法制審議会会社法(現代化関係)部会 第22回会議 議事録 第1 日 時  平成16年5月19日(水)  自 午後1時02分                        至 午後5時54分 第2 場 所 法務省第1会議室 第3 議 題 会社法制の現代化に関する要綱案(案)たたき台(3)について 第4 議 事 (次のとおり) 議    事 ● 予定した時刻が参りましたので,第22回会社法(現代化関係)部会を開会することにいたします。   本日は御多忙中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,まず配布資料につきまして事務局から説明をお願いします。 ● 事前に配布させていただきました資料は,資料番号20「会社法制の現代化に関する要綱案(案)たたき台(3)」でございます。本日はこれについて御審議をちょうだいしたいと思います。   それから,全国銀行協会から意見書が提出されておりますので,配布させていただいております。また,○○委員から意見書が提出されておりますので,同様に配布させていただいております。全国銀行協会からの意見書につきましては,社債管理会社の部分の議論の際にお目通しをいただきたいと思います。○○委員からの意見書につきましては,冒頭で簡単に御説明をいただければと思います。   それから,たたき台(3)の社債に関連する部分の参考資料として,破産法案の抜粋をお配りしております。審議の際に参照していただければと思います。   資料の紹介は以上でございます。 ● 配布資料につきまして何か御質問ございますでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,本日の審議に入ります前に,今紹介がありました○○委員からの意見書につきまして,○○委員から御説明をお願いいたします。 ● 若干お時間をいただきまして恐縮ですけれども,御説明をさせていただきたいと思います。   会社法制の現代化の要綱案のたたき台について,まず,「1 新たな会社類型について」を申し上げたいと思います。   我が国においては有限責任の人的会社制度は存在せず,その早期創設が望まれるところでありまして,特に,私ども監査法人,税理士法人等の職業専門家の法人組織は合名会社の法理が準用され,法人自体の責任にあわせて社員に無限連帯責任を負わせることとなっております。その一方,職業専門家の社会における活躍の場が拡大するにつれて訴訟リスクが大変高くなることが予想されまして,法人そのものの存在さえ脅かされるような事態の発生も予想できないことではありません。特に,国際化していく現在においてはそのことが予想されると思います。このような事態の発生を避け,その存在意義を発揮させるためにも,職業専門家やベンチャー企業その他が利用できる有限責任の人的会社制度の早期創設が望まれるところでありまして,是非ともこれを積極的に推進していただきたいと思う次第です。   なお,今回の要綱案(案)たたき台の第6部の「第1 新たな会社類型」の中におきまして,社員の第三者に対する責任について,「業務執行者以外の社員の対第三者責任については,特別の規定を設けないものとする」としていただきまして,これは有限責任の人的会社制度に大変ふさわしい規定だというふうに思っておりまして,賛成を示す次第です。   二つ目は,いつ出てくるのかなと思ったら,とうとうどこにも出てきそうもないということで,あえて申し上げるわけですけれども,「監査役設置会社における内部統制等の構築義務」についてであります。   委員会等設置会社については,商法特例法第21条の7第1項第2号等の定めにより,取締役会がリスクマネジメント・内部統制等を構築しなければならないことが明確になっております。監査役設置会社についても同様の制度を是非構築していただきたい。そして,委員会等設置会社以外の監査役設置会社においてもこれらの事項を義務づけることを明確にしていただきたい。 これは前にも申し上げましたが,とうとう出てきそうもないので,改めて申し上げておきたいと思います。   3の「剰余金の分配について」は,統一的に財源規制をかけることや,利益準備金と資本準備金の科目の区別を廃止することについては特に反対するものではありませんけれども,企業会計の基準では資本剰余金と利益剰余金の混同が禁止されており,商法上,剰余金が一本化されますと,分配の受け手側において,分配財源となった剰余金の発生要因の識別が不可能となり,その結果として,受け手側が剰余金の分配をすべて受取配当金として利益計上を行うことにもなりかねません。このような事態を避けるため,分配側や受取側がこれらに関して会計基準を適用して会計処理を行うに当たって支障のないよう,施行規則で是非明確にしていただきたいというふうに思います。   4番目は,「計算書類に関する会計監査人の関与期間について」でありますけれども,今日御議論いただく中に入っておりますけれども,現在の規定では,取締役会は総会の8週間前までに監査役及び会計監査人に計算書類を提出しなければならず,会計監査人はそれを受領した日から4週間以内に監査報告書を監査役会及び取締役に提出しなければならないとされております。   今回の提案によりますと,期限前に監査報告書を作成した場合にあっては,その限りでスケジュールを短縮できるとしておりますけれども,逆にそれを利用して早期の作成を強いられるおそれもあり,正確かつ厳密な監査の観点からは問題をはらんでいるというふうに思います。また,関係機関の同意を条件に,あらかじめその期間を短縮できるとしておりますが,現状での会計監査人の関与期間は合理的であり,これを短縮すると,正確かつ厳密な監査に支障が生じるおそれがないとは言えません。今回の提案は,正確性かつ厳密性を基礎とする監査等の期間を短縮して,できるだけアップデートな情報のもとに剰余金の分配をしようとするものと解されますけれども,慎重に検討すべきと考えます。もとより会計監査人の関与期間を伸長することを可能にすることには賛成であります。若干申し添えさせていただきました。 ● 1から4までありますが,2を除きましては今日出てくる項目でありますし,2につきましてもまた今後も議論する機会があるかと思いますので,議論の中で各項目を取り上げるということでよろしいですね。   それでは,そのような扱いにさせていただきまして,本日の審議に入りたいと思いますが,前回からの積み残しがありまして,「第6 社債・新株予約権関係」でありますが,本日はまずそこから御審議をいただきたいと思います。その後で,「第5 計算関係」,「第7 組織再編関係」を御審議いただきまして,その後で,「第3部 合名会社・合資会社関係」,第6部「第1 新たな会社類型」と,そのような順序で進めさせていただきたいと思います。   それでは,まず,たたき台(3)の「第6 社債・新株予約権関係」でありますが,事務局から説明をお願いいたします。 ● 「第6 社債・新株予約権関係」につきましては,前回の部会資料の中にも掲げておりましたので,まず最初に御審議いただければと思います。   なお,若干前回の資料と内容を変更させていただいている部分もありますので,その点も含めて御説明を申し上げます。   まず,前回までと同様,星印がついている項目について御説明申し上げます。   3の(前注)の社債管理会社の資格範囲の見直しについてですが,見直しを行うかどうかということについて,試案には掲げておりましたけれども,信託業法の見直しによって実質的にこの担い手の範囲の拡大が期待できるということと,意見照会の結果におきましても,ある種の業態について資格を付与したい,あるいは資格を得たいというような積極的な御指摘もなかったということもありまして,今回はこの見直しを行わないこととしてはどうかということをお諮りしたいと思います。   (3)の①の(注)の商法311条ノ2第2項の「三月」という期間の延長の当否についてでございます。この3か月という現行の期間自体,すこぶる合理的な--要するにほかの期間であってはならないというような合理的な--理由があるわけでもないのですけれども,他方において,これをどれだけ伸長するかという議論にも決め手がないというところもあり,強い反対意見もあり,現時点で,この期間を例えば何か月まで延長すべきであるということを実質的に根拠づける積極的な理由もなかなか見出し難いということもありまして,今回はこの延長を行わないものとすることでどうかということでございます。   それから,311条ノ2第2項の関係では,(3)の②の点でございます。   全銀協からの意見書には,②の(注)の二つの点について強い反対意見が示されておりますけれども,まず1点目につきましては,社債管理会社と特別の関係を有する者の一定の行為についても商法311ノ2第2項の対象とすることとし,その一定の行為というものを②の本文に掲げるような内容のものとすることとさせていただいてはどうかということを改めてお諮りしたいと思います。その特別の関係というものについては,②の(注)のところに掲げられているように,実質支配力を基準として規律するという趣旨でございます。   相殺の取扱いについてですけれども,従来,この点をどうするかということについては,具体的な提案を示さずに,なお検討するという形で問題点の指摘だけさせていただいておりましたが,破産法案の71条・72条によりまして破産手続における相殺の取扱いの規律が変わる予定でございますので,破産における相殺の取扱いと,相殺をこの商法311条ノ2第2項の対象とするかどうかということとは必ずしも問題状況が完全に一致するわけではありませんけれども,発行会社の方が危機に瀕しているという状態で,どこまで相殺というものの担保的機能を重視してそれを保護すべきか,あるいは社債権者の保護を図るべくそれを制限すべきかという点では,検討の方向性としては似たような方向性がとれるのではないかと思われるところでございます。   破産法案の71条・72条はかなり複雑な条文でありますが,これを前提にして,なおかつ商法311条ノ2第2項の規定の趣旨に照らして,その規定に当てはめられるような形で議論を整理しようとすると,(3)の(注)の米印のところにあるような取扱いをする--一定の相殺を,禁止というわけではないのですが,311条ノ2第2項の対象とする--こととなるのではないかと思われるところでございます。要は,イのAは,弁済に代わる代物弁済的な行為も弁済と同じように扱おうということでございますし,また,イのBとロは,相殺のうち,発行会社と社債管理会社との間で発生した債権債務そのものに直接関わるものではなく,第三者から債権ないし債務を譲り受け,引き受けてきたという場合におけるものを,弁済と同じような形で制限する--311条ノ2第2項の対象とする--というような整理をするということでございまして,これらにとどめ,一般的に相殺に大きな制約をかけることとはしないというような形での整理をしたらどうかというものでございます。   これについても,過不足等につき御指摘があろうかと思いますけれども,破産法案の71条・72条の趣旨を311条ノ2第2項の規定の趣旨に即して翻訳すると,大体このような整理をするのが適当ではないかと思われまして,それについての御意見をちょうだいしたいということでございます。   (4),(5)についてですが,特に(5)については従前から反対意見も強いところでありますけれども,部会におきましてはさほど御議論がないところでございます。反対意見の趣旨は,全銀協からの意見書に取りまとめられているとおりでございますので,それを御覧いただいた上で,格別コメントがあればお出しいただきたいと思います。   4の(2)についてですが,社債権者集会の特別決議の成立要件について,社債発行会社が法的な,あるいは任意の倒産状態に至ったときの社債権者集会の決議の成立をしやすくするという観点から,かねてより,その緩和という方向での検討を進めてきたわけでございますが,他方において,その緩和をし過ぎるということが社債権者全体の利益には必ずしも合致しないのではないかという懸念も強く示されているところでございます。   ここでは,試案が掲げていた三つの案のうちのa案を採用するということの当否について御議論いただきたいと思います。a案を支持する意見が多数でありましたし,また,特にb案については,余りに緩和し過ぎるとして不当な事態の発生を懸念する声もかなり強かったということでございます。   (注)は,成立要件の緩和をこのa案の程度にとどめるということにした場合には,必ずしも一般的に社債権者集会の特別決議の成立要件を緩和する必要はなく,会社更生手続の場面においてのみその緩和を認めれば足りるという選択肢もあり得るのではないかということでございまして,これについても御意見をちょうだいしたいと思います。   6の強制転換条項付新株予約権付社債につきましては,多少の懸念はありつつも,その導入について格別大きな反対はなかったところですが,(注)につきまして,所在不明株主に係る株式と実質的に同様の取扱いをするということについて確認をさせていただきたいと思います。無記名式のこの種の社債が強制転換された場合に,会社側において株主を把握することができないという事態の処理として,所在不明株主に係る場合と同じような処理をするということでよいのではないかという趣旨でございます。   7の(1)の(注)についてですが,合併や会社分割の場合を含めた組織再編行為の際の新株予約権の承継問題の一環として,新株予約権付社債の取扱いについて,新株予約権付社債の買取請求等,(注)に掲げてあるような整理をさせていただくということでよろしいかどうか,御確認いただきたいと思います。原則として,分離することなく--新株予約権付社債の社債部分と新株予約権部分とを分離することなく--一体としてその買取りを請求するということを原則とし,発行条項において格別の定めがある場合には,それに従った買取りの請求を許容するという趣旨でございます。   7の(2)の(注)についてですが,株式交換・株式移転の際に新株予約権付社債の承継を認めることとした場合,当該完全親会社となる会社において,社債を承継するという意味合いから債権者保護手続を要するものとするかどうかという論点でございます。一般の債務引受けについては,債権者保護手続が特に必要とはされていないことなどからすると,必ずしもこの場面で債権者保護手続を要するという整理を当然にしなければならないというものでもないのではないかという趣旨でございます。   なお,仮に債権者保護手続を要しないものといたしますと,特に株式交換に関して,社債の承継が,例えば完全親会社の債権者から見て詐害行為取消しの対象になるというような整理ができるのかもしれません。仮に債権者保護手続を要しないこととした場合に完全親会社の債権者がとり得べき手段というものもあわせ考えながら,この論点についての結論を出すべきではないかと考えられるところでございます。   「8 新株予約権付社債の譲渡等」についてですが,(注4)におきまして,記名社債についての規定の整備の必要性という点を明記しております。   実務上,記名社債については,ほとんど利用されていないと言われておりますが,一部において,一定の需要があり,必須の制度であって廃止すべきものではないという指摘もあるところでございます。記名社債に係る規律の内容がかなり古い条文であるということもあって必ずしも明確ではなく,現代語化をするに当たっては,少なくともどういう規律が働いているのかを他の制度と照らしてきちんと整理することが必要であると考えているところでございます。   問題は,現在,記名社債について,例えば権利移転とか対抗要件とかに関し,こういう内容であるという規律が考えられているとした場合に,それについて何らかの変更を加えるべきところがあるのかどうか,実務上必ずしもニーズは多くないというふうにも言われておりますけれども,制度を残す以上,こういう規律に改めるべきではないかという御指摘があれば承りたいということでございます。「規定の明確化を図る等」の「等」というのは,そういう趣旨でございまして,何らか明示的に変更すべき点の御指摘があれば,ちょうだいしたいと思います。   「9 社債の銘柄統合」についてですけれども,(1)につきまして,試案では,社債の総額が増加すべきことのほかに,その増加すべき上限額を当初の社債契約に定めることを条件としたらどうかという提案をしておりましたけれども,これに対する意見照会の結果では,事前に上限額を設定することは困難であるという意見が寄せられたことから,一応,(1)の①を御覧いただきましたとおり,増加すべきことのみにとどめるということとしておりますが,それでよろしいかどうかということでございます。   「10 社債権者による書面投票制度」についてですが,書面投票の導入については,社債権者集会についても賛成意見が多数であったわけでございますけれども,幾つか懸念されるところがございまして,(注1)におきまして,その懸念をどう考えるかということにつきa案・b案の2案を示させていただいております。   a案は,書面決議によって決議すべき事項に特別の制限を設けないこととするものでございます。この場合には,書面決議の決議事項としては様々なものが考えられることから,参考書類のような,書面投票をしようとする者に対する十分な情報を伝える手段ということを考えるとなかなか難しいという問題がございます。言うなれば,ほぼ白紙委任に近い書面投票というものが実現する可能性があるということでございます。   これに対して,b案につきましては,現行でも社債権者集会の代表者という制度がありまして,この代表者に社債権者集会で決めるべき事項の決定の委任をするということができるわけですけれども,具体的な事項の決定をこの代表者に委任し,代表者が必要な情報を得て適切な判断をするということを期待して,代表者への委任,代表者の選解任という限度で社債権者集会の書面投票を認めたらどうかとするものでございます。   a案については,いずれにしても最終的には裁判所の認可というところでその決議の正当性が担保されると考えられるかどうかということでございます。もちろん,b案におきましても,代表者が行う決定自体についても裁判所の関与が求められることになると思いますけれども,a案・b案のいずれが適当かということについて御意見をちょうだいしたいと思います。   「社債・新株予約権関係」につきまして本日御議論いただきたい点の説明は,簡単でございますが,以上でございます。 ● 今,説明していただきましたこと全体につきまして何か御質問ございますでしょうか。--よろしいですか。   それでは,個別の事項の御審議をお願いしたいと存じますが,時間の関係もありますので,まず,一わたりは星印がついたところを最初に御審議いただければと思います。星印がついていないところで,かねてより全銀協が問題にしているようなところもないわけではないのですけれども,まずは,事務局が是非この点は審議いただきたいと考えている点を先にお願いできればと存じます。   そこで,最初は第6の「3 社債管理会社」の(前注)でありますけれども,この点について,いかがでしょうか。社債管理会社の資格範囲の見直しは今回は行わない,実質的には信託業法の見直しで多少は範囲が広がるということはあると,こういうことでありますが,いかがでしょうか。 ● 私も,今回の結論としては,ここでやむを得ないかなと思って賛成ですけれども,理解の仕方としまして,社債管理会社の資格範囲をもう少し広げるという問題もあります。それについて格別の御要望もなかったし,今回はこのままというのが一つの側面だと思いますが,もう一つの側面として,意見照会の中でも御指摘があったかと思いますけれども,現在の状況の一つの問題としては,最も利害関係が深いとも言い得るメーンバンク等が社債管理会社になっているということに一つの大きな問題がないわけではない。しかし,社債管理会社等の法制をつくりましたときに,とてもこれを見直すことができるような状況ではないので,311条ノ2第2項の手当てでもって何とかなるかという形で踏み切ったわけですが,その後の事情の推移を見ていますと,必ずしも311ノ2第2項だけでもって十分に公正に扱われているとは言い難いかもしれないような事態が出てきたことにかんがみ,今回,311条ノ2第2項を更に少し強化するような改正に踏み切ることでもってもう少し様子を見てみると。それで,これでもだめであれば,やっぱり一番病根をもとから絶つというような抜本的な改正も将来は考えなければならないかもしれないと,こんなような理解でよろしいわけでしょうか。 ● 根本的な点の御指摘でありますけれども,そうなりますと,これはその問題について非常に掘り下げた議論が必要になると思います。 ● 少なくともこれで様子を見ようという結論だということで,私も賛成ではございますが,理解の仕方として伺いました。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。 ● 社債管理会社の責任とか義務とかが強化されてくる中で,銀行等がもうならなくなってしまうというふうなことも考えられないわけではない。そういうふうなときに,社債管理会社の資格範囲の見直しというのを,信託業法で定めるところだけに任せておいていいのかどうか。恐らく公認会計士事務所,弁護士事務所,そのあたりがやりたいというふうに声を上げてくるのであれば,別にそれを阻害することでもないのではないかという気がしますので,今の時点で,「行わないものとする」というふうに決め切るのはちょっといかがかなという気がするところでありますけれども。 ● ただ,具体的に手を挙げたところがないようなので,差し当たりこの改正では難しいのではないかということだろうと思います。   そういういろいろな方面からの御意見があるわけですが,この点は,一応今回については資格範囲の見直しは行わないということでよろしいでしょうか。 ● 「今回については」と,念のために入れておいていただいた方がよろしいかと。 ● 私も,その意味では賛成です。 ● 趣旨はそういうことです。   では,この点はよろしゅうございますか。次に進んでよろしいですか。   次は,3の(3)の①の(注)でありますけれども,先ほども話が出ておりました311条ノ2第2項の3か月という期間の延長は,これは行わないものとするということでございます。全銀協の意見書にもこの問題は取り上げられているところでありますが,いかがでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,先に進ませていただきまして,次の②のところでありまして,社債管理会社と特別の関係を有する者の取扱いというのがまず一つの論点であります。この点につきましては全銀協からも意見が出ていたところでありますが,本文にありますような範囲で特別の関係を有する者の行為を規制すると,まずこれが一つでありますけれども,この点はいかがでしょうか。 ● 念のために質問させていただきたいのですけれども,この「譲り受けて」というのは,取得するより狭い意味で,例えば法定代位とかで取得するとか,あるいは企業再編によって取得するとか,そういうのは除くという趣旨と解していいのですか。 ● ここに書いてあります案は一応そういう趣旨でありまして,いずれにしましても,これは311条ノ2の2項の立証責任を緩和するという規定ですので,もしそういった法定代位とか組織再編とかで潜脱的にやるということであれば,もちろん1項の方の対象になるという理解ですので。 ● 一応,案はそういうことのようです。   そういう点も含めて,いかがでしょうか。   ○○幹事の御意見は,それも含めた方がいいのではないかということですか。 ● いや,そういう意味ではなくて,余り広げると問題があるかもしれないと私は思っているのですけれども。 ● いかがでしょうか。