法制審議会法人制度部会第1回会議 議事録 第1 日 時  平成13年1月16日(火) 自 午後1時34分                       至 午後3時10分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱案(案)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 (開会宣言の後,事務当局から次のように法制審議会令の改正等につき説明がなされた。) ● 中央省庁等改革に伴いまして,本年1月6日に法制審議会令が改正されておりますが,その主な内容は,審議会を定員20人以内で組織するものとすること,従前の部会委員というものを廃止するものとすること,それから,特別の事項を調査審議するため,臨時委員というものを置くことができるものとするなどの改正でございます。  また,今後の法制審議会につきましては,従前のような包括的な諮問を廃止しまして,諮問事項を個別具体的なものに移行させるとともに,部会の常設化を解消して,部会を個別の諮問ごとに設置するという方針に改められているところでございます。  こうした前提のもとに,去る1月12日に開催されました新しい法制審議会の総会におきまして,民法に関する従前の包括的な諮問が撤回され,新たに法人制度に関する諮問がされるとともに,その調査審議のため,この法人制度部会を設置することが決定されたところでございます。  ちなみに,新たな諮問事項は,「非公益かつ非営利目的の団体に法人格を付与するための法整備を早急に行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい」というものでございます。  本日の会合は,このように新たに設置されました法人制度部会の第1回会合でございます。御覧のとおり,従前の法人制度分科会のメンバーであられました委員・幹事の皆様方につきましては,いずれもこの新たな法人制度部会の委員・幹事等に改めて就任していただいているところでございます。引き続き,よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。  (部会長に平井宜雄委員が互選・指名された。) ● 皆様の御意思によりまして,新たに部会長に就任をいたしました。新法人制度部会の審議予定は必ずしも長くはないわけでございますけれども,どうぞひとつよろしくお願い申し上げます。  それでは,あらかじめ配布されております部会資料1「共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱案(案)」をもとにいたしまして,最終的な要綱案の策定に向けまして,更なる御検討をお願いしたいと思います。  それでは,まず本日の配布資料につきまして,事務局から説明いたします。 ● 新たに部会ということになりましたので,資料番号を1からつけ直させていただいております。  この内容は,前回の分科会でお配りいたしました分科会資料12,及びその修正箇所を明示いたしました分科会資料13を取りまとめたものでございます。それから,基金の利息に関して前回御検討いただきまして,この法人の性格からして,基金利息というものは許容しないということでよろしいのではないかという案,これは分科会資料14の1(A案)の方だったわけですけれども,この内容をも反映させております。したがいまして,分科会資料12と13と14の1を合体させ,取りまとめたのがこの内容でございます。  それ以外の変更点は,名称に関する部分でございます。これについては,後ほど御説明いたしますけれども,その余の点について,今申し上げました従前の分科会資料12,13,及び14の1から大きく変更されている点はございません。  それでは,前回までの御審議の中で,なお積み残されている問題点について,御説明をさせていただきたいと思います。  まず,法人の名称についてでございますが,従前申し上げておりますとおり,「共益法人」という名称につきましては,各方面から公益法人との音の響きとの類似性が好ましくないのではないかという指摘もありまして,なかなか採用するのは困難な状況でございます。さりながら,分科会の中でもこれを支持する御意見があり,また中間試案の公表に対しても,それほど強い支持意見ではなかったにせよ,「共益法人」という名称でもいいのではないかという御意見もちょうだいしたところでございます。  それらを踏まえて幾つかの案が考えられたところですが,結論的には「共」の字は生かしつつ,少し別の名前を考えてみようということで,今回の名称にさせていただくのはいかがかということでお諮りするものでございます。比較的仕組みが類似する相互会社に倣って,「相互法人」というのはどうかとか,あるいはほかに名案がなければ「中間法人」というのはどうかという考え方もあり得るところでございますが,少なくとも「中間法人」という名前につきましては,これが講学上の中間法人のすべてを捕捉するものではないものですので,これまた必ずしも好ましくはなく,余り選択肢は多くないように思われるところでございます。  それから,「社団」という言葉は,民法の社団法人との関係で非常に使いづらいところでございますし,また,「非営利」という言葉は,それ自体がNPO法人で使われているということのほか,非営利という概念自体が非常に専門的に特別な意味を持って使われていることからすると,なかなか法人の一般的な名称としてこれを用いることは難しいということ等もございまして,このような名前にさせていただいてはいかがかということでお諮りするわけでございます。  あとは,前回の御審議の中で幾つか問題点として指摘されたものですが,まず第一の一の1,共同法人の定義に係る部分でございますが,剰余金を社員に分配しないというふうに決めを打った言い方をしたらいかがかということの御提案がございました。法制的に意味に違いが生ずるかどうかについてはちょっと厳密なところはよく分からないのですけれども,意味にもし違いがないとすれば,このように「目的としない」という方が目的に反した場合の効果等というような問題に関して,従前からある議論につなぎやすいということもありまして,従前の案のままでいかがかというのがこの案でございます。  それから,前回の指摘された問題のもう一つとして,第二の三の2と第三の三の1(七)の事業譲渡に関する規律について,特に有限タイプの方の事業譲渡について,事業の全部のほか,その重要な一部の譲渡についても社員総会の特別決議を求めるべきではないかという御意見をちょうだいしたところですけれども,一つには無限タイプとの調整を図る必要があるということと,もう一つには,この法人におきましては,決議要件をいかにするかということがかなりの程度法人の自治に任されておりますので,法人において必要があれば全部の事業譲渡以外の事項についてもかなり加重した決議要件を定款で要求することで,その法人に合った社員総会の事業運営に対する関与の度合いというものを定めることとすればよいのではないかということから,これまた従前どおりの案で御提示しているところでございます。  それから,残余財産の国庫帰属について,受ける側の国庫から来る何らかの制約の有無の検討ということが宿題だったわけでございますが,よく例のある相続財産管理人における国庫帰属の実務を調べましたところ,そこから分かるところは,国庫において金銭以外のものを受け入れることになりますと,その換価をする手続が非常に面倒であるということもありまして,実際問題としては,事実上金銭での受入れに限るという実務上の運用がされているということのようでございます。