法制審議会人名用漢字部会第3回会議 議事録 第1 日 時  平成16年5月13日(木)  自 午後1時30分                        至 午後3時07分 第2 場 所  東京地方検察庁刑事部会議室 第3 議 題  字種の選定について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● それでは,少し遅れていらっしゃる委員・幹事の方もいらっしゃいますけれども,定刻を過ぎましたので,法制審議会人名用漢字部会第3回会議を開会いたします。本日はお忙しいところをありがとうございました。できるだけ効率的に進めていきたいというふうに思っておりますので,御協力よろしくお願いいたします。   最初に,事務局から資料説明をお願いいたします。 ● では,事務局から資料説明をさせていただきます。   本日配布の資料でございますが,お手元の第3回の資料目録を御覧いただきたいと存じます。資料番号15として,「人名用漢字部会(第3回)における審議項目」,資料番号16「漢字データベース-第2版-」を配布させていただいております。   資料番号15につきましては,本日の審議項目でございます。1として,「字種の選定について」,こちらが本日のメインの項目でございます。そして,「字体の選定について」ということも掲げさせていただきました。   資料番号16の「漢字データベース-第2版-」でございますが,これは後ほど説明させていただきます。   あと,資料番号はつけておりませんが,後ほど○○委員の方から若干御説明いただくものとして,漢字の字種が幾つか掲げられているエクセルの表でございますが,一枚物でございます。後ほど○○委員から御説明いただきたいと存じます。   また,資料番号をつけておりませんが,4枚物の「人名用漢字部会資料11「漢字データベース①」の各漢字の扱いについて」,国立国語研究所の○○委員の作成されたペーパーも配布させていただいております。これも後ほど○○委員から御説明をいただく予定でございます。   また,本日も,人名用漢字表としてカラーコピーの2枚物の表と,参照条文1枚物を配布させていただいております。 ● それでは,配布資料に基づきまして,本日の審議に入りたいと思います。   まず,資料番号15「人名用漢字部会(第3回)における審議項目」について事務局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,この審議項目のペーパーのうち,「1 字種の選定について」の項目について御説明申し上げますが,【前回までの審議の結果】として,4点,ここに取りまとめさせていただきました。(1),(2)は,選定に当たっての具体的な対象範囲といいましょうか,土俵の問題でございますけれども,(1),「JIS第1水準の漢字は,原則として「常用平易」である」。(2),「JIS第2水準の漢字については,頻度数調査の結果,要望の有無・程度などを総合的に考慮し,その「常用平易」性を個別に判断する必要がある」。(3),「人名用漢字としてふさわしくないものを外すという考慮も要するのではないか。(4),「以上の検討・判断にあたっては,国民(特に,これから子に名を付けようとする方)から見た分かりやすさという視点が重要」という4点について,審議の結果としてまとめさせていただいております。   続きまして,先ほどの資料説明にございましたうちの漢字データベース,本日配布した方の漢字データベース,第2版でございますが,これについて御説明を申し上げます。   これは,前回の部会でお配りした「漢字データベース①」をベースにしまして,更にその構成を練り直したり,漢字の一部を落としたり--その中から選別したということでございますが--したものでございますが,おおむね前回のデータベースと掲載漢字は同じでございます。   1枚めくっていただきますと,「凡例」というページがございますけれども,ここにつきましては,基本的には前回のデータベースと変わりはございません。ただし,前回留保になっておりました--留保と申しましょうか,宿題をいただいておりました,平成16年のJISの漢字の入れかえに伴って,どういう字がどういう字に変わったのかという部分も加味して,そこはすべて入れ込んでおります。   具体的には,更に次の2枚めくっていただいた欄も御覧いただければ分かりやすいかと存じますけれども,④の欄に平成16年のJIS改正前の字体を入れまして,改正後,つまり現在のJISの漢字の例示字体を③の方に入れたということでございまして,新を③のところに,旧を④のところに並べたという形にさせていただきました。   これに対応しまして,○21と○22の欄も同じように,○21の方が新しい方の出現順位,○22の方が入れかえ前の旧の字体の出現順位ということで並べておりますので,これを比較いただきますと,字体の入れかえに伴って相当順位に変化があったものもあるということが御理解いただけるかと思います。   それから⑲でございますが,これは今の問題とは別の問題でございますけれども,平成16年の第3回調査についても,市町村窓口に寄せられた要望ということで,法務局数をここに書き入れたという欄をもう一つ増やしたものでございます。   変更点は以上でございます。   今の具体的な表の1枚目の1枚前に戻っていただきまして,掲載漢字についての説明のページがございます。   ここを御覧いただきますと,前回のデータベースと比べて構成を変えております。   ⅠはJIS第1水準の漢字の漢字群でございます。これは整理番号1から771まで。これは要するに,現在のJIS第1水準の漢字2,965字のうち,人名用漢字として使うことのできないもの771字をここに順番に並べたということでございます。その順番と申しますのは出現順位の順番でございます。例えば,再びもう1枚めくっていただきまして,頭の1ページでございますけれども,ここが今申し上げた771字の出現順位の高い方のページでございますけれども,一番上にあるのが「岡」という字,2番目が「誰」,3番目が「頁」というようなことで,出現順位も,554番,593番……と非常に高い数字になってございます。これがずっと771まで続いているわけでございますが,43ページまででございまして,そこに771番目がございます。「爺」という字でございます。ここまでが第1水準の固まりでございます。   次に,Ⅱとして,それ以降に続く772から880まで,これはJIS第2水準の漢字のうち,○21の出現順位が2,500番までのものを入れております。これが全部で109字ございます。   2,500番という数字の意味でございますけれども,これは,前回,○○幹事から御説明もいただきました,「漢字出現頻度数調査(2)」という文化庁でおつくりになった資料の中で,そこに取り上げられたすべての漢字8,474字のうち,この出現回数の累積度,すなわち,そこまでの漢字すべての出現回数のうちのどの程度を占めるかという割合が,おおむね99%,それが2,500番ということでございますので,99%の漢字がほとんどを占めている。つまり,2,500番までの漢字をとれば,99%の出現回数がカバーされているという,その線で切ってみたということでございます。2,500番より上位であるものが,ここにありますように,109字,880番までということでございます。   そこまでに入らない,JIS第2水準の漢字のうち,今度は881から1088までの208字,これは要望が複数あったものを取り上げております。あくまで要望が一つだけというものは,ここに入っておりません。これが208文字あるということでございます。   ここまでのⅠ,Ⅱ,Ⅲの三つのカテゴリーで合計1,088文字ございまして,前回のデータベースでは,これに加えて,要望が1個という漢字も入っておりましたので,その分が減っているということでございます。   なお,カテゴリーの四つ目でございますが,これは,以上に含まれないJIS第2水準の漢字の例で,これはサンプルでございますが,18字掲げさせていただいております。   このデータベースのつくりにつきましては以上でございます。   なお,このデータベースは,先ほどの【前回までの審議の結果】,すなわち,(1),(2),第1水準の漢字は原則「常用平易」,第2水準の漢字については個別検討という線に沿ったものとして,僭越でございますが,事務当局の方で,基本的にここにピックアップされた漢字はこの(1),(2)に当たる資格があるのではないかという判断でつくらせていただいたものでございます。   以上でございます。 ● それでは,まず,前回までの審議の結果,これは前回までの審議で皆さんのおおむねの同意を得られたことを事務局側で整理したものでございますが,これは特に御異論はございませんでしょうか。よろしいですね。   特に補足的な御意見も特にはないということで,この四つの基本的な考え方,そして,それに基づいて,漢字データベースの第2版,先ほど御説明のありましたような順で漢字を並べかえたものをつくっていただいたということでございます。   これをめぐっていろいろと御意見をいただきたいと思うのですけれども,○○委員から資料が出ておりますので,これについて少し御説明をいただければと思います。 ● 名前を書いておりませんので分かりにくかったと思います。縦のA4判で表形式になっていまして,「順位は問わず,字義として不適当と判断される漢字」という見出しがあるものは,私が昨日の夕刻に○○関係官あてにメールで送ったものに少し手を加えていただいたものでございます。   前回の審議会の最後のところでちょっと出しゃばって申し上げましたけれども,次回までに,条件をクリアしても人の名前として使うのには少しちゅうちょするという文字があるのではないかというような話がありまして,議論を効率的に進めるためにも,こういうものはいかがなものかというようなものをあらかじめ用意しておくと便利ではないかというような提案を私からさせていただきまして,言い出しっぺであったということもありまして,ざっと検討した結果でありまして,これでもって自分の意見を全部まとめたというわけではもちろんございませんが,手元に届けていただいた資料に基づいて,それを端からずっと追いかけていくという形で,ちょっとこの文字はというようなものを思いつくままに選んだものが,お手元の資料でございます。   それで,私が昨日使った資料は第1版なのです。今日の第2版とは番号が違いますので,お手元の資料の第2版の方の番号で追いかけていただくと,その文字が出てくるわけです。   まず,(賛否両論あるか)と書いてある,2番目の「なまぐさい(腥)」という漢字については,これは私の入力ミスで,本当は一番上の,任侠の「侠」という字にその項目を入れようと思っていたのが,入力ミスです。   それで,「任侠」という概念を善悪でとらえることは,これはかなり難しい気がいたしますので,任侠の「侠」という字は悪い意味だと断定するのはかなり問題かなという気がしますので,これについてはそれほど,是非とも排除したいというような意味は持ちませんが,例えば今日のお手元の第2版では224番,ですから13ページになりますが,「糞」という字があるわけですね。糞尿の「糞」であります。これは,例えば出現頻度数から考えても,JISの水準の問題,字体の問題を考えても,これという大きな問題はない,ほかの条件はクリアしてきそうな字なのですが,その文字が本来持っている意味として,子供の名前に「糞太郎」という名前をつけられるというのは,これはやっぱりちょっとかわいそうかなという気がいたします。   今日いらっしゃっていませんが,もともと○○委員から最初に問題の提起がありまして,胃癌,肺癌の「癌」とかいうような文字を名前に使うのは不適当ではないかという見解が提起されましたもので,私なりに眺めてきた結果として,例えば,今日の表では上から3番目に,聾唖の「唖」,口がきけないという意味の,くちへんに亜細亜の「亜」ですね,と同じように,下から2番目に,耳の聞こえないという,聾唖の「聾」でありますが,「聾」とか「唖」とかという文字は,条件としては,出現頻度数,それからJIS第1水準の問題は恐らくクリアされてくるだろうと思うのですけれども,最初に申しましたことと同じことですが,社会理念上,その文字が使われるシチュエーションが子供の名前という場にはふさわしくないのではないかというようなものを選んできました。   これから先--もちろん網羅したとは申しませんし--例えば,「腥」とか,任侠の「侠」とか,あるいは,前回ちょっと申し上げました,上から5番目の「鴇」,あるいは「膀胱」という字も,これは医学用語ではあるわけですから,お医者さんの名前で泌尿器科の先生の坊ちゃんに「膀子」ちゃんという名前をつけたいというおぼしめしもあるやもしれませんが,その辺はこれから先の判断ですが,文字を拾い上げていく枠を作るときに,出現頻度数と,JISの水準の問題と,字体の問題と,それ以外に社会通念上不適であると認識されるような文字を外していくという項目を立てていけば,これ以外にほかの字もあるでしょうし,ここの中から,これはいけるんじゃないかというのもあるでしょうし,そういう意味でのたたき台として用意をさせていただいたということです。 ● これが除くべき漢字のすべてというのではなくて,作業するサンプルだと思いますけれども,非常に差別的であるとか,あるいは非常に悪い意味を持っているとか,幾つかの観点から選ばれていると思うのですけれども,特に何か御質問等がございましたら,お出しいただきたいと思います。 ● 誠にもっともだと思うものばかりなのですが,一つだけ,○○委員のおつけになられた番号で701番(勠)についてなのですが。 ● これは,右側が「戈」のつくりのやつですね。このデータベースで「戈」のやつが出てくるんですよね。 ● 「力」のものですね。 ● だけですか。 ● そうなんです。 ● いずれにしましても,これは字体の問題でありまして,殺すとか滅ぼすという,殺りくの「りく」という概念をあらわす異体字が二通り(戮・勠)でしょうか,あるにせよ,その文字概念をあらわす文字は,この場合は不適だろうと思います。   ただ,「ころす(殺)」という字は常用漢字に入っていますので,常用漢字に入っている文字が名前に使えるということはもう大前提になっていますので,「殺」はいいけれども「勠」はだめだというのは,何らかの理論的なバックボーンが必要かなという気はするのですけれども。   この段階では,字体についてはまだ全然,例えば任侠の「侠」という字だって正体字じゃないですから。その問題はここでは全然触れておりません。 ● 私も,集計しているときにこの字を見てあっと思ったのですが,一応念のために辞書を見てみたところ,力を合わせるというような意味が書かれておりまして,ただ,○○委員がおっしゃるように,つくりが「戈」になっているものの異体字でもあるというようなことが書かれていて,おやっと思ったのですが。 ● 別字だとする説もあるんですか。 ● たまたま,今,机上に「漢語林」がありましたので,それで見る限りなのですが,力を合わせるという意味の「勠」という字であるということです。ただし,○○委員がおっしゃるように,殺戮の「戮」の異体字というマークもついていまして。 ● ああ,なるほど。 ● 漢語辞典によると,殺戮の「戮」そのものにも意味があるんですよ。   漢字の意味まで入っていくと大変という気がいたしますが。 ● ちょっと気になったというだけです。 ● ちょっとそこは考えもしませんでした。 ● ○○委員とはちょっと逆のことを言うかもわかりませんが,私は,基本的に名前というのは平仮名とか片仮名も使えますから,ここではその議論は広くとるべきだという持論を持っているのです。特に漢字の場合は,私は専門家じゃないですけれども,幾つかの組み合わせができるのですね。よく,「癌」というのがどうかと。一字ではですよ。じゃあ,例えば「癌克服」という名前をつけたときにどうかとなるので,私は,この問題は非常に難しいと思います。ただ,明らかに差別になるねというようなのはやめた方がいいけれども,一字をもってこれが不快感を与えるとかという,そういう絞り方というのはなかなか難しいんじゃないかと思います。二つ三つを組み合わせることができますから。でも,これは組み合わせると逆になる場合もあるのですね。ですから,そういう意味では,できるだけやわらかくとっていただいた方がいいと思います。   私はこだわりませんけれども,どうも名前というのは,「癌克服」といったら,例えば自分の系列がそうだから子供にはそういう研究をしてもらいたいというので名前をつける場合もあるのですね。そうすると,なかなか判断が難しいけれども,差別というふうにとらえ得るようなものはやめた方がいいなというのがぎりぎりの考え方じゃないかなという感じを持っているのです。まあ,こだわりませんけれども,意見だけ申し上げておきます。 ● ただ,最終的にでき上がりがどういうふうになるか,個人的な今の私なりの感覚なのですけれども,先ほど,殺戮の話がありましたけれども,常用漢字については,常用漢字は使っていいと言っているだけで,「殺」という字を名前に使っていいですよという提示をしているわけではないのですね。ところが,今度のやつは,それ以外になると,JIS第1水準というのは法律上の枠組みでも何でもありませんから,今度は,この字は名前に使っていいですよというふうに特に一字一字を示してお薦めすることになるのですね。そのときに,常用漢字を原則にしているのに,その例外として,これは名前のために使っていいですというふうに積極的に示していくと,ここの委員の人たちはこれを名前につけろというふうにお薦めしているのかということになる。そこで,「殺」の場合と,「勠」の場合とでは全然違う原則で国民に提示するということで,そういう問題がありますので,多少,こういうものを使えと言っているということを決めた委員会の委員たちなのかというふうに言われるのが嫌だというふうに考えるときには,少し,どの字はいいという検討をしなければいけないのかもしれません。   今,ここでは,JISから外すという審議の仕方をしていますけれども,多分,表に出るときは,これは使っていい字ですという方向でしか出せないような気がしていますので,その辺も加味してお考えいただいた方がいいかなという,これは感触であります。 ● 差別につながり得るようなものはという御発言がありましたけれども,○○幹事から事前に御意見をいただいていますので,補足していただければと思いますが。 ● 私も火曜日に,遅くなりましたが,若干の意見ということで,ファクシミリでしたので,今日は資料の形にはなっていないのですけれども,まず人名用漢字を常用平易な文字とするということでございますから,ふさわしくない字についてどんなものが考え得るかという目安のような形で示すということで,私は,最初から排除できないのではないかというふうに考えました。やはり,臨界点なり,どこがその区別の境かというのは非常に難しいので,やはり目安として示すのかなということで御意見を申し上げました。   具体的には,その目安を選ぶときの基準として,今お話に出た,差別につながるものですとかタブーに当たるもの,長い時間をかけてそういうものだというふうな意識が定着しているものについてはやはり外すというか,ふさわしくないというふうな扱いをしてはどうかというふうに思いまして,今,○○委員から示された中で言うと,五つ挙げさせていただいたのですが,第2版でいうと,623,745,192,224,569,「聾」「唖」とか,「姦」「淫」とか,「糞」とか,その辺を挙げさせていただいたというようなことがございます。   今の○○委員からの御発言で,出るものについては積極的に使っていこうというふうな,そういうふうにこれからの議論でなるのかもしれないのですが,私も,ふさわしくない字をとらえるときに,現在の人名用漢字表がまずベースだろうと思いましたので,そうすると,病気に関するものとかは入っていますから,その辺は,一つ一つ見ていったときには,ここまで絶対使えないよと言えないのではないのかなということも更に思いましたのと,もう一つ,やはり熟語としての意味ということもありますので,漢字部会という,字そのものということもあるのですけれども,日本の字の場合は,字自体が持っている意味がありますので,それも熟語として,あるいは一字としてとらえるということも必要かなと思いました。 ● ほかにも,何かこの点について,こういう形で作業をしなければいけないという前提が決まっているわけではないのですが,幾つかの御意見が出てきておりますので,関連する御意見がございましたら。 ● 今おっしゃっていた○○委員の御発言で,私どもも○○委員と雑談していたのですが,私もたしかここに入れたと思いますが,淫乱の「淫」という字を否定詞を伴って名前にする可能性はあるわけですね。「不淫」という名前にすれば。そうすると,みだらではないという肯定形の名前になるから人名としてはふさわしいじゃないかというような理屈も当然成り立つわけです。したがって,「淫」というのを外してしまうというのは,否定詞を伴うというような使い方を頭からつぶしてしまうということになりますので,ここに挙げられてはいますけれども,否定詞を伴えば名前としてはいけるじゃないかという考え方もあります。先ほどの「癌克服」なんかも同じようなことなのですが。   一つは,今御発言がありました差別のこととか,それから,例えば「糞」という字は,どう考えたって,否定詞を伴ったって,きれいな意味にはならないという,最低限これだけの条件の文字,一つは差別,あるいは露骨に不快感を伴うイメージというようなものの最低限の条件を設けて,それをどの辺のところで条件をつくっていくかということが確定すれば,おのずから拾われる字と捨てられる字というのは決まってくるんじゃないかという気がいたします。 ● これは,今日の部会資料15でいうと,【前回までの審議の結果】の(3)の具体的な作業ということなのですけれども,同時に(4)の御発言も前回あって,○○委員,○○委員からは,どちらかというと,国民のごく普通の人たちの観点から見た漢字の選び方というのも必要なんじゃないかというふうなことがあったのですけれども,何か○○委員の方から御意見ございますか。それに関連してということじゃなくても,自由な立場からで結構なのですけれども。 ● 確かに,子供につける名前でこういった悪い意味を含む漢字を使う人はいないと思うのですけれども,ただ,若い人で,今,若い人ゆえの独特のセンスってありますよね。何かそういうので私たちが思っていもいなかったような可能性というのはどこかに残しておかなければいけないのかなと思います。ただ,変わった名前が物すごく増えていますので,その辺もとても,可能性を残したゆえに変な可能性も残してしまうというジレンマがあると思うのですけれども。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 今,どういう漢字を外すかというか,やはりちょっと考えなきゃいけないなと思うのは,淫乱の「淫」だとか,「癌」だとか,こういうのは明らかにだれが見てもよくない意味だなということです。あえてそれをつけるかどうかということはまた別の問題ですけれども,もう一つやはり我々が意識しておかなければいけないのは,今の○○委員のペーパーで申し上げると,2番目に「腥」というのがある。これは実は○○委員の今日のプリントにも出てくるのですけれども,これを,生臭いというのを知らないで,「月」と「星」が並んでいると,非常にロマンチックな,月と星で夜空のようなイメージでつける人が例えばいたとして,そのときに,これは実は音は「セイ」で,生臭いという字なんだよと言ったときに,それこそ余計なお世話だと,おれはこれはもう月と星なんだと,だからそんなこと別に言われなくたっていいんだというような,その手のものが結構あると思うのです。   例えば,四つ目の「春」に「心」(惷)ですね。これなんかも,春のようなうららかな心を持ったとか,一見,字面で判断するということがすごく多いと思うのですね。実際は,「惷」だと,うごめくとか,乱れるとか,意味として余りよくないので○○委員は挙げていらっしゃるわけですけれども,そういうふうに,だれが見てもよくないというような物のとらえ方と同時に,非常に自分なりの解釈が入りやすい。月と星が並んでいるとか,春の心のようだとか。例えば,この前話題になっていた,にんべんに「愛」という字がある。あれも意味は決してよくない。だけれども,にんべんに「愛」ということで,人を愛すとか,人に愛されるみたいな,そういうのでつけるんだからいいんだみたいな,そういう部分の範囲の漢字についても我々としてどう考えていくのかというのをここで固めておかないと,なかなか,やはり外に出したときに,「月」に「星」が生臭いというけれども,生臭いという意味があろうがなかろうがそんなの関係ないんだと,自分にとっては月と星なんだというような人がいたときにどう考えるのかとかですね。今,○○委員もおっしゃったように,今の世相からすると,そういうことを主張するような方が非常に多いような気もするのです。ですから,そういうことについてどう考えるのかという,その観点も大切なのかなというふうに思いました。 ● 窓口でも指導されるのですか。 ● それはしません。「悪魔ちゃん」事件はあくまで例外で,基本的には名前というのは親が自分で選ぶわけですから。 ● じゃあ,「月」と「星」で一見きれいな名前に見えますけれども,本当はこういう意味があるんですよとか,そういうことは一切言えないのですか。 ● それは正に余計なお世話だと言われてしまいますから。 ● ○○委員はどう思う。 ● 言わないですね。   今は当然言わないのですけれども,どんな人が来ても,やはり字としてですので。それで,読み方は,今,どうでも読めるような状況になっていますから,そういう意味では,これとこれで字と読みが合わないというような話にもならないですし,字がきちんと今の規格に合っていれば,それで受け付けるという形です。 ● そういう意味では,名前をつけるのは親の自由ですから,自由の範囲をできるだけ広くというのも,それは親のレベルになるとそうなのですけれども,こういうのを名前につけていい字の中に選んだあなたたちはどういうことを考えているんですかというのはここの責任になるのですね。   あと,○○委員がおいでになりましたら,この○○委員のペーパーの御説明をいただこうと思いますので,それまでの間にもうちょっと御意見を出していただければと思いますが。 ● 今,○○幹事の方からありました,例えば「月」と「星」で新しい意味を独自に解釈するというものが,歴史的に古いものであれば国訓なんていうふうに命名されたりする場合があるわけですが,○○委員の挙げられた資料で,膀胱の「胱」も,恐らく「月」と「光」というふうに解した方がいたのではないかというふうに推測されてまいります。そういう俗な解釈,正に俗解であるわけですが,日本語学なんかだと,そういうものを国訓といってある位置を与えている場合があって,漢和辞典なんかにも採用されることがあるわけです。そこのところの観点というのは,○○幹事がおっしゃるように,これからよく煮詰めないと難しいところかと思いました。 ● 御参考までに,データベースの第1版の方の整理番号を御覧いただきますと,59,130,136というあたりは,法務局の要望数がいずれも5以上のものでございまして,かなりの要望が出ているということでございます。234が3局ですね。その下はそれより少ないわけですけれども。