法制審議会人名用漢字部会第5回会議 議事録 第1 日 時  平成16年7月23日(金)  自 午後1時33分                        至 午後4時16分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  字種の選定について         字体の選定について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 ● それでは,少しお待たせいたしましたけれども,法制審議会人名用漢字部会第5回会議を始めたいと思います。 (委員・幹事の異動紹介省略)   それではよろしくお願いいたします。   また,この間パブリックコメント等もございましたけれども,マスコミが様々な形で報道いたしておりまして,中には若干の憶測記事的なものもございまして,委員・幹事の皆様にも御迷惑をおかけしたことがあろうかと思いますが,その点に関しましてはおわびいたします。   それでは,事務局から資料の説明をお願いいたします。 ● 事務局から本日配布の資料について説明をさせていただきます。お手持ちの資料目録に沿って説明をさせていただきます。   資料番号につきましては,これまでの番号の通し番号でございますが,まず資料番号21は,人名用漢字部会第5回における審議項目でございます。本日の審議項目についてまとめたものでございますが,字種の選定と字体の選定ということで大きく分かれております。   それから,資料22でございますが,人名用漢字の範囲の見直し(拡大)についての意見募集結果についてです。これは本年6月11日から7月9日まで実施したパブリックコメントの結果をまとめたものでございます。   資料23は,グラフになっているものでございますが,寄せられた意見を取りまとめてグラフにしたものでございます。   意見数は1,308通ありました。   意見の取りまとめ方法でございますが,人名用漢字の範囲の見直しについての賛成,反対意見の数を取りまとめ,漢字の削除要望,追加要望について個別に集計したものでございます。1通の意見で複数の意見を述べているものについては、その中で最も中心的な意見によって賛成,反対を振り分けました。ただし,個別の漢字の集計については1通に複数の削除要望及び追加要望があるものについてもすべて計上したものでございます。   意見の内訳でございますが,賛成が1,058通,反対が20通,その他230通となっております。   意見の概要でございますが,資料23のグラフを見ながら説明させていただきます。   まず,賛成といいますのは,人名用漢字の範囲の見直し自体に賛成という方が全体の80%でございました。また,反対というのは範囲の見直しについての反対でございます。それが2%,その他が18%でございます。   そして賛成の中でも,まず,「大賛成」というのが漢字の選定自体についても賛成であるというものでございます。これは1.4%でございます。   そして,「大筋賛成一部削除」が意見の種類としては一番多かったものでございますが,いわゆる人名にふさわしくない字を排除すべきであるという意見でございます。   次に「追加要望」は18.0%でございますが,この漢字を追加してほしいという個別の要望でございます。   また「採用漢字の支持」でございますが,これは例えば「苺」など,このような字を採用することについて支持をするもので、これが5.7%でございます。   また「反対」が2%でございます。   そして、「その他」の内訳でございますが,制限自体を廃止すべきだというのが3.9%,また常用漢字の方を追加すべきだという意見が1.6%,更にJIS第2水準まで拡大すべきだという意見が0.7%でございました。   円グラフの紙を1枚めくっていただきますと、「削除要望があったもの」を個別の漢字ごとにまとめております。削除要望数ごとに順に並べたものでございます。それが3枚ほど続きます。   3枚めくっていただいて,今度は「追加の要望があったもの」でございます。「掬」という漢字が追加要望で一番多く,27通でございます。   2枚めくっていただきまして,「採用漢字の支持(要望)があったもの」,これは1枚でございます。   次に,資料24,25でございますが、これはパブコメ後のデータベースで第6版になります。第6版①の方は,パブコメに提示した漢字についてのデータベースでございます。パブコメに掲げた漢字の順に並べたものでございます。つくりはこれまでのデータベースと同じでございますが,異体字の右側に「削除要望」,「採用支持」という項目を新たに付け加えております。これは,パブコメの結果をここに掲げたものでございます。   また,最後の20ページでございますが,追加要望のあった漢字,網掛けをしておりますが,五つほどここに参考までに掲げております。   次に,データベースの第6版②でございますが,これはパブコメで削除要望のあった漢字について抜き出したもので,削除要望順に掲げたデータベースでございます。「糞」から並べているものでございます。   それから,資料番号は付けておりませんが,「人名用漢字の範囲の見直し(拡大)に関する意見募集」,3枚ものでございますが,これを参考に添付させていただきました。これはパブリックコメントに当たって、法務省のホームページに掲載されたものをプリントアウトしたもので,その3枚目に掲載漢字の一覧を付けております。   また,これも資料番号は付けておりませんが,「人名用漢字見直し案への提言」ということで,○○委員から提出のあったものでございます。後ほど,○○委員から説明をいただきたいと存じます。   また,いつも参考配布させていただいております人名用漢字表の一覧表と参照条文でございます。 ● それでは,資料21に従ってということになろうかと思いますが,事務局から説明をいただければと思います。 ● 本日の審議項目のまず1番目でございますが,「字種の選定について」の(1)で「削除する字種」についてでございます。先ほどもパブコメの概略を御説明しましたが,パブコメの結果,人名にふさわしくない漢字を削除すべきとする意見が約6割,55.7%を占めておりますので,前回の部会でも,この点は議論されましたが,パブコメの結果を受けて,パブコメ後の部会で削除すべき字について審議をするということだったと記憶しております。   その際に,では,どういうレベルで削除するのかという点について,事務局でもいろいろ検討はいたしましたが,なかなか何がふさわしいかとか,そういうことを基準として示すことが非常に困難なところがあります。第4回の人名用漢字部会で、ふさわしくない漢字とはということで,例えば差別等につながり得るものや,その漢字を子の名に用いた場合に親権の濫用に当たるような場合や,社会通念上明らかに名として不適当であるとき,一般の常識から著しく逸脱しているとき,又は名の持つ本来の機能を著しく損なうような場合,これは「悪魔ちゃん」事件の審判を参考にしたものでございますが,そういう抽象的な基準を立てることはできるのですが,なかなか具体的にどういう範囲で切ったらいいのかというところが非常に苦慮をしているところでございます。   基本的には,今回は漢字の意味を考えずに「常用平易とは」ということを突き詰めて,パフリックコメントに漢字を提示したわけでございますので,余り大幅に意味を考慮して削るというのは,この部会の立場上なかなか難しいかなとは思いますが,他方,削除すべきとする意見がかなりの数,当初から予想はされておりましたが,かなりの数が来ておりますので,そこも加味しなければいけないというところでございます。   子の名前というのは,確かに個人のものであると同時に,社会生活上,自らを指示し,他人がその人を特定指示するために用いられるものであることから,社会性を有するものです。したがって,例えば,その字が差別につながるなど社会通念上明らかに名として不適当と認められるものや,一般の常識から著しく逸脱していると認められるものについては,名の社会性にかんがみて,そもそも名に使用すべきではないという考え方もあろうかと思われます。   一般論としてこういうような言い方はできるのですが,では,社会通念上,名として不適当とはどういうものかというところは,やはり多分に価値判断を含むものでございまして,明確に示すことは困難かなという感じもしております。   ただ,パブコメの結果を参考にしまして,削除要望の件数が多いものは,やはり社会の多くの方がこれは不適切だと判断するものであろうと思いますので,パブコメに寄せられた件数も一つの参考資料にはなろうかと思っております。   そういう観点から,パブコメの結果を見たところ,少なくとも上位の漢字,件数100件以上寄せられた字につきましては9字ほど,「糞」「屍」「呪」「癌」「姦」「淫」「怨」「痔」「妾」でございますが,これはやはり明らかに不適当と考えられるのではなかろうかと思っておりますが,果たしてそれだけでいいのかどうかというところについて本日,委員の先生方に御審議をいただきたいと思っております。 ● ありがとうございました。   それでは,まず,字種の選定のうち削除する字種という課題について御意見を伺いたいと思います。これに関しましては○○委員の御意見を今お伺いしておくことがよろしゅうございますか。 ● 今でも結構ですが。 ● ではお願いします。 ● では,私のペーパーの1ページを御覧いただきたいのですが,「1.人名にふさわしくない漢字の削除案について」ということで,今,事務局がおっしゃった削除要望100件以上の漢字は当然削除すべきだと思います。そのほか,削除要望10件以上の中にも,これは一つの一例でありまして,私としてはマイナス的なイメージとか名前にふさわしくない感覚があるようなものは,なるべく削りたいという立場ですが,取りあえず10件以上の中から選んでみました。そして、意味だけではなくて画数が非常に多い,最後の「嚢」,これはちょっとテレビでは出せない字ですから,こういうものは果たして平易であろうかという気持ちがあります。   そのほかに,後の方にも書きましたが,3ページの④の「痩」「噛」「掻」,この辺も名前としては適当ではないのではないかと思っております。この辺は確かに線引きが難しいところで,なかなかまとまりにくいとは思いますが,私としては比較的多数の不適当漢字を削除したいと思っております。 ● それでは,ほかに,委員・幹事からの御意見を御自由にお出しいただければと思います。   ○○委員,お願いいたします。 ● 立場としては,今の○○委員と私も非常に似ているところがあります。資料23で申しますと,私はできれば,委員の投票ということをやっていただきたいと思っておるのですが,その際に,例えば順位1番から順位100番までという,この2行にわたる漢字があります。この2行に関しては,例えば,この漢字は残したいというものに○を打つというような形で委員が,委員だけでなく幹事も結構なんですけれども,委員・幹事が,この漢字は○,残したいというようにどれを削除したいではなくて残したいというものに○を打つという形の投票を1番から100番までについて,まずやってみる。   私も一つは,要望から言えば,残したいのはあるわけですけれども,そういうような形で100番までを委員のそれぞれの見識で提示するという,そのことを提案したいと思います。   それから,100番以下に関しては,今度は私は逆を思っていまして,これは次の段階でもいいのですけれども,これはどうしても削りたいというものに×を打つというような形の投票を行う。前回も実は委員の投票というものが行われたということがあって,もう少しだけ申しますと,今回の新聞報道等でも,大分この部会の見識ということが言われるわけです。私も個人的には大分言われておりまして,おまえが入っているのに国語研究所の見識は何かということを言われます。ですから私は今のところ見識としては,このように発言することと,委員・幹事が投票して○を打つこと,これで表すことができる。私は少なくともこれに○を打った。あとは打たなかったという記憶は持てるわけですが,そういうことをまず提案したいと思います。 ● 今,投票で個別に字を選ぶという御提案でしたけれども,その細目につきましてはまたいろいろと御意見をお出しいただきたいと思いますが,それ以外の点も含めまして,○○委員,お願いいたします。 ● 私も基本的には今の○○委員と同じでございますけれども,そもそも「常用平易」という,その「常用」はすぐに数の統計上のことで分かる点が多々あるわけですが,「平易」ということで,今いろいろ考えなければいけないことがあったのだと思います。ただし,「平易」というのはそれぞれの定義によって違うわけですが,私は,名前としての社会性というお話がありましたが,近づきやすさということがありますから,単に画数とか読み方だけでない,つまり漢字それ自体の性格でないところでの平易ということについて考えたいと思いましたけれども,今回のパブコメで出てきたのは,平易という点でかなりの方から拒否されたようなものだというふうに認識いたします。   