法制審議会 会社法制 (企業統治等関係)部会 第6回会議 議事録 第1 日 時  平成29年10月4日(水)    自 午後 1時30分                          至 午後 5時48分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  会社法制(企業統治等関係)の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神田部会長 それでは,予定した時間がまいりましたので,法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の第6回目の会議を開催いたします。皆様方には,本日も大変お忙しい中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,まずは事務当局から参考人の御紹介をお願いいたします。 ○竹林幹事 参考人の御所属等は議事次第に記載のとおりでございますが,本日は株主総会資料の電子提供制度の審議の関係で,第2回会議と同様に粟津様,田中様,前田様,三枝様,川島様の5名に参考人として御参加いただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。   なお,本日は,川島委員は御欠席でございます。また,藤田委員は遅れて御参加される旨御連絡を頂いております。   以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。   事務当局からお願いします。 ○竹林幹事 お手元には,議事次第,配布資料目録,部会資料8及び9,参考資料27から32まで,委員等名簿を配布させていただいております。御確認ください。   配布資料は以上となります。 ○神田部会長 ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。本日でございますけれども,お手元の議事次第にありますように,第二読会として,株主総会に関する手続の合理化に関する論点の検討,そして役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備に関する論点の検討,この二つについて御審議をお願いいたします。   そこで,まずは,株主総会に関する手続の合理化に関する論点の検討の審議から始めさせていただきます。   まず初めに,お手元の部会資料8の「第1 株主総会資料の電子提供制度」について事務当局から説明をしていただき,その後,参考人の皆様方,そして三瓶委員からプレゼンテーションをしていただきたいと思います。   それでは,事務当局からの説明をお願いいたします。 ○邉関係官 それでは,部会資料8について御説明いたします。   第1「株主総会資料の電子提供」については,(前注)に記載のとおり,第二読会においては,「1 書面交付請求」及び「2 議決権行使書面の取扱い」を中心に御検討いただきたいと考えております。   なお,本資料の末尾に,別紙として,B案を採るものとした場合の規律の一例を挙げさせていただいておりますが,これ自体を第二読会において御検討いただきたいというわけではなく,これは飽くまでも全体的な規律のイメージを皆様に持っていただくための御参考として掲載させていただいているものです。   1ページ,「1 書面交付請求」は,B案を採るものとした場合における振替株式に関する書面交付請求の仕組みについて,どのように考えるかを問うものです。第一読会においては,株主が書面交付請求をした旨を振替口座簿の記録事項とする案もあったところですが,これに対しては,振替制度に関わるシステムを大幅に変更しなければならなくなるといった懸念が指摘されております。   そこで,第二読会においては,振替口座簿の記録事項とする仕組み以外の仕組み,具体的にはB1案からB3案までに掲げる仕組みについて御議論いただければと考えております。それぞれの内容のより詳細な御説明等につきましては,参考人の皆様から別途御説明いただくことを予定しておりますので,私からは,検討に当たり,特にポイントとなりそうなところを二つだけ指摘させていただきたいと考えております。   まず,補足説明2に記載のとおり,B1案②においては,書面交付請求をするかしないかの選択を,銘柄単位ではなく株主単位で行うこととなりますが,それ以外の案につきましては全て銘柄単位で行うことが前提となります。   また,補足説明3に記載のとおり,振替制度におきましては,株主権の行使に関わる本人確認については口座管理機関を通じて行われることが原則とされておりますので,B3案を採用する場合には,書面交付請求をした株主の本人確認をどのようにするのかといった点が問題となります。   続きまして,2ページ目,「2 議決権行使書面の取扱い」は,電子提供措置に関する規律の例外として,株主に対して議決権行使書面を交付する場合には,議決権行使書面に係る情報についてウェブサイトへ掲載することを要しないものとすることを提案するものです。   現行法上,株主の氏名又は名称及び行使することができる議決権の数が,議決権行使書面の記載事項とされているため,仮に,現行法上の議決権行使書面に係る情報をウェブサイトに掲載しなければならないものとする場合には,例えば,1万人株主がいる株式会社は,1万通りの議決権行使書面に係る情報を個別にウェブサイトに掲載しなければならないことにもなりかねません。そこで,本文のとおり,株主に対して議決権行使書面を交付する場合には,議決権行使書面に係る情報についてはウェブサイトに掲載することを要しないものとすることが考えられます。   なお,本文は「要しない」としているにすぎませんので,例えば,パスワードを要求するなど,株式会社がシステム上の工夫をした上で,議決権行使書面に係る情報について省略せずにウェブサイトに掲載することはできることを前提としております。   私からの説明は以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,参考人としてお越しいただいております皆様方からプレゼンテーションをお願いしたいと思います。順番は,お手元の参考資料で申しますと28,29,30という順番になるかと思います。   まず,粟津参考人と田中参考人から,よろしくお願いいたします。 ○粟津参考人 ただいま御紹介いただきました,証券保管振替機構の粟津でございます。   第2回の部会にも参考人としてお呼びいただき,その際には書面交付請求権を振替口座簿記録事項とする場合の問題点等について御説明させていただきました。   