法制審議会動産・債権担保法制部会第7回会議 議事録 第1 日 時  平成16年6月17日(木)  自 午後1時32分                        至 午後5時29分 第2 場 所  東京地方検察庁刑事部会議室 第3 議 題  動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱案のたたき台(その2) 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● ただいまより,法制審議会動産・債権担保法制部会の第7回会議を開会いたしたいと思います。   お忙しいところを御参集いただきまして,ありがとうございました。   最初に,事務局より配布資料の説明をお願いいたします。 ● 事務局からは,資料番号7-1「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱案のたたき台(その2)」と題する書面を事前に送付させていただいております。   また,○○委員作成の「対抗要件理論からの整理の試み」と題する書面及び○○幹事作成の「登記の範囲及び効力に関する意見」と題する書面を席上配布しております。○○委員は,本日,御出席でございますが,説明の便宜上,書面の配布を御希望なされましたので,そのようにさせていただきました。それから,○○幹事は,本日の部会に若干遅参せざるを得ないという御連絡をいただきまして,自分の意見を記載した書面を席上配布してもらいたいとの御連絡をいただきましたので,そのようにさせていただきました。   ○○幹事の方は若干おくれますが,ペーパーの方は結論的にはBの2案が適当であるというもののようでございます。理由については,省略いたします。   資料については以上のとおりでございます。 ● それでは,議事に入りますけれども,前回の議事におきまして,時間不足のため○○委員の御意見を今回の冒頭に述べていただくというお約束でございましたので,○○委員,まずお願いいたします。 ● 御指名を賜りまして感謝申し上げます。   早速ですが,「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱案のたたき台(その1)」に関しまして,特に「第1 動産譲渡に係る登記制度の創設」,説明(1)アにおいて記載されました反対意見に対しまして,愚見を申し上げます。   以下,①から④がございます。若干恐縮でございますが,読み上げをさせていただきました上で,愚見をお話をいたします。   ① 動産譲渡登記制度が創設された場合において,譲渡人たる企業が倒産に至ったときは,当該企業の財産の大部分が担保に供されていることが予想されるため,再建型倒産処理手続が有名無実化し,その結果,雇用確保に支障を来し,また,倒産時には破産財団の減少をもたらし,一般債権者や労働債権者への保護にも欠けるなど,倒産時の弊害が大きいという御指摘がございます。この御意見は,倒産時という狭い局面を想定したものにすぎません。  そもそも,本制度の創設の目的は,中小企業の発展成長のための資金調達の多様化にあります。まして,再建型倒産手続においては,動産担保は別除権として認められ,その認められた価格の範囲において,協定において返済条件が定まることも多いと考えられます。したがって,当該担保物を直ちに債権者,担保権者に引き渡したり,あるいは処分の自主性が求められることがむしろ想定されていないのではないでしょうか。  また,倒産時の一般債権者,労働債権者の保護に欠けるとの意見がございますが,その指摘は,ひとりこの動産譲渡に係る登記制度の問題ではなく,担保取引全体に通じるものでありまして,結局従来の占有改定でも主張されているようなことを重複して述べられているというほかございません。労働債権の保護の問題につきましては,民事実体法の立法ではなく,社会政策の観点から,すぐれて別途の立法で補うことが相当であります。  翻って申し上げれば,中小企業者に対して無担保でしか金を借りるなというに等しい印象があり,金融取引上の合理性に照らし,理解し難いものがございます。   次に,②の御意見でございます。   ② 動産譲渡登記が公示されると,信用不安を生じるおそれがあること,また動産譲渡登記制度の創設によって,従来の事業者間の与信が喪失ないし減少するおそれがあることから,動産譲渡担保設定者にとって好ましくない結果となる。したがって,動産譲渡登記制度を創設する具体的ニーズが高くない。という意見でございます。   そもそも信用不安というようなお言葉がございますが,信用不安とは社会常識上倒産懸念を意味しておりますが,何ゆえ動産登記の公示が倒産懸念に直結するのか,その根拠が明らかではございません。それでは従来の占有改定型の際に,明認方法を施した場合,直ちに倒産した実例があるのでしょうか。あえていえば,こうした認識がこれまで動産を担保とすることを阻害してきた要因であるというふうに言えます。したがって,この指摘は,結果として従来からの過度の不動産担保,第三者保証依存の傾向を維持・助長するおそれすらございます。   次に,③でございます。   ③ 動産譲渡登記制度と動産取引に関する既存の制度(動産対抗要件,善意取得)との調整の困難が予想され,動産譲渡登記制度の創設によって動産取引の円滑化が阻害されるおそれがある。という御指摘であります。  金融取引の合理性の範囲内で動産を担保として提供することが,現実に当該動産をめぐる商取引を阻害するという指摘は疑問でございます。むしろ,その取引関係には何ら問題なく,逆にその動産の購入代金を支払うための資金の調達こそ,担保を提供するというマネーフローになるはずであって,動産の売主にとっては歓迎されるべきことではないでしょうか。結局阻害要因になるというのは,上記の②の御指摘と同様のことにほかなりません。   最後に④でございます。   ④ 動産譲渡登記制度を創設したとしても,果たしてこの制度によって事業者が新規融資を受けることができるのか疑問である。また,動産を担保にとったところで,金融機関がその動産を換価できる手段を持っているかは疑わしく,動産譲渡登記制度を創設しても,銀行等の金融機関ではなく,いわゆる高利貸しのような業者等にしか利用されないのではないかとの懸念がある。このような御指摘でございます。   動産を担保とする融資の在り方については,中小企業の成長過程においてそれぞれ考えられます。例えば,第1に創業間もない企業,第2に成長過程にある企業,第3に再生の過程にある企業等でございます。すなわち第1は,社歴の浅さ等から信用が確立していないことを背景として,資金調達に関して動産担保活用のニーズがございます。また,第2の成長企業につきましては,売掛金や在庫が急速に膨らみ,運転資金の需要が大きい反面,不動産等の固定資産も乏しいため,これまで資金調達に窮する例も多かったわけでございます。このような成長企業も資金調達が容易になるということが見込まれます。   また,当然のことながら第3は,いわゆるDIPファイナンスとしての有用性が認められるところでございます。   以上でございます。ありがとうございました。 ● それでは,いろいろ御意見もおありかもしれませんけれども,本日予定されました議事に移らせていただきます。   最初に,部会資料7-1に基づきまして,事務局より御説明を申し上げます。 ● それでは,資料の説明に入ります前に,申し訳ございませんが資料の訂正を2点お願いいたします。   まず,7ページをお開きいただきまして(エ)のaの冒頭でございますが,「甲乙間の取引に基づく所有権移転は,丙の登記の具備により」という記載がございますが,これは「譲渡人と甲の間の取引に基づく所有権移転は,乙の登記の具備により」の誤記でございます。   それからもう1点,同じくaの下から2行目でございますが,「したがって,乙への引渡しは」という記載がございますが,これは「したがって,甲への引渡しは」の誤記でございます。訂正をお願いいたします。   それでは,資料の説明に移らせていただきます。   第1の動産譲渡に係る登記制度の関係について,一括で御説明差し上げたいと思います。   まず1では,最大の論点でございます登記の効力等について取り上げておりますが,本日,御審議いただく順番につきまして一言お断りをさせていただきたいと思います。   (前注)に記載しましたとおり,この論点には大きな問題として,登記優先ルールの採用の可否と,それから登記の対象となる譲渡の範囲の二つの問題が含まれております。この二つの問題は関連するものではございますけれども,意見照会で寄せられた意見を見ましても,その問題を分けて御回答されているものが多かったこと,それから登記の対象をどの範囲にするか,本制度を利用する上で実務上大きな分岐点であると考えられること,また証券化・流動化による資金調達のためにも,本制度を利用するニーズがあるという意見が多数寄せられたことなどを踏まえまして,この二つの問題を分けて,まず登記の対象という問題から今回は御審議いただきたいと思います。   そこで,(1)では,登記の対象について取り上げておりますが,意見照会の結果では2案に賛成する意見が若干多かったものの,1案に賛成する意見も相当数寄せられました。   これらの寄せられた意見を踏まえまして検討した結果,1案,2案には次のような問題点があるのではないかと考えられましたことから,この点について御審議いただきたいと思います。   まず,アでは,1案の問題点を2点取り上げております。   1点目は,担保目的の譲渡とそれ以外の譲渡との区別が明確ではないのではないかという点でございます。1案では,担保目的でない譲渡は登記をすることができず,仮に登記がされましても無効となり,担保目的の譲渡か否かによって効力に決定的な差が生ずることとなります。そのため,本制度における担保目的の譲渡の意味を明確にしなければ,当事者がこれに該当する取引なのか否か,判断に困難を来たし,実務が混乱するおそれがあると考えられます。そこで,これを規定上又は解釈上明確にできるかというところが問題になりますが,まず法形式上被担保債権が存在するものを担保目的の譲渡とすることが考えられます。しかしながら,この考え方からは,実質的には担保目的である可能性のある,いわゆる買戻条件付売買等が登記の対象から外れてしまい,実務のニーズにこたえられないのではないかと思われます。   また,買戻条件付売買等が登記の対象とならないとしますと,これらの取引類型は,仮にA案を採用したとしましても,登記優先ルールによって劣後することにはならず,実質的には担保目的の譲渡でありながら,法形式を買戻条件付売買等とすることによって,登記優先ルールの適用を免れることができることとなります。したがいまして,A案を仮に採用したとしましても,その意義は減少するのではないかと考えられます。   そこで,次に実質的に担保目的であるものを「担保目的の譲渡」とすることが考えられます。   しかしながら,この考え方によった場合に,規定上登記の対象を「担保の目的による譲渡」と示すことでよいのか,また仮にそれでよいとしましても,実務運用に対する指針としては,その解釈基準を明確にする必要があると考えられますが,それはこれまでの判例の示す基準で足りるのかといった問題がございます。   また,何らかの解釈基準を示せたとしましても,当事者が当該譲渡が実質的に担保目的であるか否か,すなわち登記をすることによって法的効果を享受できる譲渡であるか否か,ひいてはコストをかけて登記をすべきか否かといった判断に迷うこととなり,実務に悪影響を与えるおそれがあるのではないかといった懸念がございます。   2番目の問題点としまして,(イ)では,実務界のニーズとの関係を取り上げております。   意見照会の結果では,動産を証券化して資金調達を図るというニーズがある旨の意見が多数寄せられました。が,1案ではこのニーズにこたえることはできないことになってしまいます。   この点につきましては,証券化のニーズにこたえるために,登記の対象として1案に「資金調達の目的で行われる動産譲渡」といった要件を加えればよいのではないかという意見も寄せられました。しかしながら,「資金調達の目的」という要件は主観的な要件でありまして,例えば事業資金を得るために余剰資産を処分する場合なども含めて解釈されるおそれがあり,いわゆる証券化目的の譲渡以外のものも含まれることとなって,その画する範囲が明確とは言えないのではないかと考えられます。また,債権譲渡特例法の立法時におきましても,対象となる債権譲渡を資金調達を目的とする債権譲渡に限定することが検討されたようですが,要件として明確性に欠け,実効性を期し難いという理由から,このような限定はされなかったという経緯もございます。そこで,やはり今回も「資金調達の目的で行われる動産譲渡」という要件を付すことは困難なのではないかと考えられます。   次に,イでは,2案の問題点について取り上げております。   まず,通常の動産取引に与える影響として,2案によりますと真正譲渡についても登記を具備する取引慣行や,登記を調査する取引慣行が形成され,動産取引の迅速性が阻害され,またコストの増大につながるおそれがあるのではないかとの意見が寄せられました。しかしながら,実務上行われている真正譲渡のほとんどは,現実の引渡しを受けるのが通常でありまして,この場合には登記をする必要はないことから,すべからく動産譲渡一般について登記をしなければならないとする取引慣行が形成されることまではなく,また登記の調査義務が課せられることも一般的にはないのではないかと考えられるところです。   また,本制度の創設の目的からは,登記の対象を担保目的の譲渡に限定すべきであるとの御指摘もございました。この点は,本制度を動産の証券化にも利用できることとされたいとの意見が寄せられたところでもありますし,このような要望は,動産を利用した資金調達を円滑にするという点では,本制度の目的とも同様でございますので,このような要望にもこたえることが妥当であるとも考えられるところです。   さらに,A2案を採用した場合には,担保目的の譲渡には登記優先ルールの適用があるのに対しまして,真正譲渡には登記優先ルールの適用がないこととなり,利用者に誤解を与えるおそれがあるのではないかとの御指摘もございました。このような懸念につきましては,新たな規定の内容が周知されることによって解消し得るものではないかと考えております。   以上が2案の問題点についてでございますが,このような考え方でよいのか,御審議いただきたいと思います。   続きまして,(2)では,登記優先ルールの採否について検討しております。   意見照会の結果では,A案に賛成する意見が多数でございましたが,A案に反対する意見,及びB案に賛成する意見も相当数寄せられました。これらの寄せられた意見を踏まえまして検討しました結果,A案・B案にはそれぞれ次のような問題点があるのではないかと考えられます。   まず,A案の問題点としましては,1案の問題点と同様に,担保目的の譲渡とそれ以外の譲渡との区別が困難であるということが挙げられます。すなわち,A2案(注)以外のA案では,登記をすることによって優先的効力が認められるのは担保目的の譲渡に限定されますし,またA2案(注)の考え方でございましても,登記しないと劣後するのは担保目的の譲渡であることは同様ですので,担保目的の譲渡とは何かを明確にしておく必要があると考えられますが,この点については先ほど述べましたように,1案と同様の実務上の問題点があるものと考えられます。   次に,(イ)では,いわゆる三すくみの状態の解決方法をどのように考えるかという問題点を取り上げております。   5ページのⅰからⅲまでの順番で,動産取引がされた場合におきまして,登記優先ルールによりますと甲は乙に優先し,乙は丙に優先し,丙は甲に優先するという,いわゆる三すくみ状態が生ずるように見えますが,この場合に,最終的にだれを優先させるべきかといった問題でございます。   この問題は,多分に理論的な問題ではございますけれども,理論的な決着をこの場でつけていただきたいという趣旨ではございませんで,結論によりましては実務の運用にも大きな影響を及ぼすものではないかと考え,取り上げた次第でございます。   まず,A2案(注)以外のA案を採用した場合には,この問題の解決方法として,(b)に記載しましたように,担保目的で動産を譲渡した者は,未登記の間は当該動産について同じく担保目的の譲渡を二重に行うことが可能な地位を有しているものの,担保目的以外で二重に譲渡する地位はない,真正譲渡をする地位はないと考えられるとしますと,乙は無権利者から譲り受けたことになって,所有権を取得することはなく,三すくみの状態にはならない,結局丙が甲に優先するということになります。   しかし,このような考え方につきましては,5ページの①,②のような問題点があるのではないかと考えられます。   まず①は,譲渡人が譲渡するのは所有権という同一の物権でありながら,担保目的の場合には譲渡の効力が生ずるのに対し,完全に所有権を譲渡する場合には,その効力が生じないといった違いが生じますが,それをどのように説明するかという点でございます。   ②はやや細かい問題点でございますが,ⅲまでいった後に,譲渡人が甲に対する被担保債権を弁済した場合には,譲渡人に処分権限が追完され,乙に所有権が移転すると考える余地が仮にあるとしますと,乙が丙に優先することとなりますが,それではいったん丙の所有権移転を確定させておきながらそれを覆すことになってしまって不都合なのではないかという点です。   この点につきましては,※印に記載しましたとおり,若干自問自答的な部分はございますけれども,この場合には丙が登記を具備した時点で丙が確定的に所有権を譲渡人から承継取得する,その反射的効果として甲への所有権移転はなかったことになると考えることでよいか,御意見をちょうだいしたいと思います。   続いて(c)は,先ほどの(b)の考え方とは違いまして,譲渡人には目的のいかんによらず,動産を二重に譲渡する地位があると考えるとした場合には,いわゆる三すくみの状態となります。この場合の解決方法として,だれが最終的に優先する者かを決定する基準としましては,主として次の①から③までのような考え方があり得るのではないかと思います。   まず,①の案ですが,これは現実に行われた譲渡の時間順に二当事者間で順番に優劣を決めるという考え方です。この考え方によりますと,甲・乙間では対抗要件を先に具備しました甲が優先し,残った甲と丙の間では登記優先ルールにより丙が優先するということになると思われます。   ②案は,真正譲渡が介在した場合には,登記優先ルールの適用がなく,原則どおりに対抗要件の取得の時間的先後により決するという考え方でございます。この考え方によりますと,甲が優先するということになると思います。   ③案は,これはもう三すくみの状態のままなので,最終的にはだれが優先するかはその順番によって決着がつかないものだという考え方でございます。   このほかにも,本日,○○委員の方から御提出いただいたペーパーにもございますように,様々な考え方があり得ると思われますが,ここに挙げた①案と②案でも,最終的に優先する人は異なりますし,また③案では決着がつかないということでございます。したがいまして,この問題について確定的な見解に至らなかった場合,又は③案によった場合には,理論的な問題にとどまらずに,取引における予測可能性等の面において実務にも大きな影響を与えると思われますので,実務家の委員・幹事の方々の御意見もちょうだいできればと思います。   次に,bでは,A2案の(注)を採用した場合について,同じく,いわゆる三すくみの状態の解決方法について検討しております。この場合は,A2案(注)の制度趣旨にかんがみますと,担保目的で動産を譲渡した者は,未登記の間は当該動産について,目的のいかんによらず二重に譲渡することが可能な地位を有していると考えられますので,乙が未登記の場合には,先ほどの(c),いわゆる三すくみ状態と同様の問題があると考えられます。   もっとも,A2案(注)によりますと,乙も登記優先ルールが認められますことから,乙が登記を具備した場合には,甲それから丙にも優先し,三すくみの状態にはならないこととなります。   続いて(ウ)では,経過措置に関する問題点を取り上げております。   A案を採用したとしましても,法律の施行前にされた占有改定による担保目的の譲渡の効力を維持するとしますと,実務上,当分の間はA案の意義が十分に発揮されないこととなります。逆に施行前のすべての占有改定による担保目的の譲渡が登記に劣後するとしますと,実務に与える影響は甚大なものがあると考えられます。   この点につきましては,施行前の占有改定による担保目的の譲渡のうち,施行後一定期間,ここでは6か月というのを例として挙げておりますが,この期間内に登記をしたものは,施行後に行われた担保目的の譲渡で登記されたものに劣後しないとするような形の経過措置を設けるということも考えられますけれども,そのような必要があるのかどうか,御審議いただきたいと思います。   次に,(エ)は即時取得との関係を取り上げております。   ⅰからⅲまでの事例におきまして,登記優先ルールにより乙が優先することとなりますが,その後に劣後するとされた甲が即時取得をしないようにする必要があると考えられますが,その理由づけについてどのように考えるかという問題点でございます。   aの考え方は,譲渡人と甲との間の取引に基づく所有権移転は,乙の登記の具備によってその効力が生じなかったものとされまして,甲への引渡しは既に否定された所有権移転を前提とする履行行為にすぎませんので,新たに所有権移転の効力は生じさせないと,したがいまして乙への引渡しは単なる占有の移転にすぎず,民法第192条の適用はないという考え方でございます。   これに対しましてbの考え方は,乙が登記を具備したことによって確定的な所有者となっていることから,譲渡人は無権利者になり,甲は無権利者からの動産の引渡しを受けたことになりまして,民法192条の適用はあるとします。ただし,甲は自ら登記をしていない以上は,登記優先ルールのもとでは現実の引渡し時であっても登記の調査義務があると解しまして,甲が現実の引渡し時に登記の有無を確認していない以上,過失が認定されて,即時取得は成立しないとするものです。もっとも,この考え方によりますと,甲自身は登記事項証明書の交付を請求することができませんので,譲渡人に対しまして,譲渡時と引渡し時の2回にわたって登記事項証明書の提示を求めるという必要が生じますが,そのような取扱いでよいのか,実務上の不都合がないかどうか,御意見をいただければと思います。   次に,(オ)では,現行の実務に与える影響について検討しております。   意見照会の結果では,登記優先ルールを採用した場合の実務への影響は予測し難いとしまして,これに反対する意見が相当数ありました。この実務に与える影響として指摘されている具体的な内容としましては,本制度によって公示性のすぐれた登記が導入されることにより,商品等の仕入れなどの通常の取引としての動産売買についても,登記を調査しなければならなくなる場合が生ずるのではないかといった懸念ですとか,いかなる場合に即時取得が否定されるのかの判断を取引慣行や裁判所の判断にゆだねてしまうことへの懸念といったものでございます。   