ですから,これを根拠にするのは,必ずしもパブコメした方が代表ではないわけですが,しかし一定の数の方がこうやって集中して,ある漢字について平易かどうかという--平易という意味は私は,かなり大幅な,幅を広げてとっていますけれども--そういう点で,とにかく一応の意見を申し述べられたということではないかと思います。   私は,最終的には投票という形をとらなければ決着はつかないと思いますが,その際,もう少し広げたい。私は,今日,今,先生方の御意見を伺う前に考えてきたのは,1枚目の次のページ,つまり204位までの要望数が5となっている。1枚目は全部投票の対象にするけれども,その一定の範囲までは,先ほど○○委員からは○をつける方の採用の方に投票もというお話があって,それもなかなかいいなと思いましたが,もう一定のところまでは無条件で削除で,しかし投票としては,先ほど来お話が出ているように,もう少し広げてやっていった方がいいし,逆にあるいは,枠の外にあるものについては拾い上げるという形もいいのではないかというような気もいたしました。消すか拾い上げるかは同じことなんですけれども,何らかのことで範囲は少し広げて見てみたい。しかしあくまでも,パブコメのものを根拠にする以外,今,「平易」ということを処理する方法はないだろうというふうに思います。 ● 投票ということ自体はいい方法だなと思っています。ただ,委員及び幹事の方々がどのような判断基準によって○あるいは×をつけ加えるのか。まず,常用という面については一応フィルターは通ってきているわけですね。○○委員からの御指摘で,例えば背嚢の「嚢」というのは平易であるかという点については個人差があるとしか言いようがないわけで,投票であれば特に常用であるかどうかよりはむしろ平易であるか否かというのは,各投票者によって見解が分かれるのかなという気がいたします。   あとは,圧倒的にパブコメで言われているのは,不快な語あるいは不潔さを伴う,明らかに人名にはふさわしくないという,かつてこの委員会でも随分議論になった点でありますが,やはり出てきたというのが正直な実感でありまして,全員が共通の認識として人間の名前にはかくあるべしという一応のコンセンサスというようなものがあれば,投票の効果はかなり大きくなるのではないかというふうに思っています。 ● 投票ということで決まればもちろん反対はいたしませんが,これまでのことを考えると,私は,見識が問われるからこういう字は出すべきではないということは再三申し上げてきたわけですけれども,ただ,これで出したわけですね。出して,これまでの流れを考えると,ここで投票してそれぞれの委員の見識をという,それも一つの方法なんですが,もう少し,このパブリックコメントの要望数との関係で,ある程度これまでの流れに沿って,要するに578字が常用平易というふうに考えて出したと。だけれども,これだけ反対があったんだという,そこの数字の方をやはりもう少し重くみた方がいいのかなというふうに思うのですね。   それで,これはちょっと先走ったようで申し訳ないのですが,今日の審議項目に(1)は「削除する字種」,今そのことについて議論するわけですけれども,(2)で「追加する字種」というのがあるわけです。これももちろん,議論の結果として一つも追加しないということもあるかもしれませんし,何字か追加するということもあるかもしれません。私は,これだけ多くの人が関心を持って寄せた意見というのは非常に重いと思うんですね。そういうふうに考えると,この後,この資料23で言いますと,「追加の要望があったもの」というのがあるわけですね。1位が「掬(すくう)」という字になっているわけですね。この字をすくうかどうかという問題があるわけですけれども,これを見ると,順位1位が「掬(きく)」という字で27,2位が9なんですね。これはたしか読売新聞に出ていたことが多分きっかけになって,これだけ多くの同情票が集まったというか。この数字の出方を見ると,27と9ということで,ここに明らかな段差があるので,「掬(きく)」については拾うということでもいいのかなというふうに思うのですね。   そうしますと,例えば「掬」を仮にすくい上げたというふうに考えた場合,要望が27ある,ほかの字は10以下であるというところが出てきますので,そうすると,すくい上げについて,これだけ多くの人が要望しているんだからということを考えれば,それはパブリックコメントの意見をそれだけ尊重するということですので,むしろ削る方も,やはりそれだけの同じ重さを持ったものについては重いと考えて,例えば27に見合う数字のところで,それより上のものは切っていくというようなことも考えられるのではないでしょうか。   例えば1ページで言いますと,27というのは順位で言うと45位の「贋」という字ですね。「にせさつ」などというときの「贋(にせ)」という字ですけれども,ここが27で46位,47位が26と。ですから例えば25というところで線を引いた。要望する方については25以上が一つだけあったので,例えば「掬(きく)」をすくいました。それから,削除する方についても25というところを一つの目安にしたということで,47位と48位が26と23ですので,25という数字はどうなるのかということをひとつ考えるのですね。もちろんその場合に,仮に1位から47位まで削った場合に,一方で非常に要望があるとか,そういう字がもしこの中にあるのであれば別ですけれども,そういうのは細かく見ないと分からないかもしれませんが,基本的にはそういう数字で切っていった方がいいのかなと思います。   ただ,先ほどからの○○委員や○○委員の御意見にありましたように,それ以下の字でも,やはりこれはというようなものがあれば,それはまたそこで議論するということで,基本線は取りあえず数で切るということで考えたらどうだろうかというふうに考えております。 ● 私も両方あり得ると思うのですが,資料25を見ていただきますと,漢字データベースでパブコメ後にまとめられたもの,例えば4ページを見てみますと,「狼」という字が整理番号92番として挙がっております。これは削除要望を見ると14件に上っていて,92位。ただ,同数なので86位であるわけですね。ところが,採用支持というのもまた,要望数が3件ある。実際に,かつて要望局数というものを数えたときには5局あった。それでまたその下のところで,106位に「蹴」という字が入っていまして,これなどは削除要望は101位ぐらいに食い込んでいる。採用支持が1件しかなかったようですが,これは法務局数を数えたときには24局に上ったものである。   こう考えたときには,削除要望というのも一つの声だけれども,そしてその採用支持というのが意外と,声なき声の方が多いのかなというふうに思うわけですが,要望というのが意外に表に出てこない。そして,嫌悪感を持つ人の声がこうやって上がってくるという点は,少しこれから,もし投票になるとしても注意すべき点ではないかと考えます。 ● ○○幹事,何かございますでしょうか。 ● まだ私,こちらの方に来てから余り時間もたっておりませんので,ちょっと分からない点もあるのですけれども,私が感じますのは,今までの先生方あるいは幹事の皆様方の御意見とほぼ同じような意見を持っております。ただ,1点,つけ加えさせていただきますと,今回のパブリックコメントについての取扱いをどうするのかということで,ここのところではパブリックコメントの(5)のところで,この部会において寄せられた御意見を踏まえて最終案の取りまとめを行うことを予定しておりますとあります。   ということであれば,もし時間とか労力の問題がございますけれども,たとえ1件でも,出された1件については適切か不適切かということを,一応この場で意見をもらった方がいいのではなかろうかと思っております。   先ほどから,何件ぐらいが適当かということもありまして,私も常識的には数の多いものという形での重みをつけるということはそのとおりだと思うのですけれども,かといって,一人しか出さなかった,あるいは二人しか出さなかったというものに対して何ら検討もしなかったという形になってしまってはまずいのではなかろうかということから,もし投票されるのであれば,残すべきもの,あるいは落とすべきものという形で全体について検討するのがいいのではないかというふうに考えております。 ● 私といたしましては,基本的に,冒頭に○○関係官から説明があったような方針で,社会通念上明らかに,人名として不適当な字かどうかを念頭において削除すべき字を選定していくというのが一番無難な線ではないかと考えています。どこで線を引くかというのは一概には言えないと思うのですけれども,○○幹事からお話がありましたように,やはりパブコメという形で,広く国民から意見募集をした,そして多数の削除要望があったということは非常に重く考えるべきではないかというように考えております。   ただ,先ほど○○幹事から,追加する方の並びで「掬」の27という数字を挙げられましたけれども,削除する基準が社会通念上明らかに,名として不適当ということであれば,1,300件余りの要望や,意見が寄せられたということですから,その寄せられた意見の中で相当の割合の人から削除の要望があったということであれば,明らかに名として不適当だということの裏づけとしてかなり有力な根拠となるのではないでしょうか。   ですから冒頭に関係官が言われたように,9位の「妾」の103という要望数と,10位の「蔑」の81という要望数にはかなりの差がありますので,当然に削除するものをまず100というラインに置くというのは一つの考え方かなというように考えております。   その後,どの漢字を削除していくかというのは,投票という方式もあり得るのかなというように考えてるところでございます。 ● 今までの皆さんの御意見で言えば,少なくとも9位までの,パブコメ全体から言えば1割弱ですけれども,100を超える削除要望があったものは削除した方がいいのではないかという点では御意見が一致しているかと思いますが,そういうことでよろしゅうございますか。   問題になりますのは,10位以下のものについては投票でという御意見が多数を占めておりますが,投票をどうするかということも問題ですし,それから○○幹事からは,投票に回すよりもむしろ,これまでの流れから言えば要望が多いから削除しましたと,こういう形で整理をつけるのが一番筋が通る。要望の多さというところで言えば47位までの文字を削るという形にした方が論理的といいますか,話の流れから言えば筋の通った考え方ではないかというお話がございました。   あと,それよりももう少し検討の対象を広げるという御意見では,投票の枠を100位までを一つの区切りにするという御意見が○○委員からありました。   それから,○○委員は,10以上の要望ということですから,117位のところが一つの区切りだというふうな御意見だったと思います。   それから,204位までというのが○○委員の御意見だったと思いますけれども,その辺のところを少しまとめてどの辺までを削除候補として投票に付するか。もちろん,それぞれの御提案も,それより下位のものについても,これはどうしてもというものがあれば御意見を反映させるという御提案だったかと思うのですけれども,どの範囲までを削除候補として投票に付するかという点で多少広い,狭いという御意見の分かれがありましたし,それから投票の方式も,削除するものに印をつけるのか,これはすくってやれという方向で投票するのかという,この二つの提案がございましたけれども,ただ,パブコメに出した経緯から言えば,ここに出したものをもう一度また,そこから何をすくうかという発想はちょっと取りにくいと言えば取りにくいのではないでしょうか。 ● 今日来ていらっしゃらない委員の方が何人かいらっしゃると思うのですが,投票というのは,今日この場でとお考えでしょうか。 ● 今,○○委員から御指摘がございましたように,今日,3名の委員が御欠席で,しかも3名の委員の方はどちらかというと,偶然ですけれども,できるだけ自由に何でもという御意見をお持ちの委員の方々ですので,それを無視して投票することはできないと思います。投票ということになれば,文書を使った形ででも全員でやらないと妥当ではないと思います。 ● 今日,もし投票ということになるのだったら,範囲を決めるという作業は今日この段階で決めておくということですね。 ● はい。 ● 分かりました。 ● 今申し上げましたようなことで,できればこれは一応採用の候補として世の中に出したものですから,一たん出したけれども,皆さんの御意見を伺って,それを反映させるために,そこからこれはやはり削りましょうという形の投票の方が全体の流れとしては筋が通るのではないかというふうに思いますので,それを例えば100位なら100位までのリストで,その中で削るべきものというものをマークしていただいて,例えば過半数の御意見が,やはり削除すべきだということであれば,それを削除するという形がよろしいかなと思います。