法制審議会動産・債権担保法制部会第5回会議 議事録 第1 日 時  平成16年2月18日(水)  自 午後1時30分                        至 午後2時25分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案(案)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 予定した時刻が参りましたので,法制審議会動産・債権担保法制部会の第5回会議を開会いたします。   本日は,御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。   まず初めに,本日の配付資料につきまして事務局から説明をしていただきます。 ● 事務局からは,配付資料目録記載のとおり,資料番号5-1「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案(案)」と題する書面を配付しております。   配付資料はこれだけでございます。 ● それでは,本日は,部会資料5-1「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案(案)」に基づき審議することにしたいと思います。   まず,事務局から,この部会資料について説明があります。 ● それでは,御説明いたします。   前回の部会では,中間試案のたたき台に基づいて御審議いただきましたが,今回はその審議を踏まえて作成した中間試案(案)を御提示しております。前回のたたき台からの変更点を中心に御説明したいと思います。なお,今回の中間試案(案)におきましては,記載の意味内容を明らかにすることなどのために,たたき台から書きぶりを直した部分もあります。この点については説明を略させていただきます。   まず,第1の柱書きの部分です。   たたき台におきましては,登記対象譲渡の譲渡人を法人に限定する点につきましては,(A案・B案に共通の後注)という項を設けて,そこに注として記載しておりました。また,対象動産については個別動産であると集合動産であるとを問わないということにつきましては,記載しておりませんでした。しかし,これらの点につきましては,制度の内容として本文に記載しておいた方がよいであろうと考えられますので,今回,案の本文に記載しております。   次に,1の「登記の効力等」についての部分であります。   A2案の(注)について御説明いたします。A2案は,登記をすることによって占有改定により対抗要件を具備した担保目的譲渡に優先する譲渡については,担保目的譲渡に限定しております。ただ,前回の部会での御審議におきまして,この点につきましては,担保目的譲渡に限定せずに,真正譲渡を含む動産譲渡一般にするべきではないかという意見が出されまして,審議におきましては,これを注として記載するということで整理されましたので,今回,A2案の(注)としてこれを記載したものであります。   続きまして,(A案関係後注)について御説明いたします。前回の部会での御審議におきまして,○○幹事から,A案及びB案が登記を独立の対抗要件としているという点に問題点が提起されまして,占有改定の公示力の補完という観点から,A案に関する修正案の御意見が出されたところであります。その上で,前回の御審議も踏まえまして,この意見につきまして,(A案関係後注)として記載したものであります。   他方,たたき台におきましては(A案関係後注)として記載しておりました,善意取得の阻止の規定を設けるべきであるという意見がある旨の記載につきましては,前回の部会におきまして,このような規定を設けることについて消極の意見が出され,このような意見については記載する必要はないであろうという審議結果でありましたので,この記載については削除しております。   次に,動産関係の2の「登記情報の開示」について御説明いたします。   (1)の「登記情報の開示方法」の部分につきましては,たたき台では,「二段階の開示方法」という言葉を用いてこれを記載しておりました。この言葉は,債権譲渡登記制度の解説等で用いられている用語ではありますけれども,検討させていただいた結果,「二段階」という言葉もなかなかつかみにくい意味内容であろうと思われましたので,このような用語は用いないで,今回,記載をこのようにさせていただいたということでございます。   第1の「3 その他」で,「その他所要の規定を整備するものとする」としております。この点は,第1におきましても,第2の債権譲渡の部分につきましても,「その他所要の規定を整備するものとする」という記載を加えております。   