法制審議会会社法(現代化関係)部会 第29回会議 議事録 第1 日 時  平成16年9月15日(水)  自 午後1時30分                        至 午後5時44分 第2 場 所 法務省第1会議室 第3 議 題 追加論点について 第4 議 事 (次のとおり) 議    事 ● それでは,予定した時刻が参りましたので,第29回会社法(現代化関係)部会を開会いたします。   本日は御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。      (委員の異動紹介省略) ● それでは,配布資料につきまして,事務局から説明をお願いします。 ● 本日の資料は,事前に送付させていただきました部会資料31,「追加論点について」と題するものでございます。事務局における条文化のための検討作業の中で出てきました派生的論点,技術的論点を掲げており,本日はこれらの論点に絞って御議論いただければと思います。   また,○○委員,○○委員から意見書を提出していただいております。   配布資料は,以上でございます。 ● 配布資料につきまして,何か御質問等ありますでしょうか。   それでは,○○委員の意見書につきまして,○○委員から補足して御説明がありましたら,お願いしたいと思います。 ● これにつきましては,前回の最終段階で議論になったかと思いますけれども,一応確認のために改めてペーパーの形で意見を出させていただいたという次第でございます。是非御検討いただければと思います。 ● この点については,次回,あるいは次々回に御議論いただければと思います。 ● それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   本日は,部会資料31につきまして審議をお願いするわけでありますけれども,始めに事務局からの説明をお願いします。 ● 先ほど申しましたとおり,事務局における条文化のための検討作業の中でいろいろと出てきました問題--技術的・派生的な問題が多いわけですけれども--それらを取りまとめまして,本日お諮りさせていただく次第でございます。   時間の関係上,一括して御説明を差し上げたいと思います。   まず,第1の「設立関係」についてですけれども,「1 設立時の出資額」,「2 設立時の発行株式の失権」について,このような規律を明らかにしてはどうかというものでございます。   現在でも,設立時において定められた発行価額以上の価額での引受けも可能であるという理解がされていると思いますけれども,その実質を明らかにしようとするのが,1でございます。   2は,最低資本金規制の在り方とも関連していた問題ですけれども,設立時における募集を会社成立後の新株発行と同様にとらえるということができるのであれば,ある程度予定した額をクリアした場合には打切発行的な取扱いを許容するという整理でよろしいのではないか,新株発行とは別の規律を設けるということが規定を複雑にするということもありまして,このような整理をさせていただくということでよいのではないかという点が,2でございます。   第2の「機関関係」についてですが,1の「任期」は,比較的細かい論点でございます。まず(1)は,株式会社の役員の任期について,その就任時ではなく選任時から起算するということとしたらどうかというものでございます。就任には相手方の承諾を要するということであるといたしますと,その承諾が遅れれば遅れるほど,その時点から任期を起算するということが果たして適当なのかどうかということが問題となってくるわけでございまして,選任時から起算することとする--もし起算点を選任決議そのものの時よりも後にする必要があるということであれば,選任決議においてその効果発生日に係る条件を付けることとすれば問題ないと思われますので--このような整理をさせていただいた方がよろしいのではないかということでございます。   (2)は,役員の任期の終期の規定の在り方についてです。取締役の場合,この範囲内で任期をどのように定めるかは自由ですけれども,原則としては,現在の商法特例法21条の6第1項と同じように,その終期については,定時総会を基準とする形に規定を整理するということでよろしいのではないかと思われるところでございます。仮にこれでよいということであれば,株式譲渡制限会社における定款での任期の伸長の許容範囲についても,(注1)に掲げてあるような整理になるということでございます。   (3)は,最初の役員の任期について,特別な規律をなお維持すべきかどうかということでございます。   例えば,監査役を任意に設置することができるという会社の場合,設立時には監査役を選ばずに後日選ぶというときであってもこの「最初の」監査役に当たるということとするかどうかというような問題が出てくるわけですけれども,いずれにしても,最初の役員でありましても,その選任時点における持分権者全員の関与のもとに選任されているという実質はその余の役員の場合と変わらないわけでございます。また,株式譲渡制限会社につきましては任期規制を定款によって相当程度自由にするということにいたしますと,そのような会社にあって最初の取締役等についてのみ特別な制限を設けるということも説明が困難ではないかと思われるところでございまして,仮に規律を残すとすれば,株式譲渡制限会社ではない会社についてのみということになりますけれども,果たしてそうまでして残しておくべき規律の実質があるかどうかということでございます。   それから,例えば組織再編時における取締役の任期については,商法414条ノ3のような特別な規律がかかっているわけですけれども,これについても,特に対価の柔軟化を前提にしますと,その実質を維持することはまず無理であろうと思われます。したがいまして,任期規制につきましては,設立時,組織再編時も含め,すべて原則どおりの取扱いをすることとし,必要とあれば,格別にそれぞれの選任決議において工夫をするということでよろしいのではないかと思われるところでございます。   第2の2は,現在,委員会等設置会社とそれ以外の会社との間の移行の関係で疑義が生じている取締役の任期の取扱いについて,明文の規律を設けようというものでございます。相当程度規律の異なる会社間の移動ということになりますので,取締役の任期はその時点で終了するという形にするのがよろしいのではないかということでございます。   「第3 株式等関係」の「1 単元株関係」についてですけれども,(1)は,現行法上,端株制度については定款変更という手続によってその整理,廃止が可能となっているわけでございますけれども,端株制度との統合を果たした後の単元株制度につきましてもそれと同様の実質を維持すべきかどうかという論点についてでございます。維持するということであれば,ここに掲げてありますように,特別決議に基づきまして,単元に満たない株式についての強制的な金銭換価という手続を設けるということが考えられます。仮にこれを設けないということでありましても,株式併合と株式分割とを一度に行えば同様の効果が得られるということになろうかと思いますけれども,そのような二度手間をかけるまでもなく,このような整理をすることにより端株制度の現在の規律の実質を維持するということでよろしいかどうかをお諮りしたいということでございます。   1の(2)は,やや形式的な事項でありますけれども,現在,単元株式数の増減については,商法346条に該当するものとはされていないわけですが,これを,345条の問題ではなく346条の問題として--346条については今回見直しをしようとしているわけですけれども,その見直しの適用も含めて--株式の分割・併合と同じように位置づけて整理をさせていただくということでよろしいのではないかという点をお諮りしたいということでございます。   2の(1)は,現在,新株発行・自己株式の処分については払込期日制度がとられているわけですけれども,実務上,払込期間というものを定めることとしたいというニーズがあるようでございまして,そのようなニーズにこたえ,払込期間中のある時点において払込みがされた場合には,その時点から株主となるという整理をさせていただくということでよろしいかどうかということでございます。基準日についてはその取扱いをかなり柔軟にするということになっておりますので,差し当たり基準日との関係での問題は生じないものと思われます。   (2)は,現行法上,常に発行決議時において行うべきこととされております株式譲渡制限会社における新株の割当者の決定につきまして,発行決議時ではなく,割当時において決め得ることとしてほしいという実務上の要請があるようでございますけれども,仮にそのようなニーズに応えるとした場合,譲渡承認機関がその決定をするということであれば,株式譲渡制限制度の実質を損なうことはないのではないかということでございます。現行法のもとでは,株式譲渡制限会社の場合,基本的に株主総会の決議が必要なわけですけれども,割当者の決定については取締役会で行うということが原則になっていますが,新たな会社法のもとでは,株主総会が譲渡承認機関となるという場合が少なくありませんので,その場合には,株主総会において割当者を決めなければならないことになるということでございます。   2の(3)は,3の(1)とも密接に関連する問題ですけれども,現在存する新株予約権と新株引受権という似て非なる制度の概念,規定の整理統合を行うこととさせていただけないかどうかということでございます。仮にこのような整理をするといたしますと,失権株の再募集でありますとか,会社自身への新株引受権の付与というような問題に関わる論点が消滅するということになるわけでございます。これは,概念の整理,表現の整理の問題というようにも言えようかと思われますので,現行法上の新株引受権というものを株主への新株予約権の無償割当てという概念で整理しようとした場合に,なお整理し尽くせない問題があるかどうか,あるとすれば,さらにそれについての手当てさえ設ければ整理が可能ではないかということでございます。   3は,株式分割等に関する問題でございますけれども,(1)は,先ほどの2の(3)の整理の前提として,このような規定,概念の整理をさせていただけるかどうかということでございます。   御承知のとおり,株式配当,無償交付というような規定については,平成2年の改正において,すべて資本等の取扱いとは切り離された「株式分割」という概念で整理されたわけでございますけれども,その当初の改正の趣旨にかかわらず,「株式分割」という語感から,ある株式を別の種類の株式も含めた複数の株式に分割するということについては,否定的な見解も有力であると承知しているところでございます。もとより,そのような立法趣旨であったわけではないのですけれども,「株式分割」という用語で整理をしたことによって,そのような--弊害といいますか--解釈が生じているとすれば,むしろ端的に「株主に対する株式の無償割当て」という概念にもう一度整理し直すということもあり得べしではないかということでございます。   現在の案では,株式分割の効果については自己株式にも生ずるということになっておりますけれども,自己株式に係る合併新株の割当てや自己株式に対する配当等と株式分割との取扱いを異ならせるべき合理的な理由もさほどないと思われますので,もしこのような整理をすれば,現在の株式分割も含めて,自己株式についてはすべて効力が及ばないという整理が可能になるということでございます。   (2)は,自己株式の取得と株式消却,株式併合という各制度の概念,規定の整理統合を行わせていただけるかどうかということでございます。自己株式の取得と株式消却,株式併合につきましては,その規律の実質を基本的にそろえるということでこれまで御審議をいただいていたわけですけれども,その経済的な効果も必ずしも異なりませんので,規定上,殊更別の制度としておく実益がさほど大きくはないところでございます。自己株式の取得とその取得した自己株式の消却という形にすべてを整理し尽くすことも技術的には可能でございまして,条文経済上もできればそうさせていただけないかどうかということでございます。   (3)につきましては,やや説明を要しますけれども,現在の案の中では,定款の定めがない場合であっても,正当な理由があるときには特別決議による多数決によって会社による株式の取得,消却を認めるという制度を設けるということでほぼ御了解をいただいているところでございますけれども,仮にその取得ないし消却--消却も取得として整理するということが前提ですけれども--その取得が有償にて行われるという場合に,その取得とその有償取得に係る対価の調達とを同時に行う必要があるとすれば,その取得に係る決議において,取得に係る自己株式の処分についても同時に決議をするということで,自己株式の取得,処分に係る規律の特例を認めるということとして,その取得をスムーズに進ませることとしたらどうかというのが,ここでの問題でございます。もとより,どのような場合に正当な理由があるものとして特別の多数決によってこのようなことが可能になるかということは解釈問題であり,その解釈が濫用の歯どめになるものと思われますけれども,そのような整理をさせていただくことができるかどうか,実質にかかわることでございますので,お諮りしたいと思います。   (4)は実務上の要請によるものであり,読んで字のごとくでございます。特に説明を付け加えるべきところはございません。   4の「譲渡制限関係」についてですけれども,会社側が株式の譲渡を承認しないという場合における先買権者による株式売渡請求の手続につきまして,株券が発行されていない会社--今の有限会社もそうなのですけれども--におきましては,現在は先買権者には金銭供託義務があり,もちろん株券がありませんから株主側には株券の供託義務がないわけでございまして,一方当事者にのみ供託義務がかかっているということから,不平等・不公平が生じているわけでございます。供託金につきましては手続が頓挫した場合には取戻しをすることになるわけですけれども,相手方である株主の協力が得られませんとその取戻しは容易ではないということになりまして,そうまでして金銭支払の義務の履行確保を図る必要があるかどうかということでございます。株券が発行されていてその株券が供託されているという状態であれば,その両方の供託によって手続をスムーズに進めるということも制度設計としてあり得るところですけれども,株券がなく,その供託がされないということになりますと,名義書換えを一時的にとめておくための他の手段があるわけではありませんので,金銭の供託中であっても,株主は当該株式を他に譲渡してその名義書換えを了することもできるわけでありまして,金銭の供託義務というのは一方当事者にのみかなり不利な制度であると言えるのではないかと思われます。仮に,供託義務をなくし,そのために金銭支払の履行確保が困難となったとしても,金銭が支払われないということであれば,結果的には譲渡承認がされたということになり,譲り渡そうとする株主側に不利益が生ずるわけではありませんから,両当事者間の公平を図るという意味では,このような整理をさせていただくことがよろしいのではないか--かなり細かいことではありますけれども--そのような整理をしたらどうかということでございます。   5は,「授権株式数関係」でございます。実質についての変更を伴うものでございますので,お諮りさせていただく次第です。新株予約権等をかなり大量に発行しているという場合には,株式の発行による資金調達が必要であるというときであっても,現行法のもとでは新株予約権に係る発行予定株式数を授権株式数の中に留保しておかなければいけませんので,その新株発行枠はかなり縮減されることになるわけでございます。今後,新株予約権の発行の需要がいろいろな意味で見込まれるということであれば,その一方で,授権株式数を資金需要の観点からある程度増加させたいという場合に備えて,このように,授権株式数を増加する際には,新株予約権相当分についてはそれを外に置いた上でその増加を図るということがあり得べしかどうかということでございます。   6の「新株予約権関係」についてですが,(1)は,現在の新株予約権の規制の在り方について,無償の場合と有償の場合とで異なっている部分を統一しようというものでございます。現行法上,有償の新株予約権につきましては,払込期日までは新株予約権としての規制--原簿への記載や承継の対象になるかどうかというような点についての規制--を受けないこととされておりますけれども,払込みはある意味では新株予約権の行使条件の一つとして整理することもできますので,このような新株予約権としての規制自体は,払込期日の前後にかかわらず,無償の場合と同じような整理をさせていただくことでよろしいのではないかということでございます。   (2)は,3の(1),2の(3)の整理が先ほどのような内容でよろしければ,ほぼ必然的にこのような整理をさせていただくことになるのではないかというものでございます。特に,強制転換条項付新株予約権付社債につきましては,その実質について御了解をいただいているところでございますけれども,現在の法制を前提にいたしますと,新株予約権者の意思にかかわらずその権利行使を擬制するという説明をしなければならないことになりますが,それがあまり自然ではないということもありまして,できればこのような整理をさせていただくことの方がよろしいのではないかということでございます。   (3)も,(2)の整理,あるいは3の(1)の整理に伴って生ずる概念の整理の問題でございます。新株引受権につきまして,仮にこのように整理することができるといたしますと,新株予約権の引受権という概念については,株主に対する新株予約権の無償割当てという形で整理をすることが可能でありますので,そのような技術的な整理をさせていただけないかということでございます。   (4)も,読んで字のごとくでございます。この禁止の趣旨を明確化したらどうかということでございます。   「第4 社債関係」についてですが,1の(1)は,解釈上,合名会社・合資会社による社債の発行,それ自体は行われ得ることと解されておりますので--御異論があるところかもしれませんが--仮にそのような発行を認める見解が有力であるといたしますと,むしろ,社債権者保護のための規律として設けられております社債管理会社あるいは社債権者集会の規定というものを含めた株式会社の社債に係る規定は,すべての会社に一律に適用されるべきこととしてよろしいのではないかということでございます。新たに設けられる会社類型については,社債と同様の債券を発行するニーズがあるという指摘がありますので,それらもあわせて考えますと,一律にこのような整理をさせていただくことが望ましいのではないかと思われるところです。   1の(2)は,やや細かい問題です。現行の商法第30条は,要するに,取締役に対して社債に係る債権の取立てをするよう求めているわけですけれども,債権の取立ては取締役の善管注意義務一般の問題でございまして,特にそのような規定を格別に設けておくべき理由もないと思われますので,整理をさせていただきたいということでございます。   2の社債管理会社の事務承継者の選定に係る公告・通知の規定の削除の問題ですけれども,お知らせ的な公告・通知の規定については整理をするというのが,電子公告に係る公告・通知の規定の整理以来の方針であるわけでございますが--これもその一環の問題であるとお考えいただいて結構だと思いますが--社債管理会社の事務承継者の選定については社債権者集会の同意が必要とされておりますので,これについては,社債権者集会の決議に認可が必要である以上,商法328条により常に公告が行われるということになります。したがいまして,商法312条2項の公告をそれとは別に行うことは殊更必要ではないはずでございます。また,社債権者集会の決議の認可については,その決議事項の実質の軽重にかかわらず,個別通知が要求されていないところでございまして,それとの比較において,事務承継者の交代ということがとりたてて個別通知にふさわしい事柄でもないと思われますので,規定間のバランスという観点から,個別通知についても削除してよろしいのではないかということでございます。   3は,無記名社債券の供託の制度について,その廃止と代替的な制度の創設とを提案するものでございます。現物の無記名社債券の大半が証券会社の保護預りとなっているという現状におきましては,その現物を供託するということは相当程度の実務上の負担となり,ひいては社債権者の権利行使を阻害するという指摘もされているところでございます。必ずしも供託という手続をとらなくとも,それに代えて,現物を呈示するというような手続を設け,二重呈示の防止というような点についての手当てがきちんとできれば,それで十分ではないかということでございます。ちなみに,法的倒産手続におきましては,債権届出の際に現物の供託を要しないものとされているところでございます。   4の「社債の譲渡等関係」についてですが,(1)は,株券と同じような不発行制度を社債券についても認めたらどうかというものでございます。流通を予定しない社債についての無券面化のニーズは常々指摘されているところでございますし,また,株式,社債,新株予約権,新株予約権付社債について,その譲渡の方法や対抗要件について同じように整理させていただくということが,現代化にふさわしい整理の在り方ではないかと思われるところでございまして,このような提案をさせていただくということでございます。   (2)についてですが,社債に係る名義書換代理人につきましては,現在,定款記載事項ということになっておりますけれども,社債の発行自体,資金調達の一方法として業務執行機関の決定し得る行為でありますし,株式に関連しないということであれば,必ずしも定款記載事項とする必要もなく--もちろん定款で定めるということも構いませんけれども--社債の発行が必要であるという場合に定款に名義書換代理人を置く旨の定めがなくても業務執行機関の決定によりこれを置く余地を認めてよいのではないかということでございます。   第5の(1)は,資本,準備金,剰余金のそれぞれの間の行き来について論理的な整理をさせていただくとした場合に,ここに掲げられておりますような計上のみを禁止しておくという整理も難しいことから,適正な手続をとった上でそのような道筋を設けるということでよろしいのではないかということでございます。   (2)は,実務上の要請に応えようとするものでもありますけれども,定時総会が終了した後に当該定時総会において決議した計算書類の修正を図ろうとした場合の手続が現行法では明確ではありませんので,この点について,定時総会終了後におきましてもその修正を行い得るということを明らかにすることとしたらどうかというものでございます。   第6の「清算関係」についてですが,まず,1の(1)の清算人会の設置の在り方についてですけれども,現在,株式会社についてはそのすべてに取締役会が設置されるということもありまして,判例におきましては,株式会社の清算人は一人でもよいとしつつ,清算人が二人以上いる場合には当然に清算人会が組成されるというような考え方がとられているところでございます。しかしながら,新法のもとでは取締役会の設置自体が原則として任意となりますし,また,清算人が一人いれば足りる旨を明らかにするということは既に了解事項であるところでございます。   したがいまして,清算人会という,単に清算人が複数いる場合とは異なる規律を有する機関を設置する場合につきましては,取締役会と同じように,3人以上の清算人がいることを要件とする--言いかえれば取締役会のルールと基本的にそろえる--ということとさせていただいてよいかどうかということでございます。ひいては,取締役が二人でも取締役会を置けるようにしてもよいかどうかというような議論にもつながり得るところもありまして,このような整理をさせていただきたいということでございます。   1の(2)につきましては,現在もこのように考えられているのではないかと思われるのですけれども,その点を明らかにさせていただこうとするものでございます。清算人につきましては任期がございませんが,監査役については,その任期を画する基準となる決算期という概念が清算中の会社についてはなくなるということもありまして,現行の条文上は必ずしも明らかではないところでございます。清算人については,清算が短期間で終了するということを想定して,任期がないということとされているのであれば,監査役についても同様の整理をさせていただくということでよろしいのではないかということでございます。   2についてですが,実質についての御議論をちょうだいしたいと思います。   現行の商法125条においては,清算中の会社の債務の弁済についてのルールが設けられているところでございます。ここでの清算は,多くの場合,債権者の目から見れば会社側の一方的な都合による解散に係るものでございますけれども,民法の一般的な原則とは異なりまして,会社側の期限の利益の放棄を認めつつ,その期限の利益の放棄によってもたらされる債権者側の不利益には必ずしも考慮しなくてよいというのが,この125条1項から3項までのルールでございます。この規定がなければ,期限の利益を放棄して支払うにしても,元本のほか期限までの利息をきちんと支払うということが原則であるはずですけれども,2項,3項を御覧いただきますと,そのようにはなっておりません。特に,無利息の場合には,中間利息控除を法定利息によって行った上で減額した額を返せばいいという形になっているわけでございます。これはこれで一つの制度の在り方かとは思いますけれども,例えば破産手続におきましては,この中間利息相当分は債権としてなくなるわけではなく,劣後債権として取り扱われることとされております。倒産手続における会社以上に清算中の会社を優遇する必要があるかどうか,1項から3項までの取扱いが合理的かどうか,御議論をちょうだいしたいと思います。   なお,4項の条件付債権等につきましては,清算をスムーズに進めるためにそれを現在価値に引き直す必要が--清算を早期に進めようと思う場合には--会社側に生ずるわけでございますけれども,そのこと自体が必ずしも債権者を害するものではないとすれば,条件付債権等に限っては,鑑定人の評価のもとにその時点における適切な額で債権者に弁済するという道があってもよいのではないかということで,仮に4項の実質を残すということであれば,その前提として条件付債権についても弁済することができる旨を明らかにし,弁済する場合には鑑定人の鑑定評価を受けなければならないという規定に整理するということになるのではないかと思われます。あるいは,125条の規定をすべて削除してしまうということもあり得るかもしれませんが,その場合には,個別に債権者との合意を得て支払をするということになろうかと思われます。   第7の「会社関係訴訟関係」についてですが,1は,判例上認められております新株発行不存在確認の訴えにつきまして,規定を整備しようとするものでございます。今回の現代化の作業の中で,どこまで規定を明確化し,平仄を合わせるというような整備を図るかという問題の一環でありますけれども,今回の整理においても規定を設けないこととした場合にはそれが消極的な方向での意図であるととられないようにする必要がありますので,特に判決に対世効が認められることが解釈上確立しているようなものにつきましては,規定をきちんと置いておくことが適切ではないかということから,1のような手当てをさせていただこうと思います。   それに関連して,御議論のあるところだと思いますけれども,(注)についても同じような処理をさせていただけないかどうかということでございます。少なくとも株式に関連するものにつきましては,その発行の無効や不存在の確認を求め,その判決に対世効を持たせるという実益は高いと思われますので,このような規定の整備もさせていただきたいということでございます。   2以下は,規律の明確化にかかわることでございますが,2は,提訴権者について,現在の条文上は必ずしも明確には規定されていない者の取扱いを明らかにしようとするものでございます。解釈に委ねて差し支えないのではないかという御指摘もあろうかと思いますけれども,代表訴訟における株主の取扱いについて比較的細かい規定を置こうといたしますと,それ以外の会社関係訴訟の場面ではどうかということが問題となり得るわけでございます。「……であった者」という者が提訴権者に含まれるかどうかということはそれなりに吟味をする必要があるところでございまして,既に取締役・監査役の地位を失っている者等であっても,解釈上提訴権者として認められ得るものについては,少なくとも条文化の作業においては,整理をさせていただきたいということでございます。   3,4,5も同様でございます。   3についてですが,設立無効の訴えに関して,特に担保提供制度の規定が設けられていないということについて,ほかの訴訟との平仄上,同じような規定を置くということでよろしいのではないかということでございます。   4,5は,現在,その処理が必ずしもはっきりしていない部分を明確化しようというものでございます。4につきましては,自己株式を無効にしないということでありますと,その自己株式が転々流通し得るということになりまして,巻き戻しができないということになりますが,それではまずいだろうということでございますし,5につきましては,現物出資により発行された株式が転々とした場合に,現在の株主にその現物を返すということがよいかどうか--そもそも現物が返せる状態にあるかどうかという問題もありますけれども--特に株式が細分化されて譲渡されていたような場合にはなかなか難しい問題もありますので,きちんとした規定を設けるとするとこのような規定になるのではないかということでございます。   最後に,第8でございますが,商法25条の会社に対する適用の在り方として,どのような競業禁止規制を設けるべきかということでございます。25条では,営業譲渡に伴う競業禁止規制として,当事者間に特約がなければ1項の内容での規制がかかり,特約があっても2項の限度でのみその効力を有するものとされているわけでございます。現在の経済,企業活動の在り方に照らして,デフォルトルールが1項のような内容でよいかどうか--地域の限定が同一市町村とその隣接市町村とされていますが,それでよいかどうかということと,20年という期間の長短--という問題もあると思いますが,25条について事務局において検討し,最小限手当てが必要ではないかと思われる点は,2項について,特約の効力を同一府県,隣接府県の範囲までしか認めないということは少なくとも現在の企業活動の範囲の広がり方からするとやや狭過ぎるのではないか,特約の効力の及ぶ範囲については特約での契約自治を自由に認めるということでよろしいのではないかという点でございます。この点だけについて手当てをするということにいたしますと,30年という期間の制限は残るわけですけれども,その点をどうするかということもあわせて御議論いただきたいと思います。   この議論は,あくまで会社が譲渡人となる場合の営業譲渡についてでございますけれども,商法総則に残ります規定,すなわち個人商人が譲渡人となる営業譲渡に係る規定については別の規律を設けることとすべきかどうか,会社が譲渡人となる場合と同じような規律を個人商人の場合にも設けることとすべきかどうか,あわせて御議論いただきたいと思います。商法総則についても,今のところ,少なくとも現代語化は必須という状態になっておりますので,もし実質について変える必要があるのであれば,あわせて御指摘をいただきたいところでございます。   事務局からの説明は,以上でございます。 ● 今,全体について事務局から説明をいただきましたが,何か,全体につきまして御質問ありますでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,順次御審議いただきたいと思いますが,今説明がありましたように,事務局で検討したところ出てきた技術的問題ということなのですが,かなり実質にかかわる問題もありますし,それから,概念の整理だけだというものの,びっくりするような--株式分割も株式併合も概念としてなくなるということでありますので--かなりドラスチックな部分もあるのではないかと思います。   これは,どうしても本日全部審議を終えていただかないといけませんので,できればそういう重要部分に時間を充分とって,純粋技術的なところはどんどん決めていっていただければと思います。よろしくお願いいたします。   では,まず第1からでありますけれども,第1の1につきましてはいかがでしょうか。これは,要するに,今でも発行価額と引受価額には差があり得るという理解が一般であろうと思いますが,ただそれを条文の上ではっきりさせるというだけだということですが,これはよろしゅうございますか。--それでは,御異論なければ,これはお認めいただいたこととさせていただきます。   次,第1の2でありますけれども,これは,設立について現在は打切発行というのはないわけですけれども,それも認めることにしてはどうかと。最低資本金がなくなったことと深く関係するのではないかと思いますが,これはいかがでしょうか。 ● 改正されても募集設立は制度として残りますが,基本的に発起設立を念頭に置いてこういう規制は考えたらいいかと思いますが。ちょっと確認ですが,発起設立の場合に,例えば5人で発起設立しましたと,そのうちの4人が出資すれば下限は確保するけれども,一人が全然出資しませんでしたと,こういう場合もそのまま設立を認めたらよいだろうということも含意されていると理解していいわけですね。そういう事態を想定されているのかどうか。   もしそうだとすると,今後も発起人は定款に記載することになっているわけですね。先ほど,新株発行とこことは,最低資本金なり何なりのこともある,一緒にしたらのいいのではないかと言われましたけれども,資本充実の観点からも発起人の地位を重視すると,そういう事態が本当にいいのかどうか。実質はいいではないかと言われたらそうなのですが,理念的に新株発行と同じにしたらと言われても,同じでない場合もあるので,少し検討を要するのではないかと感じたのですが。 ● これはいかがですか。発起人の中に払い込まない者がいたというときは,これはやはり定款変更をしないとだめなのではないかという気がしますけれども,いかがですか。 ● 一応,発起人中に払い込まない人が最終的にいるということ自体もあり得るものとして考えてはいるのですけれども。 ● そんなものではないかと言われたら,そんなものなので,それはまた先ほど○○委員が言われたように,これまでの考え方からすると,実質的にどうかは別としても,理念的には相当の変更だなという気がしたのですが。 ● それは定款変更ではないのですかね。公証人の認証を受けて,幾らと書いたのに,それが実は払い込まれないと。 ● だから,発起人は1株以上払い込まなければいけないというルールをもうなくしてしまうということまで割り切れば,またそれも一つの方法かなという気はするのですが,やはりそれは誠実に設立するための担保として,まあ1株以上というのも弱々しい話ですが,発起人は1株以上引き受け,払い込まなければいけないという基本理念からは根本的な逸脱になって,資本充実,あるいは泡沫設立の歴史的経緯をどう考えるかということだと思います。 ● やはり,あの人が発起人として加わっていると思って他の発起人もいるわけで,それが払い込まないから当然に失権するのだというわけにはいかないのではないかと私は思いますがね,解釈として。もう何が何でも発起人失権という制度を認めようということなのですか,これは。   ほかの委員・幹事の方,いかがですか。 ● ○○委員の御意見に賛成です。やはりこの点まで変える必要性はそれほどないのではないかという感じがいたします。 ● もしこの2をやろうとすると,今言ったように,どこまでこれは認めているのだというややこしい問題が出てくるとすると,○○委員は,そんなややこしいことはもうやる必要ない,今までどおりで別にいいではないかということなのですが,いかがですか,皆さん。もう何が何でもこれはやはり必要だというふうに思われますか,2については。打切発行をどうしても認めなければいけないかと。○○委員は,そんなややこしい解釈問題が出てくるなら,もうこんなものは入れるなという……。 ● 実務的にもとても必要性があるというほどのテーマではないのではないかと思うのです。したがって,そろえるという意味で,どうして新株発行のときと違うのだということがあるかもしれませんが,今,○○委員がおっしゃったような違いもあるわけですし,あえて手をつけるほどのことはないのではないかという気がしますけれども。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。特に手をつける必要まではないのではないかという御意見ですが,それでよろしいですか。   事務局もいいですか。困りますか,非常に,事務局としては。 ● 確認をさせていただきたいのですが,現行法でも,募集設立のときには発起人が1株も引き受けない場合というのはあり得るということですよね。 ● いやいや,発起人はやはり募集設立でも……。 ● 引受け,払込みをしなければいけない。 ● 1株以上は。ということは,その規定が欠けているというふうに考えればいいわけですね。 ● そうしてよいかという話。 ● こちらとして気にしているのは,発起人がとりあえず必ず,今回ですと1円以上は払い込まなければいけないという規律を設けておくべきかどうかというところがまず1点目です。それは実際に規定を置くかどうかはまた別途の問題なのですけれども。   結論的には,その規定を置くかどうかという問題と,それとは別に,ここで言わんとしているのは,株式をこれだけ発行しますというふうに設立の過程でどこかで決めるわけですけれども,その全部が引き受けられないと設立ができないこととするのか,それとも,出資額以上の価額が集まっていれば,その時点で残りの株式を発行しないということで設立を続けるのかという,要するに,二つというか……。   一番極端な場合は,今議論になっているように,発起人が数人いて,そのうちの一部しか出資しない,でも設立できるかという問題と,そうではなくて,発起人全員がとりあえず払い込んだのだけれども,最初は500株出そうと思っていたのだけれども,300株分だけ払い込んで,当初の予定額--先ほどの出資額の下限ですけれども--も満たしているので,その時点で設立させてしまうというのと,ちょっと質が違うものですから。 ● 二つ問題があることは確かですね。後者だけで最初は考えたのですが,○○委員が,これは前者の方も含んでいるのかという問題提起をされたわけです。   いかがでしょうか。   またそれを二つ分けてあれするとなると,またちょっとややこしくなるのですが。 ● 前者の方は,169条で「各発起人ハ……株式ノ引受ヲ為スコトヲ要ス」という規定が現行法でもありますので,これで必ず1株以上引き受けると,特に新しい規定を設けるまでもなく,そうなるのではないかと思います。   後者の方は,いわゆる資本確定の原則ですけれども,確かに,新株発行のときで資本確定の原則を放棄したのは,迅速な資金調達の必要性があるからということが理由で,設立のときはむしろ,○○委員がおっしゃられましたように,泡沫的な設立ということを考えれば,約束した引受け数ぐらいはちゃんと引き受けられる会社でないと設立は認めませんよという趣旨が維持されているのだと思いますので,これは特に変更は要らないのではないかというふうに思います。 ● 今,○○幹事が言われたのと組立て方は同じなのですけれども,第1点の発起人の点は,やはり発起人は1株以上は引き受けるべきだというルールは残すと。   あとは,泡沫的な設立をどうやって阻止するかという問題が残るわけでしょうけれども,その点については,「上記1の出資額以上の出資がされている」という部分をどう評価するかということにかかわってくると思い,そうだとすると,なるべく設立をしやすくしようという要請と,いい加減な設立が行われるという問題点とのバランスをどうとるかという話だろうと思いますから,そうだとすると,出資額以上の出資というのがあるのだからいいではないかというのも十分成り立つ考えではないかなというふうに思います。 ● そうしますと,今まで出てきた御意見は,とにかく,いつの間にか発起人が失権していたというのは認めないと。   これはよろしいですか。御異論ないですね。 ● 少なくともそのときですが,発起人が例えば10株引き受けたところが,先ほどは分かりやすくゼロにしたのですが,10株のところを5株しか払い込まなかったというと,発起人の引受株式は株式申込証に--私が念頭に置いたのはすべて発起設立ですが,例外的な募集設立を念頭に置くと,株式申込証にそれは書かれるはずですから,やはり発起人は設立の中心役なのだから,その人が約束したことを完全に履行できなければ,そんな設立はあやふやだからだめだということで,発起人が書面によって引き受けたものについては確実に払い込まなければだめだというルールにして,あと,募集設立の場合に最低限のものをどうするかということで,これはお考えが分かれると思いますし,設立を容易にしようと思えば原案のような立場もありますけれども,設立するためにともかく最低資本金も1円でいいとなっているのだから,そういう軽率なというか軽はずみな予測をした者について多少のサンクションがあったからといって,設立を容易にするという流れにさお差すものでもなかろうと。やはりある程度の責任は持たすべきだと。特に,募集に応じた者が払い込まなかった場合には発起人が改めて引受け,払込みをすればいいわけですからね。そういう形で,少なくとも最低限の堅実性というのは,これまでの考え方からは十分に維持する必要があるのではないかなと。   そして,この二つを分けると,ほかのところでそんなに規制の合理化を考えなくてもいいだろうと思うことまでも合理化しようとされている立場からすると,何でここだけそんなにするのかなという感じも,少し嫌みったらしくなりますが,感じたなということですが。 ● 発起人については,○○委員がおっしゃるとおりだと思いますね。発起人が権利株を譲渡すると,あれは罰則まであるのですね,たしか。だから,途中でやめたというのはやはりちょっと問題があると思います。   どうしましょうか。発起人以外の者について,意見がちょっと対立しておりますが。 ● 私も,発起人以外の者について格別に細かい微妙な調整をした新ルールを設けることに反対というわけではないのですけれども,余り需要もないことだから,まあそこら辺は今のままで放っておいていいのではないかというように先ほど申し上げた次第です。 ● よく分かります。   どうしますか。非常に重要な問題とも思わないのですが,どうしてもその程度の緩和はしないと事務局としては困るということですか。 ● そうでもないのですけれども。 ● ○○委員は,実務的にはやはり事務局のあれのようにした方がいいのでしょうか。いかがですか。 ● いや,○○関係官が非常に深い思いでおっしゃっておられるので,実務界からは是非こういうことにしていただきたいということでは全然ないと思うのですが,ここの「その下限をもって定めることができる」というのは,トータルの出資額の話をされているのか,それぞれの発起人が幾ら幾らということなのか。そうすると,A発起人が10円以上だと書いてあるときに,その10円だけでいいのであって,トータル以下で各自がばらばらにこうなっているときに,「出資額以上の」と書いてある「出資額」というのは,全体の出資額なのか,各発起人ずつの出資額なのか,どちらの意味なのかちょっと分からなかったのですけれども。   私が理解したのは,各発起人が幾ら以上と書いてある,ところがトータルでは幾らだと定めてあるときに,ある人が幾ら以上のものを,10円を20円する,ある者は10円しかしない,トータルでは100円になったと,そのような設立は認めてよいのではないかという趣旨なのかなとも思ったのでありますけれども,そのあたりをクリアにしていただければと思います。 ● 私としてはこれに余り時間をとりたくないので,後ほど休憩時間も来ますので,そこで事務局と関係の委員でお話しいただいて,それで再度,最後にこれはまたいたしましょう。ちょっとこれ,幾らでも時間とりそうですので。   では,「第2 機関関係」。   「1 任期」の点でありますが,(1)につきまして,いかがでしょうか。