法制審議会 民事訴訟・民事執行法部会 第6回会議 議事録 第1 日 時  平成15年9月12日(金) 自 午後1時03分                      至 午後4時20分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  民事訴訟法及び民事執行法改正に関する要綱中間試案(案)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 定刻が参りましたので,民事訴訟・民事執行法部会第6回会議を開催させていただきます。   いよいよ要綱中間試案を御決定いただくことになりましたが,そのために大変盛りだくさんな内容になっております。どうぞよろしくお願いしたいと思います。   それでは,早速本日の議事の進め方等につきまして,○○幹事から御説明をお願いいたします。 ● それでは,まず資料の確認でございますけれども,事前に部会資料6「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱中間試案(案)」をお配りしております。本日は,この資料に基づきまして御審議いただきまして,中間試案を御決定いただければというように思っております。   なお,この中間試案の公表,そしてパブリックコメントにかけるに当たりましては,事務当局の責任におきまして補足説明を作成して,併せて公表するということにしております。補足説明は,準備ができますれば本日のこの席上にお示ししたいと思っていたわけでございますけれども,大変申し訳ございませんが,事務当局の作業が遅れてしまいまして,本日,席上にお出しすることができなくなっております。中間試案の内容の説明につきましては,私の方から口頭で補足させていただければと思っておりますので,申し訳ございませんが御了承いただきたいと思っております。   なお,議事の順番でございますけれども,都合上,前回と同じように民事執行法の関係から始めていただきまして,それが終わりましてから民事訴訟法関係という順番にさせていただければと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● それでは,本日もただいま○○幹事からお話がありましたように,審議事項の関係で,部会資料6の5ページ,民事執行法関係から始めることにしたいと思います。   まず,部会資料6の第2の1「少額債権のための債権執行制度」につきまして,○○幹事から資料の御説明をお願いいたします。 ● それでは,第2の1「少額債権のための債権執行制度」でございます。   (1)でございますが,簡易裁判所において少額債権のための債権執行制度を創設するものとするというものでございます。前回の資料と,ここのところは基本的に変わっておりません。   (注)に,確認的に,この制度を利用できる場合であっても,なお地方裁判所における通常の債権執行手続も利用できるものとするということを記載しております。   続きまして,6ページの(2)でございます。「少額債権のための債権執行制度を利用できる債務名義」は,少額訴訟における確定判決等の少額訴訟に係る債務名義とするものとするという形で,中間試案でお出ししてはどうかということでございます。   そもそも債権執行といいますのは,やはり本来的には定型的な処理になじむものということになりますと,地方裁判所で一括して行うことが合理的ではないかというように思われるわけでございます。そこで,少額債権のための債権執行制度というものを設けるといたしましても,それを利用できる債務名義の範囲については,やはりその必要性が高い,ニーズが高いものに限るのが相当ではないかというようにも考えられるわけでございます。そうしますと,この6ページの(注)にありますとおり,少額訴訟といいますものは,一般の市民の方が紛争額に見合った経済的負担で迅速かつ効果的な解決を求めることができる,そのための制度である,そのような少額訴訟の趣旨からしますと,少額訴訟の利便性をより向上させ,迅速かつ効果的な権利実現を図るために,執行段階においてもこういった特別の手続を設けることについての必要性,あるいは合理性があるのではないかということでございます。   ただ,これ以外に何かほかに必要性,合理性がある債務名義があるかどうかという点につきましても,なお検討するということで(注)のところで書いたものでございます。   それから,(3)でございますけれども,「少額債権のための債権執行制度における執行裁判所」でございます。   この執行裁判所につきましては,今申し上げましたような趣旨,より身近な簡易裁判所にアクセスできるということになりますと,少額訴訟を取り扱った裁判所,すなわち少額訴訟の受訴裁判所とすることが考えられるのではないかというのが本文でございます。   ただ,(注)のところにありますとおり,現在,債権執行は債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所でやっている,これは債務者の利益を保護するためという説明がされているわけでございますけれども,そういうことから考えますと,債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に移送することができる,こういうようにしたらどうかということも考えられますので,この点についてはなお検討するということにしております。   今のような考え方に対しましては,もしこの範囲が少額訴訟の債務名義となるといたしますと,当然のことながら被告の方には少額訴訟から通常の手続への移行の申述権というものが認められているわけでございます。したがいまして,結果的に被告がこの移行申述権を行使しないで,少額訴訟手続による解決ということを了承したということになりますと,いわば執行段階についても少額訴訟の受訴裁判所で行う制度とされていることをも前提にして移行申述権を行使しなかったということもできるわけです。そうであれば,債務者においてもその点を了承している,すなわち債務者の利益を害することにはならないのではないかとも考えられるわけでございます。そういうことも併せ考えまして,この点についてはなお検討するというようにさせていただいているという次第でございます。   次に,(4)でございますけれども,「少額債権のための債権執行制度における執行裁判所の権限」でございます。   こちらの方は,基本的には前回の部会資料と内容的には変わっておりません。ただ,書きぶりが変わっておりまして,まずアの方で,執行裁判所の権限は金銭債権に対する差押命令を発すること,それから弁済金の交付をすることであることを書きまして,それから差押えが競合し又は配当要求があったため配当を実施しなければならない場合には,地方裁判所に移送するものとする,移送の方をイというように,アとイというように書き分けているというものでございます。   また,アの(注)にありますとおり,転付命令の点につきましても(注)で明らかにしております。   アの本文でございますけれども,転付命令の点につきましては前回の部会でも御議論があったところでございます。ただ,手続の流れから見ますと,やはり換価手続という部分につきましては,差押え段階に比べますと,困難な判断を要する部分が多いのではないかというようにも思われるところでございます。そこで,試案の本文では,換価手続は簡易裁判所では行わない,こういう考え方のもとにこの差押命令と弁済金の交付ということを認めているわけでございます。もし少額訴訟に係る債務名義を取得した債権者に,簡易・迅速な手続による債権執行を認める,こういったような制度の趣旨からいたしますれば,こういった差押命令と弁済金交付を認めるということで,そういった趣旨は満たされるのではないかとも思われるところでございます。   ただ,転付命令につきましては,前回の部会でも御議論があったものですから,この試案では(注)のところで,もし転付命令を望む場合には,地方裁判所に対して通常の債権執行手続を申し立てることになるということを確認的に,注意的にはっきりと明示しております。したがって,こういうところにつきましても御意見をいただきやすくなるのではないかと思っているところでございます。   それから,7ページの(注)でございますけれども,配当を実施しなければならない場合に,どの地方裁判所に移送するものとするかについてはなお検討するということでございますけれども,こちらの方も前回の部会資料と内容は変わっておりません。現行法では,複数の執行裁判所が差押命令を発したという場合には,実務上は最初に差押命令を発した執行裁判所に移送する,こういった扱いになっているわけでございますけれども,そのような考え方に沿って考えるのか,それとも,例えば,簡易裁判所の差押命令と,それから地方裁判所の通常の債権執行手続による差押えが競合した,こういうこともあるわけでございますが,そういうようなことがあるということも考慮しますと,むしろ債務者の利益保護の点から通常の債権執行手続であれば,管轄を有すべき地方裁判所,あるいは,最初に差押命令を発した地方裁判所に移送する,こういったような考え方もあり得ようかと思います。そこで,この点につきましてはなお検討するということで(注)に掲げているものでございます。   それから,7ページの(5)でございますけれども,「その他」でございます。ここも基本的な内容は,前回の部会資料と変わっておりません。   この少額債権のための債権執行制度の手続の簡易・迅速化を図るということでございますけれども,例えば,この執行裁判所の権限を,先ほど申し上げましたような範囲ということにいたしますと,なかなか手続の面で,省略すべき手続を見い出すことが難しいようにも思われます。そこで,より簡易・迅速にするということの手当てとしましては,裁判所書記官が手続を行うということが考えられるわけでございます。ただ,この点につきましてもいろいろ御意見があろうかと思いますので,試案ではなお検討するという形で意見をお聴きしたいというように思っております。 ● 前回の部会資料は,本文を全部並べた後で注が並んでいたということでございますが,今回はより見やすく,各本文に見出しを付け,そして本文が終わったところにそれの注を加えているということでございます。実質的に前回の資料と変わっているというのは,先ほど御説明があったところでございますが,6ページの(4)のアの(注)を説明的に加えたということ,この点であろうと思います。ほかは実質的な相違点はないというように私は思っておりますが,どの点からでも結構でございますので,どうぞ御意見を承りたいと思います。   前回,(4)のところで,簡易裁判所である執行裁判所の権限として,差押命令を出す,それから弁済金の交付をするというこの点について,これだけでいいのか,転付命令はどうなるのかという御意見が出たところでございます。試案としてはこういう形でまとめて,パブリックコメントにかけて,またその御意見を聴いてから審議するということでどうかというのがこの原案でございますけれども,しかし,なお御意見があれば承りたいと思います。   特に御意見がなければ,先に進ませていただいてよろしゅうございますか。--それでは,この点は御了承いただいたということで先に進ませていただきます。   それでは,次が7ページの2「不動産競売手続」,そのうちの(1)だけをまずやりたいと思います。「最低売却価額制度」でございます。まず御説明をお願いいたします。 ● 最低売却価額制度でございますけれども,この点につきましては,従来この部会でもいろいろ御意見を承ったところでございます。この制度につきましては,本来,不動産の価格形成というものは,競売市場における市場原理に委ねられるべきだ,国が売却価額というものを規制することは相当ではないといったような御意見,あるいは,落札価額が市場価格を下回るというのは,むしろ所有者が競売手続の円滑な遂行に協力しないということが主な原因ではないか,そうすると,所有者の利益保護を図るという必要はないのではないか,あるいは,債権者の保護ということについては,自己競落の機会が保障されているから,その債権者の保護も確保されているのではないかということで,最低売却価額というものはあまりこれを維持する合理性がないのではないかと。もし仮に,債権者等の保護のための措置が必要というのであれば,最低売却価額を定めるか否かというものを債権者が選択できる制度にすべきである,こういったような意見があるわけでございます。   ただ,担保・執行法制部会でもこの点は御議論があったわけでございますけれども,その部会では,この制度があるために不動産競売手続が円滑に進まない,こういう実情にはないのではないか,またこの制度は,所有者,債権者の利益の保護を図るためのものであって,この制度をなくしますと,不当な安値で落札されて,所有者あるいは債権者の利益を害するおそれがあるのではないか,また特に我が国の現状からいたしますと,執行妨害というものが根絶されていない,やはりこういったもとで最低売却価額制度をなくしますと,様々な手段を用いまして買受希望者の出現を妨害する,それによって不当な安値で落札しようとする,こういう者が増えるのではないか等々の意見がございまして,この制度を廃止することにつきましては,消極的な意見が大勢を占めたわけでございます。そういうことで,担保・執行法制部会では,要綱案にはこの提案は盛り込まれなかったわけでございますけれども,更に時間をかけて検討することが必要だというように考えられたわけでございます。   今回のこの部会でも,最低売却価額制度につきまして,まず現状についてのいろいろな御意見,あるいは,御議論が行われていたわけでございますけれども,現在の状況を考えますと,東京とか大阪では80%前後の売却率であると,ただ地方部ではなお低い売却率にとどまるところもある,しかしながら,その売却ができない理由としましては,競売不動産自体がおよそ競売による売却の可能性がないものである,あるいは,もともと地方部では,競売市場自体が成熟していないのだということ,あるいは,中には最低売却価額が適正な市場価格を反映していない場合もあるのではないか,こういったような指摘がされてきたわけでございます。   特に,執行妨害の実情につきましては,現在の手口は非常に巧妙になってきており,なかなか保全処分ですとか警察による摘発がしにくいといったような事例が増えてきていると,そういった中で,最低売却価額制度を廃止しますと,買受希望者を排除して,非常に安い価額で落札して,非常に多くの転売利益を収受することになるのではないかというような意見が出されたわけでございます。   そういったような,これまでの議論の経過を踏まえまして,今回の試案では,三つの案を併記させていただきまして,意見を求めることにしてはどうかということを掲げてございます。   まず,A案でございますけれども,最低売却価額制度については現行制度のとおりとするという案でございます。   この案は,執行妨害が根絶されていない,こういう現状等にかんがみますと,やはり所有者,あるいは,債権者の利益というものを保護する必要があるので,最低売却価額制度を維持する必要があるという,そういう案でございます。   ただ,この案は,競売手続において現在生じている問題は,むしろ最低売却価額が適正な市場価格を反映していない,そういう事例があるという点にあるのではないかということでございまして,つまり,最低売却価額制度を見直す,あるいは,代替的な機能を設けるというよりは,むしろそういう評価制度の在り方,これを検討すべきではないかというような考え方でございます。   なお,この評価制度の在り方の問題につきましては,資料の8ページの(後注)のところに掲げてございます。   これに対しましてB案でございますが,やはり最低売却価額というものを基本的に維持する,しかもその最低売却価額の機能,債権者,所有者等の保護の機能も維持する,こういうことをねらった案でございます。   この案には,最低売却価額制度が有している基本的な機能については積極的な評価をしつつ,なかなか現在の手続では売却が困難である,こういったような競売不動産の売却を促進する,こういうことができるようにするために,債権者等に競売手続の選択の余地を認める,その選択によって最低売却価額に達しない買受けの申出も認められるようにすべきである,こういう考え方に立つ案でございます。   現行法でも,売却によって生じます競売不動産上の権利の変動につきまして,利害関係を有する者が法定の売却条件と異なる合意をした,こういう届出をしたときは,その権利変動はその合意に従うとされております。それと同じような考え方に立ちますと,最低売却価額を定めることにつきまして,利害関係を有するすべての者の同意があるときは,最低売却価額に達しない買受けの申出を認める合理性もあるのではないか,そうすることによって,最低売却価額が果たしている所有者,債権者の保護の機能,こういうものも代替されるのではないかというような考え方でございます。   そうしますと,最低売却価額を定めることについて利害関係を有する人とは一体どういう範囲であるかということが問題になるわけでございます。この案では,アでございますが,「最低売却価額で売却されれば配当又は弁済金若しくは剰余金の交付が受けられるすべての者の同意があるときは」というようにしてございます。すなわち,債権者でございますけれども,最低売却価額で売却がされれば配当又は弁済金が受けられる債権者は,もしそれに満たない額で売却がされますと,自分の配当額が減る可能性があるわけでございます。そうしますと,こういった債権者がやはり利害関係を有するのではないかというように思われます。   