法制審議会信託法部会 第42回会議 議事録 第1 日 時  平成29年6月6日(火)    自 午後1時30分                         至 午後5時26分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題 公益信託法の見直しに関する論点の補充的な検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第42回会議を開会いたします。本日は御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は,能見委員,岡田幹事,島村幹事,渕幹事,松下幹事が御欠席です。   では,本日の会議資料の確認等を事務当局からお願いします。 ○中辻幹事 お手元の資料について御確認いただければと存じます。   事前に部会資料41,「公益信託法の見直しに関する論点の補充的な検討(4)」を送付させていただきました。また,参考人としての御説明を本日予定しております東京大学の山本隆司教授から,御説明に用いられる資料を頂いておりますので,当日配布資料として机上に置かせていただいています。   これらの資料がお手元にない方がいらっしゃいましたら,お申し付けください。よろしいでしょうか。   それから,次回7月4日の部会には,同志社大学の佐久間毅教授を参考人としてお招きすることになっておりますが,秋以降は,公益信託法の見直しに関する中間試案のたたき台についての検討に入っていきたいと考えておりまして,今年9月から12月までの日程を確保させていただきました。7月4日の部会が終了した後,8月はいったんお休みで,9月から従前どおり月1回のペースで今年の12月まで部会を開催します。来年,平成30年1月以降の日程につきましては,もう少し先の時点で調整させていただければと存じます。   皆様には,御多忙のところ誠に恐縮ですが,何とぞよろしくお願いいたします。 ○中田部会長 本日は,参考人として東京大学で行政法の研究,教育をしていらっしゃいます山本隆司教授にお越しいただいています。山本教授には,お手元の「公益信託を成立させる行政行為について」と題する資料を御用意いただいています。この資料に基づいて,40分程度お話を頂き,その後,若干の質疑応答の時間を設けることにしたいと思います。   その後,少し短めの休憩を挟みまして,休憩後に部会資料41について御審議いただく予定です。   山本教授におかれましては,御厚意によりまして,本日の御審議の方にも御同席いただけるものと伺っています。   それでは,山本参考人,どうぞよろしくお願いいたします。 ○山本参考人 ただ今紹介を頂きました山本と申します。   私は信託法の専門家ではありませんし,ましてや公益信託について知っているというわけでもございません。それから,この場の審議につきましても,この間の経緯を存じ上げているわけではございません。したがいまして,今日はお話をいたしますけれども,かなり的外れな話になってしまうのではないかということを恐れております。その点は,何とぞ御容赦を頂きたいと思います。   それでは,お手元の資料に,ほぼ今日お話しすることを全て書いてございますので,これに沿ってお話をしてまいります。   私に与えられました課題は,立法論として,公益信託の成立要件として,どのような法的性質の行政行為を考えることができるかと,そして,公益信託がそのような行政行為によって成立しなかった場合であるとか,あるいは行政行為が事後的に取り消された場合に,それぞれどのような法的効果が生じるのかと,具体的には,信託法により受益者の定めのない信託が成立するかという点でございます。これを考えるに当たりまして,まず伝統的に行政行為の分類論,類型論とされてきたものについて,1のところで大まかにお話をしたいと思います。   この行政行為の分類学というのは,当時の法律行為論にならいまして,美濃部達吉教授という戦前の大学教授が言ったものを,戦後の田中二郎教授が一部モディファイした上で継承した分類論でして,下の表に書いてあるのがその概要です。これは学問上の名前でして,法令上こういう言葉が使われているとは限りません。例えば,ここで命令的行為として挙がっている許可が法令上は認可であったり,逆に,ここで認可と挙がっているものが法令上は許可と表現されているというようなこともありますので,これは法令上どういう名称を使うかということと直接の関係はないということを,まずお断りしておきます。以下の話も,そういうものだと御理解ください。ただ,この分類論については,既に強い批判が存在するところでございます。   2ページにお移りいただきまして,実際上,今からお話をすることと関係のある批判について申し上げれば,第一にこの分類学においては,多様であって組み合せることが可能な複数の分類の軸が含まれているにもかかわらず,それらが整理されないで,それぞれ異なる観点から定義された諸類型が単純に列挙されていると。例えば,一番大きな分類項目である法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為という枠なのですが,例えば,前者はどのような内容,性質の私人の法的地位を対象として規律するかという基準で分類されているのに対しまして,準法律行為的行政行為というのは,私人の法的地位に対してどのような影響,強い効果,弱い効果を持つかという基準で分類されております。けれども,これは,本来は,縦軸,横軸のように同時に適用されるべきではないかといったような批判でございます。要は,いろいろな分類の軸が混ぜこぜになっているということでございます。それから,第二に,こういった行政行為の各類型が,必ずしも行政作用とかその対象となる私人の法的地位の実体的な性質を反映していないという批判でございます。   こういうことがありますので,現在では,学説上,この分類学というのは余り重視されておりません。例えば,ここに挙げました宇賀克也教授の本などにも,行政行為の分類という形でこういったものは挙がっておりません。しかし,具体的な法制度を設計する際の手掛かりにはなるということがありますので,実務上は今でも使われることがあると承知しております。   ただ,これを使うといたしましても,以上のような批判があるということを踏まえて,一体この分類がどういう基準を前提にしているのか,こういった基準が行政過程においてどのような意味を持つかということを明確にしないと,何か分類をすれば,そこからあらゆる効果,あらゆる答えが出てくるかのような誤解が生じる可能性がありますので,その点はよく注意をして,この分類を使わなくてはいけないということでございます。   ここで手掛かりにしたいのは,その次にあります認可と,それから確認という概念でございます。   まず,認可の方なのですけれども,これは,学問上の定義としては,行政庁が「第三者の行為を補充してその法律上の効力を完成せしめる行為」ということで,例えば,一番典型的に挙げられるものが,農地法3条による農地等の権利移転の許可,それから,実はかつての,昔の民法の公益法人設立許可が学問上の認可の例として挙げられてまいりました。   こういった認可の中には,学問上の許可の性質を併有するものがあるということが,従来から指摘をされてきました。この許可というのは,「一般的な禁止を特定の場合に解除し,適法に一定の行為をすることをえせしめる行為」というものを指しまして,この農地法上の許可がその例です。つまり,この農地法上の許可を得なければ,農地の売買等をしてはならない,しかし,許可を受ければ売買をすることができるようになるというのが許可の効果でして,学問上の許可としての効果ですし,その許可を得なければ法律行為としての効力が発生をしないと,売買契約の一番本体に当たる部分の効果は発生をしないというのが,これが認可としての効果ということになります。   この場合の許可と認可の関係を考えますと,認可制というのは,許可制の趣旨を徹底させるという意味の制度と言えます。つまり,許可の対象行為を一般的に禁止し,要件を満たす場合にだけそれを許すという点は,認可制の性質を併有しない単純な許可制においても同じなのですが,しかし,単純な許可制の場合には,許可を得ていない行為に対して,不利益処分とか刑罰などの制裁を課す可能性が定められることがあるわけですが,許可制の性質を併有する認可制の場合には,更に法律行為としての効力が一律に否定をされるということがございます。許可制,単純な許可制の場合ですと,法律行為としての効力が場合によっては否定をされることがあると,例えば,民法90条違反であるというふうな形で否定をされることが場合によってはあるわけですけれども,一律に画一的に否定をされるわけではないのに対して,ここでいうところの認可制がとられていると,その法律行為としての効果は画一的に,認可を得ていなければ一律に否定をされるということになります。   ここでは,このように許可制の性質を併有する認可制が,認可の対象行為を規律する効果を行為規制効と呼んでおきたいと思います。要は,許可とくっ付いた認可制の効果ということです。   ただ,実は,先ほどの公益法人設立許可のように,認可制には,今申し上げた行為規制効を趣旨目的にするとは言えないものがあります。かつて公益法人設立許可を受けていない団体については,公益目的で活動することを禁じられていて,それで,それが許可を得ることによって初めてそれができるようになるというように理解されてきたわけではありませんで,むしろ,いわゆる権利能力なき社団,財団として設立許可を受けた公益法人に近づけた法的な取扱いがされてきたところです。   ですから,こういった場合に,認可制の意味は一体どこにあるのかと申しますと,一定の要件を満たして認可を受けた主体に,社会で活動するための一定の法的な地位を定型的に認めると,つまり,一定の権利を定型的に認め,同時に義務を課すということにあろうかと思います。これを,以下では認可の地位設定効ということにいたします。   その次の段落は飛ばしまして,この認可によって成立する法的地位は,法律行為に基づく民事法上の地位に限られません。例えば,伝統的な行政行為の分類論で申しますと,公共組合の設立認可というものが認可の例として挙げられることがあるわけですが,その効果の中心は,民事法上の地位の成立というわけではなくて,組合に公権力を認めるということにあります。土地区画整理組合とか土地改良区といったものが公共組合の例ですけれども,そういうことでございます。   かつての公益法人設立許可も,法人格の成立という民事法上の効果と監督関係の成立という行政法上の効果とを併有しておりました。ただ,最近の教科書では,その点,認可は法律行為の法的効果を完成させると限定をする定義も見られますけれども,これは,先ほど申し上げた行為規制効を持つ認可を想定したものなのであって,認可一般に妥当するというわけではなかろうと思います。認可一般に妥当するものは,むしろこの認可の地位設定効の方であろうと思われます。   そこで,公益信託の話にようやく入るわけですが,公益信託を成立させる行政行為は,少なくとも民事法上は当該信託について信託法上の受益者の定めのない信託に係る存続期間の制限が適用されなくなるという効果,それから,行政法上は,限定された範囲ではありますが,行政庁による監督関係を発生させる効果を持つことが想定されております。このことを考えますと,以下で検討する公益信託を成立させる行政行為は,こういった地位設定効を有するという意味で,認可の性質を持っているということになろうかと思います。ただ,行為規制効を持つかどうかというのは別の問題でして,これは後で述べたいと思います。認可が地位設定効を持つということを確認しておきたいと思います。   逆に申しますと,行為規制効を持たない認可については,地位設定効に反しない限りは,認可を受けていない行為に法律行為としての効果を認めるということも考えられます。公益信託を成立させる行政行為が地位設定効を持つ認可であるとしても,認可を受けていない信託に公益信託法上の効果ではなく,信託法による受益者の定めのない信託としての効果を認めることは,これはあり得るということになります。こうした効果を認めるべきか否かという点は,したがって,その地位設定効を持つ認可の性質を更に別の角度から考えることによって決めなくてはいけないということでございます。   今日の話は,全体的に,結局行政法上はいろいろな制度ができますと,いろいろな選択肢がありますという結論で,その点では余り長々とお話しても仕方がないところがあるのですけれども,大枠として,この枠はなかなか超えるのが難しいけれども,その枠の中でいろいろな制度の選択肢を考えることができると,こんなような話になろうかと思います。   次に,もう1点,確認についてでございますが,これは,「特定の事実又は法律行為に関し疑い又は争いがある場合に,公の権威をもってその存否又は真否を確認する行為」と定義をされておりまして,恩給権の裁定とか発明の特許とか,こういったようなものが例示をされております。これらは,既に成立をしている私人等の法的地位を対象とし,その意味で,私人の実体法上の法的地位を変動させない行政庁の行為,あるいは,私人等の法的地位を対象にするのですが,当該法的地位について決定し規律する効果までは持たない,言わば弱い効果しか持たないというものとして括ることができます。ただ,では,どういう効果を持つかという点は,実は法律によってばらばらでして,統一的に定義をすることはできません。   以上のような性質があるので,この確認という行為には,行政庁に裁量が基本的にないということになります。公益信託を成立させる行政行為につきましても,統一的な行政庁が所管をして,当該行政庁は法令上の基準に従って判断をする,裁量はないという制度にすることが想定をされているのではないかと思いますので,以下でもその点は前提にしたいと思います。行政庁に裁量が認められない行政行為を確認的行為と表現することがありますが,その意味で申し上げれば,以下で検討する行政行為は,その意味の確認的行為ということになろうかと思います。これも,以下の話で前提にいたします。   ただ,実は,確認でない行為だから,逆に行政裁量が常にあるかというと,そういうことはありませんで,現在では,行政裁量が認められるか否かという点については,行政行為の分類学から独立の基準によって判断をされますので,先ほどの認可の性質を持つものについて裁量がないということも,これはあり得るということになります。したがいまして,公益信託を成立させる行政行為の効果は,以上のことから,次の2の方に入りますけれども,地位設定効を持つという意味で認可の性質を持つと。基本的に裁量が認められないという意味で,確認的行為であると考えられます。それで,以下で更に詳細にこの公益信託を成立させる行政行為の法的性質として考えられるものの選択肢を示していきたいと思います。   まず,一つ考えられますのは,地位設定効だけでなく行為規制効も持たせるという選択肢です。言わば,強い効果を持つ認可として考えるという考え方です。つまり,受益者の定めのない公益目的の信託は,認可を受けなければ行ってはいけないと,信託としての法的効果を持たないという考え方です。   これは,現行の公益信託法の1条及び2条1項の体裁に合うようにも見えるわけですが,ただ,この考え方は,行為規制効を正当化する公益上の理由があるということを前提にいたします。認可を受けなければ,受益者の定めのない公益目的の信託を行ってはならないという,これは規制ですので,それを正当化するだけの公益上の理由がなければ,財産権の過度な制限に当たるのではないかという問題が生じます。公益目的事業を行う団体は,公益認定を受けなくても一般社団法人として活動ができるのに,公益目的の信託について,これだけ強い禁止をするというのはなぜなのかということの説明が求められることになります。   ここでの議論も,ここまで強い効果を持たせるということは,恐らく想定されていないのではないかと思います。そこで,公益信託を成立させる行政行為に,こういった行為規制効は認めないで,地位設定効だけを持たせるということが考えられます。この場合には,受益者の定めのない公益目的の信託は,こうした行政行為を受けていなければ,公益信託法上の効果は生じないわけですが,信託法上の受益者の定めのない信託としての効果は持つ可能性があります。そこで,こういった考え方を採る場合なのですが,更に,何を行政行為の対象にするかによって,制度の選択肢が分かれます。   一つには,信託法に基づいて設定をされ,効力を持っている受益者の定めのない信託に対して行政行為を行い,公益信託としての効果を発生させるということが考えられます。言わば,信託法上の受益者の定めのない信託に上乗せをするような形で認定をするものです。これは,ちょうど一般法人法によって設立された一般社団法人,一般財団法人が公益認定を受けるという仕組みとパラレルな考え方ということになります。以下では,これを認定と便宜的に呼ぶことにいたします。   ただ,信託の制度と法人の制度には違いがありますので,公益認定に相当する行政行為について,これをパラレルにそのまま持ってくるということが本当にできるかどうかという点は,検討を要する点です。つまり,設立時社員らが,一般社団法人又は一般財団法人を設立するプロセスと,当該法人が公益認定を受けるために意思決定を行うプロセスというのは,一応区別が可能です。したがいまして,設立された一般社団法人又は一般財団法人を対象にして,2段階目に公益認定を行うという制度は,これは関係者が取る行動のプロセスに適合すると解することができるわけですが,受託者が公益認定を受けるために取る行動は,その信託行為に基づいて行われると考えられますので,信託行為によって信託を設定すると,まずそのプロセスが第1段階としてあって,そして,受託者が公益認定を受けるために行動を取るというプロセスが第2段階であるという,はっきりとした区別ができないということがあります。   したがいまして,この両者の区別を前提にして,信託法によって設立をされて効力を持っている信託に対して,言わば第2段階として公益認定を行うという制度は,必ずしも関係者が取る行動のプロセスに適合しないものがあるのではないかと。具体的に申し上げれば,公益信託としての効果が生じる前に,とにかく信託法に基づいて受益者の定めのない信託が有効に成立をするという期間が必ず必要になるわけですが,こういったことが関係者の不利益にならないかどうかということを検討する必要があろうかと思います。   特に問題になるのは,委託者が公益信託の認定を受けられない場合には,信託を有効に成立させないという意思の場合です。この場合に,信託行為において公益信託の認定を受けられないことが確定することを解除条件として,一旦とにかく信託を成立させるという方策も考えられるわけですけれども,しかし,こういうことを絶対にやらなくてはいけなくなるということが合理的なのかという点は,考える必要があろうかと思います。   そこで,もっと簡単に考えるという選択肢があろうかと思います。つまり,公益信託を設立させる行政行為の行為規制効を否定して,地位設定効だけを認めるという場合にも,単純に公益信託を準備する受託者の状態に対して行政行為を行うと,公益信託を成立させるという制度が考えられます。こういたしますと,信託法による受益者の定めのない信託としての効力の有無から,ニュートラルに公益信託を成立させる行政行為の制度が考えられることになります。これを,以下では,弱い効力を持つ認可ということにいたします。(2)の先ほどの認定との違いは,行政行為の効力そのものというよりは,行政行為を行う前の,言わば初期状態をどういうものとして想定するのかということによるということになります。   こうした認可の制度,今申し上げた弱い効力を持つ認可の制度におきましては,公益信託の認可を受ける前に,信託法上の受益者の定めのない信託の効力を認めるか否か,あるいは,受託者が認可を申請したものの認可を受けることができなかったという場合に,信託法上の受益者の定めのない信託が成立するか否かという点は,基本的には信託行為の解釈によるということになろうかと思います。これは,この制度の直接の枠の中の話ではなく,基本的に信託行為の解釈によって決まるということかと思います。公益信託の認可を受けることを停止条件として信託を成立させる旨,あるいは,逆に公益信託の認可がない限り,信託法上の受益者の定めのない信託とするという定めが信託行為にあれば,それぞれに従うということになります。   ただ,これがないときには,結局,信託行為の解釈に困難が生じる可能性があるので,そこで,その次のところですが,一種のデフォルト規定を法律に定めておくということが考えられようかと思います。