の積立てに関してだけまた違う発想法が入るということになるとすれば,それはどうしてそこだけは変えなくてはいけないのか,あるいは,そういう考え方というのは株式交換・株式移転だけのものなのか,もう一度再点検が必要になりはしないかということが疑問として出てくるわけです。  それから,もう一つ,完全親会社となる会社の取得する株式の価額というものがそんなに簡単に評価できるものなのであろうか。それこそ連結会計においても,子会社の株式の一つ一つの株式の価格ということを考えなくてみんな連結してしまっているぐらいの状況なのではないかというふうに思いますと,その際の交渉でもって幾らとするというふうに決めた価額をそのまま基準にするのが果たして本当に政策的にもいいんだろうか,どうだろうかということ。  ちょっと私,余り会計のことがよく分からないままこういう疑問を抱いているのかもしれませんけれども,ともかく,こういう提案が出てきたいきさつといいますか,そういうことをもうちょっと教えていただけると有り難いと思います。 ● 最初に御指摘いただいた点につきましては,正に株式交換・株式移転に係る資本金の積立ての規律の在り方をむしろ合併等の場合とそろえようという趣旨でございます。合併の場合の資本金の積立てについては,413条ノ2におきまして,存続会社,新設会社側が承継する財産というものを基礎として規律されております。これは要するに,積み立てるべき会社がどれぐらいの財産を受け取ったのかという観点から,それをベースに積立基準を定めているということでございます。株式交換・株式移転の場合は,357条,367条でそれぞれ規律されておりますように,完全子会社となる会社に現存する純資産額云々,要するに相手方の純資産をベースに規律するような形になっています。解釈で賄えないことはないのかもしれないのですけれども,完全親会社側の受け取る純資産をベースに規律されていないというところを整えたらいかがかと。これが会計の考え方に親和性を持った,平仄を合わせた整備ではないかという趣旨でございます。  企業結合会計の現在の在り方につきましては,別途どなたかに。 ● ○○委員,今の○○委員の御質問について。 ● ○○委員が本来はふさわしいと思うのですけれども,正しくあそこで今議論しているところでして,私どもとしては,受入れ側の純資産というものをきちっと正確に把握したものが資本金という形でいいというふうに思っています。 ● 357条は確かに異例な書き方だと思うんですね。これがこうなったのは恐らく,この株式交換・株式移転のときに,これは現物出資じゃないか,そこになぜ検査役の調査が入らないのだという問題がありまして,そこで,実質これは持分プーリングを原則にするのだという,何かそういうことなら検査役の調査を外せるのではないかというような話がありまして,それでこういう規定になっているのですね。ところが,完全子会社となる会社に現存する純資産というのは再評価もできるんだとかいろいろ言い出しましたので,実質は空洞化しているのですが,もともとの発想は,当然に持分プーリングをやるのだというのがこの条文のできたときの考えだったのではないかと私は理解しています。こういう変わった条文の形になりましたのはですね。  表現は,○○委員が御指摘されましたように,考えるべき点があるのかもしれませんが,実質につきましてはこれはよろしいでしょうか。  それでは,次に進んでよろしいですか。  (4)でありますが,「準備金制度に関する見直し」,この点につきましてはいかがでしょうか。  これも,まず○○委員。 ● 両方の米印につきまして賛成でございます。 ● 最初に拝見させていただきましたときに,利益準備金はなくなるのかと思ってびっくりいたしましたら,今,御説明を伺いますと,中身としては何も変えるつもりはないという御説明で安心したのですが,利益準備金も資本準備金も区別する理由は会社法上はもう既になくなっていたわけで,かねてより私は,もう法定準備金一本でいいのではないかというふうに前の改正のときにも申し上げましたら,いや,そうでもないというような御返事が返ってきて残ったようなことも覚えているのですけれども,そうしますと,これは「資本準備金」という名称もなくして,法定準備金一本にするということですか。どういうふうに扱うことになるのですか。 ● 用語について,今,確たることは申し上げられないのですけれども,少なくとも「資本準備金」でないことだけは確かですので,「準備金」という名前なのか,あるいは「法定準備金」とするのか分かりませんけれども……,まあ,「準備金」としたいなというふうに思います。 ● 名称につきまして何かアイデアがありますか。  ほかの委員の方,どの点でも。いかがでしょうか。前の方の米印について,特に御意見ございませんか。 ● まあこんな方向かと思って黙っていようと思ったのですが,特に御質問のようですので。  要するに一部を省令に委任するというのは,この基本的スキームは,原則は法律でやるけれども,部分的にマイナーなものを省令でという御趣旨なのか,そして,もしそうなら,その線引きの基準なんかはあるのか,そういうようなことが今の段階であれば,アイデアを教えていただけたらと思うのですが。 ● 現在の準備金の積立てに係る規律を殊更省令に落とそうという趣旨を含むものではございません。将来に備えて,法改正が追いつかないという場合にも機動的に適切な処理が可能なように,省令に委任することの方がよりふさわしいのではないかという趣旨でございます。 ● 現在でも,解釈論として,資本準備金のあれはあれ以外にもあるのではないかとかいうようなことは言われていますので,そういうことを手当てするという趣旨かなと思って私は見ていたのですが。 ● 利益準備金という科目の廃止は賛成なのでありますけれども,1点質問なのですけれども,今,利益準備金を取り崩す場合には,利益剰余金,その他利益剰余金に行くと。この利益準備金という項目がなくなったとしても,利益性のあるものを積み立てるわけでございまして,その部分を取り崩すものは,その他資本剰余金ではなくて,やはり利益剰余金の方に移っていくわけですよね。そのあたりは,準備金の中での源泉によって,取り崩したときにどう移るかというのはそれぞれの源泉種別によって行っていくという解釈でよろしゅうございますでしょうか。 ● 会計の考え方次第だと思いますけれども,例えば商法施行規則上は,何か殊更の手当てが別途必要かということはあり得ると思います。商法の準備金としての使途その他について,特別差異を設ける必要がないということにとどまるものだというふうに御理解いただければと思います。 ● 利益準備金の取り崩したものを配当に回すときは,今は当期未処分利益の中に入ってしまって,そのまま行くわけですね。それから,資本準備金を取り崩す場合においては,その他資本剰余金部分の配当というか,利益処分の書き方が変わってくるわけですよね。このようにすることによってどういうふうにそのあたりが変更になるのかなと思ったものですから。新しくできる「準備金」なるものの形成原因によって,会計処理というのは今と同じようにしていいのか,それとも,そもそも当期未処分利益に入るのではなくて,剰余金取崩しによる払戻しということで利益処分をしていかなければならないのか。そうなっていくと今までとは随分感じの違ったものになってくるだろうなと思うものですから。 ● 商法上このような手当てがされたとしても,会計の考え方が特に変わらなければ,取扱いは現在と同じだろうと思います。 ● 資本と利益との区分ということは厳密に考えなければいけませんので,それは今と変わらないと私は思います。 ● (4)につきましてはよろしいでしょうか。  それでは,(5)についてお願いしたいと思います。いかがでしょうか。 ● (5)は賛成でございますけれども,それにつけ加えまして,本件の部会の1回目か2回目に私どもの方から要望いたしました,例えば形式的な減資につきましては,特別--帳簿上資本金を減少する行為でありますけれども,総会の普通決議で可能としていただきたいという要望を出しているわけでございます。  それから,法定準備金の4分の1を--あ,本件は,債権者保護手続の関係はまた別途議論ということで,あくまでも総会決議との関係だけで,資本金,準備金の減少手続は議論するということでよろしゅうございますか。債権者保護手続はまた別途と。 ● 債権者保護手続の省略の可否については御意見をちょうだいしているところでございますけれども,減少手続の簡便化に関してはこの程度でいかがかというのが,ここでの提案の趣旨でございます。 ● そういたしますと,前に要望を申し上げたわけでございますけれども,法定準備金の4分の1を超過する部分の減少につきましては,債権者保護手続というのは減資並びではなくて,合併並びとしていただきたいとか,臨時総会で法定準備金を取り崩して欠損てん補を行う場合というのは期末に行うか期中に行うかだけの差にすぎないものですから,債権者保護手続をなくしていただきたいというふうなことを,去年の9月か,要望したと思うのですけれども,それも御検討していただきたいという,本件に関した付加的な要望でございますけれども。 ● ほかの委員の方,どうぞ。 ● 御提案のありました①と②なのですが,特にこの①なのですが,組織再編行為をした際に,資本金を増加することはできますけれども,特に増加しなくてもよくなってしまったわけですね。額面株式もないわけですし。以前からももちろん無額面株式だけの場合はそうだったのかもしれませんが。それを,資本金をふやすどころか減少するということを取締役会だけで決めてしまえるという道を設けることが果たしていいのかどうかという気がいたします。先ほども,現行の制度ですら合併を減資の手段として行うということが○○委員の方から指摘されているわけですけれども,こういう簡便な,取締役会だけで資本金等の減少ができるという道が切り開かれますと,簡易再編をしたいからというよりも,別の,資本金等の減少のために簡易再編をしようかという,そういうインセンティブさえ働きかねないようなところがありませんでしょうか。ということで,果たしてこういう改正がいいのかどうかということについて疑問に思います。  それから,②の趣旨ももう一つよく分からないのですが,取締役会限りで損失処理をすることができる株式会社は,もちろん期末の時点におきましては欠損てん補のために準備金を取り崩すことが取締役会限りでできるわけですね。それに加えて,これは期中においてもできるようにするということが提案の趣旨でございますね。そういう需要というのはやはり非常に高いわけでございますか。 ● 需要について高いかどうかは別途御意見をちょうだいできればと思いますけれども,少なくとも現在の289条のもとでは総会限りの権限となっておりますので,手当てをしない限りは,期中における欠損てん補については,準備金を取り崩す際に引き続き総会の決議を必要とすることになりますが……。 ● ②の方の御提案は,取締役会限りで損失処理をすることができる株式会社だけについての御提案ですね。 ● そうです。 ● そうすると,期中においてかどうかは別にして,そもそも期末時点での処理の方法として……,いや,ちょっと私,よく理解していないのかもしれないのですが。 ● 私も確認させていただこうと思ったのですが,289条の第1項の資本の欠損のてん補というのは従来からあった規定で,これは恐らく定時総会の損失処理案で処理されるということを前提にした規定だと思うのです。それに対して,2項が何か改正があり,かつ,14年に1号,2号がつけ加えられて,1項とは別個に,2項の2号で別途欠損てん補もできるようになったと。そうすると,この2項2号の欠損てん補は恐らく期中にやることも含まれているだろうと。だから,監査役設置会社においては臨時総会を開いて期中に欠損てん補できるような規定になっているから,委員会等設置会社ではこういう形でやることを確認したらよいという,こういう御趣旨かどうかという,そうなのかなと思ったのですが,誤解であればお教えいただければと思います。 ● 御指摘のとおりです。取締役会限りで損失処理をすることのできる会社において,その期中における欠損てん補が引き続き289条に基づいて総会限りになってしまっているのではないかというところを手当てをしたらどうかという御意見でございます。 ● 私も,これは,平成14年改正で289条2項の2号ができたときに,まあこういうこともあってもいいのかも分かりませんが,具体的にどういう需要があるのか。資本減少の場合にはきちっと書きまして,それで資本減少の改正に合わせてこっち側もこれがついたように記憶しているのですが,ただ,期中にやって意味があるのはどんなことかなとふと思ったのは,中間配当できないところがこれでできるようになるというのはおかしいなと。あるいは,場合によっては期末にややこしくなるときに困るから,自己株を取得したときに期末対策としてするのかなとか,しかしそれも余り意味がないなと思って,どういう実益があるのかなと思ったりしたのですが。ただ,この規定があれば,(5)の②のような御提案があるのは理解できると思うのですが,そもそも期中に欠損てん補をする需要がどれだけあるのかなということが分からないので,私もこれは黙っていようと思ったのですが,勇気を出して○○委員が質問してくださったので,確認したのですが。 ● どなたか,その実益等につきまして。 ● 私も,むしろ期中でどういうときにこういうことがあるのかということを確認したい一人です。  実務で,恐らく損益を確定するのはどうしても半期ないしは年間で,ある一定期間でやらざるを得ないと思いますので。まあ,中間のときにもしかしたら欠損てん補で使いたいというのは今のお話のとおりだと思いますけれども,期中というのはちょっと考えられないと思うのですが。 ● 当時の担当者ですので,私が説明せざるを得ないのかと思うのですが,実は私も,この準備金の方の資本の欠損のてん補というのはどんな場合なのかなというのは,そんなにニーズがあるわけではないと思っておったのですけれども,これは先ほど○○委員がおっしゃられたとおり,減資の方がもととなる規定で,減資の方に,資本の欠損てん補に充てる場合にはその金額ということを書いた関係で,こちらも書くことになったわけですけれども,ただ,余りないだろうとは思うのですけれども,減資の場合は資本の欠損のてん補というのは別に定時総会でやらなければいけないわけではないですよね。いつでも,期中でも,もちろん臨時総会を開いてですけれども,減資をして欠損てん補ができるわけなので,準備金の方はできないという説明はできないだろうと。そうすると,減資の方に規定を設ける以上は,こちらには設けないというわけにはいかないということで,こういうふうになったということでございます。 ● ②の部分は,先ほど○○委員からもありましたが,期中で準備金を取り崩して欠損てん補をするときには債権者保護手続をなくしてほしいというような要望が出てくる。ということは,先ほど○○幹事の方から説明をさせていただいた,減資に伴って欠損てん補をするときに,同時に準備金も取り崩して欠損てん補に充ててもいいじゃないかという場合を超えて,準備金単独で期中に欠損てん補をしたいというときがあるのであろうというふうにおもんばかりまして。  というのと,もう一つは,先ほど○○委員がおっしゃったように,委員会等設置会社等における規定のバランスの問題があって,②を置いているのですが,実需として,減資を伴わずに準備金だけを減少して,総会決議も開かなくてもいいような状態で欠損てん補をするというニーズがどれだけあるかというのは,実はこれの検討段階においても指摘はあったところでありまして,もしこういう場合というのがあれば御紹介いただければ,それに従ってということなのですけれども。  というのが,ここの趣旨であります。 ● 趣旨につきましてはよろしいでしょうか。そういう趣旨だということで御納得いただけたでしょうか。  そういう趣旨だと,あって悪い話ではどうもなさそうですが。まあ,実益がどこまであるかは別にして。 ● その次に来る配当規制との関係で,いわば配当の時期の自由化といいますか,自己株の取得等ともあわせて,配当規制の在り方をいわば会社資産の分配規制という形で見直すということで,この考え方からいうと,会社が配当するのは必ずしも期末と中間配当だけに限らない,あるいは四半期配当から更にもっと自由化するという考え方にもつながってくるのかもしれませんけれども,そういうことも考えられてこういう提案をされているのでしょうか。 ● ②は欠損をてん補するだけなので,これをしたから直ちに配当財源が出てくるわけではないものですから,それはそこまでですね。すなわち,中間配当のために減資差益を出すというようなことをしようと思えば,総会決議が要るのは,多分この制度を入れたところで変わらないので,ないことはないですけれども,そこが余り意図されたものでは--意図されたというか--そこに効果があるものでは多分ないと思います。 ● よろしいですか。  ①はいかがですか。先ほど○○委員から御意見の開陳がありましたが,ほかの委員の方,①についてはいかがでしょうか。 ● 私も○○委員と同じような疑問を持ちまして,「増加すべき資本金等の減少手続」という言葉の意味がいま一つ分からなかったのですが。先ほど○○委員が御指摘のように,組織再編行為に多分合併等も含めて考えるのでしょうけれども,ただ,合併であっても,消滅会社の純資産を吸収しても,少なくとも消滅会社のかつての資本分だけまた資本をふやさなければいけないとかそういうことは一切今ないがゆえに,先ほど申し上げたような問題が起きているわけですけれども,そういうときのことを考えて,「増加すべき資本金等の減少」ということをおっしゃっているのか,それとも,○○委員がおっしゃったように,存続会社の既にある資本を更に減らすようなことを考えているのか。まさかそんなことはないだろうと思ったのですけれども,ちょっとよく分からなかったので。 ● 現在は,「資本金等」といったら資本金プラス準備金のことですから,それを減らすということは,一部を--本来だと,入ってくるものに対応するものは資本金と資本準備金になるのですが,それを減らすということは,一部がその他資本剰余金になる,配当できるような形になるということだというふうに理解しているのですが。  そういうことですね。 ● 前回の部会で御議論いただきましたところですが,組織再編の場合に基本的には引き継ぐ純資産額が資本か資本準備金に振り分けられるというところを,一定の手続のもとにその他資本剰余金として取り扱う余地を認めたらどうかということにかかわる問題でございます。 ● そうすると,実質的に問題になるのはむしろ資本準備金の方だということですね。資本準備金の取り崩しの部分だと。 ● はい。  従来から,そういう組織再編をしたら配当可能利益の捻出に苦労するとかいうので,前回,そういう手続を認めてはどうかと。