そういう限定された範囲で拡大してはどうかということですが,一応よろしゅうございますか。特に御反対はないということで理解してよろしいでしょうか。   それでは,その方向を御確認いただいたという理解で,先に進ませていただきます。   次の星印でありますけれども,これも従来から議論がある相殺の問題であります。相殺の問題については,参考資料としてついております破産法案に照らして考えると,このような範囲で相殺についても311条ノ2第2項の対象とするということではどうかということでありますけれども。 ● 今議論した,その前の特別の関係を含めて,前の試案の段階では,ちょっと広過ぎるおそれがあるのかなと思っていたのですけれども,今回の案ですと,今,○○幹事から御指摘のあったように,「譲り受けて」ということになったりして,前の試案の段階では,「譲り受けて」という要件がなかったと思いますので,そういう意味では,潜脱的な場合を防ぐという趣旨がはっきりしたという意味で,今回の案は基本的によくなっていると思うのですけれども,次の相殺についても,破産法案71条・72条と同様の趣旨の範囲でこのような定めをするという基本方針はこれでよろしいのかなと思うのですが,ただ,破産法案の71条2項・72条2項に相当する限定が書かれていないのですけれども,特に前の原因にかかわるところ,あるいは法定原因とかですね,これは除くという趣旨なのでしょうか。私は,その意味でも破産法案の71条や72条と同じように限定した方がよろしいのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。 ● この点はどういう理解なんでしょうか。 ● こちらの案につきましては,一応,71条の2項,それから72条の2項についても勘案した形で書いております。   例えば,71条の2項1号に法定の原因というのがございますけれども,71条の1項2号の行為につきましては,契約を締結して,それによって債務を負担した場合ということでございますので,そもそも法定の原因で債務を負担したということは基本的にはあり得ないということでございますし,前に生じた原因ということは抜けてはおるのですが,これは311条の2項のただし書が残りますので,そちらの方で恐らく,前に生じた原因によって債務を負担したというような場合には,誠実に職務を怠ったということがないとか,そういったところでも読めるのではないかと。   72条の方につきましては,72条の1項2号は,原因を定めず,破産債権を取得したということだけなのですが,例えば72条の2項4号におきましては,破産者と直接行為をしたようなときには抜けるということですので,これはつまるところ他人から譲り受けたのではないかということで,例えばロの方はそういった形で整理しているということでして,この案は,基本的に71条・ 72条の範囲というものは変えずに,表現ぶりだけをこちらの方で直したという,一応そういう趣旨でございます。 ● 趣旨は結構だと思うのですけれども,特に71条2項の2号の「前に生じた原因」というのを311条ノ2のただし書で読むというのは若干,解釈としてそこまで,少なくとも素直な解釈でいけるかどうか,疑問の余地が生じる可能性があると思いますので,もし書けるのであれば,なるべく破産法とパラレルな形で,もう少し細かくそういった場合を書いていただいた方が望ましいかと思います。 ● なお文言等には検討すべき点はあるかと思いますが,基本的な方向としては○○委員も賛成ということだと思いますが,ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。どの点でも結構ですが,この問題につきまして。   基本的な方向としてはこういうことでよいということでは,委員・幹事の皆さん,御異論ないと理解してよろしいでしょうか。--よろしゅうございますか。   基本的にはこれでいいということであれば,なお文言の問題はともかくといたしまして,基本的な方向としては御了解いただいたということで,先に進ませていただきたいと思います。   次の(4),(5)は,全銀協から意見が出ているところではありますが,これは後回しにいたしまして,4の(2)の社債権者集会の特別決議の成立要件であります。これにつきましては,従来,a案・b案でしたか,いろいろ案があったところでありますけれども,20%という数字を入れて,こういうことではどうかと。もちろん,最後に裁判所の認可は必要だということは現行法と変わりません。ただ,この(注)にありますように,こういう処理をするのであれば,更生手続の関係人集会についての社債管理会社への授権についてのみ手当てをすれば足りるのではないかという御意見もあるかもしれないと。そういう点を御議論いただきたいということでありますが,いかがでしょうか。   たしかb案というのは,議決権を行使した者だけであれするという……。 ● 確かにb案はやや行き過ぎになる危険があるかと思っておりましたので,a案にしていただいたというのは妥当かなと思います。   あと,(注)のところにございます,更生手続等に限って要件を緩和すべきかという問題なのですけれども,実務的に言いますと,社債権者集会の成立が必要になった例を今までのを考えてみますと,例えばKEPCOの例等を見ましても,デフォルト条項を実際に修正する必要が生じて社債権者集会を開かなければならなくて,そのときの成立要件を満たすのに非常に苦労している例などがございますので,それを考えると,私は,別にこういった更生手続等に限らずに,特別決議の成立要件を見直してもよろしいのではないか,その方がいいのではないかという感じがします。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   a案でいくということと,(注)の問題と,大きく分けると二つあるわけですが,どちらでも結構ですが,いかがでしょうか。   ○○委員からは,(注)につきましては,こういう制限は必要ないのではないかという意見が出されましたけれども,ほかの方,いかがでしょうか。大体皆さんそういう方向だというふうに理解してよろしいでしょうか。 ● 質問させていただきたいのですが,私,感触としては,基本はむしろこの二本立ての方に賛成なのですけれども,(注)で書かれている緩和というのはどういうものを念頭に置かれているのか,ちょっと確認させていただきたいのですが。例えば量的に20%を10%にするとか,そういう緩和を言っておられるのか,それとも,こういう種類のものについては,例えばb案のようなところまでの採用を考えておられるのか,どちらなのでしょうか。 ● 社債権者集会の決議を成立させるべき場合というのは社債権者にとってかなり酷な事態が発生している場合ですので,一方で,要件を緩和してまで決議の成立を認めるということは必ずしも適当ではないのではないかという指摘もございまして,要件の緩和をするのは更生手続に係る場合に限るという選択肢もあり得るところです。緩和の程度は(2)の本文のとおりとして,一般的な緩和は図らないということにしたらどうかというのが,(注)の趣旨でございます。 ● この案はそういう趣旨なのですけれども。   大体こういうことで,今,○○委員がおっしゃったような方向で皆さんよろしいということでしょうか。a案,つまりこの本文に書いてあるようなこと,それで更生手続との関係には限らないと,そういうことでよろしゅうございますか。   それでは,特に御異論はないようですので,そういう形で御了解いただいたということにさせていただきたいと思います。   次が,6の「強制転換条項付新株予約権付社債」という制度を新設するということの関係で,(3)に(注)がついておりまして,無記名式の強制転換条項付新株予約権付社債が転換されますと,最初から株主が分からないというものが出てき得るので,その際の措置として,この(注)のようなことではどうかということなのですが,いかがでしょうか。特に御異論はないかと思いますが,よろしゅうございますか。 ● 原案に賛成です。 ● それでは,これも御了承いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次が,「7 組織再編行為に際しての新株予約権等の承継」でありまして,これにつきましては,現在は株式交換についてだけ手続があるわけですが,合併と分割についても手当てをすると。そのこととの関係もありまして,新株予約権付社債の問題というのがあるわけであります。   これについて,まず,(1)の(注)のような形ではどうかということでありますが,いかがでしょうか。一般的には一定の要件のもとに買取請求を認めるということなのですが,その買取請求の際に,新株予約権付社債は発行条件に従って分離されたりされなかったりするという案でありますけれども,よろしいでしょうか。この7の(1)の(注)の方につきましては特に御異論はないというふうに理解してよろしいでしょうか。   それでは,一応御了解いただいたものとして取り扱わせていただきますが,(2)の方はいかがでしょうか。現在は,株式交換・株式移転について,新株予約権の承継という制度はあるのですが,新株予約権付社債の承継というのはできないということになっている。それは債務が完全親会社に承継されて債務が増えるからだと,こういうことを言ってきたのですが,承継を認めるものとすると。そして,その際には債権者保護手続がないわけですね,現行法につきましては。そのこととの関係をどう考えるかということであります。いかがでしょうか。 ● 本当に難しい問題で,債権者保護手続が本当に要るのか,そのようなレベルになるのかというと,そうでない場合も多々あるとは思いますが,何か理屈のつけようがあるのかなという気がいたしまして,心配になるところです。   先ほども,御説明の中で,詐害行為取消しという対応が可能だからというように考えられないかというお話がございましたが,本当に株式交換・株式移転を,債権者が詐害行為だからということで取り消すということになるわけでございますか。それとも,そこの部分だけを何か取り消す……,ちょっとどういうふうに考えたらいいのかということについて,もう少し御説明いただけると有り難いなと思うのですが。 ● 私もよく考えておりませんが,どういうことになるのでしょうか。 ● 現実問題としては,今回,国会の方で電子公告等の改正が通りますと,債権者保護手続はそれほど大きな負担ではなくなるということもございますね。それがいいかどうかは判断が分かれるところかもしれませんが,一応そういう形で意見はまとまって,間もなく改正がなされるかというところまで来ているというように理解しているわけですけれども,そうしますと,もう債権者保護手続をするというようにしてしまっても,実務の上で物すごくお困りというほどではないのではないかという気もするのですが。その方が首尾一貫といいますか,法律の上ではつじつまの合った規制ということになるのではないかという気もするのですが,いかがでしょうか。 ● いかがでしょうか。 ● 私も○○委員と同じ懸念を持っておりまして,詐害行為取消しをすると,恐らく株式交換そのものを取り消さざるを得ないことになってしまうと思いますし,それは相当,実際には認められる要件は厳しいわけですので,会社法上の債権者保護の原則から言えば,こういう債務を引き受ける場合は,やはり完全親会社になる会社について債権者保護手続があってしかるべきではないかと……。ちょっと確かに説明がつかないのではないかという感じがしています。 ● 確かに,別に株式交換・株式移転全部に債権者保護手続が要ると言っているのではなくて,新株予約権付社債を承継するときだけやるということですから,そんなに大変になるわけでもないような気もいたしますが,ほかの委員・幹事の方はいかがでしょうか。そういう意見がお二人から出ましたが。 ● 経済界としては,組織再編行為が迅速にできるようにこういうことを要求しているのですけれども,そういうふうにするための理屈というのが整理できないのであれば,理屈のないことをやってくれというふうなことまでも主張することはできませんので,何か理屈がつくのだということを, どなたか委員の中で説明していただけたらと思うのですけれども。 ● どなたか理屈をつけていただける方,おられますでしょうか。   事務局にも特に理屈があるわけではないんですかね。さっきは,詐害行為取消しとかいうような,そっちの方の……,会社法上の理屈はどうもないので,そういう民法上のあれを言われたような気もするのですが。 ● 事務局サイドは,どちらかというと,一般的に合併・分割を除いて債務引受け自体は債権者保護手続の対象になっていませんので,そことのバランスで,株式交換のときにたまたま社債を引き受けると,何でそのときだけ債権者保護手続が要るのかということだけを説明できればということだと思いますけれども,そこが意外と難しいのではないかと思ったもので,今のこの原案にしているということなのです。 ● これはいろいろ考え方があるのですけれども,株式交換・株式移転を導入したときに,これはとにかく組織的な行為だということにしたんですよね。それでいろいろいきさつはあったわけですけれども,そうなりますと,何か債権者保護手続というのは債権者に不利益を及ぼす可能性がある限りするというのがあれで,しかし債権者保護手続をやりたくないというので,社債部分は引き継がないというような制度になってきたと,こういういろいろにあれして現在の制度になっているわけですけれども,そこでやっぱり債務の方も引き継ぎたいとなるとどうなるかと,そういう話になっているわけです。 ● 株式交換・株式移転について債権者保護手続を設けなかったのは,少なくとも株式交換等においては完全親会社になる会社にとって財務状態が悪化する可能性がないからという説明が一応あって,それを除いたと。実は,細かく言うとあり得ると私は思っていまして,本当にそれでよかったのか,少々疑問は持っているのですけれども,少なくとも大きく見ればそういうことで説明をつけて,これは完全に債務を引き受けることになりますから合併と分けて説明したわけで,やはりそういう大きい考え方というのは維持されているのであって,この制度だけでこういうのを入れて,そこだけ民法424条に行くというのは,全体的な説明の整合性からいくとちょっと難しいかなと いう感じを持っているわけです。 ● 今の○○委員の御意見で5年前の話を思い出したのですが,私も,やっぱり債権者保護手続は一般的に要るのではないかと言って冷たい視線を浴びたことを思い出すのですが,今日の資料の第5の3の(3)に,剰余金の計上をするときには,要するに財産関係が変わるからというので債権者保護手続が要ると。それと同じように,先ほどの○○関係官の御意見でも,債務引受けをする場合は自由ではないかと言われたけれども,これは,株式交換・株式移転とは別個に債務引受けするのだったら,それ自体の債権者取消権がいけるのですが,そういう構成をとれればいいのかなと私も思いますけれども,先ほどの○○委員や○○委員の御意見からすると,それだけを取り出してというのはちょっと無理だとなると,少なくとも通常の債務引受けが債権者保護手続なしにできるからこれもいいんだと,そしてこれも民法424条の詐害行為取消しで対応できると,こういう説明は少し無理があるので,財産関係が移動するときには債権者保護手続が要るというプリンシプルは維持するとすると,やっぱりこの提案は無理なのかなということで,財産関係を移転しても問題はないというきちっとした手当てができれば,例外的に債権者保護手続を落としてもいいけれども,なお現状では十分な説明がなされていないというのが率直な印象です。 ● そういうことで,どうも理屈では難しい,そして民法上の救済というのも難しいというのが大勢のようで,したがって,結論としては,新株予約権付社債を引き継ぐ限りは債権者保護手続は要るということでよろしいでしょうか。 ● 今の○○委員のおまとめで別に異論があるわけではないのですけれども,別途,組織再編の対価柔軟化の部分で,株式以外の対価を用いて株式交換を行う場合であっても債権者保護手続を要しないものとすると。後で議論されることになると思うのですけれども,新株引受権付社債の場合には,社債を引き受けて債務引受けをするわけですけれども,同時に完全子会社側では負債がなくなるわけですから,それがどういう計算関係になるかは個別それぞれだと思いますけれども,ある意味では,完全親会社としては負債がなくなった会社の株を取得するという意味合いで,社債の負債と株価の上昇という部分が多少相殺されるという意味合いがあるのではないかと。その点が,仮に民法上の詐害行為取消権を使ったとしても,そういう意味では詐害になっていないという認定も十分あり得るケースではないかという気がいたします。   それに対して,組織再編の場合に現金が出てしまう,その場合にも債権者保護手続は要らないという結論をとるとすると,社債の引受けの場合に,先ほどのような相殺勘定ができる場合になぜ債権者保護手続が必要かというバランスの問題はちょっと残るのではないかということを今ちょっと感じました。その点,いかがでしょうか。 ● どうも御指摘ありがとうございます。   その点の平仄ということにつきましてはどうなんでしょうか。   では,その点は後から出てきますので,○○委員の先ほどのコメントにつきましては,またそこのところであわせて御議論いただくということにして,先に進ませていただきたいと思います。   それでは,次は,「8 新株予約権付社債の譲渡等」でありますけれども,これについて,現在は無記名式の社債と記名社債とがあるわけですが,ここにあるような第3の譲渡類型を創設してはどうかという点についてと,そうなると記名社債というものを どう取り扱うかという問題も出てきます。記名社債は現在,主として私募債の譲渡制限との関係で使われていると思うのですけれども,この新しい第3の類型を作ると記名社債のそういう用途はもうなくなるのか。つまり,この新しい制度で私募債の譲渡制限もいけるのか。もしいけないとすると,やはり記名社債は残さざるを得ないのですけれども,しかし,現在の記名社債は昭和13年前の株式の譲渡と同じ形の条文になっている関係で何だかよくわけが分からない,だから内容をはっきりさせる必要があると,こういう問題があるわけです。その点につきまして御意見をいただきたいということでありますが,この点について,いかがでしょうか。   まず,こういう形のものを作ると。一部には,こういう形の譲渡ができるものをつくってくれという要望がありまして,これについては,特にそれは困るという積極的な理由はないのではないかと思いますけれども,これができたときに,先ほど言いましたように,むしろ記名社債の方への影響という問題があるのではないかと思いますが,いかがでしょうか。   この(注4)は,「記名社債について,規定の明確化を図る等の規定の整備をする」ということになっておりますが,この点について御意見がありましたら是非伺いたいと思いますが,何か私募債の実務でこういう点が問題だというような御意見はありませんでしょうか。   一つは,この新しいのをつくってしまえば記名社債なくしても私募債実務は困らないのだということであれば,もうなくせるわけですね。そういう話なんですね。現在の株式譲渡制限制度では何で株式の私募というのは認められていないかというと,あれは完全な譲渡禁止にはできないからですね。請求があれば譲受人を指定しなければならないという制度ですから,あれは譲渡禁止にならないから私募債には使えないということだと思います。現在の案は,これは譲渡禁止にはできるのですね。そういう案ですね。   それでは,特に今御意見がないようでしたら,そういう方面を事務局で詰めていただいて,また案を出していただいて,それで何か委員・幹事の方でお考えがありましたら事務局の方に御連絡いただくと。この点はそういうことでよろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきまして,次に,「9 社債の銘柄統合」であります。銘柄統合は一定の手続を設けて認めるということでありますが,試案の段階では要件が限られていたのが,その要件を緩和した,上限額等の要件は削ったというのが,本日の案でございます。この点につきまして,いかがでしょうか。社債総額が増加する上限額は定める必要はないということにするという点につきまして,いかがでしょうか。   特に御異論はないでしょうか。--それでは,特に御異論はなかったというふうに了解させていただきます。   最後でありますが,社債権者集会を開催しないで,書面投票で問題を処理するという制度を認めてはどうかというのが要綱試案から出て おります。   ただ,問題は,無記名社債が主体なわけですから,通常ですと,書面投票制度という総会を開かない形の場合は,詳しい参考書類があって会議を開かなくても十分な情報が得られるということが前提で,会議を開かなくてもいいという制度が成り立つと考えるのが普通だと思いますが,この場合は何せ参考書類が送れない,多分公告だけということを前提にするわけです。そうすると,一体そういうものを認めていいのか,仮に認めるとすると,このb案にあるような程度なら認めていいかと,そんな点が問題点であります。   いかがでしょうか。 ● この点は,いろいろ考えていくうちに,本当にこういう制度が必要なのかという気がますますしてきたというところがあるのですが,したがいまして,もしこの案を採用するにしても,(注1)にありますa案とb案のどちらがいいかということについては,b案でもって,できるだけこういう例外的な措置を認めるものは必要最小限にしていくということの方に賛成なのですが,そもそもこの書面投票制度を認めるかということなのですけれども,社債権者による書面投票自身はもう認められていいわけですね。当然もう現在でもよろしいわけですし,電子投票もできるわけですね。どこが新しいかというと,社債権者集会の開催を要しないというところにあるわけで,この要しないとすることに一体どれほどの実務上の便利さがあるのかということと,会議体の本質論から言って,集会を要しないで多数決でもって決めるという,こういう異例な措置を認めるということに本当にどの程度の必要性があるのか,一体それを認めていいのかという根本的な問題がやっぱりかかわってくるような気がするのです。社債の場合,最後に裁判所が認可するとかいう,そういう別のものが入っているものですから,まだしも例外という考え方ができなくはないかなというふうにも思ったのですが,しかし,一体,社債権者集会の開催をした上で書面投票をするのか,社債権者集会自身も開催しないで書面投票等をするのかということを考えますと,その差は非常にわずかなものですね,現実問題としましては。その点はどの程度,需要といいますか,こうすることによってどの程度助かるということがあるのでしょうか。もしもともかく集まりたい人がいたときにはどうぞ来てくださいというものをプラスアルファするか否かという程度のことですね。 ● 直接的にこれに賛成するか反対するかという問題ではなくて,先ほど○○委員も御指摘の,社債権者集会について,参考書類をそもそも現行法でも全く要求していない,電磁的方法とか書面投票を認めつつ要求していないというところにやはり問題があるような気がするのです。   ですから,ここで挙げられているb案を仮にとられる場合でも,これこそ,実は公告でもどういう人がそこで候補者に上がっているかとかいうことは書かないで投票させるというのはいかがかなと思うので,是非,参考書類をどちらにしても入れるということも検討していただいた方がいいのではないかというふうに思うということです。 ● 社債権者集会に参考書類制度がないというのは,これは要するに無記名社債であって,つくってみても手渡す方法がない,だからもう公告であると,どうもそういう前提で少なくともこれまではできているのだと思います。 ● 公告の内容を詳細にすればいいわけですね。 ● ですから,参考書類の問題と,○○委員がおっしゃったように,集会を開かないということにどれほどの意味があるのか。集会を開けば,集会に行っていろいろ話を聞くことはできるわけですね。質問したりできるわけで,それが参考書類のかわりになるわけです。参考書類がないから,行って 質問するということになるのでしょうね。 ● しかし,参考書類はそれはそれとして,直接手渡すことはできないかもしれないけれども,公告する事項にいろいろ情報を盛り込めばいいというだけの話ですから,別問題ではないかという気がするのですが。 ● 社債に関しましては,株式の場合と違ってなかなか定型的な事項ではないという点が,参考書類的なものを考える際の難しい点の一つでございます。   また,社債権者集会の開催が必要な場合というのは,およそ発行会社が危ない状態にあるという場合ですので,危ない事情を詳しく公告するということになりますと,これまたいろいろな問題があるかもしれないというようなことを考えておりました。 ● だからこそ,このb案の場合などは実はそのように詳しく書かせることになじむのではないか,定型化されているのでなじむのではないかなという気がするので,とりわけb案をとられるときには公告事項を拡張してもいいのではないかなという気がいたすわけです。 ● b案というのはそういうことだと思います。これなら定型的に,どういう人でというようなこと,これは恐らく公告でも何とかなるぐらいの情報なんですね。危ない会社の社債権者としてはどうすべきかということをこの人たちにお任せして,あと裁判所の認可をいただいてと,まあその程度なら何とか認めてもいいかなと。   しかし,およそどんな処理をしますかということについて,その理由も何も,参考書類も何もなしで,とにかく賛成しなさいと。それで20%の社債権者が賛成したら,それで元利金支払の減免等ができてしまいますという制度は,幾ら最初に約款に書いてあり,裁判所の認可があるといっても,私は憲法違反ではないかと思っていますがね,a案は。   いかがでしょうか。   これを強く主張しておられるのはどなたなんですかね。本当に集会を開かなくてそういうことを決めていい,元利金の減免を決めていいということにしろと強く主張しておられるのはどなたなのか,ちょっと私もよく知らないのですが。   ですから,全部やめるか,それともb案ならいいというふうに言うかということなのではないかと私は思っているのですが。 ● そういう御要望がなければ,もうやめた方がいいと私も思います。どうしても御要望があるのであれば,理由をよく伺って,まあb案ぐらいならばということかなというような感じがするのですが。 ● 強い要望は日本経団連の方から出しているわけでありますけれども,その中でもa案というのを認めていただきたい。選択的にこういう書面のみの決議ということの制度を設けて,それで実際に集まる場合と比べて弊害がないのであれば--○○委員の言われるようにそれは憲法違反であるというのでは,そもそもできないわけですけれども,そうでないのであれば--この選択肢も認めていただきたいなということで提案しているわけです。少なくとも,社債の発行決議において,社債権者集会においては実際に集まるのか,書面投票のみにするのか,いずれかを選択できるというふうな決議を設けた場合に,それを有効にしていただくとか,そういう社債権者の自治的なことも入れていっていただければいいのではないかと思うのですけれどね。 ● しかし,それは結局,約款に書いてあるということだけなんですよね。「集会を開かないで元利金の減殺をすることがあります」と。それでいいかということなんですね。   ほかに,○○委員以外に御賛成の御意見ありますか。 ● 意見照会の結果というのは反対意見の方が多かったんでしたっけ。 ● 意見照会は,余りたくさんは意見はないのですが……。 ● 重要な御指摘がありましたね。三つばかりでしたか。 ● 賛成が多いような……。 ● 賛成意見が多かったということは事実でございます。 ● 私にはちょっと信じ難いんですよね,こういう案について賛成が多いというのは。私はちょっと法律家として,賛成される方はいかがかなという気が,正直言ってするのですけれども。   もうこれはやめるということでいかがですか。強く支持しておられる方というのはどれほどあるのか……。それでよろしゅうございますか。   いかがでしょうか,○○委員。 ● これはもう○○委員の御見識におゆだねするしかないのかもしれません。 ● それでは,そのようなことでこの問題は処理させていただきたいと思います。   それでは,星印でない問題について御意見を,もしあればちょうだいしたいと思いますが,いかがでしょうか。最初の方から,どの点でも。 ● 前にも申し上げたことがあったかと思うのですけれども,「第6 社債・新株予約権関係」の1のところでございますが,第1種株式会社の社債・新株予約権・新株予約権付社債を認めるということ自体は,これで私も賛成なのですが,もしも,第1種株式会社であれ何であれ,その直前にあります決算公告の点につきまして,決算公告をしなくてもよいという会社が認められる場合には,そういう会社について社債等の発行を許容するということについては,もう一度慎重に考え直した方がいいのではないかというように思っております。 ● 決算公告の問題はまた次回以降御審議いただきますが,まあ,恐らくそういう会社が出す社債というのは流通する社債ではないんですよね。 ● 流通しないにしても,やはり社債というものを出してよいということは決算公告と絡んでいたというのが従来の有限会社法制であったと思うのです。したがいまして,その結びつきというのは今後も維持した方がいいのではないかという趣旨です。 ● それから,これは,発行権限といたしまして,第1種株式会社でも取締役が行うことができるということでありまして,ですから,この点は第1種も第2種も変わらない,総会の承認までは要らないということになるわけですが,その点もよろしいですか。 ● この「取締役が行う」というのは,取締役の過半数という意味ですか。 ● もちろんそういうことです。 ● つまらないことを申しますけれども,1種・2種とかいう区別自体,私どもは反対をしておったものですから,それを前提にしてこれでいいですねと言われると,なかなかうんと首を縦に振りにくいので,最終的にそこが片づいたときに整理がきれいにできているということであればいいのではないかなということだけ,念のために申し上げておきます。 ● これは第1種も第2種も区別がなくなるということです,実質は。   1についてはよろしゅうございますか。   2について,特に何か御意見ございますか。 ● 2について質問というか確認でございますけれども,いわゆる世間で言われておりますシリーズ発行であるとかプログラム発行であるとか,こういうものがこの2の②で認められるという趣旨だと理解しておりますけれども,当然のことだと思っておりますけれども,その確認を得たいというのが1点です。   それと,かねてより言っておりますけれども,多額の借財に該当しないようなものは,もう取締役会から代表取締役に委譲してもらえないかということでございます。 ● シリーズ発行につきましては,それを明文で認められるということが分かるようにしようという趣旨でございます。 ● シリーズ発行というのは,累積の発行額が幾ら以内ということです。それから,プログラム発行というのは,累積の残高が幾らだというふうなことでも授権をしたりするということのようですね。それは両方とも授権できる範囲だろうと思うものですから。   あとは額のこと,少額のものについての授権というのができないだろうかということですが,引き続き御検討だけはしていただければと思うのですけれども。 ● それでは,3の(1)から(3)までの部分については何か御意見等ありますでしょうか。--よろしゅうございますか。   (4),(5)は全銀協から意見が出ているところでありますが,この点について御意見をいただきたいと思いますが。 ● (4),(5)の問題は私も随分迷っているところなのですけれども,(4)について言えば,少なくともこれは,「法的倒産手続に属する一切の行為については……,社債管理委託契約等の定めがあるときは,社債管理会社が社債権者集会の決議なく……,行うことができる」というわけですが,「一切の行為については」と書いてありますけれども,これは,社債管理契約で例えば法的倒産手続のうちのこの部分だけができるとか,そういう定め方は当然できるという前提だと思いますが,まずその確認をよろしいですか。   それから,(5)でありますが,これは非常に難しい問題で,確かに管理会社になった以上はこういうことをやってほしいというのは一方で当然出てくる声だと思うのですが,一方で,余り重いことを要求すると,実際上こういう制度を設けたときの効果がどうなるかがちょっと心配なところがございまして,特に,今度,電子公告の制度等で,個別催告にかわって電子公告があれば,それで会社分割等の効力が生じてしまうということになりましたので,ある意味では,この催告を受ける行為の意味が非常に重くなっているものですから,まず,本当に実務的にそれのチェックがどこまでできるかという問題が多分出てくるかと。   もう一つは,そうなると,仮にチェックできたとして,責任を管理会社に負わせることになりますので,管理会社としてはとりあえず異議を唱えるという行動に出る可能性があり得るわけで,確かに管理会社になるべく社債権者保護のために活躍してほしいと,私もそうは思うのですが,一方で,余り重いことを要求すると,実際上の効果として,常に異議が申し立てられたりしてかえってスムーズな会社の再編などができにくくなる面も出てくるような気がしますので,ここら辺は,ちょっと歯切れの悪い意見で恐縮なのですけれども,実際上,実務的にこういうふうになった場合にどういうことが予想されるかというのをよくよく慎重にチェックした上で法制度化を進めていただきたいということが一つ。   あともう一つ,この(5)の御提案は,これは強行規定として入れるのかどうかということも,これもそれと関連して非常に重いことだと思いますので,この提案ではそこまでのことを提案されているのか,ちょっとそれを伺いたいと思います。 ● 後の点はいかがですか。 ● 後の点は,強行規定を一応予定しています。すなわち,今ですと,社債権者は社債権者集会の決議がないと異議を申し出られないという規定が先に置いてありますので,そこを改正してこういう形にするという趣旨であります。社債権者が格別に異議を申し出ることができるという制度にしてしまえば,それはまたちょっと別の問題があると思うのですけれども,それをしないとすると,こうするしかないかということです。 ● 社債管理契約でこの義務を除くことはできないということですね。 ● そうです。 ● 一応,この案はそういうことのようですね。   これは,○○委員がおっしゃった点が正に問題でありまして,難しいあれなんですね。   しかし,結局,社債権者集会の決議を経てから異議を申し立てるということですと,急には社債権者集会はできませんから,当然,現在の制度ですと,裁判所に異議期間の伸長を申し出て,それが終わらないと会社分割等はできないと,こういうことになってまいります。それに対して,今現在の(5)のような案ですと,社債管理会社は常に異議を言ってみるかもしれないけれども,とにかく早くは済むということだろうと思います。それで,意見照会の結果はこの(5)の方が多数であったということで,こういう案になっているのだろうと思います。   ○○委員がおっしゃったように,これがどうなるかですね。本当に常に異議を言うようになるとどういうことになるのかという問題はあるのですけれども。   ほかの委員の方。 ● 確かに難しい問題があると思うのですが,少なくとも○○委員がおっしゃいました前半の部分ですね,実務的にチェックが一体できるのかどうか,この点につきましては,個別催告がなくなることに伴う問題ということで,本当に個別催告をなくしていいのかという問題がもう一回ここで浮上するということかと思いますけれども,少なくとも社債管理会社のような立場の者であれば,当然に個別催告せよと契約で対応されるだろうと。それが前提でああいう立法が進められようとしているということではなかったかと思いますので,その点の懸念は実務上はないだろうというように理解していいのではないでしょうか。 ● 今の○○委員の御指摘は,個別催告をするように社債管理会社と発行会社の間で契約ができるだろうということでしょうか。 ● はい。 ● それはあくまで契約ベースですね。 ● 契約ベースで,大口の債権者などは,当然,何かがあれば通知せよと,立法が個別催告という手当てをしてくれなくなろうとも自主的に対応するというのが,もう当然,これからは法務部の務めということになるのではないかと私は理解しているのですけれども。まして社債管理会社ともあろう者がそこら辺のところを契約ベースで手当てしておかないということは,これはもうそれ自体が怠慢ということになるのではないかと思いますね。今までと立法が変わってくれば,それ用に実務も当然変わるだろうということでございます。 ● それは,法律が規定している債権者異議手続とはまた別な話ですね。 ● 公示催告とは別に,契約ベースでの取決めというのをせざるを得なくなるということだというふうに理解したのですが。 ● どういうことになるかですね。これは予想がつかない点がありますが。   大分御議論をいただきまして,懸念を示す向きもありますので,この点はなおもうちょっと検討ということですかね。 ● 私は,そういう意味では原案に賛成です。 ● そういう解決があると。 ● 前半はそうですし,後半についてもやむを得ないというように考えます。 ● 私は,今後,具体的に社債発行会社が倒産する事例がどんどん起こりますので,原則として(5)のような権限を持つことを覚悟して,それなりのフィーをもらって社債管理会社が就任するのは,私,原則はそうかなと思うのですが,○○委員が言われましたようにいろいろ事情もありますので,社債管理会社としてはちょっと困るという場合に,これを特約で排除できないと引受け手がないということになりかねないかもしれないと思うと,ちょっと大ごとなのですが……。しかし,これをなくしてしまったら,現行法では全然保護されないことになってしまうわけですね,社債権者集会が実質開かれないということで。そこで,社債権者が異議を述べるには社債権者集会の決議が要るということとの見合いで,もう少し,現実にこういう状態が起こった場合にどのように考えるべきかと,特に企業再編の場合にどうするかこうするかというようなことをもう少しトータルに考えた方がいいのではないかと思いますので,私も,○○委員の御懸念は分かるけれども,原則これでいいけれども,これしかできないという強行法だと言われると,やっぱりちょっと無理かなという気がするのですが。ですから,社債権者集会の異議との関係を整理していただきたいと思います。 ● 確かに,発行会社は,組織再編が遅くなってもいいよというのを排除する必要はないのかもしれないですね。   それでは,なお検討させていただきたいと思います。   あとはいかがでしょうか。4から8にかけて,いかがですか。 ● 4の(1)ですけれども,さっきもちょっと申し上げたのですけれども,法定決議事項でありますとかこういうものについてはもう少し私的自治化をしていくというような方向というのが考えられるのかどうか。私募債でありますとかそういうふうなものについて,法定決議事項というのを,例えばこれぐらいの切り捨てなのであればもう社債権者集会が要らないとか,この程度はどうのこうのとか,そういう定款自治的な発行自治的なことを認める余地というのは今後あり得ないのかどうか。それから,裁判所による許可はこういうものにはもう不要とするとか,そういうふうな発行決議内容,先ほどの○○委員から言うと,約款に書いてあるだけでだれも見ないのだから余り意味がないということになるのかもしれませんけれども,そういう私的自治を認めることを社債の発行において今後考えていくべきなのかどうか。私もよく分からないところでございますので,今後の問題としてちょっと議論しておいていただきたいなと思うところです。 ● 新しい問題点の御指摘かと思いますが,それも今後の研究課題ということでよろしいでしょうか。 ● 違う点で,7の(1)で--誤解していれば申し訳ないのですけれども--お教えいただきたい点が1点ございます。   ②で,「発行条項に定めがない場合にあっては,承継される新株予約権者(承継されない新株予約権者は行使することができない。)」とお書きなのですが,吸収合併したときに消滅会社が新株予約権付社債などを発行していた場合に,合併契約書に何も書かなければ新株予約権は消えますね,通常の考え方ですと。その考え方はそのまま維持しているとすると,その消えてなくなる人は②によって何も言えないという整理でしょうか。 ● それは学説上争いはあるのですが,現在の法務省の解釈は,合併の場合は,特に消えると書いてない限りは,発行条件として……。 ● 消えると書いた場合,発行の合併契約書に引き継がないと書いたら,消えますね。その場合は②によって消さないということなんでしょうか。 ● 当初の発行条件がそうなっておればということですか。 ● いや,当初の発行条件が何もなくて,引き継ぎませんと合併契約書に書かれてしまった場合。 ● 済みません,ちょっとそこは書き方を工夫させてください。すなわち,承継される新株予約権者及び承継されるべき……といいますか。 ● 分かりました。   一瞬,消えてなくなる人は救済がなくて,お情けで引き継いでもらったら条件に文句をつけられるという変なことになっているのかなと思ったのですが,そうではないわけですね。ちょっと確認させていただいただけで。 ● 合併の特殊な問題のところがありますので,少し工夫させていただきます。 ● ついでにもう一つ確認させていただきますと,これは保護しないということですね。営業全部を人的分割で出した場合は,実質空っぽになって価値ゼロになるけれども,これは仕方ないということですね。法的に消える場合だけは今の文言の工夫で拾うと。分かりました。 ● ほかにありますでしょうか。 ● この7の新株予約権等の承継でありますけれども,これは,今回の法改正が施行される前に出されている新株予約権等につきましても適用があるという経過規定を入れていくということになるのでしょうか。 ● ①の方はちょっと難しいかもしれませんが,②の方は定めがないので,起こったとき起こったときで考えるしかないのではないかと。 ● 既に出してあるものであったとしても,この規律が適用されると。 ● 殊更に抜くことについての合理性があれば別ですけれども。 ● そういう意味では確認的な質問です。 ● 御指摘ありがとうございました。   あと最後まで,どの点でも,いかがでしょうか。御発言ありますか。--よろしゅうございますか。   それでは,先に進ませていただきまして,次に計算,それから組織再編の問題に入りたいと思います。   それでは,事務局から御説明をお願いします。 ● それでは,続きまして,「第5 計算関係」,「第7 組織再編関係」をあわせて御説明いたします。   まず,「第5 計算関係」でございますが,星印のところだけ御説明いたしますと,最初は1の(1)①の(注1)でございます。①では,自己株式の取得につき財源規制を課すかどうかという問題を取り上げているわけですけれども,(注1)は,買取請求による自己株式の取得の場合の財源規制のかけ方についてこのような整理をするということでよろしいかどうかという点についてでございます。   ①のイ,ロの場合については,意見照会の結果でも賛成が多数でありました。ロの場合には当たらない買取請求による自己株式の取得について財源規制がかかるという趣旨についてですけれども,一方において,買取請求権を株主に保証しているということは,その権利の行使によって株式の処分,換価が図られる,そういう権利が株主に確保されるべきであるということですし,他方において,そのようなことに伴って会社債権者が株主に劣後して保護されないという事態もまた一定の場合には避けなければなりません。この調整を財源規制をかけることによって行おうとする場合には,要は,財源規制に抵触するような結果となる買取請求があった場合でも買取請求自体の効果は発生することとした上で,買取請求によって実際に買取りが行われる場合における取締役に違法配当と同様の責任を負わせるという形で処理をするということになりますが,これが(注1)の趣旨でございます。   あとは,ロの場合について,これは財源規制をかけない買取請求という整理をしようとするものですけれども,財源規制をかけないというふうに整理すべきものがどの程度あるのかどうかということでございます。例えば,種類株主の取扱いに関して相当程度買取請求によって保護しようという場面がふえてくるわけですけれども,当該行為に債権者保護手続があわせてとられるものととられないものとがあり,それによって債権者と株主との間の利害関係はやや取扱いが変わってもしかるべきではないかとも思われるところでございます。   それから,財源規制との関係で,(注2)のa・bのような場合の自己株式の取得について,今申し上げましたようなかけ方で財源規制をかけるべきものとしてよろしいか,この点については意見も両様あったところでございますので,改めて御意見をちょうだいしたいと思います。   (1)の③についてですが,人的分割についてこのような整理をさせていただくということについては賛成意見が多数であったところでございますが,(注)--現行の人的分割に係る規律について,基本的に今と異ならないものとするということについては反対意見もあったところでございまして,本文と(注)とを合わせた形でこのような整理をさせていただくということでよろしいかどうかを,いま一度確認させていただきたいと思います。   ④につきましては,やや説明を要するところでございます。剰余金の分配に係る規律を横断的に見直そうとすることとした場合,資本・準備金を減少する際に行われる払戻しというものを,株主への純粋な剰余金の分配と,計数としての資本・準備金の減少行為そのものとに分離して,以下のような整理をさせていただくことはどうかというものでございます。   まず,イについてですが,資本・準備金の額を減少すること自体は,当然には払戻しということが伴わないものという理解でお読みいただきたいと思いますけれども,このような額の減少手続もある意味では会社の一部解散的な行為であるということも言えようかと思われますので,現行法どおり,株主総会の決議--資本の減少の場合には特別決議ですけれども--と債権者保護手続とを必要とするということとしたらどうかというものでございます。資本減少のうちの一定の場合には普通決議でよいこととするかどうかということが後に出てまいりますけれども,基本原則としてはこのような整理をするというのが,イでございます。   ロについてですが,それとは別に--資本・準備金の額の減少を伴うかどうかにかかわらず--現行法でいう利益配当あるいは中間配当に相当するもの以外に,期中,総会決議及び債権者保護手続を経ることによって--すなわち,現在,資本・準備金の減少の際に行われる払戻しについて要求されている手続を経ることによって--分配可能限度額の範囲内での剰余金の分配を行うことができることとするという整理をしたらどうかというものでございます。   イとロがあわせて行われれば,現在の資本・準備金を減少する際に行われる株主への払戻しそのものということになりますし,しかしながら,イとロは各別にそれぞれの手続をとって実施することを妨げないという整理をさせていただくことができるのではないかというのが,ここでの趣旨でございます。   