本日は,事務局からもございましたように振替口座簿記録事項とせずに,口座管理機関と保振機構を経由して発行者に通知する案というのを考えてまいりましたので,御説明いたします。   部会資料8に,配当金の受取方法の指定に関する仕組みと共通番号の照会に関する仕組み,この二つの仕組みを参考にした方法という記載がございます。これらは書面の交付を請求する権利を行使しようとする加入者から,交付を行う義務を負う発行者への情報伝達の手段を提供させていただくという位置付けになろうかと思います。ここでは加入者がその権利について知る方法ですとか,加入者が口座管理機関に取次ぎを依頼する方法などの具体的な手順が何かしら整備されるということを前提に,主に口座管理機関と株主名簿管理人との間を保振機構がつなぐ仕組みの案を御紹介させていただきたいと思います。   前置きはこのぐらいにしまして,資料の説明に入ります。   項番1番,配当金参考案。これは,配当金の受領方法に係る情報連携を参考にした仕組みでございます。   現在,加入者が配当金を受け取る際,銘柄ごとに指定した金融機関の口座で受け取る方法がございますが,その口座の情報を口座管理機関と保振機構を経由して発行者に取り次ぐという制度がございます。これを参考にして,書面交付請求に当てはめてみたのがこのイメージ図でございます。   流れを御説明させていただきますと,まず,加入者は口座管理機関に対しまして,書面交付請求の取次ぎを依頼します。これは銘柄ごとの請求ということになります。依頼を受けた口座管理機関は,その請求を受け付けた都度,取次データを保振機構に通知いたします。保振機構では,その取次データを受領した後に,その都度,発行者に対して取次ぎを行います。ただ,発行者といいましても,保振機構のシステムと接続しておりますのは株主名簿管理人になりますので,実際はその銘柄の株主名簿を管理している株主名簿管理人に対して通知を行うことになります。   保振機構がシステムでデータを株主名簿管理人に通知するということは,このデータに限らず,次の案も同様になります。また,株主名簿管理人に通知するのに合わせまして,請求を取り次ぎましたという結果を連絡するために,口座管理機関に対しても通知を行います。このように配当金参考案は,請求の都度,口座管理機関と保振機構が取り次ぐという非常にシンプルな仕組みということが言えるかと思います。   次のページに,この案に係る留意点を幾つか記載してございます。   まず,1点目ですが,繰り返しになりますが,この案は銘柄ごとの手続ということになりますので,多数の銘柄をお持ちになっていらっしゃる株主にとっては,全ての銘柄について書面が欲しいということになりますと,全ての銘柄について口座管理機関に取次ぎを請求する必要がございます。   次に,2点目ですが,仮に,ある銘柄について,加入者がこの請求手続をしたとしても,次の基準日に株式を保有していない場合,株主名簿上の株主ではなくなってしまいます。このため,恐らくこのとき株主名簿管理人は書面交付請求の履歴は廃棄することになると思いますので,再びその銘柄の株主となった場合には,再度,請求手続を行っていただく必要がございます。   3点目ですが,加入者が複数の口座管理機関に口座を持っていて名寄せされている場合,加入者はいずれかの口座管理機関に請求の取次ぎを依頼することになりますが,請求を取り次いでいない他の口座管理機関はその内容を知り得ません。ですので,自社が請求を取り次いだとしても,他社で取消しが取り次がれている可能性があるかもしれません。逆に,自社が請求を取り次いでいなくても,他社で請求を取り次がれている可能性があります。このため加入者が,自分がある銘柄について書面交付請求をしたことになっているのかどうなのかということを知りたいという場合には,口座管理機関ではなくて株主名簿管理人に問い合わせていただく必要があります。   最後に,4点目になりますが,これは実務的な留意点になります。簡単に説明させていただきますと,まず,右上の※印の名寄せ解除という言葉を説明させていただきます。株式等振替制度では,複数の口座管理機関に口座を持つ加入者の情報につきましては,名寄せした上で保振機構と株主名簿管理人の間で情報を授受しております。この名寄せしたデータの背後には,名寄せされている加入者情報が複数あることがありますが,その一つが,例えば,代理人を選任したり,変更したりすると名寄せ基準上は他の加入者情報とは別の加入者と判定されてしまいます。そうなると,その加入者情報は名寄せ後のデータから分離して別のデータとして管理する仕組みになっております。   再度左下のⅳを御覧ください。この仕組みを利用して,株主名簿管理人に対して請求データを取り次ぐ際は名寄せされていたものが,取次請求後に名寄せ解除が発生する可能性があります。そうなると,名寄せ後のデータは二つに分かれるわけですから,株主名簿管理人の方は交付請求を行ったデータはどちらのグループに引き継がれるのかが分からないという問題が発生することになります。名寄せ解除につきましては,大半が代理人の選任や変更でありますので,名寄せ基準上は別ものであっても,元を正せば同じ株主なので,分かれたグループの両方とも交付請求があったものとして取り扱うなどの取決めが必要ではないかと思っているところでございます。   以上,非常に細かい点で,十分に内容をお伝えできていないかもしれませんが,今後こういう方式を取り入れる際には,実務レベルでは潰さなければいけない問題点があるという点について御認識いただければと思います。   続きまして,項番の2番の共通番号参考案になります。   昨年1月から共通番号,いわゆるマイナンバーの運用が開始されてございます。発行者が株主に対して金銭を支払う際に,その支払調書に株主の共通番号を記載する必要がありますが,上場会社の場合,株主の共通番号を入手することが難しいという問題がございましたので,振替制度を利用して共通番号を通知するという流れになってございます。   具体的には,加入者が口座管理機関に対して告知した共通番号につきまして,口座管理機関から保振機構のシステムに登録していただき,発行者がその株主について共通番号が必要になる場合は保振機構のシステムに照会をかけ,保振機構から通知をするという仕組みでございます。共通番号につきましては,保振機構では加入者情報とは全く別のデータベースで管理しております。この加入者情報とは別管理,発行者から照会するという仕組みを書面交付請求に応用するとどうなるかというのが,この共通番号参考案でございます。