法制審議会 民事訴訟・民事執行法部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  平成15年7月18日(金)  自 午後2時30分                       至 午後5時26分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民事訴訟法及び民事執行法改正に向けた中間取りまとめのためのたたき台 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 定刻が参りましたので,民事訴訟・民事執行法部会第4回会議を開催させていただきます。  議事に入ります前に,前回の部会以降の幹事の異動につきまして,私の方から紹介させていただきます。           (委員・幹事の異動紹介省略)  本日は,諸般の都合によりまして午後2時30分からスタートということになりましたが,内容的にはかなり盛りだくさんな議事をこなしていただかなければなりませんので,早速議事に入らせていただきたいと思います。  初めに,本日の議事の進め方等につきまして,○○幹事から御説明をお願いいたします。 ● それでは,私の方から配布資料の説明をさせていただきます。  まず,事前に部会資料4「民事訴訟法及び民事執行法改正に向けた中間とりまとめのためのたたき台」というものをお送りしております。本日は,この資料に基づきまして御議論していただければと考えております。  なお,時間の配分の関係上,恐縮でございますけれども第2の民事執行法についての部分を先に御審議いただきまして,その後で第1の民事訴訟法についての御審議をしていただければと考えております。  次に,事務当局の方から席上配布資料がございます。  まず一つは,「民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案に対する附帯決議」がございます。これは,後ほどこの両法案の審議の経過等を御報告するときに,改めてまた御説明したいと思っております。  それから,もう一つでございますけれども,この部会の秋以降の日程の案を席上に配らせていただいております。平成15年度下半期開催予定の案でございます。第7回を10月17日,それから11月7日,12月5日,12月19日。1月9日を予備日といたしまして,第11回を1月16日。こちらも都合によりまして第7回と第11回につきましては,午後2時30分開始の予定,また第10回につきましては,午後4時終了の予定ということで,多少時間のばらつきがございますので,御留意いただければと思っております。特段のことがなければ,今のところこういったような予定を考えている次第でございます。  次に,その他の席上配布資料でございますけれども,まず法務大臣官房訟務部門の方から,「公文書に対する文書提出命令について」と題します,6月20日付の資料をいただいております。これは,前回の文書提出命令の運用状況に関しますヒアリングの結果を書面にまとめていただいたというものでございます。前回は口頭での御報告でございますので,そちらの方を書面にしていただいたというものでございます。  最高裁判所の方からは,本日付で「民事訴訟・民事執行法部会(第4回)配布資料」をいただいております。民事執行制度に関します実情等に関する資料でございます。  それからもう一つ,「裁判所内部の職務分担の見直しについて」という資料がございます。  それから,○○委員の方から,民事執行の実務に照らしました検討事項ということで,「実務の現場から見た民事執行制度の実効性確保のための方策について(検討依頼)」という資料をいただいております。民事執行法のところで御紹介いただきたいと思っております。  それから,○○委員の方からは,文書提出命令関係に関する御意見をいただいております。本日付で「「中間とりまとめのたたき台」について」と題する書面でございます。こちらの方も民事訴訟法のところで御紹介いただければと考えております。  最後でございますけれども,日本商工会議所の方から,「最低売却価額制度について」という意見書をいただいております。最低売却価額制度に関する意見書でございます。審議の御参考にしていただければと思います。  以上が配布資料の説明でございます。  続きまして,今少し申し上げましたけれども,民事訴訟法等の一部を改正する法律案,それから人事訴訟法案の国会審議等の状況につきまして御報告いたします。  両法律案でございますけれども,この7月9日に参議院で可決成立いたしております。公布は7月16日でございます。民事訴訟法等の一部を改正する法律の法律番号が第108号でございまして,人事訴訟法の法律番号が第109号でございます。  両法律でございますけれども,施行日の方は公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日とされております。今後,政令を定めますので,現段階で公布日はまだ未定ではございますけれども,例えば,来年の4月1日といったような日を一つの有力な選択肢として考えている次第でございます。  続きまして,「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案」でございます。こちらの方は,衆議院で一部修正の上可決されておりますけれども,現在そちらの方は参議院に送られているというものでございます。今後,参議院で審議がされるのではないかと考えております。  更に,席上に先ほど御紹介しました附帯決議をお配りしております。5月9日に衆議院の法務委員会でされました附帯決議の方は,民事訴訟法等の一部を改正する法律案のみについてのものでございます。人事訴訟法案につきましては附帯決議はございませんでした。  ここにございますとおり,計画審理,それから証拠収集手段の拡充,専門委員制度,鑑定人に対する質問,特許権等に関する訴えの専属管轄化,それぞれの項目につきましての附帯決議がされております。  同様に,民事訴訟法等の一部を改正する法律案と,今度は人事訴訟法案につきましても,7月8日,参議院の法務委員会で附帯決議がなされております。民事訴訟法関係につきましては審理計画,専門委員制度,鑑定人に対する質問,それから特許権等に関する訴えの専属管轄化について附帯決議がされております。人事訴訟法関係につきましては,当事者等の尋問の公開停止,それから家庭裁判所調査官による調査の結果の開示の在り方,それから人事訴訟の家庭裁判所への移管に伴う人的・物的体制の拡充,こういったような項目につきまして附帯決議がされたというものでございます。  以上が民事訴訟法,人事訴訟法等の国会審議等の関係の報告でございます。 ● それでは,本日は,ただいま○○幹事からお話がありましたとおり,審議の順序を変えまして,民事執行法関係から始めることといたします。  部会資料4の第2の1「少額債権のための債権執行制度関係」につきまして,○○幹事の方から資料の説明をお願いいたします。 ● それでは,資料の4ページでございます。  今回の資料でございますけれども,中間とりまとめのためのたたき台ということでございまして,ただ具体的な提案といいますよりは,抽象的な問題点の指摘というような部分もかなり多くなっております。  まず,「少額債権のための債権執行制度」の関係でございますけれども,前回の論点整理のところでもお出ししましたけれども,まずこの制度を利用できる債務名義の範囲をどうするかという点が一つの問題点になろうかと思います。今回の資料におきましては,少額訴訟における確定判決などの少額訴訟に係る債務名義というのを一つの範囲として考える,こういうことについてはどのように考えるかということを提示しております。  このように考える根拠でございますけれども,(注1)にありますとおり,少額訴訟といいますのは,一般の市民が司法を利用しやすくする,こういったような観点からの制度と考えられているわけでございますけれども,簡易裁判所へのアクセスの利便,こういうものを執行段階まで認めるということで,そういった利便性をより貫徹するというようなことから,まずこういったような債務名義について簡易裁判所において簡易迅速な手続による強制執行制度を設ける必要性,合理性が考えられるのではないかというのが(注1)でございます。  また,(注2)にありますとおり,こういったもの以外に簡易裁判所においてこういう手続を設ける必要性,合理性がある債務名義があるか,それ以外に対象を広げる,そういうものがあるかというのも一つの論点かというように考えております。  それから,2番目でございますけれども,管轄の問題でございます。  簡易裁判所へのアクセスの利便性を追求するということになりますと,少額訴訟の管轄裁判所,すなわち受訴裁判所をもって執行裁判所とするということが考えられるのではないかと思われますので,この点についてどうかということを書いてございます。  (注2)でございますけれども,その場合,現在の民事執行法におきまして債権執行の執行裁判所が原則として債務者の普通裁判籍所在地を管轄する地方裁判所となっていることとの関係をどのように考えるか,すなわち債務者に防御の機会を与えて,債務者の関係者が債務者の住所,営業所の近くに居住する蓋然性が高いことからそのようになっているということとの関係をどのように説明するのか,そういったようなことからすると,例えば,受訴裁判所が債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所でない場合には,そういった裁判所に移送することができる,こういう制度を設けることについても検討の対象となるのではないかということが(注2)でございます。  それから,3番目が,執行裁判所の権限でございます。  (注1)にございますとおり,簡易裁判所といいますものは,やはり簡易迅速な性質というものが求められているかと思います。そこで,複雑,あるいはかなり裁量的な部分があるものについては,簡易裁判所に委ねるというのは相当ではないのではないかとも考えられるわけでございます。そこで,執行裁判所の権限としましては,差押命令の発令,あるいは弁済金の交付というようにすることはどうか。また,配当の実施が必要性になってくるという場合には,地方裁判所に移送する,こういうような仕組みを考えてはどうかというようにしてございます。  ただ,競合する差押命令を発した執行裁判所が異なる場合には,その移送の手続をどうするかという点については,なお検討しなければいけないのではないかというのが(注2)でございます。  続きまして,4番目が,「その他」でございます。  少額債権のための債権執行制度の手続,これは簡易迅速化というものが求められると思われますけれども,簡易裁判所でやるということ以外に,簡易迅速化を図るための手当てについて,どのようなものが考えられるのかということでございます。なかなか手続の中で,例えば,どこかを省略するといったような形での簡易迅速化というのは難しいとも考えられます。そこで,一つの案といたしまして,少額債権のための債権執行制度の手続を裁判所書記官が行うというような考え方についてはどのように考えるのかということを提案してございます。  それから,(注)でございますけれども,財産開示手続の管轄を少額債権のための債権執行制度を管轄する簡易裁判所にも認めるということにしてはどうかという御議論がございました。これは,担保・執行法制部会でも前に議論があったところでございます。  ただ,この問題につきましては,ここにありますとおり,まず①でございますが,財産開示手続で開示された財産のうち,債権以外のものに対する執行は,依然として地方裁判所が執行裁判所となりますので,簡易裁判所に財産開示の手続の管轄を認めましても,必ずしも利用者の利便性の向上につながるとは言えないのではないか,また②にございますとおり,財産開示手続につきましては,必ず債務者を期日に呼び出すということ等の関係で,債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所を専属管轄としているわけですが,今回のこの制度の管轄裁判所との関係はどうなるのかといったようなことにつきましても,検討する必要があるのではないかということで,(注)という形にしております。  以上が少額債権のための債権執行制度についての御説明でございます。 ● それでは,早速御議論をいただきたいと思いますが,この少額債権のための債権執行制度につきましては,前々回の資料からみますとかなり詳しいものになってきております。本日は,こういう制度,少額債権のための債権執行制度を設けるかどうか,設けるとした場合の利用できる債務名義はどの範囲のものか,管轄はどこにするか,執行裁判所の権限はどこまでのものにするか,更に簡易迅速化のために裁判所書記官がこれを行うという制度についてはどうかということが(1)から(4)までに掲げられておりますが,それ以外にも(注)には他の観点もいろいろ出ております。そこで,どの観点からでも結構ですし,御質問でも結構ですので,どうぞどなたからでも御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 質問というようなことなんですけれども。  債務名義のところですが,これを例えば,簡易裁判所が管轄を持っているのが現在ですと90万円までですね。それまでに例えば広げるとか,あるいは支払督促で仮執行宣言が付いているような場合も,例えば,それも90万円とかという,こういうような制限を設けて広げると,何か不都合というようなものが考えられるのでしょうか。 ● まず,当然広げるということになりますと,かなりの事件数が簡易裁判所に申し立てられるということになりますが,制度として,今回の制度をどういうような目的で作るのかというにも絡むと思います。現在,債権執行が地方裁判所で管轄されていることの理屈をどう捉えるかということでございまして,ここで一つ出している考え方というのは,やはり今の地方裁判所の管轄とするというような原則はそれなりに理由があることではないかと,そうしますとそういった中でかなりニーズが高いといいますか,そういうものを認めるニーズ,あるいは合理性が高いというものについて,それを簡易裁判所に認めてはどうかと。そうしますと,まず典型的には,先ほども御説明したような少額訴訟といったような,一般市民のための利便性を高めるという観点からのニーズが考えられると思われるところでございます。  それを,簡易裁判所の90万円一般に全部広げるというようなことのニーズと,それから現在地方裁判所でやっているということとの関係,そこまでの広いニーズあるいは合理性というのを果たして認めるべきかどうかというのが,一つの論点かなと思っております。 ● この執行の部分の申立てを訴えのときに一緒にやるという,民事保全手続みたいな,そういうことはお考えなのでしょうか。 ● そこは,特には考えておりませんでした。 ● もし,一緒にやれるというのであれば,少額訴訟の場合は1日で終わるという原則ですから,一緒にやるというのは非常に合理的だと思うのですが,簡裁事件全体に広げるとなると,数期日にわたったりするということで,どうかなと。多少関係があるのかなと思って御質問したわけです。 ● 任意弁済の可能性は,しかしありますね。判決をもらって,すぐ任意弁済すると。執行の申立てをして,その期間を待つとか,そういうことでしょうかね。これは債権執行ですから,差押命令がぱっと出せるわけですね。その任意弁済の期間をどういうふうに保障するかというようなことがあるかもしれません。 ● 御意見いただきましたので,こちらでも検討してみたいと思います。 ● 半分質問みたいなあれなんですが,これ全体を見ますと,やれることは5ページの(3)で,差押命令の発付,それも金銭債権だけですね,もちろん。それと,弁済金の交付になっていますね。そうすると,非常に簡易なものを念頭に置かれているのだろうとは思うのですが,これに関連して配当手続を行うときは地裁に移送するとか,それから同じところの(2)の(注1)で,通常の債権執行も選択できるとか,それからまだ他にも移送が考えられるような場面がいっぱいあるわけですが,差押命令を出すことと弁済金の交付程度のことを,わざわざ別に簡裁に持ってくるとすると,今度は別の制度,人的なものとか物的なものとか,ある程度カットする必要が出てくるのかどうか,出てこないというのが(4)の「その他」の裁判所書記官というお話なのかどうか,その点をお尋ねしたい。  それと関連して,(4)で裁判所書記官に手続をさせるということについて,この手続というのは全部をお考えなのか,あるいは典型的なものなのか,この二つを質問させてください。 ● これで手当てがどうなるかというのは,最高裁判所の方でお答え願えますでしょうか。 ● それでは,一応運営主体ということで,私どもの方で多少御説明させていただきたいと思いますが,今回のこの案を拝見させていただきまして,仮に,こういう制度を設けるということであれば,私どもとするとこんなような感じになるのかなという印象を持っております。それは,先ほど来御質問の出ている部分とも関係いたしますけれども,本来的には債権執行のような手続は比較的大量なものを定型的に処理していくという性質になじむものですので,本来であれば,ある程度集中的・専門的に集約して処理をしていくというものになじみやすい手続ではないかなと思っております。  ただ,そうは言っても一定のニーズがあるから,本来は地裁でやるのが筋だとしても,簡裁で一定の部分を取り扱うべきではないかということであれば,ではどういうニーズなんだろうというふうに考えると,それはやはり一般市民の方が,いわばワンストップサービス的な感覚で,自分の近くの裁判所で債務名義をもらったら,それをそこで執行していきたいというところに限定されてくるのかなというふうに思っております。  私どもも,それ以外に簡裁で債権執行したいのだというニーズがあるという声も余り伺わないというような感じがしております。  そういうニーズに応えるのだとすると,やはり制度として現行の民事訴訟法の上では,正にそういうニーズに応える訴訟手段として少額訴訟というものが作られたわけですので,それに連続した手続として,今回のこの少額債権のための債権執行制度というものをお考えいただくのが一番合理的なのかなという感じがいたしております。かつ,手続の仕組み方としても,少額訴訟と連携させるということであれば,少額訴訟自体が入口の段階で,もちろん原告側は自分の申立権というものがあるわけですし,相手方となる被告も異議を申し立てることができて,嫌ならば通常の訴訟に移行することができる,こういう仕組みにもなっておりますので,後で作っていく手続について,そういう特殊性を生かしたいろいろな工夫を凝らすにしても,当事者の入口段階での同意に根ざした制度だという位置付けも可能なように思われますので,そういう意味での融通もききやすいかなという感じがしております。  それで,先ほど○○委員の方から御指摘をいただいたようなポイントにつながるわけですけれども,そういう意味合いからすると,こういう制度を仕組んだ場合には,少額訴訟と連動させて,かつ,裁判所書記官が一貫して手続を行うということにしても,制度設計としては無理がないかなと思っておりますし,逆に言うと,それ以外の形で制度を仕組むと,今若干御不満の声もあるのかもしれませんが,体制レベルではかなり思い切ったことを裁判所側も考えていかなければならないと。例えば,独立簡裁などにおいては,現実に全体の事件数の関係からして裁判官が常駐していないというようなところも多々あるわけですので,そういうところに持ってきた場合に,本当に簡易迅速な形で手続が進むのかというような問題もございます。  ですから,そういう形で,ある程度一貫して手続の構造をお考えいただいた方が,一般市民の方々にとっても本当に使いやすい制度になるのではないかと,このように考えております。 ● ○○委員,よろしゅうございますか。 ● はい。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 最後の裁判所書記官の権限とするということとの関係で質問があるのですが。  現在の債権執行の手続は,仕組みとしては実質審査はしないということではありますが,裁判という形で命令を発令しているわけですが,このあたりも裁判所書記官がもし全面的に権限を持つということになると変わってくるのかなという,督促手続がそういうふうに変わったわけですが,変わってくるかなという感じを持つのですが,その場合にいろいろ細かい手続的な,不服申立ての問題とか,更に検討する必要があるのではないかと思いますが,この点はいかがでしょうか。 ● まだ私どもの方といたしましては,おっしゃるとおりこれは裁判所書記官が行うものとすることにつきましては,どういうような根拠で説明をしていくのか,あるいは具体的な手続というものをどう仕組んでいくのか,そういうことも含めて今後検討しなければいけない点はあるのではないかと考えておりますので,是非ともいろいろと御意見をいただきたいところだということでございます。 ● 私どもといたしましても,もちろん今御指摘いただいたような不服申立てを始めとする手続保障とか,そういう点は十分御検討いただいて仕組んでいただければよろしいかなというふうにも思っておりますし,あるいはもちろん手続の名前とか,命令とか,そういうような性格のものは本来裁判所書記官の処分にはなじまないのではないかとか,そういう部分も出てこようかと思っております。  多分一番問題になるのが,債権の差押えの部分を裁判所書記官が行うということで大丈夫なのかというあたりだろうと思いますが,1点は,先ほども申し上げましたように少額訴訟と連続させた場合には,入口の段階での同意権・異議権のようなものがある程度絡みますので,手続的な教示をあらかじめしっかりさせていただければ,そこら辺が一つの手続保障にもなってくるのかなという感じがしております。  もう1点は,差押えの部分については,もともと,例えば,動産執行では裁判官ではなくて執行官が差押えをできるというような形にもなっておりますので,かなり限定的に仕組んでいけば,この部分に限って裁判所書記官ができるというような法の構成を考えていただくことも十分可能なのではないかなというふうに考えておりますので,是非御検討をお願いできればと思っております。 ● ほかに何かございますでしょうか。  今日の資料は,先ほどのスケジュール表でもお示ししてありますけれども,この秋に予定されておりますパブリックコメントのためのたたき台という形で,今回と次回,更に御検討していただくというための資料でございますので,まだ十分固まり切っていないのは当然でございますので,今後,今日御意見をいただきましたことを踏まえまして,事務当局で更に検討させていただくということで,この少額債権のための債権執行の制度はよろしゅうございますでしょうか。 ● 今度は意見なのですが。  実務的なことで最近感じているのは,こういう債権執行の場合,恐らくイメージとして一つは給料債権の執行というのが対象物としてあると思うのですが,最近ですとどうも給料債権を押さえられる人って大体複数の差押えが来たり仮差押えが来たりすることが多くなっておりまして,そうなるとこれ配当の話になってしまうので,果たしてこれでかなりの部分が迅速にできるかどうかはやってみないと分からないのでしょうけれども,弁護士やっていましてこのごろ相談を受けることはそういうケースが非常に多くなっていますので,果たしてこれでうまくいくのだろうかという,ちょっと危ぐを持っております。これは意見ですので,危ぐだけですから。コメントだけです。 ● 今の点,大変実務感覚に根ざした御意見だというふうに私どもも思っておりますが,ただこの点も,簡裁の債務名義一般を考えますと,御承知のとおりほとんどがむしろ業者側が原告となって,多重債務者的な方に対しての貸金,あるいはクレジット代金等を請求するというものが非常に多いわけでございます。そうすると,当然そういう方ですので,債権執行等を受けるのも非常に重なる,重複するという場合が多いかなという感じがしております。ただ,そこを一般市民間の紛争ということを前提にする少額訴訟に限定していくと,かなり違った傾向も出てくるのかなと。ここは,こちらも検証しているわけではございませんので,はっきり申し上げられませんが,そういう面もあろうかなというふうに思っておりますので,念のために付け加えさせていただきます。 ● ほかに御意見,ございますでしょうか。 ● 少額訴訟に限ってという今の案に特に反対ということではないのですが,あえてこれを設ける必要があるかというのに疑問を持っております。ワンストップサービスということであれば,窓口の教示ということの充実で対応できるのではないか,むしろこんな限定された範囲で設けるのであったら,地方裁判所に集中させた方が実情には合っているのではないかという感想を持っております。  それでも,少額訴訟に限って裁判官がやるということであれば,それはそれでもいいのですが,裁判所書記官の権限でやれるとか,あるいは不服申立てがあった場合にはそれはちょっと特別なことになるとかということになってきますと,初めから少額訴訟の窓口教示あるいは同意という制度の中に取り込めるのか,つまり本人が一人でやっているわけですから,とても素人がそこまで,最初に窓口に訴訟を起こすときに至ってそこまで説明されても理解し切れるのか,その違い,問題について理解し切れるのかなという感じがありますので,簡易裁判所で債務名義をとった人について窓口で債権執行というこういう制度があって,こういう書式があってという教示をされるというところを充実していただければ,済む話ではないのかなと。これは個人的な段階での意見ということで申し上げたいと思います。 ● 具体的な,ここで示された案についてどうこうということではないですけれども,執行事件の管轄というのが,もともとどういう考え方でできているかということをちょっと押さえておいた方がいいのではないかと思いますので,御参考までに申し上げたいのと思うのですけれども。  執行も,債務名義を作った裁判所が執行もやるというのが歴史的にはもともとの姿であったのですけれども,それが金銭執行の場合についていいますと,やはり差し押さえる物がある場所の裁判所,執行機関として執行官という制度が出てきたということと絡み合っておりますけれども,現物があるところに管轄を認めるのがいいという考え方に変わってきたわけですね。今,ここで考えられているのは,少額訴訟については少額訴訟の受訴裁判所が債権差押えまでやることを認めようというわけですから,その限りにおいてはまたもとに戻って,受訴裁判所が自分で執行まで担当するという,そういう考え方を採り入れようというふうに,私なんか見ているとそういうふうに見えるのですね。それは一つの合理的な考え方だと思います。  管轄の問題は,しょせん便宜の問題だから,便利ならばいいではないかという考え方もあるとは思いますけれども,民事執行法全体が今申したような考え方ででき上がっているということを考えていただいて,そういう全体的な構成との整合性というものも踏まえて結論を出していただいた方がいいのではないかと思いますので,余計なことですけれども,御参考までにちょっと申し上げておきます。 ● それでは,ただいまいただきましたような御意見を踏まえまして,事務当局の方で更に検討を続けさせていただくということでよろしゅうございますでしょうか。--  それでは,先に進ませていただきまして,部会資料4の第2の2の「最低売却価額制度関係」につきまして,資料の説明をお願いいたします。 ● それでは,「最低売却価額制度関係」でございます。  前回もヒアリングでいろいろな御意見,あるいは執行妨害の実情等についてお話を伺ったわけでございます。この最低売却価額制度につきましては,現段階では様々な御意見があるところでございまして,また事務当局の方でもいろいろと問題点,検討課題などを考えているところでございます。現段階におきます議論の状況というものを踏まえますと,今回の資料でもこのようにまだ問題点の指摘というような形になっているという次第でございます。  それぞれの点につきまして,また御議論いただければと思いますけれども,まず第1は見直しの必要性についてどのように考えるのかということでございます。一番中心的な機能でございますが,不当に安く落札されるということを防止する機能,本当にこういうことを果たしているのだろうかというような御指摘があるわけでございます。例えば,こういうものがなくても,入札者間の競争によって適正な価額が確保されるのであるというような御意見もございますし,仮に,執行妨害というようなことがあったといたしましても,実は暴力団というものは不調に持ち込んで,任意売却で安く買っているのだと,こういうような実情もあるのではないかといったような御指摘もあるところでございます。  次に(2)でございますけれども,もともと最低売却価額制度がいろいろ言われておりますけれども,それは実は評価の問題ではないのかといったような御指摘もされたところでございます。最低売却価額と申しますものが,むしろ適正な価格というものを反映していないのではないか,だから問題があるのではないか,むしろ評価制度の在り方というものを見直すべきではないかというような意見もありますけれども,こういう点についてどのように考えるのかということでございます。  それから,仮に,その最低売却価額を置かない,こういったような制度を設けるというように考える場合には,そういった機能に代替する措置としてどのようなものが考えられるのかということでございます。  その機能の第1といたしましては,所有者ですとか,あるいは担保権者等の利益の保護ということになるわけでございますけれども,こういう問題につきましては第1順位の担保権者に最低売却価額を定めるか否かの選択権を付与すればいいのではないかという御意見もあります。  あるいはまた,不当に安く仮に落札されたという場合には,所有者,あるいは後順位担保権者等に買戻権を付与すればいいのではないかという御意見もあるところでございます。  それからまた,適正価額に関する情報の提供の機能,買受希望者に対する情報提供の機能,あるいは一括売却をした場合の売却代金の割付等の基準となる機能,こういうものについては執行裁判所が参考価格というものを決めればいいのではないか,こういう議論もあるところでございます。  こういったような意見につきまして,どのような考え方ができるのかという点について御議論いただければというように思っております。  