法制審議会会社法(現代化関係)部会 第21回会議 議事録 第1 日 時  平成16年4月14日(水)  自 午後1時00分                        至 午後6時03分 第2 場 所 法務省大会議室 第3 議 題 会社法制の現代化に関する要綱案(案)たたき台(2)について 第4 議 事 (次のとおり) 議    事 ● 予定した時刻が参りましたので,第21回会社法(現代化関係)部会を開会することにいたします。   (幹事・関係官の異動紹介省略) ● それでは,まず最初に配布資料の説明ですが--幾つか出ておりますが--事務局からお願いいたします。 ● 本日の議題とさせていただきます部会資料19をあらかじめ送付させていただいております。「会社法制の現代化に関する要綱案(案)たたき台(2)」と題するものでございます。御覧いただきましてお分かりのとおり,前回積残しとされた部分も含めて整理させていただいておりますので,本日はこの資料に基づきまして御審議をちょうだいしたいと思います。   それから,前回の議事に関連いたしまして,○○委員,○○幹事からそれぞれ資料を御提出いただいております。この後,御説明をちょうだいできれば幸いでございます。   本日お配りいたしました資料3点は以上でございます。 ● 資料につきましてはそういうことでございますが,何か質問ございますか。--よろしゅうございますか。   それでは,○○委員,○○幹事に,それぞれ提出資料の御説明を簡単にお願いいたします。 ● お手元にカラーコピーで何枚かの紙をお届けいたしております。表題は,「最大のユーザー,中小企業が使いやすい会社法改正を」ということでございます。   ページをお開きいただきますと,ファクトだけちょっと説明させていただきますが,470万余りの企業というものがあるわけでございますが,その99.7%は中小企業。株式会社が114万ぐらいと言われておりますが,98.3%が中小企業。 まあ,会社制度を使っている人というのは中小企業だよと,この点,今まで申し上げてきたことをデータでお示しいたしました。   下の方,ちょっと細かいのですが,赤い字で書いてございます。中小企業という定義を,私どもは通常,基本法上は3億円未満と言っておりますので,それが大体112万社いると。114万社のうち112万社ということでございます。3億円以上のところは緑色で書いてありますが,1万9,100社ということで,こんな数字になっております。これ以外に,有限会社184万7,900,合名・合資と,会社の数を全部合わせましておよそ309万余りと,これが大体,鳥瞰をした場合の会社の全体図というような認識を私どもはいたしております。   次のページでございますが,それでは先生方がよく想定されていらっしゃる上場企業というのはどのぐらいあるのか。一部上場が2,500余り,二部上場で1,000余り,様々のもの,JASDAQ等を入れまして,店頭銘柄を入れまして5,000というような数字だと。いかに中小企業のマスが大きいかということを是非御認識いただきたいと思います。   4ページ目でございます。これは,今度はそれがどういう社会的な役割なのかという数字でございます。まず従業者数でございます。常用雇用の数をカウントいたしました。これ以外にパート,アルバイト等様々なものがあるわけでございますが,大体私ども中小企業は7割。製造業出荷額,平たく言えば付加価値をつくり出している分と御理解をいただきたいのですが,中小企業で半分以上。卸売りの販売額で6割以上,小売業では7割以上と,これがシェアということになっているわけでございます。これは統計で出てきた数字でございます。数は多いけど大したことないんじゃないかという御疑問があろうかと思いまして,あえて提出させていただきました。   5ページ目でございます。これは開業率,廃業率の逆転の数字をグラフにさせていただきました。ここ10年ほど,非常に廃業がふえてきておりまして,どんどん企業の数が減っているということで,何とか設立しやすい会社法,設立した後はうまくハンドリングしやすい会社法--私,時々強く言っておりますけれども,会社は会社法に基づいて何かをやることが主たる目的ではなくて,事業を行ってお金をもうけるというのが主たる目的でございますということでございます。   最後の紙は,私どもの主張でございますが,株式会社というものは小会社から超大会社まで連続的なものであると。大会社と小会社という二つに分類していただくのはいいと思うのでございますが,余り外形的に差別をするようなことがないような制度設計にしていただきたいと。現在の1種・2種・3種と分けているものについては私どもは余り賛成できかねると,こう思っております。それから,コーポレート・ガバナンスは,小会社につきましては基本的には会社ごとの自治に任せればいいと。   非常に大ざっぱな議論しかここには書いてございませんけれども,細かいところはまたいろいろ話をさせていただきたいと思います。 ● コーポレート・ガバナンスに関しては基本的に各会社の自治に任せればよいという御主張でありますが,要するに中小会社のコーポレート・ガバナンスというのは内紛の問題でありまして,多数を握っている者のやりたい放題で自治だということでは困るのでありまして,その辺は○○委員も十分御認識いただきたいと私は思っております。   続きまして,中小企業庁の方からお願いいたします。 ● お手元の資料,中小企業庁名になっております,「中小企業における第1種・第2種の区分について」という紙でございます。   これまで,1種・2種というのがどういう形で利用されるのかといったようなことを含めましていろいろな御議論があった関係で,ちょっと私どもとしていろいろな宿題を持っておりましたので,それにお答えするようなことも含めまして,やや総括的にお話しさせていただくというのが本日の趣旨でございます。   もともとの出発点といたしましても,今回,譲渡制限の定めがある,ないというところで大きく会社のコーポレート・ガバナンスが分かれるというところが一つの出発点であったというふうに思っておりますので,その意味でまずそこが非常に大きなくびれとしてあるということを踏まえた上で,譲渡制限株式会社の中でどういう区分をしていくのかという形で一部の議論があるわけです。ただ,私どもがいろいろ見てまいりますと,ある程度人為的に線を引いてしまいますと,そうは言っても,中小企業者の形態選択というものが商法の論理で完全にカバーし切れないような要因,対外的信用を始めとするいろいろな要因でやはり影響を受けざるを得ないということが現実に出てくるものですから,どうしても線を引くということがある種会社選択のゆがみをまた再生産してしまうというところが懸念の点としてあるわけでございます。その意味で,従前から申し上げておりますとおり,取締役会とか監査役といった機関設計の設置,そういうものを選択した場合にどういう法的効果が出てくるのかというようなことをフラットに書くという形が,実はその会社選択のゆがみを解消する上でも最も効果的なのではないかということが主張の背景にあるわけでございます。   それから,今の事務局案に即して議論しました場合に,1種・2種,私どもは議論の便宜上こういう整理をするということは承知して議論しているわけですけれども,もともと中間試案のときに,このかぎ括弧に書いてありますけれども,「譲渡制限株式会社について,現行の有限会社の機関に関する規律に相当する規律の選択を認める」という形での問いかけがなされ,関係者もそういうような理解をしている中で,実態に照らしてみると,そうならないのではないかというふうに思われる点が出てきたものですから,それをちょっと御紹介したいということでございます。   いずれにしましても,個別の論点を議論する前提として全体の主張を明確にしておいた方がいいということがあるわけでございます。   では現状の事務局案に即して考えた場合に何が問題なのかということですけれども,実は私ども,税理士さん,会計士さん,あるいは企業コンサルの方を始め,中小企業のここら辺の問題に通じた方10名前後を通じていろいろ調査をしたのですけれども,今のままのあれでいきますと,どうも1種を選択したくても選択できないというケースが相当数出てくる懸念が実はございます。これは相続等の関係で株式が分散しているというケースがやはりかなりあるということでございます。当然のことながら,今の株式会社法のもとで支配に必要な株の維持ということはやられているわけですけれども,それが今度,頭数を含めた特別決議要件になってきますと非常に深刻な問題になってくるということで,現実にも,社長さんがある種3分の2を持つというのがこの世界の相場観として一つあるわけですけれども,それを割る場合でも2分の1ぐらいは持つという中で会社経営をしていると。具体的な例で言っても,例えば資本金1,000万円ぐらいで売り上げが1億円にいかないような会社でも,社長さん,あるいはオーナーが9割ぐらい株を持っていて,たまたま先代の御友人か何かが10%ぐらい持っていると。それが気がついてみたら相続か何かをされていて二,三人に分割されていると。当然のことながら,先代のときのつき合いですから,もうおつき合いもないというふうなケースが結構ごろごろあるわけです。そういうところも頭数でもって半数以上というのは,これは現実に非常にトラブルのもとにもなりますし,そもそもそういう会社に特別決議みたいなことを理由として2種を選ばせる,あるいは1種が選べないという形が本当に妥当なのかというところが非常な疑問としてあるわけでございます。   2ページ目なのですけれども,そういう形で,実は1種と2種の選択のところは,少なくとも今の案を前提に考えるとまたゆがみが出てくる可能性があるという中で,2種の中にも相当多様な会社が入ってくると。そうなってくると,逆に,今の2種の,取締役会を置くといろいろなものがセットでついてくるというような整理は,ある意味では過剰な規制がそのまま残ってしまう,正に実態と形式がずれてしまうということにもなってくるかと思いますし,全体として眺めました場合にも,今の2種,これはこれから議論になるかもしれませんが,監査役の必置が変わらずに,権限の範囲が,例えば小会社について言えば業務監査まで加わってくるという形のある意味での規制強化になっている面,あるいは特別決議が非常にしにくくなるといったようなことになってくるわけで,どうもちょっと,議論としてそういうことを皆様方がねらって議論をしておられたわけでは必ずしもないのではないかなという感じがしたわけでございます。   その意味で,少なくとも1種についての特別決議要件を大幅に緩和をしていくということ,あるいは第2種について自由度を上げるということは,これは仮に今の枠組みの上に乗ったとしても絶対に必要になってくることでございますし,逆に言うと,私どもがもともと言っているような,余り種別ということではなく設定をする方がよりなじむということにもまたなってくるのではないかと思っております。   各論の方を簡単にあれしますけれども,特に特別決議の決議要件のところで,議論としまして,1種の会社というのは場合によっては株主平等の原則に違反するようなことも取決めができるのだ,そうであるから有限会社並みの特別決議要件が必要だというような御意見が当然あるのだろうと思いますけれども,逆に言うと,例えば,そういう場合に限ってそういう頭数を含めた要件にして,それ以外の場合には通常の,今の株式会社並みの決議要件にするというようなことができないものなのかどうかと。そういうこと以外にも,特別決議の要件がある意味では緩んでくることによって,おのずから定款自治の範囲というのは,これはまた当然変わってくるということであるのですけれども,そういうふうに整理をすれば実害のないような形の対応も当然可能であろうかというふうに思います。   第2種につきましても,これもいろいろと議論が錯綜しているのだと思うのですが,もともと必ずしも種別ということを前提にしていないところに種別ということが入ってきているがゆえだと思いますけれども,例えば種類株式の内容について2種が自由に決めるのはおかしいというような御議論がある一方で,特別決議要件については有限会社並みというふうなことは,これはちょっとバランスとしていかがなものかというような感じがいたしますので,その意味で,第2種については,少なくとも株式会社の水準から動かす必然性はないというふうに思われることがあるわけでございます。   それから,第2種における監査役の設置ということも,取締役会を置くと必ず監査役を置かなければならないということについての必然性というのは必ずしもない。取締役会自身が取締役についての監督機能を当然持つわけでございますし,それから要綱試案の段階でも,これはややしつこいようなのですが,さっきの有限会社の機関に関する規律に相当する規律の選択を認めるという中で,例えば監査役の設置ということも含まれておりますので,その意味では,これはやや意外な感があるわけでございます。実態としても,取締役会を設けたいという会社であっても,実は監査役については非常に意見が分かれているという実態もまたあるわけでございます。   最後の任期規制のところも,これもいろいろな御議論をこれまでいただいているわけですけれども,取締役会を設けたから必ず任期規制が必要になるということでは必ずしも論理的にはないように思いますし,もともと譲渡制限会社という大きな枠組みの中で議論をしているわけですから,その意味では,そこのところが直ちに,いわゆる2種といったようなものを設けたときに任期規制と必ずパッケージになる--私ども,具体的に言うと上限を設けるということについて申し上げているわけですけれども--ということはどうかというのがよく分からないということと,それから,今回,解任決議が普通決議化されるということの関係でも,任期が延びても,逆に言うと解任の可能性についてのバランスは図られているということも申し上げられると思いますし,それから,仮にこの解任決議の要件を引き上げることが定款でできるのだとすれば,そういう場合には逆に上限を設けるといったような形の選択肢あるいはバランスを維持する方法もあるのだろうとは思っております。それから,現実にも,従業員を取締役にするようなケースも,中小企業の場合,ある一定の規模になってくれば,当然出てくる。あるいは,損害賠償責任の問題なんかもあってむやみやたらと長い任期設定ということはむしろ起こらないということを私どもも全く前提として考えているわけでございます。その意味で,登記情報の信頼性というところもそんなに変なことには多分ならないはずでございまして,あと,そういう任期の問題を勘案することが主体的にコーポレート・ガバナンスを考えるきっかけにもなるということも当然あるわけでございますから,実態として任期規制の必要性について疑問を呈する方が多いということもさることながら,いろいろな今の枠組みに沿って考えたときにも,もう少し柔軟性を付与する整理の仕方というのがあるのではないかということでございます。   全体としまして,1種・2種の区分,いろいろなところで常に関係してきてしまうものですから,やや時間をとらせていただいて全体の図を御説明させていただきましたけれども,私どもとして,一応こういう認識をベースにしながら御議論させていただいているということを御了解いただければと思います。 ● この1種・2種の区分というのは非常に意見が対立しているわけでございまして,1種・2種の垣根を低くしろ,あるいは,少なくともどっちを選ぶかは各会社の自由にしろという御意見から,そもそも株式が相当分散しているような会社が1種というのはおかしいのだという考えまで,いろいろ意見が対立しているところでございます。この点は,第二読会といいますか,今後6月以降議論がありますので,何とか妥協点を見出せればというふうに考えております。   それでは,本日の審議に入りたいと存じますが,本日の部会資料19につきましては,先ほど事務局から説明がありましたように,前回からの積残し分があるわけでありまして,それは「第4部 株式会社・有限会社関係」のうちの機関の部分でありまして,具体的には,「7 取締役の責任」からかと思いますが,まずその「第4 機関関係」の積残しの部分を最初に御審議いただいて,その後,「第3 株式・持分関係」,「第6 社債・新株予約権関係」の順に審議をお願いしたいと存じます。   前回は積残しになってしまったのですが,今回は何とかこの部会資料19を本日中に上げてしまわなければなりませんので,是非御協力のほどをお願いいたします。   それでは,まず,事務局から「第4 機関関係」の部分について,再度になるかと思いますが,御説明をお願いします。 ● 「第4 機関関係」の説明をまずさせていただきますが,その前に,たたき台(2)の取りまとめ方について若干の補足をさせていただきます。   前回も同様でございましたけれども,本日取り上げさせていただいた項目のうち,当部会における試案の取りまとめまでの審議において格別大きな御異論がなかった点,あるいは,議論がある程度分かれていたものの,意見照会の結果を踏まえると,試案において打ち出していた方向性と同じように取り扱ってよいと思われる点につきましては,特別の印をつけない形で出させていただいております。従来の議論の中でそれなりの隔たりのあった点,あるいは,意見照会結果を踏まえて,内容について試案からの変更等をすべきではないかと思われるような点につきまして星印を付してありますので--特に複数の案が示されているところを一つの案に絞るといったようなところも多いのですけれども--まずこの星印の部分につきまして御議論をちょうだいしたいと思います。それから,前回のたたき台(1)で取り上げました項目につきまして,その内容を維持するとされたものにつきましては,項目名の後ろに,【(1)参照】と記して,記述の繰り返しを避けております。また,前回の御議論で,内容を修正すべきであるとされた点につきましては,丸印を付した上でその確認をさせていただいております。この内容につきましても御確認をいただき,何か不明の点があれば御指摘をいただきたいと思います。全体的に,要綱案のたたき台を詰めていく上で,全体像をできる限り把握していただこうという趣旨でこのようなまとめ方をさせていただいているものでございます。   それでは,まず「第4 機関関係」のところでございます。   先ほど○○幹事から御指摘がありました幾つかの大きな論点のうち,「特別決議等の要件」あるいは「取締役等の任期」につきましては,まだ積残し項目であるということをあらわすためにこのような形にさせていたいただいております。本日はこの点については議論を留保させていただくこととしたいと思います。   「7 取締役の責任」についてでございますが,まず,(1)の①に--これは前回も申し上げたかと思いますが--星印をつけ忘れておりますので,つけていただきまして,この(1)の①,②あたりから御議論をいただきたいと思います。   (1)の①につきましては,試案では,266条2項・3項に相当する規定はいずれも設けないものとするという方向性を打ち出しておりましたけれども,少なくとも2項につきましては,過失責任と考えた場合の法律上の意義を見出すことができませんので,これに代わるような実質規定を置くということであれば,具体的な御提言をいただきたいと思います。現在のままでは,2項に相当する規定は設けられないという認識でいるところでございます。   (注)につきまして,3項に相当する規定を別途設けるべきかどうかということについては,意見照会の結果においても意見が分かれたところでありますので,この点について御議論をちょうだいできれば幸いでございます。   (1)の②についてですけれども,ここで御議論いただくべき点は(注2)です。第1種の会社について,現在の有限会社の取締役というものを前提にした場合に,社外取締役的な取締役の存在というものを認めるかどうか,認めるかどうかにかかわらず,その点を法律上明記するかどうかという2段階の議論がありますけれども,少なくとも社外取締役的な取締役というものを認めるかどうか自体については議論が分かれていたところでございまして,更に御検討をいただければ幸いでございます。   (2)についてですが,ここは余り御議論がなかろうかと思いますけれども,「② 分配額に係る弁済責任を負うべき者の範囲」につきまして,試案では,a案,b案を提示しておりましたが,b案,すなわち,分配実施取締役,分配議案作成取締役のほかに,当該分配行為に係る取締役会の決議に賛成した取締役についてもこの責任を負わせるという案を支持する意見が多数であったことから,そのようにさせていただこうというものでございます。   ③につきましては,前回も御説明いたしましたとおり,従前の部会の議論では,この提案について消極の御意見の方が有力だったように記憶しておりますけれども,意見照会の結果を見ますと,むしろ総株主の同意による免除を認めている現行法の規制の方が理論的に不当ではないかという指摘をする意見の方が多かったということもありまして,財源規制違反に係る部分に限りますけれども,総株主同意による免除を認めないということとしてよろしいのではないかということをお諮りさせていただくものでございます。   「(3) 期末のてん補責任」につきましては,責任を負うべき者の範囲について,(2)とほぼ同様の議論があったわけでございますけれども,ここも(2)と同様にb案を採用することとさせていただこうとするものでございます。賛成意見が多数であったところでありまして,恐らく当部会でも格別大きな御異論はないのではないかと思っております。   (注3)のてん補責任を負うべき場合についての見直しの要否につきましては,計算関係に関する一連の様々な規律の在り方と関連して,次回以降御議論いただきたいと思いますので,本日は省略させていただきます。   「(4) 利益相反取引に係る責任」についてでございますが,一般の任務懈怠責任と利益相反取引に係る責任とをどのような関係のものと理解して整理するかという点につきまして,試案では,a案--一般の任務懈怠責任と全く異ならないものとして整理するという案--と,b案--異なる取扱いをするという案--とが掲げられており,b案につきましてはさらにb1案とb2案とが提示されていたわけです。意見照会結果では,いずれの案を支持するのかについて意見が相当分かれたわけですが,差し当たり,ここでの提案は,委員会等設置会社における手当てというものを重視して,b2案を採用するということでどうかとするものでございます。   「③ 責任の免除の在り方」についてですが,御議論いただくべき部分は,ロの責任の一部免除の取扱いの点でございます。先ほどの②について,b案--すなわち一般の任務懈怠責任とは取扱いを異にするという案--を利用することとした場合でありましても,任務懈怠責任として整理する場合には,③についてはa案を採用することが理論的ではないかという指摘が意見照会の中で寄せられたということもありまして,差し当たり,この関係ではa案を提案させていただくものでございます。   「(5) 株主の権利行使に関する利益供与に係る責任」でございますが,当部会では,この責任の過失責任化については,どちらかというと積極的な御意見が有力であったものと承知しております。意見照会結果ではこの辺りについては意見が分かれたのですけれども,もともとの立法の際の議論に照らしても,この責任を積極的に無過失責任とするという意図はなかったということのようでございまして,その趣旨を明確にするというべきか,あるいは,解釈を変更するという趣旨であるかはさておき,過失責任化を図るということを現段階で打ち出させていただいてよろしいのかどうかということを,いま一度確認させていただきたいと思います。   取締役の責任関係につきましては,簡単な説明で恐縮ですが,以上でございます。   あと,機関関係で議論させていただくべき点は,9の「(2) 補欠監査役」についてでございます。補欠監査役の予選につきまして,それが可能であるということを規定上明らかにすることには格別な御異論はなかったところでございますけれども,要件としての2点--すなわち,定款の定めを要求すべきかどうかという点と,予選の効力をどの時点まで認め得ることとすべきかどうかという点--につきまして議論が残っているところでございます。   この2点につきまして,様々な意見が寄せられたわけですが,結論から申し上げれば,定款の定めの要否,予選の効力の在り方について,いずれも(注1)に掲げてありますような--定款の定めについては格別要しないこととし,予選の効力については当該予選に係る被補欠監査役の任期満了時までとするということでよいのではないかという--意見がそれなりに有力であったということもありまして,一応ここではそれを掲げさせていただいているところでございます。   それから,星印を付してはありませんが,(3)に関して,先ほど○○幹事から御指摘のあった点でございますけれども,試案では,譲渡制限株式会社において,現行の有限会社に係る機関設計に相当する規律の選択をすることを認めるという提案をし,監査役の設置が義務づけられないタイプの譲渡制限株式会社というものを許容するという提案を確かにしていたわけですけれども,そこで提案されていたものは,法定の取締役会を設けない会社--取締役と総会との権限分配等については現行の有限会社法におけるものと同様の会社--を前提とした内容であったわけでございまして,今の整理でいうと,第1種,第2種の会社について押しなべて監査役の設置を任意にするという提案が試案においてされていたわけではございません。要するに,監査役の設置が義務づけられないという類型を譲渡制限会社の中に認めようということが提案の趣旨であったということを,試案の注釈として申し述べておきたいと思います。   機関関係については,差し当たり,事務局からの説明は以上でございます。 ● それでは,順次御審議いただきたいと思いますが,例によりまして主として星印のところを中心に御審議いただければと思います。