ただ,この債権者の点につきましては,すべての債権者というように考えるのか,あるいは,最低売却価額を定めることについて利害関係を有しているのは,この不動産について優先弁済権を有する担保権者だけではないかというような考え方もあろうかと思います。   次に,所有者につきましては,最低売却価額が定められますと,少なくともその価額で売却されることが保障されるわけでございますので,当然利害関係を有しているということになろうかと思います。このうち,最低売却価額で売却された場合に,所有者も剰余金の交付を受けるというような場合になりますと,これは債権者と同様の利害関係を有することになると思われますので,ここでの同意権者の中に入れるというものでございます。   ただ,所有者の中でも剰余金の交付を受けることができない所有者もいるわけでございます。こういう所有者につきましては,最低売却価額に達しない買受けの申出を認めることにつきまして積極的に同意をするという場面は,恐らく少ないのではないかというように思われます。そこで,このB案では,イといたしまして,このような所有者につきましては,同意を不要とした上で,売却が実施された結果,最低売却価額に達しない価額で落札されたときは,落札価額と最低売却価額の差額分の債権は消滅する,こういったような代替措置を講ずるというようにしてございます。   なお,所有者が物上保証人であるというような場合になりますと,債務が消滅しますのは債務者でございますので,そのことによって直接所有者が保護されるということにはならないというように思われます。ただ,その債務消滅は,やはり自分の所有物に対する担保権が実行されたということによるものでございますので,恐らく所有者には,最低売却価額分について,債務者に対する求償権が生ずるのではないかというように思われます。そういうことを通じまして,その所有者の利益も保護されるというように考えられるわけでございます。   ただ,このB案のイのような措置を講ずるということになりますと,こういった実体法上の債権の消滅という効果をどのような理屈で説明するのかという点につきましては,なお今後検討する必要があるのではないかと思われます。   それから,(注1)でございますけれども,もしこのようなB案のような考え方に立ちますと,最低売却価額が定められてから利害関係を有する債権者等に同意をするか否かを判断する機会を与えるということが考えられるわけでございます。ただ,そういう手続を検討するに当たりましては,不動産競売手続全体が遅滞することがないようにする必要があるのではないかというように思われます。また,この同意権者でございますけれども,最低売却価額で売却されれば配当等を受けられる債権者等ということになるわけでございますけれども,あくまでもこれは最低売却価額が定められた段階,すなわちそれぞれの債権の見込額に基づくものでございますから,その段階では利害関係を有しないとされた債権者等,すなわち,あなたには同意権はありませんとされた債権者等につきましても,実際は本当は私も同意権者なのですというような形で不服申立てを認めることも検討する必要があるのではないかというように思われます。   また,このように債権者等の同意によって最低売却価額に達しない買受けの申出を認めるとした場合に,一体,手続のどの段階まで,同意によって今のような申出を認めることができるのかといった,時期の問題も検討する必要があるのかなというように思っております。   そこで,以上のようなことも含めまして,(注1)では,こういう案を採るのであれば,やはり不動産競売手続全体を遅延させることがないようにする手当ても講じなければいけないのではないかということを指摘しているものでございます。   なお,そのほか,この案につきましては,債権者あるいは所有者の利益はこれで保護されるとしても,執行妨害を助長するおそれがあるのではないかという御指摘もあるところでございます。それに対する措置というものをどのように考えるか,講ずるかどうか。あるいは,もう一つの問題としまして,債権者が同意をすればこういう制度ができる,それによって債務が消滅するというわけでございますけれども,例えば,租税債権のように,法律で決められた要件を満たさない限り消滅しないといったような債権もあるわけでございます。そのような類型の債権との関係をどう整理するのかといったような問題点もあろうかと思います。   ということで,B案につきましても,なお注に書きましたようなもろもろの点が検討されるべきではないかというように思っております。   なお,(注2)は,先ほど申し上げました本文のイの趣旨というものを確認的に記載させていただいたというだけでございます。   続きましてC案でございますけれども,C案は最低売却価額制度を基本的には維持しない,すなわち,買受けの申出の額について制限を加えないということを原則とする,ただし,第一順位の抵当権者の申出によって参考価額に達しない買受けの申出を認めないということもできるというようにするものでございます。この考え方は,最初に申し上げましたとおり,不動産の価格形成は基本的には市場原理に委ねられるべきだ,こういう考え方に基づくものというように思われます。   まず,C案のアというところで,参考価額を定めるものとしてございます。   この参考価額の趣旨につきましては,8ページの(注1)に書いてございます。すなわち,最低売却価額とは違うものである,買受希望者に適正価格に関する情報を提供する機能,それから,剰余を生ずる見込みの判断等の基準となる機能のみを有するものだというものでございます。   なお,この剰余を生ずる見込みの判断等の基準となるという点につきましては,参考価額ということになりますと結果的には,それ以下,それに満たない額で売られてしまうことになるわけでございますので,剰余を生ずる見込みの判断等の基準となる機能を有したとしても,結果的に無剰余との関係をどうするかという点についても検討すべきではないかという意見が部会でも出されていたものでございます。   次に,C案のイでございますけれども,第一順位の抵当権者の申出によりまして,参考価額に達しない買受けの申出を認めないものとすることができるというものでございます。すなわち,この案は,第一順位の抵当権者が競売不動産の売却価額については最も強い利害関係を有している,したがって,この者に申出権を認めれば,その他の利害関係者については後で申しますウといったような措置を講ずれば足りる,こういう考え方でございます。   ただ,この考え方に対しましては,第一順位の抵当権者に限定する合理性はないのではないか,特に,例えば,第一順位の抵当権者の有する債権の額が小さい,参考価額を大幅に下回るというようなことになりますと,むしろ第一順位の抵当権者は売却によって自分の債権の全額の満足を得られるということが見込まれるわけでございまして,そうすると競売不動産の売却価額に対する利害関係というのは,それほど強いものとは言えないのではないかといった御指摘があったところでございます。   最後に,C案のウですけれども,債務者ですとか抵当権者は,一定期間内に落札価額を超える価額での買受けの申出をすることができ,そのうちで最も高い価額を申し出た者を買受人とするという案でございます。これは,落札価額が不当な安価であるというように判断した債務者,抵当権者等に対して,その保護を与えるための方策でございます。   ただ,この点につきましても,例えば,債務者につきましては不動産競売手続を実行されている,こういう場合でございますから,資力がないことが通常ではないか,そうすると,結局,落札価額を上回る資金を供出するということは事実上不可能である,そうしますと,その利益を実質的に保護したことにはならないのではないかという御指摘があったところと思います。   また,債務者,それから抵当権者等の利益をより図るということになりますと,買受けの申出をすることができる期間を長くするということが考えられるわけでございますけれども,これを長くすれば長くするほど,今度は買受人の地位が不安定になるということになります。そうしますと,むしろ買受希望者が減るということになって,競売市場が狭まる,結果的に落札価額が低下することにつながるおそれがあるわけでございます。   また,執行妨害を行っております反社会的勢力が,こういったような買受けの申出という制度を設けますと,そういう制度を利用して,買受けの申出をする権利を有する者に資金を与えて,この制度を利用する,こういったおそれがあるのではないかといったような問題点も指摘されているところでございます。   (注1)は,先ほど申し上げました参考価額の趣旨をここで説明的に書いたというものでごさいまして,(注2)につきましては,先ほどウのところで説明しましたとおり,C案につきましては買受けの申出をすることができる期間をどうするかという点が非常に難しく重要な問題になりますので,この点についてはなお検討するというようにしてございます。   次に,(後注)でございますけれども,評価制度の在り方に関するものでございます。   先ほども申し上げましたとおり,評価が不適切で,最低売却価額が適正な市場価格を反映していない,そういうことによって売却することができなかった事例があるといったような指摘がされているところでございます。特に,山林ですとか,あるいはリゾート地については,その評価の方法に問題があって,最低売却価額が大幅に実勢価格と乖離している,こういう事例もあるといったような指摘もされているところでございます。そこで,最低売却価額制度の見直しにつきまして,A案からC案,いずれを採用したといたしましても,それとは別に,売却率を向上させるというためには,やはりこの評価制度の在り方というものを見直す必要があるのではないかというようにも考えられます。そこで,この評価制度の在り方を見直すべきであるとの指摘に対する方策については,なお検討するということを(後注)で掲げさせていただいているというものでございます。   ということで,最低売却価額制度につきましては,これまでいろいろ御意見がございましたけれども,今言いましたようなA案・B案・C案という形で,三つの考え方というものを挙げまして,御意見を伺いたい,またそれぞれA案・B案・C案において,今申し上げましたような検討すべき点については,補足説明の方で説明させていただきたいというように思っているものでございます。 ● 最低売却価額制度については,様々な意見が出されているところであり,この部会におきましても第三回にヒアリングを行ったところでありますけれども,まだこの段階で一つの案に絞ることは困難であるということから,今回,A・B・Cという三案を提示したところでございます。   前回は,ア・イという形で最低売却価額制度を維持するという考え方と,それから参考価額制度というものを並べまして,口頭で現在のB案を御説明させていただいたところでございますけれども,そこでの議論を踏まえて,A案・B案・C案という形で整理してお出ししたのが今回の案でございます。今,○○幹事から御説明がありましたように,いずれの案につきましても,更に詰めていくべき問題点は多々ある,それは事務当局も十分承知しているわけでございますけれども,それをすべてこの注なり何なりに書くということになりますと,パブリックコメントにかけてなるべく多くの意見をいただくには,あまりにも煩雑になるということもありますので,こういう形で整理させていただきましたけれども,まだ,こちらでも気が付いていない問題点等々あるかと思いますので,是非積極的に御意見を賜りたいというように思います。どなたからでも結構でございますので,よろしくお願いいたします。 ● 最低売却価額制度につきまして,何度も意見を表明させていただいておりますので,大変しつこい意見の開示になるのかと思いますが,少々お時間をいただきたいと思います。   この問題につきましては,弁護士会内で,直前に,更なる意見聴取を関連委員会の中でして参りました。その中で,大変有力な主張として参考になるであろうという考え方についてお話をさせていただきたいと思います。   まず,冒頭,事務当局から御説明のありました,最低売却価額制度の根本的な問題点としての市場原理に価格を委ねるべきであるということについて,有力な意見として,その問題と最低売却価額制度の問題とは少しく次元が違うのではないかという意見が開示されましたので,若干御説明させていただきたいと思います。   言わずもがなのことでありますけれども,札が競争によって最高価になったところで価額というのは形成されるのだと思いますが,厳密に言いますと,最低売却価額は比喩的に言えばそれを下支えしているのであって,最低売却価額が市場原理を誘導しているとか,そのものであるということではないのだろうというように思います。   といいますのは,例えば,「判例タイムズ」の1075号という,これは昨年の文献なのですけれども,東京地裁限りにおいての資料ですが,札が三つ以上入るものについては最低売却価額を130%超えるところで価額が形成されているという実態があるようでございます。こういうことを踏まえますと,最低売却価額が市場原理を削っているとか,ゆがめている,若しくは実際には違うのだけれども最低売却価額を先導,ミスリードしている,こういう実態はないのではないか,こういう意見が出されました。   それから,この中間試案の関係でいいますと,先ほど詳しく説明していただいたB案というのが,恐らく前回までの議論にない詳細な案として注目されるべき案だろうと思うのですが,この案についての詳細な手続の仕組み方については,事務当局から御説明していただいたとおりだと思うのですが,やはり根本的に問題だと思うのは,確かに,最も利害を有する者である最低売却価額によって配当を受ける者の同意という手続を仕組むことについては,例えば,C案の第一順位の抵当権者の同意というよりは,一歩も二歩も進んだ手続だろうと思うのですが,しかし,そうやって利害関係人の利益に配慮した手続を仕組んだとして,結果として何が起こるかということを考えますと,この同意がとれて,入札を募った,そのときに当然最低売却価額のハードルはないわけですから,その瞬間に大変な執行妨害を仕掛けていくということが十分可能なわけで,執行の現場の感覚からしますと,これを大掛かりにやるだろうというように執行妨害者の実態を見ていると予想するわけです。これは想像に難くないと思います。   そうしますと,利害関係人の同意ということでハードルを外すことは筋が通ったとして,裁判所が売りに出す手続として,執行妨害者に大きな利益,不当な利益が渡るということを認めてしまっていいのか,手続の仕組み,関係者への調整とは別に,結果として批判をされるのではないかというところを強く懸念するところであります。それは競売妨害罪の摘発等でやればいいことであって,最低売却価額制度の廃止と関係がないのだと言い切れるのかどうか,当然のことながら,個別的な検挙ということと,一般的に大変な数が競売事件に持ち込まれて売れていく過程の中でそういうことが起きるわけですから,すべての問題を刑事検挙で拾い上げることはできないわけでして,この問題について大変大きな懸念を持つわけであります。   そして,最後に一つだけ申し上げたいのは,これは弁護士会内の議論でもあったのですが,前の担保・執行法制部会での議論にあった,短期賃貸借という制度の存廃については,廃止すべきだという立法事実は確かにあった。執行妨害の温床になっているという短賃制度について問題があった。しかし,この最低売却価額制度を廃止すべしという議論が本当に実務といいますか,現場に根差して,立法事実に立脚して主張されているのかどうかについて,会内の有力な弁護士の先生方から,そういう感触を持ち得ないという,大変強い意見が出ているのです。それは私も同感でありまして,何となれば昨今の不動産の競売の売却率の向上というのは,これまでも出ているとおり大変飛躍的なものがありますし,評価に時間がかかっているとも思えませんし,これは従来述べてきたことですから余り詳しく申し上げませんが,大変な改善の努力がされている。そして,先ほどありました山林だとか地方の物件についての売れにくいものについては,文字通り評価の問題にすぎないのであろうと思いますので,それをとらえて最低売却価額制度を廃止すべしという本当に大きな立法事実があるのかどうかというところも,この審議会は立法事実を尋ねる場ではないのかもしれませんけれども,その点についても疑問の声が上がったということを申し述べさせていただきます。 ● ほかにいかがでございましょうか。 ● もう既に議論があったのかもしれないのですが,これは不動産競売についてだけで,一般の不動産強制競売については適用しないということでしょうか。 ● それは適用するという趣旨でございます。 ● C案のイを見ますと,「第一順位の抵当権者の申出」というようなことがありまして,見出しも全部不動産競売のようにも読めますので。   もしそうなら,念のために「強制競売についても同じ扱いをするものとする」とか,何か付けておいた方がいいのではないかと思います。 ● 今の○○委員の御指摘につきましては,例えば,試案の本文の引用の条文の関係で何らかの手当てが更にできるかどうかは検討したいと思いますけれども,少なくとも補足説明ではもちろんその点ははっきりと書くというつもりはしておりますので,そういうことも含めて誤解がないように,事務当局で検討させていただきたいと思います。 ● ほかに特に御発言がなければ,この不動産競売手続の最低売却価額制度につきましては,このA案・B案・C案という形でパブリックコメントに載せ,細かな問題は先ほど○○幹事から御説明がありましたように,補足説明で誤解のないよう説明させていただくということで御了承いただけますでしょうか。