それから,(注)でございますけれども,先ほど申し上げましたとおり最低売却価額を定めるか否かの選択権を第1順位の担保権者に与える案というものも提案されているわけでございます。そうしますと,最低売却価額がある制度と,最低売却価額がない制度の二つが併存するということになるわけでございますけれども,そうなった場合には,所有者等の利益保護の措置は一体どうなるのか,そういう方策につきまして違いというものがあっていいのかどうか,もし仮に,そういった利益保護の方策に違いがあるということになりますと,どうして債権者,第1順位の担保権者の選択によってそういった利益保護の方策に違いを設けていいのかといったようなところの根拠をどう説明するのだろうかという点も,一つ問題になるのではないかと思われます。そういう観点から,この(注)で所有者等の利益保護を図るのであれば,どのような措置を講ずるべきかという論点をお出ししているものでございます。 ● 前回のヒアリングにおきましては,この最低売却価額制度の見直しについて,制度を設けない立場からの御意見がここで示されたところでございます。本日,お示ししております資料は,そこでの御意見を踏まえて事務当局が論点を整理したものでございます。  そこで,御議論いただく前に,これは前々回でしたでしょうか,○○委員,○○委員から,不動産競売手続の流れなどについての資料をというお話があったと思います。本日は,最高裁判所からの席上配布資料がございますので,まずこれについて御説明をお願いできますでしょうか。 ● それでは,ごく簡単に,私どもの方で配らせていただいた配布資料の説明をさせていただきたいと思います。「民事訴訟・民事執行法部会(第4回)配布資料」という方の紙です。  順に御説明いたしますと,1枚目ですが,不動産競売物件の売却率でございます。これまでも東京,大阪については8割前後売れておりますというお話を申し上げていまして,田舎は5割切っているようなところもございますと,こんなお話を申し上げていましたが,これである程度全国の状況をこの機会に明らかにさせていただこうということでまとめさせていただいたものです。  全国で6割程度の売却率が出ているということと,あと地方部でも結構売却率が高いところもあるのですね。特に,例えば,北海道の札幌地裁は82.7%ですとか,あと九州なんかも全体で見ると53.2%ということですから,全国平均を下回っているわけですが,福岡では74.8%とか,かなり高い数字を出しているというようなことが言えようかと思っております。これを見ていただくと,特に売却率が低めの地域とすると,東北,四国というようなところが挙げられるということが言えようかと思います。  これも踏まえて,その次のページに移らせていただきたいのですが,これも前々回に御指摘いただいたように,では実際になぜ売れないのか,どういう物件が売れ残っているのかというあたりの点でございます。  今申し上げましたように,東北,四国の率が低いという数字が出ておりますので,あえて東北地方の支部,あるいは四国地方の支部というあたりについて,具体的に調査をさせていただきまして,こういうような実例があるということを聞き取りでまとめさせていただいたものでございます。東北も四国も,基本的には傾向が余り変わらないかなという感じがいたしますが,一つはやはり田畑を中心とする農業関係の物件と。これは,そもそも法律上転用許可その他いろいろな規制がかかっているというようなところもございますし,なかなか買い手がいない,あるいは物件として魅力がないという典型例になっているのかというふうに思っております。  それから,やはり地方部に行くと山林ですね,住宅なんかでも山間部の中にあるというようなものについてやはり買い手が出てこない。あるいは,最近の傾向とすると,スーパーとか工場とか,そういうたぐいの物件である程度大規模物件で,でももう廃業していて,新たなスポンサーでも出ない限りは何ともしようがないと。この中には出ていませんけれども,最近旅館とかホテルとか,地方部のリゾート物件とか,そういうものも非常に買い手という面では難しい部分があるというようなことも仄聞しているところです。  もう1ページめくっていただくと,同じように売却が困難な物件の例ですが,これは都市部ということで東京地裁の御協力をいただいて,東京は先ほど申し上げましたように8割を超えるぐらいの売却率があるのですが,その中で不売,売れないというものとしてどんなものがあるかというのを出してみたものです。  こちらはやはり都市型というか,道路条件なんかの問題ですとか,あるいは土地・建物に一定の権利がくっついてしまっている,規制が及んでいるというようなもの,それからやはり店舗関係で非常に使い勝手の悪い店舗で,ほかの供給物件いっぱいある中でなかなか買い手がつかない,こんなようなものが多いのかなという感じがしております。そういう意味では,都市部と地方部でかなり明確な傾向の違いはあるのかなという感じがしております。  それから,もう1枚めくっていただいて,これは競売のおおよその流れを見ていただく上で,標準的な例と,それから次のページの長期間を要するような例,これはなかなか一律にこういうモデルを作るというのは困難な部分もあるのですが,代表的なものとして,これも実例に当たらせていただきまして,こんなようなところではないかということでまとめさせていただいております。  不動産競売の場合には,これは色分けをさせていただいていますが,前半,後半みたいな部分で,水色で塗らしていただいている売却準備に当たるような期間,それから緑色部分の実際の売却,それからその後の代金の分配である配当,これにかかる期間というふうに大きく2分類できるかなというふうに考えております。売却準備の部分が,今現在大体現況調査報告書,評価書の提出を踏まえて物件明細書も作られて,売却実施命令というものを出すまでに,東京地裁でいうと標準的には4月半程度という形で流れているというところでございます。全国的にも,余りこのあたりは特に地方だから遅いというようなこともなくて,現在,少なくとも6月以内で売却実施命令まで至っている事件が3分の2以上はあるというぐらいの流れになっているというふうに思っております。  その後,売却実施命令をやって,公告ですとか,あるいは三点セットの備置きをやって閲覧をしてもらう期間を経て,入札をやって開札をすると,ここら辺ぐらいまでが75日というふうに書かせていただいていまして,その後開札を踏まえて,代金を納めていただいて,配当実施するというまでに85日と。そうすると,大体10か月ぐらいで手続が終わる,こんな流れになっていようかと思っております。  もう1枚めくっていただきまして,その次が長期間を要する例というわけですけれども,これは長期間を要するという原因として,先ほど申し上げましたように物件がなかなか複雑な権利が絡んでいたり,そういうことで売却準備の評価,あるいはその現況調査等にある程度手間取ると,そういう部分も確かにあろうかと思っております。そういう意味で,実例に当たりましても,先ほどの標準的な例に比べて,一番最初の水色の部分,ここは一番最初の方は130日でとっていますけれども,長期間を要する例はそういう困難物件が多いということを踏まえて,もうちょっと,大体170日ぐらいかかっている例が多いかなというふうに思っております。  ただ,実際に,なぜ長期間を要するかと申しますと,これは要するに売れないということをもって何回も売却を積み重ねていかなければならない,したがってその分の時間がかかるというところが専ら主要な原因になっているというふうに考えております。これは,結局3回売って,3回目で売れたという場合をモデル化しているものでございます。2回目の部分は,売却準備のところが50日しかかかっておりませんが,これは売れなかったということを踏まえて,評価書の補充,補正等をして最低売却価額を決め直すという,比較的簡易な手続で新たな売却実施命令を出すことができますので,それほど準備には時間がかからないというところがございます。  他方,3回目の部分は水色の部分を130日とらせていただいておりますが,これは3回目ということで,再評価を命じて,評価書自体新たに作り直すというようなことをしておりますので,水色の部分,通常の場合と遜色ない程度時間がかからざるを得ないというところがございます。こういう形で,3回売ってようやく売れたという場合には,残念ながら2年ぐらいの期間を要するということかと思います。  ただ,では実際に1回目で売れる事件というのがどのぐらいの割合で,3回目まで行ってしまう事件というのがどの程度あるのかというところが多分最も御関心が生まれるところかなと思いますが,昨年の実績で,東京地裁で2回分の期日の事件をチェックさせていただいて,どのぐらいの割合になるのかなというのを少し調べさせていただきましたら,基本的には1回目の期日で9割程度が売れているということになっております。2回目で売れ残ったものというのは3%強程度ということですので,この長期間を要する例という,3回目まで至ってしまったものというのは,100件あって3件程度,このような状況でございます。  最後に,一番最後のページで,これも前回以来,実際どんな人たちが現実に不動産競売を申し立てているのですかというお話が出ておりまして,現実に前回のヒアリングでも銀行の方とサービサーの方が来られていたわけですが,この円グラフを見ていただきますと,大体バランスよく,いろいろな業種の方が実際に不動産競売のユーザーになっているということが言えるかなと思っております。サービサーの方々も1割強ぐらいございますし,銀行,あるいはその前にある信用金庫,信用組合等金融関係の方々の割合も4分の1程度あるということで,その他保証会社,RCC等,いろいろな方に利用されているということが御理解いただけようかと思います。 ● それでは,どうぞ御議論をお願いしたいと思います。  資料では3点整理しておりますが,まず最低売却価額制度の見直しの必要性があるかどうか,それからこれはむしろ評価制度の問題なのかどうか,3番目として最低売却価額制度をもし見直すとすれば,それに代わる,その機能を代替するような措置として,例えば,第1抵当権者に選択権を与えるとか,あるいは買戻権を与えるとか,あるいは参考価格というようなものにするというようなことを書いてございますが,これに限らず,どうぞ御質問なり御意見を賜りたいと思います。 ● 私,執行の実務に詳しくはないのですけれども,ちょっと考えてみますと,普通に一般の市民が買受けをしようということをもう少し市場を開放的にして盛んにしようというふうに考えたときに,やはり私はこの最低売却価額の制度があるということは一つの目安になりますし,入り込みやすくなってくるのではないかという感じがするのです。特に,現在の評価書なんか,大阪のケースが「判例タイムズ」に2年ぐらい前でしたか,載っておりましたが,実は大阪地裁の執行部の方の報告も聞かせていただいたのですけれども,かなり分かりやすく,どういう権利関係があって,なぜこういう価格になるのかということを丁寧に計算の基礎なんかはっきりしながら出していただいているということで,ああいう評価書なんかですと,大いに活用して,そして買うか買わないかということを決めると。今度,内覧制度というのもできたわけですけれども,それも活用するということで徐々にそういう開放性というのが獲得されていっているのじゃないかという感じがするのです。完全にもし一般の方と不動産屋さん,あるいは業者の方とフリーで入り込めるようになったら確かに要らなくなるのかなとは思うのですけれども,今の段階では,やはりこれはそういう観点からするとあった方が私はさっき言ったような理由からいいのではないかと思っております。 ● 最低売却価額制度に関する前回のヒアリングの結果,民事執行法の事情というのは相当程度具体的に部会において報告がなされたものと思います。そういう状況と,更に最低売却価額制度を廃止すべきだという意見の論拠等も私なりにいろいろ考えてみたのですけれども,やはりある程度議論は詰まってきてはいるというような印象を,私個人的には受けております。問題点とされる価格は要するに競争原理によって決まるべきだということについても,最低売却価額によって一定の指針が与えられるということに有用性を見いだすことができるということは,今御指摘があったとおりだと思います。  それから,査定に時間がかかるということも,今の○○幹事からの御報告で相当程度合理化され,私が昔感じていた以上に迅速化が図られていると思いますので,この点も改善努力がなされていると評価できるのではないかと思います。  問題は,最低売却価額制度と執行妨害の関係について,どう現状を捉えるかという認識が,かなり廃止積極論者と維持論者との間に開きがあるように思います。この点,もう少し議論が更に詰まっていくのかなと思っているのですが,私,個人的に考えますと,要するに最低売却価額があるから第1回に入札がなされずに,2回,3回と不落を重ねていくうちに,物件の価値が下落をしていき,更に物件が荒れてくる,それが執行妨害を助長するという,そういう論拠があると思うのですが,これについては現状としてそういう指摘をされる事例がないわけではないとは思うのですが,だから最低売却価額制度を廃止するという結論が導かれているところに,私は若干の不明確さを感じておりまして,1回,2回,3回で売れない事情というのは,大体執行の現場を見ておりますと,先ほどの不落物件の御報告にありましたように,物件自体に売れにくい要素がある,不整形であるとかがけ地であるとか,こういうものは除きますと,大体件外物件であったり,いろいろな意味で妨害的な要素があるわけでありますが,結局,最低売却価額制度に合理性があれば,その妨害を除去すれば売れるはずなんですね。ですから,最低売却価額制度を外すのではなくて,妨害を除去すべきだという議論も,実態としてどうなっているかの検証は別にして発想すべきではないかと,この点が考え方が違うと思います。  それからもう一つ,積極論者と,維持をすべきだという意見の対立を見てみますと,若干前回のサービサーの方の御報告にもあったのですけれども,妨害がなされるというようなことになりますと,一般の方が競売市場に札入れをすることができるような状況が生まれるのかどうかというところについての考え方とか割り切り方が大分違うように思います。ハードルを全部外してしまえば,強い者だけが残るというようなことでも,競売制度としては公正なんだという見方と,しかしそれはそういうクローズドな市場であっていいのか,開かれた競売手続であるべきだという考え方から,一般の人も参入しやすいようにすべきだという考え方からしますと,やはり市場が閉鎖的になっていくことは私は問題だなというふうに思っておりまして,なぜかといいますと,まず第1に,もともと期間入札が導入されたときに,非常に閉鎖的な市場であったことが問題だとされていたというところにもう1回戻る議論になってしまいかねないということを危ぐしております。それとともに,公正な競争というのであれば,妨害者勢力の息のかかったところが札入れするに違いないと思うのですけれども,そういった関連と,そこに対抗できるだけの組織を持った強い競売関係企業との闘いだけに収斂するのではなくて,やはり一般の方も札入れできるというような,開かれた市場を目指すべきではないかと。