法制審議会保証制度部会第1回会議 議事録 第1 日 時  平成16年3月29日(月)  自 午後1時32分                        至 午後4時40分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  保証制度の見直しについて(1) 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 若干名の委員・幹事の方,まだ御到着されておりませんけれども,時刻が参りましたので,法制審議会保証制度部会の第1回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   私は,民事局参事官の○○と申します。部会長の選出があるまで,議事を進行させていただきます。   議事に入る前に,法制審議会及び部会について若干の御説明を申し上げます。   法制審議会は,法務大臣の諮問機関でございますが,政令であります法制審議会令によりますと,法制審議会に部会を置くことができることとなっております。この保証制度部会は,さきの2月10日に開催されました法制審議会第142回会議におきまして,法務大臣から保証制度に関する諮問第66号がされました。これを受けまして,その調査審議のために当部会の設置が決定されたものでございます。   法制審議会に諮問された事項は,お手元に配布させていただいておりますように,     保証人が過大な責任を負いがちな保証契約について,その内容を適正化するという観点から,根保証契約を締結する場合に限度額や期間を定めるものとすることなど,保証制度について見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。   というものでございます。   それでは,審議に先立ちまして,まず臨時委員の○○民事局長より一言ごあいさつを申し上げます。 ● 民事局長の○○でございます。どうも本日は委員・幹事の皆様方,お忙しいところをお集まりいただきまして本当にありがとうございます。   当部会で審議する事項につきましては,ただいま○○幹事から御説明申し上げたとおりであります。この保証の問題,昨今非常に社会的に注目を浴びておりまして,自己資本に乏しい中小企業が資金調達のために借入れを行う際に保証を求められる,しかもその場合,金額あるいは期間に限定のない包括根保証が用いられることが比較的多く見られ,その結果,破産に至った場合に保証した経営者あるいはその親族等に非常に苛酷な結果になっている,こういうことが指摘をされているわけでございます。   この点については,内閣府に設置されました経済財政諮問会議におきまして,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」の中で,起業の促進,廃業における障害除去という目的実現の観点から,個人保証の在り方の検討,見直しを進めるということを求めております。   また,これを受けまして,関係省庁において金融実務上の検討や無保証の政策金融の拡充等が検討あるいは実施されてきたところですが,企業倒産が多発する現下の経済情勢を考えますと,保証契約の内容を適正化するためのより直接的な措置を講ずるということが必要ではないかと考えられるわけであります。そこで今回,保証契約の内容を適正化するための措置を講ずるために,諮問記載の事項につきまして調査審議をお願いするということになったものであります。   この保証制度,先ほども申し上げましたが非常に関心も高くて,この国会におきましても既に各党から質問を受けております。そういうことから,この措置につきましても御審議を願いまして,できれば本年中の国会提出をいたしたい,こう思っているわけでございます。そういたしますと,スケジュール的には非常に厳しいスケジュールとなりまして,委員・幹事の皆様方には大変な御負担をおかけすることになるのではないかと思っているのですが,現下の情勢を考え,是非とも御尽力いただきたい,事務当局としても円滑な審議が迅速に進むようにということで,最大限の努力をいたすつもりでありますので,よろしくお願いいたします。   なお,この直接の審議の対象ではありませんが,民法関係の部会として新たにこの部会が立ち上げられましたことを踏まえまして,現在,法務省において進めております民法現代語化の作業について一言御報告をさせていただきます。   御承知のように,民法は明治29年にできたもので,片仮名,文語文ということで非常に分かりにくいという指摘を受けているところでございます。この民法,財産法の部分でございますが,これを一般国民に分かりやすい平仮名,口語体に改めるという作業にかねてから法務省民事局では取り組んでいるわけであります。既に民法学者の先生方にお集まりいただきまして,問題点の洗い出し等一応の準備作業は終わっておりまして,現在,関連する法律の文言との整合性等に配慮しながら,具体的な法文を作成するというところまで来ている段階でございます。法案の具体的な提出時期は,他の案件との調整もありますので,現在の段階ではっきり申し上げるということは難しゅうございますが,今回の保証制度の見直しにおける民法の改正とあわせて,現代語化を行うことも選択肢の一つにはなり得ると考えているところでございます。   そういうことでございますので,本部会におきましても,必要に応じまして民法の現代語化の経過等について御報告をさせていただきたい,こう考えております。   以上,簡単ではございますが私のごあいさつといたします。 (野村委員が,部会長に互選され,法制審議会会長である鳥居委員により部会長に指名された。) ● それでは,早速議事に入りたいと思いますが,最初に事務局の方から資料の御説明をお願いいたします。 ● それでは,配布資料について御説明させていただきます。   まず,右肩の方に「保証制度部会資料1・2」と書いております資料,これは1の方が審議スケジュール(案)で,2の方は「保証制度の見直しについて(1)」と書いてあるものでございます。   それから,金融庁の資料として,20ページほどの冊子と,「新しい中小企業金融の法務に関する研究会報告書」というものが配布されてございます。   もう一つは,東京商工会議所の方から,「個人保証に関する東京商工会議所の意見・提言(抜粋)」というものと,○○委員の方から「包括根保証制度の抑制について」と書いてございます資料が配布されております。--よろしゅうございますでしょうか。 ● それでは,当部会の今後の当面の審議スケジュールにつきまして,事務局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,お手元の資料1に基づいて説明させていただきます。   保証制度の見直しにつきましては,経済活性化のための産業金融の機能強化策の一環としても位置づけられているところでございますし,過大な責任を負いがちであるという指摘がある保証制度の現状に照らしますと,緊急の課題としての措置が求められているものと考えられます。先ほどのあいさつの方にもありましたけれども,法案を本年中にも提出するということを目指して作業を進めるといたしますと,本年の9月の法制審議会総会において答申をいただく必要がございます。そのことから逆算いたしますと,当部会における要綱案,これは本年8月上旬ごろまでに完成している必要があるのではないかというふうに考えます。   一方で,保証制度の見直しが経済取引,殊に金融実務に広く影響が及ぶことが予想されることからすれば,まず試案的なものを示して一般の意見を聴取する手続を行う必要があると思われます。これらをあわせて考えますと,今回を初回といたしまして,月1回のペースで部会を開催し,5月下旬に中間試案を取りまとめて公表した上,6月の1か月間,これを一般に対する意見照会の期間に充てることが相当ではないかと考えております。   さらに,これと並行して審議をお願いして,7月,8月にはその結果を部会に御報告して,要綱案決定のために更に審議を行うという段取りを考えております。   ここにお示ししたスケジュール案は,以上のような予定を割り振ったものでございます。何分窮屈なスケジュールで御不満をお感じになるかもしれませんが,諸般の事情から日程的にやむを得ないところもございますので,御理解を賜ればとお願いする次第でございます。   なお,おわび申し上げなければいけないのですけれども,このスケジュール案に書いてございます7月20日につきましては,他の部会との調整との関係で,やむを得ず変更の必要が生じてございます。とりあえず8月3日を予備日から要綱の取りまとめの予定日に振り替えた上で,別途予備日が必要かどうかということにつきましては,改めて調整の上,決まり次第できるだけ早く御連絡差し上げようと考えております。よろしくお願いいたします。 ● ただいま御説明がありました当面の審議スケジュールにつきまして,何か御意見ございますでしょうか。この案のとおりでよろしいでしょうか。   それでは,特に御異論なければ,当面の審議スケジュールにつきましてはこの案のとおりというふうにしたいと思います。   それでは,本日の審議の中心であります保証制度の見直しについて,審議を行いたいと思います。   本日は,この保証制度の見直しの必要性に関係します資料が席上配布されておりますので,まずこの資料の御説明をお願いしたいと思います。   まず,金融庁提出の資料につきまして,○○幹事の方からお願いいたします。 ● お手元に資料が配布されていると思います。最初の方はばらけているものと,それから後ろに「新しい中小企業金融の法務に関する研究会報告」というのがございます。研究会報告の方はお時間の関係がございますので,後ほど御覧いただくというようなことにさせていただきまして,ばらけた資料の方につきまして簡単にかいつまんで御説明申し上げたいと思います。   1枚おめくりいただきますと,いわゆるポンチ絵でございます。「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」というものが書かれております。これは,私ども金融庁の行政におきまして,この保証の問題はリレーションシップバンキングの問題というようなことでまずとらえてきたというところからでございます。   これは昨年発表されたアクションプログラムですけれども,内容的には二つありまして,一つが左側ですけれども,「中小企業金融の再生に向けた取組み」,もう一つが右側ですが「健全性確保,収益性向上等に向けた取組み」ということでございまして,この両面を進めていくことによりまして--上の四角でございますけれども--中小・地域金融機関の不良債権問題につきまして,平成15,16年度の2年間にこうした取組みを進めることによって不良債権問題を解決していくというようなことにしているわけでございます。   その中で,個人保証の問題でございますけれども,左側の四角の真ん中あたり,4のところを御覧いただきますと,「新しい中小企業金融への取組みの強化」というところがございます。左側は,中小企業の金融全般につきまして述べているものでありますけれども,この中で4の取組みの強化のところ,キャッシュフローを重視し,担保・保証(特に第三者保証)に過度に依存しない新たな中小企業金融に向けた取組みの促進,そして研究会を設置し,モデル取引事例に関する基本的考え方を作成・公表ということでございます。   それから一つ飛ばしまして,5でございますが,「顧客への説明態勢の整備,相談・苦情処理機能の強化」ということで,債務者への重要事項,(貸付・保証契約内容等)の説明態勢に関する監督の在り方の明確化と,この2点をこのアクションプログラムの中で盛り込んでいったというものでございます。   そこで,その一つ目の措置でございます研究会でございますが,それが先ほど申し上げました研究会報告書になったものですけれども,1枚おめくりいただきますと報告書の概要,これも簡単なポンチ絵で示させていただいております。   この研究会,大きく見まして二つのテーマに取り組んでおりまして,現状の中小企業金融,専ら預金取扱金融機関を想定してあったわけでございますけれども,その問題点としまして,一つが担保・保証への過度の依存,もう一つが擬似エクイティーに関する認識の食い違いということでございます。   担保・保証に関しましては,この報告書の中では,まず判例等をサーベイいたしまして,個人保証につきましては結果として効力の限界があるというような取扱いがなされておる,具体的には包括根保証契約などにおきまして責任制限が認められているケースもありますし,それから説明内容に応じまして一定の効力の制限が認められている場合もあるということでございます。   これを受けまして,金融行政面では,金融機関に対しまして説明態勢を整備するよう求めるということで,事務ガイドラインを改定すべきであるというような結論に達しているものでございます。   そこで,その事務ガイドラインの改定につきまして,内容面を御披露させていただきます。もう1枚おめくりいただきますと,これは事務ガイドラインを全体図示したものでごさいまして,テーマとしましては「与信取引に関する顧客への説明態勢及び相談苦情処理機能に関する監督指針」ということでございます。   私どもの銀行法第12条ノ2に,顧客に対する説明をきちんとやるようにというような条文があるわけでございますけれども,それの具体的な運用としまして,真ん中の四角にあるような説明態勢の整備を金融機関に求めるということでございます。   説明態勢の中の更にもう一つ真ん中の大きな箱を御覧いただきますと,1,2,3と柱を立てております。1のところが全行的な内部管理態勢の確立ということでございまして,このアカウンタビリティーの問題についてきちんと経営として取り組むこということが一つ目でございます。   二つ目,そのときにどういうような説明をするべきかということでございますけれども,この内容がまた①,②,③,④となっております。これにつきましては,先ほどの研究会の報告の中で御議論があったところを踏まえて記述したものでありますけれども,まず商品,取引内容,リスクの説明ということで,とりわけ個人保証に関しましてはデリバティブ取引と同様に,最悪シナリオを想定した説明をするべしということが1枚目。それからもう一つは,第三者との包括根保証契約につきましては,保証人の要請があれば債務者の借入残高等の情報提供を行うべしということでございます。   それから,二つ目の柱が契約締結の客観的合理的理由を説明するということでございまして,こうした点につきまして顧客から求められますと,事後の紛争等を未然に防止するため,顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明態勢をとること。   それから三つ目の柱としましては契約の意思確認をきちんとするということで,面前で自署をし,押印をしてもらう。   四つ目としまして,契約書などの書面の交付をきちんと行うということでございます。   ここの四角の中の大きな柱として,取引関係の見直し等の場合についてもきちんと説明をするという,こういう三つの柱を金融機関に求めるということで,そうした事務ガイドラインをを出したものでございます。   めくっていただきますと,それの本文をつけさせていただいております。かなり詳細にわたりますので,関連する部分につきましてはアンダーラインを引かせていただいております。時間の関係もございますので,これも飛ばさせていただきます。   少しページをめくっていただきまして,右のページ数の10のところまでお進みいただきますでしょうか。   タイトルとしまして「平成15検査事務年度検査基本方針及び基本計画」と題します文章をおつけしております。私どもの金融行政におきまして,とりわけこうした取引に係る説明というものは,非常に個々の事例の検証が必要なものですから,一般的な監督のみならず,その場,金融機関に立ち入りましてのオンサイトでの検査においてもきちんと検証していくということが必要なわけでございます。その検査につきましては,年度ごと,事務年度と申しまして8月から翌年7月初めまでというようなことで回しておりますけれども,その事務年度の基本方針の中で今の点を盛り込んでいるというものでございます。   具体的には,12ページでございます。上から3分の1強ぐらいのところでございます。「(2) 中小企業等の経営実態等に即した的確な検査の確保」という項目がございまして,その②でございます。「借り手企業に対する説明責任の履行状況等の検証」ということで,アンダーラインをつけさせていただいておりますが,借り手企業に対する金融機関の説明責任の履行状況等については,顧客への説明態勢及び相談・苦情処理機能に関する事務ガイドラインの改正を踏まえまして,その履行状況等について検証を行いますということが書かれております。   また,同じこの問題,一方では利用者保護の確保という観点からもとらえられているのでございまして,次の(3)の中の①のロでございます。「債務者等に対する説明責任」ということでございまして,説明責任の履行状況等については,改正事務ガイドラインなどを踏まえ,契約時点等における取引等の内容や,取引等の包含するリスク等についての説明内容,説明方法,顧客の承諾の確認方法や,そのための態勢整備の適切性について検証を行う,こういうようなことで定めさせていただいております。