最終的に受入時に利息等の調整を要しない小切手での受渡しということが行われているようでございまして,恐らく法人の清算の場面で同じような問題が生ずれば,同じような形で取り扱われるべきことになるのではないかというように思われます。  それから,基金の返還に関する規律についてですが,前回までの議論では,規制の簡便化という観点から寄附構成でいかがかということを提案しましたところ,それについて税制上直ちに法人課税の問題が生ずるということになりますと,実際問題として法律上基金の拠出を300万円まで強制するということの合理性が担保できないという懸念が示され,これに対応するために,相互会社の基金制度のような,返還可能な劣後的な債権としての性格づけをするということが事実上方向性として決まったところでございます。その返還時期について,法人の解散時まで返還させないということにすることが簡便だし適当ではないかという御意見をちょうだいしたところでございますが,前回も説明いたしましたとおり,それはそれで非常に規律は簡便になり得るのですけれども,この基金の拠出を強制させるという趣旨が,主として債権者保護という観点にあるとすれば,債権者保護に欠けない限度では返還を認めるという選択肢があっても構わないのではないかということ,むしろ債権者保護に問題がないという場合でも返させないこととすることについての理由付けが,返還可能な債権という構成をとった場合にはかなり難しいということが一つと,もう一つは広く公衆から募るという必要はあまりないにしても,やはり何がしか外部からの基金の拠出を期待せざるを得ないとすれば,法人が解散するに至らなくても何らかの要件のもとに返還され得るものであるという性格づけをしておいた方が,基金の拠出を受けやすくなり,法人としての自由度が高まるのではないかと考えられることから,かなり規律は複雑にはなるのですけれども,一応法人存続中の返還もあり得るということで規律の在り方を検討し,その結果,保険業法におけるような規律のもとに返還を認めるという方向で考えておりますのがこの案でございます。  これまでの議論を踏まえまして,かなり技術的な,法制的な検討を行わせていただいているところでございますが,その過程の中で,従前の案を現在までに2点,修正すべきこととなっているところがありますので,それを御報告するとともに,その当否について御意見をちょうだいしたいと思います。  まず1点目は,有限タイプの登記事項から,社員たる資格の得喪に関する規定というものを除くということでございます。第三の一の9の(一)でございます。  どのようなメンバーが当該法人のメンバーたり得るのか,どういう者がどういう手続をとることによって法人のメンバーになり,どういう要件のもとに法人のメンバーから外れるのかということが,定款で定められるべきことは当然でございますけれども,この実質を更に登記事項にまですべきではないかというのが従前の案でございました。しかしながら,他の法人法制を見ましても,このような事項を定款記載事項としているものはございますけれども,それを登記事項としているものがございません。そこで,開示としては,定款に記載され,それが法人の事務所において開示されるということで足りるのではないかということから,登記事項からは除くということにさせていただきたいという点が第1点でございます。  それからもう1点は,第三の三の2(五),理事に関する所要の規定の整備の中で,累積投票という事項を掲げておりました部分です。有限タイプについては,原則として有限会社の規律に従って規律を考えようということにしているわけでございますけれども,有限会社では累積投票に関する規律というものを持っているわけでございますが,実はこの法人におきましては,議決権の在り方や決議方法についての定款での定めの自由度が高いということからすると,必ずしもこの累積投票に関する規定というものを明示的に盛り込まなくても,それと同じ,あるいはそれ以上の工夫が法人において可能なのではないかと考えられますので,これを削るということにさせていただきたいということでございます。  なお,有限会社法における累積投票に関する規律には不合理な面がございまして,それによることができないということも実質的な理由としてあげられます。  この点以外は前回御説明いたしましたとおりでございまして,特に変更を加えているところはございません。ただ,いろいろ担当者限りで気がつかない点も多々あろうかと思いますので,今,申し上げたような論点に限らず,御意見をちょうだいできれば幸いでございます。 ● 前回までの案の変更点につきまして,今,御説明があったとおりですが,もちろんこれ以外のことも議論していただくことは全く排除していないわけでございますけれども,差し当たり今御説明があった点を中心にまず御意見をいただいて,しかる後にそれ以外の点についての御意見をいただく,こういう順で進めさせていただきたいと思います。  まず名称ですが,これはいかがでしょうか。最後まで「なお検討する」ということで来たわけですが,今日は「共同法人(仮称)」という名前で登場したわけです。  名称の問題,どうでもいいということも言えるかもしれませんけれども,案外大事だということも言えまして,なかなか難しいかと思いますが,いかがでしょう,この点につきまして御意見ありましたらお願いいたします。 ● 「共益法人」と言うと,公益とちょっと言葉が聞き間違いやすいとか,あるいは「益」が誤認されそうとかということで,今度新しく「共同法人」という案を出していただいたわけですけれども,今度は逆に,「協同組合とどう違うの」と,こう言われそうな感じもします。そういった場合,字ももちろん違うし,一々内容を説明すれば分かるわけですけれども,名称としてはこれもまた難しい,耳に似たような言葉があるものでして,どちらがいいのか,ちょっと考え中です。 ● 協同組合と誤認される点では,「共益法人」と似ている点があると,こういう御意見ですね。 ● はい。この前,「共益法人」と言うと,今度は共益費を連想して,管理組合のようなものが出てくるのじゃないかとか,いろいろ心配すればきりがないわけですが,「共同法人」の場合も,簡単に,私なんか思うのは,全国展開が可能で,協同組合は例えば生活協同組合の地域性があるとか,そういうところに違いがあるとか,それからあと,きちんと法律になってしまえば,その違いは恐らく解説書か何かで出てくるのだろうと思いますが,一般の国民が耳にしたときに,すぐイメージの違いが分かるような言葉であろうかということを,まず審議する立場としては考えなければいけないのじゃないかと思っております。 ● 何か,積極的にこの方がいいというのはありますか。思いつきでも結構ですけれども。 ● いや,それで困っているのです。  やはり「中間法人」というのでスタートさせちゃったので,一番頭の中にはぱっと来るのです。しかし,すべての中間にある法人をカバーするわけではないということですから,これもいけないのかと思うわけです。 ● 私は,個人的にはやはり「共益法人」の方が言葉としてはいいのじゃないかと。どちらも使っているうちに慣れてきますので,あまり差はないのかもわかりませんけれども,とりあえずのスタートという観点で,耳新しく響く言葉の中で選ぶとすれば,私は「共益」の方がいいのじゃないかと思います。  その理由といたしましては,やはり世の中には今まで公益法人という公の利益のために存在する法人と,それから私益のために存在するいわゆる営利法人とがあって,正にそこの中間領域のところの益を追求するといいましょうか,目的とする法人というのが今回の中間法人でございますので,「共益法人」というのが意外とぴったりしているのじゃないかと。