このような整理をいたしますと,ロの(注)のところに書いてありますように,債権者保護手続をとることによって,必ずしも同時に資本・準備金の減少を伴わないという場合であっても剰余金の分配が可能ということになりますし,他方,欠損が生じているということであれば,現在は資本・準備金の減少とともにする場合であれば分配することができる場合であっても,欠損を埋めた後でなければ分配することができなくなるということになるわけでございます。   ハでございますが,ロのような整理をさせていただくとした場合には,その場合の取締役の責任については中間配当と同様のものとするのを原則とし,例外的に,現行法と同様,資本・準備金の減少とともに行われる場合に限って現在の規律を維持する--分配額が減少額以下であるという場合には期末のてん補責任が例外的に課されない--という整理をさせていただくということでどうかという趣旨でございます 。   (3)の(注2)は従前も御議論いただきましたけれども,剰余金の分配可能限度額の計算に当たって,当期に分配した金銭等の価額を控除するという場合のその価額が枠取りしたものの枠そのものであるのか,あるいは現に分配又は自己株式の取得をした価額を指すべきなのかということについて,後者--すなわち現に分配又は取得をした価額--を指すということにさせていただくということでどうかという趣旨でございます。   (注3)は,恐らく次回に最低資本金に関する議論をさせていただこうかと思っておりますけれども,その取扱いのいかんにかかわらず,このような整理をさせていただくということでよろしいかどうかということでございます。   (4)の①の(注3)でございます。期中の分配可能限度額の増減には基本的に期間損益による変動を含まないということが,(注2)で注意的に書かれているところでございますけれども,他方において一定の必要もあるところでございまして,(注3)では,期中に決算手続に準じた手続--仮決算とも言うべきものですけれども--を行うことによって,その時点で期間損益を分配可能限度額に反映させるという制度を別途設けることとしたらどうかということをお諮りしたいということでございます。   (注4)でございますけれども,先ほど,○○委員の意見書にも御指摘があったところでございます。   まず,本文中の,「決算期から8週間の間は決算の確定をすることができない」という部分は不正確でございまして,8週間は定時総会の開催をすることができないというのが正しいのですけれども,そのような現行の規定について,①,②のような見直しをしたらどうかというものでございます。①は,現在,規定上必ずしも明確ではないところを明確化したらどうかということでございますし,②につきましては,関係機関の同意が得られることによって短縮・伸長を認めるとともに,不当な短縮の圧力というものを懸念するとすれば,その短縮の場合の理由を開示するというような手当てをするということが考えられるのではないかということでございます。   (4)の②の(注1)についてですが,取締役の期末のてん補責任について,現行法よりもいわば緩和した内容での責任規定に すべきかどうかという提案を試案の中ではさせていただいておりましたけれども,いろいろ御異論もあったというところでもあり,そのような見直しは行わないものとし,専ら過失の評価の問題に帰着させることとしてよろしいのではないかということでございます。   (注2)でございますが,現行の210条ノ2の第2項の規律ですと,自己株式の取得に係るてん補責任につきましては,取得後の期中処分額というものがこのてん補責任に反映する形になっておりますけれども,これは金銭の分配とは必ずしも平仄がとれていないということもありまして,この際,中間配当と同じように,取得した額自体を責任に結びつけ,これを弁済すべき額とすべきではないかということをお諮りする趣旨でございます。   2の(2)の資本減少の決議要件についてですけれども,先ほど来申しておりますように,原則としては特別決議を要求するとした上で,試案では欠損てん補に充てる場合という要件だったのですけれども,ここでは,欠損てん補という概念を要件として用いることが難しいということもありまして,定時総会において資本減少の決議をする場合であって,その減少後なお分配可能剰余金が生じないというようなときには,その決議要件は普通決議で足りるということとさせていただいたらどうかということをお諮りしたいと思います。   「(4) 準備金の積立て」についてですが,お諮りすべきは(注)のところでございます。   1点目は,イのところですけれども,利益配当の場合,現行法では10分の1以上となっておりますけれども,すべての剰余金の分配を通じて10分の1という額に固定させていただくことはどうかという点です。   もう1点目は,(注)の本文の後段ですけれども,分配する剰余金の原資が利益性のものであれば,積み立てるべき原資も利益性のものとするというように,利益・資本のつながり具合というものを確保するという手当てをすべきではないかという点でございます。   (5)ですけれども,かねてより御議論いただいているところでございますが,(注1)のような整理をさせていただくということでいかがかということを再度お諮りしたいと思います。意見照会の結果におきましても賛成意見が多数であったところでございます。   (注2)は,最低資本金の取扱いの関係で従前議論していただいたところを確認させていただこうとするものでございます。   「(6) 自己株式の処分差益の計算上の取扱い」につきましては,意見照会の結果,相当程度意見が分かれたところでございます。なかなか踏み切るのも難しいということであれば,現行の制度を維持するということでもやむを得ないのではないかというのが,ここでお諮りする趣旨でございます。   (注)につきましては,従来御指摘があるところでございますので,再度御議論をちょうだいしたいと思います。   3の(2),(3)についてですが,いずれも法務省令において所要の措置を講ずるに当たり,企業結合会計に係る議論を踏まえることが必要であるということを強調させていただこうとするものでございます。   (4)の②についてですが,「差損」以下の括弧を除く部分につきましては,これが試案の内容だったわけですけれども,意見照会の結果も賛成多数でございました。試案に対する意見照会の中では,この括弧にかかる部分を明記すべきであるという指摘がありましたので,それを踏まえた内容としております。この括弧の中を含めまして,改めて御議論をちょうだいしたいというふうに思います。   次に,4でございます。トータルで御議論いただくのが適切であろうと思いますけれども,試案の内容に明示的に変更を加えておりますのは,(2),(3),(4)の部分でございます。   (2)の①についてですが,本文の「ただし」の前の部分は試案で掲げさせていただいた内容でございます。ただし書につきまして,利益処分案等とは関係なく,株主総会決議をもってイ,ロのような事項についての決定がいつでも行えるというように整理させていただくことでよいかどうか,御議論いただきたいと思います。   ①の(注2)についてですけれども,現在,委員会等設置会社におきましては,イ,ロのいずれの事項につきましても取締役会限りで決定することができるということになっておりますが,これらを株主総会の決議事項とすべきかどうか,つまり,株主に対する分配以外の処分についてどのような取扱いにするのかということを明示的に御議論いただきたいと思います。   ②につきましては,イに(注1)と(注2)を--星印はついていませんけれども--付記させていただいております。剰余金変動計算書の記載事項等を法務省令に委ねるという点,また,先ほどの資本・準備金の減少に伴う剰余金の分配についての整理の仕方にもよりますが,剰余金変動計算書が作成されるべき場合を広げるべきかどうかという点についてでございます。   (3)についてですが,一定の要件を満たした会社において,定款をもって一定の要件の下で取締役会決議によって剰余金の分配等を行うことができるものとするという選択をした場合におきまして,そのような会社における株主の剰余金処分に関する議題追加請求権をどのように取り扱うかということでございますけれども,種々案を提示して,いろいろと御議論をちょうだいし,意見照会の結果も拝見させていただいた結果,結局のところ,このような整理をさせていただくということでよろしいのではないかというのが,この(3)の本文でございます。要は,そのような定款の定めをした会社におきましては,定款をもって株主に当該議題追加請求権を与えないという選択をするということを認めることとしつつ,そのような選択がされた会社におきましても,株主は,この(3)の定款の定め自体を削るという議題追加請求権の行使とともに行うということであれば,剰余金処分に関する議題追加請求権を行使することができるという整理が可能でございますので,このような整理でよろしいのではないかということでございます。   (4)につきましては,役員賞与等について利益処分案への記載にかかわらず株主総会の決議によって定めるという本文と,(注2)の点について,明示的に御議論いただきたいと思います。委員会等設置会社とそれ以外の会社とにおける役員賞与の取扱いの在り方について議論があることは御承知のことと思いますけれども,その点についての見直しの要否も含めまして,さらに御議論をちょうだいしたいと思います。   5の(1)の有限会社における附属明細書の取扱いのルールについてですけれども,附属明細書の作成を要しないものとするということについての説明がなかなか難しく,また,株式会社の一部のもののみを類型化して,附属明細書の作成を要しないというルールが適用される会社という類型を作るということは必ずしも適切ではないのではないかということもあり,記載内容の合理化等の措置を講ずることを前提に,すべての株式会社に共通のルールを当てはめるということでどうかというのが,ここでの提案の趣旨でございます。債権者による閲覧が可能であるということを前提にいたしますと,なかなか株主の権利が拡充されているということだけからその作成を省略することを認めるということの説明は難しいということもありますので,この際,株式会社については一律に同じルールを適用するということをさせていただければと思います。   続きまして,「第7 組織再編関係」でございます。   「1 対価柔軟化」につきましては,(注2)と(注3)の方向性について再度御議論をちょうだいしたいと思います。従前も御議論をいただいているところであり,説明は省略いたします。   2の(1)につきましては,まず,要件として,「20パーセント」のところのかぎ括弧をとっておりますので,それについての御確認をいただきたいということと,(注3)の取扱いについて--前段の部分ですけれども--総株主の議決権の9分の1に引き下げるという手当てをするということでよいかどうかということでございます。   なお,一部の株式会社について特別決議の要件を異ならせるかどうかという問題がございますけれども--本日のところは御留保いただいてよろしいのではないかと思いますが--仮にそのような取扱いをするということであれば,米印のような手当てをするかどうかということも一応考えられなくはないということで掲げさせていただいているところでございます。   (注4)につきましても,従来から指摘されている問題ですので,改めて御議論いただきたいと思います。   「3 略式組織再編行為」については,まず,括弧内の「9割以上」という要件の点についての確認をしていただきたいと思います。   また,対価の種類に伴って手続の区別をすべきかどうかという議論について,(注1)のような方向--手続を区別しないという方向--でよろしいかどうか,この点についても御議論をちょうだいしたいと思います。   (注2)についても,同様に再度御議論をちょうだいしたいと思います。   (注3)についてですけれども,意見照会の結果では,①,②双方に賛成,双方に反対,あるいはどちらか片方に賛成といったいろいろな意見があったところですけれども,そのような意見照会の結果や事柄の性質などを考え合わせますと,いずれにしましても,①,②を採用するか採用しないかについては両者をセットで取り扱わざるを得ないのではないかという感じがいたします。仮に,どちらかについてそれぞれの立場から強い反対があり,調整が難しいということであれば,少なくとも今回の改正で実現するのはなかなか難しいのではないかという感じもしているところでございます。   「4 効力発生」についてですけれども,(注2)のところで,効力の発生後登記までの間の利害関係人の保護として,第三者に対してその善意悪意を問わず対抗することができないという形で整理をさせていただくということでよろしいのではないかということの確認をいただきたいと思います。   (注3)につきましては,一部御要望はあるものの,設立一般の効力発生時の規律との関係でなかなか見直しは難しいということで,このような取扱いとさせていただきたいと思う次第です。   説明はとりあえず以上でございます。 ● 休憩に入る前に,全体につきまして何か質問がありましたら,お願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 第5の4の(4)の(注1)に引用されています「(2)(後注)」というのはどれを指すのか,ちょっと私,はっきりつかめなかったのですが。 ● 済みません,ここは従前の資料からの直し忘れであるものと思われます。   趣旨は,すべての会社,すなわち4の(1)の定款の定めのない会社であったとしても,もし仮に第5の1(4)の④のロのような手続が認められますと,やっぱり剰余金の分配の在り方が区々に変わりますので,そういうものとの関係も踏まえて考えると,ここはどういうふうに整理すべきかということについて,もう少し事務局サイドで整理が要るなということでございます。 ● (1)の定款の定めのない会社の賞与の扱いはなお検討すると,そういうふうに読ませていただけばよろしいのですね。 ● はい。 ● どうも申し訳ありません。   ほかにありますでしょうか。   それでは,ここで休憩ということにいたしたいと思います。            (休     憩) ● それでは,そろそろ再開したいと存じます。   「第5 計算関係」の「1 剰余金の分配に係る規制」でございますが,その(1)の①であります。自己株式取得,それから株式の有償消却,これ一般につきまして,財源規制をどこまでかけるかという問題でございます。   ここにありますように,①のイ,ロを除いては財源規制をかけてはどうかという案であります。特にロの関係でここに入らない,いわゆる株主保護のための株式買取請求ですね,そこに例が挙がっておりますが,譲渡制限の定めを行う際の買取請求等については財源規制がかかるという案になっております。   もっとも,財源規制がかかるという意味がどういうことかというと,財源規制を割り込むかどうかは裁判をやってみないと分からないわけでありまして,したがいまして,ここでの案は,先ほど説明がありましたけれども,取締役の責任が生ずるという意味だと。これは,決議に対する,あるいは株式買取請求のときには事前に反対意見を通知しなければいけないわけで,それを押し切って取締役がやって,それで裁判の結果やっぱり財源規制違反だったということになったときには責任を負うという意味で,株式買取請求権が行使できないという意味ではないということのようであります。   そういう案が示されているのだと理解しますけれども,まず,そういう点についてどう考えるかということについて,いかがでしょうか。 ● 大変いろいろ細かくよくお考えいただいたものを拝見しておりますうちに,イはよいとしまして,そもそもロの場合にどうして財源規制をかけないことにするのかという,そちらの説明の方がちょっと気になりだしてしまったというのが実情なんです。   従来,これは義務的なものであるのだから,やはりロについては財源規制はかけないでずっとやってきたものですから,今回改正して改めて見直すに当たっても,イと並んでロも財源規制をかけないということで来たわけですけれども,しかし,(注1)にありますような,例えば譲渡制限の定めを行う際の買取請求についてまでそうしてしまうと,いかにも穴があいてしまうのではないか,脱法的な行為もできるのではないかということでこういう制限が入ったと思うのですね。じゃあ,その場合にどう手当てをするのかということになりますと,結局,財源規制にもかかるようなほどに大勢の方が買取請求をしてくるというような場合はそもそもそういう行為を差し控えなさいということですよね。しかし,かかったとしたってわずかなんだし,あえてやりたいと思うのであれば自分の責任覚悟でやりなさいと,こういうことですよね。ですから,会社にとって義務的なものなんだからとか,そうでないかとかという基準点は,実はこういう壁がクッション材みたいなようなものなのではないか。そして,義務的といっても,そういう反対者の多いものについてはもうやめるという選択肢が常に計画遂行側にある以上,財源規制をそもそもロにかけないとすることが本当に必要だったのかなという気が逆にしてきてしまったのですが。   この案自身は大変結構だと私は思うのです。 ● いかがでしょうか。   二つに分けている意味は……。   まあ,組織再編というのは,これは企業の死活がかかっておりまして,幾らわけの分からない株主が反対しても経営者としてはやらざるを得ないということがあるということではないかと思うのですけれども,株式譲渡制限はそうでもないという……。 ● 本当に区別できるのかどうかということが気になりだしたということです。 ● ロの部分は,御指摘の点もありまして,ただ,単元未満株主は会社の方がやめようと思ってもやめられないものがあるので,また別意の問題になると。   (注1)の2段落目の,組織再編行為のうちでもそういうものがあるかどうかというのを別途御検討いただきたいという趣旨は,正に○○委員のおっしゃった趣旨です。 ● これに導かれて考えているうちにそういう気になってきたということでございますので,ねらったとおりの反応を私がしたということなのかもしれません。 ● 私も,ロの「及び」の前と後は全然質が違うのではないか--特に量的なものも含めて--と思うので,単元未満株主の買取請求の場合には,ちょこちょこはあるにしても一挙に多くないという前提があると思うし, また,これはやはり,いろいろな株主間について,全体株主のために零細株主が場合によっては不利益をこうむっているような,そういうものの代償という意味もありますから,これは特に言う必要もないのかもわからないのですが,組織再編の場合には譲渡制限の場合と基本的に同じにすることをスタンスにしつつ,先ほど○○委員がおっしゃったような特殊な事情から政策的にちょっと甘くしようかどうしようかの議論かなと思ったりもしたのですが。   ですから,私は,もしあれなら,イの場合とロの後段はともかく,組織再編の場合には,やはりそういう取締役の責任で合理的にやることがいいのかと思うのですが。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   ○○委員はいかがですか。 ● 私も,○○委員や○○委員と同じ感じを持っております。 ● このロの後段と前段は別だということですね。   いかがでしょうか。そういう意見が何人かの方から開陳されましたが。 ● 一般的に買取請求の場合に,今,先生方がおっしゃったように,もともと買取請求が発生する原因たる行為をやるかやらないかは取締役の自由であったということですから,その場合に反対者から買取請求があった,それについて弁済責任も負うと。まあ,過失責任ということになっていますので,それはあるいはやむを得ないのかなということなのかもしれませんが,ただ,ごく特殊なケースで222条の買受株式の場合,この場合には定款でいろいろな償還条項を定めるかと思うのですけれども,その償還条項に従った買受株式の買取りをやる場合に,当初発行したときの財務状態と買受けを行うときの財務状態は変わっていたというような場合には,定款で定めた償還条項とこの財源規制あるいは弁済責任というのはどちらが優先するのかという解釈問題が起きるのではないかという気持ちがいたしまして,その場合に関して明確化する必要があるのではないかということをちょっと感じているのですが。 ● 買受株式については,これは従来から,解釈論としては,恐らく財源規制の範囲内でしか買えないものだというふうに考えてきたのではないかと思うのです。それで,当然そういう枠がかかっているので,買受株式というのも結局その範囲でしかつくれないものだというふうに理解してきたのではないかと思うのですが。 ● 定款で償還条項を会社側の詳細なものを定めて,それでもって運用していこうということでやってきたけれども,それが,例えば株主の方に買受請求権を与えるというような償還条項の定めであった場合,結局,財源規制に反するような場合には株主の償還請求があっても応じることができないという結果になるのはやむを得ないという御理解ですね。 ● はい。あれはやっぱり現在の仕切りは自己株式の買受けの一種なのでということなのではないかと思っていましたけれども。 ● 今,ロの前段部分についても譲渡制限の定めを行う場合と同様にしていったらどうかという,びっくりするような御指摘を受けていて,ということは,資本に欠損が1円でもあるような会社というのは,取締役がお金を払う覚悟でなければもう組織再編行為をできないと。   こういう反対株主の買取請求というのはしょっちゅうあるわけですから,そういうものの道を封ずるということをおっしゃっているのでしょうけれども,そこまで債権者の地位を重視しなければならないのかというのがよく分かりませんで,今までのように,債権者の関係であれば,キャッシュの分配をするようなときは保護しておりますけれども,組織再編のような場合というのはニーズに基づいてやっているわけですから,債務超過にならない限りにおいては,こういう剰余金の財源規制を受けるというふうな,今までのやり方をドラスチックに変えるほど債権者の地位を高めなければいけないのか,理解できないところでございます。 ● 確かにそういう問題があるのですね。 ● 財源規制自身,割合柔軟にレベルを下げたりする手続がこの間ふえてきたということもございますね。ですから,きちっと仕切り直しをしておやりくださいというだけであって,組織再編がそれによってできなくなるということにはならないのではないでしょうか。 ● 恐らくそういう道はあると思います。ですから,減資なり何なりを絡めてやればできるのだと思います。   そうですよね。 ● 一応,原則論としてはそうです。   ただ,財源規制はどうしても簿価純資産額に拘束されますので,例えば,超過収益力はあるけれども財務上は債務超過だというような会社が他社を買収するというときには,買取請求を行使されるとみんな取締役持ちになってしまうので,そこら辺をどうするかというのが問題だと思うのです。 ● なかなか難しい問題でして……。 ● 正論としましては,実質債務超過の会社の企業再編は倒産法制の枠の中でおやりくださいということに,法律的な建前から言ったら,突き放して言うことになるんですかね。 ● 実質ではなくて,簿価上で債務超過という会社の場合です。実質上は物すごく価値があるという会社が,その価値を使って買収したり買収されたりというのができなくなる可能性があるということです。 ● ということで,やっぱりちょっとやむを得ないところがあるかなという気はするのですけれどね,前段の方も。   いかがでしょうか。一応は原案のようなところまでは何とか認めるということでいかがでしょうか。 ● 是非,是非,お願いします。 ● よろしゅうございますか,そういうことで。   それでは,一応,企業組織再編はそういうことがあるので,取締役の責任は生じないという形で御承認いただければと思います。   