続きまして,第2の「債権譲渡に係る登記制度の見直し」の部分について御説明いたします。   これまでのたたき台では,債務者が特定している債権の譲渡についても,他の要素で債権を特定できれば,債務者を記載することなく登記することができるものとするという内容の記載となっておりましたけれども,この点につきましては,債務者を記載しないでされた登記申請については,登記官が債権の特定性をどの程度審査すべきかという審査の在り方や,それに伴うシステム変更の必要性等について,なお検討する必要があるのではないかと思われます。また,仮に登記官が債権の特定性を個別に判断するというような審査方法をとりました場合には,登記官の審査業務にこれまでにない負担がかかり,現在の即日処理の体制の維持が困難となって登記事務処理の大幅な遅延につながる可能性があり,あるいは利用者の費用負担の増大という問題が生じ,ひいては制度利用者の利便性が損なわれることが危ぐされるところであります。   このようなことから,債務者が特定している場合について債務者を記載する必要がないこととする旨を明記せずに,この点についてはなお検討するのが相当ではないかという見地から,従前のたたき台を修正いたしました。   以上が中間試案の内容に関する御説明であります。   また,前回の部会におきまして幾つか御意見が出されまして,補足説明においてその意見を説明するという整理がされた部分があります。これらの点,また,これまでの部会におきまして問題指摘あるいは意見等を出されました事項につきましては,補足説明におきまして説明させていただくことにしたいと考えております。   説明は以上であります。 ● ただいま御説明申し上げたものが,これまでの審議を踏まえて作成しました,中間試案(案)の内容です。今回は,これに基づきまして中間試案の取りまとめに向けて検討していただきたいと思います。   なお,この部会で取りまとめられました中間試案につきましては,一般に公表の上,関係各界への意見照会及びパブリック・コメントの手続を行うことを予定しております。その際には,十分,意見を寄せていただくために,事務局の責任において補足説明を用意し,それをつけてパブリック・コメントの手続をするということを考えております。この点につきましては,また後ほどお話しさせていただきます。 ● それでは,ただいま補足的な説明をいただきました,「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案(案)」の内容につきまして審議したいと思います。   まず,「第1 動産譲渡に係る登記制度の創設」の柱書きと「(注)動産譲渡に係る登記制度創設の目的」につきましては,この内容でよろしいでしょうか。修正意見等ございましたら,お出しいただければと思います。 ● 個別の文面の修正ではないのですが,前々回,この目的の部分にかかわりましてこれまでこの審議で述べてきたことを述べさせていただきました。そのことをもう一回繰り返すような形になるかと思います。   私どもは労働組合ですので,いわゆる労働者の立場ということで物を考えます。現在の状況下で,非常に厳しい状況に陥っている労働組合等多々ございまして,現在検討が行われている見直しについて心配する声が非常に多いというのが実情であります。特に,こうした懸念は,動産譲渡よりもむしろ債権譲渡の方が大きいのです。現在,今まで審議していた要綱中間試案のところでは,やはり倒産時の労働債権保護の措置の検討が不十分であって,少なくとも,この全体見直しと同時に,労働債権の保護措置について検討する必要があるのではないかということが主な論点であります。   政策的意図につきまして,前回,ニューマネー,オールドマネーという形でお話を申し上げました。その間,ニューマネーを中心に全体のことを考えてほしいという御意見だったと思いますが,そういう全体のこともあるということは分かるのですが,やはり,現実に,特に債権譲渡の部分で債務者不特定の将来債権が入ってくると,これはかなり質的な変化でございまして,結果として,仮にオールドマネーの方に行くようなケースが多い場合,相当労働債権のところで労働者にしわ寄せが行くのではないか。ここら辺のバランスをとる必要があると思っておりまして,資金繰りの問題自体は非常に政策的な観点からということですが,その中で,同時に,やはり政策的部分としての労働債権の保護もあわせてされるべきではないかということでございます。この点は,今後も含めて,同時にという形で是非検討していただき,これも含めて何らかのものをつくっていただきたいと思います。   