法制審議会不動産登記法部会第2回会議 議事録 第1 日 時  平成15年10月29日(水)  自 午後1時30分                         至 午後5時05分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  不動産登記法の見直しに関する主要な論点について(メモ その2) 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 予定の時刻が参りましたので,ただいまから法制審議会不動産登記法部会の第2回会議を開会することにいたしたいと存じます。   若干,おくれておいでになる委員・幹事の方がいらっしゃいますけれども,とりあえず始めさせていただきます。本日は,御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日の審議に入ります前に,事前配布資料につきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,事前に配布しました部会資料について,簡単に御説明いたします。   まず,部会資料2001は,本日の部会において御審議いただいたらいかがかと事務当局において考えている論点について,項目を掲げたメモでございます。     続きまして,部会資料2002は,登記識別情報の提供がない場合の本人確認についての論点を取りまとめた資料でございます。1で「要綱(骨子)における登記識別情報の提供がない場合における本人確認の構造」について,2で「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度の根拠等」について,3で「資格者代理人が提供すべき情報の内容」について,4で「その他」について,それぞれ触れているものでございます。   部会資料2003は,実際の登記申請において資格者代理人が関与している割合について,本年5月に全国50か所の登記所において,実日数にしまして10日間のサンプル調査を行いましたので,その結果をまとめた資料ということでございます。権利に関する登記においては,そこに書かれていますように95.8%,表示に関する登記におきましては96.8%の申請が,資格者が少なくともいずれかの当事者の代理人として関与している,そういう結果になっております。   部会資料2004でございますが,登記官による本人確認調査についての論点をまとめた資料でございまして,1でその「制度の趣旨」について,2で「調査の要件」について,3で「調査の方法」について触れております。   続きまして部会資料2005でございますが,これは登記官の審査権をめぐる裁判例についてまとめた資料でございます。かつては①の最高裁判所の判例のように,形式審査を強調するものもございました。しかし,最近は,下級審のレベルのものでございますが,②から④の判例のように,登記官が職務上知り得た資料などを審査において考慮すべきものとするものも出されておりまして,登記官も形式的審査を正に文字通り形式的にするだけでは済まないというような状況になってきております。   それから,部会資料2006を御覧いただけますでしょうか。これは,「登記原因を証する情報に関する問題」についてまとめた資料でございます。1で「制度の趣旨」について,2でその「内容」について,3で「性質及び作成者」について触れているということでございます。   続きまして部会資料2007でございますが,これは,権利に関する登記の申請書に添付されている原因証書と申請書副本の割合について,先ほどと同じですが,本年5月に全国50か所の登記所において,実日数10日間のサンプル調査を行いました。その結果をまとめた資料ということでございます。ここで言う原因証書には,売買を原因とする所有権移転登記におけるいわゆる売渡証書というものも含むものでございますが,全体としては原因証書と申請書副本,それぞれ半分ずつという結果になっております。もっとも,登記の申請の類型で見てみますと,抵当権や根抵当権の設定の登記では,ほとんどが原因証書という結果になっております。また,下段の方にありますように,原因証書と申請書副本の割合は地域ごとにもばらつきがあるというようなことでございます。   資料の説明は,簡単ですが以上のとおりでございます。 ● ただいまの配布資料の説明につきまして,何か御質問等はございませんでしょうか。   なお,机上には,日本司法書士会連合会からの配布資料がございます。後ほど関連する論点のところで○○委員から御説明願うことにいたしたいと考えております。   では,ただいまの説明につきましては特に御質問がないということで,早速本日の審議を行いたいと思います。   本日の議事進行について,事務当局から意見がございます。 ● 本日は,部会資料2001番に記載されている個別の論点の順序で御審議いただければと考えておりますが,一応3点ほど,その前に確認をお願いしたいということがございます。   第1は,前回の審議の結果を踏まえて,出頭主義の廃止の問題につきましては,部会の大勢が賛成意見であったいうことで,今回の論点には掲げておりません。   第2に,前回の部会の審議において,所有権に関する登記の申請について,登記識別情報の提供がある場合であっても,資格者による本人確認情報の提供は必要的とすべきだという御意見がございましたが,こちらの方は消極意見が多数であったということで,やはり今回の論点には掲げておりません。   第3に,○○委員から,前回御意見がありました土地家屋調査士作成の調査報告書の位置づけにつきましては,この2001番のメモの3の(3)で論点として挙げておりますが,これにつきましては現行の不動産登記法の事務取扱準則に,申請書の添付書類を参考に実地調査の参考資料とできるという趣旨の規定がございますが,その例示として,土地家屋調査士作成の現況報告調査書とその他の添付書類という形で挙げさせていただくことでどうかということで,御了解いただけるのではないかと考えております。そこで,これらの点につきまして一応御確認いただいた上で,論点メモの1の項目から御審議いただければというふうに考えております。 ● それでは,ただいまの○○幹事のお話に従いまして,確認をしていきたいと思います。   第1点,前回の部会におきまして出頭主義は廃止するということで大方の賛成をいただいたという点はよろしゅうございますでしょうか。それでは,この点は御確認いただいたということにいたします。   次に,所有権に関する登記の申請について,登記識別情報の提供がある場合においても資格者による本人確認情報の提供を要するという意見がございましたが,これを要しないという意見が多数であったという点もよろしゅうございますでしょうか。   ○○委員からの御意見でしたけれども,○○委員,よろしいでしょうか。 ● はい。 ● では,この点も御確認いただいたということであります。   次に,部会資料2001の3(3)の表示に関する登記における土地家屋調査士作成の調査報告書につきましては,事務当局から実地調査の可否を検討する際の一資料として位置づけを行うことを検討するという御説明がありましたけれども,○○委員,いかがでございましょうか。 ● 現行準則90条に実地調査書がございますが,登記官の作成する実地調査書の記載があるだけで,土地家屋調査士作成の調査書についてはございませんので,その点をお願いしまして,準則をそのようなことを踏まえて御検討いただくということで了解しておりますので,よろしくお願いいたします。 ● ほかの委員・幹事の方で,この点につきまして御意見はありますでしょうか。   特に御意見がないようですので,部会資料2001の3(3)の論点につきましては,これで審議を終えるということにいたしまして,部会資料2001に記載されている他の論点について審議をしていくことにいたします。   それでは,本日の最初の論点であります部会資料2001の1の「(1) 登記識別情報の提供がない場合の本人確認について」の審議に移りたいと思います。   まず,事務当局から御説明願います。 ● 論点資料としては,2002番がこれに該当するものでございます。   まず,資料の内容でございますが,1は要綱(骨子)における登記識別情報の提供がない場合の本人確認の構造を簡潔に述べたものでございます。要するに,原則は事前通知で登記官が登記名義人の確認を行うということです。しかし,資格者が代理人として関与している場合で,かつ,資格者による登記名義人の確認が適切に行われたと認められる資料の提供があったときは,事前通知手続を省略することができるというのがその骨子でございます。   この場合の基本的な論点というのは,次の2の(1),つまり制度の根拠の問題だというふうに考えております。前回,この点につきましては○○幹事の方から,登記識別情報の再通知を認めない場合には,この制度の適用範囲がいわば相対的に広くなるということを踏まえて議論すべきではないかという正当な御指摘がありましたが,もちろんこの御指摘の点は,制度全体のバランスから見て重要な問題でございますが,再通知の問題は,その後の「その他」ということで議論していただく項目として,そもそも資格者代理人による本人確認情報の提供の制度自体のいわば合理性なり妥当性というものが前提問題になると思われますので,議論のやり方としては,まず2の「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度の根拠等」からしていただければどうかというふうに考えております。   次に,その制度の根拠について,事務当局としてどのように考えるかということを説明させていただきますと,現行法上は資格者代理人による申請であろうとそうでなかろうと,手続上差異を設けていないわけですが,新たな制度の下では資格者代理人による申請の場合には一定の効果を認めるということで,問題はまず本人確認の手続のレベルが下がらないかという実質的妥当性の問題,それからなぜそういう法制的,理論的に資格者代理人が代理申請をしているときはそのような特別な取扱いをすることができるかという,この二つの問題がいわば相互に絡んでいると考えます。つまり,資格者を信頼することができるという制度上の根拠があるからこそ,そして,それを担保する手続があるからこそ,実質的な本人確認のレベルは下がらないだろうという,そういう理屈なのではないかということでございます。   そこで,問題は,その資格者のいわばこのような職責上の義務というものがある,つまり資格者にこのような特別の地位を与えるのはなぜかということですが,それはここに掲げております個別業法におきます職責上の義務に求めるしかないのではないかというのが事務当局の考え方でございます。司法書士に関しましては,この2条,そしてここには掲げておりませんが1条で,そもそも司法書士制度というものは,「登記,供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し,もつて国民の権利の保護に寄与することを目的とする制度」というふうにされておりますし,土地家屋調査士法においても同様な規定がございます。そして,そのような職責を持つ資格者が自己の業務を行うときには,その前提となる事実調査も当然業務の内容に入るわけですから,適正に行わなければならないであろうという,そういうことでございます。要するに,資格自体はもちろん業務に必要な法律知識の習得について与えられるわけであって,本人確認行為についての資格の付与ではないことはもちろんでございますが,いったん資格を取得をして業務をした者,それは資格者の行う業務としては法律の解釈を当てはめただけではなくて,先行する事実関係の調査も入るわけですから,資格者が自己が代理人として処理する登記申請事件については,登記義務者が本人であることについて,しかるべき確認をする義務があるということは言えるのではないかということでございます。   次に,それを手続的な担保の問題として,登記官が本人確認の資料にすることができるということでございますが,資格者がこのような業法上の義務をきちんと履行していることが手続上確認できれば,それは本人であることのいわば蓋然性が高いということは言えるのではないかということでございます。逆に言うと,資格者が本人確認しているという結論をもって,直ちに登記手続上本人であることが認証されたというわけではなくて,あくまでも資格者がこの職責上の義務をきちんと履行してもらったというステップを踏んだということを確認する資料を提供してもらって,その資料から判断して適切であると登記官が認めるときには,その原則である事前通知手続を経ることなく,本人確認をするという,そういう制度であるということでございます。   以上が制度の理論的な根拠として事務当局で考えていることでございます。   このように制度の根拠を資格者の業務上の職責というもの,それから,それが履行されたことを登記官が確認するという,そういう手続に求めるとしますと,制度の適用範囲自体としては,資格者が登記権利者側を代位している場合だけではなくて,登記義務者側を代位している場合でも含めていいのではないかというのが次の2の(2)の趣旨でございます。   続きまして,では具体的にどういう内容を提供すべきかということ,これは今後詰めていく話でございますが,大まかな枠として3に書かれていることを考えているということでございます。   最後に,4につきましては,登記識別情報の再通知を認めない制度の下では,以上のような資格者代理人による本人確認制度の比重が相対的に高まるという点をどう考えるかという問題だろうと思っております。事務当局としましては,この登記申請の大部分が,この後の2003番に書いてあるような,資格者によって担われているという現実を踏まえますと,恐らく大多数の人にとっては不便になるというわけではないだろうと思っております。また,そもそも資格者代理人の関与がない場合の本人の申請がどれほど重くなっているかといいますと,これは保証書というものがなくなりましたので,保証人二人という形で実際上は保証料を払う必要はないわけで,また順位自体は申請時に確保される。ですから,事前通知に応答するという義務がかかるというだけでございますので,理論的には前回○○幹事から御指摘があったとおり,再通知手続というものを,いわばプレ申請手続として認めるというオプションもあると思うのですけれども,意見照会の結果でも,再通知を認めるべきであるという意見は必ずしも多数ではなかったということもございますので,原案でよろしいのではないかというふうに事務当局としては考えております。 ● ただいまの説明の3の「資格者代理人が提供すべき情報の内容」という点に関連しまして,日本司法書士会連合会から,資格者代理人が提供すべき資料についてのサンプル案が出ております。本日の席上配布資料の1でございます。   この資料につきまして,○○委員から御説明をお願いいたします。 ● 今日は,本人確認の論議のための素材として,私どもの方で本人確認のための資料としてはこういうものをと,現在私どもが実際実務で行っていることをベースにしながら考えたものでございます。論議の素材にしていただければと思います。   一つは,個人の場合であって,つまり本人確認をすべき対象の人が個人の場合であって,しかも面識がある場合が1-1の提供書でございます。   そして,1-2が面識のない場合。もっともこれが一番大きな問題になるだろうと思いますけれども,現状を考えますと,このような内容のものでどうか,ということであります。   1-3がいわゆる法人の場合です。本人確認の対象が法人の場合,ここでは大規模な法人の場合を想定して,現在の私どもが実務の世界で行っている状況を整理して作り上げたものでございます。御案内のとおり,大法人の場合には,代表者個人にお会いするということは事実上は不可能だということがどうしてもありますので,それに代わるものとして,真実性が担保できるような内容の本人確認,そういったことでこのような提供書を,私どもで現在やっておりますし,それを整理したものであるということでございます。   共通して言えることだと思うのですけれども,私どもが実務において本人確認する場合には,ただ単に本人が本人であるというだけの確認にとどまらず,その本人がいわゆる登記の申請権限があって,しかも今回登記申請するに当たってそういう客観的な背景,いわゆる法律関係があって,その結果として登記をする,そういった事実関係,法律関係といったものを確認するということを共通にしながら,本人の確認をしていくということがあるということをこの提供書の中では考えておるつもりです。以上でございます。 ● それでは,ただいまの御説明を踏まえまして,部会資料2002について議論をしていきたいと思いますけれども,まず最初に,2の資格者代理人による本人確認情報の提供の制度の根拠及び適用範囲の問題について,御意見をいただきたいと思います。   特にございませんようでしたら,3の「資格者代理人が提供すべき情報の内容」,これもあわせて御意見をいただければと思います。 ● ちょっと事前に頭の整理で確認をさせていただきたいのですが,登記識別情報の提供がない場合,原則は事前通知制度,事前通知手続によるわけですが,この事前通知手続の実務について,やや疑念がありますのでお伺いをしたいと思うのですが。   概論でいえば,現行の保証手続類似のものであろうかと思うのですが,現行の保証手続では登記義務者,登記権利者が登記申請書を作成して,登記の申請を行います。ですから,仮に,例えば代金完済を条件とする所有権留保の売買,通常行われている売買契約によって売買が行われた場合で,権利証がなければ保証手続によることになる。保証手続による場合,例えば11月1日に所有権移転,原因は売買という登記申請書を作成して登記申請を行います。それで保証はがきが数日後に来て,例えば10日後ぐらいには,はがきがそろうでしょうから,そのときに代金決済をしましょうという約束をして,10日後に保証はがきが届いたところで司法書士さんのもとに集まって,金融機関も来ていただいて,代金決済なり融資なりをして所有権移転を実現させる,こういう手続で行われていると思うのですね。ですから,その場合に登記義務者,登記権利者の意識としては,11月10日に所有権移転をしたものですが,登記上は11月1日の登記申請,原因及び売買は11月1日付売買,こういう形にならざるを得ない。先行日付の登記申請というのが認められていない以上,今,そういう制度になっていると思うのですね。   ところで,今度事前確認制度になった場合はどうなるのであろうか。事前確認制度の場合も,登記申請を行う,これが先日付を認めないとすると,今と同様のことが起こってしまう。ところで,今回,一方では登記原因証明情報をつけろとか,より公信力に肉薄するような真正な登記であることを担保しようとしているわけですが,そこでは代金も授受されていないし,事前確認という手続をとるためだけに登記申請をしているわけで,売主も買主も実は売買をしたという意識はないわけですね。そういう中で,今回の事前確認制度においても先付けの登記日付,原因日というのは認められないという構造を引き続きとるのか,それとも事前確認という制度をとって,正に事前に確認をしてもらった上で,その上で登記移転をするのだということで,先付けの登記移転日付を認めるようなことになるのかどうか,まずその辺のところからお伺いしたいと思うのですが。 ● まず論点の位置づけですけれども,御指摘の問題はむしろ登記原因証明情報と,それから登記原因になるものの考え方の問題であって,ここで言う本人確認手続の問題とはちょっと違うと思うのです。