法制審議会会社法(現代化関係)部会第7回会議 議事録 第1 日 時  平成15年6月4日(水)   自 午後1時00分                        至 午後5時03分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題    会社法の現代化に関する改正検討課題(4)について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 ● まだお見えになっていない委員・幹事の方がおられますが,予定した時刻が参りましたので,第7回会社法(現代化関係)部会を開会することにいたしたいと存じます。  本日は御多忙の中,お集まりいただきまして誠にありがとうございます。  本日は,前回に引き続きまして,部会資料6の第1の3,「取締役・取締役会等関係」の(3)の「共同代表取締役」からということになると思いますが,前回,私の不手際で予定したところまで進めませんでした。本日は,ここは5時までしかどうも使えないようでありますが,しかし,是非時間をかけて御議論いただきたい項目もございます。そこで,項目の中で,どちらになっても天下の大勢にさほど影響はないのではないかと思われるものにつきましては,さほど時間をかけずに済ませていただければ大変有り難いと存じております。  それでは,(3)の「共同代表取締役」から御議論いただきたいと思いますが,何か事務当局からありますか。 ● 前回,説明を一応させていただいたところですけれども,(3)の「共同代表取締役」につきましては,要するに代表権の内部的な制約として,当該会社においてこのような定めを設けるということはさておき,それを登記することにより第三者にも対抗することができるというようなシステムは廃止してよろしいのではないかということでございます。昭和61年改正試案でも盛り込まれていたことでございますし,実際にこの制度が所期の目的の効果を発揮しているわけではなく,--表見法理によって事実上は有名無実化している,とまでは言えないかもしれませんけれども,--この制度を利用しようとする側から見ると,必ずしも期待する効果が発生していないということもありますので,紛争を回避するというような観点からいたしますと,端的に代表権の制約の一類型とし,登記の問題とは切り離すこととしたらいかがかというのがここでの提案の趣旨でございます。 ● ということでありますが,いかがでしょうか。御意見はございますでしょうか。 ● 私も賛成であります。ただ,一部の外資系企業などで御利用になっているところもあるようですので,実務の方から特に必要であるという御意見がない限りは,私は廃止していいと思います。 ● ○○生命でしたか,そこのところで実際にこういうものが使われているということなのですけれども,今のお話で,実際に使ったとしても,もう一人の共同代表取締役の合意を得ず一方の者がやってしまったという行為についても,それを実際的には無効とはしていない,というのが裁判実務だということになるということですと,やっていることの意味合いは全くなくなってしまうだろうという気がするものですから,今の廃止をするところについて大きな問題はないのだろうと思いますけれども,もう一度,実際に使っている会社の意見もよく聞かせていただいて,その方向でいいのですけれども,本当に困るということがあるのであれば,もう一度蒸し返すと言っては何ですけれども,やりたいと思うのですけれども,今のところはこういうことで。 ● それでは,実務の状況をなお御調査いただきますけれども,一応はこういう方向でということでよろしいでしょうか。--ありがとうございました。  それでは,次に(4)の「使用人兼務取締役等」のところ,これは①②とありますけれども,この点につきましてはいかがでしょうか。これも事務当局から一言ありますか。 ● (4)の①は,委員会等設置会社における取締役会の監督機能の強化といいますか,監督機関化したという,その位置づけの変化にかんがみて,取締役と使用人との兼務については問題があるのではないかという御指摘を踏まえた提示でございます。  ②は,報酬委員会について,使用人兼務執行役についての実質的な報酬決定権限を確保するという観点からは,使用人部分の給与についても同様の決定権限を与えるべきではないかという問題意識に基づく御意見を紹介するものでございます。 ● これについては去年の暮れの座談会で,○○委員が非常に的確な御意見を述べておられますので,是非,○○委員におっしゃっていただいたらいいと思いますが,今,○○幹事がおっしゃいましたように,取締役は執行役を監督する機関で,その使用人というのは,基本的に執行役から指揮命令されるものですから,やはり矛盾するのではないかと思いますが。 ● 座談会で○○委員,それから○○幹事ともお話しさせていただいたのですけれども,制度の趣旨からいいますと,やはり平成14年改正で,監督と業務執行との分離を図ったわけですから,現行法のもとでも,私はむしろ特例法21条の6の2項でそのような解釈ができると思うのですけれども,一部に実務に異論があるようですので,それならばそういった趣旨を明確にするために,兼務をすることはできないという規定を置くのが望ましいと思います。  次の②の報酬については,これは賛成でございます。 ● 実務の方からは,これは非常に混乱するところではあるのですけれども,ここの①でおっしゃっておられるのは,取締役が執行役を兼務することはできる。その執行役が使用人を兼務することはできないという意味のことを言われているのか,執行役を兼務せずに取締役が使用人のみを兼務するということを言われているのか,どちらなのか迷うところではあるのですけれども,いずれにいたしても,執行役といいましても,代表執行役の指揮系列にあることははっきりしているものですから,取締役が執行役を兼務することを認めるということは,そこでもう一つの流れができているといいますか,執行役を兼務できるのであれば,使用人を兼務できないはずはないだろうと。実際上,何々取締役兼執行役何々本部長と,何々本部長というときに,これが使用人なのか,執行役なのか,これはまた迷うところですけれども,何々本部長なるものの名前をつければ,それが同時に使用人ポジションであるというふうなことになると実務は動かないと思います。この意味合いというのはよく分からない,議論をしているところでもよく分からない,どういうふうなことを考えておられるのか分からないということです。 ● 実務上も考えられるのは,使用人を兼務する執行役が取締役を兼任できるかということで,執行役を外して,執行役でなくて使用人を兼ねる取締役というのはまず考えられないし,それは,むしろ先ほど言われた明文の規定にダイレクトに反することになると思うのです。そして,執行役が取締役を兼任することを認めるなら,使用人を兼任する執行役も取締役を兼任していいじゃないかということですが,そのときの使用人として何がイメージされているかで,先ほど本部長と言われましたけれども,結局,今の監査役,旧来型の会社の形態でありますと,取締役というボードメンバーに使用人がつくかつかないかで,ボードメンバーでない使用人に業務執行権限をどこまで与えられるのかという議論がありましたが,今回は執行役という取締役の地位と分離した業務執行機関が明確に定められましたから,基本的に使用人を兼務する執行役も本来はなくていいのだけれども,移行過程で少しその辺混乱があるかもしれませんが,使用人を兼務する執行役は絶対だめだと言わないまでも,取締役というのは基本的に委員会等設置会社ではそれほど多くないのだから,基本的に使用人を兼務するような執行役を取締役にする実務がそれほど多いとは思えないし,先ほど言われたような本部長は,従来からも業務担当というふうな理解が一般的ではないかということで,それほど実務的に心配することなのかなという気がするのですが,私の心配すべきことでないのか分かりませんが。 ● 今のは,取締役・執行役・製鉄事業本部長と,こういうふうなポジションがありますと,それは全然問題ないということですか。 ● それは執行役の役割の名称だから。 ● では,そのときの使用人というのは,取締役・執行役・総務係長,これはどうなるのですか。 ● 総務係長になるレベルの人を何で取締役にするのかというのが,委員会等設置会社の趣旨からおかしいという議論です。 ● 執行役なんですよ。 ● でも,係長を執行役にするという実務が分からない。 ● 今のは実際上はないと思うのですけれども……。 ● そうでないと実務が回りませんと言われたらまじめに考えますが,机上の,ここら辺のことを議論しても時間のむだだと,失礼ながら思うということです。 ● おっしゃっているのは,そこの何々本部長だったらいいけれども,本部長の下に事業部長がいたとする,何々取締役・執行役・本部長で,取締役・執行役・事業部長としますね,その事業部長が本部長の指揮命令を下に受けているというふうな,執行役相互において指揮命令の関係に立つことはいけないということをおっしゃっている。これはそうじゃないですよね。取締役・執行役・社長,代表執行役はいるわけですから,それは認めているわけですよね。おっしゃっている意味は,またよく分からなくなるのですけれども,会社内におけるポジションのそこそこのところについているのだったらいいけれども,例えば部長以下の名前をつけるのはいけないと,こういうふうなことを言われているのか。じゃ極端に言うと,実際はないと思いますけれども,係長だとなぜいけないのか。それが全く分からないのですよ,使用人を兼務してはいけないという意味合いが。 ● 私,この②には,使用人兼務執行役というのはあるように書かれていますが,報酬でこういうことになりますと,本当に使用人兼務執行役だという意味がどこにあるのか。つまり執行役が,係長という--係長がたまたま空席だから,係長が判を押すべきところを全部執行役がついている,それで,その判断も確かにしているかもしれない,しかし,それは本当に使用人を兼務していると言うのか。当然ある系列のもとに入っている係長としての判こを押していても,それは執行役としてやっているのではないかという気が私はするのですが。つまり従来から使用人兼務取締役というのはありましたけれども,それは使用人として大部分報酬をもらっている,そういうことだという説明を受けたことがあるのですが,そうではないのでしょうか。 ● 私も②に大賛成でして,やはりここのところはきちんと押さえるべきだというふうに思うのですけれども,実務の方で,今までも使用人兼務取締役にしてきたのは,報酬決定の部分もあるかもしれませんが,より現実的な問題として,税制上,賞与について費用として落せるのか落せないのかという,その差を考えると,税制が認めている最大限の範囲で使用人にしてしまおうと,常務,専務はだめなのですか,けれどもそれ以外の本部長やら何やらは全部使用人とすることによってできるだけ費用として落せるような賞与の与え方をしたいと,ここに多分あったのではないかと思いますね。そうしますと,もしそうであるとすれば,委員会等設置会社になっても,同じような要求は出てくるのかなと。例えば②の報酬の点の決定の仕方について,まとめてだということがはっきりしても,更に税制の方の扱いが変わらない限り,執行役本部長ということにしたい。それを認めるかどうか,税制によって皆さんが動きやすいようにこちらもするのかという問題かと思うのですが。 ● しかし,実質からいって,どうもそれは○○委員が最初に言われたような,取締役兼執行役兼何とか本部長,これはいいということについては,この点は皆さん御異論はないのでしょうね,係長はちょっと問題ですが。 ● その場合の執行本部長というのが,執行役なのか使用人なのか,実はそもそも更にその前にその問題があって,そこがはっきりしていないところで余計議論が分かりにくくなって混乱していると思うのです。  この辺は人によってイメージが違いますし,先ほど部会長がおっしゃったように,これは天下の大勢に影響するような問題ではないと思いますので,これにたくさんの時間をかける気はないのですけれども,考え方としては,本来は監督と業務執行を分離して,取締役になる人が,いわば経営者の指揮命令下に入るのは本来は望ましくないという前提で現在の制度はできていると思うのです。ただアメリカでもそうですけれども,CEOですとかCFOみたいな人は,これはむしろ命令する側に立つ人であり,かつそういう人が取締役に入っている方が取締役会と執行役の間のコミュニケーションがうまくいくということで,特に21条の6の2項で,それだけは例外的に執行役である人も取締役になれるというふうにしているわけであって,特に例外としてそういうことを認めたという趣旨を考えると,そうではなくて,執行役の本当に指揮命令に従って活動するような使用人の場合は,取締役の地位と両方兼ねるということはない方が望ましいということで,私はこの①に賛成です。  ただ,執行役の定義自体が非常に問題で,ここでまだ詰めていないですし,それを非常に広くとったりすると,両方混乱が生じてくるということは私もあり得ると思います。  それから,執行役の間で一定の指揮命令というか,そういう関係があることは現行法も認めているわけですから,それでありながら何で使用人との間はいかんと言うのかという御疑問はあり得るとは思うのですけれども,どこかで線を引かなければいけませんので,そういうことで言えば,少なくともはっきり使用人と分かるような人が取締役ということは現在の制度の考え方にはなじまないのではないかということで,私は①に賛成しますということです。 ● 実質的には大部分の今いただいた議論の一致はあると思いますので,なお先ほど○○委員が言われた賞与,どういう形であるか,細かいところは,なお事務局,それから○○委員の方で,本当にこの点は大丈夫なのかということを詰めていただいて,改めて第二読会でもう一度確認するといったようなところでよろしいでしょうか。 ● 今の報酬のことも含めてですか,報酬の,使用人兼務執行役の使用人として受ける給与を報酬委員会が決めるということですけれども,これは,実務ですと,使用人を兼務するというときの使用人の給料というのは,ほかの体系で決まっているわけですよね。そこに幾ら執行役の部分として上乗せをするかという話だろうと思うものですから,そのとき,使用人の給与体系についても全部報酬委員会が決めるのだということにはしないでいただきたい。使用人の報酬体系は代表執行役が決めればいい問題であって,これは,こういうことになると使用人の報酬体系を報酬委員会が決めるということを言っていることにもなりかねないわけですよね。 ● 非常に明確化したのですが,先ほどの繰り返しになりますが,現在の使用人兼務取締役は,ずっと使用人だった人が総会で取締役に就任しましたと,その取締役に就任したときに,なんぼ上乗せしますかという話になる。これが今の実務なわけですね。今回の委員会等設置会社は,そういう形ではなしに,つまり使用人ではなしに役員としての,業務執行機関としての,つまり取締役会の構成メンバーという地位を離れた代表取締役若しくは業務担当取締役が要するに執行役なわけです。だから執行役がベースにあるわけです。そして,執行役は業務を執行するわけですから,先ほど部会長が言われたように,たまたま係長になる人がいなかったら執行の過程で係長の仕事をしていても,それはがたがた言うことはない。むしろ上のことが問題であって,人がいないから下のことも少しやるだけで,それを使用人と言う必要があるかどうかという議論に①との関連でなると思うのですけれども,そういう執行役をベースにいたしますと,実際上,使用人を兼務するという意味があるのか,むしろ業務を執行する,ボードメンバーであることよりも,業務を執行することがメーンの執行役が使用人のつけたりの地位というのは,この委員会等--つけたりというのは失礼ですが,--使用人の報酬体系の二,三割上乗せというイメージの報酬というものは,この委員会等設置会社の趣旨からおかしい。したがって解釈論としても,私はこういう結論を導くことも十分可能だけれども,明確化するためにこういう規定を置く必要がある。これは,使用人兼務取締役と使用人兼務執行役は異質なのだと,使用人兼務取締役はボードメンバーであるということが兼務の内容なわけです。使用人兼務執行役は,執行役も業務執行するわけです。そして,業務執行の機関である執行役の補助者が使用人なのです。その使用人が報酬体系において,使用人が主で執行役が従というような規制はおかしい。そういうふうに思います。  したがって,執行役に使用人を兼務させるなら若干上乗せをするかもしれないけれども,その上乗せ部分は報酬委員会があわせて決めるべきで,それは従業員の給与体系とは異質の観点として考えるべきだと,こういうふうな整理を②はしようとされているのだと思います。 ● よく分かります。恐らく同じことを言っているのかもしれませんけれども,ただ,A事業部長とB事業部長がいて,A事業部長は執行役ではない,B事業部長は執行役にしようと,なぜならばこの人は会社に入って2年先輩だし,処遇もよくしてあげたい,実務はこういうことで動いています。そういうときになると,A事業部長が100円で,B事業部長は,本来事業部長だと100円なのだけれども,執行役だから20円上乗せしようと,それで120円ということで決めましょうと,そういうときに,使用人部分を100円と確定して執行役の上乗せ部分を20円というふうなことにして,100円部分の妥当性がどうかという話になってくると,そもそも使用人の報酬体系自身を報酬委員会が議論することになるものだから,だからここもよく分からないのだけれども,実際に使用人部分で幾ら受けます,執行役分で幾ら受けます,だからトータルで幾ら,トータルで結構ですと実際はやるのだろうと思うのですけれども,こういうふうにいろいろ出てきますと,考えると,使用人部分が先にありき,じゃそれを報酬委員会が決めるのかと,こうなってくると実務的にはそういうふうに頭がなってしまうものだから申し上げているわけです。 ● 私の理解では,先ほどの○○委員が言われたような例で,とにかく120ということについて報酬委員会の承認を得よと,そういうことではないかと思うのですが,それはその……。 ● 100の妥当性と20の妥当性を決めなくてはいけないとなるようなことはないでしょうと。 ● それは,○○委員がおっしゃるように,それは100と決めたのはおかしいというか,それとも実務の感覚からすれば20の部分を18にしたのか,それはいろいろ説明の仕方があると思いますが,実質はそういうことではないかと私は理解しています。 ● この委員会等設置会社の認可というのですか,こういうことが出たのは,私は大変コーポレートガバナンスの上で評価をしているのです。それで,従来の監査役の設置会社ですと,使用人取締役というのが,どうもよく分からなかったというのが現状で,まだあると思います。是非,委員会等設置会社においては,コーポレートガバナンスを貫徹する意味で,細かいところまできちっとガバナンスが働くように規定は考えていただきたいということで,②も当然これは否定すべきだというふうに思います。是非そこはよろしくお願いしたいと思います。 ● 一応これも,実質については皆さんそう意見が食い違っているわけではないように思いますので,そういう理解のもとに,この方向でということについて御了承いただけますでしょうか。よろしゅうございますか。--ありがとうございます。  それでは,(4)につきましても,そういう理解のもとにこういう方向でということでさせていただきます。  続きまして(5)でありますが,では,「有限会社における取締役の対会社責任の一部免除」ですが,この点につきましても,事務局から何か最初にありますか。 ● これは,代表訴訟制度に係る議員立法において手当てがされていなかった有限会社についてどうするかということですけれども,現代化の作業の中では,株式会社と同様に取り扱うべきではないかということをお諮りしようとするものでございます。 ● いかがでしょうか。  これにつきましても,特に現行法で何で有限会社がこうなっているのか分かりませんので,これにつきましてもよろしいですね。--ありがとうございます。  それでは,引き続きまして(6)「取締役会の書面決議」に関してでありますが,この点も,最初に事務局から一言ありますか。 ● 従前からいろいろ御議論があったところですけれども,取締役,監査役の同意が,書面による決議をするということ自体の同意であるという場合,あるいは取締役会決議に係る事柄の内容について取締役が賛成し,監査役が特に異議を述べないという,実質についての同意がある場合,その二つの場合について,いずれにおいても書面による決議をすることは適当でないとされるのか,あるいはどちらかの同意であれば,それはあり得べしなのか,あるいはどちらもあり得べしなのか,この辺の御議論を整理させていただきたいと思います。 ● そういうことでありますが,つまり同意というのは,同意といっても二種類あるのではないかというのが事務局からの問題提起でありますが,この点につきまして,御意見いかがでしょうか。 ● これも,前回にもかなり議論をした部分だと思いますけれども,確かに,書面によるということに全員が合意すれば,中身について意見が分かれていてもいいと,こういう考え方はまずとり得ないというふうに判断した方がいいのではないかというふうに思います。  全員が中身について合意していて,監査役も異論がないならばいいということは,確かに一つ考えられないわけではない境界線かとは思いますけれども,前回も議論しましたように,最近はテレビ会談であるとか,いろいろなツールを使って,ともかく皆さんが議論を闘わすことができる状況の中で判断したということを確保することは,だんだん容易になってきているわけですし,その上,今回は,取締役会というものを置かないという,そういう機関編成というものも起用しようかということになっているわけですから,少し慎重な方がいいのではないかというふうに思います。やはり株主総会は,株主たちは自分で権利を処分する権限,オールマイティー持っていますが,取締役,監査役というのは,株主から託された権限を行使するだけですから,議論をした上で決定をするということが託された内容だと判断するのがいいのではないかと思います。 ● 私ども,意見が食い違っている場合においてであっても,定款に定めがある場合においては書面決議が可能というのは行き過ぎだろうと思っております。逆に定款に規定しなくとも,議案について全員一致の賛成があるのであれば,取締役会を開催しなくてもいいということを明確化していただきたいというのはかねてより言っているところでありまして,テレビ会議等もありますけれども,それもコストがかかる問題でもございますし,ある日急にどなたかが亡くなって,本件について別れの会を開催いたしたいというふうなときに,また全員取締役が集まって,これは,--当社の場合それは取締役会決議事項にしているわけです。