それがこの簡易再編の場合にはこういうことになるのではないかというのが,この案なのではないかと思いますが。  そういうことをしようと思えば,簡易組織再編は認めないということに,○○委員の御意見だと,なるのでしょうね,恐らく。その辺は確かに考えどころかと思いますが。  いかがでしょうか,この点については。 ● とはいえ,これが可能だとすると,巨額の資本準備金も全部,その際を利用して取締役会決議限りで取り崩すことも可能になるわけですね。何となく,小さいことを理由に大きいことをやってしまうような感じがないわけでもないですね。 ● 確かに,前回,簡易再編は相当範囲が広がるような話でしたからね,何されるか分からないというのがあるのかもしれませんが。  ほかに御意見,いかがでしょうか。ちょっとこの点については疑問を呈する向きもあるということですね。--ほかに御意見ありませんか。  もしあれでしたら,①については,今日は必ずしも全員の承認は得られなかったということかと思いますが,今日のところは一応そういう整理でよろしいですか。  それでは,引き続きまして,2の「配当規制」のところの説明をお願いしたいと思います。 ● 第1の「2 配当規制」は,(1)から(5)までございます。一括して御説明いたします。  まず(1)でございますが,会社財産の払戻しに対する横断的規制の導入の可否についてでございます。  現行法においては,例えば利益配当,中間配当等,実質的には会社財産の払戻しと見られる行為について,それぞれ個別に規定が書かれ,類似した,しかしながらやや異なる形での財源規制がかけられているところでございます。現代化の作業に当たり,これらを一括して,例えば「剰余金の分配」というような概念で整理して統一的な財源規制をかけるということで思想を統一し,分かりやすさを求め,条文経済上効率化を図るというようなことはいかがかというのが,この(1)での問題意識でございます。  (2)は,仮にそのような剰余金の分配という概念で統一するとした場合の限度額--現在でいえば配当可能利益あるいは中間配当の財源規制の範囲--の計算方法として,純資産額をベースとし,そこから控除するという方式ではなく,米印の①のような何らかの,平たい言葉でいう留保利益をベースにした積上げ方式での計算をするという形に変えたらどうかという点に関するものでございます。  これは,米印の2つ目に掲げておりますように,純資産からの控除方式によりますと,控除科目として加えるべきものが新たに生じてきた場合にも,法令上の手当てを行いませんと加えることができず,結果的には,現在でいえば配当可能利益に入ったままになってしまうということについて対応する必要があるかどうかという点にかかわる問題でございます。  ここでの提案は,現行法のもとでの配当可能利益の実質的な範囲を変えようとするものではありませんが,将来にわたり何らかの形で資本の部に組み込まれる項目が生じ,それが,本来は配当可能利益を構成すべきでないという価値判断がされるべきものであっても,法令上の手当てがなければ配当可能利益となってしまうという事態を避けるべく--先ほどの自己株式の処分差益についても似たような問題があったわけですけれども--会計上の考え方の変更によって資本の部に何らかの科目が追加されたという場合でも対応できるように--ここでの提案のような形をすれば,追加しない限りは配当可能利益にならないということになりますので--そのような規定ぶりの変更をするということはいかがかというのが,提案の基本的な骨子でございます。  米印の①から⑤までは必ずしも正確な表現を用いているところではありませんので,過不足はあり得るわけですけれども,言わんとするところはそういうことでございまして,特に実質的な範囲の変更を求めようとするものではございません。米印の3番目もその趣旨で,現行の範囲の変更を検討するものではないという趣旨を明らかにしているものでございます。米印の4番目も同様でございます。  (3)でございますが,「財源規制のかかる会社財産の分配」という概念にくくられるその範囲に関して,①として自己株式の有償取得の問題,②として人的分割における分割会社にかかる問題,それから③として開業利息の問題を取り上げております。  ①の「自己株式の有償での取得」につきましては,現行法では自己株式の買受けと規定されているところを,自己株式の有償での取得一般の規律というように把握し,必要とあらばそのような形での条文上の整理をするということでどうかということでございます。自己株式の有償での取得一般について財源規制をかけるという実質を原則とすることを前提に,その原則の例外として,ア,イという二つのものについては財源規制をかけないという形での整理をすることとしてはどうかということです。アは,吸収合併,営業の全部承継に係る吸収分割,それから営業全部譲受けにより自己株を取得するという場合には財源規制をかけないということでどうかというものであり,イは反対株主の買取請求,あるいは単位未満株式の買取請求等,法律上保障された買取請求権の行使に基づいて会社が義務的に買取りに応じなければならないという場合については,制度の趣旨にかんがみて財源規制から外すべきではないかというものです。  ②についてですが,人的分割につきましては,分割会社における株主に,直接,株式,あるいは対価が柔軟化されるとすれば対価たる財産が,交付されるわけでございますけれども,これは分割会社から見れば正に実質的には会社財産の分配に等しいと見られるわけでございまして,これについて財源規制をかけるべきではないかというのが,ここでの問題意識でございます。仮に財源規制をかけるとした場合,財源規制に抵触するというようなことであれば,それをクリアするために減資等の手続を行った上でないと株主への交付はできないということをしたらどうかという点が,米印の一つ目でございます。  米印の二つ目は,さはさりながら,相手方の株式を分割会社の株主に交付するという形での人的分割について,現在の規律,つまり財源規制をかけないという形での規律を特例的に維持すべきかどうか,現行法の状態をある程度既得権的に考える向きが実務的にあるとすれば,そのような取扱いを存続させることの当否ということをお諮りしたいということでございます。  ③は,横断的な財源規制をかけようとする場合には正しくその例外となり,廃止すべきではないかという御意見も少なくない開業利息の制度について,これを今回の現代化に当たって廃止したらどうかという提案でございます。  (4)でございますけれども,現行法のもとで,利益配当の場合に金銭以外の財産を配当することができるかどうかについては解釈上いろいろな考え方があろうかと思いますけれども--残余財産の分配のときについても類似の問題があり得るわけですけれども--正面から,現物による配当,払戻しというものが可能であることを認めることとしたらどうかということでございます。  米印の1番目,2番目は,仮にそのようなことを考えることとした場合における考えられる手続について掲げさせていただいているものでございます。払い戻し得る財産の種類として定款に掲げられているものについて,それを払戻しの対象財産とする場合には,株主に対する特別な手続を要さず,通常の払戻手続によって払い戻すこと,要するに金銭を払い戻す場合と同様の手続でよいのではないか,それから,払い戻し得る財産として定款に定められていないものを払い戻そうとする場合には,基本的に特別決議を経なければならないということとしたらどうか,しかしながら,株主側に,金銭か,その定款で定められていない特別の財産か,いずれかの選択肢があるというような場合には,通常の払戻手続によることとしてよいのではないかというのが,米印の1番目と2番目の考え方でございます。  いずれにしましても株主平等原則が適用されるということを前提とし,かつ,現物につき端数が生ずる場合の適切な換金手続,処理調整を行うということを当然の前提にするものでございます。  それから,(5)でございますが,剰余金の分配を行った取締役ないし執行役が,仮に事後的にてん補すべき事態が生ずる場面について見直すべき必要性があるかないかという点についての御議論をちょうだいしたいということでございます。損失が生じた場合,立証責任が転換された過失責任ではありますけれども,1円でも損失が生ずれば責任が生ずるというのが現行法の考え方でございますが,引き続きそのような立場をとることとするというのが,a案でございます。  b案は,b案の下の米印に書いてありますとおり,事前の財源規制を遵守して払戻しをしているということを前提にしますと,事後的に損失が生じた場合の責任について何らかの緩和を認めるということもあり得るかどうか,例えばその損失がある程度の幅になったときにのみてん補責任を負わせるというように,てん補責任を後退させるということもあり得るのではないかという考え方を示すものでございます。  米印の下の方についてですが,現在のてん補責任は,計算書類の確定時に行われるものについては,すなわち利益配当時については生じないこととなっておりますけれども,この点は引き続き維持することとしてよいかどうかということでございます。上の米印でa案をとる場合には,少なくとも下の米印は現行法どおりということに恐らくなろうかと思いますが,b案をとるということであれば,この点について現行制度を維持するかどうかということについては御意見が分かれるところではないかと思われますので,あわせてお考えをお聞きしたいということでございます。 ● それでは,「2 配当規制」について御議論いただきたいと思います。  まず,(1)はいかがでしょうか。会社財産の払戻しに対する横断的規制の導入ということですが。 ● 基本的な方向としては賛成です。  また,今,「利益配当」という言葉が必ずしも似つかわしくなくなってきている,利益でないものまで配当されることもあり得るということになってきておりますので,名称も変えるということは結構なのではないかと思いますが,ちょっと気になりますのは,利益処分による役員賞与がここに例示として挙がっているのですけれども,これには財源規制がかかりますと。しかし,報酬として与えられるものにはもちろんかからないわけですね。そうすると,一体報酬なのか賞与なのかという……。賞与は報酬に含まれるのか含まれないのかという話は,従来,税法との絡みで大変問題となってきたところであり,かつ,今度は委員会等設置会社ができまして,もう一つ混乱要因が出てきたと思うのですが,更にここに加えて,役員賞与についてはこういう明示的な形でもって規制がされる。今までと同じぐらいなのかもしれませんが,一体この場合の役員賞与たるものは報酬とどこが同じで何が違うのかという整理をきちんとしておかないと,また解釈論やら何やらで悩むことにならないのかという気がいたしますが,この点はよろしいのでしょうか。賞与の定義といいますか。 ● 役員賞与は例示で……。例示というのは,条文上も「役員賞与」と出すつもりは余りなくて,利益処分のときに株主に対して配当されるもの以外で会社財産が分配される場面が幾ばくかあるわけですけれども,その中の代表的なものとして役員賞与があるので,資料上イメージが出るように「役員賞与」と加えたものでありまして,すなわち,報酬なのか賞与なのかとか,それをどちら側で,要するに費用で処理すべきなのか利益処分で処理すべきなのかということをここで根本的に議論しようという意味ではないと御理解いただければと思います。 ● これは確認なのですけれども,剰余金の分配という整理というのは,財源を全部一括して集めて,それはその他資本剰余金でも利益でも同じ財源として扱って,あとは一括した分配をやるんだよという位置づけを言っているのですか。つまり,今,役員賞与というのは例ではないとおっしゃいましたけれども,実務では,利益が出ないところに役員賞与を分配するということはまずあり得ないわけですね。ですから,たとえとしてはこれは非常に悪いと思うのですけれども,そこのところは,財源を一括すれば,役員賞与というものがあったとしても,資本剰余金,資本金,準備金ですか,それも充てることができるという位置づけになるという,そういう意味なのですか。 ● 現行法自体はそこは何も規定しないものですから。すなわち,利益が上がらないときに役員賞与を与えないというのは,それは一つの判断でありまして,法律が,利益が出ていなければ役員賞与を与えてはならないという記述を置いているわけではないので,頭の整理だけをさせていただければ,「剰余金の分配」という形で財源を一まとめにして,その中で……。 ● それは,取締役の忠実義務で,利益がないところに役員賞与を出すというのは,社外流出として会社の体質が弱まるだろうということを自ら考えてやらないということですよね。だから,法解釈上そうやってやっているんじゃないですか。 ● そこを変更するつもりはなくて,単にいろいろな形で出ていく財産の払戻しを一つの財布で規制をしましょうというだけでありますので,どういう場面でどういう形で払い戻すのが適切かという問題はまた別の問題として当然考えられると。すなわち,規定の仕方であれば,先ほどちょっと余談で出ていましたが,減少して役員賞与ということも規定上ではあり得るわけですけれども,それを認めるという話ではなくて,計算上そういうふうに扱って,あとは適宜適切に判断するということであります。 ● ここでは,実質的に現行法を変えるという意図ではなくて,条文の整理ということだと思いますが。 ● 私が読んで理解したところでは,これは恐らく今度の国会に議員立法として出されようとしている,中間配当のときなんかの財源規制に関する--現行,例えば準備金を取り崩した金額を自己株式については繰入れの形で210条4項1号でいけるのに対して,中間配当財源としてはそうはいかない,239条ノ5の4項,5項との若干の食い違いとか--そういった問題が起きているので,そういうところを整合的に扱うことができるようにしようという発想でこの(1)の御提案はされているのかなというふうに思いまして,その基本的な発想は,私も適当ではないかと。ただ,それの是非は,あわせて次の(2)のところの財源規制の在り方とか,あるいは(5)の責任規制をどうするかと合わせて考えないと,全体としてそういった方向をとったことはいいことになるのか,悪いことになるのかというのは言えないのではないかというふうに思います。アプローチとしては賛成です。 ● ほかに(1)について御意見ございますか。  それでは,○○委員の御意見もありますので,(2)以下を検討するということでよろしいでしょうか。  それでは,(2)はいかがでしょうか。控除方式ではなくて,積上げ方式といいますか。 ● 質問なのですけれども,例えば(2)の②,「当期の資本金又は準備金の減少差益」と書いてあって,これは恐らく①の,最終の決算期の貸借対照表上の資本剰余金ということは,その時点での資本金や資本準備金の額を前提に決まってきますから,その後,それこそその決算期の定時総会で資本準備金の取崩しが行われたときにそれを算入することができるようにしようということで書いてあると思うのですけれども,それを言うのでしたら,一方で「減少差益」ということだけ言うのはどうかという気がしまして,例えば資本組入れを決議した場合ですね,293条ノ5で,あるいは293条ノ2や293条ノ3があった場合,それも当然ここの中に入れてこなければバランスがとれないことになると思うのですけれども,何で「差益」だけが書かれているのかがちょっとよく分からなかったと。まず細かい点で質問させていただきます。 ● 先ほどちょっと説明で申し上げたとおり,全部を過不足なく書き切れているわけではないということをまず前提にしていただきたくて。  ①と②についてこういう形で書き切ったのは,これが財布の最大限になるという趣旨で書いているものでありまして,御指摘があったように,利益を組み入れたりする,若しくは,例えば,先ほど利益準備金の話がありましたけれども,中間配当なり利益配当のときに利益準備金を積み立てればそれも控除しなければならないわけですけれども,そういうものは順次控除していくことにしておりまして,話を比較的簡単にするためだけにこう書いておりますけれども,それを積極的に抜くという趣旨ではありません。 ● あと,この提案の意味するところを考えますと,例えば③で,「当期において既に分配した金銭等の価額」と書いてありますので,現行法ですと293条ノ5第3項の3号で,自己株式取得のために使用すべき額の総額を既に取り崩してしまうことになっているわけですけれども,この考え方は,いわば予定の総額ではなくて,現実に払い出した額だけを控除するという考え方で書かれているわけですね。 ● 多分そうなる,そうしたいということを前提にこの案はできているのだと思います。 ● そうしたいというか,そういう意見もあったので。  また御紹介する機会が次回以降あるかと思いますけれども,自己株もそうですし,中間配当なんかもそういうことがあるかもしれませんが,決定したときと払い戻すときの時期ずれが起きたときに,どのタイミングでどの額を引くべきかという問題については別途検討を要するということでありますので,③は,少なくとも分配してしまった額というのは当然のごとく引くと。あとは,この分配してしまった金銭等の価額というふうに指したときに,取得が予定されている自己株式の枠であるとかそういうものを含めるかどうかということについては,別途また検討させていただきます。 ● そういうことのようです。  いろいろ細かい点はあると思いますが,基本的な考え方はよろしいでしょうか。  何か,(2)について,ほかに御意見ありますでしょうか。--よろしいでしょうか。  それでは,もし気づかれたらまた後で戻っても結構ですから,次の(3)に進ませていただきたいと思います。①から③までありますが,どの点でもどうぞ御意見をお願いいたします。 ● (3)の①でありますけれども,ここは(3)全体なのですけれども,財源規制という点での議論であって,株主総会における取得手続を要するのかどうかというのは,これは表裏一体になったのかちょっと忘れてしまったのですけれども,それとはまた別の議論だということで,とりあえず財源規制ということで進むということでございますね。  それの確認と,そうしたときに,担保で取得していたものを,自分でそれを取得してしまうというふうなときにも,今も財源規制がかかっているかどうか自身については,私,自信がないので,確認なのですけれども,今の理解と,それを何か変更を加えようとされているのか。それで,そういう担保を自己の所有権に移すときについてまで規制を加えるのが妥当なのか。そうでなければ売ってしまわなければいけないわけですけれども,そうすると価値が下がってしまうということがあるので,本当にいいのかということと,吸収分割とか営業全部の譲受けの場合ですけれども,本当は一部にしていただきたいという気持ちはあるのですけれども,理屈上無理だろうなという気もするものですから,全部--ごく一部だけを残してしまうというようなこともあるものですから--実質的に全部ですとか,何かそういうふうなことにできないのかということ。  