法制審議会会社法(現代化関係)部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  平成15年12月17日(水)  自 午後1時30分                         至 午後4時33分 第2 場 所 法務省第1会議室 第3 議 題 代表訴訟について 第4 議 事 (次のとおり) 議    事 ● 予定した時刻が参りましたので,第16回の会社法(現代化関係)部会を開会することにいたします。   本日は,御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日の会議では,部会資料15につきまして御審議をお願いする予定でありますが,その前に事務局から,前回の部会において取りまとめをしていただきました要綱試案の公表等につきまして報告がございます。 ● 前回の第15回会議におきまして取りまとめをしていただきました要綱試案につきましては,10月29日に法務省のホームページ上にて公開し,それとともにパブリックコメントの手続をとらせていただいております。前回の会議で御説明いたしましたとおり,12月24日を終期といたしまして現在パブリックコメントを求めている最中でございます。   また,個別の意見照会も別途行っております。その照会先につきましては,おおむねこれまでの商法関係の改正作業において対象とさせていただいたところとさほど変わるものではございません。   また,補足説明につきましては--事務の不手際で若干公表が遅れましたけれども--12月5日にホームページ上にて公開しておるところでございます。   現在,それなりに意見をお寄せいただいておるところでございますけれども,主な関係機関,関係団体につきましては,まだ寄せられていないところも多数あるところでございますので,引き続きお待ちしたいと思います。   それから,この意見照会の結果につきましては,恐らく2月の冒頭の会議におきまして報告させていただければと考えております。   前回の部会において取りまとめをしていただいた試案の公表等につきまして,事務局からの報告は以上でございます。 ● ただいまの要綱試案の公表等につきまして,何か御質問等がございますでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,本日の配布資料につきまして,事務局から説明をお願いします。 ● 本日の議事のためにあらかじめお配りいたしましたのは,部会資料15「代表訴訟(第4部・第4・8)について」と題するものでございます。   それから,席上に○○委員から,「株主代表訴訟制度の改正について」と題する書面を提出していただいております。後ほど御説明をしていただければ幸いでございます。 ● 以上,配布資料につきまして,何か御質問ございますでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   部会資料15につきまして,事務局から説明をお願いします。 ● 本日,意見照会期間中でありながら具体的な項目について御審議をお願いするに至りましたのは,この代表訴訟に関しては,従前の改正の作業の中でもいろいろな議論があり,また今日におきましても実務界からその改正の要望--現在の代表訴訟をめぐる様々な実務,裁判例等についての改正提言等--が強くなされておりますが,試案におきましては--この問題についての部会での審議時間を十分こちらの方で用意することができなかったということもありまして--具体的な提言等に至っていないところでございまして,少しでも論点を掘り下げ,議論を進めさせていただくということが意見照会期間経過後の審議に際して有用であろうと思われることによるものでございます。   試案におきましては,訴訟委員会制度等の方策の導入,担保提供制度の見直し,原告適格の見直し等,見直しを求める意見,提言としてそのようなものがあるという紹介だけをさせていただいておりましたけれども,それぞれが意味しているところの実質でありますとか,背景,問題点,あるいは見直しの方向性につきまして,本日は突っ込んだ御議論をちょうだいできればということで,資料を取りまとめさせていただいておるところでございます。   まず,1の「いわゆる「訴訟委員会制度」等の方策の導入」についてでございます。   試案では,訴訟委員会制度を設けるなど,会社の利益をも考慮して訴えを終了させることができる方策を講ずるべきである,という意見について紹介をしておりますけれども,これについての考え方の整理をさせていただきたいと思います。   ここでは,いわゆる訴訟委員会というものに限らず,このような観点から具体的な方策を講ずる必要があるかどうかという実務上のニーズをまず明らかにすべきではないかと思われるところでございます。その上で,仮にニーズがあるとすれば,そのニーズにこたえた適切な,合理的な方策というものとしてどのようなものが考えられるのか,という順序で物事を考えるべきであろうと思われるところでございます。   何らかの方策として求められているものは--論者によっていろいろだと思いますけれども--何らかの実体的,あるいは手続的な要件のもとで,既に提訴されている代表訴訟を,原告株主の意向にかかわらず早期に終了させるためのものである,と思われるところでございます。このような観点から,何らかの方策というのを検討すべきかどうかということでございます。   現在の実務において,そのような検討をすべき事情にあるかどうかということをまず吟味していただく必要があろうかと思います。弊害が生じているかどうかというふうに言い換えてもよいかもしれませんが,例えば件数ですとか具体的な審理期間について,そのような方策を講じなければいけない事情にあるといえるのかどうかということでございます。   また,一般論として,裁判の迅速化については,そもそも司法制度全体の見直しの中で様々な検討が加えられているところでございまして,代表訴訟に限りまして更に特別な手当てを会社法において現段階ですべきであるというためには,それなりの実態,実務上の弊害というものが指摘されるべきなのではないかと考えられるところでございます。   仮に,具体的なニーズというものがあるとした場合には,それについての実効的な措置を考える必要があるわけですけれども,例えば訴訟委員会制度と言われるような制度を導入することとした場合,その具体的な制度設計の在り方にもよりますけれども,その委員会を構成するメンバーの資格要件の適合性,委員会の具体的な判断手続の適法性,あるいは判断の相当性等をめぐって,代表訴訟自体における裁判上の争点が拡大するという懸念もないわけではございません。そのような方策をとることが果たして訴訟の終了を早めるという結果になるかどうか--その訴訟の終了を早めるということについての方策を講ずべきかどうかはその前段階の議論でありますけれども,講ずべきであるとしても--そのような訴訟委員会的制度というものがうまくワークするのかどうかということについても吟味をしていただく必要があろうかと思います。   それから,1の米印の二つ目についてですが,現行の取締役等の対会社責任の免除に関する規定との関係,これをどのように考えるか,再整理をしていただく必要があろうかと思います。何らかの方策を導入すべきであるという場合に,取締役に苛酷な実体上の責任が生ずるということが,弊害といいますか,方策を講ずべき対象であるということになりますと,この責任免除制度との関係の整理ということが不可欠になるということでございます。   それから,3番目の米印,担保提供制度との関係についてでございますけれども,実務的には,担保提供制度については,それなりに効果的に機能しているという評価があるところですが,この担保提供制度を維持し,更にはその見直しを図るということによって,仮に何らかの方策の導入の必要性があるとした場合でも,その必要性が満たされるのかどうかということの吟味が必要だろうと思われます。   四つ目の米印は,更にそのような整理を経た上で,何らかの方策を講ずるということが仮に適当であるとした場合に,その具体的な方策としてどのようなことが考えられるのかということについて--特にここに何か重きを置いているわけではないのですけれども--考えられ得るものとしてかなり方向性の違ったものを例示的に幾つか掲げております。   一つ目は,いわゆる株主代表訴訟の要件に関して,会社が追及すべき責任の追及を怠っている,つまり責任追及をする必要がない,あるいはすべきでないという事情がないということを株主代表訴訟の要件の一つとするという考え方でございます。これは,訴訟委員会制度についての議論がそもそも--論者によっていろいろだと思いますけれども--ある意味,それを当然の前提として行われているように思われますので,訴訟委員会という手続的,機関設計的な仕組みを離れて,純粋に議論を整理すると,まずはこういう何らかの更なる要件があり,その要件を欠く場合には代表訴訟は何らかの意味で終了するという制度であって,訴訟委員会というものはそれについての手続的な制約--訴訟委員会があり,その判断がなければそういう要件が欠けているということで代表訴訟の却下ないし棄却をすることができないという制約--を設けるものであるというような整理ができるのではないかということでございます。そのような整理があり得るかどうかということが一つ目でございます。   二つ目についてですが,住民訴訟のように会社自体を代表訴訟の被告とすべきであるという議論が一部において有力であるように見受けられるところでございます。これが,会社のみを被告とすべきであるということであるのか,あるいは取締役等とともに会社をも被告とすべきであるということであるのかという点については,必ずしも明らかではないところがあるのですけれども,例えば住民訴訟について言えば,かつての制度設計と異なりまして,現在では地方公共団体のみを被告とするということになっておりますので,それと並べて考えれば,会社のみを被告とするという制度設計も法制度上は考えられなくはないということでございます。   ただ,従前から,会社を被告とすべきであるという議論の実質的理由が,会社からいろいろと主張ないし立証をさせるという点に眼目があったようにも思われるところでございまして,会社による補助参加が可能となっている現在において,なお更に手を加える必要があるのかどうかということも吟味していただきたいところでございます。   それから,三つ目は,訴訟の早期終結について,明確な手続がなければ余り実効性は期待できないということでありますと,例えば特別決議による訴訟の取下げというようなことが考えられるかどうかという点についてでございます。論理的には,実体面での責任免除の問題と,この代表訴訟を追行するという権利といいますか,資格の問題とは別のものとして整理することができますので,実体面での責任免除の要件とは異なる整理をするということも論理的にあり得なくはないというところでございます。もっとも,実体面で基本的に株主全員の同意がなければ責任の免除をすることができないということが,実質的にこれによって事実上変容してしまうという点に重きを置いて考えれば,このような検討はすべきではないのではないかということになるのではないかと思います。   ただ,例えば,後の方に出てまいりますけれども,株式併合,更には現在問題になっておりますような株式移転,株式交換の場合において,原告の適格が失われるのもやむなしということであるといたしますと,特別決議という手続要件の面では同じでございますので,その辺りをどう考えるか,どう整理するかということもあろうかと思います。   それから,2についてですが,1の具体的な方策の導入の可否にも関係いたしますけれども,現在の担保提供制度について何らかの見直しをする必要があるのかどうかという点でございます。   まず,(参考)に掲げておりますような「蛇の目ミシン事件」における悪意の判断というものを前提として検討を進めてよいかどうかということをお諮りしておきたいと思います。この事件では,ここに整理しておりますように,不当訴訟であるか,あるいは不法不当目的であるという場合が悪意とされているわけでございますけれども,これらを前提として,分かりにくいということであれば条文の整理,表現ぶりの修正--悪意の意義の明確化をさせていただくということでよいかどうかという問題がございます。   それから,更に見直しを行うかどうかということを考えていく場合につき,米印を四つ掲げております。一つ目は,不当訴訟が原告の故意ではなく過失によるという場合について--これも悪意に含めるかどうかは別にいたしまして--担保提供を命ずることとすべきかどうかという点についてでございます。   米印の二つ目は,提訴の動機,目的--原告における主観的な動機,目的というものが相当強く背後にあるという場合に,悪意の判断に当たってそれらも考慮するかどうかという点についてでございます。ここにある「中部電力事件」のような考え方について,どのような評価をし,今回の立法に当たってそれをどちらかの方向に寄せるか,あるいは寄せる必要がないかということについての御意見をちょうだいしたいと思います。これが悪意に当たるということであれば,この不法不当目的というものを更に拡大するようなイメージになるかと思われます。請求自体は形式的に整ったものになっている場合に,その背後にある動機,目的というものをどの程度重視すべきかということについては,具体的事案に照らせばなかなか難しい判断があるのではないかと思いますけれども,どうお考えいただくかということでございます。   それから,米印の三つ目は,先ほどの1の米印の四つ目の最初の点とも密接に関連いたしますけれども,いわゆる不法不当目的の場合に限らず,訴えの提起が株主共同の利益を害するというような場合,この場合には端的に担保提供を命ずるという方策をとり得るかどうかということでございます。ある意味では,②を更に大幅に拡張するというものとも言えるわけですけれども,他方におきまして,担保提供制度は被告たる取締役等がその訴訟によってこうむる損害につき,その担保を提供させるという制度でございますので,そこで害されるべきは取締役等でありまして,株主あるいは会社の利益というものが害されるからといって,この担保提供制度には法律上は直ちにはつながらない話でございます。仮に,実質的に訴えの提起が株主共同の利益を害する場合というものを担保提供制度に絡めさせようとすれば,先ほど言いましたような1の米印の四つ目の最初の点のような制度,すなわちそのような場合--株主の共同の利益,会社全体の利益を害するというような場合--には,そもそも代表訴訟を提起することができないこととし,それにもかかわらず代表訴訟を提起しているということが①の不当訴訟に当たるというような整理をしないと,なかなか難しいのではないかということでございます。   それから,四つ目の米印についてですが,現代化に当たりまして,他の会社訴訟における担保提供制度,例えば,合併無効の訴え等の担保提供制度における悪意の解釈と,代表訴訟における悪意の解釈との間にはずれがあるところでございますので,代表訴訟における悪意についてどのような見直しをするかは別にして,ずれはずれとして整理をしてよいかどうかということを確認させていただこうとするものでございます。   それから,3は原告適格の問題でございます。   原告適格の問題は,実務界からの改正要望に関わるものと,いわゆる株式交換・株式移転等の場合における問題というように大きく分かれようかと思いますけれども,まず(1)の行為時株主原則の導入という問題につきましては,最後の方に掲げてありますように,現段階で議論させていただくということにはそれなりに難しい経緯があるのではないかと考えておるところでございますが,この点についての御意見をちょうだいしたいと思います。平成13年の議員立法時におきまして,与野党間の調整によって現在のような制度設計がされておるというところもあり,それを更に変更するにはそれなりの事実関係の変更が必要ではないかと思われるところでございます。   