法制審議会会社法(現代化関係)部会 第26回会議 議事録 第1 日 時  平成16年6月30日(水)  自 午後1時00分                        至 午後7時33分 第2 場 所 法務省第1会議室 第3 議 題 外国会社に関する諸問題について    残された諸論点について    残された諸論点について(2)    社債管理会社及び社債権者集会に係る規定の適用範囲 第4 議 事 (次のとおり) 議    事 ● それでは,まだこれからお見えの委員・幹事の皆さんもおありのようですけれども,予定した時刻が参りましたので,第26回会社法(現代化関係)部会を開会することにいたします。   本日は御多忙の中御出席いただきまして,ありがとうございます。   (幹事の異動紹介省略) ● それでは,配布資料につきまして,事務局から説明をいたします。 ● 事前に,部会資料27「残された諸論点について(2)」をお送りいたしております。   それから,前回の議論で取り上げられました,社債管理会社及び社債権者集会に係る規定の適用範囲の問題につきまして,部会資料28を本日席上配布させていただいております。   また,ここ一連の,会社法制の現代化にかかわる自由民主党における議論の御紹介として,参考資料15と16をお配りしております。参考資料15は,去る6月16日に自民党の商法に関する小委員会におきまして,会社法制の現代化に関する中間とりまとめとして決定された内容でございます。参考資料16は,本日の議事にも若干かかわりますけれども,6月11日の同小委員会の席上で配布された資料でございます。コーポレートガバナンス関係でこのような改正を検討すべきではないかという趣旨で,議論のたたき台として配布されたものでございますので,当部会におきましてもあわせても御議論をちょうだいできれば幸いでございます。   そのほか,席上に日本監査役協会からの意見書をお配りしております。機関設計等に係る論点に関するものでございますけれども,審議の際に参考にしていただければ幸いでございます。   事前送付,席上配布の資料は以上でございます。 ● 配布資料につきまして何か御質問ございますでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,本日の審議に入りたいと思いますが,本日は,前回配布済みの部会資料25から本日配布されました部会資料28までの審議をお願いするわけでありますが,今後のスケジュールを考えますと,本日中にそのすべてについて審議を終える必要がございます。御協力のほどよろしくお願いいたします。   それでは,まず前回配布済みの部会資料25につきまして審議をお願いするわけでありますが,前回はこの資料の「3 外国会社との株式交換」の途中で審議を打ち切らざるを得なかったわけでありますので,本日はこの3の部分から審議を継続したいと思います。   まず,事務局から説明を一言お願いいたします。 ● 部会資料25の説明をさせていただく前に,スケジュールの関係について御説明申し上げます。   従来,来月,7月中には実質的な改正事項についての審議をほぼ終了させていただきたいということを申し上げてきたところでございます。今回の会社法制の現代化の作業においては--会社法の改正はいつもその作業を伴うわけですけれども--関連する法律の膨大さにより,その整備の作業に相当程度の時間を要することが見込まれるところでございます。したがいまして,会社法本体の実質はもとよりのこと,その形式的な条文の確定をも相当程度前倒しで行いませんと,次期通常国会に法案を予定どおり提出することが甚だ困難になるということから,誠に恐縮ではございますけれども,これまでの間,審議時間を大幅にとっていただきまして御協力をちょうだいしているところでございます。できれば7月21日,場合によっては,予備日とさせていただいております同月28日をもって,会社法(仮称)の実質にかかわる審議をほぼ終了していただき,その上で事務局におきまして条文化の作業を進めさせていただくこととしたいと思っているところでございます。ただ,例えば倒産法部会におきまして別途議論が進んでおります特別清算との調整問題でありますとか,あるいは法人が業務執行者になることに伴う刑事罰の整備ですとか,いろいろと周辺の論点でまだ残るところがあろうかと思いますが,それらについては条文化の作業を進めながら問題点としてピックアップし,秋以降の部会の場で御議論をちょうだいしたいと思います。できれば本年の10月ごろには部会として要綱案を決定していただきたいと思いますけれども,それは,そのような趣旨を前提にするもので,本体についての御議論はできる限り早目に決着させていただければ幸いでございます。   それでは,部会資料25の説明に移ります。まず,「1 擬似外国会社」につきましては,部会資料27の9として別途御議論をちょうだいしたいと思いますので,そちらに委ねさせていただきます。   「2 外国会社による社債の発行」につきましては,部会資料28で別の形で取り上げさせていただいておりますので,そちらの議論に委ねさせていただきます。   「3 外国会社との株式交換」についてですが,前回御説明いたしましたように,解釈上はともかく,条文上は,内国会社と内国会社との間において株式交換をすることができるというのが 現行の規定ぶりでございますので,その相手方,完全親会社となる会社が外国会社であっても差し支えない形での条文の整理をさせていただくということはどうかという点が,ここでの問題でございます。   もとより,対価の柔軟化が図られるということになりますと,株式交換の場合に限らず,受け取る対価が外国会社株式であるというような場合には,その当該外国会社にかかわる情報の開示ということが極めて重要になるわけですけれども,それは外国会社との株式交換の問題というよりは,対価の柔軟化に伴う対価の相当性その他の対価にかかわる情報の開示として別途きちんと手当てをすべきものであると考えられるところでございます。   (注)についてですけれども,株式交換無効の訴えの管轄について,子会社側の本店所在地の地方裁判所にも認めるべきではないかということでございます。これは,外国会社の株式交換の是非にかかわらず手当てをすべきことではないかというように整理することができると思います。   「4 外国会社による内国親会社株式の取得の禁止」の問題についてですけれども,会社法におけるいわゆる子会社概念については,株式会社・有限会社のみならず,親会社からの一定の支配権が及び得ると見られる外国会社を含む法人一般を含めるということで既に御了解をいただいているところであると思いますけれども,子会社による親会社株式の取得禁止規則につきましては,そもそもその規制自体をどうすべきかという議論が残っていたことから,ペンディングの状態になっていたものです。ここでも,子会社概念については,ほかの場面と同様に,親会社からの一定の支配権が及び得ると見られる法人等を含み,外国会社もその例外ではないという整理をするということの確認をさせていただきたいという趣旨でございます。   規律の適用関係は,恐らく(注1),(注2)に掲げてあるような形になるのではないかと思われますが,子会社による親会社株式の取得規制一般につきましては,また後ほど御議論いただくことになりますけれども,外国子会社に関する論点につきましては,ここで御議論いただければと思います。   部会資料25の説明は,以上でございます。 ● それでは,この部会資料25につきまして,御審議をお願いしたいと思います。   途中まで審議しておりました「3 外国会社との株式交換」でありますけれども,この点につきまして,引き続き御意見をいただきたいと思います。 ● この外国会社との株式交換,それから外国子会社による親会社の株式の取得の禁止でありますけれども,いずれにつきましても明確に法制化すべきではないと思います。   株式交換の方ですけれども,これは別に株式交換であろうが,合併であろうが,会社分割であろうが,解釈上できるのであればできるのでしょうから,株式交換契約に限って明示的にこういう規定を設けるということになると,他の組織再編は一切だめなのかということにもなってくるでしょうから,あえて明示的にこのような条文を設けるべきではないのではないかと。   それから,親会社株式の取得の禁止の問題ですけれども,これは,子会社が勝手に,親会社に何も関係なく親会社の株式を取得したというふうなことについて何をエンフォースするのか,自己株式の不正取得罪などいうものを外国会社にどうやって適用するのかというような問題もありますので,親会社が親会社の行為として子会社をして自分の会社の株式を買わせるような問題,こういうのは規制すべきだろうとは思うのですけれども,それも解釈でやっていったらいかがかと。 ● 3についてですけれども,解釈によってあれすればよいという御意見ですが,どうも今の法務省当局等の解釈では,できないという解釈なのではないかと思いますので,現状のまま放っておくと,どうも認められない。株式交換は,これは登記がありませんので通ってしまうのかもしれないのですけれども,少なくとも今言われたほかのもの,登記があるものについては,恐らく登記所は受け付けないのではないか--今の状態が続きますとですね--という問題はあるように思いますが。   できるという学説があることは確かですけれども,それは学説の議論でありまして。 ● おっしゃっている意味は,株式交換等の組織再編についてできるものとすると,こういう規定ぶりになるということですか。合併とか,分割とか。 ● 今のところ考えておりますのは,株式交換のみということでございます。   合併につきましては,結局法人格の消滅というものが伴う行為ということになりますが,外国会社の法人格を消滅させるということを日本で規定するわけにはいきませんので,その点の手当てをするということは現状ではなかなか難しいのではないかと。また,株式移転等につきましても,法人格の成立などを含めて考えていくと,なかなか難しいと。そうすると,現状で一番明確にできるのは株式交換だけということですので,今のところは株式交換だけを考えております。 ● 規定を作るのがいいか悪いかは別として,確認的なことを--前回途中で退席して議論を拝聴しておりませんので重なるかもしれませんが--一,二,伺わせていただきたいのですけれども。   まず,この整理の意味ですが,ここで具体的にされようとしている作業は,例えば,353条とか,このあたりの規定の「完全子会社」とか「完全親会社」と書いてあるところに,「完全子会社(外国子会社を含む)」とか,そんな形で手当てをするといったようなイメージでしょうか。 ● 具体的な整備については,法制的な問題がございますので,法制局等とも相談しなければいけませんが,基本的にはそういう発想です。   あと,外国会社といっても幅広いもので,すべてが株式会社のような形態ではありませんので,一定の会社に限定するとか,特定の要件を課していくというようなことは必要だろうと思います。 ● 今の私の質問に対する答えとしてはその程度で十分なのですけれども,それだと,よく外国会社による株式交換はできるようになるというふうに報道されているのですけれども,それで何ができるようになるかが実ははっきりしないところがあるので,確認させていただきたいのですけれども。これは多分 御発想は,例えば日本が完全子会社になって外国が完全親会社になるような株式交換だとしますと,日本の方で行われることは,強制的に多数決で株式と財産を交換するという手続,それでそれは日本法に基づいてやればいい,そして相手方は一種の新株発行が行われて,それは相手方の従属法でやればいい,そういう形で抵触法上の話は整理して,日本の方の実質法で,それだけがネックでできないことにはならないように,今言ったような条文に直しますという,こんな具合のことだと理解してよいかと思うのですが,そうしますと,外国法の実質法次第では,それでは全然株式交換ができないということにもなる,片思いの規定なわけですね。   それで,ちょっと分からないのは,外国の実質法がどのような内容を持っていれば日本法として合法に連結して株式交換ができるようになるのかというところが必ずしもよく分からないところで,単に新株発行手続があればよろしいということなのかというのが,まず確認。多分そこはお答えがあると思うのですが。   そこから先,2点ありまして,1点は,相手方の国の実質法での例えば新株発行がこれに対応して,それがあればいいという手続が仮に非常に軽いものであったとすると,日本の会社が株式交換で完全子会社を作ろうとするときは,今の規定でかなり重い手続でやる--どのぐらい重いかはともかく--ある程度の手続でやるところを,外国は親会社が完全子会社を作ろうと思ったら非常に楽にできるという,ある種の内外格差が,今まではできないと言って批判されたのが,逆に外国に非常に楽な実質的な不平等をもたらしかねないような気もするのですが,これは,外国の方で軽い手続を終えていれば,それはそれで,日本の方の考え方としては全面的に尊重するのだという実質的な判断をされたということなのかという点です。   最後は,やや細かな問題ですが,外国親会社にはいろいろなものがあると言われて,確かにそうなのですが,株式会社的なものを見ても,非常に株式の流動性の薄いような会社も存在し得ると思うのですが,今のですと,例えば日本の会社であれば,譲渡制限会社が完全親会社になる場合には特殊な重い手続--353条の6項ですか--それがあるのですが,日本と同じ譲渡制限手続がある国は少ないでしょうし,日本のこの定義で譲渡制限会社に当てはまる会社は必ずしも多くないでしょうが,実質的に何らかの形で株主から見て換金性が非常に妨げられるような外国会社になるとすれば,この規定の適用ないし類推適用があり得るというくらいの柔軟性を持って,外国会社を含めるときにはこの種の規定を運用するというふうな,かなり実質法上--国際私法的には調整問題などと言われているのだと思いますけれども--相当問題が出てくるのですが,そういった点は当然含んで提案されるということなのか。   この3点,お願いいたします。 ● 最初のは何でしたっけ。 ● 最初は,仮に配分的に両方の従属法でやるとすれば,向こう側の実質法で何があればこの株式交換とつながって,最終的に株式交換が外国会社によって達成可能なというのか。例えば,新株発行でも個々の株主が株式申込書云々というふうな新株発行しかない国ですと,これでうまくいくのかなというのがちょっとよく分からない,つながるかどうか分かりませんね。その辺,どのぐらいの規定があればオーケーと言っているかによって,本当にこれ,商法は手直ししたけれども,ほとんどできないということにもなるかと思うので,その辺のイメージをお教えいただければと思うのですが。 ● 今,○○幹事のおっしゃったことは本当に大変難しい問題でございますので,我々も,今,適宜検討しているところではありますけれども,基本的には,新株発行のところできちんと出せる,日本側の完全子会社となる会社の株主に株式を発行できるというような法制度がきちんと確立しているということが最低限度のレベルで,そこから先の手続がどうかとかいうようなところになってくると,多分それは,そうくくろうと思っても,すべての外国会社について適用するというのはなかなか難しいと思います。法制的に言えば,特定の国の特定の会社だけをイメージして,適格性のある会社というようなものを分類していくということも本当はあり得るのかもしれませんが,それもなかなか大変な手続でございますので,そこは,今言った基本をベースにしながら,本当に最低限必要なものはどうなのかということをもう少し検討させていただきたいと思います。   それから,2番目で,外国の新株発行というか株式交換の手続などが非常に軽かったらどうかと。これも先ほどの問題とつながると思いますけれども,基本的に,軽ければ,それは外国の法律が新株発行に関する株主保護とかそういったものについての手続が軽いという判断をしている以上は,それは仕方がないのではないかというふうに思いますが,それで日本側の会社の利害関係人が害されるようでは困りますので,そういったものが本当に必要なのかどうか,単に競争上,日本の会社がやるのは大変だけれども外国会社がやるのは楽だというふうなところまで配慮するかどうかというのは,ちょっと検討させていただかないと,何とも答えが出ないかなと。ただ,感覚的には,一定の基準を設けること,どこまで行けば軽いのかということがよく分かりませんので,やれるとすれば,日本の会社が要求されている手続の一部を外国会社に課す,例えば公告とか,債権者保護手続をどうするかという点がまた議論になりますけれども,そういったものまで必要かということになってくるのかなというふうに考えております。   それから,株式の流動性の低い外国会社が完全親会社になる場合はどうかと。これも結局,日本法で適用されている株主の保護という観点から,外国会社が一定の,例えば株式譲渡制限のような,完全な譲渡性が認められていないような場合には,日本の譲渡制限会社と株式交換をするような場合と同じような規制を行うというような方向性で考えざるを得ないのではないかというふうに考えております。   いずれにしても,外国会社との組織変更というのは初めての試みですので,細かく調整していかなければいけない面はあると思いますが,これはかなり強いいろいろな方面からのプッシュがあることですので,何とか実務的にワークするようなことを,実務家等とも相談しながらやっていきたいと思っております。 ● 最後につけ忘れましたが,根本的に置くのに反対だという趣旨での--難しい問題があるから反対だというふうに誘導するための--質問ではなかったということだけ,付け加えておきます。 ● 今,○○関係官の方から,要望があるというお話なのですけれども,経産省の方の目で見ると,対日投資の促進という議論がもともとあって,その中で特にアメリカサイドから強い要望のある事項だというふうに理解しています。それで,アメリカサイドの要望があるからという議論だけではなくて,一応,政府全体で対日投資会議というものを設けて,総理の施政方針演説の中でも,なるべくできる限りのことはやろうと,こういうことになっておりますので,この制度については相当程度期待を持っております。   先ほど○○委員がおっしゃったように,解釈でできるということが明確であるならば,別段全く要らないというふうに我々も思っておりますが,お伺いしていると,なかなか解釈では難しいというふうに聞いておりますので,もしその前提が正しいとするならば,明文で規定を設けていただくという方向で考えていただければ有り難いというふうに考えております。   その際,アメリカの制度だとか,そういうたぐいの点について,何がどうかというような議論があれば,こういう建て付けをするという前提で,もう一度,要望している方々の実務上の観点,アメリカの制度がどうなっているかといった点については,また法務省の事務方サイドにいろいろとこちらの方も情報提供させていただいて,スムーズに,今まで以上に運用ができるように御協力させていただきたいというふうに考えております。 ● 確かに,今,○○幹事がおっしゃったような国際的な調和という観点から言うと,いろいろと要請があるのだろうということは私も推測できるのですが,経済実態の面で,複数の渉外関係の弁護士などからいろいろと聞いてみたところ,最初に○○幹事がおっしゃったように,相互主義的な観点から見て,日本の会社が完全親会社になるニーズのある場合と,日本の会社が完全子会社になるニーズのある場合と,これは両方,当然利害関係が違ってくるわけですけれども,現在の実態としては,日本の会社が完全親会社になる場合というのは相手先に株式交換などの制度がない実態が多いというのが実情のようでありまして,逆に,日本の会社が完全子会社になるというときには相手国に株式交換制度と共通の制度があるというのが実情のようでございますので,そういう点で,日本の会社が完全親会社になろうという場合にはほとんどこの規定が役立たなくて,逆の場合に使われるだけということになりかねないという点について,これは法制化という面とはまた別の,経済実態の問題として懸念を表明する方が多いというのが実情でございます。ですから,合併対価の柔軟化とかそういうことで,三角合併というのも今度できるということになりますので,それに加えてこの国際株式交換まで認めるということについては慎重意見が多いということをちょっと御紹介させていただきたいと思うわけです。   さらに,今までもお話が出ていますように,流動性のない株式をもらうとか,あるいは情報公開であるとか,あるいは日本の完全子会社になった会社の株主がもらった外国株式の権利行使の方法というものについても非常に区々になるというようなことがありますので,その辺で,日本の株主をどのように保護するかという制度もあわせて構築しないと,ただ単に外国会社との間でも株式交換ができるということだけの条文ですと,ちょっと日本の株主の保護に欠けるということもあわせて懸念としていろいろと言われておりますので,この点はちょっと慎重にお考えいただいた方がいいのではないかなというように思います。 ● ○○幹事あるいは○○委員御指摘の点はそのとおりだと思いますけれども,先ほど○○関係官がおっしゃいましたように,そういう点に十分配慮した上で,やはり解釈だけでは無理だと思いますので,日本としてできる範囲の規定を設けるということについては是非努力していただきたいと思います。   それから,次の「4 外国子会社による内国親会社株式の取得の禁止」につきましては,これも解釈で,しかも親会社が自ら積極的にそういうことを行ったときにだけという解釈ではやはり狭いと思いますので,外国子会社であれ,内国子会社であれ,実質同じような問題が起きますので,これについては,是非,内国子会社・外国子会社を区別しない規定を設けることをやっていただきたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 話を戻しますけれども,外国会社との株式交換という場合には,当然のことながら,外国の法制とか,どのような権利を株主が持つかということは株主にとっては非常に重要なはずなので,そういう場合は,やはり書類の備置きというのは外国会社との株式交換については追加しなければいけないものが当然あると思うわけですが,その辺は,「外国会社は」という感じの規定が加わるという感じなのですか,今の予想では。 ● まだちょっと規定がどういう感じになるかというのはなかなか難しいのですが,基本的には,内国会社と違って,外国会社の法的性質が一体どういうもので,株主の権利がどういうものかという部分に対する開示のようなものは必要ではないかというふうに内部では議論しております。それをどういう形で開示するのがいいのか,外国会社に何らか公告なり通知なりをさせるのか,それとも逆に内国会社の方で株式交換契約の承認のときに何とかするのか,そこら辺は制度はいろいろあると思いますので,適切な方法を講じていきたいというふうに思っております。 ● 開示の点は,確かに○○幹事がおっしゃるように,それから○○委員のおっしゃった中にも入っていたと思うのですけれども,そういうことはかなり工夫を要することであろうと思います。   そのほかに,実体的な日本の株主保護等で,○○委員がおっしゃった点で,何か,是非これはすべきであると……。現在ですと,とにかく株主総会の少なくとも特別決議で承認されないと株式交換は成立しないわけでありまして,多くが賛成するから一応成立する,それから反対株主には株式買取請求権もあるというのが現在の保護法制だと思いますが,それでは足りない,なお日本の株主保護のためにこういうことが必要ではないかという御意見がありましたら,是非おっしゃっていただきたいと思うのですが。   その辺は,○○委員,何か具体的には。 ● いや,さっき申し上げたように,私は今回,国際株式交換を明文化するということについては慎重であるべきだという意見でございまして,国内株主保護のためにじゃあどういう制度が必要かということについては,非常に限界があると思うのですね。   例えば,外国の会社では利益処分について株主総会決議が要らないというような場合に,国内の株主がその株式をもらったときに,外国の会社における権利を行使しようとするときに,利益処分にかかわりたいと思っても外国法制でできないという限界がありますので,この制度を明文化すること自体に慎重だという意見は前提として一応さておきまして,仮にそういった制度を設けるにしても,やはり,今,○○委員がおっしゃったように,情報開示であるとか,あるいは権利行使についての相当の説明義務であるとか,そういった国内での制度といいますか,そういったレベル以外,ちょっと考えられないのではないかという気持ちはしていますが。 ● まあ,これが本当に行われる場合にどういう形で行われるか。外国の,余り流動性もない株式だということになると,反対が相当多いでしょうから,やはり金銭が多くなるのかなと。それから,株式買取請求もたくさん出てくるだろうなと。ですから,前から,株式買取請求の現在のああいう算定の仕方でよいかという問題が出てくるわけですけれども,ほかのところでもこうしたことをいろいろ念頭に置いて問題点の検討はなされているというのが現在のこの現代化の作業ではないかと思いますけれども。まあ,およそ認めるべきでない,慎重にやるべきだということになると,それは話が全く違ってくるわけですけれども。 ● 少なくとも同等の制度を持っている国と,ということでありませんと,例えば,日本では今度は略式再編・簡易再編が広がっていくわけですけれども,向こうの国においてはそういう制度がない,もっと著しい制度を持っている,いろいろなアンバランスがあるだろうと思いますし,そういうことを必要だと思って条文に落としていくということになると,それだけでとても秋までに間に合うような気がいたしませんから,外国会社問題というのは先送りした方が賢明ではないかと思います。   それから,さっき○○委員が言われたことですけれども,アメリカからの要望であると聞きましたけれども,アメリカが日本では非常にやりやすい,一方,今,日本がアメリカで完全子会社化しようというふうなときに日本と同じような手続で各州法でできるようになっているのかどうか,そのあたりの検討はなされているだろうと思うのですけれども,大体レシプロカルになっているのかどうかを,事務局から,1番目の疑問点ともあわせて教えていただきたいと思います。 ● アメリカの制度ですが,少なくとも準拠法としてよく利用されているデラウェア州には日本の株式交換のような制度はないというふうに認識しておりますが,模範事業会社法の方には入っているというふうに認識していまして,それを採用している州は相当数あると聞いております。 ● 要するに,非常にアメリカの会社は日本の会社を100%子会社化しやすい制度になった,一方,日本はアメリカの会社に対してそうはできないというふうな状況を認めていいのかどうかという問題意識ですけれども。 ● ただ,どっちが有利かというと,これは制度全体として見るとどうなんでしょうかね。今は経済状況がこうですから,日本の会社が買収されるのが目立っていますが,その前はそうではなかったわけですし,さんざん日本は買収しにくいといわれていた時代があるわけでありまして,今の時点をとってどうかというのは私はちょっとよく分かりませんが。アメリカの状況について私より詳しい方がおられるのではないかと思うのですが。 ● ○○委員がおっしゃった話について回答を持っているわけではないのですけれども,日米間で規制改革イニシアチブというものを毎年やっていて,日本サイドから見てアメリカサイドの規制が非常にきつい場合,逆にアメリカから見て日本の規制がきつい場合というものをお互いに言い合うという話になっていると理解をしています。もし,今,○○委員がおっしゃったように,日本からアメリカに行くときに非常に縛りがきついという議論があるとすれば,あるいは実需があれば,そこに盛り込まれているはずだと思うのですね。一方で,アメリカから日本に要請が来ているときにはこの話は必ず入ってくると,こういう理解でございます。   私がちょっとまだ分からないと申し上げたのは,日本がアメリカに投資をする,あるいは日本の会社がアメリカで事業活動をする上でこういう規制が障害になっているという項目の中にこれが現に入っているかどうかという点を一回チェックしてみる価値はあるかもしれません。それは私の方で一度確認をさせていただきたいと思いますが,従来,本件については,どちらかというと向こうサイドの要請の方が非常に強いというふうに我々は実は認識していて,かつ解釈上も結構できるのではないかという議論が前提にあり,でも,なおかつ,そうではないという話があるので,規定を設けていただきたいと,こういう文脈で我々は理解をしているということでございます。 ● 正に,先ほど来,○○委員などがおっしゃっている,日本の制度と海外の制度との内容の違い,これをどういうふうに見るかということなのですが,ヨーロッパなどでは,相手先の会社を完全子会社化しようと思えば,例えばイギリスでは95%以上を公開買付けで取得して,公開買付けの価額で強制買取りするということしか認められないほどに厳しいわけです。ですから,仮に日本の会社がイギリスの会社を買収しよう,完全子会社化しようというときには,それほどの公開買付け,更には強制買取り制度を使わなければできないというような状態ですので,今回,株式交換の制度を国際的に認めるとした場合に,ある国では非常に機能するけれども,ある国では全然機能しようがないということになります。   ただ,海外でもある程度,新株発行とかそういう制度は当然あるでしょうから,先ほど○○関係官がおっしゃったように,どれだけ海外の制度が日本より緩いときに認めるか,その基準を作るのが非常に難しいというお話がありましたけれども,経済実態あるいは経済情勢は別として,法制化するときにはそこが非常に重要な問題になってくると思うのです。それを果たして7月末までに確定することができるだろうかということについて,余り無理をしない方がいいのではないかという感想を持つのです。 ● 要するに,日本の会社が向こうの会社を買収しやすいか,向こうの会社が日本の会社を買収しやすいかという観点のみからこの問題を見るべき話なのか。買収がたくさんあることは株主にとってはいいことだという考え方もあり得るわけでありまして,どういう姿勢で考えるべきかということなのですが。   いかがでしょうか。入れるべきではないとおっしゃっている方が二人ぐらいおられるのですが,最終的にはこれは採決でもせざるを得ないんですよね,いつの時点かで。 ● 問題は最初に○○幹事が言われたことに尽きているのではないかというふうに思っているのですが。   今回,この条文を設けたからといっても,相手方の方,100%親会社になろう,完全親会社になろうとする方の側の国の親会社従属法にいわば見合いの規定がきちっとなければ連結しないというのが基本的な考え方になるだろうと思いますので,それがどの程度のものである必要があるのかというのは,実は法律で書くという問題よりも,国際私法上の連結に関連する解釈にやや委ねられる部分がありますから,法制上ここで条文を作るということはここに提案されていることにとどまる可能性もあるかなと思います。   そう考えていきますと,冒頭に○○幹事が言われましたが,やろうと思ったのに,日本法上は株式交換の場合の会社概念に外国会社が入らないというこの解釈だけが障害となってできない,いわば非常に重装備な株式交換に関する株主保護規定を持っている国が株式交換をやりに来ても解釈上そこでストップになっているという状態だけを解放するということであるとすれば,私は,これで十分なのではないかと--やや間違っているかもしれませんけれども--そういう理解をしております。 ● ちょっと遅刻しましたので最初の方を伺っていなくて申し訳ないのですけれども,2点あるのですけれども,一つは,株式交換とかあるいは合併とかいう形だけで,例えば日本からアメリカ,アメリカから日本の買収を比較するということは非常に難しいということだと思います。   先ほど○○関係官がおっしゃったように,デラウェア州へ行く場合というか,日本の会社が買収する場合というのは,子会社をつくって,日本の親会社株式を対価として三角合併をするわけですね。それで,その子会社は簡単につくれます。ですから,実質それで株式交換と同じものができる。それは日本の会社も可能です。   それから,株式交換を持っている州は,私,予習してきておりませんけれども,昔調べたときに,ニュージャージー州とか,その典型,模範会社法--模範ですので,具体的に資料を見なければいけませんけれども--そういうところも内外はそれほど差別していなかったように記憶しております。   したがって,どういう形かはいろいろな要素で決まり,場合によっては課税関係等の影響も受けますので,どちらが行きやすくてどちらが行きにくいかということは,具体的な株式交換という手段,あるいは合併という手段,その対価の柔軟化ということを含めて比較するのはなかなか難しいと思いますけれども。それが一つです。   もう1点は,株主の保護なのか何なのかよく分からないのですけれども,今,○○幹事がおっしゃったこととちょっと関係しますけれども,私は,準拠法というか国際私法を適用して,相手側はもう向こうの準拠法にお任せしますということだけではちょっと済まない問題があるから,先ほどから慎重論が出ているのではないかというふうに思いまして,株主総会の特別決議さえ得ればそれでいいのかというお話は先ほど出ていましたけれども,買収ということで私が一番気になりますのは,よく詰めていませんので実務のことは知りませんけれども,例えば日本の企業を日本の企業が買収しようというときに,アメリカの会社がそれにコンピーティングというか競争的買収をかけてきた場合に,日本の買収しようとする企業の方は日本法のもとで,債権者保護手続が今度導入されればそれも必要だということで,いろいろな手続的な規制を受ける,それに対してアメリカの会社の方は準拠法だということになりますと,すぐ来れるということになりますと,まずスピード感の点で日本の買収しようとする方の企業は圧倒的に不利です。このことは,いい買収と悪い買収とあるのかもしれませんけれども,買収される側の株主にとってももちろん間接的に影響があるわけですから,そういう意味で,日本企業が買収側に回るというか完全親会社となる会社になる場合と,例えばアメリカの会社が完全親会社となる場合との競争条件の公平というか,レベル・プレーイング・フィールドというのでしょうか,こういったものは本来,例えば証取法の公開買付けであれば全部適用しますので,平等になるのですけれども,たまたま商法だと,相手側の手続は国際私法というか準拠法だと言ってしまうと,その瞬間全部抜けてしまうということがあるものですから,これはちょっと私も実態が分かりませんし,本当に今言ったような条件の不均衡が生じるのかどうか詰めなければいけませんけれども,少なくとも日本法として準拠法に任せておいては済まない部分は幾つかあるように思いますので,それを詰めていただく必要があると思います。   私の感想は,したがって,規定を設けることには前向きの検討でいいように思うのですけれども,今申し上げました点も含めてやはり相当詰めていただく必要があるので,詰めていただいた上で設けるということであれば,先ほど消極的な御意見も出ておられましたけれども,その心配も払拭されるのではないかと,現時点では感じております。 ● 公開買付けですと確かに,法制が違っておりますと競争になったときに有利・不利が出てくると思うのですが,これは一応,日本の会社が完全子会社になるときを考えますと,日本の会社の取締役会が合意しないと総会にかけられないわけですよね。ですから,そこのところの競争なので,向こうの会社の会社法がどうかというようなことは余り関係ないのではないかという気もするのですが。