この問題は,動産譲渡について登記制度を導入することに伴い生ずるものでごさいまして,A案・B案に共通するものだとは思われますが,登記優先ルールを認めるA案を採用し,登記がより利用された場合により顕在化するものと言えますので,A案の問題点として取り上げております。   ただ,商品等は通常は集合物として担保目的譲渡の対象とされておりますので,しかもその商品等の処分権は譲渡人に授権されているのが一般的だと考えられます。したがって,その場合には即時取得の成否を論ずるまでもなく,当該原材料等,商品等の売買には支障がないと言えます。   また,仮に譲渡人がデフォルト状態等に陥りまして,処分権がなくなった場合であっても,商品等の取引をする者はそのような事情は知り得ないのが通常ですので,過失があるとは一般的には言い難いと考えられます。   さらに,商品等が個別動産として担保目的譲渡の対象となっていた場合におきましても,商品等の仕入れといった取引の性質からは,その迅速性が要請されますので,このような場合にまで買受人に登記の調査義務が課せられることはないと考えられますが,このような理解でよいか,御審議いただきたいと思います。   もっとも,通常の取引においては,買受人に登記の調査義務が認められないと考えられるとしましても,なお実務感覚として現行の動産取引にどのような影響があるか予測し難い部分が残るという不安感があるとすれば,このような不安感を解消するために,民法第192条,即時取得の規定の適用を妨げない旨の規定を設けることを検討すべきかどうか,これについても御意見をいただければと思います。   最後に,(カ)は,A案関係後注についてでございます。   この案は,登記優先ルールによって優先するものの要件として,登記を具備したことだけではなくて,占有改定により動産の引渡しを受けたことを要求する点がA1案と異なっているものと考えられます。そのため,A1案に比べまして,登記優先ルールの適用に際しまして,占有改定の有無をめぐって争いを生ずる可能性が増えることになるのではないかと考えられます。また,この案によれば,登記の対象となりますのはA1案と同様に,担保目的の譲渡でございますので,1案の問題点と同様の実務上の問題が生ずるのではないかと考えられます。   次に,イではB案の問題点を取り上げております。   登記優先ルールを認めないB案では,先行する占有改定による担保目的の譲渡に対抗することができないため,金融機関等が融資に踏み切れず,本制度が利用されないのではないかといった御指摘がございました。この点につきましては,担保目的の譲渡における譲受人には,登記の調査義務が課せられると考えられることから,B案を採用した場合であっても後行の担保目的の譲渡における譲受人の即時取得を阻止することはできるという効果がありますし,また後日譲渡人によって無権限の処分がされ,当該動産上の権利を主張する第三者が登場して法的紛争に至る事態を防止する機能も期待し得ます。したがいまして,B案を採用したからといって,本制度が金融機関等に利用されないということはないのではないかと考えられますが,この点につきましても実務家の委員・幹事の方々の御意見をお聞かせいただければと思います。   続いて,(3)では,占有代理人の占有下にある動産の譲渡について取り上げております。   意見照会の結果では,占有代理人の占有下にある動産につきましても,本制度の対象とする実務上のニーズがあること,それから対象を譲渡人の直接占有下にある動産に限定することは規定上困難であることなどから,これにつきましても本制度の対象とすべきであるとする意見が多数でございました。   他方で,倉庫事業者に寄託されている動産については,倉庫事業者の関与なしに登記がされることとなって,倉庫事業者はだれに引き渡すかも判断しなければならず,実務に混乱をもたらすとの意見も寄せられております。しかしながら,倉庫事業の実務においては,寄託者から第三者に寄託物が譲渡された場合であっても寄託者から倉庫事業者に直接通知されるということはなく,寄託物の出庫作業は寄託者が発行した荷渡指図書を持参した者に引き渡すという業界慣行に基づいて行われているとのことでございます。このような現行実務の取扱いを勘案すれば,寄託物の譲受人が倉庫業者から円滑な出庫を受けるためには,荷渡指図書によることが必要でありますから,本制度が創設されたとしましても,荷渡指図書に基づく業界慣行は影響を受けることなく,実務に混乱をもたらすことはないのではないかと考えられます。   動産譲渡関係の最後は,2の登記情報の開示についてでございます。今回は,このうち前回残された課題でございます登記情報の全部の開示を請求できる利害関係人の範囲について取り上げております。   意見照会の結果では,譲渡人の債権者,それから先取特権としての労働債権を有する者,従業員,それから労働組合などを含めるべきことを明示すべきであるとの意見がございましたが,他方で,従業員が登記事項証明書を取得して不正に利用する可能性のあること,従業員であった者の取扱いが問題となること,それから労働債権以外の優先債権と取扱いを区別することは適当ではないことなどを理由として,反対する意見も寄せられました。そこで,全部の登記情報の開示請求できる者として,どの範囲のものを考えるべきか,また仮にその範囲を広げるとした場合には,どの程度の資料の提出を要求すべきと考えるべきか,この点について御意見をいただければと思います。   説明は以上でございます。 ● それでは,まず「動産譲渡に係る登記制度の創設」の「1 登記の効力等」のうち,(1)の「登記の対象について」という部分について議論をしてまいりたいというふうに思います。   この点につきまして,御意見等ございましたら。 ● 経済産業省の方から口火を切らせていただきます。   実は,登記の対象をどうするかというと,効力をどうするかというのは大体皆さん実務界の人と我々が議論をしているとパッケージになって考えておられるのですけれども,我々がずっと調査して話を聞いていると,皆さんのおっしゃっていることは大体似ているかなという感じがしております。   まず,一つの類型として担保目的。これは皆さん,今の制度よりも公示制度があった方がいいなと,作るからにはA案的な効力の強い方がいいかなと,こういう話の方々が,経済産業省がおつき合いしている方々の間では大多数のような気がしております。   それからもう一つ,流動化目的・証券化目的,これは経済産業省の方でも実は意外だったのですが,中間試案が出て以降,様々な方々と御議論をしていると,証券化のために,流動化のために,実はこの制度は非常に使い勝手がいいのではないかという議論が多数,実は発見されたというのが私の実感であります。   一昨年,担保法制研究会を開かせていただいたときには,抽象的に動産の融資における活用,及び若干証券化の活用という議論もしていたのですけれども,当時はどちらかというと融資に対する活用が主だったのですが,その後証券化の議論を経済産業省の重点施策として取り上げて,いろいろな方々と御議論していると,動産譲渡公示制度を是非つくっていただきたい,こういう議論になっているというのが私の実感でありまして,最近産業構造審議会の産業金融部会というところがあって,そこで新機能小委員会というのを開いております。 そこでの提言でも,やはり動産譲渡公示制度をつくっていただけるならば,是非担保目的プラス証券化・流動化目的というところまで広げていただくと非常にいい効果があるのではないか,こういう認識でおります。したがいまして,担保目的についてもなるべくいいものを,それから流動化資産目的についてもなるべくいいものをというところまでは,大体我々が聞いたところの感触でございます。   特に,流動化目的につきましては,効果として必ずフレッシュ・マネーが出るというところを強調する方も多々おられます。担保目的につきましては,御懸念の中の大きな一つの中に,保全強化のためだけに使われて,実はニュー・マネーの供給につながらないのじゃないかという御懸念があろうかと思いますけれども,流動化あるいは証券化という議論については,そういう懸念もなく,新しい資金供給につながる手段かなと我々も非常に注目しているということでございます。   他方で,今申し上げた担保目的と,それから資産流動化目的以外の目的で動産譲渡公示制度が必要か否かという点になると,必要だという方々は余りおられないという状況だと私は理解をしております。したがいまして,最初の(1)の「登記の対象について」1案か2案かというふうに問いかけをされますと,経済産業省としては1案は狭いので,1案か2案しかないよと言われれば2案と言わざるを得ない。本音で言うと,1案足すひげぐらいのところがいいのじゃないかというのが本音なんですけれども,とりあえず1案か2案か問われれば,2案ですということを申し上げている大きな背景は,そうした流動化についての実需が非常に強いということを背景にしているということを御紹介申し上げたいと思います。   効力の話は後ほど出てきますので,そのときにまたお話しします。 ● 実務界のニーズというか,このパブリックコメントの結果でいわゆる証券化ニーズというのが出てきたという背景,今御説明いただいたと思います。私も詳しく承知をしているわけではないので,何となくちょっと勘みたいなところがあって申し訳ないのでありますが,いわゆる流動化・証券化というニーズに伴って,実際の現場のところで資金調達の部分だけがきちんといくというならそれは別にいいと思っているのですが,実際には要するに企業の再編があったり,一つの営業譲渡みたいなものが起こったりした場合,そこで働いている労働者にとって雇用を含めて労働条件ということは非常に大きなインパクトを受ける。その点が,資金繰りだけで,あるいはフレッシュ・マネーという金の性質だけで考えれば正しくおっしゃるようなことはあるのかもしれませんけれども,先ほど○○委員から,直接今の担保法制以外の部分のところの保護は別途考えるべきだという発言がありましたが,前回私が申し上げたのも,この登記制度の枠組を促進することによって,現実にはそれが促進をされ,流動化の話にしても,現実にそういうことが起こるとした場合に--私が違っているというのであればまた御訂正いただければ有り難いのですが,現実の場面で起こったときに,労働者の保護をどうするか,それはその場面の問題だといえばそのとおりですけれども,どうも実態を見ているといわゆる会社形態の譲渡とか,そういうところにおいての労働者の保護,あるいは雇用の保護ということについての実体上の手当てがどうも進んでいないような気がいたします。そういう中で,こういうことが促進をされるというのは,今回の一般の登記制度全体のことと同じような立場に立ってしまうのですが,それだけ促進するということ,そこだけ見て進めるのはいかがなものかという感じはいたしております。   それから,私も素人でよく分からなのでちょっと確認をしたいのですが,ここで言う流動化のための譲渡というときに,いわゆる流動集合動産みたいなものがどういったような形で対象になるのかなと。どうも考えると,すべて譲渡の部分ですから全部確定をしてしまうので,私の錯覚かもしれませんが,そもそも流動とか集合動産みたいなものは譲渡の対象になり得ないような感じがしております。   ここで,資金の調達目的に限定するのはなかなか難しいという事務局からの提案がございます。仮にこれを無限定に,すべての譲渡についてなされるというようなことになりますと,片や占有改定という形をずっとつないだまま登記でそれを補充する。すると,今で言う占有改定が実務上ずっと長く使われるようなことが起こるのではないか。その場合,そこでの会社の維持,労働者の保護等についてかなり大きな問題があるのではないかというふうに懸念をいたしております。 ● ただいまの御発言に関連して……。 ● 関連といいますか,1案,2案,どちらがいいかという観点から。   証券化の場合は,もちろんそれはニーズもあろうかと思いますが,私どもリース業界の立場からしますと,担保目的かどうかというのは当事者でも区別がつかない。いわゆるユーザーから物を購入しましてそれをリースするというリースバック取引の対象となる資産は中古資産もありますし,新品の場合もあるわけですけれども,税務上の観点からいきますと,中古資産というのはリース物件を担保とした金融取引,いわゆる貸付取引だというふうにされているわけですが,それ以外の新品の場合は,いわゆる売買があって,それをリース,賃貸するものだという取扱いをされているわけです。したがって,担保目的に限るということになれば,中古資産だけを登記しておけばいいかという問題になるわけですが,御存じのとおりリース契約の法的性質といいますか,それについては諸説がありまして,いまだ定まっていないということもありますし,それから倒産の場面においてはリース取引,いわゆるファイナンスリース取引というのは,どちらかというと担保的取引ということで扱われるというふうなことになりますので,いわゆるリースバックの取引を真正譲渡として登記しなかった場合--これが優先効の問題,A案の問題とも絡むのですが,最終的に係争になった場合に,ユーザーからの譲渡が担保のための譲渡だというふうに最終的に裁判所かどこかで認定されたとしますと,我々としては,後行の登記した譲渡担保権者に所有権を奪われるということになりかねない。それを避けるためには,全部担保として登記するということになろうかと思うのですが,ただ我々リース業界,それからユーザーもそうだと思うのですが,このリースバックの譲渡が担保目的の譲渡だなどということは,契約当時はだれしも認識していないわけですね。それをいわゆる担保としてやるということは,心にもない登記をさせられるし,またリース業界自ら,これを担保取引だと自認するようなことになりまして,所有権はもともとないのだというふうなことにもなりかねないということで,我々としてはやはり1案でなくて2案にしていただきたいと考えております。 ● それでは,登記の対象について,経団連としての考え方を申し上げさせていただきたいと思います。   私どもは,第1回からも申し上げましたように,貸し手・借り手という立場ではなくて,多くは取引先という立場から,ニーズがあるところであればそれに対して有効な制度を設けるべきであるというスタンスから,当初は担保目的の譲渡につきまして,ニーズがあるということの意見が多かったので,そこについて有効な制度を設けるべきというふうに申し上げておきましたけれども,それはパブリックコメントでも申し上げた内容でございますが,今回,新たに資金調達目的を含む真正譲渡全般的にこれを否定するものではなくて,やはりその面でのニーズがあるのであれば,それに対応する制度を設けるべきであろうというのは変わっておりません。ですので,今回,資金調達目的のための証券化のため,若しくは流動化のためという点でニーズがあるということでしたら,それも加えて,やはりこの制度を設計をするというところには基本的には反対しないところでございます。   ただし,そこから直ちに1案か2案かということになりまして,2案の真正譲渡全般というものを対象にするということになりますと,やはり幾つか懸念するところが出てくるのではないかというふうに思っております。例えば,取引コストの増大若しくは制度悪用の懸念というところにつきましては,前回御説明をいただきましたけれども,逆に通常の売買取引について登記をしないというような慣行が続くということになりますと,逆にまれな登記につきまして取引相手が混乱を来して,悪意を持った者が登記を逆に利用するというようなことも考えられなくもない。これは理屈ではなくて,そういう懸念ということで御理解をいただきたいと思います。   さらに,実際の譲渡につきまして,通常の買受人は保護されるといたしまして,前回は場所的制約によって通常の買受人は保護されるということをおっしゃっていただきましたけれども,前回提示いただきました資料の「動産の譲渡登記担保のイメージ」という資料の中で,場所をどの程度まで特定するかというところにつきまして,どなたかから疑問が提示されましたけれども,そこについては明確な御回答がなかったのではないかというところがあるかと思います。といいますのは,例えば登記場所としてどこまでの限度を限定をするのか,例えば日本とか東京というような広い限定をするのであれば,これはもう場所で制約をしている意味がなく,むしろ一方でどこかのビルの2階とか3階,極めて狭い範囲を特定するのであれば,逆に登記の意味がないということになりますと,登記場所についての十分な議論をまずはしていただくことが必要ではないかと思います。   また,善意取得についても,通常の売買につきましては引渡しを伴うものがほとんどであるということから,善意取得によって即時取得が認められるので登記がこれを通常の動産取引を害するおそれは少ないということをおっしゃっていただきましたけれども,実際の取引におきましては,例えば預託販売,船荷証券のような場合のように,現実の所有権の移転がどこで行われるのか,それと引渡しがどこで行われるのかというのは必ずしも一致していないような場面というのが多くあろうかと思います。そのような場合に,直ちに善意取得でカバーをし切れるのかというところでやはり懸念というものがぬぐい去れないのではないかというふうに考えております。   結論としましては,Aの1案で申し上げましたような担保目的の譲渡だけでは不十分であるということでございましたら,例えば資産の流動化の目的というものについてニーズがあるのであれば,それを追加していただき,更にそれ以外にもリース目的というニーズがあるのであれば,それを追加していただくというところにつきまして,制度設計をお願いしたい。   この点につきましては,法技術上どういうふうに書けばいいかというのは私ども素人でございますので,そこについては何も申し上げられないのですけれども,このあたり,先生方に是非御教示いただきたいと思うのですが,私どものニーズとしてはそういうところにあるというところで,まず制度の効力ありというところを前提とすると,そういう御要望をしたいということを申し上げたいと思います。 ● 基本的な問題の整理の仕方といいますか,先ほど○○幹事の方からニーズの話がございましたけれども,どういう場合にここの登記制度が必要がというニーズは,担保目的の場合と,それから動産の流動化というところについてニーズがあると,しかしそれ以外についてはニーズはないどころか,逆に弊害が大きいという指摘があるときに,どういう制度を導入するかというふうに考えていきますと,ニーズがあるところに限定して,できるだけニーズに合った強い効力を与えるというのが本来の進むべき方向じゃないかと。そのための技術的な詰めを行っていって,どうしても難しいというときにどういう工夫があり得るかというふうに進むべきだと思いますけれども,そのときに中間試案でA1,A2とあって,どちらかという選択肢になるわけではなくて,中間試案のときには動産の流動化というニーズはそれほど認識されていなかったといいますか,むしろないというふうに言っていたわけですから,そこの認識が変わったというときには,別に中間試案に拘束される必要はないと思うのですね。そういう発想でいきますと,ニーズがあるところに目的を限定して強い効力を与えるということをまず検討すべきじゃないかという気がいたしますけれども,今日のペーパーで3ページに書いてあるのは資金調達の目的ということで,担保目的と流動化目的を全部受けるものとして資金調達の目的というふうに入れる考え方は難しいと,債権譲渡特例法のときにそういう考え方は採用されなかったというわけですけれども,これはあいまいだというのは私も分かります。資金調達の目的であれば普通の売却だって入ってきますから,これで限定することはおよそ考えにくいわけですけれども,そうではなくて,担保目的譲渡とそれから動産の流動化,資産の流動化目的というのを書き込むということはあってしかるべきではないかと。   今日,○○幹事のペーパー,先ほどちょっと見ていましたら,それは技術的には可能だということは,その案に賛成ではない方も認めておられますし,資産流動化法の中には資産の流動化について法律上の定義がありますので,これはむしろ経産省が所管されている事柄だと思いますので,技術的にそれが法律に書けないかというと,これは可能だと思うのです。資産の流動化については,自分たちが資産流動化をやっているかどうか判断に迷うということは余り考えにくいので,資産の流動化かどうかというのは実体としてははっきりしていて,あとは法律に書けるかどうかの問題だと思いますので。しかしそれは可能ではないかと思いますので,この3ページの案ではなくて,違う形で取り込むということをまず検討して,実際に書き下ろしてみて,これでいくとどういう問題が出てくるかということを検討すべきではないか,それをしなくて,中間試案の中でどれですかという問題設定は,やや適切ではないというふうにまず大前提として考えます。   それから,担保目的譲渡というのが登記ができる対象に含めるかということと,いわゆる登記優先ルールの対象とするかと違った事柄の要件として入っていて,これは抽象的にこういう切り分けがよくないのだという話で議論されてしまいますと,両方ともだめだということになりそうですけれども,それぞれ目的は違うわけですね。違うわけですから,そこははっきり分けて議論すべきじゃないかと。だから今日の議論の仕方にもよるわけですけれども,前半と後半は本当は別れなくて,そこの組合せでどれがいいのかというふうに考えるべきではないかと思います。   それで,先ほどの話で後で○○幹事にお伺いしたいと思ったのは,動産の流動化のニーズがあるという方々は,パブリックコメントに対する意見でいきますと登記優先ルールの対象とするということを当然想定されていたように思いますけれども,いわゆるB2のような考え方で動産の流動化に対応したことになるのか,それは対応したことにならないのかという,対応するという場合にどの程度の効力を与えるかという問題に今の問題はかかわってくるような気がしますので,これは審議の順番,後でまとめて議論すべきであれば,また後でということです。   それから,先ほどの担保目的譲渡にリースが入るかどうかという問題,これはリース契約の法的性質の問題でありまして,これは難しいというのは要するに理論的に難しい問題であるからであって,だから当事者が迷うのは当然だと思うのですけれども,これが難しいから全部真正譲渡まで広げなくちゃいけないかというたぐいの問題かというと,そうではなくて,例えば担保目的譲渡でリースバックが上がってきたときに,登記を受け付けてよいかというときの法務省の民事局の通達として,これは受け付けてよいというルールを明確にしさえすれば,それはそれでいいのではないかと思いますし,またその先,その効力が問題になったって,これは裁判になって,そもそもファイナンスリースとかリースバックはどういうものかということが争いになる,これは別にこの局面だけじゃなくて,他の局面でも一般的に問題になることですから,どういう局面でそれが問題となるのかということをもう少し明確にして議論をすべきではないかと思います。