法制審議会動産・債権担保法制部会第1回会議 議事録 第1 日 時  平成15年10月15日(水)  自 午後1時32分                         至 午後4時20分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  動産・債権譲渡の公示制度の整備について(1) 第4 議 事  (次のとおり)               議         事   (開会宣言の後,事務当局から次のように当部会設置につき説明がなされた。) ● 定刻でございますので,法制審議会動産・債権担保法制部会の第1回会議を始めたいと思います。   本日は,皆様,御多忙の中を御出席いただきまして,ありがとうございます。 私,部会長が選出されるまでの間,議事を進行させていただきます。 議事に入ります前に,法制審議会及び部会についての若干の御説明を申し上げさせていただきます。   法制審議会は,法務大臣の諮問機関でございますが,政令であります法制審議会令によりまして,「法制審議会に部会を置くことができる」となっております。   この動産・債権担保法制部会の設置の経緯でございますが,去る9月10日に開催されました法制審議会第141回会議におきまして,法務大臣から,動産譲渡・債権譲渡の公示制度に関する諮問がされ,これを承けまして,法制審議会が諮問事項について調査審議するために,当部会の設置が決定されました。   法制審議会に諮問された事項は,お手元に配布させていただいております諮問のとおりで,    諮問第六十四号     動産担保及び債権担保の実効性をより一層高めるという観点から,動産譲渡及び債権譲渡を公示する制度の整備を早急に行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。   というものでございます。   審議に先立ちまして,臨時委員の○○民事局長からあいさつがあります。 ● 民事局長の○○でございます。   当部会の審議事項は,ただいま○○幹事から申し上げましたように,動産譲渡及び債権譲渡を公示する制度の整備ということでございます。   従来, 企業の借入れは不動産担保が中心でございましたが,近時これが動産あるいは債権の方に注目が移っているということがつい最近も新聞にも報道されておりましたが,非常に注目を浴びているところでございます。   ところが,動産あるいは債権譲渡の場合,その権利移転の対抗要件が非常に使いにくいものになっているためこの公示制度をどうするかということが非常に大きな問題になっておりまして,この点をこの部会において御検討を願いたい,こういうことでございます。   できますれば来年の臨時国会に法案を提出したいと考えておりますので,非常に日程がタイトでございます。委員・幹事の先生方には大変な御負担をおかけすることになろうかと思いますが,やはり現在の日本経済の状況を考えますと,こういった制度の整備は緊急になさなければならないと思われますので,是非よろしくお願いしたいと思っております。   事務当局としても,できる限り審議が円滑に進みますよう最大の努力をするつもりでございますので,ひとつよろしくお願いいたします。           (部会長に鎌田薫委員が互選・指名された。) ● ただいま,部会長に御指名いただきました鎌田でございます。よろしくお願いいたします。   大変非力でございますけれども,円滑に議事が進みますよう,最大限の努力をしたいと思いますので,委員・幹事の皆様の御協力をお願いいたします。   それでは,早速議事に入りたいと思いますけれども,本日,席上に資料が配布されておりますので,それも含めまして本日の資料につきまして事務当局から御説明をいただければと思います。 ● まず,席上配布資料でございますが,先ほど読み上げました諮問第六十四号がございます。   全国銀行協会の作成した書面が1部ございます。   東京商工会議所が作成した書面が1部ございます。   かなり大部でございますが,経済産業省の方で用意された一件書類がございます。   それから,登記事項証明書の様式例がございます。今日のテーマの債権譲渡特例法の関係での登記事項がどうなっているのかについての御参考のために,事務局の方で用意したものでございます。   それから,「債権譲渡を公示する制度の見直しについて」という論点を簡単に整理した部会資料1-1及び債権譲渡登記に関する法令をまとめた「債権譲渡登記関係法令集」を参考資料1-1として事前送付させていただいております。   配布資料としては以上でございます。 ● それでは,当面の審議スケジュールを含め今後の審議スケジュールについて事務当局から御説明をいただきたいと思います。 ● 今後の審議スケジュールについて若干御説明いたします。   法案の提出につきましては,担保法制の経済に与える影響も考え,先ほど民事局長の方から話がありましたが,来年の臨時国会に提案することを目指しております。そういたしますと,来年の9月ごろ開催予定の法制審議会の総会において答申をいただく必要がございます。   それと,この法案に関しましてはやはり予算措置が必要となる見込みでございますので,予算措置のための財務省との折衝期間が必要になります。そのことを考えますと,要綱案がおおむね来年の7月下旬か8月上旬には完成している必要があると思います。   また,中間試案を作成いたしまして一般の意見を聴取するパブリックコメントの手続を行うことも必要と思いますので,これらを考え合わせますと,今回を初回としまして大体月1回のペースで部会を開催しまして,来年の2月中旬--第5回になりますが--に中間試案を決定する,そしてその後一般の意見照会を行いまして,4月下旬までには意見照会の結果を取りまとめた上で,部会に御報告し,一般にも公表する,そういうことが必要と思われます。その上で,5月,6月に要綱案決定のための審議を行う,こういう段取りになるかと思われます。   したがって,中間試案までの当面の審議スケジュールとしましては,大体月1回のペースで部会を開催し,来年の2月中旬ころに中間試案を決定し,意見照会を行うということにしたいと考えております。 ● 当面の審議スケジュールにつきまして,ただいまの御説明のとおりに進めていくということでよろしゅうございましょうか。   それでは,特に御異論がないようでございますので,当面の審議スケジュールにつきましては,そのようにしたいと思います。   引き続き,本日の審議事項であります動産・債権譲渡の公示制度の整備について,審議を進めてまいりたいと思います。   先ほど御紹介いただきました本日の席上配布の資料は,全体としまして動産・債権譲渡の公示制度の整備の必要性といいますか,実際界からのニーズに関する資料だと思いますので,事前配布の資料の審議に先立ちまして,席上配布の資料につき,御説明をお願いしたいと思います。   まず,全国銀行協会の資料につきまして,○○委員から御説明をいただければと思います。 ● では,早速でございますけれども,全国銀行協会から出させていただいている意見を御紹介させていただきたいと思います。かいつまんで申し上げまして2点ございます。   1点目は,お手元の資料の1番目,「動産譲渡に関する公示制度の創設について」でございます。   現状,銀行におきましては,動産を担保取得する場合には,譲渡担保の方法を専ら利用させていただいておりまして,その場合には,対象動産を債務者,設定者の手元に置く形で,いわゆる占有改定の方法で対抗要件を具備させていただいているというのが現状ですけれども,その場合には,担保設定されていることが第三者から見えにくいというところが一つネックになっておりまして,現状では動産担保というのはめったに利用されないというふうな状況になっております。   この度,動産譲渡に関する公示制度が創設されますと,現状よりもより利用しやすい動産担保といったものが可能になるのかなというふうに思っておりまして,その点期待しているところでございます。   2点目でございますけれども,「債権譲渡登記制度の改善について」,これについて意見を述べさせていただいております。   現在,債権譲渡登記制度を利用しました債権譲渡担保はかなり頻繁に使わせていただいておるところでございますけれども,現状では債権譲渡特例法上で債務者を登記しなければいけないというふうな仕組みになっております。しかし,将来債権を担保する場合に,債務者が不特定のケースがあり得る,これを担保取得したいというニーズもかなりございまして,この点について改善がされれば,より利用しやすい制度になるというふうに考えております。   以上,かいつまんで2点,意見として申し上げさせていただきます。 ● 御質問等もあろうかと存じますけれども,一応すべての御説明をいただいた上で,一括して御質問を受け付けたいと思いますので,引き続きまして東京商工会議所の配布資料につきまして,○○委員から御説明をお願いいたします。 ● 東京商工会議所といたしましては,法務大臣がこの度諮問をいたしました動産担保及び債権担保の実効性をより一層高めるという観点からの公示制度の整備につきまして,大歓迎でございます。基本的には,中小企業の資金調達の多様化,具体化の観点から,誠に時宜を得たものであり,是非とも実現されるべく御審議を進めていただきたいというふうに考えております。   先ほど,全国銀行協会の委員の方から御案内がございましたとおりでございますが,私ども資金調達を行う中小企業においても,また逆の視点,債務者の視点からしても大変重要なものだというふうに感じております。   具体的には,1ページ目にも記載がございますけれども,中小企業というのはあくまで資金調達というものが経営上の最大かつ喫緊の課題でございます。昨今,長期デフレによる資産価値下落の状況下,不動産担保並びに第三者保証等への過度の依存から脱却をいたしまして,健全な融資慣行を確立することが現下の急務となっております。その意味で,在庫等の動産を担保として提供し,融資を受けるということは大変有効なものというふうに考えております。また,個別動産の担保につきましても,当該動産の購入資金等の調達がより容易にできるということが必要だというふうに認識をしております。   しかしながら,先ほども御案内があったとおり,現時点では第三者対抗力の有無を外形上識別ができません。したがって,予見可能性,安定性に欠けている現行の譲渡担保制度を見直し,公示制度を創設するというのは大変肝要であるというふうに考えているところでございます。   他方,2ページ目の債権担保のところでございます。債権担保につきましては,債務者が特定されていない将来の債権を担保目的で譲渡するということは,現時点では債権譲渡登記によって公示することができないとの指摘がございまして,中小企業者の資金調達の円滑化の観点からも,やはりこの制度の整備が必要だと思います。   また,債権譲渡登記におきましては,その登記事項の一部が譲渡人の商業登記簿に転載されておりますが,これがなお譲渡人の信用に係る問題としてとらえられているやに仄聞をしております。ついては,今回,動産・債権譲渡の公示制度の整備等の手当てを講じられる際には,当該商業登記簿への転載の在り方も再検討されるべきであるというふうに思われます。   以上でございます。 ● それでは,引き続きまして経済産業省御提出の資料につきまして,○○幹事,お願いいたします。 ● それでは,御説明申し上げます。配られている資料は大部なのですが,これを全部説明するつもりはございませんので,御安心ください。   経済産業省の方から今日御紹介したのは,大きく分けて3点ございます。タイトルを見ていただくと,「早期事業再生・産業金融機能の強化に向けた担保制度の整備」ということでございまして,実需を御説明するということなのですが,実需について二つに分けていきたいと思います。要するに経済政策としてどういう意義付けを経済産業省は持っているのかという点と,それから実務界の方でどういう声が具体的に上がっているのかという点,この二つに分けて御説明します。   1ページめくっていただくと目次がございます。1の「経済産業省の担保制度の整備に関する取組み」というところが,いわゆる経済政策として担保制度についてどういう意見,ニーズを持っているのかという点でございます。   それから,2の「担保制度充実に関するニーズ」というのは,統計資料やあるいはアンケート調査,個別のヒアリング等々を踏まえた上で,現在,経済界でどういう担保制度充実に関するニーズがあるのかということをかいつまんで説明しております。   それから,3番目の「早急に検討すべき制度創設と関連した取組み」というところの趣旨は,担保制度の話については,一昨年来,前広にいろいろな論点を提起させていただきましたが,この2の「担保制度充実に関するニーズ」を踏まえれば,正に今法制審議会に諮問が行われている動産及び債権に関する公示制度について特に早急に整備をしていただければ,相当程度の経済効果があるという点と,あわせてそうした制度整備をうまく動かすためには,いろいろな経済的なインフラも必要になるから,そこは経済産業省とか中小企業庁もバックアップをしながら進めていきたい,こういう論旨でございます。   まず,次のページの1でございます。   まず,政策的な意義づけですが,一番最初の枠に書いてございますように,ここ1年間,経済産業省は様々な担保制度についての提言を行っているのですが,三つ段階があります。