日本の取締役会を説得した方が勝ちだということになるのではないでしょうかね。   いろいろ検討すべき点を御指摘いただいた点は大変有り難いと思いますが。 ● 一応現行法のもとでも解釈上できるということかもしれないということを前提としつつ,規定ぶりをもう少し,御指摘を踏まえて,書けるものなら書くべく,更に詰めたいと思いますが,できれば規定を設けたいと思います。外国会社についての規定をできる限りきちんと整備しようという方針で臨もうと思っておりますので,言いかえれば,今回の作業を経ると,規定がないとできないという方向になる可能性が高いことになりますし,その「できる」という実質について,相手方がどこまでの要件を整えていればできるということにするのかという問題--現在でも解釈でできるということであれば同様の問題があるはずですけれども--それをもう少し詰めまして,規定ぶりとして過不足ないところがこの程度ではないかというものを次回にお諮りしたいと思います。 ● それでは,(注)につきまして,いろいろな株主保護等の手続を設けた場合に,それが履行されないという場合があるわけで,その場合には株式交換無効の訴えになるわけですが,これにつきまして,現在ですと完全親会社の本店所在地の裁判所の専属管轄になっておりますので,違法な手続で成立したと言われたときに,どこの裁判所に訴えを提起できるかが宙に浮いてしまうという問題がありますので,この(注)のような形で完全子会社の本店所在地の地方裁判所というものも加える,それによって日本の株主等の保護を図るということでありますけれども,この点につきましてはよろしいでしょうか。 ● 方針はこれでいいと思うのですが,1点だけ伺いたいのは,完全親会社が外国会社であったら,外国の管轄があるということを日本の商法が宣言することになりませんでしょうか。規定の書きぶりが分からないものですから何とも言えませんが,「又は」と,こう書き込みますとそういうことになりまして,ちょっと奇異な気がしたものですから,ちょっと確認させてください。 ● こう書いても,もし完全子会社の本店が外国にあると,これはちょっとどうしようもない話ですよね。それは,管轄を認めろと言っても向こうが認めなければ空振りになるということだと思います。これはとにかく,現在の規定ですと日本の会社が完全子会社になったときにどうしようもなくなるのではないかということで,これを加えるということだけだと思います。   よろしいでしょうか。   それでは,4の点につきましては,先ほども二,三の委員から御意見がありましたけれども,いかがでしょうか。   ○○委員がおっしゃったように,外国子会社の場合に刑事罰とか何とかあるのかということですが,これはちょっとどうしようもないですね。これをしていても空振りになるということでありまして。しかし,実質は,○○委員がおっしゃったように,日本の取締役としては取得するなというふうに説得する,それでその親会社の意向に反すれば何らかの措置をとるという,それ以上のことはできないのだと思いますが。会社として何らかの措置をとるということですね。 ● その法的効果というものがどうなるのかということが全く分からないものですから。子会社の取締役の責任の問題とかいうことをここで律しようとしているのではなくて,あくまでも国内にある親会社の……。 ● そうです。親会社の取締役の義務とか,そういうことです。 ● 親会社の義務違反ということになりますと,親会社が主導的に,子会社をしてお金を貸したりして,国内の子会社だと買えないからおまえのところが買えよというふうに指示をしている場合とか,そういうふうなこと,それはもう 親会社自身の自己株式取得禁止と同じようなことだということでとらえればいいと。   外国子会社単体の規律を日本の会社法で設けるということがいま一つ分からないということなのですけれども。 ● 例えば監査役なども,親会社の監査役としては子会社に監査に行くのでしょうが,そのときに,積極的に親会社から指示されたものでなくても,親会社株式を買っておれば,これは少なくとも日本の国際私法上は親会社の準拠法によって決まる問題であって,日本の会社法によると,子会社は親会社株式を取得してはいけないということになっているので,これは処分してくれというようなことを言う義務は恐らく出てくるのではないかと思うのですけれどね。 ● だけども,言うことを聞かなければ,それでもう終わりですよね。お願いですから売却してちょうだいと言っても,いや,おまえの言うことは聞かないと言えば。後で役員の責任でそれを不作為でも訴えられるというようなことまではいかないのでしょう。 ● どこまでやらなければ義務違反になるかは,これは状況次第だと思いますけれどね。   それは,積極的に子会社に株式を取得しろと言うのは違法であることは確かですが,それさえしなければ全く違法にならないのかというと,先ほど○○委員がおっしゃったように,やはりそれは問題が出てくることはある,善管注意義務違反を親会社取締役・監査役が問われることはないではないということではないかと思います。   そういう趣旨だと思いますが,いかがでしょうか。一応御了解いただけますでしょうか。 ● 了解なのですけれども,あわせてこの機会に,この子会社の話で1点だけお願いなのですけれども。   この規定はよろしいのですけれども,もともとの要綱試案は,子会社一般について外国子会社も含めるということで検討するというふうになっていて,この規定だけが今出ているわけですけれども,私としては,できるだけ,可能な限り,ほかの関係する問題についても,可能であればその方向で具体的に検討して詰めていただきたいと。擬似外国会社がどうなるか分かりませんけれども,その辺が緩くなれば,そういうふうにする必要は特に大きいと思いますので。 ● 子会社について,これだけを残しているという趣旨で今回御提案しているのではなく,これまで御議論してきていただいた,子会社調査権とかいろいろな点を全部含めた上でまだ残っている問題としてこの問題があるという趣旨でございますので,当然,子会社一般に関する規定をできる限り外国会社についても適用していきたいと考えております。 ● よろしゅうございますか。   それでは,4の点も御了承いただいたということで処理させていただきます。   続きまして,部会資料26に入りたいと思いますが,一括して事務局から説明をお願いします。 ● 部会資料26と27は,現在までの御議論の中でまだ結論が得られていない論点を二つに分けて取り上げさせていただいたものでございます。   まず,資料26の1でございますけれども,株式会社と有限会社の規律の一体化に関する各種問題で,ここに掲げられているような点について一括して御議論いただきたいと思います。   (1)から(5)までありますけれども,まず(1)は,従前御説明申し上げておりますように,譲渡制限会社における株主に対する告知の在り方に関して,公告をもっては代えることのできない,各別の通知を要するものを列挙させていただいております。   それ以外のものも含め,公告・通知がされるべき場合としてどのような場合があるかということについては,別紙を御参照いただきたいと思います。この本文に掲げられているものは,その中で株主に対する各別の通知というものが必要なものとして分類することができるのではないかと思われるもので,従前の案をそのまま掲げさせていただいているところでございます。   なお,別紙につきましては,2の(4)の新株発行無効あるいは株式交換無効の判決に関して,告知の在り方を少し見直してもよいかどうかという点も問題点として挙げられようかと思います。現行法上は事後的な告知のみに限られておりますが,ある程度株主への告知の実効性を高める必要があるかどうかということもあわせて御議論いただければ幸いでございます。   (2)は,定款で別段の定めを置くことができる会社の範囲と,ここでの議決権制限株式の発行上限に関する規制の適用を受けない会社の範囲とを一致させようというものでございます。譲渡制限会社の中に格別の区分を設けないということといたしますと,(2)のような整理をさせていただくことになるのではないかということの確認でございます。   (3)につきましては,株式会社一般について,商法256条ノ2の規律を維持するかどうか--有限会社については,そのような規律はないわけですけれども--この点についての明示的な御議論をいただきたいということでございます。   これに関連して,解任の場合,現在は特別決議ということになっておりますので,その問題がないわけですけれども,選任の方に256条ノ2の規律が設けられるということであれば,解任の方にも--普通決議とした場合--この規律を設けることとすべきかどうか,あわせて明示的に結論を得させていただきたいと思います。   (4)の「附属明細書」についてですけれども,現行の株式会社の規律に従い,附属明細書については,記載事項の簡略化をどこまで図るかという問題はありますけれども,その作成を要するという規律で統一させていただくということでどうかということでございます。現行の有限会社においては,会計帳簿の閲覧請求権等が認められていれば附属明細書の作成を要しないということになっておりますけれども,定款で実際にどの程度そのような手当てがされているかは分かりませんけれども,そのような道を設けないということで実務上格段の不都合があるかどうか,附属明細書の記載内容をかなり簡略化させる--これは施行規則マターになりますけれども--ということで対応可能な問題ではないかというのが,ここでの提案の趣旨でございます。   (5)の「商号」につきましては,従前どおりの方針であり,所与の前提であったと思いますけれども,御確認をいただきたいと思います。   (後注)についても,一体化をするということであればこのような整理をさせていただくことになるのではないかということでございます。   「2 株式関係」につきましては,やや重要な論点でございますので,十分な御議論をちょうだいしたいと思います。   まず,(1)の「株式の消却」についてですけれども,従前は,裁判所の事前判断というスキームをとったらどうかという提案をさせていただいていたのですけれども,それにはなかなか難があるということでありまして,ここでは,まず,何らかの正当な理由--正当な理由がどのようなものであるべきかということについては更に御議論いただきたいと思いますが--何らかの正当な理由,それから特別決議,さらに反対株主の株式買取請求というスキームによってこの種の行為の実現を図ってよいかどうかという点について御議論をちょうだいしたいと思います。   なお,株式買取請求による自己株式の取得について財源規制をかけるべきかどうかという論点が別途あるわけでして,(4)の②のハで,この場合にも財源規制をかけるべきではないかというのがこの原案でありますけれども,その点もあわせて御議論をちょうだいしたいと思います。   (2)は,「自己株式の市場売却」についてでございます。従来,一般的に市場売却を認めるということについては,理論的な問題もさりながら,弊害が懸念されるという消極論が強かったところであるわけですけれども,一方で,少なくとも特定の事由により取得したものに限っては可とすべきではないかという御議論,更には,一般的に解禁してもよいのではないかという御議論もあったわけでして,現段階におきまして,少なくとも事由を限定した形で,さほど弊害が懸念されない範囲内で自己株式の市場売却を認めることとしてはどうかというのが,ここでの提案の趣旨でございます。①,②につきまして,過不足がないかどうかを御判断いただきたいと思いますし,市場売却をすることができる自己株式数のカウントの仕方を(注)のような形としてよいかどうかということも御確認いただきたいと思います。   (3)につきましては,(注)のところですが,子会社による親会社株式取得規制一般については,今回,その見直しは行わず,将来の課題として見送るということとさせていただきたいという趣旨でございます。   (4)の「自己株式の財源規制」につきましては,従前の御議論を踏まえて,若干手直しをしてあります。   イ,ロ,ハとして,要するに財源規制がかからないものを列挙しておりますけれども,イにつきましては,会社分割のうち営業の一部を承継する分割も含めているという点が相違点でございます。また,営業の一部譲受けについては,従前どおり,イの中には含めないという整理をさせていただいております。   ロについては,ある程度広く,反対株主の株式買取請求に応じて買い受ける場合を例外として認めることとしております 。ただ,これについては,債権者保護手続がとられている場合に限るべきではないかという御議論もありましたので,それとの関係で更に御議論をちょうだいしたいと思いますが,原案では,この種の組織再編行為等について,反対株主の買取請求による場合は例外とするという整理をしております。   ハについては,特段御異論がなかったところであると思います。   (4)の②についてですけれども,財源規制をかけるべき場合として列挙しているもののうち,ロ,ハについて,特に,これでよいかどうかの確認をさせていただきたいと思います。ロについては,数に歯どめがありませんので相当多数の株式の買取請求がされ得るということも考え合わせると,財源規制をかけるのもやむを得ないのではないかという感じがいたします。ハにつきましては,(1)の制度の趣旨とも考え合わせて御議論をちょうだいしたいということでございます。   (5)についてですが,特に合併等の対価柔軟化等を前提にすると現在の買取価格の算定基準では株主保護に欠けるのではないかという指摘について,何らかの形で少しでも酌もうといたしますと,例えばこのような工夫があり得るのではないか,要するに,場合を限定せずに「公正な価格」ということとしてはどうかという趣旨でありますけれども,このような形にさせていただくということでよろしいかどうか,御意見をちょうだいしたいと思います。   (注)についてですが,従前の御議論の中で出てまいりました,買取請求権を行使した者にかなり有利な立場を与え過ぎるのではないかという指摘に配慮するといたしますと,このような整理があり得るのではないかということでございますけれども,この当否について確認させていただきたいと思います。   「3 監査手続」についてですけれども,(1)①,(2)①とも,要するに一定の期間を経過しなければ定時総会を開催することができないという規制自体は廃止してよいのではないかというのが,その趣旨でございます。   それから,(1)②と(2)②についてですが,特に(1)の②について,会計監査人の監査期間の最低限の保障が脅かされることとなる可能性があるような法律上の手当ては避けるべきであるという強い御批判もあるところでございまして,この点については現行法を維持させていただくということでよいかどうか--伸長するということは構わないと思いますけれども--同意による短縮ということは認めないということでよいかどうかということの確認をさせていただきたいと思います。(2)②についても,同様の処理をさせていただくことがよろしいのではないかと思います。   「4 組織再編関係」についてですけれども,先ほどの御議論とも関連いたしますが,株式交換について,対価が株式ではないという場合には完全親会社となる会社において債権者保護手続を要するのではないか,あるいは,社債債務の承継ということを前提にいたしますと,その場合にはやはり完全親会社となる会社において債権者保護手続が必要なのではないかという御議論があるところでございまして,それらの点を勘案して,制度全体について一律にこのような手当てをすべきかどうか,仮にこのような手当てをすべきではないとした場合には,どのような手当てが--一般の取引行為に係る詐害行為取消しのような手だてが完全親会社の債権者にはないとすると,それに代わるようなものとしてどのような手当てが--考えられるのかということも含めて,この点については議論の整理が更に必要ではないかと思われるところでございますので,突っ込んだ御議論をちょうだいしたいと思います。   (2)は,従前の案につきまして,○○委員から御提案のありました案を--非常に合理的な案であるというふうに御支持をいただいたところだと思いますので--掲げさせていただいたものでございます。   (3)についてですが,略式組織再編については決議の効力を争うという機会が閉ざされることになりますので,それに代わる差止請求権の行使というものを許容することとした場合,例えばこのような制度設計ではどうかということをお諮りしたいと思います。   「5 その他」ですけれども,(1)につきましては,債権者保護手続において社債管理会社が有し得る権限について,全くの強行法規というわけではなく,発行条項,社債管理委託契約の定めで除外することができるという道を開くものの,社債管理会社は常に催告を受けるということとして,どのような社債管理委託契約の定めであっても社債管理会社の適宜な対応を期待するということでどうかということでございます。これまでの議論を踏まえて,このような修正をさせていただいたものでございます。   それから,(2)の清算手続の債権申出期間については,まだペンディングになっておりましたけれども,その短縮ということは,清算という債権者にとってはかなり重要な場面での問題でございますので,短縮しても格別弊害がないという立証がなければ,そのような提案をすることはややためらわれるところでありまして,今回は見直しをしないということでどうかということをお諮りしたいと思います。   説明は以上でございます。 ● それでは,資料全体について何か御質問ございますか。--よろしいですか。   それでは,順次御審議いただきたいと思います。   1の「(1) 譲渡制限株式会社における株主に対する通知・公告」でありますが,譲渡制限株式会社において,公告だけではなく,株主に対する通知をしなければならないというものについて,このようなことでどうかということであります。そして,別紙がついておりまして,こういうことになるのだけれども,これでどうかということであります。特に事務局が意見を伺いたいのは,別紙の2の(4)の米印がついておりますが,そういうところを見直せないかということでございます。この点につきまして,いかがでしょうか。 ● (1)と,別紙の1の(1)を照らし合わせて見ると,本文の方の(1)では,「公告をもって,株主に対する通知を省略することはできない」ということで,公告と通知両方というふうに私は読んだのですが,表の方では,「通知のみとする」となっていますね。これらの場合については公告はしないでもよろしいということで,通知だけを法定するという趣旨でしょうか。 ● 別紙の方はそういう趣旨ではないのでしょう。公告プラス通知。 ● いえ,別紙の方の「公告又は通知」と書いてあるのは,公告か通知かいずれかをやればいいという制度になっているのです。それは要するに,ひっくり返して言うと,公告をすれば通知を省略できるということなので。 ● 公告及び通知なのか,通知だけでいいのか,そういう御質問ですね。 ● いえ,そうではなくて,公告又は通知というのを,通知だけというふうに限定するという意味ですか。 ● はい。 ● 公告は要らなくなるわけですね。そういう意味ですか。   いかがでしょうか。 ● 私は,やはりこの(1)に掲げてありますものは株主にとって非常に重要なかかわりのある事項であり,こういった譲渡制限株式会社の場合は,公告よりも,株主に直接通知をするということが望ましいと思われますし,利害関係を持ちますのは株主名簿上の株主ということになりますから,こういう場合は通知をすればそれで足りる,公告までする必要はないということで,この提案されているような内容でよろしいのではないかと思います。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。 ● 私も,今,○○委員がおっしゃったように,これに賛成ですが,要綱試案のときには,通知というのを取締役会を設置しない会社に限るか,あるいは譲渡制限会社一般に認めるかという議論だったと思うのです。それを,譲渡制限会社一般に通知を要求するということで要綱試案のときの議論がそのまま維持されておりますから,そういう意味で賛成いたします。 ● では,(1)につきましては大体賛成が得られたかと思いますが,別紙の2の(4)の点につきましてはいかがでしょうか。   現在は,新株発行無効の判決の確定がありますと,公告して,かつ株主には通知をするということになっているのですか。 ● 現行法は--六法に載っている現行法は--公告かつ通知なのですけれども,株券不発行になりますといずれかでいいのですね。現代化においては株券不発行を前提にしていますので,そのときに公告だけで足りるかどうかということになるので,1と同じ問題になると。 ● 株券不発行制度のもとでは,株券が出ている場合と出ていない場合とあるわけですよね。株券が出ていれば公告はしなければいけないということですね。 ● 株券が出ていない場合ですね。 ● 出ていない場合はどうなんですかね。公告でも通知でもいいのですね,たしか。   これは現行法をどう見直すと言っているのですか。 ● 株券を発行していない会社の場合には,公告か通知のいずれかでよくて,それは2の(1),(2),(3),(4)と全部共通している話なのですけれども,そのうち(4)というのは,事前に株主に対する何らのお知らせもない状況で,いきなり無効の判決が出ると。ほかの(1),(2),(3)は大体,株主総会があったり,定款にあらかじめ定めていたりするわけですけれども。そういう状況の中で,無効判決が確定しましたよというお知らせを公告をしたらそれだけで足りるということにするのか,通知をしなければいけないという,この別紙の1と同じような整理にするのか,どちらかだと思うのですけれども。 ● そうですね。株券が出ていない場合でも,現行法の制度だと公告だけでもよくなるが,それはちょっとおかしいのではないかという趣旨ですね。   いかがですか。まあ,株券不発行の会社というのは恐らく株主数は少ないのだろうと。だから,コスト的には通知の方が恐らく安いのですから,通知だけということになっても,そう会社が経済的負担をあれするというわけでは恐らくないと思います。 ● そういうことでしたら,株券不発行で株券が出ていないということですから,通知だけの方が実質的ですから,よろしいのではないでしょうか。現行法が両方要求しているというのは,株券が出ていて,流通していて,株主名簿上の株主になっていない新株の所有者がいるということを前提にしていると考えられますので,株券不発行で株券が発行されていない場合であれば,通知だけでいいということで十分ではないかと思います。 ● では,これも,通知を要求する事項ということにしてよろしいでしょうか。   ○○委員,それでよろしいですか。 ● 結構です。 ● それでは,そういうことで整理させていただきたいと思います。これも,通知のみとするという類型に入れたいと思います。   (1)はそれでよろしいでしょうか。   それでは,(2)に進ませていただきますが,(2)は,譲渡制限株式会社においては議決権制限株式の発行限度に関する規制を設けないということでありますけれども,いかがでしょうか。特に御異論はありませんか。 ● 特にこの点について反対というわけではないのですが,この議決権制限株式の発行限度の規制撤廃と,後で出てきます利益配当あるいは議決権に関する特段の定款による定めという問題と,これは一体のような面があると思いまして,株式が相当分散した会社でこれらの制度を設けますと,やはり支配の点で不公正な現象が起きるという懸念というものが若干感じられないでもないという感じがいたします。   それで,前々から私申し上げているように,利益配当と議決権についての特段の定めというのは,また後で議論になると思うのですが,これについては相当,株主数あるいは株式が分散されていない会社に限るべきではないかという見解を持っているのですが,この(2)については,ある意味では,このような議決権制限株式を引き受けるか引き受けないかという自由が確保されておりますから,ある意味では株主間契約の一つの発現という意味があろうかと思いますから,そういう意味で,反対はいたしませんが,多少慎重さが必要なのではないかなという項目であるという感じは持っております。 ● 別段の定めにつきましては,また後ほど議論も出てきますので,一応この(2)につきましてはよろしいでしょうか。   それでは,先へ進ませていただきまして,(3)につきましてはいかがでしょうか。株式会社一般につきまして,256条ノ2の規律を設けるということであります。それから,解任につきましても御議論いただきたいということでありますが,いかがでしょうか。   まあ,閉鎖会社につきましては,定足数を満たしているかどうか,大して問題にする……,大体非常に低いあれしか出てこないということは恐らく余りないと思いますので。   選任につきましてはよろしいでしょうか。 ● これは,会計参与も同様でしょうか。会計参与も株主総会で選任するということになっていましたが。 ● 詰めては考えていないですけれども,会計参与については,その選解任等を取締役と同じにするということを基本的な考え方としたいと思っておりますので,ここで256条ノ2の規律を設けるとすれば,同様の整理をさせていただきたいと思います。 ● その点はよろしいでしょうか。   解任につきましても同じような要件は設けるというのは,これは当然かと思いますが,よろしいでしょうか。--それでは,これも御了承いただいたものとさせていただきます。   次に,「(4) 附属明細書」につきましては,有限会社について,従来,特殊な取扱いがなされていたわけですけれども,それを廃止するというのが(注1)であります。それから,記載内容については,(注2)にありますように,所要の措置を講ずるということでありますが,いかがでしょうか。この点はよろしゅうございますか。--それでは,この点はも御了承いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次に,「(5) 商号」でありますけれども,一体化の結果こういうことにするということですが,いかがでしょうか。この点もよろしゅうございますか。   それから,(後注)でありますが,組織変更,これも一体化との関係で,こういう組織変更に関する規定については廃止すると,これもよろしゅうございますね。 ● 「(5) 商号」についてなのですが,これは私も前に書面で書かせていただいて,取締役会を設置する会社と設置しない会社と,これは取締役の権限とかそういうものが全然違いますので,そういう意味で商号の面でも登記上区別すべきであるという意見を書いたことがあるのですが,弁護士会の意見の中でも,取締役会を設置しない会社については「有限会社」という形を残すべきだという意見も出ておりまして,私もいろいろと紆余曲折考えてきたのですが,各会社について「株式会社」という商号を使うということについては最終的に賛成したいと思いますが,一つ確認させていただきたいのは,登記上,取締役会を設置する会社とそうでない会社と,これが明示されるのかどうか,ちょっと確認させていただきたい。 ● どういう形で登記上区別を……,何らかの区別はされるのだと思いますが。 ● 取締役会設置会社につきましては,登記事項になるというふうに認識しておりますので。見れば分かるということで。 ● 取締役会を設置しているかどうかが登記事項になるということですか。 ● はい。 ● よろしゅうございますか。 ● それが登記事項になるというのは,もう少し具体的に教えていただけませんか。どういう項目で。例えば,定款に書いてあるわけではなくて,どういうことになるのでしょう。そういう何か特記事項みたいなもの,取締役会の有無という事項が出てくるということですか。今まで,登記上取締役会の有無が出てくるという議論は実は余りしたことがなくて,そこはちょっと唐突に,本当にそうなのかなと。余り議論したことがないということと,いずれにせよ株主総会でそこは決まってくる話なので,そこを見ればそもそも明らかなのではないかと。それがどういう形で登記に反映されるのか,ちょっとよく頭が整理できないのですが。 ● もちろん,取締役会を置くかどうかは定款で定まるのですね。 ● それは,定款を見ればそこで分かるのであって。 ● 定款記載事項で登記事項のものとそうでないものとあるわけですね。取締役会を置いているということ自体を登記するか,それとも,取締役の権限が違いますので,つまり各取締役が会社を代表する権限を持っているかどうかですね,その辺で区別するというあれもあり得るでしょうし。 ● 権能については当然そういう区別が起こってくるので,それがどういう形で登記に書かれるのかというのが,ちょっとイメージが像を結ばなかったものですから,お尋ねをしたのですが。   取締役会の有無という個別の項目があって,ちょっと極端に言うと,「有・無」と,配偶者の「有・無」と同じように丸がついているというようなものとなるのではないかなと。定款でどう定めているかというのが分かればいいし……。 ● 取締役会があるかないかということは各機関設計に大きく影響を与えるところなので,これは公示すべきであるという前提で我々は考えていたのですが,ただ,それをどういうふうに登記上表記すべきかということにつきましては,これは登記を担当している商事課等ともまた相談しながら具体的に検討しなければいけないと思っておりますので,もう少し検討させていただけますでしょうか。   御懸念として,こういう表示だとまずいとか,そういうようなことがあるのでしょうか。 ● 先ほどの○○委員の発言をもう少し敷えんしていくと,「株式会社○○商店(取締役会有)」「(取締役会無)」というようなラベリングにつながるような登記事項は是非やめてもらいたい。みんな「株式会社」と。それで,その機関設計の在り方として何種類かあるし,あるいは委員会等設置会社のようなクライテリアもあるので,そういういろいろなクライテリアがあるというのは当然のことなので,それが登記で見れば分かるというのは結構な話ですが,ラベリングに直接つながるような,「大会社○○商店(委員会等設置会社)」,一方,「(取締役会無会社)」というようなラベリングになるのは困ると,こう申し上げているのです。念のためでございますが。 ● 分かりました。 ● この問題は,2月25日の第19回の会議のときに大分いろいろと一体化についての議論があったときに,取締役会を設置する会社とそうでない会社,あの当時は1種・2種という形で言っておりましたけれども,その名称は使わないということにその後なりましたが,あの時点で,やはり取締役会を設置する会社のガバナンスを公示する,あるいは,それを設置しない会社であればそういうガバナンスであるということを公示するということについては相当明確に確認されまして,私,ちょっと議事録を確認してきたのですが,第19回の議事録の39ページにそういうことが載っておりますので,当然それは前提で,商号については区別しないという方向で考えるということだと思って今日は理解しておりましたのですが。   今,○○委員がおっしゃったように,ネーミングの中に「取締役会設置」云々というのを入れるということは,これは登記実務上も,あるいは外形的にもちょっとふさわしくないだろうと思いますので,当然,商号のところとは別に,譲渡制限があるかないかといういろいろな欄がありますから,そういった商号とは別のところで何らかの公示をするということを是非工夫していただければよろしいかと思います。 ● それでは,なおその点は検討させていただきます。 ● 私も,今,○○委員が御指摘の議事録は今手元にないし,確認のしようがないのですが,当時の1種・2種の議論というのは,そういう原案が事務局から出て大分議論しましたが,その1種・2種という原案自体について,これは問題だということをさんざん申し上げたので,その議論をしている最中に御指摘のようなことが議論としてセットされたということはちょっと記憶にないものですから,そこは会社の今回のつくり方の基本的な概念自体がその後大分変わって,新たな事務方の案が出てきて,議論をして,ここまで来ていると,こう認識をいたしておりますことをちょっと付け加えておきたいと思います。 ● それでは,先に進ませていただきまして,「2 株式関係」でありますが,ここはかなり重要な論点でありまして,まず,「(1) 株式の消却」でございます。前には,裁判所の事前の認可というようなことがあったのですが,どうもそれはうまくいかないということで,このような形,正当理由がある場合に株式消却を認め,反対株主には株式買取請求権を与えるということで,かつ,株式買取請求権と財源規制の在り方につきましては,先ほど事務局からありましたように,(4)の②のハのところにこれが出てきております。これもあわせて御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。 ● 私自身がよく整理がついていないのかもしれないのですが,①のところで,これはもともとは債務超過であった場合の強制消却というのが最初の原案だったと思うのですが。債務超過の場合に考えられますのは,例えば,スポンサーとして再建に協力しようという人が出てきて,私的整理の話が出てきたと,しかし,債務超過であるので,既存の株主にはいったん責任をとっていただいて,自分がニューマネーを入れても希釈化が起こらないようにしてほしいという要請が出てきたときに,じゃあ強制消却という,かつての100%減資といわれるようなものがイメージされてきたのではないかと思うのですが。ただ,そのような形で,例えばそれが正当な理由の一つだと考えた場合には,①の方で強制で全部無償消却をするということが正当であるという評価をいったん受けておきながら,反対するとそれとやや異質な形でお金がもらえてしまうという,いわば有償消却のような形になる,株式買取請求権を行使してお金をもらえると。といいますのは,債務超過でも株価が形成されている場合があるということを前提にしているわけなのですが,そういうことは制度的にミスマッチなのではないかという気がするのですが,ここは私の理解が間違っているのか,どういうふうに理解していいのかちょっと分からないものですから,御説明いただければと思います。 ● 私の理解は,おっしゃるとおりで,主として考えているのは,債務超過会社でいわゆる100%減資といわれるものであります。その場合,債務超過で,少なくとも,今もう法的な倒産手続に持ち込もうとすればできるのだと,株主にはもう一銭も戻りませんと,そういう状況だとして100%減資をしたのですが,実態はそうではないという場合もあり得るわけですね。その場合にどのような救済を与えるかで,それについての争い方として株式買取請求権と,こういう形になっているのだと思います。   ですから,これは,先ほどの(4)の②のハとあわせますと,そういう会社ですから,不満な者が株式買取請求権を行使することができまして,もし裁判所がその株式買取請求権を行使している者の主張が正しいと,つまりこれは債務超過ではありませんねということになったら,取締役はこの責任を負うということなんですね。だから,ひょっとしてこれは怖くて100%減資ができない,よほど自信がないとですね,ということにもなりかねないのですが,この辺は……。 ● よく状況が分からなくて,いつもおかしなことを言って申し訳ありません。   帳簿上債務超過でありましても,実質的には,営業権その他帳簿に載っていない部分も含めますと株式の価値があるということは大いにあり得るわけですね。よく株主責任ということが言われますけれども,株主責任というのは,株価が下がってそれでおしまいでございますよね,有限責任でありますから。本当にゼロだったら,今みたいに強制減資でゼロということもあり得るのですけれども,市場価格がついている場合には,やはり議論としてはあり得ると思うのですね。どうしてかというと,新しい会社で債務超過という会社は幾らでもありますよね。