また,これは前々から御議論のあるところですけれども,仮にこの原則を導入したといたしましても,現時点において責任追及を怠っているという不作為を理由とする代表訴訟が提起され得るということであれば,相手方の別はともかくといたしまして,代表訴訟の提起自体を妨げる効果というのは--仮に期待されているとしても--なかなか発揮されないという感じもするところでございます。   最後に,3の(2)の「株式交換・株式移転による原告適格の喪失の見直し」の問題についてでございます。   これについては,下級審の裁判例が,ここに紹介してありますような状態になっておるわけですけれども,立法上の手当て--解釈でも当然ではないかという御指摘も強いところですけれども--少なくとも立法上の手当てをすべきであるという御意見は非常に有力であるものと承知しております。   議論の整理として,まず先ほどもありましたような株式交換・株式移転が基本的に株主総会の特別決議によって行われるということとの関係をどう考えるのかという点がございます。それから,反対株主による買取請求権,あるいは株式交換等の効力自体を争う訴訟制度の準備といった株主保護の制度等との関係をどのように考えるか,これらを別にして立法上の手当てがやはり必要であるということで議論が一致するかどうかということを確認させていただきたいと思います。   また,株主代表訴訟の係属中に当該取締役等に対する請求権が第三者に譲渡され,その第三者が別訴を提起したという場合における株主代表訴訟の帰趨について,ここに掲げたような裁判例があるわけですけれども,これとの関係,この考え方自体,あるいはこのような裁判例を踏まえてこの問題をどう考えるかということについても,御議論ちょうだいしたいと思います。   それから,仮に立法上の手当てをすることとした場合には,その立法上の手当てが必要であるという意見の中身にもよりますけれども,②から④までのような幾つかの方向が考えられます。   ②についてですが,その訴訟が終わってしまうということを何とか訴訟経済上の観点から回避したいということであれば,とりあえず株式交換・株式移転の場合であれば完全親会社たる新たな株主に当然訴訟を承継させる--現在は当然に承継するわけではありませんので--当然に訴訟を承継させるという道筋を作るということが考えられます。事実の問題として,そのような親会社が訴訟追行に熱心であり得るかどうかという問題がありますが,他方において非常に不穏当な対応をとった場合には,会社の規模にもよるでしょうけれども,それなりの社会的な評価を受けるということもあり得るのではないかと考えられるところでございまして,そもそもの方向性として,このような考え方が適当かどうかということをお諮りしたいと思います。   なお,②,③,④は,いずれにつきましても代表訴訟において何らかの手当てをするとした場合に,他の会社訴訟における原告の地位の変動等においてどのように考えるかという問題がすべてつきまとうところでございますので,あわせて御検討いただきたいと思います。   ③は,そもそも論として多段階代表訴訟を認めるという抜本的な手当てをするという考え方でございます。これにつきましては,例えば二段階にとどめるのか,三段階以上--際限なくか,ある程度までかは分かりませんが--も認めるのかというところで議論は分かれるところでございますし,また認めるにしても,完全親子会社関係に限るのか,あるいはそれ以外の何らかの割合要件のもとに限定された親子会社関係について認めるのかどうかという,要件設定についてのある面難しい決めの問題があろうかと思われるところでございます。   それからまた,③でありますと,いわゆる適切代表に関する議論というのは,その要件設定いかんにもよりますけれども,特にあえてせずに済むということになるかと思いますけれども,④のような整理をするということになりますと,必ずしもそうではないということから,別途の吟味が必要になるわけでございます。   ③の措置をとらないという場合であればもちろんですけれども,仮にとることとした場合であっても,④の措置は別途必要ではないかという整理もあり得るところであろうと思われます。つまり,④は,既に代表訴訟を提起した原告について,その株主たる地位が株式交換等によって失われたという場合,特別に原告適格を維持させるという点に眼目があるわけですので,③のような手当てを講ずることとしても,親会社の株主にはならないという原告については③では救えないということになり,④の別途の手当てをするかどうかが問題になるわけです。問題は,③のような措置を仮に考えるとした場合には,③の措置によっては救われない原告というのは,要するに株式交換・株式移転において親会社株主にはならなかった者,金銭等によって会社との関係が断たれた者ということになるわけでございまして,このような者についてその後の代表訴訟を追行させる適格を認めるということの是非については御異論もあり得るところでございます。これについてどのように考えるかは,なかなか難しい問題ではないかと思われます。   それから,株式交換・株式移転について,仮に親会社の株主とはならない場合--③のような措置をとったとしても引き続き提訴ができるという立場には立たないという場合--については,原告適格を喪失することもやむなしという整理をするといたしますと,今回の合併等の対価柔軟化においては,合併等の場合にも同様の問題が生ずるところでございます。また,株式併合については現在でも同様の問題が生ずるわけですけれども,それらについては同様の整理をするということでいいかどうかという点の確認が必要であろうと思われます。   さらに,③のような措置をとらずに,原告適格は喪失しないという④のような措置をとるということにした場合には,意に反して株主たる地位を失った者についてのみの特別な手当てをするということでよいかどうか,意に反して株主の地位を失うということはいろいろな場合が考えられ得るわけですけれども,どのような線引きをしてその範囲を画するかということが問題となり得るところでございます。株式交換・株式移転についていえば,例えば総会で反対したというような要件をかけるのかどうか,買取請求権を行使した場合についてはどうするか,買取請求権を行使しなかったとしても反対はしたということが要件になるかどうか,いろいろと考えるべきところは少なくないのではないかと思われるところでございます。   別にこの資料のみに即して御議論いただく必要もないのですけれども,幾つか今までに議論され,あるいは最近議論が更に進んでいる代表訴訟に係る論点につきまして,問題点を一応整理させていただきましたので,これを参考に御議論をちょうだいしたいところでございます。   部会資料の説明は,以上でございます。 ● この資料全体につきまして,何か御質問等ございますでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,○○委員から書面で御意見が出ておりますので,これにつきまして○○委員の方から御説明いただけますでしょうか。 ● 御説明の機会を与えていただきまして,ありがとうございます。株主代表訴訟制度の改正につきまして,経済界からかねてより数点要望いたしているわけでございますけれども,改めて御説明いたしたいと思います。   経済界の改正ニーズでありますけれども,Ⅰの1にありますように,株主全体,すなわち会社にとって利益にならない訴訟なるものは,代表訴訟の対象とはしないでいただきたいということであります。米印にありますように,米国の訴訟委員会におきましては,以下のような要素を勘案し,その訴訟の追行が会社にとって最善のものであるかどうかを判断しているようであります。訴訟が会社にとって価値のあるものなのかどうか,勝訴の見込みと訴訟コスト,会社業務及び従業員に対する影響,会社のイメージダウンの程度,行為の倫理及び公序面からの重大性,原告の目的の正当性と隠れた動機,目的の存在する可能性の有無ということのようであります。   それから,訴訟を早期に終結していただきたいということであります。   3点目,取締役個人の訴訟負担を軽減したいということであります。会社と個人との間で,会社にも相応の分担を訴訟の追行面においてしていただきたいということであります。   4点目,これは代表訴訟制度の改正というよりも責任軽減制度でありますけれども,取締役個人が負う損害賠償額が余りにも公平を欠く苛酷なものである,今なおそういうふうに思っているものでございますので,これを軽減していただきたいということであります。   Ⅱであります「求められる措置」でありますけれども,1番目には,適切代表の考え方を導入していただきたい。先ほどのペーパーにもございましたけれども,Ⅱ(2)の行為時株主に原告適格を限定していただきたい。   それから,株式制度の改正の方の議論でありますけれども,一単元以上の株式を有する株主に限定していただきたい。   (3)でありますけれども,原告株主の主張が株主全体の利益を代表するにふさわしいものかどうか,それを審査する仕組みを導入していただきたい。それがすなわち訴訟委員会制度の導入であります。   なお,この訴訟委員会につきましては,例えば監査役会又は監査委員会をベースにして,必要ならばそこに条件を付加して検討してもよろしいのでありますけれども,ただし監査役会なり監査委員会なるものが全員が独立の社外だということになると,恒常的に監査役会をそのような機関にするということは,実務的にも無理だと思うものですから,そういうふうな場合には,別途訴訟委員会をアドホックに設ける必要があるのではないかと考えております。   ②でありますけれども,こういうがっちりした訴訟委員会制度の導入が非常に難しいということでありましたら,会社の機関が取締役としてではなくて,会社の機関が会社としての見解を表明する,情報を提供していく,こういうオプションを会社に与えていただけないかということでございます。   2ポツは,事前審査の充実でありまして,すなわち担保提供命令制度の改正でありますけれども,お話にございましたように,原告の悪意を広くとらえていただきたい。それから,担保提供命令の審理の中におきましても,会社が見解を表明する制度を設けていただきたいということであります。   3ポツの取締役の負担軽減制度でありますけれども,責任軽減制度の6・4・2,これを軽減していただきたい。   それから,会社が何らかの形で訴訟に関与して,個人による訴訟追行の負担を軽減させていただきたい。これが先ほど申しました訴訟委員会制度の導入であり,会社による意見の表明権の付与ということでございます。   実務として,訴訟委員会制度があった方がいいと考えられるケースでございますけれども,いずれも,こういう5項目を書いて,極めて情緒的だと考えられるかもしれませんけれども,非常に困っているということでございます。   1番目,これは被告が勝つ蓋然性が極めて高い,にもかかわらず被告に時間的・金銭的・精神的負担,先ほどの訴訟の迅速化法によって2年以内になったとしても,やはり負担なるものは大変なものであるというのが--勝訴はするのでありますけれども--被告になった取締役の偽らざる感想でございます。勝訴する蓋然性が高い場合ということになりますと,多分減損会計等が導入されたときに,なぜ1年前に土地を売っていなかったのだ,株を売っていなかったのだ,その損害を求めたりする訴訟が起こると思いますけれども,そういうものについて,そういう不作為について一々応訴していくというよりは,訴訟委員会制度が乗り出した方がいいのではないかという気がいたします。   2番目,これは非常に深刻な問題です。代表訴訟の追行によって得られる利益より,それによって必要となる他の訴訟等への対応の不利益の方が大きい場合ということであります。代表訴訟で株主が勝って,会社が取締役からお金を得たといたしましても,実際の取締役の資力からすると数億程度ということになってくるのだろうと思います。ところが,代表訴訟の場で提供される情報が,会社の他の訴訟における立場を著しく不利にしたり,訴訟が更に惹起されたりするおそれがある,例えば,ある従業員が違法取引を行ったというところで代表訴訟においては取締役会におけるコンプライアンス・システムの整備が争点となっているというふうなことがあります。もしその代表訴訟において,会社のコンプライアンス・システムが不備であるということになりますと,例えば米国における民事賠償でありますとか,刑事ペナルティーでありますとか,民事ペナルティー,これが1,000億というオーダーになってくる。こういう数億を取締役から取り上げる一方で,1,000億を損する,そういうものについて本当にどうすればいいのか,このあたりは訴訟委員会が,こんなことをやっても会社のためにならない,大きな損を招くだけだと言えばもう訴訟を却下していただくという制度を是非設けていただきたい。   3番目,会社のコンプライアンス・システムの整備が争点になる,これは非常に多いわけでございます。取締役自らが違法行為を働くというようなことはまず考えられない状況になっておりますので,訴訟になるというのは従業員が行ったということが多いわけでございますけれども,そのときにリスク管理体制の構築責任が争われる,こういうふうなものにつきましては,各被告が当社のコンプライアンス・システムがどうのこうのというよりは,訴訟委員会が対応していった方がいいのではないか。   4番目,全役員が訴えられるような場合もございます。そういうふうな場合につきましても,これは会社が訴えられているというふうなこととほぼ同義であると思いますので,訴訟委員会でやっていったらと思います。   それから,相続人が被告となっているケースもございます。特に,社外取締役が被告になっていて,その社外取締役であった社長が亡くなって,その相続人が被告になっているというケースは恐らく○○委員のところでも今御係属中なんだろうと思いますけれども,そういう遺族が訴訟の対象となる場合もあるわけでございまして,これは前から言っている問題でございますけれども,相続人にしてみれば被相続人の生前の会社の責任について応訴する負担というのは非常に大きい。こういうときに訴訟委員会制度を活用して,遺族の負担を軽くできないか,こういうのが具体的なケースだろうと認識しております。   私の説明は,以上であります。 ● それでは,個別の問題点について御審議をいただきたいと思いますが,順序としましては先ほど事務当局から説明がありましたように,まず株主代表訴訟制度の見直しがどういうニーズで求められているのかということを御議論いただいて,そして改善のニーズがあるとしますと,どういうことが考えられるか,またそれぞれの問題点がどういうことかという,そういう順序で御審議をいただければと思います。   そこで,まずそういう訴訟委員会制度といったような方策が必要と考えられるような場合はどのような場合なんだろうか,現在の既存の担保提供制度なり何なりあるわけでありまして,そういうものでは賄えないといったようなことがあるのか,そういう点を中心にまず御議論いただければと存じます。   ○○委員,あるいは○○委員にいろいろ御質問ということになるかもしれないのですけれども,どなたからでもその論点につきまして御意見,御質問ございますでしょうか。 ● 現在,裁判所の方でこの株主代表訴訟を担当しておりますので,ちょっと実情的なものと感想めいたことを述べさせていただければと思います。   東京地裁での株主代表訴訟の申立件数というのは,ここのところそんなに変わっておりませんで,大体年間20件前後で推移しております。平成14年が20件で,15年も今の段階で大体20件ほど新件が来ると。   株主代表訴訟と一口に申しましても,大ざっぱに見ますと三つぐらいの類型に分けられるのかなという感じがいたします。   一つは今日議論になっているような本来会社のコンプライアンスといいますか,経営の透明化を求めるという形で株主が会社に代わって取締役等に対しての責任追及をするというパターン。   