就任時ではなく,選任時から起算すると。 ● ○○幹事から御説明がありましたけれども,「選任時」という意味が「選任の効力発生時」という意味だということであれば,問題ないと思います。 ● そういう御説明でしたが,いかがでしょうか。特に御異論ありませんでしょうか。   よろしゅうございますか。--それでは,(1)はお認めいただいたことにさせていただきます。   (2)でありますが,これにつきましてはいかがでしょうか。 ● 基本的な方向としては賛成なのですが,「選任後二年以内の最終の決算期に関する定時総会」がちっとも開かれないような会社において,これが開かれないがために任期が終わっていないと,したがいまして登記所の方から登記懈怠なんて言われたときに,いや,うちはまだ任期の最中ですから懈怠ではないというように争うような事態の展開にならない歯どめをどう設けたらいいのかということだけ,ちょっとお考えいただけると有り難いなと思います。 ● なるほど。   規定の原則と例外をひっくり返しただけのように見えますが,確かに○○委員のおっしゃるような問題が出てくるのかもしれません。   何かその点は。 ● その程度で果たして法務局が登記懈怠でうるさく言ってくるのかどうかというのもあるとは思いますけれども,いつまでも開かれないような場面というのをどんな場面か想定した上で,何らかの対策がとれるものならば考えたいと思いますが,ちょっと今すぐにそういう……,結構イレギュラーな場面のようにも思われますので。 ● 小さな会社では結構多いのではないかと思いますので,重要ではないかと思います。 ● いずれにしても,基本的な方向性としてこれでよろしければ,何らかの対応策がとれるかどうか検討したいと思います。 ● 私も,実質的にはこれでもいいのかなと思いますので,時間をとる必要があるかどうかは分かりませんが,考え方の問題として,監査役については独立性確保のために2年・3年・4年と,こうなりました。そして,(注1)にあるように,譲渡制限会社については10年に1回はやれよという形になっているのですが,そして現行法は2年に1回はしなさいよと,こういう考え方なのですが,それを2年に法定するということは,別にこれは定款で短くできるから実質同じだと言われても,監査役の法定の任期と取締役の任期2年以内--2年ではなくて「以内」という意味とが違うというところが,この規定を設けることによってあいまいにならないかなということで。私,特に異論はありませんが,こういうことが要るのかなとふと思うということだけ。これについてはこれ以上発言いたしませんが。 ● 積極的にこうする理由というのは何でしたっけ。 ● 積極的にというより,まず実際に,実務では,2年というような規定であったとしても,定款の変更をして,結局,この「最終の決算期に関する定時総会」として必ず合わせるようにしているわけで,そのような定款の定めがないから,では臨時総会をずっと開き続けなさいというよりは,こちらの方が実際に合っていると。それと,委員会等設置会社との平仄から考えても,2年と1年という違いはあっても,ここを合わせた方が平仄が合うというようなところから,デフォルトをこのように変えたらどうかという,そういう整理と,実際上の実務の取扱いに合わせるというような観点でございます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   これは,そうしますと,総会がずっと開かれないような会社だと,任期が来ても……,これは結局どうなるのですか。今まででも,定款でそう書いたら結局同じなのですね。定款はみんなそう定めているでしょうからね。実質は余り変わらないと。   それでは,こういうことでよろしいですか。まあ,実際上,定款でそう書いていない会社は恐らくないでしょうから,実質はこういうことだったということで,それを変更する趣旨ではない,実質は変更にはならないということで,もうこうしてしまうと。それでよろしいですか。   それでは,(3)でありますが,最初の取締役1年というもの,それから,ここにははっきりは書いてありませんが,先ほど説明があったのは,合併のときの414条ノ3につきましても,対価柔軟化との関係で問題が出てくるということですが,これはいかがでしょうか。 ● 賛成ですし,特に組織再編関係のものについてあわせて見直しをするということは非常によいことなのではないかと思います。かねてより組織再編関係は気になっていたのですけれども,特別決議を得て行う場合ならともかく,簡易組織再編の場合であっても任期が1年になるということで,子会社やら何やらをちょっとくっつけただけで,取締役会の決議だけで監査役の任期を,せっかく4年になっていたものを1年に打ち切るとかいうようなこともできるような制度になっていたものですから。その点,気になっていたのが,このようにあわせて改正すれば,その問題も解消できると思いますので,大いに賛成です。 ● ほかの委員・幹事の方いかがでしょうか。よろしゅうございますか。--それでは,(3)もお認めいただいたこととして処理させていただきます。   それでは,次に移ってよろしいでしょうか。   「2 委員会等設置会社に移行する際の取締役の任期について」であります。これは実務上の質問が多いところらしいのですが,このような,定款変更の効力が生じたときに任期が満了したものとみなすという処理をする,はっきり規定に書くということであります。   いかがでしょうか。特に御異論ありませんでしょうか。   今の実務的な処理はこうなんですね。そうではない。 ● 今はそうなっていないものですから。というか,もともと普通の会社は2年で,委員会等設置会社は1年なのですけれども,1年経ったところで委員会等設置会社になった場合は,どうせ取締役なのだからもう1年やったっていいではないかというので,特段の規定を設けなかったわけでございます。ただ,そうしますと,委員会等設置会社になる際にちょっと役員を整理したいという場合が実務上は結構多いのだそうでございまして,何かいったん辞任していただいたりなどしているという,その面倒があるという御質問が多々あるようでございますので,これは実務上のニーズに基づくものだと思います。 ● ということのようです。いかがでしょうか。実質はこれでよろしゅうございますか。--それでは,これもお認めいただいたこととして処理させていただきます。   次は,「第3 株式等関係」でありますが,まず「1 単元株関係」で,その(1)でありますが,これは要するに,端株の場合は,端株を廃止すると,単純に端株を売却して金銭を配るということになるのですが,単元株制度で単元株制度をやめたときにはそういう制度はない,つまり単元未満株を単純に売却するという制度はないと。それをパラレルにするということですね。 ● 単元株制度を維持したままですね。 ● 単元株制度を維持したまま単元株を整理する,というケースだそうです。 ● 内容的に賛成なのですが,最初読んだときに,理解するのに1ステップかかったのですが。   これは,(1)の「現行の定款の定めに基づく端株の廃止に相当する制度として」とございますし,条文としては商法220条ノ2第3項後半と書いてございますが,趣旨としては,220条ノ2第5項において220条1項から3項までを準用している部分に相当する制度を設けようという趣旨かなというふうに読み直しまして納得したのですが,それでよろしいでしょうか。 ● そうですね,それは。   今でも,この3項後段で220条ノ2第5項に行きまして,そして220条1項から3項までに行くと。おっしゃるとおりではないかと思います。 ● それで賛成です。 ● ○○委員が最初に言われたこととの関連ですが,要するにこれはどういうことですかね。典型的な場合は,1,000株を1単元としますと,こういう制度を設けていますと……。こういう制度は,廃止する場合は一つの問題ですが,廃止しないけれども,現在ある単元未満株は一回整理しようと思って全部買い取るということですか。 ● そのようですね。 ● それはどういう意味……。単元株を廃止せずにそういうことをする実務上の需要というか,経済的合理性というのをちょっとお教えいただくと有り難いのですが。   それでまた何かあったとき,1月後,2月後にまた単元未満株が出てくる可能性があるわけですね。だから,単元株のくくりを変更したり廃止したりする場合にはそれは分かるのですが,維持したままこれを認めるというのが……。まあ,好きにやればいいではないかと言われたら,そうですかと。つまり,相当の補償をするのだからいいではないかと言われたら,そうかもわかりませんが,やはりこれは株式でしょうとなると,まあ,端株と単元株,どっちを残すかの議論にまた戻るのかもわかりませんが,ちょっと経済的な,合理的な意味づけをお教えいただければと思いますが。 ● 今の○○委員の御発言を聞いて,○○委員も私と同じところで引っ掛かられたのかなという印象を受けたのですが,ちょっと最初に読んだときに趣旨が分からなかった。 ● ただ,はっきりしているのは,廃止せずに買い取るのですね。現在あるものを。 ● そうなんですか。じゃあ,私が勘違いしていました。 ● そうおっしゃったのでしょう。 ● そのようです。 ● それなら分かるのです。 ● 「特別決議に基づく」というのは,どうも単元株制度を廃止して株式併合をするというのではなくて,単純に整理するということのようですね。 ● 現在は,端株を廃止しますと,端株分を金銭処理してしまって全部なしにできますよね。ところが,単元株の場合には,くくりを変えた場合に,そういうようにする措置が決められていないので,株式併合をあわせて行うかとか,そういう必要性が生じる。それをしなくてもいいようにしようというだけのことなのではないかというふうに私は理解して,したがって220条ノ2第3項後半ではなくて,220条ノ2第5項だというふうに読み直して,それで納得したのですが,今の○○委員の御発言を聞いていると,それもまた勘違いして納得しただけかという気がしてきたのですが。 ● 私は,御説明を聞いて確認しているだけなのですが。 ● どうも実務には整理したいというニーズがあって,それのためには,さっき説明されたのは,株式併合をしてそこで端株を整理して,また株式分割をしてもとの単位に戻すという,そういうややこしいことをしなければいけないのを,これでやると一遍にそれができてしまうということですね。そういう制度をつくりたいと。 ● そういう制度を作る意味はどこにあるのでしょうか。 ● とにかく多過ぎてうっとうしいと,ただそれだけでしょう。 ● この制度設計につきましては,この現代化部会が始まったときに,実務界の要望として,単元未満株式なるものが発行済株式に占める割合が少なくなって一定程度以下になってきた場合には,強制買取制度を設けていただきたい,株主管理コストの低減になるのだからということで要望したのでありますけれども,それについては取り上げられなかったわけであります。しかしながら,今回,端株制度の廃止との関係でこういう制度が設けられてきて,この資料が配られてきたときに大変喜んだ次第なのであります。   この意味は,私が思いましたのは,端株であればこういうふうに強制的に金銭に変える制度があると。したがって,単元株式制度をとっている会社においても,これは「特別決議」と書いてあるのですけれども,特別決議に基づく定款の変更によって,単元株を採用するけれども単元未満株式は廃止するという定めを置いた場合に,こういうふうな端株と同じ制度になる制度だと。単元株にはするけれども単元未満株式は廃止するというのが,端株制度と整合性がとれているのかなと,こう思って。そうすると,単元未満株式がその都度発生してくるときに自動的に端数調整で金銭処理していく,しょっちゅう特別決議をするのではなくて。その方が合理的なのかなと思って提案したかったのですけれども。そもそも前提がそうでなければ別ですが。 ● なかなか複雑な制度ですね。○○委員のおっしゃったのは,単元株制度をとっているが単元未満株というのはもうないという会社が出てくると。定款で書けばそういうことが可能だということになる。確かに,実質として考えられないわけではないと思いますが。 ● 最初にお聞きしたときには,単元株制度の採用を廃止する場合の問題だろうと私は理解したのですけれども。最初に読んだときもそうだったのですが,単元未満株がある場合に,特別決議でその単元未満株式の強制買取をするというごく一般的な制度だという理解に立つとすると,相当これは影響が大きい制度になってくるのではないかと。   というのは,今,○○委員がおっしゃったように,単元株自体は整理したいと,そういうニーズというのは非常に大きいわけですけれども,ただ,特別決議でもって端株を廃止して,定款で今おっしゃったような制度をつくってという話とはまた別に,一般的に現状の単元株制度というのを前提にして,それを単純に特別決議で強制買取りするという,限定なしの制度ですと,これは相当……。単元未満株主も相当上場企業では多いですし,それから,その特別決議については単元未満だけの株主は議決権の行使ができないわけですから,非常に不本意な形で単元未満株を失うという問題も出てまいりますので。   ですから,こういうごく一般的な強制買取制度として設けるというのであれば,一方で買取請求に応じた株主は市場売却できるようになりますから,それで対応するということで,ここまでの幅広い制度というのは実務界に対する影響が相当大きいのではないかなということで,ちょっと慎重な考え方をしているのですが。 ● ○○委員のおっしゃったのも,今,○○委員のおっしゃったようなことですよね。実際上は,その後,その会社では単元未満株というのはなくなるわけですね。その趣旨だと ,実質は余り反対はない。端株制度の廃止と同じようなものですよね。単元未満株制度の廃止。   ちょっと,その趣旨かという,これはこういう書き方で……。 ● そうすると,要綱案では,単元株制度を採用した会社において,単元株制度を維持したまま単元未満株式を廃止するという制度を新たに設けるという前提になるわけですか。 ● ○○委員がおっしゃったようなことだと,そうなんですね。 ● それならそれで,また端株制度と同じような形になりますから,そうすると合理性があると思いますけれども。 ● 恐らく,実質は,○○委員は○○委員と変わらないのだと思うのです,意見としては。   事務局が考えておられるのも,○○委員がおっしゃったような,あるいは○○委員が理解しておられるようなあれですか。それとも,その都度その都度,また増えてきたな,ここで整理しようかと,そういうことまであれなのか。それはちょっと,財産権の侵害と言えるのかどうかは分かりませんが,それはいいのですかというのが,○○委員始め,○○委員もそうかと思いますが,相当多くの委員の疑問ではないかと思いますね。   事務局としては……。   皆さんの御意見は,○○委員もそこまでしか考えていなかったと。端株制度の廃止とパラレルな形ということしか 考えておられないので。いわば単元未満株制度の廃止ですね。 ● 別に単元未満株制度という制度があるわけではないので……。 ● 定款でそういうふうに書けるようにしろということでしょう。 ● いや,多分,単元未満株が出る場合というのは結構決まっているのですけれども,そのときに,単元未満に相当する株式について,もうおよそ上げないというふうにやっていただくしかないのではないかと。出てしまいますので。要するに,単元未満株制度を採用しないということは,例えば単元株の一部だけを譲り渡してはいけないとかいう制度もあわせて置きに行かなければいけないわけですけれども,現実問題として考えていくとですね。そうすると,単元を設定しておきながら未満にはならないというか,なれないというか,というのはちょっと難しいかなと……。いや,それだけの実質であれば,単に併合していただければいいのではないかと思いますので。   そういう意味では,1の(1)は,併合していったんその単元株をつぶして,そのままでよければそのまま,でも,その単元の実質を維持したければ同時に分割して,単元の変更の定款変更をもう一回やるというのをイベントごとに三つまとめて同時にやっていただくという制度が法律外に走っていて,こういう制度は特別には会社法上は設けないという結論になるのが多分一番おとなしいのですけれども,単元株制度をとりながら単元未満株制度がないということの「ない」の実質がちょっと分からないものですから。   多分,イベント物,合併とか株式交換とか新株予約権の行使とか,そういうときに単元未満株制度が出ないようにするというのは,それは会社側の割当ての定め方とか発行条項の定め方でできないことはないと思うのですけれども,一律にそういう取扱いも難しいとすると,実質的には余りこういう制度は設けないで,要するに事実上同じことがそういうことでできるという整理にさせていただいた方が,我々としては有り難いのですが。 ● 結論を申しますと,現行の単元株制度のもとで,会社が任意に単元未満株の発生を一切廃止するという制度を設けるということには,ちょっと私は消極でございまして。要するに,計算上単元未満株が出る以上は,その単元未満株は発行せざるを得ないという形に,現行の単元株制度と同様の制度を維持するのが一番妥当だろうというふうに思っておりまして,もし仮にこの(1)の制度を導入するのであれば,定款でもって単元株制度の採用を廃止するという場合に限るという整理の方が穏当ではないかというふうに思います。 ● 私も,先ほど○○関係官がおっしゃられたことが妥当なのではないかと思うのですけれども。もともと単元株制度というものを導入した際には,株式併合でもよかったわけですね。株主管理コストというので考えるのであれば,それが一番正当なやり方であると。ただ,端数が出て,それを大量に一時的に市場売却する等で株価の変動が生ずるとか,そういう様々な弊害というのでしょうか,デメリットもあるので,いわば単元株という制度を設けて,一部株主管理コストの削減を図る制度として導入したというふうに考えれば,先ほど○○委員がおっしゃられたような意味での株主管理コストの削減をするのだったら,やはり株式併合をするという形の制度を選択していただくということで,単元株という制度をとっている以上は,単元未満株というものの存在は認めざるを得ないという制度の仕切りでいいのではないかなと思います。 ● それでは,○○関係官が言われたように,○○委員がおっしゃったような趣旨であれば,もう併合するということでどうかということですが,それでよろしゅうございますか。 ● そのときの併合の正当な事由というのは,1万株を1株にとかいうのは株主管理コストの低減だということで全く問題なく認められると。全然別のことを言っているのですけれども,それはいいわけですね。1,000株を1株に併合するというのが株主管理コストの削減のためですというのは支持されるということで,正当な理由ということでよろしいのですか。 ● よろしいですね。--それでは,(1)は採用しないということで処理させていただきます。 ● 済みません,時間がなくて恐縮なのですけれども,本来の端株制度のところなのですけれども,端株制度の廃止に伴って費用が生じない形での経過措置を設けてほしいという中で御検討いただきたいのは,端株制度廃止の定款変更なるものがある日なされたものとみなされるというふうな規定を経過措置として設けていただけるかどうか,御検討いただきたいなと。端株制度の廃止の手段としてですね。 ● それでは,これは経過措置の問題ですから,事務局で検討してください。   続きまして(2)でありますが,一単元の株式の数の増減により種類株主に不利益が及ぶ場合については,この(2)を採用しませんと,常に種類株主総会が必然的になると。これは,今度新しく採用します種類株主総会,定款で定めておれば,それをせずに株式買取請求で処理するというルートに乗せられると,こういう趣旨の提案ですが,これにつきましてはよろしゅうございますか。   一単元の株式の数の増減というのは,株式の分割・併合とまあ実質は同じ,不利益の及び方は同じでありますので,それとそろえるということですが,よろしゅうございますか。--それでは,これは御承認いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次が,「2 新株発行関係」でありますが,(1)は,現在は「払込期日」という概念を使っておりますが,それを何日かに及ぶ「払込期間」ということにするということであります。そして,払込みをすれば,その人についてはそのときから株主になると,こういう制度になるようですが,いかがでしょうか。 ● これは,そういうことを認めてもよいということであって,払込期日に一斉に株主となるという制度もあるし,選択制を認めるということですね。念のためですけれども。 ● はい,そうだと思います。 ● この払込期間というのは,それこそ定款,会社自治で自由にということなのですか。何か実務的に合理的な日が決まるとは思うのですが,今おっしゃいましたように,払込期日といっても,実際上,申込証拠金とか何かでやっておりますので実害はないと思うのですが,あえてこれを設けるのは公開会社なのか小規模閉鎖会社なのか,どういう需要があってこういう提案をなさるのか,少しお教えいただければと思うのですが。実害はなさそうに思うのですが。 ● ニーズ自体は公開会社の方から聞いています。すなわち,今の申込証拠金の実務をやりますと,実際にお金を手放したときから自分が株式を手放せる時期までというか,自分の株式を売買することができる時期まで,ある程度,一,二週間,間があいてしまいますので,そこを,今ですとブックビルディングをやって仮条件を決めてというふうに価格が決まっていきますので,払い込んだそのときから株主になって売却することができるような形に,なるべく市場の価格と払込価額,それから払い込んだ日と売買できる日を近づけるということと,それから,1日だけではなくて何日間か余裕を見て募集したいということとあわせて考えると,まあそのあたりでということですので。要望としては,公開会社の要望が強いということでございます。 ● いかがでしょうか。よろしゅうございますか。--それでは,これは御承認いただいたものとして取り扱わせていただきます。   