本事務年度におきましては,この方針のもとに各金融機関に検査を行う度,実際にこうした個別の取引に即して検証を行ってきているというところでございます。   こうしたことが私どものいわゆる検査,監督行政における取組みでございますけれども,担保・保証に過度に依存しない取引と申しますのは,金融機関にとっても重要な課題であるということで考えておりまして,この点につきまして15ページに表をつけさせていただいております。   15ページを御覧いただきますと,「担保・保証に過度に依存しない資金調達」,企業から見た場合の資金調達ということですが,それに対応する商品,取組みをいたしております。   まず,主要行ですけれども,4大グループのすべてが中小企業向けの無担保・第三者保証不要の融資商品を設けまして,貸出しを拡大させておるということでございます。サイズ的にはまだ小そうございますけれども,真ん中の四角の一番下を御覧いただきますと,いわゆる4メガグループ,合計しましてこの15年度末で1兆3,000億円程度を見込んでおるということでございます。   2番目としまして,地域金融機関,地方銀行であるとか信用金庫であるとか,こういうところですけれども,こうした地域金融機関全行に対しまして,この四角の中にございますリレーションシップバンキングの機能強化計画,こうしたものを提出するよう私ども求めてきたところでございます。一番最初に申しましたリレーションシップバンキングの機能強化のアクションプログラムの項目に沿いまして,各金融機関それぞれが自ら取り組もうとする施策を書き込んで,当局にも提出し,お客さまにも開示をしているわけですが,その中で約8割の金融機関におきまして,担保・保証に依存しない融資を促進するということが盛り込まれております。例としましては,信用格付けモデルを活用した無担保・無保証の商品について,専門店舗で積極的に販売すると,こうしたものがあるということでございます。   以上,金融行政及び金融業界における動きについて御説明申し上げましたけれども,この担保・保証に過度に依存しない資金調達と申しますのは,企業,産業の方から見たときも重要なテーマであるということでございます。この点につきましては,16ページでございますけれども,「経済活性化のための産業金融機能強化策」ということで取りまとめさせていただいたところでございます。この強化策は,そこにございます産業金融機能強化関係閣僚などによる会合ということでございまして,法務省さん,財務省さん,それから経済産業省さん,私ども金融庁及び日本銀行というようなことで会合いたしまして,こうした政策をまとめたわけでございます。   金融庁としましては,経済産業省と共同事務局ということで作業をしてまいったわけですが,この強化策,大きな柱として三つ立てておるわけでありますけれども,一つ目が「多様な資金の流れの整備」ということで,産業金融の担い手・手法の多様化。二つ目が18ページでございます。「リスクへの対応の多様化--担保や保証に過度に依存しない資金調達--」。三つ目の柱が,20ページですけれども,実は産業サイドで「産業の収益力・財務基盤強化」ということでございますが,前後いたして恐縮ですけれども,この保証の問題につきましてはリスクへの対応の多様化という中で大きな項目として立てておるわけでございまして,具体的には19ページの上の方でございますが,「不動産担保によらない担保制度の整備と人的保証の適正化」ということでございます。この点につきましては,法務省におきまして大変なお取組みをいただいておるということでございまして,それをここでも紹介させていただいております。具体的には,二つ目の黒ポツでございますが,個人保証,特に保証債務額の上限を定めていない根保証の適正化のため,法的措置も含め,必要な見直しを行うということでございます。こうした政府レベルでの取組みの一環して,ここで御審議をいただけるということでございまして,何とぞよろしくお願い申し上げたいと存じます   説明は以上でございます。 ● それでは,引き続きまして東京商工会議所提出の資料について,○○委員の方からお願いいたします。 ● ただいまお手元にお配りをしております資料といたしまして,先ほども御案内がございましたが,A4版1枚の「臨時委員 ○○」の名前のもの。並びに東京商工会議所として当該部会に御提出をしたA4の6枚ものでございますが,それぞれ御紹介申し上げます。   まずはお手元に,恐縮ですが東京商工会議所のペーパーからお出しをいただきたいと思います。   中小企業にとりまして,資金調達は最大の経営課題と言って過言ではございません。また,その大宗は間接金融によっておりまして,その保全としてほとんどと言ってよいほどに保証を徴求をされております。この保証に関しては,近年大きな桎梏があって社会問題化している例も少なくございません。この点,先ほど○○幹事から御案内のありましたように,金融庁の御尽力,並びにまた経済産業省,中小企業庁と所管官庁や業界団体の御尽力がございまして,大変有益な行政上の諸施策が講じられていただいております。ここに感謝申し上げる次第でございます。   一方で,商工会議所におきましても,中小企業の立場から様々な提言を行ってきております。これから御案内をいたします意見,提言につきましては,大きな二つの柱がございます。再挑戦が可能な社会づくりというものをコンセプトにいたしまして,第1に包括根保証の見直し,第2に破産法における自由財産の拡充等,これは個人保証に再生手続の創設の提言等も入れておりますけれども,いずれにしてもいわば入口と出口,それぞれに関して大きな柱として位置づけて御提言をさせていただいておるところでございます。   加えまして,この意見,提言につきましては,立法論もさることながら,中小企業金融における政策的な提言,あるいはまた慣行についての御注文も含めて申し上げております。その点はごしんしゃくをいただければと思います。   それでは,過去どのように会議所が主張してきたかということにつきまして御案内申し上げます。   まずは平成13年6月に,中小企業施策に関する要望といたしまして,個人保証制度の見直しを取り上げましたのが実は端緒でございます。ただ,この個人保証制度の見直しに関しましては,内容的にはあくまで私的整理等を含む整理段階において財産の確保を求めるというふうな趣旨でございました。   一方,1年たちました平成14年5月でございますが,御案内のような担保・執行法制の改正要綱中間試案,当時これがパブリックコメントに付されまして,これに関する意見を申し上げておるところでございます。このことにつきましては,恐縮でございますが少々読み上げをさせていただきます。    1 個人保証      中小企業が融資を受ける際,一般的に経営者の個人保証が要求されており,企業経営が破たんして返済に窮した場合,保証人は保証追求により,財産のみならず生活そのものを脅かされるという深刻なケースもある。また,中小企業では,同族や出資者でない者が事業を承継しようとする場合,保証人になることを忌避し,それがために後継体制を組むことができないという問題が生じている。      人的担保としての保証人のあり方について,経営責任とは別の角度から,法人信用の補完として,他の物的担保と同様の有限化の措置を講じられたい。      現行の保証制度では,特定の債務を保証することを原則としているが,不特定債務を保証するとする包括根保証も存在し,特に後者の場合には,保証人は無制限に責任を追及されることになり,その危険性は計り知れない。他方,根抵当権の場合には,3年を経過したときには元本の確定請求をすることができ,担保提供者の保護が図られている。また,保証の一形態である身元保証においても,身元保証契約は原則として3年間しか効力を持たない。このように,将来的に発生する不確実の債務を担保・保証するに当たっては,一定の法政策的配慮がなされているのであるから,根保証のあり方についても根本的に見直しすることを要望する。そして,緊急の問題としては,①保証額(極度額)を定めること,②保証人に確定請求権を与えること,を強く求める。   ということで,現実的には実質的に14年5月の意見をもって初めて個人保証に関して踏み込んだ御意見,社会に向かって申し上げたわけでございます。   続きまして,10年7月に「再挑戦が可能な社会づくりに向けて~中小企業の再生インフラのあり方~」ということで,ここでも企業,事業,借入金に対する個人保証の在り方ということで御提言を申し上げております。   これも,重複をいたしますが,若干御紹介をいたします。 中小企業は金融機関から企業・事業融資を受ける際,経営者本人及び第三者の連帯保証が要求される慣行が存在する。そのため企業経営が破たんして返済に窮した場合,経営者が法的手続をとらずに悲惨な末路を迎えるケースが散見されることから,わが国の金融慣行に根づいている企業経営と個人保証の不分離を早急に是正すべきである。     (1)経営者本人の個人保証について      現行の保証制度では,特定の債務を保証することを原則としているが,不特定債務を保証するとする包括根保証も存在しており,特に後者の場合には,保証人は無制限に責任を追及されることになり,その危険性は計り知れない。   云々でございます。   以下は同文でございますから,この(1)につきましては説明は割愛させていただきます。   続きまして, (2)第三者の連帯保証について      企業・事業融資に際しての第三者への連帯保証の徴求は,原則として廃止されるべきである。      なお,状況から第三者連帯保証が妥当な場合においても,連帯保証の範囲については,社会通念上合理的な範囲で債務の負担限度が設定されるよう,関連業界において自主的規制を検討すべきである。   というものでございました。   さらに,平成14年11月には破産法等の見直しに関する中間試案に対する意見,これを提出をさせていただいておるところでございますが,これにつきましてはあくまで破産法等に関する提言ということもございまして,自由財産の拡充並びに個人保証人再生手続の創設の提言等が中心でございます。   飛びまして5ページでございますが,平成15年6月に至りまして,同様に「中小企業施策に関する要望」をうたっております。この際に,経営者の再チャレンジを促進するための環境整備を強く訴えたわけでございますが,ここにおきましても同様に,連帯保証,特に包括根保証の在り方につきまして御提言をさせていただいているところでございます。   何といたしましても,破産法における自由財産の範囲の拡充,これは私どもの要望をお受けいただきまして,破産法の改正,これからも進めていかれるかと思いますけれども,この四角書きの中でも,パラグラフとしては3段目でございますけれども,「このような状況を打破するため」とありますが,そこの2行目右側でございますが,「まずもって企業・事業融資における経営者や第三者など個人による連帯保証人のあり方については,将来の法規制も含め抜本的な見直しを行うべきと考える」ということでございます。   言いぶりについては同様でございますが,いずれにいたしましても保証額,極度額を定めること,並びに保証人に確定請求権を与えるといったこと等も早急に検討されたいというふうにお願いを申し上げた次第でございます。   最後になりましたが,平成16年1月でございますが,同じように「提言:再挑戦が可能な社会づくりに向けてⅡ」でございますが,この提言に関しましては個人保証の在り方にほぼ統一をいたしまして提言をしたところでございます。ここの中で,包括根保証の早期撤廃と合理的な保証制度の確立をお願いをしているところでございます。   これにつきましては,恐縮でございますけれども読み上げをさせていただきます。      従来の中小企業向け融資では,代表者と経営者本人の個人保証や第三者による保証人の徴求が貸出(借入)条件として常態化している一方,企業倒産が高止まりする中,中小企業経営者から個人保証について見直しを求める意見が多数寄せられているなど,貸し手・借り手間の認識に差異が生じているケースも見られる。このため,法制度の見直しに加えて,取引慣行の是正に向けた努力を積み重ねていくことが求められるが,とりわけ極度額及び期限について定めのない包括根保証については撤廃に向けて早期に法制化を図るほか,合理的かつ客観的な基準に基づく保証制度の確立を急ぐべきである。   というふうに主張させていただいているところでございます。   このような提言を踏まえまして,今回の御諮問に関しましては,東京商工会議所といたしまして大きく歓迎をさせていただくところでございます。   1枚のペーパーの方に移りますけれども,以下臨時委員の○○といたしまして,この包括根保証制度の抑制,見直しに関しまして,もう一,二点申し上げたいと思います。   この中小企業向け融資に関しましては,先ほどから申し上げておりますとおり包括根保証が多々用いられております。この包括根保証というのは,所有と経営の分離が不十分な会社に対する融資におきましては,経営者に対する経営責任を明確にする手段として有効に機能しているというふうな評価がございます。過度な個人保証の典型であるというふうな,一方の批判もございます。特に,会社の経営に直接関与していない者が保証人である場合には,このような批判が当然に強いと考えられます。   また,判例によりますと,包括根保証の形態を採用した場合にでも,その被担保債権の範囲は合理的に制限され,かつ保証人には一定期間経過後,又は事情変更に基づき解約権が認められております。したがいまして,債権回収の手段としてもおのずと限界があることは既に明らかであります。   こういう状況にございますので,近ごろ個人保証の利用に際しましては保証責任の範囲を明確にさせることが,債務を保証する意思を明確化する上で効果的であるというふうな認識が金融界においても広まっておりまして,実務上も保証人が保証契約の締結に際しまして,保証責任の限度額・期間を限定したり,保証の対象となる債務を特定する慣行が進みつつあります。今後,更に包括根保証の問題点や限界についての社会・経済的認識が広まっていくことが期待をされますけれども,やはり悪質な金融業者らによる不当な包括根保証の利用というのは,実はなくなりません。   先ほど,○○幹事が御案内いただきましたものも,誠に恐縮でございますけれども預金取扱金融機関を中心にした極めて真っ当な御案内ではございますが,これがすべての金融業者等に及んでその措置が講じられているかというと,そうではないということも明らかでございます。このような不当な利用というふうなことを排除するためには,包括根保証そのものを無効にするなどの思い切った立法的手当てを講じることが必要であると考えられます。   これは蛇足でございますけれども,このような手当てとともに,期限付限度根保証であるとか,あるいは特定確定債務保証の活用と相まって,財務制限条項,いわゆるコベナンツというものでございますが,こういったものを利用したきめ細かいモニタリングとか,あるいは経営者の違法行為に対する損害賠償の責任追及制度を補完的に活用するということによりまして,包括根保証よりも合理的かつ効果的に経営者に対する規律づけが行われていくということが,今後の中小企業金融の大きな課題であるというふうに認識をするところでございます。   なお,中小企業金融の領域に特に特徴的なところといたしまして,第三者保証の問題があります。これは看過せざるを得ないものではございません。これは(後注)に書いてございますけれども,繰り返しになりますけれども,中小企業金融におきまして保証取得の意義というものは大きく二つに峻別されます。まずは経営者保証と言われるものでございます。これは,事業の遂行上密接な関係にあるもの,その意味では当事者保証というふうにでも換言はできますけれども,これに保証を求める場合でございまして,次に第三者保証としてそのような密接な関係にない者を保証人とする場合でございます。前者は,中小企業が所有と経営が往々にして未分離の状態にあって,また市場という,いわば衆人環視のメカニズム,情報の相互共有の場がないということから,債務者企業の信用を補完して,更には経営者としての責任を明確化させるという意義を持つと言われております。一方,後者は債務者信用が不足する場合の補完ということとともに,第三者に迷惑をかけられないという債務者,経営者のモラルを担保する意義もあると言われております。しかし後者,特に保証をなりわいとする機関保証人でない一般人の場合,正に債務者の事業に関与しないがゆえに経営の実態を知らされないままに,いわば蚊帳の外に置かれたままに,ある日唐突に債務者が破たんの情報がもたらされ,債務者から--失礼,これは「債権者」でございます。誤植でございます。大変失礼いたしました。--債権者から保証履行の請求を受けるといった事態が起こることは想像に難くございません。このことは,商工会議所内部でも,突然に連帯保証人として請求,場合によっては債務名義の公正証書等をあらかじめまいておるということもございまして,財産差押えを受けるというふうな悲劇がくり返されているというふうな事情もございまして,大変喫緊の課題として私ども認識をしておるところでございます。経営者保証も当然いろいろな意味で制約を設けていただきたいのはさることながら,特に第三者の包括根保証等につきましては,より注意深く御審議をいただければというふうに思っているところでございます。 ● それでは,以上でございますが,また中小企業庁の○○幹事の方から特に発言したいというお申出がございますので,○○幹事の方から発言をお願いいたします。 ● 先ほど,金融庁の○○幹事の方からもお話がございましたけれども,新たな産業金融に関する関係閣僚会議におきまして,経済産業省も共同の事務局をやらさせていただいておりまして,その中で法整備についてのいろいろな提言がございまして,それに対応して早急に法務省さんの方でこういった形で審議会を動かしていただきまして,まずは御礼申し上げたいと思っております。   続きまして,一言補足だけさせていただきますと,個人保証につきましては中小企業庁の方も非常に重要な問題だというふうに認識しておりまして,これまで事前の対策と事後の対策ということをいろいろ考えてきたわけでございますけれども,事前の対策としましては,先ほどのお話とも絡みますけれども,14年6月に中小企業向けの会計基準というものを策定しておりまして,こういったものを普及させることによって中小企業の決算書類の信用力の向上を図って,個人保証に依存しない金融基盤を整備するということをやっていたり,あと政府系金融機関におきましても,中小公庫や商工中金におきまして新事業向け融資制度におきまして本人保証をとらない制度を創設するといったような形で,まず入口のところでそういった個人保証に依存しない形態をどういうふうに作るのかというのをやってまいりました。   一方,今回の法制審議会の検討というのは,どちらかというと事後の救済の方になってくるわけでございますけれども,万一の場合に保証人が過度の負担を負わされるということになりますと,一義的には保証した人の生活が破たんするということでございますし,産業的な観点からいえば,事業からの円滑な退出とか,経営者の再起の促進といったものはなかなか図りにくいということでございます。そういった観点から,法制的な面で御議論していただくということは非常に重要なことでございまして,特に包括根保証につきましては保証責任を明確化等することによって保証人が過度の負担を負わないようにするということが重要かと思っております。   現在,私どものところで包括根保証の実態を含めて中小企業,金融機関にアンケートを実施中でございます。機会がございましたら,その結果を御報告するなりして,積極的に御協力していきたいと思っております。   最後に,これは言わずもがなのことでございますけれども,中小企業の倒産件数というのは平成14年度におきまして1万9,000件程度ございまして,日々ある意味で倒産が進んでいるということでございますので,倒産というのは我々からいうとマクロの問題でありますけれども,個々の事業者から見るとそれがすべての世界でございますので,そういった実態を踏まえて,個人保証の問題につきましてできるだけ早いタイミングで結論を出していただければということを切に願っております。 ● それでは,ただいまの保証制度の見直しに関する御説明,御発言につきまして,何か御質問あるいは御意見等ございますでしょうか。 ● 1点,金融庁の○○幹事の方からお出しいただいて御説明いただいた資料について,質問をさせていただければと思います。   横組みの9ページほどある「与信取引に関する顧客への説明態勢及び相談苦情処理機能に関する新しい監督指針」という資料,1ページ目でございますが,その真ん中あたりに「契約時点等の説明」という1,2,3とございまして,その2番目に「契約時点等の説明」という項目がございます。この中で,①のところに「第三者との包括根保証契約は,保証人の要請があれば,債務者の借入残高等の情報提供」という,こういう項目がございます。   それから,③のところに「契約の意思確認」ということで,「面前自署・押印等」という項目がございます。これらについてでございますけれども,これは基本的には債務者に対する説明態勢というのを念頭に置いた書き方になっているかと思いますけれども,第三者との包括根保証契約が締結されるときに,保証人の要請があれば残額等の情報提供をするということは,これは保証人に対しても説明がされるのでしょうか。   それから,契約の意思確認というので面前自署・押印等というふうになっておりますが,これも保証人について同様の手続が行われているのかということをお伺いしたいと思います。先ほど○○委員の方から,金融庁の方でいろいろとよき慣行の形成に努めておられるけれども,必ずしもそれが全体に及んでいるわけではないというお話がございましたけれども,どのような実務の取扱いがなされているのかということを確認しました上で,それが望ましいものであるならばそちらの方向に向けて立法するということになろうかと思いますけれども,その前提として,現在どのように行われているかということにつきまして,先ほどの点について御説明いただきたいと思います。 ● 先ほど飛ばさせていただきました事務ガイドラインの文章そのもののところには書いてあるのですけれども,お尋ねの点,一つは第三者保証のときにちゃんと保証人に情報提供していますかということですが,これにつきましては6ページ目の真ん中あたり,③でございます。「包括根保証契約について」云々がありまして,「第三者と包括根保証契約契約を締結する場合には」云々で,「債務者の借入残高・返済状況について情報を提供することとしているか。」というふうに書かせていただいております。   それから,意思確認につきましては,7ページでございます。上から3分の1あたりの(3)の①ですけれども,ここには「保証意思があることを確認した上で,行員の面前で,契約者本人から契約書に自署・押印を受けることを原則としているか。」ということでございまして,契約者でございますので保証人ということでございます。   なお,二つ付け加えさせていただきますと,以上の点についてはこうした態勢を金融機関がとっていますかというのを私どもがチェックいたしますので,とること自体は金融機関の経営判断の問題というか,位置づけになっておるという点が1点でございます。   もう1点ですが,先ほど主として預金取扱金融機関について御説明申し上げましたけれども,いわゆるノンバンク,貸金業につきましては,「貸金業の規制等に関する法律」というものにおきまして,書面交付,説明が立法措置がなされておるということでございまして,そちらの執行にゆだねておるというものでございます。 ● 金融庁の○○幹事の御説明の全体の流れといたしましては,特にイントロダクション部分で全体の流れとしては余り保証人に依存しないような形で金融のシステムを模索している最中であって,実際そういうふうな流れも4大銀行を中心に出てきているという御発言がありまして,他方,○○委員の方からは,実際メーンはそうかもしれないけれども,いわゆる悪徳金融業者みたいなものはやはりいるので,包括根保証の問題点は問題として残るので大事な問題であるという,この二つの話を合わせますと,要するに保証人にどれだけの責任を負わせるかという問題設定するときには,特に金融庁さんの認識では,保証人だけが頼りだというふうな形で,つまり保証責任をきちっと把握する形で制度設計をする必要はなくて,どちらかというといざというときには保証人は逃げてしまうかもしれないというふうにしても,メーンバンクを中心に困る人はいないと,なぜならば今後のメーンは保証人じゃないのだからと,こういうふうな理屈が一応立つと。それでもし迷惑をこうむるとしたら,それは悪徳的な金融業者であるというふうなお話が導けるのかどうかですね。その出発点の部分についての御認識を確認しておきたいのですけれども,いかがでしょうか。担当する方,いっぱいおられると思うのですが。 ● 現在までと将来というのとがございまして,もともと担保・保証に依存している融資というのが一定の経済的合理性があるということは確かだろうと思います。とりわけ中小企業で家計と経営の分離が十分できていないところにおきましては,やはりそうしたものがないと経営規律の面であるとか,最終的な保全というところで必要性があるということは事実でございまして,それが実は,問題は,すべてがほぼそれに依存するような慣行になっていたのではないかという指摘があるところでございます。   そのことは二つ問題点があるということでございまして,一つは,債務者さんにとりまして再生着手の妨げになるというのが一つございます。金融行政の目から見てでございますけれども。   もう一つは,金融機関としましても,金融機関に期待される情報生産機能と言っておりますが,それのきちんとした発揮ということからいうと不十分ではないかという指摘があったわけでございます。   そこで,これは経済的に見ても合理性のある話でございますので,先ほど御紹介申し上げましたように各金融機関としては今後そうした方向に進めていこうと工夫をしておるということでありまして,多少成果は上がりつつあるということですが,何分例えば企業さんの方から見ても,保証を出しているのだからいろいろ会計とか説明とか言われても,経営には一生懸命取り組んでいますよというふうに企業さんがおっしゃるというのも無理からぬところがありまして,なかなかみんなが相互に依存し合ってこの慣行が変わらないでいる,その中で何とかやっていこうということでございます。   ですから,必ずしも金融業者が悪徳かどうかということとは別の問題としまして,社会の慣行として保証に依存しているという問題は残っているということだろうかと思います。 ● だといたしますと,この立法政策の問題としては,過度の依存体質から脱却するために,ちょっとドラスチックかもしれませんが,保証人の責任を半分にするとかという判断も一応論理的にはあり得るということにつながるのですか。今の御発言は。 ● そこは御審議の結果であろうと思います。ただ,先ほど御説明申し上げました産業金融機能強化策のところで,リスクへの対応ということでいろいろな項目を書かせていただいております。こういうふうにいろいろな項目を書かせていただいておりますのは,一つだけでばしっと切っても,コンプレックスになっている問題でございますので,物事は全部は解決しない。いろいろな施策でございますね,例えば信用リスクデータベース--18ページのところですけれども--であるとか,あるいは中小企業の重要なポイントでございます。それから,私どもの方の金融行政としましてはリレーションシップバンキングということで金融機関を促していくということもございますし,それから法制度,ここの御審議であるとか,場合によっては破産制度であるとかというところがございます。   以上のようなところを全部やっていかないと,多分うまくいかないのではないだろうかと,こういうようなことでこの施策の中ではこうまとめさせていただいておるということであります。 ● もう一度だけ。済みません。   そうしますと,法制度だけがまず出るというのも一応オプションとしてはありということですか。みんながそろわないと,最終的にはうまくいかないのは分かるのですが。 ● そこは実務の方にお聞きになったらと思います。個人的な感じとしては,余り法制度だけばかっとやると,みんなびっくりするのじゃないかと思いますが。 ● 簡単に,ただいまの御質問に関しましてなんですが。   いわゆる中小企業金融に関していえば,中小企業自体が信用力並びに資産においては非常に乏しいものがありますので,保証を得て,その信用力でもって債務者が補完をいただきながら融資をいただくということは常にあることで,そういう意味で保証の有用性というのはこれは否定をしておりません。ただ,包括根保証というものに関しましては,これまでも度々いろいろな意味で悪質な追及の仕方がされてきたということがございまして,これは今ここで別にドラマチックなことを言うつもりは毛頭ございませんけれども,非常に確かに悲劇が起こっているということは間違いないので,見直しされてはいかがかなということのみでございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● ○○委員の方でお出しになられたペーパーの中で,ちょっとお伺いしたいのですが。   中小企業の場合に所有と経営が往々にして分離していないという未分化の場合が多く,東京地裁で短期間でございましたが破産なんかやっていますと,会社が倒産したときに個人の方が資産を隠していないか,そういう疑念を持つ方が結構おられまして,そのことがですから保証制度を維持させている一つの要因じゃないかと。要するに,御本人も隠してしまっているかもしれないので,きちんとすべて調べたいと。東京地裁なんかでは,会社が破産するときに個人も一緒に破産の清算をしてもらうというような法人少額制度というようなものも取り入れたりもしておりましたが,そういうものについてはどのようにお考えなのか,御意見を伺えればと思いますが。 ● 所有と経営が未分離であるということは,極端なことを言うと正に詐害行為的な意味合いを持って,その会社の財産なり利益がそのまま個人の懐に移るというふうなことがあるやも知れませんが,更にそれ以上に言えば,そもそも個人商店的ななりわいであったものが,法人化して,その法人と経営者というのはほぼ一体的に運営されているということから始まる。そのことに関して,未分離状態というのは財産のそういった移動の問題のみならず,信用そのものがほぼ一体化しているということから,債務者の信用のみならず連帯保証までいただくというふうな点もあろうかと思うのですね。ですから,決してひとり財産の問題ではないというふうに私は理解をしております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 私ども日本弁護士連合会の方でも,今回の保証制度の見直しについては非常に関心を持っております。○○委員や○○幹事の方から御提案というか,お話があった点については,基本的に私どもも非常に賛成しておりますし,関心を持っているところです。立法化の部分でどこまでできるかという問題と,行政政策というのでしょうか,政策の問題でやっていく部分というのはいろいろあるだろうとは思うのですけれども,私どもとしてもできればこの機会に,保証制度そのものの在り方について,今回の御提案の部分の主な部分はいわゆる根保証,特に包括根保証を見直すというか,廃止というのでしょうか,そういう観点が主だとは思うのですけれども,そこにとらわれず,保証制度そのものの在り方についても広く御議論させていただければと思っております。 ● 保証とか担保に依存しない金融という意味で,政府系金融であるところの信用協会保証の場合に,いわゆる求償権の部分に保証をつけているということですから,協会が保証してくれているのだけれども,やはり最終的には個人がどこかで保証しているという形であって,協会保証を廃止するのじゃなくて残す,かつ個人保証も最終的には担保として残すということですと,先ほどの金融庁さんの事務ガイドラインで,説明をきちんとして面前で署名という場合に,契約の直接の当事者じゃないところの銀行がそういう説明をして保証をとるという構造になっているのじゃないかと思うのですが,その辺は構わないということなのか,信用保証協会が直々に出てきて,いざという場合にはこういうふうに代位弁済がされて,それで求償権が発生して交渉するのですよという説明を,別の債権者がするということまで求められているのか,それとも銀行がいわばそこは代理でやっているのだという認識なのか,いかがなのでしょうか。 ● 先ほど御説明いたしましたのは,銀行法における義務でございますので,銀行が貸したり保証契約をしたりする場合について書いているものでございます。今お尋ねの件は,銀行が事務として保証協会の代行をして,どういうふうに言うのでしょうか,仲介といいますか,代行といいますか,それをしているという局面でありますので,そこで保証協会が契約者の方にどういう契約内容を表示されるかというのは,保証協会の方でお仕切りになって,それを銀行が保証協会との関係で忠実に実行していく,こういう位置づけなのかなと思います。 ● 2点ございまして,一つは先ほど○○委員からお話がありましたように,包括根保証に何らかの制限をつけるということ自身は,その弊害等々があるので理解できるのですけれども,一方で,では債務者側が,例えば正確な会社のB/S,P/Lをちゃんと公表するとか,財産の状況について公表するとか,そういう債務者側のやるべきことをちゃんとやるという,そういう組合せ,セットであるべきではないのかなという点が一つ。   それからもう一つは,今のお話ですと大体金銭の貸付けということなんですが,それ以外にも例えば消費者金融といいまして,物を売って売掛けという形にしての与信行為を断つということがあって,そういうものに対してもこの話はちょっとどういう広がりを見せていくのかなという,2点です。 ● 何か,今の段階でお答えございましたら……。 ● 企業サイドの話は,正に産業金融の機能強化策のときに関係省庁間で随分議論させていただいた件でございます。おっしゃるとおり,企業サイドでアカウンタビリティーを果たすということは非常に重要であるということなのですが,これは鶏と卵みたいなところがありまして,先ほども申し上げましたように根保証があるのに会計きちんとせいと言われても,私が仮に中小企業の社長ですと,でも全財産保証に出しているから信じてくださいよと,こういうふうに言いたくなるという点もありまして,そちらの方もまたいろいろ施策を講じていこうということでございます。   