それから,②でありますけれども,これは資本に欠損が生じていても何ら問題ないのであって,減資をするのか,資本に欠損を生じたまま--要するに債務超過であるということがだめなわけでありまして,減資をするのか,そのままで繰越剰余金の赤を持っているのか,それはもう会社の判断なのであって,義務づけしていただくことは困るということでございます。  あとは,ここに書いてあることについて賛成いたします。 ● ③は当然賛成でございますが,①の問題なのですけれども,今,自己株式の買受けの中核的な部分について規制が明確になりまして,周辺部分は何かよく分からない状況になっていて,解釈に任されている部分が多くなっているものを,一つ一つこうやってきちんと整理しながら置いていっていただけるということは大変有り難いと思うのですが,それに関連しまして,例えばこのア,イの場合,財源規制がこれはかからないという形で明確にするということでございますけれども,そういう場合に,しかしながら,財源規制に本来だったら引っかかりそうな形でこのアやイの取得がなされた場合に,相当の時期に処分をすることを求めるというような規定を昔のようにもう一回置くのかどうかということも検討する必要はないでしょうかという点が,最初の①に関してでございます。  それから,②についてなのですが,米印の1番目なのですけれども,その2行目の「金銭その他の財産を交付する場合において」というときの「その他の財産」というものの中に承継会社,新設会社の株式を含めてお考えだということなわけですね。だからこそ次の2番目の米印のお話が出てくるわけですね。  2番目の米印のお話ですけれども,こういう手当てをするということでいいのではないかと思うのですけれども,御提案は,「承継会社・新設会社の株式のみである場合」という限定がついているわけですね。そうすると,100%でないとこの2番目の米印のようにはならないのかとか,そういう点についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか,もう少し教えていただければと思います。 ● それでは,○○委員の御質問とあわせて。 ● ①の有償での取得について,担保にかかわる自己株式の取得をどう取り扱うかという点は内部でも議論しましたが,非常に難問でして,とりあえず先送りといいますか,また検討を続けたいと思いますけれども,条文で書き切る自信が今のところないというところでございます。  それから,②ですけれども,○○委員御指摘のとおり,米印の1番目の「金銭その他の財産」については,当然相手方の株式が入ることを前提にしております。  米印の2番目は,現行で許されている人的分割のスキームについては特例的な取扱いを認めるかどうかという点についてでございまして,わずかでも株式が交付されるのであればよいというのは,現行のスキームとは異なります。現在許されている人的分割においては少なくとも財源規制を外すという選択肢があるかどうかという,その実質の点を御議論いただければよろしいかと思います。 ● これは処分方法にもかかわってきますね。もしそういう相当の時期の処分をあれするのであれば,市場売却を認めるとか……。それがないと,現在のもとではなかなか難しいような気もしますね。 ● 恐らく,相当の時期というと,「相当の時期」のメルクマールを,という話にもなり,また後日御議論いただかなければいけないところもあると思いますけれども,検討してみます。 ● ①のところで,細かなことと,今の○○委員の意見との関連で,二つ質問させていただきます。  イのところで,単元未満株主の買取請求に応じてということだけで,端株主の場合には,恐らくこれは端株制度はないからという趣旨で,残ればそれも入るということになるのかどうなのか。意識的にそれを区別されたわけではなかろうというのが,確認の第1点です。  それから,○○委員が言われた担保との関連で,従来の平成13年改正前の商法210条では権利の実行云々というのもありまして,これももう少し検討しようという,担保と一緒に--広い意味での担保ですので,担保的な利用法ですので,後で御議論なさろうとしておられるのかどうかの確認です。  そして,アの方なのですけれども,従来,13年改正以前からも認められておりまして,そして特に大きな問題もなかったようですから,こういう形で財源規制をかけるとしても,これについては外してもいいじゃないかと言われることにはそれなりの合理性があるのかとも思うのですが,○○委員が遠慮されたので私が言うこともないかと思うのですが,なぜこれが要るかというと,ぎりぎり言うと,吸収合併,全部の吸収分割は,包括承継という法形式にどんな意味があるかという有力学説の批判もありますから,それはまた別問題ですが,常識的な,伝統的な考え方だと,包括承継の場合はしようがないなということなのですが,営業の全部の譲受けについては,そうすると営業全部じゃないか,株式を残したら営業全部の譲受けにならないじゃないかという禅問答みたいな話はありますけれども,営業全部の譲受けと全部の吸収分割とちょっと違うのかとか,ここら辺のすみ分けの理由をちょっとお教えいただきたい。これは13年改正前からあったからこう入れたと言われたらもうそれまでなのですが,包括承継とか,それに対して法形式上は売買だとか,そういう従来の議論との関連で,この「又は」前後のすみ分けとそこら辺を整理していくと,○○委員が遠慮されたことだって少し考えてもいいのかなと思ったりもしないではないので,そこら辺のところをお教えいただけたらと思います。 ● まず,第1点目のイに関する部分は御指摘のとおりでございます。法律上の買取請求の行使に関しては,制度の性質上規制をかけるべきではないという問題意識に基づくものでございます。  自己株式の担保その他権利行使に必要な取得等については,もう少し内部で検討させていただきたいと思います。  アの方は,とりあえず,従前,このような場合にはオーケーではないかと言われてきたところを掲げさせていただいているものでございまして,また御批判があれば検討させていただきたいと思います。 ● ①イについては,ほかに御意見ありませんでしょうか。 ● ①のイのところの,組織再編等の反対株主の株式買取請求権に応じて取得する,それは現行法どおりではあるのですけれども,改めて剰余金の分配一般に横断的に財源規制をかけるということを考え直すということから考えたら,反対株主の株式買取請求権に応じて取得する場合だってかけることは考えられる。義務的に買い取らなければいけないというのは分かりますけれども,では義務的に買い取らなければいけないのだったら,なぜ財源規制を破っていいのかという疑問になかなか答えられないのではないか。従来から,反対株主の買取請求権についても規制をかけるべきだという意見もあったと思うので,この際,会社財産の分配ということで全面的に再検討するというのだったら,その点についても考慮する余地があるのではないかと思います。 ● 反対株主の株式買取請求に財源規制をかけますと,財源規制を超えてしまった場合はどうなるのかという問題があるのではないかと思うのですが。 ● 私も,アでちょっと長くなったのでイは言わなかったのですが,イについても,反対株主の買取請求と単元未満株主の買取請求は少し違うような気がするのですね。  反対株主の買取請求というのは,基本的なファンダメンタルチェンジに当たっての不可欠の少数株主の保護策だという理解があると思いますので,○○幹事のような意見を徹底すれば,財源がなくて買取請求できなかったらそういう行為自体できないとまで言ってしまわないと論理一貫性がないので,これはやむを得ないのかなと。そして,6分の1の反対があればできないという規制--あれをもう少し緩くするかどうかはありますが--そういう形で処理せざるを得ないのではないかと。ところが,恐らく額が少ないだろうから議論する必要はないけれども,単元未満株主の場合には,場合によっては債権者保護の方が大事だという見方もできる。  結論的には,後者の方も額が少ないだろうから,従来もそうだったということであえて反論はしないけれども,確かに反対株主の買取請求と単元未満株主の買取請求については少し説明は要るだろうなと。結論的には,私,これはやむを得ないと思いますけれども,先ほどの○○幹事のおっしゃることも,そういう観点からは十分合理的だろうと思います。 ● ①についてはいろいろ検討すべき点はまだあるようで,検討させていただきたいと思います。  ②について,先ほど○○委員から御意見の開陳がありましたが,ほかの委員の方,いかがでしょうか。  今は,米印の二つ目に書いてあるようなことだけが起こるという前提で,何らこういう規制をかけていないのですが,「金銭」と出てきますと,何か露骨にかけなくていいのかという問題が出てくると。金銭についてかければ,恐らく二つ目の米印についてもかけなければいけないのではないかと。別に金銭と株式とを区別する根拠はないのではないかと私は思うのですが,現在かぶっていないということについて,○○委員からは先ほど御意見の開陳がありましたが,ほかの委員の方はどういうふうにお考えか。 ● 私は同じ懸念を持っております。 ● やはり両方についてかけなければおかしいと。 ● と思いますね。 ● これも意見が分かれているということかと思います。  時間の関係もありますので,できれば--③はよろしいですね。③については,皆さん賛成ということでよろしいですね。  (4)はいかがでしょうか。現物配当。 ● 「現物配当」の中に株式配当も含まれるということに今度はなってくるわけでございますか。これは,昔は配当だと言っていたものを分割だというふうに整理し直したのかと。 ● それは分割なのではないかと思いますが。 ● となった場合に,例えば,株式分割をするけれども,各株主の請求があれば金銭の方を選べますというような制度を設けた場合にどうなるのか。あるいは,そういう利用の仕方を考えた場合に,米印三つ目にあるような意味における株主に平等に分配されるということの原則にそれはかなうと考えるのか,だめだというふうに考えるのか,というような問題につきましてはいかがでしょうか。 ● 株式分割で金銭でもいいということは,それを売るということですかね。金銭を欲しいという人のために,会社がかわりに売ってやるということでしょうか。もし,本当の意味で現金を選べるとなると,それは恐らく株式分割ではなくなりますよね。 ● そういうものも含めて考えるときに初めて株式分割というのは意味のある制度になるのではないかなどと私は考えているのですけれども。本来の,何もそういうオプションのない株式配当であれば,これは全く株式分割ですよね。しかし,個別のオプションがあるものであれば,株式か現金かという形でのオプションがあって,それを株主に平等にそういう機会を与えるというような分配の方法は検討していい方法なのではないかと私はかねてより思っているわけなのですけれども。 ● ちょっとそれは,もし検討するとすると,恐らく相当考えないといけませんので,宿題にさせていただければと思います。 ● ここでの「現物」は,当該会社の株式以外の株式を含むすべての財産を想定しておりましたので。申し訳ありません。 ● この点につきましては,従来から,いわゆる二段階人的分割というのでしょうか,アメリカ的なスピンオフが可能かどうかということについて明瞭にすべきではないかという意見が強かったところでありまして,是非このような方向で明確化していただきたいなと思います。  その際に,そのスピンオフの関連で言えば,必ずしも配当だけではなくて,減資の場合につきましても現物で可能であるということをあわせて明確化していただければ,いわゆるスプリットオフが日本でもできるということが明確になるということですので,その点よろしくお願いいたしたいと思います。 ● ほかに御意見。 ● 「定款に定めがあるもの」というふうに限定しているのですけれども,定款に別に規定することもなくできるようにするべきではないかと思うのですけれども,どうして定款の記載が必要なのかということなのですが。 ● この米印は,一応内部でいろいろ検討した上での御提案なのですが,株主平等原則が働くということになりますと,会社の規模に応じてその種類はおのずと制約されてくるわけですけれども,金銭と異なり,現物ということになりますと,必ずしもそれをよしとしない--換金性との兼ね合いでもありましょうけれども--よしとしないという株主の保護をどの程度考えるのかというところであろうと思われます。それについての評価いかんによってはそういう御意見もあろうかと思います。御意見があればお聞かせいただきたいと思います。 ● 定款に定めをするということなのですけれども,例えば,当社においては金銭以外の財産も株主に払い戻すことができるものとするという書き方でもいいのですか。そういう定め方でいいというのだったら,いったん定めてしまうと何でもできる,余り意味がないではないか。だったらむしろ,定款で定めなくてもいい,そのかわり株主は選択すれば金銭も求めることができるという方がすっきりしているかもしれないと思います。 ● それはおっしゃるとおりですが,そういう定款の定めが有効かどうかということですので。 ● 必ず株主からの金銭での交付請求に応じなければいけないということとすると,またそれはそれで使い勝手の問題が出てくるかどうかという問題があるのではないでしょうか。 ● 株主への金銭でのオプションを与えないような現物の配当の場合には特別決議を要するとか,そういうような定め方も考えられるかもしれませんね。 ● それでは,この点もなお検討させていただきます。  (5),これもかなり御意見のあるところだと思いますが。 ● 質問なのですけれども,最初の米印のa案のところで,損失が生じた場合に常に責任が生じるのが現行法と同じと書いてあるのですが,現行法として何を考えているかなのですけれども,293条ノ5の第5項の場合ですと,ただし書で,過失があったときにだけ責任を負うことになっているわけで,別に損害が生じたらすぐ責任を負うわけでもないわけですけれども。私はむしろこの293条ノ5の第5項ただし書のようなことを原則に考えるのかなとも思っていたのですけれども,そうではないのですか。 ● 293条ノ5の5項と異ならない趣旨です。 ● それであれば,私はa案でいいと思います。したがって,そうだとすると,次の二つ目の米印になるのですかね,現行制度を基本的に変えないということでいいと思いますけれども。 ● ただ,恐らくは,時価評価の結果こういうことが起こってしまうということで,資産のそういう評価の減少ということについて過失があるとされるのではないかという心配もあると中間配当等ができないという問題がこの背景にあるのだと思うのですが。 ● それは過失の判断で処理すべき問題で,このb案というのは余り筋が通らないような考え方のように思えます。過失の判断については確かにそういうことも十分カウントする必要があると思いますけれども,これをb案のような形でその問題に配慮するというのはいかがかなという気がしますね。 ● 二つ目の米印については,現行制度を維持するということでお願いいたしたいと思います。期中における払戻し問題でございますけれども,銀行株の低下等について,これ以上落ちないだろうと思っていたとかいうふうなときの過失問題というのは極めて難しいということもございますので,そうしますと,保守的に考えますと,例えば持っている株式が,どんどん売っていったりしているのでしょうけれども,なおかつ残る。取引先の株等を持っている。それが例えばゼロになるということまでも想定したところで,配当,中間配当その他の払戻しを考えろということになってきますと,現実上の払戻しは非常に難しくなってくる。そういうふうな中で,こういうb案を御考案いただいた法務省の方々に深く敬意を表するものでございます。 ● これもお二人の意見は分かれておりますが,ほかの委員の方,いかがでしょうか。 ● ○○委員の御見解に賛成です。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 私もa案で特別の問題はなかろうと思うのですが,○○委員のおっしゃるようなことが真に経営者の方々の御心配なら,それはやはり違うということ,そうではないんだということを分かるような形でいろいろ啓蒙しなければいかんというのですか,何か--もちろん,代表訴訟で,意図的にこういう結果が生じた場合には嫌がらせ的に責任追及訴訟をし,つまり過失の立証責任は逆転するのだからという形になると思いますけれども,やはりこれが最も大きな問題になるのは自己株を持っている場合が多いのだと思うのですけれども,今後その自己株がどういう処理をされるのかによりますけれども,いろいろと自己株を中心に価格変動要因の多いものを持っているときに経営者がどういう考慮要因に基づいてやることが任務懈怠にならないかということをきちっと考えるべきで,何か分からんけれども怖いからどうのこうのというのは少し筋違いかなという気がいたします。したがって,私も,aをベースにすべきだと思います。 ● もう一つ別の考え方といたしましては,フローにおける収益につきましては,過失の判断等について取締役が負けるということは余りないだろうと思うのですけれども,減損会計が導入されてくるという中で,取締役の判断として,公認会計士とも相談して,今期における減損会計はこの程度だと思っていたと。ところが,急遽,土地の値段にしろ不稼働資産その他の問題にしろ,急に半分になってしまったというふうなときに,中間配当していたものについて,特にその半分になっていたことについて,そう見ることについて過失がなかったというようなことを立証するというのは非常に難しいなという気がするものですから,こういうストックの評価から来る,それに起因する損失については,何か,2分の1とか,こういう感じで歯どめを加えていただけるとか,そういうことをしていただかないと……。  とにかくストックの評価というのは非常に大きな問題となってくるものですから。まあ,年金資産等いろいろと対応してきているとは思うのですけれども,会計方針の変更がある日ドンと生じたよう場合に,会計方針の変更があることを十分に事前に新聞等を読んで分かっていなかったのかどうかなんていうことになってきたり,やはり経営者としては金銭を分配することに萎縮してしまう,それは株主の利益にならないということだろうと思いますものですから,そこはちょっと余りにも債権者寄りの姿勢になっているのではないか,今言ったようなことで何か設計ができないものかどうかというふうに思う次第であります。 ● 今ちょっと自民党とやり合っているものですから,このb案というのを否定したら自民党がとんでもないと言う,そういう意見が出てくるのではないかと思いますけれども,やはり,先ほどの過失の条項があれば,a案でいいと私も思います。  気持ちとしては,今,○○委員のおっしゃったことはよく分かります。かなりの金額が株式評価損とか,あるいは減損で出てくる可能性がある場合に,それが今の経営者の,せっかく会社で出た利益をそれで一瞬にしてふいになるのかというふうな発想からすると,気の毒だなとは思いますけれども,やはりそれはそれで見通しを誤ったと言わざるを得ないのではないか。減損というのは何も急に損が出るわけではなくて,あらかじめ見通せるものですから,やはりそこは会計基準が入ってきたらそれなりに見通して考えるべきだろうと思いますので,当然損が生じた場合には責任があるというふうに思います。 ● 大体委員の方々の意見の分布は分かりましたので。○○委員,何かございますか。 ● 少数説になりますので。 ● よろしいですか。 ● はい。 ● それでは,休憩にさせていただきます。            (休     憩) ● それでは,そろそろ再開したいと存じます。  次は,「3 計算書類」のところでありますが,これにつきまして,まず事務局から説明をお願いします。 ● 第1の3の「計算書類」は,(1)から(3)までの3点でございます。  まず,(1)の剰余金変動計算書の導入の可否についてでございます。  いわゆる現行法でいいます配当可能利益は,必ずしも利益に限らず,その他資本剰余金もその対象です。現行法上,それらの変動を直截に記載した計算書類というものがなく,現行の貸借対照表,損益計算書等では賄い切れないということから,剰余金変動計算書というものを作成させるべきであるという御意見があるところでございます。  仮にこのような計算書の作成を導入するということになりますと,少なくとも取締役会限りで現に利益処分あるいは損失処理を行う会社におきましては,利益処分案,損失処理案というのは不要となるのではないかと考えられます。  もっとも,前回御提案がありましたとおり,取締役会限りで利益処分,損失処理が可能とされている会社であっても,当該会社の選択によって株主総会においてその決定を行うことも可能にするということにした場合には,無論,利益処分案,損失処理案というのは引き続き必要ではないかという点が,米印の2番目のところでございます。  なお,剰余金変動計算書といった新たな計算書類を導入するにつきましては,既存の会社における実務的な対応可能性を考慮して,所要の経過措置を設ける必要があるのではないかという点が,米印の3番目でございます。  続きまして,(2)の付属明細書の廃止の可否についてでございます。  現在,御承知のとおり,計算書類について附属明細書の作成が義務づけられているわけでございますが,この附属明細書の実質的な開示機能は極めて乏しく,実際にこれを目にする株主はほとんどいないというように言われているところでございます。  そうであれば,記載事項を選別した上,必要なものは貸借対照表,損益計算書等に注記させるという形でその情報開示を維持することとして,附属明細書制度自体を廃止することとしたらいかがかという意見があるところでございますので,これを紹介するものでございます。  なお,これにつきましては,附属明細書に記載すべき事項とされる事項が株主総会において説明されるべき事項であるという理解のもとに,附属明細書の廃止というものが,この株主総会における説明義務の少なくとも実務上の在り方に影響を及ぼし,説明されるべき事項が不当に減少することのないような手当てを講ずる必要があるのではないかという御指摘もあるところでございます。もとより附属明細書の記載事項と株主総会において説明されるべき事項,取締役会が説明義務を負うべき事項とが必ずしも連動するものではないとは思われるところですけれども,それらの御指摘も踏まえて,この廃止案が可であるとした場合には,附属明細書における記載事項の選別をどうすべきかということが議論の対象となり得るところでございます。  なお,○○委員は所用により休憩時に退出されましたけれども,この附属明細書の廃止につきまして,現行のもとでの附属明細書の記載事項はすべて重要なものとして計算書類上に注記されるべきではないか,省略するについては慎重な検討をする必要があるという御意見をメモで残されていかれましたので,御紹介しておきます。  それから,「(3)決算公告」でございますが,株式会社・有限会社の規律の大きな相違点の一つが,この決算公告の義務づけの有無の点でございます。御承知のとおり,株式会社については一律に公告が求められ,有限会社にはそれがないというところでございますけれども,仮に株式会社と有限会社との規律の一体化をするということになりますと,この決算公告制度をどう取り扱うかということが直ちに問題となるわけでございます。  例えばということでa案からd案までを掲げさせていただいております。  a案は,有限責任の会社であるということを決算公告の義務づけの根拠であると理解し,すべての会社にその義務づけを広げるべきではないかという考え方でございます。  b案は,何らかの一定の範囲の会社についてのみそれを義務づけるという基本的なスキームを維持すべきではないかという考え方でございます。この一定の範囲というのは,例えば現行の株式会社と有限会社との規律というものを前提にしますと,法定の取締役会が設置されているかいないかということで区別するのか,あるいは会計監査人の設置が義務づけられるか否かということで区別するのか,いろいろ区分の仕方はあろうかと思いますけれども,対株主,債権者のみならず広く決算公告をする必要がある会社として何らかの制限を加えるとすれば,どのようなメルクマールでその制限を加えるべきかということが,b案の問題点でございます。  c案は,会計監査人の会計監査を受ける会社--受ける会社というのは,現行法を前提にしますと,会計監査人が設置強制される会社及び任意に会計監査人制度を導入しようとするみなし大会社ですが--これらについて,その社会に与える影響にかんがみ決算公告を要求することとしたらどうかという考え方でございます。これらの会社におきましては,会計監査人が置かれていることから,公開するに足るだけの適正な会計が行われているということをも実質的な論拠とするものでございます。  d案は,これらの義務づけを廃止して,任意に開示する制度とするということとしたらどうかという,最も緩やかな考え方でございます。  なお,昨今,計算書類の虚偽記載あるいは虚偽公告について刑事罰の導入等の検討を求める御意見もあるところでございまして,少なくともb案又はc案というような選択肢でないとなかなかその検討は難しいのではないかというように思われるところですけれども,決算公告の在り方については,このような刑事罰の導入の是非も含めて御議論をちょうだいしたいと思います。  なお,これに関連して,有価証券報告書提出会社については決算公告の義務づけを免除すべきではないかという御意見がありますけれども,これについての御議論もちょうだいしたいと思います。 ● それでは,これにつきましても,(1)から順次,御意見,御質問をお願いしたいと思います。  まず「(1) 剰余金変動計算書の導入」ですが,この点につきましては御意見等いかがでしょうか。御質問でも結構ですが。 ● 「所要の経過措置」というのが三つ目の米印のところにございますが,この経過措置というのは,通常の語義でいえば,数年の期間を経過した後には同じ扱いになるのだと,そういう趣旨だとすると,ちょっとこれは大変なことになるなと,こういうふうに思っております。「非公開会社等」と書いてあって,対応することができないと決めつけていただいて,大変有り難いような,苦しいような気がいたしますけれども,経過措置ではない形の方が望ましいのではないかなと,こう思う次第でございます。  もう一つつけ加えますと,むしろ剰余金変動計算書を導入した方がいいという御意見が仮にあれば,それが適用される企業というのは,数から言って極めて限定的な企業ではないかなと。これは,いつも中小企業の話をするときに申し上げるのですが,どっちが原則でどっちが例外かといえば,私どもから見ると,証券取引市場に公開されて上場されているような極めて限定的な数の企業をコントロールする何らかの法体系の中でこういうものを義務づければいいのであって,それが本則になるというのはいかがなものだろうかと。会社法制度を最も活用している中小企業の立場から言えば,そういう形にしていただいた方が自然なのではないかと,こう思う次第でございます。 ● この「所要の経過措置」ということに関係して,何かすぐに答えは。 ● 対応の可能性いかんということも含めていろいろ御意見をちょうだいした上で,この経過措置の在り方についてはまた御検討いただきたいと思っておりますので,ただ今の御意見も十分参考にさせていただきたいと思います。 ● ほかに,(1)については御意見いかがでしょうか。 ● 剰余金変動計算書の導入自身については異論があるわけではございませんで,こういう方向で検討いただいて結構ではないかと思うのですけれども,利益処分案,損失処理案というものを廃止してしまうというところに踏み切るということになってまいりますと,今のところは,原則としてはやはり株主総会で決めるべきものであるけれども例外的に委員会等設置会社においてこういう措置を認めたという,そういう位置づけになっているわけですね。それが余り原則・例外ではないようなものにだんだん変わっていくということにもなるかと思います。利益処分,損失処理の問題をどうするのかという問題との関連の中で,やや慎重目に議論していくのがよいのではないかというように思うのですが。 ● 何かありますか。 ● 利益処分案,損失処理案の廃止については,あくまで取締役会限りで利益処分,損失処理が可能な会社においてのみそうしたらいかがかという考え方を示させていただいているものでございます。もとより株主総会においてその判断をするという会社においてそれが必要であるということは言うまでもないところでございますが,取締役会限りでそのような利益処分,損失処理を行うという会社においてもなお維持しておくべきかどうかということについて,もし御意見があれば,ちょうだいしたいと思いますが。 ● そういう取締役会限りで利益処分が可能な会社においては,利益処分,損失処理のあれはこの剰余金変動計算書の中に出てくるということになるわけですね,恐らく。 ● この剰余金変動計算書というのはよく分からないのですけれども,「剰余金変動計算書の作成に対応することができない会社」と書いておられるというのは,恐らく作るのが難しいだろうという想定で言われているような気がするのですけれども,今,そういう計算書等を見ますと,未処分利益等が出てくる前に,自己株式の取得云々と出てきますね,それとは別にどういうものをイメージされているのか。今の連結財務諸表における連結剰余金結合計算書がございますよね,そういうイメージのものなのか。ちょっと中身がピンとこないのですけれども。つまり,民法上の法人における正味財産増減計算書的なことを言われているのか,項目からすると何行ぐらいのものなのか,数ページにわたるようなものなのか,「作成に対応することができない会社」と書いてあるので,よほど大変なことを考えておられるような気がするものですから,教えていただければと思います。 ● いえ,ここは御指摘のとおり,連結計算書類の剰余金の変動計算書と同じ程度のものでありますので,その会社がたくさん剰余金の変動を当期やれば長くなりますけれども,基本的には数行というか,利益処分案にちょっと毛が生えた程度のものになることになります。したがって,大変かどうかという問題は,今でも,先ほど御指摘のように,損益計算書の末尾のところに,当期純利益の後,未処分利益を計算するところまでに載っている部分と,あと,附属明細書において当期に出た積立金なり資本剰余金の変動について書いておりますので,これを1枚の書類にまとめ上げるだけというのが実質的な中身になりますから,言われるほど大変かというと,そうでもないような気もするし,ただ,新しい書類が一個入ると,別途どういう取扱いをするのかという議論になりますので,そういうことで三つ目の米印は置いてある話でありまして,そこまでそんなに大変なことということではないと思います。 ● ここは,連結計算書類作成会社における連結剰余金変動計算書的なものに限定したらどうかという気もするんですよね。通常,自己株取得に幾ら使ったかというのは別途出てくるわけですから,それよりも連結範囲の変更に伴って剰余金がどういうふうに変動するかなんていう開示が重要だろうと思うものですから,連結計算書類の一つの項目として,BS,PLに加えて剰余金変動計算書を入れるというのも一つの方向かなと思うのですけれどね。恐らく普通の小会社,非公開会社等に,作るのはそれほど難しくはないと思いますけれども,新たな開示を要求するほど重要なものものかというと,そうでもないような気がいたしまして,公開会社に限定したらどうかという気がいたします。 ● ほかに御意見ありますでしょうか。 ● 今の○○委員がおっしゃることの確認をさせていただきたいのですけれども,○○委員がおっしゃられたのは,連結計算書類の一つとして連結剰余金計算書だけを入れて,単体の方の個別計算書類の方は従来どおり利益処分案,損失処理案のままにしておくと,そういう御提案でございますか。 ● はい,そうでございます。 ● それでは,この点もいろいろ御意見をいただきましたので,なお検討させていただきます。  (2)の「附属明細書の廃止」につきましてはいかがでしょうか。 ● 先ほどの○○委員の極めてショッキングな御意見からいたしますと,そういうふうなことになるのであれば,附属明細書はやはり残すべきであると。  附属明細書というのがあるのは,直接開示に伴うコストを減少して,間接開示によって,開示としてはあるけれども開示面のコストを軽減しようということでございますので,今の附属明細書とほぼ同じ事項を招集通知添付書類として,貸借対照表,損益計算書,営業報告書の注記として例えば20ページを更に膨らませて載せるということになりますと,これは印刷コストの問題,附属明細書だったら基本的に1部でいいわけですけれども,50万部つくらなければいけない。発送コスト,郵送コストということを考えますと,ここで選別して,増えるページ数が1ページぐらいというイメージなら分かるのですけれども,今の保証債務の明細書から,子会社の何とかかんとかから,兼務明細から,リースの明細であるとか資産の取得・処分明細であるとか,あれが全部必要だということになってくると,とてもじゃないけれども附属明細書の廃止に賛成ということにはならない。あと,タイミングの面からしても,8週間前に今の附属明細書に書いてあることを取締役が会計監査人に提出できるかということになると,とてもじゃないけれども対応できないということでございますので,ここはあくまでも記載事項を選別してという中身によらなければ,いいとも悪いとも……。  でも,○○委員がそうおっしゃっている,それを正だとすると,附属明細書を廃止しろということには,コスト面,タイミング面から,ならないと思います。 ● 私はまた逆の方向から言おうと思っていただけでございまして。  ○○委員がおっしゃるとおり,非常に重要なことばかりであるにもかかわらず,これが,記載事項を選別して,株主たちに直接招集通知とともに送られるような書類に上がるのであればよろしいわけですけれども,そうではなくて,開示されないものが生じてしまうということになりますと,今よりも情報開示が不十分になるということにもなってまいりますわけですから,必要なものについて貸借対照表,損益計算書等の注記事項にするようにもう少し見直すということには賛成ですけれども,だからといって廃止するということはやはりやめた方がいいのではないか。もし廃止するのであれば,○○委員がおっしゃるように,すべて拾い上げるぐらいの心意気でということになろうかと思います。 ● ほかに御意見ありますか。 ● 同じことを繰り返す必要もないと思うのですけれども,日本の商法の計算書類附属明細書制度は,欧米の諸外国に比べましてやはり簡易化されていると思うのです。少なくとも欧米では附属明細書は計算書類の注記事項になっていると思いますので,私も,この機会にいわゆる計算書類に注記事項として附属明細書記載事項から上げるものがあるかないかを検討することが必要だと思います。そして,すべて附属明細書記載事項を注記事項とする必要があるかどうかは検討の余地がないわけではないだろうと思いますので,その意味で少し充実するとともに,附属明細書を残すということでもいいのですが,この附属明細書を残す,先ほどの御説明の中で,附属明細書は余り今利用されていないというような言葉があったかと思うのですが,やはり本店,支店に見にいくということが非常に難しいという面はあって,これは(3)の決算公告で,またここに全く書いていないことを言って申し訳ないのですが,本来,平成2年の商法改正の時には登記所公開を考えておったので,そういう制度があれば,登記所で見ればいいから,決算公告をなくし,計算書類も現状のままでいいということになるのかもわかりませんけれども,登記所公開がいろいろな事情で無理だという場合には,むしろ建前としては計算書類の記載事項,これは大・中・小会社を区分することも十分合理的だと思いますが,少なくとも大会社については充実する方向で検討するとともに,当面附属明細書を残すということが穏当なのかなという気はいたします。 ● どうもこれについては,附属明細書の廃止によって会社の負担が増えるのは困るという御意見と,ディスクロージャーが今より退歩するのは困るという御意見で,むしろ積極的な御意見は余りなかったのかなと。 ● コストの点で一言申させていただきますと,単元株制度なり何なりで,結局総会招集通知費を中心とする株主管理コストの低減を図る巧妙な制度ができているわけですから,そういうこととも関連いたしますと,諸外国のいわゆる物的会社の開示書類ないしは開示制度にかかるコストと日本の制度とを比べれば,日本の方が非常にコスト高だというわけではないということもつけ加えさせていただきます。 ● 費用負担という面を,今,○○委員から申し上げたわけですが,要するに,全株主に開示する情報というのは,多ければ多いほどいいというものでもなくて,余り多ければ,何が大事で何がどうなのか分からないということなので,理解能力というか,それを読む時間等を考えると,全株主に開示すべきものと,更に一段と自ら努力する人に対する開示の可能性とは区別していいので,今まで以上に詳しいものを全株主に開示する必要があるとは余り思えないのではないかと思います。 ● では,少なくともここに挙がっているような案については余り賛成はないという理解で,また検討させていただきます。  次に,(3)の「決算公告」についてですが,この点はいかがでしょうか。 ● 決算公告については,従来余り機能していなかった,まあ守っていらっしゃる会社はどのみち有価証券報告書も提出していらっしゃるような会社だけであったと言っても過言ではない程度の実情であったということはそのとおりかと思いますが,今は状況が非常に大きく変わりつつあると思うのですね。そういう意味で,やはりこれは大変重視すべきだと思います。  昔はやはり,決算公告をいたしましても,実際のところ使い勝手が悪いといいますか,検索機能がない中でわざわざ,どこの新聞,どこの官報のいつのものに公告されているんだろうかということを見るような方もなかなかないといいますか,使いづらいものであったということ,それから,新聞に出せばもちろんですし,たとえ官報に出すにしても何万というお金がかかって大変であった。そういう事情があったがゆえにだろうと思いますけれども,せっかく100万円以下の過料の処罰ということで罰則の規定もありますのに,それも発動されていない。ですから,皆さん,ほったらかしで全然構わない規定だというふうに思っていたと思うのですね。  したがいまして,何とか登記所公開にこれを持ち込むべきではないかということがずっと議論されていたわけですが,最近の改正によって,ウェブサイトにおける開示ということで,そういう方法が--強制はされていませんけれども--道が切り開かれてきて,一応,そのウェブサイトを使いましても,非常に費用は安くなる,それから一定の手当てさえすれば検索もしやすくなると,こういう状況がせっかく生まれてきたわけですね。したがいまして,これは非常に重視していくべき話,ここさえ充実すれば,開示で言っていたような登記事項にするかどうかという話も,どうしても難しいのだったら,そちらではなくても,こちらの充実ということで済んでしまうというほどの技術の発達というものがこの間あったと思うわけです。したがいまして,充実の方向で是非考えるべきだというふうに思います。  もちろん,今まで守られてこなかった理由の一つに,中小会社の場合なかなか,皆さんに見られたくないという,そういうものがあったということは事実でしょうけれども,しかし,それは,会社制度というものを使う以上,余り抗弁事由にならない。嫌だったら,個人企業でもできますし,合名・合資でもできるわけですし,有限でもよいということが今まではあったわけです。そういうことを考えますと,やはり会社の本来あるべきディスクロージャーの状況を確保するためにも,是非ここを充実する方向で考えていただければというふうに思います。  会社債権者や株主は,確かに本支店に行けば見せていただけるということになっていますけれども,これは大変利用のしにくいものでございますから,そういう意味でも決算公告の充実ということが非常に重要になってくる。  となりますと,d案というのはもちろん論外だというふうになりますし,それから,一定規模の会社に最低限強制するということは当然あってしかるべきだと思いますから,b案とかc案ということもあってしかるべきだと思います。  一番望ましいのは,何といってもa案であり,ヨーロッパ諸国におきましては,株式会社であれ,有限会社であれ,みんな登記所公開をしているわけですから,それに匹敵するようなものを目指すとすれば,a案ということになると思います。  ただ,多分ここら辺のところは,非常に政治的にも合意のとりにくい,難しい問題になろうかと思うわけですが,もしそうであるとすればb,c案あたりのところで決着をつけざるを得ないということになるのでしょうけれども,せめて任意に決算公告をするということは当然入れるべきだと思うのです。たとえ一定範囲のものは義務づけられる,しかしそれ以外のものは任意に公開してよろしいという制度設計は当然入れるべきですね。  そうだとしますと,任意にそういう決算公告もちゃんとしている,ディスクロージャーをちゃんとしようという姿勢の会社と,そうでない会社との区別は,分かりやすい形で社会に公示されるようにされるようにする必要があると思うのです。  となると,それは正に商号を変えるという形で持っていくべき話である。私は株式会社・有限会社の一本化に賛成なのですけれども,中の規制はほとんど同じで--ほとんどというか,全部同じでも構わないのだけれども--唯一,決算公告をちゃんとしている会社は株式会社と名乗りなさい,そうでない会社は有限会社と名乗りなさいと,このぐらいの区別はしてもいいのではないか。となると,株式・有限の区別は残るという格好になりますけれども,中身は,ちゃんとディスクロージャーをする会社かそうでないかということである。やはりディスクロージャーする会社かどうかということは,会社債権者等々から見ても,取引する際に,これはいつもウェブサイトなり何なりを見れば分かる会社なのか,そうでない会社なのかということですから,正に商号を変えるに一番ふさわしい内容の違いではないかというように思いますので,a案が理想ですけれども,そうでない場合のb,c案とした場合の,その中間の案,a’案みたいな形になるかと思いますが,そういう方向で御検討いただけないかと思っている次第です。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 計算書類の公開につきまして--あと,それも含めまして,中小企業政策審議会の方で,中小企業の立場から商法改正にどういうことを期待するかというレポートを昨日まとめていただきましたので,また機会を見て御説明をさせていただきたいと思いますけれども,計算書類の公告につきまして,今,余り守られていないという御指摘もございまして,私どもも今回調査をいたしました。これはアンケート調査ではございますけれども,3,135の株式会社から回答を得ていますけれども,これまで一度も公告をしたことがないというのが83%,昔やったことあるけれども,意味がないのでやめたという人が8%ということで,91%の方が実際公告されていない。あと,実際毎年公告をやっているというふうにポジティブにお答えになった方が5%ということで,ほとんどの方が公告していないという状況でございます。  ということは,やはりこれは罰則というか過料をかけてこういう制度を維持するというのは,ある意味では,これは中小企業が悪いのかという議論もありますけれども,5%の人しか守っていないというのは,やはり制度が失敗しているということだろうと思います。したがって,罰則をつけて仮にそのエンフォースをちゃんとするとなると,その社会的コストと便益とを比べると,やはりコストの方が高いのだろうというふうに考えております。  では実際何で公告していないのかということですけれども,これもアンケートの答えから見ますと,金融機関とか取引先とか,そういった方には求めに応じて計算書類は出しているので,したがって不特定多数の方に公告する意味というのは事実上ないというふうにお答えになった方が81%ということで,実際は債権者とか金融機関の方には求めに応じて出しているので,公告ということで不特定多数の方に公告する意味が余りないということに皆さんお答えになっております。  したがいまして,やはり金融機関とか,実際の債権者との関係では,求められれば出しているので,結局この公告制度の社会的意味がどういうところにあるのかというと,潜在的に今後債権者になるかもしれない中小企業同士というところについて,法律が強制をしてそういう制度を位置づけることに社会的な意味があるのか,それから,社会的な効率性にプラスになるのかというところで考えることが必要だろうと思います。  それにつきましても,私ども,アンケートをとりまして,では計算書類が公告されていないことについて,債権者になるかもしれない中小企業の立場として不都合が感じられるかというところを調査いたしましたところ,全体として不都合を感じないという方が85%いらっしゃいます。これはなぜかというと,結局,中小企業の場合は,計算書類というよりも,社長さんの人柄とか,業界の評判とか,過去の実績とか,そういったところを見ながら信用判断をするという方が,複数回答ですが,56%。あと,信用会社,調査会社から情報を得ますというのも35%等々ということで,皆さんほとんど,85%の人が不都合を感じていないということでございます。  したがいまして,この計算書類の--理念的には,有限責任で経営をする以上は公告すべきであるという考え方もありますけれども,実務の世界では,金融機関なり債権者に求められればちゃんと出すし,潜在的に債権者になるかもしれない中小企業については,別に計算書類がなければ困るという人も余りいないということで,少なくとも罰則つきでこういう制度をこのまま維持するというのは,やはり行政としても怠慢のそしりを免れ得ないと考えられますので--是非,義務の必要性も含めて見直しをしていただければというふうに考えております。 ● 何か○○委員,追加することは。 ● まず,今,○○幹事の方からお話がありました調査には私どもも協力しておりますので,その結果についてどうのこうのということはございません。  それから,○○委員からお話をいただいたことについても,納得できる御議論の一つではないかと,こう思っております。  私どもが極めて明確に認識しておりますのは,まず,ディスクロージャーというのは中小企業でもすべきあるというふうに思っております。しない方たちは,これから様々なところで不利になる可能性が出てきているのではないかと。今,アンケートの御紹介がありまして,3,000社,これは大体社長さんクラスに聞いているわけですが,そういったクラスの方たちは,割と近場で取引をしていたり,そういう方がメーンなのかもしれませんけれども,これは一概に決めつけることはできませんが,余り痛痒は感じていないということですが,どうもこれから少しずつやはり変わってきているところはあるだろうと。  したがって,例えば私が○○委員の会社の○○商事に何かお願いするときに,昨年どのぐらいの売上げがあるのかとか,いろいろなオプションがあるときに,まずちょっと調べてみようというときにウェブで調べるというのは意味があるということで,いろいろな制度,私どもがそれに加担して始めたわけでございますけれども,残念ながら,余りまだ皆さん御熱心ではないと。  結論は,ディスクロージャーは進める必要があると明確に認識いたしますし,それから,それを助長する,これまでいわば失敗をしてきたわけですから,失敗しないようなシステムを作る必要がある。  そこで,罰金つきで強制するのがいいのか,あるいはあめで誘導するのがいいのか,どちらがいいのだろうかというところについては,先ほどの調査結果は一つのいわばエビデンスとしてあるわけですが,先生方の御意見とか,そういうところはよくかみ合わせて一度議論していただいた方がいいのではないかと。  もう一つ,中小企業の私としては言いにくいことを言えば,ずっと長いこと,歴史的に,ある意味でディスクロージャーしろと言われて,罰則もついてきていて,ここで外すということになると,これはどういう意味があるのかというのも,我々としては正直言ってちょっと恥ずかしいなと思っているのでございます。  したがって,○○幹事が言うことにも正に私どもはそのとおりだなと思いますが,先生方の御意見にも恐らく理はあるところもあるので,罰金でなくても,もう少し誘導するようないいやり方はないのかと。ただ,そのときに,○○委員がおっしゃったように,名前を名乗る権利があるのかないのかと,何か士農工商みたいに,何のたれ兵衛とはおまえには言わせない,おまえはたれ兵衛だけだというようなやり方はちょっとドラスティック過ぎるのかなと。お知恵をむしろ拝借したいと,こう思う次第でございます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● ただいまの○○委員の御発言を伺いまして,やはり世の中変わってきているのだなと。中小企業の立場の方からでもそういう声が出てきているわけでありまして,広い意味で,正に,今,○○委員がおっしゃったように,社会全体を,今までと同じでいいというのではなくて,少しでもいい方向に持っていくように工夫すべきではないかなと思います。  実際,この問題がかなり現在の日本の経済の桎梏になっているところもございまして,私はちょっと前に,貸出債権市場協議会というところで,金融機関が御存じのような状況にございまして,少しでも自分たちが持っている中小企業等に対する貸付債権を流動化して,それによって不良債権処理等を進めたいという努力をされておりまして,その中で一つ非常に大きい問題になっているのが債務者の情報開示の問題で,確かにかつては金融機関は貸付先の情報を他に出さないということを前提に融資をし,金融機関が自分の債権を他に売却するというようなことは考えられなかったわけですけれども,今の経済状況から申しますと,先ほど申しましたように,そういう債権を流動化する必要が非常に高まっている。そういうときに,いわば企業がプライバシーだみたいなことを言って一切その企業の財務情報等を外に出させないということを続けますと,そういった債権の流動化等ができなくなるわけでありまして,そういうことを考えると,やはり企業もそういう形で経済活動をし,かつ,その債権等が流通していくような市場化が進んでいくわけですから,なるべくそれに応じた形の努力をしていただくことが必要ではないかというふうに思います。  現に,そのときにいろいろな方の御発言があったのですけれども,あるフランス系の,外資系の銀行の方は,フランスでは企業は登記所に登記しているから情報を出されるのは当たり前だ,日本は何でそんな議論をしているのだということをおっしゃいまして,制度的にも少なくとも建前上公告義務があるということは,公告すべき財務内容について,債権を売却するときに相手方にそれを開示しても,それは法律違反にならないということが言えるわけでありますし,私はやはり,確かに従来のあれからはいろいろ御意見はあるとは思いますけれども,少しでも開示が進むように工夫すべきだろうと思います。罰則まで行くのがいいのかどうか,それはちょっとあれですけれども,少なくともある程度そういった開示が進むようにすべきだと思います。  しかも,もう一つ,技術的に電子公告ができるようになっているわけでありますから,テクニカルな点ではよりやりやすくなっているわけで,問題はむしろ企業が隠したいというのをどこまで自発的に出すようにしてもらえるかということでありますので,その面ではなるべくプッシュするような政策をとるべきだと思うのです。  そこで,このa案からd案までの中では,私は,いろいろなことを考えて,物的会社の理屈論を言えばa案になるのですけれども,それはいろいろな問題もありますし,イギリスなんかでもプライベートカンパニーについては別の扱いをしておりますので,まあそれについては議論がありますけれども,私はb案で,株式の譲渡制限をかけていなくて取締役会の設置が強制される会社については少なくとも公告は強制されるという制度あたりが考えられるのではないかと。有限会社を株式会社に吸収するということをあわせて考えて,そこら辺が合理的かなという感じを持っております。 ● 建設的な方向から大変貴重な御意見をいろいろな方からいただいておりますが,いかがでしょうか,ほかの委員・幹事の方。 ● 二つつけ加えます。  確認のため一つ申しますと,私が先ほど申しました発言は,罰則で強制するというやり方ではなくて,どちらかといえば誘導するようなやり方が望ましいと。このaからdまでの案というのは,白か黒かというところがちょっとございますので,もう少しバリエーションがあるんじゃないかなと,こう思っている次第でございます。これは○○委員ともある意味で同じでございますが。  もう一つは,有限会社と株式会社との例の資本金の議論,こちらの決着次第によって,また少し変わってくるところが当然あるわけでございまして,有限会社というものが例えばある一定の時期以降株式会社と全く同じになってしまうということになると,またちょっと考えなければいけないところがありますし,差をつけなければいけないということですと,○○委員のおっしゃったやり方がいいかどうかは議論をいろいろしなければいけないと思いますけれども,何らかの差がついたときに,これも差の一つになるのかどうかとか,そういうことをちょっと議論したいと,こう思っております。  いずれにせよ,余り罰金で強制するようなことはちょっとえげつない,中小企業に私ども頑張ってPRいたしますので,彼らのイニシアチブでうまく動いていくような仕組みを誘導できるような,暖かい商法にしていただけないかなと,こう申したいわけでございます。 ● 任意の決算公告という○○委員の御提案というのは非常に魅力的だなというふうに伺いました。ただ,その場合の差別化の方法として,商号まで変える必要はないのではないかと私は思うのです。  というのはどういうことかといいますと,先ほど○○委員がおっしゃられましたように,多分これはどうやって使うかというと,新たに取引を開くような場合に,競合の数社についてウェブで決算公告をぱっと見るというようなことがあると思います。そのときに,出しているのと出していないのというのはその場で一目瞭然に出るわけですね。ですから,その出している,出していないということそれ自体が明確なシグナリングになるわけですから,別に商号でまであらわせという必要はないのかなと,十分にそれでディスクロージャーの方向への誘導の一つのあれになるのではないかと思うのですが。 ● あめとむちが両方要るというのは全くそのとおりだと思います。だから制度設計の問題なのですけれども,なぜ商号を変えた方がいいのかということにつきましては,一つには,やはりそれは社会に対する明確なサインだからということもございますが,幸い現在の法律がそうなっているというところが一つの説得の材料になると思うのです。つまり,有限会社と株式会社との法律を一本化するというふうに決めましたけれども,そこだけ変えないというふうにするだけですから,新たな規制を設けるのではなくて,そこだけ変えないというふうにするということが,やはり政治的な合意形成のときの一つのポイントになると思うのです。立証責任がどちらにあるのかみたいな話になってくるわけですから,このチャンスを逃すとそういう方法は使えないというぐらい貴重なチャンスに今我々は直面しているわけですから,これを生かさない手はない。これがあめの方です。  むちの方なのですけれども,確かに刑事罰もいろいろ検討した方がいいとかという御提案も前向きに検討していただいて結構だと思うのですが,少なくとも今までだって過料の制裁という形ではあったものを動かしていないという,ここがやはり問題だったわけですね。だからこれは決断一つで動かすことができるといいますか,今回はそうしますよというメッセージつきで改正をすべきではないかというふうに思うのです。現に中小企業は,昔は,2年の任期が来た取締役の改選の登記なんていうのも何もやっていないのが当たり前だったのですね。