とても重要なことでありますから。取締役会決議事項にしないと,損金算入が認められないということもありますから,そういうふうなことにしているわけでありますけれども,そういうものについては,皆さんに電話をして,「よろしいですね」と,「結構です」と言ったら,もう議事録だけで,後で全員にその議事録に判こを押してもらって,全員の判こがそろったと。そういうふうなことでもってやっていただくようにしていただきたいと思います。  よほどのことだろうと思います。大抵は集まってやると思いますけれども,形式的な審議も結構あるものですから,相手先の要求とか税の要求とか,いろいろな面で。 ● ほかにございますか。 ● 中小企業の場合には,当然のことながら経営者と株主とがほとんど一緒なものですから,毎日毎日意思疎通が行われているというのが通常のケースでございます。私どもは全員が合意をすれば,どのようなものでもというと言い過ぎかもしれませんけれども,書面をもって決議ができるという形に是非していただきたい。  さらには,電子的なやり方,私どもの宣伝をするわけではありませんけれども,電子認証制度を私どもの組織でも6月から始めまして,その本人であることを,ビザというか,そういうものをつけて認証する,他の人には絶対同じものは使えないようなシステムができていますので,これを使えば,書面だけではなくて,電子的なやり方でも十分取締役会と同じ機能が果たせると思っております。  大企業のことは○○委員がいろいろおっしゃるでしょうけれども,大企業はともかくとして,中小会社については是非ともこういう形をお認めいただければ,多大なるコストと苦労が省略されることになると思っております。よろしくお願いいたします。 ● 3人の委員の方,それぞれ意見が分かれます。これは時間をかけて御議論いただくほかないかなと思っておりますが。 ● 質問ですが,私も,内容についてすべてが賛成する場合に認めてもいいのかなと思いますが,濫用のことを少し考えなければいけない。公開会社の場合には,大体月1回定例の取締役会を開かれておりますが,聞くところによると,ほとんど異議がないということで,定例の取締役会まで書面決議でするかということで,要するに1年に1回ぐらいしか,あるいは1回さえも開かれないというようなことになると困るのですね。その歯どめをどうするかということも,これは,実務の合理性に任せればいいと言われればそれまでですけれども,月1回とか2か月に1回通常行われている定例のものも,全員が議案に賛成しているなら会議を開かなくて書面でいいというのは,やや問題だろうということで,それをどうするかという,そういう技術的なことも詰めていただきたいというのが第1点。  それから,先ほどのお別れの会ですか,実務的には非常に重要なことだと思いますが,そういうものについては,ある程度担当の者がいる人と多少相談して,2週間後なら2週間後に開かれる定例の取締役会で,事後承認という形で何の問題もない場合もあり得ると思うのです。そういう意味で,ある程度一般的な形は承認しておき,--事後承認というのは結構いろいろなところであろうかと思いますので,そういう柔軟な実務運用との関連,それから,先ほど○○委員が言われたテレビ会議とか,いろいろなものとの関係で,本当に必要なのかどうなのかという点をもう少しお詰めいただきたい。私,反対するつもりはありませんが,整理は必要だろうと思います。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● 私も,やはり慎重になるべきだと思うのですけれども,書面決議ができる事項について限定がない,あるいは一切開かなくてもいいというところまで行く,その歯どめをどういうふうにかけるかというのは検討すべきだと○○委員がおっしゃいましたけれども,これは技術的になかなか限定をかけるというのは難しいのではないかという気がします。特に大規模な公開会社で,非常にワンマン体制が敷かれているような場合に,代表取締役の方から,今度このような事項については書面決議でしたい,ついてはいいかというふうに回ってきたときに,反対の声を上げられるだろうかということもありますし,かなりの部分については,やはり審議をしてみないと分からない,あるいは審議をする中で提案する側がきちんと取締役全員に納得できるように説明できるかどうかというところが重要だと思うのですけれども,その部分がなくなってしまうおそれがあるだろう。  それから,小規模な閉鎖会社については,むしろ取締役会をなくすという選択肢ができるのですから,むしろそちらを選んでいただくということでよろしいのではないかと思います。 ● 教えていただきたいことがあるのですが,この書面決議に関して,内容についての同意という形での書面決議ということになりますと,14年改正のときの253条という,株主総会について,そのような書面決議が認められたわけですが,その中で,その要件として,決議の目的たる事項についてということになっている点について,いわゆる報告事項的なものにもこの書面決議が使えるのかどうかという,そういう問い合わせをよく受けたりします。例えば株主総会で,営業報告書の報告,こういったものについては,これは使えるのですか,使えないのですかというような議論があって,仮に報告事項的なものについては,この条文上だめだということになると考えると,例えば取締役会で,内容について253条と同じような整理をするということになると,例えば先ほど○○委員がおっしゃられたような3か月に1回報告をしなければいけない,という場合には,これは書面決議は使えないのか。3か月に一度はやはり実際に開いて報告を受けなければいけないのか。やむを得ない決議,緊急の決議,融資とか借入れとか,そういう決議事項については書面決議は使えるけれども,3か月に一度の報告,これはちゃんと開かなくてはいけない,こういう整理になるのかどうなのか,この辺のところが検討していて分からないなと思った次第なのですけれども。 ● その点,いかがでしょうか。 ● 報告事項の方は決議しなくてはならないのに,軽い扱いなのに,報告の方は会議を開かなくてはならなくて,決議の方は決定……。 ● それは,条文の文言の問題ですか,それとも実質の話ですか,報告事項はだめだと,総会について言われているというのは。 ● 文言的にということですね,決議すべき事項についてということであれば。 ● むしろ文言の不備ということですか。 ● それは,そういう趣旨で,趣旨的には……。 ● 普通にあれすれば,報告事項として総会で述べることを書面に書いておけば何の問題もないように思うのですが,実質の話としては。 ● 私も,253条の解釈論として,文言がこうなっていますので,報告事項のために,したがって定時総会は絶対開催しなければいけないと。定時総会ぐらいは開いたらいいだろうと思いますから,あえてどうのこうのということはないと思うのですが,決議事項は会議を開かなくていいのなら,報告事項も処理できると。ただ,報告事項の場合には,内容に同意するということがないのですね。したがって,これは報告事項について質問する気がない,あるいは追加的な説明を求める必要がないという同意を得るという形でやれば,報告事項の決議取消しはないのですね。だた,報告しなかった過料がつくのがあるかどうか分からないけれども,それは全員が同意していればそんなことはないだろうから,結局,実質的に決議取消しも何もなければ,そうやったらいいのだと,こういうことでいいんじゃないですかと,私は無責任に言ったことがあるのですが。 ● 報告に不満であれば恐らく同意しないでしょうからね。 ● ただ,報告事項を書面できちっと示すことは必要だと,これは当たり前のことですが。  ただ,3か月に1回という形で制約をせよということを否定する趣旨ではありません。 ● 私も全くそのとおりで,報告事項がこのネックで,書面決議は一切,報告事項があるものはだめだというのはおかしいように思われますが,歯どめは必要だということは,私もそういう気はいたしますが。 ● 経済産業省が昔,これはたしか産構審のレポートをまとめたときには,非常に簡単な理由で書面決議もいいじゃないかと,こう言っていたのです。先生方が言うには,いろいろ論点があるということをお伺いして,なかなか難しい問題だと思いつつ,当時の議論をすると,例えば外国人の取締役もこれから増えるケースも出てくるだろう,あるいは社外の取締役をどんどん入れなければいけないかもしれない,そういう選択をふやすときに,会議を絶対やらなければいけないという議論自身が,ある種そういう経営陣の多様化というところにちょっとネックになるのではないかという議論もあって,書面決議というのは,ある種許容する方向で考えたらどうかという議論をしていたように記憶はしています。  それと,たしか中政審の方でも,先ほど○○委員の方からありましたけれども,前回,○○幹事の方から紹介しましたように,譲渡制限会社においては,取締役全員の同意があれば,是非書面決議の道を開いてくださいということにもなっているのですけれども。  あと,今のお話を聞いていて,諸外国というのは,これはどういうことになっているのでしょうか。私,ちょっと聞いたら,アメリカはいろいろ州法に応じているそうなのですけれども,幾つかの国ではやはり書面決議という議論が結構使われているやに聞いているのです。そうすると,先生方の方でおっしゃった,いろいろ弊害もあるかもしれないけれども,その弊害を防止するために書面決議を導入したときにどういう工夫をしているのかというようなお話が,もし事務局の方からあれば議論がしやすいかと感じた次第であります。全く詰まってなくて申し訳ないのですが。 ● 何かございますか,諸外国のことにつきましては。 ● 先ほど○○幹事から,取締役会を中小企業は置かなくてもいいのだから,どちらか,そっちを選べばいいんじゃないかというお話があったのですが,取締役会はちゃんと置きたい,しかし全員が,例えば遠隔地にいて,中小企業だって外国の株主がいないとは限らないのでありまして,現実にそういう例を私は知っておりますが,「いや,今回はいいよ」と言われればいいので,そこは,そういうことじゃないかなと。選択の自由がちゃんとあった方が使いやすくなるということだけ一つ申し上げておきます。 ● 今,○○幹事の方から御紹介がありましたように,前回私どもが御報告させていただいた中政審のレポートでも,書面決議を認めていただきたいという提言をさせていただいていますけれども,今,諸外国の話が出まして,私どもでそのレポートをまとめるに当たって調査をしたところ,アメリカは取締役全員の同意を条件に書面決議が認められている。イギリスも取締役全員の同意を条件に認められていて,定款で全会一致に満たない数をもって決議要件とするということも認められている。それから,ドイツも認められている。フランスは認められていないということを,私どもの調査でもそういう実態でございます。 ● 一つは,先ほどちょっと話に出ました253条の関係ですが,報告事項にこの適用があるかという問題につきまして,この改正法が施行になりましてから,幾つかその辺についての問題提起が実務の会社の方からございまして,それで,文言が「総会の決議の目的たる事項」というふうになっているものですから,報告事項について適用があるかということになりますと,法律解釈という面からいくと,実務的には慎重な解釈をせざるを得ないということで,定時総会については報告事項もありますので,開催せざるを得ないのではないかという回答をした経緯がございまして,そういう意味では,何らかの形でそれについての明文化を図っていただいた方が,実務は惑いがないのではないかという気持ちはしております。  もう一つ,取締役会の書面決議ですけれども,今いろいろ御意見を伺っていまして,一方で取締役会を充実化するという,コーポレートガバナンスのために取締役会を充実するというのが今の一つの趨勢ですので,書面決議を余り広く認めていくということについては慎重な方がよろしいのではないかという気持ちがいたしますけれども,この間も中小企業政策審議会のレポートにありましたように,今,インターネットなどで,あるいはEメール,そういったもので事前の意思疎通が相当可能だということもありますし,それから,海外とか地方駐在取締役というのもたくさんあるわけですから,そういったところも便宜を図るという意味で,要は書面決議を認める要件をどういうふうに定めるかという問題ではないかと思うわけです。最初にお話がありましたように,最初に書面決議でやることができるという包括的な同意というのだと,同意としては包括的過ぎると思いますので,253条に似たような報告事項なり,あるいは議案についての提案の内容,それから,それに関連する主要資料,それに,これに同意する旨と,こういった要件を定めれば弊害は生じないのではないかというふうに思います。 ● ほかにいかがでしょうか。  これはいろいろ内容に関する同意がなくても認めるべきであるという意見から,それから,議案内容について同意があれば認めてもいいけれども,少なくとも年に--年にといいますか,何か月に1回は開くというような歯どめは必要であるという御意見まで,その辺が両極でしょうか。 ● 先ほど○○委員から,事後追認的なものでやればいいじゃないかというお話がありましたけれども,そういうふうに運用するのも一つでしょうけれども,当社の場合は,取締役会の決議なくして代表取締役が先に物事を決めるということは一切まかりならないということで運用しているものですから,事後追認なんていうことはあり得ない。  一方,事後追認の方がいいじゃないか,それでもいいじゃないかということになりますと,かえって取締役会のガバナンスということが問題になってくる。でも,どうしても緊急にやらなければいけない,災害が起こってしまって緊急に設備投資をしなければならない,すぐ発注をしなければならない,例えばその発注金額が2億円以上のものは全部取締役会だとなっている会社を考えると,そこで取締役を全員集めるということは非常に難しい。だから,だれが見てもそういうことはいいだろうということの場合は,やはり書面決議でもって,回して判こを押してもらうということでやった方が,後で追認を受けるよりはいい場合もあるだろうと,こう思うものですから。  かといって,定例で決めてある年間のスケジュールの取締役会を本年はすべで書面で行いますので,なんていうことはないと思うものですから,だから緊急を要する場合であって,かつ全員の同意が得られているような場合には書面決議を認める。実際の運用もそうなるだろうと思うのですけれども,そういう歯どめをしていただいても私はいいと思いますが,定款どうのこうのではなくて,先ほどの全員の同意見,緊急性ということを入れてもいいと思うのですけれども,そういうふうなことを認めていただければと思います。 ● 一応方向性が出ましたので,いろいろ言うこともないと思うのですが,要するに実務が合理的な要請に基づいて,誠実に会社のためとしていろいろなさることは合理性があると思いますので,それをやりやすいような法制度を整備するのが今回の目的ですから,実務の需要に応ずるようにいろいろと苦労は考えるべきだと思いますけれども,やはり○○委員の会社はまず大丈夫だろうけれども,そんな会社は例外的だという見方もあるわけですね。したがって,一般化する場合には濫用をできるだけ少なくするようにしなければいけないし,そして,先ほどアメリカの例がありましたが,アメリカにおいても比較的自由ですけれども,本来書面でやってはいけないことを,つまり会議を開いてきちっと議論すべきところを書面でやって,それが失敗していれば,それで取締役の責任を追及するとか,そういう形の事後的なチェックも十二分にあるということが前提だと思うのです。日本もその方向で行くことも十分考えられますけれども,まだそういう事後的チェックが必ずしもエンフォースができたかどうか分からないときには,やはり事前のチェックもそれなりにしないと,かえって困る場合もあるだろうということで,今後詰めていっていただけたらなと思います。  そしてもう一つ,先ほど追加したことは,要するに半分の取締役が出席していれば取締役会はできるわけですから,基本的に半分の人で集まってやってもいいし,場合によってはそういう緊急事態の場合には,これまた変にやると濫用の危険もありますけれども,全員が書面でやるのではなくて,集まれる人だけ集まって,あとは委任状的な形,いわゆる書面投票的なものですね。そういうことを含めていろいろと過不足のないところを今後詰めるべきだという形で議論されたらいいのではないかと思います。  それから,重要財産委員会についてもお考えいただきたいと思います。 ● 大体一わたり御意見をいただきまして,だんだん妥協点も少しずつ見えてきたように思いますので,なおこの点は検討させていただくということで,よろしいでしょうか。 ● 大体妥協点といいますか,皆が納得できる線というのは事実上あると思うのですけれども,どこまでも立法で事細かに書くかという問題もあると思うのです。基本線は,やはり取締役というのは株主から託されて,面と向かい合って議論し合う中で重要な会社の決定をしていくということですから,書面決議というのはないのが原則なんだけれども,時と場合,臨機応変に,本来はテレビ会議が望ましいけれども,電話で皆さんの意見をきちんと聞いた上で,処理してしまわなければならないような緊急事態もあるかもしれない,でも,そういう問題が起きたときには,判例でもって,この具体的なケースについてはこれでもオーケー,あるいはこの具体的ケースについてはだめというような問題で処理し得るだろうから,あえてエンカレッジするような,書面決議がよろしいというのは書かないという選択肢もあると思うのです。 ● 御意見はよく分かりました。  ほかに,この点につきまして御発言はありますでしょうか。--では,御意見を踏まえまして,またもう一度事務局で検討いたしまして,第二読会には何らかの案を出すということにさせていただきたいと思います。  では,続きまして(7)の「取締役会への監査役の出席義務」でありますが,この点につきましても,事務局から一言お願いします。 ● (7),それから(8)の米印の1も同様の問題ですけれども,監査役の取締役会への出席義務,--平成13年の改正によって規定が整備されたわけですけれども,--これについて,出席義務は過重ではないかということから,出席義務を負うべき者を指定することによって,他の監査役の出席の要否については,その権限行使に係る注意義務の問題ということで整理するという御意見についてのお考えをお聞かせいただきたいということでございます。 ● この点,いかがでしょうか。 ● これは質問ですけれども,この指定された監査役というのは,常にという意味でしょうか,それとも,その都度という意味でしょうか,ひとつ確認させてください。 ● 都度といいますのは……。 ● 取締役会の都度指定するという意味ですか,それとも,大体初めから決めておいて,指定監査役以外はいつも出席しなくてもいいという,そういう趣旨ですか。 ● 指定の方法,在り方について,特にここでは触れておりません。一人の者を固定的にするのか,その都度にするのかは,特にここでは縛ってはおりません。 ● 私は(8)の方については,あるいは見直す意味があるのかなというように思いますけれども,(7)のような御提案は,果たしてこういう必要があるのかなというように思います。やはり取締役ですら取締役会に出席するのは義務ですが,時と場合によって欠席することはどうしてもあることだと思いますので,それと同じように処理すればいい話であって,わざわざ指定した者だけが行くというふうにしますと,監査役というものはやはり取締役会に行って生の情報を得ながらちゃんと判断するという,その仕組みが揺らいでしまうことになると思いますので,やはり(7)のような立法は置かない方がいいと思います。  (8)について言いますと,重要財産委員会制度というものを設けた趣旨から,多少考慮の余地はあるのかなというふうに思います。 ● ○○委員と同意見であります。 ● ほかに,いかがでしょうか。 ● そのとおりだと思いますが,重要財産委員会の出席義務を緩和することについては,重要財産委員会の決議内容というのは,遅滞なく次の取締役会で報告される仕事で,これで監査役もチェックできるということもあわせて,(8)の一番最初のポツは,十分に検討に値するのではないかという気はいたします。  ただ,(7)については,例えば,これは恐らく一人だけということも十分考えられるのでしょうけれども,常勤の人だけでいいのか,社外の人はどうなのかとかいろいろ言うと,これも場合によってはやむを得ない場合は欠席したらいいのだという,運用に任すことではないかという気がいたします。 ● ほかに,ございますか。 ● 全くおっしゃるとおりだと思うのですけれども,そもそも何でこういう意見が出たのかという,元がよく分からないので,それで先ほどお尋ねしたわけですけれども。 ● それは,議員立法以後は,全員出席義務というはっきりした条文になっていますが,その前は必ずしもはっきりしなかったのですね,条文上は。説が分かれていたのではないかと思います。 ● 私の方がこれについて積極論を言うのはちょっとおかしい感じもしますけれども,実務の方とのコンファンスなんかに出ますと,むしろ監査役の方の中には(7)についても強い要望を述べられる方はいらっしゃいまして,商法が現実に合わない非常に典型的な例として指摘されたりしておりましたので,今の○○委員の話を伺って,人によって随分認識が違うなと思ったのですけれども。  私は,望ましい姿は○○委員や○○委員がおっしゃるとおりだと思うのですけれども,ただ,何が何でも全員がすべて出なければならないとまで言うことはないような気も実は……,建前としては,確かに独任制ですからそうなんですけれども,中の調整があって,監査役同士の間で,今回は都合が悪くてどうしても出られないけれども,かわりにおまえが取締役会に出て聞いてきてくれということは,絶対にあってはいけないということではないというふうには思っております。 ● それは,否定されないのではないですか。 ● ただ,こういう規定があると,実務の方はどうしても固く解される傾向があって,どうしても,どんなことがあっても全員出なければいけないというような,どうもそういう受けとめ方が多いようですので,それはやや行き過ぎかなと思っている次第です。 ● いかがでしょうか。監査役の中には,そういう意見もあるということですが,何かそちらの方面の御意見を承知の方はおられますか。 ● 私も,今,○○委員あるいは○○委員,それから○○委員がおっしゃった,同様の実務をやっている方たちの見方というのがある。