法制審議会 会社法制 (企業統治等関係)部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  平成29年 4月26日(水)   自 午後 1時31分                          至 午後 4時21分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  会社法制(企業統治等関係)の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○竹林幹事 それでは,予定した時刻が参りましたので,法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の第1回会議を開催いたします。   本日は御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。私は法務省民事局で参事官をしております竹林と申します。部会長の選出があるまで議事の進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。   議事に入ります前に,法制審議会及び部会について若干,御説明を申し上げます。法制審議会は法務大臣の諮問機関でございます。その根拠法令である法制審議会令によれば,法制審議会に部会を置くことができることとなっております。会社法制(企業統治等関係)部会は,2月9日に開催されました法制審議会第178回会議におきまして,法務大臣から会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する諮問第104号がされ,これを受けまして,その調査審議のために設置することが決定されたものでございます。法制審議会に諮問されました事項は,「近年における社会経済情勢の変化等に鑑み,株主総会に関する手続の合理化や,役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備,社債の管理の在り方の見直し,社外取締役を置くことの義務付けなど,企業統治等に関する規律の見直しの要否を検討の上,当該規律の見直しを要する場合にはその要綱を示されたい。」というものでございます。   審議に先立ちまして,まず,民事局長である小川委員から御挨拶を申し上げます。 ○小川委員 民事局長の小川でございます。事務当局を代表いたしまして,一言,御挨拶を申し上げたいと思います。   皆様には御多忙の中,法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の委員及び幹事に御就任いただきまして,誠にありがとうございます。  会社法制につきましては,平成26年6月に会社法の一部を改正する法律が成立しておりますが,この法律の附則第25条において,「政府は,この法律の施行後2年を経過した場合において,社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し,企業統治に係る制度の在り方について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて,社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとする。」と定められております。この附則においては,所要の措置として社外取締役を置くことの義務付けが例示されています。この法律は平成27年5月から施行されており,本年5月にはこの法律の施行後2年が経過することとなりますので,社外取締役を置くことの義務付けの要否について検討する必要があります。また,このほかにも現在,会社法制については幾つかの検討課題が指摘されています。   第1に,株主総会に関する手続の合理化として,株主の個別の承諾を得ることを要しないで,事業報告や計算書類等の株主総会資料をインターネットを利用して,株主に提供することができるようにするための制度を新設する必要性等が指摘されています。また,近年,株主提案権が濫用的に行使される事例が見られるようになったことを受けて,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備を検討すべきではないかという指摘もあります。   第2に,役員に企業価値を向上させる適切なインセンティブを付与するための規律の整備として,取締役の報酬が取締役に対し,適切に職務を執行するインセンティブを付与するための手段として機能するために,取締役の報酬に関する規律を見直すことが相当であるという指摘等があります。また,現在の会社法には,役員がその職務の執行に関して責任の追及を受けた場合等に要する費用等を株式会社が補償することに関する規定や,会社役員賠償責任保険に関する規定が設けられていないため,これらに関する規律を整備する必要性等が指摘されています。   第3に,社債の管理の在り方の見直しとして,社債管理者を設置することを要しない社債を対象として,社債管理者よりも限定された範囲内で,必要な社債の管理を行う管理制度を新設する必要性等が指摘されています。   そこで,以上のような会社法制をめぐる諸事情に鑑み,株主総会に関する手続の合理化や,役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備,社債の管理の在り方の見直し,社外取締役を置くことの義務付けなど,企業統治等に関する規律の見直しの要否を検討いただいた上,その規律の見直しを要する場合にはその要綱を示していただきますよう法制審議会において調査審議いただきたく,今回の諮問がされたものでございます。私ども事務当局といたしましては,会社法制の見直しに向けた調査審議が充実したものとなるように最大限の努力をしてまいりますので,委員及び幹事の皆様にはより適切な会社法制の整備のために御協力を賜りますよう何とぞよろしく申し上げます。    (委員等の自己紹介につき省略) ○竹林幹事 どうもありがとうございました。   なお,本日は,稲垣委員,藤田委員が御欠席と承っております。また,田中幹事は遅れて御参加いただけると承っております。   次に,部会長の選任に移らせていただきたいと存じます。法制審議会令によりますと,部会長は委員の互選に基づきまして,会長が指名することとされております。当部会は本日が第1回会議でございますので,部会長の互選をしていただきたいと存じますが,御意見等はいかがでございましょうか。尾崎委員,お願いいたします。 ○尾崎委員 会社法の分野における御業績,御経歴に照らして,部会長には神田委員が適任であると思います。神田委員にお願いしてはどうかと考えます。 ○竹林幹事 ありがとうございます。   そのほか,御意見等はいかがでございましょうか。古本委員,お願いいたします。 ○古本委員 ただ今,尾崎先生から神田先生が部会長に適任ではないかという御意見がございました。全く同感でございます。賛成いたします。 ○竹林幹事 どうもありがとうございます。   ほかに御意見等はございますでしょうか。ほかに御意見等がございませんようでしたら,部会長には神田委員が互選されたものとさせていただきたいと存じます。本日は法制審議会の高橋会長に御出席いただいております。高橋会長におかれまして,いかがでございましょうか。 ○高橋会長 御業績,御経歴から神田委員が適任であるという御推薦の辞,誠に私も同感でございます。では,法制審議会会長といたしまして,神田委員を部会長に指名いたします。 ○竹林幹事 ありがとうございます。   高橋会長から神田委員を部会長に御指名いただきましたので,神田委員には部会長席に御移動いただきまして,以後の進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○神田部会長 ただ今,御指名いただきました神田と申します。この会が実りのある会となり,また,積極的に皆様方から御意見をお出しいただき,そして,よい結果に導く議論をしていただけるように,司会進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○竹林幹事 ここで高橋会長は所用のため,御退席されると承っております。どうもありがとうございました。 ○高橋会長 では,どうも失礼いたします。 ○神田部会長 それでは,まず,皆様方のお手元に配布させていただいております資料について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 御説明させていただきます。お手元には議事次第のほか,配布資料目録,部会資料1,参考資料1から6までを配布させていただいております。また,テーマを仮のものとして記載させていただいておりますが,日程(案),御参考までに諮問第104号,委員等名簿を配布させていただいておりますので,御確認いただければと思います。   部会資料1でございますけれども,こちらは事務当局において作成したものでございます。この資料につきましては,後ほど事務当局から御説明させていただきます。   参考資料1でございますが,これは公益社団法人商事法務研究会が設置し,私どもも参加しておりました会社法研究会の報告書でございます。部会で調査審議いただくに当たりまして,この報告書の内容が参考になることもあろうかと考えられたことから配布させていただいております。参考資料2でございますが,こちらは青委員から御提出いただいているものでございます。続きまして,参考資料3でございますが,こちらは小林委員から御提出いただいているものでございます。参考資料4につきましては,安永幹事から御提出いただいているものでございます。参考資料5につきましては,田原幹事,井上関係官から御提出いただいているものでございます。参考資料6につきましては,古本委員から御提出いただいているものでございます。これらの資料につきましては,後ほどそれぞれ御提出いただいております方から御説明いただくということとさせていただきたいと考えております。   配布資料についての御説明は以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。   それから,審議に入ります前に,この部会の議事録を公開する際の発言者名等の取扱いについて,お諮りさせていただきたいと思います。   まず,現在の取扱いについて事務当局から御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 現在,法制審議会の部会の議事録につきましては,発言者名を明らかにした議事録を作成するものとされております。また,その公開の方法につきましては,発言者名を明らかにした議事録を公開することを原則としつつ,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに発言者名等を公表するのが相当でないと認める場合には,これを明らかにしないことができるものとされております。したがいまして,当部会の議事録の公開に当たりましては,原則どおり,発言者名等を明らかにしたものとすることでよいかどうかを御検討いただきたく存じます。よろしくお願いいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,今の事務当局からの御説明につきまして,御意見等がございましたら,是非,御発言を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○神作委員 審議過程の透明化を図る観点から,議事録の公開に当たっては発言者名等を明らかにすることが望ましいと考えます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   今,神作委員から議事録の公開に当たっては,発言者名等を明らかにすることが望ましいという御意見を頂きました。部会長の私といたしましても,この部会につきまして,審議事項の内容等に鑑み,議事録の公開に当たっては,御発言いただいた発言者名等を明らかにするということがよろしいかと思いますけれども,そのようにさせていただくということで御了解いただけますでしょうか。どうもありがとうございます。   それでは,今の御提案のとおり,この部会を進めさせていただきたいと思います。   なお,もう1点,お招きする参考人についてですけれども,これはそのときに御審議いただくテーマに応じて,参考人の方をお招きするということを考えております。どういう方をお招きするかにつきましては,大変恐縮でございますけれども,部会長に御一任を頂くということにさせていただければと思いますが,そういうことにさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございます。   それでは,そのようにして進めさせていただきたいと思います。   では,本日の議事でございますが,初回ということもございますので,この部会で今後,御検討いただく事項についてのフリーディスカッションということにさせていただきたいと思います。   まず,お手元の部会資料1につきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 それでは,御説明を差し上げたいと思います。   その前に,併せて今後の部会のスケジュール等について御説明させていただきたいと思います。まず,部会の開催スケジュールでございますけれども,お手元の日程(案)のとおり,おおむね月1回の間隔で開催することでどうかと考えております。   続きまして,各回で取り扱うテーマでございます。これを本日御議論いただくわけでございますが,日程(案)におきましては仮に記載させていただいております。本日第1回会議におきまして,当部会で検討すべき事項についてのフリーディスカッションを行わせていただきまして,第2回会議から4回ほど個別論点の検討等をするという第一読会を行うこととさせていただければと考えております。その後につきましては,議論の状況を踏まえながら御相談させていただくことになろうかと存じますけれども,今年度中の中間試案の取りまとめ及び中間試案に関するパブリックコメント手続の開始というのを当面の目標としてはいかがかと考えております。こちらを踏まえますと,私どもといたしまして,部会資料1に記載させていただいているような事項について御検討いただくことでどうかと考えております。   続きまして,部会資料1についての御説明に移らせていただきます。   部会資料1でございますが,本日,当部会において検討すべき事項を御議論いただくために作成した資料でございます。   まず,資料の中身の御説明に入る前に,諮問第104号と当部会において検討すべき事項との関係について,簡単に御説明させていただきたいと存じます。諮問第104号ですが,検討事項として株主総会に関する手続の合理化,役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備,社債の管理の在り方の見直し,社外取締役を置くことの義務付けの四つを例示しております。当部会はこれらの事項を中心に検討することが求められているものでございます。ある事項について,当部会において検討すべきかどうかを御判断いただくに当たりましては,これら四つの事項との関連性や当部会において検討する必要性,御提案の具体性,判例及び学説の蓄積等を踏まえました実現可能性の程度などを踏まえて御検討いただきたく存じます。   それでは,資料の中身の説明に入らせていただきます。   