「広辞苑」にも「共益」という言葉はございますしね。  「共同」と言うと,何か違った人たちが協力してあることをやるという,例えば男女共同参画法みたいにですね。そういうところで,何か益を分かち合うという,ある共通の利益を追求するという,そこの部分がちょっと欠落しているような気がするのです。「共同」ということだけで言いますと。やはり我々が今回こういう法人制度をつくるのは,益をだれが享受するのかという観点から,公益でもなければ私益でもないというところのジャンルを追求しているわけですから,私は「共益」の方がいいような気がいたします。こだわりませんけれども。 ● 名前の方は別にいい提案があるわけではないのですが,しかし「共益」というふうに省略するからあれなんで,これを4文字で「共同利益法人」でもいいのではないかという感じもしました。  それはともかく,ちょっと関連して,名称の後に続いている「社員に共通する利益を図ることを目的として」云々という文章ですけれども,前回もちょっと議論になりましたけれども,「目的」という使い方がこういうふうに二つ出てくると,やはりちょっと落ち着きが悪くて,気になっている点です。  この「目的」の使い方は非常に多様なので,こういう使い方も別に間違いではないし,現在の民法では「営利を目的とする」という言い方をしていますから,「社員に分配することを目的としない」という言い方もおかしくはないと思うのですけれども,しかし前段の方の「共通する利益を図ることを目的とする」という「目的」と,2番目の「目的」とは,やはりちょっとレベルが違って,どっちかの「目的」を削ることができないだろうかと。現在の民法34条でも,「公益に関する社団にして営利を目的とせざるもの」というふうに,「目的」は一つにしていますね。その「目的」という言葉も,余り多様に使われるのは適当ではないので,例えば民法43条の法人の事業の目的という,そういう意味に「目的」というのはむしろ限定する,完全には同じではないのかもしれませんけれども,むしろ前者の方,「社員に共通する利益を図ること」という方がどちらかというと事業の目的に近いので,こちらの「目的」を残して,例えば「社員に共通する利益を図ることを目的とする社団であって,剰余金を社員に分配しないもの」,ちょっと続きが悪いのですけれども,例えばそういう言い方はできないのだろうかということが前から気になっている点で,もう一回指摘したいと思いました。 ● 名称に関しては,私は先ほどの○○委員の御発言と全く同意見でありまして,特に○○委員が最後におっしゃられたことですけれども,言葉の語感からその内容をくみ取るといいますか,内容をあらわす言葉としては,「共同」というのはどうも私はこの法人の内容を示す言葉として余り適切ではないという感じがいたしまして,「共益」の方がその意味ではずっといいのではないかというのが私の印象であります。 ● 「共益」で行こうという御意見,もちろんそれはそれで結構でございますけれども,何か公益と混同されるというようなことを防ぐためのもう一つの積極的な対案みたいなものがございますれば伺っておきまして,更に最終的にどういう名称にするのか,検討していただこうかと思っておりますが。  確かに「共同」といいますと,協同組合と誤認されるという問題と,それから法人が集まって何か共通のことをやろうという語感はいたしますね。しかし,それも法律用語ですから,そうじゃないというふうに言えば済むのかという気もしますけれどもね。  問題としては,あるいは協同組合との類似性という問題が生じないかという御指摘の方が問題になるかという気もいたしますけれども。  共同の利益ですから,「共利法人」というのも考えられないではないのですが,そうすると今度は営利法人とどうなるかという問題もまた出てきまして,なかなか難しいですね。 ● ○○委員のおっしゃった「共同利益法人」というのが,全く明確にきちんと出ていいのじゃないですか。 ● 「有限共同利益法人」となりますと,かなり長くなりますけれどもね。  そうすると,「共益法人」の支持者のほかに「共同利益法人」という御意見もあったと。 ● そのうちに,何しろ略語の好きな国民性ですから,「共益法人」だなんて言い出したら,それはそれでいいのじゃないかと。 ● そのうち,そうなるかもわかりませんね。 ● そのときには,もうみんなの中に同じ「きょう」でも「共(とも)」という字が頭の中にイメージとして出てくるのだろうと思いますから。 ● ほかに何か御意見ございませんでしょうか。  それでは,この点は今御提案があったことも踏まえまして,もう一度事務的に検討してみたいと思います。  それから,これはいろいろな法人制度との横並びということもあるものですから,必ずしも最後までこの名称の問題について意見がまとまらないという事態もあるかもしれませんが,そういう場合にどうすべきなのか,改めてもう一回ございますので議論をしていただきたいと思います。  それから,2番目の問題は,さっき○○委員が出された問題ですが,要するに「目的」という言葉が二つ出てくるのはおかしいのではないだろうかという点でございます。先ほどの事務局の説明ですと,「目的とする」というのはほとんどの法律に使われているということと,「目的」という言葉を使うと,目的に反する行為は何かという形でコントロールする,あるいはそういう場合の効果を定めやすいという,そういう長所があるという話でしたが,それもあわせていかがでしょうか。 ● やはり二つの「目的」のレベルというか,意味が違うのだと思うのです。具体的な効果の違いがあれば,それを指摘できれば一番よろしいのですけれども,どうも思いつかないのですが,やはり前者の方は対外的な事業を考えていて,後者の方は内部的な問題ですから,効果を考える上でも違ってくるのかなという気はいたします。  あとは,実質的には「剰余金の分配を目的としない」と言った場合に,だったら対外的な収益活動をすることは構わないのではないかということが何か裏から出てくる。他方で,目的としなければ剰余金を分配してもいいのではないかということも出てくる可能性があるかもしれない。それをどう考えるかというのは大体ここで議論なされていますので,それで差し支えないということであれば,実質論というよりも,二つの「目的」という言葉のレベルが違うということが気になるということが中心になります。 ● 具体的なお考えとしては,先ほどの○○委員のような表現が望ましいという感じですか。 ● はい。もしそれで差し支えがなければ,その方がすっきりしているのではないかと思いました。 ● ほかに,この点について御意見ありますでしょうか。 ● ちょっとドイツ語をよく知りませんが,ツベックと,それからもう一つは目的とする事業ですか,としての目的と。後者については,結局規定しても法的な効果といいますか,なかなか縛りがかけにくいということで確か消えたのだと思うのですね。主として営利を目的とした事業はしない,収益事業を専らやるようなものはここに入らないと。  そうなってきますと,この法人制度の立案の経過を知っている人については分かりやすいのかもしれませんが,この法律が一人歩きした時点で,共益法人の目的というのがいわゆる中間法人という非営利というところが全く表に出てこない,単に剰余金の分配をしないというようなことだけになってしまう。  そうしますと,今,○○幹事がおっしゃったように,目的とする事業として,専ら営利を目的とするもの,収益事業をやるものというのが共益法人であって何で悪いのだというような形になってきはしないか,ですから剰余金を社員に分配することを目的としないという意味と,営利を目的としないという意味が同じであるならば,どちらかというと営利を目的としない社団であるというふうに書いておいた方が,国民一般には分かりやすいのではないかという感じがいたします。 ● これは,こういうふうに変わった経過は,考えてみますと非営利性という概念が多義的であって明確ではない,ここで言う非営利ということは,つまりここに書いてあるように社員に分配しないという趣旨であると。ですから,収益のための事業をすること自体は妨げられないのだという意味を含めて,こういうふうに変わったと思うのですけれどもね。  ですから,もし今のような御意見ですと,非営利か営利か,その限界はどういうふうに定めればいいのかという議論は,ちょっともとに戻るような感じには--もちろん,それで一向に構わないわけですが,戻るようなことにはなるかなと思います。 ● 数日前に,「共同法人」という名前になったという資料をいただいて,私も周りの者にこの話をしたときに,例えば具体的にこの定義で,PTAの人たちが学校の設備が税金の付与を待っていたらいつまでたってもできないから,ガラスを入れ替えたいから,蛍光灯を入れ替えたいからとかいって,PTA活動のために大きなバザーをやるとか,それから音楽会なんかをやって,それでボランティア的な出演料を払うことによって利益を得て,それをバザーと同じように活動費としてPTAが自分たちの子供たちを守るために寄附行為をするようなことをすると,そのときにPTAの会員たちの分も全部,少なくとも何人かの人の分ぐらいは外のお客さまに買ってもらうから,音楽会の切符をただにしてしまうということをやっていいのか悪いのかと,こういうことを言われたのですね。どこで線を引くのかと,この剰余という問題の。そういう,すごく生々しい具体例を質問されて,私としてはちょっと全然思いもかけない質問だったのでうなっちゃって,良識の範囲内でやるのかしら,それとも税務署が目をつける線はどこなのかということを気にしなければいけないのだろうかと,こういう議論というか,相談というか,話をしたのですね。  ですから,この「剰余金を社員に分配することを目的としない」という言葉は,なかなか含蓄がある言葉ではないかと思うのです。 ● 今までの議論の経過を見ると,お金を稼ぐためにバザーをすること自体はこの規定によって妨げられないという解釈じゃないかと思うのですね。 ● そのバザーをするとき,バザーなんかはいつも全部ボランティア的な労務の提供ですね。ですから,たまには会員の分ぐらい音楽会をただにして,外部の人に切符を売って,そしてバックマージンのお金で会員の人たちが音楽会をただで楽しむといったときはどうなんですか。これは剰余になるのですかという話なんですね。  そういうものを,ガイドライン行政でこれは運用していくのか,全く良識に任せられるのか,税務署から文句が来るのか,とにかく実際例を考える立場としては難しい問題だなと思いました。 ● 具体的な問題は,一種の解釈問題にはなるのだと思いますけれども。 ● よく分からないのですが,例えば今の民法の34条では,「公益ニ関スル社団又ハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ」ということになっているわけですね。それに対して35条は,「営利ヲ目的トスル社団」と言っているわけですし,それから商法の会社法の定義のところも,52条の2項で「営利ヲ目的トスル社団」というふうに言っているわけで,剰余金を社員に分配することを目的としないというようなたぐいの法人制度というのは,ほかに立法例があるのでしょうか。 ● 営利を目的とする・しないということが,金もうけをする・しないという意味であれば,現代の用語例として別におかしくはない,一般的な理解であるものの,法人として金もうけをし,なおかつその金もうけをして得た利益を構成員に分配すること,これが営利目的であり,そうでないものは金もうけをしても営利を目的としないものであって,例えば財団については営利を目的をする財団というのは存在しない,というような理解は,現代の「営利」という用語例としては通用しないのではないかという法制的な指摘を受けているところでございます。もしその実質,つまり今御指摘になられたような営利目的という語の意義をあらわすというのであれば,きちんと分かるようにあらわすべきではないかということがここでの変更の理由でございます。  おっしゃるように,このような表現で営利を目的としないということを言いあらわした条文があるというわけではございません。 ● 私も補足したいのですが,恐らくこれは現在の民法典自体は「目的」という言葉を二重に使っているというのでしょうか,43条のところの「目的」というのは,明らかに営利かどうかというのが入らないではないですけれども,やはり事業の目的だと思うのです。ところが34条の方は,「営利を目的とする」という言葉を使っていますから,営利を目的とするとか,あるいは営利を目的としないという言い方で使う場合の「目的」で,そこは明らかに違う内容を持っている。それがどうも混乱の出発点だと思うのですが,ですから両方「目的」で使っているので原案のままでもいいと,二つ内容は違うけれどもそれでいいというのも一つ考えられますけれども,多少整理して--整理してというのは,どうも一つの文章に二つ出てくるとちょっと落ち着きが悪いので,どっちかを削ると。  先ほどは後の方を削ると言ったのですが,場合によっては34条と比較したときに比較しやすくするとすると,前者の方の「目的」は事業目的というか,事業内容みたいなものですから,「社員に共通する利益を図る--言葉遣いはまだ練れていませんが--事業を行い」とか,後の方の目的は残す。そんなのもちょっと考えられるのではないかと思いました。  いずれにしても,二つあるのはちょっと落ち着きが悪いというのが意見の出発点です。 ● 問題は二つに分かれると思うのです。一つは,文章の落ち着きということで言うと,確かに落ち着きは悪いのですけれども,例えば私的独占禁止法の2条2項では,もっと落ち着きの悪い,「事業者団体とは」というところですが,「営利を目的として商業,工業,金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし」という使い方がありますね。ですから,この「主たる目的」と「営利目的」という形では,レベルの違いというのは分かることは分かるし,そういう使い方を一つの文章の中でしている法令もあるということで,落ち着きは悪いけれども許容されるのかなと思うのですが,剰余金を社員に分配することを目的とするということと,営利目的ということのどちらが定義として適当か,あるいは分かりやすいかという問題がもう一つまた別にあると思うのです。  剰余金を社員に分配することというのを維持するのであれば,どちらかの「目的」という言葉を別の言葉に置き換えるというような手法がより文章の落ち着きをよくするのだろうと思いますし,営利目的という,我々の中で概念として大体こういうイメージというのでとらえられるものを定義に持ち込んだ方がいいという意見が強いのであれば,剰余金を社員に分配するということよりは営利目的というふうに置き換えた方がいいという御意見が支持を得ることになるのではないかと。そういう感じで自分なりに今考えております。 ● 今,私は皆さんのお話を伺っていて,それから先ほど私の周辺での議論を考えますと,「剰余金を社員に分配することを目的としない」という言葉になると,かなりいろいろな面で窮屈になってくるのじゃないか,それより市民の良識に任せられる,許容度の高い,営利を目的としない社団という言い方の方がいいなと。気持ちとしてはもとの案に戻っていくわけです。  