その枠を超えたものについては,一覧表に掲げるというよりも,特に順位外だけれども,どうしてもこれだけはやはり妥当ではないだろうというものがあれば,自由に書き出してもらうというような形の方が,一たん提示してそこから削るという流れの中では,投票の方式としてはよろしいのではないかというふうに思いますが,いかがでございましょうか。 ● 先ほど私は,100番までについては残したいというのには○とかいうような,テクニカルなことを申したのです。101番以下についても問題にすべきだという点では変わりはありません。先ほど申したのは,何種類かある中で全体について投票せよというのがお二人なのですね。○○委員と,もう一人いらっしゃった。それから,204番までというのが○○委員。それからあと117番までが○○委員。私は100番ですけれども,私は100でも切れとは申していないんですね。100番まではとにかくこれはという残したいものに○を打てであって,以下も検討するという点には変わりがありません。したがって,○を打てというような形でよろしければ,私はいつでも○○委員のところまでおりてもよろしいわけです。ただ,そうかといって,205番以下をそのままここで通してしまうというわけにはいかないように思います。 ● 私も,117というのは投票のことを考えていたわけではなくて,ここまでは削った方がいいだろうということです。したがって,投票であれば私はそれよりもっと多い範囲で,200位でも300位でも構わないと思うのですが,多い方がいいと思います。 ● はい,分かりました。ただ,先ほど○○幹事からも御指摘がありましたし,それから,パブリックコメントでも,この字は削れというのが何十も出ていますけれども,全体としてはこれで結構だという意見があって,その中で,これだけは削ってくださいというふうに出てきていますから,逆に言えば,全体としてはよろしい,これは削ってくれと言われた以外の字は支持されているという要素もございますので,その点も考えなければいけないということと,それから基本的にここでのパブリックコメントに出したときの姿勢が,「常用平易」ということを基準にしていて,意味による判断はしませんでしたという形で出して,それがいけないという形でのマスコミの記事もありますけれども,逆に,その方針は支持できる,理解できるので,それについて悪い意味のものがあるとかないとかという議論はおかしいのではないかという記事も一部あるわけですから,その両面で考えて,ゼロからもう一度,今度は意味を入れて選び直すという全体についての見直しの作業というものは,全体の流れから言うと少し後戻りの度合いが大き過ぎはしないかという懸念もあるのですけれども,その辺について御意見をいただければと思います。 ● 全体の流れですけれども,この部会での流れで申しますと,パブリックコメントの前に私がワーキンググループの検討ということをお願いしたわけです。実際に2回,合わせると8時間にわたって私ども真剣に検討しました。その検討するに当たっては,私も事前に辞典を何種類か引いて,どうかということもいたしております。ところが,そのワーキンググループの結果というのは,ここには一切反映されていないんですよ。これは私としては非常に不本意な流れなのですね。「全体の流れ」とおっしゃるから言うのですけれども。   委員というのは,それぞれ選ばれて,人名用漢字について感慨を持って出席しているわけです。今日も皆忙しいでしょうけれども出席しているのは,日本のためだということがあるわけですよ。ですから,余りいいかげんなところで手を打つということだけはやめていただきたいというふうに思うんですね。   先ほど申したように,私は後ろの方に下がって,例えば○○委員の要望が5例以上あるという,ここらあたりまでおりて,そして例えば○を打つというような形での選考を各人が誠実に答えていく。それを集計していただけるというのがいいのではないか。それ以下のところについても,私は今度は×でいいと思うのですけどね。これはよくないというところで,私も資料をつくっているわけですが,これは×だということで集計してくださるとか,是非とも何らかの形で,ワーキンググループの成果が少しでも反映できるようにしていただきたいというふうに思います。 ● 先ほど私が1枚目,しかし同数がありますから2枚目の頭の204番までと申し上げのは,単に5という数だからというのではなくて,私の全く主観的な,ただ眺め渡しただけの印象ですが,私も漢字は普段,四六時中見ていますので,その印象でいいますと,第9位までなりあるいは第四十何位までなりに出てくるものの,皆さんが嫌だとおっしゃるその根拠,例えば汚らしい,品が悪い,その他もろもろあって,病気の名前,体の部分の名前,その他いろいろありますが,そういったものがこの1枚目の200位,204位あたりまではまだぱらぱらと混ざっているんですね。ところが,要望数4以下になりますと,かなり普通の字が多いということで,非常に主観的ですけれども,どこかで切るとなると,投票にするかどうかは一歩退いて,それはのけておいて検討するということになると,除去したもの,要望に従ってこれは削りましたとなります。それとの関連で,それではなぜ今度はこちらが残っているのかということにもなりかねないようなものが,割合この1枚目には散見されるということでございます。余り客観性はないのですが,私の非常に主観的ですが,しかしある程度,自分で言うのは自負が強過ぎますが,漢字を普段見慣れている者として,そういう印象を持っているというふうにお考えいただければ有り難いと思います。 ● 参考になるかどうか分かりませんけれども,パブリックコメントの内容について申し上げたいと思います。全体で1,308件あったわけですけれども,その中で削除要望をした中で,一人の方が350件の削除要望をされてきております。それから,300件以上,350件未満の削除要望をされてきた方が1人,150件以上,200件未満の削除要望をされてきた方が3人いらっしゃいます。   そういうところも参考にしていただいて,この表を見ていただければと思っております。 ● ほかに御意見はいかがでしょうか。   それと,先ほど事務局の説明の中にもありましたけれども,資料25ですけれども,これで見ますと,100位以内にもぱらぱらと,どうしてこんな字がというのが,例えば78番の淋病の「淋」というものについても,市町村窓口に要望が寄せられたのは2法務局あるとか,その前のページでも冥途の「冥」とか,こういうものも過去には要望が出ている。それが,92位の「狼」とか,先ほど○○幹事から御紹介のありました106位の「蹴」とか,116位の「憐」,117位の「刹」というふうに150までありますが,120から150までは少しまた減りますけれども,この辺になると,ぱらぱらと,要望もそこそこ出ているということも御考慮に入れていただきたいと思います。 ● 私,先ほど拾う方と,その両方を見ながらがいいのではないかというふうに申し上げたのですけれども,そこで25というのを例として申し上げたのですけれども,もう一つは,今,○○委員がおっしゃったとおりで,実は法務局からの要望数というのも一方にありますよね。106番の「蹴」というのは実は24局あるわけですけれども,もっと多いのが154位の「牙」という字なのですね。これは,今日いただいた資料24番の7ページの197番に「牙」があって,法務局数が39です。それ以降に寄せられた調査でも4とか2とかありますので,実は非常に希望が多いわけですね。そういうものがぱらぱらと入っているので,では「牙」の前後はどうかというと,私も「烏」だとかは要らないのかなと本当は思うのですけどね。私が要らないなと思うのは実は非常にたくさんあるのですけれども,ただ,これまで確かに,この間については問題があったかもしれませんけれども,ここまで来てしまっているので,余り,これまでの議論と違う形でというのはちょっとどうなのかなという気はするのですね。   ですから,そういうふうに考えてきますと,要望局数の多い「牙」が39だとか,こういうものがぽこぽこと入っているということもありますので,それから「蹴」が24局であるとか,「狼」が何局かある。先ほどは25というふうに申し上げたのですけれども,私は拾う方との関係を考えていますので,これが27と9ですので,27と9の間に明確な差が引ければいいわけで,例えばそれを15というふうにして,15以上の意見というのは割と重いと考える。まあそれは,1,300件ですから1%以上というふうに考えてもいいかもしれませんけれどもね。例えば15というふうに考えると,それでも15以上あったものについては,要望が多いから「掬」は文字どおりすくいました。15以上についてはやはり重いと考えて,これはどこかで線を引かなければいけませんので,15以上の漢字については落とすというようなことも考えられるのかなと思います。ただ,15以上で落としてしまうと,「蹴」が落ちてしまうわけですね。ですから,そのあたりで要望数が多いものはある程度残すというようなことも片一方でにらみながら考えていかないと,また議論が最初のところに戻ってしまうと思うのです。つまり要望局数の多いものは,ある程度拾っていこうというのが最初の前提としてあったと思いますので。もちろん,そういうことを勘案しながら○とか×をつけるということも考えられると思いますけれども,ただ,これまでの流れから言えば,そういったものは既にもう織り込み済みということで考えていけば,先ほど○○委員がおっしゃった10までは,「牙」がありますね。ですから,例えば「牙」ぐらいまで拾うとか,その辺で,もうちょっと話を詰めることができないのかなというふうに思うのですけれども。 ● ほかに御意見はありませんか。○○委員。 ● ○○幹事は,削る要望数10以上117位までは,もう無条件にここで切ろうということですね。 ● そうですね。ですから,そこで決まればそういうことも考えられるのではないか,ということです。 ● ただし,106番の「蹴」は,これはもちろん残すということですね。 ● はい。 ● これは別として,残りはここで切って,投票以前の問題だということですね。 ● ええ。つまり,そういう決め方の方が,これまでの議論にかなっているのではないか,それから分かりやすいのではないかということでございます。 ● 私はそれを支持します。まず第一弾として,「蹴」はたしかもう認められているのでしたよね。違ったのですかね。これはまだでしたか。 ● まだです。 ● もちろん,「牙」もすくうというつもりで申し上げているのですけれども。 ● それと「狼」。 ● そうですね。 ● 今日いただいている資料25というのはデータベースの②ですが,これは削除要望順に掲載をしてあるということで,今の○○幹事のお話から,削除要望の字種がかつて法務局の窓口にどれぐらい要望が出ているのかを調べていこう思うと.データベースの24を見ると便利なのかなと思っていたのですが、最後が150で切れておりますね。その後ろの151は削除要望数7で,150と同じなのですが,150で切られているのは何か意味があるのですか。 ● 事務局の方で,150で取りあえず切って御提示しただけでございますので,申し訳ありません。本来であればすべて御提示すべきではありましたが。 ● 「牙」という字,例えば投票になるとしまして,「牙」という字に○をつけようか×をつけようかと,私が考えるときに,実際には要望数がかなりあるというときに,その要望数を見ることができれば……。それは,このデータベース①と引き合わせればできるのですけれども,それはかなりの手間になりますので。 ● 仮に投票方式ということで対象漢字をある程度のところで決めていただければ,それに沿った形でデータベースを改めて作成して,お送りしたいと思っております。 ● そうですね。削除対象にするべき字種が,かつて人名用漢字としての希望がどれぐらい寄せられていたのかということも同時に分かるようにしてほしいと思います。 ● 分かるようにしたいと思います。 ● あと,最終的に一番いい形になるのが望ましいので,余りこれまでの流れ流れというふうなことにこだわる必要はないとは思うのですけれども,ただ,パブリックコメントに提案をしたときには,専ら常用漢字と認められるか否かの観点からの選定で,漢字の意味については一切考慮しない,これが漢字選定のポリシーですという提案の仕方をして,今度かなり幅広いものについて,その候補となったものの半分ぐらいのものについては意味を考慮して選定し直しましたということですと,全体としての選定の方針は何かということをもう一度説明し直す必要が出てきますね。その辺のところはいかがでしょうか。意味を考慮してというのだったら,ゼロからというふうなことにまではいかないですか。両方を総合的に勘案してということになりますかね。 ● 説明もなかなか難しい面もありますけれども,基本的には「常用平易」という枠の中で一定の漢字を選んで,広く国民の意見を聞いて,その選定される字が人名用に用いられるというそれは,常用性あるいは平易性の判断にも影響を及ぼすだろう。