まず,第1の「1 株主総会資料の電子提供制度の新設」では,取締役が株主の承諾を得ることを要しないで,株主に対し,株主総会参考書類や,計算書類,事業報告等の株主総会の招集の通知に際して提供しなければならない資料をインターネットを利用する方法により,提供するための制度を新たに設けることを検討してはどうかとさせていただいております。   インターネットを利用する方法により,株主総会資料を提供することができるようになれば,印刷や郵送費用を削減することができるようになるのみならず,株主に対して株主総会資料をより早期に提供したり,提供する情報をより充実させることができるようになるため,株主との間のコミュニケーションの質を向上させることもできるようになるのではないかと考えております。   しかし,現行法上の株主総会資料のインターネットを利用する方法による提供には,株主の個別の承諾が必要であったり,対象が一部に限定されているといったような課題が指摘されております。そこで,取締役が株主総会資料をウェブサイトに掲載し,株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を書面により通知した場合には,株主の個別の承諾を得ていないときであっても,取締役は株主に対して,株主総会資料を適法に提供したものとするような制度を新たに設けることを検討するのがよいのではないかと思われます。ただし,このような制度を新たに設ける場合には,インターネットを利用することが困難な株主の利益を害するおそれがございますので,株主に株式会社に対して株主総会資料を書面で交付することを請求することができる権利を保障するなど,そのような株主の利益にも適切に配慮する必要があるのではないかと考えております。   「2 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備」では,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を整備することを検討してはどうかとさせていただいております。   近年,一人の株主により膨大な数の議案が提案されるなど,株主提案権が濫用的に行使され,これにより株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ,株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり,株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加することが弊害として指摘されているところでございます。このような濫用的な行使に対しては,一般条項である権利濫用の禁止では対処することが難しいという指摘もあるところです。株主が提案することができる議案の数を制限することや,株主による不適切な内容の議案の提案を制限することを検討するのがよいのではないかと思われます。   第2の「1 取締役の報酬等に関する規律の見直し」では,取締役の報酬等に関する規律を見直すことを検討してはどうかとさせていただいております。   会社法上の取締役の報酬等に関する規律は,緩やかに運用されていると指摘されています。また,近年,取締役の報酬等を取締役に対し適切に職務を執行するインセンティブを付与するための手段であるという見方が有力に主張されてきておりますが,そのように考えた場合には,会社法上の規律は報酬等の内容が取締役に対し,適切なインセンティブを付与する内容となっていることを担保するための仕組みがないことが問題ではないかという指摘もございます。さらに,会社法における取締役の報酬等に関する規律は,インセンティブ報酬を付与する場合には,どのように適用されることとなるかが必ずしも明確ではないというような指摘もございます。   このような指摘があることを踏まえまして,例えば,株主総会の決議によって取締役の個人別の報酬等の内容の決定を取締役に委任することに関する規定を設けたり,インセンティブ報酬の付与に関する規定を設けるなど,取締役の報酬等に関する規律を見直すことを検討するのがよいのではないかと思われます。   「2 会社補償に関する規律の整備」では,会社補償,すなわち,役員が,その職務の執行に関し,責任の追及に係る請求を受けたことにより,又は法令の規定に違反したことが疑われることとなったことにより要する費用等を株式会社が補償することに関する規定を設けることを検討してはどうかとさせていただいております。   会社補償は,役員として優秀な人材を確保するとともに,役員が過度にリスクを回避することがないように,役員に対し,適切なインセンティブを付与するための手段の一つと考えられますが,会社法上,会社補償に関する規定はございません。そして,会社補償には構造上の利益相反の問題がございまして,また,会社補償が許容される範囲によっては,役員の職務の適正性が損なわれるおそれや,役員の責任や刑罰等を定める規定の趣旨が損なわれるおそれがあるという問題もございますので,会社法上,会社補償がどのような場合に許容されるかは必ずしも明確ではございません。そこで,会社法に会社補償に関する規定を設け,会社補償が許容される場合を明確にすることを検討するのがよいのではないかと思われます。   「3 会社役員賠償責任保険(D&O保険)に関する規律の整備」では,D&O保険に関する規定を設けることを検討してはどうかとさせていただいております。   D&O保険も,役員に対し,適切なインセンティブを付与するための手段の一つと考えられますが,会社法上,D&O保険に関する規定もございません。D&O保険についても,構造上の利益相反の問題もございますし,また,役員の職務の適正性等が損なわれるおそれがあるという問題もございますので,会社法にD&O保険に関する規律を設け,株式会社がD&O保険を締結するために必要な手続等を明確にすることを検討するのがよいのではないかと思われます。   第3の「社債の管理の在り方の見直し」では,会社が社債を発行する場合において,社債管理者を設置することを要しないときは,社債権者のために,社債管理者よりも限定された範囲内で必要な社債の管理を行うことを第三者に委託することができるようにするなど,社債の管理の在り方を見直すことを検討してはどうかとさせていただいております。   社債を発行する場合には,原則として社債管理者を設置し,社債の管理を社債管理者に委託しなければならないこととされていますが,実際には,我が国で公募されている多くの社債には,例外規定に基づき,社債管理者が設置されていないのが実態であると言われております。そして,このような社債管理者が設置されていない社債について,社債管理者よりも限定された範囲内で社債の管理を第三者に委託することができるような制度を設けるべきであるという指摘がございます。そのため,そのような社債の管理を第三者に委託することができるようにすることを検討するのがよいのではないかと思われます。また,社債の管理の在り方につきましては,これ以外にも社債権者集会に関する規律の見直しについても検討することが考えられると思われます。   第4の「1 社外取締役を置くことの義務付け」では,監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る。)であって,金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは,社外取締役を置かなければならないものとすることを検討してはどうかとさせていただいております。   平成26年改正法の施行後,上場会社における社外取締役の選任が進んできておりますが,改正法附則第25条の規定に従って,このような社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し,現行法上社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない株式会社が,社外取締役を置かなければならないものとするかどうかについて検討する必要があるものと考えております。   「2 社外取締役の要件である業務執行性の見直し」では,「当該株式会社の業務を執行したその他の取締役」でないことという社外取締役の要件を見直すことを検討してはどうかとさせていただいております。   実務上,社外取締役がマネジメント・バイ・アウトの際に,株式会社のために買収者との間で交渉を行うことなども期待されているところ,実際に交渉を行った場合等には当該社外取締役が「当該株式会社の業務を執行したその他の取締役」に該当することとなって,社外取締役に該当しなくなってしまうのではないかということが問題として指摘されております。解釈で解決を図ることが可能という考え方もあり得るところですが,明確化のために要件を見直すことを検討することも考えられます。   「3 重要な業務執行の決定の取締役への委任に関する規律の見直し」では,会社法第362条第4項の規定にかかわらず,社外取締役を置いている一定の監査役設置会社の取締役会は,監査等委員会設置会社の取締役会と同様の範囲内で,その決議によって,重要な業務執行の決定を取締役に委任することができるものとすることを検討してはどうかとさせていただいております。   実務上,会社法第362条第4項の適用範囲を予見することが難しいため,監査役設置会社において重要性が低いと思われる事項が,取締役会の決議事項として上程されているということが指摘されております。また,上場会社における社外取締役の選任が進んできているところ,社外取締役が取締役会における個別の業務執行の決定に逐一関与しなければならないことによって,機動的な業務執行の決定をすることが難しくなるのみならず,社外取締役も期待される役割の一つである業務執行者の監督に専念することが難しくなるということも,弊害として考えられるところでございます。そこで,監査等委員会設置会社と同様に,重要な業務執行の決定を取締役に委任することができるものとすることについて検討することが考えられます。   最後に,「第5 責任追及等の訴えに係る訴訟における和解に関する規律の整備」では,株式会社が責任追及等の訴えに係る訴訟における和解をするために株式会社において必要な手続に関する規律や,当該和解について株式会社を代表する者に関する規律を整備することを検討してはどうかとさせていただいております。   これらにつきましては解釈が確立しておらず,必ずしも明確でないという指摘がございますので,会社法にこれらに関する規律を設けて明確化することを検討することが考えられるのではないかと思っております。   部会資料1についての御説明は以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   今,御説明いただきました部会資料1についての御質問や御意見は後ほどお出しいただくことにさせていただきまして,続きまして,参考資料についての御説明をしていただきたいと思います。お手元の参考資料1はいいので,2からになりますが,2,3,4,5,6とありますので,それぞれ,御提出いただきました方々から簡単に御説明を頂ければ有り難く思います。   まず,参考資料2につきまして,青委員,お願いいたします。 ○青委員 私の所属しております東京証券取引所は,金融商品市場の開設者でございますので,日々,証券市場で行われますコーポレートアクションを見ております。その中で事務当局資料の中には明示的な論点としては取り上げられておりませんけれども,一般株主あるいは少数株主の保護の観点から,本部会におきまして会社法の制度について議論,御検討いただくことが適切ではないかと考えられる点が2点見受けられましたので,その御紹介をさせていただきたいという趣旨でございます。参考資料2を御覧いただけますでしょうか。   まず,1でございますけれども,こちらは議決権付種類株式の問題でございますが,近年,普通株式よりも経済的なリスクが小さい種類株式に普通株式と同じ議決権を付与するという事例がございました。このような議決権付種類株式の発行につきまして,海外投資家を中心とします機関投資家から私ども取引所の方にも,かなり厳しい批判が寄せられております。現在の会社法は種類株の設計につきまして,広く定款による自治を認めておりますけれども,そのような議決権付種類株式の発行については,会社法によって何らかの制限を課すべきかどうかという点についても検討が必要ではないかと思われたので,そちらについて一つ御提案をさせていただきました。   それから,次の2でございますけれども,こちらは株式の併合あるいは全部取得条項付種類株式の全部取得を利用したキャッシュアウトによって端数処理が行われることがございますけれども,その端数処理の手続におきまして,現行の制度では競売あるいは任意売却ということになっております。これらに際しまして締め出される少数株主に対して対価の確実かつ速やかな支払が確保されることが必要ではないかと考えられますけれども,必ずしもそうはいっていないという現実もあるということが見受けられております。少数株主の締出しを目的とするキャッシュアウトにおきましては,端数処理の量,規模が大変大きくなっているということがあり,多数の株主が影響を受けるという可能性もあるということから,こうした問題については深刻ではないかと考えている次第でございます。   そこで,このような点も踏まえまして,経済的な実質が類似しております特別支配株主の株式等売渡請求制度も参考にしながら,株式併合等によって締出しを受ける少数株主に対して,対価の確実かつ速やかな支払を確保するための施策の導入についても検討すべきではないかと考えた次第でございます。   この2点につきまして,詳細が御必要でしたら,また,日を改めて御説明させていただく機会を頂戴できれば幸いかと存じておりますが,本日は御紹介ということで発言させていただきました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,参考資料3につきまして,小林委員,お願いいたします。 ○小林委員 先ほど申し遅れましたけれども,私は日本商工会議所からの推薦ということで,今回,参加させていただいております。日本商工会議所は,いわゆる会員企業が大企業のみならず,中堅,中小企業まで規模が様々な会社が多数参加しております関係上,こういう影響度の大きいものにつきまして,今回は上場大企業が中心の改正と認識しておりますが,中小企業等にも目配りが必要ということもございまして,そのような視点での検討を中心にさせていただいておるところでございます。今回,まず,最初のところで意見といいますか,現在の言わば問題意識というようなところを幾つか記載させていただいた内容を参考資料として提出させていただきました。   参考資料3の方を御覧いただきたくございますけれども,まず,最初に御説明いただいた資料に対して,それぞれ,コメントさせていただいておりますが,まず,「株主総会に関する手続の合理化」というところでございますが,特に株主総会資料の電子提供制度の新設ということでございますが,こちらは時代のすう勢ということもあり,考え方としては基本的には賛成でございますが,例えば適当なプラットフォームが提供されるというような実務的な解決がなされれば,広く中小企業にとっても使える制度になる可能性がございますので,その辺の射程も考えながら御検討いただければ有り難いということと,このような制度を構築するときに逆に複雑な制度になりますと,企業の負担になるということもございますので,この辺,企業にとって魅力ある制度というような制度的なところを念頭に置きながら,御検討いただきたいというところがございます。   