つまり,受益者の定めのない公益目的の信託を設定する信託行為に,信託法上の受益者の定めのない信託の成否について定めが置かれていない場合に,どちらにするかということを法律に定めてしまうということで,一方で,公益信託の認可を受けることを停止条件として信託を成立させる旨の定めが信託行為になければ,信託法上の受益者の定めのない信託としての効力が認められるということを法定する選択肢,言わば,信託法上の受益者の定めのない信託の成立を原則とするというデフォルトの規定,他方で,逆に,公益信託の認可がない限り,信託法上の受益者の定めのない信託とする旨の定めが信託行為にない場合には,信託法上の受益者の定めのない信託は成立しないという,逆のデフォルトを設けるということが考えられます。それぞれ,以下では単に信託成立原則規定,信託不成立原則規定と申し上げます。   私はこれ以上の判断はできませんので,どちらにするかということは,ここでの議論かと思います。結論的にといいますか,後での議論との関係で申しますと,今日お配りを頂いているこの補充的な検討という資料がございますが,この第1のところに,公益信託の効力の発生時期ということで,甲案,乙案,丙案と並んでございますが,おおむね,今私が申し上げたこととの対応関係で申しますと,6ページの(1),一番最初に申し上げた認可,強い効力を持つ認可が甲案に相当すると思われます。次の6ページに認定と書いた部分ですが,これは乙案の出発点に対応するかと思います。ただ,内容的には本当に乙案なのかということが若干問題になりまして,内容的には,先ほどの乙案は,むしろ私の書いたものの7ページの(4)の信託成立原則規定をデフォルトとして設けるというのに近い見方になっているのではないかと。それに対して丙案が,7ページのデフォルトとして信託が成立をしないという信託不成立原則規定という考え方に対応するのではないかと思われます。   そこで,次ですが,それでは,この公益信託の認可ないし認定が取り消された場合に,どのような法的効果が生じるのかという,次の話に移ります。8ページです。   具体的には,信託法上の要件を充足する限り,同法による受益者の定めのない信託として信託の効力がなお存続をするのか,それとも存続しないのかということでございますが,これは,先ほどの公益信託を成立させる行政行為をどういう性質を持つものとして制度設計するかによって,答えは変わってくるだろうと思われます。   以下では,非常に極端な場合,公益信託の認可ないし認定が信託法166条1項の定めるような事由によって取り消されるといった場合には,これはもう信託法による信託を存続させる余地はないと考えますので,これはちょっと除いて考えます。もっと普通の場合を考えたいと思います。   まず,先ほどの2で述べたことと全く同じようにパラレルに考えるということが考えられます。すなわち,まず,強い効力を持つ認可の制度を採る場合には,受益者の定めのない公益目的の信託が信託法によって効力を持つことが否定されますので,結局,公益信託の認可が取り消されれば信託は終了すると,これは一切効力を持たないということになります。   逆に,(2)の認定の制度を採る場合は,公益信託の認定が取り消されますと,信託法により受益者の定めのない信託が復活をするということになります。ただ,特段の定めがある場合,公益信託の認定を受けられないことが確定することを解除条件として信託を設定する旨が信託行為に定められている場合は,これは別でありますが,原則としては,信託は復活をすると。信託法により受益者の定めのない信託が復活する,こういうことになりますので,先ほどの二つの選択肢を採ると,制度としては,終了時も同じように考えることになります。   それに対して,2の(3)で申し上げた弱い効力を持つ認可の制度を採る場合は,少し話が複雑になります。まずは,同じように考えるということも,もちろん可能です。すなわち,公益信託の認可が取り消された場合に,信託法による受益者の定めのない信託として,信託の効果が存続するか否かは,基本的に信託行為の解釈による。その判断は,公益信託の認可を受ける前及び認可を受けられなかった場合に,信託法による受益者の定めのない信託が有効に成立するか否かの判断と基本的に同じということになりますので,先ほどの信託成立原則規定はそのまま信託の終了時にも妥当すると,あるいは信託不成立原則規定は終了時にも同じように妥当するという考え方です。   ただ,次の8ページから9ページの方ですけれども,今のこの認可の制度は,実は,信託法による信託の成否からニュートラルな制度ですので,今申し上げたのとは別の選択肢として,公益信託の設定時と終了時との間で,信託法による受益者の定めのない信託の成否について,別の考え方を採るという可能性も排除していないのではないかと思われます。   ここの部分は,私はよく分からないので,ちょっと間違いかもしれませんが,弱い効力を持つ認可の制度によりますと,公益信託の認可を受ける前及び認可を受けられなかった場合に,信託法によって受益者の定めのない信託としての効力を認めるか否かを決定するに当たっては,信託を設定する当事者の意思が主な考慮要素になるだろうと。これに対して,終了時ですけれども,この場合には,公益信託の終了までに信託財産が公益信託として運用されているということが,やはり考慮要素となろうと思われます。つまり,具体的には,公益信託の終了後も,信託法による受益者の定めのない信託を存続させる場合には,財産を計算して分けるという必要が出てくるようです。受託者は,公益社団法人,公益財団法人の場合の公益目的取得財産残額に相当する額を算定し,他の類似目的の公益信託の信託財産としたり,類似事業を目的とする他の公益法人等に贈与するといったような措置を採ることによって,財産を分ける必要があると。これは,かなり複雑な計算措置になり,当事者にとっても制度を運営する国や都道府県にとってもかなりのコストが掛かると。   それから,公益信託の終了後にこのように複雑な計算及び措置を経て分けられた財産によって信託法による信託が存続することが,公益信託が社会的に高い信認を得て第三者から寄附等を受ける上で,若干のマイナスにならないかどうかという点も検討する必要があろうかと思います。   以上,申し上げたここの段落のところは,私は全く素人でよく分からないので,むしろ皆さんで御議論いただきたいと思っております。   そこで,とにかく,公益信託の認可がない状態で,受益者の定めのない公益目的の信託に信託法上の効力を認めるか否かを信託行為の解釈によって判断するに当たって,公益信託の終了時には,設定時に比べて効力を否定するという方向で解釈,判断をするということが考えられるのではないかと思われます。つまり,デフォルト規定を法律に定めるとすれば,むしろ終了時には信託不成立ということにすると。つまり,公益信託の設定時について,信託法上の受益者の定めのない信託の成立を原則とするデフォルト規定を置くという場合であっても,公益信託の終了時については,信託法上の受益者の定めのない信託の不成立を原則とするというデフォルト規定を法律に定めるというわけです。すなわち,公益信託の認可を受けることを停止条件として信託を成立させる旨の定めが信託行為にない限り,信託法上の受益者の定めのない信託としての効力が認められるということを法定する場合にも,一旦成立をした公益信託は,公益信託の認可がなければ信託法上の受益者の定めのない信託とする旨が信託行為に定められていなければ,終了時には信託法上の信託としては存続しないということになります。   更に進んで,一切信託の存続を認めないということも考えられます。ただ,こういう制度が正当化されるのは,かなり強い理由がある場合で,先ほど申し上げたように公益信託終了後に信託を存続させないことの要請が当事者の意思の自由を制限する理由になるほど強いという場合に限られますので,ここまで強い理由があるかどうかという問題になろうかと思います。   やはり,今日配られている先ほどの補充的な検討の資料で申しますと,甲案は,これは先ほどの甲案,あるいは私の資料で申し上げれば,6ページの(1)に述べた強い効力を持つ認可の場合を想定しているか,あるいは私の資料の9ページの(3)のところに書いた,いわゆる弱い効力を持つ認可の制度においても,一切信託の存続を認めないという考え方かと思われます。   それに対して,乙案の方ですけれども,こちらは,私の資料で申しますと8ページから9ページにかけて,(2)という形で信託の成立可能性を縮小すると,具体的に言えば,終了時には信託の不成立をデフォルト規定とするという考え方に対応しているのではないかと思われます。乙案は8ページから9ページの(2)の考え方におおむね対応していると見られます。   最後に,これはほんの付け足しですけれども,認可ないしは認定を受けた公益信託に対して,行政庁及び裁判所がどのような権限を持つ制度が考えられるかという点でございます。これは,今日のテーマから少し外れますので,飽くまで参考程度ということでございますが,述べたいと思います。   公益信託の認可ないし認定を行った行政庁は,信託が認可ないし認定の基準に適合しなくなったという場合や,あるいはその他法令違反があるといったような場合には,認可ないし認定を取り消すことができます。これを行政行為の撤回と申します。公益信託法には,この公益信託の認可の取消しを根拠付ける規定が実は現在置かれておりませんが,しかし,最高裁判所の判例によりますと,一般に法律上の明文の根拠規定がなくても,許認可等を行った行政庁が許認可を取り消すことは可能であると考えられておりますので,現行法の下でもこれは可能なのだろうと思います。   近時の法律においては,しかし,この取消しについては明確に法令上の規定を設けておくというのが普通かと思われます。実際,法人に関する公益認定法にもそういう規定がございます。そういたしますと,更にこれに加えてもっと前の段階で,言わば違反状態の是正を求める勧告とか命令という制度も,これに付随をしてくるということになろうかと思います。   それから,更に,公益信託の認可ないし認定を一旦受けた事項を関係人が変更するというときに,認可ないし認定の基準がなお満たされているかどうかということをチェックするために,行政庁による変更の認可ないし認定の制度を置くことが考えられます。これに加えて,重大な変更でなければ,関係人が行政庁に届出をするだけでオーケーであるという制度も考えられます。行政庁の方がそれでは基準に適合しないと判断をする場合には,先ほどの勧告とか命令という制度を使っていくということになります。   以上の制度を設けることは,恐らく認可ないし認定の制度を採る以上は,必然的についてくることであろうと。ここまでは,ほぼ必然なのではないか。これと違う制度も考えられないことはありませんが,かなり強い理由が必要になるのではないかと思います。要は,一旦とにかく許認可をするときには行政庁が判断するのだけれども,あとは知りませんという制度になりますので,それは,なかなか考え難いのではないかということでございます。   ただ,ここから先の部分でございますが,現行の公益信託法は,今申し上げた権限のほかに,いろいろ行政庁の権限を認めております。これは,主務官庁がそれぞれの公益信託によって公益が実現されるようにという目的で,それぞれの公益信託を積極的に方向付ける権限を包括的に持つという考え方の現れであろうかと思いますが,しかし,ここで考えている新たな公益信託制度においては,そうではなくて,統一的な行政庁が公益信託が法令上の基準を満たすように監視をする権限を持つにとどめるということであろうと思われます。これが,考え方のベースラインであろうと思われますので,したがって,公益信託の認可ないし認定及びその変更の認可ないし認定については,基本的に行政庁に裁量が認められないということは先ほど申し上げたとおりですし,関係人の申出に基づかないで,職権でいろいろなことをやるということを正当化するのも難しいだろうと。   ただ,問題になりますのは,信託法が現在裁判所の権限としている関係人の一部からの申立てによるもろもろの処分,例えば,受託者の辞任の許可とか新受託者の選任とか,あるいは信託の終了命令等といったように,関係人の一部から申出があったときに裁判所が処分をするという,こういう制度でございます。これらは,先ほど述べました法令適合性を審査する趣旨にとどまらず,信託の利害関係人の諸利益を調整して保護するという目的の制度と解することができます。こういった権限が,現行法上は,先ほどの(2)で述べましたように,公益信託によって公益を実現させる包括的な行政庁の権限があるというところに,言わば隠されていたというか,そこに全部含まれていたということであろうかと思いますが,しかし,新たな公益信託制度においてはベースラインがもっと下がりますので,そうすると,こういった権限をどういうふうに,どこに持たせるかという問題が浮上してくるということでございます。   これについても二つの考え方があり得て,一つは,公益信託についても信託の関係人の諸利益を調整し保護する趣旨の処分を行うというのであれば,これは裁判所がやるのにふさわしいであろうという考え方です。この点で,信託法上の信託と変わらないという考え方が一つにはあり得ようかと思います。こう考える場合には,裁判所が公益信託の認可ないし認定の審査対象を直接規律することになりますが,認可ないし認定とは別の切り口から規律を行うということですから,別にこれが法制度としておかしいということはないであろうと思います。矛盾,抵触はないだろうと。裁判所は,公益信託の認可ないし認定の基準の範囲内で処分をすべきことになり,制度としては,処分をした場合には,公益信託の認可ないし認定を行う行政庁に通知をするといったような制度を設けておけば足りるのではないかと思われます。   ただ,もちろん別の選択肢もあり得ます。つまり,公益信託及びその変更の認可ないし認定を行うのは行政庁ですし,その基準が守られるように監視を行うのも行政庁です。したがいまして,それぞれの公益信託に関する情報を持っていて,公益信託の関係人と接触をしているのは行政庁だと考えますと,それから,もう一つは,他の行政機関から必要な情報を迅速に集めることができるのも行政庁であると考えますと,こういった利点を生かして,公益信託の認可ないし認定を行う行政庁がいろいろな処分を行うということも考えられるのではないか。あるいは,こちらの方が窓口がとにかく1本になりますので,関係人にとって分かりやすいということもあるかもしれません。ただ,この場合には,具体的な手続をどうするか,行政手続法とか行政不服審査法とか行政事件訴訟法とか,この辺の標準的な手続をそのまま全部使うのかといったようなことは,検討しなくてはいけないであろうと思います。   それでは,おおむね時間ですので,これで終わります。 ○中田部会長 山本参考人,どうもありがとうございました。非常に有益な御説明を頂きました。   ただ今のお話につきまして,御質問などございましたら,御自由にお出しいただければと存じます。 ○深山委員 ありがとうございます。非常に分かりやすく整理していただいて,勉強になりました。   お話の中で,いわゆる公益認定なり認可のない公益を目的とする受益者の定めのない信託の位置付けについて,その設定時と終了時をパラレルに考えるということが一つ考えられる,しかしながら,必ずしもパラレルには考えない,設定時の規律と一旦なされた認可,認定が取り消されたときの終了時の規律をそろえないという可能性もあるのだということを御指摘いただいて,なるほど,そのとおりだなと思った次第なのですが,その延長線で,設定時と異なるときに,設定時よりも信託成立の可能性を縮小する可能性があるという御指摘があって,それはそれで分かるのですが,逆に,設定時よりも信託不成立の可能性を縮小する可能性,逆のねじれという可能性も,少なくとも論理的にはあるのではないかということを感じました。   単に論理的な可能性だけではなくて,設定時と終了時の違いというのは,設定時はまだこれから信託を設定しようという段階で,まだ何も起きていないわけですが,終了時の方は既に,どのぐらいの期間かはともかくとして,公益信託としての実績といいますか,運用がなされているという既成事実なるものがあります。その違いをどう見るかで,それはどちらにも振れるのではないか。つまり,もう既にその信託の運用がなされているので,認定が,それなりの理由があって取り消されるのでしょうが,取り消されたからといって,いきなり終わりにしてしまうと,やはり不都合が生じる場合もあるのではないかと思います。   少しそこはソフトランディングを考えて,未来永劫とは言わないまでも,一定期間はむしろ受益者の定めのない信託としてでも残しておいてソフトランディングを図るというような,これは理屈というよりは実務的なニーズがあるような気もいたしまして質問させていただく次第ですが,そのような方向での,今の御説明と逆の方向での違いを作るということもあり得ることでしょうか。 ○山本参考人 ええ,私もちょっとそういうことは考えたのですけれども,まず,論理的にはあり得ると思います。私が申し上げたのは,ここでいう弱い効力を持つ認可の制度から,成立時と終了時の間をそろえなくてはいけないといったような論理的な帰結は生じないだろうと,そこは変える可能性があるだろうということを申し上げましたので,そうだとすれば,逆に,なるべく信託をそのまま残すということもあり得るだろうと思います。   問題は,したがって,実質的にそういう選択をするかどうかというところで,そこが余り自信がなかったものですから今日は申し上げなかったのですけれども,一つ,今,正に深山委員が言われたようなことが考えられるかと思います。一定期間存続をしている状態をすぐになくしてしまうのは社会的な損失が大きいだろうということで,むしろ一旦成立したものはなるべく残した方が,社会的にむしろ有益であろうと考えると,逆の選択肢もあり得るかと思います。 ○中田部会長 深山委員,よろしいでしょうか。 ○深山委員 はい。 ○吉谷委員 信託協会から来ております三菱UFJ信託の吉谷でございます。   レジュメを拝見して,いろいろと疑問な点がございまして,大きく3点ほどございましたのですが,まず,1番目の中心的なところについて御質問させていただきたいと思います。   私どもは,元々立場としては,公益信託の前に目的信託を設定しなければならないという規律になっていると実務上は弊害があるので反対するという立場を採っておりまして,その立場からの質問という形になります。   まず,内容の確認なのでございますが,御説明からしますと,私どもがやりたくないと思っているような目的信託を事前に設定するというやり方が認定というものになり,事前に設定しなければよいというものであれば認可の方になると,まず理解しております。ただ,その認可につきましては,事前に目的信託を設定して,それを公益信託に変えると,そういう変更の段階を認可するという方法もあり得るのでしょうかというところが一つでございまして,もう一つは,認可の御説明として,2ページ目のところに,「第三者の行為を補充してその法律上の行為を完成せしめる行為」というふうな御説明のくだりがございます。これを普通にイメージとして受け取ったところでは,例えば,認可を受託者となるべきものが得ようとするというときには,委託者との間で信託契約をまず締結して,その状態で認可を申請して,認可がおりたところで信託が成立するというふうなイメージを抱くところであります。   ただ,実務で実際に行われているところは,現行法を基にした許可の制度の下でありますけれども,この場合は,まず許可を得て,その後に信託契約を締結するという手順を踏んでおります。このような手順というのが,ここで御説明の認可においても否定されることはないのだということでよろしいかどうかと,ここは実務上非常に気になるところでございます。   もし契約は認可の後で行うということになりますと,そもそも認可がない場合には目的信託が成立するのかどうかという論点も出てきません。ですので,私どもとしては,それが認められるのであれば,今後もそのような手順でやるということが想定されるわけであります。 ○中田部会長 3点とおっしゃいましたけれども,今のでよろしいですか。 ○吉谷委員 一つずつお尋ねしようかと思ったのですが。 ○中田部会長 今のが第1点でございますか。 ○吉谷委員 今のが1個目なのです。 ○中田部会長 分かりました。では,一つずつ。   では,山本参考人,お願いできますでしょうか。 ○山本参考人 第1点と最初に言われたのは何でしたか。 ○吉谷委員 目的信託を事前に設定する場合は認定になって,目的信託を事前に設定しない方式であれば認可になるという理解でよろしいでしょうか。 ○山本参考人 ここで,まず名前として付けている認定とか認可というのは,非常に便宜的なものでございますので,法令上の用語であるとか,あるいは学問上の用語とぴったりと当てはまっているという意味で,1対1の対応関係にあるわけではございませんが,7ページのところで,(3)として弱い効力を持つ認可と書きましたのは,今お話のあった,まず目的信託を設定しなければいけないかどうか,あるいは目的信託を設定しているか否かということから,いわばニュートラルに制度を作るという話でございますので,6ページの(2)の方で認定と書いたのは,まず目的信託を設定するという制度なのですが,(3)の方は,そこのところはこだわらないと。したがって,目的信託を設定していない,目的信託がない状態で認可を求めるということもあり得る,もちろん,目的信託を設定した後に認可を求めるということもあり得ると,そういうことでございますし,認可が得られなかった場合にどうなるかについても,いろいろな制度設計の仕方があるだろうということでございます。   それから,2ページの(2)で,認可というときに,第三者の行為を補充してその法律上の効力を完成せしめるというわけなので,まず,第三者の行為がなければならない。それが言わば目的信託の設定ということになってしまうのではないかと。この認可という概念の中に,まず目的信託を設定することが必要であるという含意があるのではないかと,そういうことですよね。   その点に関して申し上げれば,実は,ここで言う第三者の行為が一体どういうものなのかということがございまして,行為規制効という形で一番強い認可の制度を考える場合には,何か法律行為があって,それを補充することになるのですが,認可と言われているものが全部そうかというと,必ずしもそうではないということがありまして,例えば,先ほどのように一定の準備行為があると。それで認可を受けて効力が発生するということも,認可の制度に含めて構わないのではないかと。   典型的に強い認可を思い浮かべると,まず何か法律行為があって,それを補充するということなのですが,実は,ここでいう定義のところも,法律行為という限定はしていないのですね。法律上の行為というような表現が使われていて,本によっては法律行為と,例えば藤田宙靖教授の本などには書いてあるのですが,そこは今までは余り限定をしてこなかったので,したがって,今のお話でいうと,別に認可だから必ずまず目的信託の設定があって認可をするとしなければいけないというわけではないだろうと思います。 ○吉谷委員 ありがとうございます。   事実上の準備行為が先行する形でもいいのではないかと理解いたしました。 ○山本参考人 はい,そういう制度を作ることもあり得るのではないかと思います。公共組合の設立認可などは,むしろそうなのではないかと思いますが。 ○吉谷委員 ありがとうございます。   続きまして,2点目を質問させていただきます。   こちらは,まず,5ページのところで,「裁量をもたない制度とする」という御説明がされてありまして,裁量をもたない制度というのが後ろの方でも出てくるわけなのですが,ここの意味について確認させていただきたいと思っておりまして,その前に,「当該行政庁は法令上の基準に従って判断をし」となっております。「裁量をもたない」というのは,法令上の基準に従って判断をするということとほぼ同義なのではないかなと私は理解しまして,そのような理解でよろしいのでしょうかというところが疑問です。   実務的な感覚からいうと,何ら裁量がないというふうな御説明だとすると,ちょっとよく分からないというところの実感があるのですけれども,例えば現在,本部会では認定あるいは認可の基準の受託者の資格として,公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有するというような基準を設けるという提案があります。この能力の有無というのを客観的に評価するというのは,かなり難しいように思うのですけれども,そのような判断をこの基準に従ってするというのは,裁量という評価ではないということなのかなと理解をしております。   そのような理解で仮に正しいとして,ここからが実は本題なのですけれども,11ページの4行目の辺りで「裁量が認められず」の後,「また」以下に,職権は「正当化することが難しくなる」と記載されています。この職権が正当化されないという理由のところなのですけれども,これが,私が先ほど理解したように,裁量を認めるべきではないのだということが法令上の基準に従うということとほぼ同義なのであるとすると,確かにその受託者を職権で選任するということは受託者を探索するようなことになりますので,法令上の基準に単に従うだけでは難しいことになるのだろうと思います。一方で,その認可,認定の取消しについては法令上の基準に従うということで,職権でできるのだと理解をいたしました。   ただ,ここに記載されている中でも,受託者の解任というのがあります。受託者の資格要件については,認定基準のところにも記載されていますので,受託者の認定基準に従って判断するということであれば,裁量ではなくなって,職権の行為というのは行使が難しくないのではないかと考えるわけであります。   元々なぜこのようなことを問題意識として持っているかというと,公益信託の場合は,受託者と信託管理人という2人の機関によって成り立ってしまうというところがありますので,その監督をする行政庁の役割が結構重いのでは,大きくなるのではないかなと考えているところがあるというわけでございます。 ○山本参考人 最初の点でございますけれども,5ページの「法令上の基準に従って」というフレーズと「裁量をもたない」というフレーズが同義かということでございますが,おおむね同じように考えていただければよろしいかと思います。   厳密に申し上げると,法令でどれだけ細かく決めているかということと別に,裁判所に行ったときに,行政庁の判断を裁判所が一定程度尊重して,やや控えた審査をするのか,それとも裁判所が完全に行政庁の行った判断を見直すのかという点で,裁量がある,ないということも言いますし,一般に裁量という場合は,むしろこちらの,裁判所と行政機関との関係を考えていることがむしろ多いのですが,恐らくここで議論する際には,余りそこのところは細かく考える必要はないかと思いますので,ほぼ,基準を定めていて,それに従って行政庁が動くということと,ここでいう裁量はほぼ同義と考えていただいて結構かと思います。   ただ,厳密に申し上げれば,行政庁と裁判所との関係と,行政庁と立法機関との関係とは若干異なるところがあるということでございます。   それから,後の方の11ページの受託者の解任の部分の話でございますが,これは,私も個々に厳密に検討した上で自信を持って書いたところではございません。個別に,それぞれ検討する必要があろうかと思います。   ただ,考え方としては,例えば,受託者が非常に不適任であるというようなときには,まずは先ほど述べましたように,基準に適合していないということであれば,それでもって是正を命令すると。それにも従わず,一切改善がないということであれば,究極的には認可ないし認定を取り消すという手段を,まず行政庁は持っていますので,それに加えて,更にこういう解任という特別な権限を持たせる必要があるかどうかという問題であろうと思います。   本当に今述べた認可,認定の取消しとか,あるいは是正命令というだけでは足りず,更にそれを補うような意味で解任の制度が必要ということであれば,そうした権限を行政庁に持たせることも考えられるのではないかと思いますが,問題は,認可に関わる制度で間に合わないのかどうか,それでは十分でないのかどうかということだろうと思います。 ○中田部会長 よろしいですか。では,吉谷委員,3点目お願いします。 ○吉谷委員 3点目は,これは11ページのところで,「行政庁が,公益信託が法令上の基準を満たすように監視する」と記載されていて,監視の対象は公益信託となっておるのですね。その監視の対象というのは,機関である受託者と信託管理人の両方を含むと考えるのが素直なのではないかと私は理解しておるのですけれども,そこについて何か御見解がありましたら,お願いいたします。 ○山本参考人 私は細かいことまでは承知しておりませんが,そのようなことになるのではないでしょうか。つまり,基準が満たされているかどうかを監視するということであれば,それに必要な範囲の人を対象にしなくてはいけないですから,細かいことまで分かりませんけれども,直感的に申し上げれば,両方やはり対象になるのではないでしょうか。 ○中田部会長 吉谷委員,よろしいでしょうか。 ○吉谷委員 はい。 ○小野委員 大変勉強させていただきまして,ありがとうございます。   今までの議論にちょっと重複するところあるかもしれませんけれども,これまでの部会でも,裁判所と行政庁の権限分配の議論がいろいろなされてきまして,今,理論的な幾つかの考え方を教えていただいたこととやや重なる質問になりますけれども,手続法をかなり充足することによって,最後のくだりですけれども,行政庁の判断,すなわち行政処分と裁判所の許可というものがかなり同質的になるというような趣旨にもとれるところもありましたが,対象によるのかもしれませんけれども,やはり行政処分であるという観点とか手続法という観点,もちろん立法論まで含めての議論ですから,非訟事件手続法と同じような行政手続がということになれば同じになってしまうところもあるのかもしれませんけれども,やはりどうしても行政処分では超えられないところがあるのではないのかというような議論も,私も含めてこの部会でもしてきております。   その関係で2点ほど,今までの議論との関連で質問させていただきますと,取消しのところで,先ほどの深山委員からの質問とも関連しますけれども,既に公益信託として継続しているものが取消しになって,終了としての効果が発生する。他方において,当事者は,公益性ありということで争って裁判所に行って,最終的に取消処分が有効ではないということが確定するということになったときに,既に終了手続が開始,場合によっては終了してしまっているという状況は,必ずしも適切ではない。   もちろん行政処分でも執行停止がとれればいいのかもしれませんけれども,やはり行政処分と裁判所の判断とは違うところがあると肌感覚で思うところがあるので,その辺についての山本参考人のお考えをお聞きしたいという点と,次に,先ほどの吉谷委員からの質問にも関連するのですけれども,やむを得ない事由というものを要件としましょうということが随所で議論されているのですが,私は弁護士ということもあって,裁判所に対してやむを得ない事由を,過去の先例等とか含めて主張していくということは,非常に分かりやすい手続かと思うのです。他方において,行政庁の場合法文として非常に抽象的な要件が書かれることを現実的に判断することになり,これまでの信託法の条文の規定の仕方からしてやむを得ない事由ということが規定されたときに,果たして行政庁としてどう判断するのか,手続法をどうするのかとか,それについてどんな考えでいるかという辺りを,御見解を頂ければと思います。 ○山本参考人 最初の方の御質問は,私,ここでの議論の流れを把握していないので,正確に理解できるかどうか分からないのですけれども,例えば,取消しの場面を想定されているわけですね。公益信託の認定ないし認可が取り消されて,それが確定した後のことをお話されているのか,手続の進行中の,例えば認可ないし認定の取消しに対して取消訴訟が提起されて争っていると,その場面で,もう認可,認定の取消しの効力が発生しているから駄目ということになってしまうので,それが問題ではないかということをおっしゃっているのか,どちらのことでしょうか。 ○小野委員 行政処分なので,行政処分として認定の取消しということが行われれば,取りあえず効力として発生するということを前提としております。 ○山本参考人 手続中の,つまり,公益信託の認可,認定が取り消されて,しかし,それについて適法性を争っているという場面を想定しているわけですね。 ○小野委員 はい。 ○山本参考人 それについては,確かに,行政事件訴訟法上の原則は,訴訟提起したとしても執行停止をしないと。特別な場合に,先ほどお話がありましたように,執行停止の申立てをして,それが認められれば執行停止が行われるということですので,現行法を前提にする限りは,まず執行停止の手段で十分かどうかということかと思います。更に,立法論として申し上げると,不服申立て等の手続を取ったときに,一旦処分の効力が停止をするという制度が日本法にもないわけではありませんので,もし本当に必要であれば,そういう制度を考えることも可能であろうと思います。つまり,不服申立て等を行って争っている最中は,認可等の効力はなお存続をするといった制度を考えることもできるのではないかと思います。   それから,やむを得ない事由等のことですね。これについては,私もそれほど存じ上げているわけではございませんので,中身によると思います。行政処分の要件として,やむを得ない事由とか公益上の理由といったような抽象的な概念は,かなり実際使われていますので,そういう要件を定めているから行政機関では難しいということにはならないと思います。むしろやむを得ない事由というときに,実際に,具体的に何を判断することになって,それについて行政庁が判断するのは難しいかどうかということを検討する必要があるのではないかと思います。   抽象的な概念という点で言えば,行政機関がそれを具体化する基準をある程度定めて,基準といっても,いわゆる法令のように例外を一切認めないような基準ではなくて,大まかな原則的な基準を定めておいて判断をするといったような手法もありますので,抽象的な概念を定めるから行政機関では難しいということにはならないかと思いますけれども。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○小幡委員 私も行政法をやっている者として,この認定と認可というのは,どこかでしっかり時間を掛けて討議しなければいけないのではないかと思っていましたので,本日,山本参考人が大変クリアに整理してくださったので,大変よかったと思っています。   ただ,このタイミングで法形式を討議するというのは,やはり実体をどのようなものにするかというのが,まずは優先すべきでありまして,その上で,行政法の概念にどのように落とし込めるかという,それは後の,最後の話だと思いますので,かなり議論が大体煮詰まったところでのタイミングで,認定,認可という法形式を議論するのはよかったと思います。   山本参考人のレジュメに,行政法の概念を整理してまとめていただいています。ご説明を非常に簡明にしていただいたので皆さんも分かりやすかったと思うのですが,その中で,恐らくこの弱い効力を持つ認可というのが多分少し分かりにくいかもしれません。強い効力を持つ認可と認定というのは非常にはっきりしていて,甲案,乙案,丙案と論点の方でありますが,結局,認定とした場合,しっかり2階建てにしなければいけないという構造で組むと,先ほど吉谷委員がおっしゃったような実務と不具合なところが出てくるという問題があるので,弱い効力を持つ認可という概念が出てくると思うのですが,認定をもう少しアレンジというか,変容させればよいのではないかとも思われます。完全な2階建てにすると,まず,受益者の定めのない公益目的の信託というのができている必要があって,その上で公益信託という肩書というか資格をもらうのが認定だという仕組みになると,確かに必ず公益信託でない信託が前になければいけないという問題があると思うのですが,説明の仕方ですが,認定のところで,例えば7ページの(3)のすぐ上の「しかし」というところで,「公益信託の認定を受けることを停止条件として信託を成立させる旨の信託行為は,認定の制度のために,実現できないことになる。」と書かれていますが,それは,認定の要件をどのように作るかということによりますねという,確認です。   つまり,その認定をするための要件として,前にそういう信託行為がなければいけないとしていれば,そうなりますが,ここは多分,認定というものをどう作るかで柔軟になりうると思うので,そのことの確認が1点です。山本参考人の御報告で,要望に応じていろいろな形を行政法の概念で実現することは可能だということが明らかになったかと思います。   それから,2点目ですが,11ページのところで,裁判所との権限配分の話です。私もやや迷うところですが,最後の関係人の一部からの申立てによる処分権限で,一つの考え方と別の考え方というのがあります。確かに信託の関係人の諸利益の調整というのは,いかにも裁判所にふさわしいという感じがしているのですが,他方で,またそれを公益信託として機能させなければいけないときに,通知すれば足りるのではないかという御見解でしたが,一方で,最終的に争いになると,確かに裁判所に行けば裁判所が判断するわけですから,それでもよいかとも思いつつ,他方では,今の公益法人の認定のように,民間委員の入った第三者機関を介して,そこが公益認定をする,公益信託の場でも,そのような第三者委員会が公益信託の認定なり認可をするという仕組みになるとすれば,この場合だけ裁判所がやって,それを行政庁に通知でよいかという,多少私自身は迷いがあるのですが,念のために,その点を御確認できればと思います。 ○山本参考人 まず,第1点につきましては,6ページから7ページにかけてのところで,公益信託の認定を受けることを停止条件として信託を成立させる旨の信託行為は,この認定の制度を採ると難しいのではないかと書いた部分ですが,これにつきましては,ここで想定している認定が非常に固い制度として想定されているということがありまして,必ずまず一旦,目的信託が成立していなければいけないという制度を想定すると,こうなりますということですので,今,小幡委員が言われたことは,私の報告で申しますと,むしろ弱い効力を持つ認可というところで,公益信託を準備する受託者の状態という,一定の状態があれば認可を与えるという制度の,そちらの方で私は考えました。ですから,今の御質問について申し上げれば,認定というところは,あえて図式的に分かりやすく,非常に固いものをまず想定してみたということでございます。   この認可とか認定という言葉は,先ほどもちょっと話が出ましたけれども,最終的に法令上どういうふうに表現するかという問題になりますので,ここでは飽くまで便宜的に使ったものにすぎません。やはり,まず実体としてどういう効果を持たせる制度にするのか,どういう状態に対して認可ないし認定を出す制度にするのかという,まず実体についての議論があって,そういった制度を法律上表現するときに,どういう言葉を使うのが適切かという議論の順序になりますので,ここでは,飽くまで名前を便宜的に使っているということでございます。若干,ミスリーディングというか,分かりにくい表現もある点はお詫びをしたいと思いますけれども,飽くまでこれは便宜的なものであって,重要なのは正に中身であるということは,小幡委員から御指摘のあったとおりでございます。   それから,11ページの裁判所か行政機関かという問題については,11ページの最後のところで,どういう手続にするかということはブランクにしたところがあります。実は,行政機関が判断をするといっても,小幡委員が言われましたように,第三者機関がここで登場することが想定されていますので,その点がまず普通の行政手続ないし行政組織とは異なっているということがありますし,こういった事項を審議するために,特別な手続を考えていくことも考えられるかと思いますので,最終的に裁判所と行政庁との間の関係を考えるときには,実際,裁判所の手続という場合はそれほど違いが出てこないかと思うのですが,行政機関,行政庁というときに,一体どういう手続を想定するかということを詰めておかないと,議論が進まない可能性があるかと思いました。   ここでは,通知で足りるというような形で割り切って書いておりますけれども,これは,かなり割り切った場合の話で,そこまで裁判所に徹底的に任せるというのであれば,そういう制度もないわけではないということでございまして,しかし,小幡委員が今言われましたし,ここにも若干書きましたけれども,実際公益信託の認可とか認定とか,あるいは監督的な処分とかをやるのは行政庁であり,その行政庁には第三者機関も入っているということがありますので,言わばそちらを除いておいて裁判所でということが適切かどうかという問題があろうかと思います。   