だけれども,希望があって,株価もちゃんとついて,営業を続けていると。債務超過がすなわち倒産会社であるようなイメージが,97~8年の金融恐慌以降,一般に流布されているようなのですけれども,帳簿上の債務超過と実際の株式価値がゼロだということは必ずしも一致しないと思うのです。 ● ここで問題にしているのは,帳簿上の債務超過ではありません。倒産原因である,破産原因である債務超過を言っているのです。 ● だとしたら,今御質問の方がおっしゃったように,基本的に株式価値はゼロということですよね。 ● その判断が正しければです。正しくないことがありますので,争う手続を設けているわけです。 ● もう一つなのですが,正当な理由ということがありまして,しばしば法律に「正当な理由」とか「正当な事由」というのが出てくるのですけれども,これは多くの場合,司法に判断を委ねるのですが,今回もそうなのでしょうか。それとも,何らかの形で,会社の定款にうたったりとか,事例として列記されたりとか,そういうことがあるのでしょうか。 ● その点は御議論いただきたいのですが,従来の案は債務超過となっておりました。ところが,それについていろいろ御異論が出ましたので,こういう表現になっているわけであります。 ● 私の質問の仕方がやや悪かったのかもしれませんが,先ほどの○○委員の御説明でいきますと,争い方としては,1項の正当な理由がないという争い方もあるのではないかと。要するに,強制消却それ自体の効力を争うという余地があるようなケースをもし念頭に置かれるのであれば,株式買取請求権という制度で機会主義的な行動をある程度誘発するような形の制度設計よりは,むしろ真っ当に正当理由で争うということはできないのかという,そういう趣旨の質問です。 ● そうですね。恐らく争い方は二つあるのだと思います。正当理由なしだから決議無効というのと,そういう争い方をしても恐らく裁判所は認めないだろうから株式買取請求権でいくと。恐らくそういうことだろうと思います。 ● 確認させていただきたいのですが,この場合,株式買取請求権の中身は,(5)で書かれているような買取請求権と考えてよろしいのでしょうか。つまり,さっきから○○幹事などのやりとりを聞きますと,要するにゼロだという判断が間違っていたという主張を救うための買取請求権なのだとすれば,その決議なかりせば,でないとおかしいというような気もするのですけれども,このケースに関してはですね。そこは合併などと同じ話なのかどうかがよく分からないのですが。そもそも前提が間違っているかもしれません。(5)がここに及ぶとすればという判断ですが,救済の内容として何を想定されているか,確認させていただければと思います。 ● おっしゃるように,法的倒産手続に持ち込んだときに返ってくるかどうかというのが,恐らくここでの株式買取請求権の価値ということになるのではないかと。それが,例えば破産手続になったときに株主にはゼロですねということであれば,これはもう100%減資の状況では仕方ないのだと思うのですね。たとえオプション価値みたいものが付いていて,株価はゼロではありませんと言っても,もう倒産手続になる可能性があるのだからそれはだめですということにここではなるのではないか,100%減資の状況では,と私は理解しておりますが。 ● 表現をここだけ「買取請求」に変えるのがいいかどうかというのはまた別問題なのですけれども,ここでの「公正な」というのは,「決議なかりせば」を意味する,決議がなくてこれができなくて倒産したらという意味なのだと解釈する,まあ,解釈に委ねるのか,具体的に条文に書くか,どちらがいいかはともかくとして,そういう理解……。 ● ○○委員,いかがでしょうか,この問題につきまして。 ● 今までよりもやや,○○説よりは規制強化になるので,実務的にはちょっと厳しい面もあるかなと思いますけれども,非常に公正妥当な解決ではないかと思います。 ● (4)②のハも含めて,よろしいですか。 ● そういう本当に明々白々な場合でなければ,だれもやりませんから。 ● 私はその点がちょっと気になっていたのですが,それはもうこういう場合しかやらないのだから,危ない場合はやらないのだから,これで構わないということでしたら,それでよろしいのですけれども。   よろしゅうございますか。--それでは,(1)につきましては,御了承いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次に,「(2) 自己株式の市場売却」でありますけれども,こういう限度で市場売却を認めてはどうかという案でありますが,いかがでしょうか。 ● 本当はすべての自己株式について市場売却を認めていただきたいと申しておりましたけれども,まあ,弊害等もあるという御意見も多い中で,どうしても,自分の意思というか,そういうもので取得したようなものでないものについて限定的に認めるという,今回とりあえずそれだけの措置をとるということで,結構だと思います。 ● ほかの委員・幹事の方,よろしゅうございますか。御了承いただけますでしょうか。--それでは,御意見がないようですので,(2)についても御了解いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次に,「(3) 子会社による親会社株式の取得」につきましては,禁止規定自体の見直しはしないで,取得することができる事由としてこういうものを追加するということで処理してはいかがかという案でありますが,いかがでしょうか。 ● これも,この(注)と反対の方向で要望していたわけでありますけれども,財源等の手当てをどうするかで,先ほどの外国会社との株式交換の場合は簡単にできるというふうなことであると,こちらの方の法設計はもっと簡単ではないかとも思うのでありますけれども,今回の場合について,こういう限定的なところでもやむを得ないと思っております。   それで,一つ要望なのですけれども,ここの②はともかくとして,①の場合に,これを相当の時期に処分しなければならないという規定は維持されるのかどうかなのですけれども。そもそもどういう財源規制をかけるかというのが難しい中で見送りになった状況からいたしますと,①のような事由の場合に,相当の時期の処分規定というものは削除してもらえないかということなのですけれども,そこの検討はいかがでしょうか。 ● 削除するというか,そもそもは取得禁止がかかっていますので,何らかの保有規制をかけないといけないと。保有規制をかけなくてもいいというふうに仕切ってしまえば要らないのですけれども,保有規制をかけなければいけないとすると,相当の時期に処分をしていただくか,持たせた状態でそれを何らかの形で財源に反映するかと。それで結局また財源の問題になってしまうのですね。ということで,そこの財源の問題が解決できれば,実は取得禁止自体も解決できるものですから。と,ぐるぐると回りますと,結局,例外事由だけをふやして,とりあえず相当の期間を定める,あとは,「相当の期間」が種々解釈されていますので,そこでやっていただくということで。今回,とりあえず解決策としてはそこまでかなということなのです。 ● そういたしますと,例の,自分が子会社でもなくて,ある会社,A社の株式を持っていたときに,A社から公開買付けをかけられてA社の子会社になってしまったというときには,保有規制の問題はそもそもなかったと思うのですけれども,それも相当の時期に処分しなければならないのですけれども,これもやはり維持すべきだということになってしまうのでしょうか。毎回例に出しますけれども,ダイハツがトヨタの子会社になったときに,トヨタの株を大量に放出しなければならなくなったという事例なのですけれども,それも相当の時期の処分ということを本当に強制しなければならないかどうかなのですが。 ● 大量に買い込んだ場合は,相当の時期というのも相当柔軟に解釈すべきだと思いますが。 ● やっぱり残すということですか。 ● 建前がそういうことですから……。そういうことで御了解いただけますでしょうか。 ● 子会社が証券業務をやっていて,そのときに親会社の株式が証券業務のディーリングの一環でぽっと入ってくるというふうなものはどういう規制をかけるということになっていましたっけ。 ● 証券会社みたいな場合は,取得禁止の範囲には入るとは考えられていないのではないですかね。 ● それは取得という概念には入らない。 ● 入らないのではないかと私は思っていましたが,いかがですか。ディーリングだということになるとちょっと微妙なところですけれども,通常の証券業務でやっているならば入らないのかなと思っていましたが。   何か,○○委員。 ● その問題は,証券会社,それから信託銀行などについてもファンドの運用などで似たような問題があって,むしろ当たるということを前提に,この211条ノ2を削除してほしいという要望の一つの理由になっていたと思うのですけれども,どうしても211条ノ2の廃止という方向での手当てができないとなれば,それはやむを得ないのかなというふうに私は理解していました。ほかの理解があるかもしれません。 ● やむを得ないというのは。 ● 取得禁止に引っ掛かるのではないかと思ってはいたのですけれどね。自分の指図でないとか,そういうことはまた別ですけれども,やはりディーリングで自分自身が売り買いする以上は引っ掛かってくるかなというふうには思っていました。 ● 今の○○委員の御意見は,それも加えろという……。 ● それは当然除外されているのでしょうねということなのですが。 ● ブローカレッジでやっている場合なのか,それとも自己勘定なのか,どちらでしょう。両方とも除くべきだというお話ですか。ブローカレッジで実質的に顧客の委託で売買している場合,これは除く解釈が可能だと思うのですけれども,自己売買の意味でディーリング,普通はそういう意味で使いますけれども,それでディーリングは除かれるべきだというのは,ちょっと難しいのではないかという気がするわけですけれども。 ● そのあたりも深く研究せずに言っているので,恐らく○○委員の方が詳しいと思うのですけれども,証券会社,金融会社の方は,自己でのディーリングをするときに,親会社の株式をそこから除外してやるというふうなことというのは現実的ではないと思うのですよね。だから,当然こういうものは今でも解釈上除外されていると思っているのか,それとも,あるのでやっていないのか,そこはちょっと調べていなくて申し訳ないのですけれども。   ○○委員あたりの方が詳しいのかもしれませんが。 ● 私は,自己株はだめだというのは知っているのですけれども,関連会社の場合ですよね,今の子会社とか。 ● はい。 ● そこまでは存じません。 ● 今のところで質問ですけれども,例えばそれはインデックスで……。 ● そのような場合もあると思うのですね。 ● インデックスの場合と個別の銘柄を一本釣りで売り買いする場合とで違うのだということを聞いたことがあって,私は必ずしもそちらの解釈に詳しくないのですけれども,いかがなのでしょうか。   インデックスであるとすると,例えば日経225であるとかTOPIXであるとかを親会社のところだけ持たないとかいう運用というのは金融の世界では余り常識的でないような感じがしますし,それは幹事225銘柄でなくても,トレースというのでしょうか,その株価の動きなり指数の動きが近いものであるとか,あるいは自分の持っているポートフォリオのリスクに対して相殺するような組み合わせを別途作るとか,あるいはデリバティブで持っているポジションをうまく消せるようなものを自分で作ってそれを持つという場合に,特定のものが外れてしまうと組めないということがあるというのは聞いたことがあります。それと,非常に恣意的にある考えをもって特定の株を買うという意味での親会社というものとは違うのかもしれないという気がするのですけれども,そこら辺のところの現行の取扱いなりはいかがなのでしょうか。 ● 現場の取扱いは私もよく知らないのですけれども,おっしゃるとおり,インデックス運用,あるいはブラインド運用と呼ばれるものの場合にこれが及ぶかどうかというのは実務的に疑問になっていて,それとの関連で211条ノ2を削除してほしいという声が金融界にあったことは確かです。   さっき申しましたように,そういうことなしに自己勘定でディーリングでやるのは,これは明らかに該当すると思うのですけれども,インデックス運用やブラインド運用の場合は解釈上別だという考えはあり得るとは思います。 ● 分かりました。これはなかなか複雑で,ちょっと条文は難しいですね。 ● ディーリングの場合なのですが,インサイダー取引に引っ掛かってしまうのではないかと思うのです。親会社とかそういうものの銘柄を関連会社が直接に売買するわけですよね。 ● 何かインサイダー情報があればインサイダー取引ですけれども,何もなければ,インサイダー取引に常になるとは限らないのではないかと思いますが。   いずれにせよ,そんな複雑な,インデックス運用のときは云々というような条文はちょっと商法には置けませんので,そこは従来どおりの解釈に任せるというほかないのではないでしょうか。--それでよろしゅうございますか,この問題につきましては。 ● 調べてみなくていいんでしょうか。きちんと,どうなっているかということを調べてみる必要はないんですか。 ● それは,現在もそういうことで一応はルールがどうもあるようですので。解釈上のルールとしてそれが今後も続くということでありますので。   今,○○委員がおっしゃったのは,何か規定を置いて明確化してくれということだったのですけれども,それはどうも技術的に難しそうだということで,ここは従来どおり解釈に委ねるということで処理させていただきたいと思います。   それでは,「(4) 自己株式の財源規制」でありますけれども,まず①でありますけれども,財源規制を課す自己株式取得の範囲につきまして,イ,ロ,ハの場合は除くということであります。従来の案とは若干変わっております。イにつきましては,会社分割につきまして,今回は,一部の分割による自己株式の取得も財源規制をかけないものに入れるということであります。前回の案から変わったのはその点だけでありますが,①につきましてはいかがでしょうか。 ● 同じような質問をして恐縮なのですけれども,担保の処分としての自己株式の取得というのは,この①の範ちゅうなのか,②の範ちゅうなのか,そもそもだめなのか,どういうふうに御整理いただいたのでしたっけ。 ● 担保については,前回申しましたように,一応私ども事務局の理解では,無償だったらいいと。要するにここは有償取得だけを対象にしていますので。 ● 債権との棒引きだから……。 ● 棒引きになるのであれば,それは単なる有償取得ですので,それは普通に財源規制がかかると。 ● したがって,自分が競落するには,必ず他人に落としてもらわなければいけないと。 ● そういうことです。 ● ①につきましてはよろしいでしょうか。これも大分御議論いただいた結果でありますので。--それでは,①は御了解いただいたものとさせていただきます。   ②でありますけれども,反対株主の株式買取請求によって取得する場合でも,次に掲げる場合には超過額の弁済責任を取締役に課すということで,イ,ロ,ハということであります。   イは,財源規制に反するようなときには,定款の定めはあえてそういう時期にはするなということで,これは処理できるかと思います。   ロにつきましては,「格別の定めをするとき」というのは,これは何ら総会決議等もありませんので,どれぐらい出てくるかよく分からない。そういう面では危ない,大量に出てくる可能性がある,さっき事務当局から説明がありましたように。それから,これも定款できちんと種類株などを出すときに手当てをしておけば,こういう問題は起こらないのですね。そういう格別の定めをしなければいけない事態というのはそもそも起こらないはずなので。よほどそこをきちんとしていなかったときにこういう問題が起こってくるということだと思うのですが。ですから,ロもよろしいでしょうか。そういうきちんとしていなかった場合はやむを得ないと。   ハも,これは先ほどの(1)にかかわるわけでありますが,(1)を行うのは,もう明々白々破産原因等である債務超過である場合であって,裁判所が ,その株式について,破産手続で株主に戻ってくるはずだったというような判断をするような危険のある場合はしないというふうに○○委員がおっしゃっておられた点でありますが,これもよろしいでしょうか。よほど変な100%減資でもやった場合に出てくる問題でありますので,御了解いただけますでしょうか。   それでは,②につきましても御了解いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次に入りますとちょっと時間がかかりそうなので,この辺で,今日は長丁場になるということもありますので,休憩をとりたいと思います。            (休     憩) ● 再開させていただいてよろしいでしょうか。   それでは,部会資料26の2の「(5) 買取請求権の買取価格」でございます。   現在の買取価格の基準では,いわゆるシナジーを,例えば合併の場合,存続会社側が一人占めしてしまいまして,消滅会社の株主は一切その恩典にあずかれないというような場合も出てき得るということで,何らかの改正の必要があるのではないかということで提案がなされているわけですが,いろいろ御議論がありまして,その際に出てきた御議論も踏まえて若干案を修正し,それから,そのときに出てまいりました,買取請求をしてそれで取下げは自由なのかという問題もありますので,(注)が加わっているということでありますが,この点につきまして,いかがでしょうか。 ● 質問させていただきたいのですけれども,この(5)というのは,単元未満株式の買取請求をした場合の買取価格にも適用がある規定なのかという点をまずお聞きしたい。   それから二つ目,これは私の記憶が間違っているかもしれないのですけれども,定款で,単元未満株しか持っていない者については,株主総会決議取消しの訴えの提訴権とか代表訴訟提起権とか,こういうものを奪えるというようなところでおさまったかと思うのですけれども--これはちょっと自信ないのですが--もしそうだとすると,単元未満株主にとってそのある決議が著しく不公正な内容,要するに247条1項3号に当たるような決議の場合に,そのせいで株価が下がっているときには,その決議がなかったら有したであろう価格を請求できるという解釈は可能なのか。   この2点はどうなのか,ちょっと教えていただければと思いますが。 ● 単元未満株の買取りにつきましては,シナジーの問題がありませんので,特に考慮には入っていないと思います。   もう一つは何でしたっけ。 ● 単元未満株主には総会決議取消しの訴えの提訴権がないという整理だったかと思ったのですが--ちょっと記憶に自信がないのですけれども--そうだとすると,内容が著しく不公正な決議がなされて株価が下がってしまうということもあって,それを争うチャンスが単元未満株主にはなく,そうすると,その下がった後の株価でしか買い取ってもらえないのだとすると,ちょっと不公平かなということです。 ● 単元未満株とか議決権がないものについてはどうなるかということについては,これは現在いろいろ学説が分かれている状況だと思います。受益権だから株式買取請求権はある,それは総会では議決権を行使できないのですけれども,その場合には総会で反対するということは要件でなくなるのだという解釈もあると思いますし,あるいは,総会で議決権行使ができなくても取消しの訴え等は起こせるという解釈もあるように思います。そこは現行法は必ずしもはっきりしなくて,解釈だと思いますが,その点についてここで何か手当てをするというわけではないのですね,この案は。依然として解釈に任されるということになるかと思います。 ● 単元未満株式については,まず,普通の買取請求,何もないときの買取請求については,今,要するに早期決着をねらっての,市場価格あるときは市場価格で,ないときには結局「公正な価格」によらざるを得ないのですね,書かれてはいないのですが。ですから,そこはそういう処理,要するに市場価格がある場合の特則というものが残るのだと思います。   一方,反対株主買取請求権については,大分前に議決権のない種類の株式についての買取請求権の問題をどこかであわせてやったと思うのですけれども,すなわち,議決権の有無にかかわらず,事前に反対を通知して買い取ってもらうということが認められるような手当てをしておりますので,実質論として,単元未満株主に,合併の際というか組織再編などの際の買取請求というものを一般の単元未満の買取請求とは別に認めるべきであるということであるならば,それは要するに無議決権株主と同じような手当てをして買取請求を認めるということになると思うのですけれども,そこは……。 ● 私の質問は,1番目の,通常の場合,反対株主の買取請求権ではなく,単元未満株主の株式買取請求権の場合に,ある決議,普通そういう反対株主の買取請求権が認められているような決議事項ではないもので,株主総会で仮に著しく内容が不公正な決議がなされた結果,株価が下がってしまった場合に,その後,下がってしまった後に請求したのでは,その下がった後の市場価格でしか買い取ってもらえなくなる危険性があるのではないかと思いまして,そのときに,幅広く,この決議がなければ有したであろう価格以下であってはならないという制約をかぶせてくれるのかという質問です。 ● それはちょっとまた別問題で,それは経営ミスをしたかとか何とかと同じ話なのではないでしょうかね。要するに,反対株主の株式買取請求権が生ずることのない決議ですね。とんでもない人を取締役に選任したとか,そういうことで株価が下がったと。 ● いえ,そうではなくて,もし決議取消しの訴えを起こせば決議を取り消せるような,247条1項3号に当たるような内容の決議が何か--ちょっと具体的には思いつかないのですけれども--があって,それについて,例えば決議取消しの訴えを単元未満株主は起こせないという法制になった場合にどうなるのかという疑問なのですけれども。 ● それは単元未満株主ですから,わずかな金だから泣いてもらうしかないということなのではないでしょうか。冷たいようですけれども。 ● 前の部会に出ておりませんので,場違いな議論なのかもしれませんが,「株式の公正な価格」というのは,最終的には裁判所が決めることになるのだろうと思うのですが,この括弧の中の,(決議がなければ有したであろう公正な価格以上の価格に限る。)というのは,多分これは,通常であれば鑑定の手続に入って,そこで公認会計士の方とか,場合によっては不動産等があれば不動産鑑定士も含めて鑑定してもらうというようなことになったときに,公正な価格という形で一律の額が出てきて,それより高い額を裁判所が定めるということにはなかなかしにくいのだろうと思うのですけれども。ちょっとそこの概念のところが分かりづらいかなという思いがあるのですが。 ● 恐らく,これに括弧が入っておりますのは,さっき申しましたように,シナジーを反映しないような買取価格だと公正でないのだと言いますと,いわゆるマイナスのシナジーというのもありますねというような議論もありますので,こういう括弧書きを入れたのだろうと。マイナスのシナジーが出るような合併等でありますと,少なくともそのマイナスのシナジーは反映しない価格で買い取ってもらえるという趣旨で入っているのだろうと私は理解しておりますけれども。 ● 条文になるときは,この「株式の公正な価格」だけで,今言ったあたりは解釈か何かになってくるのでしょうか。 ● これが条文になったときは,これは法制局とのあれもありますので何とも言えないところがあるようですけれども……。 ● 分かりました。結構です。 ● この括弧がどうしても明文でなければ困るという強い意見がなければ,こちらの方で法制的に整理をさせていただきたいと思う内容なのです,こういうものは。ですから,逆に言うと,その点だけを確認させていただければ。すなわち,「株式の公正な価格」といえば,公正な価格であって,場合によっては,その決議がなければそういうことを反映しなければいけないというのも含意で,解釈で読むということで,必ずしも明文の規定が要らないということであれば,そういう処理になりますし,そうではなくて,明文でないと困るのだということであれば,入れるということになると思うのですが,ちょっとそのあたりの感触をお聞かせいただければ。 ● 今の括弧の中がないということになると,買取請求の制度が果たして反対株主の投下資本回収のための制度なのか,あるいはシナジー価格を保障するということまで含むものなのかということが全く不明確になると思うのです。ですから,もしシナジー価格も含めて保障するのだという制度であるとすれば,やはり少なくとも括弧はないとその辺が明確にならないのではないかという気がいたしまして,そうすると,今度は,シナジー価格まで本当に反対株主に払うべきだという理論的な根拠が果たしてあるかないかという問題が議論の対象になってくるかと思うのですけれども,ちょっとその辺は私もなかなか分かりませんが,少なくとも,金銭で合併するとか,そういうような場合には理屈は通ると思うのですけれども,新株で発行する場合にまでシナジーの価格を反対株主に払うというのが適切かどうか,この辺はやはり詰めた上でないと,条文形式も決まってこないのではないかという気がいたします。   ついでで恐縮なのですけれども,この間も申し上げたように,実務的な見地から言うと,シナジー効果も含めて払うということになりますと,多少,射幸的な反対というものが増加するであろうということを申し上げましたので,それを,ある程度--限定的であっても--予防するという意味では,この(注)の撤回の制限は是非設けていただいた方がよろしいと。そういう意味では,この(注)には賛成いたします。 ● 恐らく,買取請求をいつ行うかということに依存するのではないかと思うのですね。シナジー効果がプラスであれマイナスであれ,一体だれが判定できるのか。市場以外にはないわけですよ。そうすると,いつの市場価格を持ってくるかという話になりまして,それは,買取請求時点が合併後なのか,あるいはその前なのかということで決まってくるのではないのかなと。いつということを明記しておけばいいのではないかと思いますが。 ● 裁判所が判断すべき時点というもの--株式買取請求をいつまでにしなければいけないかということは法律で決まっているわけですけれども--判断時点がいつかといいますと,厳密に言うと決議の日ですかね。決議時点でどう判断されるかで,これはいずれにせよ見込みの話なのですけれどね。後から,株価の動きを見ていたら,ああ,こうなりましたねと,それで決めるというわけではないと思うのですね。それはやはりその決議の時点で,この合併については,当事者のあれから見て,今,合併比率の算定理由書というものを書きますけれども,そういうものから見て,当然シナジーもこれぐらいあるだろうと,だから従来の株価にこれぐらい上乗せしたのが公正な価格だろうと,そういう判断になると思います。   (注)につきましては,これを審議したときの議論を踏まえて,取下げについては何らかの規制を課すべきだということでこういうことになっておりますが,この点はよろしゅうございましょうか。   それでは,この本文の方ですが,趣旨がはっきりしておれば,先ほど○○委員が,これは条文がなければ趣旨が分からないという御意見だったのですが,それは解説書だとか,担当官も書いていただけると思いますから。今は,とにかくシナジーは見ないという形の条文になってしまっているのですね。だから,それはやめると。そして,やめた趣旨はそうだということを解説書で書いていただければ,ある程度はあれかなというふうには思いますが。 ● 私も,基本的にこの案でよいと思いまして,括弧内の取扱いについては,今,○○委員がおっしゃった趣旨に賛成なのですが,念のために確認をしておきたいと思いまして。   先ほど○○幹事が御指摘になった強制消却などの場合は,これは,多数株主は実質債務超過だと判断している,反対株主というのはその判断はおかしいと言っているわけですから,債務超過でないと言うわけですね。したがって,先ほどありましたように,決議なかりせば有すべかりし価格になるだろうと。   合併の場合は,新しい制度のもとでは2種類違った株主が反対してくる可能性が今後はあると言わざるを得ないと思うのです。すなわち,先ほどネガティブなシナジーとおっしゃいましたけれども,当該合併はない方がよかった ,合併をするという多数決の判断は誤っていたのだと言って反対する株主というものがいて,それとは別の株主で,いや,合併自身はシナジーを生むから賛成なんだけれども,シナジーの配分が不足している,あるいは配分比率に不満があるからと。株対株でも比率に不満があれば足りませんから。シナジーを生むという意味では当該合併には賛成なんだけれども,しかし比率に反対なんだという株主が出てくる。そうすると,合併に反対する株主のうち前者をAとし,後者をBとした場合,新しい制度のもとでAとBとに違った買取価格を裁判所は定めるべきことになるのかどうかという論点が一応あるのですね。ただ,この制度は,アメリカの制度も現在では同じですけれども,そういうふうではなくて,結果は,それをやり出しますと個別に全部違った評価をしないといけませんので,これはどちらかに割り切らざるを得ない。AもBも一律にここで言う価格を決めるということになるということだけを確認しておく必要があると思います。そういう制度だということです。 ● それは恐らくおっしゃるとおりだと思います。合併自体に反対であった者についてはシナジーを反映させなくてもよくて,シナジーに不満を持っている者についてはシナジーを反映させる,ということでは恐らくないと思うのですね。もし裁判所の判断としてこれはシナジーが生ずるはずのものであると判断すれば,前者についても恐らくシナジーを反映した価格を裁判所は決めるということでしょうし,おっしゃったように,ネガティブなシナジー,要するに合併自体が間違いだったのだというようなケースですと,この株主が,これはシナジーが発生するはずのものであって,その配分がおかしいのだと言っていても,裁判所は,それは合併なかりせばの価格で決めると,そういうことに恐らくなるのだろうと思いますが。裁判所が何が一番株主に有利だったかを判断するということだと思いますね。 ● 前回,実は,私,これを議論したときにいませんでしたので,そのときに議論されたかもしれないのですけれども,この括弧内については,扱いだけについて言えば,許されるなら,やはりこれはない方がいいという感触を持っております。   その理由は,実はこれは議論が詰め切れない話なのではないかと思っているからなのです。シナジーを反映させる可能性までは条文としては 排除しないというところまで,今回手を打てば,そこで,それ以上のことはもう決めないままにせざるを得ないのかなと思っております。   ○○委員の御懸念については,決議なかりせばという条文を削除したことにある種のインプリケーションがありますので,これを除いたら全く明らかでないということではないのだと思うのですが,気になりますのは,先ほど○○委員が言われたような,一つの訴訟で2種類の株主が出てきて違うことが起きるかというと,それだけについて言えば恐らくそんなことはしないということでいいと思うのですが,そもそも株式買取請求権という制度の設計としてシナジーを反映させるというのは,これは公正な価値で合併がされたときをあるべき状態と考えて,それを達成するための救済と位置づけることになりますし,マイナスのシナジーがあった場合にはそれを保護するのだということを言うのは,合併がなかった場合の状態をあるべき状態と考える救済も与えるということで,このように全然性格の違う救済をこの一つの制度は両方とも備えていて,かつ,事件によって,それは一つの事件ではどちらかに決まるのでしょうけれども,一番有利な方向で,いずれから見ても損害がある場合にはとにかくいずれの観点から見ても救済を与えるのだと,いずれかの観点から見て救済を与えられるのであれば与えるのだというほど株主に厚い庇護を与えるような制度として我々が買取請求権というものを設計しなければいけないかどうかというのは,これは非常に大きな問題だと思うのですね。この(注)のようなことである種のスペキュレーションを排除することは絶対必要だと思いますけれども,それをするにしても,そこまであらゆる状況,あらゆるシナリオに対して株主を保護するというのが株式買取請求権という制度の趣旨に本当に合うのかどうか,このあたりは,できれば余りはっきりさせないまま--このような条文がありますと,両方のタイプの救済があり得べきことを非常に強く示唆してしまいますので--むしろ括弧は削除する方向で考えた方がいかがかなと考えております。 ● どこかにフェアバリューがあるというのは実は幻想なんですよね。だから,ルールがきちんと事前に決まっていさえすればいいということでありまして,株価というのは需給関係でも変わりますし,ファンダメンタルズもどういうふうに評価するかによってまちまちでございますし,実際問題として,時々刻々株価や為替がめまぐるしく変わるほど経済実態が変わっているわけではございませんからフェアバリューがどこかにあるということがそもそも幻想なんですね。だから,余りそれにこだわらない方がいいのかなと。   例えば合併にいたしましても,事前にいろいろな観測も含めまして,株価は少しずつ吸収していくわけです。そうやって,決議日に必ずしも全部決まるということではなくて,過剰修正していたら戻したりとか,そういういろいろな動きをするわけですね。   だから,フェアバリューらしきものはどこかにある,できるだけ公正な理念は貫くけれども,そんなものは現実的なものではないのだという意味で,今の前の方がおっしゃった意見に賛成でございます。 ● 括弧書きは取った方がいいという御意見が大勢のようですので,そういう処理でよろしいでしょうか。 ● 大勢がそういうことなら,別にそれに反対するわけではないのですが,この括弧があることによって,その「公正な価格」というのが,決議なかりせば有したであろう価格を下回らないということがはっきりすると思うのですね。ですから,そういう点で,この括弧があることによって最低投下資本の回収制度という点がはっきりするということであって,括弧がないと,決議なかりせば有したであろう価格,すなわち投下資本の最終価格を下回ってしまう場合もあり得るということになりますので,その制度趣旨が,反対株主の投下資本の回収という制度ではなくなる,じゃあ何の制度かということが不明確になるのではないかということを懸念してさっき申し上げたわけでありまして,その点だけ補足しておきます。 ● 制度趣旨ははっきり解説書等で書く必要があると思いますけれども,条文の上ではこれは外すということではいかがでしょうか。 ● 異議なし。 ● それでは,これは,括弧書きは外して,「公正な価格」ということでいく,そして(注)については先ほど御了解をいただいたと思いますので,よろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきまして,「3 監査手続」であります。   まず,「(1) 会計監査人を設置した場合」。「① 定時総会の開催時期」と「② 各監査機関の監査期間」の点であります。   ①の方は,現行法が定時総会の開催時期まで縛っているのは行き過ぎではないかということで,「廃止するものとする」ということになっております。それから,監査期間につきましては,従来から○○委員がこれについては短縮の余地は認めるべきではないという御意見ですので,「認めるかどうか」というのは,むしろ否定的ニュアンスの提案になっているかと思いますが,この点につきましてはいかがでしょうか。 ● ①については,特に反対するものではありません。   ②ですけれども,先ほどの御説明では,おおむね現行でいけるようなお話がちょっとあったのですけけれども,この上では,まだ,「……かどうか」になっておりますので,是非,監査の充実という観点からは,現行の4週間ということについての維持をお願いしたいと思います。