法制審議会会社法(現代化関係)部会第11回会議 議事録 第1 日 時  平成15年9月3日(水)   自 午後1時00分                        至 午後5時50分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題    会社法の現代化に関する改正検討課題(二読版)(3)の残りの部分について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 ● 予定した時刻が参りましたので,第11回会社法(現代化関係)部会を開催いたします。本日は御多忙の中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。  本日の議事に入ります前に,新たに当部会の委員・幹事になられました方の御紹介をさせていただきます。        (委員・幹事の異動紹介省略)  それでは,まず配布資料につきまして事務局から説明をしていただきます。 ● 本日席上にお配りしております資料は,商法・商法特例法の新旧対照表と,○○幹事の意見書でございます。  新旧対照表の方は,御承知のとおり,さきの国会で成立いたしました自己株式の取得等にかかわる議員立法に関するものでございます。審議の参考として配布させていただくものでございます。  ○○幹事からは--本日,所用により御欠席でございますけれども--本日の議事に関しまして意見書をいただいております。その議題の際に御参照いただければ幸いでございます。  資料については以上です。 ● 配布資料について何か御質問ございますでしょうか。--よろしゅうございますか。  それでは,本日の審議に入りたいと存じますが,本日は,前回に引き続き,部会資料9につきまして審議をお願いいたします。今後の日程の関係上,本日中にこの部会資料9の審議を是非とも終えていただきたいと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。  前回は,資料9の「第2 計算関係」の「1 分配の機会の柔軟化」の(3)まで審議を終えておりまして,本日は「(4) 利益処分等に対する会計監査人の関与」の部分から審議をお願いしたいと思います。  項目のほとんどが既に当部会において一度議論されているものでありますので,本日は,これまでの議論において意見が分かれている部分,それから関連する新たな論点に関する部分を中心に審議をお願いしたいと存じます。  まず,「第2 計算関係」の残りの部分につきまして事務局から説明をしていただいて,あと,順次御意見をいただくことにしたいと思います。  それでは,説明をお願いいたします。 ● 部会資料9の第2の1(4),「利益処分等に対する会計監査人の関与」の部分から,再度御説明申し上げます。  剰余金の分配という概念で利益配当等を整理し,また,その時期についての制約も柔軟化することとした場合に,それらの分配行為に対する何らかの関与を会計監査人に求めるべきかどうかということにつきましては,一度お諮りさせていただき,種々御意見をちょうだいしたところでございますが,改めて考え方を整理いたしまして,この三つの方向のいずれをとるべきかということの御議論をちょうだいしたいと思います。もとより,試案におきまして複数の考え方を示すということは差し支えないところでございますが,差し当たり,もし今日の議論で削れるものがあれば削るということで御議論をいただければと思います。  従前の議論では,仮に期中における剰余金の分配に会計監査人の関与を求めるとしても,会計監査人に事後的な責任まで求めるものではなく,事前の,つまり枠の計算関係においてその適正さを確保するというような形での関与でも必要がないかどうかということをお諮りさせていただいたところでございます。報道されているところによれば,自己株式の取得枠の計算は非常に難しいようでございまして,足し算・引き算といえども,必ずしも関与の必要がないとまで言い切れないような事態も生じているかどうか--これは事実認識の問題でございますけれども--その点について御議論をちょうだいしたいと思います。  それから,2の「剰余金の分配にかかる取締役等の責任」についてでございます。  (1)の「過失責任化」につきましては,おおむね第一読会では御異論がなかったところであろうと思います。  委員会等設置会社とそれ以外の会社との間で,取締役等の責任を調整し,平仄を合わせるということといたしますと,新たな論点ではございますが,(2)のような点について気を配る必要がございます。委員会等設置会社以外の会社についても委員会等設置会社と同じような取扱いをすべきかどうか,あるいはその逆にするかということもあり得るわけですけれども--調整を図る必要がないというのも一つの選択ではありますが--これまでの御議論,前回の14年改正の際の国会での議論等を踏まえますと,この点についても委員会等設置会社とそれ以外の会社との間での調整を図るべきではないかと思われますので,図るとしたらどういう方向で図るのが適当かということについて御議論をちょうだいしたいと思います。  (3)につきましては,第一読会で御議論いただいたときには,現行制度の維持という御意見が多数を占めたものと理解しているところでございますので,それで特に問題がなければそうさせていただきたいということですが,再度その確認をさせていただこうとするものでございます。  (4)につきましては,a案,b案,意見が分かれたところでございます。現行法と同じa案をとるべきなのか,あるいは,過失の認定の問題ということでは非常に経営陣が萎縮するという御指摘を踏まえて,b案のような方向性をとるべきなのか。もし御意見について歩み寄りの余地がないということであれば,とりあえず試案ではこのような二つの考え方をお示しして意見照会をするという形にさせていただこうかと思う次第でございます。  (4)の米印の二つ目についてでございますけれども,格別これについては御異論がなかったところではありますが,計算書類の確定に係る剰余金の分配とそれ以外の剰余金の分配とについて質的な差を設けている現行制度に果たして非常に合理性があるかどうかという点については,事務局限りではやや疑問なところがやはり残っておりまして,特に,計算書類の確定に係る剰余金の分配について法文上必ずしも時期的な制限がないということもあって,果たしていかがなものかという感じもするのですが,この点については,細かいことを抜きにして,現行制度維持でよいということであれば,その確認をさせていただきたいと思います。  「3 資本金・準備金」についてですが,これは(1)から(3)まで,いずれも新しく提示させていただいている論点でございます。  (1)は,資本の減少,つまり形式的に資本の総額を減ずる場合の中で,定時総会において欠損てん補に充てるという場面に限ってでもその決議要件を普通決議とするというようなことがあり得るかどうか,御意見をちょうだいしたいと思います。  なお,期中における欠損てん補の取扱いについては,いろいろと考えるべき問題が多そうですので,「なお検討」という形で米印で書かせていただいております。  (2)は,準備金の減少額に係る現行の規制につきまして,減少可能額を資本の4分の1を超える部分に限定しているということが,仮に拠出資本から株主への払戻しをしようとする場合,この規制があるがために,準備金をそのままにして資本を減少することを強制するということにつながりかねない場面を生じさせることになりますが,それでよろしいかどうか,むしろ廃止すべきではないかということをお諮りしようとするものでございます。  (3)の①は,いわゆる合併差損が生ずる場合について明示的な規律を設けることとしたらどうかという御意見についての御審議をお願いするものでございます。  例えば,存続会社の側で資本減少等の手続をあわせて行うということで,合併差損等が生ずる場合の手当てをさせていただくことはどうかということでございます。  (3)の②は,簡易手続の場面におきましても,このような合併差損等が生ずる場合には,やはり株主総会決議を要するものとすべきかどうかという点について御意見をお聞かせいただきたいということでございます。  それから4の「子会社の親会社株式の取得」についてですが,禁止規制自体の見直しを検討すべきであるという御指摘は多々いただいたところでございますけれども,なかなか難しい問題であって,時間的な制約もあり,試案をとりまとめる段階で,まとまった見直し案をお示しするのは難しいということから,米印で,その点については「なお検討」とした上で,最低限の手当てとして,本文に掲げているような方向性を打ち出すことはどうかということでございます。禁止規制自体の見直しをすべきであるという御意見は別にいたしますと,この本文のような方向性については格別御異論がなかったものと承知しているところでございます。  第2の残りの部分についての説明は,以上でございます。 ● それでは,順次御審議いただきたいと思います。4ページの(4)からでありますが,まず(4)について,いかがでしょうか。a案からc案まで並んでおりますが,削れるものがあればということでありますが。 ● 前回これを残しておいていただいてありがとうございます。  (4)につきましては,ペーパーだけ提出させていただいたのですけれども,私としては,期末の利益処分案については,従来どおり,これは決算を確定させる中で適法性,適正性をチェックする立場としては当然やるべきことだと思っておりますが,期中における剰余金の分配については,四半期とかいうことがまだ明確でないので,そういうディスクローズすべき諸表なしに分配を行うとすれば,これは関与する立場にはないのではないか,あるいは関与することが必ずしも合理的ではないと,このように考えておりまして,そういう意味ではb案に賛成でございます。 ● ほかの御意見,いかがでしょうか。  前回は若干議論が分かれたと記憶しておりますが,特につけ加えて御議論ありますでしょうか。あるいは,少なくともこれは削ってもいいのではないかというような御意見でも結構ですが。 ● 議事進行のためにはしゃべらないのがいいのか,しゃべるのがいいのか,よく分からないのですが,a案を積極的に支持する見解はそれほどなかったのではなかったのではないかと思いますので,これぐらいは場合によっては削ってもという気はするのですが。これが議論になる火種だったら,すぐ撤回しますが。 ● 私も,多分a案を支持する意見はなかったのかなというふうに記憶しておりますが。  a案は少なくとも削るという点につきましては,皆さん,御異論ないでしょうか。よろしゅうございますか。それでは,a案は削るということで。  前回は,たしか○○委員はc案支持だったように記憶いたしますので,c案は支持者がある。b案は先ほど○○委員が支持を表明されましたので。では,意見照会まではb案とc案を残すぐらいのことで御異論ないでしょうか。 ● ちょっと私の名前が出ましたが,c案も検討に値するという程度の発言で,強く支持したつもりはないのですが。 ● 少なくとも現段階では残すべきであるという御意見だと思います。  それでは,この(4)については,そういう処理で,b案とc案を意見照会に付すということでよろしいでしょうか。  それでは,次に「2 剰余金の分配にかかる取締役等の責任」であります。  まず(1)については,前回これを議論したときには特に御異論なかったのではないかと思います。  そうなりますと,具体的にどういう形にするのかというのが(2)の問題でありますけれども,この(2)の点について,いかがでしょうか。過失責任化したときには,委員会等設置会社以外の会社についても,現在の米印に書いてありますような形にすべきだということなのか,あるいは現在の委員会等設置会社の規制についても見直すべきところがあるのか。いろいろな御意見はあり得ると思いますが,これは新しい論点かと思いますので,どうぞ忌憚のない御意見をいただければと思いますが。 ● (2)についてなのですが,まず,「事前の責任」,「事後の責任」という言葉がちょっと耳なれなくて,どういうことかよく理解できなかったわけですけれども,教えていただきましたところ何とか分かったのですが,米印に書かれているような規制になっているということの御理解をしていらっしゃる方が何人いるだろうかというほどの複雑さに今なっているのではないかという気がいたします。  したがいまして,委員会等設置会社に関する今の規制をそのままにしながら,そちらの規制の方に合わせて一本化していくという方向ではなくて,やはり全体として委員会等設置会社の今の規定も脇に置いておいて,一律の一本化という形ですっきりとしたものにすることが必要なのではないかと強く思いました次第です。 ● そうなんですね。委員会等設置会社の規制はなかなか難しいので。何でそうなっているのかというのがなかなか難しくてですね。 ● こういう規定によってようやくこうなるのだということで,何とかやっと理解したというレベルでございます。 ● 何かもうちょっと詳しい説明をしていただけますか。委員会等設置会社はなぜこういう米印のような形になっているのかということについて。 ● 法制審の場で十分な御議論をちょうだいしていないことだけは確かでございますので,新しいラウンドできちんとした御議論をいただいて条文に反映させたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。 ● 今日,この(2)の責任の在り方について踏み込んだ御議論をするのが難しければ,まだ意見照会までには三読もありますので,よく御研究いただいて,こうした方がいいのではないかという御意見がありましたら,三読でお願いします。 ● 少なくとも意見照会の段階では,その内容が決まらなかったとしても,「その調整をすることとし,内容について検討する」とか,せめて,同じようにするのだということだけはこの部会の統一方針としていただきたいと思います。 ● 積極的に委員会等設置会社以外の会社と委員会等設置会社とで形を変える必要も,確かに○○委員がおっしゃるように,ないのではないかと思いますが,その点を含めまして,何か御意見ありますでしょうか。 ● 無知をさらけ出すのかもわかりませんが,この(2)と(4)は連動するものと理解してよろしいのですか。 ● 事後責任については,連動するというのか,関係があることは確かです。 ● だから,やはり(4)の「事後的なてん補責任」の内容とこの「事後責任」との関連を整理する必要があるということではないかと思ったのですが。この「事後責任」というのは「事後のてん補責任」を意味するわけですね。これをさーっと読みましたら,(4)のa案が今のままだったらどうする,こうする,あるいはb案とかその他の形に修正するとどうなる,こうなるという議論もあるのかなという気がしましたので,意見照会のときには,(2)と(4)の関連が分かるような形で,(2)と(4)をもう少しくっつけて説明すると内容も分かりやすいかなと思います。  私も,(2)については,過失責任にしつつ事後責任をこうしたのは,中間配当の事後責任だけなら何とか考えられるかもわからないけれども,その当時は,自己株買受けについての事後責任も含めて総合的にするのはちょっとどうかなと,時期尚早というか,準備が十分でなかったために,いわば積み残し的なことだったのではないかなという気もしないではありませんので,もしそういう理解が正しければ,そういう形で,こういうふうに剰余金の分配という形で統一したときに,事後的なてん補責任をなお必要とするかどうか,更に……。これはやはり昭和49年までさかのぼるのかなと。49年のは,中間配当のときには決算プラス株主総会の決議でやれた利益処分を,期中に取締役会限りで,それも決算せずにするのだから,それだけの責任を取締役は負えよということで,293条ノ5の第5項の責任が生じたと思うのですが,1の(4)の会計監査人の関与とも関連しますが,もう少し恒常的にやってもいいのだとなると,事後責任の意味合いが変わってくると思いますので,そういう整理をして案をお示ししていただくと頭の整理になるなという,他人任せで申し訳ないのですが,よろしく御検討お願いいたします。 ● 確かに,(4)が(2)の議論にも関係してくることはおっしゃるとおりだと思います。  ほかに,(2)について御発言ありますでしょうか。 ● (4)との関連は,正に○○委員が御指摘のとおりで,266条1項1号の責任を無過失責任から過失責任化するのに合わせて一体どこまで見直すかという話とかかわっていると思います。  それとともに,今ここで提起されております委員会等設置会社における事前責任と事後責任の違いは,第4の2の(2)の方で出てまいりますが,266条2項・3項の処理ともかかわってきて,こちらの方が動きますと,これは違いがあるのかという話にもなるように思いますので。  それで,このような形で意見照会しますと,意見照会された人はどう答えていいか分からないと思いますから,少なくとも意見照会するときには,そちらの方もあわせて整理した上で,もっと分かりやすい形で質問する必要があるのではないかというふうに思います。 ● その点もそうですね。266条2項・3項も関係してくるわけですね。  ほかに御発言ありますでしょうか。 ● この(2)の中には論点が二つあると思うのです。一つは,今,先生方がおっしゃっておられた,責任の形態についてどのように整合性をとるかという問題だと思うのですが,もう一つは,現状では1号については責任軽減の対象になっておりません,5号だけが責任軽減の対象であると。それを,責任を,先ほど○○委員がおっしゃった2項・3項,そういったものも含めて整理していくときに,どの範囲を責任軽減の対象とするかという点について,この試案での案の提示を明確にしないと,様々意見が出てきて収拾がとれなくなるような気もいたしますので,その辺の,どの範囲を責任軽減の対象とするかについての案を作成して提示することが適切ではないかなというふうに思っているのですが。 ● 御指摘ありがとうございます。  要するに,委員会等設置会社については,これは事後責任については従来のものに全然手を加えていないということですよね。いわゆる事前責任の方についてだけ無過失責任をやめたことによってちょっと変えていると,そういうことなんですね,現在のあれは。だから,もうちょっと根本的に考えてみる必要はあるのだと思います。  では,(2)についてはそれぐらいでよろしいでしょうか。 ● 済みません,具体的な制度設計の御提案がありますれば,期日外で結構ですので,是非お知恵をおかしいただければと思います。 ● 具体的な案を御提案いただければ大変審議に役立つと思いますので,是非よろしくお願いいたします。  それでは,(3)に進みまして,この点はいかがでしょうか。  これについては,前回ちょっと疑問を呈するような資料の出し方だったのですが,大部分の御意見は,現状の制度を維持することでよいのではないか,総株主の同意があれば免除できるということで別に悪くはないのではないかという御意見が支配的だったように記憶いたしますが,(3)につきましてはそれでよろしいでしょうか。 ● これは,そうすると,290条違反の配当をした場合の取締役の責任について,総株主が同意すれば免除してもよいということですね。それが仮に会社の資産を損なう可能性があれば,あとはもう民法424条なりで詐害行為取消しか何かで会社債権者としては争うしかないということでしょうか。その決議自体を取り消す詐害行為取消訴訟でも起こすということになるのでしょうか。 ● 詐害行為の点はどうなるかは分からないのですが,前回は,債権者の利害から考えて,本当に総株主の同意があれば責任を免除することができるということでいいのかという問いの出し方だったのですが,別によいのではないかという意見がここでは支配的だったのでは。 ● 私は,今のような,民法の一般にかかわる,そもそも424条がここで使えるのかどうかもちょっと分かりませんし,それならば,債権者を害することを考えると,たとえ総株主であっても290条違反の責任は免除できないという考えも成り立つのかなというふうに考えていたのですけれども。 ● 総株主の同意でもって責任を免除した場合にでも,266条ノ3の責任が果たしてそれで免除され得るのかという問題がございますね。同様に,290条の2項の責任につきましても,実際に問題になることがほとんどないものですから余り議論してはおりませんけれども,考え方としては,たとえ株主が会社に対する取締役の責任を免除しても,債権者の返還請求権というのは残ると考えられるのではないかというふうに私は思いまして,この提案に賛成しているのですが。 ● 現行法の解釈論として対処可能であるという御意見だったと記憶します。 ● 必ずしもそれは確立した解釈論でもないものですから,それを考えると,総株主によっても免除できないというのも一つの考え方かなと思った次第です。 ● ほかに御意見はいかがでしょうか。  前回は,ここにあるような現行制度維持について積極的に賛成する意見,それから○○委員のように解釈論で賄えるという意見等いろいろありましたが……。  それでは,この点につきましても,必ずしも現行法維持ですべての委員が合意しているというわけでも必ずしもないようだという,そういう理解でよろしいでしょうか。  何かつけ加えて,(3)につきまして御異論,御意見ありますでしょうか。 ● 私も,現行法の理解としては○○委員のお考えでいいのではないかと。ここで総株主で免除する責任というのは,あくまでも会社に対する取締役の責任であって,それを超えて対債権者との関係でどういう責任が生ずるかはまた別途の問題なので。射程はあくまでも会社に対する責任を免除するというだけなので,それ以外の部分について,266条ノ3の適用は,もし要件を満たせば必ずやあるはずですし,民法上の709条等の不法行為責任等も考えられるわけだから。だから,現行法としては,総株主が同意したら全部の責任がなくなるというわけではないのですから,そういう意味で,○○委員が言われたことになるのではないかというふうに思います。 ● それでは,なお解釈については御異論もないわけではないようなので,一応論点としては残しておくということで,また次回,第三読会の折,御意見があればちょうだいしたいと思います。  それでは,次に(4)はいかがでしょうか。  まず米印の1番目でありますが,これにつきましては,前回,議論が分かれたところであります。過失の認定の問題であって,だからa案でも特に不都合はないという御意見もありましたし,そうは言っても不安が残っては中間配当等ができないので,積極的にb案をとるべきだという御意見もあったかと思います。これも恐らく,意見照会につきましては両案併記で出すほかないのではないかと思いますが,何かつけ加えて御議論ありますでしょうか。 ● 前回,私,b案というのは少なくとも理論的には余りすっきりしないのではないかということを申し上げたのですけれども。  