私どもは素人でございますので,具体的なことはなかなか提起し難いわけでございますが,一つ言うと,例えば,これはオールドマネーの方には使われないように努力をいただくというようなことになっておりますけれども,それが使われるようなケースも不幸にしてあるのだろうと思います。そのような場合に,債権譲渡に関し,未払いの労働債権に基づいて差押えが入ったときに労働債権を優先するような仕組みというのも考えられないか。これは,労働債権保護が実質的に損なわれていくことに対しての政策的配慮として,この全体の手続の中では考える必要があるのではないかと思っています。   法制的な部分のところで言いますと,不動産等の部分においては,いわゆる先取特権が抵当権等に対して優先するという措置もある。動産等の部分,特にこれからそういう制度が入ってくるという中で,労働債権の保護を政策的に図るためにそういうバランスをとることも考えられていいのではないかと考えております。この点は,是非,広く,バランスのとれた制度というのを,今後また意見を聞きつつ,検討していただきたいと思います。 ● この点は,むしろ積極的に推進すべきであるというお立場からのものも含めて,背景にある政策目的的なものはこの中に全く書き込んでいないのですけれども,事務局の方で御準備いただく補足説明との関係ではどうでしょうか。 ● 今の御趣旨は従前からお聞きしていますので,補足説明の方に記載させていただきます。 ● ただいまの○○委員の御発言を受けまして,中小企業の立場からコメントをさせていただきます。   何度も繰り返しておりまして誠に恐縮でございますが,まずは,この中間試案の案をおつくりいただいたことにつきまして,部会長並びに事務局の御尽力に敬意を表させていただきます。商工会議所としては,今後,中小企業の資金調達の多様化,具体化の大きな契機になるものとして,本件制度の創設並びにその目的自体,大変歓迎したいというふうに思っております。   ただし,既往貸出金の保全のために,合理的な説明のないままに担保提供を過度に求める,あるいは,新たな貸出しを行う場合にも,他に十分な保全財源がありながら,あるいは債務者ベースの信用力が備わっているにもかかわらず,更に過剰な担保提供を求めるというふうなことは厳に戒められるべきであります。この点,中小企業サイドにおいても,前回の,あるいはただいまの○○委員の御発言を厳粛に受けとめております。いわば襟を正して行動すべく啓発を行う所存でございます。   他方,銀行その他債権者の立場に立つ機関・団体におかれましても,この中間試案(案)に寄せる中小企業者の期待にも御高配をいただきまして,適切な判断,行動をとられるべく望みます。 ● ほかに,御意見ございますでしょうか。   特にないようでしたら,次に,第1の「1 登記の効力等」の部分でございますが,この部分につきましてはこの内容でよろしゅうございますか。御意見がございましたら,お伺いいたします。注の部分が前回と変わっておりますけれども,その辺も含めて。   特にないようでしたら,2の「登記情報の開示」の部分に移りたいと思いますが,この部分につきまして御確認をいただければと思います。 ● 登記情報の開示の利害関係人という部分のところ,それがまた今後議論されるところだろうと思っていますが,やはり,先ほど申し上げた趣旨も含めまして,特に将来の債権,あるいは集合動産等の場合は将来につくったものになるわけでありますけれども,この部分は,労働を含めた部分の成果によって出てきている部分でございまして,これは労働者に対しても非常に重大な影響を与えるということでありますので,労働者自身もきちっと把握できるような制度を設けるべきではないかというふうに考えています。 ● ほかに,御意見いかがでございましょうか。 ● 今の○○委員の御発言ですが,これは,前回,○○幹事からの労働組合などに利害関係人として登記事項証明書の交付請求権を認めてはどうかという意見に関しての御発言と承ってよろしいですか。 ● はい。 ● それも,補足説明で,そういう意見があったことを紹介するということでよろしゅうございますか。 ● はい,現段階では。 ● ほかにいかがでしょうか。   それでは,4ページの第1の「3 その他」でございますけれども,何か関連して御意見がございましたら,お願いします。   それでは,次に,第2の「1 債務者不特定の将来債権譲渡の公示」について,御意見ございますでしょうか。ここは,先ほど説明がありましたように,前回提示されました試案のたたき台から若干の変更があるということでございますが,その点も御了承いただけますかどうか。あるいは,それに関連して御意見がございましたら,お出しいただければと思います。   それでは,2の「法人登記簿への記載」,それから3の「その他」につきまして,御意見があれば,お伺いしたいと思います。   