聾唖の「唖」につきましても5局の要望があります。御参考までに。 ● 膀胱の「膀」も「胱」もそれぞれ要望は出ているのですね。 ● その要望というものの中身をあげつらうことはできないのでしょうか。大変失礼な言い方かもしれませんが,取り上げるに足る要望なのか,門前払いにしても構わない要望なのかというのは議論してはいけないことなんでしょうか。例えば,月光仮面のファンだから子供の名前に膀胱の「胱」をつけたいというような次元で要望があれば,それをまともに議論するのはちょっと私はためらってしまいますが,そういうことは言っちゃいけないことなんでしょうか。 ● それは,どういう理由で子供の名前をつけたいかというのは,正にその人の生き方にもかかわる話ですから,月光仮面が好きでつけたいという人がいれば,それはそれで,要望としては中国の古典から引いてきたのと何ら差はないのではないでしょうか。その字を認めるか認めないかというのはここで判断するということにはなると思いますが,どういう理由で子供のためにこの名前を望むかというのは,その理由まで立ち入るというのはどうかなと思います。 ● 分かりました。 ● それから,こういうものの要望についての判断で難しいのは,多くの人は,使えないということであったらそれ以上に頑張らないで,違う名前を考えてしまうのですね。だから,仮に今考えているような字を使えるようになったらどうかというところで要望をとれば,多分,今まで要望が全然出ていないものがたくさん出てくる。今のような状況の中でなお使いたいというふうに頑張る人はそう一般的に存在しているわけではありませんから,その辺のところは,やはり要望というものの価値の評価の仕方は非常に難しい要素を含んでいるのだろうと思います。 ● それと,要望に出てくる字というのは比較的珍しい字が多いのですが,そういう字を考えるというのは,それなりのこだわりがあるから要望まで持ってくるんだろうと思いますね。 ● 任侠の「侠」に要望があるというのは,これはある程度理解はできるんですけれどね。 ● ○○委員からは非常に詳しい御提案があるのですけれども,JIS第1水準とか,第2水準の中で非常に要望の強いもの,こういうのを一切無審査で全部入れるということはなかなか難しいかもしれませんので,いずれにしろ少し具体的に,例えば外すべきものは外していくとこういう姿になるという作業をやって,その結果を提示していただいた方が議論はしやすいのかなというふうに思いますが,ここで一字一字,何千もあるものをやっているわけにはいきませんので,いかがでしょうか,少し御専門の先生方でワーキンググループ的なものをつくっていただいて,それでたたき台をお出しいただくというふうな作業の進め方にしてはいかがかと思いますけれども。   この点については,余り独断で出しても問題ですけれども,事務局の方からも御見解をいただきたいと思いますが。 ● 実は,事務局としてもそういうふうにお願いできればと思っておりまして,恐縮ですが幹事の方々にはワーキンググループに御参加いただくとして,あとは委員の先生方で御専門の先生にお入りいただいて,それで集中的に作業をしてみて,どういう姿になったかを御覧いただいた上でまた御議論いただければ,進展もあろうかなと考えております。 ● それでは,おおむねそういう方向で,御専門の先生方に具体的検討をお願いするということですね。   ただ,これは,御専門の先生方は御専門の先生方でまた非常にうんちくを傾けてと思うのですけれども,名前をつけるのは,そういう意味では逆に素人ですから,この場で,むしろ御専門じゃない方の方から一般的な意見をお出しいただいて,それを踏まえて専門の先生方で詳細な御検討をいただければと思います。   そういう意味で,○○委員,まだ何か御意見ございましたら,お出しいただいて。 ● もう何回も申し上げていますけれども,なかなかこだわる人もいますし,やっぱり名前というのは広い意味では命名権みたいにとってやった方がいいから,非常にやわらかく広げてやった方がいいなと思っております。ただ,何を絶対的にだめかというのは,私も専門じゃないから分かりませんけれども,漢字というのは幾つかで組み合わせることもあるのでね。   それから,もちろんこの委員会の議論の対象ではないのですけれども,実は平仮名と片仮名というのがありまして,それはもう,日本語の言葉じゃないのを出してくるのがたくさんあるんですね。だから,それを左手に置きながら考えなさいという意味ではないのですけれども,できるだけ広く考えてやった方がいいのではないかという思いですけれども,絶対的にだめなものを論理構成していただければそれでよろしいですから,具体的につくっていただいた方がかえって議論が進むのではないかというふうに思っています。 ● 実務的なことを言いますと,窓口に来たときに断る立場で,なぜ使えないという話になりますので,外すべき字を選ぶときの基準などが多分ある,皆さんの意見に出てくると思いますから,それをある程度グルーピングなり何なりで,こういうふうにして外すのだという,そういうところまで視野に入れながらやっていただけると有り難いかなと思います。 ● 作業グループをおつくりになるというのは私も賛成です。是非そういう形でたたき台をつくっていただきたいと思いますが,ここでちょっと,ワーキンググループに必ずしも入らない先生方もいらっしゃると思いますので,例えばこのデータベースの第2版の1ページ目,これは頻度順になっていますので,非常に頻度が高いわけですね。そういう意味では正に常用されている字だと言えるわけですけれども,その中で,例えばですけれども,2番目に「誰」という字がある。名前に「誰」とつけるのは,ちょっと何か笑えるかもしれませんけれども,何となく,こういうのはどうなのかなとか,それから,5番目には腫瘍の「腫」というのがあったりとか,2ページ目の31番に,音で「コウ」,「尻」という字ですね。それから,その少し上に「顎」という字があったりとか,この「尻」とか「顎」とか,こういう普通だったら名前に使わない,「誰」という字もまさか使わないと思いますけれども,こういうふうに普通だったら使わないだろうなと思うような字についてどういうふうに考えるかというあたりは,これはワーキンググループで作業をしていただくときの非常に基本的な考え方になると思うのです。ですから,○○委員が何度もおっしゃっているように,なるべく広くというところを非常に大事に考えてたたき台をつくっていくのか,あるいは,今のような,例えば「誰」だとか「尻」だとか,余りつけそうもないようなものについてはどう考えたらいいのかというのは,この辺である程度先生方の御意見を伺っておいた方が,多分,作業グループの作業に非常に役立つのではないかなと思いますので。 ● ○○委員,何か御意見ございますか。 ● 私としては,新聞・放送も含めまして,名前をつけるということは親のこだわりがあるかもしれないけれども,実際はそれは子供が使うわけですね。子供は,その親のつけたいろいろな思いというものはもちろん伝えられているかもしれないけれども,伝えられていない場合もあるし,実際,親がこういう気持ちでつけたといっても,今,○○委員やその他挙げられたような,一般的に名前にふさわしくないような名前をつけられているような場合は,多分,今度は子供が嫌がるのではないかと思います。   それから,名前の字そのものは,本人が書く場合がもちろんありますけれども,いろいろなニュースとか報道とか,そういうところで使われるわけですから,非常に簡単に出てこないような難しい字を使うということは社会的にも余り感心しないし,それから,画数が多い字というのは,例えば小学校に入ったときに試験なんかやるとき,不利ですよね。自分の名前はなるべく簡単な方が子供はいいと思うので,やはり使う立場ですね,親だけの気持ちじゃなくて,実際に社会的存在になっていく子供の名前として子供が使うのであり,また社会が使うのであるということを考える必要があると思います。   それから,戸籍法の常用平易な文字を用いなければならないという戸籍法50条を改正しないで,この前提でいくとすれば,やはりある程度易しいとだれもが感じられるような字の範囲にとどめたいと私は思います。   ということは,余り数は増やしたくないということです。 ● ○○委員,おいでになる前に,具体的な字を選定する作業を進めていく上で,作業グループをつくって具体的な作業をしていただいた方がいいんじゃないかというふうにおおむね話がまとまりつつあるのです。   ただ,その前提として,作業グループは非常に専門的な先生たちにお願いせざるを得ないので,その作業を進めていく上で基本的にどういう考え方で進めていったらいいかという点についての各委員の御意見を今お伺いしていたところで,○○委員からは非常に詳しいペーパーも出していただいていますので,○○委員に御説明いただいて,それから○○委員にと思いますが。 ● プリントの説明でよろしいでしょうか。 ● はい。 ● 遅れて申し訳ありません。   今日はプリントを作成いたしました。これは,この前の最後のときに,私はゴールデンウィークもあるから何らかのことをしたいということで,実は,私のこのデータベース①はバツをつけた漢字がざぁっとあるのですけれども,そういうのをやっていたけれども,どうも,こうやって,これはよくないから落とせというのではなくて,考え方を変えた方がいいかなと思って,プリントを作成いたしました。