--それでは,その点は御了承いただいたといたしまして,次に進ませていただきます。   次は,8ページの真ん中辺からでございますけれども,(2)「剰余を生ずる見込みがない場合の措置」,それから(3)「内覧制度」,9ページの(4)「入札期間中の取下げの制限」,(5)「差引納付の申出の期限」。この4項目につきまして,一括して御審議をいただきたいと思います。   まず,資料の説明からお願いいたします。 ● まず,(2)「剰余を生ずる見込みのない場合の措置」でございます。   基本的な中身は,こちらの方は前回の部会資料と変わっておりませんが,位置が変わっております。こちらの方が順番としては相当だということで,少し上に上げたというものでございます。   現行法では,こういった剰余を生ずる見込みがない場合に,競売手続を進めるということになりますと,そういうことは差押債権者にとりましても意味がないということになりますし,そのような場合でも不動産を失うということになりますと,債務者の財産権が不当に侵害される結果にもなるのではないか,そういうことで剰余を生ずる見込みがない場合には,競売手続を取り消さなければならないとしているわけでございます。   ただ,このような場合でありましても,もし不動産が売却されますと差押債権者は,その売却手続の実施までに支出しました手続費用につきまして,不動産の売却代金から弁済を受けられるということになりますし,また,もし最低売却価額が手続費用を上回って,優先債権者が配当を受けられるということになりますと,優先債権の額が減少する,そうすると,例えば,債務者がほかに財産を持っているということになりますと,その財産から弁済を受けられる額が増加する可能性が生ずるわけでございます。   また,債務者にとりましても,優先債権者が配当を受けられるということになりますと,自分が負担する債務の総額が減少するということにもなるわけでございますので,全くこういう場合でも手続を進める利益がないのかというと,そうでもないのではないかというように考えられます。   ただ,もちろんこういう場合でも,優先債権者の利益を害することはできないというように考える必要があろうかと思います。すなわち,自らは不動産の売却を求めていない優先債権者につきましては,もしこれで競売されてしまいますと,債権の全額の弁済が受けられない,にもかかわらず,この不動産上に存する権利が消滅させられてしまうということになりますと,そういった優先債権者の利益を害するということになるのではないかというように思われます。   もっとも,そういった優先債権者の方は,そういう自分の利益を放棄することは可能でございますので,自分の債権の全額の弁済が受けられない,そういう可能性があるにもかかわらず不動産を売却することに同意するというのであれば,売却手続を実施してもよいのではないかというように考えられるわけでございます。そこで(2)は,こういった優先債権者の同意があるときは,不動産の売却手続を実施することができるものというようにしております。   (注)のところが前回の資料から加わったものでございます。   (注1)でございますけれども,同意を要する優先債権者の範囲をどうするかという問題でございます。今,申し上げましたような趣旨で優先債権者の利益を保護するということになりますと,最低売却価額で優先債権の全額の弁済を受けられる優先債権者は,これはこのまま競売手続を進めても特段これで利益が害されるということはないのではないかというように思われます。そこで,そういった優先債権者を除いたすべての債権者の同意を要するとしてはどうかというのが(注1)でございます。   それから,(注2)でございますが,本文の考え方と,今申し上げました(注1)というものを併せて考えますと,結果的にはこうなるということを確認的に書いたものでございます。すなわち,最低売却価額が手続費用及び優先債権額の見込額と同額であるという場合には,(注1)でいきますと,同意を得るべき優先債権者がいないということになりますので,そのまま売却手続を実施することができることになるのではないかと思います。そうなりますと,この点につきましては,現行法の取扱いが変わるということになりますので,その点を確認的に書かせていただいたということでございます。 以上が,剰余を生ずる見込みがない場合の措置でございます。   それから,(3)でございますけれども,「内覧制度」でございます。   これにつきましては,ここにありますとおり,占有者の有する占有権原が差押債権者等に対抗することができない場合だけではなく,対抗することができる場合であっても,その占有者の同意なく内覧を実施することができるようにすべきであるとの意見があるが,どのように考えるかということで,このような意見があるということについての意見をパブリックコメントで求めるというような形にしております。また,こちらにつきましては,注で,今回の改正法の趣旨というものを明らかにしております。すなわち,差押債権者等に対抗することができる占有権原を有する者は,競売手続による影響を受けないのが原則であって,内覧を受忍すべき義務を課するのは困難であると考えられたことから,その同意がある場合に限り内覧を実施することができるものとされたという改正法の趣旨というものを,(注)で確認的に明らかにしているというものでございます。   この対抗できる占有者についても内覧の受忍義務を課すべきだという意見は,通常,その不動産を買う者は物件の内部を見てから買うものであって,占有者の権利の内容で区別するのはおかしいと,それから,執行官がきちんと秩序を維持して内覧を実施すれば,それほど占有者に負担がかかることもないのだ,こういったようなことを根拠にする御意見かと思います。   ただ,この御意見につきましては,この部会におきまして,やはり改正法では先ほど申し上げたような趣旨で対抗できる占有権原を有する者については同意を必要としているということとの関係を慎重に検討する必要があるのではないか,また,この内覧の手続につきましては,いわば買受けを検討している者が一堂に会する場ということになりますので,談合ですとか,あるいは,入札妨害を企てる者が悪用する,そういうおそれがあるのではないか,また,内覧制度の運用に際しましては,今言ったようなことを考えますと,非常に様々な配慮というものを必要とするように思われます。そうしますと,改正法の施行を待たずにこの内覧制度を拡充するというのは相当ではない,やはりこの制度の運用状況を見定めた上で,その拡充が本当に必要かどうかというものを検討すべきではないか,こういったような意見が出されているというところでございますので,そういうことも補足説明において説明したいと思っております。   (4)でございますけれども,「入札期間中の取下げの制限」でございます。   こちらの方も,基本的には前回の部会資料と変わっておりません。すなわち,現行法でいいますと入札期間が開始した後でありましても,開札期日までは差押債権者は自由に申立てを取り下げることができるということになっております。ただそうしますと,その間に入札した買受希望者の方は,その入札の時点までにいろいろと不動産の調査費用を支出したりとか,あるいは,買受けの申出の保証を提供しているわけでございます。そこで,この段階での取下げを自由に認めますと,そういった費用というものに関して損失を被るおそれがあるということで,手続の信頼性を害して,買受希望者を募ろうとする競売手続の目的や機能を損なうのではないかといったような指摘があるところでございます。   このような考え方を踏まえますと,入札期間の開始の日から買受人等が定められるまでの間は,取下げを認めないとするような考え方が出てくるわけでございます。 他方,現実には競売手続が開始されましても,例えば,債務者が不動産の任意売却をするということもありますし,あるいは,債務の一部を弁済するというような形で債権者に申立ての取下げを求める,こういったような実例もあるという指摘がございます。やはり不動産競売手続は,国家が強制的に債務者の不動産を売却するという手続でございますので,できるだけそういうものを抑制して,私的な解決というものを図るのが望ましいのではないか,そうしますと,そういう解決によって申立てを取り下げる機会というものを殊更現行法よりも狭めるという必要はないのではないかという考え方もあるところでございます。そこで,(4)では,そういう二つの考え方があり得ると思われますので,この点についてはなお検討するという形にしてございます。   それから,(注)も前回の資料と変わっておりません。ここに掲げました文書の提出ということがされますと,買受人等の利害が害されることがあり得るということにつきましては,債権者による申立ての取下げと同じ利益状況でございますので,もし本文のような手当てをするのであれば,こちらの文書の提出の時期についても同じように取り扱ってはどうかということを(注)に掲げているというものでございます。   それから,(5)の「差引納付の申出の期限」でございますけれども,ここも基本的な内容としては前回の部会資料と変わっておりません。現行法では,売却決定期日の終了までの間,差引納付の申出をすることができるとされておりますけれども,この差引納付の申出自体は,買受人がいったん代金全額を納付した上で,また更に配当等を受けるという二重の手続を回避するというものでございますし,また売却決定期日の終了までにこの申出がされた場合には,売却許可決定が確定したときに,代金納付期限の指定及び通知をすることなく,直ちに配当期日等の指定をすることができるというものでございます。このように,買受人の手続の二重化を回避するというようなものでございますので,支障がなければ,こういうことをできる限り広く認めるということが買受人の利益の観点からも望ましいのではないかと思われます。   また,実際上は,代金納付期限の指定及び通知は,売却許可決定が確定したときにするということになっておりますので,その時までに差引納付の申出がされることにすれば,現在と比べまして特に手続が遅延するということもないというように考えられます。そこで試案では,この差引納付の申出の期限は,売却許可決定が確定するまでの間できるというようにしたものでございます。 ● この(2)の「剰余を生ずる見込みのない場合の措置」につきましては,前回の資料と比べて位置が最低売却価額のすぐ後に来ているという点と,注をこういう形で加えているということが新たな点でございます。そのほかは資料と同じでございます。   この注でございますけれども,今,○○幹事の方から御説明がありましたように,現行法では剰余主義を採っているために,手続費用と優先債権を合わせたものよりも最低売却価額が1円でも高くなければ,それ以上は手続は進めない,そうなると,それ以下の場合,あるいは,同額の場合には,差押債権者にそのことを通知して,差押債権者がそれより高い額で売れるはずだという申出額を自分で定めて申し出まして,そして自分が買受人になれる場合となれない場合とで違いますけれども,一定の保証を積めば,手続を進めて売却までいくという手続になっておりますが,今回のこの案は,手続費用は超えていなければいけないと,しかし優先債権の方はそれを超えていなくても,配当が受けられない優先債権者の同意があれば--それが(注1)でございますけれども--そのまま売却してもよろしいと。   そうなりますと,手続費用と優先債権を合わせたものと,最低売却価額とが同額だったらどうなるか,従来の考え方ですとこれは剰余主義に反するという形で,先ほどのように差押債権者が何らかの申出をしなければ手続は進まないわけでございますけれども,今回のこの案では(注2)のところで,注意的に,そういう場合には売却の手続を実施することができると。これは現行法の解釈を前提として,こういう制度を採るとこういうことになるということを注意的に明らかにしたというのが今回の新たな注でございます。   ほかの内覧制度,入札期間中の取下げの制限,差引納付の申出の期間等についての資料は前回と同じでございますが,何か御質問あるいは御議論があれば承りたいと思います。 ● (2)ですが,優先債権の方は期限が未到来でも同意が要らない,こういうことになるのでしょうか。 ● 要るということですか,要らないということ。 ● 要らないのですかという質問なんですが。民事執行法88条で,非常に有利な利息が付いている,それで合意されているというような場合でも,弁済が強制されますね。それで,既に履行期が来ている場合と来ていない場合とで違うのかなと思ったのですが。 ● 民事執行法88条1項で,配当の場合にはそこで弁済期が来たものとみなすということになっておりますので,一応剰余の計算をする場合にも,配当がこのぐらいの時期にあるだろうということを想定して金額について計算しておりますので,その見込みについては変わらないというように考えます。 ● そうだろうと思っていたのですけれども,特に早く回収を強制されるということになるわけですね。そうすると,別に申し立てた人には何も配当が行かないのに,ただ優先債権者はそういう場合には害されるだけということになるのではないかと。少なくとも同意は要るのではないかという,そういう質問ですが。 ● 全額の配当を受けられる予定の人も同意が必要だと,不当な時期に配当を受けることが不利だとおっしゃるわけですか。   ここで同意が必要だというようにされているのは,(注1)で,その最低売却価額では全額の配当を受けられなくなるという人については同意が必要だと,全額の配当を受けられる人はもう不要だと。 ● 全額というのが,非常に有利な利息の約定があって,まだ2年も3年も先なのに弁済を早めに強制されて,しかも有利な利息はもらえないわけですね。 ● 御指摘の趣旨については一応そこまで私どもも詳しく詰めて検討しておりませんでしたので,御指摘を踏まえまして,補足説明の書き振りを含めて,なお検討させていただきたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● この(2)の剰余の関係ですが,考え方とすれば,現行制度の競売のやり方を広げる,緩やかにするといいますか,そういう趣旨で新しい考え方を採ろうとしているのではないかと思われるのですが,ただ一つ,競売の実務の中で,こういうように合意が求められる,あるいは,合意ができるという可能性が実際問題としてあるのかどうかということについて,お分かりであれば御説明願いたいと思います。 ● 東京地裁の例で,正確な統計をとっているわけではありませんので,大ざっぱな印象ということも含めて御説明させていただきたいと思います。   この無剰余の関係は,東京地裁の執行部では物件明細書を作成する係で担当することが多いので,そこでの実態を分かる範囲で調べてきました。大体,毎月400件から500件,事件を処理しておりますけれども,無剰余の通知をして取消しをするというのは,10件程度,あるいは,10件未満程度,パーセントにすると2%から3%の間ぐらいの事件だろうと思います。これは,取消しまで行く事件数です。   それに対して,本当は無剰余なんだけれども優先債権者に,新たに競売事件を申し立ててもらって,無剰余を回避して手続を進めるという事件が相当ありまして,これが正確な統計がとれていないのですが,実感としては無剰余で取り消す場合の2倍程度はあるのではないか,半年で大体70件から100件ぐらいはあったのではないかというような感触です。   そうだとすると,現行の実務でも多くの数については,優先債権者の協力を得て無剰余の回避の手続が採られているのではないかということが言えると思うのですが,幾つか難点がありまして,一つは時間がかかる,優先債権者に競売を申し立ててもらうというと,その債権者の内部決裁の時間とかの問題があって,なかなか決断がつかなくて,時間がどうしてもかかるというケースも多いですし,また反応がはかばかしくなくて,結果は無剰余の取消しをしたのだけれども,間もなくして,優先債権者が申立てをするというようなケースも多くありまして,実務の実感からすると,無剰余回避の手続のための工夫はしているのですけれども,これを同意に置き換えるということによって債権者の便宜といいますか,執行手続の進行の円滑化はかなり進むのではないかと思います。   要するに,同意を求めるということであると,容易にその同意を優先債権者がしてくるのだけれども,改めて競売事件を申し立ててくださいということになると,手続にも時間がかかるし,費用も余分にかかるわけですから,こういう制度を作っていただくことによって優先債権者の権利行使もよりしやすくなるのだという,そういう感覚は持っております。 ● ちょっと済みません,実務的なことをお伺いします。   今の無剰余回避というのは,差押債権者が何かするのではなくて,優先債権者に乗り換えるということですね。 ● 優先債権者に競売事件の申立てをしてもらうわけです。その場合にも費用はかけてもらうことになりますけれども,そうすることによって両事件を同時に進行させることによって,無剰余取消しをしないで進めるという,そういう処理をしております。 ● ○○委員,何かございますでしょうか。 ● 分かりました。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 先ほどの○○委員の御発言についてですが,無剰余の場合に,現行法のもとでも差押債権者が申出額を定めて申出をして保証金を積めば,事件をそのまま進めることができるということでございますので,必ずしも利息をもっと取れるはずだったというようなところまでの優先債権者の利益というのは,差押債権者との関係で現行法のもとでも保護されていないのではないかと気がしているのですが,そのあたりはどのようにお考えでしょうか。 ● 無剰余取消しの制度というのは,私が今申したような,先順位の債権者の貸付けをしておけるというのでしょうか,続けられる,そういう利益を保護するという制度なものですから,何か同意が要るのかなというように思っただけで,極めて例外的な話かもしれません。 ● 恐らく,○○委員の今のような趣旨を貫徹しようとすれば,引受主義を採るほかないのではないかと思うのですね。回収したくない時期に,更に貸し付けられてその利息を得る利益を保護しようとすれば,それは,ドイツなどのように引受主義を採るということになるのだと思いますが,日本は消除主義,無剰余を前提としながらも消除主義を採用したというところでは,やはりもうその利益は保護されなくてもしょうがないと,ただ自分の望まない時期に換価をされるという,その時点での全額弁済が得られないのに換価をされるというところだけを保護しようとしたのが剰余主義なのではないかというのが私の理解ですが。 ● 多分,○○委員の御意見というのは,差押債権者にとって無益執行であるにもかかわらず,優先債権者が不利益を受けるということについてどう考えるかという問題で,だから無益執行の問題を全く無視しようというのがこのスキームであるということを,やはりちょっと確認を……。限られた範囲ですけれどもそれを確認しておかないと,というか,むしろ(注2)が現実化されると本当に無益執行は許容されることになるわけですね,そこがいろいろな無剰余については学説があって,理解が異なっているところが今噴出しているのだなと思いますので,もう少しちょっと整理していただいた方がいいのかなという気もします。 ● 私ども,基本的に○○幹事のお考えと同様の立場でして,手続費用の点につきましては,手続費用を上回る額でなければならないということで,その部分については無益執行の原則をなお生かすつもりではおりますが,優先債権者の部分につきましては,これを超える額でなくてもいいのではないかというところで,無益執行の禁止の原則は,現行法とは若干変えるべきではないかというのが今回の提案であるという認識をしております。 ● これは,(1)の最低売却価額制度とこの剰余の問題も同じですけれども,競売不動産が売れないというのを,売れるようにするということの方策の一つというように位置付けていただければと思います。それが本当にいいのかどうか,それによってどういう不利益が生ずるのかというのが今の問題だろうというように思いますので,位置付けとしては先ほどから○○委員が御指摘になった点が正に中心的にあるわけでございます。   内覧制度や入札期間中の取下げの制限,差引納付の申出の期限というような点につきましては,いかがでしょうか。 ● 内覧制度ですけれども,こういう中間試案の取りまとめにはなると思うのですが,これを積極的に進める意見というのは余り私は聞いていないのですけれども。   要するに,競売物件の売却を促進するという観点以上に,抵当権の効力によって内覧を受忍させる義務を課すのに,抵当権に優先する者に内覧を受忍させる根拠というのは,これを進める論者からは聞こえてきているのでしょうか。問題点が残るのがどうかということだと思うのですけれども。 ● 結局,そういう私法的な権限の優先関係といいますよりも,不動産競売を円滑にやるということで,いわば公的な利益というようなものも強調する,そういう考えというようには思っております。 ● なぜ御質問したのかというと,最低売却価額が議論されるのは背景としていろいろ分かるのですけれども,この議論は強く主張されているのでしょうか。その辺のところをお聞きしたいのですが。 ● 強さがどうかというのはともかく,こういった意見があるということがありますので,幅広くパブリックコメントでこの点についても意見を聞かせていただきたいというのが事務当局の考えでございます。 ● この意見は,不動産競売で内覧というのは現況調査を執行官がやるのと同程度の意味で不可欠のことなのだと,物を売るのに中を見られないというのでは,本質的に物を売るという前提条件を大きく欠いている,それは競売のときに,現況調査しなければ売りに出せない,それは占有者に受忍義務を課しているのでしょうと。同じ程度に重要だと考えれば,民事上の権利の優先関係とは別の問題として,国が売り出す制度である以上不可欠のものとして受忍させていいはずだと,こういうことを言われているようです。 ● 確かに,現況調査の際の執行官の調査には,強制解錠をして中に入りますので,中に入られるという不利益はそうなのですけれども,違うのは,不特定の第三者が入ってくるかどうかというところですので,同じように論じられるかどうかという問題はあると思います。 ● よろしゅうございますでしょうか。いろいろな御意見をいただきましたが,いただきました御意見は事務当局が作成する補足説明の中に盛り込むこととして,要綱中間試案としてはこの原案の方向で取りまとめるということでよろしゅうございますでしょうか。 ● 今の内覧のところですけれども,聞き方としてはこれでよろしいのではないかと思うのですが,(注)で,「改正法では」というくだりがございますけれども,施行日を定める政令というのはもう出ているのでしょうか。 ● いえ,まだでございます。 ● つまり,これだけ見ると,既にこの法律が施行されているかのような誤解を持つ方もいらっしゃるのではないかと思うので,補足説明の段階で,まだ施行されていないということであればその旨を明らかにした方がより誤解がないのではないかというように感じます。   何を言いたいのかというと,つまりこういう内覧というのは実際にはまだ行われていないということを付け加えるのが,聞き方としはては公平なのではないかという趣旨です。 ● もちろん,先ほど口頭で述べましたとおり,補足説明では今後そういうものの運用状況を見てという意見があるということ,すなわち,今後それが運用されることになっているということの趣旨は明らかにするつもりでございますので,そういう補足説明での書き振りも含めまして,検討したいと思います。 ● よろしゅうございますか。先に進ませていただきたいと思います。   次は,9ページの3「執行官による援助請求」でございます。説明をお願いいたします。 ● それでは,3の「執行官による援助請求」でございますが,この案の本体自体につきましては前回の部会資料と変わっておりません。すなわち,現行法では官庁又は公署に対して援助を求めることができるのは,執行裁判所とされているわけでございます。したがいまして,執行官が官庁等に対して援助請求をする必要が生じた場合には,執行裁判所に依頼をして,執行裁判所から官庁等に対して援助請求をするということになるわけでございます。   ただ,もちろん執行官の方は警察上の援助請求ということができるというようになっておりますけれども,これは,執行官は,債務者等の住居等に赴くということが多いわけでございまして,その執行に当たりまして様々な抵抗を受けることが定型的に予想されるわけでございます。そうしますと,一々執行裁判所を通じて援助請求している,そういう時間的余裕はない。そういうことから,特に執行官の判断による援助請求が認められているというものだと思います。   ところが,こういった執行官による円滑な執行を妨げるというのは,何も警察上の援助請求が必要となるような抵抗がある場合には限らないというように考えられます。例えば,前のヒアリング等に出ましたけれども,債務者等が身寄りのない寝たきりの高齢者であるといったようなケースもございます。こういったようなケースにおきましては,その高齢者を屋外に連れ出して放置するということは実際上困難でございますし,もしそういうことをすると,それは過酷な執行ということで違法ということにもなり得るわけでございます。そういった場合には,地方自治体ですとか,あるいは民生委員などに援助を求めるということが考えられるわけでございます。   そのほか,そういった高齢者がおられるようなケースだけではなくて,いろいろな援助請求というものも考えられようかと思います。例えば,対象物件に可燃物ですとか,そういった危険物が存在する,こういうものにつきましては,例えば,そういうものを除去するという際には,防災の観点から消防署に協力を求めるということも考えられようかと思いますし,あるいは,農地を現況調査するといったような場合には,いろいろと農業委員会に対して照会するといったようなことも考えられるわけでございます。こういったケースを考えますと,もちろん執行裁判所を通じて援助請求をするということができるわけですけれども,やはり現実に職務を執行する執行官が,その必要な事項について直接官庁等に対して援助請求をするということになりますれば,事案に応じて適切に,また迅速に対処することが可能になるのではないか,そういうことによって円滑な執行手続というものが実現できるのではないかというように考えられます。   また,現行法で執行裁判所となっておりますのは,やはり執行官が執行裁判所と同等の判断ができるのだろうかといったところから,執行裁判所のみとなっているというようにも思われますけれども,民事執行法制定以来,執行官の方も十分に経験あるいは研さんを積んでおりますので,援助請求の必要性等を判断するということにつきましても,ふさわしい知識,あるいは,能力を備えるようになっているというようにも言えようかと思います。そこで今回の試案では,以上のような考え方から,執行官も執行裁判所と同様に,民事執行のため必要がある場合には官庁等に対して援助を求めることができるという案を試案としてお出しして,意見を求めたいと思っているところでございます。 ● この点について,何か御意見ございますでしょうか。 ● 細かい点の確認だけですけれども。   執行官以外の者,例えば,評価人とか管理人が執行官に援助を求めた場合に,更に執行官が官庁・公署に援助を求めるということもこれは含んでいるという理解でよろしいのでしょうか。 ● はい,そのとおりでございます。 ● ほかに何かございますでしょうか。   この執行官の援助請求につきましては,ヒアリングも実施させていただきましたし,前回もこういう方向で試案をまとめていいのではないかという御意見が多数を占めたかと思いますが,もし御意見がなければ,こういう形で要綱中間試案としてはまとめさせていただきたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。   それでは,御了承いただいたといたしまして,その次に進みたいと思います。   次は,同じ9ページの4「裁判所内部の職務分担」でございます。説明をお願いいたします。 ● それでは,4の「裁判所内部の職務分担」でございます。   (1)のところは,基本的に前回の部会資料と変わっておりません。すなわち,民事執行手続におきましては,その手続の進行ですとか,あるいは,具体的な処理方法の全般にわたりまして,事実関係の調査,あるいは,整理・検討というものをした上で,例えば,決定書等の原案を裁判所書記官が作成する,これを裁判官に提示するといったように,裁判所書記官が非常に積極的にその手続の進行,あるいは,管理について,大きな役割を果たしている,そういう実情にございます。また,裁判所書記官が作成した原案につきましても,執行裁判所が審査をするわけでございますが,それを変更等しなければいけないといったような例はほとんどないとも言われております。そういったような実情,現実を踏まえまして,更なる民事執行手続の迅速化,簡明化を図るということから,基本的な方向としては,執行裁判所の権限とされている事項のうち,一定の事項を裁判所書記官の権限とする方向で職務分担を見直すということを(1)に書かせていただいているというものでございます。   前回の担保・執行法制部会におきましても,この点については御議論があったわけでございますけれども,基本的な方向性としましては,こういう方向につきましては御異論はなかったと理解をしております。   次に,10ページでございますけれども,(2)「民事執行手続の職務分担の在り方」,それから(3)が「裁判所書記官の権限とする事項」でございます。   すなわち,具体的な職務分担等の在り方について,(2)にありますとおり,まず裁判官が行わなければならないと考えられるものとしてはどういうものがあるかということをここに書かせていただいております。アが手続を開始・終了させる等の性質を有する事項,イが実体的要件の存否について判断し,権利の得喪・変更を生じさせる性質を有する事項,ウが不服申立てに関する事項ということでございます。   (3)でございますけれども,(3)は裁判官が行わなければならないものとする事項以外の事項につきましては,裁判所書記官が行うものとするということが可能である,こういったような基本的な考え方に基づきまして,どのような事項を裁判所書記官の権限とするのが相当かということで試案に書いております。   ということで,今回の試案ではこの五つの事項につきましては裁判所書記官の権限とするものとするとしておりまして,これについてパブリックコメントにかけたいというように考えております。   なお,特にイの物件明細書につきましては,従来この部会でもいろいろと御意見があったところでございます。現実には,先ほど申し上げましたとおり物件明細書につきましても裁判所書記官が資料に基づいてその原案を作成しているわけでございまして,その原案について更に裁判官が審査するということになっております。   これに対しましては,物件明細書はやはり手続的に重要な役割を担うものであるから,裁判官が作成すべきであるといったような御意見,あるいは,最低売却価額の決定と物件明細書の作成とを別の機関が行うということになりますと,両者の整合性を図るための何らかの手当てが必要ではないかといったような意見があるわけでございます。   ただ,例えば,先ほど申し上げましたように手続的に重要な役割を担うものであるから裁判官が作成すべきである,こういう意見に対しましては,やはり最終的な売却許可又は不許可の決定ですとか,あるいは,引渡命令の発令の際には,裁判官が物件明細書に限らず,記録上のすべての資料をもとに独立して判断するのだと,したがいまして,そういった判断が物件明細書の内容によって異なることにはならないといったような意見もございます。   また,両者の整合性を図るための制度的な手当てが必要ではないか,こういう意見に対しましては,例えば,最低売却価額の決定の基礎となった事情を何らかの形で示すということによって,両者の整合性を図るということが可能となるのではないかといったような意見もあるところでございます。   また,前回の部会でも御紹介がありましたとおり,物件明細書の質を高めるために,いろいろ記載方法等につきましても裁判所書記官による研究がされておるということなど,その作成に関して記載方法,あるいは,記載の内容につきましていろいろ研究がされるなど,裁判所書記官が果たしてきた実績は非常に大きいという意見もございました。   そこで,こういったような御議論があったことを踏まえまして,試案では,物件明細書の作成も裁判所書記官の権限とするものとするという形でパブリックコメントにかけたいというのが,今回の試案でございます。   それから,11ページの(注)でございますけれども,「裁判所書記官の権限とする事項についての不服申立ての在り方については,なお検討する」とございます。これも,前回の部会資料と基本的には変わっておりません。手続保障の観点からいたしますと,少なくともその判断は裁判所がするということが必要であるというように考えられますけれども,果たして,例えば,民事訴訟法でいう裁判所書記官の処分に対する異議ということとするのか,あるいは,民事執行法上,執行異議,あるいは,執行抗告とは異なる特別の何らかの異議申立てを認めるのかどうか,こういったようなことを含めまして,この点についてはなお検討する必要があると思いますので,注に書いてあるというものでございます。 ● この民事執行手続における裁判官と裁判所書記官との職務分担の見直しにつきましては,その命令なり処分なりの性質に応じまして,前々回ですか,性質に応じてこういうように,これはどうしても裁判官に判断してもらわなければいけない事項と,これは裁判所書記官の権限としていいのではないかという事項について区分いたしまして,前回そういう形の資料をお出しして議論をいただいたところでございます。今回の資料も,実質的にはそれを踏襲しておりますが,この点につきまして何か御意見あるいは御質問があれば承りたいと思います。 ● 先ほど,最初の方で採り上げられました少額債権の債権執行,それとの関係で裁判所書記官の権限とするかどうかなお検討するということに7ページのところになっているわけですが,その問題提起というのはこちらの方には触れられていないのですが,どういう関係になるのでしょうか。辛うじて10ページの方では,基本的に不動産の競売手続についてのことが掲げられているように思われるわけで,(注1)のところでそれ以外についてもなお検討するという仕組みになっているわけですが。   といいますのは,7ページの少額債権の方の趣旨が,債権執行の特色ということから来るのか,それとも少額債権という,その執行手続を簡易・迅速にするということ,それ自体に主眼があるのか,そこが必ずしも明確でなかったものですから。先ほど質問すればよかったのかもしれませんけれども。 ● 基本的には7ページの(5)の「その他」というのは,今の御指摘からしますと後の方,つまり少額債権ということに着目したものでございます。