そして,これが法律文言として落ち着きが悪いということは,そんなことはないというお話であれば,この前の12月のときの資料12の定義の方に戻ってしまって,このままでよいのではないかというのが私の意見です。  ただ,どうしても直すというか,普通の平易な言葉でいくと,例えば「社員に共通する利益を図り,かつ営利を目的としない社団」,そういう言い方というのはまずいのでしょうか。という提案です。 ● ほかに,この点についていかがでしょうか。  営利ということに立ち返るのか,それとも営利性の内容をもっと言葉の上で厳格に表現した今回のような定義でいいのかどうかという,そこの問題ですけれども。  その前に,営利かどうかというのをもう一遍復活するかどうかという点についてはいかがでしょうか。  どちらかというと,○○委員と○○委員がそのような御意見で,ほかの方はそんなにこだわらないというような印象を私は受けましたけれども。なおこの点について……。  確かに法律の条文としては,これは初めてで,ただ内容がこれまでの「営利」という名前で呼ばれてきたものが,結局はこれであるという形で明確化した。特に今回の場合には,その点を明確にした方が法人の性格をはっきりさせる上で望ましいのじゃないかという考慮があったのじゃないかと理解しておりますけれども。  ほかの方は,大体これでよろしいと。今の御発言以外の方は,よろしいというふうに理解してよろしゅうございますか。  特に御意見なければ,営利かどうかという問題は,今の御意見をいただいた上で改めて事務的に検討したいと思います。  次の問題は,「目的」というのを二つ違ったレベルで使われているので,どちらかに統一すべきではないだろうかという御意見と,いろいろな使い方があるので,そうこだわらなくてもいいじゃないかという御意見等もあったかと思いますが,この点はいかがでございましょうか。  特に御発言なければ,ほかの方は大体そんなにこだわらなくていいのじゃないかというふうにお考えになっていると理解してよろしゅうございますか。 ● いいと思うのですが,要はこの共益法人が定款の目的に沿う限り,いわゆる収益事業を行うことができるのだということの解釈といいましょうか,それがはっきりしている表現ならば,私はどちらでもいいと思います。どっちかの表現がややあいまいだということならば,より正確な方の表現を選んでいただきたいということで,その辺は専門家にお願いをしたいと思うわけでございますけれども。 ● 付随的に収益事業を行うという点については,ほとんど合意があるわけですね。できるという点についてはね。ですから,その点はこれによってはっきりさせられるということは言えるかなという気がちょっといたしますけれども。 ● さっきの○○委員のような,バザーだとかやることを営利事業じゃないかということで,シュリンクされたら困るわけですね。そうじゃないのだということがはっきりすればいいわけですから。 ● 蛇足になりますが,「目的」という言葉の使い方という意味では,最初の方,「社員に共通する利益を図ることを目的とし」というのが,これが共益法人なり共同法人なりの主たる目的ということで理解されますので,こちらの「目的」を残して,「社員に分配することを目的」という,後の方の「目的」というのは,私はこれは取れるものならば,「社員に分配しない」ということで問題がないなら,そうした方が一番すっきりするのではないかと思いますが。 ● それでは,この問題についての御議論は,大体ここでいったん終わりまして,次の問題に進むということでよろしゅうございましょうか。  では,御意見を踏まえて,もう一度機会がございますので事務当局で検討していただきます。  ただ,次回は最終回でございますので,そこで法人制度部会としての意見をまとめる必要があると思いますので,その点はよろしくお願いいたします。  次に,先ほどの説明で議論をしていただきたい点は,事業譲渡に関する規律でございます。事業の全部譲渡については,一定の枠がはめられておりますが,全部譲渡でなくて,「全部又は重要なる一部の譲渡」という規制を加えたらどうかという御意見がありましたので,それに対応していろいろ検討したわけでございますけれども,検討した結果,先ほどのような理由で,一応12月に出ました案を維持するということで落ち着いて今日お出ししたわけですが,この点はいかがでございましょうか。  ○○委員,何か御意見ございますか。 ● その前に,この間,宿題として商法の55条を超えるような内容になっているかどうかという御質問があったと思いますけれども,考え方としては特に異なるところはないと言ってよろしいのではないかと思っております。細かく詰めますと,法人一般のような規定の仕方になっているとか,若干超えるような感じもしないではありませんけれども,考え方としましては,商法55条は商法の枠内で会社が無限責任社員になれないということと,会社の無限責任社員に他の会社がなれないという両方の側面を一つの条文の中で規定しておりますので,それをこの要項案では二つに分けて規定したというふうに理解すれば,趣旨としては特に異なるところはないと考えてよろしいのではないかと思っております。  事業譲渡のところは,私はやはり本当は「重要な一部」も入れた方がいいとは思っているのですけれども,法制上のバランスで,特にこの方が立法技術上好ましいということであれば特に反対はしませんが,本来は「重要な一部」も入った方がいいとは思っております。 ● 非常に細かい話になって恐縮でございますが,無限タイプが模範としております合名会社では,この事業譲渡に関する規定というのは清算の部分にだけ登場してまいります。社員の過半数で事業の全部又は一部譲渡ができることとされています。  ところが,存続中の会社において,事業譲渡がどういう形でできるのかというのは何も規定がありません。いろいろ解釈論がありまして,少なくとも全部譲渡については,定款変更そのものなのか,あるいは実質的に同じに扱うべきだということか,いずれにしてもそういう理解がされているのに対して,重要かどうかにかかわらず,一部の譲渡についての議論はあまり見当たらない感じがいたします。  御承知のように,株式会社,有限会社におきましては,事業の全部又は重要な一部の譲渡について,特別決議が要求されているということとのバランスは何かという説明に窮しているところでございまして,それぞれ歩み寄らせて,全部譲渡は少なくとも法律上必須の手続を定め,それ以外のものについては,当該法人において必要と思えば決議要件を加重するということで対応するということでいかがかというのが,よいのではないかというのがこの案の趣旨でございます。 ● きちんと調べたわけではないのですが,恐らくそうなった理由は,株式会社について全部譲渡及び重要な一部の譲渡を含めた規定になっているのは,戦後アメリカ法に倣って,特に株式買取請求権の規定を入れたときに,アメリカではいろいろな議論があった末,全部譲渡だけを対象にしていると実質的にそれの潜脱の形で重要な一部譲渡が行われたものですから,それを含めて株式買取請求権等の対象にするために全部譲渡及び重要な一部の譲渡を同じ手続に従わせるという立法をしたのだと思うのです。  そのときに,株式会社の方だけはアメリカに倣った形の規制にしたものの,人的会社については多分それに見合った法改正をしなかったために,両方の間にアンバランスが生じてしまったのではないかと思います。多分,理由はそこにあると思います。 ● 確かにそうかもしれませんが,主として先ほどの説明ですと,横並び的な発想ですね。 ● ですから,これが無限責任タイプもあることから合名会社との横並びを重視されるということであればそうなんでしょうし,前回御説明のあったように,協同組合の場合の規定と合わせたいという,その方が非常に話が進めやすいということであれば,あえて反対はいたしません。 ● ほかに何か,この点について御意見ございませんでしょうか。--よろしゅうございますか。  それでは,この点はそういう御意見だったということで,次の問題に参ります。  残余財産の国庫帰属について,何か問題はないのか,このままで国庫は受け入れてくれるのかという指摘が前回ございましたので,それについて事務的に検討しました結果,先ほどのような考え方で特に大きな問題はなかろうということで,従来の考え方を維持してお出ししておりますが,この点についてはいかがでございますか。 ● 相続の場合には,人の死亡という事実によって最終的に決着がつかない場合に国庫に帰属するということで説明ができますし,公益法人の場合には,やはり公益ということで最終的に国庫に帰属するということは説明できるかもしれないけれども,共同法人の場合には,全く私人間の意思のみで一方的に帰属させることができる,それが果たして可能なのかというのが前回の疑問の出発点だったわけです。  しかし,実際上運用で何とかなるというのであれば,それ以上申し上げることもございませんけれども,原理的には可能なのかなという疑問は残っています。ただ,実際上問題にならないのであれば,別にそれ以上は申しません。 ● それは,私人間の意思がまず優先するということについては,この要綱から明らかですね。それがどうにも分からないときに,初めて国庫という問題が出てきて,ちょうど相続財産で完全に無主の財産権ができることを防ぐために国庫帰属ということをとったという意味では,その点では同じじゃないかという形で前回はたしか説明があり,そういう御意見が多数だったような気がいたしますけれども。 ● 私人が積極的に,自分たちの意思だけで国庫に押しつけることができるという制度ですね,この制度は。 ● 無主の財産が生じることを防ぐと。 ● 意見が一致しない場合に,最終的に国庫帰属ということになっていますから,その意見が一致しないという結果,結局は消極的な意味ですけれども私人間の意思によって一方的に押しつけることができるという,そういう制度が可能なのかということが気になっただけです。 ● いかがですか,今の点について。御意見ございましたらお願いいたします。  突き詰めていきますと,なかなか難しい問題は残る可能性はありますけれども,どうにもならない財産が残ったときにどうするかというときの手当てという趣旨でこれは考えられた条文だとは思いますけれどもね。  特に御意見なければ,ほかは特にこれでもいいのだという御趣旨だと理解してよろしゅうございましょうか。--それでは,そのように理解させていただきます。  次に,基金の返還に関する規律,保険業法に倣った規定を置くということですね。  これは,前回も出ていたように思いますけれども,今回初めてですか。 ● 前回と同様でございます。 ● これは前回と同様ですけれども,途中で返さなくてもいいのじゃないかという御意見があったので,事務的に検討して先ほどの御説明をいただいた,こういうわけでございます。  何か,御意見ございましょうか。--それでは,これでよろしゅうございますか。  それから,次の問題は二つありまして,これまでここでお出ししてきた原案から除く方であります。  一つは,第三の一の9の「登記」のうちの(一)の⑤です。社員たる資格の得喪に関する規定。これは,定款の記載事項としている例が非常に多いわけですし,むしろほとんどすべての法人は定款記載事項としているけれども,登記事項としているのは極めてまれであると。そうすると,なぜ登記事項とするのか,特段の必要があるのか,そういう問題が起こってくるわけでして,先ほどの御説明はどちらかというと横並び的発想だと思いますが,そこまでは要らないのじゃないか,従来の法人の例に倣って登記事項から削ってもいいのじゃないかという,こういう御説明だったかと思いますが。 ● 有限タイプの場合の登記事項に社員のことが出ているのですが,無限タイプのところでも,やはり社員の氏名及び住所が入っているわけですが,これは代表者じゃなくて全員が登記されるということに理解するわけですけれども,その必要があるのですか。  例えば,有限会社なんかでも株主とか社員とか,いろいろ全部出るのですか。 ● 有限会社,株式会社の例を想定されれば,それはここで言う有限タイプの方の法人がそれに類することになります。無限タイプというのは,合名会社ですので,ここは原則として社員は皆平等に,だれでも業務執行権,代表権を有します。内部で制約することは自由ですけれども。 ● 社会的な責任が共同しているからということですね。 ● はい。 ● そうすると,有限タイプの場合は,理事及び監事が出ていれば,社員たる資格の得喪に関する規定というのまでは要らないように思うのですが。  それから,ここで今になって質問するのはあれなんですけれども,理事の選任のところに,「有限共同法人には,一人又は数人の理事」と書いてありますね。一人っきりの理事というのは,何か非常に突出した印象で,余り常識的には考えられないのですが。それからまた,できれば民主的な運営ということからいくと,できるだけ二人以上とか,数人の,若干のとかいう数字の方がよろしいのではないかと思うのですが,なぜここでは一人になったのでしょうか。  もしかしたら,議論があったのに私が聞き逃していたのかもしれませんけれども,ちょっと御説明ください。 ● 中間試案では,株式会社の例に倣っていたわけですけれども,理事会を構成するという形をとっておりましたので,3人という員数を要求しておりました。  その前提となっていたのが,有限タイプの設立時の社員の員数要件として,10人以上の員数を要求するという問題でございます。ところが,中間試案についていろいろ御意見をちょうだいする中で,かなり規模の大きい法人であっても,構成員の数は非常に少ないものがあり得る,場合によってはほんの数社の会社が社員となってこの法人を設立するという需要もあるとの指摘を受けました。そうしますと,10人という要件は多過ぎますので,その員数要件は二人以上でよいのではないかということにさせていただいているところでございます。  社員が二人で構わないということになりますと,理事についてそれを超える人数を要求するのは果たしていかがなものか,結局当該法人において経営をし,代表者を置くについて,どれだけの理事がいればいいのかということは,当該法人において自由に決め得ることとしておけば,必要とあれば理事を多数人置かれても構いませんし,一人でいい法人もあろうし,ということで,現在このような案に至っているところでございます。 ● そうすると,「若干」という言葉を字引で引くとどういうことになるのですかね。一人も若干。だったら「若干」でいいのじゃないかなと思うけど。 ● ○○委員の御提案は,「一人又は若干名」ということですか。それとも,最初から「若干名の理事」と。 ● 確かにそういう御説明をいただくと,一人でもいいのかということは……。解説書が出るからいいのかもしれませんけれども。 ● 議論の経緯は今おっしゃったとおりだと思いますね。最初は人数の最低要件がありまして,理事会というものがあって,それをなくした以上は一人でもいいのじゃないかということだとは思いますが。 ● この「一人又は数人の」というのは,民法52条1項の表現と全く同じですね。ですから,その意味では,私はこれでよろしいのじゃないかと思うのですが。 ● ほかに,この点について何か御意見ございますか。今の点も含めて,それから社員たる資格の得喪に関する規定を除くという点ですが。 ● 言う必要もないことかもしれませんけれども,社員の資格の得喪に関する規定は,登記事項から落とすというのは,先ほど横並びということでしたけれども,実質的な根拠としては,これは対外的な取引活動には直接関係ない事項であるということですね。