法制審議会 民事訴訟・民事執行法部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  平成16年1月30日(金)  自 午後3時02分                       至 午後5時07分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する法律案要綱案(案)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 定刻が過ぎましたので,民事訴訟・民事執行法部会第12回会議を開催させていただきます。   議事に入ります前に,後ほど知的財産関係訴訟の関係で御報告いただきますために,「民事・人事訴訟法部会」と言っていたころ御参加いただきました,司法制度改革推進本部の○○参事官に,今日は関係官として御参加していただいております。後ほど,御報告をお願いするつもりでおります。   それでは,本日の議事に入りたいと思います。   まず,配布資料と,本日の議事進行等につきまして,○○幹事から御説明をお願いいたします。 ● それでは,資料の説明でございます。   まず,事前発送資料でございますけれども,部会資料の10「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案(案)」がございます。本日は,この資料を基に御審議いただきまして,要綱案の取りまとめをしていただければと思っております。   それから,席上配布資料でございますけれども,まず一つは,公示催告手続の関係の資料がございます。「公示催告手続の見直しに関する取りまとめ」,それから,もう一つは,一枚の図でございますが,「見直し後における公示催告事件の流れ」でございます。公示催告手続につきましては,別途研究会が設けられており,そこで検討が続けられてまいりましたけれども,本日,その取りまとめにつきまして御報告させていただければと思っております。   それから,もう一つでございますけれども,日本経団連の方から,「民事訴訟法・民事執行法改正に関する今後の課題について」という書面をいただいております。これも後ほど,○○委員の方から御説明していただければと思っております。   本日の議事でございますけれども,まず知的財産関係訴訟に関します民事訴訟法の改正の関係につきまして,○○関係官の方から御報告いただきたいと思っております。   その後,部会資料10に基づきまして御審議をいただきまして,「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案」の取りまとめに向けた御審議をお願いしたいと思います。   最後に,「公示催告手続の見直しに関する取りまとめ」について御報告させていただきたいと思っております。 ● それでは,ただいま○○幹事から御説明がありましたように,知的財産関係訴訟検討会における検討に基づきますところの,民事訴訟法の改正案の概要につきまして,御報告をいただきたいと思います。 ● ただいま御紹介にあずかりました,司法制度改革推進本部で参事官をしております○○と申します。よろしくお願いいたします。   司法制度改革推進本部では,知的財産訴訟検討会というものを開催しておりまして,ここの法制審議会のメンバーでもあられます○○委員に座長をしていただきまして,幾つかの検討項目を検討してまいりました。そのうちの一つが,「知的財産訴訟における専門的知見の導入-特に裁判所調査官の権限拡大・明確化等-について」と,お手元の司法制度改革推進本部事務局の封筒の中に,その関係のレジュメが,一枚紙ですが,入っておりますので,それを御覧いただければと思います。   この「裁判所調査官の権限の拡大・明確化」のほかに,知的財産訴訟検討会においては新聞等でもいろいろと話題になっておりました知的財産高等裁判所--仮称ということですが--の設置や,無効審判と侵害訴訟との関係の整備の問題,それから,営業秘密の保護と侵害行為の立証の容易化の課題,そういうようなものについて議論を続けてきたものでございます。今国会に,法案としていずれも提出をするという方向で考えております。   その中でも,知的財産訴訟における専門的知見の導入のための裁判所調査官の権限の拡大・明確化については,民事訴訟法を改正するという形で考えておりますので,この法制審議会においてもきちんと御説明をして,御理解をいただいておかなければいけないのかなと思いまして,今日は御報告させていただきたいと思っております。   立法の経過,背景でございますが,裁判所調査官については裁判所法第57条第2項に,「裁判所調査官は,裁判官の命を受けて,事件(地方裁判所においては,工業所有権又は租税に関する事件に限る。)の審理及び裁判に関して必要な調査を掌る。」というような形で条文がございます。産業界等から,この裁判所調査官が黒子という形で表に出てきていない,どういうことをやっているのかよく分からないということで,それをもうちょっと明確化できないだろうかというような一方の要請と,それから知的財産に関して専門的知見をなるべく強力・強化をして,事件の迅速な審理に資するような形の体制強化をしてほしいというような,そういう要請がございました。   その二つの要請ということを前提にして,まず裁判所法については今の地方裁判所においては「工業所有権」ということになっているところを,「知的財産」という形でもう少し幅の広いものという形の関与を認めるという形の改正が第1点と,それから「必要な調査を掌る」というように書いているのですが,「その他他の法律において定める事務をつかさどる」という形にして,その他他の法律というのが先ほど言いました民事訴訟法という形になりまして,そこの1番目と2番目に書いてある内容について,民事訴訟法に規定を設けるということを考えておるわけでございます。   レジュメの方の1番目のところでございますが,「裁判所は,必要があると認めるときは,高等裁判所又は地方裁判所において知的財産に関する事件の審理及び裁判に関して調査を行う裁判所調査官に,当該事件において次に掲げる事務を行わせることができる。」ということを前提にして,この場合において,「当該裁判所調査官は,裁判長の命を受けて,当該事務を行うものとする。」と,二段階の構造になっておりまして,関与させるかどうかは裁判所が決めるのですけれども,関与させることになった場合に,具体的な事務の在り方,監督の仕方というのは,裁判長が適時に適切な形で関与できるような形ということで考えております。   それから,(1)から(4)が具体的な事務の内容でございますが,(1)は,口頭弁論の期日等において,訴訟関係を明瞭にするため,事実上及び法律上の事項に関し,当事者に対して問いを発し,又は立証を促すこと,(2)として,証拠調べの期日において,証人,当事者本人又は鑑定人に対して直接に問いを発すること,(3)は,和解を試みる期日において,専門的な知見に基づく説明をすること,(4)としまして,裁判官に対し,事件についての参考意見を述べることが掲げられています。   これらの要件立てについては,昨年の法制審議会の民事・人事訴訟法部会で御議論いただいた専門委員とは,かなり要件立てが異なってございます。その専門委員と要件立てが異なっている法制的な理由といたしましては,専門委員というのは,非常勤の職員という形で関与するのですが,この裁判所調査官というのは,常勤の職員という形で,その地位の差が具体的にどういうところにあらわれているのかというと,兼職の禁止であるとか,営利企業への再就職の制限であるとか,服務の宣誓の適用というような形で,中立性が常勤の職員の場合は高まっているというような形で,その切り分けができるのではないかなというように思っております。それから,これまでの裁判所調査官の関与の在り方ということを前提にしながら,こういう要件立てがよかろうということで,知的財産訴訟検討会の場では議論されたということでございます。   それから,2番目といたしまして,裁判所調査官の中立性の確保ということで,この知的財産訴訟に係る裁判所調査官については,除斥・忌避の規定を準用するという形にしてございます。   説明としては以上でございます。 ● どうもありがとうございました。せっかくの機会でございますので,何か御質問等でもあれば承りたいと思います。   知的財産訴訟検討会の座長をお務めの○○委員,何かもしあれば……。 ● 今,○○関係官から御説明のあったとおりでございます。 ● それでは,どうぞ何か御質問あればと思いますが,いかがでしょうか。 ● 何点か,質問ということで教えていただきたいと思いまして,お話しさせていただきたいと思います。   既にこの検討会で十分に審議されていて,このような方向で取りまとめされていると認識しておりますが,従来の法制審議会での議論で出た問題意識を踏まえて何点かお尋ねしたいと思います。   まず,この専門委員と裁判所調査官の関係についてですが,今御説明がありましたが,要件立てが大分違っているということで,そこは理解できたのですが,知的財産訴訟の場合の専門委員についても,今度の民事訴訟法の改正で入った専門委員の規定がそのまま適用されると理解しておいてよろしいのか。言い換えれば,特に知的財産関係の専門委員については,特別な規定を考えられているのかどうか,そういうことはないということなのか,この点が第1点の質問です。   それから,2番目で,取りまとめで中立性について1項目与えられておりまして,これはこのとおりで除斥・忌避等の規定が準用されることも明記すべきだと思うのですが,専門委員の際にも議論がありましたけれども,中立性とともに,裁判所調査官が関与した手続の透明性について,一応の問題になり得るのではないか,あるいは,なったのではないかと思うのですが,特に昨年の5月に司法制度改革推進本部が行った知的財産訴訟についての意見募集でも,透明性について,例えば,裁判所調査官の口頭報告の透明化とか,報告書の開示と当事者間の意見,反論の機会といった項目が挙げられていたと思うのですね,それについてはどのように結局取りまとめになられたのかということをお尋ねしたいと思います。   具体的には,ここの項目の1の(4)に,権限の中で,例えば,参考意見を述べること,これは裁判官に対して述べるわけですが,当事者がこういう参考意見を述べるのを聞く機会というのは全くないことになるのか,あるいは,そうではないのかというところとか,あるいは,もう1点,裁判所調査官のお考えになっている論点などについて,当事者と話ができる機会というものはあるのでしょうかとか,そういう点を教えていただければと思います。 ● まず第1点でございますが,専門委員の制度は知的財産訴訟においてもそのまま適用になるということでございます。知的財産訴訟検討会の委員の方から,知的財産訴訟の場においては,この専門委員の要件立てが少し厳し過ぎるのではないか,それは見直すべきではないかという意見もございました。ただ,今後この4月から施行されていくということもありまして,それはそのことを見ながらでないと,どういう問題点があるのかというのはクリアにならないですし,成立した法律をすぐにまた改正云々というのはどうだろうかというような議論が大勢を占めまして,これはそのまま適用されるということの仕切りでございます。   それから,2番目の問題は,今,○○委員の方からも御指摘がありましたように,検討会の中でも非常に大きな論点として議論されたところでございます。特に,裁判所調査官の意見というものが,意見書という形で出てくることも間々あるということを前提にして,その意見書を開示するということはできないかどうかということを中心に,かなり議論がされました。しかし,その意見書を開示した場合においても,その裁判所調査官の言った意見がそのまま判決に採用されるかどうかは分かりませんし,最終的な段階でのそういう意見という報告書的なものが開示されたときに,それをもとにして更に審理が紛糾するということは考えられるのではないかという意見が,産業界の方からも強く出されました。