法制審議会会社法(現代化関係)部会第9回会議 議事録 第1 日 時  平成15年7月16日(水)   自 午後1時00分                         至 午後4時59分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題    会社法の現代化に関する改正検討課題(二読版)(1)の残りの部分について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 ● それでは,委員の方はほとんどおそろいですので,第9回会社法(現代化関係)部会を開会いたしたいと存じます。本日は,御多忙の中御出席いただきましてありがとうございます。        (委員・幹事の異動紹介省略)  まず,配布資料につきまして,事務局から説明してもらいます。 ● 本日は,まず前回に引き続きまして部会資料7の御審議をいただくわけでありますけれども,それに引き続くものとして部会資料8を事前に送付させていただいております。  それから,前回,検討していただきました項目に関連いたしまして,○○委員から意見書の御提出をいただきましたので,本日席上に配布させていただきました。総則の商号関係にかかわる御意見を取りまとめていただいたものですけれども,総則関係は第三読会で御議論いただきたいと思いますので,その際に御参考にしていただければと思います。  当方からお配りいたしました資料は,以上でございます。 ● 配布資料について,何か御質問等ございますでしょうか。○○委員の御意見は,第三読会で取り上げるという扱いでよろしいですね。 ● 結構でございます。 ● それでは,本日の審議に入りたいと存じます。  この部会資料7の第1の4(4)から本日は御審議いただくことになりますが,前回余り進みませんで,後の日程を考えますと本日は部会資料8に入って相当部分進みたい,日程の関係からはそういうことになりますので,審議は重点的に,重要問題に絞って御議論いただければと存じます。  それでは,前回この(4)の部分あたりは一応事務局から説明はしてもらったのでありますが,思い出すためにも,もう一度事務局から簡単に説明をいただければと思います。 ● それでは,前回の部会資料7の第1の4(4)から御説明いたします。  まず(4)の①は,第一読会でも御審議いただきました「少数株主権の行使要件」について,株式会社と有限会社との間の調整を図るとした場合にどのような整理を行うのが適当かという観点から,イのような整理をすることはどうかという提案をさせていただくものでございます。  イの3行目から4行目にかけて,「有限会社の少数株主権」とありますが,「有限会社の少数社員権」の誤りでございますので,御訂正いただきたいと思います。  デフォルト・ルールとしては現行の株式会社の少数株主権の行使要件と同様とするということを前提に,定款の定めによって有限会社タイプの機関設計を持つ会社については,現行の有限会社法における有限会社の少数社員権に相当する要件までの引上げを認めるという制度設計をしたらどうかというものでございます。  ロにつきましては,ここまで手当てをしなくてもよいのではという御指摘もありましたけれども,法制的にはこのような整理が望ましいのではないかと思われますので,再度お諮りするものでございます。  それから,②でございますけれども,現行の株式会社の特別決議,有限会社の特別決議における各決議要件をどのように調整するかという点についてでございまして,a案は現行の株式会社の特別決議の決議要件--有限会社に比べれば緩やかなものですけれども--これを原則としつつ,定款の定めによってその加重を認めるというアプローチをとろうとするものでございます。定款においてそのような加重の方向での定めができるということが仮に解釈上明らかであるとすれば,格別の手当てを要しないのではないかという論点は残りますけれども,実質としてそのような整理をしたらどうかというのがa案でございます。  これに対してb案といいますのは,有限会社的な機関設計を持つ会社につきましては,少なくとも現在の有限会社における少数社員権と同じ要件を保障するというアプローチでございますので,それ以外の,つまり現在の株式会社的な機関設計を持つ会社については,有限会社の規律からスタートして,今の株式会社の規律まで緩めることができることとするものでございます。そのいずれがよろしいかということについて,もし御意見がまとまれば,試案では一方の案を提示させていただきたいと思います。  ③,④は,第二読会で新たに提示させていただく問題です。  ③は,有限会社についても総会検査役制度を設けることとするかどうかという問題でございます。  ④は,現在の有限会社についても株式会社において認められているような議決権の不統一行使,あるいは代理人の数の制限等に係る規律の適用を認めることとするかどうかという問題でございます。  ④の米印は,やや細かな話で恐縮ですけれども,議決権の不統一行使を許容することとした場合に,現在の有限会社法におきましては議案の要領を総会前に社員に告知をするということが当然には行われませんので--特別決議が要求されるような場合にはその通知がされるわけですけれども--議題の通知がされるか否かによってこの議決権不統一行使の在り方が変わるか変わらないかということの整理が必要ではないかという問題点についてでございます。  ⑤についてですが,現在,有限会社法においては,株式会社に係る総会の書面決議制度の導入に伴いまして,書面決議の制度が二つ並存していることになっております。有限会社法42条の類型の書面決議は--これはかねてよりあった制度でございますけれども--規定が非常にアバウトで,実はその手続,効力がよく分からないという問題もあり,実際に利用されている例も少ないものと承知しております。新たに設けられた商法253条の類型の書面決議というものを認めることで十分であるとすれば,有限会社法42条の類型の書面決議--書面決議をすることについての社員の同意があればよいという要件の下での書面決議ですけれども--そのような書面決議を廃止してもよいかどうかということについての御意見をちょうだいしたいというのが⑤の趣旨でございます。  それから「5 計算」ですけれども,「(1) 附属明細書」につきましては,附属明細書を廃止するということについては反対意見がほとんどであったところでございますので,附属明細書という制度を残すということを前提に,有限会社と株式会社との調整としてこのような整理をするということでいいかどうかということをお諮りしようとするものでございます。有限会社法におきましては,定款をもって各社員に帳簿の閲覧請求権を認めるという場合には,附属明細書の作成は要しないということにされておりまして,株式会社についても同様のアプローチをとってよいかどうか,これが(1)の問題でございます。  (2)は,決算公告について,どのような整理を行うかという点についてでございまして,第一読会でも御議論をちょうだいいたしましたように,いろいろな御意見があるところでございます。試案におきましては,差し当たり幾つかの案を提示して,関係各方面の御意見をちょうだいすべき問題の一つかと思っておりますけれども,意見照会の仕方としてこのような案を掲げるということでよいかどうかという観点から御意見をちょうだいできればと思います。この段階で特にこの選択肢を取り上げる必要はないということで意見の御一致があれば,それを落とした上で意見照会をすべく試案をまとめたいと思っております。  5の(2)の二つの米印についても御検討をお願いしたいと思います。  前回の部会資料7の第1の残りの部分についての説明は,急ぎまして恐縮ですが,以上でございます。 ● それでは,この第1の部分につきまして御審議いただきたいと思います。  まず,第1の4(4)でありますが,まず①イから御意見をちょうだいできれば幸いですが,①についてはいかがでしょうか。 ● この「10分の1以上への引上げ」というのは,10分の1以下までの引き上げということでしたか。「10分の1以上への引上げ」というのが,何か言葉として引っかかったものですから。 ● 例えば5分の1に引き上げられるというわけではございません。「10分の1以上」というように定款で定められるということです。 ● この御趣旨は,これまで株式会社の場合には10分の1以下のものもあったけれども,基本的に株式会社に並べるけれども,有限会社,更には取締役会が設置されていない株式会社については,従来どおり有限会社ベースになったらいいという,そういうことで,有限会社をベースにすると現行どおりでもいいけれども,法律は少し厳しくというか,要件が低減される場合がある,そういう理解でよろしいですか。ただし株式会社3%,こちらが10%,3%にするけれども10%にするとか,そういうイメージのものと理解してよろしいわけですか。 ● 現在の有限会社法における規律を変えようとするものではありませんけれども,株式会社の中で有限会社型の会社については,有限会社と同じようなレベルまで引き上げる,制限するということを許容したらどうかということでございます。 ● それは別にそれでいいのかと思うのですが,次の方の例の総会検査役の場合には1%なのですね。これもこの規律が入るのかどうかということで,細かな問題ですが。  私,特に反対するわけではないのですが,確かに従来の有限会社にない制度で新たに導入するときに10分の1にすることを認めるかどうかというのは,一つの検討を要する事項だということで,内容について異論ではなくて,考慮要因を挙げさせていただいたということです。 ● ③の要件ですね。 ● ついでに③に行くと,従来からこれは株式会社についても会社にも請求できるようにしたらどうかという立法論がありました。これもあわせて今後検討されるということですか。 ● そうでございます。少数株主権につきましては,有限会社は非常に単純なのですけれども,株式会社は幾つかの異なる要件設定のものがありますので,それをどのように整理するかという点は,やや細かな議論でありますけれども,また改めて御相談させていただきたいと思います。 ● ①につきましては,いかがでしょうか。基本的な考え方の点は。 ● イの考え方,私ども考え方としてはいいと思うのですけれども,要件の切り方として,「法定の機関たる「取締役会」が設置されない株式会社」という,これは前も○○委員から御議論が出たと思うのですけれども,譲渡制限会社というものと「法定の機関たる「取締役会」が設置されない株式会社」という要件がここでまた出てくるのですけれども,これは単に譲渡制限株式会社ということでもいいような気もするのですけれども,その考え方がちょっと私は……。また,要所要所で出てくる「法定の機関たる「取締役会」が設置されない」会社というところの考え方。 ● 恐らく第一読会では○○委員から全く逆の,先ほどの○○幹事からとは逆の御意見が出まして,たしか10分の1に引き上げられる会社については株主・社員の人数制限をすべきだという御意見があったのです。それで,○○幹事はもうちょっとこういう法定の取締役会を設けない,「法定の機関たる「取締役会」が設置されない会社」ではなくて,もっと10分の1という定めができる範囲を広げるべきであるという御意見だと思いますが,逆の御意見も第一読会ではあったわけです。ちょっとその点御議論いただければと思いますが。  ○○委員,いかがですか。 ● 二つの側面があって,一つは理屈の問題として,前回も最後に申し上げたのですけれども,(2)などについては今,○○幹事もおっしゃったように,譲渡制限の有無でもってこういうガバナンスの要件を決めているのに対して,(4)の方は譲渡制限の有無ではなくて,取締役会が設置されているか否かということで会社の性格を分けて,それで少数株主権の要件を分ける。これがまず理屈として一貫しているかということが一つあると思います。取締役会があるかないかによっていわば会社の公開性が違ってくるというか,ガバナンスの性格が基本的に違ってくるということで(4)の御説明を理屈としてはされていると思うのですけれども,それが(2)の方ではそうではない分け方をしていることとの整合性という問題が一つ問われる可能性があるのではないかというのが,いわば理屈の問題です。  そういうことを考えていきますと,実は(2)と(4)とで違えている本当の理由は,(4)の問題の方が少数株主権という,より株主の権利を守る上で非常に重要な権利だから,譲渡制限の株式会社について現状とできればなるべく変えたくないという考慮があって,多分こういう苦心の区分けになっていると思うのですけれども,そうだとすると,いわばその実質論を正面から考えれば,むしろ現行法のように有限会社は社員数が限定されているわけですから,そういう本当の意味での閉鎖的な会社とそれ以外に分けるという,第一次案で出ていたような分け方の方が実質論としては望ましいのかということで前回も申し上げたわけでありまして,そういう点で私は前回と基本的に意見としては変わらないということであります。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。  どうもちょっと意見が対立していまして,今日は一つに決めてしまうことは難しそうなのですが,ちょっと世論調査的な意味でもほかの委員・幹事の方からも御意見をいただければ有り難いのですが,いかがですか。特に現在ございませんでしょうか。 ● 考え方の説明だけをさせていただきます。  私どもの基本的な整理といたしましては,株式会社のうち譲渡制限がかかっているものの中に,現在の株式会社同様の機関設計を持つものと,それから全く有限会社と同じような機関設計を持つもの,その両方を認めることの適否について御意見をちょうだいし,それはそれであり得べしではないかということで御議論を進めていただいているわけですけれども,その譲渡制限株式会社の中で,有限会社的な機関設計の規律を選択するもの--取締役会が置かれておらず,所有と経営とが分離していないという,少なくとも擬制が働くもの--については,その他の場面につきましても有限会社と同じような規律を適用していくということでまずは整理できるのではないかという整理で一応原案をつくっているわけです。ただ,譲渡制限株式会社一般について機関設計等を更に緩めてほしいという実務界の御要望があって,それは株式会社と有限会社との規律を一体化するという枠組みから一歩越えた議論であり,そこは分けて御議論いただければと思います。最低限株式会社と有限会社との規律を一体化するとした場合に,まずは有限会社的な機関設計を持つ会社かどうかで分けた上で接合するということが一番簡便であり,現行の法制にも余り手を加えずに接合することができる,そういう発想で議論を整理させていただいた上で,それ以上の御提案については別途の御意見として整理させていただいているということでございます。 ● いかがでしょうか。前回,○○委員,○○委員は基本的にこの原案でいいのではないかというような御意見だったかと思いますが。  それでは,そういう必ずしも原案には賛成でない委員・幹事も若干おられるということをメモした上で,先に進ませていただきます。  ②はいかがでしょうか。a案,b案ありますが,b案が今回の新しい案ですが,いかがでしょうか。 ● b案の方に賛成です。やはり特別決議の要件というのは非常に重要なことですので,現在の有限会社と同タイプのものは,現在の有限会社と同じということをベースにするのがよいのではないかと思います。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。何か,○○委員は……。 ● a案に賛成であります。 ● ほかの委員・幹事の方。 ● 私も,a案において従来の有限会社の少数株主保護に関する経過規定がとられるのであれば,a案の方がフレキシブルになって有り難いと思います。 ● ほかに御意見。 ● a案は,この間の改正でなされたように3分の1まで引き下げるというやつですか。あれも加味したという理解をするということですね。 ● 特にその点に変更を加えようとしてはおりません。 ● そうすると,ちょっとa案は余りに緩和し過ぎるかなという感じがしないでもないと思いますが。 ● 現在の日本の特別決議要件というのは,デラウェアより緩いという。デラウェアは,発行する株式総数の過半数ですから。 ● 私も,○○委員や○○委員と同じ意見ですけれども,少なくともそれぞれの会社が現在のルールを特に定款を変更しなくても選べるという経過規定は,当然入れる必要があると思います。こういった問題が起きてくるのは,無理に有限会社と株式会社を一体化しようとするためだというのが一番の意見です。 ● a案,b案,それぞれに賛成の方がおられますので,これもこの段階では集約は難しいと思いますが,ほかに御意見ございますでしょうか。  それでは,先に進ませていただくことにしまして,③でありますが,これについては先ほど○○委員から要件について質問がありましたけれども,要件はともかく,基本的には有限会社についてもこういうことにするということについては御異論ありませんでしょうか。  では,何か要件についてコメントありますか。 ● いや,特に腹案はありません。 ● では,またちょっと検討してもらうことにいたしまして……。  では④でありますが,いかがでしょうか。 ● 基本的に賛成なのですが,ちょっとお伺いしたいのですけれども,有限会社については招集通知への議題の記載等を要求しないというルールを残す,つまり有限会社だけについて残すという御趣旨なのでしょうか。今まで有限会社と株式会社となるべく規律を一体化するという方向で来ておりますので,その関係での質問だけです。 ● これは,譲渡制限株式会社で有限会社的な機関設計をとるものは,有限会社と同じになるという趣旨でございます。 ● 結構でございます。 ● それを前提にいたしまして,米印がこういうことでよいかということなのでありますが,どう考えるべきでしょうか,この米印につきましては。 ● 私は,④に基本的には賛成なのですけれども,この米印のところで3日前までの議決権不統一行使の通知を義務づけている現在の法規制そのものが本当に必要なものだろうかという気がしていまして,有限会社においてでも現在でも不統一行使ができるというのは竹内先生などの解釈で,私もそう考えていいのではないかと思いますけれども,更に考えていくと現行法が株式会社についてどうして3日前までに不統一行使の通知をしなければ不統一行使を認めないとしているかの方がむしろ問題であると思っていまして,一つ考えられるのは会社側の事務の態勢がつくれるようにと,もしかしたらそういうことがあるのかもしれませんけれども,そこら辺,○○委員にでも教えていただければ有り難いと思うのですけれども。  一方で議決権の不統一行使をやめるときは,あらかじめ申し出てもやめることは当日でもできるというのが現在の通説ですので,そうだったら事務的には同じことではないかという感じがしまして,そういうことを許しながら不統一行使をする方は3日前に通知していないとできないというのは,本当にそんな必要が総会の事務的にあるのかどうか。あれば確かにこういったことは考えなくてはいけないと思うのですけれども,もしくはなければ,そもそもこの規定を削除してもよいのではないかという気がいたしますので,お願いします。 ● ○○委員,何か。 ● 調査いたします。今のところ,本当に3日前までに通知がなければ株式実務上困るとは思えないのですけれども,恐らくこういう規定が入っているというのは困ったから入ったのだろうと思いますので,ちょっと調べさせていただきたいと思います。 ● そういう公開会社も含めまして,一般の会社についての3日前ルールというのはいいか悪いかということはともかくとしまして,招集通知に議題等の記載が要求されていない場合についてはその通知は不要という,この考え方については皆様いかがでしょうか。その限りでは,もちろん○○委員はこれはこれでよいということかと思いますが,ほかの委員・幹事の方も,その点についてはよろしゅうございますか。  この3日前というのは,恐らくこの規定は新しく41年改正ぐらいで入ったのではないかと思いますが,そのときから多分入っていたのですね,3日前云々という規定は。