法制審議会 民事訴訟・民事執行法部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  平成15年4月18日(金)  自 午後1時00分                       至 午後2時35分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  民事訴訟法及び民事執行法についての検討課題(案)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● それでは,定刻が参りましたので,民事訴訟・民事執行法部会第1回会議を開催させていただきます。  ただいま,「民事訴訟・民事執行法部会」というように申しましたけれども,この部会は,一昨年6月の諮問第52号に基づいて設置されました「民事・人事訴訟法部会」における残された検討課題と,後に御説明いただきます諮問第62号に基づきます新たな事項を審議するために,前の部会の名称を「民事訴訟・民事執行法部会」というように改めたものでございます。  審議の開始に先立ちまして,委員の○○法務省民事局長からごあいさつがあるということでございますので,○○委員,よろしくお願いいたします。 ● 民事局長の○○でございます。今日は,委員・幹事の先生方,お忙しい中お集まりいただき,ありがとうございます。  本日からこの部会で改めて御審議をいただくわけでございますが,この部会で御検討いただきますのは,まず第1に,民事司法制度をより国民に利用しやすくするという観点からの民事訴訟法の改正でございます。第2に,民事執行手続を一層適正かつ迅速なものとすることにより,円滑な権利の実現を図るとの観点からの民事執行法の改正でございます。  まず,民事訴訟法の改正につきましては,ただいま部会長からのお話にもありましたように,この部会で御審議をいただき,その成果は,この国会に法案として提出されておりますが,種々の事情から検討が先送りされた事項もございますので,それについて更に検討を進めていただくということでございます。  民事執行法の関係につきましても,担保・執行法制部会で御審議をいただき,要綱の答申をいただいて,この国会に既に法案として提出してございますが,現下の状況におきまして,民事執行制度を更に適正・迅速なものとして,より国民が利用しやすい手続とするということが急務とされております。そのようなことから,本年3月24日の総会におきまして,さきに述べました観点からの民事執行法の改正についての諮問62号がなされたわけでございます。この諮問につきましては,民事・人事訴訟法部会において御審議をいただくということとされまして,その関係で,部会長からのお話にありましたように,この部会の名称が民事訴訟・民事執行法部会という具合に変更されたものでございます。名称の変更はありますが,部会としての継続性はございますので,これまでどおり○○委員に部会長をお願いしております。  なお,今回の審議事項につきましては,関係各界から強く早期の改正を求められておりますことから,諸般の事情を考慮いたしまして,遅くても来年の通常国会には所要の法律案を提出するための御検討をいただく必要があると考えております。大変厳しいスケジュールの中で数多くの事項について検討をお願いすることになりますので,誠に心苦しい限りですが,どうか委員・幹事の皆様方におかれましては,限られた時間の中で十分なる審議,検討を切にお願いする次第でございます。我々事務当局としても,充実した審議のために全力を挙げて努力をしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ● ただいま○○委員のごあいさつにもございましたように,私が民事・人事訴訟法部会から引き続きこの部会の部会長を務めさせていただくということでございますが,それでよろしゅうございますでしょうか。           (「異議なし」と呼ぶ者あり) ● では,御承認をいただいたということで,お願いいたします。初めからこの席に座っていながら何だとおしかりをこうむるかもしれませんが,実質的に同一の部会だということで,お許しいただければというふうに思っております。  さて,この部会は,本年1月24日に,民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案,それから人事訴訟法案要綱案を取りまとめて以来,約3か月ぶりの再開ということになりますが,この間にかなり多くの委員・幹事の方々の異動がございましたので,私の方から御紹介させていただきます。           (委 員・幹 事・関係官 紹 介 省 略) ● それでは,続きまして,事務当局から配布資料の説明と,引き続きまして,ただいま開会中の第156回国会に提出されている法律案のうち,当部会に関連するものにつきまして御報告をお願いいたします。 ● それでは,私の方から,まず配布資料の確認をさせていただきます。  事前送付させていただきました資料といたしましては,まず部会資料1「民事訴訟法及び民事執行法についての検討課題(案)」がございます。本日は,この資料に基づきまして御議論いただければと思っております。二つ目といたしまして,この3月に新たに諮問されました諮問第62号を資料としてお付けしております。さらに,後ほど御説明いたしますけれども,「司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案新旧対照条文」の一部を資料としてお送りしております。最後に,「民事訴訟・民事執行法部会平成15年度上半期開催予定(案)」,これもお送りしております。このスケジュールにつきましても,また後ほど私の方から御説明させていただきたいと思います。  次に,本日の席上配布資料でございますけれども,民事・人事訴訟法部会,この部会の昨年8月2日に開催されました第9回会議におきまして配布されました資料の一部を,改めて今回席上配布させていただいております。これにつきましてもまた後ほど御説明いたしますけれども,文書提出命令制度の見直しに関する資料でございます。従来からこの部会のメンバーでいらっしゃった方々は当然お持ちではございますけれども,新たに加わられた方もいらっしゃいますので,改めて今回お出ししたというものでございます。  また,そのほか,法律案の関係資料を席上に配布してある方もいらっしゃいます。