法制審議会動産・債権担保法制部会第9回会議 議事録 第1 日 時  平成16年8月4日(水)  自 午後1時30分                       至 午後5時05分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱案(案)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 定刻になりましたので,法制審議会動産・債権担保法制部会の第9回会議を開会いたしたいと思います。   本日は,要綱案の取りまとめに向けた実質審議の最終回でございまして,前回までの議事を伺っておりますと,エンドレスで大分長時間議論しないといけないかなという気もいたしますが,会場の都合で5時には必ずここを明け渡さなければいけないということでございますので,何とぞ御協力のほど,よろしくお願いいたします。   それでは,最初に配布資料の説明をお願いいたします。 ● 事務局が事前に送付いたしました資料は,資料番号9-1「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱案(案)」です。   また,本日,席上配布しております資料といたしまして,○○委員作成の意見書及び○○幹事作成の意見書があります。   ○○委員は,かねてより体を悪くされて入院されておりましたが,過日御退院になられました。しかし,まだ完全に御回復されておられないということで,本日も御欠席でございますが,○○委員からは,動産譲渡登記制度の範囲及び効力についての意見書を席上配布するようにとの御指示がございましたので,そのようにいたしました。その概要は,簡単に言いますとA案には理論上及び実際上の問題点があること,B案には対抗要件に関する証明の負担を軽減するなどの意義があるので,B案を支持する。そして,登記の適用範囲については譲渡目的によって限定しない2案を支持するという内容になっております。   ○○幹事の意見書については,後ほど該当箇所において御発言があると思います。   資料については以上でございます。 ● それでは,議事に入ります。   部会資料9-1に基づきまして御説明をいただいた後に,討議に入りたいと思いますが,いつものように,動産関係と債権関係を分けて審議したいと思います。   それでは,まず第1の「動産譲渡に係る登記制度の創設」につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。 ● それでは御説明をさせていただきます。   今回の御説明の資料につきましては,要綱案の取りまとめの書式を意識した形で整理させていただいておりますが,前回御提示したものから変更させていただいたところを中心に,全体を御説明させていただきたいと思います。   まず,第1の「1 動産譲渡に係る登記制度の創設」といたしまして,登記対象となる譲渡の譲渡人は法人に限定し,登記対象となる動産は,個別動産であるか集合動産であるかを問わない動産譲渡に係る登記制度を創設するものとさせていただいております。   次に,2の「登記の効力等」につきましては,担保目的又は流動化目的の動産譲渡登記制度の対象とするA1+α案と,このような限定を加えずに動産譲渡を登記制度の対象とするB2案を併記させていただいております。   まずA1+α案でございますが,プラスアルファの書きぶりにつきましては,特段変更を加えてございません。   なお,2ページの④といたしまして,法人が行う担保目的又は流動化目的の動産譲渡は,民法第178条の規定にかかわらず,登記をもって第三者に対抗することができる旨の原則規定を記載させていただきました。   また,3ページの⑥が,いわゆる三すくみ問題に対する対処についての規定ですが,前回からは規定の仕方を変更させていただいております。いわゆる三すくみの事態におきまして丙が勝つという実質的結論につきましては変更はいたしておりませんが,前回の提案におきましては,乙に対する譲渡は効力を生じないというふうにさせていただきましたところ,御審議の際に,当事者間において効力があるかないかの問題としてとらえるよりも,対抗要件の問題として整理した方が説明が一貫するという御趣旨の御議論をちょうだいしましたので,そのような趣旨を踏まえまして,3ページの⑥にありますような規定ぶりに変更させていただきました。すなわち,登記優先効を規定します⑤におきまして,いわゆる三すくみ状態における甲に該当する者を「先行譲受人」というふうに略称させていただきました上で,⑥におきましては,先行譲受人に対抗することができない譲渡,すなわち乙に対する譲渡は,⑤の登記がされた担保目的又は流動化目的の譲渡に係る譲受人,すなわち丙に対抗することができないと規定することで解決してはどうかというふうに提案をさせていただいております。いわゆる三すくみ問題と言われておりますのは,甲が乙に勝ち,乙が丙に勝つと思われるのに,丙は甲に勝つというところであるところ,このような規定をもちまして甲は乙に勝つ,乙は丙には勝たない,丙は甲に勝つということで,ぐうちょきぱあの関係にはならない,トランシティブな関係が成立ということを書こうという提案でございます。   続いてB2案を提示させていただいております。   ①といたしまして,法人が行う動産譲渡を登記制度の対象とする。それから,②といたしまして法人が行う動産譲渡というものは,民法第178条の規定にかかわらず,登記をもって第三者に対抗することができるものとするというふうにB2案をさせていただいております。   第1の1及び2につきましては,以上でございます。 ● 続けて,3の「占有代理人の占有下にある動産の譲渡」について御説明いたします。   前回の御審議におきましては,新たに規定を設ける必要はないのではないかという御意見もございましたけれども,何らかの調整規定を設けるべきであるとの意見が上回っておりました。そこで,いかなる調整規定を設けるかについてでございますけれども,代理人は,所有権に基づく引渡し請求を受けたとしましても,確定判決等を得るまではこれに応じる必要はないというのが民法の一般原則であるとする考え方からいたしましても,この民法の一般原則自体が民法に規定されていないのに,その特例を定める法律において,前回提示させていただきました乙案ないし甲プラス乙案のような規定を設けることには,いささか気持ち悪さがあるという点,それからそのような一般原則に疑問を持たれるような考え方からしましても,この制度において実質的に民法を変更するような,改正するに等しいような規定を設けること自体が相当ではないという御意見もございましたことから,それらの諸事情を勘案いたしまして,前回御提示させていただきました戊案に相当する規定を設けることでどうかということを,今回御提案させていただいております。   次に,4では,「動産譲渡登記の存続期間」について取り上げております。   この点につきましては,第6回会議におきまして,動産譲渡登記のイメージという形で存続期間について御提示させていただいております。そこでは,一般の動産の耐用年数等に照らしまして10年とすることを提案させていただいておりました。   現在行われております動産譲渡担保契約の実態を見ますと,契約上は期間の制限がございませんけれども,大体実務上5年から10年の範囲内で契約自体を見直しているというようなことですので,存続期間を10年ということにすれば,実務上は問題ないのではないかと考えております。   5は,「登記情報の開示」についてでございます。   (1)の「登記情報の開示方法」につきましては,前回の御審議を踏まえまして,譲渡人の使用人を全部の登記情報の開示対象者として加えております。   それから,(2)の「動産譲渡登記の概括的な情報の開示」につきましては,内容自体に変更はございませんけれども,1点だけ,用語を変更しております。②以降に出てきます概括的な事項を記録する媒体の名称につきまして,従前は「動産譲渡登記事項記録簿」という形にしておりましたけれども,近い将来のうちにすべて電算化されることを見込みまして,「動産譲渡事項概要ファイル」という用語に変更をさせていただいております。   最後に,6では「その他」として,所要の規定を整備するものとしております。 ● それでは,「第1 動産譲渡に係る登記制度の創設」につきまして審議をお願いいたします。   先ほど申し上げましたように,本日で大まかなところの取りまとめをいたしたいと思っておりますが,最後まで意見が分かれた場合には,委員の多数決ということになろうかと思いますけれども,余り多数決又は両案併記というふうな形にはしたくない,そういう形ですとなかなか国会で法案を通していただくのが難しくなろうかと思いますので,できる限り意見の一致を見たいと思いますので,重ね重ねではございますけれども,各委員・各幹事の御意見を伺った上で,できる限り調整をしていきたいというふうに思います。   産業界のニーズが強いですから,○○委員の側から御発言をお願いいたします。 ● それでは,私の方から会員各社にいろいろお伺いした結果といいますか,結論めいたものを申し上げたいと思います。   前回の会合で,必要とされる対象範囲について必要とされる制度を設けるのであれば,A案のように効力の強い案でも構わないのではないかというふうに申し上げましたけれども,やはり会員企業にいろいろとディスカッションしてみますと,その場合にどのような使われ方をするかということに対するある種の悪用の懸念というものがどうしても拭い切れないということがございました。これは,特に日常的に多品種,多頻度の動産売買を繰り返すような大手スーパーのような小売業を中心にでございますけれども,これらの業態におきましては今の現状でも例えば管理すべき取引先が余りに多いことから,中の一部が経営不安に陥ったような場合に,在庫商品を第三者が差し押さえるというようなことが,物理的に押さえるということが,やはり実際にはあるようでございます。特に,対象となる商品がプライベートブランドのように,企業の信用にかかわるようなものになった場合には,それは法的な手続をとって時間をかけるよりは,やはり迅速な解決というものを第一に考えざるを得ないというのが実態であるというふうに伺っております。   このような前提で,新たな効力の強い登記制度を設けた場合に,対象範囲をたとえどのように絞ろうとしたとしても,どのような事態が起こるかというのは予測できませんけれども,やはり第三者が登記制度を悪用して,それをもって何らかの請求をしてくるということは,どうしても拭い切れないような気がいたします。   そのような状況を前提として考えれば,やはり登記制度を設ける場合に,先行するものをひっくり返すというような強い効力があるA案では,問題はどうしても大きいということから,そういう懸念の小さなB案からスタートするというところでもいいのではないかと思います。   それを前提として考えますと,対象範囲につきましても,真正譲渡全般を対象としても,ビジネス範囲,ビジネスのチャンスを広げるという観点から,今後の企業の創意工夫が期待できると思われますので,一定の意義があると考えられると思います。したがいまして,結論としてはBの2案であっても構わないのではないかというところで申し上げたいと思います。 ● 同様に登記の効力のところでございますが,この現在の要綱案の案ではA1+α案とB案が御案内のように提示をされております。中小企業金融には,簡潔かつ明快なスキームが望まれることは言うまでもありませんけれども,東京商工会議所は従前からA1案をもって,また日本商工会議所はA1+α案をもって資金調達のための最善の考えであると強調してまいりました。ただ,現在の本部会の御議論からしますと,B2案が妥当であるとの意見が大勢を占めておるようにも思われます。   また,それに関しまして,ただいまの○○委員の御見解にもありますような客観的かつ合理的な理由を見出し得るのであれば,当会議所といたしましてもB2案を採用されてもやむを得ないとの考えに至っております。   もっとも,B2案が採用されまして,法制審議会の総会及び国会において御承認をされるのであれば,是非金融スキームとして制度設計をする際には,いたずらな真正譲渡の登記を戒めて,しかも担保目的のための登記を占有改定,すなわち隠れた担保よりも優先して考えることが徹底されるべきだと思います。このことを社会的にも広めるべく,行政及び金融関係業界の団体等におかれては,啓発活動等,所要の措置を講じられることを望むところでございます。 ● 前回申し上げましたとおり,新たな回収等に使われるという懸念等,モラルの維持への懸念というのは十分にまだ払拭できていないというところの段階において,余りにも強い効力を与えるということは,ちょっと現状の進み具合からして問題があるのではないかというふうに考えます。   とりあえずB2案という形でやって,実際現場での在り方が非常に重要な問題だというふうに思っておりますので,諸関係者の取組みを見ながら検討していくべきではないかと考えます。 ● 私もB2案に賛成でございます。まず理由の第1は,A案をとった場合には,いわゆる三すくみ問題が発生するということはこれまでの御指摘にあったとおりでございます。これは,新たに立法をしたがゆえに発生するという問題であるという点において,非常に問題が大きいのではないだろうかというふうに考えております。この点を解決するために,一定の結論を法律上決めておくという御提案がなされておりますけれども,そういった規定をわざわざ設けなければならないということ自体,あるいはその結論自体が本来的にいわゆる実質的な観点から甲乙つけ難い問題に対して仕方なく決めているというふうな形になってしまうこと自体,非常におさまりが悪いのではないだろうかという気がしております。   ほかにこのような法解釈上の問題が発生しないという保証もないわけでございまして,この段階で非常にまだ不安定なと申しますか,解釈上疑義の発生するおそれのある問題をはらんでいる可能性のあるA案をとるということに対しましては,実務家としますとためらいを覚えるというのが率直なところでございます。   第2に,A案は非常に登記に強い効力を与えるわけでございまして,先ほども御指摘がございましたけれども,先行する占有改定による譲渡担保,これを知りながら悪意のものが次々と後から譲渡担保を設定し,これにつき登記を経ていくと,それにより先行する譲渡担保が次々と覆滅されていくという事態がもし頻繁に起こりますならば,我が国の遵法意識といいますか,法秩序に大きな影響を与えるのではないだろうかという気がいたします。   仮にB2案をとりましても,後から発生してまいります利害関係人,利害関係を持とうとする者に対する効力はございますので,十分意味はあるのではないだろうかというふうに考えます。そう考えますと,もしB案をとった場合には,A1+αという形にわざわざ限定するまでもなく,2案をとるということについても十分な安全性はあるのではないかと,余り心配するようなこともないのではないだろうかという気がいたしております。したがいまして,B2案に賛成いたします。 ● 銀行の中で議論いたしまして,議論の趨勢といたしましては,従前より申し上げているようにA1+αとB2案,これがいまだ比較的拮抗しているような状況にはございます。しかしながら,この部会における議論を御紹介させていただいて,その中でA1+α案については三すくみの問題であるとか,あるいは三すくみ以外にもまだ予期し得ない問題がどこかに隠れているかもしれない,そういった問題であるとか,あるいはB2案であっても,後行取引に対する一定の牽制効果は働くのではないか,こういった観点を御紹介させていただきまして,議論の結果,B2案であっても銀行としてはさほど問題なく対応できるのではないかというふうな結論に至っております。 ● 私ども,リース関係者としましては,A1+α案というのは反対ということで,Bの2案に賛成します。   その理由は,前にも申しましたが,いわゆる担保目的か真正譲渡かというのは当事者が思っておっても後で裁判所などで当事者の認識とは食い違った判断をされるおそれがあるということがございまして,特にリースバックの場合には,いわゆる真正譲渡というふうに当事者が認識して登記をしなかったといった場合に,後で争われて,それはいわゆる担保目的だと認定されるおそれはやはりあろうかと思います。そうしますと,優先すると思ったものが完全に劣後するというふうなことにもなりますので,リース業界にとっては非常に大きな問題であるということです。   それなら,担保として登記すればいいじゃないかということもありますが,当事者が認識していないものを担保として登記するということは,ほかのリース取引に与える影響も非常に大きいということがございますので,A1+α案には反対ということでございます。 ● 日本貿易会の会員の意見を改めてヒアリングいたしましたところ,貿易会としては現在でもA1案が適当ではないかと,こう考える次第でございます。A1案に証券化の要請が加わりまして複雑化していて,かえってA案の傷がふえたというふうなことは非常に残念に思っております。   残されたA1+α案とB2案,これを比較しますと,B2案に積極的に反対するような論拠というのは乏しいというのは我々も理解しているのですけれども,ただ第2回でも出ておりましたとおり,制度整備の必要性の一つとして,先行する隠れた譲渡担保に劣後するおそれ,これを回避する,払拭するという要請があったはずで,そういった意味ではA案がいいのではないかと。あるいは,資金調達の多様化という点からも,B2案ではその効果がやや乏しいのではないかというふうに考えております。   なお,日本貿易会といたしましては,動産譲渡担保法制の制定というのは究極的な我々の希望でございまして,仮に今回B2案で成立した場合でも,引き続き将来的な課題として御検討いただければというふうに考えております。 ● 私は,積極的にB2案に賛成をいたします。これまでの発言の繰り返しになりますけれども,若干意見をまとめさせていただきます。   まず,第1にA1案の難点ですけれども,1案及び1+α案の言う担保目的譲渡に限定するとか,それに流動化目的譲渡を加える等の目的による限定というのは,実際の運用に当たって個別事例において判断が難しくなると思われます。そもそも担保目的譲渡と真正譲渡の区別が困難であるということは,国際的な認識にもなっております。また,そのことから,登記官には実際判断ができませんので,実は要件を満たしていない無効な登記というのが増加するおそれもありまして,この新しい登記制度への信頼度が結果的に低くなるということも考えられるところであります。   それから,A1案の難点の第2点は,理論面から申しましても対抗要件制度というのは画一的に明確な処理をできるのが最大の利点でありますけれども,A案では占有改定と登記の関係において,対抗要件の中に優劣を置くことになりまして,更に引渡しという本来の対抗要件との関係から,三つどもえというような,本来対抗要件制度で起こってはならない現象を生じ,自己が確保した権利についての当事者の予測可能性が非常に低い状況を招来いたします。