あとは,こういう言い方がいいかどうか分からないのですが,内紛型といいますか,どちらかといいますとかなり株を持っている株主と。中で経営権の争いといいますか,どちらかというと自分の会社に対する支配を主張しているのではなかろうか,これもちょっと推測ですので正確かどうかあれですが。   それと,これは閉鎖会社に多いのですが,いわゆる本当の親族間紛争型。商事部というところにおりまして,会社関係訴訟というと非常に商法がそのまま争われるのかと思うのですが,実際にはかなりの閉鎖会社での訴訟というのは,根は親族関係,兄貴が気に入らないから株主総会の決議不存在をやったとか,あとは遺産分割するために会社の解散を求めるというものですので,株主代表訴訟の場合にはそんなに多くはないのですが,この親族間紛争型もある。親族間紛争型がどのぐらいかというと,これは通常ですと閉鎖会社の紛争はかなり多いのですが,株主代表訴訟の場合はもうちょっと少ないかなと,3割まではいかないかなという感じは持っております。   どちらかといいますと,親族型とか内紛型というのは,会社の資料を株主が持っているものですから,比較的主張がすぐ明らかになって,資料も出てきやすい状況下にあろうかと思います。   問題は,このコンプライアンス型といいますか,外部の株主の立場で主張を構成し,資料を収集するというパターンではなかろうかと思います。そうなりますと,どうしても株主側の主張というのが特定できない。例えば,特に経営判断に関するいわゆる違法といいますか,裁量逸脱を主張するような場合に,具体的にどういうところが逸脱しているのだという主張を整理するのに時間がかかる。それから,監視義務違反を主張する,取締役がきちんと見ていないというときに基礎づける具体的な事実の主張が非常に不十分だと。単に取締役だからというだけでは,なかなか当然に損害賠償等の義務を負うということにはならないのだろうと思いますので,そういった主張の特定が不十分。さらには資料も不十分。そうすると,どうしてもおのずとそれを特定していく過程で審理を何度も重ねて,先ほど○○委員から御指摘がありましたように,どうしても審理がややもすると長期化する可能性がある。   また,これをひっくり返しますと,これも先ほど○○委員から御指摘のあった投網型といいますか,当時在職していた取締役全員を被告とする訴訟と,こうなりますと大会社の場合ですと何十人単位になってきます。しかも,個々の取締役ごとに多分具体的な違法性を基礎づける事実というのは個別になるものですから,これの特定に時間がかかる。翻って見ますと,結果的に時間がかかるという御指摘はあり得るのかと思います。   また一方で,仮にその取締役の中で実際の行為をした取締役と,監視をした取締役ですとかなり争点となる事実関係が違うのですけれども,それも全部一緒くたにやらなければならないということになると,これも時間がかかります。場合によっては,監視義務型のものであれば,これはもう主張自体不特定ではないか,立証が難しいということで分離して判決をしたとしますと,今度その分離した分だけについて控訴がなされて,事件が拡散していくというようなところがありまして,そういう意味で仮にそういう主張の資料とかそういうものを整理するという観点だけから見ると,例えばこの訴訟委員会というのも人を得て,かつ組織がきちんとするというのであれば--かなりなかなか難しい部分があるということは,これは間違いないと思いますけれども,仮にそこでいろいろ資料の整理ができて,その資料が訴訟でも使えるということであれば,その意味では訴訟促進に寄与する面はあるかとは思いますけれども,ただまた逆の面もあるかと思いますので,ここは全くの私の感想程度というところかと思います。   あとは,何か実情等御質問等あれば,適宜お答えさせていただきたいと思います。 ● ○○委員,○○委員から御説明がありましたので,大分実情は明らかになったかと思いますが,なお御質問がありましたら……。 ● 今,○○委員から実情の御説明がありましたけれども,この代表訴訟も私ども実務的に見ておりまして,当初平成5年に改正になったときには恐らく濫訴が起きるのではないかという問題が非常に大きな問題だったと思いますが,その後判決で非常に多額の賠償責任が認められたというのが,経済界に大変大きなショックを起こした,そういう形で推移しておりまして,そういう意味では代表訴訟の改善というのは,今,○○委員がおっしゃった第1の類型,特に上場企業を中心にした代表訴訟,これが一つの発端になっているのではないかと思います。   最近の代表訴訟,非常に概括的に見ておりますと,代表訴訟の機能として損害回復機能とそれから違法抑止機能があるというようによく言われますが,確かに損害が回復されれば代表訴訟をそれ以上に違法抑止機能まで含めて制裁を加えるということまで予定していないということだと思いますが,何分損害賠償額が個人では支払不能な額であるぐらいに多いということですので,そういったケースでは,最近の状況を見ていますと,和解によって損害の回復は一部にとどめるけれども,違法抑止機能といいますか,再発防止,これを会社が利害関係人として参加するなり,そういった形の手続をとりまして,再発防止策を会社が約定するというような和解が幾つか行われているというのが実情だと思います。これは,昨年12月段階の地裁段階の代表訴訟の係属ケースが135件ということですから,それに比べればこういった形の和解が行われたというのは,私が数えただけでも最近の三菱自動車を始めとして8件ぐらいにとどまっているわけですけれども,ただ損害回復機能に加えて,それを一部にとどめて,違法抑止機能がこれだけ和解を通して達成されるようになってきているということは,代表訴訟の行われ方がまあまあ健全に行われているというのが概括的な状況ではないかというふうに見られるのではないかと思います。   もちろん,一部に不当な目的,あるいは不当訴訟というものがありますけれども,これは後ほどまた担保提供命令のところで発言させていただければと思っておりますが,担保提供命令,あるいは長崎地裁の長崎銀行事件では,担保提供命令に行く前に訴え却下というような判決もされておりますので,そういったような不当訴訟については担保提供命令その他の形で対応ができているというのも,これも概括的な状況ではないかというふうに認識しております。   こういう状況を見てみますと,代表訴訟が進行すること自体をやめさせる,それが会社にとって利益である,あるいは全株主にとって利益であるという経営判断を行うべき場合というのは,割合と狭いのではないのかという印象を持っておりまして,もちろん○○委員が御指摘になったように,経営判断でもって代表訴訟を損害回復機能,あるいは代表訴訟の係属に優先して経営判断というものを持ってくるという場合が絶無とは言えないと思いますけれども,やはり専ら会社の利益を理由に訴訟を終了させる,それを目的とするそういう法制を立法化するということについては,適応範囲が比較的狭いのではないかという面,それからやはり現在の状況に照らしてみると,そういう法制化をすることについてはやはり慎重であるべきだという印象を持っているということでございます。 ● それでは,私からちょっと○○委員に御質問したいのですが。   最初の「Ⅰ.制度改正に関する経済界のニーズ」の中で,4番目の点ですけれども,「取締役個人で負う損害賠償額があまりに衡平を欠く苛酷なものであり,これを軽減したい。」ということですが,これは事務当局から最初に説明がありました,取締役の会社責任の一部免除の制度,これができたこととの関係につきましては,どのようにお考えか。つまり,あの制度,かなり定款変更してあの制度を導入している会社も多いように新聞等に出ておりますが,そのあたりとの関係はどうなのか。それから,恐らくは損害賠償額があのように決まりますと,保険を掛けやすくなったと思うのですけれども,そうなりますと6倍といっても保険を掛けてしまえばそれで済むのではないかと思うのですが,その辺の実情も御説明いただければと思いますが。 ● 取締役会でもって軽減をできるというふうに定款変更をしている会社が徐々にふえてきているというふうには思います。ただ,これは正に経営者としての多くの方の感触なのでありますけれども,6年というのは余りにも重いということでございまして,特に報酬の方は税引き後になるわけですけれども,これは税前の6年分ということになりますものですから,極めて苛酷であるというふうに言われる経営者が非常に多いというのが現実であります。   やはり6年・4年というのはまだ重いなと思います。 ● まず,代表訴訟全体をどのように評価するかということに関しましては,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,これだけ難しい制度を日本人は何とかまずまず運用してきているのではないかという印象を持つわけでして,一部大変難しい問題もあることは承知しておりますけれども,全体として見たときに,ドラスチックな改正をしなければならないような状況ではないのではないかというのが私自身の印象でもあります。   この制度は,戦後アメリカから導入されたと一言で言われますが,導入時に相当によく当時の商法の専門の諸先生や法務省のサイドで御検討になったということを感心するぐらいでございまして,それまでの日本の制度に合うように,非常によく配慮されて取り入れられた,その結果アメリカとは相当に違っている制度になっているということをまず出発点にしなければいけないのではないかと思います。   例えば,嫌がらせ訴訟ですね,非常に濫用的なものもあるだろうということを懸念して,昭和25年の改正の後,26年の改正によって担保提供制度というものを入れておかれたわけですが,それが随分役に立つような状況が今生まれてきているとかいったことにもあらわれているように,相当に違うということをまず前提にすべきだと思うのです。   多少,何らかの形では細かな手直しはするということを検討するということは,これだけ重要な制度であるわけですから当然だとは思うのですけれども,この中で,私はやはり訴訟委員会の制度というような提案がなされてくるということは,昭和25年改正時に何とか日本の制度に合うような形で代表訴訟を取り入れようとされた諸先輩の努力というものを十分配慮しない提案なのではないかというように思っているわけです。   確かにアメリカの制度を見ると,訴訟委員会制度というものが動いているようだと,だから日本でもいいのではないかというように並列的に持ってこられるようなものではなくて,非常に法律のそもそもの組立てが違っているところで出てきている制度である,つまり訴訟委員会制度というものがあるのは,アメリカには是正要求という制度がある,それとの関係で訴訟委員会制度というものが生まれてきているということが一つです。   それから今度は,アメリカになくて日本にあるもの,これが監査役制度なわけですね。監査役が取締役の会社に対する損害賠償責任について追及する,一般的に会社・取締役間の訴訟については監査役が会社を代表するという,こういう制度を持っている。これは日本にあってアメリカにないものだと思います。このディマンドといいますか是正要求の制度と,それから監査役制度,アメリカにあって日本にないものと,日本にあってアメリカにないもの,この二つの違いというものを踏まえないと,訴訟委員会制度というものを直接日本に持ってくるというには,理論的にも難しい問題が出てきてしまうということがそもそもの私の印象であるわけです。   また,この訴訟委員会制度の奥にありますディマンドの問題の奥には,更に言えば,アメリカの場合は,それこそ監査役のような特別の機関--会社と取締役についての訴訟だけについては別扱いにして訴訟を担当するという制度--がないということに行き着くから,根っこは一つというふうになるのかもしれません。したがいまして,アメリカの場合,会社が第三者に対して訴訟を起こす場合も,会社が取締役に対して訴訟を起こす場合も,結局会社が訴訟を起こすということで同じになってしまうものですから,特に第三者に対する訴訟の場合については株主が代表訴訟を起こすと言ってきましても,それはちょっとやはり会社の方でもう一度判断したいということは大いにあり得るということから,この是正要求の制度というのが入ってきたというふうに私自身は承知しておりますけれども,そういう基本的な構造の差というものを考えると,訴訟委員会制度という形でこの問題に対処するということは,では今の監査役制度をどうするのかとか,取締役と会社との訴訟についての権限をどうするのかという,そこら辺の調整で非常にややこしい問題をもたらすことが懸念されますので,私自身は訴訟委員会制度というものは考慮しない方がいいのではないかというふうに思っております。   今度は逆に,訴訟委員会制度においてアメリカでやっているようなものを,日本でも何とか取り入れられないかというふうに考えた場合には,これはもう既に私は現行法上できるのではないかというように思っておりまして,すなわち昭和25年の改正の折に,日本法的な形でアレンジされたその一つが,皆関係者はすべて参加をして,そこの中でいろいろな情報を全部裁判所に集めて,これは不当な訴訟ではないかというようなことも含めて,全部裁判所に集めて,裁判所が適切に判断をする,こういう構造は十分に可能なような枠組みをつくっていらっしゃったのではないかというふうに思うわけです。したがいまして,現在も監査役がアメリカの訴訟委員会がやっていらっしゃるのと似た役割を十分に果たせるのではないかというふうに思っているわけでして,つまり監査役は何も株主側を応援するときに参加できるだけではなくて,被告側を応援する,あるいは会社としての独自の第三の立場で言いたいことを言う,そのために独立当事者参加をするということは可能なのではないかというふうに私自身は思っているわけです。現在,それが行われているかというと,そうではないけれども,それが可能であるということであれば,訴訟委員会制度というものを新たに持ち込もうというよりは,監査役もっと頑張ってくださいと言えば済むかもしれないような問題だというふうに思うものですから,一体監査役が独立当事者参加をして,このようないろいろな主張をするということを,私は可能だというふうに解釈しておりますが,どんなふうにこれをお考えになられるのか,むしろ○○委員とか○○委員にお教えいただきたいなと思う次第です。 ● 反論でありますけれども,繰り返しになるのですけれども,担保提供手続があるからいいではないかというのは今までも議論されたところですけれども,今現状どうなっているかはまた○○委員に教えていただきたいと思うのですけれども,この前の私どもの調査では,担保提供命令が出るまで平均17か月かかっている,取締役任期は4年ぐらいだとその半分は裁判所ばかりで過ごす,担保提供命令をとるためだけであってもこれだけ大変なんだというふうなことを申し上げたことがございます。今,どういうふうに裁判所の方でお手引きされているかということについては,またお教えいただければと思います。   それから,監査役につきましては,先ほど言いましたように訴訟委員会というのを監査役を軸にした改正をしてもらうことで十分だと私は思っているのです。経団連のこの前の提言で,○○委員の方から却下されたのがありますけれども,監査役会が会社のためにならないということを申し出れば,裁判所は訴訟を却下しなければならないということを経団連の緊急提言として何年か前に出したわけであります。これは却下されたわけでありますけれども,これを○○委員がそういう制度に賛成だとおっしゃっていただけるのであれば,すぐにでも乗りたいと思います。   それから,独立当事者参加を監査役会ができるかどうかについては,私はよく分からないので,それこそ専門の皆様の御意見を聞いて,それができるのであれば,先ほどの会社としての何らかの意見表明する機会を代表訴訟制度の中で組み込んでいただきたいということを申し上げましたけれども,それが現状でも可能なんだというふうなことであれば,我々としてはそれを利用していなかっただけだということになるのかもしれません。 ● ○○委員が経済界のニーズとして1から4まで挙げておられますけれども,恐らく2と3は,先ほど来○○委員からのお話しの担保提供制度,あるいは会社による被告側への補助参加,これに深くかかわっていると思いますので,その辺を中心に○○委員から,実情等お話しいただけますでしょうか。 ● 担保提供命令の申立て自体が,東京地裁で昨年7件,今年3件で,申立て自体が非常に少ないのと,実際には審理をしていますと早期に終局判決ができるといいますか,判断ができる場合ですと,担保提供命令の判断をして,更にまたそれに対して抗告をされてということを考えると,本案を先にしてくれと言われればそれはもうそこで終わってしまいますので,実際に判断に至っている例が少ないのですね。ただ,やはり担保提供命令をまず判断しろと言われれば,裁判所はすることになるのだろうと思うのです。   ただ,先ほど言いましたような訴訟の類型を考えますと,当初の段階では主張自体失当に近い,主張が十分尽くされていないと,ただ原告側が資料とか主張が少なくて,その中でいろいろだんだん主張を整理していくということになりますと,すぐそこで,主張自体が失当だから,直ちに今の担保提供命令の要件を満たしていて担保を積めというところまでなかなかいきにくいのかなと思います。   私が最近見たのでは,そんなに数がないものですから,平均17か月というのはちょっと何か,どの統計なのかちょっと分かりませんが,そこまでかかるのかなと。もしそうしますと,担保提供命令の判断をして,それに対して抗告があると。この間もあったのですが,実際にそうすると今度は担保を積んでくる,また戻ってきて最初からやり直す,結果的には担保提供命令の判断をしたために長期化するということにもなりかねない。積めない程度の担保を積めと言えばいいのですが,担保をむちゃくちゃに大きな額にするというわけにはいきませんので。この間ありましたが,3,000万程度ですと積んでくるという場合もあったものですから。   それから,補助参加の話で,確かに○○委員から言われたとおり,裁判所からしますと会社が補助参加してくれて資料を出していただけると非常に審理の促進にはなるのだろうと思います。 ● 独立当事者参加は。 ● 独立当事者参加はできるのかどうか,ちょっと私もぱっと言われて……。あれは三面訴訟になりますので,会社はどちらかの立場のはずなんで,ちょっと……。   一番しやすいのは,補助参加だろうと思うのですが,なかなか多分会社の立場からすると旗幟を鮮明にしにくいところもあるのだろうと思うのですね。被告側についていて,結果的には裁判所が損害賠償でも認めたなんていうことになると,会社としては非常に立場がないということになるのかもしれませんし,なかなか思ったようには補助参加の例はほとんどないに等しい状況です。   裁判所としては,できれば早く審理をして結論を出したいという,その観点からしますと,これは若干私の個人的な意見になるのですが,株主代表訴訟というのは余り事実がぎりぎり争われるというよりは,評価の問題が多いのではなかろうかと思います。そういう意味では,事実関係が今言いましたように何らかの手段で早めに分かれば,あとはそれをどう評価するかということで早期の判断も可能ではないかなと最近思いまして,それは今の医療過誤訴訟,非常にスピーディーに審理をしておりますが,その医療過誤訴訟がこんなに早くやれるようになったというのは,いわゆる診療経過一覧表という事実関係のものを最初にもう被告側といいますか,医師側でつくってくれる。これはもう運用で。そうしますと,その事実がきちんとすれば,あとは争点は評価だと,そういうところに持ち込めればもっと早く審理ができる。私たちとしてはやはり早く審理をして,今,○○委員の言われたような無用な負担,と言ってはあれですけれども,認めるものは認め,認められないものは早く判断するということはしてみたいと思います。そういう意味で,補助参加というのも有効ですし,何かそういう手立てがあるというのは非常に有り難いなという気がいたしますが。 ● 補助参加の点が改正のときにもいろいろ問題になったわけですけれども,私は基本的に会社が被告取締役側を実質上応援するということは大いにあり得る話だろうと思いますが,会社が補助参加をするといったときに問題になってくるのは,むしろ補助参加を被告側に補助参加をするということになった途端,会社を代表するのは代表取締役になると,このように解されてきたことと深く関連しているのではないかと思うのです。それはおかしいのではないかという感情を皆に与えるものですから,そのために改正の折にもその点が議論されて,結局監査役の同意が必要であるといったような形で改正された。そうなると,また監査役としても責任を問われるかもしれないのでそういう同意をするのかどうかということになると,ちゅうちょする向きもなくはないみたいなところがあると思いますので,動かしにくくなって,それほどケースは多くないという結果にまた結びついていくのではないかというように思っているわけです。   したがいまして,会社と取締役との間の法律関係,特に義務違反に関する損害賠償の責任に関しては,もうすべて訴訟になる前の交渉段階から,すべて含めてということまで私は考えるのですけれども,監査役が担当するのだということに決めてしまえば,それはむしろ楽になりまして,補助参加であろうが独立当事者参加であろうが,何であろうが,自分の思うところ,会社のために一番いいと思うところに従って,監査役も動きやすくなるし,訴訟を起こさないでその前の段階で早く交渉して,幾ら幾らはちゃんと払っていただきたいとということもやりやすくなると思うのです。ですから,どうも問題は会社と取締役の間の義務違反にかかわる問題の処理について,アメリカとは違って,日本の場合は監査役というものを当てたということ自体はいいのだけれども,それが中途半端になっているがために十分に活用できていないのではないか,となれば,もっとそこのところをはっきりさせることによって,うまく動き出すのではないかというのが1点。   それから,監査役だけというふうに言いますと,その監査役が不適当な場合だってあり得るわけですね。特に,会社と監査役との間の義務違反にかかわる問題ということになりますと,これは代表取締役がもう一遍会社を代表することになるのでしょうけれども,果たしてそれがいいのかどうかという問題がありまして,したがいまして株主総会で別の方を選んでもよいという制度設計は大いにあり得るし,そうした方がいいのではないかなどとこの間は考えて,学会などでもそういう方向で報告させていただいたということでございます。 ● さっきの補足ですが,補助参加する場合,ちょっと難しい問題がありまして,実際には取締役の中でも実際にその行為を担当した取締役,これはもう法令違反等--極端に言うと違法行為だという明らかな取締役がいる場合,それと経営判断の違法が主張される取締役がいる,それから監視義務と,何種類かの取締役の責任類型が分かれてきているような場合ですと,こちらの場合は認容される可能性,会社としても原告側に補助参加したいと,こちらについては多分被告側,監視義務違反というのであれば取締役かわいそうだからそこは補助参加したいというので,確かに異質なものを一挙に訴訟でやっているものですから,そこで補助参加しにくいというところもあるのではないかなと。   ちょっと,これは今,議論を聞いていて思ったことでございます。 ● 先ほど,○○委員からもお話がありましたけれども,なかなか我々の先輩がよく考えてつくった代表訴訟制度であると。確かにそのような面があると思うのですけれども,もし訴訟委員会という制度,もちろんこの訴訟委員会をどういう内容のものとして構成するかという問題はありますけれども,もし訴訟委員会的な考え方を持ち込んでくると,現在のものとかなり違ってくる部分というのは,現在の制度だと私の理解しているところでは代表訴訟というのは取締役に義務違反があれば責任があるということになって,責任があれば賠償しなければいけないということになる。ところが,会社のベストインタレストというものの要素を考慮していくということになりますと,仮に取締役に責任がある場合でも,会社のベストインタレストにそれが合致しないのであれば,訴訟は終了するという問題が起きてきますし,あるいは訴訟委員会の構成いかん,制度設計いかんですけれども,いわば取締役の責任の有無という問題に入らない段階で,会社のベストインタレストというのを問題にして訴訟を打ち切るということが可能になってくるということで,現在の仕組みのもとではそういうことは恐らくできないのではないか。もちろん,権利の濫用というような一般法理でそれは対応できる部分もあろうとは思いますけれども,取締役に義務違反がある以上は責任を負わなければいけない,それを裁判所はそれが正に訴訟物なので,それに対してこたえていかなければいけない。その際に,会社のベストインタレストがどうのこうのというのは責任の成否には関係がないことなので,判断要素に入ってこない。ところが,この訴訟委員会制度を導入していくという考え方の中には,そういう現行では考えられていない部分を持ち込むという発想が基本にあるのだろうと。だからそういう考え方をこの際取り入れていくのかどうかということが,ここの議論中の重要なポイントの一つであろうというふうに思います。   私は,そのベストインタレスト,責任の成否のほかにベストインタレストというものも訴訟を今後続けていくかどうかを認めるに当たっての判断要素として考慮していくというのは,一つの考え方として十分成り立ち得る考え方でもあろうと思いますので,そういう方向をとるのかとらないのか,もしとるとすると,どのような形でそういう要素を代表訴訟の中に持ち込んでいくかというあたりを議論していくということが必要ではないかというふうに思います。 ● 会社のベストインタレストにその訴訟が合致するのかどうかというのが問題だというのは,○○委員のニーズの最初にも書いてありまして,正にその点は非常に重要な問題だと思います。   これ,アメリカの場合は,前提は○○委員も最初におっしゃいましたように,とにかく本来取締役の責任は取締役会が追及すべきなので,それを怠っていると裁判所が認めれば,株主に訴訟追行権限を認めるということであって,したがって怠っているかどうかということの一つの要素として,会社のベストインタレストは何かという形で問題が出てくるわけですね。しかし日本の構造はそうなっておりませんので,正にこれは○○委員がおっしゃるように,新しい要素がありまして,それを入れるのかどうかというのは,このニーズを認めるのかどうかということの判断の非常に大きな問題だというのは,おっしゃるとおりだと思います。   この点につきまして,何か御意見ございますか。 ● 私も,会社の経営上のインタレストというのが代表訴訟の早期終結に働くべき場合がないことはないということはもちろん認めるわけでありまして,この関係で○○委員が御提案されている会社の見解表明,あるいは情報提供に係る機会の付与という問題が,現行の実務でどれだけ導入できるかという問題について,ちょっとこの資料を拝見して関心を持ったのですが,これは裁判実務に携わっていらっしゃる○○委員に教えていただければ非常に有り難いのですが。   ちょっと話は外れますが,一つは担保提供命令の期間が先ほど十数か月というお話がありましたが,これは私の手元に「判例時報」の1738号がありまして,これは八千代銀行の担保取消決定の事例ですが,平成11年9月9日に申立てがあって,平成12年4月3日に決定ということで,6か月程度なんですね。そのコメントに,「東京地裁においては最近は担保提供命令の申立ての事例は多くないが,大体6か月程度で決定に至っているようである」という記載がされておりまして,数が少ないということですからなかなかその辺の把握が難しいのかもしれませんが,印象としては十数か月というのよりも相当短期で今は出ているのではないかなという印象を私は持っているという点が一つでございます。   それともう一つは,先ほどちょっと○○委員の御提案のことを申し上げた会社の見解表明,あるいは情報提供,こういうことを先ほどの補助参加ですと結局訴訟終結まで会社はつき合うということになるわけで,早期に訴訟終結という機能は補助参加自体にはないわけですね。それに対して,会社の見解表明,情報提供というのを担保提供命令の手続にしても,あるいは本案訴訟にしても,この機会を裁判実務上付与することによって,それが実質的な効果として会社の見解を聞いて,この件は会社の経営上の利害関係が非常に大きいから,この点は早期に和解をすることを勧告するとか,そういうような実際上の効果というものを図っていくということができ得るのかどうかですね。会社の見解を聞いて訴訟を終結させるということは現行法でも難しいと思いますけれども,裁判実務上そういう形で早期終結に至る過程において,会社の見解表明あるいは情報提供というものを機能させるということが可能なのかどうか,あるいはそういう事例があるのかどうか,教えていただければと思います。 ● クオリフィケーションのために申し上げておくのですけれども,担保提供命令の期間につきましては,先ほど申しましたように現状どうなっているかを把握していないということでありまして,2001年時点におきまして調査したところ,これまでも申し上げたような気がしますけれども,1年未満が33%,1年以上1年半未満が29%,1年半以上2年未満が25%,2年以上が13%ということで,平均17.4か月になっていたと。   たしかこの資料,議員立法の場でやったのか忘れてしまいましたけれども,2001年2月の例の「商事法務」に載っていたのを分析いたしまして出したときのもので,今からほぼ3年前の状況なものですから,今現状はそうかもしれません。 ● 私もこの「判例時報」のコメントで把握した限りですので,統計データに基づく発言ではございません。その点はちょっと御了承いただきたい。 ● ○○委員の「会社,(監査役会,取締役会,調査委員会等)の見解表明,情報提供に係る機会の付与」というのは,これは○○委員も,先ほどもそういうものがあれば争点整理に役立つのではないかというふうに言われたように私は聞いたのですが。 ● そうですね,今言いました実際にはかなり和解を勧告している例もある。先ほどちょっと三菱の事件,具体的な事件はあれですが。そういうときは必ず会社にも入ってもらって,和解するとなると入ってもらわないとできませんし,どちらかというと会社がどういう方針でこの問題を考えて解決していくかというのが和解のかなめになると思いますので,そういう訴訟の進め方を考える上では非常に会社の見解表明というのは,使えれば役に立つのだろうと。これは私の個人的な意見ですが,思います。 ● まず最初に,今の17か月の議論なんですけれども,これは前に議員立法が問題になったときにもここで御披露があって,議論があって,当時の○○裁判官からその実情の御説明があって,17か月という長い期間が出ているのは,まずそもそもそういう判例集などに上がった事件をベースに計算されていて,しかもその中には,さっき○○委員が御指摘になったように抗告されてまた戻ってというケースが多くて,そういうのを全部平均するとそうなるのであって,実際の事件の大部分は大体6か月とかそのぐらいで終わっているのが普通ですよというのが当時の○○裁判官の御指摘だったと思います。   私は,やはりこういう代表訴訟の現在の実情を踏まえて,それを少しでもよくするにはどうしたらいいかという観点から考えるのが妥当だと思いまして,○○委員御指摘のような,あるいはさっき○○委員が御指摘になったような,現在の代表訴訟の使われ方がしているということであれば,それのいい点はなるべく伸ばして,そして仮に何か少し問題がある点は着実に少しずつ改善するということでよろしいのではないかと思っておりまして,○○委員が最初におっしゃった代表訴訟には三つのタイプがありましてと,実際かなりの部分は内部紛争や親族が多いと。