この辺が大分違うように思いまして,今のところ,といいますか,最低売却価額制度に合理性というのは十分見出せるというふうに思っております。  それから,選択制でございますけれども,これは前回も指摘させていただいたと思うのですが,選択権というものが濫用されるという可能性があるということを大変心配されますということを申し添えさせていただきたいと思います。  長くなりまして恐縮でございますが,以上でございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 過去2回,この部会を欠席しました関係で,ちょっとここに書いてあることの趣旨がもう一つ頭に入りませんので,2点ほど御質問させていただきたいと思います。  1点目は,第1順位の担保権者に選択権を与えるかどうかという御提案なんですが,なぜ第1順位の担保権者が選択権を持つのかというところの理由が,私はまだちょっとのみ込めませんので,是非お教えいただければと思います。  それともう1点は,仮に,最低売却価額制度を一部ないし全部廃止した場合において,無剰余取消しのような制度を別途設けることは全く考えていないという理解でよろしいのかどうかという点をお教えいただければと思います。 ● こういう意見があるということでございまして,その論拠としては,第1順位の担保権者というものが,いわばほかの,より高く売れた方がいいという人の利益を代表しているのではないかというような根拠ではないかと思いますが,そういうことにつきましてはいろいろな,考え方もあるのではないかなというふうに思っております。  それから,無剰余取消しの方につきましても,恐らく剰余主義との関係については問題があるのではないかと私どもも考えておる次第でございます。 ● これは質問で,できれば最高裁の方にお伺いしたいことなんですが。  先日,ヒアリングのときにサービサーの御意見がありまして,占有妨害とか何が市場価格かというところでは余り私はおっしゃっていることにとても納得できなかったのですが,もう一つ別の理由,最低売却価額制度を廃止すべきという理由の中で,リゾート物件等が非常に彼らの言う常識的な価格からかけ離れた評価がなされる,それで引き下げて,それでも売れないという状況があると,そういうようなことをおっしゃっていまして,そのあたりの実態は,もしかしたらそういうことがあるのかなと。  そういうことを弁護士会でもちょっと報告しましたところ,全国一律の評価基準でやっているというところに何か問題がもしかしたらあるのかもしれないと。そのあたりの実態で,もう少し調査があれば教えていただきたいと思うのですが。 ● 今,御指摘いただいたような,正にリゾート物件というのは先ほどもちょっと申し上げましたけれども売れにくい物件として着目すべきところだろうなというふうにも思っています。むしろ今までは,各地で評価基準は,かなりばらばらだったのですね。それについて,もちろん地域差,あるいはマーケットの違いというものを十分反映すべきだけれども,基本的な考え方とか,あるいは評価書の書式とか,そういった一般のユーザーの方から見てずれているのはおかしいなと思われるようなところをできるだけ標準化していこうと,こういう動きが去年あたりから各地の評価人の間で広まって,そういう基本的な考え方,それから書式の標準化を図りましょうというような提言が法律雑誌にも載せられているというふうに思います。  ただ,どんな物件でも,じゃ同じように,金太郎飴的に評価するのがいいかというと,決してそうではないというふうに思っておりますので,評価人の側も,今むしろ自主的に研究を始めているのは,農地,山林なんかについての特殊な要因に基づくより売れやすい評価の在り方というのはどんなものがあるのかとか,あるいは,今,○○幹事から御指摘いただいた,多分リゾート物件なんかの物の考え方も,今後そういう具体的な検討の中で重要な役割を果たすものだというふうに思っております。ですから,仮に,今現在リゾート物件の価格というのがマーケット的に考えて余りにも実情と乖離しているというようなことであれば,そこは裁判所側,評価人側としても謙虚に伺って,改善を図っていく必要があるのだろうなと思います。  ただ,もちろんそういう面はあると思いますけれども,なかなか競売の評価というのも買い手側の買いやすくというのは当然配慮しなければならないと思うのですけれども,売り手側の希望,当然債権回収額に響いてくるわけですし,あるいは所有者側の希望というものも無視はできないというあたりですから,例えば,大規模ホテルについて100万円でなきゃ買わないというときに,100万円という値段で評価して本当にいいのかどうかというあたりの考え方が,今現在もう一つまとまり切れていない,法制度的に見ても本当にそれでいいのかどうかというあたりがもう一つはっきりしない,こういうジレンマは抱えているのではないかという気がいたしております。 ● 何度も大変恐縮でございます。先ほど,ちょっと申し上げようと思っていた点を2点ほど申し上げたいと思います。  執行妨害との関係,最低売却価額との関係なんですけれども,廃止をするという意見として理解しております一つの考え方として,安く不動産を取得して転売利益を得ようとする場合に,執行妨害者サイドは,妨害をしておいて入札を待つのではないのだと,入札というのは,たまたま誰かが入札してしまうと妨害が効を奏しないので,執行妨害をしていて安全に転売益を取得するためには任意売却を債権者に持ちかけるのだという考え方があると思いますが,これについては実態は少し違うように私は感じておりまして,金融機関等,昨今コンプライアンスの観点から,当然のことながら最低売却価額を下回るような任意売却というのは拒否をしているはずでありますし,私もそのような情報に接しております。それが1点でございます。したがって,任意売却というのが必ずしも彼らのもくろむような不当に安い任意売却が実現するかというと,そのような実態はないように感じております。  問題は,ではどうやっているのかといいますと,いろいろなところでも分析されているのですけれども,事故物件である,きずものである,妨害が入っているという,うわさレベルでこれは買受人を威嚇するのに十分ですので,こういう情報がある程度,そして妨害排除,検挙されない程度の占有にしておくと,買受人はほぼ分かりますので,だれも札を入れないということであります。これでもって自分たちが安く買い受けたいと彼らは願っているわけですが,最低売却価額がありますと,安く買受けができませんので,ここで実は相当程度歯止めがきいているわけであります。これがなくなると,彼らは,現在かなり終息をしてきつつあるように思っているのですが,彼らがまた息を吹き返すことが十分予想されますし,関係するいろいろな方々に聞いても,妨害勢力というのが活発化するに違いないということを聞いております。これが1点でございます。  それから,今の点とも若干関係するのですが,執行妨害があって,きずものだと,事件ものだと,こういうようなうわさが立ったときにも,占有排除費用を客観的に見積もることによって市場価格というのは算出ができて,最低売却価額制度を廃止しても公正価格で札が入るという意見があるように聞いておりますが,これは恐らく実態とはかなりかけ離れていると思います。先ほど申し上げましたように,妨害物件であるということは,競売で入札をして物件を買い受けようとする者の間を駆けめぐりまして,実態としては大変なきずものだということになりますので,一般の人若しくは企業が占有排除費用をあらかじめ見積もって,彼らとの交渉でどれだけ保全処分かけなければいけないのか,どれだけ法的措置,強制執行費用をかけなければいけないのかということをあらかじめ見積もって,それを市場価格から差し引いた形で客観的な数値を出せるかというと,きっとそれはそうではない,妨害というものが非常に効を奏してしまって,いろいろな費用,支出を強いられるかもしれないということで,これは大変大きな金額を削り取られていくに違いないという見方をするのであろうと思います。したがって,妨害排除を見積もることができれば公正な競争が最低売却価額がなくてもできるという考え方というのは,恐らく現状にはそぐわないのではないかと,こういうようなことを考えております。 ● ほかに何かございますでしょうか。御意見があれば,承りたいと思いますが。 ● この前も質問したのですが,最低売却価額制度の見直しの必要性についてどのように考えるかと言われて答えるときには,どうもなさそうだという意見がかなり強いですね。それにもかかわらず,3番のところで,仮に定めない制度を創設するものとした場合とかいうような聞き方をしますと,だんだんこの法制審議会の部会として何となく見直しの方向に行っているのだろうかなという気がして,どうもさっきから気にはなっているのですが。見直しの必要性については,どのように考えるか,維持するにしても今のままではいかんとか,多少手直しせんといかんとかいうようなこと,手続を迅速化するために何かせんといかん,あるいは2番目のところで評価制度の問題ではないのかとかいうようなところで,1番があって,次,2番とか3番が選択肢になってきておるようで,聞き方の問題として,どう考えるかというところで,ここで一定の意見を出すのか出さないのか,私は前から質問もしましたし,維持した方が……。維持しないという理屈がどうもよく分からないというところで何度もお聞きしたのですが,どう考えるかと言われると,維持しましょうということになってしまうと,もう3番の問題は要らないのですよね。そこら辺を,この部会としてどちらかの方向を出すのか出さないのか,もうこれでいいのかと,ちょっと気になります。 ● この最低売却価額制度は相当問題を含んでおりまして,いずれの結論を出すにいたしましても,十分法制審議会において必要とされるすべての点について議論を尽くした上でこういう結論を得たのですということを,後々実際に法案を作るときに私どもが言えるということが必要とされているわけでございます。ここに書いてありますのは,そういう意味では私どもとして態度を決めて,最低売却価額制度を廃止する方向に誘導するためにこういういろいろなものを書いているというような事情では全くございませんので,あくまで幅広く,必要な論点についてすべて議論を尽くした上で,その結果としてどうなったということが事後的に説明を要請される場面が多々あるであろうと,こういうことから広く意見を求めているということを御理解いただきたいと思います。 ● 今のような御趣旨と承りましたので,(3)の代替措置として提案されているところが,私にはかなり不十分に思われますので,それについて意見を述べさせていただきます。  アの①については,正に先ほど○○幹事が言われたことでありまして,なぜ第1順位かというと,結局,これは最低売却価額の選択権を持つのは限界のところの担保権者,実際にそれによって影響を受ける担保権者である必要があるわけで,第1順位でもどんな額であっても100%弁済を受けられるような担保権者については選択権を認める必要はおよそないわけです。そうすると,しかしその選択権を誰に付与するかを決めるために最低売却価額を定めなければいけないというようなことにもなりかねないので,これはこういうことを制度化するのは非常に難しいのではなかろうかという気がします。  それから,②の買戻権の話ですが,これも買戻権を認めるという場合に,1円でも高ければいいのかというと,恐らくそういうような制度にしてしまうとだれも入札しなくなるのじゃないかというふうに思われます。この点については,現在,倒産法部会で破産管財人の任意売却との関係で若干議論されまして,いわゆる後出しじゃんけん論というような議論がされているわけですが,やはり一定の額を上積みしなければいけないだろうというふうに思われます。倒産法部会では10%とかいろいろな額が議論されていますが。  しかし逆に,そういうふうな上積みをした場合に,果たしてそれで所有者とか後順位担保権者の利益保護になるのだろうかというと,それは上積みの額にもよるのだろうと思いますけれども,やはり疑問があるのではないかという気がします。  それから,イの点でありますが,ここでも私は○○幹事が言われたように,剰余主義との関係が一番気になるところでありまして,この参考価格というのは,結局,その額に達しない買受申出も認めるものでありますから,剰余主義との関係では上位の担保権者を保護することにはならないわけです。結局,上位の担保権者を保護しようとすると,差押債権者より上位の担保権者が仮にいる場合には,その担保権者の被担保債権額を下回る額では買受申出を認めないという制度にする必要があるのじゃないかというふうに思うわけでありますが,そうすると売却をする前の段階で,被担保債権額を確定する手続が恐らく必要になってくるのだろうと思うわけでありますが,現在の執行制度はそのようなシステムを持っていないわけでありまして,果たしてそういう制度がうまく作れるのかというと,そこも私はやや,これは検討してみないといけないと思うのですが,難しいところがあるのかなというふうに思いまして,ちょっと私の感覚では,これらの意見,こういうことで述べられている意見が適切な最低売却価額に代わる代替案になるのかというと,疑問が残るというのが私の意見でございます。 ● 結論はともかく,そういう問題点を広く御指摘いただくというのが今日と次回の目的でございますので,どうぞ遠慮なくおっしゃっていただければと思います。 ● 遠慮なくということですので……。  ○○幹事,○○幹事の驥尾に付すようなことになるわけですが,部会資料4の7ページの一番上の①の選択権について,最低売却価額が一体誰の利益を守っているのかということをやはり考えなければならない。今の発言で挙げられたのは担保権者でしたが,それ以外にも一般債権者,これも考えていきますと当該手続の配当要求をした債権者はどうか,あるいは仮差押えを既にしていた債権者はどうか,あるいは何もしていない一般債権者の利益はどうか,更に優先順位でもう一つ落ちる所有者の利益はどうかということまで視野に入れる必要がある。どこまでが法的な利益で,どこから先が反射的な利益なのかはともかく,そういう者の利益を守っているということも考えざるを得ない。そうしますと,選択権者が非常にたくさん出てくるとなると,恐らくワークしない手続になるのではないかという気がいたします。  付け加えれば,これは私の知っているごく狭い範囲での知見の限りですけれども,違っていたら訂正していただきたいのですが,事業者が自己所有の不動産に担保をつける場合,例えば,第1順位に公的金融機関が入っている,何とか公庫というのが入っていたりすると,第1順位そのものは比較的額が小さくて,第2順位の民間の金融機関が大きい順位をつけているということが,しばしばなのか時々なのか知りませんが,あるやに伺っております。そういう場合には,第1順位の担保権者に選択権を与えるという仕組みがワークしないというのは,○○幹事の指摘されたとおりかと思います。というようなことで,そのような利害関係人の利益を守っているという機能を考えると,なお最低売却価額というものを大きく見直す,あるいは選択制にするのは,なお時期尚早のような気がします。  