法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  平成29年 7月27日(木)   自 午前 9時27分                          至 午前11時12分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること及び非行少 年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の 在り方について         2 今後の審議の進め方について         3 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の第5回会議を開催いたします。 ○井上部会長 おはようございます。本日も御多用中のところお集まりいただきまして,ありがとうございます。   本日,酒巻委員,田中委員及び山下委員におかれましては,所用のため欠席されておられます。   まず幹事の異動がございましたので,御紹介させていただきます。   名執雅子氏が幹事を退任され,新たに大橋哲氏が幹事に任命されました。 ○大橋幹事 新たに幹事に任命されました大橋でございます。どうかよろしくお願いいたします。 ○井上部会長 また,新たに隄良行氏が幹事に任命されました。 ○隄幹事 法務省刑事局参事官の隄でございます。どうぞよろしくお願いします。 ○井上部会長 次に,事務当局から,本日の資料について説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,配布資料14「論点表」を配布しております。これは,前回論点表を確定していただきましたので,従前「論点表(案)」と書いていたものから「(案)」を削ったものでございまして,内容は同じものでございます。 ○井上部会長 ありがとうございました。   審議に入りたいと思います。初めに前回に引き続き論点表の論点について意見交換を行います。その後,今後の審議の進め方について御相談をさせていただきたいと考えております。   それでは,早速,論点表の論点についての意見交換ですけれども,前回は論点表の1枚目の各論点について御意見を伺いましたので,本日は論点表の2枚目に記載されている七つの論点について意見交換を行いたいと思います。便宜上幾つかをまとめて1つのグループとし,その各論点群ごとに意見交換を行うという形で進めさせていただきたいと考えております。   まず,2枚目の一番上の「保護観察・社会復帰支援施策の充実」と,二つ目の「社会内処遇における新たな措置の導入」,この二つの論点をまとめて第一の論点群とします。次に,上から三つ目の「自由刑の在り方」と,四つ目の「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実」,この二つの論点をまとめて第二の論点群とします。最後に,上から五つ目の「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」,六つ目の「社会内処遇に必要な期間の確保」及び七つ目の「若年者に対する新たな処分」,この三つをまとめて第三の論点群とします。以上,第一から第三までの各論点群ごとに,順次,意見交換を行いたいと思います。   初めに,第一の論点群の二つの論点項目の概要につきまして,事務当局から説明をしていただきます。 ○羽柴幹事 論点表2枚目の上から二つの論点について,その概要を御説明いたします。   一つ目の「保護観察・社会復帰支援施策の充実」は,罪を犯した者の改善更生・再犯防止のためには,保護観察を始めとする社会内処遇の充実,就労・住居確保等の社会復帰支援の拡充が有用であると考えられることから,これらについて検討するものです。   「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書には,若年者に対する保護観察について,若年者の特性に留意するなどしつつ,より充実させること,刑事施設出所者等に対する就労支援施策を充実させること,更生保護施設において,同施設入所中の支援に加えて,同施設退所後も必要な指導,支援等を行う措置を推進していくことが記載されていますが,これらに限定されるものではないと考えられます。   二つ目の「社会内処遇における新たな措置の導入」は,社会内処遇の充実という観点から,保護観察を始めとする社会内処遇を現行より多様化することについて検討するものです。   若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会の取りまとめ報告書には,特定の施設・場所に居住し,又は通所することを義務付けることや,必要に応じて休日,夜間等を活用した集中的な指導監督を行うこと,夜間等の特定の時間帯の外出や特定の施設・地域への立入りを禁止すること,有用と認められる医療機関等でのプログラムの受講のほか,対象者の同意を得た上で,医療機関での受診等や福祉関係機関への相談を義務付けることなどが記載されていますが,これらに限定されるものではないと考えられます。   二つの論点の概要は以上です。 ○井上部会長 それでは,今の説明も手掛かりにしながら,以上二つの論点について,いずれからでも結構ですし,あるいは二つをまとめてでも結構ですので,御意見のある方は挙手をお願いします。 ○小木曽委員 双方に関してです。保護観察には,権威的監督的側面と,援助的福祉的な側面があると言われております。この言葉自体が適切かどうかということはひとまず置くとしましても,第3回会議におけるヒアリングで,現在は補導援護だけを委託されている更生保護施設において,より監督的側面からの支援ができるようになると良いという趣旨の発言がありました。   論点表の後の方に,「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」という項目がありますが,ここでは,言わば,「社会内処遇と自立した生活」との間に,例えば,先ほども紹介されましたように,一定のプログラムを受けることや被害弁償を義務付けるとか,保護施設に一定期間滞在するということを義務付けるといった措置が,何らかの形で実現できるかどうか,つまり,自立した生活と国による支援・処遇との間に,今よりも柔軟な制度を設けることが可能かどうか検討する価値があると思います。   また,保護観察に関する良好措置・不良措置に関して,何号観察であるかによって扱いが異なるのが現状ですが,これについても,より使いやすいものにできると良いという指摘がありました。これらについて検討すべきであると思います。   抽象的に申しますと,法律としては,どこかで線を引かなければいけませんから,成人年齢を何歳と定めざるを得ないわけですけれども,人の成長の実際を考えますと,昨日まで子供だった者が,誕生日を境に突然大人になるわけではありません。成人と少年に対する処遇・措置を截然と区別すべき場面と,両者を柔軟に運用するという場面を想定してよいのではないかと考えます。   同様に,罪を犯した人々に対する措置も,ここまでは権威的で,ここまでは福祉的であると,両者は法的な性質を異にするので,更生保護施設ではここまでしかできませんというのでは,本来狙いとされるソーシャルインクルージョンが達成されないことがあるかもしれないということを念頭に置きつつ,現在の制度を見直してみるということには意義があると考えます。 ○太田委員 今の小木曽委員の内容にも関係しますけれども,「社会内処遇における新たな措置の導入」と,それから「保護観察・社会復帰支援策の充実」の両方に関わることであります。保護観察対象者の中には,通常の生活指導であるとか職業補導といったものを中心とする処遇だけでは更生が難しくて,より専門的な,より密度の高い処遇を必要とする者がいることが明らかになってきているわけであります。そういった意味では,保護観察を充実させる上で,現在の特別遵守事項の内容を改めて検討し直す必要があるのではないかと思っています。   先ほど,羽柴幹事の御説明にもありましたが,現在の遵守事項としては,特定の場所であって,宿泊の用に供されるもの,すなわち,自立更生促進センターに一定期間宿泊して指導監督を受けることという内容のものは設定できますが,一般的な居住指定はできないこととされていますけれども,例えば,その他の専門機関において,居住しつつ処遇を受けることができないかを御検討いただきたいと思っています。それから,被害者に接近することを禁止することは,現在の特別遵守事項でも行われております。けれども,これを,これ以外の地域や場所に接近を禁止したり,海外のように,夜間に問題行動をとりがちな若年者に対しては夜間の外出を禁止するような事項を設けることも考えられないかということもあります。それから,更生保護法に改正されましてからは,被害者への賠償に努めることということを特別遵守事項に設定することができないとなってしまっております。やはりこれをもう一度見直す必要があるのではないかと思っております。このように,対象者の改善更生や再犯防止に向けた様々な内容が考えられますので,特別遵守事項の見直しということを御検討いただければと思っております。   また,先ほど小木曽委員からもありましたけれども,従来は,指導監督を行うのは保護観察官と保護司に限定されておりまして,これを外部の方に委託するということは認められていないわけでありますが,近年,補導援護という形ではありますけれども,薬物依存の治療とか処遇といったことを外部の機関に委託するというようなことが行われております。