一つは,資金調達環境の整備の視点から,二つ目は事業再生の促進の視点から,三つ目は産業金融機能充実の観点からということで,スリーステップに分けて議論が順次進化をしてきたということであります。   1ページにありますように,最初やりましたのは,ちょうど一昨年,企業法制研究会という経済産業省の私的な研究会です。この法制審議会の委員の中にも参加していただいた方が何人かおられますが,いわゆる資金調達の多様化に向けて担保制度について前広に論点を提示をしようという研究会を設けさせていただきまして,平成14年の2月から始めて,最終的には今年の1月に研究会の報告を発表しております。その具体的な研究会のレポートが,お配りしている一番最初の冊子でございます。   この段階で様々な提案をしたものはあくまで私的な研究会の提言にとどまっていたのですが,第二段階で「早期事業再生の促進」というところを見ていただきますと,事業再生を加速化するために融資の慣行を変えていただこうという議論をしまして,融資の慣行を変えていくことをバックアップする制度として担保制度を提案しております。   ここでできたのが,早期事業再生ガイドラインというものですが,これは政府の意思決定であります。したがって,資金調達の多様化に向けた企業法制研究会という経済産業省の勉強会の提言から,今年の2月になって政府レベルでの意思決定が行われたということです。   第三段階目として,最近行っておりますのが「産業金融機能強化に向けた取組み」ということで,関係閣僚会議を今年の9月から開いておりまして,こうした担保制度の取組みを含めた政府レベルでの,閣僚レベルでの意思決定をこれから高めていこうという議論をしているところでございます。   順番に,概要をかいつまんで御説明します。   第一段階の,「資金調達手法の多様化に向けた担保制度の提案」というところでございますが,枠の中で書いてございますけれども,先ほど○○委員の方から御紹介もありましたが,不動産の資産価値が継続的に下落していて,従来型の不動産担保に依存した資金調達がなかなか限界が生じている。経済産業省ですので,どちらかというと借り手の視点が非常に大きいのですけれども,そうすると事業の収益性に着目した融資を根づかせたい,そして新しい融資手法を確保するためには,動産譲渡の公示制度,債務者不特定の将来債権の公示を可能とする制度,更に譲渡禁止特約に関する慣行の見直し,もう1点,包括的な担保制度の見直し,この四つぐらいの中身をいわゆる論点として研究会でまとめていただいた経緯がございます。   下の方に書いてございますように,動産に関する提案としても,やはり公示制度の不十分性が動産に対する譲渡担保の安定性を低くしているから,この改善ができないか,債権に関する提案につきましても,将来の債務者不特定な債権の譲渡について,公示制度ができないであろうか,あるいは譲渡禁止特約に関しても,その慣行を見直すよう努力することが望まれるのではないか,更に財団抵当法等についても,古い法律でございますので,できればそうしたものをより簡便に使えるような制度ができないであろうか。こうして,担保と名のつくものについては例外なく論点を挙げさせていただきました。ただ,この研究会では,具体的な方向性が完全に煮詰まったわけではなくて,これから検討していく課題として,こういうものが,ちょうど昨年の夏ごろ大体議論が集約化され,今年の1月に発表されたということです。   続きまして「早期事業再生の促進に向けた担保制度の提案」ですが,これはどういう文脈かと申し上げますと,昨年不良債権処理の加速化という議論がテーマになって,秋口以降,例えば産業再生機構の設立だとか,あるいは改正産業再生法とか,現にある不良債権を加速的に処理をするという制度的な提案が手当てされたのですが,その一方で,不良債権の新規発生を未然に防止するためにはどうすればいいかという根っこの議論も必要ではないかということで,最終的には早期事業再生ガイドラインというものが策定されております。枠付きで書いてございますが,いわゆる事業別のキャッシュフローに着目した新しい融資慣行への転換,その結果として,事業の変調が生ずればすぐに事業再生のトリガーが引かれるようなメカニズムの確立を旨としておりまして,そうした融資慣行の改革を支える担保制度の一つとして,動産公示制度とか包括的な担保制度の整備について,政府の内部で検討を行って,必要な制度整備を行うということが決められたということでございます。   具体的な案文は,そこのページの一番下の方に書いてございますが,「早期着手」と「迅速再生」を旨とする新しい事業再生のメカニズムの確立に向けて,具体的にはキャッシュフロー融資を支える担保制度の充実ということで,動産公示制度の創設や包括的な担保制度の整備など,キャッシュフロー融資を支える新たな担保執行制度の検討を行い,その結論を踏まえて必要な制度の充実を図るということで,経済産業省が法務省を始め関係省庁の御了解を得て,こういう基本的な検討方針を定めたというのが今年の2月であります。   さらに,次のページに行っていただきまして,最近取り組んでおりますのは,そうした検討を行うだけではなくて,産業金融機能の強化に向けて担保制度をどうすればよいのかという議論もやっております。具体的には,枠付きで書かれてございますけれども,産業金融機能の強化に向けて金融の主体をなるべく拡充をしていく,手法も多様化する,リスクへの対応も多様化する,政策支援対象も多様化する,こうした四つの,主体,手法,リスク,政策支援の多様化を旨とした検討が,現在,「産業金融機能強化関係閣僚による会合」というところで行われております。メンバーは一番下に(注)で書いてございますが,内閣官房長官,金融担当大臣,法務大臣,財務大臣,経産大臣及び日銀総裁も参加をして,こういう会合が今年の9月から開かれております。   具体的にどういうことを検討しているのかというのは,次のページを開けていただきますと,このペーパー自身は経済産業大臣から第1回目の関係閣僚会議において御提案させていただいた検討項目の一覧でありますので,必ずしもすべての関係省庁が合意しているわけではございませんが,これを見ていただきますと,「産業資金の取り手の企業,出し手の金融主体とも,金融機関の融資に大きく依存し,特に不動産担保に拠っている。……新しい手法が普及していない」という問題意識の中で,「リスクへの対応の多様化」ということで,「過度の不動産担保主義からの脱却」というテーマで,「不動産以外の財産を担保とする資金調達の円滑化を図るため,法務省での……検討」ということに加えて,経産省としてもその活用を促す具体策を講じたい,こういうことを提案させていただいているわけでございます。   この関係閣僚会議,いつ取りまとめられるのかということはまだ決まっておりませんが,関連する立法が多々ありますし,信託業法の改正だとか有限責任組合法の改正なんかもここでの検討課題でございますので,恐らく年内を目途に,政府部内での取りまとめは行われるかというふうに考えております。   以上のように,当初は私的な勉強会から始まった担保制度の充実の議論が,政府レベルの意思決定まで非常に重要アイテムとして盛り上がっているということですが,それ以外に,次のページを開けていただきますと,規制改革会議が平成15年3月に3か年計画を再改定し,閣議決定もされております。「動産・債権担保法制の整備による資金調達の円滑化」ということで,動産担保法制,債権担保法制の整備に関するニーズの有無,問題点の洗い出し等について検討を行うというのが,再改正の内容でございます。   それから,最近,各党のマニフェストを読んでいると,自民党とか公明党の中では,やはり産業金融機能の強化,あるいは不動産担保主義からの脱却ということが政権公約でも取り上げられているということを御紹介したいと思います。   以上が政策的な話ですが,次のページを開けていただいて,具体的な実情を跡づけていきますが,統計的な資料,アンケート,個別のニーズ,アメリカの動向と,こう分けていきます。   次の8ページですけれども,これは統計データですが,企業の保有資産を現金・預金,受取手形,売掛債権,在庫,有価証券,土地,それから建物・機械設備等と分けております。見ていただきますと,土地の価値が全企業158兆円に対して売掛債権173兆円,在庫104兆円,建物・設備機械等299兆円。中小企業をとっても同じような状況でございまして,土地以外の財産的な価値を企業はちゃんと保有をしている。   ところが,売掛債権については売掛債権担保融資保証制度や日銀の資産担保CP購入がまだ始まったばかりですし,在庫については先ほど全銀協の委員の方から御紹介がありましたが,なかなかまだ担保として活用し切れてないという状況だと思います。それから,個別動産という意味では,機械設備も大事なのですが,そこら辺も十分活用されていない。   次のページを開けていただくと,二つ表がありますが,担保として活用する資産というのは不動産が約4分の3を占めている,貸付金の担保別の内訳を見ると,不動産が73.5%を占めている現状でございまして,先ほどありました大きな財産的な価値を有している動産・債権というのは,いまだ十分に活用されているとは言い難い。逆に,中小企業においては20人以下,あるいは100人以下というところの中小企業に限って見れば,8割以上が逆に人的な保証を提供している,こういう状況になっておりまして,いろいろな御議論はあるのですが,やはり資産価値に重きを置いた融資慣行がまだまだ根強いのかなということでございます。   次のページを開けていただきまして,アンケート調査を行いました。アンケート調査は,具体的にお配りしている一連の資料の中に冊子が添付されているかと思います。これがすべてのアンケート調査項目の集計でございますので,今日は全部これを御紹介はしません。御関心のある方はこれを見ていただければいいかと思います。   10ページの表で順次御説明していきますが,ここで御紹介する調査は,今年の7月22日から8月8日まで行った調査でありまして,金融機関359社,事業会社1万5,000社を対象にして,211社の金融機関,それから約3,000社の事業会社から回答を得ております。事業会社は,商工会議所の全面的なバックアップを得て,大企業も入っておりますし中小企業も入っております。それから,金融機関の中には,都銀はもとより,地銀,信用金庫,あるいは商社,ノンバンクといった幅広い金融機関が入っております。   実は,これと類似した調査を,先ほど御紹介した企業法制研究会でも,1年前に同じぐらいの規模で似たような調査をやっております。その調査の結果と対比させながら,どういう実需があるのかということを御紹介したいと思います。   一番最初に,多様化のニーズということです。   質問項目は,「資金調達の途を広げるために,企業の有するどのような種類の資産を活用することが考えられますか」と事業会社に問いただしたところ,在庫や機械設備等の動産を活用するとしたのが3,000社のうちの約42%,売掛金等の債権を活用したいとするのが約7割,逆に既存の資産以外に広げる必要はないと答えた人が13%ということでございます。   これを昨年の調査と対比してみますと,1年前に聞いたときには,「動産を担保として活用しますか」という質問に,「はい」と言う人が35%,「いいえ」が65%だったのですが,これと比べると動産を活用したいという比率が42%に上がり,余り関係がないと言っている人の比率が13%に減っているというふうに見られるわけでございます。   それから,「債権を担保として活用しますか」という問いかけも,やはり「はい」と言った人が34%にとどまっていたのが,現在68%まで上がり,活用することは必要がないと言っていたのが66%だったのが,現在は13%まで下がってきているということです。見方によれば,資金調達環境は相当厳しいということでもありますし,新しいこうした融資のやり方の認識が深まったという結果であろうかと思います。   一方で,金融機関サイドですが,回答者数210社,「企業の保有するどのような資産を活用して資金調達手法を多様化することが考えられますか」という問いに対して,在庫や機械設備の動産を活用すると答えた方が約5割,売掛金等債権を活用すると答えた方が87.1%です。   既存の融資手法で十分だとおっしゃった方は約7%にとどまっておりますが,これは昨年の調査と比べますと,昨年,在庫・棚卸資産を担保とした資金提供について積極的に取り組みたいとした金融機関はわずか4%でございました。それが,現在約5割にまで上がっている。それから,消極的にしたい,要するにやりたくない,必要ないと言った人が約8割だったのです。それが,現在7%まで減っている,こういう結果です。   それから,債権を担保とした資金提供についても,積極的に取り組みたいとしたのは,昨年はわずか3割,それが現在87%,約9割まで上がっているという結果になっております。   業種別に見ると,若干これはいろいろな差がございます。例えば商社の方々とか,あるいはリース会社の御回答というのは,現に使っているし,これからも100%使いたい,こういう議論になっております。それから,いわゆる都銀,メガバンクの方々の回答は,今余り使っていないのだけれども,これからは使いたいという結果が,個別に見ていただくと分かるかと思います。   それから,次のページは動産に絞って聞いてみた結果でございます。   事業会社に対して,「不動産以外に,担保として価値があると思われる資産にはどのようものがありますか」という問いかけに対しては,在庫が38%,原材料15%,機械設備・器具31.4%という結果になっております。   