もちろん,それ以外の部分でも御意見があれば,どこでも発言いただいてもちろん結構でございます。   まず,第4の7の(1)の①であります。266条第2項に関しましては,従来から非常に議論があったのですが,どうも私の見るところ,恐らく結論については,こういうときはこう処理すべきだということについては,ほとんど委員の皆さんの意見は対立していないのではないかと思います。こういう場合は取締役会において賛成した者については無過失の相当厳しい立証を要するとか,あるいは,こういう場合は原告が過失を証明すべきだとか,そういう実質については余り意見の対立はないように思いますが,現在の2項が責任発生につきまして相当の役割を果たしているという立場からは残すべきだという御意見があり,そうではないという御意見とが対立しているということでしたが,事務局の案では,どうもやはり2項というのは,今のままの文言では,無過失責任がなくなったときは維持し難いという考えでこういうことになっているわけですが,いかがでしょうか。 ● この点につきましては,ずっと私なかなか理解できないでいる部分で,何度も申し訳ありませんが,取締役会の決定が法令に違反するという場合に,一体だれの責任を追及することになるのかということですね。私はもともと,266条の2項というのは,もし置いていなくても同じように解釈することになるような規定なのではないかというふうに思っていた,そのぐらい当たり前の規定だというふうに思っていたのですが,もしそうではないということを改めてここで立法したということになりました場合には,法令に違反する取締役会決議がなされたその議案を作成した者及びその決定を実際に履行した者が任務懈怠責任を追及されるのであって,議案に賛成した者はだからといって責任を問われないのか問われるのか,問われるにしたところでほかの者とは何か違いが生じるのか。取締役会の決議が法令に違反するということが主張立証された後の話になるわけですけれども,一体どういうことになるのでしょうか。 ● 法令違反の決議をするというのは,具体的にはどういう場合ですか。 ● 例えば,新株発行を行う場合に,有利発行であるにもかかわらず,時価発行だと判断して取締役会で決議をしたと,しかし,これは客観的に見て有利発行であるということになった場合。 ● それにつきましては,恐らく,そう判断したことについてそれぞれの取締役の責任が問われるということになるんじゃないでしょうか。 ● もちろん,私のように考えましても,これは過失責任だと思いますので,本当にそれが有利発行かどうかという判断は微妙で,それについてきちんと認識していた者は責任を問われるし,これは時価だと思ったときちんと抗弁できる者は責任を免れるという結論には変わりないのですが,266条2項は一応あることを前提に判断していけば済むのではないかというふうに思っているわけです。今まではそういう規定があったからそう判断されることになったと思いますし,この規定が初めからなかったとしてもそう解釈したのではないかぐらいに思うのですが,わざわざあったものを外したということの意味は一体何なのですかと聞かれたときに,一体どうやって答えたらいいんだろうかということが……。 ● 普通に読めば,新株発行は代表取締役がするので,その前提として取締役会の承認が必要なんですね。この規定は,ほかの取締役も 代表取締役と同じことをしたとみなすということでありまして,それにどれほどの意味があるのかということですね。ほかの人間はやっぱり取締役で,承認したことについて責任があるのであって,代表取締役がしたこととは別段関係がないのではないか。したとみなすことについては,そんなに大きな法律的意味があるとは私には思えないのですけれども。 ● 新株発行は代表取締役の専権事項ではなくて,取締役会で決めなければ効力が生じない事項だとされているわけですね。 ● 効力は生じるのではないでしょうか。取締役会決議なしに代表取締役がやれば,それはそれで有効だと考えているのではないでしょうか。 ● それはまた別の問題がありますね,効力の問題も含めまして。 ● ですから,新株発行をするのは代表取締役であって,承認が必要であると。 ● それで,効力の問題としては,もちろん対外的ないろいろな問題がありますから別要素がかかるだろうけれども,しかし,その任務に違反してそういうことの決議を行った者の責任は内部的には問えるのだから,対外的な効力を考えてですね,少し効力の点では十分に追及し切れないというものが残るかもしれないという組立てではないかと思うのですが。その賛成した取締役は,違法な取締役会決議ではあっても,基本的には責任は問われないところから出発していくということになるわけですか。 ● 説明の仕方ですけれども,例えば今のようなケースですと,恐らく法務担当の取締役がいたとしたら,それで有利発行であることを見逃していたとしたとすると,これは相当責任を問われる可能性は高くなるのではないかと思いますし,関係ない仕事をしている取締役は問われない可能性が高いのではないかと。 ● 結論においては皆同じことだと思うんですね。結局,主張立証責任だけで……。 ● ですから,恐らく結論は,○○委員と私は全く同じに考えているのではないかと。 ● いや,主張立証責任はどちらかということがやっぱり違ってくるのではないかというふうに思いますが。違法な決定であるということまでの主張立証ができたとしますね。それであっても,更にそれが任務懈怠である……。 ● すると,ほかの,法務担当でも何でもない,代表取締役でも何でもない者も責任まずありというところから出発すると,これが○○説。 ● 責任ありではなくて,まず違法な決定はあったというところから出発して,しかしその帰責事由はないという主張立証ができれば免れ得るということになるんじゃないかと思うのですが。 ● 原告は,まず,有利発行であった,だから違法であったということから立証していくことは確かだと思います。   ということで,私は,なぜしたとみなすことに意味があるのかの意味がついに分からないのですが。 ● 決議をしたといっても,だからといって責任が発生するわけではない,直結はしないと。 ● 2項は,賛成した取締役に--1項によって責任が負わされる取締役はまさに行為をしたことによって責任を負わされるのですけれども--その行為を行ったことにより責任を負うべき取締役と同じ行為をしたとみなすのですね。 ● 行為にはもちろん関与しているけれども,その責任の問われ具合は違うのではないかと。 ● 違うのであれば,2項は置いてはならない規定ですよね。行為をしたものとみなすので。 ● それは,事実上関与の具合が違うので,主張立証によって責任を免れる者と……。 ● ですから,もし任務懈怠責任として整理するのであれば,行為をした取締役,決議に参加した取締役のそれぞれについて,それぞれが担っている任務についてどう全うし,どうそれに足りなかったのかということが検討されてしかるべきことでありまして,2項はそれとは全く無関係の,実際にはしていないことをしたとみなすことによって法律上責任を負わせるというための特別の規定であります。それを,その趣旨を踏まえて,賛成した取締役には責任を負わせるべきであるという議論に結びつけることは御自由ですけれども,とにかく,法律上は,していない者について,したとみなして責任を負わせるという規定ですので……。 ● 結局,この取締役会の決議が法令に違反する場合にも,それに基づいて現実に行為をした,その行為の責任者は代表取締役ということになるわけでしょうから,その代表取締役だけが基本的に責任を負うところから出発すると,こういうことでございますか。 ● いえ,もしその決議が違法であれば,その違法な決議をしたということ自体で責任を問われ得るわけですよね。そこは別に2項の問題ではないですね。2項は,1項の違法な行為をしたという取締役がいていることを前提に,決議に賛成した者は違法な行為をしたものとみなすことによって責任を負わせているわけですので。 ● 整理をしようと思って割って入るとかえって混乱させるというのがこれまでの私のパターンでしたので,黙っていようかと思っていたのですが。   今の話をこんがらがすようですが,○○委員に質問したいのですが,例えば次の(2)の②の違法配当の分配額に係る弁済責任の場合は,これは現行法は行為擬制でやっているのですが,これについては,以前,行為擬制の2項規定は,損害額の立証責任の容易化もあるかもわからないということも踏まえられたのかもわかりませんが,(2)の②のところは,賛成した取締役は連帯して弁済責任を負うという形にされているわけですね。こういう議論と今の議論とを整理すると,やはりこっち側は,損害のあるなしにかかわらず違法配当額を弁済させることが資本維持の観点から重要だということでこういう規定を置いてあるのですが,今おっしゃったような任務懈怠責任については,損害額はそれぞれまた立証しなければいけなくなるわけです。そういう枠組みからすると,(2)の②のような規制はできずにこういう規制になるのではないかと思ったのですが。それを,2項を残すことによって具体的に何がプラスになるのかをお教えいただきたいというのが,従来からこの原案を支持する人たちからの意見だと思うのですが。(2)の②は分かるのだけれども,(1)の任務懈怠責任で2項を強く主張される意味がよく分からないのですが。 ● 強く主張するわけではなくて,結論はそんなに変わらないのではないかと思っているのですけれども,この理論的な整理が自分でつきかねている,違法な剰余金の分配に係る責任についても全く同じ構造で基本的に考えられるのではないかというように思っているわけです。違法な剰余金の分配に係る責任については,決議に賛成した者も,そのほかの実際に分配をした取締役やら議案を作成した取締役と同様に扱おうという話が片方には出てくるわけですね。ところが,こちらの任務懈怠責任の方については,決議に賛成したからといって責任は当然には問われないんですよと,責任を問われないのはもちろんとして,行為をしたともみなされないんですよという,その整理がちょっと,論理的な整合性という意味で私の頭になかなかすとんと落ちないものですから,その違いの理由をむしろ私が聞いているというふうに……。 ● 一言だけ追加させていただくと,(2)の②の話は,損害賠償責任ではなくて弁済責任だからこういう規制が要るわけです。(1)の①は損害賠償責任だから,過失責任における損害賠償の場合には2項を維持する意味が大きくはないと。それは何かあるのかもわからないので,全くないとは思いませんが,実質的になかったら,すっきりした方がいいのではないかというので,私も従来の案を支持していたのですが。それが(2)と(1)の違いです。弁済責任か損害賠償責任かということです。 ● しかし,(2)の方においても過失責任化をしようとしているわけですね。とすると,過失相殺やら何やらでもっていろいろ差は出てこないのでしょうか。 ● これは確実な弁済責任ではないのですか。そう理解していたのですが。 ● (2)の方は,ですから,一応はまず払ってくださいというあれは負わされてしまっていて,あとは過失の……。それは,過失の立証のときに,代表取締役ならこれぐらいでも過失ありとされ,ほかの者はないという程度の差はあると思いますけれども,基本的に(2)は,あなた,決議に賛成していれば責任ありますよと,そこから出発するわけですね。原案では次の利益相反もそうですね。とにかくそれはもうそれだけの責任をやはり……。 ● そこの違い,任務懈怠の場合と,利益供与とか違法な剰余金の分配との違いをどういうように整理したらいいのかということがはっきりすれば,私としてはそれで結構なのですが,そこがなかなか納得がいかないものだから質問しているということです。 ● 違法な分配は,恐らくこれは最初から政策的なものだというふうに考えてきたと思います。無過失責任も全く政策的なものだと言ってきましたから,ここもそうだと思います。やはり資本充実……。 ● 全体を過失責任化しようとしたときの……。 ● そうしても,やはり政策的な配慮は入っているということだと思います。 ● いわゆる政策もやはり整合的であった方がいい。思いつきでやっているわけじゃないわけですから。   となった場合に,そのどこに違いがあるからこういう差を設けるのかといったときに,金額の違いだと,損害賠償額の違いだと。今の○○委員の御説明だと。 ● 損害てん補ではなくて,弁済責任なんですね。損害賠償ではないんです。そういう政策がいいか悪いかは別問題ですよ。そういう政策を採用したとなると……。 ● 弁済責任だということになりますと,過失責任化というのは難しいんじゃないですか。 ● いやいや,それはいろいろあると思いますが。 ● 弁済する責任だけれども,それは本質において損害賠償の責任だと言わないと,過失責任化は無理になりませんか,逆に。 ● それは(2)に対する根本的な疑問だと思いますが,ちょっとそこまでは……。 ● 今まで我々は弁済責任と言ってきたけれども,過失責任化しようとしているときに,果たして「弁済責任」という表現がいいのかどうかから考えなくてはならない事態になるのかもしれないということはないですか。 ● 従来は無過失の弁済責任だったのですね。今度は,無過失は認めるというところまで弱めた弁済責任。その政策にも,それはけしからんという御意見はあるかもしれません。現在の案はそういう形でできていると。 ● 結論云々というよりも,法学的な美しさということで気にしているというだけと思っていただいたらということでございます。 ● いや,もうそれは,どう説明するかは,これは各学者に任されたことでありまして,法律ができてしまえば学者はそれなりに説明するのでありましょうけれども,もちろん,立法論的に間違っているということを書かれても,それは学問の自由ですから。 ● さらに話を混乱させそうで大変恐縮で,今の○○委員の御整理で言うと,もうつけ加えることもないような気もするのですが。   現在の266条2項なりは,これは別に無過失責任にだけ適用される規定ではなくて,過失責任を含めての一般的な規定なものですから,どういう意味を持っているのかなというのを考えてみると,前も申し上げたことですけれども,当該決議に基づいて行われた会社の行為によって会社に損害が生じたときに,当該決議で議決権を行使した個々の取締役の議決権行使行為とその損害との間の因果関係の立証に問題が生じることがあり得るので,そういった因果関係の立証の困難さを省くために,自身が行為したとみなすという規定を置いたのかなと私は考えまして,そうだとすると,この規定のあることの意味は,例えば,取締役会の決議を多数決で決めて,その取締役の議決権行使がなくても決議は成立していたであろうというときでも,その取締役がとにかくそれに賛成した決議によって会社に損害が生じたというときには,本人自身が行為したのと同じように因果関係を認めて損害賠償させますよと言うことに意味があるのかなと私は思っていたもので。仮にこの2項を整理して削除するのであれば,少なくともそういう因果関係の問題,たとえこの規定がなくなっても同じように因果関係を認めていいんですよという趣旨は残した方がいいのかなと思っていまして,それはもう解釈でいけるんだよと。多分,○○委員はそうお考えだと思うのですけれども。   あえて残すとすれば,例えば,「賛成したる取締役は,その取締役の賛成なくしても決議が 成立し得たることをもって責めを免れることを得ず」というような趣旨の規定を,もしあえて入れるなら,入れてはどうかという気がしております。 ● 先ほど事務局も申しましたように,そういう実態に即した文言の御提案であれば非常に歓迎いたしますので。今の案は第二読会で検討対象にさせていただければと思います。 ● 議論を更に混乱させることになると困るのですけれども。   私は,2項は,「みなす」という表現は適当ではないけれども,取締役会に上程されて決議がなされた場合に責任が追及される場合と,取締役会に上程されない事項について監視義務違反が追及される場合とでは差があってしかるべきであると。損害賠償責任か弁済責任かというところが問題なのではなくて,取締役の決議がなされたか,あるいはそうでない一般の監視義務違反が追及される場合との均衡ということを考えるべきではないかというように思います。一般の監視義務違反が追及される場合には,責任を追及する原告の側でその取締役が監視義務に違反したということを主張立証しないといけないですね。2項も3項も落とすということになると,取締役決議がなされた場合も,その決議に賛成した取締役の責任を追及する場合に,責任を追及する原告の側で積極的に取締役に義務違反があったということを主張立証しなければいけないということになってしまう。実際上は,取締役が議事録に賛成したというように書いてあれば事実上推定されるということなんだろうけれども,条文上,一般の監視義務違反を追及する場合と決議がなされた場合とで何の違いもないということが果たして立法論として適切なのかどうかということを検討しなければいけないのではないかという気がするのです。少なくとも3項に当たる規定は残すべきであるというように思います。 ● 私も○○幹事の言われることはよく分かるのですが,それでこの原案は3項を維持すべきかどうかと。3項が残れば,これはどういう意味ですかと。やはり,賛成しておれば,先ほど言われたような何か法的な--まあ,そこまで強い効果かどうか分かりませんが,何らかの効果はあるのではないかというふうに人は考えるであろうと。そこで3項は残すという原案になっているのではないかと私は思っているのですが。維持すべきかどうかという問いかけですけれども。   ○○幹事は,3項だけが残るということでは御満足いただけませんか。 ● 利益相反取引や利益供与の場合みたいに,取締役会の決議に基づいてなされた場合には,取締役の側で注意を怠らなかったということを主張立証しなければいけないというような規定を置くということも考えられるのではないかと思うのですが。 ● それも,先ほどの○○委員のように文章にして出していただければと思います。   この3項を維持すべきかどうかというのは,これはいかがですか。日本の取締役会は恐らく決をとるということは非常に少ないので,会議では反対の意見を述べたけれども,結局最後は何だか賛成したのか反対したのか分からなくなるということは起こり得ると思うので,それで賛成したのか反対したのかは事実上責任を追及されるときに相当影響があるのだという○○幹事のような御指摘も踏まえますと,もし残せば,あることについての意味はあるような気がするのですけれども,いかがでしょうか。 ● 私も○○委員と同じ考えでありまして,少なくとも3項は残した方がいいと思っています。 ● 3項の議論が出てくるというのは,法文の中に取締役会の決議に賛成した取締役の特別の責任が規定されるからという議論だと思うのですけれども,そもそも,後で出てきますけれども, 特別の責任を負う者というのは,やはり行為をした取締役に限定して,取締役会の決議に賛成した取締役については通常の任務懈怠責任にするというふうに方針を変更していただいて,それと同時に3項も落とすというのが一番すっきりしているのではないかと思いますけれども。 ● 両意見が出ましたが。 ● 何だかいろいろな意見を申し上げて恐縮なのですけれども。   今,○○委員からお話があったのは確かにもっともだなという気持ちはするのですが,ただ,3項を残した場合に,任務懈怠責任に関する限りで言えば,(2)以下の法定責任を負う取締役の範囲を定めるという効果にはならないものではないかというふうに思うのですね。そうすると,私は3項を残すことに賛成したいと思うのですが,3項を残す意味というのがどこにあるかということを考えてみると,それこそさっき○○幹事がおっしゃったように,訴訟の場合に--私も原告になる場合もあるし被告になる場合もあるのですけれども,いずれの立場に立つにしても--具体的事例において,例えば取締役会の議事録に賛成多数で可決されたと書いてあって,だれが反対したかは書いていないというようなケースもありまして,そういうときに何も異議をとどめないでその議事録に署名したという取締役は賛成を推定されてもしようがないのではないかという気持ちもいたしますので,そういう訴訟における立証の問題,それの公正な分配という観点から,この任務懈怠責任について3項を残すという意味はやはりあるだろうと。ですから,繰り返しになりますが,法定責任を負う取締役の範囲を定めるという効果ではなくて,この任務懈怠に関して言えば,立証責任の公正な分配という観点から残す意味があるのではないかと,そういう感覚で今見ているのですが。   ちょっとつけ加えますと,たしか前回,○○幹事がちょっとおっしゃったのですが,責任の範囲の問題というよりも,この3項の規定は,議事録という文書の効力という形で取締役の責任の中での一つの通則というような形で規定されると分かりやすいのではないかなというふうに考えております。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。   もちろん,無過失責任ではありませんので,賛成しておれば即責任があるというわけではないのですね,今回のは,いずれにしましても。   いかがでしょうか。   御発言のない方は3項を残すことに賛成なのか反対なのか,ちょっと分からないのですが,賛成,反対,一言ずつでも何人かの方からおっしゃっていただくと,どっちが多いのか分かりやすいのですが。 ● 3項につきましては,それぞれお考えの方によって意味が違うかもわかりませんけれども,最低限きちっと審議結果を議事録に残すという健全な慣行を維持する観点からも,残す方がいいのではないかなと思います。   それから,○○幹事の言われたことですが,決議事項の任務懈怠違反と決議事項以外の監視義務違反の責任とで違うことは当然ですので,確かに因果関係との関連で○○委員の言われるような明文の規定を残す方が明確なのかもわかりませんが,恐らく解釈論でもそういうことの差は出てくるのかなという感じがして,○○委員のおっしゃることも分かるけれども,そういう議論をベースに2項を削除し,3項を残しておけば,まあそういう解釈論が一般的になるのかなという感じがしておりました。 ● もう○○委員が言われると,大体議場の大勢はそうかなということになるのですが,いかがでしょうか。大体3項は残すという方が大勢だというふうに理解してよろしいでしょうか。--それでは,3項は維持するという方向で考えさせていただきたいと思います。   次が②でありますが,②は,特に(注2),第1種株式会社における社外取締役的な者の扱いということですが,これについてはいかがでしょうか。 ● この(注2)につきましては,社外取締役に関する事前の契約に基づく責任限定を認めない方向ではどうかということですが,これは是非そうしないでいただきたいということを申し上げたいと思います。この社外取締役に関する事前の責任限定は,大きい会社も小さい会社も問わず,社外取締役導入の必須の前提というふうに考えられているものであります。第1種の株式会社についてこれが認められないということは,第1種の株式会社については社外取締役を基本的に認めないということになるわけでありますが,これはベンチャーのみならず,いわばコーポレート・ガバナンスに関して志の高い会社に対して,そのガバナンスを強化することをディスカレッジするという法政策を意味しているわけでありまして,これは是非お考え直しいただきたいと思います。   前回,星印がついていなかったものですから発言をし忘れてしまったのですが,前回の資料の「第4 機関関係」の「2 取締役の資格・員数・権限」の「(4) 権限」のところで,「第1種株式会社においては,各取締役が業務執行・代表権限を有するものとする」とございまして,これが今日の(注2)の前提になっているものであると思いますが,第1種であるからといって取締役は必ず業務執行に携わらなくてはならないという前提は,これはやはり違うのではないか。これは定款自治に任せる,社外取締役的なものの存在もお認めいただきたいというふうに思います。 ● ほかの委員の方。 ● 第1種とここで言われているような株式会社,元有限会社のようなものについて社外取締役というものを置くという可能性はあると私どもは認識しております。 ● いかがでしょうか。   これは,特に規定を置かないと,第2種・第3種と同じ扱いになって,社外取締役的な者を認めるという法制度になるわけですか。 ● いえ,そこは明記しなければ解釈ということになるかと思うのですが,ただ,取締役会という,代表取締役を監督する権限を持つ機関設計を持たない第1種において社外取締役というものをどのように位置づけるかということは,取締役の中に社外取締役があってもいいというだけでは恐らく解決しない問題ではないかと思いまして,もう少し,場合によっては取締役とは異なる機関とするというような整理も含めて考えなければいけないのではないかという気もするところでございまして,余り難しいことを考えるよりは,触れない方がいいのではないかというような感じもしているところでございます。 ● ここでは「19項等」とあるのですが,18項で6年,4年,2年のあれがありますね。これは非常に技術的なことを聞いて申し訳ないのですが,もしこれを触らないとすると,第1種については,社外を置いても,通常のものについては2年になるけれども,この特別の19項だけが外れるというのはちょっとバランスが悪いかなと思います。とりわけ,これはいろいろ見方がありましょうけれども,19項だけが機能するのではないかというような意見もあるとすると,私も,これはもう放っておいた方がいいのではないかという気がするのですが。18・19もそのままにしておいたら。そして,本当に合理的に使う人があれば,それは別にいかんというわけでもないのかなと。ただ,非常に使われる例が少なければ,それはそれで,そんなものかという感じで任せて,だめだというようなことを言う積極的理由があるかなという感じはしたのですが。18・19いずれについてもということですが。 ● 放っておくとどうなるんですか。私,ちょっと混乱しているのですけれども。 ● 第1種の会社において,社外取締役というイメージがそもそもどういうものになるのかということがよく分からないのですが。第1種の場合には,取締役は取締役会に出席するのが義務とかそういうことではなくて,当然に業務執行ができるわけですね。 ● 先ほど○○幹事が御指摘になった条文で,法定権限があることはあるのですが……。 ● 法定権限があるけれども,自主的に使わないと約束した者という定義になるのですか。 ● ええ,もしそういうことをした場合どうなるかということですよね。 ● 重要事項についてのみ意思決定に参加するということになりますね。 ● 事実上はあり得ると思うんですよね。 ● それはあると思いますね。そういうケースは。 ● 株主総会の決議事項だけにして,ということでは済まない。 ● 例えば,取締役会がなくても,取締役が集まること自体は妨げないわけですから,日常的に毎日会っているわけで,そこで,じゃあ○○取締役にも来てもらおうではないかという話はよく起こり得ることだと思います。 ● その○○取締役はいろいろな業務執行などを行う権限もあるんだけれども,社外取締役と。 ● 権限はありますけれども,○○委員はビジネスはやっていないですから,それはできないでしょうねと,当然みんながそう思うわけですよね。   ですから,今言われているのは,社外取締役的な役割を果たす方が入ってくる可能性は十分にあるし,その方が会社としての運営は非常にうまくいくということでございますね。 ● 実質上は分かるのですが,法的にこういう責任権限などについて違いを設けるということになりますと,明確な定義が必要になりますね。そのときに,法定権限を持っているけれども社外取締役であるということを一体どうやって規定するのか。それで,社外取締役のその定義に当てはまるということになりましたら,当然,営業報告書に記載するとか,そういう開示の義務も出てくるわけですね。 ● 現行有限会社法をベースにすれば,複数の取締役を置いたっていいわけですね,現在。その場合には,支店の設置,支配人とともに,重要事項については取締役の過半数で決するということになっているし,会社代表は各自会社代表が原則だけれども,代表取締役を置いてよいと。それで,代表取締役以外の取締役で業務執行も行わない者は,その26条に言うところの重要事項の意思決定と,明文の規定はありませんが監視・監督機能だけを有すると。それは,現在の委員会等設置会社でない株式会社の代表取締役,業務担当取締役でない取締役と同じことだと,こういうことになりはしないかと。ただ,そういう複雑なものを1種に認めていいかというようなのは一つの考えですけれども,まあ,あっても悪くないといえば,先ほどの○○幹事のような御意見なのかなと思ったのです。   そして,やはり合弁とか何かで使われる例も,あるいは,かつてのオーナー経営者が,ほとんど他に渡したけれども,こういうことだけは意思決定に参画したいというように思うときに,それを素直な意味で社外と言っていいかどうかよく分かりませんが,責任軽減だけはしてもらいたいという場合に,18項を全面的に排除するのか,あるいは19項をという議論をする必要があるのかなと思って,私,あえて激論するつもりはありませんが,まあ残しておいても実害ないのかなというのが直感的な印象でした。 ● ○○幹事のは,もうはっきり,2年のをつくれと。 ● そういうことが可能であることをはっきりさせていただきたいなということなのですけれども。そうでないと,1種については社外取締役が事実上使えないということになりかねませんので,御検討いただければと思います。 ● 何度も申しますが,1種と2種でそんなことで階層,段差をつける必要は全くありませんで,企業がどちらを選ぶかというのは,そのときの状況を見て選ぶので,そのときにこういう使い方ができるというのは非常にいい話だと思います。 ● ほかに御意見ございますか。   そうすると,1種・2種はこの点は区別しないという御意見がかなり有力のようですが。 ● 確認ですけれども,複数取締役がいるという場合であって,社外取締役は代表権を持たないというのが前提だということでよろしいのでしょうか。 ● そのとおりです。 ● それでは,そういう有力な御意見が出ましたので,また次の機会に検討させていただくということにしたいと思います。   次が「(2) 違法な剰余金の分配に係る責任」でありますけれども,これにつきましては星印が二つついておりますが,いかがでしょうか。「(3) 期末のてん補責任」も含めまして,星印の部分についてはいかがでしょうか。 ● 質問させていただきたいのですが,②の(注4)というところで,分配をした取締役が連帯して弁済責任を負うというのですけれども,第1種株式会社において,分配する取締役というのは複数いるという前提なのですか。分配をするというのは一体何なのか,その行為をするというのは一体何なのかがなかなか思い浮かばないのですけれども。二人で分配をする,あるいは3人で分配するという,この辺がちょっと分からないのですが。 ● これはどうなるんでしょうかね。   例えば,代表者が二人いて,二人の名前でしたと。二人の名前でするということはあり得ますよね。 ● まあ,あり得ると思うのですけれども。そういう意味ですか。 ● 第1種株式会社の場合は,第2種と違って取締役会で決定するという仕組みになっておらず,基本的に分配自体は株主総会というか社員総会がやるということなので,分配した取締役サイドの方はその限りにおいてしか責任を負わないという趣旨です。すなわち,その分配議案を作成した取締役というか,その分配をしようということを仮に過半数で決めたというようなことがあったとしても,分配した取締役だけが責任を負うというような整理でいいかどうかというような整理に多分最後はなると思うのです。現状の有限会社の分配責任がその手のことについて格別の手当てをしていないこととの平仄ということで,確認的に書いているということだと思いますが。 ● ちょっと説明の意味が理解できないのですが,どういう意味ですか。 ● 株式会社の場合は,分配をしますという決定に当たっては取締役会決議で行うと。提案もそうですし,まあ,その提案自体がそうなのですけれども。そうしますと,②のように,取締役とその決議に賛成した取締役とを一体として取り扱いましょうと。   他方で,有限会社の場合は,意思決定機関として分配に関する意思決定は社員総会で行われることになりますので,言ってみれば,取締役はそれを単に執行するだけということになりますので,もしそのもとになる議案的なものがあったとして,それを先ほど来問題になっている26条みたいなもので過半数で決めたと,複数取締役で,ですね。 ● 社員総会が責任を持てばいいわけですよね。 ● いえ,社員総会は責任をとらないのですけれども。単に意思決定をするだけなので。 ● でも,そこで決定するわけでしょう。 ● 決定はします。   それで,社員総会自体は,もしこれが違法な分配であれば,もらったお金を返しなさいという責任が別途生じますので,それはその問題です。   他方,配った方の責任を課すのは,その配った取締役だけ,すなわち代表権限をもって配った取締役だけで,先ほどのような,例えば社外取締役的な者がいるとか,そういう者がもとの議案の作成を過半数で決めたといっても,そこで賛成しただけでは直ちにこの弁済責任の責任は問われない。善管注意の問題はまた別途,先ほどの ……。 ● 総会に出す議案の原案を取締役がつくったと。そのつくってしまったことについては特段責任はないわけでしょう。 ● はい,ないという説明です。 ● それで分配するということになって……。 ● 作成した取締役,要するに提案した取締役はかかるのです,今でも。会社に対する責任の30条ノ2で,提案責任で。   株式会社の場合は提案責任であって,かつ,提案するために取締役会の決議というのが要るので……。 ● それは取締役会がありますからね。 ● その賛成した取締役も全部そこに合わせて引っかけると。   有限会社の場合は,過半数で提案するというのはちょっと難しいので,過半数で決定することはできても,ということなのです。 ● ○○幹事からの御質問にまず端的に答えようといたしますと,②の本文で,「分配をした取締役」というところに括弧をつけて,それで定義をしておりますので,実際に分配を実施した者と,違法な分配議案を作成した者と,両方が存在し得るということを前提としたものでございます。   それで,第1種と第2種の違いは,今,○○関係官の方から申し上げましたとおり,法定の取締役会というものが存在するかどうかという点であり,それによって,そこでの賛成者にも更に責任を負わせるかどうかという点について取扱いを変えてよいのではないかというのが,(注4)の趣旨でございます。 ● ちょっと私も見落としておりまして。   よろしいですか,○○幹事,そういうことで。 ● すなわち,この括弧が(注4)にもかかっているということですね。以下同じで。分かりました。 ● だから,それは現行の有限会社法30条ノ2の2項に,例の266条2項と同じ規定があるので,その問題を蒸し返すわけではないのですが,恐らく,26条で,多くの会社は,代表者,複数取締役がいたとしても,利益配当なんかは社長が決めたらいいというふうに定款で決めているのかもわかりませんが,理念的には,そういう社員総会に出すような案件は取締役の過半数でやるというのがここのルールになっていると思うのです。そのときに,現行の有限会社法よりも取締役の責任を,とりわけ資本制度の根幹にかかわるという形で特別の責任を負わそうとするときに緩和する根拠は何なのかなという気がするのですが。その意味で,同意した者にも連帯責任を負わすのが原則だろうというふうに思うのですが。 ● 済みません,30条ノ2の2項はすっかり失念をしておりました。 ● 失念をしていたというと語弊がありますが,この②についての複数案の選択の前提として,先ほど○○委員から御指摘がありましたような考え方をとるとした場合には,当然,(注4)のような形になるのですけれども。済みません,本文の整理と(注)の整理との間で事務局側の注意が足りなかったということでございます。 ● そうすると,どういうことになるのですか。 ● ②の本文がこの内容でよいということであれば,御指摘のように,30条ノ2の第2項につきましても,範囲という面では同様の取扱いをするということに法制的には整理せざるを得ないというふうに思います。 ● そういうことでよろしいでしょうか。 ● 形式論を言っただけで,○○委員のようなお考えもあることは重々承知しておりますが,整合性からいくと,やはりその点を整理していただきたいということです。 ● (注4)が正しいのであって,本文の方を変えていただきたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 私がこんなことを言うのも何かもしれませんが,(注2)は本当にこれでよろしいのですね。 ● ②の(注2)ですね。 ● はい。   損害額が法定されておりますね。となった場合に,非常に多額になる場合があるわけですが,その場合に,過失がない取締役はもちろん責任を免れますけれども,わずかに過失がある取締役について,責任軽減という中間的なクッションのものをなしにするということの積極的な意味はどこにあることになるのかとお伺いしたいわけなのですが。 ● うんと形式論をすれば,先ほど来の266条1項の方の責任ではないからということなんですけれどね。まあ,実質論を言っておられるのだと思うのですが。 ● つまり,今まで,266条1項5号の責任と1号などの責任とを余りにもかけ離れたものと我々はし過ぎてきたのではないかと。法律論から言えば,そんなにかけ離れたものでなくても十分に柔軟に対処して,責任がある者についての責任追及はきちんとできる法制になっていたのではないか。それにもかかわらず,資本の充実であるとか利益供与とか,そういうものは特別だという余り,過剰な政策をそこに押しつけてきたのではないかという気がするものですから。本当に真剣に考えてみますと,なぜ(注2)のようなものを違法な剰余金の分配の責任については認めていけないのかという理由が余りよく分からないような気がするのですね。 ● やはり資本充実から出発した名残なんですね,恐らく。 ● 当たっているのかどうか分かりませんが,正にそれが弁済責任ということなんだと思うのですけれども。過失責任であるかどうかと,弁済責任であるかどうかの論理が整合性を持ち得るのは,先生がおっしゃられるとおり,弁済責任の連帯の範囲に含まれる人と含まれない人とを過失の有無で範囲を絞りましょうと。今までは過失がなくてもその範囲に入っていたというところの違いがありますけれども,依然としてまだこれが弁済責任であるということは,その額について免除があるということはあり得ないわけでありまして,これは要するに,違法配当されてしまったものについて,とにかくまずは資本維持のためにもとの資本の状態に戻しましょうという趣旨だと思うのです。これは,基本的には266条ノ2の違法配当に関する取締役が求償するというので最終的には調整が図られているものでありまして,不当利得返還請求権が実質上なかなか行使できないということから,まずは取締役が弁済責任を果たすことによって会社の資本維持という事柄を回復させる,もとの状態に戻すということをさせているのであって,最終的な責任はあくまでも求償責任によって解消されると。だから,免除というのは論理的には不整合なのではないだろうかと私は思います。 ● そういうことなのですが,まあ政策的なものだということですね。   ほかにいかがでしょうか。 ● (注5)の委員会等設置会社についての所要の見直しというのは,具体的にはどういうことを考えておられるのですか。 ● 仮に,この②のような形で整理をするとすれば,商法特例法21条の18--,現在,執行役のみになっておりますけれども--それについて,決議に賛成した取締役についても同様の取扱いをするというような整備内容になるのではないかというふうに今のところ整理しているところでございます。 ● 今の点ですけれども,この21条の18を設けたときに,取締役会の決議に賛成した取締役についてはこの21条の18の責任の対象から外して,21条の17の方の任務懈怠責任にすることになっているわけですけれども,それは決算のやり方の仕組みが委員会等設置会社と一般の会社とでは違って,決算書類は全部執行役がつくって,それを監査委員会と会計監査人の監査にかけて,両方でオーケーが出たものについて初めて取締役会の決議にかけられるという,そこの仕組みが全く違うので,取締役会の決議に賛成したからといって--監査委員会は監査役に相当するわけですけれども--それ以上に重い責任を負わせる必要はないのではないかと。つまり,監査役は任務懈怠責任しか負わないことになっているので,それに相当する監査委員会のメンバーも任務懈怠責任しか負わないのであれば,更にそれよりも責任が軽くてしかるべきである委員会等設置会社の取締役会の決議に賛成した者については普通の任務懈怠責任でいいのではないかということでこういう仕切りにしたのですけれども,そこを変えるということですか。 ● そういう説明でしたよね,委員会等設置会社については。   そうなりますと,委員会等設置会社に関する実質の変更になりますので,もしそうだとすると,この点はちょっと検討する必要がありそうですね。 ● しかし,逆に言いますと,委員会等設置会社の場合には,株主総会にすらかけないで剰余金の分配を最終的に決定するのが取締役会ですね。 ● ただ,決算書類は執行役がつくっておりますので。 ● 過失責任化ということだけではだめですか。 ● ですから普通の過失責任になっているということだと思いますが。 ● 決算書類を作るのは,委員会等設置会社の場合は執行役の方の務めということですけれども,普通の監査役設置会社においても代表取締役ではないのですか。その点で何か違いがありますか。 ● 普通の会社の場合は,取締役会の承認を得た決算書類を監査に回すということになっているので,取締役会のメンバーは監査役や会計監査人に渡す決算書類についてまず第一義的に責任を負って,それを監査に回しているという関係に立つわけですが,委員会等設置会社の場合は,執行役が取締役会には諮らないで監査に回して,監査の方でオーケーが出たものが取締役会に回されると。そこに決定的な違いがあるというふうに当時考えられたのだというふうに記憶しておりますが。 ● その決定的な違いというのは,むしろ逆に,取締役会の決定でもって剰余金の分配が最終的に決定するから,その前に監査させるということだったのではないでしょうか。株主総会との権限分配の違いがそれに反映しているということなのではないですか。 ● そこはそうではなくて,最終的に取締役会限りで決算書類を確定させる,利益処分案についても確定させるかどうかという問題ではなくて,決算の手続自体を執行役と取締役という二つのものに分けたことに伴うものでございます。 ● 確かに,お話を伺っていると,多少違うような気がするのですが,ただ,責任を負わせることについてそもそもそんなに違いがあるのかなという気はするわけですね。すなわち,委員会等設置会社の場合には,むしろ監査委員会,会計監査人の監査を経てから取締役会で決めるわけですから,無過失を立証するのは非常にやさしい。何しろ専門家がチェックしているということですから,無過失を立証するのはやさしいのかもしれないわけで,そもそも,この弁済責任という位置づけを監査役設置会社について採用する趣旨が先ほど御指摘があったような趣旨だとすると,委員会等設置会社の場合には弁済責任を--損害賠償責任ならまた分からないですけれども--負わせなくてもなぜ大丈夫なのか,なぜいいのかということが本当は問題にされるべきではないかと。まあ,今更言ってもしようがないのですけれども,前の根拠は余り説得的ではないのではないかという印象を受けますが。 ● 結局,(注5)はどういう趣旨だったということになるのですか。 ● (注5)は,趣旨としては,本文をこうするのであれば同じような取扱いをすべきかと。もともとの発想が,委員会等設置会社とその余の会社の責任を合わせようということでありましたので,余り格別の差を設けないということだと思いますが,先ほど○○幹事の方から,決算手続との絡みについてどのようにするかという指摘もありましたし,他方,今回,剰余金の分配に関しては委員会等設置会社かどうかにかかわらず,という手続になりますので,ちょっとそちらの方の決算手続をどうするかについて次回まとめて御提案させていただいた上で,さらに,この計算書類を作成した取締役と取締役会というものと,計算書類を作成した執行役と取締役会というものについて差を設けるべきかどうかということを御議論いただければというふうに思いますので。 ● それでは,この点は再度整理する必要がありそうですので,今,○○関係官から説明があったような形で再検討させていただきます。   ③の星印はいかがでしょうか。これにつきましては,ここで相当議論はあったわけですが,意見照会ではこういう議論が多かったと。そういうことなら,あえてここにあるような案に積極的に反対するという御意見はそうはないのかなというふうに思いますが,いかがですか。--よろしゅうございますか,これはこういうことで。 ● 賛否云々の問題というよりも,今の③を免除を認めないということにすると,委員会等設置会社においては,21条の18で,「前条第2項の規定は,前項の規定により執行役の負う義務の免除について準用する」と。前条2項というのは,総株主の同意がなければ免除できないということで,総株主の同意があれば免除できるという規定になっているわけですね。そうすると,これも変更するということになるのですか。 ● それも含めてということになります。   実質はよろしゅうございますか。 ● はい。そういう趣旨だということが分かれば結構です。 ● それでは,これはここにある原案の方向で進めさせていただきます。   次に(3)の星印でありますが,この点はいかがでしょうか。(注3)は,なお検討するということなのですが。   この(3)の部分は原案でよろしいでしょうか。 ● 何度も言いますけれども,全体的に議論していただきたいのですけれども,取締役会の決議に賛成した取締役の問題というのは,この場ではまだペンディングになっている,すべてについてペンディングという理解でよろしいのかということと,(注)の中で,上の②の(注2)に相当するものはこの下にはないのですけれども,これは上の②の(注2)と同じものがあるということでしょうねということです。これは一部免除の対象とできるということにはなっていないですよね。しないのですよね。そこは確認です。 ● これは一部免除の対象にはなっていないということです。 ● 書いてないけれども,そうだということですね。 ● この(3)につきましてはよろしいでしょうか。ほかに御意見ございませんか。   それでは,次に進ませていただきまして,(4)の利益相反取引であります。これは②と③ロに星印がついておりますが,いかがでしょうか。 ● まず,①の(注)なのですが,取締役に対する金銭の貸付けに係る,これまで弁済責任と言ったわけですが,これをなくすということになった場合に,損害額は一体どう算定されることになるのでしょうか。   それから,過失の認定というのは一体どの程度のものとして実際上運用することになるのでしょうか。 ● その点は,もう先生方に解釈をお願いするしかないと思います。少なくとも損害については,返済が現実化しなかったものが損害になるのだろうと思いますけれども,どういう場合に過失があり,どういう場合に過失がないかということについては,こういう場合であるとはなかなか言い難いところがございますが。 ● 損害額については,「未ダ弁済ナキ額」と,こういうことでよろしいわけですか。あるいは,貸付けが特に有利なわけでもないから損害額はないというふうに判断するのか。 ● それはどうなんでしょうかね。当然に何か額が決まるかと言われますと,確かに難しい問題かもしれませんね。 ● 少なくとも委員会等設置会社と同様でございます。 ● だから,私は委員会等設置会社のときからこれに反対をしてきたわけでございます。 ● この266条1項3号に相当する規定を委員会等設置会社に設けなかったのは,過失責任という考え方と,それで利益相反行為全体をとらえるときに,貸付けの場合だけ特別の取扱いをすることは法制的に不可能であると考えられたからでありまして,たしか○○委員もその席上におられたと思いますけれども。 ● 私はずっと反対しておりましたのですけれども。 ● それで,じゃあ損害はどうなるのかといいますと,貸付けをして返ってこなかった額が損害になるに決まっているので,あとは過失があるかどうかということになると思います。ここは,現行法は無過失の法定弁済だから額を書いてあるので,損害賠償にすれば,損害額は返ってこなかった分が会社の損害になるに決まっていると思いますが。 ● じゃあ,損害額については,「未ダ弁済ナキ額」というところを変えるつもりはないということですね。 ● そういう意図はなかったと思います。 ● じゃあ,あとは問題は,過失がどういう場合に認められて,どういう場合に認められないかということだけですね。 ● それはほかの利益相反と同じで,利益相反全部について過失を問題にするわけですので。だから,過失といいますか任務懈怠といいますか……。 ● 普通の利益相反の取引なんかになりますと,会社と取締役がたとえ取引をしても,それが双方にとって有用な取引であるということはあり得るわけですね。したがいまして,具体的に判断して決める余地を残そうということになると思うのですが,会社が取締役にお金を貸しつけるという,それが会社にとっても利益になるというような場合というのが果たして考えられるのだろうか,むしろ濫用の危険が多いだけの行為なのではないだろうかと。だから今までは,それを正に事実上禁じるに等しいような規定としての責任規定が置かれていたと思うのですね。それをわざわざ変えなければならない法制上の理由があるという説明は,こんなにも政策過剰のような規定をあちらこちらに設けていながら,どうしてここだけ法制上それにしかできないのかということが私は理解できないのですけれども。 ● 今,○○委員が質問されたこの今回のやつでは,266条1項柱書きのところの「未ダ弁済ナキ額」という規定はなくなるんですよね。ですから,結局のところ,損害は,別に「未ダ弁済ナキ額」ではなく,損害の一般理論によって,つまり回収できなかった額,貸し倒れた額ということなんですよね。 ● それは弁済がされなかった額ということになるんじゃないですか。それは貸倒額という意味ですから。 ● そうですね。いや,「未ダ弁済ナキ額」というのは,まだ貸し倒れていなくても請求できるのかと,この条文の文言からは感じたのですけれども。 ● 実務上は貸倒額だと思いますが。 ● ああ,そうですか。 ● これは,確かに貸付けの場合は貸倒額,それから通常の取引の場合でも,取締役の側が履行しなければ,その履行不能額。だから,結局は損害ということですよね。だから,同じことなのかもしれません。 ● 先ほど○○委員が後で言われたことなのですけれども,利益相反取引にも様々なものがあるので,実際には貸付けと同じように一方的に取締役の側が有利になるような利益相反行為というのは多々あり得るわけで,それを,みんな過失責任にするのに貸付けだけ特別にして--しかもここは過失責任にするというところは変えないわけです--4号を過失責任にするなら,3号だけ無過失責任のまま残すのはおかしいし,過失責任にしながら,弁済責任みたいな形で返す額だけを規定するというのも,これまた変な話なわけですね。だから,貸付けの場合は基本的には会社には利益はないというか,まあ利息にもよるのかもしれませんが,利益相反取引が行われたときには,その取引によってちゃんと会社は回収できるんだということの判断がされたはずなので,その判断に経営者としての誤りがあったかどうかという点では4号も3号も同じになるのではないでしょうか。 ● 取締役に対する会社からの金銭の貸付けだけ別に扱うという政策判断は大いにあり得る,したがいまして,それは過失責任ではなくて無過失責任であるということは,今までもそうしてきたわけですし,ほかの利益相反取引に係る責任についてどのように変更するかということ,これもまた②以降の議論になりますけれども,それとは別に,今までどおりの3項維持ということはあり得るというふうに私自身は思っております。 ● ほかの方はいかがでしょうか。   どちらも一理あるのかもしれませんが,貸付け以外に保証を出すというのと同じだという考えもあるかと思いますが。 ● 私は,○○委員がおっしゃっていることは一つの議論ではないかなと思うのですけれども。   といいますのは,恐らく今の現行法の場合,期限が決まっていて,その期限を徒過してしまったときに,他の取締役はいわば保証人的な立場で弁済責任を負うのだという説明をしてきましたので,そう考えますと,やはり他の取締役は,これは将来,最後まで見ていったら遅延であったと,随分遅く払いましたということになれば,損害賠償の一般理論からいけば遅延損害ということになるのだと思うのですけれども,それをある一定の時期に,期限が徒過したという段階で請求をすると他の取締役が弁済してくれるというのは,やはりかなり違う制度なのではないかなというふうには理解してきたわけです。   これが正しい理解かどうか分かりませんが,法政策としては,現行の委員会等設置会社のように,それはそういうような責任を負わせるのはむしろ過大な責任であって,取締役にお金を貸しつけるというニーズも当然あるわけですから,そこを余り別に考える必要はないという政策をとることは十分考えられると思いますけれども,○○委員がおっしゃっているような考え方もまたありますから,ここは,どちらの政策が正しいのかということで議論すべきであって,法理論上どちらかが一義的に正しいということではないのではないかなというふうに思います。 ● おっしゃるとおりだと思いますけれども,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,貸付けはダイレクトですけれども,より広い意味での信用供与取引の典型例で,現在様々な信用供与取引,先ほどは保証ということも言われましたけれども,そして,貸付けの場合には返ってくるのですけれども,例えば債務免除だとかそういうことだと返ってこないわけですね。それでも取締役が,主として代表取締役を兼ねる他の会社ということになるのでしょうけれども,そういう債務免除だって一切許されないわけではない。そういうことからいたしますと,貸付けだけを特別に扱う必要はないと。   そして,法制的な観点からしますと,いわゆる信用供与取引でも,貸付け以外はいわゆる間接取引に当たるのですね。間接取引について265条の適用が云々と言われたのが40年代前後からですので,そういう間接取引を踏まえて,56年で利益相反という形の枠組みにしたときに3号と4号の関係も非常に流動的になったと。   そこら辺を考えて,委員会等設置会社で一つの政策変更をし,そして,それを是としてこちらもこうするというのは十分に合理的な判断だと私は考えております。政策的にどちらが一方的に正しいかどうかというのではなくて,全体的な流れからするとこの方が滑らかかなという感じを私個人は持っております。 ● まとめを言っていただきましたので,大体よろしいでしょうか。もちろん,どちらが正しいという問題では性格上ないようで,どこで線を引くかという話ですから,一応御納得いただけますでしょうか。--それでは,必ずしも納得できないけれども……。 ● 二つ方法があり得て,そのうちのどちらを選ぶのかということだということは,私もそのように理解しています。 ● では,一応,○○委員に御整理いただいたような形で進めさせていただければと思います。   ②以降ですけれども,いかがでしょうか。②は大変意見が分かれていた問題で,意見照会でも意見が非常に分かれた問題なのですが。 ● ②の途中の,「会社と直接又は間接に利益相反取引をした取締役」自身の責任の問題ですね,これは,会社を代表してその取引を行った相手方の取締役であるとか,取締役会の承認決議に賛成した取締役とかとは,やはり責任の種類が違うのではないかと思うのですね。したがいまして,直接に利益を受けた結果となった取締役についても,全くほかの者と同じような責任で考えていく,あるいは,ロの方に参りますと,責任の一部免除についてもこれは同じふうに扱うという趣旨なのかちょっとよく分からなかったのですが,そういうふうにするのは余り適切ではないのではないかと思っているわけです。これはやはり,まず,世界的に,注意義務と忠実義務を区別するというアメリカあるいは英米法などの考え方というのは非常に広く受け入れられてきているわけでして,これの明晰性というものが多くの国の法学者に,あるいは法実務に受け入れられてきている,裁判所に受け入れられているという中で,日本だけは特別の扱いをするんですよというメッセージになると思うのですね。これがこのグローバルな観点から言って適切なのかというのが一つです。   それから,理論的に,利益を得た者がその利益を吐き出すということが一体ほかの者の損害賠償責任と同じものなのかどうなのか。利益の吐出しというのは別物なのではないかという疑問があるというのが,第2点目の理論的な問題。忠実義務と注意義務の理論的な分析ということにもつながると思いますが,それが疑問の点です。   もう一つは,私は,同じような枠組みの中でとらえられると思うのですが,次の(5)の利益供与責任との関係を考えてみますと,(5)の方は,利益の供与を受けた者はそれを戻さなければいけないということになっている,返還するということになっているのであって,これは決して損害賠償でも何でもないわけです。ところが,会社から利益を受けることとなった取締役の方は,これは一部免除もあり得るような損害賠償責任だということになりますと,規定上もアンバランスなのではないかというように思います。 ● 確かに,御指摘のように,「直接又は間接に利益相反取引をした取締役」というのは,相手も会社で,会社を代表した者だけを言っているのか,それとも直接利益が個人的に帰属した取締役まで含んでいるのかというのは一つの論点だと思います。   この点は,これは解釈にゆだねてあれするという考えですか。まさかそれまであれして一部免除とかいうわけではないのでしょう。直接利益が本人に帰属しているという……,○○委員の言われているのは。   大体,今までの議論で,直接又は間接に利益相反取引をした取締役にも一部免除等を認めるべきだという御意見があったとしたら,それは,要するに,相手も会社であって,それを代表して取引をしていると,そういうケースまで,先ほど言われた吐出しの責任ですね,会社の代表者にすぎない者に対してそういうものを課すのは不当だと,そういう考えだったと私も理解しているのですけれども。まさか本人に帰属しているのにという,そこまでは含んでいないと私は思っていたのですが。 ● 私も○○委員がおっしゃっているとおりに考えているのですけれども,要綱試案の段階ではここは二案併記されていたのですね。直接に利益が帰属することになる取締役だけ特別扱いするか,そうでないかという二案を併記 していて,このような形になったということは,直接利益が帰属する取締役についてもほかの取締役と全く同じ扱いにするというふうに読めてしまうのですけれども,それは適切ではないと思うのですが。試案の段階では,利益が帰属することになる取締役についてだけは無過失責任を維持するという案と,そうではなくて,すべての取締役について過失責任化してしまうという二つの案が併記されていたと記憶しておりますが。 ● 無過失責任の点についてはそうですね。 ● 利益相反に係る責任一般について,御指摘のように取締役の関わり方に応じて見方がかなり異なり得るわけでございまして,それに対応して,試案でいきますと(4)の①の(注1)のところで,無過失責任を負わせるべき者を設けるかどうかといいますか,維持するかどうかということを検討事項とさせていただいており,この点についてはかなり意見が分かれたところでございます。したがいまして,先ほどやや説明が不十分だったと思いますけれども,この①として,利益相反取引に係る対会社責任一般について過失責任化を図るという点について十分御議論をいただいた方がよろしかったところでございます。 ● そうすると,先ほど○○幹事が指摘された点は,むしろ(4)の①でありまして,この点も十分議論する必要があると。   それから,一部免除等については,要綱試案では必ずしも明示はされていなかったのかもしれないけれども,潜在的にその問題はあったわけですよね。 ● そうですね。 ● もし無過失責任だとしたら,もうそれは一部免除なんていうことはあり得ない。 ● 試案の本案自体が,この過失責任化を図るものとするということとしていたということもありまして,格別,相手方,利益帰属者についてのみ一部免除を認めないというような考え方の提示をしていなかったところでございます。 ● 実質問題としてはそういう問題があります。この点は十分御議論いただく必要があるかと思うのですが,いかがでしょうか。   利益帰属者についても過失責任とすべきであるというのが,日弁連,法友会,司法書士連の三つ。無過失責任とすべきであるというのが,一弁,二弁,広島弁護士会,阪大,一橋大,広島修道大,名城大,明治大学。利益が帰属するか否かの判断の困難さを理由に慎重な検討を望むもの,経済産業省。会社と直接又は間接に利益相反取引をした取締役等はすべて無過失責任とすべきであるとするもの,立命館大学があったと。こういうことで,数からいくと利益帰属者については無過失責任という方が多いみたいですけれども,いかがでしょうか。 ● 私も,この点については,○○委員や○○幹事と同じように,直接取締役に利益が帰属している場合については,それはその分を会社に返還させるということでいいし,その分について返還額に限定を加える,一部免除する必要もないと考えております。 ● いかがでしょうか,ほかの委員・幹事の方。   日弁連は過失責任化に賛成だということですけれども,これはそうですか。 ● 私は日弁連の意見とまたちょっと違う意見を持っているのですが。   ○○委員がおっしゃるように忠実義務違反というベースで考えるのか,あるいは,そうでなくて一種の任務懈怠という考え方でいくのか,それによってもいろいろ結論が違うと思うのですが,現行266条1項柱書きによると,4号違反の場合には,「会社ガ蒙リタル損害額」が責任の額になっていまして,これを,さっきから利益を吐き出させるといういろいろな御意見もあるのですが,忠実義務違反と考えた場合には,利益を全部償還しなさいというふうにあるいは結びつきやすいのかなという気持ちもいたしますし,そうでなくても,任務懈怠なら正に損害賠償責任だということになりますので。   具体的な例を考えてみると,例えば,会社の商品を自分の運営する会社に安く売りさばいて,自分の方でその差額を利得して,その金額で何か投資をしたと。その差額が5,000万の場合に,投資が非常にうまい社長で1億円の利益が出たというときには,会社の損害は5,000万なのですけれども,取締役の利益という意味では1億だと。そうすると,その場合はどれを返させるかという問題にもかかわってくるかと思いますので。   恐らく,今度の要綱案では,責任を過失責任化するということと,責任を負う取締役の範囲をどうするかということだけが論議されていて,賠償額とか返還させる額の問題は266条1項柱書きのまま。ただ,さっきの貸付けについてはまた別かもしれませんが,この4号違反については,「会社ガ蒙リタル損害額」というのを維持するのではないのかなと私は理解しているのですが。   そうすると,やはりベースは理論的には任務懈怠責任という考え方でできている。そうすると,利益を吐き出させるという観念ではなくて,会社が蒙った損害の範囲,利益があってもなくても損害を払えという制度になるのだろうというふうに理解しているわけですけれども。   ただ,それにしても,やはり,直接利益を得た,あるいは自己取引をやった取締役と,それを認めた,あるいはその相手方として会社を代表した取締役の責任とは区別しないと何となくバランスが悪いという感じは,私自身,個人的な感じとして持っていまして,日弁連の意見に反対するわけではないのですけれども,私自身は,直接行った取締役については無過失責任ぐらいは認めないと,こういうものについては会社全体のバランスが悪いという……,これは決定的な議論というのは恐らくないのではないかと思うのですが。要するに制度のバランス感覚の問題ではないかという気持ちがいたしております。   そうすると,今度は,それを無過失責任とした場合に,取締役会決議をとらないでやってしまったというときに,それが実は過失責任のままであるということとの均衡をどうするかという問題がまた出てくるかと思いますので,結論を出すのは非常に難しいような感じはするのですが,取締役会決議をとらないでやったときには一つの任務懈怠責任ということで割り切るしかないのかなという気持ちはするのですが。   ただ,昭和五十何年かの名古屋地裁の判例で,取締役会決議をとらないで自己取引をやってきて,取締役会決議をとった後の自己取引についても損害が生じたというときに,取締役会決議をとった後の自己取引は現行法では無過失責任ですから,無過失責任を認めると。ところが,取締役会決議をとる前の段階についても,とった後の法制とのバランスから無過失責任という判決を出したケースがありまして,恐らくその辺が裁判官としても非常にバランスを悩んだケースではないかと思うのですが。これは東海圧延事件という,名古屋地裁だったと思いますが,そういうのがありますので,取締役会決議をとらないでやったときに過失責任である,取締役会決議をとったら無過失責任になるというのが,何となくその点でちょっとバランスを失するということで,何か二律背反みたいな問題が起きてきますので,なかなか結論が出にくいような感じはするのですが。 ● ここで問題にしているのは,それこそ取締役会決議をしないで取引していますと無効ですから,相手方からは取り返せるんですね,恐らく。ここでは相手方になっている取締役のことを言っているわけですから,取締役会決議をとっていないと取引は無効ですから,満額取り返せるのではないかと思います。 ● 情報提供だけですが,実は今,信託法の改正作業に手がつけられていまして,秋から始まると思うのですが,そちら側で,受託者の責任について,狭い意味での忠実義務違反については恐らく何らかの意味での利益吐出しの責任みたいなものが定められる方向にあるのではないかと思っております。今のところはそういうことだと思います。もし,そちら側でそれが正面から書かれますと,受託者の典型である取締役について全く違う法制を持つというのはかなり大きな不整合という印象もないわけではありませんので,いずれにせよ向こうのは忠実義務一般の話ですので,こちら側で利益相反についてどういう規定を置いても完全にぴったりは重ならないのですが,ちょっとその不整合が起き得る可能性だけ……,全然議論のスピードが違うので調整は難しいかもしれませんが,少し内部での御調整を図られることをお願いできればと思います。 ● ○○委員が御指摘になった点で,損害額とするか吐出しとするかということは確かに一つの問題ですが,ここでは条文は必ずしもその点をはっきり書かなければいけないものなのかどうかと。ただ,直接帰属した者についてはこの過失責任化を図るというものから除けば,あとは解釈の問題で済むのかもしれません,条文の書き方としては。それが一番無難かと思いますが,実質としては,利益が直接取締役個人に帰属していれば無過失でよいという点につきましては,皆さん御異論ないでしょうか。--その点はよろしゅうございますか。   それでは,この①からは,○○幹事が御指摘になった点,要綱試案では書いてあったように,直接利益が個人に帰属した場合は,その者については無過失責任にするという形で処理させていただきたいと思います。   ②につきましては,この特別の規定,立証責任を転換した特別の規定を設けるものの範囲として,これでよろしいでしょうか。この点が非常に分かれていた点なのですが。 ● 質問なのですけれども,「間接に利益相反取引をした取締役」という表現があります。それで,間接取引の場合には,取締役自身は取引の当事者ではないので,取引はしていないのか。266条1項4号の「前条第1項ノ取引ヲ為シタルトキ」には間接取引の取締役は入らないんだという説を唱えていらっしゃる方がいます。商法特例法21条の21の第1項1号の方は,265条1項の取締役であって,間接取引の場合の利益相反取締役が入る,これは条文上明らかだと思うのですけれども,この「間接に利益相反取引をした取締役」という表現は,その間接に利益相反関係にある取締役も含む,責任を負わせる,現行の商法特例法に合わせるという考え方に立っているわけですね。 ● 実質内容はそうだと思いますが,表現としては確かに問題がある表現で,条文はこう書くのかどうかはちょっと疑問だと私も思いますけれども。 ● 表現はともかく,この案は21条の22を前提にしているものです。 ● 別のことの質問になるのですけれども,商法特例法21条の21というのは,取締役会の承認を受けた場合の規定ということになっておりますので,恐らくこれもそういう法制の仕切りになるのだろうと思いますが,先ほどの,利益を受けた方の側の取締役については効力が無効になるからという○○委員の御説明は私も納得しているところなのですが,一方,取引をした代表取締役の方の側の責任というのが,承認がないときの方がやや軽くなってしまうのではないだろうかという,そこはちょっとよく分からないところなのですけれども,この21条の21というのは,立証責任を転換したというふうに,そこを非常に強調していきますと,一般の任務懈怠責任の場合との差別化を図っていくことになると思うのですが,そうすると,取締役会で承認を受けない方が何か悪いような感じが私は……。明らかに利益相反取引であるということが分かりながらも,あえて秘密裏にやっているというような場合の責任の追及との間で整合性がとれるのかどうかということをちょっと御質問申し上げたいのですけれども。 ● 今の○○幹事が出された事案ですと,明らかに任務懈怠ではあるのではないでしょうか。だから,別に特別規定を設けなくても任務懈怠責任は負うのではないかと思っていたのですけれども。 ● 実態が正にそれが結論であれば問題ないわけですけれども,紛争の過程の中でそれを立証していくということが,いろいろ言い逃れをすると思いますので。 ● 利益相反取引であって取締役会の承認を得なかったということ自体が任務懈怠なのではないでしょうか。 ● それについての過失というのは議論しないのですか。 ● この場合というのは,結局,会社に損害が出ていることは立証されているのですね。その場合に,そういう取引について代表取締役が取締役会にかけなかったということであれば,代表取締役については過失があることはもう明らかなんですよね,恐らく。一応過失責任とはなっておりますけれども,原告が立証することも非常に容易であるから,実際上責任を負わされるであろうと。   ですから,ここでの問題は,取締役会に上がってきたときに,提案者である代表取締役以外がどの程度注意深くやればいいか。任務懈怠責任の原則どおりだということになると,特別責任ではありませんので,原告の方で過失を立証してくださいということになるのですが,それで本当にいいですかというのが,やっぱり特別責任を--利益相反取引がかかってきた以上はほかの取締役が注意深くやってくださいというのが,この特別責任を負わせるということだと思います。 ● 十分了解いたしました。 ● ということで,実質的な範囲はこれでよろしいでしょうか。 ● 確認ですけれども,①につきまして,一部,直接受益の取締役について無過失責任とするということであれば--一部免除についても同様の問題がありますけれども--③につきまして,商法266条6項に相当する規定はその限度では維持されるという整理でよろしいかどうかということを再確認させていただきたいと思います。 ● 今の点はよろしいでしょうか。 ● 受益取締役について責任免除要件を軽減するという意味ですか。 ● 無過失責任であることを前提に責任軽減規定があるという説明がされていたとすると,ここでの③のイは過失責任化を図るという前提での提案であったものと理解しておりますので,その議論が再度妥当するかどうかということを確認させていただきたいと思います。 ● これは違う話のような気がしますが。 ● いろいろな考え方があろうかと思いますが,③のイの本文については,設けないということとするにしても,それとの関連でロの一部免除は認めないと,こういうことになるわけですね。そういう形のバランスをとるかどうかという質問と理解してよろしいわけですね。 ● そうしたいというわけでもないのですけれども……。 ● そういう二つの連携になるだろうということ,一部免除は認めないというのは前提なのですね,吐出しについて。 ● はい。 ● それを確認しただけです。 ● 一部免除にはかけないし,直接取引が帰属した者の無過失責任というのは別に現行266条6項の議決権の3分の2で免責できる無過失責任ではないわけですから,これは関係ないという整理でよろしいわけですね。   利益は吐き出させる--まあ,本当に「利益吐出し」という条文になるかどうかは別にして,利益が直接帰属していれば,それは吐き出させなければいけないというのは当然の話で,266条6項みたいな形で免責されたら,それはおかしいということなんじゃないですか。 ● どちらでもいいのですけれども。 ● 実質はそういうことだと思いますね。よろしいですか。   では,この(4),利益相反取引はそういうことでよろしいでしょうか。 ● 先ほど利益処分のところで質問したのとの関連で,この④も現行法と整合性がとれているということでよろしいかということですが。 ● 具体的に申しますと。 ● これは利益処分の場合と違って,賛成取締役の責任がかぶるというふうに当初からお考えになったということでよろしいかという,それだけのことですが。「第1種株式会社以外の会社と同様の取扱いとする」と言われる趣旨は,(注)では免責の効果は生じないということのみを意味されているようですが,賛成取締役の責任も一緒という理解でいいかということを利益処分のところとの関連で確認したいという,それだけですが。利益処分がそうなったので,恐らくそうだろうと推測するのですが。 ● ④の記述に当たっては,深くは考えておりませんでしたけれども,先ほどの点と同じように取り扱うべきものというふうに整理させていただきます。 ● 私もちょっと混乱しておりますが,とにかく整理をさせていただきますので。 ● 悪いことは書いていないのですが,そうだろうなという,そういうことだけです。 ● ④で賛成取締役というのは,どこでどういうことを賛成した取締役ということですか。株主総会での承認ですよね。株主総会で賛成した取締役の責任ということでしょうか。 ● それこそ有限会社法26条の運用になりますけれども,重要事項については,複数の取締役がいる場合には,過半数の取締役の同意がなければ--業務執行については同意が必要ですよという規定がありますので,それを定款で排除することはできるのですが,排除されていなかった場合には,社員総会にかける場合には過半数の同意が要請されるというルールになるだろうという前提で,そういう意味で利益処分の場合と同じということです。 ● 分かりました。 ● そういうことです。   この取締役の責任は,本来,時間的にはもっと早く終わっていなければいけないのですが,休憩の後,(5)以降に入らせていただくということでよろしいでしょうか。   それでは,休憩させていただきます。            (休     憩) ● それでは,時間の制約もありますので,そろそろ始めさせていただきたいと思います。   「7 取締役の責任」の「(5) 株主の権利行使に関する利益供与に係る責任」の点であります。この点はいかがでしょうか。これはかなり大きな問題でありますが。   無過失責任を見直すかどうかということについては,要綱試案では,なお検討するということになっておりましたけれども,その後,56年改正のときの立法担当官の見解も明らかになり,こういう案になっているわけでありますけれども,いかがでしょうか。一応弁済責任ではあるのですけれども,過失責任化するということですが。--よろしゅうございますか。   ほかに,(5)については何か御意見ありますでしょうか。 ● ②の方なのですけれども,私は普通,取締役の責任を軽くする方向の議論はしないのですけれども,この点をちょっと考えてみましたら,取締役会の決議に賛成した取締役の責任と考えたときに,利益分配とか利益相反取引の場合には,これはちょっと危ない取引であると,だから用心してかかれということを取締役会に要求するという意味が,この取締役会決議に賛成した取締役の責任にあると思うのですけれども,利益供与の場合には,正面から利益供与であることをうたって取締役会にかけられることはまずないですね。正面からうたってかけられれば,それは当然全員責任を負うということになると思うのですね。普通は通常の取引を偽装して,利益供与じゃないような形で取締役会にかけられるはずです。そうすると,取締役会の決議に賛成しただけの取締役はそれは分からないのが普通で,もしこのような規定を置いてしまうと,通常の取引であっても,常にそれが利益供与の性格を帯びたものではないかと疑ってかかれというふうに取締役会決議に参加した取締役に要求することになってしまって,おかしくはないだろうか。   そうすると,利益分配や利益相反とは区別して,利益供与のところは取締役会決議に賛成した取締役の責任は外すということも十分考えられるのではないかと。積極的にそうしなくてもいいとは思うのですけれども,そういう考え方もあり得るのではないかというふうに思いました。 ● そうしますと,この規定自体要らないと。