それでは,全体につきまして御意見をいただければと思います。十分な討論時間を用意してございますので,どこからでも遠慮なく御発言をいただければと思います。直接修正にかかわるものでなくても,この機会に議論をしておいた方がいい,あるいは確認しておいた方がいいというようなことがございましたら,どうぞお出しいただければと思います。 ● 「債権譲渡に係る登記制度の見直し」に関連いたしまして,登記関係部署からの御懸念という話が出ていたのですが,その背景にある債権譲渡登記制度のとらえ方,更には,それが前半部分の動産の登記制度を具体的に仕組むときにどういうふうに関係してくるのかということについて何かあれば,お教えいただきたいのですが。   もうちょっと具体的に申しますと,ちょっと私の理解が不十分なのかもしれませんが,第2の「債権譲渡に係る登記制度の見直し」に関連して出てきた話というのは,当該登記によってきちんとした特定性というものが生まれるか生まれないかを判断する。判断して,生まれないというふうなものは受け付けちゃいけないのだということがあるような気がするのですね。そして,そうであると仮定いたしますと,動産登記制度の仕組み方というのは極めて難しくなるような気がするわけでありまして,なぜ第2の債権譲渡関連のところでそのような懸念が出てくるのか。懸念が出てきたのがもっともな懸念であるといたしますと,恐らくこの第1のところがもうすぐ破たんするのではないかという気がしてならないので,もうちょっとお教えいただければ有り難いのですが。 ● 債権譲渡の関係の担当部署でどの程度まで特定性について審査するかしないか,動産とも絡む問題かもしれませんが,その点も含めてもう少し検討していく必要があると考えております。 ● まだ方向性は定まらないけれども,問題があるかもしれないので,少し現在のところではということですか。 ● もうちょっとお時間をいただきたいという趣旨です。 ● 分かりました。 ● ほかに,ただいまの点に関連して何か御発言ございますか。 ● 間接的に関連するようなことになるかと思いますが,まず第1に,今後の中小企業金融の具体化,多様化ということを考えましたときに,SPCを利用した例えばプロジェクト・ファイナンスなどを考えますと,およそ動産担保のみならず,例えば流動資産全体を担保として提供し,資金調達を行うというふうな事業金融の在り方もあってよいと思われます。したがいまして,今後,この部会の議題ではございませんが,そのような担保形態等についても,いずれ御検討していただきますように期待をしておるところでございます。   次に,動産担保若しくは債権担保いずれにも共通することですが,特に債権担保等で,将来債権の譲渡につきましても,登記によって第三者対抗要件を具備することができるというようなことになりますと,アセットベース・ファイナンスが特に進展するということは考えられます。これは決して全資産担保ではないにしても,そういったファイナンスが進展すればするほど,従前からある程度御指摘もございましたが,倒産時にそのような資産はいずれも別除権の状態になっているということが想定されます。とすると,DIPファイナンス等を展開する場合,一方では,このような動産の公示制度を使って御融資をするというようなこともあるのでしょうが,他方で,実際には既に担保化しているというようなケースも出てくるということでございますから,場合によっては,倒産法制において--アメリカにおいては見られるというふうに伺っておりますが--プライミング・リーエンその他のことについて逆に考えられていくべきではないか,また,その端緒になり得るこの法制の整備ではなかったかなというふうに思っておりまして,この辺も,御当局におかれましては視野に置いていただければというふうに思っております。 ● ほかにございますでしょうか。 ● 今のお二方の御発言と関連するのですけれども,1点目が,先ほど○○委員がおっしゃいました,全資産,全動産なり全債権なりを担保にとるという場合に,例えば,ある人間が持っている全債権というふうな書き方であれば,特定は100パーセントあるわけですね。その人間が持っているすべての債権を根こそぎということになりますから。そうすると,先ほどの労働債権の保護等にも,いわゆる一般債権者にどこまで残すかという問題とも関連しますけれども,債権譲渡登記なり動産譲渡登記の記載事項を仕組む場合に,包括担保をどこまで認めるかというかなり政策的な判断と,記載事項をどうするかというのは,裏表になるような感じがいたします。それが1点です。   