個別の回答の中では,店舗内装設備,コピー機,機械器具,車両,サーバー,パソコン・周辺機器,トラック云々と,ありとあらゆるものが挙がっていまして,ありていに言えば,集合動産だけではなくて,個別の動産についても活用したいという意識が強いということです。   一方で,金融機関サイドから見たらどう映るかということなのですが,登記制度ができた場合という前提なんですけれども,「どのような動産を担保として活用できると考えますか」と聞いたところ,在庫については約6割,原材料が35.7%,機械設備については81.0%でございます。   個別の業態で見ると,商社は,在庫については100%の方が活用できるとおっしゃっています。それから原材料についても,71%の商社が活用できるとおっしゃっています。   一方,銀行サイドは設備機器,これは100%の方が活用できると。業態に応じて若干着目点が違うのですが,それぞれの得意分野に応じて活用する意思を持たれているのかなという結果でございます。   下側の結果は,動産を担保として有効に活用するために,動産譲渡に関する登記制度創設についての期待はどうだろうかということでございます。   事業会社につきましては,約55%の方が制度を作っていただきたいという議論でございます。一方で,与信するサイドは,もうほぼ全社が,是非作ってくださいと。借り手と貸し手で,ちょっと意識が違うのですが,せんじ詰めて言うと借り手サイドでもやはり作っていただいてまでもこれを活用したいという意識かなというふうに理解しております。   次のページを開けていただきますと,債権。債権については,もともと論点になっておりますのが債務者不特定の将来債権の議論でございましたので,そういうところに着目しながら質問を行っております。   事業会社の方を見ていただきますと,売掛金債権等を活用する途を広げて,債務者不特定のものまでやってみることについて,どのように考えますかという問いに対して,将来債権も資金調達に活用したいという方が約7割ということでございます。   それから,一方で金融機関に対しては,それを使うときにどういうふうに担保を設定しますかという問いかけをしております。言い方は,「在庫の販売による売掛債権に担保を設定することについてどう考えますか」という問いかけに対して,在庫だけでとるという議論よりも,在庫と,将来その在庫が売掛金に化けたものの両方を一括してとりたいという御議論が84.6%。したがって在庫と売掛債権の担保というのはある種一体的に整理をしていただいて同時に取得をしたいという御議論が96%という結果になっております。   債務者不特定の将来債権を担保として活用するために,登記制度についての期待はどの程度かということにつきましては,事業会社は約6割,金融機関は76%の方々が登記制度を望むという回答になっております。   以上が動産と債権の話ですが,13ページに譲渡禁止特約の話をしております。というのは,企業法制研究会で譲渡禁止特約についても論点に挙がっておりましたので,もう一回実情を調べようということでございます。   左側の表にありますように,平成13年の12月末に保証協会の制度で売掛債権担保融資制度ができ上がりました。わずか2年間の間に,約4,000億円,9,000件の与信実績があります。相当程度売掛債権を使うという議論が進んできているのですが,アンケート調査で譲渡禁止特約がどれほど大変なことになっているのかということを聞いたら,事業会社の方々は,不便は感じていないという方が7割ぐらいから8割おられます。それから,金融機関に聞いていくと,スムーズに解除できた,難航したが解除したと,何とか頑張れば解除できるという話が6割ぐらいありまして,この問題は民間環境レベルで実需に応じてねばり強くやっていただければいいのであって,余り制度的な対応という議論ではないということではないかという調査結果であります。   以上がアンケート調査でございまして,金融機関の業態別,あるいは業種別の動向は,先ほど御紹介した詳しいアンケート調査の方を御覧になっていただければと思います。   それから,14ページですが,個別に産業界から我々がヒアリングをしております。ここで書いてありますように,ニュービジネス協議会,日本鋳物工業会,石油連盟,石灰石鉱業協会という,ありていに言うといろいろな業態の方々がいろいろな意識で,動産だとか債権の担保制度に対する実需をお持ちになっているということがお分かりいただけるかと思います。   15ページは,別途統計的なデータなのですが,アメリカにおいてどうだろうかということでございます。これは,アメリカの中小企業向け融資において,在庫・売掛債権担保とか設備・車両担保が,法人不動産担保,個人不動産担保との対比においてどのぐらい活用されているかという一つのデータです。左側が,いわゆる一般の融資で,見ていただきますと,日本に比べると不動産よりもむしろ在庫・売掛債権,設備・車両担保というものがウエートが大きい。それから,右側の方はクレジットラインという与信枠を設定する融資の場合には,その比率が更に高くなるという実態にあるということでございますので,逆に言えば日本はまだまだ動産だとか債権の活用の余地があるのではないかということでございます。   以上が実態でございますが,16ページに移らせいただきますけれども,やはり,諮問にあります動産譲渡の公示制度を作っていただき,債務者不特定の将来債権の譲渡に関する公示制度を作っていただければ,相当の効果があるのではないかと。   17ページ以降は,その模式図を書いてございます。先ほど○○委員の方から御説明がございましたように,キャッシュフローに着目した融資慣行というのは,この絵でかいてございますように,個人資産と不動産があったら融資は行くのだけれども,事業が回っていて,在庫も債権も回転している人にはなかなか融資が行かないと。そこに今回こういう動産とか売掛金,将来の売掛金というところに着目した公示制度ができれば,与信がやりやすくなるかなと。実は,リース・クレジット協会とか所管しているところに聞いてみると,証券化のときに使えるのではないかと。債務者不特定の債権をSPCに譲渡するときにこういう制度が使えれば,証券化を加速する,そうすると別にこの金融機関というところは銀行だけじゃなくて,ノンバンク,あるいは一般投資家ということも入ってくるのじゃないかということでございます。   それから18ページ,事業再生の局面でDIPファイナンスの議論があろうかと思います。日本ではなかなかDIPファイナンスは浸透しないという議論がありますけれども,我々が調べてみると,アメリカのDIPファイナンスは,結局のところシンジケートローン方式で,複数の金融機関が組んで,動産だとか在庫・債権について担保を取って,それで与信をするという形態でございまして,従来の日本の与信形態とは全く対局の姿ではないかということであります。したがって,こうした在庫とか売掛金について公示制度が整備されれば,従来以上にDIPファイナンスもやりやすくなるのかなというような副次的な効果も期待できるということです。   右下の方にアメリカの例が書いてございます。Kマート,あるいはUSGといったところの事例のように,不動産のみならず,在庫,債権を担保としてDIPファイナンスのクレジット枠を獲得しているという事例が,日本で出る一つのきっかけになればと思っております。   それから19ページ,財団抵当の話を最初に論点として挙げさせていただきましたが,いろいろと皆さんのお話を聞いていると,財団抵当制度を見直す前に,まず動産とか債権の制度を作ってくださいというのが実務界の気持ちではないかと思っています。図にありますように,現状ではプロジェクトファイナンスとかで使うときに,不動産とか売掛金,あるいは不動産と一体となった設備機器までは比較的容易に担保化できるのですけれども,在庫だとか将来の債権というのはなかなかとれない,それが今回の制度によりましてとれるようになってくれば,こうしたプロジェクトを構成する事業資産一括として,比較的簡便に担保がとれるということになるのかなということも期待できるかと思っております。   最後,20ページでございますが,今申し上げましたように,経済産業省としては,実務界のいろいろな御議論,いろいろな実情を把握をしますと,やはり動産譲渡の公示制度,それから債務者不特定の将来債権の譲渡の公示制度を整備していただきたい。そうすると,枠付きで書いてございますが,公示制度ができるのですけれども,それだけでは恐らくなかなかうまく回らないだろうと思っております。担保物件の処分手法の確立。アメリカにおいては,清算人と呼ばれる外部業者を活用した担保評価が一般的なのだそうです。それから,担保物件の管理。事業がちゃんと回って在庫が動いていることのモニタリングとか在庫品の処分について能力がないと,なかなかこういう制度は活用できないと思いますが,そうした点についての一般化という議論もあろうかと思います。   それから,公的な支援。売掛債権担保の公的支援というのは現在あるのですけれども,これからの課題としては,こうした在庫だとか将来不特定の債務者を相手にしたような融資制度,これに対する新しい支援策も考えていきたいと思っております。   ここに「16年度財投要求」と書いてございますが,政投銀でございまして,不動産担保は要りません,そのかわりコベナンツをつけさせていただきます,動産と債権を担保にとらせていただきますと。こういう新しい融資形態に対して,民間と協調型で支援をするというような実験も始めたいと思っております。もしこの部会の方で公示制度ができますれば,我々の方もその周辺関係の整備ということは粘り強くやらせていただきたいと思いますので,こうした実需にかんがみまして,是非前向きの御議論をお願いしたいと思っております。 ● この際でございますので,ほかにも公示制度整備の必要性,あるいは実務界のニーズ等について御意見ございましたら,御発言いただければと思います。 ● 商社の立場から一言申し上げたいと思います。   動産譲渡担保につきましては,全国銀行協会,それから東京商工会議所の委員の方からも御発言があったように,確かに登記がなされなくて,隠れて譲渡担保をとっていらっしゃるところがいた場合に,後で動産譲渡担保を設定しても負けてしまうという現実がございますので,安心して担保をとれないという現状がございます。したがって,動産譲渡担保についての公示制度というのは,商社の実務という点から見ても,是非導入していただきたいなというふうに思っております。 ● ほかにはございませんか。 ● 私,経団連の推薦をいただいておりますので,経団連での議論を御紹介させていただきたいと思います。   今回,動産担保と債権譲渡と二つの制度が議論されておりますけれども,今のところ,まだ債権譲渡についてのみ議論をしているところでございます。また,経団連の中でも一部の各社に今回いただいた資料をお送りして御意見をいただいているだけですので,まだ経団連としての意見を取りまとめたという段階ではございませんので,その旨御承知おきいただきたいと思います。   まず,今回の債権譲渡を公示する制度について,債務者不特定の将来債権の譲渡を可能とするということは,キャッシュフローに着目した担保制度を創設することで,資金調達手段の多様化という観点から非常に有益なものというふうに考えております。私どもでも,具体的なニーズというものを指摘する声がございまして,例えば再開発ビルのフロアの取得者が,将来のテナントからの賃料債権等を担保として資金を調達することができれば,そのフロアの取得というものが容易化するということも考えられるかと思います。そのほかにも,例えばレンタカー事業などのように,一定の資産をもとに賃貸するというような場合には,その一定の車両に基づく賃料債権を担保にするということも考えられるのではないかと思います。   ただし,現行の取引慣行に与える影響というものも非常に大きいのではないかという意見も多くございましたので,慎重な検討を求める意見というのも多かったということを御指摘させていただきたいと思います。   今回,全銀協さん,日商さんは資金調達元という観点からの御意見でございますけれども,例えば譲渡人の取引先という観点から申し上げさせていただきますと,取引相手方である譲渡人への与信という点で,非常に不安が生じるおそれがあるかと思っております。例えば,継続的な取引につきましては,相手方の取引から生じるキャッシュフローをある程度当てにしまして,与信枠という形で支払いサイトを設定することが多いのですけれども,そういうものが将来的に把握できなくなるおそれがあるということになると,これは見直す必要も出てくるのではないか,例えばクレジットラインを改めて見直すということも十分にあり得るのではないかと思います。   また,業態によりましては,債権の取扱数が非常に膨大な業態もございます。こういうものにつきましては,一つ一つ個々の債権の確認という意味で実務負担というのは大きくなるおそれがあるのではないかと思います。   あともう一つ,譲渡債権の債務者という観点から,二重譲渡,それに伴う多重支払いについてどういうような手当てが整理されるのかというところで指摘がございました。   これらは,いずれも債務者不特定の将来債権がどういうものかという,要は特定性というものに関する不安に起因するものではないかと考えております。例えば,債務者不特定ということを一般化しますと,将来債権の債権の範囲も分からなくなるのじゃないかと。