だから,後の登記原因証明情報のところで先日付の問題,つまり原因行為と物権変動の時期の問題,そこの問題として議論した方がいいのではないかというふうに思いますが。 ● 分かりました。 ● よろしいですか,ではまた後でその問題を扱うということでよろしいでしょうか。   ほかに御意見ございますでしょうか。   では,1から3までにつきましては,特に御意見がないということで,前回の審議におきまして○○幹事から,登記識別情報の再通知を行わないでよいのかという趣旨の御発言がありました。この点につきまして,4の部分で○○幹事からの御説明がございましたけれども,関連した御意見があればお伺いしたいと思います。 ● ちょっと戻って恐縮ですけれども。   先ほどの,資格者代理人による本人確認情報提供制度の根拠のところでございますが,これは大枠についてお話し申し上げるわけではございませんけれども,実際の問題といたしまして,例えば本人確認の困難さにつきましては前回にお話をしたところでございますけれども,それぞれ大多数の有資格者の方は職責に基づいて正しい登記申請をやっていただいているわけですが,代理人というところで,また場合によっては依頼される者とお客様という関係でなかなか難しい問題が生じているというところがございます。   例えば,よくあるということでは,建築業者の方が融資を受けなければいけないということで,本当はまだ建物になっていないのだけれども,建物として申請をしていただけないかというような話があったりするところがございます。そうしますと,私ども実地調査に参りますと,居宅で三階建てということになっているのだけれども,行ってみるとまだ階段もできていないし,また壁も張られていないというようなものもあったりいたしますし,また司法書士の方の方でも保証書事件等で本来的にはもう少し調べたいのだけれどもというところで,いつもだと免許証とかそういうものだったのだけれども,今回は保険証しか持ってきておられなかったけれども,更にというのは難しかったとか,そういうことが,ごく一部ではありますが,後々私どもで発見することがあります。そのときにもう一歩踏み込んでやっていただいていたらそうはならなかったのではないかというようなところがございまして,私ども公務員のようになかなかすぱっと割り切った形での運用が難しいところがあるのではないかというようなところを,若干実務としては危ぐをいたしております。 ● 今の点につきまして,お伺いだけしておくということでしょうか。それとも事務当局から何かございますか。 ● 今の問題というのは,正に義務者側の代理人とか,要するにお客様との関係でどうしても踏み込んでできない部分が,資格者代理人という以上は代理人ですから,あるのではないかという御指摘だと思うのですけれども,また実際,現場サイドからそのような危ぐの声があるというのは私ども事務当局も認識はしているわけです。一方これを制度化して,こういう手続を踏むという形が法制化されると,逆にむしろ資格者代理人の方も本人確認情報を提供する以上はそういうステップを踏むということになるわけですから,それは信頼関係云々ではなくて,制度がこうなっていますからという形で本人確認がむしろしやすくなるのではないかというふうに考えております。 ● その点に関連して,今ちょっと気になっている点は,確かに資格者代理人というのは基本的には間違いがあってはまずいという発想で取り組む人がほとんどなはずですから,確率的には基本的にはかなりの程度信頼していいだろうとは思ってはおります。現に,私,弁護士ですけれども,何かミスをやれば多分懲戒の対象になるでしょうし,その意味では違法でないからいいというふうに開き直れないという点がありますので,その点は私としては自信は持っておりますけれども,ただ問題は,どの程度確認するかということ,これは現実には施行細則などで,かなりの要件,例えば電子署名認証法のように本人確認の手法というのは限定されるということになるのでしょうか。そうでないと,やはり人によってどこまで詰めればいいかという基準がちょっと判断しにくい。逆に言うと,いい加減にやってまた損害賠償請求訴訟などされたらたまらんということも起きてくるのではないかと思うので,その点ちょっと御確認したいのですが。 ● そこは正に重要なポイントの一つだろうと思っております。もちろん,面識があったという,そういう事実がある場合と,それから一面識もない人との差というのはあるのだろうと思うのですが,もちろん今考えておりますのは,やはり細則,省令などで公的な身分証,顔写真があるもの,ないものには二つ以上の組合せとか,そういう形である程度特定していく必要があるのではないかというふうに考えておりますし,先ほど○○委員の方から御説明があった本人確認の調査の報告書も,正に身分証明書による確認という形で,自分が本人確認のためにどういうステップを踏んだかということを書いてあるというふうに考えております。   要素としては,資料に戻りますが,まず公的な身分証明書と,それから,もう一つの重要なものとして御本人と基本的には直接お会いになったということが重要なのではないかというふうに考えております。 ● この点に関連しまして,ほかに御意見ございますでしょうか。 ● 今のお答えの確認ですが,どういう形で本人確認をするかについては,具体的なルールを定めるということなのか,適否はゆだねられるということなのか,いずれなのでしょうか。 ● 失礼いたしました。本人確認をした結果を記載した情報を提供していただく,そういう形を省令などで明確にしておく必要はあるのだろうというふうには考えております。 ● 制度の根拠という場合に,誰を資格者代理人として認めるかという根拠としては,ここに並んでいることでいいかと思いますけれども,本人確認は電子署名なんかについてもそうでありますけれども,どういう形でチェックをしているのかという,その手続に対する信頼をベースに築き上げるというのが法制度だと思いますので,どういう形で本人確認をするかというやり方をどこまで具体的なルールとして盛り込むかという点が一つの重要な点で,そことあわせて制度の根拠となるというふうに説明しないと,ややワイドではないかというふうに思います。   それから,事前通知手続との関係ですけれども,この資格者代理人による本人確認情報というのは事前通知手続にかわるものという位置づけになっておりますけれども,事前通知手続で,例えば住所が変わっている場合どうするかとか,そういう問題は,面識がない場合については,資格者代理人がそれに相当するチェックは行うという理解なのかどうなのかという点についてはいかがでしょうか。 ● 今の御指摘というのは,直前の住所移転があった場合の話でございますか。 ● はい。 ● 現在の要綱(骨子)案の構造というのは,事前通知というのは二つありまして,一つは登記義務者の現在の住所にする事前通知ですが,もう一つ,直前の住所移転があったときには過去の住所地にもいわば警告的な通知をすると。資格者代理人による本人確認情報の報告があったときには,義務者の住所地への通知は省略できますが,過去への住所地への通知は省略しないという構造に現在の骨子案はなっております。 ● そうしますと,今の点は,それよりも劣ることは絶対あり得ないという構造になっているという理解でよろしいわけですね。 ● はい。 ● ほかに御意見,いかがですか。 ● 今のやりとりの直前に,○○幹事の方から,本人との面識がない場合には面談をするというのが非常に重要なところだというようなお話があったかと思いますけれども,これは面談をするということが前提となっていて,ルール上も書き込まれるというふうに考えてよろしいのでしょうか。それが第1点。   それから,その上で実態についてよく分からないのですけれども,そのこと自体が実務上の負担になるというようなことについてはどういうふうにお考えなのかということについて,関係の方に御意見を伺えればと思いますが。 ● 面談が重要だというのは一般的に申し上げただけで,それは例えば法人の場合はどうかというような,そういう問題と絡むのだと思いますが,そこは今後,一方では制度の趣旨,一方では実務上の負担というものを考えながら詰めていくしかないかなというふうに考えます。   ただ,基本的な原則は,保証書事件なんていうのはいろいろ裁判例がございますね,そのときもやはり御本人に確認もせずにとかいうふうな形で,面談でないにしろ御本人にある程度コンタクトはとらないとだめだという構造になっておりますので,そこはそういうことを踏まえながら検討していくということになろうかと思います。 ● 後半部分については,○○委員,○○委員。 ● 具体的に面談はどのように,またどの程度というお話だったと思います。私ども,司法書士の現場では,ほとんど全部面談をしております。例えば,大変高齢の方がある施設に入っておられる場合であるとか,あるいはお体が弱い場合,病院まで行って,施設の長の立会いの下にするとか,面談そのものをしないでするという場合というのはほとんどありません。強いて申し上げますと,既に義務者が外国などに行っておられて,どうしてもその間に帰って来られなくなった場合,その場合でも,場合によっては面談にかわるものとして電話などによって確認を直接させていただくというような形で,実際私どもは処理しているというような状況でございます。 ● 表示の方は余り……。 ● そうですね,ただ一度の面談で終わるということは余りないものですから,現地でお目にかかったりしておりますので,そう重要に考えておらないのですが,当然と思っております。   ただ,合筆登記のように,余り現地でお目にかかるということがない登記については,皆さん方の御検討を参考にしながら,内部でそのような研修をしたいと思っております。よろしくお願いいたします。 ● これは,保証書による登記申請等に関連して司法書士の損害賠償責任等,いろいろ裁判例もあるところですけれども,そういうふうなこととの関連で,何か学者委員の方から御発言ございませんか。   ○○委員,何かありませんか。 ● 当然賠償責任保険,あるいは司法書士としての能力担保のためのことというのは問題になると思います。○○委員御指摘のとおりの論点が重要であるということを申し上げさせていただくとともに,司法書士会の方で,例えば何か賠償責任保険とか支出担保のようなことについて今回の制度改革をにらみながら御検討になっておられることがあれば,むしろお教えをいただきたいと考えております。 ● 今回のこのオンラインによる不動産登記法の改正というものを,具体的に私どもも内容をずっと協議をさせていただいているわけです。その場合に,まず二つの面で司法書士が対応をどうしてもしなければならないというふうに考えているのは,一つは,個人個人の司法書士の実務的な面で十分これは対応できるような場合,これはまだ具体的な場面がちょっと細かいところまでなかなか把握できないところがありますので,ただそれにいたしましても,システム的にどの司法書士でも,あるいは今後入ってくる新人の司法書士でも対応できるようなそういう研修システムというものは常に考えておりますし,実行に移したいというふうに思っております。   それから,例えばどんなに注意しても,今言ったように事件が起きるとか,あるいはそう損害賠償債務を負うということはあり得るだろうとは思っております。そういうことのために,今現在私どもでは保険制度の充実ということをずっと前からやっておりまして,現在では任意保険という段階でございますけれども,これをできるならばもう少し一歩進めた形の保険体制なども,今現在協議しておるところでございます。 ● 申し遅れましたが,やはり内容充実のためにも調査書というのに詳しく記載しております。それをやはりちゃんとした位置づけをされた方が,徹底ができると思いますのでよろしくお願いいたします。 ● ほかに,関連した御意見はございませんでしょうか。 ● 4は,もう進んでいったのでしたか。 ● 含めて。 ● 私の前回の意見をこういう形で取り上げていただいたのですけれども,ちょっと私の舌足らずだったところがあるかもしれませんが,この面も確かに指摘しましたので,資格者代理人による本人確認情報を提供するのか,あるいは登記識別情報の再通知を認めるか,そのウエートの問題もありますけれども,それとは独立に,仮に例えば司法書士さんを通じて登記申請する場合も,登記識別情報があった方がいろいろな意味でチェックがしやすい。当事者としても再通知を求めたいというニーズはあるのではないかと思います。そのときにいったんなくしたらもう事前手続しかありませんよというふうに選択肢を狭めてしまうということが果たして適切かどうかという問題でもありますので,必ずしもこういう形に尽きる問題ではないというふうに認識しております。   それで,これは登記識別情報というものが,そういう制度を導入するわけですけれども,これが不動産手続関係の本人認証情報として重要なものだというふうに国民一般が思って,それを大切に保管するという前提ができて,初めてこの制度がうまくいくという観点からいいますと,重要なものなんだけれども,例えばなくしてしまったり,あるいは人に知られたかもしれないということになると,あと失効させる以外手がない,再通知はありませんということが,果たしてここに書いてあるだけの理由で十分説得的なのかなという点が疑問として残ったものですから。こういう面もありますけれども,これに尽きるものではないというふうに理解していただいた方がよろしいかと思います。   ここに書いてある,前回もありましたけれども,再通知を認めると不正取得する可能性が増えるというけれども,これは正に事前通知手続を前倒しにしているだけのことですので,それに伴う固有の危険というのが本当に増えるのかといいますと,前倒しにして利便性を高めているだけで,これが悪用されるのであれば事前通知手続も同じように悪用されることになるのではないかと。   それから,属性を失うというのは,これは比喩でありまして,権利証がなくなって登記識別情報に置き換わるというのは,比喩的な説明としては分かりますけれども,本来は登記済証に代わるものはないわけで,他の制度の組合せででき上がっているものですから,登記済証と同じ論理的属性を与える必要はむしろないというふうに考えるべきではないかと思います。格別不利益があるかどうかというのは,最初の○○委員の御質問にも関係しますけれども,実際これでどういう不利益があるかないか,あるいは資格者代理人を通した場合に,本人確認の手続にどのぐらい時間がかかるのかという点,それらを総合考慮して,しかしその上で選択肢はたくさんあった方がいいのではないかというふうに考えた場合には,この理由だけだと弱いなという感じがするものですから。   国民一般に対して重要なものであって,もし,他人に知られた可能性があるのだったら失効させて再通知をすれば,またそれを大切に保管してくださいというふうに説明した方が定着を図ることができるのではないか,そういう考え方が基本にあるものですから,これだけではちょっと弱いのではないかという感じを持っております。 ● そこのところは,理論的には両方の考え方,制度論としてあると思うのですが,意見照会等,特に実務にかかわっておられる方の意見等を見ますと,再通知は必要なしという意見が多かったというのが事実でございまして,そうしますと逆にニーズは現時点ではないのではないかと。つまり,制度発足の時点ではないという形で出発してもいいのではないかと,そういう判断をしたということでございます。 ● その観点で,再通知の制度について,私ども金融機関としましては債権保全の手段としての不動産担保の利用が主たるかかわり方になりますけれども,銀行協会といたしましても,この再通知不要という案に賛成しております。   理由といたしましては,登記を留保する扱いでの不動産担保というものが相当数金融の担保制度として浸透しております。具体的には,今の制度でいいますと権利証であるとか印鑑証明でありますとか,当然抵当権,根抵当権の設定契約を約定して登記手続は保留する,こういう格好で保全手段として使っているのが相当数ございますけれども,これが今回のオンライン登記制度になってまいりまして,再通知が可能だということになってまいりますと,この辺の留保の扱いについて相当程度使い勝手の悪い格好になるということを懸念いたしまして,その辺,やや打算的ではございますけれども,実務上の観点からすると,ここのところはむしろ再発行しない形で仕組みを組み立てていただきたいという考えで御要望させていただきました。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。 ● 今の御発言である程度分かったのですけれども,私自身は前回にも○○幹事とほぼ同様の趣旨で再発行があった方がいいのではないかというようなことを質問した記憶がございますけれども,必要がないということと,こういうものを設けると弊害があるということはやや違うように思うのですね。必要の有無ということを問いますと,これは意見照会しましても個別の,個人のレベルの方々からの意見というのは上がりにくいかと思いますけれども,国民全般に広く聞いたときには,そういうものはあった方が便利ではないかというふうに漠然と感じられるという方はかなり多いのではないかと推測します。であるならば,やはりこういうものがあるとむしろまずいのだということを積極的に打ち出す必要があるのではないかとちょっと思いましたので,一言させていただきます。 ● 今,「再通知」という言葉で論議がされていますが,たしか研究会のときも議論があったと思うのですが,再通知というのはいわば権利証の再発行と類似のイメージがありますね。この再発行については,かなりどの委員も否定的であったという認識をしていますが,一方で,例えばこういう情報というものは誰かに見られてしまうかもしれない,保管がうまくできないかもしれない,だから私は当初からもらわないで結構ですという制度も認めようではないかとなった。もらわないでいる人が,売る必要ができたと,そのときの売買のときに,買主さんに心配を与えてはいけないからとか,時間がかかってはいけないから,売買に先立って登記識別情報を取得するということはできないのか。だから再取得ではなくて,さっき○○幹事がおっしゃったのも,その意味も含んでいたと思うのですが,再取得ではなくて,そもそももらっていなかったものを取引に先立って,取引が円滑に行われるように初めて取得するというようなことを,事前確認類似のものを取引事前にして,登記識別情報を新たに取得するというようなことの制度はいかがであろうかというのは,確か研究会のときも出たような気がするのです。   それからもう一つは,どうも誰かに見られたかもしれない,うちのドラ息子が盗み見たみたいだと,だから失効させる。だけど,今度新たに売るときに,前の登記識別情報の再取得ではなくて,この物件に対して新しい登記識別情報をくださいというのを,事前確認というのを許すのであれば,取引に先立って登記識別情報を新たに取得するという制度は一考の価値があるのではないかみたいな議論があったかと思うのですが,その点についてはいかがなんでしょうか。 ● 確かにそういう議論もあったのですが,制度として組むときには,例えば,では何回でも通知・失効を繰り返すということをどこで切れるのだろうかと。そもそも登記識別情報というのは,登記申請のためにだけ必要なのですね,そのための本人確認というのを一回すれば本来いいはずです。たまたま登記手続が義務者・権利者と連続性の構造になっており,登記済証という制度が現にあって,それと同じような機能のものをもし考えるとすればこういうものになるという形で登記識別情報というものを出すことにしたわけですけれども,やはり最終的には本人確認を登記手続の中でどうやってするかという問題ですから,確かに形式的に1回に限るとか2回に限るとかいうのはあるのかもしれませんが,制度全体としては,再通知を認めるまでの必要性もないし,何回もできるということになると,逆に弊害も出るだろうと。