ちょっと時間をとって説明させていただこうと思います。   今の○○委員と同じような発想でありますが,まず,1の1行目に,「常用平易」とあります。これをやっぱり私も根本方針といたしております。   その上で,法務局数,幾つの希望が局に届いているかということ,出現順位,それから3番目として,それぞれの漢字の持つ音・字画・字義,この三つの見方を取り入れる必要があるということで,以下,そのことを説明いたしました。   まず,(1)としては法務局数でありますが,何といっても,この50局の中で寄せられた数というのは,これは私どもは無視できないということを思いました。そこで,どこまでおろしていくことができるかということを後で考えるべきだと思っているところであります。   (2)として,出現順位ということ。これは文化庁が表外漢字字体表を作成するときに資料として作成されたもので,今日は○○幹事がおいでになっていますが,○○幹事が中心になって作成されたものであって,その出現順位というのもやはり無視できないということをここに書いてあります。   ただ,表外漢字字体表のときに参考にした凸版印刷の資料が,8,474字という膨大な数になっているわけです。その8,400というのを膨大とここに書いてあるのですけれども,それは以下,①から⑦までのことを根拠といたしております。   ①が,カナモジカイというのが戦前から大変大きな力を持っているわけですけれども,1941年に「新聞ノ漢字使用度数シラベ」という立派な冊子を作成しております。昭和10年の5紙の漢字を何年間かかけて調査した資料でありまして,44万7,575字という延べで,異なりを3,542字という形に整理しております。ですから,この昭和10年段階は,新聞に,振り仮名つきではあっても,3,500字ほどが使用されているということが分かりました。   ②が,戦後の「婦人雑誌の用語」というところでは,「主婦之友」,「婦人雑誌」という二つを使いまして,一方が3,121,もう一つが2,974字という形になっております。これはもう当用漢字になっているところであります。   ③が,「総合雑誌の用字」というところでは,延べが11万7,000から,異なりとして2,781字を整理しております。   ④として,1963年ですけれども,「現代雑誌九十種の用語用字」というところでは,42万というところから,異なりで3,500という数字を整理しております。   ⑤として,「現代新聞の漢字」というのでは,1976年に調査したものでありますけれども,99万から3,213字を整理しているということです。   ⑥が,これが,今新しく,「漢字出現頻度調査(2)」,一番上の表外漢字字体表を作る上で作成されたものでありますが,その最後のところに,「読売新聞調査」というのが入っております。1999年であります。これは,2,500万字の中から4,546字を整理しております。   ⑦が,「現代雑誌の漢字調査」でありまして,これは,今日御出席の○○幹事が中心になったものでありますが,延べ56万というところから,3,586字を整理しているということです。   こういうように数を見ておりますと,⑥がちょっと多いのですけれども,せいぜい3,500前後ではないかというふうに思ったのであります。   ⑥がなぜ多いかということですけれども,分布が多いこともあるわけですけれども,最近は中国の固有名詞とか古文献などの紹介もあるし,それから評論家などがたくさんいろいろと使うこともあるということで増えている。そこで,延べの99.99%の箇所で切ってみたわけですが,すると3,600ということになった。延べの残りの0.01%のところに1,000字入って使われているということで,非常に使用頻度が少ないということがお分かりだと思います。そういう次第で,私は,文化庁の表外漢字字体表が3,200というところで切ったというのは,やっぱりこれは適切であったと思っています。今日は,それを3,500と,300ほど多く見積もっているわけですけれども,これは,3,200ではちょっとどうかなと思ったので増やしたのであります。   次に(3)でありますけれども,市町村窓口に寄せられている要望等を検討しますと,一番先に音が選択され,次に字画が考慮に入れられ,それから字義というようになっている。これはどうも,優先順位ということで字義が一番軽い扱いになっているということであります。   まず,①の音でありますけれども,例えば姓名判断で言うと,音に基づく姓名判断と画数に基づく姓名判断があって,どうも音の方が一番先に考えられるようであります。例えば,漢字データベース①の300のところに,「揶」という,てへんのついた「耶」でありますが,これなどは正にそれじゃないかなと思ったのであります。人名漢字にてへんをつけているのですけれども,これは熟語の揶揄というときの「揶」で,からかうとか,あざける意味であります。そういう意味よりも,てへんがあって3画ふえたということの方を要望者は考えているというふうになる。そうすると,こういう,てへんに人名用漢字の「耶」がついている字をもし使ったとすると,これはやはり本人が大人になるまでの間に何度か,からかいとか質問の対象になるのではないかというようなことを私は心配するのであります。   ②が漢字の画数で,この画数というのも,何か考え方でいろいろあるわけですけれども,姓名判断がどうも考えられているようであります。   ③に挙げられているのが字義でありますけれども,この前も話がありましたけれども,にんべんに「愛」という字があります。これは○○幹事から教えてもらったのですけれども,人を愛すという意味で世俗的に解釈している,字面で解釈しているということのようです。それから,2枚目の一番上に,「春」の「心」(惷)というのがありますが,春らしい,おっとりとしたうららかな心というような,やはり文字面の解釈であるということです。実際の「惷」というのは違う意味であります。307番に,「莠」という,くさかんむりに「秀」という字がありますけれども,これも,秀でた草という意味で多分理解していると思うのですけれども,実際は,稲に害をなす雑草というところから,比喩的に善に害をなすものという意味なんだそうです。そういう解釈でなくて,個人的な字の構成からの理解というところに来ているのではないか。これは,本人が成長していく上で,何でこんな字つけたのということになるのではないかと私は心配するわけであります。   そこで,2のところ,「以下,「漢字データベース①」の各漢字の取扱いについて……。」というところで,(1)で法務局数が3以上の漢字については原則として認める方向で考えるとあります。しかし,3以上というところでも問題になるのがあるのであります。   例1として,130のところで,にくづきに「星」(腥)というのがあって,生臭いという意味があるのですけれども,これも私は○○幹事に教えてもらったのですけれども,夜空に輝く月と星ということで,大変ロマンチックな美しい夜空が出てくる,こういうところで「腥」という漢字が選ばれているというのですけれども,漢字辞典を引くと悲鳴を上げることになるのではないかと思います。   例2として,「口」に希望の「希」(唏)というのもあります。そういうことで,字義の上で問題になるものは,3以上の場合でもやっぱり考えたいというふうに思います。しかし,原則を重視することは必要です。   次に,法務局数が2の漢字については,やはり意味の面での配慮というのを考えていきたいというふうに思っております。ここにまた出てくるのが,②として,常用漢字の「実」のう正字の「實」があります。年配の人には「みのる」という名前でよく出てくる。それから,番号,号令の「号」の正字の「號」でありますが,こういうのを認めていくと, 「まなぶ(学)」とか「たのしむ(楽)」というときの,そういう正字(學・樂)がやっぱりだんだんと要望が強くなってくるのではないか。こういうのをどうするかということは考えたいというふうに思うのであります。   (3),法務局数が1の漢字については原則として認めない方向で進めるとあります。ただし,その中でも,これはという漢字に限ってはすくい上げなければならないだろうと思っているわけであります。   次に,3で,⑲の「出現順位」を基準に立てて考えていく場合でありますけれども,3,500よりもよい数字のものは,もうそのまま採用するというふうになるわけであります。   それから,3,500を超える漢字の場合はどうするかですけれども,例えば動植物名などについては,これは戦後,当用漢字を制定したときに,動植物名等については片仮名表記をしようということがありました。したがって新聞などは動植物名については仮名表記になっているために,漢字の出現順位というのは必ずしも高くないということがありますから,これは別の配慮をしなければいけないのかと思っているわけです。結局,常用平易ということを前提でこれも進めていくということであります。   4のところに,これは僭越ですけれども,こんなことを考えたのであります。   (1)が,先ほど申したように,私の今日持ってきております漢字データベースは,バツ,バツ……とこうつけているわけですが,これをお送りしませんでした。というのは,これはよくない,これはよくないという形で理由をつけていくことは,考え方として余りよくないから,(1)に,一定の枠,例えば何百という枠を念頭に置いた上で,これは入れよう,入れなければならないというよい漢字をすくい上げる方向で検討するようにしたらどうかと思ったのであります。   (2)が,その一定の枠の中にどういう漢字を入れるかについては,この会ではなかなか難しいので,短期間で内容をまとめるためにワーキンググループを設けることはどうか。それで私も協力したいと思います。また,昨日○○委員にも電話して,先生,一緒にやりませんかという話も実はしたのであります。そういう提案であります。 ● 今の○○委員の御発言に対しまして,何か御質問あるいは御意見等ございましたら,お出しください。 ● 直接的に○○委員のお話に触れるかどうかは微妙なところなのですが,専門的にやっている人と専門ではない方という分け方は,例えば私とか○○幹事とか○○委員とか○○幹事というのは,これまで漢字という文字そのものについての研究なり調査なりということをやってきてはおりますけれども,人の名前の専門ではないわけですね。したがって,個別のこの文字についてはどういう意味ですかとか聞かれたら,それはこちらは一定の調べるシステムを知っていますので,お答えはある程度できますけれども,まず全体の方針というのはこの会でしか決められないでしょうから,これこれこういう方針で進むという大枠を決めていただかない限り,ワーキンググループをつくったとしても何にもできないという気がするのです。ワーキンググループを作るかどうかというのは,今日の議論の議題ではあるのでしょうけれども,むしろ,例えば○○委員からは広目に,広目にという御提案がありますし,今の○○委員の御発言でしたら,ある程度絞り込もうというような趣旨も多分あるだろうと思いますので,その辺の方針を大枠でも決めていくということからやっていかないと,議論はいつまでたっても進まないんじゃないかという気がいたします。 ● おっしゃるとおりだと思います。   本日の最初に出てきた【前回までの審議の結果】というのも,これも一つの大枠の基本的な考え方ですけれども,これ自体をどう読み込むかでまだ更に,なるべく幅広にとらえる読み方もできれば,狭目にとらえるという読み方も可能ですし。○○委員は,できるだけ自由度を高くということですけれども,○○委員は,やはり名前はある意味での社会性もあるものだから親の好みだけではいかないだろう,常用平易でなじみのある字というのを基準に据えなければいけないというふうな,こういう御見解だったと思います。 ● 私も,やっぱり常用平易ということをどう考えるかということで,場合によっては,短期間でというときでも,例えば高校3年生ぐらいに対して,この漢字を読めますか,意味は分かりますかというような,そういう調査というのも必要かなというふうに思っているのです。今の高校生が3分の1も読めないというようなものは,これはもう常用平易とは言えないのですね。書けるかどうかは別としてですよ。 ● 常用漢字でも使えない字が出てきてしまうんじゃないかという気がしますけれどね,今の高校生でやると。 ● 読めるというのはまた別だと思うのですね。目にしているかどうかということで。それで,これが読めないとなると,常用平易というところで難しい。   そこで,私は,最後の4のところの(1)に,「一定の枠を念頭に置いた上で」というときのその「一定の枠」というところはここでほぼ決めていただいて,その上で,例えば,ここがこれぐらいだということを決めていただいたら,あとは何かいくような感じは持っております。 ● ○○委員がおっしゃる枠というのは,端的に言えば数字ですか。 ● 数字です。 ● 何字ぐらいという目安。 ● はい。ほぼ何字ぐらいという。 ● 確かに,今回ふやす人名用漢字が大体何字ぐらいかということが分からないと,無制限,ここに挙げてあるような第1水準のほとんど,あるいはそれにプラス第2水準ということになりますと,私どもの考えている数より非常に多いので。私は,多くても五,六百字ぐらいにとどめたいと思うのですが。まあ,○○委員のようにほとんど無制限という方もいらっしゃるようですから。やはりある程度,制限方式ということになれば,数は限らなければいけない。   その場合の絞る前提として,○○委員もおっしゃったのですけれども,私も,漢字の意味が一般的に,普通の漢和辞典なり国語辞書を調べれば分かるような悪い意味であれば,そういうものは名前としてはふさわしくないのではないかと思います。そうすると,それを落とすことになると思うのです。例えば,「月」と「星」ですばらしいと親が言っても,子供が大きくなって自分で調べたときに,うちのおやじは結局物を知らなかったんじゃないか,辞書も引いてくれなかったのかというふうに思われる場合だってあり得るわけですから。ですから,俗解,言葉というものは何でもそうですけれども,間違った考えが一般化すれば,それはもちろん辞書に採用されますので,本来の意味と違っていても辞書に採用されている意味があれば,それは構わないと思うのですけれども,どの辞書にもないような,悪い意味しかないものは,やはり落とした方が子供のためじゃないかと思います。   それから,2番目としては,画数が非常に多いもの,これは,例えば放送の立場で言いますと,画面に出ないんですね,真っ黒になっちゃって。だから,NHKなんかも,名前は仕方ないにしても,画数が多い字は,混ぜ書きといいますか平仮名で表記するようなことをやむを得ずやっておりますけれども。名前にしても,例えば「亀」という字の正字みたいなもの(龜)を子供につけて,おまえ,これを学校で必ず書けなんて言われたら大変なことになりますので,やはり画数を一定以下のものに絞るというような形で絞っていっていただきたいというふうに思います。 ● ほかに。   ○○委員,何か御意見ございますか。 ● ちょっと重複するかもしれませんけれども,希望的には,やはり可能性は広げておきたいなという気持ちはあるのですけれども,その一方で,当事者,要するに名前をつける親の今の世代の背景というのを考えたときに,これだけ幼児虐待が増加している中で,名前も幼児虐待という範ちゅうに入ってくるかもしれない。そういう中で考えていくと,やっぱり絞った方がいいのかなと思います。あるいは,ここで話し合うべきことではないのかもしれませんけれども,窓口である程度の指導というのがこれからは必要になっていくのかなとも思います。例えば,「月」と「星」でいい意味に見えますけれども,本当はこういう意味があるのを御存じですかというようなことを指導する必要というのが今後出てくるということも考えられるような気がするのですけれども。 ● 私も,基本的には数は絞り込む方が望ましいとは思うのですが,議論の出発は木曽の「曽」という字からでして,それが常用にしてかつ平易であると司法機関が認定したということだったですね。   今日の表を拝見していますと,第1水準でここに出てくるのが771入っていまして,この第1水準という集合の中に入っているものは常用にしてかつ平易であると認識されて,しかし,なおかつその中に今回採択されない文字があったとした場合,再び裁判が起こるという可能性はないのか。行政として,今回おつくりになったものがもう一回また同じことの繰り返しが起こってくるという危険はないのかという,そこのところはやっぱり考えておく必要があるんじゃないかという気がするのですね。 ● そういう意味で,例えば人名用漢字になくて訴訟を起こした事例というのがどのぐらいあって,その中にどういう字が入っているというような資料はあるわけですか。 ● それは把握できているものはございますが。 ● それで,実際は,名前をつけた人の方が負けたというか,採用されなかった方が多いわけですね。 ● もうそれは,ほとんどそうです。 ● ですから,今回の「曽」とか,その前の琉球の「琉」ですか,はっきり裁判で,これが人名用漢字にないのはおかしいと,違法であると言われたのは,その2字ぐらいでしょうか。 ● 最高裁では唯一,「曽」だけです。 ● 家裁で幾つかの判決か勧告か何かがあったというふうに聞きましたけれども。   いずれにせよ,「曽」は,まあ常識的に非常に易しい字ですよね。それから,琉球の「琉」は,何しろ地名にはっきり使われている字だし。ですから,私は,このJIS第1水準すべて入れなければ裁判で負けるというふうにはならないんじゃないかと思うのですがね。まあ,それは裁判官の考え方次第ですけれども。 ● 現実としてはそうだろうとは思いますけれども,ただ,議論の発端と最終的な決め方がもしかしたら,ずれるという言葉は大変よくないとは分かるのですが,方向が変わるというのでしょうか,議論のスタートから最終的なところまで一本線じゃないという形になるかもしれないなというところは感じられるのですが。 ● そういうのは,もちろんそれは一つの手段であって,絞った後に,そこから漏れたもので名前にふさわしい字があれば,それは拾っていけばいいんじゃないかというふうに思います。 ● 881番から後は,要望のところがずっと出ていまして,「苺」とか,「琥」「珀」とか,というようなところは,JISのレベル,あるいは出現頻度数のレベルからは浮かび上がってこないのですね。ところが,「苺」であるとか「琥」「珀」であるとかは現実の要望が非常に多い文字があって,これはやっぱり拾わざるを得ないだろうと思うのですね。 ● 私も,「琥」「珀」とか「苺」とか,日常的に言葉としてすぐイメージが浮かんで別にイメージの悪くないような字は,しかも画数がそんなに多いものではありませんから,それは拾うのは構わないと思うのですが。 ● だから,外す方向でいくのか,拾い上げていく方向でいくのか,それによって判断の根拠がちょっと違うんじゃないかという気がするんですけれどね。 ● 最初に出されました部会資料15のような考え方は,基本的には,第1水準は常用--平易の方は若干疑問がないわけじゃないですけれども--常用性は非常に高いから,基本的には採用の方向を原則にして,おかしなものを外す。それに対して,第2水準については,原則的に常用平易性がないというところから出発して,使用頻度が高いとか要望が強いというものを個別に拾い上げていく。大まかに言うとそういうイメージで,第1原則,第2原則的な区別が出てくるかなと思っていますけれども。 ● ○○委員にお聞きするのですけれども,これは落とすべきだというのは,これも実は私のもバツがついていて,かなりの数があるのです。しかし,それも一つの資料として,例えば,ここで350ほど全体で入れることにしましょうと仮になったとしますね。600とかいうのはちょっと多いような気もするものだから。400でもいいのですけれども。仮にそういうものをしたときに,こういうのはやめていこう,これは入れていこうということでやるのと,これは落とそう,これは入れようというところでいくと,最初にある枠があれば,そう考え方で食い違いはないように思うけれども,さっき懸念されたのは,落とすのとすくい上げるのと,それはどういうところですかね。 ● ○○委員がいらっしゃる前に,私がお届けしていた資料について御説明をしたのですが,これは,いわゆる意味が望ましくないというものを私なりにざっと眺めた結果をまとめたものです。   それ以外に,昨日この作業をやっていて,第1版では,大陸の「陸」という字のさんずいの字(淕)が割と最初の方に出てきていたのですね。その文字自体は決して悪い意味を持たないということは保証できます。頻度数がどうだったかということは今ちょっと覚えていませんけれども,大陸の「陸」のさんずいの文字というのは一体どういう動機のもとにそれを人名として使うのかということを考えると,これは万葉仮名的に使うしかない。万葉仮名というのは,要するに漢字を表音文字として使うということですが,万葉仮名として使うしかないじゃないかという選択しか私には思い浮かばないのです。   ほとんどの漢字はそうなんです。外してはいない文字でも,これは音でしか使えないというような文字が圧倒的多数あるわけです。それを外してしまうことは問題があるのですが,かといって採用してしまうと,やたらと,意味を持たない,それこそ○○委員がレジュメに書いていらっしゃる音だけでつくられた名前ということになってしまうわけです。それを我々この委員会がコントロールする権限があるとは思いませんけれども,結果的にはそうなる社会的趨勢は非常に強いんじゃないかという気がするのです。それを外すなという御意見ももちろんあるでしょうし,あらかじめ選択の対象から知らない間に外しておいたら使われないということだってあるわけですね。その辺の判断は,私自身も,どちらが望ましいのかというのは判断がつかないところもありますので,もしワーキンググループをつくられるのだったら,あらかじめ全体の意思として,それは残すとか,あるいは表意文字として使われないような可能性のものは初めから対象外とするとか,その辺のところは全体で御検討いただきたいことだと思っています。 ● そういうことですか。 ● これはどうでしょうか。最初に数字の枠というのも,漢字に接する度合いが強いか弱いかによって違うのでしょうけれども,300と言われたらどのぐらいのどういうイメージのものが入ってきて,500とどう違うかというのは,そうにわかには想定できないので,むしろ,もうちょっと,数ではなくて……,まあ,こちらでは,第1水準は基本的に入れるというふうな考え方なのかもしれませんけれども,そういう枠でいって,ざっくりとそこから差別的な語を外すとか,全く意味を持たない語とか,あるいは難し過ぎる語を外すとやっていくと,でき上がりで何字になりましたという形で示していただいた方が,素人的には判断しやすいかなというふうに思うのですけれども,その辺,何か事務局の方で御検討を既にされているようなことがありましたら,出していただければと思いますが。 ● 私どもは,あくまでもこの漢字データベースの第2版をつくったときの先ほど申し上げたような考えでございますけれども,例えば,○○委員がさっきおっしゃった,出現頻度3,500番という一つの目印がございますので,それをJIS第1水準の771,これに当てはめますと,586までが3,500位以内ということになります。同じようにといいましょうか,第2のカテゴリーのJIS第2水準,これは2,500番より上位であるという理由だけで拾い上げたものが109あって,かつ要望が複数あったものが208と申しましたが,3局以上というふうにこれを更に限定しますと,208のうち123ございます。586と109と123を足しますと800字ぐらいになりますから,まずざくっと切ったところでそのぐらいには切れるだろうと思います。それから更に,これまでの御議論に出ておりますように,第1水準でこれはどうかなというのを削り落としていくというようなのが,一つの作業の目印にはなり得るかなと。事務局としてはそう思っておりますけれども。 ● それででき上がりで600とか700というふうな感じも……。600,700に絞るのも難しいですか,出発点が800もあるということですか。 ● そこは,ある程度作業をしてみないと分からないんじゃないでしょうか。 ● 第1水準は全部とかいう話がありまして,ただ,その中にも人名用漢字が入っていますから,ですから,今言われたような線でやってみて,そして,3,500というのが,やっぱりどうも常用平易から言ったら無視しにくいのです。それと要望の局数というのも,これはもう粗略にできない。それと意味ですね。意味で余り変なのは,私ら後世の子供につける上では問題だというのはやめたい。そこらあたりの兼ね合いを方向としてここで認めていただいたら,何かできるんじゃないかなと思うのですけれども。 ● 厳し目にとると大体これぐらいになって,緩くしていくとこれぐらいになるというふうな見本を見せていただいた方がいいのかもしれません。作業する方は大変かもしれませんけれども。 ● 今,○○委員がおっしゃった御意見に賛成です。   やはりなかなか,今,○○委員がおっしゃったような,これは大体どのぐらいというのは,委員の先生方も含めて,実は私も,恥ずかしい話で,一字一字そんなによくは見ていません。一字一字見てみないと,それがどういう問題があるかとか,やはりなかなか分からない部分があると思うのですね。さっき○○委員がおっしゃったような観点というのは,よく見た上でいろいろ整理してみないとちょっと分からない部分があるだろうと思います。   ここでそういうところまで決めるのは非常に難しいので,まず大事なのは,事務局で苦心なさってつくっていただいたこのデータベースをここで認めていただいて,これがまず土俵の大きな枠であるということを認めていただいたら,ここからどういうものを拾ってくるかという問題になりますから,そのときに,今,○○委員がおっしゃったように,割と緩やかに拾って,特にこれはだれが見ても悪いというようなものだけを落として割と大きくつくった漢字集合と,それを,こういう理由があるからよくないだろうというのを割と厳しくやってみると,大きな集合の中にもう一つ小さな集合が出てきますので,それをむしろここで先生方に見ていただいて,こっちの小さい方がいいんじゃないかなとか,でも,小さい方がいいけれども,大きい方の集合からこういうものを持ってきたらいいんじゃないかとか,そういう議論に持っていった方が恐らく生産的なんじゃないかなという感じがしますので,今,○○委員がおっしゃったような方向で,ここでは特にあらかじめ何字なんていうふうに決めないで,今のような観点から大きく見て,割と緩やかにとったものと,その中で更に厳しくとったものではこんなふうになりますというのを具体的にたたき台として作っていただいて,ここで議論したらどうかなというふうに考えます。 ● A案,B案をつくろうということですか。 ● A案,B案というよりも,A案を一つつくって……。 ● それをもうちょっと縮小したものをB案とすると。 ● ええ,そうです。 ● それでしたら後の作業は楽でしょうけれどね。 ● ○○委員,何かありますか。 ● そういった,どういう考えをとったらどのぐらいになるというのを実際に見せていただいた方が,判断するのには便利ではないかと思っています。   