それで,今になって13年12月の出席義務を法定するというものを否定し去るということはなかなか難しいと思いますけれども,もう少しさかのぼって考えると,監査役は取締役会の構成員ではないから,出席義務というものを法定されていなかった。そういう時代でも,監査職務という面から,監査役会を構成する監査役の善管注意義務という観点から出席義務があるのだと,そういう認識で監査役は動いていたと思いますので,そういう意味では,出席義務というのは法定されてしまうと,確かに○○委員がおっしゃるように,実務としては全員出席が義務だという感覚で受け取られかねない面がありますので,それに対して私どもは,いろいろな業務の都合,あるいは職業上の都合で欠席しても,後日常勤監査役から結果を聞いて,やるべきことをやれば善管注意義務違反はないのだよということを話せば,そういうことですかということで納得するわけです。ですから,この点は,取締役会もかなり臨機に開くという情勢になってきておりますので,取締役会も重要財産委員会も監査役構成員の善管注意義務に委ねる,立法的にはそれでもいいのかなという気持ちは,実は率直には私,内心思っているのですが,先ほど申し上げたように,今現在,出席義務を,法定を否定し去るわけにはいかないだろうというふうに思いますので,結局は取締役会について出席義務を法定して,重要財産委員会について,明文で多少そういうことを緩和するという方策が一つの妥当な線ではないかと感じてはおります。 ● そうすると,はっきりと監査役会の中で,職務分担として,常勤監査役だけが出席するというような,そういう定めはできないということで大体皆さん,大勢はそういうことだと,少なくとも取締役会については。そういう理解でよろしいですか。  重要財産委員会については,いかがでしょうか。 ● 米印の二つ目,三つ目の問題ですけれども,これは,(9)の方で,いろいろまた柔軟化を図るということは検討に値すると思うのですが,重要財産委員会を更に膨らませて大きなものにしていくというよりは,監査役会設置会社であっても,執行役制度を一定の要件がある場合には使えるとか,そういう選択肢の方を膨らませていくということで,とりあえずいいのではないかという気がいたしますが。 ● 重要財産委員会についての出席義務の方ですね。 ● 重要財産委員会の出席義務はもう済んだかと思いまして,米印1は賛成なのですが。 ● こちらについては,皆さん緩和の余地を認める方向でしょうか。そういう理解でよろしいですか。  それでは,(8)の「重要財産委員会制度」の米印の後の二つの方に,事務局からまず一言お願いいたします。 ● 重要財産委員会自体,現在余り採用予定事例が報道されておりませんけれども,現段階で見直すべきかどうかという点についてでございます。仮に見直すとした場合,一部御指摘があるのは,決定権限が少な過ぎる,狭過ぎるので,社債の発行等に広げていただけないかというものです。  それから,これはややどうかという感じもいたしますけれども,取締役の員数要件の緩和を求めるといった御意見もありますので,これらを含めまして,重要財産委員会について,この段階で見直しを行うべきかどうか,行うとした場合はその内容を含めてですけれども,御議論いただきたいと思います。 ● ○○委員から御意見をいただきましたが,○○委員,いかがでしょうか。 ● 決定権限の事項は,本条の3号,4号,それから柱書きでの人事・組織案件ですね。それから,柱書きにその他重要な業務執行とありますから,その部分。それから,お話がありました社債。このことぐらいまで拡充していただきたい。重要財産委員会自身がそれほどの利用頻度が高まる制度だとは思っておりませんけれども,社外取締役の設置強制との兼ね合いで,社外取締役1名でも置けば,こういういい制度ができますよということをやったものですから,本当に社外取締役をふやしたいというふうにお思いのところからは,より使い勝手のある重要財産委員会の権限を拡大してあげるというふうに持っていくのが首尾一貫しているのではないかと。私,個人的には全く興味がないところではございますけれども,重要財産委員会についてはですね。だけど,そういう社外取締役を広めていきたい,そのときに重要財産委員会もできますよと,だけど決めるのはこれだけですよというのではなくて,もう少し広げてあげたらどうだろうかと思う次第であります。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● 今,○○委員がおっしゃったその他重要な業務執行という柱書きも含めるかどうかという問題に関連するのですけれども,例えば現行法のもとでの重要財産委員会の決議事項が,当然にその他重要な業務執行を伴うというときにどうなるかという問題について,この14年改正のときの部会では審議されたのかどうか,私,詳しくは存じ上げないのですけれども。  例えば,新規事業発足のための資金調達をするときに,これが重要な,多額の借入れになる。そのときに,その多額の借入れは重要財産委員会の決議事項なのですけれども,新規事業の発足,これはその他重要な業務執行に当たる。そうすると,結局は新規事業の発足について取締役会決議を経ないと,多額の借財の重要財産委員会の決議というものはできないことになる,ということになるのか,あるいは重要財産委員会の決議事項に該当する事項について,伴う重要なその他の業務執行については,重要財産委員会の決議でカバーされるという見方でいいのか,その辺少しお教えいただければと思うのですが。そのいかんによって,決議事項の拡充が妥当かどうかという問題も,多少ちょっと問題が新たに出てくるという感じを持っておりますので。 ● そこは,去年の改正のことですので,私からまず口火を切らせていただきますけれども,去年の改正の際には,多額の借財とか重要財産委員会で決議できる事項がほかの事項にも関係する場合に,そちらもできるのかということは,当時の会社法部会では特段の議論はされなかったと思います。この点については,解釈は分かれているようでございまして,伴うものについてはあわせてできるのだという考え方と,必ずしも一概にそうは言えないので,ケース・バイ・ケースではないかと。つまり多額の借財よりも,その他の新規事業をやるというのだったら,新規事業をやる方がより重要かもしれないので,そちらまで一緒くたに取り込めるというのは問題だろうという御意見と両方あったように記憶しております。 ● 私個人としては,そこまで含めてしまうと,重要財産委員会の権限が,会社の根本的な事業というものにも及んでしまうということで,多少消極的に思ってはいるのですが,ただ,ある程度限定的にせよ拡大すれば,重要財産委員会の役割というものも利便性が高まるということもありますので,これはほかの先生方の御意見も是非伺いたいと思いますが,とりあえずは余り重要財産委員会の権限を,--そういう新規事業の発足とか,あるいは重要な子会社の株式の売却が会社全体の事業の再編につながってしまうような場合にどうするかという問題もありますので,--これをちょっと詰めておいていただきたいという気持ちがいたします。 ● ○○委員が先ほど,2項の柱書きで,その他の重要なる業務執行と言われたのは,その新規事業等も含んだ趣旨ですか。 ● 恐らく新規事業への進出というのは,取締役会から重要財産委員会には権限委譲規定では入れないだろうと思うのです。恐らく入れる会社はないだろうと思います。かといって個々の重要な販売契約の締結とか,重要な原料契約の締結とか,そういうものは全部取締役会でやらなくてはいけないというのを,例えば「何々工事の受注について」なんていうのを重要財産委員会に移したいという会社はたくさんあるだろうと思います。例えば1件10億円以上の工事受注というのは取締役会だけれども,10億円未満については重要財産委員会でやりたいということもあるだろうと思いますから,そういうふうな意味で,営業活動にかかわるような業務執行というのは典型的だろうと思います。新規に事業に出るとか,そういうものというのは,やはり会社の基本方針的なものにかかわるものですから,そこまでは恐らく委譲しないことになるのではないか。その委譲する,しないのところをどこで区別するのかということになるわけですけれども,これは,そういうことになると非常に難しくなるのでしょうか,会社の基本方針的なものは,やはり取締役会から重要財産委員会には委譲してはいけないという,ただ「基本的なものを除く」と書くのかどうか分かりませんけれども,法技術的にはともかく,私の申しているのはそういうふうな日々の業務執行にかかわる問題で,それを取締役会事項としているときの区分けの問題です。 ● 契約の受注とか設備投資とかは2項1号ではないかと私は思っていたのですが。 ● 財産処分ですか。 ● はい。 ● ちょっと違うような気もしますね。 ● 処分・譲受けで読めるのではないかと思っていたのですが。 ● 私の理解では,重要な契約というのは,その他業務執行という感覚で理解していたのですが,これはいろいろ見解があると思いますが,ただ,今おっしゃったように,現在の重要財産委員会の権限以外のものにどれだけ拡大するかということになってくると,やはりある程度個別的な規定をしないと線引きは非常に難しいと思いますので,そういう意味で,私も現在の権限を拡大するには,社債の発行ぐらいかなという気持ちでいるのですけれども,ただそうすると,重要財産委員会の機能というものが非常に狭いものになってしまうという問題は残るとは思いますけれども。 ● 社債については,またこれは社債の方で相当,代表取締役等に委任できるというのが一方では議論されておりますので,そちらの関係もあると思いますが。  何かほかに御意見はありますでしょうか。 ● 先ほど○○委員がおっしゃったことですが,10億以上の受注という話がありましたが,これはまた第二読会で議論されるのでしょうけれども,営業上の重要な一部の譲渡の重要性について,今までの一般的な実務感覚よりは相当引き上げたいとか,これは株主総会の決議事項の話ですが,そういたしますと,取締役会の決議事項の範囲も重要性が膨らむというか,日本語が分かりませんが,要するに緩やかになる。そういうことで,例えばこの辺については,そのような会社の状況もありましょうけれども,やはり経営の根幹にかかわるようなことを取締役会はしなければいけないけれども,日常的なことは代表取締役に授権できるし,そして,重要財産委員会が法定権限以外のことができるかどうか議論の余地がありますが,代表取締役ができることを重要財産委員会でさせることは何の問題もないと思いますからね。そういう意味で,今後は実務もそういう弾力的な解釈で,先ほど申し上げたことですけれども,実務の合理性からむしろその方がいいのだと言われることは,専門家の御意見をお聞きになりながら,緩やかな解釈をされればよいのかなという気がいたします。  その10億の受注というのは私は実務感覚はありませんが,十分にそれは代表取締役でやるということを決めても悪くない場合もあるだろうというのが第1点です。ただ,会社がおかしくなるときには,一般的にやってもだめだというような,そういうような善管注意義務の縛りはかかりますけれども。  そして,会社法部会でどこまで議論されたか分かりませんが,分科会でしたか,前回の分科会では,やはり1号,2号に限定するという形の議論は最初はせずに,ただ,やはり合理的に限定しようと思うと,1号,2号ぐらいしかないなということでこうなりましたので,我々分科会で,最初から1号,2号以外に広げてはいけないのだというのではなくて,そうすると野方図になってしまって,どうなるのかなということで,○○委員の意見に対しては,柔軟な実務の知恵ということで検討されるとともに,これを立法として拡大する場合に,どこまで広げられるのかという技術的なこともあわせて検討される必要があるかと思います。私は,ある程度広げることは合理性があると思うのですが,うまく,どういうふうにしたら合理的な範囲になるかが分からなかったので,名前も最初はもう少し違う名前が,1号,2号だから重要財産委員会ということになったので,だから私は,ある程度広げることに検討の価値はあるけれども,去年までの分科会の知恵ではうまくいかなかったと,こういうことだと思いますが。 ● 事実関係ですが,今の○○先生のお話では,1号,2号に限定したのは14年改正のときの分科会での考え方だったと言うのですが,私の理解では,たしか分科会では260条1項各号を提案していて,むしろ内閣法制局とのディスカッションの過程でこれが1号,2号に限定されたというふうに理解しております。 ● 本文の方の重要なところまでも,どうのこうのということではなくて,難しいということです。事実関係は,そのとおりだと思います。 ● 3号,4号は緊急性がないだろう,一月ぐらい待てるだろうということでしたよね。だから,恐らく落ちたのだろうと思います。 ● この柱書きのその他「重要なる業務執行」をそのまま書くというのは,これはちょっと難しいと思いますので,もう少しこの中で,もし○○委員のような御希望があるのであれば,もう少し特定して何か工夫できないかということを御提案いただくということでしょうかね。 ● 先ほど言いましたように,個人的には余り……。これが広まるとも思えないものですからね。広めたいというふうに思っておられるサイドの方々,いろいろとやはり,こういうふうに書いて広げてあげたらどうかと。 ● それでは,○○委員に限らず,もし,こういう考え方はできないかという具体的な案がありましたら,事務局の方へ御連絡いただいて,また第二読会で議論したいと思います。  三つ目の米印につきましては,格段の御意見はありませんか。特にこれを希望されるという御意見はありませんでしょうか。特にないようでしたら結構ですが。  それでは,次に(9)でありますが,「株式会社の機関の柔軟化」という点でありますが,これも,少し事務局からお願いします。 ● ここでは,専ら大会社を想定した機関の柔軟化について,現段階での検討の要否についての御感触を賜れればという趣旨で掲げさせていただいている次第でございます。  米印を三つ掲げさせていただいておりますけれども,実務上のニーズについて,現段階でお寄せいただいているものをこちら限りで分析すれば,1番目のものにかなり集中しているようでございます。もし,1番目の米印の内容を実現するということにいたしますと,監査委員会と監査役会とがほぼ等値であるという前提に立たざるを得ませんので,もしそうだとすれば,米印の二つ目についても手当てをすべきかどうかという議論がまた出てこようかと思います。施行されて間もなくという段階で,なお検討すべきかどうかということ自体についても御意見があろうかと思いますけれども,その辺も含めまして,御意見を賜れれば幸いでございます。 ● いかがでしょうか。 ● まず,米印1が一番需要があるといいますか,御要望があるということだそうですけれども,米印1が一番問題ではないかという感じがいたします。やはり取締役会が相当変わったものになっている,新しいものになっているということが前提になって監査委員会というものは初めて機能し得るものであるわけですから,これはやはり認めるべきではないのではないかというふうに思います。  次に米印2ですが,これは認めてもいいのではないかというように思います。監査役会と監査委員会というものは,等値の部分,同様である部分とそうでない部分とがありますが,取締役会が強化された監査委員会と監査役会とが比較的パラレルなものになり得るのではないかというのが基本的な発想法だと思いますから,指名委員会,報酬委員会を置きながら,監査委員会よりも監査役会の方がより株主総会に近くて,いろいろな意味で強力であるということでこちらを置くという,この選択肢は十分にあっていい選択肢ではないかと思います。  米印の三つ目ですが,これは,米印の二つ目の選択肢が置かれれば,それでもいいような感じがいたしますけれども,例えば委員会等設置以外の監査役会設置会社などにおきましても,例えばですが,指名委員会も報酬委員会も置かないけれども,過半数が社外取締役であるような取締役会を置きますとおっしゃったときに,なぜ執行役を使えないのかと,説明がつかなくなるのではないかというふうに思いますので,これは検討していいのではないかと思います。 ● 今の2番目の点ですが,まず,実務として,委員会等設置会社の監査委員会と私どもと対決したことはないのですけれども,どうも勉強している過程では,監査役会と監査委員会は大分違うなという印象は持つのです。特に会計監査人の選任の問題とか,あるいは今後出てくる会計監査人の報酬の問題とか,そういうことを考えたときに,監査役会と監査委員会と大分違うのではないかと。ですから,とても同等の位置に代替措置として置けるということは,多分考えられないのではないかと私は今の段階では感じております。 ● 私も監査委員会と監査役というのは随分違うものであって,代替的なものにはなり得なくて,この三つの米印ともに私は反対であります。  最初の米印については,やはりここでいう監査委員会というのは,指名委員会が選んだ取締役会によって選任された監査委員会ではないわけでありますから,まず,社外取締役が過半数を占めている指名委員会が人事のかなめを握って,そして,信頼できる取締役を選んでいくということが委員会等設置会社のもっとも大事な点でありますから,そういうことを考えると,ここで言う委員会等設置会社以外の監査委員会というものは,ちょっと語義矛盾というか,これは監査委員会と呼べないようなものであって,これは問題ではないかと思います。  2番目でありますけれども,これは,確かに制度的に見ますと,○○委員がお考えになっているように,監査役の方が独立性を担保するための法制度上の仕組みはいろいろあるわけですけれども,他方で監査役ですと,この監査委員会とは違って,取締役会に出席し,そしてそこでボートをすることができないわけでありますので,あくまで傍聴するだけですよね,監査役の場合は。そういうことを考えますと,監査委員会の人が取締役であって,取締役のボードのメンバーであって,その監査委員会でチェックしたことを取締役会での政策的な意思決定に反映できるというのが委員会等設置会社の非常に重要な意味であると思いますので,それを考えますと,先ほど○○委員も恐らくそういう趣旨で御指摘になったのではないかと思いますけれども,確かに形の上での制度的な担保は,独立性が監査役の方が強い面もありますけれども,しかし全体として果たす機能を考えますと,やはり監査委員会の方は違う意味を持ってきますので,したがって2番目についても疑問ではないかと思っています。  一番疑問なのが3番目でございまして,ここで,そもそも執行役と言うのですけれども,この執行役の権限をどう考えているかによって話は全然違うのですけれども,委員会等設置会社における執行役の権限を持つ者を仮に意味するとしますと,これは非常に大きい裁量権を持っているわけでありまして,ごく一部限定された取締役会の決議事項以外はほとんどすべて執行役の方でやれることになっていくわけでありまして,そういう権限を持つ以上は,やはり独立性のある指名委員会が選んだ取締役が選んだ執行役でないと,そういった機能を期待することはできないのではないかと思いますので,私は三つの委員会制度というのは,やはりワンセットのものだというふうに理解すべきだと考えております。 ● これは,かねてより経済界の方からは,アラカルト,アラカルトと申しまして,ああいうリジットな形ですと,なかなか委員会等設置会社を選択しづらいのではないかということで,いろいろな組合せをやっていった方がガバナンスの多様性が出てきて,制度間競争をそこでやってもらえばいいのではないかということで言ったわけでございまして,その考え方も今も変わっていないわけでありますけれども,○○委員のお話を聞いていると,どうも委員会等設置会社の方がガバナンスがいいような感じの御意見で,言われているところというのが納得できないところであって,商法上両方ともガバナンスを認めているということは,両方とも対等のガバナンスということ,それはまず認識としてなければならないだろうと思っております。  そのときに,監査委員会と監査役会との違いですが,○○委員のおっしゃるのは,今の監査役会の方がより強烈な組織であると言われているのか,監査委員会の方がより強烈なと,これまたよくまだ私も分からないところですけれども,いずれにいたしましても,一番目の類型,委員会等設置会社以外の株式会社でございますけれども,そこで監査委員会の担当の取締役を株主総会において決める,その人は監査委員会のメンバーにしかなれないというふうなことをやることによって,監査をするとともに,ボートの決議にも参画することができる,こういう類型を認めてほしいという要望が実際上実務にも多いものですから,そこを指名委員会がないからということで否定するまでのことはないのではないかと。  2番目の委員会等設置会社においても,もちろん指名委員会の指名は受けませんけれども,株主総会によって直接選ばれている監査役でありますので,こういう類型もあっていいのではないか。  代表執行役の問題についても,○○委員が言われたとおり,その会社のガバナンスに応じて,なるほど今の会社のままで,監査役設置会社の中で,代表執行役に大幅な権限を与えるということについては理屈の面での合理性はないのかもしれませんけれども,今,○○委員が言われたような類型も考える中で,条件をつけながら認めていってもいいのではないかというふうに思うわけであります。 ● 最初に○○幹事がおっしゃったことですが,これから発足しようとして,制度間競争が起ころうとしているときに,余り複雑な中間形態というのですか,それをやると,ややこしくなって,それぞれの理念型をベースにしながらも,実務はいろいろと理性を働かせて柔軟なことをやると思うのです。それを見ながらゆっくり考えた方がいいだろうというのが基本的な立場です。  そして,今考えますと,いろいろ心配な点があるというのは,先ほどの○○委員のおっしゃったことの繰り返しになる可能性もありますが,--○○委員がどうも,○○委員がおっしゃることは,委員会等設置会社のガバナンスの方がいいと思っているのではないかというのではなくて,--委員会等設置会社にも,これまた愚痴になりますが,純理から,学者の立場からこう申したい,ああ申したいが,どんどんはぎ落とされた面というのもないわけではないわけです。非常に失礼な言い方というか,不謹慎な言い方かもしれませんが。  そこで,委員会等設置会社も穴がいっぱいあるわけです。しかし,3委員会と執行役とがドッキングして,効率的な経営をするような経営執行部を作るとともに,健全かつ効率的な経営を確保するための監督規制が何とかやれたのだと。これがワンセットで,これと従来型の監査役を設けている会社とがこれから競争しましょうということで,先ほどの意見も,これがなければ従来の会社ときちっとした競争になりませんよという面できけば,どちらが有利だどうの--○○委員の趣旨はともかく,そういう形で対等の関係に立つためには私はワンセットがいいと思います。  