次ですが,(2)でありますが,株式譲渡制限会社における第三者割当てにつきまして,総会決議時には割当者は決めないで,後に割当てのときに決めるということを認めてはどうかということですが,いかがでしょうか。 ● これは,こういうことであってほしいという需要もあることは理解できますけれども,株式譲渡制限会社の実態に大きな影響を与える改正なのではないかと思いますので,少し慎重に検討していただけると有り難いのですが。   やはり,譲渡承認をする機関が株主構成について割当て自由的な形でもって何でもできるというわけではないのではないかと思うのですね。譲渡制限株式を譲渡したいと言った者をどこにはめ込むかという程度においては裁量に任されていますけれども,今まで1,000株であったもののうちの100株の持ち株がどこに動くかということではなくて,1,000株発行していた会社が今度は1万株発行するということになったときの割当てまで全く自由だと,株主総会さえ通しておけば,あとは1年の間にどこでも決めていいのだという原則に変わってしまうというのは,ちょっとドラスチックな感じがするのですね。   したがいまして,もしこういう方向へ少し柔軟化するにしても,何らかの歯どめが要るのではないか。例えば,原則割当者も決定するのだけれども,必要があるときにはその必要性を示して任せてくれと言えるけれども,その場合には事後報告をするとか,何らかのものはあった方がいいのではないかという印象を持ったのですが。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。 ● この株式譲渡制限会社については,既にあった提案ですと,たしか有利発行と一元化するという提案だったと思うのですけれども,有利発行のような場合に,発行時に割当者を決定しないで,その後に譲渡承認をする機関がだれに割り当てるかを選ぶというのは,そもそも有利発行の必要性とか,そういう判断の上で問題があるような気がするので,一元化するということと,この(2)の提案というのを組み合わせると,若干問題があるのではないかという気もいたすのですが。 ● ほかにいかがでしょうか。   結局,取締役会が承認機関となっている会社について問題になるのですね。あの制度をどう理解するか。原則は株主が決めるべきなのだけれども,一々総会を開けないから取締役会でもいいよということに譲渡のときにはなっているのだというふうに理解するか,もうだれを株主にするかは取締役会の権限なのだというふうに理解するかで大分考え方が違ってくるのかもしれませんが。   いかがでしょうか。学者から意見がありましたが,実務の方からは。   ○○委員,あるいは○○委員,いかがでしょうか。 ● これは,現行の280条ノ5ノ2の譲渡制限会社においては株主割当て以外は株主総会決議を要するというのは維持するという前提でございますよね。 ● はい。そして,そこで割当先は必ずしも総会では決めていない,取締役会に任せると,そういうやり方を認めろということだと思いますね。 ● 基本的に譲渡制限会社の場合には臨時総会を開くのもそう難しくはないということもありますよね。 ● 今回のあれでは,それは両方どちらでも,取締役会にあれするか総会にあれするかは定款で決めるということになっていますね。 ● ちょっとお恥ずかしい話なのですが,有利発行との関連も重要なことだと思いますが,280条ノ5ノ2の1項の後段あたりで,特別決議を得るときに,株主総会の特別決議である程度合理的な説明がされるのでしょうけれども,固有名詞までは当然に要求されていないと思うのですが,この「新株の割当者」の「者」は固有名詞を念頭に置いている話なのですか。それとも,ある種のこういう方という範囲というのですか,そういうものを……。この割当者の決定というのがどういう意味を持つのかを少しクリアにしていただいて,現行法とどう違ってくるのか,お教えいただきたいと思うのですが。そのときに,あわせて有利発行の--「株主以外ノ者」というのは,別に固有名詞までは要らないと解されていたのではないかと思いますので,そこら辺との関連でちょっと議論を整理していただければと思いますが。 ● 2の(2)の「割当者」というのは固有名詞ですね。すなわち,本当に払込義務を負う人を決めるという最後の段階であります。   現行法との関係で言いますと,例えば280条ノ2の2項は有利発行ですし,280条ノ5ノ2は第三者発行ですけれども,ここは必ずしもこの決議で固有名詞を具体的に定めなければならないということにはなっていないのではないかと。要するに,授権決議的なものを経て,280条ノ2の1項の取締役会決議か,場合によっては株主総会決議で各号に列挙された事項を決議すると。その中で8号なり9号なりというのが出てくるわけでありまして,8号が有利発行の場合なのですが,8号の「新株ヲ発行スベキモノ」の「モノ」は「者」に当たると思うのですが,ここで固有名詞を決議しなければいけないのかどうかすらまた争いがあるところであります。9号は,平成13年の改正のときに,それまでは譲渡については会社の承認が必要だったけれども,割当てについては株主総会の決議さえそろっていれば割当て自由となっているのはおかしいのではないかということで,発行決議のときに,今度はどちらかというと具体的なといいますか,この人に対して割り当てますということを決めましょうということにしたわけです。   今回の2の(2)の提案は,この9号,すなわち,具体的な発行決議段階での具体的な決定を申込みが始まる前に決議をしてやりなさいというのではなくて,申込みがあって,その中からこの人とこの人に割り当てるということを最終的に決めなければいけないわけですけれども,その段階で譲渡承認機関が決めるということであったとしてもいいのではないかという制度にしようというのが,今回のこの案でありまして,そういう意味ではちょっとレベルが小さい話ですけれども。 ● ですから,要するに,280条ノ2の1項の9号を少し弾力化しようという御趣旨と理解していいわけですね。280条ノ5ノ2のコンテクストでは触るつもりはないと。 ● ええ。 ● だから,先ほど○○委員のおっしゃったことは現行法でも問題になることで,これはそういう意味でマイナーな弾力化の提案だと。なら,まあいいかなと思うけれども,根本的に現行法制がいいかというのは,○○委員のおっしゃるような考え方はあると思いますが,これはちょっと何か大ごとになってきたなと思ったのですが,小ごとでなかったのかと思ったので,確認しただけですが。 ● 実務感覚として言うと,今いろいろ御説明があったように,現行法でも,発行時に,あるいは株主総会の決議で具体的な氏名を決議することまで必要ないという理解になっておりますので,その後,取締役会が承認機関であれば,株主総会で定められた,あるいは類型の範囲で具体的な割当者を決めるということで現実にやっておりますので,実際にこの取扱いが大きな変化を及ぼすというものではないのではないかと思いますので,基本的には違和感を持たずに読んでいたのですけれども。ただ,要するに,譲渡制限会社では譲渡承認をするのに株主総会の場合と取締役会の場合と両方出てくるというものに即応してこの点をはっきりさせようという御趣旨かなと理解しておりましたので,それ以上に違和感を持つという点はないのですけれどもね。 ● 実務的にはやっているという……。規定の点では解釈がいろいろあるかと思いますが。   いかがでしょうか。よろしゅうございますか。現在もどうも実務的にはやっているのではないかということのようですが。   次になりますと,これは理論的にはかなり大きな問題で,ちょっと休憩した方がいいですね。   それでは,ここで休憩いたしたいと思います。   さっきの第1の2の点は,この時間に意見のすり合わせをお願いします。             (休     憩) ● それでは,再開してよろしいでしょうか。   第3の2の(3)であります。これは概念的には相当大きな整理ですが,株主割当てについては,株主に対する新株予約権の無償割当てとして整理するということでありますが,いかがでしょうか。   メリットとしては,失権株の再募集等の概念がなくなるということですが,これは条文的には余り大したことはないので,条文的には恐らく新株引受権証書のところの規定がなくなるということが一番大きいのかなと思いますが,この点,いかがでしょうか。 ● 私自身,よく頭の整理がついていないのですけれども,この(3)の(注1)や(注2),特に(注2)で 書かれている問題なのですけれども,「新株予約権と新株引受権を同一の制度として整理するものとする」という整理の仕方のようなのですけれども,新株予約権というのは,会社が新株発行をするという決定をするか否かにかかわらず,権利としてとにかく新株発行を請求する権利があるというものですね。それに対しまして,新株引受権というのは,会社が新株を発行することを決めたときには優先的な割当てを受ける権利があるというもので,ちょっと概念的にワンステップ違うような気がしますし,それから,新株引受権というのは,また幾つか抽象度の違うレベルで現行法上使われていて,とりわけ,例えば280条ノ5ノ2みたいなときは,仮にそういうふうに新株を発行するとすれば,正に優先的に株主に割当てがなされなければならないということを決めているわけですので,新株予約権のように確定的に発行することを請求することができる権利を持っているというものとはかなり性格が違うように思うのですけれども。したがって,それを280条ノ5ノ2の実質を新株予約権で法文として書こうとすると,これは一体どのように書いたらいいのか分からないような感じもするのですけれども,そこら辺,どのように問題を整理して,特にこの(注2)あたりを書かれたのか,教えていただければと思いますが,いかがでしょうか。 ● 280条ノ5ノ2の1項の新株引受権は確かに新株引受株なのですが,実は,この280条ノ5ノ2の1項の「新株引受権」と,例えばその前の280条ノ5の「新株引受権」とか280条ノ6ノ2以降に出てくる「新株引受権」というのは,御指摘のようにややレベルの違うことを同一の用語で書いているということになっております。   (注2)がターゲットに置いているのは,どちらかというと,後ろの方というか280条ノ6ノ2というか,具体的な新株発行の場面で,その権利を行使すれば株式を割り当ててもらえるという場合の「新株引受権」という用語自体は,そこの場面だけを取り出せば新株予約権と実質的には変わりませんので,そこは整理をしようと。280条ノ5ノ2のように,抽象的に,新株を発行するときには株主に対してまず割り当てて,それを解除するためには特別決議が必要であるという,こちらの実質を殊更に動かすわけではありませんので,そこは従来どおり「新株引受権」という用語を使うのか,それとも,株主に対して平等に割り当てないときにはこうしなければならないというように書くのか。いずれにしても,ちょっと異なる権利の内容を同じ言葉で書くというのもよろしくないという点がありますので,そういう意味では,そういう形で整理をさせていただくと。   すなわち,今の「新株引受権」という用語でいろいろな概念を示すのではなくて,端的に,権利者が会社に対して行使をすると株を発行してもらえるというものは全部「新株予約権」というふうに整理し,抽象的に株式を優先的に引き受けてもらえる,若しくは,法文には出てきませんけれども,第三者に対する新株の引受権,有利発行なんかの場合にもたまに出てきますけれども,そういう概念をなくして新株予約権にしてしまおうという,そこまでは--意図しようが意図しまいが条文にはあらわれないので出てきませんが--そこまでを意図するものではありません。どちらかというと,今の,株主割当てで発行すると決定して株主に対して渡したと,この渡した権利というものを表現するときに,二つの用語を残すのではなくて,その渡したという行為は全部,新株予約権を渡したという整理にして,条文を書きかえようという,そういう整理をするだけです。 ● そうすると,新株引受権全般の概念をこの新株予約権で再構成するという話ではなくて,具体的に言えば,むしろ新株引受権証書が発行されるような場合に限って新株予約権と合わせた整理にするという御提案ですか。 ● ですから,条文上出てくる「新株引受権」という用語自体がどちらの意味で使われているのかということをある程度見た上で,具体的に権利行使をすれば株式をもらえるという場面のことを指して「新株引受権」と書いている部分については,そういう概念を削っていって,新株予約権を渡したというような制度設計にしようということでございます。 ● ちょっとよく理解できなかったのが,6の(3)に,「株主に対する新株予約権の引受権の付与という制度は,廃止するものとする」とございますね。ここのところが余りよく理解できなかったのは,実は今の御提案と関連しているのでしょうか,していないのでしょうかということなどをちょっと教えていただければと思うのですが。 ● これ自体も関連はしております。今ですと,新株予約権の引受権というものを与えて,その引受権を行使すると新株予約権がもらえて,また新株予約権を行使すると株式をもらえるという,二段階,三段階の構成になっているのですが,今の新株引受権というものの「引受権」というところだけをとって予約権に当てはめるとそういうふうになるという構成になるのですけれども。2の(3)のように,「引受権」という概念自体,具体的な権利の場面では新株予約権を与えたというような制度設計に変えてしまいましょうというふうにしますと,「新株予約権予約権」というようなものをつくらなければいけないことになるのですが,そこまではしませんと。すなわち,新株予約権の引受権を株主に割り当てるというときには,端的に新株予約権を割り当てるというだけの制度にしましょうと。   ですから,今の実質と変わるのは,今ですと,新株予約権を有償で株主に割り当てるという制度が一応概念上存在することになっているのですけれども,そういう制度がなくなると。 ● それは概念の整理だけで,実体を変えようとするものではないというふうに理解していいわけですか。 ● 実質的には,株主に対して,例えば譲渡制限会社であれば株主に対して平等に株式を割り当てる,若しくは,新株予約権もそのついている新株予約権の数を平等に割り当てるというのが原則で,そうではない場合には特別決議で発行してくださいと。 ● そこを変えるわけではない。 ● そこはそのまま維持した状態で,使われていない制度とか,同じ用語を違う言葉で使っているとかいうところを整理して,若干条文の構成を整理させていただくということです。 ● 私も質問なのですけれども,新株予約権証券と新株引受権証書を一体化するというのはいいアイデアだと思いますけれども,そうしますと,この10月1日から施行される改正で新株予約権証券の不発行制度というものが導入されるわけですが,それで新株引受権証書の不発行というのはまだ導入しないということにとりあえずはなったわけですけれども,新株予約権証券に吸収されるとなると,非常に流通期間の短い新株引受権についても新株予約権証券の不発行制度というものを作る,その代わり,その場合は新株予約権原簿の名義書換えにすると,こういう形になるのでしょうか。 ● そうなりますね。 ● 形だけつくっておいて,結局は使われないようにするというわけですね。 ● ほかに御質問ありますでしょうか。 ● 私,まだ全貌を明らかに……,後ろの方の議論も加味して,最後にトータルに考える必要があるのかと思っているのですけれども,要するに,2の(3)の提案は,ある種の美意識から概念を整理し,かつ,若干の条文の整理ができると。私,そのために何か不安になるような,これはこちらがとろいからと言われたらそれまでなのですが,この期に及んでそこまでしなければいけないのかなという感じがするのです。何か,こういう構成にしたらこうなりますという,事務局サイドではある種の条文のモデルもあるのかもわかりませんが,そこら辺をお見せいただくと,なるほどなと思うのですが。何でこんなことをしなければいけないのかなというのが,率直な私の,三,四日前にこれを拝見したときの印象だということだけを申し上げて,あと最後にもう一回いろいろ考えさせていただきたいと思います。 ● 特に反対するとかいうことではないのですが,この改正によって新株予約権と新株引受権を会社法として統一の制度とすることによって,税法上の取扱いに何らかの問題が生じないのかどうか,税務当局との折衝等はちゃんとなされるのかという,そこだけちょっと確認させていただきたいのですが。 ● どういう問題が生じ得るかまでも把握していないので,必要があればということになると思いますが。 ● ほかに御意見,もちろん結構なのですが,いかがでしょうか。   どうも従来は,法律構成として,新株引受権というのは一種の債権で,優先的な割当てを受ける権利なんですよね。それに対して,新株予約権の方は形成権だと言われていました。それから,経済実態としては,新株引受権は,(3)で言っているような場合には,とにかく会社としてはこれだけ資金が必要なのでこれだけ発行すると決めていまして,それをだれに優先的に割り当てるかという話なんですね。新株予約権の方は,これは行使されようとされまいと,会社としては別にどうということはないわけで,むしろ行使されない方が既存の株主としては有利なのかもしれないというぐらいの話で,どうせ恐らく,新株引受権の場合は失権株の再募集という概念がなくなるのですけれども,やはり足りない分は何らかの形でほかに新株を発行せざるを得ないんですよね。ですから,むしろ,従来新株引受権と言われていたものがちょっと分断されるといいますか,株主割当てだけは新株予約権の方へ行くと。 ● 新株引受権の譲渡性の問題なのですけれども,新株引受権は,本来,280条ノ2ですと,特別に定めなければ譲渡することができないというのが原則の方で,定めると譲渡性があるということになっているので,実際上はそれは譲渡制限をしていることになるのだと思うのですけれども,新株予約権の場合は譲渡性が原則で,譲渡制限をかけることができるという仕組みなのですが,ここはどういうふうに整理されることになるのでしょうか。 ● 整理をする予定はないというか,今でも,要するに,新株引受権の原則と例外がひっくり返っていますけれども,譲渡できるようにするかしないかが選択性になっている点では両方同じですので,そこはそういうことのままです。 ● 新株予約権は,譲渡制限ですから,取締役会の承認を要すべき旨の定めができるということですよね。今のは,新株予約権は本来株主割当てをして,この株主だけ割り当てます,そしてそれは譲渡できませんと,全く譲渡性を排除できる仕掛けになっていますよね。 ● ほかにいかがでしょうか。御意見ありますでしょうか。   これで本当に実質が変わるところはないかというところが皆さんの御関心のところだと思うのですけれども。 ● 実質ではなくて技術的なことかもわかりませんが,(注2)では新株引受権証書と新株予約権証券の話になっていますが,要するに,先ほど来あるように,実務上譲渡性が認められていませんので,実務上は新株引受権証書もないものという前提で考えてもいいのかもわかりません。むしろ実務上は株式申込証でやっているわけですね。この株式申込証でやっている実務がこういう構成で変更にならないわけですね。株主割当てと通常の新株予約権というのは,理念的に考えると同じようにできるのかもわからないけれども,やはりちょっと違うものと実務は考えており,それがあながち不当ではないように思うというのか,それが先ほど○○委員がおっしゃった債権,請求権と形成権の違いにもあらわれているので,何か無理に一緒にすると,本当にいいのかなということ。   それと,先ほど意見を保留したのは,○○委員の質問に対する○○関係官の御説明が,ちょっと私,理解できなかったので,もう一回,後ろの方のところで質問しようかなと思ったからなのですが,結局,抽象的な引受権と具体的な引受権とを区別すると言われても,どういうコンテクストなのかが……。そんな区別をするなら,今のままにしておいて何で悪いのかなと思ったりして,そこら辺の整理が十分に私の頭の中にできていないので,何かこれ,御尽力になったけれども,(注1),(注2)のメリットというのはそれほど実質的なものではないので,実務あるいは我々の頭の体操を無理に混乱させることになるのならやめた方がいいのかなと思ったりしたのですが,それに加える合理性を少し説明していただけたらなという気はするのですが。   つまり,現在でもそれほどおかしい話ではなさそうに思うのですが。こうなっているから現在はおかしいので,このおかしな点をこう変えたいと言われると,なるほどなと思うかもわかりませんが,どうも理念的な話なのかなと思ったのですが。 ● 確かに株式の申込みという概念はなくなるのでしょうね。新株予約権の行使ということになるのでしょうね。 ● 先ほど○○幹事の御指摘になられました譲渡性の違いなのですけれども,新株引受権証書は確かに一般的には発行されないですが,「株主ノ請求アルトキニ限リ新株引受権証書ヲ発行」するという扱いは結構なされているのではなかったですか。上場の際に,上場会社については譲渡性を認めろというような要請がなされていた時期が少なくともありますね。現在はどうかよく覚えていないのですけれども。したがいまして,株主が要求したときだけは新株引受権証書を出すというような扱いだったように覚えているのですが。 ● 今の点は,新株予約権の方も,280条ノ20の第2項の9号で,「新株予約権者ノ請求アルトキニ限リ新株予約権証券ヲ発行スベキモノトスルトキハ其ノ旨」と定められますから,そこは変わらないのではないでしょうか。   ですから,変わるのは,先ほど○○幹事がおっしゃられた,全く譲渡禁止にできるかできないかという違いと,それから,新株予約権の方へ統合されますと,株券不発行会社は新株予約権証券を発行することができませんので,今だと株券廃止会社でも新株引受権証書は発行するという選択肢があるのですけれども,それがなくなるという,それぐらいなのではないでしょうか。 ● 現在でも,新株引受権証書を出すかどうかは自由なわけですから,新株予約権の場合も譲渡性を認めるかどうかは自由なので,従来新株引受権証書が持っていた実質を変えないで新株発行しようと思えば,それは譲渡性を認めるという形の新株予約権にするということですよね。