ですから,私もここのところは決め切っておりませんで,二つ,若干極端な選択肢を挙げれば,こういうことになるのではないかと御理解を頂ければと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○山本委員 民法を専門にしております山本敬三と申します。   今日は,非常にクリアなお話をして頂きましてありがとうございます。非常に分かりやすかったのですけれども,その分かりやすかったと思ったのが誤解ではいけませんので,これで本当にこのような理解でよいのかということを確認させていただいた上で,最後に一つだけ質問をさせていただければと思います。   今日お話を伺って,認定や認可等の概念があるわけですけれども,重要なのは,その下で行われる規制の実質がどのようなものかということではないかと思いました。したがって,問題は,公益信託の成立に関する規制,特に公益信託の成立要件が認められない場合の効果をどうするかということなのだろうと思いました。   その際に,御指摘によると二つ問題があり,一つは,認可の対象行為を規制する効果として,どこまでの効果を認めることが許されるのか。特に行為規制効として,信託としての私法上の効力を否定するという効果を認めるべきかどうかがポイントではないかと思いました。 強い効力を持つ認可とおっしゃったのは,この信託としての私法上の効力を否定するというものではないかと思います。 次の認定は,私法上の効力は肯定するものだと理解しました。  その次の弱い効力を持つ認可とは,信託としての私法上の効力は認めるかどうかを私的自治に委ねるというもので,デフォルト規定を付け加えるのは,私的自治を前提として,そこにデフォルトルールを設定する,要するに変更可能な緩やかな規制を行うものではないかと理解しました。   では,どこまでの規制が許されるかは,行政法上は,今日はおっしゃいませんでしたけれども,恐らく比例原則ないしはそれに類する基準ではないかと思います。おっしゃっていたのは,強い効力を持つ認可は,この比例原則によると正当化できないのではないかということではないかと思いました。   認定については,当事者が取る行動のプロセスに適合しない可能性があるとおっしゃっておられました。これは,この方法では規制目的を適切に実現できない可能性があるので,やはり問題があるのではないかという指摘をされたのではないかと思いました。  それに対して,弱い効力を持つ認可について,デフォルトをどのように設定するかは,比例原則からすると全て正当化可能であり,したがって立法裁量の問題であって,この場で議論して決めてくださいとおっしゃったのか,あるいは,そこに何らかの指針が行政法の観点から出てくるのかということをお伺いできればと思います。   もう一つは,地位設定効というもので,一定の要件を満たしたものに一定の権利を定型的に認めて,同時に義務を課すという効果であるとおっしゃいました。この要件の設定の当否について判断するための行政法上の基準はあるのでしょうか。比例原則はここでも妥当するのか,それとも,そうではなくて,立法裁量に委ねられる,したがって自由に考えればよいというものなのでしょうか。これが最後の質問です。   少し長くなってしまい,申し訳ありません。 ○山本参考人 大変分かりやすく私のごちゃごちゃした話を整理していただいて,ありがとうございます。   比例原則という点から整理をしていただきましたけれども,私のお話をしたことと適合しておりますので,そのような趣旨で私も申し上げたつもりです。   最後の地位設定効については,これは,結局,そこで問題となっている地位の法的な性質によって,行政機関が,どういう地位をまず設定して,そのためにどういう要件を設定して,それをどういう手続で判断するかという問題になりますので,恐らく比例原則そのものの問題というよりは,今申し上げたような,もう少し広い制度設計の在り方の問題,今の山本委員のお言葉によれば立法裁量といいますか,立法上の考慮で決めていく問題であると理解をしております。   それから,デフォルト規定として何を選択するかというところについてですけれども,これも特に比例原則からということは恐らくなく,ここに書きましたように,行政法の観点から答えを出すことはちょっとできない問題で,むしろ信託の法的な性質等に照らして判断をしていただくことになるのではないかと思います。 ○山本委員 分かりました。 ○中田部会長 ありがとうございました。   まだ御質問があろうかと存じますけれども,当初,山本参考人にお願いしていました時間を相当超過しております。また後の審議の中でも御議論いただけるかと存じますので,もしどうしても,この機会に是非お伺いしたいということがございましたら,お一人ぐらいであればとは思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,山本参考人には貴重なお話を頂きまして,また,質問にも丁寧にお答えくださいまして,大変ありがとうございました。頂戴しました御説明をよく咀嚼して,今後の審議の参考にさせていただきたく存じます。どうもありがとうございました。   それでは,いつもより少し早いのですけれども,ここで一旦休憩にいたします。15分後の3時15分に再開いたします。その時間になりましたら御参集くださいますよう,お願いいたします。           (休     憩) ○中田部会長 再開します。   ここから,本日の審議に入ります。   本日は,部会資料41について御審議いただきます。   部会資料41の「第1 公益信託の効力の発生時期」及び「第2 公益信託の[認可/認定]の取消しによる終了」について,事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 では,御説明いたします。   まず,「第1 公益信託の効力の発生時期」について御説明いたします。   本文では,甲案として「公益信託の認可(私法上の法律行為の行政庁による補充)があった時とする。」,乙案として「[公益を目的とする]受益者の定めのない信託の信託行為の効力が生じた後,公益信託の認定(行政庁による確認行為)があった時とする。」,丙案として「原則として,公益信託の認可があった時とし,公益信託の認可を受けられなかった場合には,その効力を生じないものとするが,例外として,当該信託の信託行為に公益信託の認可を受けられなかった場合でも当該信託を無効とはしない旨の定めがあるときは,当該信託は,[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として,信託行為の効力が生じた時にその効力を生ずるものとする。」との提案をしています。   これまでの部会での審議においては,現在の主務官庁による許可制の廃止について検討を行うとともに,新たな公益信託の仕組みを検討するに当たり便宜的に認定という用語を使用してきましたが,第38回会議までに新たな公益信託制度においては,現在の主務官庁による許可制を廃止し,民間の有識者から構成される委員会の意見に基づいて,課税庁を除く特定の行政庁が公益信託の認定を行う仕組みを採用することで意見が一致しました。   そこで,これまで暫定的に使用してきた認定の内容について,更に詳細な検討を行う必要が生じています。新たな公益信託において採り得る制度としては,現行制度に比較的近い「認可」,公益信託類似の制度である公益法人制度にて採用されている「認定」,NPO法人制度にて採用されている「認証」等が考えられます。   各用語の一般的な定義は部会資料の3ページに記載のとおりですが,NPO法人制度にて採用されている認証制度は,所轄庁の認証を経て法人格を付与する制度ですが,公益信託はそれ自体の法主体性を認めるような制度ではないことから,これを参考にして認証制度を採用することは相当でないと考えられます。   また,公益信託の法的効力は,委託者,受託者及び信託管理人等の信託関係人の権利義務を生じさせる私法上の効力と,公益信託の名称保護等の公法上の効力に分けて整理することが可能であると考えられます。したがって,新たな公益信託における行政処分の法的性質を認可とするのか,認定とするのかについて,公益信託の効力発生時期との関係及び行政との処分と結び付けられる法的効力との関係で検討することが有益であると考えられます。   現在の公益信託の実務においては,公益信託の受託を予定している信託会社が公益信託の引受けの許可を受けた後に,受託者として公益信託事務を行っています。このような現在の実務との連続性を尊重する観点からすると,私人である委託者及び受託者が行う法律行為が行政庁による公益信託の認可によって補充され,当該信託が行政庁の認可を受けた時点で公益信託としての私法上の効力及び公法上の効力が同時に発生するものとすべきであるとの考え方があり得ることから,このような考え方を本文の甲案として提案しています。   なお,甲案によれば,公益信託の認可を受けられない場合には,公益信託としての私法上の効力及び公法上の効力がともに発生しないことになるため,当該信託は[公益を目的とする]受益者の定めのない信託としても無効となります。そうすると,甲案に対しては,行政庁による公益信託としての適格性審査を受けず,行政庁の監督に服さない[公益を目的とする]受益者の定めのない信託を一律に無効とはしないとする本部会の方向性に整合しないという指摘があり得ます。   一方,現在の公益法人制度との平仄の観点に加え,実際の公益信託設定時の法律行為としても,委託者と受託者との間の合意がされた後に行政庁の処分が行われることを重視するのであれば,公益信託の認定より前に委託者と受託者との間では,その信託契約の締結等により[公益を目的とする]受益者の定めのない信託としての私法上の効力が発生し,その後,当該信託について公益信託としての適格性を審査した行政庁が認定をすることにより,公法上の効力が追加的に発生することとなるとの考え方があり得ることから,このような考え方を乙案として提案しています。   なお,乙案においては,公益信託の認定以前に信託契約の締結等を想定しているものの,停止条件付きの信託契約等,公益信託の認定後に信託行為の効力を発生させる方法を一律に否定するものではありません。ただし,そのような方法によることが可能か否かについては,実務的な検討を要すると考えられます。   乙案を採用する場合,行政庁の認定を受けない受益者の定めのない信託について,それを有効とするか無効とするかについての検討が必要となりますが,従前の部会での審議においては,そのような信託を一律には無効とはしないということで意見が一致しております。また,そのような信託を一律には無効とはしない場合,信託法附則第3項との関係で,受益者要件の検討等が必要となることから,乙案においては「公益を目的とする」の箇所にブラケットを付し,留保を付す形でその旨を表現しております。これは,この第1の丙案及びこの後御説明いたします第2の乙案についても同様です。   さらに,原則として,公益信託の認可を受けられなかった信託については,私法上の効力も公法上の効力も発生しないものとするが,公益信託の認可を申請したが不認可の処分を受けた場合等について,当事者の意思を尊重して,信託行為にその旨の定めがある場合には,例外的に[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として,信託行為の効力が生じたときに私法上の効力が発生し,存続するものとするとの考え方があり得ることから,このような考え方を丙案として提案しています。もっとも,信託行為にその旨の定めが明記されていないと,当事者の意思が不明確になり,事後的に当該信託の有効性について紛争が生じる可能性があることから,上記のような当事者の意思が存在する場合には,それを信託行為として契約書や遺言書等に明記しておくことが望ましいと考えられます。   丙案に対しては,公益を目的とするが,行政庁の認可を受けていない受益者の定めのない信託が有効な場合と無効な場合が信託行為の定めの有無によって生じることから,既存の実務よりも法的仕組みが複雑になり,利用者にとって分かりにくい制度となる可能性があるとの指摘があり得ます。   次に,「第2 公益信託の[認可/認定]の取消しによる終了」について御説明いたします。   本文では,公益信託の[認可/認定]を取り消された信託について,甲案として「当該信託は終了するものとする。」,乙案として「原則として,当該信託は終了するものとする。ただし,信託行為に公益信託の[認可/認定]の取消後は[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として存続させる旨の定めがあるときは,当該信託は[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として存続するものとする。」との提案をしています。   まず,本文の提案について,冒頭の公益信託の[認可/認定]を取り消された信託の部分は,部会資料37の第1の3では「公益信託の認定を取り消された信託」と表現していましたが,今回は,先ほどの第1のとおり,行政庁が公益信託について行う処分は認可あるいは認定とすることが考えられることから,ここでもブラケットを付し,留保を付す形でその旨を表現しています。   本文の甲案は,部会資料37の第1の3の甲案と同一の提案であり,その内容及び理由に実質的な変更はありません。仮に甲案を採用する場合には,その取消事由の如何を問わず,行政庁による公益信託の取消処分によって当該公益信託が終了することになりますが,取消事由によっては[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として継続させる方が社会的に有益である事例も想定されることなどの指摘を付加することが考えられます。   本文の乙案は,部会資料37の第1の3の乙案をベースに,公益信託の[認可/認定]を取り消された信託の信託行為に,当該信託を[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として無効とはしない旨の信託行為の定めがあるときは,当該信託は[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として存続することとしたものです。先ほどの第1の丙案と同様,公益信託の[認可/認定]を取り消された場合に,当該信託を[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として無効としないためには,信託行為にその旨の定めが存在することを必要とする考え方があり得ることから,その旨を付加した上で提案しています。   仮に乙案を採用する場合,公益法人認定法第30条の規定等を参考に,公益信託の[認可/認定]が取り消された後,受託者が速やかに公益目的取得財産残額を算定し,その額を他の類似目的の公益信託の信託財産とすることや,他の類似目的の公益法人,NPO法人等,若しくは国又は地方公共団体に贈与しなければならないとする規律を設ける等の方策を採ることが想定されますが,その場合には,公益信託に当初拠出された信託財産の価額の変動や,公益信託の運営期間中の信託財産の増加や減少に対応した規律を設けることになる結果,制度設計が複雑になり,公益信託の軽量・軽装備の利点を損なう懸念があることなどの指摘を付加することが考えられます。   また,部会資料38の第3の1においては,新たな公益信託の受託者が行うことができる公益信託事務の範囲を当該公益目的の達成のために[直接又は間接的]に必要な信託事務とすることを提案しており,その前提に立つ場合には,公益信託においては全ての財産が公益目的の達成のために取得した財産と言え,公益法人制度でいうところの公益目的事業財産に相当する財産に該当すると考えられます。したがって,そのことを前提として乙案を採用し,公益信託の認定を取り消された信託を,その後も[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として存続させる場合には,当該信託の受託者に全ての信託財産を公益目的に使用することを義務付け,それを行政庁が一定の範囲で引き続き監督するなどの仕組みを設ける必要が生じる可能性があり,その点でも制度として複雑になる懸念があることなどの指摘があり得ます。   最後に,第1の論点と第2の論点の関係についてですが,第1の甲案のように,行政庁の認可によって公益信託の私法上の効力及び公法上の効力が発生するとする考え方は,第2の甲案のように行政庁の認可が取り消された場合には公益信託が終了し,私法上の効力及び公法上の効力が消滅するという考え方と親和性を有するものと考えられます。一方で,第1において甲案を採用しつつ,第2において乙案を採用するとした場合,公益信託の[認可/認定]時と終了時とで取扱いに差異が生じ,利用者にとって分かりにくく,混乱を招く可能性は否定できないと考えられます。   また,第1の乙案及び丙案のように,公益信託の[認可/認定]を受けられなくても,[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として無効とはしないとする提案は,第2の乙案と親和性を有するものと考えられます。   以上でございます。 ○中田部会長 ただ今説明のありました「第1 公益信託の効力の発生時期」及び「第2 公益信託の[認可/認定]の取消しによる終了」について御審議いただきます。   まずは第1からお願いしますが,第1と第2は相互の関係も問題になりますので,併せて御発言いただいても結構です。   なお,先ほどの山本参考人の御説明と,部会資料41の用語とには少しずれがあるかもしれませんし,また制定法上の用語がどうなるかという問題も別途ありますけれども,ここでは規律の実質について,御検討いただければと存じます。また,山本参考人におかれましても,適宜コメントを頂ければ幸いに存じます。   それでは,御自由に御発言をお願いします。 ○道垣内委員 以前も発言させていただいて,繰り返しになるのですけれども,公益信託とは何かというのが分からないままに,公益信託の認可があったときに公益信託の効力が発生するとなっているような気がするのですね。と申しますのは,例えば私が東京大学に所属している行政法の教授の研究のために金銭を交付するという信託を作ったときには,恐らくは東京大学の行政法の教授に金銭を交付しても,公益目的ではないというふうなことになるのだろうと思います。しかし,私自身は公益目的だと思ってそういう信託を設定したわけであり,そのときに,認可申請をしても断られるわけですけれども,どういうふうになるのか。結論から言えば,本来は,公益信託というものは,行政庁によって公益信託であるとの認可があったものを指す概念なのではないかということです。   ただ,例えばこれから申し上げるような内容の条文を作るというのならば,この第1の問題の意味というのは分かってくるわけで,例えば「公益信託の設定は,特定の者との間で,当該特定の者に対し財産の譲渡,担保権の設定,その他の財産の処分をする旨,並びに当該特定の者が裁判所又は行政庁に対し,公益信託としての認可--認定かもしれませんが--の申請をするとともに,一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下,「公益信託契約」という。)を締結する方法によってする」というわけです。例えば,このように,公益信託という言葉を,その受託者が--受託者とは限らないかもしれませんけれども--行政庁なら行政庁に対して,公益信託としての認可の申請をするという義務を負わせられている契約によって設定されるものと定義をすれば,第1の甲案,乙案,丙案というのは成り立ち得ると思います。しかし,そこの定義というものをしないままに,公益信託というのが,あたかも神の目によってあらかじめ決まっているというふうな形で条文とかルールとか作れるのかというと,私は作れないのではないかと思うのですが。 ○中田部会長 という御意見を頂きました。何かありますか。 ○中辻幹事 私どもとしては,公益信託は,行政庁の認可あるいは認定を受けるという形で,一定の基準を満たしているか否かの審査をクリアした信託であるという定義付けをしております。ですので,道垣内委員がおっしゃられた公益信託の認可/認定の申請を前提としているものかと問われれば,そのとおりでございますというお答えになります。 ○道垣内委員 そうすると,公益信託の認定が得られなかったときの話というのは,どういう場合を指しているのかということにならないでしょうか。論理的には,申請をしなかった,あるいは,申請したが認められなかったということになると,それは公益信託ではなかったのだという話になるということになりますでしょうか。 ○中辻幹事 行政庁が基準を満たしていないという判断をすることによって公益信託の認定が得られなかった場合には,今,私どもが考えている公益信託の定義には当たらない信託になるということになります。 ○道垣内委員 では,その要件を満たしていると考えるときには,要件を満たしていると必ず認可申請をしなければいけないでしょうか。そんなことないですよね。そうすると,それは要件を満たしていようが,申請をしなければ,公益信託ではないということになりますね。そうなりますと,同じく客観的に見れば公益の認定基準を満たしている信託なのだけれども,申請して認められるという場合と,申請して断られるという場合と,申請しない場合というのがあるということになりますが,1の第1のところで書いてあるのは,申請して認められたときにどうなるかという話ですよ。申請しなかった場合は,それではどうなるのですか。 ○中辻幹事 事務局としては,これまでの部会での御審議の状況からすると,公益信託の要件を満たしている信託を設定する場合に,その受託者が行政庁に対し公益信託の認可申請を必ずしなければならない,認可申請が義務付けられるというような制度を作ることにはならないと考えております。   その上で,今回の部会資料41の第1では,公益信託としての認可申請がされた信託の効力の発生時期について,どのように考えるかという論点の設定をしていますので,そもそも認可申請をする気が信託契約の当事者に無くて申請をしなかった公益を目的とする受益者の定めのない信託の効力の発生時期はどのように考えるか,ということが別途問題になるという御指摘をいただいたものと受け止めました。 ○中田部会長 取りあえずよろしいでしょうか。 ○小幡委員 私も同じようなことを考えましたが,要するに,公益信託をどう定義するかによるので,ここは公益信託というのは認可あるいは認定を受けたものという定義をしたら意味がなくなってしまいますね,効力の発生時期の話は。およそただ,抽象的にそういう性質を帯びたものを公益信託と広く呼ぶとすれば,広い公益信託があって,その中に申請によって認定/認可されたものがある,したがって,それだけを公益信託と呼ぶことにするかどうかという問題かと思うのです。   山本参考人の話も含め,行政法的な技術的な器をどうするかとか考えている中で,一番実は重要なのは,公益信託というものの認可あるいは認定を受けたことにより,一体どういうメリットがあるかということだと思うのです。公益法人の制度であれば,あれは2階建てですが,公益法人となった途端に,特に税務当局からの別途の審査もなく,そこで税法上の優遇は付いてくると,そういう仕組みになっています。ただ,それでも実際には同じような公益事業をしながら公益認定を受けないという選択をしている一般法人は沢山あります。それはなぜかというと,監督を受けることもありますが,多分いろいろ揃えるべき書類が非常にたくさんあって,事務的にやっていくのが大変だという,ほとんどがそういう理由だろうと思うのです。公益認定を受けるためのハードルを高くして全部税務上の優遇が得られるという仕組みに作っているのが公益法人の制度です。   それに対して,今回考えている公益信託の場合は,もちろん申請主義で,申請しなくてもよいわけです。ただ,その申請によって,そこで実際公益信託とされるために,申請が認められるためには何が必要とされるか,どのぐらい大変なのかということと,受けるメリット,例えば,その公益信託の認定あるいは認可を受ければ税務上の全ての優遇が得られるということであるのか。税法上の優遇は,後で付いてくるので,多分ここでは決め切れないと思うのですが,それは逆から言いますと,公益信託がきちんとしたものである,そして行政庁が認定あるいは認可し,監督をするというようなものを公益信託としたから税法上の優遇を付けるべきという話にはなってくるので,そこも制度設計の問題かと思います。現状公益信託の中で税法上の優遇が付いているところがありますが,それが今回どのようになっていくかということがあろうかと思います。それによってメリットがなければ,別に申請はしなくてよいわけで,申請しなくても,実際上同じようなことをやることは可能なように作った方がよいだろう,したがって甲案でないのです。結局は,強い認可ではない,そういう行為規制はしない,実際上,公益目的の受益者の定めのない信託ができることになる。ただ,プラスして,申請すれば公益信託を受けられる,そこで名称の独占があれば世の中の利用者が安心できるとか,そういうものは得られます。ただ,税法上は全部特典が付くことになるかどうかは,ここは全く分かりませんが,そういうふうに仕組めれば本当はよいと思います。   いろいろ申しましたが,そもそもどういう効果が実際上,得られるかということが大事でして,ここで甲案,乙案,丙案とありますが,それによって決まってくる話でありましょうし,強い認可ということは概念としてやや考えにくいと思います。実際には同様なことはできる。しかし,公益信託と認められれば何かのメリットはあるのですが,それは何のメリットがあるかということと,逆にどのぐらい大変なものかということ,両方を勘案する必要がある,釣り合いを取らせる必要があると考えております。 ○新井委員 第1については甲案に賛成します。乙案には賛成できません。   その理由は,乙案においては,公益を目的とするという部分と受益者の定めのない信託,つまり目的信託を連結させている点にあります。目的信託,すなわち受益者の定めのない信託というのは,その立案担当者の解説書によりますと,私益,共益,公益,全てを含むと解説がなされておりますので,それによると公益を目的とするという部分と目的信託を結合させることは可能だとは思いますけれども,現行信託法によると,目的信託というのは委託者が非常に強い権限を持っています。これは260条の規定で強行規定になっております。そして公益信託においては,やはりその委託者の権限というのは限定されるべきではないかと考えます。この部会の議論では,一定の委託者の権限は残していいという議論があることは十分承知しております。しかし,260条の規定は,はるかにそれを超えて,委託者に強大な権限を持たせていると私は考えるわけです。ですから,委託者に強大な権限を持たせながら,それを公益だというのは非常に難しい。   したがって,乙案は,公益を目的とするという部分と公益信託を結び付けるということです。公益を目的とする目的信託と公益信託を結び付けるというのは,ちょっときつい言葉を用いれば,概念矛盾のように私は思います。したがって,乙案には賛成いたしません。   丙案ですけれども,丙案も一つの可能性としてはあると思うのですが,ただ,この場合でも,公益を目的とするという部分は削除すべきではないか。削除すれば,丙案の可能性もあると思います。   それから,第2については甲案に賛成です。 ○沖野幹事 私もちょっと,ここの第1の問題がよく分からないと感じております。タイトルが「公益信託の効力の発生時期」となっておるのですけれども,甲案,乙案,丙案,いずれも公益信託は認可があったときに効力を生ずる,公益信託として効力を生ずるという点では同じではなかろうかと思われるわけです。とりわけ,今のやり取りを聞いた中では,公益信託というのは認可を受けた信託であって,公益信託の名称を使うことを許されるものだということになると,認可を受けたときということになるのではないかと思われるからです。   ただ,ここで問われているのは,そういう公益信託がいつ効力を発生するのかということではなくて,認可を受ける前に何らかの信託としての効力が既に発生しているのか,例えば受託者は忠実義務を負っているのかといった問題と,もう一つは,認可を申請したのだけれども,それが受けられなかった,不認可であったときに,公益信託の名称の下で公益信託としての各種の規律や効果は生じない。その中の一つとしては名称を使うとか,あるいは20年以上を超える期間でも構わないとか,そういうことが出てくるのですけれども。それ以外の一般信託における目的信託としての存続の余地があるのかという,その問題ではないのかと思われるわけです。それは別に効力の発生時期の問題ではないのではないかと,あるいはそういう定式をすることは適切ではないのではないかと思われまして,それらの効力を持っているかどうかということが,それに対してどういう回答をするかということが,あるいは行政庁が行う何らかの認定行為というか,それをどのような性質として法性決定をし,どのような法律上の表現を与えることが適切なのかということに関わってくるという話ではないのだろうかと考えます。   それから,そのおおもとには,これは道垣内委員がおっしゃったことですけれども,あるいは新井委員の御示唆もそれに含まれるのかと思いますけれども,そもそもその公益の認定なり認可なりの申請をせずに,公益の目的のために目的信託を使うことは許されるのかということで,現行法は,信託法は少なく本則は許していると思うのですけれども,公益信託法がそれを制限しているように思われるわけで,そこをどうするのかということではないかと思われ,新井委員のお考えによりますと,公益を目的とする信託を使った活動は,現在の目的信託を使う限りは委託者に強大な権限を与えすぎるので,許されるべきではないということではないかと伺いました。そうだとすると,認可を申請しなくても,そのような目的信託はそもそも認められないという考え方を含意しているのだと思います。   私自身は,そしてこの部会では,むしろ,そのお考えではない方が,より数の上では多数ではなかったかと思われます。かつ,委託者に強大な権限を与えることがなぜ駄目なのかと,自分の財産を公益の目的で使いたい,細々と,というような人がやる分には構わないのではなかろうか。ただ,公益信託だという名称は使えないし,あるいは税法上の特典がどのくらい与えられるかというのは,それは税法上の問題であるので,それにどういうものを与えるかというのは税法で,そういう目的信託には余り与えられない,あるいは全然与えられないというような話になるだけのことではなかろうかと思われますので,したがって,前提としては,公益信託としての認可を受けず,したがって公益信託という名称にはならないけれども,公益のために目的信託を使うということは,それは許容されてしかるべきであるということが適切ではないかと思います。その前提の下であるならば,認可の申請をしたときに,その前に既に効力が生じているのかという問題と,認可の申請をしたけれども,不認可であったときにその後どうなるのかという問題として,この問題を考えた方がいいのではないでしょうか。   そうしますと,甲案の位置付けというのはよく分からないところもありますけれども,甲案の含意としては,別途目的信託としてやることは構わないのだけれども,ただ,認可の申請までしたようなときには,認可がなければそれはもう諦めてもらって,別途目的信託としては改めて設定してやればいいのだという考え方なのかなと思われます。   乙案の方は,既に通常信託としての効果は生じさせるという前提で,各種の信託の効果は発生するのだけれども,認可によって更にプラスアルファで加わる部分があるという考え方だと思われますが,丙案は,ただ,丙案が扱っているのは認可が受けられなかったときにどうなるかという問題の方なので,乙案とは若干次元が違うことを扱っているのではないかと思われまして,そこを委託者の意思にかけるかどうかという話ではないかと考えております。   誤解をしておりましたら,訂正をしていただければと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○深山委員 95%ぐらい,今,沖野幹事がおっしゃったことを私も申し上げようと思ったので,重ならない限度でお話したいと思います。   公益信託の効力の発生時期は,沖野幹事がおっしゃるとおり,私も,甲,乙,丙,全部同じことを言っていて,要するに認可ないし認定があったときということを言っているので,このタイトルの議論というのはほとんど議論する必要もないことだろうと思います。   その上で,これも沖野幹事が御指摘のとおり,ここで議論しようとしているのは認可/認定のない公益を目的とする受益者の定めのない信託の位置付けの問題で,これは三つのパターンがあると思います。既に何人かの方から出ているものの整理のような形になりますけれども,1番目は,元々,公益目的の受益者の定めのない信託なのだけれども,公益認定を受ける意思のない場合,それから2番目は,認定なり認可の申請をしたのだけれども,認められなかった場合,それから3番目は,認可/認定が一旦は認められて公益信託になったのだけれども,後日,何らかの理由で認可/認定が取り消されてしまった場合で,それぞれ共通する側面と違う面があろうかと思います。   まず,1番目の元々その中身は全く公益信託的な公益目的の信託なのだけれども,認可/認定を受ける意思がない場合,これはどのぐらい実務にあるかどうかというのは疑問ですけれども,まず,その制度の整理としては,これはこれで有効なのだということをやはり明文で明らかにすべきだろうと思います。沖野幹事御指摘のとおり,信託法にはネガティブな規定はないと読めるのですけれども,公益信託法の方はそれに対してネガティブな表現があるので,そこは新たな公益信託法では,できるということを何らかの形で明文化をする,これが出発点になるのだと思います。その上で,認可/認定の申請をしたけれども認められなかった場合,あるいは,認められたけれども後日取り消されてしまった場合に,どのような信託としての効力が認められるのかどうか。   これは,前半の山本参考人のお話でもいろいろ言及されたところに関係するかと思いますけれども,やはり委託者の意思はそれなりに尊重すべきで,およそ公益認定を求めて認められない場合には,もうやる気がないという場合には,それはそれで,それでも私益信託としてやりなさい,私益とは言わないでしょうけれども,公益信託ではない信託としてやりなさいというのはふさわしくないと思います。先ほど私が質問したように,その設定時の問題と後日取り消された場合とではちょっと考慮すべきことが違うと思いますが,一般的に言えば,委託者の意思に反してまで信託を続けさせるというのは,基本的には好ましくないという方向で考えるべきなのかなと思います。   したがって,そこでは委託者が,認可が認められなかった場合,あるいは取り消された場合に,その後の信託をどのようにしたいかということを,その意思を基本的には尊重すべきだろうと思います。デフォルトルールとして,どちらを原則にしてどちらを例外にするかというのは,両方あり得るのだろうと思います。そこはまだ,決め打ちは私の頭の中でもしていないですが,信託行為の意思解釈を補助する意味でどちらかのデフォルトルールを置いて,あとは個々の信託行為の解釈に委ねるという規律になるのではないかなと,そうすべきではないかなと考えている次第です。 ○小野委員 2点ほど質問といいますか,確認みたいなことをちょっとさせていただきます。   税の扱いと一致すべきという議論は,正にそのとおりの考え方だと思います。ただ,現行の公益信託と違いまして,今後いろいろ事業型の公益信託等も認めていこうと,また受託者が個人とか又は株式会社でない受託者も登場してくる,信託銀行,信託会社ではない受託者も登場していくだろうという前提に立って,それに税の特定,認定が追い付けばいいのですけれども,そこに齟齬があるかもしれません。   ですから,公益認定と税との間には,どうしてもそこで時間的な問題,場合によっては,公益は取れたけれども税法上の特定は取れない,また,そのために時間を要すると,こういう問題があるかと思うのです。その公益信託の特定が取れるまでの公益信託税制の議論は今までもこの部会でしてきたかと思いますが,いずれにしてもそういう問題があり得る。もっとも信託行為の中で効力発生の前提条件とするのかも知れず別に問題視するほどのことではなく理屈上の問題かもしれません。   とは言っても今の深山委員が話したように,デフォルトルールを明確にしなくてはいけないと思います。もちろん信託行為の中にしっかりと書いていくということである意味では十分でそれ以上にデフォルトルール的に目的信託になるうんぬんというところまで明確に規定する必要は必ずしもないとも感じます。   今述べたことは,今までの私の部会での発言とちょっと矛盾するのですけれども,税法上の扱いで,公益目的ということを今までも随分議論していますけれども,実際にこれまでの部会での議論でも,単に目的が公益であればいいだけではなくて,公益信託として認められるためにはガバナンスとか全体を含めて公益信託として機能するかどうかということで公益認定が取れるという理解だったと思います。   他方において,目的信託の公益目的というのは,別にガバナンスうんぬんではなくて公益目的,ある意味では,条文上の規定にならってそれを目的とすれば,取りあえず目的信託としての公益目的目的信託にはなると思います。法人要件が適用されないとしても他方において法人課税信託の対象になりますから,恐らく信託行為の作り方としては,そのときにあえて法人課税される信託ではなくて,単純に委任型とか,信託ではない形を採ることにするのかもしれません。そもそもそういうことならばやめようという議論かもしれませんし,それでも構わないという議論になるのかもしれません。いずれにしてもそういう信託行為における自由度をできる限り認めるということが,やはり税の適用関係もありますから,必要ではないのかなと思います。 ○神田委員 第1のほうを例にとって意見というか,感想を申し述べたいと思います。   それは前半でのやり取りにも関係するのですけれども,意見としては,論理的な順序と時間的な順序とは必ずしも同じでないので,それを整理した上で考えた方がいいでしょうということです。第1の方で言いますと,認可が受けられた場合に,いつから公益信託としての効力が発生するのかというのは,もちろんその認可があった時からでもいいですけれども,それより後に信託契約の効力を発生させるような形態もあり得ると思いますので,その場合には,それより後に信託契約の効力が発生した時から公益信託としての効力が発生するということだと思います。   それから,既に存在している公益信託でない信託について公益信託としての申請が行われて,そういうことがあり得るとしてですけれども,認可された場合には,これは認可があった時から公益信託になるというのが時間的順番だと思います。   これに対し,認可が受けられなかった場合ですけれども,丙案の最後の語尾がちょっと分かりにくいです。信託行為の効力が生じた時にその効力を生ずると書いてあるのですけれども,認可が得られなかった場合には,私の理解では,時間的な順序としては,その時又はそれ以降の時点であって駄目だった場合にもという,この例外的な場合の規定がある場合には,その信託契約が効力を生じた時から,ここの言葉で言う受益者の定めのない信託としての効力が生じるという意味だと理解します。ただ,時間的順番ということで言いますと,既に受益者の定めのない信託が存在していて,それについて公益信託の認可を求めて,そしてその認可が得られなかった場合には,ある意味元へ戻るだけというか,既に受益者の定めのない信託は存在しているわけですから,それは何もなかったかのごとく元へ戻るということではないかと思います。   いずれにしても,文言で言うと,丙案の最後に言う「生じた時に」というのは,認可があった時又はそれ以降を信託契約で定めるということを想定していると私は理解します。より一般的に言うと,第2についても同じ問題があって,論理的にどういう順番に物事が起きるかという話と,時間的にどういう順番に物事が起きるかというのは必ずしもイコールでないので,それを分かりやすく整理していただきたいというのが意見です。 ○平川委員 第1について,丁案を提案します。   丁案というのは,信託行為の効力発生を前置を必要とすることなく,公益信託の認可ではなく認定があったときとするという説です。ですから,認可でなくても,その信託行為が認定であっても,信託行為の前置を必ず必要とするということにはならないのではないかという問題点の指摘です。   理由としましては,甲案についてですけれども,公益信託の成立時期を行政庁の行政処分のあったときと同時に成立させるためには,講学上の概念である認可でなければならないという理由に基づいているようです。そして,講学上の認定というものは行政庁による確認行為であり,公益法人制度において,まず一般社団法人や一般財団法人を設立して,それに対して公益性の確認を行う行政行為を認定とした前例をもって,まずは第1段階として私人の信託行為があり,それに対して公益認定を下すという2階建て方式が必然であるという考え方を採っています。   