ところが,ある時期からちゃんとチェックされまして,裁判所の方から過料の制裁というのをかけるようになったわけです。それであっという間に,今,それだけはちゃんと守らなければいけないことということであの中に浸透しているわけですね。ですから,これは法の執行に当たる者の責任でもあるわけです。従来は,そういうことをやろうにも,頑張ってやってみたところで,費用はかかるは,効果は少ないはという前提だったから,法務省がそこまで踏み切らなかったことについてまだ納得できたと思うのです。しかし,今のようにウェブサイトが使えるようになって,電子公告ができるようになって,もう罰則規定があるけれどもほったらかしにしておく理由はなくなったと思うのです。そのぐらい激変の状況に今あるということで,この機を逃してはできないような改正を是非今すべきであると私は思います。 ● 御趣旨は,株式会社に何か今までは公告を強制していたのだが,そうではなくて,公告をした会社だけが株式会社と名乗れると。 ● そうです。それで,ほかの規制については全く一本化。だけれども,唯一この点だけのために株式・有限を残すという提案でございます。 ● 御趣旨はよく分かりました。  ほかに御意見ありますでしょうか。 ● ちょっと別の点でよろしいですか。  どこで申し上げるのがいいのか,よく分からないのですけれども,今の決算の話ではないのですが,計算関係についてのもう一つの非常に根の深い問題としまして,私は,やはり財務諸表と計算書類とが二本立てになっているというところがあると思うのです。これは日本全国で壮大なむだをやっているようなものじゃないかと思うのです。だんだん中身を近づけてこられたということで,現場の御苦労は減っているのかもしれません。だけれども,片方では,今までは連結財務諸表だけだったのが,今度は連結計算書類までできまして,二重のものがまたふえたわけですね。こんなことやっているのは日本だけではないかと。世界じゅう,ほかの全部をくまなく調べたわけではないのですけれども,ほとんど日本だけではないかと思うのですね。  したがいまして,やはりこれは,大会社については財務諸表一本つくればよい,そういう証券取引法の適用でない会社につきましては今までのような計算書類でいいと。この名称も統一した方がいいと思いますけれども,大きいところは詳しく,中小企業についてはもう少し簡単な規制でいいということはあると思うのですが,そういう意味での差は分かるのですけれども,少なくとも大会社について,何で計算書類と財務諸表と両方つくらなければいけないのかと。中身を近づけることではなくて,一本化した方がよほど簡単だと思うのです。  これも,こういう思い切った改正というのは,こういう大がかりな,現代化を図るというときぐらいしかチャンスがないと思いますので,現代化の大きなテーマの一つとして是非御検討いただけないかというように思います。 ● 最後の点について何かありますか。 ● 最後の点は少なくとも検討させていただきたいと思います。 ● 今の最後の点ですけれども,今の有価証券報告書に相当するものを何万人,何十万人の株主に送れということになると,これはとてもじゃないけれども,それだけで拒否感が……。 ● いえいえ,私が申しますのはそういうことではなくて,株主に送らなければならないものはこれこれであるという規定の仕方をすればいいわけですね。要するに,財務諸表というものと計算書類というものと,ほとんど似ているにもかかわらず,ほんのちょっとだけ差があるわけですね。名称やら何やら。それでだんだん近くなる……。 ● 書類は基本的になくなるんですよね。 ● だけれども,二本作るという建前はまだ残っていますね。 ● この間の商法施行規則の大改正によりまして,有価証券報告書提出会社は,実際のデータベースとしてはほとんど同じもので,しかし注記事項とかが大幅に違うのですね。今,○○委員がおっしゃっておられるのは正にそのことで,財務諸表というと物すごい膨大な注記事項をつけなければなりませんから,それを送れというのは無理な話でございます。ですから,それをはるかに簡素にしたものが計算書類になっているということで,中身的には,特に有価証券報告書提出会社については,様式なども同じ取扱いにしてもよろしいという規定を設けておりますので,実際的な負担は,附属明細書のことは別ですけれども,実際上の負担はほとんどゼロに限りなく近くなっているというふうに理解しているのですけれども,○○委員,そういう理解でよろしいですよね。 ● はい。 ● 私も,限りなく近いというのではなくて,全く同じだというふうなところまで行けないだろうかということを言っているわけです。だから,送らなくてはならないのはこの範囲であるという決め方で,そもそもその二本あるんですという建前からなくしてしまっていいのではないかということなのです。 ● 恐らく,○○委員のおっしゃっていることも,現在進んでいる方向と余り違わないのではないかと思われますので,また検討させていただきます。  それでは,時間の関係もありますので,決算公告についてもいろいろアイデアをいただきましたので,検討させていただくことにして,「第2 社債」の方に移りたいと思います。これは全体を通して説明をお願いいたします。 ● 「第2 社債」でございます。かなり技術的な点が多うございますけれども,1から5まで,まとめて御説明いたします。  まず,1は「有限会社の社債発行」でございます。株式会社と有限会社との規律の一体化を図るとした場合に,現在禁じられております有限会社についての社債の発行を許容することとしてはいかがかというのが,その趣旨でございます。  それから,「2 社債総則に関する規定の整理」でございますけれども,(1)は,発行決議についての見直しの要否についてでございます。  米印の一つ目は,社債の発行決議事項につきまして,代表取締役への具体的な事項の委任というのを認める形での手当てをすることの可否についてでございます。  米印の二つ目は,いわゆる総額が引き受けられなければ社債全体が成立しないという形での原則を,いわば修正する形で,打切発行を許容したらどうかということでございます。仮に許容するとした場合には,条文の規定上,恐らく打切発行というのを原則にするかというようなことになると思いますけれども,いずれにしましても,打切発行というものを許容するということの可否について御意見をちょうだいしたいと思います。  米印の三つ目は,実務的にこのような御要望があるということですけれども,取締役会の決議においては社債を発行し得る期間というものを設定した上で,個々の発行時期の決定を代表取締役に委任するというような形で,社債の発行の自由度を高めることはどうかという御要望についてでございます。  四つ目についてですが,有限会社について社債の発行を認め,あるいは株式会社の管理運営機構の規律を柔軟化することとしたときに生じてまいります,取締役会が置かれない会社における社債の発行について,発行の意思決定の基本的ルールをどのように設けるかという点についての御意見をちょうだいしたいというのが,(1)の4番目の米印でございます。  (2)は,長信銀法で規定されております売出発行という形式についてですが,一部には普通の株式会社である銀行についても同様のニーズがあるという御指摘があるようですけれども,事業会社も含めた一般の株式会社に係る社債法について,これらについての規定を設ける必要があるかどうか,実務的なニーズがどの程度あるかということについて御意見をちょうだいしたいと思います。  (3)は,社債申込証の作成についてでございます。社債申込証については,少なくとも申込者に対する情報開示という意味合いでその用紙に一定の事項の記載が義務づけられているわけですけれども,別途証取法による開示がされているという場合には,社債申込証の開示機能というものを考える必要はないのではないかと考えられることから,社債申込証の用紙の作成を不要としてはどうかということでございます。社債の成立の確保,その成立時期等について何らかの問題が生ずるかどうかということもあわせて御検討いただきたいと思います。  (4)ですけれども,総則関係のうち,298条,299条,300条といったあたりの規定は必ずしも存続させておくべき合理性に乏しいものではないかと思われることから,余り残しておくべき必要性がなければ,現代化に際して,条文経済的な観点から削除することとしたらどうかという御提案をするものでございます。  続きまして,「3 社債管理会社」でございますが,現在,商法上の社債管理会社については,商法297条ノ2でその資格要件が限定されているところでございますけれども,この社債法の改正論議がされた平成5年以降の経済情勢の変動,社債発行会社におけるデフォルト事例の発生等にかんがみて,この資格要件というものに更なる見直しをする必要があるかどうかという点について御意見をちょうだいしたいと思います。  (2)は,やはり発行会社のデフォルト事例を目の当たりにしたときに,この社債権者と社債管理会社との利益相反関係に係る規律について更なる見直しをする必要があるかどうかという点についてでございます。  米印の1番目は,いわゆる社債管理委託契約に基づく約定権限の行使について明文で規定を設けるべきではないかという御意見について,どのように考えるかということでございます。  米印の2番目についてですが,現在,利益相反行為に関する商法311条ノ2第2項におきまして,社債管理会社が行う債務の消滅に関する行為について一定の制約がかかっているわけですけれども,この中には,解釈上,相殺は含まれていないとされているところでございます。ここに相殺を含めるという形での手当てをすべきかどうか--銀行業務に大きな影響を及ぼし得るところでございますけれども--資格要件の拡大ということもあわせ考えた上で,そのような取扱いの是非について御検討いただきたいと思います。また,同項におきます3か月内という期間についても,更に延長すべきではないかという御指摘もあるところですので,あわせて御意見をちょうだいしたいと思います。  米印の3番目は,発行会社と社債権者集会の同意がある場合には社債管理会社は辞任をすることができるわけですけれども,それとあわせて,利益相反状態になるなどの一定の事由があらかじめ定められているときには,その定められた事由の発生によって社債管理会社が辞任するという道を認めることはどうかという問題でございます。もとより,辞任に当たって後任の者を選定する等の辞任にまつわる規律は前提とした上で,利益相反状態からの脱却等を辞任という形で認めることの是非について御意見をちょうだいしたいと思います。  (3)ですが,社債発行会社が法的倒産手続に入って以降の社債管理会社の権限の在り方について,先般の会社更生法の見直し作業の際にも議論があったところでございますけれども,一般的な社債に関する規律の見直しという中で,更にどのような手当てをすべきかという観点から,米印を二つ挙げているところでございます。  会社更生手続において,社債管理会社が社債権者集会の授権なくして議決権を行使することができることとするかどうかにつき,社債管理委託契約--あるいは社債契約かもしれませんが--約定があるということを前提に,そのような権限行使のオプションを認めることとしてはどうかという点が,米印の一つ目でございます。  米印の二つ目についてですが,そのような権限行使を約定で認め得るとした場合に,更にそれを一般的な権限の行使にまで拡大し得るかどうか,309条ノ2第1項各号に掲げる他の行為についても同様の取扱いができるかどうかということについて御検討いただきたいと思います。  (4)ですけれども,商法上債権者保護手続が要求されるような場合においては,社債権者は,通常の債権者としてではなく,社債権者集会による意思決定のもとに異議を述べるという形になっているわけですけれども,より社債権者に対する債権者保護手続の実効性を高めるという観点から,社債管理会社に催告の受領の地位を与えるとともに,社債権者集会の決議を要せずに,社債管理会社の方で異議を述べることができるという形を認めてはどうかという意見を紹介するものでございます。  それから,4は「社債権者集会」でございますが,現在,社債権者集会が決議し得る事項は,法定決議事項のほか,特に重大な事項であって裁判所による許可を得たものに限られているところでございます。他方,決議の効力については裁判所による認可手続が要求されておりますので,ある意味,法定決議事項以外の事項については裁判所によるチェックが二重にかかることになっております。裁判所の実務からも,最終的に認可手続が要求されているのであれば,決議事項としての当否についての裁判所の判断は不要ではないかという御指摘もいただいているところでございますし,それ以外からも同様の実務的な御指摘をちょうだいしているところでございますので,それらを踏まえ,法定決議事項以外の事項を社債権者集会が決議事項とすることについて裁判所の許可を要しないこととしてはいかがかということでございます。  この場合に,そうは言っても決議し得る事項に何らかの枠をはめるかどうかということも一応問題になり得るところでございます。認可手続があることを重視すれば,必ずしもそのような必要はないということにもなり得るところでございますが,例えば社債契約に定めた事項に限ることとするかどうかといった点も含めて御議論をちょうだいしたいと思います。  (2)は,決議の成立要件についてであり,社債に関する項目の中で最も手当てが求められているところの一つであると思われます。まず,本文は,会社更生手続における関係人集会で先ほどのようなオプションが認められていない場合,社債管理会社が社債権者集会の決議に基づいて議決権を行使する際の社債権者集会の成立を確保するための手当てとして,どのような工夫が考えられるかということについてでございます。  無記名社債について,その定足数の確保が極めて困難であるということから,何らかの工夫が迫られているところでございますけれども,A1案は,定足数というものをそもそも廃止した上で,いわゆる出席社債権者の債権総額の過半数であって,その賛成者が総社債権に対して一定割合を占めるという場合であれば,その決議は成立するものとしてよいのではないかという案でございます。  A2案は,定足数の算定の分母について,無記名社債の債券の供託がされていないものを除く,つまり,供託がされているもののみを定足数の分母として取り扱うという--裁判所の実務で行われている取扱いでございますけれども--案でございます。  A3案は,かつて存在しました仮決議の制度を復活させるというものでございます。仮決議の制度といいますと,少なくとも期日を2回開くということになりますので,それなりに時間を要することになるわけですけれども,このような方向の方がよろしいかどうかということでございます。  なお,本文は会社更生手続に限った議論をしておりますけれども,社債権者集会の特別決議が要求される場面一般について今のような成立要件の緩和が図れるかどうかという点が,米印の2番目でございます。  それから,「5 新株予約権付社債」ですけれども,(1)は,新株予約権付社債についての記名式証券の導入の是非でございます。  新株予約権付社債については記名式というものが認められていないわけですけれども,実務の一部においては,いわゆる記名式の証券の導入を求める御意見があるやに承知しているところでございます。  この場合,一方で新株予約権については,その譲渡制限について株式類似の所要の措置が講じられているところでございますし,他方において記名社債については,かつての社債法の改正の際にもその廃止が議論されながら,結局今日に至るまでその制度が維持されているところでございまして,その移転等の規律も漠としたものながら307条に残っているわけでございますけれども,現行のこれらの記名社債に係る規律,新株予約権に係る規律を踏まえて,新株予約権付社債について何らかの記名式なるものの導入の実務上の必要性があるとした場合に,どのような制度設計が考えられるかが,ここでの問題意識でございます。米印の三つは,そのことを,視点を変えて敷えんさせていただいているものでございます。  (2)は,有限会社における新株予約権付社債に相当する社債の発行の許容の問題でございます。株式会社と有限会社との規律の一体化をする場合には,その検討は避けられないと思われる問題の一つであり,先ほどの有限会社における社債の発行の許容と同列の問題でございます。  (3)は,強制転換条項付新株予約権付社債の制度の導入の可否についてでございます。実務的にこのようなニーズがあるという御指摘があるところでございますが,具体的なニーズの有無とともに,その導入の可否について御議論いただきたいと思います。  第2の「社債」について,取り急ぎましたが,以上でございます。 ● 重要な問題とそうでない問題とありまして,時間の関係もありますので,できれば重要な問題に絞って重点的に御議論をいただければと思います。  まず,1でありますけれども,この点につきましてはいかがでしょうか。有限会社の社債発行でありますが。  ただ,株式会社と同様の規律とすべきであるといっても,これも取締役会がないですから,2の(1)の一番下の米印の問題はあるわけですね。 ● そのとおりでございます。 ● そういうことで,1自体についてはいかがでしょうか。--よろしいでしょうか。  それでは,2。2は(1)に米印が非常にたくさん並んでおりますが,2の(1)についてはいかがでしょうか。 ● 社債の発行決議でありますけれども,取締役会に付議しなければならないものについては,「多額の社債」というふうにしていただいたらどうだろうかというのが1点と,少なくとも重要財産委員会における社債の発行決議,そこは授権を認めていただいたらどうかと。以上2点を要望いたしたいと思います。 ● その点については,事務局,何か今御意見ありますか。 ● 重要財産委員会につきましては,その権限の範囲の見直しについてまた別途お諮りしたいと思っております。  多額の社債に限るという点につきましては,なお検討させていただきたいと思います。 ● それでは,そういうことで。  この具体的に挙がっている米印についてはいかがでしょうか,○○委員は。 ● 賛成でございます。 ● 一番下の米印については何か御意見ありますか。  具体的には,取締役の過半数で発行するということにするのか,それとも株主総会の決議を要するというようなことにするのか。まあ,考えられるのはその二つぐらいですね。  何かその点については。 ● 社債の定義ともかかわるところです。 ● 何かその点について御意見ありますか。この最後の米印につきまして。  それでは,特にこの場では御意見がないということですと,またお考えいただくということで。  ほかの三つはいかがですか。