あと,こういう事後的なてん補責任を考えるということになると,自己株取得をしたときの扱いとの整合性も考えるべきかというのも論点だと思います。自己株取得の場合については,現行法は,例えば212条ノ2の1項で,欠損を生ずるおそれがあるときは買受けができないという形の規制になっているわけで,剰余金の分配について,単に現金による配当とそれ以外の自己株取得等とを合わせた整合的な法制を検討するというのが,たしか方針として掲げられていると思いますので,この事後的なてん補責任についても,両者を整合的なものとして考える必要があるのではないかと思います。 ● ここでの剰余金の分配というのは,自己株取得も含めてこのように整理したらどうかという提案を含むものでございます。 ● あ,そういうことですか。 ● この米印の最初の方につきまして,特につけ加えて御意見ありませんでしょうか。  米印の2番目については,前回,特に御異論はなかったように記憶しますが,それでよろしいでしょうか。 ● ○○委員の御趣旨は,この2番目の米印はもう取ってしまうという御趣旨と理解していいわけですか。それとも,これは一応残されるという……。残していただいてもいいのですが,会計監査人の監査も受けて,そして10か月後の過失の有無というようなことをどうやってするんだろうと思って,こんなの要らないだろうと従来考えていたのですが,これを発動する具体的な,こういう場合があるからこういうスキームも考えたらいいんじゃないかという御発言があれば納得するのですが,そうでない限り,当たり前のことではないかと思ったので,この米印は取った方がすっきりするかと思ったのですが。いや,固執はしませんが。 ● 「現行制度については,維持するものとする」ということであれば,これはもう米印として要らないということだろうと思います。 ● もう一つ,細かなことで恐縮なのですが,ここにはありませんが,266条ノ2と,委員会等設置会社の21条の19の関係で,委員会等設置会社ではない,従来型の会社で過失責任化すると,266条ノ2も,21条の19的になるという理解でよろしいのか。つまり,これは立証責任が転換してしまっていると思いますので。細かな話ですが。善意の株主には取締役・執行役が求償できないという……。266条ノ2は悪意となっていたかと思いますが。21条の19はたしか善意の株主となっており,266条ノ2は悪意の株主となっている。同じことだと思うので,恐らくこれは過失責任化の関係で立証責任を転換されたのかと理解したのですが。 ● 御指摘の趣旨を再度確認させていただくと,266条ノ2の方は,取締役が株主が悪意であることを立証する,他方,21条の19は,株主の方で自分が善意であることを立証して,その求償を逃れるというふうな構図になっているのかということですね。 ● はい。  少なくとも,これは両方ともかく一緒にしたらいいだろうと。過失責任化した場合には,同じ文言にするのも--文言は違うけれども一緒だと言われたら,そうかと思うのですが--文言も含めて整理された方がいいだろうという,そういう趣旨だけですので。 ● 御指摘ありがとうございます。  それでは,先に進ませていただきまして,「3 資本金・準備金」の部分であります。  まず(1)でありますけれども,これは新しい論点でありますが,いかがでしょうか。 ● 減資というのは,やはり将来の配当可能の範囲に影響を与えていくわけですので,その影響の及ぶところを考えますと,欠損てん補に充てるかどうか,それは当面については欠損てん補に充てる場合とそれ以外とで影響は違いますけれども,将来に与える影響の点では変わりませんので,私は,こういった場合だけを普通決議にすべきというのはどうも疑問ではないかと思っております。 ● 私も○○委員の御意見に賛成です。 ● これは,別の議論の場等では,欠損てん補の場合につきましてはもう少し要件を緩和してもよいのではないかという意見がかなり有力だったので,ここにこういう形で出てきているわけでありますが,これに賛成だという立場の方から御意見をいただければと思いますが。 ● 債権者保護手続の方は別途されるということですから,会社内部においては,この欠損てん補に充てる場合だけではなくて,単なる帳簿上の減資にすぎないものはすべて普通決議にすべきであると。これは資本剰余金に振り替える場合もあるでしょうし,それも含めて,欠損てん補だけではなくて,すべからく形式的な帳簿上の減資についてはすべて普通決議にすべきであると,そういうように思います。 ● ほかの方,御意見いかがでしょうか。 ● そんなに積極的に結論にこだわるつもりはないのですけれども,資本の減少に対する規制というのは,基本的にはやはり対債権者の問題であって,株主から見れば,資本を減少してその配当財源をふやすか,そうでないかということは基本的には無差別でありますので,株主側の議決要件を厳しくするということに特に積極的な意味があるとは思えないので,だから普通決議にすべきであると言うかどうかは別にして,これを決める決め手は余りないのではないかという感じがしています。 ● ちょっと意見が分かれているのですが,ほかに御意見ありますでしょうか。  別の議論の場では,極端な意見は,株主に不利益ではないのだから取締役会決議でいいというような御意見もなかったわけではないのですが。  ほかにありませんでしょうか。まだちょっと意見が分かれているということですが。  この米印についてはいかがでしょうか。期中における欠損てん補というのがどういうことなのかということもあって,ここでは,「なお検討する」ということになっておりますが,この点について,何か御意見ありますでしょうか。 ● むしろ,今の御議論を前提にいたしますと,欠損てん補に充てる場合に限るかどうかということではなくて,債権者保護とは全然無関係に,資本の在り方を変えることが基礎的な変更であるという理解のもとに特別決議を要求するのか,あるいは普通決議で足りるということにするのかというような形で議論を整理して,御意見をお伺いするというようなことでよろしいでしょうか。いずれにしても,欠損てん補に充てる場合に限るということでは余り合理性がないという御指摘であろうと思いますので,そういった形で議論を整理するということでよろしいでしょうか。 ● 別の議論の場でのそのときの御議論は,今,○○幹事のおっしゃったような御議論であったように思います。基本的なところは○○委員がおっしゃったような考え方で,なぜ株主総会決議が要るのかという理由がむしろ立たない。  しかし,考えてみると,例えば,実際に払い戻します,それは平等だということが前提ですけれども,その手のものは事業規模が縮小しますから,ファンダメンタル・チェンジという名前で済むかはともかくとして,ある種基礎的変更ですから,これは特別決議でしょう,その他の合併とかいろいろな基礎的変更と同じでしょうと。  事業規模は全然縮小しないで,資本の額だけを減らしますと,もちろん会社債権者保護手続は踏むのですけれども,そのときに株主総会の特別決議がなぜ要るんですかというところはどうも説明が理論的につかないでしょうということで,それを欠損のてん補で線引きするかどうかというのは,今,○○幹事がおっしゃったとおりでして,そこはいろいろ考え方はあり得ると思うのですけれども,そういう議論をなしておりました。 ● 私も,今,○○幹事が言われたような形で,もう資本減少なら全部一緒だという形で整理するのは,必ずしもそうでもない考え方があり得るのではないかと思いますので,そこまですぐに踏み切るのはちょっと問題かなというふうに,○○委員と同じように思っていたのですが,やはり,いわゆる実質上の減資と言われているものは,一応株主の承認を得て,これだけの事業規模でやりなさいというふうに言われていたのを縮小するわけですから,これは株主の意思から見ても相当厳重な手続が要るけれども,ここに書いてあるような形の場合については,これは別に何か非常に株主の利益にかかわるということではないのではないかと。  ただ,そうは言っても,欠損は出ているわけですから,それを取締役会決議限りで,この欠損を消しますというのは,それも問題なので,やはり株主におわびをしてやるべきではないかと思います。最低限,普通決議ぐらいは要るだろうというのが,ここに出ているようなことの背後にあるのかなと私は思っていたのですが。  ですから,いろいろなお考えがあると思います。今日初めて出てきた論点でありますので,なお御検討いただければと思いますが。 ● 今の論点そのものには立ち入りたくないのですが,その周辺にあることを,この概念の整理との関係で申し上げておきたいのですけれども。  ファンダメンタル・チェンジなのか,あるいは資本の欠損なのかはともかく,仮に一定の場合に普通決議でできるとして,それは恐らく,資本が減ることの影響だけ言えば,債権者の配当の拘束との関係で言えば,これは法定準備金減少と差を設ける理由はありませんので,恐らく○○委員とか○○委員がおっしゃったようなことになると思うのです。ただ,従来は,減資に特別決議を要求する理由として併合とか消却との関係を持ち出す見解があったことは一応留意する必要がありまして,今回の案でそれがどう整理されているかということは,欄外でもいいですから,若干明確にしておいていただければと思います。恐らくこのペーパーは,減資の場合の併合・消却はもう減資手続の中から放り出してしまって,別途,それはそれできちんと整理すると。既に併合は214条というふうに整理されていますから,消却の方もこんな形にしてしまうということを前提に,そして,そうすると株主間の問題というのもなくなるから,純粋に資本が減ることだけの影響を考える,その結果,さっきから出ているような案になるのだという,そこのところは一応は押さえた上で意見照会をされたらと思います。 ● 株主の利益に影響するのは消印と併合なんですよね。ですから,それについては,もちろん特別決議だということは前提だと思いますけれども。  それでは,この点はなお各委員・幹事の方にお考えいただくということで,今日のところは,この(1)につきましてはこれぐらいにさせていただきたいと思いますが,それでよろしゅうございますか。特に何か御意見ありますでしょうか。  (2)はいかがでしょうか。これも新しい論点でありますが。  これは比較的最近の改正なのですけれども,本文のようなことになっております。したがって,この4分の1の制限に引っかかる部分について減資をしようと思うと,資本減少の手続が要ると。資本減少をすればここにも響いてきますから,減らせると,現在はそういうことになっているのですが,そういう回りくどい手続をとる必要はないのではないかというのが,この(2)でありますが。 ● この意味するところなのですが,結局これは,288条や289条2項の利益準備金の制度そのものや,あるいはそれにかかわる制度を廃止するという御提案と理解してよろしいのでしょうか。 ● いや,必ずしもそうではないと思います。利益準備金の制度,積立ての制度等を廃止するということではないと思いますが。 ● この制度があるのは,利益準備金をとにかく4分の1まで,少なくとも資本プラス4分の1をクッションとして積めという政策の上に成り立っているものであって,これを動かすということは,結局,政策そのものを見直すという趣旨なのかなと。それは一つあり得る考えだとは思いますけれども,またそれは大いに議論する必要があるかなという感じがします。 ● 御意見の趣旨はよく分かりますが。  ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。  ○○委員の御意見は,現在の規制は論理一貫している,だからあえてこういう規制の撤廃の必要はないのではないかという御意見だと思いますが,いかがでしょうか。 ● もし変えるのだったら,利益準備金の制度そのものを廃止するという方がまだ筋は通るかなということなのですけれども。ただ,それは……。 ● そこまで行くとすると,大改正ですから。 ● 資本制度については,そもそも論で,従来から,私,古い方だなと思っていますので,余り言いたくはなかったのですが。  欠損てん補のことはともかく,準備金の減少額についても,今,○○委員は利益準備金のことを言われましたけれども,資本準備金でも,払込剰余金4分の1ありますと。4分の1あったら,払込剰余金を準備金として積み立てるかどうかの選択を与えるとか,そういう話とこれは連動すると思うのです。義務的に半分以上積み込まされて,そして,それを減少をするときに,それこそ同時にやるときだって債権者保護手続が要るということに現行法ではなってしまうのですね。  そういうことで,ちょっとこれは整理をする必要がある。つまり,288条とともに,288条ノ2の,資本にするか払込剰余金として当然に半分までは積まなければいかんという規制が本当に債権者保護になるのかどうなのかといったようなことも含めて考えなければいけませんので,ちょっと,こういう米印のようなぶざまなことがあるからというのとは違うような気がするということだけ申させていただきます。 ● ほかにいかがでしょうか。  意見の大勢は,別にいじくる必要はないのではないかという……。 ● 是非,意見照会には付していただきたいと思います。この場で削るのではなくてですね。私の去年の要望事項の一つでもございましたので。 ● 分かりました。 ● 済みません,もう一度,利益準備金の積立てとこれがどう関係あるかというのを御説明いただけますでしょうか。  ここで申し上げているのは,いったん計上した準備金を減らすときにどこまで減らしていいかという問題と,あと,利益準備金の積立基準というのは,ある状態で準備金の額が一定額未満しかないというときに強制的に積ませるというだけの話ですから,4分の1以上もし準備金がたまっていれば,その後は利益準備金に積まなくてもいい,若しくは積んではいけないというふうにしている288条と,減らすときに4分の1を切っても減らしてもいいということが何か関係があるのかどうかすらよく理解できないのですけれども。284条ノ2の方はもともと問題があると思いますけれども,必ずしも,ある一定を超えたら積んではいけないと言うか,積まなければいけないと言うかという,その手の数字と,減らすときの話というのはそんなに関係しますかね。 ● どのレベルで制度をとらえるかですけれども,共通する政策として,資本の額のできれば4分の1の準備金はクッションとしてなるべく会社に置いておくようにしよう,少なくとも表示されている資本の額の4分の1の準備金はあるようにしようと。最初からないときは,利益が出たら少しずつ積む形で4分の1まで利益準備金として積ませるし,準備金を減らすにしても,資本の4分の1は残るような形で減らすことしか認めないという形で,名目的な資本の4分の1の準備金があるようにしようという思想,少なくとも政策を現行法はとっているのではないかというレベルであります。それが余り論理必然的,あるいは政策として本当にそういうものであるべきかどうかということを疑問に持たれるのであれば,○○関係官みたいな疑問が出てくると思いますけれども,今申しましたような抽象的なレベルでの政策という意味では,その一部ではないかと理解している次第です。 ● でも,もしそんなことを突き詰めると,新株発行のときだって必ず4分の1は準備金に積まなければいけないということになりませんか。もし資本に全額積めば,準備金は4分の1を切ることがあるわけですけれども,それを許さないという趣旨ではないはずで。 ● どこまでそれを貫くかというのは無論ありますから,新株発行のときでもすべて全部,論理的に必ずそうなるようにしろというところまでは現行法は要求していないけれども,現在規定されているような規定の範囲では,なるべくそういうふうにしようという政策をとっているのではないかということです。 ● 逆じゃないですか。今言っているのは,資本金が準備金の4倍を超えてはいかんということを言っているわけですよね,結論において。要するに,減少するときに4分の1未満にしてはいけないということは,資本金の額は準備金の4倍以内におさまらないといけないということになるわけですよね。資本金が100億ある会社が準備金を20億まで減らしたいというときに,それは減らしてはだめだと,そういうことをするのであれば先に資本を減らしなさいというふうに規制をしているわけですから,減少するときには資本金が一定以上になってはいけませんというふうに規律が働いているのですね。  そこは本当にそんな必然性があるのかという問題と,それから,先ほど言ったように,一定限度資本金を積んでいるときに,ある程度準備金は積まなければなりませんよという規律をほかでかけることとの関係がそんなに合理的に関係するのかどうか。準備金を4分の1未満まで減少したとしても,その後,利益処分をするときにはまた準備金を積まなければならないわけで,そこは規律は変わらないはずですよね。先ほど私が申し上げた新株発行のときだって,今は資本に全額積むことが原則だということにしているということは,準備金の額というのはそんなに大きくならない,資本金の方がはるかに大きくなることの方が原則というふうにしているのが積立ての場合ですから,そうすると,そんなときに,準備金を一定額以下に減らしたいと思ったときに,先に資本金を減らさなければいけないというふうに規制をかけることの合理性というのは,どっちにしても,積立基準云々の問題ではなくて,それだけの問題として解決できるのではないかと思うのですけれども。 ● 準備金の額の方から見ると,問題はそのようにしてもとらえることができるということだと思います。確かに一つのことはいろいろな方向から見ることができますから,現在の現行法が一体どこまで合理的かというような物の見方があって,○○関係官のような見方もある。私がさっき説明したようなのは,ある意味では極めて名目的な資本の額と準備金の関係だけについての政策論ですから,それが本当に合理的かということを検討する余地は大いにあると思いますけれども,少なくとも現在の制度はそういうような考え方でできていたのではないかということであります。 ● これは技術的な問題ですが,あるいは非常に深く哲学的な部分にかかわっているようにも思いますので,この点についてはなお御検討をお願いしたいと思います。  何かほかに,(2)については御意見ありますでしょうか。  それでは,先に進ませていただきまして,(3)でありますが,合併差損の問題であります。①,②とありますけれども,それぞれについて,いかがでしょうか。  まず①でありますが。 ● 質問を一つさせていただきたいのですが。  この①というのは,合併の場合に「合併差損等が生じる場合」と「等」と書いてあるのですけれども,この「等」というのは一体何を指しているのかというのを教えていただければと思うのですが。  それはさておいて,合併差損等が生じる場合だけ資本金の減少を認めるということを前提にしているのか,それとも,実は,合併差損等が生じない場合であっても,合併の際には債権者保護手続も踏まれるから,資本金の減少等を行うことが同時に,やろうと思えば,できるという,こういう選択肢もあるのかもしれないと思うのですが,そのあたりはどうなっているのかという,この2点を教えていただけますか。 ● 前者につきましては,まず,「合併差損等」の「等」の中身は,分割とか株式交換の場合でありまして,合併差損が生じない場合の特定の場合を指すわけではないというのが一つです。  もう一つの方は,途中の「資本金の減少等を行うことを認めることとし」には余り重きがなくて,「所要の開示等の手続を設ける」というところの方が多分問題であろうと。減少自体は,合併の手続と同時並行的に減資の手続をすれば,合併とはかかわりなく行えるわけでありますので,これを積極的に中に取り込むことにどれだけの意味があるかというと,必ずしもそんなに意味はないので。いずれにしても,今は,基本的には合併によって合併差損が生じてはいけないということで,ある程度,のれんを継ぐとか何とかで調整しているのだと思いますけれども,そういう処理ではなくて,そういうことが出るのであれば,そういうことが出るということを前提にした手続規定を整備してはどうかということであります。 ● 内容はそういうことのようですが,御意見ございますでしょうか。 ● そういたしますと,結局のところ,この基準でいくと,会社としては,合併差損等が生じると認識して,資本金の減少を行うという選択肢と,のれんを計上するという選択肢のどちらを選んでもいいという,こういうことになる可能性が結構あると。実は,最近,企業結合に係る会計基準の公開草案というのが企業会計審議会から公表されているのですけれども,それとの関連で,そういう,選択肢が非常に広く認められることを前提にしておくのが賢明かどうかというのがちょっと気になったものですから。 ● 何か,○○委員,この点についてお話を。 ● まず質問ですが,ここで言う「合併差損」というのは,会計上言うところの「のれん」とオーバーラップしている概念なんですか。もし,のれんを指しているとしますと,この話は,のれんを合併時の資本のストックで控除していいという話ですよね。通常のパーチェスの処理では,のれんはのれんとしてオンバランスにして消却する,その消却分は合併後の利益にチャージするというのが基本的な考え方になりますが,この処理をとりますと,利益に対しては影響がなくて,合併時のストックで相殺してしまうという処理を商法上認めようということになりますと,やはりちょっと,大丈夫かなという気はいたしますけれども。 ● ここの処理は,そこまでをあれしたわけではないのですけれども,企業結合会計ができて,選択肢が広がるのか,狭まるのかというのは,ちょっとよく分からないところはあるのですが,パーチェスとプーリングという二つの方法でやるというふうに決めたときに,パーチェスであれば,多分基本的にはこの問題は起きないであろうと。対価が配られるということで,対価をもって判断するということであれば,合併差損という問題は多分出ないと思うのですが,プーリングでやりますと,関係なく出るのではないかというところ……。 ● プーリングではのれんは出てこないのですね。 ● ええ,のれんが出ませんので,そうすると,ストレートにやると差損が出る。 ● 合併差損になるということですか。 ● ええ。  それで,そこの部分については,企業結合会計の方がどこまで緩やかに見てくれるかというのがちょっと定かに分からない。要するに,プーリングのときにはのれんというのは多分基本的に積まないことになると思いますので,そうすると,従来,今まで実務で,商法会計の方でやっていた,プーリングなんだけれどのれんで調整することで差額を調整するという実務がまま見られるのですけれども,それが基本的にはできなくなるのではないかと。  そうだとすると,そこは,そういうことができないということを前提に,合併差損が出るということを正面から規律上置いた方がいいのではないかというのが,①でございまして,パーチェスのときののれんを先に資本取引で処理してしまおうということを意図しているわけではない。 ● ここの「合併差損等が生じる場合」というのは,この括弧内に書いてありますけれども,こういうことをすることが少なくともあるだろうと。こういうときには,一般に合併差損と言われるものが生じる。例えば,自己株をあれして,その自己株の簿価が,入ってくる資産の帳簿上の額よりも大きい場合には,こういうことになる。 ● ですから,先ほどの例ですと,代用自己株であればパーチェスでも差損が出る可能性があるんですかね。代用自己株のそのときの時価が簿価よりも安ければ,例えば100パーセント全部代用自己株で処理をすれば,当該簿価・時価の差額分は合併差損になりますので。それで,それはどこかで調整をしないといけないということになるのではないかと。そのときに,更にそれに超過分ののれんを計上するということは,今度は逆にパーチェス法の方が許さないはずですので,そうすると,その旨の手続をとって何らかの資本勘定を減らすということにせざるを得ないのではないかと。 ● ちょっと即答を避けたいのですけれども,ここで言われている「合併差損」という概念と,企業会計上言うところの「のれん」という概念がかなり違うような気がしますので,御趣旨をもう少し冷静に考えてから御返事したいと思います。 ● よろしくお願いいたします。  これは,先ほどの説明では,①で一番重要なのは,「所要の開示等の手続を設ける」ということなんですね。そう理解していいのですね。 ● はい,そうです。 ● ほかに,この①について,御意見ありますでしょうか。 ● 意味は分かったのですが,ただ,○○委員が確認されましたように,この文章を読んだ人はそうは思わないんじゃないかなと。やはり実態的なことが中心で,付加的に開示をやっているので,だから,こういう場合には資本金の減少等を行う必要が出てくるわけですね,実際上。そして,その際には債権者保護手続をとることは当たり前なんだけれども,それと別途,開示をきちっとして,株主なり何なりに分かりやすいようにするという意見があるがと,そうやると内容が分かるのですが。あと一行やはり要るのではないかと思うのですが,そういう点をお考えいただけたらと思います。 ● はい。 ● ほかに,①についてはよろしゅうございますか。  では,②。②は,単に開示の問題ではないですね。これは実質的な手続の問題のようですが,これについてはいかがでしょうか。 ● もちろん賛成です。 ● これについては何か御異論ありますでしょうか。 ● 賛成ではありますけれども,1円でもやらなければいけないのかということで,何か「重要性の原則」的なものが盛り込めないかということを御検討願いたいと思います。 ● ほかに御意見ありますでしょうか。  それでは,この点もなおお考えいただくことにいたします。  次に4に進ませていただきますが,これは従来から根本的な御議論はあるところですが,なかなか現段階で抜本的な解決は難しいのではないかということで,ここでは,とりあえずこの本文にあるようなことではどうかということでありますが,御意見いかがでしょうか。 ● 質問なのですが,現状では211条ノ2の1項が関連条文だと思うのですが,1号がこの①に当たると思うのですが,②が新設されると。それで,現行法の2号の権利の実行の場合というのは,これは削除するという御趣旨ですか。 ● 2号は残します。 ● 2号は残すという前提ですか。  では,例外的に取得を認めるというのは,①,②と,現行法の2号が3番目に入るという理解でよろしいわけでしょうか。 ● 1号も,承継取得というとちょっと言い方が悪いのですけれども,要するに,消滅会社が持っている存続会社の株式は1号で典型的に読むタイプでありますので,それも残り,それからここに書いてある二つがあって,更に権利の実行が入るという,その4類型というと変ですけれども,そうなります。 ● では,現行法にこれが二つ追加になるという御趣旨ですね。 ● はい。①については,一部,1号で読めると言われているものもあるのですけれども。 ● そういう趣旨のようですが,いかがでしょうか。  ここに書いてある限りにつきましては特に御異論ないという理解でよろしいでしょうか。  それでは,この本文に書いてある限りでは御承認いただいたということで,前へ進ませていただきます。  次に「第3 組織再編関係」でありますが,これは1ページだけですね。それでは,この部分については,全部,事務局から説明をお願いします。 ● 簡略に御説明申し上げます。  「第3 組織再編関係」の「1 新株予約権等の承継」の(1)につきましては,第一読会で,おおむねこのような方向で御異論がなかったものと承知しております。  (2)につきましては,特に明示的な御意見はちょうだいしなかったものと承知しておりますけれども,特に米印につきましては,株式交換自体について,そもそも債権者保護手続を,対価の柔軟化を前提にして,要求するかどうかという議論が前回ございましたけれども,それはそれとして,仮にそうでないとしても,従前,株式交換においては完全親会社となる会社の側では債務の承継を行わないという前提で債権者保護手続がとられていないといたしますと,何らかの債務承継を伴う株式交換については,債権者保護手続を一定の場合に--どの程度の場合かはともかく--用意すべきかという点について,第一読会でお諮りしたところを敷えんして再度お諮りしているところでございます。債権者保護手続を何のために要求するのかということについての理解とも関係すると思いますけれども,この点について格別議論の収斂がなければ,このような形で試案を公表させていただくのはいかがかということでございます。  それから,2の人的分割についてでございますが,剰余金の分配という包括的な概念でいろいろと整理をいたしますと,現行の人的分割は非常に違和感の残る制度でございます。端的にa案のような整理をしてしまうとすれば,要するに現行の人的分割という制度を廃止するに等しいわけでございます。あるいは,そこに何らかの色をつけてb案的な方向性で整理をするかどうかですが,この場合でも,現行法が認めているような,承継会社の株式が出される人的分割の場合については現行法と同じような取扱いを維持すべきかどうかという点がb案の下にある米印でございます。人的分割を特別な制度として,剰余金の分配などとは別の制度として依然として残しておくべきかどうかという点が,この2の問題でございます。この点については,第一読会でも双方向から御議論があったところでございます。  以上です。 ● それでは,まず1の(1)でありますが,前回の御議論では,本文の限りにおいては特に御異論なく皆さんの賛成が得られたのではないかと思いますが,この米印のように具体的な形になって書かれたのは今回が初めてのように思いますが,いかがでしょうか。その新株予約権について発行条項に定めがある場合の取扱いについてですね。発行条項に定めがある場合とない場合とに分けて,このように書かれておりますが。  ①はこういうことでしょうね。発行条項に沿っておれば特に異論を言わせる必要もないので,発行条項に定めた内容に沿わない取扱いをする場合には保護が必要になると。  それから,発行条項に定めがない場合の取扱いが議論が分かれ得るところなのですが,承継される場合というのは,分割会社が新株予約権を出しており,それが新設会社等に承継されるという場合と,それから合併の場合は,これは当然に承継される。消滅会社が新株予約権を出しておれば当然に承継される方に入るのですね。そういう理解だと思います。ですから,承継されないというのは,会社分割で分割会社に残されるという場合を指しているのだと思います。 ● ちょっと質問です。  小さな点の質問ということになるのかもしれませんが,発行条項に定めた内容に沿わない取扱いも一応自由にできるということが,この前提になっているということでございましょうか。 ● いや,そうではなくて,違うじゃないかという主張をする者については,その者が恐らく買取りを請求するということになるのではないでしょうか。そういう意味かなと私は思っていたのですが。  そうではないのですか。 ● そうでございます。  要するに,ある種の交換が起きるときには承継させると書いてあったにもかかわらず,株式交換契約書を見てみたら入っていないというような場合とかもあり得ますし,一定の条件で承継するというふうに書いてあるときの条件自体に争いがある場合とか,幾つか,争いがある場面というのが多分出てくると思いますので,結局,沿うか沿わないかというのは法的判断に委ねられてしまうところに難点があって,実質上は買取請求権が行使できるという形になる場合が多々見られると思うのですけれども,基本的にはそういう考え方。ですから,その自由があるかどうかというふうに言われると,正面から自由があるというふうには言わないと思うのですけれども,意図してか意図せずにか,そういう状態になることはあり得るだろうということで書いております。 ● 御説明の限りでは非常に納得がいくのですが,ただ,これをぱっと読んだときに,発行条項を定めておいても,それに沿わない扱いをしてもいいかのように読めるような感じがいたしますので。沿う形で行うのが前提なんだけれども,異論がある人もいるだろうからという御趣旨ですよね。 ● そうです。 ● ですから,そういう表現に少し気をつけた方がいいのかなというだけのことでございます。 ● 表現は検討させていただきますが,趣旨は,おっしゃったような趣旨であります。 ● ②について質問させていただきたいのですけれども,括弧内で「承継されない新株予約権者には認めない」という意味は,これは割り切るという趣旨なんでしょうか。つまり,人的分割の場合は必ず分割会社は縮小するわけですから,会社価値は減るわけですね。ただ,もちろん株主は対価を受け取りますし,総会で決議し,買取請求もあるわけですけれども,予約権者は何もない。これを認めないという意味は,もうそういうものと思えという割り切りをしようとしているのか。ちょっとその辺を教えていただければと思います。 ● 原案は割り切っています。 ● そういう趣旨だそうです。 ● 今の点なのですが,別の議論の場での記憶をちょっと御紹介させていただきますと,確かに,ひどいというふうな印象があるかもしれませんが,これを問題だと言い出しますと,例えば実質的減資をした場合に全く同じことが起きてしまいます。規模は小さいですが,配当も,配当政策を急に変えて多額な配当をしたら同じことが起きるわけで,これをカバーするというのは,要するにオプションの希薄化についてカバーすべきだという,それについて一定の法的効果を与えるということを意味しますので,それを人的分割のときだけカバーするというのはいかにもおかしいのではないかということが背景にあっての割り切りだろうというふうに想像いたしますが。 ● 一番ひどいのは,株式交換で,残されてしまうと。これも,承継しないという類型の一つとしてはあるのですね,恐らく,この案では。ですから,それはもう割り切っていると。  そういう前提で,いかがでしょうか。どこまで保護するかということなのですけれども。  極端に議論すれば,株式交換のときに,完全子会社となる会社に残してしまうなんていうのは認めないということだって,立法論としてはあり得るのですけれども,この案は,そういう線で割り切った案がここに出てきているということであります。それは立法論としてはいろいろあり得ますので,すぐに皆さん,これで賛成というわけにも恐らくそう簡単にはいかないかもしれないのですが。  なお,御質問でも結構ですが,米印の一つ目について,何かほかに御意見等ありますでしょうか。  それでは,この案の内容についてはなおお考えいただくことにいたしまして,米印の二つ目ですが,これはなかなか難しい問題ですね。新株予約権付社債の新株予約権部分について,その承継について争いがあるということも,これもあり得るわけでありまして,条件等についてですね。これはちょっと考えがまとまりませんので,「なお検討する」ということになっているのだと思います。  (2)に進んでよろしいでしょうか。(2)はいかがでしょうか。本文と米印とあるのですが,本文については,前回,特に御異論なかったのではないかと思います。ですから,むしろ問題は米印の方にある。米印をどう考えるべきかということにつきまして御意見をいただければと思いますが。 ● 質問させていただきたいのですが,この新株予約権付社債権者の保護手続というのは,債権者保護手続という意味ですか。それとも,新株予約権についての価値の問題について,(1)と同じように買取請求とかそういう余地も認めるということですか。 ● (2)で書いている保護手続は,現行法で言いますと,人的分割の場合の分割会社から承継会社に承継される債権者に対する債権者保護です。ですから,多分,電子公告の改正がされますと,結局は単に公告するということになるのだと思いますけれども,異議を言える対象者が新株予約権付社債権者ということになるというのが一つです。  買取請求権に関しましては,(1)の米印のところで,買取請求権を認めるのか,それとも全体として弁済させたり,担保を徴求させたりするのか,いろいろ選択肢があって,一長一短が整理し切れないというのが現在の状況です。 ● いかがでしょうか。  現行法では,新株予約権付社債というのは,これは債権が入っているからということで,およそ承継の対象にならないということなのですが,その点を,この本文,それから米印の形で処理するということなのでありますが。  これは,ニーズは非常に大きいわけですよね。 ● もう一つ質問してよろしいですか。  この前のときに出ていなかったので申し訳ないのですが,この新株予約権付社債を承継する場合というのは,当然,完全子会社となる会社から親会社に,社債の弁済のための原資というか,そういう資産が動くということになるのでしょうか。それとも,これは新株予約権の部分だけを承継するのですか。そういうことはないですよね。 ● 前提として,新株予約権の義務者と社債の義務者が分離することを予定した制度を作る予定は余りないというか--ニーズがあればやらないことはないのですけれども--ないので,基本的にはどっちも動くと。  原資が渡されるかどうかというのは,株式交換のときの対価でどういうふうに評価するかという問題と,あとは,事実上キャッシュのやりとりをするかどうかという問題に多分解決されるのではないかと思います。 ● 前回もちょっと出て,これは一体会計処理はどうなるんだろうかという話がありまして,考えてみたのですけれども,新株予約権付社債の移転のときに,これは無償となる処理をするのか,有償という形で処理するかによって,どうも難しい部分があるなと思いまして,今お話しのようにキャッシュ等で有償とする扱いでやるならば,仕分けとしては非常に理解できるのですけれども,無償として承継した場合には,その本質は利益になるのか,資本になるのかというところが,ちょっと私はまだ解決ができていないのです。ここはむしろ○○委員に伺った方がいいかもしれませんけれども,やはりそこが解決できないと,これを無償で認めるというふうな形はもうちょっと検討が必要なのかなということで,疑問だけ申し上げておきたいと思います。 ● 何か答えなきゃいけないですか。  ちなみに,現在のルールといいますか,会計基準では,新株予約権付社債に関しては,オプションに当たる予約権相当額を分離しますので,有償で取得したというふうにみなすと。それが,現在の日本の基準ではテンポラリーに負債に計上されますので,いずれにしても,その権利行使までは仮に負債に置かれるという形になっています。 ● これは今の御議論と関係があるのかどうか知りませんが,現在は,正面からはこういう手続を認めていない。それで,実際上は,完全子会社となる会社の発行していた新株予約権付社債と交換に,完全親会社となる会社がやはり新株予約権付社債を発行するというようなことをして処理しているのではないかと。それを何か登記は認めているというふうに聞きましたが。そうですね。違いましたっけ。 ● 株式交換の際にということですか。 ● はい。  とにかく,完全子会社に残ってしまうと非常に困るんですよね。転換社債が残ってしまいますと。つまり,完全子会社となりますから,完全子会社の株式というのは上場廃止になってしまうわけで,それと,転換社債はデフォルトになって,全部クロスデフォルトで償還しなければならなくなるんですね。それは非常に困るから,何らかの処理を実際上しておられるのではないかと。それで,そのときの処理は,さっき言ったように,何か完全子会社となる会社が投資家から転換社債を取得して,かわりに転換社債を出すと。  そうではありませんか。 ● そこまで大胆なケースは実行してないのですけれども,期限前償還条項がついているものについては期限前償還をしてしまうというのが,例外なく行われていることだと思います。 ● そうしますと,これは「なお検討する」ということですから,なお皆さんにも問題点を御検討いただきたいと思います。 ● ちょっとここら辺が疎くてあれなのですが,米印の方の問題ですが,この場合に債権者保護手続を要する必要性を感じられたのは,要するに,会計処理も含めて,実務が,無償か有償かもありますが,有償をベースにするときでもこういうような必要があるということですか。 ● 現在は,株式交換のときには,完全親会社となる会社には債権者保護手続はないのですね。そのない理由は……。 ● 財産が移動しないから。 ● そうです。少なくともマイナス財産は入ってこないし,合併なんかでは,消滅会社が実はマイナス,債務超過だということはあり得るのですが,株式取得するのは株式ですから,入ってくる財産は,少なくともゼロ。かつ,完全親会社が何を出すかというと,自己株を渡せば,何か財産価値のあるものを渡しているということになるのですが,新株発行ですと,完全親会社となる会社から出ていく財産もない。ですから,債権者には何の不利益もないということで,債権者保護手続は一切ないのですが,これは新株予約権付社債の債務部分を引き継ぐことになりますので,現行法は債権者保護手続もないのにそういうことを認めてはだめだというので,新株予約権付社債の承継ということは認めていないのですね。新株予約権だけの承継なら認めている。しかし,ここでこのように社債部分まで引き継ぐということになると,債権者保護手続は要らないんですかという話が出てくる。 ● だから,そこで先ほどの○○幹事のお話になるのかなと思ったりもしたのですが,そこら辺の実務的な状況を見ないと,何もなかったら当然要るということになるのでしょうけれども,社債の場合には,そういう別途実質的な,完全親会社となる会社の債権者にとって保護措置が可能かどうかを少しお教えいただくというか,そういうスキームと連動するかなという気がしたので。 ● 当然に完全子会社が出していた社債を取得するとか,そういうことだと計算上は合うのですが,○○幹事が言われたように,有償で取得するのですかという……。 ● そこら辺がちょっと私も疎くて分からないので。単純に言えばそういうことになるのだろうけれども,社債に限って言うなら,あえて一般的な債権者保護と違うものが何かあるなら要らないし,なければ要るになるし,そこら辺,ちょっとお教えいただこうと思ったのですが。 ● ○○委員的な言い方をすれば,1円でも引き継ぐなら要りますかという話になるのですが。ですから,いろいろな論点はあるのですね。  それでは,そういう問題がありますので,先ほど○○委員,○○委員からお話がありました会計の部分も含めまして多角的に御検討いただければと思います。  次に2に進ませていただいてよろしいでしょうか。  2については,人的分割についてどのような取扱いをするかと。これは,新たにこういう問題が出てきたのは,人的分割のときに株主に配るのが株式だけだと見過ごされていたのでしょうけれども,それがキャッシュアウト的なものを認めるということになったので露骨に問題が出てきたということと絡んでいるのだと思いますが。  a案は,昔,会社分割という制度を作るときに問題になりまして,これはアメリカ型の制度ですよね。会社分割の制度を作るときは,私はこれでもいいんじゃないかと言ったのですが,一蹴されたのでありますが。 ● 質問ですが,a案で,剰余金の分配になっていて,これは株式を交付する場合でも,もちろんこれは現物配当としているわけですね。 ● 現物配当の場合もありますし……。 ● ただ,この書き方ですと,基本的にいわゆるスピンオフのケースで,要するに,分割会社が株主に対して,取得した株式を単に渡してしまうという,そういうケースですよね,これは。  場合によっては,アメリカでよく行われているスプリットオフのように,分割会社が株式を渡すときに,株主から自分の会社の株式,分割会社の株式を取得して交換するという形態がありますね。それですと単純な剰余金の分配ではなくなるわけですが,人的分割の理解の仕方として,物的分割プラス株式の交付なのですけれども,その後者の株式の交付を,通常の配当に準じて扱うのか,そうではなく,株式を交換するというスタイルで考えるのかによって多少結果が違ってくるような感じがするのですけれども,ここでは専ら剰余金の分配として考えるということなのでしょうか。 ● 剰余金の分配の中に,例えば自己株式の取得が含まれるとすれば,多分,計算は合うのではないかと……。 ● まあそうですけど,自己株式の取得は通常はキャッシュで買うわけですけれども,これは,分割することで取得した子会社の株式を渡すわけですよね。 ● そうですね。だから,ちょっと特殊な形態ではありますが,財源規制という観点だけからすると,多分合うのではないかと思うのですが。 ● これを現物配当のような形にしますと,当然,配当財源の規制がかかりますけれども,株式を取りかえっこするときに配当規制はかかるのでしょうか。 ● いや,かからないです。それが,2で言うところの,下の米印で典型的に想定されている,ぱかっと割れるタイプの人的分割のときに特別扱いをするかどうかという話になるのではないかと。 ● やはり特別扱いをしなければだめなのですね。 ● 財源規制との関係ではそういう場面が出てくると思います。 ● ○○委員がおっしゃったような形は,現在では,スプリットオフというのですか,非案分的分割とかと言っていまして,株主全員の合意がないとできないと言っているのですが,こういう形になりますと,おっしゃったような問題がもろに正面から出てくるんだと思います。 ● アメリカでも,ケースを見てみますと,案分的分割と非案分的分割が両方ありますよね,スプリットオフで。 ● ですから,これは,こうすると正にアメリカの問題がそのまま日本にも出てくるということだと思いますが,現在とは相当考え方が違うんですよね。ちょっとここまで大胆に,今までの制度を全部やめてa案に移りましょうというのは,なかなか大きな発想の転換が要る話で,そう簡単な話でもないような気がしますけれども,ただ,現行法のままというのは,先ほど言いましたような,株式を出すのではなくて現金を渡すということもできるようになったときに違和感がありませんかという問題でして,これも,うんと割り切れば,債権者保護手続があるのだからそれもいいのだということに,論理的にはそういう可能性もあるのですが,何か気持ち悪いという感じもするということだと思います。  