そうすると,むしろどういう意見を持って関与しているのかということは,裁判官と当事者と同じような形で,当事者は裁判官がどういう心証を持っているのかというのは口頭弁論の期日とか弁論準備手続なんかの釈明だとか,証人に対する発問等において,どういう心証を持っているのかということを当事者は見てとっていくというところがございますので,この裁判所調査官というのも裁判体の一つの内部の機関ということからしますと,同じような規律でもってその透明性を図るということでもいいのではないかという意見が大勢を占めた形で,こういう形になっております。   逆に言いますと,この権限の一番目に書いてあります(1)から(3)のような形で,当事者の面前でもいろいろなところで裁判所調査官が関与をして,そこで意見を述べていくという形をとりますことによって,その裁判所調査官がどういうような意見を持って臨んでいるのか,そういうことについても当事者は把握をしていけるだろうということが前提になっているということでございます。   最終的な担保としては,もちろん判決に対する上訴ということが制度的にはあるわけですけれども,やはりその前においてもこういう点を前面に出すことによって透明性を図っていく,それが知的財産訴訟における迅速性との兼ね合いでは最適ではないかという意見であったということでございます。 ● よろしゅうございますか。 ● 今お尋ねした中で,(4)の参考意見については,今の点はいかがでしょうか。 ● 今の(4)の参考意見というのが,具体的にどういう意見を持っているのかということ自体も,その(1)から(3)の中で当事者の方が推認していくことができるだろうということでございます。 ● ほかに何かございますでしょうか。   それでは,この報告は了承するということでよろしゅうございますでしょうか。   それでは,本日の主たる議題に入りたいと思います。   部会資料10でございますけれども,「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案(案)」の第一「民事訴訟法関係」につきまして,前回の部会資料9からの変更点を中心として,○○幹事から御説明をお願いいたします。 ● 先ほど資料の説明の際に,司法制度改革推進本部からの席上配布資料がございましたのを忘れておりまして,大変失礼いたしました。   それから,部会資料10の御説明に入る前に,一言御報告いたしますと,今,民事訴訟法の改正の検討の御報告がございましたが,もう一つ,人事訴訟法の改正の検討につきまして1点御報告させていただきたいと思います。   今,夫婦間におきます厚生年金等の分割を認めるという法律の改正が検討されているところでございます。この中で,家庭裁判所で厚生年金等の分割の割合を定めるというようなことも認めるということが検討されております。そこで,人事訴訟におきます附帯処分としても,こういった厚生年金等の分割の割合を定めることを加えることが検討されております。具体的には,人事訴訟法の第32条第1項に附帯処分の規定がございますけれども,この附帯処分の中に,この厚生年金等の分割の割合を定めることというようなものが追加されるというような方向での改正が現在検討されているということを,一言御報告させていただきたいと思います。   それでは,部会資料10でございますけれども,まず全般的なことを申し上げます。   タイトルでございますが,「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案(案)」となっております。今回のこの要綱案に基づく法律案の名前,名称につきましては,まだ確定的なものとはなっておりませんので,このような実質でタイトルを表すという方がよろしいのではないかということで,このようにさせていただいております。   資料全般につきましては,前回の部会資料に比べまして,例えば,注を落としております。注の中には,説明的なものとして書いた部分,あるいは,最高裁判所規則の問題であるとして注にしたものというものがございました。そういうものを落としまして,必要なものは本文の中に書くというような形で整理させていただいております。   それでは,まず第一の「民事訴訟法関係」でございます。   第一の一,それから二,いわゆるオンライン化の関係でございますけれども,基本的には中身は変わっておりません。やや字句の修正等がございます。   2ページでございますけれども,二の2「支払督促等の作成及び記録の電子化」のところですが,これにつきましては,従前の部会資料と少し趣旨を明確にするために,字句の修正をしております。   また,3ページの冒頭でございますけれども,「規則の定めるところにより」というようにしておりますが,これは従来注に書いておったものを本文に書いたというものでございます。   それから,同じ3ページの続きの(二)でございますけれども,この裁判所書記官が電子データにより行う処分についても,一の3と同様とするものとする,すなわち,署名押印に代わる措置というものをしなければいけないということも,新たに明確にしております。   それから,同じ3ページの5の(一)でございます。「督促事件記録の謄写等に代わる措置」でございます。   前回の部会資料では,「閲覧謄写等に代わる措置」というようにしておりましたけれども,閲覧の方法につきましては,現在の法律では特に規定はされていないということとなっております。したがいまして,ここは「謄写等」というように変えたというものでございます。現実には,出力した書面を閲覧する方法が考えられるという,前回までの注の実質は変わるところはございません。   そのほか,多少字句の修正をしたというものでございます。   続きまして,三の「その他」でございます。この三につきましては,修正はございません。   なお,1の管轄合意の書面の規定のところでございますけれども,民事訴訟法の281条の飛躍上告の規定におきまして,この管轄の合意に関する規定が準用されております。法案化に当たっては,飛躍上告の合意につきましても,同様に電子データによる合意を可能にするというようにしたいと思っております。   以上が「民事訴訟法関係」の今回の要綱案の案の説明でございます。 ● 文書提出命令関係につきましては,前回の部会におきまして事務当局から,今回の要綱案には盛り込まないことでどうかという考えをお示ししました。この関係につきましては,後に御意見をいただきたいと思いますが,まずこの文章に出ているところ,第一の「民事訴訟法関係」の中で要綱案に盛り込まれた事項についての御審議をいただきたいと思います。   この部分につきましては,今,○○幹事の方から御説明がありましたように,前回の資料から実質的な変更はございません。字句や表現ぶりの訂正ばかりでございます。しかも,この内容につきましては,前回の部会までに御了承いただいていると私は認識しておりますけれども,細かな字句や表現ぶり等も含めまして,もし御意見がございましたら承りたいと思いますが,いかがでしょうか。   御意見がなければ,この原案を御了承いただいたということにさせていただきますが,よろしゅうございますでしょうか。--それでは,そのようにさせていただきます。   続きまして,今申しました刑事事件関係書類等を対象とする文書提出命令制度関係につきまして御審議をお願いしたいと思います。   ○○幹事から,まず御説明をお願いいたします。 ● いわゆる公務文書の文書提出命令制度につきましては,これまで刑事事件関係書類等の文書提出命令制度を中心に御審議をいただいてきたわけでございます。この刑事事件関係書類等につきましては,刑事の法令等におきまして独自の開示制度が定められている,そういうこととの関係をどのように考えるのかといったような理論的な問題点の指摘がございました。   また,現在,刑事事件関係書類等につきまして開示が求められた場合には,その大部分が開示されているといったような統計上のデータもございます。   また,そうは言っても必要な書類が出されていない場合があるのではないかというような指摘もございまして,具体的な例も踏まえて御審議いただいたところでございます。   そのような今回の審議の結果を踏まえまして,法務省刑事局におきましては,運用上刑事事件関係書類等の開示の範囲を拡張するということを検討しているということは,前回の部会でも御報告のあったところでございます。   具体的には,例えば,不起訴事件記録中の供述調書の取扱いについて,民事の裁判所から送付嘱託がなされた場合に開示する要件を明確化すること,あるいは,目撃証人の特定のための事項について,裁判所から調査の嘱託があった場合に,一定の要件の下にこれに回答すること,こういうようなことについて検討しているというように伺いました。   また,前回の部会でも,この民事司法と刑事司法との在り方についてはなお検討すべき点があるのではないかというような御意見,あるいは,今回はこういった運用の在り方,そういう面から考えていってはどうかというような御意見もあったところでございます。   そのようなことを踏まえまして,事務当局といたしましては,前回どおり,今回のこの検討の結論としては,法律上の手当てまではしないということにしてはどうかというように考えているところでございます。   また,自己利用文書につきましても御審議いただいたところでございますけれども,前回の部会では,今回は法律上の手当てまではしないというように取りまとめられたというように理解しております。そこで,今回文書提出命令制度につきましては,資料には記載しなかったというものでございます。 ● 今の御説明のとおり,刑事事件関係書類等を対象とする文書提出命令制度につきましては,前回,事務当局から,実務上不都合を感じている点に関する運用の改善によって,実践的な観点から民事訴訟において刑事事件関係書類をより利用しやすくする方向を目指すべきではないかという提案があったところでございます。これは今,○○幹事が御説明になったことと重複いたしますけれども,具体的にはこの部会における議論の結果を踏まえて,法務省刑事局から次の二つのことについて,文書で周知徹底を図る方向であるという検討の紹介がございました。   この二つのことというのは,第1に,民事の裁判所からの文書送付嘱託があった場合等における不起訴事件記録中の供述調書の開示の範囲を明確化するという点,もう一つは民事の裁判所から目撃証人等の証人尋問の前提として関係者の人定事項に関して調査の嘱託があった場合に,一定の要件の下で弾力的に嘱託に応ずるという,そういう2点につきまして,更なる運用改善のために文書で周知徹底を図る方向で検討が進められているという,そういう旨の御紹介が○○関係官からあったところでございます。これにつきましては,この会議でも一定の御理解が得られたのではないかと私は了解しております。   こういう問題のほかに,もっと大きな問題としては,今,○○幹事も御指摘になりましたけれども,民事訴訟法の枠内にとどまらず,もう少し刑事の裁判所と民事の裁判所というような大きな横断的な問題をも含めて,なお中・長期的に検討すべきではないか,そういう理論的な問題もまだあるのではないかという御指摘もこの会議であったところでございます。そこで,そのような点を考慮いたしまして,この刑事事件関係書類等につきましては,今回は法改正ということで対応するのではなくて,法務省刑事局から御紹介がありましたような実践的な観点から対応するということでよいのではないか,そういう意味で法改正を見送ることにしてはどうかというのが原案でございます。   前回の部会では,このような方向でよろしいのではないかという御意見が多くの方から御発言がございましたけれども,非常に重要な問題でもありますし,これは平成8年,平成13年改正以来の懸案でもございますので,念には念を入れて,今日の会議でもう一度お諮りしたいというものでございます。   それでは,この問題についてどなたからでも結構でございますので,御発言をいただければと思います。 ● 前回も発言させていただきましたが,今御指摘のありました理論上の問題その他等々から,今回,法改正に至らないということについては,弁護士会としては残念に思いますけれども,今後の運用を見ながら,あるいは,理論上の検討を見ながら,適当な時期に,また再度の御議論をいただける機会をいただければありがたいというように思っております。   今回の審議で,私ども日弁連が指摘した不開示の問題点について,法務省刑事局の方で具体的に検討していただき,改善案を示していただいたということ,それから,今後の運用上,いろいろ御協議もいただけるというように表明していただいた点は,今回の審議の成果であったというように受けとめております。   なおこの問題は,こういう文書の開示を求める弁護士会の側で,具体的な問題事例などを示して,運用改善の努力をするということが一方で大変大事だというように認識しておりますので,よろしくお願いいたしたいと思います。 ● ほかに,いかがでしょうか。   この前,この問題について御発言いただいた方でも結構でございますし,それ以外の方でも結構ですので,御意見を伺いたいと思います。 ● この議論が始まったころは,私は刑事関係文書を別扱いする必要はないのではないかというような立場から発言したわけですけれども,その後,刑事訴訟法の先生でも意見が真っ向から対立して,分かれていたということ,それから前回,○○委員からお話がありましたように,民事司法と刑事司法との関係をどう考えるのかというようなことを考えますと,例えば,刑事訴訟の方が証言拒絶権の範囲が狭いとか,あるいは,外交文書等と違って,刑事記録というのは極めて明確な特定の目的のもとに強制力をもって集められているというので,直ちに同一視していいのかどうかといったような問題,しかし他方で,刑事記録を持っている方も,開示するのかどうかの判断にかなり民事訴訟での証拠としての必要性というものが重視されているというようなことがありまして,よく分からなくなったわけですけれども,そういうことですから,この段階で強いて法改正をしないで,一方で理論的な検討を続け,他方で運用の改善を図るという原案が示されまして,それに私も賛成したいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。--よろしゅうございますでしょうか。   この問題につきましては,平成13年の民事訴訟法の一部を改正する法律の附則の第3項,これは「政府は,この法律の施行後三年を目途として」云々とありまして,この刑事事件関係書類等を対象とする文書提出命令の制度について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるというものでございますが,この趣旨に基づきまして,これまで関係機関等から運用状況に関する報告を受けるとともに,刑事法学者からも専門的知見からの意見を聴取するなど,慎重に審議を続けてきたというように思っております。刑事事件関係書類等の民事訴訟における利用状況という実際的な側面と,それから,刑事訴訟法等との関係という理論的な側面の双方から,相当議論がこの部会では深められたのではないかというように考えております。   そこで,この部会では,共通認識として,現在の実務なり問題点についての認識が深まり,その結果として先ほど御紹介いたしましたような実務上のニーズを踏まえた運用の改善という一つの現実的な方向が示されたのではないかというように思っております。これも,この附則第3項に言うところの,「政府は制度について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずる」ということに十分該当するのであって,必ずしも法律の改正を要するということを附則は言っているわけではございませんので,この部会としては一応現段階では使命を果たすことができたのではないかというのが私の認識でございます。   この問題につきましては,日弁連及び法務省刑事局におかれまして,各問題点につきまして毎回大変真摯な御発言を賜りました。この部会での問題意識を共通化するために,大きな役割がそれによって果たされたのではないかというように思います。   それから,大きな問題として,この部会で御指摘いただいた民事・刑事の横断的な問題をも含めたそういう理論的な問題点につきましては,今後も更に中・長期的な検討を行っていく必要があるという認識を私は持っております。このようなことから,今回は,ここにお示しした原案どおり,法改正は見送ると,しかしそれとは別に,法務省内部,政府において所要の措置を講じていただくということで取りまとめさせていただきたいというように思いますが,それでよろしゅうございますでしょうか。--それでは,そのようにさせていただきます。   それでは,引き続きまして第二の「民事執行法関係」に移らせていただきたいと思います。   まず,一の「少額訴訟債権執行制度」につきまして御審議をいただきたいと思います。前回からの資料の変更点を中心として,また○○幹事から御説明をお願いいたします。 ● それでは,資料の4ページ,第二「民事執行法関係」の一「少額訴訟債権執行制度」でございます。   まず1から6までにつきましては,多少細かい字句の修正はございますけれども,明確にしたというだけでございます。   それから,6ページの7でございます。「転付命令等のための移行」でございます。   (一)「転付命令等のための移行の申立て」の末尾でございますけれども,「事件を移行させる決定をすべきことを求める旨の申立てをすることができるものとする。」としてございます。前回の部会資料では,「移行させる旨の申立て」というようにしておりましたけれども,「移行させる旨の申立て」というようにいたしますと,当然移行のための申立てのようにも読めますので,この趣旨を明らかにしたというものでございます。   続きまして(二)「執行処分に対する不服申立てがされているときの移行決定の効力」でございます。   この点につきましては,前回の部会資料では注という形で出しておりましたけれども,実質的な内容につきましてはこういう方法で取りまとめいただいたものと理解しております。こちらの方は,最終的には法律事項ということになることでございますので,本文化ということにしております。   なお,移行の効果でございますけれども,7ページの(三)でございます。こちらの方は少し字句の修正を加えたという程度でございます。   なお,不服申立てと移行との関係につきましては,転付命令等のための移行のみならず,ほかの移行でも問題となるものでございますので,それぞれのところでこれと同様とするといったようなことを加えております。   続きまして,9の「配当のための移行」でございます。   こちらの方の(一)でございますけれども,どこに移行させるのかという裁判所をここに記載しているわけですが,その裁判所の記載の順番を変えたというものでごさいまして,表現の修正にとどまっております。   その他,少額訴訟債権執行につきましては,字句の修正のみでございます。   なお,前回の部会で不服申立てとの関係で二つの点につきまして御指摘がございました。すなわち,配当要求を却下する裁判所書記官の処分に対して執行異議がされたと,その結果,その処分を取り消したという場合には,配当要求が認められるわけでございますので,その取り消した決定に対しては執行抗告はすることはできないというようにすべきではないかという御意見,それから移行決定に対しては不服申立てを認める必要がないのではないかという御意見がありました。この二つの御指摘につきましては,事務当局といたしましても,このような要綱案を御決定いただきますれば,今後そういう方向で法律案の立案作業を進めていきたいと考えているところでございます。   ただ,やや少し技術的な点でもございますので,今日の資料の記載といたしましては,あくまでも原則的なところを書いたということで,そういう方向で今後検討させていただくということをここで御報告するということで,御了解いただければというように思っているところでございます。 ● この少額訴訟債権執行につきましては,これまでに様々な角度から活発な御審議をいただいてきたところでございます。資料の内容といたしましては,前回の部会資料では注に記載されていました不服申立てがなされた場合の移行決定の効力という点につきまして,これは法律事項であるということで本文に記載するというように変更されていることのほかは,字句が若干修正されているというものでございます。   また,資料の記載には直接反映されてはおりませんけれども,今最後に御説明があった点,つまり不服申立ての関係につきましては,前回までの議論を踏まえて,しかしそれは細かいのでこの資料には載せていないということでございます。   それでは,この少額訴訟債権執行につきまして,御質問あるいは御意見があれば承りたいと思いますが,いかがでしょうか。--よろしゅうございますでしょうか。   それでは,本日までにいただきました貴重な意見を踏まえまして,事務当局においては条文化の際になお検討を続けていただくということにいたしまして,要綱案としてはこの原案のとおりに御了承いただくということにさせていただきます。よろしゅうございますね。   それでは,引き続きまして第二の二「不動産競売手続」の(一)「最低売却価額制度の見直し」につきまして御審議をいただきたいと思います。○○幹事からお願いいたします。 ● それでは,8ページの二「不動産競売手続」の1「最低売却価額制度」でございます。   最低売却価額制度につきましては,前回申し上げましたとおり,評価にはやはりその事柄の性質上一定の幅,アローワンスがあるということではないかと。そういうことを前提といたしまして,最低売却価額を一定程度下回る価額での買受けの申出も認めると。そうしますと,「最低売却価額」というような,そういう名称,そういう言葉は使えないものでございますので,「売却基準価額」という形にするというような御説明を申し上げたところでございます。   この具体的な幅,一定程度につきましては,前回の部会で事務当局の方から2割から3割ということを考えているということを御報告申し上げました。この具体的な幅につきましては,前回の部会で,やはり幅が大きくなると評価が質的に変容するのではないか,あるいは,執行妨害を招くのではないかといったような御指摘もございました。また,競売の市場価格というものが下がるのではないか,例えば,入札が1件のみしかないような場合もあるといったような御指摘もございました。さらに,その幅が大きくなると,今度は与信にも影響するのではないかといったような御意見もいただいたところでございます。   そういった前回いただきました御意見等も踏まえまして,私ども事務当局といたしましては,前回は2割から3割というように申し上げましたけれども,この一定程度につきましては2割ということが相当ではないかと思っているところでございます。そこで,本日2割ということで御了解いただけますれば,本日,この提示いたしましたたたき台を修正いたしまして,「一定程度」というところを「2割」という形で御決定いただければというように考えているところでございます。   続きまして,(二)の評価でございます。評価につきましては,前回の部会でも御説明申し上げましたとおり,基本的にこの売却基準価額というものが最低売却価額と内容的に変わるものではないこと,またこの売却基準価額が適切に評価されるように,その考慮要素を掲げたというものでございます。   このように,ここのところは評価の考慮事情というものを一般的に書いて,評価人の評価についての規定というようにしているわけでございますけれども,このように新たに評価人の評価に関する訓示的な規定を設けるのであれば,もう少しほかの事項も書くのが相当ではないかというようにも考えているところでございます。すなわち,現在評価書の提出時期につきましては,最高裁判所規則で所定の日までに提出するというような趣旨が定められております。