先ほどの再開発ビルの場合でしたら,フロアが特定されていれば将来債権といいましてもある程度債権の範囲というのは確定するわけですが,これを一般的な範囲で譲渡対象とすることになると,どの限度で特定されるのかということが取引に不安を生じるおそれはないかということでございます。ですから,債務者が特定した時点で追加的に債務者を明示する,例えばその時点で債務者の対抗要件を備えるというような方法もあるのではないかと,思いつきでございますがそういう意見もございました。   そのほかにも,例えば,債務者とか第三者に対する対抗要件の問題,先取特権との優劣,それから二重譲渡における多重支払いの場合の効力などについてもどう考えていけばいいのだろうかということも教えていただきたいと思います。   ただ,その上でもやはりこの制度というものが経済界にとっても有益なものであるということを考えますと,この制度を導入しただけでなくて,この制度が広く活用されるように,先ほど経済産業省の方からの御説明にもありましたような経済インフラというものも十分に制度整備をしていただければ,経済界にとっても歓迎すべきものであるというふうに考えております。 ● 先ほど,○○幹事の方がおっしゃったことと全く重なるかもしれませんけれども,事業の再生,あるいは企業の再建といった方向に携わる者としまして一言申し上げますと,やはり法的手続に入ってしまった後の企業,あるいはその前の経済的なピンチの状態にある企業がファイナンスを受けるときには,どうしても,スポンサー,スポンサーというふうになってしまう。スポンサーと言われていますのは,御承知のように伝統的にはストラティジックな投資家,債務者のやっております営業自体に関心のあるスポンサーが丸抱え的に資金の面倒を見るということがないとなかなかファイナンスがつかないという実情がこれまであったわけですね。それはなぜかというと,やはりファイナンスを与えるのはいいけれども,それに対する担保がどうなっているのだというところの危うさというものが常にあったからじゃないだろうかと思います。それが,もしこういう担保の公示制度が整備されてくれば,そういった戦略的な投資家ではないところであっても,単に金融上の投資家として,ファイナンシャルなインベスターとしてDIPファイナンスだけを提供する投資家の呼び水になるのではないか,そういう人たちがもっともっとこの企業の再建と事業の再生という分野に入ってこられるインフラになってくるのじゃないだろうかという気がいたします。   例えば,事業会社の場合には,最初原材料を調達し,それが仕掛品に変わって,それが棚卸しの商品になって,売掛金に変わって,最終的に預金債権になっていくという一連の流れをトータルに担保としてとらえていくことができれば,物上代位がどこまで及ぶのだろうかとかいったことを気にすることなく,ファイナンスというものが受けやすくなってくるのじゃないだろうかという気がいたします。非常に意義のある試みだろうというふうに期待しております。 ● ほかに,よろしいですか。 ● 私どもリース会社も,特に動産担保につきましては,集合物ということではなくて,個別の機械設備をとるわけですが,いかんせん占有改定ということがございまして,いざ実行しようとするときには例えばなくなっておるとかいうことが非常にありますので,いわゆる登記ということで公示制度を設けるということについては,非常に賛成ということだと思います。   ただ,どの程度の効力をこの公示に認めるのかということになりますと,私どもリース物件の所有者という観点の問題から,細部についてはちょっと問題がありますが,総論では賛成ということでございます。 ● それでは,今までの御発言に対して,あるいは御質問等ございましたらお出しいただければと思いますけれども。   特にないようでしたら,次に進みたいと思いますけれども,よろしゅうございますか。   それでは,部会資料の審議に入りたいと思いますけれども,まず最初に,部会資料1-1,それから参考資料の1-1につきまして,事務局から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ● この点について,私から御説明させていただきます。   まず最初に,事前に送付させていただいた資料の全般的な御説明をさせていただきます。   部会資料1-1が「債権譲渡を公示する制度の見直しについて」と題する書面でございまして,本日,部会において審議していただきたい内容に関する資料でございます。   それから,参考資料1-1は,「債権譲渡登記関係法令集」でございまして,「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」,「債権譲渡登記令」,「債権譲渡登記規則」及び「債権譲渡登記令第7条第3項の規定に基づく法務大臣が指定する磁気ディスクへの記録方式に関する件」を参考資料としてつづらせていただいた書面でございます。   それでは,部会資料1-1に基づきまして,債権譲渡を公示する制度の見直しについて簡単に御説明させていただきます。   1の「現行制度の問題点」というところでございますが,現行の債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律--以下「債権譲渡特例法」と呼ばせていただきますが--による債権譲渡登記制度においては,債務者が登記の必要的記載事項とされているため,債務者不特定の将来債権の譲渡について,第三者に対する対抗要件を具備することができないという問題点があると指摘されているところでございます。   そこで,「2 第三者対抗要件の具備を可能にするための見直しについて」というところでございますが,債権譲渡特例法を見直して,債務者不特定の将来債権の譲渡についても,登記によって第三者に対する対抗要件を具備することができるものとすることについて,どのように考えるかという点について,本日,御審議いただければ幸いでございます。   債務者不特定の将来債権の譲渡についても,第三者に対する対抗要件を具備することができる理由については,次のように考えられるところでございます。すなわち,現行債権譲渡特例法による対抗要件制度は,民法第467条第2項の第三者に対する対抗要件を迅速かつ簡易に具備することを可能とするために設けられたものであることから,対抗要件を具備することができるのは,民法と同じく債務者が特定されている場面に限られているものと考えられます。しかしながら,債務者不特定の将来債権の譲渡について,第三者に対する対抗要件を具備することを可能にするべきであるとの要望がありますし,また債務者が不特定であっても,他の要素によって債権を特定することができるのであれば,実体法上有効に債権を譲渡することが可能であると考えられるところでございます。しかも,債務者をインフォメーションセンターとして債権譲渡を公示するという制度をとっております民法と異なりまして,第三者に対する対抗要件と債務者に対する対抗要件とを切り離し,第三者に対する対抗要件として登記制度を採用している現行債権譲渡特例法の枠組みからすれば,債務者が不特定であっても,債権譲渡を公示することが可能であると考えられるわけでございます。   次に,3の「債務者を追加的に明示する制度について」というところでございますが,既に御存じのとおり,債権譲渡特例法第2条第2項によれば,債権譲渡の債務者に対する対抗要件は,同法第8条第2項に規定する登記事項証明書を交付した債務者に対する通知,又は債務者の承諾であるとされております。この登記事項証明書というものがどのような書面であるかについては,具体的なイメージを持っていただくために,本日,二枚一組の登記事項証明書の様式例を席上配布させていただきました。   ところで,債務者不特定の将来債権の譲渡を登記することができるものとした場合には,債権譲渡特例法第2条第2項に基づく債務者に対する通知は,後に債務者が特定した段階で,債務者が明示されていない登記事項証明書を債務者に対して交付することによってされるということになると考えられるところでございます。そうすると,通知を受けた債務者にとってみれば,譲渡された債権が果たして自分に対する債権なのかどうかという判断に困惑するような事態もあり得るのではないかとの向きもございます。そこで,この点に配慮いたしまして,譲渡登記後,債務者が特定した段階で,登記に追加的に債務者を明示することができる制度を設ける必要があるかどうかについて,どのように考えるかという点についても御審議いただければ幸いでございます。   最後に,「4 譲渡登記時に債務者が特定している場合について」というところでございますが,債務者不特定の将来債権の譲渡を登記することができるものとした場合に,債務者不特定の将来債権については,債務者を登記の必要的記載事項とすることはできないということになるわけですが,譲渡登記時に債務者が特定している債権についても債務者を登記の必要的記載事項としないものとすることについて,どのように考えるかという点について御審議いただければ幸いでございます。   この点につきましては,登記時に債務者が特定している債権については,債務者を必要的記載事項とすべきであるという考え方もあり得るところだとは思われますが,これに対しては,譲渡登記時に債務者が特定している債権についても,債務者不特定の将来債権と同様,債務者以外の記載事項によって譲渡される債権を特定することができる以上は,債務者の記載を要求する根拠はないのではないかという問題点が考えられるところでございます。   また,仮に,債務者不特定の将来債権については債務者を登記の必要的記載事項としないけれども,債務者が既に特定している債権については債務者を登記の必要的記載事項とするという二段階の制度をとった場合にも,登記官において登記時に債務者が特定しているか否かを実質的に審査するような制度にすることはできないと考えられますので,債務者が特定しているにもかかわらず,債務者が特定していないとして登記の申請が行われた場合に,実際には債務者が特定しているのに債務者が記載されていない登記が出現する可能性があると考えられるわけでございますが,そうした登記は必要的記載事項を書いていない登記ということになりますので,その効力をめぐって紛争が発生するおそれがあるという問題点があると考えられるところでございます。   本日は,以上の点について御審議いただきたいと思っております。   私の方からの御説明は以上でございます。 ● 今の資料1-1に関しましては,四つの表題が掲げられておりますけれども,1につきましては,先ほど来様々な立場からの御説明のあったところでございますので,特に審議の必要はないと思います。   2の「第三者対抗要件の具備を可能にするための見直しについて」ということでございますが,これも見直しが必要だという御意見が相次いだところでございますけれども,一応この2を一つの論点として,まず御議論をいただくという段取りにしたいと思います。   全体としての論点の抽出の仕方というような全体的な問題も含めて,御意見がございましたら御自由に御発言いただければと思います。   2の部分につきましても,先ほどから必要性は高いという御指摘もあったところでございますので,特に御異論がなければ,皆さんこういった方向に賛成であるというふうに理解させていただきたいと思いますけれども,いかがでございましょうか。 ● 一つだけ,発言をさせていただきます。   方向として賛成ということは,私もそのとおりでございます。恐らく異論が学者の方から出るとすれば,債権譲渡特例法2条の規定が,「当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは,当該債権の債務者以外の第三者については,民法第四百六十七条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす」という,みなし通知の形になっている。そのことからして,第三者債務者不特定でも特例法登記ができるということになりますと,民法上の通知ができない場合--債務者が決まっていないわけですから,通知先がいないわけで,民法上では対抗要件を具備できないケースにつき,特例法で第三者対抗要件をとれるケースが出てくるではないかということで,通知みなしという規定が全く467条の等価代替物ということと解釈されるのであればおかしいのではないかという異論が一部にあるかもしれませんが,私は,条文は通知があったものとみなすというふうに効果面でみなしているだけであって,必ずしも等価代替物であるということを規定しているわけではないので,そこは大丈夫であろうと思います。   もともとがこの特例法登記は,流動化の面ではすべての債務者に個別通知をする煩瑣を避けるというねらい,それから譲渡担保の面では債務者に知らせずに第三者対抗要件を具備できるというねらいがあってつくられたものと思いますので,その利点,ねらいを生かすということで,この点は賛成してよろしいものというふうに私は思っております。 ● 今の御発言に関連して,あるいはほかの点でも結構でございますけれども,何かございましたらお願いいたします。 ● 意見というよりも,ちょっと教えていただきたいのですが。   私も,基本的にはこの2番目の,対抗要件の具備を債務者不特定の場合でも可能にするということには賛成したいのですが,債務者が特定していなくても対抗力を認めるというときに,必ずしも論理必然的につながらない別の問題だと思うのですが,つまり,将来債権について包括的に対抗力を与える,実際に債権が発生したときにそれが担保なり譲渡の範囲の中に組み込まれるという形になるのですけれども,その組み込まれることが詐害行為となるかあるいは否認の対象になるかどうかという問題までは,決定しないわけですね。