そして,ワンセットの意味は,分かりやすく言えば社長の人事権と報酬とをどうするか,それが効率的な観点から,業績連動にするためにどうするかということで,それをきちっとやるためには,監査委員会が適法性だけではなくて,妥当性というか,効率的な面についても指名委員会と報酬委員会と連携しながらいろいろ議論しなければいけない。こういう観点からすると,やはり米印2ですけれども,監査役を設けた場合に,例えば非効率だからやめさせようというときに,指名委員会と報酬委員会だけで十分なのか,もちろんいろいろな御議論はあると思いますけれども,監査役会は多くの場合は適法性監査ですよと言われているときに,効率的なものは監査役以外の取締役会でやる。そして,取締役会には半々ぐらいのところもあるかもしれませんが,当面は執行役を兼務する取締役が多い会社が多いだろうと,そういうところで非常に難しいのではないかということで,監査役会が妥当性監査もやり,そして,甚だしい非効率も含むかもしれませんが,取締役あるいは執行役の人事に何らかかかわるような,そういう監査役会の機能を少し変容すれば,米印2はそれなりの意味があるかもしれないけれども,現行の監査役会と今想定されている,--どう動くか分かりませんけれども,--うまく監査委員会が機能した場合の監査委員会との役割は相当違うし,米印2を今決定する段階ではない。  そして,一番目のことも,では,この監査人となるべき取締役と指定して株主総会で選ぶからいいじゃないかと言われたけれども,その候補者は社長が選ぶんじゃないかと。もちろん,委員会等設置会社の指名委員会だって,社長に牛耳られているではないかと言われたら,それまでですが,そうならないために過半数の社外取締役ということを言っているので,例えば先ほどの○○委員の言い方で,この監査委員会を構成する取締役を推薦する権利は指名委員会がやるのです。社外取締役過半数といっても,委員会等設置会社とどう違うのだということになって,やはり米印1も少し無理がある。  米印3は,どういう意味なのかかがよく分からないのですが,先ほど○○委員のおっしゃったような形で要望があるとすれば,今は時期尚早だろう。それよりは,いやいや言われたけれども,(8)の米印2をお考えいただいた方がいいのではないかと思うということです。 ● 私も一般論としては,事務局案にありますように大企業のコーポレートガバナンスにつきましても,更に柔軟化を図っていくべきだという方向には賛成なのですが,ただ,では具体的にどうしたらいいかということを考えた場合に,いわゆるワンセットではなくて,アラカルト方式ができるかどうかということを考えると,先ほど○○委員からも御指摘がありましたように,このシステムは全体としてよく考えられているものですから,どれか一つ抜くと,全体としてのそごがどうしても出てきてしまいまして,アラカルト方式でいこうという線はかなり難しいのかなと。ですから,結論的にはこの三つのポツにつきましては,現時点では慎重に考えざるを得ないのかなというような,いろいろ具体的にどうしたらいいかということを考えた上で,今のところ私はそういうような結論になっておるのですけれども,ただ,柔軟化の方向といたしまして,もう一つ実務界の懸念として漏れ承っておりますところによりますと,我が国の委員会等設置会社のもう一つの特色といたしまして,委員会の権限が非常に強い。すなわち,指名委員会,報酬委員会の決定を取締役会をもってしても覆せないということにつきまして,ごく少数の,要するに3人のというのでしょうか,取締役が暴走したときにどうするのかというような懸念が経営サイドにあるというようなことを伺っております。  ただ,そのように指名委員会,報酬委員会の権限を非常に強くしたのは,部会長の教科書にもありますように,我が国ではアメリカ的な過半数が社外ということはあり得ないということを前提に,少数の社外取締役を十分に機能させようということだったと思うのですが,このような委員会等設置会社を立法者として実務に提案したことのインパクトは非常に大きいというふうに思っておりまして,今のところ上場会社は1社ではありますけれども,社外が過半数というのが出てきております。そのほか,何社か,半々とか,半々に近いところも出ておりまして,時代はかなり,社外取締役過半数ということも,そんなに非現実的ではないという状況になってきているかと思うのですね。ですから,一案といたしましてですが,今そんなことをいうのは非現実的だと言われれば,もうそれまでですけれども,取締役会自体が社外過半数ということをクリアした場合には,もう少し柔軟な設計を認めるといったような方向はあり得るのかなというふうに思っております。 ● ありがとうございました。大分時間をかけて御議論をいただきましたが……。 ● 先ほどの監査役会と監査委員会と一体どちらが上なのだという見方なのですけれども,実はアメリカで今回のことで監査役会の制度は認めたのですよね。委員会等設置会社については,結局まだガバナンスは不足だという点で認めなかったわけですね。それはなぜかというと,私は本来は委員会制度の方が機能するのではないかと思っている方なのですけれども,恐らく,独立性,社外性がまだ欠けているのだろうと。監査役会というのは,よく見ると法律的には本当に大したものなのですね。だからこれだけ現実とかけ離れているというのは,新日鉄さんは大変大物の監査役で,いつも尊顔を拝していまして,大変違うところなのですけれども,一般的にはそれほど,法律上ほどの機能は発揮していないのではないか。やはり委員会等設置会社の方が恐らくそういう機能は発揮できるのではないかという期待を持っていて,私は今のところ,どちらが上とは申し上げられないのですけれども,可能性は委員会があるのかなと。新日鉄さんにおいては,永久に委員会制度を恐らく採用されないだろう,あれだけ大物の監査役が出る会社は,そういうことはないだろうと思いますけれども,一般論としてはそう申し上げたいと思います。 ● いろいろとあるのですけれども,私も会社の実務の方々から何かの機会にヒアリングをすることが多いのですが,そういうときに,先ほどお話がありましたように,米印の1が一番希望が集中しているという印象というよりは,どちらかというと,監査役設置会社の方は現段階でも比較的会社が自由なのですね。制度設計といいますか,例えば社外取締役に任意性がある,あるいは社外監査役について半数以上というふうになりますけれども,社外監査役をそれだけ置けば足りる。それ以外に社外のガバナンス機能という意味では,社外諮問委員会を置くという方法もできる。経営と執行の分離という意味では,執行役員制という任意的な方策もできる。そういうことで,監査役設置会社は二義的な制度設計のフレキシビリティーが高いので,余りそれについて当面は規制を強くしてもらいたくないと。その反面,委員会等設置会社については,確かにきちんとした機能しやすい制度だということは言えるのですが,選択の余地が狭いということで,米印2の監査役会を置くこともできると,そういう方向の選択肢を一つ加えていただくという希望は出ているような感じ,印象を受けております。ですから,私としては,取りあえずは米印の2が実務としては一番選択肢の幅が妥当に広がるというような面があるのではないかなという印象を持っておりますので,その点,御報告させていただきたいということです。  ただ,監査役会を設けた場合に,監査役の報酬の決定機関,どこが決定するのかというのが一つの課題になるだろうと思います。報酬委員会でよろしいのか,まさか,監査役だけは株主総会というわけにはちょっといかないと思いますので。それから監査役会が自分で決めるというのもちょっとまずかろう。そうすると,報酬委員会しか考えられないのですけれども,報酬委員会が決定するにしても,監査役は株主総会で取締役と別途選任された機関ですから,監査役の同意を得て報酬を決定するという方策などもいろいろ考えられますので,米印2をとったときには,報酬の決定者が一つの課題になる。是非これは御検討いただきたいというふうに思います。 ● そういう実務で米印2の要望が多いときに,これまでは取締役会が取締役の,あるいは経営に対する監督権能もあったのですが,それがなかなかうまくいかないということで,とりわけ委員会等設置会社でも圧倒的多数が社外でもないからということで,取締役会の監督機能は高める努力を実務がしていただいたけれども,三つの委員会の相互の連携で監督機能を強化しましょう,こういう三委員会制度を設けたのですが,そして,人事と報酬は二つの委員会がありますと。その人事と指名委員会にいろいろとサジェスチョンするために効率性の観点も含めて監査委員会が監督し,そして執行役の人選については監査委員も加わりますよというスキームになっているのですが,それを監査役会にかえる場合には,効率性と,その人事の意思決定に監査役会がどのようにかかわるということを念頭に置いておられるのか。そこら辺,先ほどの繰り返しになりますが,そこを十分に,例えば現行制度を少し変容して過不足ないものにしますという話なら分かるのですが,今のままの監査役会だったら,そこに穴があいて,そこで先ほど言われた委員会等設置会社の理念が瓦解する危険性もある,こういうことだと思うのですが,そこで実務の知恵としてはどういうふうにお考えなのでしょうか。 ● 実務の知恵と申しますと,一つは,おっしゃるように,監査役会が執行役の任免とか,そういった業務の効率性の面に対する監査を行うというところまでやるかどうかということが一つ問題として残るとして思うのです。むしろ,委員会等設置会社においても監査役会を設けるという発想というのは,委員会等設置会社においては,業務の相当部分が取締役会から決定権限が執行役に移行する。経営と監督が分離されるということになりますので,そういう意味では,どちらかというと,監査部門というのは執行役の業務執行を監査するという側面が非常に強くなって,むしろ取締役会の職務執行に対する監査という意味では,これはどちらかというと取締役会全体のセルフコントロールになるのではないか。 ● 取締役会が執行役を監督するのですね。 ● ええ。 ● ただ,十分に監督できないから監査委員会がありますよと,こういうスキーム。取締役と執行役とを先ほど混乱して使ったかもしれませんが,委員会等設置会社の中で最も重要なのは,執行役の健全かつ効率的な経営を取締役会が全体としてコントロールするのだけれども,その過半数が執行役だったら,取締役会は機能しないから,社外中心の三委員会を置いたというスキームで,先ほど説明すべきところを,執行役と取締役を取り違えていたかもしれません。 ● 結局,取締役が執行役の職務執行を監査する,監督すると。これは監査役設置会社においても,使用人監督という意味では,レベルの違いはありますけれども,似たような面があるというふうに思います。その場合に,監査委員会にかえて監査役会を設けるというのは,監査役が取締役の執行役に対する監督の状況を監査するという発想だと思います。 ● それはなかなかできないからということ。もう一つは,今回は省令の,施行規則の193条6号ですか,それで例えばコンプライアンスだとかモニタリングのスキームをきちんと取締役会で決めて,その稼動状況を監査委員会が監査するとなり,そしてそのための使用人についても手当てしますが,そこら辺のところはすべて監査役会の方にもつなげるとなると,今の監査役と相当違うようにならざるを得ない面もあるので,そこら辺の詰めをしていくと,最初に申し上げたことですが,現在の監査役制度が相当程度変わってくるなら,米印2は検討の余地があると思うけれども,主張されている方がそこまで覚悟があるのかないのか,よく分からないから聞いていると,こういうことなのですが。 ● まず第一に,現在の監査役制度が法制度としては非常に立派なものでありながら,実態においてはそれほどでないというその落差が大きいということですけれども,先ほど○○委員もおっしゃいましたように,従来,監査役は社長が選ぶということだからこそ問題があったというのは,そのとおりなわけで,それゆえに,平成13年12月の議員立法がなされているわけですから,これがどの程度効果を持つものかどうかというのは,これから見ていく段階にあると思うのですね。したがいまして,議員立法がなされたということを一応念頭に置きながら我々は今後どう動くのだろかと見ていかなくてはいけないわけで,その議員立法の評価抜きに,前のものの判断をそのまま引きずる形で,今,比較検討はできないのではないか。したがいまして,立法後の状況の中で今これから制度間競争が始まろうとしているわけですから,そういう意味で見ていかなくてはいけないということが一つあると思うのです。しばらく待つ必要があると思うのですね。  それから,第2番目に,適法性の監査というものと効率性の監督というものですけれども,これをどの程度分離してやった方がいいのか,それとも融合してやった方がいいのかという判断の分かれだと思うのですね。取締役会というところで適法性の監査を監査委員会を設けてやりますと。それから効率性の判断についても,指名委員会,報酬委員会の具体的な活動もありますが,その監査委員も含めて人事権を行使するという格好で,効率的監査をやりますというスタイルがいいのか。それとも,適法性のチェックというのは本当に独立性の要ることだから,切り離して,任務分担でやっていただいて,ごまかしのないデータがきちんと出てきた場合には,効率的に運用されているかどうかということは比較的判断しやすいわけですね。それを見て,本当の首を切れる立場にある人たちが指名委員会あるいは報酬委員会に入っていれば,それだけでも十分だという判断もあり得るわけです。だから,その二つのどちらがいいのかということは,正に制度間競争でやってもらいましょうということなわけですから,今ここで,どちらがいい悪いということを決めつけて制度設計をする必要はないだろうというのが第2番目の点です。  それから,先ほど○○委員がおっしゃいましたように報酬の問題ですね。確かに,私は米印の2番目のような選択肢は置いた方がいいと思いますし,実務的にも案外お使いになられるのではないかと期待もするぐらいなのですが,そうした場合に初めてイコールフッティングの制度間競争が始まるというふうに思いますので,是非,この米印の2番目というのは御検討いたたぎたいと思うのですけれども,確かにそのときに監査役の報酬をどうするかという問題が残りますね。しかしこれは株主総会が監査役を選ぶわけですから,株主総会が決めるということでいくべきだと思います。そうでないと一貫性がとれないと思います。  では今度は,委員会等設置会社ですから,取締役の報酬の方は報酬委員会に任されてしまうわけですね。食い違いが生じるのではないかということですけれども,私はそもそも,委員会等設置会社において執行役の報酬を決めるのが報酬委員会になるのはともかくとして,取締役の報酬を株主総会権限から外してしまったということは政策的に妥当ではなかったのではないかと,昔からそういうふうに,ここでも発言を申し上げてきておりまして,そうでないと,どう考えても,やはりお手盛りになるわけですね。ですけど,せっかく立法してしまったわけですから,そこを今すぐに手直しをしろというふうには申しませんけれども,そういう問題があったがためにできた食い違いですから,これはもう食い違いのまま走るということで仕方がないのではないかなというように思います。  それから,米印の3番目というものが考えられないという御意見もございましたけれども,私も先ほど申しましたように,米印3番目の選択肢というのは,米印2番目の選択肢を設ければ,必要性もかなり薄らぐと思いますが,ただし,米印3番目でも,先ほど○○幹事もおっしゃいましたように,過半数を社外取締役にするという会社が実際にあらわれ出してきていると。これからも広がるとした場合に,例えばそういう要件をつけるならば,なぜいけないのかという説明がつかなくなるだろうという意味において検討してもいいのではないかというふうに申し上げただけで,むしろ厳しい要件をかけることが前提になっているわけです。 ● ありがとうございます。いろいろ御意見をいただきましたが,結局,現段階では難しいのではないか,時期尚早ではないか。何年かやってみた後は,皆さんからいろいろな意見が出ましたように,再検討の必要は出てくると思いますけれども,ちょっと現段階では米印三つとも難しいかなという気がいたしました。 ● まずは単純な競争をさせてみようということですね。 ● それではもう少し進ませていただきたいと思います。 ● 訴訟委員会とか株主代表訴訟絡みのものは別途ですね。ここで訴訟委員会の要望をテイクアップしないで,ということではないですよね。別途,ほかのところで株主代表訴訟制度の改正問題をやると。 ● 訴訟委員会につきましては,宿題でもありますので,取り上げるかどうかも含めて現在検討中でございます。 ● ここで取り上げないということを決めたわけではないですね。はい,分かりました。 ● ありがとうございました。それでは先へ進ませていただきます。  「第2 計算」ですが,これにつきまして事務局から説明をお願いいたします。 ● 第2については,1,2,一括して御説明を差し上げます。  まず,第2の1の「利益処分が取締役会限りで可能な会社の「剰余金の分配」」についてでございます。利益処分が取締役会限りで可能な会社の範囲についてはさておきまして,利益処分が取締役会限りで可能であるという会社については,剰余金の分配の機会について特に制約を設けなくてもよいのではないかという御意見についてどう考えるかということでございます。  前々回にお諮りいたしましたように,利益配当その他の株主への金銭等の分配,あるいは自己株式の取得等を含めまして,すべて剰余金の分配という概念でくくり,それについて統一的な財源規制をかけることとした場合,その起こり得る機会について,株主に対する平等での金銭その他の財産の配当に限って,年2回に限る必要は必ずしもないのではないかというのが,ここでの問題意識でございます。  なお,役員賞与その他株主以外の者に対する,現行法で言います利益処分の取扱いについては,なお検討を要するところがありますので,また別途,第二読会までに整理してお諮りしたいと思います。これが(1)の問題でございます。  (2)は,(1)をどうするかにもかかわりますけれども,現在,中間配当・自己株式の取得等につきましては,会計監査人等の関与がなされておりません。定時総会における利益処分の場面では会計監査人の関与があるわけですけれども,それ以外の金銭の払戻し,自己株式の取得に関してはその関与はないわけでございます。債権者保護的な観点から,会計監査人につきまして,財源規制が適切に守られて,そのような剰余金の分配がなされているかどうかということをチェックしていただくようなシステムを構築してはいかがかというのが,ここでの問題意識でございます。例えばといたしまして案を掲げさせていただいているところでございます。剰余金の分配が取締役会の決議によって行われるとした場合に,そのことが会計監査人に伝えられ,会計監査人が財源規制を守っているかどうかということを確認し,守っていないということが確認できた場合には監査役等に通知をするというようなシステムを構築したらどうかというのが米印に掲げさせていただいているところでございます。  これは,必ずしも利益処分が取締役会限りで可能な会社に限らず,問題となり得るところでございますので,そのような会社に限らない問題としても御議論いただきたいと思います。  (3)も同様に,必ずしも利益処分が取締役会限りで可能な会社に限らない問題でございます。会計監査人が不適法意見を述べている場合,あるいは監査役等が会計監査の方法について不相当意見を出している場合におきましても,株主総会の決議によって,その計算書類を確定させるということが現行法のもとではできるわけですけれども,このことについて現代化に当たって何か手当てをすべきところがあるかどうか,仮に何らかの手当てをすべきとすれば,米印のようなことが考えられないわけではないのですけれども,どうかということを伺わせていただきたいと思います。  それから,2でございますが,現行法で言えば違法配当の場合の関係者の責任の問題でございます。(1)は過失責任化の問題でございまして,事前の財源規制に違反して利益配当等の剰余金の分配をした場合の責任について,現行法に照らせば,委員会等設置会社につきましては,立証責任が転換された過失責任化が図られておりますけれども,それ以外の会社については無過失責任規定があるわけでございます。この規定の見直しというものが宿題になっているところでございますけれども,委員会等設置会社の責任内容に合わせ,過失責任化をするということはいかがかということが(1)で指摘させていただいている点でございます。  (2)は,仮に(1)で過失責任化を図るとした場合に,その責任を負うべき者の範囲につきまして,現行の取締役,執行役に加えて会計監査人等の関与者も含めることとしたらどうか,すなわち,立証責任が転換され,賠償額が法定された過失責任を,これらのものにも負っていただくということはいかがかということでございます。  それから,(3)は,財源規制違背で分配がなされた場合の関係者の責任の免除の在り方についてでございます。現行法は,文理上総株主の同意によってこれらの責任をすべて免除し得る形になっておりますけれども,財源規制が債権者保護的な観点から設けられているものであるといたしますと,少なくとも財源規制を超えて分配された部分について,総株主の同意によってとはいえ免除を認めるということに合理性があるかどうか,疑問でありますので,その点について,超える部分については免除の余地を認めないという考え方をとり得るかどうかということをお諮りしたいと思います。 ● それでは,この第2につきまして御議論をいただきたいと思いますが,まず,1の(1)でありますが,取締役会決議でもって剰余金の分配ができることになった場合に,その会社については,2回に限る必要はないのではないかということです。問題提起でありますが,いかがでしょうか。 ● 賛成です。 ● このような必要性というのはどの程度あるのでしょうか。 ● 会社再生法を手当てしたときに,子会社の株式を段階的に割り当てるケースなど,いろいろなケースが想定されていて,取締役会の決議で株主に対して議決権の3分の2を有して子会社の株式を交付することを特例的に認める。これは○○委員とずっと議論しながら,そういう道をつけておりまして,結構実務的には非常にニーズの高い分野だと思っております。是非一般化する方向で御議論していただきたいと思います。 ● 年に何回か限らないという意味と,それから株主総会にかけないということと,二つあるわけでございますね。