それから,「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置」ということでございますが,こちらについては基本的には賛成でございますが,いろいろな現実的な株主総会等での運営上,言わば他の一般的な株主から見まして,むしろ,建設的な対話が阻害されるような提案については,一定の制限が必要であると考えさせていただいております。そのほか,濫用的な場面とは必ずしも言えないかもしれませんけれども,単元株の考え方が大分変わってきているということもありますので,株主提案権の行使要件について,あるいは株主提案を行った方とのいわゆるコミュニケーションの問題というようなこともございますので,この行使期限の考え方等についても併せて検討していただけると,大変有り難いと考えているところでございます。   それから,第2のところで「役員に適切なインセンティブを付与するための取組」というところでございますけれども,取締役の報酬につきましても,どちらかといえば,東証一部上場というようなところが中心とはなろうかと思いますけれども,この部分は新興企業あるいは二部上場,あるいは場合によっては,これから上場しようと言っているような中堅企業にとっても重要な課題である部分というのが必ずあると考えられますので,そういう意味での射程は少し広めにとっていただいて,報酬制度の柔軟性,機動性というところを確保する方向で,慎重に御検討いただきたいというところがございます。   続きまして3番のところ,「会社役員賠償責任保険」につきましては,問題意識として提示されたところについては理解しておりますけれども,現実,実務的に大きな問題がないのではないかというのが日本商工会議所等での認識でございまして,こちらにつきましては事実上,規制強化につながるということもございますので,実務に対しての混乱等をもたらさないように,慎重に御検討いただきたいというのが意見でございます。   それから,第4の「社外取締役を置くことの義務付け」でございますが,こちらにつきましては,既にかなりのいわゆる上場企業が社外取締役を導入しているという実態,あるいは逆にまだこちらの方に十分になじめていない,ないしは必然性の問題として必ずしも社外取締役を置く必要がない,自ら確信を持っている会社というのが当然ございまして,導入以来,間もないということもございますから,現時点での一律の義務付けについては懐疑的な部分もございまして,こちらについては私どもとしては必要がないと考えておりますが,慎重に御検討いただきたいというところでございます。   あと,「重要な業務執行の決定の取締役への委任に関する規律の見直し」というところで,監査役設置会社におけるモニタリングモデルの採否につきましては,今現在,マネジメントモデルを採用している会社について,これを排除するというような一方的な議論は望ましくないと考えております。現実的に監査役設置会社においてモニタリングモデルを仮に採用できるとしたとしても,現在,平成26年度改正で設けた監査等委員会設置会社とのすみ分けについては,非常に不明確になる可能性がございますので,この点についての企業ニーズの把握等をしながらの精査をお願いしたいというところでございます。   次に,「重要な財産の処分及び譲受け又は多額の借財の該当性に関する軽微基準」というところでございますが,こちらについては現実的なニーズがあるというところは了知しておりますが,業種業態等について,この基準を一定,きちんと決めることはなかなか難しいのではないかと考えております。特にいろいろな考え方がございますが,セーフハーバールールを仮に作ったとすると,中小・中堅企業は基準の決め方によりましては,ガバナンスの形骸化がかえってあり得るということを懸念しているというのが商工会議所内部の意見でございまして,この点については,ここは上場あるいは公開,非公開とかいうことで分けるような部分の規定ではないと考えておりますので,ここは慎重に御議論いただきたいというところでございます。   今,法務省から御提示いただきました資料以外で検討していただきたい論点が二つございまして,細かい論点もございますが,いわゆる株主総会等の運営関係のところでもございますけれども,議決権行使書面の閲覧謄写請求権が濫用的に行使されている場合があるということで,こちらの方の拒絶事由等については,御検討いただきたいということが要望としてございます。   もう一つは,いわゆる株主に対する利益供与の禁止規定というところでございます。こちらは重要な歯止めとして生きているということは認識しておりますが,こちらのところがリーガルリスクとして過剰な萎縮効果を生んでいる部分もございまして,立法措置まで至るかどうかということは別でございますが,この解釈ないしは基準を定めるものであれば,利益供与に当たらない部分がどうかということについては,御検討いただくことが可能であればお願いしたいというのが商工会議所からの要望でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,参考資料4につきまして,経済産業省の安永課長,お願いします。 ○安永幹事 発言の機会を頂きましてありがとうございます。   まず,事務当局から御提示いただきました部会資料1の論点でございますけれども,総会手続の電子化を始めといたしまして,経済産業省の方でも提言してきました内容,あるいは会社法の解釈につきまして,経済産業省は2年前に解釈指針という形でいろいろ議論させていただきましたけれども,その際の問題意識なども酌んでいただきまして,事務当局の整理に感謝を申し上げたいと思います。お示しいただいた論点につきましては,これからよりよい仕組みを作っていくという観点から議論を深められればと思っております。   本日,会社法制に関わる論点で,経済産業省において問題意識を有しているものを御紹介させていただければと思います。具体的な会社法改正の御提案というよりも,むしろ,問題意識の御紹介でございますので,今後,私ども経済産業省においても,少し勉強してみようと考えておりますようなことも含めての御紹介でございます。参考資料4という形でお配りいただいておりますので,詳細な御説明は省略させていただきますが,大きく二つのくくりで問題意識を御紹介させていただければと思います。   まず,1点目,コーポレートガバナンス改革をめぐる議論の中から出てくる問題意識でございます。経済産業省におきましては,特に企業の稼ぐ力あるいは企業価値の向上といった観点を中心に議論を行っておりますけれども,会社法制度が実情に合っていないのではないかという議論になることもございます。   お配りしております参考資料4,1ページのまず(1)で,業務執行者の位置付け,それから,資料の2ページの(2)で,任意で指名委員会あるいは報酬委員会といったものを置いたときの位置付け,それから,資料2ページの(3)で,株主総会,取締役会などの役割分担,位置付け,例えばコーポレートガバナンス改革として取締役会の監督機能の強化というものが進む中で,株主総会が幅広い権限を持つという今の法律の立て付けが果たしてどうなのかといった論点でございますし,それから,現在,関係省庁との間で分かりやすい開示の仕組みということをいろいろ検討しておりますけれども,こうした株主と投資家との対話といった取組の状況に応じて,こうした関係機関の枠組みはどういうものが適切かといった論点でございます。   それから,3ページの(4)でございます。経済産業省が行っておりましたコーポレートガバナンスに関する研究会の中では,会社をどう規律するかというのは会社法で細かく縛るのではなくて,ある程度,投資家によるチェックに任せてはどうかといった提起,あるいは実際の企業活動においては海外の子会社も含めまして,グループ企業全体としてのガバナンスというものをどう捉えるか,この在り方が実際に問われまして,特に昨今,いろいろな会社で海外子会社のガバナンスの問題が指摘されたりしているということで,こうしたグループガバナンスというものの在り方の議論が不足しているのではないかという議論もございます。   大きく2点目は,資料の3ページの2.でございますけれども,事業再編の円滑化でございます。この30年間,日本企業の企業価値が向上していないという大きな要因として,機動的な事業再編への対応ができていないといった点が大きな課題ではないかということを現在,経済産業省あるいは政府部内で議論しておりますけれども,こうしたことから,事業再編をいかに円滑化するかについての問題意識を持っております。例えば,3ページ,(1)で,海外の状況も踏まえ,日本でも自社株対価による企業買収が活性化するよう関連制度を見直してはどうか,それから,4ページ,(2)で,組織再編時の対価の選択的なものを認めてはどうか,4ページ,(3)で,これは今年度の税制改正でスピンオフというもの,これに課税の繰延べ措置が講じられましたので,こういったことも踏まえまして,一定の現物分配について会社法上の手続を緩和してはどうか,といったことを挙げさせていただいております。   いずれにしましても,今後の検討テーマとして事務当局に挙げていただきました株主総会資料の電子提供制度などを中心に,実際に企業にうまく使っていただけるような仕組みというものを作っていくことが大事だと考えておりまして,こうした観点から,是非,連携させていただきまして議論に貢献させていただければと思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,参考資料5につきまして,金融庁の田原課長,よろしくお願いします。 ○田原幹事 御発言の機会を頂きましてありがとうございます。金融庁の田原でございます。   私からは資料5に基づきまして,前回,会社法改正以降,金融行政上,直面いたしました様々な問題に関連しまして,会社法と関連すると思うものにつきまして問題意識を述べさせていただければと存じます。7点ございます。   まず,1ページをおめくりいただきまして,企業グループ全体の経営管理とございますけれども,平成27年12月に報告を取りまとめていただきました金融審議会の「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」におきまして,金融グループをめぐる制度の在り方につきまして御議論を頂戴いたしました。この際,委員の方々から会社法と関係する指摘ということで,株主としての権限行使とは別に,銀行持株会社が子銀行に対して指揮命令を行い得ることを制度的に担保する必要があるのではないか,その上で,当該指揮命令について子銀行の取締役が従った場合には,当該取締役には任務懈怠責任が生じないこととする必要はないか。こうした問題を回避するための方策として,経営委任契約を活用することが考えられないか,銀行持株会社において子会社の実効的な経営管理を行っているケースについて,必ずしも子会社において監査役会等の設置を求める必要はないのではないかというような意見が出されたところです。   こういった指摘につきましては,必ずしも金融の世界に限らず,親子会社一般に妥当し得るのではないかという御意見もございまして,金融庁といたしましては,こういった点について会社法上の考え方の整理をしていただければと考えておりまして,御検討をお願いしたいと考えているところでございます。   2点目は3ページになりますけれども,株主総会関連の日程でございます。株主総会関連の日程につきましては,平成26年から27年に金融庁と東証で事務局として開催しましたコーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議におきまして,基準日から株主総会開催までの期間がガバナンスの実効性を確保する観点からできるだけ短いことが望ましい,英国では2日以内と。招集通知から株主総会開催日までの期間につきまして,株主が議案について熟慮する期間を確保する観点から,できるだけ長いことが望ましい。こちらは英国では4週間以上と承っております。また,決算期末から会計監査証明までの期間について実効ある会計監査確保の観点から,一定の期間を確保する必要があるといった指摘がなされたところでございます。こういった点につきまして,会社法上,どのように考えるか,御検討をお願いできればと考えているところでございます。   3点目でございますけれども,こちらは資料はございませんが,有価証券報告書を提出している会社についての事業報告等の提供方法の弾力化ということでございます。現在,政府全体で会社法の事業報告,計算書類と金商法の有価証券報告書のより一層の共通化,一体化ということを容易にする取組を進めているところでございます。今回の法制審におきましては,株主総会資料の電子提供制度について議論されるものと承知しておりますが,こうした政府の取組を踏まえまして,事業報告や計算書類で記載すべき事項が記載された有価証券報告書が例えばEDINETで提出されている場合に,これを事業報告等を提供した場合と同様に扱うといったようなことについて御検討いただけると,こういった施策上,大変有意義ではないかと考えております。   4点目は,社債の管理の在り方の見直しでございまして,先ほど御紹介いただいたとおりでございまして,金融庁といたしましても,投資家の運用手段,企業の資金調達方法の多様化に資する重要な論点と考えておりますので,是非,前向きな御検討をお願いしたいと考えているところでございます。   5点目でございますけれども,4ページ目の上になりますが,会計監査人の報酬の決定の在り方についてでございます。前回の会社法の見直しにおきまして,会計監査人の選解任の議案の内容につきましては,監査役等が決定するということとされた一方,報酬の決定権につきましては,監査役等は同意権を有することにとどまることとされたということでございます。前回の会社法改正後に,会計監査をめぐりましては大きな不正事件などが発生しておりまして,監査委員会等の機能強化が喫緊の課題と認識されていると承知しております。昨年3月に公表いたしました会計監査の在り方に関する懇談会の提言におきましても,会計監査人の独立性を確保する観点から,監査報酬の決定の在り方について,引き続き幅広い観点から検討されることが望ましいという御指摘を頂戴いたしておりまして,この点につきましても御検討いただければ幸いということでございます。   最後,その他とございます。4ページ目の下,最後の一つ目でございますけれども,会計監査報告における監査上の主要な事項,いわゆるKey Audit Mattersというものについてでございます。現行法の会計監査報告におきましては,財務諸表が適正と認められるか否かの監査意見以外の記載は,限定的とされているところでございますが,国際監査基準におきましては会計監査の透明性を高めるために,会計監査人が着眼した虚偽表示リスクを監査上の主要な事項(Key Audit Matters)として,会計監査報告に記載することとされておりまして,欧州やアジアの主要国などで導入が進められているところでございます。現在,我が国で当該制度を導入する場合の目的や問題意識を共有するため,関係者における意見交換を行っているところでございますけれども,本件は金融証券取引法監査のみならず,会社法監査にも関わる論点と考えておりますので,その取扱いにつきましても御検討いただければと考えるところでございます。   最後でございますが,5ページ目にございます国際会計基準の単体ベースの財務書類への任意適用についてでございます。現行の金融商品取引法及び会社法では,連結ベースの財務諸表については国際会計基準(IFRS)の任意適用を認めているところでございますけれども,一部のIFRS適用会社からは,単体ベースの財務書類についてもIFRSの任意適用を認めてほしいという要望が寄せられているところでございます。