特に少額訴訟に限定した場合には,例えば,先ほど言いましたような被告の移行申述権が認められているということとの関係で,こういうことも一つ基礎付けられるということもあり得るのではないかということも考えられますので,ここの7ページの方は特に少額債権,しかも少額訴訟というものを念頭に置いた,そういうことから来る議論かなと思っております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 配当表の作成ですが,7ページの方のB案を採った場合において,配当表というものと債権の消滅というものが何らか関連する可能性はなお残されているということだろうと思いますので,そこだけちょっとどこかで明らかにしておいていただければと思います。 ● 分かりました。   ほかに何かございますでしょうか。執行手続における裁判官と裁判所書記官との職務分担の在り方につきましては,こういう形で要綱中間試案をまとめさせていただきましてパブリックコメントにかけるということで御了承いただけますでしょうか。   それでは,先に進ませていただきまして,11ページ,「金銭債務についての間接強制」でございます。 ● それでは,5の「金銭債務についての間接強制」でございます。   まず(1)でございますけれども,間接強制の方法によることができる金銭債務につきまして,前回の部会資料とは異なりまして,今回の資料では扶養義務等に基づく金銭債務に限定する案を本文として書いてございます。このように,扶養義務等に基づく金銭債務に限定する理由といたしましては,次のような説明が可能ではないかというように思っております。   まず,扶養義務等に基づく金銭債務は,定期給付債務であり,かつ,その定期金の額が少額であるということが通常でございます。したがいまして,こういったような少額の金銭債務について直接強制の方法によるということになりますと,実際に金銭の支払を受けるまでに時間,あるいは,費用がかかるということで,その手続的な負担が定期金の金額に比べまして不相当に重くなるのではないかということで,間接強制の方法による任意履行を促すということが効果的な場合があるというように思われます。   それから,2番目でございますが,やはりこういった扶養義務等に係る金銭債権ということになりますと,その債権者の生計維持に不可欠なものということになりますので,例えば,直接強制の方法によります手続的な負担,これに見合う額まで債務不履行の額が達するのを待って申立てをするということもできないと考えられます。また,通常の消費貸借契約のように,例えば,法定利率を超える遅延損害金の約定をあらかじめしておくというようなこともなかなか現実的には難しいと思われます。   それから,3番目でございますけれども,今回の担保・執行法の改正法によりまして,将来分の定期金についても一括して債権執行を開始することができるというようになったわけでございますけれども,ただ,この特例といいますものは,債務者が給料その他の継続的な給付に係る債権を持っていなければ適用されないということになりますし,また,給料を差し押さえますと,債務者が勤務先に居づらくなって,失職,あるいは,辞職するおそれがある事案というものもあり得るのではないかという指摘もあるところでございます。したがいまして,そういうことを考えますと,間接強制の方法が債務者にとっても有益だという場合があり得るというように思われます。   さらに,扶養義務等に基づく金銭債務の額につきましては,民法で債権者の需要ですとか,あるいは,債務者の資力といったものを主要な考慮要素として決められるというようになっております。また,事情の変更があったときは,その減額等の内容の変更も可能でございます。したがいまして,扶養義務等に基づく金銭債務について債務名義が存在しているということは,少なくともそれが作成された時点においては相応の資力が債務者にあったということをうかがわせるものではないかというように思われます。   また,現実にも扶養義務等に基づく金銭債務については,債務者に資力があるにもかかわらず,感情的な理由等から支払わない,こういった場合があるという指摘もあるところでございます。したがいまして,ほかの債務に比べまして,扶養義務等に基づく金銭債務ということになりますと,債務者による支払の可能性,資力があるとの蓋然性が高いということで,この制度の濫用等の弊害が生ずるおそれも低いのではないかと思われます。   以上のような理由から,今回の試案では,扶養義務等に基づく金銭債務について間接強制を行うことができるものとしてはどうかということでございます。   もちろん,このような間接強制といいますものは,従来の直接強制にいわばプラスの選択肢ということになりますので,直接強制と間接強制というものをどう選択するかというのは,債権者の自由だということになろうかと思います。したがいまして,先に間接強制を申し立てて,その後に直接強制を申し立てるということもできようかと思いますし,逆の順序,あるいは同じような時期に両方申し立てるということも可能ではないかと思っております。   それから,(注1)は,今言ったような趣旨で扶養義務等に基づく金銭債務ということになりますと,濫用等の弊害が生じることが少ないのではないかというように考えられますけれども,それ以外に考えられる類型があるかどうかという点については,なお検討するというのが(注1)でございます。   それから,(注2)でございますけれども,扶養義務等に基づく金銭債務が定期給付債務である場合,担保・執行法の改正法と同じように,将来分の定期金について確定期限が到来する前に間接強制を申し立てることができるものとしてはどうかという意見が前回の部会で出てきたところでございます。すなわち,定期金でございますので,その期限が到来するごとに,その都度その都度反復して間接強制を申し立てるということになりますと,これはかなり債権者にとって手続的な負担が重くなるという指摘がございます。   ただ,このような考え方に対しましては,債務者の資力というものが将来どうなるかというのはなかなか現時点では分からないという場合もございます。したがいまして,本当に将来の定期金につきまして債務の履行がなかった場合の間接強制金の額をあらかじめ定めておくことが果たしてできるのかどうかというような指摘もあろうかと思います。   また,ある程度期限が到来した分について間接強制をかけておけば,将来分についても任意の履行を促す効果があるのではないかといったような指摘もあろうかと思います。   ただ逆に,そういった指摘に対しまして,こういうことを認めるという考え方からは,もしそういった不都合が生ずるのであれば,例えば,将来の定期金というものも無限定にやるのではなくて,例えば,一定期限に限って将来分の定期金について間接強制を認めるといったような方策もあり得るのではないかというように思っております。   そういうようなもろもろの意見,考え方があろうかと思いますので,この点については,(注)でなお検討するという形にしてございます。   それから,(2)でございますが,「間接強制の決定の取消し」でございます。   間接強制につきましては,やはり資力があるにもかかわらず払わない,払えるにもかかわらず払わないというところで効果を発するというものでございますので,資力がないときにこの間接強制をかけるということになりますと,債務者にとっても酷であるという場合があろうかと思います。でありますので,もし,例えば,将来的に債務者の資力がなくなってしまったという場合には,間接強制の決定を取り消すことができるというようにすることが考えられようかと思います。   それから,発令時において債務者の資力がない場合どうするかというのは,(注)にも書いてございますけれども,ここも一つの問題と思っております。すなわち,発令時におきまして債務者に資力があることということを要件とすることも考えられるわけでございますけれども,そのようにいたしますと,申立てをする債権者の立証の負担,手続的な負担というものが重くなるのではないかというように考えられます。そうしますと,そういうものを発令の要件にしないで,いわばその時に資力がなかったということも併せて取消しの原因としてはどうかという議論があったところでございます。そこで,本文の「債務者の資力がないと認めるときは」といいますのは,前に申し上げました,後に資力がなくなったということのほかに,発令段階において資力がなかったということも含むという趣旨でございます。   今,発令段階での資力の要件のことを申し上げましたけれども,その点につきまして(注)で書いてございます。   今申し上げましたとおり,資力があるということを要件にしますと,債権者の手続的な負担が重くなるのではないかという指摘があるところかと思います。ただ,現実には,間接強制ということになりますので,債務者の方の審尋もするわけでございます。そういったような中で,債務者に資力がないということが明らかで,裁判所としても容易にそれが分かるというような場合もあろうかと思います。そのように,明らかであるという場合には,間接強制の決定をすることができないものとする,このようにいたしましても,先ほど言ったように債権者の手続的な負担というものはそれほど重くはならないのではないかというような考え方もあり得ようかと思います。   ただ,このようなことを考えますと,もし本当に債務者に資力がないことが明らかだということになりますと,このような規定を置かなくても,例えば,権利の濫用等の法理によって間接強制の決定をすることができないというような解釈ということもあり得るのではないかというように思われるところでございます。そこで,そういったことも含めまして,こういうような規定を設けるかどうか,その要否についてはなお検討するという形にしているところでございます。 ● この金銭債務についての間接強制につきましては,これまでのこの部会で様々な議論が出されたところでございます。担保・執行法制部会で間接強制の補充性というものを外しまして,為す債務についても,代替執行だけでなく,間接強制もできるということにしましたけれども,今回はそれを更に一歩進めるといいますか,金銭債務についての間接強制をできるようにする,しかし具体的には扶養義務等に基づく金銭債務についてだけ間接強制を導入するということはどうかというのがこの案でございます。(2)の「間接強制の決定の取消し」のところは,本文及び(注)とも,前回の議論を踏まえて今回新たに資料として御提示した点でございますので,これも含めて御質問や御議論をいただきたいと思います。 ● (1)の(注1)ですけれども,ここでは裏から見ますと,扶養義務は間接強制の方法によって履行を強制することが効果的であり,かつ,そういうことをしても濫用等の弊害が生じないから,この扶養義務について間接強制を認めてもかまわないと,こういうように読めるのですが,果たしてそれだけで十分なのか,少し疑問がありまして,やはり扶養義務というものがそういうできるだけ即時に履行されることが望ましい債権であるとか,そういう要保護性の問題というものをどこかに入れておかないと,仮に,ほかに認めるべき債権があるというように言われた場合に,差別化,それを取り入れる場合は差別化ではないのですが,そういう比較が困難になるのではないかという気がいたします。   その要保護性の強さという点では,まだ法律にもなっていないものを挙げてどうかという気がいたしますが,破産法等の改正要綱では,扶養義務を新たに非免責債権にするなどというような方策を講じて,扶養義務が非常に要保護性の高い債権であるということを明らかにしているということで,そういう立法全体のスキームの中で扶養義務が選ばれたのだということをもう少し,注で書くかどうかは別として,補足説明では是非明らかにしていただきたい。 ● 先ほどは申し上げませんでしたけれども,扶養義務等に係る金銭債権は,やはり生計維持に不可欠のものであるといったような,そういう要保護性の点も補足説明で十分明らかにしておきたいと思っております。 ● (2)の取消制度の関係ですが,この種の制度を設けることを検討するというのは趣旨としては賛成ですが,ちょっと分かりにくいところがあるような気がします。   一つは,要件としての「債務者の資力がないと認めるときは」という表現ですが,実際に制度を作るときにはこういった表現ではなくて,もう少し詰めた表現になるのでしょうが,それにしても現状の表現ですと,資力がないという意味が絶対的にないということなのか,間接強制金との関係においてないという意味なのかがよく分からないとか,あるいは,例えば,不動産のような流動性の低い資産があって,処分すればあるけれども,実際にはなかなかそれが困難な場合とか,いろいろな場合があり得ると思いますので,補足説明の問題だろうと思いますが,その趣旨がある程度分かりやすいようにしていただければというのが1点でございます。   それから,第2点目は,理屈だけで考えますと間接強制の決定を全面的に取り消すほかに,例えば,金額を減額するとか,あるいは期間を限定するというようなことも考えられないではありません。そういったものを,この案では一部取消しという趣旨で含んでいると見るのか,それとも全面取消ししか考えていなくて,今のような一種の変更については制度としては考えないという趣旨なのか,その辺が明らかでないということで,お教えいただければと思います。 ● 確かに,「債務者の資力がないと認めるとき」にいう,「資力がない」の意味というのも,また今後,実質的な中身がどういう意味かというのは詰めて議論すべきだと思っております。   変更の点は,現在でも間接強制については変更を許されるということで,それを排除するものではないということで,そこは補足説明でそういうことができるということを注意的に説明しておきたいと思っております。 ● 事務当局からも適切な御指摘があったと思うのですが,この資力の問題ですけれども,金銭債務について間接強制を課すこと自体いろいろな弊害があるということは従前から議論されていまして,とにかく資力がある相手でなければ意味がない制度ですね。   それから,資力がない人にこれをかけた場合に生ずる大変な事態,これは十分考えておかなければいけないと思うのです。いたずらに債務を負わされてしまって,しかも間接強制金というのは毎日増えていくわけですね。ということで,こういう法制度を置いて,月々5万円ずつ義務を果たせばいい人が,膨大な債務を抱えてしまうような,そういう生活破たんに積極的にこの制度が追い込んでしまうという事態があり得るわけですね。扶養義務を履行しない人,払えるのに払わない人がいる,けしからんと,これだけに目がいったらいけないと思うのです。現実の事態は,やはり大体皆さん資力が乏しい人が月々3万円とか5万円とかいうものを払っているわけで,一応とにかく何とか苦労して払っている人が,いろいろな事情で払えなくなるということ,払いにくくなるということがいろいろあるわけですね。給料が減ってしまうとか,仕事がうまくいかないとか,あるいは,病気になったりほかの出費ができたり,あるいは,ほかに扶養しなければいけない人が生ずるということもあるわけなので--これ自体問題があるのですけれども--そういうことを考えると,相当社会的な問題を生じ得る制度であると思うのです。だから,やめた方がいいのではないかというようにすら思うのですが。   そこで,やはり制度化するのであれば,最後にある(注),そもそも間接強制をする要件として資力があるという場合ということを明確にしておくべきではないか,そのぐらいやっておかないと非常に怖い制度ではないかというように思うのです。   ということで,具体的な提案としては,最後の(注)は,(1)の最初の(注1)に持ってきて,私の意見はこの中身ですが,債務者に資力がないことが明らかである場合はできないというのではなくて,資力があることが明らかである場合に限りできるというぐらいに本当はしたいところなのです。それが受け入れられない場合は,少なくとも資力があることを要件とするということについてなお検討するとか,あるいは,資力があることを要件とするとか,何かそういうことをもうちょっとしておいていただかないと,困るのではないかというように思っておりますが。 ● 若干いろいろな先生方から聞いたところ,実際に携わっている人たちに聞くと,払えるのに払わない理由は何なのかと。合理的な理由があるのかというと,実は大部分,子供のための養育費なのに,単に配偶者に対する悪感情から払わない。理由がある人は何かといえば,面会交渉をさせてくれない。こういうところがあって,実際,家庭裁判所調査官や何かのアンケートを見ると,面会交渉している場合は,大部分スムーズに養育費を払っているわけです。このあたりについて,本来は家庭裁判所できちんと,例えば,審判するとき,和解させるときに,その間がリンクするようにちゃんとやっていれば,こういう事態,つまり,そもそも養育費の不払の問題は起こらなかったのではないか。逆に言えば,今のところ理念的には養育費の問題と面会交渉権は別だということになっていますから,このあたり,実体法とか家事手続でうまくできれば,実はこういう強力な,心理的圧迫の制度を使わないでいいのではないか。   逆におそれるのは,ぎりぎり払おうかと思っているときにこの間接強制で審尋されて出てしまった,そのときに,その人たち,もっと言えば夫婦の問題が子に影響するのかというような問題を実際現場で小さい子たちを扱っている先生方が非常に心配しているという点は,一つお話に付け加えたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 私も,ただいまの面接交渉権の件は非常に重要な問題であるというように思っておりますが,家族法の方でなかなか立法が進まないということがありまして,難しい問題があるかと思いますけれども,人事訴訟で附帯処分ということで今後のいろいろな付随的な処分というものができるということになっていますので,そちらの方で本来ちゃんと解決しておくべき問題であると,ただいまの御指摘のとおりであるというように思います。   