それから事前に定款に定めるということもないと。三つと言っていいのかもしれませんですね。 ● 利益処分を取締役会限りで可能とする会社の範囲をどう定めるかというのがまずありまして,それにつきましては,当然,定款での定めがあり,会計監査人が置かれ,その他いろいろな要件の要否について既に御議論をちょうだいしたところでございますけれども,ここでは,そのような要件をクリアして取締役会限りで利益処分が可能になっているという会社におきまして,--例えば現在検討されております議員立法ですと,取締役会限りで,一定の方式ではありますけれども,自己株式の取得がかなり自由になると,--期中において取締役会限りの判断がかなり自由になり,剰余金の分配という概念ですべて整理するといたしますと,株主に対する金銭の平等な分配という行為に限って時期を年2回に限るという理由は必ずしもないのではないか,その実需がどのくらいあるかどうかということはともかくといたしまして,法制的に限る必要はないのではないかというのが一つでございます。  また,自己株式の取得に限らずとも,減資等に伴う株主に対する払戻しも含めて剰余金の分配という概念で整理いたしますので,それらについては特別,時期が限られるわけではありませんことから,特に金銭の分配,--中間配当は金銭分配に限られているのですけれども,--それに限って時期を,回数を限るという手当てをすることの方が非常に難しいということもありまして,お諮りさせていただいた次第でございます。 ● この問題は,先ほど○○幹事が御紹介されたとおり,部会資料5の改正検討課題の(3)で,ほぼ同じことを一度議論しているわけです。そのときに申し上げたことと同じことをまた繰り返すことになりますけれども,アプローチそのものはこれで結構だと思うのですけれども,問題は,ここで言う分配できる剰余金の範囲をどうやって決めるかということが重要であって,それの具体的な案をお示しいただかないと,どのように妥当かということは議論できないというふうに思います。基本的アプローチとしては,私はこれでいいと思います。(1)についてはそうです。 ● 今,○○委員のおっしゃられた分配できる剰余金の範囲というのは,基本的な考え方としては現行の配当財源と対応するものというふうに考えていいわけですね。 ● 基本的にはそうです。前々回お諮りしたと思いますけれども,期中での分配を前提にして,その期中での判断が可能になるような規定の仕方に変える必要がありますけれども,その点を除けば実質において変えるという御提案はしておりません。 ● そうすると,基本的には事前には分配可能な剰余金から,既に決定された剰余金の払戻しに相当する部分を控除した残りが配当財源になる。事後的には,期末において配当財源はマイナスにならないという,マイナスになることが見込まれる場合にはやってはいけないと,そういう格好になるわけですか。 ● その点についていえば,前回,私が御質問したように,自己株取得の財源としてあらかじめ決めた分を全額控除するのか,それとも,実際にその支出をする時点までに取得するのに使った分だけを控除するのかといったような問題があって,それについてはここでは特に,この間は,現実に支払った分だけを控除するという意味で,現行法とやや違うアブローチをするような書き方がしてあったのですけれども,それはここでどちらが適当かということは議論しなければいけないと思います。 ● その点については二読で十分御議論いただきたいと思います。まずは方向性についていかがでしょうか。 ● 私ども,(2)と関係することがあるのですけれども,会計監査人が違法な配当等がないかどうか。「等」がついているのであれば,これは何だろうという疑問があって,もし実質的な内容まで意味するのですと,大変重いなと思って,そうなると,(1)も問題があるのではないか。つまり,私ども,今一番気にしているのは,今の経済の中で,株価の変動や棚卸資産の変動で相当含み資産を抱える危険性が期中にあるだろう,そういうことが見えたときに,それを見逃していいよと言うことはなかなか言いづらい。しかし,会社の帳簿には,その時点では,多分決算ではないから織り込まないでしょう。そういうときに,「等」がついたことをやれと言われるのは大変きついなというふうに思います。  「等」がないのだったら,監査人は何もやる必要はないのではないか。だからいずれにしろ,会計監査人は関与する必要が,この分配についてはないのかな,決算のときには当然やらなければいけないと思いますけれども,そういうことで,(1)は賛成なのですけれども,(2)がつくと,ややクエスチョンがつくと,そのような意見を申し上げます。 ● ここではかぎ括弧の「剰余金の分配」というものを指しているので,それ以上に妥当性その他の判断までしていただこうという趣旨では毛頭ございません。したがいまして,ある意味では,これから御議論いだたく具体的な配当財源の定め方に照らして,それを超えているかいないかだけのチェックになりますので,足し算,引き算と言ってしまえばそれまでなのですけれども,それすらについても会社内部の者に任せておいてよいのかどうかということから,会計監査人の方に関与していただくという制度はいかがかというのが提案の趣旨でございます。 ● 今の点に関してなのですけれども,剰余金の分配可能な範囲の決定だけというのですが,既に現行法のもとでも293条ノ5の第4項で,期末に貸借対照表上の純資産が,いわば配当可能利益がなくなるおそれがあるときは「分配ヲ為スコトヲ得ズ」と書いてあるわけですね。210条ノ2の1項でも同じように,「くだるおそれがある場合は」ということを規定しているわけで,今の配当可能剰余金の算定の場合に,「くだるおそれ」の判断を会計監査人がすることになるのかどうか。これはかなり実質的な判断が入ってくることになって,非常に重い。これが入るとなかなか大変な話かなという気がします。 ● その点も責任自体について議論があったところなのですが,それにもかかわってきますけれども,ここではそれは考えているのですか。 ● 原案を作る段階では,そこまでは考えていなかったところでございます。 ● 先ほど○○委員が,「配当等」があるからいけないとおっしゃられたのですが,先ほど部会長のお話では,この規定を使う場合のニーズの一つとして,年2回でなくて,それ以上に金銭の分配を行う。つまり四半期配当をやるということですね。四半期配当は配当ではないのですか。 ● ここの「配当等」というのは,先ほどの事務局の説明では剰余金の分配全部を含むから「配当等」と。言いかえるとしたら,違法な剰余金分配という意味だということです。 ● ですから,仮に四半期配当をやった場合も,当然(2)があれば,監査人はそれについて責任を負うことになるわけですよね。もしこの(2)が適用されれば。 ● 四半期配当が財源規制に違反しておればですね。 ● そういうことですね。ですから,「等」がなくても……。 ● 「等」は私の誤解で,分配を含むということですので,それは結構なのですけれども,○○委員がおっしゃったことが適用されるとすれば,これは大きな問題だなと。単に計算のことだけであるならば,これは監査役で十分ではないかと思います。やはり私どもがもし関与するとすれば,どうしても本当にその時点でいいのかということをやらなければいけないと思いますし,また期末まで大丈夫かということを考えた中でのことを世間も要求するのではないかということで,そこは余り軽く,計算だけやればいいのですというふうには言ってほしくないなと思いますけれども。 ● 私ども,(2)につきましては,取締役の責任だけで対応すればいいのではないか。会計監査人にチェックをしていただくと,それによってまたコスト高を招くとか,そのときの将来の見通しのDCF査定等において,またいろいろと意見が食い違ってくるようなことも考えられますから,ここは期中の,何回か行うであろう剰余金の分配につきましては取締役の責任でやっていけばいいのではないかと思います。 ● これまた教えていただきたいのですが,今のところで,現行法上におきましても,会計監査人の監査というものにおいては,特例法の13条2項2号で,281条ノ3の2項第1号から第7号までに掲げる事項についてということで,利益処分の適法性については監査対象という形になって,利益処分の分配の,正に違法ということであれば,足し算,引き算の問題もチェックするという形になっています。剰余金の分配という形で株主に対する払戻規制を統一的に考えるという場合に,先ほど○○委員からは,決算のときにはいいのだけれどもという御発言がありましたけれども,この辺の理屈はどのように立てることになるのでしょうか。 ● 決算のときにと申し上げたのは,バランスシートで,項目について全部監査しているわけですね。したがって,含み損等については一応内容を全部検討済みだということで,そういう意味では,その結果としての剰余金について監査済みだということが言えると,そういう前提があるからこそ言えるのだと思っています。 ● 今,○○関係官の話を伺っていて,ちょっと,わけが分からなくなってきたのですけれども,(1)というのは,利益処分が取締役会限りで可能な会社については,場合によったら,一度も利益処分も損失処理もしないということもできるということなのですか。つまり,年に一度必ず決めなければいけないということも排除するということなのですか。ゼロと決めるのではなくて,何も決めないで放りっぱなしにするということもできると。 ● 年に1回は利益処分をつくらないかんですね。 ● 定時総会で計算書類を出す,そのときの……。 ● 年に1回は締めなくてはいけない。 ● では,その場合の計算書類のことはどういうふうにすることを考えているのですか。 ● 前回御提示しましたけれども,もしこういう利益処分案についての取扱いを認めるということであれば,その利益処分に関する議案というのは多分なくなることになりますので,定時総会のときに締めるのは,あくまでバランスシート,BSとPLだけを締める形になりまして,その後の剰余金の分配もしくは金銭の配当に相当するものは,結局は(1)の手続で順番に戻されるだけということになりますので,先ほどのような○○委員の意見を採用すれば,利益処分に関しては一切会計監査人は関与しないという形に多分なることになるだろうということです。  ですから,どちらかを選ぶということなのですが,すなわち,現行法は利益処分案については見るということになっておりますので,それに相応するものが期中に行われても,見るようにしてはどうかというのがこの案ですし,もう一つの考え方は,足し算,引き算だけの話であれば,適宜取締役にやらせればいいというふうにとるのであれば,このタイプの会社においてはバランスシートと損益計算書と,あと営業報告書の一部までは監査対象になるけれども,そこから先は書類自体が存在しないことになりますから,監査されないということになり得るということになります。 ● 先ほどの○○関係官の御説明を正しく理解していない可能性があるのですが,先ほどの御説明では,現行法でも会計監査人は利益処分に関して責任を負っているというお話だったわけですね。その一方,先ほど○○委員からも御指摘がありましたけれども,293条ノ5の第4項で,期末においてバランスシートの純資産が配当可能な額を下回るおそれがあるときは配当できないという規定があって,そうすると,現在,会計監査人が責任を負っている部分というのは,この部分は負っていないということですか。そういう解釈になっている。 ● はい。 ● それなら分かる。 ● 少なくともこの原案の考え方は,当該事業年度の期末の予測については会計監査人は責任を負わないと。それから,もし(2)を置かなければ,現在,利益処分案について会計監査人が一応責任を負っているけれども,それについては全く責任を負わなくなると。それでいいかというのが(2)の趣旨です。 ● 今回の(2)がそうだという趣旨だけではなくて,現行法においてもそういう解釈だということでいいわけですね。 ● 現行法は,利益処分案が適法であることについては,会計監査人にも監査する義務があるわけですね。 ● したがって,先ほど293条ノ5の4項というのは……。 ● 4項は現在でも責任はない。 ● 現在でも責任は負っていないと,そういう解釈でいいですね。 ● はい。期末の予測については責任を負っていないということです。  そうなりますと,(2)はそれでいいかということですね。剰余金の処分について,会計監査人は,私は関係ありませんよということで,本当に,そういうことになるがそれでいいのかというのが(2)の趣旨のようです。 ● ○○関係官がおっしゃった,現行法では確かに年1回の決算のときの,定時総会のときの利益処分案については会計監査人がその適法性のチェックもしている。その論理からいうと,それを認める以上は,剰余金分配についても認めることになるのが,多分筋だというお考えだったように先ほど伺いました。剰余金の方を認めないのだったらば,年1回の決算のときの利益処分案についてのチェックも行わないことになるのは,論理的な関係だというお考えで先ほどは述べられたのかと思ったのですけれども,そうなのかどうかということで。  ただ,問題は論理だけの話ではなくて,会計監査人に一体どこまでのことを期待するかということであって,確かに仮に剰余金の分配全部について,現行法293条ノ5の第4項等も含めたチェックをするということになると,少なくとも仕事の性格として従来と違ったものも入ってくることは確かで,会計監査人に一体どこまで将来予測の仕事をさせるのか,それ自体,先ほどDCFなどを含めて大問題ですけれども,それは正に政策論として決めるべき話であって,論理的に片一方がだめなら,片一方もだめとか,そう考える必要はないように思っておりまして,新しい予測の要素の入るところについても会計監査人に責任を問うような形での監査の仕事を商法としてやらせるかどうかということは政策問題として考えれば足りるのではないか。ただし,それは非常に大きな問題だと思います,ということです。 ● 論理的にはそういう解決も確かにあるわけです。どうも原案はそれは考えていないみたいですね。 ● よく分からなくなってきたのですけれども,期末に金銭で配当する限り,貸借対象表も損益計算書もきちんとできたということになりますと,あとは足し算,引き算だけの問題になると思ってよろしいのでしょうか。  それから,今度もしも現物配当などもいろいろ認めようということになってきて,例えば子会社の株式を期中に配当するといったときに,金銭でないわけですから,もう一つ別の要素がかかるわけですね。これはどれだけと評価するかと。その点についても,会計監査人も関与せず,取締役会だけでそれができるということになることも意味しているのかということなのですが。 ● 現在でも,中間配当の問題があるわけですけれども,中間配当の場合には中間決算をやって,その結果として,それを使うか,使わないかは別として配当するわけですけれども,私どもとしては,中間決算で大赤字が出た場合は,極力配当すべきではないという意見を申し上げております。ただ,それは法的な根拠はないわけで,あくまでも善管義務的な会計士としての監査上のいわば注意ということで申し上げているのですけれども,これが四半期あるいはもっと別な形での配当になっていくと,決算もやっていない可能性もあるわけで,四半期でもきちんとした監査をしていない可能性もあるわけで,そういう中で,いわゆる前期の後の状況の変化が入ってきているにもかかわらず,それについて一切見ないで会計監査人が意見を言うということは制度的にかえって誤解を招くような結果になるのではないかということで,私としてはそれは不要ではないかと申し上げているわけです。 ● そうしますと,いずれにせよ,もし足し算,引き算の問題だから,これは会計監査人にはもうチェックしてもらわないでいいという考え方も論理的にはあるのですが,それは現行法とは違ってきますけれどもね。もし(2)のようなあれは要らないということになると,結局そういうことになりますが。 ● むしろ心配なのは現物の場合ではないかと。 ● 現物の場合も,現物の評価はともあれ,少なくとも,配当可能現物を決めるのは簿価で決めるのでしょうから,それは足し算,引き算と同じでいい話だということに,論理的にはなると思うのですね。いかがでしょうか。そういうふうに割り切っていいのかどうか。 ● 中間配当自身についても割り切っているんですよね。年に2回が年に4回になるから規制を強化しようということは,理屈としてはおかしいのではないでしょうかね。 ● ただ,現在は期末の配当については一応……。 ● 今,そういうお話が出て,ここを読んでいて,「現行の利益配当以外の剰余金の分配についても」と書いてあるから,現行の利益配当,年度の決算を締めてやるものについては従来どおりでやって,それ以外のと読めたのですけれども,今の御説明は全然違うということですね。ここを読んだときには,「中間配当とか自己株式とか,現行の利益配当以外の剰余金の分配についてもチェックする」と言っていますから。 ● 現行の利益配当についてはチェックがかかっているわけです。 ● それは今後も続けようということなのでしょう。 ● (2)を前提にしますと,現行の利益配当にかかるチェックと同様のチェックをほかの場面にも広げたらどうかという提案になりますし,この(2)を維持しないということになった場合には,現行の利益配当に関する部分のみチェックするということにしますかどうですかということを,また別途御議論いただかなければいけないということでございます。 ● そういうことでしょう。 ● 現行の利益配当の部分については可能性は二つあるということですね。 ● その部分についてのみ,従来どおり見てもらうということもあるのではないかと思うのですけれどもね。 ● 先ほどの○○関係官の説明は,そもそもそういう処理はないからという。 ● 次回以降,現行の利益処分はどういうふうに取り扱うかという問題をまた再度議論していただかないといけないのですが,(1)みたいな制度を認めまして,役員賞与等についての取扱い,例えば委員会等設置会社と同じように禁止するなんていうことをしますと,利益処分案に書くべきものというのが,そもそもあるのかないのかというのが問題になると思うのですね。必ずしも,現行の利益配当に相当するものを利益処分案に書かなくても,同じ時期に取締役会決議でやればいいわけですから,そこら辺を整理しないといけない。したがって,1の(1)みたいな制度を認めてしまうと,現行の利益配当と他の場合の中間配当なり自己株,--自己株はちょっと特殊かもしれませんが,--中間配当と利益配当とにそんなに差異はないのではないかということですので,どちらかまとめてやるのか,それとも,どこかで割り切りをして,どこかのレベルでとめてチェックをするというシステムにするのかについては考えていただかないといけない。(2)みたいな制度にすれば,そこは余り議論せずにばさっと全部というだけなので,とりあえずこういう提案をさせていただいているということです。 ● 現行の利益処分は確かにバランスシートなり損益が固まった後にやるということになると,形式的ではあるのですけれども,セットでやるというところに意味があると思っているのですよね。つまり,財産を確定した中で利益処分をするというのがセットになっていますから,この財源というのは非常に明確になっている。その後に,何か月か過ぎた形だと,その間の損益が新たに入ってきますから時点がずれてくるわけですね。そうすると,前は確かに確定した財源を使ったといっても,後の損益でそれを食っているかもしれないということになると,時点がずれてくるから,それは逆に言えば損益計算書なりバランスシートとセットでやらない限りは,そういう意味では意味がない。だから,四半期でも,私は四半期制度をきちんとやった中で配当するというのが本来筋だと思うのですけれども,それを無視というか,それをやらない制度の中でこれを認めるのなら,それは相当,取締役の覚悟でやってくださいということでしかないのかなと,そういうことで申し上げているわけです。 ● 私も,自己株も入ってくると,広い意味での剰余金の処分だと言われると,ちょっと混乱するのですが,期末の配当,半期,それから四半期,これがルーチンだとしますと,健全な実務としては,中間配当するときには仮決算というのですか,ともかく何らかのある程度の決算をしているはずなのですね。四半期するなら,中間配当との中間の四半期はともかく,次の四半期の方については何かやらなければ,少なくとも取締役の善管注意義務違反になる可能性……,そこでおかしくなれば,何もしなくて,期末におかしくなったら,おかしいのではないかと思いましたので。そうして,こういう制度をするときには,その際,会計監査人にも目配りしてもらうという方向になるのかなと思ったのです。せいぜい,年4回の,広い意味での金銭分配と自己株を一緒にされたので,私はわけが分からなくて,やはり二つ,違うのではないかな。とりわけ,こちらの方は相当の巨額の金なのですね。自己株の場合も巨額になりますが,これまたちょっと別の意味で,私は半期を四半期にするのなら,半期と同じような手続を社内でするだろう。その半期ないしは四半期に会計監査人がどうかかわるかという話になると,何か分かるような気がするのですが,それを適宜やりますから,そして,その書類もありませんからと言われると,ちょっと,私の頭が空白になってしまったので,そこら辺はもう少し実務的にもどうなのか。古い人間なのかもしれませんが,配当する限りは決算するものだというふうに思っていたのですが。 ● 今,中間決算のときはみんな決算をして中間配当していると思うのですけれども,自己株式の取得のときには決算はしませんよね。期中で,例えばトヨタ自動車が3,000億円購入しましょうというときに,それを1,000億円,1,000億円,1,000億円とやるときに,ある日,1,000億円を買いますというときに,その日の決算を締めるわけではありませんし,1か月後,1,000億円をまた追加でということでもない。自己株の取得は,かわりにキャッシュで毎月配当していくというときも,恐らく決算などすることはないと思うのですね。今までの状況と,その後の月次の損益というのは通常把握していますから,キャッシュフローも把握していますから,それに基づいてびしっとした決算を締めることなく,一月ごとであろうが,四半期ごとであろうが,期末には剰余金がマイナスになることは絶対ないという自信のもとに,ただ,財務担当の重役から,ないしは社長から,本件を実施しても,私どもの把握している財務状況に関する限り,期末に欠損になることは絶対ありませんから,そういう中で議論をちゃんとやって,私どもが取締役会に提案しているわけですので御了承いただきたいと,こうやっていくわけですよね。そのときに,いや,今日自身の決算を全部出せということを言う取締役はいない。