法制審議会 民事訴訟・民事執行法部会 第7回会議 議事録 第1 日 時  平成15年10月17日(金)  自 午後2時30分                        至 午後4時20分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめについて 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 定刻が参りましたので,民事訴訟・民事執行法部会第7回会議を開催させていただきます。   本日は,定例と異なりまして,開始時間を2時30分スタートということにさせていただきました。現在,さきに取りまとめの審議をお願いいたしました「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱中間試案」に対するパブリックコメントの手続を行っている最中でございます関係から,本日の審議をどうするかということを事務局がいろいろ考えてくださったわけでございますけれども,やはりパブリックコメントの結果を見ながら後半の審議を行うのが適当ではないかというふうに思われましたことから,本日は,諮問事項に関する審議は議題にしないこととした次第でございます。その代わりに,この部会の第1回の会議でも申し上げましたように,旧々民事訴訟法の最後の1編となりました公示催告手続ニ関スル法律の現代語化を含む見直しの作業が別途進められておりまして,今般,その中間的な取りまとめがされたところでございますので,この部会におきまして,これについて事務当局から御報告をいただくことにいたしました。その関係で,今日は2時30分から開始ということにさせていただいた次第でございます。   議事に入ります前に,本日からこの部会に御参加をいただく委員・関係官の方がいらっしゃいますので,ここで御紹介をさせていただきます。          (委員・幹事の異動紹介省略)   それでは,本日の議事の進め方等につきまして,○○幹事から御説明をお願いしたいと思います。 ● それでは,まず配布資料の確認をさせていただきたいと思いますけれども,事前に「公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめ」という資料を発送させていただいております。本日,席上にも同じタイトルのものを配布させていただいております。これは,大変恐縮でございますが,冒頭の(注)のところで「仲裁法附則第9条」と席上配布の分はなっておりますが,事前にお送りしました分が,「仲裁法附則第2条」となっておりましたのを訂正したというものでございます。そのほかは全く変わりがございませんので,本日,差し替え分の席上配布資料に基づきまして御報告をお聞きいただければと思っております。申し訳ございませんでした。   それから,本日,「公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめ」につきまして御報告させていただきますけれども,その参考資料といたしまして,公示催告手続の現行法の制度等,あるいは現在の利用状況等につきましての参考資料を席上に配布させていただいております。   参考資料1でございますが,「公示催告手続の構造」というものでございます。参考資料2が,「公示催告手続の利用を定める実体法の規定」。参考資料3が,「公示催告事件数の動向」。それから,参考資料4が「公示催告事件の流れ」ということでございます。具体的にどういったような順番で手続が進んでいくのか,後で御報告します中間取りまとめも,手続の流れに沿いまして書いてあるということもございますので,こういったものを御参照いただきながら,御報告をお聞きいただければと思っております。   本日の御報告でございますけれども,この後,中間取りまとめにつきまして事務当局の方から,大体1時間程度御報告させていただければと思っております。その後休憩をとりました後で委員・幹事の方々から御質問を受けまして,また御意見を承るというようにしたいと思っております。   今回の中間取りまとめでございますけれども,先ほど○○委員の方からお話がありましたとおり,別途○○委員を座長にして公示催告手続に関します研究会の方で検討がされているものでございます。今回,この中間取りまとめ御報告の後,これをパブリックコメントに付しまして,各界から意見を求める,またその意見を踏まえまして,私どもの方といたしましても検討を進めてまいりたいと考えている次第でございます。 ● それでは,これから中間取りまとめについての報告をしていただくということにいたします。今日は初めてでございまして,かなり時間が必要だということでございます。大体1時間ぐらいかかるということでございます。どうぞよろしくお願いいたします。   それでは,○○関係官からお願いいたします。 ● それでは,中間取りまとめの内容についての報告をさせていただきますが,御覧のとおり,この中間取りまとめは通常の要綱中間試案などと同様に,現行法を見直すべきであると考えられる部分についての結論又は提言の部分のみを掲げるスタイルをとっている関係上,若干の補足的な説明が必要になるということでございまして,まず公示催告手続の意義や構造についての若干の前置き的な説明から,どうしてこういう形で取りまとめをしていくのかということで御説明をしていきたいと思っております。   まず,公示催告手続が利用される典型的な場面と申しますと,言うまでもないことでございますが,例えば,約束手形を紛失してしまったというような場面でございます。その場合でも,単純に,例えば,事務所の中で手形をなくしてしまっただけなのかもしれませんし,だれかに盗まれてしまったのかもしれない,ただそれにしても振出人に対して手形金を請求するためには,有価証券である以上は証券と権利とが結びついているものでございますから,証券が手元になければ権利を行使することもできないということになるわけでございます。仮に,だれかに証券が盗まれていたということになりますと,その者から事情を知らないままに手形を譲り受けたという人が善意取得をしてしまう,そのために自分が権利を失うというおそれも出てくるわけでございます。そういうときに,この公示催告の手続を申し立てていただきまして,自分がその約束手形を所持していた権利者であるということを疎明して,裁判所に公示催告決定をしていただく,その上で公示催告の公告をして,紛失してしまった手形を所持している者に対して,手形を持って裁判所に届出をするように催告をしてもらうということになります。   催告のための公告には,届出をしないときにはその手形が無効であると宣言されることがあるとの警告が付されることになっているわけでございまして,この催告に応じて届出をする者がないときは,裁判所は,除権判決をすることで手形を無効にする,すなわち証券と権利との結びつきを観念的に切り離しまして,約束手形金請求権を証券の所持なくして行使できるようにするということになっているわけでございます。   我が国において最も利用されておりますこの公示催告手続は,有価証券を喪失した者を保護するために,証券と権利とを切り離すための裁判,一応ここでは「除権の裁判」というふうに申し上げておきますけれども,これを行うための一連の手続だということになるわけでございます。   ただいま申し上げた内容をもう少し詳しく定義的に申し上げますと,席上配布の参考資料の1の冒頭にございますように,公示催告と申しますのは,法律の定める場合において不特定又は不分明の相手方に対し,請求又は権利について裁判所に対して届出をさせるために,一定期日までにその届出をしないときは,法律上定める失権の効力を生ずる旨の警告を付して公告される裁判上の催告をいうものとされているわけでございます。また,除権判決と申しますのは,この公示催告におきまして警告がされた失権を宣言する判決,失権の効果を生じさせる形成判決をいうものとされているわけでございまして,この公示催告及び公示催告を経た除権判決までの一連の手続を包括して「公示催告手続」と呼んでいるということになるわけでございます。   皆様御承知のとおり,先ほども出てまいりましたけれども,公示催告手続ニ関スル法律は,さきの通常国会において成立いたしました仲裁法の附則第9条によりまして,公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律が一部改正されたものでございますけれども,明治23年に成立いたしました旧々民事訴訟法の最後の1編として存在しているものでございます。この法律の現代化は,今申し上げた旧々民事訴訟法の現代化を図るための最終作業であるということができようかと思われます。   この公示催告手続につきましては,これまで実質的な改正は一度も行われなかったものと承知しておりますけれども,更に解釈論につきましても,現行法の第777条以下の有価証券の無効を宣言するための特則の部分にほぼ議論が集中してきたということもございまして,公示催告手続自体の在り方について,具体的な検討は余りされていなかったように思われます。もちろん,これまでも立法論がなかったわけではございませんで,最も古いところでいきますと,明治36年に,最終的には大正15年改正に結実いたしました民訴法改正作業の一環といたしまして,公示催告手続についても改正案が示されたということがございました。またその後も,主として商法学者の手によります除権判決による有価証券上の権利をめぐる法律関係の規律,これを論じた文献中では若干の立法論が展開されたという例はございます。また,そもそも公示催告手続という制度の必要性につきまして,いかなる法律関係がその対象になるのかという点が必ずしも一義的には決まらないということがございまして,立法の沿革を見てまいりましてもいろいろな考え方というのが示されてきたところでございます。   