全く譲渡性を認めないということにすれば,新株引受権証書を出さないという処理をしたのと同じと。 ● 余り法律的な発言でなくて恐縮なのですけれども,これを最初に拝見したときに,非常に斬新な御提案だし,法律的に見ても,概念整理をどうするかという問題については,抽象的な新株引受権というのは非常に分かりやすい形でできているのですが,具体的に新株引受権と新株予約権というのはどう違うかと。これは確かに,今御説明があったように,似ていると言えば似ているし,ちょっと違うのではないかと思えば違うということで,私もまだ概念整理については特段整理ができているわけではないのですが,ただ,株主割当てにおける新株引受権が具体化したものと新株予約権というものとは,実質は同じだろうと。○○委員がおっしゃったような一つの,優先的に権利が割り当てられて,それを申し込むことができるという具体的な権利だと。   そういうものとしては実質は同じだろうと思うのですが,実社会からの分かりやすさという面から見たときに,現在,新株発行については,株主割当て,第三者割当て,公募という3種類が一つの通念として使われておりまして,株主割当てですと,新株予約権にすれば株主からの申込行為というものはなくなるということは確かにそのとおりだと思いますし,また,現在の新株発行に対する見方という意味では,会社側のどういう割当ての新株発行をやるかという,そういう見方で経営者の方も考えますし,株主の方もそういう見方で見るというのが実情だと思うのですね。経営者の立場から見ると,株主割当てであれば何も問題ないだろうと。ただ,第三者割当てですと,有利発行になるかどうか,あるいは不公正な発行になるかということに気をつけなければいけないと。公募ならばそれほど問題はないという形で,株主割当て,第三者割当て,公募,どの形で新株発行をやるかという,そういう意味での一つの呼称が広く通用されているという実態があるかと思いますので,そこへ,この株主割当てだけは会社の割当行為というものを全く切り離して,株主に新株予約権というものを行使することができる地位を与えるという形で整理いたしますと,実社会が,会社がどのように新株発行をやるかという形の見方が混乱するのではないかということをちょっと懸念いたしまして。   例えば,13年に新株予約権制度ができたときに,新株予約権付社債というものが同時にできましたけれども,いまだに「転換社債」あるいは「CB」という言葉が実社会で使われているわけです。ですから,仮に株主割当て,要するに株主に割り当てるという条文が,今,280条ノ4などにありますけれども,株主に割り当てるという条文がなくなって,株主割当てという観念がなくなったのだというふうに言っても,恐らく,新株発行の三つの態様として,株主割当て,第三者割当て,公募というような見方が実社会からは一番分かりやすいという実態が残るだろうという気がいたしますので,この点については私は今のところ慎重な考え方をとっているのですが。   あわせて申し上げますと,この(注1)に書いてある,失権株の再募集と会社自身への新株引受権の付与の概念がなくなるという点については,多少,条文で,立法政策的にどういう規定をするかということで解決ができる問題ではないかと思いますので,必ずしも理論当然にこういうふうになるからということだけでもって本文のような形をとるということについては,ちょっと慎重がよろしいのではないかという気がしております。 ● そうなんですよね。従来三つあったものが分断される形にはなるんですよね,どうしても。ですから,既存の法律家にとっては分かりにくくなることは確かだと思います。   いかがでしょうか。   ○○委員もちょっと慎重なお考えではないかと思いますが。 ● 今の○○委員の御発言ですけれども,280条ノ2第2項の有利発行規定ですけれども,「株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スル」という言葉は多分残るのではないかと思うのですけれども,そうであれば,株主割当発行というものは会社法上も残ることにはなるのだろうと思います。それで,新株発行する株主割当増資と言われる場合に,現在の新株引受権に相当する株主あての新株予約権を発行するような形で株主割当増資をする場合と,そういうものを与えないで,株主を対象に最初から新株を発行する,その二つができるだけなのではないでしょうか。   私の整理は間違っていますでしょうか。 ● ちょっとよく分からないのですがね……。   特に有利な価格で株主以外の者に割り当てる場合,これは何か,権利行使価額が安い値段の新株予約権を与えるというような構成になるのではないですか。 ● そうすると,新株発行というのはなくなってしまうということですか。全部新株予約権になる。 ● 今の場合は。例えば,株主以外の者に特に有利な価額で発行するケースはそうなる可能性もありますね。それから,第三者割当てでも,そうではない場合は,これは従来の株式申込者に割り当てるということかもしれません。公募のときは,恐らく株式申込みがあって,そしてやはり割り当てるのではないですかね。   だから,○○委員がおっしゃったように,今まで三つみんなそろっていたのが,この場合はどうなるのだという点は非常に複雑になるような気が私もしますけれどね。 ● 株主に新株引受権が抽象的にも与えられていないときに第三者割当てをやるというときには,正に第三者割当てというのは現在でも実質新株予約権を与えることなんですよね。第三者には新株引受権というものがないわけですから。ですから,直接第三者に新株予約権を与えるというのと同じことだと思うのです。ですから,それを株主割当ての場合にも,抽象的な新株引受権を有する株主に対して具体的な新株引受権を与えるのを,新株予約権を与えるというように整理すれば,結局,第三者割当てと株主割当てはいずれも新株予約権の付与だという整理も十分可能だと思うのですね。   ですから,私が申し上げたのは,今通用している「株主割当て」あるいは「第三者割当て」という用語が,株主に対しては割当行為というのがなくなる,だけれども第三者に対しては割当行為によって新株予約権を与えるというような形で分断されまして,それで「株主割当て」という用語が使われなくなるということも十分あり得るかと思いますので,その辺が,実社会から見て従来の整理が非常に分かりにくくなるという問題が起きるのではないかということであって,法律的な実体はそう変わらないだろうとは思います。 ● いかがでしょうか。どうもいろいろ難しいことがありそうですが。   やはりどうしてもこれはやらなければいけないですか。どうも何となく不安だという,実務にどういうあれが起こるかという各委員・幹事の御発言がありますが。 ● 議論が二つあると思うのですけれども,まず実質が変わるのかどうかという問題が解決されなければいけないということと,実質が変わらないとした場合に,今まで「新株引受権」と呼んでいたものの中に抽象的なものと具体的なものがある,それを例えば分けて考えた上で,具体的なものはもう新株予約権の方に吸収させてしまうのかという法律構成的な問題があると思うのですね。   恐らく皆さんは,新株予約権制度ができてちょうど慣れてきたところなので,また概念が変わるのかという感想をお持ちだと思いますが,もう私などは,10年間,商法に触れたこともなかったので,前は「新株引受権付社債」と呼んでいたものがいつの間にか「新株予約権付社債」になっていて,これが同じものなのかというところから出発しておりますので, 最初は新株引受権だけだったものが,新株引受権と新株予約権とに何で分かれてしまったのだろうと,こう分かれたものがまた一つになって,かえって分かりやすいかなとか,またもとに戻ったのかなとか,概念というのは,時の変遷によって,どこを基準点にすると分かりやすいのかというのもあると思うのですね。   ですから,事務局としても,具体的に,今「新株引受権」として整理されているものを「新株予約権」と構成した場合にはこうなりますということを整理した上で,本当にその整理に何か問題が法的にあるのかどうかということを検証していただいた方がよいのではないかなと。   確かに,商法上は新株引受権証書については少ししか規定がないということになっていますから,今回,社債とか新株予約権付社債とかを含めて,有価証券系の規律に関しては,例えば対抗要件とか発行形態などについてはなるべくそろえたいと,その方が分かりやすいという面があるということでございまして,そうしてくると,本当に新株引受権証書と新株予約権証券とを併存させておくだけの法律的な実質が残るのかというところがまず問題になるということは御理解いただきたいと思います。   もう一つ,確かに商法上は少ししか規定がないのかもしれませんけれども,例えば社振法になりますと,振替新株引受権に係る規定だけでかなりのボリュームがございまして,これを本当に振替新株予約権と併存--多分,振替新株引受権というものはほとんど使われないのではないかと言われているぐらいのものなのですけれども,それを本当に併存させておくだけのメリットがあるのかとか,これは単純に商法だけにとどまらず,ほかの整備とかにもはねてくる問題なので,そこら辺をもうちょっと検討していただいて,余り性急に結論を出していただくと,こちらが立法をする上でかなり労力を割かなければいけない可能性もあるということだけは御理解いただきたいと思います。 ● それでは,今の○○関係官が言われたことですと,ここには株主割当てのときだけのことが書いてあるのですが,第三者割当て,それから公募,このときにはこういうような概念の整理になりますと,それも次回出していただいて,それを御覧いただいてからもう一度御審議いただくということでよろしいですか。   それでは,この(3)はそういうことにさせていただきます。   次のこれも大問題でありますが,3の(1)であります。現在「株式分割」と言われているものは,株主に対する株式の無償割当てとしてこういう整理をするということでありますが,いかがでしょうか。   どうも事務局からの先ほどの説明では,株式分割,例えば優先株を分割して,これは従来から無償交付ではあったことなのですけれども,普通株を優先株主に渡すと,これも現在の株式分割制度で認められていると。これは何年の改正でしたか,全部株式分割に統合したときに,従来は無償交付でできたことをできなくする趣旨ではないというふうに我々年寄りはみんな理解したのですが,最近の方は,株式分割というからにはそんなことはできないのではないかと理解している人も多いやに聞きまして,そういう点の誤解がなくなると,こういう説明だったのですが,いかがでしょうか。 ● 単純な質問ですが。   3の(2)の(注)の意味がよく分からなかったのです。「株式併合についても,同様とする」という,その「同様」の中身はどうなりますでしょうか。 ● これは(2)ですが,株式消却について申しますと,私の理解では,株式消却というのは株主の手元で株式が消えるわけですね,整理のために株券を提供してもらう場合はありますけれども。それがそうではなくて,向こうに株券があって,それで株式が譲渡されたことになる,そして会社はそれを任意消却すると,そういう概念の整理にするということだと思います。   株式併合の方も,例えば○○委員が2株持っておられたら,2株を1株に併合するときは,1株は会社が取得したことになる,そして任意消却すると,そういうことになるのではないかと私は理解しています。 ● (2)について続けて伺ってよろしいでしょうか。 ● はい。その方が分かりやすければ。 ● その前に,(1)についてよろしいですか。   (1)の(注)なのですけれども,今までは,自己株式については株式分割の効果が及ぶという実質的整理をなされていたわけですけれども,これは自己株式の財産的価値をおとしめようという,金庫株制度の利用を妨げようという政策的趣旨なのでしょうか。これは言っている意味が全く理解できないのですけれども。自己株式のみに株式分割の効果が及ばないということは,自己株式の価値がどんと落ちるわけですよね。こういう憲法違反的なことをやっていいのかどうかということですけれども。   いや,趣旨がどういうことなのか,ちょっとよく分からなかったものですから。 ● この(注)の整理だと,そういうことに恐らくなるのだと思います。 ● それは全く不当だと思います。 ● 同じ3の(1)について,この3の(1)に書いてある,「株式分割については,株主に対する株式の無償割当てとして整理」するというのを,さっきの2の(3)とあわせて読むと,株式分割は新株予約権の無償割当てになるということになるのですか。両方あわせると。そうではないのですか。 ● そうではなくて,これはもう株式が直接割り当てられる。 ● 株式分割ですと,株主による権利行使の意思表示なしに当然に効果が発生するわけですけれども,この新株発行も,とにかく株主の意思とは関係なしに無償で発行されるものだと,そういう位置づけなのでしょうか。 ● そうだと思いますね。従来の無償交付がまた復活すると。 ● 別のことを質問させていただきますが。   分割だけではなくて,併合にもかかわるのですけれども,このように新しい形に整理し直すと,1株に満たない端数が出た場合の処理は,今は220条でそういう株主に権利保障がされているのですが,それはどうなるのでしょうか。 ● そこは同じですね。要するに,1株を1.5株に分割するというのは,1株を持っている人に0.5株を無償で割り当てると言ってもいいのですけれども,そうすると0.5株の端数が出てきますので,それをかき集めて売却する,そしてお金を渡すと。だから,そこは変わらないのです。   実質的に一番大きいのは,先ほど○○委員が御指摘になった,自己株式について割り当てられなくなるというか,配当並びになるということですね。配当とか合併とかの並びに分割がなるというところが最大のポイントです。 ● 先ほどの○○委員の裏返しの話ですので,ついでに申し上げたいと思うのですけれども,併合の場合,この整理でいくとやはり自己株式については併合の効力が及ばなくなるという整理になりますね。分割の場合は,私,余り強い意見はないのです,どっちでもいいと思っているものですから。けれども,併合の場合は,より実質的に問題かなという気はしています。つまり,併合の場合は,持っている自己株式の価値が,併合が及ばないと大きくなってしまうのですね。分割の場合は,及ばないと小さくなってしまって,それは御不満で,少なくとも従来と同じ価値までキープすることは認めていいのではないかというところまでは,それは反対はしませんが,積極的に今まで持っていたものより価値が大きくなっていいのかというと,そうなるとちょっと何かおかしい気がするのです。放出した後,調達した資金に対する構成が違ってきますので。それだと,ちょっと概念の整理とかを超えてしまっていまして,実質を大きく変えていることになりますので。   この点だけ,分割と併合のルール,これは概念を整理しても,少なくとも一律に効果が及ぶという従来の要綱試案の考え方を生かす形で明文化してくださるなら,まあ考え方として,言葉だけだったらいいかと思うのですけれども。分割は強く言いません。併合の方だけですけれども。 ● 分割の方を強く言います。 ● しかし,併合について,どう概念整理するんですかね。自分から自分に譲渡したという……。 ● みなすような規定という形になるのだと思うのですけれども,そこまでして……。 ● そこまでしなければいけないかということですね。 ● ただ,実質は変えてほしくないわけで。 ● いかがでしょうか。   (1)と(2)は,これは必ずしも一体でなければいけないというわけでもなさそうですがね。   (1)についてはいかがですか。   ○○委員は,少なくともこの(注)は取るという御意見だと思いますが。 ● そうですね。本文の「会社自身への株式の割当てを認めないものとする」というのが同義であれば,本文にも及ぶことですけれども。 ● これも,実質が変わらないかどうかの確認なのですが。   株式分割を株式の無償割当てというふうにしますと,引受けというような概念も出てきたりするとすれば,失権が生ずるようなことになる,そういうことは考えていらっしゃらないのかどうか。要するに,従来の株式分割の手続的取扱いと基本的には同じだという前提なのかどうかという確認が一つです。   もう一つは,やはり税務上のインプリケーションが何か出ないのか。要するに,分割ではなくて無償割当てだということについて,従来よりも不利益な取扱いがされないような考慮がされるのかどうか。   その2点だけ,確認させていただきたいと思います。 ● 割当ての方は,引受けとか何とかいう概念は差し挟みませんので,効力が発生すれば当然に数が増えるということになります。   税は,先ほど申し上げたように,別途ということです。 ● (2)の方ですけれども,実質を変えないということですと,強制消却の場合は,原始定款に書いてあれば可能だというような議論がもともと学説で多かったと思うのですけれども,それは,こういう整理にするとどういうふうに……。そういう場合も,それはそれとして認めるということなのでしょうか。 ● ええ。試案には非常に分かりにくく書いてあるので伝わりにくいと思うのですが,基本的に今の消却の制度と取得の制度をパラレルにするというところまでは,要綱案(第二次案)で書いてありましたけれども,そこから消却だけを抜いていくので,原始定款で定めないと消却についてはできないという話は,それがそのまま取得の方に入れ替わるだけです。 ● あと,213条1項ですと,定款規定なしにやれると。あるいは,210条と212条をあわせると,定時総会での剰余金処分に基づいてできるということですけれども,定款規定はやはり要ることになるのでしょうか。自己株式の消却のときには定款規定の根拠は要らないと思うのですけれども。そこら辺の整合性を,ちょっと私,自分でよく確認していないのですけれども。 ● 213条も,中身がどうなっているのかというのが必ずしもすべてが明らかなわけではなくて,つい最近もどこかに論文が出ていましたけれども,多分,定款の定め方のパターンによっていろいろ手続が変わってくる……。それはそうなのですけれども,現在の自己株式の取得の方は,ある程度ルールが決まっていますので,それに合わせながら,要するに,定款で当然にある一定の条件が満たされれば効力が生ずるというたぐいのものはそういうふうな手当てをし,会社の方でそういう場合になったら取得することができるというふうに決めているものはその取得のための所要の手続をとると。その辺りはそういう形で手当てをしようと考えています。 ● そういう調整をした上で,あとは概念の整理として,ということですか。 ● そうです。 ● ただ,かなり定款の書き方が厄介になりますね。従来は,消却というと,いわゆる随意償還で消却を定めていると,これは当然に消えるわけですよね。だけど,これが取得して消却するということになると,従来の消却の形態ですと,取得して必ず消却すると定款に書くか,取得して消却するかどうかは自由である,会社の任意であるというのと,二つ出てくるわけですよね。そこまで複雑にする必要があるかなという気がするのですがね。 ● まず(1)についてですけれども,現行法でも株式分割によって他種の株式を発行することを可能とするというような解釈が改正当時にはされていたということなのですが,やはり,現代化においては,「株式分割」という言葉自体が非常に抽象的なので,より具体的に規律していかなければいけないという要請が私たちもございまして……。   普通,分割といったときに,チーズケーキを二つに割ったらその半分がチョコレートケーキになるというのは,概念としては余り自然ではなくて,やはり分割後もそれぞれチーズケーキのままであってほしいなと。そうなってくると,「株式分割」という概念を仮に残すとすると,他種の株式を無償交付するときには,正にほかの種類の株式の無償交付というような概念をつくらざるを得なくなってしまうのではないかなと。そうしたら,せっかく改正して無償交付を資本組入れなどと切り離して株式分割に整理したというところが,また何か舞い戻ってしまうようになるのか,どうするのか分かりませんけれども,わざわざそういうときに「株式分割」というものを概念として更に残さなければいけないのかということだろうと思うのですね。   ですから,まず,実質として,もし他種の株式を出すという株式分割があるとするならば,その実質を確認したいということと,もしそうしたいのであれば,法律構成として,それを全部株式分割ということで整理するのはやや困難であるという現実も分かっていただきたいということを申し上げたいと思います。 ● 今の○○関係官の御説明の趣旨を確認したいのですけれども,○○関係官が言われたのは,「株式分割」という概念自体が全部なくなるという意味なのですか。それとも,従前の無償交付に相当する,つまり他種のものを出す場合だけ別の概念にするという意味なのですか。どちらなのでしょうか。 ● それはどちらもあり得る構成だと思うのですが。要するに,「株式分割」というものを同種株の場合だけを示す概念として残した上で,他種のものは「他種の無償交付」というような概念に整理するということも可能だと思いますし。まあ,「他種の無償交付」というものをわざわざ規律した場合に,同種のものだけを別扱いにする必要があるのかどうかというのはちょっとよく分からないですけれども,ぱっと考えると,わざわざ別概念で同種だけを取り出す必要もないのかなという印象もあるのです。   そうなると,今,事務局の方で提案している(1)の整理というのはそれなりに合理性があるのではないかというふうにも思うのですが。 ● (1)の方は,(注)につきましては,○○委員の御意見もありますので,ちょっとこれは難しいのではないかと。   本文の方は,○○幹事が言われるようなやり方もありますね。株式分割と,いわゆる無償交付--ここでは無償割当てと書いてありますけれども--それらが二つ併存するというのと,それから,○○関係官が言われるように,もう全部無償割当てでいいのではないかという整理と。そういう選択だと思います。 ● 私,「株式分割」という概念を残せとは一言も申し上げておりませんので,その点だけは……。 ● 立法的にはどちらも可能かなという気はするのですが。   