そうであれば,特定の処遇を指導監督という形で外部の機関に委託するということができないだろうかということとか,それから,保護観察のそもそもの在り方として,保護観察官及び保護司が対象者と1対1対応でやってきているという従来の構造を改め,チームあるいはグループで連携して行うというような形に見直す必要があるのではないかと思っております。是非この部会においても御検討いただければと思います。 ○羽間委員 「社会内処遇における新たな措置の導入」について,2点ほど申し上げさせていただきたいと思います。   まず,第1点目でございますけれども,先ほど御紹介がありましたように,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書には,特定の施設への居住の義務付けなどの幾つかの措置が記載されていると理解しております。ただし,権利制約の度合いの強い措置について,保護観察所長などの行政機関の権限で義務付けるということは,限界があるのではないかとも思っております。   そこで,新たな措置として,例えば,保護観察とは別の付随処分として,裁判所が直接義務付けるということを考えるべきではないか,あるいは,他の遵守事項についての違反があった場合の不良措置としてのみ義務付けられるようにすべきではないか,というように,義務付ける際の裁判所の関与の有無や義務付けの条件についても,併せて検討していく必要があるのではないかと考えております。   次に,保護観察の解除や仮解除といった,いわゆる良好措置について意見を申し上げたいと思います。部会の第3回会議で古山保護観察所長が指摘していたとおり,現在,保護観察付執行猶予者に対する良好措置である仮解除は,それほど活用されていません。保護観察付執行猶予者の改善更生意欲を高めて処遇効果を上げていくという観点からは,仮解除の手続の簡素化,あるいは,更に進めて解除制度の導入などといったことも検討する必要があるのではないかと思っています。   保護観察の解除については,改正刑法草案にもそういった規定があったかと承知しておりますので,そこでの議論も踏まえた更なる検討が必要であろうと考えております。 ○廣瀬委員 これまでお話があったことはいずれもごもっともだと思っており,私も基本的に賛成です。けれども,今の更生保護法でもかなりの制度,権限はあるわけです。それが,実際になぜそれほどうまくいかないかというと,受皿・予算,人的,物的なものが非常に大きいと思うのです。例えば,居所指定の問題も出ましたけれども,これも,指定する受皿がないとどうしようもないわけです。そういう意味で,今お話されたような制度をいろいろ考えていただくときに,それがきちんと動くような受皿作りなども併せて御検討いただければ実効的になるのではないかと思います。 ○山﨑委員 廣瀬委員から出たこととも関連するのですけれども,様々な保護観察の充実策を考えた際に,対象者と現実的に接する方としては,保護司であることが多いだろうと思っております。特に,少年ですとか若年成人の場合,保護司が高齢化していることもあって,年齢ギャップが非常に大きいということが若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会のヒアリングでも出ていたと思います。制度を考えるに当たって,現状の制度の運用を改善することでどこまで可能なのか,仮に,新しい何か制度を導入する場合に,それに対応するような現場の体制がとれるのかどうか,そういった点は,きっちり慎重に議論する必要があるだろうと思っております。 ○奥村委員 2点あります。社会復帰支援施策の充実ということに,私は賛成なのですけれども,この社会復帰支援施策について,まず一つは質問です。平成18年度から法務省と厚生労働省とが連携して刑務所出所者等総合的就労支援対策が始まっているということですけれども,この現状がどうなっているのかということと,この支援施策を更に充実させていくための課題は何かについて,この場で分かる範囲で結構ですので,教えていただきたいと思います。   それから,もう一つは,犯罪被害者等の権利・利益の擁護の視点からの意見です。次の自由刑の観点にも関係するのですが,現行の損害賠償命令は,現状では,加害者側に支払能力が欠ける場合が少なくなく,画餅といいますか,被害者側は債務名義を得るだけで,損害回復の実効性がほとんどないという問題があるわけです。第三次犯罪被害者等基本計画で損害賠償命令の実効性の有無について調査をするということになっているわけですけれども,犯罪被害者等に対する損害賠償ということについて,犯人が実刑を言い渡され入所した場合は,損害賠償命令の実現はやや困難を伴います。そこで,加害者が社会復帰して賠償義務を果たすためには,加害者の自立が必要です。そのためには,就労支援ということが非常に大事であります。要するに,加害者に対する社会復帰施策として就労支援を行い,加害者が仕事に就くことにより自立できるようになれば再犯防止につながるとともに,被害者に対して賠償していくことも可能にする点で,後の自由刑の議論とも絡んでくるのですけれども,その点を検討していただきたいと思います。 ○今福幹事 ただいま,平成18年度から始まりました就労支援対策の現状について御質問をいただきました。   今御指摘いただきましたとおり,平成18年度から法務省と厚生労働省が連携をしまして,刑務所出所者等の就労支援を総合的に実施するということで,名称としましては,刑務所出所者等総合的就労支援対策というものを開始しております。具体的には,保護観察所,矯正施設,ハローワークが3者連携をしまして,身元保証制度などの就労支援メニューを実施しているところでございます。その後,その対象となる者の実績は上がっておりまして,平成27年度の実績で申し上げれば,支援対象者の数は3,781人に及んでおります。また,それに伴って就職に至った者の件数は2,319人となっておりまして,それぞれの数字は年々増加傾向にあるという状況にございます。 ○山下(幸)幹事 先ほど山﨑委員から指摘のあった保護司制度のことですけれども,何回か前の会議で私からも質問させていただいたことがありますが,刑の一部の執行猶予制度導入のときから,保護司制度の活用についての重要性というのも高まっておりまして,今回の「社会内処遇における新たな措置の導入」との関係でいうと,やはり保護司制度がきちんと機能することが重要であると思います。その中で,先ほど指摘があったように,今,高齢化であるとか,元々完全なボランティアでやっているということも含めて,なかなかなり手がいなくて,今後これを活用するには,保護司制度の充実等が必要だと思います。この点,この部会でどこまでこれが議論の対象になるのかというのはありますけれども,果たして,保護司制度というものが,今後どんどん活用するときに,本当にそれが十分耐えるだけの人数とか,そういう担い手の在り方といいますか,そういうものが果たしてきちんと機能し得るものなのかどうかということについても,議論していただければと思っております。 ○田鎖幹事 今の点とも関連するのですが,先ほど来御意見が出ていますように,確かに処遇の現場において,より効果的な中身を実現するために,もっと強い権限が必要だと,有効だという声があるというのは確かだと思います。   一方で,そういう声が出てくる背景には,やはりマンパワーが不足しているということが基盤にあると思います。裏を返せば,現行の制度の下でも,より十分な人員があれば,あるいは予算もあれば,もっといろいろなことができるということもあろうかと思いますので,現行の制度の下で,よりどういった制度であれば充実していけるのかということも併せて,新たな制度の検討が必要であろうと考えます。 ○井上部会長 第一の論点群については,このくらいでよろしいでしょうか。   それでは,他に御意見のお申出がないようですので,次の第二の論点群について御意見を伺うことにしたいと思います。まず,各論点項目の概要につきまして,事務当局から御説明をお願いします。 ○羽柴幹事 論点表2枚目の上から三つ目と四つ目の二つの論点について,その概要を御説明いたします。   論点表2枚目,上から三つ目の「自由刑の在り方」は,罪を犯して施設に収容された者の改善更生・再犯防止を図るという観点から,施設内における処遇・教育を一層充実させるための法整備として,自由刑の在り方について検討するものです。   論点表2枚目,上から四つ目の「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実」は,罪を犯して施設に収容された者の改善更生・再犯防止を図るため,施設内における処遇・教育を充実させることなどについて検討するというものでございます。   これらの論点に関し,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書には,若年受刑者は,可塑性に富む場合があり,改善更生のためにその特性に応じた矯正処遇を充実させることが重要であるとして,若年受刑者について,その特性に応じた矯正処遇の実施に関する処遇の原則を明確化した上,若年受刑者を対象とする処遇内容を充実させること,若年受刑者に対し,現在少年院で行われているような教育的な処遇を実施するための方策として,少年院において刑を執行することができる受刑者の範囲を現行法の16歳未満の者から拡大すること,個人の特性に応じた適切な処遇を実施し,若年受刑者の改善更生を図るため,少年を対象として少年鑑別所や家庭裁判所において行われる調査を参考としつつ,若年受刑者に対する処遇調査を充実させるための措置を採ること,現行法上,懲役刑について作業のみが刑の内容とされているため,現在の取組を更に進めて,受刑者の特性に応じ,刑期の大部分を作業以外の改善指導や教科指導に充てるなど,より特性に応じた矯正処遇を実施することには限界があり,また,禁錮刑については一律に作業の義務付けを行うことができないものの,受刑者によっては,本人の改善更生にとって作業が有用な場合があることから,懲役刑及び禁錮刑を一本化した上で,受刑者に対し,作業を含めた各種の矯正処遇を義務付けることとする法制上の措置を採ることが記載されています。 ○井上部会長 この第二の論点群についても,いずれの論点からでも結構ですし,二つの論点をまとめた形での御意見でも結構ですので,御意見のある方は挙手をお願いします。 ○佐伯委員 両方にまたがって意見を申し上げたいと思います。「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書の御紹介にもありましたけれども,受刑者の改善更生・再犯防止を図る上では,受刑者の特性に応じた矯正処遇の取組を進めるということが重要かと思います。その観点から,自由刑の単一化を含めて自由刑の在り方を検討することが意義があることではないかと思います。   現行刑法においては,懲役刑では所定の作業を行うことが義務とされているわけですけれども,受刑者の特性に応じた矯正処遇を進めていく上で,現行の懲役刑で作業のみが義務付けられていることとの関係を検討する必要があるかと思います。これまでにも,自由刑を単一化して,作業を含めた矯正処遇を柔軟に行うような制度について検討がなされてきたわけですけれども,そのような過去の検討も踏まえて,新しい立法をすることも含めた検討をすることが意義があると思います。   また,受刑者の特性に応じた矯正処遇の取組を進めるという点では,若年受刑者については可塑性に富む者がいますので,改善更生のために,その特性に応じた矯正処遇を行うことが重要であると考えられます。その上で,先ほどの取りまとめ報告書にもありましたように,若年受刑者に対する処遇原則を明確化した上で,若年受刑者を対象とする処遇内容をその特性に応じたものとして充実したものとすることを検討することが重要であると考えます。その際,少年院における処遇と刑務所における若年者に対する処遇を比較して,両者の処遇がどういう点で違っているのか,違っているとすると,その理由はどこにあるのかというようなことを整理した上で,処遇の在り方を検討することが重要かと思います。 ○池田幹事 佐伯委員の今の御意見に付け加えまして,可塑性に富むことがある若年受刑者については,現在も処遇調査は充実したものが行われていると伺っておりますけれども,その特性に応じた処遇の内容の充実を図るために,処遇調査を一層充実させるということも必要であろうと考えます。その在り方については,これまでヒアリングでも伺ってまいりました少年鑑別所における鑑別なども参考に検討していくことが必要だろうと考えております。 ○山﨑委員 今,お二方から若年者の処遇についてお話がありましたので,関連して,少年院受刑の対象の範囲の問題ですけれども,非常に,考えるとメリット,デメリットそれぞれありそうで,慎重にこれから考えたいと思っているところです。実際に,法改正で規定が設けられてからこれまで,ただ一件も実施された例がないということでございますので,果たしてこれがどのように機能して,どういった影響があるのかということを慎重に考える必要があるだろうと思っております。   例えば,保護処分を受ける少年と受刑する少年とが同じ少年院の中に両方いるということであれば,その双方にとってどういう影響があるのだろうかとか,あるいは,対象者の年齢やその刑期の長さによって,受刑をする場所が途中で少年院から刑務所に移送されて変わるような場合も想定するのかどうかとか,いろいろな問題があるかと思いますので,実際現実に行われた例がないこともあって,様々考えながら慎重に検討していきたいと思っております。 ○山下(幸)幹事 自由刑の在り方についてですけれども,従来,短期自由刑の弊害という議論があったと思うのです。今回,余りそのことは明示的に言われていないのですけれども,若年受刑者について,もし,保護処分のような,あるいは行為責任を超えた,例えば長期のというか,そういう処遇をされることになるとしたら,なおさらこの短期自由刑の弊害という問題があり得ると思いますので,自由刑の在り方の問題の一つとして,そういう問題もあるということを意識して議論すべきではないかと考えます。従来,かなりそれが議論されていたのですが,その解決がされていなかった点だと思うので,この機会に,この懸念も議論する必要あるのではないかと考えます。 ○廣瀬委員 自由刑単一化の議論は,私も賛成ですので積極的に進めるべきだと思います。ただ,自由刑を単一化した場合に,その中身として何をやるか,作業を義務付けるか,あるいは処遇プログラムをいろいろ設けてやってもらうか,その辺の義務付けをきちっとする必要があると思います。その義務付け等は,現場の裁量に任せるのではなく,きちんと権限を明らかにし,それについての手続的なものもきちんと整備をすることを検討する,これはやはり非常に大事なところではないかと思うので,その辺も含めて御検討いただけたらと思っております。 ○太田委員 今出ました自由刑の単一化ですけれども,私も個人的には,従来の考え方に基づく懲役と禁錮という区分は必要ないのではないか,しかも,刑務作業を刑罰として義務付けていくということは必要ないのではないかと思っています。けれども,その半面,刑務作業の意義ということも認められますので,何らかの形で刑務作業やその他の処遇を義務付けていくことは必要なのではないかと思っています。現行の刑事収容施設法でも作業を含めた矯正処遇が義務付けられているわけでありますけれども,これをどういう形で基本法の中に取り込んでいくかということを検討する必要があるとともに,刑務作業そのものの内容とか,刑務作業の運用ということも,考慮しなければいけないのではないかと思っています。   と言いますのは,そもそも,刑務作業を全てやめてしまうというのは非現実的で,作業以外の処遇で全ての時間を埋めるなどとはとても考えられませんし,刑務作業は処遇としての意味もあるわけですから,一定の時間刑務作業をやるとしても,何をどの程度やるのかを考えていかなければならないと思っています。従来は生産作業に非常に重点を置いた形でやってきており,しかも,外部の企業から発注してもらうという提供作業という形で行うのがほとんどになっているわけです。けれども,経済不況でありますとか産業の空洞化などで,刑務作業の運用が非常に厳しいものになってきていますし,単純作業が多くなってきています。しかも,作業単価も低く下げられて厳しいものになってきています。今後は,他の矯正処遇を更に充実させていくことも必要である一方,刑務作業の比重や効率が下がることになると,外部企業との契約が難しくなり,刑務作業そのものの維持が困難になることも考えられます。   かつては,受刑者の収容のために使った税金の一部を刑務作業で回収するという発想もありましたが,今後は,若年受刑者も含めた受刑者に処遇としてどのような刑務作業をどの程度行わせるのかということとともに,他の矯正処遇とのバランスを考えながら,刑務作業の維持運営という観点も併せて考えていく必要があるのではないかと考えております。 ○井上部会長 この第二の論点群について,他に付け加えることはございませんでしょうか。   特に御意見のお申出がないようですので,次に進ませていただきます。   最後の第三の論点群ですけれども,そこに含まれる三つの各論点項目の概要につきまして,事務当局からまず説明していただきます。 ○羽柴幹事 論点表2枚目の上から五つ目,六つ目及び七つ目の三つの論点について,その概要を御説明いたします。   上から五つ目の「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」は,受刑者の円滑な社会復帰を図るために,施設内処遇と社会内処遇との連携を強化することについて検討するものです。「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書には,施設外の機関等と連携した矯正処遇等の充実,施設内処遇から一貫した社会内処遇の充実が記載されています。   上から六つ目の「社会内処遇に必要な期間の確保」は,施設内処遇の対象者が円滑に社会復帰するためには,施設内処遇に引き続き社会内処遇を行うことが重要であると考えられるところ,社会内処遇が効果を上げるためには一定の期間が必要であることから,その期間を確保することについて検討するものです。「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書には,若年者について,保護観察付き刑の一部の執行猶予制度の活用を図ること,仮釈放の期間について,いわゆる考試期間主義を採用することが記載されています。   上から七つ目の「若年者に対する新たな処分」は,若年者を対象とする新たな処分について検討するものです。「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書には,18歳以上一定年齢未満の若年者について,現行法の少年審判に準ずる調査・鑑別手続を経た上で,少年院送致に準ずる処分や保護観察に準ずる処分を行う制度の検討が記載されています。 ○井上部会長 それでは,これらの論点について,御意見のある方は挙手をお願いします。 ○大沢委員 この「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」や,「社会内処遇に必要な期間の確保」について申し上げたいと思います。   