また,その実情を見ましても,この評価書の提出時期につきましては,実務上特に問題が生じているというようには言えないというように思っております。ただし,今申し上げましたとおり,今回,評価に関する新たな訓示規定を設けるというのであれば,こういった考慮要素を掲げるほかに,当たり前のこと,当然のことでありますけれども,確認的,注意的に,不当に遅くなってはいけないと,こういうような趣旨もつけ加えてもよろしいのではないかというように思われるところでございます。   そこで,これもちょっと口頭での御提案になりますけれども,ここの「評価人による評価の考慮事情」の中に,「遅滞なく」というような文言を加えさせていただくことを御提案させていただきたいと思います。具体的には,評価人は,近傍同種の不動産の取引価格等,これこれの事情を適切に勘案して,「遅滞なく評価をしなければならないものとする。」,こういったような表現にしてはどうかというように事務当局としては考えているところでございます。   以上,前回の御報告から今回までに少し事務当局の方で考えて,新たな提案をさせていただきましたけれども,その趣旨を御説明申し上げました。 ● この最低売却価額制度の見直し関係につきましては,前回の部会において初めて具体的な案を示したものでございます。前回の部会では,基本的な方向は御了承いただいたところでございますが,その際の御意見を踏まえまして,事務当局で更に検討していただいた結果,今,御報告がありましたように,引下げの割合を2割というように明記するとともに,もう1点は,今回評価についての規定を設けることに伴いまして,遅滞なく評価を行うという,当たり前といえば当たり前かもしれませんけれども,それも併せてここに盛り込むということにしたいというのが今の口頭での御提案でございます。事前配布資料にその2点を変更したものを原案として,御了承いただけるかどうかということでございます。   前回の部会において,事務当局から2割から3割という数字をお示ししたところですけれども,2割がよいという,3割では問題だという御意見が非常に多かったというように思います。そこで,この2割という数字を明記をするということで,御異論がなければ御了承いただきたいと思いますが,なお御意見があれば承りたいと思います。どなたでも結構でございますが,どうぞ。 ● 従来,執行妨害に対してかなり有効な制度となっていました最低売却価額制度が,こういう形で変貌する,ちょっと形が変わるということにつきまして,漠然とではあるのですけれども,執行妨害に対してどういうことになるのかなと,執行妨害が増えたりしないかなという漠然たる不安がちょっとあります。したがいまして,その点について十分御留意いただいた上で,よろしくお願いしたいと思います。 ● 分かりました。   ほかにいかがでしょうか。 ● 基本的には今の御意見と一緒だと思いますが,最低売却価額制度を見直すということについて,余り興味がなかったというか,むしろ反対であったということです。   2割を下回るということで書くことの理由みたいなものがどうなるのだろうかなということです。それは,その評価の考慮事情にもあると思いますが,不動産の売却を実施するための評価であるから,あらかじめ2割下げとくとかいうような話であれば,結局,最低売却価額を守るようなところになりますね。そこのところで,姿勢というのですかね,やはり最低売却価額というものの制度の趣旨は守るのだけれども,このぐらいまではぶれるようなことの理解で2割ぐらいはぶれるかという趣旨なんでしょうかねということなので,趣旨は最低売却価額制度を動かすとかいうようなものではないのだということを明確にしておいていただきたいなという感じがするのですが。   2割下げることが,結局ぶれたからというようなことの説明ですね,なぜ2割なのかという説明をちょっとしてもらいたいということなのですが。 ● 基本的に競売の場合に余り低額で売却されては,債務者にとって不利益を強いることになるという,そういう基本的な考え方は今回変えてはいない,ただ現実に,評価をしてもらったその評価の額というのが,ある程度の幅があるのではないか,ということが先ほどから申し上げている趣旨ですが,現実に裁判所の運用を見ましても最低売却価額をいったん決めて売却にかけても,売れない場合には改めて評価することなく2割程度下げて,そしてかつ現実に相当数が売れているという実情がございますが,これは1回評価をして現実に売れなければ,その売れなかった事情も考慮して,2割程度下げても評価の趣旨には反しないという考えをとっているのではないかと思うのです。そうしますと,それを2回に分けてやっていることを基本的には1回にしても,その評価に対する考え方が本質的に変わるものではないのではないか,実際にやってみて,上の額があればもちろんその額でいくわけですし,売れなければ下げてもおかしくないということであれば,1回目からそこまで許容しても本質的な差はないのではないかと。   ただ,2回に分ける場合に比べますと,1回でやってしまうと競売参加者の数が限られるというようなこともあり得ますので,それは前回○○委員から御指摘のありましたように,額が下がるおそれがないとは言えない。そこは,やはりできるだけ広く競売に参加していただくという努力をしていただくと同時に,今回の趣旨についても周知して,多くの国民が参加していただけるようにすることによって解決はできるのではないか,こういうように思っているわけです。   ですから,今回の改正は,決して最低売却価額制度そのものを大きく変容させるものではないというようには,私どもも思っております。 ● 弁護士会としての意見は,前回の部会でも申し上げたとおりでございます。こういう方向性に動いていることについては理解するものですけれども,やはり「基準価額」という言い方をする,2割を減ずることを認めるということが,安易に2割下がるのだから売却基準価額というのが緩くていいではないかという運用になることを危ぐいたしますので,その点を前回も申し上げましたけれども,評価が非常に重要であるということを是非この制定に際してお願いしたいというところでございます。   それから,幅なんですけれども,2割から3割ということで前回提案がされたのですが,弁護士会等では,やはり現行の最低売却価額を維持してほしいという意見が強いこともまた事実でございますが,弁護士会は同時に,前回も申し上げましたように評価というものは幅がある,それと全国の標準化の問題で,不落物件が地方で散見される,その評価が高過ぎるという意見もあり,不落物件が実は長期滞留案件となって残存しているものも見かけるわけでございます。そういったことが,実はこの最低売却価額制度の見直しの発端になっているやにも聞いておりますので,そういう問題を総合的に解決するものとして,幅というものを認めるというのは整合的なことだろうと思いますが,是非この2割というものがまた下げられることのないようにお願いしたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 認識の確認をさせていただきたいのですが。   結局,こういう形で見直すということは,つまり競売手続を迅速化するというところが非常に大きいかと思います。   第2には,参加しやすくなる,これによって競売の効果を事実上上げることができるというねらいですね。   それから,3番目には,2割ということは,先ほども出ましたように執行妨害を防ぐぎりぎりの最低限度だろうと,こういう判断からこういう二つの見直しになったと理解するのですが,それでよろしいでしょうか。 ● 御指摘のとおりだと思っております。 ● 今まで出されました各委員の意見と同じです。最低売却価額制度は,基本的に法律理念としても,理論面でも,これは適正でかつ合理的なものだと考えておりまして,○○委員が説明されたような理論付けのもとで,この新しい要綱案が作成されているものだと理解しております。その運用に当たりましても,○○幹事から指摘がありましたようなことを十分踏まえた上で,裁判所としても対処できるものと思っております。   要するに,基本的に現行の最低売却価額制度が基本的には維持されているのだと,そういう理解でこの要綱案が作られ,それに基づいてこれからも運用するというように考えております。 ● ほかに,御意見ありますでしょうか。   それでは,ただいま何人かの委員・幹事の方から御意見をいただきましたので,事務当局では条文化の際にそういうことを踏まえて条文化をお願いしたいと思いますが,要綱案としては原案のとおり御了承いただいたということでよろしゅうございますでしょうか。   2点の口頭で修正したものを原案としまして,それを御了承いただいたということでよろしゅうございますね。--はい。   それでは,引き続きまして第二の二「不動産競売手続」の2「剰余を生ずる見込みのない場合の措置」及び3「差引納付の申出の期限」につきまして,併せて御審議をいただきたいと思います。資料の説明からお願いいたします。 ● 次が資料8ページの一番最後でございます。「剰余を生ずる見込みのない場合の措置」でございます。   これにつきましては,基本的に変更はございません。9ページの真ん中あたりに(二)がございます。これは優先債権者の同意をとった場合には,売却の手続を実施することができるということと,それからそういうことを1週間以内に証明するということをここで書いております。前回の部会資料では,この二つのことを別の項に分けて書いておりましたけれども,今回,この(二)ということで一体的に書かせていただいたというだけでございます。   9ページの3「差引納付の申出の期限」,それから三「執行官による援助請求」,この点については変更はございません。   なお,この不動産競売手続につきましては,内覧を前回の部会資料では後注ということで掲げておりました。これまでの議論で,やはり先般の改正法の運用状況というものを見守る必要があると,この段階でこの制度を拡充することは時期尚早であるというような取りまとめがされたというように理解しておりますので,前回の部会資料では後注にございましたが,今回は落としたというものでございます。 ● 今,「剰余を生ずる見込みのない場合の措置」と「差引納付の申出の期限」のほかに,「執行官による援助請求」,そこまで御説明いただきましたので,9ページの後ろから2行目までの部分について御審議をいただきたいと思いますが,この部分は今御説明がありましたように,表現ぶりにつきまして若干の変更があるほかは,実質的な部分につきましては変更はありません。内容につきましては,前回の部会で既に御了承いただいていると認識しておりますけれども,何か御質問等ございますでしょうか。 ● 9ページの(二)という部分ですけれども,1週間以内に優先債権を有する者の同意を得たことを証明するということですが,実際,間々優先債権で租税債権というものが出てくることがあって,そうしますと租税債権のようなものにつきましてはあらかじめどういう態度をとるのかというようなことが事前に分かっていたりすると,この部分が非常に利用価値が高まるというように思いますので,直接この法律自身という問題ではないのですけれども,これを1週間という短い期間であることもあり,そういうことも,法務省ではないかもしれないのですけれども,ちょっと御検討いただきたいなというように思います。 ● その点に関しましては,今後の運用の中において関係各省庁に制度の趣旨を適切に説明していきたいと思っております。 ● ほかに,御意見ございますでしょうか。   なければ,この部分につきましても御了承いただいたというように受け取らせていただきますが,よろしゅうございますか。--はい。   それでは,引き続きまして9ページの最後の四「裁判所内部の職務分担」と,五「扶養義務等に関する金銭債権についての間接強制」についてでございますが,併せて御審議をいただきたいと思います。御説明をお願いいたします。 ● ちょっと説明が先走ってしまいまして,三のところまで説明してしまいました。   続きまして9ページの一番最終行,四「裁判所内部の職務分担」というところでございます。   