この要望に対応する場合には,IFRSと日本基準の差異を踏まえまして,分配可能額の調整に係る手当て等が必要という指摘がございますので,この点につきましても御検討いただければということでございます。   以上,7点にわたりましたけれども,いずれも重要な論点だと存じております。必ずしも今回の法制審のテーマではないかもしれませんけれども,金融行政上も非常に重要な論点でございますので,御検討の上,法制審としての考えを示していただければ大変幸いに存じます。ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,参考資料6につきまして,古本委員,どうぞよろしくお願いいたします。 ○古本委員 それでは,私からの提出資料,参考資料6について御説明を申し上げます。先ほど御紹介がありました部会資料1の記載の論点のほかに,現時点で私どもとして議論に加えていただきたいと考えている4点を記載してございます。   まず,1点目の株主代表訴訟制度の見直しでございますけれども,提訴することが会社全体の利益にはならないと会社が合理的に判断した場合でも,現在の制度では,一株株主ないしは一単元株主が提訴すべしと判断しますと,常にその判断が優先されてしまい,いきなり取締役個人が法廷に立たされる,場合によっては取締役の遺族が訴えられるという状況にあると認識してございます。   これが望ましいものなのかということを実業界では疑問に感じているところでありまして,個々の株主に提訴に関する決定権を委ねすぎているのではないか,場合によっては取締役による果断な経営判断への足かせともなりかねないのではないかという思いもございます。会社及び株主全体の利益と個々の株主の権利,このバランスを再度,検証する時期に来ているのではないかと感じている次第です。その観点から,ここに書いてございますけれども,アメリカのような訴訟却下制度,ないしは訴訟却下事由と会社及び株主全体の利益との関連付け,それから,少数株主権化などの原告適格の適正化,訴訟委員会制度の導入など,広く御検討いただきたいと考えております。これが1点目でございます。   2点目は,議決権行使書面の閲覧請求権の濫用防止でございます。一部の企業で,毎年,同じ株主ないしは株主グループから,この閲覧請求を受けるという状況が生じてございます。株主数が多い企業になりますと,何万通,何十万通という数にもなります。閲覧のために部屋を用意して,常時,社員が立ち会うという形で,毎年,数日,長い場合には1週間といった間,閲覧が行われており,これが延々と繰り返されることにより不合理な負担が生じているということでございます。   議決権行使書面の閲覧請求は,本来,株主総会手続の適法性の確保のために行使が許されるべきものでございますけれども,本来の目的に沿わない形でも行使され得るということが問題だと考えてございます。更に,昨今の個人情報保護の要請が高まる中で,株主であれば制約なく,ほかの株主の個人情報にアクセスできるということも問題ではないかと考えております。株主名簿の閲覧請求に拒絶事由が明文化されていることに照らしましても,目的外利用を制限する立法措置がなされてしかるべきだと思っております。   なお,個人情報保護の観点からは,株主の住所は議決権行使書面の法定記載事項ではないということから,閲覧時に住所を外せばよいではないかという御意見もあると承知しておりますけれども,実務的には,何万通,何十万通もある議決権行使書面の一つ一つから住所を外す,見えないようにするということは,負荷が重すぎて現実的ではないということでございます。また,例えば,議決権行使書面と送付先の住所,これを別の紙面にして,議決権行使書面に住所の記載がない形にすることも考えられますが,紙の枚数が増えますと,掛け算すると封入コストがばかにならない金額になるという懸念もございますので,この制度についてもう一度,御議論いただけないかというのが2点目でございます。   3点目は,代表取締役等の住所を登記事項から削除又は閲覧制限をすることを検討いただきたいということですけれども,これは正に個人情報保護の観点から,代表取締役,代表執行役の住所を削除する,ないしは住所の閲覧を制限するのが妥当ではないかということでございます。実際,企業の代表者が自宅に不意の来訪を受けるといったようなことがかなり発生しておりまして,これには何らかの対処が必要ではないかと考えてございます。   それから,最後,4点目の組織再編における反対株主の株式買取請求の制限でございますけれども,組織再編の条件を知った後,これを知りつつ株式を取得した株主に買取請求権という保護,保障が必要なのだろうかという疑問から,これを制限してしかるべきではないかというものでございます。   以上,御説明申し上げました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,委員及び幹事の皆様方から御質問,御意見をお出しいただきたいと思います。どう進めるかですけれども,まず,事務当局から御説明を頂いた部会資料の番号でいいますと1番,これについての御質問と御意見を一通り頂きたいと思います。その後で,今,御説明いただきました参考資料2から6までについての御質問,御意見,あるいはそれに関連して,そのほかにこの部会で議論すべきテーマであったり,この際,発言しておきたいことですとかいうようなことも,初回でございますので,適宜,御発言いただくという,そういう二つに分けさせていただきたいと思います。   それで,まず,部会資料1,大きな項目として第1から第5までありますけれども,先ほど事務当局から御説明いただいたところであります。この部会資料1につきまして,どの点でも結構でございますので,御質問,御意見等があれば,是非,お出しいただきたいと思います。どなたからでも結構でございます。 ○川島委員 連合の川島でございます。まず,一言,部会に臨むスタンスについて申し上げたいと思います。私ども連合は,これまで持続的な企業価値の向上と,労働者を始めとする多様なステークホルダーの利益への配慮を含む企業統治の実現という観点から,会社法制の整備について意見提起を行ってまいりました。今回の検討に当たっては,これらに加え,近年,その重要性が指摘されております株主との間での建設的な対話と,その基盤となる適切な情報開示という観点から議論に参加していきたいと考えております。   本日,事務当局から示されました検討すべき事項については特に異存はございません。その上で,2点ほど意見,要望を申し上げます。   1点目は,第2の1「取締役の報酬等に関する規律の見直し」についてです。ここでは報酬等を決定する際の手続の在り方と併せ,開示に関する規律の在り方についても検討することが重要だと考えております。この点について検討事項に加えていただくようお願いします。   二つ目は,第4の1「社外取締役を置くことの義務付け」についてです。この場で検討するに際しまして,ここに記載されております選任比率の数値のほか,社外取締役を選任したことによって得られた効果,選任する上での課題など,判断材料となるような事例やデータを提供していただくことをお願いします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○古本委員 部会資料1で挙げられております各論点につきまして,経団連の会員企業で議論した今の状況を総論的にお伝えしておきたいと思います。   まず,第1の「株主総会に関する手続の合理化」のうち,1番の「株主総会資料の電子提供制度の新設」につきましては,新たな電子提供制度を導入すれば,会社にとっても株主にとっても利便性が高まることとなると考えてございます。会社にとりましては,郵送,印刷,封入等の手間,コストの効率化,削減が期待されますので,こうした制度を導入する方向で検討することに賛成でございます。   ただ,この新たな制度に関しましては,いろいろな論点がございまして,書面提供との選択方式にするのか,それとも,原則電子化とするのか,選択方式とした場合に選択する際の会社における手続をどうするのか,それから,株主の書面請求権の有無・内容と,論点がいろいろございますけれども,そうした論点は,互いに密接に関連していると認識してございます。いずれにいたしましても,会社が新たな制度を円滑に導入して,電子化のメリットを会社及び株主双方が享受できるようにすべきと考えてございますので,総会実務にも十分配慮した柔軟な制度となることを希望しております。   それから,2点目の「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備」でございますけれども,株主提案権が濫用的に行使されますと,先ほど御紹介があったとおり,本来,株主総会で議論するのにふさわしくないような議案につきましても会社の負担で総会資料に掲載せざるを得なくなるという問題がございます。また,総会の場でも,そのための時間を確保しなければならなくなりますし,提案が多数なされた場合は,ほかの株主との対話の機会が阻害されるということにもなりかねません。以上のことから,株主提案権の濫用的な行使を制限するということに賛成でございます。   資料には,提案個数の制限と不適切な内容の提案の制限について書かれておりますが,提案権の行使要件と行使期限の前倒しについても御検討いただきたいと思っております。行使要件のうち,300個の議決権という絶対数基準が現行法ではございますけれども,これは会社の規模,発行株式数と関連しない基準でありまして,これを維持することには疑問を感じているということでございます。   第2の「役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備」でございますが,まず,総論として,どのようなインセンティブを役員に付与すべきかという点につきましては,基本的にそれぞれの企業が工夫して考えるべき問題であると理解しておりまして,法で余り具体的に枠をはめるような定めをおくべきではないと考えてございます。   1番の「取締役の報酬等に関する規律の見直し」につきましては,会社の経営環境,これは時間とともに変化し得るものでございますので,役員報酬に関しましても,こうした変化に柔軟に対応できるようにしておく必要があると考えております。報酬に関する委任に有効期間を設ける,あるいは株主総会決議によって一定の事項を定めなければならないとしますと,報酬額,報酬制度の硬直化につながりかねませんし,柔軟な対応をとりにくくするおそれがあります。結果として,インセンティブの付与という趣旨に逆行することにもなりかねませんので,慎重な検討が必要であると考えております。   2番の「会社補償に関する規律の整備」につきましては,現状,企業においては,既に民法を含む現行法に基づいて実務が行われておりまして,特に支障があるという声も上がっておりません。したがいまして,特段の規定を設ける必要はないと考えてございます。   それから,3番目の「D&O保険の規律の見直し」でございますけれども,この保険は既に実務で十分に定着していると認識しております。したがいまして,締結する際の手続等の規律の整備につきましては,実務といたしましては必要性を感じてございません。開示の議論もございますけれども,濫訴や和解交渉への弊害といったことにもつながりかねませんので,慎重であるべきと考えてございます。   第3の「社債の管理の在り方の見直し」につきましては,社債市場の活性化という観点から,この見直しを検討することに賛成でございます。ただし,新たな管理機関の善管注意義務が重くなりすぎますと,現行の社債管理者制度と同様の問題が生じてしまいます。この制度を十分に活用するために,新たな社債管理制度において管理機関を確保するという観点から,実務を踏まえた規律の設計がなされてしかるべきであると考えてございます。   それから,第4の「社外取締役を置くことの義務付け等」のうち,1番の「社外取締役を置くことの義務付け」につきましては,私どもの立場としては,必要ないと考えております。社外取締役の設置も含めまして,適切なガバナンス体制の在り方は,個々の企業がそれぞれの経営理念や経営戦略,業種業態などに応じて株主と建設的な対話を行いつつ,創意工夫を凝らして構築していくべきものと理解しております。現状,社外取締役を設置していない企業には,それだけの理由がございまして,社外取締役を置くことが相当でない理由につきましても株主に対して説明している状況にございます。これを会社法で否定して,一律に設置を義務付けるという必要はないのではないかと考えております。   2番の「社外取締役の要件である業務執行性の見直し」,これにつきましても,同様でございます。社外取締役を設置する理由や,社外取締役に期待する役割は,各社の事情,選任された社外取締役の専門分野等によって様々でございます。現状どおり,各社が創意工夫して,それぞれの会社が社外取締役に期待する役割を果たしてもらうことが望ましいと考えてございますので,業務執行性の要件の見直しが必要であるとは感じておりません。   それから,3番,「重要な業務執行の決定の取締役への委任に関する規律の見直し」についてでございます。監査役設置会社における重要な意思決定の取締役への委任につきましては,実務上の要請はそれほど大きいとは認識しておりません。特に,そのための条件が社外取締役の数が半数以上であるとか,過半数ないといけないといったようなことになりますと,これを採用しようとする企業は余り出てこないのではないかと思いますので,そういう条件が付くのであれば,いよいよ,これを制度として規定する実務上のメリットは小さいのではないかと感じております。いずれにしましても,特定のガバナンス体制に誘導するような議論にはならないように留意していただければと思います。   それよりも,ここでは出てまいりませんけれども,重要な財産の処分,譲受け等の該当性に関する軽微基準,先ほど小林委員からも御意見ございましたが,これにつきましては,法定いただく実務上の要請はどちらかというと高いのではないかと理解しております。ですので,これについては前向きに検討していただきたいと思います。   最後に,第5の「責任追及等の訴えに係る訴訟における和解に関する規律の整備」につきましては,特段,意見はございません。先ほど申し上げましたように,和解に関する規律よりも,代表訴訟制度の在り方についての再検討をお願いしたいと考えます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   部会資料1につきまして,ほかに御質問,御意見等はいかがでしょうか。 ○前田委員 最後のページの第4の「3 重要な業務執行の決定の取締役への委任に関する規律の見直し」のところで,委任できる事項の範囲の見直しについては,ここに検討事項として挙げてくださっているのですけれども,今,古本委員からも御指摘がございましたが,会社法研究会報告書では,それとともに,重要財産の処分,譲受けなどの該当性について軽微基準を設けることが検討事項とされていたと思います。   この軽微基準については,確かに一律の基準の設定は困難であって,設けるとすると低い基準になってしまって,余り意味がないという問題があったことは認識しているのですけれども,軽微基準は,事業譲渡の重要な一部の場合と同じように,セーフハーバーですので,低い基準になってしまっても設ける意味は相当にあるのではないかと思います。