法制審議会法人制度部会第2回会議 議事録 第1 日 時  平成13年1月30日(火) 自 午後1時32分                       至 午後2時04分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱案(案)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 定刻でございますので,第2回法人制度部会を開会することにいたしたいと思います。  本日は,御多忙の中を御出席いただきましてありがとうございました。  本日は,既に御案内しておりますとおり,この部会として要綱案を決定するという日でございます。どうぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。  それでは,本日の議事に入りたいと思います。あらかじめ配布されております部会資料2「共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱案(案)」につきまして,御審議をお願いしたいと思います。  事務局の方から説明をお願いいたします。 ● お手元の部会資料2につきましては,前回の資料1から若干の修正を施した部分以外,特に内容として異なっているところはございません。前回の資料から変わっているところは3点のみでございます。  具体的に申し上げますと,まず,第三の一の「9 登記」というところですが,有限共同法人の設立の登記に関する項目の登記事項の中の,社員たる資格の得喪に関する規定について,これは定款記載事項ではありますが,登記事項とする必要はないだろうということで,削るということで前回御了承いただいておりますが,その部分を反映させております。  それから,第三の三の2の(五),これは理事に関する項目の中の「その他」というところでございますが,累積投票の制度について「所要の規定を整備する」というくだりがございましたけれども,これも前回御説明させていただきましたとおり,削除するということとさせていただいております。  あと,字句の修正として,第三の三の「4 計算等」の中の(二)の「計算書類の作成」の中に「及び」とありますが,これは,従前「並びに」とありましたところを訂正したものでございます。  修正点は以上でございます。前回までの資料から,それ以外に変更されているところはございません。  あと,残された問題は,法人の名称でございます。従前,法制審でいろいろな御意見をちょうだいし,どれも決め手がないまま今日に至っておりまして,とりあえず前回の案をそのまま仮称として用いさせていただいているところでございます。これについても,本日,改めて御意見をちょうだいできれば幸いでございます。  それから,有限タイプについては基本的に有限会社の規律を,合名タイプについては基本的に合名会社の規律を設けるということで,所要の規定を整備するとしている部分が多いわけですが,その所要の規定の中身につきまして,○○委員の方から,2点について御指摘をちょうだいしておりますので,その点について触れさせていただきます。  まず,これは前回も御指摘をちょうだいしたところでございますが,名称中の「無限」あるいは「有限」という文字を含めた「共同法人」という文字の使用を義務づけるべきであるという御指摘でございます。これは,前回も申し上げましたとおり,その趣旨に従って,商法における商号と同様の趣旨の規律を設ける方向で条文化の作業を進めているところでございます。  それからもう1点は,特に有限共同法人の計算書類等につきまして,損益計算書,あるいは剰余金の処分又は損失の処理という概念が必ずしもこの共同法人にふさわしくない部分があるのではないかという御指摘でございます。これも,基金の性格を返済可能なものとし,剰余金の範囲内で返済を可とする相互会社と同様のスキームを採るということになりますと,法制上,今の要綱案のような表現をとらせていただかざるを得ないと思われます。ただ,この中間的な団体である共同法人につきましては,非常に多種多様な団体が想定されますので,そこに適用される会計原則,会計処理の考え方は,必ずしも一律のものではない可能性があろうと思われます。公正な会計慣行に従った処理がされるということを前提に,この規定を置くものでございます。  資料等について,私どもの説明は以上でございます。 ● それでは,説明は以上でございますが,大体前回の説明に尽きておりますので,特に場所を定めずに,全般について御意見を賜りたいと思います。  名称の件は,後で独立の議題としてまた御意見をいただきたいと思いますが,名称を除いたほかの部分について,一般的な御意見ございますでしょうか。--よろしゅうございますか。  それでは,またもし御意見がございましたら後で御発言いただくことにいたしまして,名称の件でございますが,これはいかがでございましょうか。  