それは一応別の問題と考えていいですね。   もう一つ気になりますのは,将来個別に発生する債権は,例えば普通の売掛債権などの場合でも,債務者のいろいろな資産,あるいは労働者が働いて,個別の債権を具体的に発生させるわけですね。そうすると,いわば事業活動から発生する果実を全部持っていく,けれども,その果実そのものには労働者なりが寄与しているので,労働債権との優劣という問題が出てくると思うのですね。つまり,これは証券化の場合に出てくる問題なんですが,証券化が進むと具体的には労働者の方が賃金債権の引当財産として考えた財産がなくなってしまうという懸念を聞いたことがあるのですが,その辺の調整というのはどのように考えていらっしゃるのか,もしお考えがあったら教えていただきたいのですが。 ● この点につきましては,事務当局あるいはほかの研究者,実務家の方からの御意見をいただきたいと思いますけれども。 ● 労働債権との優劣関係につきましては,実体法上の問題と公示の問題とは一応別問題というふうに事務局としては考えております。ですから,将来,法制的には実体法上どういう優劣関係を作るかという問題点は残ると思いますけれども,当面ここでの議論の対象とはしないというつもりでございます。 ● よろしいですか。 ● 私の方もまだ十分詰めておりませんので,考えさせていただきます。 ● ただいまの○○委員の御発言とも若干関連するのですけれども,今日のペーパーで債権譲渡を公示する制度の見直しについてということで1から4までの論点が挙げられている。この部会で審議する対象はどこなのかということについて,具体的な中身に入る前に若干御確認させていただきたいと思いますけれども。   今のお話ですと,実体法じゃなくて,諮問で言うところの「公示する制度の整備を早急に行う」という点に限定するのだということで,第三債務者不特定の場合の公示制度を設けますと,それに付随しまして実体法上のいろいろな問題が出てくるけれども,それはこの諮問の対象外だというお答えだったようにお聞きしましたけれども,そういう理解でよいのかということと,それから実体法に踏み込まないとしましても,例えば現在でも5条1項5号の「譲渡に係る債権の総額」というものについては,第三債務者不特定の場合じゃなくてもいろいろな問題が指摘されているところであるかと思います。第三債務者不特定を入れる場合に,こういうのはどうなるかということを考えていくと,そこで得た結論というのが,第三債務者不特定の場合以外についても影響を及ぼすということは考えられますので,第三債務者不特定の場合を検討するけれども,その結果,債権譲渡の公示する制度全体として整理するというところまで及んでいくというのは必然的なことだと思いますけれども,それはここでの審議の対象になり得るというふうに理解してよいのかどうかということについて,御質問させていただきたいと思います。 ● まず,今の点について,事務局側がお考えがあればお出しいただきたいと思います。 ● まず,実体法のところに手をつけるか,諮問の対象となっているかと申しますと,規制改革推進3か年計画というところで閣議決定がされていますが,そこでは動産担保制度,債権担保制度の整備についてのニーズとか問題点の洗い出しが宿題になってございます。それで,ニーズなど我々の方で大分調査いたしたのですが,経産省の先ほどの○○幹事からの説明もございましたけれども,早急に行うべき課題というのは,やはり公示制度であり,実体法の整備につきましては,かえって立法化によって制度が硬直してしまって,使い勝手が悪くなる,利用の便が悪くなるなどという指摘がございました。そういったことから,実体法について手をつけることのよしあしというのは,まだ検討の必要があるという理解でございます。当面,部会で議論いただくのは,動産・債権譲渡の公示制度の整備というふうにさせていただいているつもりでございます。   それから,将来的に債権譲渡特例法の関係で将来債権,第三債務者不特定のものを入れるかどうかという観点で,全体の何を必要的記載事項とするかという観点のところまで,若干影響が及ぶことは御指摘のとおりだと思いますが,どこまでこの部会で御議論いただくかというところは,またどこまでが法律事項なのかという点と絡む問題だと思っております。   ○○幹事が御指摘になりましたように,債務者を記載しないとしますと,ほかの要素で特定せざるを得ないということになると思いますが,現行の債権譲渡特例法ではその部分については法務省令に委ねているという構造になっておりますので,そこの枠組みを変更すれば別ですが,枠組みを変更しないという方針であれば,同じようにここの部会で直接審議しなければならない事項ではないというふうに理解しております。 ● 今の○○幹事の御質問の第1点ですけれども,例えば○○委員の挙げられたような先取特権との優劣の問題を実体法的にどう解決するかというのがここでの立法提案,要綱の中身として盛り込むべき範囲内に入っていないということは明らかなのですけれども,現在は将来の債務者不特定の債権を包括的に譲渡しても対抗要件を備えられないから具体化していない問題が,今後,対抗要件を備えると具体的に発生してくる可能性がある,それについてどういうふうに解決されるべきと考えているかということは,実体法に踏み込むというのとは性質の違う問題だから,そういう問題を引き起こすような公示制度を作る以上は,やはり議論はしておくべきではないかという御趣旨ではないかと思うのですけれども,それはそれで議論しておくべきで,知りませんというわけにはいかないだろうというふうに思います。   それから,第2点の方は,5条1項5号の問題については,今回の諮問事項があるなしにかかわらず,議論の存したところでありますけれども,将来債権の包括的譲渡というようなことになれば,よりこの「債権の総額」は一体何なのだということが正面に出てきますので,この機会に一括してこの問題を議論の対象にすることは,この部会の権限の範囲といいますか,諮問された事項の範囲を超えることは多分ないのだろうと思います。ただ細かい部分の調整というふうに言って言えなくないですから,今日のテーマではないけれども,追ってこういう問題についても議論するということでよろしいのではないかというふうに思うのですけれども,事務当局としてはいかがでございましょうか。 ● そのとおりでございます。 ● ○○幹事,そんな扱いでよろしゅうございますか。 ● よく分かりました。 ● ただいまの○○幹事の御発言,非常に私も重要だと思うのですが,第1点は○○委員におまとめいただいたように,ここで諮問されていることではないにせよ,実体法に影響する可能性のある部分について十分に議論をしておくということは,私は必要だろうと思います。そして,場合によっては,この部会の答申の附帯意見というか,追加意見というか,今後実体法でこういう問題を処理する必要があるとか,継続して早急に審議してほしいというようなことがつくということも,私個人はあってもいいと思うのですが,その辺は○○委員としてはいかがでしょうか。 ● 先ほどのような問題が,立法的に何か対処をしなければいけないテーマなのか,あるいは解釈論的に処理できる問題なのかということで違ってくるのだろうと思います。立法要請までしなければならないという性質のものかどうかについては,ちょっと疑問がありますけれども,少なくともここの中でそういう課題について審議をして,それが将来できた法律の解釈に当たって参照されるということは,十分あり得ることだろうと思っております。少し検討した上で,具体的な内容に即してまた対応を決めたいというふうに思っております。   ほかに,今の点に関連して。 ● 今,御発言が続いた点に重なるのかもしれませんし,あるいは少しそれよりもさかのぼってしまうのかもしれませんが,債務者不特定の将来債権の譲渡について対抗要件を具備することを可能にしますと,それらの譲渡が広く行われることが可能になるわけですが,債務者不特定の将来債権の譲渡が,仮に広く可能になったときに生じ得る問題点は,あり得ると思うのです。今の御説明では,そこには触れずに,要望があって,そしてできるのじゃないかということですが,要望は今あることは分かりましたが,その要望を実現すると生じ得る問題としてどういうことを御検討されたのか,そしてそれに対してはどういうふうな対策,対応でこういう譲渡ができるようにしようというふうにお考えになったのかということも御説明いただけると,私の意見を成熟させるために大変有り難いところですが,いかがでございましょうか。 ● 当面,具体的に顕在化してくる問題として事務当局の方で考えられていることが,論点の2と3だというふうなことのようでございます。2と3は多分に公示制度上の問題になりますけれども,予想される当面解決しなければいけない問題点ということのようでございます。   それ以外につきましては,特に今すぐに思い出すことはないようでございますので,少し休憩ということにして,その後,また事務当局から何かあれば補足をしていただく,あるいは委員・幹事から御発言があれば御発言をいただくということにしたいと思います。             (休     憩) ● 予定の時間が過ぎましたので,再開したいと思います。   先ほどの○○幹事からの御発言に関連して,事務局から何かございますか。 ● 債権譲渡特例法の,第三債務者不特定のものを登記できるようにすることにまつわる実体法上の問題点としてどういうものを考えられたかという御質問だったと思うのですが,先ほど○○委員の御説明もありましたように,第3,第4のところでそういった実体法の問題が出てくるのだろうと。制度にまつわる論点ですから,これは検討いたしました。それ以外にどういう問題点が生じ得るかという点は,そもそもこういう制度を作っていいのかどうかという大問題のところは置いておきますと,余り浮かび上がってこなかったというのが正直なところでございます。かえって立派な先生がおいでになりますので,御指摘があったら御指摘いただき,御議論いただけたらと思っておりますが。 ● よろしいですか。   ○○委員の出されました問題も,また動産に関連して出てくるかもしれない問題でございますので,追って御議論をいただければというふうに思っております。 ● それでは,ただいまそういうお答えでしたので一言申し上げれば,御質問なさった幹事の方々も,恐らく念頭に置いておられたことなのだろうと思いますが,実体法との関係としては,やはり466条の譲渡禁止特約をこのままにしておいていいのかという問題が当然かかわってくる,これは大きいのではないかと思います。   というのは,現時点でも債権譲渡特例法の登記をする上で,466条の譲渡禁止特約というのは,一つの不安定要素,阻害要因になっているということは,ここに御出席の皆さんはよく御存知のことと思うのですけれども,そもそもが特例法登記の場合には,譲渡契約,そしてその登記という一連の流れの中で,第三債務者を巻き込んでおりませんところが,民法上の通知・承諾という対抗要件と最も違うところになるわけですね。そうすると,後になって2条2項通知をした際に,あるいは更にその後で弁済請求をした際に,第三債務者から譲渡禁止特約の存在を持ち出される。知らなかったと言えばいいようなものですが,現状の規定では,「善意」について最高裁が無重過失までを要求しておりますので,万一重過失を認定されてしまいますと,物権的効力説でいくと譲渡が無効になり,判例の考え方でいくと譲渡無効になり,したがってそれに基づいてした登記も無効になるということで,全く担保がひっくり返ってしまう。このような状況が,第三債務者不特定の債権について譲渡登記を認めれば,なお多発する可能性が出てくる。そういうようなことを考えると,確かに第三債務者不特定で債権譲渡登記させるのは便利な面はもちろんありますけれども,譲渡禁止特約をこのままにしておいていいのかという議論は,当然ある程度ここでなされるべきではないか,あるいは今後のこの種の審議会等で,立法問題として466条の問題は検討されるべきではないのかというふうに私は思いますが。 ● 譲渡禁止特約がついていることが,債務者に請求したときに初めて発覚するというのは,必ずしも債務者不特定の将来債権に限らず,既存の債権の場合にも起きてくる。量的にそれが増える可能性があるだろうということですので,密接に関連しますけれども,今検討している新しい制度に固有の問題というよりも,やはり債権の流動化を図っていくときの一つの課題ということで,相対的に別のテーマとして検討課題になるのじゃないかなというふうに思っております。それで,当面の諮問事項からは直接には外れているテーマであるけれども,一層の債権流動化を図る上では更に前向きに検討していく,将来的な課題というふうな受けとめ方になるかなとは思うのですけれども。   余り独断で申し上げるのも恐縮ですが,先ほどの○○幹事からの御報告の中にも,実務界の状況等御説明がありましたけれども,その点につきましてはまた追って折を見て議論させていただく。それがあるがゆえにこの制度をストップさせるかどうかというのとは少しずれるような気がしますので,後々の課題ということで処理させていただければと思いますけれども,よろしゅうございますか。 ● 結構です。 ● 先ほどから諮問事項との関係が出ているわけですけれども,本当に諮問事項との関係ではこのペーパーの問題だけを論ずればいいのかいうのが私にはかなり疑問に思われるわけであります。   