今申し上げたこの公示催告手続は,旧々民事訴訟法の第7編ということで立法されたわけでございますけれども,当時のドイツ民事訴訟法の内容をほとんどそのまま取り入れた内容になっております。その際,どのような場面に適用されることがもともと予定されていたか,どのように理解されていたかということを申しますと,立案担当者が当時書いたものは参照することはできなかったのですけれども,法律の成立直後の時期に書かれました最も古い注釈書などを拝見してみますと,ある財産がある,その財産の配分をするために数多くの関係人が出てくる。その関係人に対して,財産を処分するについて権利を有するのだということで申出をさせて,届出がなければ法律の規定によって失権の効力を生じさせる,そういう場合に限って公示催告をする,こういうことが念頭に置かれたようでございまして,具体的に家資分散の場合における分散の財団についての処分を終了するための手続として利用されるのだというようなことが言われていたようでございますが,これは文献の名前は省略いたしますけれども,明治24年,25年といった時期にそういった説明がされていたのですけれども,現実には家資分散の手続というようなものがこの公示催告手続で行われたということはないのではないかと思われます。   そのほか挙げられていた例としては,相続における相続債権者への弁済の手続というようなものがあるわけでございますけれども,いわゆる限定承認ですとか相続人不存在の手続,こういうものが念頭に置かれていたように思われます。もっとも,当時の旧民法の財産取得編における相続手続の規律では,この公告の手続というのは全く規定がされておりませんで,相続人に知れたる相続債権者,受遺者に対しては,相続人はどんどん弁済をしていって,責任財産である相続財産がなくなってしまったら,あとは債権者間の求償によるという制度になっていたわけでございます。これがその後の民法・商法の修正作業の中で,公示催告手続が導入されていくというようなことが考えられていたのかもしれません。ただ実際には,あとで参考資料2を御覧いただければ分かるのですが,我が国の実体法におきましてはこの公告の手続を利用している実体法の規定というのは実に極めて少ないのでございまして,公告,催告の手続を経ることを要求する手続であっても,期間の経過によって直ちに届出なき権利を除斥するという実体法上の効果を生じさせるものの方が多いということでございまして,除権判決まで要求しております裁判上の公示催告というのは余り採用されていないという実情にございます。   参考資料の1にも若干挙げておりますが,例えば,相続人不存在の場合,現実には債権者,受遺者に対する公告,催告というのは,相続財産管理人が行うことになっておりますし,それから相続人捜索の公告,催告というのは,これは家庭裁判所が行うのですけれども,除権判決の手続は使われないということになっております。また,限定承認の場合における相続債権者,受遺者に対する公告,催告も,家庭裁判所が行うものではございませんし,除権判決も使われないということになっております。この相続段階で公示催告手続が採用されなかった経緯というのは,当時の法典調査会での議論を見ておりますと,ドイツ流の考え方をとると公示催告手続を経て除権判決までやることになるのだけれども,それではいかにも煩わしいというような理由によりまして,一定の期間の経過,それからその間に届出がされなかったということで,直ちに失権の効果を生じさせるということになったということのようでございます。   このように,本来,立法当時において典型的な適用対象と考えられておりましたような,多数の債権者がある財産から弁済を受けることを目的として催告期間中に債権の届出を行うような手続というのは,実際には我が国においては公示催告手続の対象にはなってこなかったということでございます。   そこで,現在,公示催告手続を利用している実体法の規定でございますが,先ほど申し上げた参考資料の2に掲げているようなものでごさいまして,大きく二つに分かれております。一つは不動産登記法の第142条を中心といたしました登記又は登録を要する権利の抹消の手続の一環として行われる場合でございます。そしてもう一つが,先ほど例に挙げました有価証券の無効を宣言する場合ということになってまいります。   ちなみに,この不動産登記法142条というのは,先ほども出ました法典調査会において議論もされている原始規定ということでございまして,もともと民事訴訟法制定当時に考えられていたものとは若干違うものが,明治31年当時にはもう考えられていたということでございます。   この規定を準用したり,また同様の規定を設ける例というのが,やはりこの登録や登記を行う手続の中で多く作られているということになっております。後者は有価証券の無効の手続でございますが,これは平成14年の商法改正によりまして,実務上は主たる対象でございました株券,これが公示催告手続ではなくて,株券の喪失登録制度によって無効とされるように制度が変わっているところでございます。   この株券について,どうしてこのような改正がされたかということを簡単に申し上げますと,株式会社の名義書換の制度を通じまして,発行会社に株券についての情報が集まってくるという特性があるということに着目しまして,発行会社が,それまでの裁判所の役割に近い役割を果たすことができるということで設けられたものでございます。このため,これは参考資料の3で最近の事件数の動向を掲げているのでございますが,昨年の公示催告事件の新受件数が1万1,875件だったわけでございますが,この4月に株券喪失登録制度が施行されてからは,新受件数は大分落ち込んでいるというふうにも聞いております。最終的には,前年度の4分の1程度まで減るのではないかというような見込みもあるようでございます。   こうした状況の中で,公示催告手続の見直しを検討するに当たりましては,そもそも実体法上失権の効果を生じさせるために公示催告手続によらなければならないのかどうか,裁判による失権という法律構成を本当に必要とするのかどうかという点についても考えざるを得ないところではないかと思われます。そこで,現在あるこの二つの類型でございますが,まず不動産登記法の142条の規定によります不動産についての権利に関する登記の抹消手続のための公示催告,それから他の法令において準用している場合ですとか,同様の規定の場合について見てまいりますと,これは権利の登記・登録の抹消について,登記・登録義務者というのが普通は特定されているわけでございまして,そういう場合にはその者が行方不明になりましても,本来は抹消登記・登録手続を求める給付の訴えというのが可能になるわけでございまして,そのときは公示送達の手続によって訴訟手続も進行していくということになっているわけでございます。ただ,自然人につきましては,相続が数次にわたって生じているために,権利の承継人を調査することが著しく困難であるような場合ですとか,法人につきましても,登記関係書類の保存期間が経過してしまっているようなために,関係者を調査するということが著しく困難な場合などが存在するという,こういう指摘がございます。こういう場合には,関係者に対しまして登記義務の存否について争う機会を保証するためには,公示催告をした上で,登記を抹消する前提として登記に係る権利を失権させる必要があるというふうに考えられているわけでございます。この場合にいう失権の内容は,不動産登記法の解釈上は142条2項におきまして,登記権利者のみで登記の抹消を申請することができると定めておるわけでございますけれども,この登記義務者の登記に係る権利を失わせることになると理解されているようでございます。ただ,その効果は,いわば手続相対的なものであって,登記抹消手続に関する限りにおいてのみ失権の効果が生ずる,こういう理解はされているようでございます。   典型的なもので言いますと,地上権や永小作権といった制限物権を設定した不動産につきまして,その制限物権の設定者又はその承継人が,当該不動産の処分に当たりまして制限物権を消滅させる必要に迫られる,そういうときに権利の存続期間の満了ですとか,時効消滅など,そういったことを理由として公示催告を申し立てる場合があるようでございます。実際,最近の官報を見てみましても,そういう例というのは結構ございます。   ちなみに,現在,不動産登記法の全面改正の作業が進んでいるところでございますけれども,この現行142条につきましては,実質に変更を加える予定はないというふうに聞いておるところでございます。   それから,有価証券の無効についての公示催告でございますけれども,これは先ほども申し上げたように,有価証券上の権利の権利者が当該有価証券の所持を失っても,仮に,現在の所持人が判明していれば占有回収の訴えなど提起することは可能なのですけれども,最後の権利者が証券を喪失してしまって,現在所持人が存在するかどうかすら判明しないような場合については,証券による権利行使,あるいは証券の再発行といったことを求めるためには,関係者に対して証券の権利関係について争う機会を保障して,公示催告をした上で有価証券を無効にするという手続がやはり必要になってくるという指摘があるわけでございます。   ここで有価証券の無効と申しますのは,先ほど申しましたように証券と権利とを切り離すということでございますが,こういった立法例を前にして考えてまいりますと,公示催告手続,特に除権判決の効果として一定の不利益が生ずる,失権という効果が生ずるというのは,すべて実体法の規定によって決められているものなのでございますけれども,この実体法上の失権の効果を生じさせる要件の一つとして,この除権判決というものが位置づけられるということになろうかと思います。