問題の軽重というのが,小さな問題があるから何か一挙にすべての動産譲渡に登記の対象を広げるというところまでなってしまうところが,どうも違和感がありまして,今日のペーパーを見てみますと,限定は難しい難しいと言うのだけれども,余りニーズがなくて,逆に弊害が多い動産一般について,大は小を兼ねる式で広げてしまうという結論に結びつくところが,やはり問題ではないかと思います。 ● 私は,1案に反対し,2案に強く賛成いたします。ペーパーで出してあるのは効力の方でまたお話しするとして,今は口頭で申し上げます。   まず,1案に反対し2案に賛成する理由の第1は,部会資料の2ページa,bにもありますように,担保目的と真正譲渡の区別が困難であると,皆さんからも出ているところ,これが私の最大の理由で,2番目の理由が証券化・流動化目的のものが入らなくなると,これも○○幹事から御説明のあったとおりであります。   それから,第3に,資金調達目的というのではどうかということが出てきて,これも御紹介されましたけれども,これは例えばUNCITRALの国際債権譲渡条約では条約の前文にこの資金調達目的というのを入れるかどうかというのがいろいろ議論されまして,結果として,これはやはり要件として明確性に欠けると。先ほども御意見の中にも出ていましたが,売買だって資金調達だろうということで,ほとんど考えてみれば資金調達目的と言えないものはないのではないかというような議論もなされまして,我が国の債権譲渡特例法をつくりましたときにも同じ議論がされて,資金調達目的というのは考えられたのですが,採用されなかったというのは先ほど事務局から御説明があったとおりであります。   この債権譲渡特例法は,御案内のように立法を考えました最初の段階では,証券化・流動化の方を主として考えておったのですが,実際には債権譲渡担保のためにかなり多く使われるというのが現状になっていますが,いずれにしても両方を区別せずに取り込んだことで,債権譲渡特例法は現在かなり有効に使われているということであります。   そして,若干加えますと,私が2案に強く賛成するというときに,ほかに1プラスアルファとかいう御意見もあるわけですけれども,それから目的を二つ書くというのも今御提案がありましたけれども,私はいずれにも反対であります。それは,この後対抗要件のところでペーパーを使ってまた説明をしてみたいと思います。   それから,その他のところまで広げることの弊害という御意見もありましたけれども,これは登記の強さとも関連するお話で,これまた対抗要件のところで言及したいと思います。 ● 銀行業界での実務という,そういう観点からお話を申し上げたいのですけれども,お話しする中で,余り1案,2案という切り分けと,A案,B案という切り分けを二つの軸で切って考えるという考え方は余りしておりませんで,両方の軸が割と有機的につながるような形で考えておるものですから,ちょっと話の筋道が余りきれいにはいかないのですけれども。   まず一つ目として申し上げたいのは,1案では実務のニーズが満たされないのではないかというふうなところがあるのですが,銀行業界における実務の観点からは,そこまではちょっと言い過ぎなのかなというふうに考えているところがございます。   まず,担保目的とそれ以外の区別の明確性についてというところですけれども,銀行において動産担保を取得するに当たっては,設定契約を締結しまして,そこで担保目的であるということについて疑いを入れないような契約の書きぶりをするとか,そういう一定の対応はできるのじゃないかというふうに考えておりますのと,それから仮にA案をとった場合には,1案をとろうが2案をとろうが,優先される方の譲渡,こちらが担保目的に限るというふうにされておりますので,仮にA案をとるとすると1案だろうが2案だろうが担保目的とそうでないものとの区別の不明確性という問題は,程度問題でどちらも残ってくるというふうなことがあろうかと思います。   担保目的かどうかという点についてはそんなところでございます。   次に,先ほどからお話が出てきております流動化・証券化のお話でございますけれども,確かに証券化・流動化,あるいは信託目的,こういった譲渡についても登記対象としてほしいというふうな意見は銀行の中からも一部からは出てきております。そういう証券化目的・流動化目的,そういったものを一般の真正譲渡から切り離して登記対象として含めるというふうなことであれば,さほど異論はないところだと思うのですけれども,仮にこれが技術的に困難であるということだとした場合に,やはり一足飛びにA2案であるとかA2の(注)であるとか,そこまで行ってしまうのは,少なくとも銀行界の考え方としては,大勢にはなっていないというところでございます。   一方,B2案であれば真正譲渡を含めてもさほど抵抗はないのかなというふうな感じでございます。   そうしますと,A1案又はB案,B案においては1か2は特には問わないということなんですが,それであればどうしてもどちらでなきゃ困るというふうな意見ではないのですけれども,一方でA2案であるとかA2案の(注),これにつきましては懸念が持たれるというふうな意見が比較的多いというふうに感じております。   その理由といたしましては,一つは登記優先ルールというのがほかに類を見ない制度であって,既に三すくみの問題とか指摘されているところではありますけれども,それと同じような困難な問題で,まだ気がついていないような,そういう問題がどこかに転がっているかもしれないというふうな懸念を持っておりまして,そうすると真正譲渡まで含めて全部対象にするのは,ちょっと自信が持てないなというところがございます。   それから,具体的に現行取引への影響といたしましては,外為取引で荷物の貸渡し取引というのがあるのですけれども,こういった取引,銀行は現在荷物については銀行自身の所有というふうに考えているのか,あるいは担保目的で銀行の所有になっていると,そういうふうに考えているのか若干はっきりしないところはあるのですけれども,そういったところに登記優先ルールが入ってきたときに,ちょっと一体どんなことが起こるのかよく分からないという,十分解明できていないだけに懸念が残るというふうな意見もございました。   それからもう一つの理由といたしましては,A1かA2かというところで考えた場合に,A1案ということであれば「担保ムラ」の中での話として取引界への影響を消化しながら,一方では担保取引の拡大というのにもそれなりの目的が果たせるのかなと,そういった意見がございます。   結論といたしましては,A1又はB案,B案であれば1,2どちらでも問わないということなんですが,それであればどちらかでなくては困るということはないと。   B案については,利用されないのではないかという懸念もあるようでございます。これは実際やってみないと分からないというところはあるのですけれども,今回の部会資料7-1の9ページに米印で記載されているところがございまして,こういった機能の期待というのはできるのかなというふうに考えられますので,それなりに担保取引拡大という目的は果たせるのではないのかなというふうに思っております。 ● それぞれの委員・幹事御指摘のように,効力の問題と切り離して独立に論ずることは大変難しいのですけれども,多少議論の整理の都合上,少し効力の問題,読み込みながら御意見をちょうだいできればと思っております。 ● 意見が一つと,質問が一つございます。   意見の方ですけれども,1案と2案との関係について,1案プラスアルファというふうな御議論論も幾つか聞こえたわけですけれども,アルファの部分を法制的に果たして書き込むことができるかどうかという問題に関して,確かに既存法令の中にも資産の流動化に関する法律に資産の流動化の定義文言等出ておりますけれども,しかし気をつけなければいけないのは,資産流動化に関する法令でそういう文言があって,またそれがそのコンテクストでは使えるということと,民事に関する法制の中で,登記の効力を議論するときに,その文言だけで,あるいはそれと類似のもので果たして十分に機能する,法制的に耐え得るものとしてその文言を用いることができるかどうかということは別問題でありまして,その点については私はやや悲観的な見通しを持っております。これが意見でございます。   それから質問ですけれども,今日の議論の切り口を与えてくださった○○幹事のお話,大変参考になったのですが,1点教えていただきたいこととして,1案プラスひげあたりが自分の心であるけれども,どちらといえば2案だというふうにおっしゃったのですが,そのときに一つお尋ねしたいのは,2案をとったときの,つまりひげを超えている部分が入ってきたときに,何か積極的な弊害があるというふうなことについて,経済産業省のお立場でお聞きになっているいろいろな声の中で,そういうものがあるのかどうか,そのあたり御教示いただければと思います。 ● 簡単なんですけれども。2案でどうかという,さっき担保で狭いのでひげをつけたいと,したがって中間試案に沿って言うと2案ですねと,御心配ですかと普通の人にお伺いすると,やはり通常の取引で一々登記があるかどうか確認しなければだめなんでしょうかとか,あるいは通常取引して,後から登記したやつが出てきて,これはおれのものだといってとっていかれることはないだろうかと,こういうレベルです。実は非常に多いです,そういう懸念というのは。   それで,一応パブリックコメントの方で我々は,そういうことは実際上は起こり得ないのじゃないかと,それは杞憂にすぎないのじゃないかというような形で2案を支持しているのですけれども,ただこれはちょっと御説明すると,例えば今申し上げたような非常にナイーブな懸念というのが,要するに普通の生業でやっておられる八百屋さんとかお肉屋さんのレベルだけじゃなくて,相当立派な,日本を代表するような大手スーパーの方々も,例えば普通に懸念を持ってしまうという実態があるのは事実なんです。したがって,パブリックコメントでちょっと我々申し上げているのは,そういう懸念をどうやって,それが本当に懸念ならば,どう丁寧にそれを払拭していくのかという議論が一つと,それからもう少し高度な,複雑な議論として,先ほど幾つか複雑な契約形態というのがあって,それに対する影響はどうかというもう少し高次な話も実は出てきているのも事実だと思います。ただ我々が,10人聞いてみたときの御心配というのは,正にそういう非常に原始的な,非常に新しい制度が新たにできることに伴って,私たちの通常の行動のコストが更に上がるような気がするので,それが心配なんですというレベルだということでございます。   それに対しての一応のお答えは,そういうレベルでは余り御心配ないのじゃないでしょうかということは申し上げているのですが,一言言って,すぐにああそうですかとなかなか言ってくれないのも現実だということでございます。 ● それらの懸念の中には,A1であってもB1であっても出てくる懸念というのがかなり混ざり込んでいますね。 ● 混ざり込んでいますね,そこはもう少し……。AかBかというのは,余り皆さんそこまで分からないので,新しい制度ができる,そうするということで,今,○○委員がおっしゃったとおりでございます。 ● 裁判所は,この件に対する意見について,A案にするかB案にするかというのは立法政策の問題で特に意見を述べなかった。その上で,A1案かA2案かというときには,A1案の方がいいと思うと。それは,この立法目的が,中間試案にも書かれているとおり,譲渡担保が占有改定によって行われて,外形的に分かりにくいと,そのことが動産の担保の実効性を害していると。この目的のために制度をこしらえましょうということであれば,それはその目的を超えるような制度を作るのは違っていると,こういう考えで1案の方がいいというふうに申しました。ですから,今議論があるように,別の目的をここにプラスするのであれば,それはそういうこととして,そのことも一度議論をして,その目的をこの立法目的に加えるか加えないか,それはこういう立法事実があって,こういうものをこしらえればそれが解決するはずだから,こういうものをつくってほしいという,同じような御説明を聞いて,それを乗り越えるための必要性を理解して,それでやるのであれば,それは意見は変わっていくと。   ただ,何かおまけでつけるという話では,ちょっとないのじゃないかなというふうに私は思います。後半は,私個人の意見でございます。   それから,担保目的の譲渡と真正譲渡の区別の点でございますけれども,裁判所に判断が回ってくる,そこでの判断がどちらになるのかが不安だと,リスクになっておるという御意見,もっともだと。私,一度申し上げたことがあるかもしれません。ただ,それを払拭しようと思うと,今出ている案だとB2案までいかないと,ほかの案だと登記をつけるときに迷わないで済むということはあったとしても,前に来ている譲渡が担保目的なのかそうでないのかによって,後の登記を受けた者との間の優劣が変わってくるということになりますので,B2案までいかないと,今出ている案の中ではリスクはなくならないということは,それでよろしいのでしょうね。 ● 効力の問題はいろいろあると思いますから後に回しまして,まず先ほど申し上げた資産の流動化目的というのは楽観的か悲観的かというのは印象論はいろいろあると思うのですけれども,実際に書いて見てもどういう問題があるのかというのを検討していただきたいというのが私の要望でありまして,これは事務局として書いていただいて,どういう問題があるかと。これはむしろ経産省の方がノウハウが蓄積しているということであれば,法務省と御協議いただいて,そういう案を書いてみて,これでもしかしどうしても超えられない問題があるとうことになれば,最後はそれで困る人と,それから流動化を推進するメリット・デメリットを考量して,どちらに倒すかという決断になる。慎重にならざるを得ないかもしれませんけれども。B2とかA2で問題があるのだったら,なくなってしまうということだったら,そういう案を考えてみましょうというのが多分経産省のスタンスじゃないかと私は理解しますので,まずそこは検討してくださいということをお願いしたいと思います。   その上で,担保目的かどうかということで,今日の資料の2ページ目に書いてあることですけれども,私の目から見るとAとBというのが理論的な同じレベルで問題が整理されていないという気がいたします。担保目的はあいまいだというわけですけれども,何をもってあいまいと言うかというのは,要するに担保目的かそうでないかをどういう基準で判断するかという原則があって,その原則の適用が難しいケースがあるということなのか,原則がはっきりしないということなのかという点をちゃんと区別しないと,よく分からないけれどもそれぞれが何かそれぞれのことを思ってあいまいと言っているということになってしまうかと思います。   基準としてどういうものが担保かというと,私の理解するところ,あるいはこれは例えばマイカルのようなケースで当然の前提となっているような考え方だと思いますけれども,担保と売買とどこが違うかというと,行ってしまって戻ってこないというのと,一定の金銭を供与すれば戻ってくるということになっているかどうかという違いが本質的だろうと思います。そのときに,被担保債権が残っていて,それを弁済するという形をとるのか,買戻しや再売買という形をとるのか,これは法的な性質決定の問題でありまして,当事者が再売買といっても譲渡担保というふうに性質決定することは不可能ではないわけでありまして,そういうときには契約書の文言を尊重しようとか,形式に着目しようという話が出てくるかと思いますけれども,担保目的という場合には一定のお金を相手に渡せば物が戻ってくる,そのお金が融資を受けた者の被担保債権プラス利息,手数料的なものと評価できるかどうか,相手方の同意なくして当然に戻ってくると言えるかどうかというのが,これは一般的に通用する基準だと思いますので,その基準で多くの場合は解決がつくと。   リースバックが難しいのは,リースの場合の所有権というのがリース期間終了した場合の残存価値がある場合とない場合がありますけれども,その所有権の扱い自体が特異なことでありまして,フランスなんかでは経済的所有権とか,リースの場合の持っている所有権とは何かということ自体が他とは違う面があるものですから,先ほどの基準だとうまく判断できない部分が残るわけですけれども,それはどちらかというとマージナルな場合で,マージナルの場合が難しいというのはリース特有の問題でありますから,その問題を持ち出して一般に担保目的かどうかというのはあいまいだという議論をすることは難しいと思います。   それから,法務省がお書きになった中間試案の文章を見ても,特別法上担保目的という文例があると,それから判例の蓄積によって大多数の場合には形式的,定型的に判断できるので問題はないと,それから当該取引が債権担保の目的に該当するか否かは取引当事者自身が最もよく知るところであるから,この点の判断に特別の困難はないと思われると。これは中間試案の文章でありまして,それで全く問題ないのではないかと思うのですけれども,今日のペーパーになると,中間試案で書いてあるトーンと全く違って,これはあいまいでとり得ないということになっているかと思いますが,それはマージナルな局面ではそうだと,そこの対応の仕方は先ほど一つ申し上げましたけれども,様々な工夫があり得るのであって,むしろそうではなくて,大多数の場合にこれだと困るということになるのかという点をまず議論すべきじゃないかという気がいたします。 ● 売買という形をとった取引があったときに,それが実際に真正の売買なのか,それとも担保目的なのかということについては,過去に長い判例の蓄積があるのだろうと思います。それだけ紛争が起こってきたという事実は,紛れもない事実なんだろうと思います。   それから,証券化・流動化の世界では,申し上げるまでもなくこれは真正売買であるとみんなだれでも契約書に書いています。書いていますけれども,後からそうでないということが起こってくるわけでして,それはそういうことが起こらないように当事者は懸命になって弁護士にツールセールオピニオンを書いてもらうわけです。しかしながら問題が起こってくるということです。したがって,非常に例外的な場合なのか,それともそうでないのかというと,私はどうも実務の感覚からすると,非常にしばしば起こり得る問題なのではないだろうかという気がしております。   そういう前提に立って,真正売買の方につきましてもこの公示方法でカバーするかということになった場合に,証券化・流動化の部分だけをカバーすればいいのかというふうな問題がございますけれども,これについてその部分だけを果たして公示制度として担保だと,担保はこれでカバーします,それから譲渡は全部やりません,この部分だけですというふうな,そういう制度の設計というのはどんなものなのかなという気が,まずいたします。直感といたしまして。   それからもう一つは,流動化とそうでないものとの書き分けの問題が出ておりますけれども,これも私は資産流動化法の例が挙がっておりますけれども,どのトランザクションも全部資産流動化法を使ってやっているわけではないだろうと思いますし,実際問題,そんなに上手に,この場合にはこの公示制度でカバーするけれどもこの場合は違うのだということの書き分けができるのだろうかということは,疑問に思っております。ただ,○○幹事がおっしゃったように,実際に書いてみていただければ,なるほどなと思うのかもしれませんけれども,私は今のところはちょっとそれは懐疑的に思っている次第です。 ● 資産の流動化の目的ということを法文上書けるかどうか,十分検討される必要があろうかというふうに思いますけれども,今皆さんが六法を開いていらっしゃってないようですので,1点申し上げさせていただきたいと思いますが,定義によりますと,まず主体が特定目的会社という一定の類型の会社であって,しかも特定目的借入れにより得られる金銭をもって資産を取得すると。この特定目的借入れというのは,特定目的会社が資産流動化計画と,こういう計画をつくって,内閣総理大臣の方に出すわけですが,これにのっとった資金借入れということになっております。この特定目的会社というのは,内閣総理大臣の監督権限が及んでおりまして,解散命令などの規定もあると。   今,我々が議論しております法人による動産譲渡のための対抗要件ということを考えているわけですけれども,このような民事基本法において法人の資産の流動化というふうに一般的な形で広げた場合に,どのような形でその目的を限定するのか,資産の流動化に関する法律では極めて固い枠組,主体を限って,すごく固い枠組でつくってあるわけですが,それを広げた場合にどのような問題が生ずるか,その点を特によく検討すべき必要があろうかというふうに考えております。 ● 先ほど,○○関係官がおっしゃったその民事基本法ということにも関連するのかもしれませんが,資産流動化を促進するという目的がこの部会にはあるのでしょうか。それがよく分からないのですが。   つまり,資産流動化についてニーズがあるというのはどういう意味なのか,つまりそのときに安定した所有権移転をして,安定した対抗要件を備えて,即時取得するような第三者がなかなか出てこないようにしたいというのならば,それは資産流動化の局面においては第三者が出にくくするというふうなことについてコンセンサスがここであるのかというのが,私にはよく分からないのですが。   少なくとも,まず譲渡担保に関連して申しますと,それは正に民事基本法の問題として譲渡担保について錯綜した法律関係が様々生じてきていると,そして譲渡担保というのは現在の占有改定で行われて,それが譲渡担保権者にとっても不安定なことになっているし,逆にまた第三者にとっても過失があるというふうに言われたりしてとれないということで困っていると,そこでそれを安定した形にするというのは,恐らくは正に民法--といって別にセクショナリズムを振り回すわけではありませんけれども,それが目的かなと思うのですけれども,流動化について需要があるという意見が寄せられた,では流動化に対応しましょうと。まず動産の流動化をどこまで進めて,それを安定させるための立法をここでやるのかというところから議論するのならば議論をしていただきたい。   資産流動化法はそういう目的なんでしょう。それはそうなんですが,私はそういうふうなことのコンセンサスというのがここで得られるとはとても思えないわけであって,そうすると担保目的に限るというのはもちろん分かります。それで,あとすべての占有改定というのは外部的に公示力が弱いのにいっぱしの対抗要件のような顔をしているので,なかなかすべての担保取引に限らず,純粋な所有権移転の取引であっても不安定な面がある,そこで公示制度というのをつくりましょうと,これは分かるのですが,資産流動化ということについて書けても,書くことには私は反対です。 ● つまり,ここにあるような担保目的にするか,そうでなければすべてかと,そういう選択肢の方がむしろここでの議論の対象としてはふさわしいと,そういう理解でよろしいのですね。 ● はい。そうです。 ● ほかの御意見,いかがでしょうか。 ● 私は,別に民事基本法を議論する場だからという制約があるとは,実は余りこの場に参加するときには意識はせずに議論差し上げていて,若干誤解を招いているところもあろうかと思うのですけれども,実は担保法制は,我々の目から見るともともと日本の産業金融制度をよくしたいという思いで入ってきているのだと思います。我々が非常に有り難かったのは,法務省及び法制審議会の方で担保法制全般についてもう一回見直していこうというお話があったので,だとすれば,担保なんですけれども広くとればいろいろな産業金融上の一つの経済制度だという認識で,よりよい制度ができればいいなということで期待してここに参加しているわけでございます。   真摯に皆さん方の御意見を聞いていると,それが担保と言うのか担保と言わないのかということは別にして,公示制度というものをつくっていただければ,実はいろいろな使い道があるよねという議論がだんだん世の中に広がりつつあるというプロセスなんだと私は理解をしております。そういう意味で,私はこの法制審議会の中間試案というのは非常に画期的なある種の提案をされていて,当初その提案の中で入ってこなかったような方々まで参加できて,こういういい制度をつくろうという議論が起こっているという意味合いでは,私は非常にいい議論のプロセスだなと思っていまして,狭義の担保目的ではないのかもしれないけれども,それについて是非使いたいという声が上がっているとするならば,是非目的として,最後法律の立て付けとして,法務省的な法律になるのかあるいは金融庁的な法律になるのか,経産省的な法律になるのかといろいろな議論はあると思うのですけれども,そういう方向でしていただければ私は有り難いなというふうに思っております。したがって,できますれば担保目的か,それでなければ全部かという議論だけではなくて,その中間的なところの可能性も含めてやっていただければというふうに思います。 ● 今のところ,1案でなければだめだという意見は,Aをとるならというもとでの意見はございますけれども,一般的に1でなければいけないという意見は少数で,1プラスアルファ,あるいは2の方向でという御意見が多いというふうに承っておりますが,もちろんこれも幅広く登記をさせてやれということと,そのした登記が幅広くすごく強い効力を持つというのは別の問題だということで,効力は切り離しているのですけれども,この1プラスアルファ又は2,その前提として1プラスアルファというものが法制的にもうまく切り分けられるし,ニーズ的にもそれで必要にしてかつ十分であり,いろいろ難しい問題も生じさせないというふうな可能性があるかどうか,これは検証しなさいというのが一つ事務局に与えられた課題で,それと2案との優劣を今後比べていくというふうな作業になろうかと思いますが,この点につきましてまだ御意見ございますか。 ● 今の御議論に関連したことですけれども,私も,そもそも流動化のための譲渡ということ,○○幹事の言葉をかりれば1プラスひげとして書くかどうかということについては,非常に否定的です。   理由は二つありまして,一つは先ほど○○関係官から御紹介がありましたように,流動化のための譲渡というのは,切り口が仕組みから切っているわけで,片一方は譲渡の担保目的で,今度プラスアルファが仕組みからということのがどうも座りが悪いということがあります。仕組みから切ってしまうと,今後金融のイノベーションが進んでいくと,どんな仕組みが出てくるか分からない,何が出てくるか分からないですけれども,その度に流動化の仕組みの中に,こういう仕組みで譲渡をしてもこれはすばらしい金融商品になると,そのために追いかけていくということが果たして民事基本法--私は結構民法のセクショナリズムは強い方ですけれども,そういうことは置いておいても,そういう形である意味で寿命が短くなってしまうのじゃないかという気がいたします。それは,ある種のそもそも論で,○○幹事とは問題意識の在り方が違うのかもしれないのですけれども,大きなところでは似たような考えです。   もう1点は,みんなが知恵を集めれば書けるのじゃないかというのですが,やはりさっき申し上げたように流動化というのは仕組みから書いてありますから,正に同じように,どんな仕組みがこれから出てくるか分からないとなると,将来にわたって使えるようにするということを考えた場合には,非常に難しいのではないかなというふうに考えます。   それから,担保目的に限定するということについては,これは私は反対でございまして,アメリカ法の言葉をかりれば,担保がトゥルーセールかというのは,そもそもトゥルーセールって何かということ自体が,○○幹事がおっしゃったようにそんなに簡単に提示できるのかというところもありますし,それから証券化の場合でも,いろいろなオピニオンレターはみんなこれはトゥルーセールだと言っていますけれども,いざ裁判に上がればひっくり返る可能性というのは非常に持っていますから,やはりこういうものというのは,これは効力の話との表と裏もあるので,効力は弱くても非常にクリアだと予測可能性がつくという,そこも非常に大事ではないかと思いますので,担保目的に限定するということについては反対です。 ● ごく一部についてだけ,一つ意見を申し上げます。既に出ている意見と重複することはありますが,お許しください。   企業が金融を得るために融資を起こすのと,それから証券化・流動化と呼ばれるその外延はちょっとよく分かりませんが,その方法と,両方あるというのはここ5年とか10年ぐらい私のような者でも十分認識するに至っているところであります。それぞれ法的効果,コスト,違うのだろうと思いますが,しかし対抗要件のところで動産在庫を対象にしたときに,融資で担保をつければ対抗要件は登記ができると,しかし証券化・流動化と呼ばれる新しい金融手法,それだと在庫の動産については対抗要件登記だって備えられない,そこはそういうアンバランスなインフラにすべきではないというのが,私,強く思います。ですから,この部会の前半は,流動化について余り考えずに,余りニーズはないのじゃないかというようなことでいたのかもしれませんが,正にパブリックオピニオンでそこが明らかになったのであれば,この部会で○○幹事がおっしゃるように,そうでないという御意見があり得るならば,流動化と担保とは分けて,担保にのみ新しい対抗要件備えるべきだという意見は,論理的にはあり得るのだろうと思うのですが。ですから私は,そういう意見がもしあるならば,それに対しては実質的に反対であって,正にそのために必要ならば議論をして,この場で,時間は余りないのかもしれませんが,議論をして,ゴールのインフラを提供すると,それがまず第一なんだろうと思います。   その上で,1案プラスアルファなのか2案なのかというのは,ちょっともう少し考えないといけないのだと思いますが,アルファの書き方というのは恐らくすごく難しくて,そのときに最終的に考えるべきことは,今,○○幹事がおっしゃったように,今何か我々が見えている流動化の仕組みを前提にして書くと,またそこで次の流動化は同じ条件を提供できなくなるというようなことになりかねないのではないかなというふうに思います。したがって,2案の方向に傾くということですが,うまく1案が書ければ,1案プラスアルファのアルファ分が書けるならば,それに反対する趣旨ではないと。そのために事務局に書いてくれという○○幹事のリクエストに対しては,私も同調はいたします。 ● 事務局の方で,既にその点は若干検討があるようですので,ちょっと御提示を……。 ● 先ほど来,1プラスアルファか2案かという問題は,また御議論をいただく話だと思うのですが,アルファの部分をどのように書くかということについて,まだ内部的に結論に至っているわけでもないのですが,当然のことながら検討したことはございまして,それで一つの書き方としましては,先ほど○○幹事からスキームをとらえるというようなお話がありましたけれども,そのスキームをトータルとしてとらえると書き方が難しくなってまいりますので,動産の譲渡を受けるSPCなりの定款に着目して,いわゆるビークルの特性に着目して,資産流動化を行うためだけにしか資産を譲り受けることはないというような定款を持っているような会社に対する譲渡というような書き方で規定する方法はあり得まして,こういう書き方をした法律は実際2本ぐらい例としてございます。   問題は,そういうふうに何か工夫しろということであれば,非常に限定的ではありますけれども,工夫の余地はあるのかもしれませんけれども,それがどれだけサクセスフルかというのはまたちょっと,検討結果を踏まえて御議論いただかなければいけないかと思いますし,それから先ほど○○幹事がおっしゃられたように,今後の金融のイノベーションとかいうものを考えたときに,これで全部対応し切れるかどうかというところと,それから現在起きている実務というものを全部きちんと拾い得るかどうかというようなところがちょっと自信のないところですので,そうであるとすれば,先ほど○○幹事がおっしゃった2案という形で,懸念のところを払拭していくという議論もあり得ましょうし,そういったところをトータルでまた御議論していただく問題かなと,個人的には思っております。 ● ほかに,事務局の側から追加すべきことはありますか。 ● 1プラスアルファで書けるかどうかについては,検討してみて,次回にでも御報告してみようかと思います。 ● これ,どういうものが登記の対象になるかというのを考えるときに,登記すべきかどうかについて当事者がどう判断するかということ以上に,ここでは登記所がどの登記は受け付けることができるかというところでの判断基準として明確なものであることが一つ。それから,そこで受け付ける登記の問題と,この後出てきます登記の効力の問題はまた別ですから,優先効を主張して,裁判所に行って優先効の対象になるのはどのような原因による物権変動であるかというようなことをそれぞれ分けて考える必要があって,イメージとしては今議論しているのは,どの範囲の動産譲渡については登記所で登記をすることができるものとすべきかというのを主として念頭に置いている議論ですけれども,この点について事務局に宿題が与えられましたので,1プラスアルファの案を考えながら,本日ちょっと私の方で手控えでカウントすると,やや2案が優勢で,その次は1プラスアルファで,1じゃなければ絶対だめだというのはむしろA案との結びつきでは1でなければいけないという意見が少しあったというふうな状況ですので,そういった状況全体を踏まえて,次回にまた御提案をさせていただくということで……。 ● 今,何が登記の対象かという議論を今までしていただいたということで,まだちょっと尽きてはいませんけれども,ほぼ予定の休憩時間を少し過ぎておりますので,ここで若干休憩をとらせていただいて,残されたところ,まだまだ議論のネタの多いところですので……。 ● 済みません,会議所のA1案の御提案を中間試案の段階でコメントして申し上げておりますけれども,先ほどから○○委員がおっしゃっているとおり,決して固執するわけではございませんで,特に中小企業金融の多様化ということを考えますと,できる限りプラスアルファという方向での御議論,これにくみさせていただきたいというふうに思っております。 ● それでは,休憩させていただきます。             (休     憩) ● それでは,再開させていただきます。   次が,(2)の「登記の効力について」ということでございまして,これは先ほど申し上げましたように(1)の方で2案をとっても,当然にそれに連動してどうこうなるというふうなわけではございませんで,優先効が主張できるのは担保目的の場合だけというふうな絞りをかけるというふうな,登記は幅広く認めるけれども優先効は狭いとか,いろいろなバリエーションはそれはそれであると思いますので,まずこの登記の効力につきまして御意見をいただければと思います。 ● それでは,いささか発言が長くなりますので,レジュメ的なペーパーを用意させていただきました。それに沿って発言をさせていただきます。   今回の部会で,こういう目的でどういうルールをつくれば効果的かという議論はかなりされたのだと思いますが,制度目的論,機能論も重要なんですけれども,学理的に,例えばこの部会の委員の見解が多岐に分かれたままで新立法を提案するというようなことがあっては,私は適切ではないと思いまして,ある程度共通認識を得るように努力すべきではないかと思っております。そこで,本日,私はその対抗要件理論の基本から考えた場合に,どういう整理になるのか,それを御提示して皆さんに御意見いただければと思って発言をいたします。   まず,対抗要件の基本というのは,先生方の前で申し上げるまでもありませんが,完全な対抗要件,つまり第三者対抗要件の完全な形のものを具備したところで,画一的な帰属関係,あるいは優先劣後関係の決定が図れるものである,こういう画一的な処理に対抗要件主義の最大のメリットがあるというふうにも思っております。   そうしますと,そこで注というふうに書きましたが,実はこの段階で担保目的譲渡に限定する1案も,それから先ほど議論に出ていました1プラスアルファの考え方も,画一的な処理を図るということは困難になりますので,適切ではないという評価が一つ加わります。それは先ほどの議論として別論といたします。   この対抗要件論の基本から考えますと,帰結の第一段階は,今回の部会資料にいうような三すくみの状態はあり得ない,言葉を変えれば対抗要件の立法としてそういうものはあってはならないというふうに私は考えます。その理由は,今,対抗要件の基本で申し上げたように,完全な,つまり100%の第三者対抗要件を得た者が登場した段階で,権利帰属の争いが終了する,そうでなければ対抗要件とは言えないはずでありまして,ですから三すくみになる場合があるからどうするかという議論をしなければいけないというのは,対抗要件の立法が間違っているというふうに私は思うわけであります。   それでは,何をもって完全な100%の対抗要件とするかということですが,ここで一言申し上げておきますと,今回の登記を,比喩的な言い方をしますと120%の対抗要件とする考え方は疑問であります。つまり,その考え方は,すなわち登記が100%の完全な対抗要件なのであって,ほかの対抗要件はすべて不完全な対抗要件とするという意味にならざるを得ないと思います。これはまた後のところでお話をいたします。   私がここで申し上げておきたいのは,まず部会資料の論理の立て方に対する疑問であります。まず①として,「時的先後ルール」と「登記優先ルール」ということで説明をされているところがあるのですが,時的先後ルールと登記優先ルールが別に存在するような議論はそもそもおかしいと思います。完全な対抗要件を時間的に最も先に具備したものが優先するのが第三者対抗要件であります。これは,債権譲渡の対抗要件のところでもそのとおりであります。ここで言う債権譲渡の対抗要件というのは,例の二重譲渡の通知の到達日,ああいうことを考えてください。467条1項,2項の問題というのは,本日配布された○○幹事のペーパーにもあるとおり,正確に言うと少し違います。あれは,1項の方は,対債務者権利行使要件で,2項で完全な第三者対抗要件になるわけですから,正確に言うと少し違うと思います。通知同時到達の到達時説を考えていただければ,それは適切だろうと思います。   次に,②のところですが,説明のつけ方として「二重譲渡できる地位,できない地位」云々の書き方が部会資料に出てきますが,この言い方は私は全く適切でないと思います。二重譲渡というのは,我が国の法制では不動産でも債権でも起こってしまうものでありまして,それを対抗要件で決着をつける,これが意思主義・対抗要件主義の法制の基本であります。ですから,動産だけに別途の議論を持ち込むべきではないというふうに私は思います。   それから,「真正譲渡が介在すれば」,三すくみのところでこういう書きぶりのところがありますが,真正譲渡が介在したら結論が変わるという話なのではなくて,真正譲渡についての完全な対抗要件具備があれば,そこで決まるというべきなのであって,それはしたがって真正譲渡についての完全な対抗要件は何かというのが決まれば答えは決まる話です。こういうふうに思います。ですから,いずれにしても三すくみでぐるぐる回るというのは,そういうことが出てくるようになればその対抗要件立法はおかしいということを申し上げたいと思います。   そして,議論の混乱の原因って,私一人で混乱しているかもしれないのですが,これはどうも登記と占有改定だけを比べようとしているからではないのかなという気がいたします。新しく登記の制度を置くならば,それが引渡し等の既存の対抗要件とどのような関係に立つのかの位置づけを再確認すべきではないか,こう思います。その場合の論理の流れは,まず第1に登記と占有改定以外の引渡しと--簡易の引渡し,指図による占有移転,これはちょっとここでは私はとりあえず引渡しと同視するという立場で議論を簡略化して進めさせていただきますが,その占有改定以外のとりあえず引渡しとの関係を確認して,それから占有改定との優劣関係を考えるべきだと思います。   そうすると,占有改定以外の既存の引渡し等の対抗要件を完全な,100%の対抗要件と見るか見ないか,これを決めなければいけない。見ないというのは,すなわち先ほどの登記を120%の対抗要件と見ることと等しいと思います。この見ないという選択肢をとった場合にはどうしても民法178条の改正といいますか,178条とぶつかってしまうだろうと思います。ですから,普通は100%の対抗要件として見るということになるのだろうと思います。   その次に,今回の登記を動産権利移転の完全な第三者対抗要件の一つと位置づけるか位置づけないかを決める。これは,登記を単に現在の動産権利移転の第三者対抗要件の一つとされている占有改定を補完する公示手段にすぎないというような位置づけをするということも考え方としてはあり得るからでありますけれども,そのような考え方では占有改定をしたものが更に登記をした場合にはそれでいいのですけれども,登記単独でした場合の法的位置づけというのができなくなってしまうということになります。したがって,これもまた動産権利移転の完全な第三者対抗要件の一つというふうに位置づけることになるのではないかと思うわけですが,ここまでが対抗要件法理からの問題の前提的整理というふうに私は位置づけました。   この後どうなるかといいますと,まず第1に,登記制度を定めて,新たな完全な第三者対抗要件の一つが加わったとした場合には,それだけならばB案になります。引渡しや占有改定も登記もすべて同等の完全な第三者対抗要件とする。したがって,先に具備されたものが後から追い越されるというようなことはありませんし,引渡しがあった後で,後から登記で持っていかれるなんていう御心配はないということになるわけです。   ②として,もし先行する対抗要件のどれかにこの登記が勝てるのだとしたら,その対抗要件,負ける方の対抗要件を不完全な対抗要件と位置づけなければならないはずです。したがって,先行する占有改定に勝てるとしたら,占有改定は不完全な対抗要件と位置づけられることになります。その場合は,その占有改定というものはほかの引渡し等の対抗要件にも劣後しないのかどうか,劣後しないとしたら,なぜかという説明をつけなければならないはずです。ここが,現時点で私は分かりません。   念のため申し上げておきますと,民法上,これは申し上げるまでもないですが,動産物権の権利移転の対抗要件というのは178条の引渡しだけですから,民法に書かれているのは。この占有改定については,これは判例法理で御案内のように最初は昭和30年の6月2日で認められているわけで,それが62年の11月10日なんかでもっと更に精緻にされている。だから,条文上対抗要件として明記されているわけではないですね,占有改定は。したがって,占有改定では対抗要件として認められないということ自体は,現在の民法典の規定のもとでも可能なんだろうと思います。判例と違うことを言うというだけなので,判例に抵触するだけだと思うのですが。ただそうした場合に,今申し上げたようにほかの対抗要件に劣後しないという,あるいはするというのはどういうふうに説明つけるのかというところをお教えいただきたいということです。   結論的に,私見は1と2と書きましたが,まず先ほど申し上げたように,担保目的譲渡と真正譲渡の区別が困難だとか,担保目的譲渡に限定すると流動化のため真正譲渡等に使えないということから,2案を強く推すという発言をさせていただきましたが,この対抗要件理論からも,したがって画一的処理のできない1案ないし1案プラスアルファは不適切というふうに申し上げたいと思います。   それから,効力の方は,2で書きましたように,以上申し上げた整理からすればB案が理論的には明快で無理がありません。したがって,現時点で私はB案に賛成をいたします。その場合,先行する占有改定に勝てなくても,登記制度創設の意味は十分にあると私は考えております。この点,制度目的論,機能論からA案を採用するというのであれば,部会委員,殊に学者委員・幹事の理論的意思統一が私は強く望まれると思います。   結論としては,本日,○○幹事がお出しになった意見書とたまたま同じ結論ですが,Bの2案ということになります。この点は,先ほど○○幹事からもB2案までいけばリスクはなくなるのではというお話がありました。私としては,A案についてよほど明快な御説明をいただけない限り,私個人が立法にかかわる学者として今回責任をとり切れるのはB2案ではないかというふうに思っておりますので,A案について何か非常に明快な御説明をいただければ有り難いと思います。 ● ほかに関連した御意見,このテーマに関する御意見ございましたら……。 ● ただいまの○○委員のペーパーの内容の確認ですけれども,御趣旨は,要するに対抗要件というのはゼロか100かの二者しかなくて,120%や80%というのはあり得ないと。あり得ないという前提に立つと,理論的にとり得る選択肢はB2しかないということで,理論的にB2に決まって,ほかの理由は付随的なものにすぎないという,そういう結論になるかと思いますけれども,なぜ三すくみの問題が出てきたのかという私の認識は,要するに100じゃなくて80とか120という,中間的なといいますか,相対的な対抗要件というのを承認するということ,そういう前提に立つからこういう問題が生じてきていると思います。   その承認することが理論的にできるかできないかというのは,今まではなかったわけですけれども,ある必要性からそういうのを承認する必要があれば理論的にはあり得ると思いますけれども,そのときに困難な問題が出てくるのをどう調整するかという次の問題に進むわけですので,その相対的な対抗要件というのが,あり得るかあり得ないかというのは,これは理論的にはあり得ると私は思います。   それで,相対的な対抗要件というのがなぜ必要とされたのかというこの部会での審議を思い出してみますと,要するに担保目的の場合には占有改定の効力を否定するというのが最もすっきりした解決だと思います。   民法典345条は,質権についての規定ですけれども,フランスなどではこれは動産担保の一般的な考え方だというふうに理解されていると私は理解しております。