なお付け加えれば,現在国会で審議中の担保・執行法制の改正法案で,執行妨害のために保全処分について大幅な強化が図られておりますけれども,その効果というのを見据えるということも一緒に考える必要があろうかと思います。それを抜きにして議論するのは,やや尚早という気がしないでもありません。 ● 時間の都合もございますので,ここで休憩させていただきたいと思います。休憩後は内覧制度に入りたいと思います。           (休     憩) ● 審議を再開させていただきたいと思います。  休憩前の最低売却価額制度関係につきましては,いただいた御意見を踏まえまして,事務当局におきまして更に検討させていいたいと思っております。  引き続きまして,部会資料4の第2の3「内覧制度関係」と,4「入札期間中の取下げ関係」につきまして,まとめて御審議をお願いしたいと思います。資料の説明をお願いいたします。 ● 内覧制度につきましては,部会資料4に掲げましたような意見があるということでございます。もちろん,今回国会に提出しております改正法案では,この(注)に書いてありますような考え方から,差押債権者等に対抗することができる占有権原を有する者については同意が必要だというふうにしているわけでございます。したがいまして,これにつきましては,こういう意見はあるけれども,この点についてはまたいろいろな考え方があろうかと思いますので,そういうこともお聞かせいただきたいと思っているわけでございます。  それから,「入札期間中の取下げ関係」でございますけれども,こちらの方は競売不動産につきまして調査検討を経た上で,高い保証金まで提供して買受けの申出をしたと,こういう人の利益を保護するために,現在では開札期日の直前まで取下げが可能でございますけれども,その期間を制限する必要があるのではないか,こういう意見がございますので,この点についてのお考えもお聞かせ願いたいというものでございます。  この入札期間中の取下げ関係でございますけれども,(注1)にありますとおり,具体的にどういう損害というものが考えられるのかというのを書いております。ただ,本当に取下げと損害との間の因果関係があるものは限られているということを確認的に書かせていただいております。このように期間を制限するということにつきましては,現実問題として取下げというものが,割と入札が開始されてから行われるということがあると,例えば,任意売却の話がまとまる,あるいは一部の弁済をするということで取り下げられるというようなことが相当程度あるということとの関係でどうするかという点が問題になろうかと思います。 ● それでは,この内覧制度関係と入札期間中の取下げ関係につきまして御意見を賜りたいと思います。 ● 度々で恐縮です。結論から申しますと,私はここに掲げられている考え方,つまり占有権原が差押権者等に対抗できる場合であっても占有者の同意なく,内覧が実施できるという考え方には賛成しかねます。先ほども言及しました,現在国会審議中の担保・執行法制の改正法案では,この(注)に掲げられていますとおり,現在というか,従前に比べますと随分広く内覧の権限を認めているわけですが,その具体的な実施を待たないまま,改正法案の範囲でどういう問題が起きるか,それが現実には見えないまま議論するのは大変危険なのではないかという気がいたします。  それから,担保・執行法制部会で内覧のことを議論いたしましたときも,やはり居住者のプライバシーというものに配慮すべきだという御意見が非常に強かったところでございまして,対抗権限で分けるというのも,そういう意味ではかなり踏み込んだぎりぎりの選択肢ではないかというふうに考えるわけであります。それを正面から踏み越えるというのは,いかにも担保・執行法制部会で議論したところを大きく踏み越えるものであって,これもまだ,論理的にどうこうということではないのですが,議論の進め方としてはやや拙速に過ぎるのじゃないかという気がいたします。 ● ほかにいかがでしょうか。  入札期間中の取下げ制限の方はいかがでしょうか。 ● 取下げ制限の点について一つ質問があるのですけれども。  (注2)に書かれている「関係者間で任意売却の話がまとまるなどして」云々というところ,これ,任意売却の買主というのは,一般の人ではないということを前提にして議論していいわけでしょうか。つまり,業者が一定の利益を見込んで,債務者あるいは債権者と交渉して任意売却してもらうというのがほとんどのケースであるということになるのでしょうか。 ● これにつきまして,どなたか実情について御発言いただける方,いらっしゃいますか。 ● 限られた経験といいますか,情報に基づくものにすぎないのですけれども,別に任意売却をする人と入札者とがダブるダブらないというのは,ケースによると思いますし,ただ入札をしようとする者も任意売却ができれば確実なわけですから,任意売却に頼りたいと。その話ができるのであれば任意売却をしようというふうに動くことがありますので,ケースによりますとしか申し上げられないところだと思います。  ただ,一般的にどうかということになると,やはり任意売却をしようとする人は,債務者が買い主を連れてきて,この買い主が買ってくれるからと債権者のところに訪ねてきて,競売ではなくて任意売却でまとめてくれないかと,こういうことが多いように見受けております。 ● ほかにいかがでしょうか。  ○○委員,何かありますか。 ● 考えたのは,例えば,札を入れている人がどうしても欲しいので任意売却の交渉をするというようなケースが多いのでしたら,取下げを認めてもいいのかなというふうに考えるのですが,私が最初に質問したようなケースですと,せっかく一般市民に参加してもらいたいということでいろいろな方策を講じて,ローンも組めるようになったわけですね。ですから,銀行と交渉していろいろやって札を入れたところ,取り下げられてしまったということでは,競売制度に対する信頼を失ってしまいかねないのではないかというふうにちょっと考えたものですから,どういう実情なのかなというのが非常に気になったわけです。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。  それでは,この問題につきましては,今の実情ということがどうなっているかということもございますので,それも含めまして事務当局の方で更に検討させていただくということで,この問題は先に進ませていただいてよろしゅうございますでしょうか。  それでは,次は第2の5「執行官による援助請求関係」と6「裁判所内部の職務分担関係」について御審議をいただきたいと思います。  これも資料の御説明からお願いいたします。 ● 前回のヒアリングで執行官の方から,例えば,一人暮らしの御高齢の人が住んでいる,そういう建物の明渡しの場面などで,非常に御苦労されているというような話がございました。例えば,こういったような場面で,執行官が福祉関係のそういう機関と連携を図りやすくする,こういったような措置というものが何か考えられないのかといったような御意見があったというように理解しております。そういうようなことをするために,執行官の権限としてどういう権限の行使を求めるということを執行官の職務として認めるかということが問題になろうかと思います。そのことが(1)に書いてございます。  この場合,現行法では,例えば,警察官に対する援助請求のように,権限を個別で規定しているというものもございます。また,他方(2)に関係するものでございますけれども,執行裁判所は一般的な援助請求というようなことができるわけでございますけれども,執行官についても援助請求の必要性等について,執行裁判所と同じように判断することができると,このようにすることも一つの考え方としてあるのではないかということで,そういったような前回のヒアリングに出たような状況を踏まえて,何らかの援助請求の関係での見直しが考えられるかというのがここでの問題かと思っております。  それから,裁判所内部の職務分担関係の問題でございます。基本的な方向性といたしましては,この(1)にありますとおり,現在,執行裁判所の権限とされている事項のうち,一定の事項を裁判所書記官の権限とする方向で見直すという方向でどうかというのが基本的な方向性でございます。  問題は,その分担の在り方でございますけれども,(2),あるいはその(注1)にございますとおり,まず現行の手続の役割分担の在り方というものについてどのような観点から整理されていると考えられるのかという点,それから,そういうことを踏まえた上で,今後どのような整理で分担を決めていくのかということでございますけれども,(注2)にありますとおり,どうしてもこれは裁判官にしなければいけない,あるいは裁判官にするのが相当だという職務があるのではないかと。仮に,そういうものがあるとした場合に,その他の権限についてはどうするかという点が問題になろうかと思います。  また,(注3)にありますとおり,裁判所書記官の権限とする事項について,不服申立てを認めるということが考えられるわけでございますけれども,その在り方をどうするかという点も検討課題というように思っております。 ● それでは,まず「執行官による援助請求関係」について御議論いただきたいというふうに思います。  この問題につきましては,前回の部会におきましてヒアリングで執行官から強く要望があったところでございます。そこで,この援助請求を認めるとすれば,その内容,あるいは在り方について御議論をいただきたいと思います。どうぞどなたからでも結構でございますので……。 ● 度々で恐縮でございますが,執行官が執行する際に援助を求めることが相当だとする先については,警察だけでなく,その他の官公署にも当然のことながら援助を依頼することが相当な事案が多くあるわけですが,これをやはり執行官が援助請求をすることができるという原則的な取扱いにしていただけると,その後,各官公署がその要請をどう受け入れるかというのはまた後に積み残された課題になるのだと思うのですが,そういう原則的な扱いをまず切り開いていただけると有り難いと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 大体同意見なんですけれども,前回のヒアリングで執行官の方が,要するに警察だけではなくて,そういう行政機関,特に福祉の関係,そういったところの協力がなければ執行ができなくなるというようなことで,非常にこの点について強調されたということを思い出しますが,今おっしゃったように,私もやはり具体的にどの行政官庁が何をするということについては,ここでどうのこうのということはできないと思いますので,少なくとも原則的にそういう協力体制をとる,援助体制をとる,また執行官がそれを求めることができるということを決める方向でやった方がいいと思います。 ● ほかに御意見ありますでしょうか。--よろしゅうございますか。  それでは,引き続きまして裁判所内部の職務分担関係につきまして御意見をいただきたいと思います。  最高裁から,席上配布された資料がございますので,まずその説明をお願いしたいと思います。 ● それでは,裁判所内部の職務分担の見直しにつきまして,席上に3枚の紙をお配りしております。これに基づきまして,どういうような見直しをすればいいのかということを,私どもの方から御検討をお願いしたいというふうに考えております。  民事執行手続は,非常に非訟的な手続でありまして,一応権利関係に基づきまして債権回収のためにいろいろな手続が複合的に重なって進んでいくという,そういうような性質を持っております。このような手続につきましては,これまでも実際に裁判所書記官が実質上各手続をかなりの範囲にわたって間違いなく行ってきたという,そういう経緯がございます。そのような経緯の中で,より迅速な民事執行手続を実施する,あるいは分かりやすい民事執行手続を行うというためには,裁判官と裁判所書記官がそれぞれの事務をきちんと切り分けをして,重複する事務を行うことなく,手続を進めていくということが迅速な手続の実現に非常に有効ではないかというふうに考えております。したがって,執行裁判所が行うものとされている現在の手続のうちに,実務の実情,実際にどの程度裁判所書記官が行っているかということを踏まえ,更に理屈を考えた上で職務分担を見直していただくことがよろしいのではないかというふうに考えております。  1枚目でございますが,まず先ほど○○幹事の方から御説明もございましたけれども,基本的には執行手続の中でどうしても裁判官が行わなければならない手続があるだろうというふうに考えております。このような事項をまず整理して考える必要があるのではないかと思っております。  ここの1に書いてありますとおり,まず手続を開始・終了させる処分,これは開始決定だとか,あるいは無剰余の取消し,あるいは3回売却を行っても売れない場合の取消し等の取消決定というような,これは終了させる処分になりますけれども,このような処分につきましては,執行手続をいかに進めていくか,いかに終了させるかという最終的な判断を行うという意味では,裁判官が行う必要があるだろうと。  それから,2番目の権利の得喪・変更を直接生じさせる処分ということになりますが,これは売却許可決定。これは,所有者の所有権を買受人の方に移転するという,現実の効果を生ずる処分になりますので,そのような決定は裁判官が十分に判断すべきだろうと。  それから引渡命令ということになりますが,引渡命令につきましても,これは占有を直接解いて,買受人の方に物件を引き渡すことを直接執行するということを命ずる処分になりますので,このような非常に重大なものについては裁判官が行う必要があるだろうというふうに考えます。  もう一つは,不服申立てに関する処分ですけれども,執行法上,現在,執行抗告,執行異議というものがありますけれども,これらは依然として当然裁判官が行うべき事項というふうに整理できるのではないかと考えております。  これら以外の各種の手続につきましては,このような例えば,開始決定が行われた後の売却に向けた準備行為,あるいは売却を実施するために準備すべき行為,そういうものが種々手続上あるわけですけれども,そのようなものを含めて,基本的には裁判官が本来行うべきとされている処分以外については,裁判所書記官が行うことを考えていいのではないかというふうに考えております。  その切り分けをどういうふうに考えるかということが問題になるかと思いますけれども,2のところに整理させていただきましたとおり,1),2),3)というふうに整理させていただいております。  まず,第1番目の物件明細書の作成でございますが,これは類似の手続というものがちょっと見当たりませんので,これは特別に切り出して考えていただければと思っております。  物件明細書につきましては,2枚目のところに図面を用意しまして,簡単にどのような手続の流れになるかということを御説明させていただきたいと思います。  物件明細書の作成のところにつきましては,現行は現況調査報告書,あるいは評価書が提出されますと,裁判所書記官がそれらの報告書等を精査しまして,物件明細書の原案を作成しております。これを裁判官に提示しまして,裁判官の方で更に十分に同じように現況調査報告書等を検討しまして,物件明細書の原案がそれでいいかどうかということを審査しまして,これを作成するということになります。  