その影響の及ぼし方としては,明らかに名前としてはおよそ使われそうもないような字を常用であるとか,あるいは平易であるとかと,無理して考える必要はないのではないかというのが国民の多くの意見だったということでしょう。   それで,基本的には法律の「常用平易」の枠組みの中で選定はする。そういう意味で一定の基準,使用頻度をもとに選んでいる。しかし,個々の具体的な文字が名前としてどの程度用いられるのか,あるいは名前として平易と言えるかということについては,その漢字の意味を考慮せざるを得なくなるという,まあそんなところではないかと思うのですけれども。 ● この前の会議に欠席したのでちょっと伝え聞いただけなのですけれども,本来,名前にふさわしくない意味を持った漢字は除こうという意見がそれまでの部会であったわけですが,法律の条文が「常用平易」とだけあるから,取りあえず「常用平易」という基準だけで頻度から選んで,意味は取りあえず考慮しないけれども,パブリックコメントの結果を聞こうと,そういうことのように聞いておりますので,これだけの削除要望があったということは,それは受け入れなければならないと思います。 ● その点はそのとおりだと思います。ただ……。 ● その法律の「常用平易」だけにこだわるというのは,我々法律の素人から言うと,よく分からないので。つまり人名用漢字という名前で発表しているわけですから,これは人名として使える漢字であると,国民はとるわけですね。だからこれは当然意味を考慮せざるを得ないのではないか。だから,幾ら法律の条文どおりであるにしても,「糞」とか「屍」を裁判に出して,これを裁判官が認めるとはちょっと考えられないので,そういう意味で,意味を全く考えないで頻度だけで出したということに初めからちょっと無理があったように思います。 ● 木曽の「曽」を始めとして,裁判で幾つか人名用漢字として認定されているものがありまして,あの裁判の判断、判事さんの判断というのは,意味の面ではこれまでは余り言及していらっしゃらないのではないかと思うのですが,例えば今回ある程度削りますよね。何でもいいのですが,一番上の「糞」なら「糞」という字を削って,それが裁判になったときに常用と平易というフィルターはクリアするのだけれども,意味の面でふさわしくないという判断は,裁判所としてはそういう判決をお出しになる可能性というのはあるものなのでしょうか。つまり,我々は今まで意味というのは余り表に出してこなかったのですが,意味というものを法務省の判断として出してもいいものかということをちょっとお考えいただきたいのですが。 ● 法律はあくまでも「常用平易」でございますので,私は裁判官ではありませんが,仮に裁判で争われた場合には,やはり最高裁の決定では意味は考慮されておりません。仮に今回,上位のものを全部落として,ここで,例えば削除要望の14番に「尻」というのがありますが,これは確かに普通人名としては使わないかもしれませんが,地名でも山口に三田尻というような地名もあって,これを使いたい。常用平易ではないかということで争われた場合,「尻」は確かに常用平易ではありますので,裁判官によってはこれを認めるという決定が出ても,戸籍法の規定上はおかしくはないかなと思っております。 ● そうしますと,これを名前として使いたいという申請があって,それが司法に持ち込まれるというのは,言葉が悪いですが,イタチごっこになる可能性があるということでしょうか。 ● 今回,そのようなことがないように「常用平易」というところで,まず,判断して,将来,訴訟になるような事案をできるだけなくそうという考慮をしたものでございます。 ● そうは言いましても,普通の人が余り人名に使わないような字が裁判になる可能性というのは現実問題としては限りなく低いということです。 ● そういう字を裁判所が常用平易だという可能性は,仮にここで落としたときに訴訟が起きて,どうしても使いたいといったときに,これは常用平易だとまでは言わないと思うのですが,今,○○関係官が言ったように「尻」という字になると,これは裁判官によっては,どう見ても常用平易としか言いようがないという判断をする可能性は十分あります。逆に,これを常用平易でないと言って蹴飛ばすのは,決定を書く身としては相当つらいだろうと思います。 ● この前の参議院の選挙のときに,各家庭に公報が配られたのですが,その中で,もちろん候補者の氏名というのがきちんとした登録の名前で出るけれども,各党の自己推薦の名前というのは,実は比例代表だけですけど,地方は調べられない。比例代表だけを私,調べたのです。そうすると,3分の2までの人が自分の姓あるいは名前に平仮名を使っているのですよ。そう大して難しくないのになと思いながらも平仮名を使っている。これは戦後すぐの日本の最初の選挙のときにGHQが,ある県に行って投票用紙を調べた。かなり平仮名があったというような結果があって,国会議員になろうという人というのは,国民の言語能力というものを前提とした表示をしていくわけです。これが本当に常用平易だと私は思っているのですよ。   それに対して,今,最高裁で出たのが木曽の「曽」というもので,しかもあれは筆記体の「曽」の方で,りっしんべんをつけたり,何々をしたりして,常用漢字の中に幾つも入っているようなものである。それを我々どんどん拡大解釈して,常用平易を今考えているのですけれども,できれば,ここで例えば漢字学の専門家を呼んでいるとか,こういうことから言ったら,単なる常用平易というようなことだけでいくのではなくて,意味とか日本人の言語生活とかいうようなことを念頭に置いた形での回答にしていきたいと私は思っているのです。例えば電話で「おたくさまのお名前様をお教え願いますか」とか言うときに,「お尻の尻ですよ」とか,これはちょっと言いにくいことだと思うのですね。   そこらあたりで,私は漢字というのはどこまでいっても意味というものがついて回るものだと思います。価値というものが,ある程度ついて回るものだと思っているわけです。ということをちょっとお願いしたいと思います。 ● この前,「悪魔」と名前をつけた親が最終的には取り下げたわけですけれども,それに対する法律的判断というのはどういうところにあったのですか。意味を考慮したのではないですか。 ● 「悪魔ちゃん」事件では,原則として命名権は親が自由に行使できるとされています。まず原則論は自由なんだというところがありますが,例外的には親権の濫用にわたるような場合や,社会通念上明らかに名として不適当と認められるとき,一般の常識から著しく逸脱しているようなときは,その名前の受理を拒否することができるということでございます。 ● ですから,「尻」も,明らかにかどうかは分かりませんけれども,普通に聞いて,名前に使って社会生活上,その本人が本当に誇りをもって自分の名前を言えるかどうかということは疑問ですからね。 ● ただ,「悪魔ちゃん」事件も字の組み合わせでございます。例えば「尻」の下の18番に「垢」とありますが,これは「無垢」とつければ,むしろ清らかなイメージにもなりますので,なかなか判断は難しいかなという感じはしております。 ● 「無垢」という名前をつけた場合は,ちょっと考えますね。 ● いずれにしましても,投票をして,ふさわしくないものはこの枠の中から外していこうという点は全体の大勢を占めていると思いますので,投票の方式に移りたいと思いますが,ただ,以前,民事行政審議会で投票が実施されたということですけれども,法制審議会では余り投票した経験がないと思いますので,法制審議会における投票について何か決まりがありましたら教えてください。 ● 審議会での投票というと,やはり審議会でやる形になりますので,形としては多分それぞれの委員・幹事の方から,そういうリストについての賛否の御意見を寄せていただいて,それを集計した結果,例えばこれについては賛成何人,反対何人と,そういうものをずらっとつくって,この結果によれば,ここまでの字は削除する。ここからは認めると,そういう案でどうでしょうかというのを諮る,それが正に表決だと思うんです。投票というのは多分,最終案を作るための各委員・幹事の方の意見の表明だと思います。かつ,投票権というと委員しかありませんので。 ● おっしゃられたように,厳密な意味での結論を出すための投票というのは,今ここで議論しているようなものとはなじまないのだろうと思いますので,意見照会的なものとして,委員・幹事の御意見を伺うということですね。会議体では時間的にも出席との関係でもうまくないので,書面を使って意見照会をするという,そういう理解ですね。それを踏まえて最終的な決定は,また審議会の場で行うというような手順にせざるを得ない。   その場合に,ただ,どんな字がいいですかという聞き方はできませんから,ここに挙がったパブリックコメントの結果を前提にして,削除意見の多かったものについて削除すべきと思うかどうか。リストをお送りして○×をつけるということですね。ただ,このリストはゼロから全部やって,ゼロからやり直しというのもまたおかしいわけで,数はどこにするかの御意見を今伺っていたところですけれども,先ほど事務局あるいは○○幹事から100というふうな切り方というのもありましたし,150前後とか200前後とか,これも決め手はほとんどないに等しいと思うのです。そこで一応線を引きましたら,そこまでは本日の資料25のような,これは過去の法務局が要望数だけではなくて,一番右の方には今回のパブリックコメントで出てきた要望数も入っていますので,そういうものも御参照いただいて,やはりこれは削りましょうというものに印をつけていっていただくということになろうかと思います。   変な字が入っているといえば,300でも400でも,こんなのは要らないのではないかと思うのがいっぱいあるといえば,いっぱいあることは間違いないですね。ただ,一部を削除すればあとは賛成というのが多分,1,000近く要望として出ているという,数字にはなってこない支持意見というのも,あるいは支持なのか,どちらでもいいということだけのことなのかもしれませんけれども,それがあることを考えると,余り低いところにおりるのはちょっといかがなものかなという感じもしなくないです。 ● これは事務局の準備にもよるんだと思うのですが,御意見を伺うときに多分,上位の,100なり150なり200なりは,漢字のリストをつくって表をつくって,そこに○なり×なりを記入していただく。それから下の最後の489番までについては,その中から特に削除したい要望があれば,その数字を書いていただくというような形になるのだろうと思うのです。ですから本質的には,その表をどの程度にするかというだけで,御意見を伺うという意味では,削除要望のあったものすべてについて伺うという,先ほど○○幹事からもお話があったような仕組みになるのだろうと思います。   それを切るとすれば,要望数で切って,2けたの117までか,先ほど出た5人以上の204か,そのどちらかではないかなと思うのですが。そこはもう御意見に従って事務局で資料を作るという,そういう格好になるでしょうね。 ● 私の方で皆様の御意見を参考に考えてはみましたが,○○幹事の御意見で,追加要望のところとの対比で見ますと,1位が「掬」で27,2位の「曠」が9でございますので,9以下はある意味,重みがないということであれば,削除要望の方につきましても,○○委員の結論に同じになろうかと思いますが,9の要望数で切ってみればいいのかなと。順位は117以上の漢字についてリストを作成するという方向でやるのが,ちょうど今日の議論の中間あたりの結論になろうかなとも思います。理屈的にも9と10で切ったというところで何となく座りがいいかなと思っておりますが,いかがでしょうか。 ● これもなかなか決め手に欠けるところがあって,要望の方は,先走った話ですけれども,27と9は明らかな段差があるし,2位以下を最初から採用リストの中に入れていれば,これは要らないという意見も出るもしれないような字ですよね。そういう意味で,要望の方は別として,削除の方の線の切り方は,ここは皆さんの御意見で,リストにたくさん挙がっていた方が投票しやすいといえば,多く挙げておくということになりますし,余り数の少ないものまでは,特に必要があるものだけをすくい上げていただければいいので,表としては余りたくさん挙げなくてもいいではないかという考え方もあり得ようかと思うのですが。 ● 今の説明は大変に分かりやすかったです。つまり,入れてほしいという要望が27と9であると。9というところを切り捨てるということで,1ページ目の9,118番以下はちょっと別とする。そうすると,117の要望数10という上のところを材料にすると,こういうことですよね。 ● はい。 ● それで,そこのところで投票をやっていく。ただし,9以下のところでも,これはというものについては我々は書くことができる。だから,117で一たん資料は切ろうと,こういうことで私も賛成します。 ● 1位から9位までは無条件で切り捨てる,それは決まっているわけですね。