飽くまでも参考にしているということですので,書面交付請求を共通番号と併せて管理したり,通知したりということではございませんので,その点は誤解なさらぬようお願いいたします。   イメージ図ですが,加入者が口座管理機関に請求の取次ぎを依頼し,口座管理機関が保振機構に取り次ぐという点は先ほどの案と全く同じになります。ただ,この請求は銘柄ごとではなくて加入者単位ということになります。保振機構では,取次データの履歴を蓄積し,加入者情報とは別のデータベースで管理することを想定してございます。先ほどの案では,取次ぎの都度,発行者に通知をするという想定でしたが,この案では保振機構から能動的には通知せずに,発行者が必要な都度,銘柄ごとの照会データを保振機構に通知していただき,保振機構からは,その照会結果を通知するということを想定してございます。この場合の照会結果というのは⑤になります。,照会を受けた銘柄の直近の基準日の株主,これは総株主通知の対象株主ということになりますが,その株主の中で,照会日時点で書面交付請求を行っている株主ということになります。   ページをめくっていただきますと,留意事項を記載してございます。   1点目は,繰り返しになりますが,加入者単位の取次ぎになりますので,加入者は銘柄ごとに書面の要否を決めることはできなくなります。   2点目ですが,今回参考にした共通番号の場合,法律上,必要な範囲内に限っての提供しか認められていませんので,発行者が株主を特定して保振機構に照会を頂いているということでございますけれども,今回提示した案では,株主を特定していただく必要はございません。銘柄単位で御照会を頂きますと,その時点で書面請求を行っている株主の一覧を回答するという想定をしてございます。   その照会に対する回答ですが,加入者が異なる口座管理機関に対して,異なる意思表示をしている場合,例えば,ある口座管理機関に対して書面交付請求の取次ぎを申請し,別の口座管理機関に対して書面交付請求の取消しの取次ぎを申請することもあり得るかと思われます。その場合は照会時点で直近の意思表示,最新の日付の意思表示を採用することを考えております。つまり,株主名簿管理人から照会があった場合には,照会時点の直近の総株主通知の対象株主のうち,直近の意思表示が書面交付請求となっている株主の一覧を回答するという想定にしております。   留意点の3点目ですが,口座管理機関は,加入者が他の口座管理機関でどのような意思表示をしているか分からないので,加入者が自分の書面交付請求状況を知りたい場合には,口座管理機関ではなく株主名簿管理人に問い合わせていただく必要があります。これは,先ほどお話ししました配当金参考案と同じ留意点になります。   最後,4点目でございます。当社としても,念のため挙げているものになりますが,総会等の基準日が3月末に集中している現状がございますので,株主名簿管理人からの照会も恐らく3月末基準日の総株主通知の直後に集中することが想定されます。システム上,処理上限を設ける可能性がありますが,現時点ではその上限を設ける必要があるかどうかも分かりません。場合によっては1営業日に集中するのではなく,何日かに分散して照会することをお願いする可能性があるということを記載させていただいております。   続きまして,項番3番の両案の比較になります。   ここまで駆け足の説明でしたので,このページでただいま説明しました二つの案の特徴について簡単な比較表を記載してございます。   まず,加入者による請求の単位で,配当金参考案は銘柄ごと,共通番号参考案は加入者ごとというのが大きな違いになるかと思います。   次に,株主名簿管理人への通知の単位と,その次の通知の時期ですが,配当金参考案については加入者が銘柄ごとに請求したものをその都度通知いたします。共通番号参考案については発行者の任意の時期に,といっても,基本的に総会に係る基準日の後に必要になろうかと思いますが,銘柄ごとに書面交付請求を行っている株主の一覧を通知いたします。   最後に,株主名簿管理人における管理ですが,配当金参考案では,加入者による請求の都度通知いたしますので,その都度情報を管理・更新していただく必要があります。名寄せ解除が発生すると,その管理が難しいのではないかという懸念点は,先ほど御説明したとおりです。一方,共通番号参考案は,必要なときに一括して取得が可能となってございます。   最後に,項番4番として,両案に共通の論点ということで記載してございます。   まず,振替制度を利用するという場合には,第2回の部会でもお話しさせていただいた内容になりますが,口座管理機関が株主の窓口となり,システム対応ですとか事務対応を行っていただくということになりますので,この後,口座管理機関から御説明があるかと思いますが,検討を進めるに当たっては口座管理機関の合意が必要と考えてございます。   次に,システム対応ですとか事務対応に要する新たなコストというのが発生いたしますので,こちらのコスト負担をどうするのかという点につきまして,関係当事者間で合意がなされることが前提になると思ってございます。   最後に,保振機構のことで恐縮ですが,現在サービスの向上を図るため,2020年,具体的には2020年の秋のシステム稼働を目標に,大規模なリプレースに取り組んでございます。このシステムリプレースを安全・確実に完成することが当社にとって最大の経営課題というふうに認識してございますので,仮に,振替制度を利用するということになった場合も,そのシステム対応への着手は,このシステムリプレースの安定稼働後になる見込みでございますので,その点は御認識いただければと思います。   保振機構からの説明は以上になります。御清聴,ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,次に川島参考人,どうぞよろしくお願いいたします。 ○川島参考人 ただいま御紹介いただきました,みずほ信託銀行の川島でございます。   早速でございますが,説明に入らせていただきます。   B2案及びB3案につきまして,株主名簿管理人の立場から案の概要及び問題点について説明させていただきます。   参考資料は29でございます。まず,1ページ目を御覧ください。   B2案,B3案をそれぞれ説明するに当たりまして,現状の事務概要を御理解いただくために,平成21年株券電子化以降の上場会社に係る株主名簿管理人業務の概要を説明させていただきます。   株主は口座管理機関,いわゆる証券会社にて株式を購入する際に,その氏名,住所及び配当金振込先等を届け出いたしますけれども,その情報は証券保管振替機構を経由して,原則年2回,総株主通知として株主名簿管理人へと送付されます。