これは,随分以前,○○裁判官が当時やはりそういうふうに御指摘になりまして,すべて一色に議論しないでほしいと,そういう内部紛争型については現にそれはたとえ代表訴訟を制限しても,多分別の形の訴訟でやはり裁判に出てくるわけですから,代表訴訟制度を動かすことによって何か現状をよくできるという話でも必ずしもない。ですから,それはそれとして認めて,そしてあと問題なのは,というか,今後更に考えていく必要があるのは,○○委員が御指摘になった第1の類型,これについてよりよくするにはどうしたらいいかということだと思うのです。   第1の類型について,○○委員が御指摘になった点,首肯できるところも多いのですけれども,正に会社の実情をなるべく裁判に反映することが望ましいと,そういったチャンネルを作るべきだと。それは十分あることで,それをどういう形でやるのがいいのかというのは考えるべきことであろうと思っておりまして,訴訟委員会という形でやるのがいいのかどうかということが論点だと思うのです。   さっき,補助参加の議論もあったのですけれども,そもそも議員立法で入ったときに補助参加という形にするについてもいろいろ議論があって,むしろ学者,特に民訴学者の方は独立当事者参加の方がいいという御意見があったのですけれども,立法側サイドが最高裁の判例もあったせいもあると思うのですけれども補助参加という形になった。   ただ,補助参加ということになると,さっき○○委員が御指摘の,一方でやや抵抗感も出てくる,ある意味でいうと被告側にくみする形になりますし,確かに被告側に有利な訴訟資料しか出てこない可能性もあって,本来の望ましいのは,会社はできれば本来中立的な立場で,なるべく事実を明らかにする訴訟資料を出してもらうような制度にするのが望ましいと思いますし,またその方がさっきおっしゃいましたいろいろな立場にある会社の関係者の人たちが,そういう訴訟資料を出しやすくなるという面もあると思いますので,そういったことを含めて補助参加なりあるいは訴訟委員会という形でやるのがいいのかどうか,さっき言いました少しでも現状よりよくするにはどうしたらいいかという視点で考えるのがいいのではないかと思います。   訴訟委員会でそういうことをやろうとした場合ですが,問題は本当に訴訟委員会がそういう○○委員がお考えになるような望ましい形でうまく機能してもらえるかどうか,裁判所がそれが公正な意見であり,かつ,より裁判を充実したものにするものとして使えるかどうかということが重要だと思うのですね。ただ,どうしても訴訟委員会制度というのは,やはり結局取締役会で訴訟委員会のメンバーを選んで出てくるものですから,これはアメリカでもやはりややバイアスがかかる危険があるということは言われていて,アメリカの判例もいろいろでありまして,確かに訴訟委員会での判断に経営判断原則を適用している多くの判例もありますし,一方ではさっき言ったようなバイアスを考えて,必ずしもそういった原則を適用しないで判決しているところもある。ということで,訴訟委員会制度もつくり方,それから運用の仕方によって随分違ってきますし,そこを考えないと,その意味では慎重に考える必要があると思います。   今回の○○委員の御提言を読んで一番注目したのは,Ⅲの2のところで,正にさっき○○委員が御指摘になった点をこういう形でくみ取ろうとされているのだろうと思うのですけれども,一方でもっと強い主張になると,会社の長期的な利益を考えて,こういう即物的にすぐ代表訴訟の結果によって損害が生じるというだけでなくて,もっとある面で抽象的な利益も考えて訴訟委員会が却下すべきであるという意見を出すことができるという考えもあると思うのですけれども,そこまでいくと,やはりさっきの訴訟委員会の判断が一体どこまで尊重できるかということとあわせて抵抗感も出てくるであろうと,多分そういうことをお考えになってこういう範囲でこういう御提言をなさったと思うのです。   経済界もいろいろ真剣にお考えになって,こういう案を出していると思うのですけれども,そうだとすれば,仮にⅢの2のようなこともある程度考慮した制度にするとして,その仕方がどの範囲で,どういう手続でやればいいかというのは,これはもっと考える必要があると思っていまして,それこそさっきの担保提供のような中でやるという考えも一つあるでしょうし,さらに言えば,訴訟委員会という制度は世界的に見るとむしろまれな制度,アメリカでは確かにとっていますけれども,他のコモンロー諸国,最近代表訴訟制度の法改正をしておりまして,カナダ,ニュージーランド,オーストラリアなんかもやっていますけれども,それらの国では訴訟委員会の判断ではなくて,むしろ裁判所の裁量でそういう点を考慮するような制度になっているわけでありまして,私はこのⅢの2の問題は下手すると劇薬になるので,入れることには相当慎重になるべきだと思うのですけれども,入れるにしても,今言ったように,必ずしも訴訟委員会--訴訟委員会の制度がどう組み立てられるかによりますけれども,いろいろな仕方を考えてみるべきではないかというふうに考えている次第です。とりあえず以上です。 ● ほかにいかがでしょうか。そろそろニーズについて御議論をいただければと思うのですが。 ● ちょっと議論を明確にするために,前提として○○委員に質問なんですけれども。   米国に倣った訴訟委員会制度の導入,Ⅱの1の(3)のところの①ですが,これは具体的に条文に落とす場合にはどんなふうになるというイメージを持っていらっしゃるのかなということをお伺いしたいのですけれども。   これ,かなり難しいのではないかというふうに思っているわけで,するべきだとしてもそれを入れるということはかなり困難なのかなと。今,○○委員から御指摘ございましたように,アメリカにおきましても別に訴訟委員会というものが正規の,といいましょうか,もともと法律で決められた委員会として出てきたというわけではなくて,判例の積み重ねの中でその判断がかなり尊重されるという形になってきたわけですから,まず条文で落とし込むということになりますと,どういうことになるのかなということをお伺いしたいのです。 ● 難しいことを考えておりませんで,現行の代表訴訟制度において監査役に提訴ディマンドがあったときに,監査役が従前どおりのことでほったらかしておくか,自分が提訴請求をするか,こういう道が一つある。   それとは別に,自分の組織というのは社員が--独立してないものが二人いて,社外は二人だと,こういう中ではちょっとこれについてどうしていいかよく分からないというふうなとき,監査役会の判断でもって訴訟委員会の設置を検討する。監査役が訴訟委員会を設置すると決めた場合においては,訴訟委員会がそこから一定の期日以内において結論を出す,その結論が訴訟の却下請求というときには訴訟委員会は裁判所に対して却下請求ないしは考慮要求なるものを出していくと。それで,裁判所でそれがこれでは意味ないねということになると,通常の訴訟に移りますし,意味があるということでもし裁量却下,裁量棄却等ができるという制度がくっつくのであれば,それで終了する,こういう制度だと考えております。 ● そのときに,裁判所の方が退けるというときの前提なのですけれども,例えば形式的なプロシージャーがはっきりしていれば当然訴訟自体を却下しなければいけないというような書きぶりになるのか,そうではなくて,もう完全にフリーハンド,裁判所に渡して,要するに実質判断まで裁判所にしてもらっていいのかというところが一番の争点になると思うのですが,もしとにかくフリーハンドを裁判所に渡すということであれば,この②の方の意見表明の御提案と基本的には同じなのかなということで,であれば,必ずしも法改正をすることもなく,任意で訴訟委員会というプラクティスを積み重ねていくということもあり得るのかなというような感じがしておるのですが。 ● フリーハンドではあるのでありますけれども,訴訟委員会の場合においては訴訟委員会の出した判断を裁判所が,どういう意味は分かりませんけれども「尊重するものとする」と,これが入る。   ②の方については,何らそういうものは入らない,そういう違い。それがゆえに訴訟委員会についての独立性であるとか手続であるとか,そういうあたりというのは法律での規制が必要になってくるのだろうということだと思っております。 ● いかがでしょうか。もし今すぐ御発言がなければ,この辺で休憩にしたいと思いますけれども,よろしいですか。   それでは,休憩にいたしたいと思います。             (休     憩) ● 時間になりましたので,再開いたします。   休憩前に,訴訟委員会制度のニーズについて大分御意見をいただきましたけれども,若干まとめさせていただきますと,まず,会社としてのその問題に関する調査結果といいますか,あるいは意見に当たるようなもの,そういうものを訴訟に反映させる機会を補助参加の形以外に何か認める方がいいのではないかという御意見が一つあったと思います。それが訴訟委員会という形がいいのかどうかは別にしまして,もし争点整理等にそれが役立つ場合があるのではないかと,そうしますとどういう形でそれを訴訟に反映させるのがいいのかという問題が一つ提起されたと思います。   もう一つの問題は,○○委員のペーパーの最初にもあり,それから事務当局の資料15にもあるのですが,会社あるいは株主全体の利益を考慮して訴えを終了させるという,そういう訴え終了事由を導入すべきなのかどうか,少なくとも既存の制度にはそういう制度はないと私は理解しますが,そういう制度を導入すべきなのかどうか。ただこれも,訴訟委員会という制度にするかどうかは別でありまして,○○委員から御指摘がありましたように,仮に入れるとしてももうちょっと要件を絞る形もあり得ますが,○○委員のⅢの2でしょうか,訴訟の追行によって得られる利益より,それによって必要となる他の……,要するに,会社の不利益の方が大きい場合とか,もうちょっと特定して書くかという問題はあるのですが,そういう訴訟の棄却事由か却下事由か知りませんが,そういうものを導入するとしましても,何も訴訟委員会でなくてもいいので,それをこういう却下事由あるいは棄却事由を法律の中に書き込めば,裁判所はそれを適用して棄却なり却下なりする場合があり得るという,そういう制度にするかどうか。一つこれがあります。   それからもう一つ,○○委員が最後に言われましたが,訴訟委員会というものの実益はそんなものにはとどまらないので,やはり会社がこういう意見を持っているということを裁判所も,どの程度か知りませんがとにかく尊重しなければならないという制度にまでするかどうか。これは,恐らく日本風に翻訳すれば,要するに会社にはそれが会社のためになるかどうかということの判断に関するビジネスジャッジメントの権限があるのであって,だから裁判所はそれを尊重するというような形になるのかと思うのですが,そういう制度を導入する必要があるのかどうか。その3点ぐらいに休憩前の議論は整理できるのかなという気がいたしました。   そこで,そういった点についてなお御意見いただければと思うのですが,最初に申しました会社の調査結果あるいは意見というようなことを訴訟に反映させるには,どういうのが一番日本の従来の手続にもマッチし,いいのかというようなことにつきまして,何か○○委員,お考えありますでしょうか。 ● 深くは考えていないのですが,例えば裁判所が必ず求意見をするとかですかね。今ちょっと,これは本当に思いつきですけれども,例えば訴訟の提起があって,今のところですと提訴請求があって,それに対して提訴がないというだけで株主からの訴えが起こる,あとは裁判所は通常の訴訟と同じ形を進めていきますけれども,会社の方で意見を表明したいというのであれば,現行でいくとどちらかの当事者から送付嘱託とか……。嘱託か何かをするか……。   ちょっと,ぱっと思いつきませんけれども,何か意見を必ず聞いたら会社が答えなければいけないという仕組みにすれば,それは一つはあり得るかと思いますけれども,裁判所としてはあくまでも,尊重するというかどうかはあれとして,参考意見として考慮するということはあっていいかなという感じは……。   これは,全くの思いつきの意見でございます。 ● 今の件に関しては,これは私どもの研究会が前から申し上げているのですけれども,一つはさっきも申し上げたのですけれども,会社が言いたいことを言うというだけでいいのかということもあると思うのですね。そうなりますと,場合によっては,例えば被告側に有利な証拠等だけが出される可能性もありますし。そうではなくて,やはり会社である以上は,立場上きちんと必要なものは出してほしい,それから言うべきことは言ってほしいということがあると思っていまして。前に提言したのですけれども,例えば商法35条に倣って,「取締役の責任に関する会社所持文書については,民訴法220条4号ハにかかわらず,自己専用文書であっても当事者の申立て又は裁判所の職権で,会社に対して提出を命ずることができる」とか,あるいはその他単独株主による情報開示請求権を強化するというようなことも当然ありますし,それから会社にそういう見解を述べさせることを裁判所の方で命ずることができるような制度を考えてよいのではないかと。   単に訴訟委員会のような形をとるだけが,唯一のそういった情報を裁判所に持ってくるやり方ではないと思っております。この点についてだけ。 ● 今の論点につきまして,何かほかに御意見ございますでしょうか。 ● さっきのまとめにかかわることなんですけれども,現行法上会社の全体の利益を考えて代表訴訟をやめさせる手段がないというまとめだったのですが,恐らく現行法の考え方は,株主総会の特別決議でもってやめさせるという形で,一定の限度がありますけれども,そういうことも考えているというのですね。   アメリカの訴訟委員会と責任制限の制度というのは,責任制限は事前にあらかじめ一定額に限定していて,そしてその事後的な提訴のよしあしの判断は訴訟委員会でするということになっているわけですけれども,日本の場合は,事件が起きた後での免責を株主総会での特別決議ということで認めているわけで,少なくともそのチャンネルはあると。たとえ事件が起きた後,代表訴訟が提起された後であっても,株主総会の決議で一定の免責をすることはできる。ですから,その制度との整合性も一応考える必要はあるかなと思います。 ● それはちょっと別の制度ではないかと私は理解しておりますが。 ● 今の○○委員の御意見,よく私も分からなかったものですから手を挙げたのですが。   現在は,特別決議をすればそれで訴訟終了させると,いかに原告が訴訟を続けたいと思っても訴訟を終了させるという制度はないというふうに私は理解しておりましたのですが。 ● たとえ提訴後であっても,免責決議がされましたら責任が消えるわけですから,その部分については訴訟を継続できなくなるのではないでしょうか。 ● 免責決議は,総株主の同意が要るということに実質上やはりなるという解釈……。 ● 7項以下の手続に従って,です。 ● それを入れればということですね。でも,それは軽減だけで。 ● 無論,軽減だけ。完全な免責ではありませんけれども,その範囲では認めているということとの均衡も一応考える必要があるというだけのことです。 ● 今の点に関連して,この部会資料15にも出ていますけれども,責任を免除する規定との関係をどのように考えるか,これは理論的には訴訟委員会なんかの話というのは責任の成否の問題なのであって,責任が成立するかどうかという局面で問題になる話だろうと。   ところが,この266条の5項以下の責任の免除の規定というのは,むしろ責任の成立を前提にして損害賠償の額を制限するという話なので,だから責任の成立は認められてから後の話なので,理論的にはこれは違う整理ができるのではないかと。   そうだとすると,先ほどの○○委員の御意見で,正にこれは責任の成否は問題にしないのであって,責任の成立を前提にして,一定範囲での損害賠償額,本来ならば全額賠償のところを制限するということができるということですから,どうも責任の成立そのものの問題に一体この責任軽減規定というものの存在がどういう意味を与えてくるのかというのが必ずしも連動しないような感じも。