したがいまして,この公示催告手続を使うか否かというのは,実体法において失権の要件をどのように定めるのかという問題でございまして,除権の裁判の手続を必要とする場合の考え方としては,一応次のように整理ができるのではないかというふうに考えております。   第1に,手続の開始を申し立てる資格,申立権の存在についての証明,あるいは疎明が要求されることになる,こういうことが挙げられるのではないかと思っております。ただ,手続の開始を申し立てる資格についての証明・疎明を要求しないような,そういう手続も考え方としてあり得ますので,それほど強い理由ではないかもしれないのですが,それが一つの理由として挙げられるのではないかと思われます。   第2に,不特定又は不分明な相手方の手続上の地位に配慮するために,防御の機会を付与する,そのための公示方法として公告の手続をとるということが挙げられるのではないかと思われます。これにつきましては,参考資料1で掲げました公示催告手続によらないような手続でも共通することではございますけれども,裁判手続という形にすることで,権利の届出人を期日に参加させる形での手続保障も図ることが可能になる,こういった点が他の手続と公示催告手続との間で違いがあるといえるのではないかと思います。   そして最後に,裁判所による除権判決という判断の形式をとりますことから,判決の確定によりまして,不服申立ての手続を用意するとしても,その効果が安定的なものになるということが中心的な理由になってくるのではないかというふうに整理をしているところでございます。   参考資料の1で挙げております限定承認ですとか,株券の喪失登録制度というのは,あえて裁判上の公告の手続というのを避けて設けられているわけですが,それは確かに裁判所による判断が必然的に必要になるということではないことを示すものではございますけれども,単に公告期間の経過のみによって失権の効果が生じるという実体法上の構成にした場合には,後の訴訟で失権の効果と矛盾する主張をすること,その前提問題といたしまして,訴訟において失権のために執ることが要求されている手続の履践がされていないではないかというような形での,手続についての争いというものを許すことになる,そういった問題が出てくるのではないかと思われます。   裁判によって失権の効果が実体法上生ずるという形で仕組みますと,手続的には,裁判が確定すればとりあえずは不可争力が生ずる,不服を申し立てるために一定の手続を執ることが要求されるというような形になりますので,法的安定性が高まるということになるのではないかと考えられます。   また,もう一つ問題となりますのは,公告を行う主体が裁判所でなければならない理由ということを別の角度から考えますと,例えば,失権の対象となります権利に係る義務者,こういったものを失権の手続に関与させることができる場合でないと,その失権の手続の中で権利についての情報を集中させるような人が手続上出てこないことになるのではないか,そうしますと情報を集中させるための機関として,裁判所にそうした手続を行わせる,こういった必要があるということでこの裁判上の公示催告という制度を設けることが適当ではないか,こういう理解になるのではないかと思っております。   以上,現在法律上存在しております裁判上の公示催告を利用する法律関係などについて申し上げてまいりましたけれども,現在,数は少ないですけれども,公示催告を利用する実体法上の規定というのが存在しておりますし,今後公示催告手続を利用して失権の効果を生じさせることを実体法上定めることがあり得ないとまでは言えないようにも思われます。有価証券の無効を宣言するためにする特則の部分について,非常に数の多かった株券が抜けまして,その他の証券についても現在ペーパーレス化が進んでいるところでございますので,今後更にこの利用対象が減っていくというようなことは考えられるわけでございますけれども,当面,条約によりまして証券であることが求められております手形・小切手につきましては,なお公示催告手続によらなければ証券の喪失者を保護することはできないということになりますので,重要な利用対象として存続していくことになるだろうというふうに思っております。そこで,当面の作業といたしましては,公示催告手続を利用する実体法上の法律関係はなお存在するということを前提に,手続の在り方についての検討をしたということでございます。   非常に長くなりましたが,ここでようやく中間取りまとめ本体についての説明に入らせていただこうと思います。   資料を御覧いただきますと,大きく公示催告の手続を三つの段階に分けて整理をしております。第1を「公示催告手続の開始」,第2を「除権の裁判」,第3を「除権の裁判に対する不服申立て」というふうに区分をしております。基本的に,手続の流れに沿った形で整理をしておりますので,参考資料4を御覧いただきながらお聞きいただければと思います。   まず,第1の1でございますけれども,手続の最初に位置づけられます「公示催告手続の管轄」の問題でございます。そのうち,一般の公示催告手続の土地管轄について(1)に掲げております。   一般の公示催告手続の管轄につきましては,現行法の第764条第2項が,簡易裁判所の職分管轄に属するということを示しておるだけでございまして,土地管轄についての定めは設けられておりません。これは,現行法の第1条による民事訴訟法の規定の準用によって賄われているところでございまして,失権の対象とされる請求若しくは権利を有する者の普通裁判籍の所在地又は当該請求若しくは権利の目的物の所在地,当該請求又は権利が登記又は登録に係るものであるときは,その登記又は登録をすべき地が基準になっていると考えられるところでございます。ここで申します「請求」ですとか「権利」というのは,特定の相手方に対して一定の給付を求める権利である請求権,それからまたそういった状態に達しない条件つきの権利あるいは期待権,こういったものも含めて届出の対象となるということを明示するために,こういう表現がされているということでございます。   例えば,不動産登記で申しますと,観念的な相手方でございます登記義務者となるべき者の普通裁判籍所在地,それから不動産の所在地,不動産登記をすべき地などが基準となってまいりましょうし,船舶についても同様に考えられますので,民事訴訟法第5条第6号にあります「船舶所有者その他船舶を利用する者に対する船舶又は航海に関する訴え」の規定を準用して,船舶の船籍の所在地も基準とすることができるのではないかと考えております。   こういった現在の取扱いについて,特に変更の必要があるというような御指摘は見当たりませんでしたので,この取扱いを維持するものとするということにしてございます。   なお,(注)におきましては,一般の公示催告手続がどのような法律関係について利用されているかを若干でもイメージできるようにということで,例を挙げているところですが,先ほど参考資料の2で挙げましたような具体例を,補足説明では掲げることを予定しております。   次の(2)の「有価証券の無効を宣言するためにする公示催告手続の土地管轄の特則」についてでございますが,これは現行法第779条第1項に規定がございまして,(注)で示しておりますように,さきに改正された人事訴訟手続法第1条第1項のように,段階的な専属管轄の規定を設けておるところでございます。こうした規律につきましては,有価証券上の権利関係に利害を有する者の取扱いとして,どのようにすればバランスが図られるのかという観点から考えますと,現行法は権利行使をすることになる地でございます履行地というのを第1順位にしているわけでございます。また,指図証券や無記名証券につきましては,商法第516条第2項によりまして,債務者の現時の営業所又は住所というのが義務履行地になってまいりますので,そうした規律と整合的に第2順位の管轄も定められているのかなと,このように理解できると思います。そうした基準地が存在しない場合の第3順位として,証券発行当時の発行人の普通裁判籍所在地というものが定められていると考えられます。こういった規律は,それなりの合理性があるというふうに考えられるのですけれども,これに対しては専属管轄としているということ,それからまた順位の在り方についてやはり硬直的ではないかというような指摘もあるところでございますので,その見直しの必要性があるかどうかということについて意見を問うことにしております。   続きまして,資料の2ページに参りますけれども,第1の2の「公示催告の公告の方法・期間」についてでございます。   (1)は,一般の公示催告手続の公告の方法・期間についてでございますが,これについては本文で,裁判所の掲示場への掲示及び官報への掲載を2か月以上行うという現行法の方法・期間を維持するものとしております。裁判所の掲示場への掲示につきましては,これによって公示がされているのはかなりの部分フィクションが含まれていると言わざるを得ないところでございますので,これを廃止するとの考え方もあり得ないではないのでございますけれども,現実に掲示場への掲示を見て,裁判所に出頭するような例は,これは民事訴訟の公示送達の場合には実際に地方などでは見られるところでもございまして,それなりに機能しているところもあるであろうと考えられます。   それから,官報による公告でございますが,これを閲読する機会というのは利用者には保障されなければいけないのですが,官報を購読している者でなければ,図書館などでこれを閲覧するしかないということになりますので,やはり一般の方がだれでも見られるという形で,裁判所の掲示場による公告というのはなお必要ではないかという結論に達しまして,このような本文になっているわけでございます。   