その後,株主名簿管理人は株主名簿を作成し,その株主名簿に基づき招集通知,それから議決権行使書などの発送及び議決権行使書の集計業務等を担っております。   なお,株主からの住所,氏名,配当金振込先の変更については証券保管振替機構を経由し,通信先指定といった証券保管振替機構がカバーしない諸届につきましては,口座管理機関による本人確認を経て株主名簿管理人へ提出されています。   株券電子化以降,従前,株主名簿管理人にて保管しておりました株主の届出印が押印された印鑑票の取扱いが廃止となり,株主名簿管理人が株主本人の確認事務を行うことが困難になりましたので,証券保管振替機構を経由しない諸届につきましては,口座管理機関による本人確認を行う取扱いとなった経緯がございます。   さて,B2案の口座管理機関のみを経由して株主名簿管理人に対して書面交付請求を行う方法といたしましては,レジュメに記載された通信先指定の事務フローを準用するものが考えられます。   2ページ目を御覧ください。   株主は,口座管理機関に対して書面交付請求用紙を提出し,その書面に口座管理機関の確認を押印した上で株主名簿管理人に書面交付請求を行う方法でございます。この方法を採りますと,複数銘柄を保有する株主は銘柄ごとの請求が必要となります。運営上の問題点といたしましては,まず1点目として,仮に,総会基準日と書面交付請求基準日を3月末とした場合,前回基準日であります前年9月に株式を保有していない株主は,株主名簿管理人で管理する株主名簿に記載されるのは4月以降になりますので,9月末から3月末の間までに書面交付請求を提出されても,株主名簿管理人はそもそも請求の受付ができないということでございます。   したがいまして,このような場合は,その請求を一旦保留いたしまして,総株主通知受領後に株主名簿の記載を確認し,短期間で書面交付請求を登録するということになりますので,これに応じた事務システムの刷新に係るコストは発生するというふうに考えられます。   2点目といたしまして,件数・規模の問題がございます。通信先指定の年間処理件数は信託銀行3社を合わせて年間約2万3600件程度でございます。これにつきましては,受託株主数のうち,約0.04パーセントの水準となっております。対しまして,書面交付請求の行使請求がどれぐらいかというところなんですが,もちろんまだ未定ではございますけれども,米国,英国の例を参考に試算いたしましたので,4ページ目を御参照ください。この件数は,経済産業省の株主総会プロセス電子化促進等に関する研究会報告書の参考資料であります「日本及び諸外国における株主総会プロセスの電子化等の状況」を元に算出をしたものでございます。   米国では,2014年の株主数ベースで8.9パーセントと試算しております。こちらの数字は,米国のノーティス・アンド・アクセス制度採用企業における書面送付の状況から,事前登録及び資料請求の対象となる株主の割合を合算した上で,個人株主のフルセット及び通知のみの割合を乗算した数値から算出をしております。   英国における試算では,個人株主のうち15パーセントが書面請求対象となっているとされております。   なお,このような基準を基に,仮に,日本において10パーセントの個人株主が書面交付請求を実施するとした場合は,延べの個人株主数で500万超という数字になります。この人数分が,請求が一気に来るわけではないと思いますけれども,先ほどございました通信先指定とは大幅に異なる事務量というのを想定しなければいけないというふうに考えております。   2ページ目の運営上の問題点②の方にお戻りください。   また,現状の通信先指定では,口座管理機関の確認が漏れているケースも多々ありまして,関係者間で紙のやり取りをするというのは事務が繁雑になるというところが想定されるために,この書面交付請求の件数が多ければ多いほど,B2案の書面によるやり取りではなくて,B1案の証券保管振替機構経由でシステム的にデータをやり取りするほうが,イニシャルコストは一時的には発生すると思いますけれども,長い目で見たときに,この株主権行使の画一的かつ安定的な運用に資するというふうに考えております。   最後に,B3案について御説明をいたします。3ページ目を御参照ください。   こちらのフローでは,まず,株主から株主名簿管理人に書面交付請求の意思を御連絡を頂き,私どもで株主名簿上の株主を特定して,株主の届出住所に書面交付請求の専用用紙を送付して,その専用用紙の返送をもって書面交付請求を受け付けるという流れでございます。これにつきましては,現在の議決権行使書の事務フローと同様でございまして,全株懇の本人確認指針でも記載されております一般に定着した本人確認手法でございます。この場合は,B2案と同様に複数銘柄を保有する株主は銘柄ごとの請求が必要となります。   運用上の問題点といたしましては,先ほどB2案でもございましたとおり,総会基準日と書面交付請求基準日を3月末とした場合に,前回基準日である前年9月に株式を保有しない株主については,株主名簿管理人で管理する株主名簿に記載されるのは4月以降になりますので,株主名簿管理人へ連絡してきた株主が,株主名簿上の株主として存在することを確認すること及びその株主の氏名・住所の確認ができず,専用用紙の発送が難しいということで,議決権行使書のような本人確認を行うとすることを前提とすると,フロー自体が成立していないと思っております。株主であるかどうかを確認せずに専用用紙の発送を行うというやり方もあるかもしれませんけれども,現状と同様の本人確認事務を前提とする本人確認の問題については,一旦検討を行わなければいけないかなというふうに考えております。   また,株主からの請求用紙を受領後に,例えば,住所変更されたような場合は,4月に受領する総株主通知上の住所と請求用紙上の住所が不一致となるというような不都合も生じてまいるというところでございます。   以上,証券保管振替機構を経由しないフローとして2案を御説明をさせていただきました。株主権行使の一種として株主の本人確認を行うことを前提とし,大量事務を想定するのであれば,株主の利便性,関係者間の事務コストからいっても,B1案が望ましいというふうに考えておりますけれども,イニシャルコスト面も含めて関係者間での検討が必要だというふうに考えております。   説明は以上となります。御清聴ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,前田参考人と三枝参考人からプレゼンテーションをお願いいたします。よろしくお願いいたします。 ○前田参考人 ただ今御紹介にあずかりました,大和証券の前田でございます。