事務も増えるというのもありますけれども。ということでございます。 ● 関連業界というよりも,代理人としてお仕事をされている○○委員,何か御意見ございますか。 ● これは,実際そういう場面に今なっているわけではありませんけれども,ただ非常に心配なことは,もし再発行なり再通知というものを認めるとしますと,従前出したものは当然失効してからやるのだろうということは分かるのですけれども,しかし外形的には二つのものが存在しているということはあり得るわけですね。最初から不発行の場合は別でございますけれども。   そうなりますと,そういったものの存在が論理的に推定される中で,私どもが本人確認をしていく場合ですが,先ほど来,本人確認の程度ということで非常に厳しい御意見がございました。私どもも全くそのとおりだと思うのですけれども,そういう状況を踏まえながら本人確認を進めていく場合,先ほどもちょっと申し上げましたけれども,本人確認というのは本人が本人であるというだけではなくて,その本人が申請権限があって,しかも今回のこの登記を生み出す法律関係の下に登記を申請する意思があるということを前提に考えて,本人確認をしているという前提がございます。今,再通知を認めるということになりますと,果たしてどういう形で,多分それは法務局側で発行されるわけですけれども,どういう形で御本人を確認していくのか,その場合には当然のことながら登記時と離れた形で出てくるだろうと思いますので,そうなりますと極めて定型的な形で本人確認せざるを得ないのかなという気がいたします。それを前提に私どもが--私どもが代理をする場合ですが--それを前提に業務を行っていくということになりますと,そういう本人確認の下に発行されたものだという前提ですので,相当程度また本人確認のものについては深めていかなければならないかなと,そんな気がします。そういった意味では,最初一つ出ているものであれば,それが正に当時の登記申請,以前の登記の時に付与されるものであるという前提に立ちますので,本人確認という手続につきましても,それを前提に次に進むことができますけれども,そうでない場合には,またゼロからやっていくという形になると思いますし,果たしてそれが可能なのかどうかという点でもちょっと心配な点がございます。   と同時に,もう一つはどういう理由で,通常は失念したとか紛失したとか,そういう形で再発行を求められるのだと思いますけれども,果たしてそれは事実そうなのかどうかということまで私どもは考えなければならない。と申しますのは,非常に典型的な売買とかそういった場合であればいいのですが,非典型的な代物弁済であるとか譲渡担保であるとか,様々な,特に今の時代はそういう複雑な,十分注意を払わなければならない登記が多いわけでございますが,そういったものの背景の中で,その再通知されたものが出てきたという場合に,やはり我々としてはより以上の注意を払わなければならんだろう,そういうふうな気もいたしております。ですから,そういった意味ではちょっと心配な点があるのかなというふうな,実務的な感じですけれども,感じがするということです。 ● 先ほどの○○幹事のお話も,それから今の○○委員のお話も,再発行,再通知についてだったと思うのですけれども,それに対して○○委員の方から出ましたのは,ずっと発行しないで,要るときになって初めて発行する,そういうのはどうかという御提案も含まれていたと思うのですけれども,その点について,それではまずいというようなことの理由を教えていただきたいのですけれども。 ● 再発行にしろ新規発行というのにしても,例えば一定期間内に本登記申請をしなければいけないとか,そういうふうな形にまでするのかどうかということとも絡むと思うのですね。では,そういった制限を仮にかけたとして,また登記申請するときにもう一回同じ手続をするということで,やはり繰り返しができるということには変わりがないのではないかと思うのですね。   つまり,論点として失効・再発行の形をとろうが,新規発行という形にして新規発行制度にしたからといって,失効制度は別に設けるわけですから,失効させた後また登記申請するときには今度は再発行の問題になるだろうという気がするのです。つまり,新規発行だけ認めて再発行は認めないというオプションはどうかということですか,そこはそこまでする必要性がどこまであるのだろうかということに尽きると思うのです。つまり,登記申請のために本人確認をすればいいわけですから,それは前になろうが後になろうが,それはやることは同じということになりますから,それは申請があった後本人確認をするという構造で十分なのではないか,そこに尽きると思います。 ● 先ほど,○○委員の方から,どういう弊害があるかという点を明確にしてほしいということに対して,結局弊害というのは事務の負担であることに尽きるというようなふうに……,お聞きしていますとね。   事務の負担という場合に,事前通知は省略できるわけですから,事前通知を前倒ししただけであれば事務量はふえないわけですね。だから,何度も繰り返されると困る,その点が中心的な弊害だということなのですけれども,これは課金をしないのか,つまり費用は払うのか払わないのかということに持っていくわけで,一定の費用を徴求するのであれば,おのずと無意味に繰り返すなんていうことはあり得ない,必要がある場合にその費用を払って,なお必要がある場合には再通知を求めるということになるかと思いますので,そういうことであれば一律拒否するというよりは,そこを合理的に組めば,合理的に当事者が選択していくということで,選択肢を否定するのがそれほど事務の負担になるのかという点がよく分からないものですから,そこを教えていただきたいと思います。 ● もちろん,選択肢として,制度のオプションとしては論理的にどんな組合せでもあると思うのです。しかし,最終的には意見照会,それもパブリックコメントも踏まえてですが,大勢としては再通知反対が多かったということですので,事務当局としては再通知はしないと。そして,新規発行の問題も実は再通知と同じようなレベルで当初はとらえていたものですから,新規発行も再通知もしないという形で制度を組むということでいいのではないかと判断した,そういうことです。   仮に,新規発行を認めないときに,ではどういう手続にいくかということですが,後にしても前にしても,事前通知をやればとか,そういう本人確認手続をするのだからという御指摘ですが,逆に言いますと,それなら申請の後,事前通知をしたっていいわけですね,わざわざ前倒ししなくてもいいはずなんですね。ですから,それはどちらでも同じなのではないかと思うのですが。 ● 登記する側の手間というのも一つの論点では十分あると思うのですけれども,ただ発行を留保しておいて,新規に発行する,そこで登記申請時とは別に独立して本人確認手続と同等のものをやる。それができるのだったら,ではなぜ再発行はだめなのかというふうな話にもつながっていく,そうなると歯どめがなくなるというのも一つの理屈なんだろうと思います。   それから,この世の中に同一のものについて複数の登記識別情報が存在することによる司法書士のところでの,場合によっては登記識別情報が今なお有効か真正かということの確認の手続をもう一度踏まなければいけないというふうな事態が出てくるとか,あるいは登記識別情報に対する信頼感が揺らぐというふうな御指摘だったと思うのですけれども,先ほどの○○幹事の御発言でいえば,登記識別情報の大切さの定着度みたいなものがどうなのかということとの関連でというものの出発点が,多分現在の登記実務にかかわっている人の感覚からいえば,現在の登記済証にかわるものとしての登記識別情報というところから逆に出発して,登記済証が唯一無二のものなんだから,登記識別情報も唯一無二というところからまず出発していって,その上で不都合があれば発行留保で後日発行とか,再発行ということをその次に考えていけばいいという,どうも発想の方向がゼロからこの制度づくりを考えていくのか,あるいは登記済証の横滑り的発想でいくのかというところの感覚の違いも大きいように伺っていたのですけれども。 ● 先ほどの○○幹事の御指摘で,基本的に再発行を阻む問題点は事務負担だけなのではないかという御指摘もあったのですが,先ほど司法書士会の方もおっしゃったような問題もあるほかに,余り多くはないのかもしれませんけれども,登記をやる場合に実質的な権利者といいますか,お金を出した人が別の名義で登記をやって,そのときの登記済証とかを実質的にお金を出して保管している。その場合に,権利がどっちに帰属するかという別の問題はありますけれども,そういう例もないでもないので,本人であることが分かれば再発行すればいいではないかということに,実体的な法律関係がすべてそれで割り切れるというふうにも言い切れないのではないかなという気がするのが1点でございます。   もう1点は,こういうコンピュータ化の改正でこんなことを言うのもあれですけれども,私,これコンピュータ化の改正やったからといって不動産取引がコンピュータ取引に圧倒的にどっと流れ込むという気は余りしておりませんで,紙による取引というのは実際上かなり存続するのではないかと。そういう場合に,この登記識別情報が紙にされて,例えば目隠しをするということも考えておられるようですけれども,そういったものが実際上登記手続をしたときに発行されるいわば唯一無二のものだと,しかもこの世に一つしかないということになると,それを持っているということは正常な,通常の不動産取引の場合においては,その人が真正な権利者であって,間違いない権利者であるということを,もちろん本人確認にプラスアルファですけれども,かなり強く推測させるという意味で,正常な不動産取引の世界においてかなり有用なものなのではないかと。逆に,これを複数発行されるということになると,そういった従前登記済証が持っていたような機能がほとんどなくなってしまうということになるのが本当にいいことなんだろうかという疑問を禁じ得ないところでございます。   ですから,これもしょせんは制度設計の問題として,こうやってしまえば,再発行を認めればあるいはそれでいいのかもしれないのですけれども,むしろ実際に不動産取引,あるいはイレギュラーな裁判事務なんか扱っている観点からすると,従前の登記済証の延長みたいな形の登記識別情報,紙化されたもの,紙になったものを考えているのですけれども,それにふさわしいような実際の制度的な運用というのを当局でお考えいただいてやるというのは,従前の不動産取引になじんでいる国民感情に合致するのではないだろうかという印象を持っているのですけれども。ちょっと御意見だけ申し上げました。 ● 今の○○幹事のお話にもありましたし,先ほどから何度か出ているのですけれども,複数の登記識別情報が流通していることに伴う弊害というお話があったかと思いますけれども,確かにそういうことが問題になり得るように思うのですけれども,単一の登記識別情報だけが存在するという場合にも,失効しているということはあり得るわけですね。そうだとしますと,一つか二つかという問題はあると思いますけれども,登記識別情報が存在しているというだけではそれが真正かどうかということは分かりませんので,そこのところは程度の問題になるような気がするのです。ですから,実際上再発行を認めることによって,利用者のビヘービアがどうなるかということにもかかわるのかと思いますけれども,何か相対的な差のような気もするなというふうに思いますが。 ● おっしゃっていることはすべて論理的には成り立つ話なんだと思いますが,先ほど○○委員のお話にもありましたけれども,やはり登記申請,前の登記の申請のときに出されたものだという属性があるからこそ,いわば前の登記の申請人だったということが確認できるという構造があるわけですね。ですから,例えば新規発行ということになると,そこは遮断されてしまう,再通知も同じだということで,もちろん論理的にはそういう考え方は制度設計としては成り立つとは思いますけれども,いろいろ御意見,関係各界の御意見を踏まえた上,やはり一応そういう論理的な属性を持ったものとしてこういう制度にしたいということでございます。 ● 議論の中身について直接言うつもりはないのですが,登記原因情報が紙ベースであるときに,それに対する信頼というような発言が幾つかありましたので念のために申し述べたいのですが,現行の登記済証でも当然偽造の登記済証,しかも非常に巧妙なものがあって,なかなか見分けるのに,多分資格者の方々もそうでしょうし,こちらの窓口も苦労しているわけです。そういう意味では,今回の登記識別情報の最大のメリットというのは,有効確認がいつでもできるということですので,仮に唯一無二のものとして紙に書いて印刷して発行したにしても,それを見せられた方は有効確認を必ずしていただかないと,これはもう制度として成り立たないということだと思いますので,登記識別情報の提供を受けた場合には,その中身を見せるかどうかという問題はまたあるわけですけれども,少なくとも有効確認とあわせてでないと登記識別情報は信頼できないぐらいに思っていただく必要があるのではないかということがありますので,そこはもう少し,いわゆる紙の登記済証に対する信頼とは違う扱いを考えていただきたいなと思っております。 ● 今のお話にも関連するのですが,登記識別情報の有効確認という話,今,○○委員からはいつでもできるというお話がありましたが,それはいつでもできるのですか。登記申請のときしかできないのではないのですか。 ● 御本人であれば,要するに有効性確認請求をして,有効であるとか,返し方はいろいろあると思いますけれども,失効していないといいますか,正規に発行されたものですということの証明の請求は,いつでもできるということを考えております。 ● いつでもできるわけですね。 ● 請求できる人は限定されますけれども。 ● 非常に実務的な話で恐縮ですが,先ほど○○幹事からのお話がありましたが,登記識別情報というものと権利証との最大の違いは,物であるか情報であるかという違いだと思うのですね。   例えば,今,不動産屋の実務,売り方と買い方がいらっしゃる,その仲立ちをしているという場面で考えますと,まずこの不動産を売ってほしいのだという売主が業者のところに来たときに,真正な売主かどうかというのを確認するわけですね,つまり正しい所有者かどうか。それは,実務的には当日謄本と権利証と照らし合わせて,司法書士さんだけではなくて不動産業者もそのぐらいはやっておりますので,身分証明書なり免許証なりで,売主さんが本当に売る気で持ってこられたのだなということで媒介契約を結んで売りに出すわけですね。という実務をしているわけです。これは本当の持ち主さんが売る気で売りに出されていますよといってお客さんを集め,買い手が来たときにお会わせして条件交渉をする。そのときには,真正な売主さんですよということを,いわば業者が仲立ちしているわけですから,そこで機能しているのだと思うのですね。そういう実務があると思うのです。   ところで,今度のようにオンライン登記になったときに,登記識別情報を業者が見せてくださいとか教えてくださいといっても,これは当然教えないでしょう。そうすると,本人かどうか,今は権利証を見せていただいて,権利証は物ですから見せることができるし,その場で返せますから,現に見せていただいて謄本と確認をする。ところが,その作業ができなくなるわけですね。そこで今御質問させていただいたわけですが,登記識別情報はいつでも本人であれば確認できるということであれば,例えば業者さんの窓口でパソコンでアクセスをして,打ち込むときは後ろを向いていますからといって,信じるかどうか,お客さんが記録されちゃうだろうから嫌だとおっしゃったらもうできないわけですが,仮にキャッシュカードでお金をおろすのと同じで,ほかの人に見られないようにキーボードが押せれば確認ができる。それで,その場でリターンが得られるわけですね。そういう制度と考えていいわけですね。   ただその場合,例えば実務的には今も申し上げたように売主さんは多分業者には登記識別情報は漏らさないでしょう。シールの張ってあった紙を見せて,これを持っているのだからおれだと言っても,それは今度は業者が信じられないですね。では,そこに司法書士さんを呼んだとしても,普通は司法書士さんは買い方でつける方が多いですから,買い方の司法書士さんに登記識別情報を教えるかというと,これも教えないだろうと思うのです。あるいは,教えた上で取引が流れちゃったら,教えたことでその登記識別情報は失効させないといけなくなりますから,やはりその場で自分で打ち込む,自分で打ち込んだものが記録に残らないという保証がない限り売主さんは打たないということになって,そうすると取引前に本人確認をするという機能が今の権利者にはあるわけですが,今度登記識別情報になったときに実務はどう対応していくのかなと,あるいは取引慣行がそこで変わっていかざるを得ないのかなと思っているような次第で,特別意見ということではないのですが,登記識別情報というのが情報であるがゆえに,ペーパーというような物理的なものでないだけに,結構影響が大きいかなというふうに思っております。 ● 今の話ですけれども,これもしょせん運用の問題ではなかろうかなと。先ほど,当局の方から御説明がありましたように,登記識別情報は,結局,法務局における確認ですか,有効性確認がないものは直ちにはそれだけではだめだと,だから売却を依頼する場合には,すべからく法務局に行って有効性を確認してもらったものではないと,とてもではないが不動産業者だって受けられないだろうという気がしているのですけれども。   ただその場合,例えば紙ベースで考えた場合,目隠ししたものを取ったときに法務局はその後どうするのかと,わけの分からない問題はあるのですけれども,その辺はまたお考えいただくとして,有効証明付であればそれなりの機能は十分果たし得るのではないかなという気がしておりますけれども。 ● 今,○○委員のおっしゃられたのはそうなので,他人のパソコンに打ち込んだら記録をとられる可能性はある。ですからそれを非常に心配されるというのはそのとおりだろうと思うので,実際それをどういう形でクリアするかと考えないといけないとは思いますね。本人が専用に使えるようなものにする。それこそ携帯電話から確認できるようにすればまず間違いないのでしょうけれども。そういうような技術的な点は幾つか解決の方法はあるのではないかとは思うのですが,おっしゃるように非常に心配をし出すと切りがない面はあると思います。 ● あと1点,担当者骨子案の15ページに有効証明のエクザンプルが載っているわけですが,これはパソコン画面上に出るものですか。それともペーパーで交付してもらえるものなんですか。イメージとしてはどういうものなのでしょう。 ● オンラインで確認されたときは,これはオンラインで返すしかないので,パソコンの画面上に出る。窓口に来られたときには,これは紙で出すしかないのでペーパーで交付される,そういう単純な仕切りだと思います。 ● 先ほどちょっと申し忘れてしまったのですけれども,先ほど来のお話の中にありますように,一回発行された登記識別情報がある,それが恐らく失効して再通知という手続でやられるのだと思う。しかし,最後までその内容というのは分からないわけですから,外形的にはどうしても二つ,例えば窓口申請で出た場合のことを考えますと外形的には二つ存在してしまう。その二つの存在がどちらが正しいかというのは,なかなか分かりにくいわけですね。表側に「再通知」とか書いてあるか分かりませんけれども。しかし,いずれにいたしましても一般的にはなかなか理解していただけない。   