このような状況を整理するための条文化の案も示されたわけですけれども,規定として理解の難しい長文となること,またそれ以上に,その案でもなお登記と占有改定と引渡しの三者関係が明瞭にならないことから,採用し難いと考えます。つまり最後の点は,登記と占有改定で登記を優位に置き,登記と引渡しは同等とするならば,引渡しと占有改定にも優劣の差を設けなければならないはずであるということが自明であるということであります。   次に,B2案のすぐれた点を申し上げます。   第1には,2案は目的による制限をいたしませんので,画一的な処理ができ,運用上の判断の疑義もなく,当事者の予測可能性が高いということが言えると思います。   それから第2点として,B案は対抗要件として引渡しや占有改定と同等のものを一つふやすだけでありますから,運用上も優先関係は明確でありまして,三すくみのような紛争は起こり得ません。   第3点としてB2案とすれば,法文の書きぶりも簡明になると思われ,恐らく現在ある債権譲渡特例法による登記制度と同様の,あるいは特例法に条文を書き加えるような処理で行うことができて,法律として国民に理解しやすい形でまとめられるのではないかと思います。   そして第4点として,実際の機能として先行する占有改定に勝てなくても,動産譲渡担保について新しく法的裏づけを与えるということで,登記制度創設の意味は十分にあると考えます。   つけ加えますと,そもそも対抗要件理論からすれば,先行する対抗要件があればそれに勝てないのが当然でありまして,また後行の対抗要件に確実に勝てるのが当然であります。したがってB2案は,対抗要件法理からすれば非常に適切なというか,当然の機能を持った対抗要件を創設するということになります。先ほど,当事者の予測可能性が高いと述べましたけれども,そのことからB2案の登記制度にはA1案以上の信頼性が与えられると思われます。ですから,その機能として登記をすれば現在の引渡しや占有改定と同等の保護が得られるということの意味は,実務上十分にあると私は考える次第です。この点,実務に携わる委員・幹事から,この審議会の中で,先行する占有改定を覆す必要のある事案,また覆そうとする事案というのは実際にはそう多くないのだという発言があったことも記憶しておきたいと思います。   以上の諸点から,制度の意図や機能を重視してA1案を採用することと,制度の信頼性,理論的整合性からB2案を採用することを比較した場合に,いずれに利点があり,合理性があるかという判断は,私は明瞭であると思いますので,B2案の採用を決定していただきたいと思います。 ● それでは,引き続き幹事の皆さんの御意見を伺いたいと思いますが,○○幹事からお願いいたします。 ● 既に多くの委員の方々から御発言があったことと,理由及び結論において重複する部分があると思いますけれども,本日に至りますまでの審議を踏まえますと,前回まで申し上げてきたことの繰り返しですけれども,B2案が比較的相当ではないかというふうに考えるものであります。   思い起こしてみますと,占有改定を対抗要件として譲渡担保などの取得を受けるということは,今まで実務で行われているところでありまして,それについてもちろんいろいろ問題があるからこそ今般の御議論が起こったという側面もございますけれども,従前の占有改定に伴う譲渡担保というものが,ひとまず安定して運用されてきたということもこの議論の機会に思い起こしていただきたいわけでございます。A案を導入したときに,先行する占有改定と後行する動産譲渡登記がぶつかったときに,どちらが優先するかということが訴訟裏において論点になったときに,先行する占有改定が担保目的であるか否か,後行する動産譲渡登記が本当に担保目的であったか否か,それらが論点になって,訴訟裏において激しく主張立証が交わされるというような,今までになかったことがつけ加えられることによって,この譲渡担保の制度の運用に不安定さを加えるということを,A案を採用することによって行うということには,やはり大きなちゅうちょを感じざるを得ないというふうに思うものでございます。B案について,それとしての魅力があり,その発足によって動産譲渡担保の制度をより安定的なものとして運用していくことができるだろうということは,ただいま○○委員始めから御指摘のあったとおりであるというふうに思います。   最後に1点つけ加えますと,席上配布の○○委員の1(2)の指摘で,A案について具体的に指摘されているA案の問題点についても,拝読させていただいてなるほどというふうに思うところが大きゅうございます。   以上の観点から,B2案が相当ではないかという意見を申し述べたいと思います。 ● B2案に賛成をしたいと思います。   重要な考慮要素は,譲渡担保,流動化ともに新しい制度を導入することによって同等に安定した法的関係が形成できるという点であろうかと考えます。その点からは,A1+α案もB2もそれぞれ譲渡担保,流動化が同等に法的基盤が整備改善されるところであり,結論が出ないところであります。   では,その上でなぜB2案に賛成であるかといいますと,次のような理由を申し述べたいと思います。既に今日の議論でも出ているところですが,1点に限って申し上げたいと思います。   それは,A1+αの特徴は,第三者対抗要件として動産については4通りの引渡しが民法では用意されているわけですが,これらの相互間では,その先後で優劣が決まるというものであります。しかし,それに加えて,登記を導入することによってA1+α案では,引渡しの中の三通りとは同等であり,しかし占有改定との関係では登記が優先するという特徴を持っているわけです。ここの評価が,私にとっても最後まで難しかったわけですが,しかしこれは次のような問題をなお持っているのだろうと思います。すなわち,現実の引渡しと占有改定は同等の対抗要件でありますし,そして現実の引渡しと登記もまた同等の対抗要件として仕組まれるわけですが,登記と占有改定は登記が時間的におくれても効力が優先するというもので,この三つの対抗要件の間に等式・不等式が一本で成り立たないという点に私の漠然とした不安が最後まで解消せずに残ります。   これに基づいて生じた具体的な問題は,この部会の中で解決されるという方向に私は向かったものと思いますが,しかしこのことが持っている抽象的な問題点,それをどういうふうにしたら解決するのかというところもよく分からないのですが,解決しないまま残されたというふうに考えます。したがって,A1+α案には漠然とした不安が残るということで,賛成できません。   他方,B2案では,当初から果たしてこういう制度で実際のビジネスで使われるのかどうかという危ぐがあったように思います。私もそういう危ぐを共有しておりました。しかし,この部会で回を進むにつれ,実務のビジネスに実際携わっている方々からB2案でも導入されればビジネスでは活用されるだろうという御発言があり,また部会外で実務家の方々とこのことを話題にする機会もありましたが,その際にも,共通の意見を伺うことができました。したがって,B2案を導入することによって資金調達の多様化が図られないという見通しは,現段階では払拭できたのではないと思います。   以上のとおりでありまして,B2案に賛成申し上げます。 ● 私自身の意見はもう既にこれまで述べてきたとおり,A1+αが今回の動産・債権譲渡に係る公示制度の整備のもともとの趣旨といいますか,目的からすれば適当ではないかというふうに感じておりますけれども,しかし最終的にどちらの制度が望ましいかというのは,この政策的な問題,つまり登記にどの程度の効力を付与するのが適当かという極めて政策的な問題でありますので,その点について明確な認識を持って一定の決定がなされるのであれば,それはそれで尊重すべきだろうというふうには考えております。   先ほどからお伺いしておりますと,結局占有改定というものを対抗要件として認めることをどう考えるかという点がポイントだろうと思います。私自身はこれまでも述べておりますように,担保権設定において占有改定というのを対抗要件としてこれまでどおり承認しておくということにはやはり問題が多いので,この際それを見直すというところから,明確な公示制度を長期的な視野に立って構築する一歩を踏み出すべきだというふうに考えてきたわけでありますけれども,ただ現在の実務に携わっておられる方が,むしろ占有改定でいいじゃないかという考え方が強いことがよく分かりました。   占有改定で対抗要件を備えられている場合に,B2案ですと先行する占有改定があればそちらが勝ってしまうわけでありますけれども,その点についての不安はないという御指摘は,結局公示制度不要論だろうと思います。つまり,調べれば分かるからというのは,公示をしなくてもよいという論理でありまして,公示制度というのは調べなくても公示をすることによって調べるコストを軽減するというのがその目的でありますので,公示制度は要らないのだというふうにおっしゃっていると。それから,後行する譲受人に対する効果がB2でもあるじゃないかという御指摘が何人かの委員の方からもなされましたけれども,これはもう既にこれまでの会で明らかなように,即時取得を排除しないということでありますので,登記がされたからといって登記を調査する義務は後行の譲受人に一般的にはないと,これは真正譲渡も含めてB2は対象としているわけでありますから,一般的には登記を調査する義務はないので,時間をかけて調べた上で担保設定をする,なおかつ一定の取引慣行がある場合には即時取得を阻止する効力がある,その程度でありまして,そういう効力もないかもしれないという意味では,余りB2で登記を設けても,登記としての効力はないに等しいのではないかという気がいたします。   先ほどからの御意見も,B2でも構わないとか,とりあえずB2案でもやむを得ないというように,B2というのは登記はできるけれども登記としての効力は余りない,しかし邪魔にならないのだったらいいではないかという御意見もかなり多かったのだろうと思います。これは結局,公示は要らないという話にかなり近くなってきますので,動産の公示制度の整備ということで始めたけれども,余り公示制度は要らないというのが実務の大勢であれば,とりあえず登記はできると,その効果についてはおいおい考えていきましょうというところから始めるということで,現状ではやむを得ないのではないかと。   今日,席上配布されました○○委員のペーパーは非常によくできておりまして,B2案の意義はどこにあるかというと,結局証明の負担の軽減と,それから従来の集合物概念が持っている懸念の払拭という点で,それ以外については余りないということを的確に述べておられると思います。証明の負担の軽減というのは,対抗要件の話ではありませんで,占有改定の公証制度みたいなものをここで導入しようという話でありまして,本来の公示制度とはちょっと違うのだと思いますけれども,こういうものでも登記ができることによってメリットがあるのだと,それ以外にメリットがなくても,このぐらいのメリットがあれば,ないよりはあった方がいいだろうし,またあっても邪魔にならないということであれば,それはそれで一つの政策的な決断としてあり得べき態度だと思います。私自身は,結論としては,本来はA1+αの線で整備を図っていくことが,長期的に見れば妥当な政策的な決定だろうと思いますけれども,まだ我が国の実務においては時期尚早であるということであれば,将来しばらく時期を置いて,もう一度議論をするときに再度この点について慎重に検討していただければというふうに思います。 ● ○○委員がおっしゃったところに私の考え方は尽きております。それに,○○幹事がおっしゃったところを若干つけ加えていただければ結構なわけでありまして,本来担保について,登記による公示というものを求め,占有改定では不十分であるというところから私は出発すべきであるというふうに考えていたわけでありまして,これは対抗要件制度がすべて同一効力でなければならないというふうな話とは独立の問題であろうというふうに思います。   実際,現在の学説においても譲渡担保に関しましてはネームプレートを張らなければ第三者に対抗できないという学説が一定の範囲で有力に唱えられているわけでありまして,つまり担保のときには単なる占有改定では足りないという判断は十分に私は現行法の枠組の中でも可能であったのだろうというふうに思います。   そうなりますと,結局,今回は先ほども○○幹事がおっしゃいましたように,公証制度のような形でB2案ということになるということは,実務的なニーズがないというふうに言われてしまえばそれまでですので,それで結構だとは思いますけれども,○○委員が最後におっしゃいましたように,将来,本来ならば譲渡担保立法までつなげるべきであるというのはそのとおりであろうというふうに思うわけでありまして,そしてそのときには,私はどう考えても担保については基本的に登記が対抗要件になると,幾つか売買代金担保とかについて例外を認めるということがありましても,そうなるのだろうというふうに思います。そのときも,また不可能であると,理論的に不可能であるという話になるのかというと,私はならないのではないか,何で今なるのかというのが私は最後までよく分からないのですが……。ということで,賛成はしませんが反対もしません。 ● 席上配布していただいているところではありますけれども,B2案を支持するというのが私の意見であります。重複になりますので,かいつまんで御説明いたしますと,大きく4点,登記制度への信頼性,それから登記制度の簡明性,法理的な安定性,実務的な機能性という四つの観点から,B2案支持の意見を申し述べさせていただいております。   「1 登記制度への信頼性」のところの途中からですが,1案あるいは1+α案を採用した場合には,要件を満たさない無効な登記が数多く出現することが予想されます。しかも,こうした無効な登記であっても,これを見た後行利害関係人,これから後行で取引関係に入ろうとする者は,それが善良な経済人である限り,先行登記の目的の真実性を疑うことなく取引を中止するであろうことが容易に予想されます。先行登記の存在を知りながら,後行で取引に入ろうとする者がいるとすれば,それは先行登記が無効であることを主張して係争することをあらかじめ織り込んだ異端者であるか,時には先行登記が有効であることを知っていても,係争の負担につけ込んで,和解的解決をねらおうとする非正常なものであるだろうというふうに思われます。   当該登記が,本来無効であるにもかかわらず,良識ある経済人を排斥し,その一方において異端者を利するという,このようなゆがんだ行為規範として作用することは,国家制度として健全なものとは到底考えられません。逆に,善良な経済人であっても,先行登記の目的の真実性を疑うことが一般化するとすれば,それ自体で国家制度としての存在意義を失っていることになります。ここはむしろ,先行登記をした善良な経済人が取引を中止するのは当然というべきですから,これを正面から制度化するB2案が正当であるというふうに考えます。   「登記制度の簡明性」という2番目の問題につきましては,既に何人かの方々がお述べになったとおりだと思いますけれども,登記の効力についてマトリックスにすると四つの区分ができ上がるわけでありまして,その四つの中の一つについて登記優先効があるというわけですが,これ自体,この議論に参加している私ですら,時に頭の中がこんがらがってしまうというような実態がございますので,対抗要件制度というのは広く開放された簡明な仕組みであるべきであり,専門家にも分かりにくい複雑な制度とすることは極力避けるべきであろうというふうに考える次第であります。   それから,「法理的な安定性」につきましても,既に出たところですけれども,対抗要件相互間の優劣の問題,それから担保目的,一定の限定された目的であることが真正譲渡よりもある意味で強い効力を持つということに対する疑問というような観点から,法理的な安定性からもB案がよろしいのではないかというふうに思います。   特に私の立場から強調したいのは,4の「実務的な機能性」のところでありますけれども,A案の利点として,先行する隠れた譲渡担保が存在する危険を克服できることが指摘されていますが,実務上,この危険はさほど高くないと考えられます。貸し手は,融資時,つまり取引開始時において債務者の信用調査や表明保証条項等でこのリスクをカバーしているのであり,融資当初からこのような虚偽申告をされるリスクを現実的なものとして受けとめているわけではありません。   このことは,債権譲渡登記の実務を例にとれば明らかです。債権譲渡の場合,譲渡債権の債務者がインフォメーション機能を果たすとされていますから,先行譲渡の存在を疑う者は債務者あてに先行譲渡の有無を照会することになるはずです。しかし,かかる債務者との接触を回避できる点にこそ,債権譲渡登記のメリットがあるのであり,債権譲受人は,債権譲渡人の表明保証や一般的与信に依存して取引をするのが通常で,かかる先行譲渡の存在を疑うことなく債務者のインフォメーション機能までは利用せずに取引をしています。   動産譲渡についても同じでありまして,隠れた譲渡担保リスクについては同様に考えてよいのではなかろうかと。特に,貸し手がメーンバンクであるとかDIPファイナンスなどのように,債務者側の情報を豊富に持つ場合には,より一層この虚偽申告のリスクはないというふうに思われます。   それから,○○委員の御指摘にもありますとおり,明確な立証手段を持つということは,このB2案の十分なメリットではないかというふうに思います。従来の動産譲渡担保は,占有改定を証する一片の証書にすべてを依存するものでした。日付遡記の主張に備えて確定日付をとり,かつ印鑑証明書を徴求していても,かかる書類は債務者倒産直後の混乱の中で,血走った競合債権者や倒産管財人に対して権利主張していくにはいささか心もとないものであり,単なる私書証書の域を出ないものでありました。権利主張のため,この証拠書類を示そうとしても,一般的にはコピーを交付するのが精一杯であり,関係当事者に対する説得材料としての力を持つものではありませんでした。こうした不安を可及的に回避すべく,明認方法を併用することができても,しょせんは慣習法の世界の対抗要件にすぎませんでした。   これに対し,登記制度が創設された場合には,公文書で対抗要件を立証することができ,また広く公示されていたということが競合当事者間の納得の問題としても大きく作用することが予想され,動産取引をめぐる法律関係の安定に資するものと考えられます。   また,資産流動化取引におきましても,やはりこうした公的な確実な文書による優先的地位というものがあることは,大きくプラスに作用するのではなかろうかというふうに思います。   あわせて若干補足をさせていただきますと,1案ないし1+αという目的に関する制度を採用した場合ですけれども,裁判所の世界で目的の存否をめぐっての紛争というものが大いに予想されるわけであります。特に動産の場合には,迅速な処分が要求されますから,恐らくこれは断行の仮処分の場面において問題として顕在化してくる。断行の仮処分をとった後で,真の所有権を主張する者が第三者異議,あるいはそういったものは執行停止のような形で闘っていくことになりますけれども,そこでこの目的いかんということが議論になってきて,その四つのマトリックスの中のどれに当てはまるのかということが議論になるというのは,非常になかなか判断もしにくい問題ではなかろうかというふうに思います。