ちょっと由来は私もよく分かりませんけれども。  それでは,その3日前の点はなお事務局の方で検討することにいたしまして,基本的にはこの米印の招集通知に議題の記載が要求されていない場合には不統一行使の通知は不要という,これはお認めいただいたということで処理させていただきます。  続きまして⑤でありますが,現在有限会社については書面決議の方法が二つあるのですが,これを現在の株式会社と同じ,つまり全株主,社員から賛成という意思表示があった場合にのみ書面決議が認められるという,そういうルールに統一する。書面決議をすることについてのみ全社員の同意がある,そして書面決議をやってみたら反対者もいたというのでも,書面決議は成立するというルールはもうやめるということでありますが,いかがでしょうか。  大体書面決議というのは,全員から賛成をもらうのだというのが普通のやり方だと思いますから,実務的に困るということは余りないのではないかと思いますが。--よろしゅうございますか。 ● 一つお尋ねをしたいのでございますけれども,物理的な株主総会の開催の省略が認められるケースについて。例えばネット上でやりとりができる,その場,その場で,今ですと,これから株主総会を始めますと,世界中いろんなところにいて,それで意見を言い合う,こういうところまでそろそろもう踏み込める時代になったのではないか。ただ書面でイエス,ノーと,あるいはEメールでイエス,ノーと言うだけではなくて,○○株主がaと言ったから私は賛成だとか,いや,aと言ったけど私はbだというようなことができるようなところまでもう踏み込めるレベルまで今,来ておって,それは認証システムで私が私だということを証明できるようになっているシステムもありますから,十分に可能なレベルになってきているのではないか。それを踏まえてもEメールの話は既に入っているわけですから,その次のレベルに行ってもいいような気がするのですが,そこら辺は御検討されたのかどうか,少しお尋ねします。 ● 総会の電子化といいますか,新たな技術の発達に伴う総会のありようにつきまして,前回の改正にかかる部会でも御議論があったところであると承知しております。現段階では,テレビ会議システム,あるいは映像のない電話会議システム,いずれにおきましても討論の実質が確保されているようなタイプのものであれば,総会として適法であるという理解でおります。新たな技術の発展に伴い,どのようなシステムでその実質が--実質というのは要するに議論,討論が行われたのと同じ実質ということですが--確保できるのか。それが確保できさえすれば,それは総会の効力としても問題ないということになると思いますので,今回,現代化の折に更に明示的に規定すべきものがあるかどうかという点につきましては,こちらの方でも整理した上でまたお諮りしたいと思います。電話会議システム,テレビ会議システムにつきましても,明文の規定があるわけではありませんので,その辺りを規定上どうするかということも,またこちらで検討させていただきたいと思います。 ● そういうことでございますので,せっかくでございますからなるべく例えば認証システムなどを活用して,ネット上で株主総会を現実に正に本当の現場でやるような総会に近いものができるというもの,必要があれば規制を改正すればいいし,読み込めるというのであればそこを明確にしていただければ,大変特に譲渡制限がかかっているような人たちにとっても,遠いところにいる人とかいろんなことが起こりますので,簡便にやれる方法として,証拠も残りますので,是非うまく採用する方向でお願いをしたいと思います。 ● 電子的な総会については,いろいろ御意見はあるところだと思います。やはり社長の顔を見て一言言いたいという人も世の中にはいるかもしれませんので,検討すべきことはいろいろあるかと思いますが,検討させていただきます。  では,この⑤については格別御異論なかったという了解で進めさせていただいてよろしいでしょうか。  それでは,「5 計算」に入らせていただきますが,まず(1)でありますが,附属明細書,これは廃止の可能性を第一読会では示唆していたのですが,それについては皆さん大体反対であったということで,本日はこういう形の案になっております。この点はよろしいでしょうか。 ● これ,有限会社の場合にはこういう場合には附属明細書の作成は不要だということになっているとのことなのですけれども,債権者の保護というのはどういう面で図ろうとされていたのか,そこの立法趣旨というのをちょっと教えていただけるでしょうか。株主だったら何でも見られるのだからいいのだろうけれども,債権者についてどう考えてこういう立法をされたのか。 ● 済みません,勉強不足で恐縮です。何か教えていただければ幸いですけれども。 ● 現在の有限会社は,確かに附属明細書の閲覧権がないということですかね。株式会社でもそれでよいかということになってしまいますね。  では,なお検討してください。 ● 検討させていただきます。 ● (1)につきましても,どうも御指摘ありがとうございました。検討させていただきます。 ● この附属明細書の方ですけれども,株式会社の場合に会計帳簿の閲覧請求権を会社自らが認めるというのは,現実的にあり得ると言ってはあれなのですけれども,何でこういう規定が必要かというのがちょっと疑問です。附属明細書をつくった方がはるかに楽ではないかと思うのですけれども。 ● これは,各国にそういう有限会社的な会社については立法例は多いのだと思います。たしか,いろんな国にあると思いますけれども。定款をもって,各社員に閲覧権を認めるということを決めてよろしいという法制は非常に多いと思います。それこそ,株主・社員がほんの少数の会社,典型的には合弁会社とか。 ● 現実的にあり得るということですね。 ● はい。  それでは(2)でありますけれども,これはa案からd案までありますけれども,ここで一本化するのは到底難しいので,先ほど事務局から申しましたように,ここでもうこれは落としてもいいという案があるかという,つまり意見照会をする上でこれはもう意見照会に載せなくてもいいのではないかという案があれば,という方向で御議論いただければということでありますが,いかがでしょうか。 ● d案は落としてもよろしいのではないかと思います。  それから,一応考えられる選択肢としては,株式会社には決算公告を要求し,有限会社には要求しないという現行の制度を残すという選択肢を書いておくことも考えられますが,次のような見直し案が考えられるがどうかということで検討した結果,まとまらないので現行どおりにするという,戻るという方法もあると思いますので,あえて選択肢にどうしてもしなくてはならないということではないかとも思います。  もう一つ質問なのですが,米印の最初のところに,「b案,c案を採る場合には,計算書類の虚偽記載・虚偽公告についての罰則の導入も併せて検討することでどうか」とございますが,具体的にはどういうことをお考えになっていらっしゃるのかお伺いしたいということと,それからb案,c案をとる場合にだけこういうことを考えるのかということと,それから現在も一応過料の制裁はどの程度動いているかは別にいたしまして,過料の制裁の対象になっているかと思われますが,そのこととの関連で一つ目の米印についてお伺いいたします。 ● 米印の一つ目についてですが,ここで言う罰則の導入の検討は刑事罰を含めた検討の趣旨でございます。当部会に出されました要望の中にも,計算書類,決算公告の内容の虚偽につきまして厳しい罰則をもって臨むべきではないかという御指摘がされているところでございます。制度として計算書類が開示され,更に決算公告という形で公示されるという場合には,すべて刑事罰をもってその正確性を担保するということも論理的にはもちろんあり得べしだと思いますけれども,開示対象の範囲が広ければ広いほどなかなか刑事罰の導入が難しいというのが現実だろうと思いますし,他方におきまして刑事罰をもって正確性を担保するという手当てを講じなければいけないほど関係者が多い会社というのもまたすべての会社ではないかもしれませんので,そのようなことも考え合わせて,仮に刑事罰の導入の検討をするとすれば,ある程度範囲が絞られた場面でないと現実問題としては議論がむだになるのではないか,というような配慮からのものでございます。論理的にこれに限らなければならないという趣旨では,毛頭ございません。 ● 論理的には私はa案だと思うのですけれども,現実的にどこまでかと言われたときに論理的ばかり言ってもしようがないと思いますと,b案の「一定の範囲の会社」というのが今よりもかなり幅広く仮に設定されるならb案でもいいかなと思いまして,○○委員と同じようにd案は全く意味がないというふうに思いますし,c案はちょっと狭過ぎるのではないかということで,a案若しくはb案ということで意見を申し上げたいと思います。 ● まず最初に確認なのですが,これは現行のような決算公告制度ではなくて,インターネットを使ったような制度を前提にしていると考えてよろしいでしょうか。 ● 現行の制度も含めて,インターネット公開もあり得べしということです。 ● それを前提にしてといいますか,私の提案は,日刊新聞紙等にということではなくて,当然インターネットを使って,例えば登記所等のホームページで例えば「鈴木商店」とかいうとポンと行けるというようなテクニカルな制度を前提とした話なのですが,実はa案とd案プラスというのを私ちょっと提案したいのですが。  それはどういう意味かと申しますと,これはまず法制度といたしまして,様々な会社を相互に比較できるようなフォーマットを示すということは非常に重要なのではないかということで,このような決算公告制度というのは非常に重要だろうというふうに思うわけであります。その場合に,特に規模等によって決算公告をする,しない,するべきか,しないべきかというのは必ずしも切れる問題ではないと思われます。ただ,すべての会社,今の有限会社的なものも含めて過料等を科すような形での義務づけというのは余り現実的ではないが,さらに,そういう小さい会社も含めましてできるだけディスクロージャーをしていくというインセンティブを与えるという方向が望ましいのではないだろうかということで,要するに決算公告はすべてに要求するのですが,不提示ということもあり得る。ただ非提出ということをホームページ上で確認できるということではどうかというのが,私のアイディアです。ですから,これは過料というようなことですべての会社に義務づけようとするよりも,実効性があるのではないだろうか,そういう趣旨です。 ● すべての会社が,インターネットのアドレスを法務省の何かに登録しておくというのが前提ですか。出しているか出していないか分かる。 ● インターネットといいますか,私のイメージといたしましては,法務省のといいますか,登記所というのでしょうか,電子登記所を通して何とか会社,コード名等を出しますと,その会社の決算公告の欄に行けて見られる。そのときに空欄というのがあり得る。要するに未提出。ああ,そうか,それだけ自信がないのだなと。それだけの制度が,ガバナンスが整っていない会社なのだなということを開示していただくということはどうだろうかというのですけれども,いかがでしょうか。 ● 前に私が申し上げたのは,今,○○幹事がおっしゃったことと近いところがあるのでもう一度繰り返しますけれども,中小会社で非常に狭い範囲で取引をしているので,必ずしもディスクロージャーの必要性は今感じていないけれども,全般的にはやはり中小会社のディスクロージャーも進めるべきだ。これは私も前回はっきり申し上げた。そのときには,ディスクロージャーを行った人はやや有利に,行っていない人はやや不利にというふうな慫慂の仕方をしていくのが,制度としては妥当なやり方であろうと。ただし,とその後つけたのは,失敗しないような方法でやってくださいと。今,○○幹事がおっしゃったのは,アドレスは登録しなければいけない。出してみたら,あっかんべえと,私は出しませんよと,こうなっているという,そういうことで差別をしようということですね。そうすると,その根っこのところの今度はアドレスを登録しない。当然のことながら,人間ですから自分に不利になることはしたくないということになりますから,ちょっとそのお考えを……,そうするとアドレスを登録するところを例えば何らかの刑事的な罰則で強制する,こういうことになってくるので,そうなるとちょっと私どもは賛成はいたしかねるなと。もう少しマイルドな,やった人が得をするというところを少し打ち出したシステムにしませんと,120万社ある株式会社,有限会社を入れるともっとたくさんあるわけですが,そこのところがうまくついてこないなと。そう余り過激なことをおっしゃらずに,もう少し時間をかけながらディスクロージャーを慫慂するようなやり方にしていただけないかなと思うのでございます。 ● ちょっと今までの話と違う話で,米印の2番目なのですけれども,有価証券報告書提出会社,これは主として上場企業だと思いますが,こういう会社については決算公告義務を課さない。これは私は当初はこの考え方でいいのではないかと実は思っていたのですけれども,一つは証取法目的でつくった書類を公衆縦覧したということだけで決算公告の商法上の義務を排除するということをリンクさせていいかという法体系上の疑問が一つあるのと,もう一つは,これは今年の2月の新聞なのですが,電通が調査した企業のIR活動に対する個人投資家の活用の頻度が高いのは何かというデータがありまして,一番高いのは事業報告書,その次が新聞紙面上の法定決算公告,それからその次が株主通信,更にホームページ上のIR情報。新聞紙面上の法定決算公告と答えたのが41%,ホームページ上でのIR情報というのが33%ということで大変高い比率を占めておりますので,そういう意味では有価証券報告書を商法上の決算公告にかえるという選択肢は,ここに記載して試案で示すことに反対するわけではないのですけれども,実情にはちょっと合わないのではないかという印象を持っているということだけちょっと申し上げておきたい。 ● 決算公告については,以前私ここで御説明させていただきましたけれども,私どもアンケートをとりまして,今,9割ぐらい中小企業は公告していない状況にございます。有限会社はもちろん推して知るべしですけれども,当然義務がかかってないのでやっていませんけれども。したがって,a案を過料で,罰則担保でa案までやるというのは無理だということなので,余りいきなり背伸びをしないで,a案のやり方をとっても実態上多分もう動かないと思いますので,新しい制度を組み立てるときに余り実態とかけ離れた制度を提案するのはどうかと私は考えています。  私が推測するに,b案とc案のときに罰則の導入ということを米印で書いてあるということは,今までの公告義務の範囲よりも多少もうちょっと精査をして,真に必要なところはどこなのかというのを考えた上で,そういう範囲でやる以上きちっと守らせるというような多分思想なのだろうとお見受けしておりますので,b案,c案ということで意見を聞かれたらいいのかと。d案というのは,さすがちょっとやり過ぎではないかという先生方の御指摘もありますので,と思います。  ただ,今,○○委員もおっしゃったように,中小企業の決算のディスクロージャーというのは大事ではありますので,ただ過料なり罰則つきでやろうとしてもなかなか進まない。要はなぜ公告していないかというと,公告することのメリットが中小企業に感じられていない。大体普通の債権者である銀行には出しているので,それ以外の一般の人に見せるというところの意味がない,感じられていないので,幾ら過料なりつけても,何でそういうことが必要なんだというところが実感としてわかないので,単にやらないとだめだということだけでは進まないのだろうと思います。したがいまして,では有限会社は決算公告してはいけないのかというと,したい人はしてもいいと思いますので,これは商法上の公告かどうかというのは別で,したがってそういうものをうまくできるように,これは商法上,会社法上の制度がどうかというのは議論がありますけれども,私どもとしてはいろいろ金融機関と今,協力したりとかして,できるだけ公告なり決算書がちゃんとした人にメリットが行くようにということで政策的には対応したいと思いますが,ここの今,この議論の前提になっている過料なり罰則で担保をするという前提での制度としては,b案なりc案ということで,意見を聞かれたらどうかというふうに思います。 ● 一つは質問ですが,先ほどの○○委員の御発言とも関連するのですが,推測するに○○委員はb案よりもc案が狭いような理解をされたのではないかと思うのですが,提案者は恐らくa案からd案に順々,a案からb案にかけて徐々に狭くなるという御理解,そういう感じではないのですか。つまり,一定の範囲という話がよく分からないということで。一定の範囲というのは,要するに義務づけられているところにほんの少しつく,何がつくのかよく分からないのですが,これに対してc案の場合には今回この改正で相当大幅にいわゆる任意監査でない法定監査を大会社以外にも認めようとするので,そういうところがちょっとよく,この一定の範囲をもう少し明らかにしていただきたいというのが質問の1です。  それから,○○委員は真剣に熟慮の上,合意が成立しなかったらa'案になるのではないかと。a'案というのは現行制度というのですが,やはり今の議論を聞いていると,ここに挙げておかないと現行制度が飛んでしまうかなという感じがしないではないので,順番からいくとa案とb案の間に,現行どおり株式会社についてあるというのを一応書いておかれた方が,公正なというか合理的な意見照会になるのではないかと思うのが第1点です。  それから,先ほど○○幹事がおっしゃったこととも関連するのですけれども,確かに私も小さな会社,有限会社はもちろんのこと小さな株式会社でも,実務においてこんな公告どんな意味があるのだ,これは○○委員も何回もおっしゃっていることなのですが,他方,やはり見ようと思ったときに見られなければいけないのですが,結局本店で行われているところの計算書類と附属明細書の開示がどのように行われているかということの兼ね合いだと思うのです。本店に行ったら気楽に見せていただくというのか,そういうことであれば債権者はあれだし,一般人はそういうところの一般投資家はないでしょうから,新規の取引を開始しようとすればそのときに見せろと言って,見せなければ取引をしなかったらいいという意味であるのですが,私はやはり決算公告の要否は本店,更には支店における計算書類と附属明細書の備置きと,その閲覧が実務上どのようになっているかとの関係で,それがうまくアクセスできるようだったら,○○幹事のような御発言にも相当の説得力があると思うのですが,それさえない場合には,ちょっと有限責任の観点から困るのではないかというので,そこら辺また別途お教えいただけたらと思います。つまり,需要がない,需要がないと言われるけれども,やはり本店における閲覧請求なんて,はなから考えていないという形でいろいろあるのか,ないのか。そこら辺のこともちょっと気になるなと思いましたので。 ● 情報開示というのもコストがかかるわけですよね。ですから,今ここでa案というのが載っておりますのが,なぜかなとさっきから疑問に思いながら皆さんのお話をお聞きしていたのですけれども,中小企業というのは大体特定の金融機関と長いつき合いの中で融資を受けたりしているわけです。だから,大企業,公開企業のように不特定多数の人たちから資金調達しているという企業ではないケースがほとんどですね。そういうときに,公開企業と同じような決算公告を求める積極的な理由というのは,私にはよく分からないです。そもそも,商法もそうだと思うのですけれども,こういう会計決算公告ということ自体が道具であるということが最近考え方として薄れてきたように思うのです。ディスクロージャーが非常に重要なことであるということは疑いを入れないのですけれども,何でもかんでもディスクロージャーがまず第一番というのは少し違うのではないかというふうに思っております。  例えば時価会計もそうなのですけれども,時価なんてどこにもないのです。だけれども,時価があるかのように思っていらっしゃる。市場価格は時価ではないということを前にもここで言わせていただきましたけれども,企業実態であれ資産の内容であれ,あんなに株価や為替が時々刻々変動するようになんて変わるわけがないですね。