しかし,一々,「分割及び無償割当て」と全部条文に書くかということになりますよね,二つ併存させると。 ● 一つは,先ほどの2の(3)の(注1)と3の(1)の(注)ですけれども,いずれも株主割当てあるいは株式分割で,自己株式には及ばないという点については,要綱案(第二次案)の「9 その他」の「(1) 自己株式に係る株主の権利の内容」というところで,「株式分割,併合及び強制転換等ある種類の株式につき一律に,かつ,当然の効力が生ずべき場合を除き……自益権を認めない」と,これで前回固まったと思いますので,あえてこの点を(注)に載せるということについては,必要ないのではないかという気がいたします。   それから,3の(1)については,これも実社会のことを申し上げて恐縮なのですけれども,余り法律論ではないものですから。平成2年の改正のときに,「無償交付」と「株式配当」を全部「株式分割」に統一したわけですけれども,それ自体についていろいろ評価がいまだにあると思いますけれども,ただ,平成2年から十数年たって,この「株式分割」というのが,株主に対する株式の実質的な無償割当てという観念で一つの投資尺度にもなっているわけですね,この用語自体が。ですから,あえて「無償割当て」というように整理して,ではこの場合は配当可能利益の資本組入れによるものであるか,あるいは資本準備金の組入れによるものであるか,一つ一つについて別の理由をつけて投資家に説明するということをわざわざするよりも,「株式分割」という用語で投資情報ということになっていますので,あえてこういう形をとらなくてもいいのではないかなという気が実はしているのですけれども。ただ,ある意味では,平成2年前の「無償交付」という用語がいまだに使われておりますので,それにまた戻るという面もあるからかえって分かりやすいという意味で,そういう面もあろうかとは思いますけれども。ただ,インサイダー情報にしても何にしても,「株式分割」というのは一つの法律用語ということでずっと通用してきておりますので,これもちょっと何となく慎重がいいのではないかなという気がしています。   もう1点だけ。さっきの別の種類の株式の無償交付については,例えば,その種類の株式について無償の新株予約権交付決議という形では解決できないのですか。 ● それは,もう一つ,株式分割のほかに無償……。 ● 株式分割は同種のものというふうに一応定義づけをして……。 ● それでもう一つ概念を作るということですね。 ● ええ,現在の新株予約権制度を利用して,別種の株式を株主に無償で発行するという形では解決できないのですか。 ● 特に新株予約権というものを挟まなくてもいいのではないかと思いますが。直接に割り当てれば。   まあ,とにかく二つ作ると。「株式分割」の概念は残したままで,もう一つ。どうも○○関係官のあれでは,とにかく「株式分割」という言葉で違う種類のものが出てくるということは法制的に通らないということのようですから。 ● そういうものを使って株式分割をするというニーズはどの程度あるのでしょうかね。 ● それはあるのではないでしょうかね。だんだん複雑になっていろいろ出てきますと,恐らくあるのだと思いますが。   これは,選択のあれは,要するに,概念を二つ作るか,一つで「無償割当て」だけでいいかと,この選択だと思うのですけれども,いかがでしょうか。条文は面倒になるけれども,二つ置くのが,どうも○○委員の御意見では,世の中は通りがいいと。事務局は余り歓迎しないかもしれませんが。 ● 表現ぶりの問題だけであれば,お任せいただければ幸いですけれども。   「株式分割」といった場合,当然の前提だと思いますけれども,株券を交換して,例えば1株券を10株券に交換するというようなタイプは,正に直截な株式分割なのですけれども,株券の追加発行のタイプの場合には,旧株券を有する既存の株主とは異なり得る,基準日における株主がその追加発行された新株券を受け取ることになり,これをも「株式分割」と呼ぶことにちゅうちょがあるかどうかでございまして--「株式分割」といっても株主の手元で株式が割れるわけではなくて,分割された株式を持つ株主が異なっていくわけですが--それは正に無償交付であるという整理をした方が「株式分割」という語感からは望ましいとすると,異種かどうかには多分かかわらない話ではないかと考えているところでございます。 ● どうも事務局はそうしたいということのようですが。 ● ちなみに,「株式併合」という言葉もなくなるという前提なのですか。 ● それは必ずしも連動はしないように私は思いますけれどね。   とにかく,株式併合については取得だということになるわけでしょう。それはまたちょっと違う話だと思います。   (1)についてはいかがですか。どうしても「分割」という言葉を残すべきなのか。どうも事務局はもうやめたいということですが。 ● 「分割」という言葉をなしにして,「併合」という言葉だけを残すという,そういうことだけはやめていただければ有り難いなと思うのですけれども。いよいよ混乱します。 ● 今でも,有限会社には分割はないんですよね。併合だけなんですよね,たしか。   いかがですか。強い反対はありますか,「分割」はなくすという事務局案について。   概念としてはなくなるわけでしょう。法文の上からは「分割」という言葉はなくなるんですよね。   お認めいただけますか。よろしいですか。絶対に残せという御意見がなければ……。一応よろしいでしょうか。   この(注)は取るということですが,この点はよろしいですね。 ● 確認ですが,要するに1行だけで終わるということですね。整理すると。 ● そうです。 ● それで,一言追加してよろしゅうございましょうか。   お聞きしていると,私は,2の(3)よりは,3の(1)の方は,2行目以下はともかく,考え方としてはこういうことかなという気はしたのですが,やはり実務を見ていますと,株式分割というのは,通常の同種のものを割るのが圧倒的に多いと思うのです。そして,異種の株式,優先株に普通株とかそういうものは,特別の需要に応じた特殊な使われ方だと思うのです。ですから,それを統一的にやろうとするときにいろいろと法制上の問題があるとなったら,この制度を使うこともいいのかなと思うのですが,○○委員がおっしゃいましたように,「株式分割」というのは非常に通りがいいし,「無償割当て」若しくは「無償交付」というと何かもうかったように思えますが,「株式分割」だったら今あるものを割っただけということで,そこら辺のことも含めると,一応この方向で御検討いただけたらと思うのですが,もう少しそういう株式実務なり何なりの,それから先ほど税法の話も出ましたが,そういうことを踏まえて,一応この方向でいくことに,先ほど○○委員が言われたように,強く反対するものではありませんが,やはりいろいろの懸念もありますので,そこら辺の詰めをもう少し事務局でもしていただくという留保をつけて,次にお進みいただければ幸いです。 ● ○○委員から,そういうまとめの御発言がありましたが,よろしゅうございますか。なお技術的な点を事務局に詰めていただくということで,一応の了解はするということですが。   それでは,そういうことにさせていただきまして。次の(2)でありますが,これは,「強制消却」という概念はなくなると。取得した上で任意消却をすると。しかし,恐らく,その任意消却が定款上強制されている場合とされていない場合とがあると,そういう話だと思います。   それから,併合についても,強制取得だと,そういう整理になる。 ● 株式分割については,さっきの違った種類のを割り当てざるを得ないというところから,そういう実質的なニーズがあるからこういう概念の整理をしたいというのは分かるのですが,株式併合について何かそういう具体的な問題があるのか。株式分割の方を(1)のような整理にしたので,株式併合の方についてもこのような整理にするということなのか。実際上の概念整理の上での意義ですね,こういう整理の。それをちょっと説明していただけますでしょうか。 ● 実質はないのです。これは要するに,「分割」と「併合」という対比物になっていますので,○○委員に申し上げましたけれども,分割と,それに対比する併合と。それで,分割の方をもし「割当て」とすると,併合の方も「併合」なのかと,そういうことだけです。   消却の方は,端的に「取得及び消却」とずっと書き続けるのが面倒だというだけの話で。 ● これは,株式併合するときに財源規制が及ぶということではないですよね。だから,「併合のためにする取得についてはこの限りにあらず」とか,財源規制の例外として書いていくということになるわけですか。 ● 財源規制の例外というか,無償取得の状態になりますので。 ● ああ,無償で取得するからということになるわけですか。失礼しました。 ● これは要するに,法律構成上そうするということで,現株が投資家に渡って,それも紙くずになったという擬制ですね。先ほどの○○委員との関係ですが。   実質的なメリットがあれば,そういう構成もやむを得ませんけれども,形の上での整理で余り擬制的構成が適切かどうか。こんなことを読んでクレームをつける投資家もないのかもわかりませんが,何か違和感は……。このコンテクストでなぜ擬制をしないといけないか,そのメリットというか必要性が説明されないと難しいのかなという感じはいたします。実質に反対するわけではありませんが。 ● ほかにいかがでしょうか ● この消却と併合というのを本当に同じくしていいのかなというのがちょっとよく分からないのですけれども。いや,私がちょっと誤解しているかもしれないのですけれども。   消却の場合には,1株単位で消却するというのはあるかもしれないのですけれども,0.5株を消却するとか,そういう概念はないと思うのですけれども。併合の場合というのは,当然,3株を2株にするとか……。そうしたら,もうこれは端数の部分がぼんぼん出てくる,その単位での併合は幾らでもあるような気がするというのが,一つちょっと気になります。   それから,先ほど,端数の処理のところで,分割のところの端数の処理の説明はよく分かったのですけれども,併合した場合の端数の処理というのはどういうことなんですか。要するに,0.5株減ってしまう。2株を1株にする場合はいいのかもしれないですけれども,とにかく端数の処理の部分というのは,多目に取って残りを返すという,そういう処理ということに(2)の(注)の場合にはなるということなんですかね。 ● 確かに併合は細かいあれがありますよね。合併のときとか。   これは本当にやる必要があるんですかね。特に強い要請がないのであれば,もう従来のままではいけないのですか。 ● 「併合」については,そのまま残すということで構いません。「取得・消却」だけは是非整理をさせていただきたいのですが。 ● 併合は,確かに○○幹事がおっしゃったような点はあると私も思いますので,ちょっとこれで説明できるかどうかは……。先ほど○○幹事が言われた点もありますしね。   そうすると,「消却」はかなり条文の整理という面があるということなので,「消却」の方はこうすると。それで,「併合」は従来のまま,概念として残すということではいかがですか。 ● 「併合」という概念を残すのであれば,「分割」という概念も残しておいていただいた上で,また別に「無償交付」もあるのかどうか,そこはちょっと別に御議論いただくということにした方がよろしいのではないでしょうか。何かもう,「分割・併合」なんていうのは四則計算みたいなもので,もうみんなペアだと思うんですよね,概念として。片方だけは残るけれども,片方はないというと,どうやって……。 ● 先ほど「消却」と「取得」を整理したのは,正にその二つを並べるのが嫌だということなので,「分割」と「無償割当て」を二つ並べるというのと同じ問題なんですよね。   一応それで御了解いただけませんか。 ● 名前が残るかどうかというのは我々どもだけで決められる問題ではなくて,法制的な審査などもありますので確約はできませんが,ただ,商法の世界はともかく,社振法のいわゆる振替株式との関係で言いますと,同種の株式が出る,今で言う通常の株式分割の場合というのは,特別の規定が置かれておりまして,自動的にその効力発生日にそれぞれの口座簿の数を倍にするとか3倍にするというような規定が置かれています。実務上非常に要請が強いのでそのような規定を置いているのですが,少なくともそこで異種のものが発行されるような場合はそういう処理は不可能でございますので,恐らく現在の一番典型的な株式分割というのは,少なくとも社振法の世界の中で,こういうものが株式分割であると定義してしまえば,概念としては一類型として残るのではなかろうかと思います。   ただ,商法の中であえて残す意義までがあるのかどうかという点は,異種のときと同種のときとで何らかメルクマールが違うかどうかということになってしまいますので,そこはちょっと難しいのかなという認識でございます。   ですから,先ほど○○委員が,「株式分割」は結構なじみがあるとおっしゃっていましたけれども,社振法の世界,上場の世界では,「株式分割」という言葉がこれからも使われ続けてもおかしくはないというふうに思います。 ● そうですか,社振法には「株式分割」という概念が残る,商法上は消えると。 ● 実態の問題としては,法律がどう変わっても,実質に見合った名称で実務界ではネーミングされて使われるだろうということは,これはあると思いますので,それだけでいろいろと意見を申し上げるわけではないのですけれども。   例えば,今の「消却」と「取得」というのを「取得」というふうにまとめるとした場合に,375条の条文などはどういうイメージになるのか,ちょっと教えていただけますか。資本減少の「左ノ各号ニ掲グル場合ニ於ケル」という中に,1号が「株主ニ払戻ヲ為ス場合」,2号が「株式ノ消却ヲ為ス場合」,それで「消却スベキ株式ノ種類及数,消却ノ方法」等を決議せよとなっているのですけれども,これは結局,株主に払戻しをなすという自己株取得一本の条文になるということになるのでしょうかね。 ● 375条自体は,各号が全部なくなるだけですね。要するに,資本減少に伴う払戻しというものがなくなってしまいますので,資本金が減る,それでそれがその他資本剰余金になるというだけの条文になります。もし払戻しをしたければ,その他資本剰余金を払い戻すと,消却というか,取得をしたければ,そのときに合わせて自己株式を取得するという決議をするというだけに整理されますので,それはここの問題ではなくて,計算の方の問題になりますね。 ● よろしゅうございますか。   それでは,先ほど○○委員が言われましたように,これから技術的な詰めをまだしていただくという前提のもとに,一応,現時点としては,(1)については,最初の1行を認める,(2)については,株式併合は現在のまま,それから株式消却についてはここに書いてあるような整理を一応認めると。よろしゅうございますか,それで。   それでは,次に,(3)ですが,これは,例の今度新しくできる,正当理由がある場合の株式消却・取得,それが有償で行われる場合の話でありますけれども,その代金調達のために,株主から取得する株式を売却するという場合の手続ということであります。まあ,こういうこともあるのかなということで,これは特に何か実質的に非常に大きな問題が起こるということではないのではないかと思うのですが。 ● この「自己株式処分」なるものがそもそも有利発行等に該当しないのであれば,普通の処分決議でいいわけですよね。これは一体どういう局面を想定して……,株主総会。取得する,それをまた有利発行で処分したいというような場合,一緒くたになっていいですよという,それだけを言っていることなのですか。 ● それだけです。だから,通常発行だと,公告とか通知が別途要らなくなるとか,有利発行であれば,その有利発行用の決議が要らなくなるというだけですので,大した内容ではないのですけれども。 ● これは,要綱案(第二次案)の第4の2の(5)を受けた提案ということですね。正当な理由だけありますが,先ほどの御説明のように。だから,我々が想定していたのは,それだけには限らなく,正当理由で広くなりましたが,倒産状況とかそこら辺を念頭に置いた特殊な状況のもとの特殊な正当の理由がある場合の特殊な取扱いと。だから本体には余り影響がないと,こういう理解でよろしいわけですね。   ただ,どんな場合になるのかよく分からないので,是非の判断能力がないので,まあそういうことなら,ほかの方に,専門家に任せましょうと思うのですが。 ● 本来余り想定していないケースなのだろうと思いますけれどね。--よろしゅうございますか。   それでは,(4)でありますが,これは純粋技術的な問題で,恐らくニーズはあるのだと思いますが,これはよろしゅうございますか。--それでは,これはお認めいただいたことにいたします。   次,4でありますが,これはいかがでしょうか。 ● これはかなりマイナーな話だという御説明でございましたけれども,譲渡制限会社は大変多うございまして,多くの場合はスムーズにみんな何とか処理されていると思いますので,そういう意味ではマイナーかもしれませんが,いざ紛争になったときには,一体どこまでブロックできて,どこまで引っ張れるのかとか,ルールいかんによって非常に大きな影響を当事者に与えるということで,最近は最高裁の判例なども出るようになっておりますし,考えてみるとなかなか難しい問題だと思うのですね。   御趣旨は,株券の供託ということがなくなった場合においてのみ,バランスを回復するために供託義務をなくそうということだと思うのですけれども,本来,株券を供託するということの意味はどのみち本当に薄くて,供託しなかったからといって何か役に立つようなものではないわけですね。これに対して,やはり金銭の方を供託するということが非常に重かったわけです。その軽いものがなくなったからということで,この重いものも一緒になくしてしまう,ただそれだけというのでは余りにも粗っぽい,と言ってはおかしいのですが,もう少し微妙な利害調整の必要な局面ではないかと思うのです。   しかも,供託義務がなくて,かつ,いろいろ引っ張っておきながら供託もしないでいいものですから余計に,先買権者で先に買うのだとか言っておきながら価格がちっとも決まらない,それで裁判所へ行って長くかかってやっと決まったと,それで履行しないとなったら,当然に売買契約が解除されて,そのころには売りたいと言った人の売るチャンスなどというものは到底なくなってしまっていたというようなことになりますと,これは相当問題になるのではないかと思いますから,やはりもう少しバランスのよいルールにしなければいけないのではないかと思います。   先ほどの御指摘の中に,一遍供託をしますと,相手方の協力が得られないと取り戻せないという御説明がありまして,それは確かに実務上ネックになっているようですね。   ということを考えますと,株券を発行していない会社の場合だけではなくて,全体をもう少しルールを見直してバランスのよいものにした方がいいという点は私も賛成なのですが,この御提案についてはちょっと問題があるのではないかと思って います。 ● 私も,そのアンバランスという指摘は少しおかしいのかなと思っているのです。   というのは,この10月1日から施行される株券の不発行制度の関係で,株券廃止会社について商法施行規則の改正を行いまして,先般公布したところなのでございますが,この新しい商法施行規則の194条1項3号におきまして--これは法制審の別の部会で御審議いただいたところに従ったものですけれども--供託をしたことを証する書面を提出すれば,取得者側,つまり先買権者側の単独の請求でもって株主名簿の名義書換えに応じなければいけないという形に規定を整理しておりますので,株券が供託されないことのアンバランスというのはそれでなくなるだろうという結論に前の別の部会の方ではなっていたところなのですけれども。 ● 大した話ではないので,現行のままでよいというのであればそれでもいいのですが,株券が供託されている場合とは違いまして,株券不発行の場合には,特にこの手続が進んでいるから当然に名義書換えが禁止されるというような措置を講ずることができるわけではありませんので,そうだとすると,不平等感というのは引き続き残るわけです。手続がうまく進んだときに,先買権者において名義書換手続の履行を確保する手段があるという意味では,不発行の場合についての手当てはできているのですけれども,そもそも手続が進行している途中で当該株主によって別の譲渡がされてしまい,その譲渡について名義書換えが行われてしまうということを--株券が供託されれば防ぐことができるのですけれども--株券が供託されていない場合にはそれを防ぎようがないにもかかわらず先買権者だけに金銭の供託義務が課されているという辺りのバランスをどう見るかということでございます。   まあ,大した話ではないので,御異論が多いということであればやめてしまおうかと思いますが……。 ● いかがでしょうか。   どうも異論もおありのようですので,事務局もこれはやめてもいいということのようですから,もうやめましょうか。それでよろしいですか。--それでは,これはもうやめと。   それでは,次に進ませていただきまして,「5 授権株式数関係」ですが,新株予約権を発行している会社については,それを除いて4倍という授権株式数を認めてはどうかということですが,いかがでしょうか。 ● 私の勉強不足かもしれないのですけれども,この新株予約権というものについて,会社がそれを取得することとか,それを処分することに対する規制というものは,確か,ないのではないかと思うので,そういたしますと,この手の会社でもし悪用されると--悪用と言っていいのか分からないのですけれども--新株予約権を発行しておいて,会社がそれをたくさん買い取って,実際はそれを取締役会が思いどおりに処分することができるような状態にして--この規制だと,この制約をかけたにもかかわらず,実質的には取締役会の権限が授権されているもの以上に膨らんでしまうのではないかという気がするので,こういうニーズがあることは分かるのですけれども,これだけだと緩過ぎるのではないかという気がするのですけれども。 ● ○○幹事のおっしゃった前半部分は,私,全く同意見でして,これは6の(4)のところでお願いしたいなと思っていたことなのですが。