一般の任務懈怠責任でよろしいということになりますか。 ● ええ,利益供与に関してはそれでいいかもしれない。 ● 利益供与をした場合には,利益供与した者に対する返還請求権を会社が持っているわけでございますね。その点を勘案して損害額を決めろと言われますと,やはり厄介なことになりますので,損害額を法定しておくという意味はあるんじゃないでしょうか。 ● としますと,○○委員の御意見は。 ● ですから,利益供与に関する特別の責任は,私の位置づけですと,むしろ違法な剰余金の分配と同じような位置づけでもって,損害額を法定しているということに意味のある特別規定という格好で置いておいた方がいいというふうに思うわけです。 ● それで,どの範囲の。○○幹事の問題提起は,どの範囲のものにその特別規定を……。 ● これはもちろん,私は,任務懈怠責任一般についても,もし取締役会で決定したのであれば,決議に賛成した取締役も範囲に含む方がいいというふうに思っているわけですから,その方にそろえた方がいいと思いますし,逆に言いますと,(注1)にあるような,どうしてこの利益供与責任に関して過失責任を負った者について一部免除の対象とならないとするのか,経営過失責任である場合も,今,○○幹事がおっしゃったように大いにあり得るということになりますと,経営過失責任の一部免除ということを盛り込んでおいてもいいのではないかぐらいに私の方では整理しているところです。いろいろ考えが分かれるところなので,なかなか難しいと思いますが。 ● いろいろ意見が出てきますね。   いかがでしょうか,ほかの委員・幹事の方。 ● 私も,弁済責任を一つの法定責任として維持するということは,○○委員がおっしゃったとおりの理由で賛成なのですが,もう一つ,○○幹事がおっしゃった点については,確かに,現在行われているような総会屋とかそういうものに対する利益供与を取締役会で諮るというのは絶対ないケースだと思うのですが,これから例えば企業買収などが盛んになりますと,大株主に対する利益供与とかそういうものがいろいろ問題になってくる可能性もあるかと思いますので,そういう意味でも,取締役会で利益供与の決議をしたということが--まあ,そのときに取締役としてはそういう意識がなかったというケースが恐らく多いと思いますけれども,ただ,過失責任の問題ということになってきますと,意識していなくても,取締役会決議が利益供与であったというケースがないとは言えないと思いますので,やっぱりこれを維持する必要性というのは今後あり得るのではないかと思います。 ● ほかの方,いかがでしょうか。 ● くどいようですけれども,行為取締役だけにしていただいて--すべてについてそうですけれども,取締役会決議の賛成取締役については一般の任務懈怠責任にしていただきたい。   取締役会の判断というのは,こういうくだらないことではなくて,日々の,あるいは中期の事業計画をいろいろやっているわけですから,そちらについては責任はそれほど,まあ気軽にやりなさいと,利益供与とか配当とかそういうときだけ一生懸命やりなさいと,この立法思想というのはどうしても分からない。すべてについて等しく取締役はちゃんとやるべきなのであって,このごく限られたケースにのみ挙証責任を転換するというふうな立法政策には反対だということであります。 ● ほかにいかがでしょうか。ほかの委員・幹事の方は。   今の○○委員のあれで言えば,恐らく多くの委員の方は,利益相反取引については,やっぱり,一応怪しげなあれであるから,危ない取引であるから,特別責任を負わされても仕方がないかなというふうに思っておられるのではないかと思うのですが,ここのところは,確かに○○幹事の言われるような面はあることは否定できない問題だとは思います。   一方,○○委員が今御指摘になられたように,いろいろなものがあり得るという御指摘も,なるほどと思いましたけれども,いかがでしょうか。   ○○委員,○○委員,いかがですか。 ● 利益供与についてはいろいろな経緯があって,56年に導入されたけれども,いろいろな問題が起こり,平成9年で刑罰が相当引き上げられたのですか,それで終わるかなと思ったら,2年ぐらい前ですか,関西方面で幾つかあるということで,やはりこれについては,いろいろの見方はありましょうけれども,証取法の損失補てんと同じように日本独特の法制だということで,ある意味で恥ずかしいと思うけれども,恥ずかしい規定を置かなければならない実態がまだ続いているかどうかということを考えると,こういうのを現在も維持するのはやむを得ないかなと。そして,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,弁済責任としたというのは,従来の民法理論上の損害賠償ではなかなか難しい問題もあるので弁済責任にしたということで,その場合には賛成取締役についてもそういう規定を置くのがいいのかなと。そして,一部免除の対象というのは,これは政策判断ですから,こういう規定を置く以上,こうなってもやむを得ないかなということで,私は原案でそれほど違和感は持ちません。   ただ,こういう規定は要らないと多くの方が思われるような企業慣行になることを期待していることは確かですが。いや,一番嫌味を言ったのかもわかりませんが。 ● ありがとうございました。○○委員が一言言ってくださいますと大体大勢が決まりますので。   ○○幹事の御懸念はもっともだと思いますが,まあ,分からないような形の取引は,大体それは過失がないということに普通はなるでしょうから,これで非常に実害が生ずるかというと,そうでもないと思いますので,一応,規定の上ではこういうことということでよろしいでしょうか。--それでは,そういう原案のような形ということで進めさせていただきたいと思います。   次に「9 監査役」でありますが,一つの問題は,「(2) 補欠監査役」の(注1)の予選の効力でありますけれども,このあたりはいかがでしょうか。 ● (注1)の後段の,「予選の効力は被補欠監査役の任期満了の時までとするものとする」というのは,もう一本なのか,「までできる」ということで,従来と同じように次の定時総会まで効力のある予選はできないのかということが質問の1点です。   あと一つは,「被補欠監査役の任期満了の時まで」とありますが,これは今後どうなるか分かりませんが,例えば3人なら3人の監査役が,特にこれは取締役が準用されるといたしますと,一人だけを補欠監査役に選んでおいて,その一人の補欠監査役が全員の監査役に対する補欠だというふうにやればいいのですが,二人の場合には第1順位,第2順位をつけてやることになろうかと思いますが,一部では,二人ほど選んでおいて,その二人が相談して1位,2位を決めたらいいのではないかとか,そういう弾力的なことも認めてほしいとかいうような議論がありますので。まず,「任期満了の時まで」という意味と,複数の補欠監査役が選ばれた場合の被補欠監査役の範ちゅうがどうなるのか。AさんについてPだ,BさんについてQだと,こうしろという趣旨までも含まれてはいないように思うのですが,そこら辺のところをちょっとお教えいただければと思うのですが。 ● 予選の効力は,基本的にはその決議での定め方次第でありますが,しかしながら,最長1年とするのではなく,最長本監査役の任期が切れるまで認めるという整理をさせていただいてよろしいのではないかというのが,ここでの趣旨でございます。   被補欠監査役と補欠監査役とをどう対応させるかという点も,恐らくその補欠監査役の選任決議における定め方次第という整理でよろしいのではないかと思いますが,もしそれで不都合があるということであれば,その対応関係を常に一対一できちんと定めなければいけないということを考えるかどうか,御議論いただければと思います。そこまでは考えておりませんでしたけれども。 ● 基本的には決議で柔軟にできるという趣旨のようですが。 ● 私も○○委員と同じような疑問を持ったのですが,自由に定めることができるということでもいいかと思うのですが,自由ということになりますと,一番重たい場合を考えるということになりますと,やはり補欠監査役の氏名等をどのように公表させるのかとか,ここでは営業報告書という案が出ておりますけれども。   それから,複数の監査役が5名いるうち,任期がそれぞればらばらの者もいるとしますね。ある者は2年,ある者は4年というときに,きちんと決議の中で,Aさん,Bさん,複数の補欠監査役がどちらにどう行くのかということを決めておけばよろしいのでしょうが,決めなかった場合にどうなるのかというデフォルトルールを決めておかなければいけないんじゃないかとか,そういう厄介な問題が出てくるのではないかということが一つ心配なわけです。 ● そうですね,場合によっては決議無効ということになって。不明確で無効ということは解釈上あり得ないではないと思いますけれども,どうなんでしょうね。 ● その点,補欠監査役は単に選んでおいて,次の定時総会までの間にどなたか欠けた方があった場合には,第1順位はこの人,第2順位はこの人で入っていくのだということだけで,実際にだれかお亡くなりになってしまったような場合には次の定時総会でもう一度承認を受けるというふうにしますと,これは非常に気軽な制度ですから,定款でわざわざ定めておいた場合にだけ使えるなんてする必要もございませんし,どのように開示させるのかという必要もない。といいますか,営業報告書に書くころにはむしろ議案の方に提示するということになろうかと思いますので,やっぱり,非常に気軽に使いやすい簡単な制度とするのか,自由度は高いけれども,そのかわり,何かよく分からなくなってしまったときには無効と判決されるかもしれないような制度にするのかという選択肢の中ではどちらがいいのか,よく考えてみる価値はあるのではないかという気がするのですが。 ● なるほど,そうですか。 ● (注3)が非常に気になって気になってしようがないのですけれども,「取締役についても,同様の取扱いをするものとする」と,これはどういう意味でございますか。補欠取締役を予選することができる,例えば新日鐵さんのように何十人もいるものについて,それぞれについて第1順位,第2順位,第3順位と会社での序列を決めてしまうようなことにもなりかねないような感じがするのですが。要するに,そういう話にまで拡散する議論をまじめにしようということなんでございますか。それとも,ちょっと気が向いたから(注3)を書いてみたという程度の話ですか。   もしこういうことが本当に出ると,大きい会社のことは知りませんが,中小会社の場合には,その次はだれだとか何とか,ほとんど全部見えるわけです。それで2代目で争っているとかいうと,こういうのを使ってこうしたい,ああしたいとか,もう大変なことになりますよ,これは。 ● なるほど,事実上そういう効力を持つ使い方もあるかもしれませんね,こういう制度ができれば。 ● こういうのがなければ,だれもこんなことは考えつかないような世界だと思いますね。いわんや監査役について補欠なんて,何言ってるのという感じだと思いますね。 ● しかし,一部に要望があることは事実で。 ● 予選そのものは定款の定めがなくてもできるというのが,株主総会の条件付決議の一種ということで,昔は地裁判例では否定されていましたけれども,その後認めるようになったということですから。私も一時,定款の定めが必要だという意見を述べたことがあるのですが,それは二つ問題がありまして,一つは,予選の効力がどの期間継続するかという問題,それから,予選して補欠監査役として就任するまでの間に新株発行があった場合に,その予選の効力はどうなるかという二つの問題がありましたので,その点をクリアする意味で,法務局の昨年の回答が,定款に定めれば,その点両方ともクリアできるという説明があったと思うのですが,今回,この(注1)で「被補欠監査役の任期満了の時まで」という期間を定めれば,期間の点はこれで解決するのですが,補欠監査役の間に新株発行があったとき,これは立法的に解決するのか,あるいは解釈に任せるのか,その辺が多少浮動的なところが残るかなという気もしますので,この制度そのもの,(2)全体には私は賛成しますけれども,新株発行があった場合の問題というのがどういうふうな形で解決されるのか,この点がちょっと気にかかるという1点だけあるのですが。 ● 質問したいのですけれども,予選の効力を被補欠監査役の任期満了のときまでとするとすると,今,監査役は4年の任期なので,残り3年とか結構あり得ると思うのですが,一たん選ばれた補欠監査役をキャンセルするということの必要性というのが,これだけ長い間の効力を認めておくと,やっぱりあり得ると思うのですが,そのあたりはどういうふうに対応できるのでしょうか。 ● 補欠監査役の予選に係る決議を変更する決議というのは,恐らく時期を問わず可能であるということを前提にしているものでございます。 ● じゃあ,解任なんかと違って気軽に--まあ,今度,解任決議は緩くなるからいいのですけれども。 ● 監査役の解任については緩くならないですね。 ● ああ,そうですね。取締役は軽くなるけれども,監査役は軽くはならないですね。でも,補欠だからまあいいと。 ● 補欠ですから。 ● 今の回答の中で,例えば決議の内容が非常に重要だとすると,後での決議の変更を認めない趣旨の決議が含まれているような場合は,これは例外になるのでしょうね。つまり,補欠を選任するときに,その後の総会決議では変更することを認めませんという趣旨の決議の内容を盛り込んでいれば,それが優先することになるのか,それとも,その後総会を開いてそれを否定する決議をして,補欠以外のものを選ぶということをやったときに,一体どうなるのかなという法律問題はありそうだなという感じがしたのですが。恐らく,補欠を選んだときの決議の趣旨というもので決まるのだということを言うと,そこでどういうふうに決めたかということになりそうだけれども,しかし,後で行った決議の方が,後法は前法に優先するみたいな考え方だとすると,仮に最初の決議でそういう後々まで効力を持ちますという趣旨の決議をしたときに,それを否定することも可能のようにも思えるのだけれども,こういう制度を設けた場合に,この辺はどうなるのかなと。 ● 最長4年になるわけですね。新任と同時に補欠をやる,そして4年間,特定の方か全員,社外なら社外が3人おられたら,3人全員のうちのだれかが欠けた場合にはなってくださいと。そうすると,その被補欠監査役の方も,名前だけと思っている場合には別ですけれども,法律制度としてはやっぱり重要な監査役の仕事ですから,社外の監査役であったとしても,本務とともに社外監査役をきちっと対応するためにいろいろの身辺整理をする必要が出てくるだろうと。   ただ,おっしゃるように,その4年間の間には,その人がなれないということで辞退するということはあるし,その補欠の方が辞退することは自由だと思うのですが,補欠の方が辞退しないのに会社側が自由に首の据えかえをしていいですよとなると,監査役の場合には正当の理由がない限り損害賠償という形で利益の調整を図っているのですが,補欠の場合には補欠料というのを払うわけでもなさそうだし……。   そういう意味で非常にややこしくなって,私は,そういう実務界の需要が多く,またそれが合理的だと思えば,最長4年ということを否定するつもりはないのですが,機能的には毎定時総会にやる方が円滑にいくので,そこら辺,実務界の方がどのようにお考えか,つまり,これまでの慣行から,4年だったらもうそれで適当にすればいいのだということで今後進むのかどうなのかも含めて,少しそこら辺のことを……。   だから,幅広く可能性を開くのはいいけれども,本当に実務的に使い勝手のあるのは何なのかをもう少し,この原案をベースにしつつも,本当にこれが有効に4年間利用される制度なのか,大半の会社は従来どおりならもう従来どおりとしておいて,私,定款は別に要らないと思うのですが,後段についてはそこら辺の実情をいろいろと御調査--まだこれを利用されているところはごく少ないんですかね,今後,利用されているような方にいろいろとお聞きいただきたいなと。私,これに強く反対するつもりはありませんが,本当に4年間補欠を選ぶのか,そしてそれが社会的にどのように評価されるのかというのを,少し実務的感覚を整理していただきたいなと思います。 ● 確かに,要綱試案に対する回答では,大体経済団体は任期いっぱいを支持しておられますが,弁護士会はほとんど次の総会までという案を支持しておられるようで,かなりはっきりと弁護士会と経済団体と意見は分かれているようですね。   今日はいろいろ御意見が出ましたので,これはなお検討するということにさせていただきたいと思います。 ● (3)について,さっき冒頭でも少し触れましたけれども,この点も,1種に限らず,2種についても特に扱いを変える必要はないのではないかなということでございまして,特に,2種については,取締役会を設置した会社ということが一つのあれに今なっているわけですけれども,取締役会を置いたということでなぜ直ちに監査役が必要になるのかということが必ずしも明らかでない。取締役会自身のモニタリング機能もあるわけでございますし,むしろ,監査役を置いた場合にはこうとか,置かなければこうといったような法的効果のようなことを定めればよいのかというふうに思いますし,あるいは,場合によっては1種の方にもそういうのがあってもよいのかというふうにも思いますけれども。   それから,さっきの社外取締役の議論ともちょっと関係しますけれども,選択肢をいろいろと示していくという観点で,取締役会のみを置いて監査役を置かれないというふうな形態のものが,特に今は譲渡制限会社という枠の中で議論をしているわけですから,その場合にそれが否定されるということの理由が必ずしもよく分からないというところがあるわけであります。特に,今回,要綱試案の議論のときにも,ある意味では,規模というよりはむしろ会社の性質,実質をより重視した形でいろいろ規律を考えていくという議論の中で,譲渡制限というのを一つの大きなメルクマールにするというあれも出てきているわけでございますから,その場合に,私ども,決して頭から監査役はおよそ意味がないということを申し上げているわけではなくて,そういう譲渡制限という枠の中であれば,置く・置かないというところについてある程度自由度を認めても,過剰規制の--ある意味では譲渡制限という枠の中だからこそ,そういう緩さを認めることになっても,商法の在り方としてはそんなに根本的におかしいということでもないのではないのかなと。逆に,非常にクルーシャルな問題が何かあるということであれば,そこについての手当てをするということがあれだと思っているのですが,この部分については,むしろそこは選択をできるようにしていただきたいということがございますので,とりあえず意見としてあれしたいと思います。 ● これは先ほどの中小企業庁からの意見に書いてあった点でありますが,いかがでしょうか。 ● 私の方も大体同じような意見なのでございますけれども,監査役というもの自体,これは大企業の例を私もたくさん知っておりますけれども,社員の方で功なり名を遂げてなられる方も多いし,それからペイを会社からされていると。だからといって監査ができないというつもりでは全くないのでございますが,一定の限界があるだろうと。譲渡制限会社というバインドの強い中小企業というのを念頭に置いた場合に,当然のことながら株主あるいは取締役による相互チェックは働くべきであって,そこにまた監査役という,今申し上げたような意味で必ずしも強烈な役割を果たし得るかどうかというところに若干の疑問があるわけで,そういうものを重畳的に義務づけるというのはいかがなものかと。   私どもは,取締役会である程度のことを決定できるクライテリアと,株主総会ですべてを決定するクライテリアというふうに二つに分けることは,まあこれはいいのではないかと思いますが,それ以上の差をつけるのは不要ではないかと。したがって,監査役については,置きたい人は置けばいい。そして,置けば,そのことを外へアピールすることはそれぞれできるので,監査役がいる会社ってこうですよとか,その実態はこうですよということは十分に説明ができるようになるのではないかと考えます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 今のお二人の御意見は,私が前々から申し上げてきたところでありまして,分科会のときから,そのような形態をお認めいただきたいということを申し上げてきたわけでありますが,少なくとも,監査役にかえて社外取締役がいればいいのではないかというようなところまではお認めいただけないかなと。もちろん,お二人がおっしゃったように全く自由に取締役会だけというものを認めることがベターだと思いますが,執行と監督の分離というような要素をお考えになっていらっしゃるのであれば,社外取締役を置くという選択肢も当然あるでありましょうし,かつ,委員会等設置会社の導入がなされた以上は,将来において1種・2種の会社が成長していって委員会等設置会社になるというようなルートを考えたとすれば,どこかでどうしても監査役が入らなければいけないというのは,非常におかしなコストを強いることになりますので,その辺も含めて,今の○○幹事,○○委員の御意見に賛成したいと思います。 ● いかがでしょうか。   これは,この部会におけるかなり根本的な議論の対立に絡んでいる問題でありまして,つまり,1種と2種をどれぐらい違ったものとするか,あるいはどの程度同じものにするかということに絡んでおります。   従来は,確かに,○○委員がおっしゃったように,株主総会で主としていろいろなことを決めていく会社か,それとも取締役会に権限がゆだねられている会社か,つまり所有と経営が分離した会社かということがメルクマールだということでやってきたはずなのですが,どうも議論して詰めていきますと,本当に1種は株主総会主体で,2種は取締役会主体かといいますと,その点はそんなに違わなくなっているのですね。確かに1種は総会で決議しようと思えば何でもできるのですけれども,実際は余り起こらないだろうと。1種であるからこそ株主総会にかけなければいけない事項,つまり,2種なら取締役会でいけるけれども,1種だから株主総会にかけなければいけない事項というのはどれぐらいあるのかといいますと,実は,利益相反取引の承認と株式譲渡制限の場合の譲渡承認,これは1種だと総会にかけないといけないわけですね,原則は。およそ代表取締役等に範囲を限ってゆだねられるものがありますから,それを除きますと。どうもそれぐらいなんですよね。   ですから,むしろ現在の現状は,前から○○委員あるいは○○委員が言っておられるような,1種というのは,株主の権利の決め方,つまり株式の内容等を自由に決められて,かつ,業務執行機関の構成も,これも取締役会というのを置かなくていいわけですから,かなり自由に決められる会社。2種は,がちっと,株主の権利内容も属人的定めなんかできなくて,機関構成もがちっとしている会社というような,どうもそちらが議論の実態に近いような話になってきているのですね。そうした場合に,この監査役の問題というのもそこで出てくるわけでありまして,そういう機関構成ががちっとしている会社が2種なんだということになると,監査役はもう当然ではないかと,こういう議論に一方ではつながってくるわけです。ですから,ここは,1種と2種は非常に違うものとするのか,なるべく近づけていくのかという,大きく分けて二つの考え方があるのですが,正にそこがガツンとぶつかるところであるというふうに私は認識しているのですが。 ● ただ,さっき要綱試案の問い方についても若干言及したわけですけれども,あのときにも,基本的にそういう有限会社的な規律を選択できるようにするということが書かれていて,確かにそれ以外のものがおよそないということになっていたわけでは必ずしもないのかもしれませんが,少なくとも,そうではないものが何か非常にかっちりした,きっちりしたものになるというようなことを前提に必ずしも議論されていたわけではないように思いますし,今回,こういう形の機関設計が出てきたことは,そういう意味では意表をつかれたというふうに受けとめているのは,それは実態としてあるわけでございます。   だからどうこうということではなくて,もちろん,したがってここからきちんと議論ができればということなのですけれども,基本に立ち返ると,要するに取締役会を置くことに伴う効果をどこまで見るのかということのような気がしますので,その場合に,何か2種という箱があって,それはかっちりしたものでなければならないのだというところから出発すればあれなのですが,必ずしもそういう形で議論が進んできたわけではないように思いますし,たしか先回,これは監査役の権限に絡んでなのですけれども,業務監査を一律に付与するかどうかというところ,私ども,ここは立場が違うわけですけれども,たしかそのときの御議論でも,置くか置かないかを決められるのだから別に業務監査が付与されてもよろしいではないですかという御意見もかなりあったような感じがしましたので,そういうことからしますと,バランス感覚としても,何となく,譲渡制限の世界の中では置くか置かないかというところはそれなりに任せるということもあり得ないわけではないなという感じをお持ちの先生方もおられるような感じがしましたので,監査役の議論についてはですね,ですから,ちょっと1種・2種がかたいものだからというのではなくて,むしろ監査役の議論としてもそういう流れがあったというふうに私どもは考えているものですから,とりあえずその点あれだと思います。 ● 確かに要綱試案ではそういうことを,2種はがちっとした会社だなんて書いてなかったと思うのですけれども,どうも問題点を一つ一つ詰めていきますと,本当にそういうことになってきてしまっている感じが あるのですが。 ● 実は最後にお願いをしようと思っていたのですけれども,資本金の話とか,議論が最後収斂していくときに,一部一部の要素だけ議論してダメを詰めていかれますと,碁が弱いものですからあっという間に負けてしまうので,大きな地のところがちゃんと決まらないと,まず会社のイメージができない。