これは,この3月期の決算においても,やはりこの4週間という期間があることによって監査が救われた,あるいは充実したケースがたくさんございました。したがって,是非これは現行どおりにしていただきたいと思います。 ● 公認会計士協会とは少し違った観点で--結論的には似た方向に向いてしまうのですが--意見がございまして,監査契約というものはどういうものなのかということが,エンロン初め不正会計とかスキャンダル以来議論になっておりました。特にアメリカで議論になったわけですが,本質的に利益相反的な契約なのではないかと。趣旨は,株主のために,あるいは投資家のために,債権者のためにきちんと見るのですということなのですけれども,実際に契約する人は,株主が直に監査法人あるいは公認会計士と契約交渉はできませんので,どうしても取締役なり代表取締役が交渉して契約を結ぶことになる。   取締役というのは,そういう意味では監査はできるだけ軽く,浅く,短く,報酬も安く,そして仮に自分たちが不正をやっていればやっているほど,見ないでほしいというインセンティブがあると。したがって,いろいろな--会計士まで巻き込んだ飛ばし行為だったのですが,そういうふうな契約になっていくというインセンティブがあったのではないかということがアメリカの議会でもさんざん議論になりまして,もともと取締役というか会社の代表者と監査法人とが締結する契約というものは,通常の一般の一対一の契約であれば,お互いに自分のためになる契約であって,その自分の利益を極大化するということで合意が成立したものというのは最も望ましい契約になるのですが,監査契約というのはそれが望ましくない結果になってしまうのではないかというふうに言われております。それで大議論になって,監査法人・公認会計士に対する公的介入ということをすべきであるということになって,大きく世界が動いたと。   我が国でも,公認会計士・監査審査会,アメリカではPCAOBというものができたのですが,ここでは,かなり監査契約の自由,契約自由の原則に介入していくというふうな方向性で考えられていると思います。具体的には,監査基準というのは従来からあるのですが,そういうものが厳しくなって,あるいは監査のガイドラインであるとか,本来,監査の契約において決められるべき監査の範囲・深度・方法などが,グローバルなものですけれども,スタンダードとして,しかも重くなってきているという状況にあります。   したがいまして,これは私契約の問題なのだから会社の代表者・取締役と監査法人との自由な契約で何かできると,そして,会社の方は取締役会とか株主総会の機関の承認があればいいという単純なものなのではないかと,公認会計士なり監査法人を監督している立場としては考える次第でありまして,この②というものは,従来型の,自己の利益を極大化して契約を結ぶ,それについて会社の機関が承認を与えればいいというふうな,エンロン以前の考え方に立っているような気がいたしますので,強い疑念を感じるところであります。   これは,公認会計士・監査法人の責任に対するその一部免除,次の部会資料27の8の問題と共通するのですが,私契約,契約自治というのでしょうか,交渉自由の原則を貫くことに対しての大きな疑念を持っているということでございまして,むしろ,ここのところは認めない方向で御再考いただけないかというふうな意見でございます。 ● 逆でございまして,私的自治を認めればどうかということでございます。   今の制度でも,連結財務諸表の場合はこういう制度になっているのですね。連結財務諸表の監査については,もう商法でこういう短縮合意があるということになっているわけでございまして,それで動いているわけでしょうから。ここで言っている新しいルールというのは,単独監査,単独決算の監査のことを言われているのかもしれませんけれども,それについても同じようにすべきであって,もし会計監査人または監査役の方で,会社の方から変なことで言い寄られて期間を短くしたというふうな場合には,必要な調査ができなかったということをいつでも言えるわけですから,それを盾にというか,その実態に基づいて交渉されればいいのであって,必ず4週間,必ず1週間ということを,当事者の合意によってそれを短縮することも伸長することも認めないということはいかがなものかと思いますけれども。 ● 現行でも,短縮することを認めないということではないと思うのですね。現実に早く決算を作成して,それを監査法人の方へ提出して,早く監査を終えてくださいということは行われていると思います。ただ,法定上4週間ということを短縮できることを認めるとすると,逆に,これはあらかじめということになっていますから,本来は監査してみないと分からないという部分が随分あるわけで,多くの会社はそんなことはないと思いますけれども,そういう問題会社においてはなおさら,短縮をあらかじめということに決められると,これはとんでもない結果になるということで,やはりここは監査の充実という観点からは,問題があったらそれは最後まで頑張ってやるということを制度的に保障すべきだというふうに思いますけれども。 ● (1)と(2)が同じ相場観の話なので絡むので発言をさせていただきたいと思います。   私もどちらかと言えば○○委員の発言に非常にシンパシーを感じておりまして,もちろん問題案件というのは世の中で常にあるわけでございまして,その問題案件がどれだけ重大かということで社会的にこういう面で影響を及ぼすことはあるわけでございますが,例えば1割2割程度短縮することも法律でそれもできないということにするのは,世の中,ドッグイヤーと言われる言葉があるほどに以前と比べてスピードが上がってきているわけですから,もう少しここは融通をきかせるということはできる。ただ,○○委員あるいは○○幹事が御心配になられることを防止するための別途のバッファーをちゃんとつけると。先ほど○○委員からも,監査機関が調査が十分できなかったからという言い訳もできるわけだし,それから,仮に監査なりに入ってみたらこれは問題があるというところで,そこで手を上げればその延長が若干ほごになるというような仕組みをビルドインするとか,私的契約というのはそういうこともできてやるわけであります。   それから,御心配の向きは私どももよく理解できるわけでございますけれども,世の中には,超特急でやれば価格が上がるという,普通はそういう世界だし,それが嫌であれば拒否する自由もあるし,そうすると当然あいみつ入札ということになるので,その世界で決まっていって,かつ,問題を起こした人は,しばらくはいいかもしれませんが,それが露見した時点で社会的な大変な制裁を受けることは火を見るよりも明らかでありますから,むしろここで担保するという考え方ももちろんありますし,バッファーをきちっとつけるということでいいのではないかと私は思うのですが。社会的な制裁を確実に受けるということがもう予定されているわけでございますから,そう全部しゃくし定規に,現行のこのルールを一歩も譲らないという考え方までは必要がなくて,もう少しフレキシブルに考える方が世の中の大勢なのかなと,こんなふうに考えます。 ● ○○委員,○○委員に賛成でございます。直近で株主総会があったわけですけれども,これまで毎年毎年,株主総会がある一日に集中するというふうに批判されてきましたのは,こういう商法上の制約も非常に大きかったと思うのですね。今ここで問題になっておりますのは,最大期間を定めるということではないのですね。何週間以内に終わらせろという条文を作ろうとしているわけではなくて,8週間経つまでは総会を開いてはいけないと,それをもっとフレキシブルにしようよということですよね。だから,それは,公認会計士の方であれ,会社側であれ,それなりにきちんとした監査を行わなかった場合は後で制裁を受けるわけでございますから,それはそのときそのときの状況に応じておやりいただいたらいいと思うのですね。   それで,この期間というのはずっと以前から決まっておりまして,電子会計やなんかが入って随分いろいろ簡便にやられるようになりましたし,監査も昔ほどいい加減ではなくなって,ずっと会社と密接に連絡をとり合うようになっているわけでございますから,ここで期限を商法で定める必要は全くないというふうに考えます。 ● ①につきましては余り御異論がないのではないかと。これにつきましては,○○委員も反対ではないのではないかと思います。専ら②でございます。 ● 私も,基本的には○○委員に賛成でございまして,もともとこの法定の監査期間というものは,利害関係が相反する者同士の手続をどのように規制するかという問題ですから,会計監査人については○○幹事が先ほどおっしゃったとおりで,私も本当に同感なのですが,監査役という立場から見ましても,やはり取締役と監査役というのは潜在的に利害が相反する立場でございますので,私も実は経験があるのですが,法定の監査期間満了日の前に決算取締役会の日程を決められてしまって,監査役が少し監査を早めなければというふうに言っているものですから,これは会計監査人の立場もあるし,監査役の立場もあるから,やはり法定期間が過ぎた後に決算取締役会を入れてもらうべきだということで,現実にそういうふうにしてもらったというケースもありまして,これを事前に合意でもって短縮することができるというふうにいたしますと,○○委員がおっしゃったように,会計監査あるいは業務監査,いろいろな面で,監査の結果様々な問題が起きてくる可能性がありますので,事前に合意で短縮するということを軽々に法律で認めるということについては,ちょっと私は賛成できないという感じがいたします。 ● ほかにいかがでしょうか。ほかの委員の方。 ● 事務局に確認したいのですけれども,もしこれを4週間・1週間のフィックスなものでもって,合意によっても変更することができないという規定ぶりにするというときには,連結財務諸表の方も--今は合意によって短縮が認められているのですけれども--それも変えようということも含まれているのでしたっけ。そもそも,これは短縮しようということだから……。 ● そんなことは考えていないのでしょう。 ● 当時の議論は余りよく覚えていませんが,連結の場合は単体ができた後の話ですので,4週間とか何週間とかしますと余りできませんので。できた後,かつ商法上は余り位置づけのない開示書類ですから,そこまで厳重な監査保障をしなくてもいいということで,多分あれは合意で短縮が認められていると思いますので,ちょっとそこは単体とは……。 ● 単体と連結とは違うのだと。 ● ということになると思います。 ● ○○委員もそういうスタンスでよろしいのですか。 ● はい。 ● 連結は重要ではないということですね。いや,ここは逆になっているのではないかと思ったものだから。 ● いや,違います。 ● 連結計算書類についてそういう延長も短縮もできるということになっておりますのは,当初は,あれはやはり,総会招集通知に間に合うような期間を法定しようとしたら,それはできないということを会計監査人側が言われましたので,それならばもっと延ばしましょうと。しかし,一律にこれをあれする必要もないでしょうから,それで延長も短縮もできるという形にしたのだと思いますので,こことはかなり話が違うのではないかと私は認識していますが。 ● 連結は大変重要でございますけれども,今の連結の組み方というのは,個別財務諸表が適正なものができた,その上に連結調整をして連結決算するということですから,いわゆる技術的な話として終了できるということで,その期間は会社によってはかなり短縮できるだろうということだと思うのです。   ただし,個別決算の方は,先ほどお話があった,問題があって調査できなかったら調査できなかったと書けばいいではないかというようなことでは済まない,やはり本来の適正なる財務諸表を企業に提出してもらうということが会計監査人の本来あるべき使命だと思いますから,そこは現行で頑張っている範囲を維持したいというのが私どもの願いでございまして,後で問題があったら制裁すればいいではないかというのはやはり本末転倒だと思います。できるだけ適正な,透明性ある財務諸表を企業から提出してもらうということが本来の使命ではないかということで,何もこれを長くしろと言っているわけではないので,かつ,短くするということは現在でも可能ですから,現実にやっている会社もございますので,それで補えるのではないかと,こういうふうに申し上げているわけです。 ● ○○委員が先ほどから説明しておられますように,これは何が何でも4週間かけるというのではなくて,とにかくその期間を保障してくれと,何が出てくるか分からないと,そういう御趣旨だと思いますので。 ● それでも合意しなければいいだけだと思うのですね。ここの会社については実地調査もしょっちゅうやっていると,何も4週間だけで全部監査をするのではなくて,1年中やっておられるわけですから,最後の締めだけをやられるわけですから,例えば,この会社はずっとよく知っている会社であって,ガバナンスもしっかりしているから,おたくのところは2週間でといったら,それは認めましょうと,あなたのところはよく分からないから4週間くださいねということをやられればいいのであって。公認会計士というのはそれほど弱い立場ではなくて,私どもからすると先生でありますから,公認会計士の方からだめだと言われたら,それでもやりましょうなんて言える経営者がいるとは思えませんから,もっと自分は強いのだということでやっていただければ。 ● ○○委員が属している会社はそういうことはないと思うんですよ。ただ,上場している会社でも大変幅広くありまして,実際に問題に対処してみないと分からないという会社は結構あるんですね。それはあらかじめ決められないんですね。特に期末の時点でのいろいろな処理というものは,具体的に中身に突っ込んでみないと分からないケースは結構あります。特に粉飾を起こしそうな会社というのは,期末で在庫をごまかしたり,期末で売掛金をごまかしたりということはよくあるわけですから,それは追及してみないと分からない。追及という言葉はちょっと度が過ぎますけれども,よく見てみないと分からない。   ですから,そういうふうな会社も想定して,それを正しくさせるためには,やはり現行の規定は大事だと,こういうことを申し上げているわけで,○○会社さんは恐らく,早くやりたいと言えば早くやれるのではないでしょうか。それは今でも早くやっていると思うんですけれどね。 ● やっていただいております。 ● 監査役にはもっと強く自信を持っていただきたいという点で○○委員と同じ意見でございます。監査の結果が出たにもかかわらず,金融当局が何か言ったらひっくり返るとか,黒字銀行であるにもかかわらず税効果会計がゼロになるとか,そういうことは非常に信じ難いことでありまして,今後そういうことのないように,監査には絶対的な自信を持って,むしろ闘っていただきたいと思うわけです。どうしてかと申しますと,金融当局は勝手にルールを変えるわけでございますね。監査役も公認会計士も,実は株主とか社債権者の権利を代表してくださっているのではありませんか。どちらの権利も侵害するような金融当局の横暴に対して余りにも弱いというふうに私は感じておりますので,もっと頑張っていただけるとうれしいなと思っております。 ● いろいろな当事者にとって事柄の軽重というのがあるのですけれども,この問題はどうも業務の性格からして会計監査人にとっては死活問題でありまして,○○委員がこれはどうしてもと言われれば,これはやはり,この際これを改正するということは難しいのではないかというふうに私は思いますが,いかがでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,①の方は御異論ないようですので,①はこのように8週間の規制は廃止するけれども,②については,あらかじめの合意による短縮は認めない,4週間を保障するということにさせていただきたいと思います。   (2)もパラレルな問題なのですが,これも,①につきましてはこういう規制は廃止すると,これはよろしいでしょうか。   ②は「監査役の監査期間」ですが,これについて,まさか監査役の方は保障しなくてもいいということは,論理的な整合性からして無理ではないかと。(1)の②をそういうことはしないということにすれば,(2)の②もそういうことをしないということにならざるを得ないのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ● 1週間と4週間で,余りにもそこが違うものですから,別にこれを変えてくれと今言うつもりはありません。それはもちろん仕組みが違うものですし,あれでございますけれども。いろいろな意味で,小回りをきかせてビジネスをやっている人たちにとっては,ちょっと硬直的かなと。まあ,ユーザーサイドとしてはそういう感じでございますね。 ● 先ほど申しましたように,やはりこれは制度の均衡の問題がありますので,ここもお認めいただきたいと思います。--よろしいでしょうか。 ● これとの関係なのですけれども,もし会計監査人の方が4週間ではとてもじゃないけど無理だと,10週間どうしても欲しいというふうになったときには,これは制度上認められるのかどうかということと,そういうことに伴って,株主総会を8月にならなければ開けないとなったときに,今の基準日制度,3か月問題というのはどう扱うのか,そのあたりについて御議論しておいていただければと思うのですけれども。伸長問題というのはどうなるのかですね。それは,今の制度上,4週間与えられてできなかった場合には,調査が十分にできなかったということで監査報告書自身がディスクオリファイしてしまうのか,もっと時間があればちゃんとできるのでということであるのか。 ● 現実は株主総会の期限がありますので,4週間でできない場合には,意見差控え,あるいは不適正意見,こういうことを考えざるを得ないと思います。   ただ,現実に意見差控えなり不適正意見になりますと上場廃止問題が出てきますので,そこで何が問題かということについて会社もどうしても詰めざるを得ないだろうということで,最終的にはそういう場合には処理をしていただけるのではなかろうかということで解決を図っているというのが現実だと思うのですね。   なお,そこで,会社も分からない,監査人の方も見て分からないという問題が存在する場合には,これはもうそのままいかざるを得ないだろうなということで,その場合には,本当のレアケースだと思いますけれども,場合によっては監査人を辞任するという話も出てくるのではないかと思います。これは本当にケースバイケースで,ちょっと法には書き切れない話ではないかと思いますけれども。 ● よろしゅうございますか。 ● はい。 ● それでは,先に進ませていただきまして,「4 組織再編関係」でありますが,(1)であります。これが従来から非常に議論になっていたところでありますけれども,この点,いかがでしょうか。   要するに,現在の制度では,株式交換・株式移転には,株式というマイナスではあり得ない財産が入ってきて,出ていくものは株式か,それから株式交換交付金の場合もありますけれども,それは比率調整のためのネグリジブルなものであるということを前提に債権者保護手続が課されていないわけですが,これからは現金による株式交換ということも出てきますので,そうなると,少なくとも債権者保護手続を要するものがあるのではないかということで問題が出てきたわけであります。   今回の案は,対価の種類を問わず債権者保護手続を要するということになっておりますが,これでは現在よりも規制が厳しくなりますので,例えば株式だけの株式交換が行われる場合ですね,新株だけで行われる場合,これでは厳し過ぎるというのであれば, どこまで緩められるだろうかと,そういう点を御議論いただきたいということであります。   (注)につきましては,これは従来から議論になっておりますように,新株予約権付社債の社債部分を引き継ぐという制度は現在はないわけですが,これを引き継いだ場合は債務というマイナスの資産を受け継ぐということが出てきますので,同じ問題が出てくると。問題は御承知のとおりでありますが,いかがでしょうか。 ● たたき台(4)から百八十度変わっているものですから,ちょっといろいろと調査したりしてみたのですが,結論的に申しますと,株式交換・株式移転の場合,まず,現金交換の場合と,従来かつて議論がありました新株引受権付社債の承継の場合に,正当なというか,対価をもらっていないというふうな形で債務負担あるいは現金が流出するという場合に限って債権者保護手続を設けるということで十分足りるのではないかというように思います。   というのは,株式交換,現行法で体験した企業などの話を聞いてみますと,合併などの債権者保護手続で債権者異議がありますと結構煩わしいものですから,従来,せっかく債権者保護手続のない株式交換・株式移転で十分に対応できているわけですので,それにあえて債権者保護手続を加えるということは必要ないと考えます。 ● 現金を対価とするような従来なかった制度についてのみ債権者保護手続を設けるという御提案だと思いますが,ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   確かに,現在認められているような,新株だけ,あるいは新株に加えて自己株,それから比率調整のための合併交付金ということですと,その分については現在も債権者保護手続なしでも認められていて,格別弊害があるということでもなさそうですので,そこを規制強化する必要はないのではないかと思いますが。新たに認められる現金と新株予約権付社債の承継,こういうものについてのみ債権者保護手続を課すという御提案ですが,いかがでしょうか。 ● 是非そうしていただきたいと思いますけれども,剰余金を増加させる株式移転等をするような場合について,今後,今と制度が変わるわけですから,その場合については債権者保護手続が必要なのかどうかということも,現状の制度から変わる部分についてそれぞれに債権者保護の必要性を検討していただければと思います。 ● 剰余金が増えるものについては,これは資本準備金の減少ということですよね,逆に言いますと。 ● そうです。 ● これは,それ自体が債権者保護手続が該当するのですね,現在でも。ですから,それはやむを得ないのではないかと思いますが。   よろしいでしょうか。   それでは,○○委員が御提案になったように,現在債権者保護手続なしで認められている新株,自己株,それから比率調整のための交付金,この場合については債権者保護手続は不要,そして新たに認められる現金等の場合には要ると,こういう形の整理にさせていただいてよろしいですね。 ● 確認ですけれども,対価の柔軟化を前提にすると,対価が完全親会社となる会社の株式でないという場合と,新株引受権付社債の社債部分の承継がある場合,これらが対象になるという理解でよろしいということですね。   その場合,例えば株式交換無効の訴えの提訴権者について,その場合に限って債権者を含めるというようなことになるのかどうかも一応確認させていただきたいのですけれども,それはそういうことになるのですか。 ● そういうことですよね。 ● そういうふうに結びつくのでしょうね。   それから,新株予約権付社債のことですが,無償でということはないと思うのですが,無償でという場合に限ってという限定つきでさっき私申し上げたのですが。 ● それは合併も同じなのですけれども,債務は負うと。例えば1億円負うと。子会社に対して求償権を1億円,名目的には持つのですが,本当にそれだけの価値があるかどうか分かりませんので。ですから,それはちょっと無理ではないか,債務を親会社が負う以上はやはり債権者保護手続が要るということに論理的にはならざるを得ないのではないかと思いますけれども。 ● まあ,こだわりません。 ● 私自身は,実は以前,株式交換・株式移転の制度が入ったときに,いわば資産の再評価がされて,実質的に会社資産の流出の可能性があったものですから,当時でも本当は債権者保護手続が必要ではないかなという気があったのですが。ただ,それはさっきの○○委員のお言葉ですとそれほど大きな問題ではないということで入らなかったのですが,今回こういう形で御提案になってきたということは,今,○○委員が御指摘になったような場合以外にも,むしろ債権者保護手続を株式交換・株式移転一般に広げた方が妥当である,あるいは制度を作りやすいというような御考慮があって事務局はこういう案を提起されてきたのではないかと思うのですけれども,そこら辺,どういう御考慮でこういう案を原案として出されたか,ちょっと教えていただけたら有り難いと思うのですが。 ● ここでの議論の株式交換をめぐる債権者保護手続の主たる問題は,現金もしくは--要するに株式以外の財産ですね,実財産が会社から流出する場合の問題というふうに言われておりましたけれども,会社法全体を通して考えると,実は,対債権者との関係では,純財産が出るときよりも株式が出るときの方が手続が重い姿にずっと通してなっているのですね。例えば,新株発行で対価が入ってくるときに,現物が入ってくると検査役が要る,でも,それをキャッシュで買えばそんな手続は要らないと。これは常日ごろから何と説明されているかというと,対債権者,要するに債権者を害するおそれがあるからと説明されていたのです。そうすると,株式交換の場合に債権者保護手続が必要ですと言ったときに,ここだけ逆転することになるのですね。実財産が出るときだけ債権者を害する可能性があって,株を出すときには債権者を害するおそれはおよそないと。だから,対価が株式であっても債権者保護手続も要らないという結論になるものですから,そういう結論の出し方でいいのかどうかという点に若干の懸念があって,したがって,まずこちらサイドからは,いったん,全部必要ではないかということで,もし仮に株式のみを対価とするときに要らないとするのであれば,そこはどういう割り切りでそういうふうになったのかということを明らかにしておきたいというのが,そもそもの提案の趣旨であります。 ● ○○委員,いかがでしょうか。 ● 私自身は,○○関係官の問題関心と一致しているのかどうかは分かりませんけれども,株式交換・株式移転にも,そういう債権者保護手続の点で問題になり得るシチュエーションはあり得るので,本当はあった方がいいと思っていましたので,実はこの原案に私個人としては賛成であったということであります。 ● 果たして新株が出るから債権者保護手続だったのか。しかし,そうしますと,何で株式交換をあれしたときに外したんだということになりますので,ちょっと……。もともとは○○関係官がおっしゃったようなことだったのかもしれないのですが,少なくとも株式交換の制度ができたときからは考え方が違っているのではないかと私は思うのですけれどもね。   いずれにしましても,従来の制度とそう大きく枠組みを違えないということであれば,先ほど○○委員が御提案になったような形で今回は決着をつけざるを得ないのではないかと思いますが,それでよろしいでしょうか。--それでは,先ほど○○幹事から確認があったような形でまとめさせていただきます。   (2)でありますが,これは前回の○○委員からの御提案で,大変説得力のある御提案だったと事務局からの説明にも出てまいりましたが,いかがでしょうか。特別決議の定足数の総株主の議決権に対する割合を3で除した割合ということですね。よろしゅうございますか。--それでは,これは御承認いただいたものとして取り扱わせていただきます。   (3)でありますけれども,略式組織再編についての差止請求,これは略式でなければ決議取消しの訴えが起こるようなケースでありますので,特別利害関係人がいる場合でありますから,それに代わる制度が何らか必要であろうということで,こういうことでありますが,これもよろしいでしょうか。 ● 一つだけ確認したいのですけれども。   もう既に決着している問題かもしれませんけれども,どうして違法行為差止請求権と株式買取請求権だけでは株主保護にはならないで,この新たな制度が必要かということについて,もう一度御説明だけお願いしておきたいと思いますけれども。 ● 取締役に対する差止請求権というのは取締役を被告とするものでありまして,これは会社を被告とするものですね。   何か事務局から説明してもらえますか。 ● ここは正に,決議取消しに代わるものとして何か必要ではないかという強い御指摘を踏まえて,このような制度設計をさせていただこうとするものでございます。 ● 現行制度では無理だということになったということですね。これでは救えないと。 ● そうですね。272条というのは実効性があるのかどうかという問題がありますので。例えば,登記ができるのかとか,登記をストップできるのかとか,取締役がやってしまった場合にですね。そういうこともありますので,こういう会社を相手とする手続が必要なのだと私は理解しておりますが。   よろしいですか。   それでは,「5 その他」に進ませていただきます。   5の(1)でありますが,これにつきましては--債権者保護手続に関する異議でありますが--従来の案は,社債管理会社が社債権者集会の決議なくして異議を申し述べることができると,これはもう強行規定ということであったのですが,今回の案は,「社債管理委託契約等に別段の定めがある場合を除き」ということが入ったという点が新しいと思います。   つまり,常に社債管理会社は社債権者集会の決議なくして異議を述べるという制度は,そうでないと,社債管理会社が社債権者集会の決議を経てから異議を言いたいのだというと,債権者保護手続が非常に長引くということがありまして,それは発行会社にとっては非常に困るということから来ていたと思うのですが,社債発行の段階で,社債管理委託契約において発行会社がそういう社債権者集会を経るという手続でもいいと言っているのに,なぜそれをとめる必要性があるのだということから,こういう,社債管理委託契約に別段の定めがあれば別だということが加わったと私は理解しておりますが,これでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。--それでは,これは御了解いただいたものとして取り扱わせていただきます。   (2)でありますが,清算手続の債権申出期間の見直しは行わないと。これは短縮してほしいという御意見もあったのですが,今回はちょっとそれには踏み切れないということでありますが,よろしいでしょうか。 ● この前も申し上げましたけれども,現実の清算手続におきまして,1月を超えての申出というのは全くなされていないということは,1か月に限定しても弊害にはならないのではないかということでありまして,より早く清算を済ませたいということのニーズがある中で,それほど債権者を保護しなければならないのかという気がするものですから,せめて45日にしていただくとか,何かないものでしょうか。 ● ないというのは,○○委員の御経験ではないということですか。 ● 一般に。私の経験ではありません。一般にもそういうふうに言われていると。○○委員なんかお詳しいのかもしれませんけれども。 ● 確かに,異議が相当後になってから出るということはなくて,1か月以内に異議が,それ自体少ないということが多いですから,ケースとしてどれぐらいあるのかというのは私も何とも言えないのですが。むしろ随分後になってから清算未了のものが出てくるということの方が多くて,それでしようがなくて,特別代理人だか何だか,制度は忘れましたけれども,また裁判所で選任して,清算処理がまだ未了だったということで処理するというケースはありますけれども,清算を公告してから2か月あるいは3か月経ってから異議が出るというのは確かに少ないとは思います。ただ,皆無とは言えませんので,特に会社の最終段階での清算でございますから,現行法を変えるというまでの必要性があるかどうかということになると,必ずしも変えなくてもいいのではないかなという気がしておりますが。 ● おっしゃるように,清算という最終的な段階での問題ですので,もう間違いなく大丈夫だということであればいいのですけれども,ちょっとその自信が……。実務的な御意見等を余り突っ込んでお聞きする機会も少なかったということもあって--実情をお調べいただけるかというお話もあったのですけれども--なかなか決め手に欠けるのではないかというのが正直なところでございます。 ● それであれば。 ● まあ,事の性質上,これで御了解いただければと思います。   それでは,部会資料26につきましては,以上でよろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきまして,部会資料27につきまして,まず,事務局から説明をお願いします。部会資料28も一括してお願いします。 ● それでは,事前にお配りいたしました部会資料27と,本日席上配布の部会資料28につきまして,一括して御説明いたします。   部会資料27は,「残された諸論点について(2)」と題するものでございます。   1は,「市場取引等以外の方法による自己株式等の買受手続」の見直しについてでございまして,①と③の一部,それから④につきましては,従前お諮りしていた内容そのものでございますが,特に,中小規模の会社における実際のニーズということから,②のような手続,すなわち,一定の要件のもとに,特定の株主及びその株主と同様の取扱いをしてほしいと手を上げた株主のみを相手方とする手続というものも引き続き認めるべきではないかという強い御要請をいただいたところでございまして,今回,この②と,それから,この②を採った場合の措置として③の括弧内--通知すべき相手方が株主全員ではなく,特定の株主と手を上げた株主のみに通知をする--こういう制度を更に付加したらどうかということをお諮りするものでございます。   2は,一体化の諸問題のうち,部会資料26では取り上げていなかったその他の論点についてとりまとめたものでございます。(1)は,従前意見の対立があった 監査役の権限の在り方についてですけれども,原則として株式会社の監査役は業務監査権限及び会計監査権限を有するという整理をしつつ,大会社以外の株式譲渡制限会社について例外的に業務監査権限を持たない監査役というものを認めることとしたらどうかという提案をさせていただくこととしたいと思います。現在,有限会社については,その規模にかかわらず,監査役は会社監査権限のみを有しておりますし,株式会社の小会社についても監査役の権限は会計監査権限のみに限られていまして,このような現在の法制度を踏まえ,制度の滑らかな移行ということを考えますと,会計監査権限のみを持つ監査役というものの存在を引き続き認めてほしいという,従来からの強い御指摘があったところでもあり,取締役会の設置のいかんにかかわらず,大会社を除く譲渡制限会社一般について,監査役をそのような監査役のみとするという余地を認めることとしたらどうかということでございます。   それに伴いまして,業務監査権限を持つ監査機関を有しない株式会社につきましては,株主によるチェック機能をそれなりに強化すべきではないかと思われることから,従前お諮りしていた内容も含めて,②のイからヘまで,改めて--新しい提案もありますけれども--お諮りしたいと思います。   ちなみに,イからハまでは取締役会が置かれている会社の株主の権利ということになりますし,ニからヘまでは取締役会の有無にかかわらず株主に認められるべき取扱いということになるわけでございます。イからハまでは,要するに,業務監査権限を持つ監査役が置かれていれば当該監査役が有しているであろう権限に準じた権限を株主自らに与えることとしてはどうかというものでございます。ニにつきましては,前回の部会での御指摘を踏まえまして,業務監査権限を有する監査機関が存在しないという会社における取締役の責任の一部免除制度についてはそれなりの制約があってしかるべきではないかということを明らかにするものでございます。