この点も,重要な点ではないかと思います。   それからもう一つですけれども,A案の場合であっても,登記優先効が認められるのは担保目的での登記に限られることになるわけですけれども,実質的に真正譲渡をねらっているにもかかわらず,登記優先効を利用できてしまうようなケースもあるのではないかと思います。例えば,先行譲渡が隠れた譲渡担保,占有改定譲渡担保で,後行で例えば倒産直後に整理屋のような人が乗り込んできて,その集合動産譲渡担保をけ飛ばそうとしたときに,その集合動産を第三者に真正譲渡してしまいますとひっくり返すことはできませんが,買い手候補者からいったんお金を借りた格好にして,即座にそこに代物弁済をするというような形をとりますと,恐らく後行取引,担保目的で登記をいったんして,すぐ数日後に代物弁済をするとなると,恐らくこれはひっくり返せるというような解釈になってくる。しかしそれは権利濫用だとか何とかというような議論に恐らくなっていくというような形で,担保目的と,それから真正譲渡とのボーダーラインというものは,今のように融資プラス代物弁済のような形でもって抜いていくこともできるのではなかろうかというふうに考えられまして,実際には倒産前後のばたばたの時期の混乱の中で,そういったことも考えられるのではなかろうかというふうに思います。   最後に申し上げますと,私自身も動産についての新しい担保制度,特に権利実行手続まで含めた形での新たな実体権の議論をしていくということそのものについては賛成でありますけれども,今回は公示制度に関する議論ですので,現在の法律の枠組の中ではB2案が適当であるというふうに考えます。 ● 今まで,委員・幹事の皆様がおっしゃったことと重複をしてしまいますので,手短に申し上げたいと思いますけれども,私も今回の動産の譲渡の対抗要件立法としてはB2案を採用するのが適当であると思います。確かにA1案というのは,結局とどのつまりというのは非占有型の動産担保は認めるべきではないということを言い換えただけでございますけれども,それがA1案という形で実現できるかどうかということが,正に今回の立法というのは実体法には一切さわらないで対抗要件のところだけで何とかしようというスタンスで進んでいる立法では,○○幹事はできるというふうにお考えですけれども,私はやはり実体法にさわらないとなれば,譲渡担保というのはやはり所有権が移転しているということで真正譲渡と違う対抗要件を作るということは,理論的に無理ではないかと思います。この点は,○○委員のペーパーに書いてあることと,私,同意見でございます。   ということで,動産譲渡の対抗要件立法ということではB2案が適当であると考えますが,今まで何人の方かがおっしゃいましたように,動産の非占有担保立法を新たに作ると,そのときこそ正に占有改定は一切け飛ばすという,というか,そもそも占有改定などはもう対抗要件としては認めないという立法を作るという次へのステップとして,今回の立法が位置づけられれば幸いだと思っております。   それに関連いたしまして,B2案だと使われないのではないかとか,いろいろ御意見がありますけれども,業界の方々へのお願いでございますけれども,せっかくつくったわけですから,どんどん使っていただく。使っていただくには,正に登記がなければしようがないというふうな--全部が登記がなければ後ろからけ飛ばされると,それは困るとは思いますけれども,担保の場面とか流動化の場面では,みんながそれを使うのがもう常識であるというふうなところにまで持っていっていただければ幸いかと思います。   済みません,手短にと言いながら長くなりましたけれども,一つその意味では最初の対抗要件の対比でA1かB2かというのはよく分かるのですけれども,A1+αというこの対象というのは,A1+αかB2かというのは非常に奇異な感じがいたします。A1かB2かということでは理論的に整序できるわけですけれども,A1+αかB2かというのは,いわゆるニーズというもの,世の中の金融のニーズというのだけが一本線で議論が行われてしまったような気がいたしますので,今後立法に当たってどういう態度をとるかというのは難しい問題だと思いますが,やはりニーズだけで,一本だけで割とこういう基本的な立法が動かされると,これが何本も重なるとわけが分からなくなってしまうというような状況になるのではないかと思います。   最後,ちょっと余計なことを申してしまいました。 ● 登記の立場から申し上げれば,つくっていただいた制度に従って粛々と実務を行う,これが我々の使命だと考えております。ただ,ここで登記が対抗要件として議論の俎上に上っているということは,これまで営々として登記官の努力によって積み上げられてきた登記制度に対する信頼というのがバックボーンにあるだろうと思っております。登記官は,形式的審査権しか有しておりませんが,その範囲内におきまして不実の登記,無効の登記を作出しないように精一杯の努力をこれまで積み重ねてきておりまして,この制度設計につきましては,我々はつくり上げていただきました制度に従って粛々と登記事務を行う体制をつくり上げてまいりたいと思いますが,願わくば引き続き登記官がそのような誇りと自信を持って登記を行うことができる,そのような制度設計としていただければ有り難いと。以上,お願いでございます。 ● 裁判所としては,使われる方のニーズがあるところで制度をつくっていただければいいというふうに考えるのですけれども,私個人的には前回も申し上げましたように,B2案の方が今作るとすればいいのじゃないかというふうに思っております。理由は前回述べたとおりでございます。   できた制度が利用されることによって,後から出てくる人に対する善意かどうかというそこの部分では,これが利用されるべき場面でよく利用されていくということが前提になると思いますので,それをやっていただければ裁判所は判断が楽なるだろうというふうに考えます。 ● 冒頭で○○幹事の方からお話がありましたとおり,本件は立法政策の問題ということでA案,B案どちらであっても,裁判所として特にどちらがという見解はございませんで,事務当局として使いにくいというはございません。 ● 政策の当否につきましては,私どもは容喙すべき事柄ではございませんけれども,法制的な観点から若干の感想を申し上げますと,B2案であれば,これは債権譲渡特例法との整合性という観点からは,民事基本法の特例として対抗要件の特則を定めるというルールの在り方としては,特に問題とか隘路とか,気になる点というのは見当たりません。例えば,無効な登記を作出しないために,登記対象の範囲をどう明確に条文化するか,また明確化しつつ,各その実務に応じた登記対象というものをどのように適切に画していくかという観点の問題も捨象されますし,B2案で立案する場合の特に法制的な問題というものは見当たりません。また,○○委員が御指摘になられたような債権譲渡特例法との整合性という観点からも法体系的な整合性という点ではすぐれているのではないかという印象がございます。   他方で,A1+α案ということになると,仮に政策命題としてそれが立案の課題となるという場合に,いろいろ委員・幹事の先生方から御指摘になられたような種々の問題点について,果たして条文化する場合に現時点の部会の御議論として解明し尽くされているのかという点については,率直に申し上げると懸念は払拭されていないのかなという印象はございます。例えば,担保目的の動産譲渡というものをこのようにさらりとした条文で書いた場合,リース業界の御懸念があるような,そういった無効な登記を作出しないのか,登記対象としての明確性というものが果たして担保されるのか,あるいはその明確性を担保するための条文化というのはどういうものであるべきかという点は,相当慎重な検討を要すると思われますし,流動化目的ということについて,若干の先例に倣って,現時点で細かく個別具体的にがちがちに書き切るということが,○○幹事から以前に御指摘がありましたように,明確性ということと,他方でまた現在あるいは将来にわたっての実務のニーズへの機動性という観点から,双方を満たせるような適正な条文の構築というものについては,かなり相当慎重な検討を要するのではないかという印象はございます。   あるいは,A1案という,いわば民法の普遍的な対抗要件理論をかなり突出して打ち破る,そういう大胆な特例を作るということにつきましては,正に部会で出ました三すくみの問題という,かなり個別的な問題を個別的に条文化するということは,果たして民事基本法としての整合性という観点から,そういう整合的な条文がうまく書き切れるのかという点について,相当慎重な検討を要するものと思われます。また,そういう個別の事案を解決する条文を書いたときに,果たしてそれ以外の問題になるケースというのが全くないということで割り切っていいのか,何百万通りというような,いわゆるコンピュータシミュレーションでもしていただく必要があるようなすべてのケースについて,将来にわたってそういう問題が全く起こり得ないといえるのか,あるいは将来そういうものが起きて来たときに,果たして立法の過誤だという御批判を受けないのだろうかなど,多々そういう点について検討が必要であり,仮にこの案を政策命題とされるということであれば,なおこれらの法制的な問題点について十分に御議論を尽くしていただいた上で,政策判断をしていただければ有り難いという感想は持っております。以上は,あくまで感想でございます。 ● ○○幹事,おくれていらっしゃいましたが,今,一通り委員と幹事の皆さんの最終的な御意見を伺ったところでございますが,○○幹事からも一言お願いいたします。 ● 経済産業省はもう使いたい人のためにシンプルな視点で言っておりますので,したがってちょっと皆さんの御議論とずれるかもしれないですけれども,1+αか2かという議論をしたときに,2の場合に一般の人が動産の取引全部に登記しなければいけないのかという非常にナイーブな懸念があるので,だとすれば1+αで十分ではないかというふうに申し上げた経緯もあります。   それから,AかBかというふうに示されれば,Aの方が使い勝手がいいと使いたい人が思うのは当然であると,私は今でも思っています。   ただ,御議論をいろいろ聞いていると,Aの1+αという議論についていうと,Aにすることに伴う様々な法論理的な議論がまだまだ整理がつかないのではないかという御議論もございました。それから,Aの1+αにしたときに,Aにしたことに伴う様々な悪意のある人が出てきたときの混乱が非常に予期し難いものがあるのではないかという議論も,ある種,説得的な議論だと理解をしております。   それから,1+α,Bになってくれば逆に今の議論は全部払拭されると,かつ払拭された段階ではなるべくシンプルに範囲を限定せずにやった方がいいのじゃないかという御議論も理解できるかと思っております。したがいまして,もともと動産の公示制度をつくっていただくかいただかないかが一番大きな政策的な効果の境目だというところの基本的な路線は,我々は変わっておりませんので,そこさえ乗り越えていただくという結論になった後,AかBと,あるいは1+αか2かという議論はかなり限界的な議論だというような頭の整理をした上で,今回の御提案についていえば,皆様方の御議論の大勢がBの2で走ってみようということであるならば,経済産業省としてはそれが現段階における,日本におけるベストな制度だというふうに認識をいたしまして,それをサポートしていきたいというふうに今考えているところでございます。   ただ,実は走ってみた段階で,やはり使う方々の意見というのは依然私は大事だと思います。流動化の方々,証券化の方々,御専門家の方々がなかなかこういう場で意見を開陳する機会が少なかったということもありますので,我々としてはもしBの2ということで制度が発足し,なお具体的な制度の普及状況,先ほど○○幹事からなるべく使ってくださいという議論がありましたが,我々もそこは十分宣伝をし,応援をしたいと思いますが,なおB案でいろいろな問題点が出ると,あるいはなかなか使い勝手が悪いという議論になりますれば,またこの部会等々で,見直しを前提にした制度をつくってくれとまでは申しませんから,何か問題が出てくれば,またそのときにオープンに議論をしていただくというような構えにしていただければ,一時期A案に非常に期待を持った方々に対する一つの前向きなお答えぶりということになるのではないかというふうに考えております。   長々申し上げましたが,皆様の御議論,何回かずっと聞かせていただきまして,経済産業省としては,最後にこの部会の中でBの2で行こうということになれば,それを支持したいというふうに現在は考えております。 ● それでは委員・幹事の御意見を伺ってまいりましたが,A1あるいはA1+αを強く支持する御意見もございましたけれども,他方でこれに反対する御意見があり,B2というのはそういう意味ではA1案を支持する方も許容できなくはないという意味で,本日のところB2案がすべての皆さんの強い反対はないというような意味でも,B2案というところで取りまとめの方向についての一応の合意をいただいたというふうに理解しております。これに基づきまして,次回までに事務局の側で最終的な要綱の案をおつくりいただきたいというふうに思います。   それにしましても,様々な形で御指摘がありましたように,やや消去法的な要素もないわけではありませんし,実際に使ってみてどうなのかというところに対する御懸念が払拭し切れなかったというふうな点が一番大きいのかとも思いますので,このB2案で制度づくりをした上で,なお実際に運用していった上での問題点等には,これは立法だけではなくて解釈論的な対処も十分に考えられると思いますが,いろいろな形での前向きでの対応を今後とも続けていっていただきたいというふうに考えております。   ○○幹事が今御到着でございますけれども,一応今まで委員と幹事の御意見,一通りお伺いしたところで,B2案が大勢というところでございましたけれども,何か一言ございましたら……。 ● 遅れてきて申し上げるのはあれですけれども。   今ほど,○○委員の方からのお話ではB2案というのが大勢だということでございますけれども,私どもの立場といたしましては,できるだけ使い勝手がいいという要請がございます。せっかく新しい中小企業金融の道を開くというものでございますので。   一方で,法的な保守性といいますか,余り冒険をするのもどうかという両方の観点があろうかと思います。そうした観点の中で,ではB2案で全く使えないかというと,そこはそうではないのだろうと,ある一定の,もちろん使い勝手という方から見ると,例えば100点じゃなくて80点かもしれないけれども,一方のリスクのことを考え併せてみると,恐らくこれは十分使えるものではないだろうかとも思えますので,今ほど○○委員がお話のありましたような大勢がB案ということであれば,私はそれで構わないというふうに考えております。 ● 大体B2案ということのようでございますが,今,○○幹事から,要するに使った後,利用者の声をという御指摘がありましたけれども,それはもう本当にそのとおりだろうと思います。そういう意味では,法務省のやっている立法も,最近は昔と違って非常に迅速に対応するという姿勢で一貫しておりまして,かつては法制審議会にかけると何年かかるか分からないと国会議員からみんな御指摘を受けたのですが,今回のこの部会においても非常に迅速に審議をしていただいておりますが,そういうことでこのところ必要があれば,それに対応して随時法改正をしていくという姿勢でおります。この動産・債権担保につきましても,運用状況に応じて必要があれば,それは直ちに対応していきたいと,こう思っておりますので,新しい制度ができました場合に,積極的な利用を推進すると同時に,問題点があればこちらにお知らせいただければ,こちらとしてもできるだけ早く対応していくと,こういう姿勢で臨みたいと,こう思っております。 ● それでは,ただいまの「登記の効力等」に関しましては,B2案に基づいて要綱案の取りまとめをお願いいたします。   次に,3ページの「3 占有代理人の占有下にある動産の譲渡」でございますが,これにつきましては前回までの戊案が原案として提示されておりますけれども,この点につきましても御意見をいただければと思います。   ○○委員,何かございますでしょうか。 ● 以前,貸金庫の関係で若干の懸念を申し上げさせていただいた経緯があります。その関係で,銀行協会の中でも議論いたしました。ただ,本当に貸金庫について占有代理人の占有下にあるというふうに言えるのかどうか,ここもまだ必ずしも明らかでないというところがありますし,それから今回の議論については,いわゆる実体法の問題には基本的には入らないで,対抗要件の問題として考えるというところが一つと,それから本件のような債権関係と物権による引渡請求権というのが競合する場面というのは,この立法によって新たに発生するような問題ということではなくて,現時点でも,頻度は少ないかもしれないですけれども,ある問題なのかなというふうな形で整理しております。そういう観点からいたしますと,余り深みにはまったような対応を立法上していただくというのはなかなか難しいところかなというところも理解できるところでございまして,そういたしますとこの程度の記載で御対応いただくということでやむを得ないのではないかというふうな意見でございます。 ● ほかに御意見,いかがでございましょうか。 ● 今までも出た話かもしれないのですが,ちょっと議論の前提として2点確認をさせていただきたいと思います。   1点目は,これは登記に係る,登記がなされている場合の規定であって,指図による占有移転というのが一般的に行われたときには適用されない条文であるというふうに考えていいわけですよね。それは,最終的にはどこに区別する正当化根拠というものがあるのかということが第1点です。   第2点目は,これは任意規定なのでしょうか。つまり,代理人によって占有させるに当たって,例えば相当の期間というのを三日というふうにあらかじめ契約によって定めてもよい,あるいはどんなことがあっても自分に対して,自分が預けた中で自分に対して返さなければ債務不履行責任を負うというふうに定めたら,損害賠償の責めは負わないというふうにここに書いてあっても,責めを負うということになるということなのでしょうか。   済みません,ちょっと前提として伺いたいのですが。 ● いかがでしょうか,この点は。 ● 1点目の,なぜ指図による占有移転の場合とこの登記制度を導入した場合を区別して規定するのかという点でございますけれども,そこは前回の最初に問題の所在のところで若干書かせていただきましたけれども,指図による占有移転の場合には,所有権の移転と占有の移転が一緒に行われるのが通常でございますけれども,登記制度が導入された場合には,所有権の移転の対抗要件については登記で備えることができるけれども,指図による占有移転では占有もあわせて移転したのに対し,登記による場合には占有だけが残ってしまって,観念上所有権の所在と占有が分離したような事態が生ずるのではないかという問題意識から,そこは区別して,新しいこういう規律を設けたという次第です。 ● 私が申し上げるのはあれですが,任意規定だろうと思います。つまり,これは前提の確認ですけれども,前回の説明によりますと催告義務もなければ本人が異義を述べなかったときに渡す義務もないと,渡してもいいというだけであって,渡さなくてもいいというわけで,本人が異義を述べないことについての解釈規定だろうと思いますけれども,異義を述べないときには異義を言っているのだというふうに当事者で合意をすれば,この規定は外れると思いますので,そういう意味で任意規定ということになろうかと思います。   それから,前者の動産譲渡登記上の譲受人がというのは,動産譲渡登記もしていないような譲受人が来た場合には,なおさら渡さなくもいいというのは当然だけれども,動産譲渡登記で何か証明書を交付している場合には,渡さなければいけないかという疑義が生ずるので,いや,そんなことはありませんよと,こういう場合だったら渡してもいいかもしれませんけれども,暗にこれは渡さなくていいということを示唆していると。その「暗に」というところが論理的でないからどういう意味があるのかが分からないわけですけれども,直接書きにくいので暗に書くしかないという,そこをくみ取ってほしいということであれば,皆さんでくみ取って,この規定には余り意味はないけれども,暗に渡さなくてもいいということで従来の業界の扱いにはいささかも変更を生じるものではないと。動産譲渡登記はこの点でも特別な効力はないよということを確認したということで,よろしいのじゃないかと思います。 ● ○○幹事のお立場や,ないしは私の立場もそうなんですけれども,ならばよく分かる,今の説明は。しかしながら,動産譲渡登記と占有改定,簡易の引渡し等々の他の対抗要件具備方法との間に優劣の関係はない,全部同じであるという話ですよね。そうすると,なぜ動産譲渡登記というのがもちろん解釈の基準となり得るのかというと,ならないと思うのですね。それは,大きなものがあるというときに,小さなものもいくというのがもちろん解釈なのであって,同じレベルのもののうちの片方だけが書かれているということのときに,もちろん解釈は成り立たないのではないかと思うのですが。 ● それは,登記の対抗力と指図による占有移転の対抗力の強弱に由来して,債権譲渡登記の場合だけの規定があるのじゃなくて,債権譲渡登記の場合には譲渡人から直接占有者への通知がないから,問題が違う形で起きるという,そういう趣旨なのではないですか。 ● そういう御説明の仕方は違いますよね。つまり,指図による占有移転の場合には寄託ですと寄託者からの指示が来るのだから,それに従えばいいというだけであってというのが○○委員の解釈のされ方であって,それは先ほど○○幹事がおっしゃったもちろん解釈みたいな話とは違う説明の仕方ですね。 ● 矛盾していないので。指図による占有移転がなされた場合には,要するに間接占有も移転してという形で来ますから,契約関係も当然に移転して,その人が出さなくちゃいけないということになるだろうと,その点はそうだろうと思います。   また,確定判決が下されればそれに従わなくてはいけないというのも異論がなくて,先ほど私が申し上げたのは,私が所有者だという人があらわれて,実はあれは譲渡人のものじゃなくて私のものだとか,私が紛失したものだとか,私が盗まれたものだという人が出てきたときに,この手続で本当ですかといって催告して異義を述べないときには渡していいかというと,同じような規定を置くことは可能かもしれませんけれども,それは普通そういうことをしなくていいだろうし,する人もいないだろうと。ただ,動産譲渡登記がなされていますと,登記事項証明書を交付を受けている場合には,ただ単に自分が所有者だと主張しているだけではなくて,何かお上が公証しているような外観を与えているので疑義が生ずると,そこで,いや,そんなことありませんよと,これはただ単に登記事項証明書というだけであって,所有権を表章するものではないので,これに応じなくてもよいということが原則ですけれども,こういう手続を踏んで異義を述べない場合には渡してもいいでしょうという規定。   ですから,○○委員がおっしゃったことと私の説明はレベルが違うので,全然矛盾していないと思います。 ● よろしいでしょうか。 ● ちょっと分からないのですが。応じなくてもいいという○○幹事のお話は,そうすると占有をしている人間と所有者との関係ですよね。今おっしゃった,応じなくてもいいというのは。 ● 所有者と称している者との関係。 ● 称している人間。所有者かもしれないですけれども,とにかく所有者と称している人間には返さなくても,何も所有者と称している人間に対しては責任は負わないということがこの条文に含まれているという……。 ● 暗に前提としているというのは,含まれているのとはまた違って,暗に前提としているという以上の説明は難しいのだと思いますけれども,論理的には含まれていないのだろうと思うのです。 ● 暗に前提としているということが,ここからにおうのであれば。 ● におうのであれば意味があるのでしょうけれども,におわないのであれば,余りこの規定自体の意味があるかというと,こういう場合についてこういう規律を置いたのですけれども,こういう場合でなければどうなのでしょうかという問題は,解釈にゆだねましたという説明で,これも一つの説明として成り立つとは思いますけれども。 ● 今の点は,○○幹事は寄託のところの立法経過その他から,要するに判決のような確実なものに基づかない限りは返還しなくても,少なくとも違法として損害賠償を請求されないという解釈をとっておられるわけで,それを判例が認めているかどうかというのはまた別論ですが,少なくともこちらが提案している条文は,その部分についてはいじらない,そこの解釈は変わらないという前提でやっているという意味で,「暗に」ということだろうと思いますが。 ● 明確に書けないので,ある意味では玉虫色で,そうではないという解釈も余地として残りますよと,だからそこは解決がついていないというわけですけれども,解決がついていないと不安な方には,一定の解決はついていますというふうに説明しなければいけないので,それは事務当局としては苦しい立場に置かれると思いますけれども,それはそういう玉虫色の解決を目指したと。これはすべての場合についてそうかもしれませんが,そういうことだろうと思います。 ● ここの記載内容が,いま一つ実はよく分かっていないのですけれども。   本人が異義を述べなかったときに,それでも本人に返してしまった場合にどうなるのかというのは,これ担保権の侵害に当たるのじゃないかなと思いまして,その場合は本人が異義を述べていないのに本人に受寄者が返すということは,果たして許されるのかどうかという議論をまずしなければいけないということ。   それから,本人が異義を述べたときにはどうするのだ,どうなるのだというと,これはどちらにも受寄者として渡さないというのが実務じゃないかと思う次第で,だからこの条文というのは,条文になった場合はそういうふうに読めるのじゃないかと私は思うのですけれども,違っていますでしょうか。 ● 本人に返すと。 ● 異義を述べなかったら本人に返すということはあり得るはずなんですけれども,それについては何も書いていませんけれども。 ● それは解釈だと思います。   2点目のところは,本人が異義を述べた場合でも,実務上は受寄者はどちらにも返さないのではないかと。 ● それは,法的な観点から申し上げれば分からないので,実務的には多分危なくてどちらも返さないということになるのじゃないかと私は思います。 ● 本当に実務的には,恐らく留置権がございますので,それを主張して返さないことになると思うのですが,所有者が被担保債権を弁済するかわりに引き渡せということになれば,またそこは実務上の判断ということになってくると思いますけれども。 ● そういう意味ですべてがB2案の玉虫色とはレベルが違う玉虫色で,これがあったからといってどういう意味があるのか,かつこれは,動産譲渡登記の譲受人ですけれども,何もない譲受人だってこういう話は起こる話ですから,この条文があることによってどれだけ安堵できるかというのは,ましてデフォルトですから,いたずらに逆に混乱を招いてしまうのじゃないかなと思いますので,私はそもそも要らないという考えでございます。 ● 理論的に言うといろいろなことはあるのだろうと思うのですが,やはり単純に何もなしに譲り受けたと主張する者と,動産譲渡登記という国が営んでいるものの譲受人として証明書を提出した場合とでは,事実上の効果は相当違う。特に,受寄者である倉庫業者のような立場に立ったときに,自分のものだから渡せと,何の証拠もないのが言ってきても,それは相手にしないだけのことで,それは問題ないわけですが,やはり登記事項証明書を持ってきて,そこに所有者として書かれている,譲受人として書かれている者から請求があったときに,それを拒絶しようと思えば,やはりそれなりにこういう条文があった方が業者としては安心して振る舞えるという,そういう効果はあるのではないかと。そういう事実上のことを念頭に置いた条文だと思います。 ● なぜこの場合にだけこういう規定があるのかという点は,御指摘のような問題があって,今,○○委員からお答えがあったような事情に基づいてこういう規定が提案されているということですけれども,この規定があることによる混乱というのは,そんなには心配ない……,混乱はないような気がしますけれども,いかがでしょうか。 ● 前回欠席しましたので,ちょっと重複があるかもしれませんが,質問をさせてください。   この3のこのような規律を立法において置いた場合の性質ですが,私が理解するところは次のようなものなのかと思うのですけれども,いかがでしょうか。   すなわち,代理人と本人との間の寄託契約又はその他類似の法律関係に基づく債務不履行の損害賠償請求権,又は不法行為に基づく損害賠償請求権に関する任意規定ですか,当事者間で特段の定めを置かなかった場合に,これに基づいて規律すると,そういう規定だというふうに考えてよろしいでしょうか。 ● 性格づけをしようとすれば,そういうことになるのではないかと思いますが。 ● それを公示制度法の中に入れようという御趣旨ですよね。だから反対だというわけではないのですけれども,何か違和感がありますけれども,御提案をされた事務局は,その違和感よりも実質的な問題解決の方が重要だというふうにお考えになったということになりますでしょうか。 ● 実際にこの登記制度を利用される方々の御懸念というのを踏まえますと,登記制度が,先ほど来御議論がありましたように使われるという前提の中で,そういう使われた登記制度の中でこういうような事態が生じると,そのときに関係者の対応の仕方としてどうかという問題が出てくるのだろうと思います。   それで,この規定を置いても同じではないかという御指摘もございましたが,そこは別にないとあるとではやはりあった方が対応の仕方がかなり明確になると思います。実際に私どもが当事者として御懸念されている方々からお話をお伺いしてみると,それは痛切に感じるところでございまして,その意味から建設的にちょっと考えてみたいというところかなと思いますが。 ● 法的な性質を考えると,御指摘のとおり随分違和感のある条文であることは間違いないだろうと思います。ただ,従来ない動産についての登記という公示制度を新たに設けると,しかも迅速性の要求される動産に関する取引,あるいは寄託,そういったものに大きく影響を与えるわけですので,新しい登記制度を設ける以上は,社会的にそれに関連して安心して取引ができるようにという配慮をする必要があるだろうということは,これはもう間違いないところだろうと思います。そういう意味では,やや理論的な問題点はあるわけですけれども,今までにない新たな制度を設けるということを考えますと,やはりその不安を払拭するという努力の方を優先させるべきではないか,そういう観点からこういう条文を設けることによって,倉庫業者の方々が寄託契約を結ぶについて,従来の扱いを大きく変えることなく事務処理ができるということを考えたわけでございます。 ● ただいま○○幹事の方から御指摘があった違和感というのは,恐らくこのお示しいただいている文案自体について,この会場にいる皆さんが何らかの温度差があるにしても共有していることなのだと思うのですね。   他方,○○委員が繰り返しお話しいただいたように,こういう状況のときの--「受寄者」という言葉がさっきから出ていますけれども,文案からいえば賃借人とか,間接占有が問題になる場面をすべて理論的にカバーする文言になっているのですが,実際は倉庫業者に明示される受寄者なんだと思うのです。その人の立場を考えたときに,確かに公の証明を伴った動産譲渡登記というのを持ってこられたときの困惑その他を考えたときに,何らかの規定を置いてほしいという気持ちが分かる一方で,公示対抗要件制度の法律の中にこういう規定を盛り込むことの不自然さというのはやはりあると思います。   先ほど来御議論になっていることとの関係なんですが,ここに書いてあることそのものは,○○幹事が御指摘になったような整理であると思いますと同時に,幾つかこの規定から直接は書いていないのだけれども派生してくる論点の部分については,規定が言及していないということを認識した上で,解釈にゆだねられる部分が大きいのかなという気がいたします。   2点挙げますと,一つは,こういう状況に置かれたときの登記名義人である譲受人と称する者と,受寄者に当たる人との関係は,この規定からは読めないのですが,恐らく整合的な運用としては,その人に対する関係で,暫時この催告の手段が済むまで引渡しを延期的に拒んだとしても,不法行為その他の責任を負わないというところまでは解釈として言えるのではないかと。それから○○委員が提起なさった,本人が異義を述べたときどうなるのですかというのは,これは正にペンディングになっていて,いろいろな考え方があると思いますが,先ほど出た事情からいえば,そこの手当てを正面からしていなくてもおかしくはないということは言えるだろうと思います。   その上で,私の所見として申し上げますと,そういうふうな整理に立った上で,ぎりぎり置くこと自体に絶対反対であるという感じはいたしませんけれども,やはり事務局としていろいろ感じておられるからそういう政策的,事情的な由来でこの規定をお置きになったのだと思うのですが,やはり置かない方が気持ちがいいなという気がするものですから,いま一度,あってもよい規定かもしれませんが,24日までにそのニーズのところについてお確かめをいただいて,恐らく御心配になっていらっしゃる皆さんに一定の安心を持っていただければ,無理して規定を置かなくても済む話ではないかという気もするものですし,ここでねらわれているような解決というのは,現状でも論理的には同じ構造のことが起こることですから,裁判所の運用などで対処ができるという御説明などをしていただいて,だめだったときにはこういう案文もあり得るのであろうなというふうな,そんな感想を持ちました。 ● 正に,今,○○幹事から御指摘をいただいた事情が背景にはございまして,この間,何回となく関係業界の方と打合せを重ねてまいりました。それで,先方のニーズも十分にくみ取って,前回戊案を提示しましたけれども,先方は,乙案ないしは戊案を修正して丁案の従前の②の引渡しを拒むことができるものとするというものをつけて,更に乙案的なものを入れてほしいとか,いろいろな要望を述べられてこられたのですが,前回の部会の御審議を勘案しますと,なかなかそれを明確に正面から,正にこの特別法の中にそういった規定を設けることは難しいと,理論上の越えなければいけないハードルはかなり高いということを御説明しまして,今回の登記制度ができても,業界の慣行を崩さずに実務上整理できるぎりぎりの範囲はどこかというところと,更に前回の御審議を勘案した結果,今回御提示した戊案ならばというところが決着点でありまして,関係業界との間ではぎりぎりそこまでというところが現時点のところで,それは恐らく24日までお時間をいただいたとしましても,なかなか変えられない,正直難しいというところです。 ● 実務として譲渡担保権者になる立場から考えると,この条文があるのは非常に実は有り難いなと。実際に担保対象動産が,直接債務者の手元にあるというケースは意外と少なくて,大きな案件になればなるほどパートアウトして倉庫業者に,あるいは自分の子会社に保管させているというケースが多いと。ただ我々,債権譲渡通知が出せないように,指図による占有の移転というのはなかなかこれできないわけでございまして,そういったケースでこの動産譲渡登記というのがある意味代理人によって占有されている場合も生きてくるのだというのを,この条文があることによって逆の面から言えるという意味で,非常にこれはあった方が我々としては有り難いというふうに考えております。 ● 中小企業が倉庫業者に在庫をお預けするという場合は多々ございまして,したがって本人の立場になるわけですが,率直に申し上げますと,ただいまの御議論を伺いまして,現実にこの程度の規律でよろしければ,それがまた円滑に担保として利用することができる正に契機になるのであれば,私どもは全く異論はございません。 ● おっしゃられるように,公示法制の中にこういう規定を置くのはやはりちょっと違和感があることは確かですし,同時に民法の原則をここで決めるわけにいきませんので,こういう手続的な側面からしか書けないという,二重に違和感のある規定ではございますけれども,今御説明のありましたような事情でもございますので,先ほど来いただいた御意見を更に踏まえて,御検討は重ねてさせていただきますけれども,要綱案の中に残る可能性の高い規定ということで御了解いただければと思いますけれども,いかがでしょうか。 ● その結論自体には異論はございませんが,法制審議会の部会においてこの条文というか,要綱案が採択されるに当たって,この手続に従っていれば相当の期間内は債権譲渡登記上の譲受人に対して引渡しをしなくても,損害賠償義務を負わないというのが含意されているという意見が幾つか出ておりますので,それが前提であったといわれるとちょっと私は納得がいきませんので,それについて反対するというのを一言言っておきたいと思います。 ● ここで,いったん休憩をとらせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。             (休     憩) ● 再開したいと思います。   先ほど,3の「占有代理人の占有下にある動産の譲渡」の議論を無理やり打ち切ったような形にいたしましたので,何か御発言がございましたら……。 ● 私は,前回も必要性はある程度あるだろうと,置くべき必要性の方から申し上げたのですが,今日も御議論をいろいろお伺いしていて,確かにこういう立法の中に入れることには,私自身もかなり違和感はございますけれども,とりあえず部会の案として残すというか,入れておくという方に賛成をしたいと思います。 ● ほかに,特に御発言ございますでしょうか。   それでは,一応残しておくと,そしてなお引き続き可能な範囲内で御検討をお願いするということにしたいと思います。   では,4の「動産譲渡登記の存続期間」についてでございますが,この点につきまして御意見をいただきたいと思います。 ● 動産譲渡については,債権譲渡のように将来債権の特定性という観点から期間が必要だという要請も実はないので,余り期間については正直なところ深刻にとらえていなかったというのが実情だと思います。   それで,この10年という今回の案を考えてみますと,一つは継続的な取引関係のある責任に対する例えば債権保全ということでこの登記を使う場合に,我々考えるのは,事務作業の手間として,これがどうなのかということなんですけれども,10年という期間であれば,十分実務としても対応できますし,使い勝手がいいのだろうと,こう思います。   それから,継続的な取引関係というのではなくて,例えば債務の弁済を繰り延べるとか,あるいは商社として融資を行う場合,この場合に10年という期間が短過ぎたという問題なんですけれども,これも実務的には10年を超えて融資を行う等々というのは,実は余りないのではないかと思います。そういった意味で,10年というのは必ずしも短過ぎるということはないと。   ただ逆に,譲受人が将来当事者能力を失った場合,なかなかこの登記が抹消されずに残ってしまうという問題もございまして,そういった意味で余り長く期間を設定すると,今度譲渡人の方としてもいつまでたっても担保が消えない,登記が消えないということもございますので,10年というのは適当ではないかと私は考えます。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● 私も,10年とされること自体について反対の意見を述べるものではないのですけれども,「特別の事由がある場合は,この限りでないものとする」というこの部分の運用,これは債権譲渡特例法でももちろんあるわけですけれども,この部分の運用につきましては十分に御留意をお願いしたいと思います。   私の多少関与しております取引の中で,農林漁業者向けの融資などにおいて,集合動産として家畜類を担保にとる場合がございまして,非常に超長期の融資,30年,50年というような融資が出てまいる場合がございます。そういった場合,多分この「特別の事由」ということに当たるというふうに解釈していただけるのだろうと思いますけれども,今,○○委員の方から御質問がありましたような,10年でおおむね足りるとは思いつつ,例外も必ずしも少なくはないのではないかと思いますので,その点ちょっと発言させていただきます。 ● ほかに御意見いかがでございましょうか。 ● 在庫を担保に提供して金融を受けるということであれば,これはもう当然短期を中心にした運転資金を調達をいたしますので,その点でこの10年というのはむしろ長過ぎるのではないかというふうに有り難く受けとめております。   一方で,先ほどの○○幹事の方からも御案内がありましたが,中小企業者においても大型の例えば冷凍庫の設置であるとか,そのような設備を購入する場合に,できるだけ長めの償還期間をお願いをするということもないとは言えないわけです。そういう意味で,それが10年を超えたかどうかというのは個別事案ごとですから何とも言い難い点がございます。したがいまして,この10年でおおむね結構でございますけれども,この「10年を超えて存続期間を定めるべき特別の事由がある場合」の運用に関しては,是非とも御留意をいただければと思っております。 ● 解釈論的な問題点を2点伺いたいのですが。   1点目は,10年を超えても占有改定の効力というのは残るのかという問題が第1点です。   第2点は,それを仮に前提としても前提としなくても出てくる問題ですが,10年間たった時点で更に動産の譲渡登記というのはできるのか,つまり10年たった時点で対抗要件が欠けているというような状態になりますとできそうなわけですけれども,占有改定で引渡しがなされている状況が10年を超えても続くということになりますと,一個もう既に対抗要件があるところに同一の効力の対抗要件がなされるわけですが,そういうことも可能なのかということについて,ちょっと……。もちろん解釈問題であって,決められるべき問題ではないかもしれませんけれども,お考えをお教えいただければと思います。 ● 第2の論点については,延長の登記ができるわけですね。 ● いえいえ,延長ではなくて,やり直しということ。延長ができるのはそうなんでしょうけれども,10年たって1か月間の間があいて,それから新しい譲渡はないのだけれども登記ができるのか。 ● いいのじゃないですか,それで。できるのでしょう。順位的にはその時点の順位になってしまうだけの話で。 ● それは,前者の占有改定の効力としては,10年を超えて存続しているというふうになっても重ねてできるというふうに考えてよろしいわけですね。 ● できるという場合の譲渡は,どの譲渡について登記公示をしているのですか。 ● 昔の譲渡。 ● 昔の譲渡についてということですね。それは集合物論をとった場合。   でなくて,将来取得動産たくさんある場合がありますね。時々刻々。過去のものについては関係ないという場合も,やはり昔の譲渡ということなのか,今後,将来取得する動産の譲渡についての登記ということでも別によさそうな気がしますので,そこは要するに解釈問題なので,その点は決めなくていいということで……。   ただ,占有改定で集合物論をとった場合には,最初のやつは全部カバーしていますから,結局B2案をとった場合には登記というのは対抗要件でも,占有改定は公証制度ですから,一番のベースは会社の占有改定なので,その交渉が途中で切れたときにはもう一回交渉のつぎはぎをするという,そういう発想になるのだと思うのですね,対抗要件で考えるとちょっと変なことになりますけれども,B2案は対抗要件と考えない方が説明はしやすいと思います。 ● しかし,集合物についても占有改定の効力を認めないというふうに解釈論が変わる可能性もないわけではない。 ● その場合も,B2案の説明が全部占有改定を否定して登記しかできないという場合が出てくれば,B2案の固有の意味が出てきますという,そういう話です。○○委員のペーパーのとおりだと思います。   それから,ちょっと質問ですが,「特別の事由があるとき」というところで私も実務に必ずしも詳しいわけではありませんけれども,プロジェクトファイナンスとかPFIなどでプロジェクト期間が20年,30年にわたるような場合で,長期にわたってもうすべて押さえておくという場合には,この「特別の事由があるとき」で対応できるという理解でよろしいわけでしょうか。 ● そのとおりです。 ● ○○委員のお言葉にちょっとお触れになった延長登記のことなのですけれども,現行の債権譲渡特例法が50という数字をイメージしながら規律を与えている延長登記と,ここでのこの10年を前提にしたときの延長登記の仕組みを全く同じにしてよいかどうかは,あるいはもう御所管の方で御検討が進んでいるのかもしれませんけれども,ただいまの○○幹事の御指摘などをヒントして承ると,ややちょっと突っ込んで考えた方がいいなという気もいたしたものですから,最後の御議論は今日はちょっといかないかもしれませんけれども,御検討をお願いしたいということを申し述べておきたいと思います。 ● それは,場合によっては延長登記の制度を設けなくてもいいという趣旨を含みますか。 ● いや,むしろもっと使いやすいようにして,さっきの○○幹事がおっしゃった1か月の空白が起きないように,10年が満了に近づいてきたら更に6年,5年と延ばせるような形の使い勝手のいいのがあってもよろしいのではないかと。   つまり,ここの動産のところの10年と,債権のところの10年は,10年に絞ったことの意味が結果的に数字は同じですけれどもやや違うということもありますし,現在の債権譲渡特例法の前提する50年と組み合わされた延長登記の仕組みとも異質であると思いますので,そのあたりを総合的に見て,今よりも延ばしやすく,使い勝手のいいものにしていただきたいなという趣旨で申し上げました。 ● ここで,「動産譲渡登記の存続期間は,10年を超えることができない」というふうに書いておりますが,これは1年でもいいですし,2年でもいい,3年,4年,5年,1年単位で10年までよいということですので,延長のときもまた6年間延長したければ10年プラス6年という形でやってよろしいというふうに思っておりますので,そういうことであれば○○幹事の御疑問はよろしいのでございましょうか。 ● 差し当たり結構です。 ● ほかによろしゅうございますか。規定自体は--規定といいますか,要綱の内容としてはここに記されているような内容で御承認をいただいたということで,次に移らさせていただきたいと思います。   次は,5の「登記情報の開示」でございますが,これは大分以前からこのままの形で御了解をいただいてきたと思っておりますが,名称としては「動産譲渡登記事項概要ファイル」というふうに電子化を前提とした名称に切り替えたということでございますが,御意見がございましたらお願いいたします。--よろしゅうございますか。   次は「その他」。「その他所要の規定を整備するものとする」でございますが,要するにこれの「その他」というところに放り込まれた部分に関連しまして,何か御発言がございましたらお願いいたします。   特にないようでしたら,「第2 債権譲渡に係る登記制度の見直し」の項目に移らせていただきます。   では,事務局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,「第2 債権譲渡に係る登記制度の見直し」につきまして御説明させていただきます。   「1 債務者不特定の将来債権譲渡の公示」では,債務者が特定していない将来債権の譲渡について,債権譲渡登記によって第三者に対する対抗要件を具備することができるようにするものとしております。   2は,債権総額についてでございます。   債権総額につきましては,前回の部会における議論の結果を踏まえまして,(1)で「将来債権を譲渡する場合」,これには既発生の債権と将来債権をあわせて譲渡する場合を含みますが,この場合には債権総額を登記の記載事項としないものとするが,(2)のところでございますが,既発生の債権のみを譲渡する場合には,債権総額を必須の記載事項とするものとしております。   3につきましては,「債務者不特定の将来債権の譲渡に係る登記の存続期間」についてでございます。   この点につきましては,前回の部会での御指摘を受けまして,今回,債務者不特定の将来債権を譲渡する場合,これには債務者の特定している債権と債務者不特定の将来債権をあわせて譲渡する場合を含みますが,この場合には,登記の存続期間を原則として10年以内とすることを御提案させていただいております。   現行債権譲渡特例法上,債権譲渡登記の存続期間は原則として50年以内とされております。しかし,債務者不特定の将来債権の譲渡について,存続期間を長期とする登記によって第三者対抗要件を具備することが可能になりますと,債権が包括的に譲渡されたり,債務者が被担保債権に比して過剰な債権を担保として提供することを余儀なくされるというおそれが高まるという指摘がございます。そこで,このような包括的な債権譲渡や過剰担保を,可及的に防止するという観点から,債務者不特定の将来債権を譲渡する場合には,登記の存続期間を原則として10年以内とすることでいかがでしょうか。現在,債権譲渡登記の件数のうち,98%程度が存続期間を10年以内とするものでございまして,存続期間の延長登記が可能であることもあわせ考えますと,債務者不特定の将来債権の譲渡について,存続期間を原則として10年以内とするものとしても実務上不都合はないのではないかと考えられます。   なお,この案によりましても,債務者を特定した債権のみを譲渡する場合につきましては,これまでどおり存続期間を原則として50年以内ということになります。   続きまして,4の「登記事項証明書の交付請求権者」につきましては,前回の御審議を踏まえまして,利害関係を有するものとは別に,譲渡人の使用人を加えさせていただいております。   5の「債権譲渡登記の概括的な情報の開示」につきましては,媒体の名称を「債権譲渡登記事項ファイル(仮称)」に変更ておりますが,内容に変更はございません。   6では,「その他」として,所要の規定を整備するものとしております。   最後に,部会資料には記載しておりませんが,前回の部会におきまして債権譲渡と相殺の担保的機能との関係を整理すべきであるという御指摘をいただきましたので,この点について御説明を申し上げたいと思います。   この点につきましては,第6回の会議におきまして,債権の譲渡担保は債務者にとって相殺の担保的機能を大きく減殺することとなるところ,債務者不特定の将来債権にまで担保権を設定できるとすれば,債務者に不測の損害を与えかねないから,債権譲渡登記制度の見直しに反対であるという意見が意見照会の結果寄せられたということを御紹介するとともに,債務者不特定の将来債権の譲渡が,債務者の相殺の担保的機能を減殺することにはならないため,この意見は採用することができないと考えられる旨述べさせていただきました。   債務者不特定の将来債権の譲渡が,債務者の相殺の担保的機能を減殺することにはならない理由について再考すべきである旨の御指摘を受けて,改めて検討した結果,次のように考えられると考えましたが,この点いかがでしょうか。   すなわち,債権譲渡特例法は,第三者に対する対抗要件--これは債権譲渡登記ですが--それと債務者に対する対抗要件--これは登記事項証明書を交付した通知--この二つを分けて規定しておりまして,更に債権譲渡特例法の第2条第3項におきまして,登記事項証明書を交付した通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由を譲受人に対抗することができるという旨規定しております。したがって,債務者は,債権譲渡登記がされた後,登記事項証明書を交付した通知を受けるまでに原債権者に対して取得した債権を受働債権とする相殺の抗弁をもって譲受人に対抗し得ると考えられます。この規律につきましては,債務者不特定の将来債権の譲渡の登記を認めた場合についても同様でございますので,債務者不特定の将来債権の譲渡が,債務者の相殺の担保的機能を減殺することにはならないと考えられます。この理由づけの当否につきましても,あわせて本日御審議いただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ● それでは「第2 債権譲渡に係る登記制度の見直し」についての審議に移りたいと思います。   最初に,「債務者不特定の将来債権譲渡の公示」でございますけれども,この部分につきまして御意見がございましたらお願いいたします。--よろしゅうございますか。   それでは,1については御承認をいただけたものとして次に進みます。   「2 譲渡に係る債権の総額」についてでございますけれども,御意見がございましたらお伺いいたします。 ● (1)で,既発生の債権とあわせて譲渡する場合も含んで総額を記載事項としないものとする,前回議論のあった部分のところだと思います。本筋からすると,不確定の部分が非常に大きいし,不安をあおる部分が大きいという部分があるのだろうと思いますし,実務の運用でいくと不安がある部分のところは多分当事者の任意によってそれぞれ適切な判断をされるのだろうというのが趣旨だとは思いますが,一方で,これはひねくれた見方なのかもしれませんが,わずかでも将来が含まれていることによって,例えば99%既存の債権の譲渡であって,何となくそれを見せたくないというような,どうもこれは公示の部分である本来のものと相入れないような部分で使われるようなことがあるのではないかということで,むしろそういうことをやる人はそういうのを確信犯的にやる人が使うのだろうということがあって,これは本来の意義に反するのではないかというふうに考えておるのですけれども,議論のベースの見方をどこに置くかという議論だろうと。ほとんどそういうものまで全部,例えばほとんど中身的に9割以上既存の債務であるというものについても一切求めなくてよいのかということには,非常に疑問を感じます。 ● この点について,何か事務局からありますか。   債権総額が書いてなければ,既存の債権は全部隠れているということになりますか。 ● 譲渡の特定のために必要とされる債権総額については,一部に将来債権が入っている場合には書かれませんけれども,譲渡の対象となっている個別の債権の中に既発生のものがあれば,債権個別事項ファイルに譲渡時債権額として確定額が記録されますから,登記事項証明書をもらって足し算すれば額が分かるということになります。 ● 今のような説明でよろしいのですね。つまり,丸めて幾らかという総額が書いていなくても,どの債権が譲渡されたかというのは,登記の中身を全部見せていただければ,譲渡された債権は個別に出てきますから,だから99%が既存で,ちょっと将来のものをまぜたら,総額は出てきませんけれども,しかし既存の99%のものを隠し通せるかというと,それは隠せないということ。   ほかにいかがでございましょうか。   それでは,2の部分につきましても御承認いただけたものとして,3に移らせていただきます。「債務者不特定の将来債権の譲渡に係る登記の存続期間」,これも10年という提案でございますけれども,この点につきまして御意見をいただきたいと思います。 ● つまらないことなのですけれども,説明の中で「過剰担保」という言葉とともに,「包括的な債権譲渡」というのがマイナスの意味で使われているのですが,「包括的債権譲渡」という言葉は,今までマイナスには使われてなくて,譲渡人の営業を不当に縛るような包括的な債権譲渡とか,前に修飾語がついていたような気がいたしますので,これだと包括的な債権譲渡というのはすべからくいけないという形になってしまうので,ちょっとまずいのではないかと思います。それは説明のことです。   上の本文の方ですけれども,現行の債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律というのは,50年になっていて,ただし書が更にあるというわけですね。私は立法過程を詳細にフォローしていたわけではないのでよく知りませんけれども,その当時伺った話によりますと,例えば住宅ローンというものが譲渡されると,30年,場合によっては親子ローンということになりますともっと長いときがある,そうすると50年というのを認めておくのが妥当であろうというふうに考えられたというふうにちょっと,これは違っていたら後で訂正いただければと思うのですけれども,聞いております。そうなったときに,債務者不特定の住宅ローンと債権等を譲渡するというニーズはないのだろうかというのが少し気になるところであります。   この10年いうのは,期間の話ではなくて,10年たつと登記の効力がなくなってしまうということなので,かなり意味が違うわけでして,そんな場合はただし書で対処すればよいのだということなのかもしれませんけれども,ただし書というのも何か随分茫洋としておりまして,安定した債権譲渡の実務というのを確立する際に,本当にそれでよいのかというのは,私,実務家ではございませんので,素人でございますけれども,ちょっと気になるところであります。そのあたりについて,お教えいただければと思います。 ● もともと現行の債権譲渡特例法で登記の存続期間について50年以内と定めた理由については,ただいま御指摘があったとおり,親子二代にわたる住宅ローン債権等相当長期のものがあって,そのような住宅ローン債権の流動化というニーズもあるということで50年以内とされたという経緯がございます。しかし,債務者不特定の将来債権につきましては,債務者不特定という形でそのような住宅ローン債権を譲渡する事業というのはそれほど想定されないのではないかと考えられます。それから仮にそのような住宅ローン債権を流動化するという必要がある場合には,やはりこの「10年を超えて存続期間を定めるべき特別の事由がある」場合に当たるのではないかと考えております。 ● 動産の譲渡と異なりまして,やはり債権については我々期間というのをかなり気にしております。それで,実務の傾向を申し上げますと,例の平成11年1月29日の診療報酬債権で8年3か月という将来債権が認められるという以降の傾向といたしまして,債権の発生の始期と終期は大体5年ぐらいというのが我々商社の平均的な期間でございます。登記の存続期間というと,それよりも多めにとりますので,大体10年前後ということで,債務者特定の場合の将来債権の譲渡ということになってくると,10年ぐらいが適当ではないかという意味で,債務者不特定になっても運用としては変わらないと思います。多分債務者不特定というのは担保目的で使われるのだろうということになってくるので,10年で実務的な支障というのはないし,適当ではないかと私は考えます。 ● ほかにいかがでございましょうか。これも,実務の側でどうなのかということが一番重要かと思いますけれども。 ● 債務者不特定の住宅ローン債権の証券化のニーズがあるかという点について,実務の観点からお答えすれば一つの答えになるのかなと思うので発言させていただきますけれども。   今,○○委員のおっしゃったとおり,債務者不特定の将来債権譲渡は真正譲渡ではなく担保目的のものになるだろうと。もちろん,中には同質化した債務者について真正譲渡の形での流動化というのはあり得ると思いますけれども,住宅ローンの場合はそこまではいきませんので,現在住宅金融公庫などで行っている証券化におきましても,債務者のリストを全部載せまして,既発生のものとして値段をきっちり決めて流動化を行っております。したがって,債務者不特定の将来債権の形で住宅ローンを流動化するというものは,恐らく考えられないというふうに申し上げてよろしいかと思います。 ● いかがでございましょうか。 ● この債務者不特定の将来債権の場合には,これはいわゆる過剰担保のおそれがあるから10年にすると,ただし10年を超えて,だから今,○○幹事がおっしゃったような流動債権譲渡担保みたいな場合は20年,30年というふうな期間の融資をする場合があるから,その場合には「特別の事情」に当たるので,10年を超えた存続期間も認められるという,この「10年を超えて存続期間を定めるべき特別の事由」というのは,ちょっと私不勉強なものですので,どういう場合なのか教えていただきたいのですけれども。 ● 現行の運用ですが,50年を超えて存続期間を定めるべき特別の事由がある場合には,債権譲渡登記令の第8条第3号という規定がございますが,この特別の事由があることを証する書面を登記申請に当たって添付しなければいけないということとされております。それで,そのような書面が添付されている場合に,その後は登記官の判断ということになると思いますが,契約書等を添付した場合には,50年を超えるような契約期間を定めた契約であれば,登記官はそれに基づいて特別の事由の有無を判断することになると思います。 ● これは,余り楽に認めるのだったら,10年というふうに制限したことの意味はないというのと同じになりそうですよね。 ● 正に今○○委員がおっしゃったように,契約書に20年,30年と書いてあれば,ほとんど自動的にそれだけの存続期間を認めるのだったら,こういうふうに書いたところでどれだけ過剰担保の防止になるのか,どういう意味があるのかがちょっとよく分からないものですから。一律不特定であっても,50年で私は構わないのではないかと思いますけれども。   ただ,ある種の世の中への牽制効果みたいなことでしたらそれはそれでいいのかなと思いますけれども,何か単なる10年でも本当に5年ぐらいの与信期間でがばっと網かけるのは構わない,そこは押さえられなくて,期間のところだけ押さえて過剰担保の防止というのは,何となくちょっとよく分からないところがあります。済みません,とりとめもないことですけれども。 ● 私も,皆さんの御意見を伺ってから発言しようと思って待っておったのですが,まず2点,説明のところにやはり異論があります。   1点目は,先ほど,○○幹事が御指摘になった債権が包括的に譲渡されたりと,これは包括的譲渡自体は当然でありまして,それが○○幹事がおっしゃったように,譲渡人の業務を実質的に立ち行かなくするような要素があったりという特段の状況のある包括譲渡だけが問題でありまして,ですからこの書きぶりはもちろん修正なさるのだろうと思います。   第2点は,正に○○幹事が今おっしゃられたとおり,私も第三債務者が不特定だから過剰担保になるのではないだろうと思っております。過剰担保になるかどうかというのは,そのほかのいろいろな要素で決まってくるのであって,発生原因であるとか始期とか終期であるとか,債権の種類であるとか,こういうものから特定していくわけですから,第三債務者が決まっているかいないかだけで過剰担保になるかならないかが変わってくるというわけではないと思います。したがって,この要綱案を拝見して,ほかの委員・幹事の方から10年ということで御異論が出ないのであれば,私も実務的にもそうなのかなという気でよろしいのかと思っておりましたけれども,やはり債権の方は債務者が特定しているかいないかにかかわらず,この存続期間は今ある50年という規定だけでいいというのが私の第一義的な考えで,10年というのは,先ほど98%が10年以内という御説明があったのですが,私の読んだデータでは,残りの2%,例えば20年とやるとほとんど100%近くカバーするという記憶があったのですが,この「特別の事由」というところで柔軟にやればよろしいのだということであれば構わないのですけれども,御説明があったように契約書に20年,30年と書いてあればそれでよしということで解説書等にもお書きになるということなのか,その辺がちょっとやや意味について釈然としないところがあって,そういうふうに運用するのであれば,正に今,○○委員や○○幹事も言われたように,余りこの規定を作る意味はないという気がするものですから,ここは--私,こだわりません,この部会の大勢に従いたいと思いますけれども,個人としてはそういう違和感がございますということを申し上げておきます。 ● これ,登記の有効期間を制限するというのは,債権譲渡特例法のときに出てきたものなんですけれども,実際に何年間にわたって譲渡するのかということは一つなんですけれども,同時にこういう登記がそのままずっと累積していきますと,システム面に対する負荷は無限に大きくなるというふうなことがありますし,それから先ほど○○委員がちょっとおっしゃったように,抹消登記申請しないと消えないという状態で,債権者が当事者能力を失うとそのまま20年でも30年でも実体がないのに残っていくというようなことを,不動産登記でもそういうものが現にあるわけですけれども,そういうものを避けなければいけないという観点から,登記の有効要件という考え方が入ってきて,多分債権譲渡特例法で考えたときは50年になるということはだれも予想していなかった,もっと短い期間を考えていたのが,実務上の超長期もあるというので50年までいったのだと思うのです。   これは10年で対抗力がなくなるのではなくて,延長登記をすれば延ばしていけるということですので,ある程度やはりそういう債権管理的なことまで考えれば,一応の区切りをつけておくと。   それから,ただし書があるのでざるみたいになっているというふうに言われればそれまでなんですが,やはり標準は10年以内のところで基本的に考えようというのは,ある意味で合理的なのかもしれないと。   フランスでは,抵当権でさえ10年で登記更新しないと登記の効力を失うという形で一定の制限を設けているわけで,これ自体は不合理じゃないし,私は個人的にはただし書は非常に厳格に運用してほしいというふうに思っているのですけれども。 ● 過剰担保ということが今議論になっておりますので,付言させていただきたいのですけれども。   この過剰担保について,今回のこの法制が引き金になってそれを助長するようなことになりはしないかということは,実は私の周りでも懸念する声が非常にございます。それについて,この10年という規定が何がしかの防止策になる,抑止的効果があるのであればということで,私はこれはやはり残しておいていただいた方がよろしいのではないかというふうに思っております。   更に踏み込んで,これで十分なのかということにつきましては,恐らく十分ではないのだろうと思います。ただ,今回の立法に関しましては,恐らく過剰担保を抑止するためにどうすればいいのかというシステムをビルドインするところまでは期待されていないのではないだろうかと,過剰担保についての取扱い,あるいはそれを抑止するためにどうすればいいのかという部分につきましては,一番基礎的なところでは銀行あるいはレンダー,債権者たちの倫理の問題からあるのだろうと思います。あるいは貸付実務の問題のところから始まる問題だろうと思います。いろいろ広がりのある問題なんだろうと思います。あるいは倒産手続に入ってしまった後,どういうふうに必要な運転資金を確保していくのだという問題になりますと,担保権と運転資金調達の必要性の間のせめぎ合いと申しますか,そこら辺についての制度的な考え方の議論にもなってきて,大きな広がりのある問題なのだろうと思いますけれども,ここでの議論としましては,私は今の将来の不特定の債務者に対する将来債権,これについての取扱いは若干変えるというところで,これは私は残していただいてよろしいのじゃないかというふうに考えております。 ● 2点,申し上げさせていただきたいのですけれども。   一つは,この10年の話が出てきた恐らくこの部会の審議での背景なんですが,今日○○委員の方から御指摘があった債権管理上の障害の除去とか,あるいは○○委員の御指摘になった登記制度の負荷とかいう御指摘は,それぞれごもっともであると同時に,しかし恐らく今日初めて指摘されたことで,経過を見ますと○○委員の方から,様々な他の債権者等の存在への憂慮等で余りに投網をかけるように将来債権譲渡担保を許すということはいかがかという問題提起があって,それを受けて事務局の方で御苦心なさったという側面がおありなんだと思います。この説明のところに,恐らくそのことを直接に書きかねて,債務者への経営圧迫みたいな文脈でお書きになるものですから,先ほど委員・幹事からおしかりがあったような説明になっていますけれども,ある程度そういう○○委員の御指摘を踏まえて一つの要素として入ってきたような政策的な規定なんだということを,上手に,どういうふうに書いたらいいかよく分かりませんがきちんと書いていただいた方が,○○委員御指摘のとおり論理的構図としては債務者が不特定であろうが特定だろうがどっちでも同じ関係で起こることなわけですから,論理的な説明だけで押し切ることが難しいので,そういう他の債権者への影響とか,今日御指摘いただいた債権管理上の問題とか,登記制度の負荷とかいうような,中身のある説明でこの10年を出していただくというのがよろしいのではないかという提案,意見が1点でございます。   それからもう1点は,○○関係官が御指摘になったことなのですけれども,もし契約書に10年,20年と書いてあればそれを出して通ることになるでしょうというお話で,○○委員が余りルーズに運用してほしくないという御心配をなさっておられましたが,あれも○○関係官の御指摘は,今までの50年に対する例外の運用の御説明をいただいたのだというふうに私は受けとめましたので,今度この10年に制限したときの「ただし」というところが,契約書が10年超えていれば通りますというのではただし書を置く意味がありませんから,おのずとこれが政策的な規定なんだという説明に添えた上で,ただし書をどう運用していくかは今までと違った観点で改めて考え直していただかなければいけないのだろうということも感じた次第でございます。 ● 私は,今の意見と○○委員の御指摘がそごしているのじゃないかというふうに感じたものですから。   つまり,先ほどから出ている過剰担保かどうかということをこの説明として出すと,いろいろ厄介な問題を抱え込むことになるので,そうでなくて単純に債権管理上の問題として10年で区切って,あとは延長登記でどんどんやっていくということで,過剰担保についても間接的に何がしかの影響はあるかもしれないけれども,それは正面に出さないという説明の方がすっきりしていいのじゃないかという気がいたします。   それで,将来債権の包括的な譲渡の場合の先ほどの延長登記の場合の譲渡は何を登記するのかという議論になるかと思いますけれども,例えば当事者の契約では30年について集合債権として譲渡するという場合には,その契約時点で30年分がすべて譲渡の効果が生じていると,それについて登記をするのは10年までだけれども,延長登記をする場合には先ほどと同じ説明でいけば,当初の譲渡だということになるのだと思いますが,ここは集合物論はなくて,管理理論によってそうなるという説明で延長登記ということに論理的にはなるのだと思いますから,そうなってくると延長登記を認めるのであれば過剰担保抑制というのも正面からはここには盛り込めないわけで,そうなってきますと過剰担保というのはこれは別の判例の公序良俗の枠組がありますので,そちらで直接にやっていただくことにして,こちらは間接的にも何がしかの,まあ10年としておけば,必要なく長期にすることは普通はないだろうという,そういう意味も期待できようぐらいにとどめておいて,正面から過剰担保ということはここでは出さないという説明の方が,皆さんの御賛同が得られるのじゃないかと。そういう趣旨で○○委員は先ほどおまとめになったのじゃないかというふうに感じたものですから,その点御指摘させていただきます。 ● ちょっと初歩的な疑問で恐縮なんですけれども,延長登記ができるからという御発言がありますけれども,今の債権譲渡特例法の6条1項ただし書を見ますと,「ただし,延長により前条第二項の規定に反することとなるときは,この限りでない」ということで,50年を超えるときはできないとなっていますよね。ですから,今まで議論に出てきた延長登記というものは,現在の債権特例法の延長登記とは違うものとして認識しないと,どうもおかしくなるのではなかろうかというふうに今条文を見たのですが,その辺間違っていないでしょうか。 ● 今,御指摘になった6条の中で,「前条二項の規定に反するとき」と書いてありますが,この前条二項というのは本文,ただし書両方から成り立っておりまして,原則としては50年を超えられないと,ただし特別の事情があれば50年を超えられると,これが全体として延長登記のところにもかかっているということですので,特別の事情があればこれを超えられると。ただ特別の事情がなければ,やはり50年以内になりますよと,そういうことなんですが。 ● 延長の期間が50年を超えるときは,「特別な事由」がなければ延長できないと,そういうことです。逆に特別な事情があれば,延長後の期間が当初から通算して50年を超えていても延長ができると,こういうことになりますので,それはこの10年の場合でも同じで,10年にした場合には,10年を超えて期間を長くしたいというときには,「特別の事由」が必要になると,こういうことでございます。 ● そうだとしますと,今のこの部会資料の方のただし書の運用がどうあるべきかという議論だったのですけれども,正しくここが厳格になると延長登記もしにくくなるというお話ですから,延長登記ができるからいいではないかということにはならないと,こういうわけですかね。 ● 新たに債務者不特定の将来債権の譲渡についても登記ができるというふうなことになった場合に,どういった融資に使われることになるかというのを想定したときに,例えば賃貸ビルを建築するといったときに,だれが今後入居することになるのか分からないけれども,将来の賃料債権を担保にとって,建設資金を融資するというふうな取引形態が一つ例として考えられると思うのですけれども,そういった場合には建設資金ということになりますとかなり長期の融資というのも十分考えられることになると思うのですね。そうした場合に,このただし書の「特別の事由」というのを余り厳格に解釈されてしまうようなことになりますと,なかなか本当に使いたいときに使い勝手が悪いというふうなことになってしまっては元も子もないなというふうに感じるところがございまして,少なくともそういうケースについては,特別な事情が認められるような運用をしていただきたいというふうに思っております。   それから,あと延長登記ができればよろしいということにつきましても,融資をする側からしてみますと,10年たったところで本当に設定者から協力が得られてもう一回登記ができるのか,これも一つのリスクになってくるものですから,やはり融資をする段階でそこの部分まである程度担保できるような,そういうふうなことでないとちょっとやりにくいなという印象を持ちます。 ● いろいろ御意見承っておりますが,確かにこの説明の「包括的譲渡」がいかにも悪いというのは御指摘のとおりだろうと思いますが,ただこういう記載がされているのは,既発生の債権についての登記の存続期間と,債務者不特定の将来債権の場合の期間というのは意味が大分違う。要するに,既発生のものについての登記の存続期間というのは,要するに債権そのものが増えるわけではないのですが,将来債権で債務者特定のものについて長期間をとれば,その間に新たな債権が次々に発生してくる可能性が常にあり得るわけです。したがって,長期間にすれば,対象となる債権の範囲が非常に広がる,額としても増える可能性が常にある。そういう違いがあるわけでありまして,そういうことを心配してここの言っている「包括的」というのも,将来に余りにも長期間にわたって認めると当初の予想よりも非常に広い範囲の債権が入ってしまうのではないか,あるいは過剰担保についても当初予想したよりも債権額が非常にふえてくるということがあり得るという,そういう懸念からこのような指摘になっているのだろうと思います。そういう,いわばこれから発生する債権ですから,額も予測がつきにくいわけでありまして,そういったものについて余りに長期間の,50年先の発生するかもしれない債権を譲渡しますという,そういう登記を認めるかというと,これはやはり特別な事情がある場合でなければ難しいのではないかというのが発想の根本ではないかなと思っているのですけれども。   この期間を限ったからといって過剰担保が防げないというのは,それはそのとおりだろうと思います。過剰担保になるかどうかというのは,別にこの期間だけで決まるわけではありませんから。