第2回の部会に続きまして,本日の意見陳述の場を設けていただき誠にありがとうございます。   さて,お手元の日本証券業協会の資料ですけれども,今回の部会資料に,書面交付請求に係る手続として何案か提案されておりましたので,それを基に日本証券業協会の方で,証券会社の実務家にヒアリングして,その意見を踏まえて作成したものでございます。本日はこちらの書面にて口座管理機関及び株主さん等への影響について御説明いたします。よろしくお願いします。   資料1ページになります。こちらは全体共通の内容になります。   先ほど来,御説明がありましたとおり,現状,口座管理機関というのは振替口座簿の管理ですとか総株主通知等,株主管理の一部には関与しておりますが,今回の株主への株主総会資料の送付ですとか,株主からの議決権行使を含む,そういった株主総会に係る手続には,現状全く関与していないという実態がございます。また,口座管理機関から株式会社様へ直接株主の請求等を取り次ぐ仕組みは,株券電子化制度実施以前より,通信先指定や配当金の非課税の請求書,そういったものがありますけれども,実際に発生する件数というのはごく僅かと認識しております。   このような現状から,口座管理機関の基本的なスタンスとしては,第2回の資料に記載したとおり,株主総会に関与していない口座管理機関が書面交付請求のみを切り出して関与することには,やや違和感があり,また,仮に,口座管理機関が関与する場合の負担等の配分については大きな課題であると考えております。   書面交付請求に口座管理機関が関与する場合ですが,口座管理機関においては,制度の導入に対しては,その体制の構築やシステムを新たに構築する必要がございます。また,制度の運営に関しては,事務のコストですとか事務リスク等,こういったものが新たに発生いたします。また,書面交付請求の相手方は飽くまで株主会社様ということで,口座管理機関はその一部の手続に関与する機関であるというふうに考えております。   続きまして,2ページ目を御覧ください。   口座管理機関が書面交付請求に関与する場合ですが,その仕組みの検討に当たっては以下の点を御留意いただきたいと思います。   まず,1点目ですが,口座管理機関が関与することによって生じる書面交付請求の取次ぎに係る事務処理等の負担については,関係者間において適正に配分される方法も併せて検討いただきたいと思います。   2点目ですが,書面交付請求の制度が適正・適切に運営されるためには,簡素で分かりやすい仕組みを構築することが求められると考えております。例えば,上場会社様は電子提供の範囲を一律に決めるというようなことが必要ではないかと考えております。   3点目ですが,口座管理機関の義務及び責任の範囲についてですが,こちらはあらかじめ明確にする必要があると考えております。例えば,口座管理機関が自発的に御客様に対して書面交付請求をするかしないか,そういったことを確認する必要まではないということなど,口座管理機関には過大な義務や責任が課されないものと,想定しております。   次,資料をめくっていただきまして3ページ目は,B1案に関する意見でございます。   まず,B1案①配当金の単純取次方式を参考にした仕組みですが,これは先ほどから御説明ありましたとおり株主が銘柄単位で書面交付請求を行わなければならないということで,上場会社様の大半が電子提供をされるということを前提としますと,やはり株主においてはB1案②の株主単位の手続に比べて非常に負担が重くなると,口座管理機関としても考えております。また口座管理機関においても,株主単位で請求される場合と比較して,株主・銘柄単位で受付や請求に伴う管理を行う必要がありますから,そういったところの負担,事務リスク等は大きくなると考えております。   次に,B1案②共通番号の照会を参考にした仕組みですが,こちらは株主単位での手続となりますので,先ほどの①案と比較しますと,株主,口座管理機関とも,事務の負担等は総体的に少ないと思います。   ただ,部会資料「(補足説明)4その他」にありますように,書面交付請求の取次ぎに対して,口座管理機関と株式会社の対応関係が明確でなく,一因として,株主は保振様の加入者情報の中で,名寄せされて管理されているということがあるためですけれども,こういったことから,費用の負担の在り方とか計算方法については,ちょっと工夫が必要であるかと考えております。   続きまして4ページ目,B2,3案に対する意見でございます。   B2案,保振を通さずに口座管理機関のみを経由する仕組みですけれども,こちらについては,株主においてはB1案①と同様,銘柄単位で手続が発生しますので,非常に負担が多くなると思います。また,口座管理機関においても,B1案①と同様に銘柄単位での管理の必要なことに加えて,各株式会社様へ保振のシステムを利用せずに個別に取り次ぐ必要があることから,非常に他の仕組みと比べると,やはりこれが一番最も負担が大きくなると考えております。   最後のB3案,口座管理機関を経由しない案ですけれども,こちらは口座管理機関としては全く影響ないのですが,株主の観点で考えたところ,例えば,諸外国に見られるような株主向けのポータルサイトというようなものがない前提とすると,やはり銘柄単位での書面交付請求をしなければいけないというところでは,他のB1案①と同様に負担は重いと考えられます。ただ,株主総会資料の郵送というのは,発行会社,株主名簿管理人から直接送られるというものでありますので,そういったところでは,株主様にとってみれば直接株式会社,株主名簿管理人に請求するというのはちょっと分かりやすい点もあるかなと思います。   次,5ページ目,最後のページになりますが,その他記載の内容についても,御留意いただければと思います。   1点目ですが,株主の書面交付請求の制度理解を促進する観点からは,導入に関しては十分な周知を行う必要があると考えております。   2点目ですが,部会資料の2番,議決権行使書面の取扱いにも触れられておりますけれども,株主総会資料の電子提供を行うか否か,またその資料の提供範囲は,上場会社様でいろいろ選択ができるようになると,やはり株主に混乱を生じさせるおそれがありますので,基本的には上場会社においては統一性のある対応が望まれます。   ちょっと駆け足ですが,説明は以上になります。どうもありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,三瓶委員からプレゼンテーションをお願いいたします。よろしくお願いいたします。 ○三瓶委員 参考資料の27になります。   