これについては,○○委員は賛成ということですが,ほかの委員の方,何か御意見ございますでしょうか。  ○○委員も何かありますか。 ● 現在より柔軟化することには賛成ですけれども,ちょっと具体的にどこまでというのは……。シリーズ発行なんかあり得ていいように思うのですけれども,それは次の売出発行との関係で申し上げさせていただきたいと思います。 ● それでは,また後で戻っていただいても結構ですから。  (2),(3),(4),これは一まとめでいいと思いますが,どの点でも,(2)から(4)までについて,何か。 ● (2)で,実は金融審議会の場でこの問題は議論したことがございまして,長信銀法をいわば吸収する形で,銀行の発行する普通社債の方に収束させようということを検討していて,今ちょっと中断しているのですけれども,その過程でこの売出発行が問題になりまして,そこで有力に出たのは,むしろこれは商法の問題ではないかということだったのですけれども,そもそも売出発行って何だろうということを考えますと,一体どれだけ普通の社債の発行と違うのかと考えると,余り違うところは多くはなくて,一つは,さっきの296条との関係で,シリーズ発行が許容されればかなりそれでカバーされますし,あとは301条の社債申込証の作成の問題,そして,あとは公告と公示の問題などは,これは長期信用銀行法の11条の5項の問題でありますが,それはちょっと細かい問題としてあるのですけれども。  そういうことを一つずつ考えていきますと,シリーズ発行ですとか,社債申込証の問題等が,上の(1)の方で,あるいは次の(3)ですけれども,仮に合理化されると,商法の上でも可能であって,あとはもう一つは,銀行の場合,業法的な問題がちょっとあって,窓口で売るということがどうなんだと,いわば発行者が自分で売ることの問題があるのですけれども,これも普通,社債の発行者が自分で直接引受人に発行すること自体を禁じているわけではないので,そういうことも可能ですから,さっきの点などが柔軟化されましたら,別に売出発行なんていうことをわざわざ規定しなくても,実際上同じことはできるということで,問題が,解決ではなくて,解消していくのではないかという感じがしております。  次の社債申込証ですけれども,これは,もしか違う点があるとすると,ちょっと前までは証取法の目論見書というのは建前上は必ず発行を受けた人に交付しなければならないことになっていたのが,実際には交付されていなかったという問題があって,そこに大きいネックがあったのですけれども,最近これが実際に交付されるようになってきておりますので,その点では余り区別する意味がなくなってきている。かつては業法的な意味,銀行と証券の分離の大きい意味があったのですけれども,そこの点も今ではそういった深刻な問題はなくなっております。あと,仮に違うとすると,301条の1項で,署名を求めて,それだけより慎重な手続を申込証の方はしているのが,目論見書の方は,現在でもせいぜい交付するだけ,かつては交付さえ実際にはしていなかったということがあったものですから,その点がきちんと担保できれば,この点は認めてもいいのではないかという感じがします。 ● 私も,(3)のような検討の方向というのは非常に意味のあることではないかというように思うわけです。  ここの問題に限らず,証取法適用会社における証取法と会社法とのすみ分けと接続みたいなことは,一般的にあちらこちらで気をつけながら見ていく余地があるのではないか。先ほどの3(3)の一番最後の米印のところですけれども,有価証券報告書を提出している会社は,もう実際は決算公告義務を免除すべきであると,これはそれでいいと思いますし,それから,目論見書が交付されて,それに署名を求める方がいいのかどうかという問題とか,いろいろ詰めなければならないかもしれませんが,基本的に社債申込証と同じような性格のものということであれば,むしろつなげて,役割分担をするような形で考えていった方がいいと思いますし,もしそうだとすると,今度は株式申込証の方はどうなるのかということもあわせて検討した方がいいのではないかというふうに思います。 ● では,大体,(2),(3)については,方向としては委員の皆さんの御意見は一致しているようですが,(4)についてはいかがでしょうか。これらは不要なのではないかということですが,何か御意見ありますでしょうか。--よろしいでしょうか。  それでは,3の「社債管理会社」に進ませていただきますが,まず,「(1)資格要件」でありますが,この点について,いかがでしょうか。どなたか御意見ありませんでしょうか。 ● 基本的方向としてはこういう方向だろうと思うのですが,具体的にどのような形で考えたらいいのかお教えいただければと思います。  そして,言葉の問題ですが,機能を強化するために資格要件を緩和するのではなくて,やはり範囲を拡大する話ではないかと思うので,ちょっとここ,強化で緩和と言われると,感覚的に混乱するなと。まあ,これはゆっくり考えていただきたいと思います。 ● ○○委員,○○委員,何かこの点につきましてございますか。 ● 今の強化と緩和については,この意味がよく分からなかったのですけれども,資格要件を緩和することについては賛成であります。 ● 確かにややミスリーディングな表現で申し訳ないのですが,現在の資格要件を充足するものよりもよりデフォルト時にふさわしい能力を持った者がいるとした場合には,それらを加えることが機能強化と言えるのではないかという趣旨でございます。これは,例えばアメリカでは,このような事態に,より専門の会社に交代するというように言われておりますけれども,そのようなことも念頭に置いてこのような表現にしているところでございます。  特にこの点について腹案があるというわけではありませんけれども,これまでいろいろと各方面から御指摘をいただいている中では,サービサーはどうであるとか,あるいは弁護士とか弁護士法人はどうであるとか,そういった御意見などがあるところでございますので,率直に御意見を伺わせていただければ幸いでございます。 ● では,何か具体的な御意見がこの場でなければ,またお考えいただくということではいかがかと思いますが,そういうことでよろしいでしょうか。  (2)につきましてはいかがでしょうか。利益相反の規制をより強化すべきではないかということで,米印が三つ挙がっておりますが,いかがでしょうか。 ● (1)の資格要件では緩和しながら,(2)の方で利益相反に対処するための規律を強化するという方向に賛成です。  ちょっと教えていただきたいのですが,米印の1番目については,現在では,解釈でもって,こういう管理会社が行うべき管理の内容を契約で定めることができないという,こういうことになるのでしょうか。  今度は2番目の米印でございますけれども,これは大いに賛成で,是非強化すべきだろうと思います。  3番目の米印ですが,確かに,利益が相反する事態が生じた場合におやめいただく,一方的にやめていただくのもむしろ認めた方がいいのではないかということなのですけれども,そうしますと,責任がいろいろかかってくるからという形でするりと抜けてしまうという心配は逆に起こらないものなのでしょうか。もしもこれが,法定事由でもって利益相反関係にある者は社債管理会社になれないということを厳しく資格要件として,そちらの方は厳格にしておいて,それに当たった場合にはやめなければならないということであれば,それはいいかと思うのですけれども,契約で決めておき,かつ,いざというときにはやめることもできるというのであっては,いいように使われてしまわないかということが逆に心配になるように思うのですが,いかがでしょうか。 ● 最初の米印に関しましては,これは社債法の改正のときに非常にもめまして,要するに約定権限というものにつきましては条文にはどこにも入っていないということでありまして,どうも文言解釈をしていきますと,社債の管理というのは法定権限だけだと。だから,法律上,善管注意義務が強行規定としてかかってくるということにはならないというのが現行法なのですね。善管注意義務を負うかどうかも含めて,それは契約で決めればいいことだというのが現行法だと思います。これは恐らく,こういうことになりますと,約定権限,つまり財務上の特約等に関しましても,その財務上の特約違反があるかないかということにつきまして強行規定として善管注意義務が社債管理会社に負わされるということになるのだろうと思います。 ● 平成5年の商法改正の前提となった議論においては,今とは全然事情が異なりまして,メーンバンクたる銀行の関与というものを極力社債の発行時点からは排除すべきかどうかという点について綱引きがあったところでございます。約定権限の典型例は,例えば財務制限条項を置いた上で,その財務内容をウォッチングする権限として社債管理会社たる銀行に付与するもろもろの権限でございまして,その約定権限というものを表に出すことによって,発行自体についての社債管理会社たる銀行の発言力を強めるということを是としないという方向から,約定権限という文言が全く法律上に置かれないこととなったという経緯がございますが,その事情は一変しているところでございますので,むしろ手当てをすべきが望ましいのではないかという御提案でございます。 ● 3番目の米印については。 ● 不適切な辞任によって社債権者に損害を与えるとした場合に,辞任した社債管理会社の責任を追及することができるかどうか。追及されるべき手当ては当然必要だと思いますけれども,そのような手当てを置くにしても,やはりいわば逃げる形での辞任を認めることが適切ではないということであれば,このような措置は講ずるべきではないということになろうかと思います。 ● 米印の3番目ですが,現行制度だと312条の3項で,裁判所の許可を得れば辞任することができるのですが,そして,やむを得ざる事由というのがやや厳格に解される余地もあるから,このやむを得ざる事由と裁判所の許可を排除して,約定しておけば自由にやめられるというふうに変えたいと,そういうことですか。 ● ここに出ている案はそういうことではないかと理解していますが。 ● それは,やはりこの3項というのは,やむを得ざる事由も含めて相当厳しいという御認識があったというか……。 ● 少なくとも米印の3番目での辞任については,312条1項後段の,事務を承継すべき後任者を連れてきていることが前提でございまして,3項とはその場面では違い得るわけでございます。  ちなみに,担信法の97条で,信託契約に基づく辞任というものが認められておりますので--これが即社債管理委託契約になるのか,社債契約に含まれていなければいけないのかということはちょっと詰めなければいけませんけれども--そのような約定でのオプションというのが担信法の97条との比較において可能なのかどうかということもあわせて考えているものでございます。 ● これは,そういうことでは規定の整理の話なのかもしれません。  実質的に重要なのは,二つ目の米印ですが,何か御意見ございますか。 ● まず,最初の米印について言えば,先ほど○○幹事から御説明のありましたとおり,かつては業際的な問題でこういうことになってしまったわけですけれども,現在はそういう問題はもう余り問題にならなくて,むしろ実務的に管理会社の約定権限をきちんと認めるという形で規定していくのが妥当だろうと私は思っております。その意味では,この297条ノ3にかかるところだけではなくて,ほかのところでもそれぞれなるべく規定を整理した方がいいだろうと思っております。  次に,二つ目が非常に大きい問題で,現在は状況がかつてと変わってきている,かつてのメーンバンクの力の関係の議論が意味をなくしてきているということは事実なのですが,一方で,現在でも社債管理会社の大部分がメーンバンクであることも事実でありまして,この規定の修正は,実際の社債管理会社の実務に非常に大きい影響を与えるだろうと思います。  そういう実務の実態を考えると,単に理屈だけで簡単に割り切ることもできない問題かなと思っておりまして,例えば相殺でも,3か月内というこれを,消滅に関する行為を一体どの時点において考えるのか。例えば,相殺に関する例の破産法104条2号で,「前ニ生ジタル原因」についてはという書き方になって,その前に生じたる原因をこの3か月で考えるということを意味されるのか,そこもちょっとよく分からなくて,相殺権を行使した時点なのか,ちょっとそこら辺もよく分からないのですけれども,これはやはり少なくとも3か月よりも前にそういう相殺の期待が生じるような原因関係が生じている場合は,これは相殺権が行使できるとしないと,多分これは管理会社としても非常につらいし,それはそこまでのことを要求することはないのではないかと思います。  それから,誠実義務の規定ですね,これは,部会長がさっきおっしゃいましたように,大激論の末に現在のような形になったわけで,現在の規定自体が非常な妥協の産物で,これは分かりにくいし,解釈が難しいし,実務的には非常に困る規定で,これを直すというのは,私もすべきだと思うのですけれども,直し方は,誠実義務を強化すればそれでうまく問題が解決するだろうという問題ではないと思っておりまして,5年改正のときに非常に激論があって,学者側からは強い意見で採用されなかったのが,アメリカの連邦の信託証書法の311条の,ファンドをつくっていわば管理会社が取ってきたお金については,否認の問題は別にして,社債管理会社がこういうような形で債務会社からお金を取ってきたときは,それは社債権者と管理会社との間で平等に分配しなさいという規定になっているわけですね。アメリカの311条の規定は。そういうふうな規定があれば,管理会社の方も--これは,もしか形式的にすべて管理会社の方が劣後することになってしまいますと,一生懸命回収してくれないわけですよね。だから,アメリカの行き方は,少なくとも回収してきた部分については平等に分配するわけですから,管理会社にもそれだけインセンティブがあるわけで,そういう行き方の方が合理的だと思っておりまして,311条的な規定は非常に規定しにくいということで結局平成5年のときにはその規定は採用されなかったのですけれども,実際の社債発行会社が破たんするときの実態を考え,実際にどういうことが起きるかということを考えてみると,やはりアメリカ的な行き方の方が合理的ではないかという気がしておりまして,そういう実際上与える影響を考えて,ここは単にそういう3か月のこれを拡張するとか,そういう形だけで対応するのではなくて,本当に少しでも社債権者にプラスになるようにするにはどうしたらいいかという観点から,そういう法制も是非検討していただきたい,改めて検討していただきたいと思う次第であります。  最後の三つ目の米印,これまた大きな問題で,アメリカのトラスティーの実務は,実際にはみんな逃げてしまうんですよね。それを認めることにもなりかねないので,非常に難しいのですけれども,一方で,余り厳しいことを言い出すと社債管理会社の方もたまりませんので,ある程度承継会社で,相当なものを承継会社に選任した場合には抜けられる可能性はやはり認めざるを得ないのかなという感じはしております。 ● ほかに,この(2)について御意見ございますでしょうか。  それでは,またこれもお考えいただくことにして,事務当局でも検討させていただきます。  (3)でありますが,これにつきましてはいかがでしょうか。  これは,社債管理委託契約に定めがあるときは,社債管理会社が社債権者集会の授権なくして関係人集会において議決権を行使することを認めるべきではないかというのですが,実際にこれを置いても,恐らくそういうことを定めることはしないであろうと。更生計画案等でどんな案が出てくるか全く分からない間に,全部私が引き受けますよとはなかなか実際上言わないと思いますので,社債管理会社も,だからこれは--まあ,もちろん,それをやりましょうという会社があれば認めてもいいと思うのですが--これだけ置いても問題は解決しないので,恐らく社債権者集会の成立要件ですね,4の(2),こちらを検討せざるを得ないというような問題かと思いますが,この点はそういうことでよろしいでしょうか。(3)はそういう問題だと。それは,それを引き受ければいいけれども,恐らくは引き受けないでしょう。  それでは,(4)はいかがでしょう。現在は,債権者保護手続について,社債管理会社は社債権者集会の決議がなければ異議を述べられないのですが,それを決議なしに異議を述べるということも認めてはどうかということでありますが。 ● (3)の話,会社更生法の方でもいろいろ御検討されてきたわけでございますね。その問題との役割分担といいますか,あちらにお任せするのか,こちらでするのかという,その方針などについて何かお立場がございますでしょうか。 ● では,私がたまたま会社更生法を担当していましたので。  会社更生法のときには,商法の先生方にも部会にお入りいただき,それから,その外の研究会などでもいろいろな議論がされましたけれども,そのときの大前提は,商法の社債法の規定でうまいこといかないケースが現に生じている,そのことについて,本来は商法の社債の規定の見直し,特に授権の決議の要件や在り方についての見直しが抜本的な解決になることは衆目の一致するところだけれども,それは少し後になるので,現に次々社債発行会社がデフォルトになっている状況のもとで,先にできる会社更生法の方で商法の規定と矛盾しない範囲で手続的ないわばパッチワークを当てようと。それが,こちらの方,つまり商法の本体の方が合理的な形で規律が変わって,手続的な特則を設ける必要がなくなれば,場合によってはやめてしまうこともあり得べしだと。こちらが本家で,手続はあくまで継ぎはぎで,最低限度のことをしたつもりです。 ● そういうことでございます。 ● 私もその審議に加わって,全然意見を入れてもらえなかったのですけれども,会社更生法190条がそれにかかわるところで,結局,届出をした社債権者の金額でだけ議決権を実際にはカウントしますよということになったわけですね。そうしますと,届出をする社債権者はほとんどいませんから,社債権者の声がほとんど関係人集会での決議に反映されないという実際上の効果が出てしまうのですね。そこで,私は,社債権者だけで特別の組をつくって,そこで決議をするというような制度にしてほしいと申し上げたのですけれども,全く少数説で,受け入れられなかったのですけれども。  そういうことを考えますと,ここで社債権者集会を成立させないと--させれば,社債権者の全部の額で関係人集会で議決権を行使できますから,本来の社債権者のインタレストをちゃんと関係人集会の決議に反映させることはできるわけで,そのためにも,少なくとも会社更生法190条のような規定をされてしまった以上は,関係人集会にちゃんと反映させるためには,社債権者集会で決議が成立するような工夫をする必要があるということになっていると理解しています。 ● 恐らく,これとの関係では,4の(2)を御議論いただいた方がいいのではないかと思うのですが,いかがでしょうか,この4の(2)につきましては。