つまり,自己新株予約権の行使の禁止だけではなくて,取得・保有・処分全体をよく見てルールを決めた方がよいのではないかということで,前半は全く賛成なのですが,この5自身のことで言いますと,現在でも解釈でそうなるのかぐらいに思っていたのですが,違うのですか。というのは,新株予約権の行使期間中は,新株予約権行使により発行すべき株式数は未発行株式として留保しておかなければならないということになっていますね。 ● ですから,それは4倍の枠内なんですね。これは,既に発行している新株予約権分については枠外にできると。ですから,これは,典型的には,ポイズン・ピルとして新株予約権を出しているような,大量に新株予約権が出ているときの話ではないかと。 ● 分かりました。反対です。 ● 質問なのですけれども,こういう法律になる場合には,授権株式数がいっぱいになった後で新株予約権を出す場合においても規制はかからないと。 ● いや,これは,ある状態のときから授権枠を広げようというときにだけ。 ● 既に出している新株予約権については入れないけれども……。 ● 入れないというか,授権株式数との関係では,常に新株予約権の行使によって発行される株式数も含めて授権株式数の中に入っていなければいけない。それはそのままなのですけれども。4倍に増やそうと,要するに,授権株式数を増やそうとするときに,今の348条は,発行済株式総数掛ける4と書いてありますので,未発行の部分があると,そこはカウントされないのですね。だから,上に広げるときにはカウントされないのだけれども,普段はカウントされてしまうというふうになっていますので,増やすときだけ,いったん外に出して,4倍に増やして,それでまた戻してくる--戻してくるというか,また上に足し込むだけなのですけれども。ですから,授権枠が一杯になっている状態で追加で新株予約権を発行しようと思ったら,それは授権枠を広げてもらって,それで空いた枠を使ってもらうしかないのです。 ● いかがでしょうか。   これはかなり実質にかかわる話なんですね。実質は,先ほど申しましたように,相当新株予約権が多いときに実際上問題になるのですね。何かぼんぼこ新株予約権が出やしないかという気はするのですけれども。   「株式譲渡制限会社を除く」ですから,これは公開会社の話ですよね。本当に大丈夫ですか。 ● 株主によって会社の株主構成あるいは資金調達の在り方をある程度コントロールする手段として授権株式制度があるわけでありますから,新株予約権という形でそういうものが出ていくというのは,その範囲で会社の財務構成,ポイズン・ピルなどを含めてある程度規定していくことになりますから,やはりそれを含めた4倍の枠という中に入れて考えた方が,株主によるコントロールの趣旨からはよろしいのではないかという感じがいたします。 ● いかがでしょうか。どうしてもこれはやるべきだという御意見はありますでしょうか。   どうも○○委員,○○委員からは懸念を示すあれがありましたが。 ● これを事務局で入れていただいたというのは,敵対的買収防止策として有効な手段となる,逆に言うと,こういう制度がないと不適切な買収に対する対抗措置を講ずる手段が薄くなるという思いで入れていただいたということなのでしょうか。それとも,何か……。 ● 一部から,そういうものも含めて要望が出ていたということもありますし,昨年でしたか,預金保険法を改正するときに,公的資金を入れるときにある程度,転換株式のタイプですけれども,そういうものを大量に発行しますと結局授権枠が埋まってしまう,それで,その後,実質的に新株を発行することもできなくなってしまうので,そこは上に抜けるようにしたいとか,そういう話もあったので。先ほど申し上げたように,転換されていない状態のときには発行済株式総数の中にカウントされるのですね。普段は発行済株式総数の中にカウントされるのに,増加させるときにはカウントされずに,本当に現に発行するところからカウントしなければいけないというふうになっていますので,それは早晩そういうことが起こり得るのですけれども,だから,そこは調整をした方がいいのであれば調整をしてみましょうかということで御提案をしてみたのですが,そんなにニーズがないというのであれば,我々の方として積極的にということではありません。 ● いい御提案だとも思われますので,検討させていただければ。今切り捨てるのではなくて,検討は続けていただきたいなと思いますけれども。   このときの「留保すべき株式数」というのは,例えば新株予約権が時価に連動していて,1株1円になったときには1円だということになると,無限大になってきますよね。今の制度は,そういうときはどういうふうになっているのでしたっけ。 ● その問題はまた別の問題で指摘されていますけれども。要するに,新株予約権の数とか転換で出ていく株式の数は,今,変動するのが通常ですから,それが必ずしも授権株式数に--もし一杯まで発行していると--入り切らない場合もあるのです。それはよく聞く話ですけれども,それが一体どこの場面でどういう違反になるのかというのがいま一つよく分からないということですね。   それで,この話は,どちらかというと,1,000株発行している会社が3,000株分のオプションを発行しているときに,もう新株も発行できないし,授権枠も拡大できないと。新株予約権をつぶすか,自己株を取得して再発行するか,どちらかしかないということになりますので,そこを解決できるようにしようかしまいかと,そういうことです。 ● それでは,なお少し検討させてほしいという○○委員からの御意見もありますので,これは留保して,次回ということでよろしいですか。 ● お願いします。 ● それでは,次に進ませていただきまして,6でありますけれども,有償で新株予約権を発行するときにも,無償の場合と同様に,割当時から新株予約権としての規制をかける。これは技術的な問題かと思いますが,いかがでしょうか。 ● 株式の場合にしたところで,株式引受人が払い込む前に株主になるということはないですね。そのこととの整合性はどのように説明するのでしょうか。   ということが1点と,ついでにですが,「払込期日前」とありますけれども,こちらの方も「期間」にするのですか。 ● 多分,株主となるときには,株主の方は積極的に幾つか権利がございますので。例えば配当をもらうとか,何とかの割当てとか。   ちょっと,今の全額払込みを前提にする制度の中だとすると,その前に株主として取り扱うと難しい問題が起きるのですね。新株予約権の場合は,権利といっても,払込みをしなければ権利行使もまだできませんので。要するに,新株予約権を割り当てた後,払込み前に割り当てられた人が行使することができる権利というものはほとんどないのです,実際上は。唯一あるのは,その間に合併が行われても,新しい会社でなお,というようなことが,ある場合があり得る,合併の要件によってはですね。   ということなのですけれども,今度は既存株主の方からしてみますと,割当時から払込期日までの間というのは,要するに,2回にわたって払込みをすると株主になるという人がいる状態であり,その状態のときに,無償で割り当てますと1回しか払込みが来ないのですけれども,割り当てたときからちゃんと,だれだれに対してどれだけの分がこういうふうに出ていますよというふうに開示される。ところが,それを2回に分けると,1回目の払込みまではずっと出さなくてもいいわけですね。ということで,そこをつかまえにいくということの方の実質の方が必要性が高いのではないかと。 ● ただ,2回に分けて払い込まなくてはならないということになったときに,1回目を払い込むと新株予約権者になりますよというのが有償の発行の意味ですよね。しかし,そう約束しておきながら,履行しなくても,1回目の払込みをしなくても,新株予約権者になりますよというふうに扱った方がいい理由というのは何か特別にあるのでしょうか。 ● ですから,ここは開示の問題ですね,どちらかといいますと。要するに,新株予約権原簿に書かれたり,営業報告書に書かれたりはしないわけですね。 ● むしろ,払込期日までに払い込まないと権利を失うわけですよね。 ● 権利は失います。だから,そこで権利を失えば,当然,新株予約権者ではなくなりますから,その後はもう権利行使はできませんし,払い込む前も権利行使はできませんから。 ● そのわずかの期間の間の開示の問題ですか。 ● その期間がわずかだと思っているのは思い込みかもしれません。すなわち,新株予約権の払込期日自体については,いつまでに払込期日を設定しなければならないという規制がないので--これは13年のときにも一回議論して,何か月かに規制するかという話もありましたけれども,結局置いていませんので--例えば,極端な話で言い方は悪いですけれども,権利行使が可能な時期の前日とかに設定してしまいますと,そこまでずっと実質的には新株予約権者なのですね,その人は。それで最後に払い込めば権利行使ができるとかいうことではなくて,ずっと隠した状態でやってきてということが,やろうと思えば可能なのです。   それで,先ほど申しましたように,株式の場合は,当然,払い込まないと,もらえるものももらえないし,与えるものも与えるべきではないということになるわけですけれども,新株予約権の場合は,新株予約権者ですよと言ったところで,払込みをしなければ,権利行使もできなければ,証券も何ももらえませんから,譲渡もできませんし,という状態になります。ただ,それと引換えに,会社の方は開示しなくてもいいということに今はなりますので,そこはどちらかに調整した方がいいのではないかということだけであります。   ですから,通常は短い期間,要するに,有償で発行して,割当てをして,払込みですから,せいぜい二,三週間ほど前に倒れるかどうかだけの話なのですけれども,悪用しようと思えば,かなり……。   それで,新株予約権を譲渡されることは普通は予定されていませんから,そこは重要ではないのです。 ● そういう趣旨のようですが,よろしいですか。   それでは,これはお認めいただいたこととして処理させていただきます。   (2)は,先ほど,一応消却については原案を認めるということでしたので,これも,その並びでいくと,そういうことになるかと思いますが,よろしいですか。   (3)ですが,これはちょっと留保,次回にまたということでしたので。   (4),これはよろしいでしょうか。 ● このこと自体は賛成なのですけれども,○○幹事もおっしゃいましたように,自己新株予約権の,特に処分などについて手当てをしなくてもよいのかということが気になっております。 ● 取得・処分が自由だという点が問題だという御意見ですが,これは前から問題になっているところではあるかと思いますが。   取得はよろしいのでしょうか。 ● もし取得というものを認めないというのだったら,それは全然問題にならないわけですけれども,取得というものを認める限り,やはり処分についても自由ではないという規制を設けないと,幾らでも自由にできてしまうということになるのではないかということです。 ● いかがでしょうか。   まあ,従来から,擬似ストックオプションは潜脱だという指摘はあるのですけれども。   申し訳ありませんが,時間のあれもありまして,問題はよく分かりますので,今後の検討課題ということにさせていただいて,先に進ませていただければと思いますが。   この(4)はよろしいでしょうか。   それでは,次,「第4 社債関係」でありますが,「合名会社・合資会社・合同会社についても,株式会社の社債に係る規定と同様の規定を設ける」と,この点はいかがでしょうか。 ● 先ほど,有限会社についても解釈で認められるということでございましたか。 ● いや,合名・合資。 ● 有限会社はだめですよね。 ● 現在の制度はそうです。 ● それで,合名・合資についても確かにいろいろ解釈論はあり得るのかもしれませんけれども,少なくとも社債という限りにおいては,転々流通し得ることが一応前提になりますので,決算公告をするような会社でないと認めないというプリンシプルはひとつ要るのではないかと思うのですね。したがいまして,合名・合資・合同会社であっても,決算公告を任意にする会社であれば社債を発行してもいいぐらいのことだったら構わないと思うのですが,そういうものがなくて社債一般を認めるということが果たしていいかどうかということは少し検討した方がいいのではないかと思うのですけれども。 ● 今,○○委員がおっしゃられたのは,1だけではなくて,4にもかかわる問題だと思うのですけれども。つまり,転々流通しない社債というものを4は前提にしているわけですので。   だけど,実際には,私募債で,ごく少数で,もう流通するということは考えられないようなものというものも,むしろそれも多々発行されているのではないでしょうか。   だから,そうなってくると,一体,社債と消費貸借上の債務とどこが違うのかということにはなるのですけれども。 ● これは,営利法人以外の債券発行という問題とも絡まっているのですね。   これは,株式会社の社債と同じというと,何か新株予約権付社債に対応するようなものもあるという,何か社員になる権利を……。 ● 社債権者集会と社債管理会社に係る規定だと思っていただいて結構でございます。 ● ということですが,よろしいですか。   それでは,これはお認めいただいたことにさせていただきたいと思います。   次が,303条の規定を削除すると。これは当然のことではないかということですが,よろしいでしょうか。   次が,2ですが,312条2項の規定は削除すると。これは,社債権者集会を経ているから,そこで公示はあるということですね。これはよろしいでしょうか。 ● これはいいと思うのですけれども,実は,社債権者集会で決まるからいいではないかというふうに考えると,商法335条の社債発行会社の期限の利益喪失,これも社債権者集会で決議して期限の利益を喪失させるので,前に電子公告のことを検討したときには,セットで両方とも落とすことを考えていたのですけれども,権限ある御当局の御判断でだめになったので,両方とも落とすというのも一つの手かなと思いますので,御検討いただければと思います。 ● 335条についてもということですか。よろしいでしょうか。 ● 1点なのですが,そうしますと,309条ノ2の2項というのが今残っているのですけれども,これはいかがした方がよろしいでしょうか。 ● これは,309条2項を削って,309条ノ2の2項については書き下ろしの形で公告をしなければいけないことにしてありまして,これも権限ある御当局の御判断で,こういう異常形のものは公告しなければいけないと。異常形ということで全部--通常,社債としてあり得べき行為のときは知っていて当たり前なのだから公告しなくていいと。そうではなくて,異常事態が生じたときはやはり公告を残しておいた方がいいのではないかということで残ったというものですので,これもセットでお考えいただいた方がいいかもしれません。 ● 期限の利益喪失はちょっと違うのかもしれないですね,こちらの方は。むしろ期限が延長されたりするわけですから,ちょっと違う。果たして同列に論じられるのかどうかという問題はあるように思いますが。   それでは,これはちょっと検討してください。   3はいかがでしょうか。供託制度を廃止するということですね。これでも,二重呈示とか何とかは,はんこを押すとか何とか,債券の現物が呈示されればそれなりの手続がとれると思うのですが,それ以上のことを考えると,技術的にはなかなかこれは難しいかもしれませんけれども,一応これはよろしいでしょうか。   4でありますが,社債券不発行制度。これは,株券について株券廃止会社という制度ができまして,それと並びということだと思いますが。ほとんど流通しないものを想定しているのだと思いますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   (2)もよろしいでしょうか。   それでは,「第5 計算関係」に移りまして,(1)でありますが,実質的に問題なのは,利益準備金への計上,これが新しいわけでしょうかね。資本の準備金への計上,これも従来はないのですか。 ● この(1)の,特に後段の「資本の準備金への計上を認めるものとする」というところですけれども,従来は,資本を減資した場合には,その他の剰余金という扱いで配当等にも使える,分配に使えるということですけれども,ここでそれの準備金への計上を認めるというのは,むしろそれを分配させないというふうにも読めるのですが,どういう趣旨で前よりも強めることも認めるということになったのでしょうか。私どもは,むしろこれは当然だというふうには思うのですけれども,あえてここで規定するという趣旨を伺いたいのですが。 ● これは要するに,順列組合せのうちの,ないものがこれだというだけの話です。要するに,この辺りの規律は何回か紆余曲折を経ておりまして,まず利益が資本に組み入れられるようになり,資本が減少しますと準備金に昔はなっていたのですけれども,その準備金の減少を認めて配当財源に入れることに伴って,減資差益も配当財源に入るようになったと,こう変遷してきたのですが,そのときに言われたことは,1回何かをして,もう1回何かをすると何かにできるのだけれども,直接はできないのはおかしいということで,徐々に順番が埋まっていったのですけれども,そうすると,今回どうせ改正をするのであれば--要するに,利益を資本に組み入れるということが--なぜそういうことをするのかというのがよく分からないのですけれども--あるのだったら,利益を準備金にも組み入れられるし,その他資本剰余金も資本準備金にと,そういう制度があってもいいのではないかという程度の話です。 ● それも柔軟性の一つだと,そういう理解でよろしいのですか。 ● そうです。 ● 私も,これについては,今おっしゃいましたように,こういうケースもあるし,どれだけの需要があるか分からないけれども,一応一覧表をつくりましょうというなら,あえて反対しないのですが,これも観念的なことかもわかりませんが,資本の減少について,特別決議事項と普通決議事項に分けて整理されていますが,それは基本的に,株主に渡してしまう場合には特別決議をしましょうというルールなのですが,この場合には,準備金への計上だと,債権者保護手続は別途として,普通決議で準備金の場合はやれるということで,二段階行くと特別決議事項が普通決議事項になっていいのかなという感じもしないではないのですが,それはこちらの誤解なんですかね。   要するに,資本減少について株主総会決議がどこまで要るかという議論がありますから,ある種の割り切りで,私はこれで反対をするわけではないのですが,うまくそういう点,14年から現代化の流れの中でこのルールがそういう観点から整理できるかどうかだけ,最後,確認していただけたら。まあ,何とでも説明できますから,いいように思いますが,ちょっと気になったということで。 ● これは特別決議ではないのですか。この後段の方は。 ● 放っておけば特別決議の予定だったのですけれども。 ● どうもこの部会資料は,特別決議でも「特別決議」とはっきり書いていないのです。そういうものが結構多いのです。 ● 分かりました。それでは,ちょっと誤解に基づくものです。済みません。 ● よろしゅうございますか。要するに,順列組合せで今欠けているもので積極的に押さえる必要のあるものがあるという趣旨だと。   次に,(2)でありますが,貸借対照表等に誤りがあるときの修正手続の明文化。これも恐らく何か規定整理の上で必要なのだろうと思いますが。 ● これはちょっと,場合によってはと思っているのですけれども,この必要性というのは,どういうときのことを想定しているのでしょうか。今までですと,翌期で,あるいは気がついたときの決算期で修正をして,その期の株主総会に提示すると。それが常套手段だと思うのですけれども,一種のリステートをさせるということについて,どういうケースでどういう場合のことを想定しているのでしょうか。 ● これは多分,○○委員がお相手をしている会社というよりは,中小企業系の会社から物すごく問合せが多いのです。7月の風物詩みたいな感じで。6月に定時総会をやりましたと,でもちょっと在庫を書き忘れていたとか,何かを書き忘れていたので,重大な誤りがあると,それで修正をしたいのだけれども, 商法をひっくり返したら定時総会と書いてあって,どうも定時総会が来ないと直せないらしい,それはどうしても困るんだというような事態のときに,今現行はどうなっているのかよく分からないのですね。かつ,直すときの手続もこれといって用意されていないものですから,直せないんでしょうか,直せるんでしょうかという問合せが非常に多いのですから,原則としては定時総会で決めていただくのですけれども,定時総会以外の株主総会でも同じ手続で修正することはできますよという規定を予備的に用意しようというものです。大それた規定ではないのです。 ● ただ,これは前にも私,申し上げたことがあると思うのですけれども,会計監査人がいるところでも,もともと誤った決算書を承認しているという総会はあるわけです。今回それを,不適法意見が付いたものは不適法意見が付いたものとして公告に載せようということになっているわけですけれども,これはその場合にも適用できるのですか。 ● いえ,修正するということでやって,関係者が皆さん,そういうことでやるということであれば,修正できます。 ● ということは,これは,経営者が直したいという意思があるときにこれを認めようと,そういう趣旨ですか。 ● そうです。 ● それは,会計監査人がいないところに限ると。 ● いえ,一応,制度上は区別はしていませんけれども。 ● 経営者の意図が働かない場合はやらない,誤りがあってもやらないと,そういうことになるわけですね。 ● 誤りがあったら必ず直せという規定でもないものですから。どうしてもこれだと,何かの申請ができないだとか,明らかに誤っているのが分かり切っているので直したいということであれば,直すと。 ● どういう規定になるのか分かりませんけれども,誤りがあるということを経営者が認めたときにこれを使えると。 ● そういうことです。要するに,よく問合せがあるのは,そういう事案なのです。 ● ちょっと条文を拝見したいですね。どんなふうになるのでしょう。   要するに,私が申し上げたいのは,会計監査人との関係で,今度は別に大会社だけではなくて任意設置できるわけですね。