そもそも問題を取り扱っている事象が,一方は責任の成否の問題であるのに対して,こっちは責任が成立してから後の話なので,その辺の関係でどういう連動があるのかなと,直ちに連動してくる話かなという点について,ちょっとその辺よく分からない点があるという感じを持ちました。 ● 責任が制限されたことによって,事実上訴訟がそこで意味がなくなる場合はあり得ると思うのですけれども,しかし責任限度額内で訴訟をやっておれば,それはまだ続くわけでしょうし,必ずしも必然的に結びつくわけではないのではないかというふうに私は思っておりますけれども。   ほかに,どの点でも結構ですが,御意見いただけますでしょうか。 ● 今,裁判所に会社側の方が意見を出す機会をという話なんですけれども,その会社が意見を出すことの意味ですね,一体これは訴訟の成否の中でどういう位置づけで会社の意見表明というものが意味を持ってくるのか。文書提出命令の特則のようなことですと,証拠を提供させるという意味合いで会社の意見表明というものを,そういう意味づけを与えようということなのかもしれませんけれども,そもそも会社の意見を表明させるということは一体何をねらっている制度なのかという,そこがはっきりしないと,会社がどこまでそれにこたえていくかというようなこととも関連してくるような感じがいたしまして,そもそも第1点の問題で,会社の意見表明制度というのは一体何をターゲットにした制度として考えているのか,ここを明らかにしないと,やや議論が混迷に陥る可能性もあるのではないかという感じを受けました。   だから,1,2,3と分かれたのですけれども,非常にある意味では論点が相互に連関しているような感じもありましたので,その辺のところも整理は必要なのかなという印象を持ちました。 ● 先ほどの質問のときに多少要領を得なかったものですから……。   裁判所の事実審理のやり方からしますと,本来,通常の当事者訴訟であれば,当事者が一番証拠を持っていて,主張も意見もきちんと言える,大事なことは言えるのですが,株主代表訴訟の場合には,どうしてもそういう手持ちが株主側にはない,それが特に審理を長期化したり,多分はたから見ている会社の側から見て隔靴掻痒するところではなかろうかと。   現行法ですと,例えば調査嘱託の制度で会社に対して調査をして,資料も出させるというようなことを使えないかなと考えたことはあるのですが,多分現行法でもかなりできそうな気もしますし,ただ意見だけ言われても,それをどういうふうに裁判所が訴訟で使うかということを考えると,ちょっとなかなか難しいかなという気がいたします。多分,意見が出ても,やはり当事者が何らかの形で主張にのせてくれないと,裁判所はその意見に基づいて判断するというわけにはいかない,全くの参考的なものというだけになるだろうとは思うのですが,そういう意味では最後はやはり当事者が訴訟活動の中に反映してこないと,なかなか生かしにくいという感じはいたします。 ● ○○委員が整理していただいたことに即して考え直す機会を得たものですから,改めて申し上げたいと思うわけですけれども,この三つは○○委員がおっしゃるとおり非常に連関しておるわけですけれども,そのうちの○○委員のおっしゃる第1の点ですね,会社の意見を訴訟に反映させるという機会をもう少し真剣に考えるということ自体は賛成でございます。ただこれを,訴訟委員会という枠で設けるということについては,日本の制度上そういうことを持ち込みますとかえって複雑化するばかりでありまして,なかなかすんなりといかないのではないかということが一つです。   それから,こういう観点から考えたときに,現行制度を使ってもまだまだ動かし得る余地が非常に高いのではないか,裁判所の側がイニシアチブをとって,何か意見を求めるについても,今,○○委員がああいうものも使うのかなとおっしゃいましたけれども,会社側の方がイニシアチブを持って,もっとかかわろうとする場合も,監査役はそういうことができる立場にあるのではないかというように解釈論としても考えていたりするぐらいのことでございまして,こういう形で議論することは非常に賛成ですし,方向も賛成なのですが,立法の必要があるかどうかということも含めて,した方がいいということであればしてもちっとも構わないと思うのですけれども,検討していくに値する非常に重要な視点であるということには賛成いたします。   今度,第2番目の話ですが,一体裁判所は,どういう判断でもって最後却下なり棄却なりをするのかということにつきましても,三面訴訟みたいな形ものがふえてくればくるほど,あるいは会社が補助参加をするとかいう事態がふえてくればくるほど,こういうことも真剣に議論されることになると思いますので,これも大変重要な論点であると。ただ,今の段階ですぐ立法に踏み切るのがいいのか,解釈でもって裁判所にしっかり判断していただいて,その積み上げを待ってみてもよいのではないかという判断と分かれ得ると思いますけれども,立法でも真剣に取り組んでもいいのではないかという御判断であれば,それは一つの賢明な判断であり得るかもしれないと思います。   ところが,3番目に整理された話でございますけれども,確かにアメリカの訴訟委員会の制度においては,訴訟委員会の判断を一定程度裁判所がまず尊重するということを前提に組み立てられてきている,これはやはり是正要求があって,それに対する答えという,こういう構造になっているからそうなっていると思うのですけれども,先ほど○○委員もおっしゃいましたとおり,こういう枠組みを日本に取り入れますと,またまた大変になってまいりまして,ほかの諸外国でもそういうものは余りとられていないということを○○委員が御紹介になられましたのですが,アメリカ自身でも,こういう構造というのは余りよくないのではないかということが反省として言われているわけです。こういう構造は代表訴訟を複雑にし,長引かせている,裁判所はその事件が根拠のあるものであるか否かを審理するに先立って,複雑ではあっても結局は枝葉末節であるにすぎないような問題を解くことを余儀なくされていると。したがいまして,こういう問題をアメリカで解決するには,是正要求とかそういうものの制度自体をやめてしまった方がいいという意見もあるわけですが,さすがに世紀を超えてこういうものを発展させてきているものですから,アメリカはそれをなかなか踏み切れないでいるという状況ですので,日本がわざわざこんなものを取り入れる必要はないのであって,やはり総合的に裁判所がきちんと判断していただくというだけの枠組みで十分ではないかということで,私は3番目の見解には反対であるということです。 ● 先ほど,○○委員から御指摘のあった点,会社の意見表明の意見とは何かということなのですけれども,私は基本的には意見ではなくて,事実,証拠を出してくるということではないかと思っていまして,さっき文書提出命令の改善等々でカバーできると言ったのは,そういう趣旨であり,○○委員御指摘のように,現行制度の改善でかなりの部分はそれがやれる。もしそれでない部分が残るとすると,さっきの○○委員のⅢの2のいわば政策的考慮から,たとえ請求権があるにしろ却下することが望ましいという意見を会社が出すのかという話,もしか意見の部分があるとしたら,そこになってくるのかなと。いわば政策からですね。それを認めるのがいいかどうかというのは,これは非常に難しいし,よほど慎重でないといけないのかなと。○○委員も,ある程度限定した案でお出しになっているというのも,多分そういうことを御考慮になったのではないかと。   正に政策的に,とにかく認めない方がいいということを--訴訟委員会の意見をそれこそ尊重して認めるということになると,それこそさっき私が言った,政策的考慮をして責任の一部免除をするという制度をとっている現行法の制度との整合性等も考える必要が出てくるかなと,そこまでいけば,ということであります。 ● もちろん,第2の点,会社の利益にならないということを却下なり棄却の理由にもしするというのであれば,これは会社の意見を聞かないわけにはいかないので,まさか被告が,私を訴えることは会社の利益にならないということを言うというのは変な話なわけで,それは第2の点を肯定するなら当然○○委員のおっしゃるようなことになると思います。 ● 会社から意見を表明したいケースは,訴訟委員会制度の方策が必要と考えるケースとして私が5点述べておりますけれども,被告が勝訴する蓋然性が高い場合というふうなときに,証拠とともに意見も会社の方から申し出る,財務担当の取締役が資産を先ほど言いましたように半年前に売っていればこれほど株が下がらなかったのに,今まで置いておいたがゆえに会社に100億の損害を与えたというふうな訴訟,そういう不作為の訴訟が起こってきたときには,やはり会社としてのそういう財産,資産の処分に関するマニュアルであるとか,こういうことが整備してあるので,これについては問題ないでしょうというふうなことを言ってみたい,こう思いますし,物は正に政策判断の問題でありますけれども,3番目のコンプライアンス・システムなんかの整備状況についても,やはり会社が言っていきたいと。   それ以外に,私の資料の中で,アメリカで考慮されているという「勝訴の見込みと訴訟コスト」とありますけれども,例えば10万円の損害賠償請求を出してきた,ところが訴訟コストが500万円かかる,こういうふうなものについて本当に10万円の請求であとはサービスフィーベースでもって500万円を弁護士に払うというのが本当に会社にとって価値のあることなのか等も,やはり会社の意見表明としてはあるのではないか。したがって,米国等で考えられているようなことについての意見表明というのも,証拠とともにあってもいいのではないかと思っております。 ● 第1点については相当御意見いただきましたが,第2点,例えば○○委員のⅢの2のようなことについて,これを理由に株主代表訴訟を裁判所が判断して却下なり棄却なりするというような制度については,これは導入する価値があるのかどうかという点につきましては,既に意見を表明された方もありますけれども,いかがでしょうか。 ● たとえ取締役に資力がなくて,得られる賠償額がわずかであるとしても,それゆえに代表訴訟の追行をそこでストップさせるという制度は,やはり問題が多いというふうに思います。一番最初に○○委員がおっしゃいましたとおり,代表訴訟は損害回復だけが目的ではなくて,やはり違法な行為の抑止効果というのも非常に大きいと思いますので,単に幾らぐらい回復できそうかということだけで判断するのは不適切と考えます。 ● これは本当に困る話でありましてね。ここで会社がどうしているかというと,違法ではないということをやっていくわけですけれども,時間の問題もあって,結局責任を認めないで和解ということになっていくのですね。他の訴訟へのことを考えますと。最後の最後まで争っているときに,会社の予期せぬようなものも出てこないとも限らないので,結局は早期に和解をして,これについては違法ではあるかないか分からない状態でふたを閉めることによって他の訴訟を闘っていく,こうなるものですから,またそれによって取締役がお金を払わなければならない。本当は,自分はちゃんとコンプライアンスやっているのだ,にもかかわらずほかの訴訟に影響を与えるのだから,あんた3億払えと言われて払う,そして和解をしろと会社から言われる。これもちょっと酷ではないのかなという気がするものですから,これは是非お認めいただきたいなと。   株主からしても,こっちの方を望むのではないかと思いますが。 ● いろいろな考え方があると思いますけれども,この代表訴訟が何のためにあるのかといったら,会社の利益のため,ひいては株主全体の利益のためであるということになった場合に,株主全体の利益に合致するかどうかという判断を代表訴訟を続けるかどうかという点でおよそ考慮に入れる必要ないということはないのではないかなと。だから考え方としては,どんなに軽微であれ違法行為があれば,違法行為たることを明らかにして取締役の責任を明らかにし賠償させるというのは株主全体の利益になるのだという理解であれば,正に株主全体の利益とそこで合致するわけでしょうけれども,そうするとこれはある意味では違法的な行為の是正に非常に力点を置いた理解ということになると思うのですけれども,それだけで考慮してしまっていいのかなというと,やはりコスト的に見たときに,結局は株主が多大な負担をして取締役の責任を明らかにし,その結果会社に支払われる賠償額は極めて微々たるものである。トータルとしては赤字というような,株主全体の支出がふえたというようなことになる。それがかなり極端な場合を考えてみると,そういう場合でもなお訴訟を追行させるという必要はあるのかどうか,これは考えが分かれるのではないかなと。   今,○○委員が言われているような考え方というのは,恐らくそういう点を重視するというか,そういう視点を代表訴訟の続けるかどうかというところに盛り込むべきであるという考え方だろうと思うので,あながち理屈としておよそ成り立たない理屈であるというふうには私は思いません。   ただそれを,どういう形で取り入れていくかということで,特に代表訴訟の場合は,いわば会社が違法な行為をした取締役に対して責任追及をやれるかというと,一番の問題は,やはり仲間内ということで責任追及できないだろうということで代表訴訟というような形が導入されたということが一つの要素であるとするならば,会社全体の利益というようなものを判断する主体が同僚の取締役であるということになると,非常に会社全体の利益になるのかどうかという判断の公正性といいますか,中立性というか,妥当性というものに対して疑念が生ずるので,まず第一次的にその判断主体という問題になりますけれども,最終的には裁判所に任せるのがいいと思いますが,裁判所がかなりビジネスの判断が相当入ってくる会社最善の利益という問題に対して判定する機関として,裁判所が本当に適切な機関なのかというと,この点は経営判断のベースというものが一つの背後にあるような考え方からすると,判断主体として適切なのかという問題が一つありますね。ですから,そこでビジネスがよく分かる中立的な立場,独立性のある人間に一応その点を判断させた上で,それを裁判所に出させるという仕組みは,それなりに考えられた仕組みとしては十分成り立ち得る仕組みなので,それが監査役が代替できるかということになると,ちょっと私はこれはどうなのかなという感じを持っておりまして,先ほど○○委員も言われましたけれども,いわゆるストラクチャーバイアスというものが,独立の取締役を選んだ場合でもあるのではないかという議論があることを考えると,この独立的な判断を選ぶところを取締役会というものでいいのか,それとも裁判所あたりでそういうパネルを構成するメンバーを選任するというような仕組みで,バイアスのところは何とかクリアするというようなことも考えられますし,いろいろな制度の設計はあり得ると思いますけれども,違法追及のみに傾斜したのでいいかどうかについては,私としてはちょっと疑問があるということです。 ● 非常にⅢの2というのは,やはり無視できないことなのではないかなという気はするのですけれども,ただここで気になるのは,代表訴訟というのは単に損害を回復するというだけでない面もあることは否定できないわけで,そう考えてみると,やはり裁判所が常にこの要件,つまり不利益が大きいという要件を満たす場合には,却下なり棄却しなければいけないというルールは適当ではなくて,いろいろなことを総合して,こういう場合には棄却できるとか,あるいは却下できるけれども,そこはやはり裁判所の裁量に委ねられる程度にはしないとまずいのではないかなという印象を受けました。 ● 今の経営判断の重要な,先ほどの○○委員のⅢの2ですね,こういったような場合が恐らく非常に重要な問題だろうと思いますけれども,法律で要件設定する場合に,こういう場合に限局するということは恐らく限定的過ぎるだろうと思いますので,裁判所が何らかの形で訴訟を終結させる処理をとるという場合に,どういう要件設定をするかというのはもう少し全体を鳥瞰して,どういう場合は本当に必要かということで要件設定することが必要だと思います。   