と申しますのは,諮問事項自体は動産の譲渡と債権の譲渡で全くパラレルな書き方をしているわけでございますけれども,動産の譲渡につきまして,仮に対抗要件制度ないしは公示制度というものをつくったといたしましても,その公示制度の効力をどこまで認めるのかということは,正に議論をせざるを得ない話でございまして,それは○○委員の方からも,効力内容はまた別問題ですけどねというような話が出たことからもお分かりのことだと思うわけです。そうなりますと,動産に関してはそのような生じ得る問題点というものを検討した上で,だからこの程度の効力にすべきであるという形で公示問題を考えていくということにせざるを得ないのだったらば,諮問事項は債権もパラレルに書かれているわけですから,全く債権についても同じ議論になるはずではないか。債権については,例えば大量の債権譲渡が生じることによって,ひょっとして労働者との関係での利害対立が鮮明になってくるというふうなことがあるとしますと,じゃあ第三債務者不特定の形で登記をした場合の効力というのは,この程度にとどめましょうという形での立法論というのはあり得るわけですので,諮問事項の限定があるゆえにこのように限定されるというふうには,私はならないと思います。 ● それはおっしゃるとおりだと思います。議論の対象にせざるを得ないというふうに思います。この制度をつくったら,それの効力はどうである,それに伴って実体法上どのような問題が起きて,それについてはこういう姿勢で臨むと。解釈論的に,処理できない問題ではないと思うのですけれども,現在の解釈論で処理したことに大きな不都合があるのだから,立法的な解決を伴わない限り,制度を採用してはいけないというふうな選択肢はないわけではないと思います。そういう意味での,むしろ積極的な御提言を出していただいた方がいいと思います。 ● ちなみに私は,別に何も制限は要らないと思っているのですが。 ● ○○幹事の御質問についても,○○幹事から御発言がありましたように,こういう包括的な担保を認めることに伴う問題,そもそもこういう包括的な強力な担保を認めていいかどうかという大問題はあるけれども,それを抜きにすると,少なくとも債権譲渡のこの課題に関しては,この制度を導入したことによって直接出てくる厄介な実体法上の課題というのは,そう多くはないというふうに認識しているところです。 ● 全く不勉強で教えていただきたいのですが。   今までは第三債務者が出ていましたので,例えば,債務者が持っている売掛債権のうち,これらの債務者に対する債権という形でよかったと思うのですね。今度それがなくなって,  どういうふうに決めるのですかね。当該譲渡人,債務者が持っている債権のうち半分,これはだめだと思うのですね。何億円というのもだめだと思うのですね。でも,何らかの形で決定しないといけないですね。それを決定するというのは,登記簿上どの程度まで要求することになるのか。例えば,先ほどの,この不動産のこのフロアから発生する賃料債権は,全然問題ないと思うのです。しかし,それを広げていったときに,何年から何年までの,例えばこの債務者の事業のうちの請負なら請負の債権で,請負の債権の中にも代金債権なりいろいろなものがあると思うのですが,それをどの程度特定しなければいけないと登記簿上要求するのか。   といいますのは,制度を作っても全部本当に包括的にしてしまいますと,債務者との関係では過剰担保の解放請求とかでいいと思うのですが,ほかの融資者が出てきたときに,一体どこが押さえられているか分からないというのでは,結局この制度を作っても意味がないということになってしまうと思うのですね。つまり情報が非常に少ないので,実際の取引で使えないということになると思いますので,その辺はどのように考えたらよろしいのでしょうか。 ● 具体的には商事課の方で検討しているのじゃないかと思いますが,抽象的に申し上げれば,将来の債権が発生した時点で譲渡されたものかどうか判別できるようなもの。先ほどおっしゃった正にこのフロアから発生する賃料債権というようなものというのはあり得るでしょうし,あるいは取引を特定しておいて,この取引から生ずる債権というような特定の仕方もあるだろうと思います。ですから,登記実務とも関連しますが,やはり,具体的に発生した時点で,その債権が対象になっているかどうかが債務者にとってもあるいは他の第三者にとっても判断できるような特定の仕方をしていただく必要があるとは思います。   幅広く,持っている債権全部といったら,何でも入ってしまいますから,それはそれでまた一つの特定の仕方ですが,当然そうなるとほかの利用ができなくなりますので,そこはそれぞれの方が工夫するということになると思います。登記実務としても,どのような特定の仕方があるかというようなことはこれから検討して,実際に利用していただくときには参考に供するというようなことになるのじゃないかと思いますが。 ● 事務局から何かございますか。あるいは商事課で。 ● 今,○○委員の方から申し上げましたとおり,今後登記実務においては十分検討する必要があろうかと思いますが,まず特定の在り方については,当事者間の債権譲渡契約の契約の中身をどのようにして作成されるかというのが一番大事なのではなかろうかと思っております。当事者間において特定できないような契約はもとより妥当でないということでありますので,そもそも登記の話の前に実体法としてどのように特定をするのか,その特定の在り方というのは,正にこの場などを通じて御議論いただければと思っております。 ● 私は,この「債権譲渡特例法」という略称は非常に気に入らない略称で,これは決して債権譲渡に特例を作っていなくて,債権譲渡の対抗要件特例法でしかないと。この債権譲渡特例法の立法姿勢というのは,実体法には手を触れないといいますか,もっと言えば,登記制度が実体法を変えるようなことがないようにという前提で立法されたので,ここでも同じだと思うのです。   例えば,将来債権譲渡の場合に,どの程度の特定性が必要かというのを登記制度が決めるというのはやはり筋が通らなくて,どの程度の特定性があれば実体法上有効かというのは,実体法上の問題ですから,例えばある項目が決まってなくても実体法上は有効と解されるのに,登記上はそれが決まっていないものだから登記は受け付けてやらんというのもおかしいのだろうというふうに私は思っていますので,登記事項が実体法を拘束しないようにする。そのときに,実体法上その債権譲渡登記が有効であるかどうか,あるいは譲受人が安心して譲り受けられるかどうかというのは,むしろ譲渡当事者が自らのリスクで判断し,第三者に対する効力が確保できているような特定の方法は当事者の方で工夫していただくというのが,恐らく制度設計の基本的な姿勢になるのじゃないかなというふうに考えておりますけれども。 ● 基本はそうだと思うのですが,ただ,登記の上で広く認めておいて,あとは実体法に委ねる,つまり裁判所に行って判断してくださいというのでは,結局裁判所で,判例の公序良俗とかまで持ち出してくることになり,制度として余りよくないと思うのですね。ですから,ある程度登記法で絞るということが必要なのかどうか。イギリスのオールアカウントレシーバブルみたいに,非常に包括的に持っていくことを認めるということも一つの選択だとは思うのですが……。これは動産の方も絡んでくる問題ですので,検討していただければ……。 ● 度々発言して恐縮ですが,ただいまの御発言にあった登記法の方で縛るというのは私は余り賛成ではありませんで,少なくとも将来債権譲渡に関しては,既に最高裁が将来の債権の発生の可能性の多寡によってその有効性は左右されないという判決を出し,かつ,特定性に関しては,他の債権との識別可能性があればいいということを実体法的に判決してくれていますから,それと同じ程度の識別可能性が登記の方に反映されていればいいはずであって,それ以上に登記で縛りますと,この事項が間違っていたからこの登記は無効だなんていうことになりましたら,債権譲渡特例法登記自体が非常に使い勝手の悪い,リスキーなものになってしまう。   そういうことから,具体的に申しますと,ここに配布されている二枚紙の登記事項証明書で,第三債務者不特定ですと二枚目の方の「債権個別事項」の債務者欄が空欄あるいは「不特定」と書くのでしょうか,仮に空欄になるとしますね。そうすると,債権の種類とか発生年月日,始期・終期,そして備考欄に何か記載をするということから,その登記事項証明書を付して通知された第三債務者が,自分がその債務者だというのが分かるという識別可能性があればいいわけで,先ほど○○委員のおっしゃった,「このフロアから生じる賃料債権」というのは,正に将来テナントはだれが入るかまだ分からない第三債務者不特定の段階で譲渡して,例えば備考欄なんかでこの不動産の何階から発生する賃料債権というように書けると仮にいたしますと,そのフロアに今賃借している,居住しているとか営業している債務者は,自分のことだというのは明瞭に分かるわけですね。   それから,「ある始期・終期の売掛債権」という書き方で--その売掛債権のところをもう少し詳しく書くなり,このままでもいいのかもしれませんが--この会社の売掛金がうちにあるということが認識できる第三債務者は,債務者欄が不特定であっても,この始期・終期の間に取引をして,現在その債権があるという認識ができれば,自分のことだと分かる。こういう形で第三債務者が識別できる範囲であれば,紛争が増えることはないだろうというふうに,大まかな言い方ですが私は思っておりますが。 ● 補足させていただきますと,私が先ほど申し上げたのも,今の○○委員と同じ趣旨で,要するに実体法上特定されていれば登記は受けるわけでありまして,登記実務でそういう特定の仕方を検討すると言ったのは,あくまで実体法上受けられるものかどうかというのを利用者の参考に供するために検討するだけであって,登記の立場から,実体法上特定できているのにこれは受けないということはあり得ないだろうと思います。 ● これも最終的に白紙でお任せするというわけにもいきませんので,法律事項ではないかもしれませんけれども,登記事項はこんなイメージになりますというのが,この部会の中で提示できるようであればお願いしたいと思います。   ほかにはよろしゅうございますか。 ● よく分からないのですが,私,結論から申しますと,○○委員,○○委員がおっしゃったことに全く賛成なのでございますけれども,では現行の債権譲渡特例法関連法規が,法務省令等も含めまして,そういうつくりになっているかといいますと,例えば債権の種別がございますが,種別なんか分からなくても特定できる場合は十分にあるわけです。債権発生の日付でもそうでございまして,私,そんなに借金を負っていないわけでありまして,住宅ローンは負っているのですけれども,私がみずほ銀行に負っている債務というのは1個しかないので,「みずほ銀行に負っている債務」と言われるとそれでもう特定が完璧にできてしまうわけですね。だから,そういうふうに特定さえできればどのようにやってもいいのだ,登記実務としてそれを妨げるということはあり得ないのだということになりますと,全くフリーワードの形で書くというのが唯一の方法で,筋ということになりかねない。   しかし,それは現実的ではない,ガイドラインとして幾つかのものは示して,幾つかのものは必須にするということになりますと,そこには一定の制限というものが出てきてしまうわけでございまして,特定できているのだけれども断るということがあるわけです。そうすると実際,債務者というものが書かれなくなったときに,どの程度のものを書ける状態になっていて初めて登記を受け付けるかという問題は,なお立つのではないかという気がするのですが,いかがでしょうか。 ● 私が先ほど申し上げたのも,全くフリーにすると無効な登記を山のように作るということになりますし,コンピュータ処理の都合上項目をある程度パターン化しなければいけないという要請もある。その枠の中で最大限当事者自治をということです。とりわけ債務者不特定の将来債権になってきますと,いろいろなパターンが出てきて,こっちの要素が決まっていればこっちはなくてもいいというふうな選択肢のバリエーションが非常にふえてきますので,既存の債権よりは自由度が広くなる。   それと同時に,債務者が困るというのも一方にあり,登記官に厳格な審査を要求するというのも,また制度運用上うまくない。そのバランスの中で大体どういう制度設計のイメージができるかは,もう少し中身が固まってきたところで事務局なり商事課なりからイメージを出していただけるように要望しておきたいと思います。   ただ,こういうものがきちんと決まっていない限り,2の論点である債務者不特定の将来債権を公示する制度の採用ということが決めかねるというようなことであれば,もう少し議論をしていかなければいけないのですけれども,一応方向としては採用してもいいけれども,それを前提にして,なおこの点を議論しろというふうな形での議事進行をさせていただいてよろしいかどうか。 ● 今の○○委員のおまとめでよろしいのではないかというふうに思うのですけれども,審議の進め方について二つ提案なのですけれども。   一つは,今,話題になりました譲渡目的債権の特定をどの程度確保するかという論点を,今日お出しいただいている部会資料1-1にその点の問題意識が明瞭に示されていなかったことは確かだと思いますので,○○委員御指摘の最高裁判所判例を実体的な基盤に据えつつ,それと登記制度との関係をどう整合させたらよいか,○○幹事から御指摘があった現行法上の問題点も含めて,次回以降の審議でこれを論点の一つとして認知していただきたいなという希望が1点でございます。   