そうなるとどうなるかということでありますが,先ほど来御心配のことは,例えば今では登記申請するのにそういうふうにした方が便利ではないかという観点から今いろいろお話をされているのだと思うのですけれども,仮に悪用されるおそれはないのかというようなことを私どもはちょっと考えてみました。例えば二重譲渡とかそういったことですね。外形的に,実質的には一つなのですけれども,しかし,外形ではなかなか分かりにくいということから,今までの場合は登記済証は一つですから,いずれにしても登記するときにはそれを使わなければならないということがございました。しかし,今回は,例えば複数,あるいは三つか四つか分かりませんけれども,そういった場合になりますと,それをもとにして悪用されるという意味,例えば二重譲渡のようなこととか,そんなことが,今の申請とはちょっと離れるかもしれませんけれども,そういったこともちょっと危ぐされるのではないかと。   そういうことが考えられるとすれば,私ども,というか,実務に携わる立場といたしましても,先ほど申し上げたようないろいろな作業をしなければならない。そんなことで申し上げたところでございます。 ● 今の再通知のことに限らず,もともとの○○幹事のお話は,登記識別情報がどれだけ利用されて定着されるかという制度設計との関連だったわけですけれども,そもそも不発行の制度を設け,失効する制度を設け,再発行を認めないという形にすると,登記識別情報が出されてくる余地はどんどん少なくなってくるわけで,ちょうどこれは韓国で保証書制度を廃止したときに,事後通知につきですけれども登記官の審査と,あと資格者代理人での審査があって,結局90%資格者代理人になってしまったわけですよ。同じような制度設計に持っていくのか,つまり登記識別情報制度は一応設けたけれども,実際利用できないで,最終的には資格者代理人だけで90%以上,韓国と同じようになるとお考えであるとすれば,再発行なんか認めない方がいい。   再発行絡みでの真正性の問題ですけれども,○○委員御指摘のように,一枚,一通であろうが複数であろうが,すべてこれは有効証明をつけていく形になると思うのです。そうだとすると,それは課金されますから,その負担を避けて,当事者だったらどう流れるかというと,○○幹事がおっしゃるように窓口申請で目隠しシールをもらうのではないでしょうかね。その方が安上がりである。そうするとオンラインには流れず,窓口申請ばかりに流れて,目隠しシールの紙をもらってペーパーベースの新たな登記済証を送るだけという結果に流れるのかもしれない。そこら辺との関係での制度設計なのではないでしょうか。 ● ○○幹事は,登記識別情報不要論だと発言されていましたので,そのような発言になるのでしょうけれども,やはり先ほど○○委員の方からもありましたけれども,要するに1回しか出さなくて,それが登記申請の申請人,権利者になったときに出すのだというものがあるからこそ,例えばもちろん登記手続だけの本人確認を考えれば御指摘のとおり資格者代理人一本とか事前通知一本というのはあり得ると思いますけれども,正にそういったものが今まで出ていたわけですね,登記済証という形で。それが本人確認手続以外場面で,ある場面では一応本人確認手段として機能していたという事実もあるわけですね,だからこそ有効性確認という形でも用いたということですので,そこは全くゼロから制度を作るというわけではなくて,現行制度上登記済証というものがあって,それなりに一定の属性を持って定着して,それがオンラインのときにはできるだけそれに近いものを考えていこうというところから出発して,いろいろ意見照会の結果,やはり再通知は認めなくてもいいということで落ち着きがいいのではないかと考えたと,繰り返しになりますがそういうことでございます。 ● 議論の中身自体について言うわけではないのですが,どうも登記済証のイメージでこの登記識別情報をとらえているのではないかという気がするのです。幾ら紙ベースとは言っても,登記済証の場合には登記官の印とかいろいろなものがあるので,真偽判定がそれなりにプロが見れば分かるという前提ですね。ところが,登記識別情報の方は,仮に法務局が発行する紙にしたって,要は目隠しがしてあって,そこに書いてあるのは暗証番号ですから,仮に中の暗証番号まで見たって真偽なんか全然分からないわけです。ですから,これが本当に有効なものかどうか確認しようとすれば,登記識別情報の有効確認をするしかないのですね。   しかも,一番問題なのは,これは情報ですから,幾ら手元に持っていたって中身を知られてしまったら唯一無二性はなくなってしまう。その登記識別情報の有効確認のときに一番漏れやすいわけです。そういう特色があるということを,従来の登記済証と随分違う,唯一無二性で見せない限りはある意味では偽造は不可能です。登記済証の場合には,全く見せないで手元に持っていたって,登記簿を見て登記内容を知れば,それなりの偽造ができてしまうわけです。現にそういうことをされているわけです。この登記識別情報の一番いいのは,ともかく見せない限りは絶対に偽造されない,そういう意味では極めて安全です。ただし,一回見られたら,もう手元に持っていたって全く当てにならないという,登記済証と相当違う点があるという,その危険性とか利便性を,登記済証と大分違うということをもう少し意識していただいた方がいいのではないかなと。伺っていて,どうも登記済証のイメージで唯一性,無二性というようなことを考えておられるようなのですが。   特に,有効確認が非常に便利ではあるのですが,その有効確認のときに一番情報が漏れやすい,そこをどうやって秘匿するのか,技術的な面も含めて相当検討しなければいけないのは正にそういうところだと思うのですが。 ● この登記識別情報の再通知又は新規通知の問題に関連しては,御指摘がありましたように論理的に可能な制度の組合せの在り方というのは幾つか考えられるわけで,御指摘のあったものはいずれもごもっともなものだと思うのですが,私が一つ危ぐするのは,この登記識別情報なるものの考え方といいますか,コンセプトの問題がありまして,登記識別情報というのは少なくとも今回のこの検討を始めたときからイメージされてきたものは,あくまでも登記の申請という手続があったことを契機として発行されるものであって,単に本人確認のだめ押しではないですし,したがって,それによって確認されるものは,本人性に加えてその登記の手続の経過との関係で登記を申請する意思をも確認するという機能を併せ有しているという性格を持っていたはずのものなのだと思うのです。そして,実際にそのことが分かるのは,今日の司法書士会からお出しいただいている資料の本人確認情報のサンプルなどを拝見しますと,これは正に登記識別情報にかわるものとしてこういうものが必要だという文脈でお出しいただいているものなのですけれども,司法書士に代表される資格者代理人のような方々が,単に私が私であることを確認してくださいということの確認を求めているのではなくて,不動産の登記申請手続,あるいはより広く見ても遺産分割手続のような何らかの財産処分の経過との関係で,本人であることと本人が正に財産の真の所有者として登記申請手続に入ろうとしていることを確認しているという性格を持つものでありまして,登記識別情報というのはそういう出発点から検討に入ったものであったものだと思うのです。   そうだとしますと,この再通知,新規通知ということを認めるという議論は十分に論理的に成立可能であると同時に,しかし,それを認めたときには,この作業の出発点はそのもののところを見直さなければならないような部分が出てきて,一体登記識別情報というのは何だったのだという議論になりかねない部分があるのだと思うのです。そのことを非常にニヒルな感じでおっしゃったのが,さっきの○○幹事のお話だと思うのですけれども,別にああいうふうにニヒルに申し上げなくても,その手の登記識別情報なるもののコンセプトをきちんと明確にして制度を示すという見地からいえば,再通知ないし新規通知なるものに十分議論としてあり得るものだなというふうには感じつつも,少なくとも今日の御議論を伺っている範囲では慎重でありたいなというふうな所感を,個人的には持ちました。 ● 結論にこだわる気はないのですが,私の申し上げたいことは先ほど○○委員がすべておっしゃったいただきましたので,少なくとも再通知を認めるかどうかにかかわらず,論理的属性があるからどうか,あるいは唯一無二のものであるからという説明は,いかなるところでもしていただきたくないと。これが誤解を招く,あるいは紙に目隠ししていると,登記済証にかわるものだというような,そういうイメージを国民一般に抱かれることになりますと,この制度はややこしいことになるので,そういうことを一切言っていただきたくないというのが基本です。   では何と説明するかというと,本人確認の登記申請用のパスワードですと,ただ変更もできませんし,いったんばれてしまったらそれでおしまいですよと,そういう使い勝手の悪いパスワードですよというふうに説明せざるを得ないので,そうなってくると,パスワードだったら何で変更できないのですかというふうになると。それはしかし登記済証というところから発想を始めたので,それ自体は一回なんですという苦しい説明にならざるを得ないので,私の疑問につながるわけですけれども,そこは一回限りのパスワードでも結構ですから,論理的属性だとか唯一無二だとか,そのことによって今までの登記済証と同じようなチェックができるというふうに言っていただくと,これはかえって問題ですので,それをやめていただければ,この点はこだわりませんのでよろしくお願いいたします。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。   ○○委員,納得がいくかどうか,御意見があれば……。 ● ○○幹事のおっしゃったのに9割ぐらい賛成ですけれども,しかしそれは使い勝手の悪いパスワードですよという,これもおっしゃったのはレトリックなのかもしれませんけれども,その説明では国民は納得しないだろうなというふうには思いますけれども。   ですから,誤解を招くような説明を避ける必要はあると思いますけれども,やはり実体に立ち入って,いつか補助的な説明というのが必要なのではないかと思います。 ● 先ほど申し上げたように,この登記識別情報の場合に,他人に知られない限りはある意味では絶対的な安全性が保持できますし,そういう意味では正に知られるまでは唯一無二であることは間違いない。それを有効性確認でやったときに,いかにして安全性が確保できるか,そこが確保できれば,唯一無二性といってもそうおかしな説明ではないはずですので,要は情報ですから,物を持っていても,その情報が他人に知られてしまえば正に情報として唯一無二性がなくなってしまうということは御指摘のとおりですけれども,その秘匿の仕方がきちんとできるのであれば,それはそれで安全性の高い確認の方法であることは間違いないと思っていますので,そこはこれからのシステムの組み方にしろ運用の在り方にしろ,特に気をつけていきたいと思っています。 ● いろいろ貴重な御意見をいただきまして,どうもありがとうございました。   今,説明の仕方についても厳しい御指摘をいろいろいただきましたが,基本的に○○委員から言われたコンセプトの話をベースに,確かに「論理的属性」という言葉は舌足らずだったとは思います。ただ言いたかったことというのは,要するに前回の登記の申請のときにだけ発行されて,その秘密性を本人が厳重に守るという要件のもとに,それを知っている人は本人しかいない,その本人というのは前の登記の申請で権利者になった人だという推定が働くだろうという,そういう意味で単に申請があったときに本人確認をするという制度とは違う,そういうコンセプトではない,そういう趣旨で論理的属性と申し上げた,そういうことでございます。   結論においては,再通知をしないということでよろしいのでしょうか。それとも,やはり再通知はしろというところまでいくと,そこはやはり制度設計にかかわるものですから。   そこまではないというふうに考えてよろしゅうございますか。 ● 私個人は,そこは切り離して,再通知というのはあり得ると思いますけれども,これは決めの問題ですので,一番引っ掛かったのは先ほどから申し上げた点ですので。   それから,これは資格者代理人が本人確認をするかという選択ですけれども,その前の議論というのはそうではなくて,司法書士さんのところに行くときにも登記識別情報なるものをチェックして,それが再通知を認めない制度だと安心できるとおっしゃったわけですけれども,再通知を認めなくてもそういうふうには考えてはいけないという点がポイントなわけですから,やはり御説明によって誤解をたくさん招いていると。今までの登記済証と同じような機能を営むかのごとく,再通知を認めないことによってそういう安全性が保障されているような誤解を招いていることが一番問題ですので,そこを一番気をつけていただきたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。○○委員,ここで再通知制度なしという決めをしてもいいかどうかということなんですが。 ● 私は,ここに至る長い真偽の経緯については十分にフォローしておりませんけれども,ですのでここであえて再検討しろというふうには申し上げませんけれども,くれぐれも説明の方はよろしくというふうに申し上げておきます。 ● それでは,一応原案には反対はしないということで御結論をいただいたと。   いずれにしても,ある意味で過渡的な制度の色彩を持っていますので,今後の実務の運用の中でいろいろ再通知の方向に行くのかあるいは登記識別情報不要論に行くのか,更にまた追って検討をしていかなければいけないのだろうと思いますけれども,本日のところは,原案には注文はあるけれども反対はしないということで引き取らせていただきたいと思います。   そこで,ここで休憩をとらせていただきたいと思います。   (休     憩) ● それでは,時間になりましたので再開したいと思います。   次の論点は,部会資料2001の1の(2),「登記官による本人確認調査について」でございます。   まず,事務当局から御説明願います。 ● 済みません,誠に申し訳ないのですが,今,休憩時間中に皆さんのお話もちょっとお伺いして,言うべきかどうか分からなかったのですけれども,先ほど申し上げましたようにシステムを技術的に作ったりいろいろする方の観点から一言だけ。ひっくり返す話になるかもしれないのでちょっと嫌なのですけれども。 多分この登記の識別情報,これはどういう桁数でどういうふうになるかは別にしても,一種のパスワードに近い考えというふうにさっきから伺っていて,そこは理解されるのですが,もらった方は管理するのが大変ですよね。発行する方も,管理するのは大変なんですよね。となると,どういうメリットがあるのかが分からなくなって,先ほど後でもらう方法もあるよねと,例えば事前の手続をするいろいろなことのためにと。だとすると,もう一回申請をするという,交付はできるのだけれども,交付をするための--要するに登記が完了しました,交付はできるのだけれどもその交付の申請をしてもらうと出ますという解釈をもしやれば,多分管理する側もそれから受ける側も楽になるのではないかという気が……。   済みません,余り詳しく制度を知らないのでこんなことを言って失礼かもしれないのですけれども,技術的にはお互いにこういうものってなくす可能性もある。様々な観点を考えると,それを管理するのにかける費用とか,結構これ大変だと思うのですね。何か,高いシステムになってしまうような気がするのですが。   例えば,登記所の方で管理をしていますよね,当然発行したら。そこが漏れるということは絶対ないとお考えかというのも出てくるわけですね。そこが漏れたら,ひょっとすると全滅ですよね,この制度上で。その登記識別情報に価値を与えれば与えるほど危なくなるわけで,だからそこのところはもともとは全部せっかくシステムとして登記所に始めとする電子化された台帳……,ではありませんけれども,物があるにもかかわらず,というのが……。   これ最初からずっと今回の話の説明を受けたときから,実は私自身は説明できないなと思っていまして,こんなことを申し上げて恐縮なんですが。それでもやはりやる方がいいのですかね。 ● 今の考え方は,本人が希望したときの逆ですが,希望しないときには出さないという形にはしています。つまり,交付の申請があったときに出すということと基本的には同じになると思います。   それから,2番目のセキュリティーの管理の問題は,ここはやはり両エンドで秘密を守るようにしないとだめだというのは御指摘のとおりで,体制はこれまでどおりではいかないので見直しをしていこうと考えております。 ● それでよろしいですか。 ● 今,見直しをしていくということなので,それが分からない限りは,そこから先の意見は言えない。済みません。 ● 要するに,こういう登記識別情報を考えたのは,本人確認の方法って幾つもあるわけですが,現実にこの登記を申請した人しか知らない,そういうものが次の登記の申請のときに出てくれば,そういう情報を持っている人は前の登記をした人であろうと,それが言えるだろうと。現在は,それを登記済証でやっているわけですね,前の登記をしたときに登記済証を渡して,その登記をした人しか登記済証は持っていない。その登記済証をつけて次の登記申請がされれば,申請している人は前の登記をした人だろうと。   ですから,通常の本人確認の方法って幾つもありますが,それにプラスして,登記をしたという人,その人が次の登記をまたするという,登記の手続の特色に着目して設けられているのが今の登記済証であり,それと同じような機能を期待して考えているのがこの登記識別情報,こういうことになるわけです。 ● そこはよく分かるのですが,一般論で言うと,間違っていたら申し訳ないのですけれども,例えばせっかく法務省さんが法人登記をやっているわけですよね,そうすると例えば法人の動きというのは登記簿上は分かっているわけで,個人は公的個人認証サービスが始まれば,あるいはせっかく住民基本台帳ネットのようなものがあるからには,その方がどうなっているかというのは分かっているわけですよね。したがって,ずっと追いかけて,トレーサビリティーというのは確保されているので,そこにおいてはわざわざそういう情報を渡すことで今出る効果は分かるのですけれども,それがなくてもできるようになっているとすれば,便宜上というか,少し楽にするためという話のように思えるのですよね。そうすると,その楽にするためにかける費用と,それによる効果を考えたときに,本当に効果的かというのはちょっと技術的な面から見ると,下手をするとまた国会等の説明もつらいようなものが出てくる可能性も,まあないとは思うのですけれども,システムの監査等は結構そういう一つのものでも大変になるかもしれないなと思うので,そんなことをちょっと申し上げたわけです。ですから,やり方に反対しているのではなくて,そこは効果があるということを説明して,それにかかる費用を見ないといけないのかもしれませんね。   済みません,そっちの方が専門なものですから,意見だけ申し上げさせていただきました。 ● それでは,意見としてお伺いした上で,事務当局で今後継続してまた案をお考えいただくということにしたいと思います。   いずれにしても,従来の登記慣行だけではなくて,従来の登記制度を前提にした取引慣行も引きずりながら制度を作っているというところで,いろいろある意味で中途半端なものも紛れ込んでいるような印象を与えるのかもしれないと思っております。   それでは,次の「登記官による本人確認調査について」の御説明をお願いいたします。 ● 次の資料は,不動産登記法部会資料2004番になりますが,制度の趣旨でございますけれども,現行法上の登記官の審査は書面を対象とするいわゆる形式的審査に限られていると言われているわけですが,当事者出頭主義の下では出頭しないという却下事由というのが不動産登記法49条3号にございます。