いかがでしょうか。これは,前回はもうちょっと抽象的な形で案が出ておりまして,それについてもかなり御意見は分かれた,金銭であろうと株式であろうと財源規制は必要だという御意見もありましたし,先ほどありましたように,別に債権者保護手続があるのだからいいのではないかという御意見もあったように記憶しますが,それがもうちょっと具体的になりますと,そういう抽象論では議論されなかったような,アメリカ型にまつわる問題とか,そういう問題が今日は提示されているということでありますが。  b案もなかなか難しいのですが,これはどういう考えですか。事後責任についてのみ,剰余金の分配と同様に取り扱うというのは。事後責任というのは,事業年度末までに何とかなるならば見逃すということですか。欠損が出ていても,それは見逃すが,年度末にはなくなっているという確信がないとやってはいけませんよということですか。  ○○委員は,前回,かなり厳しい立場の御意見だったように……,株式であろうと金銭であろうと,欠損状態は放置すべきでないという御意見だったと思うのですが,今日の案につきましては何か御意見ありませんでしょうか。 ● 質問させていただいてよろしいですか。  このb案の事後責任というのは,期中にやるということなのですか。人的分割を期中にやるから事後的責任の問題になるということですか。事後的責任というのは,中間配当とか自己株式の取得とか,そういうのに相当するケースでしたよね。ということは,期中でない,期末にこれをやれば,b案の場合は責任を負う余地はないというふうに平仄をとるということですか。 ● そこは考えないといけないのですけれども,b案の考え方は,a案と似ていて,対価を受け取って分配するという構図はそのままなのですが,必ずしも対価を受け取って分配するというときに財源がなくても,まあよしにしましょうと。ただ,現実には配当しているのと同じだから,事後的な評価においては,配当したのと同じような評価で処理をしてはどうかというのがあれなのですが。ただ,テクニカルには非常に,どこからどこまでの間の責任を分配とみなして計算するかが問題なので,ちょっと難しいのですけれども。 ● ○○委員,何か御意見ありますか。  それでは,特に今御意見がないようでしたら,これもお考えいただいて,次回また議論をして--意見照会には結局抽象的な形で,なかなか意見照会までに案を詰めるということも難しいのかなという気がしますが,いずれにせよ,お考えいただきたいと思います。  それでは,大分長時間御議論いただきましたので,休憩いたしたいと思います。            (休     憩) ● それでは,時間になりましたので,再開させていただきます。  次は第4の「機関関係」のところでありますが,これにつきましても,事務局から一括して全部説明していただきます。 ● 本日中に「第4 機関関係」の御審議を終えていただくという前提で,一括して御説明を申し上げます。  1の「株主総会関係」でございますが,(1)の「書面・電子投票制度」につきましては,①,②とも,特にこの内容には御異論はなかったものと承知しております。  (2)の「招集地」につきましては,あえて規定を削除するまでもないのではないかという御指摘もいただいたところでありますが,格別に定款に定めを置かなければ233条に規定するようになるということ自体にやや実務上の不都合があるようですので,規定自体は削除して,合理的な範囲での選択を認めるとともに,むしろ具体的な開催場所を通知に記載することを義務づけることの方がよいのではないかという趣旨で御提案させていただいているものでございます。  (3)は,昭和61年の改正試案にも提示されていたところであり,第一読会でも格別御指摘をちょうだいしていないものでございます。  (4)につきましては,やや御異論もありましたが,実質においては賛成される御意見が多かったのではないかと思います。定款で決め得る事柄かどうかという点について,どこまでを解釈に委ね,どこまでを明示的に規定すべきかということは最終的に法制的な整理をする必要がありますけれども,いずれにしても実質としてはこのような内容にするという整理をさせていただくことでどうかということでございます。  それから,2の「取締役・取締役会等関係」でございます。これも前回の改正時における宿題として残されている,委員会等設置会社とそれ以外の会社との間での調整を図るという問題でございますが,一定の取締役につき無過失責任を維持しておくべきかどうか,維持しておくべきであるとしてその範囲という点が議論として残っていたかと思います。米印の一つ目でございます。  米印の二つ目につきましては,いろいろと案を提示しておりましたけれども,要するに,過失の立証責任の在り方について,取締役会の承認を得ている場合とそうでない場合とでどの程度違いを設けるか設けないか,いずれにしても委員会等設置会社とそれ以外の会社とについて両者を合わせた形での調整を図るべきであるということで,やや丸めた表現にさせていただいております。  ②についてですが,本文につきましては格別御異論がなかったのではないかと思います。商法266条6項が無過失責任を前提とした規定でありますので,過失責任化する場合にはそれに相当する規定を設けないということでございます。  米印の一つ目は,前回の議論の際に御指摘をいただいた点でございます。  米印の二つ目は,一応確認させていただきたい点でございます。このような整理をするということでよいかどうかということでございます。  ③は新しい論点でございますが,法定の取締役会が設置されない会社における取締役の利益相反取引等について,株主総会の承認がどのような意味を持つのかなどという点につきまして,承認は普通決議で足りるものとした上,それによっては免責の効果は当然には生じないものとするという整理でよいかどうか,また競業取引についても同様の整理をするということでよいかどうか,新たにお諮りしたいと思います。  (2)についてですが,委員会等設置会社につきましては,266条2項・3項に相当する規定は設けられていないわけですけれども,両者の調整に当たって,どうすべきか,--ここでは,設けないものとすることでよいかとしておりますけれども--これについての御意見を再度確認させていただきたいところでございます。  ちなみに,委員会等設置会社においては,米印のような整理がされているところでございます。  (3)の利益供与に対する責任につきましては,無過失責任を維持するというこれまでの規定の在り方を変えるということについては,いろいろな面でなかなか受け入れられにくいのではないかという判断のもとに,このような形でその方向性を確認させていただきたいと思います。  なお,(2)の在り方にかかわらず,(3)につきましては,現行の266条2項・3項に相当する規定は設けないものとしてはどうかという点については格別御異論がなかったものと承知しているところでございます。  (4)についてですが,①につきましては,第一読会ではいろいろと御意見があったところでございますが,成年被後見人とはやや別の意義がありますことから,破産宣告を受けた者につきましては欠格事由から外すということを試案では御提案させていただければということでございます。成年後見制度に関しては,当該者の保護という観点も非常に強いものと考えられるところでございまして,役員としての重い責任を負わせることが適当かどうかという配慮もあり,それとは一応区別して考えられるのではないかというのが,ここでの整理でございます。  ②につきましては,第一読会で,具体的な罪を十分吟味すべきであるという御指摘をちょうだいしたところでございますので,米印にその点を加えさせていただいております。現在,破産法の改正作業が進行中でございますけれども,それも含めた倒産犯罪法制がどのように整備されるかということを見極めて,具体的な罪を吟味すべきであるという趣旨でございます。  (5)につきましては,実務上格別の強いニーズがなければ,このように整理をさせていただくことでどうかということでございます。  なお,米印で確認させていただいておりますように,他の共同代表制度,少なくとも商法にかかわるものについては同様の取扱いをするということになるのではないかということでございます。  (6)につきましては--前回の改正の積み残しの事項でもあり,また昭和61年の改正試案でも提示されていた問題でありますけれども--当部会でも種々御意見があったところでございますが,一応本文のような形を試案として提示させていただくことはどうかということでお諮りするものでございます。決議の目的たる事項についての取締役の同意,監査役の同意があれば,定款をもってその旨が定めているということを前提にした上で,書面による決議をすることを認めるということとしたらどうかということでございます。  なお,実務的な観点から,報告事項が書面決議の対象に含まれ得るということを明確にするという点が,米印の1番目でございます。  米印の2番目についてですが,当部会でいろいろと御意見が出されていた中に,取締役会の具体的な開催の形骸化を懸念する御意見があったところでございますので,取締役会の定期的な開催を義務づけるべきかどうか,そのような措置についてなお検討するという旨を掲げさせていただいているところでございます。  (7)の「社外取締役」についてですが,社外性の要件の見直し自体は時期尚早であるという御指摘をいただいているところでございますので,なお検討するということで米印にさせていただき,本文には登記事項からの削除という点だけを掲げさせていただいております。  (8)は,第一読会ではお示ししておりませんでした項目ですけれども,当部会での検討を求める御要望が非常に強いところでもありますので,本日のところはこれについてフリートーキングをしていただければというふうに思います。  役員の責任についての実体的な制限規定が設けられ,その実効性,効果がまだ十分検証し尽くされていないと思われますので,代表訴訟制度の見直しはそれを待ってから検討するということも考えられますけれども,実務上の御要望を踏まえ,現段階でもし議論し得るものがあるとすれば,実体的な規定とは別に,手続的に,訴訟を妨げ,終了させるという制度の工夫の余地の有無ということであろうと思われますので,これについての御意見,それから,言うまでもなく,多段階代表訴訟の在り方という議論も残っているわけですけれども,それについての御意見を自由にちょうだいしたいと思います。  それから,「3 監査役関係」につきましては,まず,株式会社についても有限会社的な組織形態の選択を認める,すなわち監査役の設置を必ずしも強制しないということを前提に,(1)のような提案をさせていただいているところでございますけれども,これについては,従前,賛否両論あったところでございますので,その取扱いについて再度御意見を確認させていただければと思います。  (2)につきましては,従前の株式会社的な,すなわち所有と経営との分離型の機関設計を有する,取締役会を設置する株式会社にあっても監査役の設置を任意にすべきかどうかという御意見があるところでございまして,これについてどう受けとめるかということを確認させていただきたいと思います。これも,従前,賛否両論のあったところでございますので,一応,意見の分布状況を確認させていただくだけということになるかもしれませんけれども,試案での取り上げ方を含めて御相談させていただきたいと思います。もちろん,取締役会を設置する株式会社であって委員会等設置会社でない会社であっても,という趣旨でございますけれども,そのようなものとしてお考えいただきたいと思います。  (3)と(4)は新論点でございます。監査役協会から,(3)のような御意見を非公式にちょうだいしているところでございます。委員会等設置会社において手当てされているこの部分につきまして,それ以外の会社についても同様に手当されるべきではないかという御指摘のようでございます。事務局限りでは,監査役の取締役会からの独立性という点を考えますと,この種の事項,監査に必要な事項を定め得るのは監査役--監査役会が置かれていれば監査役会--であるべきであるという整理が現行法においてはされていると思われますので,取締役会がそのような事項を定めるというのはいかがなものかという感じがするのですが,この点について御意見をちょうだいしたいと思います。  (4)につきましては,計算書類,監査報告書の招集通知への添付について,有限会社における取扱いと,取締役会が設置されない株式会社における取扱いとを同じにしてよいかどうかということを確認させていただくものでございます。  4の「商業使用人関係」の(1)の①,②は従前お諮りした点でございます。賛否両論あったところですけれども,試案におきましてはこのような形で意見照会させていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。  (2)は,会社法制の現代化に当たって,会社に係る商業使用人制度について何らか見直すべき点はないかどうかということを包括的にお伺いするものでございます。  米印におきましては,このような点が問題かどうかと思われる点をピックアップさせていただいておりますけれども,米印の一つ目は,少なくとも会社に係る支配人と取締役について,義務の内容の違いをそのままにしておいてよいかどうかという点でございます。  米印の二つ目は,会社に係る支配人についての営業主としての許諾の意思決定機関につきまして--取締役会を設置する会社は取締役会ですが--取締役会が設置されない会社については取締役とするということでよいかどうかという点を確認させていただこうとするものでございます。  それから,「5 会計監査人関係」でございますけれども,(1)の設置強制の基準につきましては--現行の基準は幾多の改正の末にでき上がっている基準であるわけですけれども--現時点でそれを積極的に動かすべきであるとして打ち出す自信のある基準もありませんので,一応試案ではこの程度の取り上げ方をすべきではないかというのが,①の趣旨でございます。  ②は,①の設置強制基準を満たすような大規模な有限会社について,イ,ロに書かれているような手当てを講じつつ,有限会社といえども会計監査人の設置を強制するという方向でどうかということを打ち出そうとするものでございます。仮にそれが既存の有限会社にとって非常に酷であるということであれば,何らかの経過措置を講ずることで軟着陸を図るという点がイでございますし,ロは,機関設計の簡素化につき一定の措置を講ずることによって,会計監査人を置くことに伴う機関設計に係る負担を減少させようとするものでございます。  ③は,いわゆる完全子会社については,その規模のいかんにかかわらず会計監査人の設置を強制しないというような整理をするかどうかという点について--それは②の有限会社の一部に設置強制をすることについての緩和的な措置にもなり得ますけれども,それにかかわらず--大規模な会社の一部については,このような特例を満たすものである限り,設置強制をしないという整理をすることとしてはどうかという,従前お諮りしていた内容のものでございます。  これについても双方向からの御意見をちょうだいしたところでありますが,仮に設置強制をしないということになりますと,完全子会社であるということを前提として,米印のイ,ロのような手当てをするという整理でどうかということを御確認させていただきたいと思います。  (2)は,現行の特例法のもとでは,いわゆる中会社の範囲の株式会社についてまで法定の会計監査人の設置が認められているわけですけれども,規模による制約にさほどの合理性はないのではないかということから,その制約を取り除くこととしてはどうかという提案でございます。  特に小規模の会社については,その場合における会社の機関設計の在り方が問題になるわけですけれども,その点についてどう考えるかということが,(3)の問題でございます。現在の中会社につきましては,会計監査人を置くという以上は,委員会等設置会社あるいは監査役会設置会社のいずれかの機関設計の選択が義務づけられるわけですけれども,少なくとも一定規模以下の会社等につきましては,それ以外の簡素な機関設計であっても,会計監査人を置くという選択肢も認めるべきではないかという論点でございます。  第一読会では,その場合の会計監査人を置く意味につきまして,いろいろと多角的に御意見をちょうだいしたわけですけれども,事務局限りでいろいろと検討する中で,結局は会計監査人が置かれる場合の効果--これは米印の2番目に掲げさせていただいておりますけれども--につきましては,やはり会計監査人に関する規定を設ける以上,会社の規模の大中小にかかわらず,特段の差異を設けるべきではないのではないかと考えられることから,仮に効果は同じであるということを前提とした場合に,その機関設計はどこまで簡素化し得るかという議論をしていただく方が適切ではないかとも思われますので,とりあえずそのような整理をさせていただけるかどうか,させていただくとした場合に,具体的な機関設計の簡素化としてどこまで認められるのか--例えば米印の1番目のイにつきましては,過去においては少なくともこのような機関設計が容認されていたわけですが,さらにロ,ハ,ニについてはどうであろうか--ということを,改めて御議論いただきたいと思います。  この辺りに関連して,○○幹事から御意見をちょうだいしているところでございます。  それから,米印の二つ目でございますが,先ほど申しましたように,会計監査人を置くべき意義については会社の規模の大中小にかかわらず同じであるということを前提とし,取締役会を設置する会社と設置しない会社との双方において会計監査人を置き得るという選択肢を仮にとるといたしますと--つまり,1番目の米印でハあるいはニの選択肢をとり得るということにいたしますと--計算書類の確定という関係では米印の二つ目のような整理をさせていただくということになるのではないかということを参考までに提示させていただいているところでございます。  (4)でございますが,(3)はひとまずおきまして,現行の会計監査人が設置されている場合の計算書類の確定手続の在り方について--従前いろいろとお諮りした論点でございますが--結論において現行法の取扱いを維持するということでよいかどうか,よいとした場合に,米印の1番目のような手当てをすべきかどうかということを再確認させていただきたいと思います。もし本文のような手当てを維持しないということであれば,米印の2番目のようなことが考えられるのではないかという点は,従前お諮りしたとおりでございます。  (5)も,前回の改正での積み残しの論点でございます。御異論があることを前提としつつ,試案においてはこのような形で案を提示させていただくことでどうかということを,再度お諮りするものでございます。①はそういう趣旨でございます。  ②についてですが,会計監査人の責任の免除の在り方として,取締役と同様の免除の在り方のほか,米印の二つ目で掲げさせていただいておりますように,会社と会計監査人とが交渉の機会を持つということが必ずしも適当ではないのではないかという配慮のもとに,法律で責任の限度を一律に--絶対額,あるいは報酬何年分ということでもよいのですけれども--定めてしまう方が望ましいのではないかという御意見もありますので,それを提示させていただいております。  それから,事後的な免責についての手当ては,取締役とは異なり必ずしも必要がないのではないかというようにも考えられるところであり,米印の三つ目はその趣旨でございます。  (6)は,これも前回お諮りした点でございます。基本的な考え方については御異論がなかったところではないかと思いますが,監査役会,監査委員会とも,会計監査人の報酬の決定に関する同意権限を有するものとするというような整理でどうかということでございます。  なお,仮に,会計監査人を設置する会社について,監査役会,監査委員会を置かないという機関設計を認める場合において,監査役が置かれるときには,監査役に同意権限を付与するということでよいかどうかという点が,米印のところでございます。  (7)は,第一読会でも提示させていただいたものを再度掲げさせていただているところでございます。  それから,6の「その他」についてですが,前回のコーポレート・ガバナンスにかかわる改正に関しては,新たな論点,新たな改正要望がいろいろとないわけではないのですけれども,第一読会では,制度の機能の仕方を見極めた上で,再度,腰を据えた検討を行うべきではないかという趣旨の御意見が有力だったように思われますので,一応論点としては認識しつつも,将来の検討課題的な位置付けの雰囲気を示すよう,(1),(2)を掲げさせていただいているところでございます。これについても,具体的な御要望は十分承知しているところでございますが,試案に掲げる文言としてはこの程度とさせていただくことでどうかということでございます。 ● ということで,まだ大分御議論に時間をちょうだいせざるを得ないのですが,ひとつよろしくお願いいたします。  まず,第4の「1 株主総会関係」の(1)でありますが,これにつきましては,①,②とも,本文に書いてあるところにつきましてはさほど御異論はなかったのではないかと。①の米印の部分につきましては,なお若干議論が分かれたところでありますが,いかがでしょうか。この点につきましてはこういうことでよろしゅうございますか。特に新しい御意見ありませんでしょうか。  それでは,先に進ませていただきまして,(2)でありますが,あえて改正の必要はないのではないかという御意見もありましたけれども,この点についてはいかがでしょうか。  たしか,有限会社については,これは規制はないんですよね。 ● 私も,あえて削除する必要はないかとも思いますが,そういう要望があればまたあえて異を唱えることもないということで,いいのですが。二つ目の,開催場所の記載を義務づけるというのは,これは開催場所を特定しなければ……,今も「地」だけですのでね,法定されているのは,だから,当たり前のことではないかと。つまり,そうすると,日時,場所,議題を書けと,こうすると丁寧なのですが,そういう意味で,私,本文は削除するにしても,だから二つ目の米印が要るということにはならないので,これも異論があるわけではないのですけれども,あえて,それこそこんなことを追加する必要があるかという感じがするということで,あとはお任せいたします。 ● おっしゃるとおりだと思います。  何か,この点について御意見ありますでしょうか。  まあ,この点についてはそれほど重要な問題でもありませんので,よろしゅうございますか。  (3)も,これも余り御異論はないのではないかと思いますが,こういうことでよろしいですか。  (4)も,これも,ニーズがないという御意見もあったのですが,恐らく認めても悪くはないのだろうと思いますが,株主に不利になるわけではありませんし,これもこういうことでよろしゅうございますか。  それでは,先に進ませていただきます。  2の(1)でありますが,これも御意見はいろいろあると思いますが,(1)の②につきましては,本文については余り御異論はないのではないかと思いますが,前回いろいろ御異論があったのは米印ですね。この点につきましてはいかがでしょうか。特に米印の一つ目の方がいろいろ御意見のあったところかと思いますが,何か御意見ありますでしょうか。 ● 全体としての過失責任化の中で整理していくということで,基本的な方向は賛成なのですが,やはり,米印の1番目にありますように,利益相反取引によって自分自身が利益を得ている取締役について,その利益の吐出しを命ずる,これについては,過失,無過失を問うまでもなく,当たり前のこととして,命ずるという精神は明確にしておいた方がいいのではないか。結局これは,忠実義務というものをどう考えるのかという議論にもつながると思いますが,そのようにはっきりさせておきますと,こういうものについては例えば責任の軽減というものもあり得ないのだとかいった整理がしやすくなるのではないかと思うのですが。 ● 恐らく,個人的な利益を取締役が受けたときについては○○委員のおっしゃるようなことで余り異論はないのではないかと思うのですが,直接取引した相手方が会社で,それを代表した代表取締役,取引相手方の代表取締役についてどう扱うかについて,前回,たしか○○委員から御異論があって,それは免責しても悪くはないのではないかという御意見だったと思うのですが,そうなると,相手方の会社自身はやはり……。 ● 前回の○○委員の御意見でもう一つ,私も考えたのですが,第三者の利益を図った場合であっても,そのことを通じて御本人が得た利益に限れば,吐出しの対象をそのように限定すれば,話が一貫するのではないかと。それで,それ以外のものにつきましては全部過失責任でもって処理していくということならいかがなものかというように考えた次第です。 ● ほかに,そのような論点につきまして,いかがでしょうか。御意見をいただければと思いますが。ここでは,「等」というふうに何かごまかしてありますけれども。  では,なおこの点は,事務局にも詰めていただきまして,皆さんにも,これとこれというふうに具体的に意見を固めていただければと思います。 ● ここでも,「なお検討する」とあるのですけれども,今の過失責任化の米印の「なお検討する」。それで,それ以外にも,最後の方にも,第4の6でも「なお検討する」と出てきて,そのときの,先ほどの○○幹事の御説明は,今回の商法改正では取り扱わないものを「なお検討する」的な表現をされているのですけれども,「なお検討する」というのは,そういう意味で全部統一して使っていないような気がするのですけれども,いかがでしょうか。 ● おっしゃるとおりでございます。 ● いろいろあるわけですね。 ● いろいろございます。 ● ここは検討することは間違いないんですね。何らかの結論が出されることは間違いないと思うのですが,まだはっきりした着地点が必ずしも見えてこないという,そういう意味の「なお検討する」だと思います。  ②に移ってよろしいでしょうか。この点は全体を通じて余り御異論はないのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ● この点につきましても,もしも無過失責任としての利益吐出しの義務というものを残すということになりますと,266条の6項に相当する規定が,どうしてもなければというほどではないのかもしれませんが,あってもそれなりに合理的なのではないかというように思いました。 ● 無過失責任が残るものについては……。 ● そうすれば,その部分についてということです。 ● 分かりました。  ほかに御意見ありますでしょうか。--よろしいですか。  それでは,先に進ませていただきまして,③ですが,これは現在の有限会社法とはちょっと違う取扱いが書いてあるようでありますが,いかがでしょうか。これは本日出てきた新しい論点のようですので,是非御意見をいただければと思いますが。 ● 私は賛成です。 ● 要するに,これは現行法よりも規制緩和されるというのか,責任が重くなるというのか。現在は,特別決議でやって,しかも,もし特別決議があれば完全免責なんですね。それが,普通決議になるけれども責任が残るということに変えようということなので,かなり違ってくるのですが。  ○○委員は賛成という御意見ですが,ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 私も,別にこれで絶対だめだとは思わないのですが,むしろ,これについては,有限会社の実務がこういう問題についてこれまでどう運用されてきたかということも合わせると,○○委員がおっしゃいましたように免責されることになりますので,七,八人ぐらいの社員株主がいるだけにすぎないところで頭数と持株数とで事前にやっておいたら,少なくとも株主サイドからはがたがた言われないというのも一つの合理性があって,これだと,総株主の同意が必要ということにならざるを得ない。もちろん,過失責任化されますと例の軽減の適用がありますが,総株主の同意がなければいかんとなるとちょっと重いのかなと思いますので,私は,特に反対ではありませんが,中小企業の方の御意見をお聞きした方がいいのかなと思ったりもするということです。 ● もちろん,実務上の取扱いということも十分考慮しなければいけないと思っておりますが,これはもともと立案の際には,先ほど○○委員がおっしゃられたような一部免除制度を有限会社の取締役に導入するとした場合の整合性がまず理屈の面としては一つあって,もう一つは,免責とは法文には書いていないわけですけれども,その免責という意味合いがそもそも現行法上どういうことなのか。具体的にある一定の取引について社員総会で事前承認したとしても,その取引を行うに当たって善管注意義務違反が問われる場合というのはあり得るだろうと。そうすると,その免責というのは,どこまでの範囲を免責しているのかとか,どういう承認を内容としたかによって変わってくるものだってあるだろうし,そこのところがよく分からないというところもありまして,そういうことであるならば,統一的に一部免除制度と合わせた形で整合性を図った方がいいのではないかという趣旨での御提案でございます。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● この③の点については,本文はこのとおりでいいと思います。小規模な閉鎖会社で取締役が支配株主を兼ねているような場合に,株主総会で承認したからといってどれだけの意味があるのだろうかという気もするのですけれども,ただ,①,②,③全部含めてこうなると,承認を得た場合と得ない場合との責任の違いは一体どこにあるのかというのが不明確になってくるような気もするのです。特に,承認を得るようなインセンティブを与える,あるいは承認を得ないことに対してはより重いサンクションが与えられるとかいうふうになっていた方が,規制としては整合的であるような気もするので,それを明文で書くのか,解釈論で済む話なのか分かりませんけれども,承認を得た場合と得ない場合の違いということについて,少し詰めて議論する必要があるのではないかと思います。 ● その問題は出てましたっけ。  今の○○幹事のおっしゃった,承認を得ることのインセンティブ等の話は,つまり証明責任等の関係は,2の(1)①の一番下の米印がそうなんだそうです。  重要な問題を御指摘いただきまして,ありがとうございました。  それでは,この③につきましては,○○委員がおっしゃったように,ちょっと中小企業関係者がお帰りになっておられますので,次回,改めてこの問題はまた御議論いただきたいと思います。  (2)はいかがでしょうか。これについても,前回いろいろと御議論があったところでありますが。先ほど○○委員から御指摘がありましたが,委員会等設置会社ではこのようなことになっているわけですが。 ● 委員会等設置会社の責任の制度を設計するときに,余り過酷にならないということを,この規定を設けないということでもってある程度確保されようとしたというところがあるかと思うのですが,よく考えてみますと,266条の2項というのは,たとえこの規定が置かれてなくてもこのように解釈するというのが自然であるほどの内容のものなのではないかという気もいたします。それから3項も,政策的にこの扱いは妥当なのではないかということが感じられるわけです。  したがいまして,委員会等設置会社で一つ決断はしたわけですが,今回は改めて委員会等設置会社も監査役会設置会社もそろえて制度を設計し直すという規律一本化の形で設計し直すということを考えましたときに,先回はこの選択肢をとったということに余りこだわることなく,もうちょっと考え直してみた方がいいのではないか。むしろ,いろいろなところで過失責任というものを原則とするという大きな筋を一本通しますと,この2項・3項の取り扱いでもって処理しなければならないという部分は減ってくるのではないかと思うのですね。正にこの(3)の問題も絡むと思うのですが,基本的にはすべて取締役が義務に違反した場合には債務不履行責任であり,過失責任,帰責事由の有無ということでもって調整弁があるということを前提にしますと,この266条2項・3項のような,ある意味では当たり前,あるいは政策的に妥当な規定をそのまま残しても,特別に過酷だということにはならないのではないかというようにも感じたりする次第です。 ● 266条3項は,確かに無過失責任がなくなっても意味はあると私も思うのですが,どうも2項は,これは無過失責任を前提にすると非常によく分かるのですね。行為をなしたものは無過失責任だよという規定があると,決議に賛成した者はなしたものとみなす,それは要するに,決議に賛成していれば無過失責任だよと,こういうことで,政策的にいいかどうかは別にして,意味はよく分かるのですが,過失責任になったときは,何か私にはよく分からないのですね,2項というのは。  といいますのは,例えば,取締役会で設備投資何億円まで認めますという承認をしたと。その後,代表取締役が具体的な設備投資の行為をするわけですが,決議のときから大分経済情勢が変わっていて,普通なら途中で中止するところを,どんどんその代表取締役が続けたと。そうしたら後で訴訟になって,決議に賛成した取締役も訴えられて,そのときに,決議に賛成したときは私は過失がなかったと思う,そういう経済情勢だったのだからといっても,いや,それはだめですよ,あなたは行為したものとみなされているのだから,設備投資をした社長とその面では同じなので,設備投資を続けたことについて無過失であることを立証しなさいと,そういうふうに言われてしまうというのは何か変な話で,私は,どうもやはり2項は,何らかの過失推定をするのであれば,もうちょっと違う書き方があるのではないかという気がするのです。 ● 確かに,「決議ニ基ヅキテ為サレタル」という言葉の読み方次第では,今,○○委員がおっしゃったような解釈に自然になってしまうような側面もあるかと思いますので,ここの表現は考えた方がいいところがあるのかもしれませんが,例えて言うならば,違法配当の決議をしたということであれば,それは当然に,その決議に賛成したる取締役はその行為をなした,違法配当をしたとみなしていいのではないかと思うのですが。 ● 違法配当のような行為だと割とよく分かるのですけれどね。 ● 分かりますね。取締役会決議事項であるというか。 ● 確認ですが,この(2)は,利益相反にかかわらず,一般論ですね。ですから,266条1項5号についても今はかかっているわけですが,少なくとも1項5号については,3項は推定規定ですから別ですが,2項について,任務懈怠責任について行為者とみなすことの意味も,私にはよく分からない。今おっしゃった違法配当だとか,次の(3)で問題になるような権利行使だとか,あるいは場合によっては265条の場合もあるけれども,この(2)は,一般的に1号から5号について2項・3項を適用するのは排除して,あとは個別に検討しましょうというものとして理解していいのか。特に,(3)が「設けない」となっているので,全部否定する気かなと思うと,(2)の米印では,同様の取り扱いだから,265条についてはこの2項・3項を残すという趣旨ということで。だから,この2項の意味と,○○委員がおっしゃるように,1号違反については委員会等設置会社でも再検討の余地があるのかもわからないとか,いい悪いは別にしまして。だから,私も,1項5号責任について2項は要らないんじゃないかなと思うということだけを当面申させていただきます。先ほどの○○委員の御意見もそういう御趣旨だったのかと思うのですが。 ● 確かに,おっしゃるように,1号とかそういうものについてどういう形の規定が残るのかということにかかわってくるのかもしれません。 ● 質問させていただくと,先ほど,どなたかの御意見で,2の(1)の①の2番目の米印の「所要の整理」の内容が具体的にどうなるのか分かりませんが,これに差をつけるとなると,承認を得ていない場合よりも立証責任は緩和されるというインプリケートがここに入っているということなんですかね。しかし,現行法は立証責任を転換しているわけですね。だから,その「所要の整理」で,現在,事務的にお考えになっていることと,(2)の米印の「委員会等設置会社以外の会社についても,同様の取扱いとする」という趣旨との関係をちょっと御説明いただけたらと思ったのですが。あるいはこっちが誤解しているのかもわかりませんが。 ● 非常に難しい……。利益相反取引なんかについて,承認を得た場合と,承認を得ない場合とあるわけですね。承認を得ていない場合は,無効というのはあるのですが,そのほかに責任の問題がありまして,それについて,それぞれどうするかと。つまり,承認はあったけれども実は不公正な取引条件であったという場合もあるわけですから,そのときの立証責任をどうするのかと。承認を受けることのインセンティブということになると,承認を得た場合については過失の立証責任があっていいのだというようなことになりそうですが,しかし,利益相反取引であることを分かっていて注意しなかったのはけしからんので,やはり取締役側が無過失を立証すべきだという考え方もあるでしょうし,意見はかなり分かれるところだと思うのですが。 ● 難しいから,「所要の整理」というふうに2(1)①の2番目の米印ではなっている。しかし,「所要の整理」のときに,ふと,今,○○委員がおっしゃったような整理になるのかなと思うと,(2)の米印では,過失の立証責任は転換すると,ここでは断定的になっていますので,そうすると,「所要の整理」の枠はどれだけあるのだと。そこで○○幹事の御質問にもう一回帰るなと。だから,これは「所要の整理」だから--時間もないことですから,三読で結構なのですが,ちょっと……。 ● この部分は,私も,こう割り切っていいのかなというのはちょっと問題だとは思っていたのですが。 ● 前にこの問題を扱ったときにも発言したことの繰り返しなのですが,この規定の沿革等から考えると,昔は民法の一般理論との関係がはっきりしていなかったこともあって,決議に賛成しただけの取締役が,一体その決議に基づく行為による会社の損害にどこまで責任を負うかということについて,少なくとも古い時期ははっきりしなかったらしいですね。そして,場合によっては,因果関係がないというような議論もあり得る。例えば,支配的な社長がいて,自分が投票した,あるいはしなかったからといって結果は変わらないではないかというような主張,これは多分,現在では解釈論としてはそうはならないのだろうとは思うのですけれども,どうもそういう疑問を封じるということで入ったのではないか,ちょっとはっきりはしないのですが,という感じがしていまして,そういう意味であれば,今でもあってもいいのではないかと思います。解釈としてもそんなことをわざわざ規定しなくてもいいということであれば,規定を削っても構わないかとも思いますけれども,あっても本来は害のないというか,○○委員がおっしゃるように,その限りでは意味のあるものであったと。○○委員のような御懸念も,やはり解釈でそうは当然にはならないのではないかという感じはしております。ただ,もしか問題になるとすると,次の利益供与の方を無過失責任として残したときにこれが引っかからないかということが,これは別の議論の場でも問題になったところなものですから,それに差し障ると困るなという気がするだけです。ただ,その方については,またそれを残しても,米印の例外を認めるということであれば,問題はないのではないかと思っております。 ● なかなか難しい問題があることは確かです。 ● 1点だけ補足させていただきますが,丸めてしまったところですけれども,前回の資料のときには,一応a案からd案まで示させていただいて,それは今の委員会等設置会社における過失の立証責任のところの扱いを踏まえてどう整理するかというところを提示させていただいたもので,ちょっといろいろ細かいかなということで今回は絞ったわけですけれども。現行の委員会等設置会社においては,承認を得た場合についての過失の立証責任の転換,当然,得ていない場合については,これは不完全履行の立証としても得ていないということを立証するということは,ある意味でそれほどの負担ということは考えられず,それを立証さえしてしまえば,相手方が帰責事由の不存在を立証することはほとんど不可能であろうという,そういう前提で今の委員会等設置会社の過失の立証責任の分配というのはされていると。だから,それを維持していいのか,それとも,そこまで細かい手当てをしなくてもいいのかといったような論点がございまして,そこを丸めたということで,そこをもうちょっときちっと明確に整理するということであれば,していくべきかというふうに考えております。 ● 現在の266条の2項に当たる問題については,これが,決議に賛成した者については何らかの立証責任なり何なりで特別な取扱いをする必要があるのかもしれませんが,そうだとしたら,それなりの規定をつくってもらいたいので。とにかく,「其ノ行為ヲ為シタルモノト看做ス」というのは,何だかいかにも変な解釈問題が出てくるんじゃないかなという気が私はいたしますので,○○委員がおっしゃるような趣旨でしたら,やはりもうちょっと文言を工夫していただきたいなというのが私の感じなのですが。  2項について,実質については余り皆さん意見は違わないのかもしれません。表現の問題なのかもしれないですね。  2項・3項を一緒に書いてありますけれども,同じなのかどうか。3項はある意味では当たり前なのかもしれないですね。規定はなくても,そういうことで解釈上当然そうなのかもしれません。 ● ○○幹事に確認させていただきたいのですが,承認を得た場合と得ていない場合とで,その承認を得ることのインセンティブというものをどう整理して盛り込むというか,どう考えるのかという御質問がありましたけれども,具体的に,例えば実体的な過失責任規定を書くに当たって,そこはどういう点を盛り込むべきなり考慮すべきというふうに……,こちらで検討するに当たって,もうちょっと具体的にいただければと思います。 ● 私,確とした考えがあるわけではなくて,ただ,承認を得たら過失の立証責任は原告の側に移りますとかいうことを言っているわけではないのですけれども。承認を得ても被告の側に立証責任があるというのは,それはそれでいいと思うのですけれども,承認を得ない場合には,それよりももっと責任は重くてしかるべきではないかと。  先ほど,承認を得ていないことは不完全履行だから,それさえ立証すればいいのだというふうに。ただ,承認を得なかったということと,損害が生じたということは,本来直結しないはずですよね。損害が生じたということについては,やはり原告の側で,取引条件が不公正だったというようなことを言わないといけなくなるのですけれども,そういうことはなしにして,正に承認を得なかった,265条違反だったということだけで責任を基本的には負わせるということにすれば,それはそれでいい方法かなと思うのですけれども,そのためには何か明文の規定が必要ではないですか,というようなことです。 ● ○○幹事の御懸念も,条文を字面だけで見ていると確かにそういう心配が出てくるように思うのですが,承認を得ていない場合には,何しろ手続を守っていないということですから,これは非常に主張立証のしやすいことであるわけですね。かつ,その損害につきましても,損害額の推定の規定が競業取引についてはかかってきますし,それから利益相反取引についても,それが無効であることを前提に,しかし,無効だ,原状回復だとできないということを前提に,それにかわる損害賠償ということになりますから,それほど損害額の主張立証も難しくはないのではないかと。  これに対して,承認の手続はきちんと踏んだ,しかし内容的に不公正だということになりますと,この実質的に不公正だということは,やはりそういうことを言う側の方で言っていかなくてはならないのではないか。これは結構難しいのではないかというように考えますし,でも,それによって実質的にあなたはこれだけの利得を得ているのだと言って初めて,その利益の吐出しを請求できることになりますので,解釈の問題としてもそんなに困らないのではないかと私は思っているのですが。 ● まあ,これは解釈論になりますと,それこそ一日中やっていても終わらない可能性もありますので,いろいろ問題点を御提起いただきましたので,これもなお検討させていただきます。  (3)は,これもいろいろ御異論あるところだと思いますが,いかがでしょうか。 ● この際,思い切って全部過失責任ということで,理論的にはその方がすっきりいたしますね。実際にあるかといいますと,やはり利益供与なんかの場合については過失はあるということでございましょうし,あるいは故意ということでございましょうから,わざわざこの点は手をつけ難いというようにちゅうちょしなくてもいいのではないかと最近は思うようになっています。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。  それでは,そういう御意見もいただいたということで,先に進ませていただきます。  (4)でありますが,①,これも前回,いろいろ御議論があったところでありますが,これは,前回,たしか○○委員が強くおっしゃった点なのですが,今日はおられないので。ほかの委員の方,何か御意見ございますか。 ● イギリスなどの制度を見ると,日本のこの欠格事由というのは甘いのではないかと。つまり,会社を使った詐欺をやったような場合について,イギリスなどはかなり欠格事由を広く,実質的に,資格を剥奪するという制度があるわけで,我が国の,罪を犯してという,執行が終わって何年とか,こういう規定というのが本当に甘過ぎるケースがあるのではないか。