こちらの方は,字句の修正でございますが,一つ,9ページの最後に「裁判所内部の職務分担」で「(新設)」となっておりまして,次の10ページの1の冒頭で,「裁判所書記官の権限とする事項」の下には何も記載されておりません。これは,ほかの項目との並びでございますけれども,最終的には10ページの(一)から(六)というところの条文の改正ということになるものでございますので,これも口頭での新たな提案,技術的な表現についての提案でございますけれども,9ページの四「裁判所内部の職務分担」の下の「(新設)」というところを削りまして,1「裁判所書記官の権限とする事項」の下に,(一)から(六)までのそれぞれの手続の根拠となる条文を列挙したいというように考えております。その方が,ほかとのバランス,あるいは,これを見た際にどこの条文が問題になるのかというのがよく分かるのではないかというように思っております。   そのほかにつきましては,特に変更はございません。   続きまして,11ページの五でございます。「扶養義務等に係る金銭債権についての間接強制」でございます。   この部分につきましては,基本的に字句の修正だけでございます。   まず,11ページの最終行の4「間接強制の決定の取消し」でございますけれども,12ページの方に移りまして,1行目ですが,「申立てにより,間接強制の決定の変更をすることができるほか」と入れております。これは,前の部会資料では注に掲げておりましたけれども,これは本文にいたしました。全くこれがなくて注を全部落としてしまいますと,取消しのみと誤読されるおそれがございますので,本文の中で間接強制の決定の変更もできるのだということを明らかにしたというだけでございます。   それから,同じ12ページの6でございますが,「扶養義務等に係る定期金債権についての執行開始の要件の特例」でございます。   この点につきましては,将来分の定期金のうち,どれだけの範囲のものについて認めるかという点につきまして,前回の部会で御議論いただきまして,6か月という方向で基本的に取りまとめていただいたというように理解しておりますので,今回のこの資料では,「六月内に」という形にさせていただいたというものでございます。   間接強制に関します資料の説明は以上でございますけれども,この間接強制に関しましていま一つ議論していただきたい点といいますか,問題点の指摘というものをさせていただきたいと思います。   前回の部会で,事務当局の方から,いわゆる一部取消しの可否等につきまして御説明させていただいたところ,この問題につきましてはいろいろな御意見をいただいたところでございます。その後,事務当局の方で前回の部会でいただきました御意見なども踏まえて更に検討しましたところ,こういった一部取消しの可否等の問題につきましては二通りの考え方があるのではないかというように考えておりますので,本日この点につきまして御議論いただければ大変ありがたいと思っているところでございます。   この一部取消しの可否ということになりますと,恐らくそれに対応する問題といたしまして,そもそも一部認容というようなものが理論的にできるのかどうかというような問題もあろうかと思います。   例えば,養育費の10万円のうち,7万円分だけこの資力の要件を満たす,こういったようなときにどのような決定がされるのかということでございますけれども,一つの考え方としては,一部認容というものを認めて,7万円分についてのみ間接強制の決定をするという考え方があり得ようかと思います。   もう一つの考え方といたしましては,それは10万円の債権というものを一体的なものと見て,10万円についてその一部についてでも資力要件を欠くということになれば,これは全体の申立てを却下する,こういったような考え方もあるかと思います。このような点につきましても,御議論いただければと思っております。   そうしますと,恐らく一部取消しもこれとパラレルの関係で,一部について資力要件を欠いた場合には一部取消しを認めるという考え方と,少しでも資力要件を欠く部分があれば全部の取消しをするといったような,二つの考え方があり得るのではないかと思われるところでございます。   以上が一部取消し,あるいは一部認容の問題でございますけれども,もう一つの問題点といたしましては,例えば,間接強制の決定がされている場合に,元本の一部を弁済した場合に,間接強制金は当然に消滅するのかといったような理論的な問題もあろうかと思います。すなわち,例えば,10万円について間接強制金が定められているときに,そのうちの5万円を支払ったら,その後は間接強制金は半分になるのかといったような問題でございます。   この問題につきましては,これはある意味では裁判所においてどのような内容の間接強制の決定をするのかといったような問題になるのかもしれません。例えば,その決定において「不履行分につき」,例えば,月幾らを支払えというような形で決定すれば,履行がされればその分減っていくというようなことにもなるでしょうし,あるいは,「全額が支払われるまで」月幾らを支払えと,こういうような形で決定をすれば,それは一部が弁済されても間接強制金は減らないというような形になるかもしれません。このようなことは,こういったような決定の問題なのかどうかという点につきましても,御意見を賜れば幸いと思っております。   それから,最後に御意見を伺いたい点でございますけれども,間接強制金の減額,例えば,債務者の資力が減って間接強制金を減額する,こういう決定は,間接強制の決定の変更なのか,それとも一部取消しなのかという問題が,前回の部会でも御議論あったところかと思います。観念的には,どちらにも当たり得るというようにも思われますけれども,これまで他の類型の間接強制におきましては,間接強制金を減額するというのは恐らく決定の変更,こういう制度しかなかったわけでございますので,決定の変更というように解されていたと思われます。そういうことが,仮に,取消しという新たな制度を設けた場合に,それが変化するかどうか,あるいは,従前のとおりなのかといったような問題かと思います。ほかの類型の間接強制におきましても,債務者の資力等を考慮して,間接強制金が決定される点では同じであり,資力が減って減額ということはあり得るわけでございますけれども,現在の制度におきましては,そういう場合には遡及効というものは認められていないわけでございます。 事務当局といたしましては,そういうことからしますと,額の減額,間接強制金の減額については遡及効はなくてもよいのではないかというように考えているわけでございます。ただ,もしこの原案のとおり要綱案,要綱をいただきまして,仮に,このように条文になった場合には,そういったような減額も一部取消しに含まれて遡及効があるのだというように解釈することができるかといったような形で,解釈問題というものが生じ得るというようにも思われます。   以上,申し上げました諸点でございますけれども,事務当局といたしましては,いずれも解釈の問題ではないかというように考えておりまして,要綱案の案自体としましては原案を維持させていただければというように思っているところでございます。ただ,今後理論的な面で運用上問題になることも考えられますので,この機会にいろいろと御意見をいただければありがたいと思っているところでございます。 ● 今,間接強制について3点の問題を提示させていただきましたけれども,これは事務当局の考え方としては,法律ができた場合の解釈問題だというように考えているわけでございますけれども,この中で,これは解釈問題にとどまらず,何らかの形でできるならば法律に書き込めというお考えもあるのかもしれません。それから,解釈問題なら解釈問題として残しておいていいけれども,それはこういうように解釈すべきであるということであれば,またその点を言っていただければ,今後の運用に,特にこれは家庭裁判所が間接強制を課すことになると思いますけれども,その場合の運用に資するところがあるのではないかということでお伺いしようとしているわけでございます。   3点と言いましたが,繰り返しになりますけれども,一部取消し,一部認容ということがこの間接強制を課す場合にあり得るかどうか。もちろん,初めから10万円のうち7万円について間接強制してくれという,それができるのは当然でございますけれども,それを前提として10万円を請求したら7万円分についてだけ間接強制を許すとか,あるいは,いったん10万円について間接強制を課しながら,後からそれを一部取り消すというようなことがあり得るのかというのが第1点。   第2点は,10万円なら10万円分につきまして間接強制金を課された場合に,5万円なら5万円について弁済をした場合に,当然に間接強制金が発生しなくなるのか,この問題は初めの間接強制金を課す命令の中に,不履行の部分について間接強制金が発生するというような文言を書いておけば済む問題なのかどうかという点が第2点。   それから3番目は,間接強制金を減額した場合に,1日幾らというのをもっと減額したという場合に,これは従来の考え方でいいますと変更なわけですね。変更は,この前の議論にもありましたけれども,今までの間接強制金の変更というのは遡及効がなかったわけです。今度,取消しというものを作りまして,取消しについては遡及効というものを明文上認めるということになるとしますと,これもそれによって変更に遡及効を認めるという解釈論があり得る,出てくるかもしれませんけれども,一体,この間接強制金の減額というのは変更というように事務当局は見ておりますけれども,これが取消しなのかという,その3点でございます。   ちょっとくどく説明して申し訳ないのですが,御意見を聞かせていただければと思います。 ● 第1点ですけれども,○○幹事の挙げられた例で,10万円中7万円しか支払う資力がないという場合は,これは支払不能なのではないのでしょうか。つまり,履行期にある債務を全額支払う資力がないということで,支払不能と判断基準が違うのであれば別ですけれども,支払不能と同じだとすると,否認可能なので執行を認めるという,否認すべき--将来破産手続が開始した場合において,債務者が行った扶養料の支払が,そういうことを否認する人が,管財人がいるかどうかは別として,そういうことになりはしないのかという気がしまして,そもそも支払不能の者に間接強制を課すこと自体が,それ自体不適切だということもありますので,私は今おっしゃったような意味での一部認容というのはできないと,資力がないと判断すべきだというように私は考えておりますので,ですからそれと同じ構造をとる一部取消しというものも,私は認めるべきではないというように思っております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 御質問の点は,いずれも両様の考え方がありそうな論点ですので,今から申し上げるのはあくまでも私の考えということであって,そういう考え方が論理的に正しいとか,そういう趣旨ではないということで申し上げたいと思います。   まず第1の点ですけれども,一部認容が可能かというのは,理由は違いますけれども結論的には○○幹事が言われたのと同じく,できないと思っております。   理由ですけれども,一部認容ができるかというのは民事訴訟理論的に言うと処分権主義の問題という話なんだろうと思います。部会長がおっしゃったように,債権者自身が一部について執行の申立て,あるいは,間接強制の申立てをしたという場合には,権利者自身が処分をしたということで,それは認められることは恐らく争いがないのだろうと思います。問題は,債権者が全額について申立てをした場合に,裁判所が一部認容の間接強制の決定ができるかという,債権額について一部認容の決定ができるかということでしょうけれども,判決手続とのアナロジーで考えることになるのかと思いますが,判決手続において一部認容が通説・判例で多くの場合認められているというのは,債権者の合理的意思というものが背景に一つはあるのだろうと思います。