まず,この「社会内処遇に必要な期間の確保」ですけれども,これは,やはり実効性が上がるように柔軟性を持たせるということが非常に大切なことだと思います。少年院の仮退院者の場合は,原則だと20歳で保護観察の期間が切れてしまうとか,仮釈放者の場合は,保護観察期間は必ず刑期の残存期間であるといった,更生が不十分な状態で保護観察が切れてしまうということの問題がやはり多いと思います。ですから,再犯の危険性がなくなるまで,期間が少ないのであれば十分にとるということは,やはり必要なのではないかと思います。   ただ,それを誰が判断するのかとか,そういったところは当然問題になると思いますので,先ほど「社会内処遇における新たな措置」のところで御発言がありましたけれども,例えば,裁判所がそういった,最終的にその期間というものを,実際に判断するのは保護観察官になるかもしれませんけれども,そういった形で何らかの裁判所の関与によって公正さを担保できれば,一般の国民にも理解が得られるのではないかなと思いました。   それから,この「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」のところで,先ほど御発言がありましたけれども,これを円滑にするには,それを支える体制とか受皿というのはやはり大事なのではないかと思っています。こういった連携の在り方の,現在でもやっている取組は幾つかあると思うのですけれども,例えば,外部通勤作業とか外出,外泊とか,そういった制度というのは今もあるわけです。この前,法務省の方に,外部通勤作業がどのくらい運用されているのかということを聞かせていただいたのですけれども,昨年の2016年12月末時点では,4刑務所で14人とのことでした。この外部通勤作業については,御存じだと思いますけれども,職員が同行せずに,刑務所の外の事業所に通勤させるという制度です。それから,職員の同行なしに受刑者が外出や外泊できる制度がどのくらい運用されているのか,この制度が始まった2006年5月から2016年12月までで,法務省の方に伺ったところ,外出が164件,外泊が21件ということでした。   この数字を聞いて私が思ったのは,やはり少ないのではないかということです。ですから,何でこれが少ないのかということを,多分それは受皿とか,特に事業所が協力雇用主と比べて少ないからではないかと思うのですけれども,それはなぜなのかというところは分析していただいて,これからのこの新しい制度を作っていく上でも,現行の制度がどうなって,それがもし余り使われていないとしたら,それの原因というのもきちっと確認していくことが,今後の新しい制度を作るときのヒントになるのではないかなと思いましたので,それもできたらということを感じた次第です。 ○太田委員 この三つの全てに関わることでございますけれども,現在,懲役又は禁錮の実刑を受けた受刑者のうち,特に問題性が大きくて,更生に支障が生じる可能性の高い受刑者については,仮釈放が認められない結果,満期釈放となり,かえって社会内処遇が行われないということになっています。けれども,満期釈放者の再入率の高さを考えますと,これは深刻な問題であると思っています。   刑の一部執行猶予が導入されまして,特に保護観察付きの刑の一部執行猶予を受けた者につきましては,釈放後の保護観察が確保されておりますけれども,残念ながら,制度設計上,非常に適用範囲が狭くて,特に薬物依存者を除く累犯者や問題の高い重大事犯者は一切適用がないために,今後も満期釈放者や短い保護観察期間しかない仮釈放者が多く出ることになります。   仮に,少年の上限年齢が引き下げられた場合に,刑事施設に収容された若年者の処遇が刑事施設の中だけでしか行われず,社会内処遇が行われることなく社会に戻ることになった場合には,問題はますます深刻になると思われますけれども,これは,何も若年者に限った話ではなくて,有期の全部実刑の者に共通の問題であります。是非この部会におきましても,社会内処遇に必要な期間を必ず確保し,施設内処遇と社会内処遇との連携を図る制度の検討をお願いしたいと思います。   具体的な制度といたしましては,刑の一部執行猶予制度を拡大するとか,若年者に特化した新たな刑の一部執行猶予制度の導入あるいは拡大,それから仮釈放制度の改革などが考えられますし,若年者に対する新たな処分ということも範疇に含めるならば,例えば,実刑を受けた若年者に対しては,釈放後に社会内処遇を付すという制度も考えられなくもないと思っております。   それから,各論的に言えば,私は非常に大きな問題だと思っているのが,精神障害を持った受刑者の施設内処遇と社会内処遇との連携であります。   現在,刑務所の中には,統合失調症を中心として精神障害のある受刑者が,統計上19%に上っております。近年,知的障害とか,それから福祉的な支援を要する高齢者については,特別調整とか特別処遇の制度ができましたけれども,こういった福祉的な支援というよりは,むしろ医療的な治療や支援といったものが必要となるような統合失調症を中心とした精神障害受刑者は,かなりの数が満期釈放になって社会内処遇が一切行われないということになっております。   精神保健福祉法に基づく26条通報というのがありますけれども,特に平成10年ぐらいから26条通報者の対象者が激増してきております。しかしながら,措置診察が行われる者はごく一部で,ましてや措置入院が行われる者はごく一部ということになっておりまして,精神障害を持った受刑者は,保護観察も行われないし治療も行われないという状況になっております。そうすると,せっかく刑事施設の中で治療や処遇が行われてきても,社会内処遇もなくそれが一切切れてしまうという状況になっていますので,施設内処遇と社会内処遇との連携ということから見ても,この精神障害を持った受刑者に対する処遇継続ということについても是非この部会で検討いただければと思います。 ○池田幹事 私も,「社会内処遇に必要な期間の確保」について申し上げたいと思います。   今,太田委員からも御指摘がありましたように,現行制度としては,刑の一部の執行猶予制度があって,それはいろいろな限界の下で運用されているという話ではありました。そのように,現に存在する制度が今どのような機能を果たしているかという実情も踏まえて,その他にあり得る制度の内容について検討されるべきだと思います。そういう意味で,今後の検討においても,刑の一部の執行猶予の施行後の運用の在り方について,実情が明らかになるような形で進めていただければと思っております。 ○山下(幸)幹事 「社会内処遇に必要な期間の確保」の点ですけれども,現行,刑法上は,有期刑の場合は3分の1を経過すれば仮釈放できることになっています。けれども,実際の運用は,弁護士の立場から見ると,仮釈放されるとしても4分の3ぐらい経過してからとか,仮釈放ではなくて満期で釈放されることも多いという実情がございます。なぜ,刑法の原則と実際の仮釈放の現状がそんなにずれているのかということを,つまり,元々刑法が規定している3分の1で仮釈放をしていれば,恐らく十分な保護観察期間が得られると思うのですけれども,そうなっていないために,つまり4分の3を経過して釈放されるとあと本当に短い期間しかないし,満期で釈放されると全く保護観察が受けられないという現状がありますので,まずその仮釈放の運用が,刑法が定めたとおりになっていない,そのような現状がどうしてそうなっているのか,そして,その現状が変えられないのか,なぜ刑法がそう規定しているのにそれができないのかということも分析した上で議論しないと,何か今の現状を前提に新しい制度を作る,また考試期間主義とか,そういうものを採用するとか,そういう議論をする前に,まず現在の運用をきちっと見直す必要があるのではないかと考えます。 ○羽間委員 2点ほど申し上げさせていただきたいと思います。   まず最初に,「若年者に対する新たな処分」に関してですが,現行の少年に対してなされている処分前の調査や少年院での処遇といった点は最大限いかすような方向で,少年法の適用年齢がもしも下がったとしても,処遇水準が現行からそれほど変わらないような措置を考えていただきたいと思います。   2点目は,「社会内処遇に必要な期間の確保」について,申し上げたいと存じます。取りまとめ報告書の最後の方に,その他として記載のある少年院の収容継続等を可能とする年齢や期間の上限についてです。これらの上限は,その趣旨から考えれば,少年法の上限年齢の引下げに連動して直ちに引き下がるというものではなく,年齢引下げ後の18歳,19歳にどの程度の期間の処遇が必要かという検討も,併せて検討していくべきではないかと考えます。そこで,この収容継続等の上限年齢等についても,社会内処遇に必要な期間の確保という論点に含めて検討していただけないかと考えます。 ○川出委員 私も,「若年者に対する新たな処分」について意見を申し上げたいと思います。論点表2枚目の第1点から第6点までに挙がっている論点は,若年成人も含めて,罪を犯した者に対して,その改善更生と再犯の防止をより図るために,既存の刑罰の内容や執行方法を改善するという観点からのものなのですが,それとは別に,若年者に対しては,既存の刑罰以外に,より教育的な観点を取り入れた新たな処分を創設するということも検討に値すると思います。   ただ,その際には,こういった処分が有効であるということだけではなくて,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書にも記載されていますように,その処分の正当化根拠,それとの関係で,その処分の法的性質がどのようなものかということについての理論的な検討が必要であろうと思います。   