これは,なかなか決め手がないようでして,いろいろな意見がこの部会以外にもあるようでございます。ただ,部会としては一応御意見をいただいて,議事録にとどめておく必要があるかと思いますので,今までのここに出た御意見をまとめますと,まず当初用いられておりました「共益法人」という名称の方が望ましいという御意見があったかと思います。それから,「共同法人」と言うと,協同組合と間違えられるおそれがあるので,余りアイデアはないけれども,ちょっとその点疑問であるという御意見もありました。それから,「共同法人」というのは,何か法人が集まって事業をするような,そういう印象を与えるので,ほかの名称にした方がいいのではないだろうか,そういう御意見もございました。  しかし,そのほか特に御意見がございませんでしたので,「共同法人」という名称があるいはやむを得ないかというのが,この部会の雰囲気かというふうに理解をしておりますけれども,ほかに何かアイデアがありましたらこの場でお伺いしまして,最終的にはこれはいろいろな方面と折衝していかなければならない問題も残っておりますので,部会長一任ということにさせていただかざるを得ない問題かと思いますが,部会として何かいろいろなアイデアを出していただいたという形の方が望ましいかと思いますので,思いつきでも結構でございますので,名称について何かありましたら,御自由に御発言をいただきたいと思います。 ● 名案はないのですけれども,どうもこの「共同法人」という名前は気に入らないというのだけはずっと思っておりまして,先ほど御指摘がありましたように,やはり「共同法人」と言うと何かジョイントベンチャーみたいな感じがつきまといますので,恐らく社員の共同の利益という意味で「共同」という言葉になっているのでしょうけれども,普通の人が読んだときには余りそういうところに思い至らないようなものではないかと。そういう趣旨でしたら,先ほど協同組合と混同のおそれがあるという御指摘もありましたけれども,「共同」の「共」が協力の「協」の方が,まだ少し趣旨に合うのかなと思いますし,「共益法人」とか,それに類する法人名を考えてみてもよろしいのではないかというふうに思っております。  それから,ついでに申し上げさせていただきますと,「無限」,「有限」というのも,これも余り感じのよくないもので,何か長続きする法人と,どこかで終わってしまう法人みたいな感じもしますので,その辺のところも工夫ができればなと思っております。かといって,これといった名案はないので申し訳ないのですが。 ● 「共同」の「共」を「協」に変えて使った方がいいという,そういう御提案でした。 ● 私,最終的には仮称のままこの提案をされるということ自体は構いませんが,前回からの繰り返しですけれども,「共同」よりも「共益」の方が実体をあらわしていてよろしいと思うという意見があったということは,議事録には是非残しておいていただきたいと思います。  私は,「共益」と「公益」が紛らわしいという批判が一部にあるようですけれども,これ,今後どういう名前でも採用された場合に,今のように財団法人であれば(財),社団法人であれば(社)というような形の略称が使われることが多いと思います。その場合は,共益法人の場合は(共)ということになるのであって,「公益」と「共益」が紛らわしいというのは,そんなに私個人としては問題ではないと思っておりますので,是非「共同」より「共益」の方が実体をあらわすという,適切であるという意見もあったということは,どこかに残していただきたいと思います。 ● ほかに,いかがでございましょうか。 ● 「共同利益法人」とかいう御意見が出ていましたが,あれはもう消えたのですか。 ● いえ,そんなことはないです。確かに,「共同利益法人」というのも一つの考え方だと思いますね。 ● 余りよく考えてではないのですけれども,「共益」というのを省略するのが問題であれば,省略しないで,「共同利益」と言っておけばいいのではないかという程度の意見です。 ● 私も,そのときに賛成した覚えがありまして,1月16日に書いていただきました「共同」よりは,もとに戻った12月のときの「共益」が入る方が,何かピンと来ると,私の場合は思いますが。 ● はい,分かりました。「共益法人」ですね。 ● 「共同」,「共益」とか,もっと細かくなればなる。それに,また今度「無限」,「有限」がイメージとして生命が長い短いのイメージになるのだったら,またそこも「無限責任」という言葉も入れば,より正確になっていくのかなという気がいたします。 ● 確かに,「有限」という言葉はありますけれども「無限」というのは余りないですね。有限会社はありますが,無限会社はないですから,ちょっとあれですね。  「無限連鎖講」なんて,かえって悪いイメージを与えるような用語がありますけれども。 ● もし,「無限」「有限」と言うと誤解があるのだったら,「無限責任」,「有限責任」と書いた方が……。長いですけれども。 ● 名は体をあらわすと言うから,なるべくイメージが明確に少しでも早く伝わる方が,説明の少ない方がいいのではないかと思いますね。 ● 私は「共同」よりは「共益」の方が相当イメージがいいなと思います。「共益」と「公益」が紛らわしいとおっしゃるけれども,いろいろな問題で紛らわしい問題はいっぱいあるわけですね,やはり私は「共同」よりは「共益」の方が法律の性格をあらわすし,その方が私どもが求めてきたような趣旨に沿うと思います。 ● ほかに,いかがですか。 ● 私も,やはり,「共益」と言った方がその実体をあらわすのに近いのではないかという感じがいたします。  それからまた,国際化の時代ですが,この法人が世界的に英語で表現される,共通する言語である英語とかその他の言語で表現するときには,どういった形に翻訳されるということを考えておられるのかなと。 ● まだ考えは及んでいないそうです。  「共同」という言葉をそのまま直訳すると,確かに誤解を招くおそれがあるかもしれませんね。 ● 前回申し上げましたとおりでございまして,やはり私は「共益」の方がいいと思うのです。もしどうしても「共益」というのが響きが悪い,あるいは何かと誤解されるということでございましたら,「共同利益」ということにされた方がいいと思いますし,それから「無限」,「有限」も確かにそう言われてみるとやや違和感がございますので,長ったらしいですが「無限責任」あるいは「有限責任」と言う方がベターじゃないかなと思います。 ● そうすると,むしろ「共益法人」がここではかなり多くの方から主張されたと理解しておいてよろしゅうございましょうか。  この問題,いろいろな過程で,いろいろな意見を取り入れて決めていく問題でもあります。すべてがそうですが。ですから,この部会の意見はこうであったと決めるわけにはちょっといきませんものですから,仮称のままで差し当たりいくという形にさせていただいて,最終的には部会長一任ということにさせていただくことになるかと思います。いろいろな過程で,結果的には多数の御意見に沿わない場合もあるかと思いますが,その点は部会長一任ということでお許しいただきたいと思いますが,それでよろしゅうございましょうか。  それでは,「共益法人」の意見が強かったということを議事録にとどめることにいたしまして,名称の問題はこれでいったん打ち切りたいと思います。  そのほか,何でも結構でございますけれども,一般的に御意見ございましたらどうぞ。 ● いろいろなほかの省庁とのやり取りもあって難しいのかもしれませんけれども,最終的に名前が変わることは,これはいろいろな状況でしようがないと思うのですけれども,ここで出す案として,要綱案として多数説である「共益法人(仮称)」という形で出す,それがいろいろな交渉の過程で変わるというわけにはいかないのですか。 ● それは可能だと思いますが。ただ,それほどまでに強い御意見だというふうに前回は思っていなかったものですから,これでいいかなということで今日お出ししたわけですが。 ● そういうことであれば,私も強い意見として「共益法人」の方がいいと。 ● ありがとうございました。ちょっと事務局の方から,いろいろな経緯があるようですから説明をいただきます。 ● 従前,御説明しておりますように,なかなか「共益法人」という名称の採用が難しい状況にございます。 ● 恐らく「共益」ということになると,「公益」と紛らわしいという形で表明されている意見の背後にいろいろなものがあるのじゃないかという気がいたします。私は,個人的には「社員に共通する利益」と書いてありますので,共通利益を約して「共利法人」という,全くなじみのない言葉をつくったらどうかと,個人的には提案をしているのですが,今言ったような事情がありますので,確かにここの御意見としては,今日「共益法人」が急に力を得たような印象を受けておりますけれども,差し当たり「共同法人(仮称)」という形でいくというふうにさせていただければと思いますが。  もちろん,それに反対する意見はあった,かなり強かったということはニュアンスが分かりましたので……。  それでよろしゅうございますか。 ● こだわる気はありません。 ● それでは,(仮称)という言葉をつけたままのを原案とするというふうにさせていただくことでよろしゅうございましょうか。--それでは,そうさせていただきます。  特に,ほかの問題について御意見がないようでございますので,この法人制度部会としましては部会資料2,これを要綱案の案とするというふうに決定させていただいてよろしゅうございましょうか。--それでは,そのようにさせていただきます。  なお,お断りいたしますが,この要綱案は,案自体が基本的な内容が変わるということはもちろん今後ないかと思いますが,表現その他,いわゆる「てにをは」の点で多少の変更がある可能性もないわけではないと思います。これは,そういう報告書なりにつきものだと思いますけれども,その点は部会長に一任ということでお許しをいただければと思います。  それから2番目に,「所要の規定を整備する」という表現がかなりたくさん出てまいります。