この判断については,出頭主義を廃止したことの性質上,対人的審査を必要とすると解されているわけですので,出頭主義を廃止した場合も登記官にはやはり対人的審査権というものがあるし,またそれを適切に行使しなければいけないということを明確にしておく必要があるだろうというのが制度の趣旨でございます。   もちろん,出頭主義を廃止した場合に,考え方としては登記官の対人審査権もなくなるのだという考え方もあるのかもしれませんが,しかし常識的に考えまして,やはり疑わしいと思ったときには出頭を求めて必要な質問をするとか,情報の提供を求めるというのは当然あり得てしかるべきですし,次の2005番につけております最近の裁判例においても,形式上は書面が整っていても疑わしいときにはより慎重な審査が要求されるという傾向がうかがえるわけでございます。そこで,この際,登記官が疑わしい事情があるときは,この「調査の要件」と「調査の方法」に書いておりますが,その申請人又はその代理人に出頭を求めて質問をして,又は必要な情報の提供を求めるということができるということを明確にしておく必要があるのではないかという,そういうことでございます。 ● ただいまの登記官による本人確認調査の制度についての御説明を踏まえて,御意見を伺いたいと思います。 ● 実務の取扱いを若干御説明申し上げたいと思うのですけれども。   今,御説明がございましたように,一応現在の実務では形式審査主義ということでございますが,2005の資料で,下級審の判決でございますけれども,ある一定の場合に登記官の審査義務が重くなっているという部分がございます。現実的には,先般私どもで本年度の始めに4件ほど,ばたばたと偽造事件が出ましたという御説明を申し上げましたが,あの際に,そのうちの1件でございますけれども,自分の土地について,自分が全く関与していないのにどうも取引が行われているみたいであるという土地の所有者の方からお話がございまして,そのお話を実際登記官の方で聞いたわけでございますけれども,そうこうするうちに,実際に登記が出されてきた。それで審査をしたところ,先般御説明申しましたように明らかに登記済証が偽造されている。登記済証に押されている印が年代が異なるものであるということで,最終的には必要な添付書類が添付されていないということで却下になったわけでありますけれども,これも大量の事件を調査していく中においては,そういう申出があれば止まるわけでございますけれども,ないとなかなか止まらないのものもあります。   それから,実際そういう申出がされた場合も,先ほど言いましたように本来的には形式審査だと言われているわけですけれども,実際私どもとしてはやはり登記に対する国民の信頼というのもございますので,そこの部分を確保したいというところもございますし,またその案件では,数千万円の抵当権設定登記があったというふうに承知しておるわけでありますけれども,そういうものが実行されてしまうというようなことにもなりかねなかったというようなことで,現実のところでは登記官のそういう法律の建前と申しますか,形式審査のところと実際に御本人等からお話があった際にそれに対して対応していかなければいけない,そこの部分の明確な根拠と言われるとなかなか難しいものがあるけれども,そこをやっているということで,今回の登記官の審査権限について明確にしていだたけるということは,実務としては非常に有り難いというふうに考えております。 ● ほかに御意見ございますか。 ● 現行49条3号の「当事者カ出頭セサルトキ」についての多数説の見解は,当事者が出頭しても意思能力がない場合の審査も含むと言われていますが,これに対してこのペーパーの中では,本人確認の権限だけに限定するということで,現行法と解釈を変えるというふうに理解してよろしいのですね。 ● 意思能力があるかないかという判断というのは,非常に微妙な判断にはなると思います。ですから,そこは基本的な原則としては本人確認のための制度であるという,そこは現行法と同じですが,それ以外の部分でどこまで意思能力,つまり裁判をやってみなければ分からないようなことまで判断できるかというのは,明確には書けないだろうと思うのです。ですから,制度の趣旨としては本人確認に限るということにするのは,現在登記実務で意思能力あるかどうかも含めて判断しているというわけではないですから,現行法の制度の実務における解釈を変えるものではないということだと思います。 ● 先ほど,○○幹事の方から法律的な根拠はともかくとしてというお話があったのですが,私ども実務の考え方としては,基本的には登記申請の真実性というのは登記官が最終的な責任を負う,ただ権利の登記に関してだけは中身の審査については形式審査主義という,そういった制約があるというだけにとどまるというような基本的なスタンスでやっておりまして。ですから,例えば典型的には表示の登記であれば裁判官的審査権があるということが原則でございますので,相手方が本人かどうか,今出てきているのが本人かどうかはいろいろな形で現実に確認しておりますし,商業登記についても本人性が疑わしいときにはそういったことを行っております。確かに権利の登記につきましては,東京みたいに非常に事件数の多いところでは,実際問題としては本人確認が今まで余り明確に行われていないのが現状ですが,地方などでは,たとえ権利の登記についても疑わしい事情があるときには本人確認を行っているということがありますし,要は現在の法律の建前から,強いて論拠を求められるならば双方申請主義の下の対面審査権ですか,そこに本人確認の権限のもとを求めることができるだろうなと思っておりますし,これをやらないとインチキな,いわゆる訴訟詐欺ではありませんけれども,登記の関係のいろいろな地面師の暗躍等が阻止できないわけでございまして,現実にやらなければいけないし,やっている。これを今回法律上明確にしていただくというのは,大変有り難いことというふうに思っております。 ● 本人確認調査の権限を明確にするということについては,御賛成の御意見でしたけれども,第二文の部分について○○幹事からの御意見があったのですけれども。 ● 先ほど舌足らずでございましたが,現行法でも例えば添付書面から明らかに意思能力がないはずだとか,そういう場合は意思能力の判断,実質的な審査の対象にはなっているわけだと思うのです。ですから,登記官の審査というものが,形式的には意思能力を含むすべての審査,法律事項に及ぶと。ただ,判断資料の問題として,基本的には書面で審査するという構造の手続でございますね。ですから,ここで問題としているのは正に人違いだという疑いがあるときに,その人違いかもしれないので関係者を呼んで事情を聞く,そういう制度ですと。   この文を入れましたのは,前回○○委員だったかと思いますが,自分はこの制度に反対であると,反対である理由として,もしこの制度を入れると本人確認以外のいろいろな,いわば登記原因を含むところにまで実質的な審査をされてしまうおそれがあるという御指摘だったと思いますので,そこはやはり登記にとって人違いの登記というのは一番困る登記ですから,そこを中心に書いた,そういうことでございます。 ● むしろ○○委員から御説明いただくのが一番よろしいかと思いますが,一方で現行49条の2号の側についての登記官の審査権は,形式的な書面審査であって内容に実質的に入らないというのが判例の立場と理解しております。   その一方で,意思能力の有無というのは,本人確認ではなくて本人なわけですから,本人の意思表示の有効性の問題であって,登記原因証明書と同じレベルの問題のはずです。この点について,一方では形式的審査主義で書面審査で登記原因関係の有効性,意思表示の有効性については書面上の審査しか行わない。と言っておきつつ,今度は3号を新しくする場合には,意思能力についての審査も建前上は本人確認の限りだけれども,裏では--裏ではと言ったらよくありませんが--実際のところは原因の有効性審査も行うのだよと,こういう改正の仕方をするのである,こう理解してよろしいのですね。 ● ちょっと最後のところ,よく分からなかったのですが。 ● 形式的審査の限りであるというのは,本人確認に関しても,有効性確認に関しても,書面審査の限りで行いそれ以上は行わないという建前であるという立法を行うのか,それとも,有効性審査についても,本人審査についても,この新しい権限に関する条文を使って両方とも及ぶと規定するのかをお聞きしたい。 ● 誠に不勉強で申し訳ないのですが,意思能力の判断権限がある,本人確認に含まれるというのは,どんな事案か教えていただけますでしょうか。 ● もともとは幾代先生の不登法に書かれたのが最初だと思うのですけれども,今ではここに持っていますけれども,これでも特に問題なく,例えば読み上げますと,「出頭した当事者に意思能力がないことが一見明らかの場合も含むと解されている」と。ほかの教科書も似たり寄ったりと理解しています。特にここについて争いは……。 ● どう考えるかなんですが,これよく分からないのですが,要するに問題となっているのは,現に申請されている申請書を作成して申請行為をしている人が,表示されている本人であるかどうかというのが本人確認ですよね。本来的に,意思能力がないと一見して分かるような人が,そういう申請書を作成できるのかどうかということではないかという気がするのですが。   仮に,持ってきた人が一見して明らかに意思能力のない人であれば,その人がたまたま表示されている本人と同じ人であったとしても,その人がした申請行為とは到底見られないのではないか,そういう考え方でいけば,それは本人の確認の範囲内の問題ではないか。その人が作ったことは間違いない,しかし,意思能力がない,だから無効だという判断をしているのか,一見して明らかに意思能力がないと分かるような人であれば,この申請をしているわけがない,したがって却下できるのだという考え方なのか。 ● ここにお書きになった方,永井紀昭さんですけれども,「出頭した当事者に意思能力がないことが一見明らかな場合」と言っているのですから,出頭してきた人間を対面審査しているのだと思います。 ● ですから,それは正に申請している人が本当にこの申請書を作ったとは到底思えないのではないかということではないかと。 ● この本人確認の意味に係る問題ですが,基本的にそのスタンスは,現行法にある対人的審査権を明確にすると。出頭主義の中で読んでいたものを明確にするという趣旨ですから,コアになる部分というのは人違いであるか本人確認であることは間違いないわけですから,その場合の本人というのは,意思能力のある本人ということであれば,その限度ではもちろん現行法と同じということにならざるを得ないのかなと。今,ちょっと突然の御質問だったものですから,そういう気がしておりますけれども。 ● 部会資料2004の1の二文のところについての今の○○幹事の問題提起ですが,恐らくここに書いてある文章のとおりに最終的に法制化するときに法文を作るものではないのだと思うのですね。今,○○幹事がおっしゃったとおり,ここの本人確認という概念を法文に書きあらわすときに,本人であるかどうか及びその本人についての意思能力の有無の確認まで含み,しかしそれ以外の,例えば代金の決済がなされているのですかといったようなことを尋ねるところまでは含まないと,司法書士会が御心配のところのようなことまでは含まないのだけれども,しかし○○幹事が御指摘のような,現行法の意思能力についての通説化している解釈は変更しないということが伝わるような法文にしていただければよろしいと,そういう性質の問題なのだろうというふうに承ります。 ● ただ,現実問題として,それを書く書き方にもよるのですけれども,従来は出頭主義で,正に出頭してきた本人の問題なんですけれども,出頭主義にかえて,申請者本人の同一性について疑いがあるときに調査をするというのはいいのですけれども,この書きぶり次第では,すべての申請について意思能力の調査義務があって,意思無能力者の申請を受け付けると国賠になるというふうなことになるような条文になっても困るわけですね。多分,そこまでのことを意図しているわけではなくて,ここに書かれているのは,いわゆる従来言われているような実質審査主義を登記原因について及ぼすつもりはないというのが事務局の御趣旨なんだろうと思うのですけれども,積極的に申請人の意思能力についての調査をする義務ありという明文の規定を置くことについて,法務局としては対応し切れるか,どうでしょうか。 ● この規定というか,調査の要件との関係でもあるわけですが,「申請人となるべき者以外の者が申請人として申請していると疑うに足りる相当な理由があるとき」ということですので,全く意思能力がないと,先ほど○○委員の方からも若干ございましたけれども,およそ申請人となるべき者以外の者が--そういう申請書を書けないような人が,申請人として申請しているとは言えない,そのときには,やはり調査できるという,そういうことなのだろうと思うのですけれども。 ● その場合,事情によってはこの要件の中に読み込むことも可能と。 ● 足りる相当な理由があるときと。そういう要件の中ではそれは処理できると。 ● ○○幹事,よろしいですか。 ● 要するに,ちょうど遺言の作成だとか,あるいは手形の振り出しなんかも同じ話がありますけれども,書いたけれども出す気がなかったものだとか,意思能力がなくて出したとか,そういった形で,人が同一人であってもこういうケースは起こり得る。だけど,今の御説明の限りでいえば,人が代わった場合のみの審査である,こう理解してよろしいのですね。 ● というよりも,今のこの2004の2に書いてある「申請人となるべき者以外の者が申請人として申請していると疑うに足りる相当な理由があるとき」,本人が意思無能力者で,申請書をとても書けないような人であるという事情が分かっているときに,その人の名前で申請書が出てくれば,その人が申請したのではない,つまり申請人となるべき者が申請したのでないということが認識できるので,この要件に引っ掛かってくる,したがってそういう場合も調査対象の範囲内に入ってくる,そういう御説明ですね。 ● 従前の解釈と同一と理解しますけれども,その場合も実質的には有効性確認であって,本人確認ではないと私は思っています。 ● 本人確認というか,申請書に書かれている名義人が権利者であるかどうかという意味の本人確認ではないけれども,申請行為をしている人が当の本人であるかという意味では,そうではないという意味での本人の同一性に関する確認の問題だという御説明だと伺ったのですが。 ● それも含めて本人確認概念だということであれば,納得いたします。 ● ほかに,御意見いかがでございましょうか。   それでは,この点につきましては原案に賛成されたというふうに理解してよろしいかと思いますけれども。   では,次に部会資料2001の「2 登記原因を証する情報に関する問題」について審議をお願いいたします。   まず,この点につきまして事務当局からの御説明をちょうだいしたいと思います。 ● それでは,資料2006に基づきまして説明させていただきます。   まず「制度の趣旨」ですが,これは記載のとおり,登記をするということが前提となる実体的物権変動が生じているわけですので,その原因を登記官が確認した上で登記をする制度にするという,そういう趣旨でございます。現行法は,申請書副本でもいいとしておりますけれども,そこをいわば常に登記原因を確認して審査するという,そういう制度にしますと,そういう趣旨でございます。   これは,したがって現行法と比べますと手続が重くなる部分があるわけですが,なぜこのような制度にするかということを一応説明する必要があるというふうに考えております。   もともと登記申請自体,行為自体は登記を許諾するといいますか,登記を移すという公法上の申請行為の意思であって,実体的な法律関係の存在を書面上明らかにするという,そういう意思とは同一ではないということをいわば出発点として考えております。確かに,登記により不利益を受ける人,登記義務者が,登記を申請しているということは,それに対応した実体関係を承認しているのだろうという推測が働くわけでございますが,登記の前提となった実体的法律関係を当事者が直接確認したことを示すわけではない。そこで,登記という物権変動の存在を前提とする重要な手続上の行為をするに当たっては,登記当事者に対してその前提となる物権変動事実等を確認して,あるいは書面又は記録化するという行為を要求する制度とすることは,実体的法律関係をめぐる紛争の防止や,同時に登記の真実性を高めることに役立つのではないか,そういうふうに考えた次第でございます。   次に,問題の中身でございますが,では,一体内容としてどのようなものがあればいいのだろうかということでございます。我が国においては抽象的な物権変動行為というのは,基本的にはなくて,必ず原因行為があって,それに基づく物権変動というものが存在するということでございますので,要素としては,当事者間が法律行為で物権を移転したという場合には,先立ついわば原因行為とそれに基づく物権変動の事実,これが特定されている必要があるというのが2の(1)でございます。   他方,その法律行為以外の原因に基づく物権変動とか,あるいは実務上認められております真正な登記名義の回復等の登記もございますが,この場合も,やはり登記をする以上は誰かが,つまり登記名義人になる人が権利を持っていて,そうでない人は持っていない,現在の人は持っていないという,そういう実体的な法律関係というものがあるわけですから,その法律関係をいわば登記当事者が確認すると,実体関係を確認するということが必要なのではないかというのが2の(2)でございます。   次に,ではその登記原因をこういう形で登記手続上証明することができる最も適切な人は誰だろうかということを考えますと,つまり,これは証明情報なるものの作成者の問題でございますが,共同申請の場合には登記義務者と考えていいというのが3の(1)の考え方でございます。これは,通常の法律行為に基づく物権変動の場合を前提としますと,その者が申請に係る登記によって物権が登記簿上移転するわけですから,その前提となる物権変動の事実を,自分が物権を失ったわけですから証明することができる立場にあるという考え方でございます。したがって,形式面としては,2の内容に加えて,登記義務者が作成者として書面あるいは記録上明らかになっているという必要があるというのが3の(1)でございます。   他方,単独申請の場合については,登記義務者という人が手続上関与しないタイプの登記申請ということになりますので,これは個別に登記原因証明情報となるものを法令で規定していくというアプローチになるだろうと。ただ,大部分,原則型である共同申請の場合の登記原因証明情報としては,以上のような考え方でいかがだろうかということが3の(2)でございます。   なお,(注2)でございますが,ではその登記原因証明情報というのは一体どういう形で作るかということですが,現在の実務は売渡証書型というのがあって,他方では生の契約書といいますか,それが添付されている類型がある。どちらも,ここに書いてあるような要素,つまり物権変動の事実と,それからそれに先立つ原因行為というものが含まれていて,そして作成者というものが書面上あるいは記録上認定できるという場合であれば,新しい制度における登記原因証明情報と認めていいのではないかというのが(注2)でございます。したがって,この登記原因証明情報というのは,既存の契約書を利用して作ってもいいわけですし,写しにもう一回署名してもいいわけですし,原本であってもいいという,そういう考え方でございます。 ● この点に関連しまして,日本司法書士会連合会から,本日,席上配布の資料の中に登記原因証明情報の例ということでサンプル案が出されております。