つまり,担保で対抗要件で占有改定で足りるという考え方自体が,ある種の無理を冒しているわけでありまして,担保というのは目的物に対する実効的な支配がないと担保権を取得したと言えないとすれば,占有改定でもいいというのはやや無理を冒しているところがあります。そこを無理を冒した--占有改定でいいというのは,要するに対抗要件を備えたのだけれども実質的な公示がないということを無理して認めているわけですので,その問題性を払拭するために登記制度を考えようというのが問題の出発点だったと思います。その登記制度を導入するときに,占有改定はやめてしまうというのが一つのすっきりとした選択肢なので,その場合には占有改定なくなりますので,全部100%でそろえるということになるかと思いますが,それでは困るという実務のニーズがある,つまり占有改定で登記しようと思っても,協力を得られない場合があると。あるいは,登記までコストをかけてということになると,実際上は担保取得できないという,そういう動産担保というのが現実にある。それを尊重してほしいというニーズを受けとめると,ある場合にはそもそも登記になじまないような動産担保の世界があり,ある場合にはそもそも今後は登記で決するという,二つの動産担保があると,そこを法制度として受けとめるときに,相対的な対抗要件,占有改定は一定の場合には何らかの効力を持つけれども,しかし登記の対象となるような動産担保については登記優先ルールで劣後すると,そういうすみ分けを図っていこうという選択肢を選んだのだと思いますので,その出発点をもう一回考え直して,占有改定はだめだと,今後は担保の場合には占有改定ではだめで,登記をするか,それとも現実の引渡しを受けるかしないとだめだというふうにするというのが,問題の払拭のB2以外のもう一つの選択肢でありますけれども,その協力を得られなくて占有改定にやらざるを得ないというその実体をどう考えるか。これはもう理論というよりは現実認識の問題でありますので,そこを受けとめるということからこの問題が出発しているのではないかと思います。ですので,○○委員の御意見というのは,私の整理によりますと100%しかあり得ないという前提をとった場合はそうですけれども,ここではそうじゃなくて,中間的な解決を図るということも選択肢としてあり得ると,それが必要な実体があるという認識,これは学者というよりは実務の側からのそういう問題提起を受けとめるという選択をしたからだというふうに理解しております。 ● ここは,余り学理的な話にはまり込みますと抜けられなくなってくるので,ちょっと実務界の方々の御意見も十分に伺っておきたいところでございます。   先ほど,○○委員からは効力の面も含めて御意見を伺ったところでございますが,○○委員,○○委員,○○委員等,御意見ございましたらお出しいただければと思いますが。 ● 私ども,リース業界としてはA2案(注)ということを賛成しておるわけですけれども,この三すくみ状態の解決方法ということで想定の例が出ておりますが,これはいわゆるここにおける乙をリース会社というふうに想定しまして,リース会社がいわゆるリースバックを受けたというふうなことを考えれば,こういうことも例としてはあり得るのじゃないかなと,こういうふうに思います。   この場合,問題は占有改定による対抗要件だけで登記をしていないということになるのですが,この考え方によれば,2の乙が登記をした場合でも同じ結論になる,すなわち丙ないしは甲が優先するという結論になるので,せっかく登記までしたのに何で,通常2と3だけであれば劣後する3の丙が優先するということになるのか,これは甚だ釈然としないといいますか。乙が登記をしていない間でしたら,確かに登記した3の丙が優先するという結論をとっても,まあ何となくしようがないかなという感じもしないわけではないのですが,登記をしたにもかかわらず,それに劣後するような丙が,突然先行する隠れた譲渡担保権者が出てきた場合には,丙が優先するということになるというのは,なかなか納得し難いものがありますし,そういう面ではA2の(注)をとって,登記をしない占有改定にとどまる担保権者というのは,後行の登記をした,それが真正譲渡であろうと担保目的であろうと,その者には覆されるリスクを負っているという考えのもとでやっていくべきじゃなかろうかと私は思います。 ● それは,5ページの説例でいうと,ⅰが「担保目的の譲渡を受けた甲が」という,これはその限定はつくわけですね。   ⅰがリースバックを受けたリース業者がと,こういう場合には後で登記がされても,それは覆らないと。 ● それはそういうことだと思いますけれども。 ● ほかの御意見はいかがでしょうか。   ○○幹事,ペーパーについて先ほど結論だけ御紹介させていただきましたけれども,○○幹事はB案を御支持されるということですけれども,ごく簡単に要旨を説明いただければと思いますが。 ● 本日,遅参いたしまして大変失礼いたしました。   既にA案・B案のお話に入っているのかと思いますけれども,私は1案か2案かの問題について2案に賛成,A案かB案かについてB案に賛成で,あわせてB2案を支持するという御意見を本日配布していただいております。   1案か2案かのところにつきましては,担保目的とはいうものの,やはり譲渡という枠組が譲渡担保の基本になっているということから考えますと,担保目的ということについて通常の譲渡を超える効力を認めるというのは,新たな実体法の創設にほかならないのであって,今回の議論の枠をはみ出すものではなかろうかということを考えております。   それから,基準として,区別の基準としてなかなか日ごろ流動化・証券化案件をやっておりまして,真正譲渡かどうかということに悩んでいる者といたしましては,これは非常に難しい問題であるいうことを実感しております。   それから,第3といたしましては,証券化ニーズにこたえるためにも,やはり2案がよろしいだろうということ。それから債権譲渡特例法の議論の際にも,やはり個々の目的による限定というものは回避されているという経緯があろうということを指摘しております。   反面,2案をとった場合には,動産取引の迅速性を阻害する,あるいはコストの増大につながるという問題点の指摘がありますけれども,私はこれはいずれも当てはまらないのではなかろうかということを考えておりまして,通常の真正譲渡においても登記を具備する取引慣行というものが本当に形成されるのかどうか,分析して考えていきますと,どうもそうは言えないだろうと。   それから,真正譲渡に当たり,登記を調査する取引慣行が形成されるのかということを考えますと,やはりこれもそうは言えないだろうということで,唯一登記を見ないと心配だぞと言える場合といたしましては,3ページの真ん中辺に書いてありますが,中古の生産ライン設備を買い取る場合のように,売主によって既に先行の譲渡担保がなされているかもしれないと疑ってしかるべき場合というものが考えられますけれども,この場合に先行登記の有無を確認すべきであるという規範といいましょうか,慣行をぶっつけてみても,これは特段問題はなかろうと,このぐらいの調査はしていいだろうというふうに言えるのではないかということがあります。   それから,登記の優先効,A案かB案かの問題につきましてはB案でありまして,担保目的譲渡に通常の譲渡以上の効力を認めることの問題点につきましては,1案か2案かのところで2案を支持するものと,軌を一にするところであります。   それから,担保目的がどうかということの基準のあいまいさについても,これまた同じであります。   ここにちょっと例として挙げましたのは,後行の対抗要件具備が先行の対抗要件具備に優先するケースとして,不動産先取特権などの例がありますけれども,これは両立する権利の優劣に関するものであって,排斥し合う権利相互間でこうした例というのはないのではなかろうかということを考えました。   それから,三すくみの問題につきましては,私自身この三すくみを厳密にどう考えるのかということ自体は,必ずしも十分に分析し切っているわけではありませんけれども,ただ登記の効力を相対的に考えるような考え方を持ち込みますと,本来簡明であるべき対抗要件制度の趣旨にそぐわないのではなかろうというふうに考えます。   最後に補足いたしますと,B案をとった場合には,先行の隠れた譲渡担保を覆すという機能を持たないわけですけれども,私自身は,今世の中において必要とされております局面では,先行の隠れた譲渡担保を疑う,つまり今から金を貸そうとしている債務者がうそをついているという場面は,さほど大きいものではなく,むしろこれから先,将来にわたって安定した,外から見やすい,分かりやすい対抗要件を具備して,その動産を担保にとるということの方がはるかに強く要請されているように感じておりますので,B2案でもって今次の改正のねらいは必要十分じゃなかろうかというふうに考える次第です。 ● 今日お配りいただいたペーパーで,4ページぐらいから何回か三すくみの話というのが出てきていて,三すくみの話が決着がつかないので実務上本制度を利用する上で不都合が生じるのではないかという話が書いてあるのですが,先ほど資産流動化というのを文章に書くのは難しいのじゃないかというのが出たのですが,三すくみの場合にはこうなると書くのはすごい簡単だと思うのですね。何も書かないときに意見が分かれるという理由が,このA案のいろいろなものをとるのは妥当ではないという理由にはなり得ないのじゃないか,じゃ書けばいいじゃないという感じがするということを申し上げておきたいと思います。 ● ちなみに,こういう三すくみのケースだと,だれが勝つのが妥当な結論になりますか。 ● それは,皆さんでお考えいただいて……。つまり,私は私の理屈がどうしても頭の中に占めておりますので,それを今出すのは余りよくなくて……。 ● ○○幹事の御報告をいただきましたペーパーに,1点御質問させていただきたいのですけれども。   ペーパーにお書きになっていなくて,口頭で補われた部分についてのお尋ねなんですけれども,B2案の方に今議論の方向が向かいつつあると思いますけれども,それを採用したときに,おっしゃったように先行する隠れた占有改定に基づく譲渡担保を覆すという効果は,今般の登記制度にはその効用としては仮にB2案でいったときには認められない,しかしそのことは余り心配しなくてもよろしいというお考えでしたが,これはペーパーにお書きになっていませんが,かなり強くそういうふうにお考えになるという趣旨でしょうか。   そこのところが,もしそういうふうに確認されるのだとしますと,○○委員から御指摘のあった理論的な御説明にも相当の説得力があるところでありますから,大筋議論が詰められつつあるということになると思うのですが,そこを念のため確認をさせていただきたいと思います。 ● 私自身は,今,○○幹事がおっしゃいましたとおり,先行の隠れた譲渡担保,もちろん理屈の上でそのリスクがあるということは当然の前提として理解しておるつもりですけれども,世の中一般において,どういう場面でこれをとるか,融資をする場面において債務者と債権者,きっちり債務者の状況を調べますし,いろいろな角度から判断していく中で,この取引をスタートするという場面において,もう既に大うそをつかれているということは,よほどのレアケースというふうに言ってもいいのではなかろうかと。   どの程度の正常な融資取引をイメージするかなんですけれども,少なくとも私のイメージするような,きちんとしたという言い方はよくないでしょうか。きちんとした貸し手がきちんとした借り手に対して,これから動産を使って融資をしたとするという局面におきましては,先行の隠れた譲渡担保のリスクというものは小さいというふうに考えてよろしいのではないかというふうに思っております。 ● 私も同意見ですね。むしろ後からひっくり返されてしまわないかという懸念が大きいような気がします。   もともと隠れた占有改定による担保設定が行われているのじゃないだろうかということを懸念して,そのことによって取引が何らか萎縮しているという例というのは,実際やっていましても余りないような気がします。スポンサーになろうとするところ,あるいは新たな与信をしようとするところ,そういったところがその対象の債務者がそういったことをやっているのじゃないだろうかというふうなことが分からないがゆえに取引が萎縮するということは実際上はないので,実際そんなことが起こってしまったらそれはもって瞑すべしだというふうな気はいたします。   そういった,信頼関係が構築できない債務者を助けなければならないのか,助けるときにはやはり信頼関係があるから融資をするのだろう,あるいはスポンサーになるのだろうというふうな気がいたします。そういった信頼関係が構築できない債務者を救済するために,全部ひっくり返して登記が優先するのだという制度をつくってあげる必要まであるのかなという気が,今しております。   しかしながら,もし登記に優先効を与えても弊害がないのであれば,広い方がいいのじゃないだろうかというふうにもともと私は考えておりましたけれども,やはり御指摘のように三すくみの問題,あるいは先行する担保目的の占有改定があって,後から真正譲渡の登記がされた場合には,これは2をとった場合の話ですが,先行する担保が優先する。しかしながら,先行する占有改定による担保設定が行われた後,今度担保目的の登記がされたという場合には,後の方の担保が優先する。これは非常に分かりにくいですよね。これは,よく考えれば分かるじゃないかと,あるいは教育の問題だろうというふうに割り切ることもできなくはないかもしれませんけれども,やはり動産売買,あるいは動産担保設定に関与する当事者というものは,そんな専門家ばかりではないわけでございますから,そういった方々の混乱ということも考えますと,やはりこれは制度としまして分かりにく過ぎるのではないだろうかというふうな気がしまして,私は今のところは前と意見を変えてBの方に傾いていると,Bの方が妥当なんだろうというふうに考えております。 ● Bをとった場合の,今先行する譲渡担保等との関係という問題のほかに,その後になされるものとの関係について,今日のペーパーでよく分かりませんのが,登記の調査義務が課されて,即時取得を妨げることができるかという点で,B2案をとった場合に,担保目的譲渡とそれ以外とで調査義務が違ってくるといことになるのだという何か前提で書かれているような気がいたします。   それで,9ページのイの「B案の問題点」のところを見ますと,※印で,「担保目的の譲渡における譲受人には登記の調査義務が課されると考えられることから」というのですけれども,考えられる根拠は何かということが示されていませんし,先ほどの御説明でも根拠は示されませんでした。   それから,8ページの方を見ますと,真正譲渡の場合には登記は調べなくてもいいということが前提になっておりまして,A案・B案でいきますと,A案をとるとより利用されることになるからA案の方がより顕在化するけれどもというのは,裏を返せばB案では登記を利用する人が少ないので,調査をしなくていいということになる,そういう理由づけを当然補われたように理解していますけれども,B案でいった場合に,法的には担保目的とそれ以外とでは全く区別はしないということであって,その結果,その登記の調査をするかどうかというのも法律からは何も出てこなくて,実際実務がどう動くかということで,今後占有改定でもひっくり返されるおそれはない,登記もしないし登記するメリットは乏しいと考えて,登記する人がいるかもしれないけれどもしない人が大勢いて,それで普通は調査しないということになると,担保目的であろうと何であろうと,即時取得を妨げるという効果もないということもあり得ると。法律はどちらと決めていなくて,これはふたを開けてみないと分からないということで,ふたを開けてみると登記制度をつくったけれども余り使われないし,効力もほとんどないので,その結果だれもしないということになるけれども,したいという方があれば,場合によっては疑ってしかるべき他の事情があるときには登記も見なくてはいけませんよと裁判所が判断してくれるとも限らないので,あったら選択肢としていいでしょうと,そのぐらいのものという理解なのかどうか。何でB案をとった上で,担保目的譲渡の場合には調査義務が課されると,こう言えるのかという点が私は理解できませんので,その点の事務局のペーパーをつくった場合の法的な根拠と,それから○○幹事の先ほどの御意見の基礎になると思われますけれども,何で担保目的とそれ以外とでは調査義務の有無が違ってくるかという点について,御質問したいと思います。 ● この点について,事務局から回答の用意はありますか。 ● まず,資料8ページのところで,「登記優先ルールを認めるA案を採用した場合には,より顕在化するものと考えられるか。」と書いたところですけれども,これはA案をとったときに対する一般の現実の実務に与える影響として,当事者がこういう不安はあるという中間試案に対する意見,それを紹介しているところです。事務局の方が積極的に,B案だったら使われないから,そういう不安はないということを言っているわけではございません。   それともう1点,担保目的の場合では当然調査義務はあると考えております。担保目的の場合には,動産の譲渡人が,自分のところに置いたまま融資をしてほしいと申入れをしているわけですから,その場合には融資をする側としては,自分に対すると同じようにほかの人にも申入れをしている可能性というものはやはり十分予期するべきではないかと思っております。 ● ○○幹事がおっしゃられることで,A案をとれば,担保にとる人は登記をしないと自分の権利は安堵できないのだから,しかも登記をすることによって優先効を得ようとする人たちだと。そういう人たちが,自分が登記を利用しながら登記を見ないというのは,基本的にあり得ないし,不注意だと言われてもいいと。   しかし,B案の場合には,別に登記をすることに格別のメリットがあるわけではなくて,ほかの対抗要件と同列だし,担保権者に特別の効力が与えられているわけではないのだから,法的にB案でありながら担保権者だけが特に見る意味があって,ほかの真正譲渡の譲受人には見る義務がないと,こういう区別が法的にはできないのだろうと,こういう御趣旨ですね。 ● 占有改定だけではだめだという場合には,登記までしなくちゃいけないと,それが解釈論にはね返ってくることは,民法の他の局面で一般的に見られることですから,そういう形で法律がある方向に当事者を誘導しているというふうに説明することができますけれども,B1の場合はそこは全く白紙でゆだねているということで……。   それで,先ほどのお答えなんですが,8ページのより利用されたときに生ずる問題というのは,先ほど○○関係官の方から説明があったときの事務局の説明でありまして,そういう説明をされたので,今それを撤回されたというふうに理解しました。   それから,後者の答えは,正にそういうことは信頼関係でやるのだから,ほかの人に出しているかもしれないから調査しなくてはいけないと,そういう実態がないという先ほどお答えがあった後で今のお答えでいくと,どちらの実務の認識が正しいのかという点を決めていただいて,占有改定で担保に供するという場合にはほかにも同じオファーをしているかもしれないから調査しろという,そういう世の中実態があるのだというお答えは,先ほどのお二方のお答えと真正面から抵触するように思いますので,これは成り立たないと言われているのじゃないかと思うのですね。 ● 占有改定の有無の調査はできないけれども,登記があれば登記の調査ぐらいはできると,それは事実のレベルでは言えなくもないと思いますが。   これちょっと,実務界の側からの御発言を……。 ● 登記,実際のところどのような効力を持つかは別としまして,こういうふうな新しい形で制度が導入されたとしますと,やはり実務レベルでは無視できないとは思いますので,効力の有無は別として,必ず何らかの形で必要があれば調査をすることにならざるを得ないのかと思います。そういう意味で,○○委員の書かれましたように登記制度創設の意義というのは十分にあるというのは,少なくとも私は日付の先後だけでも十分な意義があると思いまして,そういう意味で部会の当初,私は制度の効力は限定的にすべきだと申し上げた次第です。そのときには,意義のない制度だったら創設する意味はないというふうにたしか言われたような気がするのですが,ただ実際,どういう効力,余り与えないとしましても,創設した以上は必ずや何らかの形で使われるであろうと,それが取引慣行を形成されることに,真正譲渡について登記を調査するという取引慣行を形成するかどうかは別としまして,形成するとしても,逆に形成しないとしても,影響はあるというのは避けられないだろうというふうに思います。形成することはないと○○幹事は書かれていますけれども,果たしてここまで言い切れるかどうかというのは,私は自信がございません。   あと,逆に形成されないとしても,そうだとするとめったに使われない登記があるとき突然出てくるということについて,日常多頻度で取引をしている業者についての影響というのは,逆にその意味で無視できないのではないかというふうに思います。   ですので,この段階で直ちにB案に移行するというのは,ちょっとまだ余り賛成ではございませんでして,少なくとも今ニーズが具体的にあるというのが二つ示されているわけですので,それがこの制度上手当てができるのかどうか,どうしてもできないという結論が出てから次の手立てを考えるということでもいいのじゃないかと思っております。 ● これは,先ほど○○幹事からの問題提起は,少し違う局面を想定されているのかもしれませんけれども,実際上やはり隠れた譲渡担保を登記によって覆す必要性というのはかなり高い。これは逆に言えば,占有改定だけしていると,登記する人は悪意でもいいわけですから,悪意の人が後から登記をしてひっくり返されるというリスクがあっても,それ以上に隠れた譲渡担保を破る効力を登記によって確保すると,このニーズが非常に強いのだと,こういうことになりますか。 ● 非常に強いとまではなかなか申しにくいのですが,これは各社の御意見を伺いましても,是非こういう局面で使いたいというのが正直申してなかなかないのですけれども,当初の諮問の中にありましたように,占有改定で公示力が不足する譲渡担保について,公示力を強めるという目的があるのであれば,やはりその目的に即した制度を作るべきでしょうし,それにプラス流動化という目的が加わるのであれば,それも可能とするような制度とすべきであると。   それから,それ以外のものについては,今のところどういう形で使われるかがよく見えない中で,懸念ばかりが先行する状態になっておりますので,そこについてはできれば及ばないような形にしていただきたいというのが本当のところでございます。 ● そもそもこの部会の御諮問の目的,その背景にあったことというのは当然皆様方御承知のとおり,中小企業の資金調達の円滑化にあるわけでございまして,従来の動産譲渡担保の,特に公示手段が,例えばですが明認方法しかないというふうな慣行があったわけで,そういった不十分性が当然ながら動産に対するむしろ譲渡担保の安全性を低くしていたと。そういう意味では,資金調達のためということもありますが,あくまで動産の担保としての活用の障害になっていたわけでございますが,ただいままでの御議論を伺っておりますと,何だか三すくみという問題が生じるからむしろ登記優先ルールを採用しないというような発想に聞こえまして,それはいかがなものかと。