資料としては10位からですね。投票の場合,先ほどの要望数5まで資料として出していただいた方がいいかなという気もしないでもないですけれども。 ● 資料としては全部出してですね。 ● データベースの形でということですね。 ● 今日のデータベースですと150までですけれども,これは最後までのものにしないといけないと思います。 ● 最後までのものにしてお送りさせていただきます。 ● 資料としてはデータベースとして1番から489番までの形にした,本日の25番ですか,これをそれぞれお届けして,これを見ながら表の方に○をつける,あるいは下の方の順番であれば,その番号を記載していただくと,そういうことになろうかと思います。 ● 118位以下について,これはどうしても削りたいというものは,この表に従って出すという形になりますか。 ● 数を出すということですね。 ● データ的にどういう要望があるとか,そういうものは最後の番号まで整備してお届けするということです。 ● ほかに御意見はいかがでしょうか。○○委員。 ● ちょっと私,大学の方でばたばたしている用事があって,電話で何回か受けておりまして失礼いたしました。大体今,仄聞している方向でよろしいのではないかと思います。 ● ○○幹事,よろしいですか。 ● はい,結構です。 ● それでは,1位から9位までにつきましては,もうこの場で削除決定ということで,10位以下117位ではなくて117番目の文字までは一覧表をつくって○さえつければ削れるという投票用紙を作る。 ● 削る文字に○をつけるのですか。 ● 拾いたいものに○を打つだけでどうでしょうか。 ● それは構いませんが,一たん提示したものから削るというのですから,削るものをという方が,よろしいのでは。 ● 原理的には全く同じことですが。だから下の方は数字を書いていただいたものは削除の要望を書くわけですね。集計するときに,要するに削除数で集計するかというときに,そこで切れてしまうのですよ。ですから削除で書いていただいた方が,要するに10番から最後まで,集計するときに削除数の集計だけで済みますので,投票としては削除で投票していただければ,事務局の間違いは少なくなると思うのですね。 ● ○というのは普通,生かす方向に……。 ● ○でも×でも何でもいいですが,要するに削除するものにチェックをしてくださいという形の表にしておけば,それをどんどんカウントしていって,下の方で数字が出てくれば,その数字をカウントする。そうすると,それぞれについて一遍でできますので。それを逆にするともう一回ひっくり返さなければいけないものですから,ちょっと大変にので。 ● 記号をつけるのであれば×の方がいいですね。 ● ×でも○でも何でもよろしいかと思います。疑義があればまた個別に先生にお伺いさせていただきます。 ● もう一つお願いなのですけれども,先ほど9位の「妾」までは今日決定するということですけれども,今日決定するというのを,もうちょっと下までいけないものなのですか。例えば9位ではなくて,上から見ていくと18位の「垢」というのは一つだけ例外が出てきましたけれども,ずっと見ていきますと,先ほど45位の27というところに○○幹事は線を引かれたのですが,ここぐらいまで一挙に,この場でいけるのではないかと思うのですけれども。何か,この字は残すべきだというものがあるのでしょうか。それこそ,漢字の大家にお伺いするのですけれど。 ● 今の○○委員の御意見に賛成です。 ● 18番は無垢というときの使い方をしますよね。 ● 先ほどそれは言ったのですよ。だから「垢」というこれだけは別として,これは後の投票に回すとして,あとのものを45番まで切ってしまうということは誰も異存はないのではないかと。何か○○委員におありでしょうか。 ● 先ほど申し上げたように,意味的にどうかというのは使い方次第によるということと,例えば「尻」という字が名前に使われるとも思わないのですが,常用平易かどうかと争われたときに,例えば「尻」であるとか「仇」であるとか,この辺になると,これが常用でも平易でもないというのはなかなか,「叱」という字もありますけれども,どうかなということと,意味的に上の方とは大分違う字も入ってきていますので,やはり御意見を伺った方がよろしいのではないかなとは思うのですけれども。 ● 事務局として,本日いらっしゃっていない先生もいますので,その御意見もお伺いした方がいいとは考えております。 ● 三けたの方の反対のある字は,今日お見えでない委員の方々を含めて決をとっても,多分そうなるだろうということで,ここを改めて投票するまでのことはないのではないかということを申し上げているわけで,やはり御出席でない委員の方々は単なる数だけではなくて,御意見を開陳する機会もないわけですので,余り決めてしまうのはいかがかと思います。いずれにしろ,一手間で全部決まるのなら別なのですが,最終的には御意見を伺った上で要約して最終案を決めて決をとらなければならないとすると,全委員が出席しているわけではない今日この場で余り先まで決めるのはどうかなということでございます。 ● 「尻」というのは,常用性は画数でおっしゃるんですね。 ● 画数もありますし,名前にふさわしいかどうかといえば,それはふさわしいとは思えませんけれども,字としての常用平易さということを言ったときに,かつ具体的などういう使われ方があるのか分からないものですから。例えば無垢という言葉が出たように,「尻」という字が入っていても,その名前全体として必ずしもそうおかしくないという使い方があるのかもしれないという,そういうことを申し上げているのです。ですから,そこまで含めると,少なくとも各委員・幹事の方々の御意見を伺った上で採否を決めるべき字ではないかなと思います。そう一律に,何十人の反対があるからというだけではちょっとどうかな,少なくともほかの委員の方々もいらっしゃるところで最終的には決めた方がいいのではないかと思います。 ● 投票という方向で動いていると思いますので,例えばほんの一例ですが,114位に庇護するの「庇」という字がありますね。要望数10ですから,恐らく投票のターゲットには入るのだろうと思いますが,賛否が拮抗した場合,投票総数が例えば24であるとしまして,11対9とかというようなときになったときに--圧倒的にだめだというものがたくさん出てくるだろうと思いますが,拮抗する場合が恐らく考えられると思うのですね--そういうときには,どのように次の手順をお考えでしょうか。 ● それは多分,どうですかね,その結果を見てまた御審議いただかなければいけないと思うのですけれども。その審議の結果も,状況が変わらなければ。 ● 投票の結果をもう一度検討して,最終的な判断はそれに基づいてということになるわけですね。 ● はい。特に今日御欠席の委員は,一切制限しない方がいいという御意見をかねがねお持ちでもいらっしゃいますので,削除は9までで,それ以下は改めて決定ということでお願いしたいと思います。 ● 次回ですけれども,私どもが×を寄せて,それを集計していただいて,この場で,また話し合いでということですね。 ● はい。 ● 次回は8月25日の水曜日を考えておりまして,そのときには答申案を御了承いただきたいと思いますので,それ以前の段階で各先生方に御了承を,事務局の方から回らさせていただいてということを予定はしていたのですが。 ● 結果にもよるのではないですか。 ● ただ,事務局としては御意見をいただいて過半数の削除意見について落とすことを案として考えておりますので,拮抗した場合でも過半数は定まりますので,そこはもう一律に切ってしまうという案を提示させていただくつもりでございます。 ● それを原案にして,その原案を次回の会で承認できるかどうかということですが。 ● できるだけ回り持ちではなくて,前も8月中旬の予定があったと思うのですが,私はちゃんとした会で決めていきたいと思っているのです。   それと,私どもが寄せた×については,欄があって,甲斐はこれについては反対しているというような,そういうリストをいただけるのですね。 ● 各委員・幹事ごとの賛否を明らかにした資料ということですか。 ● はい。 ● それは,そういう御要望であれば,事務局の方で準備すると思います。 ● それでは,先ほど申し上げましたような手順で,委員・幹事の皆様の御意見を伺わさせていただくということを早急に事務局の方で準備をいただくということで,取りまとめまでの期間も限られておりますので,御返答の方も早目によろしくお願いいたします。 ● 字種だけの問題として考えるということですね。字体の問題は次の議題であると思いますし,かぶるかどうかは分かりませんけれども,字体の問題はこの場合除外して,字種の問題として採否を考えるということですね。 ● はい。 ● もう一つすみませんが,できればメールでいただける方がこちらの作業が楽なのです。 ● では,メールと紙ベースと両方,念のために送らせていただきます。   それでは,字種の選定については今申し上げたようなことで,ここで一たん休憩させていただきます。            (休     憩) ● それでは再開させていただきます。   次のテーマが「追加する字種について」でございますけれども,これにつきまして事務局からまず説明をいただきたいと思います。 ● 「追加する字種」でございますが,先ほど○○幹事からもお話がありましたとおり,「掬」の字について特に検討をいただきたいと思いますが,部会資料24のデータベースの①の20ページを御覧いただければと思います。   追加要望のあった漢字を上位から五つほど示しております。「掬」につきまして,要望数が27と,ダントツでございます。この「掬」は第1水準で出現順位が3160。要望が1あったものでございます。ですから,出現順位的に見てもいわば次点扱いになっていた字でございます。今回,読売新聞の記事がきっかけではありますが,ダントツの要望数でございますので,ここを加味した場合に第1水準の漢字について3013位以下の漢字であっても,要望6以上であれば今回は採用したということでございますので,それに準ずるものとして考えることはできないかと思っております。この点について特に御議論をいただきたいと思います。 ● では「掬」を採用してはいかがかという原案でございますけれども,御意見をいただければと思います。--よろしゅうございましょうか。   「掬」以外の文字についていかがでございましょうか。○○委員の御意見の中には,ほかの字もという御意見が入っていたように思いますが。 ● それほど積極的な意見ではありませんが,後で字体のときに説明したいと思います。 ● 分かりました。   それでは,追加する字種といたしまして,「掬」を採用すると。それ以外については特に採用はしないということでよろしゅうございますか。   どうもありがとうございました。それでは,「字体の選定について」の説明をお願いいたします。 ● 次に,項目2番の「字体の選定について」でございます。字体につきましては参考で掲げさせていただきましたが,第2回部会において大枠の方針を二つほど示させていただきました。   まず,候補の例示字体が表外漢字字体表に掲げられている場合には,その表外漢字字体表の字体を選定する。そして候補の例示字体が表外漢字字体表に掲げられていない字体の場合は,総合的に考慮するという方針で一応の了承をいただいたと記憶しております。基本的には表外漢字字体表を採用しているものでございますが,ここに掲げている任侠の「侠」,「痩」,「噛」,隔靴掻痒の「掻」,芦屋市の「芦」,「叱」につきましては,表外漢字字体表であっても簡易慣用の方の字体を今回パブコメで掲げたものでございます。この字体を表外漢字字体表の印刷標準字体にするかどうかについては,まだ議論がされておりませんでしたので,この点について御議論をいただきたいと思います。   まず,(1)でございますが,これは任侠の「侠」ですが,候補の例示字体が表外漢字字体表には掲げられてはおりません。ただし,異体字の手書きで書いておりますが,「(〓人偏+夾)」の方がJIS第3水準の漢字ですが,表外漢字字体表の印刷標準字体でございます。印刷標準字体の方は出現順位が3145位でございます。他方,今回パブコメに掲げた「侠」の字体は順位がついておりません。ということであれば,字体選択のよりどころを示した表外漢字字体表の趣旨を尊重するということからすれば,印刷標準字体の手書きの方を採用するのがいいのではないかと考えております。   次の(2)のグループでございますが,これは候補の例示字体,パブコメに掲げた字体が簡易慣用字体でございます。他方,異体字が,手書きで書かれておりますが,それが表外漢字字体表の印刷標準字体でございます。これもいずれを採用すべきかについてまだ御議論いただいておりませんが,「やせる」と「かむ」,それから「ソウ」につきましては,いずれも印刷標準字体の方が順位が上位でございますので,これについては印刷標準字体の手書きの方を採用するのがいいのではないかと思います。   