具体的には,19ページから20ページあたりで,例えば20ページのところなんか見ていただきますと,二つ目のところで,企業さんが自らの経営・財務状況や,それからリスクの状況について的確に把握をしていくというようなことを進めていかれるということで,これは中小企業庁さんとも御一緒に進めてまいりたいと考えております。 ● ただいまの○○委員並びに○○委員の御指摘に関しまして,私も補足的に申し上げますけれども,中小企業の会計の質の向上等,これは正に喫緊の課題であるということで,○○幹事の方からも御案内のありましたとおり,その質の向上に関する報告書等もうたわれまして,日本税理士会連合会さんであるとか,チェックリストまで含めて中小企業は何にしても自らの信用力を高めるというふうなことは当然努力をしておるところでございます。   そのような努力を経ながらも,なお一方で公開会社並みにでは,そこまではいきませんから,言ってみれば財務内容の信憑性も持ち得ないということで,保証並びに保全というふうな形でいろいろと徴求されるということが常でございまして,そういう意味では自らのどんぶり勘定等を是正をして,信用力を高めるための努力をしつつ,なお例えばキャッシュフローベースの融資慣行を確立させていかれればよいものを,そういうものではなくて,あえて言えば保証に依存し,あるいは担保に依存する,しかもそれが過度に行うと,これははっきり申し上げて質屋金融のようなものであるというふうに人から言われるのですが,そういうふうに債務者の信用を全く頼らずに,物や人の信用のみによっているというふうな慣行が一部にあったことは間違いないことでございまして,それがやはり過度な保証の徴求ということで問題になってきたのではないかと。その典型的な例が包括根保証ではないかなというふうに思われるところがございます。一言申し上げたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 自分の頭の中で整理されていないで,それなのに話すのですけれども,かつ質問の先はもしかしたら事務局が最も適切なのかなという気もするのですけれども。   今,金融に携わっていらっしゃる方々からのお話を聞いていますと,何か話が,例えば包括根保証をある程度効力を制限する,何のためにするかというのが,一つは中小企業に対してリスクマネーが今まではなかなか出ていなかったので,リスクマネーを出せるようにしましょうと,そのためには安全な形で与信は与えるシステムをいつまでも置いておくと,リスクマネーはいつまでたっても出ないから,少々保証をたたきましょうという,そっちからの議論と,もう一つは,もう包括根保証で最終的に一体債権額が幾らになるか分からない,気がついたら身ぐるみはがれてしまうというのは余りにも気の毒だから,包括根保証をたたきましょうという,何か二つベクトルがあるような気がしまして,そうすると前者の方ですね,いわゆるリスクマネーを出すために包括根保証をたたきましょうという議論というのは,いわゆる民事一般法としての保証をどうしようかと言っているこの場の議論になじむのかどうかなという,非常に私自身は居心地の悪さを感じます。   今,金融に携わっていらっしゃる方からの説明に対する質問だったせいもあるのですけれども,この会というのは,包括根保証という場合に,一体包括根保証という一般論として議論すべきなのか,今議論になっているいわゆる中小企業金融のコンテクストにおけるものを主にターゲットに議論すべきなのかというのが,ちょっとどうも私分からないところがありますので,そのあたりを教えていただければというのがあります。   それからもう1点,これはまめまめしい話なんですけれども,よく包括根保証で身ぐるみはがれちゃうと,フレッシュスタートができない,だから包括根保証の効力を制限しようという議論がありますけれども,その場合に,それはどういうことなのかよく分からないのですね。例えば,中小企業の経営者の方がフレッシュスタートができるぐらいの金は残せという話だとすると,それは変な話,包括根保証ではなくて,一本ばあんと全財産を超えるような債権に保証していれば,それで身ぐるみはがれるわけですから,何となく破産の自由財産をどうするかというところですべき議論のような気もするのですけれども。   ちょっと,私自身整理されていないのですけれども,少なくとも前者について,この会では保証という場合にどういうイメージで議論すべきなのかということを教えていただければと思います。 ● 大変難しい御質問だと思っておりますので,そのあたりも含めて御議論いただければということが簡単なんですけれども,一応少しだけ御返答しておきますと,先ほどの保証について議論するに当たって,リスクマネーの導入の話と,それから一般的な旧来の第三者保護の観点というのと,これはもちろん切り口が違うと,具体的な措置というのはそれぞれ変わってくるのだと思います。ただ,どちらに焦点を置くのかということになってくると,これは事務局の方で,それは両方見据えながらやってくださいというほかないところがございますし,それから中身として,これはもちろん措置の中身を議論していただくわけですけれども,片方の目的のもとに講じる措置と,片方の目的のもとで講じる措置というのは完全に一致しないかもしれません,それのみを追求した場合には。ただそれは,両方とももちろん声があって,社会的な要請があるという観点に基づいて,効果としてつながっているものももちろんある,想定できるわけですから,そのあたりの落ち着きどころも含めて議論していただければというのが,現段階での非常に不十分だとは思いますけれども,お答えでございます。   それから,中身としてどういう場面を想定するのかということがございましたが,これもこの部会で一つの大きな議論の対象になることだろうと。今の○○幹事の御指摘からいいますと,リスクマネー云々ということからすると確かに一般民事法というような範囲から多少ちょっと,ごく限られた範囲の議論になってしまう可能性があるとは思っております。これは,第三者保護という観点からしますと一般的な場面での議論をしていただいて構わないというふうには思っておりますが,これは後ほどの説明でも補充させていただきますけれども,保証,それから根保証に限りましても,非常に広い範囲で社会では利用されているという面がございます。今回の議論の端緒としては,やはり中小企業金融の保証,経営者・第三者を含めた保証についての問題点ということが主に意識された問題というふうに考えておりますので,世の中にあまたある保証の類型,根保証の類型というものすべて拾ってということが十分できればいいのですけれども,それもなかなか難しいということがございますので,事務局としては,もちろん必要に応じて関連する分野での保証を俎上に乗せていただいて構わないというふうに思っておりますけれども,やはり今正に一番問題となっているものが端緒であるということを意識しながら,議論を進めていただければ有り難いかなというふうに思っているところでございます。 ● 金融庁の御担当の方に御質問させていただければと思うのですが,ふだん民法解釈の細かいことばかりやっておりますので,マクロのことについてお教え願いたいということなのですが。   この種の金融の場面では,大ざっぱに見ますと資金調達のコストというのもあるでしょうけれども,回収にかかわるコスト,それから回収できないことによる損失等々,いろいろなそういうコスト,費用とか損失というのがマクロではあって,政策としてはこのマクロであるこういうものを今現在担っている人間がいるわけで,それを変更するというのが一つあるというのと,それからできる限りこの損失やコストというのがむだになっている部分を圧縮して,減らすようにするという,そういう政策があり得ると思うわけです。その両方を多分ねらっておられるというふうに思ってお聞きしたのですが。   ここから先が質問なんですが,現段階では保証人,いろいろなタイプの保証人がいると思いますが,保証人がこのコストや損失を担っている部分があるわけであって,この保証制度についていじって,保証を使いにくくする,あるいは保証の射程を限定するというようなことをもし行った場合に,帰結としてその担い手がどこに移るのか,どういうふうにお考えになっているのかということをちょっとこの段階でお聞かせいただければなと。   これは,通常の銀行等の金融機関の場合と,あるいはノンバンクの場合とでいろいろ違いがあり得るのだろうと思うのですけれども,その前提としてどういうふうな想定をしておられるのかというのをお教えいただければと思います。 ● まず,回収がどのぐらいできるかということにつきまして,保証が一定の役割を果たしているということは確かだろうと思います。とりわけ不良債権の保全状況を見ますと,やはり4分の1か5分の1ぐらい保証でカバーされているということですから,仮にそこが破産なり何なりということになりますと,その部分から回収するというものがあるということは確かだろうと思います。そのところが,銀行としての経営の健全性からいうと,直接的効果からすると保証がしっかりあって,しっかり取り立てられる方が銀行の経営の健全性に寄与するという面は確かにあると思います。   しかしながら,事後の処理だけではなくて事前のことを考えてみますと,必ずしもそうとだけは言えないのではないかということがございます。一つは,そういうように保証に依存した融資をしているということになりますと,適切な事業審査に基づく融資機会をきちんと活用していくという面からしますと,ビジネスとしては非常に偏った小さなビジネスをしているという側面があるということが一つ目でございます。   もう一つは,そうした保証に依存した融資といいますのは,逆に,先ほどから申し上げておりますように事業リスクの把握,これは金融機関も企業も双方ですけれども,ということについてはマイナス要因になっているということでありますし,また経営が困難になったときに早期に着手しないことによって,結果として損害が大きくなるという面もあると思います。   こういった以上を全部考えてみますと,結果としてこれがありていに言いまして経済的に見てどちらに転ぶか,これはなかなか言いづらいものであろうと思いますので,むしろ社会的に見て,金融という経済の面もありますし,それから社会的正義の面から見て,正しいと思われる整理をされて,それを所与として金融機関が融資活動に取り組んでいくということが重要であろうと,こう私どもは考えております。   なお,例えば金額からいくとどうなるのかということなのですが,典型的には例えば担保・保証に余り依存しない融資商品といいますのは,例えば金利は今までのより少々高めであるということがございますので,その辺で経済合理性の中で固まっていくものだと思っております。 ● それでは,ここで休憩に入りたいと思います。       (休     憩) ● 時間が参りましたので,再開したいと思います。   部会の資料2につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,部会資料2につきまして御説明申し上げます。   まず,第1の部分について御説明いたします。   ここでは,今回の保証制度の見直しをどのような観点から行うのが相当であるかという,いわば総論的な事項について御議論賜りたいと考えております。   資料には,①から③までの三つの視点を記載いたしました。①と②は,かねてから保証に関して指摘されていた問題点を記載したものであり,このうち①は保証の全般について,②は特に根保証について指摘されているものでございます。また,③につきましては,先ほど来紹介がありましたように,経済財政諮問会議が「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」の中で,起業の促進,廃業における障害除去という目的実現の観点から,個人保証の在り方の検討を見直しを進めることを提言していることなどにあらわれておりますように,近時,事業上の融資に関する経営者等の個人保証に関しまして,金融実務の運営面のみならず,民事上の法制の面からも見直しを求める声が高まっておりますことから,その点を特に記載したものでございます。   この①から③までは,いずれも保証人の保護という視点に立ったものでございますが,他方におきましては,保証に関する民事上の規制を行うことにより,事業に関する円滑な金融を阻害するおそれがあるのではないかという懸念もあり得るところでございます。そこで,保証制度の見直しを行う際の視点といたしまして,資料に掲げました①から③までにつき,どのように考えるべきであるか,またこれ以外にどのような点に留意すべきであるかにつきまして御意見を賜りたいと考えた次第でございます。   なお,この総論的な部分につきましては,第1回の会議でありますことから,必ずしも部会資料の記載にとらわれずに,様々な観点から自由に御発言をいただければ幸いであると考えております。   続きまして,第2について御説明いたします。   この保証制度部会におきましては,日程的な制約もございますことから,第1回の会議から早速各論的な事項についての審議をお願いすることといたしまして,次回の会議では,今回の会議で御意見を賜りました点や,事務局において特に御議論をお願いしたいと考えた点などを中心といたしまして,更に詳しく議論をしていただくという段取りで進めさせていただきたいと考えております。   まず,第2の(前注)の部分でございますが,ここでは保証制度の見直しに関する議論の進め方につきまして,まずは保証人が貸金債務について根保証をした個人である場合を念頭に置いて,具体的な保証人保護の方策を検討するということを提案させていただいております。この(前注)にも記載いたしましたように,保証制度が利用されている経済取引には様々なものがあり,保証人保護の必要性や保証人保護のためにとるべき措置についても様々なものがあることが容易に想像されるところでございます。本来であれば,このような保証人保護の方策について広く実態を把握した上で,それぞれの場面に即した措置を検討すべきところであろうかとも思いますが,限られた審議時間の中で成案を得るというこの部会の目的に照らしますと,ある程度論点を絞り込んで御議論をお願いすることにならざるを得ないと考えております。そこで,まずは保証制度が利用される一つの典型であるとともに,最も法的措置の必要性が指摘されていると考えられる,個人が貸金債務の根保証をした場合を念頭に置きまして,保証人保護のための具体的な方策を御検討いただきました上で,その保護の方策をそれ以外の保証についても及ぼすことが適当であるかどうかという手順によりまして,審議をさせていただきたいと考えた次第でございます。   このような審議の進め方を前提といたしまして,具体的な保証人保護の方策として,事務局から議論の素材として提示させていただきましたのが,部会資料の第2の1から5まででございます。   まず,第2の1は,保証契約を要式行為といたしまして,書面によらない保証契約は効力を生じないものとすることを提案するものでございます。保証契約が一般に無償で情義に基づいて行われることが多いことや,保証契約の時点では保証人に対して現実に履行を求められることになるかどうかが不確定であり,保証人において自己の責任を十分に認識していない場合が少なくないこと等に照らしますと,保証を慎重ならしめ,保証の意思が外部的にも明らかになっている場合に限り保証の効力を承認するということは,十分に考えられるところであり,現に諸外国の法制におきましても,保証を要式行為としている例が少なくないものと承知しているところでございます。また,保証契約の実情を見ましても,通常の保証契約につき書面を作成しないということは想定しにくいところでございますので,書面性を要求することといたしましても,特段の不都合が生ずるとは考えにくいところでございます。   ところで,現行民法の財産編におきましては,贈与契約についてのみ書面の作成の有無により異なる取扱いをしているところでございますが,この贈与におきましては,書面によらない贈与は,その履行前に限り,事後的に取り消すことができることとされております。これと比較いたしますと,保証も贈与と同様に無償契約でありますものの,保証におきましては,その契約時において債権者から主債務者に対し金銭の交付などの出捐がされているという相違がございますことから,事後的に取り消し得るものとすることは関係者間の利害調整として適当ではないように思われるところでございます。そこで,保証契約におきましては,書面によることを契約の効力要件とすることを提案させていただいた次第でございます。   もっとも,保証意思が明確であることを要するという趣旨から書面性を要求するといたしますと,書面によらない保証の合意がされた場合であっても,それが現実に履行された後にいては保証契約の無効を主張することを制限すべきではないかという考え方もあり得るように思われますが,このような考え方は,書面によらない保証合意に基づく強引な取立てを招くおそれがあり,問題もあるように思われます。やや細かい問題になるかもしれませんが,このような点も含めまして御意見を賜りたいと考えております。   次に,第2の2における「保証の限度額の定め」の点につきまして御説明いたします。   この限度額の定めや,第2の3における「保証すべき期間の制限」など,第2の2から5までの項目は,いわゆる包括根保証契約に関する問題を取り上げたものでございます。   