担保・執行法制部会に所属しておられなかった委員・幹事の方には,今回,「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案」の関係資料,それからまた,今回新たに加わられました方々には,「民事訴訟法等の一部を改正する法律案」と「人事訴訟法案」の関係資料を席上配布させていただいております。  以上が資料の確認でございます。  続きまして,この通常国会に出されております政府提出法律案につきまして簡単に御報告をしたいと思います。  まず,この部会におきまして御審議いただきました民事訴訟法の改正,それから人事訴訟手続法の見直しに関係するものでございますが,先ほどありましたとおり,1月24日にこの部会で要綱案が決定されまして,その後,2月5日の総会で要綱案どおり決定されております。そして,法務大臣に要綱として答申されております。  これに基づきまして事務当局の方で法律案を取りまとめまして,この3月4日に法律案が閣議決定されまして,国会に提出されております。「民事訴訟法等の一部を改正する法律案」,「人事訴訟法案」の二つでございます。  この二つの法律案でございますけれども,先日,4月15日に衆議院の本会議におきまして趣旨説明,さらに,法務委員会におきまして提案理由説明が行われております。その後の審議の予定は,現在はまだ未定でございます。  続きまして,「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案」がこの国会に提出されております。こちらの方は,1月28日に担保・執行法制部会で要綱案が決定されたものでございます。その後,2月5日の総会で要綱案どおり決定され,法務大臣に答申がされました。これに基づきまして事務当局の方で法律案を取りまとめ,3月14日に閣議決定を経て国会に提出されております。  3番目でございますが,「仲裁法案」が国会に提出されております。この「仲裁法案」につきましては,1月24日のこの部会におきまして,司法制度改革推進本部の方から,仲裁法案(仮称)の概要ということで,そのあらましが報告されたものでございます。その内容に基づきまして司法制度改革推進本部におきまして法律案を取りまとめて,3月14日に閣議決定をされまして,国会に提出されております。  次に,「司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案」でございますが,この法律案におきましては,一部民事訴訟法の改正部分がございますので,その点を御説明申し上げたいと思います。それが先ほど資料で確認いたしました新旧対照条文の一部でございます。  この「司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案」の中には,裁判所法の改正部分が含まれております。その内容は,簡易裁判所の事物管轄を90万円から140万円に引き上げる,こういう趣旨の改正でございます。したがいまして,これに伴いまして,民事訴訟法第8条,すなわち,訴訟の目的の価額を算定できないような,そういったような訴えの管轄を地方裁判所にする,こういう趣旨の規定でございますが,これが改正されまして,90万円とあるところが140万円となっている,こういうものでございます。  以上が,この部会におきまして関係する法律案の国会提出の関係でございます。  もう一つ,御報告あるいは御了解いただきたい点がございます。それは,先ほど「仲裁法案」について御説明したところでございますけれども,御承知のとおり,現在は「公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律」ということになっておりますが,この度,「仲裁法案」ということで仲裁法が独立の法律になるということによりまして,この「仲裁法案」の附則第9条でございますが,現行法の名称が「公示催告手続ニ関スル法律」というように変更され,公示催告手続の部分だけが残る法律になる予定でございます。  改正後の「公示催告手続ニ関スル法律」につきましては,私ども事務当局といたしましては,現代化をやはりすべきではないかというように考えております。そういう要請もございますし,また,例えば,従来の公告期間ですとか,あるいはその方法等の見直し,こういうものもすべきではないか,やはり現代的なものに改める必要があるのではないかというように考えております。  ただ,この「公示催告手続ニ関スル法律」の現代化を,どの場で検討するのかということにつきましてでございますが,基本的にはこの規定の現代語化というものが中心になろうかと思っております。また,もちろんこれは,平成8年改正前は,民事訴訟法の一部をなしていたものでございますけれども,その性質に照らしますと,民事法の基本法令とまでは必ずしも言えないという考え方もあるのではないかというようにも思われます。  そのようなことから,事務当局といたしましては,別途検討会を設けまして,そこで検討してはどうかというように考えているものでございます。もちろん,この部会におきましても,そういった検討の過程で中間的な報告というものはさせていただきたいと思いますし,最終的な部分につきましては報告して,更には法制審議会の総会におきましても報告して,御了解を得たいというようには思っております。そのような検討の進め方でよろしいのかどうかにつきましても御感触をいただければ幸いでございます。  以上が私からの説明でございます。 ● ただいま○○幹事から,配布資料の説明,それから提出法案についての御報告,それから3番目に公示催告手続の今後の見直しについての御提言がございました。そこで,これらにつきまして何か御質問がありましたら承りたいと思いますが,いかがでしょうか。  御意見はいかがでしょうか。何か御意見があれば承りたいと思います。  それでは,御質問,御意見がなければ,今の最後の点,公示催告手続の取扱いにつきましては,今の御提言のとおり,別途研究会を立ち上げて検討をしていただき,節目,節目にこの部会にその検討状況を御報告していただくという御提案でございますけれども,そういう原案でよろしゅうございますでしょうか。 ● 結論としては,私はそういう取扱いがよろしいのではないかと思います。申すまでもなく,法制審議会は法務大臣の諮問機関でございますから,諮問を受けた事項について審議をするというのが本来の権限かと思います。この公示催告手続は,先ほどの御説明にもございましたように,もともと民事訴訟法の一部であったわけで,そういう意味では,基本法ですから,改めて諮問をいただいてということも考えられないわけではないと思いますけれども,実質的な内容から見て,別途検討していただいて,随時ここでも報告をしていただき,総会の方に報告をしていただいて了承を得るというやり方がよろしいのではないかというように思います。 ● それでは,そういうことでよろしゅうございますでしょうか。―それでは,そういうことにさせていただきます。  では,続きまして,民事執行法の見直しに関する諮問第62号につきまして事務当局から御説明をお願いしたいと思います。 ● 先ほど,当方の局長の○○のあいさつにもありましたとおり,本年3月24日の法制審議会の総会におきまして,民事執行法に関する諮問第62号がされたものでございます。  民事執行制度につきましては,本年2月5日の第139回法制審議会におきまして,民事執行法上の保全処分等の要件の緩和あるいは効力の強化,それから間接強制の方法による強制執行の適用範囲の拡張,債務者の財産を開示する制度の創設,扶養等の義務に係る債権に基づく強制執行における特例の創設,こういったことなどを内容といたします「担保・執行法制の見直しに関する要綱」が決定されたものでございます。  この要綱は司法制度改革の一環でございますけれども,いわゆる占有屋等による執行妨害や債務者による財産隠し等によりまして民事執行制度が適切に機能しない場合がある,こういったような指摘を受けまして,不動産執行妨害への対策強化あるいは強制執行の実効性の確保,こういった観点から民事執行制度の改善を図ったものでございます。ただ,我が国の社会経済情勢の変化に照らしますと,更に民事執行手続を一層適正・迅速なものといたしまして,権利実現の円滑化を図る,こういう必要があるのではないかというように考えられるところでございます。そういうことで,本年3月24日の法制審議会の総会でこの新たな62号の諮問がされたものでございます。  この諮問におきまして,具体的に今どのような検討事項を事務当局の方で考えているかということにつきましては,主な項目として,後ほど部会資料1に基づきまして説明させていただきたいというように思います。  なお,民事執行法と民事訴訟法とはともに民事手続法の基本法である,こういうところから,新たな部会を設けないで,既存の,この部会におきまして審議していただくというようになったものでございます。  事務当局といたしましては,先ほどの○○のあいさつにありましたとおり,いろいろな諸事情から考えまして,遅くとも来年の通常国会への法案提出というものを考えておりまして,この部会の第1回が4月からということで,非常にスケジュールがタイトでございまして申し訳ございませんけれども,その点もよろしくお願いしたいというように思っております。 ● ただいまの諮問第62号に関する○○幹事の御説明につきまして,何か質問等がございましたらお願いいたします。―よろしゅうございますでしょうか。  それでは,今御説明がありましたように,法務省としては,諮問第52号及び第62号についての審議の結果を平成16年の通常国会に法律案として提出したいという目標だということでございますので,この点についてもどうぞよろしくお願いしたいというように思います。  それでは,諮問第52号に基づく民事訴訟法の見直しとともに,この諮問第62号に基づく民事執行法の見直しでございますけれども,先ほどから既に説明がありますように,大変厳しいスケジュールでございます。後からも私,申し上げたいと思いますが,ここに審議に参加しておられる委員・幹事は,この部会だけではなくて,ほかのいろいろな部会や,あるいは他の省庁等の審議会にも多分参加されている方が多いと思います。そういう中で,非常に厳しいスケジュールで進めていかなければなりませんが,どうぞよろしく御協力のほどをよろしくお願いしたいと思います。  今ちょっと申しましたように,今後のスケジュールにつきまして,○○幹事の方から説明をお願いしたいと思います。 ● それでは,今後のスケジュールにつきまして御説明いたしたいと思います。  事前に上半期の開催予定を送らせていただいておりますが,本日改めてこの開催予定の案を席上に配布させていただいております。  変更点でございますが,第6回,9月12日の金曜日でございますが,事前に送付させていただきました資料におきましては場所が未定となっておりましたが,この法曹会館高砂の間というように決定されましたので,その部分が変わっているというものでございます。  これを御覧いただきますとお分かりになりますとおり,第1回が本日4月18日でございますが,それから9月まで,大体一月に1遍ぐらいのペースで開くということにしてはどうかというように考えております。  なお,この中で第4回の7月18日だけは開始時間が午後2時30分からの予定になっておりますので,この点御留意いただければというように思います。  このように,とりあえず9月までの当面の日程を考えておるわけでございますが,具体的にどのようなスケジュールを事務当局としてとりあえず考えているのかといいますと,もちろんこれは今後の審議の状況によって当然変わり得るものではございますが,従来のやり方から申しますと,やはり中間的な段階で中間試案というものを取りまとめて,パブリックコメントの手続に付すというようなことが必要ではないかというように考えております。先ほども申し上げましたとおり,第1回が4月からのスタートということになりますので,なかなか試案までの検討期間がないということでございます。そういうことから考えますと,昨年のこの部会の例で言いますと,8月に試案を出して,むしろ8月の期間,そういう期間をパブリックコメントに当てるというようにもしていたわけでございますが,なかなかちょっとそういうのも難しいのではないかと。そうしますと,9月12日のこの期日あたりに中間試案が取りまとめられればよろしいのではないかというように事務当局としては考えているものでございます。  そういったところからいろいろ逆算するということなども考えていきますと,例えば文書提出命令の状況につきましては,昨年8月に,その状況につきまして関係機関からお話を伺ったわけでございますけれども,例えば,今の段階では,6月20日の第3回,このあたりでそういった状況を改めてまたお聞きしてはどうかと。そういったようなものも踏まえながら,中間試案の作成に向けて,第4回,第5回という二つの会議で試案に向けた御議論をしていただいてはどうか,こういったようなことも現段階での事務当局の一つの案としては考えているものでございます。  