落としていいのじゃないかと思いますけれども。 ● 特にほかに御意見なければ,そういう線で御意見の一致があったと理解してよろしゅうございますか。--では,そのように考えていきたいと思います。  それでは,累積投票に関する規定を設けないものとすることという点ですが,これは第三の三の2の(五)の「その他」というところに,累積投票について所要の規定を整備するということになっていますが,先ほどのような理由から,累積投票は削除したらどうかと,内部的に検討した結果,そういうふうに考えるということでございますが,この点につきまして何か御意見ございますでしょうか。 ● さっきの御説明,ちょっと十分に伺っていなかった点もあるかと思うのですが,定款の定めをもっても累積投票によることができない,こういう趣旨になるわけですか。 ● 実質としてそういうことを考えているわけではございません。議決権の与え方が定款の定めによってかなり自由にできますので,工夫次第で累積投票という制度を含め,いろいろな工夫が可能なのではないかということでございます。  なお,先ほど申しましたように,例に倣おうとしている有限会社における累積投票制度に不合理な点があるものですから,それによれないというところも形式的な理由ではありますけれども。 ● これは,実際上の要請がどの程度ありそうかということだと思いますけれども,どう見積もったらいいのか……。 ● 現実にはどうなんですかね,ほとんど行われていないようですね。  ほかに,この点について御意見ございますでしょうか。 ● 有限会社の方の累積投票の制度が不合理だからと,今,御説明があったのですけれども,どういう点で不合理だという御理解なんでしょうか。 ● 3点ございまして,1点は,当該有限会社における累積投票制度というのは,複数の理事を選任するということがあらかじめ知らされていなければいけないのですけれども,有限会社の社員総会の開催のされ方で,その点が担保されておりません。会議の目的たる事項があらかじめ伝えられるということが保障されていません。それが第1点でございます。  それからもう1点は,会議の招集に関して,1週間前に招集通知を発すればよいとされている一方で,5日前までには累積投票によるべしという請求をしなければならないため,招集通知が到着する前に請求しなければならないという可能性があるという点です。  それからもう1点は,有限会社法の規定で商法の規定を準用しているわけですけれども,その準用関係が原則と例外とを逆転させるという趣旨なのですが,非常に読みにくいという点です。これは表現ぶりだけの問題ですから,工夫次第だと思いますけれども。  このような点からしまして,少なくとも有限会社法の規律そのものに倣うことはできないということでございます。  そうすると,株式会社の制度に倣うかどうかということになりますと,今度は総会の招集通知から,全部株式会社並びでいかなければいけないかということになりまして,原則有限会社と同様ですといって規律の合理性を説明しようとしている中で,説明に窮してしまうというところがございます。  実質的理由としては,定款で議決権の数やその所在自体を非常に自由に定め得るということがありますので,かなりの程度いろいろな定款の定めの工夫で似たような効果を発生させ得るのではないかと考えられるところでございます。 ● 有限会社について御指摘になった点は,解釈等で改善することは可能だと思いますし,問題があれば有限会社の手直しした制度をこちらの方で設ければいいというだけのことだと思うのですけれども,この共同法人か共益法人か分かりませんけれども,こちらであらかじめ累積投票の制度を原則的な制度として用意しておく必要があるかというと,それは多分ないだろうと思います。  そもそも累積投票制度が会社法の方に導入されましたのは,株式会社について正に戦後,さっきと同じなんですけれどもアメリカの制度に倣って,なるべく民主的な制度にすべきだという,会社運営のコーポレート・ガバナンスの民主化を図るために,最初は強行法的に株式会社に累積投票の制度を導入して,それがいわば有限会社が倣う形になったと思うのですが,日本の経済界は非常にこれに対して不満が強くて,改正によってほとんど骨抜きにして,形の上だけ原則的な制度になって,実際には定款変更でこれがほとんど使われていないということになっておりますので,こちらの方でも,共益法人でも,多分実際にはお採りになるところはないのじゃないか,よほど何らかの社員の間の利害関係の必要があるところだけが特に制度を設けて,そういうのを使えばいいということであれば,議決権については定款で自由に定めることができる法律になっていますから,そのもとで工夫していただければ,累積投票も定めることができますから,それで十分対応できるということで,法律としては累積投票を原則にしないでいいということは,私もそれでよろしいかと思います。 ● ほかに,この点について御意見ございましょうか。--では,特に御意見なければ,こういう方向で進みたいと思います。  先ほどここでお諮りをしました問題についての御議論は,大体これで終わったわけですけれども,これ以外の一般的な問題について,何か御意見伺いたいと思います。 ● この段階で非常に細かいことで恐縮ですけれども,無限共同法人の法定退社事由,これに「後見開始の審判を受けたこと」が含まれている点について,少し伺いたいのですが。  これは,社員に無限責任が生ずるわけですから,被後見人にそのような重い責任を負わすことは適当ではないということと,業務執行権が基本的にはあるわけで,そのようなものを与えることは適当ではないと,そういうことからすると当然なんだろうと思います。合名会社の社員や合資会社の無限責任社員と同様ということで。  それはそう思うのですけれども,ただこの無限共同法人が,例えばさっきおっしゃったようなPTAとか,ごく素朴な同好会的なものに使われる場合が恐らく一番念頭に置かれていたと思いますが,その場合,責任の面,あるいは取引保護の点からすると確かにちょっと問題が場合によっては生じるかもしれないのですが,後見開始の審判を受けたからといって,社員であり続けたいという意思を無にして,法定退社事由としていいのかがちょっと疑問があるのですが。つまり,代表権はなくなるというぐらいでだめなのだろうかとちょっと思ったものですから,お教えいただければと思います。 ● 類する合名会社については,この規定が任意規定だというふうに理解されていると思いますので,必要と思われる法人において,そのような手当てを全員の同意のもとにされておけば,対応可能ではなかろうかと考えておりますが。 ● 任意規定というのは,この法定退社事由に挙がっているけれども,定款によってそれは排除するというふうにすればならないと。  反対は,やはりぐあいが悪いのでしょうか。つまり,法人の方で退社させたいと思う場合には……。そういう規定はちょっと置きにくいという印象がないわけではありませんが,法人の方からすると。それはだめなんでしょうか。こだわるわけではありませんが。 ● 原則と例外をどうするかという問題はあろうかと思いますけれども,こういった事態を想定した規定をあらかじめ定款に置いていないという法人に関しましては,先ほど御指摘がありましたように,後見が開始してしまったにもかかわらず無限責任をそのまま負い続け,かつ業務執行権をそのまま持っているという状態が発生してしまいますので,やはり原則形態としては法定の退社事由として退社していただくと。  