保証すべき期間や金額に限定のない包括根保証契約につきましては,保証人において将来どの程度の額の保証責任を負うことになるのか予測可能性がなく,過大な責任を負う結果となりがちであるとの指摘がございます。このような指摘を踏まえまして,まず第2の2では,根保証契約は保証の限度額を定めなければ効力を生じないものとすることを提案しております。ここで限度額を定めると言っておりますのは,当事者間の合意により金額的な上限を定めるという意味でございます。また,この限度額につきましては,貸付元本のみについての上限とするのか,利息・損害金をも含めて合計額の上限とするのかという問題がございますが,この点につきましては,(注)に記載しておりますように,根抵当の場合と同様に,利息・損害金を含むものとして定めるものとすることを提案させていただいております。   ところで,先ほど申し上げた保証人の予測可能性の確保という観点からいたしますと,事業上の融資につき,経営者が保証人となる場合には,保証人自身が主たる債務の状況を把握していると考えられますことから,このような経営者保証の場合には,必ずしも限度額の定めを義務づける必要はないという考え方もあり得るように思われます。しかしながら,事業上の融資における経営者の個人保証に関しては,部会資料の1ページ(総論)部分の③に記載いたしましたように,事業再生の機会を逸する結果となったり,経営者の再挑戦を妨げる要因となる等の問題が指摘されているところでありますことから,経営者の個人保証は,それが真に必要とされる場合に,必要な範囲に限って行うようにすることが望ましいと考えられます。このような観点からは,根保証契約の締結時において個人保証の必要性の有無及び必要とされる範囲についての慎重な判断を求めるため,限度額の定めを一般的に義務づけるものとすることには十分な理由があるように考えられます。   また,このような観点から,限度額の定めを一般的に義務づけることといたしましても,具体的な金額は,当事者間の合意で事案に応じて定めることが可能なものとしておけば,更に根保証の枠が不足するに至った場合には事後的に当事者間で限度額の変更を行うことが可能なものとしておけば,円滑な金融の阻害という問題に直ちにつながらないのではないかと考えられるところでございます。したがいまして,最初に申しました保証人の予測可能性の確保という観点とともに,根保証契約の締結時において保証の要否及び必要な範囲について慎重な判断を求めるという観点から,経営者の保証であるか,それ以外の第三者の保証であるかを問わないで,限度額の定めを一般的に義務づけることを提案させていただいた次第でございます。   次に,第2の3における保証期間の制限の点につきまして御説明いたします。   まず,ここで「保証期間」と言っております意味でございますが,これは期間が経過して保証契約が終了したことにより,その後は保証債務が消滅して一切責任を負わないという意味ではなく,保証の対象を一定の期間内に発生した元本に限定するという意味でございます。したがいまして,保証期間の経過後は,保証すべき主たる債務の元本が確定し,その後は確定した元本と,これに対する利息・損害金についてのみ保証責任を負うという意味でございます。   この保証期間の制限につきましては,現行法においても判例上,期間の定めのない根保証契約の締結後,相当な期間が経過した場合には,保証人に将来に向かって契約を解約する権利が認められたり,保証契約が当然に終了して元本が確定したものと判断されたりした事案がございます。そこで,このような考え方を更に推し進めて,法律に明記することにより,保証人の保護を図ろうとするものでございます。   まず(1)の部分でございますが,ここでは合意により保証期間を定める場合には,その期間は,例えば5年というように法定の期間を超えてはならないものとすることを提案しております。もし法定の期間を超える保証期間を定めたときは,法律上,その保証期間を法定の期間に短縮するものとするという趣旨でございます。もちろん,保証契約を更新することは可能であることを前提としておりますが,更新後の保証期間についても同様の制限を設ける必要があると考えております。   この場合の法定期間としては,部会資料の本文において亀甲括弧を付して5年としておりますのは,(注)に記載いたしましたように,身元保証法や根抵当における規律を参考としたものでございます。この点につきましては,どの程度の期間とするのが相当であるかにつきましても御意見を賜りたいと考えております。   次に,(2)の部分でございますが,ここでは合意による保証期間の定めがない場合につき,その保証期間を例えば3年というように法定の期間に限定するということを提案しております。この場合の法定期間につきましても,(注1)に記載しましたように,身元保証法や根抵当における規律を参考として,亀甲括弧つきで3年としておりますので,先ほどと同様に,どの程度の期間とするのが相当であるかについても御意見を賜りたいと考えております。   ところで,根抵当におきましては,(注2)に記載しておりますように,(2)に相当する規律として,法定期間の経過により当然に元本が確定するものとはしないで,法定期間の経過後は,いつでも根抵当権設定者が元本確定請求権を行使することができるものとしております。そこで,根保証におきましてもこれと同様にすることも考えられるところでございます。しかしながら,単に元本確定請求権を付与するのみでは,これを行使しない限り保証すべき元本が将来にわたって膨らんでいく結果となりますので,人的無限責任を負う根保証の場合には,根抵当の場合とは異なり,より保証人の保護を厚くする観点から,法定期間の経過により当然に元本が確定するものとすることが相当ではないかと考えられるところでございます。   もっとも,このように考えるといたしましても,事業上の融資につき,経営者が保証人となる場合には,先ほど限度額の定めに関して申し上げましたのと同様に,保証人自身が主たる債務の状況を把握しておりますので,元本確定請求権を行使するかどうかについての合理的な判断を期待することができるという見方もあり得ることから,経営者の保証の場合に限っては,法定期間の経過により元本確定請求権を付与するにとどめるという考え方もあり得るものと思われます。ただ,先ほど申し上げましたとおり,経営者の個人保証を含め,保証一般についての必要性の有無,及び必要とされる範囲につき慎重な判断を求めるべきであるという観点からいたしますと,期間の経過後は,当然に元本確定の効果が生ずるものとし,引き続き保証人としての責任を負う場合には,改めて保証契約を締結し直すものとした方が,そうした慎重な判断を経たことの担保になると考えられます。そこで(2)の本文に記載いたしましたように,経営者の保証の場合を含めて,法定期間の経過により当然に元本確定の効果が生ずるものとすることを提案させていただいた次第でございます。   続きまして,第2の4「期間の経過以外の事由による元本の確定」という項目につきまして御説明いたします。   ここでは,(1)におきまして法律上当然に元本確定の効力が生ずるものとすべき事由を取り上げ,(2)におきまして保証人の請求により元本確定の効力が生ずるものとすべき事由を取り上げております。説明の便宜上,(2)から御説明させていただきます。   (2)は,現行法におきましても判例・学説上,契約時に予期し得なかった著しい事情の変更が生じた場合につき,保証人に解約権が認められるとされておりますいわゆる特別解約権につき,法律上明文化するかどうかという問題を取り上げたものでございます。もっとも,ここではいわゆる特別解約権が行使された場合の法律上の効果を明確にするため,差し当たり特別の「元本確定請求権」という名称を付しまして議論していただこうと考えております。   部会資料では,著しい事情変更の具体例につき,①から③までを掲げております。①は,例えば企業の経営者が経営者であるがゆえに企業の債務につき個人保証したという場合において,その後に経営者の地位を退いて全くの第三者となった場合などを想定したものでございます。また②は,例えば比較的少ない額の融資が行われていたところ,主債務者の事業拡大に伴い融資の額が著しく高まったといった場合を想定したものでございます。③は,主債務者が経済的な破たんに至った場合等を想定したものでございます。   このような著しい事情変更が生じた場合に,事案ごとの具体的な事情をしんしゃくした上で,当事者の意思解釈や信義則等によりまして保証人に元本確定請求権を認めるべき場合があることは,一般に承認され得るところであろうと考えますが,この点は立法技術上の問題として過不足のないように要件を書きあらわすことができるかどうかという問題がございます。このような問題があることも踏まえつつ,御議論賜りたいと考えております。   次に,(1)はこのような立法技術上の問題があることを考慮しつつ,特に法律上当然に元本確定の効果を生じさせることが相当であると考えられる事由につき,個別的に元本確定事由として明記することとすべきかどうかという問題を取り上げたものでございます。ここに掲げております①と②は,根抵当の元本確定事由を一応の参考としたものであり,部会資料の(2)の③における主債務者の資産状態の悪化の徴表となる事情などを特に明文化することを意図したものでございます。ここに掲げておりますような事由を,法律上当然の元本確定事由とすることの当否につきまして,法律的な観点のほか,金融実務の観点からも御意見を賜りたいと考えております。   続きまして,第2の5「通知義務」という項目につきまして御説明いたします。   ここで取り上げておりますのは,債権者の保証人に対する通知義務であり,根保証人が主債務の額の変動等の事情につき十分な情報を有しない場合があるという観点から問題提起をしたものでございます。もっとも,このような通知義務を課することとする場合には,部会資料の(注)にも記載いたしましたように,その義務違反に対してどのような私法上の効果を付与することとするのかという問題がございます。   例えば,部会資料2ページの保証期間の制限における3(2)におきまして,仮に本文に記載しましたように法定期間の経過により当然に元本確定の効果が生ずるものとはしないで,(注2)の冒頭に記載しましたように,法定期間が経過後は元本確定請求権を有するものとするという考え方をとる場合には,保証人が元本確定請求権を行使するかどうかを判断するために必要な情報を提供するという観点から,債権者に対し,主債務の状況についての通知義務を課することとし,その義務を怠ったときは,当然に元本確定の効果が生ずるという効果を付与することが考えられるところでございます。このように,通知義務に違反した場合にどのような効果を付与するかという観点を踏まえまして,この問題についての御議論を賜りたいと考えております。   続きまして,最後まで説明を続けさせていただきます。第3の「適用範囲」という項目について御説明いたします。   第2におきましては,保証人が貸金債務について根保証をした個人である場合を念頭に置いて,具体的な保証人保護の方策として1から5までの検討項目を掲げておりましたが,第3におきましては,これらの方策の適用範囲につき,それ以外の場合にも広げることの当否について御意見を賜りたいと考えております。   まず,第3の1の「要式行為」という項目についてですが,この項目については,すべての保証契約を対象として適用するものとすることを提案しております。要式行為とすることは,書面によらない保証合意の効力を認めないという重大な効果を伴うものではございますが,およそ経済取引として現実に行われている保証は,そのほとんどが書面により行われていると考えられることを考慮いたしますと,この点については広く保証契約一般に適用することといたしましても,特段の弊害はないのではないかと考えた次第でございます。   次に,第3の2の「根保証における限度額や保証期間の制限について」という項目でございますが,ここではまず(1)の「保証人の範囲」におきまして,保証人が個人である場合に限ることとし,法人にまで適用範囲を拡張することはしないことを提案しております。   根保証における保証人が個人である場合には,人的無限責任を負うことに伴う経済生活の破たんという問題を考慮する必要があるのに対しまして,法人である場合には,そのような考慮が不要である上に,機関保証に代表されますように,保証の要否や必要の範囲につきまして特段の規制を設けなくても合理的な判断が期待できると考えられることを考慮したものでございます。   続きまして(2)の「主たる債務の種類」という点でございますが,ここではまず本文におきまして金銭の貸付けのほか,手形割引など,これに準ずる行為によって発生する債務をも含めるものとすることを提案しております。これは,銀行取引,信用金庫取引等によって生ずる債務は,貸金債務でないものについてもすべて含まれるようにしようという趣旨でございます。   また,これに関連する問題として,(注1)に記載いたしましたように,銀行取引につき機関保証がされ,その保証人からの求償権につき経営者等の個人が保証しているという場合には,その求償権についての個人保証人は,法形式上は銀行取引等についての根保証の保証人ではないものの,これと同様の保護の必要性があるのではないかという疑問が生ずるところでございます。そこで,この点についても同様の保護を及ぼすものとするかどうかについて御意見を賜りたいと考えております。   最後に,(注2)でございますが,ここでは主たる債務が継続的な商品売買における代金債務である場合や,不動産賃貸借における賃借人の債務である場合などについても,限度額や保証期間の制限といった規律を一般的に及ぼすこととすべきかどうかという問題を取り上げております。   (注2)の①,②のような場合にも,保証人保護の必要性があることは当然でございますが,これらの場合には,貸金債務の根保証とは異なった問題があるわけでございます。例えば,貸金債務の根保証におきましては,保証期間の満了時に保証契約が更新されずに保証人がいない状態になった場合には,債権者は,それ以降の金銭の貸付けをしないという対抗措置をとることが可能であるのに対しまして,賃貸借の保証におきましては,同様の場合に保証人がいない状態になったからといって,解約の正当理由があるとは考え難いことから,賃貸借契約を終了させることができず,賃貸人がとり得る十分な対抗措置がないという問題がございます。このほか,根保証は様々な経済取引において利用されておりますことから,多種多様な経済取引につき,一律に限度額の定めの義務づけ等の規律を及ぼすこととした場合に,実際上どのような影響があるかを把握することは必ずしも容易ではないという問題もございます。そこで,このような問題があることを踏まえ,どのように考えるべきであるかについて御意見を賜りたいと考えた次第でございます。   説明は以上でございます。 ● それでは,この部会資料2に基づきまして議論を進めたいと思いますが,幾つかの部分に分けて,順番に議論をお願いしたいと思います。   最初,資料2の総論部分である,「第1 保証制度の見直しの視点について」という,ここについて御意見をいただくということから始めたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 見直しの視点で,前段の議論もそれぞれあったと思いますけれども,ちょっと背景を確認したいのでお聞かせをいただきたいのですが。   (総論)の,特に③の理由のところでございまして,懸念をするのは,一方で資金繰りが非常に難しくて,中小企業はなかなか大変だというここの議論があるということは非常に重要な視点だろうというふうに考えております。   この③を読んでいると,まず1点目は「また」以降,「保証人への責任追及を恐れるあまり早期に法的手続をとることを躊躇させ」と書いてあるのですが,このことについてはどういう文脈なのかなと。これは,もう保証などやめてしまえ,根保証の全部をなくしてしまえという文脈であるように素人は解釈をするのでありまして,限度額を設けたところで,期間を定めたところで,このこと自身それがこういうことになるかというふうにはちょっと理解ができない。どういう意図で考えられているのかなというのをお聞きをしたいというのが1点でございます。   それから,二つ目は現場の実務等でとりわけ重要だと思っておりますが,この問題意識でやることが,いわゆる実際の現場での資金繰り,いわゆる金の流れ等について,逆の意味でショートさせるというか,出ないというようなことになるのでは元も子もないということだろうというふうに思っておりまして,今ここで議論されているこの根保証を考えること自身がそれに及ぼす影響というか,実務的な部分についてもきちんと検証しておく必要があるのではないかというふうに考えております。ちょっと全体について,考え方を教えていただければと思います。 ● まず,③の点の文脈の関係でございます。これは確かに,例えば限度額の話とか期間制限の話を主に念頭に置いて議論をした場合に,例えば限度をどういうふうに決めるのかというようなことについて具体的な制限を加えなければ,結局のところは最大限保証に応ぜざるを得なくなって,効果がないのじゃないかというふうな,恐らくそういう指摘につながってくるのだと思うのです。   