ホ,ヘについてですが,ヘについては,従前は監査役を置かない譲渡制限会社--従前は取締役会が置かれていないということが前提になっていましたけれども--の規律としておりましたが,取締役会があるかないかにかかわらず,業務監査権限を有する監査機関がないという会社における株主について,このような違法行為差止請求権の要件の緩和を図るとともに,その前提としてホのような取扱いをさせていただくことはどうかということをお諮りしたいと思います。   なお,株式譲渡制限会社のうち,大会社以外の会社についてのみこのような取扱いを認めるのは,大会社については,会計監査人の設置が義務づけられ,会計監査人の設置について執行機関からの独立性を担保する等の観点から業務監査権限を持つ監査機関を必置とするという整理をさせていただくことに伴うものでございます。   「(2) 取締役の任期」につきましては,いろいろな御意見のあったところですけれども,最終的に,一方では現行の有限会社について法定任期規制が全くなく,他方,株式会社については一律に2年とされている現行法制について,これらを一体化させるとした場合,株式譲渡制限会社に限って言えば,必ずしも現在の株式会社の規制というものがその実態に合っているとも限らないということもありまして,原則2年--監査役については原則4年--としつつ,定款でその譲渡制限株式会社における実情に即して任期の延長を認めるとともに,全く無制限にすることに伴う弊害を除去するために最長限を設けることとし,それについて,いろいろなニーズを見越して10年という比較的長い期間を設定するということはいかがかというものでございます。   「(3) 特別決議の要件」でございますけれども,従前お諮りしている案から変更している点は,②の2)--先ほどもお話が出ていました特段の定めをする場合の決議要件--でして,これは正に現行の有限会社において認められている制度でございますので,現行の有限会社とほぼ同様の決議要件--1)とは別の,より加重された要件--によってのみ可能とするという整理をさせていただいてはどうかということをお諮りしたいと思います。   「3 利益相反取引に係る取締役の責任」については,利益相反取引に係る責任に関する論点が残っております。いろいろと御議論があったところですけれども, 現段階で立案をさせていただくとすれば,無過失責任を負うべき取締役については直接に利益相反取引をした者に限るということにし,一部免除が認められない対象もそれに一致させ,なおかつ,責任の内容,返還すべき額については現行法の規律を必ずしも変えることまではしないということとさせていただけないかということをお諮りしたいと思います。   4は,新たにお諮りする内容です。従前,部会でも複数の御指摘をいただいたところですけれども,委員会等設置会社かどうかにかかわらず,内部統制システムの構築の基本方針にかかわる事項を法律事項とし,これについては,取締役会のある会社においては代表取締役の決め得るところではなく,取締役会において決めるべきものとし,決めた場合には営業報告書に記載するという形で開示することとしたらどうかということが本文でございます。   これは,必ずしも取締役会が置かれた会社すべてについてその基本方針の決定を義務づけるという趣旨を含んでいるものではありませんけれども,(注)におきましては,少なくとも大会社についてはその基本方針の決定を取締役会において行うべきことを義務づけることとしたらどうかということとしております。仮にこれを義務づけるということになりますと,委員会等設置会社に関する現行の商法特例法21条の7第1項第2号に基づく法務省令で定められた事項についても同様の,それ以外の会社と同様の規定内容になるような調整が必要になるわけですけれども,このような処理をさせていただくことはどうかということをお諮りしたいと思います。これは,参考資料で配布させていただきました自民党の商法に関する小委員会での御指摘をも踏まえた内容でございます。   「5 補欠監査役」ですけれども,定款の定めを要するかどうかということと,予選の効力をいつまで認めるかという論点のうち,定款の定めを要するかどうかという点については,その必要はないということでおおむね御了解をいただいているかと思いますけれども,予選の効力の存続期間については,補欠候補者を長期間浮動的な立場に立たせておくのはいかがなものかという御指摘もあったところでございまして,先ほどのように取締役の任期について定款で最長10年まで伸長する余地があるということになりますと,とりあえず--最低限のニーズには対応し得ると思いますので--次期定時総会までということとさせていただいたらどうかということでございます。   「6 重要財産委員会制度」につきましては,御指摘のあった点を取り入れるとするとこのような形になるのではないかというものでございますので,御確認いただきたいと思います。   7の代表訴訟に係る論点のうちの「株主が代表訴訟を提起することができない場合」の要件の設定の問題についてでございますけれども,議論をいただくべきは②の部分でございます。一応a案,b案という形にさせていただいておりますが,b案が前回お示しした案に比較的近い内容ということになっております。ただし,従前の案では,額の比較という形をとっておりましたけれども,とりあえず額の比較という面を後退させております。また,「おそれ」ではなく,「相当の確実性をもって予測される」という要件に変えてみたらどうかという提案を含んでおります。a案は,b案に比べまして,プラスとマイナスとの比較という面を文言上は後退させております。「著しく」という要件がありまして,要するに制度の趣旨に照らせば比較する問題であることはa案でも同じなのですけれども,文言上は比較という面を明らかにはしていないという案でございます。どちらにせよ,制度の趣旨に照らして,会社にマイナスが生ずるということから代表訴訟を認めるべきではない場合というものを表そうとしているわけですけれども,現実の訴訟を踏まえて,あるいは今後の裁判実務における運用のしやすさ等を考慮して,どのような要件設定をするのが適当かという観点から御議論いただきたいと思います。   「8 会計監査人の会社に対する責任の一部免除」についてですが,会計監査人の対会社責任については,その一部免除の在り方だけが残された論点でございまして,それを代表訴訟の対象にするということ自体にはほぼ御異論がないところでございますが,責任の法定額というものは,なかなか例の乏しい考え方でございますので,非常に難しいのではないかと考えているところでございます。差し当たり社外取締役と同様の取扱いをするということでいかがかというのがここでの提案ですけれども,これが難しく,しかも責任の法定額というものも難しいということになりますと,結局,責任の一部免除はできず,代表訴訟の対象にするだけという整理もあり得るかということでございます。しょせん軽過失の場合の問題ですので,責任の一部免除がどの程度のものかということもあり,その辺りを総合的に考えて御議論いただきたいと思います。   「9 擬似外国会社」についてですが,前回は,試案におけるb案,すなわち,商法482条を削除し,一般の外国会社と擬似外国会社とについて,内国取引保護の観点から必要な規定の追加の要否を別途検討することは別にして,会社法上特に別異の取扱いをしないという案を提示させていただきましたけれども,それについては有力な御異論があったところでございます 。   他方,試案におけるa案でもb案でもない中間的な案,すなわち,外国法による設立,それに基づく法人格という効果は認めつつ,設立以外の規律については日本法を適用するという考え方ですけれども,これについては,外国法による設立が,少なくともその外国法が予定している機関ですとか出資ですとか,それらに関連する規律を前提としているものですので,そのように作られた外国会社について日本法を適用するということの意味が不明であり,法律に書き表すことが不可能であると言ってもいいと思いますけれども,結局は日本法に基づき設立からやり直さなければならないということになってしまうのではないかと思われるところであります。それはすなわちa案を採ることを意味するわけですけれども,a案につきましては,法人格の否認という効果が果たして適当か,また,法人格の否認という効果が生ずるとした場合のその効果の重大性から見て要件がややあいまいなところがありますが,それが適当かどうかということもあり,もちろん意見照会の結果ではこれについての反対意見が多かったわけです。なかなか妙案はないのですが,少なくとも擬似外国会社が一般の外国会社とは異なる規律の適用を受けるような会社法上の取扱いがされるべきであり,擬似外国会社というものは本来日本法によって設立されるべき会社であるという理念を示すということにいたしますと,通常,外国会社であれば登記をすることによって日本において取引継続をすることができるわけですが,擬似外国会社については仮に登記をしたとしても日本において取引を継続して行うことはできない,すなわち,その効果は何かといいますと,商法481条と同様の効果--違反して取引を行った者がとにかく当該擬似外国会社と連帯して責任を負うという効果--であり,これは,その者について言えば,当該会社の法人格を認めないという場合とほぼ同じことになるのかもしれませんが,そのような処理をさせていただくということが現実的なのではないかと考え直した次第でございます。この検討の方向性の当否について御議論をちょうだいしたいと思います。   なお,(参考)は,2の「(1) 監査役の権限」の①の(注)に関するものですけれども,これまでの部会での御議論を踏まえた剰余金の処分等に関する権限分配等に係る規律の在り方を並べてみるとこうなるということをいま一度御確認いただきたいと思います。   内容について確認させていただくべきところはそう多くはないのですけれども,1点目は,(参考)の1の(注1)のところで,整理の結果,利益処分案,損失処理案という概念が不要となるのではないかという点でございます。   2については,特にコメントすべきことはございません。   3につきましては,まず(1)について,いわゆる現在の中間配当というものを維持するということでよろしいかどうかの再確認ですけれども,例えば1の①を前提にし,また,3の(3)の要件--これはかなり重い要件になるわけですけれども--それとの要件の違いという点を踏まえつつ,年に1回であれば,この程度の要件で中間配当を行うことができるということでよいかどうかということの確認をいただきたいと思います。   3の(3)についてですが,この点は事務局側の資料における整理が行き届かなかった点かもしれませんが,前々回の御議論を前提にしますと,(3)のような取扱いが認められる委員会等設置会社以外の会社は,会計監査人を設置し,取締役の任期を1年とするのみならず,監査役会を設置していることが必要であるということになりますので,そのことを明示しております。御確認いただきたいと思います。これが(3)の要件なのか,あるいは(4)の要件であって(3)の要件ではないという理解の下に前々回の御議論があったのか,ちょっと確認ができなかったところもあるのですけれども,議論の趣旨からすると,(3)の要件としてこうあるべきであるという御意見であったように思いますので,このように整理をさせていただいております。   なお,(3)の(注)ですけれども,これについては,実質についてこのような改正をさせていただくべきかどうか,御議論いただきたいと思います。準備金の資本組入れについては,かつては無償交付という制度があったこともあって,取締役会限りでできるということになっていたわけですけれども,現時点において,準備金の取扱い,資本の取扱いの差異を考えますと,必ずしも取締役会限りでできるということにしておく理由はない,むしろ株主総会の決議を要するという形の方が整合的なのではないかというふうに整理することができると思いますので,その点についての明示的な御議論をいただきたいと思います。   (4)につきましては,繰り返しになりますが,(3)の定款の定めを設けることができる会社と同じ要件とするということでよろしいかどうか,御確認をいただきたいと思います。仮に要件をそろえる場合には,(3)の定めが当然に(4)の定めを含むという整理も考えられますが,一応,原案では,(3)の定めを置ける会社の要件と(4)の定めを置ける会社の要件は同じであり,なおかつ,(4)の定めは(3)の定めとは別のものとしてあり得るという整理をさせていただいているところでございます。   それから,部会資料28の説明に移ります。部会資料25の「2 外国会社による社債の発行」について,前回の御議論では余り評判がよくなかったということもありまして,今回,このような整理をさせていただくべきかどうか,改めてお諮りしたいと思います。   前回の案は,社債管理会社,社債権者集会に関する我が国の商法の規定が強行規定である--社債管理会社については原則として設置強制とされていますし,また,どちらの規定についても裁判所の関与が規定されているところでもありまして--ということを前提とし,その強行規定が仮に内国取引保護という観点から設けられているとすれば,内国会社か外国会社かにかかわらず,国内で社債を発行する場合については適用され,国外で社債を発行する場合には適用されないという整理ができるのではないかということでお諮りしたものでございますけれども,一方において,内国会社が国外で社債を発行する場合においては,現在,事実上社債管理会社が置かれていないという現実を踏まえ,少なくともその実質が変わらないということが必要であるという実務上の御指摘をいただいているところでございます。そうであるといたしますと,部会資料28の本文にあるように,内国会社が国外で社債を発行する場合にはそれらの規定の適用はないということを明文で明らかにすることとしつつ,それでは外国会社についてはどうすべきかということについての御議論をちょうだいしたいと思います。   仮に外国会社について何も触れないということになりますと,先ほどの外国子会社に関する議論にもかかわりますけれども,外国会社が国内で社債を発行する場合にもそれらの規定は当然には当該外国会社には適用されないということが,今回の改正を経ることによって更に示唆されるといいますか,解釈される可能性が強くなると考えられるところでございます。社債管理会社の設置強制や社債権者集会の決議に係る認可制度というような現在の商法の仕組みは内国会社が国内で社債を発行する場合にのみ適用されるものであり,その余の場合には適用されない性質のものであるという整理をこの段階でさせていただくことがよろしいかどうか,それらが矛盾なく説明できることかどうかということをあわせて御議論いただきたいと思います。   なお,国内か国外かという分類の基準について,社債に係る債務の義務履行地ということで区別したらどうかという点は,前回の資料と同じでございます。   部会資料27,28の説明は以上でございます。 ● 部会資料27,28全体を通じまして,何か御質問ありますでしょうか。   それでは,まず部会資料27でありますけれども,1でございます。前回,新しく提案されている制度に加えて,市場による取引以外で売主を定めた自己株式買受けという従来どおりの制度も残してほしいという強い御希望がありましたので,今回,②でそういう制度もとれるようにする,そういう形の決議もできるようにするということでございます。そうなりますと,自分も売主に加えろと希望した株主に対しては③のような手続がとられると,こういう提案であります。変更された点はその点であると思いますが,いかがでしょうか。 ● 今までの議論を踏まえて工夫をしていただいたという意味で,私どもはこれを評価いたします。賛成です。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。--御異論がないようでしたら,1については御承認いただいたものとして取り扱わせていただきます。   それでは,先に進んでよろしいでしょうか。   2の「(1) 監査役の権限」であります。この点につきましては,もちろん監査役が強制される会社もあるわけですが,それ以外の任意で定める場合も含めまして,監査役を置けばそれは当然に業務監査権限も持つというのが従来の案でありましたが,これも,会計監査のみの権限の監査役というものを認めるべきであるという強い御希望がありまして,そこで今回の案では,定款で定めればそういう会計監査に権限を限定した監査役も置けるというようなことにすると。ただ,その場合,株主の権限を強化して,少なくとも業務監査を行う監査役が持っていた権限の一部は株主が持つようにしてはどうかというのが,今回の(1)の提案でありますが,この点につきまして御議論いただきたいと思います。 ● 強い意見が出たと○○委員からお話があったのは,恐らく私のことを指しているのではないかと思うのでございますが……。 ● 異議なし。 ● 結果は,繰り返しになって申し訳ございませんが,これまで,有限会社と小会社については業務監査権限のない監査役があったのに,前回の案ではなぜかそれがおまけでばっちりくっついてきた。これはもう大変な規制強化になるのではないかと,こういうことで強く申し上げました。   今回の案を見させていただいて,ああ,私の強く述べたとおりになったかなと,こう思っておったのですが,実はフリンジが山のように付いていまして,大変なものがだあっと付いておって,それから,(1)①で,「原則として,業務監査権限及び会計監査権限を有するものとする」と麗々しく第1番目に書かれてしまって,大変不満なところも実はあるのでございますが,比較衡量して,右手と左手でそのくっついてきたものと取ったものとをバランスをとると,取ったものは,今までもそうだったのだから重みがないじゃないかという意見も私どもの中にあるのでございますが,まあ,これまでの議論の経過,それから,今日は残念ながら天候の影響で○○委員がお見えになっていない--欠席裁判ではないわけでございますが--○○委員も今日はお見えになっていないので,そういうこともちょっと勘案しまして,これだけ大量のフリンジが付いておっても,もう私どもはこれで結構だと,渋々ながらというと言葉が悪うございますが,これでいい案になったのではないかと。一言申し上げれば,中小企業にとってもきちんとした牽制の要因が入っているということ,ガバナンスがきちんとできるのだ,少数株主についての権利も尊重しているのだという形がこれで非常にうまい具合に外向きに説明できるものだというふうな理解をさせていただいて,全面的に賛成いたします。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● ○○委員から賛成という御意見があった後でちょっと何なんですけれども,会計監査権限のみの監査役を認めることにしたというのは私も賛成でありますけれども,そのためにこれだけ大掛かりなものを持ってこなくてはいけないのかなという,一つ危惧がありまして,株主の権限を強化するというのも,ここまでするかという気もありますが,まあこれはよろしいといたしまして,私が非常に懸念を表明したいのはニでありまして,特に(注)との関連になりますけれども,前回の議論におきましても,御記憶のとおり,取締役会非設置会社においても,一応定款による取締役の責任制限は認める方向で議論するというお話だったはずであります。繰り返しになりますけれども,特にベンチャー的な企業におきましては,コーポレートガバナンスを非常に任意法規的にといいますか自由に設計するという需要が非常に高く,かつ,公開会社同様あるいはそれ以上に社外取締役を導入する実質的なニーズも非常に高いわけでありまして,これは更にはいわゆる日本版LLCのコーポレートガバナンス,取締役の責任設計にもかかわり得ることではないかと思いますので,監査役と取締役の責任の一部免除制度,これを必ず論理的にタイアップするという議論--ここで初めて出てきたことだと思いますが--これにつきましては,監査役がいるから取締役の一部免除制度が適用されるというのは論理的に必ずしも必然ではないというふうに思います。これは,株主との契約においてそのような責任制限が認められ,それが社外取締役の選任を受ける,就任を許諾するということのインセンティブにもつながると,そういう話だったと思いますので,このニだけは御再考願えないだろうかと。ベンチャー法制にとって将来問題を生じさせるであろうという重大な危ぐを一応表明させていただきたいと思います。 ● ○○幹事の御懸念も十分に理解はできます。   私どもの理解は,今回いろいろ経緯はあったけれども,監査役に業務監査権限をつけないことを定款で定めることができるということをこの制度の中に導入するときに,世の中は全部が理屈で通るのではなくて,いろいろなバリエーションの中で,あれもあるしこれもある,これもあるけどあれもあるという世界なものですから,こういう仕組みがはかりの逆の側におもりが乗ってくるというぐらいはしようがないのではないかと,中小企業の代表としてはそういう判断をまずさせていただいたということが一つ。   それから,ベンチャーといっても様々あるわけでありまして,立派なベンチャーで経営者がどんどん気持ちが先走っていくのだったら監査役ぐらい置けよと監査役を置いて,業務監査もさせろよというのが例えばエンジェルから出てくれば,はい,分かりましたといって置くのもバリエーションの中の一つではないかと。そういういろいろなことを総合的に勘案すると,この仕上がりは,いろいろなオプションがあって,いろいろなやり方ができるという意味で使い勝手が悪くないものに仕上がったのではないかと。もちろん,マトリックスを使って縦と横とでマル・バツをつけていくと,ちょっとここがおかしいではないかというのは,厳密に言えば,あるかもしれません。そういうような検討もしましたけれども。   とはいえ,そこはそれで,とりあえず,これは外向きの説明でいってもうまく説明できるものではないかと。商法の中身は,レッテルも大切ですが,対外的な説明,ライアビリティーあるいはアカウンタビリティーといったようなことも非常に重要でございますので,そういうことがあって私が全面的に賛成をしたということを,○○幹事に対してということではないのですが,申し上げておきたいと思います。 ● ニの点は,前回,○○委員がおっしゃった点を踏まえているのだと思いますが。 ● やはり,取締役の責任の一部免除を定款によって行うという場合,まず一つは,業務監査権限のある監査役が会社の業務を考えて,それで差し支えないという判断がある,やはりそれが前提になっていると思います。   さらに,こういったタイプの会社の場合は,取締役会がないと,では定款に基づく取締役会の決議でなくやるということになりますので,定款に基づく免責の前提条件がないということになりますから,これは一般原則に戻って株主総会の特別決議で免責すればいいだけのことですから,私は,別にこれでおかしいことはないと思います。 ● ○○幹事のおっしゃった点は,業務監査をする監査役を置けばいいのですね。○○委員がおっしゃいましたけれども。どうしても嫌だというほどのことではないのではないかと思うのですけれども。 ● 大勢がそういうことであるとすれば,あくまでもこだわるということではないのですが,一番懸念しておりましたのは,先ほどもちょっと申しましたように,この法制をあれしますと,LLCの方もそうだということになるのでしょうか。これを前提として,やはり監査役を置かないとというような,監査役必置というような話になってくるのか。そうすると,せっかく新しい制度を作ろうというのに,余り 面白くないものができてしまうのではないかというような懸念も非常にあるのですが,それは別途に考えさせていただいてよろしいということですか。 ● LLCは,何回前だったか忘れましたけれども,責任の減免の方法については特に規定を置きませんので,こういう問題は起きません。置かないということの意味はちょっと多義的なのですけれども,ただ,明文で頭から総同意でないとだめだというふうには置きませんので,そこは適宜ということです。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   特に御意見がないようでしたら,○○委員もおっしゃいましたように,これで妥協案として適当な案であるということで御承認いただいたということでよろしいでしょうか。--それでは,(1)は御承認いただいたという処理をさせていただきます。   次に,「(2) 取締役の任期」でございます。これも従来から議論があったところでありますが,原則は2年・4年で,ただし譲渡制限会社については任期を最長10年まで伸長することができるということにするという案でございます。任期を全く定めないという現在の有限会社型のものはなくなるわけであります。いかがでしょうか。 ● 立て続けに申し訳ございませんが,これも先ほどと同じような話でありまして,そもそも任期のなかった有限会社を融合させるということになると,物すごい大きな規制強化,それも例えば2年と監査役4年というようなことになるともう大変なことになってしまうものですから,それとの調整を図るということで,私どもは,前もちょっと御説明したと思うのですが,仮にすべてのものを無期限にしても,恐らくそういうふうにはならない,大体,自分の子飼いの部長を取締役にすれば,1年とか2年でいつでもすげかえられるようにするし,そういうようなことをして,自分は10年というのがあるかもしれませんけれども,これは自分がどれぐらい生きるかという目安の問題だと思うのでございますけれども,それも息子にいつ譲るかとかということもあるので,そうそう野放図では実はないのでございます,経営者というのは。そういうことを勘案すると,10年というのは,これも渋々,私どもは無期限とずっと言い続けてきたわけでございますが,これでしようがないだろうと。   ただ,一部に御心配がございました,それは幾ら何でも長過ぎるのではないかということについては,今申し上げたように,やはりここは節度のある対応を経営者もちゃんと考えておりますし,それらにつきましては私どもも十分PRさせていただきたいと思っておりますので,これもこの原案を評価して,これで私どもも賛成したいと,こう思います。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 私は,前回も申し上げたように,この10年というのはちょっと賛成しかねる長さでございまして,じゃあ何年が妥当かということになると,これはもう皆さん恐らく節度を持ってやられるということですから,その実績というものを見ないことには分からないという面はあるかと思うのですけれども,ただ,法制的に最長10年ということを法定するということ自体が社会的にどう評価を受けるかという面もありますので,例えば取締役については6年とか,監査役については2期分8年とか,そういったレベルで抑えるのが妥当ではないのかなという,これは本当に感じということなのですが,10年はやはりちょっと長過ぎるのではないかというふうに感じます。 ● 私は,これは株式譲渡制限会社でありますので,株式譲渡制限会社でも,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,ある程度の規模の会社になれば従業員から取締役に引き上げなければいけないので,そんな長い任期を定めるはずがない。それから,そうでない会社につきましては,こういうふうに10年を定めますと,これを途中で解任すると,前に○○委員がおっしゃいましたけれども,10年間の報酬を払わなければいけなくなるのですね。ですから,御承知のとおり,こういう譲渡制限会社では,およそ一般株主の信任を受けるという話ではないので,恐らく取締役になっている,経営に参加している者が大部分の株式を持っているわけでありまして,経営者同士が信任するというのがこの改選なんですね。そういうところでは,この10年の任期を定めるというのは,10年間は戦争をしないという約束をするという話でありまして,だから,それは非常に実体に合っているのではないか。その平和条約の期間を5年に限る必要はないというふうに考えているのですけれども。私は,30年でもいいと思っています。 ● 今,○○委員から,むしろ私,背中からドスを突きつけられたような気持ちがしまして。スー族,シャイアン族と騎兵隊の戦争も10年間休戦だと,これは確かにそういう面がございます,効果として。御心配の向きの逆効果ももちろんあるので,そこをどうバランスよく見ていくかということでございますので,商法改正も10年に1回ぐらい大きいのがありますから,もしこれでひどいことが起こっているというなら即刻変えていただくということも視野に入れたぐらいの気持ちで,私ども,しっかりPRをして,これで妙なことが起こらないように……。○○委員が御指摘になっていらっしゃる問題は,6年とか8年にしても10年にしても,そこは実は大差ないのでございますよ。2年でも4年でも,ある意味では同じなんでございますね。そこら辺の問題がありますものですから,譲渡制限会社で株主イコール取締役的な会社が相当程度のウエートを占めているということを考えれば,この程度のものでも我々の目から見ると規制強化になったのではないかぐらいの批判を受けかねないものですから,是非この案でおさめていただければなと,こう思う次第でございます。 ● よろしゅうございますか,10年ということで。--それでは,この点も御承認いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次は,「(3) 特別決議の要件」でございますが,これも従来から議論があったところですが,新しい点は②の2)でありますけれども,この点が若干要件が強化されておりますけれども,いかがでしょうか。   この点につきましては,従来から○○委員,○○委員から御意見があったところかと思いますが。 ● 繰り返しになりますけれども,この問題は,結局,現行の有限会社法にもあるのですけれども,社員の個性を非常に重視する,あるいは経営者あるいは社員同士がそれぞれの個性を十分分かり合える,そういうような会社を前提にした制度ではないかというふうに考えておりまして,定款でこういった規定を設ける場合に,現行の有限会社法の注釈などを読んでみると,社員全員の同意が必要であるというようなことも書いてございます。そういう意味では,譲渡制限会社にも非常にたくさんの種類がありますので,経営者イコール株主という会社はもちろんたくさんありますけれども,反面,非常に株主数も多くて,経営者が株主から直接ガバナンスを受けるというよりも,所有と経営がほとんど分離しているというような譲渡制限会社もございますので,そういった会社に十把一からげにこういう新制度が適用されるということになりますと,特に所有と経営が分離している会社では,定款によって支配の不公正というような問題が出てくる懸念もないではないというふうに思います。   というのは,有限会社でもこの制度はあるのですが,こういったことを採用している会社というのはほとんど見たことがないわけでありまして,具体的に議決権あるいは剰余金あるいは残余財産の分配についてどういう定めをするのか,これはなかなかイメージがわかないので,使われていないということだと思うのですが,もし仮にこれが株式会社で譲渡制限会社において一般に使えるということになったときにどのような使われ方をするか,これは何ともまだ予測がつかないというような感じがいたしますので,それは結局,所有と経営の分離がかなり進行している会社でも様々な形で議決権あるいは剰余金の分配が定款で定められるということになると,不公正な会社支配に結びつくという懸念もありますので。   これは,実際には,今度,新たな会社制度を採用すればこういうことができることになると思いますので,株式会社の株式についてこういうことを認める必要性が本当にあるのだろうかと。もし仮に相続その他の場合に利用価値があるとした場合においても,譲渡制限会社のうち,取締役会を設置しない会社,しかも株主数も比較的少数,そういう会社に限ってこの制度は認めるべきではないかというのが,今まで私がずっと繰り返してきた考え方なのですが,まあ,そういう主張でございます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 私,頭が若干混乱していて,今の○○委員の御発言の真意がよく分からないのですが,私の目から見ると,これは規制強化というか,なかなか議決が難しくなってきておって。私,時々,○○委員から皮肉を言われていたのですが,株主の多数を握れば何でもできるわけではないんですよと。逆に言うと,それがどんどん加重されてきておって,そう簡単に多数を握った株主が何でもできるということではないシステムに加重されてきているということだと私は理解をいたしております。したがって,中小企業の立場から言うと,これはだんだん重くなってきていて,うまく動きにくくなってきているのですけれども,今回の有限会社と株式会社を一体化した中で,少数の株主等の権利をきちんと守るというか重く見ていくという中で,この議決の要件が加重されてくるということはトレードオフの関係で今回やむを得ないのかなという認識をしておりまして黙っていたと,こういうことなんでございます。 ● この2)の要件は,これは現在の有限会社の定款変更要件と同じでありまして,確かに,現行法の解釈として,○○委員がおっしゃったように,こういう定めは社員全員一致でないとできないのだという解釈もあることは承知しておりますけれども,必ずしもそれが支配的な学説というわけでもないというふうに私は考えております。もちろん,既存のものの権利を変更してこういうことにするということであれば,それは全員一致かもしれませんが,定款変更をして新たに作り出すということであれば,それはそうでもないのではないかというふうに考えております。   それから,LLCにすればいいではないかというのは,それはLLCでできることは確かなのですけれども,じゃあ各国会社法がLLC以外にはおよそこういうことを認めていないのかといいますと,いわゆる属人的定めというものを--日本では使われていないかもしれませんが--LLCみたいなもの以外にはおよそ認めないという法制もまたないと思いますので,そういう立法をするのはちょっと説明しづらいのかなというふうに私は思っております。   いかがでしょうか。   2)の要件は,前回よりは強化されておりまして,現在の有限会社の特別決議要件になっております。ですから,現在も有限会社についてはこれが認められているわけでありまして,非常に要件が強化されたというわけでも……。 ● 株式会社については強化されたという……。 ● いえ,株式会社ではもともとできなかったわけですから。 ● ああ,それはそうでございますね。 ● ですから,現在の有限会社のをそのまま移してきたということですので,特に規制強化でもないと思います。   ということで,○○委員が御懸念をお持ちということはよく分かりますが,よろしいでしょうか。   ○○委員はよろしいですか。 ● 私も○○委員のような懸念は持ってはおり,かつ,そもそもこういう閉鎖的な会社における特別決議の要件がこのような現行の大会社と同じような特別決議の要件でいいのかなというのは,むしろ閉鎖会社については定款自治をなるべく広く認める方がいいという観点から疑問は持っていたのですけれども,まあ,他のいろいろな箇所とあわせて,全体として以前と比べればよりモダレートな案になっていますから,一応この案で賛成したいと思います。 ● そういうことですので,これも妥協の一つだと考えて,御承認いただければと思います。   それでは,先に進ませていただいてよろしいでしょうか。   「3 利益相反取引に係る取締役の責任」でありますが,この点についてはいかがでしょうか。これは従来からいろいろと議論があったのですが,「会社と自己のために直接に利益相反取引をした取締役」と,こういう要件に今回はなっております。いかがでしょうか。 ● これがこのまま条文になるのですか。   