もちろん,先ほども申し上げましたとおり,これは,これからの審議の状況によって当然変更はあり得ることでございますけれども,最終的なこの検討の時間あるいはパブリックコメントの時期というものも考えますと,こういったような非常にタイトなスケジュールにならざるを得ないのかなというようにも思っております。  また,9月に試案ということに仮になったといたしますと,パブリックコメントの方が大体1か月ぐらい時間がかかるということになります。そうしますと,そのパブリックコメントの結果を踏まえて御審議していただくのが10月の後半あるいは11月の頭ぐらいからということになるわけでございます。最終的な要綱案といいますものは,遅くとも来年の通常国会への法律案の提出を目指すということになりますと,来年の1月には取りまとめということになりますので,また秋以降のスケジュールもかなりタイトになることが予想されるということで,大変恐縮ではございますが,よろしくお願い申し上げたいと思います。 ● ただいまのスケジュール案につきまして御質問等がございましたら,どうぞ御発言いただきたいと思います。―よろしゅうございますでしょうか。  秋以降の日程はいつごろ決まるのでしょうか。 ● こちらでの,部会での御審議の状況も踏まえながらまた決めたいと思いますけれども,できるだけ早急に案を固めまして,またお諮りしたいというように思っております。 ● それでは,スケジュール案につきまして特に御異論もないようでございますので,今後は「民事訴訟・民事執行法部会の平成15年度上半期開催予定(案)」に従いまして,今後この部会を開催させていただきたいと思います。  それでは,次に,部会資料1というのがございますが,部会資料1の「民事訴訟法及び民事執行法についての検討課題(案)」につきまして御審議をいただきます。○○幹事,御説明をお願いいたします。 ● それでは,私の方から,部会資料1につきまして御説明させていただきたいと思います。  こちらの方は,前の「民事・人事訴訟法部会」におきまして,もう少し時間をかけて検討しようとされた事項,あるいは先ほどの諮問第62号に関しまして,事務当局の方で,このような問題があるのではないかと考えている事項というものを取りまとめたものでございます。本日は,この資料につきまして,こういうような論点を今後検討していくということでよろしいのか,あるいはほかにこういったような論点があるのではないか,あるいはこういった論点について議論していくにはこういったような進行というものがいいのではないかとか,そういったような,この検討課題につきまして御意見,御感触を伺わせていただければというように考えまして,とりあえずの案を出させていただいているものでございます。  そこで,まず,第1の,「民事訴訟法についての検討課題」について御説明したいと思います。  まずは,1番でございますが,督促手続のオンライン化の関係でございます。  この督促手続のオンライン化につきましては,昨年にこの部会で取りまとめられました「民事訴訟法改正要綱中間試案」に掲げられていたものでございます。すなわち,支払督促の申立てをオンラインですることができるというようにいたしますと,申立てが非常に迅速かつ円滑にすることができるようになると。そういうことによりまして,国民の司法へのアクセスというものを容易にしよう,こういうものでございます。こういったような方向につきましては特に御異論はなかったわけでございますけれども,やはり新たな制度を作るということになりますし,現実にどういう手続になっていくのか,技術的な検討というものも詰めなければいけないということになりました。そこで,最終的に,この部会では,要綱案を取りまとめる段階でこの事項は落ちたわけでございます。すなわち,司法制度改革審議会の意見書で具体的に提言されている事項の制度化を優先しようということで,この督促手続のオンライン化は,もう少し時間をかけて検討しようということになったという経緯でございます。  今回は,こういった問題につきまして,少し時間をかけて検討させていただきまして,御議論していただきたいというように思っているものでございます。  具体的に,どういうようなシステムを構築していくのかという点につきましては,最高裁判所におきまして具体的な検討が進められるということになりますし,そういった技術的な部分も含めまして,事務当局の方でも検討して,こちらの部会の方でお諮りしていきたいというように思っているものでございます。  さらに,(後注)でございますが,先ほど述べました,昨年の中間試案の段階でも督促手続以外の民事訴訟手続についてのオンライン化も検討していくということを(後注)に掲げておりました。今回,督促手続の方は,先ほど申し上げましたような,国民のアクセスということから,これをまず第一に検討していきたいというように思いますけれども,それ以外の民事訴訟手続等のオンライン化につきましても,今回,検討の対象といたしまして,御審議していただきたいというように思っているものでございます。  2番目は,文書提出命令の関係でございます。ここにございますとおり,「民事・人事訴訟法部会」におきます公務文書の文書提出命令制度についての検討を更に続けるというものでございます。  平成13年の民事訴訟法の改正によりまして,公務文書の提出義務の範囲,それから,その提出義務の存否を判断するための審理手続等について民事訴訟法の改正が行われたものでございます。具体的には,公務文書につきまして,一般義務としての提出義務の対象とし,さらに除外文書であります公務秘密文書に該当するか否かという点につきまして裁判所が判断する場合には監督官庁の意見を聴かなければいけないといった手続を設ける等の改正であったわけでございます。  この改正におきましては,刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書については,文書提出義務の除外文書というようにされたわけでございます。  その理由につきましては,例えば,刑事事件の関係書類につきましては,捜査や公判に不当な影響が生ずること,あるいは被告人,被害者など関係人の名誉,プライバシー等に対して重大な影響が及ぶこと,あるいは犯罪の手口が開示され,模倣犯の出現等,公の秩序に反する結果が生ずること,あるいは将来の捜査や公判において国民の協力を得ることが困難となること,こういった種々の弊害が生ずるおそれがあるということで,このようにされたわけでございます。  