ですから,市場価格というのは,投機も入ればパニックにも陥るという意味で,決して時価ではないです。もっと言えば取得原価だってその時点の時価なわけでありまして,そういう会計の限界ということをよくわきまえて,初めて会計のメリットを享受できると思うのです。  ですから,例えば最近の税効果会計にいたしましても,取り過ぎた税金は返すのが世界の常識です。それを返さないと言っている国税当局がおかしいのでありまして,その税効果会計を金科玉条のように振り回して,○○さんみたいな何だかよくわけの分からない金融行政を応援するかのごとき動きがあるということは,非常におかしなことだと私は思っているのです。会計というのはあくまで道具であって,現実経済が,あるいは現実社会がそこに参加している国民がより幸せになれるということが大事でありまして,会計制度のために株が余分に売られて経済が危なくなるというようなことがあっては決してならないと思っているのです。ですから,ディスクロージャー一般に関しまして,何かそれ自体が自己目的化しているかのような御議論が最近非常に多いのですけれども,私はそうは思わないのです。  例えば,自分で調べたのではなくて読んだのですけれども,大恐慌のときにアメリカでは一部もう時価会計を取り入れていたのだけれども,それによって非常に経済が傷むということで凍結したというのです。それから,例えば自己資本比率に類するようなものが生命保険会社にもあるのですけれども,ドイツでもイギリスでも非常に思い切ったことをやりまして,時価会計凍結しようとか,あるいはイギリスなんかは生命保険会社の健全基準を凍結してしまったりとか,あるいは401Kに属するような個人年金の株引出しを禁止するというような措置までとっているのです。ですから,ルールというのはあくまでも守ることは大事なのですけれども,それがあることによって国民生活がよりよくなるという,その根幹というのでしょうか,基本を忘れないようにしていただければとなと思うのです。だから,ここで決算至上主義に立ちまして決算公告を要求するというのは意味ある文言のように思えるのですけれども,私は非常に非現実的であると思います。 ● ○○委員から御下問がございましたので,実態の方だけ簡単にお話をすると,まず株式会社の中小会社に対して取引先になる可能性のある方が例えばいろんなものを見せてくれと言ってくることはほとんどない。実態はそうでございます。私が取引先になろうとすれば,まず近場の金融機関にちょっと聞いてみるとか,業界のうわさを聞くというところから始めるので,いきなり取引するかもしれないので見せてくださいなんて言ったら,そもそも何者だろうと思われるような世界だと。そこは御理解をください。  それから,先ほど○○幹事の方からお話があったことについて,私ほとんど賛成ではあるわけでございますし,今,○○委員からありましたものにもそのとおりだと思うのでございますけれども,すべてに決算公告を要求する,それを強制力を持ってというのは,これはもう全く我々にとってはアンビリーバブルな話であります。ただ,やれというのではなくて,これは商法でそんなことが書けるとは思いませんが,やった方がよろしいですよ,あなたのためにもなりますよという,ちょっと政策的な物の言い方になりますが,そういうようなことで慫慂をするということは,私,何度もちょっと申し上げているのですが,その方が中小企業にとって将来はいい。それでもやらないという人は,別にそのメリットは享受できないということになるのではないか。したがって,強制力を持って強制をするのは,これはもう全くa案は非常に難しいと思います。しかし少し考え方,ちょっと私が言っていることが不分明かもしれませんが,商法のこのシステムによって何らかの形で商売をやっていく上では,なるべくディスクロージャーをした方がいいですよという訓示規定のようなものがあれば,それは望ましいのではないかと思います。 ● これはもう打ち切りたいのですが,それでは○○委員と○○委員,○○委員,一言だけでお願いします。では,○○委員から順に。 ● ○○委員の御発言については,資金調達以外の債権者もいるということも考える必要があるということですが,私が申し上げたいのは二つ目の米印のさっきの○○委員の御指摘になった点でありまして,ここでは断定的に有価証券報告書の提出会社については決算公告義務を課さないとしてありますが,電子公告が可能になった現在を考えますと,証取法の開示というのは財務局や本店,支店,証券取引所だけの開示でありますので,むしろ一般の株主にとっては会社のホームページで公告してくれた方がずっと情報に接近しやすいので,こういうふうに言い切ってしまうのがいいのかどうか,法律上強制する必要があるかどうかは検討の必要はあるかもしれませんけれども,ちょっとその点御考慮をいただけたらと思います。 ● ディスクロージャーというのは,特段に罰則を設けなくても,市場で必ず仕返しを受けるのです。つまり,ディスクロージャーをしないというのは,よほど自信がないのだろうとか,非常にリスクを過大に評価されるのです。だから,格付でありましても,企業はわざわざお金を払って格付をとるのです。ディスクロージャーというのはそういうものなのだということを,少なくとも経済学的にはそういうふうに整理されているということを申し上げたいと思いました。 ● 私は,もう最後の落ち着きどころは現行法を変えないということではないかということは前から言っているのですけれども,その精神は○○委員がおっしゃったり○○幹事がおっしゃっていることとそんなに違わないと思うのです。つまり選択を残す。各当事者が,どちらにするかということの選択ができているということで現行法はそうなっていると思うわけです。つまり,ほかの規制が全部同じになって,そこの点だけが違うとすれば,それは当事者の選択だということになるのだと思うのですが,そこに商号がつくわけですね,結局,現行法どおり残すとしますと。ほかの点について,株式会社と有限会社との規律を全く一体化しながらそこだけ残すとしましたら,商号を変えるということがそれにつくということになると思うのです。私はそれが賛成なのですが,しかしそれがもし厳しくてもう一つ別の選択肢がないかということを考えるとすれば,私は先ほど○○幹事がおっしゃった案というのは一案ではないかと思うのです。つまり,○○幹事はちょっと複雑なような形で表現されましたけれども,要するに株式会社,有限会社,規律を全く一体化してしまって,両者の区別,商号も含めて区別をしなくなった場合に,定款において我が社は決算公告はしないということを決めることを認め,かつそれは登記を必ずしなさい,うちはしない会社ですということを登記しなさいというふうにするのとほぼ同じなのではないかと思いますし,そうであれば簡単だというふうに思います。 ● 問題は,今日の御議論を伺っておりますと,つけ加える案についてはいろいろ御議論いただいたのですが,削れる案があるかということになりますと,d案を削っていいかどうかということなのですね。それでd案は,任意に開示をしていると何かいいことがあるという制度としてこれは考えられていたのではないかと思うのですが,それを○○幹事等が主張しておられたのではないかと思うのですが,今日のお話では,○○幹事もd案はもう要らないというような御意向のようですが。 ● これ,株式会社全般ですよね,今,これは。譲渡制限とか限らずという世界ですね。したがって,それは幾らなんでもやり過ぎだろうと思いますので,そういう意味でd案は要らないというのですが,d案を落とすのならa案も落とした方がいいのではないか,同じ程度にという,そういうことです。 ● a案についてはちょっと次に伺おうと思っていたのですが,a案はこれはヨーロッパは基本的にこうだと。それから,株式会社と有限会社の差がなくなるということでこういう案になっているのでしょうが,○○委員もこれは無理なのではないかと,商号の問題にも引っかかってきますけれども,というあれなので,a案をどうするかということなのですが,いかがでしょうか。 ● 選択肢を減らすということは,何かこれから外へ出していく上で必須のことなのでございますか。 ● 必須ではありません。減らなければ減らないでもいいのですが。 ● だんだん選択の幅が狭まって。 ● どうせこれは意見照会に幾つかの案は並べることは避けられないので,今日いろいろ御議論いただきましたので,またちょっと検討を事務局の方でして,意見照会に出す案としてはあるいはむしろ案がふえたのが出てくるかもしれないのですが,もしこれが無意味だという案があればもう今日落とすという,そういう方向で御議論いただきたいということが最初にあれでしたので。 ● 一言申し上げますと,d案でも,一般論としてはルーズにしてしまって,例えば上場会社についてはちゃんと違う特則として義務をかけるというやり方は幾らでもあると思いますので,そういう意味で別にこれは賛成,反対ということではなく,論理的にd案もあり得ると思います。 ● それにしても,これを意見照会に出すとしたら,d案を残すにしてももうちょっと説明つけないと,このままではこれは何だろうなという,無意味だという受け取り方をされる危険は非常にあると思いますね。  これは,解説のようなものはつくのですか,意見照会するときは。 ● 本日の御議論も踏まえて,第三読会までにまた整理をしてお諮りしたいと思います。 ● それでは,今日はd案もそれでは落としはしない。書き方を工夫して載ることあるべしということで,次回まで検討させていただきます。  それでは,次に第2の方へ移りたいと思います。それではこれ,事務局からお願いします。 ● それでは,「第2 設立関係」の部分につきまして,簡単に御説明いたします。  まず1は「最低資本金制度」でございます。第一読会の3月の部会で御議論をちょうだいした際もほぼ同様の3案を提起させていただいておったところでございます。そのときの御議論を踏まえましても,試案を公表するに当たっては大体これらの案を併記するしかないのではないかという感じでこの資料をまとめさせていただいておりますけれども,なおこの点に関する意見照会の在り方について御意見をちょうだいできれば幸いでございます。  それから,b案,c案を仮にとるとした場合に,債権者保護の観点あるいは法人格濫用の防止の観点から何らかの代替的措置をとるべきかどうかという論点が当然あり得るわけでございます。第一読会のときにも御指摘を賜ったわけでございますけれども,債権者保護の観点として,例えば1の(2)にあるような整理をするとすれば,債権者保護の観点からの代替的措置はほかには必要ないと考えてよいかどうか。それから,いずれにしても法人格濫用の防止の観点での代替的措置という点については,この案には今のところ具体的な提案が盛り込まれておりませんので,仮にb案,c案をとるとした場合に,その点をどうすべきかということについて御意見をちょうだいしたいというのが(1)の米印の趣旨でございます。  (2)は第一読会では掲げていなかった新しい論点ですけれども,会社成立後の最低資本金規制の在り方につきまして,第一読会の御議論を踏まえますと,結局配当規制という形で最低限度何らかの金額基準というのを盛り込むということに議論を収斂させることができるかどうかという点についてお諮りするものでございます。米印は,会社成立後におきましては設立時の最低資本金規制は及ばない,つまり仮にa案をとるといたしましても,会社成立後はその金額を資本減少の手続をとることによって下回らせることができるということを明らかにする趣旨ですが,これを前提に,(2)の本文のような配当規制という形での規制をかけるべきかどうかということをお諮りするものでございます。  それから,「2 払込取扱機関」につきましては,第一読会では格別御異論がなかったかと思います。米印の一つ目は,今回明示的に新しくお諮りするものですけれども,恐らく同様の手当てということになると思います。米印の二つ目の範囲の拡大につきましては,現段階で事務局の方に腹案があるというわけではありませんが,金融機関として今認められている範囲を更に拡充すべきであるという実務的な要望がどの程度強いかどうか,意見照会の結果を踏まえてなお検討ということになると思いますけれども,そういう趣旨で掲げさせていただいているものでございます。  それから,3の「事後設立」ですけれども,(1)につきましては,最終的にほぼ御異論がなかったものと承知しております。また,(2)につきましても,格別御意見はちょうだいしなかったように記憶しております。  4の「現物出資・財産引受け」の点ですけれども,(1)の①の発起人以外の者からの財産引受けを,ここで言う事後設立並みに扱っていいかどうかについては,御意見が分かれたところでございますので,なお本日もお諮りしたいと思います。  それから,(1)の②につきまして,イ,ロ,ハと3点掲げさせていただいております。このうちロについては,御異論はなかったところですけれども,イ,ハについてはそれぞれ複数の御意見があったところでございますので,意見照会においてどのような形で打ち出すべきかという観点から,御指摘を賜ればと思います。  4の(2)につきましては,本文,米印を含めて格別御異論はなかったように承知しております。  第2につきましては,以上でございます。 ● それでは,順次前の方から御審議いただきたいと思いますが,1の「最低資本金制度」でありますが,まず(1),これは従来からいろいろ意見があるところでありまして,これも絞り込むのは無理だと思いますので,どのように意見照会するかというような観点から御意見をちょうだいできれば幸いです。特に米印の点については,また御意見をいただきたいということでありますが,いかがでしょうか。 ● 最低資本金制度なのですけれども,それを下限を上げてまだ10年経っていないのですか,何か数年前ですよね。平成2年ですか。ではもう13年経っているわけですか。だけれども,そのときにあったいろいろな御議論というのがあると思うのですけれども,今回いきなり規制緩和されて,時限があるとはいえ,その辺に関しては新聞の投書などにもちらちらいろんな意見が載っているぐらいでありまして,この法制審議会としてどう考えるかということをお示しいただければ,私,勉強になるのではないかと思いまして,お願いでございます。 ● それでは,事務局から,簡単に。 ● 平成2年の改正の際に,この最低資本金規制について改正がされ,株式会社には新たに規制が導入され,有限会社についてはその額が引き上げられたわけですけれども,当時,新設会社につきましては平成3年の施行時期から適用されたわけですが,既存の会社につきましては5年間の適用の猶予期間があった結果,結局平成8年に既存の会社も含めて全体的に規制が適用されております。そこから考えると10年も経っていないではないかという御指摘は,そのとおりなわけでございます。  今回,この最低資本金の見直しの要否についてお諮りさせていただいている趣旨は,繰り返して恐縮ですけれども,3点ばかりの理由に基づくものでございます。  1つは,当時の株価その他の経済情勢と,現在の我が国の経済情勢とはかなり大きく異なっているということ--当時というのは,最低資本金規制の在り方について改正の議論がされていた当時ということですけれども。それから二つ目は,諸外国の立法動向,特に我が国がその範をとったEU諸国におきまして,我が国が議論していた当時よりは既に引下げがされている国,あるいは大幅な引下げがされようとしている国が幾つか見られるということでございます。  もう一つは,営利法人の横に位置する非営利法人法制の議論の中で,今,非営利法人についても準則主義で設立を容易に認めようという御議論が進んでいるものと承知しておりますけれども,こうした他の法人法制における法人格濫用の防止,あるいは債権者保護の要請を見据えながら,営利法人法制においてどのようなアプローチをとるべきかということを考える時期に来ているのではないか,すなわち,非営利法人法制のもとでは,資本という概念を持たないはずでございますので,営利法人法制において最低資本金規制の意義を維持し続けることができるかどうか,これを検討すべき時期に来ているのではないかというような趣旨でお諮りさせていただいているものでございます。 ● ある意味では,これだけ倒産がふえてきますと,逆に債権者に対する責任とかあるいは従業員を始めとする社会的責任を踏まえますと,もっと最低資本金を上げた方がいいのだという考え方だって一方ではできると思うのですね。それなのに,10円とか何かちょっとよく分からない。ゼロでもいいとか,そういう話が全然分からないのです。おっしゃいましたように,国際競争というのも大事ですから,ほかの国々が引き下げているときにこちらも引き下げるというのはあり得ることかもしれないのですけれども,何もそんなに追随する必要もないわけでありまして,もしもこういうことでパブリック・コメントを求めるということであれば,その辺に関しても若干の説明をつけていただければ分かりやすいかなと。でないと,法制審議会で何やっているのだと言われてしまうのではないかと思いました。 ● そこで法人格濫用とか債権者保護の観点から,代替措置ということも是非御議論いただきたいと思っている次第でありますが。  このa案,b案,c案は,もうこれを出すしかないでしょうか。 ● b案とc案の関係なのですけれども,若干意味が不明なところをもうちょっと明確にしてほしいなと思うのは,「例えば100万円,10万円等」というときには,これでいくと1万円までを意味するような感じがしますよね。そうすると,このc案と具体的に現実問題としてどこが違うのかということになりますと,もうちょっとb案とc案の持つべき意味が違うのではないかというところを考えたときに,この括弧の中の「100万円,10万円等」のところまで入れてしまうのがちょっと意味が分からないと思って,そこはいかがなものかということでちょっと質問をさせていただきました。 ● 10万円となると,ゼロとほとんど変わりないのですが。その点はおっしゃるとおりだと思います。  どうですか,これは。 ● b案は,300万円より下回る金額で,しかしながらある程度意味がある何らかの数字を設定するという案でございます。100万というのは切りのいい数字という以上のものではございませんが,10万円はSPCがそうでありますし,また,かつて有限会社がそうであったということをも踏まえて例示させていただいているものでございます。b案の打ち出し方について,もし100万なら100万と打ち出すべきであるということであれば,その方がよいかもしれません。その点も御議論いただければと思います。 ● いかがでしょうか。どの点でも結構ですが,米印に関しても結構ですが,御意見いただければと思いますが。 ● これ,パブリック・コメントに付す場合に,米印の内容について代替措置を検討すべきかどうかについてはなお検討するというだけでは,b案,c案にしてほしいのだけれども,とんでもないような規制がかかるというふうなことになると,検討できないだろうと思うのです。だから,b案,c案の場合にはこういうことについて検討する,ぐらいにしておかないと,ないしは,そういう場合には(2)の規制を設けることとするとか,そうしておかないと,ちょっとパブリック・コメントで意見を書く人が大変だろうと思いますね。米印次第によるとかいう答えだけになってしまうから。 ● 特に前回代替措置を検討すべきではないかという御意見をいただいた方,何か例を,例えばこういうものというような例を挙げていただけると,今,○○委員のおっしゃった点がはっきりするのではないかと思うのですが。 ● 例ではないのですけれども,ここの(1)と(2)が統一されていないような気がするのです,考え方として。b案,c案というのは緩める方向にあるわけですね。通常は,設立時よりも会社成立後の方が基準が緩いのです,何であっても,変動に耐えられるようにということですから。そうであるにもかかわらず,ここの(2)で書かれていることは,例えば一定金額を純資産が下回った場合には,利益があっても配当することができないというようなことについてはどうかと聞いていて,何かこれちょっと厳しいですね。だから,(1)と(2)とが何となく整合性がない。