もちろん,これでいい場合もあると思うのですけれども,緩めることばかりではなくて,やはりもう少し欠格事由を強化する方向,これはもちろん罪の種類を加えるというわけですが,やはり重大さに応じてそれなりに年数が変わってもいいんじゃないかという気がするのですが,いかがでしょうか。 ● この②よりももうちょっといろいろ考えるべきことがあるのではないかという御意見だと思いますが。 ● つまり,追加するだけではなくて,罪の重大さに応じて欠格期間を少し変えるとか。もちろん,どこがよい落としどころなのか分からないのですが,やはりその辺,何か気になるのですが。 ● たしか事務局でもイギリス法は勉強されたと思いますが,何かありますか。特にコメントがなければいいのですが。  では,②につきましては,○○幹事の御指摘も踏まえて,なお検討するべきところがあるかどうかを事務局に考えていただきますが,①については,ちょっと○○委員が今日はおられないのですが,①について,前回,かなり御意見をいただいたのですが,つけ加えて御意見ありますでしょうか。--それでは,今日のところはこれでよろしいでしょうか。  それでは,先へ進ませていただきますが,(5)であります。これは,たしか○○委員が実務のニーズを調べてみるというふうにおっしゃったような記憶があるのですが,いかがでしょうか。 ● まだ現実に利用しているところがあるという程度のことはこの前御説明したとおりなのですけれども,共同代表制度がなくなったときにその会社として致命的な問題があるのかどうかについては,まだその会社の--結構ですよとはその会社はなかなかおっしゃらないだろうと思うのですけれども,だから聞きにくいのではありますけれども,まあそういう状況であります。 ● ほかに何か御意見ありますでしょうか。  それでは,こういう形で意見照会してみて,その会社が絶対困るというふうに言われるかどうか。 ● そうですね。 ● では,(6)でありますが,これは,前回,いろいろ御議論いただいたところであります。基本的にはこういう制度が認められるにしても,濫用に対する歯どめが何か必要なのではないかというような御意見もあったところでありますが,いかがでしょうか。 ● 取締役会の審議機能というものを重視した方がいいと思いますが,先回以来いろいろ御議論があり,需要も高いというお話でございますので,本文のような方向で検討することもやむを得ないかなと思いますが,是非,米印の二つ目の方は確保していただけるようにというふうにお願いしたいと思います。 ● 前回も,複数の委員の方から,この米印の二つ目については特に御意見があったところかと記憶しておりますので。  ほかに御意見ありますでしょうか。  特に米印の二つ目については,これはこういうことでは困るんだという御意見はないと思うのですけれどもね。濫用の歯どめはもちろん必要だと思いますので。 ● 決議事項は書面でもいいのに,報告事項は書面であってはだめだというのは,何か……。濫用防止は分かるのですけれども。 ● 年に何回かはやってくださいよということを……。 ● もちろん分かります,その点は。  それであれば,年3回以上は開催しなければならないとか,そういう規定の方がまだいいのかもしれません。 ● 趣旨はそういうことだと思うのですね。3か月に1度ぐらいやってくださいよという。その点については余り御異論はないのではないかと思いますけれども,ちょっと規定のしぶりは工夫する必要があるかもしれません。  では,この点も,そういう方向で案を練ってみるということでよろしいでしょうか。 ● これは既に議論があったのかもしれませんけれども,委員会等設置会社の場合には認めないという前提が入っているのですか,これは。取締役会の書面決議が,ここに書かれているものだと,従来型の会社を前提に書かれているのですが,委員会等設置会社の取締役会については,これは認めないという趣旨を含んでいるのかどうかという質問です。 ● そういう趣旨ではございません。 ● 確認なのですが,「決議の目的である事項につき……同意をし」とありますが,これは議案の内容についてという御趣旨で,あと法文にする場合には253条のような形を整理される……。向こうも「提案」という言葉が出ていると思うのですが。それとともに,議事録とか何かの関係では,やはり253条の1項の1号・2号的なことも配慮されるということに,これは細かなことですが,それと同じような形になるということですね。 ● それから,「かつ,各監査役が特に意見を述べることがないときは」,この部分は,例えば監査委員会がそうなるということになるのですか,もし委員会等設置会社にこの規定を及ぼすとすると。 ● その場合は,取締役でもということです。 ● 委員会等設置会社につきましては,ちょっと表現を考える必要があるかと思います。 ● あと,一つ目ですが,これ自体は解釈論としてもほぼ認められて……,株主総会の報告事項の話ですが,もしこれを法文化する場合には,明定した方が手続がきちっとなるかなと思ったけれども,同意をするというのは要するに質問がありませんという意思表明にすぎないので,これは明文の規定を置いた方がやはり実務が安心する,更には理論的にもきちっとした要件が定まっていいという,こういう二つの面から御提案されているというふうに理解していいわけですか。 ● そのとおりです。 ● その意味では,ひょっとすると規制強化になるかもわからんという……。 ● その規制強化とおっしゃられる部分は,具体的な手続がきちっと定まってしまうことによってということですか。 ● つまり,定時総会だと,今だと議決事項についてやっておけばいい,そして,事実上,報告事項について特別のことをとらなくてもいい。通常の場合,それが利益処分の前提ですからね。でも,これだと,報告事項についてもきちっとしなさいという形で明確化するから,あるいはいいのかなと思ったけれども,何となく,そこまでしなければいけないのかなと思いましたので,お考えをお聞きしたいということです。 ● 確かに,そういう解釈論がこの平成14年改正にはあるということは承知しておりましたけれども,我々事務局内部でも,果たしてこれできちっと文言上読めているのかという疑念がございましたし,ここでの議論におきましても,たしか○○委員から,実務上も,リーガル・アドバイスするに当たってここはかなり悩むところが多いというような御指摘を受けましたので,それでしたら,きちんと明確化しておくということに意義はあるのではないかということでの提示でございます。 ● 今,ちょっと私の名前が出ましたから。  前に申し上げたことの繰り返しみたいになりますけれども,この253条の総会の手続は,文言が「総会ノ決議ノ目的タル」と書いてあるものですから,その点から本当に文言解釈だけでいくと,報告事項についてはどうなのかという疑問が出てしまうというレベルの問題でありまして,この解釈の問題としては,決議の前提になる報告事項について特に異存がなければ,異議の申出がなければ当然に書面だけの総会でいいだろうという解釈も可能だと私は思うのですが,実務的な安全性という面から見ますと,文言的に見て,報告事項もやるのに総会を開かなかったのはおかしいではないかというクレームが後で出ると非常に困るものですから,安全を見越して,先ほどのようなアドバイスをせざるを得ない部分があるということを御指摘しただけでございます。  そういう意味では,例えば総会の会議の目的たる事項につきということにしてもよろしいし,特に報告事項について質問がない場合はというふうにわざわざ規定すると,質問する人が出てきてしまいますから,かえって有害無益だという点があると思いますので,その辺は,現行の文言の書面あるいは電磁的記録,それで同意があったときはという前提の中に,決議の目的たる事項と報告の目的たる事項と両方含まれるような形のさらっとした表現にしておけば,そういった疑問も氷解するだろうというふうに思っております。 ● 細かなことですが,そうすると,1号・2号は報告事項についてはどうなるのですか。これは株主側からの書面ですね。そこら辺のことで,まあ,大らかにすればいいといったら大らかに解釈でしたらいいと思うという,それだけのことで,反対しているわけではないのですが。 ● 1号は,これは決議事項ということだと思うのですが,何も提案があるわけではないのですが,これに報告事項も含めるという形で,取締役からの報告の内容,それから,取締役又は株主の提案の内容というような形で包括しておくという形であれば,それに対して積極的な異議がなければ書面でもよろしいという扱いができるのではないかという,非常に細かい問題ではありますけれども,実務的にはその辺の疑問が氷解する方法をとっていただくとよろしいのではないかなというレベルの問題です。 ● 議論の中での確認なのですけれども,米印の二つ目の「なお検討する」というところについては,そうではなくて,必ず年に1回かどうか分かりませんけれども,取締役会を開催するということを前提として上のことを述べるというふうに今後はまとまるという解釈でよろしいですか。 ● はい,今の議論の方向はそうです。  ○○関係官も,結局,米印の一つ目に書いてあることは,今,○○委員のおっしゃったようなことを規定するということですね。 ● そうです。 ● 実質はそういうことですね。  ○○委員も,そういうことであれば。 ● 反対しているのではないのですけれども,何かきれいな規定ぶりになるのかなと不安だという,ちょっとおせっかいをしているだけの話なのですが。  進んでいただいて結構です。 ● それでは,先に進ませていただきます。  (7)でありますが,米印につきましていろいろ御意見があることは承知しておりますが,ちょっと事務局も,これは余り検討しない「なお検討する」という趣旨のようでしたけれども。 ● 社外取締役の定義がかなり形式的なまま残るということになりますと,なおさらのことですが,小規模閉鎖会社の場合などには,すべて登記事項にするとかえっておかしなことも生じかねない部分が出てまいりますでしょうし,そういう意味で,登記事項から削除するものとすること自体に反対なわけではないのですが,しかし,やはり何らかの形で公示がきちんとされるということは必要なのではないかと思いますね。やはり大規模公開会社についてはその点がはっきりするようにということになりますと,例えば選任議案に関する参考書類規則の方での手当てをきちっとしておく。あるいは,この場で議論するのが適切かどうかということはありますけれども,有価証券報告書などにおいてはそのあたりを明示させるというような検討ができればと思うのですが。 ● 御指摘ありがとうございました。その点は事務局にももちろん異論はないわけですが。ありがとうございます。  ほかに御意見ありますでしょうか。  それでは,先に進ませていただきまして,「(8) 株主代表訴訟制度」,これについては,フリー・ディスカッションをしてくれということなのですが,是非お願いいたします。 ● いろいろございますけれども,特に今回是非取り上げていただいた方がいいと思いますのは,ハの「株主代表訴訟の原告適格の見直し」の部分であり,多段階代表訴訟の問題,あるいは既に代表訴訟を起こしている場合に株式交換,株式移転が行われた場合の問題等については,やはりもう手当てをせざるを得ないような状況に今なってきているのではないかと思います。これはもう,立法がなされなくても,ある程度のところまでは解釈で対応できる,あるいはすべき問題なのではないかと思いますが,原告適格を失うという方向での判例がいよいよ固まりつつありまして,相次いでおります。このまま放置しておくことはやはり望ましくないことだと思いますので,是非,今回の改正でこの点を取り上げていただくようにと思っています。 ● 今の問題につきましては,多段階の問題でありますけれども,子会社の不始末について訴えなかった親会社,すなわち自分が直接株式を持っている親会社の取締役を不作為ということで訴えていけばいい。それから,株式移転,株式交換があったときの問題も,特に判決が出ているような場合において控訴審に行っているような場合において,どうして,親会社の取締役が株式交換した後の取締役を訴えないことを株主が放置しているのか,このあたりも非常に理解に苦しむところではあるのですけれども,そういうような不作為を訴えるというふうなことでやっていくので十分ではないかと前々から言っているとおりでありますけれども,○○委員は,規制強化の面での代表訴訟制度の改正を今取り上げていただいたわけでありますけれども,当方といたしましては,是非,ロもハもあるのですけれども,特にイ,訴訟委員会制度の導入について,「なお検討」の「なお」は,今回の改正での「なお」という意味で,具体案を設計していただきたいと強くお願いしたいところでございます。 ● 訴訟委員会制度といっても,これもいろいろ内容的にはバラエティーがあり得る問題だと思いますので,具体的に○○委員の方からも積極的に御提案をいただければ。 ● 分かりました。 ● ほかにありますでしょうか。 ● 具体的なアイデアは,これは幾らでもまた出します。是非,この機会に検討をするということをお願いしたいと思います。 ● ほかに。 ● 訴訟委員会には多義的な意味合いがありますが,例えば,こういう制度を設けた場合には会社がする和解についても恐らくここがかかわるとかいう形で,現行の和解制度よりも,経営者側からある意味で遠くなるような制度設計になることになると思うのですが,そういうことも含めてお考えになっているということでいいわけですね。 ● ほかに。 ● まず,○○委員が御指摘になりました,株式交換等によって代表訴訟の原告適格を失うという問題は,やはりこれは看過できない問題だろうと思います。  一つは,既に提訴されている場合について,原告適格を失ってしまったたくさんの事件のようなことは,やはり司法制度そのものの信頼を失わしめるということになっておりますし,大和銀行の事件の和解を見ても,あの和解内容は極めておかしい内容でありまして,少なくとも故意の責任もあれには含まれていたわけで,特に3億4,000万ドルの罰金をアメリカから科せられたのは,あれは故意に対する責任ですが,それでありながら,結局,全体で1億数千万の和解金で終わってしまって,これは明らかに,株式移転によって原告適格を失うというプレッシャーのもとで初めてできた和解だと思いまして,そういうことが起きるということ自体,司法制度への信頼をなくすことになりますので,まず,それに対する適切な制度ができる必要があると思います。  ○○委員がおっしゃいました,親会社の取締役の責任を追及したらいいというような問題,これは一つの筋だとは思うのですけれども,ただ,そうなりますと,ビジネス・ジャッジメント・ルールなんかがかぶってくることになって,実際上,かなり責任追及が厳しくなる面がどうしても出てまいります。  そういうことを考えると,多段階の代表訴訟を認めるなり--アメリカは判例上そうなっているわけですけれども--あるいは,仮にそういうのを認めないにしても,親会社の責任を追及しやすくなるような責任法制の方の工夫等を考える必要があると思っていまして,何らかの形で,少なくとも株主が問題のあった取締役の責任を追及するチャネルがちゃんとあるのだと。本当に責任のない取締役は,これは責任追及してはいけませんけれども,本当に問題のある取締役については,責任追及がやはり何らかの形でちゃんとあるのだということをつくっておく必要があるように思っておりまして,そのための工夫は是非必要だというふうに思っております。  それから,その他一番問題になりますのは訴訟委員会のところでございますが,経済界からいろいろ御意見があることは十分承知しておりますが,○○委員御指摘のように,ではどのようにして入れるのか。特に,責任免除の規定を13年改正に入れましたので,それと整合性を持った制度としてどのようなものなら果たして可能なのか。かつ,制度の趣旨として広く世間に受け入れてもらえるようなものとしてはどんなものがあり得るのか。さらには,裁判所としても受け入れやすい,あるいは運用しやすいものでないと,制度としてつくってもなかなかうまく機能できないことになると思いますので,そこはよほど知恵を絞る必要があるのではないかと思っていまして,○○委員が御提案いただくなら,そういうことについてなるべく知恵を働かせたものを出していただけたら,こちらとしてもいろいろ考えてはみたいと思いますけれども,そういう工夫が必要かと。  意見照会をするときにも,単にレッテルとしてだけ「訴訟委員会どうですか」と聞かれても,余りいい反応が返ってくるとも思えません。ただ賛成,あるいは逆に反対というのしか出てこないと思いますので,その聞き方はやはり工夫する必要があると思います。  それとの関係で,このイ,ロ,ハ,ニのニの「担保提供手続の見直し」というのは,これはどういうことを……。これは何か経済界の方からですか。よく分からないので。確かに担保提供についていろいろな議論があることは存じていますが,かといって,それにかわるいい知恵が今出ているわけでもないような気がしておりますので,ここでどうしてこのニが挙がっているのかというのが伺えたらと思った次第です。 ● 担保提供につきましては,具体的にここをどうこうすべきというニーズというのは経済界等からはいただいていないのですが,例の判例法理上の,今は悪意となっているそれを,法制的にもそれで悪意といったときに,例えば過失を含むのか,様々な判例法理上の問題点があって,判例も分かれてきていると。蛇の目ミシン判決をベースとしてはいるものの,いろいろなバリエーションもあり得るという中で,現代化という課題に当たって,ここをどういうふうに要件を位置づけるのかというのは,裁判所などと話している中においても,当然,そういう指摘はあるところでございます。 ● いろいろ御意見をいただきましたけれども,ほかにありませんでしょうか。 ● 訴訟委員会制度を議論することは,私は,すべきであろうとは思いますけれども,それとの関連で,(7)の社外性の要件の見直しというのの「なお検討」の意味合いが,限りなく「なお」であるというようなことだとすると,それとの兼ね合いの中で,訴訟委員会の効力,やはりここを関連づけて議論しないと,かなり強力な制度としての訴訟委員会というのは難しいのではないかという感じがいたしまして,そういう点を考慮した形での訴訟委員会制度の提案がもし具体的に出てくるのであれば,その点について十分考慮した議論になった方が好ましいのではないかなというふうに思います。 ● 正におっしゃるとおりで,これは単に社外取締役の要件だけを強化してもだめなのかもしれないですね。この訴訟委員会に入れる社外取締役というのは,またその上に要件をかぶせる必要があるのかもしれませんし。なかなか検討すべき点がたくさんあることは事実だと思います。  ほかにありませんでしょうか。  それでは,今日は,この点につきましてはフリー・ディスカッションをしていただいたということで,先へ進ませていただきます。  3の「監査役関係」でありますが,(1)でありますけれども,業務監査権限という問題であります。  これにつきましては,たしか○○委員が反対というふうに前回言われたのですね。 ● 私どもとしても,これを一律にというのではなくて,できれば選択によって業務監査権限を付与することができるという形にしていただけたらと思っております。  実態は,中小企業で業務監査まで監査役がやるというのは相当度胸が要る話ですので,かつ,責任と報酬の関係で,せっかく実質的に監査役として会計監査をやっている人も,それだったらちょっと遠慮させていただくということになりかねないので,これをすることによって実質的な中小企業のガバナンスがかえって下がってしまうという懸念もあるので。まあ,私が業務監査やってもいいよという人が見つかれば,それはやっていただければいいということですし,会計監査だけだったらやってもいいよというのだったら,それはそれでいいと思います。  あと,実際には名目的な監査役の方が相当多いので,それで,今度,監査役設置が任意になっても,じゃあ監査役設置をしなくなる,移行する人というのも,移行しない人も結構いるので,そうすると,また実態と規定が乖離して,かえってトラブルのときの思いもよらない責任を追及されて悲惨な結果がいろいろ起こるので,ガバナンスを強化し得るような仕組みということで,任意というか,定款の定めによってそういう選択肢をふやすということではいいと思うのですけれども,一律にやるということだと,かえってマイナスの効果が大きいのではないかというふうに考えております。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。 ● 確認ですが,この監査役は,有限会社で任意に置かれる監査役も一律という趣旨が含まれているわけではないのですか。これは任意,強制にかかわらず,有限会社も株式会社も含めて一律という,こういう趣旨ですね。 ● これも,○○委員がおられませんので,ちょっとこれ以上は議論を詰められないのかなと思いますが,特にほかの委員・幹事の方から御意見ありませんでしょうか。  それでは,(2)に進ませていただきますが,これについては○○幹事の意見書も御参考にしていただければと思いますが。 ● 質問ですが,この問題は,後に出てまいります機関設計の柔軟化といいますか,5の(3)のところと非常に深くかかわってきますけれども,従来,ここでの議論では,取締役会設置会社と取締役会非設置会社とで大きく分けて,その両者の間で非常に大きいいろいろな面での扱い方の違いを認めておりましたね。取締役の任期等もそうですし,少数株主権の要件等その他もそれで大きく分けてきましたが,この考え方は,監査役がなくても,とにかく取締役会があるものについては,従来議論してきた取締役会設置会社としての扱いはやはり認めるということでも,こういった取締役会を認めるということなのでしょうか。 ● この意見はそうなんですね。おっしゃったような,事務局が従来から言っているようなものとこれがマッチしているのかどうかは私は分からないのですが。 ● そうなると,ちょっと従来の議論の質が変わってくるのかなという気もしないではないということなのですけれども。 ● 監査役の機能に非常に重きを置いた議員立法による改正が行われてきておりますので,それらを前提にすると,このような提案をさせていただくべきかどうかについては非常にちゅうちょを覚えるところではございます。 ● その意味で,後で出てきます5の(3)のところも,平成13年の議員立法と果たして整合的なのかというのは実は非常に疑問を持っている次第であります。 ● 私も,監査役を置かない会社があるということ自体はもちろん問題ないわけですけれども,法定の機関である取締役会を設置する株式会社というものを一くくりにしていく以上,やはりここまで緩和するのがいいのかどうかというように思います。