その後の国会の審議におきましては,この刑事事件関係書類等その他の公務文書の利用の在り方をめぐりまして議論がされたわけでございまして,最終的に,資料にございますとおり,附則の第3項におきまして,公務文書の文書提出命令については,なお検討を加える,その結果に基づいて必要な措置を講ずるというようにされたわけでございます。  なお,この平成13年の改正法律の施行日でございますが,平成13年12月1日でございます。この検討を加えて,その結果に基づいて必要な措置を講ずる期限は,この法律の施行後3年を目途として必要な措置を講ずるということになっております。したがいまして,今回,この部会におきまして御審議していただきたいというように思っているものでございます。  この問題につきましては,先ほど少し御説明いたしましたとおり,昨年の8月2日にこの部会で,公務文書についての文書提出命令の運用状況につきまして,最高裁判所,法務省刑事局,法務省大臣官房訟務部門,日本弁護士連合会から御説明を伺ったものでございます。本日席上に配布しました資料が,そのときにそれぞれ関係機関の方々からお出しいただいた資料でございます。先ほど申し上げましたとおり,従前からの方々は既にお持ちと思いますけれども,新たに加わった方がいらっしゃいますので,改めて席上に配布させていただいたというものでございます。  ただ,昨年の8月2日ということになりますと,それほど改正法の施行後,期間がたっていないということになりました。したがいまして,なかなかその数字自体もそれほど多くないということもありまして,やはりもう少し時間をかけて,期間を経た段階で改めてこの運用状況というものについてお話を伺おう,で,それに基づいて更に議論をしようということで,要綱案からは見送られたというものでございます。  そこで,先ほどのスケジュールのところでも申し上げましたとおり,現在,事務当局の考えているのは,例えば,6月20日あたりでどうだろうかということは考えておりますけれども,改めて関係の機関の方々から状況を聞きまして,その結果を踏まえて御審議いただきたいというように考えているものでございます。  ちょっと先ほど御説明し忘れましたが,法務省の大臣官房訟務部門からは口頭で説明をいただきましたので,この席上配布資料には訟務部門の資料はございません。  続きまして,第2の,「民事執行法についての検討課題」でございます。  これにつきましては,民事執行の手続を適正・迅速化して,その権利実現の円滑化を図るというためにはいろいろと議論すべき点があるのではないかというように思いますが,とりあえず事務当局の方で,こういうことが議論になり得るのではないかというものをお出ししております。  まず1番目が,少額債権執行制度の関係でございます。  具体的な内容といたしましては,ここにありますとおり,例えば,少額訴訟の判決などの,そういった少額のものにつきましては,簡易裁判所におきまして,こういった少額債権のための債権執行手続を設けてはどうか,こういう問題でございます。  この問題につきましては,担保・執行法制部会では議論はされておらないというようにお聞きしております。ただ,現在,簡易裁判所におきましては,少額訴訟手続,すなわち,原則として1日で審理を終えて,即日判決を言い渡す,こういったような少額訴訟手続というものが設けられております。この制度は,簡易・迅速に判決が得られるという点で,非常に国民からも評判がよい制度でございます。そこで,冒頭に御紹介しました,今通常国会に提出しております「民事訴訟法等の一部を改正する法律案」でも,その上限額を引き上げることとしておりますけれども,更に,その執行手続が簡易・迅速に行われるということになりますと,権利の実現の段階も含めて,より国民に利用しやすい制度になるというように思われます。このような観点から,少額訴訟の判決などに基づきます,簡易裁判所における少額債権執行手続,こういうものを創設してはどうかというのが一つの検討項目になるのではないかというように考えております。  続きまして,2番目の項目でございますが,最低売却価額制度の問題でございます。  現在の不動産の競売におきましては,言うまでもなく,競売開始決定がされますと,裁判所が差押不動産の適正な競売が行われますよう,評価人を選任して不動産の評価を命じて,その評価に基づいて最低売却価額を定めるというようにされております。最低売却価額は,これに達しない買受けの申出に対しましては売却を許可しないというものでございまして,不当に安い価格での売却を防止する,そういう機能とともに,適正な価格を提示して,買受けを申し出ようとする者に一つの指針を与える,こういう機能も有するものでございます。  しかしながら,この制度に対しましては,この最低売却価額の決定に時間がかかるのではないかというような指摘,あるいは,この制度があるために不動産がなかなか売却できず,競売手続の円滑な執行の妨げになっている場合があるのではないか,こういったような指摘もされております。そのようなことから,今回,この部会におきまして,この不動産の競売におきます最低売却価額制度等の在り方を検討するということも必要ではないかというように考えている次第でございます。  次に3番目でございますが,「裁判所内部の職務分担関係」という項目でございます。すなわち,現在,執行裁判所の権限とされています事項についての見直しでございますけれども,執行手続におきましては,民事執行の申立てから配当の実施に至るまで裁判所が様々な職務を行うというようにされているわけでございます。その中では,例えば,不動産の差押えの登記の嘱託ですとか,配当要求終期の公告等,一定の事項は裁判所書記官が行う事項というようにされておりますけれども,執行手続のより迅速化を図る,こういう観点からいたしますと,この裁判官と裁判所書記官の役割分担の見直しを行う,こういうことも必要ではないかというように考えております。担保・執行法制部会でもこの点についての議論がされたというようにお聞きしておりますけれども,なおもう少し時間をかけて議論する必要があるのではないかということで要綱案には盛り込まれなかった,こういう経緯というように伺っております。  大体,事務当局として,主な項目としてこういうものが検討課題になるのではないかというものでございます。  続きまして,第3の「その他」でございます。その他につきましては,ほかにどういう項目があるのか,御意見,御感触を伺いたいと思いますけれども,一つ,事務当局の方から検討項目として考える点を述べさせていただきたいと思います。  これは,オンライン化といいますか,裁判手続のIT化にも多少は関係するのですが,管轄裁判所の合意についての検討項目でございます。