それから,(注2)で,次のような場合についても財源規制はかけないという考え方があり得るかということだと思います。   aは,これは一般の株式買受けとは変わらないのではないかと私には思えますけれども。これは当然配当可能利益の範囲内でやるということを決めた話なのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ● おっしゃるケースもあると思いますが,直感的には,上で営業の全部を承継するケースについて除外したわけで,営業の全部の承継と一部の承継とでどういう区別をするのかというのは,ちょっと引っ掛かる点ですね。 ● 一応,考え方だけを申し上げますと,イの方は実は合併だけが問題でありまして,合併のときにはもういや応なく取ってくるしかないということになります。合併がありなんだったら,それに準ずる会社法上の行為をとりあえず入れましょうというのが後ろの二つでありまして,もし合併がなければ,営業の全部か一部かで規律するのはそんなに合理的とは言えないのですけれども,合併に準ずる行為としてこの二つを挙げているというふうに一応整理をしているつもりであります。 ● そういう整理の仕方も確かにあり得ると思うのですが,ただ,実例あるいは実務のレベルから見ますと,分割と営業譲渡と,多少違う面もあるかと思います。   というのは,会社分割ですと,営業の全部を承継させる分割というのはむしろケースとしては少なくて,かなり全部に類するような承継であっても,大体は営業の一部の承継というケースが恐らく多いのではないかと思いますし,それから,分割の場合には別途債権者保護手続を承継会社側でやっておりますから,そういう意味では,この場合に財源規制を及ぼすというのは,営業の全部を承継する分割と一部を承継する分割とで区分する必要はないのではないかという気持ちがいたします。それに対して,営業譲受けは個別の契約ですから,多少色彩が違うかなという気持ちはしますけれども,営業の一部だというだけで分割と営業譲受けを同列に置くということはいかがかなという感じがいたします。 ● そうなりますと,○○委員の御意見は,営業の一部を承継する分割についても財源規制は外すと。 ● ええ,①のイに含めてよろしいのではないかということでございます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがですか。 ● その営業の一部の分割につきましても,是非お認めいただきたいと思っております。   実際に分割をする場合に,コングロマリットではなくて,今やろうというのは集中による分割ですから,同じ事業を営んでいるところを持ってくるのですね。そして,それが今までの関係で相互保有をしていたりすると。そういうのを残してこなければこの規制に引っかかるので残さなければいけないというふうなことまでやることではないのではないかと。   ニーズとしては非常に高いと思うものですから,よほどの弊害がない限りはお認めいただきたいと思います。 ● いかがでしょうか。営業の一部の承継する分割についても財源規制を外すということでよろしゅうございますか。 ● 例えば,債権者保護手続がとられているということもあって,組織再編行為である分割について,全部か一部かを問わずこのような扱いをするとした場合に,営業の全部の譲受けか一部の譲受けかということで差異を設けるというのもまたいかがかという話になりましょうか。   そうだとすると,営業の全部の譲受けであっても契約行為であり,とりあえず差し控えるというのもあり得るのではないかという気もいたしますけれども。 ● 営業の譲受けの方についてはいかがでしょうか。 ● 今,産業再生の問題を見ていますときに,あらゆるケースを想定することが一番いい再生につながっていくということを現実に見ているのです。そうすると,やはり変な形の規制--変な形というか,要するに,余り規制があると,そこだけに力を使ってうまくいかないというケースが,それさえなければうまくいくというようなことも当然考えられるということで,私は,このa全体をイに入れてもいいのではないかというふうに解釈しております。 ● しかし,営業の一部の譲受けというのは,これは普通の取引行為なのではないかという気がしますが。確かに営業というものがくっついているかもしれませんが。   ちょっと,なかなか細かい議論になってきましたので,いろいろ御意見をいただいて,もう一度検討するということにせざるを得ないかと思いますが,この際,こういう考え方もあるという御意見を賜れれば幸いですが。   bについてはいかがでしょうか。   bも,これもなかなかあれで,一方では,これはむしろ代物弁済なんかだとすると債権が消えるんですよね。債権が消えてこれがこうなるために,その際,財源規制はどうなるかと,こういうことなのですが,いかがでしょうか。 ● bについては,やはり財源規制を課さないと,脱法行為が非常に容易になるのではないかというように思います。 ● ただ,ちょっと気になりますのは,もしこのbのケースで自己株を取得できなかったときには,債権がほとんど回収できなくなるわけですね。全額若しくはほとんどが。そうではないですか。 ● そういう場合もあるのですけれども,これは必ずしも,それが最終的な債権,幾らかでも回収する手段だというケースだけを言っているのではないのでしょう,このbでは。もうちょっと広いから問題なんですね。 ● なるほど。 ● 結局,これは,平成13年改正前の210条の各号に書かれたものの復活……。その当時は財源規制がないから,その前のときには,3号か何かで,権利の実行のため必要あるときですか,この権利の実行のために必要であるときというのは,今,○○委員がおっしゃいましたように,他に見るべきものがなくて,それはゼロより危ないものでも自己株の方がまだプラスがあるだろうと,こういうことでやられたと思いますので,そういう要件を課せば,bは合理的かなと思うのですけれども,これだけだと極めて濫用の危険が大きいという形で先ほど○○委員がおっしゃったのだと思うので,これを少し何か制約することができないかどうか御検討いただけたら……。私も,見るべき資産がない場合には,これだけでも持っておいた方が,それは,得だという品のない日本語を使うのがいいか悪いかは別として,不合理ではないように思うのですが。 ● これについては確かにそういう問題がありまして,今,○○委員がおっしゃったような,○○委員が実質をおっしゃったような,文言のあれも含めて,なお検討させていただきたいと思います。 ● 前の方の(注1)に戻って申し訳ないのですが,先ほどの○○委員の迫力ある意見で3人の意見がぶっ飛んでしまったのですが,それはそれで,こちらの思慮が足りなかったということでやむを得ないかもわかりませんが,いろいろ考えますと,誤解なのかもわかりませんが,組織再編行為の場合の,とりわけ合併なり会社分割の場合の債権者保護がある場合には,債権者としてはこのことも配慮して異議を申し立てることは,現行法では考えられていないわけですね。しかし,やはり,いろいろと自己株の取得が多様化すると,これだけ,例えば,もうぎりぎりの6分の1近い,相当数の人が反対して,大幅な欠損状態が起こると。その場合には,債権者保護と反対株主のどちらを重視するかとなると,やっぱり債権者を考えなければいけませんので,私も,○○委員のおっしゃるようなことがあって,特にこういう場合には組織再編をした方がいいんだというふうに債権者も思うような説明をされるし,また,異議を申し立てたところには弁済しておけばそれで済む話ですから,それでいいのかなとも思うのです。   そういう意味で,この(注1)の後段の,「同様の取扱いをすべきものがあるか」について,債権者保護があるものについては,そういう手当てをすれば正に○○委員のおっしゃるとおりなのですけれども,休憩前にちょっとあった,また11年の話になって申し訳ないのですが,株式移転・株式交換について債権者保護手続がないことがこれとの関連で問題になるので,今のところ,○○委員の説得力のある御反論で私も黙りますが,そこのところを含めて,また最後のときに発言することがあればお許しいただきたいという注釈だけをつけさせていただきます。 ● では,また御意見を詰める機会に賜ることにいたしまして,これにつきましては,一応, ロの前段については○○委員の御意見に従って残す,(注2)の問題についてはなお検討ということで,しかし,ロの問題についてもなお○○委員からは御意見があるかもしれないということで,先に進ませていただきます。   次が,やはりこれも星印のついているものを最初に御検討いただくことにいたしたいと思いますが,③でありますけれども,これは,人的分割について,金銭で行う場合についてはこういう形で整理するということでありますが,この点につきましてはいかがでしょうか。 ● 私は,金銭の場合はもちろんそうですし,株式による場合であっても,(注)とセットであれば基本的にこれでいいのではないかと思います。   それはいいとした上で,むしろ確認だけさせていただきたいのですが,例えば,株式分割して子会社化する物的分割をした上で,取得したその子会社分の株式を親会社の株主に分けるということで人的分割に持っていく際に,いわゆるスピンオフという形をとって,単に取得した子会社株式を親会社株主に分配するというのであれば,これは完全に剰余金の分配というふうに考えて,現物配当と考えていいと思うのです。それで,実態は全く同じなのですけれども,よくあるのはスプリットオフというやつで,親会社の株式の一部を取り上げて,それと交換に,取得したその子会社株式を割り当てるというケースですが,この場合でも,基本的には親会社株式の取得とそれに対する子会社株式の割当てを分けて考えて,親会社株式の取り上げる分については単純な株式併合と考える,子会社株式を渡すのは現物配当と考えるという構成でいいということであれば,私は割に納得しやすい。その後,会計ルールにかかわってきますので。その点だけ確認をさせていただければと思うのですけれども。 ● そのぐらいで--そのぐらいでというのもあれですけれども,その程度のことです。 ● そのとおりだということですが,よろしゅうございますか。   ほかに,この③については御意見ありますでしょうか。   御承認いただけますか,これにつきましては。   それでは,御承認いただいたということで,先に進ませていただきます。   次は④でありますけれども,現在は実質上の減資といったような形で行われているものを,このような形でもうちょっと一般的な制度にするということだと思います。   このような本文,イ,ロ,ハとなっておりますが,基本的にこのような整理でよいかどうかというのが最初の問題でありますけれども,この点いかがでしょうか。 ● お考えをお教えいただきたいのですが,まず,④のイで,資本減少は現行法と同じ特別決議を踏襲するけれども,2の(2)で,要するにありていに言えば欠損の場合ということですが,欠損の場合は普通決議というふうに,決議要件を区別された決定的理由はどういうことか,もう一回確認的にお教えいただきたいということと,ロの(注)を見ると,結局,「債権者保護手続を経た場合には」というのは,具体的にどんな分配が考えられているのか,分かりやすい例をお教えいただければと思うのですが。その2点,お願いいたします。 ● まず,決議要件を変えたことに関しましては,るるございました。要するに,資本を減らす,若しくは準備金を減らせば配当可能利益が増えるのであるから,株主が関与しなくてもいいのではないかという意見と,他方で,資本が変わるということで会社の基礎的な変更に当たるという意見,それぞれありまして,全体として,特別決議はそのまま維持をしようと。ただし,この欠損のてん補に充てる場合というのは,要するに財産状況に比べて資本が大きく見えている状況ですから,それを適正な,というか財産に見合ったところまで落とすということについて,株主の方で決議要件を重くする必要まではないのではないかという--合理的かどうかは別として--そういう規律でとりあえずこの線で今回は切るということでありまして,一つの割り切りであります。   それから,ロの(注)の部分でありますけれども,これは別途後ろに随時払戻しの話も出てきますけれども,後ろで出てくる4の(1)の定款の定めをしていない会社でありましても,自己株式の取得に関して言いますと,期中かかわらず出ていくということにまずなりますので,それに対応するというか,手続上は対応していないのですけれども,対応するような制度ということで,株主に平等に配る手続というのを一つ設けようということが一つと,それからもう一つは,これは今回の整理の問題なのですけれども,資本減少に伴う払戻しというのだけが特別に残る形になるわけですけれども,そういう形にするのか,それとも計数の変動の問題は計数の変動の問題,分配の問題は分配の問題と整理をした上で,それぞれに従った規律を置くべきかということで,今回は後者の方を採用させていただいたと。   仮にそういたしますと,現行法制ですと,期中に株主に対して金銭を分配できる場合というのは,利益配当と中間配当と,それから減資若しくは法定準備金を減少する場合ということになるわけですが,これを,剰余金をいつでも戻せるようにしようという目でもう一度眺め直しますと,利益配当と中間配当のとき以外は資本金を減らさないとお金を戻せないという仕組みになってしまっていますので,そういう制限をかける必要はないのではないか,同じ手続がとられるのであれば剰余金をそのまま単独で戻すということでいいのではないかということで整理をさせていただいております。   その関係上,その(注)の後ろの方に出てきますけれども,現在,資本の減少があれば,欠損があろうがなかろうが,その減少額に相当する額を戻すという道があるわけですけれども,そういう特別の取扱いもせず,剰余金の分配については剰余金の分配ということで一律の規律に従っていただくというふうな整理をしていますので,典型的にどういう場合が想定されるかというと,この制度を採用しても,やっぱり資本減少の際の払戻しが典型的には想定されるわけですけれども,必ずしもその限りでなく,後ろで出てくるような定款の定めをしていない会社でも四半期配当をしたいということであれば,この制度を使えば四半期配当もできないことはないという整理をさせていただいております。 ● (注)の2行目で,「債権者保護手続を経た場合には」とあることでちょっと気になったのですが,全くの誤解なら御指摘いただきたいのですが,100億資本金がありますと。それで配当可能利益がないから,利益配当というか剰余金分配をしようと思うと,本来は100を80なり50なりにしなければいけませんと。ところが,100の資本金のまま,債権者保護手続をとって,20ほど--要するに配当可能利益がゼロのときに債権者保護手続をとって,20だけ配当に回すとか,そんなことを考えているわけではないと。 ● そこの趣旨だけ申し上げますと,ロの3行目に,「分配可能限度額の範囲内で」戻せますという形で一応書いているつもりです。分かりやすいかどうかは別ですが。   したがって,剰余金の分配は剰余金の分配ですので,きっかけの問題として,利益配当と中間配当以外のときには債権者保護手続もとってくれないと,そのきっかけすらできませんという姿にしているだけでありまして,戻せる財源は,どのような形態をとろうとしても,先ほどのイ,ロのような場合に当たらなければ,分配可能限度額の拘束がかかるという線はそのままです。 ● 私も,全く○○委員と同じところを質問したいと思っていたのですが,今のお答えを聞きましてもまだ理解できないものがございまして,④のロの2行目に,「債権者保護手続を経て」と,これがなぜ出てくるのかが分からないのです。 ● ここは,今の減資の手続をそのまま横にばらしただけですので,とりあえずこちら側からの提案としては,この程度でどうかと。   実質的に分配可能限度額の範囲内で期中いつでも戻すことについて差し支えないとするのであれば,要するに決定機関が取締役会なのか株主総会なのかという問題として整理をして,あえて,こういう場合であっても債権者保護手続は不要だと,つまり,分配可能限度額があるか,若しくはなくても,減資をすることに伴う債権者保護手続を経てつくり出した額を戻すということであれば,債権者保護手続なく,いつでも--いつでもというのは言葉が悪いのですけれども--戻すという法制にして,自己株式の方とも完全に平仄をとるというのは,一つのありようとしてはありますけれども,この段に及んでの提案でありまして,かつ現行法制の流れ方を単純に割ったということで,ちょっと控え目に提案をさせていただいたのですけれども。 ● 債権者保護手続の要件がなければ,私,すっと読んで,大変結構な提案じゃないかと思ったのではないかと思うのですけれども,債権者保護手続があるものですから,何か裏の裏が隠されているのではないだろうかというので,一体どういう事例が考えられているのだという,正に○○委員がおっしゃったのと同じ質問をしたかったのです。 ● 要するに原案はそうなんですね。定時総会時の配当と中間配当以外には,とにかく期中の配当には全部債権者保護手続をとれという非常に慎重な案が原案です。   その点は不要だという御意見だと思いますが,ほかの委員・幹事の方,その点につきましてはいかがでしょうか。定時総会時の配当,中間配当以外でも債権者保護手続は要らないということでしょうか。   それでは,「及び債権者保護手続」は取るということでよろしいですか。 ● それはそれで結構なのですけれども,そういう変更をした場合でも,(注)の方の2行目にありました,○○委員が御質問になった,「債権者保護手続を経た場合には必ずしも資本・準備金の減少を伴わない場合であっても」というのは残るのですか。私は,具体的にどういう場合が当たるのか,ちょっとよく分からなかったのですけれども。 ● もし仮にロのところを削りますと,資本の額を減らすことと払い戻すことは完全に切り離された,それぞれ独立の制度になってしまうという整理をすれば,説明的に書けばこの(注)の書きぶりは残りますけれども,理念的には全く別物であって,いつの機会をきっかけとして与えるかというだけの問題になります。 ● 要するに,剰余金が出てくるような形で資本を減らすときに債権者保護手続が要る,あとは要らないという整理になるわけですね。   それでよろしゅうございますか。   それでは,実質はそういうことだということで整理させていただきたいと思います。   それ以外に④につきましては御意見ございますでしょうか。 ● 私は従来から,資本減少に特別決議を求めることはそれなりに合理性があるかなと思ったりもしたのですが,最近は,債権者保護手続はともかく,株主の利益にむしろプラスになるような面もあるのだから,総会決議さえ要らない,あるいは場合によっては,要るとしてもせいぜい普通決議で十分だというような立場もおありだということで,後ろの方とこの方とで,後ろのようにするなら前も普通決議でも悪くないかなとふと思ったりしたのですが,これは余りにずさんですか。   ○○幹事などは取締役会でいけると言われるのではないかと思うのですが,そこら辺,余り細かに分けてもどうなのかなという気がするので。   一部を普通なら,前も普通にして悪いのかなと思ったのですが,やっぱり正規のときには現行制度をいじらないという保守的な態度を貫かれ,プラス積極的な意義づけをされているのか,それを先ほどお聞きしようと思ったのですが。先ほどはどうも,普通のときは一緒で,このときだけはそれほど必要ないから,両方とも緩めてもという思いもするのですが,特に強く言うつもりはありません,どなたかの発言を誘引するために言っただけなのですが。 ● 私は,おっしゃるとおりで,全部普通決議でよいのではないかというところまでいけそうなのですが。ただ,教科書に載っているようなものを見ますと,鉱山の鉱脈が尽きたので,そこを畳んで売却してと,そういう話であれば,これはやっぱり幾ら何でも基礎的変更的な色彩がないとは言えない。会社を半分畳んで払い戻す,そのために減資するというのがあり得るとすれば,それは基礎的変更的な要素を含むのだとすれば,そこは総会のかなり厳格な関与というのはあり得るだろうと。そうすると,厳格な,というのが何かということを言っていくと書き切れなくて,安全なのだけを書くとこれしか書きようがなくて,本当は非常に不満ですが,これだけしか除けなかったというのが,私の立場から見た場合の見方なのですが,全部いいというのは確かに引っ掛かりが全くないとは言えないというのでこんなふうになっているのではないかという印象なのですが。あるいは担当された方の御意見とは違うのかもしれませんが。 ● 時間をつぶす気は……,もうこれで結構です。 ● やっぱり,それだけ必要だと言って金を集めているわけですから,基礎的変更の面はあるのではないかということだと思います。   それでは,次に進ませていただきまして,「(3) 剰余金分配限度額の計算方法」であります。そこにつきましては(注)が新しい問題なのですけれども,(注2)は,枠ではなくて実質の分配額ということで整理するということであります。それから,(注3)につきましては,前から問題になっております,ある金額に達しない資本金による設立を認めた場合の処理という問題に絡む問題ですが,いかがでしょうか。   それについては,こういうことで御承認いただけますでしょうか。よろしゅうございますか。--それでは,御承認いただいたものとして処理させていただきます。   次が,「(4) 分配可能限度額の算定の基準時」でありまして,これにつきましては,①では(注3)と(注4)の問題であります。特に(注4)につきまして,○○委員は所用ができまして帰られましたが,たしかこれは公認会計士協会の意見に出ていたことに関係するのでありますけれども,この点,いかがでしょうか。   (注3)については御承認いただけますでしょうか。 ● 「決算手続に準じた手続」と書いてありますけれども,通常の決算のときとどこが違う手続をお考えなのか,その確認をお願いしたいのですけれども。 ● 新しい会社法のもとでの規定は同じ条文になると思います。「準じた」というのは,準用するかどうかというだけの話ですし,全く同じかと言われますと,会社法自体の監査のレベルの求め方というのがはっきりしませんので,ちょっとそこにちゅうちょを覚えたということでありまして,とるべき手続は同じです。 ● そうすると,現行の正に8週間の手続が実際にはかかってくるということですか。 ● それとの関係で(注4)もどうかという話もありまして,含めて考えていただきたいと。 ● そういうことのようでありますが。   (注4)がなかなか難しい問題ですが,いかがでしょうか。 ● (注4)については,○○委員の言われたように,実際には実務的に会社それぞれで,前倒しの計算書類の提出,監査報告書の提出ということを実際にやっている会社が結構多くて,ただ,中には,監査に相当重要な問題が多くて監査報告書の提出がぎりぎりになるというような,会社ごとそれぞれだと思いますので,そういう意味では,前倒しでできる会社については実際にそういうふうにやっているということを尊重して,前倒しで計算書類が出たから,そこから監査報告書の期間も前倒しの法律上の期間を強制するというような形で法定してしまうということについては,ちょっと消極のように思います。   (注3)も関連させてというお話でしたから,その点は,ちょっと私,念頭になかったのですけれども,(注4)だけの問題として,本決算の問題について言えば,今申し上げたように○○委員の御意見が妥当ではないかなというように思います。 ● (注3)の問題は,多分これから金融審議会で四半期決算の制度の検討に入ると思いますので,場合によるとそれに結びついた制度として,四半期配当のような話にも出てき得るところで,そういうときに,そういう手続が現行と同じようなものになるのかどうかといった点は実際上も重要な話として出てくる可能性がありますので,正に,この「準ずる」はどの範囲で準ずるのかというのをやはり大いに検討していただければと思います。 ● (注3)は念のためなのですけれども,当然,期末,この前の確定した決算で剰余金があるというふうなときに期中に分配する話,これは何も財源規制が,その中でやっているわけですから,全然問題なくできるわけですよね。配当可能利益,剰余金が負であったと,ところがフロー利益を入れると配当できる状況になったと,そういうときは臨時決算を締めなさいということだろうと思うものですから,さっき○○委員が言われた,配当可能利益がたくさんある中での四半期決算問題とこれとはまたちょっと別なのかなという気がしたのですけれども。   それから,(注4)は,もうこういう8週間とかいう規制は全部やめてしまって,とにかく会社の任意にすべてを任せる,あとは公認会計士,監査役と取締役とが協議をするということでよろしいのではないかなという気がするのですけれども。   この前,○○前委員とお話をしていて,ああいうリジッドな定めをしたがために,今ある某社の監査役で大変だというようなお話をされておりましたけれども,やっぱり実務をやってみて,余り意味のない規制だったような気がするというようなこともおっしゃっておられたこともこれありまして……。   会計監査人,監査役の方から強い御反対があるなら,もう余り申し上げませんけれども,やはり株主総会を5月30日にやってしまうとかいうふうなニーズのある会社がたくさんあるんですよね。そういう中でこういうリジッドな,短縮した場合にはその旨,その理由を開示するとかいうふうなことになると,このスケジュールを守らなければいけないような感じになってくるものですから,一切任意にするということはできないものかどうかというお願いです。 ● 経済界の方でそういう御意向があるということは十分承知しているわけでありますけれども,この期間がかなり短縮できる,任意になっていくということになりますと,今現在,会計監査人との間で最終的に適正な--いわば計算書類の作成というところが民間レベルで,そこの一種のバトルというとおかしいですが,そういうものによってきちっと確定されていくという手続が,ある業界ではよく行われているようですが,そういう実態からいきますと,やはり短縮されてしまいますとやれることに限界が出てきて,結局はサンプリングの数も減り,非常に安易な決算になってしまいかねないという部分があるように思います。そういう点では,会計監査というものの重要性をむしろ重視していくという観点からいけば,この辺の期間は余りルーズにしない方がいいのではないかというのが,私個人の意見です。 ● これは両様の意見が出されまして,ちょっと○○委員がおられないということで,なかなか今日結論を出すということは正直なところ難しいのかなという気がいたします。   では,この点は,今日の御意見を踏まえまして,なお事務局で検討するということにさせていただきたいと思います。   それでは,「② 事後のてん補責任」の件でありますけれども,(注1),(注2)が新しい問題でありまして,取締役のてん補責任につきましては,試案では改正案も出ていたのですけれども,見直しを行わないということではどうかということが(注1)。それから,(注2)につきましては,現在は,てん補責任につきまして,取得してまた売っておれば,それは差し引いて責任額を定めるわけでありますけれども,そういう売却したものについて責任額から控除するというのはやめるという案でございます。この点,いかがでしょうか。 ● いずれも賛成です。 ● 要するに,先ほどの御説明では,違法な中間配当との平仄というような表現があったかと思うのですが,違法な中間配当の場合には全額社外に流出してしまいますが,この場合には戻ってきたわけですね。もちろん,金庫株として持っている分との平仄とか何とかいうとややこしいのですが,そうすると,この弁済というのは,期末に欠損状態が生じたけれども,50なら50てん補させるべきところを,結果80戻ってくるような算数にはならないかなと思うのですけれども,そういうものではないのですか。要するに,そういう見込み違いをしたから少しおつりがあっても,全部払えという割り切りをするというのか。何かちょっと違和感があったのですが。算数の問題が間違っていたら済みません。 ● (注2)自体は,てん補責任の上限額というのはあくまで欠損額でありますので,もし仮に期中に自己株式を処分していたとすれば,その余に一切の取引がなければ,その部分は控除されて欠損額が出てくるはずなのですね,まず第一に。   問題は,その余に損失がどばっと出てきたときに,その損失分というのがどちらの責任になるか,すなわち,予測を適切にせずに自己株式を取得 してしまったことの責任なのか,単なる事業の執行の責任なのかの振り方を変えようというだけですね。 ● 現行と変えないということをおっしゃっているのですか。 ● 単に損失がなければ,変わらないのです。要するに,自己株式を取得したことによってのみ欠損が生じているというような状態を考えていただければ,期中に処分をしていると,その処分価額が全部配当可能利益に--後ろの自己株の処分差益の取扱いはさておき--入ってきますので,その分は控除されると。ですから,そこは現行法のこの手当てがなくても同じ結論になるのですけれども,そうではなくて,自己株式を処分したことに加えて更に事業の方で損失が出ているというような場合のこの損失額というのが,中間配当ですと,戻した額に相当する分は全部てん補してくださいということになるのですが,今は,自己株式の場合ですと,取得額を戻すのではなくて,そこから処分して取り戻したやつを先に引いてから払えということになっておりまして,その取扱いが中間配当の方にそろうと。 ● この制度は--本来,欠損自体について取締役は責任を負わなくてもいいということを現行法は前提にしていて,ただ,自己株式の取得を原因とした欠損についてはてん補しなさいという考え方をとってきたわけですよね。つまり,欠損のてん補なのですけれども,しかし,今おっしゃられたように,ほかの事業の失敗による欠損てん補責任というのは本来なくて,経営者というのは本来ビジネスをやっていて,そういうことが起こったときに自腹を切って埋めなさいという話ではなかったと思うのです。そういう意味では理論的には非常に巧妙につくられている条文だと思うのですが,何かこれを設けておくと不都合なことというのはあるのでしょうか。 ● これはいろいろととらえ方はあって,てん補責任がそもそも自己株式の取得によって生じたのか損失によって生じたのかというのは,考え方は多分二通りありまして,事前の財源規制を守って取得していることを前提にすれば,期末に生じた欠損というのは事業損失以外のものではあり得ないことになります。その考え方からすると,事業損失が起きてしまったときに期中に分配をしていたというときに,どちらの責任だとして先に埋めていくかという問題だと思うのですね。もし仮に事業損失が生じてしまって分配をしていたときに,分配額相当額は先に取締役が埋めろという理屈をとるのであれば,そこは中間配当も自己株式の取得も分ける必要はないということで,こういう形になりますし,おっしゃるように損失の性質をやや分けて,混然一体のものとして考えれば,現行法の形になる。まあ,いずれもありますけれども,財源規制の一本化の中で,考え方をこういう形で整理してしまったということです。 ● ということは,やっぱり平仄を整えるということが趣旨でということで,弊害があるという話ではないと。 ● ええ。 ● 今の御説明をちゃんと理解していなかったので,私,誤解しているかもしれないので,誤解していたら教えていただきたいのですが。   私は,この(注2)の考え方というのは,従来,自己株式の取得を損益取引として位置づけて,自己株式に関する損失というのは,取得した自己株というのはあくまで金庫株制度のもとでも暫定的に保持しているだけで,それが処分されたときに初めて損益が確定することになって,そのときに初めて損失が生じるという考えが従来の商法210条ノ2の2項なんかの考えだったと思うのですけれども,それをやめて--なぜやめるかというと,金庫株のようになって,実際,ある取得した自己株が一体どこで処分されてどこで損益が確定したかというのをたどること自身がある意味で難しくなってきますので,そういうような考え方はむしろやめてしまって--一たん取得したのは取得したところで確定させてしまって,後で実際にそれを売却して利益が上がれば,全体として会社に超過損失がないという方で処理すればいいという考え方をとったのかなと思っていまして,その意味で,会計的に言えば自己株の取得あるいは処分を損益取引から資本取引的に考えていく流れの中でこういう御提案が出てきたのではないかと思っています。したがって,これは後の2の(6)とちょっと関係してくる問題であって,その意味では,むしろ逆に2の(6)の方はそういう考えに必ずしもなっていないわけで整合性を欠くけれども,私は,本来はこの(注2)の方の考え方で,アメリカで行われているような,損益取引ではなくて資本取引的に考えていくという方が筋ではないかという気はしています。その意味では(注2)に賛成であります。 ● 私も○○委員のように考えて,賛成と思っておりました。 ● これはその辺の,本当に原案が平仄が合っているのかどうかという問題もありまして,ちょっとなかなか難しい問題なんですよね。 ● 私も,今,○○委員がおっしゃったことが理屈ではやっぱり正しいという感じがいたします。   本来,自社株の売買というのは,自社株の取得は利益配当と基本的に同じ,株主への払戻しでありますし,その取得した自社株を売却するというのは新株の発行と基本的に同じでありますので,その限りで,配当をしたことに対して責任を負うのと同じように,自社株を取得したことについて責任を負うという構成をとるのが,理屈では首尾一貫すると思います。   ただ,問題は,今,○○委員が指摘されたとおり,後の自己株式の処分差益の取扱いの問題で,それと平仄が合っているかどうかというところで合っていないもので,ちょっと苦しいかなという感じはいたします。 ● では,この問題はその問題にも絡まっておりますので,結論はちょっと留保して,先に進ませていただきたいと思います。それでよろしゅうございますか。   それでは,次に,2の(2)の点であります。これは先ほど○○委員から御発言があった点でありますが,この点はいかがでしょうか。 ● ○○委員もおっしゃられたように,この場合は少なくとも取締役会決議でできるということにしていただきたい。 ● そこまでは言ってない。 ● 形式上の減資でも,そういうことになったことについて取締役には何らかの責任があるわけで,ですから,やっぱり総会にかけるということは必要なのではないかというふうに私は思いますけれども。   まあ,そういう欠損てん補だけを目的とするものと株主に払い戻す場合について要件を分けるということは,これは諸外国でも例がないわけではありませんので。   いかがでしょうか,この点につきましては。一応御承認いただけますでしょうか。--それでは,御承認いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次が,「(4) 準備金の積立て」に関する問題であります。これも(注)の方が問題でありますけれども,こういう形で整理するということでありますけれども,いかがでしょうか。 ● 確認させてください。   (注)の一番最後のところで,「この場合において,積み立てるべき原資は,分配する剰余金の原資の区分によるものとする」とありますので,例えば分配をこの後に書いてある自己株式の処分差益から処分をしたという場合には,その処分差益に該当するその他資本剰余金から積み立てるという,そういう考え方になるわけですね。 ● そうだと思います。 ● 現行の制度を前提とする限り,多分そうなるのだと思いますが,これは既に議論の前提だから余り言うのはいけないと思うのですけれども,その前にある,利益準備金と資本準備金とを単に準備金として全部まとめて考えるというところにまで返ってくる議論だと思うのです。私は,ありていに言えば,利益準備金という制度があることが話を複雑にしているという感じがして,そういうことを言っても今すぐ制度改正できませんから,当面は一応これでやむを得ないと思うのですけれども,将来,基本的な検討の方向としては,利益準備金という制度の廃止も含めて議論をしていただければというふうに考えております。 ● ちょっと今回は恐らく無理なので,これは将来の課題としてメモさせていただきたいと思います。   この(注)につきましては,今回の案としてはこれでよろしいでしょうか。--それでは,御承認いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次に(5)でありますけれども,これも,(注1),(注2),このあたりが新しい問題かと思いますけれども,いかがでしょうか。 ● この問題については,ここでかつて○○関係官と大分議論させていただいたところなのですけれども,一方では,今,○○委員が御指摘になったような,そもそも利益準備金等をどう考えるかということにも実はかかわってくるのですけれども,確かに,この(5)の改正が従来のような制度をとることは法技術的に言えば余り意味がないということでの提案であると理解していまして,それについては,私も,法技術的に言うとそうなのかなと思います。   ただ,一つ,前に気になったのは,それこそ先ほどの減資に関する手続が準備金の取崩しなんかとまだ手続で違いが残っていますし,実際の実務界からすると減資を行うことの心理的な抵抗感が残っていますので,この規制は法技術的には余り意味がないということかもしれませんけれども,実際上はかなり意味を持っていましたので,それを一遍に廃止することにはやや慎重に考えたらどうかという感じを持っていたのですけれども,そういった実際上の効果を含めてこういうふうに整理するという全体のお考えであれば,特に強く反対するものではありません。 ● いかがでしょうか,ほかの委員・幹事の方。   では,これも特に御反対の発言がなければ,御承認いただいたということでよろしいでしょうか。 ● もう1点つけ加えさせていただきたいのですが。   (注2)の方のことなのですけれども,これは前から結論には多分異論はなかったのでしょうけれども,御存じのとおり,EU諸国では,いわば資本の維持義務を規定している方がむしろ普通であって,それが満たせなくなったときは増資義務あるいは会社の破産の申立義務等を課すという法制が普通でありまして,日本も戦前は破産の申立義務を課すということだったのですけれども,今後,会計の在り方が変わっていって時価会計が徹底していけば,会社の役員として,そういった本当に時価会計的な制度のもとで財務状況が非常に悪くなったときにむしろ倒産申立てを義務として設けるというようなことは再び考えていいときが来るのではないか。現に保険業法はそういう義務を取締役に課しております。これは,財務の将来収支分析を含めて会社の存続が難しくなったときには取締役がそういうことを申し立てる義務があるということを保険業法は規定しておりまして,将来的にはそういったことも考える必要があるかと思います。 ● それでは,それも将来の課題としてテークノートさせていただきます。   よろしゅうございますか。   それでは,先ほどの論点にも関係いたしますが,(6)でありますけれども,これにつきまして,いかがでしょうか。 ● 私も,先ほど○○委員,○○委員がおっしゃいましたように,この点は現在の制度を維持するということで本当にいいのだろうかという気持ちが残ります。   そして,特に(注)につきましては是非,金銭以外の財産の場合ということになりますと,これはもう現物出資と同じようなことになるわけですから,現物出資と同様の規制がかかってくるようにしないと,これもつじつまが合わないのではないかというように思っております。 ● いかがでしょうか。   ただ,自己株式の処分は,これは全く新株発行と同じ取扱いにできないことは確かですね。簿価取得,取得価額相当額までは戻るということにしないと,何のための金庫株制度をあそこでやったのか分からなくなりますので。そもそもその前から,純粋に消却のためならば幾らでも自己株式を取得できたわけですから。   ということになりますので,取得原価を超える部分についての話なんですね。   いかがでしょうか。 ● 念のために補足いたしますけれども,先ほど申しましたように,基本的には自己株の取得と売却というのは,取得した段階が利益の払戻しといいますか会社財産の払戻しであって,それを再び処分した段階では新株の発行という性質を持つのですけれども,今,○○委員がおっしゃられたように,実際にそれは繰り返し繰り返しセットで行われますから,会計上もネットでとらえているのですね。つまり,買って売った差分だけをとらえている。   ただ,その場合であっても,その買って売った差分である売却益というのは,自社株を売却して得たキャッシュの一部でありまして,基本的な性格はやはり出資に近い性質を持っていことは否定できないと思うのですね。その意味で,理屈から言えば,特に会計上の理屈から言えば,これは払込資本と非常に近い性質を持っていると思うのですけれども,ただ,私は会計分野の人間であって,基本的に,このオンバランスになっている自己資本といいますか株主持分についてどういう配当制限をかけるかということは,企業会計上の観点を離れた純粋に会社法的な問題だと思っていますので,この会社法部会で委員の方の御意見がこれについて配当制限をかけないというのであれば,特にそれ以上申すつもりはありません。基本的な性格は払込資本に近いということだけ申し上げますけれども,それ以上特に強く申し上げるつもりはありません。 ● いかがでしょうか。そういうことで,会社法部会としてはどう考えるかということなのですけれども。 ● 是非,現行どおりとしていただきたいと思います。 ● 原案どおりということですね。 ● はい。この原案です。 ● 1の(4)②の(注2)の話と関連するのですが,私も,理論的に言えば,(6)は,検討すると言われていたような,要綱試案のように差益は配当原資としない方がいいと思うのです。その限りで,私も,(注2)にあるなら,(6)はどうなってるんだろうなという感じがするので,少しでも改善だといえば,(注2)は,それほど強い反論もなければやっておいて,次の改正の段階で(6)を考えればいいのかなという気もいたしますが,(注2)を先ほど○○委員や○○委員がおっしゃったような形で整理するなら,やっぱりこちらは現状を変更する方が筋かなという気がいたします。 ● ただ,(注2)も,先ほど言いました取得原価まで戻る部分についてもだめなのかという話にもなってくるのではないかという気もするんですよね。 ● そこら辺を先ほど言いたかったのです。   特に,(注2)については,差益ではなくて,これは全部が無視されることになるのですね。だから,ちょっとそれはきついかなという感じもしないではなかったのですが,(6)との関係の整理ができないまま先ほど発言いたしましたが,しかし,(注2)と(6)はやっぱり整理をした方が,部会としてはいいだろうなと思います。 ● これは,なかなか論理一貫して説明できるかという問題もありますので,これもなお検討するということにさせていただきたいと思います。   それでよろしゅうございますか。この際,何かつけ加えて御意見あれば,どうぞおっしゃっていただきたいと思いますが。 ● 私,筋としては,この(6)も本来資本取引として扱うということだと思っていますが,恐らく,更に検討していくと,現在,資本取引とした場合は現行法で言えば資本準備金になりますので,その取崩しに債権者保護手続等が出てくると。新株発行とどこまでパラレルに制度をつくっていくかということも多分意見の分かれるところで,現行法でも資本充実に関する規定はほとんど準用していなくて,そこら辺のところで既にアンバランスのあるルールになっているわけで,それをどこら辺までバランスさせるか,どこまでが合理的なのかというのは非常に難しい話で,下手するとしっぽが全体を振り回して,資本準備金等に関する債権者保護手続をどこまで見直すかという話になるかもしれないのですけれども,そこまでいくと大きい話にもなりますので,どこかで線を引かざるを得ないと思っていまして,そこら辺は事務局に適切なバランスを考えていただければと思います。 ● 完全に消却と同一視するというのは,理論的には非常にすっきりするのですけれども,そんなことのためにあの改正をやったんですかということを○○委員はおっしゃると思うのですよね。何のためにやったんだと。ですから,これはなかなか難しいところだと思います。   それでは,そういうことで,もう少し検討させていただきたいと思います。   それでは,3の(2),その次の(3)の(注),これは両方,結局は,「企業結合会計に係る議論も踏まえて,法務省令で所要の措置を講ずるものとする」という点がポイントかと思いますが,いかがでしょうか。両方あわせてそういうことでよろしいでしょうか。 ● 企業会計の問題にかかわっている人間として,まず御礼を申し上げるということで,感謝をしたいと思いますが,ただ,ちょっと気になっていますのは,これはたまたま星印がついていない部分で,本当は後で議論すべきところなのですけれども,そのすぐ上の(3)の①,②で,合併・分割あるいは株式交換・株式移転の際,「増加すべきものとされる資本又は準備金の増加をしないことを認める」と,これはもちろんこれでいいわけであって,合併・分割でなくて通常のときでも,債権者保護手続をとれば資本や準備金は取り崩せますから,それで平仄は合っているわけですが,ただ,3の(1)の株式交換・株式移転の場合の資本の増加限度額,これが,「完全親会社となる会社が取得する株式の価額を基準として」となっておりますので--これはこれでまた会計上正しいんですよね。いわゆるパーチェスのやり方で,国際的にはこれしか使えませんし,日本もよほどの例外を除いてみんなこれになっていますから,正しいのですが--この部分と,先ほどの「増加すべきものとされる資本又は準備金の増加をしない」ということが結びつきますと,かなり大きな問題が生ずる可能性があるのです。   というのは,会社を取得したときに,取得の対価として自社株を出すその時価で資本を増加させますので,当然,取得される側ののれんの期待分がそこにみんな入っているわけですね。つまり,将来の超過リターンの期待にすぎないものが現在の資本の増加分に入ると。それが直ちに取り崩されて,すべて配当財源に入る可能性がありますので,その考え方が,従来の,あるいは現在の商法の法体系になじむかどうかということは多少気になるところなのです。つまり,債権者の同意を得て取り崩す,それで債権者がオーケーしたものは分配を認めるという観点からは,完全にこれは首尾一貫しているのですけれども,その議論の前提は,あるオンバランスになった資本の額が前提になっていたのですね。ところが,この3の(1)で入ってきたのは,これはオンバランスにする資本の額が従来と違う可能性がある部分が入っていまして,その分がストレートに配当財源に入る可能性がある。そうしますと,取得した会社の将来の超過リターンという,全くとらぬタヌキの皮算用かもしれないものが現時点ですぐ取り崩されて配当財源に入るということがこの会社法の体系としていいのか悪いのかということは,やや難しい論点ではありますけれども,検討する必要はあるのではないかという感じはしております。 ● 私がさっき申し上げた,株式交換等について債権者保護手続が本当に要らないのかという問題,前に申し上げたのは,正に今,○○委員がおっしゃったようなことが起きるからでありまして,そういうことを含めてもう一度チェックしていただければと思います。 ● 何か法務省としてはコメントありますか。 ● 問題は認識しております。要するにのれんの取扱いを今後どうするかという問題だと思います。   ここ一連の話と別の問題として評価できるのではないかと思っていますので,のれんを計上したときの配当拘束の在り方ということで考えさせていただければと思います。 ● そういうことも含めて法務省令で考えるということなのではないかと思います。   そういうことを前提で,この星印につきましてはよろしゅうございますか。   それでは,次に(4)の②,合併差損等の差損の話でありますけれども,いかがでしょうか。自己株式の処分差損を除いてこういう形にするというのが,要綱試案に関する意見照会では支持が多かったということのようですが。 ● 差損が剰余金の範囲内であるとか,一定の場合においてはもう株主総会の決議は要らないというふうにしていただけると有り難いのですけれども。そういうことに理由があればですね。 ● ここの前提は,組織再編に伴って,受け取る側の会社の方に差損が生じると。その処分権限は一体だれにあるのだろうかという問題だと思うのですけれども,内部でもいろいろ検討した結果,線引きは非常に難しいと。僅少だとか何分の1だとか何とかいうのは額的に難しいものがありますし,差損が生じているのも,相手方に本当に実財産がない場合や,こちら側が対価として支払ったものが高かった場合,種々考えられますけれども,その切り分けは非常に難しいと。唯一ここに書いてあります自己株式だけは新株発行のかわりに交付するものですから,こちらで差損が出るために新株を発行しなければいけないということになるのはやや理不尽であろうということで,こういう形にするのですけれども,その余のものについては我々のサイドでもいい知恵がなかったということでありまして,その点で御了解をいただければということです。 ● そういうことでこの原案はできているということでありますが,御承認いただけますでしょうか。 ● 確認ですが,これは株主総会の特別決議でございますね。 ● ええ,合併に際しての株主総会の決議ということになりますので,そうでございます。 ● よろしゅうございますか。   それでは,先に進ませていただきまして,4の(2)であります。ここはいろいろ論点は多いところでありますけれども,まず,(2)の①のただし書,それから(注),このあたりを特に御審議いただきたいわけでありますけれども,いかがでしょうか。 ● 質問なのですが,前に教えていただいたのかどうか,ちょっとよく分からないのですが,少しイメージがわかないのですけれども,このロの,「「株主に対する剰余金の分配」以外の分配」というのは,例えばどういうものでございましたでしょうか。 ● 現在で言えば,役員賞与が典型的には当たります。役員賞与以外の場合でもやっている例があるか,ないか,いろいろあると思うのですけれども,要するに損金計上したくない寄付金のタイプが含まれるものと思われます。 ● 損金計上したくない寄付金というのは株主総会で自由に決めてよいと。 ● はい。今ですと,寄付金を寄付したいというときがあったとして,税法上損金に算入されるのであれば当然損金算入して処理するわけですけれども,税法上損金算入されないやつをわざわざ損金に入れて,まあ余りいいとは言いませんけれども,当期純利益が小さく見えるということであるならば,あえて損金算入せずに,株主総会の決議で利益処分でやりましょうと。これは役員賞与が その理屈の典型的なものですけれども,そういうものがありやなしやというのが……。   実務上使われているのはそういうことだと思います。伝統的に言われているのはもうちょっと別のものもあると思うのですけれども。 ● それは,寄付の責任を後で株主から問われないゆえに,あえて利益処分で株主総会の承認をとっているという会社があるということですか。 ● あるかもしれないと。 ● 主観的事情までは聞いていませんけれども,幾つか見られるということですね。 ● いかがでしょうか。特にただし書で。   イについては,従来,たしか○○幹事等から御意見があったところだと思いますので,御承認いただけるかと思うのですけれども。   ロについてもそういうことだということですが。 ● (注2)の方ですが,要するに,これまでできていた委員会等設置会社については役員賞与はもうできないという前提で議論したと思うのですが,役員賞与を認めることとして,しかし,それは利益処分とは別個の--まあ,利益処分になってもいいのですが,総会決議事項だぞと,こういうことがこの(注)で書かれているということでよろしいわけですね。 ● ちょっと賞与との関係は難しいのですが,賞与との関係は別途,(4)の(注2)に出てきまして,要するに,役員賞与の額自体を株主総会で決めるものなのか,報酬委員会で決めるものなのかという問題はありますので。   その余の部分についてはそうです。すなわち,現行法ですと,役員賞与以外の利益処分は何があるのかという問題は置いておいて,一応,委員会等設置会社では取締役会決議限りでできるとしておりますが,今回は区別なくこういう制度に一本化するということであれば,ここの部分についてはこうではないかと。   役員賞与の部分については,また役員賞与の部分で。 ● 利益の資本組入れについては,293条ノ2を取締役会の決議事項にしていますが,それもやめるということですね。 ● そうです。 ● ついでに,米印はついていないのですが,この4の(前注2)のことで,「(1)から(3)までについては,委員会等設置会社についても,同様とする」けれども,これは当然にこうなるけれども,定款の定め以外のルールが委員会等設置会社にも妥当するということでよろしいわけですね。 ● 議論の前提としては,私どもの認識している限りにおいては,委員会等設置会社も,定款でこの制度を採用するかどうかを決めるということであったかと思いますが。 ● 現行法が。 ● 現行法は当然になりますね。 ● だから,現行法とそこも変えるという趣旨ですね。 ● そういうことでございます。 ● そうすると,このイ,ロについて,委員会等設置会社についても総会決議事項にするという(注2)については,これはこうするというお考えでしょうか。それでよいというお考えでしょうか。 ● なぜ現行法を変える必要があるのか,むしろ変える方の理由の説明を伺いたいのですが。私自身は,特に変える必要があるのかなという気がするものですから。 ● 資本組入れの方は配当しにくくなってしまうからということなのではないでしょうか。 ● その限りでは委員会等設置会社でも株主のコントロールを強くした方がいいということでしょうか。 ● 利益処分全体について,今,委員会等設置会社の場合は,株主総会権限とするのか,取締役会権限とするのかという,そういうフェーズで議論されていたと思うのですけれども,今回は,各別にばらばらに分けますと,(1)のような定めをする,すなわち,株主に対して会社の剰余金を分配するというのは,株主にとっての利益になると言ったら変ですけれども,その限りにおいて取締役会と株主総会を選択できると。   その余の利益の使われ方がされるのであれば,それは,委員会等設置会社とその余の会社で,まあ区別する合理的な理由がまたどこかにあればあれなのですけれども,そんなに強いものでないのであれば,そろえてしまった方がいいかということです。 ● 私の感じでは,少なくともさっきの役員賞与については,むしろ後の問題にもかかわりますけれども,これはやはり委員会等設置会社に報酬委員会等を設けた趣旨から考えて,これを変更するのは反対だと考えております。   それ以外についても,少なくともロについては果たして変える必要があるのかなという気がしておりまして,剰余金分配等について取締役会に委ねると,広い意味での会社の剰余金・資金管理を取締役会にゆだねた委員会等設置会社の趣旨から,ロについては引き続き現行法と同じでいいのではないかと。   ただ,イについては,確かにおっしゃるようにあくまで枠の設定だけだということであれば,その限りで株主のコントロールの余地を大きくすることはあり得るかなという感じはします。 ● そうしますと,委員会等設置会社であろうと,こういう定款の定めを置いたそれ以外の会社であろうと,ロについては同じ問題だと。 ● ロについて,委員会等設置会社以外の,いわゆる監査役設置会社はまた別に考えてもいいのではないかと。とりあえず今意見を申し上げたのは,委員会等設置会社についてのことであります。 ● 事務局側の検討の過程の話だけをさせていただきますと,利益の資本組入れというのは,また減資すれば株主に戻ってくるのですけれども,ロの方は払い戻してしまったら絶対に株主に戻ってくることはないのですね。ですから,処分権限の大きさとしてははるかにロの方が対株主との関係では大きいものですから,そこら辺を踏まえると,イはだめだけどロはいいというのはなかなかとりにくい,逆ならまだしも,という感じなのですけれども。 ● 私は,委員会等設置会社と監査役設置会社とで,この点については変える必要がないというふうに思うわけですけれども。逆に,ロの場合について,一体,株主総会の過半数を牛耳っている者であればどこにでも自由に寄付なり何なり無制限に決めることができるのかと,そっちの方がむしろ心配になるぐらいで,当然これは制約がかかってくるだろうということを内心思いながら今お話を伺っていたようなわけです。   ○○関係官がおっしゃいますとおり,本当に大きな権限なわけですね。それを,今まででしたら,取締役会の判断に任せていたときだって,これは当然全体的に考えて,会社のためになる寄付であるということが一応はかかっていたと思うのですけれども,株主総会であれば無制限にどのように処分してもいいのだということにはやっぱりならないのではないか。役員賞与であれば,それは会社のために働いてくれた方に対する賞与,報酬ということになるわけですし,それ以外のものの分配でしたら株主平等に扱われる。そうでなくて,だれか特定の人に利益を渡してしまうということが,49%の者が反対しても,自由にできてしまう。そこにはやっぱり当然,その寄付が広い意味では会社のためになるとか,そういう制約がかかってくるということですね。 ● もちろん,株主以外への処分だと称しているものが,実質的に株主平等原則に反するとか,そうなってくると問題ですが,そういう問題がなければ,やっぱり利益処分としてできると。例えば,何とか大学に寄付するということはあってもいいのではないかというふうに思っておりましたが。 ● 営利目的との関係からいたしますと,我が社は配当はしないで全部公益的な目的で寄付するというような決議がなされて,49%の株主は反対できないというようなことになってしまったら,これはちょっと会社の本質論から言っておかしいことになりませんか。 ● 程度問題は確かにあろうと思います。営利法人性を疑われるような決議は確かに問題なのかもしれませんが,そこまでいかないものだってありますので。 ● いかないものだと思いますが,たまたま51%持っている者が,それこそ自分の関連のところに寄付をするとかいうような話だってあり得るわけですし,当然,社会的な合理性といいますか相当性といいますか,何かないとおかしい……。 ● それは,特別利害関係とか株主平等原則とか,そういうことにかかわってくれば,それはまた別の話だと思いますが。 ● ○○委員が心配されていることは,この提案から新しく出た話ではないですね。そういう例を出されたからビビッドになっただけで。 ● そうなんです。それでちょっとびっくりしたのです。 ● 何か余り考えないでもいいんじゃないかという気がするのですが。 ● ここのロの問題は,多分,先ほど○○委員がおっしゃられた問題に尽きているのではないかと思うのですが。もしロの方法をとらなくても,取締役自身が業務執行の判断としてだれかに寄付をするということについては,これはできるわけでありまして,それがもし不当なもので会社に損害を与えるものであれば,それは善管注意義務違反として責任が問われると。   ただ,もし利益処分で株主総会の決議に従ってやったとなると,そこに責任が生じるのかどうかというのが分かれ得るということになる効果があると思うのですけれども,その違いでしかないので,要するに,会社がだれに処分することができるのが50%でどうこうという話ではなくて,事後的な責任追及のやりやすさといいますか,そこに吸収されてしまう問題が大部分を占めていると思うのです。 ● 今の○○関係官の説明で,私の最初の疑問に戻って,そもそも,正にここで言っている「「株主に対する剰余金の分配」以外の分配」として行われるのはどんな場合かという話に結局戻ってしまって……。さっき,○○関係官が,私の意見に対して,イに比べてロの方が外に決定的に出ていってしまうという意味ではより重大ではないかとおっしゃいましたけれども,普通の寄付という--損金の形であれば,正に取締役はできるわけですよね。それとこのロがどう違うのか,どういう場合にそれによってどういう違いが出てくるのかというのがいまだに腑に落ちないところがあって,もし余り変わらないのだったら,同じように考えればいいのではないか。だから,私,さっき,委員会等設置会社では,そういう会社の経理に関する取締役の権限の中に含めて考えるのではないかと思っていたのですね。   ロに入ることによって何で決定的に大きい違いが出てくるのか,そこがどうもよく分からないという気がしております。 ● 私も,従来型の会社についていろいろ,こういう問題についても委員会等設置会社と規律を調整しようというか不均衡を是正しようということは分かるのですが,議題提案権はまた別の議論がありますけれども,この4の(1),(2)に書かれていることについては,委員会等設置会社に移行する会社は,基本的に利益処分権限も取締役会にあるものだと思ってこれまでは選択したと思うのですね。   それを,定款の定めでどうのこうのとか,あるいは,利益処分というのは自分たちがやれるものだと思っていたのに2年か3年してまた変わってしまうというのでは困るので--おっしゃるように,利益の資本組入れは確かに293条ノ2で特別の規定があり,これを利益処分の中でやることもできたし,それ以外のことでやることができたけれども,これについては委員会等設置会社の場合にでも無理に取締役会の権限にすることはないということで,やはり資本の枠組みだから株主に任せましょうというのは一つの合理性がありますから,イについて株主総会の決議事項にすることは,体系的整合性の観点からは分かるけれども,委員会等設置会社についても取締役会に利益処分権限を付与する場合には定款の定めがあり,そして,利益処分案あるいは損失処理案と言っていたものをいろいろとブレークダウンしてああだこうだというルールを委員会等設置会社に強制することはどうかなということで,少なくとも,この(2)の①のイについて修正を図っても,それ以外は基本的に変えないということで,しかし,監査役設置会社についてでき上がったものと比べてみてやはり合理的でない差があるという形になったら,委員会等設置会社も少し見直そうかと,委員会等設置会社の場合はそういう手順にしていただいた方が議論が混乱しないかなという気がするのですが。   この案が絶対だめだとは言わないのですが,なぜそんなに委員会等設置会社にしなければいけないか。ただ,議題提案権とか何かの関連から言うと,こういうことにしなければいかんということになるのかもわかりませんが。   そして,もう一言,委員会等設置会社について,定款を変更して株主総会の方に戻せるかどうかの議論がありますが,これは戻せるという考え方が相当有力でありますので,現実にその問題はまだ起こらないと思いますけれども,そういうことで少しはバランスがとれるので,余り,委員会等設置会社も当然だということで並行する議論は少し避けた方がいいかと思ったのですが。 ● 分かりました。委員会等設置会社については,確かにロはやめた方がいいんじゃないかという気が,私も,○○委員の御意見を聞いて思いましたが。 ● もともとこの話が始まったのは,委員会等設置会社と他の会社の利益処分権限が違うということについて,合理的な差,その理由がないのではないかという政治的なあれだったと。   それを調整すべく種々いろいろやってきたのですけれども,もし仮に,ロのようなものというのは,要するにここに出てくるものにまともなものというのは余りないのですけれども,その程度のものでしかないものについてあえて差異を残すということは余り賢い選択ではないのではないかと我々は思っておりまして,したがって,役員賞与のように構造的にそうすべきではないかと思われるものはそうだと思うのですけれども,こういうロという制度の端っこの端っこで,ほとんどの会社ではおよそ想定できないようなものについて,殊更に委員会等設置会社と他の会社ではガバナンスの構造が違うので,利益処分で他人に寄付するときには取締役会でできますという差異を設けるというのは余り,政治的な観点から言っても適当ではないのではないかと。 ● ですから最後に調整されたらいいので,現在の監査役設置会社について,こういう分配権限を取締役会におろす場合にどの規制が合理的かで,ロの場合は,監査役設置会社でもこんなのいいという話になるかもわからないのですね。したがって,そっちの方をした方がいいだろうと,それだけの趣旨です。そして最後に整理したらいいだろうと。なぜロが出てくるのかがよく分からなかったのですが。ともかく,委員会等設置会社はそれなりのものとしてみんな理解しているから。ただ,監査役設置会社形態のものを見た後,その中でできるだけ一緒にすることは賛成なのですが,ただ,これを一緒にやりますと何かごちゃごちゃするかなという趣旨だけです。 ● 私,多分,○○委員がお考えになっているところと一緒になるのではないかと思うのですが,私自身も,このロの「「株主に対する剰余金の分配」以外の分配」というのはほとんどが役員報酬の話であるとすれば,それはそれでまた後から議論することにしまして,それから,解釈上,寄付を株主総会で決めていいかどうかというような問題はもちろん残ると思いますが,現実に問題になることというのはそんなにないのではないかと思うのですね。やっぱり損金で処理できるものをあえて利益処分という格好で寄付をしたいという会社も少ないと思いますし,そういうことが生じたとしたら,もうそのあたりは解釈でみんなでいろいろと検討すればよろしいわけで,あるいは裁判所の方で適切に判断いただくように悩んでいただいたらいいわけで,あえて立法でもって,そういうことができるのだということを正面から言うようなことはこの際しなくてもいいのではないかと思うのですけれども。   となると,結論的に,委員会等設置会社と違う規定を設けるということにならないということになるメリットがあると思うのですが。 ● 監査役設置会社では,このロの問題というのは,取締役会限りでも寄付ならできるわけだし,しかしあえて総会にかけたいというときの話なんですね,恐らく。それについて,委員会等設置会社では,利益から出したいといったときに,この(注2)の案というのは,それは総会にかけなければいけませんよという規制を置くということなのですが,そこまでやる必要はあるのかというのが,○○委員や○○委員のおっしゃったことなのではないかと思うのです。 ● もうロを削除していただければ有り難いのですが。 ● ロ自体を,役員賞与を除いては,削除してしまうというのが一番の解決なのですけれども。 ● それでは,もし御承認いただけるなら,もうロはこの本文からは落としてしまうということでよろしいでしょうか。 ● ロの削除は全く賛成なのですが,イの方がどうなっているのかと。利益の資本組入れなのですけれども,○○委員もおっしゃいましたように,これがどうしてここに今出てくるかというのが若干疑問でありまして,確かに監査役設置会社との並びということではそうかもしれませんが,委員会等設置会社の場合については,いわばコーポレートファイナンスの問題は取締役会で決めるという一つの一貫した考え方で行っているのだろうと思うのですね。ここでこれを入れる理由というのが,もちろん,株主に対する利益配当をなるべく促進したい,だからその逆の方向になるようなものは少し特別なそういった配慮から厳しい条件にするということは,一つの考え方ではあると思うのですが,わざわざこれだけを今,委員会等設置会社のルールを変える必然性がそんなにあるのかどうかというと,若干疑問のような気がするのですけれども,いかがでしょうか。 ● これは,たしか○○幹事が前に意見を出されて,それ以来こういう形になっているのだと思うのですけれども,ちょっと今おられないので。 ● 私は,イにつきましては原案に賛成です。ここでもって差を設ける理由はやっぱり説明が余りつかないのではないかということで,今回,規律を一体化するということでいいと思います。 ● それか,委員会等設置会社の規制強化をするのも何ですから,これはもう取締役会限りで,監査役設置会社も取締役でできると,こうしていただく問題なんだろうと思いますけれども。これをまた違えるという理屈はないだろうと思いますけれどね。だから,どちらかに統一していただきたい。そして,規制緩和の方に行くので問題がなければ,そうしていただきたい。 ● これも従来から議論があったところなので,イの方はなかなか簡単にはいかない問題だと思いますが。もし反対意見があるのであれば,これもちょっと今日は決められないということですが。   それでは,イにつきましても留保させていただきます。 ● 私は,イについては,両方の会社類型で区別する実益はないということまでは--どちらにするかはエイヤッと後で決めていただいたらいいと思うのですが,一緒だということでよかろうと思うのですが,ただ,「定款をもって」というのは,しつこいようですが,こういう規定があるのだったら,その施行時に委員会等設置会社の場合にはまたみなし規定か何かを置かれるのかもわからないけれども,少なくとも現状では,先ほども言いましたが,こういうことを前提に委員会等設置会社を選んでいるので,それと一般の会社とは違うので,この「定款をもって」のあるなしが不当な両者の差とは思えないのです。したがって,これは少なくとも委員会等設置会社に入れる必要はないのではないかという気がするのですが。   ただ,先ほどもちょっと言いましたように,この規定がなければ委員会等設置会社で株主総会に利益処分権限を上げられないという会社があるからこうしたいと言われたら,私,強くは申しませんが,それは解釈論で何とかなるとするなら,これは委員会等設置会社には要らないことではないかという感じはいたします。強くは申しません,既存の会社についてはきちっとなさるのでしょうから。 ● それでは,この項目はなお検討させていただきます。   それから②でありますけれども,いかがでしょうか。剰余金変動計算書の問題でございますが。 ● どうして剰余金だけなんでしょうか。   御趣旨は結構なのですけれども,剰余金というのは,資本を取り崩したり準備金を取り崩したりして,ふえたり減ったりすることもありますし,あるいは,自社株の問題もありますので,むしろ全部まとめて持分計算書みたいなものでも別に構わないわけですよね。 ● その趣旨が(注1)のなお書でありまして。 ● じゃあ,別に剰余金--何で「変動」が要るのかしりませんが,とにかく剰余金計算書だけじゃなくていいわけですね。 ● そうでもいいのではないかと思っているのですけれども。 ● 分かりました。 ● ほかに,この(注)も含めまして,いかがでしょうか。   特に(注2)については,○○委員,いかがでしょうか。 ● ちょっとまだよく分からないところがありまして,「剰余金処分に関する理由」というのが何かというのが……,あ,(注2)の方ですか。 ● はい,(注2)です。(1)の定款の定めのない会社についても。 ● それは私は割にニュートラルで,特に意見はありません。