例えば,仮に,ここでいう新たな処分というのが,その名称はどうであれ,既存の保護処分と同じ法的性質のものであり,それを民法上成年である若年者に対しても科せるようにするということであるとしますと,前回議論になりました,民法上の成年者に対して少年法を適用するのと同じ問題が生じますので,それが果たして理論的に可能なのかどうかということを検討する必要が出てきます。ですから,この部分については,新たな処分の正当化根拠と法的性質がどうであるのかを検討した上で,その結論に基づいて具体的にどのような処分が考えられるかという順序で検討していくことが必要だろうと思います。 ○山﨑委員 私も,「若年者に関する新たな処分」について,今,川出委員がおっしゃったこととほとんど同じような意見を持っております。   やはりこの論点については,若年者を保護処分の対象の外とした上で,要するに,刑事手続上はもう大人という形で扱っておきながら,今の保護処分と同様な処分を行うという発想に立っていると思いますので,果たして,今言われたような法的性質ですとか責任主義の観点から,理論的に整合性がとれるものなのかどうかということは,慎重に検討すべきだろうと思っております。 ○田鎖幹事 「社会内処遇に必要な期間の確保」と関わる点なのですけれども,従来の問題意識としてはやはり,特に満期釈放を前提とした場合に,いわゆる処遇困難といわれる受刑者に対する矯正処遇というものが従来はなかなか十分にできず,なおかつ,そういう人ほど満期釈放になる可能性が高いという状況で,施設内でも十分な処遇ができず,そして,仮釈放もないまま外に出されてしまうと,そういうのが典型的な最も懸念されるケースだったと思うのですけれども,近時では,B指標の受刑者を中心に収容する施設でも,随分と意欲的な処遇がなされているとも伺っております。   さらに,先ほども大沢委員から,外部通勤作業や外出,外泊の活用が少ないのではないかというような指摘もありました。そうすると,やはり必要な期間の確保というのは,施設内での処遇がどの程度できるか,そういう外の社会とのつながりを徐々に高めていくようなものも活用しながら,どのように施設内処遇と社会内処遇との格差を徐々に減らしていけるかということが重要なポイントになるのではないかと思いますので,そういう段階的に開放度を上げていく処遇をもっと取り入れられないかといった観点も含めた検討が必要ではないかと考えます。 ○廣瀬委員 今の意見に近い問題意識なのですけれども,この施設内処遇と社会内処遇との連携,それから社会内処遇の評価などを考えた場合に,中か外かだけではなくて,中間的な処遇・施設等がないのが今の一番の問題だと思うのです。そういう中間的な受皿のようなものも含めて御検討いただけたらと思います。 ○青木委員 今の意見にも絡むのですけれども,やはり施設内処遇というのはどうしても限界があって,その施設の中でだけやっていけるということと,社会の中でやっていけるということとは中身が違うわけですから,施設内処遇をやっているときから,社会に出た後どういうことがやっていけるのかというのを見据えていかなければいけないのだと思います。けれども,今,話が出ましたように,中間的なものがないので,結局,その施設内処遇と社会内処遇,その後,若干なり多少長く社会内処遇の期間があったとしても,最初からそれを見据えた形でやるということもできないですし,途中で変更するということもできません。今,刑の一部の執行猶予はありますけれども,それは,言渡しの時点でいつから執行猶予になるというのは決まってしまっているわけですが,社会内処遇の期間を長くとるために,実際,実刑の期間が長かったとしても,それを途中で変更して社会内処遇に切り替えるというような制度があれば,もう少し連携した形もとれるのではないかと思うのです。実際の制度の作り方はすごく難しい部分もあるかもしれないのですけれども,裁判所が関与する形で,刑の修正というか,諸外国にはありますけれども,そういうような,あるいはそれに近いような制度というのも考えてみたらどうだろうかと思います。   それで,諸外国には,中間施設というか,刑務所の中でもうほとんど全員が外部通勤をしているような,社会復帰センターというような形のものがあったりします。先ほど大沢委員からもありましたように,外部通勤作業は,恐らく受皿の問題もあってなかなか難しいのだろうと思いますけれども,やっているところでは人数は少なくても,それなりにいい成果が出ているのではないかという気もするのです。そういうことについて,もう少し制度的に,例えば,どこかの刑務所はそういう社会復帰を目指す人たちが入っていて,そこに関しては,社会内で刑を執行すると,半分社会内でというのでしょうか,そのようなこともある程度,どこまで近づけるか分かりませんが,想定して考えるということも必要なのではないかと思います。 ○村田委員 「若年者に対する新たな処分」のところで,処分の正当化根拠の御意見がありました。前からも御議論があったところと思いますけれども,そこについて,理論的に御検討,詰めをする必要があるというのは全く同感でありまして,十分な御議論をしていただければと思います。その際に,現行法の下においても,例えば,少年が民法上は婚姻によって成年が擬制されたというものに対しても,少年法上はなお少年として扱われるというのが一般的な考え方かと思いますけれども,そういった例外があり,これをどういうふうに正当性を根拠付けるのかというようなことにも関係し得ると思います。さらに,若干次元がずれるかもしれませんけれども,準少年保護事件として今扱われておるところの収容継続事件ですね,成人になっても更に少年院で処遇をするということ,これも,どういうことが正当化根拠になるのかというところもあるかと思いますので,現行法でもそういう例外的事象というのがある程度生じています。これを,新たな制度の中でどういうふうに位置付け,それぞれの原則と例外の基本となる考え方と,それぞれの正当化根拠,この辺りもかなり詰める必要があるのではないかと思いますので,それらについても併せて御議論いただければと思います。 ○武委員 社会内処遇がいけないとは思わないのですけれども,私たち遺族から言いますと,刑が決まったときに,満期で入っていてほしいのです。その満期の中で,どう矯正教育を充実させるかということに力を入れていただきたいのです。まだまだ被害者の視点を入れる教育が足りないように感じるので,そういうところをもっと充実させて,できたら満期で入っていてほしい,せめて満期で入っていることを望むというのか,そうなってほしいです。だからといって,社会内処遇が悪いとは思わないのですけれども,遺族はそういう思いです。 ○井上部会長 他に御意見のお申出がなければ,第三の論点群についても,このくらいにさせていただきたいと思いますが,よろしいですか。   では,これで一応の締めくくりとさせていただきます。   ここまで,論点表の各論点について一通り,現段階における御意見を伺いました。こういう点を検討したほうがいいといった御意見が多かったのですけれども,今後は,より中身に立ち入って,具体的にこうすべきだといった形の議論もしていっていただく必要があるわけですが,そういうことも含めて,これまでの議論を踏まえ,今後の調査,審議の進め方について御相談したいと思います。   今後の進め方につきまして,事務当局で何かお考えをお持ちならば,御披露いただきたいと思います。 ○加藤幹事 審議の進め方につきましては,もとより部会においてお決めいただく事柄ではございますが,これまでの意見交換の状況等を踏まえまして,飽くまで一つの御参考として若干の提案をさせていただきますと,まず,論点表の大項目2について御検討をお願いした上で,それを踏まえまして,大項目1について検討をお願いするのが適当ではないかと考えております。これは,当部会におけますこれまでの意見交換の状況等を踏まえますと,少年法の「少年」の年齢を18歳未満に引き下げるか否か,すなわち,論点項目の大きな1番につきましては,大項目2の非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法,手続法の整備の内容を踏まえて,更に御検討を願うのが適切ではないかと思料いたすことによるものであります。   次に,大項目2の各論点についての審議の進め方につきましては,部会審議を効率的に進めるため,部会の下に複数の分科会を設けて,まず分科会において大項目2の各論点について,理論的,技術的な観点を含めて,具体的な検討を加えていただき,考えられる制度の概要案等を作成するとともに,検討課題を整理していただいて,それを踏まえて,部会において更に調査審議を進めていただくのが適当ではないかと考えております。   大項目2の各論点は,一つ一つが相当大きな論点でありまして,また,その内容も概して抽象的なものとなっております。これまでの意見交換におきましても,それぞれの各論点について具体的な検討を加える必要がある旨の御発言があったことなども踏まえますと,効率的に審議を進めていただくためには,考えられる制度の概要案等を作成するとともに,検討課題を整理することが必要であると考えられますが,このような作業につきましては,より小規模な会議体において作業を行うことが適切ではないかと考えられるところでございます。そこで,分科会の設置を提案申し上げる次第でございます。   もとより,分科会は,ただいま申し上げましたような,考えられる制度の概要案等を作成して検討課題を整理する場として設置するものでありまして,部会としての制度設計あるいはその採否の判断などについて,実質的な審議は部会において行っていただくことが相当であると考えております。 ○井上部会長 事務当局としてのお考えの要点は,第一に,大項目2についてまず審議を進めた上,それを踏まえて大項目1について審議をするということ,そして,第二に,その大項目2の各論点についての審議の進め方として,それらの論点をいくつかのグループに分け,本部会の下に複数の分科会を設置してこれらを分担させ,各分科会において担当する論点につき検討して,考えられる制度の概要案等を作成するとともに,検討課題の整理を行ってもらい,それを踏まえて,本部会において実質的な議論を行うということ,この二つであると言えます。   もちろん,大項目2について結論が出るまでは,大項目1の年齢の引下げ問題については全く議論しないという趣旨ではないと思いますし,また,各分科会だけで検討を行うばかりで,本部会全体としての意見交換の場がないというのも適切ではありませんので,各分科会での検討状況を適当な時期ごとに本部会に報告していただき,各分科会に加わらない委員・幹事も含めて,本部会全体として意見交換を行う機会を適時に持ち,そこでの意見を,各分科会にフィードバックして,更なる検討に反映してもらうということも必要であり,有益であろう。私としては,そう考える次第です。   そういうことを含めまして,事務当局から提案があった審議の進め方について,御質問あるいは御意見があればお伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○山﨑委員 質問的になるのですけれども,論点大項目の2から入って1にいくという,大きな流れが今,御説明あったかと思います。また,部会長からは,大項目1の問題についても大項目2の論点のところで全く議論しないわけではないという御説明もあったかと思いますが,要するに,大項目1の少年の上限年齢の引下げについて,例えば,引下げを前提とする方向で2の各論点を検討をしていくという方向性ではなくて,まず純粋に大項目2の論点を議論してみて,1の年齢引下げについても十分な部会での時間をとって,しっかりその是非について議論するという前提での御提案と受け止めてよろしいのでしょうか。 ○加藤幹事 おっしゃるとおりの趣旨で提案しております。 ○井上部会長 そうでないとおかしいですよね。大項目1について突っ込んだ議論をして,大きな方向性を見いだした上で大項目2の議論をするというのではなく,大項目2の各論点についてどのような可能性があるかということを詰めてみて,それを踏まえて大項目1について実質的な議論をしようという趣旨であろうと思います。 ○山下(幸)幹事 私は,元々論点表を作るのもすごく早いと思ったのですけれども,今回の分科会の提案も非常に早いという感じを持っております。   この間,特に前回の会議でも,現在の年長少年を含むこの少年法の家庭裁判所による少年審判のシステムは,特に不都合がない,むしろ順調に,そして大変きめ細かく調査・処遇がされていて大変良好である,ということは異論がないということが,議論になったと思います。そのような中で,そうではない,つまり,18歳以上の若年者を中心とする刑事法制の在り方という,この論点の2ですけれども,これを,各論点を非常に細かくといいますか分科会に分けて細かく議論するとなってしまうと,現行のシステムをなぜ変えるのかというところが,余りまだ十分議論されていないといいますか,順調に運用されている現在の制度を,わざわざ一旦18歳以上についてはそれを外して,少年法1条の健全育成の理念とか,そういうものを外して全く新しい制度として刑事法制を作ろうという議論に入るというのは,やはり順番が逆ではないかと思います。   まず現行の少年法で,果たして本当に対応できないのか,つまり,民法の成年年齢が変わろうとも,各法制度ごとに年齢というのは決めてもよいものであると思いますので,本当にその少年法でそれが対応できないのか,20歳未満という現在の少年法の適用年齢を維持したままで,現在の少年法のシステムを変えないでできないのか,それを一旦変えて,ゼロからそれを構築するというのは非常に,国家財政的にも,また立法技術的にも非常にいろいろ困難があると思います。ここで分科会に入って,非常に細かい議論をして新しい制度を作る議論に入っていくというのは,やっぱり順番が逆ではないかと思いますので,私は,この時点で分科会で議論することについては反対でございます。 ○今井委員 今回の諮問第103号を改めて確認しますと,形式的には三つの項目が諮問対象となっておりますけれども,実質的には,この論点表の大きな1と2ということではないかと思われます。   先ほど事務当局から御説明がありましたけれども,今回この2という大項目が諮問の対象の一つとなっていて,それは,今日の意見交換でも出ましたように,様々な検討すべき問題を抱えていますので,2の諮問対象にお答えするには,詳細な議論が必要であるということには,皆さん御異存がないところだと思います。   そのためには,やはり機能的な議論をして集約する必要がありますので,私は,まず一旦分科会に落として,そこで徹底的な議論をするのが適切ではないかと思います。そして,そういう議論をすることは,諮問の冒頭にある,この第1の項目について特定の結論を前提とするものではないと思いますので,私は事務当局の御提案に賛成するものであります。 ○小木曽委員 私も,そもそもこの部会は大臣の諮問によるものですので,そこで問われていることに答える責任があると思いますし,これまでのところで,この論点表に挙げられた点について,様々検討課題があるという御意見があったわけですので,それについて議論するのがよろしいと思います。 ○山﨑委員 分科会を設けるという点についてですが,課題を整理するという意味合いは,それとして理解できるのですけれども,制度の概要案を作成するという御説明があったところについて,分科会としての意見的なもので,ある程度議論があったものが素案として部会に上がってくるとなると,その段階で落とされてしまうものがありはしないかという点ですとか,分科会の分け方にもよりますけれども,他の分科会に相互にまたがるような問題について,全体を見渡したような検討が果たして十分にできるのかというような危惧が若干あります。そういった点は,どうお考えになっているのでしょうか。特に,概要案を部会に持ってくるというような形にすると,分科会における一定の評価といいますか,その結論が上がってくるのでは不十分ではないかという意見を持っております。 ○加藤幹事 お尋ねの点について,事務当局の考えを申し上げます。   まず,概要案を作ることになると一定の評価が入るのではないかという御指摘についてでございますが,部会でのこれまでの議論を拝聴いたしましても,ある程度具体的な素案と申しましょうか,意見交換の基になる案といったものがないと,具体的かつ効率的な意見交換ができないのではないかとも考えられます。   そこで,分科会において一定の素案を作成して,それを基に御議論をいただくのが適切ではないかと考えているところなのではございますが,もとより先ほど部会長からお話がありましたとおり,分科会における作業については,必要な都度,部会にも御報告をいただき,そこで部会における意見交換の機会を設けていただいて,その分科会における作業の方向性といったものについて,部会でも御議論をいただく機会を設けることが必要であろうと考えております。また,もとより分科会において作成した概要案といったものが,部会での審議を拘束するわけではございませんので,部会に戻していただいた際に,必要な御意見については更にお述べいただくということができるのではないかと考えております。むしろ,分科会におきましては,分科会において参加している委員,幹事の中から様々な御意見を伺って,例えば,全く一つの案ではなくて,複数の案といったものが提示されるということがあってもよいのではないかと考えております。   もう1点,先ほどの山下幹事からの御意見に関しまして,事務当局からも申し上げたいのでありますが,既に御指摘がありましたように,今回の諮問は,現在の少年手続に何か問題があり,改めるべき欠陥があるということを前提に諮問をされているものではございませんで,特に公職選挙法あるいは民法における年齢の問題でありますとか,近時の犯罪情勢,再犯防止の重要性等に鑑みて諮問がなされているものでございます。したがいまして,少年司法手続の現在の状況に対する評価だけを前提に御議論いただくのではなくて,幅広い諮問にお答えいただくために,各論点について詳細な御検討をいただくということが必要なのではないかと考えているところでございます。 ○井上部会長 山﨑委員の御質問について若干付け加えますと,例えば私の経験でも,平成23年から26年まで3年余りかけて審議した「新時代の刑事司法制度特別部会」においても,総論的な議論ばかりしていると,堂々巡りになってしまったため,その点はひとまず置き,分科会を設けて具体的に考え得る制度案やそれについての検討を要する事項を整理し,それを踏まえて特別部会でより実質的な議論をすることにより,総論的な問題をも含め審議を前に進めることができたということがありました。そうした経験から申しますと,総論的な問題を含め実質的な審議を進める上で念頭に置くとすればどういう制度が考え得るのか,また,そこにはどういう問題があるのかということを,分科会の方で詰めて議論をし,それを踏まえて本部会で議論をするというやり方が有用ではないかと思います。その際,その途中の適切な段階,段階で,各分科会においてこういう議論が進んでいるということを部会に報告してもらって,部会全体で議論をし,その議論を踏まえて分科会で更に議論するという方法が採られました。