実際にやらないだろうと思います。 ● 私もそれを先ほど言ったつもりではなくて,自己株はそうだろうけれども,半期配当が四半期になると,むしろ半期の中間配当と同じラインになるというふうに考えるのも十分に合理性があるなと。それと,自己株がこうなって,分かりません。そういうことなのです。しかし,何か気になるなという。 ● 内容は皆さん御理解されたと思いますが,選択肢はいろいろありまして,今日議論を詰めるのは難しいと思いますので,なお,お考えいただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。 ● 事務局においてまた議論を整理して,第二読会にお出ししたいと思います。 ● それでは,ちょっと休憩いたしましょうか。今日は何としても,5時までですが,少なくとも……,最後に少し合名,合資会社あたりが残るのはやむを得ないのかなと思いますのが,できれば終わりたいと思いますので。            (休     憩) ● それでは,審議を再開させていただきたいと思います。  1の「(3)会計監査人が不適法意見を述べている場合等の計算書類の取扱い」でありますけれども,現行法はここに書いてあるようなことでありますが,この当否についてどのように考えるかということですが,いかがでしょうか。 ● 現状においても,会計監査人が不適法意見ないし意見を差し控えている中で,株主総会でもって,本来は報告事項となるところが承認事項になって,株主の判断でもって確定していくということはしょっちゅうのように行われているのだろうと思います。その現行法を変える必要はないのではないか,株主総会の決議によって計算書類を確定するのだという基本路線は何も変更する必要はないのではないか,そういうように思います。 ● ほかの委員・幹事の方,御意見いかがでしょうか。 ● 実務では○○委員のおっしゃるとおりだと思うのですけれども,公開会社の場合には,そもそもがそういうことが非常に不適切で,上場廃止問題も出てくると思いますので,現実にはあり得ないと思いますけれども,公開していない会社では往々にして多いのですね,これは。内容が問題あるのに,総会がいいからといっていくということは,どうも私は理解ができないと思うのです。いわば内容不存在みたいなことにもなるのではないかと思うのです。まあ,ケースにもよると思いますけれども,やはり原則的には,重度の問題があれば,これは作成し直すのが筋ではないかというふうに思いますが,場合によっては,総会がいいといっても,強制的に取り消す権限がどこかにあればまたそれでもいいと思うのですけれども,とにかく総会でよければいいという形で通していく方法というのはいかがなものかというふうに思いますので,これは改める方向を考えていただきたいなと思います。 ● まあ,最終的には,確定した計算書類が違法だったかどうか,最後は裁判所の判断になるのですが,裁判所に行く前にどうなるかという話ですが。  ○○,○○両委員からは違った意見が出ましたが,いかがでしょう。 ● 小さい会社でも公開でも閉鎖でも何でもいいのですけれども,最後決めるのはやはり出資をした方たちの自己判断で決めるということなので,私は○○委員の意見に大賛成というか,当然だと思っております。  ○○委員がおっしゃっていたのは,会計監査人に,ちょっと言葉は悪いですが,ジョーカーのようなオールマイティーの力を与えるべきだという議論なのか,そうではなくて,違う,先ほど最後の方におっしゃっている,一体どういうやり方だったら出資者が最終判断をする責任を持つのだということと相容れるような違うシステムを入れられるのか。そこの議論を教えていただいて,いいものがあれば取り入れたらいいと思いますが,なければ出資者のラストデシジョンだと思います。 ● 公開会社は出資者だけでいいのですけれども,本来はやはり債権者の保護ということも会計監査人の監査の中にはあると思うのですね。不測の事態を招くということがもしあれば,それは事前にきちっとしたレポートでお知らせするということが債権者の保護,取引の安定ということにつながる,こういうことも理解していますので,そういう意味では,株主総会だけで,内容がおかしなものが,おかしくないよという形はおかしいと。 ● 具体的なやり方を教えていただければ,それが合理的なものなのかどうかということを……。 ● 取締役会に監査意見を出します。で,取締役会はそれを受けて,それをそのまま総会に出すか,意見が無限定適正意見になるように修正し直して出す,これは両方あると思うのです。 ● おっしゃっておられるのは,会計監査人にビートーを認めろ,拒否権を認めろということと同義だという理解をすればよろしいのですか。 ● 要するに,不適法意見でいっても,最終的に総会で決議すればいいということについて,内容的に,会計監査人が,くだらないという,取るに足らない意見を言っている場合もあるかもしれませんけれども,内容的に,本質的にそれはおかしいのではないかというときに,それは裁判所が最終的に判断を下すのかもしれませんけれども,それはもう不測の事態しかないと。そういう意味で,その前に債権者保護の観点から,やはり直すことを考えられる方策がないかということで言っているわけです。 ● その方策を教えてくださいという質問を私はしているのですが。 ● だから,私は,とるかとらないかというのは取締役会の意見でしょうけれども,その修正をとるべきではないかと。 ● 望ましいのは取締役等が計算書類を作成し直すことだと思うのですけれども,そうしないと判断した場合に,監査役等が会計監査人の解任その他の適切な措置を講じるといっても,急にかえて,新しい方がすぐに間に合うように判断できるのか,報告書を書けるのかという問題がやはりつきまとうのではないかと思うのですね。そうすると,やはりこの米印の方はちょっと難しいのではないかという印象を持つわけです。  ただ,おっしゃいますように,確かに監査報告書で不適法だといっても,そのままになってしまって,少なくとも会社債権者との関係でよいのかどうかという問題はあると思うのですね。例えば,有価証券報告書を出す会社とか,あるいは上場会社とか,そういうレベルでは事実上その問題は起こらないというふうに考えた場合に,要するに大会社であって,会計監査人の報告は出されるけれども,そういうチェックがかからない会社の問題だとした場合に,少なくとも大会社の場合には,決算公告等をするときに,会計監査人の監査報告書等々もやはり公開させるとか,そういうような手だてでもって対処することは考えられないものでしょうか。 ● 今の○○委員の提案は,私は賛成です。セットでしていただけるのなら,大変それで有り難いと思いますが。 ● 電子公告の場合には全部,会計監査人も監査役の報告書も皆出させるけれども,相変わらず新聞等でおやりになりたいところは,1行でいいから,今は要注意であるということで出せということだけでもいいかと思いますけれども。何らかの形で債権者にちゃんと情報公開がされるということが担保されれば。それ以上の仕組みというのはちょっとつくりにくいのではないかなというふうに思います。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。 ● この不適法意見というのは今後増えるんじゃないかと思うのですよね。増えるんじゃないかと思いますのは,○○委員の前でございますけれども,ある銀行の両会計法人の意見の基本的な食い違いもこれ出てきている。この前も申し上げましたけれども,特にああいう減損の問題が入ってきたり,それから税効果ということが入ってきますと,今までになく将来予測というのは会計にとって極めて重要な問題になってくる。将来の事業をどう予測するかというのは,経営者と会計監査人との間で意見の一致を見る場合はいいですけれども,そうじゃない場合もたくさんあるだろうというふうなことになりますと,経営者が考える会計と--あれも粉飾をしようということでは全然ないと思うのですよね。同じ事象をとらえながら判断が違って,そのときに見積もるであろう税効果の資産性でありますとか,減損会計の対象となる資産の将来見通しであるとか,こういう正に見解の相違というのはふえてくるだろう。そういう中では,不適法意見というのは相当出てくるのではないかと思うものですから,それを,会計士の言うのがすべて正しいのだから,会計士の言うがままに変えなければならないということにはならないだろう。  今おっしゃられたように,○○委員の提案にありましたように,もしそういうことでありますと,公告書類に,本件につきましては会計監査人の適法意見を得られていないとかいうことを注釈して公告をするとか,そういうふうなことで債権者には注意を喚起する。株主については,当然会計監査人に出席権があるわけですから,こういうことだけれどもこれは不相当だ,かくかくしかじかだ,その上で承認決議をしてもらったらいいのではないか,そう思いますけれども。 ● 私もそんな不遜な考え方は持っておりませんので,そこは申し上げておきたいのですけれども,おっしゃるように経営者と監査人の方との見解の相違というのはこれからも多いかと思います。ただ,今期も始まっていますけれども,かなりの範囲でディスカッションをして,見解を一致させよう,こういう努力はしかるべきでありますし,また現実にもやっていると思います。これからも将来予測については,基本的には経営者と監査人とが一致すべきだと思いますし,お互いが理解できる範囲での違いにとどめるべきだというふうに思いますので,そうは,おっしゃるような見解の相違で不適法というふうなことにはならないのではないか。ここは私どもも十分注意したいと思いますけれども,おっしゃるように,修正まで求めることは現実的になかなか難しいということであれば,是非その意見を添付するという形でしていただければと思います。 ● では,大体,○○委員がおっしゃったようなことで,一応,株主総会で決着をつけるという制度は残すけれども,もし会計監査人の承認が得られていないのであれば,その旨は公告等で開示する,そういう方向で御異論ありませんでしょうか,皆さん。--ありがとうございます。それでは,そういう方向で進めさせていただきます。  次に,「2 違法分配の場合における責任」でありますが,これは(1)から(3)まで,どの点でも結構ですが,御意見……。 ● (1)につきましては,かねてよりの要望でございますし,国会の附帯決議におきましても,検討しなさいということになっているものでございますので,是非,本件につきましては,委員会等設置会社に限らず,監査役設置会社におきましても過失責任化をしていただきたいと思います。  (2)番につきましては,こういう考え方でよろしいのではないかと思います。  (3)番目の,責任の免除につきましても,違法配当の場合というのは,総株主というのは正に全員が利害関係人ということになっているものですから,こういうことも分かるのですけれども,それから,自分が得た配当とは別に,違法な,株主以外の者に対する分配の場合においては,やはり総株主の同意というのが条件になるので,免除してもいいのではないかと思います。 ● (1)は基本的にこの方向でよろしいかと思うのですが,(2)について,ここの「等」というのがありますが,会計監査人は1の(2)との関連でもう少し整理する必要があるという前提なのか,1の(2)と無関係にこれは議論するのか。これは当然前者の方と理解してよろしいわけですね。 ● おっしゃるとおりでございます。 ● それから,(3)については,財源規制の中でも,つまり倒産しちゃったらまた別途倒産処理法上の制約があると思うのですが,これはゴーイング・コンサーン状況でも免除を認めないという,こういう御趣旨と理解していいわけですね。 ● そうです。そういう考え方がとれるかどうかということです。 ● 法定準備金が十分あって,ただ,それが--十分じゃない,今は4分の1か,まあそれがちょっとあって,まだ欠損はあるけれども資本に食い込んでいなくて,来期ぐらいには十分に剰余金が出るようなところでも免除はできない,これは来期もずっと免除できない,こういう趣旨ですね。 ● 当該剰余金の分配時における財源規制違反というのを一種の法定的な強固な責任であると思えば,こういう考え方もとり得るかどうかということをお諮りするものでございます。 ● (1)につきましては,私は解釈論としてもこれでいいのではないかというように思っておりますので,立法で明らかにすることも賛成です。  (3)についてなのですが,290条の2項の責任は,2項でもって債権者が請求するという場合は,これは株主が免除していたかどうかということにかかわらないのではないかというように考えておりましたので,解釈論としても私は(3)は既にそうやっていたのではないかというふうに今思うわけです。ですから,もちろん明確にするのは結構ですけれども,そこまで一々書かなくちゃならないのかなという気もいたしますが,290条の2項でだめなのかなというふうには思いますけれども,内容に反対なわけではありません。  (2)なのですが,こういう形で監査役,会計監査人等も入れていくということは,方向としてはいいかと思うのですが,今までと相当に変わることになり得るのは,責任の軽減の規定というものは,今の266条1項1号責任は含まれていないということになっていますね。そのままこれを行うとしますと,会計監査人の責任について,何年分にするかとか,軽減措置を入れるかどうかとかと前にも議論したかと思いますが,会計監査人の責任というのは多分違法配当に絡んだ責任だけということにほぼなってまいりますでしょうから,向こうで議論していたことが意味がなくなってしまうということまで含めてこの御提案がなされているのかどうか。もしそうだとすると,それはかなり違う話になりますので,政策的によく考えた方がいいのではないかというように思います。 ● この点はどうですか。今の,違法配当の会計監査人の責任は。会計監査人は現在でも過失責任ですよね,違法配当があった場合につきましても。だから当然に責任の軽減の対象にはなり得るんじゃないかと。 ● ただ,今まで違法配当責任というのは,266条1項1号の責任というのは,責任軽減措置の対象外にされていますね。 ● 従来型の会社はそうですね。委員会等設置会社もそうでしたか。 ● 同じじゃないですか。ですから,責任軽減の規定を今度全部266条1項1号にかけてしまうということになりますと,これまた損害額を違法配当額に限定したとかという意味が非常に薄らいでしまいますから,大きな政策判断ということになりますでしょうし。その問題を考えながら,この(2)の問題は検討しなければいけないのではないかというように思った次第です。 ● 挙証責任が転換された過失責任になった場合は,これについては今,責任軽減はない,そういう趣旨……。 ● 責任軽減は入っていないと思いますね。 ● そうしますと,要するに会計監査人の責任軽減を論ずる意味が余りないんじゃないか,そういう意味のことですか。 ● 同じ扱いにしてしまうということがそこまでを意味するのであれば,多分,○○委員あたりから異論があるのではないかということで,その点を踏まえながら検討した方がいいと思います。 ● そこのところ,どうなるのでしょうね。 ● 先ほど○○委員がおっしゃったことの確認を私求めたいのですけれども,ここの立て方のことで,1は,剰余金の分配についての関与のことについて触れているわけですね。この(2)の,関与がない限りは2の違法分配の責任の(2)はないという関係で考えていいということなのでしょうか。 ● そういう趣旨でございます。ですから,仮に現行法のスキームをいじらないとすれば,定時総会にかかる利益処分での会計監査人の責任だけがここでは問題になるということです。 ● それは現行であるわけですよね。それと同じだという意味でよろしいのですね。  そうすると,この立て方ですけれども,「事前の財源規制に違反して剰余金の分配をした場合」という趣旨だと思うのですけれども,「事前の財源規制に違反した」というのは,1の剰余金の分配の範囲内でやったということじゃない場合という意味ですね。そうすると,全く取締役が勝手にやったという,そういう趣旨になるわけですか。 ● といいますか,もともと貸借対照表,損益計算書が違っていたと。 ● そこに毀損がある,その内容にですね,それも意味していると。  そうすると,先ほどの中間とか,あるいは四半期でやったときはそういうものが前提にないわけですよね。 ● いや,もとが違っていたわけですから。 ● もとがですね。分かりました。 ● そうしますと,(1)については大体御異論ないということでよろしいでしょうか。  (2)ですが,○○委員が御指摘の,会計監査人にはどういう意味があるのだという,その点以外の点についてはよろしいですか。取締役,執行役に加えて監査役の方については……。 ● 同じですね。今であれば責任軽減の対象になりますが,もしも,取締役あるいは委員会等設置会社の執行役と同レベルに,過失責任化はするけれども,違法配当額という決められた額でもって賠償をする,で,責任軽減の対象にはならないということになると,今とは違う扱いになるということを含んだ提案ということになるわけですから,会計監査人と同じ問題だと思います。 ● 違法配当については責任軽減が今まで監査役はあったけれども,なくなるということですね。単に証明責任がひっくり返るだけじゃなくて,責任軽減の余地もなくなる,そういうインプリケーションですね,これは。  いかがでしょうか。そういうことだとすると……。  ○○委員は,もしそういうことだとすると,結論は……。 ● なかなか大きな変革だなというふうに思いますけれども,方向として何も悪いわけではないと思うのですね。それから,過失の程度といいますか,過失相殺とかいろいろなことをいって,本当に責任の薄いものについては減額され得る,別の道は残されているということになると思いますので,一つあり得る方向かなとは思いますけれども,なかなか厳しくなることを関係者はよく自覚した上で議論しなければならないことかなというふうに思っただけです。 ● 現行よりも厳しくなるということについてはよく考えさせていただきたい。  要するに,1との関係ですとちょっと納得できないところがあるのですよね。やはり,もともと粉飾決算をしていて,本来配当すべき財源がないのに配当していたということについては,その粉飾決算を見逃したかどうかということについての過失責任はあると思いますけれども,その後の,この(2)のようなケースの場合で,どこまで本当に監査をして責任を負わなきゃいけないのかということについては,今ちょっとにわかに判断ができないなと思います。考えさせていただきたいと思います。 ● 分かりました。それでは,これはなお検討ですね。  (3)についてはいかがでしょうか。  ○○委員は,先ほどの御趣旨は,それは問題だということでしょうか,(3)につきましては。 ● 確かに290条2項をどのように解するかとも関連するのですが,そこまでやる必要があるのかなと思わないでもない。積極的に債権者が言ってくれば,何かそういう事情があるのでしょうから,つまり倒産前での危険があるからするけれども,例えば翌期に非常に営業成績がよくて,まともに利益配当できるようになった,そういうときまで何で免除できないのかなという気がすると思っただけで。ただ,理念的には分かるし,あるいは解釈論としてもこうだと言われれば,それを明文化するだけですけれども,これはいじらずに,290条2項との関係で,運用に任せておいたらいいのかなと思わないでもないということですが。積極的に反対だという意味ではなくて。 ● ほかの委員・幹事の方,(3)についてはいかがでしょうか。 ● 今の○○委員の御発言は,基本的には,いつ,いかなる場合でもそれについて認めないというような規定がおかしいのであって,「総株主の同意によって」というところについては触れていらっしゃらないわけですか。  つまり,総株主が同意すればいいと見るかどうかという問題と,この種の財源規制に反して分配された分は,いつ,いかなる場合においても責任は残るというふうに見るということとは違う問題ですよね。それはどっちをおっしゃっているのかちょっと分からなかったのですが。もし今のような御発言の趣旨ですと,総株主の同意によって免除するというふうな規定の仕方でなくて,別の免除の仕方を考えろという趣旨にも聞こえるのですけれども。 ● 基本的に何も触らなくていいのではないかという意味において,結論は私,○○委員と一緒になるのです。やはり総株主はほかのものと同じように免除できるけれども,これは債権者保護の規定なわけですから,債権者はそれであっても問題提起ができる,たとえ総株主がいいと言っても債権者は問題提起ができるという規定にせっかく今なっているわけですから,何もいじらなくてよいというふうに思います。 ● ただ,規定は置く必要はないという結論においては○○委員,○○委員一緒なのですが,どうも解釈がちょっと違うように聞こえますので。法制局がそれで許してくれればいいのですが,必ずしもそうではない,立法規定を置かざるを得ないかもしれません。 ● ○○委員がおっしゃるように,ほとんど債権者が動き出すことはないわけですね。したがいまして,290条の2項が使われることがないものですから,皆つい忘れてしまうというほどの規定になっているというだけのことであって,だからといって制度上できるようになっているものを今更改める必要もないし,規定上は筋が通っているわけですから,触らずにおいたらいいのではないかということです。 ● じゃあ,ちょっとこれもなお検討させていただきます。  時間の関係もありますので先へ進ませていただきまして,「第3 株式等」でありますが,これについて全体を説明してもらった方がいいと思います。 ● では,かいつまんで第3全体を御説明さしあげます。  1は「自己株式関係」として(1)から(5)までの項目を掲げさせていただいております。  (1)は,自己株式の市場における売却を許容するかどうかということでございます。御承知のとおり,自己株式の処分につきましては,新株発行手続類似の手続のもとに行うべきこととされておりますけれども,市場価格を有する株式については市場取引による売却をすることを認めるべきではないかという御意見がかねてよりあるところでございますので,このような場合に価格や割当先の恣意性というものを排除し得るとすれば,そのような選択肢もあり得るかどうかということについてお諮りするものでございます。  なお,インサイダー取引等の弊害が懸念されるとすれば,数や期間等について一定の制約を設けるかどうかということも検討の対象になり得るところではないかと考えられます。  (2)は,現在,定時総会の決議に基づいて特定者からの自己株式の取得が認められているわけですけれども,期中の事情の変更によりまして,臨時に総会を開いて取得の決議を行いたいという場合に,現行法ではそれができないという点を改善すべきかどうかという問題でございます。  (3)についてですが,特定者から自己株式を取得する場合における他の株主の売主追加請求権,自己も売却の機会を得たいという売主追加請求権について何らかの見直しをすべきではないかということから,米印を二つ挙げております。  一つは,現在の実務でもその対象とはされていないと思われますけれども,合併,分割,営業全部の譲受けの場合におきましては,そのような売主追加請求権を他の株主には与えないものとしてよいか,また,そのような組織再編等の行為が簡易手続により行える場合には,総会の決議を経ずに自己株式を取得することができるようにすべきではないかという御意見をどう考えるかという点,それから,そのような場合でも,取得する自己株式の数等につきましては開示をすべきではないかという指摘についてどうお考えいただくかという点でございます。  米印の二つ目は,実務的に支障が生じているという御指摘があるところですけれども,譲渡制限会社において,かつての商法210条ノ3と同様の取扱いを行おうとしても,売主追加請求権が生ずることによって同じような取扱いができないとされるところに工夫を凝らすかどうかということでございます。相続,合併によって株式を取得した者から譲渡制限会社がその株式を買い受けるという場合には,売主追加請求権が生じないこととしてはどうかという御意見についての御審議を賜りたいということでございます。  (4)は,当該会社自身に対する新株の発行ということが,現行法上もろもろの場面で問題となり得るわけですけれども,それらについて,その許否に関する何らかの規律を設けるかどうかということについてでございます。  例えば①ですが,かつての合併法制の見直しの際に大議論になったところでございますけれども,現段階で,例えばこれらについては一律に新株の割当てを認めないというような選択肢があり得るかどうか。②,③については,それぞれ,できる,できない,会社の自由,いろいろ御議論があろうかと思いますけれども,これらの場合,すべてについて何らかの一律の規律を設けるのか,あるいは部分的な規律が設けられるのかどうか,従前どおり解釈にゆだねておくべきなのかという点についても御意見をちょうだいしたいと思います。  それから,(5),難問でございますけれども,子会社による親会社株式の取得規制に関して,現段階で見直す方向性というものがあるかどうかということでございます。仮にあり得るとすれば,ということで,a案,b案を掲げております。a案は,禁止規定を削除した上で何らかの潜脱行為防止措置を講ずる,--この講じ方がなかなか難しいと思われますけれども,--そんな方向性での検討が可能かどうかというものです。b案は,原則禁止とする現行規制を維持した上で,現在いろいろな場面で子会社による親会社株式の取得という事例は多発する可能性があるわけですけれども,潜脱行為に当たらない場合の例外規定を拡大するということで実務上のニーズにこたえることとするかどうかというものです。  米印についてですが,仮にb案をとるとした場合,あるいはb案をとらず,現行法の規制をそのまま維持するとした場合であっても,「相当の時期」という保有期間制限が不明確であるという指摘が実務上ありますので,それについて,例えばその時期を明確化するかどうか,あるいは保有期間制限というものにかえて別の規制,例えば親会社の財源規制の問題として処理することも考えられるかどうかという点をお諮りしたいと思います。  2は,「株式の消却等」の関係でございますが,(1)は,利益による強制消却に関する定款規定の設定手続を明確化すべきではないかという問題意識でございます。利益による強制消却に関する定款規定,これが原始定款に記されていれば問題ないわけですけれども,会社成立後にこの定めを定款変更によって置こうという場合には,総株主の同意がなければならないということを明確にすべきではないかということでございます。  それから,米印は,仮にそのような考え方をとるといたしますと,償還株式に関する定款規定について,ある種類株式の発行後にそのような定めを置き,あるいはその定めを変更するという場合には,当該種類株式の株主全員の同意がなければならないということとすべきではないかという点をお諮りするものでございます。  (2)は,定款に基づかない強制消却についてですが,現在は,資本減少の場合にのみ,定款の定めがなくても,株主総会の特別決議によって株式の強制消却が行えるということとされておりますけれども,必ずしもそのような取扱いを維持すべき合理性が乏しいということに仮になるとすれば,以下のような整理をこの現代化の中でしたらどうかという提案でございます。  ①は,株式の一部を株主の持株数に応じて,つまり平等な,割合的な強制消却をするという行為は,株式併合という概念のもとに整理をしたらどうかという点でございます。  ①の場合は,必ず株式が何らかの形で残るわけですけれども,②は,例えば100%減資のような形の強制消却として,株主総会の特別決議をもって,その種類株式の全部の強制消却を認めるということとしたらどうかということでございます。  なお,この場合の価格の公正さの確保という観点がどのような形で担保し得るのかということが,この②の関係では問題になり得るところでございます。  米印の二つ目は,今申し上げたところについてのものでございます。②については,例えば私的整理などの場合に旧来の株主に係る株式の100%を消却するというような場面で実務上のニーズが高いとされておりますけれども,不当な消却が行われないようにするための措置としてどのようなことが考えられるのかという点でございます。  米印の一つ目は,株主の持株数に応じない場合,抽せん消却のようなものも含めまして,そのような強制消却につきましては,定款の定めがある場合でなければ認めない,つまり,事後的な株主総会の特別決議等によっては認めないということとしてよいかどうかということでございます。  (3)は,授権株式数の変更の取扱いに関するものでございます。現在は,株式分割の場合,一定の手続のもとに授権株式数が増える余地がありますけれども,株式の消却・併合がされた場合にそれが減少するかどうかについては解釈にゆだねられているところでございまして,これらについて,定款又は株主総会の決議により特別に減少するということを定めない限りは減少しないということで法制的に整理をすることはいかがかということでございます。  3でございますけれども,新株発行の際の公告・通知制度についての見直しの要否についてでございます。特に,種類株式を発行する場合,種類の内容がかなり複雑多様化しておるということから,その内容のすべてを公告・通知をするというのは実務上かなり負担となっていると聞いておりますけれども,種類株式の内容自体は何らかの形で開示されている,--現在であれば登記,場合によっては会社における開示ということがあり得るかどうかということを従前お諮りしておりますけれども,--いずれにしても種類株式の内容自体はそちらの開示に委ねることとして,種類株式の発行に係る公告・通知の中では,その種類株式を特定する情報としての名称のみを公告・通知するということで足りるものとすることができるかどうかという点について,御意見を賜りたいと思います。  それから,新株発行の際に公告・通知によって開示されるべきものとされている事項につきまして,証取法に基づく届出書等によって実質的に商法所定の期間までに開示がされているという場合には,商法の規定による通知・公告を不要とする,省略するという余地を認めることの当否についての御意見をお伺いしたいと思います。  4の「新株予約権」についてですけれども,(1)は,いわゆるストック・オプション会計基準の在り方の見通しと,それにかかわる商法改正の検討の要否についてでございます。  ここでは新株予約権の分割払込みの許否について取り上げさせていただいておりますけれども,この点は,ストック・オプションの会計基準がどのように定められるかということを受けて,商法の側で,それとの関係で調整を要する問題があるとすれば,現代化の中でその検討をすべきではないかという問題提起をさせていただこうとするものでございます。本日のところは,この分割払込みの許否について突っ込んだ御議論をちょうだいするのは時期尚早かと思いますので,今後の検討に回させていただきまして,特にストック・オプション会計基準との関係で商法について必要とあれば改正の検討をするかどうかということ,むしろその基本的なスタンスについての御意見をちょうだいしたいというところでございます。  それから,4の(2)についてですが,新株予約権の行使の際に生ずる端数の取扱いについて,実務上これを例えば切捨て,あるいは端数相当の金銭処理,社債であれば差額返還というような形で事前に定めておくということによってその処理を合理化したいという御要望があると聞いておりますので,そのような方向性の可否について御意見をちょうだいしたいと思います。  (3)についてですが,新株予約権の行使の場合について,配当起算日に関する規定が設けられておるわけですけれども,例えば代用の自己株式を交付するというような場合を考えますと,必ずしもこの日割配当という形で配当額を決するということは合理的でないという場面もあり得るところでございまして,一律に基準日等において,株主が有する株式の発行時期にかかわらず,同一の配当を受けるということで各種の規定を整理したらどうかという考え方について御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 私の不手際で,どうも本日最後まで行くことは到底不可能で,残された時間は40分余りでありますので,何とかこの「株式等」が全部済むかどうかという事態になっていると思います。できれば「株式等」は済めばいいなと思いますので,御協力をいただければと思います。  まず,「1 自己株式関係」でありますが,まず(1)についてはいかがでしょうか。 ● 反対です。やはり,準新株発行扱いをするということでもって自己株式の取得,保有を認めるということでせっかく整理したばかりでございますし,それから,最低限必要性のある部分について,単元未満株について買増請求も認めたところでございますから,当分ここで動かしてみるということでいいのではないかと思います。 ● 弊害がないのであれば是非お認めいただきたいというふうに思います。インサイダーの問題は株価操縦規制等の証取法の世界で処置していただければいいのではないか,そういうふうに思います。 ● もともと自己株式の取得を認めたときの趣旨が,売却する際に新株発行手続がきちんとかかることが必要だということで認めたわけですが,その趣旨は,市場価格があれば基本的には株主にその持分のダイリューションは生じないわけであって,そういう,市場が存在し,かつ市場価格がある株式については,私は,市場価格で売却する限り,新株発行の手続をとるのと基本的に同じことだと思うのですが,何か法律的に非常に難しい違いがあるのでしょうか。 ● この問題は,私にとってはある意味で今日の中で一番重い問題と考えておりまして,理屈として言うと,このような考え方をとるということは,新株発行手続そのものを見直すことになるのではないかというふうに思います。論理的に言って,恐らくどっちかだと思っていまして,これを認める以上は,むしろ今,○○委員御指摘のように,新株発行手続そのものの方も,市場で売却するときは,現在のような手続は要らないという話にどうしてもならざるを得なくなってくるところがあって,そうだとすると,本当にそれでいいのかということをここで大議論を多分しなければならなくなると思います。それについてはいろいろな議論が可能だと思いますし,現在の280条ノ2以下の各規定それぞれについて全部チェックしていく必要がありますし,これは大変な話になる。実務に与える影響も大変なことですし,私は,この考えに相応の理由があることは認めるのですけれども,これは大変なことだというふうに思います。  更に言うと,これをやる以上は,本当にダイリューションがないかということを担保するためにいろいろな議論をしなければならなくて,ここでの市場価格があるということの概念の定義からもう一度多分見直さなければいけなくて,金庫株についても既に問題になっていますし,トストネット2での問題とかいろいろありますし,そういうのも全部チェックした上で,本当に問題がないかということを検討しなければならないので,正直言って私は,今これを取り上げるのはやや重過ぎるという気はします。ただ,長期的には検討する必要は十分ある問題だと思います。  あと,実質上のことから申しますと,○○委員御指摘のように,現行法の新株発行類似の手続をとることによっていろいろな弊害が起きにくいだろうということを前提に金庫株というのは認めたと考えております。確かに理屈の問題としては,ここで書かれているようなことが出てくるのですけれども,一方で,2週間の公告の期間があるとか,そういうことによって,いわば,例えば株価操作的なことは実際上行いにくくなっているとか,そういうことがあって,そういう心配がないということで金庫株の制度を導入したところがあるわけでありまして,そういう実際上の考慮まで含めて考えると,これはいろいろな意味を持ってしまいますので,簡単にここでは結論が出ない。とりあえずそれだけ申し上げたいと思います。 ● 法律の専門家にいろいろな意味があると言われちゃうと,それ以上返す言葉がないのですけれども,今の○○委員が最後におっしゃられた論点というのは本当に商法固有の問題なのか,むしろ証取法に近い問題のような気もするのですね。ですから,商法に固有の範囲内で,単にダイリューションが生ずるかどうかの実質判断を超えて存在する難しい論点とは一体何であるかということが,もう少し私のような素人に分かるような御説明があると大変助かるのですけれども。 ● 現在でもそんなに面倒なことなのかということがあると思うのですね。取締役会限りでもって公告をちゃんとすれば,法定公告をすれば発行できるわけですから,で,それが最低限の歯どめにはなっているのではないかということは,今,○○委員がおっしゃったとおりでございますから,あえてここまで踏み込むとすれば,やはり新株発行の規制の在り方全体を議論し直す中でしか取り上げることはできないのではないかと,私も○○委員のスタンスに賛成です。 ● 現在でそんなに面倒くさくないというのであれば,もともとこういう問題は多分出てこないはずであって,出てくるからには何かあるんじゃないかというふうに私なんかは受け取るわけで,そうだとすると,それをだめだというためには,何となくもう少し説得的な理屈がほしいなという感じはするのですね。 ● 確かに端株を買い増すために取締役会の決議が必要かと言われると,それは要らないだろうということできちんと手当てをしたわけですよね。だから,当面はそのくらいで済んでいるのではないかということです。 ● 弊害があれば分かるのですけれども,新株発行手続と類似の手続をとらなければ,自己株式を市場で売却,市場価格で売却することについて,株主や債権者に対してどういう弊害があるのかというのをはっきり明示していただきたいなと。どうして2週間待たなければいけないのか,どうして新聞社に金を払わなければいけないのか,そのあたり,これでも何百万というお金が要るわけですから,それを正当化する規制の理由というのをちょっと教えていただきたいなと。  まあ,最初は自己株の,そもそも金庫株の解禁問題のときに,そういう規制の中でということだったのだと思いますけれども,もう今や正に年間3兆円の自己株の取得が行われているような状況下において,もう発想を変えてもいいんじゃないか。だけど,弊害があるのであればそれには同意するということなのですけれども,どういう弊害あるのか,ちょっとまだぴんとこないものですから。 ● それは新株発行についてどういう弊害があるだろうかということとやはりあわせて議論すべきだということを言っているわけで,つまり実質において……。 ● 新株ではなくて既存株の発行について。 ● 実質において結局同じではないかということが基礎にあると思うのですね。  それから,今,公告するのにお金がかかるということをおっしゃったわけですけれども,これは電子公告とかそういう方法で,今後はインターネットを使って,もっとお安い費用でできるようにするという方向で今,改正が検討されているわけですから,その問題も解消できる。となると,皆さんに知らせた上で2週間待てと,これだけのことですから,それは守っていただいていいのではないかということだと思います。 ● 非常に意見が分かれておりまして,どうも妥協的な,認めるが一定の限度をつけるというような御意見はどうもここではないようで,これもなお検討するという以外はちょっとなさそうですけれども,そういうことで,次に進んでよろしいでしょうか。  それでは,(2)でありますが,これについてはいかがでしょうか。 ● 私は,臨時株主総会の決議でもってこういうことを認めていいと思うと同時に,204条ノ3ノ2は削除していいのではないかと思います。これは(3)の2つ目の米印のところにも関係すると思うのですが,売主追加請求権を与えない形での自己株式の取得,特定の者からの取得というものを認めるのはやはりいろいろな弊害が生じ得ることであり,どういう条件で会社に買い取ってもらえるのかということについて,他の株主との間での利害調整の問題が出てくるわけですから,一律どんな時期でも特別決議があれば,そして他の株主に売主追加請求権があれば会社は買い取ってよろしいとするのがよろしいのではないかというふうに思います。 ● この(2)の主たるあれは,前から問題になっている,前は相続人による取得があった,それが消えちゃったことが主たるあれかなと思いますが。(2)自体はですね。 ● だから,(2)は結構ではないかと思うのですけれども,あわせて(3)の2つ目の米印にありますものは反対だということです。 ● 特定者からの自己株取得,これは定時総会にせよ臨時総会にせよ認める,このこと自体は,私どもとしては必要かなという気持ちはしているのですが,ただ,今,○○委員もおっしゃったように,特定者から自己株式を取得する場合には,株主平等原則との関係上売主追加請求権を認めることを原則とすべきであり,もし仮に売主追加請求権を認めないケースを認めるとすれば,これを限定列挙にすべきであろう。その限定列挙すべき事由としては,ここの2つの米印に書いてありますけれども,私は,組織再編の場合と株主の相続・合併の場合については認めてよろしかろうという気持ちでおります。特に中小企業においては,相続の場合には,かつての210条ノ3ですか,あれが削除されましたので,定時総会でしか買受けができない,この点は需要としては相当多いですので,認めていただきたい。  もう一つ,再編の場合についてはいろいろ賛否両論あると思いますけれども,これはいろいろな手続の中で,債権者保護とかそういった厳格な手続をやっておりますので,そういう意味では,売主追加請求を認めるということは,かえって特定者からの買受けを実現させないと,買受目的を達成できない場合というふうになるのではないか。そういう場合ですから認めてもよろしいのではないかという実際の必要性というものは相当強いという感じがしております。  ただ,一つつけ加えさせていただきますと,会社分割,吸収分割とか,あるいは営業全部の譲受けの場合,これはいろいろ議論があると思いますが,営業の一部譲渡の場合も含めるということでよろしいのではないか,この点ちょっと議論があると思いますけれども,検討の材料にしていただけるとよろしいかと思います。 ● 前回私ども御報告させていただいたように,(2)と,(3)の2つ目の米印も相当ニーズがあるので,是非認めていただけたらと思っております。 ● そうしますと,特に(2)は,買取事由を限定するかどうかというような問題はありますが,基本的には(2),(3)は前向きに検討していいという御意見でしょうか,皆さん。大体そういう理解でよろしい……。 ● (3)の米印1について申し上げなかったのですが,これは現在,解釈で,買受けではないということで,他の株主の売主追加請求権を認めない形で結局いいんじゃないかということになっているのかというように理解をしていたのですが,そうだとすれば,あえて変えようという趣旨ではないという御提案のようにも見受けられまして,とりわけ最後のところにあります,取得する自己株式の数等を開示するという規制を加えるということであれば大変結構ではないかというふうに思うわけですが,逆に,御指摘を受けて私もあっと思ったのですけれども,簡易手続による場合は,取締役会の決議だけでできてしまうわけですね。これを使おうと思えば,結局,自己株式の取得規制をかいくぐるためにうまく使う道が何かありそうな感じがいたしますね。果たしてこれでいいのだろうか。簡易手続による場合は,全体を含めて株主総会の特別決議をやっているわけではないわけですから,簡単にこれを認めていいのかという疑問は逆に生じるなというふうに気づかせていただいた次第です。 ● これは技術的な問題はいろいろあるようですけれども,基本的には,(2),(3)は前向きに検討するということ……。 ● 売主追加請求権は必ず入れた形でということが私の主張です。 ● (2)の方なのですけれども,これは,ある意味で言うと,さっきの配当可能剰余金の分配と同じ問題があって,株主総会で分配した場合に,やはりこの将来予測,つまり期末の剰余金の存在を予測して,そのときだけ分配ができるということになるはずですよね。ということになると,ただ,株主総会の方に責任を負わせるわけにいきませんから,やはりこれは,それを提案した取締役の方について,210条ノ2と同じような責任を負わせるという前提だという理解ですけれども,それでよろしいでしょうか。 ● それは,相続人からの取得があったときはそうだったのですよね。将来予測は入っていましたよね。だから,それは当然そうなるのだと思います。  それでは,いろいろ技術的には,必ず売主追加請求権を認めろとか,あるいは事項を限定せよとかいろいろ御意見があったことは承知いたしましたので。 ● 一つだけ,細かなことで。  前も申し上げたことと同じことなのですけれども,担保でとっていたものを実行して自分のものにしちゃったというときにも,今は売主追加請求権ということがかかってくることになるのでしたか。 ● それはいろいろな解釈が……。先ほど○○委員が言われたように,果たしてそれは買受けなのかどうかという問題があると思いますね。場合によっては買受けじゃないという解釈もあり得ると思いますけれども。  (4)でありますが,これは例えば①なんかは従来から非常に大きな議論になったところですけれども,いかがでしょうか,この点につきましては。  ○○委員は,たしか,①はやめてほしいと,会計の方からはそうおっしゃっておられるようで。 ● 合併の場合は,要するに,いわゆる抱合せ株式に対する合併新株の自己割当てのケースですよね。ですから,これは,抱合せ株式というのは被取得会社を先行取得している部分であって,それに対してもう一遍株式を割り当てるということは,やっていけないことはないでしょうけれども,事実上何の意味もないことだというふうに思いますし,それから,分割の際も,これは恐らく承継会社の持っている分割会社株式に対して承継会社の株式を割り当てるケースだと思いますが,これは人的分割でも物的分割でもどっちも出ますよね。これも先行取得している部分に対する自社株の割当てですから,これもおよそ経済的には意味のないことなのですね。何か法律的に特別な事情があって認めているというのなら別ですけれども,経済的な実質論でいけば全く無意味なことだというふうに思っています。 ● ①,②についても余り感心しないことなのかもしれませんが,準新株発行でいくから弊害が少ないとも逆に言えるのかもしれませんが,③については,自己に対する新株予約権,新株引受権の行使等の場合に払込みをどういう形で行うことを前提にしているのか,よく分からなかったのですが。 ● ③は,解釈論として,今まで,だめと言ってきたんじゃないかと私は思うのですけれどもね。まあ,いろいろ学説はあるのかもしれませんので,ここには出ているのだと思いますが。  ①については,従来これは経済界が非常に,平成9年でしたか,非常に強く主張されたのですが,現時点では貸借対照表の資産の部にも載せられなくなったし,余りこだわらない……。 ● こういうことをやっている会社というのは,○○委員,あるのですかね。 ● どうですかね。ちょっと分かりません。 ● だけど,平成9年の段階で経団連があんなにも死守したことでもございますので,非常に重いものになったらいけませんので,これでいいのかどうか,もう一度だけ。 ● 経済界の意見をもう一度確認していただきたいと思います。 ● ここで「結構です」とはちょっと言う度胸がないものですから,お願いいたします。 ● 株式分割のときは,これは必ずするのだという説もないではないのですが,②はいかがですか。 ● これは自社株を既に持っているわけでしょう。持っている株を分割するのは,これはしようがないですよね。 ● そういう説もあるのですが,分割しなくても別に株主が損するわけじゃないという説もありまして。  まあ,大した問題じゃありませんので,①を含めましてなお検討するということで。  (5)はいかがでしょうか。 ● 質問なのですが,こういう改正を検討する需要というものはあるのでしょうか。 ● (5)番ですか。とてもございます。下の方でありますように,子会社へ,潜脱行為じゃなくて,組織再編行為の株式交換等をする場合に,親会社の株式を割り当ててやっていきたい,そういうために,子会社が親会社の株式を持って,親会社の株式でもって株式交換をするというふうなニーズは実際非常に強いというふうに聞いておりますので,お願いいたしたいと思います。ニーズはそういうことだろうと思うのですけれども。 ● そうしますと,○○委員はb案的な行き方……。 ● ではあるのですが,もともと自分が持っていいのに,なぜ子に持たせちゃいけないのだというところが,単に財源規制とかいうのがうまくできないからというのは立法当局のいわゆる怠慢なのであって,筋からしておかしい。何で自分が持ってもいいのに,子に持たせちゃいけないのかというのは,どう考えてもおかしい。どう考えてもおかしい法制は手当てをすべきであるというふうに思いますけれども。経団連が申しておりますのは,規制は子会社の剰余金規制だけでいいのではないかと。 ● 確かに○○委員がおっしゃるように,親会社自体が自社株を持っていいのに,なぜそれを子会社に持たせちゃいけないかと言われれば,それはそのとおりであって,私はその面では全く同感なのですが,この問題の難しいのは,子会社は親会社株式を取得する代表的なケースが二つありまして,一つは,外から親会社株を買ってくる。その場合には,事実上親会社の財産が流出するわけですよね。もちろん子会社の財産が流出するわけですが,結果的には親会社の財産が社外に流出する。ですから,その分について恐らく配当規制がかかってくる。恐らくその場合には,親会社単体の配当規制でも,子会社のデータを使って配当制限をするというややこしいことをする必要はありますね。それが1点です。  その問題と,もう一つの類型は,親会社の株式に対して直接子会社がそれを引き受けるというケースですね。この場合には,実は財産は外へ流出していないわけであって,配当制限の問題にならないわけですね。資本充実が損なわれるだけと言っては失礼ですけれども,だけであって,配当制限の問題は生じない。  その二つのケースをどうやって配当制限上区別して制度を作るのかというのは確かに難しいのだろうと思って,その点では,私は当局に同情申し上げるのですが。 ● ○○委員の話をちょっと補足させていただくと,組織再編への対価として用いる場合というのは,今回の産業再生法で法制局とも議論をして,一応クリアして,特例を認めていただいたのは,組織再編の場合は直ちに消滅会社の株主に対して親会社株式が交付されますので問題がなかろうということで,一応これはクリアされているので,経済産業省の目から見ると,少なくともb案ぐらいはまず問題なかろうなということなのだと思います。あえて更にa案の方まで行くかどうかという議論は,ちょっとまだ我々の方がトライをしていない,難しい問題がありそうなので,ちょっとここではそこをクリアできるようなロジックがどこまであるかは申し上げられないのですけれども,少なくともb案という議論は,実態的な実需と,それから論理的な問題点をクリアしている,この二つから見れば,最低限妥当ではないかというふうに感じております。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。  皆さん,b案の線ならば,その辺どういう決め方になるか分かりませんが,結論は,もう少し拡大するということであれば検討の余地はあるという理解でよろしいでしょうか。a案でいくと,○○委員もおっしゃったように,なかなか実際上の規制を作るのは難しいのではないかということかと思いますので。 ● 仮にb案でいく場合にも,米印の方ですね,このような「相当の時期」というのが不明確ではあるけれども,まあほどほどのところで皆さん処理されるのであろうということで,この点については現行法のままということでは何か特に困りますでしょうか。 ● これについてはいかがでしょうか。 ● これ,保有期間の問題で実際にありましたのは,恐らく,ダイハツがトヨタの株を持っていて,トヨタがダイハツを子会社化したというときに,ダイハツが大量にトヨタの株を持っていたのですけれども,公認会計士の方から指摘があって,期をまたがって持つことはまかりならぬというので,大量の株を市場に放出しなければならなくなった。「相当の時期」というのは,年度内,当該取得した期じゅうに売却しなければならないというふうに解釈されているのだとすると,これはかなりの制約になるのではないか。そういう意味で,「相当の時期」というのは,そうではなくて,本にも書いてありますけれども,今100円ぐらいのものが500円になるまであと30年かかるだろうと思ったときは30年後でもいいんだ,こういうのが「相当の時期」だと解釈していただければ問題ない,そういうことだろうと思うのですが。 ● 30年はどうか分かりませんが,確かに年度をまたがってはいけないというのはちょっと厳しいかなという気はしますが。 ● そういう話は聞いたことありますけれども,私どもの解釈では,何も年度内でなければいけないということは言っておりません。あくまでも,損をするのに年度内で売らなければいけないなんてことは考えていないので。ただ,30年というのはちょっと長過ぎるなと。やはりそれは速やかにという意識はどこかに持ってもらいたいなと。ただ,損してまですぐ売れというふうな解釈はしておりませんので,年度内というのは何かの誤解ではないかと思います。 ● 実際上の必要という意味で言いますと,株式移転で親会社を作るときに,子会社が自己株式を持っているときに,親会社株式を割り当てられるわけですけれども,そうすると子会社が親会社株式を保有する。それが決算期その他関係なく期中に行われますと,相当な時期に処分するという規制がかかりますと,持株会社を発足して,上場して間もない親会社株を大量に市場に出すと,せっかくの新規上場株が下がる,子会社の処分によって下がるという問題が起きてくるということが想定されていますので,その点を避けるという意味では,この「相当な期間」というものをもう少しはっきりさせるか,あるいは,ここに書かれているように別途の規制にするかという方策を考える方が株式移転の場合には望ましい,そういう実際上の問題はあるようです。 ● 親会社に財源があれば,子会社株を買えばいいわけですね。買って消却すれば。ですから,特に市場価格を心配して,一気に売れないからというふうに言う必要はないんじゃないでしょうか。 ● それはいろいろ事実関係によってそれぞれだと思いますけれども。ただ,株式移転のときの問題としてそういうことが実際には指摘されているということですので,具体例としてはまだ私も把握しておりませんが,考えられ得ることではあるという……。 ● ダイハツとトヨタの例においては,現行法のもとでは,取締役会だけでボンと買い取れば,消却すれば済む話ではないかというふうに思った次第です。 ● 米印は,これは解釈だけで実際の問題が解決するのかどうか,ちょっとまだ私も分からないところはありますけれども,皆さん,考え方は大体一致していると思いますので,これもなお検討させていただきたいと思います。 ● ただ,私は,b案若しくは,それよりも現行法に近い案で何となく集約されつつあるような気がするのですけれども,私自身は,差し当たりまずトライアルとしてはa案の方向で考えて,合理的な配当制限をかけられるかどうかを検討していただいた上で,だめならしようがないという,そういう感じではおります。 ● 大賛成です。 ● 厳しい御注文のようにも思いますが,それでは,一応トライはさせていただきたいと思います。  それでは,次に,「2 株式の消却等」でありますが,まず(1)はいかがでしょうか。  これも大体,現行法の解釈としてもこういうことではないかなと思いますが,特に御異論ありますでしょうか。--よろしいですか,(1)につきましては。  (2)についてはいかがでしょうか。  難しいのは②,いわゆる任意整理としての100%減資をやるというのは一番のニーズだろうと思いますけれども,そのときの処理ですね,これはかなり……。②を読んでも,ちょっとよく分からないところがあるのですが。 ● ①は当然賛成ですが,②につきましては,確かに私的整理を行う場合に,特別決議なり,ともかく多数決でもって,おまえの財産はゼロだよということが決められるということが便利だということは分かりますが,しかし,ある意味では私的財産の収用にも相当するようなことを当人の同意がなくて行うについては,絶対できないということではこの世の中動きませんから,一定の収用手続は必要でしょうけれども,それなりの手続があって初めて認められるということだろうと思うのです。ですから,やはり全員の合意がある場合と当事者の合意がある場合,それから当事者が同意しないけれども多数決で決められることということの間にはどこかで線を引かなければならないということになりましたときに,私的整理であっても,全株主がオーケーといえばもちろん100%なくなることでもよろしいわけですが,そうではない,やはり評価やら何やらにおいてゼロではないはずだと言い張る人がいる場合に,法定の手続があって,そちらによれば,そういう人にも異論を言わせずに,全部,100%ほうり出すことができる中で,やはり法定の手続は嫌だ,民事再生法は嫌だ,会社更生法は嫌だといって,あえて100%の合意も得られないのに私的整理でやるということを認めなければならないのかどうかという,そういう問題だと思うのですね。相当,民事再生法やら会社更生手続やらでこの間努力してきているわけですから,やはり,法定でいくべきものはいく,全員が合意できたときは私的整理という区分けはした方がいいのではないかと思います。 ● これは債務超過でなかった場合であったとしても,多数決原理でもって紙くずにできるということを提案されているわけでしたか。 ● それは恐らくだめなんじゃないかと私は思っていますが。 ● 債務超過なのであれば,今でも多数決で紙くずに全部できていっているのですよね。 ● 実務上はやっているように聞きますね。 ● これはもう解釈で登記所も認めていただいていますから。  今言っているのは,そうじゃなくて,正の財産があるにもかかわらが紙くずに多数決で持っていくということなのだとすると,○○委員がおっしゃるように,本当にそれでいいのかという疑問がありますね。 ● ただ,正の財産か負の財産かは,会計監査人によっても意見が分かれたりする時代ですね。その判定を本人が納得しない場合に多数決でやっていいかどうかということで,今の実務はともかく,一遍このあたりで法定手続と私的な整理の手続というものの整理が必要なのではないかということを申し上げているわけです。 ● これは,多数派は,債務超過だ,だから100%減資をやります,適法にできますといってやっちゃったけれども,それを争う少数株主がいて,裁判所は債務超過がなかったと認めたときに,どういう救済をするかということにもかかわっているのですね,実は。それで,ひっくり返しますか,それとも,ひっくり返さないで,何らかの金銭的な補償であれするかとか,いろいろな問題はあるのですけれども。 ● 倒産したときに法定手続を嫌がるという,こういう風潮を,そのままでよろしいのでしょうかということでもあると思うのですね,この国の民事法の制度として。 ● それは,国にコストをかけないでできればそれにこしたことはないと思うのですけれども。 ● 100%和解でもってともかく問題を片づけるのと同じで,全員が合意すればそれでいいことはもちろんそうなのですし。 ● いえいえ,反対しているときでも実務ではやっていっているのですよね。 ● それがいいのかという問題だと。 ● 債務超過であることが明らかである場合にはね。それをあえて倒産手続,破産法の申請をしなければならないのかどうかとかいうことではないんじゃないかと思うのですけれども。 ● いかがでしょうか。そういう争いがあるときについては,②は,面倒なことは多々あるのですね。面倒な法律問題は。 ● 何か具体的な実例とかあったのでしょうか。我々も実は,私的整理か法的整理かという,その境界線のところでどうやって円滑に私的整理をやっていくかというたぐいの議論は別途の文脈でいろいろ議論していたのですけれども,こういうたぐいの議論は余り聞いたことがなかったので。実際上あるのですかね,こういう……。 ● 現に100%減資は任意整理でやることはあるのだと聞いていますが。 ● 当社の関係会社の2社,債務超過で強制的にやっちゃいました。 ● それは債務超過になっていればという議論だから,そこはもうよろしいわけですよね。それが確立している中で②の議論があえてあるというのは,また更にプラスアルファ,債務超過じゃなくてもとか,そういうたぐいの議論なのですか。 ● 法的にそういうことでいいのかというふうに今私は伺っているのですけれどもね。 ● 債務超過であってもと。 ● 債務超過であるかどうかの判断が分かれるときにということを申し上げているわけですけれども。 ● では,この問題も検討すべき点はまだかなりあると思いますので,なお検討させていただくということでよろしいでしょうか。  (3)はいかがですか。これは決めの問題みたいなところがありまして,学説等も分かれているところです。いかがでしょうか。 ● やはり,株式併合をして10分の1にした,そうしたら授権枠が一気に10倍になったという扱いを認めるのはおかしいのであって,現在の登記実務ですか,自然に割合的に減らすというのが妥当なのではないかというように思います。  いずれにしても,授権株式の制度というものが,こういうように株式を消却したり併合したり,あるいは新株発行だけではなくて,分割したり,いろいろなことをする時代に果たして合うのかということが一つ大きな問題になっていると思うのですけれども,少なくとも現在の規制を前提とする限り,一回株式を併合さえすれば授権枠を幾らでもふやせますというに近いような,そういう改正をしていいのかという問題はあると思うのですが。 ● これ,しかし,10分の1による解釈はいろいろありまして……。今は数で縮むのですよね,たしか。登記実務はそうなのですけれども,割合で縮むとか,論理的にはいろいろあり得るわけですよね。 ● やはり授権枠の制度自身がもう限界に来ているというふうに思いますので,新株発行規制の在り方から全部考え直した方が,根本から考え直した方がいい時期に来ているということは事実だと思います。 ● 授権枠も自由化はされるのでしょうけれども,授権枠全くなしというわけにいくのかどうかという問題もありますので……。 ● ○○委員が今おっしゃったのは,去年の改正のときにいったん議論して,反対が多くてだめになった,授権資本制度をやめて,一回の発行分を既存の発行の倍とか,あるいは半分とか,それで割り切っていくという,そういう抜本的な改正のことをおっしゃっているわけですね。 ● はい。少なくとも公開会社については,何が問題かというと,余りにも一気に株式を発行することが株式市場に与えるインパクトを考えて,取締役会で決められることと株主総会にかけるべきこととを区別していくのが妥当であろう,そういう発想法に変えないと,定款でかなり大きめのをとっておいて,それでもいつか限界に来てしまったときにはまた定款変更をしてとかということの規制の持つ意味というものは,少なくとも公開会社に関する限りは余りないのではないか。非公開会社については,定款で授権枠を決めておいてという今の方法でいいかとも思うのですけれども。 ● 公開会社についての授権枠の決め方は,これはいろいろな問題が恐らくあると思いますので,なお検討させていただきます。  いよいよ時間がなくなってまいりましたが,3についてはいかがでしょうか。 ● 米印1につきましては反対です。やはりどのような種類株式かということはきちんと公告すべきであり,公告の費用等については,電子公告等々を認めるという形で処理すべきだと思います。  米印2番目につきましては,一般的に証券取引法による開示規制と商法による開示規制とをもう少し一本化する方向で検討していっていいのではないかという流れの中で賛成です。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。 ● 最初の米印が疑問だというのは,私もそのとおりです。  二つ目のところなのですが,ただ,現在の証取法上の開示が実際どれだけなされているかどうかを株主等が分かるかというのはちょっと不安がございまして,確かに会社法上の公告は,定款に公告方法が定められていて,それを継続的に株主等はチェックしているということは期待できますけれども,証取法上の開示が実際なされたかどうかというのは,常に株主がチェックできるような体制があればいいのですが,現在は,少なくとも制度上はそういうことにはなっていないように思いますので,その点で私はちょっと疑問を覚えます。 ● ほかに御意見ありますでしょうか。  では,これについては,皆さん,するまでもないということだというふうに理解してよろしいでしょうか。  それでは,次に4でありますが,(1)につきましては,これはストック・オプション会計との関係でなお検討する,商法としても検討する余地を認めてくれというのが事務局の希望のようですので,それ以上ここで御議論いただく時間もありませんし,ストック・オプション会計の今後の進展に応じて商法も検討する,その点は認めていただけますでしょうか。--はい。 ● 会計基準について,法制審議会として賛成だという態度をとっているというふうなことのないようには是非していただきたい。 ● 別段その点については態度決定しているわけではないと思います。  (3)はよろしいですね,これで。--はい。  (2)はいかがでしょうか。 ● (2)は,私,現行法におきましても,341条ノ3第2項等々の関係で解釈上いろいろな御意見がおありなようですが,端株処理の220条と重ねて合わせれば,今ここに御提案のようなことはできるのではないかぐらいに思っておりますので,内容的に問題ないと思います。 ● 現行法は,切り捨てなければいけないんじゃないですか。 ● 現行法は,同額でなければいけないということで,皆さん慎重になっていらっしゃいますが,それにプラスすることの端数処理は金銭でしてもよいという220条の規定があるわけですね。220条の規定をこの場合に使ってはいけないという理由はないわけだから,両者あわせてやった……。 ● これは端数処理,切り捨てて,金銭を与えないということを言っているんじゃないですか。 ● そこを定める方法として,切捨てという方法と金銭による端数処理という方法とがあり得るわけで,そのいずれをもあらかじめ定めることによって認めることとすべきかどうかということでございます。端数処理の方は,220条そのものは,株を売却するという形になっておりますので,バラバラと新株予約権が行使されたときに,果たしてぴったりマッチしている規定かどうかという問題はあろうかと思います。理念として端数処理の根拠規定として220条を持ち出すことは可能だとしても,ぴったりはしていないのではないかと思われます。 ● では,これにつきましても第二読会でもうちょっと具体的な案を提示させていただくということでよろしいでしょうか。基本的には前向きに検討させていただくということで。  最後急いだ形になりまして申し訳ありませんでしたが,今日はここまでで仕方ないですね。結局,最後の「会社総則,合名会社・合資会社に関する事項」は残りましたので,次回これについては御審議いただきたいと思います。  それでは,最後に事務局から連絡事項がございます。 ● 次回は,7月2日,水曜日,午後1時から,場所は同じく法曹会館高砂の間で開かせていただきますので,御参集のほどよろしくお願いいたします。  次回は,本日残された部分についての検討と,既に一回御検討いただいた部分についての二巡目の議論をあわせて行わせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● それでは,どうも長時間熱心な御議論ありがとうございました。私の不手際で大変御迷惑をおかけいたしましたが,これで閉会させていただきます。