私からは,今まで御説明のあった書面交付請求とがらっと違う話なので恐縮ですけれども,これまで第2回の部会及び今日もそうですが,株主総会の全体のプロセスの見直しとは言いながらも,招集通知までのプロセスについて相当時間を割かれていたと思うので,私は招集通知を発送されてから,その後の株主総会までの事務というのがどういうふうに行われているのかということについて,共有させていただきたいと思います。   資料の1ページ,2ページ,3ページは3月末決算の会社を想定していますが,3月末の基準日から6月末までの全体のスケジュールを表わしています。特にここで一つ一つの事実関係の共有をしたいということと,あと項目的には基準日からの日数でどんなことが起こるか,例えば,四つの軸,決算発表,招集通知発送,それに関しての校了から印刷・封入の時期及び議決権行使の手続の確認をしたいと思います。   1ページ,2ページ,3ページは全体の流れを示しているだけで,吹き出しにその根拠が書いてあります。この資料は第2回会合での発言の根拠として用意していたものです。その後,今年度の株主総会がありましたが,そのデータを反映すると,日数が多少ずれたりして分かりにくくなるのであえて更新はしていません。   スライドの3に,招集通知を受領した直後の実務が書いてあります。   簡単に申し上げますと,招集通知の受領,これが基準日から数えると66日目ぐらいですね。ここで議案データを議決権行使基準プログラムに入れて処理をします。これは機械処理をするのですぐできるだろうというふうに思われるかもしれませんが,例えば,現在,外国人の株主は30パーセントぐらいいるわけですけれども,招集通知の中身,データ,情報を英訳するのに5営業日ぐらい要します。一方,カットオフという議決権行使入力の締切りがあります。すると,赤く表示していますけれども,基準日からいうと75日目ぐらい,株主総会から遡ると11日目ぐらい,この辺で議決権行使の判断決定をしなければいけないということです。横の吹き出しに,経産省の対話促進研究会の報告書からの抜粋を表示していますが,報告書にも実質3日ぐらいで議案の検討をしなければいけないということが書かれている,このことを示しています。   それを更に,いろいろな事例を踏まえて御説明しているのがスライドの4です。   ここで,招集通知が営業日ベースでいうと株主総会から15日前,次に議決権行使プログラムにて処理する,又は方針作成するのに6営業日掛かる。入力締切りは株主総会から遡ること6営業日ということで,これらの条件で挟まれる日数が3営業日ということです。   そして,その間に何が起こっているのかというのが,このページの下半分です。ここで,ちょっと字が小さくて見にくいですけれども,A,B,C,Dの4社との実際のやり取りの事例を示しています。A社の場合は,招集通知が発送されたのが,株主総会から17日前です。そして,この場合は日本語,英語,両方とも出ていますので即座に処理ができています。昨今,機関投資家は社外取締役の独立性ということについては非常に判断を厳しくしておりますけれども,そのときによく参考にするのが,独立役員届出書です。ただ,独立役員届出書の締切りは,株主総会前2週間前ということになっているので,招集通知発送時点では届出書が出ていないことがままあります。   ということで,この場合,独立性について根拠が余りはっきりしないので,例えば,大手議決権行使助言会社が反対推奨を出します。そうすると,その推奨情報を入手した発行体企業の方は,もう少しきちんとした説明をさせていただきたいということで機関投資家に連絡をとられます。実際にそういった追加説明の申出連絡をいただいたのが,株主総会前16日だったわけです。カットオフまで残る時間が1日,2日ぐらいしかありませんが,そこでお話を伺って,どうにか株主総会の10日前の入力締切りに間に合ったのがA社のケースです。   B社の例では,株主提案が多くありました。株主提案について,議決権行使助言会社がどんな推奨をしているかが大体分かってくるのが,この場合だと株主総会15日前です。それから追加説明の申出がありました。ただ,横並びで見ていただくと分かるとおり,この時期は集中していますから,その説明をしたいという申出を頂いても即座に対応できるわけではありません。この場合は電話会議を翌週月曜日に設定して,もう即その場で判断しないと入力締切りに間に合わないというような日程でした。   C社の場合は,今度は年間を通じてずっと継続的な対話をしていた会社です。議案について事前に議論をして,最終的な議案は修正されたものが出てきたわけです。この会社としては,修正したから大丈夫だろうと思ったんでしょうけれども,蓋を開けてみると,議決権行使助言会社は反対の意見だということで,すぐに追加説明をしたいとの申出がありました。ただこの時はほとんどもう営業日ベースでは検討時間が残っていないので,電話で入力締切りぎりぎりのタイミングで内容確認をしました。   D社については,残念ながら御連絡いただいた段階では対応が集中していますから,本当に電話を取ること自体も難しいぐらいです。結果的には入力締切り後にやっと電話でやり取りができましたが,その説明を反映するとか,説明を聞いた後で判断するということには,時間的には間に合っていないというような状況です。誤解のないように念のため付け加えますが,弊社では議決権行使助言会社の推奨に従う,または,参考にして議決権行使を行うことはありません。弊社独自の議決権行使方針に従うか,または,顧客の議決権行使方針に則って行使します。しかしながら,発行会社から追加説明の申出がある場合には,可能な範囲で受け付け対応しています。   このタイトなスケジュールのどこをどうしたらいいのかということで,スライドの5ですけれども,頭とお尻が決まっていて,その中で判断する時間を確保するには,まず前半のところで前倒しできるという見直しポイント①があります。一方で,全体の期間のお尻を少し後ろにするという見直しポイント③というのもあります。ただ,いろいろなハードルがあります。なので,今回の議論にも若干関連し,かつ,できるのではないかというのが,見直しポイント②ですので,このことについて特に御理解を頂きたいと思います。   それがスライドの6です。   まず,総量というか,ボリューム感を御理解いただきたいんですが,先ほどの説明の中でも,1日に処理できる量というのがありますと言いましたが,例えば,インデックスで運用しているパッシブ運用者については,TOPIXの6月総会会社全てとその他の6月総会会社についてまとめて議決権行使するわけですね。そうすると,6月総会について招集通知を受け取って,それを4週間(5営業日×4週)毎日そういうことをやって最終的に2000社近くになる。