もう一つは,裁判所がそういった会社から出た意見表明,あるいは情報でもって経営判断の適正性というものを判断できるかという問題から申しますと,アメリカのALIのコーポレート・ガバナンス原則を見ますと,取締役又は訴訟委員会と言っていますが,それが意見を述べたこと以外に,それについて理由が情報あるいは合理的な判断に基づいているかどうかということ,それから裁判所としてはそれについてあらゆる法的問題点を検討した上で結論を出す,そういうような三つの要件を定めていまして,そういう意味では裁判所が実質的に棄却するかどうかの判断をする一つの主体として適格だという前提に立っているというふうに思うわけです。   それで,どういう要件を設定するかということで,私もいろいろ,従来の担保提供命令の事件を見てまいりますと,ある程度実体審理をしないと不当な訴訟かどうか判断し得ないというケースと,それ以外に,担保提供命令という遠回りの手段をとらなくても,棄却してもおかしくないというようなケースも見受けられるような感じがいたしますので,そういう意味では担保提供命令の手続との関係でいっても,不当な目的がある場合に担保提供まで命ずる必要もなく棄却するというケースがあってもいいのではないかということを今まで実は感じてきたわけです。   それと今の問題を考えあわせると,例えば担保提供命令の制度を維持した上で,それと,場合によっては裁判所が裁量の棄却を行うということを裁判所の選択で決定をするという制度があってもあるいはいいのではないかという感じを持っておりまして,その場合に,担保提供制度の方は恐らく原告に負担を課すわけですから,悪意という要件が必要だろうというふうに思いますが,裁量棄却という面では,悪意の場合以外に会社あるいは全株主の利益,その他一切の事情をしんしゃくするというようなことで,裁判所の裁量的な棄却を認めるとという選択的な制度を作るというのも一つの方法かなというふうに考えております。 ● そういう制度も非常に望ましいと思うのですけれども,もう一歩進めますと,責任が認められた後の責任軽減制度というのを定款に規定すれば,取締役会でもってできると。それに反対の株主がいれば,株主総会にいくわけですけれども。それと同じ制度がこれに導入できないものか,こういう株主代表訴訟の提起があった,会社としてはこういう訴訟がこういう観点から会社のためにならない,株主の皆様のためにならないので取り上げないと判断した,株主がそれについて--株主総会,臨時総会まで待っているというのは大変な時間がかかりますから,定款でもってそういう定めを置くことができるという今と同じような制度にして,取締役会の判断を公告する,反対がなければもうそれで訴訟は自動的に終了する,裁判所は一切構わない,株主が定款自治の中での取締役会,これは当然監査役の全員同意が要るわけですけれども,そういう中での訴訟の自動取下げ制度というのを株主自治の中で認めるというのもあり得ないのか。ちょっと図に乗った提言かもしれませんけれども,そういうことも御検討いただきたい。 ● ほかに,先ほどの第2点,第3点については御意見ございますでしょうか。 ● 先生方の様々な御意見を伺っていて,いずれもいろいろな御意見があるのだなと拝聴していて納得している部分もたくさんあるのですが,考えるべき点としましては,やはり日本の会社実務の実態の中で,取締役に対する責任追及というのは本当に会社自治に任せて追及できるのかどうかということだと思います。実際,金融機関などにおきましては,取締役の融資等に相当の問題があるにもかかわらず,何ら責任を追及されないまま放置されてきたという実態は多分にあるわけでありまして,昨今の訴訟を見ますと,例えばRCCなどが一生懸命やれば訴訟になって,かなりの部分で責任を追及するという事件も出てきている,それが本当に会社の自力によって追及できたのかどうかということを考えてみますと,相当程度疑問があると言わざるを得ないというのが実態だと思います。   その中で,今の議論に非常に関連性を持ちますのは,ちょっと違う視点かもしれませんけれども,代表訴訟の提起について株主の方から会社に要求が出た後,会社が訴訟を提起しないという判断をどうやって行っているのかということではないかと思います。監査役がほっておいているという場合もあると思いますが,本来ならばそこでもしコンプライアンス体制というのが確立しているのであれば,当然のごとく会社自身は調査を行うべきですし,その調査の結果,そもそも損害賠償を求めるような実態がない,事実関係がないのだということの調査が相当程度できれば,そこで防衛することができるはずでありまして,そういったようなものの内部の調査結果がきちんと整っていれば,それは裁判所にも提出されて,裁判官の判断にも大きな影響を与えるということになるだろうと思います。   また,他方において,調査はしたのだけれども,その事実というのは非常に些細なことであって,場合によってはむしろそのレピュテーションリスクの方が大きい,会社にとってみればいわば風評というのでしょうか,そういうようなものが横行していて会社のためにならないという判断で私たちは訴訟を起こさないのだというのであれば,報告書の中にきちんと書かれるべきであって,それが会社の立場として表明されるということになるのではないかというふうに思います。   そういった実務の積み重ねがないところで,例えば株主総会にかけて,株主総会の中でみんなが承認したからもういいのだというような形であれば,やはりどうも世間は納得しないのではないかなというのが私の個人的な意見でありまして,やはりそこで監査役会,あるいは監査役ないしは監査委員会の方が訴訟を提起しなかった理由というものを,しっかりとした形で世間にアピールしていくというような実務の積み重ねが,むしろ問題の解決なのではないかなというふうに思います。 ● ○○幹事の言われるとおりだろうと思うのですけれども,ただ実務の積み重ねが今ないということにつきましては,恐らくそうではないだろうと思うのです。多くの会社においては,例えば法令違反があった,それによって会社に損害が生じた場合には,必ず調査委員会なるものをコンプライアンス委員会のもとに発足させて,それを本当に取締役が知っていたのか,知らなかったことに過失がなかったのかどうか,そういう判断が出ると必ずしかるべき処分をしている。お金をもらうのか,それを監査役による訴訟追行という形ではないけれども,その損害に相当するようなものを金銭的にないしは身分というようなことで処分をしているということだろうと思います。   そういうことがあったときに,取締役会として,監査役として,それをほったらかしておくというふうな会社というのは,極めて少なくなってきているのではないかと。一応社外弁護士を使ったり,全然関係ない弁護士を立てたりして,調査委員会を発足させて調査レポートをまとめている。そういうときに代表訴訟の提起請求があると,そういうものが既にありますから,これによって既にそういう措置をしたとか,ないしはこれについては責任がないのだとかいうふうに監査役がすぐ対応できる制度というのは,各社もうコンプライアンス委員会の中でほぼやっているのではないか,訴訟になっていないだけであって,という気がします。   それほど実務もいい加減なあればかりではないのだということは,御理解いただきたいと思います。 ● 先ほどの○○幹事,○○委員のこととちょっと関係するのですけれども,現在訴訟委員会制度ということを取り上げるときは,むしろ会社が言うことができるという方向性で今議論されているようですが,○○委員の整理で言う,例えば第1の問題という主張とか事実の解明という部分については,単に会社だけではなく,原告側であったり,また被告側であったとしても例えば被告の相続人だったら事実関係なんか何も分からないわけで,とにかく事実を一番知っている人に何とか語ってもらいたい,こういう側面があるということが明らかになっていると思うのですけれども,そういう文脈からいくと,例えば訴訟委員会制度を設けた場合に,そういう会社については当事者が例えば訴訟の提起請求をした場合には,必ず事実調査の義務を負って,それに基づく例えば意見書のようなものを作成しなければならない,若しくはその意見書の作成がされた場合には,例えば原告や被告がそれの開示を請求した場合にはそれを交付しなければいけないという義務の側面というものも含まれた御意見なのか,それとももうちょっと政策的な面から,あくまでも会社の権利としてというか,そういう立場からの御主張なのか,そこら辺がちょっと不明確な部分があるかなと思いますので,質問させていただきたいと思います。 ● 私のところは,この資料にありますように,こういう機会の付与ということでありまして,会社がやりたいと思うときに意見表明をする。必ず証拠提示に応じなければならないとか,提出しなければならないとかいうふうなところというのは,考えておりません。とりあえず主張はそういうことでございます。 ● 昔から,裁判所サイドには義務的に考えるアイデアというのはあるのですね。 ● 先ほどの○○幹事の御意見にも関連するのですけれども,やはり世間の納得が得られるかどうかということは重要な問題であろうと思います。会社が自分のとった行動を世間がそれを正しいというふうに評価してくれるかどうか,ここは非常に重要なポイントであると思うのですけれども,その場合に,現行法のもとですと監査役にしろ監査委員会にしろ,社外取締役ないし社外監査役という位置づけになっていて,この「社外」という要件だけで一体公平中立な,世間が納得できるような判断を,あるいは調査を行って結論を出したのだという部分について,世間一般の疑念を完全に払拭するのには本当に十分なのだろうかという論点があると思います。   そこで,社外性から更に今度は独立性という要素をそこに加えていく,したがってこういう独立性のある人間が調べて,調査をして,判断をしたのだと,善管注意義務を果たして判断をしたのだということになると,これはかなり世間の受けとめ方も現在とは違う可能性が出てくるだろうと。だから,いわば仲間内というようなものではないということを避ける要素をインプットしていかないと,会社最善の利益というようなものを持ち込もうという場合はなかなか困難な問題が出てくるのではないかと。だから,そういう方向に踏み込むということとセットで考えていくというようなことは,十分検討に値するのではないかなと思うのですけれども,その辺のところは○○委員のお考えとしてはどうなのでしょうか。 ● それが,今の監査役会であるとか,監査委員会というのを訴訟委員会そのものにするということになると,独立性の問題とかいうところで,そもそも代表訴訟が会社の歴史として一回もないような会社の方が圧倒的に多い中で,過度な負担を求めることになって実務的ではない。したがって,訴訟委員会をアドホックに設けると。そして,訴訟委員会は全員社外であって,独立性の要件もより強化するという方向であるのだろうと思っております。 ● そういう方向であれば,○○委員の言われた第3の点ですね,何らかの拘束力,裁判所がそれを尊重しなければならないという意味での,どの程度尊重しなければいけないかという問題はあるのですが,何らかの拘束力を認めるという御主張でしたが,その点につきましてはいかがでしょうか。 ● その点に関連しまして,もし独立性のある--独立性の意味をどのような要件で独立性というものを決めていくかというのは非常に重要な問題であって,ここはまた議論があり得ると思いますが-一応独立性を満たすというような場合に,そういう訴訟委員会が下した報告あるいは結論というものを,裁判所がどこまでレビューするかという問題があると思うのですね。当然に訴訟委員会の結論をそのまま裁判所が受け入れろというのは,ちょっとやはり無理があるのではないか,だから訴訟委員会の判断が相当であるという判断は,恐らく裁判所はしなくてはいけないような仕組みにしないといけないだろうと思うのですけれども,その場合,相当性の審査を裁判所が,例えば独立性というような要件に絞って審査するというような審査の範囲にするのか,独立性ももちろん審査するけれども,その訴訟委員会なり何かそういう判断主体が下した判断が,一体合理的なのかどうかという中身の問題までも踏み込んで裁判所が判断をしていくかどうか,これは訴訟委員会の判断の取扱いについてアメリカでも大きく分ければ三つの立場,どこまで踏み込むかということについて三つの立場があると思いますけれども,やはりここは,もしそういう制度を考えていくのであれば,どこまで裁判所の審査の範囲を及ぼしていくかということも議論していかなければいけないだろうと。   ですから,割とそういう意味ではこの制度を導入するためには,かなり積めなければいけない論点が随分あるような感じで,その場合,裁判所の役割をどこまでやるか,ここもかなり難しい問題のように思いますけれども,私としては全く裁判所が形式的な独立性,つまりメンバー構成の独立性という点に重点を置くだけの審査でいいのかどうかは,やや……。もちろん,制度は具体的に考えなければいけませんけれども,それで留保はいたしたいと思いますけれども,何かちょっと危ぐはあることはあるというような印象を持っております。 ● それはもう,○○委員がおっしゃった第3の点を認めるのだとすると,これはもう非常に大問題で,どういう要件があれば裁判所が認めていいのかというのは……。 ● この代表訴訟制度,平成5年以来随分推移してきているわけですけれども,先ほど○○幹事がおっしゃったこと,それから○○委員が反論なさったこと,これが非常に動的な問題ですから一定の統計的なものがあるわけではないですけれども,代表訴訟の制度が改正されてから,企業のコンプライアンスというのは非常に格段に成長したという印象を持っています。   私の経験でも,例えばある企業が何らかの業務執行をやる,取引行為をやるというときに,顧問弁護士に意見書を求める,あるいは顧問弁護士以外の客観性のある第三者弁護士に意見書を求めるというケースは非常にふえてきておりまして,私の経験でも,こんなことまで弁護士の意見をもらわなくても大丈夫ではないかと思うようなことまで求めてくるというようなケースもありまして,そういう意味では非常にコンプライアンスの,代表訴訟というのは一つのきっかけになったという非常に大きな成果はあったという認識をしております。   ただ,どうしてもやはりそういう会社ばかりではないわけでありまして,○○幹事がおっしゃったような特定の業種云々ではなくて,いろいろな問題を抱えてコンプライアンス体制が全然成長していないという会社も多々ありますので。その結果,大企業中心にコンプライアンス意識が非常に成長した,だから代表訴訟が減少してきている,また代表訴訟の運営も,先ほど冒頭に申し上げたように適正な運用をされてきているという結果に結びついているということだと思います。   ただその場合に,訴訟委員会というものをどういうふうに位置づけるかにつきまして,何らかの訴訟委員会の意見なり見解なりに裁判所に対する拘束力を認めるということを考えた場合には,その前提として訴訟委員会の法制的な制度をどうするかということを固めなければいけない。これは,先ほど来○○委員などおっしゃっておりますけれども,まず委員会の構成要件をどうするか。これは常置委員会ではあり得ないわけですから,個々の局面において会社が選任するということになろうかと思います。そうすると,今度は委員の選任権限を持つ帰属主体は一体どこにあるか,これは取締役会なのかあるいは監査役会なのか,あるいはほかの何らのか手続を求めるのかという問題も出てくると思いますし,更に委員会の権能の範囲をどうするか,これもやはり明確に法律に定めるということが必要になってくると思います。また,委員会の権能として仮に裁判所に対して却下の申立てをするという権能があるのだとした場合に,申立ての理由をどういうふうに制限するか,あるいは法定するかという問題などもございまして,なかなか会社あるいは全株主の利益という抽象的な規定では機能しないというように思います。   