また,期間の2か月以上という点でございますが,現行法と変わらないのですが,不動産登記に係る権利の失権なども対象とされることからいたしますと,失権の対象となる権利者の保護の観点からは,最低でも現在と同様,2か月程度は公告期間とすることが必要ではないかと考えられますので,このようにしているところでございます。   (注1)につきましてでございますが,これは公報への掲載による公告を廃止するというものでございます。この公報と申しますのは,公示催告手続法で「官報又ハ公報」というように並べて書いてあるのですが,地方自治体で発行している府報,県報などのたぐいを言うとされ,つまり一地方においてだけ発行されているような官報に類するものということになるのですが,こういったものについては既に明治40年時代に,公報だけで公告を行うのは違法だと,こういう司法省の民刑局長の回答が出ておりまして,公報だけを使った公告の例というのは実務上全然見られないところでございますので,これは実態に合わせて廃止をするということにしているものでございます。   それから(注2)でございますが,これは官報による公告についての説明的な注として掲げさせていただいたのですが,現在,官報についてはインターネット版というのがございまして,法制的には事実上行われているものにすぎないのですけれども,ここに書きましたようにインターネットで閲覧しようとする日を含めまして1週間分の官報の記載内容というのは,無料で閲覧が可能になっております。さらに,一定の金額の支払いによりまして,これは「官報情報検索サービス」と言うのですけれども,これを利用することができるようになりまして,任意の文字から昭和23年以降に発行されたすべての官報の情報が検索可能になっているということだそうでございます。官報の発行主体が,国から独立行政法人国立印刷局に変わってから格段にサービスが向上したということでございまして,これによりますと,有価証券を取得しようという方は,公示催告の対象になっているかどうかというのは,これを使うとたちどころにチェックができるということになっているわけでございます。こういった状況でございますので,場合によりますと,有価証券の善意取得の成否にも大きな影響を与えることになるのではないか,こういった見方もあるところでございます。   ちなみに,このサービスは有料でございますが,1か月2,100円だそうでございまして,証券の売買を行うような人にとりましては,わずかなコスト負担で問題のある証券であるかどうかを確認できるということになるものですから,インターネットを利用できる環境にある方にとりましては,官報への掲載というのは以前から言われているような低い公示力しか有しないという,そういう状況では既にないのではないかというふうにも考えられます。もちろん,なお問題はあるわけでございまして,インターネットでの閲覧が可能になりますのは,言うまでもなく官報に公示催告が掲載されてからということになるわけでございますけれども,現在でも裁判所から官報公告用の原稿を国立印刷局に発送してから現実に官報に掲載されるまでのタイムラグ,これがやはり1か月近くかかるようなこともまだあるようだというふうに言われているところでございます。そういった問題はあるわけでございますけれども,それにしましてもインターネットが利用されていることによりまして,官報公告の印象というのは大分変わってきているかなというふうに思われるところでございます。   それから,このページには国立印刷局の了解もいただきまして,ホームページのアドレスも掲載させていただいておりますので,実際にアクセスしていただくのもよろしいかなと思っております。   それから,これはもう一つ付け足しですが,現行法第766条第2項には,裁判所が任意に行わせる新聞紙への掲載による公告というのがあるのですが,これは裁判所の裁量によって行うものでございますので,特に今のところ廃止しなくてもいいのではないかと考えておりますので,特段今回の中間取りまとめには掲げなかったところでございます。   続きまして,(2)の「有価証券の無効を宣言するためにする公示催告の公告の方法・期間の特則」でございますが,アの公告の方法についての特則でございます。   ここでは,現行法第782条第2項で定められております裁判所の所在地に取引所があるときにおける取引所での公告を廃止するということにしております。取引所というのは,専ら有価証券の移転を媒介するところであるということで,ここに公告をすることで権利を取得しようとする者を戒めるのだと,こういう説明が当時されていたのですが,現実にはこの「公示催告裁判所ノ所在地ニ取引所アルトキハ」の意味につきましては,これは非常に厳格に解されておりまして,その簡易裁判所の所在する行政区画の中に取引所がなければ,この公告はする必要がないということになっておりまして,最高裁の昭和32年の判例がございます。それによりまして,現在でも,東京の事例ですが,東京証券取引所が東京都中央区にあるわけですが,東京地裁管内の各簡裁というのは一つも中央区には所在しないので,この公告は不要であると,こういう実務上の取扱いがされているということでございます。その他の証券取引所についての取扱いは,実は詳しくは今分からないのですが,そういった実情があるということ,また今回,官報の公示力がインターネットを利用することを前提にすれば,かなり公示力というのも上がってきているのではないかなというふうにも考えられますし,それから取引所の性格というものも,従来の公的なものから,だんだん株式会社形態のものまで認められるというようなことにもなってきておりますので,公示の方法として考えていいのかどうかというような問題,どのように公告をするかということについて何らの規定も設けていない現状で,そうした取引所に公示を義務づけるという方策をとることについては,今後もそうあるべきなのかどうかという妥当性の問題なども考慮いたしまして,廃止するとの方向性を今回は出しているところでございます。   それから,同じ第782条第1項でございますけれども,「新聞紙ニ三回掲載シテ」というのが公告の方法として定められているのですが,これは御承知のとおり戦時民事特別法の第3条で,「裁判所ガ官報及新聞紙ヲ以テ為スベキ公告ハ官報ノミヲ以テ之ヲ為ス」とされまして,官報公告とともにする新聞紙による公告というのは既に廃止されておりまして,その効力というのは戦時民事特別法廃止法律附則第2項によりまして,現在まで維持されておりますので,現行実務では全く行われていないものでございます。今回,こうした規律を前提にすることといたしまして,新聞紙の義務的掲載については行わないものとすることでどうかと考えておりますが,現在の実務と変わるものではございませんので,やはり取りまとめでは触れていないところでございます。   続いて,イの「公示催告の公告の期間についての特則」であります第783条についてでございますが,これにつきましては,(注1)にありますように,我が国における代表的な有価証券でございます約束手形につきましては,いわゆるサイトが大体3か月ぐらいのものが多いのではないかというふうに言われておりますし,そうしますとこの公示催告期間の下限が6か月というのは,期間中に満期が来て善意取得が生じてしまうと,権利行使がされてしまって除権判決も無駄になるのではないか,そうするとこの6か月の期間というのはいかにも長いのではないか,こういった方向での指摘がされているところでございます。もちろん,官報などによる公示が十分な公示力を有するということを前提にいたしませんと,失権の対象となる有価証券の所持人を害することが甚だしいということになりますから,権利の届出の機会を確保するという所持人の保護を図る観点も含めて検討して,公示催告期間の下限を短縮するかどうかについて検討していかなければいけないということで,意見をお聞きするものでございます。その際,具体的にどのぐらいの期間が適当なのかということについても,問うこととしているところでございます。   ちなみに,この6か月の下限でございますが,公示催告法の母法でございますドイツ民訴法と同様になっております。ただドイツでは,小切手については公示催告期間は2か月に短縮されているという例もございますので,現在の経済のスピードなども考慮いたしまして,先ほど申し上げた権利の届出の機会の確保の要請,これとのバランスでどの程度の下限を認めたらよいのかということを検討していく必要があるというふうに考えております。   (注2)は,逆に公示催告期間の上限について何らかの考慮が必要ではないか,そういった点を指摘するものでございまして,現在,第783条は,6か月を下限として法定しているのですが,上限は裁判所が事案に応じて決定することができるという建前になっております。これは,実は母法たるドイツ民訴法では,(注2)にも書いておりますけれども,公示催告期間の上限は1年を超えることができないというふうになっておりまして,その前提としてですが,ドイツにおける有価証券についての公示催告手続と申しますのは,対象となる証券に表象される権利の弁済期に応じて,弁済期の到来から6か月間は公告がされるように公示催告期間を定めなければならないというふうになっております。例えば,一定の期間中に数回利札などが発行されるような,そういった有価証券の無効を求めるという場合でございますと,公示催告期日というのは,その期日までに証券の喪失の時点以降に発行される利札のうち,最初に発行される利札の弁済期が到来し,かつ,その弁済期から6月を満了するような形で指定せよと,こういうことになっております。   このように,ドイツ法では,有価証券の所持人が証券上の権利を行使する機会が1回でも到来するということがこの公告を実効あらしめるという前提に立って,弁済期の到来から6か月間の期間を定めることができないような場合には,公示催告自体許可しない,そういった制度になっております。