各社が取締役会の決議事項を減らそうとして,付議基準を見直していこうというときに,ここまでは絶対に安心だというラインが客観的に定められていれば有益ではないかと思いますので,軽微基準は,検討事項に残していただくのがよいのではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○梅野幹事 今回の検討すべき事項の3ページ,会社補償に関して,質問をまじえてコメントさせていただきたいと思います。今回,会社補償については,「役員が,その職務の執行に関し,責任の追及に係る請求を受けたことにより,又は法令の規定に違反したことが疑われることとなったことにより要する費用等を株式会社が補償すること」とまとめられています。一方,会社法研究会報告書,今日,頂戴した冊子では19ページとなりますが,そちらでは「役員に対する責任追及等に関して役員が要した費用等を株式会社が当該役員に対して負担することをいう」とされていて,文言が変わっています。   この点について,余り内容的な変化があるものではないのだろうと理解しております。つまり,会社法研究会における議論を見ると,研究会での資料15というのがありまして,そこの1頁には「1 役員が勝訴等をした場合」と「2 補償契約を締結した場合」に分けて検討されていて,役員が勝訴した場合には,基本的には勝訴したことを条件として請求することができるとされていて,言わば後払い的なことを原則とされていたようです。   しかし,2番で取り上げられていた補償契約を締結した場合については,例えば「責任を追及され,又は刑事責任等に関する手続の対象となったために生じる費用」というのが記載されていて,前払的なことも視野に入っていたのだろうと思います。今回,定義の仕方を若干変えられたということで,より前払,民法650条3項の部分だけではなくて,事前に支払う可能性についても検討を重ねていこうという趣旨なのかと理解したのですが,そういった理解で相違ないかどうかということをお伺いしたいと思います。   なお,先ほどこの補償については余り実務上,問題はないといった御発言もありましたが,会社の業務を取締役が行う中で裁判等に巻き込まれた場合に,どの程度,補償できるかどうかというのは,実務的にはかなり微妙な問題もあると理解しております。例えば新株発行差止めの仮処分等における債務者は会社ですが,違法行為の差止めの仮処分ですと債務者は取締役個人になります。   後者のような場合に,取締役個人として弁護士費用を負担しなければならないかどうかというのは,結構,大きな問題で,弁護士費用が自己負担となってしまうと,役員の判断が萎縮してしまうといったことにもなり得ると思います。あるいは会社法研究会でも問題にされたようですけれども,例えばアメリカにおいて反トラスト法等に基づき役員が調査対象になるといった場合に,費用をどうするかといった点についても実務上の問題があるのだろうと思います。そういった場合における規律について,必ずしも全て条文化になじむものではないかもしれませんけれども,大きな方向性や枠組みについて議論していただければ,それは実務に資するのではないかと思う次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   御質問の部分について事務当局からお願いします。 ○竹林幹事 会社補償の説明の仕方の違いにつきましては,内容面を大きく違ったものとする趣旨ではございません。部会で改めて資料を皆様に御提出するに当たりまして,より適切な文言はどういうものかと検討しながら御提案させていただいているものでございまして,我々の検討が進む中で,どういう言葉を使うのが適切かというのは,今後も少し変更があり得るものかとは思っております。本日は,会社補償でどういう範囲について補償を認めるべきかの詳細まで,御議論いただくというようなことは想定しておりませんけれども,前払の場合あるいは後払いの場合,いろいろ,あり得るというようなことを念頭に置きながら,各制度設計で問題となり得る点等につきまして,今後,御議論いただければと事務当局としては考えております。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○三瓶委員 私は上場企業に投資する立場から発言させていただきます。上場企業の企業統治を考えるときに,まず,基本的なスタンスとして健全な自律がありきで,それを促す他律ということで全体の企業統治があるべきという考えにあります。今回の資料1に関して,細かく一つ一つは申し上げませんが,特に我々が興味を持っているところは第2と第4のところです。第2と第4は非常に関連付けられるというか,相互に関連するということです。   というのは,今,コーポレートガバナンス・コード以降,ガバナンス報告書で開示項目がありますけれども,補充原則の4の11の3というのが取締役会の実効性の評価であります。そこで,最も課題として多く見受けられるのは付議基準についての見直しです。これは多くの会社が監督をしようとするときに,特に監査役設置会社ですけれども,付議基準の見直しをしないと,なかなか,審議が進まないということで悩みを抱えているということです。   こういった会社と議論する中で,ある会社はそれをうまくクリアしている。どこがどう違うのかというのを見たときに,必ずしも解決する方法というのは決議事項の数を減らすとかではなくて,取締役会の構成であるとかが鍵を握っている場合があります。そのときの鍵というのは,必ずしも社内の取締役と社外,「社内か社外か」という軸だけではなくて,「業務執行と非業務執行の役割・機能」を整理するということも大事な観点になっていると思います。   業務執行について,先ほど別のところで業務執行性という話も出ていましたけれども,そういうことをまた掘り下げていきますと,それぞれの報酬についての話になっていきます。なので,ここについて改正ということで見るときには,それぞれの項目で見なければいけないんでしょうけれども,頭の中でどこかでリンケージというか,関連を崩さないような形で議論していければと思っています。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○青委員 私どもは取引所の立場から,この部会に参加させていただいておりますので,よりよい資本市場の実現という観点から,私どもの方に国内外の投資家から寄せられた意見を踏まえながら,先ほど事務当局の方から御提案いただいた検討事項について所感を2点,述べさせていただければと思っております。   まず,1点目はコーポレートガバナンスの進展を目指すという立場からの意見ということでございます。現在,証券市場とそれを構成します上場会社,市場関係者におかれましては,政府の成長戦略に示されておりますとおり,企業の収益力向上に向けて必要なリスクテイクができる攻めのガバナンスの導入,進展ということに向けまして,日々,努力を積み重ねているところと認識してございます。今回の会社法の見直しにおきましても,こうした社会からのニーズというものを踏まえながら,各企業が行おうとしている動きをより行いやすくするような基盤の整備という観点から検討を進めていく必要があると考えておる次第でございます。   その検討の際に,各論点で密接に関連しているという部分があるかと思っておりまして,例えば取締役の報酬ですとか,あるいは取締役会の決議事項の範囲といったような論点につきましては,取締役の職務執行に対するインセンティブ付けや,取締役会の機能向上を目指すべきであると思っております。また,各機関の権限配分に関しましては,前提として取締役会や報酬委員会の構成に社外取締役がどれぐらい入っているのかといったような点も関連付けて考慮する必要があるのではないかと思うところであります。他の関連する論点についても,それらの相互の関係に目を配りながら,検討していくことが重要ではないかと考えてございます。   また,社外取締役義務付けの要否という点に関しましては,現状,社外取締役の選任がかなり進んできているという実態がございますけれども,社外取締役の数ですとか,比率,あるいは社外取締役の質ですとか,働き等々に関しまして,様々なステークホルダーは,必ずしも満足していない状況だと理解してございます。ガバナンス・コードによりまして,今後,社外取締役の質の向上というものに努めていくという動きが進んでおりますけれども,その前提として会社法制におかれましても,ガバナンスの向上のための基盤を整備するという観点から,社外取締役の義務付けが必要かどうか,あるいは複数名を選任するというのを促進すべきかどうか,あるいは社外取締役の要件について厳格化すべきかどうか,あるいは社外取締役の活用方法についてより工夫ができないかといったようなことについても,このような場で御議論いただくことによって,前向きに考えていくということが大切なことではないかと存じます。   ここで,投資家の方々,特に,海外の投資家から見た場合に,現在の社外取締役を取り巻く状況が必ずしも十分ではないという状況があると,彼らは思っているところもある程度ございますので,今回の会社法改正により何も対応も行わないということになってしまいますと,そこに関して日本では十分だと判断したというメッセージと受け止められかねないという点もあるかとも思いますので,議論の中で,あるいは法令のところでしっかりと取り組んでいくという姿勢を出していくことも,大事ではないかと考える次第でございます。   それから,2点目としましては,株主総会に関する手続に関しましては合理化を進めていきつつ,対話を充実させること,それから,株主への一定の配慮を確保しながら進めていくという,この二つの方向を目指していくということが重要であると考えている次第でございます。具体的に申し上げますと,総会に関する手続の合理化につきましては,企業の負荷,コストが削減されますし,株主総会の効率的な運営につながるということですので,その方向を目指していくというのは非常に適切ではないかと考える次第でございます。   ただ,株主にとって重要な場である株主総会における実質的な議論ですとか,あるいは建設的な対話の促進といったものに実際につながる制度となることが必要であり,そうした視点も重視すべきではないかと考えております。それから,総会資料の電子提供につきましても,インターネットを利用できない方々というのもございますので,現状よりは変わるかもしれませんけれども,一定の配慮というものはしながら制度設計をしていくということが必要ではないかと考える次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○野村委員 2点,この資料につきまして発言させていただければと思います。   一つは,株主総会の資料の電子提供の話でございますが,これに関しては言うまでもなく,海外機関投資家等を念頭に置きながら,外国人株主の方々に対してなるべく早く情報が提供されるということも附随的な効果として期待されていると思います。既に経済産業省で尾崎委員が取りまとめられた報告書等を拝見いたしますと,現行の実務におきましては,紙を出す前になるべく電子情報を開示するという方向が実務的にも試みられているということでありますが,修正が起こりそうだということで,慎重な会社はぎりぎり紙を出す前の日ぐらいに提供するのが精一杯なのに対し,多少,修正があってもいいと考える企業は,比較的早い段階で開示しているといった傾向があるとまとめられていたかと思います。   そういう点で考えてみますと,今回,ウェブ開示あるいはウェブ修正との関係については,恐らく論点として検討されることになると思いますが,従来でも紙を出した後,ウェブでの修正ができるという制度になっていまして,ウェブ修正の対象はかなり軽微なものというんでしょうか,本質的ではないものについては可能だということになっていますので,今回,アクセス通知を出して,それで例えば電子開示をその時点から始めるということになった後も,軽微なものについての修正は恐らく理論的にも可能なのだろうとは思います。   ただ,そうなりますと,アクセス通知を出した段階から本体の大部分は,修正ができないという実務になる可能性があるわけでありますが,そうしますと,先ほど出てまいりました議論のように,実務的にはなるべく修正が起こらないように,ぎりぎり,2週間に近いところ辺りに時期が集中してしまう可能性があるかと思います。それに対して,例えば,ウェブでの情報提供を行った後でも,例えば法定の通知期間である2週間前までは比較的自由に修正できるといった実務的な取扱いが可能であれば,早い段階での情報提供につながるのではないかと思われますので,その辺り,開示する電子情報の修正について少し丁寧に御議論いただければ有り難いなと考えております。   それから,もう1点は社外取締役の話でございますが,この点につきましては今回,業務執行が何なのかということを検討いただくことになるんだと思いますけれども,他方におきまして,会社法研究会ではアジェンダに載っていたんですが,何となく余り大きく取り上げるようなことはなくなりましたが,社外取締役の情報請求権というのでしょうか,権限に関する問題というのは,少し整理した方がいいのかなとは思っております。   といいますのは,監査役設置会社におきまして,ボードの方に社外取締役がいる場合につきまして,社外取締役は一体,何ができるんだろうという議論につきましては,やや不明確な状態になっているからです。伝統的には取締役の監視義務を負っているのだから,その義務を履行するに適切な形での何らかの監視というものはできるのだろうという整理になっていて,それを怠れば監視義務違反になりますよという話になっているわけですが,例えば監査等委員会設置会社というのを念頭に置きますと,社外者の中には監査等委員会の委員というカテゴリーと,委員になっていない社外取締役というのを理論上,考えることができるということになると思います。   更には指名委員会等設置会社の場合につきましては,他の委員会には所属していますけれども,監査委員会には所属していないといったような社外取締役がもちろん多く存在し得ると思うんですが,その場合,監査等委員会あるいは監査委員会というのがいわゆる独任制を採らずに,委員会ベースでの調査権限を持つという形の制度設計になっておりますので,裏を返してみますと,委員会の場合には,委員会が指定した監査(等)委員が調査に行くことになります。そうなりますと,監査(等)委員会に入っている社外取締役は単独で調査できないのに,委員会に入っていない社外取締役ならば勝手に調査できるというのはやや不自然ですので,調査できないという結論になる可能性があります。しかし,その結論は奇異な感じもしますので,そもそも社外取締役は一体,何ができるのかということについては,一定程度,整理をしていただけると有り難いなと思っている次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きましてありがとうございます。   投資家の観点になろうかと思いますが,部会資料に掲げられた検討すべき事項のうち,3点についてコメントを簡単にさせていただければと思います。   まず,「株主総会資料の電子提供制度の新設」に関してですが,基本的に経産省の「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」から出された電子提供の促進・拡大に向けた提言を具体化していく方向性が望ましいと考えております。株主総会資料の「新たな電子提供制度」が導入されることで,ペーパーレス化による紙資源の節約や会社の費用削減といったコスト面でのメリットに加えまして,早期の情報提供とその内容の充実を促進する効果及び株主の議案検討期間の拡大といった点が期待できるものと考えております。   