事実上複数の取締役を置いて,そして御相談しながら運営されることは自由なわけですから,そうしたからといって特にお困りになるわけではないのではないかと思います。 ● やはりここは米印に意味があって,限りなくスモールな会社においてはこういうことがあるのかなというふうに思いますので,譲渡制限株式会社が小さいかどうかはちょっと分かりませんけれども,更にその下の方のスモールにおいては認めるという範囲内で検討するということなら理解できるのですけれども,上の一般論的な考え方は私はちょっとよく分からないので,書き方を変えたらどうかというふうに思いますけれども。 ● この米印になるとどうかということでありますが,この米印について何か御意見ありますでしょうか。 ● これも前から,取締役会を設置する株式会社というくくりと,譲渡制限がついた株式会社というくくりをどういうふうに規定上整理するかという問題はありますけれども,私どもの立場から申しますと,いわゆる所有と経営が分離していないような会社については機関設計はできるだけ定款自治に任せればいいということですので,その譲渡制限株式会社に限っては--大きい譲渡制限会社はどうするかという議論は残りますけれども,所有と経営が分離していないようなものについては,取締役会の設置も任意だし,任期も任意だし,監査役を置くか置かないかの組み合わせも,それは定款の自治に任せたらいいのではないかというふうに考えています。 ● ほかに御意見ありますでしょうか。  そうしますと,意見照会のときにどういう……。本文だけのあれを認めるという御意見でもどうもなさそうですね。○○幹事も,たしか○○委員も,こういう取締役会を設置している会社でも監査役を置かない機関設計を認めるべきであるという御主張のようですが,何でもかんでもというわけでも恐らくないので……。 ● 二読の第1の機関関係で,譲渡制限株式会社の機関の柔軟化ということで,さっき○○委員がおっしゃったことですけれども,取締役会を認めない,有限会社と実質一緒にしようと。これは,有限会社との関係は最後にえいやっと決まることになることになろうと思うのですが,その中の一選択肢としてちょっと考えさせられると,そうすると,ここで言う取締役会って何なのだと。つまり,二読の第1の「4 機関関係」の(1)の「譲渡制限株式会社の機関の柔軟化」の取締役会を置かないというのは,複数の取締役を置いてはいけないという趣旨ではないわけですね。そして,譲渡制限会社に限ったら,5人を超える取締役というのもまた考えられない,せいぜい多くても二,三人と。そういうときに取締役を設置する意味をもう少し整理すると,何でこんなのが要るのかなと思うのですが,複数いたら,やはり取締役会を開きたいなと,取締役会を開くといろいろと,ということであるなら,それは任意の取締役会で,法定の取締役会とは何なのかを少し議論されて,そういうことをするためには,二読の第1の今言ったところで,米印ぐらいでこんなことを提案された方が分かりやすいのかなと思ったのですが。  ちょっと私,そういう譲渡制限会社に限って取締役会を設置する意義がよく分からないと思いましたので。 ● ちょっとこれは,意見照会をするにしても,書き方はいろいろ工夫する余地があるのではないかという気がいたします。  ほかに御意見ありますでしょうか。  それでは,またこれは書き方を事務局に検討していただきまして,次に(3)でありますが,これは監査役協会からの御意見だそうですが。 ● これは,委員会等設置会社と並んで,特例の大会社に関しての意見なのですけれども,私も,是非こういう規定を入れてほしいなと思っております。  今回,商法規則で,大変立派な,いわば社内管理体制に関する条項ができたと思うのですけれども,この条項は,何も委員会等設定会社だけではなくて,それ以外の大会社においても当然あり得べきことだと思いますので,確かに,それは監査役の下に置くのがいいのか,代表取締役の下に置くのがいいのか,ここは議論の余地があると思うのですけれども,是非とも規定して,そういう立派な管理体制を築くようなことにしていただけないだろうかというふうに思います。 ● 細かな技術的な問題は別にして,一般的な理念としては,こういう声が上がるのは合理性があるなと思うのですが,監査役設置会社におきましては,取締役会も取締役の職務執行の監督権限を有しているわけですね。だから,少なくとも内部統制システム,具体的には施行規則の193条の5号・6号,更には4号あたりのことは取締役会が自ら決めるべきで,これは自分の監督機能を発揮するためのもので,その監督機能を発揮するためのものを,今度は適法性プラス著しい不当性の観点から監査役はチェックされたらいい。それに対して,193条の1・2・3号あたりの,要するに監査体制を確立するですから,この1・2・3号も,ちょっと監査役の場合には範囲が狭まり--つまり,内部統制部門の職務が入らないという意味で狭まりますが,これはむしろ279条の拡大の観点で,ちょっとこの御提案は二つのことを一緒になさっているのかなということで,私,取締役会が内部統制をきちっと--構築義務を取締役会に付与するのは,監査役設置会社でも合理性があると。それに対して,監査役がきちっとした職務を遂行するために必要なものは,279条の規定だけでいいのかを,委員会等設置会社の監査委員会のいろいろなスキームを考えて,少し拡大する必要があるかどうか,これは二つ違った問題ではないかという形で,少し実務的な御検討をしかるべき方にお願いしてやられたら。これは二つ一緒にするとちょっとおかしなことになるなと。 ● おっしゃるとおりのような気がしますね。 ● 私も同じような感想を持つわけでして,内部統制システムをきちっと打ち立てるような方向でもって規制をきちんと整えるということ自体はもちろん賛成なのですが,少し工夫が要るのでないかなという感じがいたします。  少なくとも,取締役会が監査役の職務の遂行のために必要な事項を定めるというのはやはりおかしいわけで,監査役会が監査役の職務の遂行のために必要なことは自分で基本的なところは定め得るはずですから,この表現ではまずいのではないかというように思います。  それから,193条の商法施行規則の方を見ましても,1号から6号までございますが,例えば,4号・5号・6号などは,正に監査役会設置会社であっても必要なことであろうと思いますし,3号もあるいはいいのかなと思いますが,1号・2号みたいなことになってきますと,果たしてそれが適切かどうかという問題もある。監査役としては,事実上御相談して進められるでしょうが,自分たちで必要だと思えば手当てできるはずという仕組みに法律上はなっているのではないかと思いますので,工夫の上,前向きに検討するというようなことではいかがかというように思います。 ● これは,先ほどの事務局からの説明では,何か事務局としては余り積極的に何らかの規定をつくろうということではなくて,監査役協会が言ってきたから出したみたいな言い方だったのですが,それだとすると,もう監査役協会にだけ,議論したけれども○○委員や○○委員からこういう御意見でしたというふうに言えばいいのですが,先ほど○○委員がおっしゃったような,従来型の会社でも,いわゆる監査役設置会社においても,取締役会は内部管理体制に関して何か決めなければいけないというような規定を置くのだとすると,またこれはここで議論すべき話になってきますので。 ● 現行の商法の解釈論については両委員の御指摘のとおりで,そういう制度の枠組みだろうというふうに理解できるのですが,現実の問題としましては,やはり内部統制システムの構築義務の中には,内部監査部門の充実とか,あるいは内部監査の整備という問題が非常に重要なウエートを占めることになるわけですけれども,他方において,監査役もスタッフがいないと監査ができないという問題が事実上ございまして,そうすると,監査役は,今の現行の制度の仕切りでは,自分でとにかく人を雇って,その分の監査費用として会社に請求するという枠組みなので,一応やれないことはないということは確かなのですけれども,一方で内部監査の部門でかなりの人を雇い入れている会社に対して,自分のスタッフとして,大体同じようなことをやるようなスタッフを配置するということが現実的にできるかどうかということになると,なかなか難しいという問題があるのだと思います。  そういう点で,むしろ現実的な解釈論として実は問題になっていますのは,276条の兼任禁止規定との兼ね合いで,内部統制システムとして内部監査部門を仮に取締役がつくっているという場合に,監査役がその内部監査部門にどういうふうな形でつき合うことができるのかという問題が非常に大きな,クルーシャルな問題として出ている。具体的に言いますと,例えば,こういうところを見てほしいのだということを指示することがもしかすると業務執行に関与するということになってしまって,事実上,内部監査部門の部門長的な役割を担わされてしまっているのではないかと。そうすると,それは兼任という形にバッティングするのではないかというようなことで,ちゅうちょしてしまうという形になって,最終的には,ただ単にレポートを受けるという程度で,内部統制システムを外からモニタリングしているというのにとどまってしまっているという現状になる。  それで果たして本当に監査の実が上がるのかどうかという問題が,とりわけ金融機関なんかの場合にはそのことを非常に気にしておりまして,御案内のとおり金融機関の場合には内部監査部門が非常に充実していますので,これを何とか監査役とうまくつなげて,その機能を発揮させることはできないかと,そういう議論があろうかというふうに思います。  法解釈の問題ではなく,うまく運用で賄える問題なのかもしれませんけれども,一応御指摘だけさせていただきたいと思います。 ● 重要な御指摘,ありがとうございました。 ● 何となく否定されそうな雰囲気があったものですから申し上げますけれども,やはり現実の会社において,立派な会社も数多いのですけれども,きちっとした内部管理体制ができていない会社も現実にはたくさんあるわけですよね。それは,委員会等設置会社みたいな会社ではなくて,既存の監査役設置会社において,しかも公開会社においてもかなりあるのではないか。そこにおいて,もし今回の法律改正で心がけるなら,これは監査役協会が云々ではなくて,やはり考えていただきたいなということで,まあ結果がどうなるか分かりませんけれども,文章を変えてでも何でもいいのですけれども,この商法規則の193条の確かに4号以下だと思いますけれども,是非そこを取り上げていただきたいなと思います。 ● それでは,この点は,事務局で,先ほど来,○○委員,あるいは○○委員,○○委員等から御指摘があるような点について考えていただきたいと思います。  それでは,(3)についてはいろいろ有益な御意見をいただきましたが,先へ進ませていただいてよろしいでしょうか。  (4)でありますが,これも新しい問題でありますが,いかがでしょうか。 ● 現行の有限会社的な会社においても,今回の改正によってこの点は変わるというふうにむしろした方がいいのではないか。やはり,会議に出ていってからその場で見せられるよりは,どうせ招集通知をするわけですから,その段階であらかじめ事前に資料を送る方がよろしいわけで,しかも,どのみち作るわけですから,事前に送れということが物すごく負担になるということでもないと思いますので,ここでは区別しないという方向で改正するという決断をした方が日本の会社のためになるのではないかと思います。 ● いかがでしょうか。ほかに御意見は。  ○○委員の御意見は,もう有限会社の方を改正しようということですよね。  これもちょっと実態がよく分からないところがありますが,御意見,いかがでしょうか。  ○○幹事,何かこの辺については。 ● なかなか実務的には今の御意見は難しいのかなというふうに思っております。  有限会社に新たにそういう義務を課すというのは,課すという法律はできるのですけれども,また乖離するなという感じがするので,できれば有限会社の方に合わす方がすっきりするのかなというふうに考えております。 ● 本当に計算書類は送らないですかね,有限会社は。 ● 多分,実態上は,しかるべきときにちゃんとできているかどうかという方が問題だと思うので。余り申し上げにくいのですけれども。 ● 有限会社というのは,ちゃんと税務署に出す書類は作るわけですね。 ● ええ,それは税務署に出す書類は,税理士さんと相談しながらつくられるので,それはあるのですけれども,いつできているかという問題が……。 ● それは決算期から2か月内に出さなければならないということになっておりますから,商法の3か月内よりもむしろ短いわけでございまして,必ずできている。それを社員総会にといいますか,今回,株主総会になるのか分かりませんが,それを見せなくていいということはあり得ないわけで,そして,見せるとするならば,招集通知につけろと言ったからといって問題はないのではないか。そのぐらいの規律みたいなものは会社である以上必要なのだということを,むしろ今後の日本の会社においては徹底していくべきではないかというように思います。 ● ○○委員の御懸念は,もし株式会社でこういうことをしてしまうと,株式会社が今よりも悪くなる可能性もあると。これは,有限会社と株式会社を一本化するかどうかということにもかかわってきますが,もし一本化するときは,どちらかにしなければいけないわけですよね。なかなか難しいところですけれども。  ほかにいかがでしょうか。 ● 有限会社でも,1週間前から計算書類,監査報告書の本店備置きというのが要求されているわけですよね。ですから,有限会社の場合には招集通知は1週間前よりももっと短く,直前でもいいということなので,1週間前にはでき上がっているという建前にとりあえず今の法律もなっておりまして,そうだとすると,○○委員のおっしゃるような提案もさほど無理はない,理論的には無理はないのではないかという気もするのですが。 ● ほかにいかがでしょうか。  いろいろ御指摘いただきましたので,これはなお検討が必要かと思います。  では,先に進ませていただいてよろしいでしょうか。  4でありますが,(1)でありますが,これにつきましては,前回,若干御異論もあったようでありますが,まあ建前としてはこういうことではないかと思いますが,いかがでしょうか。①,②それぞれにつきまして,こういうことでよろしいでしょうか。 ● この①は,こういうことを法律で書き込もうということですか。何か次元がとても低いような気がしますけれどね。  それから②ですけれども,使用人として受ける給与ということ,ある会社の給与体系においては,使用人給与に執行役分を上乗せというふうなところを報酬体系としてとっているところにおいては,使用人の給与体系をこの報酬委員会で決めるということと同義になってくるのですけれども,それはちょっとやり過ぎではないかという気がするのですけれども。ということで,この前申し上げたような気がしているのですけれども。 ● ○○委員がそうおっしゃったことは私も記憶しております。  ただ,やはり使用人の分については報酬委員会は全然権限がないのだということになるのはおかしいのではないかという気がいたしますけれどね。事実上そうなっているにしましても,それは手をつけられない問題なのだと言われると,ちょっとそれはおかしいんじゃないかなという気がいたしますが。 ● 意見照会はこれでしていただいて結構です。 ● それでは,こういう形で意見照会をさせていただきます。  (2)についてはいかがでしょうか。米印が問題でありますが。これは新しい問題でしょうかね。なかなか難しいあれですが,何か特に御意見ありますでしょうか。  もし,この場でなければ,なおお考えいただくということにせざるを得ないかと思いますが。まあ,これは新しい問題ですので,こういう問題があるということを御認識いただいて,ちょっとお考えいただければと思います。  それでは,次,「5 会計監査人関係」でありますが,まず(1)でありますが,設置強制の範囲。  ①につきましては,前回,○○委員の方からいろいろ御意見があったところでありますが,これは「なお検討する」という表現になっておりまして,ちょっとここでなお突っ込んで検討するのは事実上難しいのではないかという事務局の感触なのですが,そういうことでよろしゅうございますか。 ● この場合の「なお検討する」というのは,今回は検討しないという趣旨ですね。 ● そうです。事務局としてはそうしたいということです。 ● 余り職域調整みたいなことはしたくないので,そこは理解しますけれども,全く触れないというか,全くどこの項目にも入れないというのは今の日本でどうかなと思うので,何か手がかりだけは残してほしいなと思うのですけれども。 ● この点について先ほど申し上げました趣旨は,部会の議論がその方向性として一定の案を示すことができるところまで熟してもおりませんし,事務局限りで適当と思われる案をお示しできる状態にはないものですから,ざっくばらんに,この点についての意見照会の結果,何か特定の方向性が示されれば--まあ,どちらかというと政治的な情勢にも関わりますが--それを踏まえて検討するという形にさせていただけないかという趣旨でございます。もとより,この文言につきましてはまた次回以降御相談いたしますけれども,このような形で試案に掲げさせていただくということにさせていただけないかという趣旨でございます。 ● そういう趣旨で御理解いただければと思います。  ②でありますが,これも,前回,いろいろ御議論があったところでありますが,今回は既存のものについては経過措置を講じるということで,方向としては本文・柱書きのような形ではどうかということでありますが,いかがでしょうか。何か積極的にこの点について御意見ありますでしょうか。 ● 是非,本文で意見を聞いていただきたいと思います。 ● では,こういう形で意見照会をするということでよろしいでしょうか。--それでは,そのような方向で進めさせていただきます。  ③でありますが,これも,前回,いろいろ御議論があったところでありますが。 ● 前回申し上げましたけれども,その後もいろいろと内部でまた検討させていただいたのですが,今のホールディング・カンパニーの仕組みの中でいきますと,やはり完全子会社であってもステークホルダーがたくさんいるわけですね。特に,事業をしている子会社が非常に大きい場合には,そこの取引先とか融資先というのがかなりあって,そういう場合には,そこの子会社自体のバランスシートなりPLの正確性というものが意味を持つと思うわけです。それを実体としても押さえていくためには,そこの子会社の会計監査人の設置というものは外せないのではないかということで,この提案については,私は反対です。 ● これも御意見が分かれているところでありまして,現時点ではっきりした決着をつけるのはなかなか難しいと思いますが。 ● パブリックコメントではこういう問いかけをしていただきたいと思います。 ● こういう提案自身をパブリックコメントでされることはいいかと思いますけれども,私も,○○委員がおっしゃるように,無制限にこういうことを認めるということで果たしていいのかという疑問を抱くわけでございまして,もしも親会社の方が,法人格否認等について,要件が緩やかな形でもって責任を負いますというのとセットであれば,完全子会社について会計監査人の設置を強制しないということはあり得る選択かなというふうに思いますけれども,何も条件をつけないでこういう問いかけをすること自体,果たしていいのかという疑問は抱きます。 ● いろいろ実質的な御意見は分かれていることはよく承知しておりますが,意見照会はこういう形でさせていただくということについてはよろしいでしょうか。 ● この米印の方なのですけれども,例えばオランダとかは,親会社が子会社の債務についてすべて責任を負うという条件のもとでは,子会社は,その子会社が連結財務諸表の範囲に含まれている限りにおいては,個別財務諸表をつくらなくていいという法律になっておりまして,先ほど○○委員がおっしゃったように,少なくとも子会社の債務について親会社が完全に保証するという要件で,かつ連結計算書類でカバーされている場合についてはこういうような特例を設けることはどうかという,もっと狭くはなるのですけれども,そういうことも立法論としては他の国ではあるものですから,この米印のところで加えている「例えば」というのの中に,そういう,親会社が責任を負うというようなものを入れてみたらどうかという提案をさせていただきたいと思います。 ● 大変有益な御意見をいただきまして,ありがとうございました。  それでは,どういう書き方にするかはなお検討させていただくことにしまして,意見照会は,これについて何らかの形でするということにさせていただきたいと思います。  それでは,次に進ませていただきまして,(2)でありますが,(2)自体については特に御異論はなかったかと思いますが,むしろ,この場合の機関設計についての問題というのが大きいので,(3)の方に進ませていただいてよろしいでしょうか。  (3)についてはいかがでしょうか。 ● (2)のように,どのような会社であろうとも,自分のところはきちんとした会計監査をしてもらうのだと思う会社は会計監査人を設置できるということだけ決めておき,片や,機関の制度設計につきましても相当な柔軟化をするということになりますと,それだけで十分なのではないかという気もするのですが,会計監査人を置いたがゆえに特別の柔軟な機関設計が認められるという提案をしようというのが,この(3)の趣旨でございますね。そういう位置づけになると思ってよろしいわけでしょうか。 ● やや説明が不十分だったかと思いますけれども,現在,会計監査人が置かれている会社の機関設計の在り方は法律上限定されているわけでございまして,その会計監査人が設置され得る会社の範囲を非常に広げたとした場合に,当然そのような機関設計が伴うものという理解であるべきかどうかということでございます。小会社について,委員会等設置会社か監査役会設置会社にならなければならないものとすることが余り現実的ではないということであれば,会計監査人が置かれているがゆえに機関設計の柔軟化の方向性が一部分制約されるのかどうかという点が,(3)の問題でございます。  その際に,機関設計の違いによって会計監査人というものの意義が異なるかどうかという議論を持ち込みますと,非常に議論が錯綜いたしますので--第一読会ではそういう議論をさせていただいたのですけれども--会計監査人が置かれる以上は,その置かれる意義,その責任はもちろんのこと,計算確定に関する効果その他も同じものであるということを前提とすると,機関設計に何らかの制約が出てくるのかどうかという点を,この(3)ではお伺いしたいところでございます。もちろん,会計監査人が置かれるべき意義は機関設計によって違っていいのだという話になると,また話は別なのですけれども……。 ● みなし大会社制度を入れましたときには,ワンセットで全部入ってしまったわけですね。