それからもう1点は,その少し前に御議論になりました,諮問事項との関係でどのぐらいまでこの部会で議論したらよいのかということですけれども,これも○○委員がおまとめになったとおり,あくまでも公示制度を議論するわけですが,関連して問題になる制度導入の問題点というのは,今日は○○委員がお見えになっていないので,そういう御議論が主に学者の方から出たのですけれども,もしかしたら○○委員の方から御指摘があるようなことも含めて,広く次回以降の審議で検討を進めるべきではないか,かように考えます。 ● それでは,おおむね2につきましては,債務者不特定の将来債権の譲渡についても登記によって第三者に対する対抗要件を具備することができるものとするという方向で,この場の大勢はほぼまとまったというふうに理解させていただいて,その場合に出てくる様々な問題のうちの一つが3でありますし,もう一つは4でありますのでこの点について御議論をいただきたいと思います。   まず3の方ですけれども,これは先ほど来の議論の中で○○委員から少し言及のあった論点ですが,何か御意見がございましたら……。 ● 議論に入る前提として,この3の論点について御質問させていただきたいと思いますけれども。   前提としましては,債務者以外の第三者の対抗要件としては,特定している,そしてそれを公示するということで完全な対抗要件を備えているという前提で出発しているのだと思いますが,債務者に対する関係で,この明示する制度というのを設けた場合に,その法的な効果はどういうものとして考えておられるか。これを明示しないと債務者に対する当該債権の行使ができないという法的な効果のあるものとして入れるということなのか,そういう法的な効果はないけれども,ある種のサービスとしてそういうのを入れますよということなのかによって,全然違ってくると思うのです。法的な議論としては,先ほどから議論がありますように,債務者以外の第三者のみならず,債務者に対する関係でも,当該財産が譲渡の対象になっているという識別可能性がなければそもそも実体法上だめだということですから,登記簿上,明示しなくても分かる程度に特定されているということが大前提の話でありますので,債務者を明示する制度は法的な効力を付与しない,サービスとしてやってもいいですよということであれば,考慮の余地があるかと思いますけれども,そうではなくて,これをしないと債務者に対して当該譲渡は対抗できませんということになると,どうしてそういうことになるのだろうかという点がよく理解できないところがございますので,論点の趣旨を補足していただければと思います。 ● 今,○○幹事の方から御指摘がありましたように,強く債務者を保護しようという観点から,明示しないと対抗力も発生しないという考え方もないわけではないと思い,事務局の方でもその点は検討しましたが,債務者が不特定のまま登記を認め,対抗要件も備えさせるというのが基本的な趣旨でございますので,その後で明示がない限り対抗要件が発生しない,追加的に明示するまで対抗要件を認めないというのでは,自己矛盾でございますので,そういったことにはできないだろうと。   ここで論点として提示いたしましたのは,正に法的な効力は特段はない,ただ債務者が特定したときには追加的に明示をしたい人は明示できる制度を設けるというものはどうだろうかと,それについての賛否を御議論いただければと思ったのです。 ● この点,こういう制度をつくったときのメリット・デメリットについて,何か事務局の方で御検討がありましたら……。 ● メリットといいますのは,債務者の方がはっきり自分の名前が書いてあるので惑わないだろうなというところでございますが,逆にデメリットといたしましては,対抗要件という効力を与えておきながら,後で当事者が別の人の名前を書いた場合,それがまた混乱のもとになるだろうなと。こんなところがデメリットだろうなという感じはしております。 ● そういう意味では,別の名前を書いたというケースもそうかもしれないし,先ほどの議論との関連ですが,登記の受付のところで実質審査がないとすると,特定性に欠けていたものが名前を入れたことによって特定性が出てきたというふうなことになると若干問題が起きるという,それも事態としては想像できることかもしれませんね。 ● 今の○○幹事と事務局説明のやりとり,及び○○委員のやりとりを伺っていると,そのような制度を入れる必要はないという結論がほぼ見えているような気がするのですが,私,休憩前に○○委員から御発言があったかなり具体的な御指摘との関係で,念のために確認したいと思いまして,もし○○委員にお考えがあったら2点お尋ねを申し上げたいのですけれども。   一つは,○○委員から御指摘があって,債務者が明らかになったときには追加して記載があることも法的な安定性からよろしいのではないかというふうな御示唆もあったと思うのですが,今話題になったどういう効果をお考えなのか,インフォメーションとしての機能だけをお考えなのか,対抗力に影響のあるものだというふうにお考えになっておられるのかということが1点。   それからもう1点は,この追加の記載を果たして共同申請で行うということがイメージされているのか,それとも関係者の任意の協力がなくても,どなたかが単独でできるというイメージでおられるのかという点についても,お教えいただきたいということです。もしこれが任意の協力がないとできないので,それをやるのに裁判所に訴えなくちゃいけないとかいうようなものですと,だれも使いませんし,メリットもないということになるので,制度導入について全体的にネガティブな方向になっていくかなというふうな見通しを持つものですから,もしお考えがあったらお教えをいただきたいと思います。 ● そこまで深く検討して申し上げたわけではないのですけれども,やはり根本的な考え方といたしまして,先ほど来議論に出ていますように,債務者不特定の将来債権というこの債権の特定性がどこまで求められるのかというところで,明確なイメージが持てなかったというところがございます。   具体的に,今申し上げた再開発ビルのフロア賃料というような形では,かなり明確な特定が可能だと思いますけれども,それ以外に,一般的な売掛債権とか,基本契約に基づく債権といった場合に,どこまで範囲が広がって,どのぐらいの金額になるのかというのが明確でないとすると,やはり取引先としては,そういう相手方のキャッシュフローは全部吸い上げられているというふうにみなさざるを得ないということになると,取引の安定性を損なうことになるのじゃないかと。あと,現行,譲渡禁止特約がまだ広く行われていますので,そことの関係というのもあるのではないかということから,特定性のための一つの要件として,債務者がいずれ確定した段階で追加的に明示すると。その場合に,どこまでの効力を持たせたいのかというのはイメージはありませんけれども,少なくとも対債務者という観点では,それで登記を補完するという制度であってもいいのではないかというところで申し上げた次第です。 ● 中小企業者の立場で,特に債務者の立場として申し上げるとすれば,従前の御議論もありましたけれども,何らかの形で特定をされていれば,あえてこのような追加的な明示をされる必要はおよそないのではないかなと。はっきり言って,何らかのエビデンスを示していただければ私たちは払いますというのは普通の感覚だろうと思うのです。これをわざわざ登記をしてほしいとか,そんなことはおよそ思わないわけでございます。そういう意味では,○○委員の方から明快な御指摘がありましたが,例えば店頭在庫の売買代金など--これは例えば資金調達する側からすると,恐らく集合動産として物を入れて,その物の売買代金まで担保に入れる,これはまた金融機関もそのように望むというふうなことがあるかもしれませんが--大体売り先はほぼ特定をされつつ営業を展開しておりますから,その後売り先にエビデンスを提示して,きちんとした支払い方ができると。これは運用の問題かもしれませんけれども,その中で,商取引上請求書とかあるいは支払通知書というふうなエビデンスのやりとりも出てきますので,そういう方向からも特定ができる,実態的にはそれで納得をするものだろうと思います。   加えて言うと,例えば全く不特定状態にしかならない消費者向けの在庫の販売代金とかいうものであれば,むしろ担保としてとろうとしたって難しいものがあるというほかないわけでございまして,これはもう割り切りかと思います。 ● 全くの思いつきで恐縮ですが,例えば中小企業者の方が債務者不特定の債権に担保権を設定して,ある段階で,もう特定したのだからそれをはっきり登記簿上明示しておいてくれと。そうすればそれ以外のものは自由な財産なんだからということが対外的に表示できて,そのことによって新たなファイナンスが得やすくなるということがもしあるとすれば,それは担保権設定者の方が担保権者に対して明示を請求できるというふうな形にすることもできるのかなと思いましたが。 ● ほかの銀行は分からないのですけれども,私どもの銀行では,現状の債権譲渡登記を担保目的で行うに当たって,この債務者対抗要件を具備する手続をどういうふうにやっているかと申しますと,登記事項証明書の交付はやるのですけれども,それとは別に,それとあわせて通知をやるという二本立てで行っております。   どうしてそういうふうにしているかというと,2条2項の記載の仕方が,「当該債権の譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて,譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に第八条第二項に規定する登記事項証明書を交付して通知をし」となっておりまして,交付することによって通知という形になってないというのが一つございます。あと,法務省の方でお書きいただいている緑色の本もそういう形になっているものですから,登記事項証明書と通知というのは別建てで行っているというのが実態でございます。   ここのところを変えるということであれば別ですけれども,そういうやり方で今後とも行われるということであれば,債務者において困惑するということは,実質問題として余り起こりにくいのじゃないかというふうに思っております。 ● ほかに御意見ございませんでしょうか。   これは,一つは,債権譲渡登記のシステムは,最終的に債務者の側で優劣を判断しなければいけないという,債務者にリスクを負わせる仕組みになったわけですが,債務者名の書いていない登記事項証明書と自分の負っている債務との同一性の判断まで,更に付加的に負担をかけていいのだろうかという,いわば債務者に対するサービス的な感覚と,それともう一つは,債権者の側でもそういったことをめぐるトラブルを避ける,こういった明示をすることによって事業をスムーズにという発想になると思うのです。けれど,実務界の側では余りそういう要望がない,そういうようなリスクを避ける工夫を十分に凝らしているのだと,それから法律的にもこれに特別の効力をつけることは難しい,逆にそれに伴うデメリットの指摘もあるということになると,消極という方向に傾いていくことになろうかと思うのですけれども。 ● 非常に極端な議論かもしれませんが,今の商取引というのは,例えば電話一本で注文受けて伝票も残さずにとか,エビデンスも何もなくて売買契約するということはおよそないわけでございまして,売掛債権担保融資保証制度なども,むしろエビデンスというものは実務上大変必要なんですよと,ですからそういったものを蓄積して,いわばどんぶり勘定で商売しなさんなよというふうな商慣行の確立まで意図していたわけでございます。ですから,そういう意味からすれば,我々がしっかりとした規律と,いわば商取引上の倫理心を持っていけば,これは解決ができる話であるというふうにも,極端でございますけれども申し上げたいと思います。 ● 蛇足かと思いますが,○○委員のおまとめのとおりと思うのです。というのは,私も○○委員や○○委員のおっしゃるようなメリットを多少考えまして,そういうのが追加的にできた方がいいのではないかということも考えてみたのですが,学理的に申しますと,これはどうしてもやるとしたら○○幹事のおっしゃった紛争回避のサービスを超えるものにはできないし,またしてはいけないような感じなんです。   というのは,対抗要件としては,既に御発言がありましたけれども,当初の登記時に完全な対抗要件が具備できないと優劣関係が変わってしまいますので,その段階での対抗要件が具備できないと困る。そうすると,あとの段階では第三債務者名という情報の追加だけをさせてもらわないと逆に困ると。それは,紛争回避サービスみたいなものにとどまるはずで,ところが,登記法の方で変更登記ということにして,前の登記じゃなくなってしまう,新しい登記になるのだとすると,困るのですね。前の登記の効力が全部生きたまま,情報が追加されるというものがうまくできるのかしらという疑問もあります。それから,制度を動かすに見合う効果として,紛争回避サービスということだけのためにやっていいかということを考えると,どうも私も結論としては消極説になっております。 ● それでは,今の論点は制度を設ける必要がないというのが多数の意見であったというまとめにさせていただきます。   そうなりますと,債務者名が記載されていないまま有効な登記というのが存在することになる。