A1案からA3案までありますが。 ● 実際上決議の成立を可能にするためには,A2案しかないのではないかというふうに思います。 ● ほかの方,いかがですか。  A2案だと,非常に少ないあれで決議が成立してしまいますが。 ● 何らかの形で手当てしなければならないということはよく分かるのですけれども,A2案ということになりますと,今おっしゃったような問題があり,先ほども,会社更生法の方でも,届け出なければ多分なってしまうという,それに類した話になるというように理解してよろしいのでしょうか。少し行き過ぎで心配な面がございますが。  A3案は2回もやらなければならないということで大変かもしれませんけれども,いずれにせよ置いておいてもいい規定ですね,恐らく,という印象を持ちます。  現実的な問題として,A1案をいろいろ検討するのがよいかと思うのですけれども,しかも,何もそれは社債権者集会の特別決議の成立要件一般として検討してもいいかと思うのですが,ちょっと気になりますのは,定足数を廃止したいというのは分かるのですけれども,それに加えて出席社債権者の債権の総額の過半数でよいというふうにしてしまうということがここに入っておりますね。その上で,それでは余りにもということで,総社債権者の債権の総額のどれだけかに当たる債権を有する者は同意しなければいけないと,こういう三本立てになっているかと思うのですが,2番目の柱の,出席社債権者の債権の総額の過半数に行ってしまうということが,これは考え方の問題にやはりつながってくるのではないかと思うのです。ほかの株主総会の特別決議であるとか,そういうものも含めて,やはり3分の2ということ,一応,御審議いただいた方々のうちの過半数ではなくて,3分の2の合意が得られるものがやはり特別決議なのだというようなものを一本柱として維持しますと,それは割合分かりやすいということになると思うのです。ところが,株主総会の方は3分の2ですよ,こちらは過半数ですよとか,振り分けていきますと,じゃあ一体特別決議って何なんだみたいな根本の問題を引き起こしてしまわないか。となると,3分の2というのは一応残しておいた上で定足数を外すということと,その後,少なくとも,でもどれだけかの賛成は実質上あるという,その組合せなんかの方が整理がしやすいのではないかというふうに思うのですが。 ● おっしゃるように,A2案はそういう問題がありまして,実際上はこれは裁判所の認可にすべてかかってくるということになるのですね,そういう少ない人数で成立したのを認めていいかということで。  実際上は,何パーセントかが出席していないと裁判所は認めないというのが現在の実務のようでありまして,それがA1案の考え方だと思うのです。  A3案といいますのは,これは確かに,あってもそれなりの価値はあるのですが,恐らくA3案だけではなかなか回らない。というのは,倒産しそうな状況なのですから,2回やってはいられないということで,もちろんあってもいいのですが,これだけでは恐らくだめだということではないかと思います。  それで,おっしゃるとおりA1案の過半数でいいのか,3分の2じゃなくていいのかというのは,確かに一つの問題点ではあろうと思います。 ● 20%というのは,可能性はあるのですか。今の実態からいたしまして。機関投資家に割り当てているようなやつは分かるのですけれども,そうではなくて,一般的に公募しているものは。 ● 今の裁判所の運用は20%ですか。--既に何か事件があって,そのとき認可したのは20%というのがあったそうです。 ● では,それ以外のものはもう流会になる。 ● 裁判所がもう認可しない。余りに少ないから,それは社債権者全体の意思だとはちょっと認められないという扱いなんじゃないでしょうか。 ● それは,実際幾つかデフォルトが起こった事例で,民事再生のときは中小企業だったような記憶なのですが,上場企業で社債を発行しているところがデフォルトを起こしたような場合は,大体一けたしか意思表示をしないというのが普通の例ではないでしょうか。 ● 一けたですよね。 ● 先ほど,○○委員から,A1案の過半数ということの問題の提起があったのですけれども,この(2)で問題にしているのは,更生手続がもう開始されているという,いわば有事といいますか,平常時ではない。で,更生計画とか再生計画なんかの決議要件も昔と違って緩和されているということも考慮して,ここは過半数にされたのではないですか,事務局の案は。だから,下の方の米印の一般化する場合はまた別で,更生手続だから過半数という考え方なのかなと思って読んでいたのですけれども。 ● A1案はどちらかというと,割合が総債権との間で何パーセントかを占めるという要件をかぶせることで定足数が外せるという考え方がとれるかどうかということをお諮りしたいという趣旨でございますので,確かに会社更生手続において,決議要件の緩和が望ましいかどうかという議論はありますけれども,それはそれとして,定足数の外し方として何が適切なのかという観点から御議論いただきたいと思います。  それから,20%というものが仮に実現不可能な数字であるとした場合には,定足数を外すという意味合いにおいてそれを何パーセントまで下げられるのか。それが難しいということであれば,A1案自体を採用することは困難だということになりますので,これまでの実務の在り方もこちらの方でも踏まえつつ検討したいと思いますけれども,何か更に御指摘いただくことがあれば,御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 御説明の中で,A2案で,これが裁判実務だというような御説明があったし,後の議論のところで,このコンテクストで3%が何か基準になったような御説明があったのですが,そこを,確認の点,もう一回お教えいただければと思うのですが。何かそういう話があったような記憶が……。それとA1案のような20%云々という話とが,ちょっと実務状況がこちらの方で頭の整理ができなかったものですから。 ● 私の理解では,実際上,A2案のような解釈がどうも行われているようです。分母は供託されたものだけで計算すると。  そうなった場合に,裁判所としては,しかし供託される量が非常に少ないと,それを本当に認可していいかということが出てきて,そこである程度のパーセンテージがないと認可しないということが,そのときの裁判所の取扱い。そこでA1的な取扱いが実質上裁判所では現在は行われているのではないか。それが20%か,先ほどありましたように数パーセントかという,そういう問題はあるかと思います。  それでは,これもまたお考えいただくとして。  3の(4)はいかがでしょうか。  これはたしか産業再生法で,何か会社分割の関係で--現行の商法は,債権者保護手続に関して催告を受領しなかった債権者については連帯責任を負うということがあるわけですけれども,今度改正された産業再生法では,社債管理会社に通知すれば社債権者に通知したことになると。つまり連帯責任を免れるという形になっている。もちろん主務大臣の認定があった場合なんですけれども。  ところが,それでは社債管理会社はそういう通知を受けて社債権者集会を開かずに異議が言えるのかというと,そこの手当てはないと。だから,結局のところ,それで1か月内には社債権者集会を開けませんから,結局は何か連帯責任だけ免れてしまったという,そういう状況がどうも生じている。私の理解ではそうです。産業再生法のもとではですね。どうもそういうことでいいのかなと。やはり異議は言えなければおかしい。  それから,実際問題として,現在の制度で減資,会社分割等のときに異議を言うのは,社債権者集会の決議がないと異議を言えないということだと,なかなか実際上難しいだろうと思うのですね。という問題がありまして,4は必要ではないかと私は思っておりますが。  それから,昔は,合併なんかについては,銀行の力が強いときは,いわゆる募集の受託会社の承認を得ろと書いてあったんですね。ですから,実際問題として,権限を与えられれば社債管理会社は異議申立てぐらいはするのではないかと。 ● 異議申立ての権限は是非必要だと思いますね。 ● それでは,これはその方向でということでよろしいでしょうか。  4の(1),これも割と大きな問題なのですが,いかがでしょうか。 ● これは社債管理委託契約に定めがなくても,もうどんなことでも決議できるということなんでしょうか。 ● そこは,そのようにするかどうかということを含めてお諮りしたい点でございます。 ● 確かに,2度のチェックをやめて,決議成立後のチェック,認可のチェックだけでいいというのは,それはそのとおりだとは思うのですけれども,果たしてどんな事項でも決議できるとまで言えるのか。若干そこだけは引っかかったところです。 ● ただ,そうしますと,何か限られてしまうと,およそできないのかと。社債契約で変更は一切できないということになってしまうかと。漏れていると。 ● 漏れているとですね。そこの管理会社の能力にどれだけ期待するかということなんでしょうね。  若しくは,極端に多数決ではまずいようなことが決議された場合であれば,認可で全部ちゃんとやれるのだということであれば,それで結構だと思います。 ● それでは,これも検討させていただくことにいたしまして,「5 新株予約権付社債」でありますが,まず,(1)はいかがでしょうか。  これは,現在は無記名式に限られておりますので,私募で譲渡制限をかけるのは非常に難しくなっておりますので,私募で譲渡制限をかけたいということを考えますと,何らかのこうした記名式証券というものを認めざるを得ないのだろうと思いますが,ただ,そうなりますと,現在のこの記名社債の移転の規定でいいかという問題が出てくるわけですね。記名社債,307条でしょうか,これはずっと古い昭和13年改正前の記名株式の譲渡の規定と全く同じでありまして,御承知のとおり委任状付きで転々としていたわけですね,当時の株券というのは。それが現在のあれに,記名社債であっても,それでいいのかという問題があるのではないかと。もうちょっと307条自体を現代化する必要があるのではないかという問題だろうと思います。  これは,何らかの現代化の検討をするということはよろしいでしょうか。  (2)はいかがでしょうか。--よろしいですか。  (3)はいかがでしょうか。 ● よろしくお願い申し上げます。 ● これは結局,いわゆる転換価格に達しなかったときの問題なんですね。転換価格に達しておれば,これは任意繰上償還しますよと言えば転換されるに決まっているわけですから,転換価格に達していないけれどもこれは株式に転換しますよということを会社が言えるようにするということなのですが。実務上のニーズは○○委員のおっしゃるようなところもあるらしいのですが。 ● 買う人もそういう条件で買うわけですので,それで取引が成立するのであれば,よろしいのではないかなと。 ● 他方では,いろいろ問題を起こした,いわゆる他社株転換社債に似た話が出てくるわけですね。だから,それは売り方の問題だということなのかもしれませんが。  絶対いかんという御意見はありますか。 ● 設計の仕方もいろいろあるだろうと思うんですよね。魅力ある仕組みにするのもいろいろな企業の知恵だと思うものですから,売れないからやってもむだだとおっしゃらずに,弊害がなければ認めていただきたいと思いますけれども。 ● では,これもその方向で検討させていただくということで。  最後,ちょっと時間があれですが,外国会社の御説明をお願いします。 ● 第3もちょっと時間を急いで御説明いたします。議論が足りないところは次回の冒頭にまた御議論をちょうだいできればと思いますので,説明だけは差し上げたいと思います。  第3の1は,外国会社に関する規定についての現代化における問題点でございます。  482条におきましては,いわゆる擬似外国会社について,我が国と同一の規定が適用されるべきことが定められております。これについて,設立に係る規定も適用されるという理解を前提にいたしますと,要は,我が国の会社法に基づく設立手続がとられていないということから,その疑似外国会社の法人格が否認されるという結論が導かれるわけでございます。仮にこのような考え方をとりますと,法人格が否定されることに伴う相手方の保護として何らかの措置,481条2項に相当するような規定の手当て等の措置を講ずる必要があるのではないかというのが,ここでの問題意識でございます。  他方,482条のような擬似外国会社についての特別な規定を設けておくということが,特に法人格の否定という法的な安定性を損なう結果をもたらすということになりますと,擬似外国会社についても特別な取扱いをしない,要するに一般の外国会社と同じに扱うという選択肢もあり得るところでございます。  これらの考え方について御意見をちょうだいしたいというのが,1点目でございます。  (2)は,商法483条におきまして,外国の会社が発行する株・社債等について,日本法の規律が適用されるべき旨が定められているわけですけれども,実際問題としてこの規定の実効性が疑わしいということから,国際私法の考え方に従うこととして,483条のような独自の規律は設けないということとしたらどうかという問題でございます。  (3)は,外国会社の日本における代表者について,その全員が日本に住所を有しなければならないこととなっている点につきまして,代表者の登記をするということでありましても,その全員が日本に住所を有することまでは要しないものとしてはいかがかということでございます。  第3の2は,いわゆる会社法における子会社関連規定の現代化における取扱いの問題でございます。  子会社に関する規定というのは,例えば社外性に係る資格要件,子会社調査権,閲覧請求等の対象文書,連結の範囲,それからここにも書いてあります親会社株式取得規制等に関して,会社法ではよく出てくる概念でございますけれども,ここでいう子会社が,我が国の法律に基づいて設立された会社のうちの株式会社・有限会社に限るということにするのか,あるいは合名・合資会社,あるいはその他の我が国の法律に基づく法人,更には外国会社も含めた法人等の団体をも含むこととするのか,規定の性質によってその区分はいろいろあり得るところだと思いますけれども,その辺りの整理について御意見をちょうだいしたいというところでございます。 ● それでは,御議論いただいて,時間の足りないところはまた次回ということにさせていただきたいと思いますが,そういうことですので,これは全体を通じて御意見を賜れればと思いますが,本日のところは,いかがでしょうか。どなたでも。 ● 「子会社に関する規定」のところでございますけれども,「外国会社等」という表題のもとで極めて重要なのがここにぽんと出てきているわけでございますけれども,子会社概念につきましては,連結計算書類につきましては,この実質支配という考え方で分かるのですけれども,今の社外性の問題等につきましては,それから株式取得規制等の規制との関係からは,やはり子会社概念は従来どおりとしていただきたいということが一つです。  それから,外国会社,外国の子会社を子会社とするのは結構だと思うのですけれども,例えば,そこの子会社調査権が先方の準拠法においてはそういうのは認められていないとかいうことがあったときの,そういう抵触があったときの措置等についてどう考えられるのかということについて御整理いただきたい。  それから,「親会社株式取得規制の在り方については,なお検討する」とありますけれども,これを,取得規制を一定の財源規制のもとで緩和するという方向を引き続き御検討いただきたいと,そういうふうに思います。  1につきましては,特段指摘すべき見識を持ち合わせておりません。 ● ほかの委員・幹事の方,どうぞ。 ● 1の(3)の「外国会社の日本における代表者」なのですが,これは,少なくとも1名は日本に住所を持たなければいけないというのは,必然的なあれなのか,あるいは単なる政策的なことであるのかということなのですけれども。 ● これは恐らく訴状の送達なんかの……。 ● 去年の改正で営業所設置義務を撤廃したのですけれども,外国会社の日本における代表者は置かなければいけないと。そしてそれを登記しなければならないということにしてございます。登記するためには,住所のないものは登記のしようがないので,その登記技術の問題として,まず第一に日本に住所がなければならないということになります。  それと,部会長が今言われかけたことですけれども,外国会社の日本における代表者というのは,普通裁判籍になるわけで,そのためにも,つまりいろいろな--代表者という名前が余りよくない名前なのかもしれませんけれども,要するにトラブル処理係を置けということを義務づけているわけですので,そのトラブル処理係が外国にいたのでは意味がないということから,住所は日本でなければならないということになるわけでございます。  ただ,現行の規定ですと,例えば483条ノ3が,日本における全代表者が退任した場合に一定の債権者保護手続をとるということになっているわけですけれども,こういうような規定を設けていることとの兼ね合いで,日本における代表者は全員が--前は少なくとも1人はというのが法務局の考え方だったわけですけれども,この改正によって,すべての日本における代表者は日本に住所を有しなければならないという,これは法務省の民事局通達で出しているわけですけれども,そう変わったわけです。そこがいわば規制強化になっているのではないかという観点からの問題提起だと思います。 ● 今のあれで,そういう観点はよく分かったのですけれども,かつ,規制緩和の方向であるということも非常に評価できるところですが,単に営業といいましょうか,そういう観点からした場合に,企業の経営という観点からした場合には,必ずしも住所が日本でなければいけないということでもないのかなと思いましたもので,ちょっと確認させていただきました。 ● ほかにいかがでしょうか。ほかの委員・幹事の方。  それでは,また次回に御議論いただくということで,この外国会社等につきましては,次回の冒頭に御議論の機会を設けるということで,今日はこれぐらいでよろしいでしょうか。  それでは,そういうことで,私の不手際でちょっと時間が延びまして御迷惑をおかけいたしましたが,本日の議題につきましては終了させていただきます。  なお,事務当局から連絡事項がございます。 ● 大変長時間にわたり御議論いただきまして誠にありがとうございました。  次回は,5月28日,水曜日,午後1時から,場所は法務省本館20階第1会議室で行わせていただきたいと思います。  次回と次々回の資料を一括して事前に御送付させていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● それでは,本日の会議は閉会させていただきます。本日は長時間にわたりまして熱心な御議論を大変ありがとうございました。