今回の見直しに当たって,そうした発想による見直しの方向で検討すべきかどうかというのは,一つの論点になり得るところでございます。   確かに,公示催告期間を定めるに当たりまして,有価証券の所持人の権利の届出の機会を確保するという観点からいたしますと,この証券上の義務の弁済期との関係というのは一つ問題になるわけでございまして,例えば,弁済期がはるか先に到来するような社債のような場合,証券喪失者の静的安全の保護ととどのようにバランスをとっていくかというのは,かなり問題になるところだろうと思われるわけです。   また,ドイツ法でそういった制度があるのに,日本法でこの制度がない,その立法の経緯としましては,旧々民訴法ができた当時は商法上の社債の制度というのも整備されていなかった,したがって利札などの発行というのも予定されていないということで,旧々民訴法制定時にはこういった制度が導入されなかったというような経緯もあるわけでございます。   ただ,単純にドイツ法の規律を導入するということになりますと,かなりこれまでの公示催告期間の定め方を変えることにもつながりますし,現状におきましては利札等が発行されるといいましても,割引債のようなものも出てきているということでかなり多様化もしておりますから,単純に利札が発行されるから途中で権利行使の機会があるのだというような言い方もできないところでございまして,どういう権利についてどういった期間設定をしたらいいのかというのは,現在の目で考えるとなかなか見極めがつかない状況ということになります。そういった状況を踏まえまして,直ちに的確な制度設計はなかなか難しいのではないかなと,こういった状態でございますので,今の問題については補足説明において説明させていただいて,現時点で我が国で同様の制度を設計するとしたらどのように考えるべきかという問題提起をすることにするのが相当ではないかなと考えております。   それから,2ページ末尾の(後注)でございますけれども,前段にございますのは有価証券の無効を宣言する公示催告手続については,この手続が有価証券上の権利に係る義務者と全く無関係に進んでしまう,そのため義務者の地位が不安定になるのじゃないか,そういった指摘に対して何らかの手当てをすべきかどうかということについて,問題提起をするものでございます。   ここでの問題と申しますのは,有価証券上の権利に係る義務者が,いわゆる二重払いの危険を負担することになる,それについての対応が可能であるかどうかということでございます。   前提といたしまして,除権判決がされますと有価証券は権利と切り離されるわけで,いわば紙切れになるのですけれども,その結果,この紙切れになってしまった有価証券の所持人があらわれたときに,その者に弁済をしてしまった場合の効力はどうなるか,いわゆる準占有者に対する弁済として扱われないのかという問題がございます。この点についていろいろ調べたのですが,やはり除権判決の効果として,紙切れになってしまう以上は,有価証券を所持している人であっても債権の準占有者に当たらないという理解もあるよううに思われます。したがいまして,そうした前提に立つと,除権判決がされてしまった以上,義務者としては新たに形式的資格を回復した公示催告の申立人が,判決正本を持って履行請求に来たらそれに応じなければいけないということになりますので,仮に,除権判決前に善意取得が成立しているような場合であっても,証券の所持人に対する弁済というのが保護されずに,と申しますか,いったんは形式的資格が生じてしまった申立人からの履行請求を拒絶できずに,事実上二重払いをさせられることにもなる,こういうことになるわけでございます。   これに対しましては,公示催告決定がされたこと,あるいは除権判決がされたということを義務者が認識し得るようにすべきではないかという商法学者による立法提言も見られるところでございます。そういったところでございますので,中間取りまとめにおきましては,この点に関して何らかの手当てができるか,その必要性について抽象的に問うているということでございます。   後段についてでございますけれども,有価証券の喪失者であります申立人の公示催告手続の進行中における保護に関しまして,有価証券の所持人である権利の届出人の保護の観点をも踏まえて,見直すべき点があるかどうかを問うております。公示催告を申し立てたところが,証券の現在の所持人が義務者に対して履行請求をして弁済を受けてしまいますと,除権判決がされても義務者に対する請求はできない,それによって弁済を受けた所持人に対する不当利得返還請求をするしかないということになりますので,結局公示催告手続をやったことの意義がなくなるではないかという指摘があるわけでございます。   こういった事態を避ける方策として,これまたドイツの制度でございますけれども,無記名証券,日本では例えば,無記名社債などが当たるわけですが,この無記名証券の無効を宣言するための公示催告の申立人を保護するために,公示催告の申立人が裁判所に対して,証券上の権利に係る義務者による所持人に対する給付を差し止める,こういうことを求めることができる,こういう制度がございます。いわゆる支払禁止の仮処分ということになると思うのですが,こういったものがドイツ法では用意されているのですが,こういう制度を日本で導入するというようなことは考えられるかどうかという問題の指摘がございました。ただ,こうしたものを本当に導入してしまうと,実務上はかなり問題もあるのではないかという指摘もございます。似たような事例として一つ挙げさせていただきますのが,昭和60年代に約束手形の振出人を仮処分債権者,それから現在の所持人を仮処分債務者,そしてその手形の支払担当者であります銀行を第三債務者として,手形の処分禁止の仮処分が多用された,こういうような時期があったそうでございます。これは,約束手形をだまし取られた振出人が,その手形を詐取した所持人による権利行使を防いで,不渡処分を免れるという,そういう目的で行うわけでございますけれども,本案の訴訟として考えられますのは,所有権に基づく手形の返還請求ということでございますので,被保全権利はこの手形所有権に基づく返還請求権,したがいまして,仮処分としては係争物に関する仮処分ということになるのですけれども,こういった仮処分を打つその前提の問題といたしましては,裁判を理由とする支払拒絶というのは,いわゆる0号不渡事由ということになりますので,手形交換所規則施行細則上は,異議申立提供金を提供しなくてもいいと,そういったメリットがあるということで,この裁判所の仮処分を利用するということがあったようでございます。   ただ,この仮処分命令の中には,第三債務者である銀行に対して仮処分債務者以外の一切の手形所持人からの支払の請求に対しても拒絶をせよという,こういう形の第三債務者に対する支払禁止がされる,そういった仮処分も多用されていたようでございまして,こういったことになりますと,善意取得者を含めて一切の所持人が権利行使できないということになりますし,実際は,本来1号か2号の不渡事由に当たる場合に,振出人が,裁判所の仮処分をいわば濫用して,0号不渡事由ということで不渡処分を免れると,こういった事例がかなり出ていたというような指摘があったようです。現在では,手形交換所規則の施行細則の改正をして,そういった事例が起きないようになっているということでございますけれども,仮に,今回,この今申し上げたドイツ民事訴訟法のような支払禁止の仮処分を導入いたしますと,銀行が正に仮処分債務者の地位に置かれるということになりますので,これは仮処分債務者としては仮処分上完全に支払禁止を義務づけられるわけですので,だれから来ても支払をしてはいけないということになりますと,常に0号不渡事由が成立するということになりますので,こうなりますと,例えば,振出人が第三者と共謀してこういった仮処分を申し立てるというような形で濫用されるおそれがあるのではないか,実務家からはそういった指摘もされているところでございます。   こういった実務上の懸念がございますことや,そもそも仮処分命令の名宛人とされない一般の第三者の権利行使が完全に禁じられるような仮処分というのを本当に認めていいのかというような指摘もあるようでございますし,かなり慎重にここは検討する必要があるのではないかというふうに思われますので,この議論についても取りまとめには掲げずに,補足説明で指摘をするにとどめようと考えております。   それから,実は公示催告の申立人を保護する手続としては,現行法上存在しているものもございまして,商法第518条というのがございます。これによりますと,金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券の所持人が,証券を喪失した場合において,公示催告の申立てをしたときは,二つあるわけですが,第1に,債務者をしてその債務の目的物を供託させることができるというふうになっております。また,第2に,相当の担保を提供して債務者に証券の趣旨に従った履行をさせることもできるとされているわけでございます。この制度も,結局,結果的には善意取得者がいる場合でも,一次的には権利行使を禁ずることになるわけですが,その後,公示催告の申立人を相手方として,供託金の還付請求権の存在確認請求訴訟ですとか,不当利得返還請求訴訟という形で所持人と公示催告の申立人の間で争いをしていただくということになりますので,少なくとも義務者は法律関係から離脱させることができるということで,そういう意味では仮処分制度に比べて若干の利点もあるようにも思われるところでございます。   