もう1点目は,やはり,動産の登記制度,それから債権の登記も,現実にどういうふうに仕組まれるか分かりませんけれども,従来よりもより網がかけられるような担保制度になった場合には,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,特に再建型の倒産制度の場合に,流動資産を担保にとった人間をどうするかという問題が必ず生じてきますので,やはりこれは早急に,倒産法制での整備というものが必要になってくるのではないかと思います。 ● ほかにございますでしょうか。   先ほどは労働組合,それから商工会議所のお立場からの御発言がございましたけれども,銀行サイドから,○○委員,何かございませんでしょうか。 ● 基本的には,企業の持っている資産について担保化を促進して企業の資金調達手段の多様化を図るという方向性は望ましい方向性だなというふうに思っておりまして,本件の立法につきましても同じ方向性を持っている話であるというふうに考えているところからいたしまして,基本的には,銀行界としては歓迎すべき方向だなということはございます。   ではそれを更に推し進めて,先ほどお話がありましたような,ある企業が持っているすべての債権という形で債権を特定したときに,それでもいいのかというふうな問題は確かにあると思うのですけれども。確かに,他の債権との識別可能性という点からすれば,すべての債権ということでもって識別はできるのでしょうけれども,特定の仕方として果たしてそれで特定されたものと見られるのかどうかというところについては,私自身,いまだに若干疑問を持っているところもあります。一方では,そういうふうな担保取得の方法をした場合に,ケース・バイ・ケースではあるのでしょうけれども,公序良俗違反とかいう一般法的なところで,そういう担保の取得の仕方では有効な担保取得にはならなかったというふうな結果を招来してくることも,ケースによっては出てくるのだろうと思います。そこら辺の議論というのは,また今後詰めていかなければいけない部分なのかなというふうに考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 主として債権譲渡担保の方ですけれども,ただいまも幾つか御意見がありましたように,例えば債権譲渡特例法の記載事項に関して,特定性,識別可能性や,全資産担保が許されるかという論点に絡めて,既に最高裁なんかでも債権の種類コードの誤りとか期間の表示の仕方とかについて判例が出始めているところでもありますけれども,今後,債務者不特定の将来債権譲渡の登記を可能とするにあたり,単発の修正でとどめずに,記載事項全体を見直す作業をやっていただけたら結構かと思います。 ● ほかに。   ○○委員,何かございますか。 ● 動産譲渡の対抗要件登記制度につきましては,商社業界全体としては賛成の方向なのですけれども,正直申し上げて,A案とB案のどちらが相当かについては,まだ中で割れているところでございます。   債権譲渡につきましては,これは前回も私申し上げましたけれども,もしオール・アカウンツ・アンド・レシーバブルというふうになるのであるならば,やはり過剰担保の問題も出てくるだろうということで,商社業界の中でも,それはちょっと広げ過ぎではないかなというふうな意見があるということを御紹介したいと思います。 ● ○○委員,何かございますか。 ● 確かに諸刃の剣のようなところがある制度なんだろうと思うのですね。中小企業,あるいは大企業もそうなんでしょうけれども,従来,担保化がなかなかしにくかった資産を担保化することができる,よってファイナンスを得ることができて,従前は行き詰まっていたかもしれない企業がそこで立ち直りのきっかけを得ることができるかもしれないという意味では非常に前向きだし,その意味では,従来破たんせざるを得なかった企業の労働者の方にとってみても朗報なんだろうと思います。ただ,一方では,そうして最後まで悪あがきをして全部の資産が担保にとられてしまった挙げ句に倒産してしまうと,そのときに労働者の方々が持っていくものがないではないかとか,あるいは一般取引債権者が持っていくエクイティーが全然残ってないではないかという問題が出てくるという意味で諸刃の剣なんだろうと思うのです。   今回,この新しい制度が導入されるに当たっては,恐らくは,担保をとった方々というのは,ボロワーの状況についてのモニタリングを従前以上にしていかれるのだろうと。そうしますと,それに伴ってだんだんと水温が上がってくる,それによって突然に破たんするということではなくて,徐々に金利が上がってくるとか,貸出しの条件が変わってくるということで,債務者が比較的早目に経営改善の手段をとっていくというふうなことが期待できるのではないだろうか。それがすぐに導入された翌日からできるわけじゃないだろうと思うのですけれども,徐々にそういう方向に向かっていくとすれば,それはあるべき方向なのかなというふうに思います。   