逆に言うと,あくまで政策的な意味合いでこのような部会で御議論されているというふうに私は認識しておりましたので,そういった点からすると,あえて申し上げますがこの部会でなぜ政策的な優劣をつけていただけないのか,またそういう方向の議論にならないのかというのが非常に不思議でございます。   むしろ金融取引の安定性,あるいは予見可能性を得るためには,ありていに申し上げれば登記優先という形でやった方がかえって落ち着くのではないかと思われるわけでございまして,もとのもくあみといいますか,B2案などに方向性として行ってしまいますと,それは皆疑心暗鬼の状態がこれまでと同じように続くということになりかねないわけでございまして,果たしてそれで部会としての政策的な議論が成り立ち得るのか,政策性の発揮ということがあり得るのかといった点,この点も是非御勘案をいただきたいと思います。   誠に恐縮ですが,三すくみの状態を現出させたのは債務者の側でございましょうから,そういう債務者サイドとして言うのは誠にじくじたるものがございますが,何にしても率直に申し上げれば,この三すくみのものであっても,理論的なことはよく承知はいたしませんが,あえて申し上げれば登記をした丙を勝たせるべきだというふうなお考えがなぜないのかということでございまして,そのところを,繰り返しますけれども御配慮をいただければと思います。 ● 政策的な論点から申し上げます。政策的な部分のところが非常に重要だという認識は,それは前回も指摘したとおりであります。ここの議論の仕方をどうとるかということは,この前提の中でしかるべく整理をしていただく必要があるというふうに思っておりますが,私も○○委員と別の意味で,正しく政策的配慮ということでこういう動産担保等が促進をされる,とりわけ集合流動動産担保みたいに企業の活動自身が突然握られるようなことまで担保が入る,それに伴う従業員のための代替の保障の政策的な必要性ということを申し上げてきたわけであります。   前回,○○幹事の方から考えますということで,引き続き知恵ということ,思いつきでも結構ですということでありましたので,ここでの思いつきで,私なりの素人の思いつきですが,今の○○委員の対抗要件の100%のところを考えまして,例えばそういう労働者の保護を図るという意味では,労働者へ未払賃金等を理由として譲渡がされたときには,それを善意取得とみなすというような例外をダイレクトにつけるような形も一つの方法かというふうに考えます。 ● 先ほどの○○委員のお話ではあるのですけれども,登記制度の持つ機能というのは細かく分ければいろいろあって,先ほど○○委員がおっしゃったように,公示の機能とか公証的な機能と,それがあるだけで随分今の不安定さは確実なものになってくるのだと,これも一つの利用促進の方法で,その上に更に優先的機能というのをつけないと,全く使い勝手の悪いもの,使う価値のないものになってしまうかどうかというのが正に今ここの議論の対象なので,その辺のところは必ずしも今優先的効力について若干の疑いが出たからといって,余り大したものにしようというふうな議論をしているわけではないというふうに認識しておりますので,その辺,よろしくお願いいたします。   ほかに御意見いかがでしょうか。 ● 今の御発言と重複するのですけれども,私,結構欠席が多いので,一番最初に動産の担保制度をつくろうというとき,ある意味ではとにかく登記をつければ一番になれるのだということが,これは私の感想で至上命題みたいに感じられたのですね。私自身は,でも与信をつける人間は登記すればそれで勝てる,それは便利かもしれないけれども,そこまで国にそれだけの制度が要るというのかなと,何となく居心地が悪いのでずっと今まできたのですけれども,ここに来て,実務家の皆様の感触を伺いたいのですけれども,確かに登記すれば前の占有改定が全部ひっくり返せるという制度とそういう効力がない制度,どっちがいいですかといえば,それはひっくり返せるのが楽でいいですよという,そういう答えが出るのは当たり前だと思うのですけれども,先ほどの○○委員が占有改定しかないという場合には,動産を引当てにした与信が進まないというふうな御発言をなさいましたが,その意味というのが,占有改定だけでは自分がつけるときにわっとお化けみたいに先行する隠れたものがいつ出るか分からないから進まないのか,それともつけたけれどもやはり外から見えないし,明認方法つけておいてもどこかで引きちぎられちゃうから,つけても占有改定しか公示の対抗要件の手段がないと,後でだれが持っていってばらばらにしちゃうか分からないから与信が進まないのかと,二つの局面があると思うのですけれども,どっちがより深刻な問題なのかということが……。   繰り返しますが,私がこの会に入ったときは前者の方が圧倒的に強いという感触を持ったのですけれども,今日出席いたしますと随分議論のトーンが変わってきているので,ちょっとそのあたり,感触なり聞かせていただけると有り難いのですけれども。 ● 今の○○幹事のお話にちょっと関連して。   経産省はどうやって頭を整理しているかというと,先ほど冒頭申し上げたように担保目的については制度は要るか要らないかと言われたら,これは制度は要るだろうと。作るとすれば,使い勝手のいい制度がいいだろうと,だからA案ですねと。これは普通すっといく話なんだろうと。   それから,2番目の流動化目的についても担保目的と同じような発想が恐らくなって,要るか要らないかというと要るだろうと。作るならば優先効つけてもらった方がよりいいだろうと,ここまでは来ると。   次に,その他のところはどうしますかという話になってくると,先ほど申し上げたように余りそこについて手当てをしてくださいという話はないので,本来ならばAでもないしBでもないし,ほかっとくという話になってくるのだろうと思います。ただ,先ほどからいろいろ御議論聞いていると,途中で線を引けるかどうかという議論でございますね,真正譲渡の中に一部をくくり出して制度を作ることが法技術的にできるのかという議論もございましたし,そもそも担保制度を組むときに,そういう発想というのは正しいのかといういろいろな御議論があって,だとすると,全部をかぶせますということをやらざるを得ないとなったときに,本来制度は要らないところのその他の真正譲渡について,AにしますかBにしますかと,こういうたぐいの話になってくるのだと思うのですね。   このときに,AかBかという話をしたときに,さっきの我々持っている懸念というのは,どちらかというとAでもBでも実は恐らくあるのです。さっき○○委員がおっしゃったとおりでございます。したがって,そうしたいわゆる「資金調達目的」という言葉が厳密じゃないということを承知の上であえて申し上げさせていただくと,資金調達目的以外のところまで広げたときに出てくる懸念について,本当にそれは懸念なのか,あるいはそれを払拭するためのある種の手立てがあるのか,これは幾つか御提案があるかと思います。そういう議論でそこがちゃんと整理ができるかどうかという議論で,AかBかという議論も決まってくると思いますし,更にA案については今お話を伺っていると,どうも三すくみという一見してなかなか分かりづらい議論があるという議論だと,もう一つ別の要素がA案にするとするならどうも出てくると。そこを解決手段があるかどうかという議論で,また対応が変わってくるのだと思うのですね。   したがって,経産省自身はもともとはAの2案が出発点で,Aの2案としたときの懸念という弊害もあるし,法論理的に三すくみという議論もある。それがちゃんと払拭できるのだったらAの2案でも構わないけれども,それが難しければ例えばBに落とすという議論があるのかもしれないし,ないのかもしれない。あるいはそれが難しければ,逆にもうその他のところは何とかうまく切ってもらって,そこだけAにしてくださいという議論が本当にあるのかないのか,どちらかにいくのではないかという感じがしております。   それから,何人かの委員からお問い合わせがあった,AとBでそんなに致命的ですかという話をされると,先ほど申し上げたように制度を作るかどうかというのはかなり段差があると思っています。だから,その効果に大きさに比べれば,AかBかというところで更につけ加えられる効果というのは,恐らく経産省の皆さんに聞いてみれば,それとの相対ではそんなに大きな段差がAにしたからつくというわけではないと思います。ただそれは相対論でありまして,Aにした方がまともな使い勝手をするときにはいい効果があるのではないかというふうな感触を持っております。 ● ○○幹事のおっしゃいました前者と後者の比重の問題につきましては,私自身は繰り返しになりますけれども後者が大きいだろうというふうに--前者が先行する隠れた譲渡担保で,後者がどちらかというと後行の人に対する権利公示機能というような整理かと思いますけれども,後行の人に対する権利公示機能というところのウエートが大きいというふうに認識してよろしいのではなかろうかと。   例えば,占有改定によって譲渡担保にとった場合,現在どういうことをやっているかといいますと,占有改定を確認する引渡証のような紙切れ一枚を公証役場に持っていって確定日付をもらって,一応日付遡及を防止するために確定日付をとった上で,債権者自身のファイルに入れて金庫に入れておくだけですね,そのことが本当に担保としてどこに出ていっても機能するのかという不安を常に抱えているわけでして,これが公示機関にきちんと登記されるということは,大きな前進であろうというふうに考えております。 ● 先ほど,○○幹事からお話があったところで,○○幹事から今お話しいただいたのとほとんど似通っているのかもしれないですけれども,銀行の中で意見を聞いたわけではないですが,私自身の感触としては,やはり先行する隠れた譲渡担保の件というよりも,後で善意取得によって覆されてしまう懸念の方が懸念としては大きいのかなというふうに考えております。   先行する隠れた譲渡担保の懸念,後者に比べてはそれほど持っていないのはどうしてかなと考えてみますと,銀行で融資するに当たっては,一般的に人・物・金と言われていまして,要するに買い手側の人柄がどうか,要するに不誠実な人でないか,そういったところを一つのメルクマールに注意して見るというところがございまして,もしそこが崩れて,隠れた譲渡担保をやっているような人であるとすると,この問題に限らず,それこそ何をやっているか分からないという話にもなりかねないので,そういうことは,あらかじめの審査段階である程度のみ込んでいる部分なのかなと,そういうふうな気はしております。   それから,先ほど○○幹事からお話があった,B案をとった場合に後行の善意取得を阻止する効果がどれほどあるのか,そのメルクマールとして後行の取引が担保目的か否かによって即時取得ができるかできないかという区別がどうしてされるのか,そこら辺なんですけれども,確かに担保目的かどうかできっちり区分けができるような話ではないのではないかと私は思っているのですが,ただ実際に,担保目的で動産を取得するような人というのは,それなりにプロみたいな人がやるのではないかと思うのですが,そういったときに善意か悪意かということを判断するに当たっていろいろなメルクマールがあると思うのですが,そういうメルクマールの一つの中に,そういう担保取得しようと思っているプロみたいな人がおれば,一般の普通の動産の売買とかと比べて,やはりそれなりに注意義務というのは高いとされてしかるべきではないか,そういうふうな違いぐらいはあるのかなというふうに思っておりまして,そういう点からするとB案--B2案もそうなんですけれども--をとったとしても,全く使われないというわけではないのではないかなというふうな気がしております。 ● ちょっとまだ頭が十分にまとまらないうちに発言を始めてしまって,混乱するといけないのですけれども,B案という御意見が実務に携わっている方を中心にして多いということはよく分かりました。そして,にもかかわらずA案が実務のニーズに合っているというふうに私が言ったって,何の説得力もないわけですので,そういう言い方をするつもりはありません。ただ,これは何の法律なのかという話をちょっと発言をして記録にとどめたいというふうに思うのです。   つまり,最初は対抗要件の立法であるというふうな話になって,そして対抗要件立法として最終的にでき上がるという形をとっているのですが,フィクションですよね。つまり,集合動産譲渡担保等々についても,占有改定というのはできるわけであって,それは理論的にぎりぎり詰めていくと占有改定の合意をしないままに登記をしたらどうなるか,それは独立の対抗要件として意味を持つのだから,やはり対抗要件だ,それはあるかもしれませんが,占有改定なんていうのは占有改定するというだけの話でありまして,集合動産譲渡担保の設定契約その他においてそれは含まれているというふうに通常考えられるわけですね。そうすると,B案をとる限りにおいては登記というものは独立の対抗要件としては何の意味も持っていないということだと思うのですね。   ということは,何なのかというと,これは今まで学説等々で,またあるいは実務で集合動産譲渡担保に対するときにネームプレートしようとか,そういう話があったりしたわけですが,これはネームプレートをやるというのも大変だし,ネームプレートというふうなことが何センチ掛ける何センチならいいとか決まっているわけではないと。そこで,登記所というところに登記という形で今までネームプレートしなければいけませんよ,占有改定プラスネームプレートしましょうと,その方が第三者の即時取得も阻止することができますよというふうに言っていた,そのパブリックサービスとしてそういうふうなネームプレートの機能を果たすような施設をつくりましょうと,そういうものであるということだと思うのですね。そうなりますと,私は本当はかなり初期の段階で否定された見解が,もう一回再び出てくるのではないか。つまり,リースというのは物権変動がないのだと,リースバックはちょっと特殊ですけれども,通常のリースで考えますと,リース会社からユーザーに対して貸し与えられるわけであって,そこには所有権の移転というのはなくて,物権変動がないから対抗要件立法にはなじまない。所有権留保に関しても,対抗要件立法にはなじまない。   しかし,これネームプレート立法になろうとしているのですね,今。では,どうしてそれを外すのかというのは私にはよく分からない。対抗要件立法から始まったのだからもうだめだというのなら,それは仕方がないのですけれども,授業で説明するときにはネームプレート立法だというふうに説明することになるのかなということをちょっと,ニーズがないというふうに言われて負けそうなので,一言発言をしておきたいと思います。 ● あくまでも中小企業サイドでございますけれども,ニーズがないということはおよそないわけでございまして,従前から申し上げておりますとおり,隠れた譲渡担保というものが活用されていないから,むしろ公示制度をより充実させていただきたいということを主張しているわけでございまして,先ほどの○○幹事の御疑問についても,前者・後者と先ほど御案内がございましたが,いずれもそれはあるかと思うのですね。   むしろ問題は,後行の善意取得の方が問題があるというふうなことを○○委員から御指摘がありまして,それはウエートのつけ方の問題ですから,今私がとやかく言いませんけれども,後々二重の譲渡などがあった場合にトラブルが起こって,そのトラブルは大体において後行か先行か分かりませんが,後付けで何かを担保として主張されて,そこで大きな紛議が生ずるというようなことも多々あるというふうに伺っていますから,むしろ明らかに分かりやすい登記の方がよろしいのだろうというふうに考えているところでございます。   ちょっと1点,恐縮でございます。先ほど,あくまで御私見というふうに承ってはいるのですが,全銀協さんの御意見は,先般配布されました動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案の意見照会結果によりますと,A1案に賛成で,一部A2案に賛成とございます。先ほど,B案でもそこそこ使われるのじゃないかという趣旨のことを言われておられますが,これは恐縮な言い方ですけれども,あくまで中小企業者の望むところの動産を担保として融資を受けやすくなると,そういうところを御示唆いただいたものだというふうに理解してよろしいのでしょうか。 ● A1案が多いのはたしかです。A1案ではなくて,A2案,あるいはA案(注)で是非やりたいという意見はさほどないと。   一方で,B案なんですけれども,B案の意見もこれまた有力にございます。だから必ずしも統一されているわけではないので,そこは申し訳ないのですけれども,先ほどB案について申し上げたのは,銀行界としてB案になったら困るというふうなほどの問題ではないということをちょっと申し上げたわけです。 ● ただ,A案・B案というよりは,B案を採用されてでも動産担保融資というものがより展開されるのであろうかということでございます。 ● それも実際やってみないと分からないところがあるのですけれども,少なくとも現状に比べれば,後行の善意取得の排除が,すべてではないかもしれないけれども一定程度期待できる。いわゆるネームプレートのつけやすさが増えるといったところでは,全く効果がないことはないと思いますけれども。 ● ○○委員が御懸念されてるいることも大変よく分かることで,ただこれ後から事前に占有改定していたのだというふうな主張が出てくるというふうなことがあり得て,それは本当に前なのかどうなのかすら分からないようなもの,これもきっちりふさいでおくのが一番安全だという御趣旨なんだろうと思いますが,これは多分,立法的にはA案のようなものをとるのが一番簡明な対処なんでしょうけれども,他方で,先ほど○○幹事が御指摘ありましたように,大体譲渡担保で占有改定が対抗要件だなんていうこと自体が本当にそうなのかというふうな議論もある上に,現在譲渡担保について譲渡担保契約として引渡しをしなかったら占有改定があったものとみなすといって,事実上はもう占有改定というのは本当のフィクションと化して,つまり何もしなくても対抗できるのだというふうにやっているわけなんですけれども,これも本当は絶対的なものじゃないのだろうと思うので,こういう登記みたいなのができた後も,何だか分からないけれども私は前にやっていましたなんていうのが,占有改定で対抗要件として認められていくかどうかは,なかなか難しいところはあるだろうと思います。   もう一つは,三すくみ論がA案否定の論拠かというと,これも三すくみ論があるからA案だめだというのはやはりおかしいと思うので,やはり全体としてニーズにこたえるのに必要な道具は全部そろっているのかどうか,あるいはそろえ過ぎたことによって弊害のおそれがどのぐらい出てくるのか,こういうのも全部総合的に判断して決めざるを得ないのだろうと思いますので,本日の御意見,いろいろな立場からの御意見いただきましたので,それを前提にして,また事務局の方で欠陥を指摘された部分はきっちり補充することも含めて,更に検討させていただくということで引き取らせていただいてよろしゅうございましょうか。 ● 1プラスアルファ案をとったときのアルファの登記の効力というのは,私は1プラスアルファ案を推しませんので個人的には関心がないのですけれども,事務局の次回までの御作業の前提としては,それを御指摘いただいた委員からは,御見解がもしおありであれは承っておいた方がいいと思います。 ● A1,A2,B1,B2と,4分割になっているのが何となく釈然としないところがありますので,A1という議論があり,Aの1足すアルファという話もあり,Aの2がありますと。こちらの方にBの1もあれば,Bの1足すアルファもあり,Bの2もありますと。   今お話を伺っていると,余り1という話はなくなっているような感じがしますので,今Bの2という御議論もありますけれども,Bの2との比較でAの2というのは何が難点なのか,あるいはBの2との比較で,例えば1足すアルファにAをつけたものにどういう難点があるのかというふうな形で,頭を整理していただければ有り難いなと。 ● 仮にAの2案をとったとしても,2案ですからみんな登記はできるのですが,登記の優先効というのは担保目的のものにしかないのですね。だけど,資金調達目的のものに広げていったときには,資金調達目的のもの全体に優先効を及ぼすというお考えかどうかと。 ● そういう理解だったのですけれども。 ● 優先する方と,あと負ける方ですね。資金調達目的で登記をしていないと,登記をした資金調達に負けると。資金調達目的で登記をしていないと,担保目的の取引に負けると。 ● 分かりました。 ● これは,そこまで広げるのでしょうね。当然。 ● いろいろな分割の仕方があると思いますけれども,まだちょっと今にわかに言うと……。適当に言うとまた混乱しそうなので,済みません。私自身も頭を整理させていただきますけれども,少なくとも今A1,A2それからB1,B2と,大きな4分割ではなくて,間が出てきたときにどう整理するかというのはもう一回考えさせていただきますけれども,今○○委員が言われたようなラインだと私自身は思って発言を申し上げたと。 ● そういう意味では,逆にA1の中身を担保目的に限らないで,もうちょっと担保目的プラスアルファに広げたと,そういうふうに理解させていただいてよろしいですね。 ● そうですね,そういう方が分かりやすいですね。 ● では,占有代理人の占有下にあるものにテーマを移させていただきます。 ● まず御質問なんですけれども,10ページに書いてあることの意味が,私は十分理解できないのであれですけれども,ここで書いてあることは「荷渡指図書に基づく業務慣行は影響を受けることなく,実務に混乱をもたらすことはないと考えられるのではないか」と書いてあるのですけれども,これまたなぜかという法的根拠が示されていないので,その点についての御確認です。   中間試案の補足説明を見ますと,要するに登記がなされた場合には,自分が先に登記をしたのだと,登記の証明書を持っていったときには,指図による占有移転と登記の先後を判断し,登記の方が先の場合には,そちらに引き渡さなければいけないと,あなたはデリバリーオーダーないから渡しませんよとか,デリバリーオーダー持ってきた人がいるからそちらに渡しますよというふうには言えないと書いてあったと思うのです。ところがここは影響ないと,荷渡指図書を持ってきた人に渡すという扱いを今後も継続すればいいと。これは,法律にどう書いてあろうと業界としてはそれが頑張ればいいということであれば,これは別に法務省がお聞きになることではないと思うのですけれども,ここは法律論をしていると仮に理解しますと,その根拠は何ですかと,何か調整規定を置かずにこういうことが果たして言えるのかという点が分かりません。   それから,前に御質問して,船荷証券とか倉荷証券,倉荷証券は国内の場合は余り出されないと聞いていますけれども,船荷証券が出されたような場合についても,船荷証券の交付というのは要するに引渡しと同一の効力があるわけですから,それと登記の先後の優先問題が出てくると思うのです。