それでしたら,「会社と自己のために」というところを,「自己のために会社と」と変えていただけると分かりやすいのです。私,無知なために,「会社と自己のため」とは何だろうかとちょっと考えてしまいましたので。   (2)も同様でございます。 ● 文言の点は,その方が分かりやすいということであれば,変更は可能ですので。   それから,前回,いわゆる法定信託のような御提言もあったのですが,この点も改めて検討してもらいましたけれども,事務局では,やはりちょっと難しいという考えのようです。この点も含めて,いかがでしょうか。 ● この点については全く賛成なのですけれども,ただ,前に,266条1項3号の削除に関連して,その1項3号には,取締役に対する金銭貸付けについての規定ですけれども,無過失責任にするということと,損害ではなくて,「未ダ弁済ナキ額」,つまり責任の額を法定しているということに意味があるのではないかという意見が出て,それに対して,いや,そんなことはないのだと,弁済期が到来すれば,まだ払っていなければそれは損害になるのだ,だから削除しても問題ないのだという御説明があったような記憶があるのですけれども。しかし,どうも考えてみると,不良貸付けをして取締役の責任を追及するという一般の場合を考えてみると,貸倒れがかなり確実になった場合に初めて責任が追及できる。1項3号は,これは弁済期が来て,いまだ払われていない額があれば直ちに責任を追及していけるというところに意味があったはずなのですね。1項3号をなくすということは,過失責任にするということだけではなくて,やっぱり取締役個人に対する金銭貸付けについての責任追及が著しく困難になるということになるのではないかと思うのですけれども,今更これは変えられないと--まあ,今の時期になってまた変えるということは難しいのかもしれませんけれども--その点はちょっと確認をしておいた方がいいのかなと思ったのですけれども。 ● 3号は保証人的地位に置くということでしたので,おっしゃるとおりの効果はあったと思うのですけれども, 現在のあれではそういうことにはならないということですね。解釈上はもうそれは疑いないことだと思います。   いかがでしょうか。これはどうしてもそれは必要だというふうに考えるか。取締役に対する貸付けについて賛成すれば保証人になるということを法律上当然のものとして規定を残すかどうかということでありますけれども。 ● 保証人というふうに置くべきかというのは別として,やはり貸倒れがどの段階でそういう状態になったかというのを立証するのは結構難しい。要するに,本当にもうどうしようもなくなるまではそこを会社が取り戻せないというのはやはり問題があるので,少なくとも損害額を推定するなりの規定はこの貸付けについては入れたらどうか。つまり,弁済されていないものはもう損害というふうに推定して,反証がなければその額というふうにしてもらった方がいいのではないかという気もするのですけれども。つまり,同じ損害額というのでも,原告の側で損害額を立証するのと,損害額が推定されるケースとでは,この貸倒れのケースについてはかなり大きく違うと思うのですね。税法などでもなかなか貸倒れを国税庁は認めてくれないというのは,この問題ということがありますので,そのあたりは検討してもいいのではないかと思うのですけれども。 ● 是非とも改めて検討せよという御意見が強ければ,せざるを得ないのですが。いかがでしょうか。時間はたっぷりありますので。   あの規定がなくなれば,どんどん取締役に対する貸付けがなされるかということですよね。そういう弊害が出てきて……。私もちょっとそこまでは自信がありません。 ● 委員会等設置会社においてはそういう手当てはしなかったわけですよね。だから,もうそこで一応の立法的解決を経ているので,あとはそれを横並びで今回はしていただくということでいかがでしょうか。 ● 大会社については余り問題ないと思うのですね。恐らく○○幹事や○○幹事がおっしゃるのは,中小企業で,赤字だから配当はできないし,給与も払えないけれども,だから貸付けはしていると,そういうのが出てくるという御懸念だと思うのですけれども。 ● 現行の会社で,取締役個人に対して金銭を貸し付けるような場合に,その正当な事由以上の目的があるというような場合は本当にどれぐらいあるのかと考えると,厳しい責任を課しておいてもそれほど不都合はないと。 ● ○○幹事のおっしゃっているのは,借りた取締役に資力があって取り戻せるときでも,他の取締役から取り戻せるようにしようという趣旨ですよね。 ● これは,規定をすべてなくすと,ほかの不良貸付けについての責任を追及をする場合と同じで,かなり確実に貸倒れということがはっきりした場合でなければ責任を追及していけなくなるわけですね,他の取締役については。 ● 貸倒れがはっきりしなくて,資力が十分あっても,他の取締役に……。 ● 資力があるかどうかも分からないから……。 ● いや,分からなくてもいいから,とにかく他の取締役で金が取れそうなところにかかっていけるようにすると。 ● ええ,弁済期を過ぎたらもう追及していけるというぐらいにしておいても構わないのではないかと。その方が早期に弁済することを促すことになりますよね。 ● 当該者は追及されないので,弁済しないですよね。すなわち,借りた取締役はどっちにしても契約責任を負っているので,返さないといけないわけですので,今,もし仮に266条……。 ● 小規模閉鎖会社で支配株主イコール取締役であるというような場合には,事実上,責任が追及されない,そのまま放っておかれていると。 ● 借りた当人はもちろん返済する義務はあるわけですから,それに会社側を代表して貸した取締役,それから,取締役会があれば賛成した取締役,そういうものについての議論なのですけれども,どうなんですかね。そういうことがなされる会社というのは,そういう規定を置いたからといってどうなのかという……。 ● 余り不用意な発言をすると,議事録に残った後で,ああ言った,こう言ったと言われるので困るのですけれども,私の知っている例は,例えば取締役会で決議をして社長に貸し付けたり,当然しているわけです。社長は会社から金を借りているけれども,金繰りがうまくいっていないときには社長のポケットマネーで会社に貸したりしている。これは物すごい重層的なんですね,実態は。実態はそういうことなんです。   私が今言っているケースというのは,例えば売上高が300億ぐらいあった会社でさえそうなっていまして,じゃあ借りた金で何やっていたのかというと--これが一般的な例ということではなくて,誤解されると困りますけれども--一つの例示をしますと,株式投資なんかをしているケースもあるのですね,極端なことを言うと。もうかっていればぽーんと返しますし,今度はそれを会社に対する貸付けに回したりもするのですね。逆を言うと,損をしていまして,損をしたときにどうなったかというと,これは非常に悲惨な例でありますけれども,その社長さんが突然亡くなった,元気な社長が,マラソンをしていたら亡くなった。それで,実は会社に対する負債が物すごくあって,億単位であったのですね。じゃあどうしたかというと,退職慰労金でお出しをして,プラ・マイ・ゼロどころか,プラスになるような退職慰労金を当然出したわけですね。そういうことで全体が整理されて,それで,御子息がいらっしゃって,御子息が全株式を引き受けて云々と,こうやって整理をしていったと。この会社自体は,債務超過に近い会社でしたけれども,キャッシュとしては非常によく回っていたので,何の問題もなく,現在も隆々とやっていらっしゃると。   これが典型的なパターンと言うつもりはありませんけれども,中小企業における経営者との貸し借りというのはそういうものでありまして,キャッシュフローが足りなくなれば,もう自分の預金があるところで,借金しているにもかかわらず預金が物すごくあって,それをぼーんと会社に入れて,その貸し借りの関係が実は帳簿に載らないこともないわけではないのですね,極端なことを言いますと。借りる方は載るのです。しかし,私が取締役として会社に貸す方は,ちょっと頭に覚えておいてもらって,会計担当者が,ああ,あのとき社長から5,000万円入れてもらったんだ,あれでちょっと落とせたんですわというような話がつながっていくと。これが実は危急存亡のときの中小企業の実態であるわけです。   今おっしゃったようないろいろなモデルケースにおいてああだこうだというのは,ちょっと実態とずれているところがあって,最後,取締役の中の親族が仲間割れをして,それでだれかが死んでしまって,いざ権利関係を整理しようというときに,あのときにみんな賛成したから云々と,まあこういう話になってくるということなんですね。ですから,そういうことまでこの世界で想定して裁けるようなシステムをビルドインするというのは,私の正直な印象で言うと,ちょっと難しいのではないだろうかと。ですから,そこは,一般原則を決めておいていただければ,それで十分にうまく運用ベースで具体的に回っていくのではないかという印象を持っております。単なる御参考でございますが。 ● そういうケースでほかの人間を保証人にしておくことにどれほどの意味があるかということですが。 ● この点,いろいろお考えがあるとは思うのですが,基本的に,取締役の責任をどう見ていくかということについては,ここ何年間かの商法改正の度に国会等でも取り上げられて,方向としては過失責任化するということが大きな流れになっている。確かに,通常の債権の場合と,取締役に貸し付けた場合とで違う考慮をするということも考えられなくはありませんけれども,大きな流れから言えば,関与した取締役の責任については過失責任を原則とするということの方向で考えていただきたいとは思っているわけです。 ● 私の提案は,過失責任を前提にして損害額を推定した方がいいという趣旨なのですけれども。先ほど,借りている方は契約責任を負うのだからそれでいいのではないかという御指摘があったのですけれども,○○委員がお書きになっている「株式会社・有限会社法」などを拝見しても分かりますように,現在の有力説,あるいはひょっとすると多数説なのかもしれませんが,代表訴訟で追及できる責任というものが,もしも商法上の責任あるいは有限会社法上の責任あるいは商法特例法上の責任に限定されるのだとすれば,契約上の責任というのは,これは多分,代表訴訟で追及できないのではないかという気もするわけです。そうすると,まあ,代表訴訟でどこまでの責任を追及できるのかということが一つの問題ではあるわけですけれども,もしも商法上の責任しか追及できないというのであれば,とりあえず,貸した側というか,貸すことに賛成した取締役に過失があるような--過失があるとされるかどうかは問題なのですけれども--場合には,とりあえず損害額を推定しておいて,そこで,先ほど○○関係官もおっしゃっていましたように,資力があるのだと,もう返す力があるのだという立証をしてくればそれはそれでいいのですけれども,そうではないときは,とりあえず損害額というふうに推定してはどうかと,こういう提案です。決して過失責任の建前を否定する気だという意見ではございません。 ● そうなりますと,これは全く新しい御提案ですよね。 ● その場合に,損害の発生を推定するというのは,基本的にそういった一定類型のものについては損害の認定について非常に困難が生ずるということを前提にするのだろうと思うのですが,他の債権と区別して,取締役に貸し付けた債権について特に損害が認定しにくいというような事情があるかということですが,それはにわかには考えにくいのではないかと。一般的に,特に債権の性質が異なるわけではありませんので,かつ,認定に必要な事柄について言えば,場合によれば取締役の方がより相手の財産状況が分かりやすいかもしれないぐらいでありまして,特に類型的にこの場合に推定規定を置かなければ損害の認定が困難だという事情はあるのかということが問題になってくるのではないかと思うのですが。 ● なかなかこれは議論が複雑になっておりまして……。   ○○幹事がおっしゃったのは恐らく,借りた当人に対しても代表訴訟をちゃんと起こせるようにしろ,その借りた金を返せと,そういうあれだと思うので,これは全く新しい,○○幹事とは全く別の提案なのですね。そうなると,これは今の時点でそう簡単にできるものではないというふうに思います。 ● ○○幹事のおっしゃっていることはよく分かるのでありますけれども,理論的に詰めて考えますと,今のは損害額の推定ではなくて,損害の推定なのではないかと思うのですね。損害額の推定といいますと,例えば競業行為を行ったような場合に,いわゆる得べかりし利益の損害の立証が難しいから,取締役の方が得た利益をもってそれを推定するというのは,正に今,○○委員がおっしゃられたような,損害額の立証の困難性に伴う制度的な仕掛けであって,損害自体はあるということが立証されていることが前提なのではないかと思うのですが,今の推定規定を設けてしまいますと,本来まだ単に遅延しているだけで弁済の可能性がある,損害が確定していないのに,損害があると推定するという規定なので,ちょっと制度として難しいのではないかなと。 ● ○○幹事がおっしゃったのは,それは検討すべき問題なのかもしれませんけれども,もうこの段階で,今回はちょっとこれは勘弁させていただきたいと思います。   ○○幹事の方は,前からある規定を残せということですから,これは……。 ● 私も,過失責任にすること自体は別に反対しないのですけれども,弁済期が過ぎたら直ちにほかの取締役にも責任追及していけるようにしろと。そこで無過失を証明できたらいいわけですけれども,そうすることによって,ほかの取締役が安易に貸付けをしない,あるいは弁済期を過ぎたら早期に弁済をさせるように促すように働くのではないかと。 ● 無過失立証は許すわけですか。 ● 論点がよく分からないので,またもやおかしなことを申し上げるかもしれないのですけれども,例えば,今,個人保証をできる限り縮小しようとか,そういう方向に向かっていますね。仮に中小企業が今の論点の一部に少なくとも入っているのだとすれば,日本の銀行の苛斂誅求といったら大したものなんですよ。しかも,住管機構はそれよりもっとひどいというのが斯界の常識でありまして,少しでもそうやって足掛かりがあったら何でもかんでも取り立てるという方向で来まして,闇金融もびっくりみたいなやり方をしているわけです。ですから,中小企業がそういうことで責任範囲を広げられると,大変立ち直りが困難になりまして,今いろいろ行われている法改正と逆行するのではないのかなという心配を持ちました。とんちんかんなことを言って申し訳ないのですけれども。 ● 今おっしゃったのは,会社が銀行から金を借りて,それを個人保証している場合ですけれども……。 ● でも,契約の範囲の拡大についてもそうです。 ● いや,今の話は,取締役が会社から金を借りた場合の話ですので。 ● でも,それを盾にとって銀行が押しつけていくわけですよ。銀行が直接貸している場合ではなくても,財産を保全して取り立てようという銀行の動きが幾らでもありますよね。そういうことです。 ● それは,債権者代位権というか,民法上はいろいろあるのですけれども……。 ● 今回の改正の一つの目玉としては,委員会等設置会社と監査役設置会社の規律を合わせるということがありまして,そういう観点から,委員会等設置会社に合わせてこちらも削除するというような流れで提案させていただいております。   先ほど,○○幹事の方は,委員会等設置会社は大会社だからそういう問題が少ないのだというような御発言もあったのですが,今回,大会社に限らず,小会社についても委員会等設置会社の形態をとるというふうに今まで議論していただいておりますので,そうすると,今度は,この金銭貸付けについては大会社においてのみ適用除外とする特例というような位置づけにするのかというと,何かそれもまたちょっと理屈としては言いにくいのかなというふうに思います。   そうすると,先ほどから議論がありますように,お金を貸し付けて,まだ焦げついていない段階で,本人に対して請求もしないうちから取締役に対して請求していくという規律が本当にどこまで合理的に維持--委員会等設置会社と違って監査役設置会社だからこそ維持されなければいけないのかという説明になると,なかなか難しいのではないかなというふうに思いますので,そこら辺を勘案して議論していただければ幸いです。 ● ○○幹事の言われたのは,貸倒れの推定なんですね,恐らく。無過失立証は許すというのですから。これは,例えば,弁済期が来たけれども,これを取締役会決議で弁済を猶予するという決議をしたらどうなるのかとか,考えてみるといろいろ難しい問題がありそうで,時間はたっぷりあるのですけれども,ちょっと今日じゅうに結論を出すのは難しそうなので,なお事務局に検討していただきます。それでよろしいですか。 ● はい。時間をおとりして恐縮です。 ● 間違えないように復唱いたしますと,弁済期に返済がなされなければ,貸倒れの推定をして,ほかの取締役に請求できるようにするという御提案だというふうに理解いたしました。   3につきましては,ほかにはよろしいでしょうか。   それでは,「4 内部統制システムの構築に関する決定・開示」,これは全く新しい問題なのですが,参考資料の15,16に関係する点です。 ● 参考資料について説明を補足させていただきます。   先ほど申しましたように,会社法制の現代化にかかわる当部会における審議状況につきましては,自由民主党の方でも非常に関心を寄せておられるところでございまして,政調の法務部会の下に商法に関する小委員会が設けられており,そこで各界からのヒアリングを含め,いろいろな意見交換・審議がされているところでございます。参考資料15,16はその議論の過程でのもの--参考資料16は正にその過程で提示された議論のたたき台としてのペーパーですし,参考資料15はそれらの議論を踏まえて同小委員会としての議論の中間的な取りまとめとして作成されたものでございます。   参考資料16は,エンロン事件,あるいは昨今の国内有名企業の不祥事を踏まえて,特に大企業のコーポレートガバナンスの在り方について,平成13年・14年の改正を経た現在においてもなお不十分な点があるのではないかという問題意識に基づき,このような改正を検討すべきではないかとして提言されたものでございまして,法制審議会におきましても同種の点について議論をすべきであるという指摘を受けているところでございます。   ただ,差し当たり,それらの項目の中で,これまでの部会の議論の中でも--完全には重なってはいないかもしれませんけれども--提言されたものとして,参考資料27の4の「内部統制システムの構築に関する決定・開示」にかかわる論点,これを今回の現代化の作業の中で実現したらどうかというのが,ここでお諮りする趣旨でございます。もとより,それ以外の項目について,これも実現すべきであるという声が多数であれば,さらに前向きに取り組みたいと思います。それらの事情を勘案していただいて御議論をちょうだいできればと思います。 ● 私は,この4の提案には賛成でございますが,ただ,お伺いしたいのは,現在,委員会等設置会社においては,「内部統制システム」という言葉は使わずに,「監査委員会の職務を補佐する」とか,「監査委員会の職務の遂行を補佐する」というような位置づけになっているのですが,委員会等設置会社以外の会社の場合に,この位置づけをどのような表現ぶりでお考えになっているのか,お教えいただければというふうに思います。 ● 法文上の表現ぶりということにつきましては,また法制的な観点から考えたいと思っているのですが,今,イメージとして考えていますのは,商法施行規則の193条で,「商法特例法第21条の7第1項第2号に規定する法務省令で定めるものは,次に掲げるものとする」として,5号で「損失の危険の管理に関する規程その他の体制に関する事項」,また6号で「執行役の職務の執行が法令及び定款に適合し,かつ,効率的に行われることを確保するための体制に関するその他の事項」というような表現でいわゆる内部統制システムを表現しております。そうすると,これは必ずしも監査委員会が監査を行うために必要な事項に限られるようなものではございませんので,例えばこれを法律のレベルに引き上げて,それについて取締役会の決議事項とするというような法制的なやり方というのはあるのかなと。ここら辺,イメージとしては今はそういうものを考えております。 ● 前に私どももこれは提案したことがあるのですけれども,言葉は多少違っているかもしれませんが,こういう方向で法案化されると大変すばらしいことだということで,是非お進めいただければと思います。 ● 言うまでもないことなのですが,いわゆる内部監査部門というものの位置づけが一番微妙かなというふうに思いまして,内部統制システムの中でも,内部監査というのは一つの位置づけはあるのではないかなと思うのですが,それをどう表現するのか。単なるリスク管理体制ということだけでいいのか,あるいは委員会等設置会社との間で表現を変えてしまうと宙に浮いてしまうような部分があるのではないかと,ちょっと懸念されます。今ここでお答えを求める趣旨ではありませんが,御検討の際にはいろいろ御検討いただければと思います。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 内部統制システムの開示ですけれども,有価証券報告書提出会社におきましては既に始まっているのですね。そういう状況下ではあるのですけれども,それに加えて商法上においても,そして公開会社には限らず大会社,これは譲渡制限がついていようとついてなかろうとという意味だと思いますけれども,そこまでこういうものを義務づけようとされるのか。今の有価証券報告書レベルでやっているのであればもうそれでいいのではないかという別な判断もあるのですけれども,いや,それでは足りないんだ,やはり商法上も必要なんだと,おまけに会社の範囲を広げなければいけないんだというあたりは強い政策ニーズがあるのでしょうか。 ● どの範囲の会社に義務づけるかということですね。 ● 商法上。 ● (注)において明らかなように,この案は大会社についてということですね。ほかの会社は,決めるのであれば,これは取締役会の専決事項と,その点に意味があるわけですけれども。 ● 今の有価証券報告書におきましては,当然,有価証券報告書の記載ですから,取締役会の決議で作っているわけですね。それだから,公開会社においてはこれと同等のことが既に取締役会において追認され,開示されていると。したがって,もうそれはそれでいいのではないかと。そうすると,公開会社以外についての規制を商法で図る,有価証券報告書,だれでも見れるものについて,更に商法でもやれというのは行き過ぎではないのか。公開会社以外の会社についての規制ということでやる,また,そこまでコストをかけてやる意味が本当にあるのかどうかなのですけれども。 ● 大会社におきましては,やはり内部統制システムを構築して,確立して,運用しているということは非常に大事なことだと思うのですね。もともと財務書類・計算書類を公表することの前提としては,内部統制がきっちりあるということで,その関係で監査もいろいろと容易にできるということになるわけですから,このシステムは是非必要だと思うのです。   今お話しのように,有価証券報告書できっちりと記載していれば,それはそれとして認められる方向だと思うのですけれども,有価証券報告書を必ずしもすべての会社が記載しているかどうかということについては,やはりこれは検討する必要があると思いますし,有報提出会社以外の会社においては,正しくこのことについて経営者が責任を持ってやっているという位置づけを商法上明確にしておく必要があると思いますので,それは今後の決め方によると思いますけれども,基本的には,大会社ではこういうことがしっかりと決められて運用されているのだということの表示というのはあってしかるべきではないかと思いますので,是非御検討いただきたいと思います。 ● ○○委員から非常に強いサポートがありますが,ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   基本的には,大会社においてはこの原案の(注)にあるような案,義務づけということに賛成ということでよろしいでしょうか。 ● これはやはり譲渡制限会社についてもということですね。100%子会社においてもその膨大なる体制を作っていけという……。それぞれの会社に応じた,なのかもしれませんけれども。 ● どの程度のものを作るかは,これは……。 ● それは裁判所の評価ですよね。 ● 裁判所といいますか,取締役会が一応考えるわけでありまして。 ● だけど,それが妥当なものかどうかは取締役の責任になるわけですから,最終的には裁判所が評価されるということですね。 ● そういう意味ではですね。 ● 私,本文,(注)ともに賛成なのですが,確かに大会社一律にということになりますと,大企業の子会社とか,あるいは持株会社の子会社とかはそれほど負担ではないのではないかと。現に委員会等設置会社などでは既にやっているわけですから。また,有報にも記載するということが始められておりますので。むしろ,そういう会社ではなくて,5億円以上の資本金で譲渡制限で独立系の会社,しかも同族会社,そういう会社ではかなり負担になるだろうなという感触はあると思います。ただ,その辺の線引きというのはなかなか難しいですから,また,いろいろと段階あるいは程度の問題も出てくるかと思いますので,この本文,(注)に賛成でございます。   (注)の中で,特例法21条の7第1項第2号に規定する法務省令,これが内部統制システムの内容ということで引用されておりますけれども,特例法21条の7の1項3号,ここでは執行役が数人いる場合における内部牽制とかそういった事項,これは法務省令には入っておりませんけれども,監査役設置会社についても内部統制システム構築ということを考えるとすれば,取締役の業務分担とか,あるいは使用人の職務の分担といったものについての権限規定とか,そういうことも内部統制システムに入ってくるかと思いますので,21条の7第1項第2号だけではなくて,3号もやはり内部統制システムという範ちゅうに入ってくると思います。ですから,その点を,条文化するに当たって若干工夫する必要があるかなという感じがいたします。 ● 単なる当たり前の質問なのですけれども,4の(注)のところの「大会社」という切り方は,公開か非公開か,ほかの要因は関係なく,社会に対する影響が大きいか小さいかを会社の規模で切ったということでもちろん理解をして,それは正しいと思うのですが,まあ,そういう案が出てきたと。それであれば私どもはコメントがないということでございます。 ● 私は,大会社については,委員会等設置会社であるか監査役設置会社であるかを問わずに,やはりこういった内部統制システムの開示の制度はあった方がいいと。   先ほど○○委員がおっしゃいましたように,確かに有価証券報告書による開示はございますが,それはあくまで証取法上のもので,営業報告書に記載されることによって株主に直接それが送られることになりますし,株主総会においてそれが株主の質問等の対象にもなるわけでありまして,その方が物事の性格上--これは会社の一番の基本でありますから,最近の某大会社の株主総会を見ても分かりますように,むしろ株主にとっては一番質問したいことであり,知りたいことでありますから--それを営業報告書の中に書いてもらい,かつ株主総会での質問権の対象にするということは適切なことではないかと思います。 ● それでは,基本的には,皆さんの御意見は,これには賛成であるというふうに理解してよろしいでしょうか。 ● 趣旨は賛成なのですけれども,あとは実務なのですけれども,ここで言われている内部統制システムの基本方針の開示書類ですけれども,事務局においては,営業報告書で20ページぐらいの記載を考えているのか,5行ぐらいの記載を考えているのか,どういう……。今の有価証券報告書ベースでということになると,恐らく営業報告書ベースにすると五,六ページの記載がずっと続いていくような気もするのですが,絵をどんどん入れたりして。どれぐらいのイメージの記載を……。これは毎年記載ですよね。会社の概況の中で毎年記載していくということですけれども,印刷費の問題も非常にあるものですから,連結財務諸表は付くはこれは付くはということになると,恐らく今までの営業報告書の倍になるだろうと思うのですね。そうすると総会コストが何千万もふえていくということになるわけですけれども,どの程度のイメージのものを今想定されているのかということをお教えいただければと思いますけれども。まあ,内容によるので,いろいろなのでしょうけれども。 ● 何を書くかは,これは法務省が関与しているのですか。してないですよね。経団連で決めておられるのではないですか。営業報告書のモデルは経団連で決めておられるのではなかったですか。 ● モデルは……,そうですね,決めております。 ● それでは,4については,先ほど○○委員からちょっと御指摘がありましたが,基本的には御了解いただいたということで取り扱わせていただきます。   それでは,次に「5 補欠監査役」,これもいろいろ議論があったところですけれども,一応こういう形ではどうかと。10年という最長もありますので,10年間補欠でというのもちょっと問題があろうということなのですが,いかがでしょうか。よろしいですか。--それでは,これも御了解いただいたものとして取り扱わせていただきます。   それでは,「6 重要財産委員会制度」でありますけれども,いかがでしょうか。これも御了解いただけますか。 ● 提案をくみ入れていただいて,非常に有り難いです。 ● 他の委員・幹事の方もよろしいでしょうか。--それでは,これも御了解いただいたものとして取り扱わせていただきます。   さて,次が大変大きな問題でありますが,どうしますかね。食事の時間をとるか,それとも続けるかということですが。 ● もうb案にしていただいて。 ● いや,それはやってみないと分からないのですが。 ● 続行いたしましょう。 ● 基本的には続行するということでよろしいですか。   それでは,7に入りたいと思いますが,①については,大体これで御了解いただいたように思うのですが,問題は②でありまして,前回の案は--ちょっと文言は違ったかもしれませんが--このb案だったのですが,今回,a案も付け加わって出てきているわけであります。しかし,先ほどの事務局からの説明にありましたように,基本的には会社の損害・費用と利益とを比較するということはa案でも考えるのだという説明だったかと思いますけれども,文言上はそれがa案では省かれているということであります。   いかがでしょうか。どの点についてでも結構ですが。 ● ○○委員がb案がいいとおっしゃる理由をお聞きしたいのですが。 ● a案の場合というのは,これは裁判規範として,これは○○委員にお聞きしなければいけないのですけれども,本当に機能するのかどうかということと,やはり私どもの主張は会社にとって利益があるかどうかということ,これは比較衡量でしか出てこない話だろうと思うものですから,筋論からして,また今後の裁判実務からして,b案でしかないのだろうと,こう思っているわけであります。 ● ○○委員,お願いできますか。 ● 一番難しいのは,「会社の利益」という概念に何を入れるかという点です。   多分,株主代表訴訟では取締役に対して損害賠償を請求しますから,損害を補てんされればそれで経済的損失は埋まるということで,そこだけが利益だというのであれば,利益と損失を比べてみれば判断できるのかなと思うのですが,ただ,いわゆるコンプライアンスといいますか,会社としてきちんとした法令遵守をしているかどうかということを明らかにするために株主代表訴訟を起こしているという例がかなりあるものですから,それはもう切り捨てて利益と見ないのだということであれば,それは一つの基準にはなると思うのです。そこの点が多分,単に「正当な利益」という書き方だけからしますと,裁判官の中でも価値観で分かれかねないところではないかなという気もするものですから。   先ほど言いましたように,損害賠償訴訟を起こして損害をてん補させる,そういうことで利益が入ってくる,その入ってくる利益がすごく少なくて,逆に会社の方が持ち出す利益の方が非常に大きいという,そこだけで決めるというのであれば,それは一つの基準かなと。ただ,その場合でも,訴訟の費用,会社にかかった費用というのはどういう概念で認定するのかという問題はまた出てくるだろうと思うのですが。   コンプライアンスといいますか,法令遵守といいますか,そのあたりを会社の利益との関係でどう位置づけるかというあたりの議論をいただいておかないと,多分,裁判官として判断するときに基準がちょっとはっきりしないなという感じを持ちますが。 ● 正にそこが問題になろうと思います。前回の議論でも,「会社が受けることができる利益」と言われている部分,これが単純な,今,○○委員が言われたような金銭的なものだという理解と,いや,取締役に法令遵守等のことをさせるということ自体が長期的に見れば会社の利益なのだという御意見と両方あったように記憶します。そこのところがむしろ前回非常に議論になったところの一つかと思います。 ● これは,原告適格条件というのを決めているわけですよね。それを判断するのは裁判所でございますか。 ● そうですね。 ● 私,これまでの御議論を大ざっぱに「商事法務」やなんかでフォローさせていただいたのですけれども,ちょっと違和感を感じましたのは,アメリカの場合,会社というのは株主の代表なんですよね。だけど,日本の場合,会社は株主の利益と対立するものというように位置づけられているような気がするのです。   どこが違うかというと,アメリカの場合は,株主代表訴訟が起こされました場合には,その訴訟を受け入れるかどうかということを会社が判断するのです。訴えられている役員というか取締役・監査役とかそういう人がいたとして,そういう人を除いて残りの役員で訴訟委員会みたいなものをこしらえて,そこで訴訟を受け入れるか受け入れないかを決めるということは,つまり会社というのは株主の固まりでありまして,個人対会社ではなくて,一人の株主が起こした代表訴訟が--一人ないし複数でもよろしいのですけれども--全体的な株主の利益に当たるかどうかということを会社が判断するのですね。   ところが,日本の場合は,当該事件が起きたときの株主でなくてもいいではないか,後から知るというケースもあるではないかとか,そういう御議論をなさっているのですけれども,代表訴訟であるということが議論の中でちょっと忘れられているのではないのかなと思うのですね。その個人の株主にとっての利益ではないですよ。その個人が起こした訴訟によって得られた利益は会社に戻るんですよね。   だから,会社が実際的に自己の利益となるかどうかということを判断するという極めて合理的なシステムにアメリカではなっていると思うのですけれども,日本の場合はどうもそうではない,会社は天下の悪者だという前提なのですけれども,会社と株主がガバナンスの上で全く一体かどうかということには異論がありまして,私は,従業員の方がステークホルダーとして強固だとは思っておりますけれども,それでも,従業員の利益も含めまして,会社が判断する。会社というのは株主の集合体であるという考え方もあるわけでございまして,それから見ると,この原告適格とか,いったんは司法に委ねるというようなことは迂遠なような気がする。現に,今までこれが総会屋の手段となってきたということは事実なわけですね。訴訟費用だってものすごく下がってしまって,それでいつでもいいと分かったら,事件を知ってから訴訟を起こすということが可能だったわけで,現にそういう訴訟の方がずっと多かったわけです。ですから,そちらのマイナスもお考えいただいて……。 ● 訴訟委員会のことをおっしゃっているのでしたら,それはもう議論いたしまして……。 ● 訴訟委員会の話は却下されたというのは承知しておりますけれども,だから参加できなかったのはとても残念なのですけれども,せめて,ここのところでそういう趣旨を踏まえて,できる限り,今,私が申し上げたようなことがあらわれるような条文にしていただければなということでございます。 ● いかがでしょうか。   先ほどの「利益」の点が一番重要で,b案,まあa案も潜在的にはそうなのですけれども,裁判所としてはそこのところをはっきりしてもらわないと,どういう判断をしてよいか分からないと。それは裁判官によってとり方が違ってもいいのだという考えもあるかもしれませんが。条文はこう書いて,それを,ある裁判官は長期的な利益も考える,ある裁判官は単純に金銭で考えるということでもいいのだということでありますと,こことしては,それは解釈が分かれても仕方がないということで突き放すということも考えられないではないのですが。 ● 裁判所の立場,あるいは会社の立場,いろいろだと思うのですが,この②の部分というのは,結局,訴訟要件ですから,相当将来を見越した認定をした上で,これが実体審理の先決問題になるわけですよね。先決問題ということになりますと--まあ,手続的には,あるいは終局判決で認定するということもあるのかもしれませんが,早期終結ということをねらう以上はこれは先決問題だということになると思います。その場合に,裁判所として認定事項が多い方がいいのか少ない方がいいのか,あるいは判断の幅が狭められている方がいいのか広い方がいいのか,これは裁判官によってもいろいろとお考えが違うかと思うのですが,やはり,b案ですと,正当な利益あるいは費用と,後半の損害・費用あるいは利益というのが厳密に比較の対象になっておりますので,○○委員がおっしゃるように,それを比較して会社の利益を害するという認定をしてもらうための制度だということは確かにあると思うのですが,裁判所の立場から見ると,b案の後半の「会社が受けることができる利益」というのが,取締役に執行してみないとどれだけ取れるか分からない,かなり財産関係とかそういうものを調べて認定しなくてはいけないということになってまいりますと,その先決問題の審理あるいは証拠が相当膨大なものになるということが考えられると思うのですね。   ですから,そういう意味では,a案の程度の認定事項ということで法定しておいて,実際には双方弁護士がいろいろ主張あるいは立証して,それでb案と似たような比較をした上で認定するということになるのが実務ではないかなというふうに私は推測するのですけれども。そういう意味では,a案の方が,裁判所あるいは訴訟実務としては先決問題を比較的早期に結論を出すことができるというような感じを持つわけです。 ● a案かb案かというと,a案の方がより簡素で,b案の方が二つの比較をして具体性がより多い。そのことがどちらなのかと。先ほど○○委員がおっしゃったように,そのあたりをもっときちんと細かく,「正当な利益」とは何だということで裁判官が迷うだろうと。じゃあそのあたりを法で書けるかというと,多分これ以上のことは書けないと思います。   それから言うと,aのようにただふわっと書くよりも,やはり利益衡量をするのだということをもう少し明確化したのがb案だと。それから言うと,b案の方が裁判としてはやりやすいのではないかと。そのために認定が複雑になるというより,より実際的になるのではないかと思いますので,これよりも詳しくということも難しいし,この程度には書き込んでおいた方がいいのではないかという意味で,b案の方がいいのではないかと思っております。 ● ○○委員を差し置いて話をするのもと思ってずっと黙っていたのですが,私も代表訴訟は裁判官時代に山のようにやりましたけれども,このb案のような考え方は前回もあって,これについては,なかなか難しいのではないかという意見があって,a案という別の考え方,少し角度の違う考え方が出てきたのだと思いますが,これは別に事前に事務局と何かどうこう言ったわけじゃないのですけれども,b案は,もとの額を比較する案と非常に発想が似ていて,正に今言われた利益衡量をするという話です。   ただ,ここで,入口段階の訴訟要件として,不当な訴訟を入口段階ではねてしまおうと,そういうニーズがあるということについては大方異論がないということで,既に一つの類型は異論がなくて,二つ目でこういうものはどうかという話になっていると,そこまでは十分理解しているのですけれども,利益衡量を訴訟の入口の段階でしろと言われると,例えば,典型例だと言われている,代表訴訟に勝とうと思うと営業秘密を漏らさざるを得ない,それでそのことは立証できた,それで,営業秘密が漏れたらどれだけの損害をこうむるかという予測,これも主張立証していただかなければいけない,これは10億円です,100億円ですということを立証していただく,これは容易なことではありません。実際には,営業秘密の内容は明らかにできないと言っていながら,これが出たらこれだけの損害を受けるという立証をしろと言われても,企業の方は進退極まるところがあります。   それから,反対利益の方の,訴訟によって会社が受けることができる利益,これは最大はもちろん原告主張額だと思いますが,また御案内のとおり,100億とか1,000億とかいう突拍子もない請求をする者も代表訴訟の場合にはいます。そういう場合には,仮に認められても,現に何百億というケースもあるわけですから,何百億かもしれないし,執行可能性を考えると,1億,あるいは500万かもしれない,しかもそれは勝訴の可能性というのを掛け算しなければいけません。入口段階で裁判所に,この1,000億の訴訟の勝訴確率がどれぐらいなのかと。しかも,それで半分だと,じゃあ500億かというと,執行可能性を考えると5,000万だというような判断をした上で,じゃあ,この内容ははっきり言えないけれども,営業秘密を出さざるを得ない。このことによって会社が失う正当な利益の侵害というのは幾らなのかも同じように主張立証してくださいと。おおよそでいいとしても,利益衡量しましょうと。これを入口の段階で延々と審理してやるのだろうかというような気がしてならないのですね。   そうすると,ここの争点について双方で物すごいエネルギーや時間をかけるということになってしまって,しかも裁判所の方も隔靴掻痒で,勝つか負けるか,あるいはどれぐらいの営業損害が出るかということについて延々と悩んだ上で,結局,やりましょうとなったらまたやるという話ですよね。   ですから,これは極端なケースを排除するというシンプルな--私も実務をやっていて,しばしば濫用的な,こんなのはひどいのではないかというものをいろいろなパターンでよく知っています。   その一つの類型が,この最初に出ている①の類型ですが,それ以外のものもあるのではないかと言われると,それはそういう気がするのですが,訴訟要件ですから,極端におかしなもの,だれが見てもこれは請求額との関係で会社の方が物すごく大きなダメージを受けて株主全体の利益を損なうのではないかというような極端なケースを排斥すればいいのだというふうに考えれば,a案の方がb案よりもずっとそういう発想に近いですし,主張立証の負担ということを考えても,比較させられると一番つらいのは,始まった段階で,勝つか負けるか,何%の確率で勝って,執行可能性はどうなのかと言われるのは裁判所は非常につらいので,そうではなくて,全くそのとおり,10億円なら10億円取れるとしても,これだけ正当な利益を害されてしまうんですよ,明らかにバランスを失しているでしょうと,だからこそ,「著しく害される」あるいは「過大な費用」でしょうと,こういう認定ならまだしもできるのではないかという気がして,私自身は,昔の感覚ですが,a案であれば何とか……。b案だと,当事者も裁判所も進退極まる事態になりかねないのではないかという感じがします。 ● ○○委員はa案ならと言ったのですが,率直なところを言うと,私は,このa案でも果たして判断できるかと,非常に悩んでいるわけなのです。   ①であれば,これは明らかに不当な訴訟だと。   a案の一番難しいところは,先ほどから再三言っているのですが,「会社の正当な利益が著しく害される」,この「正当な利益」の例示がなかなか出てこない。例としては,先ほど言った企業秘密というのが一つあるのかもしれませんけれども。   ただ,逆に,別の面なのですが,前回ちょっと例として挙げました,取締役は既に刑務所に入っていて,刑事判決も受けている,そういう意味で違法行為をしていることは明らかである,だから損害賠償請求訴訟を起こして,その中で会社の問題点も明らかにするのだという株主からの申立てがあったというときに, どうせ取っても一銭も取れないだろうから,会社の立場からすれば,そんな経済的に合わないことはやらないんだということで,そこを割り切って,それはもう株主代表訴訟はだめなんだと,そういう解釈だというふうにしていただけるのであれば,多分,裁判所は比較的そこの判断はできると思うのです。ただ,現実には,訴訟に出てくる事件というのは,どうせ取れなくても判決をくださいというのが幾らでもあって,社会的な問題をきちんと明らかにするために裁判をやっているものですから,その考え方一本に割り切れれば非常に分かりやすいのですけれども,そうでないとなかなか,そういった訴訟を全部排斥するかのようにa案で解釈しろと言われると,ちょっと難しいかなという気もいたします。   あとは,先ほど言ったように,費用と会社の利益というところもなかなか……。弁護士費用だけ取っても,もう弁護士費用も基準もなくなっているような状況で,一体幾らかかるのか。多分,この先生は大先生だから物すごく高いですよと被告の方は言うと思うんですね。そうすると,原告の方は,いや,この先生には特別安くやってもらいましたと。じゃあ裁判所でその費用を認定しろと言われて,どのぐらいの費用なんだろうかと,超一流弁護士だったらどうかというような判断もしなければいけないとか。   それから,先ほど言いましたように,これは○○委員からも言っていただきましたが,執行のことまで考えろということになると本当に難しいし,今は刑務所に入っているかもしれないけれども,スイス銀行にはお金があるかもしれないと。それとか,出てきたら収入があるかもしれないから,債務名義をとって10年間待って執行するのだというようなことを言われたときに,裁判所はそれを排斥できるのか。   確かにだれが考えてもおかしいというようなのがあればいいのですが,訴訟の場に出てくると皆さんいいことを言いますので,原告の立場,被告の立場でそれぞれの御主張が出てくるので,率直に言うと,a案でもなかなか難しいかなという……。そのぐらいの能力しかないのかと言われると,ちょっとつらいのですけれども,今の時点ではそういう感想を持っています。   だから,そういう意味で,今言いました「正統な利益」とかいうあたりにもう少しメルクマールを決めていっていただいて,もう少し割り切ったものが出てくるのであれば,また考える材料にはなるかとは思うのですけれども。 ● その点ですが,前に単元株制度を取り入れましたときに,一株株主運動というものについては,株主総会で社会運動をすべきではないというような考え方もあったと思うのですね。株主権というのは,たくさんの株を持っていればそれだけ大きいということでありまして,一人一票の民主主義とは若干異なるのですね。だから,株主でありさえすれば何でもできるという世界とは違いまして,今の○○委員のお話を聞くにつれ,何で訴訟委員会制度が却下されてしまったのか,私は本当に分からないのです。そんなに何もかも司法に委ねて,司法は今だってもう満杯状態ではありませんか。こういう必ずしも専門の方がどれぐらいおいでになるかどうか分からない,金融・証券に関してはほとんど素人ではないかと,判決を見る度に思うのですけれども,そういうことを考えましても--私,現場のことはよく分かりませんけれども,ただ,今,○○委員も○○委員も,会社の現場においでの方がb案の方がいいとおっしゃっているなら,多分b案だろうなというふうにしか思えないのです。 ● 訴訟委員会がここでだめだということになったのは,訴訟委員会をあれしますと,結局,その訴訟委員会の独立性というものが争われることになります。経営者から独立の判断をしたのかどうかということですね。 ● 独立である必要はないですよ。株主の代表ですから。 ● いえ,それはありません。アメリカだって,そこは十分,訴訟委員会が経営者から独立の判断をしたのかどうかは争われるわけです。アメリカの代表訴訟というのは,専らそれを争うような構造になっております。 ● だから,先ほどから当該役員を除いてというような,そういう意味での独立性ですね。 ● いえいえ,それだけではいけないので。要するに,アメリカの代表訴訟というのは,専ら独立性を争って,それでもう終わりだというような訴訟なのです。ところが日本の代表訴訟はそういうものではありませんので,そういう前段階で独立性を争うような手続を設けることは余計審理を長引かせ,ここで問題にしているものとは,日本の訴訟構造を前提にすると,目的に合わないということで,そこで現在のような,もう少し違った観点で簡単に訴訟を終了させる要件を検討しているという,これが現状であります。   恐らく,○○委員,○○委員がおっしゃっているのは,非常に単純な,前回も出ましたけれども,金額の衡量でそこでぱっと終わるということを前提にしておられる意見だと思うのですけれども,○○委員が先ほど言われたのは,本当にこれはそういうことなのか,それでやっていいのかということを言われたのだと思うのですが,どうも前回は,必ずしもそれはそうではないのだという御意見もあったということだと思います。 ● 今までの議論をお聞きしていると,一つは,コンプライアンスの利益などを入れるのか入れないのかという,比べる対象の問題,もう一つは,将来の損害とか利益というのは予測ができない,もしくは認定するには多大の時間がかかるというような点の御指摘があったと思うのです。   問題は,後者の点について,前回の議論でも出ておりましたので,今までは,「超えるおそれがある場合」と,「おそれ」という言葉と使っていたのですけれども,今回の案は,どちらの案にしても,「相当の確実性をもって予測される場合」という要件に変えているところです。ですから,入口の段階で立証が不十分でどうなるか分からない,一体幾ら取れるかも分からないし,というような場合だったら,多分,この要件があることは相当の確実性をもって予測されないわけですから,そこで訴えを却下するというようなことにはならないのではないかと思うのですが,この「相当の確実性をもって予測される場合」という要件を加えることによっては,そういった入口だから分からないという不安は解消されないということなのでしょうか。そこら辺を○○委員にお聞きしたいのですけれども。 ● 多分,入口だからといっても,やはり裁判所で認定するとすれば,どういう事実を認定していって,これがあるから相当な確実性をもって予測できるのだと,そのための基礎事実はある程度認定しないと,判決の場合は無理だろうと思うのですね。そのときに,直感的には何となく分かるような気がしますけれども,やはりある程度の証拠が出てこないといけない。そういう意味での事実認定の問題だろうと思います。だから,何がそのメルクマールになるかというときに,先ほど言ったように,将来どれぐらい取れるのかというところまでやはり事実には入ってくると思うのですね。   それから,実際にはどれぐらい取れるのかというのと同時に,どれぐらい費用がかかるのか,これもやはりある程度事実として認定しなければいけないものですから,それが非常につらい作業になるだろうという気がするのです。 ● 今言われた点と若干関係して,結論としては私は○○委員の言われたことに賛成で,a案の方がよかろうと思っているのですけれども,将来のことが予測しにくいという話と,どんな利益かということがはっきりしないという二つ違う話があるのですが,将来の予測できない云々は,これはどんなやり方をしても仕方ないものですから,それはある程度置いておかざるを得ないと思います。   前回との違いは,前回のb案のは「額」という言葉が入っていたために,訴訟そのものから出てくる回収額の期待値と,訴訟に関して支出するものの期待値の比較だけだったかのような感じのものが,それがなくなったという意味では,どちらでも○○委員はいいと言われるのか,困ると言われるのか分からないのですけれども,狭い意味での金額の期待値ではないという発想はどちらの案でもそうなったと思うのですね。   ただし,○○委員が非常に気にされている,コンプライアンスが高まって長期的に見ると株主の利益に云々というようなものを認定しなければいけないのはb案だけだと思います。なぜかというと,b案ですと「会社が受けることができる利益」というのが入っていますから,この点を考えなければいけない,比較しなければいけない。どこまでまじめにするかはともかく,比較しなければいけない。a案ですと,害される方が正当な利益なものですから,基本的には,訴訟によって営業秘密云々,せいぜいそういうふうな話だけを,莫大かどうかを認定し,それが相当確実かどうかを認定すればよくて,一番厄介なものはa案では排除される可能性が高いものですから,恐らく狭い意味の金額の話だけではないという発想になるのだと思うのですけれども,a案の方がまだしも無難なのかなという感触,これは実務を知りませんから誤解かもしれませんけれども,そういう意味で,少しでも認定しなければいけない情報が少なくなって,非常にネックになりそうなものがないa案の方がいいという,○○委員のような意見の方がいいのかなというふうな印象を持っております。 ● ただ,あえて今ちょっと文面を読みながら考えていたのですが,やはり,「著しく過大な費用」というのは,その「過大な費用」という認定のことも入ってくるとb案と同じことになるのかなという感じがいたします。例えば,1,000億取れるなら,それは500億かけたってやれということになるのだろうと思うのですね。ですから,そういう意味で,多分,a案でもb案でも根本的には同じだろうと思います。b案のような書き方をしたから裁判所が判断しやすくなるかというと,実際には同じような難しさがどちらの案でもあるかというのが率直な印象でございます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   ○○委員はいかがですか。 ● 私自身の感想は○○委員に近くて,a案もb案も実質はそんなに変わらないと。b案の方がa案よりは詳しく書いてあるというぐらいで,実質的に考えなければいけないことは,多分,裁判所としては同じなのだろうとは思います。あとは,もう裁判所がどちらが使いやすいか。   私は,実質は先ほど○○委員がおっしゃったとおり,一見してこれは幾ら何でも会社にとって無駄だろうという訴訟はやはり中にはあり得ると思いますので,そういうものは裁判所がこの権限を行使して妨訴の抗弁を成り立たせて,訴えを却下するということを可能にする道も作っておくべきであって,あとは,そういう極端なケースを排除するのに裁判所としてどちらの要件を書いておいた方が使いやすいかということで決めるしかない。私はa案もb案もほとんど実質変わらないと思うのですけれども,ですから,誠に自主性がないのですけれども,皆さんがなるべく受け入れられやすい文言があればそれでいい,a案でもb案でもいいという感じがしています。 ● 現に裁判をしている○○委員に,裁判するときにどちらがやりやすいかと私が言うのもあれですけれども,感じとしては,本質的にどちらも大変だなと。a案でいこうとb案でいこうと,裁判所の苦労はそう大きくは変わらないのではないかというのは○○委員のおっしゃるとおりではないかと思うのです。   ただ,例えば,b案ですと,「会社の正当な利益」が害された場合に,更に,その損害が「会社が受けることができる利益を超える」という認定をしなければいけない。「正当な利益」が害された場合に,中にはもう定性的に,こういう利益が害されたらそれはこんな訴訟は認められないというようなものがあるのではないかと思うのですが,b案でいくと,そういう場合でも必ず定量的な比較をしろということを迫られるという感じはするのです。ですから,細かく書いてあるようだけれども,「正当な利益」の中身によってはかえって使いにくくなる場合があるのではないかということを,まず印象としては受けるのです。そういう意味で言うと,「著しく過大な費用」で言えば,おおむねかかる費用と受ける利益の比較ということですから,基本的にb案で言っているようなことはa案で含まれていて,なおかつ,a案の方でいけば定性的な判断で可能な場合に,b案だと定量的な判断まで無理やりしなければいけないのではないかということまで考えると,裁判をする場合にどちらが使いやすいかといえば,a案の方が使いやすいのではないかという印象は持っているのです。 ● 将来の利益の点は,a案とb案とで果たしてどれぐらい違いがあるのかというのは私も自信を持って判断ができるわけではないのですけれども,「会社が受けることができる利益」はコンプライアンスも含むということは,○○委員や○○幹事は当然のこととしておられたように思うのですが,その点はそれでよろしいのでしょうか。 ● そこが一つ,大体皆さんのコンセンサスがあれば……。   ただ,問題なのは,コンプライアンスの利益というのが定量的に評価できないものですから……。   ただ,だれが見ても,というような基準をある程度つけていただければ,多分……。裁判官の価値観によって判断が割れるのは,先ほど○○委員が言われましたけれども,最高裁が統一すればいいと言っても,余り裁判官ごとに価値観が割れるような判断にならないような基準にしていただければとは思います。だれが見ても,というあたりがあるというのであれば,非常に分からない基準ではないのですけれども,なかなか言葉にしにくい基準なものですから。そこは○○委員のお話もあったので,よく分かりましたけれども。 ● そういう意味では,a案が「著しく害される」とか「著しく過大」と言っているのは,そういう代表訴訟の持っている役割も考えて,なおかつ却下するという,そういう場合であるから,「著しく害される」というようなことが要るのだという,ある意味で言えば,だれが見てもという,そういう場合を念頭に置いているのだろうと思うのですけれども。 ● いかがでしょうか。相対的にどちらがいいかということについてはかなり意見が割れているのですが,どうしますかね。   事務局は,まだなおもうちょっと文言を工夫する余地はありますか。 ● 今の御議論をお聞きしていますと,実は実質的な対立点というのはもう余りなくなってきているのかなというふうに思います。   また,a案,b案と一応文言を変えて示してはおりますが,これはまた法制的な観点から--このまま通るとも思えないと言っては何ですけれども--また各種の例を見ながら変えざるを得ないので,要綱にする際にはもう少し文言を練って,今行われた議論が反映されるような形で一つの案を掲げさせてもらって,事前に,今回議論していただいた委員の先生を含めて,ちょっと調整をさせていただいたらいかがかなと思いますが,いかがでしょうか。 ● それでは,実質についてはだんだん詰まってきたと思いますので,今回の実質に関する議論を踏まえて,事務局になお文言は工夫していただいて,要綱を作ってもらうということでいかがかと思いますが。 ● 実質についての議論ではなく,むしろ形式の話になるのかもしれませんが,現行法上,293条ノ7というところにいわゆる帳簿閲覧請求権の拒絶事由が列挙されている中に,「株主共同ノ利益ヲ害スル」という概念がありまして,その概念と,ここで言う「会社の正当な利益」を害するということがどういう関係のものなのかということがかねてから気になっていまして,いわゆる適格代表っぽい形で問題を考えていくと,株主全体にとっては,みんなが株主代表訴訟を起こすということをよしとしているような場面でありながら,なおそこで「会社の正当な利益」というものとバッティングするような場面があるのかどうかというのが,これは全然分かりません,文言を作ってこのとおりになるとは思えませんので,よく分かりませんが,問題を考える際に,ここに出てきている「株主共同ノ利益」という概念とむしろ別な概念を使うと,解釈がいろいろ--私たちの仕事が増えるのはいいのですけれども--ややその解釈に迷うところが出てまいりますので,そのあたりの文言の調整を是非よろしくお願いしたいと思います。 ● それでは,そういうことで,事務局にもう一度案を練ってもらうことにいたします。   それでは,先に進んでよろしいでしょうか。   「8 会計監査人の会社に対する責任の一部免除」であります。   これにつきましては,前回,○○委員の方から法定の額というものが出されたのですが,今回はこういう案になっております。 ● 先ほど,監査期間4週間のところでこれと関連して申し上げましたので,重複になりますので省略いたしますが,特にこの責任免除の方が,期間以上に,バーゲニングの意味の,あるいは影響の大きい話でありまして,先ほど申しましたような,利害が反するような立場にある人の契約を一般の契約と同じ扱いで,かつ社外取締役において前例があるということで必ずしも同じ条文の立て方でいいのかどうかというところに強い心配をいたします。   私としては,責任限定を認めるかどうかについてはニュートラルですが,仮に責任限定をするという判断をされる場合の条文構造といいますか,法的な構造としては,むしろ,ポリシーとして限定するのであれば,それらしく法定した方がいいと思いますし,仮に法定がどうしても困難である,法制上の理由で困難であるということであるとすると,極力取締役と監査人のバーゲニングにならないような形,例えばアウトライトに定款でかくかくしかじかと決めるとかいう方が,ここは個人的な感触ですけれども,まだ弊害が少ないのではないかと感じる次第であります。   いっそのこと,バーゲニングにするぐらいであれば責任限定なんかやめてしまえばいいのではないかと思いながらここに来たのですが,自民党の商法に関する小委員会の紙を見るにつけて,なかなかそういう選択肢がないのだとすれば--要するに,株主代表訴訟の対象とするということと責任限定制度を導入するということの二つがセットでの枠組みであるとすれば--むしろ,その限定の方法として,取締役と全く同じものをなぞるのではなく,少し違った観点で条文の組立てとかを工夫していただければと存じます。 ● 先ほどの御説明ですと,このままでいくと私どもの主張は取り入れられなくて,かえってキャップ制がなくなるという可能性もあるというお話を受けまして大分プレッシャーがかかったのですけれども,本当に法技術的に難しいのであれば,当然のことながら,今のこういう形で入れてもらうということも考えざるを得ないというふうに思います。   ただ,今,お話が○○幹事から出ましたけれども,やはり私は経営者とこのことで余り争いたくはないということで,私どもとしては,契約約款に入れるとか,今お話の定款に入れるとか,何らかの形で,なるべく標準的な形で限定できるということを考えておりますので,条文上も,何かいかにも契約で決めなければということの意味合いを強く出さない方法があれば,それも是非御検討いただきたいと申し上げたいと思います。 ● ○○幹事もおっしゃっていたように,バーゲニングというのはやはり余りよくない。ただし,確かに法定するのも我が国の法制では非常に例外的ということを考えてみると,バーゲニングを最小限にするためには,前回もちょっと申しましたけれども,とりあえず,例えば何年間という,2年間とか,それをデフォルトルールとして決めて,そのデフォルトルールの場合には何も約定しなくてもそうなると。それと違って,約定もとりあえずできるというようなタイプはどうかということを前回申したのですが,もう一つ気になるのは,もしこの約定する,普通にバーゲニングするという場合に,代表取締役とか代表執行役と交渉して会計監査人の責任の限定を決めるというのではなく,やはり,せめて監査役会あるいは監査委員会の関与や--できれば本当はそういうところが,こういう会計監査人と会社との監査契約については会社を代表した方がいいのではないかとも思うぐらいなので--そのあたり,単なる代表取締役とか代表執行役との間で契約を結ばない仕組みにした方がいいのではないかという気がいたすのですけれども。 ● ここに書いてある案のような,現在の社外取締役と同じ仕組みというのは,定款で最低額を決めて,その上,これは幾らでも余地がありますので,そこを契約で決めるという方式ですよね。定款で決めてそれきりというのは,そうすると何を決めるんですかね,定款で。どういう方式になりますかね,交渉の余地はないという定款の決め方というのは。 ● 組織的に検討したわけではなくて,全く個人的な思いつきであることをおわびいたしますけれども,法律で契約の損害賠償責任の上限を定める前例がないというのは,私も確かにそのとおりだと思います。ただ,じゃあそれは許されないことなのかということを法制局との間で一度議論したことはあるのですが,許されないことであると整理されたこともないというふうにそのときはなったと思いまして,チャレンジする価値はあるのではないかと個人的には思っていることをとりあえず付言させていただいて,その本論なのですが,要するに,アウトライトで何年と書くと,会社の機関なりバイローでこういう契約しか結べないという制約--債権者である会社側が,一種の委任権限なのか代理権限なのか--制約になって,そういう契約しか結べなくなるわけではないでしょうか。要するに,契約上請求できる権利を債権者が放棄するのだから責任限定ができるというのが今の前例的な法制局の発想だとすれば,そして,その債権者が許して,お金をこれ以上取らないと言っているからそういう限定が許されるのだというロジックに乗るのだとすれば,それを使って一種のアウトライトなルールを作るということはあり得るかなという思いつきであります。 ● ほかの委員・幹事の方はいかがでしょうか。 ● 法定が非常に難しいのではないかということに関して事務局で検討した経緯をお話しいたしますと,結局,今回の法定で損害賠償額を制限するということになると,会社が取ろうと思っても絶対取れないという状態に陥らせることになるわけですね。   例えば船主責任制限法ですとか油濁とか,あと条約ですが,昔のワルソー条約,航空機のようなものであれば,例としてないわけではありませんけれども,それは,一つの事故によって多大な損害が生ずるということが一つの根拠になっているのではないかとも思いますが。そして,いずれも条約に基づいて行われていると。また,その超える損害が生じた場合には一体どうするんだと。私も昔,飛行機事故で荷物をむちゃくちゃにされて,たったこれっぽちかと怒った経験もあるのですが,そこの部分は保険によってカバーされるというようなトータルな制度として多分位置づけられているのだろうと思うのです。   ところが,会計監査人の責任が法定で2年分にされたから,残りの損害はどこか保険で入るのですかと,そこら辺は全然ないわけでございまして,また,実際に今までの例と今回の会計監査人の責任を一緒に考えるというのは非常に難しいのではないかということで,まず問題があると。   また,バーゲニングのおそれということはもちろんあるわけですけれども,最も重要な報酬の部分というのはまだバーゲニングの余地が残っていまして,もう報酬の部分も法定だと,すべてとにかく法定で,何でも法定だというなら分かるのですが,やはり,一定のバーゲニングというか契約というものを維持したまま,ここのところだけ法定するというのはどういうことなのか。例えば,契約上不対等であるという前提で,消費者保護法制のように,一方に絶大な権力があり,一方はバーゲニングの能力がないということであればいいのですが,先ほど○○委員がおっしゃいましたけれども,公認会計士は交渉能力がないのだということを前提にしたような法制というのもまたなかなかに難しいのではないかと。そうすると,ここのところについてのみ法定にするということの正当化根拠が一体どこにあるのかというところを突き詰めていくと,やはり法定という選択肢はちょっと難しいのではないかと考えるに至った次第です。   そうすると,今度は逆に,法定しなければもう無制限にとにかくキャップはしないという判断をするのか,どこか現行制度で似ているものを引き合いに出してそれと同じものにするのかという選択になると,キャップをしないというのもちょっと酷ではないかという発想から,ある意味では一番有利な制度と言っては何ですけれども,社外取締役と並びにするという発想が一番穏当な案ではないかと思って今回提案させていただいている次第です。   まあ,○○幹事のおっしゃったようにチャレンジする価値があるのではないかというふうに言われると我々も非常につらいところがあるのですけれども,チャレンジして難破した場合にどうにもならなくなるよりは,現在の制度に合った方がいいのかなというふうに思っております。 ● そういう意味では御苦労はよく分かります。   もともと代表訴訟に私どもはなじまないという意見を当初申していたわけで,それが代表訴訟の対象になるよというお話になったわけですから,それだったら,受け入れるのだったら,片方でキャップということを申し上げておりましたので,実質的にキャップが考えられるという形で法文化されれば,これは次善の策としてやむを得ないと思いますので,是非その趣旨を酌み取ってよろしくお願いしたいと思います。 ● 実は,私も法定の方がいいと当初は思っていたのですけれども,先ほど事務局から説明がありましたように,実際上はなかなか難しいようでありまして,少なくとも見込みが立たないということでありますので,○○委員が言われましたように,これで御了解いただければ,まあ一つの解決かなと思っておりますけれども,いかがでしょうか。   ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● キャップ制に反対という意見だけを述べさせておいていただきたいと思います。   会計士の責任は非常に重大なんですね。会計によって,つぶれなくていい企業がどんどんつぶされているわけです。そういう社会的影響を考えましたら,公認会計士と社外役員が同じ責任とは私は思いませんし,もっと言えば,社外役員も余りにも安易に引き受け過ぎます。忙しい本業を持っている人が片手間にやってどれだけ株主の権限を代表できるのか,極めて怪しいものがありまして,そういう人たちが,何百万だか何千万だか知りませんけれども,2年分でいいよと。ああそうか,高々ゼロだなということであってはならないと私は思います。つまり,自分の得たプラスを返せばいいではないかと,社外役員も会計監査もそんな簡単な責任ではないと思いますので,この案には反対意見を述べさせていただいたという証拠をしっかり残していただきたいと思います。 ● 従来から,キャップ制に反対だという意見は他の委員からも述べられていることはありますけれども,だんだんあれしてきまして,こういうことになっております。   ほかに御発言がなければ,こういうことでよろしいでしょうか。--それでは,原案のような形で御了承いただいたということにさせていただきます。   次が,「9 擬似外国会社」であります。これも前回非常に議論があったところでありますけれども,前回は,擬似外国会社も一般の外国会社も区別しないという原案であったのですが,やはり擬似外国会社というものを置くということであります。ただ,擬似外国会社について,現在の判例は全く法人格を認めないということなのですが, それが行き過ぎだとしますと,これは,先ほど事務局から説明がありましたように,非常に難しい。では法人格を認めて,あとは重要なことは日本法に従えというと,結局,資金調達から取締役の選任から全部日本法に従わないと,全部,あなた取締役でもありませんねということになってしまうということになりますので,ちょっとそういう処理も難しいと。それで結局はこういう案以外にないのではないかというのが事務局の考えでありますが,いかがでしょうか。   前回御異論がありました,○○委員,○○委員は。 ● 私の意見は前回申し上げたとおりで,本来はむしろ現行の482条のような規定があって,そして法人格は否認しない,民法36条が適用されるというのが一番望ましいとは思っているのですけれども,事務局が御説明のように,具体的な商法の規定がどのように適用されるかということをすべて書き切らないと準用規定にならないということであれば,そうでないと立法の手続をクリアできないということであれば,この現在の案については次善の案として支持したいと思います。 ● 擬似外国会社の規制をした場合に,日本において取引を継続して行うことができないわけですけれども,だから取引停止とかいうことは考え難いと思うのですけれども。例えば,営業所まで設置してやってしまっている,できないはずなのですけれども営業所が設置されているというときの,商法484条の営業所閉鎖命令とか,あるいは商法485条の日本にある財産の清算命令とか,その辺はどういう整理になるのでしょうか。 ● 結局,今,外国会社が登記しなければ営業できないのと同じように,営業停止命令とかもそれに並びでかけていくということになると思います。 ● これは前回と百八十度急に回転されてきたわけでありますけれども,こういう,「継続して行うことができない」という規律が必要なのかどうか。下のその効果というのが,「連帯して責任を負うこととしては,どうか」ということなどであれば,擬似外国会社が日本において取引を継続して行う場合には,この取引を行った者は連帯責任を負うのだと,こういう規定ぶりの方がよろしいのではないかという気がするのですけれども。そもそも,行ってはいけないというふうなことをなぜ入れなければいけないのかということなのですけれども。局面を限定してお書きした方が……。 ● ○○委員がおっしゃっている趣旨がよく分からないのですけれども,日本において継続的に行うことはできるけれども,代表者に重畳的な責任を負わせるという……。 ● 擬似外国会社はそういうリスクでやりなさいと。 ● 私は,この今回出されたアイデアというのは非常に面白いアイデアだと思ったのですけれども。   というのは,たしかここで問題になっている擬似外国会社の現行規定の問題点というのは,ケイマンSPCを使うとか,そういうことの上で擬似外国会社の今の規定だと非常に困るという指摘があって,判例から言えば設立からやり直さなければいけないということになったら,プロジェクトがやれなくなるという問題があると。それを解決する上では,SPCは日本で取引を継続して行うわけではない,そのあるプロジェクトの一つのツールとして使うだけですから継続して行うことにはならないと考えれば,そこの問題はクリアして,かつ,そうではない,正真正銘日本で全部やるのだけれども日本の法規制を完全に脱法しようというものは許さないということができて,非常に面白いアイデアかなと思って読んでいたのですけれども,それではおかしいのですか。 ● 今のSPCの場合ですけれども,これは継続して取引を行うことには該当しないという趣旨で書かれているということなのですか。 ● 日本で資金調達をするだけであれば継続取引に当たらないという,それは一般に言われていることだと思います。 ● 利払いを日本で継続して毎日のようにやっていても,それは継続して取引を行うということではないということなんですか。調達面だけということですね,一発だけの行為だと。   そういう意味なんですね。さっき,SPCはこれに該当しないという説明があったのかどうか,ちょっと聞き忘れてしまったものですから。 ● 一応そういう前提だと思います。 ● それが立法上はっきりするのであれば,一つの案だと思います。 ● いかがでしょうか,ほかの委員・幹事の方は。 ● 前回,482条の削除の問題について若干意見を申し上げたのですけれども,結局,国内債権者保護といいますか,弁済されることを保護するということだけではなくて,様々な準拠法の調査であるとか,そういった不便というものも考えてということで,482条の削除は慎重にという意見が多かったということを申し上げたわけですが,今回のこの9の御提案で,実質的に擬似外国会社の法人格を否認するわけではないけれども,活動の制約という意味で国内債権者に余り大きな影響が生じないようにという発想の御提案だと思いますので,まあ,これで私は賛成ということにいたします。 ● 私も,考えられてこういう案が今日提示されているということですので,基本的にいいと思いますけれども,注意点として,○○幹事が御指摘になった二つの点が特徴だと思うのですけれども,なおお考えいただければということを申し上げます。   一つは,証券化などのSPCですけれども,売掛債権を買い集めたりいろいろなことをしますので,資金調達だけのケースもありますけれども,それを超えて--まあ,最終的に法の文言をどう書くかは知りませんけれども--取引を継続して行うということに該当し得るようなSPCは現にあります,すべてがそうとは言えませんけれども。したがって,外すべきものは,どういう形で外すのかよく分かりませんけれども,法的確実性を確保するという意味では,例えば一定の類型のものを法務省令で並べるとか引き取るとか,どういう形にせよ,やはりその余地はお詰めいただきたいというのが一つです。   もう一つは,今度は逆の側で,正真正銘脱法的なというか,いわゆる擬似外国会社で日本でやっていると。これが,現在の規定のようなアプローチですとどうもうまく書けなくて,また動かないということで,アプローチを取引継続禁止ということで,まあ名案なのですけれども,やはりその実効性ですよね,先ほどからちょっと出ていると思いますけれども。ですから,営業所閉鎖命令とかの適用があるとはいえ,(注)だけかというと,これは私法上の効力も無効という趣旨なのか,そこは解釈に委ねるのか,それは取引の安全も非常に害しますので,仮に(注)だけがサンクションだというと--484条とかその後のもの,外国会社と共通の規定の方はまた別としまして--ちょっと寂しい感じがしますけれども,なかなか名案がないということであれば,これでも一応,日本で主として事業を行う会社は日本で設立してくれるという効果が出てくるのであれば,それで現在の482条に代わるものとしてはワークするということですので,前回の危ぐは払拭されるということだと思います。その点,なお今後の検討課題ということにしていただければ有り難いと思います。 ● 484条は,「法務大臣又ハ株主,債権者」とありますけれども,株主はこういうケースでは余り訴訟は起こさないでしょうし,債権者はこれで一応あれでしょうし,法務大臣は正直言って余り期待できないと思いますね,こういうところまでは。   最初におっしゃった点はおっしゃるとおりで,なお検討する必要があるかと思いますが,基本的にはこの方向でいいということで皆さんの御了解をいただいたということでよろしいでしょうか。   それでは,なお若干,そういう技術的な点は検討させていただきます。   次が,(参考)でありますが,剰余金処分等に関する権限分配につきましては,かなり複雑なことになっておりますので,改めてここで御確認いただくということですが,何かこれについて御質問とか御意見ございますでしょうか。 ● 3の(3)の②ですが,利益の資本組入れ,これは要綱試案では株主総会決議ということになっていたのではないでしょうか。あるいはその後の議論で変わったのかどうか,ちょっと私,記憶がないのですが。利益の資本組入れは,組み入れた後,それを取り崩すについて相当重要な手続がありますので,取締役会決議だけで組入れを決定するにはふさわしくないのではないかということになって,要綱試案では……。 ● その点はそのとおりで,取締役会決議をもっては決定することができないものとしてこれが挙がっているわけです。おっしゃるとおり,資本に組み入れられてしまいますと,仮に取締役会の多数を後で握ったとしても,特別決議を経ない限りもう配当できなくなってしまうというようなことになってしまいますので。 ● 「次に掲げる事項を除く」なんですね。分かりました。 ● 3の(3)なのですけれども,柱書きの中に「定款をもって,1の①から③までに掲げる事項」となっているのですけれども,その前の(2)ですと,市場取引による自己株式の取得はもっと広い範囲で認めるということになっている,1の②の全部ではないのですけれども自己株式の取得後の市場取引なので,この(3)の柱書きの部分においても,定款をもって,1の②に掲げる事項と書いてあるということは,一体どういう意味なのかというのがよく分からなかったのですけれども。 ● この括弧書きで書いてあるのは,確かに私もちょっと論理的に自信がないのですが,これは文章の外に出してもいいんですよね。 ● そこを言っているのではなくて,括弧の外の「定款をもって,1の①から③までに掲げる事項」と書いてあるのですけれども,②に掲げる事項のことは(2)に,少なくとも市場取引の部分は,入っているのですね。 ● 御指摘のとおりなのですけれども,要するに,この紙をどこまで分かりにくくするかということの限界にチャレンジするのをそこでやめたということです。すなわち,○○幹事のおっしゃっていることを斟酌すれば,「次に掲げる事項」の多分四つ目に,「1の②に掲げる事項のうち,(2)の定款の定めがある場合には,当該事項を除く」というのを入れなければいけないのですけれども,そこまで分かりにくくするかどうかというだけの問題です。 ● 要するに,取締役会による剰余金の分配を認める場合でも,(3)の①,②,③はだめですよと。実質はそういう意味だと思います。 ● ポジで書くかネガで書くかだけなのですけれども,(3)のところで書きたかったことは,そういう会社であっても取締役会には委任できませんよということが①,②,③で書かれた方が議論はしやすいかなということだけなのです。ポジで書くと,何が抜けているのかが一義的に分かりませんので。 ● 書き方の文言についてはいろいろと問題があるかもしれませんけれども,実質はそういうことだと。分かりやすく,(3)①,②,③というのを掲げたと。これはそういう取締役会限りの権限ではできませんということです。 ● 細かな質問で申し訳ありませんけれども,この(参考)の3の(2)の「市場取引による」というのは,これは公開買付けも当然のことながら入っているということですよね。これも簡単にするために言われていると。   次の(3)の場合ですけれども,これは,既存の委員会等設置会社においては何らかの経過措置を設けるということでございましたっけ,変えない限りにおいては。 ● はい。 ● 準備金の資本組入れの(注)なのですけれども,先ほど御説明があったのかもしれませんけれども,現行を更に規制強化するほど重みのあるものなのかどうかというのをもう一度教えていただきたいと思います。   それから(4),これまたいろいろな議論があって忘れてしまったのですけれども,今まで配当議題提出権とかいろいろ議論がありましたけれども,あれがこの(4)で集約されたという理解でよろしいのかということ。   最後ですけれども,1の(注1),「利益処分案,損失処理案という概念は不要となる」,これはどういう意味合いだったのか,また分からなくなりましたので,申し訳ございませんけれども,お願いいたします。 ● 1番目の準備金の資本組入れ,これはどちらでも構わないのですけれども,準備金を資本に入れますと,取崩しの要件はかなり厳しくなるということがありますので,それを株主総会で決めるか取締役会で決めるかということになるのですが,今回,配当しにくくなるということについて,利益の資本組入れもそうでしたけれども,基本的に株主の了解を得て,ということにするのであれば,程度問題ですけれども,準備金についても同様に扱った方がいいのではないかということでございます。   2番目の議題追加請求権その他につきましては,(4)でそのままになります。すなわち,定款で全部を外していただくか,一部を抜いていただくか,それはいろいろやり方があると思いますけれども,基本的に,(4)の定款の定めを決めれば株主総会の権限ではなくなるということになります。   それから,「利益処分案,損失処理案という概念が不要となる」というのは,今現在,貸借対照表・損益計算書・営業報告書に加えて利益処分案というのが並んでいますけれども,今回のこの改正をしますと,いわゆる計算書類を作ると言われている貸借対照表とか損益計算書の部分と,この手の金銭の分配をするとか計数を変動させるということは切り分けられる。したがって,計算書類として今まで一緒くたで議論されてきたものは,報告に関するものと,これから何かをしようとするものとで,取扱いが条文上も書き分かれてくるということであります。   付け加えて言いますと,「利益処分案」というのは法律上の文言の概念として不要になるということでありまして,今までと同様,定時総会で決めるものを「利益処分案」と言っていたことについては何の妨げもないのですけれども。 ● この星印がついている(注)でありますけれども,これはよろしいでしょうか。   従来は,現在,株式分割になっているもののうち,無償交付と言われるものは,とにかく資本組入れをしなければできなかったわけでありまして,だけれども,それが別段,資本組入れをするかどうかにはかかわらなくなりましたので,もうその段階で--以前は,無償交付というのはいいことだということで,なるべくさせようということで手続が取締役会限りでできていたのでしょうけれども--あの改正がなされた段階でそういう必要は実質的にはなくなっていたのではないかと。だから,今回こうしたことによって特に何か不便になる,規制強化になるというわけでもないのではないのかなという気がいたしますけれども,株主の利益からしますと。   (注)の点はよろしいでしょうか。   その他の点につきましてもよろしいでしょうか。 ● 3の(4)ですけれども,従来の経緯から入っているのだということは分かるのですけれども,こうやってまとめるときに,(4)は要らないのではないか。当たり前ではないかと思うのですけれども。剰余金の処分権限はデフォルトでは株主総会だけれども,定款で定めれば取締役会にある。定款で取締役会と定めて,その上に更に定款で株主総会で決めるとは書けないというのは,それは当たり前のこと。定款を外したらまたデフォルトに戻るということで。 ● ただ,デフォルトでそうなのかどうかというのは,ちょっと……。委員会等設置会社では,恐らく定款で--現在の制度でですよ。現在の制度ですと,いろいろ説は分かれていますけれども--やはり230条ノ10でこれは総会で定められますというふうにしないと,総会では決められないのではないかと,私はそういう理解ではないかと思うのですね。ですから,その点をはっきりさせると。この(4)を置いておきますと,とにかくデフォルトは,おっしゃるように総会では常に決議ができる,株主提案が常にできるということになります。やはりそこは明確化しておく方がいいのではないかと私は思っていますけれども。   よろしいでしょうか。   それでは,この(参考)の部分を全部一括して御了解いただいたという理解でよろしいでしょうか。   それでは,まだ残っておりまして,部会資料28でありますけれども,これは,先ほどの部会資料25の2,これが前回の案だったのですが,かなりいろいろ御異論が出ましたので,そこでどう直したかというと,外国会社が日本国内で発行するものについて,前回言及されておりましたものの明示の言及は避けた,(注1)という形で,どうしますかということで出ているわけです。今回の案はその点が違いであります。何も規定を置きませんと,従来から,日本法を準拠法とした場合には適用があるのだとか,いろいろな議論があるわけですけれども。 ● こういう案にしていただいて非常に有り難いと思います。   本文の方は,「明らかにするものとすることで,よいか」というのは賛成でございます。(注1)については,法律は何も規定しない,私的自治に任せる,外国会社が国内で発行する社債についても日本商法上の社債管理会社とか社債権者集会の適用があるのだということになると,外国会社が日本で起債するということをしなくなってしまう。そうまでして規制すべき問題ではないだろうということでございますので,本文のみを明確化していただくということでお願いいたしたいと思います。 ● いかがでしょうか,ほかの委員・幹事の方。 ● 変更のないところで恐縮ですけれども,前回と同じような質問を繰り返しているのですけれども,(注2)に関連して,元利金は,日本の投資家には日本で,ヨーロッパの投資家にはロンドンで,アメリカの投資家にはニューヨークで払いますというふうに社債要綱で決めたらどうなるのでしたっけ。決められないのでしたっけ。グローバルオファーですか,一つのオファリングですか。 ● 今の○○委員の御質問は,義務履行地が社債ごとに違うというお話ですか。 ● いえ,社債を3か所で,アメリカ,ヨーロッパ,日本で募集しまして,それぞれの元利金の支払は,日本の投資家については東京で支払います,ヨーロッパの投資家にはロンドンで払います,アメリカの投資家にはニューヨークで払いますと社債契約に書くのが一番アトラクティブですよね,資金調達する側から見れば。それは(注2)でまさか禁止するという趣旨ではないと思うのですけれども,それですと,要するに義務履行地というのは1か所だと。そうでないと国内か国外か決まらないですよね,現在の(注2)の考え方は。前回の案もそうなのですけれども,ちょっとそこが実務とそごがあるように思ったものですから,そういった趣旨の発言を前回もしたつもりだったのですけれども,ちょっと誤解を招いているかも--私が誤解しているかもしれません。 ● まず,募集が3か所であるかどうかというのは,今の(注2)の基準からいくと関係なくて,義務履行地がどこかというところで判断するとすれば,一つの社債については一つの義務履行地というのが通常であろうと考えておりましたので,それで決まるのではないかと。では仮に,まあどういうルールで決めるのか分かりませんが,先ほど言ったように日本で募集したものは日本でというふうにしたら,恐らくそれ自体が1種類になるというのが第1の考え方だと思うのですね。ただ,そうではなくて,とにかく一つの種類で,場所によって違うのだといった場合には, 債権者側が少なくとも義務履行地として日本を選択できるというようなことであるならば,やはり社債管理会社の設置強制等は働くと考えざるを得ないのではないかと思うのですけれども。 ● 多分,グローバルオファリングの普通の実務から言うと,全部で一つの社債で,そこの間にファンジビリティーがあるというところが売り物でもあるので,日本で募集するものは一つですと,もちろんそういう社債もあり得ると思いますけれども,いわゆるグローバルオファー--グローバルノートと言ってもいいですけれども--そういうものではないというように思うものですから。他方,一つの社債であっても,例えば日本で募集するものについては日本法,アメリカで募集するものについてはアメリカの39年法とか,アメリカ法については少なくとも実務はそういう実務で動いていると思うのですけれども,ヨーロッパで募集するものについてはまた別の何とかと,それはまたそれで一つあり得る選択だと思ったものですから。   ここでは問題は非常に狭くなっていて,本文と(注1)を適用する上での「国内」・「国外」というのは何で決めるかという基準を決めようとしているだけのことだと思いますので,そうすると,今のような場合に,三つ別々だというふうに言うのか,あるいはもうどれか1か所決めてくださいというふうに言うのかということになるのだと思うのですけれども。それで実際にワークすればいいのですけれども,そこを確認していただければ,それで結構です。 ● 解釈としては,今,○○委員がおっしゃったような形になりますと,義務履行地が日本に,そのうちの一つでもあれば,内国会社が発行した場合であれば,これは国外で発行したことにはならないのですね。ですから,やはり,社債権者集会でもその効力を認めますかというと,日本法の要件を満たしていなければ認めませんということになってしまうということではないでしょうか。この案はそういうことを言っているのではないかと。 ● という場合には,本文の修正をしていただいて,「内国会社が主として国外で社債を」と,こういうふうにしていただきたいと思います。 ● でも,それは種類が別というわけにはいかないのでしょうか。義務履行地が違うわけですよね。 ● できないでしょう。社債の中に,あなたが元利払いを受けるのは何々銀行東京支店,何々スイス銀行どこそこ,アムステルダムのどこそこと,こういうのがどーんと書かれたのが出回るわけですから,ここの何々,全部同じ券面に書いてあるものを別々のものというわけにはいかないのではないですか。それでボンドホルダーが好きなところでそれを提示するか,トランスファーでもってお金を受け取るということでしょうから。 ● たしか私が聞いた記憶では,全体で日米欧で1,000億とか3,000億やりたいと,それでブックビルディングをしていって,どのぐらい需要があるかというのをぎりぎりまで見て,最終的な額がその3市場で決まるということでしょうから,最初から三つの発行をしているという感じは当事者の意識の中にはないのではないかと思います。 ● 正にそのようなブックビルディングをして,最終的にどうかということについて,仮に「主として」という言葉を入れたとすると,非常に法的安定性を欠くことになりますので,「主として」という要件は,実際に社債管理会社を置くべきかどうかとか,社債権者集会を開くべきかどうかという判断としては妥当ではないのではないかと。実際に還流して,ユーロで発行したものが日本に還流してきて日本の方が主として多くなった場合とか,発行時点についての問題が出てくるでしょうし,そうなってくると,現状で,少なくとも社債管理会社の設置強制を国内の社債権者の保護という観点から見るならば,国内が義務履行地になっているような場合にはやはり社債管理会社を置くべきではなかろうかと思うのですけれども。 ● 1点だけ確認を,これも前回聞きそびれたところですので,させていただきたいのですけれども。   この案は,今まで余りなかった考え方なのですね。内国会社が日本法を準拠法として国内で募集して,専ら国内で流通している社債であっても,義務履行地の定めによっては日本法を全く適用しないという案ですから。   そこで,「義務履行地」の概念を確認させていただきたいところなのですけれども,形式的に社債の契約上に書いてある文言で決まるというお考えなのか,多少なりとも実質が読み込めるようなものなのかだけ確認させていただきたいのですが。例えば,フィスカルエージェンシーみたいなものを駆使して,国内で最終的に投資家がお金を口座に入れて もらうところは絶対邪魔しませんから,契約上はアメリカ--アメリカではなくてもっと別のところと,そういうアレンジメントをしたときに,義務履行地はあくまで文言で決まると,法的安定性はそれで確保されるのですが,もしそういう趣旨だとすれば,これは幾ら何でも297条--私,297条は撤廃論なので,余り強く言いたくないところではあるのですが,ただ,やはり本来の趣旨とは大きく違うものになりますので,しかもそれが準拠法とも募集地法とも流通地法ともずれるとなってきますと,ちょっと引っ掛かるものですから。これは実質解釈できるものかどうか,確認をお願いしたいのですけれども。 ● その点につきましては,それはもう社債発行においての契約の問題,解釈の問題ですので,多少--通常は,はっきりと義務履行地というのが必ず法律上一つ決まっているのだろうと,最低一つは決まっているだろうということで,そこが実質的な解釈を許すかどうかというのは,現状でも恐らくそういう実質的な解釈というものが多少なりとも行われるならば,やはり入るのではなかろうかと思いますけれども。 ● それはどんな解釈をしてもいいのですが,それは法の適用に全くイレレバントな,つまり連結点になっていないから,実質法の解釈として好きにやればいい話だったのが,全く位置づけが変わってくる条項になるものですから,確認したかったのですけれども。 ● これまでも,「義務履行地」というのは決して法的な意味が全くない概念ではなくて,当然,契約の内容としての義務履行地という意味でも法的意味がありますし,裁判管轄等においても意味のある概念だったわけで,今回,この義務履行地が社債管理会社の設置強制がかかるかかからないかの基準になるから特段何か今までの解釈と変わるという感じではないのではないかと。   ただ,普通に考えれば,会社が社債を発行する際に,社債は東京で支払うとか,そういうふうな義務履行地を定めたら,自分がそう判断しているわけですから,社債管理会社は置くでしょうし,ニューヨークで支払うといったら置かないということに,まず第一次的にはなるでしょうと。ただ,その後,何かすごい,先ほど言われたフィスカルエージェンシーとかをつくって,実質的には義務履行地は日本なのに,社債管理会社の設置強制をかけないためだけにそのようにしたということになって,それが裁判になったとしたら,これは設置強制をかけるべきだったという判断が下ることもあり得るのではないか,そういうことにならざるを得ないのではないかと思いますけれども。 ● いかがでしょうか。いや,ちょっと難しい問題ですね,これは。   ほかの皆さん,今の○○幹事の御指摘の点はいかがでしょうか。 ● 実質解釈を全く許さないわけではないということがはっきり確認できたとすれば,これ以上何も申し上げるつもりはございません。   私,今まで社債を何回も売買したのですが,義務履行地なんか全く確認しなくて,いずれにせよ証券会社で--まあ,満期まで持つのは少ないのですけれども--証券会社のアカウントに入ってくることさえ確認できていれば,幾らでも流通するのですね,義務履行地をどこに定めようが。そういうことを考えますと,意味は,それは従来も法的に多少あったかもしれませんが,やはり非常に違った意味合いを持ってくるものですから,いいのかなと。だから,実質解釈である程度濫用的なものは抑えられるということがはっきり言えるのであれば,かなり条件をつけて,いいのかなということなのですけれども。 ● これは,発行地が国内かどうかの基準についてはっきり規定を置かなければいけないのですかね。規定を置いたためにそういう脱法の余地が出てくるとしますと……。 ● これは議論の過程で,まず,社債を発行した地というのは一体--発行というのは何をもって発行というのかということが問題になりますので,少なくとも何らかのメルクマールがないと,それこそ法的に不安定になるのではないかと。   それで二つ考えたのは,一つは募集。外国で募集,日本で募集という概念ならあり得ると。ただ,その場合には,グローバルオファリングみたいな多方面で同一の種類を募集したときというのは一律にかけられるのか,それとも何か区別の基準になるのかというところで不安定になるのではないかということで,一応,その案ではなく,逆に,通常,これは種類概念にもすべてよってくるのだと思うのですけれども,日本での義務履行地の種類とユーロでの義務履行地の種類というのはやはり違うのではないかと,最終的にはですね,というふうな整理が可能ではないかということで,義務履行地の方がまだ実効性があるのではないかと。また,実際に社債権者集会,社債管理会社の適用というのは日本の裁判所抜きにはなかなかできないスキームでございますので,義務履行地の社債権者が最も利害関係を持つので,それに従ってはどうかということで,こういう御提案をさせていただいております。それが法的安定性と実質との違いについて何らかのすり合わせが必要であるということならば,またもうちょっと詰めて考えたいとは思いますが,基本的な枠組みとしては,置くか置かないかができる限り明確に判断できるようなものがいいというふうに考えております。 ● 今,○○委員や○○幹事からいろいろ御指摘をいただいたところですので,証券の専門的な分野に属する事柄でもありますから,証券の専門家とも少し相談をしていただいて,これについては更に検討するということでいかがでしょうか。 ● 今日は何時までかかっても,と思ったのですが,調べる必要があるということですと,これはやむを得ないのですが。 ● 社債の券面で,普通,この社債は何々国何々市において発行されるものであるというふうに入りますよね。発行概念も,その券面を見るなり社債発行契約を見るなり,それではまずいのですか。入れてませんでしたっけ。 ● 入ってないと思いますね。記載事項に発行地はないと思いますね。義務履行地もないのではないかと思うのですけれども,今は。それで,今ちょっと社債契約書を幾つか見たのですけれども,義務履行地が書いてあるのも実は余りなかったりしたのですけれども。   ですから,今の実務を調べるというよりは,これを置いたために払い方なんかについて非常にクリエイティブないろいろな工夫が今後されることについての仮定の議論になると思うのですけれども。現在はちょっとないのではないですかね。 ● この本文を置かないという選択も当然あるわけですけれども。社債管理会社の設置強制の趣旨に照らして内国会社が国外で社債を発行する場合には設置強制がかからないという解釈が適当かどうかということについて,引き続き解釈に委ねるということでよろしければ,むしろ置かないという選択肢も十分あり得るところでございます。 ● 何か○○幹事の御指摘で私はちょっと不安になってきたのですが。これを置いたためにですね……。 ● やや実務の話とはずれるかもしれませんが,この本文を考えた場合に,この例外的な適用に該当するものというのをかなり狭く設定するということもできるし,広く該当するということもできると思うのですね。つまり,事例として先ほどから出ていますグローバルオファーのような事例の場合に,例えば1か所でも日本に義務履行地があるものは全部日本の国内の社債であるというふうにしてしまうこともできますし,すべての義務履行地が日本であるというふうに考えるというふうにすれば,外国で発行されたという方に事例を寄せていくこともできるわけですが,そこのところの政策判断として,例えば国外で発行する場合には適用除外にするということをかなり限定的にとらえていくとするのであれば,発行地及び義務履行地のいずれもが日本国外であるとか,そういったようなかなり限定的な設定をしてしまえば,事例は相当程度外れてしまうということもあるやに思うのですが,そのあたりの判断として,どんなようなものは社債設置強制をしなくてもいいというふうに考えておられるのか,そのイメージを固めていただかないと文言を決められないのではないかと思うのですが。 ● 先ほどからの議論で,非常に潜脱的な事例を考え始めると,それはいろいろな事例があると言うしかないのですけれども,実際に今発行されているベースで考えていれば,基本的には国内で発行されているものには社債管理会社が設置強制されていますし,準拠法も当然日本法ですし,義務履行地も日本国内というふうに設定されています。逆にユーロで発行されているものは社債管理会社などは全然設置されていないのも事実ですし,義務履行地もユーロ,準拠法もイギリス法だとなっていて,現在実際に動いているほとんどの場面ではほとんど不都合はないというのが実際なんですね。   では何らかの潜脱的なことが行われて,日本で発行しているのに,全く社債管理会社も置かないようなものを許すスキームが現在ないかというと,現行法で,例えば準拠法説があって,イギリス法とか日本法ではない法律を準拠法にした場合には社債管理会社の設置強制がかからないのだと,こういう説に立つとすると,例えば日本会社が日本国内で発行しているものについて,ではイギリス法を準拠法にした場合に,イギリス法が準拠法だから置かないのだといったようなことができるのかどうかというところにも尽きてきて,結局は,どんな手段をとっても,一定の場面で置かないという選択肢をとる以上は,潜脱は何らかの形でできるわけですね。だけれども,それが先ほど○○幹事がおっしゃった実質的な解釈というところで最終的には裁判所なりで判断することを否定するものではないという以外はないのではないか。   あと,具体的な問題としては,先ほどから出ている,グローバルオファリングなどでどうするかということで,本当に不都合があるということであれば,合理的な限定をかけていくということはあり得る選択肢だと思いますが,今まで実務の方とお話をしている中で,グローバルだからこの義務履行地ではだめだというふうなことは言われたことがなかったので,再度,その点に絞ってもう一回検討はしてみたいと思います。 ● いろいろなメルクマールがあるはずなのですけれども,義務履行地というのは,○○幹事がおっしゃったように,非常に簡単なんですね。これは余り気にしないようなあれですから,それだけぽんとニューヨークに置いたらどうなるんだという話が出てきますので,準拠法なんかとはちょっと違う話なんですね。 ● あいまいな記憶でいい加減なことを言って大変申し訳ないのですけれども,私の記憶によりますと,受託銀行制度を廃止いたしましたときに,銀行が受託手数料を稼げないということで騒ぎまして,それで社債管理会社をつくろうという動きがあったと思うのですね。もともと社債管理会社なんか要らないんです。ほかの国にはないと思います。だから,そういうことも参考にお決めいただければなと思うのです。 ● その点は,そこまでは今回は踏み込まないことになっております。   しかし,本当にこの規定を置かなければいけませんかね。本当に無理にこの規定を置かなければ困るのか。   それから,置いたために,先ほど○○委員が言われましたように,とにかく1億円以上にして社債管理会社を置かないという実務が非常に多くなったわけですね。だから,あっという間に実務は変わるんですよね。だから,この要件で国内・国外を分けるというような規定をつくってしまいますと,ちょっと危ないような気が私はするのですけれどね。だから,ちょっとあいまいにしておいた方がいいのではないかという気が私はするようになったのですが,いかがですか。 ● いずれにしても,グローバルイシューをするとかいうふうなときには,その社債なるものが準拠法であるとか発行地法に照らして適法であるということを弁護士の証明をつけるんですよね。それで今まで弁護士がつけているわけですよね。それで,大部分ユーロでやるようなものについては当然こういう社債管理会社とか適用はありませんけれども,合法だとしてきているわけですね。だから,今更お上にそこの合法性を明確にしてくれと言う必要もないわけですから,法務省が今の実務を,それは違法だ,過料をかけるとかいうことを言わない限りにおいては,もう今までどおりの実務にお任せすればいいのではないかと思いますけれども。 ● そういうことでどうですか。 ● 実務上のニーズに即していろいろと工夫しようかと考えていたところですけれども,特に必要がないということであれば,今回は見送らせていただきたいと思います。 ● それでは,そういうことでよろしいですか。もうこれはやめると。   時間があれば,先ほどの自民党の参考資料についても御議論いただく予定だったのですが,今日はかなり遅くなっておりますので……,これは次回でもいいわけですね。 ● はい。 ● それでは,大変長時間,本当にありがとうございました。本日の審議はこれで終了させていただきたいと思いますが,事務局から連絡事項がございます。 ● どうも本当に長時間の御審議ありがとうございました。御協力について感謝申し上げます。   次回は,7月21日午後1時から,場所は同じく,第1会議室で行わせていただきます。できるだけ早めに実質改正にかかわる全体像をお示しする資料を整えたいと思いますので,それを御覧いただき,なお残された論点を幾つか--今日も御指摘がありましたけれども--そのあたりの詰めをさせていただきたいと思います。   それから,参考資料16につきましては,当部会でも議論をすべきことになっていますので,あわせてお持ちいただいて,御議論いただければと思います。 ● それでは,第26回会社法(現代化関係)部会を閉会させていただきます。本日は誠に長時間にわたり御審議を賜りまして,本当にありがとうございました。