例えば,今の1,000万円の株式会社の資本金の規制が100万円になりますというと,先ほど,私,開業率,廃業率の話をしましたが,じゃあやってみようかという人がたくさん出てくるだろうと。出てくるときに,例えば私が何かを開業するときに,親族で5人10人で金を集めてやろうという人もいれば,実質はこういうレベルで,大学の先生なんかがお初めになるときに,つき合いが多いものですから,おれも一口,おれも一口と,100万円の株式なのに100人というケースもないわけではない。したがって,最後は自分のところに我田引水かもしれませんが,1種・2種何を選ぶのかというのは,やはりそのときの事情なり,その方のパターンによって大分違う。それで,どれを選べるかというのはその人の自由にさせてあげたい。   余り言うと,○○委員から,株式の過半を握っているからやり放題できるというわけではないのであって,それは○○委員よく認識してくださいと。いや,私はそんな極悪人ではなくて,ちゃんとそれは分かっているのでございますよ。   ただ,要するに,一定の枠,最低限の規制以外はセルフガバーンでいいのではないかということを申し上げているのです。やり放題やりたいということを言っているのではなくて,一定の枠をはめるときに監査役の設置の義務づけの枠までは不要ではないでしょうかと。それは出資者の方たちが,例えば,一番最初に設立するときに,じゃあどれを選ぶかということは株主に対しても提示するわけです。そうすると,監査役もない会社になんかとても出せないよとおっしゃる方もいるかもしれないし,気にしないという方もいるかもしれない。そういうことで会社というのはつくられていくということを是非御理解いただきたい。 ● 資料のまとめ方について,こちらの方でやや思慮不足というところもあったかと思いますが,(3)につきましては,第1種株式会社は株式会社であっても監査役の設置が義務づけられないものとするという意味で,現行の株式会社法制に変更を加えるという限りにおいては恐らく御異論がないのだろうと思うのです。   問題は,2種の取扱いをどうするかということでございまして,2種の取扱いについて,監査役の設置の強制の有無ですとか,その場合の監査役の権限ですとか,それから--1種・2種の間の壁の高さですね--特別決議の要件の程度ですとか,あるいはその特別決議の要件を高くすべきであるという方向での議論の前提となる定款における別段の定めというものの要否ですとか,そういった論点がもろもろ関連いたしますので,あわせて1回--1回か2回か分かりませんけれども--まとめて別途御議論をいただきたいと思います。   第1種の株式会社において監査役の設置が要らないという限度では,ここで御了解をいただければと思いますが。 ● 今の,第1種株式会社については監査役を義務づけないという形で規制を緩和すると,この点については御異論ございませんか。--それでは,ここではそれだけは御了解いただいたと。一番難しい問題はなお今後に残されていると,こういうことでよろしいですか。   もうこれで予定より1時間以上遅れておりますけれども。 ● 監査役について,もう一つよろしいですか。   監査役設置会社についても,内部統制システムを構築する義務が取締役側にあるということを書き,あるいは開示を要請する規定を設けるという点について委員会等設置会社と同じようにするというのをこの際取り組んでみたらいかがかというふうに思います。この点についても,委員会等設置会社と監査役設置会社とで差を設ける大きな理由はないのではないか,むしろ判例などによりますと,監査役設置会社においてもコンプライアンス体制をきっちりせよということになっているわけですから,明示するのがいいのではないかというふうに思います。 ● 第1種・第2種についてもということですか。 ● いえ,これは大会社なり第3種なりということで考えております。済みません,最初に言っておくべきでした。 ● 従前,一回御議論いただいたと思うのですけれども,委員会等設置会社以外の会社における取締役会と監査役会の権限の分担という問題から,監査との関係で取締役会がそれを定めるということ自体に法律的に整理すべき問題があるかどうかということがたしか議論されたように記憶しておるところでございます。監査役会が定めるということであればさておき,それを取締役会が定めるということと監査役会との関係をどう整理するのかという点がなかなか難問だったのではないかと……。 ● 基本的に委員会等設置会社においても取締役が執行側ですね。それから,監査役会設置会社においても執行側といいますか代表取締役側ということになるわけですから,それを横から監査役がかかわるという制度設計をする意味においては,監査委員会であれ監査役会であれ,ほぼ同様に扱えるのではないでしょうか。コンプライアンス体制を作るのは監査役会側だということになると,これは大問題になりますが,そうではないと私も思います。そして,むしろ判例はつくれと言ってるんじゃないでしょうか。 ● その問題になってきますと,これは従来から○○委員等もいろいろ御意見がありまして,そこの委員会等設置会社とそれ以外の問題というのは今回は様子を見るということで来ているというふうに私は理解しているのですが。 ● 現実には非常に今大きな問題になってきている上に,グループでどのように監査をするのかという問題も実務上大きな問題になってきておりますね。そういうときに,委員会等設置会社にせよ監査役会設置会社にせよ,グループ監査体制をしくに当たってもその根拠となるようなよりどころがはっきりしていた方が,実務上のいろいろな工夫やら何やらを盛り込んでしっかりしたものをつくっていくのに役に立つのではないかというふうに思っております。 ● ちょっとここでは考えておりませんでしたので……。   今後それを取り上げる可能性はありますか。 ● いずれにしても,施行規則に何らかの規定を委ねるかどうかという話ですので,委員会等設置会社とは異なる監査役会設置会社について,取締役会と監査役会の権限分担--現在の権限分担--を前提に工夫ができるかどうかということについては,事務局内部で検討したいと思います。 ● それでは,これで機関のところは終わりですか。--使用人兼務取締役もありましたか。 ● 星印がないのですけれども,星印がついていないのはなぜかちょっと分からなくなったのですけれども,「取締役が使用人を兼務することはできないものとする」と,こういう規定が本当に要るのかということでございまして,取締役副社長経営改革本部長なんていうことにしたいわけがあるのですけれども,そういうのがなぜいけないのか。社長自身が経営改革本部長を兼ねる,なぜそれがいけないのかというのがよく分からないものですから。こういう規定が入ると,それ自身が違法だと,じゃあもう「執行役」というのを外して経営改革本部長にしよう,いや,「執行役」がついているからこそそういうトップにつけるのだと,こうなりますから,これは何のためにこういう規定を入れるのかよく分からないのですけれども。執行役を兼ねることができる,それで執行役が取締役副社長経営改革本部長兼CSR本部長と,そういう人事がなぜできないのかということなのですけれども。 ● できないわけじゃないでしょう。 ● いや,経営改革本部長というのは使用人だと我々は思っているものですから。 ● 思わなくていい。 ● だから,これはどういう意味か,「使用人」の定義をはっきりしないと,無用の混乱が実務に人事上生じるということです。 ● 理論上,アメリカでは日本で言うところの執行役も使用人なんですね。そういう意味で,日本の場合は特殊な,つまり,従来の業務担当取締役と使用人の間で,なぜ使用人兼務取締役が多くなったかというと,いろいろな理由がありますけれども,報酬のこととか何かで日本的慣行であったのでしょうが,ともかく,今おっしゃったようなものは,使用人が兼務しているにしても,取締役あるいは執行役としての職務と理解すればいいので,そこら辺は実務上御懸念になることはない。ここで言う「使用人」というのは,結局,取締役というのをある程度少なくして監督だけに専念させる,そして執行役に経営を行わせるとしているところが,もうそれこそ極端に言えば,40人ぐらいの取締役を委員会等設置会社で選んでおいて,そのうち30人が執行役で,そのうちの下15人は実質使用人じゃないかと,そういうことはやめましょうという趣旨のものだということだと思うのです。したがって,ある程度経営の中枢を担うようなある種の役割を従来使用人がなさっていたとしても,それは執行役としての職務だというふうに整理することは十分に可能だと思うのです。その意味で,現在の大会社をベースにした合理的実務がこの規定によっておかしくなることはなくて,むしろ変に30人,40人,取締役を選んで,そして実質上取締役でない者が委員会等設置会社で,つまり監督機能という観点から 不適切な者を取締役会から排除しようという趣旨だというふうに整理されたらよろしいのではないかと思うのです。ただ,運用上いろいろなことがあるかと思いますが。この提案の趣旨はそういうふうに理解しているのですが。 ● これは,委員会等設置会社のガバナンスの基本的やり方をどういうふうに考えるかということから来ているわけで,委員会等設置会社というのは,基本的には経営の業務執行と監督を分離して,取締役会は実際の業務執行を行う執行役を選任し,それを監督することが主たる役割だと。ただ,そのうちの一部の取締役について,アメリカのCEOのように,あるいはCFOのように,執行役を兼ねる人も一部出てきた方が両者の間の意思疎通を図るのに便利だから,それを妨げるものではないけれども,ただ,そういった委員会等設置会社の理念から言うと,基本的な経営の在り方を決めるCEOやCFOについては取締役と兼務することは差し支えないだろうけれども,そういう人たちから更に命令を受ける一番下の使用人のような人を取締役が兼務して執行役から命令を受けるというようなことが起きると,さっきの監督と業務執行の分離という理念に反するところが出てくるから,そういうのは避けてくださいということでありまして,さっきの本部長というのも,恐らく実際には全体の経営の業務執行の中心的な政策を決めるような職務であるとすれば,それはむしろ執行役の職務と考えられますから,それを兼務することは別に差し支えないということで,○○委員のおっしゃったような御説明でそれはいいのではないかなというふうに思います。 ● 御趣旨は分かるのですけれども,そうしたら,「使用人」という言葉の定義をはっきりしておかないと。   実際にやっていますと,使用人というのは,執行役の分掌以外に「○○長」とかいうのをつけるのが使用人だとしていまして,それは使用人ではないんだとおっしゃっていただいたら,それは結構なのですが,私どもでも,委員会等設置会社ではないけれども,「取締役代表執行役社長兼○○長」というようなのをいっぱいつくります。つまり,それが極めて大事であるということを言うためにやろうというので,それは使用人といわないのだと言えばそれで分かりますけれども,じゃあ,ここで言っている「使用人」はどこまでを言うのだということをはっきりさせていただかないと,混乱が起こる。何もわざわざこんなことを言う必要はないじゃないかということです。 ● 「長」とつけば使用人だというふうには商法は言ってないと思うのですけれども,それは日本の実務……。 ● これは実際のある委員会等設置会社の某有力電機会社でありますけれども,その方が,今度の商法改正でここは非常にこだわると。実際に執行役に「CSR本部長」をつけたいとか,「経営改革本部長」と,こうやっているのだけれども,そういう人事ができなくなると。できるというのであれば,使用人ではないんだという定義をはっきりしてくれという強い御希望がおありなものですから。そういうトップがそういうふうにおっしゃっているものですから。 ● しかし,そういうのはどう書けばいいんでしょうね。権限の面から言うのか,しかし,支配人は使用人だと言っておりますからね。難しいですよね。 ● どうしてこういう規定をわざわざ入れるのかと。おっしゃるように,何十人も取締役を置いて,その中に課長クラスも入っているというような,そういう例を頭に描かれたら,これは分かりますけれども,本当にそんなのがあるんですかと。   「使用人」の概念,頭に描いていることが違うと,両方の極端なことを頭に描いてこういうのを作ると,そうすると,今度また,「使用人」の定義はと,ほかで言う「使用人」とどう違うのだと,こうなってくるので,何もこんなことを決めなくてよいではないですかということを申し上げているのです。 ● しかし,今はこんな規定はないわけで,そこで先ほどの有名電機メーカーの問題が起こるというのは……。 ● これは,今回の商法改正でそういう提言がされて,それでそういう人事ができなくなると困ると。それがいいというのであれば,ここで言う「使用人」の定義を明確にしていただきたいと。 ● これも,要するに,ここにいる人の実質的な理解は違わない問題だと思いますので,技術的な問題ですので,そういう「使用人」の定義というのは書けるのかどうか,検討は事務局にしてもらいますけれども,本当にできるのかどうかはちょっと……。まあ,それも含めて,この(1)については本日は結論が出なかったということで,なお検討させていただきたいと思います。   ほかによろしいですか。 ● 執行役の報酬のところなのですけれども,これは,「使用人兼務執行役の使用人として受ける給与を勘案の上決定する」とか,そういう書き方にしていただけないかどうか。使用人分給与をすべて報酬委員会が決めると。そして,もう何回も言っていますけれども,使用人給与というのは従業員の報酬体系の中で決まっているものですから,そういう使用人の報酬体系を報酬委員会が決めるというような趣旨ではないでしょうから,特定の使用人兼務執行役の給与を決めるときには,執行役分の給与を決めて,使用人分は幾ら取ってもいいというのでは分からないだろうから,使用人分給与を勘案した上で使用人兼務執行役の給与を決めなさいというふうな 形にしていただいた方がよろしいのではないかと。誤解を招かないようにということですけれども。 ● 実質はおっしゃるとおりだと思うのです。ですから,これも技術的な話で。   ほかに,10についてはよろしいでしょうか。 ● 10の(1)なのですけれども,今の御議論を聞いていると,取締役が使用人を兼務することはできないというのは,正確には,取締役が執行役でない使用人を兼務することはできないと,こういう趣旨ですよね,ここで書かれているのは。ですから,むしろそういう趣旨として理解しても,その某電機会社の方は非常に困るということなんですかね。 ● 人事がこれでできなくなると。 ● 10に関しますと,恐らくこういう(1)のような規定というのは--確かに使用人概念が現在の我が国でいろいろあるのですね。つまり,業務担当取締役と使用人兼務取締役の区別なんていうのは非常に分かりにくいもので,かつては使用人分給与が払われる人と払われない人という形で形式的に給与で決めていたと思うのですが,今後はそういうことはいけないということで,なぜこんなことがあるかというと,議論を混乱させるかもわかりませんけれども,委員会等設置会社の取締役会の機能を考えれば,アメリカやイギリスのように少なくとも過半数は社外であった方がいいなとか,そういう議論があったのですが,現状ではそういうことを要求するのは時期尚早だろうと。そういうことを積極的に自治的にお考えの企業があればすばらしいけれども,それを強制することはできないので,しかしながら,先ほど言ったような運用で,社外取締役が圧倒的に少なく,いわゆる社内の取締役が圧倒的に多く,かつ,そういう上下関係が明確化し,少なくとも監督機能を発動するのに不適切な方が取締役会に相当入られると困るという趣旨もあってこういうのがあるという,この提案の理念的な趣旨はやはり御理解いただきたいなと思います。あとは,それをどう立法的に合理的な規定にするかは事務局のお知恵に全幅の信頼を置いておりますけれども,理念だけはお分かりいただきたいと思います。 ● (3)について質問なのですが,これは第1種の取締役を許諾機関にすれば,取締役が複数の場合にはその過半数,それとも全員がオーケーしないといけない,どちらなんでございますか。取締役というものを「機関」というふうに書くということ自体に何かちょっと国語的に違和感がないわけじゃないのですけれども。 ● 恐らく,重要なことですから,過半数だと思います。過半数と解釈していただいて……。 ● 一人一人訪ねていって,よろしいですか,オーケーというのをもらって,じゃあオーケーという ことになる。 ● 取締役会というものはありませんけれども,現在の有限会社法と同じで,過半数の取締役で決定していただくと,こういうことだと思います。 ● 意味は分かりました。 ● ほかにございませんか。この機関全体について,よろしいですか。   それでは,最初に戻りまして,株式のところ。よろしいですか,「第1 総論」から書かれておりまして,一応前回までで議論はあれしたと思われるところがありまして……。   それでは,説明を事務当局からお願いします。 ● お時間をとって恐縮でございます。   丸印につきましては,先ほどのような趣旨でございますので,今日は多分時間がないと思いますから,お気づきの点があれば,個別に事務局の方にお申し出いただければと思います。   資料の最初から,星印が付されている項目につきまして御説明いたします。   「第2 設立等関係」の6の(2)についてですが,募集設立における関係者の財産価格てん補責任について現行法を維持することとしつつ,発起設立については(2)の本文のような手当てをすることとした場合,会社成立後の新株発行の場合についてはどのような取扱いをすべきかということをお決めいただきたいと思います。それが第1点でございます。   続きまして,「第3 株式・持分関係」でございます。   「2 市場取引等以外の方法による自己株式等の買受手続」につきましては,基本的な制度設計の方向性は試案と特に異なるところはございません。   (前注2)につきまして,ここでの買受手続を,いわゆる買受けにとどまらず有償取得一般について適用する,そして無償取得については適用しないという方向での検討でよいかどうかを確認させていただきたいと思います。   (1)の①の(注)ですけれども,株主総会の授権決議によって取締役会にこの①の本文に掲げられているような授権をするということを前提とし,その際の総会の決議で一定の条件を付することができるものとするかどうかという論点を試案では掲げておりましたけれども,それについて,このように,授権決議による条件の設定を認めるという整理をさせていただくということでよろしいかどうかということでございます。   ③の(注3)についてですが,以上のような(1)の制度設計を前提にして,(注3)のように現行の制度を廃止するということとしてよろしいかどうか,--これは(2)でどれだけの特例の場合を認めるかということにもかかわりますけれども--これについての再確認をさせていただきます。   (2)の手続の特例--(1)の手続によらなくてもよいこととする場合--についてですけれども,まず,①の(注)の営業の一部譲受けの場合につきましては,結論としては,意見照会結果におきましても反対が多かったということもあり,また,理屈として説明が難しいということもありまして,分割,営業の全部譲受け,それから合併という場合に限ることとし,営業の一部譲受けについては特例を認めないこととさせていただきたいというのが,①の(注)の趣旨でございます。   ②の(注)についてですけれども,この②の場合における株主総会での決議においては,買取価格の上限を定めるべきこととするかどうかという点を試案では取り上げておりましたけれども,かなり意見照会結果が分かれたところでありまして,むしろ,上限を定めるべきこととするのではなく,開示と取締役の責任追及ということで手当てをすればよいのではないかという意見も有力であったということから,ここでは,そのどちらにすべきかということをお諮りしたいと思います。   ⑤の本文につきましては,①から④までの場合以外にも,株式消却とできるだけ平仄を合わせるという観点から,ここに掲げられているような場合については特例を認めてよいのではないかということを確認させていただきたいと思います。むしろ,これは6の(前注2)との関係で御議論いただければと思います。   ⑤の(注)についてですが,さらに特例を設けるべき場合があるのではないかとする具体的な意見がこの部会でも出され,意見照会の結果でも寄せられております。イ,ロ,ハと掲げてあるものがその具体的な場合として挙げられたものですけれども,いずれもなかなか理屈として難しいのではないかと思われまして,特例に加えるべき場合には当たらないのではないかというのが事務局なりの整理でございますけれども,更に御意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。   5につきましては,部会におきまして非常に御議論のあったところでありますし,いずれにせよ十分な御議論が更に必要だというふうに思われます。新株発行とは別に自己株式の処分についてのみ規制の見直しを行うということの当否,あるいは,具体的なニーズ等を踏まえつつ処分可能株式数等に何らかの限定を加えるというような形での制度設計をすることの当否や,また,実際に何らかの形で許容することとした場合に,どの程度のニーズがあり,どの程度の自己株式の処分がこれによって行われ得るか--この見通しも重要かと思いますけれども--そのあたりについての御意見,御議論をちょうだいしたいと思います。   「6 株式の消却」については,まず,(前注2)で,先ほど少し触れましたとおり,株式の消却と自己株式の取得について,基本的に同様の規律で整理をするという方針でよいのではないかと思っておりますが,それでよろしいかどうかということをまず御確認いただいた上で,6の(2)の②のロについて御議論いただきたいと思います。定款に基づかない株式の消却のうち,イの場合については全然問題ないのですけれども,ロの場合につきましては,従前,債務超過の場合には多数決による無償消却が現に行われている,あるいは認められるべきであるという御議論があったわけですけれども,なかなかこの債務超過という要件の設定が難しいのではないかと思われるところでございます。そのほかの,もう少し難の少ない要件を設定することとすべきかどうか,あるいは,そのような要件が設定されたとした場合に,その要件の該当性,更には無償で償却されることの当否につきまして,裁判所の許可というような制度を設けるべきかどうか,②のロについて突っ込んだ御議論をちょうだいしたいと思います。   8の(2)の(注3)でございますが,商法346条の規定による種類株主総会につきまして,前回までの御議論で,本文と(注2)のような形で整理をするということになったところでございますけれども,現行の商法346条の後半部分につきましては,特段の手当てを行わないということとさせていただいてよろしいかどうかということの確認をさせていただきたいと思います。   「9 端株・単元株」でございますが,(2)のような整理をするということで,(1)に書かせていただいておりますように,法律上は端株制度を廃止するという方向で整理をさせていただいてよいかどうかにつき御確認いただきたいと思います。内容的には試案におけるb案を採用するものでありまして,非常に大まかに言えば,実質については現行維持の内容なのですけれども,このような整理でよろしいかどうかということでございます。   それから,「11 基準日」の(2)の(注2)ですけれども,(1)の議決権に係る基準日についてはかなり柔軟な取扱いを認めるということにしているわけですけれども,配当等の基準日についてはそのような取扱いをさせないということでよろしいかどうかという点についてでございます。意見照会結果でも,(1)についてはこれに賛成する意見が多かったのですが,(2)の(注2)につきましては,この方向--すなわち配当等の基準日については(1)を適用しないという方向--での御意見が多かったところでございます。   14の星印は,今回は留保させていただくということでございます。   第4の「機関関係」の前までの星印が付された項目の説明は,以上でございます。 ● 一応ここで切りますけれども,まだ社債が残っておりますので,それを念頭に置いて御議論いただければと思います。   最初の星印は,第2の6の(2)の(注1)の現物出資に関する財産価格てん補責任に関し新株発行についてはどうするかという点で,この(注1)より前には星印はないのですが,その前の部分はよろしいでしょうか。何か特にございませんか。--よろしいですか。   それでは,6の(2)の(注1)でありますけれども,前回,募集設立については財産価格てん補責任を残さざるを得ないということになったわけですが,そうなると,新株発行のところの規定はどうするかという問題になってくるわけですが,これはいかがでしょうか。   設立のところは,募集設立と発起設立と一応類型が分かれているのですけれども,こっちの現物出資は,株式が非常に分散した会社についても確かに株主割当増資みたいなのがありますし,第三者割当増資もありますよね。他方,とても閉鎖的な会社で新株発行がある場合もあるということでありますが,どっちに割り切るかということですが,いかがでしょうか。 ● これも割り切りの問題ですけれども,設立段階はとりわけ資本充実についてきちっとしなければいけないということが強調されますが,会社成立後においてはそれと変えるのもそれなりの理由があるかなと思いますので,その二つを明確に区分できないのなら,責任はきちっと追及するけれども,発起設立的なものにするというのも一つの--多くはそういうことだろうと思いますので--それでもいいのかなという感じがするのですが。   ちょっと前回の議論が,私,休みましたので,不適切な発言かもわかりませんが,発言させていただきます。 ● いや,前回は,たしかこの点は割とすんなりとこう決まったと思うのですけれども。   いかがでしょうか。設立のときの財産充実と新株発行のときの資本充実は違うのではないかという御意見ですが,ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   特に御意見がなければ,そういうことでよろしいですか。   それでは,今,○○委員のおっしゃったような考え方で,ここは,新株発行については無過失の財産価格てん補責任はやめるということで処理させていただきます。   「第3 株式・持分関係」の2の(前注2)でありますけれども,「以下に掲げる事項は,自己株式の買受けのみならず,有償取得全般について適用し,無償取得には適用しない方向で整理する」と。この点はよろしいでしょうか。--よろしゅうございますか。 ● この「自己株式の買受けのみならず,有償取得全般」と,この相違はどこにあるのか,教えて下さい。 ● 買受けといえばもちろん金銭によるものですけれども,有償取得といえば交換も有償取得でございますし,その他……。 ● 買受けの対価の問題ですか。現金以外による対価によるものと。 ● そうです。対価が現金以外のものであれば普通は買受けとは整理できませんので。 ● 一応,買受けにだけ規定があって,ほかは解釈で今やっているところをきちんとするということです。 ● 分かりました。 ● そうしますと,次は2の(1)の①の(注)に星印がついておりますが,この点はいかがでしょうか。これは,市場取引,公開買付以外の方法による取得という新類型のあれについてのことですね。   特にこの点は御異論ありませんでしょうか。--よろしゅうございますか。   そうしますと,こういうことを前提に,次に(注3)ということでありますが,現在の制度は廃止すると,こういう前提で。 ● 今の点なのですけれども,(注3)の関連で,むしろ(注2)にあります点なのですけれども,やはり現行の制度を維持していただきたいということでございます。   特に実務の観点で,たしか9月ぐらいに若干議論したときにも,実務の観点でこれは問題ないかという御指摘があったように記憶しておりますけれども,やはり今提示されているこの仕組みではなかなか難しいと。特に,取締役会からいろいろ一株当たりの買受価格が提示されるとかいうような部分は,かなりこの制度の特に中小企業にとっての使いにくさという意味で問題があって,やはり現行の制度は選択肢として残していただきたいということがございます。   この点,会社がいろいろと恣意的な価格を設定するということが指摘されているわけですけれども,ただ,私どもがいろいろ聞いている感じで言いますと,今,やはり税制の運用の結果として,例えば売主がどういう属性を持っているかということによって,これは価格がおのずから変わってこざるを得ない。純資産価格方式が適用されるのかとか,類似業種比準方式が適用されるのかとか,あるいは配当還元なのかというようなことが,かなりまた,税制といったこの外の世界で決まってくる部分があると。その結果として,どなたから買うかによって,相対の場合,価格がいろいろ変わってくるということは,これは現にそういう要請からも起こらざるを得ないところもあるわけなので。そして,その場合,価格が外に見えるということについては,現実の中小企業の場合,そこは非常にセンシティブにならざるを得ない部分があるものですから,ここのところは是非現行の仕組みを残していただきたいということであります。 ● という御意見でありますが,ここのところは意見照会はどうだったですかね。 ● 意見照会のときには,正確には,(注3)の方で出しているのか,ちょっとはっきりしませんけれども,要するに現行制度を維持すべきということで,経済産業省あるいは日商等の中小企業団体からは意見が出ているということではございます。 ● 意見照会でも意見は分かれていたところのようですが。 ● 私も,現行制度を残しても価値はあるのではないかなというふうにも思いましたが,今の○○幹事の御意見との関係で二つばかり気になったのですけれども。   一つは,ぎりぎり詰めて考えますと,中小企業において特定の者だけから買いたいというときには,現実問題としては,(2)の②の方式を使うことができるのですよね。ほかの人に一遍売ろうと思ったけれども,買い手がなかったので会社に先買権を行使したという格好をとることぐらいは幾らでもできてしまうものですから,現実にはそれで済んでしまうのかなというのが第1点です。   もう1点は,今,税制との関係で価格がいろいろ変わってくるというふうにおっしゃいましたけれども,(1)の買受手続で行うということになりますと,どのような株主からであっても同一金額で買い受けるということにならないとおかしいわけですから,やはり商法の規定があって,それに基づいて株式の価値というものが出てきて,税制の方が基準等をお考えになる場合も,今後は商法にこういう制度があるということを念頭に置きながら,向こうの方をむしろ変えていただかなければならないような,そういう関係になるのではないかというふうに認識しているということを申し上げさせていただきます。   単に確認なのですが,(1)の買受手続の②の部分なのですけれども,こういうことを「株主に対して通知又は公告をする」という書き方がしてあるわけですが,この通知・公告の話は,今回の資料でいきますと第3の14のところにあります「株主に対する通知・公告」に該当するものになりますねということの確認が一つです。   もう一つは,今回,こういう(1)のような買受手続を会社法で規定するということになったときに,この手続自身,何か名前があった方が便利ではないかななんていう気もするのですが,仮にこれを「均等買付け」の制度というふうに考えたとしますね。それと証取法が定めている公開買付けの制度とは全く異質のものなのか,それとも,会社法が定める均等買付けの制度のうち証券取引法が適用されるものについては公開買付けの証取法の規制を守らなければいけないというのが上にかぶってくるという関係になるのか,どちらというふうに整理したらよろしいのでしょうかということをお伺いしたいと思います。 ● ちょっと後の方は難しいですね。にわかには答えられませんね。   最初の御質問は,これはそうですね。 ● そうですね。譲渡制限会社における株主に対する告知方法一般の問題でございます。 ● 先ほどの(注3)の関係なのですが,この点は前にも私の意見を言って議論したことがありますので,ちょっと確認の意味でお伺いするのですが,現行の210条2項で,定時総会,今度は臨時総会でもいいことになるのでしょうけれども,1号と2号で,2号に「特定ノ者ヨリ買受クルトキハ其ノ者」と,そういう特定の者から買い受けるという決議をする際には5項で特別決議が必要ということになっておりますが,これは今後も維持して,現行の制度を廃止すると(注3)に書いてあるのは,7項以下のtag along rightという売主追加請求ですね,これを削除するという意味と理解していいのでしょうか。 ● (注3)の趣旨は,会社が特定の者から買い受けるという現行の制度を維持するのではなく,(1)の買受手続,すなわち,先ほど○○委員がおっしゃられたように,均等に買い受けるという手続を原則とし,個別例外的に必要があるものについては,弊害が生じない限度で特例を認めていこうというものです。 ● では,210条2項の,特定の者から買い受けるのを特別決議だけでできると,それで売主追加請求は認めないと,そういう形にするわけじゃないのですね。①の授権決議が原則と,そういうことですか。 ● そうです。そのために,(2)の特例がこれだけで足りるかどうかという議論が出てくるわけでございます。 ● 先ほどの○○委員の御指摘の関係なのですけれども,基本的に現行制度を残すことについては余り問題がないということで,その点は御支持いただけたのだと思いますけれども,他方で,今言われた2点,特に税法とか商法のはざまというところについては,正にそういう現実がある中でそのはざまに立って苦しんでいるのが中小企業の状況なものですから,それが一つ,そういう実務の要請の背景にあるのだろうということと,それから,下に特例がいろいろ設けられている,そういうもので見れるものがあるのではないかと,そこはそのとおりだと思うのですが,ただ,株を買い受けなければならない場合というのはいろいろなパターンが現実に出てくるものですから,なかなかそれを限定的に列挙するということでもってカバーできるのかというあれがあるものですから,もし現行の制度がうまく回っているということであれば,その選択肢は残しながらということでもいいのではないかというのが,私の申し上げた趣旨でございます。 ● この点は,私は余り深刻な問題だと考えていなかったものですから,ちょっと準備不足なのですが,これは留保ということでいいですか。○○幹事御指摘の問題は,第二読会までによく研究しなければいけないと思います。   それでは,先に進ませていただきまして,(2)の①の(注)について,いかがでしょうか。一部譲受けの場合には,①の本文に書いてあるような扱いはしないということですが,この点はいかがでしょうか。特に御異論は……。 ● 異論はあるのですけれども,営業譲渡の対象部門が--営業の譲受けをするわけですから大体同じような事業をしている部門を譲り受けるのでしょうけれども,その部門が自分の会社の株を持っているというふうなときに,それだけは別の自分の会社に一たん残しておきなさいというふうなことで営業譲渡がうまくいくのか,買受手続を同時にとらなければならないというと非常に厄介だなという気もするものですから,営業の一部の譲受けで,自己株式がその営業の部門に属している場合というのを認めていただけると,営業譲渡手続は非常にやりやすくなると思うのですけれども。それで大きな弊害があるかどうかですけれども。 ● 確かに,政策投資でその営業に関係して持っているのだというのはあるのだろうと思いますけれども,しかし,果たしてそれがあるからこういうことを認めなければいけないのかというと,それも理論的説明がつくのかなという気もしますし,最低限やむを得ないものだけにするかどうかということですよね。   どうしても困りますか。 ● よく分からないところはあるのですけれども,かなり出てくるんじゃないかという気がしまして……。A食品会社が,B食品会社で今まで仲よくやっているようなところがあって,B食品会社がA食品会社の株を持っているときに,その同じ事業の譲渡を受けようとするときに,その株式を置いていくか,ないしは,持ちたいのであれば(1)の手続をやるわけですね。 ● 正にそういうケースだと思いますね,問題になるのは。 ● それを,またこの特例の例外にしなければならないのかということなのですけれども。 ● 平成13年6月の改正の際の規定の弾力的解釈としては,場合によっては今のような場合は許されるのではないかというようなことをある小論で書いたことがあるのですが,きちっと立法でやろうとなると,やはり要件を明確化しなければいけないので,営業の一部譲受けの場合に今おっしゃったことをどう書くのかというと,非常にあれなので,やはり,解釈・運用でやる場合と違って,こういうふうに書く場合には立法技術的に厳しいのかなということで,○○委員のおっしゃるべきようなことを申し上げて申し訳ないのですが,具体的に提案して,なるほどと思ったら反対される方はおられないと思うのですが,どう書くかということで非常に難しいので,原則はこうなるのでやむを得ないのかなと私個人は考えております。○○委員のおっしゃることは合理的だと思うのですが,立法技術的にどうするのかを現時点では具体的に提案する時期かなと思います。 ● まとめを言っていただきまして,どうもありがとうございました。   実質は○○委員のおっしゃることも確かに一理あると思いますので,うまく技術的に可能かどうかということを検討すると。   それでは,そういう技術的検討を直させていただくということで,前へ進ませていただきたいと思います。   次が,②についている(注)でありますが,次のページですね,先買権者指定の場合について,買取価格の上限等を定めることを義務づけることまではしないということでありますが。まあ,取締役の責任等で処理するということになりますが。 ● やはり,この手続の場合には,他の者が,そんな値段で会社に買ってもらえるんだったら自分もというように売主の方に加わっていくという,そういう権利がない分,少し慎重に考えなくてはならない部分があるわけですから,本来,買取価格の上限を株主総会で定める方が望ましいとは思うのですが,株主総会で承認を得た後に実際の価格交渉が始まるというのが法律的には一応スキームということになるでしょうから,条件を決めるといってもなかなか難しい等の御判断があるのであれば,せめて,その後の事後報告を株主への通知--これは譲渡制限会社ですから簡単に把握できると思いますので,個別に,幾らで買い取ったかということを事後的に通知するという制度を設ける。ただし,事前に上限まで,あるいは買取価格まで株主総会で決めていた場合には,後で何も通知する必要はないぐらいの制度で決定してみたらどうかなというようにも考えたりしますが。 ● つまり,この(注)の後段の方を支持といいますか,実質はそういう御意見だと思いますが。 ● ここもさっきと似ていると思うのですけれども,やはり価格的なものが外に出ることに対するセンシティビティーという面もあって,今の○○委員の御議論も,私も伺いながらよく分かるなと思いながら,できればそれは両方ともない形にしていただくのが,実務の観点では一つ重要なポイントかなというのがございます。ここのところは,さっきの問題に比べますと,実務への影響という点で,私どもも完全に深くあれしているわけではないのですけれども,価格が外に出ていくと,事後的なことも含めて,結局それがまた次の新たな要求につながっていくとか,現実の場面では,やはり,株を買い取ってもらう,買い取らないとかいう会社と株主の間のいろいろなやりとりというのは非常に微妙なものがあるものですから, その点,非常に気がかりという観点で,この(注)については,何の対応もとらないということでお願いできないかというふうには思っております。 ● そのセンシティビティーというのが私にはよく分からないのですけれども。そもそも,先ほど,この(注)みたいな考え方はとらないという前提は,取締役の責任でカバーしようというわけですね。価格が明らかにならなければ取締役の責任も追及しようがないわけでございまして,そうすると,やはりこれは,前段もだめ,後段もだめというのでは,実質的には何も担保されないというのに近いという状態になるのではないかなという気がしてならないのですけれども。   価格を明らかにすべきではないというその理由がちょっとよく分からなかったのですけれども,そのあたり,ちょっと教えていただけますか。 ● これもいろいろなケースがあって,それから,今,○○幹事が言われた理屈の部分も私自身よく分かった上であれしているものですから, あれなところなのですけれども,現実に株を会社に買い取ってもらいたい,あるいは買い取れないといったようなやりとりがいろいろある中で,部分的にであれ,やはりそういうものが--もちろん,最終的に株主総会にかけられたりして,実際上分かるという部分はあるわけですけれども--今現在明らかになっている以上に明らかにしたくないという心理的な部分があることはどうも事実なようでございまして,ただ,私も,今の御指摘なども踏まえて,どういう形のあれがあるのかというのはもう少し考えてはみたいと思うのですが,済みません,そこでいろいろな意見が,実態も含めて錯綜し,そういう非常に強い反応なども一部にあったりしたものですから,そういう観点で御意見を申し上げているということを御理解いただければというふうに思います。 ● まあ,会社が買わなくてもいいわけですからね。大株主が買えばいいわけですから,いろいろなことがあり得るので,やっぱり○○幹事が言われるようなのが正論のような気がいたしますけれどね。   いかがでしょうか。   一応,先ほどの○○委員のような後段の方の工夫をするというようなところで合意が得られればと思いますが,それでよろしいですか。 ● ちょっと留保だけさせていただければということでございます。そういう案があれになるということ自体は否定はいたしませんけれども。 ● 全く反対がないわけではないということですが,一応方向としてはそういう方向でいかせていただくということにここはさせていただきたいと思います。   次は⑤でありますけれども,自己株式の買受方法について異なる内容を定めた種類株式,「買受株式」などと呼ばれているものについて特例に加えてはどうかというのが本文で,そのほかにいろいろ意見照会等に出てきた案が(注)であると,こういうことなのですが,(注)の方はいろいろ御意見はあるのだけれども,どうも一つ一つなかなか難しいのではないかというのが事務局の考え方なのですが,いかがでしょうか。   まず,本文の方はよろしいですか。一応種類株式の一種として,定款でこういうふうに買うと定めているものをその方法で買うと,これについては特例として扱うと。これはよろしいですか。   (注)の方については,御意見はいかがでしょうか。 ● ロ,ハはやはり認めるのは難しいと思うのですけれども。 ● イについては,これは会社が質権者等になっている場合の話ですよね。だから,これは従来からあるような,脱法に使われないかという,そういうことに類することだと思いますが。 ● イとロがどうしてだめなのかがよく分からないのですけれども。 ● イも合理的なケースはあると思うのですけれども。それ以外に債務者から取るものがないというようなケースは,それは経済的には合理的な行為なのですが,ただ,およそこういうふうに書いてしまいますと,極端な場合,会社が金を貸して自己株式を買わせて,それを担保にとると。そして,担保権の実行だと称して自己株式を取得したら,本来の商法の手続によらず自己株式が取得できてしまうのではないかと。そういうあれで,やむを得ない場合とそういう脱法的な場合をどう区別するかという問題があるというのが,従来からのこれをめぐる議論だと思います。   ロはどういうことか,私もよく分からないのですけれども。自己株式を貸して,そして返還を受けると,これは現在何か制限の対象になっているのかどうか,私もちょっとよく分からないのですけれどね。   それから,ハに問題があるというのは,これは技術的な……。これもニーズがあることは分かるのですけれども,従業員持株等の場合に,当該従業員から会社が買ってやるという,さっきのような公開買付けの事務手続によらず買ってやるニーズがあることは確かなのですが,「従業員その他特定の者」というのは,これは持株会のようなものを考えているらしいのですが,そのあたりを技術的にうまく書けるかという……。このままでは,「その他特定の者」というのは何だか分からないわけですね。これは技術的な問題だと思います。 ● ということは,ハは,技術的にある程度特定したような書き方ができればということではあるのですね。 ● ニーズは私も理解しているのですけれども。   そういう意味では,イも技術的な話かもしれませんね。   ちょっとロは何のことだか,私,よく分からないのですけれども。どこかの団体等が問題提起をしておられるのでしょうけれども。   では,これは,何かいい知恵があれば御提案いただくということでよろしいでしょうか。ロも,何か理由があるならば,関係のところから出てくれば,もちろん検討するわけですが。 ● 別の問題でよろしいですか。   ④について,これもちょっとよく分からなくなってきたのですが,こういうことを決める場合に,期間の制限というのは必要ないのでしょうか。一たん株主総会の特別決議を得ましたら,その特定者から市場価格で買い受けるということが長期にわたって授権されていると。となると,株価の変動等を見ながら最も有利な時期を選んでというようなことになるのでしょうか。 ● 特にどの場合でしたっけ。 ● ④の場合。市場価格のある株式を市場価格で買い受けるということなのですが,特定の者から何株どの種類の株を市場価格で買い受けるということを,譲渡人を除いた株主によって特別決議が得られたということになったら,例えばあと10年間,そういう最も価格の有利なときをねらって買い受けることができるのだみたいなことにはならないでしょうから,となると,一体期間制限というものは考えなくてもいいのかということなのですが。 ● ちょっと問題点として検討させていただきますが,基本的にはよろしいわけですね。 ● 例えば,決議をしたその当日の終値でとかというのだったら全く問題ない--全くかどうか分かりませんが--考え方かとは思いますけれども,比較的問題は少ないのではないかというように思います。 ● これも重要な技術的問題点かと思いますので,これも事務局で検討していただきます。 ● 今の④なのですけれども,「市場価格で」というのは,「市場価格以下で」という意味ですよね。   それから,特別決議というのは,市場価格以下でなものですから,これは普通決議にしていただけないかという再交渉なのですけれども,御検討願えれば……。特別決議にするほどではないのではないかと思うのですけれども。 ● まあ,市場価格があるものですからね。 ● お願いいたします。 ● 分かりました。それも一つの技術的検討点として検討させていただきます。   では,次のページに移ってよろしいですか。5でありますが,これはかなり大きな問題かと思いますが,いかがでしょうか。 ● これは前にも申したところで,繰り返しになりますが,私はこれについてはよほど慎重に考えていただきたいと考えております。   その理由は,要綱試案の補足説明のところにも書いていただきましたけれども,市場取引による売却であるということで問題が少なくなる面,一つは,正に市場価格であることから,価格の不公正ということは余りないのではないか,もう一つは,市場取引である以上,いろいろな人が取引に参加する可能性があるので,不公正取引の面でも懸念が少ないんじゃないかというのも,恐らくこのような取扱いを認めてはという理由として提案されていると考えられるのですが,ただ,現実を考えてみますと,まず市場取引として,これはそういうのを市場取引と呼んでいいかどうか自身,実は解釈として問題があると思うのですけれども。例えばトストネット2取引のようなものが市場取引として現在扱われておりますので,あれは実際にはほとんどクロス取引と変わらなくて,取引に参加できるのは--事実上あらかじめ合意した当事者が買い取るということが行われているわけでありますから,そういった実務の現在の運用を前提にしますと,市場取引だからといって,実際には特定の者に対する売却が行われる可能性が非常に高い。それを考えますと,商法の新株発行に関する280条ノ10,不公正発行に対する差止めのようなことがやはり問題になり得る場合が起きてくるのではないかと。特定の者に対してだけそういうふうにして自己株式を売りつけると,それはやはり新株発行の不公正な発行方法と同じ問題が出てき得るわけですから,そういうことを考えると,新株発行に関するルールを市場取引については適用しないとまで言ってしまうことには,実際の実務の運用を考えても問題があり得るのではないかという感じがします。   値段的にも,さっきのトストネット2なんかですと取引の終値でやるということですから,それ自体,本当に完全な意味でみんなが参加して形成される市場価格と呼んでいいのかということにもちょっと引っかかりはあるのですけれども,それはおくにしても,少なくとも不公正取引の点においての問題があり得る。   もう一つは,仮にこれが認められることになりますと,これは単に売却の方だけでなくて,自己株式の取得--これも特に昨年の議員立法によって取得側の裁量性が更に高まったわけですけれども--それをあわせ考えますと,事実上発行会社がマーケットメークをすることが可能になってきます。いわば代表取締役限りの決定でほぼ毎日のように売り買いをするということが可能になってくるわけで,その結果,ある意味で言うと,正に株価操作というか,会社自身が相場を見ながら株式の価格を変動させるということが事実上可能になる。無論,それに対しては,証取法を改正して--例えば,上場等株券の発行者である会社が行う上場等株券の売買等に関する内閣府令等が定められて一定の手当てはされておりますけれども,果たしてそれだけで十分にそういった相場操縦的な行為を完全に抑え切れるかというところには正直申して不安が残るし,インサイダー取引の問題はやはり残るということを考えますと,まず,これを許すことから起こり得る問題は完全には疑念がぬぐえないということであります。   あと,やはり,これを認めることになると,正に普通の新株発行だって,市場で発行する場合には,同じように,もう現在の新株発行手続を経なくてよいのではないかと,これは当然に出てくるし,論理的に言うと両者を区別するのは分からなくなってくるように思いますので,その面もあわせて答えを出さないと,この決断はできないのではないかと。   やるのだったら,そこまで認めるかわりに,それに対する弊害が十分起きないような手当てをした上でやるしかないという気がしております。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 私どもは今の○○委員の御意見と全く違って,是非認めていただきたいということであって,○○委員の言われた,もしトストネット2なるものが公正なる市場価格を形成していないものだとすれば,そちらの方の改善を図るべきであるし,インサイダー等の問題,相場操縦等の問題は今の規制で十分なのではないか,もしそれが不足なのであれば,そちらの方で手当てをするべきであって,ここで言っているのは,正しい市場価格ということを前提として,それを市場取引でやるということなのだから,弊害というのはないのではないかということで,是非,機動的な売却を行うためにこれを実現していただきたいということであります。 ● これは多分意見が対立するだろうとは思っていたのですが。 ● 恐らく何を言うか分かっている者が時間が切迫したときにあえて言うこともないと思うのですが。   現在,211条3項が設立と新株発行に関連する幾つかの規定を準用しておりまして,その中で幾つか,別に簡易化することが考えられないわけではない規定がないわけではないと思うのですが,私も,○○委員のおっしゃいましたように,新株発行において最も重要な,資本充実の観点とともに,特に新旧株主の公正確保とか,そういう問題についての規定,具体的には280条ノ3から3ノ2,それから10と11ですか,そこら辺の規定をどうするかということと,公正取引ですね,相場操縦,内部者取引,この二つについて少しきちっと議論するとともに,とりわけそれ以外のことについては,新株発行手続が現状をベースにするときにこれでいいのかという新株発行規制の合理化も--例えば280条ノ3ノ2についてはいろいろと証券界の要望なり何なりがあって改善されてきているわけですから,そういうものとあわせて,新株発行と,これは落ちましたけれども自己株式の経済的価値をどうとらえるのか,これは,先ほどのよく分からないという消費貸借の目的,これは価値物として機能しているわけですね,そういう自己株式をも価値物としてやるのか,それとも実質消却したものと同じで,売却は新株発行と同じようにするのかという理念的な問題とあわせて,やはり新株発行規制を見直すということと連携しながらこれをしないと,何かちょっと新株発行規制が重いからこちらをやってくれると有り難いということでいろいろな弊害が起こると困りますので,やはりこれについては新株発行の合理化とあわせて慎重に検討する必要があるのではないか。   そして,これは異論があることは十分に承知していますが,売買をして損が生じた場合のその法的意義も少し整理する必要があるのかなという気がいたしますので,そこら辺もあわせて慎重に御検討いただきたいと思います。 ● もう○○委員,○○委員に何もつけ加えることのないような話なのですけれども,私も,もし何らかの要望があるとしたら,新株発行規制をどのように合理化するかという形で受けとめるとともに,本来的にはやはり金庫株という概念自身をなくして,会社が買い取ったら,そのまま自然にそれは消えてなくなるという制度にするのが本来の姿ではないかというふうに思っております。 ● 大体代表的な意見が一わたり出たと思いますが,今日これについて結論を出すのはやっぱり難しい問題ではないかと思っていますので,時間の問題もありますので,今日は大体代表的な意見を伺ったということで,なお検討するということにさせていただいてよろしいでしょうか。   それでは,次に「6 株式の消却」でありますけれども,これの(前注2)というのが星印なのですけれども,いかがでしょうか。   この(前注2)の中の「(1)に掲げる定款の定め」というのは,そのすぐ下の6の(1)のことですね。 ● そうです。 ● 御意見いかがでしょうか。   これは,先ほどの2の(1)というのについて必ずしも最終的な結論は出なかったということから,論理的にここも最終的な結論は出せないということですかね。その点はおくとして,同じにそろえるという点では議論できるのかもしれませんが,一応そろえるという考え方自体についてはよろしいでしょうか。--それでは,一応御了解いただいたものとさせていただきまして,先に進んでよろしいでしょうか。   そうしますと,6の(2)②でありますが,これが従来から議論のあるところなのですけれども,いかがでしょうか。債務超過であれば総株主の同意がなくても消却できるのではないかということで話は来ていたのですが,意見照会をしてみると,どうも必ずしもそれについて合意が得られたわけではないというので,今回は裁判所の許可というのが出てきているわけですが。 ● 今,もう実務は,○○委員の本に基づいてそういうことをどんどんやっておりますので,今更実務で合法とされていることについて裁判所の許可にかからしめるというのはいかがなものかと思うのでありますけれども。 ● 私は,債務超過の認定というものの難しさということを考えますと,前回の議論を踏まえて,今回,裁判所の許可ということを持ち出されたのは,それとしていいのではないかというように思っております。   ただ,○○委員がおっしゃるところにもう一つ申し上げて申し訳ないのですが,株主総会の特別決議あるいは種類株主総会の特別決議ということなのですけれども,一番心配されるのは,やはり特別な利害関係を持っている者が大半の株を持っている場合にどうなるのかということがあるわけですね。特別利害関係人の議決権排除の制度というものは,結局境界線も難しいしということでだんだんなしにしてきたわけですけれども,しかし,株主であり続ける者の株主権の行使について,特別利害関係人ということを考えながら議決権を行使するのに対して排除するということで難しいというのは分かるのですが,もう株主でなくなるということの決定の場合に,特別利害関係人の議決権の排除という制度をもう一回考えなくてもいいのかということを一つ思います。そこがもしクリアされるのであれば,もうこれでほとんど全く問題ないということで,私も全面的に賛成したいと思います。 ● 特別利害関係人というのは,具体的には。 ● 例えば,私的整理を行う中で,実は営業譲渡を受けようと思っている親会社。 ● しかし,いずれにせよ,これは裁判所の審査にはかかるんですよね。原案でも,事後的にですが,債務超過でなかったよという訴えは恐らくできるので,これは事前か事後かだけの違いなんですよね。いずれにせよ裁判所は難しい判断を迫られるわけで,その点は変わらないと思います。 ● 裁判所の許可を得た場合ですので,賛成です。 ● ほかの方々はいかがでしょうか。名指しはしませんけれども。 ● 私は,これでよろしいのではないかと思いますけれども。   確かに,債務超過といっても,実際には債務超過会社でもなお株価があるという現実を見ていますと,そういうような懸念が出てきて意見が出てくるのはしようがないかなと思います。   制度としてはこれでいいかなと思いますが,ただ,変なことを考えますと,有利な条件で消却するということに対する異論からすると,株主総会の特別決議ではなくて,むしろ当該種類株主以外の株主による特別決議が本当はあってもいいのかなという気はしますが,そこまでは申しません。 ● やはり,実質的な債務超過であることが明らかであるというふうなときに,事前に裁判所に行って--これはどの程度で許可が出るのか分かりませんけれども,これは事後審査にしても別に大きな弊害はないのではないかと思うのですけれどね。 ● 私もこれでよろしいかと思いますが,(注)の書きようで,つまり,債務超過の場合には結局無償だということで,無償でやることを合理化するという,それだけのこと,結論的にそうなるわけですね。そういうことは,やっぱりいろいろの問題が起こるときに裁判所の許可を得ておいた方が法的安定性に資するだろうと思うけれども,この裁判所の許可手続が長くかかると確かに大変なので,そこら辺のことをこの(注)のところの検討過程で実務的なことをお教えいただければ有り難いなと思うのですが。   基本的なラインはこれで結構なのですが,余りいろいろな要件をこの(注)のところで加味すると,慎重になって困るので,そこら辺のことを踏まえて,次回までにこの(注)を本文か何かに入れて,それほど実務的に支障のないような手続だというふうにすれば,○○委員も,賛成されないまでも,強くは反対されないのではないかと思うのですが。 ● これは,事務局は既に何らかの要件云々というのはあるのか,それとも皆さんの御意見をいただきたいというのか。 ● 価格の相当性の点については,事後か事前かはともかく,判断は必須だと思いますが,問題は,債務超過に代わるような,要するに,多数決で決め得るという場合の要件として,何らかの客観的要件を更に求めるかどうか,求めることとした場合にはその要件の該当性も判断すべきことになるのですけれども,その要件としてなかなか適切なものが考えつかなかったということもありまして,このような形になっている次第でございます。価格の相当性については,もちろん,株式の買取請求における価格の決定等と同じ程度の難しさはあるのではないかと思いますが。 ● それでは,先ほど○○委員からおまとめいただきましたように,(注)にかかっているということで,この点を--事務局は何か余りいい知恵はなさそうなので--皆さんの方でも是非お考えいただければと思います。   では,これはそういうことで,(注)をなお検討するということで,先に進ませていただきたいと思います。   次は,8の(2)の(注3)でありますけれども,現行法のとおりでよいかということでありますが,前回に比べますと(注2)が加わったわけですね。この点いかがでしょうか。 ● (注3)なのですが,これは合併等についても契約自由に委ねるという方向で検討できないかなというふうに思っております。   といいますのは,今の時点でありますと,合併等が起こった場合に,バリュエーションというのでしょうか,種類株式の価格をどういうふうに決めるかというと,要するに拒否権があるということで,そこからバーゲニングをしていくということになるかと思うのですが,その拒否権を持っているということで,必ずしも価格交渉が合理的な範囲でできるとは限らないと思うのです。要するに,種類株主の保護という点では,それで一応制度的には保証があるとしても,実際に合併が起こった後でそのような価格交渉が合理的にできるかどうかというのは,むしろ疑問が出てくるところだと思います。ですから,むしろ事前にその種類株式契約の中で,合併が起こった場合についてはどういう転換比率をもってするというような交渉ができた方がいいのではないか。少なくとも,それをしてはいけないということにしておくのは余り合理的ではないような気がいたしますので,定款に別段の定めなき限りということで,この合併等についても基本的には定款自治を認めていただく方向で御検討いただけないかと存じます。 ● これはそういう趣旨じゃないのですか。 ● 誤解があるとあれなので,申し上げておきますと,(2)の本文は正に,今,○○幹事がおっしゃられたようなものを導入しようと。すなわち,346条について,およそ種類株式--その当該種類株主と会社その他の者との関係では使わないという選択肢を認めた上で,そういう定めをしない者が事後的に利益を受けるような場合のありようとして,殊更現行法の文言をいじらないというのが(注3)です。 ● 株式買取請求で処理するということは定款で定められるわけです。それはもう前提です。 ● どうも失礼しました。 ● では,よろしゅうございますか,そういう理解だということであれば。   それでは,次,「9 端株・単元株」でありますが,現在,端株と単元株は行ったり来たりできることになっておりまして,事実上それを維持したまま,端株という制度だけをなくすというのがこの原案だと思いますが,いかがでしょうか。 ● 質問させてください。   この端株制度を廃止するということは,現在端株制度をとっている会社についてはどういうことになるのですか。 ● それは,(2)の(注2)で経過措置と書いてありますけれども……。 ● この(注2)は(1)にもかかっているということですか。 ● 適宜適切にと。 ● 全部急になくしてしまうというわけではありませんので。 ● そういう意見なのかと一瞬思って。端株の権利を全部奪おうという,そういう話かと……。 ● 実際上,このような定めをしたときの効果としては,現在,単元未満株については,議決権は否定されるけれども共益権は認められているわけですけれども,それが,現行法では一たん端株にしないとそういった権利を奪うことができないのを,普通の定款変更決議でそういった権利も否定することができるようになるというのが実際上の効果ということでしょうか,一番大きい問題は。 ● そういうことのようです。 ● 確かに形式的に言えば現状と変わらないと思うのですけれども,実際上の意味はかなりあるかなという気はします。 ● いかがでしょうか。   どうも端株というあれがあると条文は非常に複雑になるようでありまして,その点からはこういうことにしたいということなのですが,よろしゅうございますか。--それでは,この点は御了解いただいたものとして前へ進ませていただきます。   あと御審議いただきたいのは,事務当局の方で是非と思っているのは,11の(2)の(注2)のところですが,要するに,議決権の処理につきましてはもう会社の判断で非常に自由にするということなのですが,まさか配当基準日までそういうわけにはいかないだろうというのが原案であります。現在,配当基準日は定款で定めているわけですね。それを維持するということですね。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。 ● この問題は,この前ちょっと書面で出させていただいて,もう星印もついておりませんので繰り返し御説明することは差し控えたいと思いますけれども,基準日そのものの考え方について私が考えていたのは,基準日後の株主の議決権の存否という問題と,議決権がある株主の基準日を定めるという問題とはちょっと問題が違うのではないかという考え方を前提にこの間の書面を書きまして,議決権基準日以後に発生した新株についてはどういう--例えば自己株式の処分の場合,あるいは組織再編における自己株式の代用株式としようと,それから強制転換株式が転換されたといういろいろなケースに応じて法定して,それで議決権というものを客観的に定めて,その基準日後であっても議決権がある新株式を前提として会社の事務処理の便宜のために基準日制度を設けるというのが今までの考え方だったという理解のもとに書面を書いたのですけれども。まあ,これはこれで,もう星印がついていないですから余り異論を述べるということはいたしませんけれども,ただ,この「会社の判断により議決権を行使することができる株主を定める」,これは基準日というよりもそれ以前の,議決権のある 新株式がどれかということを会社自身の判断により決めるという前提でできておりますので,この「会社の判断」という場合の「会社」の意味は,取締役会あるいは執行役という業務執行機関なのか,あるいは定款で定めるという意味で理解すべきなのか,その点についてこの間の書面で書いたのですが,もし,取締役会とか執行役という業務執行機関が,基準日後に1回,2回と増資したときに,1回目は議決権を認めるけれども2回目の新株式については議決権を認めないという判断をする,あるいは,第三者割当てと株主割当てを同時に行った場合に,第三者割当ての第三者については議決権を認めるけれども株主割当ての分については議決権を認めないという判断をすることを認める,そこまでの判断の余地を与えられると,株主平等原則との関係で判断が非常にリスキーな部分も出てくるということで,実務界からはかえって,どういった新株式が議決権を有するかということを法律で決めていただいた方がいいという意見もありますので,その点,ちょっとお伝えだけさせていただきたいと思います。 ● これは正にそういう議論だったんですよね,意見照会前から。これはもちろん株主平等原則とかが全然働かないと言っているわけではないので,それはかぶるのですね,この案というのは。けれども,それは前提とした上でこういうのがいいというのがたしかここの多数意見で,法律でがちっと書けというのは少数意見だったということからこうなっているのではないかというふうに私は理解していますが。 ● その点は十分認識した上で,実務界からは判断にリスクが生じるという意見も出ているということだけお伝えさせていただきます。 ● 当然,そういう御意見もあると思います。なおそれを踏まえてここでどう考えるかということなのですけれども,一応,従来からの多数意見はこうだったと思いますので,特に御意見を変えられる方がいなければ,こういうことになるかなということなのですが。--よろしゅうございますか,こういうことで。 ● 少数意見のものが少数意見のまま出るということでございますので,黙っております。 ● それでは,一応こういうことで進めさせていただきたいと思います。   この(注2)の点はよろしいですね。   それでは,大分急ぎましたので,株式全体につきましてそのほかの点で御意見があるかと思いますけれども,いかがでしょうか。   事務局の方で特に何か意見を聞いておきたいという積極的なあれはあるのですか,項目は。その点はよろしいですか。   それでは,あと社債の問題が残っておりまして--事務当局としては社債は次回に回さざるを得ないかというふうに考えているようなのですが,いかがですか。   それでは,社債は次回ということにさせていただきたいと思います。   ちょっと私の不手際もありましたけれども,何といっても機関のところでこれほど時間をとるとは正直言って思っておりませんでした。   それでは,本日の審議はこれで終了させていただきたいと思いますが,連絡事項を事務局の方から。 ● こちら側の不手際もありまして,誠に申し訳ございません。   次回は,本日積み残しの社債以降の部分と,計算,組織再編,合名会社・合資会社,新しい会社類型,このあたりについて一通り御議論いただきたいと思っております。   なお,前回,今回と議論が先鋭に対立している部分につきましては,6月に何回か日程を用意しておりますので,そちらに回させていただきたいと思います。   次回の日程ですけれども,5月19日,午後1時から,場所は法務省20階の第1会議室でございます。次回も本日程度の審議時間を要すると思いますので,よろしくお願いいたします。 ● ここにお集まりの方は皆さんそうだと思うのですけれども,当然半年先ぐらいまでいろいろなスケジュールがあるわけでありまして,6月は何回とかと言わないで,大体こことここで,予備はこうなっていて,何時ぐらいまでと。それで,大体の今の予定で結構ですから,項目はここはこうやって,ここでこうおさまる見通しだとか,それぐらいいただきませんと,まず準備ができない。準備ができないということは,議論に十分に貢献できないということになりますので。   それから,資料も,今回はまあまあかもしれませんけれども,もうちょっと丁寧な……,(略)等で(1)を見ろと書かれると,プロの方はあれですが,アマチュアも参加しているゲームなものですから,アマチュアにもある程度分かるように努力はしておるのでございますけれども,もう少し丁寧に書き加えていただけないかと。   それから,全体のおさまり,いつごろをゴールラインとして見てやっていて,何回ぐらいやってどうという,そこら辺のグランドデザインを示していただかないと,もう不安で不安でたまらないものですから,よろしくお願いします。 ● 何日に何をやるというところまではちょっと見通しはついていないのだと思いますが,日程はもう決まっていませんでしたかね。 ● いや,○○委員,例えば最低資本金の話とか,大きな項目は大体このあたりでやるんですと,それでそういうものについて議論する。私ども非常にショックだったのは,1種・2種・3種とかというのが事務局からぽーんと出てきて,さあ議論しろと言われて,これはちょっと……。あしたのゲームが相撲なのかサッカーなのかも分からないで,土俵の大きさもピッチの大きさもわからないでゲームをしろと言われるのは困ると。したがって,1種・2種・3種というようなものを出すのであれば,最低でも数週間前にお示しをいただかないと,それに対応のしようがないですわね。これはちょっと是非ともお願いしないと。例えば,事務局案として最低資本についてどういう議論が粗筋として出てくるのか,ある程度前にお示ししていただかないと,議論はできない。   これは当然のお願いだと思いますね。我々個人の議論もありますけれども,組織でどうするかということをやはり聞かなければいけないわけですから。それで,中小企業団体は私の組織だけではなくてほかにもありますので,その方たちとの関係もありますので。これはもう切なるお願いなので,少しお考えをいただかないといかんと思います。 ● 日程はお知らせしていなかったですかね。 ● 日程は,前回口頭で御説明いたしましたとおり,5月19日以降は,6月2日,9日,16日と3回とっております。これは,今御指摘のような問題も含めて,政治的に,あるいは法律的にも難しい問題が関連して多々ありますので,この3回を使って,それらについて一括して御審議をいただきたいという趣旨でございます。 ● それで十分ですか。例えば予備日もちゃんと設けておかれた方が……。普通こういうことをやるときには,予備日を設けたり,もう少し工夫を……。もちろん,そこでやめるのが目標なのですけれども,生煮えの議論のまま,もう時間もあれだから,反対意見もあるけど大体このラインでと言われては,やっぱり十分に発言もできないし,意を尽くせないし。そこら辺の御配慮もしていただいた方がよろしいのではないかと思うのです。   先生方も同じだと思いますよ。「繰り返すかもしれないけれど」と,やっぱり言いたいことはあるわけですから。分かっているかもしれないけれども言いたいという……。 ● 6月は3回というのは,これは異例で,予備日が入って3回ぐらいということだと思います。 ● その全貌が,私どもが先行きに不安を持たないような形で十分な時間的余裕をもってお示しをいただいて,大体この日にはこれをやるよ,こんな感じだよと。変わってもいいんですよ。今のもくろみとしてはこんな感じだと。もう大体詰まってきていて,あと5月に1回やって,6月に3回やってと。 ● ただ,5月にもう一回とにかく,今回よりも次回の方が大変だと私は思っておりまして,つまり,今までの第一読会といいますか一回りが次回で終わるわけですけれども,それが終わりませんと,この日にこれをやるというのは恐らく立たないんじゃないかと。 ● でも,それは次回で終わるわけでございましょう。 ● 次回が終わればある程度の見通しは立つと私も思っておりますが,今日の段階で言えと言われてはちょっと困ると私は思います。 ● 終わらないのだったら,終わらないケースだったらこうだろうという案をお出しいただいても結構ですよ。 ● ちょっと今日の段階では……。私は,次回が終わらないと今後の6月の3回の日程は立たないと思います。その点は御理解いただきたいと思います。 ● 7月21日というのも何か日程が……,これはまた予備日みたいな話なのでございますか。ここはどういう関係になるのでしょうか。 ● この日はもう決定の日だと。 ● という前提だということですね。いや,そういうふうに言っていただくと分かりますので。 ● おしりは決まっていて,次回が終わらないと分からないと言われても,それは困りますよ。情報をみんなが共有して,じゃあそれに対してどう準備していくかというぐらいの心の準備ができるようなある程度の情報をいただいて……,それは変わっても結構なんですよ。 ● ですから,次回に非常に重要な問題が集中しておりますので。次回が終わりますと,御懸念のような,何が論点なのか,最低資本金はどんなのが出てくるのかとか,そういうのも一応の見通しはつくようになってくると思いますので。 ● 結構でございますが,論点はおおむねもう明確になってきているのではないかと思います。 ● 6月23日と30日はやらないことが確定しているという意味ではないのですね。6月の残りの2回の水曜日という意味ですけれども。 ● 6月30日はこちら側の都合で難しいですね。6月23日は多分経済界の御都合で非常に難しいのではないかと思っておったのですけれども。 ● ああ,それはそうですね。 ● 経済界といっても,よく経済界とおっしゃる方はお二人だけで,ほかは総会が当たるわけでもありませんから,前後に動かすこともできるし,フレキシブルにお考えになってよろしいと思うんですよね。 ● こちら側の不手際で誠に申し訳ありませんけれども,会日がもし不足するというような事態に至るとすれば,またそこは御相談させていただきたいと思いますし,現在残されている問題というのは相互に密接に関連しているところもありますので,なかなか早い段階で全体像をお示しできないところがあることは御了解いただきたいと思います。 ● それについてもう一つ言わせていただければ,こうやっていろいろなところを,これはこれでいいかと周りを詰めていかれると,さっきも言いましたけれども,ダメを詰められるともう進退極まるという感じもあるものですから,それもちょっと,私どもにとっては,ウーンというところもあるんですよ。ここら辺で1種・2種という話を,もうどんどんそういう言葉で議論を進めていくと,しみついてしまいますから。すり込みが起こった後で,1種と2種は実はこんなもの段差をつける必要がないと,例えば先ほど○○委員がおっしゃったような議論が出てくると非常に心強いわけでありまして,にもかかわらず,ずっと1種・2種と書かれている時間が長いのは嫌だとか,いろいろあるわけです。そういう気持ちも酌んでいただいて,私ども,最終的にはバランスで決めようと思っていますので,そういうことを考える時間もいただけないかと。ですから,重要ポイントからある程度議論するという手法もあってもいいのではないかとも思います。 ● 従来からある程度は重要問題をまずあれして,それから細かい点を詰めて,しかし詰め切れない問題があるから,そういう非常に意見が先鋭に対立しているものが最後に残ってしまうと,そういうことなんですね,実際は。   もちろん,予定をお示しできる限りは早くお示しできるにこしたことはないわけでありまして,ただ,何が重要だと思っているかは各人違いますので,○○委員がこの点は非常に重要だと思っておられるものがもしあれば,スケジュールも事務当局にその都度御確認いただくとか--すべての問題についてこれは何日にやりますということを示すのは恐らく非常に困難だと思いますので--特に重要だと○○委員がお考えのところは,個別に問い合わせをするなり何なり,そういう方法で解決していただければということをお願いするしかありません。   それでは,本日の部会を閉会させていただきますが,殊に本日は長時間にわたり熱心な御審議をいただきまして,ありがとうございました。