すなわち,現在,合意によりまして管轄裁判所を定めるということができるわけでございますが,民事訴訟法第11条第2項によりますと,その合意は,「一定の法律関係に基づく訴えに関し,かつ,書面でしなければ,その効力を生じない。」というようになっておりまして,この管轄の合意は書面でしなければいけないというようにされております。  ただ,現実の社会,取引というものを見てみますと,現在は電子商取引,オンラインでの取引等が非常に盛んになっております。そういうところで取引,契約を行った,しかし管轄合意の部分だけは書面で合意しなければいけないというのは,この電子商取引が盛んになっておる現状を踏まえますと,やはり不合理ではないかというように思われますし,また,そのような指摘もあるところでございます。  また,御参考までに,冒頭に申し上げました,今国会に「仲裁法案」が提出されておりますけれども,この「仲裁法案」におきましては,仲裁合意は書面によってしなければならないという規定はございますが,それとあわせまして,この「仲裁法案第13条第4項に,  仲裁合意がその内容を記録した電磁的記録,「電子的方式,磁気的方法,その他人の知覚によっては認識することができない方式でつくられる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。」  という定義規定がございますが,すなわち,仲裁合意がそういった電磁的記録によってされたときは,その仲裁合意は書面によってされたものとする,こういう規定がございます。すなわち,仲裁合意につきましては,書面によるほか,こういった電磁的方法による合意も認めているというものでございます。  こういったような状況にかんがみますと,現在の民事訴訟法第11条第2項が管轄合意を書面に限っているという点につきましては,やはり検討して,その見直しを図る必要があるのではないかというように事務当局としては思っているものでございます。  また,そのほか,不動産競売に関しまして,その適正あるいは迅速な手続を確保するための方策として,先ほど幾つか項目を述べましたけれども,そのほかにまた何か検討すべき課題があるかにつきましては,今後また事務当局の方でも検討してまいりたいというように思っております。  部会資料1の説明は以上でございます。 ● ここで休憩に入らせていただきますが,ただいま御説明いただきました部会資料1の「民事訴訟法及び民事執行法についての検討課題(案)」といいますのは,今後の当部会の,これから1年弱をかけて審議すべき目標を事務当局としてはこういうように考えているということでございますが,再開後は,委員・幹事の皆様方におかれましては,場合によってはこの項目は後回しでもいいんじゃないかとか,ここまでやるならもっとこういう重要な問題があるという御指摘も含めて,広く御意見を賜りたいと思います。そのうちのどこまでが16年の通常国会にのせることができるかというのは,進め方の問題として別途事務当局に考えていただきますが,とりあえずこの部会で広く御意見を賜って,今後の民事訴訟法,民事執行法の更なる改善に役立てていきたいというように考えておりますので,再開後は,この点についての御意見を賜りたいと思います。           (休     憩) ● それでは,審議を再開させていただきます。  休憩前に,部会資料1に基づきまして○○幹事の方から,民事訴訟法の検討課題,民事執行法の検討課題及び第3としてその他について御説明をいただきました。これにつきまして,各委員あるいは幹事から御質問あるいは御意見を賜りたいというように思います。どなたからでも結構ですので,どうぞよろしくお願いしたいと思います。  順序といたしましては,まず第1の民事訴訟法について御意見を伺い,順次,民事執行法,その他というように進めたいと思います。  まず,民事訴訟法の部分について,いかがでしょうか。 ● この1,2については全く異論がございません。ただ,2に関連して,これは取り上げるに値するのかどうかということをちょっと御検討いただければと思うのですが,自己利用文書の問題がありまして,公務文書については,情報公開法との整合性の観点で,事実上,共用文書を除外していますので,自己利用文書の問題はないわけなのですが,御承知のように,銀行の稟議書等をめぐって既に相当の判例も出て,最高裁判決まで出ていまして,この平成11年11月12日の最高裁の決定についてはいろんな評価もあろうかと思いますけれども,プライバシー侵害とか意思形成阻害という看過し難い不利益が生ずるおそれがあることを必要とするという実質条件を付加したという点では,むしろ要件を絞り込んだというような気もいたすわけでございますけれども,結論を見ますと,銀行の稟議書について,抽象的な,意思形成を阻害するおそれがあるということで,自己利用文書に当たるという判断をしているわけで,それについては随分議論もあって,立法当時のいろいろな議論からすると,そういう結論でいいのかどうかという疑問も出されているところでありまして,これが果たして立法の問題なのか解釈の問題なのかという点がありまして,私自身,自信はないのですけれども,一応重要な問題が提起されておりますので,採り上げるかどうかについて一応議論はしていいのではないかというように思っているのですが。 ● 今の御発言に関連する御意見でも結構ですし,別の御意見でも結構ですが,御質問なり御意見を承りたいと思います。 ● 後ほど,次回の予定のところでも申し上げようと思っておりますが,次回には論点整理という形で資料を作っていきたいというように思っております。そういった中で,どういう論点を整理していくのかということを事務当局で考えますけれども,今日いろいろ,これからも恐らく出されると思いますけれども,今の御指摘の点も踏まえて,そういう論点整理をどうやっていくのか,また事務当局の方で検討していきたいというように考えております。 ● 第1の,「民事訴訟法についての検討課題」については,ほかにいかがでしょうか。―よろしゅうございますでしょうか。  それでは,第2の民事執行法関係に移りたいと思います。ここでは3項目とりあえず挙げておりますけれども,これに関連する御質問でも結構ですし,これ以外の問題点あるいは見直し点の指摘でも結構でございます。どうぞ御発言いただければと思います。 ● 意見というより質問なのですが,担保・執行法制部会の方に参加しておりませんでしたので,経過について必ずしも全部承知しておりませんので質問なのですが,第2の2の最低売却価額制度についての検討については担保・執行法制部会の方で議論をされたというように伺っているのですが,平成14年10月29日ですか,議事録を拝見した限りなのですが,一応かなりの議論をしているように拝見するのですが,まだ議論が足らないのか,あるいは何かここでもう一度やらなければならない理由がまだあるのか,その辺はどうなのでしょうか。 ● この部会には担保・執行法制部会に御関係の方がたくさんいらっしゃいますけれども,そういう方にちょっと御発言いただきたいと思いますけれども,いかがでしょうか。  ○○委員,いかがでしょうか。 ● 議論をかなりいたしまして,その部会におきましては,別に,決めたということではないと思うのですが,最低売却価額というものはやはり必要な制度ではないかということで,ほぼそれが大勢の意見であったと存じます。  それから,その際に,それの見直しということに関して,一部の方から,あるいは外部のところで議論があるアメリカの競売制度につきましても,その実際の姿などがかなり詳しく紹介されまして,それはやはり我が国の競売手続とはかなり違う要素があるということで,やはり日本の現在の競売手続の仕組みからすると最低売却価額は重要な基本ではないかということで意見がほぼ一致したように記憶しております。 ● 私も,担保・執行法制部会の関係議事録を全部読んできたのですが,今,○○委員の御紹介になったように,かなりの議論がなされておりますが,その後の事情をちょっと事務当局の方から御説明いただければと思います。 ● 今,○○委員の方から御紹介がございましたとおり,担保・執行法制部会の議論では,やはりこの最低売却価額というものが,債権者あるいは債務者等の利益というものを保護するために必要ではないか,あるいは,この制度があることが,売却ができない原因になっている,そういうような実情はないのではないか,こういったような意見があったこと等から,この要綱案に盛り込まれなかったというように認識しております。  ただ,先ほど私の方からも申し上げましたようないろいろな指摘がございます。そこで,今回,事務当局としてお願いしたいのは,いろいろな機能,必要な機能というものは確かにあるという御議論でございましたけれども,そういった機能というものを,ある意味では損なわないような何か工夫といいますか,そういったような制度というものもあり得るのだろうか,そういう点も含めて,もう少し時間をかけてこの制度の在り方というものを検討してはどうかということをお願いしたいというものでございます。 ● そういうことで御提案がなされているということでございますが,ほかの点よろしゅうございますか。御質問でも結構です。御意見でも結構です。  何か最高裁の方から御発言ありますか。○○幹事なり○○幹事から。 ● 最高裁の○○でございます。私の方から,3番目の,裁判所内部の職務分担関係ということで一つだけお願いをしたいと思います。  民事執行手続におきます裁判所書記官の役割ということでは,前回の担保・執行法制部会におきまして議論をいただきまして,部会の方では,その方向性については大方御賛同をいただいたかなというように私ども理解しております。中間試案のパブリックコメントにおきましても,大方のところは御賛同いただけたかなというように思っております。  ただ,この事項そのものが民事執行手続全体にかかわる問題ということで,非常に検討に時間がかかるということ等を踏まえまして,前回の検討では時間がちょっと不足していたのではないかなというふうなことで,先延ばしにさせていただくというお話だったのですけれども,私どもとしては,裁判所におきまして,裁判官と裁判所書記官を,今,両輪として実質的に手続を推進させていただいているわけですけれども,この役割をもう一度見直すことによって,民事執行手続や審査,これの二重化を回避して,より一層迅速な民事執行手続を実現できるのではないかというように考えております。そのような意味におきまして,是非,今回の部会におきましては,裁判所のこのような内部の職務分担関係について御議論をいただきまして,より迅速な民事執行手続を実現するための裁判所と裁判所書記官の役割というものを御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ● どうもありがとうございました。  ほかにいかがでしょうか。―よろしゅうございますでしょうか。  第2の民事執行手続の部分について御意見がないとすれば,第3の「その他」について御質問あるいは御意見を承りたいと思います。いかがでしょうか。  先ほど事務当局から,管轄の合意の電子化について御審議をお願いするということでございましたが,この部会資料1に掲げられていない事項で,特にこの部会で審議するのが適当であるということであれば,第3の「その他」のところに入れて,議論を次回までに整理しておきたいというように思っておりますが,どうぞ遠慮なく御発言いただければと思います。 ● 引き続きで大変恐縮でございますけれども,1点お願いできればという事項を御説明させていただきたいと思います。  執行関係でございますけれども,執行官の関係機関に対する援助請求という項目についてでございます。これも前回の担保・執行法制部会においても御議論いただいて,中間試案にも載せていただいて,基本的には全く異論はなかったというように認識しておりますけれども,細部の具体的なスキームを詰めていくためには時間切れということで,積み残しになった項目というように理解しております。今現在,執行官の警察に対する援助請求という点につきましては明文の規定が認められているわけですけれども,現実の執行現場におきましては,今非常に,寝たきりの御老人の方とか,あるいは病人の方をめぐって,そういう人たちを本当に明渡執行などで,言葉悪く言えばたたき出すというようなことをしてよいのか,人道的に果たしてどこまでそういうことが許されるのかというような問題意識を執行官は持ちながら執行現場に臨んでいるというような状況がございますので,全国各地から執行官が集まると,そういうような話題が提供されるというような状況にございます。そういう意味合いで,今回の執行関係でいただいている諮問のテーマにも非常に合致したものではないかなという感もいたしますので,是非この点についても審議の対象にしていただければというように希望するところでございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 今,ポイントの指摘がありました,警察以外の行政官庁への援助請求の関係について,弁護士としても是非お願いをしたいと思っております。  