もっとも,「あし」につきましては,異体字の印刷標準字体よりも,芦屋市の「芦」の方が,簡易慣用字体の方が順位が上位でございます。しかも,要望が3あります。他方,印刷標準字体の方は要望がございません。しかも,平易性から言うと「芦屋市」の「芦」の方が明らかに平易かなとも思いますので,こちらについては例外的に印刷標準字体ではなくて簡易慣用字体の「芦」の方を採用するのがよかろうかと思っております。   次に,(3)でございます。「しかる」につきましてはちょっと分かりにくいのですが,字体の差ではなく,これはデザイン差でございまして,くちへんの横の「七」が書き順の向きが違っているものでございます。印刷標準字体の方は「七」と書いているものでございますが,パブコメに示した字体の方は逆の向きの,「七」の第一画目が右から左に来ているものでございます。これもいずれを採用すべきかというところでございますが,デザイン差であるとのことであれば,印刷標準字体の方を採用して問題はなかろうかと思っております。 ● それでは「字体の選定について」という項目の(1)「(〓人偏+夾)」の字でございますけれども,これは印刷標準字体,JISの第3水準でありますけれども,JIS第3水準の方を採用するという御提案でございます。御意見を伺いたいと思います。   御異議はございませんでしょうか。   それでは,「キョウ」という字につきましてはJIS第3水準の印刷標準字体を採用するということで御決定いただきました。   (2)番目に4文字ございますが,そのうちの「あし」以外の3文字につきまして,印刷標準字体を採用するという御提案でございますけれども,この点についての御意見をいただきたいと思います。これも御異議ございませんでしょうか。   それでは,この3文字につきましてもJIS第3水準ではありますけれども,印刷標準字体を採用するというふうに御決定いただきました。   次に「あし」でございますが,くさかんむりに上の方のが「ノ」となっている「戸」をあわせた簡易慣用字体を採用することでよろしいという御提案でございますが,この点について御意見をちょうだいしたいと思います。これも御異議ございませんでしょうか。   それでは「あし」につきましては,簡易慣用字体を採用するということで御決定いただきました。   (3)の「しかる」という字でございます。これは漢数字の「七」と「化」のつくり部分でしょうか。これはデザイン差でしかないということで印刷標準字体は……。 ● 手書きの方です。 ● 手書きの方ですね。こちらの方を原則形にするということでございますけれども,よろしゅうございますか。   御異議ないようですので,これも御決定いただいたということでございます。   字体のところで御発言のある方はいらっしゃいますでしょうか。 ● この間,この場ではなくて,主としてコンピューターで表示する作業に携わっているエンジニアの方々との会合がありまして,そこで問題になったのですが,今日の資料番号24の「漢字データベース第6版①(パブコメ後)」の一番最後の20ページの571番「梛」という字ですが,法務省がホームページにお出しになったパブコメには,これはパソコンで表示できる字形なのですが,つくりの方の「那」という字の左側の部分の横線2本が右に飛び出ている形を画像で貼り付けていらっしゃるのですね。そのことに関して,エンジニアたちから,JISの字形と違うというような指摘がありまして,今日ここに出ているこのデータベースの字形だったら,これでよろしいのですが,その辺はパブコメでお出しになっていたビットマップの画像のものは,これに戻されるということで理解してよろしいのでしょうか。 ● 掲載したもののコピーはございますでしょうか。 ● 参考配布をしております。 ● 一番最後,第2水準以下というところの3段あるうちの真ん中の段の「苺」のすぐ下です。ちょっとフォントが一回り小さくなっていますよね。右の方に2本ぽんぽんと飛び出ていますね。これをめぐって,主としてコンピューター関係の方々から,これを表示されるのは困るという指摘があったのですが。 ● これはちょっと私もよく分かりませんが,デザイン差の部類なのでしょうか。 ● ですから,データベースで,これは多分パソコンのエクセルでおつくりになっている表と思いますが,571番のところに使われている「梛」という字はJISのフォントをそのまま使っていらっしゃると思うのですね。それでいいのではないかということです。わざわざ右側に2本ぽんぽんと飛び出す必要はないのではないかというふうに思うのですが。 ● ○○委員の今おっしゃった同じ会議に出ていたものですから,そこでもちょっとお話ししたのですけれども,これは実は事務局の方から相談を受けまして,ちょうど6月初めですかね,ワーキンググループがあって,そのときに実はこの「梛」という字は表外漢字字体表にも入っていないのですね。入っていない字については基本的に漢和辞典等で正字体としている,つまりいわゆる康煕字典体と言われているものを原則的に標準と考えるという,そういう記述がこの中にあるのです。   それで,これについては漢和辞典,例えば大漢和辞典とか,そういったところでは実は出ている方のものを親字として掲げているというようなこともあって,基本的に表外漢字字体表の字体の考え方によるというのが大原則としてあったものですから,○○幹事などともお話しして,やはりこの段階では表外漢字字体表の考え方に合わせて漢和辞典等で--大体どの漢和辞典もそうなっています--出ている方をとっていますので,それに合わせておいた方がいいだろうということで,出る方を出したということなのですね。   ただ,字体の問題そのものとしては,今,○○委員がおっしゃったように,大きな問題ではないので,ここで表外漢字字体表の1022の本表にも入っていないということもあり,これは出ない方がいいのだろうという意見が強ければ,私は別に反対はいたしません。 ● 現用の平成明朝をそのまま使っても別に問題はないではないかということですよね。 ● ええ。 ● 多分これが採用されても,今後の戸籍事務の中ではデザイン差はどちらも同じものとして受け付けるということになるわけですね。 ● はい。であれば,もう出さない方向でやっていいのではなかろうかとも思いますが。 ● すり替えるというのは言葉が悪いのですけれども,平成明朝で印刷してしまっても別に問題はないだろうと思います。 ● JISの方が標準化していてよろしいということですね。 ● 余談ですが,大辞典というものを見ますと,見出しは突き出ている。熟語のところでは小さい活字なのですが,出ていないということなので,一般的にどちらでもよいのだろうと思います。 ● ○○幹事,よろしいですか。 ● はい,結構です。 ● ほかに,字体に関連して何かございましたら。○○委員。 ● 私のペーパーをちょっと御覧いたたぎたいのですが,1ページの2のところで,「字体の国語施策との整合性について」ということ,どういうふうに発表するかということなのですが,今までの人名用漢字は一字種一字体の原則を守ってきたわけですね。ですから,常用漢字表,人名用漢字表,表外漢字字体表に掲げられた字体は,国が定めた標準字体として,公用文,教科書,新聞,辞書など主要出版物で採用されています。国語審議会が表外漢字字体表の漢字選定をしたときに,人名用漢字を常用漢字と同様に扱って,表外漢字の字体の審議の対象外としております。ということは,人名用漢字も国語表記上の標準字体と見なして,これはこの字体でいこうというふうに表外漢字選定に当たって国語審議会は考えたということです。   したがって,現在,教科書,新聞,辞書などは人名用漢字が追加される度に,使用字体を人名用漢字の字体に合わせて変更してきています。例えば1976年,「槙」という字が,いわゆる略字形で人名用漢字に追加されて以後は,『広辞苑』とか『大辞林』を始め多くの辞書が,それまで使ってきた「槇」の使用をやめて,人名用漢字の字体に合わせてきました。   それから,1990年に石川啄木の「啄」が採用されたときに,人名用漢字では「啄(点がない)」でしたから,ほとんどの辞書が,新聞も含めて人名用漢字の「啄(点がない)」ものに変更しております。   ところが,今回,一字種一字体の原則が崩れたわけですね。発表したものを見ると,「遙」「槇」あるいは「凜」,こういうものを,「遥」のように既に人名用漢字に入っているものの旧字体といいますか正字体を採用した。「凜」と「凛」にしてもそうです。   そうなると,現在,人名用漢字を国語表記のよりどころとしてきた新聞,辞書,教科書などは,どれを基準としていいか分からなくなるという批判が起こっているわけです。   表外漢字字体表の前文で,教科書や各種の辞典類においても,人名用漢字を除く表外漢字の字体は,いわゆる康熙字典体を原則としている。したがって,表外漢字に常用漢字に準じた略体化を及ぼすことは新たな略字体を増やすことになり,印刷文字の使用に大きな混乱を生じさせることになる。一般の文字生活の現実を混乱させないという考え方は,常用漢字の制定過程から一貫して国語審議会の採ってきた態度である。この考え方は,逆に常用漢字の字体をいわゆる康熙字典体に戻すことを否定するものである。つまり社会的に極めて安定している常用漢字の字体については,動かすべきではないと考えると述べています。   こういう表外漢字字体表の考え方は,新聞・出版界でもおおむね同意するというか,それに従って現在まで来ていると思うのです。   ところが,今回発表された人名用漢字表は,そういうふうで,同じ字種についての異体字を複数,同じバランスでつけ加えました。そこで,辞書界などでは標準とする字体というものが人名用漢字では示せなくなってしまったのではないかと危惧しています。人名用漢字表を全く国語表記の基準と関係ないものとして無視するというなら,また話は別ですが,やはり人名というものも漢字であって,日本の文字の一つでありますから,今までと同じように,できれば規範性といいますか,標準字体はこれであるということを示してほしいというのが新聞,出版界の希望ですね。   そこで,一字種一字体の原則を守って,かつ標準字体を示すとともに,名前をつける側の要望に応える方法はどうしたらいいかということなのですが,私の試案としては,現在の人名用漢字許容字体表の形式を踏襲することはどうだろうか。つまり常用漢字の異体字は許容字体表に加えてしまう。ですから,今,「瀧」が人名用漢字の方に入ってしまっていますけれども,これは従来の許容字体の常用漢字の字体の「滝」の中に,括弧して許容字体とすれば,今までとの整合性は保てるわけですね。   こういう,現在の許容字体表と新たに付け加えた旧字体あるいは正字体は成り立ちが違うということで,当用漢字の時代にさかのぼれば確かにそういうことは言えるのですけれども,もう今,当用漢字字体表もほとんど消えてしまっている状況で,常用漢字一本になっておりますので,これは一般には分かりにくい。つまり,通用字体と旧字体の関係は全く同じであるのですから,今の許容字体の考え方に基づいて許容とした方が,標準字体は常用漢字の字体であるということが明らかにできるということで,国語施策との矛盾が生じない。   それから,「嶋」「蹟」「峯」などの異体字も許容異体字として,本来の常用漢字の「島」の異体字として,人名に限り認めるという形にしたいと考えます。   それから,大阪の「阪」とか「堺」のような,この辺のところは漢和辞典的には同じ字であるかもしれませんけれども,表外漢字字体表でも一応別字として記載されていますので,これは親字として標準字体扱いしてもいいのではないか。   同じような考え方で,2番目で,現行の人名用漢字の異体字も許容字体表に加える。つまり「遥」と「遙」,「槙」と「槇」というものの関係は全く,今の許容字体と同じ形であるわけです。   3番目として,今回,一字種二字体を採用したものは表外漢字字体表に従って,「棲」と「栖」の場合は別字としているから両字とも親字とする。「(〓示+爾)」と「祢」は,「(〓示+爾)」の方が印刷標準字体ですので,こちらの方をとる。「檜」と「桧」の場合は,表外漢字字体表には正字の方しか採用していないので,「檜」を標準字体とする。   そして先ほど説明のあった「侠」とか「痩」とか,この辺は印刷標準字体,「芦」は簡易慣用字体に従うという方針は,どちらも一応表外漢字字体表に準拠しているということで同意できるのですけれども,先ほど申しましたように「痩」「噛」「掻」は,私は人名用漢字としては要らないのではないかと思っております。   こういうことで,不適当な漢字を削除すれば--字体が問題ですから削除とは直接関係ないのですけれども,先ほど休憩前に削除案が出ましたように,結果として,ある程度削除数の漢字が増えれば--「掬」のような追加希望字種を加えてもいいのではないか。   