そこで論点の4で,既に債務者が特定されているのに債務者名を書いていない登記というのが出てきた場合に,その効力はどうなのか,ほかの要素で債権が特定されているから有効だというふうにすると,あえて債務者名を書かない登記というふうなものを--今はそういう登記はできないのですけれども,今後は認めていってもいいのじゃないか,こういう論点が論点4でございますけれども,これについての御意見をいただければと思います。   例えば,既存のリース料債権を大量に譲渡するときにも債務者名を全部書かなくていいとかいうふうな使い方もあるかと思いますけれども,何か御意見ございますでしょうか。 ● 米印に書いてあるとおりの理由で,必要的記載事項としないものとするということで差し支えないのじゃないかと思います。 ● ニーズとしては,確かに担保設定時において第三債務者が分かっていても,非常に小口多数で実務上登記はできないというケースもございますので,こういう制度があればよいとは思うのですけれども,ちょっと1点,例えば小まめに第三債務者を登記する譲受人と,包括的に不特定でやってしまう譲受人がいて,先に債務者不特定で登記をした人が出た後で小まめに債務者を特定して登記をしたというケースにおいて,優劣という点から考えれば当然のことながら登記の先の方になるのでしょうけれども,第三債務者のところには,自分の名前が出てくる登記事項証明書が先に来て,債務者不特定で登記した方は,だれが第三債務者かというのは後で倒産してから探す,調べるのだと思いますから,随分後になって,自分が先に譲り受けていますという登記事項証明書を出すということになってくると,非常に時間的な差ができてしまう。第三債務者が先に支払ってしまって,あとは譲受人同士で争えばいいのだということになるのですけれども,かなりトラブルが起こるのじゃないかなというふうに危ぐしております。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。   その点は,トラブルを避けたかったらちゃんとやれと,あるいは将来債権になると同じトラブルはたくさん出てくるじゃないかとかいうふうな話もあるかと思いますけれども,しかし実務に対する影響というのは小さくないと思いますので,御意見をいただければと思いますが。 ● 先ほどの3の論点との関係でいきますと,この4で必要的記載事項でなくて任意的記載事項にする場合には,このサービスは途中からだと受けられないけれども,最初から書こうと思ってその後の債権回収のコストを安くしようと思えば,そこはサービスでしますよということがあり得るわけですが,必要的記載事項にしてしまうというのは,その前の文脈で○○幹事から指摘になられましたように,実体法上できるというのを公示制度によって限定するということですから,そこまでしなければいけない理由があるのかというと,ほかをできるだけ認めていこうとしておきながらここだけで絞るというのは,全体として整合性を欠いているのじゃないかというふうに感じられますので,サービスとした場合,それを利用するデメリット・メリットはビジネスが全体として判断されればよいことじゃないかというふうに,私は考えます。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● 私に賛成だという発言をしていただいて反対するのは悪いのですけれども,これはサービスじゃなくて,最初にやるときに特定事項として何を選んで特定するかという譲渡当事者の選択を認めるというだけなので,3の性格とは大分違うと思うのですが,結論としては,○○幹事がおっしゃったことも結局はそこに収斂するところだと思うのですけれども,米印の①のとおりだと思いますので,私も必要的記載事項とはしないというのが妥当ではないかと考えております。 ● 経済産業省は自分がビジネスをやっているわけではないので,具体的なニーズを把握しているわけではないのですけれども,証券化とか流動化をやっている方々の話を聞くと,こういう形で債務者を必要的記載事項としないという制度ができれば,一つのフロンティアが開けるかなという意見の方が多いような気がします。   先ほどちょっと御指摘のあった,事後いろいろとややこしいことが起こるかもしれないという議論であるならば,それはそれでまた別途特定をしてやっていただければいいのであって,経済産業省の目から見ると,こういう形の仕組みができれば,恐らくプラスに働くのかなと,あとは当事者間でいろいろな工夫をしていただければいい。その余地が広がるということでは,債務者を必要的記載事項としないという方向で御議論を進めていただければいいのではないかというふうに考えております。 ● 任意的記載事項にしても,書けるものは書いておくということは,恐らく実務上やられることになるのだろうと思うのですね。   それで,先ほど○○委員のおっしゃった点も,第三債務者名を不特定で登記しても,その通知を受けた人間が自分がそこに入っている第三債務者だと判断できる程度の識別可能性のあるデータをほかに用意してあれば,たとえ後から二重譲渡のようなことで,そこには自分の名前が入っている登記が後からされたが,登記の日時は明らかに劣後しているということであれば,前の方の登記が,第三債務者名が書いてなくても,それは紛争において勝てるだろうと思うのです。   ただ,1点心配なのは,判例,特に下級審が,そういう先行登記の方を効力不十分といって後者の方を勝たせるなんていうことがあると混乱を来しますので,何らかの形で,制度設計はこうなんだということを業界だけじゃなくて,司法業界の方にも知らしめる必要があるのかなと思います。そういう形で,書けるものは書く,そして十分な識別可能性のある登記であれば,紛争においても後からされた登記には勝てるという切り方でよろしいのではないかと私は思っておりますが。 ● 登記のレベルでは,登記の内容と具体的な債権との同一性さえ確認できれば,判例がおかしなことを言うことはないと思うのです。   ただ,○○委員がおっしゃられたことでいえば,初期の集合流動動産担保でも,何も目的物管理をしないで最初に契約だけしてほったらかしにしているような債権者が全部包括的にとるようなことを認めていいのだろうかというふうな議論が昔からあって,債権でも,一切の債権と言っておきさえすれば一番だということに,譲渡担保自体の有効性にかかわるようなレベルでの問題がないわけではないのかもしれないと思います。ただ,ここで,努力賞的にきちんとフォローしているやつはいいけれども,余りフォローしないやつは負けだという解釈論もなかなか難しいといえば難しいのかもしれないと。こういう包括的な制度を作ってしまえば,最初に出てきたような問題も含めて,ラジカルに根こそぎ持っていって,非常に強い立場の担保権者が出てきてしまうのは,あきらめなければいけないことなのかもしれないという気がいたしますけれども。   この点について,実務界の方から何かありましたら。 ● くどいようですけれども,譲渡の対象となった債権がいかに特定されているかということについて,当事者間での特定の度合いと,外から見た,将来的に債務者になって譲渡されているかどうかを判断する際の特定の度合いというものが,やはり同じじゃないのじゃないかと思われます。特に,最終的に紛争になったときに,裁判所が判断するということですけれども,実際問題としまして,特に企業間のビジネスにおいて紛争まで持ち込むというのはよほどのケースでございまして,ほとんどの場合は紛争に持ち込まずに,当事者間の話し合いで解決するのではないかと思います。したがいまして,今回,債務者を明示しなくても特定できるという前提で話が進んでおりますけれども,その特定の度合いというのは当事者間だけではなくて,だれが見ても登記を見ればどの債権かが明らかになる程度にまで特定されているということであっていただきたいと思います。 ● 任意的記載事項とすることについても全く異論はないのですけれども,ここで一つ御検討いただきたいのは,実務としては書けるものなら書いておきたいという場合が当然あるだろうと思うのです。これは第三債務者の立場から相談を受ける弁護士として,債権者預託事項としようかどうしようかということを考えたときに,書いておいてくれた方が有り難いにこしたことはない。その辺をおもんばかれば,恐らく債権者の方で書けるものなら書こうという場面というのはあり得ると思うのです。   問題は,その場合に,例えばこのフロアの向こう10年分の賃料債権といったときに,今はAさんが住んでいるけれども,2年後に変わってしまうかもしれない,そこでAさんと書いておいたらBさんに変わってしまってもうだめなのか,今のシステムではだめだと思うのですけれども,その場合に,今はAさんだけれども,でも10年分だからBさんかもしれませんしCさんであるかもしれませんよという登記もやはりやりたい。そうすると,任意的記載事項としては,当初の,譲渡当時の債務者というようなところまで認めていただけると,非常に使い勝手はよくなるだろうなというふうに思います。 ● 非常によく分かる御希望ではあるのですが,しかし同時に,債権の特定の仕方として,このフロアの10年分の賃料ということなのか,この人に対する賃料なのかというのでは全然違うので,やはり登記を見てぱっと分かってもらうためには,このフロアの10年分であればこのフロアの10年分ということしか書かない方が誤解を招かないだろうと思うのですね。そういう意味では,今はこの人ですというのをそれこそ付随的に書く欄があるかないかという話なんですが,登記ではなかなか難しいのじゃないでしょうか。   それで,どちらを特定したのかという争いを残さないためにも,このフロアの10年分なんですということをはっきり書いていただいた方が,争いの余地はないのじゃないかと思いますが。 ● 私の申し上げたのは,そういう迷いを生じないようなうまい工夫をした上でできたら,それはそれで一つ使い勝手ではあるなということで,是非それが欲しいという意味では決してありません。 ● ちょっと誤解かもしれないのですけれども,要はオールアカウントレシーバブルというものまで債務者不特定というふうに考えていらっしゃる委員の方と,賃貸借に基づく賃借人というような不特定の債務者を考えていらっしゃる方とで,随分違う議論になっていると思うのです。どういう債権をここで対象としているのかというところが,まだちょっとはっきり私には見えてこないのですけれども,どういう認識でいればいいのでしょうか。 ● それは,債務者を書かずに特定できるような債権と言うしかないと思うのですけれども。 ● 債務者の立場から少し離れるかもしれませんが,小口大量の債権がある場合に,債務者の特定自体が事務上非常に煩瑣であると。そういったことのニーズもあって,このような御要望があったというふうに私は理解をしております。したがって,そういうふうなケースがあれば,よしんばその債権者が担保として取得する場合は,大数の法則に基づいた評価しかせずに,相応に担保取得性があるのでしょうし,むしろ第三債務者を特定してA社ならA社の債権をきちんと自分の回収に充てたいと思われるのであれば,それをきちんとやるだろうし,それがまた当事者の合意でできる。そういう意味では任意的記載事項でやってしかるべきだし,また逆に言うと,大変な負担感が今現実にあることは間違いないのです。   大量の集合債権,多数の債権を担保に入れている場合にはもう間違いなく,特に中小企業ベースの例えばノンバンクとかが資金調達をするような場合には,相当の負担感がある。地方の中小のリース会社さんとかも,金融機関の方ではいろいろな形で大変御苦労があるというふうには伺っているところでございますから,そういった点の御配慮もいただければと思います。 ● これは,特定しているにもかかわらず特定していないと誤信して,債務者の名を書かないで登記しちゃったものを無効とまで言わなくていいのじゃないかという,非常に消極的なものから,必要的記載事項じゃないのならもう書かずにじゃんじゃんやっていこう,積極的にこの制度を活用しようというのでは,イメージが随分違うのですけれども,大量の債権を持っているときには基本的には書かないとか,場合によっては第三債務者名を隠しておく方が標準になってしまう可能性もあるのかもしれないのですけれども,そういういろいろな将来の点から考えても,あえて必要的記載事項としてこだわる必要はないと。   ただし,当然のこと,任意的記載事項として残すことは間違いないので,書けないようにするなんていう制度は選択の余地がないと思いますが,取引界の側でも任意的記載事項でいいじゃないかという御判断ですし,理論的にもそれでいいはずだということで,議論はほぼまとまったというふうに理解させていただいてよろしゅうございますか。--ありがとうございました。   そういうことで,幾つか宿題的なものも与えられておりますので,事務局にも鋭意御準備いただくと同時に,答えを出すのは本来事務局ではなくて,委員・幹事でございますので,御検討を更にいただければと思います。   最後に,次回の議事日程につきまして,事務局から御連絡をいただきたいと思います。 ● 次回の議事日程について御連絡申し上げます。   次回は平成15年11月25日,火曜日でございます。場所は,こことは違いまして法務省の第1会議室,20階にございます。そこで午後1時半から午後5時までの予定でお願いをしたいと思います。 ● 議論のテーマは,まだ未定ということですか。 ● テーマは,今日の積み残し部分が若干ございましたのでその部分と,あとは動産譲渡の公示制度というところで議論をお願いしたいと思います。 ● それでは,今後ともまた熱心な御議論をいただけますようにお願いいたします。   本日はどうもありがとうございました。 -了-