それから,やはり負の面,悪い面については,経営者の責任が非常に重いと思うのです。会社の資産を洗いざらい全部担保化してしまって,その挙げ句に何も積極的な手を打つことなく倒産させてしまった経営者についての民事あるいは刑事上の責任というのは,現在よりももう少し厳しくされていってもいいのではないかなという気はしております。そういう方向になっていくのかもしれません。   それから,いったん倒産してしまったときに,実務家が乗り込んでいって本当に何もできないのかというと,担保をおとりになった方々というのは幾らかの部分をカーブアウトして,例えば共益債権部分として提供しましょうというプラクティスはやはり育っていくのではないのかなと。倒産してしまって,全部担保化されていて,何もできないということではなくて,実務上話ができていくのかなという気は,想像ですけれども,いたします。   そんなときに,ちょうどバランスのいい話ができるためには,さっき御指摘のあったプライミング・リーエンのようなものがあった方がいいのか,あるいはどうなのか,検討の対象とはなり得るんだろうなというふうに思っております。 ● ○○委員,何かございますか。 ● 改めて繰り返しになりますけれども,先ほどもおっしゃっていましたけれども,今回の制度が,今までなかなか把握されていなかった企業価値というものについて,譲渡担保を設定することで新たな価値を生み出せるようにするということになりますと,経営効率の向上ということにつながるわけですから,基本的にはやはり前向きに考えられるものではないかと思います。   ただ,このような登記制度を設定することによって従来の取引ルールに与える影響がどのぐらいあるのかということは,やはり慎重に考えざるを得ないかと思っております。その点で,前回申し上げましたが,例えば善意取得について,その善意・悪意の判断が変わるようなことがありますと,それに対抗した新たな対応策というものをとらなければいけなくなるおそれもございます。   あと,債権譲渡の登記制度も,最初のころに何回か申し上げましたが,どの債権が把握されているのかというところがあいまいなままですと,登記制度がうまく機能しないということも考えられますので,このあたりも十分に御考慮いただきたいと思います。 ● ほかに,学者委員・幹事の方から,何か御発言ございますでしょうか。 ● 中間試案の取りまとめそのものではないのですけれども,先ほどから出ている議論は,登記にどういう形で記載して特定をするかということで,今回,債務者不特定の将来債権について,そういう問題意識から一定の修正を行ったということなのですが,○○幹事が御指摘になったように,これはすべてにかかわる問題だと思います。それがひいては,包括担保を許容しないという選択肢をとった場合にはどういう対応をするのか,許容するとすればその次にどういう対応が必要になるかという問題に発展してきて,そういった問題をどう考えるかというのが,ひいては,中間試案の内容のうちどれをとるかという点にかかわってくるという構造になっているということは共通認識になっているかと思います。そうしますと,中間試案でパブリック・コメントを経た後の進め方がどうなるのかということで,このパブリック・コメントを受けて,A案がいいんでしょうか,B案がいいんでしょうかという議論をまたしていると,結局その議論はまた将来の課題として先送りになってしまうという気がします。   前回,動産についても占有の移転の態様を問わず登記できるというのですけれども,例えば,現実の引渡しの場合に種類物はどうやって記載すればいいのかという点については私もよく分かりませんし,また,こうすればいいという意見はどこからも出ていないかと思います。そういう問題について,今後どういう形で議論されていくのかという点について,今日はお時間があるようですので,もう少し具体的に詰めておいた方がいいのではないかと。そうしませんと,パブリック・コメント後はパブリック・コメント後で,今日の話はまた忘れてしまって,どの案がいいんでしょうかという議論に終始して9月に至ってしまうということがないとは限りませんので,そのあたりについてどういうふうにお考えなのか,今後の検討の進め方についてお聞かせいただければと思います。 ● ○○幹事から,何か御提案ありますか。 ● 先ほどの債務者不特定の場合だけではなくて,こういう場合の記載はどうするのか,そのどうするかという議論は立法するときにどういう形で最終的に取りまとめられていくのかと。これは登記の問題なので,ここでの問題ではなくて,別のところで対応します,ここでの議論は参考にさせていただきますということなのか,むしろ,ここでもう少し中身まで踏み込んで議論していくのか。