ただ,この長期間の将来債権の譲渡を認めると,過度に広範に,しかもいわば過剰に譲渡される可能性が増えるということは多分言えるのじゃないかと。それを最小限登記面からそういった事態の発生を少しでも抑制するということも,一つの10年に決める理由ではないかなとは思っております。 ● ただいまの○○委員の御説明は,将来で不特定だと額が増える可能性が残る,これはそのとおりなんですけれども,登記の存続期間と将来債権譲渡の契約の何年できるかというりは別の話でありますので,当事者が債務者不特定の将来債権譲渡を30年,40年,50年で契約しても,ほかの発生原因とか始期・終期とか,そういうことで決まっていれば,最高裁判例も言うように,将来のその時点おける債権の発生可能性の高い・低いは問題でなく,譲渡契約自体は有効です。それがだから公序良俗違反等で引っ掛からなければ,過剰担保ということにならなければ,それは有効でありますから,それは例えば20年,30年で契約して,だけども債務者不特定のケース,プロジェクトファイナンスとか,先ほど○○委員からも例が出たようなケースは債務者不特定のことが多いわけですから,その場合には10年しか登記は存続できないので,そこでまた付け直すとか延長するということになる,それが一つまたリスクになるだろうというのは,金融法的にいえば当然であります。それで特別事由の運用いかんによっては,ちょっと窮屈になるだろうと,だからさっき私が発言の中で申し上げたのは,こういう規定を置かないというのは余り抑止的な効果も考えなければいけないという○○委員の御指摘なんかも分かりますので,置くとすれば20という数字にこうしておけば,大分問題が減るのではないかというふうに個人的には思ったわけですけれども。   ですから,登記の存続期間のただし書のこの「10年を超えて存続期間を定めるべき特別の事由がある場合は,この限りでない」というのが,現実には運用上どうなるのかというのは,ちょっと心配の残るところであります。 ● 先ほど,ただし書の適用を厳格にという個人的な見解を申し上げましたけれども,これ実際問題としては,現在の規定の解釈としてもそういうふうな厳格性が要求されているわけでありますし,実際問題として登記官に,そこに実質的な考慮をしろといっても無理ですから,実際上は契約の中で長期間の契約がしっかり約定されていれば,それに応じて期間の超過を認めざるを得ないという,そういう運用になってくるのだろうと思いますけれども,他方でやはり過剰担保へのおそれというのが一部あって,将来債権の包括的譲渡による過剰な担保になるかどうかの判断要素としては,やはり譲渡される債権の種類とか総額とか,期間というのも一つの判断の一要素でもあるのでしょうから,法制的にはどれだけ意味があるのか余りよく分かりませんけれども,やはり10年ぐらいを一つの標準に考えて,具体的に当事者間に契約上の基礎がある場合に限ってはそれを超えるというような制度というのは,今の時点ではそれなりに合理性があるのじゃないかなという感じもするのですけれども,いかがなものでしょうか。 ● 今,○○委員がおっしゃったように,最高裁で将来債権の譲渡,20年先,8年7か月先でもできるわけですが,あれはまだ債務者が特定している場合についてできるといったところで,債務者が不特定の場合は,現時点の法制ではまだ対抗要件を備える手段というのがないところであります。ですので,この話は今回の法制で初めてできることになるわけですので,期間が短いと窮屈だという議論もございますが,ただそれは今に比べればよほど前進するという話になろうと思います。ですので,余りに長くすると危険があるというのであれば,まずは実務上のニーズを踏まえた上で,一歩前進していくと,そして実務上のニーズを見ながらまた検討していくと,そういう方向も十分あり得るのではないかなというふうに考えております。 ● その前に○○委員が言われた,結局ただし書の「特別の事由」の運用がどうなるかという点の認識をはっきりさせておくべきだろうと思います。つまり,過剰担保の抑制という観点からこれを理解する場合には,ただし書の「特別の事由」というのは過剰担保とは言えない合理的な理由がある場合ということになりそうでありますけれども,これは判例法でいけば,現在の判例法は直ちに適用されないとしても,公序良俗違反という一般条項の枠内で裁判所が判断すべきものとされている事柄を,登記官が判断できるということになるのかならないのか。それはできないということになりますと,過剰担保かどうかという観点から「特別の事由」に当たるかどうかという判断はしないということにならざるを得ない。そうなると,当事者が契約で定めておけば,それはそれでただし書はパスするということであれば,本文の方は10年であろうと15年であろうと20年であろうと,さほど窮屈ではないということになろうかと思いますけれども,そうじゃなくて,何か実質的な審査をするということだと変わってくるわけでありますけれども,そのあたり,過剰担保という説明と,「特別の事由」の裁量といいますか,審査の在り方の問題がリンクしていますので,これはどちらかということをここではっきりしておかないと,ややこしいことになるのじゃないかと思います。 ● これは,実質審査はできないということですね。 ● 実質的な審査は困難だとは思いますが,ただこれが実質的審査をしないから10年でも15年でも20年でも同じだというわけではなくて,やはり10年後に相手方の協力を得て登記をし直すと,そのリスクがあるというふうな先ほどのお話がありますので,この期間というのは登記官が形式的審査をするという範囲においても十分意味があると,これを余りに長くするか,それとも10年ぐらいにするかというのは十分に意味があろうかというふうに考えております。 ● どんな事例を念頭に置くかで大分感覚が違うのだと思うのですけれども,例えば消費者金融業者が将来の貸金債権を包括的に譲渡するというときに,現在顧客リストに載っている人に対しては既に名前を挙げて登記をすると,そうするとそれは50年もつのだけれども,しかしながらそれ以外に網をかけようとしてそれ以外にも,ここに書かれていない以外にも,将来当該業者からお金を借りて債務者になった人に対する債権というものも譲渡するということになりますと,その部分は10年で効力が失われるということになるのですが……。 ● 別契約にすればね。 ● 同一契約にすると……。   あ,全部が10年になるのですか。だから別契約にするという方向に話は動くわけですよね。何の意味があるのですか。 ● 今の例でいえば,消費者金融業者,将来50年にわたってお得意さんになる人は余りいないかもしれない。 ● 政策的な意図を含めて初めてできることなので,きちんとやるべきだというのが基本的スタンスで申し上げて……。   もともと,この制度創設の趣旨,目的,また最初の話に戻したくないので今は触れませんけれども,考えたときに,やはり今現実に求められるのはかなり現実的な継続可能性をもってかなり詳しく詰めてきたものが手段として使われるということの中で,将来のものを入れるという意味合いが出てきているのであって,政策の在り方としてはそういうものを許容していこうというところにもとが1点あるのだろうというふうに思います。   それにあわせて,確かに契約の類型化というのは物によってかなり長い期間のものを,当然先ほど例に挙げられた家賃とか集合マンションのような例もあるだろうと思うし,その判断というのは,正しく現実の将来というものを現在の基準に換価するビジネスの上での合理的確実性とセットの部分のところで認められるべきものだろうというふうに思っております。ただでさえ弱い立場にあるものがありますから,そうすると当然期間を長くすればそれが膨らむという意味では非常に,私の感覚としては非常に不公正な力関係の部分には必ずしも対等で合理的に結ばれるのがない契約を強いられる可能性は非常に高くなって,そういうのを避けるということも政策的な理由の一つだと思いますし,それからもう1点,将来債権についてそれを譲渡するかどうかは,当然契約は大原則から考えて当事者の自由だということになるので,それは公序良俗と別の実質の要件で具体的に排除というか,調整をせよというのが現状だと思いますけれども,将来ということになると,要するに将来可能的な契約を結び得る潜在的な契約対象者がいっぱいいる。何でそこの将来のところで限定してしまうのだという意見があったことに対して,一応契約可能性としてはイーブンであるからできるのだということでなっているのですが,確実なものとして,余りにもそういう長期のものについて見るということについては,これはやはり非常に契約当事者間についての関係を余りにも形式にとらえてゆがめるようなことになるのではないかという批判があったというのも,この間の議論の経過の中では事実だったというふうに思っています。 ● 一般的には,中小企業が資金調達をするという場合に,このような売掛債権などの将来債権の担保提供する場合というのは,資金使途上は運転資金として調達することが通例だと思います。先ほどの○○委員のような御案内の設備資金ということもあり得ますけれども,それはすぐれて特別な場合であるというふうに思います。そういう意味で,よしんば登記官,制限されるとすれば,あくまで一つのメルクマールにすぎませんが,中小企業が全国的に多く利用しております国あるいは地公体の制度融資,これを考えますと,およそ10年以内とされております。その意味でも,感覚的で恐縮でございますが大変座りのいい期間だと思っております。 ● これもなかなか論理的には決まらないし,他方で無制限というわけにもいかないというところで,どこに線を引くかという話なんですけれども,ほかに御意見いかがでございましょうか。20年という案が一つ出ているということですけれども。 ● 一言追加で申し上げておきますと,UNCITRALの債権譲渡条約をつくりましたときには,アメリカ代表とかの意見では,第三債務者不特定のものも認めて当然と,かつ,プロジェクトファイナンスとか,要するに大きな建築物をつくってそこの収益から回収するとか,高速道路をつくってそこの利用料金から回収するとかいうようなことを考えると,最低5年,10年は必要だという意見が多かったですね。先進国の代表の中では。したがって,私はこの10という数字がそういう意味では窮屈になるぎりぎりのところではないかというふうに思っておりまして,20ならばもっと楽なのにということを申し上げるだけで,別に20という修正案を出そうとか,そういうことではございませんで,皆さんが10年というのがそのぐらいの,窮屈になるぎりぎりの期間であると,流動化の方から言うと。そういう認識をお持ちの上で,「特別の事由」というところで柔軟に年限が延ばせるのだという認識でやっていただけるならば,それ以上異を唱えるものではございません。 ● ほかにいかがでございましょうか。 ● 今,○○委員がおっしゃったことと重なりますけれども,私も別にこの案自体にどうこうということはございませんけれども,さっき○○幹事がおっしゃったように,この「特別の事由」というのが,登記官は一切形式的審査しかないということで,契約書に20年,30年という与信期間があったらもうそれはそれで「特別の事由」ということで,10年を超えて存続期間を定めるという,登記を認容するということが前提であるならば,別にそんなに10年,20年とかいうのは構わないのではないかと思います。何かちょっと乱暴な言い方ですが。   もう1点,説明のところで,債務者不特定の将来債権であるならば,過剰担保というところに一気に走ってしまうような表現は,少し改めていただきたいと思います。 ● ちょっと初歩的な疑問かもしれないのですが,確認したいところがあるのですけれども。   この「特別の事由」なんですが,先ほどのお話からしますと登記官は実質的な審査はしない,形式的な審査をするということでございまして,そうしますと例えば契約書に長期が定められておって,登記官がそのまま登記を通しましたというふうなことが起こった場合に,後で「特別の事由」が実はなかったということで争いになるということがあり得るのかどうか。仮にあり得るとして,その「特別の事由」が実はなかったとした場合に,そうするとその登記というのは初めから無効な登記だったというふうなことになるのか,そこら辺をちょっと教えていただければと思うのですが。 ● 事務局,何かありましたら……。 ● 非常に難しい話ですが,基本的に登記官の形式的審査権と言われているのは,書類に基づいて機械的にできるような範囲でやっていますので,書類そのものが偽造されている場合というのがないわけではないのですが,一般的に言えばこの「特別の事由」が後でないから登記の効力が問題になるということは,余り考えられないのではないかとは思っておりますが。 ● その場合でも,10年は有効というふうになるのでしょう。10年を超えた部分が問題になり得るのですけれども,契約で例えば20年と書いてあって,20年で登記して,それが後で「特別の事由」なしというふうになることは,余り考えられないように思いますけれども。 ● 余り考えられないけれども,やはりそれはあり得るということで,当事者はリスクを抱えて登記が無効になるという可能性があると。担保目的譲渡か何か,リスクがあってはいけないという話は盛んにしましたけれども,ここはリスクがあるけれどもいいという話。   それからもう一つは,公序良俗違反かどうかという話はまた残るわけですから……。 ● 残ります,それは。 ● 登記官が受理したとしても,裁判所に行って,これは公序良俗違反で過剰担保だったらやはり無効な登記だということになるわけですから,ここでの登記は余り安定的なといいますか,そういう限界事例では後からひっくり返る可能性があるという前提でしなければいけないと。   10年以内だって,その点は同じなわけですね。ここで登記官が受理したからといって,別に過剰担保じゃないというお墨付きは何ら与えられないということになるのではないでしょうか。 ● それは公序良俗違反の場合には,登記の問題じゃなくて,そもそも契約自体の効力の問題ですから。 ● 過剰担保とかそういう他の債権者との公平とか,債務者の事業を圧迫するとか,そういう考慮を入れて「特別の事由」かどうかを一応形式的にせよ判断するということを言っていくと,そこの関係というのは問題になってくるので,そういう話でなくて,契約書に書いてあるかどうかということで,偽造されていなければいいですよということであれば,それはその限度の話だということですっきりするのじゃないでしょうか。 ● 登記の存続期間を登記官のこの「特別の事由」の認定にかからしめているので,登記官が「特別の事由」があるとして,例えば50年なら50年を超えて60年の存続期間にすれば,それは事後的に「特別の事由」がないから50年を超えた部分が無効ですということにはならないのではないでしょうか。登記として存続させている以上は。   だから,登記官が職権で50年経過前に「特別の事由」がないことに気がついて,存続期間を短くするというのをすれば……。   どうですか,登記の担当としては。私もよく分からないのだけれども。   いわば登記として存続させておく期間ということで,登記としてもう有効なものとして公示しちゃっているのを,後から無効ですと言うわけには,多分いかない。ですから,登記官がこの「特別の事由」の認定をして,存続期間を長くしたら,それはもうその期間は有効だと,少なくとも登記してしまったものについては無効になることはないと考えないと,仕方がないのではないかと。 ● このただし書の「特別の事由」なんですけれども,その認定について登記官が与えられている権限がどういうものかというのをうるさく法律論的に議論すればいろいろな議論があるかもしれませんけれども,しかしいずれにしてもかなり裁量的な「特別の事由」の認定権限が登記官に与えられているというふうに考えることができるのだと思うのです。そこのところは,○○委員が御指摘になったように,公序良俗違反の問題と登記の効力の問題に関するここのところとは,性質の違う問題なんだろうと思います。   その上でもう1点添えますけれども,ですから登記官がそういう認定をした後,後で「特別の事由」が客観的になかったということが訴訟で争われるということは,そこから先,それが起こりにくいというふうに言うか起こらないというふうに言うかというのは,理論的に問題が残りますけれども,実際上それはしかしほとんど起こらないのだと思うので,また○○幹事に起こりにくいのですか,起こらないのですかとしかられそうですけれども,それはほとんど99%と100%ぐらいのことで,ネグリジブルな問題なんだというふうに思うのです。それが1点です。   それからもう一つは,登記官は形式的審査ですということが,何か随分軽く言われていると思うのですが,先ほど少し前に○○関係官がおっしゃったことをもう一回思い出していただきたいのですけれども,確かに書面を見て審査しますけれども,書面から既知し得る事柄を手掛かりとして登記官が審査をするということは間違いないのでありまして,その審査の在り方を,契約書に10年,20年と書いてあればパスさせますというふうに考えるか,そうではなくて,その書面から更なる事情がうかがえなければ,やはり「特別の事由」と認定しないとするかということは,同じ形式的審査の論理の中でも,運用としては両極あり得るはずなので,そこのところは御留意をいただきたいというふうに思います。 ● この3項の10年という期間を設定することに,過剰担保を防止するという機能を持たせるのか持たせないのか,そこは持たせるということを前提に今議論はされているのですか。それとも,登記官は形式的審査しかできないから,柔軟に延ばせるのだから,そんな心配はないですよと,そこは見ませんよということを前提に議論しているのですか。 ● 恐らく実務の方がこれを見ると,要するに原則10年でもいいのだけれども,合理的な要するに与信活動しているのですと,そういうケースは特別の事情でちゃんと見てもらえますねと,この1点に尽きているのだと思うのです。だから,意思的に何か悪質な融資活動をして,過剰担保をとって云々というたぐいの議論をやりたいからとはだれも思っていなくて,10年で原則切られたときに,どうしてもしかすると与信の形態等で合理的に見れば10年を超えるケースもあるかもしれないと,そのときはこの「特別の事由」の中できちんと見ていただけるというふうなことなんですねという質問に,どういう答えが返ってくるかということだけなんだと思うのです。だから,先ほど契約書の中に10年,20年と書いていれば,それですっきりいきますよという御議論ならば,それはそれで恐らくすっきりするでしょうし,先ほどおっしゃったように10年,20年と書いているけれども,その要するに契約書を見ながら,その背後にあるいろいろな事業の実態とかを考えて,最後は登記官が合理的な判断をするのですということであるのなら,それも恐らく一つの御回答だと思うのですけれども,いずれにしても恐らくこの10年の議論については,私自身も一応原則10年と切っていただいた上で,ただ合理的な理由があれば延ばせますという議論の合理的な理由のところについて,分かりやすい御説明があれば,この案でいいとは思うのですけれども,今お伺いしていると,そこについて混乱があるので,一応そこを教えていただければ有り難いというふうに思います。 ● 一定の過剰な担保をとることは公序良俗に違反して無効だという,そういう考えがある。そのうちの一つの期間という類型で,一つの縛りを制度としてかけておくというふうに考えれば,それを超えてそれが合理的でなければ,それはやはりいけないということにいきますわね。ただそこは,契約で20年,30年と書いてあれば,それでもう認めればいいのだということであれば,そこは登記としてはスルーしているわけですから,おかしくないわけですね。後は全体として見て,公序良俗違反かを別に考えればいいということになるのだと思うのですね。   後者だと,基本的に過剰融資をどうこうするということは,この10年,アナウンス効果は別として法律上どうこうするということは考えていないというふうに言わなければけいないと思うのです。これ一体どっちにするのかというところは,少し整理していただいた方がいいのではないかと思います。 ● この規定との関係では,今おっしゃられたうちの後者しかあり得ないと思いますけれども。 ● それはもう,ここで10年と定めたからといって,これによって過剰担保を防げるかといったら,それは無理。先ほど委員からの御発言にもありましたように,50年できるのですというと,逆に何にも決めないで50年間先までのが無条件にできるのですということが,かえって過剰担保なり余りにも過渡に広範な債権譲渡を誘発することにつながらないかという,そういったアナウンス効果だろうと思いますね。 ● ○○幹事が最初のころにおっしゃったように,この規定の法的に根拠は債権の整理とか登記の整理とかということにおいて,アナウンス効果としてこういうものがあるという整理でここはいいということになるのですかね。よく分からないので……。 ● ぎりぎり理論的に言えば,過剰担保を防止するために10年にしましたというと,いかにも因果関係がはっきりしない説明になってしまうことは事実ですが,ただ主観的意図としては,10年に決めたということの一つの副次的効果としてそういう効果をねらっているということは間違いないので,そういうねらいを達成するためにどういう説明をするかという,そういう観点から説明の仕方を考えれば,必ずしも論理的な説明だけではない説明もあるのではないかという,そういうことではないかと思います。 ● ですから,その辺は書きぶりを考えていただいて,私は○○幹事がおっしゃるように,これは理論的には過剰担保の話とは切り離していただきたいところなのですが,ですから債権管理とかそういうものを理屈の説明としては出していただいた上で,こういう今回新制度を--新制度といいますか,債務者不特定のものも将来債権を登記できるようにしたそのことについての,世間に対するアナウンス効果とか抑止効果とか,○○委員がさっきおっしゃられたような現実に懸念も出ている,それにも対応せしめた規定であるというぐらいにしておいていただきたいと思います。   ここは,売掛債権担保融資のような,譲渡担保融資のようなものと,債権流動化のようなものを考えるので大分ニュアンスが違ってきますから,恐らくこれUNCITRALの関係者なんかがこの新しい規定を見れば,日本は債務者不特定の将来債権をようやく認めて前進したよと,だけどこの10年というのは余計な規制だというふうに彼らは反応すると思います。その人たちは,そういう今我々がここで議論している抑止効果とかアナウンス効果のことは全然頭にないわけですから,条文を外部から見たら,一種の規制だと,何で10年なんだというふうに言うのだろうと思いますが,それを申し上げた上で私は御提案に従います。そういうことでございます。 ● これは,法制的にはちょっと変わった条文であることは間違いないのですけれども,10年の原則にするのが,絶対反対だという御意見は特にはないというふうに……。 ● 反対です。反対というよりは,ただし書の解釈運用について○○幹事が提示されて,○○幹事が一定の御見解を出された問題についてのコンセンサスといいますか,どういうふうにするのかというのが私にはいま一歩分からないままなんですけれども。合理性で判断するのですか。 ● そこで言っている合理性というのは。 ● いい融資かどうかということでしょうね。それはあり得ないですね。そうすると,何を……。   やはり契約書が20年の期間だったら,それでいいという運用がなされるということなのですか。 ● そうするしかないのではないでしょうか。 ● 最初から20年の期間の契約書を持っていけば,それでいいわけですね。   それがアナウンス効果ということで,法的な意味はほとんどないけれども,10年というふうに書いて,だまされる人はだまされるというか,20年という契約書つくればいいのだけれども,一部の人は引っ掛かってしまうかもしれないと,そういう話ですか。 ● 今の言い方はいささかひどくて,データがパンクしないためにはどこかで消去する期間を設ける。それは50年も一つの選択肢,20年も10年も5年も3年もあるのですね。そのときに,その1点であればどこか,容量の関係がありますから幅は何でもいいというわけではないですが,一定の時期までに存続期間を限るという,それは制度としての側から来る事実があって,ではそれをどこかに決めましょうというときに,何年にしましょうかというときに,実務上制度を作るに際して典型的に想定している類型の取引がおおむねカバーされる範囲でなければ,それはかえって短過ぎて不合理でしょうということになりますから,ここで10年で決めたというのは,ここでのいわばコンセンサスになればですけれども,おおむね,例外はあるかもしれませんがおおむね多くの想定される典型的取引は,10年ぐらいのものでしょうと。正に○○委員なども言われたような,そういうことを念頭に置いてこの制度をつくりましたというアナウンスですね。   そのことは,だからといって20年や30年という与信をし,その間の将来債権譲渡には何の規制にもなりません。そのとおりですが,そういうつもりで制度をここでつくったということのアナウンスメント効果は,ひいては将来債権を担保にとるときの一つの,ごく一般的にここでいろいろ各関係者が集まって典型的に想定した像はそういうものですということが間接的に伝わり,そのことが50年,100年全部の債権を担保にとりますみたいなことは何となくしにくいことになるでしょうという,その程度のアナウンスメント効果なんですが,じゃ20年でも5年でも同じかというと,そういうことはないでしょうと。だからこそ10年なのか20年なのかを決めていただきたいということです。 ● ○○委員のおっしゃることはよく意味が分かります。私もちょっと言葉が過ぎて大変失礼いたしました。   ただ,特定の場合に50年でいいということとの関係は,どのように説明すればよろしいのでしょうか。債務者特定の場合なんですが。 ● それはやはり,従来の議論の中にも出てきたように,全く要するに債務者の将来取得する債権,50年全部担保にとりましたというふうな使われ方は,やはり好ましくないでしょうというふうな考慮も入っていることは間違いないのですよ。 ● 債務者が特定されているということは,将来債権は別なのですが,既発生債権については債権の存続期間が一応特定されているということですね,ですから30年とか50年とかいう債権も,これはありきということで。   だから,債務者が特定されて不特定というよりも,むしろどっちかというと将来債権かどうかという観念でとらえるべきかなと。だから,もし債務者が特定であれ不特定であれ,将来債権だけを担保する制度というのが枠組であるならば,多分特定であれ不特定であれ,10年というのは全くおかしくない議論だったのだろうと思います。本件の場合は,債務者不特定の将来債権ということで,将来債権に限っておりますので,そういった意味では10年という枠組をとらえることは全くもっておかしくないことではないかと。   うまく説明できませんけれども,債務者特定の場合は既発生債権もあって,その既発生債権というのは期限つきのものであって,30年,50年もあり得べしということとの違いがあるのじゃないかと私は思います。 ● 全体を通して言うと,典型的に念頭に置いているものが50年の債務者特定の場合の債権譲渡と,債務者不特定の場合の債権譲渡と違うと,それが50年と10年という差にあらわれていて,そしてその背後には,データをいつまでも管理をしておくということはできないということがあると,こういう整理でよろしいのでしょうか。--分かりました。 ● しつこいようですが,一つだけ。   ここでのコンセンサスとして,当然というか,多くあるものが10年ということでつくったのだというニュアンスが,この法律をつくったことによって登記の存続期間が10年なんだけれども,そのことがひいては将来債権譲渡の有効期間というものも10年までなら大丈夫だというふうに実務が誤解するようなことがあっては,私はさっき申し上げたようにこれは余計な規制になってしまうと。この条文ができても,これは登記の存続期間の話なんですから,第三債務者不特定の将来債権譲渡契約が15年,20年でされて,それで公序良俗違反にならないような縛りがかかっているのだったら,おかしくないはずなんですから,その辺は私どもがここでのコンセンサスというのは,10年あれば大体登記たりるでしょうということで,それだけのことであって,将来債権譲渡の有効期間というようなところまでアナウンス効果が過剰になるようなことは,私は避けていただきたい。その辺はQ&Aか何かでちゃんと説明をしていただきたいと思います。 ● 先ほどの○○幹事の御質問と同じなんですけれども,ちょっとさっきから実はずっと債権譲渡の特例法の原則を50年を10年に短くすればいいのじゃないかなと思っていたのですが,ちょっと恐ろしくて言えなかったのですけれども,○○幹事が質問でおっしゃってくださったのでしり馬に乗りまして……。   やはりいろいろなパターンがありますから,債務者不特定の将来債権だけ登記の存続期間を10年にするという,ここで切り分けるということの説明が上手にできるのかどうか,切り分ける説明というのはせいぜい過剰担保はまずいですよ,債務者不特定の将来債権の場合には10年を超えた--さっきの○○委員の何かメッセージがこもってしまうという嫌なところもありますけれども,債務者不特定の将来債権の場合には,何か期間が長いと過剰担保になりかもしれませんから皆さん気をつけなさいよという,ある種の一つの国とかのメッセージが込められているということしか,50年と10年を切り分ける理由はないと思うので,果たしてそれでいいのかなという,そこを何か……。   ちょっとここからは,言葉が過ぎるかもしれないですけれども,そういう登記という,存続期間というレベルでそういうメッセージを送る,登記という場面でそういうメッセージを送るのがいいのかなと。これ,登記の制度を議論しているのではありませんけれども,どうも登記の場面でそこまでのメッセージをあえて入れる必要があるのかなというのが疑問でございまして,長いものを短くするというのは非常に難しいと思うのですけれども,そもそも50年のように10年を超えて債権譲渡の登記の場合に存続期間が必要なものというのは,どのぐらい現実にはあるのでしょうか。 ● 先ほどおっしゃられたように,現在では98%が10年以内だと。 ● そうすると,正にシステムの負荷とか考えれば,みんな10年で,ただし書で対処とかという……。済みません,話が大きくなってしまって。それがなぜいけないのかということをちょっと教えていただきたいのですけれども。 ● ただ,現行50年を10年に縮めろという議論は,ちょっと……。 ● だからずっと黙っていたので……。   ですから,やはり50年と10年の切り分けを,○○委員がおっしゃったようにある種の実体的なところのメッセージではないとか,債務者不特定の将来債権であっても,繰り返しになりますけれども,過剰担保と一直線にはいかないとか,何となく債務者不特定の将来債権だと過剰担保になるかもしれないから気をつけてくださいぐらいの,それぐらいのメッセージですというぐらいに何とか御説明でしておいていただかないと,UNCITRALの委員の方々に規制だと思われてしまう。 ● むしろ登記を通じてそういう過剰担保を抑制しましょうというよりも,現に想定できる利用目的の中に,将来あなたは50年にわたって取得する債権を全部いただきますというふうなものが,どれほどあるのでしょうかという……。 ● どれほどあるのでしょうかだったらば,ちょっと現実的ではないですけれども,今50年といっても98%しかないという話が返しちゃう。 ● 現在の50年をどうするかという話は,そもそも今確定している債権について50年の登記の存続期間で特段の不都合はない運用がされているものを,急に10年に短くしますというのは,それはなかなかやりにくいですし,現にそれをやろうと思ったら経過措置をどうするか,登記面で考えただけでもぞっとするので,それはそういう現実に運用されているということを前提に議論をしていただかないと困るわけです。   債務者不特定の将来債権の登記については,従来そもそもそういう登記を認めていなかったわけですから,それをどうするかというときに,いろいろな配慮から確定している債権と違う扱いをしても,それは理論的に必ず違う扱いをしなければいけないという理由はないといえばないのですけれども,現実に債務者が不特定のものについて,従来対抗要件を備える道を与えていないので,従来は将来債権の利用がどの程度されるかということは,これはやってみないと分からない。そのときに,登記制度の面から,ともかく50年はもう絶対大丈夫なんですということを最初からぽんと出すということが,従来認めていなかった債務者不特定の債権譲渡を認めるに当たって本当に大丈夫か,それで社会の混乱が生じないかというのは当然あるわけです。それは実体面で規制をするのはとても無理なので,ともあれ登記の面で,存続期間の面で確実に利用されるであろうものを一応の基準として認めたらどうでしょうかという提案です。ですから,理論的に10年でなければならないかと言われれば,それはなかなか難しい。5年じゃ不便だろうということは何となく分かりますが,しかし逆に先ほどの○○委員のお話にもあるように,10年を超えて20年,30年になるのは多分そういう長期間の与信があって,それに伴って包括的に担保にとるような場合でしょうから,それはそういう契約書をつけてやれば当然「特別な事由」で登記できるわけですから,少なくとも10年に制限しておくことによって,現実の利用に支障が生ずるとは思えない。   一方,50年でずるっとやると,何となく怖いなというのは,これは多分多くの方が持っている。そこら辺を考えると,理論的に割り切れないあいまいな面があるのは,先ほどからそんなことばかり申し上げておりますけれども,やはり新しい制度を組み立てるとなると,必ずしも理論的にきれいでない部分があっても,何とか支障の生じないような制度にしたいと,こういうことでございます。 ● 正に,今,○○委員がおっしゃったことを説明に書いていただきたい。私も,おっしゃったことを全面的に賛成をいたしております。 ● 最初に申し上げたことを私自身がすっかり忘れておりましたが,次の会との関係で5時には必ず明け渡すという約束になっておりまして,あと4,5,6が残っているのですが,特に御意見……。 ● 先ほどのやりとりの関係なんですが,先ほどの御議論の中で,契約書に何年と書きさえすればそれがフリーパスになるのだというような趣旨の御発言も幾つかあって,多分議事録に残るのではないかと思います。登記官は,形式的審査権しか有しておりませんから,審査の対象となりますのはそういった書面ではありますが,書面が形さえ調っていればフリーパスになるというものではございませんで,独立した行政庁として処分権限を行使しております。その点だけは,くれぐれもお間違いのないようにしていただきたい。この点だけ議事録に残させていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● 書面の記載から明らかに公序良俗に反するようなものは,そこでストップされるということはあり得るということですね。 ● 個々の登記官に属している権限の行使としての判断でございますので,必ずフリーパスになるとか,そういうものではございません。 ● 1点だけ。   以前に申し上げました相殺の担保的機能につきまして,若干説明がありましたけれども,要綱の結論には関係がありませんので,何か損なわないという先ほどの説明もおかしいと思いますけれども,そういうことでコンセンサスが得られたということでなければ,結論に関係ありませんので,その点はまだ解釈論として問題が残っているということだけ確認いただければ,あとはここで議論していただかなくても,法律ができた後に議論すれば結構ですので。 ● 前回から今回の提案で,1から個別にせられたわけでありますが,基本的な部分の考え方として,このような制度を基本的に必要性というものは否定はいたしませんし,制度を作る,そういう意味ではこの中身についても発言をさせていただきました。   ただし,現状の認識から申し上げますと,濫用的な使い方が懸念され,なおかつ労働債権等の保護との関係で公示の措置というのがまだ十分に煮詰まっていないということを前提の上で,最終的なこのことについては問題があるということだけは再度申し上げておきたいと思います。 ● 先ほどの10年の問題もそうですけれども,ここでいただいた御議論をすべて踏まえて,事務局で最終案をつくっていただきます。   それから,今の○○委員の御発言は,大分前から何度も御発言いただいておりまして,やはり実体法に立ち入らないという前提では対処がこの枠内では難しい問題ではありますけれども,社会的には非常に重要な問題だというふうに認識しておりますので,その点につきましても可能であれば何らかの附帯的な要望事項,将来に向かってこういう点に対処するような制度を検討するようにというふうな形のものがつけられるかどうか,少し事務局で検討していただくというふうなことでよろしゅうございましょうか。 ● 私も,今10年のところで異論を申し上げましたけれども,それは将来債権譲渡の発展の阻害要因にならないようにということでありまして,○○委員が従前からおっしゃっておられる労働債権の保護,これは別途十分に考慮しなければいけない問題だと思いますので,その点は今○○委員のおっしゃられたような形で,今後検討する事項としての附帯的な表現等をおつけになることは結構だと思います。 ● それでは,そういうような形で処理をさせていただくということで,ほかの委員・幹事の皆様にも御了承をいただけたということで事務局に少し御検討をいただきたいと思います。   大変議事の進行がまずくて,いろいろと混乱をさせてしまいまして申し訳ございませんでした。大筋では大体の合意がいただけましたので,本日の議論を踏まえまして,事務局で最終案をまとめていただくようにしたいと思います。   次回につきまして,○○幹事からお願いいたします。 ● 次回は8月24日,予定どおりでございますが,火曜日になります。時間は1時半からでございますが,場所が法務省の20階の方に変わりますので,お間違いのないようにお願いいたします。 ● 本日は,長時間にわたり熱心な御議論をいただきましてありがとうございました。 -了-