この資料につきまして,○○委員から御説明をお願いいたします。 ● お手元の方に,登記原因証明情報のひな形と申しますか,幾つかのパターンを提示させていただきました。論議の素材にしていただきたいということでございます。   今もお話がございましたけれども,登記原因となるものには無数の形があるわけでございまして,当然全部について作成することは不可能でございまして,ここでは極めて典型的な売買による所有権移転の場合,それから時効取得による場合,それから担保の設定といったもの,それから担保の抹消といったものについてお示しさせていただきました。   形式といたしましては,当事者本人から法律関係について事情をお聞かせいただいて,それを報告書形式にまとめたいわゆる報告方式といったもの,そして,その内容を確認していただいて当事者御本人の署名・捺印をいただく,こういう形式と,それから実際に具体的に売買などの場合には,原契約書がある場合が多いわけでございますが,その契約書の中から必要な部分を抜粋するような形,いわゆる援用方式といったものも作成してみました。   それから,実際に抵当権設定などの場合,これは2-3-①の例でございますけれども,契約書そのものずばりを,写しを提出する,こういうふうな形で考えてみました。   おおむね私ども,例えば所有権移転などもそうでありますけれども,決済のときに当日私ども司法書士が決済の場所に立ち会わさせていただくわけでありますが,そのときにいろいろなそこに至るまで,そのときその日だけでなく,恐らく二,三週間前から様々な契約書などの写しをいただいたり,本人確認についての情報をいただいたりして進めていくわけでありますが,その一連の経過の中で,私どもで知り得た事実といったものを報告するといった形,そういったものが一番あり得る形かなということでこういうようなものを作らせていただいたというわけでございます。むしろ本来ならば,こういう典型的な例ではなく,非典型的な,例えば譲渡担保であるとか,今お話に出ました真正なる登記名義の回復であるとか,あるいは錯誤の問題であるとか,そういった問題の原因証明情報があればよろしいかなと思いましたけれども,それにつきましてはなかなかケースとしては難しいので,こういう典型例を提出させていただいた,こういうわけでございます。 ● それでは,以上の説明を踏まえまして,登記原因証明情報の提供を必須のものとするという点につきまして,御意見をお伺いいたしたいと思います。 ● 登記原因証明情報の内容について,準則,細則等で,ちょうど司法書士会の方から出てきたようなものを作る予定はおありなのでしょうか。 ● 様式を規則等で定めると,そういう趣旨でしょうか。 ● 最低限必要な書面というか,情報の例であるとか,そういったものを定める予定はあるのでしょうか。 ● 現在のところは考えていないのですが。 ● そうしますと,代理人申請の場合も本人申請の場合も,どこまで出せば通るのか分からないまま出す,こういうことになるわけですか。   つまり,情報についてもう一つ質問なのですけれども,個別的な売買の契約書に相当する,写しに相当する情報を出し,代金支払済みの領収書にかわる情報を出すという形で,およそ幾つもの個別情報が存在しているのを一個一個電子化して,なおかつ本人証明をつけて出すという個別型もあり得るわけですよね。それと,統合型の,司法書士会のような統合型もあり得るわけで,そのどっちでもいいし,そこにも限定はないし,個別型の情報を出してくる場合にも,どこまで出していいかも限定を加えないわけですね。つまり,どこまで出せばいいか,申請人側としては不安だから,どこまでも出しますという,そういうことはないのでしょうか。 ● 現行法でも,「登記原因を証する書面」としか書いていないわけですね。ですから,そこでそういう解釈として,これこれこういう要件のものがあってということでございますね。ですから,登記原因を証する情報として,解釈の問題としてこういう内容であるということが分かればいいのではないかと思うのですが。 ● しかしながら,改正法においては現行の登記原因証明情報の真実性よりも,具体的な物権変動原因事実の証明に変えると,ここの部分は現行法どおりではなくて,より細かな事実に変えて真実性を向上させるという方針で改正をするのではないでしょうか。したがって,現行法と同じものでスライドさせればよいということにはならないように思いますが,いかがでしょうか。 ● ちょっと御趣旨がよく分からなかったのですが,要するに現行法上の登記原因を証する書面になるものというのは,多分この新しい制度の下でも当然登記原因を証する情報になると思うのですが。ですから,つまり物権変動の事実というのはやはり確認することができないと困るというのが現在の登記原因を証する証書ではないでしょうか。 ● そうしますと,「担当者骨子案」のときに書かれていた話ですけれども,もともと登記原因証明情報で電子化した情報を中心に行うといったときに,現在の登記名義人の現在の権利状態のみならず,物権変動の過程及び態様も正確に公示されなければならない,したがって登記原因証明情報においては,と,こういう文脈で新制度の解説をなさっていたはずで,それが全く現行法と変わらないのであれば,そういう目的,現在の権利状態のみならず物権変動の過程及び態様も正確に公示されなければならないのは現行法も一緒であって,何も変わるところはなかったと,こう理解してよろしいのですね。   つまり,「担当者骨子案」に書かれているあの部分,過程及び態様も公示しなければならないという部分は,別に特段強調すべきこともない。 ● 登記事項としては,例えば売買とか贈与とか,そういう登記事項は今でもあるし,正にそれを裏づける資料がちゃんと出ているという構造に現行法はなっていないわけですね。申請書副本でもいいと。だから,そこを申請書副本でいいという制度はやめますというのが出発点でございますが。 ● そうしますと,要するに申請書副本の制度をやめるということが改正法の本質であると理解してよろしいのですね。あとの登記原因の証明情報だとかの真実性を向上させることは,改正の本質部分ではない。 ● 今の関連で。私どもは,例えば典型的には権利関係の変動のとおりに登記が行われない最大の問題の登記として,真正な登記名義の回復があるのです。そのパターンは,今までは申請書副本だけで来るものですから,しかも税金が安いものですから濫用されている可能性が高いのですね。これを一々要件事実,登記原因事実を書かせるということになりますとなかなか濫用しにくいのではないかというところがあって,そこのところでは大きな効果を持つのではないかなと思って期待しております。 ● あと,申請書副本を廃止するというだけではなくて,態様とか過程という話だったのですが,過程のお話では今真正名義の回復,これは飛ばせないよという話が出てきたと思うのですけれども,態様というところでも,売買か贈与か相続かということをきちんとそのとおりに記す,それも現行法ではあるというお話だったわけですね。   そこで,今回の内容ということで,研究会の段階と比べますと,今回の今日いただいた資料では,売買契約が成立したということ,それが売買の場合には原因であると。ここで当然物の特定もされなければいけないと思うのですけれども,それは書いた上で,代金全額が支払われたこと,これ括弧になっているのですけれども,恐らく所有権が移転したというよりも代金が払われたことというのは恐らく要素となるのだろうと思うのですけれども。と考えたときに,果たして売買であるというふうに本人たちが言っている,その売買が成立したことの要素まで書く必要はないのか,つまり代金と引換えに所有権を移転する合意であって初めて売買なわけですから,代金額を書く必要がないという理由について教えていただきたいと思います。   特にその点は,時効取得の場合には時効取得が完成し,時効期間が完成して時効を援用したというだけではなくて,ここではきちんと開始時点の占有と,それから20年あったことというふうにきちんと要素で書いてあるわけで,そのバランスとの観点でもその辺をお教えいただくと助かります。 ● 表現の内容,売買契約の成立ということも細かく言えば申込みと承諾があってという,そこまで詳しくという,そういう趣旨ですか。 ● そうではなくて,正しく代金額,つまり例えば登記官が出てきた書類を見て,実際に最近でも公序良俗違反になったという事例がありますけれども,非常に低額な代金であったという事例があったように思います。見るからに時価と比べて非常に低い時価であるということを登記官が見たときに,これは売買というよりもむしろ贈与ではないかというふうに判断する場合もあると思います。そういう点のことであって,その点でございます。つまり,代金額を書く必要はないのかどうか。 ● これは,確か研究会の報告のときからあった問題ですね。確か多数は,代金までは要らないのではないかということだったように思いますが。   やはり考え方としては,例えば代金があるということは要素にはなると思いますが,具体的な額まで書かないと,申請を却下できるかというと,そこまではいけないのではないかということが一つでございます。   それからもう一つは,代金額というものがある意味ではセンシティブな情報だとい御指摘があって,これは全く公開しないというのであれば別ですが,一応この目的として登記原因を証する情報というのを提供してもらって,それを一定期間保管して,その後の物件調査の手掛かりにするという発想をとりますと,これは公開しないわけにはいかない。そうすると,代金を書かないと必ず却下されちゃうというところで,もちろん皆さんがそれでいいというのであればそれは望ましい,ベストかもしれないのですが,そこはコンセンサスがそこまであるとは言えないという判断で,最低限売買だと言えばもう代金額までは要らないという,そういうことにしたという,若干妥協をしている部分があるのは事実でございます。 ● ○○幹事の御指摘の中身,二つ入っていたような気がするのですけれども。   一つは,物権変動原因,売買という以上,売買は代金と目的物についての合意があって初めて成立する,その二つが主要な要素だから二つとも中身を書かないと売買だという認定ができないのではないかという,そういう御趣旨のものが一つ。それからもう一つは,法性決定の問題で,極めて安い価格での取引を売買と認定するのか贈与と認定するのか,売買としたら均衡がとれていないから贈与と認定するのだという……。   多分,後者の方は登記官の権限としてそれまで要求するのは現行法のシステムに合致しないのだろうと思うのです。前者の方については,今,○○幹事がおっしゃったように,代金と目的物の交換の契約ですということさえ登記官に伝えれば,それでオーケーにするのか,もっと細かい,具体的内容を確定しないことには売買の存在が認定できないという立場をとるのかということだろうと思います。   それは今おっしゃられたように,同時に登記原因証書を公示するといいますか,第三者がアクセスできるようにするのかどうかということとも関連して,どの程度の内容を書かせるかというのは,政策的な判断の対象ではないかというふうに思いますけれども。 ● それで,私自身は代金を書きなさいという趣旨で申し上げているというよりは,仮に研究会の段階でも具体的な代金額を示さなくてもよいということで,発想としては物と代金を払いましたという要素レベルで書くという話だったと思うのですね。つまり,いろいろな委任契約がありますけれども,何々契約は--委任で所有権移転しませんけれども,いろいろな契約があったとして,その契約の性質づけを本人たちが言ったと,その性質づけを書くのではなくて,その性質づけを成り立たせる要素というものをこの原因証書の中で構成要素とすべきではないか,そういう考えでございます。 ● 今おっしゃったように,少なくとも所有権移転原因としての売買契約の要件として考えれば,その所有物についての所有権移転の合意と代金額の定めということになるだろうと思います。その場合,具体的な額までは要らない。それを,もちろん言ったら具体的にはなりますが,代金額の定めがあることさえ確定していれば,売買契約としての要件は備わっていると言えるのだろうと思います。   そのときに,では売買契約を結びましたといったときに,必ず代金額の定めをしましたと言わなければ要件がそろっていないということなのか,常識的に売買契約を結びましたと言えば,それは代金を定めていますということが常識的な日常用語としては含まれているわけですから,そこら辺の日本語の解釈の問題にもなるのではないかと思いますけれども。 ● そういう日常的な解釈の問題ということにしますと,現在のような売渡しをしました,今は言ってみれば申請書副本を出していれば出した人はきっと登記原因があってやっているのだろうと,それはもう常識だということになるわけですね。そうではなくて,もう少し具体的に書かせることによって,それを出すということになれば,本人たちはうそのことは言いにくくなる,それだけ非常に大きなメリットがあるわけですから,それを具体的に言ってくださいという,そういう制度としてあるわけだと思いますので,そこは情報を出せという意味ではなくて,どういうものを要件とするかという法的なレベルで考える必要があるのではないかと思います。 ● 今日,司法書士会が出された書面を見ますと,端的にいえば法律行為について要件事実を書き切るというイメージになっていると思うのですけれども,それであれば,むしろそういうイメージ,従前の契約証書を前提にした書類を念頭に置いた,その延長線上だということであれば,代金額を書かないというのはむしろ筋が通らない。売買契約によって代金というのは明らかに要件事実ですから,それを書かないというのは筋が通らない。ただ,従前の登記申請書副本というのは年月日売買しか書いていないわけですけれども,それをも許容する程度の書類でいいのだというイメージであれば,別に代金書く必要はない。ただし,そのかわり,それは年月日売買プラスアルファ程度の,端的にいえば今回出されたような書面ほど細かいものである必要も必ずしもない。この辺になると,それは決めの問題だと思うのですけれども。 ● どの程度の具体性を要求するかというのはいろいろなレベルがあり得るのですが,例えば今日日司連の方から出していただいた資料の2-2-①というのがございますね,これは代金額を書いていないパターンでつくってあるわけですが,これは○○幹事の基準からすると,これでも足りないという,そういう御指摘でしょうか。 ● 足りるか足りないかというよりか,どういうふうに決めるという方針でいくのかということなんですけれども。ここでは目的物があって,売り渡し,買い受ける旨の契約を締結したというふうにあるわけですから,物はありますけれどもここでは代金について--例えば時価で買う旨の契約をしたと,そういうのであれば代金は示していることになるだろうと私は考えますけれども,売り渡し,買い受けるということが何なのかということを書いてもいいのではないか,そういう趣旨でございます。 ● 売買代金全額を支払ったとは書いていない。 ● それは,所有権等の移転時期の話ですよね。ですから,もともとのところで売買があったというところの話なんですけれども。   ですから,今日の資料の関係でいくと,「所有権を移転した」ではなくて,代金支払のときに所有権が移転するのであれば,正しく「代金を支払った」という記述になるのではないかと思います。 ● 私は,○○幹事よりももっとラジカルな見解なので,もともと担当者骨子案にあったのは,物権の現状のみならず物権変動の過程及び態様も公示しなければならないような制度にするのだという目的であるならば,物権変動原因の具体的な要件事実について明確な形で証明できるような情報を提供しなければならない。そこでもともと考えられていた構造としては,ドイツやフランスのように,その原因事実についての人的な担保制度,公証人であるとかあるいは司法書士を日本では念頭においておられましたけれども,そういった人が作成したならば,そこは捨象してもいいから統合型で出せばよい。ところが,それを人的担保制度がなくて,当事者間で合意しているのだからという担保制度のみで真実性を担保しようとするのならば,○○幹事がおっしゃるように,私は○○幹事以上に要求しますけれども,具体的な要件事実を証する書面を出してこなければ,バランスがとれないと理解していました。   ただし,一番最初の私の質問に戻りますが,もともとの制度の趣旨が,○○委員もおっしゃっていましたけれども,贈与にかえて売買であるかというところは本質ではないのだと,つまり登記制度の制度趣旨というのは物権の現状のみを公示するのであって,過程及び態様というのは公示する必要はないのだと,あくまでもそれは申請書副本だとか,申請自体の副次的な真正性担保のためのものなのだという理解をすれば,そこは落ちるかもしれませんけれども,もともとの制度趣旨はそうではなくて,過程及び態様も正確に公示することではなかったのでしょうか。 ● 特に今日出てきた書類を見て若干の危ぐの念を覚えるのですけれども,端的に言うと非常に細かい。こういうものが出てくるという限りは,きっと登記所の窓口で,ここに書いてある書類が少なくとも書面上つじつまが合っているという程度の審査をなさるという前提で恐らくいらっしゃるのだろうと思うのですけれども,それはそれでいいのですけれども,これ本当に細かく要求していきますと,実質的審査と形式的審査がどう違うのだろうかなというところまで行きかねないことなきにしもあらずという懸念を持たないではございません。   それともう一つは,さっき言った従来の登記原因証書の延長で考えるのか,申請書副本の延長で考えるのか,その程度でも許容されるという前提で考えるのかという理念の問題もあるかと思いますし,その辺で余り……。   さらに理屈を突き詰めて言えば,代金を書かないというのは要件事実を書き切るという立場からいうと筋が通らないということもありますし,私はむしろもうちょっと緩くていいのではないかという印象を持っているのですけれども。 ● 売買契約の要件事実をどう考えるかというの,いろいろありますけれども,対象物の所有権移転の原因としての売買契約を考えるときに,代金額が確定しなければということはないので,代金額の定めがあって,ということさえ確定できれば要件事実として満たしているはずですよね。代金請求するなら代金額まで確定しなければいけないけれども。   だから,通常は代金額の定めが未定で,代金額の定めがあったかどうかという認定は難しいですけれども,理論的には考えられなくはないので,額を言わなければ要件事実はおよそ満たさないということにはならないはずです。それが一つ。   それから,登記は権利変動の過程及び態様についてできるだけ正確に公示していくことが望ましいというのは,正に登記が公示するという意味で,別にそれ以上に売買額とか,そんなことをここで考えているわけではないので,要するに登記事項として表示されている登記が,できるだけ物権変動の過程に沿った,いわば中間省略のようなものなくして,それぞれの移転原因ごとに登記がされる,そういうことをイメージしているわけですから,それを担保する手段として登記原因証明情報を要求している。その証明情報としてどこまで要求するかというのは,それは実務的な運用も考えなければならないですし,それはできるだけ詳しいものが出てくればそれは真実性の担保としては望ましいでしょうけれども,当事者にとっても負担も増えるわけですから,どの程度のもので満足するかというのは最小限のものとしてはやはり登記原因の要件となるようなことが分かる情報であれば,それは満たしているということだと思います。どこまで詳しいものを出すかといったら,それは当事者が詳しいものをそのまま出した方が楽だということならそれでもいいですし……。 ● 今のお話ですけれども,○○幹事のお話の繰り返しになってしまいますけれども,どこまで登記原因の有効性を証明するかについて,人的な公証人制度であると,ドイツやフランスのような公証人制度の人的担保制度によって真実性を確保するか,それをやらないというわけですから,したがって違う形での真実性を担保する制度の内容として,なるべく詳しい情報を出そうというそのバランスの問題であって,○○幹事もおっしゃっていたように,代金額とかにこだわっている話ではなくて,どれだけ詳しく要求すれば,それに対応して真実性が向上するであろうという,人的な担保制度に代えての物的な担保制度の内容の設計の問題だと理解しております。 ● 先ほど,○○委員のお言葉ではあるのですけれども,売買代金を一定と定めて売買契約をしたというのは,売買契約の適法な要件事実の主張にはなっていないと思うのですが,例えば時価とすると合意したというのだったら一応適法な主張にはなると思いますけれども,一応一定の金額を定めてやったというのは,では一定の金額を言えと言わなければ,要件事実の問題としては適法な主張にはなっていないと思います。が,私の言いたいのは,登記原因証明情報としてそこまで要求する必要はないと,要するに売買年月日,売主と買主は何年何月何日これこれの土地を売買することを合意しましたと,これで十分ではないでしょうかということなんですが。私の考えとしては。 ● 理想の登記制度みたいなことを考えるときにはいろいろなモデルがもちろんあり得て,そして○○幹事が言われた考え方というのも一つあり得ると思うのですね。資格者強制主義をとるかどうかは別として。もし,資格者強制主義をそのモデルでとらないのであれば,本人申請型の場合には,登記官はいわば本人を直接呼んで,実質審査をすべてして,いわば資格者がやっているようなことをすると,そういうバランスの制度になるのだと思います。ただ我々としては,やはり現行制度というものが現にあって,そこから出発していくしかないというところがありますし,そこで現に実態として出てきている登記原因証書というもの,つまり申請書副本以外のものですね,一つは売渡証書型のパターンと,それから契約書型パターンがあるわけですね。それを余りドラスティックに変更できないだろうという気がしております。   この場合,要件事実という言葉にこだわると,いろいろここれが要素だあれが要素だという話にどうしてもなるわけですが,やはりここで押さえたいことは,登記申請書自体は「何月何日売買」と書いていますが,これは要するに物権変動の日--これは先日付の話がちょっと関連しますが--なわけですが,冒頭で申し上げましたように,やはり原因行為というのがまず債権行為というのがあって,そしてその後の物権変動という二つの要素があるのであれば,それはきちんと書いた売渡証書型のものであれば,それは申請書副本よりかは真実性が高いはずだということになります。それから,真正な登記名義の回復というパターンであったとしても,それは現行では申請書副本なわけですが,要綱骨子ではその前提となる権利関係を書かせるわけですから,それは理想の登記制度論から見れば不十分かもしれませんが,それでも現行制度よりは一歩前進だというふうに考えております。 ● 先ほどの御発言で,実質審査か形式審査かというお話がありましたけれども,現行法と基本的に変わらないと思っているのです。現行法も同じだと思っているのですけれども,登記官は,登記すべき事実がなければ登記はできないわけですから,物権変動の事実が存在したということの確認をしなければいけない。物権変動が存在したということを証明するためには,日本法の下では物権変動,例えば売買契約による所有権移転なら売買契約が物権変動原因ですから,売買契約によって所有権が移転したということを登記官に対して示さなければいけない。いわゆる形式審査主義と言われているのは,そのときに提出された書面のみに基づいてその事実を判断するというのが形式審査主義の意味ですから,その書面に何を要求するか,詳しいものを要求したってそれはやはり形式審査主義なんだということだと思います。   それから,○○幹事がおっしゃられたことの中で,私が申し上げたことを誤解があるのかなと思ったのは,例えば代金が安いから,例えば暴利行為で--代金が安くて暴利行為ということがあり得るのか--公序良俗違反だとか,そういう判断をするというと,これはむしろ実質審査,裁判的判断に踏み込むのではないか,そこまでできるのかどうか。明らかに代金はないけれども売買ですなんていうと,これはおかしいのでいいのですけれども,代金額の当・不当まで審査したり,あるいは法性決定を,売買になるのか交換なのか贈与なのかについて極めて微妙なところまで立ち入って,それの判断をしなければ登記ができない構造だというところまで要求するかどうか,そこはちょっと立ち入り過ぎなのではないかということを私は先ほど申し上げたのです。 ● ○○委員のお話は,前半部分と後半部分で何か不思議に思うのですけれども。   申請に要する書面の問題,書面にどういうものを要求するかというのは,実質的審査か形式的審査かとは関係ないと前半部分でおっしゃっているわけで,そうしますと審査に要する今度は情報ですけれども,それについて売買代金額を書いた情報を要求するか,それともそうではない情報を要求するかも実質的審査,形式的審査の問題ではないはずで,ですからすべては前半部分の問題であって,つまり贈与に代えて売買であるということについて審査権限は登記官はもともと持っていないですよ。始めから,前半部分の書面がどれだけ内容が具体的かどうかだけの問題であって。   ドイツやフランスの問題と比べて,日本の問題というのは,すべては形式審査,書面審査ですけれども,そこに要求する書面の真実性が人的制度によって担保されていないことによる。ところが,ドイツやフランスと同じような,同じ形式審査主義,書面審査主義の下において審査される書面の真実性が担保されてないのを,人的な方法によって今回の改正でもやらないと。やらないとなれば,違う方法で書面の真実性を担保しなければならない,書面に表れている情報の真実性を担保しなければならない,その方法として○○幹事も,私もそうですけれども,具体性を要求すれば,真実性は向上するだろうという物的な方法でカバーするしかないのではないのかというのが,少なくとも私の考え方であって,それは実質的審査も形式的審査も,○○委員がおっしゃるように関係ない。 ● ちょっと議論にねじれがあって,○○幹事が公序良俗違反を持ち出したり,低額の代価の売買契約書が出てきたら贈与としなければいけないというお話があって,それはそうではないだろうというお話をしたら,○○幹事は,私は登記原因にこだわらないで所有権移転の事実だけを登記する制度だと考えていると言っているから,そうではないですよということを申し上げたかっただけです。   ついでに言えば,フランスは現在公正証書が義務づけられていますけれども,発足当時は私署証書でよかったわけですから,人的担保制度が制度として成り立つ必須の条件かどうかというのは,今日何が妥当かという議論をすればそうかもしれないですけれども,それが必須の条件では必ずしもない。と同時に,フランス法は契約証書そのままを出していますけれども,契約証書は絶対に公示しませんから。ここでは,出された原因証書は公示するというシステムをとって,詳細な契約書を常に出さなければだめだというのは,それはちょっと制度として成り立つのはかなり困難であるというふうに思っております。 ● 先ほど私が申し上げたことについて,ちょっと私の言い方が悪かったのですけれども,公示をしなければいけないということで,贈与か売買かというのは私は念頭に置いておりますのは,登記官が判断して却下するというのではなくて,公示して,次の人たち,取引に入る人たちにとって資料となるというのであれば,売買が成立しましたと言っているけれども,親子関係があると,これは本当に売買なんだろうか,それによって後で自分が争いに巻き込まれたくないなというときに,例えばそこでちゃんと時価でやっていますよ,代金払っていますよというのが入っていれば,公示としてはいいだろうと。   そこまで書かない方針というのはあると思うのですけれども,それについて,そこまでやらないのだとするその御趣旨を,売買なら売買というところで本人たちが性質づけまでいって,つまりその要素,代金,時価なら時価でも何でも,とにかく代金払っていますよということも要らないのだとする,そのことの積極的理由というのを教えていただきたい,そういうことでございます。 ● 具体的なイメージというものが,例えば先ほどの資料の2-2-①の程度に書いてあるというものがあったとして,これは売り渡し,買い受けると書いてあるからだめだと。代金時価で,相当で,買主はこれを支払って買い受けると書けばいいというのは,かなり形式的な話にどうしてもなってしまう。結局,究極的に登記制度の登記官に求める心証と,その真実性のレベルにもかかわる話だと思いますけれども,基本的には書面で審査するという枠組みの中で,そして人的担保制度がないと言われればそれまでですが,登記義務者といういわば取引によって権利を失う人が,何月何日に自分は売り渡したと,そしてそれに基づいて何月何日に所有権を移転したと,このことがあれば,それはいわばそういうこと,つまり登記申請書以外に書かせるということによって,ある意味では実体関係にコミットしているといいますか,そういう要素になるでしょうし,後でその物件を調査,トラックダウンするときも手掛かりとなる情報としては,何月何日に売買したのだなということで,それで確認の一つの手段になるという意味で,○○幹事が言われるほどの具体性までは,最終的にぎりぎり最低限必要かという議論をすれば,要らないのではないかと。つまり登記申請をそれによって却下するか,要らないのではないかという気がしております。それは,一方では申請人の負担等ということも考える必要もありますし,一方では登記原因証明情報はなくてもいいという立場もある中で,どこまで一歩前進するかという,そういう問題だというふうに御理解いただければと思っております。 ● 恐れ入りますが,終了予定時間まであと2分しかないのですが,ここで終わらせるのもどうかと思いますので,若干の延長をお許しいただければと思いますけれども,よろしゅうございましょうか。 ● 登記原因情報の具体性のレベルとは違う,登記義務者が作成者になっているものという点ですけれども,真実性を担保するという場合には,登記権利者と義務者双方がこれで間違いないというふうに認めている必要はなくて,義務者だけでいいというのは,どういうふうに説明するかという点がちょっと気になったものですから。   義務者だけが作成者となるというのは,自分が不利益を負う者が,現時点でこういう原因に基づいて権利変動することを承認しますよというふうに言っている,それだけをチェックすればよいという意味での登記原因情報という理解になりますし,そこが権利者も含めますと違う理解になるかと思いますけれども,これはどうしてこうなっているかというのをどう説明されるかという点について,先ほど触れられたかもしれませんけれども,もう少しお伺いしたいと思います。 ● これは,やはり現在の実態というものから出発しますと,例えば抵当権設定というのは別紙の資料でもかなりの部分が登記原因証書がついております。それは,形式を見ますといわゆる差入れ型というのがかなり多い,つまり義務者だけのはんこがあるというその実態でございます。実態の話からしますと。それが,権利者側の書面もないとだめだということになると,これもまた大変かなと。   思想としては,もちろん義務者・権利者両方確認すれば万全なのかもしれませんが,最低限必要なものという要素で考えたときには,最低限義務者の確認があればいいと,そういう考え方でございます。 ● そうしますと,権利者側はコミットしていないので,これが本当かどうかは保証していないという,実態ではなくて制度の理解としては義務者が保証するものであるという理解でよろしいわけですか。 ● この登記制度のもとで,登記原因を証明する情報としてそれだけあればいいと。ですから,もちろん真実は神様,あるいは裁判所まで行かないと分からないかもしれませんが,大部分の取引というのは,きちんとした取引だという前提のもとに制度というのは作らざるを得ないのかなという気もしますし,義務者の署名もないというのはやはりまずいのではないかと。最低限,義務者の署名は必要だろうと。 ● 今のにも関連することなのですが,私自身はそもそも副本でもいいのではないかと言っていた人間なので,今回の原因証明情報については冒頭のお話でいえば売渡証書が現行法で登記原因を証する書面として認めているのだから,今回改正後も,従前認められていたものが認められなくなるわけはないという理解でいいのだという旨の,そんな御趣旨のお話があったと思いますし,司法書士会でお作りいただいた2-2-①というのは,どちらかというと売渡証書類似のもので,2-1-①というのは報告方式といって双方が契約事項から何から全部をアテストしたもの,こういう理解なんだろうと思うのですが,その中で,今,○○幹事がおっしゃられたように,報告方式には権利者・義務者が押印をしている,援用方式と証する売渡証書型,売渡証書だから現行でもということなんですが,義務者だけという形で基本的にはいいというお考えだというふうに理解をしてよろしいのですね。 ● 繰り返しになりますが,サンプル自体にはもちろん権利者の署名についてもありますけれども,最低限必要なものは何かという問題の立て方をしたときには,義務者の署名だけでもよしとせざるを得ないだろうという考え方です。   ですから,○○幹事の御質問に対しては,義務者だけの署名で足りるという制度ですということになるかと思いますが。 ● 私自身も,○○委員と同じで申請書副本でもいいではないかという立場ですのであれですが,もし一律強制するときに,義務者だけ入れるというのはどういう制度の説明になるのかなというのが,何かちょっと中途半端なといいますか,実態がこうだからそれに合わせてというのは分かりますけれども,それと離れて,制度は何でこれを要求したのですかと,何のための制度ですかというときに,できるだけ真実性を担保するといいますか,どこまで具体性かという議論はありましたけれども,そのときには権利者も入れるという方が素直なような気もしますし,その妥協の仕方の説明がどうつくのかなというのが気になったものですから。私自身がすっきりしないのだったら,別にここまでしなくてもというところがありますのでこだわりませんけれども,どうも何か中途半端な感じがいたします。 ● 私も,どちらかというと従前の副本的なイメージでいいのではないかという基本的な発想があるのですが,今回出てきたイメージで,非常に細かい,詳しいものになっているので若干懸念を覚えるのですけれども,端的に言えばこういうものが常に要求されて,かつこれについて常に作って出さなければいけないということで,かつ,これがいわゆる資格者の方によって有料で作られることを要求されると,こういうことになると,新たな国民負担という観点からの議論も必要なのではないかなという点で若干懸念を持っておりますので,御指摘したいというのが第1点です。   第2点は,これは裁判所の立場からの発言ですけれども,従前,登記の申請が事後的に争われた場合には,委任状等における署名が本人のものと筆跡が合うかどうかというのもかなり重要なチェック項目になっておりますので,この登記原因証明情報,更に言えば申請書でもそうなのですが,義務者の個人の場合には必ず本人の署名・捺印を義務づけるような方向での制度設計をお考えいただけないだろうかと。現実には,登記申請書なんかでは,法律では署名・押印となっているのが記名・押印で済んでいるという場合が非常に多いのですけれども,それは申請書は場合によっては制度全体の立場で署名・押印の簡略化とかいうようなたぐいの話があって,これはやむを得ない面もあるかと思うのですけれども,原因情報に関して言うと,少なくとも法人はこれまた記名・押印もやむを得ないかなと思うのですけれども,個人に関して言うと,本人の必ず署名・押印を求めることによって,事後的な申請の審査というか,証拠が収集しやすい形でやっていただきたいなという要望を持っておりますので,よろしくお願いいたします。 ● 2点ほど話をさせていただきます。   1点目は,今,○○幹事から言っていただいたのですが,経済界のいろいろな議論の中で,この法改正が一般消費者にとっても経済界にとっても,負担が増えるもの,これは経済的にもを含めてですが,そういうものであっては困るなという,大変強い危ぐを各方面から聞いております。   その一つが,先ほどの事前確認とかいうのがう遠な制度で使いにくいから,結局資格者代理人によることが大勢になってしまうだろうと,そうすると資格者代理人がアテストをするための特別な費用が国民の経済的な負担になるのではないかとか,あるいは原因証明情報を新たに作ることでまた新たな費用負担が生ずるのではないか,あるいは登記識別情報の有効確認ということでも新たに費用が増える。お国に払うもの,司法書士さんにお支払するもの含めて,大変手間と費用が増えてくるのではないかという危ぐが持たれています。   一方では行政の簡素化という意味で,本人申請がしやすいような制度設計というのをお願いをしたいと思いますし,そういう中で費用の軽減が図られるような,そういう御配慮もいただければと思います。○○幹事からの御発言があったので,あえてこの場で申させていただきました。   それから2点目は,本会議の冒頭にお聞きした点について,まだお答えをいただいていないので。   実務的にこの登記が流れていく,特に事前確認と登記原因証明情報とのすり合わせの部分で,期日の問題,あるいはこれは住宅ローンなんかの場合を考えると,融資の実行とかと大変大きなかかわりを持ってきますので,その辺のところを御教示賜ればと思います。 ● 1点目の,制度設計のところですが,もちろん実態論をいえば95%は資格者によって担われている制度ですし,今後もそれは多分変わらないと思いますが,それを強制するかどうかはまた別の話だと思います。   それから,ここにサンプルで書かれていますのも,司法書士のアテストというのは,これは要件ではない。つまり,登記義務者の署名があればそれでいい。もちろん,職業,プロフェッションとしてそういう慣行があって,更に詳しいものを書くというのは,これは95%の司法書士がそれでいろいろ活躍されているわけですから,今後物件調査なりに役立つ手掛かりになるわけですね,しかし,法律上の要件としては義務者の署名だけで足りるだろうし,その内容も簡潔なものでいいという形でカバーしたいというふうには考えております。しかし,全く申請書副本でいいというところまでは,いけないだろうと思っております。   それから,2番目の原因日付,要するに登記申請をしましたと,しかし,そのときにはまだ決済はしていない,そして,事前確認を経て,間違いない申出があったときに決済をして,そのときに物権が移転しますと。ですから,登記原因に書く日付というものが物権変動の日付,これが多分今の解釈ですが,そうだとすると,それは実態を率直に見ると事前確認をして申出があったとき,あるいは登記がされたときかもしれませんが,そういうものでなければいけない,そういうことですよね。そこはいろいろ御指摘もあって,今考えているところですが,一つの考え方というのは,要するに事前通知をして申出をしたというのは登記所にとっては公知の事実なんですね,そのときに決済するということであれば,あるいは申請があった時点,申出をした時点かもしれませんが,それは登記所にとって公知の事実なわけですね,それを考慮すると,そこを日付とすることは可能なのかもしれない。