判決手続の場合は,観念的な権利関係の確定ですから,たとえわずかでも認めてもらった方がいい,全部棄却されるよりは一部認容された方がいいという合理的意思が背景にあって,一部認容というのが認められるということが多いのだろうと思います。   執行の場合に同じことが言えるかどうかというと,執行に関しては一部認容された場合には,まだ残額が欲しければまた執行の申立てをしなければいけないわけですから,この辺はなかなか分かりませんけれども,判決手続と同じような意味で一部でもゼロよりはましだという合理的意思があるかどうかは一概には言えないのではないかという気がいたしますので,少なくとも私は一部認容というのは当然に許されるわけではないと考えます。   それから2点目ですけれども,一部を支払った場合に,履行された部分に応じて間接強制金が減額されるのかという問題は,これは事務当局がおっしゃったように,命令の定め方によるということはそのとおりだろうと思います。もちろん問題は,その命令自体では趣旨がはっきりしない場合というか,その点をきちんと定めていない場合だろうと思いますけれども,私はその場合には,一部を払った場合でも間接強制金は減らないと,つまり払い切るまで間接強制金は全額残るというように考えております。   これは,金銭ではなくて,現在認められている間接強制にもあり得る話かもしれませんで,作為を命ずる債務の場合に,一部の点について作為をしたというときに,間接強制金が減ると解するのかということとも同じことになると思いますけれども,この問題がどのぐらい議論されているのかよく知りませんけれども,恐らく一部履行したから間接強制金が一部減るとは言われていないのだろうと思いますので,同じような考えではないかと考えます。   それから最後の点ですが,間接強制金の減額をするというのが変更になるのか一部取消しになるのかという点ですが,結論から私の意見を申しますと,これは変更にも当たり得るし一部取消しにも当たり得る。つまり,変更と一部取消しというのが相互に排他的な概念かどうかということになるのですが,私はオーバーラップする部分が概念的にあってもいいと,あるいは,あると思っております。これは恐らく異論があり得るところだとは思いますが,少なくとも私自身はそう思いますので,結論としては一部取消しにも当たり得ると考えております。   それから,これは形式論ですが,実質的に考えてみますと,これも両様の意見があると思いますけれども,取消しで認められている遡及効というのは減額には不要であるかどうかということですけれども,私は必要というか,あってもいいと思いますので,その実質面から見ても一部取消しになり得ると,とりあえず考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 再三申し訳ありませんが,また第1点について,先ほどの意見を補足させていただきたいのですが。   10万円中7万円しか支払う資力がないというときに,間接強制金を課すということは,本来実現されるべき本体である扶養料に取るべき部分を間接強制金が取っていくような,割り込んでくるような,加わってくるようなことになりますので,それでは何のためにこの制度を設けたのか分からないというようなこともありますので,やはり一部認容というのはおかしいのではないか,こういうように考えております。バランスシート上,右側が増えるわけですから。   本来,間接強制金,つまり割合的な権利ですから,扶養料債権も。そうするとダイリュートされるわけですね,バランスシート上デットが増えるということは,資産に対するデットの持分がダイリュートされるわけですから,そういうことが本当にいいのかどうか,何のためにこの制度を設けたのかというところとかかわってくるのではないでしょうか。 ● これは,多分学者の方から意見を聞いた方がいいと思いますが,どなたか御意見があれば,更に承りたいと思いますが,いかがでございましょうか。 ● 解釈問題ということですから,今後の議論に委ねられることかと思いますし,今のお二人の御発言も伺っていると,もっともだと思います。   ただ,そういう考え方しか成り立ち得ないかなというようにちょっと考えてみますと,とりあえず今伺ったばかりなものですから思いつきで申し訳ないのですけれども,債務者の資力というのも当然上がったり下がったりするわけで,ある時点をとらえて見れば確かに本来債務を支払う資力が十分ではないのに,更に間接強制金という債務を課してどうなるということはおっしゃるとおりだと思いますけれども,一定の時間的経過の中で見ていけば,場合によってはそういう形で債務を更に課して履行を促すということが意味がない場合がおよそないというところまで言い切れるようにも思えないのですね。ですから,恐らく現実には想定されたような場面で余り意味のないことというように裁判所が判断される場合がほとんどだとは思いますけれども,解釈の余地として,およそ一部認容だとか一部取消しだとかいうことを,この間接強制金について考えること自体が合理性を欠くというところまでは言えないのではないかという印象がございますので,一言申し上げます。 ● 私も,余り理論的ではないのかもしれませんけれども,本来10万円の債務名義があって,しかしそれは妥当な額とは思えなくなっていて,7万円が妥当だというケースですね。その場合には,債務者がアクションを起こして債務名義を減額するというのが本来の姿だと思うのですけれども,この場合,直接強制がやりにくいということを前提にして間接強制を入れるわけですから,もしこれを認めなければ,債務者の方は何もしないということになって,結局債務者が利益を得るだけに終わってしまうのではないかという感じがするのですね。ですから,債権者の方から減額の何かアクションを起こすということも可能なのかもしれませんけれども,それをやらせるというのも何かちょっとバランスを失するような感じもしますので,私はここは解釈として一番目の選択肢の方が落ち着きはいいのではないかなと。   理論的にそれをどう根拠付けるのかというのは,もう少し考えさせていただきたいと思うのですが,結論としてはそちらの方がいいのではないかと思います。 ● ついでに,第2,第3の問題も,もしあれば続けて……。 ● それはまた別の機会に。 ● 解釈でどっちでもいけるのでと言われればそのとおりだとは思うのですが,間接強制というのはあくまでも執行の段階で問題になるはずということですね。重要な変更があれば,債務名義に反映させるというのが請求異議訴訟なり何なりでちゃんと調整すべき筋合いのもので,判決裁判所で債務名義ができているわけで,その中身を執行裁判所が減らしてしまうような……。   実質そうですね,10万円について扶養義務がありますよ,毎月払いなさいよと言っていたわけで,それを調べてみたら7万円,それで間接強制も7万円の幅でというようなことになりますと,裁判所の役割分担みたいなものがおかしくなってしまうという気がしますので,先週その議論を聞いたときに,それはないだろうと言ったのですが,やはり執行裁判所,執行としての役割というのをちゃんと考えておかないといけないので,要するに請求異議なりに代わる簡易なもの,手段を別に設けるとかいうのならいいのですが,間接強制のところで調整をつけるというのは筋が違っているのではないかという気がしますので,そこも解釈だからと言われてしまえばそういう解釈を私は多分展開するということになろうかと思います。   あと,問題は,一部弁済すればどうかとかいうようなところがありますが,そこも実質どうしたらいいのだろうかと。間接強制のことを考えれば,そんなもの動くはずがないということになりますし,全体として見直す必要があるときにはあるという形になりますし,最後の点も遡及効があるかないかというようなところが実質論であって,そこもなるべく認めなくてもいいのではないかといったら変更ということになりますし,遡及させたらいいということであれば一部取消しというようなところと議論が結びついているような気がしますので,どっちでもありかというような気がしますので,最初のところをちゃんと押さえておいてもらいたいなと,解釈でごまかすというようなことは余り好ましいことではないのではないかということを感じています。 ● 解釈でごまかすということではないのですけれども,そこまで一部認容ができるとか,あるいは,一部取消しができるというようなことを法律のレベルで書く問題ではないだろうというように考えているわけです。そうすると,これは将来解釈の問題になるだろうということをこちらは考えまして,それならばここで少し御議論を展開していただくと,それは今後記録にも残りますし,今後の運用にも資するところがあるのではないかと,そういう趣旨でございますので,ごまかすつもりはないということだけは申し上げておきたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ● 第1の点について,舌足らずでしたので,ちょっとだけ補足しておきたいと思います。   一部認容を認めるべきではないと申しました趣旨は,一部について資力が足りないと思った場合に,黙っていきなり申立てを却下しろという趣旨ではありませんで,申立人の真意を確かめて,申立人自身が一部取下げをするというようなことで,申立人の方で減額するのであればそれはもちろん構わない。むしろ執行の場面では,判決手続の場面のように合理的意思というものが一義的に明確ではないのではないかと思うので,申立人の意思を確かめてやるべきであって,裁判所が一部認容は当然にできるとかできないとかという話にすべきではないという趣旨です。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 一部認容といいますか,債務額のうちの一部について間接強制を認めるかどうかということが議論されるのは,主として念頭に置かれているのが扶養義務等で継続的な給付だからだと思うのですね。1回限りの債務で,そのうちの一部について弁済の資力があって,こっちはないから間接強制をというのは,余り現実的な想定例ではないのではないかと。   要するに,例えば,月々10万円を扶養料として払いますという約束をしたときに,何らかの事情の変更があって,どうも10万全額は毎月到底払い切れないだろうと,変更の申立てをすれば,当然減額されるだろうと,しかしその手続をとらない間に間接強制の申立てがあったときに,裁判所として10万が無理ならおよそ全部駄目なのか,それとも少なくとも,例えば,5万円とか,そのぐらいであれば毎月払わせるということでおかしくない,そういう場合もあるのではないかと。それであれば,その限度で間接強制を認めるというのは,現実的な必要性としてはあり得るのではないか,そういう判断ではないかと。   ですから,1回限りの債務でいいますと,確かに先ほど○○幹事がおっしゃったようになかなか一部を認めるというのは難しいのかもしれませんが,そういう継続的給付で,しかも将来的に変更されることがあり得る債務が念頭に置かれている。また,金銭債務について支払が難しいものに間接強制金を課すと,過酷な結果になるということから,その資力要件が今回入れられているという,そういう趣旨から,そういった一部についてだけでも認めるということがあり得るかという,そういう現実的な必要性ではないかとは思っております。 ● よく考えていないのですけれども,一部認容というように考えるのもおかしいのではないかと。例えば,動産執行で100万円の債権があっても,動産がたくさんなければ10万円しか現実には執行ができないというので,今の場合も10万円債権があるのだけれども債権者が7万円でよろしいと言った場合とは違って,執行の中身がちょうど差押えに該当するようなものが間接強制の決定だというように考えれば,7万円しか執行できないからそれについて払わなければこれだけというような,そういう決定というのはあり得てもいいので,それはやはり10万円の債権の執行の一つの態様というか,現実に債務者が持っている財産状況に応じた執行と考えていけばいいのであって,何か執行債権が執行としてなされているというように考えなくていいのではないかというような気がするのですが。 ● 分かりました。一部認容という言葉はおかしいけれども,一部について間接強制を課すということはあり得るという,そういうお考えですね。 ● 素人考えですが,養育費の関係ですが,現実に債務名義分の金額が払えないというときに,調停,あるいは,審判でその養育費の減額請求が出て,それに対していろいろとやりますね。その手続の問題と,今論議されているこの間接強制のその部分とは,どういうような関係にあるのか。つまり,手続としてはどちらも当然成り立ち得る手続なのかどうか,そこのところの関係がいま一つ理解できないということが一つ。   もう1点は,今の一部認容,あるいは,一部取消しなどの問題ですが,理論的にはいろいろ考えられるのですが,やはり実際の実務というようなことを考えると,そこまで書き込むような形,つまり法律化するということについては,かなり分かりにくいといいますか,使いにくくなるというような問題もあるのではなかろうかというような感じがいたします。その辺のところ,もし御説明がありましたらよろしくお願いいたします。 ● 例えば,資力がなくなったような場合に間接強制の取消しですとか,あるいは間接強制金の額の減額を申し立てるということと,それから養育費の減額を申し立てるというのは,これは制度としては別のものですから,それぞれ併存的に存在するのだろうと思います。基本的には,例えば,養育費の減額ということになりますれば,これはどこまでさかのぼるかというのはいろいろ議論がありますけれども,例えば,申立ての後のその後の養育費というものを減額していくという場合には,そういうものが使われようかと思います。   ただ,過去に資力がある状態のもとで作られてしまった,そのときの債務名義の内容は,養育費の減額による方法では難しいので,そこは強制執行の,間接強制の金額を変えるとか,あるいは,間接強制を取り消すというような形でそれが問題になる,そういったような関係なのかなと思っております。   第2点の方は,ちょっと私,質問の趣旨を正確に把握していないかもしれませんけれども,取消しの制度がなかなか法律上難しいではないかという,そういう御趣旨。 ● 結論から言うと,要するに解釈に委ねる云々ということがありましたが,私もそういう形になるだろうと思っているわけで,現時点で法律の手当てをするほどのことではないだろうと。むしろそういう法律に書く以上は,かなり書き込まなければいけない部分があるだろうから,そうなってきたときに,実務的には使いにくい法律になるのではなかろうかと,こういうような趣旨のことを言ったのです。 ● 事務当局の方もそのように考えております。先ほど申し上げましたような説明につきましては,今こちらで理論的にどちらかということを決めを打って法律で書くというのはなかなか難しいのではないかと思っておりますので,こういったような本日いろいろお聴きしましたような御意見を踏まえて,運用上どうやっていくのかという,そういうような解釈論ということに委ねるというのが相当ではないかと考えているところでございます。 ● 基本的には解釈によるということで,運用に委ねられるということになるかと思いますけれども,新しい仕組みでございますので,解釈論としては両方あり得るのかと思うのですが,ただ一部認容を許容しているということになりますと,理屈の上では,例えば,10万円の債務がある場合に,10万円払う資力はないけれども,5万円程度は払う資力があるからそういう一部認容もあるということになっていくと,では1万円払う能力があれば,では1万円を払うような支払予告命令を想定するのかということになって,だんだん細かい話になっていくわけですね。そういたしますと,発令の際の審査もそれだけ細かく資力を審査してやるのかということにもなりかねないわけで,そうなるとちょっと執行のシステムとしてはどうかということになろうかと思います。   したがいまして,仮に,理屈あるいは制度として,一部認容を許容しているとしても,そこまで細かな資力の審査を想定しているものではないということは確認の上で,御議論いただければと考えております。 ● 分かりました。   よろしゅうございますでしょうか。大分議論をいただきまして,参考にさせていただくということにさせていただきまして,法律案要綱案といたしましては,今日ここにお示ししましたような,四の部分は「(新設)」というところを新設各当該条文を書き込むというここでの修正がございますけれども,それ以外の部分につきましては,この原案のとおり御承認いただいたということでよろしゅうございますでしょうか。 ● 五も含めてということ。 ● はい。 ● 再度ということで恐縮ですが,最後ということなので……。この間接強制の問題,振り返って一言意見を申し上げさせていただきたいのですが。   私どもとしては,この金銭債務について間接強制を課すことそれ自体,非常に問題があるのではないかという考えで反対をして参ったわけです。仮に,そういったものを導入するとしても,従来の履行命令の制度の中でというように,相当真剣に意見を述べさせていただいたのですけれども,全体としてはそういう点については御賛同が得られなかったというのは大変残念に思っております。   ただ,この議論の中で,私としてはこの間接強制の補充性というのは,むしろ認識していただいたのではないかというように思っております。特に,金銭債務について間接強制を課すことの問題点というのは,かなり具体的に議論していただいたのではないかというように思っております。結局,審議の結果このようになっているわけですけれども,金銭債務についての間接強制をこれ以上,といいますか,これ以外の方向に拡大させるということになりますと,相当大きな問題があるというので,それは是非避けていただきたいということを最後に申し上げさせていただきたいと思います。   どなたかがおっしゃったと思うのですが,間接強制というのは劇薬であると,特に金銭債務について,ですね。こういうようにおっしゃった方もおられたと思うのですが,正に同感で,非常に大きな効果を持っているものですが,最初の1錠,2錠ぐらいで病気が治ればいい制度だと思うのですけれども,それで治らなくて,3錠,4錠と連用していくと,副作用だけが出てしまう。効果は出ないで,大変な,ちょっと大げさかもしれませんが死に至るような,そういう重大な副作用だけが残ってしまうというところが,やはりこの制度の基本的な問題だろうと思うのです。それを何とか防止できるようにということで,事務当局の方でもいろいろお考えいただいて,それは評価しているわけですけれども,本当にこれでそれが防止できるのかということについては,正直なところ私自身まだ大変危ぐを抱いております。上限を設けたらどうかという御提案もしたわけですが,あるいは,遡及についても最初に間接強制を課した時にさかのぼって取り消せるようにした方がいいのではないかということは申し上げたのですけれども,いろいろな御議論があって実現していないわけで,そういうことを考えますと,特にこれは一般市民が一番対象になって,決して悪人だけがこれを,間接強制を受けるわけではなくて,ごく普通の市民生活をしている人が受けるわけで,そういう人が消費者金融に走らなければいけなくなったり,あるいは,それこそヤミ金融に走らなければいけなくなるような人も出てこないとも限らないのです。この間接強制制度によって。そういうことも考えて,やはり運用上は本当に注意深くやっていただきたいと思うのです。   これは,主として家庭裁判所の管轄になると思うのですが,もう少し私,裁判官の裁量がそこで利かせられるような仕組みであればもっといいと思うのですけれども,実際の運用に当たってその点は十分御留意いただきたいというように思いますので,よろしくお願いいたします。 ● それでは,再度確認させていただきたいと思います。   扶養義務等に係るこの間接強制の点につきましては,とにかく金銭債権に対する間接強制を認めるという全く新しい制度であるという一面,しかしまた養育費の履行の確保はしなければいけないという,そういうジレンマでこの部会でもかなり白熱した議論がこれまで展開され,様々な意見を頂戴してきたことは御存じのとおりでございます。   ところが,間接強制につきましては,日本ではそれが今まで余り多く利用されていないという実情のために,研究等がそれほど進んでいないということもありまして,実務の方もまた余り問題の提起がなかったという状況であったかと思います。そこで,この部会の議論では,従来の研究や実務で明らかにされてこなかった様々な問題点が,今,○○委員の御指摘になったようにいろいろ提起されてきたことは事実だろうというように思います。かなりこの間接強制の性格なり使い方について,議論が深まったというように私は感じております。その点を踏まえまして,今日お示ししましたような原案のような形で御了承いただけるかどうかということを再度確認したいと思います。もしそういうことになれば,これに基づきまして法文化をし,そして実際の運用に任せ,その中で新しい研究が生まれ,実務の改善がなされるという方向に進むのかなというように思っておりますけれども,原案のとおり御了承いただくということでよろしゅうございますか。 ● せっかくこういう制度を,例えば,予備差押えからこういうようになったきっかけについて,やはりもう一度家庭裁判所が,庶民がどういう考えをして,何に不満があったか,債権者だけの執行制度ではなくて,債務者のことも聴こうと,審尋などについては,やはり書面ではなくて1回きちんと聴くなどといった形をとって,円満に機能するようにしていただきたい。特に,家庭裁判所にお願いしたいと思います。 ● 運用に対する希望ということでよろしゅうございますね。   それでは,原案のとおり御承認いただいたものとして受け取らせていただきます。   これでは,これで本日の部会資料10につきましてはすべて御審議をいただいたことになります。そこで,この本日の部会資料10の「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案(案)」を修正をした点を含めまして,この部会として御了承いただいたということにさせていただきます。   次に,公示催告手続の見直しにつきまして,御報告をいただきたいと思っております。この部会でも,中間取りまとめの段階で御報告をいただきました公示催告手続の見直しにつきまして,このたび,最終的な取りまとめがあったということでございますので,まず取りまとめに向けて検討されました研究会の座長でいらっしゃいます○○委員から,一言お願いしたいと思います。 ● 今,部会長から紹介がありましたように,今回,このたびお配りしましたような形で公示催告手続の見直しに関する取りまとめをいたしました。これは,既に御紹介があったかと思いますが,学者,実務家で組織しまして,外部で研究会をして検討した成果であります。既にパブリックコメントを出す前提として,中間取りまとめにつきましてこの部会でも報告し,御意見をいただきました。その後,パブリックコメントの結果を踏まえまして,また,もともとの課題である法律の条文全体の現代語化も含めて検討いたしまして,本日お配りしたような形で取りまとめたものでございます。   内容につきましては,法務省の方から御紹介があるかと思います。 ● それでは,○○関係官から御説明をお願いできますでしょうか。 ● それでは,手短に御説明させていただきます。   さきに御報告いたしました公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめについて寄せられました意見を参考に,ただいまお話がございました○○委員を座長とする研究会において検討された結果でございます。   中間取りまとめに対する意見の数は,全部で6件ということで,数としては少ないものではございましたけれども,この制度を利用される方,あるいは,制度の運営にかかわる裁判所などから貴重な御意見をいただいたというように考えております。