どちらを向いているのか分からないと思っておりましたら,○○委員が前にそういうコメントを私はしたんですとおっしゃっていて,どうなのでしょうか。これは読む人は混乱しませんか。一体どっちを向いているのだろうか。 ● 今の○○委員のお話があったのですが,私はこれは非常に一貫していると思っておりまして,私は個人的にはc案プラス(2)の事務局案を支持したいと思っているのですが。  といいますのは,多分考え方といたしましては,資本金制度自体が現在債権者保護のために実質的に役立つということはないのではないか。例えば1,000万円の資本金があったとしても,それが金庫に入っているというわけではありませんから,そういう保証は全くない。ただ,一つだけ意味があるとすれば配当規制だと。資本金を超えて株主の方に財産が移るということはないということでありますから,最低資本金制度と配当規制とはむしろ切り離して考える方が論理的であろうと思いますし,最低資本金制度があることによって,ある程度このような創業率がなかなか上がらないという状況の中の一つの問題だと指摘されているわけですから,特にベンチャー育成等の観点からすると,やはりc案でお願いして,配当規制は別途(2)のような形でお考えいただくのがよろしいのではないかと思っています。 ● 今,私のコメントというふうに引用されましたので,正確を期する意味で申し上げますと,私も今,○○幹事がおっしゃったように,最低資本金制度を緩和するのであれば,一方で配当制限が不可欠の要素になるであろうということを前ちょっと述べました。ですから,そういう意味では(1)と(2)の本文とは一貫しているというふうに思うわけですけれども,むしろ(2)の米印,会社成立後には最低資本金規制は及ばないものとする,これの趣旨といいますか,どういう場合を想定しているかということについての説明が相当ないと,これを単純に読んだ方は,300万円で資本金で設立してもすぐに減少して1円にできるのだという理解をしてしまうというおそれがありますので,そういう意味ではこの点について意見照会するときには,ある程度の説明をしないと誤解を受けるのではないかと。その点がちょっと,1と2の一貫性という意味では気になるという部分のように思います。 ● (1)の米印については,何か(2)以外に具体的な御提案はありますでしょうか。 ● 以前そういう趣旨のことを申し上げたのかなという気がいたしますので,大した知恵はないのですが,債権者保護については資本制度の理念と,従来からの考え方とこの(2)のスキームとが整合的かどうかとかいろんなことがありますが,これも一つの方法だろうと思うのですが,私が法人格濫用の防止と以前申し上げた一つの理由としては,結局極端になると1円設立の話ですけれども,10円玉持っていたら10の会社つくれるぞと。そして商号についても,少し緩やかにしようかというような議論がありますと,結局資本の維持充実とかそういう意味での問題ではなくて,法人格を極めて犯罪的な面に使われることも含めて,いろいろ難しい問題が出てくるということを申しました。  そして,平成2年のときにも,私自身は1,000万,300万というのが意味のある債権者保護ではなかろうと考えておりましたが,しかし,今言ったような意味での濫用防止というならばもう少し下げてもいいけれども,ある程度の意味のある--先ほどおっしゃったb案がそういう趣旨のようですけれども--a案かb案かはともかく,ある程度五つも六つも法人をつくっていろんなことをするというようなことを阻止する,ないしは当初はそう思わなくても,そう使われるようなことを阻止する,あと結局は,法人格の濫用については法人格否認の法理というか判例法理で考えざるを得ないのかなという気がしております。その意味で私は商法の立場としては,b案の例えば括弧書きの金額はどうするかはともかく,少なくともa案かb案かあるいは現状維持かぐらいで,c案というのは商法という一般法としては厳しいのではないかという感じがしております。  ごめんなさい,これはa案,b案,c案のコメントではなくて,米印のコメントだけで済ますべきでした。 ● ○○先生に弓を引いて恐れ入りますけれども,100万か300万か1,000万か10円玉かによって,例えば商号の関係でそういう人が全く防止できたり,相当程度防止できるという効果はないのではないかと思うのです。商号屋というのは,見せ金で300万だろうが1,000万だろうが使って幾らでもそんなことはやるわけでありまして,ちょっとそれを考えながらこの資本金の方の金額を議論するというのは,いかがなものかと思います。もう少しそこは本筋で考えるべきだと。  それから,せっかくの機会ですから言わせていただきますと,1,000万に上がりましたときに,中小会社は大変迷惑を正直言っていたしまして,今でも記憶がたくさん残っているのですが,そうなるのだという大変なPRをして,無理無理していただいて,みんな大変な御苦労をしたわけでございます。苦労してなったので,また下げられると,何だよという気持ちも一方ではありますが,しかしこれも筋論に戻ると,それは正しい方向へ戻ったのだと。みんながビジネスをしたい,ビジネスをするためのツールとしての会社を作るのは簡便でいいはずだと。法人格濫用の防止,債権者保護等の観点というのは,別途違う手で,資本金の額はバナナのたたき売りで300万でも10万でも1円でもなかなか決めにくい話なものですから,やはりそこと直接的にかかわりのないところで規制をかけるのであればかけるという論理的な考え方をとっていただけないか。この案ですと,b案だったら,c案だったらと,金額に引きずられて濫用防止の話が書かれているのは,ちょっと納得がしにくいのではないかと思うのです。 ● 私自身は,前も申し上げましたように,最低資本金は意味ある制度としてやはり残すべきだと考えております。今,○○委員がおっしゃったように,ある意味で言うと大変苦労して1,000万なり300万を用意していただいて,現在株式会社や有限会社である会社はそれだけの内実のある会社だという信頼を得ているわけでありますから,それを引き下げるということは,今まで既存のそうやって信頼を得ている会社も同じように信頼ならないと見られる可能性が出てくるということも意味するわけでありまして,それは一つのポイントにしかすぎませんけれども,私は本来は最低資本金は維持すべきだと思っております。  なお,どうしてもそれを実質上無意味化するような立法をするとしますと,(1)の米印のところでありますけれども,本当はそういうことは余りできればしたくない気持ちではあるのですけれども,それでほとんど会社債権者保護はなくなってしまう。特にこの前の問題の公告とあわせて,ディスクロージャーもほとんどないし,最低資本金による最低の会社資産の担保もないということもなってしまいますと,最後のやむを得ない手段としまして,例えば不法行為債権者に対する関係では一定金額までは株主が責任を負うというようなことを決めざるを得なくなってくると思っておりまして,この米印として考えられるルールとしてはそういうところがあるかと思います。  次に(2)の方については,先ほど○○委員や○○委員が御指摘になった点,非常にもっともな感じがしていまして,いったん会社成立後の規制として考えますと,(2)の本文で言っていることは要するに300万円の最低資本金を守らせるということを言っているのにすぎないのであって,次の米印といわば矛盾するような印象を与えると思いますので,本文の方は私は賛成なのですけれども,米印は書かない方がいいという感じを持っております。 ● 先ほど○○委員がおっしゃったことはそのとおりでありまして,地方公共団体とか公的企業とかは,株式会社でないと取引しないと決めているところが随分あるのです。そのために物すごく苦しい思いをして株式会社制度の株式会社であることを維持した中小企業がたくさんあったのですね。じゃ,だからといって下げればいいのか。これだけ起業率が下がってきたのだからというのだけれども,起業率が下がってきているのは,余りにも不況だと,将来見通しが暗いということが最大の原因と思っておりますので,それとは余り関係ないかなと。  それから,事業を起こすということであれば,個人企業として立ち上げるということもできますし,法人格を得るかどうかというのが,先ほど言ったような例を別にすればそんなにクルーシャルとも思えないとは思うわけです。ですから,これはすぐれて現実的な問題なので,何を言っているのか分からなくなってきてしまっているのですけれども,要するに,現実問題としてはどうあったらいいのかということで,○○委員とか現場を御存じの方たちの御意見を尊重するというのが一番いいのではないかと私は思いました。 ● そうしますと,このa案,b案,c案は一応このまま意見照会については維持するほかないと思うのですが,米印につきましては,○○委員がおっしゃったようにもうちょっと具体化しないと,何のことか分からない。どうも具体的な御提案としては,○○委員が今おっしゃったようなことしか,制定法で書くとしたらそれぐらいしかないのだろうと。これは,たしか平成2年改正前の商法・有限会社法改正試案にもそういうことが出ておりましたので,具体化といえばそれぐらい。あと濫用に対する対処は,判例法理の問題だと思いますので,この(1)の米印は今の○○委員のようなものを例として出すということでいかがでしょうか。  それから,(2)は確かに本文と米印の関係は非常に解釈が難しいところがあると思いますので……。  何かコメントありますか,この点につきまして。 ● いや,特にはないです。 ● 減資はできるのですね。減資はしても,しかし配当はしてはいけないと,こういうことになるのだと思うのですけれども,確かにちょっと難しいので,この辺は説明は意見照会にはつくのだと思いますけれども,きちんと書いていただきたいと思います。  1は,以上のようなところでよろしいでしょうか。  先へ進ませていただきます。2の「払込取扱機関」でありますけれども,大体方向としてはこういうことで御異論なかったのではないかと思いますが,この点はよろしゅうございますか。  問題は,先ほど事務局からありましたように,払込取扱機関の範囲をどうするか。拡大要求があるのかということでありますけれども,この点,何か御意見ありますでしょうか。 ● この払込取扱機関について,何らかの対処が求められているということは第一読会の御説明で大変よく分かりまして,賛成なのですけれども,ただ払込取扱機関の範囲の拡大の方が米印で,本文の方が残高証明その他の適切な手段ということになっておりますが,どちらかというとやはり払込取扱機関の範囲の拡大の方が筋が通っているといいますか,弊害が少なくて,そして残高証明ということになりますと,一体だれの残高証明で,それがどうして確実にその会社のものとなるということが証明できるかというようなことで,法律的にはちょっとややこしくなりませんでしょうか。だから何らかの手当てをするというのは賛成ですが,その方法としてはまず払込取扱機関の範囲の拡大の方が望ましくないのかと思うのですが。 ● この二つは別の話だと私は理解しておりますが,この「残高証明その他の適切な手段によれば足りるものとする」というのは,これは現在のような保管証明制度というのはやめるということで,現在の保管証明制度というのは登記の日までは必ず保管しておりますという,何か金融機関自身が証明者になった証明文書なのですね。 ● その証明文書の制度が働いているがために,やはりいろんな弊害が抑制されていると思うと,それを取り扱ってくれる金融機関がなかなかスムーズに対応してくれないということであれば,その範囲を拡大することによって,例えば郵便局とかいろいろ考えられるかと思いますが,皆さんがお困りにならないようにしようということになる。それに対して,残高証明やら何やらの制度にかえますと,法的には違う制度になりますので,せっかく今,濫用が抑制されているものが飛んでしまわないかということの懸念も生じるというように考えているのです。 ● その辺になりますと,これは原案とは相当違った御意見ということになると思いますので,そうなりますと御意見いただきたいところでありますけれども。果たしてどの程度弊害が抑制されているのか。登記が済むまでは保管しておりますという証明なので,その後も見せ金であれば,その後の保証はないのですね。この「残高証明その他適切な手段」というのも,これもある時期までは,登記の日までかどうか分かりませんが,金融機関にあることは,その証明はさせるのでしょうね,恐らく。預金通帳なり何なりで。 ● この制度は,最低資本金をなくして1円でできるというようになったときに,その1円の払込みがあるということを証明する意味は余りないのだろうと思います。もし債権者保護のために最低資本金を設けるということを実質的に放棄するのならば,余り意味のない制度になるのではないかという気がするのです。 ● 確かに資本金1円の会社にとっては余り意味はありません。ただ,みんなが1円になるわけでもないですから,1,000万円なり1億円で設立する場合には,とにかくある時点においては1億円は金融機関にありましたという証明は登記のときに要求するのだと思いますが。  ○○委員は,この米印の二つ目があれば本文の改正は不要であるという御意見のようですが,いかがでしょうか。それで問題は解決するのでしょうか。払込取扱証明の制度が起業の制約になっているという問題提起をされた委員・幹事の方からは,その点はいかがでしょうか,今の○○委員の御意見について。 ● その点いろんな件があるのですけれども,我々がつくった新事業創出法というところで一応の特則をつくっていまして,払込証明書にかえて通帳の写しでもいいというルートをつくったのです。そうすると,大抵皆さんそちらの方を選ばれる。そうすると,設立に要するに期間が約1週間程度に短縮できるということで,非常に利便性が高いという評価を受けております。したがって,ここで御提案があったように,残高証明という手続あるいは手段というものをお認めいただければ,少なくとも創業する方々の--大きいか小さいかという議論はいろいろあるのです,1週間程度我慢しろよという議論もあるかもしれないのですが--少なくとも現状よりも設立手続が簡便になるというニーズは強うございますので,もしできますればこの部会における提案をまとめられるときには,この原案のような形で書いていただければ有り難いかなというふうに考えております。 ● 残高証明はどなたの名義のもので受け付けられるのですか。 ● 通帳の写し等を認めているということなのです。 ● どなたの預金ということで。 ● 名義ですか。 ● はい。 ● それはちょっと詳細は,私今手元にございませんので,その点はもう一回確認しておきましょうか。 ● そこの点を心配しているということだけです。 ● 何々会社設立委員会,発起人だれそれとか,そういう名義ですかね,恐らく。 ● 発起人会代表何々という構造でしょう。そこですよ,それはもう明らかにそうです。そうでないと,個人の名義では意味がありませんから。何々株式会社発起人会代表何々という口座をつくってもらってということですね。 ● ほかに御意見ございませんか。 ● 次のところでまたお聞きしようと思ったのですが,結局この設立は以前発起設立だけにしろ,ただ実情云々という話があったと思いますが,基本的に発起設立の場合を前提にこれも考えるということでよろしいわけですね。その点だと,いわゆる投資家保護という側面はなくなっていますので,私も本文のような簡易化はそれなりに合理性があるかなという気がいたしますが。 ● 設立についてはそうなのですけれども,1番目の米印も含めて同じように取り扱ってよいかどうかという点は,そうしますと結論は変わってくるということでございましょうか。 ● 米印の1番目につきましては,名義人で余り悩まなくても済む。つまり,会社自身を受け入れたというその証明を出すということで済むという扱いにはできないのでしょうか。つまり会社設立のときは困るのですけれども,新株発行のときは簡便な措置を認めても法的に余り困らないのではないかと思うのですけれども。 ● そちらの方は○○委員もよろしいわけですね。 ● はい。最初の手続のときに,法律的にちょっとやはりなかなか説明がつかないのではないかということを心配しているだけですから。 ● ほかに御意見ありますでしょうか。  それでは,いろいろ御意見もありますが,ちょっとその原案を修正するというほどではないかと思いますので,一応このまま維持させていただいて,なお検討するということにさせていただければと思います。  次に,それでは3でありますが,この点については特に全体を通じて第一読会で御議論はなかったように認識しておりますが,いかがでしょうか。--よろしいでしょうか。  ちょっと次の4,これがかなり議論があるところでありますので,4に移っていただきたいと思いますが,4の(1)であります。検査役の調査が義務づけられる範囲でありますけれども,この点について①,②とありますがいかがでしょうか。①についても,第一読会でもいろいろ御議論があったところかと認識しておりますが。 ● 第一読会でも申し上げたとおり,私は発起人以外の者からの場合についても,やはり財産引受けの規制をかけるべきだと考えております。このように発起人に限るというのは,恐らくEUの指令やあるいはドイツの2001年の法改正を受けての議論かと思いますけれども,あれは事後設立の場合の規制でありまして,ドイツは財産引受けについてはやはり発起人かどうかということを問わずに規制をかけているわけでありまして,設立の段階においての危険性を考えますと,特に発起人以外の者かどうかということの認定が非常に問題になるわけでありまして,ドイツでは,そういうことの立証をさせることが非常に難しい,つまり発起人と関係のある者との取引かどうかということの立証が難しいということで,これは抽象的な危険を防止する制度だということで,一般的に財産引受けの規制の対象にしているわけでありまして,それと同じように日本においてもこの規制の対象にするのが私は望ましいと考えております。  ②の方でございますけれども,検査役の調査の範囲をなるべく狭くしたいというお気持ちは分かるのですけれども,一方でイのところのような制度を500万で一本化しますと,例えば最低資本金がさっき出ていたように少なくとも300万までは引き下げられそうな感じなのですけれども,そうしますとその範囲では全く現物出資等に関するチェックが入らないで会社の設立が可能だということになってしまうわけで,それまたちょっと,本当にそれだけの価値のあるものの出資がされているかのチェックが全くないというのも,最低資本金との関係で言うとやはり懸念があるところでありまして,私は前の案に出ていたように,最低資本金額については現金での払込みを要求するというような規制とセットであればこれでいいように思うのですけれども,それでないとややその点の懸念があるということでございます。  米印の二つ目のところは,これは私の前回申し上げたところで入れていただいたのを大変有り難く思っておりまして,是非こういったことを御検討いただければと思っています。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● この②のハがちょっと気になるのですが,「会社に対する金銭債権であって履行期が到来しているものを当該債権額以下で出資をする」ということの意味は,会社から見ると会社の金銭債務であって,履行期が到来しているものを当該債務の額以下で出資に振りかえるという意味ですね。そうしますと,債務の処分益が出ますけれども,要するに当該債権より価値のないものを出資にするというときに,その処分差益が出れば結局配当財源に入りますよね。それは配当財源に入るということも,それから出資が出資に値する価値がないということも,いずれも債権者保護の問題には触れる点では同じなのですよね。ですから,一方は資本充実の問題であり,他方は配当制限の問題なのですけれども,どっちにしても債権者保護という問題に触れる点では変わりはないので,一方だけが検査役の調査が不要であるという話になるのかどうかがちょっと理解できないのですけれども。 ● 何かその点,今の○○委員の御質問については,事務局。 ● ハの処理は,債権額以下という処理をするのがいいのか,それとも債権額は額面で動かして残りの部分を債権放棄という形にするのがいいのかという問題と似通っていると思いますけれども,もし今私が申し上げたように一部債権放棄だというように考える考え方をとっても,やはり今おっしゃった結論になる形になりますね。一部は利益に振り替えられて一部は消却ということですので,そこはもしかするとそういう処理の方がふさわしい,すなわち全額出資するのだけれども一部が債権額以下で振り替えられて,残りが利益に立つという考え方ではなくて,そこは額面で振り替えて一部を債権放棄したというような形で構成をした方がいいということであれば,そういう形になると思います。 ● どっちがいいかということは今すぐ議論するだけの準備はないのですけれども,債権の額で振り替えれば,それは資本充実の問題に触れるし,債権額以下に振り替えれば必ず配当財源が増えるという点では,どっちにしても債権者保護という観点からすれば同じ問題を引き起こすということなので,片方だから検査役の調査が必要で他方ならば不要であるという議論には必ずしもならないのではないかという印象を持ちました。 ● ほかに,御意見いかがでしょうか。①につきましては,これはちょっと実務的な要請がどこまであるのかという問題があると思うのですが。 ● ちょっと基礎的な,初歩的な質問になって申し訳ないのですが,いろんなところで検査役の調査は要しないとする趣旨なのですが,例えば設立のところに限定して申しますと,いわゆる変態設立事項から外してしまうというわけではない。検査役の調査だけが要らないと。そうすると,価格てん補責任などはかぶるということに……。定款には書かなければいけない,しかし,そういう意味での変態設立手続には含まれるけれども,検査役調査という手続は排除する,したがって発起人の価格てん補責任はかぶるということになるわけですね。したがって,検査役の調査を受けると,価格てん補責任は,発起人以外の者だったら免れるけれども,この場合には価格てん補責任は免れられないという前提の制度ということでよろしいわけですね。 ● はい。 ● そういう意味で,すべて事前の検査役制度は廃止するけれども,事後的な責任追及は現在よりも場合によっては厳しくなるという見方ができるわけですね。つまり,検査役の調査を受けていればよかったのにと。 ● はい。 ● 分かりました。 ● 今の関係は,検査役の調査と選択的にできるという制度設計ではなくて,検査役の調査をそもそも受けることができなく……。 ● これだとそうなると。だから,それで本当にいいのかという。 ● 「要しない」ものとする,検査役調査を受けてはいけないものとするというのではなくて。 ● 今の条文で言いますと,173条の1項が「請求スルコトヲ要ス」となっていて,2項で,適用しないという書き方になっております。ここの理解の仕方が,請求することすらできなくなるという趣旨なのか,それとも「要す」が要しないということであって,請求すること自体は別に妨げられないという趣旨なのか,多分両方あり得ると思うのですけれども,そこはちょっと御意見を伺わないといけないかなと。すなわち,一定の要件にはまった場合には検査役の調査を受けられないという制度にするのか,それとも受ける必要がない,ただ受けること自体は妨げられないという制度にするのかという,ここは多分議論の余地があるところだと思います。 ● そこは是非,選択制を残していただきたいなと思うのですけれども。 ● 検査役の調査を受けてやりたいという,財産引受けをしたいというニーズはあるというお考えですか。今は全くと言っていいほど行われていないのではないかと私は認識しておりますが,あえて残す必要があるのかどうかということですね。そういう検査役の調査を受けて財産引受けをするという制度を本当に……。もし,やはり検査役の調査はあるということになると,もうしないのではないか。実は今までの実務からしますとそんな気もするのですが。 ● そして,実務もその選択の基準はどうなるのかがよく分からない。例えば,調査は受けなくてもいいけれども,受ければ免責効果があるという,こういうスキームですね。それはやはり,少し非常に価格とか何かについて不安があるから,裁判所に検査役の調査を依頼するのかどうかになると,裁判所としても画一的な制度にしてくれということ,これは裁判所の方がお答えになるのでしょうけれども,大体そういう選択制度というのはこれまで裁判所がかかるものにあったのかなという感じもしないではないのです。そういう制度設計との関連で,私はこの文言を見て全部なくなるのだと思って,それはちょっと大変と思われる方がおられないかと。あと,内容については何も言いませんが。選択というのは,これまでの制度からはなかった,現行解釈でもそうだとおっしゃれば,私はそうは思ってなかったのです。 ● 私が○○委員にお伺いしたいのは,財産引受けという制度は本当に必要かということなのですね。つまり会社成立前に会社を契約上拘束するという制度ですね。それは非常に欲しい財産がそこにあって,是非とも設立手続段階で,これは何日ぐらいかかるのか,新制度になってもありますけれども,本当にその段階でそういう契約を発起人がしなければいけないという……。 ● 実務としては余りないのかもしれませんけれども,現実に例えば1,000億なら1,000億円で工場を建設しようというのがある。それをジョイントベンチャーでやりたい。ジョイントベンチャー契約の交渉に5年間かかる。だけども,ジョイントベンチャーが整った段階ではすぐ一定の比率で,ある一定の時期に工場を建設したいというふうなことがある。そのときに,一方の当事者が発注をしていく。合弁契約がまとまらないときには,持ち分だけでやる。まとまったときには,それを財産引受けをする,ないしは当事者でないところもこれはありますから,そういうふうなときで実際の実務上の必要性はあるのだろうと思っているのですけれども。お答えになっているのかどうか。 ● ただ財産引受けという制度は,やはりもう定款はできて,定款に署名はしているのですね。そこから登記までの間,その間の契約なのですね。今おっしゃったようなのは,もっと長い時間の経過のときの話のようにちょっと伺ったのですが。つまり,どうせ大してニーズはないのだということでしたら,○○委員がおっしゃるように現在のままでいいのだ,別に使われなくたっていいではないかという,そういう考えもあり得るというので,ちょっと実務のあれを伺いたかったのですが。 ● 今のようなやつは,事後設立でやればいいのではないかということですか。 ● 事後設立は,もうニーズがあることは私も承知しております。 ● 財産引受けではなくて,事後設立でやりなさいということをおっしゃっておられる。 ● ええ。事後設立について検査役調査をなくしてやりやすくするということについては,皆さん御異論がないようですので。①は,非常にニーズがある話というわけでもないのではないかという気がいたしますね。 ● 確かにニーズという意味では,私も財産引受けの検査役というのは経験したことがないのですけれども,ただ,一応財産引受けという制度を廃止して検査役の調査という制度も観念として存しないという状態にいたしますと,現物出資と事後設立との中間の形の事実上の財産引受けみたいなことが行われて,それを資本の充実のないまま事実上譲り受ける形が起きるというような悪用がされるということがないかということを,今ちょっと直感的になのですけれども思ったのですが,そういう御心配はないということであれば,制度そのものを廃止すればそういうことはできないのだという前提になりますから,懸念はないのかもしれないのですけれども。  それともう一つ,これ結論いかんの問題というよりも,①の記載の仕方が,従来の議論ですと財産引受けの脱法行為を予防するために事後設立についても検査役を要求するというような論法だったと思うのですが,ここでは事後設立について検査役の調査を要しないとする場合には,財産引受けについても要しないというのは,ちょっと論理が逆転しているような感じがいたしますので,その辺の表現を試案として作成するときにはちょっと御検討いただいた方がいいのではないのかなという気持ちがしました。 ● 従来の考えは,現物出資の脱法としての財産引受け,財産引受けの脱法としての事後設立,そういう発想だったのですが,確かに財産引受けはそもそもそんなにニーズがあるわけでもないし,事後設立は,どうもその後社会の情勢が変わってまいりまして,必ずしも脱法的事後設立ばかりではないという世の中になってきているようですので,そこから,事後設立については余り御異論がないということになっているのではないかと私は理解しておりますが。 ● 私,ちょっと理解をよくしていないのかもしれませんが,私も○○委員の御意見に賛成で,財産引受けというものが,たとえニーズがなくてもそういう規定を置いておくことによって穴があかないということで,残しておいてもいいではないかという御意見ですね。私もそう思うのですが,○○委員がおっしゃいましたのは,この①のような提案は○○委員がおっしゃるように削除してもよろしいのではないでしょうかということだったのではないのですか。 ● 4の(1)の①はそうです。 ● したがいまして,その財産引受けというものが使われないだろうけれども,穴ふさぎのまま,広い範囲で現行法と同じように残すという御提案だったのではないのですか。 ● そうです。 ● だから,何も御心配になる必要はないのではないかというふうに思ったのです。 ● そういうことなら,よろしいです。 ● 実務の御意向は,事後設立の検査役調査はやめてくださいと。これは非常に強い要求だけれども,この(1)①はそんなに強い要請でもないのではないかという気がちょっといたしますので。 ● 理念は変わらないのですよね。事後設立については検査役の調査は要しない,財産引受けも,利害関係人ではないアームズ・レングスの取引についてはもう要しないのだというのは,議論が一貫しているような気がするのですけれどもね。 ● ②はいかがでしょうか。ロは前回も余り御異論なかったのですが,イとハはかなり意見が分かれている問題なのですが,イについては先ほど○○委員から御意見がありましたが,ほかの方,いかがでしょうか。○○委員は,最低資本金の制度が残ることは前提に,それは現金で,それを越える部分についてはこういうことでもよいだろうと,そういう御意見ですが。ほかの委員の方,何か御意見ございますか。  資本の5分の1の要件を廃止すると,これについてはいかがでしょうか。これについては格段御異論はないというふうに理解してよろしいでしょうか。  イについてはそう理解してよろしいでしょうか。米印の関係は,先ほど○○委員がおっしゃったようなことも含んでというふうに理解いたしますが。よろしいですか。  それでは,ハはいかがでしょうか。先ほど○○委員から御意見がありましたが,これもデット・エクイティー・スワップについて何らかの検査役の調査が要らない例外を認めてほしいという件,これは実務界の相当強い御意見,御希望だと思いますが。 ● ○○委員の,持っている債権をパーでもって,ないしはそれ以下でもって出資に振り替えるというときに,検査役の調査は要らないという制度について問題があるという御指摘がまだのみ込めないのですけれども。 ● 例えば10億の負債を持っているとしますね。それが実際に今2億ぐらいしか価値がないとして,2億円を資本に振りかえる,出資と見るという処理をとった場合には,8億円が負債の償還益といいますか免除益になりますね。それは利益ですから配当財源に入っていきますね。ですから,それは配当できるわけですが,その問題と,本当は2億円しか価値がない負債をもとの額面の10億円のままで出資と見て資本に振り替えるということと,どちらがどれだけ弊害が大きいかということで,もし仮にその背後にある考え方が例えば債権者の保護ということでありますと,どっちも同じことではないのかなという印象を受けたのですよね。だとすると,両方について検査役の調査が要らないと言うべきか,両方について要ると言うべきか。多分どっちかであって,一方だけが必要で他方が要らないというだけの理屈がはっきりしないのではないかということを申し上げたかったのですけれども。 ● よく分かりました。 ● この提案は,今,○○委員がおっしゃった両方を含んでいるのではないかと私は理解しているのです。つまり,10億円の額面があるものを10億円かあるいはそれ以下で出資する,振り替えるということにする場合には検査役の調査は要らないという,そういう趣旨だと思いますので,○○委員がおっしゃった,つまり10億円を2億円と評価して入れる場合であっても10億円の価値はないという,そういう見方をするかどうかは別として,とりあえず額面というか契約金額上10億円返さなければいけない義務を会社が負っているときに,その10億円をチャラにしてそれを出資に振り替えてくれるというときは,10億円と評価しようが2億円と評価しようが,どちらでも検査役の調査は要らない。これが今回のこの条文だと思いますので,その二つの間には多分矛盾はないのではないかという印象を持ちます。  そして,更にその2億円しか価値がないかどうかという,これは確かに持っている側にとっては2億円の価値しかないかもしれませんが,会社にとってみれば10億円分の債務がなくなるわけですから,会社にとっては10億円の価値がとりあえず,履行期が到来している以上は,あると法律上は考えていいのではないかなという気もしないではないわけです。これは,○○委員とはその辺で御意見が違うのだとは思いますけれども,いずれにしても二つの間では同じだと,今回の提案では整合性はとれているのではないかなという気がいたします。 ● そうすると,どっちも検査役の調査は要らないのですね。 ● 要らないのではないかと。 ● それならそれでよく分かります。 ● 今の○○幹事の御説明でよろしいわけですね。 ● そのとおりでございます。 ● ここに書いてある案はそういうことであります。  いかがでしょうか。その実質についてどうかという話になってくるわけでありますが。 ● ただ,この書き方ですと,「当該債権額以下で出資をする場合には」と書いてあるので,当該債権額で出資する場合はどうなるのですか。 ● 「以下」だから入るのです。 ● 入るのですか。 ● 法律用語ではそうなのです。 ● そうなんですか。恐れ入りました。 ● 今,現実の実務としては,検査役の調査を要しているわけですか。裁判所の方では。 ● はい,そうだと思います。現物出資だという取扱いは,これは間違いないのですね,現在の裁判実務では。 ● 今までのお話で一応明らかとは思うのですけれども,一応確認のために申し上げますと,ハですけれども,「当該債権額以下で出資をする場合」というのは,債権額以下の差額ですね,これは債権放棄をするという前提というとらえ方でよろしいのですね。そこだけ,ちょっと確認させてください。 ● 形式的に債権放棄という形をとるかどうかはともかく,負債がそれだけ減りますので,実質的にはいずれにしても債権放棄ということになると思いますけれども。 ● 今の場合で,では債権額以上で出資をするというケースですね,つまり負債を評価替えして,本当はもっと価値が高いと見て出資に振り替える場合には,当然検査役の調査が要るということになるのでしょうけれども,その場合でもそうしますと会社はその分が,債務の切り上がった分だけが損失になりますので,ネットのアセットに対する影響は何も変わらないのですが,その場合やはり要るのでしょうね。よく知りませんけれども。 ● この案では要るということですね。 ● それを質問されたときには,何と答えればいいのでしょうか。 ● 結局,これは債権者保護の問題と,それから他の既存の株主の利益の問題とありまして,この検査役の調査がだれの利益を守っているかというのはケースによっていろいろ出てくると思うのですね。先ほどの券面額以上に評価するという場合につきましては,恐らくは他の株主の利益が主として問題だということになりますでしょうか。 ● 配当財源が資本算入される結果になるから,その件について株主の了解を得なければいけないという理屈ですか。 ● といいますか,ほかの株主にとっては,評価額自体が,本当の価値がよく分からないわけですから,ひょっとして債権が過大評価されているのではないかと。そういう問題が出てくるからではないでしょうか。 ● よく分からないのですけれども,日本の場合は融資をしたときに担保をとって,担保価値が下がってきた場合は追加担保をとるということなのですけれども,海外の場合は必ずしもそうではなくて,ノンリコース型で,それで追加担保はとらない。つまり融資のときにそういう契約だったのだからいいのだよということですと,担保価値の減少というのは債権価値に物すごく響いてきますよね。そういうケースは,ここは考慮されているのでしょうか。 ● ですから,先ほどの10億円を2億円に,実質価値2億円しかないというのは,結局そういうケースだと思うのですね。 ● そうすると,以上になるケースというのもあり得るわけですよね。よく分かりませんけれども。そういう以上になるケースというのは,どういうケースなのでしょうか。 ● これは,金利の変動等で券面は10億円だけれども,その後の金利の変動等で実質価値は11億円ですとか,そういう評価をしてエクイティーに入れる。そういうケースが想定されているのだと思いますが。 ● つまり,証券として発行されているケースということですか。普通融資関係ですと,市場金利が変動しても洗替えはしませんね。 ● 普通はそうなのでしょう。 ● 通常はね。 ● 今の関係なのですけれども,○○委員にお伺いしたいのですけれども,負債の時価会計というのを本気でやられるということになってくるときには,こういう考え方というのは本来なくて,その負債というのが時価として正しいのかどうかというのは検査役の調査が要るのだということになるのでしょうか。 ● いや,検査役の調査ということについては,私どもの守備範囲ではありませんので,お答えできませんけれども,このケースは,出資という負債が資本に振り替わるときでの評価の問題ですので,負債の時価会計の議論ではないような感じがいたしますけれども。 ● 確認させていただきたいのですが,このルールが適用あるのは常に履行期にある場合だけですので,履行期が来ているときに価格がそれ以上にということはあるのでしょうか。債権の価格が履行期になっているにもかかわらず券面額以上というのは。 ● 一番おとぎ話的に可能性がありますのは,かつて切り下げた,例えばデフォルトリスクに備えて切り下げた債権について,評価替えして切り上がってしまってという可能性ですね。これはデット・エクイティー・スワップで,その発行する株式について,債権者側では時価評価いたしますから,その額が基本的には消滅する債務の額よりも大きいということは全く不可能ではないですね。めったにないと思いますけれども。 ● 分かりました。そうしますと,一つだけ皆さんに確認しておきたいのは,先ほど○○委員がおっしゃった,券面額10億円,だけど実際の価値2億円ということで,2億円で評価してエクイティーに入れた,8億円の益が出る,配当可能利益が増えるという場合でも,これについて債権者保護手続は要らないという点,この案でいくとそうなるのですが,その点は皆さん御異論はないでしょうか。普通は相当会社は危なくなっているケースだと思うのですが。 ● 論理的にはそういうことはあるのかもしれませんけれども,債権放棄してそれが配当可能利益に化けるということは,その債権放棄が本当はおかしいのですね。そういう債権放棄というのはあり得ないのです。ですから,それはむしろ投資側といいますか,債権者の方が矛盾を来していると思うので,私はやはりさっき○○幹事がおっしゃったけれども,私は要らないということで両方考えるのが筋ではないかと。 ● お言葉ではありますが,債権放棄をして直ちに配当財源が出てくるということ自体が異常なことなのですけれども,そのときは欠損のままであっても,その後利益が出てきたときに,その分が--つまり,さっきの債務の償還の利益に相当する部分がどう処理されるかによって,その後の配当財源は変わってくるのですね。ですから,○○委員がその点について懸念されるのは理由のあることだという気はいたしますけれども。 ● 確かにそういうことはあるのかもしれませんけれども,ただ,銀行実務あるいは再建の可能性を考えたときに,やはり現実に債権放棄をどこまでするかというのは相当大きな問題であって,それは配当可能利益云々の話ではないと私は思いますけれども。そこは意見だけ申し上げておきます。 ● それでは,これも,前回からの○○委員の問題提起もありますので,ちょっと結論を出すのは難しそうですので,なお検討させていただきたいと思います。  ①についても,なお検討させていただきたいと思います。  それから(2)につきましては特に御異論はなかったかと思いますが,よろしいでしょうか。  それでは,余り時間に余裕はないのですが,休憩をとりたいと思います。            (休     憩) ● それでは,そろそろ再開させていただきたいと思いますが,時間的にはかなり苦しいことになってきておりまして,御覧のとおり現在取り扱っている資料だけでもあと6ページありまして,これを今日終わらないとえらいことになりますので,御協力のほどお願いいたします。  それでは,「第3 株式等関係」,ここについて事務局から説明をお願いします。 ● 第3の「株式等関係」でございますが,1の「単元株・端株」につきましては,その制度の一本化をどう図るかという観点から資料を整理させていただいております。問題は一本化するとした場合の内容についてでございまして,(2)につきまして御意見をお伺いしたいということでございます。  2の「基準日」でございますけれども,第一読会でお諮りした際にいろいろ宿題をいただいたことから,米印を三つ掲げておりますけれども,事務局の方で論点を整理して,例えばということで考えられそうな措置を①から④まで掲げさせていただいております。その前提としての,「基準日後に新たに株主となる者」としては,二つ目の米印ですけれども,A,B,Cの3種類ぐらいあり,それらについての基準日後の議決権付与の要否については実務上のニーズに軽重があると思われますので,それらにかなりフレキシブルに対応しようとすれば,最初の米印の①から④までのような制度設計が考えられるがどうかということをお諮りするものでございます。  米印の三つ目についてですが,米印の一つ目のような制度設計をするとした場合において,会社側で適宜取捨選択するということを仮に認めるとしますと,株主平等原則との関係についてそれを解釈に委ねておいても実務上困らないかどうかという点についても,この米印の一つ目のスキームを御検討いただくに当たってお考えいただきたいということでございます。  それから,2の(2)でございますけれども,この点については,第一読会では格別御異論がなかったものと承知しております。  3の「種類株式」ですけれども,(1)の①につきましては,本文,米印を含めて格別御異論をちょうだいしていないものと承知しております。  今日お諮りしますのは,(1)の②の点でございます。種類株式ごとに譲渡制限を定める場合の定め方としては,このような整理ができるのではないかということで,イ,ロと整理をしております。イですけれども,株主総会の特別決議,全体としての特別決議のほかに,譲渡制限の定めをしようとする当該種類株式に係る種類株主総会と,その種類株式にかかわる他の株式,転換予約権付株式あるいは強制転換条項付株式に係る種類株主総会のそれぞれの特殊決議を経るということとしてはいかがかということでございます。  また,ロですが,イに掲げられたような株式を目的とする新株予約権が出されている場合には,その予約権者にも買取請求権を与えるということでどうかということでございます。  そもそも譲渡制限の定めをする場合において特殊決議を要するものとすべきかどうかについても,なお検討するという形で掲げさせていただければと思うのですけれども,まずは種類株式について個別に譲渡制限を定めようとした場合のスキームとしてこれでよいかどうかという点を一義的にお諮りする趣旨でございます。仮に原案,本文のような考え方をとるとすれば,二つ目の米印のような整理ができるのではないかということでございます。  また,この本文のスキーム自体につきまして,全体としての総会の特別決議--定款変更になりますので,基本に立ち返って考えればそうなるわけですけれども--それが果たして本当に要るのかどうかということについての御意見も確認させていただきたいという点が,米印の3番目でございます。  それから(2)ですけれども,①,②については基本的に御異論がなかったものと承知しております。  ③が,今回確認させていただきたい点なのですけれども,まず③の米印につきましては,第一読会でこのような御意見をちょうだいしたところでございます。本文は,およそ議決権を有しない株主について買取請求権を与えるものとすべきかどうかという点についてでございまして,この点についての御意見をちょうだいしたいと思います。  (3)は,格別の御意見はいただかなったところでございます。  それから4の「自己株式」でございますが,売主の追加請求権の在り方について事務局限りで少し整理をさせていただいたところなのですけれども,仮に現行の売主追加請求権を前提とするといたしましても,①,②のような手当てをするということでいかがかということでございます。②につきましては,御異論があったところでございますし,また①につきましても,営業の一部の譲受けも含めるべきではないかという御指摘をちょうだいしております。  4の(2)についてですが,保有する自己株式について,配当請求権という典型的な自益権以外の自益権につきましても,同様にその権利を認めないものとしてよいかどうかという点についてでございます。米印も含めまして,このような整理をさせていただくことでよいかどうか,確認をさせていただければと思います。  それから4の(3),第一読会で御議論をいただいたのですが,まだ整理が不十分でございますので,第一読会とほとんど同様の内容を再び掲げさせていただいております。試案にどう掲げさせていただくか,もう少し内部で検討をした上でまたお諮りしたいと思いますので,本日のところは特に何か御指摘があればという程度の扱いにさせていただければと思います。  (4)につきましても,第一読会で御議論があったところでございますけれども,試案での取り上げ方も含めまして御意見があれば御指摘いただきたいと思います。  それから「5 株式の消却」についてですが,(1)と(2)の①につきましては格別御異論がなかったものと記憶しております。今日お諮りしたい点は,(2)の②でございます。定款に基づかない多数決による強制消却については,任意整理などの場合にニーズがあるという御指摘を受けておりますけれども,例えばc案のような形ではいかがなものかという御指摘もあったところでございます。どのような案が望ましいかということについて,試案での取り上げ方を含めて御意見をちょうだいできればと思います。  それから(3)でございますが,種類株式が出されるようになった現在において,当然に増減するということには対応し切れないところでございまして,法制的にはこのようにせざるを得ないものと事務局限りでは整理しておりますけれども,この点について御異論もあったところでございますので,再度お諮りする次第でございます。  それから6の「新株予約権」でございますが,(1)は格別御異論がなかったと思います。  (2)につきまして,株式の種類,種類株式の内容と登記事項との関係につきましては,前回の御議論で登記事項とさせておくべきであるという御意見が強かったかと思いますので,この取扱いはそれとの平仄を合わせるということになろうかと思います。格別な御指摘があれば,またちょうだいしたいと思います。  7は,これ自体格別の御意見をいただいていないところでございます。米印の中の(1)から(3)までは新規に提示させていただくところですが,事務局において整理した限りで大体このような取扱いになるのではないかと考えたところをお示ししたものでございます。  なお,米印の手当てにつきまして補足する点があれば,御指摘をちょうだいしたいと思います。  大変急いで恐縮ですけれども,「第3 株式等関係」につきまして,こちらからの説明は以上でございます。 ● 時間が押しておりますけれども,是非審議に御協力いただきたいと思います。  まず第3の「1 単元株・端株」でありますけれども,この点について,(1)につきましては,一応一本化ということについては,第一読会では賛成の御意見を皆さんからいただいたわけでありますが,(2)で,どういう形で一本化するかということについては意見が相当分かれたところでございます。この点につきまして,これも恐らく,本日,(2)について一本化するのは難しいと思うのですが,これももうちょっと整理できるものかどうかというような観点から御議論いただければと思います。いかがでしょうか。  a案というのが,現在で言う端株にそろえる。c案というのが,単元未満株にそろえる。b案は,現行法にはないそろえ方ということかと思いますが。 ● a案とc案とでなかなか一本化できないとしますと,結論的には単元株・端株の制度を今のまま残すという選択肢もまた浮上する可能性があるかと思うのですね。したがいまして,意見の聞き方としては,(2)的なことだけを聞けばよろしいのではないかとも思うのですが。もう一本化すると決めた上で,あと意見がまとまらないということになるよりは。 ● しかし,二本立てというのは非常に制度が複雑になって,条文数が膨大になる。それは余り言うなという人もあるのですが,実際問題としてはそういう問題があることは事実なのです。特に,この整理は現段階では難しいということですと,意見照会はこのままするということでやむを得ないでしょうか。何かこの際是非にという御意見があれば承りますが。 ● 一本化の問題ですけれども,前回も賛成いたしましたけれども,ここの「既存の会社に過重な負担がかからないよう」という,これの程度なのですけれども,いささかも負担がかからないよう所要の手当てをする的なことでないと,先ほどの○○委員のおっしゃるように,少しでもお金がかかるのであれば,法律条文が長くとも両制度を併存してほしい。これもビジネスとしては当然そういうことになると思うものですから,よろしくお願いいたしたいと思います。 ● そうなりますと,(1)についても必ずしも議論は集約はされていないということのようであります。  では,そういうことで先に進ませていただきます。  次が「2 基準日」でありますが,これは前回いろいろ御議論がありましたので,改めて事務局の方で整理したわけでありますが,まず(1)はいかがでしょうか。基準日後に新株発行等により新たに株主になった者が出てきたときの議決権行使でありますが。従来からも解釈上の問題もあるところかと思いますけれども。 ● 私は,この問題については会社の裁量を十分に認めることが適当ではないかと思っていまして,例えば②と③の両方が可能であると。つまり,基準日後に特定の事由により生じる株式につき,しかも会社が基準日後に行う会社のある特定の行為ごとに議決権を与えるか与えないかも決めることができるというようなことも可能だという問いかけにしていただけたらよろしいのではないかと思っております。これは,②,③,それぞれ選択的みたいに書かれていますけれども,重畳的なこともあり得るのではないかということであります。 ● この点はどうなのですか,②,③の関係は。 ● ①から④までは,やるのであればすべて手当てするということまで含めての照会だと。どれか一つをということではなくて,可能であればというか,異論がなければ,すべての制度を用意するかどうかということです。 ● 以前申したかと思いますが,私もこれについては,それぞれ既存株主,新株主になるべき者の双方に,当初の予定見込みというのですか,こうなるということが明らかであれば,会社のできるだけ広範な裁量の余地を認めたらいいと思います。今おっしゃったように全部こういうのもこういうのもできますよというのは要するに解釈で認めたらよいのではないかということで,余りごちゃごちゃと,これができます,これができますというよりも,そういうプリンシプルを会社実務の指針としてやっておけばいいのではないかなという気がするのですが。ですから,私,こういうことができる,できるというのを議論することはいいけれども,そして結論として,だからそういう運用をこれから会社実務の合理性としてやりましょうということで,明文の規定が要るのかなという感じがしないではないということで,ただ,実務としてきちっとしてほしいと言われたら作るなとは言いませんけれども,こういうようなのは本来権利行使の日の名簿上の株主が権利行使できるのだけれども,会社の実務処理上必要なものとして基準日制度があるので,その趣旨をベースに弾力的にやればよいと。その趣旨が,この①から④までの背景にあるのではないかと思いますので,私,異論を差し挟むつもりはないのですが,結論として何もなくてもできるというような解釈論で進むのが一番いいのかなと思うという,そして本当に困ることだけちょっと書けばいいという,そういう発想で今後作業を進めていただけたらと思います。 ● この(1)の最後の米印は,どういうお考えでしょうか。全く自由だといったときに,株主平等原則で後で何かごちゃごちゃ言われると会社としては困ることはないかというあれです。 ● ですから,この場合の株主平等原則も,画一的に整理するのではなくて,事前にその予定はされているということが前提なのです。これ,すべてそうですね。新株発行して引き受けられてから決めるというのではなくて,新株発行のときにもう決めてしまうとか,そういういろんなことがありますので,私はリーズナブルな形であればよいということで。ただ,不安だと言われたら何か手当てをされてもいいけれども,私はこういうのは自信を持って実務が運用されたらいいのではないかと思う方なのですが。 ● 実務は株主平等の原則の関係で,解釈に迷うようなことは起こらないだろうということですかね。③は,会社が行為ごとに,今回は議決権を与えます,今回は与えませんということができる制度ですよね。しかし,余り恣意的なことをやると,それは問題は……。 ● それはそういうことだと思うのですね。 ● しかし,それはもう解釈上当然に分かるだろうと,会社としては。ということでしょうか。 ● 株主平等の原則については,解釈に任せておいてもそれでいいし,そういう支えしかありようがないのかなという気もいたしますし,それから,一定の場合に会社の方でこういう基準日後の株主の議決権を認めるという需要も分かるのですが,一番心配なのは,株主総会で危なくなったから新株を発行することによって議決権の多数派を変えようという,それまでができるような仕組みであってはおかしいのではないか,この1点に尽きると言ってもよいと思うのですね。その場合に,例えば②のような方法ですと,余りそういう心配がないかなというふうに思いますし,一番需要があるのはAのような場合であろうというふうに思うのですけれども,新株発行を後から決めて,その人にも議決権を与えるという,そういうことも可能な制度設計にしておくことがいいのかという点だけは,ちょっと配慮した方がよいのではないかと思うのですけれども。 ● 実務のいろいろな事例から見ますと,Bのケースですね,要するに,基準日設定時点では判明していないけれども,基準日後に会社が行う新株発行等により,一定の日において新株になるもの,こういうケースが一番--第一読会でもちょっと例に挙げましたけれども--かつての,時価発行増資を3月末以後に取締役会で決定して,それで株式の発行日現在の株主に議決権を与える,そういう公告をして,定時総会で,結局証券会社が買取引受けしますから,その証券会社が議決権を行使するというケースを申し上げたのですけれども。ここに書いてあるような基準日設定時点において判明していないというよりも,会社としては内定しているけれどもまだいろんな事情で公表ができない,それで基準日すなわち4月1日以後に取締役会で正式決定するという,そういった新株発行ですね,こういうケースがかなり需要が多いのではないかというように考えるわけでございまして,そういうケースを,かなり会社の裁量で基準日設定をして,新しい株主が定時総会で議決権を行使できるようにする,そういう柔軟な法制度にしていくということが望ましいのではないかなというふうに感じております。  確かに,基準日現在の株主を見てから新株発行を決議して,それで第三者割当てするなりということがまれにはあり得るかもしれませんけれども,上場企業の公募増資などでそういうことが起きる気遣いは全然ないというふうに思いまして,むしろ第三者割当てなどを行う場合にそういった問題が起きるということは懸念としてはあり得ると思いますので,そういうものは280条ノ10の不公正発行の差止めという方法でカバーしていけばよろしいのではないかというふうに思います。  そういう意味で,一番柔軟なのは,一つ目の米印の②の方法だと思いますが,これでさえ平成13年11月の改正前の実務で行われていたのよりは--定款で特定の事由を定めるということが必要になってまいりますので,実務にとっては定款でどういった事由を定めるかということのピックアップが必要になってくるということがありますので--少しきつくなるというような面もあろうかと思います。その点にちょっと配慮して,定款あるいは基準日公告で特定の事由,これをどういうふうに定めるか,その解釈問題が,この制度をとったときには出てくるというような感じがいたします。 ● 基準日以降に株主になった者にも議決権を与える,つまり,次回の株主総会なんかでということになると,自益権については基準日ですよね。そうすると,後で株主になった者がなるべく会社からお金を出したくないと思って配当を阻止するとか,そういうことは考えなくてよろしいのですか。 ● 配当については,恐らくこの基準日の株主に配当するというふうに定款に普通定めておりますので,配当と議決権はばらばらになるのです。 ● だからです。幾ら配当するかという利益処分に関しての議決権を持ってしまうわけですよね。権限が何もない人が。その問題は考えなくてよろしいのですか。  それから,もう一つ,時間がないのに申し訳ないですけれども,こんなに厳密に御議論いただいているのに,株主代表訴訟のときに事後の株主に権限を与えたというのはどうしてだったのでしょうか。後でどなたか教えてください。 ● 株主代表訴訟については,後ほどまた議論する機会がありますので。  そうしますと,基本的には皆さん,できる限り自由に,議決権を与えるかどうかは会社の裁量にゆだねてよいのではないか,濫用的なものは○○委員がおっしゃったように280条ノ10の差し止め等で賄えるのではないかというお考えでしょうか。 ● 若しくは決議取消しか何かでやるかですね。 ● 大体方向としてはそういう御了解をいただいたということで,よろしいでしょうか。 ● これは今議決権ということで御議論いただいているのですが,同じような仕組みにつき配当とか株式分割の割当てとか,そういうことと区別する必要があるのかどうかについてはいかがでしょう。議決権については,確かに3月31日に定めて6月30日に権利行使をするという側面がありますので,途中の事情変更はあると思うのですが,配当なんかの場合には,例えば3月30日に決めておいて5月1日の株主を新たに入れ込むのかどうか。 ● それは従来から定款自治だと考えていたのではないでしょうか。いつの株主に配当を配るかは。これについては……。 ● 基準日後に出てきた人に会社の選択によって配当を与えるか与えないかという制度を認めるかどうかという話になると思うのですけれども。 ● もしそれを認めるとすると,配当値がぐちゃぐちゃになってしまいます,市場での。 ● なるのですけれども,議決権に関しては,多分基準日を定め,その後また会社が自由に定めると。例えば,同じ基準日という条文を使うことになるとすると,配当についても同じことができるのかどうかという問題になるのですが。 ● いや,それは従来から理論的にはあった問題でありまして,現在の定款は例外なく基準日の株主に配当を配ると書いてあるから余り問題ないのですけれども,そういう定款の規定がなかったらどうなるのかというのは解釈問題としてはありまして,それはもうとにかく総会のときの株主に配るしかないというのが普通の解釈ではないかと私は思っているのですが。