ただ,特に団体の性格等を考えまして,定款で,この場合には退社しないというような規定を設けていただければ,そちらの方に従うという形で原則・例外を定めた方が,実際上の不都合はより適切に回避できるだろうと考えております。 ● 法律的な書きぶりが,私は素人ですから分かりませんけれども,要するにその書かれぶりの結果,後見開始の審判を受けたら代表権以外は存続するというよりは,むしろそのことは逆にとられてしまわないような,できるだけ積極的に共同の社員としての存続が可能であるような書きぶりにしてほしいと思うのです。  というのは,同窓会とか趣味の会とかいうのがこれを利用しようとしたときに,高齢社会で補助程度の人って随分ふえてくるのじゃないかと思っていますので,書き方というのをすごく工夫してほしい。機械的に,むしろ後見開始の審判を受けたら即出ていくのが当然だみたいな書かれ方のないような書き方にしてほしいというのが希望です。 ● 今の点は,事務的に検討させていただきます。確かに,おっしゃるような事態が生じることはあり得るかと思いますが,他面,財産管理の権利を失うということはありますので,それをどう考えるかという問題で,定款に定めておけばそういう場合も免れるとか,あるいは特別の事項として中で議論をするという形で解決を図るという方法もあるかと思います。いずれにいたしましても検討させていただきます。  ほかに,今日お出しした問題以外について。 ● 御質問でございますけれども。第一の八に「名称」というのがあるわけですが,いわゆる「共益法人」といいますか,「共同法人」という文字は,必ず使うということを義務づけられるのか,それともそれは任意か。逆に,そうでないものがそれを使用することは禁ずるということはもちろんされると思うのですけれども,共同法人であるものが「共同法人」という名前を上に冠しないといけないのか,それともそれは任意なのか,それはどういうふうにお考えになっていますか。 ● これは,株式会社等と同じように,上につけるか下につけるかは別にして,法人の性格をあらわすために,名称の中に必ずこの文字を入れるということを当然の前提として,今細部にわたって詰めているところでございます。 ● 公益法人は,任意になっていますね。それとのバランスで,逆に任意にされると困るなと思ったのです。「共同法人」という名前を使っていなくて,「何々協会」と言われますと,それが公益法人というふうに世の中に誤認されるおそれがありますので,使用をむしろ義務づけていただきたいなと思ったのです。 ● この関係では,全く商事会社,株式会社,有限会社と同様な扱いをさせていただくわけでございます。 ● ほかに御意見ございますか。 ● 今日の資料,要綱案に書かれていないことですが,民法44条に対応する規定を置くということは考えなければいけないと思います。所要の規定を整備するというどこかに入っているのかもしれませんが,全然ありませんと,どうしたらいいかということになろうかと思います。 ● 少なくとも44条1項につきましては,全く同様の手当てをさせていただく予定でございます。44条2項については,いろいろ議論のあるところでございますので,その規定を明示的に準用すべきなのかどうかというのは,現在法制的に詰めているところでございます。 ● 先ほど議論になったところに関連して,説明の仕方だけちょっとお伺いしたいのですけれども。  事業譲渡の関係ですけれども,合名会社に関して規定がないということなんですが,これを民法の組合に近いものとして考えていくと,日常業務については別として,事業の譲渡をするというのはやはり組合員の共有財産の処分に当たってきて,むしろ全員一致でやる方が原則で,この規定は逆にいえば全部譲渡以外は全員一致原則を解除するというふうな趣旨の規定として読む方が,組合的な観点からいくと普通なのかなというふうに思いまして,そうなると,全部だけに限定しないで,重要な一部までは原則どおりであって,それに至らないものについてはむしろ全員一致要件を軽減するという方が,何か筋が通りそうな気もするのですけれども,その辺のところは何か私の理解の方が間違っているということでしょうか。 ● 合名会社において清算のところだけに規定されているという実質は,ご指摘のような趣旨のようにも見受けられます。この無限タイプの法人において,事業が複数あるという場合に,そのごく一部だけの譲渡であっても全員一致を原則として要求するかという実質について,必ずしもそれが望ましいと決めを打てるだけの自信がないというところでございます。全部譲渡であればもちろん定款変更を伴うものという実質的な理解が可能ですけれども,一部となったときに,それが定款変更を伴うものであれば,同じように定款変更の手続をとりますけれども,そうでない部分について,具体的な線引きをしてまで規律を設けるべきかというところで,悩んでいるところでございます。  合名会社の清算のところでは,「重要な」という要件がないものですから,平仄という意味では,株式会社,有限会社で「重要な」という要件をかぶせていることとの対比で,どういう調整を図るべきかが問題となりまして,いろいろ検討に難渋しておるところでございます。 ● ○○委員の御提案は,無限タイプの話ですね。 ● 重要な一部についても全員一致だというふうにするのも,理屈の通らない話ではないと。 ● 今の点は,ではもう一遍内部で検討いたしまして,御返事をしたいと思います。  ほかに何かございますでしょうか。 ● 直接これには関係ないのですけれども,全般的な今後のスケジュールでございますね,いつごろ国会に上程されるとか,そういったスケジュールについてお伺いしたいのですが。 ● では,その点は今後の日程を含めまして最後にいたします。  ほかにございますか。--よろしゅうございますか。  ほかに御意見がなければ,今日の審議はこれで終わったということにいたします。  今から,今後の日程について説明をいただきますが,当初決まりました予定では,もう1回ございます。これが最終回ですので,御意見その他がありましたら,それまでに事務局の方に御連絡をいただきたいと思います。  次回は,そこで最終的な部会としての案を確定いたしますので,そのつもりで御出席をいただきたいと思います。 ● まず,日程から御説明いたします。  次回は,既に御連絡差し上げておりますとおり,1月30日火曜日,1時半から,場所は法務省20階の第1会議室で行わせていただきますので,よろしくお願いいたします。  予定どおり部会としての要綱案を御承認いただきますれば,2月16日に開催を予定しております法制審議会の総会にお諮りしたいと考えております。順調に進めば,3月上旬,遅くとも中旬までに国会に提出という運びにさせていただきたいと思っております。  それから,現在,法制的な詰めの作業を行っておるところですが,例えば,先ほどの定義に関する部分の問題について,表現ぶりの問題ではないかという議論に収斂されてしまうと,場合によっては御容赦いただかなければいけない点があろうというところは御了解いただきたいと思います。  それから,法人法の性格上やむを得ないということでお許しをちょうだいしたいのですけれども,細目にわたる点について,「所要の規定を整備する」ということでくくっているところがございます。具体的な点の取扱いがどうなっているのかということを疑問に思っておられる方もいらっしゃると思いますし,私どもが気がついていない問題点も多いかもしれません。もし御指摘があれば,いかなる方法でも結構でございますので,早めにお寄せいただきたいと思っております。是非よろしくお願いいたします。 ● 今の細部についての御意見,よろしくお願いいたします。  それでは,本日これで閉会といたします。どうも長時間ありがとうございました。 -了-