所要の規定の内容は,先ほど事務局からの説明にありましたように,無限タイプについては合名会社,有限タイプについては有限会社を基本とするというふうに御理解いただければと思いますが,何しろ法人と申しましてもたくさん種類があるのですね。民法の公益法人と,それから組合を団体と考えればそれとの整合性も問題になりますし,合名会社,有限会社,株式会社,それから特別法上の協同組合等々,さまざまな法人があるものですから,一つ一つの問題について,ほかの法人とどう違うのかとか,それを違いをどう説明するのかとか,あるいは同じであればどうなのかとか,いろいろな問題が今後出てくることだろうと思います。ですから,基本的な考え方はそれでいきますけれども,所要の規定の具体的内容は,これはやはり部会長一任ということにさせていただくほかはないのじゃないかと考えておりますので,その点もあわせて御了承いただければと思います。  それから,先ほどの名称の点も含めて,これも部会長一任という形で御了承いただければと思います。  それでは,どうもありがとうございました。この承認につきましては御反対がなかったというふうに理解をさせていただきまして,今後の日程を進めたいと思います。  そこで,今後の予定につきまして,事務局の方から説明をお願いいたします。 ● 長期間にわたりまして,御審議に御協力いただきまして誠にありがとうございました。  この要綱案につきましては,2月16日に予定されております法制審議会の総会におきまして審議され,御了承いただければ要綱として法務大臣に答申される運びとなります。法案提出を目指して作業中でございまして,答申が得られればこの通常国会に法案を提出すべく,事務当局の方で鋭意作業を進めることとなります。  それから,新しい法制審議会のもとでは,個別諮問がされることとなったこととの関係上,この部会はこれで解散ということになります。それに伴う人事手続が,近日中に行われる予定でございます。  今後,法制審議会は個別諮問を逐次行い,それぞれの諮問事項に従って各部会が立ち上がっていくという予定になっております。民法関係につきましても,検討課題が山積しておりますので,また新たな部会の委員・幹事としていろいろお願いさせていただくことがあろうかと思いますが,その節はまたよろしくお願いいたします。 ● 何か,今の説明に対しまして御質問その他ございますでしょうか。 ● 最後の民法関係の懸案というのは,たくさんあるのは分かりますが,差し当たってどういうようなものが近々の話題になりそうな感じですか。 ● とりあえず今考えております立法テーマは,一つは担保法制の全面的な見直しということでございます。これは,平成11年ですか,要するに抵当権に基づく占有排除効を認めた最高裁判例等が出まして,抵当権の効力という点についての見直しをする必要があるのではないか。更には,従前から問題にされておりました短期賃貸借の保護の制度の必要性というようなものを含めて,抵当権法制の在り方を見直す。それにあわせて,譲渡担保の法制をどうするか,それから企業担保法の見直しをするかというような,そういうような問題がございます。  もう一つは,区分所有法の見直しでございまして,特に最近,建物の管理,それから建替えというようなことがいろいろ問題にされておりまして,社会問題に一部なっているというところもございますので,現在の管理組合に与えられている権限の見直しであるとか,建替えの要件の明確化であるとか,決議の手続をどうするかとか,そういうような点の見直しをするということを考えております。  もう一つは,親族・相続の分野ですが,人工生殖子についての親子関係の規律をどうするかというようなこと等が近々のテーマであろうというふうに考えております。  とりあえず,民法分野でこの二,三年の間に法的な手当てをしなければならないテーマはそのようなものかと考えております。 ● ほかにございますか。--よろしゅうございますか。  それでは,私から一言御礼を申し上げます。  大変長い間にわたりまして,熱心に御議論をいただきまして本当にありがとうございました。これで部会としての責任は終わったわけでございますけれども,今後部会の意思をできるだけ体するような法律案ができるように,私自身も事務局の方に要望をし,そのような方向に行くことを期待しているわけでございます。  なお,先ほど説明がありましたように,法制審議会が変わりまして,従来のようなスタンディングの部会がなくなりましたので,法律上は皆様とこれでお別れをするわけでございますけれども,先ほども御説明がありましたように,いろいろな民法上の問題が出てまいりますので,あるいは何かの機会にまたそういう審議を通じて皆様にお目にかかることがあるかと思います。その節は,何とぞよろしく御協力のほどをお願いしたいと思います。  どうも本日はありがとうございました。また長期間ありがとうございました。  それでは,これで閉会にいたします。 -了-