あと1点は,補足説明に書いておいていただければと思うことでございますけれども,先ほど,なぜこういった養育費について間接強制を用いるかという理由付けの中で,3番目ぐらいにおっしゃっておられたかと思いますけれども,予備差押えが実効的でない場合がある,給料債権を差し押さえられたことによって居づらくなって会社を辞めてしまう場合があるだろうと,そういう御指摘があったわけでありますけれども,再々いろいろ御指摘がある問題でありますが,確かに辞めてしまってどこかほかに再就職した場合,再度そちらに給料債権の差押えを申し立てなければならない,それは非常に手間がかかるということは従来言われていたことでありますけれども,今回の担保・執行法改正におきまして財産開示手続が設けられた,これは執行証書の場合は使えないけれども,裁判離婚と調停離婚で養育費が定められた場合には,この開示手続を用いることによって再就職先はどこかということは,情報は得られる,そちらに対して再度給料債権の差押えを申し立てることができる,そういう建前になっているわけですから,それでも実効的でないのかどうか。この財産開示手続の点は,周知徹底すべきであるということがずっと言われておりますので,そのあたりのところも補足説明でお書きいただいた上で,それでも実効的でないのかどうかということを問うていただくということにしていただければと思います。 ● 今の給与債権の差押えの件につきましては,それが望ましくないとおっしゃる方は,辞められたら追及できないからということではなくて,その扶養義務者の生活基盤が解体してしまうことによって扶養義務自体が無意味化してしまうということを根拠としておりますので,今の御指摘は必ずしも適切な御指摘ではないというように私は思います。   それともう1点。面接交渉権との関係ですが,未成年の子の養育費が扶養義務であり,それと面接交渉権の関係ということが問題になりましたが,理念的に考えました場合に,確かに父親の場合--多くの場合父親であると思いますが--父親の感情としてはそういう面接交渉をさせてもらえないのになぜ払わなければいけないのかという感情を持つのは十分理解できるのですが,しかし,面接交渉させないのは多くの場合同居している母親でして,母親がそういう行為,面接交渉を実現しないからといって子供に対する扶養義務が影響を受けるのかというのは,やはりそれはちょっともう少しきっちり考えなければいけない問題だろうと私は思っております。あくまでも扶養義務というのは子のための制度であり,面接交渉自体もどちらかといえば子のための制度だと考えるのが一般的ですので,そこの感情論というのは確かに理解できますけれども,もう少し理念的にも詰めていかなければいけない問題であると思っております。 ● たまたま調停をやっているものですから,調停実務の立場から今のことに関連して意見を述べたいのですが。   やはり養育費といいますか,この問題についての当事者の知識が全く欠落しているというのをまず感じます。   それからもう一つは,どういうような別れ方をしたのかとか,要するに納得して別れたのか憎悪を感じて別れたのかどうかという問題,それから夫の場合が多いのですが,自分が全く非がないのに,つまり責任がないのに一方的に妻が別れたとか,そういうことで妻も失い,家族も失い,それなのになぜそういった別れた妻に対して金を渡さなくちゃいけないのか,子供のためだと幾ら我々が説明しても,それが理解できない。別れた妻にいわゆる追い銭を投げるような形で,なぜ給付しなければならないかというような思いが強い。そういうことが複合してこういう問題が起きてきているのではないかと私は思います。したがって,○○委員もおっしゃったのですが,やはりこういう間接強制うんぬんという論議の前に,前提としてこういう実態があって,そこを何とか法律上,あるいは実務上何とかできないかという思いをいたしております。   それからもう1点,私は基本的には養育費を始めとするこういう扶養義務に対する金銭債務についての間接強制については賛成の立場であります。ただ,これも○○委員がおっしゃったように,非常に慎重に運用しなければ,やはり問題がちょっと残るのではないかということは同意見であります。   それはなぜかというと,一つは給与関係の義務者であれば比較的まだまだこういった問題が,間接強制をかけても一応理解できるのですが,零細企業などの自営業者の関係で収入が今の時代一定しない,将来の収入もはっきり分からないというような方たちが対象になる場合があります。そのときに,その人たちに果たしてこの間接強制をかけていいのかどうかという問題が残ると思います。   それから,間接強制をかけるにしても,やはりタイミングの問題が相当大きな問題として出てくると思います。だからそこのところ,いつ,そういうような形にすればいいのかどうかということなどに対して,かなり配慮しておく必要が,運用面で出てくる可能性があると思っております。 ● 私も,家事債務の履行状況が非常に悪いということをどうやって改善していくかという問題が全体としてあって,その一つのやり方としてこういう間接強制という方法を採ったらどうかということだと思うのです。だけど,それだけを取り上げると○○委員のおっしゃったように,ちょっと私もいびつなやり方かなとは思うのですけれども,今のところこれしか立法としてはすぐに取りかかれるものはないのではないかというように考えているわけです。   ただ,全体としてのシステムをどう作り上げるかというのは,○○委員のおっしゃったとおりでして,ここだけで問題が終わってしまうわけではないということを我々は自覚して,もう少し全体のシステムをどう仕組んでいったらいいのかということを継続して考えていくべきなのではないかというように思います。 ● ほかに,何か御意見ございますでしょうか。 ● 結局,予備差押えとか財産開示が今回改正法に入ったわけですから,その実情と,今後家庭裁判所で間接強制的な和解とかができれば,当然納得しているから支払いやすいだろう,それも債務名義になるわけだから,それが直接強制でできるわけで,そういうあたりの検討を実際予備差押えが施行されるか,あるいは,財産開示がうまくいくか,これは先生方がいろいろな考え方でいるでしょうけれども,それを検証しないでこれをやった場合,安易に間接強制を濫用するということは当然考えられるわけで,そうしたら結局お互いの生活は全部駄目になってしまう。何のための制度だったかということになるのではないかということで,予備差押えあるいは財産開示の制度を見てからということを考えるというところを少し入れていただければと思う次第です。 ● この金銭債権の間接強制というのは,確かに間接強制としての実効性を高めると,つまり強制力を高めることと,扶養義務制度がむしろ無意味になるというところがトレードオフの関係になるようなところがありますので,間接強制金の上限を考えるとか,いろいろな方策をやはりもっと考えなければいけないということも,できれば,仮に導入するとしても,1年間で倍になるという程度までしか認めないとか。そうすると,間接強制として余り威力がないのかもしれませんが,そういうような幾つかの,導入することが現行法といいますか,まだ現行法ではありませんが,改正法の言われているような間接強制と同じである必要性というのはどこにもないわけですので,そういうあたりも含めて検討事項が多々あるというような形で補足説明をしていただければと思います。 ● ほかに,何か御意見,御注文ございますでしょうか。--よろしゅうございますでしょうか。   今,この金銭債務,特に扶養義務等についての間接強制については非常にたくさんの御意見が出ました。間接強制というものが強力であるが故に,その要件がこれでいいのかというようなこと,それからその間接強制のやり方,それから取消しの制度,現行法として間もなく施行される予備差押えなり財産開示制度との関係というようないろいろの問題がありますが,要綱中間試案としてはこういう原案のような形で取りまとめをさせていただいて,パブリックコメントで更にこれについてはたくさんの意見が出てくるでしょうから,それについて再度10月以降検討させていただくというようなことで御了承いただけますでしょうか。それとも,やはりこの点はこれを直せというようなことがあれば,おっしゃっていただきたいと思いますが。   先ほどの○○委員は,この原案を直せという御意見を言われたようにも思いますけれども。 ● 支持者はおられないようですので……。 ● 「できるものとする」というと,この会議ではもう決まってしまっているようで,あと細かなところを検討するというようなことになりかねないのですが,今までのお話を聞いていると,「間接強制の方法によっても行うことができるものとするか,なお検討する」とか何とかいうぐらいの方がまだいいのかなというような印象も若干あるのですが,そこら辺はもうよろしいのでしょうか。   要するに,家事審判とかいろいろな問題がありまして,もともと扶養義務をどうするのか,その履行をどうするのかという一環の中で,一つの選択肢として間接強制もあり得ると,そのぐらいのところでは皆さんの納得が得られているのだろうかということなんですが。そうでないと,なお検討するというぐらいのところでおさめておくかなというような印象がしているのですが。   私としては,一つの選択肢としてなら別にかまわないかという気がしますけれども,実際に取り入れるとしたらまだかなり検討すべき問題があるような気がして,「なお検討する」かなという気がしているのですが。 ● 私は,これまでの議論,今日6回目でございますけれども,6回目までの議論では,行うことができるものとするか検討するというのではなくて,こういう形で出して,そして意見を聞いて,最終的にはそれは落ちるということがあることはもちろんそれは当然のことですけれども,意見を聞くには,注のところは細かな点でございますので検討すべき点がたくさん残っているという意味でこういう形で「検討する」とありますが,本文は「導入するものとする」という形で意見を聞かないと,それについて反対だとか,それは賛成するとか,意見が出にくいのではないか,「検討する」ならどうぞ検討してくださいという意見で終わってしまうのではないか,ある程度具体的なイメージを出さないと意見を聞きにくいのではないかと私は思っているのです。   それから,先ほど○○委員が間接強制の方法として,毎日毎日上がっていくということも言われましたけれども,間接強制のやり方はそれだけではありませんので,一定期間までに払いなさい,払わなければこれだけ加えなさいというような,そういう方法もありますし,間接強制の方法については現行法もそうですけれどもいろいろな工夫があり得るだろうと思います。ですから,過酷執行をどうやって防ぎながら,しかしこういう保護すべき必要が特に高い債務については,そしてその資力があるにもかかわらず払わないという人たちについては,やはり間接強制というような方法を導入するということについて,大方の御了承を今までの議論の中ではいただいているのではないかと。今日の御議論は,その上で,しかしいろいろの御心配をされて,それは補足説明等にきちんと書いておけという御注文だと思って私は今日聞いておりましたけれども,そういう取りまとめでよいかということを再度伺いたいと思います。 ● 今回,こういうたたき台を出しましたのは,この点につきましては担保・執行法制部会の方からも引き続き御議論がされておるわけでございますけれども,これまでの御議論についての私どもの見方も,ただ,今の御発言のとおりの見方でございまして,今日いろいろと御懸念の点,幾つかの点がございました。資力があるということが明らかである場合ということを要件にしてはどうか,あるいは上限額を決めたらどうかといったようなもろもろの御意見もございましたので,そういったような御意見につきましては補足説明の方で明らかにさせていただければということで,試案の本体につきましては,従来の御議論を踏まえるとこういうことになるのかなというように,事務当局としては思っておったということでございます。 ● よろしゅうございますでしょうか。これはパブリックコメントにかければいろいろな御意見が出てくるだろうということはこちらも十分予想しているところでございますので,それを受けて,更に10月以降御検討いただくという形で,要綱中間試案としてはこういう形で取りまとめさせていただくということを御了承いただけますでしょうか。   それでは,よろしくお願いいたします。 ● 事務当局の方から,執行関係でもう1点ほど御説明させていただきたいと思います。   この部会におきましても,いわゆる夜間執行の問題につきまして御意見が出てまいりました。現在では休日,それから午後7時から翌日の午前7時までの間に職務を執行するには,執行裁判所の許可を得なければならないものとされている。この点につきましては,現在の社会全体のライフスタイルというものが夜型に変化しているというところから,休日,あるいは,午後7時から9時までの間については許可を不要とすべきではないかという意見も出されておったわけでございます。   この点につきましても,そういった時間帯について執行が認められないというわけではなくて,当然執行裁判所の許可があれば執行は可能でございますし,実際にも執行官が事前にいろいろ債権者等から事情を聴取して,そういう執行をする必要があるということになれば,あらかじめ執行裁判所の許可を得ているということになっております。   それからまた,人の住居への行政機関の立入りというものを認めるほかの法令でも,やはり日没後から日の出前までの立入りについては認めないですとか,あるいは,令状ですとか占有者の承諾といったものを必要とするというような例が多いわけでございます。   ということから,事務当局の本日のたたき台には,この点は盛り込まれていないわけでございますが,こういう御議論があったということにつきましては,補足説明の方で明らかにさせていただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。 ● それは御了承いただきたいと思います。   それでは,ここで休憩いたしまして,今度は民事訴訟法の方の改正についての御審議をいただきたいと思います。             (休     憩) ● それでは,再開いたします。   第1の「民事訴訟法関係」の中間試案に戻らせていただきます。   初めに,第1の1「民事訴訟手続等の申立て等のオンライン化」,2「督促手続のオンライン化」,この二つにつきまして,併せて○○幹事の方から御説明をお願いいたします。 ● それでは,第1の1「民事訴訟手続等の申立て等のオンライン化」でございます。   この点につきましては,前回の部会資料から大きく構造が変わっております。すなわち,前回の部会資料では,2ページの督促手続のオンライン化が本文に掲げられておりまして,民事訴訟手続等の申立て等のオンライン化につきましては,後注という形で掲げさせていただいていたものでございます。ただ,その後事務当局の方で検討いたしまして,今後の立法の形式というようなことを考えますと,やはり民事訴訟手続等につきまして,つまりこういう全般的な手続について,その申立て等,申立てその他の申述でございますが,そういうものについて将来的なオンライン化に備えるために,インターネットを利用して申立て等をすることができるということを認める,そういう通則的な規定を置くことが相当ではないかと思われるところでございます。そこで,第1の1で,そういった申立て等についての通則的な規定のことを書くという構造にしてございます。   これに対しまして,2ページの督促手続につきましては,これは前回までの部会資料でお示ししておりましたとおり,申立て等に限らず,もう少し幅広い,いわば督促手続の全体部分についてオンライン化を図ろうとするものでございます。したがいまして,督促手続の申立て等の部分については,第1の1で規定し,この中に含まれるということになります。その上で,1に含まれない督促手続についてのいわば特則的なものを2のオンライン化のところで書いてある,こういう構造に変えたものでございます。   そういうことを前提にしまして説明させていただきますと,まず第1の1の(1)でございますが,「インターネットを利用した申立て等の許容」でございます。民事訴訟に関する手続における申立てその他の申述の将来的なオンライン化に備えるため,法令の規定により書面によることとされている申立て等のうち,規則で定めるものであって,最高裁判所が定める特定の裁判所に対してするものについては,最高裁判所規則の定めるところにより,インターネットを利用した申立て等を認めるものとするというものでございます。   基本的な中身といいますか,書きぶりは,前回の督促の申立ての部分で書いていたものと変わっておりません。   ここに,将来的なオンライン化に備えるため,申立て等のうち「最高裁判所規則で定めるものであって」とございます。すなわち,法律の規定では申立て等につきまして全般的にオンライン化を認めるわけでございますが,具体的にどういうものをオンライン化していくかにつきましては,技術,あるいは,ニーズというものも考慮しながら,規則で順次その範囲を広げていく,こういうことが想定されるわけでございます。   同じように,どの裁判所に対してインターネットを利用して申立て等をすることができるかというものも最高裁判所が定める特定の裁判所ということでございまして,順次最高裁判所の方でこういう裁判所というものを広げていくということがイメージとしてあるわけでございます。   (注1)に,「規則の定めるところにより」とありますけれども,ここは具体的には申立て等の方式に関する事項などが考えられるものでございます。   (注2)でございますけれども,本文は民事訴訟法にこのような規定を置くということでございますけれども,非訟事件手続法におきましても,これと同じような規定を設けるということにいたしますと,民事訴訟法,あるいは,非訟事件手続法を適用し,準用し,又はそれらの例によることとされる他の法律に定める民事訴訟手続等に関する将来的なオンライン化に備えるための通則的な規定になるということでございます。   それから(注3)でございますが,本文では「特定の裁判所に対して」とありますので,ここに限定されるということの誤解がないように,ここの裁判所に対する申立て等には,裁判長ですとか受命裁判官等に対してするものも含むということを(注3)で明らかにしているということでございます。   それから,(2)が「インターネットを利用した申立て等の到達時期」でございます。これも,前回督促のところで書いていたことと実質的な書きぶりは変わっておりません。こういう申立て等につきましては,いつの時点で到達したものとみなすかという点を法律上明らかにするということが相当だと思われますので,行政手続オンライン化法を参考にいたしまして,このように,「当該申立て等に係る電子データが裁判所が使用するコンピュータ中のファイルに記録がされたときに到達したものとみなす」といったような規定を置いてはどうかというものでございます。   次に,2ページの(3)でございますが,これも前回の部会資料では督促手続の中で書いていたものでございます。   インターネットを利用した申立て等におきましては,法令等の規定によりましてこの申立て等について署名押印,あるいは記名押印等が要求されている場合がございます。そういうものにつきましてインターネットを利用して行う場合には,こういうもの,署名押印等に代わる措置をしなければいけないというものでございます。   また,(注)にございますとおり,この氏名又は名称を明らかにする措置に関する具体的な定めは,規則に委任するものというようにしてございます。具体的には電子署名等が考えられるかと思いますけれども,そのあたりは規則に委任するというようにしております。   以上が,民事訴訟手続等の一般についての申立てをオンライン化するというための手当てでございます。   次に,2でございますけれども,「督促手続のオンライン化」でございます。   これにつきましては,支払督促の申立て自体がオンライン化するというのは1に書いてあるところでございます。そのほかにも,督促手続には以下のような特別のオンライン化のための手当てをするというものでございます。   (1)でございますが,「インターネットを利用して取り扱う督促手続の地理的範囲の拡大」でございます。すなわち,例えば,この督促手続を取り扱う簡易裁判所というものが,例えば,東京簡易裁判所というように定められたといたしますと,当然アにありますとおり,東京簡易裁判所の管轄区域内に普通裁判籍等を有する債務者に係る督促事件,つまり通常の管轄規定による事件で東京簡易裁判所が取り扱うことができる事件は,申し立てることができるということになっております。   ただ,こうしたインターネットを利用して取り扱うということになりますと,もう少し幅広い範囲の管轄からインターネットを利用して申し立てていただいても処理が可能だということになるわけでございます。そこで,イにありますとおり,ア以外の簡易裁判所であって規則で定めるものの管轄区域内に普通裁判籍等を有する債務者に係る督促事件,すなわち,仮に東京簡易裁判所ということになりますと,東京簡易裁判所以外の簡易裁判所の管轄区域内に普通裁判籍等を有する債務者に係る事件についても,東京簡易裁判所にインターネットであれば申し立てることができるというものでございます。   現行法でも,OCR方式による申立てということができるわけでございますけれども,そういうものにつきましても,必ずしも東京簡易裁判所あるいは大阪簡易裁判所の通常の管轄区域内には限られておりません。その取り扱う事件の範囲というものは広げられておりますので,このインターネットを利用した申立てにつきましても,幅広くそういった地理的範囲を拡大するということが考えられようかと思います。ただ,どのように拡大するかというものは,具体的には最高裁判所が定めるということになろうかと思います。   それから,(2)でございますが,申立て等のみならず,支払督促その他裁判所書記官がする処分であって,規則で定めるものは,電子データによって作成するものとし,これを原本として取り扱うものとするというものでございます。すなわち,支払督促自体,その原本自体が電子データ化するということでございます。   具体的な方法等につきましては,規則に委任するということを注に書いております。   次に,(3)でございますが,「督促事件記録の閲覧・謄写等に代わる措置」でございます。   今,申し上げましたとおり,督促事件記録につきましては電子データで調製されるということがございますものですから,それについての閲覧及び謄写をどうするかというものでございます。これにつきましては,規則で定めるところにより,これに代わる相当と認める措置を講ずるといったような法律上の手当てをするということにしてございます。   具体的な措置の内容といたしましては,(注)でございますが,例えば,閲覧の請求については閲覧の対象となる電子データの内容をプリントアウトした書面を閲覧する方法,それから,謄写につきましては請求の対象となる電子データの内容をプリントアウトした書面を交付する方法によることが考えられるということでございます。   督促事件におきます閲覧等の請求は,実務上はほとんどないというような御指摘もありますし,また督促事件記録につきましては,定型的に大部にわたらないということがございます。そうしますと,むしろ一覧性等の観点からしますと,このような方法の方が合理的ではないかと思われるところでございますが,具体的な措置の内容については,今後最高裁判所におきまして検討されるものというように考えております。   次に(4)でございますが,「インターネットを利用してする債権者に対する処分の告知」でございます。   裁判所書記官の債権者に対する処分であって規則で定めるもの,具体的な範囲は規則で定めるというものでございますが,例えば,支払督促の申立てに対する補正を命ずる処分等が考えられます。このような告知は,債権者の方はインターネットを利用して申し立てているわけでございますので,今度はそういう告知の方も債権者に対してはインターネットを利用してすることができるものするというのが,この(4)でございます。   ただ,このような場合に,告知の具体的な方法,それからその効力の発生時期についてどう考えるかというのが一つの問題点と思っておりまして,その点を(注1)で書いております。   裁判所の方が告知をした場合,まず中身はどういう告知をするのかという問題がございます。処分自体というものを告知いたしますと,いろいろセキュリティーの問題が出てまいります。また,行政手続のオンライン化等につきましては,例えば,相手方の方がいわば行政庁側にアクセスして,情報をダウンロードするというようなことが考えられるわけでございますけれども,仮に,ダウンロードしたときというようにいたしますと,債権者がいつまでもダウンロードしなかったという場合にはどうなるのかということがございます。なかなか処分等の効果が確定しないということになりますと,手続的に問題が生じます。そういうようなこともいろいろ考えまして,この処分の告知の方法ですとか,あるいは,その効力の発生時期につきましては,どのように手当てをするかは今後なお検討したいというものでございます。   それから,債務者に対する処分でございますけれども,債務者の方はインターネットを利用して申し立てているということではございませんので,債務者に対する処分につきましては,告知は従来どおりとするものとするというのが(注2)でございます。 ● 今回のこの第1の民事訴訟法関係の1と2の関係につきましては,最初に説明がありましたように,従来は,督促手続のオンライン化が先に出ておりまして,民事訴訟手続全体についての申立て等のオンライン化については,後注になっていたわけでございますけれども,今御説明のあったような事情によりまして,むしろ原則を最初に持ってきて,督促手続のオンライン化は,2の方に回したということでございます。そこで,1と2をまとめて御質問,あるいは御意見をいただきたいと思いますが,どなたからでも御自由にお願いいたします。   何か,裁判所の方から御説明はございますでしょうか。特に1の点について,申立てはどのぐらいの範囲のところまで考えられるかというようなことで,もし見通しが御説明いただければお願いしたいと思っておりますけれども,いかがでしょうか。 ● 今現在,そのあたり,どういうようなスパンで具体的にどのように積み重ねてというようなところまで決まっているわけではございません。ただ,いずれにしても申立てレベルということで,これはユーザーの方々の便宜を十分踏まえてということですから,そのあたりのニーズ等も十分しんしゃくして,技術の進捗状況等も踏まえて,着実に進めていきたいと思っております。   こういう形で,法律のレベルでそういう将来の部分まで踏まえて一定の穴をあけていただくということ自体には,非常に裁判所としても意味のあることだとは思っております。 ● 何かほかにございますでしょうか。   インターネットを利用していろいろな申立てをするというのは,既に行政手続等でもどんどん行われておりますし,最近の法制審議会のパブリックコメントに対する回答なども,もうインターネットでの回答といいますか,それの方がだんだん増えてきているという実情でもございますので,趨勢としてはこういうことかなというように思っておりますが,こういう形で要綱中間試案としては取りまとめさせていただきまして,パブリックコメントにかけるということでよろしゅうございますでしょうか。 ● 形式的なことなんですけれども。   これでいきますと,督促手続についてオンライン化のインターネットを利用して申立てができるということは,これは最高裁判所規則が定めるということになるわけですね。 ● 督促手続の申立てを含ませるという意味で,それは規則が定めると。 ● その上で,督促手続でインターネットを利用して取り扱う場合の拡大された管轄は,また法律に戻るのですね。そういう前提でよろしいのですかね。 ● この点の立法の形式については,今の御指摘を踏まえてまた考えたいと思います。 ● 言うまでもないことですけれども,従来のような文書による申立ては当然できるという前提で,そのほかにインターネットでもできるということでございます。--よろしゅうございますでしょうか。   それでは,この点につきましては御了承いただいたということにいたしまして,先に進ませていただきます。   次は,3ページの3「文書提出命令」の部分でございます。 ● 文書提出命令につきましては,これまでの部会での御議論を踏まえますと,まだ一つの考え方,あるいは,幾つかの考え方を具体的に書くということには至っていないのかなというように思っておりまして,基本的にはこの3ページの3にありますとおり,刑事事件関係書類等を対象とする文書提出命令制度の見直しの要否については,なお検討するという形になっております。ただ,なお検討するということだけではいろいろ御意見を伺うということでも意見が出しづらいのではないかというように思いますので,この検討に当たりまして,問題となる論点につきまして具体的に整理させていただいているものでございます。   この見直しの要否につきましての検討に当たっての論点でございますけれども,(1)が利用状況に関するものでございます。平成13年の民事訴訟法の一部を改正する法律附則第3項におきましても,刑事事件関係書類等の民事訴訟における利用状況等を踏まえて検討するということになっておりますので,こういった利用状況についてどのように考えるのかというのが一つの論点かと思っております。   この点につきましては,これまで2回に渡るヒアリングを行ってまいりましたので,ヒアリングの結果などにつきましても,補足説明におきましては明らかにしたいと思っております。すなわち,刑事確定訴訟記録の利用状況,あるいは,確定前の訴訟記録,不起訴記録,それから,少年の保護事件の記録,それぞれの利用状況につきまして,統計的には,かなりの数のものが開示されているというようなことがヒアリングからも明らかになっているというように思っております。   ただ,他方で,刑事事件関係書類等の閲覧・謄写の一部又は全部に応じない取扱いをしている事案も,割合的には少ないものの一定数ございます。この部会におきましても,具体的には,例えば,交通事故の目撃者等の記憶が民事訴訟の時点ではあいまいになっている場合,あるいは,民事訴訟における供述が捜査段階から変遷している,こういうような場合には,やはり捜査段階での供述調書というものが民事訴訟においても必要であるが,しかし,こういったものが開示されないといったような意見も出たところでございます。   こういった意見に対しましては,供述調書であっても,代替性がないような場合には弾力的に開示に応じている,あるいは,供述調書そのものの開示は不相当であっても,そういった供述の変遷等が問題となるような事案では,民事訴訟の受訴裁判所からの文書送付の嘱託に対して,供述が相反する部分の要旨を文書で回答するような運用上の工夫も現に行われている,こういったような意見もございました。   なお,こういったもの以外にも,例えば,株主代表訴訟ですとか,あるいは,住民訴訟等におきまして,株主ですとか住民がいわゆる犯罪被害者保護法にいう被害者等に該当しないというようなことから,こういう訴訟でも刑事事件関係書類等が証拠として必要な場合がある,こういったような意見も出されていたものでございます。そこで,(1)は,今申し上げましたようなことを踏まえまして,この利用状況についての評価に関しまして意見を問うということとしたいというものでございます。   続きまして,(2)及び(3)は,現行法の見直しの要否を検討する際の前提となる論点というものを整理したものでごさいまして,(2)は刑事事件関係書類等の特性に関するものでございます。   刑事事件関係書類等につきましては,刑事訴訟におきます実体的真実の解明,そういう目的のために関係者の名誉あるいはプライバシーについてまで深く立ち入って作成されるというものでございますので,その中には,開示されますと関係者の利益の保護ですとか,あるいは,捜査の秘密等の確保に支障を生ずるおそれがあるというものがあろうかと思います。また,こういった書類というものが,刑事事件等以外の別の目的に用いるために公にされ得るということになりますと,国民からの捜査等に対する協力が困難になるおそれがあるというようにも考えられます。そこで,この刑事事件関係書類等の開示の在り方を検討する際には,こういったような刑事事件関係書類等の特性を考慮する必要がある,このことをどのように勘案するのかという点について意見を求めたいというものでございます。   次に(3)でございますが,これも部会で御議論いただいた点でございます。刑事訴訟法等における開示の制度と,民事訴訟法上の文書提出命令制度との関係についてどのように考えるのかという論点でございます。   この点につきましては,大きく分けますと二通りの考え方があり得るのではないかというように思われます。   まず,アでございますけれども,刑事事件関係書類等の開示につきましては,刑事訴訟法等における各開示の制度に委ねている,そういう現行規定を維持するという考え方でございます。例えば,刑事訴訟法47条ただし書におきましては,公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合には開示が許されるというようにされておりますけれども,これは民事訴訟における利用の必要性等をも考慮して,捜査官等の判断によって相当と考えられる場合に,刑事訴訟に関する書類を公にすることを認めるという,そういう趣旨だと言われております。すなわち,刑事訴訟法等におきましては,刑事事件関係書類等の保管者が関係者の利益保護ですとか,あるいは捜査の秘密,刑事裁判の適正の確保等,それからこういったものを開示することによって得られる利益,そういうものを調整し,考慮した上で開示を判断するというように,その開示の要件,方法について,自己完結的に規律をしているというものでございます。そういうことから,刑事事件関係書類等の開示については,刑事訴訟法等における開示制度の方に委ねるというのがアの考え方でございます。   具体的にどのような開示の制度が設けられているのかというのが,(注1)でございます。(注1)の方は,条文のことしか挙げておりませんけれども,具体的な内容につきましては,前に部会で御紹介いただきました刑事局長回答も含めまして,補足説明の方で明らかにしたいと思っております。   ただ,このような考え方につきましては,(注2)でございますけれども,刑事事件関係書類等のみを他の公文書と異なる扱いをする合理性が乏しいのではないかというような意見があるところでございます。例えば,いわゆる情報公開法におきます開示制度と,民事訴訟法上の文書提出命令制度とは,その趣旨,目的を異にするものでございますので,それぞれの制度において開示の是非が判断され得るものというようにされております。そういうことに照らしますと,刑事事件関係書類等のみを他の公文書と異なる扱いをすることについては合理性が乏しいのではないかというような御指摘があったところでございますので,その点をこの(注2)で明らかにしているところでございます。   