いつ株主になった人間であろうと,そうなりますと。ということで,よろしいですか。 ● 例えば,中間配当の一定の日とかという場面なのですけれども。 ● 中間配当は,あれは定めておかないといけないのですよね,定款で。 ● 一定の日とやって,その後に入ってきた株主を任意につまみ出して配当受領権を与えるかどうかという話なのです。 ● それは中間配当のその基準日以降に株主になった者ですか。 ● そうです。問題は同じはずなのですけれども,その配当基準日後に株主になった人に配当を与えるかという問題と,議決権基準日後に株主になった人に議決権を与えるかという問題と。積極的にどっちにしたいという話ではないのですけれども。 ● 中間配当については,ちょっと法律の書き方がどうでしたかね。 ● 224条ノ3ですと,「会社ハ議決権ヲ行使シ又ハ配当ヲ受クベキ者」と,「又ハ」ということになっておりますから,議決権行使だけに絞って会社が基準日を定めるということも法律は容認しているということだと思いますので,もし定款に配当を受くべき者を定めるという基準日が規定してあるとすれば,議決権行使についてだけの基準日設定ということもできるという前提になっているのではないでしょうか。 ● そうだと思います。それはそうなのですが,中間配当については,これははっきり一定の日を定め,その日における株主に対し分配することと書いてありますよね。これは規定の上で,だからそういう定款自治は排除されてしまっているのではないのでしょうか,解釈としては。中間配当については。  今の問題につきましては,もうちょっと事務局内で検討させていただきまして,(1)については,そういうことでできるだけ会社の自治を認める方向でまとめるということでよろしいですか。  (2)の日割配当の考え方は採用しない,この点についてはよろしいでしょうか。これは特に前回は御異論なかったかと思いますが。--よろしゅうございますか。  次は種類株式であります。まず(1)につきましては,①については御異論はなかったと認識しております。そして新しいのは②あたりで,②で前回はなかった論点が提起されているわけですが。 ● (1)の①の本文については,こういうことでもよろしいのではないかと思うのですけれども,その米印のところで,一体種類ごとに譲渡制限というものが設けられるということになったときに,いわゆる譲渡制限会社というものはどういうものなのかという問題が新たに生じてくるわけですね。この米印によりますと,全部の種類の株式について譲渡制限がかかっていないと譲渡制限会社ではないということになりますと,譲渡制限会社だから何か緩い規制でもよろしいですよというものについては,これがふさわしいと思うのです。しかし,例えば譲渡制限会社であれば株主割当増資が原則ですよ,こういう規制について見ますと,あの規制を逃れようと思えば,1種類だけ譲渡制限のかかっていない株式をつくっておけばよいということにもなってしまうのではないか。 ● 譲渡制限があるものとないものとがある場合の新株発行規制につきましては,譲渡制限があるものについては現在の持ち株比率維持の制度はかぶってくるという制度になると思います。 ● その種類のものについてだけかぶってくるのであって,ほかの種類のものにはかぶってこないということが前提になりますよね。 ● そうです。一応そういう案だと思いますが。 ● しかし,その会社の支配,最終的にどこに支配があるのかということは,その種類ごとに決まるわけではないですね。もちろん種類株主による選・解任というのもございますけれども。ガバナンスとファイナンスが絡んでくる部分があるものですから,果たしてそういう分けた扱いでよいのだろうかという問題が出てこないか。  それからまた,上場要件につきましても,今後はどうなるのでしょうか。例えば,1種類だけ譲渡を制限している種類株式がありますと。そうすると,その株式は上場できないけれども,あとの種類株式は上場できますということにするのかという話になりますね。 ● これは上場ルールの問題でしょうが,恐らくだんだん自由になってくるのではないでしょうかね。 ● そこでも,ファイナンスとガバナンスが実は絡んでくるという問題をどう見るかということになる。 ● 無議決権株だけを上場しますというようなことは,私のところには専修コースで取引所から来ていた人がいまして,それを研究しておりましたが,どうもできるようにするというような方向のように聞いておりますが。 ● そうすることが,果たしていいのかどうかというやはり問題が……。 ● それは商法ではちょっといかんともしがたいですね。上場を認めるかどうかにつきましては。 ● でも全体として見たときには,一体どうなのかという問題があるかと思いますけれども,特に株主割当増資を原則とするというあの歯どめが,やはり中小企業の新株発行の公正さを保つ上で非常に大きな役割を果たしている。あの規定が設けられる前は,やはりひどい状況になっていたと思うのですね。それがこんなにも容易にくぐられるような制度にもう一回戻していいのだろうかということがあるように思うのですが。 ● そうしますと,例えば議決権のある種類の株式については譲渡制限をかけていないということにすると,そういう持ち株比率維持のあれはなくなるわけですね。ですから,それがいけないかどうかということですが,いかがでしょうか,その点につきましては。ほかの委員・幹事の方は。  非常に困りますか,それで。譲渡制限をそこについてはかけてないわけですから,仕方がないという気もいたしますけれども。 ● 全部について譲渡制限がかかっていたときに,それを一部の種類については外すか,あるいは全部について外すか,いずれにしても定款変更の問題なので,そこに軽重をつけるのはどうかということで,こういう整理をさせていただいているところですけれども。 ● せっかくの歯どめがいとも容易にくぐられるという,そこを心配しているのですけれどもね。 ● 全部について外すのは難しくて,一部について外すのが簡単だという趣旨ですか。定款変更手続において。 ● 譲渡制限会社は株主割当増資が原則であるというルールが一体どうなるのだろうかということを心配しているだけなのです。 ● 現行法で言えば,全部を外せばいいわけですね,それを逃れようと思えば。譲渡制限会社が譲渡制限の定めをやめればいいだけなのですね。すなわち,1回特別決議をやれば,あとは実際に譲渡できるようなたぐいの株式ではなくても,持ち株比率関係なく自由に発行できるという制度になっているのが現状ですから,それと比較してその一部を外すといえば,残りの株式についてはまだ譲渡制限がかかっておりますので,その範ちゅうでは持ち株比率というか,その種類の持ち株比率といいますか,手続は要求しようという制度を導入したときに,それが現行とそんなに著しく差異があるのかどうかということだと思うのですが。 ● ちょっと質問させていただいていいですか。その一部を外すというか,そういうときって,例えばAという種類の株式とBという種類の株式があって,Aは譲渡制限されていてBは譲渡制限されていないというときに,Bの方の,譲渡制限されてない方の株式を発行するときには,その譲渡制限されている方の株主さんにはもちろん引受権は与えられないという,そういう仕組みなのですよね。ということは,その譲渡制限をされている方の株主さんはどんどん持ち分比率が下がっていくということなのです。その種類の中での持ち分比率は同じだけれども,全体で持ち分比率は考えられる,要するに議決権が両方に同じくついていればどんどん薄まるわけですね。確かに全部もともと制限していない場合には,それはそれで全く保護は与えてないのだから,保護がそれほど極端に減るわけではないのだという,そういう見方はあるのかもしれないのですけれども,ただそうだとすると,やはり本当にそれってそんなに必要なのか。要するに,一部を譲渡制限して一部を譲渡制限しないということが本当にどれぐらい必要なのかというあたりも,一つの問題だと思うのですね。  ただ,○○委員が御懸念のような問題というのは,仮にAという譲渡制限している方の種類株主には拒否権があるタイプの種類株式であれば,この人たちは別にほかがどんどん膨れ上がったって悪影響をそんなに受けないのだとすれば,これはその限りにおいては問題ないような気もするのですけれども。つまり,譲渡制限されている方の株主が一定の範囲で種類株主総会の決議を必ず要求できる,そういう権限があれば,そうではない方がどんどんふえていっても発言力は一定の範囲で維持できるからとか。 ● 普通はそう考えていると思うのですね。常識的には譲渡制限してある方は議決権がついていて,支配株主層が持っているという,それが普通だろうという頭で案は考えられているのだろうと思うのですが。そればかりではないと言われると,ちょっと分からなくなるのですが。 ● ○○幹事から,今,本当にそんな需要があるのかという御質問がありましたので,それはあるということを一言申し上げたいと思うのですが,特にベンチャー企業などについては,典型的には創業者グループが引き受ける普通株式については譲渡制限を課す。しかし,ベンチャー・キャピタル・ファンド等が引き受ける種類株式については譲渡制限を課さない。例えばサルベージ・ファンドに売ってもよいというような可能性を残しておくというような実務が行われる可能性が少なくともあるということで,その種類株主の方の様々な権利というのでしょうか,持ち分比率等の低下等につきましては,契約で自分たちで守っておくということですので,これは契約自由に任せても,少なくともそのタイプの企業については問題ないという理解であります。 ● 今のような需要であれば,その譲渡制限は課してあるけれどもBの種類株式については取締役はノーと言わないということを,あらかじめ社内の規則で決めておくというだけでは足りないのかということですね。 ● Bというのは,どっちでしたか。 ● 譲渡制限のついていない方。つけないでおこう,譲渡は自由にしようと思うところについては,当然にもう譲渡は承認します,取締役会は承認しますということを決めておくと。そういう発想法だけでそういう需要に対処できるのではないか。だから,それだけのことをこの制度化したものが(1)の①の制度であるということになると,譲渡制限会社の定義というのは一つの種類でも譲渡制限をしているものが譲渡制限会社だという,そういう発想法につながってくるのではないかということなのです。 ● 誤解があるとあれなのですが,今現在,譲渡制限会社で複数種類の株式を発行するときに,ある種類の株式を発行するときに他の種類の株主に引受権が与えられるかどうかという問題は,別に法律では与えられることになっていますが,種類株式の定めとして与えないということは定款で定められるわけですので,必ずしも持ち株比率が今完全に保障されているかというと,そういうわけでもないのですね。したがって,それは譲渡制限の定めを一部につけるかどうかという問題ではなくて,単に複数種類を発行したときの引受権の問題をどう処理するかという,従前からあった問題と同じでありまして,その問題についてはもう既に大分前から,多分昭和25年改正のころから222条の一番最後の項で,格別の定めをすることができると。その場合に,それによって損害が生じる等の場合があれば,格別その種類株主の総会によって権利保護を図ろうということになっておりますので,それは必ずしも譲渡制限が一部の種類にかかっているかどうかということで大きく差が出る問題ではないのではないかということは,ちょっと御指摘をさせていただきたいと思います。 ● ちょっとなかなか細かい話で難しいあれですが,○○委員の御疑問については,なおもう少し整理をさせていただきまして,改めて明確化したいと思いますので,ちょっと今日時間がありませんので先に進ませていただきたいと思います。  ②についてはいかがでしょうか。特に②になりますと,米印の二つ目のような現行法の改正が出てくるということでありますが。いかがでしょうか。  ある種類の株式について,その株式発行後に譲渡制限の定めをする場合の手続をこのように整備する。そうすると,この米印のようなことになるのではないかということでありますが。特に御異論はございませんか。 ● 米印の最後の部分ですね,なお慎重に検討した方がいいのではないかというように思ったりいたします。 ● そうですね。私もこれはどうかなと思っていたのですけれども。あえてこうする必要はないのではないかという気がしますが。 ● 他の種類の株主に不利益が及ぶかどうかということを考えてみますと,当該種類株主に買取請求権が与えられて,会社の資産を受け取って出ていくことが可能になるわけで,そうするとある意味で言うと自己株の取得のときに他の株主に機会を同じように与えなければならないかというのと同じような問題が出てきますので,そういう意味でやはり利害がないわけではないと思いますので,やはりこれは慎重に考えていいと思います。 ● それでは,最後の米印はもうやめるということでよろしいですか。御異論はありませんか。それでは,そういう整理をさせていただきます。  次は(2)でありますが,これも従来から議論があったところで,法定種類株主総会の要件の明確化であります。①,②については,特に第一読会では御異論はなかったように承知しておりますが,いかがでしょうか。①,②についてはよろしゅうございますか。 ● ②の方なのですが,こういう定款規定があるとどのような格別の定めでもなし得るということになるのでしょうか。格別の定めについて,やはりそれはフェアな内容でなければいけないということは当然あると思うのですけれども,それは特に断わらなくてもいいということなのでしょうか。 ● これは実務上のニーズはどの辺にあったのですか。恐らく実務上のニーズとしましては,②が出てきたのは,現在の346条でありますと,ある種類株主総会で承認されないために組織再編行為ができなくなる,それは困る。ですから(2)の最後の米印にありますような,株式買取請求権で問題を処理できないか。これが問題の発端だったのではないかと思いますけれども。 ● 私も(2)の②の本文は,こういう処理もやむを得ないにしても,それはあくまでも③の米印のようなものとセットにして取り入れるということでもってある程度の柔軟化を図るのはやむを得ないのではないか,こういうつもりでいたものですから,今回分けられてしまって,③の米印の方は必ず②の提案とセットという形でない格好になっておりますが,果たしてこれでよいのでしょうかという疑問が残ります。 ● 私も全くそのとおりだと思っております。組織再編行為でどういう条件で組織再編行為がなされるか,つまり種類が違う株式が出ている場合に,どういう割当比率で来るかということは,これはその組織再編行為が起こるときになってみないと分からないわけで,それについてあらかじめもう何も私は意見を言いませんよと最初から意見放棄ということはあり得ないと思うのですね。ですから,それは何らかの最終的な公平な割当てを受ける権利は確保されていなければおかしいと私も思っておりますので,②がついておれば,当然に最後の米印は要るのだろうと私は思っておりますが。  それをつければ,最後の米印があれば,皆さん②はお認めいただけるかということですが。特に何か反対の意見はございますか。 ● ①のロなのですけれども,これはやはり種類株主総会決議を要するということになる理由は,どういうことにあったのか教えていただきたいと思います。イだけに限定できないのかどうかということなのですが。 ● それは他の種類の株主の権利について利益変更がなされるときには,やはりこっちで相対的には不利益をこうむるわけですから,それは他の種類の株主の承認は要るのではないでしょうか。  よろしいですか,それで。 ● はい。 ● ③ですが,これは新規ですよね。ちょっとこれ読んでいて,こういうことかなと思ったのですが,③の本文は,むしろ組織再編行為を承認する種類株主総会が行われない場合には,株式買取請求権を与えるものとすべきであるということではないのでしょうか。つまり346条は,組織再編行為によってある種類の株主に損害を及ぼすべき場合には,種類株主総会をしろという規定なのですね。ところが,会社の方が,いや,不利益はありませんよといって種類株主総会をやらないという場合がある。すると--その場合は,議決権が行使できれば問題ないのですかね。やはり議決権がなく,かつ種類株主総会もないという場合ですね。議決権行使できた場合は,株式買取請求権あることは現行法でも当たり前。 ● 全体の総会は,今そういう仕組みになっておりますが,種類株主総会が開かれたときのそこでの反対株主が買取請求権を行使することができるのかどうかという点が必ずしも明らかではないという問題が一つまずあります。③の話は,そこについて格別に記載はしていませんが,前提としては,まず今は株主総会が開かれる場合は株主総会で反対の議決権行使をした人だけが買取請求権が行使できるような制度になっているのではないかという前提のもとで,その株主総会に参加する機会が与えられない種類株主に対して買取請求権を与えるものとするかどうか,これが本文で,米印のところは,別途種類株主総会が346条等で与えられるのであれば,それはそこで権利行使をしてほしい,それが与えられない人についてだけ買取請求権を与えればいいという,○○委員のおっしゃった趣旨が米印になるのだと思います。したがいまして,種類株主総会が本体の株主総会以外に開催される場合においても,その種類株主総会で反対する株主に買取請求権を与えるかどうかという視点からの御意見もあれば,それもいただきたいと思います。 ● ちょっと③の本文と,その下の米印の関係が難しいですね。この上の本文があれば,当然この米印は含まれていると考えていいわけですね。  ちょっともう一度,本文と米印とどこが違うか,説明してください。 ● まず米印の方は,②のような定め,したがいまして346条に関して包括的に要しないというふうにしたような場合において,組織再編時に買取請求権を行使することができるかどうか。それから本文の方は,そういう定めをしていなくても,本体の株主総会で権利行使ができない,権利行使の機会を与えられない種類株主がいる場合において,その株主に与えるかどうか。これは346条の改正の有無にかかわらず,若しくはあった場合だけ,なかった場合だけ,いろいろあると思いますけれども,そういう趣旨であります。したがって,②の定めにかかわらず買取請求権を行使できるかどうか。 ● いかがでしょうか。 ● ちょっと確認させていただきますが,③については株主総会だけ書いてあるので,この株主総会において議決権を有しない種類株主が種類株主総会で議決権を行使するかどうかについては,ここでは何も言ってない,こういう理解でよいということですね。 ● はい,そうです。 ● その背景としては,種類株主総会については買取請求権がないというのが,当然かどうかは別としても議論の前提にはなっている。 ● 原案の前提は,そういう前提で書いてあります。 ● そうすると,やはり私も,この③の本文はともかく,③の米印は②の米印の前に入れて,そして先ほど来の議論であれば,「買取請求権を認めるべきであるとする意見があるが,どうか」というものを,「認めることとする」としておいた方が,ここでの議論はすっきりして,あと346条の適用除外を定款で設けない会社についてどうするかだけを③で議論する方が,私は頭はすっきりすると思いますね。 ● もう②には,少なくとも③の下の米印をくっつける,その点については御異論ないですね。それをしないと,やはりむちゃくちゃになる可能性がありますから。そういう理解でお願いします。③の本文はいかがですか。 ● 株主総会に関する規定を準用するという規定があるのですが,その射程範囲がどこまでかという問題については,どうでしょうか。 ● 私は考えたことなかったのですが,無議決権株の種類株主総会で,種類株主総会の多数決,特別多数で決議したけれども,おれは反対だという種類株主の当該事項についての買取請求権は,やはり認めるということになったのかなという……。 ● そうだと思っていましたけれどもね。とにかく無議決権株ではどこで制約が出てくるかというと,議決権行使ができないと何か株式買取請求権の要件である事前の通知みたいなのができないからというのが問題なので,種類株主総会であれ何であれ,総会があればその通知はするわけですよね。