電子化研究会では「法制度上においてもインターネットの普及を踏まえ,電子的な手段を通じて対話の一層の充実を図る方向で柔軟に見直していく」とされていますが,一方で「制度変更により生じうる不利益がある場合は,適切に手当てが講じられるようにする」とも提言されています。「新たな電子提供制度」に関しては,デジタルデバイドの観点からしますと,株主の権利を実質的に制限し得るものとの見方もありますので,書面請求権の要否ですとか,対応などが議論になるかと思いますが,「新たな電子提供制度」の導入によって期待される会社と株主の対話の促進,株主とのコミュニケーションの充実といったプラス面に重きを置くという形で,具体化に向けた整備の進展が見られればと考えております。   2点目ですが,「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備」ということについて簡単にコメントさせていただきます。こちらに関しましては,権利濫用になるのか否か,判断するのに容易でない面があるというように捉えておりますが,基本的に提案できる議案の数ですとか,内容について制限を導入することが望ましいと考えております。近年の行使事例におきましては,些末な内容を含む議案や,一人の株主が膨大な数の議案を提案するような状況が見受けられますけれども,実務上,会社側で株主提案権の濫用的な行使になるのか否か,判断するのは難しいのではないかと認識しています。   そのため,こうした状況に何らかの歯止めがかからない限り,株主総会参考書類等の印刷や発送費用の増大といったコスト面での負荷はもとより,ほかの株主の実質的な議論の時間が少なくなるといった意思決定機能上の弊害というリスクも,生じ得る可能性があると思います。仮に制限措置を検討するとした場合ですが,実現可能性が高いと考えられるものとしては部会資料にも記載がありますとおり,提案できる議案の数を制限することや,不適切な内容の提案を制限することが挙げられるかと思います。今後の個別議論に際しましては,具体的に議案数の制限を幾つまでとするのがよいのか,また,不適切な内容に対応するために,株主提案の拒絶事由を設けるべきか否か,設けるとした場合にどのような文言となるのか,こういった点も課題だと認識しております。   それから,3点目は「社外取締役を置くことの義務付け」に関してですが,平成28年度におきまして既に東証一部上場企業の98.8%が社外取締役を選任している状況を踏まえて考えますと,あえて法律で義務付けを行うことにどれほどの意義があるのかといったような捉え方をしております。周知のとおり,東証の上場規定では,上場会社は取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならないとされておりますし,コーポレートガバナンス・コードでも上場会社は独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとされています。会社法上の規律付けではありませんが,一定のルールが既に浸透し,機能を果たしているものと認識しています。   社外取締役の選任義務付けに関しましては,賛成,反対意見が様々ある状況かもしれませんが,選任を義務付けることでかえって会社の規模や業種業態等に適した柔軟な企業統治体制の構築を阻害する可能性がありますし,各会社の選択に任せるべきとの指摘については留意しておきたいと思います。会社側の自由な選択の結果として,社外取締役選任比率が100%に近付いている現状を重視したいと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○神作委員 私も部会資料1について2点,御発言させていただきたいと思います。   まず,第1点は第3の「社債の管理の在り方の見直し」に係る論点でございますけれども,金融庁の田原幹事や古本委員からも,前向きに検討する必要があるとの御発言がございましたけれども,私もこの点については,是非,検討していただくとともに,資料の5ページの方で社債権者集会に関する規律の見直しということも言及されておりますけれども,社債の管理の在り方の見直しの基本的な方向性は,私は社債に何か問題が起こったときに,社債権者がきちんと情報に基づいて意思決定をすることが非常に重要なポイントなのではないかと思います。社債の管理の在り方は,社債権者の意思決定の在り方と密接に結び付いており,社債権者が重大な局面で意思決定をする機会と合理的な意思決定をする可能性が確保されるような管理がなされることが望ましいと考えます。したがいまして,社債の管理の在り方と,社債権者の意思決定の在り方の両者を相互に関連させながら議論を進めていただければ有り難いと思います。以上が第1点でございます。   第2点は,第2の2の会社補償とD&O保険に係る論点でございます。この点については会社法で整備する必要はないのではないかという御意見もございましたけれども,私は,法的明確性を確保し,可能な限り安定的な状態で合理的な会社補償やD&O保険契約の締結ができるように,むしろ,会社法として正面から議論するべきではないかと思います。   例えば会社補償につきましては,確かに現行の民法650条の枠内で費用等の償還請求等によって,すなわち過失なく被った損害に対する賠償を求めることにより実現できる余地はもちろんあると思います。しかし,そのことが会社法上,どのように評価されるのかというのは,別問題でして,会社法の報酬規制や利益相反規制との関係というのは,依然として残っておりますし,それらを会社法上,誰がどのような手続で決めるのかという権限分配や手続も含め,会社法が正面から取り扱うべき問題であるように思われます。したがいまして,会社補償,また,D&O保険についても同種の問題がございますので,第2の2及び3についても,是非,御検討を進めていただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   部会資料1についてほかに御質問,御意見はございませんでしょうか。 ○松井(智)幹事 次回の議題に上ると思いますので,第1の「株主総会に関する手続の合理化」についてだけ,気になっていることを一言,言っておきたいのですが,ノーティス・アンド・アクセスの制度というのはSECで導入されているということで,これを中小企業まで拡大するということに積極的だという御発言を今まで聞いてまいりましたけれども,あと,もう一つ,デジタルデバイドという言葉で簡単に整理されきっているんですけれども,同族会社,閉鎖会社において議事を少数株主から隠してしまいたいというような弊害的な運用がある場合に,これを使うとどういう影響があるのか,若しくは書面請求権とか,総会の取消しに関する訴訟という形で整理しきるのか,そこら辺について,この制度が入ったときにどういう整理になるのかについて少し次回,議論ができればと思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○田中幹事 株主総会資料の電子提供制度について,一言,申し上げたいと思います。この電子提供制度につきましては,将来を見据えて電子提供による株主総会手続の合理化を,そして,低コスト化を是非進めていただきたいとは思いますが,同時に,現在の個人株主が必ずしも電子的に株主総会資料を閲覧しているとは限らないということを踏まえて,株主利益にも配慮する制度設計をお願いしたいと思います。   現行法の下でも,会社が自主的に株主総会資料を招集通知発送に先立って開示することが妨げられているわけではありませんし,法律で要求されている以上の資料を電子的に提供することも,別段,妨げられておりません。したがって,今回,総会資料の電子提供,ノーティス・アンド・アクセス制度を作ったからといって,それ自体は,別段,情報の拡大のための制度設計というわけでもないし,株主との対話促進のための制度設計というわけでもないと思います。もちろん,この制度の導入を機会に株主の対話が促進されれば,それは結構ですけれども,少なくともこの制度の創設趣旨として,そういうふうなものを挙げることは必ずしも容易ではないと思います。   となりますと,この制度自体は,これまで書面で提供しなければならなかったものをしなくてよくするということですから,コストの削減になるということは間違いないのですけども,しかし,制度趣旨としては,どうもそこにとどまるわけであります。となりますと,この制度を導入しまして,そして,株主が特に書面交付の請求権が与えられないとすれば,少なくとも制度的には,株主はこれまで提供されていた紙媒体による情報が提供されないと,今回の制度改正はそれだけのことであると,少なくとも一般株主から受け止められる可能性があると思います。そういう懸念を私は強く抱いております。ということで,書面の交付請求をある程度,確保して,決して現在いる株主をないがしろにしているわけではないということを是非,明確にするべきではないかと思います。   その際に,書面交付請求の在り方をある程度,合理的にすることが必要と思います。ノーティス・アンド・アクセス制度によるアクセス通知を受けてから,個別に企業に対して書面が欲しいと請求する,それを制度として強行法規的に保障しますと,会社としては,個別の請求が際限なくやってくるということになりかねず,確かに負担が大きくなると思います。この点に関してはある程度,合理的な対応ができると思っておりまして,例えば現在の振替制度の下であれば,保振への登録に際して書面の交付請求を希望するということを何らかの形で登録させるということが考えられるかと思います。   書面交付というのは,基本的には書面で欲しいか,欲しくないかであって,ある会社について書面が欲しいが,ほかの会社については欲しくないとか,そういうような希望は基本的にはないのではないかと。したがって,ある株主が持っている上場株式については,一律に書面を交付する,あるいは交付しないという取扱いをすることが許容されると思います。そのようなものであれば,基準日に株主名簿に登録するに際して,そのときまでに書面交付を請求するというような意思表示をさせる,そして,そのような株主に対しては一律に書面を渡すというような制度設計も可能かと思います。   これは法制面での対応だけではなくて,株主管理のインフラストラクチャーを運営している主体との連絡が必要かと思います。そのような実務的な対応の中で,可能な範囲で法制度の設計をすることにより,合理的な範囲でコスト節減のニーズとデジタルデバイドの問題との調整をすることができると思いますので,是非,これを機会に関係者で知恵を絞って,合理的な制度設計をしていただければと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○沖委員 私も梅野幹事と同じでありまして,日本弁護士連合会の推薦で参っております。会の意見は集約しまして,また,いずれ申し上げる機会があると思いますので,今日は概括的に私個人の意見と,1点,御質問させていただきたいと思います。   私ども法律実務家の役割としましては,今回の諮問事項の背景にある問題意識を考えて,そのためによい改正を行うために役に立つ実務上の知見や経験を申し上げることと考えております。その上で意見を申し上げますけれども,今回の諮問事項の多くのものの背景に,企業における取締役が積極的で迅速な意思決定をすることができることが可能になるような仕組みの導入ということがあるかと思います。個別的な論点でいいますと,報酬をインセンティブの観点から捉えることであるとか,会社補償やD&O保険に関する規律を設けること,あるいは監査役設置会社で重要な業務執行の決定の範囲を明確にしたり,モニタリングモデルの採用の可否について検討するということも,この問題意識に関係している部分かと思います。   第2に,第1の点とも関係するのでありますけれども,取締役が意思決定をする際に一定の行為をとったときに会社法上の効果がどのようになるかということについて,予測可能性を高めていくような改正である必要があるかと思います。最近では経産省の方から大変優れた実務指針が出されておりまして,それによって,一定,実務が進んでいるということも認識しておりますけれども,それでも会社法上,重要な問題について解釈上の問題が残っているということはあると思います。こういった問題が多ければ多いほど,会社がその制度を採用するについては,より慎重になるということが考えられると思いますので,もし,可能であれば,そこに何か合理的な解決をする規定を検討することは意味があると思うのであります。   ただ,先ほど古本委員の方からも御指摘がありましたけれども,現実に実務上,何ら規制がない中で行われている中で,今回の改正が行われることによってできることができなくなったり,あるいは実務を阻害するようなことがあってはいけないと思いますので,その点は十分な配慮が必要ではないかと思います。   以上が概括的な意見ですけれども,1点,御質問させていただきたいのでありますが,社外取締役が活動できる範囲について業務執行との関係や,その定義を見直したらどうかという論点がありますけれども,教えていただきたいのは社外監査役の活動に与える影響であります。社外監査役の定義の中では業務執行と無関係に定義されておりますので,兼任の禁止であるとか,過去に取締役でなかったことということだけが定義に入っていることは認識しておりますけれども,社外監査役についても同じように活動範囲を広げるべきではないかと考えたときに,社外取締役の業務執行に関する議論が間接的に影響してくることも考えられると思うんですけれども,今回,社外監査役の活動範囲については何らか改正することを考えておられるのかどうか,この点,御見解を賜れればと思います。ありがとうございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   御質問の部分について事務当局からお願いします。 ○竹林幹事 社外監査役につきましては,今現在,私どもで御検討いただきたいと考えているものの中で,直接,取り扱うことまでは考えてございませんでした。 ○沖委員 ありがとうございます。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○加藤幹事 部会資料で挙げられている事項の中には,一見,技術的な事項のように見えるものが多く含まれているのですけれども,実際には会社法の根本的な問題と関連するものもあるように思いますので,そういった事項についても検討する必要がある気がいたします。例えば第4の3の「重要な業務執行の決定の取締役への委任に関する規律の見直し」を例に挙げますと,これは会社法が重要な業務執行の決定については取締役会という集団で意思決定をさせるということを強制していることと関連します。しかし,なぜ,集団で意思決定させることが個人で意思決定させることよりも望ましいのか,突き詰めるとよく分からないところもあります。会社法の根本的な問題と絡んでいる事項は,ほかにもたくさんあると思いますので,そのような点があることを意識しつつ検討を進める方がよいかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○北村委員 部会資料1につきまして,3点ほどコメントをさせていただきたいと思います。   先ほどの神作委員の御発言とも共通いたしますけれども,まず,会社補償とD&O保険についてでございますが,私が実務家の方々から相談を受けました折には,これらは利益相反取引との関係でかなり問題があるので,慎重に検討する必要があるというようなことをお話しさせていただいております。また,経産省の解釈指針によりましても,それに従えば法的に安全だというほどにはすっきりとした解釈ではないと感じております。