これは,どのような目的で作成されるかと申しますと,これは現行法上は買受希望者に対する物件の情報,特に権利関係等について十分な情報を与える,そういう趣旨で定められているものというふうに位置づけられるものと考えております。したがって,実体的な権利関係について,裁判を行っているものでもありませんし,これによりまして実体的な権利関係が決められるものでもないという性質のものというふうに考えられます。  このように物件明細書を作成しまして,裁判官が最低売却価額を決定しまして売却に付するというような手続になるということになります。最低売却価額というのは,先ほども御議論いただきましたけれども,関係人の利害を調整しつつ,適正な価格による売却価額を設定するというようなものというふうに理解されます。そのような形で最低売却価額を決定することによりまして,具体的な売却手続に移るという形になります。  物件明細書の作成を裁判所書記官が行うことになった場合にはどのようになるかということになりますと,右の「改正後」というところにありますとおり,現況調査報告書あるいは評価書等が提出された場合には,裁判所書記官は直ちにこれらの資料に基づいて物件明細書を作成することができるということになりまして,このような形で物件明細書,裁判官との間で原案を作成して,実際に裁判官が決裁するというような手続を経ることなく,これができ上がりますので,最低売却価額決定をこれらの資料をもとに裁判官の方で行うという形になろうかと思います。  物件明細書の民事執行法上の位置付けは,先ほど申し上げましたとおり,買受人等に対する当該物件の権利関係等に関する情報を提供するということが正に目的になるわけでございますが,実際の権利関係等につきましては,別の手続で最終的には確定をするということが残されております。最低売却価額を決定する場合におきましても,要するに占有者の権利が引き受けられるのかどうか,負担を見て減額をするかどうかということに影響が出てきますので,そういう意味では,最低売却価額を決定するところで十分裁判官は権利関係について検討すると。そして,売却手続がありまして売却許可決定を行うという場面で,ここでは裁判官はそれまでの手続全体を振り返りまして,全体の手続が適正に行われたかどうかを判断して,売却の許否を決定する,そういう手続になっております。  そういう形で,裁判所書記官が物件明細書を作成することによりまして,裁判官との重複を避けるということができようかと思っております。これまでも裁判所書記官,実際の実態を考えますと,物件明細書の原案を作成するということで,物件明細書の作成については裁判所書記官は自分の仕事だというような認識を持って取り組んできております。民事執行法が施行されて以来,物件明細書の作成についてのいろいろな研究,そういうものにつきましてもほとんどは裁判所書記官の手によって行われております。現在も,三点セットをインターネットで提供するという,そういう施策を最高裁で今進めているところでありますけれども,そのようなことをきっかけとしまして,物件明細書の作成につきましても,全国的にばらつきのない,レベルの高いものを作成しようということで,東京,大阪,名古屋,福岡,札幌の5庁の裁判所書記官により,物件明細書の基本的な考え方,その記載内容,あるいは記載の体裁,こういうものについての研究が行われて,雑誌等にも公表されているところであります。  そのような実際の裁判所書記官のこれまでの実績等も踏まえまして,物件明細書を作成するということで,その内容に,これまでとぶれが生ずることはないのではないかと思っております。たとえぶれがあったとしても,裁判官による最低売却価額の決定,あるいは売却許可決定のところで十分修正する余地があろうかと思いますし,最終的には引渡命令のところで占有関係については十分,執行裁判所が判断するという形になろうかと思っております。  物件明細書の記載が,実務上はこれらの裁判官の決定に非常に影響を及ぼす,拘束されるのではないかという御指摘もあろうかと思います。現実は裁判官が作成するということになっておりますので,そういう実務上かなり重要なものとして扱われている実情もあろうかと思いますけれども,実際には物件明細書自体には法的な効力は特にないという形で,訴訟になった場合には,その物件明細書に書いてあるからといってそれが決定的な結論に影響するということはあり得ないというふうに考えております。  実際に手続の流れの中で,最低売却価額という決定のところで裁判所の権利関係等についての判断が十分に示されると,裁判所書記官が書いた場合にその認識等にずれがあるのではないかという疑問も生じようかと思いますけれども,現実の実情,これまでやってきた実績等から踏まえますと,そのようなぶれが生ずるということは非常に例外というか,ほとんどないのではないかというふうなことを考えております。そういう意味で,物件明細書につきましては,裁判所書記官が行うという方向で検討をお願いできればというふうに考えております。  それから,1枚目に戻りますけれども,2番目ですが,手続の結果を記載した書類の作成ということで,手続の結果を記載する書類の作成というのは,調書に代表されますように本来的な裁判所書記官の職務というふうにされているわけです。3枚目のところで,代表的なものとして配当表の作成というのがありますけれども,3枚目の図にお示ししましたとおり,配当手続の実態を十分分析しますと,配当期日において配当順位及び額を決定するというのが実質的な配当の内容を定める行為であると思っております。それを書面として記録化するという場面では,これは配当表の作成ということが行われると。現行の手続は,原案を事前に作成して裁判官に提示する,そして配当期日において当事者の意見を聞きまして,異議がなければその配当表を作成する,異議があった場合には配当異議手続に移行するという形になりますけれども,配当期日の構造そのものは変わらないにしても,配当表の作成というのは記録化という性質を有するところから,そこは裁判所書記官が行うことでいいのではないかというふうに考えられます。  三つ目でございますが,その他の手続の迅速かつ円滑な進行を図るための処分ということで,これは種々細かい手続も多々ありますけれども,ここにありますように代表的なものとして,例えば,配当要求の終期の決定。それから売却実施命令。これは,実際に売却のスケジュールを定めまして,執行官に対して売却を実施させるというような処分になるわけですけれども。それから,売却許可決定が確定した後の代金納付期限の指定というような手続がありますけれども,これらの手続は手続の流れを十分把握している裁判所書記官の方で主体的に進めることが可能な手続でありまして,そのような形で進めることによりまして,更に迅速な運用を図ることができるのではないかというふうに考えております。  3番目には,このような裁判所書記官の権限の見直しをした場合には,裁判所書記官の処分については執行裁判所に不服を申し立てる道を開くということで,その手続保障を図るということができるのではないかというふうに考えております。  このような裁判所書記官の権限分担を見直すということによりまして,今以上に手続の適正さが損なわれるとか,そういうことはこれまでの実績,あるいは手続の流れからしまして,ほとんど起こり得ないのではないかというふうに考えられますし,スムーズな,円滑な手続の進行を図るために,このような切り分けの仕方で御検討をお願いできればというふうに考えております。種々議論はあろうかと思いますけれども,私どもとしてはこのような形で広く各界の御意見もお伺いした上で,更にこの場で御検討いただければというふうに考えております。  ちょっと長くなりましたけれども,以上,説明させていただきました。 ● それでは,民事執行手続の裁判所内部での職務分担関係について,その職務分担を見直すかどうか,その際にどういう原則,どういう性質なら裁判官の職務とするか,裁判所書記官の職務とするかということにつきまして,部会資料4に問題点が書いてございまして,また今の御説明では特に具体的に物件明細書,あるいは配当表の作成等々について,裁判所書記官の権限にしてよいのではないかという,そういう御意見がございましたけれども,これについて何か御意見があれば承りたいと思います。 ● 執行手続の簡明化の要請ということから,詳細な御報告をいただきまして,総論的にはそのとおりのニーズがあるのだろうと思うのですが,1点だけ,弁護士会内の代表的な考え方として,物件明細書につきましては,やはり引き受けるべき権利と引き受けずに済む権利との記載というものが,実務上非常に重要なものとして見られておりますので,この点につき,裁判官の権限として引き続き存続してほしいという意見がありますことを述べさせていただきます。 ● ほかにいかがでしょうか。--よろしゅうございますでしょうか。  それでは,ただいまいただきました意見を事務当局の方では十分勘案いたしまして,更に検討を進めていきたいと思っておりますが,よろしゅうございますでしょうか。  それでは,引き続きまして部会資料4の第2の7「金銭債務についての間接強制関係」について御審議いただきたいと思います。まず,資料の説明をお願いいたします。 ● 資料は9ページから11ページにかけてでございます。  まず,9ページの(1)でございますけれども,間接強制が効果的である場面,すなわち間接強制を認めるメリットにはこういうことがあるのではないかということを書いております。  次に,10ページの(2)ですけれども,今度は間接強制を認めることとした場合の問題点につきまして,こういう意見があるということを整理してございます。  そういったような問題点の指摘があるということを踏まえまして,そういうことを考慮するとどういったような何らかの手当てが考えられるのか,例えば,間接強制の範囲について限定を加えるということが考えられないかというのが,(3)というところに書いてございます。  ということで,例えば,一定の限定の加え方について,アなどいろいろと書いてございます。それぞれの限定の加え方についても,また細かいそれぞれの問題点については(注)のところで問題点を指摘させていただいているということでございます。  この問題につきましては,担保・執行法制部会の方からも,従前から議論があるところでございますので,また,前回抽象的な論点整理をさせていただいたということもあるものですから,今回は少し詳しく論点整理をしまして,この点につきまして十分にいろいろな御意見を伺いたいということでございます。 ● 今日の資料は間接強制がどういう場合に効果があるかと,しかし間接強制を認めた場合にどういう問題点があるかということを踏まえまして,具体的に(3)のところでアからキまで,7つぐらいのオプションを書いて,かなり詳細な資料になっておりますが,これについて御質問なり,あるいは御意見なりを賜りたいと思います。 ● (2)の問題点のところですが,これが金銭債務に関する間接強制に固有の問題なのかどうかという点の確認をする必要があると思います。  まずアですが,金銭債務以外についても損害額というのを観念できる場合があるのですけれども,通常の間接強制においてもそうした損害額を上回る支払義務が課せられるということはあるところだろうと思います。また,その間接強制金を債権者が取得すべきかどうか,それに正当性があるかどうかという問題も,通常の間接強制一般の問題だろうと思います。  それから,イの資力がない者に対する間接強制が苛酷な結果になるということも,同じく現在認められている通常の間接強制に通有する問題だろうと思います。  このようにして,アもイも金銭債務に関する間接強制の固有の問題とは言い難いのではないかと考えます。  それからウですが,「例えば」以下に書かれていることは,金銭債務に対する間接強制金に利息の性格があるかどうか,あるいは損害金の性格があるかどうかというような議論と関連するところで,それについて,一定の立場を採ればという前提で,利息の性格や損害金の性格とは別個のものであるという考え方をとれば,違った議論になるということも確認しておきたいと思います。  そこで,私の見るところ,問題点たり得るものとすれば,ウの1行目の濫用のおそれというところかと思います。これも,考え方によっては間接強制一般の問題に還元できるという言い方もできるかもしれませんが,それにしても金銭債権の場合にそうした懸念があるということは疑えないところであります。そこで(3)で書かれているような種々の案を含めて,濫用防止策について議論をするということは望ましいことだろうと思います。  その際に,先ほど申しました間接強制に一般的に通有する問題点なのか,それとも金銭債務に固有の問題なのかというところの議論を詰めておく必要があろうかと思います。例えば,一定の金額以下の金銭債務に限って間接強制を認めるとか,あるいは一定の種類の金銭債務に限って間接強制を認めるとかいうような措置をとる場合には,仮に,間接強制一般の問題であって,金銭債務に固有の問題ではないという議論が立つとすれば,どうして特殊な金銭債務だけが制限を受けるのかというところが問題になろうかと思います。  最後に,ここに挙がっている以外の濫用防止策として考え得るものが若干あるとすれば,カの執行裁判所が事後的に間接強制決定を取り消すことができるというのに付け加えて,内容の変更決定のようなものも考え得ると思います。  それからもう1点,間接強制金が一定の期間に乗じて命じられるという場合には,その期間の上限を画する,あるいは金額の上限を画する,例えば,本来の債権の何倍までとか,そういったような措置も,望ましい措置かどうかは分かりませんけれども,考え得る方法という候補にはなるのではないかと思います。 ● 余りよく分からないのですけれども,間接強制,今までその必要性があり,間接強制の方法によらざるを得ないからという形でできていたと思うのですけれども,今度の場合には,金銭債権の執行という本体的なものが構えておる上に,これを作る必要がどういう場合にあるのか,(1)のア,イ,ウと三つ示されているのですけれども,非常に幅広いのですね。本当の作る制度によって狙おうとするニーズというのは,どこにあるかというのがいま一つイメージできないのですけれども,ここら辺は実務的にこういう場合に有益なんだというのがあったら,ちょっと教えていただけると,考えるよすがになるのかなと思っているのですが。 ● これは,担保・執行法制部会で間接強制をある程度広げた後,この金銭債務についての間接強制をどうするかというのはさんざん議論をして,積み残して,更に検討するということになった経緯があると私は思っておりますが,担保・執行法制部会で出た議論でも結構ですし,あるいは事務当局で更に聞いている意見でも結構ですが,どなたか……。 ● すべてではないのですが,典型的に想定されているのは扶養義務等ですね,額が比較的少額。今回の担保・執行法改正案では,この扶養義務については将来分も含めて差押え可能という執行を容易にする方法を作ったのですが,これは非常に歓迎はされていますが,同時にそれに対する意見としてあるのは,そうは言っても給料債権を差し押さえて,会社がそれを知ると会社に居づらくなって辞めなければいけない場合が出てくる,そういう意味で,いいのだけれども使うのにはちゅうちょするのだという,こういう指摘を受けているのです。