これは,確かに更に強い措置といいますか,額の定め方について関与していくというような仕方もあると思うのですが,そうなりますと正にその後に○○委員の方から御指摘がありましたように,逆に金融閉塞を招いてしまう,その保証についての担保としての機能をかなり損なってしまうというような話とつながってくるところでありまして,ここは正直申しまして限度額の定めということで,直接最終的に,例えば経営者の立場において責任を負う範囲が具体的に減少するのかどうかということについては,直接つながらない場面も少なくないというか,結論的には多いということは否定できないのじゃないかと思っておりますが,ただ先ほど来から鶏が先か卵が先かという話がありますけれども,やはり使われ方として必要性,合理性の範囲についての判断というか検証が必ずしも十分でなく,保証に偏っているというようなこととの関係からいたしますと,具体的に限度額の中身についての規制などを伴わないような形で措置を加えたとしても,今申し上げたように多少保証に頼らない形といいますか,保証依存との関係でも,それを緩和させる方向の具体的な効果は見込めるのじゃないかというふうに考えております。 ● よろしいですか。 ● はい。 ● ほかに,この部分について。 ● 実務側の銀行の方から幾つかお話を申し上げておきたいのですけれども。   まず,先ほどお話があったように,ではどこまで保証というのは有効なんだろうかという話がそもそもあろうかと思うのですね。この保証をやめるということになれば,先ほどあったようにいろいろな弊害を生むことにもなろうと思っております。むしろ中小企業の皆様が,本当にそれをどう理解されてどう希望されていらっしゃるかというところが,一つ判断基準になるのじゃなかろうかというふうに思っておりまして,ここで議論し尽くしても,中小企業の社長の皆様がどうお考え,どうされるのかというのが一つのポイントになろうかなというふうに思っているのが一つ。   それからもう1点,極めて重要だなと思っているのは,冒頭に○○委員がおっしゃった経営者保証と第三者保証の違いといいますか,そこら辺を大きく取り上げて議論していただいた方が,より適切になっていくのかなというふうに思っております。全銀協の方も,この部会に先立ちましていろいろ意見が出たのですけれども,もともと保証制度の見直しというのを反対しているというわけでは当然なくて,より友好的というか,より日本にとって明るい将来を目指すといいますか,そういったことを考えた上でどうするのがいいのかということを考えたときに,ということですので,経営者の皆さんの意向というものも必要になってくるし,あるいは今申し上げました経営者保証と第三者保証の違いというのも,やはり議論をしていただく必要があるのかなというふうに考えております。 ● もともと経産省はこの保証制度について,特に先ほど御指摘のあった③の早期事業再生という視点でも実は御議論を御提起申し上げた経緯がございます。問題意識は比較的単純でありまして,今の融資の在り方,すなわち保証さえあればあとは何とかなるという形で--済みません,言葉は物すごく単純に言っていますのであれなんですけれども,そういうような融資のやり方をやっていると,結局融資サイドも融資を受けるサイドも,日々のモニタリングというのがちょっとおろそかになってやしないかと,そうすると結果的に事業が変調になっているにもかかわらず,ずるずると先送りになってやしないかと。現にアンケート結果をとると,やはり経営者の方々,中小企業白書の調査分析なんか見ると,やはり何で着手遅延になってしまうのかと言われると,保証債務の問題があってと,こういう議論になっていくわけでございます。   正に中小企業の経営者の方々のビヘービアにも関係するのですけれども,もう少し保証に頼らずに,事業の中身をなるべく前広に開示をしながら,お互い常時もっときちんとチェックをするような融資のなりわいを確立していった方が,お互いのためになるのじゃないかと,こういう問題意識で御提起を申し上げたので,融資慣行の改善ということなんですね。   そのときに恐らくやることは幾つかあって,当然銀行サイドもそういう保証に頼らずに,ちょっと手間暇かかるけれども,相手先の企業の財務データだとか事業データを見ながら与信をするというような取組みも当然やる必要があるし,今度受入先の中小企業の方も,なるべく前広に自分の事業がどうなっているかというのをもっと開示しないとだめだし,これは恐らく民・官サイド,それぞれやることがあると我々は思っております。   一方で,政策制度サイドは,一つは事業に着目してやろうと思えば,動産だとか債権だとか,今まで余り光の当たっていない新しい担保制度というものを整理していただいて,新しい融資がやりやすいような環境を作るというのもあるし,一方で,保証の世界にちょっと目を転じてみると,余りにフリーになり過ぎているのじゃないか,余りに安易に保証がとれやすいような環境になってしまっているのじゃないかと。そうすると,一定のある種のルールというものがあった方がよりよくなるのじゃないか,これはここの議論なんだと思うのですね。   さらに,経済産業省ができることといえば,そうした新しい取組みをもし民間サイドがされるということであるならば,それに対して一定の政策支援というものを行いながら,いい融資に対して応援をしていくというやり方もあるのじゃないかと。そうすると,やることはいろいろあって,与信サイドも与信を受けるサイドも,それから新しい担保制度を作るという議論もあるし,余りにも保証については何らルールがないというところについて,一定のルール,相場観をつくっていくという議論も大事だし,政策支援もやることも大事だと,こういう感じで我々は思っておるわけでございます。   恐らく総論的に言えば,この保証の問題,第1のところの問題意識は,もし機会があればまた御紹介させていただきますが,日本の融資慣行について,与信サイド,それから与信を受けているサイド,アンケート結果をとると,皆さん8割以上の方が不満だと言っている,こういう異常な事態であります。これは中小企業と大企業とはまた回答が変わってくるのですけれども,特に個人保証というところについて不満を持ていることは事実でございますので,我々としてもここで書いておられます①,②,③それぞれ大事な視点だと経産省は思っておりますし,かつ,ちょっともう一度申し上げますと,こうした問題を解決していくために,先ほど御指摘がありましたように新しい与信につながっていくようになるのかどうかというところが最後は大事だと思っておりますが,それについては単に保証のルールを定めるだけでは恐らく達成できないので,その他様々な制度面,慣行面,それから支援策取り混ぜて達成していくということが大事だというふうに思いながら,こういうところについて経産省は支持をしているというふうに御理解いただければと考えております。 ● この部会ではないのですが,いわゆる新しい融資の部分のところについては,それに伴う働いている人たちの保護の問題とか,そういうことも同様にきちんととっていく必要があるだろうということは,今までの別の部会でも発言して,これは確認をさせていただきたいと思います。   私が先ほど申し上げたのは,今お答えを間接的にいただきまして,これは皮肉ではないのですが,要するに保証人への責任追及を恐れるという部分のところは,これは基本的に経営者の行動もあるし,あるいは金融機関と経営者の力関係の部分のところもあるかもわかりませんけれども,これはいわゆる根保証の問題だけではないという部分のところだろうというふうに思っておりまして,流れのそういう広くいろいろな,いわゆる融資行動を含めて私もきちんと自ら評価をやりながら適正になされることが必要だと思いますし,それに安易に頼って,根保証ということに安易に頼ってやるというのは,これは現実には進めていくとやはり問題であって,きちんとしたそういう話し合いというか,場が設定するようになるということは重要だろうというふうに思っています。   ただ,今の保証自身が保証人の責任追及自身を恐れるあまりということで,これが及ぼしているいうのは多分様々な見方というか,考え方があるのだろうというふうに,逆に言うとモラルハザードが起こっちゃっているということもありますし,逆にそれが無限定であるがゆえに,分かっているから一生懸命見るという部分が,いい加減でもいいやということになるようなことにもなりかねませんし,それは多分現場を含めた部分の考え方とかいうところでありますので,何かこれですと一方的に保証人への責任追及自身が何かいかんような感じを受けたものですから,先ほどのようなことを申しました。 ● 中小企業がおかしくなったときに,できるだけこれを再生していただくいうことが取引関係者あるいは債権者,労働者にとっても望ましい姿だろうと思うのです。そういう意味で,私どもも再生法等を整備して,あるいは会社更生法も使いやすくし,できるだけ再生の方向で利用してもらいたいと,こう思っているわけです。   ただ,実際にそういう再生に携わった方々の感想として,もう少し早めに持ち込んでくれれば何とかなったのにという事案が相当数ある。多分それは,これだけ使いやすくしてもまだまだそういう事案があるのだろうと思います。   もちろん,この保証人への責任追及というのはどの程度の影響があるのかということはまた十分これからも御議論していただければと思うのですが,そういう中に,やはり中小企業の経営者が,自分の全資産を出さなければいけないということで,最後の最後まで頑張って,結局傷を広げて,本来再生できたものができなくなる,そういう場合があるという指摘はこれはかなりあるのですね。そういうことから,こちらとしても仮に保証の在り方がそういうことに結びついているのだとすれば,それはそこを見直して,再生を容易にして,関係者すべてにとって少しでもプラスになる方向でということでいっているわけで,御指摘のような別に保証人の追及が甘くていいと,そういうつもりではないし,それが諸悪の根元だと言っているつもりもないのです。ここで言っているのは,そういう保証の在り方と再生の機会を逸するということに関係があるなら,そういう観点からも見直す方がいいのではないかと。   おっしゃるように,いろいろ関係する中でも労働者の権利というのは,それは重要なものですし,私どもとしてもいろいろな局面で考えなければいけないと思っておりますが,決してこれは経営する者の責任を軽くしようという趣旨で言っているわけではありませんので,そういった再生機会を確保することと関連があるなら,その観点からも検討をお願いしたいという趣旨でございます。 ● ただいまの○○委員の御指摘,現実的に大変鋭いものがございますのですが,あくまでここのくだりというのは,保証というものが物的有限責任ではなくて,むしろ人生そのものを担保として出しているような感覚を中小企業の経営者は持っておりますので,そういった点からしますと,経営者若しくは第三者に保証人がいるとするならば,その保証人がそのような形で人生そのものを奪われてしまうのは忍びがたいということで,逆にずるずるべったりと経営を継続すると,ましてでございますけれども,高利貸しやあるいは融通手形にまで手を出して,なお債務超過状態,結局は企業価値毀損の状態になりながらもなお継続するということが往々にして見られて,結果としてそれがふたを開けてみれば破産という状態に陥り,労働債権あるいは商取引上の債権も含めて大変大きな迷惑を及ぼしているというふうなこともありますから,それであればむしろ予見可能性のある極度という形での保証額を見極めていけば,それは十分割り切りつつ早期再生というふうなものにも踏み出していくであろうということを,むしろこれは大いに期待されるくだりであるというふうに理解をしております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 私も,先ほど申し上げたことに関連しますと,○○幹事のおっしゃるようなことを十分考えていただいて,いろいろな方面からお考えいただくべきことだと思いますが,保証制度の見直しそれ自体については,私も是非とも実現していただきたいものと考えております。   最初,企業を興したばかりのときに,小さな規模で企業を興したときに,銀行に対して保証なんかしていた人が,事業がどんどん拡大していってとんでもない大きな負債を抱え,保証人として抱え込むということが少なくなくて,私が訴訟担当いたしておりましても予想しなかったような大きな金額を--最初小さな企業のときに情義によって保証を入れたあげたところ,とんでもない大きな責任をかぶってしまって,自分の人生を投げうってしまわなければならなくなったという人たちも,少なからず見ております。それは,やはり予見できるものと予見できないものがある程度あると思うのですね。どんどん企業が拡大していく中で,融資も拡大していく,事業に伴う責任も拡大していく。ある程度人間の行動として予見できるものを考えて差し上げるのがベターじゃないかなと思います。   また,先ほどから御指摘もありますが,判例で制限しているというところもございますが,何分規範性が必ずしもありませんので,裁判官の価値観ないしは一般条項ということで対処していきますと,かなり大きなところでいかないとそういう制限というのはなかなか容易じゃありませんので,このような形で保証期間とか極度額ということで制限していくのがやはり望ましいのではないかと考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 私は,この(総論)に書かれている視点に特に異論はないのですけれども,先ほど○○幹事がおっしゃった債権者のモニタリングへのインセンティブを与えるという点について,少しコメントをしたいと思います。   債権者に,自分の債権についてモニタリングをするようにインセンティブを与えるということ自体は,私は賛成ですし,また今後そういう形で与信の際に管理をしていくということが望ましい方向であるということにも異論はないのですが,ただモニタリング自体は非常にコストを要することで,またモニタリングをするためには,先ほど来も議論が出ていましたように債務者に対して情報の開示を求めるということも必要になる。情報の開示そのものもまた,債務者にとってコストを要することです。そうしますと,規模の小さな与信の場合にはモニタリングなんかするよりも,むしろ経営者が個人保証して,安心してくれということでそのコスト,双方のコストを節約することにも経済合理性があると思いますので,経営者自身が自分の全財産なげうって保証するから与信してくれという場合に,そちらの側の需要というのも無視できないのじゃないかなという気がするのです。   ですから,経営者の保証と第三者保証を分けるということは,立法的になかなか難しい問題があると思いますけれども,視点としてはそれなりの経済的合理性もあるのかなという感じを受けました。 ● 若干揚げ足取りめいた話だと思うのですが,これ,今御説明いただいて,第1の③の趣旨,企業の早期再生に当たって保証というのがある意味で足かせになっているのではないかという話は分かるのですけれども,③の前段に書いてあります「中小企業等が経済的に破たんした場合には経営者が過大な保証債務の履行を求められる」と,その意味で人生が全部ひっくり返るというのは分かるのですけれども,この見直しの視点のとき,「経営者の再挑戦を妨げる要因となっている」ということが,具体的に何を意味しているのかが私には分からないのです。正直申し上げて。   例えば,人生が身ぐるみはがれるというのは,自分の財産以上の保証の責任を負われれば,こういうコンテクストでなくても当然人生は終わってしまう,終わるというか,いったん築いたものが壊れてしまうわけですけれども,そうじゃなくて,何でこの中小企業の経営者の再挑戦を妨げる要因となっているということが視点について殊更書いてあるということ,ちょっと説明をお願いしたいのですけれども。 ● これは先ほどの説明と多少繰り返しになるかもしれませんけれども,今,○○幹事がおっしゃったように,最終的にどこまで責任を負うかという話になってくると,具体的に保証限度額について具体的な額についての制限をするとか,あるいは正に今回の破産法の見直しで措置が講じられておりますけれども,破産した場合にどこまで手元に財産を残せるかということと直結する話ですので,今回のテーマとしてあります包括根保証の限度額とか期間の制限の話ということから,そうクリアに論理的関係が見えてくるものじゃないのじゃないかというのはそのとおりだと思っております。   ただ,これは後段との関係もありますけれども,限度額であるとか,期間の制限ということは期間ごとに見直しをする機会があるいうことからすると,それは最終的に負えるだけの責任を保証人として負ってしまうということはもちろんあるし,今の流れとしてはそういうケースも多いのじゃないかというのは先ほど申し上げたとおりなのですが,簡単に言うと,そうは言ってもその都度の判断で,理想的に言えばその都度合理的な判断をしていく,見直しもしていくということが可能ですから,そこで多少前の段階,責任が拡大する前の段階で,それ以上の責任は負わないことにして,例えば事業のことはあきらめてしまう,やり直すというような進路の選択ということをとる余地が出てくるというような説明の仕方になるのだと思っております。   ですから,具体的にじゃこういう措置を講じたことによってどれだけの,何パーセント実効が挙がるのかということはなかなか説明しにくいところがあると思うのですけれども,そのための制度としての環境整備としては意味があるのじゃないかというふうに考えております。 ● 実は,商法の会社法なんかの検討もしているときに,そういう問題で話したときに,ある方から,本来会社というのは有限責任だろうと,経済がそういう会社組織で発展してきたというのは,ある事業を興したときに,失敗をしたとしても出資の限度でしか責任を負わない,そういうことがあるから危険のある分野に進出できるのだと。ところが,日本の会社制度というのは,有限責任と言いながら一部の大企業を除けば実質無限責任じゃないかと,みんな個人保証を求められている。しかも,それは限度がない。そういうことで新しい挑戦をする人が入ってくるわけがないということを非常に強く言われたことが記憶にあります。   もちろん,保証だけが起業がない理由じゃないですし,ましてや民法の保証契約のこの在り方だけで決まっているわけではないと思いますが,実際に経済に携わっている方がそういう印象を非常に強く持っている。要するに,何かをやったときに,うまくいかなかったら適当なところで手じまって,次に挑戦するというのが普通の勝負のやり方ではないかと思うのですが,今の日本の企業経営ですと,特に包括根保証なんかしてしまったら,ともかくとことん心中するしかない,最後の最後まで行って,もう余裕がなくなって初めて手じまえるという……。そうすると,もうまずほとんど財産がなくなってしまいますし,それだけ当然周りにも迷惑かけていますから,再チャレンジをしようと思ってもなかなか応援してもらえないという,そこはそういう実情にある部分によるところが相当あるのじゃないかとは思っているのですね。ですから,そういう観点から,やはり実質的にそういった新しい分野に挑戦したときに,それが失敗したときにどれだけの負担を自分が被るのかということが適切に予測できて,その範囲で思い切ってやれるという,そういう仕組みをできるだけ広げていかなければ,挑戦する人がふえてこないでしょうし,また融資する方もそういうリスクをどの程度に評価してどうやるかという融資慣行も,なかなか確立してこないのではないかという気がしていますけれども。 ● ただいまの○○幹事の御発言に関しまして,コメントを申し上げます。   やはり経営者というのは,本来は正に法人の代表者であって,それに尽きるわけでございます。したがって,法人の経営の失敗について,それを合理的な範囲で責任をとるというのは当然のことでありながら,一方で連帯保証しているということから一特定債権者に対しては,当然それは連帯保証人も自ら判こをついているわけですから,財産の提供その他責任をとるということも大いにあってしかるべしなんですが,それがなお包括根保証ということになりますと,前に中小企業サイドから考えますと,先ほども御案内がございましたとおり,会社経営に当たって常に会社イコール個人であるという見方をされていくということで,何ら成長がないわけでございまして,それよりももっと緊張関係のある,いわば個人とは倒産隔離されたような,個人が倒産隔離されたような形でその法人を見ていただくというふうな審査の目というのが育っていただきたいというふうに思っているところでございます。   加えて申し上げますと,往々にして特に中小・零細企業の融資にあっては過剰融資の問題がございまして,言ってみれば最初は合理的な範囲の金額の中で融資を受けるわけですけれども,どんどん貸し込んでいって,なお返そうとしても返していくのは,例えば恐縮な言い方ですけれども,私どもに何か落ち度があったのでしょうかというふうな意味合いで返済を拒絶されて,力関係上高い金利を払いながらその残高を維持し,ますます借りていくというふうなことがあって,結果として言うと,破たんした段階では大変な大きな金額の借入れがあり,それは実際には個人の財産を事実上簒奪される,収奪されるがために借入れをしていたというふうなことに見ざるを得ないような場合もございまして,これは極端な例ではありますけれども,そういうケースもあるのだということは是非御理解いただきたいのです。決して合理的な金融行動,銀行行動だけじゃないと,特に包括根保証にあっては。その辺は一言申し添えさせていただきます。 ● 一つ議論として先ほどの御説明にもあったのですが,いわゆる経営者保証と第三者保証を分けるのかどうか,どの段階でどの程度差をつけるかという問題等,これから皆さんに御議論いただくのだろうと思うのですけれども,基本的に今出てきた議論の中では,要は経営者保証についてもやはりある程度理性的な枠を設けるべきだという意見は,私も賛成です。   私なんかは,いわゆる中小企業の経営者から相談を受ける,極端なことを言えば,さっきの例でいうと危機的な状況で相談を受けるというケースは結構あるわけで,倒産制度が今いろいろ切り替わってきて,これから少しずつ変わっていく場面はあるのですけれども,やはり経営者が何をおそれるかというと,結局個人責任がどう来るのかというのが最終的におそれる問題として非常に多くあるわけです。本来は理性的な経営ができるのが経営者としての資質なんでしょうけれども,日本の中小企業というのは基本的にはワンマン経営であったり親族経営であるのがほとんどなわけですね。そうすると,本来は理性的な経営ができていれば,もっと早い段階できちんと他への転換とか整理とかができるはずなんでしょうけれども,実際は我々のところに来るときにはある程度もう倒産,要するに破産以外にないというようなケースがほとんどで,かつ,その段階になってもまだ経営者は判断つかない。それは何かというと,やはり個人責任という点なのです。   ですから,私どもが御相談を受けて,例えばもう倒産以外にない,破産以外にないということをお勧めする場合でも,早ければ早いほどある種価値が減額しないで済むという場合は非常に多いのですね。最悪の場合になれば,私どもに来たときにはもう従業員の給料すら払えない,要するにもう何もないというか,端的に言えば破産の費用すらつくれないという企業があるのです。ですからそういうことを考えれば,ある一定の段階で経営者保証についても制限枠は設けるべきだろうと私は思います。   ただ,それが第三者保証と同じでいいのかどうかというのは,また別だろうと思いますし,実際経営者保証についてある程度枠を設けたとしても,実際の経営の中では,特に金融機関から融資を受ける関係でいえば,金額について限度があり,期間について限度を設けたとしても,実際はそんなに変わらない場面だってあり得るのかなとは思いますけれども,やはりそれはそれとして,ある程度前向きに進めていく必要があると思います。 ● 先ほどの○○委員の御発言に関して,一言コメントなんですが。   おっしゃる内容は非常によく分かります。同感なんですけれども,しかし,保証制度を変えたら債権者は保証人もつかないような新しいビジネスに融資するようになるのかと,今まで保証人をつけないとだめだと言っていて,保証制度を変えて保証が余り使えないということになった場合に,じゃ保証なしで貸しましょうというふうになるのかというと,これはそう簡単ではないように思うのです。   問題なのは保証制度ではなくて,何か民法の保証制度に欠陥があるがためにいろいろな問題が起きているような議論になっていますけれども,そこに問題があるというよりは,むしろ金融機関の与信行動の問題であって,モニタリングをするというのも本当に経済合理的に行動すればそういうふうにいくはずなんだけれども,十分なモニタリングもせずに過剰な貸付けをしてしまったと,保証があるからということで過剰な貸付けをしたいたのを反省して運用を変えようという,これは非常によく分かるのですが,しかしそれは果たして今回の改正と直結する問題なのかどうか。これは,あるいは○○幹事の問題意識と共通していると思います。   私自身は,今回提案されている程度の内容の改正は,そんなことを言わなくても十分説得ができると,つまりそれなりに合理性のある改正なわけですので,新しいビジネスへの信用を導くためにとか何とか,そんなことに本当に直結するのかどうかというのは甚だ実証性は怪しいわけで,むしろそういうことではない,もう少し一般性のある理由で正当化していいのじゃないかという感想を持ちます。 ● それでは,この(総論)についていろいろ御意見まだあるかもしれませんけれども,第2以下のそれぞれの論点とかなり関連してきますので,余り残された時間はございませんけれども,第2の「貸金債務の根保証についての個人保証人の保護の方策」というところで,要式行為,限度額,期間制限と,この辺についていろいろ御意見いただければというふうに思います。 ● やや全体にわたるのですが,限度額の定めという一つの項目と,それから例えば保証期間の定めがない場合の解約終了権だとか,あるいは特別の元本確定請求権というようなのは,何か両者が関連しているのじゃないかなと。つまり,限度額があるのであれば,例えば2ページの一番下の行,「保証人は全財産を引当てにして責任を負うものであることから」という部分は,これは理由にならなくなってしまうわけで,あるいは3ページの真ん中の(2)の「特別の元本確定請求権」,特別の解約権につきましても,③のような場合はなお残るのでしょうが,②なんかは限度額が決まっていれば要らないかもしれないというところで,限度額の定めを義務化するか否かにかかわらず,3の(2)とか4の(2)が必ず必要なのかというあたりは,事務局としては一応切り離してお考えなんでしょうか。 ● 今の点は,まだ議論していただくという前提でございますので,どういう結論か,どういう考え方かということまではまとまってないのですけれども,おっしゃるように根保証について責任をある程度限定するということからすると,それぞれ関連はしておりますし,もちろん場面場面一つの方策で十分じゃないかというような議論は当然成り立ち得るのだろうと思っております。   今,○○委員から御指摘があった限度額の定めと例えば期間の制限の話なんですけれども,考え方としては限度額でその範囲では覚悟したのだからもうあとはいいのじゃないのという発想が一方では説明としてはあり得ると思いますけれども,他方で,限度額の定めといいましても,これについて先ほど来話題に出ておりますけれども,具体的にどう定めるかということまで何か踏み込んで規制ができるかというと,なかなかそこまでは難しいのじゃないかという前提に立つと,やはり額の定め方について一応覚悟したとはいっても,認識といいますか,どの程度の--ちょっと説明が難しいのですけれども,どの程度の覚悟の上で契約したのか,いろいろなレベルがあり得ると思いますので,そういったことも含めて考えますと,それは保証に対する制限が何もない世界から比べると限度額があるということについて期間の制限の必要性というのは相対的に低まるというような説明の仕方は可能でしょうけれども,一方で限度額があればほかの措置は必要ないのかというと,必ずしもそんなことはないのではないかといったような考えでございます。現段階でございますけれども。 ● 続きですが,今のお話,何となく感じは分かるのですが,例えば1億円という限度額を設定しても,実際の取引では3,000万円ぐらいですよというような感じで与信取引が行われるというケースが結構あるのかどうか。すなわち,1億円なんて必要がないのに,念のためとか称して多めに担保を設定しておくという,一種の過剰担保だと思うのですけれども,そういうのを公認するような感じ……。   それが構わないということであれば,限度額は残っているのだけれども当事者の予想していた本当の限度額を超えるような取引がなされるようになれば,解約請求権というのは十分分かるのですけれども,それなら最初の書面で限度額を設定する段階で,そんな過剰担保ではなくて,適切な額にしておいて,必要になれば限度額を改定していけばいいという議論で十分対応できるのじゃないかと思うのですが。 ● 取引額の問題もあるでしょうけれども,例えば保証した段階では自分が経営者だった,経営者であれば1億まではしようがないと。しかし途中で退任した,退任してまで1億の保証をするのは困るという事情の変更はあろうかと思います。   また,1億を保証したときは数億の財産があったのが,その後目減りしてしまって到底1億に達しなくなった,この段階でその保証を続けるのはかなわないから下げてほしいということもあるかもしれない。   ですから,そういう事情をどの程度まで入れるかというのは,もちろん限度額が定めがないときであれば確定請求は与えないとこれは到底無理だろうと思うのですが,限度額を定めたからといって確定請求が一切認められないかというと,それは事情にもよる。そこは正に御議論いただくことではないかと思っております。 ● この1から3まで,いかがでしょうか。 ● 今の論点とちょっと別の論点になりますけれども,1の要式行為についてなんですけれども,○○幹事の方から,現状においてもほとんどの保証契約は書面で行われているので,このようなものをつくったとしても余り大きな支障は生じないだろうというお話がございましたけれども,逆に言いますと,しかしそれでは規定を置いたからといって余り意味はないというか,何か実効的な意味が生じするわけではないということでもあるわけですね。にもかかわらず,この規定を置くということの積極的な理由というのがどこにあるのかなと。もしこの種の規定を置くならば,単に要式行為とするだけではなくて,書面に記載すべき事柄について何か規定を置く必要はないのだろうかというふうに思うのですけれども,いかがでしょうか。 ● 今の御指摘は,一方ではごもっともなところもありますし,考え方としては民法の贈与契約の要式行為性みたいな形で書面でやるということまでしか書いていないわけです。さらにそこで具体的な意味といいますか,より慎重とか,手続内容を明確にした上でということになってくると,恐らく今○○幹事がおっしゃったような方策もあり得るのだろうと思っております。   ただ,そこについて,これも民事法的なルールでその内容,契約の要素についてどこまで具体的にうたって,それを効力と結びつけるというようなことができるのかというあたりの問題もありますので,ちょっと答えになっていないような気もするのですけれども,そのあたりも含めて御議論をいただければと思っております。 ● 訴訟の実務をやっておりますと,口頭の合意で保証があったというようなことが出てくることはまずほとんどございませんので,御指摘はごもっともかもしれませんけれども,この中の保証の限度額の定めとか,期間制限ということをもし盛りこんでいくとすれば,それ自体が争いになることは往々にしてあるかと思います。その意味でいきますと,ここでまず保証について要式行為性を出しておいた上で,それを明示するという意味で書いていただきますと,裁判する者としてはとても助かりますので,要式行為性については現実に非要式のものが,口頭によるものがほとんどございませんが,ここで要式性を要求しておいて,慎重な判断を求めるということと,その他の制限,それと結びつけていくことは極めて有益じゃないかなと思っておりますので,私は要式行為の点については,立法事実としては十分あり得ると考えております。 ● 全銀協の方ですけれども,限度額,期間につきましては,我々としては今包括ということを考えておりますので,受入れに消極的という意見が多かったのですが,特にこの期間の方ですね,期間の方につきましてはもともとこの改正の趣旨から考えれば保証人保護の観点でございまして,保証債務の予測の可能性が重要になってこようかと思いますので,あえて保証期間を限定する意味があるのかなというのが一つ。   結局,限定しますと,その度にお客さまと銀行との間で合意をするということになるものですから,そこら辺のロスといいますか,どちらかというと経営者の方には会社の経営をしていただくのが本来の姿だと思っておりまして,その方がベストというかベターというか,ではないかなというふうに思っておりますので,特に期間の方はどうなのかなという,反対というか,消極的と言ったらいいのか,そういう考え方を持っております。 ● 2点あるのですけれども。   一つは,とりあえず貸金債務について検討を進めるということで,それは全然異論はないのですけれども,例えば分割返済のときに,その分割返済日に合わせた手形を債務者から預かるということがあるのじゃないかなと思うのですけれども。それで,保証人の保証が一切の債務ということになっていたときに,貸金債務と手形債務を別物だというふうにとらえるならば,手形債務の方の保証は残ってしまうのかという問題は出てくるのかなということをちょっと思いました。   それからもう一つ,今お話がありました保証期間の問題なんですけれども,これは実際に,当社は商社ですのでお金の貸付けではなくて,物の売買での与信行為ですけれども,現場はやはり期間制限のあるのはすごく嫌がるのですね。例えば3年間とか5年間としたときに,とれないのです。そのときに。最初,商売を始めるときは中小企業の社長さん方も,始めなければいけないからもう何でもしますわということでやっていただけるのですけれども,ある程度回り始めると,そして,じゃ更新ですから新たに保証書を書いてくださいと言うと,嫌がられる。嫌がられるけれども,じゃそこですぱっと商売やめられるかというと,やめるとその会社自身,その債務者自身危なくなることもあるし,なかなかそう簡単にやめられないというような問題もあって,これはちょっとしたネックになるのではないかなというふうに思います。   これ,恐らく趣旨からいったら自動更新は認められないのじゃないかと思いますけれども,そういう問題が一方であるかなと思います。 ● 今の○○委員のお話で,まず前半部分の手形の話でございますけれども,これは適用範囲の関係で一番最後に妙に銀行取引だけを念頭に置いたような書き方になっているのですけれども,この対象の限定の仕方についてはいろいろ問題があるというか,特に技術的な問題もありまして,恐らく今の議論からいっても,銀行が基本取引で結んでいる場合に保証をとっているような保証人の債務の範囲というのは,恐らくカバーできないとやはり問題は解決しないということがあるのですけれども,例えば今の基本取引約定書みたいなものを拝見しますと,デリバティブとかいろいろなものが書いてあると,それを全部書くのかと言われると,なかなか難しいところもありまして,そこは技術的なこととも絡むのですけれども,もう少しよく詰めて考える必要があるだろうというふうに思っております。   それから,後の保証期間の制限についての話ですけれども,今のお話というのは非常に興味深くお聞きしたのですけれども,やはりこれは力関係とかいろいろあって,我々の実務を知らない考え方からすると,そして金融機関との取引なんかを念頭に置くと,一応継続している場合の代表者が更新を要求して,ノーと言えるケースというのはそうそうないのじゃないかなというような認識のもとにあったのですけれども,それはもちろんケース・バイ・ケースだし,特に金融取引じゃないような継続的取引の場面になってくると,それはもう場面ごとに力関係が非常に動いてくるのじゃないかというふうなことがあるのかなと。これはもう単なる感想でございます。   この点については,特に保証期間経過後,当然終了というような,終了というか当然確定ということについて,正にここがかなり大きな議論が分かれるところなんだろうと思っておりますけれども,一方では期間の制限をどの程度に設定するのかというあたりのこととも関係してくるとは思っております。   先ほど,事務局でまずお示しした案では,上限5年ということで,今の○○委員のお話からしますと,5年でもやはりその都度とるのは大変なんじゃないかというふうな考え方が一方であるのだろうと。5年というと,しかしそれでも相当な長期間ですので,そこを一区切りとして意思確認なりということをやるということになると,それはそれで,負担として過大ということにはならないのじゃないかということもあるでしょうし,それから要求してもとりにくいというのは,それは法律では自由だから争いになるわけでありまして,それは5年で自動的に消滅するというようなルールが仮にできたら,それはそれでまた別の話が出てくるのじゃないかなという気もいたしますけれども,ここは引き続き御議論いただければと思っております。 ● 話は,先ほど○○幹事が問題提起なさった要式行為のところですけれども,現実には書面でとっているのであるならば,別にあえて要式行為にしなければいけないことはないのではないかということを私も考えました。かつ,日本民法というのは基本的には諾成契約を原則としておりますと,なぜ保証だけを,贈与は別にして,保証契約としては委任の場合でも別に書面は要求していないのに,なぜ保証契約だけ書面を要求するという,そこの理屈づけは,決めれば決めましたでいいのかもしれないのですけれども,どうもちょっと気持ち悪いので,逆に,あえて定めなくても,従来は書面でやっている以上はそんなに不都合はないのに,あえて日本の民法の超諾成主義の中でこういう異質な条文を入れるというときは,何らかの理論づけが必要なんじゃないかと思うのですけれども,そのあたりを教えていただきたいと思いますが。 ● それは説明が必要だと思うのですよね。 ● 日本民法という具合に民法典に着目すると,それは確かに諾成主義でおよそ書面は要求しないのが原則ですけれども,広く契約ということで考えるのであれば,日本の法律で契約当事者の一方を保護しようというときに書面性を要求するというのは極めてありふれた立法手段であります。ですから,今回の保証契約についても,保証人が予測していない過大な責任を負担する可能性がある,そういうことから保護するためにより慎重に契約をしてもらう,そういう発想でいけば,日本の種々の立法で見られている書面性を要求するというのは何ら不思議ではない。   民法だけ見ていますと,異例だと思われるかもしれませんけれども,法律というのは民法だけじゃないわけですから,日本の契約法に関する規制の在り方として見れば,書面性を要求するということは別に不思議ではない,相当数ある。しかも,ここで求めていることがそういう契約当事者により慎重に契約をしてもらうということによって,予測していないような被害から守るのだと,そういう観点だとすれば,その方策として書面性を要求するということは,他の立法とほぼ同じ考え方ではないかというふうに思います。 ● 私,この趣旨について疑問に思ったという点では○○幹事と意見を共有しているのですけれども,要式主義をとるならば,今,○○委員から御説明がありましたけれども,そして一方当事者の保護という観点を前に出すならば,やはりもっと進んだ記載事項を定めなければ実効性がないのじゃないかなというふうに思いまして,実効性がないのだったら,慎重にという意味で,理屈は別としての意味はあると思いますけれども,それに尽きてしまうのじゃないかなというふうに率直に思います。 ● 多分,主たる債務の証書と別にということを考えるかどうかというのとちょっとかかわっているかなと思っているのですけれども。保証契約書というのを別個に作るかと。 ● 正に今の点に関してですけれども,○○委員が御説明されたような説明,もちろんそういう説明もありますし,またほかにもいろいろな形での説明の仕方はあり得るだろうと思います。   例えば,今日の部会資料2の最初の(総論)の「見直しの視点」に挙がっているように,特に①でしょうか,「無償で情義に基づいて行われることが多く」というような点をもし強調するとするならば,もちろん諾成契約であって,それは保証契約という性質づけができる以上は法的な拘束力を持つというのは,法律家から見れば当たり前のことではありますけれども,一般の多くの人々にとっては,それは本当にそのような法的な拘束力を持つ意味があるものとして直ちに認識し切れるかというと,ややあいまいなところも多いと。そこから法的な拘束力のある世界に入っていくのだということを明確にするために,書面という形で意思を明確にするという,そういうような観点からすると,要式行為とすることは,恐らく民法の理論--と言ってもいろいろあるかもしれませんが,説明は可能なんだろうと思いますね。   そして,贈与は贈与者の側から見ると負担になりますけれども,受贈者の側から見れば利益になると。しかしこのケースでいきますと,特に保証人というのは,正に社会的に見れば一方で主たる債務者から利益を得ているのかもしれませんけれども,法的に見る限りには負担のみを負うということになりますと,それゆえの要式行為化というのは正当化できるというのが恐らく最初の○○幹事の御説明の含意かなと思いますし,このあたりはどんな説明でもできるところかなという感じはいたします。   そして,もし要式化することに実務上問題がないのであれば,それは別に要式化という方向でもいいのではないかなと。あとは実効性をどう確保するかという点は,私も○○幹事と同じような考えを持っているところではあります。 ● 要式の観点についていえば,私ども実務的な立場からいえば当然要式化すべき,それを法定化すべきと思います。ただ,どのレベルでそれを要求するかという議論は,今の議論を聞いていてあるのかと思ったのです。つまり,民法典自体にそこまで要求するのか,ある種業法的--と言ったら怒られるかもしれませんけれども,業法的なレベルで規定することも可能だろうと思うのです。   私ども弁護士の立場からいえば,単に書面を作る,いわゆる書面化するというだけではなくて,交付まですべきだろうというふうに思っております。交付を義務づけるということですね。先ほど,○○幹事の方から今後の在り方ということで御説明になった中に,契約書,書面の作成と交付ということもあったかと思いますけれども,多分今の銀行実務では,例えば銀行取引約定書を徴求するその時点で,多分多くは限度保証ということで金額の限度をつけた保証というのはある意味とっていらっしゃるのじゃないかと思うのですけれども。私の認識が間違っていればあれですけれども。それはそれとして,その書面が例えば主たる債務者とか借り主,あとは限度保証した保証人に配布されるかというと,そうはなっていなかったのだろうと思います。ですからそういう意味でいえば,書面化することは今もやっていることでしょうけれども,更にいえば交付義務も義務づけるということが必要だと思うのですが,それを民法のレベルでやるかどうかという議論は,やはり議論があっていいのかなとは思います。 ● 今の御意見との関連で,これは今日直接には御説明がなかったように認識しているのですけれども,立法のスタイルについては何か既にお考えがおありなんでしょうか。 ● 今の○○幹事のお話とも関係すると思うのですけれども,基本的には立法スタイルについてここで議論していただくのは適当じゃないと思っております。それは,民法の中に織り込むということもあるでしょうし,特別法的に何か措置を講じるということもあるのだろうと。ただ,業法云々という話が出てまいりましたけれども,法務省の所管している法律という意味での限定というか,そのレベルでの抽象度は必要なんだろうという配意でございます。ですから,こういうことを議論しているけれども民法に置くとしたら難しいとかいうことは,ここでは無用の心配であろうというふうに一応御説明させていただきたいと思います。 ● 今,書面交付につきまして業法の話と民事法の話をなさいましたけれども,ちょっと誤解のないように申し上げますと,私どもは事務ガイドラインで書面を交付するようにしているかというのをチェックしますと,検査しますと書いてありますが,それは個々の取引について書面を交付するということとは少し別の問題でございまして,銀行の業務運営体制においてきちんと情報提供は行われているかどうかということを見ますと,こういうことでございますので,ちょっと性格が違うということを御留意いただきたいと思います。 ● 先ほどの書面要件のところですけれども,これは○○幹事の対極にある考え方が一つあるぐらい記録に残しておいてもいいかということで発言いたしますが,私は民法の諾成主義というのは全くおかしいと思っています。現実と乖離していて,あれは変えるべきであると。これはその第一歩だということで,ほかと横並びでなければいけない,整合性ということを強調すると,第一歩はいつまでたっても踏み出せないということになりますので,この貴重な第一歩を踏み出すという意味があるのじゃないかと思います。   あと,書面性の要件のところで,最初に○○幹事の方から非常に興味深い問題が指摘されて,つまり合意のみで保証契約が成立して履行まで終わってしまった,それを有効とするかどうかと。これは私,非常に興味深い問題で,かつ難しい問題だと思いますが,果たして任意に履行された場合には,もう有効というふうにしてもいいのじゃないかと思います。   ただ,そういうふうにすると,強引に取り立てるということを生ずるのじゃないかということの御指摘がありましたけれども,確かにその懸念はありますが,しかし強引に取り立てるということでいえば,無効とはいえいったんは口頭で保証すると言ったのだから第三者弁済しろといって強引に取り立てられるということもあるかもしれませんので,任意に第三者弁済したということになってしまうと,それはそれで有効になってしまう。そういう意味では同じ問題は残るので,任意に履行した場合にはとりあえず有効というふうに扱った方が落ち着きがいいような感じがいたします。   それからもう1点だけ。期間についてですが,期間を定めることについてやや消極的な御意見もございましたけれども,私はこれこそがモニタリングに対する最大のインセンティブだと思いますので,期間を定めるということには非常に意味があるのじゃないかというふうに思います。 ● 期間の点について一言だけ,単なる問題点の整理にすぎないですけれども,ちょっと述べさせていただければと思います。   この限度額,期間,両方そうだろうと思うのですけれども,やはり保証契約をする時点では将来のことは分からない,不確実性があるという状況下でどういう契約をするかということが問題で,その不確実性,お互いに,債権者も債務者も,保証人もそうですけれども分からない中でどういうふうにしていくか,そして分からない中で決定したことをどう補正していくかという観点からの問題だろうと思うのですね。一つの考え方は,限度額が定まっておれば,もうその枠内でのお話になるわけだから,これで不可欠な事態にも対処できると,ここまでは責任を負う,これ以上は責任を問えないということでそれでいいじゃないかというのは一つの考え方で割り切りだろうと思います。   ただ,恐らく契約をする人間って,そこまで割り切っていないのじゃないかなと思います。つまり,最悪はこれ以上はいかないということであって,しかし契約しているときにはおおむねこんなふうに将来いくのじゃないかなという前提があって,その枠内できっと推移していくだろうと思うけれども,これ以上は悪くないだろうという,そういう発想だろうと思うのですね。そうすると,契約するときに,こういうふうに推移するのじゃないかな,しかしそれが外れたときに救済するかしないかということが問題になってきて,救済しないというのも一つの立場ですけれども,救済するとすれば二つ方法があって,一つは今正に出ている期間を切って,期間ごとにまた考えていくという方法。もう一つは,あるいは両方重ねてもいいのですけれども,期間を定めるか定めないかはともかくとして,事情が変わったという段階で解除ないしはその確定というのを考えていく,そういう対処法があると思うのですね。この二つの対処法,つまり期間を切っていくという対処法と,事情変更に基づく解除や確定を考えていくという二つの方法というのは,やや,というか,かなり大きく性格が異なっている面があって,ポイントは,期間を切っていくというのはもとの契約内容はそのままその時点でまた更新していくということであれば余り変わりないのですけれども,その時点でまた保証契約の条件を,5年なら5年後の時点で考え直す,そういう可能性を含意している,そういう理論的可能性も認めている。これは何を意味するかといいますと,さっきいみじくもおっしゃった点なんですけれども,5年間なら5年間やっていて,その関係に債権者も保証人も固定されているわけですね。その固定された状況の中で決めると,最初の決定の時点では,恐らくは債権者の方が強いのじゃないかなと思うのですけれども,5年後の時点はそのままかもしれないしそうじゃないかもしれない,そういう中で改めて契約をし直せるチャンスを法制度として保障するというのが期間を定めるということの意味だろうと思うのです。そういうタイプにした方が,保証制度というのはもっと合理的に使われるだろうし,あるいはもっとほかのより有効な手段を考えていくことになるインセンティブになるかもしれない。そこまでいくか,それとも事情変更解除ないし確定というのにとどめておくか,そういうあたりの判断問題じゃないかなという気がいたします。 ● 今,○○幹事のおっしゃったことでちょっと紹介されたのですが,私は限度額を決めること,それから期間を決めること,それぞれ合理性があると思うので,両方あってもいいと思うのですが,ただ最初の方におっしゃった限度額というのは万が一の場合であって普通はそう考えていないのだろうというところに引っ掛かる,かつ,賛同したいのですね。   普通の庶民の意識からいけば,保証というのは万一なんだけれども実際は自分が責任を負わされるということは想定していないのです。していれば,保証人にならないですから。その限りではゼロなんですね。想定している責任はゼロなんです。だから,そこの乖離を限度根保証の場合にどう考えるのかというところであって,非常に大きな問題だと思うのですが,両当事者間で金額はここだけども実際は与信はせいぜいここまでしかやりませんからねというような合意があれば,そっちが本来の限度額だという形で実質縮減は可能だと思うのですが,そういう特段の合意がないとか,あるいは黙示の想定がないような場合に,限度額というのは万一の場合であって,実際は責任を負わなくていいのだというようなのは,金融機関としては恐らくとらないのじゃないかと,とってほしいですけれどもとらないのじゃないかというふうに思えるのです。したがって,限度額は限度額としてかなり重要なものだろうと思いますし,その上で事情変更というのはもう一つかかってきてもいいのでしょうが,何が事情変更かというのが恐らく一番難しい問題で,先ほど金融機関の方がおっしゃったように,被担保債務の範囲についての限定を一切しないで金額だけでいいのかというのも,議論した方がよろしいのじゃないかというふうに思います。 ● それでは,時間が大分過ぎましたので,今日の議論はちょっと途中ですけれども,一応本日はここまでということで,次回また引き続いて御議論をお願いするということにしたいと思います。   では,次回の予定をお願いいたします。 ● 次回の日程について御連絡いたします。   次回は,4月19日月曜日,午後1時半から4時半まで。場所は法務省20階の第1会議室でございます。よろしくお願いいたします。 ● それでは,以上をもちまして法制審議会の保証制度部会を閉会にしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。 -了-