私は基本的には人名用漢字が余り多くなるのは賛成できないのですけれども,理屈として「榮」を採用して「螢」を採用できないというのは,もしこれから「螢」を使いたいという裁判が起こったときに,果たして説得力があるかどうかということもありますので,この辺のところは許容してもいいのだろうとは思いますが,特にこれは積極的な主張ではありません。   いずれにしても,今回の人名用漢字を今までと同じように字体の規範とするという要望に応えるためには,標準字体を確定した上で,人名に限って異体字を許容するという方式を考えていただきたいと思うわけです。ですから,現在組み込まれてしまっている,現在の人名用漢字の法律条文とどういう具合にうまくさせるかということは専門的な検討が必要でしょうから分かりにくいのですが,新聞発表などでは,つまり一般には以下のような簡単な表示ができるのではないかと思っております。つまり標準字体を一字決めて,異体字を括弧内に示し,前書きで以下のような注記を付ける。   「人名用漢字は,これまで常用漢字表,表外漢字字体表とともに字体の標準を示してきたとされている。今回,同一字種に異体字を採用したことで,字体の基準が混乱するという批判に応え,異体字は括弧内に示すことにした。括弧内の字は標準字体ではないが,人名には使用できるものである。」というのが私の提案です。 ● 大きく項目が二つに分かれて,今「螢」のお話ですが,これは余りこだわらないというお話でしたけれども,改めて追加の提案はないというふうに理解すればよろしいのでしょうか。 ● 私は提案はしないのだけれども,一般国民の中には,これだけ,いわゆる旧字体が「萬」にしろ「實」にしろ認められましたよね。そうなると,何かの拍子でそういう希望が出てきた場合に,非常に説得性が少ないかなというふうに思っております。だから私は,常用漢字は常用漢字の通用字体でいくべきで,本当は名前でもそれに統一したいのが個人的な考えですから,余り旧字体を増やしたくはないので,積極的ではないということです。 ● それでは「螢」の追加という点については御提案はないという前提でよろしゅうございますか。 ● 前,○○関係官から,○○委員が「螢」を希望しているということを聞いて,どこかで出るのかなと思っていたのですが,今日ちょうど出されたので,一回ここで検討するのがよいように思うのですけれども。 ● パブリックコメントではたくさん出てくるかなというふうに思っていたのですが,3件程度となっています。 ● パブリックコメントではそれほど多くの件数が出ておりませんでしたので,27件ぐらいあればとは思いますが,ずっと件数が少ないですので,なぜ「螢」だけかということもありまして,特に本日御議論いただく予定とはしておりませんでした。 ● 「掬」が急にあれだけの数になったのは,読売新聞がかなり大きく取り上げましたので,その影響があったと思うのです。ですから,これは想像で,実際にはやっていないから何とも言えないけれども,仮に「螢」を使いたいという人がいて,それが新聞に,もしこの期間に取り上げられたら,かなり出てくる可能性があったと思います。これはもう仮定の話ですが。 ● 「螢」につきましては要望自体も確かなかった字でございます。「掬」は1件ではございましたが,あったというところは違いはあろうかなと思っております。 ● ですから,常用漢字の字体が,もう「蛍」として一般化して,各国民がそれに納得しているのであれば.むしろ私ども望むところでありますから,それはそれでいいのですが。 ● 分かりました。それでは,本日のところはこれを個別に取り上げることはしないということで,ただいま事務局から説明のありました人名用漢字別表への掲げ方の問題ということになりましょうか。この点について事務局から説明をいただきたいと思います。 ● 本日の項目で言えば「その他」のところになろうかと思いますが,今,○○委員から御提案もありましたが,基本的には戸籍法の上では人名用漢字が字体の標準を示したものではないと考えております。法律の文言を見れば,どこにもそのような規定はありません。あくまでも人名用漢字というのは戸籍に記載ができる,戸籍に載せることができる字の集まりでございます。ですから,これを標準だ,どうだというのは,出版業界などがそう思っているだけにすぎず,法律上は標準を示すというものではないというふうに考えておりますので,掲げ方につきましては十分事務局としても意見があるものではありませんが,もし戸籍法の条文を忠実に考えるのであれば,別表にそのまま淡々と載せていくだけとするのが,法律的には最も忠実な掲げ方になろうかなとは思っております。 ● 確かに今,○○関係官がおっしゃったとおりだと思うのですけれども,ただ,実態は○○委員がおっしゃったように,これは前々から,これも何度も言っていて恐縮なのですけれども,要するに人名用漢字というのはすごく重く扱われているのですね。何日か前の朝日新聞でも,これはもう実質的に常用漢字を広げてしまったのと同じだと。本来その仕事は文化庁の国語課だなんていうことで,我々も複雑な思いでその記事を見ていたのですが,そういうような意見は実は随分出ているのですね。   これは何かというと,そこでどこがやるのかはともかくとして,人名用漢字というのはそれだけ重く扱われてきた。昭和26年に最初に92字,人名用漢字ということで出て以来,これが世の中の言い方として正確ではないのですが,「政令漢字」というような言い方で,何か常用漢字,当時は当用漢字字体表ですけれども,それに近いようなものとして扱われてきて50年たっているというその重さというものがあるのですね。ですから,これも読売新聞だったと思いますが,「遥」と「遙」という二つの字を掲げて,表外漢字字体表でも実は,○○委員の資料で言いますと,「遥」という今の人名用漢字の字体と,坪内逍遙の「遙」というふうに旧字体を使ったりしますけれども,これが今回両方入っている。そうすると,表外漢字字体表をつくったときには,書いていらっしゃるとおり,人名用漢字については常用漢字と同じように世の中が使っているので,もう人名用漢字の字体を標準としましょうというふうにはっきりうたっているのですね。ですから,漢和辞典などでもそういう扱いをしているわけです。   ところが今回,それの旧字体が同じ人名用漢字に入ってくると,同じ人名用漢字という意味では並び立つわけですね。そのときに,既に人名用漢字であるがゆえに,表外漢字字体表の対象から外しているわけですから,そこが二つ同じ人名用漢字という重さになると,一体どちらが標準なのかというところが非常に困るわけです。ですから,出版界とかそういうところでは困るという話です。   ところが木曽の「曽」も実は似たようなところがあるのですけれども,あれは例えば同じ人名用漢字になっても,同じ人名用漢字という資格の中で,片や印刷標準字体で,片や簡易慣用字体というものがありますから,強いて言えば,そこで重さがある程度判断できるということがあると思うのですね。   やはり一番考えなければいけないのは,字体については異体字が使われてもちろんいいのですけれども,標準字体というところが一本筋が通って,字体のルールとしてそこがきちんとないと,今はともかくとして今後長い時間たてばたつほど,その辺のところは非常に困ってくる。漢和辞典などですと,人名用漢字になると,わざわざ○人マークというものをくっつけて,親字に大きく載せるようになるわけです。そうすると,「はるか」については二つ並ぶ。それから今回常用漢字については,常用漢字の通用字体が挙がっていますけれども,それの旧字体がその横に,例えば人名用漢字として載るなんてことになると非常に困るわけですね。   それから,漢和辞典の方でも,今までのものと,一字種一字体という原則と違ってくるので,私が一番恐れているのは,漢和辞典ごとに編集方針の違うものが出てきてしまうのではないか。そうすると,ある辞書の扱い方と別な辞書の扱い方で違ってくるなんてことになると,学校教育などで漢和辞典を持ってこさせて,そこで例えば指導するなどの場合,困ったことが起こってくるのではないかとか,そういうことを気にしています。   現に私のところにも,出版関係だとか,新聞では校閲関係の方とか,そういったところからその辺について,異体字が使用されることはともかくとしても,どちらが標準か,正に○○委員が先ほどおっしゃった標準性というところをきちんと確保してほしいということがありますので,できればそこは,○○関係官がおっしゃったことは気持ちとしてよく分かりますけれども,50年間の重さということを考えると,ここでそれを乱すようなことは避けないと,これは人名用漢字だけの問題にはとどまらないというところは是非考慮していただきたいという意味で,○○委員の御意見に私も全面的に賛成いたします。 ● これは多分,人名用漢字別表へどう掲げるかという問題ですから,本来の字種,字体の選定という項目からは少し外れています。事務局で調整すべき課題なのかもしれませんけれども,せっかく御専門の先生方がお集まりでいらっしゃいますので,十分に御意見を伺って,それを参酌して最終的な人名用漢字別表をつくっていかなければいけないと思いますので。 ● もう一点確認なのですけれども,途中段階では一字種一字体の原則を基本的に維持するということは,たしかこの部会の共通認識になっていたと思うのですね。新聞によってはもう一字種一字体の原則をやめたのだとか,それを今回改めたのだなんて,そういう報道をしているようなところもありました。しかし,この部会の中では,原則としてはそうなんだということが確認されていたと思いますので,その辺からも,正に今○○委員がおっしゃったように,ある面で技術的な問題だと思いますので是非御配慮いただきたいなというふうに思っております。 ● 結果的に「遥」と「遙」,「檜]と「桧」を同じように並べると,一字種一字体の原則を崩したと当然見られてしまいますので,先ほど表外漢字字体表にあるものはそれにするという形でやっているのであれば,やはり何らかの標準字体を示して,異体字を別にするような形で発表できないかというふうに思っております。 ● 私も今のお二人に賛成でして,淡々と表示するだけではなくて,是非常用漢字表というものと人名用漢字というものの整合性を考えて,そして私どもが思っているのは,日本の国民の言語生活の整合性ということであります。そこのところへの配慮を十分にしていただきたい。私どもが呼ばれているのはそういうところもあるのではないかというふうに思っているのですね。したがって私は,今日の○○委員のこの提案に全面的に賛成するわけです。一字種一字体というところで,括弧に許容ということを扱っていくことを是非ともお願いしたいと思います。 ● 私も全く同意見で,先ほど○○委員の説明が,無用の混乱を避けるという意味でも大変結構だと思いますから賛成です。 ● 私は素人ですので教えてもらいたいと思っているのですが,常用漢字について今度異体字が採用される。常用漢字というのはオフィシャルにあるものですから,常用漢字と人名用漢字として採用される異体字の関係というのは,従来の許容字体表に掲げられている字と本来の字との関係は非常に近い関係かなというふうに思うのですね。ただ,現行人名用漢字の異体字とか,新たに二つの字体を同時に採用するというものについて,これはどちらが親字で,片一方はそれのいわば括弧書き的なもの,異体字だという扱いは,逆にここで決めるのは,審議会なり役所なりの役割からいくと,それこそ越権的で,人名用漢字の種類を決めるところが漢字としての主従みたいなものを決めているというのは,ちょっと越権である。ここは人名用漢字としてどの字が使えるかだけを決めた。それを国語的観点から,親字とそれの異体字というふうなことは,むしろ国語審議会なり文化庁でしょうか,そういうところでこれに連動して,本来の役割分野で決めていただいた方が,私どもは頭の整理としては分かりやすいかなという気がするのですが。 ● そうですね。ただ,今のお話ですと,もう10月には使えるようになるという話がありますよね。ですからもうそこから世の中は動いていくわけですね。動いていくときに,その段階でもう既にそういう重みづけがきちんとなされていないと,だんだん時間が経てば経つほど混乱していくと思うのですね。   それで,今,○○委員がおっしゃったように,字体の議論をするということになると問題ですけれども,実はここに表外漢字字体表があって,基本的に常用漢字の字体,それから当時の人名用漢字,このとき285字ですけれども,それについてはそれが標準だということは明確に述べているわけですね。そしてそれ以外の字についても考え方がきちんともう述べられています。ですから,今回のものについてもすべて表外漢字字体表で示されている考え方に基づけば,おのずと実は字体の重さというのはすべて決まってしまうのですね。ですから,新たにここで決めることではなくて,世の中を混乱させないために,字体の標準である表外漢字字体表の考え方に従って,こういうふうな形で示したということであれば,ここで新たに決めるということはありませんので,むしろそういう形で示していただいた方が,世の中の方の受けとめ方としても分かりやすいのではないかというふうに思います。 ● 字体の問題というのは大変難しいのですが,木曾の「曾」の略字体である「曽」が,裁判所の判断によって入らざるをえ得なかったという事態が起こったわけですよね。それが今回の見直しのきっかけになっているわけで,「曽」を人名用漢字として認定するというのは,外部からの圧力というのは変な言い方ですけれども,それがまず至上命題として法務省に来て,それによってこういう委員会ができた。上から与えられた,アプリオリに与えられている字体は決して,いわゆる正字体ではないわけですね。それを人名用漢字に入れなさいという至上命令があったときに矛盾が起こるわけですね。   私も漢和辞典の編集をしたことがありますので,表外漢字字体表の選定にも入れていだたいていましたのでよく分かりますけれども,人名用漢字というのは,ある意味では一人歩きして規範的な位置づけを与えられていたというのが出版,新聞の多分,常識だろうと思います。ところが「曽」という略体を上からどーんと与えられたときに,その規範というのはいつまで持ちこたえられるのかなというのは,私にとってはかなりの疑問です。   この際,人名用漢字というのは何ぞやということを定義するのは非常に難しいだろうとは思いますけれども,最も規範的な漢字の研究の結果,少なくともこれが最も正規な字体ですというふうに認定できるものではないだろうという気が……。私は「曽」から,その原則が崩れているのではないかという気がします。そこを今回の発表でどのようにするかというのは,かなりナーバスな問題になるのではないか。今は国語審議会はありませんし,では人名用漢字の一つの字種に関して二つの字体がある。どちらが正俗と決めるかというのは,この組織の仕事ではないだろうという気がするのですね。ではどこがそれを決めるのかというと,それを決められるところは今はないのではないかというのが正直な感想です。字形の正俗を人名用漢字に委ねるというのはちょっと違うのではないかというのが,私個人の感想です。 ● これはちょっと質問なのですけれども,木曽の「曽」が最高裁で認められましたが,あれはどうなのですか。「曽」というのは確かに簡易慣用字体という形ですね。要するに略字体ですけれども,あれが人名用漢字としてということなのか,「曽」という略体が使えないことがおかしいから,使えれば良いという話なのかということが一つあるのですね。つまり,「曽良」という名前をつけたいという話だったわけですね。ですから,使えないことが一種,違法状態であるというそういう判断だけであれば,要するに使えればいいというふうにも逆に言うと言えるわけですね。だとすれば,例えばですけれども,あれは今人名用漢字に入りましたけれども,康熙体の方が印刷標準字体で,略体の方が簡易慣用字体なわけですね。例えば9月にたくさんの,要するに500ぐらいの字がどーんと人名用漢字に入るわけですね。そのときに整理し直してしまって,あれは要するに使えればいいのだということであれば,印刷標準の方の,例えば「曾」が出ていて,括弧の中に略体が入っていて,そういう形で略体の「曽」が使えるということであれば,最高裁の言っていることに反したことにならないということであれば,そういうことも含めてあるのかなというのが一つあるのですね。   それから,○○委員がおっしゃったことは全くそのとおりだと思いますけれども,ただ,そうは言っても,字体の問題というのは日々起こっているわけで,それから,いよいよこれが問題になれば,また○○委員などに入っていただいて,国語審議会の後の国語分科会というのがありますから,そういったところで議論になるのかもしれませんけれども,ただ,それをやるためにはまたかなりの時間が,当然そのときにはここにいらっしゃる○○委員とか○○委員とか,皆さん入っていただくことになると思うのですけれども,それをやるためにはやはり時間がかなりかかってしまうのですね。つまり,議論をし始めてから結論が出るまでにも時間がかかりますから,その間に字体の問題について非常にばらばらになってしまうと,字体の問題については私も表外漢字字体表を担当してきましたから,ある面で言うと,きちんとした物差しがないと,世の中は非常に困ったことになるということは身に染みて感じておりますので,ですからできればやはり,もう出るときから,ある一定の線で出していただいた方が,世の中のためにはなるのではないのかなというふうに思っています。 ● 今,○○幹事がおっしゃったように,常用漢字表はもちろんですけれども,表外漢字字体表というものがあるわけですから,それにある字は,それを基準にすれば,こちらで勝手に決めたことにはならない。だから当然,標準字体というのは示せるのではないかと思っております。 ● 先ほど○○関係官からも申し上げたように,法律的に見れば,人名に使える字の間で字体が違う,それをともに使えるようにした場合に,主従の差というのは法律的にはないというのはそのとおりですし,少なくとも権限的に見ても,法務省がその主従を決めるという立場ではないのだろうとは思っています。ただ,そうは言っても,同じ字種に属する字体の異なる字が複数あるときに,それをどういう形で国民にお見せするかというのは,それはなるべく分かりやすい方法があるでしょうし,また表外漢字字体表のような,それなりの考え方が示されているわけですから,そういうものを考慮して,どのような形で人名用漢字の別表を作っていくかということは事務当局で考えてみたいと思っています。   ただ,申し上げますが,それは決して法務省が本来的に決めるべきことではないのだろうと私は思っているわけです。ただ,現実に果たす役割とかそういうものを考えれば,可能な範囲で国民に分かりやすい表示の仕方を工夫してみたいということですので,また,その点について御意見を伺えればと思っております。 ● 文言を書くか書かないかは別としまして,「はるか」という字が二つありますよね。これは人名用漢字というレベルで考えたら同じ重みだろうというふうに私は認識するのですが。それについて人名用漢字の持っている性格を超えて,どちらが正体でどちらが略体でというのは人名用漢字のすることではないだろうというふうに私は思っています。それをするのは,どこかほかのところだろう。現実に漢和辞典はそれをやろうとしてくるわけですが,それは表記の段階で人名用漢字という略物なら略物をつくって,同じ重みづけで書くという方式しかないのではないかというふうに私は思いますけれども。 ● ○○委員の方でおっしゃっていただいたので,私が申し上げることは全然ないのですけれども,人名用漢字別表というふうになると,これは省令の一部ですから,省令として書けるスタイル,書ける限度というものがあるので,だから省令の中身として別表というものと,その別表を更に何というのですか,一般に御説明申し上げるために何らかの工夫をするかという,ちょっと次元の違うところでの対処の仕方というのはあり得るのかもしれません。 ● それは例えば同じ字種について二つの字体を認めたときに,ばらばらに書いたら,それは国民は分かりにくいだろうなと思います。そのときに並べる並べ方として,どう並べてみても、どちらが先になるのか,括弧にするのか,それは同じような関係にある字については同じような形で表記をしないと分かりにくいだろうなということになります。そのときに,先に表記するのはどうするのか。例えば従来どういう字体表で用いられていた字体を先に書いてありますというような説明をつけるかどうか,そういうことではないか。こちらの方で,こちらが標準だと法務省が考えるからこちらを先にしましたという説明は,法務省としてはしにくい。ただ,国民にとって分かりやすいような表記の仕方を工夫してみたい。どこまでうまくいくかということは知恵を絞ってみたいと思います。 ● ですから今おっしゃったように,二つ並べた場合に,例えば常用漢字表あるいは表外漢字字体表にある字は,これを先にしたとか,そういうような,法務省が決めたということではなくて,その根拠となるものを示せばいいのではないでしょうか。 ● そういう工夫をしてみたいということで,ちょっと字を見た上で,また事務当局の方で考えます。 ● だからそれ以外は括弧に入れていただきたいと思います。 ● 私は今の○○委員の御説明で良いというサポートをしようと思っていました。説明を付けていただいたら,それで十分だと思います。そして,前に出した方,後ろは括弧で包めるようになれば,もう何も言うことはありません。 ● 1点だけ確認させていただきたいのですが,○○委員から,人名用漢字というのはもう出てしまうと,辞書,新聞,教科書がもう事実上追随してきたという話がありました。印刷業界,出版業界がいわば勝手にやっていることだということだったのですが,例えば外国の方が日本人として帰化されるときに,人名漢字表にある文字から苗字を選んでくださいということを言われるということを仄聞したことがあるのですが,そういう運用というのも現にあるのでしょうか。 ● 原則として日本に帰化するときに日本風の名前をつけていただくことが多いわけですけれども,そのときには人名用漢字表から使っていただきたいということにしています。ただ,韓国とか中国の方で,漢字でもともと名前を使っているという場合には,人名用漢字表にない場合でも認めるということにはなりますが。 ● 私の聞いたところでは,元横綱の曙が,しこ名では「曙(者に「、」がある字)」と「点」がありました。帰化名をつけるときに,人名用漢字には点がないので,それにしたというのがあります。 ● 日本人名の申請時の命名というものに使われるときには大原則なわけでしょうけれども,そういう運用も一部にあるということですね。 ● 氏の方はもう今決まってしまっていますから,いいのですが,外国の方の場合には氏も含めてこれからつけるということですので,なるべく分かりやすい字を使ってほしいという人名用漢字の趣旨を踏まえて,その範囲から選んでいただきたい,こういう運用です。 ● ほかに,この点に関して。○○委員。 ● そうしますと,8月25日のこの会議のときには,今局長がおっしゃったような案も,原案というものを出していただけるのですかね。 ● 25日ででできるかどうかはちょっと分かりませんが,こんな考え方というのは示せると思います。 ● その点は努力したいと思いますが,25日の段階でというと,今の時点では,はっきりお約束することはちょっと難しいかもしれません。 ● それこそできれば,25日以前にメール等で原案をお送りくだされば,拝見していろいろと私どもも努力したいと思っております。 ● 多分,十分な検討を経ないまま,こういうふうにしますというのは言いにくいところもおありでしょうし,従来の許容字体と同じように括弧書きにとたときに,戸籍手続上も多少関連する部分が出てくることがあろうかと思いますので,その辺の調整も必要でしょうから……。 ● 決め方が,いろいろ過去を踏まえて複雑になっているものですから,それを整理してどういう形にするかということで,事務当局の検討もあるでしょうから,間違いなくお約束するわけにはいかないのですが,事務当局にともかく検討してもらって,可能な範囲で考え方を示して御意見を伺えればと思っています。 ● 何かつけ加えることはありますか。 ● 特にございません。 ● それでは,ただいまいただきました御意見を踏まえて,可能な範囲内で最大限,国民の便宜に資するような方法を御検討いただく。次回までに素案ができれば,その段階でお伝えできるものを,できる限り具体的な形でお伝えいただくということにさせていただきたいと思います。   ほかに,本日特に審議すべき事項はございますでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,次回につきまして,何度も出ておりますが,確認のために事務局からお願いします。 ● 予定としましては,次回は8月25日水曜日を考えておりますが,字種に関する御意見を委員・幹事の先生方からいただきいたしますが,その結果いかんによっては,臨時に部会を,その前の段階で開催せざるを得ないかもしれません。仮押さえとして8月13日金曜日を考えております。字種に関する御意見がまとまっているのであれば開く必要はないかなとは思っておりますが,いずれにせよ,その御意見の結果を見てみないと,はっきりしたところは決しかねますので。 ● 予備的にでも日をはっきり決めておいた方がよろしいでしょうか。 ● 予備的には8月13日金曜日でございます。 ● いずれも午後1時半からということでよろしいですね。 ● はい。 ● 13日に開く必要がないということであればどういたしますか。 ● 意見をいただいた後にはなりますが,御連絡を差し上げます。 ● それでは次回は8月13日又は25日ということですね。 ● 13日に開いた場合には,字種のことに関して最終的に表決をいただいて,25日は答申の関係で,最終的に御了解いただくという日程でございます。 ● それでは,本日は長時間にわたりまして有益な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。 -了-