ただ,要は,法律上要求されているのは,常用平易な字かどうかということですので,意味は,それは確かに,明らかに名前にはというのはあろうかとは思いますが,余り漢字の意味に深く入り込んで,これがふさわしいのかふさわしくないのかということは,法律の趣旨からはなかなか出てこないので,そこは慎重に御判断をいただきたいなと,こう思っております。 ● 今おっしゃったことでいいのですけれども,木曽の「曽」というのは,もう意味も何もなくて,地名に使われている,しかも常用漢字五つか六つの中の構成要素になっているということで,音の「ソ」をあらわすということだけでいいわけです。ところが,希望を見ていると,例えばにんべんに「夢」というのもありまして,これも,好きな人を夢見るとかでロマンチックですけれども,辞典を引くと,愚かと出てくるんですよ。こういうのが出てくると,やっぱりこれはよくないというようになりまして。それが今度,○○委員とか私とかがこれはというときは,やっぱりどうしてもその解釈が出て,これを入れるのかということになるのですが,そこらあたりをどうするかなんですね。   ですから,漢字の持っている意味の中心というのをある程度無視していくのかどうかというところですが,専門家の立場から言うと,無視しにくいというところがあります。そこだけは何か了解していただく方がいいと思うのです。   先ほど○○委員がおっしゃったのは,そういう意味ですよね。 ● 一般的な辞書の意味ですね。余り専門的な意味じゃなくて。 ● しかし,それは……。 ● 「はかない(儚)」という漢字はにんべんに「夢」で,はかないというのは必ずしも悪い意味だとは認識できないので,それをはかないという意味で使っている場合と,好きな人を夢見るという,そのどちらでもいいだろうと思うのです。「儚」というのは恐らく頻度数も結構高いでしょうし。   ところが,先ほどレジュメで例に挙がっていましたけれども,にんべんに愛情の「愛」というのは,恐らく常用でもない,平易でもない わけです。そこで,人を愛する,人から愛されるというのは,失礼な言い方をすれば,これはへ理屈なんですね。そのへ理屈をどこまで聞くか。要望があったとしても,へ理屈を聞く必要はないだろうと思います。ただ,それをへ理屈と言っていいのかどうか,傲慢じゃないかと言われたらそうかもしれないという気持ちはこちらにもあるわけです。その辺のボーダーは,今,○○幹事がおっしゃったように,大きな緩やかな集合と,少しリジッドな(狭い)集合と,二通り考えてみて,例えば,「儚」というのを……,それはいい例ではないですね。何かそのボーダーラインになるような文字が幾つか浮かんでくれば,二案をつくってみたら次の議論が見えてくるんじゃないかという気がするのですけれども。 ● にんべんに「夢」は4,900番のところにあるものですから,多分拾えないだろうと思うけれども,日本では,おっしゃるように,はかないという意味だとされています。ところが,漢和辞典を引くと,ぼんやりとか,おろかという意味がある。そこらあたりが……。 ● しかし,名前としては日本で使うわけですからね。もちろん,中国の方がその漢字を見れば,あるいはそういう意味をとるかもしれませんけれども。 ● はかないの場合は古今集にある解釈で,それはもう日本ではそういうことになっているということで,それは構わないと思うのですが,国語辞書でも漢和辞書でも,どれを引いても悪い意味しか載っていないようなものはやはりまずいんじゃないかと思いますね。 ● それは,常用平易性とのバランスで,余り身近な漢字でないのにわざわざ引っ張ってくるというときに,しかも意味を見たら変な意味しかない,それをわざわざ載せる必要は多分ないと思うのですが,○○委員がおっしゃる裁判の心配というのは,正に常用平易性だけが基準になるわけですね,裁判で問題になるというのは。   だから,やっぱり,易しくてみんなが使っているし書けるような字というのは,これは意味にかかわらず拾わざるを得ないということで,あとは,少し身近でないものについては意味も加味しながら拾っていくというふうな作業の仕方になるのではないかと思うのですけれども。 ● 立法の趣旨が常用平易ということは,名前の漢字であっても,余り社会で使われていない難しい字は使わない方がいいという趣旨だと思いますね。ですから,にんべんに「愛」のような,社会で絶対というぐらい見ないような字はやっぱりちょっと認めたくはない。 ● まだ御発言のない委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 私も大体,皆さんの発言を聞いていて,もっともな御意見かなという感じがしましたけれども,先ほど来議論があるように,このいつも出していただいている人名用漢字ということで,追加するということが前提だったら,今の中の流れのお話にあるように,やはりある程度制限的な要素を加味してワーキンググループで検討していくべきじゃないかなというふうに考えていますが。 ● ○○幹事,いかがですか。 ● そこは特に申し上げることはございません。   ただ,先ほど○○幹事がおっしゃられたように,あるいは事務局で用意していただいたこのデータベースを土台として,やはりワーキンググループで幾つかの案を示す,そしてこの部会の場で委員の方々の意見を聞くという方法が効率的ではないかというふうに個人的には考えております。 ● それでは,今提案させていただいたような方向で,ワーキンググループを,幹事を中心に,○○委員,○○委員は意欲的に御参加くださるということですので,委員・幹事の御専門の方々に専門的観点を踏まえて御検討いただいて,たたき台をつくっていただくことをお願いするということにいたしたいと思います。 ● 済みません,一つだけ,○○委員のレジュメの3枚目の2の(2)の②ですが,常用漢字の「実」,「号」の正字,つまり字体の問題が,今回データベースの中からそれを拾い上げていくという作業をやれば,現状の人名用漢字・常用漢字のいわゆる正字体に当然リンクしていく話なんですね。そこのところはちょっと御議論いただけないかという気がしていたのですが。もしワーキンググループでそれをやるという作業になっていけば,当然そこと関係が起こってきますので,その方針についてはどう考えるべきかというのはあらかじめ,結論はなかなか出ないかもしれませんが,少し議論をしておいていただければと思うのですが。 ● 字体についてはいかがでしょうか。   おっしゃるように,ワーキンググループで仕事をしていくときに字体の問題が絡んできますので,字体の部分は少し先送りにして,字種をとりあえず選んでもらうという作業から始めていただいて,その間に字体について少し検討をいただければ……。 ● そうすると,例えば,一つの字種を選んでも結果的には一字種に複数の字体がそこに包括されるということは,これから先の議論の可能性によってはあるということですね。 ● あり得るということです。 ● とりあえず字種を選んでいけということですね。分かりました。 ● 常用漢字に,あるいは人名用漢字にある字でも,いわゆる字体が違うものが要望されていますね。そうすると,それはとりあえず取り上げて,枠の中に入ってくるということですね。その場合に,ほかのもう既に人名用漢字や常用漢字にある字種との整合性といいますか,どういう位置にするかということは,やはりとにかく話し合わないといけないのではないでしょうか。「はるか」という字が,2点しんにょうの字(遙)を取り入れた場合に,今の人名用漢字をいじらないということになると,同じ字種の「遥」が人名用漢字にあるのにもかかわらず,もう一つ追加されたという変な感じになると思うのですが。 ● 特に常用漢字の場合には,常用漢字の基本的考え方ともぶつかる部分が出てきますので,少し時間をかけて御議論いただかなければいけないのではないかと思いますので,作業グループの作業に多少困難があるかもしれませんが,当面は字種についての御検討をいただいて,字体についてはそれと並行してこちらの会議で御議論をいただきたいと思いますけれども,よろしゅうございましょうか。   ほかに特に御発言ございますでしょうか。   ございませんようでしたら,予定より大分早く終わりますが,本日の審議はここまでということにいたしまして,次回の御案内をお願いいたします。 ● 次回は,5月28日,金曜日の同じ時間でございます。午後1時30分から最長5時まで。今度は法務省第1会議室,20階でございますが,そちらでとり行います。   なお,恐縮でございますが,休憩が終わりましたら引き続き第1回作業グループを行いたいと思いますので,作業グループの先生方はお残りいただくようにお願いいたします。 ● だれが作業グループかというのは,何となくイメージとしてはあるのですけれども,こちらでイメージしているけれども本人はそう思っていないとかいうようなことはないでしょうね。大丈夫ですか。 ● 幹事の皆様は当然のこととしまして,あとは,先ほど○○委員,○○委員というお話がございましたので,よろしくお願いいたします。 ● よろしくお願いいたします。   それでは,これをもちまして法制審議会人名用漢字部会第3回会議を終了いたします。どうも長時間ありがとうございました。 -了-