ですから,そういった法制化をするという方向でいくというよりも,すなわち訴訟委員会を法制化して裁判所に対する拘束力を認めるという方向をとるよりは,私はちょっと先ほど申し上げたように何らのか裁判所の棄却,裁量棄却的な制度をつくって,その運用の中で各企業が自主的に訴訟委員会というものをつくって,その訴訟委員会が裁判所に見解なり情報提供をする,そういう形で行えば,訴訟委員会というものが否定されるわけではないですから,手続の運用の中で,企業実務として訴訟委員会というものが非常に代表訴訟の手続の中で広まっていくということが行われるようになるのではないかなという気がしております。 ● そういう実績を積み重ねていくという考え方ですと,○○委員のおっしゃる裁量棄却的な規定を置いているだけでも,裁判所としては困らないというか,動くというか……。   その点は大丈夫なんでしょうかね。日本の裁判所というのは,余り裁量的なあれというのは嫌うのではないかという気がちょっと私はしますが。 ● 今の○○委員の御指摘の点は,○○委員が帰られてしまいましたので適切に答えられる人がいなくなってしまったわけですけれども,これは先ほど○○委員がいみじくも御指摘されましたように,こういう特に○○委員のⅢの2のようなケースについて,裁判所が本当に適切な判断権者になれるのかどうかというのは,やはり相当に慎重に考える必要はあるのではないかなという感じがいたします。裁量棄却という制度は,株主総会の決議関係にはあるわけですけれども,なかなかきちんとした要件のない中での判断というのは,非常に日本の裁判所は比較的苦手としていることは間違いないので,そこら辺は更に慎重に御検討いただく必要があるのではないかなと思います。また,○○委員が出られるときに更に議論をしていただいた方がいいと思います。   それから,裁量棄却というお考えが○○委員,それから○○幹事からも出されたわけですけれども,今ある裁量棄却という制度は形成訴訟の場合なわけですね。形成訴訟であれば,形成しないで棄却するというのが比較的説明がしやすいのだと思うのですけれども,株主代表訴訟というのは会社の株主に対する請求権をいわば代わって行使するわけで,そうするとそういう制度と裁量棄却というものと理論的にどういうふうにつなぎ合わせるのかという問題を考える必要があると思うのですね。   そもそも,商法上の会社の取締役に対する請求権というものが,そういう一定の場合には発生しなくなるのか,そうではなくて,訴権の濫用という言葉が出たと思いますけれども,訴権の濫用みたいな状態になって裁量棄却できるようになるのかとか,そういう理屈面を○○幹事から御指導いただければと思うのですけれども。 ● ちょっと考えさせてください。すぐにはちょっと答えられないと思いますので。 ● 1についていろいろ御意見をいただきまして,私,多分今日はこの1だけで終わるのではないかと予想していたのですが,案の定そうなりそうな状況なのですが,特に今日の資料15に関しましてはまだいろいろありまして,特に3の(2)なんていうのは相当の大問題で,これも十分一回分ぐらいとるような話だろうと思います。   先ほどの事務局からのお話でも,多分意見照会に関するものは2月以降のようでありますので,1月はこれをやろうと思えばやれるわけでございまして……。   1につきましては,いろいろ御意見いただきまして,難しい課題も多々あるということが分かりましたので,このぐらいにさせていただいて,2の方に入るということでよろしいでしょうか。次回もやるとしましても,進んでおかないといけませんので。   それでは,2の「担保提供制度の見直し」につきまして,この点について御意見いただければと思います。   この点につきましては,○○委員がおられたらよかったのですが,お帰りになってしまいましたので,どなたでもこの問題につきまして御意見いただければと思います。 ● 意見ではないのですけれども,2の最初の米印と二つ目の米印で引用されている判例の意味なんですけれども,最初の米印のところで,最判の昭和63年1月26日が引用されていて,「知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提訴した場合」に不法行為になると。確かに表現もしているのですが,同時にこの最判は,「提訴者が悪意重過失である場合など訴え提起が裁判所制度の趣旨,目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる」と,そして訴えを提起する際に,「提訴者において自己の主張する権利等根拠につき,高度の調査,検討が要請されるとすると,裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となるからである」というような判示もしているので,むしろ事案としては不法行為責任を認めるのにかなり慎重な判断を示した判決だと思いますので,単にここでの引用だけ見ると,過失があれば一般的な不法行為責任が発生するみたいな,それだけに見えますので,その点は慎重な配慮が必要かなと思います。   それから,次の二つ目の米印の中部電力事件も,同じ事件の控訴審の方では,一般論としては同様の一般論をとりながらも,当該訴訟がそのような企図により株主代表訴訟を逸脱し,濫用するものとは認められないと言って,実際この事件ではそういう場合に当たらないといって,その部分の担保提供は取り消しておりますので,そこら辺,判例の引用の仕方は注意する必要があるかなと思います。 ● ほかに御指摘や御意見,いかがでしょうか。   一番重要な点は,不当訴訟要件について,御承知のとおり蛇の目ミシン事件の第一審は過失でも担保提供命令ができるように言ったのですけれども,その後の裁判例は大体過失ではだめというようなことになっているようですが,この点につきましてはいかがでしょうか。   どうも現在の要件の書き方では,過失の場合には担保提供命令は命じられないということに一応固まったのではないかという気がいたしますが,恐らく実務は蛇の目の第一審判決よりは担保提供命令が出にくくなっているのかなという気がしますけれども,その辺につきましてはいかがでしょうか。 ● 私も,結局裁判実務としてやってみたら,担保提供命令というのは無論有用な制度ではあるけれども,万能でもないというか,常に過失まで全部カバーするような広い制度としてまでやると必ずしも妥当でないということに落ち着いてきたのかなという印象を持っていまして,さっきの○○委員の御指摘のように,むしろかつての蛇の目基準でやっていると,担保提供命令の決定手続の中で実質的な実体審理まで行う--つまり過失ということになりますと--ことになってしまって,決定手続が本案化してしまう。それこそ長くなる可能性がありますし,それでいながら決定手続ですので抜本的な解決にはならない。むしろそのぐらいなら,中身までかなり入った審理をするなら,むしろ請求を棄却してしまった方がいいということになって使われるのが減ってきているのではないか,むしろその方が全体として紛争を早期に解決できるという裁判所の合理的な判断があって現在に至っているのではないかと。そういう意味で,私はそんなに現在の裁判実務を変える必要はないような気がしております。   また,原告株主の立場を考えますと,さっき○○委員が御指摘になったように,大会社の事件のような場合ですと,訴訟資料や証拠資料の収集が,何と言っても原告株主は当初は難しいわけでありまして,被告,会社と一体化している場合特にそうですが,それと比べますと証拠資料等を集めることは難しい。特に提訴時に具体的な請求原因事実の主張立証をしなければいけないということまで原告株主に要求してしまいますと,これは酷な面がある。さっきの○○委員のお話を聞いても,裁判所はそこまでのことは要求しないで,ある程度訴訟を進めて,証拠をそろえる可能性を認めているように思います。そうでないと,不公正になるというお考えがあると思いますし,また民事裁判の原則からいっても,適時提出主義をとっているわけでありますので,提訴した時点で完全に相当な請求原因事実の主張立証,証拠もそろっていないと訴えの提起に過失があるとまで言ってしまうと,やはり酷な面が出てくる。そういう意味では,むしろ現在の運用でいいのではないかと。   さらに,蛇の目基準では,法律論の面でも請求の主張が法律論としていわばなってなければ担保提供の原因になるということですけれども,蛇の目の事件自体も一審と二審で法律論が逆の判断をしているわけでありまして,裁判所だってそういうふうに考え方が異なり得るわけで,それを最初から完璧なことを要求して,それが満たされていないと過失があるから担保提供だとしてしまうと,やや行き過ぎになるような感じを持っております。 ● この過失を含むかどうかという問題ですけれども,私自身は蛇の目基準が非常に適切に運用されているという印象を持っている部類なんですが,単に過失ではなくて,通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提訴したということですから,重過失に近い,それを要求しているわけですから,ある意味では悪意と同程度ということを要求していると思います。   具体的な事例でどういうふうに容易に知れたということを加えることにメリットがあるかと申しますと,最初の監査役に対する提訴請求の中に書かれた原告株主の違法事実の箇所につきまして,監査役が提訴請求に対して返事を出しまして,原告が主張した違法事実の中にもう既に解消された事実がある,あるいは弁済されている,あるいはその違法事由と主張されていることについては別のこういう事実があって,その事実は成り立たないと考えるという返事を文書で出して,それにもかかわらず原告株主がそれを全く意に介さず提訴したというような場合には,担保提供命令の申立てをした場合に,悪意そのものまでは認定が難しいけれども,監査役の返事の文書を見たことによって容易に自分の請求が成り立たないということを知り得たということを認定して,担保提供命令出したというケースもございますので,そういう意味では本案請求に至る前に,そういった代表訴訟提訴前のやりとり,そういったものをもとにして容易に知り得たという事実を認定して,早期に担保提供命令で訴訟を終結するということも事実としてありますので,これを含めていただいた方が,かえって私としてはいいのではないかというふうに考えております。 ● 今の基準ですと,とにかくもう取締役全員を訴えて,あるいは監査役も,それで監視義務違反だと言えば,もうこれは少なくとも悪意ではないということになるというのが,例えばミドリ十字とか何とかはそういう判決だったと思いますが,その程度で適切だというふうに皆さんお考えでしょうかね。   現在の基準は,恐らくそんなところだと私は思っているのですけれども。後からぼつぼつ事実は分かってくるのだと。 ● 私の意見は,このペーパーで書きましたとおり,今の○○委員のお話もありましたけれども,会社としてどういう措置をとったのかというふうなことも担保提供命令制度の審理の一環としてそういうことが言える制度を設けていただきたい。   今の,悪意がそういう解釈になっているとは,○○委員のおっしゃるような状況になっているとは私はつゆ知りませんでして,そういうことで,ますます悪意をもう少し評価をしていただきたいなという感を強くした次第であります。 ● ほかに,この部会資料15には,訴えの提起が株主共同の利益を害する場合にも担保提供を命ずることを認めることはどうかというようなことがありますが,これはさっき,もう棄却や却下の事由にできないかということで議論しましたが,そっちの方は難しいとしても,担保提供ぐらいならという御意見はありますでしょうか。   ちょっと,余り理屈は立ち難いみたいな気がしますけれどもね。 ● 棄却とか却下の事由にしないでおいて,担保提供命令にするのは,ちょっとまずいのではないですか。 ● 余り理屈に合わないような気がしますね。   2の最後の米印は,これはいかがですか。これは解釈の問題ですけれども,確かにずれはあるのですね,一般に学説上言われていることは。ほかの合併無効等とちょっとずれがあることは確かだと思うのですが,この辺については余り従来合併無効なんかについては細かく考えてこなかっただけの話ですかね。本来,同じものであるべきなんでしょうかね。 ● 私は,そもそも害意と悪意がどれだけ違うのかというのもちょっと議論があって,民訴の先生方の中には区別がつくのかという議論もあるようなんですけれども,恐らく従来学説が考えていたのは,害意というときにははっきり言えば会社荒らし的なものを考えていて,代表訴訟以外の共益権の行使としての会社訴訟については,担保提供を発動することで--私のさっきのような考えには御批判がありましたけれども,基本的に慎重であって,そしてはっきりそれが出せる場合としていわば会社荒し的なものをあらわすために害意という要件が使われていたと。ただ,代表訴訟でこういうのが非常にたくさん出てきたことによって,本当にそれでいいのかということが問題になって,今のような議論になっていると。   私と○○委員との違いがどれだけあるのか分かりませんけれども,重過失ならどうかということなのかもしれませんし,あと過失と悪意の違いが法律論のレベルの問題なのか,事実に関する認識の問題なのかとか,いろいろなレベルでありますので,細かく言うとそういった点もあるとは思っております。 ● 私も,余りこの点はよく考えたことがなかったのですけれども,合併無効の訴えは,被告は会社ですよね。ところが,代表訴訟の方は被告は取締役であるというところで,会社が被告の場合は会社自体の損害がどうなのかというのと結びつけやすいわけですけれども,だからこの不当に会社の利益を害する意図,あるいは会社が害されることを知っていたというのは,これは会社側は当然被告になりますから,主体が会社ということになるので,それ以外の部分が代表訴訟の場合の担保提供の場合と非常に違うことを言っているのかどうか,それほど違いがないのではないかと。   担保提供という制度が,基本的には被告にされた者がこうむる不当訴訟による損害の担保だという発想からいくと,それほど違わない制度になるので,むしろ不当な代表訴訟が濫用されるというのを抑えるメカニズムとして,正面からそういう制度を考えようという場合だと,2の米印の3番目のような考え方というのが正面から入ってくるのでしょうけれども,あくまでも被告の不当訴訟の損害のてん補だという枠を動かさない限りは,これを広げようとしたって非常に限界があるので,そういう発想の転換が一体できるのかどうかという点も問題になると思いますし,アメリカの場合でもこういう担保を出せという州法もありますし,そういう担保提供という制度がない,デラウェア州なんかはないわけなので,これが一体濫用的な代表訴訟の歯どめとしてどの程度有効な仕組みなのかということについては,余り期待されている制度ではないのではないかと。そうだとすると,なおさらこれを濫用的なものを抑える仕組みとして使うというのは,かなり無理なのではないかなという印象を持っております。 ● 担保提供制度をどういうものとして仕組んでいくべきなのかということにつきましては,余り従来の制度も--現在の制度は,建前上は○○委員おっしゃったとおりなんですね。これを何かつくりかえた方がいいというような御意見はありますでしょうか。   特にそういう御意見はないと理解してよろしいでしょうか。   それでは,今日は1についてはいろいろ御意見いただきましたし,それから3の(2)については皆さんいろいろ御意見があるところだと思いますので,1月にはそれをやるということで,今日はこのぐらいでよろしいでしょうか。   それでは,本日の審議はこれで終了いたしたいと思いますが,事務局から連絡事項がございます。 ● 次回は,1月14日水曜日,午後1時半から,本日の部会資料の残りの部分だけにさせていただこうと思います。場所は,地下の大会議室を予定しております。 ● それでは,本日の会社法(現代化関係)部会を閉会させていただきます。   本日は,長時間にわたりまして熱心な御審議を賜りまして大変ありがとうございました。