できるわけですね。余り障害はないような気がするのですが。 ● ちょっと詳しく考えたことはなかったけれども,そう思っていたのではないかなという程度のことですが。 ● では,ちょっと②は全体の理解は一致したと思いますけれども,③についてはもうちょっと問題点を整理して,再度。 ● ②は御指摘のような形で三読で確認させていただきます。③の方は,種類株主総会にかかる買取請求権について,整理の上再度お諮りしたいと思います。 ● 先を進ませていただきますが,(3)の「強制転換条項付株式」につきましては,これは特に御異論がなかったかと思いますが,よろしゅうございますか。  次は「4 自己株式」でありますけれども,まず(1)はいかがでしょうか。 ● 第一読会で申し上げたことの繰返しになるかと思いますけれども,やはり売主追加請求権の果たす役割というものが非常に大きいと思いますので,特にこの②の,譲渡制限会社において,相続・合併によって買い受ける場合にこれが外れるということになりますと,これもまた相続の方はなかなかそう人為的にできないかもしれませんが,合併なんていうことになりますと簡単に仕組むことができるわけですね,したがいまして,売主追加請求権を外すのは非常に容易だということにもなってしまいかねないところがありますので,反対です。そもそも,204条ノ3ノ2において売主追加請求権を認めていないということの方がむしろ問題なくらいであって,やはり売主追加請求権があるという,そういうプレッシャーのもとですと公正な価格をみんな決めることになりますが,そういうものがないということになりますと,もう目の前にいる人だけのことを考えて交渉をするということになると思いますので,やはり売主追加請求権の範囲を狭めるようなことは慎重に考えていただければと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。①については米印がついているのですが,特に二つ目の米印あたりは,これはやはり○○委員はもちろんこういうものは認めるべきではないということですね。  ほかに御意見,いかがでしょうか。○○委員はお帰りになられたのですね。 ● ここのところは,売主追加請求権の制度自体の合理性に疑問を呈される向きも少なくありませんので,事務局において再整理をさせていただいて,二読の中でもう一度御議論をちょうだいできればと思います。 ● もうちょっと抜本的な再構成をすべきではないかと。追加請求権を実質は失わないような形で,ただもうちょっと手続をきちんとする。現在のような手続はかなり使い勝手が悪いという御意見もありますので,なおこの点は後ほどまた出てきますので,そことあわせて御検討いただければと思います。  次に(2)でありますが,これも大きな問題ですが,いかがでしょうか。 ● この趣旨は,例えば被合併会社に自分がなった場合,そのときに自分の自己株に対して合併会社側の株式を割り当てて,結果においてそれが合併後の会社の自己株になるということはないと,そう考えていいですか。 ● そちらの方はどうですかね。 ● ちょっとマニアックで申し訳ないのですけれども。 ● こう書けば,この米印も入れて考えますと,こういう条文にもしなりますと,○○委員が今おっしゃったようなことになるのではないか。抱き合わせ株式に割当てはもちろんできなくなる。それから,今おっしゃったように被合併会社,消滅会社に自己株があった場合に,それの割当ても恐らくこれはできないということに,承継したらなるのではないかと思います。 ● 相手方の自己株は,承継した側で消却するしかないということですね。 ● はい。 ● それの方がすっきりしているように思うのですけれども。 ● ○○委員はいかがですか,抱き合わせ株式に対する割当てはしないというのは。 ● もうそれで割り切っていきましょうと。 ● ということですか。 ● はい。 ● これは,そうしますと米印については分割,併合,株式の強制転換,これについては効力が生じるということにしてないと,やはりまずいですかね。この点は,これも含めて御異論ないでしょうか。--よろしいですか。それでは,これは一つ進展をしました。  次に進ませていただきまして,「(3) 自己株式の処分差益の計算上の取扱い」でありますが,この点についてはいかがでしょうか。本文は,要するに処分差益はもう出ないということにするということでありますが。 ● これは前に申し上げましたとおり,反対でございます。何か議論が,今ここで随分絞っていくというよりも,意見照会に出すためでも議論の絞込みを余りしないということなのであれば,余り議論してもあれですが,反対は反対だということです。 ● それでは,これは反対意見があるということで,御意見は分かれているということで,意見照会もそういう扱いをさせていただきます。  (4)でありますが,これはいかがでしょうか。 ● 認めていただきたいとかねてより言っているわけですけれども,これに加えまして,従業員持株会に売却する場合でありますとか,報酬として処分をする場合というようなものについても,新株発行規制を課さないようにできないものかということをお願いしているところでありますが。 ● ○○委員が前回反対されたところですが。 ● 繰り返しませんので。少なくともこれだけで入れるというのは反対です。 ● これも時間の関係で,もう意見が分かれているということを再度確認したということで,先へ進ませていただいてよろしいでしょうか。  次は「5 株式の消却」であります。まず(1)につきましては,これは前回の御議論では御異論がなかったのではないかと思いますが,いかがでしょうか。よろしいですか,この点につきましては。 ● (1)の定款規定の総株主というのは,消却の対象となる株主の総株主ということではなくて,すべての総株主ということですか。 ● そうですね。 ● 米印の二つ目ですけれども,この内容自身は結構だと思うのですが,定款の定めがなくても株主の持ち株数に応じる方法による強制消却は認めるということが,これは意味されているのでしょうか。そうだとすると,株式併合の手段をとれば,端数の処理をしなければならないのに対して,強制消却と名を打てば端数の処理をしなくてもよいということを意味するのでしょうか。 ● 持ち株数に応じた強制消却は株式併合そのものとして整理するということで,5の(2)の①につきましては御異論がなかったかと思いますが。 ● そういうことであれば結構です。 ● よろしゅうございますか。それでは,(2)は①については今ありましたように御異論なかったのではないかと思います。  問題は②でありまして,これは恐らく従来の議論といいますかニーズといいますか,これは任意整理で100%減資をするというようなケースが主なニーズだと思いますが,これはいかがでしょうか。 ● 先日,この点,b案の債務超過の場合に限っては無償で株主の全部を強制消却するという実務があるという御紹介がありましたので,ちょっと気になりまして,私どもの商業登記所を所管する商事課の方で先例を調査いたしましたので,その点,御報告だけしようと思います。  この点は,当課から通達を出しておりまして,このa案のような法的倒産手続の中では,裁判所が一応関与しているということで,株式の全部を無償で多数決で強制消却するということを認めているわけですが,債務超過の場合であっても,任意の手続で無償でこれを取り上げる,多数決で取り上げるということは認めないという解釈を示しているところであります。  理由といたしましては,債務超過の場合に限ると申しましても,その債務超過の判断の適正さが担保できるのかどうかという点,特に裁判所が関与しない手続で,例えば手続的にも,直前に貸借対照表をもう一回つくり直して事前に開示するとか,そういうものがあるのかどうかという点,また,株価が将来においてはまた上がるかもしれないけれども,その一時点における債務超過ということをもって多数決で株式の全部を無償で取り上げることが妥当かという点,これらの問題点が考慮されたようでございます。  この場は立法論を議論する場ですので,今の解釈にとらわれる必要はないとは思いますけれども,このような問題点にどのように対処するのかという点,また,この問題はこれに限らなくて,恐らく債務超過会社を吸収合併して救おうというような場合に,合併の対価--今回柔軟化しますが--結局,対価を何も与えないで合併していいのかという点,こういう点にも波及するかもしれませんので,そのような点も踏まえて御検討いただければと考えております。 ● 今,先例の御報告がありましたけれども,登記の実務では,通達でしたか,実際それに従わずに登記がなされているということですね。 ● 私の方でその事実関係を調査したかったのですが,ちょっとどの会社か分からなかったもので,事実関係が分からないという範囲にとどまっているところでございます。 ● 私ども,具体的に名前を挙げることはできませんけれども,この半年以内に2社につきまして,多数決でもって反対の株主がいる中を債務超過だということで無償での消却を行って,登記もなされております。 ● 実務的なニーズはあるということですね。  いかがでしょうか,これはなかなか難しい問題ですが。b案の債務超過ということの意味がなかなか難しいのですね。恐らく単なる貸借対照表による債務超過ということではなくて,資産を全部売り払っても現時点では売却で得た売得金によって債務全額は返済できない,そういう場合のことを恐らく言っているのだと思いますが。 ● それと,将来収益をどう大目に見積もってもペイしない。DCFの計算でも債務超過であると。 ● 債務超過ということに関して,随分誤解があると思うのです。  債務超過というだけでは企業も銀行も決してつぶれません。資金繰りで倒産するのです,概して。それなのに,債務超過という一時的な現象を重く見過ぎているなというふうに私は思うのですね。しかも,最近の自己資本比率の計算のように,突然ルールを変えたりとか,あるいは不良債権の評価の仕方を変えたりとか,そういうことをやられたら生きている企業はたまったものではないです。そういう前提で,この債務超過だったらば強制消却可能というようなことを入れてしまいますと,もっともっと何でもありになってしまうのではないかと思って,私は大変心配しております。  債務超過というと,一般にはそれでもう企業は死ぬというイメージなのだけれども,そんなことを言ったら新しい企業は大体みんな債務超過ですよね。だって,まだ利益を生んでいないのだから。 ● ただ,貸借対照表上の債務超過でも,破産原因ではあるのです。だれかが破産申立てをするとか。 ● それはよく分かっておりますけれども,過大に考え過ぎているなと思います。 ● いかがでしょうか。c案は御支持ありますか。b案まではどうもニーズはあるという御意見があるのですが。c案は削れるかというようなことですが。無理に削る必要もないのですけれども,ちょっと一般的にニーズがあるとも思えないのですね,c案は。c案は削りましょうか。削ってもよろしいですか。 ● 賛成です。 ● 米印もですかね。 ● これだと米印も削れますので。  では,a案とb案を残すということで,よろしいですか。 ● b案だけにしていただきたいのですけれども,a案は取ってしまって。実務がb案で走っているのが,a案しか認めないなんて今ごろ何を言っているのだと。あえて裁判官の費用とか持ってまでやらなくてはいけないのかと。 ● しかし,今の○○委員のような御意見もありましたので。ほかの委員の方はいかがでしょうか。 ● 私も,先回申し上げましたとおり,a案に賛成ですから,是非残していただきたいと思います。 ● そんなにまで国の手続を関与させなければいけないような事由だと思えないのですよね。株主が争えばいいわけですから。 ● 債務超過かどうかということをですね。 ● 債務超過かどうかを裁判で争えばいい問題ですから,債務超過かどうかを裁判所で認めてもらうというような手続を踏まなくてはいけないというのは,過剰な規制だろうと思いますけれども。 ● 私も,一応教科書には○○委員と同じことを書いているのですが。 ● だからそれを利用してやっているわけでございますので。そこでa案を残されるというのは……。是非b案に。 ● いや,これは非常な少数説なのではないかと思っております。 ● 私の意見は,○○委員の御意見に反対とかそういう意味ではなくて,単に現今の風潮に感想を申し述べたというだけのことですので,無視してください。 ● もう委員の間で意見が分かれていることは確かなのです。a案とb案は一応現段階では残すということで,よろしいですか。--ありがとうございます。  それでは,次は(3)でありますけれども,「授権株式数の変更の取扱い」であります。この点は前回若干御異論があったことは事実なのですが,いかがでしょうか。 ● 繰返しになりますけれども,かつての登記所の扱いの方が妥当なのではないか,さっきの問題と合わせて私はそのように思うわけです。やはりこのような規制を設けますと,4倍ということを限度にしているという意味は全くなくなってしまうというほどの影響が生じるのではないかと思います。 ● ほかの委員の方,いかがでしょうか。  何か事務局からはありますか。現行の登記実務が,○○委員がおっしゃるようなあれなのですが,もうこれは単純にこういう規定をつくらないという御意見ですね。ほかの委員の方,いかがでしょうか。--よろしいですか,これは落としても構わない……。 ● そうすると,多分その扱いをするためには書かないとだめですね。  逆にお聞きしたいのは,現行なぜそういう実務を,要するにどの条文を根拠にやっているかという問題だと思うのですが,登記実務の方は非常によくできているというか,前提となる株式併合や減資のときの決議の中に定款変更決議を織り込むという解釈をしても差し支えないということでやっているのですね。 ● それを書けばいいということであれば書くということでいいのではないかと思いますけれども,いずれにしても新株発行規制の全体的な合理的な在り方というものから当然に導かれる扱いということになるのではないかと思うのです。何でも簡単にくぐることができるような規制というものをなるべく設けないということが,基本精神になるのではないかと思います。 ● 何か事務局はかなり書くのは難しいなと思っているような……。 ● 議論することは全然やぶさかではないのですが,やりますか。 ● 技術的にその対応ができるかどうかという問題ですので,また検討した上で,再度同じような御相談させていただくと思いますけれども。 ● 新株発行規制のあり方が,今のような授権枠を4倍までとしている,それの範囲であれば自由にできるというようにしていること自体の問題性だと私は思います,根本的な問題としては。したがいまして,そこを改めるのは大いに賛成なのですけれども,今のようなものを前提にしながらここだけを外しましても,今ある余り意味のない規制ですが,それまでも簡単にくぐれるようになるという意味で,慎重に考えた方がいいと思うのです。 ● ちょっと技術的な問題もありますので,なお検討させていただきます。  次が「6 新株予約権」でありますが,(1)については,これは特に御異論なかったかと思います。現在より少し自由化するということであります。  それから(2)でありますが,これにつきましては,これは前回から案が変わっているわけですね。 ● 6の(2)につきましては,種類株式の御議論を前回ちょうだいいたしましたので,いずれにしてもそれの結論と合わせた形での整理をさせていただくことになると思います。 ● 種類株式については,何か登記事項を少なくするということについては御反対が多かったので,ここもそれと連動して問題が出てくるということでありまして,これもなお検討させていただきます。  7でありますが,これにつきましては,本文については御異論なかったかと思います。  そうなりますと,米印のようなことが問題が出てくるということなのでありますが,いかがでしょうか。 ● (2)の「転換事由の発生が取締役会の決議に委任されている」ということの趣旨が余りよく分からないのですが。 ● これは,強制転換条項付株式の場合と同じなのではないでしょうか。 ● 強制転換条項付株式の場合は,転換予約権付株式の場合と異なりまして,転換によって発行すべき株式の内容,転換の条件は定款をもって定めなければならないとされている。つまり,強制的に会社の方から一方的にする場合と,転換をするかしないかということが各人の自由に任されている場合とでは扱いを変えているわけです。そのこととの絡みで,この転換事由の発生が取締役会の決議に委任されているということの意味がよく分からないという趣旨です。つまり222条第2項と222条ノ8とでは書き分けてあるのではないかという意味です。 ● これは,222条ノ9の1項の後段と同じ趣旨であります。要するに,定款に定める事由というのが定款に書いてあって,具体的にその転換の発生するタイミングが取締役会にゆだねられていると。 ● 要するに制度は強制転換条項付株式とパラレルになるということだと思いますが。 ● それであれば結構です。 ● それでは,よろしいですね。 ● 今の,償還金により払込みがなされたという場合の償還金というのは,幾らでしょう。つまり,それは満期償還額を言っているのか,発行価額を言っているのか,それとも,これは転換事由が発生するときは必ずしも社債の満期ではありませんから,その時点までの例えば金利を割り戻した額になるのか,その辺の理解はどうなのかということです。 ● これは前から規定上は問題があるところでありまして,おっしゃるとおり正確な経済実体を映してないのではないか,条文上表現されていないのではないかという問題はあります。そこのところをどう書くかというのは一つの問題としてあるのだと思います。  その問題ですね,今おっしゃったのは。 ● そうです。 ● その点は重々承知しておりますが。 ● 通常の従来からの転換型新株予約権付社債の転換についてのその処理も違ってくる可能性,連動する可能性がありますよね。 ● いろんなところに響いてきますので,私もちゃんと規定を書いた方がよいと思うのですが,なかなか書くのが難しいという面がありまして,どうも余り規定のできがよくないということはあります。 ● これは発行目論見書の記載で済む問題ではないのですか。つまり,コーラブル・ワラントと同じ取扱いをしてしまえばいいわけですね。会社側の都合により強制的に償還する場合には,ペナルティーをつけて転換するというようなことがもう一般的になっておりますから。そうでなければだれも買わないというだけのことです。 ● そうなのですけれども,ここは「償還金により払込みがなされた」というような表現が使ってありまして,ちょっとこの概念が問題だということが従来から問題になっておりまして。実質はおっしゃるとおりなのです。  それでは,そろそろ時間でありますので,本日の議事はこれで終了したいと思います。  事務局から連絡事項があります。 ● 本日の部会の資料として既に事前にお配りいたしました部会資料8につきましては,次回には是非全部審議を終えていただくことを前提にいたしまして,今日更にそれに続く資料を発送しておりますので,次回にはあわせてそちらの資料の方の審議もある程度は進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  なお,次回は7月23日の午後1時から,場所は同じくここ「高砂の間」で開かせていただきたいと思いますので,御参集のほどよろしくお願いいたします。 ● というわけで,部会資料9というのが間もなくお手元に届きます。それも次回審議するという前提でお越しいただきたいと思います。 ● 次回,全部終わるまでやるということですか。 ● そのつもりで。部会資料9の最後の方には機関関係の項目を多数並べておりますので,その辺りのかなりの部分は,次々回の9月の部会に回していただいて構わないと思っておりますけれども,できる限り進めさせていただければと考えております。 ● 何せ意見照会をどうしても10月にはやるということでありますので,それまでにその案を取りまとめないといけませんので,ひとつよろしくお願いいたします。  それでは,長時間にわたり熱心な御審議を賜りましたが,ありがとうございました。本日はこれで閉会いたします。