そういった意見は,中間取りまとめにお示しした考え方,その方針というものをおおむね支持する御意見ばかりであったというように認識しておりまして,今回の取りまとめというのも,中間取りまとめで示した方向をそのまま発展させた内容ということになっております。   大きく公示催告の申立ての段階,その後の審理・裁判の段階,そして不服申立ての段階というように三つに分けておりますのは,中間取りまとめのときと同じでございます。   大きく方向性が決まったという点を特に申し上げますと,これまで公示催告決定の段階,そして除権判決の段階ということで,前半の決定手続と後半の判決手続の二段階に分かれていたものを,初めの段階で公示催告手続開始の決定をもって始まる一本の決定手続に改めたということが一番大きな点でございます。   もう一つ,これは実務上の要望ということでこの部会の席でも御発言がございましたように,公示催告の公告期間を,特に有価証券の公告につきましては,現在の最低6か月というところを,一般の公示催告と同様の2か月というように改めるというものでございます。これによりまして,この公示催告手続のいわば簡素化・迅速化が図られるというようになろうかと思っております。   内容について,細かくもう少し申し上げたいところがございますけれども,後に公示催告手続研究会の報告書というものも作成される予定でございます。その中で,理論的にもかなり詰めた議論がされておりまして,4ページ以下を御覧いただきますと,除権の裁判等につきましても,除権決定,制限の決定,さらには留保の決定といったような形で,現在公示催告手続に関する法律の中ではごく短いタームで表現されているようなものの内容を,理論的にどのようなものかということを検討して,現代語化するとどのようになるかということをお示ししたような内容もございますので,こういった点について後に検討の経緯なども報告書の中で記録化されるのではないかと考えているところでございます。   今回,お示しした内容というのは,今回の見直しに当たりまして現行法の規律を変える部分だけを切り出したものではございますけれども,現在の公示催告手続ニ関スル法律の全体を新たにするということで,次の通常国会に所要の法律案を提出することを目指して,法務省事務当局としても現在作業をしているところでございます。   御報告としては以上でございます。 ● せっかくの機会でございますので,今の公示催告手続の見直しに関する取りまとめにつきまして,御質問等がございましたら伺っておきたいと思います。--よろしゅうございますでしょうか。   この取りまとめをするにつきましては,○○委員を座長といたしまして精力的な検討がなされたということでございます。この席を借りまして,○○委員及び研究会に参加された方々に厚く御礼を申し上げたいと思います。   今の御報告では,研究会の成果が報告書になるということでございますので,多分それをも含めて公示催告手続が利用されるようになることを期待しているところでございます。   この公示催告手続が見直され,現代語化されますと,明治23年の民事訴訟法の中に入っていた片仮名の部分は,全部現代語化されるということでございます。   それでは,最後に時間の関係もあって,この部会では十分審議することができなかった事項につきまして,日本経団連から資料をいただいておりますので,その内容につきまして,これは○○委員から御説明をお願いいたします。 ● お手元に,1月28日付になっておりますが,民事執行法に関してこの2点について,今後の課題として御検討いただければということで挙げさせていただきました。   一つは,夜間執行につきましては,やはり昨今の状況から夜間での執行というニーズが高まっているのではないかなということで,現在,許可制ということでやられているものを,夜9時ぐらいまではできるというような形に変えるということが御検討いただけないかなという点が1点でございます。   これにつきましては,裁判所の方からも柔軟な運用を現在行われているということの御説明をいただきましたので,当面はこの状況で見守りたいと思いますけれども,今後のものとして執行の円滑化,それから,執行の実効性を高めるというような観点から,御検討いただけないかというのが1点目です。   それから2点目が,「事前供託」とここで申し上げておりますが,被告が仮執行宣言付の認容判決が出る場合に,事業用資産に仮執行をかけられるというのは非常に営業活動,事業活動に支障が生じる場合がございます。それを避けるために,仮執行宣言判決が出ることを停止条件として,あらかじめ一定額を供託しておいて,その供託金に対して仮執行をしていただくというようなことで,事業用資産への仮執行を回避できるという仕組みを是非御検討いただきたい。この2点を課題として申し上げたいと思います。 ● ただいまの御要望,御説明でございますけれども,今回の改正作業は大変時間的制約が厳しい中で行われましたので,しかし今日の部会におきまして日本経団連からこのような御要望があったということは,法務省民事局としてもきちんとテイクノートして,将来の課題ということにしていただきたいというように思っております。   それでは,本日の審議事項はすべて終了いたしました。そこで,この後事務当局から,今後のスケジュール等につきまして事務連絡等がございますけれども,その前に部会長として私から一言ごあいさつをさせていただきたいと思います。   本日,御決定をいただきました要綱案は,民事訴訟法関連部分と民事執行法関連部分とが含まれております。このそれぞれが,法制審議会総会からこの部会に付託された諮問事項に応えるものでありますので,そのことをもう一度確認しておきたいと思います。   当部会は,司法制度改革審議会の意見書が公表された直後の,平成13年6月18日の法制審議会総会に法務大臣から諮問された,諮問52号というものに--この52号というのは,    「民事裁判を充実・迅速化し,専門的知見を要する事件への対応を強化するとともに,家庭裁判所,簡易裁判所の機能の充実を図ることにより,民事司法制度をより国民に利用しやすくするという観点から,民事訴訟法及び人事訴訟手続法を改正する必要があると思われるので,それぞれについて要綱を示されたい。」  というのが諮問52号でございますけれども,この52号に基づきまして,当初の名称は「民事・人事訴訟法部会」という名称で発足いたしました。   この民事・人事訴訟法部会は,平成13年9月14日の第1回会議から,平成15年1月24日の第15回会議まで,合計15回,その間,その部会のもとに設けられました人事訴訟法分科会,これは○○大学教授の○○委員に分科会長を務めていただきましたけれども,この分科会は合計14回の会議を経まして,結局二つの法律案要綱を作成いたしました。すなわち,「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案」と,それから「人事訴訟法案要綱案」,この二つを取りまとめまして,昨年の2月5日の法制審議会に報告した次第でございます。   これに基づいて,昨年7月に法律第108号,同109号といたしまして,民事訴訟法の一部改正と人事訴訟法の制定が実現したことは,皆様御存じのとおりでございます。   しかし,これで諮問52号に対しましてすべて応え切ったかといいますと,実は裁判所への申立て手続のオンライン化については,これは主として制度の構築にもう少し時間がかかるという技術的理由から,引き続きこの部会で検討することとされました。   それとは別に,平成13年の文書提出命令に関する民事訴訟法改正の際に,先ほどちょっと読み上げました法律附則第3項として掲げられました,政府はこれこれを検討し,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするという,この課題につきましては,法律の改正を要するか否かを検討するのはこの当部会の任務とされたわけでございます。   以上は民事訴訟法関連部分でございますけれども,民事執行法関連部分につきましては,法務大臣から,平成15年の3月24日の法制審議会総会に新たな諮問が発せられたわけでございます。それが諮問62号でございまして,    「民事執行手続を一層適正かつ迅速なものにすることにより,円滑な権利の実現を図るとの観点から,民事執行制度の見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」  というのが諮問62号でございます。   同日の法制審議会総会は,この諮問についての調査審議も当部会に付託して,そこでやるべきだということを決定した次第でございます。   そこで当部会は,当初「民事・人事訴訟法部会」という名称を使っておりましたけれども,当初の部会との一体性を維持したまま,ただし人事訴訟関係だけの審議のために部会に参加していただきました委員・幹事の一部の交代はお願いいたしましたけれども,部会の名称だけを審議事項に合わせまして「民事訴訟・民事執行法部会」と改めたわけでございます。そして,昨年の4月18日の第1回会議から,民事訴訟法関連部分及び民事執行法関連部分の双方につきまして審議をお願いして参りました。部会での審議は,御承知のとおり委員・幹事の方々の極めて熱心かつ活発な議論に終始したというように思っております。その結果,本日の会議まで合計12回にわたる部会での審議を経て,これだけの内容の改正としては10か月という極めてスピーディーな審議でこのような要綱案を取りまとめることができました。   これをもちまして,本部会は与えられたすべての任務を終了したことになりますので,解散の時期は今日ではなくて,実は法制審議会に報告をしたときで解散の時期だということになりますけれども,実質的には今日これでお役御免になるということでございます。   この間,委員・幹事の皆様方には,民事・人事訴訟法部会から数えれば2年数か月に及びまして当部会の審議に対して賜りました御協力,御尽力に対しまして,部会長として心から御礼申し上げます。   私,部会長を務めるのは初めてでございましたので,今日○○委員はいらっしゃいませんけれども,○○委員の御指導を得ながら,何とか務めることができたのかなと思っております。多々司会の不手際がありまして御迷惑をおかけしたことは,おわびしたいと思います。   それから,これは内輪の話かもしれませんけれども,縁の下の力持ちとしての役割を果たしてこられた○○幹事以下,法務省の事務局スタッフの方々にも,部会長として厚く御礼申し上げたいというように思います。   今回のこの要綱案の取りまとめによりまして,私の見るところ,司法制度改革審議会意見書で提言された改正問題も含めまして,民事手続法分野全般について,当面行うべき見直し作業は,これは法務省で決めることですが,私が見る限りはまあ一応これで終了したのではないかというように思います。恐らく,これまでこの立法のために多大な時間を割かれた皆様方におかれましては,今後はそれぞれの現場に戻られて,この要綱案が法律になった暁には,その定着,運用なり解釈なりに御尽力いただきたいというように願っている次第でございます。   これをもちまして,私のあいさつとさせていただきます。   それでは,最後に○○幹事の方から事務連絡等をお願いしたいと思います。 ● 私の方からも,本日,要綱案をお取りまとめいただきまして,改めて御礼申し上げたいと思います。いろいろ準備の不手際もございましたし,特に最後の方では日程が二転三転いたしまして,大変御迷惑をおかけしまして,大変申し訳なく思っております。短い時間でございましたけれども,御熱心な御審議の結果,要綱案を取りまとめていただきまして,事務当局からも改めて厚く御礼を申し上げたいと思います。   今後のスケジュールでございますけれども,法制審議会の総会は2月10日火曜日に予定されております。そこで要綱が取りまとめられますと,それに基づきまして私どもの方で今通常国会に所要の法律案を提出いたしたいというように思っております。 ● それでは,これをもちまして民事訴訟・民事執行法部会を終了することといたします。どうもありがとうございました。 -了-