特にコンメンタール等で,これらの問題について厳しい意見を書きました者としては,しっかりと議論させていただければと思っております。   次に,第4の1の「社外取締役を置くことの義務付け」でございますけれども,社外取締役を置いたことによる,その企業の業績に及ぼす影響等を検討すべきとの意見が会社法研究会の報告書等に掲載されておりましたけれども,恐らくそれはいろいろな先生がおっしゃっていますように,なかなか,検証は難しいところもあると思います。むしろ,現在,上場会社の90%以上,94%,98%が社外取締役を設置しているというデータが出ておりますけれども,コーポレートガバナンス・コードも施行された時点で,なお,このように社外取締役の選任をしていない会社についての選任しない理由及び将来的な見通しというのも検証対象になるのではないかと,このように考えております。   最後に,3の「重要な業務執行の決定の取締役への委任」についてでございますが,先ほど前田委員から出されました軽微基準についての検討は,セーフハーバーとして私も重要なものと思います。もう1点は,監査役設置会社について,モニタリングモデル的なものを導入するということの可否を検討しようということのようでございますけれども,そうすると,我が国で現在,三つの機関設計の制度選択をさせているという意味との関係が分かりにくくなると思います。関連いたしまして,現在の会社法423条4項に監査等委員会設置会社についてだけ特則が設けられておりますが,それとの関係などいろいろと関連問題が出てくるのではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。この部会は,少なくとも次回からは5時半までお時間を頂きたいと思っております。本日は早目に終わってもいいかなという感じなのですが,いずれにしましても5時半までやらせていただくときには,3時半頃をめどに15分間の休憩を取りたいと思っております。今,この部屋の時計が3時半を示しているようですので,ここで15分間,3時45分まで休憩をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○神田部会長 それでは,再開させていただきます。   参考資料の2から6までについての御質問,御意見を頂きたいと思います。なお,休憩前に部会資料1についての御質問,御意見を言う機会を逃したという方は,もちろん,部会資料1についての御質問,御意見をお述べいただいても結構です。参考資料2から参考資料6までについての御質問,御意見に併せて,そのほか,この部会で議論すべきであるということがありましたら,御発言いただければと思います。また,そういった取り上げる,取り上げないに関係なく,今日は初回ですので,この機会に発言しておきたいということがありましたら,もちろん,それも適宜,御発言いただければと思います。どなたからでも,どの点についてでも結構です。いかがでしょうか。 ○齊藤幹事 部会資料1に関連する内容で,既に御議論にも上がったところではありますが,発言をさせていただきます。   まず,株主総会の手続合理化につきましては,法律上の立て付けだけでなく,民間のインフラの進展も促すような方向で考えていくのがよいのではないかと思います。もちろん,引き続き書面でもらいたい人はその機会を確保することも重要ではありますが,そのような人たちでもインターネットへアクセスしやすい環境の整備を同時に進展させていく,例えば,その人たちも証券会社等で口座を開いていると思いますので,証券会社等のサービスとしてインターネットの閲覧などを補助するようなサービスを提供していってもらう形で,ソフトランディングしていく道もあり得ると思います。そのような点も視野に入れつつ,制度設計をしていくのがよろしいのではないかと考えております。   第2点目ですが,先ほど松井智予幹事からも御指摘がございましたが,閉鎖企業への導入については別の問題として慎重に検討する必要があるのではないかと思います。議論の方向としては,上場会社等においては強制するべきかどうかという議論が一つあると思いますけれども,認める必要が乏しい企業,あるいは企業群といいますか,グループもあるかと思いますので,もしもそのような企業でも採用を認めるのであれば,適切に利用されるような制度的担保が必要になるだろうと思います。   第3点目ですが,マネジメントモデルの再考につきましては,先ほど加藤幹事がおっしゃったとおり,もう少しマネジメントモデルの意義に関わるところまで掘り下げて議論する必要があるのではないかと思います。個人的には,362条4項があるがために,現在,日本では,三つのタイプの経営機構を法が用意する規律になっており,同条項が,制度設計を実は窮屈にしているのではないかと思われます。ですので,監査役会設置会社の取締役会に関わる改正がされると,監査役会設置会社と監査等委員会設置会社とのすみ分けが難しくなるのではないか,という点を問題視する前に,むしろ,そのように三つの形態を置く意義が本当にあるのかどうかというところも,再考していく必要があるのではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○尾崎委員 今,齊藤幹事に資料1へ戻っていただけたので,私も発言させていただこうと思います。今,おっしゃったように一番最後のところというのでしょうか,重要な業務執行の決定の委任の問題というのは,先ほど北村委員もおっしゃったように,これを突き進めていきますと,下手をすると監査等委員会との距離感がだんだん分からなくなってくるかとも思えます。そうだとするならば,現在,三つを並行させていて,どれがいいのか,優劣を競わせているみたいな言い方がありますが,これに決着をつけるのか,一体,どうすればいいのかという,そこのところを議論すべきであろうという点は私も感じております。ですので,この点は単に技術的な話ではなくて,そういう根源的な話として,監査役設置会社あるいは監査役会設置会社というものについて,どう考えていくのかということも踏まえながら,議論するべきで,これからも私はこのような観点から発言させていただきたいと考えております。   それともう一つ,先ほど野村委員から言われた電子化の話のところなのですが,これは現在,法務省令におきましても,いわゆる電磁的方法によって株主が提供を受けることができる状態に置くことは妨げないとなっている。これは恐らくこういう方向性を法務省令で一応認めて,強制はないけれども,任意にやればよろしいのではないかというところまで私はきていると認識しているわけですが,なかなか,実務は進まない。この制度整備はある意味で法的な,あるいは社会的なインフラ整備の問題になってくると思うわけで,日本だけITが遅れていていいのでしょうかとなってくると,IT化は進める方向にあるというので,この議論は恐らく総論賛成という答えに恐らく上場会社においては成り立つのだろうと思っております。   したがいまして,総論賛成とするならば,その方向を更に進めるにはどうすればいいのか。そうすると,いわゆるどういうふうな形で初期設定をした方がいいのかとか,書面請求権というのは,要は初期設定としてIT化が進んだときに,そういう欲しいという人にどうしますかという先ほど田中幹事の発言,そういう場合に保振を使えばどうだろうかとか,こういう議論は私もあり得るのだと思います。株主をないがしろにしていないということは,これから立法する上において大変重要な一つの視点であろうと思いますので,そこはバランスよく,ただ,どちらの方向にいくのかという基本的スタンスはしっかりしていきたいと私は思っておりますので,そういう形の発言をこれからさせていただくということになろうかと思います。先ほど齊藤幹事からもありましたように,民間のインフラで相当,対応すべき部分というのは当然あるわけでして,その人たちにもこの方向が正しいのですよと,正しいかどうかは分かりませんが,その方向に行きましょうと言うメッセージを送ることが大事ではないかと考えております。   それともう一つ,途中のD&O保険とか,様々な議論のところで実務において対応できているのだから構わないというお声もあって,私はそれはそれでよく分かるのですが,ここにも提案がありますように,適用関係が必ずしも明確でないとか,構造的な利益相反があるとなってくると,これは明らかに法律問題になる可能性がありますので,その点を明確にする。そして,明確にするというためには前提として規定を設けて,明確にして一歩を踏み出す。それから,中身については議論はあり得るかもしれませんが,言わば今,全く手付かずというのでしょうか,実務に任せ切っている,それがいいのですかという問題提起は大切だろうと思います。そのときに構造的利益相反があるようなものについては議論して,規定を設ける必要があるのか,ないのか。あるならば,それについてどういう手続が必要かとか,境界線はどこですかというふうなことの明確化を図るという趣旨の提案であろうと理解しますので,法務省からの提案は大変よくできていると私は思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○中東幹事 参考資料について意見を述べさせていただきたいと思います。   何を今後の審議事項にすべきかについては,竹林幹事の御説明にもありましたように,諮問内容に鑑み,どこまで検討することが必要で適切かという枠組みで考えることになると思います。このような観点から,部会資料1を取りまとめていただき,これは諮問で示された事項をほぼ正面から応えた項目を掲げられたものであると理解しています。そこで,部会資料1との関係で,参考資料で問題提起していただいた個々の事項を眺めていくのが分かりよいかと思います。  例えば参考資料6の1の「株主代表訴訟制度の見直し」について,これは部会資料1と関係する中身が含まれていると理解しております。   つまり,例えば補償,D&O保険といった項目は役員の責任に関するものであり,積極的な経営を萎縮させるような経済的負担を負わせないためにどうするのかという話で,役員の責任追及のための手段に関する株主代表訴訟制度の内実とはある程度,リンクする話であると思えます。あるいは報酬との関係で申し上げますと,報酬でインセンティブを与えようとしているのに,代表訴訟が容易に提起されて濫訴への対応が大きな負担になるのであれば,ディスインセンティブになってしまうので,そこら辺の調整も考えなければなりません。このように,株主代表制度と無関係に,部会資料1で掲げられた項目のみを議論することは適切ではなさそうです。   参考資料6の2の「議決権行使書面の閲覧請求権濫用防止」について申し上げますと,これは諮問にもあります「株主総会に関する手続の合理化」そのものではありませんが,株主総会の一連の実務を合理化して建設的な対話を促進しようというのであれば,余分なことはできるだけやめて,その分を対話に時間や労力を割くことができるようにする制度に向けて法改正を検討すべきことになると思います。   参考資料6の3の「代表取締役等の住所を登記事項から削除又は閲覧を制限」について,削除することは平成26年改正に向けての会社法制部会での審議の折に検討され,私は削除に賛成との意見を述べさせていただきましたが,部会では削除しないという結論になったことだけ申し述べます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○梅野幹事 少し前の株主総会資料の電子提供制度についての御発言に関連することですが,飽くまで私見ですけれども,全体の時代の流れとして電子提供制度を推進していくということについては,個人的には非常にいいことだろうと思っております。ただし,今まで会社法研究会の資料等を拝見していても,デジタルデバイドの実態というのが必ずしもよく分からない点がございました。   今後,60代以上といった方々や資産保有されている方々に,株式投資をしてもらうということも大事なことだろうと思いますが,単にモバイルフォンを使っている方々もあるいはインターネット利用者とされているのかなと思いました。あのような小さい画面を通して参考書類を見ても,必要な情報はなかなか得られないように思いますので,そういった方々をないがしろにしないというのは非常に大事なことだろうと思っております。   また,会社のお立場からすれば,アクセス通知後にどんどん請求が来たのではたまらないというのも非常によく分かりますので,先ほどの田中幹事から御発言があったような制度も含めて,そういった工夫をしながら,電子提供制度をうまく活用できない方々にも配慮しつつ,流れを進めるという方向が望ましいのかなと個人的には思っております。もし,そういったデジタルデバイドについて,何らかのより具体的な統計等があれば参考になるかと思いますが,多分,そういったものはないのかもしれません。以上述べましたような観点からの御議論を次回以降,お願いできればと思った次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○成田幹事 別の話で参考資料6の3についてコメントだけさせてください。問題意識は古本委員の御指摘されるとおりで,そこは理解できるところではあるんですが,裁判との関係ではここはなかなか悩ましい問題がございます。すなわち,特に実態が失われた会社に対して裁判を起こすというケースが間々見受けられるところなんですが,その場合の管轄の標準ですとか,あとは送達の場所が代表者の住所になることになります。そうしますと,その手掛かりとなるような登記事項がないと,なかなか,裁判を起こしにくいという問題が生ずることになっていきます。ですから,ここの辺りを議論するに当たっては,民事裁判等,他の制度の関係でいろいろ慎重に御検討いただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からいかがでしょうか。 ○竹林幹事 今,言及がございました資料6について若干,コメントをさせていただきたいと思います。株主代表訴訟制度の見直しということで御提案いただいておりますけれども,会社法制定時に一度,議論がされておりまして,訴訟の却下事由については国会で削除されているような経緯ですとか,その後の訴訟の件数等を踏まえると,実際に制度的に更に濫訴を抑制するような立法事実があるのかどうかということにつきましては,事務当局といたしましては疑問もあるところでございます。   また,議決権行使書面の閲覧請求権の濫用防止という点で言及いただいているところにつきましては,御説明の中にもございましたけれども,恐らく濫用の主たる理由は株主の住所を見たい,氏名を見たいというようなところにあるのではないのかと思うのですが,株主の住所につきましては,法定の記載事項というわけではございませんので,紙の枚数の問題等もあるのだというような御指摘等も頂きましたけれども,その点も踏まえまして,実務的な工夫をまずしていただけないかなというのが事務当局としての考えでございまして,実務的な御工夫の結果,なお,法律面での支障があるということであれば,また,別途の御議論というのはあり得るところかなと考えております。   続きまして,代表取締役の住所の関係ですけれども,こちらにつきましては26年改正時にも登記事項から落とすという観点からは御議論いただいて,成田幹事からも御指摘いただきましたけれども,裁判手続への影響等を踏まえると,単に登記事項から落とすということについては,難しいのではないかと考えております。