分科会というのは,そういう場であって,部会としての方向性や意見を決めるところではなく,決めるのは飽くまで部会全体だという仕切りであり,それが一つのステップボードになって,部会全体の議論も進んでいったわけです。本部会でも,これまで伺った限りでは,こういうことも検討した方がよいのではないかといった論点出しのような御意見が多く,中身について踏み込んだ議論になかなかなっていないという印象ですので,今後議論をより実質化し,効果的・効率的に進めていくためには,事務当局の御提案は,一つの有効な方策ではないかと私自身は考えます。 ○廣瀬委員 私も,大項目2と1の論点は非常に関連すると思います。川出委員が先ほどおっしゃったことにも関連するのですけれども,例えば,正当化根拠の問題でも,それが決まらないと新処分の検討ができないという話ではないだろうと思います。そういう部分がないとは言わないですけれども,正当化の面について整合する範囲に限っても,新処分などは十分考えられるでしょう。それで考えても,恐らく今の保護処分とそれほど大きく変わらず,多少修正するぐらいのことでも構想することは十分できるのではないかと思っています。   それも含めて,具体的な案まではなくてもいいかもしれませんけれども,具体的なイメージを作っていかないと,きちんとした議論はできないのではないか,効率的議論はできないのではないかと思います。そこで基本的に御提案には賛成いたします。   ただ,その場合に,他の分科会,他の委員等は,各分科会が何をやっているのかについて,フィードバックされる,アクセスするということができるという前提でよろしいのでしょうか。 ○井上部会長 先ほど例に挙げましたこの特別部会でも,委員・幹事は希望する分科会を傍聴することができることにしていました。そこで,適宜傍聴していただくことや,分科会の検討状況を適時に特別部会に報告してもらって,特別部会の委員・幹事全員から意見を伺うことにしていました。そのような形であれば,御懸念のようなことはないように思われます。   また,考えられる制度案といったものも複数あり得ますし,それぞれの案についても,こういう問題点の指摘があったとか,こういう反対意見があったとか,そういう形で報告してもらうのが有用ではないかと思われます。そのようなイメージでよろしいですよね。 ○加藤幹事 部会長のお話のあったとおりだと考えております。   特に,案と申しましても,最前から御指摘のあるように,これに決めたいという案というよりは,議論の基となる,作るとすればこういうものではないかという意味での議論の基になる案という意味合いで御理解いただけると適切かと思います。 ○山﨑委員 先ほどの御説明との関係で1点だけ確認なのですけれども,分科会での議論というのは,部会と同様に議事録がきちんと作成されて公開されるのか,委員・幹事はすぐそれを見られるのかといった辺りはどのようにお考えなのでしょうか。 ○加藤幹事 今御提案申し上げている分科会の設置がお認めいただければ,この後,御提案申し上げようと考えていたのですが,先ほど部会長からも御発言があったように,分科会については,委員・幹事の方々の傍聴は可能とするという方向ではいかがかと考えていたところでございます。   また,議事録につきましても,その取扱いは部会でお決めいただくべき事柄なのでありますが,基本的には,審議会の議事でございますので,この部会と同様に議事録を作成した上で公開をするということが適当ではないかと考えております。また,各委員,幹事の方々からお求めがあれば,その公表前でも,草稿の段階でも御覧をいただけるという形にするのが適当ではないかとは考えていたところでございます。   その点も含めまして,部会長あるいは部会の御決定に従いたいと存じます。 ○井上部会長 ほぼ御意見は伺ったと思います。この段階で仮に決を採るということになれば,委員の方の御意見を伺うということになろうかと思います。 ○山下(幸)幹事 私としては反対意見を維持しておきますので,あとは,どうされるかは部会で決めていただければと思います。 ○井上部会長 委員の方々にお伺いしたいのですけれども,事務当局提案のとおりで,特に御異議ございませんでしょうか。              (一同異議なし)   それでは,そういうことにさせていただきます。   次に,分科会を設置するとして,設置する分科会の数,各分科会が分担する論点等を決めておく必要がありますが,この点についても,事務当局でお考えがあればお伺いしたいと思います。 ○加藤幹事 ただいま部会長から御指摘のありました分科会の数,あるいは各分科会の分担,更には運営に関する若干の細目につきまして,事務当局として簡単に書面にまとめておりますので,それを配布させていただいた上で,羽柴幹事から御提案をさせていただきたいと存じます。 ○井上部会長 では,書面を配布していただきます。              (書面の配布が行われた)   お手元に届けられましたでしょうか。それでは,御説明お願いします。 ○羽柴幹事 ただいま配布した書面は,仮に3分科会を設置することとした場合において,各分科会が分担することが考えられる論点の案を記載したものでございます。   まず,設置する分科会の数につきましては,論点の数が12と多いこと,また,一つ一つの論点が大きいことから,各分科会の予想される作業量等を勘案しまして,3分科会の設置が適当ではないかと考えているところでございます。   次に,各分科会が分担することが考えられる論点案は,大項目2の12の論点について,各論点の内容,相互の関連性を考慮したほか,各分科会の予想される作業量等を勘案して作成いたしました。   具体的には,第1の分科会は,刑法総則の改正が問題となり得る論点である,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」,「自由刑の在り方」及び「社会内処遇に必要な期間の確保」並びに自由刑の在り方とも関わる施設内処遇の在り方についての論点である「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実」を担当することが考えられるのではないかと考えまして,論点を選択いたしました。   第2の分科会は,現行法にはない新しい制度について検討することとなる論点である「宣告猶予制度」及び「若年者に対する新たな処分」並びにこれらと関連し,対象者や活用場面等の在り方を含めて,現行法の新たな運用を検討することとなる「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」を担当することが考えられるのではないか,併せて,これらの制度との関連で検討が必要になるものとして,「少年鑑別所及び保護観察所の調査・調整機能の活用」を含めることが考えられるのではないかと考えまして,論点を選択いたしました。   第3の分科会は,社会内における改善更生・再犯防止に向けた働きかけの在り方について検討することとなる論点である,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」,「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」と,これらに関連する論点である「少年鑑別所及び保護観察所の調査・調整機能の活用」を担当することが考えられるのではないかと考えたものでございます。   なお,「少年鑑別所及び保護観察所の調査・調整機能の活用」は,第2分科会と第3分科会の双方に記載しておりますけれども,これは,それぞれの分科会が担当する論点と関連する範囲で検討するという趣旨でございます。また,各制度の対象者の範囲につきましては,これまで同様,各制度ごとに検討するという趣旨でありまして,手続の在り方についても,各制度について検討する中で必要に応じて検討していただきたいと考えているところでございます。   「各分科会が分担することが考えられる論点(案)」についての説明は以上でございますが,併せまして,分科会の審議に関する若干細目的な事項について申し上げます。   分科会の構成については,部会に準じて,部会委員又は幹事である構成員により構成することとし,そのうち,部会委員である構成員の方お一人に分科会長となっていただき,各分科会の進行を総括していただくのが適当ではないかと考えております。また,各分科会長は,必要に応じ構成員以外の部会委員・幹事に各分科会への出席を要請できることとすることが適当ではないかと考えております。   それから,先ほど来既に御指摘等がございまして御説明したところでございますけれども,念のために重ねて申し上げます。   分科会の構成員以外の委員・幹事又は関係官において,直接,分科会における審議の状況を確認されたいという場合もあろうかと思われますので,分科会の構成員以外の委員・幹事又は関係官は,当該分科会の審議を傍聴することができるとすることが適当であろうと考えております。また,分科会の会議においても,議事録を作成いたしまして,法務省ウェブサイトにおいて公開し,構成員以外の部会委員・幹事に対して参考のために議事録を送付するということが適当であると考えております。 ○井上部会長 今説明いただいたのは,事務当局としての案ですけれども,これについて御質問,御意見がございましたら,御発言願います。   特にございませんでしょうか。   それでは,今事務当局から提案のあったとおり,分科会を三つ設け,各分科会の分担事項は今配布されたペーパーに記載のとおりとすることとし,細目といいますか,手続的な事項についても補足的な説明がありましたけれども,そういう形で検討を行っていただくということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   では,そうさせていただくことにします。   