その場合に,登記がなされて無効だということに解釈として当然なるのか,船荷証券の処分証券性がありますから船荷証券によらずに登記をしても登記は無効だということになるのかならないのか,それも規定が要るかどうか,前にお伺いしたのですけれども,その点についても確定的な御回答をいただいていませんので,この種の問題を対象に入れないのであれば検討の必要はないのですけれども,ニーズがあって入れるという場合には,やはり指図による占有移転との調整の問題が必要だと。もし影響を受けないということであれば,倉庫業者に対する関係においては指図による占有移転が優先すると。債権譲渡特例法の場合の第三者債務者と類似の関係になると思いますけれども。そういう調整規定を置くのだということであれば,理解できるのですけれども,何ら規定を置かずにこうなるという法的な根拠が理解できないので,まずこの文章を書かれた趣旨を御説明いただきたいと思います。 ● 質問が二つありましたね,順番はどちらから。文章の方から。 ● 前回の中間試案を出した後,倉庫業者の関係の方から大分ヒアリングをさせていただきました。倉庫業者の方からお聞きしましたところ,倉庫業者としては寄託者が所有者であるかどうか,あるいはだれが寄託物の所有者であるかどうかについて全く関心がないと。預け入れるときも,所有者であることの確認は全くとっていないのだそうです。専ら倉庫寄託契約に基づいて,荷渡指図書に従って出庫手続をとっているだけということでした。そして,これまで譲渡の対抗要件として,指図による占有移転の通知を受けたという経験は全くないということでした。   かえって倉庫業者の不安は,登記をしたといって後からいきなり登場してきた人が所有者であるかどうかということをどうやって確認するのかが分からないというところにあるのだと,そういうお話を聞きました。   このことから,倉庫業界では,だれが所有者であるか,物件の所有者かどうかというのは特段問題となっておりませんで,寄託物を譲渡しても,当事者としては民法の定める対抗要件を具備するというやり方はしていないと思われるわけでございます。これは,多分寄託物の譲渡を受けても出庫手続を円滑に行うということが必要になりますけれども,そういうことを確保するためには,倉庫業者が行う出庫手続,つまり荷渡指図書に従って出庫手続をする,そういった手続に従う必要があるからだと思われます。現在,民法所定の対抗要件具備方法というのを使っていないと思われますので,この点は登記制度を設けても変わりはないのではないだろうかと思います。   そういうことから,登記制度を設けても,現在の慣行,荷渡指図書に従って出庫手続を行う,そういう慣行は変わらないのではないだろうかと考えたのがこのペーパーの趣旨でございます。 ● 登記事項証明書を持ってきて,登記があっても所有者かどうかは判断できないので,訴訟でも起こして,判決でも出れば渡すけれども,そうでない限りは渡さなくていいと。中間試案の補足説明ではそういう説明ではなかったと思うのですね。判断して,そこの補足説明の説明は撤回して,別の説明に変えたということですか。変えたならば変えたというふうにはっきりおっしゃっていただかないと,何か両立するのかなと思ってしまうものですから。 ● ○○幹事が占有代理人の下にある動産を登記の対象から除外すべきであるという意見の根拠は,専ら指図により占有移転の方法によって譲渡の対抗要件が具備されるのだから,第三者は,倉庫業者・占有代理人に対する問い合わせを通じて先行する譲渡の有無を調査することができる,だから余計なことをしなくてもいいという御主張でしたけれども,それは,寄託者が所有権者であることが前提の御議論だったと思います。私どもも中間試案の補足説明では,確かに寄託者が所有者である場合,指図による占有移転があったときを前提にして考えておりましたが,先ほど申し上げたように寄託者が所有権者であるかどうかは受託者にとって特段関心がないといいますか,そういったことを前提に実務が動いているわけではないということが分かったものですから,先ほどのように申し上げました。しかし,所有権者であることを前提とすると,補足説明の議論というのはそのまま該当すると思います。   倉庫業者の立場に立ってみますと,荷渡指図書を持たずに,いきなり所有者であるというふうに引渡しを請求する人が来たとしても,そのときには所有者であることを確認できない限り引き渡すことはないのだろうと思います。登記事項証明書を持ってきても,必ずしも所有者であるとは限らないわけですから,所有者だと言って引渡請求を求めてきた場合には,所有者であるかどうかの確認ということはやはり必要で,その確認ができない限りは,やはり引き渡すまでの必要性はないだろうと思います。   それから,指図による占有移転の通知をして,いきなり所有者であると主張してきた場合,民法660条に引渡しの請求の訴えが提起された場合には,寄託者に通知をしなければいけないという規定がございますが,訴えられる前の段階でも寄託者に通知をして,当事者間で所有権の帰属の決着を求めることは事業を営む者にとっては当然予想される行動だというふうに思っております。   そういったことで,倉庫業者の方が不利益をこうむることはそれほどないのではないだろうかということを考えております。   場合によっては,約款の中に登記事項証明書を持参した者に引き渡せば免責される--所有権者であることはある程度確認しなければいけませんが--という免責条項で処理するということも考えられるのかもしれません。これは思いつきにすぎませんので,十分考えた末の言葉ではございません。 ● 今の確認ですけれども,登記事項証明書にはその人が所有者であることを推定するとか,そういう効力は一切何もなくて,あなたが所有者であるかは私は分からないと言えば,そういうふうに扱っていいという効力しかないという御回答なんですね。 ● 私なりの理解なんですけれども,占有代理関係にある場合の一般的な理論的な問題というのは,中間試案の補足説明で出ていて,ここで書かれているのは占有代理関係にあるもの全般についての説明じゃなくて,占有代理関係,いろいろな場面で出てくるうちの倉庫業者が扱っている場合の実務的な取引慣行に混乱を引き起こすかどうかということに対して,倉庫業者の取引慣行ではこういう形になっているので,まあ混乱を起こすおそれは少ないのじゃないかと。これは多分法律論じゃなくて,どちらかというと事実のレベルでの問題で,倉庫業者との関係でこうだからといって,間接占有状態にあるもの一般についての中間試案の補足説明の記述が全部撤回されたわけではないと。   ただ両者の関係,ちょっと私も分かりにくいと思ったところがありますので,未整理であることは間違いないのですけれども,理論的に矛盾していることではないのかもしれないというふうに思いますが。 ● 確認ですが,契約関係と物権関係と別にあって,契約関係というのは例えば保管料を請求できるかとか,保険の利益はどちらにあるかとか,そういう関係で,もともとの所有者との間に,所有者というのはかぎ括弧つきかもしれませんけれども,契約関係があって,その人からデリバリーオーダーを出したと。それを確認して寄託台帳を変えるといった場合には,その時点からいろいろなものが移転すると,そうすると今度はその人が唯一の指図を出せる人だと。そういう形で運用しているというときに,登記制度が出てくると,そちらが勝ってしまうことになると不都合がありますよというのが従来から私の主張していたことで,それを入れるのだったら,何か調整が必要でしょうというのに対して,調整なくても登記の方は無視して行動していいですよというのが法的に言えますということが果たして言えるのかというのが私の疑問で,今の御回答でも,法律論からいけばそうではないと,あのときの説明は間違っていたので,裁判所はそう判断しないという可能性も十分あるのじゃないかと。これが1点です。   それから,指図による占有移転を受けた覚えがないというのも,これは商法の問題ですから,商法の詳しい先生にもお伺いすべきことかもしれませんけれども,デリバリーオーダーを出しただけでは物権的効力もないし指図による占有移転もないと,しかしそれを確認して,寄託台帳を変えた時点では,それが指図による占有移転であり,即時取得もありますよというのが,あるケースについて最高裁であり,またそれが一般化できるというのが例えば江頭先生の教科書に書いてあることでありますので,指図による占有移転はしていないというのは間違いで,指図による占有移転はデリバリーオーダーを出しただけでは何ら効力はないけれども,それに基づいて先ほど言った契約関係も全部セットで移すということで,ある人を唯一の権利者として扱うと,それと別系統に登記が出てきても無視できますよということであれば,これはいいのだと思うのです。それが,法律の調整規定を置かずにそういう解釈になるかといえば,私はならないのではないかという気がします。   それから,A1でいく場合には余り問題がなかったかもしれませんけれども,B2だということになってくると,これは譲渡一般ですので,かなり影響は大きいと思うのです。ですからこの説明というのは非常に重要で,登記があっても何ら不利益はありませんよと言っているわけですけれども,これがもし間違っていて,間違った法律論に基づいていいというところで部会はまとまったけれども,あれは違っていたのだということになったら大変なことですので,よくよく御検討いただきたいと思います。 ● その点は,少しまた更に検討を詰めていただくということで……。   指図による占有移転の構造ですと,物権の移転についての対抗要件と債権関係の移転の対抗要件が同じシステムの上にのっかれるけれども,登記は要するに受寄者に対する通知なしに勝手に移ってしまいますから,物権だけは移るけれども債権関係は残っている,そういうところから出てくる問題の一つであるというふうに理解して……。 ● 例えば,登記だけ持っているとしても,所有権者であると仮に認めたとすると渡さなければいけないけれども,保管料の請求はできますかと。これは,例えば留置権で対抗できるかどうかですね。保険の利益はだれにありますかという問題が,債権関係と物権関係で分かれてしまうのですね。そのことの問題を調整するためには,やはり倉庫業者に対する関係では指図による占有移転をしないとだめですよと,登記をしても,その契約関係までセットに動かさないと対抗できませんという形にするのであればこうなると思うのですけれども,それをしなくても,解釈で当然そうなるとうふうに書いてあるわけですから,なぜそうなるかというのが私は先ほどの御説明を聞いても理解できないということを申し上げておきたいと思います。 ● そこのところ,少しまた検討させていただきますが,そういうふうな形でやるか,あるいは登記の効力が要するに担保権者相互間の優劣を決めるだけの効力であって,それ以外のものには特別に対抗力持たないとか……。 ● その場合にも,同じ問題は起きてきます。担保目的譲渡の場合にも,指図による占有移転はせずに,登記だけするという場合に,例えば担保権実行の局面でどうなるかという問題,同じように起きてくると思うのですね。 ● そこは,債権譲渡通知のない債権譲渡登記を持った人の争い的な感じで処理できて,債務者との関係はそれとは別に契約関係で処理するという余地があり得るかもしれないと。   ただおっしゃるように,B案的にいけば,だれにでも対抗できるという,一本の登記で全部の効力を一気に生じさせるものであるとすると,受寄者との調整の問題は残るだろうというのは御指摘のとおりだろうと思いますので,これはそれとは少し違ったレベルでの倉庫業者間の取引の関係の中で,そう現実に衝突は起きないだろうというふうな観点が中心かなと思いますので,ちょっと詰めさせていただくということで……。 ● 検討させていただきます。 ● 倉庫業の関係の方の意見をいただいていて,見た初めは,倉庫業者だとこういう意見もあるのかなぐらいにしか思わなかったのですけれども,銀行でもよく考えてみると貸金庫取引というのがありまして,これ従来は場所の賃貸借だから内容物の占有なんかありませんよということでやったのですけれども,平成11年に最高裁の判決が出て,銀行もその事例であらわれた貸金庫についてはということなのかもしれないですけれども,銀行も共同の占有下にあるというふうなものが出てきておりまして,そうするとやはり貸金庫についても占有代理人の占有下にある動産に当たってくるというケースが出てくるのかなというふうに思いまして,今の○○幹事が御指摘いただいた点,特に指図による占有移転がされて,一方で登記もされているといったような状況が生じたときに,登記事項証明書を持ってきても登記に公信力があるわけではないでしょうから,そうすると一体どっちに返したらいいのかという,かなり迷うケースが現実には出てくるのではないかなというふうに思っておりまして,銀行の貸金庫取引の場合には,荷渡指図書なんていうのはないので,では一体何が実務なのかというところにまた入っていかなければいけないところが出てくるのかもしれないですけれども,そういうことでちょっとこの点も非常に関心を持っておりますので,慎重に御議論いただければというふうに思います。 ● 私の意見をもう少し述べておきますと,この占有代理人になる場合にニーズがあるという場合に,二通りあって,指図による占有移転を一々すると面倒くさいというようなものを登記でやると一挙にできるというタイプの場合には,そもそも調整の必要はないわけですね。指図による占有移転がそもそも現実的にないわけですから,登記一本でいくと。そちらはそういうニーズにこたえると。   ただ,例えば先ほどリース物件がずっと散らばっている場合に,登記をとってもためだとすると,一件一件型番号で特定するのかユーザーの住所を書くのか,そちらの面倒くささはどうクリアするかという問題はありますけれども,一応登記はできる。そういうニーズにこたえるという部分は,それはプラスだと思うのですね。   ただ,競合する場合についてどう調整するかというと,登記の場合に指図による占有移転を少なくとも直接占有者に対しては優先させるとか,あるいはそちらを優先させるという考え方も十分成り立つと思います。UCC,間違っているかもしれませんけれども,私の調べた限りでは,担保にとる場合も直接の担保権実行の円滑化を考えると,最終的には指図による占有移転をしないと意味がないのですけれども,それに対しては一定の手間暇がかかりますので,その間にデフォルトになってしまうと破産財団に対抗できないという面がありますので,そういうバンクラプシープルーフを得るためにまずファイリングをしておいて,それから直接占有関係,間接的関係も移転すると,そういう使われ方が一般だと考えられていますので,そういうことであれば,そういうことを前提に調整規定を置けばいいと思うのですね。いずれにしても,だれが今直接占有者に対して間接占有持っている人かが定まるということが確保できるわけですから,そういう調整を置いたのであれば,加えるということはいいと思うのですけれども,そういうことなくて,解釈でいきますよというのは,どうも私は理論的に考えて無理があると。   それは,法律がどう定めようと,実務は実務として頑張るというふうに推奨しているだけであって,それはできるわけですけれども,事実行為の問題であって,ここで議論すべき問題ではないと思います。 ● ○○委員が,先ほどおまとめになったように,私はここの記述は事実に関する記述だというふうに理解いたしました。この政策として立法を考えるに当たって,この論点がしんしゃくすべき立法事実としてそれほど深刻な問題ではないということを部会資料は指摘したのだというふうに受けとめます。ただその上で,○○幹事御指摘のとおり,その上で更に法律論として物権関係として詰めたときにどうなのかという御議論はあるかもしれません。これは部会資料及びそれをめぐる議論がまだ熟していませんから,やはり○○幹事は別のお考えかもしれませんけれども,継続してお詰めをいただいた方がいいと思います。   その際に,先ほど○○幹事が少しおっしゃったように,現状がどうかということもさることながら,登記制度創設後に約款にどう書き込まれるかというようなことも視野に入れていただいて,その約款を契機として形成される商慣習が民法に優先する商慣習としてもし認められるようなランクになるとすれば,○○幹事の御疑問に対しても何らかの回答の余地がありますし,そうでないとすれば,またそうでないという整理の仕方があると思いますので,そういった将来的な視点も含めて引き続き御整理をいただくのがよろしいのではないかというふうに感じました。 ● かなり難しい問題ではありますけれども,占有代理人の占有する物権については,リース業界が非常に密接な,倉庫とは全然別の部分でありますので,何か関連して御発言があれば,今いただいておけばと思いますが。 ● 特に問題があるとすれば,やはり今度証券化とかそういった場合についてどうするかという問題があろうかと思いますけれども,今は御存じのように債権の流動化ということである程度それで賄っているという現状からすると,直ちにリース業界について問題が出てくるというふうにはちょっと思えないのですが。 ● リース債権とリース物権をともに包括的に営業譲渡する等との取引に非常に数多く関与している者として発言させていただきますと,この場合,リース債権だけを譲渡いたしましても,ブックされているのが物権でなっていますから,物権変動の対抗要件を具備できないとほかのやつができないというニーズは非常に強く感じております。 ● では,場合によっては5時を過ぎることがあり得るということもお許しいただいて,次に登記情報の開示について,利害関係人の範囲が問題となっておりますけれども,この点につきまして御意見をいただければと思います。 ● 前回も申し上げたとおり,利害関係人の範囲に従業員,それから労働組合等を含めるべきであるというふうに考えます。その理由も今まで何度も申し上げてきたとおり,受ける不利益等が非常に大きい,したがってそれに対する全くの代償ということにはなりませんけれども,保護の範囲として見られるようにすべきだという考えでございます。   ここで,従業員が不正に利用する可能性があるとか,そういったようなことが書いてある,これは何だろうと非常に思うわけです。そもそも公示自身が,公示なのでその中身は基本的に全部オープンにすべきものだという位置づけのものだと考えていますが,こういう制度を作るときの政策的配慮ということで一定の利害関係人のみに絞るということになっているものだと思うので,正しく政策的配慮という観点のバランスがしかるべくとられるべきなのだろうというのを基本的に考えておりまして,従業員だから信用できなくてほかの人は信用できるのかとか,これはちょっとひどいような,表だった公式の文書で出るような話なのではないのかなというふうに考えます。   そのほか,特に労働債権等の機会というのがどれだけ額,直接ここじゃなくて債権譲渡の方の意見の方で同じく出ているのですけれども,労働者として労働債権として個別の部分まで知る必要はない,総額だけあれば分かればいいのではないかということなんですけれども,ただ単に債権がどうこうあるという話だったら結構なんですが,今回の焦点は明らかに動産の話でいくと流動集合動産譲渡担保の話がかかっているかかかっていないか,これは勤労者にとって恐らく決定的でございます。それが一つ。   それから,将来債権ということにつきましても,これはまた後の方で議論のときにも申し上げますけれども,その範囲というものについて与える影響が非常に大きいということがありますし,そこのことも含めて労働組合あるいは労使関係として対応が必要になってこないと非常にバランスが崩れるのではないかというふうに考えます。   また,ここでたまたま企業漏洩という,秘密漏洩という話もございまして,確かに筋からいくとやはり従業員個々人だろうというふうに思います。それは基本の筋だろうと。ただここで,政策的背景から全体の該当者としての範囲を絞るという観点に立った時には,同時にやはりもともと労働組合,従業員の雇用の安全とか,そういう利害を代表してやるということがそもそも存立の意味でございますので,そういう意味では労働組合に実務上そういう対応ができるという方が,現実上の問題としてはスムーズにいくのではないかというふうに考えます。 ● これに関連して,使用者側と言うと何ですけれども,○○委員。 ● 前回も議論になったことの繰り返しになりますけれども,利害関係人ということで取引関係にあるものですとか,将来の取引相手をどう扱うかという問題があるかと思います。この点は難しいということにもしなるのであれば,ないことの証明ということの手当てというものを是非お願いしたいと思います。 ● ○○委員から御指摘いただいた論点は重要な論点であると思いますし,基本的には賛成だということを申し上げさせていただいた上で,やや理屈ばったことで,いろいろそう簡単にはいかない部分があるということを申し上げさせていただきますと,並んでいるうち,「先取特権としての労働債権を有する者」というのは,既に債権が生じていますから,その人に閲覧請求権を認めるということは既存法制との整合性からいってもあり得べき議論だと思うのですが,先取特権の付従性の論理を形式的に当てはめますと,まだ不払いがないときの契約関係だけある労働者に見せろというところは,ちょっとハードルが高くなりますね。   さらに,労働組合になると倒産法制上意見を聞くような規定がある場合もありますが,しかしこういうときにそこに入れられるかというのもちょっと高くなると思います。   いずれにしても高くなってきますが,しかし可能な限りこれは御管掌の当局においても御検討いただきたいと私個人は思いますし,また○○委員に対しては,そうやってみんなで労働者のことを考えているということについても御理解をいただきたいなというふうにあわせて感じます。 ● この点も,ほかに御意見ありますか。   これまでに出されました意見等を踏まえて,更に事務局で具体的な方策等を含めまして御検討をいただくということで,先送りが多いですけれども,また次の債権譲渡が全部まだ残っておりますので,債権譲渡に係る登記制度の見直しにつき,まず事務局から急いで御説明をいただきたいと思います。 ● それでは,第2の「債権譲渡に係る登記制度の見直し」について御説明いたします。   本日,主に御審議いただきたい論点は3点ございます。   1点目が,譲渡に係る債権の総額の記載を見直すか否かという点。2点目が,既発生の債権の譲渡において債務者の記載を見直すか否かという点。3点目が,登記事項証明書の交付を請求できる利害関係人の範囲をどのように考えるかという点でございます。   まず,「1 譲渡に係る債権の総額」について御説明いたします。   譲渡に係る債権の総額につきましては,現行法上債権譲渡特例法第5条第1項第5号におきまして,登記の必須の記載事項とされております。この債権総額につきましては,法務省告示において譲渡に係る債権の譲渡時における債権額の合計額を記載するものとされておりますところ,譲渡時債権額につきましては,同告示においても,将来発生すべき債権については見積額を記載するものとされております。