そうすると,すべからく働き口があるときに,確定した決算ということがどういうふうに処置できるのかということを,安易に経営者の意思だけでできるということがないように,そこははっきりしておきたいという,そういう趣旨で質問しているわけです。 ● 今の点について。   少なくとも,この手続をすれば,括弧書きには,「監査」,「決議」とありますが,結局,決算公告の修正も視野に入るということになるわけですね,当然に。 ● そうです。 ● ですから,これは要するに,次期の定時総会に当期分と前期分の修正をしているというのが大会社では一般かと思うのですが,これを臨時総会なり,あるいは取締役会の承認事項になっているものについては取締役会を適宜やって,しかるべく公告することができるようにしようと,外部的には,そういう趣旨だということでいいわけですね。 ● この規定を置いた場合に,全く経営者の意思だけのものとして,つまり,そういうことを修正したくなければそのままで何ら問題ないというものなのか,それとも,こういう修正手続が設けられたら,善管注意義務の中の一つとして,修正すべきときは修正しなければいけないのであって,もしそれをやらなければ善管注意義務違反が生ずるというような性質の規定というふうに解釈される可能性も出てくると思いますが--むしろそういう解釈の方がいいような感じもするのですけれども--その辺は,そういう善管注意義務の問題は一切生じない,そういう意味で全く任意の修正手続だという位置づけとしてこれを提案されているのかどうか,ちょっと確認したいと思うのですけれども。 ● 善管注意義務かどうかはよく分からないのですが,今でも,266条ノ3の2項などは,計算書類の誤りについて特別の責任を負うことになっていますので,そこは別にこの規定があろうがなかろうが,正しい計算書類をつくりましょうという話はあるのではないかと思うのです。 ● だけど,恐らく修正手続が明確な形で--もちろん解釈はあり得るのでしょうけれども,今でもできるのだというのはあると思いますが--明確にそういう修正手続が定められた場合は,かなり状況が違ってくるのではないかという感じはしますね。 ● それはあるかもしれませんが。 ● まあ,それは機関のところの話で。そういう可能性はあり得るかと思います。 ● 基礎的な話で恐縮なのですが,これは,修正をした場合,その定時総会で決議した事項についての効力はどうなるのでしょうか。例えば,いろいろな計算書類で誤りがありましたと。例えば,本当は配当可能利益がなかったのに配当してしまいましたと。そうしたら,その配当した行為というのはどうなるのでしょうか。 ● 配当可能利益がなかった場合は,幾ら決議していても無効ですから,それはやはり違法配当であることは間違いないと思いますね。 ● もう一つの問題として,誤りがあったことが分かった時期というのはまた別途あると思うのですね。例えば,その次の決算期をまた越えてしまっているという場合もあり得ると思うのですが,このあたりは実務上は非常に大きな影響があるかもしれませんので,ちょっと慎重に考えた方がいいのかなという気はいたします。 ● もう一つ確認したかったのですが,この「定時決算時と同様の監査手続」というのは,監査役の通常行う監査手続という意味合いで理解してよろしいのでしょうか。 ● そうです。一緒のというか,長さも4週間なら4週間,1週間なら1週間のあれを守った上でということになります。 ● 大会社の場合には,当然,通常の監査手続というのは,会計監査人の行っていることを相当と認めるかどうかということですから,大会社の場合にはそれはあり得ないという理解……。 ● そうですね。だから,普通はそういうことでオーケーですよということにはならないだろうということです。 ● そうすると,主として会計監査人を設置していないところで,なおかつ安易に総会が行えるというケースの場合に……。要するに余り大きな意味はないという,そういう理解で。 ● もしかすると,会計監査人も一緒になって,しまった,あのとき間違えてたねということもないことはないと思いますけれども,主として想定しているのは,そういう会社ではなくて,とりあえずつくったんだけれども,どうも間違っていたらしいというようなものを考えたと。 ● それでは,大体御異論がないようですけれども,○○幹事からそういう発言がありましたので,また事務局と○○幹事の方とで少しお話しいただいて,もし問題がありましたら次回にまた御提案いただくということで,これはそういう理解にさせていただきたいと思います。   次ですが,「第6 清算関係」であります。   まず,「1 清算中の株式会社の機関関係」ですが,(1)は,清算人会は清算人が3人以上いる場合でなければいけないという規定を作ると。現在はこれは判例法でしょうけれども,二人で清算人会ということになるというのも,最高裁判例はそのようなのですが,二人というのは清算人会にはならないのではないかと,そういうことを明文で書こうということですが,いかがでしょうか。二人の場合は,要するに二人の合意ということですよね。よろしいですか。   (2)は,監査役の任期については清算人と同じように,任期がないものとする,清算終了までということになるということですが,これもよろしいでしょうか。   それでは,これはお認めいただいたことにしまして,次に,2ですが,これが実質的な話なのですけれども,125条1項から3項までは削除するということであります。これは実質的な話ですが,いかがでしょうか。 ● 125条の2項,3項の趣旨はよく分かるのですが,1項を削除することはどういう意味を持つことになるのでしょうか。 ● 民法の世界であったとしても,期限の利益を放棄した上で任意に弁済することは可能ですので,結局,1項を削除するというのは,民法の世界でやってくださいと,こういう話でございます。   この清算の場合につきましては,会社が任意に解散決議をして解散をして清算に入るような場合がある,要するに株主側が主導権を持ってやる場合ですから,もし早く清算を終えたいというニーズがあれば,それは,こういった先払い,期限の利益を放棄するという方法でやってくださいということを意味しております。 ● 質問があるのですが,ちょっと勉強不足で特別清算のところはよく知らないのですけれども,特別清算の場合には,この125条の2項とか3項に相当する規定というのはあるのですか。それとも,125条の1項から3項までの規定が総則として普通どおり適用されているという状態ですか。 ● これは恐らく総則として適用されると思います。 ● そうすると,特別清算の場合に,もちろん法的倒産手続とのバランスというのもあると思うのですけれども,この2項とか3項とかが合理性を持つということはないですかね。 ● それは十分あり得ると思いますので,もしこちらで削って,特別清算の方で必要ということであれば,そちらの方で書くということになると思います。 ● そういうことのようですが,いかがでしょうか。   ○○委員,何か御意見ありませんか。 ● 特別清算の方ではこの議論はしておりませんので,今のようなお話であれば,特別清算の部会の方に是非御連絡いただいて,そちらで議論したいと思います。   これは,民法136条等の原則によるということですね。   連絡の方,よろしくお願いします。 ● 結局,株主への残余財産分配が若干減って債権者の方に回ると,こういう実質ですが,よろしいでしょうか。   それでは,これも御異論ないようですので,お認めいただいたものとして処理させていただきますが,(注)もよろしいですか。   次,「第7 会社関係訴訟関係」ですが,これにつきましては一括でよろしいかと思いますが,どの点でも,御意見があればお願いしたいと思いますが。 ● 5なのですけれども,実質は非常に正しいと思うのですけれども,「現物出資の目的たる財産の価額に相当する金銭」,この算定時期というのはいつになるのでしょう。 ● 基本的には,「払込ミタル金額」に対応する概念として,「現物出資の目的たる財産の価額に相当する金銭」ですので,やはり出資時と考えるのが正当ではないかと思うのですけれども。 ● もしもそれで御異論がないのであれば,それを規定しておいた方がいいのではないかという気がいたします。そうでないと,そこでまた訴訟で争われることになるのではないかと思いますので。私もそれが妥当かと思っておりましたが。 ● これは,現在の金銭を払い戻すときのあれがそのままかぶってくると。結局は同じ処理ですよね。原則は払込金額で,その後何か非常な変動があれば変更することもあり得べしという規定だと思いますが。実質は,どうも現物出資もそういうことにすると。 ● 今,○○委員のおっしゃったことなら分かるのですが,この文言を見たときに,280条ノ18ですか,これが現行法上の新株主に対する払戻し規定ですね。これにまた特別の規定を設けられるという趣旨ということかなと。つまり,これが原則ですね,今。それで,現行法は,現物出資の場合にもこれが妥当するわけですね。 ● そうかどうか分からないから,規定を置くと。 ● これは,そのときにこの2項と違うルールを定めるという趣旨かと思ったのですが。 ● そういうことではなくて,まず280条ノ18が,新株発行が無効になった場合に「払込ミタル金額ノ支払ヲ為スコトヲ要ス」と書いてあって,現物出資の場合に一体どういうふうにするのかというのが全く分からないと。そこで,ここについて,払込みたる金額若しくは現物出資の場合にはその現物出資に相当する金銭というような形での改正を考えております。そうした上で,判決確定時の価格調整につきましては,現在の2項と同様の規定の適用があることとするというようなことを考えております。 ● 私も,この第7の5の部分については少しいろいろと気になるところが多いのですが,現物出資者に対して交付された株式の株主に対しては,金銭出資者に対して交付された株式の株主と違う金額のものが支払われると。 ● 当然,現物出資時に払込金額と現物出資の価額とが違っていれば,そもそもそれは現物出資に係る資本充実の原則からはおかしいはずですので,基本的には,その現物出資は,単にお金の代わりで,それに相当する価額で行われているはずなのですね。ですから,結局同じ金額で支払われるということになるのですけれども,ただ,現行の読み方からすると,「払込ミタル金額」というような書き方がされているので,現物出資の場合にどうするかということが全然不明確になっていますから,それを明確にしたいというだけの話なのです。1株当たりの金額は同じになるはずなのです,現物出資であったとしても。そうでなければ,現物出資者に対して有利発行しているような状態ということになるはずですから。 ● 同じならば,それで少しは安心したのですが。   しかし,こういう書き方をすると,何か違うような印象をまず与えるのではないかということが少し心配なのと,現物出資が,例えば,その価額の評価がいいか悪いかは別にして,ともかく巻き戻す,無効になったのだから巻き戻すというような発想法を取り入れようという趣旨かなと思ったのですが。 ● 結局,新株発行が無効になったわけですから,こういう規定がもしなければ,一番最初に払い込んだ人には,その払い込んだ人に対する不当利得で金銭を払い,また,現物出資をした人には,その現物出資をした人に現物出資された財産を戻すということが民法の基本原則であろうと思いますが,その点については,御承知のとおり,こういう特例を置いて,いろいろと株式が譲渡されていて将来効になっている関係から,金銭で現在の株主に返せばいいと,このようなルールを置いているわけです。   そうすると,現物出資の場合も,もともとの現物出資者であれば,現物を返してもらうということもあるのかもしれませんが,その者が既に株式を譲渡していたような場合に,たまたまその時点でその株式を持っていた人が,現物出資に対応する部分だから現物を返せというような,現物をもらうというようなことは,やはり少し処理としておかしいので,少なくともその点については不当利得の特則的なものを置く必要があって,現物ではなくて金銭で清算をしますと。だから,完全に巻き戻すのではなくて,そこは変換した形での巻戻しを認めるというような意味合いを設けるべきではないかということで提案させていただいております。 ● 実際に実質的にどういう解決がいいかということも絡むと思うのですけれども,その現物出資自身が非常に問題があって,それも理由となって新株発行無効が決まったのに,そのかつて行った取引についてはそのまま有効と。結局,出資プラス売買が行われたと,二つに因数分解みたいにして考えた場合に,その売買の部分はそのまま有効扱いになるということですよね。 ● それはまた別の話でしょう。 ● 要するに,ここで言っていることは,金銭を払うということだと。 ● 金銭を払うということ自体は,もうそれしか解決方法がないと思いますので,私もこれで結構だと思うのですけれども,それ以外の,現物出資固有の問題についての配慮というものを,どうせこんなふうに考えるのだったら,一つ検討しなくてもいいのかということが気になると言った方がいいかもしれません。 ● それは恐らく,現物出資の価額が不当な場合にどうなるかということで,それに対しては,一応現物出資のところで価格のてん補責任とかいろいろ手当てがされている前提になっていると思うのですね。 ● だから,基本的には巻戻しではないと。 ● そうですね。そういうところについて影響を与えなければ,要するに金銭が現実に会社に入ってしまえば,その現物プラスてん補責任分の金銭ということであれば,今の株主にその分を返してもおかしくないはずですので,そういうところで手当てされるべきなのではないかというように考えております。 ● 280条ノ18第2項の適用があるようなケース,現物出資ですね,これはちょっと微妙,いろいろな形が出てくると思いますね。おっしゃったように現物が非常に値下がりしてしまったとか,ほかの株主とはちょっと違った扱いになるかもしれないですよね。 ● それは280条ノ18第2項で処理しようと,こういうことでございますね。 ● 実質はそういうことかなと思っていますが。 ● だから,悪意の株主については別段の定めがある。現物出資者と語らって善意取得をしているような形の株主については,またこの限りでないというのが入ってくると。そこはもう巻戻しなしで,もう割り切ると。 ● 基本的なスキームとして,恐らくもう金銭で処理するしかないというふうに私どもは考えておりますが,今おっしゃったような,例えば悪意の場合をどうするかとか,現物出資が非常に値下がりしていたとか,個別のイレギュラーな場面については,もう少し事例を幾つかこちらで検討させていただいて,何かカバーしなければいけないようなものであれば,ちょっともう一回御提案させていただきたいと思います。 ● この際ついでにというような話になりますが,結構重要なことではないかと思うのですが。現物出資に限らないのですけれども,今,○○委員がおっしゃったように,悪意の者とつるんでいろいろなことをした場合の後始末の問題ということを考えたときに,かねてより,株式というのは転々流通するものであるから取引の安全を考えなければいけないということで,新株発行無効の訴えというのがほとんど実質認められないような形でこれまで運用されてきているわけですね。しかし,悪意の者とつるんでいろいろ操作したというような場合が,小さな会社などでは結構大きな問題になりまして,やはり善意者と悪意者とを分けて扱うべきだということを,鈴木竹雄先生など最初に取引の安全ということを強調された方も,途中からそういう見解に変えてきていらっしゃるわけですね。   ところが,善意者と悪意者とを分けて扱うということがなかなか判例にも定着しないでいる一つの理由は,新株発行の無効ということになりますと,新株が将来に向かってその効力が失われてしまうということになっていることに一つ原因があるのではないかと思うのです。つまり,譲渡されているわけですから,だれの手元にあるか分からないのだけれども,ともかく新株発行分をたまたま持っている人はそれがその手元で無効になってしまう,それで会社に返さなくてはならなくなる,そうでない株式をたまたま市場で買った人はオーケーと,こういう扱いになることが前提になっているものだから,なかなか,善意者は保護するけれども悪意者は保護しないという,個別的な,相対的な扱いができないでいて,判例もそこのところを考えられて,結局,一律取引安全を考えて無効原因は狭めるというようにしていらっしゃったのではないかと思うのですね。   そこで,先ほど,第3の3の(2)のところで,株式の消却については,いったん取得して自分のところでなくすというふうにもう切りかえようという話がせっかく今出てきているわけですね。そうすると,新株発行の無効の場合にも,株主の手元にあるものがなくなってしまうのではなくて,その無効になった分,会社が自己株式を取得して消却しなければならないというような制度に切りかえるとか,何かここはちょっと根本的にこの際考えることができないだろうかというようなことを思います。   しかし,今回はちょっと難しいからまた次回送りと言われれば,それはそれで仕方がないかなというふうに思います。 ● 今の新株発行が無効になったときの処理のあれは,やはり払い込みたる金額を返しますので,任意取得の場合とはちょっと違うと思うのですね。つまり,現在の時価ではないのですから,払う金が。 ● だから,悪意者からはそうするけれども善意者は保護するとか,そういう個別的な扱いができると,特に小さな会社で本当につるんで悪意でやっている人たちの問題を解決するには一つの方法かなと思ったりします。鈴木説が生きるようになるための装置は,やはり新株発行の無効の訴えが認められた場合の効力の在り方というものに深く関連しているのではないかというふうに常日ごろ思っています。   しかし,少し法的にややこしい問題ですので,次回送りと言われれば,それは仕方がないかなというふうに思っております。 ● そうしますと,第7全体を通じて,よろしいでしょうか。5についてはいろいろ解釈論をいただきましたが,ほかの点についてはよろしいですか。   それでは,これは御了承いただいたものとさせていただきまして,第8でありますが,これは,25条の強行規定の部分ですかね,それをこういう形で整理するということであります。それから,ついでに,会社法についてはこうするにしても,個人商人の場合をどうするかと,こういうあれもあったかと思いますが,いかがでしょうか。   まず,これについては,これでよろしいでしょうか。   個人商人については,個人商人も同じにするか。特に違える必要もないように思えますが,現在,個人商人であっても,同一市町村,それから周囲のあれというのは幾ら何でも狭すぎるような気はいたしますが,よろしいですか。本条の,個人商人についてもこういう処理にするということでよろしいでしょうか。 ● これの実質的な根拠というのは,活動範囲が非常に広がっているという現状を踏まえてということですよね。そうすると,新しくできる会社法が対象にしている会社は実は非常に多種多様であって,本当に小さな個人商人に毛の生えたようなものだって含まれるということになってきたときに,何か企業活動範囲が広がっている企業だけを対象にしているわけではないわけですね。そういう意味では非常に広い範囲の会社を含んでいるということになったときに,にわかに,企業活動範囲が広がっているからという理由だけでこれを拡張しましょうというのは,ちょっと何か不足している部分がありそうな感じがして,その辺,問題ないのかどうかですね。本当に小さな会社のような場合,小さな範囲でしかやっていないというような場合どうなのかなというのがちょっと,問題がないかどうか少し心配のような気もするのですが。 ● 25条2項は強行規定だから,そこを排斥しようということでありまして,小さい会社,大きい会社それぞれで任意に定められるのは,それはいいのですね。   これはその部分だけですね。 ● はい。本来,すべて任意にすべきであるとして25条を全部削除するという選択肢もないわけではないと思いますけれども,何も特約をしなかったときのデフォルトルールとしての25条の1項について,仮にこれが合理的なものであるとして残すとして,2項の規定については,特約をしてもこの限度でしか効力が生じないという規制について,大きい会社を考えると,もう少し広げてもよいのではないかと。小さい会社については,25条1項によってもいいし,さらに特約で狭くしてももちろん構わないわけでございます。 ● よろしゅうございますか,これにつきましては。   それでは,ちょっと時間が超過いたしましたが,一応全部御議論いただきまして,若干,結論が出なかったものがありますけれども,それは次回にお願いすることになります。   それでは,本日の審議はこれで終了させていただきますが,事務局から連絡事項がございます。 ● ○○委員の意見書につきましては,次回でよろしいでしょうか。 ● 次回で結構です。読んでおいていただければと。 ● では,次回に,本日お配りした○○委員の意見書をもう一度お持ちくださいますよう,よろしくお願いいたします。   次回につきましては,10月6日と予定しておりましたが,10月13日に変更させていただきたいと思います。   開始時刻は1時半からでよろしいでしょうか。 ● どうしましょうか。1時半からでよろしいですか。今日のように延びることも考えますと,1時からの方がいいかなという気もしますが,よろしいですか。一応,もう1時半ということで通知がありましたよね。ですから,それで御予定を立てておられる方もあるかと思いますので,1時半ということで。 ● それでは,次回は,10月13日,午後1時半から,場所は同じく,第1会議室で行わせていただきます。   前回の部会資料,要綱案(第二次案)につきまして,前回御指摘をいただきました内容を含めて表現等を修正したものをお出しすることとし,本日お示しした論点につきまして,御了解いただいたものはそれに溶け込ませる形で,そうでないものはそれなりに分かるような取扱いをさせていただいて,また御議論をちょうだいしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● それでは,本日の部会を閉会させていただきます。本日は長時間にわたり熱心な御審議をありがとうございました。