次に,イの考え方でございますが,イの考え方は,アの考え方に対しまして民事訴訟の受訴裁判所が一定の要件の下に刑事事件関係書類等の提出を命ずることができるとする考え方でございます。このような考え方につきましては,具体的な考え方としましては(注1)にありますとおり,二つの考え方が論理的にはあり得るのではないかというように思われます。   まず,①でございますが,これは民事訴訟の受訴裁判所が別個独立に開示の相当性を判断して,提出を命ずることができるというものでございます。   これに対して②の方は,いわゆる保管者の開示の相当性に関する第一次的判断を尊重するけれども,その判断が保管者の裁量権を逸脱していると認められる場合に限って,刑事事件関係書類等の提出を命ずることができるというものでございます。   この第一次判断権の尊重でございますけれども,②の括弧の中にありますとおり,現在,民事訴訟法220条第4号ロ,公務上の秘密等の問題につきましては,223条第4項第2号で監督官庁が意見を述べるという制度がございます。この制度は,言ってみればそういった監督官庁の第一次判断というものを尊重するという,そういう手続ではないかというように考えられます。したがいまして,②のような考え方を採るということは,すなわちこの220条第4号ロ,あるいは223条第4項第2号を適用することによって,第一次判断を尊重するということにもなるのではないかというように思われるところでございます。   そうしますと,①の考え方は第一次判断を尊重しない,別個独立に判断するという案でございますけれども,現行法におきまして,こういった220条第4号ロ,223条第4項第2号で,犯罪の予防ですとか公訴の維持,公共の安全と秩序の維持等の問題につきまして,監督官庁の第一次的判断を尊重していることとの整合性で,果たして①のような考え方が採れるのだろうかといったような問題点はあろうかと思います。   この点につきましては,この部会でも具体的な提案がございました。その具体的な提案を(注1)の①,②のような考え方に整理して考えてみますと,具体的な提案は捜査等の支障のおそれがある場合と,それから関係者の名誉や生活の平穏を害することとなるおそれ,そういう二つの場合を区別して,それぞれ別個の規律に係らしめるというような案であったように理解しております。すなわち,捜査等の支障のおそれがある場合については220条第4号ロで読む,すなわち②の考え方,第一次判断権を尊重するという考え方になるのではないかと思います。   これに対し,関係者の名誉や生活の平穏を害することとなるおそれについては,二つの御提案があったというように理解しております。一つは,そういったようなおそれがある場合でも,一般義務としての文書提出義務の対象にしてしまう,しかしながら,裁判所が提出を命ずるに当たって,当事者に対して使用目的を制限するとか,あるいは,その他適当と認める条件を付することができる,こういう案ではなかったかと理解しております。もう一つの考え方としましては,関係者の名誉等のおそれにつきましては,一般義務としての文書提出義務の除外事由とする,すなわち,そういうおそれがある刑事事件関係書類等については,文書提出義務の除外事由とするというものであったかと思います。ただその場合でも,そういったような関係者の名誉や生活の平穏を害することとなるかどうかについては,これは民事訴訟の受訴裁判所が第一次的に判断できる,そういう案であったというように思われますので,結局それは①の考え方によるのではないかというように思います。   ということで,具体的な提案をそのままここに書いてあるわけではございませんけれども,論点を整理しまして,こういった論点に沿って具体的な提案を整理するとそのようなことになるのではないかということは,補足説明の方で明らかにさせていただきたいと思っております。   それから,(注2)でございますけれども,イのような考え方を採ります際に検討すべき点について,三つの点を挙げております。これは,現行法の規律というものがアの考え方によっておるものですから,そういう現行の規律をもし変えるということになりますと,この三つの点について検討する必要があるのではないかという趣旨でございます。   まず①でございますけれども,これはアの意見とも関係するわけでございますが,刑事訴訟法等における法体系との整合性がとれるかどうかというのが一つの論点だろうと思われます。   それから,5ページの②でございますけれども,刑事訴訟法等におきましては,開示の要否につきまして的確な判断をするためには,やはりこの刑事事件に関係しますいろいろな捜査情報ですとか,事件記録,そういったものをすべて検討しなければ,なかなか開示の要否について的確な判断を下すのは難しいのではないかというようなことが実質的に考慮されているのではないか,刑事訴訟法等において保管者に開示をさせる,判断させるというのは,そういった考慮に基づいているのではないかというように思われます。   他方,民事訴訟法におきましては,仮に,インカメラ手続で文書が見られるということになりましても,当該文書のみを閲読しただけで,果たしてそういった判断というものを合理的にできるかどうか,また,仮に,保管者の方が開示の相当性について意見を述べるということになりましても,なかなか詳細に事情を述べられるかどうかという点も問題となってまいります。そういうことで,果たして民事訴訟の受訴裁判所の判断の合理性を確保することができるかどうかというのも一つの論点かと考えて,②に掲げております。   それから,③でございますけれども,民事訴訟の受訴裁判所が判断することができるというようにいたしますと,捜査機関の判断と民事訴訟の受訴裁判所の判断が食い違うという場合もあり得るわけでございますが,刑事の裁判所の判断と民事の裁判所の判断が食い違うということもあり得るわけでございます。そういう場合でも,例えば,民事訴訟の受訴裁判所が文書提出命令を発しまして,刑事の裁判所の判断を事実上覆す,こういうことも認めてよいのかどうか,こういうことも一つ検討すべき点かと思っております。以上が③でございます。   なお,部会におきましては,刑事事件関係書類以外の公務文書につきましても,その運用状況につきましてヒアリングの際に明らかになっておりますけれども,特段ヒアリングの結果,これ以外の,刑事事件関係書類等以外の公務文書の利用状況等については,特段の問題が生じているという意見は出されていないということは,補足説明で明らかにしたいというように思っております。   続きまして5ページの(後注)でございます。いわゆる自己利用文書に関するものでございます。   自己利用文書につきましては,自己利用文書であることを文書提出義務の除外事由としないこととする,あるいは,除外事由となる範囲を限定する,そういう方向で法律上手当てをすべきであるといったような御意見もあったところでございます。   他方,やはり文書の作成者の自由な活動の保障は必要であるというようにも考えられますし,自己利用文書の範囲につきましては,平成11年の最高裁決定を前提とします具体的な運用状況というものをなお見守るべきであって,いわばその解釈に委ねてはどうかというような意見も出されたものと認識しております。そこで試案では,(後注)で,いわゆる自己利用文書については何らかの見直しをするかどうかについてはなお検討すると,こういう形で意見を求めたいというように思っております。 ● この刑事事件関係書類等を対象とする文書提出命令制度の見直しにつきましては,中間試案の段階,現在の段階で具体的な案をお示しするのはかなり難しいというように思われるわけでございます。今回お出ししてあります案は,前回までの御議論の結果を踏まえまして,今後の議論の前提となる論点につきまして,多角的に照会事項を掲げるということにさせていただきまして,パブリックコメントの結果,かなり幅広く意見が集まってくると思いますので,その結果,更に検討させていただくというものでございます。   ただいま,○○幹事の方から御説明いただきましたけれども,民事訴訟法と刑事訴訟法との間の横断的な検討がやはり必要かなという感じがいたします。補足説明におきましては,この間行いましたヒアリングの結果や,あるいは,刑事訴訟法等における開示制度を含めまして,パブリックコメントに付するに当たって問題の所在がきちんと浮き彫りになるような形で詳細に書かせていただくということを前提としまして,この原案について御意見をいただきたいというように思っております。どなたからでも結構でございますので,お願いいたします。   3ページの(1)のところは,利用状況につきまして,ヒアリング,あるいは,アンケート調査の結果,少しニュアンスが違う資料が出てきたということをどういうようにまとめるかということで,下から6行目ぐらいに「刑事事件関係書類の大部分は請求があれば開示され民事訴訟において利用されているものの,なお,民事訴訟において必要な刑事事件関係書類等の開示がなされない場合があるとの意見があるが,どうか」と。これは具体的な法律案をどうするかということではなくて,利用状況そのものについての考え方を聴こうということで,従来の要綱中間試案とは若干性質が違うものをここで書いておりまして,これを前提として具体的に法律改正として見直しが必要かどうかという点を(2)と(3)に書いているということでございますので,そういうことも含めて御意見をいただければというように思います。   この文書提出命令については,先ほどの民事執行法についての金銭債務についての間接強制についてと同じくらい,いろいろの御意見が出てくるのかなというような予想をしておりますが,試案としてこういう形で御意見を聴く,あるいは,試案としてこういう形でまとめて御意見を聴くということにつきまして,御了承が得られるかどうかということをお伺いしたいというわけでございますが。 ● ちょっと私の認識が違うかもしれませんので,違っていたら御指摘いただきたいのですが。   3ページの3の(1)のところですね,刑事事件関係書類等の大部分は請求があれば開示され,民事訴訟において利用されているというように書かれているのですが,刑事事件関係書類等の請求があったものの大部分はという趣旨ではないのでしょうかというのが一つであります。細かい話ですが。多分,保管されている関係書類が全部出てきているという趣旨ではないだろうと思います。 ● その点は,補足説明で具体的な統計的な数字を明らかにする予定にしておりますので,この大部分という趣旨も,そういう統計上に現れたデータでございます。そうしますと,統計というのは請求されたものの9割とかが出されているということでございますので,御指摘のような趣旨ではないかと思っております。 ● それから,これは言葉の問題なんですが,「大部分」という表現がいいのかどうか,認識が少し違う人もいるかもしれないのですが,その辺はいかがでしょうか。 ● 統計的な数字は,補足説明の方で挙げさせていただくつもりでございます。事務当局としましても,例えば,90%という数字が出れば,それは大部分というように評価していいのではないかと思っておりますけれども,そこはそうではないという方がいらっしゃれば,それは補足説明の方で90%という具体的な数字を書きますので,「大部分」という評価をしないというのであれば,それはそういう御意見がいただけるのではないかと思いますが。 ● ほかに何かございますでしょうか。   御意見がなければ,この点も原案どおり試案を御了承いただいたというように受け取らせていただいて,先に進ませていただきたいのですが,よろしゅうございますでしょうか。   それでは,5ページの4「その他」,(1)「管轄の合意」と,(2)「債権者に対する仮執行宣言付支払督促の告知方法」,この二つをまとめてお願いいたします。 ● 「その他」でございますが,まず(1)「管轄の合意」でございます。   こちらの方は,前回の部会資料から変わっておりません。電子商取引等の市場規模が拡大して,インターネット等を利用して行う電子商取引がますます増えていく,こういう実情にかんがみまして,管轄の合意だけがそういう場合でも書面でしなければいけないというのは不都合ではないかということから,この管轄の合意も電子データによってもすることができるというようにするものでございます。   それから,(2)の「債権者に対する仮執行宣言付支払督促の告知方法」でございますが,これは前回の部会資料では,督促手続のオンライン化のところに書いていたものでございます。ただこちらの方は,必ずしも申立てがインターネットを利用してされた場合に限らず,一般的な督促手続についての改正の提案でございますので,この「その他」という中の位置にしたというものでございます。   この仮執行宣言付支払督促につきましては,これに対しまして債権者が異議申立権を有するということはないというように考えられておりますし,その内容も債権者が分かっているというのが普通でございますので,債権者の同意というものを要件にすれば,あえて送達という厳格な方法によらないで,送付による方法で告知するということであってもよいのではないかというものでございます。 ● 5ページの「その他」の「管轄の合意」と,「債務者に対する仮執行宣言付支払督促の告知方法」の内容は,前回の資料と実質的に変わっておりません。ただ,前回の部会資料での御指摘を含めて,「その他」という別の項目を挙げて掲げさせていただいたものでございます。これにつきまして,何か御意見ございますでしょうか。   特に御意見がなければ,この「その他」の2項目についても,この要綱中間試案としては御了承いただいたものとして受け取らせていただきますが,よろしゅうございますでしょうか。--それでは,そのようにさせていただきます。  それでは,本日の審議事項はすべて終了いたしました。   これからのスケジュールは,これから事務当局の方から説明いたしますが,今日の御審議でたくさんいただいた御意見は,補足説明の中に十分盛り込ませていただきます。その補足説明といいますのは,これは従来の慣行によりまして民事局参事官室の責任において発表するということでございます。そこで,その点について,補足説明の中で詳しいことは御説明させていただくということについて御了承いただきたいというように思っております。 ● いろいろ今日御指摘いただきまして,その趣旨をもう少し明らかにした方がいいというような箇所も幾つかございました。私ども事務当局の方で検討いたしますけれども,基本的には補足説明の中で,今日いただきました趣旨というものは十分に反映させていただくということにいたしまして,試案本体としてはこういう形でパブリックコメントにかけるということを御了解いただいたものと思っておりますので,基本的にはそういう方向でさせていただきたいと思っております。   細かい表現ぶり等の問題につきましては,なお私どもの方で精査いたしまして,変えるべき点がありますれば変えさせていただくことは御了解いただきたいと思っております。 ● それでは,中間試案の取りまとめについて御了解いただきましたので,今日で6回目ということでございますが,6回という非常に短期間の間に中間試案を取りまとめていただきました。部会長として委員,それから幹事の方々に感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。   それでは,最後に○○幹事の方から,今後の事務連絡をお願いいたします。 ● 今日御決定いただきました中間試案につきましては,事務当局の方で作ります補足説明と併せて公表しまして,パブリックコメントにかけたいと思っております。   パブリックコメントにつきましては,9月19日の金曜日から10月20日の月曜日までのおよそ1か月間を現在のところ予定しております。なお,10月20日以降の次の部会が11月7日ということになっております。したがいまして,パブリックコメントの最後の期日から次回の部会までの期日が非常に短期間でございますので,御意見をいただく場合には,10月20日の月曜日というものは厳守していただければ大変ありがたいと思っております。   次回の部会でございますけれども,10月17日,本日と同じく法曹会館の高砂の間でございます。   今申し上げましたとおり,パブリックコメントの期限が10月20日でございますので,次回の部会ではまだパブリックコメントが終了しておりません。したがいまして,10月17日の部会にどういうことを御審議いただくか,あるいは,どういう議事進行にするかにつきましては,なお今後事務当局の方で検討させていただきたいと思っております。ただ,一つ予定がございますのは,この部会の最初に申し上げました公示催告手続ニ関スル法律について,別途検討を行っております。それにつきまして中間的な取りまとめに関する報告をこの部会でさせていただければというように思いますので,それが一つの予定になっているということだけは申し上げたいと思います。 ● そういうことで,パブリックコメントの締切りは10月20日ということで厳守していただきたいということと,それから次回のこの部会は,締切りの三日前,10月17日に行う,その17日には,内容としては公示催告手続の中間取りまとめに関する御報告,御審議をお願いすると同時に,パブリックコメントのいかんにかかわらず検討していかなければならない事項もたくさんありますので,それについて併せて検討していただくというようなことで,次回の10月17日は考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。   それでは,本日の部会はこれにて終了することといたします。どうもありがとうございました。 -了-