したがいまして,ちょっと窮屈な部分も出てきたということかと思いますが,(2)のような形で,会計監査人を任意で設置できるんだよという格好で迫りますと,果たして(3)のような取り上げ方がどこまで必要なのか。もちろん,その場合の(2)で会計監査人を入れた効果というものが何かということを詰めなければならないということは分かるのですが,会計監査人が設置された場合には機関設計がこれだけ柔軟になりますというようなアプローチが,何かあっちからとこっちからと,行ったり来たりするような……。 ● この場合は,これだけ柔軟化が制限されますという方が正しいですね。制限されますかどうかという問いかけでございまして。 ● そういうアプローチなのですが。 ● 前回のときは,効果を柔軟化することによって会計監査人が入ることの制約を少なくしようという,そういう議論だったように思うのですけれども,今度の方は,効果は全部,現在の会計監査人設置会社と全く一緒にしてしまう,計算書類の確定等,それから責任等も全部一緒にしてしまうということをむしろ出発点にして,それでいながら,その他のガバナンスの仕組み,監査役の必要性とか監査役会を設ける必要があるかどうかという点の方だけ柔軟化してしまうと。効果を全く同じにしておきながら,要件というか,ガバナンスの在り方そのものは非常に緩やかにしてしまうということになっておりますので,これはいわばガバナンスのある意味で言えば緩和というか,非常に甘くすることを意味しているわけで,さっき申しましたように,13年改正の議員立法で,監査役の半数は社外監査役でなければいけないとしたとか,あるいは,それまでの何回かの改正で監査役制度の厳格化を図ってきたことを全部吹っ飛ばすような提案ではないかと思うのですけれども,ここでそういう大きい方針転換をすることが適切なのでしょうか。無論そういう考え方もあり得るとは思いますけれども。 ● いや,そういうアプローチをしますと,もうこういう柔軟化は認めないと。恐らく小会社でも,会計監査人を置いた以上は,現在の会計監査人が入ったときの機関設計そのままでないといけないということになってくるのだろうと思います。 ● 前回は,導入してもいいけれども,効果の点については別に考えてはという議論をしていたのですけれども,やはり効果は同じでなければいかんという前提でこれは御議論されるのでしょうか。 ● そうですね。そういう前提の議論です。  効果の柔軟化というのがどういう意味だか,ちょっとよく分からない点があるのですね。 ● 任意に公認会計士,監査法人に会計をチェックしてもらうという効果以上の効果が,商法上の特別の責任という程度--それも意味があるといえばそれまでですけれども--であるとしますと,同じ「会計監査人」という用語で呼んでいいかどうか,あるいは資格者を同じように考えるべきかどうかを含めて,根本的な議論をしなければいけなくなるのではないかという気もするところでございまして,一応ここでは,現在の会計監査人に係る法的な効果を前提とするとどういう整理ができるのかということをまず御議論いただければと思います。 ● 商法上の会計監査人ではない形で公認会計士が計算書類を監査しているというのは現在でもたくさんあるわけですね。中小企業投資育成会社が入っているとかですね。でも,それは商法特例法上のあれではないわけです。商法特例法上の会計監査だということになりますと,やはり効果も,責任等全部一律についてくるということ以外考えられないのではないかということなのであります。 ● 商法特例法のここで見ますと,9条から11条までの責任規定は適用されますけれども,選任とか解任とか,それに関します3条ですとか5条の2ですとか6条その他の規定はかぶってこないわけで,そういう会計監査人の選任・解任等を通じての地位の保全,あるいは独立性の担保といったところは消えるわけですけれども,それでも,とにかく公認会計士法に基づく会計監査人がこういった監査をした以上はこれだけの効果を認めていいのだと,むしろそちらの方に着眼して,これだけの効果を認めるという考えなんでしょうか。 ● 結局,前回は責任の話が出ていたと思うのですが,責任を負いますと,やはりそれなりの監査にならざるを得ないのですね,恐らく。報酬ももらいますし,それだけのことはやりますという話にどうしてもなる。そうすると,計算書類の確定等の効果も当然に付随して当然ではないかという話になってくる。 ● そうすると,監査役の地位の強化等を図ってきた政策はもう必要ないということになるのでしょうか。あるいは,一定の範囲の会社についてはなおそういったものが強制されるというようなことで残るのでしょうか。 ● そこの点を上の方の米印で御議論いただきたいということだと思います。ですから,強化された監査役というバックがなくても,会計監査自体はきちんとなされますということであれば,上の米印でいろいろな制度設計が認められるわけです。 ● 先ほど言ったことの繰り返しになるかもしれませんが,機関設計の柔軟化自身をこれまでいろいろ議論してきたわけですね。それで,こういう条件がある場合にはいいのではないかと。例えば,譲渡制限会社であったら相当程度柔軟化していいのではないか,小会社であればいいのではないかとか。ところが,公開会社の大会社であっても会計監査人さえ置けば監査役会は置かなくてもいいという,そういうところまで踏み切る話をここで別に始めるのでしょうかという疑問なのです。したがいまして,○○委員がおっしゃるように,この間ずっと,いろいろな議員立法等もなされてきたことを大方針転換するのですかという疑問にもつながってくると思うのですが。したがいまして,もう十分,機関設計の柔軟化自身,どのような要件のもとに認めたらいいのかということを我々は議論してきたはずなわけだから,それを踏まえながら,なおかつ,いろいろな場合に会計監査人を自由に,任意にお使いになっていいし,使われる以上,ある程度の法律的な効果は認めるとした場合に,どこまでが適切かと,そういう議論の立て方は分かるのですが,ここに来て,会計監査人を任意に設置した場合を含めて,強制される場合も含めて,会計監査人があるがゆえに監査役は置かなくてもいいとか,監査役会は置かなくて一人でいいとかいう議論をするのでしょうか,という疑問なのです。ですから,○○委員がおっしゃっていることと割合スタンスは同じなのではないかと思いますけれども。 ● 私の理解では,3の(3)の上の米印は,ほかの要件で監査役等が置かれるということであれば,それは当然監査役を置かなければいけないので,○○委員がおっしゃるように,会計監査人を入れたから監査役を置かなくてよくなるとか,そういう話ではないと思っているのですが。ですから,例えば,先ほど来,取締役会を置いて監査役がなしというような選択肢は認めるべきでないということになると,ロの選択肢は消えるということになると思います。ここにも書いてあるとおりですね。 ● そうしますと,従来の商法特例法上の大会社については,監査役会が強制され,しかも半数が社外監査役でなければいけないというのはそのまま残るということなのですか。 ● それはそういうことだと思います。 ● それは言わずもがなであると思っておりましたが。 ● 少なくとも上の米印は(2)と連動しているのではないでしょうか。今のみなし大会社については当然今と同じ機関設計だという考えではないでしょうか。 ● みなし大会社というよりも,ここは要するに1億円という基準を作るかどうかという。だから,会計監査人の設置強制という意味で5億円という基準を立てるとすれば,そこから先の話については,特に……。譲渡制限会社についてはまた別途の考慮があり得るかもしれませんけれども,それは有限会社との一体化という絡みの話の中において,有限会社の大規模なものについて会計監査人を強制すると。有限会社的なものについてですね。既存のものは経過措置で逃がすとしても,有限会社的なもの,譲渡制限会社である大規模なものについて,会計監査人制度の設置趣旨からいって,債権者保護という趣旨からいって,会計監査人を強制しなければいけないとなったときに,その機関設計をどこまで簡素化できるかという話は,もちろん,それはまず一つの問題としてありますが,いわゆる非譲渡制限で公開会社的なものについての,正に会計監査人プラス取締役でいいか,そういったことを念頭に置いている議論ではないということです。 ● ですから,もともと機関設計が非常に柔軟に認められている会社について会計監査人が入ったときに,それを機関設計の方まで変えなければいけないのかという問いかけなのです。そういうことに限局した議論なわけであります。 ● 今の○○委員の御説明でよく分かったのですが,この(3)の文章自体が,「会計監査人の設置が強制される場合,又は会計監査人を設置することができる場合」と,非常に広いんですよね。それを前提にして,現行のこれ以外ということがあるので,だから,これはちょっと表現を,○○委員が言われた趣旨であるとすれば,その趣旨が明確に分かるような表現にした方がいいかと思います。 ● 前の方が誤解を招くかもしれませんね。「設置が強制される場合」というのが。 ● そうですね。この(3)の最後の米印ですけれども,基本的に事務局として念頭に置いていたのは,正に譲渡制限的な,有限会社的なもので強制される場合ということでこの(3)を考えていたということでございます。 ● むしろ,ここに米印があるものだから,これは譲渡制限会社に限って認めることとするかどうかですから,そうしないということも含まれたテーマかと思いましたので,なぜここの段階でこんな大胆な提案が出てくるのだろうと思った次第です。 ● 申し訳ありませんでした。その点は誤解を招く書き方だったかもしれません。  これは,今言ったような趣旨でありますと,結局,もともと機関設計が柔軟な会社について,会計監査人が入ったときにどうあるべきかというということにつきましては,意見照会の段階ではいろいろ出さざるを得ないのかなと。もちろん,もう機関設計も全部,会計監査人が入った場合は現在の会計監査人が置かれる会社と同じ機関設計以外は認めないという選択肢をとってしまえば,こういういろいろな案は出す必要がなくなるのですが,もうちょっと柔軟化してもいいのではないかということになると,いろいろ挙げざるを得ない,意見照会では聞かざるを得ないということになりますが。従来から,会計監査人が入るのと機関設計とはワンセットであるべきだという御意見もたしか前回はあったかと思います。もしそうであれば,最初の米印は議論する余地がないのでありますけれども,恐らくそこまで割り切るあれは余り有力ではないのでないかと思います。 ● 私どもとしても,是非,機関設計を柔軟化していただきたいということで,会計監査人を設置しようとすると監査役会を置かなければならないということになってしまうと,せっかく会計監査人を,外部の人にチェックしてもらいたいというと,機関設計まで全部変えなければいけなくなりますので,そこは是非,柔軟化をする方向で意見照会をしていただけたらと思います。もしそういう前提がなくなりますと,(2)の方も,要するに小会社の場合には一定のガバナンスのあれがないと会計監査人を置けなくなるわけですので,(2)という形で前提で聞く以上は機関設計の方も是非そういう方向で意見照会をしていただければと思います。 ● それでは,現段階で何か選択肢,上の米印にイ,ロ,ハ,ニとありますが,これについて特に落とすということがなければ,こういう形で意見照会はするということでよろしいでしょうか。  二つ目の米印はいかがでしょうか。 ● この問題は,今出ていた誤解その他,我々の説明の問題点を踏まえ,もう一度再整理し直して,どこの部分について議論をしていただかないといけないのかという点がうまく明らかになるような形で,再度こちらの方で整理をさせていただいて,もう一度,この米印の一つ目,二つ目及び本文に関して検討させていただきたいと思います。 ● それでは,そういうことで,次回また御議論いただくことにいたしまして,先に進ませていただきます。  (4)についてはいかがでしょうか。 ● 是非,この問いかけをお願いしたいと思います。できれば米印の一つ目もあわせてお願いしたいというふうに思います。 ● 米印の一つ目は,計算書類となっていますけれども,これは決算公告ではなかったでしたっけ。 ● そうですね。計算書類は監査報告書についていますからね。 ● 前回はそうでしたね。 ● 債権者が分かるようにという意味合いで。 ● たしか○○委員がそういうことをおっしゃいまして。そうですね。  それでは,この点も意見照会するということでよろしいでしょうか。  それでは,次に(5)でありますが,これもいろいろ御意見があるところであることはよく承知しておりますが,いかがでしょうか。 ● もうここは余り言ってもしようがないなと思っていますけれども,この①は,「するものとすることで,どうか」という問いかけになるのですか。「するものとする」という決め撃ちでこういう問いかけになるのでしょうか。  それと,もしどうしても訴訟対象だという理解でいくのなら,是非,②のことは,特に米印の一つ目がいいのか二つ目がいいのか分かりませんけれども,セットでお願いしたいと思います。 ● それでは,基本的にこういう形で意見照会するということでよろしいでしょうか。 ● 表現ぶりを御説明させていただきますが,この問題については,一応,①についてはこのような形で打ち出さざるを得ないのではないかと思っておりますので,ひとつ御理解のほどを。 ● よろしいでしょうか。 ● 「2~10」という,この10というのは,どうしてこういう数字が出てきているのですか。2から6というのなら分かるのだけれども。 ● たしか14年のあたりの議論の中で,私,どこかから数字を拾ってきたように記憶しているのですけれども--ちょっとお待ちください,確認できるかと思いますけれども--当時の議論から残っているということです。 ● 取締役は2から6なのに,どうして会計監査人が急に10なんていう数字が出てくるのか,嫌がらせではないかというふうな気もしますが,そういう点,2から6ぐらいにしても。 ● 恐らくは,取締役が会社からの収入に依存している割合と,会計監査人が当該会社からの報酬に依存している割合は相当違うという前提なのではないでしょうか。 ● 一応確認だけさせていただきますと,その14年改正の際の法制審議会で出された案の中で10年というのがあったということでございます。 ● その2から10まで,米印だから余り出ないのかなと思っていたのですけれども,それもこのまま出すという趣旨ですか。それだと,相当意見を言わなければいけないなと思っていまして。今,○○委員におっしゃっていただいたのですけれども,まさかそこをこのまま出すとは思わなかったものですから。そこはきちっとした議論をしたいと思っていますけれども。 ● では,この数字の点も事務局で検討していただいて。 ● これ自体は参考までですので,別にこれにこだわるものでもないですから,現行法制と整合性をとるということであれば,2ないし6とかいう数字でお出しした上で,もっと多くすべきであるという御意見があるかどうかという確認をさせていただくということでしょうか。 ● むしろ,年数かどうかというよりも,実質的にそれが制裁としての効果を持つ数字なのかどうかというのが問題なのであって,したがって,会計監査人が会社から受ける報酬が一体どのぐらいのレベルにあるのかということによって,仮にそれが世間的に見てというか,それの10年分というのが大した額でないということがもしあるとすると,10年は意味を持つわけですから,そういう意味で,実際的な責任を負わせる意味合いはある程度持つ額という水準の話ではないかなというので,そういう意味で,この表現は工夫していただいたらと思いますけれども。 ● そういう話になりますと,そもそも代表訴訟以外でもともと特別な責任が法定されているわけですから。何も代表訴訟でなくても,いろいろ訴訟を受けるということで,申し上げたいと思うのです。現実にそういう訴訟が今あります。それは相当大きな金額の訴訟に遭っているわけですから。それは実態としてあるわけで。そうではなくて,新しい制度を作るなら,それは今ある制度と整合性を持たせてほしいと,そういう趣旨だと思うのですね。 ● ここで御議論を聞いていると,会計監査人は,大きな監査法人を皆さん念頭に置いていらっしゃるようですが,商法特例監査をやっているのは個人の公認会計士もいるわけでして,これは,取締役とか監査役に比べて資力が高いとか,あるいは依存度が低いとかということはない場合があり得るのですね。ですから,社外取締役を2年とするのであれば,社外性がある点では同じなのに,なぜそれよりも大きい数字にするのかという方が,実は現行制度とのバランスとして一つ問題があるかもしれないというのと,もう一つ,やはり考えなければいけないのは,会計監査人と取締役と監査役というのが連帯責任を負うという前提のもとだと,会計監査人の責任を限定しておかないと,一部免除されたはずの取締役や,あるいは監査役が求償されてしまうことになるわけですから,取締役や監査役の責任限定と申しますか,そういうものの実効性を担保するためにも,会計監査人の責任はある程度限定できるようにしないとまずいのではないかという,こういう考慮もやはりしなければいけないのではないかと思います。 ● 重要な点の御指摘,ありがとうございました。  この免責についてはいろいろな点を考えなければいけないので,なかなか難しいですね。どういう意見照会の仕方がいいのか,今,いろいろな御意見をいただきましたので,数字を入れるのがいいのかどうかという……,こういう考え方があるというような方がいいのかもしれないですね。この点は,書き方についてはなお検討を要するのではないかと思います。  それでは,先に進ませていただいてよろしいでしょうか。  (6)でありますが,この点についてはいかがでしょうか。 ● 監査役会は同意でいいと思うのですが,監査委員会はむしろ決定の方ではないかと思います。といいますのは,人事においても,監査委員会の方が提案権を持っているということで,監査役会はたしか同意のはずだと思いますので,やはり位置づけが違うのではないかということで,私は,同意権ではなくて,監査委員会においては報酬の決定権を付与するという提案もあっていいのではないかと思います。 ● 同じ趣旨でございますが,更に厳密に言えば,監査役会におきまして,同意権限のみならず,提案権もあるという格好にした方が平仄が合っていいのではないかというふうに思います。 ● ほかにいかがでしょうか。  今の御意見は,前回以来御意見が出ていたわけでありますが,書き方をどうするかということだと思います。ここでは「付与するものとする」という形になっていますけれども,もうちょっとぼやっとした表現にするかどうかというようなことですね。  それでは,これについては,なお前回と同じような御議論があったということで,次回また御検討いただくことにしたいと思います。  次に,(7)はいかがでしょうか。  これも,前回,若干御議論はあったのですが,少なくともその会社については関係が切れないとおかしいのではないかというような御意見があったわけでありますが,特定の会社の関係で業務停止になったというようなこと,常にそうなのかどうかというような問題もあるようでありますが。 ● 若干の補足でございますが,さきに終わりました通常国会におきまして金融庁が提出した法案で,公認会計士に対する監督を強化するというようなことを内容とする法律が成立いたしました。そこにおきまして,検査権限を強化したりとか,「公認会計士・監査審査会」という独立性を法律で保障された監督機関を,既存の審査会を抜本的に改組して,設置することにいたしました。監督を強化するということで,何らかの違法なる不正があった場合の処分をきちっとするというふうな方向性でございます。そういう意味では,会計監査の厳正性をより強く担保するという方向性で見た場合に,確かに現状の一律アウトになるものというのが非常に困った規定でございまして,そういう意味では,これを廃止するというのは賛成であります。  それから,委託をした会社との関係ではアウトにするという規定を残してはどうかということについても,処分をする際,今,○○委員から御指摘のあったとおり,監査体制であるとか,監査のやり方についての理由での業務停止の処分を受ける可能性もあるわけですし,それからもう一つは,仮に特定された場合であっても,交代を強制するという行政処分を付加した格好になってしまうわけですね。行政処分をすることを,一種の独立した行政委員会が決めるというスタイルになって,恐らく一番気にするのは,違反行為の内容なり,その範囲とか重さに対して,処分の範囲なり,重さということだろうと思います。その違反行為の重さ,広さと,処分の重さ,広さが均衡していないといけないものですから,恐らくそういうことに一番意を払って,適正手続を踏んで,委員会で議決して,処分をするということになった場合に,交代を強制するというのが自動的にくっつくことになってしまうということについてどう考えるのかという問題があろうかと思います。  違反が例えば特定の社員一人に限定されていて,かつ,それがほかの社員なり上司の監督不行届きに至らないという事実認定があった場合,それを前提として,必ず,ほかの社員とか本部とか,同じ監査法人の中のよりしっかりした部門の監査も受けられなくするという一種の懲罰,ペナルティーを,今のようなケースの違反の重さと広さに対してかける行政処分として重過ぎるのではないかというふうにチャレンジされる可能性がある。その場合に,もしそれが重過ぎるというふうに判定されると,処分自体ができなくなる,あるいは場合によっては違法になりかねないということは,恐らく,新たにできる公認会計士・監査審査会の処分なり調査の制約になるのではないかという危ぐがございます。 ● 今,○○幹事から御説明があったようなことでありますので,(7)についてはこういうことでよろしいでしょうか。  それでは,先に進ませていただきまして,「6 その他」でありますが,これは二つ出ておりますが,ともに改正間もないことでありまして,今回はこういうことでやむを得ないのではないかというのが事務局の感触なのですが,いかがでしょうか。--よろしいでしょうか。  それでは,どうも長時間熱心な御議論をありがとうございました。どれだけ整理できたかはともかくといたしまして,大変有益な御意見を今日はたくさんいただきました。また事務局でそれを踏まえて検討していただきたいと思います。  それでは,事務局から連絡事項がございます。 ● どうも本当に長時間,ありがとうございます。  次回は,9月17日,水曜日の午後1時から,場所は,従前御連絡していたところとは異なりまして,次回もまたこの第1会議室で行わせていただきますので,よろしくお願いいたします。 ● そういうことでありますので,どうかよろしくお願いいたします。  それでは,本日の会社法(現代化関係)部会を閉会させていただきます。本当に今日は長時間にわたりまして,熱心な御議論,ありがとうございました。