しかし,認定と2階建て方式というのは,必ずしも必然であるとする必要はないと考えます。この考え方は,山本参考人のレジュメ7ページにある,弱い効力を持つ認可と実質的に似通っているとも言えますし,山本参考人も認定という言葉にどういう意味を込めるかというのは,立法上,柔軟に考えてよいとおっしゃっていたと理解しています。すなわち,公益信託を準備する受託者の状態に対して行政行為を行い,公益信託であることを認定して公益信託を有効にするという山本参考人のレジュメからの引用によれば,そういう形になります。   ただ,弱い意味による認可とか,何しろ認可という言葉を使った場合には,一般人の考え方としては,国が公益活動を認可するという許可制度を連想し,公益活動を民間の手で促進するという新しい公益信託制度の促進の意図が伝わらないと考えます。新しい公益信託制度は,法務省の補足説明3にありますように,公益信託自体を法主体と認めることではないこと,また,旧民法の公益法人の設立のように,私人間の法人の設立行為に対し行政庁がそれを補完して効果を与えるということでもないこと,また,新公益法人制度においては,一般法人に対する公益法人への移行については認定とされており,同じ言葉を使った方が一般の人々にも分かりやすいということなどを理由として認定とし,しかしながら,信託行為を前置し,それに認定を与えるのではなく,認定をもって公益信託が発効するのが相当であると考えます。   繰り返しになりますけれども,認定が行政庁による確認行為であるとしますと,乙案のように受益者の定めのない信託行為の効力が生じた後に行政庁による確認行為が行われるという時間的な差を設けなければならないとする必要はないと考えています。すなわち,信託行為の効力とその効力の発生の結果,公益活動がそれを受けて行われる可能性を行政庁が確認する行為は同時に行われても一向に構わないと考えます。上記に述べたとおり,認可による効果の一つであるとされる法主体を認めるということでないのであれば,なおさらのことであると思います。   乙案による事前に目的信託を設定する案に対しては,そもそも公益信託を目的信託の一類型とする考え方には反対であること,また,前置した目的信託については,補足説明6のとおり,設定段階においてみなし法人課税の問題等,固有の問題を抱えていることなどから反対です。   また,丙案については,公益信託の認定が得られなかった場合には一定の条件の下に目的信託の効力を認めるとするものですけれども,認定が得られない場合には,信託行為に受託者の定めのない信託として効力を生ずる旨の明確な意思表明がなされていない限り信託の効力を否定する信託不成立原則を法に規定し,明確にすべきであると考えます。元々公益目的信託を目指していたのですから,当事者の意思解釈として認定が得られない場合には,信託としても効力を生じないと法に明記することが法律関係を簡便にすると考えます。 ○林幹事 確かに,委員・幹事の方々の問題点の捉え方はそのとおりであり,沖野幹事の整理のとおりだと思っています。それを踏まえて,少なくともこれは動かないというか,こうで在るべきだと思う点を,理屈は通らないかもしれないのですけれども申し上げたいと思います。恐らく,それを後から翻って評価して,どういう制度になるかとか,認定という言葉なのか認可なのか,そういうふうに考えるのだろうと思います。ですので,まず,こうであるべきだと思う点をちょっと,一つ一つ申し上げたいと思います。   1点は,認定を受けなくても公益的な目的信託というものが残る,それを一律に否定しないという前提だと思いますので,まずそれを確認したいのが1点です。申請をしない場合とか,申請したけれども駄目だった場合,あるいは取り消されたような場合はそこの類型に入っていくので,そういう類型があるという点は疑いないところとして議論していただいたらと思います。   それから,その上で,結局,申請をすることについて,申請する前と,申請して認定が受けられなかったときの二つの問題があって,認定を受けられなかった場合については,目的信託として残りたいというときはその意思が尊重されるべきだと思いますので,目的信託に戻るというか,移行できるルートを設けるべきだと思います。確かにゼロから目的信託を作り直せばいいではないのかとの意見もあるかもしれないのですが,手続的にそういうステップを踏んでいるのであれば,それは尊重していいと思いますので,そうすべきだと思います。   ただ,そのときに当事者の意思のデフォルトをどう考えるかについては,私もまだ決めかねているところです。信託行為に書かれないときに,そういう意思がある前提でいくのか,ない前提でいくのか,そこは決めかねているのですが,少なくとも可能な限り意思を尊重すべきです。この提案で,例えば丙案の例外のような,こういう留保がなくても,黙示の意思を尊重してそちらのルートに持って行くべきではないかという議論もあったぐらいです。少なくとも意思を尊重して目的信託として残りたいときはそちらのルートに行けるようにという制度にしていただきたいのが1点です。   それから,申請の時点の段階のことで言いますと,神田委員がおっしゃったとおりと思っていまして,確かに思考の中では信託行為があって,その後,認定を受けるとあるのだけれども,吉谷委員が言われたように,信託契約が後の場合もあり得るわけで,それが前か後かによって,その効果が違うように考えるのは,この場合にはそぐわないと思っています。   これまでの議論だと,軽量・軽装備だから,設立や認定のときは比較的軽微に考えるべきだから,そこにおいては2階建て的には考えないというのは一応,議論としては一致していたと思います。ただ,その中でも,思考の中では信託行為というものと認定というものと2段階にあると考えるのはそのとおりなのですけれども,ただ,プロセス的には信託契約は必ず前だというのではないと思います。山本参考人の整理でも,行政的な効力の面と私法的な効力の面が両方あって公益信託になるという理解だと思ったのですけれども,どちらかが前で,どちらかが後という問題ではなく,恐らく両方そろったときに公益信託としての効力が生じるのだと思いました。   そうしたときに,信託契約なり行為が前だったときに,恐らく認定を受けるのとタイムラグが生じます。そのタイムラグがあるがために税が課せられるという議論があったと思うのですけれども,そこで税が課せられるというのが私自身はすごくナンセンスだと思います。典型的に想定しているのは申請して認定を受ける期間がそれなりに短いもの,あるいは頭の中で一体的に手続としてやっている場合なのに,そこで税が課せられるなんていうのがおかしくて,それは税が課せられるということ自体がおかしいのかもしれません。そういう前提で心配してしまうのかもしれないのですが,実務的には,そういう状況であれば,恐らく信託行為の中に停止条件を付けて,認定を受けたときに私法的な効力が生じると書くことになると思われ,だから,それで手当てできるという面もあります。それだったら,その面においても法なりにそこをしっかり書き込めば,それで十分ではないのかと思います。 ○中田部会長 ほかに。 ○樋口委員 私はちょっと政策論的な話をしようと思っています。うまく三つにまとめられるといいと思っていますけれども。まず一つは,山本参考人のお話を聞いて,私が最も感銘を受けたのは10ページから11ページ,山本参考人の資料なのですけれどもね。それで,行政庁の権限の縮小という話になっていて,題名が,そもそもそういうことが書いてあるのですけれども,今まで主務官庁制を採ってきたのだというわけですね。それはどういうことかというと,それぞれの主務官庁で勝手にとは言わないのですけれども,それぞれやはり何が公益であるかをそれぞれの主務官庁で判断して,しかも権限が相当にありますから,今までの旧信託法では,こういうものだということであえていえばそれぞれの判断で介入もできたということです。いや,それは今度やめたのですよという話になっているわけですよね。   統一的な行政庁が新たな公益信託制度においては法令上の基準を満たすかどうかだけを監督するのだと,こういうようになったのだというのは,基本的に行政庁の裁量が縮小したことが,うまく私が言うような話につながるかどうかは何とも言えないのだけれども,実は正直に言うと,やはり公益の判断が,各主務官庁で極めて狭くそれぞれのところで考えていたものが一つのところで,一つの大きな抽象的な基準ですから,これも公益だという形で,広げられるはずだということです。つまり政策目的は,今度の公益信託法改正は絶対に公益信託を広げようとするものでないといけないと初めから私は思っているわけです。   そういう観点から見て,行政法の教授がというか,山本参考人がこんなふうに制度の改正で,こういうふうに道が広がるというか,そういうことを含意してくださるような,なるほど,主務官庁制を廃止するというのはそういう意味もあるのかということを感じたのが1点。   その上でなのですけれども,今日の第1の効力の発生時期という,まず問題の捉え方が,沖野幹事が言うようにちょっとずれているのではないでしょうかというのはそのとおりだと思いますけれども,その上で,これでこの議論を,今までの方と違って細かな議論ではなくて申し訳ないのですけれども,公益信託を広げるという観点から見てどう考えるのかというと,次のように見える。いいですか,公益信託が認可されなくても,実は公益概念はもっと広いものである。   私にとっては,例えば,私は公益信託の申請は駄目だと言われたのだけれども,これは公益を目的とする受益者の定めのない信託です,そっちはきちんと存在していますよといえるという議論が今なされているわけです。そのうち公益概念も変わってきますから,時代とともに,だから,こういうような準公益信託みたいなものを認める方向で全体としての公益信託,公益信託というのは認可/認定されたものだけかもしれないけれども,そうではない,単なる目的信託でもなくて「公益を目的とする受益者の定めのない信託」というのをここで作ろうとしているわけですから,乙案,丙案では。そちらの方が従来の意見では多数だというわけなので,そういう発想でこれはできているのかなと思います。しかし,事務局は,私が思っているように考えていないはずなのですよ。そんなことは,私もそれほど楽観的ではないので。でも,そういうように見えるということなのですよね。   第3点は,だから,そういう意味では乙案でも丙案でも,私はそういうふうに,つまり公益概念をある行政庁が独占して勝手に解釈するのではなくて,実はもう少し広がりのあるものですよというふうに広げていって,将来にいろいろな種を残す布石を打つというのだったら非常にいい話だと思いますけれども,ただ,1点心配なのは,公益を目的とする受益者の定めのない信託で,公益信託という名前は名称独占で使わせないでしょうけれども,長くても何でもいいのでしょうから,「公益を目的とする受益者の定めのない信託」をたとえば樋口が作りましたといって本当にいいのかなというのはあるのですよ。   それで,それを私がある程度の財産を出して,それをこのために使っていきましょうという話だけだったら,いいではないのと,それでいいのですけれども,普通は私が考えるのは,これに,山本参考人,是非とも私の考えに賛同してください,500円でもいいです,1,000円でもいいですという,同じような,何しろ公益を目的とする,しかし,どうしてか分からないけれども認定を受けられなかった信託,今のところは認定を受けていないかもしれないけれどもという信託を始めますね。私は詐欺師ではないので真面目にやります。しかし,この公益を目的とする受益者の定めのない信託というのを簡単にやはり認めていいのかなというのは,先ほど言ったこととちょうど反対になるのですけれども,公益概念をもう少し柔軟に考えていく政策論的な話はあるけれども,もしこういう議論をするのだったら,やはり少し注意を,何らかの,やはり普通の目的信託ではないものを認めようみたいに見えますので,これはどういうことなのかと多少の危惧も覚えます。それに関しては,少なくとも初めの信託財産がずっと動かない,それを費消していくだけだったらいいと思います,別に関係ないから。でも,それに追加の信託財産を受けるようなものについてだけは,やはり何らかの,余り私は規制とは好きではないのだけれども,何らかの注意は当然必要になるのではないだろうかというふうに,今日の議論を通して,ちょっとピント外れだけれども感じました。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○新井委員 質問です。あるいは,私だけが分かっていないのかもしれませんけれども,質問をさせていただきます。   受益者の定めのない信託というのは,現行法上,二つの制約があります。一つは課税は信託財産課税であることと,もう一つは受託者要件が厳格に定められているという二つの制約があると理解しております。それで,公益を目的とする受益者の定めのない信託についても,当然その制約は掛かってきているわけです。この場では公益を目的とする受益者の定めのない信託を認めるという意見が大勢であるということは十分承知しております。   その上での質問なのですけれども,今まで目的信託,受益者の定めのない信託というのは一件も設定例がないわけですね。それは今言った二つの制約のせいだと思っています。そうすると,そういう類型を認めて,これを拡張しようとする意見の方は,現行法の二つの制約というのを廃止しろという主張なのでしょうか,あるいは存置した場合は,ほとんど現行法と変わらないような,使い勝手がないと思うのですが,その辺りはどのようにお考えになるのか,これは質問というか,御意見をお伺いしたいと思います。 ○中田部会長 今回,「[公益を目的とする]受益者の定めのない信託」という概念を仮に置いていて,その中身について更に詰めていこうということだろうと思いますが,新井委員は,仮にそのようなものを置くとしても,その中身をもっと明確にする必要があるのではないかと。とりわけご指摘の2点について,今の段階でこのような類型の信託を認める方の御意見があれば伺いたいということだと存じます。   どなたでも結構ですけれども,もしございましたら。 ○林幹事 その点は,私としてはずっと申し上げてきたつもりなのですが,新井委員の問題意識はそのとおりだと思うので,本来的には目的信託がなお使われるようにという意味においては,公益にかかわらずその要件は緩和されるべきであり,そこを工夫すべきだと思っています。ただし,少なくとも公益的なものに絞ったとき,現行法の解釈だと附則も公益目的のものを除くとなっているので,附則を読めば,受託者要件は公益には掛からないという考えもあるかもしれないのですが,いずれにしても,公益目的の目的信託で認定を受けないものというのを考えるときは,その受託者要件は外れる形で何か類型を考え,ガバナンスなりを考えるというか,そういうものを作っていかなければそこは機能していかないのだろうと思いますので,そこを何らか変えていくべきだと思います。   今の法務省の御提案だと,ちょっとそこはブランクというか,まだこれから考えましょうというか,そういう形で問題提起していただいていると理解しているので,これから議論していくのかなと思っています。 ○沖野幹事 個人的な意見を聞かれたと思いますので,申し上げたいと思います。もちろん全て個人的な意見なのですけれども。私は現在の税法の話は,やはり税法としてはどういうものを認めるかということではないのかと思っております。どういう要件があれば,どういうところが認められるのかはそちらの方の問題で,それをにらみつつ,それをクリアするような制度を整えるということはもちろんあるかと思いますが。ですので,信託法の問題としては,受託者要件の問題が大きいのではないかと思っております。   この附則については,一定期間の実際の運用等々を見て目的信託の乱用などがないのかということを見ながら,適切な時期に見直すということであるとすると,附則自体の見直しという問題はあるのだと思います。ただ,これがそのまま存置されるならば,目的信託の場合に,公益信託の場合には受託者要件の限定が除かれるということが,公益目的であれば除かれるのか,それとも,公益目的で行われる場合には,公益信託法による各種のきっちりした制度が作られているので受託者要件で絞る必要はないということなのかで,私は後者だと思います。ですから,公益目的であるならば,この要件はもう外してもいいということにはならないだろうと考えます。   可能性としては,そうすると,公益信託とは別に,公益を目的とする目的信託について更に特有の規律を置くのか。受託者要件を外してもいいけれども,公益信託というほどではないというタイプのものを置くのか。そのことは委託者の権限の問題に関わったり,あるいはその中にも,他者から寄附等を含めて財産を得るようなタイプのものをするときには,更に一定の要件がなければいけないというような形とし,ですので,他者から財産を得ないときにはもう構わないのだということにして,ただ,財産の管理処分先は,きちんとした受託者にお願いすると,そこは要チェックですねという話をするかどうかという問題なのだと思います。   目的信託の中に更にそういうものを作り込むというのは,その方が公益活動を拡大するにはいいのかもしれないのですが,やや大仰ではなかろうかという気がしていまして,附則自体の受託者要件の見直しは,目的信託一般について見直されるならば,それはそれでいいのですけれども,公益を目的とする,しかし,公益信託とはならない目的信託のためだけに,何かを用意するということは必要ないのではないかと考えております。 ○中田部会長 確認ですけれども,そうしますと,仮に現在の附則3項があるとすると,目的信託の受託者要件から公益を目的とするものは除くという規定になっているわけですけれども,そうすると,認定ないし認可を受けていない公益信託については結論としてはどうなりますでしょうか。 ○沖野幹事 附則自体は公益信託としての認可を受けたものを除くとか,そういうような形になるのではないかと思います。 ○中田部会長 つまり,その限りで附則は書き換える必要があるという。 ○沖野幹事 そうです,その意味ではそうなると思います。 ○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。 ○吉谷委員 新井委員の御確認の趣旨にはきちんと答えられるかどうか分からないのですけれども,議論をお聞きしていたところで,元々発言しようとしていた項目でありますので,併せて発言させていただきます。   まず,目的信託で公益的な目的を信託行為に記載するというような類型を認めてよいのかどうかということについては,これは認めてよいというのが従来からの立場でございます。   ただ,その上で,新井委員がおっしゃった,あるいは樋口委員がおっしゃったように,その委託者がただ公益だと思っているだけで,実は公益ではないことをするかもしれない信託というのに,信託行為に公益目的でというようなことが書かれているということに対しての懸念はやはりあります。ありますが,私はこれは名称使用の問題のところで解決すべきなのではないかと考えております。ということは,公益的目的信託という新たな目的信託の類型というのを作るのはやはり屋上屋を重ねるということになりますので,やるべきではないと考えております。 ○中辻幹事 今回の部会資料41の「第1 公益信託の効力の発生時期」で挙げた3つの案のまとめ方については沖野幹事の御指摘のとおりでして,認可でも認定でもその行政行為がされた時点から効力が発生することになりますし,仮に信託契約の準備段階で行政庁の認可を受けたなら信託契約のときから効力が発生するということになると考えています。   その上で,ちょっと前の資料に立ち戻ってしまいますし,その資料が今お手元にない方がいらっしゃると思うので申し訳ないのですが,部会資料38の第2の3のゴシックでは,公益信託法第2条1項の削除という提案をしておりました。そこでは,公益信託の認定を受けていない目的信託の効力を認めるかどうかは,信託法附則3項で公益信託法に任されている部分であり,現行の公益信託法2条1項からは,主務官庁の許可を受けない限り許可申請の有無を問わずそのような信託を設定しても無効である,山本参考人の表現をお借りすれば一般的禁止を伴う「強い認可」であるように読めるのだけれども,2条1項を削除することにより,そうはならないということが明確になるということを御説明し,皆様の了承を得られたと理解しております。   その上で,今回の部会資料41は,信託契約の当事者が公益信託として認可/認定の申請を予定しているものを取り出して効力の発生時期を議論していただくために作成したものですので,認可/認定の申請を予定していない信託はひとまず枠の外に措いてお考え頂ければと存じます。 ○吉谷委員 第1の論点につきましても,既に同様の御意見も出たところではございますが,意見を述べさせていただきます。   まず,公益信託の効力の発生時期につきましては,先ほど申し上げましたように,認可の後に信託契約を結ぶという場合もありますので,認可のときではなくて認可のとき,あるいはそれ以降という形でしていただければと思います。そして,先ほど申し上げたとおりで,山本参考人の御説明の認定という形には反対ということでございます。   それでは,弱い認可の場合に,デフォルトルールをどのように置くのかということにつきましては,認可がされなかった公益信託が目的信託として成立するということをデフォルトとする規定を置く,これには反対いたします。理由は2点です。   1点目は,私が元々イメージしておりますのは,公益信託を設定するに当たって,新たな信託を設定するというような場面を専ら想定しているところです。その場合に,委託者は,公益信託の認可が得られない場合に,普通はどのように修正をすれば公益信託として認可が得られるのでしょうかというふうに受託者になろうとしている人に対して確認するわけです。そのような検討もせずに目的信託を成立させてしまうというのはいかがなものかと,本末転倒なのではないかと思います。   また,その認可が得られなかった,認可を受けられなかった場合に効力が生じるとなっておるのですけれども,認可が受けられなかったというのが一体いつ決まるのかということになるかと思います。そうすると,あらかじめこの信託契約で認可を受けますと,これが受けられなかった場合には目的信託になりますよというようなことをあらかじめ委託者と受託者との間で考えておくというようなことになるわけです。   そこで,理由の二つ目にまいりますけれども,先ほど,公益信託になるから税の恩典が得られるとは限らないのではないかというお話もございましたが,私どもとしては,公益信託の認定が受けられることによって,どのタイプのものも一律に税の恩典が得られるかどうかというのは分からないのかもしれないと思っておりますけれども,公益信託の認可が得られた場合には,セットになって何らかの税の恩典があると,一定のパターンのものには一定の税の恩典があるというような形で,今まで2段階に分かれていたものが1段階で済むということを望んでいるわけであります。   ちょっとそのような形になるといいなという話ではあるのですけれども,現状のものを考えてみましても,公益信託と目的信託では課税の違いがあります。課税が違いますと,当初信託財産であるとか,事業を始めてから得られる信託財産について,当然キャッシュフローが違ってくるわけです。このキャッシュフローが変わるわけですから,当初の信託財産額も変わるわけですし,事業計画も変わるということになります。そのようなことを織り込んで,初めから目的信託と公益信託でこういうふうになりますからということを検討した上で公益信託の認可を受けようというのですから,これは余り現実的ではないだろうと思っているのです。というわけで,デフォルトルールとしては,目的信託としては成立しないとすべきだと思います。   目的信託から公益信託に変更するパターンのときにどうなのかという議論もあると思いますけれども,これについては,私は元々そのような変更というのを,複雑な制度になるので認めるべきではないという立場でありますので,省略させていただきます。 ○中田部会長 ただ今の御発言は,甲案を前提とした上で,その認可の時ではなくて,認可の時あるいはそれ以降とすべきだということなのか,それとも丙案について,デフォルトルールを逆にするというものであれば許容するという御趣旨なのか,いかがでしょうか。 ○吉谷委員 丙案でデフォルトルールを逆にするのであれば許容できるとは思っているのですけれども,余り使われることがないだろうと思っているので,わざわざそのようなデフォルトルールを設ける必要があるのか,それとも,解釈に任せるのかというところは考えようかなと思いました。 ○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○沖野幹事 度々申し訳ありません。場面設定がどうかということを詳細に説明をしてくださいまして,ありがとうございました。中辻幹事から最後,明確にしていただいたと思うのですけれども,念のためなのですが,神田委員あるいは吉谷委員のお話などをお伺いしまして,あるいは林幹事のお話をお伺いしまして,ここでは申請がされたときの問題であるということはもう明確になったと思うのですが,その申請が新しく公益信託をゼロからといいますか,作ろうという場合の申請と,既に例えば1年ぐらい,目的信託でもできるということだということが前提ですが,やってみて,これはやはり公益信託の名称で続けよう,いったん終了させてもう一回作り直すというよりは,今のままで申請しようという場合もあり得るということが指摘され,そういう場合がそもそもあり得るか,認められるかということと,それをも射程にして,この話をするのかということですが,そこを多分,整理はした方がいいのではないかと思います。   それから,効力発生時期ということに関連しましては,例の2段階論の話ということがあり,それは最終的には林幹事がおっしゃったように,信託行為と認可の両方がそろったときに効力は発生するというところでまとめられ,信託行為というのが常に先行しなければいけないかというと,必ずしもそうではないと,現在の実務もそうであると,何らかの前提の予備的行為で認可を申請しても足りるというところになるのではないかと思われます。それで,あとの認可を受けられなかったときにどうなるかというのは,どちらをデフォルトにするかということであり,先ほどのやりとりですが,丙案はデフォルトはおよそ効力を生じないのだけれども,信託行為で別の定めがあったときには有効にするというものですよね。吉谷委員のお考えとしては,許容可能なのはその範囲だということでしたよね。という理解かと思いましたが,これは念のため確認です。 ○中田部会長 すみません,最後の御指摘については,ちょっと私の整理が混乱したかもしれませんけれども,今の沖野幹事のような御指摘の趣旨と承ってよろしいでしょうか。 ○吉谷委員 結構です,はい。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○中辻幹事 先ほど吉谷委員が少し触れられました目的信託から公益信託への変更のような,途中まで目的信託として遂行し,ある時点で公益信託の認定を受けることにしました,というものは,最初から公益信託の認可/認定を受けるつもりがある基本形とは違いますので,これも今回は枠の外としてお考えいただければと思います。 ○中田部会長 山本参考人,これまでの御議論をお聞きになられまして,もし何かコメントなどございましたら。 ○山本参考人 やや法技術的に言えば,私の理解するところ,甲案ないしは私が強い効力を持つ認可というふうに表現したものは,先ほどの道垣内委員の話にもありましたけれども,まず,現在の公益信託法の2条1項のように,公益目的の信託という定義がまずあって,それについては,とにかく認可を受けなくてはいけないと,逆に言えば,認可を受けないと効力は発生しませんという形にした上で認可の基準を定めるという形で,まず,認可の対象をはっきりと決めて,その上で認可基準を決める形になるかと思います。私の理解するところ,若干このようなシステムに賛成という委員もいらっしゃいましたけれども,反対であるという委員が多かったのではないかと思います。   ちなみに申しますと,余り議論を混乱させても仕方がないのですけれども,行為規制効をもつ認可を狭い範囲で法定して,公益目的の中でも,一部については認可を受けなければ信託を行ってはならないとするような制度も中間的には考えられますけれども,果たしてそこまで複雑な制度を作る必要があるかどうかということかと思います。   あと,丙案ないし私が弱い効力を持つ認可と表現をしたものは,結局,受益者の定めのない信託として効力を持つかどうかは信託行為の解釈により,当事者の意思によるというのがベースで,その上で,では,どちらをデフォルトにするかということですので,細かく言えば,何もデフォルトを設けない,とにかく意思解釈に全部任せるやり方もあるという前提で書いておりますが,ただ,実際上はデフォルトを設けた方が恐らく動きやすいだろうということで,そういうふうに表現をいたしました。   ですから,この場合には恐らく,法律において,先ほど道垣内委員が言われた公益信託契約みたいなものを定義して,そこにおいて,契約にこういう定めがない限り,受益者の定めのない信託として効力を持つとか,持たないというような形で表現をしていくことになると思いますので,特に丙案ないし私が弱い効力を持つ認可と書いたものは,公益信託契約のような表現を多分使って定義をした上で,契約に定めがあるかないかで場合を分けて,デフォルトルールを作っていく形になるのではないかと思います。   樋口委員から言われた点ですけれども,そのような御指摘を頂くのは大変有り難く思います。恐らく樋口委員の懸念に関しては,先ほどほかの委員からも御指摘がありましたように,まず,名称独占といいますか,名称の使用の規制をある程度厳しくする,つまり,公益と信託という二つの言葉をくっ付けたような形で名乗ってはいけないとか,そういった形でまずは対応できるかと思います。もしも,それでは対応し切れないということですと,先ほどちょっと申しましたけれども,公益目的の中でも部分的にこういうものを目的に信託をする場合には認可を受けなくてはいけないというふうに,ここで言う強い効力を持たせる認可を,範囲を限定した上で残すことも考えられなくはないかと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。   主として第1について御意見を承りながら,第2についても言及していただくということでございましたけれども,第2について,更に御意見などございましたらお出しいただきたいと存じます。 ○平川委員 第2につきましては,第1の公益信託の効力の発生時期について,公益信託の認定があったときとする丁案を妥当と考えますけれども,それの関連から,認定の取消しがあった場合には私法上の効果と公益性の認定は同時に効力を失うというのが私どもの丁案との親和性もあり,妥当であると考えます。   乙案の取消しがあった場合に,信託行為に事前の定めがある場合に,公益を目的とする目的信託として存続するという案については,そもそも公益信託として出捐された財産を,公益を目的とすると言いながらも私益信託として引き継ぐことは,制度としても税法上の優遇の観点からもあり得ないと考えます。もっとも,それを認めるとするならば,残された信託財産について,公益法人制度におけるように公益目的支出計画を提出し実行させるとするか,優遇を受けた税金の還元を何らかの形で行う等の議論が必要となり,大変複雑な制度となりますので,そのような形で信託を存続させる必要性もメリットもないと考えております。 ○中田部会長 ほかに。 ○吉谷委員 従来同様で,甲案に賛成いたします。   乙案の場合は,資料の9ページの6よりちょっと上の辺りにも説明してありますように,公益信託では全ての財産が公益目的の達成のために取得する財産であるという前提ですので,公益目的事業財産に相当する財産だと。そうしますと,公益法人と同様の立て付けで考えると,ほとんど全てを寄附等してしまわないといけないということになるのではないかと,まず考えております。そうすると,乙案というのは寄附とかはしないで公益的目的信託として残しましょうという提案であると思います。先ほども申し上げましたけれども,公益を目的とする目的信託の規律というのを新たに設けるのは,まず屋上屋を重ねることになりますので反対というところが一つでございます。   そしてもう一つは,終了時に目的信託に戻りますということが書かれている信託行為については,これは恐らく税の控除の適用というのはないだろうと思われます。すると,認定取消しがあっても公益を目的とする目的信託として存続させたい場合には,税控除の適用はありませんけれども,そのような公益信託にしたいですかということを委託者の方に我々受託者は確認をするということになるのですけれども,余りそういうニーズはないのではないかと。まず,税控除の適用があった方がいいと思う人にはそういうニーズはないと思いますし,一方で,税控除の適用がなくてもいいのだ,とにかく公益をやりたいのだという人にとっては,公益のお墨付きが得られないような信託として残すことを望みますかという問いには,これは公益ではないから,いや,それはもうそのときは要らないよと,何とか公益信託のままで残してくれと,そのために工夫をしてほしいという反応になるのではないかと思います。ですので,乙案というのは事実上は,ほとんど使われないのではないかと考える次第です。 ○林幹事 前回の部会資料40の2の5のときにも申し上げたのですが,それと引き続き同じですが,今のところは乙案に賛成致します。   確かに,部会資料にも書かれているような,公益として支出された資産なのだからという部分について,問題点というか,悩ましさがあることは承知しているつもりなのですが,とはいうものの,取消しがされる場面というのはいろいろあって,取消しはされたけれども,公益的な目的として残る可能性がある場合もあると思います。吉谷委員はニーズはないとおっしゃられたのですけれども,必ずしもそうではないのではないかと,場合によってはあるのではないかとは思います。ですから,そういう意味においては,今のところは少なくとも乙案のようなことで残していただいて,あの中間試案なりでもう少し議論していただいて,ニーズの有無であるとかをパブリックコメントを経て見ていただいたらいいのではないかと思います。   ですから,認定のない公益的な目的信託は否定しない前提ですから,その中の一つのものとしてあり得るものと思いますし,その前提で,そういうものも制度で組めないのかをもう少し議論していただいたらと思います。   確かに,山本参考人は設立とか申請の時点と,その取消しの時点と,考え方が違う場合とおっしゃられて,そこにも引っ掛かってはいるのですが,問題点は分かった上で,今としては乙案を支持して,もう少し議論の対象としていただきたいというところです。 ○中田部会長 ありがとうございました。   部会資料41の9ページに,乙案を採る場合の問題点が指摘されていますけれども,これについては何かお考えはございますでしょうか。 ○林幹事 個別にこうであればというのは,まだ答えを出し切れていない面もあるので,今直ちには答えられず申し訳ありませんが,ただ,その時点まで公益信託として実績があって,ガバナンス等の制度も一応設けられたものとしてそこまで来たわけですから,そういう意味においては,公益認定が取消されてその認定機関からの監督はないのですが,一定監督もあるわけで,公益目的としての余地があるのなら残せばいいのではないか,というのが今のところの意見です。そういう点も含め,もうちょっと詰めないといけないことは理解していますが,今のところはこうした意見にとどまりますが申し上げたいと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○神田委員 ちょっと細かい点で,前に出たのかもしれませんし,本筋でなかったら申し訳ないのですけれども,現在,現行法のもとで存在している公益信託というものは,この新しい改正の下では永遠に適用除外で行き続けるのか,一定の時期にこの新法というか,改正後のルールに言う公益認定を受けなければいけないのか。もし後者だとして,受けられなかった場合に,そういうものについては,一般論としては例えば甲案でいく場合であっても,乙案で処理をするのかという問題があるように思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   経過措置については,前に少し事務局の方からの御提案,御議論があったかと存じますが,重要な点だと思いますので,引き続き検討することになろうかと存じます。   ほかには。 ○藤谷関係官 申し訳ありません,お時間が限られているところ,恐れ入ります。   一つ,山本参考人が問題提起してくださったところでまだ議論されていないと思われる点として,公益上の理由がないと財産権の過度の制約に当たるのではないかという論点がございます。   この論点は,強い効力を持つ認可というのと甲案とが連動するのではないかという話で,まず資料の6ページで出てきて,もう一回,資料の9から10ページにかけて,終了のところでももう一回出てくるというかたちになっております。   確かに,財産権の過度の制限に当たるのではないかというのは非常に重要なポイントだと思います。しかし,その点については,既に先ほど中辻幹事から御説明ありましたとおり,現在の案でも,現行法の2条1項を削除するという形で,公益認定を受けないルートで私人が,自由にやるということは否定しないということで,一応そこは認められていると。そうすると,現在の第1の甲案及び第2の方の甲案を採った場合,若しくはデフォルトルールで,甲案というか,認めないというルールを採った場合には何が問題になるかというと,公益認定を目指してやったけれども失敗した人に全然それ例外の救済がなくて,奈落の底まで落ちてしまうというような制度の立て付けが問題になるということなのだろうと思いますが,果たして,その場合にもやはり財産権の過度の制約ということは考えた方がよいのか否か。つまり,山本参考人の御説明の中で,この論点が一つ甲案と丙案デフォルトの原則としては整理させないという考え方との分水嶺になっているような気がしましたものですから,それは民事基本法制を考える方からすると,余りそういう財産権の規制に当たるのではないかということは,それほど正面から議論してこなかったように思いますので,とても重要なポイントではないかと思いましたので,その点について改めてお考えをお聞かせいただけると大変勉強になるのではないかと思いまして,よろしくお願いいたします。 ○中田部会長 山本参考人,よろしいでしょうか。 ○山本参考人 財産権と書きましたけれども,民事法の研究者の方々の前でこんなことを言うのは恐縮なのですが,私的自治と申しますか,意思の自由の問題ではないかと思います。   丙案,あるいは私が弱い効力を持つ認可と申し上げたものは,私的自治ないし意思の自由を基礎にしており,それと比べたときに,甲案ないし私が強い効力を持つ認可と言ったものは,当事者がどのように考えていようとも終了をさせるという制度であって,ということは,始めようというときにも,認可を受けない限りやはりやってはいけないということに必然的になるわけですね。当事者が受益者の定めのない信託として続けようと思っても,もうそれは駄目です,どう考えていようとおしまいですということは,当事者の意思が否定されることになり,それはなぜか,それだけの実質的な公益上の理由が,必要だろうと思うのですね。   そうすると,それと同じ理由でもって,結局,信託を始めようというときにも,一定の類型の信託については,やはり認可を受けなくては駄目だということになってくる。そうすると,全面的に,当事者の意思如何にかかわらず,とにかくそれは駄目ですと,信託としての効力を発生させませんということに,公益上の理由があるかどうかということになろうかと思います。ですから,財産権というよりも,むしろそのような私的自治,意思の自由の制約ということかもしれません。 ○藤谷関係官 ありがとうございます。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。   ほかにございますでしょうか。 ○深山委員 先ほど沖野幹事が御指摘をされたとおり,全く新たに公益信託を作ろうという場合と,既に公益的な信託設定があって,それをある段階で,これをいっそ公益信託にしようという場合があり,場面を分けて議論なり整理すべきだという御指摘だったとお聞きしたのですが,それにごもっともだと思って,その先を私なりに考えていました。既に公益的な受益者の定めのない信託をしているときに,例えば1年やって,では,これはもう公益信託に言わば格上げをして税制優遇も受けようとか,名称も使わせてもらおうということになって申請をしたけれども,何らかの理由で認められなかったという場合,その場合には公益信託にはもちろんならないわけですが,全く何もなくなるわけではなくて,元の状態に戻るといいますか,元の公益信託ではない公益的な受益者の定めのない信託に戻るといいますか,そのままということだと思うのですね。   