ただ,先ほど申し上げた手形交換所規則の不渡事由の制度などを拝見していますと,こういった供託請求ですとか履行請求がされたときに,振出人あるいは支払担当者であります銀行が弁済,供託ということをいたしましても,手形交換にそれが反映されるかどうかというのはなかなか明確でもないように思われまして,この第518条の対応で十分なのか,また弊害はないのかというようなことも補足説明においては若干問題提起をさせていただこうというふうに思っております。   それでは,第2の「除権の裁判」について申し上げます。ここでは理論上必ずしも除権の判決でなければ失権の効果を生じさせることができないと考える必要はないのではないかという前提に立って,単に「除権の裁判」と書いておりますけれども,まず1の手続の構造について,公示催告手続全体を決定手続とした上で,除権の裁判の形式を判決から決定に改めるというふうにしております。   参考資料の4を御覧いただきますと分かりますように,現行法は公示催告の決定の段階と除権判決の段階では手続が二分されておりまして,前者は第765条第2項にあらわれておりますように,口頭弁論を経ないで裁判がされる決定手続になっておりまして,後者は第769条以下ありますように判決手続となっております。   ところで,この公示催告手続は,若干の少数説はあるところでございますけれども,裁判により実体的な権利義務関係自体を確定するものではない,非訟手続だというのが多数の見解だということでございます。ただ,沿革的に旧々民事訴訟法の一部として立法されたことから,形式的には訴訟事件として取り扱われておりまして,現在でも手続の補充のためには非訟事件手続法ではなくて民事訴訟法が準用されているということでございます。   そうした考え方を裏づけるものといたしまして,実質的に同じような公示催告手続を利用しております失踪宣告の手続は,これは非訟事件手続であります家事審判の手続でされているということが指摘できようかと思います。失踪者の住所地を中心とした法律関係を確定するために,一定の要件の下で失踪者の権利能力を失わせるという効果を生じさせるわけでございますけれども,この失踪宣告の制度というのは,判決手続ではなくて非訟手続でされているということになるわけでございます。   現行法が定めております公示催告手続も,事情は同じではないかということでございまして,除権判決の効力というのは,その除権判決の既判力によって生ずるのではなく,いわば実体法の中での除権判決のいわゆる構成要件的効果としてとらえればいいのではないかというふうに考えているところでございます。そうしますと,あえて必要的口頭弁論の手続によらずとも,実質的に現在と同等の手続保障を関係者に与えつつ,手続を簡素化するということも許されるのではないかというふうに考えております。そういった理解に立ちまして,本文にございますような決定手続を採用するというふうにしているわけでございます。   なお,現行法第769条第2項の詳細な探知の命令の制度というのがございますけれども,これは通常の職権探知と同様であると理解されておりますので,今後通常の非訟事件手続とここは同様に考えていいのかなというふうに思っております。   ただ逆に,これまで民事訴訟法の準用によって,恐らく弁論主義によっていたと思われます公示催決定の段階にも職権探知が及ぶということになるわけですが,裁判所が常に積極的に資料の探索を命じられるというようなものでもございませんので,特に問題はないのかなというふうに思っております。(注)では,そういったことについて若干理論的な根拠に触れているということでございます。   2の具体的な審理・判断の方式でございますけれども,書いておりますのは,第1に申立人の出頭を要する公示催告期日を廃止するということ,第2に公示催告期日に代えて公示催告決定において権利の届出の終期を定めるということ,第3に除権決定をするための要件の審査として書面審尋又は当事者・参考人審尋によるとしております。   現行法では,公示催告の申立てがありますと,この要件についての主張立証を申立人が行って,理由があれば公示催告決定がされて,公告がされることになるわけですけれども,その公告の中で公示催告期日というのが既に指定されているということになります。これは,権利の届出をすべき終期を一応定めるという性格があるわけで,権利の届出がされたときには,その適法性等についての審理もこの期日においてされるという仕組みになっているわけですが,一応定めるというふうに今申し上げましたけれども,第768条という規定がございまして,公示催告期日に除権判決がされなかった場合というのも想定されますので,更に審理のための続行期日が指定されるとか,除権判決の言渡しのための期日が別途定められるということがありますので,そのときは判決言渡し期日までは権利の届出が可能とされております。したがいまして,この権利の届出があった場合には,現在でも口頭弁論を再開して届出についての審理を行うという形式になっているわけでございます。   ただ,現実にはこの権利の届出がされる例というのは余りないわけでございまして,通常は申立人を口頭弁論期日に出頭させて,その場で除権判決の申立てを口頭陳述させるまでの必要もないのではないかというふうに考えられますので,この公示催告期日は廃止してはどうかということでございます。ただ,この期日が権利の届出の期間も定めている関係がございますので,この期日に代えて,倒産手続におけるような権利の届出の終期を定めるという形にしてはどうかというものでございます。   そして,除権決定をするに当たりましては,これは決定手続でございますので,通常は書面審理,必要があれば口頭審理をするということでどうかということでございます。   (注1)は,今申し上げたような考え方の整理の問題ですが,この除権判決のための申立てを口頭陳述する必要がなくなりますので,公示催告の申立てのほかに除権の裁判の申立てというのも別途要求する必要があるかどうかということがございます。そこで,ここでは公示催告手続開始の申立てというようなものを一つ考えて,それ以外に手続の申立てが必要ないというような,そういった整理もあり得るのではないかという問題提起をしております。実は,現在も公示催告事件の申立ての手数料というのは,最初の申立てに600円かかるだけで,除権判決の申立ては手数料をとっておらず,手続として一連のものと今でも理解されているということがございますので,そういたしますと公示催告事件の申立てがされると決定がされて,公示催告期間が終了して権利の届出がないときには,自動的にといいますか,審理を遂げれば除権の決定がされるというような,こういう仕組み方もあり得るのではないかというふうに思われます。ただ,手続的には現在と同じように段階を踏むというような形もあり得ますので,(注1)で意見を問うという形にしております。   (注2)につきましては,権利の届出があった場合の手続保障の観点から,審理の終結日と審尋期日を指定するというふうにしております。通常であれば,権利の届出の終期に除権決定がされるということになるわけですが,口頭弁論の終結のような手続の区切りがないということになりますので,保全異議の手続を参考に,審理の終結日を定めることで攻撃防御の機会の終期を明確にするというような考え方もあるのではないかというふうに考えております。   最後に,第3の「除権の裁判に対する不服申立て」でございます。   結論的に申し上げますと,現在の仕組みは変えずに,判決手続を決定手続に変えるという形にしようと考えております。現在は,不服申立ての手続につきましては,第774条第1項で上訴を禁止した上で,第2項において不服の訴えを認めるという形になっております。したがいまして,構成としては,再審の手続に類似したような形になっております。今回の見直しでは,上訴構成を採用するというようなことも考えられたのですけれども,不服申立てを認めるために,除権の裁判がされたということをどういう形で告知して,この不服申立ての機会を確保するかということを考えますと,上訴構成をとって除権の裁判が確定するまでの間の上訴期間を設定するということになりますと,除権の裁判がされたら直ちに公告をして,それを確知できる状態をつくった上で,上訴期間が経過したら最終的にだれも不服申立てをしなかったということで除権の裁判が確定する,そうしますと,現在行っていないこの上訴の機会を与えるための公告をふやすというようなことにもなるわけで,そうするとかえって手続的にも重いものになりかねないのではないか,そういったようなことも考えまして,手続の簡素化を図ろうという中で,かえって申立人の費用負担も増えるようなことになりますので,現在の仕組みをそのまま導入してはどうかということで,上訴構成はとらなかったということでございます。その代わり,本体の手続は決定に変わることから,決定手続に変えるということで,イメージとしては準再審のような形になるのかなというふうに理解しているところでございます。   最後の2でございますが,不服申立ての手続の在り方ということで,例示として事由について検討するかどうかということを挙げておりますが,そのほかにも不服申立ての期間なども検討の対象にはなり得ると考えているところでございます。   そのほか,不服申立てが容れられて,除権の決定が取り消された場合について,この除権の決定を信頼して義務者が公示催告の申立人に弁済をしてしまっていたときのその効力が,不服が認められたことによってどうなるかというような論点もございますが,これにつきましても先ほどの除権判決を受けた後の義務者の弁済の効力と同じような問題がございますので,合わせて補足説明でこの点も触れておこうかというふうに考えているところでございます。   非常に長時間にわたりましたけれども,一応これで全体についての御説明を終わります。この後,本日,あるいはパブリックコメントに対してでも結構でございますので,いろいろと御意見,御指摘をいただければ幸いでございます。 ● 御苦労さまでございました。   