そういう場合に,間接強制ですとそういう会社側に知られるという点はありませんので,しかも扶養義務の場合,支払いを怠っている理由の一番大きいものは,要するに金はあるけれども気に入らないから払わないという場合で,定型的に扶養義務というのは大体支払可能という前提で額が定められておりますので,一般的に金銭債権で,金がなくて払えない,それなのに間接強制するのは酷じゃないかという,そういうことは通常は生じない。そんなことで,最も典型的なのは扶養義務だろうと思います。  そのほか,ここに掲げたように,少額の場合非常に手間暇がかかりますので,間接強制でやってもらえるならその方が楽だというのは,それはほかにもいろいろあるとは思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 私も,なぜ必要なのか疑問がありまして,他方,(2)にある問題点は非常に大きいのではないかと。特にイとかウとか,非常に大きいのではないかと思います。  ○○幹事が,先ほど金額の限定をするというふうにおっしゃったので,そういうふうにすればともかくとも思いますけれども,支払わなければ際限なく金額が増えていくということで,非常に合理性のない制度ではないかと。今,○○委員がおっしゃったようなことであれば,むしろ狙いを絞った方がいいのではないでしょうかね。そうでなくて,ここまで聞いてしまうと,いろいろな意見が出てきて,ひょっとすると大変不合理な制度ができてしまうような危険も非常に感じるわけです。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 必要性があるとしたら,(1)のア,イというのは両方あるのだと思います。ただ,イの方は,結局差し押さえる資産がなければどうしようもないことですから,アの方に全部,つまり資力があるのに払わない債務者という方に吸収されるのかなと。こういう場合に限っては間接強制をしてもいいし,実効性もあるかと思われますが,資力があるというのは,つまりその債務名義を支払う資力があるという意味と理解しますけれども,実際に運用上資力があるかないかを証明するということは難しいのかなという感じがいたします。  それから,先ほどお話がありました扶養義務についても,確かにそういう場合もあるかもしれませんが,これはやはり類型的に,慰謝料の分割払いなんかと違って扶養料を払わないということは,やはり原因は資力的に厳しいものがあるからではないかと。実務的には,とにかく債務名義をとっている扶養義務の支払いを止められちゃった,さあどうしよう,まず約束してもらったところを執行せずに,あるいは執行もかけて取ることでやっとであると,それ以上に追い詰めたところで余り意味がない。逆に言うと,破産してもらっても困るわけなのですね,そういうことを考えますと,扶養義務だけに限ってどうかという議論にも疑問があります。  またちょっと情報が正確ではないのですが,扶養義務の算定基準が最近上がるということもございますので,それを考えるとちょっと扶養義務だけに限るということにも疑問があります。 ● 民事訴訟法学会でフランスの間接強制の報告があったのですが,私,余りちゃんと記憶していないのですけれども,こういうことがあったと記憶しております。  一つは,損害額というのは全部が債務者にいくのじゃなくて,国庫と債務者と両方にいくというようなのがあるというような話でした。  それからもう一つは,ちょっと(3)のカに近いのですけれども,フランスでは確定的に一定の強制を命じて,履行しなければもうそれが本決まりというのではなくて,もう一度裁判所の方がレビューするというのでしょうか,前のでよかったかというようなことで,最終的に決まるのは2回目の裁判所の決定というようなことになるのだと,たしかそういう御報告があったと思うのですが,そういうようなことになりますと,間接強制の現在の在り方とは随分違ってきて,大がかりな話になってしまうのですけれども,民法学者の方が419条に反するのじゃないかとかいうようなことで,債権者がもらってしまうというのには抵抗があるというようなことでしたし,濫用等ももう一度レビューするとなるとそこでチェックできるかもしれないので,そこまでここでやるかどうかは別として,そういう立法もあるように思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 私,前回2回ほど欠席しまして,この御議論を伺っていないものですから,ちょっと基本的なところから伺いたいということなのですけれども。  既に御指摘がありますように,この間接強制制度を導入することによって,一体どういうメリットがあるのかということが一番関心のあるところでして,恐らく資力があるのに支払わない債務者に対して間接強制が効果的であるということが本当にあればとてもよいなというふうに思うのですが,この効果的であるという面と,それから問題点の(2)のイという,資力がない者に対して間接強制が命じられると酷であるという,これは表と裏といいますか,制度の問題だと思うのですけれども,本当に資力があるのに支払わない債務者というのは一体どのぐらいいるのかということでありまして,今フランスの制度ということが出ましたので,イギリスの制度について若干御参考になるかなと思いまして申し上げるのですが,実際向こうでも調査をしておりますけれども,払わない債務者というのはどうして払わないかといえば,大多数は払えないのだと。中には資力があるけれども払わないという人もいますけれども,それは非常にごく少数であるというふうに言われております。また,本来そういう間接強制で強制すべき債務者というのをどうやって区別するのかという,そのあたりのところもなかなか難しいというようなことが言われております。  こういったことは,アメリカ合衆国の破産債務者について免責が濫用されているかどうかという調査でも,こういったことが言われていると思いますが,実際本当に払えるのに払わないというような債務者がどの程度いて,それをちゃんと見分けられるのかということについては,慎重に議論する必要があるかと思います。 ● 今,資力があるかないかということでいろいろ評価が分かれていると思うのですが,先ほど来出ている議論のように,資力が本当にあるのかどうかという確定も非常に難しいわけですね。考えてみますと,間接強制というのは任意履行を促す非常に重要なきっかけになるという,そういう機能がかなりあるわけでして,どうしてもそれで間接強制金で最終的には金銭執行の問題ではないかというふうに最後までいくとそういうふうに捉えて,最後の部分についてそれをだれが取得するべきかという議論になってしまうわけですが,まず考えるべきことは,任意履行を促すきっかけとしてこういう方法をとるのがどの程度許されてしかるべきかという,そこを考えてみる必要があるのではないか。そういう側面からいうと,資力のあるなしというものは重要ではありますが,確定できないことでもありますので,この(1)のアとイというふうに書かれていることは,それなりに理由があって,そういうために間接強制の制度を金銭債務についても広げる必要があるのではないかと,そういうふうに私は思っております。 ● 間接強制について,ここにありますように効果と問題点があるわけで,広く間接強制を適用していくという考え方には疑問があります。ただし,限定的に考えるという意味で,ここにもありますけれども,要するに扶養ですね,定期給付債務であるというような意味での養育費,扶養とか,そういったことで,しかも資力があるのに支払わないということが証明されるということを条件に,限定的に間接強制の制度をやるというようなことがもし法律的にできるならば,そういう限定的な考え方もあっていいのじゃないかと思います。 ● この(1)のアですけれども,資力があれば,預金でも何でも執行ができるわけですから,やはり資力がある場合に間接強制は必要ではないということが一般的に言えるのじゃないかと思います。そうなると,やはり少額の場合だけだろうというような気がいたします。  それから,ウについて,これはどういう意味なんでしょうか,一言だけ御説明いただければ有り難いのですが。 ● こちらの方は,担保・執行法制部会の中でこういう意見があったということで整理させていただいたものですので,具体的にどういうものをイメージしているかというのは,むしろ部会に出られた方から御発言があればというふうに思いますが。 ● 債務者のために間接強制を導入する必要はないのではないかと思いますが。 ● 先ほどの会社に居づらくなるということではないでしょうか。 ● 間接強制については,多分民事訴訟法学者はいろいろ理論的にはたくさん問題点を抱えていると思いますし,これをやり出したらもっと時間がかかりますけれども,大体いろいろな意見が出尽くしたように思いますので,この意見を踏まえまして,事務当局で更に検討させていただくということにさせていただきたいと思います。  それで,民事執行関係でもう一つ,席上配布資料として○○委員の方から,執行関係に関する具体的な問題について御提言がありますので,御説明いただけますでしょうか。 ● 民事執行の実務を担当しておりますが,日ごろ実務をやっておりますと,民事執行法の幾つかの問題について改正の必要性を感ずることが多いわけであります。そのうちの幾つかについては,これまでこの審議会等で議論をいただいておりますけれども,そこから漏れているといいますか,技術的であったり,あるいは相当細かな問題であったりということについても改正の必要を感じておりまして,他の論点とともに民事執行法が改正されるなら併せてこの点も検討していただきたいということで,今回は2点出させていただきました。  昨年度につきましても,私の前任に当たる○○委員から,幾つかの提言がされていまして,それが懸案となっておりますけれども,それに引き続いて出したということであります。  まず第1点は,無剰余取消しをなるべく避けたいということでありまして,実務の運用でかなり工夫しているところもあるのですが,限界があります。その点において,ここに書いておきましたように,優先債権者の同意があるときには無剰余取消しをしないで済むような制度を構築したらどうかということを考えていただきたいというのが第1点です。  第2点はもっと細かな点でありますが,差引納付制度をもっと利用しやすくするために,申出の時期を現行法より更に延長して,使いやすい制度にしたらどうかということであります。詳細については,このペーパーに書いてあるとおりですので,御検討をよろしくお願いいたします。 ● 引き続きまして,○○委員の方からも何か具体的な御提案があるということですので,どうぞ。 ● 今回の民事執行法をより利用しやすくするという観点から,何点か御提案をさせていただきたいと思っておりまして,まとめたものは次回にペーパーにして提出させていただきたいと思っておりますけれども,例えば,一つ出ていますのが,現在,執行は朝7時から夜7時までというようなことになっていますけれども,どうも夜7時ではまだまだ在宅率が低いのじゃないか,もうちょっと9時ぐらいまでとかというわけにはいかないだろうかというようなこと等ありまして,このあたりをまとめて次回までに出させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ● それでは,今いただいた具体的な御提言等につきましては,事務当局の方で更に検討させていただくということでよろしゅうございますでしょうか。それに関連して何か御意見があれば賜りたいと思いますが。--よろしゅうございますか。それでは,そういうふうにさせていただきたいと思います。  それでは,時間を少し延長させていただくことをお許しいただきたいと思いますけれども,今度は民事訴訟法の方に戻りまして,部会資料4の第1の1「督促手続のオンライン化関係」につきまして,御説明をお願いいたします。 ● 督促手続のオンライン化関係でございますけれども,まずこのオンライン化の具体的なイメージを(1)から(4)というところまで書いてあります。  (1)がインターネットを利用した支払督促の申立ての方式でございます。(2)は,裁判所の管轄の地理的範囲の拡大でございます。  (1)では,「最高裁判所が定める簡易裁判所の裁判所書記官」となっております。この定められた簡易裁判所に対して,どこの管轄の人たちが申し立てられるかということでございますけれども,本来の管轄よりももう少し広いところからこちらの簡易裁判所に申立てができるようにするというようにしてはどうかというのが(2)でございます。  それから(3)でございますが,手数料の納付方法は,例えば,オンラインバンキングといったような方法で納めることができることとする。  (4)でございますけれども,支払督促自体も電子データ,あるいは当事者,あるいは裁判所が作成した電子データもそのまま督促事件記録として取り扱うということでございます。  (後注1)でございますけれども,こちらの方は少し細かい事項でございまして,例えば,将来的には恐らく最高裁判所規則で定めることになるような事項につきまして,ここで掲げております。  それから,3ページの(後注2)でございますけれども,これは最終的に法律の手当ての形がどのようになるのかということの一つの考え方を示しているものでございます。民事訴訟手続等の申立て等に関しまして,これのオンライン化を可能にするといったような一般的な規定を置きますと,すなわち,民事訴訟法と非訟事件手続法にそういう通則的な規定を置きますと,こういうものの適用,準用,あるいはそれらの例によるというような,ほかの法律でもオンライン化が可能となります。  具体的なオンライン化の対象となる手続の範囲については,最高裁判所規則に委任しまして,最高裁の方で順次そういった範囲を広げていく,こういうようなことが考えられるのではないかということでございます。 ● 今回の部会資料も,前々回に引き続きまして法律レベル,最高裁判所規則レベルの別を問わずに,オンライン化された督促手続についての具体的なイメージをお持ちいただくために,多少細かな内容になって恐縮でございます。  それでは,まず督促手続のオンライン化につきまして,部会資料の本文と,(後注1)というのが2ページにありますが,(後注1)をあわせて御議論賜りたいと思います。御質問でも結構でございます,どなたからでも御自由に御発言ください。  最高裁の方から,何かございますでしょうか。 ● 以前からいろいろな形で御紹介させていただいておりますが,今回,おまとめいただいたような方向性で,大きなところでユーザーの方々の意見を聞いていただくというような形をとっていただければ,私どもとしても技術的な部分を含めて十分検討を重ねて,いいものにしていきたいというふうに考えております。 ● ほかに,御意見ございますでしょうか。  この点につきましては,前々回いろいろな議論をいただきまして,(1)のインターネットを利用した督促手続の申立ての方式等の問題,それから(3)の申立手数料の納付をオンラインバンキング等の方法で納付するという問題,それから(4)の支払督促の作成及び記録の電子化という,これにつきましては前々回の議論で余り御異論がなかったように思います。  (2)の管轄の特例につきましては,これは現在の民事訴訟法397条でございましたでしょうか,それと同様に,督促手続を取り扱う裁判所や地理的範囲に属する具体的な定めというのは,最高裁判所規則に委任するということで問題がないと思われるところでございます。  それから,(後注1)につきましては,こういう方向で事務当局の方で検討を続けさせていただくということにさせていただければと思っております。  それから,(後注2)の方でございますけれども,これは前々回の部会資料から内容は変更しておりませんが,具体的な検討,細かな検討をしていく際には,多少技術的な点で変更があるかもしれないというふうに予測されますところでございます。今日の部会資料は,法律事項と規則事項を分けずに,全部お示ししたということになっておりますので,更に検討をしていく際に,あるいはパブリックコメントをする際に,もう少し限定して,これは法律事項,これは規則事項というようなことを補足説明等に書き分けるというようなことが必要になるかと思います。そんなようなことも含めまして,事務当局の方で更に最高裁判所と協議しながら検討を続けるということでよろしゅうございますでしょうか。少し時間をはしょっておりますけれども,お許しいただきたいと思います。  それでは,最後に大きな問題が残っておりまして,それは2の「文書提出命令関係」でございます。○○幹事の方から御説明をお願いいたします。 ● それでは,部会資料4ページの2の「文書提出命令関係」でございます。  まず,刑事事件関係書類等でございますけれども,前回のヒアリングで利用状況についてのお話を伺ったわけでございます。今回の見直しも,やはり利用状況を踏まえて検討するということが基本的な必要なところかなというように思っているところでございます。ただ,前回のヒアリングの結果によりましても,例えば,それぞれの統計の取り方等,資料の作り方等の問題もございまして,そういった利用状況というものをどう評価するのか,もう少し議論をしていただく必要があるのではないかとも思っております。そういうようなこともございまして,今回の案では非常に抽象的に,「何らかの見直しをするかどうかについては,なお検討するものとすることで,どうか」ということで,そのような抽象的な文言になっているというものでございます。  それから,(注)でございますけれども,現行法では刑事事件のいろいろな特殊性というものを考慮しまして,一般義務としての文書提出義務から刑事事件関係書類等を除外して,その結果としてこういう刑事訴訟法等における開示制度に委ねる趣旨であったということでございます。そういったようなことで,先ほどの繰り返しでございますけれども,利用状況等を十分に踏まえて検討する必要があるのではないかということを書いてございます。  それから,(後注)でございますけれども,自己利用文書につきましては,前にいろいろ最高裁の判例等も御紹介したところでございます。これにつきましては,現在判例が出ている中で,解釈の問題として考えていくのか,それとも何らかの法律上の手当てをする必要があるのか,そういう議論があるのではないかと思いますので,何らかの見直しをするかどうかについてなお検討するという形で,(注)という形にしております。  あと,3の「その他」でございますけれども,管轄の合意は電子的なデータによってもすることができるといいますのは,これは最近のこういった電子的な方法による取引の普及といった実情を踏まえまして,見直しの必要性があるのではないかというふうに考えているところでございまして,こういった形で提案させていただいております。 ● 2の「文書提出命令関係」につきましては,○○委員から意見書を提出していただいておりますので,まずこれについて御説明をお願いいたします。 ● 簡単に,ペーパーに基づいて述べさせていただきます。  これは,要するに中間とりまとめとしてパブリックコメントにどういうふうに出すべきかという観点から考えたものですけれども,事務当局がお示しいただいた案も,これをそのままという趣旨ではないとは思うのですけれども,出す場合にはやはり具体的に示して意見を聞くのが一番よろしいのではないかということでございます。  刑事事件関係書類についてですけれども,これは4号ホで一律に一般義務から除外しているわけですけれども,これについて弁護士会の意見はA案にあるような,これは削除であるという考え方ですが,ただ今回のA案には少し,いわゆるプロテクティブオーダーというか,関係人の名誉とか,生活の平穏を著しく害するおそれがあるものについては,例えば,提出は命じるのだけれども第三者に開示しないようにとかいう保護措置を裁判所が命じることができるというようなものを付加して,削除をするということが考えられるのではないかと思います。この辺はまだ弁護士会の正式な議論を経ているものではありませんので,私個人の意見,案としてA案を出させていただいております。  それから,もう一つはB案というような形で,刑事事件関係書類については,特に事件関係人のプライバシーだとか名誉といったものに深く関係する文書が多いということに着目するならば,一応除外をするのだけれども,こういう名誉,生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあるものについてだけ一般義務から除外するということが考えられるのではないかと思います。  その後の(注)の中の4号「ニ」は,「ロ」の間違いです。「4号ロ」です。捜査等の支障については,4号ロで処理されるということです。  もちろん,現行規定のままという御意見も強いと思いますので,C案という形で出すというようなことです。  この点については,従来ヒアリングで,実態として必要な書類はかなりいろいろな法制度によって,あるいは検察庁の取扱いによってかなりのものが利用されているという御説明がありました。そういう御努力については非常に敬意を表するものでありますけれども,なお相当数のものが利用できないということがありまして,それが裁判に利用すべきものなのかどうか,出されるべきものなのかどうかというのは,やはり民事訴訟の受訴裁判所が判断できるようにすべきではないかというふうに考えるわけであります。  それからもう一つ,自己利用文書の除外の件について,これは従来の議論で私自身B案のように提案させていただいておりますし,A案のような考え方もあると思いますし,また最高裁の判決,今後の判例を待つべきだというC案という考え方もあろうかと思いますので,具体的に意見が出てくるようにということで,このような案を示して聞いたらどうか,こういうことでございます。詳細は前にもう意見を述べておりますので,省略させていただきます。 ● この○○委員の御提案も含めて,この問題について御意見を賜りたいと思います。前回,刑事局あるいは訟務部門等から資料を御説明いただいたわけでございます。また弁護士会からも具体的な資料をいただいたわけですけれども,そのときのこの部会の印象は,双方から出された資料が随分正反対の印象を受けたという方が多かったと思いますけれども,そちらの資料の,つまり実情の確認ということも含めて,何か御意見を賜わればというふうに思っておりますが,いかがでしょうか。 ● 弁護士会からの釈明ですが,御指摘いただいた点は,いつのデータであるかということを調べるように言っておりまして,それは御報告できるようにしたいと思っております。ただ,私自身の個人のコメントとしては,日弁連のものはアンケートですので,それにかかわった人全部が,全数が出てくるわけではございませんので,そういう意味では統計的には非常に偏ったというか,問題事例だけが挙がっているということがあろうかと思います。ただ,多分利用できなかったケースというのは,かなりそこには挙がってきているのだろうと思います。  それと,法務省等が御説明になっておられる,つまり非常に率としては少ないのですけれども,利用できなかったというケース,実数としてはそんなに,大ざっぱで申し訳ないのですけれども,多分違わないのかなという印象を持っております。 ● ほかに,何か御意見ございますでしょうか。  パブリックコメントに付す案をどういう形で作るかということを,これから事務当局で検討していかなければいけないわけですけれども,それについて御意見を賜ればと思っておりますが。 ● ○○委員のこれでいいかどうかは別として,やはり抽象的に見直す必要があるかというのじゃなくて,意見が出やすいような形の質問というのでしょうか,まとめがよりいいのじゃないかと思います。 ● ほかに御意見,どうでしょうか。 ● 実情につきましては,前回,あるいはそれ以前に御説明したとおりなんですが,今,○○委員の方からお出しになった考え方というのは当然あり得るところだと思うのですが,そういう考え方を採った場合に,例えば,確定記録の問題ですと,確定記録について開示決定に不服があれば,そこはそこで裁判所で決着がつくことになっているわけですね,準抗告をされて,裁判所がもうそこで開示・不開示の決定もされると。更にそこでは,もう出せませんよと,開示はしませんよと,民事訴訟に出す必要があるという理由でも,それは無理ですよと,こうなった後でも,更に民事訴訟の中で文書提出命令がかけられるのかどうかという問題もあるように思われるのですね。もちろん,それだけではないのですが,そういった全体の法制度といいますか,整合性というか,そういうものも加味して中間とりまとめをどういうふうにしていただくのかということも考えていただいた方がよろしいのではないかと思っております。 ● 今の御指摘ですが,それは例えば,普通の公務文書についていうと,情報公開法と文書提出命令制度との関係と同じではないかと,パラレルに考えられるわけですから,別におかしいことではない。刑事確定訴訟記録法の手続があり,また民事訴訟について文書提出命令の対象になるということはおかしいことではないと思いますが。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。  この問題は,前から引き続いておりまして,平成13年の改正で3年を目途に見直すということで,まだ3年がたっていないわけでございまして,実績がこの前の資料でどの程度出てきたのかということについても,まだこれで平成13年改正後の実績が十分出てきたかという点については,まだ十分私自身も分からないというような状況でございまして,どういう形でパブリックコメントにこの問題をかけるかというのは,事務当局としてはこの部会の御意見をお聞きして態度を決定したいというふうに考えているところでございますので,何か更に御意見があれば承りたいと思いますし,次回に延ばせといえば,また次回にさせていただいてもよろしゅうございますが。  ○○委員,何か御意見ございますでしょうか。 ● できたらもう一歩前進していただきたいというのは,「何らかの見直しをするかどうかについては,なお検討する」と書かれると,全然進んでいないような気がしますので,その方向付けみたいなものでも幾つか出して,こういう方向で検討するがどうかというような聞き方をされた方がいいのじゃないかと。今の原案のままだと,何となく先送りになってしまって,今回はしないというのですが,そのぐらいでよろしいか,もうちょっと前進した方がいいのじゃないかなという気はしますけれども。 ● 一言だけ,事務当局の方から申し上げさせていただきたいと思うのですけれども。  先ほど,○○関係官の方から,刑事の法制度との整合性というような御議論もございました。ただ私ども事務当局としては,まずは附則に書いてありますとおり,利用状況を踏まえてそういう見直しについてどういうふうに考えるのかということをまず考えなければいけないかなと思っていたわけでございます。そういう点で,先ほど部会長からお話がありましたとおり,今現在,率直に前回のヒアリングで利用状況はどう評価できるのかにつきましては,いろいろな見方もあって,いろいろな意見もあるかと思います。ですからちょっとそういう点を,むしろ今後詰めた議論をしていって,やはりこういう点で現在の利用状況が足りない部分があるのではないかという議論をしていくのも一つの在り方として十分考えられるのではないかと思うのです。  事務当局が,現在こういった形にしておりますのは,どうもその辺のところが事務当局としても何とも明確でないものですからこんな形になっているということで,そういうことをとりあえずひとまず置いて,制度論的な法律的な手当てというようなものを議論するのがよろしいのかどうかという点につきましても,ちょっと御感触なりいただければ有り難いかなと思いますけれども。 ● この利用状況ということの意味なんですけれども,他の制度で九十何%出ているからもう改正しなくていいじゃないかというふうなことをお考えなのか,それとも,利用というものはそういうものを民事訴訟で必要とすることが多い,しかも10%いくかいかないかとはいえ,利用できていない場合がある,そういう場合について文書提出命令の中で裁判してもらう機会を設けるべきではないか,そのどちらをお考えなのか。私は,後者じゃないかというふうに考えて,基本的には○○委員の方の御見解に今のところは賛成,そちらの方が説得力があるのじゃないかと思っているのですけれども,いかがでしょうか。 ● 私も,基本的には後者のような場合についてどのように考えるかも御議論いただきたいと思っておりますが,ただ,そういうことを考えるに当たっては,例えば,前回の御指摘を踏まえますと,改正法の施行後に,では具体的にどういうようなものが出なかったのかというようなことをいろいろ御議論していただいて,それはやはり出るようにすべきなのかどうかというような,そういう御議論をしていただく,それが○○委員のA案,B案,C案という議論の中でそれをすればいいという御趣旨であれば,そういうこともあわせて図られるのかなという感じもしますけれども,実質的にはそういう議論をしていくのが相当なのではないかなとも思っている次第でございます。 ● ほかに,何かございますでしょうか。  それでは,自己利用文書の方はいかがでしょうか。これは,部会資料としては(後注)に書いてあることでございますけれども,○○委員の方からは具体的な御提言をいただいたところでございます。  それでは,御意見がございませんし,時間もこんなことでございますので,今日はどういう方向性があったという取りまとめはこの段階ではできないと思っております。それで,もう1回,夏休み前に機会がありますので,その際に,更にもう少し事務当局の方で検討させていただきまして,また御意見を伺うということにさせていただきたいと思いますが,それでよろしゅうございますでしょうか。  3の方は「その他」ということでございますが,管轄の合意を仲裁法案に合わせる形で電子的な方法でやるというようなことについては,こういうようなことでパブリックコメントの方に載せていくというようなことでよろしゅうございますでしょうか。--  それでは,大変時間が超過して恐縮でございましたけれども,本日の審議事項はすべて終了いたしましたので,最後に○○幹事の方から事務連絡をお願いいたします。 ● 次回の開催予定でございます。次回,第5回は8月1日金曜日でございます。場所は法務省の1階,東京保護観察所会議室でございます。 ● それでは,本日の部会はこれにて終了いたします。長時間にわたりましてどうもありがとうございました。 -了-