今回はそれ以外の御提案も頂いておりますが,それがここで議論いただくべきなのかどうか,適切なものなのかということにつきましては,また,事務当局としても,民事局といたしましても検討させていただきたいと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○古本委員 私の提出資料について御意見を頂きましたので,一言,申し上げておきたいのですけれども,まず,1点目の株主代表訴訟制度の見直しにつきましては,ここにも書いてございますが,監査役会等の不提訴判断というものが一体,どう扱われているのか,どう扱われるべきなのかということに疑問があるということでございます。それと,その次に訴訟却下事由の拡張と書いておりますけれども,ここのところを前回の国会の議論で否定されたものとは違う形,例えば,株主全体の利益,会社の利益という観点から何かできないのかと思う次第です。私どもからいたしますと,会社として不提訴判断をしているというのは,そういうところから判断しているということでございますので,この辺りが一体,今の制度ではどうワークしているのかということについて疑問があるわけでございます。   それから,二つ目の議決権行使書面についてですけれども,いろいろ,申し上げましたけれども,経団連の会員企業から伺っている一番切実な声といたしましては,住所を見たいといってくるのではなくて,要するに会社を困らせてやろうという趣旨から閲覧権が行使されている現実があるという訴えがなされておりますので,そこをしんしゃくいただけないかということでございます。ですから,個人情報保護の観点からどうのこうのというところもございますけれども,経団連の中で伺っているところでは,そういったハラスメントに近いことが行われているにもかかわらず,どうして何もできないのだろうかと,こういうことでございます。   発言の機会を頂きましたので,金融庁から提出されております参考資料5の1番についても,一言,申し上げたいと思います。企業グループ全体の経営管理ということについて,2ページ目の下の方に金融グループについてのみの問題なのかどうなのかということが書かれてございますが,経団連の立場といたしましては,これは会社法全般の問題というよりは,銀行法の問題ではないかと考えてございます。会員企業間の議論の中でも,この話が出てまいりましたが,銀行業界におきましては,銀行法による規制の関連で,この議論を進めていきたいと私どもは伺ってございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○三瓶委員 私は参考資料5について一つ感想というか,意見を述べさせていただきたいと思います。実は今日,もし追加で議論する中身があって求められたときには,是非,申し上げたいなと思った点がここに書いてあるんですが,参考資料5の「6.その他」の①,いわゆるKAMというKey Audit Mattersという,これなんですが,今年,監査法人のガバナンス・コードも策定されました。日本の今の監査報告書というのは非常にいわゆるボイラープレートというか,投資家がどれだけ有用としているかというと,非常に疑問があるところであると。ここで,ただ,海外でもそういった議論がある中で,いわゆる長文監査報告書というのが今,検討されているところです。   その議論をしているときに,有報でどうにかできないかということは,一旦,ありましたが,同時に事業報告の方でも連動してというか,連動しなければ全体としての解決にはならないということです。また,資料5の3にも少し絡みますけれども,将来的に考えたときに,有報と事業報告のある種の共通化,一体化みたいなことを視野に入れたとき,経産省のいろいろな会合で議論がされておりますけれども,それが現実的なものとなってくる準備をするというようなことも含めると,正に6の①,KAMというものを事業報告の方でも考えをある程度,一定にしておくということが必要ではないかなと考えています。   それ以外で,先ほど資料1のところで申し上げたのが少し漠然としていたかもしれないので付け加えますが,先ほどの資料1のところでは業務執行取締役と非業務執行取締役,その関係と,あと,報酬インセンティブについて実は関係がありますというお話をしました。これは今,取締役会の議長を取締役会会長がされるケースが多いんですけれども,その会長が代表取締役会長であったのが,代表権のない取締役会長で取締役会の議長をされるというような会社が幾つか出てきました。   ただ,現実的に幾つかの会社の社長とお話をさせていただく中で,そのときに報酬は社内,社外という考えでいくと,社内の方として業績連動があるとなる場合もあるし,ただ,そこについて非業務執行であれば,本来は業績連動ではないのではないかというような議論をしたときに,まだ,そんな議論をさせていただいている会社,どの会社もそこについて明確な答えは持っていないというような状況があります。ですから,まだ,ここは非常に混沌として整理できていないのかなというところです。   ですから,「社外か社内か」ということだけではなくて,そもそも,監督する立場というのは社内の方であっても非業務執行で監督するというのが非常に初期の段階というか,最初の段階としてはあって,英国などでそれはNEDと言っていますけれども,Non Executive Directorです。ただ,Non Executive Directorがより客観性を持って監督ができるという意味で,社外の方にお願いしようといって社外取締役,ただ,社外の方であっても何らかの取引関係があるとかいうことではなくて,より客観性があるということで独立社外取締役,そういった段階があるということを踏まえると,いきなり独立又は社外ということだけで議論するのではなくて,非業務執行取締役の役割,又はそういった場合,その方が社内から出てきた場合に,報酬はどうなるのかというようなことが絡んでくると思います。そういう意味合いで先ほど発言させていただきましたので,補足させていただきます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○中東幹事 私も訂正ないし補足説明をさせていただきたいのですが,先ほどの参考資料6の第3点の代表者の住所の登記についてですが,先ほど私が申し上げた枠組みからすると諮問に入っていないし,部会資料1にも関係していないので,私自身は敗者復活戦をする気持ちはないという趣旨で申し上げるつもりでおりました。むしろ,カナダなどで利用されているようですが,送達先等あるいは送付先等として私書箱のような住所を使ったりしている例もありまして,そういったことも,また別途,考えていただくということになろうかと思っています。 ○神田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○沖委員 先ほどの古本委員と中東幹事の御発言に関係する部分ですが,代表訴訟の改革ですけれども,今回,代表訴訟が会社の利益になるか,ならないかという観点からの制度設計が可能かという論点が会社法研究会では提起されていたかと思いますけれども,これは従来の濫用になるかどうかというのはまた違った切口ですし,もし仮にそういうものを見分ける制度が可能であれば,代表訴訟の弊害も防止できるということで,今回のD&O保険に関する開示の論点がありますけれども,これも反対は濫用の可能性があるのではないかと,その情報が濫用される可能性があるのではないかと,そういった弊害を防止することにも役立つと思いますので,私としてはそういった設計が可能かどうかというのを検討する価値は大いにあるのではないかと思いました。 ○神田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。特によろしいでしょうか。事務当局から先ほど以外の参考資料についてのコメント等がもしあれば伺いますけれども。 ○竹林幹事 既に古本委員からも御指摘がありました金融グループの経営管理の問題等につきましてですが,会社法一般の問題というよりも,銀行法上,経営管理というものが規定されていることとの関係で,どう在るべきかというような観点からの議論がされているのではないかと思っております。   また,例えば,経営管理の在り方としまして,一定の親会社の子会社に対する指揮命令権のようなものを観念するとするならば,その裏返しとして親会社がどういう義務を負うのかということが問題であり,これもまた26年改正時に議論いただいたと認識しております。機関構成の在り方につきましては,銀行法4条の2ですとか,5条で一定の機関構成を義務付けている,あるいは一定の資本金の額を義務付けているというようなことから生じている問題であって,要するに銀行法が会社法の規定を利用していることによる問題ではないかと思っておりまして,利用している銀行法の中で,どういう制度設計があり得るのかというのを御議論いただくのがよろしいのではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに参考資料にないようなことでももちろん結構です。無理に長く今日はやるつもりはございませんけれども,もし何か御発言があれば。 ○田中幹事 株主代表訴訟に関しましては,もしこの訴訟制度について取り上げるのであれば,入口段階でのスクリーニングだけでなくて,その後の訴訟手続に関し,特に,証拠収集などについても一緒に取り上げるべきではないかと思います。御承知のとおり,アメリカでは確かに訴訟委員会の制度などがありまして,不適切な代表訴訟は却下するというスクリーニングの制度があるわけですが,私の理解では,そのようなスクリーニングが採られているのは,アメリカの場合,スクリーニングをくぐり抜けると特に証拠調べが非常に厳しい,ディスカバリーなどがありまして,それ自体が非常に会社にとって負担ですので,入口段階で厳しい証拠調べにいく価値のある事件かどうかを選別しているということではないかと思います。   したがって,例えば通常の経営判断に関する事件については,よほどひどいものでない限りは,代表訴訟を入口段階で却下する形になっていることが多いわけですが,他方で,利益相反があると,かなり高い確率で入口段階のスクリーニングをくぐり抜けることができるようになっていると理解しております。そして,入口段階をくぐり抜けると非常に厳しい証拠調べがなされる,という形になっていると思います。   翻って,日本を見ると,入口段階ではほとんどスクリーニングしていないという,これは確かに諸外国でも類を見ないほど代表訴訟を緩く認めているわけですが,他方で,入口を通り抜けた後に十分な証拠調べが保障されているかというのは,若干,議論の余地もあるところです。これは学説などでは批判もありますけれども,現在の判例では,証拠収集において文書提出命令の対象除外になる自己使用目的の内部文書の例外は,第三者からの訴訟だけでなくて代表訴訟にも適用になるということになっていますから,一議論として,株主が文書提出命令を申し立てることは困難な仕組みになっているかと思います。しかも,このような法理は,少なくとも判例の文言上は,利益相反の有無などで区別されていないと思いますから,利益相反がある事件だからといって,株主による証拠収集が容易になっているような形ではないと思います。   ですので,今回,代表訴訟の制度改正をすること自体,必ずしも積極的ではないかもしれませんが,もし,制度改正をしようとするのであれば,入口段階のスクリーニングだけでなくて,入口を通ったところの仕組みなども含めた全体的な改正という形で,是非,検討をお願いしたいと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○田原幹事 この場で結論がどうこうということもございませんが,先ほど竹林参事官から法務省としての考え方を教えていただき,ありがとうございます。私どもとして提出させていただいた資料の2ページで三つ論点がございまして,この三つでもいろいろグラデーションといいますか,考え方に違いがあって,より金融グループに密着したものから,そうでないものまであると思うんですけれども,その辺りについても特に会社法上,大きな相違はないといいますか,これについては金融グループ独自の問題であると言ってしまってよいものかということについてももしありましたら,本日でなくても結構ですので,いずれかの段階で御見解を頂ければと考えていると,また,できましたら御議論いただければということでございます。ありがとうございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○梅野幹事 今回,私ども弁護士会としては,こういったペーパーという形で御提案するということができなかったのですけれども,実務的な企業統治等関係に関することでお役に立てるようなことがあれば,今後も何らかの提案について検討してまいりたいという所存でおりますので,一言,申し上げます。ありがとうございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○沖委員 今,梅野幹事が申し上げた点ですけれども,大変,事務当局に御負担をお掛けして申し訳ないと思いますけれども,私どもの方から幾つか御提案させていただくことがあるかと思いますので,その際は申し訳ありません,よろしくお願いいたします。 ○神田部会長 ありがとうございます。できれば早目にお願いいたします。次回から本格的に御審議いただきますので。   ほかにいかがでしょうか。大体,よろしゅうございますでしょうか。   それでは,参考資料で本日,御説明いただきましたことにつきましては,本日,頂きました御質問,御意見等も踏まえた上で,少し事務当局の方で整理していただいて,しかるべきものについて次回以降に取り上げるということにさせていただければと思います。それで,次回から早速というか,個別の論点について御審議いただくということになります。いずれにしましても,次回以降の準備につきましては本日の御議論も踏まえ,事務当局の方で準備を進めていただくということにさせていただきたいと思います。そういうことで進めたいと思いますけれども,よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございました。   また,準備の段階で個別に皆様方に御意見,御相談をさせていただくかもしれませんので,その節はどうかよろしくお願い申し上げます。   それでは,次回の議事日程等につきまして改めて事務当局から御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 次回は,平成29年5月24日(水曜日),午後1時半から午後5時30分までを予定させていただいております。場所は法務省20階の第1会議室になります。次回はこの部屋ではなく,20階にある会議室となりますので,御注意いただけるようお願いいたします。また,次回は本日の御議論等も踏まえまして,株主総会の手続の合理化につきまして御議論いただきたいと考えております。具体的な内容につきましては,株主総会資料の電子提供制度の新設と,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備について論点等を提示させていただきたいと考えております。なるべく早目に資料はお送りしたいと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,本日は予定より早いかもしれませんが,法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の第1回目の会議をこれにて閉会とさせていただきます。   いろいろと貴重な御指摘,また,熱心な御議論を頂きましてありがとうございました。これで散会いたします。ありがとうございました。 -了-