各分科会長並びに各分科会に属すべき委員及び幹事の人選につきましては,部会長に御一任いただくということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   ありがとうございます。   それでは,先ほど説明があったとおり,三つの分科会を設置することといたしますけれども,確認のため,その内容を整理した上,各分科会の構成はこのようになったという点を含め,文書にして皆様に後日お送りしたいと考えておりますが,それでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   ありがとうございます。   次に,前回,皆様から御要望があった資料等について,事務当局で用意していただきましたので,配布いたします。   これについて,簡単に説明していただけますか。 ○羽柴幹事 ただいま,資料といたしまして,配布資料15「18歳及び19歳の少年並びに20歳及び21歳の成人の処分状況」を配布いたしました。また,参考資料といたしまして,「法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会議事録(抄)」,「改正刑法草案の解説(抜粋)」を配布いたしました。   資料について御説明いたします。   まず,配布資料15「18歳及び19歳の少年並びに20歳及び21歳の成人の処分状況」について,御説明いたします。   この資料は,平成27年における18歳及び19歳の少年並びに20歳及び21歳の成人の処分状況についての統計資料です。前回会議におきまして,少年法における「少年」の上限年齢を引き下げた場合の18歳,19歳の処分状況に関する大まかな予測を行うことができないかとの御意見がございました。もとより刑事処分の結果は,それぞれの事件の内容等による事柄であり,また,処分結果の分布等は,各事件について裁判所が判断した結果の集積でありますため,その予測について一概に申し上げることは困難と考えられます。   そこで,飽くまで基礎的な統計資料ということになりますが,参考として統計をお配りすることといたしました。なお,この資料に記載した各統計は,対象事件の範囲等が異なるものでございます。詳細は,それぞれの注に記載しておりますので,御留意いただければと存じます。   各統計について,簡潔に御説明をいたします。   まず,第1は,18歳及び19歳の少年の処分状況に関する統計です。1は,警察における処分状況であり,交通業過を除く刑法犯の送致についての統計です。2は,家庭裁判所における一般保護事件の終局人員についての統計です。この終局人員には,簡易送致事件など,注3のないしに記載の事件は含まれておりません。3は,刑事事件における処分状況の統計です。   次に,第2は,20歳及び21歳の成人の処分状況に関する統計です。1は,警察における処分状況であり,交通業過を除く刑法犯の送致についての統計です。2は,検察における処分状況の統計です。3は,略式命令請求事件を除く地・簡裁における終局人員についての統計です。   配布資料15の説明は以上でございます。   次に,参考資料の「法制審議会被収容者人員適正化方策に関する部会議事録(抄)」は,同部会の議論に関し,前回の会議における論点表大項目2の五つの論点の意見交換の際に,それらの論点に関連するものの配布について御要望がありましたため,そのような議論がまとまってなされている部分の議事録をお配りするものでございます。   また,「改正刑法草案の解説(抜粋)」は,改正刑法草案の際の議論を整理したものについて御要望がありましたことから,法務省刑事局においてまとめた改正刑法草案の解説から,刑の章,刑の執行猶予の章,保護観察の章を抜粋してお配りするものでございます。 ○井上部会長 ただいまの説明に関しまして,御質問等がございましたらお願いいたします。 ○羽間委員 まず,最初に配っていただきました配布資料15に関しましてでございます。   前回申し上げたことにつきまして早急に御対応いただきましたことに,本当に感謝申し上げます。その上で,確認の趣旨で1点質問させていただきたいと思うのですけれども,その質問を申し上げる前に,まずこのいただいた資料について,関連してお話をさせていただきたいと思います。   第1の2を拝見いたしますと,18歳,19歳の一般保護事件のうち,保護観察や少年院送致といった保護処分を受けている者が全体の4割であるということが分かります。次に,第2の2の20歳,21歳に対する検察における処分を見ますと,公判請求をされている者が全体の3割弱ということ,さらに,第2の3を見ますと,裁判を受ける者のうち,実刑や保護観察付き執行猶予といった処遇を伴う判決を受けている者が25%程度だということが分かります。   先ほどの御説明にもありましたけれども,統計の取り方に違いがございますし,私の手元での非常に雑駁な計算でございますので大変恐縮なのですが,仮に,第2の2で公判請求となった者のうち,裁判で実刑や保護観察付き執行猶予となる者の割合が,第2の3のとおりだと雑駁に仮定をさせていただきまして,試算をして掛け合わせて考えると,検察で処分された全体数のうち,実刑や保護観察付き執行猶予になる者の割合は1割にも満たないのではないかと推察されます。   つまり,現在であれば,一般保護事件の対象となる18歳,19歳の4割が保護処分として何らかの処分を受けていますけれども,少年法適用対象年齢が引き下がって,現在と同じような刑事手続で処分されるとなると,何らかの処遇を受ける18歳,19歳の割合が1割弱にまで減ってしまうということになります。これは,飽くまでも数値の上での仮定の話でございますけれども,一応の雑駁な予測として考えられるのかなと思います。   ここからが質問でございます。確認の趣旨で質問させていただきたいという趣旨でございますが,私としては,若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会の取りまとめ報告書に記載があります年齢引下げに伴う刑事政策的懸念というのは,このようにこれまで処遇が行われていたのに,年齢が引き下がることで処遇が行われなくなるという層が出てきてしまうということを指しており,こういった懸念を解消する制度をいかに考えていくかということが大項目2における大きな検討課題であると理解をしたのでございますけれども,そのような理解でよろしいのかということを事務当局に教えていただきたいと考えます。 ○羽柴幹事 まず,前提といたしまして,統計の見方につきましては,今,羽間委員からも言及いただきましたとおり,なかなか一概にこれを掛け合わせるということができるのかどうかというような問題があろうと思います。また,刑事処分につきましては,現在18歳,19歳というのは少年でございますので,その年齢でありながら刑事手続における処分を受ける者というのは,人数的に少ないということがございますので,これを統計的にどう見るのかということも難しい点があろうかと思います。20歳,21歳という2歳分の年齢の者が,裁判所において最終的にどのような処分を受けているのかということにつきましては,参考のために第2の3のところに記載したところでございます。   その上で,今御質問をいただいた点でございますけれども,御指摘の勉強会の報告書に記載のとおり,現在の処遇が今後行われなくなるのではないかという懸念が述べられている,指摘があるということについて認識をしております。そういったことを踏まえて,どのような処遇をするための制度があり得るのか,運用があり得るのかというようなことを考えていくということが,その刑事政策的措置の在り方を検討する内容の一つになっていると認識をしておりまして,その点について変更はございません。 ○青木委員 法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の資料を早速ありがとうございました。   これは,前回議論した論点に関わる部分だと思うのですけれども,これ以外にも,例えば,社会内処遇に必要な期間の確保の問題等々,今日議論した部分に関するものもあると思います。また御負担をお掛けして申し訳ないのですけれども,その部分も含めて出していただけると大変有り難いです。よろしくお願いします。 ○井上部会長 これは,御希望としてお伺いしておき,分量にもよりますので,事務当局として対応可能な範囲で対応していただこうと考えます。   他に,よろしいでしょうか。   それでは,御質問等はないということで,審議はこれで終了させていただきます。   今後の予定について,事務当局から説明をお願いします。 ○羽柴幹事 今後の予定について申し上げます。   今後,部会長において,各分科会の構成員となっていただく方の選任等を進めていただいた上で,各分科会の第1回会議の日程について御相談させていただきたいと考えているところでございます。 ○井上部会長 それでは,事務当局で準備を進めていただきたいと思います。   なお,本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと考えられますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。              (一同異議なし)   では,そのように取り扱わせさせていただきます。   本日は以上でございます。どうもありがとうございました。 -了-