ただいまの御報告につきまして,質疑応答ということになりますけれども,その前に長時間御説明を聞きましたので,ここでちょっと休憩をとりたいと思います。             (休     憩) ● 再開いたします。   先ほど報告していただきました,「公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめ」につきましての質疑を行い,あわせて御意見を伺うことにしたいと思います。   先ほどの御説明にありましたとおり,公示催告手続というものを制度として維持するということを前提といたしまして,これをある程度簡素化して,利用しやすいものにするというのが今回の中間取りまとめの方向性であると言ってよいかと思います。   方向性の固まっている事項といたしましては,現在のような判決手続ではなくて,決定手続の採用というのが大きなところでございまして,そのために公示催告期日というものは廃止して,審理の在り方を形式的には大きく変えるという提案になっているかと思います。   それでこれから質疑を行うわけでございますけれども,公示催告というものを,これは民事訴訟法にずっとあったわけでございますけれども,私,民事訴訟法学者でございますけれども,大学の講義をしても,5分か6分説明する程度で,たまたま判例評釈程度で当たれば勉強するという程度でございまして,もちろん実務でやっておられる方もいらっしゃいますし,専門家の方もいらっしゃると思いますけれども,大部分は公示催告手続は皆さん同じ素人だと思って,遠慮なくいろいろなことを事務当局の方にお聞きいただければ,お答えすることになっておりますので,どうぞよろしくお願いしたいと思います。   順序といたしましては,第1,第2,第3とありますので,まず第1の「公示催告手続の開始」というあたりから,どなたからでも結構でございますので,どうぞ御質問あるいは御意見を賜りたいと思います。 ● 管轄のところで御説明をし忘れたところがあるのですが,第779条第2項というのがございまして,有価証券の特則の管轄の規定ですが,「証書ヲ発行スル原因タル請求ヲ登記簿ニ記入シタルトキハ其物ノ所在地ノ裁判所ノ管轄ニ専属ス」と,こういう規定がございまして,作られた当時は適用対象がないと言われていたのですが,その後昭和に入りましてから抵当証券法ができまして,ここは抵当証券について適用があると理解されております。これについては特に変える必要はないのではないかということで,中間取りまとめには掲げなかったということでございます。 ● 企業側は,実は時々書類をなくしたりしますので,この手続にちょくちょくお世話になっているのですけれども,多いのが約束手形と,小切手ももちろんたまにありますけれども,船荷証券というケースがございます。約束手形は,お恥ずかしい話ですけれども社内でなくなるということもあります。船荷証券の場合は,海外から商品を輸入して,日本のどこかの港で船から陸揚げされるという場合に,船荷証券が海外の取引先,あるいは当社などの海外の現地法人からクーリエを使って送られてきて,ところがその途上でどうも何か入っている袋ごと全部1個なくなってしまって,その中に入っていたものが全部なくなってしまったというようなケースで船荷証券がなくなるということがあって,これらについて公示催告,それから除権判決をいただく手続をとっているのですけれども,実はいつも社内で議論になるのは,この手続をとる意味,必要性があるのだろうかということがよく議論になります。最終的には,手続費用が安いということと,基本的には社員を代理人にして使えるということから,やっておこうかということになることが多いのですけれども,ただ本当にどうなのだろうかと。   例えば,善意取得の問題というのも,考え方としては除権判決取得までは善意取得はあり得るという整理ですかね,そうしますとかなり善意取得されるおそれのある期間があって,不確定な状態に置かれている。そうこうしているうちに,当然,例えば,先ほどの船荷証券ですと,ヨーロッパとか非常に遠いところから積んできても,航海期間というのは1か月ぐらいです。ですから,船荷証券がないということで船を滞船させると莫大な滞船料がかかりますので,通常は念書を入れて引き取ります。でないと,今度販売先へのデリバリーができなくなるという問題も起きますから,とにかく会社としては,輸入業者としては念書を入れて,通常念書でオーケーしてくれるのですけれども,場合によっては銀行保証を出せと言われる場合もないことはない。それで荷物は引き取って,しかるべき販売先に持っていくということをやります。   一方,船荷証券はちょっと議論があるようなのですけれども,一応国際海上物品運送法上で1年間の時効という,一応そういう整理をしているようですので,そうしますと1年プラス航海期間の1か月とかいうぐらいで物事もけりがつくわけですね。ところが,現在の公示催告手続をとっていきますと,6か月の公示催告の期間があって,その前に申立てして審理をいただくという期間があるので,どうですかね,東京簡裁あたりだと1年弱,10か月ぐらいかかるのではないかなと。田舎の方に行くと結構早かったりするのですけれども,かかるので,そうなると結局期間的にどのぐらいの意味があるのかということになります。先ほど,手形につきましても6か月という期間がどうかというのも,それは確かに6か月というと台風手形に近いぐらいになってしまうので,通常はそこまでいかない。だから,その前に手形の満期が来て,手形満期が来るときには銀行に対しては,もしだれか呈示してきたら供託不渡りにしてくださいねと,供託不渡りにするときの供託金は当然積みますからねと,こういうことをやって,まあ第三者から出てくることはないのですけれども,そういうことをやっている。そういう流れの中で,果たしてこの公示催告手続というのが一体どういう意味を持つのかなというところがいつも議論になるのですけれども。   少なくとも,一つ言えますのは,やはり公示催告の期間をもう少し短く,今の船荷証券とか約束手形という観点からいきますと,これをもう少し短くしていただいて,例えば,2か月とか3か月とかふうようなタイミングにしていただいて,権利の安定をなるべく早くに図るといいますか,そういうことは是非お願いしたいなというふうに思います。   それから,もう一つ,今度除権判決の申立てというのが,公示催告の申立てとは今は別個の手続ですが,これが一連の流れということになると,非常にくだらないことで恐縮なんですけれども,今,公示催告の申立ては書面でできますので,書面でばんとやってしまうのですが,除権判決の申立てのときは出頭を要請されていて,実は先ほどの船荷証券というのは海外から送ってくる途上で紛失していることがあるので,海外の,例えば,弊社の独立法人が申立人になることがあるのですが,裁判所によっては社員じゃないとだめだ,親会社の社員は許さないと言われるところもあるので,申立てだけのために弁護士の先生をお願いするという,ちょっと何か本末転倒とは言いませんけれども,ちょっとどうかなというのがあるので,これが一連の手続になったらそういうこともなくなるのかなというようなことも期待するのですけれども。ちょっと雑駁ですが。 ● ○○委員,ありがとうございました。   ほかに,実情を御存じの弁護士さんで,公示催告やられた方,いらっしゃいませんでしょうか。 ● 大昔の話なので,余り御参考にならないかもしれませんが,やはり手形の紛失とか,路上で落としてしまったケースが一度と,あと社内で紛失したのが二度ぐらいありまして,警察に届けたり,いろいろな書類を用意して申立てをしたケースがありました。   大阪の管轄だったケースがありまして,弁護士に頼んできたものですから,やらなくてもいいとは思うけれどもということで,結局やっておこうかなと,先ほど○○委員がおっしゃったとおりの展開になりまして,弁護士ですから仕事なんですけれども,大阪に行くと大変でして,交通費もかかるし会社にも負担がかかりますので。どの程度意味があるかというふうに私も同じ質問をされまして,非常に説明に困った記憶があります。   実務的には,拾って届出をするなんていうことは実際上ないようにほかの方にも聞いておりますが,やはり改正をお願いするとすれば期間の問題だというふうに私も思います。2か月とかいろいろな案が出ておるだろうと思いますけれども,期間の問題も,忘れたころに何か除権判決の期日が来て,そのときはまた行かなければいけませんので,その点をちょっと,行かなければいけないということも含めて検討を多分されているのだろうと思いますので,その点,私も同じ意見です。 ● ほかに何かございますでしょうか。全般的なこと,あるいはこの1の「公示催告手続の開始」の管轄とそれから方法,期間のことですけれども。 ● 余り関心がなかった問題だけに,素人的な感想になるわけですけれども,やはり現行の手続を簡素化の方向に持っていく,検討していくということについては,大いに賛成であります。それは,先ほどから説明がありましたように,新受事件にしても非常に減っているし,あるいは公告の手続についても電子化の方向に向かっているというようなこと,あるいは株券の処理の問題についても新しい制度になっているということ,こういった背景を考えると,当然簡素化,迅速化の方向だろうと思います。   それから,第1の中で私思うのは,公告の方法の問題なんですが,公告の方法として現行維持ということですから,裁判所の掲示板への掲示及び官報への掲載というのがありますが,掲示板の掲示ということについて,何とか運用上の問題で見直しができないか,非常に冷たい感じの,封建時代のお達しの立て札といいますか,そういう感じさえ……,極端に言うと,ですよ。よほどの人でない限り,関心を持って見るということはないですね。   