1日当たり単純計算すると100社超です。   我々はアクティブ運用者ですが,アクティブ運用者はそれよりもはるかに少ない数の投資先ですけれども,その分,議決権行使の判断を丁寧にします。そういう意味で,先ほどお見せしたように,企業から追加説明をしたいということがあれば,できるだけそれを伺います。ただ,それをしながら,この6月総会の4週間に対応するというのはかなり厳しい状況です。   株主総会集中率というのが昨今下がってきているという話がありますけれども,集中率,例えば,30パーセントぐらいまで下がってきているという中で,この30パーセントの計算は日ベースですね。日ベースで集中率を計算しているのは日本だけです。海外で集中率といったときには月ベースです。日本の集中率を海外ベースの計算方法で見ると,いまだ7割ですね。だから,ちょっと話にならないというところがあります。   それと,次の段に書いてあるんですけれども,商事法務の9月15日号,NO.2144に,今回の株主総会のデータがありますが,ここで,招集通知の発送前にウェブ開示をしている会社が増えているというのがありますけれども,総会日の4週間以上前からウェブ開示している企業は,ここに書いてあるとおり17.9パーセントにとどまります。ウェブ開示をしていると,実際の書面の発送よりも早いのかというところなんですが,これについては,この商事法務のデータからも,それほど早く出している会社はないというのが分かります。より具体的に申し上げると,ある大手議決権行使助言会社によれば,今回,東証のウェブサイトから入手できたのは,平均して総会の22日前だと。要するに3週間前プラス1日という感じですね。要するに,大多数の会社がウェブ開示をしているという場合でも,1日,2日前でしかないということです。   そういう中で,もう少しウェブ開示の有用性をいかして,是非とも御議論又は御検討いただきたいのは,開示タイミングのルール化です。総会1か月前又は4週間前というふうにするのか分かりませんが,やはり早期化ということをはっきりルール化することが大事になります。例えば,今現在でも,準備はできているけれども,法定の2週間前まであえて待つ会社が16パーセントほどあります。   そして,開示方法のルール化では,どこにウェブ開示するか。例えば,自社のホームページということでは,これは議決権行使実務に乗りません。ですから,東証等の共通プラットフォームに招集通知のウェブ開示をしていただきたいということ。   それと掲載情報も,一旦,平仄をそろえたほうがいいということで,注記とか,先ほども触れましたけれども,独立役員届出書などについて,きちんと含めるということが必要かと思います。   このウェブ開示の話は,今回ここで御議論いただいていることと本来は若干ずれるとは思います。ただ,この招集通知をどういう形で発出するかという点で,電磁的方法に持って行くという方向性については,例えば,ウェブ開示が速やかにできるとすれば,今までの現状維持バイアスという壁を乗り越えて,電磁的方法への移行のインセンティブになるんではないかと思います。   例えばという意味では,招集通知をウェブ開示によることによって,今までよりも早く手に入れられると。早く手に入れられたほうが,やはりいろいろな検討する余地がありますから,早く手に入れた人(個人株主)と書面まで待っていた人(個人株主)とでは,やはり早く手に入れた方がいいなという実感が見えてくるということ。   また,議案を開示してから株主がどういう対応をとってくるのか,賛成するのか反対するのかという様子が見えてから発行体企業の方は追加説明をしようとしますけれども,ウェブで早期に開示すれば,そのタイミング・期間がもう少し確保できます。そうすると,丁寧に説明をし直して,それを株主が聞いてという対話の機会は増えます。   三つ目には,そういうことをやっている中で,懸案議案についてどういう意見が今まで出てきているかということが,例えば,メディアを通じて広く知れ渡ると。そこで,知れ渡ったときには“既に遅し”ではなくて,それを踏まえて個人株主も議案について,もう一旦いろいろな意見を聞きながら検討するという余地が生まれてくるという意味で,本当の意味での対話というのが深化する余地が十分にあるのではないかと思います。   私からは以上です。どうもありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,部会資料の8の「第1 株主総会資料の電子提供制度」につきまして,委員,幹事の皆様方から御質問,御意見をお出しいただきたく思います。   なお,参考人の皆様方からのお話及び今の三瓶委員からのお話についての御質問等も,もちろん併せて御発言いただければと思います。どなたからでも結構でございます。よろしくお願いいたします。古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。   株主総会資料の電子提供についてですけれども,コストの削減,それから株主の議案検討期間の確保の観点から,実務が回る仕組みが採用されるという前提で,電子提供制度の創設に賛成であるということを改めて申し上げたいと思います。   実務が回るという意味では,第一読会のときに示されておりましたA案とB案のうちB案の考え方をベースに検討を進めるという考え方に賛成でございます。   「1 書面交付請求」についてですけれども,B1からB3の各案について示されておりまして,先ほど参考人の方々から御説明いただきまして,私もイメージといいますか,仕組みについては大体把握できたかなと思っております。どうもありがとうございます。   具体的にどの制度を選ぶかということにつきましては,それぞれ制度の構築に必要となるコスト,それから安定的な事務処理といった観点から,関係業界の意見を十分に踏まえた上で,実務上,機能する仕組みにしていただきたいと思っております。   それから,書面交付請求につきまして,部会資料には記載はございませんけれども,前回も申し上げましたように,定款の定めによって書面交付請求を排除できるとすることについても,引き続き検討していただきたいと思います。   「2 議決権行使書面の取扱い」については,部会資料の御提案に異論はございません。   別紙,これは参考ということで付されておりますけれども,B案を採るものとした場合の規律の一例というものについても,若干コメントさせていただきたいと思います。   この別紙の「1 定款の定め」のところでございますけれども,上場会社に関して義務化するかどうかという論点があったかと思います。