他方,全く新たに信託そのものを作ろうというときを考えると,それは元々何もない状態なので,公益の認定なり認可を申請したけれども,おりなかった場合には,戻るものがないという意味では全く何もなくなってしまうというのも一つの割り切りとしてはあると思うのです。しかし,観念的にはそういうふうに,場合が違うから結果が違ってもいいと言えるのでしょうけれども,しかし実際には,そういう認められない場合もおもんぱかって取りあえず作っておこうと。極端に言えば,1か月でも作って,それからやれば全くゼロにはならないということになるのも,またおかしな話だという気がするのですね。ですから,もちろんどういう理由でその認定が受けられないかということにもよるのかもしれませんけれども,新たに作る場合,あるいはそれに近い場合であっても,現行法の2条1項を削除する以上,もはや,藤谷関係官の言い方を借りるとすれば,奈落の底まで落ちてしまうしか道がないというのはどうもやはりしっくりこないので,2条1項を削除する以上は,主位的な意思が通らなくても予備的な意思が,無条件ではもちろんないわけですが,一定の要件さえ満たせば生かされる余地というのは,やはり認められるような仕組み作りが必要なのではないかなという気がいたしました。 ○山本委員 先ほどの山本参考人からの答えに引き続いて,少し怖いのですけれども,質問させていただければと思います。   9ページの真ん中ぐらいの段で,本論点で乙案を採用する場合にはとあって,公益信託の認可ないし認定が取り消された後,公益目的取得財産残額を算定し,その額を他の類似目的の公益信託の信託財産とすることなどというのが方策として挙げられています。   このようなことを本当にしないといけないとなると,信託としての存続は事実上,考えられなくなるだろうということがあるわけですけれども,このような規制を課すこと自体,私的自治に対する過剰な制約になるかという問題はあるのでしょうか。それとも,これは確かに一見すると過剰な制約のように見えるけれども,やはり合理的な理由があるのであって,それは正当化されると考えるのでしょうか。これはかなり重大な問題ですし,それを直接おうかがいできるまれな機会ですので,お聞きかせいただければと思います。 ○中田部会長 よろしいでしょうか,お願いします。 ○山本参考人 これは私が最終的な判断はできないのですけれども,観念的にはあり得ると思います。やはり私的自治等の制約として観念的には考えられると。ただ,問題は,先ほど言われましたように,要するに合理的な理由があるのかどうかということで,全く新規に公益信託を始めるときよりは,ずっと公益信託をやってきて,その結果として問題が出てくるという場面ですので,私は感じとしては,合理的な理由がこちらの方が付けやすいかと思います。   ですから,私の案の中でも,一応考えられるとしました。それにも更に段階があって,デフォルトルールとしてどちらを設けるかということと,更に一切,甲案のように排除するというやり方があると思いますが,可能性としては合理的な理由が立つかと思います。   ついでに,資料を事前に読んで分からなかったのが,今の9ページの6と書いてあるところの直前に,乙案を採用して公益信託は終了するのだけれども,引き続き行政庁が一定の範囲で監督する仕組みを設けるとありまして,これは公益信託における行政庁の監督等の仕組みとはまた違う監督の仕組みを設けるということなのですが,何かこれが,いささか中途半端な感じがして,なぜ公益信託はおしまいなのに,まだ行政庁の監督が続くのだろうかと。公益信託の場合よりは弱い監督を考えているのかもしれないのですが,そういう中間的な監督の制度というものが成り立つかどうかということがよく分からなかったというのが質問というか,単に感想ですけれども,ついででしたので申し上げます。 ○中田部会長 何か。 ○中辻幹事 部会資料の9ページで表現したかったことは,公益信託の認定を取り消された後の信託への行政庁の監督の仕組みとしては,当然のことながら公益信託の認定を受けているときと同じ形で監督する必要も理由も無くなるものの,認定中の監督よりも弱い形で,公益への拠出が予定されていた信託財産が私益に流れないようにするために必要な範囲での監督が考えられるのではないかということなのですが。 ○中田部会長 私が伺うのはよくないかもしれませんけれども,公益目的財産額について,公益目的支出計画を立てて,何年かに分けてそれを実行するというときの,それを監督というのかどうか分かりませんけれども,一定の関与があり得ると思うのですけれども,その話とは別のことですか,それとも,そのことでしょうか。 ○中辻幹事 旧公益法人のうち新制度の下での公益認定を受けない法人が一般法人に移行していく局面では,今,中田部会長に御紹介していただいたように,旧公益法人の財産を一般法人が公益目的支出計画に従って支出していくことを行政庁が監督するという仕組みがございました。それと同じような仕組みをイメージしていただくのが分かりやすいように思います。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。 ○山本参考人 ええ,分かりました。そういうイメージで了解いたしました。 ○吉谷委員 何を聞こうとしていたのか,ちょっとすぐによみがえってこないですけれども,深山委員の御発言に対する御質問の趣旨だったのですけれども,深山委員の御発言は,その第1の方の論点をお話されたのかなというふうに聞いていたときは理解していまして,その第1のところで公益の認可がされなかったときに奈落の底に落ちるということは多分なくて,認可されなかったら,そのときもう一回受託者と委託者で合意をし直せばいいのではないかなとちょっと考えましたので,そこの御確認というか,意見なのですけれども。 ○深山委員 おっしゃるように,まだ何も信託としての実態がなくて,これから作ろうというときを想定すれば,確かに公益信託で作ろうと思って契約を結んで認可/認定の申請をしたけれども,駄目だったというときに,では,もう一回,一からやり直せばいいというのは,それ自体はそのとおりなのでしょう。   私が申し上げたかったのは,その場合に,先ほど契約が必ずしも先行するとは限らないという御指摘もあって,確かにそうかなと思うのですが,契約が先行をして,なおかつ是非公益信託を新たに作りたいけれども,万が一,認定が通らなかったときには,次善の策として公益的な目的信託にしようという意図で契約を結んでいた場合には,改めて契約を結び直すまでもなく,従前の契約を生かすということがあるというようなことをイメージして申し上げました。 ○中田部会長 大体よろしいでしょうか。 ○藤谷関係官 すみません,一つだけ。テクニカルなのですけれども,公益からもう一回目的におりてくるときに,目的信託の20年の期間制限の潜脱にならないか,どういうふうに考えたらいいのかという問題はあるかなと思いました。 ○中田部会長 今のような問題点があるという御指摘を頂きました。   ほかにはよろしいでしょうか。 ○中辻幹事 沖野幹事がさきほど仰っていたことに関連して,少し御質問させていただければと存じます。   沖野幹事からは,新たな公益信託制度の下では,信託法附則3項も改正の必要があり,3項のうち,現在公益を目的とするものを除くとしているところが,公益認定を受けたものを除くという形になるのではなかろうかと,その上で,公益を目的とする受益者の定めのない信託について敢えて特段の規律を設ける必要性はない,すなわち現在の目的信託と同一の規律を適用すれば良く,2類型で足りるというお考えが提示されたものと受け止めました。   事務局としては,そのようなお考えを前提とした場合には,今回の部会資料で用いている[公益を目的とする]受益者の定めのない信託の角括弧でくくった部分を取り外し「受益者の定めない信託」とすることが合理的な選択肢になると考えています。その場合,行政庁の認可を受けられなかった,あるいは行政庁の認可を受けるつもりのない公益目的の目的信託が有効に成立するためには,現在の目的信託の受託者要件を満たしていることが必要になると思います。   他方で,公益信託法2条1項を廃止した場合には,山本参考人のお言葉を借りるなら,公益認定を受けることに伴う地位設定効が生じない,公益目的の目的信託の設定が現実味を帯びてきて,3類型目といいますか,角括弧でくくった部分を取り入れた「公益目的の受益者の定めのない信託」について現在の目的信託とは別の規律を設けるという選択肢もあると考えています。そして,その場合,考え方はさらに2つに分かれて,そのような信託をわりと緩やかに認めていくべきだと,信託法附則3項のような受託者要件は要求しないし,ガバナンスも緩やかなものでいいという考え方がある一方で,いやそれは違うのだと,委託者の私益を実現するための目的信託ですら厳しい受託者要件が設けられているのに,公益目的の目的信託の受託者要件が緩和されるのはおかしいし,ガバナンスも厳格なものにすべきであるという考え方もあると思います。後者の考え方を採ると,最終的には2類型論と同じ仕組みに落ち着くことになりそうです。   今回の部会資料は,これらの点をひとまず措いて作っておりますし,本当は事務局がもう少し詰めて検討すべきなのですけれども,少しなりとも前に進みたいので,もしこの点について沖野幹事に更にお考えがあれば,御教授いただきたいと思います。 ○沖野幹事 機会を与えていただきましてありがとうございます。   私はそこまでの必要はないのではないかと申し上げました。現時点で立法をすることを前提にすると,目的信託に更に2類型目のというか,そういう制度を用意するまでのことは,今のところはないのではないかという趣旨です。それは,そのような制度を作ることそのものについて,およそ否定的な立場を採っているわけではなく,公益活動というのを幅広く認めていくということであれば,目的信託だけれども,特殊な目的信託としての制度を用意するということは,それは考えられることは考えられるのではないかとは思います。ただ,そこまでしなくても今の時点ではいいのではないかという程度の感触ではあります。   考え方としては,元々が制度として公益信託という,あるいは現在ですと公益信託法による信託ですが,それと目的信託というのがあり,それが公益目的であるということによっていずれか分けられるというよりは,こちらの制度を利用するタイプのものはこちらの制度で,目的信託を利用するならば目的信託の規律でと,そういう区分けになるのではないかと考えているということです。   事務局としては間のものを考えることも十分余地があって,そのときには受託者要件が掛からないということですよね。受託者についての附則の限定が外れるけれども,それを埋める形のそれ以外の一定の規律が入ってくる,あるいはその中に他から財産を集めるときにはというような話が入ってくるかもしれませんが,そういうような,特別な規定を更に設けて,公益信託とは別に目的信託の両方で公益目的に信託を使えるということを正面から明らかにし,類型としても3類型用意するということをするだけの用意があるということであれば,それに対しておよそ否定的な姿勢だということではありません。抽象的な言い方で申し訳ありません。 ○小野委員 すみません,触発されまして,是非やりましょうということで。   この部会の初めの頃に,一般財団法人,一般社団法人,それに対して公益認定をもらうという形での法人制度の2階建ての方は,税制的にも,またガバナンス的にも非常に明確で分かりやすく,また使いやすいものであるにもかかわらず,この信託制度に関しては,目的信託の中に,もちろん法人要件とかそっちの要件もありますし,法人課税信託という,ある意味では使い勝手が悪いという観点もございますし,先ほど新井委員がおっしゃったように,委託者の権利が非常に強いという観点もありますけれども,デフォルトルールとしてといいますか,2階建てとしてとか,いろいろな言い方あるかもしれませんけれども,公益目的の目的信託というものが今後登場してくる場面というのは非常に今回の議論でも多いわけですが,そうすると,やはりそこでは通常の目的信託よりガバナンス機能というのはもっと強化して,一般的に割と批判的に言われるような,今までの類型としての公益目的ではない,目的信託とは違うものというものを,しっかりとガバナンス制度も整えた上で,制度として用意することによって,仮に公益信託認定は必要でない公益目的目的信託であっても,社会一般的にはきちっとしたガバナンスがされている。また,そうすることによって,税制上の扱いも違ってくるかもしれないというような可能性を秘めるものとして,せっかくの機会ですし,決して当部会の枠を,のりを越えているとも思えませんので検討してみてはいかがでしょうか。ガバナンスの制度をしっかりというのは,ある意味では公益信託と同様に信託管理人必置にするし,委託者の権利をその分だけなるべく後退させるとか,そういう観点だと思います。それに対して行政庁はどういうふうな監督機能を果たすかというのは別の議論ですし,ガバナンス機能だけ十分果たせれば,私的自治に任せるという観点もあるかと思います。 ○沖野幹事 小野委員に趣旨を確認させていただきたいのですが,例えばガバナンスの方を信託管理人を必置にすることによって,附則の受託者の限定を外すというようなことですよね。それは,やはり公益目的だということがあるからなのでしょうか。それとも,そういうのにすれば,公益目的かどうかということをぎりぎり言わなくても目的信託でできるということなのか。つまり,やはり公益目的だと,目的がそこだと,その制度として特殊なものが許されるということなのか,ガバナンスがしっかりそこで対応できるならば,受託者による絞りによらなくてもよく,それは公益ではなくても制度としてはもう十分いろいろなものに使えるのですということも考えられるのかと思ったのですが,飽くまでやはり公益目的だからということなのですね。 ○小野委員 沖野幹事が私にいいきっかけを作っていただいて,いや,そういうものと必ずしも限らないと,我々が想定したり想像する以外の形での公益目的以外の社会に有用な目的信託というのも十分あり得ると思うところもありますから,ガバナンス機能をより強化することによって広げるというのは,総論としてはもちろん賛成です。   ただ,他方において,当部会における議論とか,先ほどから議論しているように公益信託でない場合に何かが残るだろうと,残るべきではないか,また,私的自治は認めるべきではないかという議論の観点からすると,公益目的目的信託に当面は,別にそれを広げるという議論を反対するわけでも何もないですけれども,当部会の今日の議論,今日の延長としては,公益目的の目的信託においてはということでいいかと思います。特にこれまでの議論,今日でなくてこれまでの部会での議論でも,受託者として担い手というものが個人の場合,場合によっては法人とか,それは別に資産規模ではなくて受託者の能力という観点から考えましょうということを議論してきたわけですから,そうすると,附則の要件というものは必ずしも適用がない,そぐわない状況ではないのかなと思います。   ただ,沖野幹事がおっしゃるように,より広げるということはいろいろな意味で必要かと思います。どういう状況ということを今後,議論できるかと思います。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。そろそろ時間が近づいてまいりました。 ○吉谷委員 元々公益的目的信託という制度を作ることに反対なのですけれども,公益的目的信託という制度を作る場合に,それは公益だからなのか目的だからなのか,目的信託だからガバナンスを厳しくしないといけないのか,公益だからガバナンスを厳しくしないといけないのかが,どういう理由なのだろうというのはちょっとまだよく分かっていないということと,以前から,公益的な一般の信託というのはできるのであって,それを活用するというのがいいのではないかということを申し上げてきました関係からすると,公益的目的信託という類型を立てるとしたら,公益的一般信託,これについて何らの規律もなくていいのか。そういう制度を作ることは元々不要だという立場なので,要らないという結論になるべきだと思っているのですけれども,一応,概念整理としてはそういうことも視野に入れる必要があるかもしれないというところまで言及させていただきました。 ○中辻幹事 ありがとうございました。事務局として2分類にするのか,3分類にするのか,必ずどちらがいいということまで考えているわけではございません。今回の部会資料で,角括弧を用いて[公益を目的とする]受益者の定めのない信託という表現をしているのは,どちらの選択肢もあり得ると考えているからでございます。   一見すると,3類型にした方が類型が増えるので公益を目的とする信託の利用を促進するようにも見えるのですが,2類型とした方が公益信託本体の信頼性が高まるし,制度としても分かりやすく,公益信託本体の利用を促進するようにも思います。この点については,現時点では,事務局として固定的に考えているわけではないということを付け加えさせていただければと存じます。 ○中田部会長 大体よろしいでしょうか。   第1の論点につきましては,タイトルが「公益信託の効力の発生時期」ということで,分かりにくいという御指摘を頂きました。恐らくこれは発生時期というよりも,発生の仕方とかメカニズムとか,そういう趣旨でありまして,それに伴って,認定ないし認可を受けていない公益目的の信託をどういうふうに呼ぶのかという概念整理の問題であったと思います。その上で,その概念について,神田委員から御指摘を頂きました時間的な関係と論理的な関係を検討すべきであるとか,あるいは今日,山本参考人からるる御説明いただきました行政上の概念との関係であるとかということで,更に整理していく必要があると思います。   その上で,実質論としていただきました御意見は,結局は認定ないし認可のない公益を目的とする信託,受益者の定めのない信託をどう考えるのかということで,本日は,場合分けをして考えるべきであるという御指摘をいただきました。すなわち,申請しない場合と,申請したが不認可である場合と,認定ないし認可が取り消された場合という三つある,あるいは,新たに申請する場合と,既にあるものについての認定ないし認可の申請をする場合という二つのケースがある,というようなことだったと思います。それぞれについて認めるかどうか,あるいは認めるとして,その規律の具体的な在り方をどうするのか,更に,受益者の定めのない信託一般との関係,あるいは認定ないし認可の前置を必ず要求するべきかどうかといった点についての御指摘があったかと思います。   本日の山本参考人のお話から始まり,御審議によりまして,問題点が非常に明確になってきたと思います。その上で,公益を目的とする受益者の定めのない信託を仮に認めるとしたら,その具体的な規律の在り方はどうなのかということが検討課題だということが浮かび上がってきたのではないかと思います。   第2につきましては,当然に終了するということに賛成の御意見の方が多かったかと存じますが,いや,これは残してもいいのだという御指摘もいただきました。ただ,残すにしても,何らかの規制ないし注意が必要ではないかという御指摘を複数の委員からいただきまして,仮に残すとすれば,その規制ないし注意の具体的な在り方,あるいはそれに要するコストとの関係というのが検討課題であろうということが浮かび上がってきたのではないかと思います。   以上の御指摘を踏まえまして,更にこの部会で検討をお進めいただければと存じます。   ほかに御意見などございませんでしょうか。   ないようでしたら,本日の審議はこの程度にさせていただきます。   最後に,次回の日程等について,事務当局から説明をしていただきます。 ○中辻幹事 次回の日程としては,7月4日(火曜日)午後1時半から午後5時半までを予定しております。場所は,現時点未定ですので,決まり次第,また御連絡いたします。   当日は,参考人としてこの部会にお招きする同志社大学の佐久間毅教授から,新たな公益信託制度を設計する際の民法,信託法上の論点についてお話していただいた後,今日と同じような形で質疑応答を行う予定です。   また,次回は,公益信託設定後の信託の変更等の論点について,信託の目的以外の変更と信託の目的の変更,信託の併合・分割の三つに分けて整理した部会資料を事務局の方で用意し,それを踏まえて御審議いただくことも予定しております。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。   それでは,これで終了といたします。本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 -了-