つまり,先日付の申請という言い方になるのかもしれませんけれども,それは一つの考え方だろうと思います。   それからもう一つの考え方というのは,しょせん申請して事前確認というプロセスは経るのですが,最終的には当事者の意思解釈なのかもしれませんが,売買契約というのは最初にしているわけですから,この時点ですべて終わってみたときには物権変動したことにしようということなのであれば,それは最初の申請時の日付だって構わないわけですね。そこは,考え方はあり得るのだろうと思っております。つまり,事前通知にしたからといって,克服できない問題ではないということです。 ● ただ,登記はできるだけ現実に即して,正に物権変動をそのまま登記にするのが理想像だと,こういう考え方なわけですね。今の市井の売買契約というのは,代金決済をもって所有権が移転するという契約が九分九厘です。お役所に土地を買っていただくときだけ別ですが。そうでないケースでいえば,登記移転は代金と引換えということですから,契約をして手付けを打って,それで残金精算とあわせて所有権移転をする。   これは,登記識別情報があって,その場でできる場合はそれでいいわけですが,登記識別情報がないと事前確認の制度になる。それは,正に今の保証書手続と類似になって,登記申請を出す,登記申請を出した日を物権変動日としなさいといっても,両当事者の意識は代金決済のときが物権変動日なので,うその物権変動日を書いて登記申請をしなさいと素人には言っているに等しいと思うのですね。   今,我々が保証書手続のときに,売主・買主さんを無理やり司法書士さんと御一緒に説得するわけですが,ありていに言うと売主さんに,あんたが権利証を持ってないのだから,しようがないでしょう,先に移転しないと登記ができないし,代金だって払ってもらえないから,登記だけ先に移しなさいといって登記申請をさせるわけです。ただ,あなたの担保としては,はがきを出さない限り登記は実行されないから安心ですよと,こう言っているわけです。だから,所有権移転日と今の登記申請のこの日付はうその日付ですと,これは両当事者も司法書士もみんなそう思ってやっているわけですね。今度,事前確認という制度になったときに,私は事前確認がかなり,登記識別情報というものの定着を待てば別ですが,やはり不安でなくしてしまう,もらわないというのが相当増えるだろうと思う。その場合,資格者代理人制度がほぼ強制に近くなるのではないかという裏の思いはありますが,それは置いておくと,かなり増える可能性がある。そのときに,もう登記の仕組みはこうなので,うその申請をしてくださいという説明は,なかなかしにくい。   今も,我々デベロッパーでいうと住宅金融公庫の融資付きの売買というのは,所有権移転登記をして,住宅金融公庫の抵当権がつかないと融資が下りません。ですから,この場合はデベロッパーが覚悟して,これは所有権をその日に渡している。そして,代金の支払だけをお客さんに対して猶予している。こういう理解で,ですからこのときはうそをついていることにはならないですね,物権変動日は代金完済ではないけれども,デベロッパーが覚悟してやっているわけですが,市井の個人対個人で事前確認制度で売買が行われるときに,物権変動日でない日で登記を申請します。それが登記日になります。なおかつ,普通の市井の売買であれば,売主さんの抵当権を代金で抜く,新しい買主さんは新しい住宅ローンを借りて抵当権をつけるというのがあるわけですね。そうすると,事前確認で,事前に物権変動をしてしまうという登記になると,旧債務者の抵当権がついたまま新所有者,これは普通の売買契約でいえば,無瑕疵,無負担のものを移転するという売買契約になっているわけですし,ここに報告方式でもそういうことが書いてありますが,実はそうでなくなってしまう。抵当権付きで渡す。事前確認が済んだ段階で,郵便が来て,それで申請をするときにそれを確認していただいて,代金決済をし,旧債権者に弁済をし,抹消し,新抵当権をつけ所有権を移転するということを,物権変動日と別の日付でやるということになって,これはやはり市井の個人の理解は非常に得にくいだろうと思います。ですから,○○幹事が言われたように,もしかなうのであれば,やはり先付けの日付での登記申請を認めるという形の方が,個人的にはいいように思います。 ● 今の御指摘というのは,現行制度にももちろんある問題で,保証書型で事前通知を出したときには,やはり最初に出す申請書には原因日付というのは本当はうそのを書いているのではないかと,そういうことですね,今回の場合も同じ問題があるのではないかという御指摘だと思いますので,そこは原因日付の書き方の問題として,また検討していきたいと思っております。 ● 今,○○幹事からおっしゃいましたように,保証書による登記申請の場合,現行法もずっと長年解決しなければいけない問題として残っていたものですから,引き続き御検討いただくとして,登記原因の内容等についての先ほどの御議論について,それなりの結論が出れば出したいなというふうに思うのですが。 ● 権利の登記については,この部屋の中で最高に無知な人間で,○○委員がいらっしゃるので今お聞きしておきたいなと思うのですが。   e-Japan計画の中でオンライン申請が実施されるということですと,登記情報も当然総務省,財務省,国土交通省等あらゆる機関につながるわけですね。どのようにつながるのかは全く空想でしか知らないのですが,電子国土構想の中に登記情報も筆界情報も地図情報も盛ると言っていますね。そうしますと,登記情報の中には当然登記原因が入るわけですが,あるいはそこには売買情報,評価情報も盛ると言っておりますが,そのときに登記原因が売買であるのにどうして価格がそこで出ないのかということを,法務省が困らなければ構わないと思うのですが,あるいはそれらについては当事者に聞け,あるいは仲介者に聞けというふうに突っぱねればいいのですが,そういうおそれはないのでしょうか。 ● e-Japanで電子政府だということではあるのですけれども,登記情報自体は登記所が持っている登記情報システムに入っておりまして,それを直接ほかの官庁のシステムとつなげるということは予定していません。オンライン登記情報提供制度を使っていただくというのが今のところの前提です。   それから,地図の電子化,電子化された地図の共有化ということは,これは課題として挙がっておりますけれども,その共有化の話と登記事項自体をどういうふうにそれと結びつけるかというのはまた別の話でございますので,今のような御懸念はないと思っております。 ● やたらなところで期待をされているようですので,その辺はやはりどこかで説明しないと具合が悪いかなと思いますけれども。 ● 売買代金は公示しろという動きは,具体的な動きとして存在することは確かですね。 ● さっき○○委員がおっしゃった登記原因証明情報の内容の問題の方ですけれども,これは意見といいますか,要望のような形で申し上げさせていただくことになるのだと思うのですが,○○幹事と○○幹事が御心配になった部分を,私もやや共有する部分がございます。   いわば今回のこの登記制度改革の理念の確認なんですけれども,単に申請書副本を廃止するということ,それ自体も大変問題でしたから大事なポイントだと思いますけれども,しかし,恐らくそれで終わりだということではなくて,今回改正を機に登記の真正を向上させるのだという理念があったのだと思うのです。そうだとすると,申請書副本の廃止に加えて,登記官に伝えられる登記原因証明情報の内容を可能な限り豊かなものにしようということも理念としてあるのだと思うのです。先ほど○○委員がおっしゃったように,それを余り重くしますと,当事者の負担という問題もありますから,限りはあると思いますけれども,しかし可能な範囲で高めようという理念はあったと思いますし,そういう観点から○○幹事と○○幹事が御心配になったのだと思うのです。   だとしますと,今日の部会資料の2006には,「例えば」という形で,従来の登記原因証書よりは豊かさが--これでも不十分だという御意見はあるかもしれませんけれども--豊かさが増したという印象の例示をお示しになられておられるわけで,この線は守っていただきたいなという気持ちがいたしますし,それからまた部会資料にこういうふうにお書きになったものであることを考えれば,先ほど○○幹事のお話から,現行法の文言をスライドさせるというふうにニュアンスのお話だったと思うのですが,ここに「例えば」とお書きになっているようなものが,法制上の御工夫に限りがあるかもしれませんけれども,可能な限り高いレベルのところで法制上表現するような結果にしていただきたいなという気持ちを持ちます。   単に現行法の登記原因を証する書面というのを,登記原因を証する情報と変えただけでは,この「例えば」で例示されているようなものであっても,実現できるかどうかちょっと危ぶむというふうな御心配はあると思いますので,御工夫の可能な範囲でそういうことも理念としてはあったのだということを,お忘れではないと思いますけれども,事務当局におかれまして改めて確認していただいて,お進めいただければという気がいたしました。 ● 先ほど,この問題で登記原因証明情報,例えば私ども資格者代理人が作った場合のコストの問題,国民の御負担の問題というふうに話がございました。一言。   私ども,今回素材として御提供申し上げたのは,あくまでもこの登記原因情報をつける場合の目的といったことから考えさせていただきましたので,費用とかコストは余り考えておらないことは事実です。ただ,既に今日も3種類,4種類ほどの資料をお見せいたしたわけですが,これは相当程度,例えば文書の定形化とか,あるいは引用形式を工夫するということによりまして,相当手間は省けるだろうと思っております。   と同時に,私どもは現在でも,実はこういうふうもの,登記所にはもちろん提出してはおりませんけれども,これに近いことはやりながら実務を行っているという現状がございます。そういった意味では,もちろん国民の皆さんに御負担になるということになるべくならないような形は考えていかなければならないというふうに思っております。   ただ,私どもがそれを指導できるかということになりますと,今度独禁法とかいろいろな問題がございますから,なかなかちょっと難しい点がございますけれども,ただそれは今度の登記原因証明の趣旨を十分,もしこれがこのままなったとすればですけれども,会員にも趣旨を理解してもらって,そして御負担の問題についても考えてまいりたいと,こんなふうに今考えております。 ● 確認ですけれども,今日重たいとか詳しすぎるというような話が出ましたけれども,一応対象となっているのはこの2006の注に書いてあるここの部分が最低あればよいと,ここが議論の対象とすべきものなわけですよね。しかしながら,現実としては司法書士会の方では,司法書士としてはプラスのことも考えていますよと,そういうふうな理解でよろしいわけですね。 ● 先ほど○○幹事から御説明がありましたけれども,これは決して法務省,法務局の作ったモデルではなくて,しかもみんな司法書士さんの準認証文言がないと登記をやらせないわけではなくて,司法書士を頼まなくてもいいし,それから司法書士に頼む場合でも,そのまま登記原因証書として出せるような契約書をしっかり作っていただければ,それが登記原因証書にもなるわけで,これを作らなければいけないというふうには考える必要はないと思います。ただこういうものは,同時に登記の真実性を担保するための書面であると同時に,当事者間の権利関係を明確にする,次に売るときにも売主の権限を証明する,あるいは後日の紛争に備える証書としての意味も持ってくるのだろうと思いますので,登記申請を媒介にして,当事者間の契約関係についてもより明確な証書を作っていく,これが慣行として定着していくことが多分望まれるのだろうと思います。   ただ,何が望ましいかということと,この登記制度の中で何を義務付けるかということについては,現在の取引慣行を前提にして制度をつくらざるを得ないという状況のもとでは,必ずしも望ましいものをそのまま義務付けの内容にすることは少し難しいのかなというふうに思っています。 ● 今,○○委員の御説明の中で,今日お示しした資料の中に,私どもの署名・押印があるというようなお話がございました。これは,実を申しますと司法書士法の規則の第24条だったと思いますけれども,そちらに司法書士が作成した文書,権利があるかどうかでなくて,作成した文書については署名・押印をするという規定があるものですから,それにのっとってそういうふうにしたというふうに一つ御理解いただきたいと思います。 ● 誤解を与えたら訂正させていただきますけれども。こういう証明書を司法書士さんに作ってもらわないと登記所に行けないわけではないですね。司法書士さんを代理人にした場合でも。   そこで,性急に結論を急ぐ必要もないかと思いますけれども,大まかなところで,産業界を中心には原案の方がよろしいという,それでは制度を改正する以上不足ではないかというような御意見もあったところですけれども,大勢を見極めておかないと,今後の作業にも支障が生ずるところですけれども,○○幹事とか○○幹事,制度としてどうしたらいいかということをちょっと……。 ● 私自身は,先ほど申し上げたことに尽きますので,それ以上は……。それでも売買が成立したというところをきちんと書かせれば,それでいいのだと,政策的にそこを選択されたというのであれば,それは特に反対は申しません。 ● 私の方も,これは要するに暫定的なものである,理想的な登記制度というのは人的な担保制度がついていなければ理想的なものではない。明治維新もそうですし,今の東南アジアも日本もそうですけれども,フランスとかドイツは公信力や対抗問題の紛争はまず起きません。広き門をつくっておいてあと滅びの道に歩ませるか,それとも狭き門をつくっておいてあとは幸福な道に行くかという選択肢の問題だと思っております。これは決して望ましいと思っていませんが,この段階で時間が足りないという形で,次回是非ともということです。 ● 私も,もともと○○幹事がおっしゃったような制度にすべきだと昔から言ってはいるのですけれども,しかしやはりそれぞれの,ドイツにしろフランスにしろ,制度以前の取引慣行がしっかりあるところにああいう制度ができたので,日本でもこういう制度改正を契機にして,むしろ取引当事者間できちんとした契約慣行を確立していく,そこへの専門家の適正かつ理想的な関与の仕方を模索していくということを期待せざるを得ないというのが現状ではないかなと思っております。   余り強引にするのも何ですが,大勢としてはこれはやむを得ないところかなというふうに思っておりますけれども,そういう取りまとめでよろしゅうございますか。   ○○委員の提起されました問題については,なお引き続き事務局で引き取らせていただいて,御検討をお願いするということで,事務局側もそういうことで……。 ● 確認ですが,日付の問題というのは登記原因を証する情報の内容とか,それ自体の問題ではないのでございますね。 ● ただ,証明情報の書きぶりには影響を及ぼしますね。 ● 基本的な制度導入のこういう枠組みの中でやるということ自体は差し支えないというふうに承りますので,よろしくお願いいたします。 ● 本日,3に「その他の問題」というのが並んでおりまして,それに関連して席上に休憩時間に資料2008というのも配布していただきましたけれども,これ以上延長することは信義にもとると思いますので,残念でありますけれども次回に持ち越しということでお許しいただきます。 ● 非常に活発な審議,厳しい御指摘をいただきまして非常に反省しておりますが,次回は完了通知,ここに甲案・乙案ということで用意しておりますが,それについての御意見を伺うということ。それから予告登記の廃止について,もしよろしければここで結論,この前もいろいろ御意見はございましたが廃止の方向自体は御反対はないというふうに結論は伺ったのですが……。 ● 実体法の解釈には,何らこの改正によって微動だに影響を与えないという前提であれば,全く反対する意思はございません。   それと,先ほど私が提起した第2点についてはまだ御回答をいただいていないと了解していますので,それは次回で結構でございます。 ● 署名の話でございますね。 ● はい,それは次回で結構です。 ● 予告登記について,○○幹事の御意見は。 ● 私は影響を与えるというふうに理解しているのですけれども。そういう改正であるのであるなら了解。結論的には廃止で了解。ただしそれは,実体法の解釈に影響を与えるのではないかという理解です。 ● 実体法に解釈を与えるのであれば,この場でやるのがそもそも間違っているというふうに理解しています。 ● そうですね,つまり代替制度として実体法上の制度を出してくるからここで問題をやらない。ほかの部分でも,登記済証を廃止して登記識別情報でやるからという,同じ不動産の枠内でやるからここで議論できる。だけど,違う実体法制度で代替する場合には,ここで議論できない,だからやらないという処理というのは,すごくバランスを欠いているように思います。 ● ちょっと,どういう意味かよく分からないのですけれども。 ● 仮処分登記で代替をする,仮処分登記で代替ができるというような御説明だったのですけれども。 ● 代替というのは,制度的に代替するということではなくて,事実上代替する機能を持つであろうという,そういう説明でございまして,制度として入れ替わるという話ではない。 ● 百パーセント入れ替わるかどうかは……。 ● 百パーセントではないと思います。 ● ないとすれば,予告登記でカバーできない穴が起こるということですね,廃止した場合に。 ● その穴はあるかもしれませんが,しかし,廃止することによって弊害がなくなるのであれば,それもいいであろうと,そういうことでございます。 ● ここで議論してはいけないという制約は全くなくて,仮処分で代替機能が営めるにしても,予告登記を廃止することによって実体法上の諸問題に重大な影響があるなら,それは廃止しないという選択をここですればいいだけの話で,議論すべき問題ではないとは,そういう制約は課していないつもりです。   理論上の問題というのと,○○幹事はむしろ実際の結論にどれだけ影響が起きるか,○○幹事もそれも含まれていますけれども,同時に理論上の問題というのを……。 ● 実際上は百パーセントカバーできてないのであれば,こぼれ落ちるであろうという問題と,百パーセントでないという御説明でしたから。それと,理論的には,特に訴訟がおよそ提起されたら仮処分登記すべきで,仮処分登記ですべて先後関係を決するといったら,例えば鎌田公信力説も不完全物権変動説も訴訟提起された場合には使わなくて済むわけですよね。という理論的な問題。 ● まあ時間の関係もございますので……。   予告登記の問題,今の状況ですと,ある程度次回議論させていただいた方がいいと思いますので……。 ● 失礼いたしました。 ● 次回,完了通知の問題と予告登記の問題,次回で何とかまとめないと困るという状況にありますので,御協力の方,お願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。 ● 登記完了通知については,本日資料も出ておりますので,事前に御検討をいただくことができますので,よろしくお願いいたします。   次回につきまして,お願いいたします。 ● 次回は11月26日,水曜日に予定しております。場所はここと同じ,第1会議室になると思います。よろしくお願いいたします。 ● それでは,法制審議会不動産登記法部会を閉会させていただきます。不手際で予定時間を大幅に超過しまして,申し訳ございませんでした。   本日は御熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 -了-