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   ○○委員は何か御意見があるかもしれないのですが,お帰りになっておられるので……。   これもなお検討するでよろしいですか。   それでは,この点もまた今後検討させていただきます。   次に,(3)に進んでよろしいでしょうか。   これは従来からいろいろ議論があった,要綱試案でもたくさん案が並んでいた問題でありますけれども,剰余金処分に関する株主からの議題追加請求権であります。これについては一応,定款で株主が議題追加請求権を有しないというところまで定めることは認めると。しかし,そう定められたとしても,(注2)にありますように,その定款の定めを削るという議題追加請求権と一緒に出せば,全く反対提案が出せないわけではない。このインプリケーションとしては,定款に何も定めがなければ普通の株主提案権として出せるのだと。つまり,株主が議題追加請求権を有しない旨を定款で定めていない限りは通常の株主提案権の問題になると,こういう前提だと思います。 ● かつてa案からd案までずらっと並んでいたうち,私はd案に賛成であったわけですけれども,もしもd案で意見をまとめることができないということになりました場合には,ほかの案の中ではいろいろな点で比較的よく御配慮いただいている方の案ではないかと思いますので,これで皆さんがよいとおっしゃれば,まあやむを得ないというふうに考えます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがですか。 ● 確認ですが,恐らくこういうことが問題になる会社は定款で特別の定めをなさるだろうと思うから,心配しなくてもいいのですが,今,○○委員がおっしゃいましたように,定款で定めない場合,現在のところ,利益処分案については提案権を行使できますが,中間配当については特に考えていなかったけれども,中間配当を総会決議事項とすれば--まあ,それができるのかどうかも一つの議論がありますが,少なくとも通常は考えていなかったけれども,剰余金の処分とやってしまいますと,例えば,定時総会のときに,今期は利益処分としてこうしろ,中間配当にはこうしろと,一般的なそういう定めが定款にある場合が前提になってしまいますけれども,それも認めるということで,少し状況が違うという理解でいいのかどうなのか。細かな話で,余り心配しなくていいことかもわかりませんが。   要するに,十把一からげという言い方はあれですが,剰余金全部について議題提案権を認めるという割り切りをしたと理解していいわけですね。前から気になっていることなのですが。 ● 今のは,要するに利益処分案のうちどこまでが株主提案権を出せるかという問題だと思うのですけれども,そこは我々も,どこまでなのかというのを決め切れないものですから。   ちょっとここの書き方が広くなっているのは,試案であることもあることと,あと,先ほど来議論をいただいた,第5の1(1)の④の制度ですね--債権者保護手続がなくなりましたけれども--あの制度も入ってきますので,やや利益配当とか何とかとは書けなかったというだけでありまして,そこら辺は注意して立法はさせていただきたいと思いますけれども。 ● そういうことでよろしいでしょうか。 ● はい。 ● 今更そんなことをと言われそうなのですけれども,もともとこの議論を思い返してみますと,平成14年改正のときに,委員会等設置会社と比較してガバナンスが充実していないということと,もう一つは,現在では大口機関投資家などが利益処分についても積極的に発言するようになっているので,その機会をなるべく失わしめないということで,監査役設置会社については株主総会になお利益処分に関する権限を残すということになったわけですね。ただ,その後で,正にさっき○○関係官が御指摘になったように,国会の方で,委員会等設置会社と監査役設置会社でこういう権限についてなるべく差を残さないようにすべしというような意見があったことから,こういうふうな整理になってきているとは思うのですけれども,実質的な問題はなお残っているはずで,現在のこの(3)はb案をベースにしていますけれども,試案ではb案には(注)がついていたはずで,試案の(注)は,「b案の定款の定めをするには,社外取締役の選任等一定の要件を満たさなければならないものとすることも考えられる」と言っていたわけで,私は,やっぱり本当はこれはあった方がいいと今でも思っています。   それから,さっき言いましたように,もともと大口機関投資家等,株主でも積極的に剰余金処分について発言するようになっているのだから,そのようなチャネルをなるべく生かすべきだということからいくと,何となく,(3)は逆にそれが言えなくなることだけを規定して終わるような感じがしまして,そういう意味では,正直言ってちょっと残念な結果になっていると,むしろ感想に類したものかもしれませんけれども,そういうふうに思います。 ● いかがでしょうか,ほかの委員・幹事の方は。加えて何らかの要件が必要ではないかという○○委員の御意見だったと思いますが,ほかの方はいかがでしょうか。   いろいろ議論があった末の一応の案でありますので,この辺で御承認いただければというふうに思うのですけれども。   ○○委員はこれで一応……。 ● やむを得ないということで,観念いたします。 ● いかがでしょうか。   まあ,いろいろ議論の経緯はあったことは私も記憶しておりますけれども。   ○○委員,何とか御納得いただけますか。 ● 極めて残念ではありますが,○○委員の賢明な御判断には従います。 ● いや,賢明かどうかという問題よりも,これはもう最後どこかで妥協しなければおさまりのつかない問題ですので,この辺で御承認いただければというのが,本当のお願いしたい点でございます。   一応こういうことでよろしいでしょうか。   それでは,こういうことで,原案で御承認いただいたということにさせていただきたいと思います。   では,次が(4)の点でありますけれども,これは役員賞与ですね。まず本文についてはこのようにし,それから(注1),(注2)ということになっているわけでありますけれども,特に(注2)の問題でありますが,いかがでしょうか。 ● 質問でございますが,委員会等設置会社における役員賞与の場合の税法上の扱いというのは,結局今どうなっているわけでございましょうか。もう処理されているわけですよね。 ● 税法上の扱いは,損金算入はできない。賞与という形で払うものについては,利益処分でやろうがやらなかろうが--これは利益処分じゃないわけですけれども--損金算入はできません。 ● 委員会等設置会社におきましても……。 ● ええ,損金算入はできません。 ● 同じ扱いになっているわけですね。 ● ええ,その賞与の実態ですからね。これについてこういうふうに変動するときは,この部分は損金算入ではできないということになっています。 ● そういうことで,いかがでしょうか。 ● これは,ローカルには法務省サイドの御尽力で当面決着がついている議論なので,持ち出さない方がいいのか,ちょっと迷うのですが,依然として議論の火種が残っていますので,一言だけ申し上げておきたいと思います。   ここに書いてありますことですと,定款の定めのある会社のケースで,役員賞与を利益処分案に記載することは当然できるわけですよね。その場合に,昨今の企業会計上のルールですと,原則として役員賞与というのは利益を処分する前の利益を出す過程で費用として控除するというルールがおおむね定着しかかっていると。そうしますと,会計上は利益を出す途中の費用として控除しておいて,株主総会に出すときは利益処分案に記載するということは,理屈の上ではあり得るわけですね。ただ,それは現状では,利益を出す過程で費用として控除した場合には利益処分案には書けないという解釈で対応しているわけですけれども,そういう状態がどこまで安定的かということについては多少の危ぐを持っておりまして,問題としては一応御認識いただくために,一言申し上げておきたいと思うのです。   一番困りますのは,もし仮に利益処分として出しますと,利益処分に関しては財源規制がございますので,役員賞与を支払う前の段階で支払うだけの剰余金がなければいけないわけですね。ところが,会計上は剰余金を出す段階で既に,役員賞与の部分は利益を計算する段階の費用で引いてありますので,法の解釈上は,役員賞与を払う前の段階で既に,役員賞与に相当する額は利益を計上する段階で引かれているということになります。   そうしますと,そういうやり方が果たして本当に合理的かということは疑問でありますので,もし仮に利益処分案に役員賞与を計上することができるということになった場合には,場合によっては配当制限の在り方の方で工夫することが必要なのかもしれない。ただ,当面は,それは大問題になるので,いろいろ法務省サイドの御指示に従って,原則として,費用として控除した場合には利益処分案には書けないという取扱いになっているわけですので,その辺はなお将来の問題としてテークノートしていただければというふうに考えております。 ● 何か法務省からはコメントありますか。よろしいですか。   では,テークノートするということで,どうもありがとうございました。   この(4)についてはいかがでしょうか。(注1)はなお検討するということです。それから,(注2)につきましては,先ほどどなたからか,現行の制度を維持することでよいのではないかという御指摘がありましたが,本文とあわせて,いかがでしょうか。 ● さっき申し上げたのは私でありまして,委員会等設置会社の趣旨,特に報酬委員会を設けた趣旨から考えますと,特にこの制度を変える必要があるとは思えませんので,(注2)のとおり,このままで現状でよろしいのではないかと思います。 ● この点はよろしいでしょうか,ほかの委員・幹事の方は。 ● 私は,かねてよりこの点は余り賛成ではないのですけれども,特に変えないという御判断であれば,それに従いたいと思います。 ● それでは,本文も含めまして,よろしいでしょうか。 ● 次に行かれると思いますので,この一連の問題で。   先ほどの(2)の①のロの話なのですが,「利益処分」という概念と「剰余金の分配」という概念を区分していろいろと整理していただいて分かりやすいとともに,やっぱり伝統的な考え方との影響というので非常に分かりにくくなっているのですが,こうやって少なくとも役員賞与も利益処分とは違う形でできる,それから利益の資本組入れも別にできるとなった場合に,剰余金の分配,少なくとも定時総会の--これまた定時総会で決めないからややこしくなるのですが,「利益処分」という概念がところどころで出てくると何か分かりにくいのですね。だから,「利益処分」という概念がこの新しい制度のもとで必要なのかどうなのかも含めて,少し言葉の整理をしていただければ非常に有り難いなという気がいたします。   その関係で,議論が錯綜して申し訳ないのですが,もとに戻って,4の(3)の(注2)の話なのですが,この趣旨は分かるのですが,その整理の過程でいくと,(3)の定款の定めを削っただけで当然に議題の追加請求権が認められることになるのかどうなのか,つまり,「利益処分」という概念を使うとこれがもう少し変わってくるのかも含めて,整理をしていただければと思います。 ● おっしゃるとおりだと思いますので,検討させていただきたいと思います。   それでは,先に進んでよろしいでしょうか。   次は,5の「(1) 附属明細書」の件でございます。この点は,現在の有限会社法の制度は必ずしも理屈がよくわからない制度であるので,廃止するということでありますけれども。 ● (注)のところに書いてあります,「記載内容の合理化等所要の措置」というところがどういうものなのかをお聞きしたい。附属明細書でも結構ボリュームが出る場合があると承知しておりますので,現行の有限会社で会社をつくろうという人が,新しい制度になったときに,ああ,附属明細書も大変なんだなというようなくびきになるという可能性はないのかどうか,ちょっとお尋ねをしたいのですが。 ● 現在でも,有限会社は,この(1)に掲げています定款を書いていないと,附属明細書を作ることに一応なっておりまして,そのときに,今の商法施行規則の方の規定によりますと,株式会社と同じようなことを書くということになっております。   それで,かねてより,附属明細書に関しては,大会社も含めて不要な記載も多いのではないかというような話もありますので,そちらの方の見直しをやるとともに,こういう小さい会社について本当に必要かどうかというのももう一回再整理を別途させていただこうということでありますので。 ● おっしゃっておられるのは,大も中小も関係なく,まず株式会社についての附属明細書の合理化の案を作る,加えて,例えば割と小さい会社についてはもっと合理化ができるのではないかという二段階方式でやると。   やり方はそれで確認できたとして,じゃあ具体的には……。そこの注書きの条件として,「廃止するものとする」と,こう書いてあるものですから,どのぐらいのレベルになるのかなと。もう少しイメージが……。ついつい疑心暗鬼になりがちな性格であるということが問題なのかもしれませんが,例えばこれを作るために更にまたコストがかかるとか,税理士さんとか公認会計士さんにお願いしないとなかなかつくれないぐらいのレベルになってくるとか,中が分かりにくいのだとかということになると,いろいろ障害にもなるのではないかということなのでございます。   ですから,本件について,今の御説明だと,その合理化されるレベルがなかなか説明しにくいようですから,それがある程度イメージとして出てきたときに話を最終的に決めるということでもいいのかなと思っているのですが,いかがでございましょう。 ● あと,そもそもの議論として,ここの部分は恐らく,有限会社と株式会社の規律の一体化というときにどちらにどう寄せていくかという問題と関連する気がするものですから,その意味では譲渡制限会社全体をどういう形で整理していくかという議論と非常に関連してくる部分があるかなという感じがいたしますので,ちょっと今の時点では立場を,その議論との関係では留保させていただきたいというふうに思います。 ● この(1)の趣旨はそういうことですか。 ● (1)の趣旨は,説明の過程でもありましたけれども,株主は余り関係ない問題でありまして,どちらかというと専ら債権者との関係で,株主に会計帳簿の閲覧権を与えただけで附属明細書を廃止していいのはなぜかという問題に答えることができるのであれば現行制度を維持するし,それが無理なのであれば削るしかないだろうと。削るとすると,今,現に有限会社でこの定款の定めによって附属明細書をつくっていない会社があって,その経過措置はさておき,新しく作る会社はこういう定めができなくなりますので,それに応じて簡素化できるものがあるかどうかということになりますので,必ずしも(注)ができなければ本文ができないというわけではなくて,本文は単独で倒れ得るということを前提に考えていただかないといけないのかと。 ● どうも本文の趣旨はそういうことのようです。 ● だとすれば,有限会社と株式会社を今回一体化することは私も賛成でございますが,その場合にどちらの規制に寄せて考えるのかという原則のところにまた戻りますので,そこをもう一回,そのうち議論をしたときに,さっと決めるというのがよろしいのではないかと思います。 ● 附属明細書の内容はともかく,本文については御承認いただけるのでしょうか。 ● いいえ,残念ながら。もう一度仕組みを整理するときに議論しようじゃないかということです。 ● これを持ち出した趣旨は,最初に説明がありましたように,今,○○関係官からも説明がありましたような趣旨なのですが,なかなかちょっとまだ御理解いただけないようで……。   それでは,本文につきましても留保させていただきたいと思います。 ● 済みません,もう一つ,(3),先走って申し訳ありませんが,決算公告なのですが,「なお検討する」ということで,今日はあれなのでございますが,いつごろ検討していただけるのでございましょうね。いつごろまな板の上に……,次回ということなのか。 ● 本日の部会が始まる前の私どもの予定では,本日は恐らく合名・合資会社関係以降の部分が残るだろうと思っておりましたので,次回は,それを含めて,株式会社・有限会社の規律の一体化,区分,種別の在り方,機関設計の柔軟的な規律の在り方を含めたもろもろの株式会社と有限会社の制度の調整の議論をまずさせていただき,時間があれば,最低資本金,決算公告の議論も一括してさせていただこうかと思っていたところでございますが……。 ● 大体感じは分かりましたが,そういう情報が少し事前にあると,今日は6時までとなっていて,もっとエンドレスかもしれませんけれども,一体どこまで何をどうするのだろうと,いろいろ留保事項が多いものですから,頭の整理がつきませんで。大体,次回,その次あたりで,特に中小の譲渡制限会社にかかわる規制については一度議論の俎上に相当なレベルで乗ってくると,こう理解をしておいてよろしゅうございましょうか。 ● ええ。次回,次々回で,積み残された論点,あるいは二読に入って以降議論されてまだ決まっていない点も含めて,一応一回りする予定です。 ● その2回が非常に重要なステージになるということですな。 ● そこで決着がつかない問題も幾つかあるはと思いますけれども,全部の項目を一通り議論させていただくという予定でございます。 ● 分かりました。安心しました。 ● そういうわけですが,組織再編については,これはページ数がないので,頑張ろうと思えば頑張れないわけでもないのですけれども,星印のないところの御検討もいただく必要がありまして,どうしますかね。「組織再編関係」に入らない方がいいですかね。   それでは,今やった「計算関係」の星印のところをずっとやっていって,これも非常に時間がかかるようでしたら途中で打ち切らざるを得ないかと思いますけれども,第5の1からもう一度,星印のないところにつきまして御意見があれば承るということで,今日は「組織再編関係」には入らないということでよろしいでしょうか。   それでは,第5の1(1)の①のところで何か御指摘ありますでしょうか。--よろしゅうございますか。   ②から④までですが,ここは大体星印だったかと思いますが,よろしいでしょうか。   (2)から(4)まではいかがでしょうか。 ● どうでもいいぐらい些細なことですが,(4)①の(注2)に,「「分配可能限度額の増減」とは……」という御説明がございますね。「金銭の分配,資本の減少等による分配可能限度額の増減をいい,期間損益による変動は含まないものとする」と,まあこれでいいのですけれども,いわゆる自社株の処分差益みたいなものはこの中に入るのですね。 ● それはそうだと思いますが。 ● 処分差益は(注3)の問題かなというふうにも思っているのですけれども。少なくとも現行の中間配当の財源規制の場合においては,自己株式の処分差益は相手にされていないものですから,そこと変える趣旨でないとすると,(注3)の問題になります。 ● いずれにしても,それがはっきりしていれば結構です。 ● ほかにありますでしょうか。--よろしいですか。 ● 念のためなのでございますが,先ほど○○委員からも大分議論がありましたが,(注4)なのでございますが,私どもが深く議論すべきところでも必ずしもない,興味があるわけでもないのですけれども,様々なビジネスをやるときに,こういうリジッドな,8週間とかということになると,やはり相当柔軟性を奪われるということは,これはどこでも当然でございます。短い期間でやることに体制を整えていて高いフィーをもらおうというビジネスがあるのも当然でありますし,そこら辺は,8週間とか1週間とか,いろいろなリジッドなものが,8・4・1とありますが,ここら辺を昔決めたときの何か経緯みたいなものでも……,なぜ8週間だったのかとかですね。それで,一度決まると,おれは8週間で決めたんだから,もう嫌だという人が出てくるのは当然でありまして,○○委員がそれに近いようなことをちょっと書いていらっしゃったので。私はやや門外漢であるのでございますが,余りこういうことをされると……。   実は,なぜこんなことを言っているかというと,中小会社等,譲渡制限会社等については,なるべく規制緩和をお願いしたい,フレキシブルに,フレキシブルにということを今回の会社法改正の一つのテーマにしたいのですが,別に○○委員を援護射撃するわけじゃないのですけれども,ちょっとややかたい議論が続いているので,何か次回までに……。 ● ○○委員,この問題はまだ続きますので。先ほど確定しなかった問題ですので。 ● 次回お願いがあって,ここら辺のバックグラウンドについて,少し我々素人にも分かるように教えていただけると,非常に理解が進んで,やわらかさをどう出すかという議論につながってくると思うのです。よろしくお願いします。 ● ほかの点はいかがでしょうか。   それでは,2の(1)から(6)まで。この点も大体星印がついていましたので,よろしいかと思いますが,よろしいですか。   それから,3の(1)から(4)までの問題でありますが,これも大体御議論はいただいたかと思いますが,よろしいですね。   4の(1),(2)について議論しなかった点で,何か御意見,御指摘いただく点がありますでしょうか。 ● 恐縮ですが,これも念のために。   4の(1)の②に,任意積立金の積立てというものについて,一定の条件を満たした場合に取締役会の決議でとなっていますね。これは,積立てがいいということは,取崩しも構わないということですね。 ● そうです。 ● そうすると,現在の損益計算書ですか,ひな形にも影響はしますけれども。分かりました。 ● 要綱試案では中間配当の決定権限について検討するという(注)が入っていたと思うのですが,それが削られておりますから,中間配当については決定権限の主体は維持するという趣旨と理解してよろしいですか。 ● 中間配当は中間配当,したがって,今の株式会社相当の会社についてはそのままになりますし,今日議論していただいた減資の際の払戻しが,それを埋め合わせるものとしてその余の会社にも認められるということでございます。 ● ほかに御意見ありますでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,4の(3),(4)でありますが,この点も大体,先ほど全部御議論いただいたかと思いますが,よろしゅうございますか。   5の(1)から(3)まで。これは,決算公告等,今後の問題になりますので,これもよろしゅうございますか。   それでは,今日は大変申し訳ありません,予定したところまで進めませんで。まあ,しかし,2ページですから,次回に回っても,そうひどく残したということでもないのではないかと思いますので,今日はもう6時近くなっておりますので,これぐらいにさせていただければと思います。   本日の審議はこれで終了させていただきたいと存じますが,事務局から連絡事項がございます。 ● 長時間にわたって御審議いただき,ありがとうございます。   次回は,6月2日,午後1時から,場所は同じくこの第1会議室で行わせていただきます。   なお,6月2日,9日,16日と日程をとっていただいておりましたけれども,審議の状況を踏まえますと,もう少し日取りが必要ではないかという感じがいたしておりまして,6月30日にも予備的に期日を入れさせていただければと考えているところでございます。また,7月は諸般の事情で21日が最初の期日となりますけれども,場合によっては7月28日にも期日を入れさせていただくことがあり得るということで御予定をあけておいていただければ幸いでございます。非常に勝手なお願いで恐縮でございますが,御協力のほど,よろしくお願いいたします。 ● それでは,本日の部会を閉会させていただきます。本日は長時間にわたり熱心な御審議を誠にありがとうございました。