それから,あの場所,掲示場の場所が非常にスペースとして狭い,それからガラス張りになっている,それから関係書類が掲示されているというよりも,束になってぶら下げられているというような状態をよく拝見いたします。そういうのを見ると,これは公告の掲示と言えるのかどうか,本当に機能しているのだろうかというようなことさえ,素人ながらでも感じられるわけですから,現行のこういう公告制度を残すならば,そういったことも含めたことを考える必要があるのではないかと思います。感想でありますけれども。 ● 私も,公示催告を担当したことはないものですから,具体的なことは分からないのですけれども,今,期間の問題,それから出頭の問題,掲示の問題という幾つかの御意見が出たところですけれども,期間の点については確かに先ほどの御指摘のような形で,やはり6か月以上という決めがありますので,そこのところを考えると9か月から10か月,11か月という手続がかかってしまうだろうと。もちろん,申立てから公示催告決定まで1月もかからずやれる場合もあるだろう,補正やら官報公告費用の予納ということまで入ると,若干長くなるということもあるかと思います。それから,多少官報掲載まで1月ぐらいかかるというところもありますことを見越して,多めに期日を設定しておく,また期日出頭の確保の必要がありますので,都合がいい日ということもあるとすると,やはり足してしまうと合計として9か月,10か月,11か月というぐらいかかってしまうのかなというところがあります。そういう意味で,官報の公告の期間,こういったところを見直していくというのは非常にニーズに合った話ではないかというふうには思っているところです。   それから,出頭の関係も,やはり決定という形で,この原案のような形でやっていくと,必ずしもそういった形の方法は必要なくなりますので,またこれもニーズに合致したものになるのじゃないかというふうに思っているところです。   それから,掲示の関係は,運用の問題という御指摘ございましたけれども,余り表だってというところもどういうところかと思いますけれども,中には資料をガラスの中ではなくて,構内に吊すというところもございますし,いろいろな工夫はしているのではないかというふうには思っているところです。いずれにしても,利用者のニーズということで,利用しやすい形に直していただくということが,裁判所としても考えているところであるということでございます。 ● ほかに何かございますでしょうか。   統計の資料がございますけれども,これは平成14年までですが,これより新しい数字がございますでしょうか。 ● 事務当局の方から,資料3ということで14年までの数字が出ているところですけれども,この後,15年にどうなったかという速報,概数ですけれどもちょっと調べてまいりました。   平成15年1月から8月までの概数ですけれども,これにつきましては新受件数の合計が3,578件。これを14年の1月から8月までと比較しますと,14年は7,940件となりまして,15年につきましては14年の半分以下に減少しているということになるところです。   今度は,15年の4月1日から株券の失効制度,これが施行されたというところですので,4月以降を比較してみますと,15年の4月から8月までの5か月の新受件数は1,368件でありまして,平成14年の同じ期間は4,811件となっておりまして,これは70%以上の減少というふうになっているところです。   東京簡易裁判所の方に聞いてみたのですけれども,平成15年4月以降,株券については申立てがないということですけれども,他方,その他の証券につきましては,3月,前月と比較して特段の変動がないということでしたから,4月以降の減少というのはほとんどが株券についての申立てがなくなったということが影響しているというふうに言ってよいかと思われます。以上です。 ● ほかになければ,第2の「除権の裁判」と第3の「除権の裁判に対する不服申立て」は一緒ですから,この辺のところで御質問あるいは御意見があればと思いますが,いかがでしょうか。   ○○委員は,研究会の方を御指導していただいたようですけれども,何かございますでしょうか。 ● 特にございませんが,先ほど大変詳細な説明をいただきまして,事務当局には明治期の学説から始まりまして,ドイツ法との比較をしていただいて,また更に先ほどの説明は,本来補足説明に書くような事項についてかなり詳しくやっていただきまして,逆に言えば初めての方には難しいことがいっぱいあったかと思います。私どもの研究会におきましても,いろいろ検討をしたわけですが,先ほど○○委員も言われましたように,ほとんど素人が集まって議論したような感がありますので,何か思わぬところで抜けている点があるのではないかとおそれておりますので,何でも結構でございますので,是非御意見,御質問をいただければと思っております。 ● 昔,企画物でこの項目を割り当てられたことがあったものですから,物を書いたことがあって,一つだけ気がついた点があるのですが。   先ほど,第3の1で不服申立てについては独立の不服申立てとして,いわば準再審をイメージする決定手続であるというお話でしたが,管轄裁判所は地方裁判所というのは現行を維持するという理解でよろしいですか。 ● 正にその点は問題でございまして,再審のようなイメージで考えると本来は原裁判をした裁判所がやるはずなんですね。この公示催告手続については,実際に除権判決をした簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所ということで,そこだけは何か審級制度を利用した上訴のような形にもなっていて,どうもハイブリッドな感じがあるのでございますけれども,ここも実は第3の2の「事由など不服申立ての手続に関し,見直しをすべき点はあるか」ということでお聞きしているつもりでございまして,管轄裁判所をどうするかというのは一つ大きな問題になるのかなというふうには思っております。本当に再審類似だと言い切ってしまって,もとの除権決定をした簡易裁判所でやるのがよろしいのか,それとも今までどおり不服の段階になってからは地方裁判所での手続によるというような形がよろしいのか,ここはまた一つ考えるべき点だろうと思っております。 ● 不服の事由について,特に774条の2項を実質的に改正しないとなれば,これは特に地方裁判所に持っていかないとできないというようなことではないのかなという気がしておることだけ,一言つけ加えさせていただきます。 ● ほかにいかがでしょうか。   特にないようでございましたら,これは今回初めてでございまして,これに基づきましてパブリックコメントにかけるという手続にこれから入るわけでございますけれども,それに対して答えをしていただくということももちろんできますし,それから答えが返ってきてまた審議を再開して御意見を賜るということもございますので,特に今日御質問あるいは御意見がなければ,今日は以上とさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。 ● 済みません,1点だけよろしいでしょうか。   証券の方の除斥の裁判に対する不服申立てについて1点だけお伺いしたいのですけれども,届出をした者がある場合において,しかし除権判決が出ましたという場合に,届出をした者がこの不服申立て手続に入るということはあり得るということだと思うのですが,その場合に,除権判決を得た者に対して弁済をしてはならないといったような保全処分というものをどう考えるのかというのが一つあり得るのかなという気もするのですが。決定手続だとすると,民事保全法には乗りにくくなってきますので,そこをどう見るのかなと。   もちろん,仮の地位を定める仮処分としてそういう保全処分ができないのであれば,何の問題もないのだろうと思うのですけれども。 ● 検討させていただきます。その方向での仮処分というのは,余り考えていなかったものですので。 ● そういうような難しい問題も,多分これから考えていくと出てくるのかなというふうに思いますけれども,今日のところはそれではこれだけにいたしまして,今後のスケジュールについて,事務当局の方から御説明をいただきたいと思います。 ● 今後のスケジュールでございますけれども,本日,御報告しました内容などを盛り込みまして,これから補足説明を作成いたします。現在の予定といたしましては,来週,10月24日からパブリックコメントを開始する予定にしております。   本日,この部会におきましていろいろいただきました御意見,それからパブリックコメントの結果を踏まえまして,またこちらの方で検討を進めていきたいというふうに思っております。大体今年の年内ぐらいには中身を固めまして,またこちらの部会に御報告申し上げたいと思っている次第でございます。 ● それでは,本日は少し時間が早うございますけれども,審議事項はすべて終わりました。   次回でございますが,次回からはまた再び本来の諮問事項でありますところの民事訴訟法及び民事執行法改正についての審議をお願いしたいと思います。   それでは,次回の期日についての事務連絡をお願いいたします。 ● 次回でございますけれども,11月7日の金曜日でございます。場所でございますけれども,東京地方検察庁の会議室ということになっております。いつもの場所と少し違いますので,また御案内がいくと思いますけれども,御留意のほどお願いいたします。   議題でございますけれども,また事務当局の方で少し今後検討させていただきたいと思いますが,パブリックコメントが終わっておりますので,パブリックコメントの結果の概要を御説明申し上げまして,これを踏まえて御審議いただくということを予定しておりますのでよろしくお願いいたします。 ● それでは,本日の部会はこれにて終了することにいたします。   本日はどうもありがとうございました。 -了-