あるいは,包括担保,すべての債権とか,すべての動産というのは特定性がないとすれば,それはどこかに書き込むのか,書き込まないのかという点も問題になってくるかと思います。諮問事項との関係もあるでしょうけれども,第1回目の議論でもその点が多少意識されていたかと思いますけれども,どういう土俵が設定されるかということがはっきりしませんといけませんので,積極的に,その特定の仕方,記載の仕方もここで独立に取り上げて,こういう場合はこういう形でいくという検討を行うことが考えられると。それで,どういう問題があるかという点について御検討いただいて,具体的な議論を展開していくためのたたき台を用意していただくというのが,まず第一に必要なことではないかというふうに思います。 ● これは,大まかな方向性が出てこないと書き方も決められないという関係にも立つかと思いますけれども,パブリック・コメントの期間中にも,少しずつ準備をしていただいて,可能な限りでのたたき台を用意していただくと。それから,先ほど来提起されましたような,基本的な論点についても考え方をまとめておくという作業をしておく必要があろうかと思います。   ほかに御意見ございますか。あるいは,今,○○幹事から提起されました今後の進め方ということについて,これもおっしゃるとおり,パブリック・コメントで意見を求めれば大体どこかに意見が集中しそうだというふうな予測はつきにくいわけでございますので,どういう形で取りまとめに向かっていくかということについて,ほかに御意見ございましたら,お伺いしたいと思います。   事務局側からは何かございますか。 ● 今後の方向性の検討といいましょうか,そういったことについてはなお,今の○○幹事の御意見を踏まえて検討させていただきたいと思います。 ● 今後どうするかというのは,今ここでぱっと決まるというわけではないことは十分に承知しているのですが,具体的な登記の方法ですね,どういうふうなことを要素として書いて動産登記をするのかということについて,それはこの部会の問題ではないということになりますと,やはり議論しにくいところがあるような気がするのです。   ですから,そのあたりの,どのような登記制度にするのかということと部会に対する諮問事項との関係等についてどういうふうな方向でされるのかということについて,もし事務局ないしは○○委員の方に御意見とか方向性がありましたら,お教えいただければ有り難いと思うのですけれども。 ● どのような登記制度になるかというのをどのレベルで語るかによって大分違ってくると思うのですが,○○幹事が先ほどの御発言で指摘されましたように,登記事項をどう決めるかというのは技術の問題にとどまらないで,どういう公示制度を想定するのか,それから実体法上どのぐらいの特定性を要求するのかという問題と同時に,逆に,公示を通じて検索機能が果たせなければいけないわけですから,検索していく上で--債権譲渡登記については,現在既に,債務者名からの検索とか,債権の種類からの検索というのがあるので,これをどこまで変えることができるか,それがシステムにどういう影響を及ぼすか。そういう意味では,実体法上の考え方と,公示制度としてどのぐらいの公示機能を持つことが取引上必要なのかという判断と,それから,システムとしてそれにどういう形での対応ができるのかと,いろいろな問題を複合的に考えていかなければいけないと思うので,うんと細かいところまでは出せないけれども,逆に言えば,それは正に実体法的にどういうものを仕組んでいくのかという議論そのものですから,どんなふうな公示制度とするか,あるいは,どういうものを必要的記載事項にするかという議論を一切しないでここでの議論が終わるということはあり得ないだろうと思いますから,大まかな方向性が固まると同時に,それを具体化する登記のイメージはこういうことになるというのを後半では必然的に議論せざるを得ないのではないかというふうに思っていますので,その辺のところは,また事務局と商事課との御議論も詰めていただく必要があると思いますので,よろしくお願いいたします。   ほかにいかがでございましょうか。 ● 内容にわたることではないのですけれども,パブリック・コメントをする場合に,前回,○○幹事からもその種の御発言があったかと思いますが,中間試案だけだと分からないので補足説明を見て,更には,よく勉強する人は議事録も見てということなのですが,今日見てきましたら,第1回目以降,議事録がホームページにアップされていないようで,パブリック・コメントをするまでには前回ぐらいまでの議事録を必ずアップすると。補足説明と議事録を見て,どういう議論がされてこういうことになったのかということがよく分かるように情報提供をしていただくということがどうしても必要だと思いますので。