こうした点につきまして,意見照会の結果,将来債権の譲渡については見積額では意味がないし,実際に発生した債権の額と食い違うこともある,かえって誤解や混乱を招くこともあり得るのであって,債権総額を必須の記載事項とする現行の制度を見直すべきであるという意見が複数寄せられております。そこで,将来債権の譲渡について,譲渡に係る債権の総額を必須の記載事項とする制度を見直すべきか否かについて,御審議いただければ幸いでございます。   次に,「2 既発生の債権の譲渡における債務者の記載」について御説明いたします。   意見照会の結果では,既発生の債権についても債務者以外の要素によって譲渡に係る債権を特定すれば足りると考えられることや,多数の債務者に対する債権をまとめて譲渡する場合に,登記申請事務の負担を軽減したいということを理由として,既発生の債権の譲渡について債務者の記載を必須ものとして要求すべきではないという意見が複数寄せられました。しかしながら,既発生の債権につきましては,次に述べるような理由から,債務者を必須の記載事項とする現行の仕組みを維持するものとすべきではないかと考えられます。この点について御審議いただければ幸いでございます。   アで述べておりますのは,登記申請事務の負担軽減という必要性はそれほど高くないのではないかということでございます。すなわち,多数の債務者に対する債権をまとめて譲渡するような場合,譲渡人は,債務者に関する情報を電子データによって管理しておりまして,こうしたデータを活用して,磁気ディスクを用いて債権譲渡登記申請を行えば,登記申請事務の負担はそれほど大きいものにはならないのではないかと考えられるということでございます。   次に,イで述べておりますのは,既発生の債権について債務者を必須の記載事項しないことによって,制度利用者の利便性がかえって損なわれるという弊害が懸念されるということでございます。現行制度におきまして,登記事項証明書の交付を受けるに当たって,請求に係る債権の登記番号及び債権通番が不明の場合には,譲渡人及び債務者の表示を検索条件として債権を特定するという方法がとられております。したがって,現行制度のもとで特定の債務者に対するある債権が既に譲渡の対象となっているか否かを調査しようとする者は,譲渡人及び当該債務者の表示を検索条件とした登記事項証明書に基づいて,当該債権が既に登記されているか否かを調査すれば足りるということになります。しかしながら,債務者が特定している既発生の債権について,債務者の記載が必須ものとして要求しない場合,同様の調査をしようとする者は,譲渡人及び当該債務者の表示を検索条件とした登記事項証明書に基づいて調査するだけでは足りず,これに加えて,譲渡人の表示及び債務者不特定である旨を検索条件とした登記事項証明書に基づいて,当該債務者に対する債権が譲渡の対象となっているか否かを逐一調査する必要が生じることになると考えられ,制度利用者の利便性が損なわれることが危ぐされるということでございます。   次に,ウで述べておりますのは,債務者を記載しない方法による登記を許容することにより,登記官の審査業務に過度の負担がかかり,登記事務の遅延につながることが懸念されるということでございます。   最後に,「3 利害関係人の範囲」につきましては,動産で述べたところと同様の問題意識でございます。 ● それでは,譲渡に係る債権の総額の記載でございますけれども,これは必須の記載事項から外していいのじゃないかという御意見が多く寄せられたということでございますけれども,この点についての御意見を伺いたいと思います。 ● どうも債権譲渡の話がいつも時間が短くなって駆け足になるのが残念なんですが,まずこの総額の話ですが,最初これ累積額で書いて非常に巨額になるために信用不安を起こすということから,今度譲渡時の想定残高を書くとか,担保の極度額を書くとか,いろいろ苦労しているところなんですが,私個人でいろいろ聞いてみますと,まだ現時点でもなおあえて累積額にするというような事務所もおありのようで,これはどうしてかというと,譲渡時残高とか担保極度額で本当に裁判所が紛争になったときに認めてくれるかどうか分からないではないかと,やはり一時対応した形の登記をしておく方がいいという意見もあったりして,非常に錯綜しております。これはやはり,債権譲渡登記の活用の阻害要因の一つと私は把握しておりまして,この際,総額記載は外していただきたいというふうに考えております。 ● 内容を明示するというよりも,外した方がいいということですね。   要するに,何を書くべきかをはっきりさせるよりも,外した方がいいと。 ● 金額の総額の記載欄自体を外していただけるのが,一番明瞭ではないかということです。 ● ほかの御意見,いかがでしょうか。 ● 私も同じことを考えたのですが。ちなみに,現在累積額でやっている事務所は大変正しいと個人的には思いますが,それはともかくとして,私,実務的なことが分からないのでちょっとお伺いしたいのですが,任意的記載事項にしたときに,書いてないと怪しいという感じはしないのですか。それが私,分からないものですからお教えいただければと。   記載はできないということにするのならば,もう記載はないわけですけれども,してもいいししなくてもよいということになると,何かしていないときには何かすごい多額で怪しいのじゃないかとか,そういうふうな感覚が起こるのならばまずいかなという気がするのですけれども,ちょっとお教えいただければと思います。 ● これは,流動化の実務に関与されていらっしゃる方の感覚の問題だと思いますが,いかがでしょうか。 ● まだそういう事態になっていないので,ちょっと想定の域を出ないのですけれども,現状でも債権の総額を書かなければいけないということ自体に,相当違和感が現場にはあるのだろうと思うのですね。そうだとすると,素直にそれを書かなくてよくて,それ以外の事項で特定できればよくなったのだということで,さほどそういう心配はなしで済ませられるのかなというふうに私は思います。 ● 同じでありまして,余計なものがなくなるということで歓迎なのではないかと。 ● 将来債権の金額について,見積額というのがあいまいであるという御指摘も非常にもっともでございまして,このとおりの方向に直すことは全くやぶさかではないと思っております。   ただ1点,御留意いただきたいのは,現在ですと継続的取引の場合に過去に発生したものから将来に発生したものまで,全体として見て累積は幾らか分かりにくのに見積額を書くということになっておりますが,今後はこのような改正をいたしますと,将来部分については金額が分からないから書かないと,しかし過去の部分については既に発生した債権の全部を譲渡するのか一部を譲渡するのかという債権の範囲の特定の意味もありますので,譲渡時点において譲渡した債権の金額をしっかりと書いていただくと。ですから,将来の部分については書かないけれども,過去の部分については金額を明示していただいて,それによって対抗要件の範囲が決せられるということになろうと考えられます。非常に民法的にはすっきりした方向でよろしいとは思っているのですが,今の実務に比べるとそこの記載をするという部分で実務の方々がどう思われるのか,そういうところもあわせて御検討いただければと考えております。 ● 特に御意見ございますでしょうか。 ● 既発生の債権について,債権の額を書くというのは今でもやっていることで,今までどおりやれば違和感はないのかなとは思うのですけれども,ただ将来債権の譲渡について,譲渡に係る債権の総額を書かなくても,他の事項によって特定すればいいというふうな考え方からすると,じゃ何で逆に既発生の債権については債権額を書かなければいけないのだと,そこがちょっと私理解できないところがありまして,別に既発生の債権であっても他の事項で特定できれば書かなくてもいいような気がするのですけれども。 ● 分かりました。では,ただいまちょうだいした御意見を踏まえて,また事務局と担当商事課との間で議論を少し詰めさせていただくと。大勢は書かない方向に向かう意見が有力であったということだろうと思います。   では,次の「既発生の債権の譲渡における債務者の記載」の問題について。 ● この点は,私は第三者債務者名というのは,現在の債権譲渡登記の仕組みからすると,特定性を判断する大変重要な判断要素になっているというふうに理解しておりまして,それは登記官にとってもそうだし,それからここにも御説明がありますけれども,検索しようとする人の検索条件としても債務者から見ていくという形ができ上がっているものですから,調査の手間という意味でも,これを外してしまいますと逆にかなり使い勝手の悪いものになってしまうのではないか,使い勝手と,それから登記の信頼性といいますか,そういう点であわせ考えますと,既発生のものについて書けるものはやはり書いてもらうという方がよろしいのだと思います。   この書いてもらうというのが,債権コードとかいろいろ余り厳密に要求すると困るものもあるのですけれども,第三者債務者名というのは理由のアのところにもあるように,通常既発生のものについては登記しようとする人は認識しているというデータだと思いますので,将来債権について書かずに済むというのと,それだから既発生のものも書かなくていいか,今の譲渡総額の話と似ているところもありますけれども,状況はかなり違うように私は思いまして,既発生の分かっている第三者債務者名については書いていただく,現行のままというふうに私は提案したいと思います。 ● 1点は,私が登記システムがよく分かっていないことに起因する質問で,もう1点は意見なんですが,これは既発生・未発生というのは,譲渡時を基準にするのであって,対抗要件具備時,登記時を基準とするわけではないと考えてよろしいわけでしょうか。つまり,譲渡時と登記時が3日ぐらいずれたと仮定したときには,譲渡時に既発生のものを書けばよいと。   もしそうじゃないとするならば,例えば消費者金融の会社なんかですと刻々と発生しているわけですよね,どうするのだろうかなというのがちょっと気になるのが第1点。   第2点目は,その理由なんですけれども,○○委員がおっしゃる理由は分からないではないのですが,イとしてかなり長く書いてありますね。でも,これってあした分からはもうできないのですよね。債務者を基準とする検索が。こんなに長く書ける理由が気になりまして,できるだけそうすると,できるだけ債務者からも検索できるようにしたいと,せっかく書けて,アで言うようにそんなに負担でもないのなら,より検索しやすくしておこうよという理由ならまだ分かるのですけれども,債務者から検索することになっているのにそうできないと大変なことになるというならば,将来債権もだめだという理由になるというのが理屈の流れじゃないかという気がするのですが。 ● 多分今の点については,商事課の方から御説明いただくといいのかもしれませんけれども,むしろイなんかで想定しているのは,大量にどんどん入れ替わっているというよりも,どーんと大きい一つのものが債務者が画されているとかいうふうなケースで,イのケースは考えた方がいいのだろうと思うのですが,公示制度のときにはやはり検索の便宜というのは公示全体の機能にとっては非常に重要であることは間違いないことだろうと思うのですが,そういう全体の中でどのぐらい,1個でも欠ければ全部無効にするのかどうかとか,そういう議論とも絡みますので。 ● ただいまの○○幹事の御質問に関係しますけれども,切り分けの問題ですけれども,既発生という場合に,最高裁の言い方をしますと既発生及び将来債権を一括して譲渡すれば集合債権譲渡という場合に,既発生の部分だけを1個の債権譲渡担保契約のある部分だけは別に登記しろという,そういうことなのか,これは既発生だけの場合であって,そういう既発生と将来債権一括する場合には,この対象になっていないということなのか。先ほど,どんどんあしたからだめですよねというのは,一括してやる場合は対象から除くということであれば,それはそれでいいし,一部だけ入れても仕方がないような気がします。   例えば,あるマンションの賃料債権全部入れる場合に,一部もう既に入居していて,発生している賃料分だけ別に登記させていきますと,かえって公示機能としては混乱を招くことになるのじゃないか,その場合にはまとめてやった方がかえって公示としては機能が高まる場合があるわけで,ここで既発生というのがそういう両方含む場合には,契約の中で一部切り分けて登記しなさいと,そこまで要求することなのか,これは既発生のみを担保とする場合とか,何かもう少し限定が入ることなのか,ここは確認したいと思います。 ● 今の点についてですが,既発生の債権と債務者不特定の将来債権をまとめて担保化するということは,恐らく実務でも行われ,その場合に譲渡契約は一つということになるのだろうと思います。   この場合に,登記の方はどうなるのかということですが,登記申請も一つ,登記番号も一つということになり,登記を2つに分けなければいけないということにはならないと考えております。   どういうことかと申しますと,登記は一つなんですが,債権個別事項ファイルを分けて作成するということになるかと思います。そのことについては,現在複数の債務者に対する債権をまとめて譲渡する場合も,債務者ごとに分けて債権個別事項ファイルをつくっているわけであって,登記申請及び登記自体を分けてしなければいけないということにはならないと考えております。 ● そうすると,先ほどの○○委員の御質問ですが,この場合は既発生の方については債権額も書かせてということになるわけですね。それが,ここで書いてあるイの理由がうまく当てはまるか,それをさせることにどういう意味があるのかというのがよく分からないのですけれども。   結局,この範囲が全部まとめてとれるかどうか,将来債権の部分を除いて,既発生の部分だけ検索しようという意味も余りないし,そこの部分だけ検索したってどうかという気がするのですけれども,それは理屈の上でそうなる,手間になるけどそうしてくださいということなんでしょうか。どういう意味があるか,よく分からないのですが。 ● そういう場合に対応するために既発生のものを書かなくていいというふうになると,既発生のものみんな書かなくなってくるという,それはそれで本当にいいのだろうかと。   もっとも両極にある単純既発生債権の譲渡と,単純に将来の債権だけれども集合的な譲渡という二つのモデルを想定して,真ん中に出てくる今みたいなものに対する対応で全部を変更する必要があるのかどうか,ちょっとそういうことが絡んでいるのじゃないかと思うのです。 ● どちらかなんでしょうけれども,寄せ方として,既発生も書かせるというのは論理的にどうしてもしなければいけないという要請じゃなくて,利便性である範囲については書かせた方がいいということだとすると,セットの場合には将来債権の方に寄せてしまうと。真ん中のをどちらに寄せるかという話だと思うのですけれども,それが既発生の原則というのは貫徹しなければならないほど強い要請があるのかというのが,私は必ずしもよく分からないところです。 ● 私も実務はよく分からないのですけれども,ここのところは債務者から検索するということを基準に考えているので,既発生債権プラス債務者不特定の将来債権の譲渡契約は一つで,登記も一つで,その中で既発生の部分しか債務者は分からないではないかと,今,○○幹事はおっしゃるけれども,そのある債務者名でどれだけ検索ができるかという意味での便宜性を言っているので,その当該登記された契約が,既発生プラス将来債権一緒にしたもので,それの半分しか分からないではないかと,そういう議論ではなくて,無数にいる債務者名でどれだけ検索ができるかという利便性を考えるということではないでしょうか。 ● しかし,それでも無数にいる債務者のうちで,例えばあるクレジットカードの会員であって,その人がAさんだとしますと,Aで検索しても,それは譲渡時にその人が負っていた債権額だけが出てくる。Aが,譲渡時以降に負った債務で譲渡の対象になったものはあらわれないわけですよね。ですから,債務者名で絞って検索をしたとしても,その債務者に係る譲渡されている債権のすべてが分かるわけでもない。 ● おっしゃるとおりですが,私が申し上げているのは,だからといってその場合に○○幹事の言うように,将来債権の方に引き寄せちゃって,全部記載させなくていいではないかということにはなりませんでしょうということです。 ● 将来債権といいましても,いろいろございまして,例えば賃貸借契約で家を--ある賃借人Aさんに対する過去の分と将来の賃料債権というもの,これはもう債務者が特定しているわけですが,それについては過去の部分も将来の部分も一括して登記ができると。これはもう既に現行法においても,債務者が特定しているわけですから登記ができると。で,現行法では見積額を書くといことで金額が出ていないわけですが,それを今回改正をすると,過去の分について債権通番1,将来の部分について債権通番2という形に分かれてくるということですので,将来部分についても債務者が特定していれば現行とほとんど同じような形でできるということを考えていると。   ここで記載されているのは,そのような特定の債務者というふうに着目できない,例えば将来発行するクレジットカードの番号で特定するとか,そのような場合については債務者を書けないので,これを書かないのもやむを得ないでしょうと,こういうふうなことを考えておりまして,そのような将来債権の譲渡というのは,確かに債務者の名前では検索はできないわけですが,企業においてそのような債務者が全く分からない,将来の債権の譲渡,ある程度包括的な譲渡契約になると思いますが,それが果たして何百件も何千件も出てくるかというと,企業の資産というのはそういうものではないのではなかろうと,包括的な譲渡というのは数個ぐらいあるかもしれませんが,そういうものの検索というのはもう債務者では検索できないので,全部債務者不特定物ということで登記事項証明書をとって,全部網羅的に見るしかないとは思いますけれども,そのような債務者不特定の包括的な譲渡というのはもそれほどはないので,この(理由)のイで書いてあるような困難性というのは,そこまでは生じないのではなかろうかというふうに考えているところでございます。   逆に,過去のものについても全部債務者を不特定としてしまいますと,今現行の債権譲渡登記制度では最も多い会社で80万個ぐらいの債権を既に登記しているところもございますが,そのような特に消費者金融会社が中心になった何百万個というところを一つの登記で過去のもの一括して登記ができるということになると,この(理由)のイで書いてあるような問題などが出てくるというふうに考えているところでございます。 ● 債務者の記載よりも,どちらかというとその前の額の問題になるのかもしれないのですけれども,先ほど債権通番で既発生のものと将来債権のものと分けるというお話がありましたけれども,例えば継続的商取引に基づく売掛債権で,始期が平成16年,今年の4月1日で,終期が来年の3月31日まで1年分を譲渡しますと,譲渡契約今やって,今登記しますという場合,今は始期終期,これ一本で,通番1で登記できていると思うのですけれども,これが先ほどの話ですと登記時を境に通番を二つに切るという,こういうお話ですね。そうしますと,今やっていることよりもそこはちょっと変わっていくという,こういう意味に理解してよろしいのかどうか,確認だけちょっと済みません。 ● 今御指摘のとおりでございまして,といいますのも,今まで現行ですと一つの通番でできるのですが,それは金額を明らかにしないで,あいまいなまま登記がされていたと。過去の部分も将来の部分も含めてあいまいな金額でされていたからできたわけで,これを将来の部分をやめましょうといいますと,今度は既に発生しているものについて,その全部を譲渡するのか一部を譲渡するのかという話をしっかり考えなければならないというふうに考えておりまして,そうするとやはり全部譲渡であればその金額をしっかり書いていただくのが筋論ではなかろうかと思っているのですが。 ● それに対する意見は留保したいのですけれども,やや大変なことになるなという……。毎月発生していくものを,例えば今の例でいきますと4月分,5月分がまだたまっていて,6月もいつ登記……,請求書がどこに出るのか,いや納品はもう済んでいるとか,だから既発生分に入れるのかどうかということ,全部やらなければいけなくなるという話ですが,これはちょっと実務的には大きな問題になるような気がいたしますので留保いたしますけれども,指摘だけ。 ● 今までと比べて金額を特定しなければいけない部分が加わるというと,これは結構抵抗あるのかなという感じがしますね。 ● 今の制度は,何かあいまいにすぎますが,実務家の方にとっては便利な部分もあるのではなかろうかと思って,御留意していただきたいなと思った次第です。 ● 時間の関係で私も発言を急いでいまして,総額のところ,とってしまえばいいでしょうという発言をしましたけれども,具体的にとった場合にどうなるか,将来のところは書かないとしたときに,既存の部分についてはどういう手続で書くことになるのかとか,そのときの作業量はどう増えるのか,やはりこれはそういうところまで含めて我々認識した上で最終的な確認をした方がいいと思いますので,次回にでもそういう資料というか情報を準備していただいて,もう一度確認をさせていいたいなという気がいたしますが。 ● この点は,ちょっと単にすぽっと削るだけじゃないので,それならちょっと考えなければというふうな御意見もありますので,今日○○関係官,それから御説明いただいたようなことを前提にして,それならどうだということを,申し訳ないですけれども次回に最終的に結論出させていただくと。大枠としては,記載不要が筋だけれども,その上でどうなるのかということを考慮に入れて,最終結論を出すと。   それから,既発生の債権の譲渡における債務者の記載,これは必要的記載事項としたいというのが原案ですけれども,それに対しては幾つか御質問が出てきて,特に既発生・未発生が混在して契約の対象となったときの問題がいろいろ指摘されているところですけれども,これに関連して特に御発言ございますでしょうか。   これも,申し訳ございませんけれども最終的には次回に回さざるを得ないとは思いますが,出せるものは今日全部出していただいて,次回までにお考えいただく方がよろしいと思うのですが,いかがでしょうか。   それでは,特にないようでしたら,今までに出されました御質問,あるいは御意見を踏まえて,次回に,もうそろそろ残りの回数少なくなってまいりましたので,次回に方向性を決めていきたいと思います。   大変不手際で,大幅にお約束の時間を超過してしまいましたことをおわび申し上げます。次回の予定等を事務局から御通知申し上げます。 ● 次回は7月14日,水曜日になりますが,場所は法務省の20階の第1会議室でございます。よろしくお願いいたします。 ● 本日は本当に大変不手際で,時間を延ばした上に先送りになったものばかりで恐縮でございますけれども,残された回数も少なくなってまいりましたので,事務局におきましては鋭意準備を進めていただかざるを得ませんので,その過程でまた委員・幹事の皆様にいろいろと御意見をちょうだいすることがあろうかと思いますが,是非ともよろしく御協力のほど,お願いいたします。   それでは,本日はこれにて終了いたします。 -了-