執行妨害については,るるいろいろなところで議論され,また,公刊物で出ておりますので,あえて御説明いたしませんが,最近の傾向としては,あえて病人,老人を入れる形での妨害ということが実態として増えております。こういった問題が放置されること自体,やはり権利実現の実効性をより一層円滑にするということとの関係で欠落部分が出ますので,御議論いただきたいと思いますし,今,御説明ありました警察への援助請求によって,暴力団組事務所の明渡し等,これはかなり実効的に排除できておることから,その他の妨害へ対応が移行しているというのも実際でございます。そういった観点から,人権問題,人道上の問題等を全体として議論をしていただいて,そういった問題について付加して御議論いただきたいというように思います。 ● ほかに,事務当局が原案としてお示ししなかった問題につきましても,最初に言いましたように,平成16年の法律の改正案までに間に合うかどうかはともかく,広く問題点を把握しておきたいと思いますので,御指摘いただければと思います。―よろしゅうございますか。  それでは,特に御意見もないようでございますので,「その他」につきましては,事務当局から出されました「管轄の合意の電子化」という点のほかに,今の,執行官の援助を求めるべき相手方というような問題につきまして検討すべきだという御意見を賜りました。そこで,部会資料の1に掲げなかった問題につきましてどこまで検討するかということにつきましては,本日いただきました御議論を踏まえまして更に検討を事務当局にお願いいたしまして,次回またそのことをここで御披露するというような形にさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。―はい。  ○○委員の先ほどの御発言も,その中で検討させていただくということでよろしゅうございますでしょうか。 ● 結構です。 ● それでは,そのようにさせていただきたいと思います。  これで当部会の今後の検討課題の,これはあくまでも大枠でございますが,大枠について決めていただいたということになります。その範囲は,民事訴訟法,民事執行法,それから先ほど研究会を立ち上げるというようなことがありまして,公示催告手続法の見直しというように大変広範にわたります。このうちの民事訴訟の検討課題の部分は,従前の当部会における審議事項の続きでございます。それから,民事執行法の部分は,先ほども御発言がありましたように,これまで担保・執行法制部会で審議し,現在,第156回国会で審議中の民事訴訟法の一部改正の部分と関係している部分もございます。公示催告手続の見直しの部分は,今後の研究会の審議待ちということになりますけれども,これは現代語化をした方がいいという先ほどの事務当局の御説明もありまして,全面改正,新法の制定ということになるかもしれません。  以上の当部会の検討課題を,最近の手続法に関する法制審議会のいろいろな部会の活動と比較してみますと,最近は法制審議会は大変活発に動いておりまして,新法ラッシュと言っていいかと思います。平成8年の新民事訴訟法の制定後に限って見ましても,○○委員が部会長をしていらっしゃる倒産法部会では,民事再生法,いわゆる外国倒産処理援助法,それから会社更生法が既に成立いたしまして,今は,今年の秋に開かれるであろう臨時国会に向けて破産法の改正―これも新法になると思いますが―を審議しているところでございます。それから,先ほど既に御説明がありました,今国会では,司法制度改革推進本部で検討しておりました「仲裁法案」が出ておりますし,それからまた,当部会のこれまでの審議の結果に基づく「人事訴訟法案も審議中でございます。そうした新法の制定,審議というようなものに比べますと,今後の当部会の検討は,公示催告手続の部分がどうなるのかということを別といたしますと,比較的マイナーな,一部の見直し,民事訴訟法の見直し,民事執行法の見直しということになるかもしれません。大変地味なテーマかもしれません。しかし,最初に○○委員が言われましたように,いずれも民事司法制度,民事司法手続を国民に一層利用しやすくする,民事執行手続を機能的に活性化するという,いずれも国民生活にとって重要な議題であり,そういう改正の要望あるいは要請がいろいろな方面から指摘されている事項でございますので,事務当局はもちろんのこと,委員・幹事の皆様方にも引き続いて審議に御協力をお願いしたいというように思っているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは,最後に,事務当局から今後の予定等につきまして事務連絡をお願いいたします。 ● まず最初でございますけれども,今回は新しい諮問事項が加わった,また,新しいメンバーの方にも加わっていただいたという関係でございます。そのため,最初に,法律案の資料の配布のところでも申し上げましたとおり,従前の担保・執行法制部会の御議論をよく存じ上げない方もいらっしゃいますでしょうし,あるいは,むしろ従前の民事・人事訴訟法部会の議論をよく御承知されていないという方もいらっしゃるかもしれません。その関係で,事務当局といたしましては,できる限りそういった従前の議論というものが分かるような方向に努めてまいりたいとは思っております。  また,従前の法制審議会の各部会の議論といいますものは,法務省のホームページに公開されておりますので,そこで御覧いただくことは可能でございますが,例えば,従前の部会のこういった資料,従前の部会でこの点が分かるような資料が欲しいということがございましたら,いつでも事務当局の方にお申出いただければ,準備させていただきたいというように思っておりますので,よろしくお願いいたします。  次回の予定でございますが,5月30日の金曜日でございますが,午後1時から午後5時までの予定で,場所は本日と同じく,ここ法曹会館高砂の間を予定しております。先ほども申し上げましたとおり,本日いただきました御意見なども踏まえまして,民事訴訟法,民事執行法の見直しに関する論点を整理するためのたたき台の資料を御用意させていただければというように思っておりますので,またよろしくお願いいたします。 ● それでは,本日の部会はこれで終了させていただきたいと思います。時間が通常の法制審議会の部会よりも大分早うございますけれども,本日予定していた,御意見を伺いたいという事項はすべて終了いたしましたので,部会はこれにて終了したいと思います。どうもありがとうございました。 -了-