他の部会ですともう少し最近まで出ていますが,この部会はちょっと議事録のアップが遅れているようですので,その点は是非お願いしたいと思います。 ● 分かりました。 ● 実際にも,世間の関心はかなり強いですから,議事録等を参照した上で議論されている方も多いですので,是非その点はよろしくお願いいたします。   商事課の側から何かございますか。 ● 特にはございませんが,先ほど○○幹事の方から,債権譲渡の特定の問題と動産との関係ということのお話がございましたけれども,私ども登記の現場をあずかる立場から申し上げますと,債権譲渡の方は既に,先ほど○○委員からもお話がございましたように,債務者名というものをある意味特定の柱としてシステムが構築されている,それを前提に人員配置その他執務体制を構築しているという事実があるというところを踏まえてどういうふうに今後御検討いただくのかということを現場からはお願い申し上げたいと思っております。動産の方につきましては,そういう事実はまだございませんが,湯水のようにリソースがあるというわけでもございませんので,様々な人的・物的リソースのもとで,登記事務が利用者の期待にこたえる形でつつがなく行えるような形のものを御検討いただければ幸いに存じております。 ● ほかに。   ○○委員,何かございますでしょうか。 ● 少し前の議論に戻るのですが,特定の問題についての議論を今後どう進めていくかということですが,是非とも,今日御出席の関係各界の方々には,具体的にどのような形で使われ得るのか,そしてどういう弊害が考えられるのかを具体的に出していただく御努力をお願いできれば……。私ども,どうもイメージをつかみかねるところがありますので,お願いしたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。   それでは,特別の修正意見はないということで,ただいまお手元に配付されております中間試案(案)の内容につきまして,この原案どおりで御了解をいただけたということでよろしゅうございましょうか。--それでは,そのようなことで,この案のとおりに中間試案として決定されたものと理解いたします。   先ほど既に事務局から御説明がありましたけれども,今後,これを公表して意見照会をするということ,それから事務局で補足説明を作成して公表するということでございますけれども,その点についても御了解をいただきたいということですけれども,その点もよろしゅうございますね。   それで,その場合に,表現ぶり等での細かい修正の必要がありました場合には,事務局と私とに御一任いただくということもお認めいただければと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。   それでは,今後の中間試案の公表,それから補足説明,意見照会等につきまして,事務局から御説明をいただければと思います。 ● この中間試案は,速やかに公表いたします。   補足説明につきましては若干時間をいただくことになると思いますが,いずれにしましても,パブリック・コメントは3月の初めぐらいからと心づもりしておりますので,そのときまでには補足説明も完成させるつもりです。   意見照会の期間,パブリック・コメントの期間は,大体3月の初めごろから約1か月間を予定しております。意見照会を終わりましてから取りまとめをいたしまして,部会に御報告をさせていただきます。その間一時,部会は休会とさせていただくことになると思います。次回の開催は5月の連休明けぐらいと思っております。再開の際には,また改めて,書面で御案内申し上げますので,よろしくお願い申し上げます。 ● ただいま事務局から御説明がありましたように,まず,この御決定いただきました中間試案をすぐに公表すると。意見照会は,補足説明の作成を待って,3月初めぐらいから3月いっぱい,あるいは4月初めぐらいまでして,その後,意見照会の取りまとめを踏まえて審議を再開する,それが5月の連休明けぐらいになるというスケジュールのようでございます。   特にスケジュール等について,何か御質問,御要望等ございますでしょうか。   ないようでしたら,そこまでで本日議論すべきことはすべて終わりということで,しばらく休会に入りますが,休会の間にも,先ほど御指摘いただいたようなことで,後半の審議に向けての準備を進めていきたいと考えております。それに関連しまして個別にいろいろな形で御意見を伺う機会もあるかと思いますので,それも含めまして今後の審議に御協力をお願いしたいと思います。   本日の審議はここまででございます。本日はどうもありがとうございました。 -了-