上場会社については義務化する,みなし定款変更とするということであれば,書面交付請求に実務として確実に対応できることが,義務化に賛成する上での条件になると思います。義務化をしないで,全ての会社について任意で定款変更した場合のみ電子提供が可能となるという制度にする場合でも,書面交付請求に確実に対応可能な仕組みでなければ,あえて電子化を選択する会社は少数にとどまるのではないかと思っております。   その意味で,この別紙の記載で気になりますのは,3の(1)にございますけれども,発送時期が総会の,これは仮置きということですが,3週間ないし4週間前とされている点,かつ,4の(2)にございますけれども,書面交付請求に対しては招集通知を送付する際に電子提供措置事項を記載した書面を交付すると,こういうことが前提となっている点です。仮に,全株主の10パーセントに相当する数の株主から書面交付の請求があったと致しますと,株主数が10万人の会社であれば,1万通の書面の発送の準備をしなければならないということになります。仮に,発送時期が総会の3週間ないし4週間前ということになりますと,10万通と1万通の違いはありますが,現行の2週間前の書面発送の時期が単に1週間ないし2週間繰り上がるということになってしまいます。   現状はどうなっているかといいますと,先ほど御紹介もありましたけれども,かなりの数の会社が3週間前,4週間前に発送しているということなので,可能ではないかという御意見もあろうかとは思いますし,可能な会社も確かに少なくはないと思いますが,任意に早期発送をするということと,義務,つまり達成できない場合には不適法な招集となるということでは大違いですので,やはり法律上の期限としては現行の2週間前を維持していただきたいと思います。総会の8週間前ぎりぎりに株主提案権が行使された場合には更に対応が厳しくなりますので,その辺りも御勘案いただきたいと思います。   それから,電子提供に係る調査につきましても,第2回の会合で申し上げましたけれども,例えば,東証にアップする場合は調査を不要とするとか,EDINETを利用できるようにして,これを利用する会社については調査不要にするといったように,調査に伴う手間とコストの発生の回避についても御検討いただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。小林委員,どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   今回の株主総会資料の電子提供制度につきましては,商工会議所内部の検討としましては,全ての上場企業に電子提供を義務付けるということには,まだ依然として懸念を持っております。やはりそれほど規模の大きくない上場企業までもが全て電子提供制度の対応が可能か,ないしはこれらの規模の会社についてニーズといいますか,負担感がどのくらいなのかという意味での実態については,検討,把握が必要ではないかなと思っています。   第一読会でも申し上げましたけれども,これとは逆に,個人株主が多いような企業におきましては,実際には書面ベースで元々は送りたい,広告ツールというわけではございませんが,個人に対して送りたいというニーズはございますので,仮に,電子提供が義務付けとなった場合に,書面提供で全部やりたいという会社にとってみると,場合によってはこれが二重投資になるというようなこともあるかもしれませんので,考え方としては,少なくとも,電子提供制度が,各企業が選択できる制度にしていただきたいという感覚は依然として持っております。   今回の提示では,振替株式に限って一読目で御提案のあったA案,B案のうち,そのB案を更に深掘りするという内容になっていますけれども,元々やはり書面交付請求を強行規定化する前提ではなく,定款によって書面交付請求が,電子化した場合にはしなくてもよいということを認めることも前提に,それをも含めて技術的に可能な制度設計としていただけるかどうかが重要と考えております。   部会資料の9ページの招集通知の発送期限が仮案として置いてありますけれども,3週間前,4週間前というようなことが書いてはございますが,電子提供制度全体の考え方がまとまっていない段階で,いわゆる招集通知の関係で,こういう発送期限の見直しありきで議論が既定として進められるというようなことがないようにしていただきたいと考えております。   ここで提案されているA案,B案について,あえて選択するとすれば,やはりB1のいずれかが現実的ではないかと考えますけれども,現実に株主事務を取り扱う各機関において,実務上,コストも含めて対応可能であるということが当然の前提だと考えておりますので,この点についてはよく検討いただきたいということがございますが,先ほど申し上げましたように,各株式会社における電子提供の採用の可否であるとか,書面請求権の取扱いについてもやはり選択の余地が残るような仕組みとしていただきたいということを重ねて申し上げさせていただきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。前田委員,どうぞ。 ○前田委員 書面交付請求の仕組みは,会社とか口座管理機関の側にとってワークしやすいかどうかということとともに,株主側にとって実際に行使しやすい仕組みになっているかという要素も重要だと思います。そして,株主側にとっての利便性という観点からいたしますと,株主が株式を取得する手続に併せて,口座管理機関に申し出る形で請求できるようにしておくのが便利なのではないかと思います。   この株主の利便性の観点,そして補足説明で指摘されている本人確認のことを考えますと,B1案かB2案が優れていると思います。そして,B2案が書面ベースで使いにくそうだということになりますと,私もB1案が一番優れているのではないかというように思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 電子提供の仕組みに関しまして詳細に御説明いただき,私も問題状況を把握することができました。現在のB案を前提にした場合には,B1の更に②案というのがコスト面でいうと最も実現可能性が高いのかなと思います。   それで,B1②案について生じ得る問題点として,株主が書面交付請求をするかどうかを銘柄ごとに選択できないということがあるわけですけれども,この点については以前の部会でも申し上げましたが,株主は銘柄ごとに書面の交付を受けたり,受けなかったりするという選択をする権利まで保障される必要はないと思います。一般的に,自分は書面の交付を受けたい,あるいは受けなくてもよいという選択を認めるだけで十分だと思いますので,この点は,B1②案採用の障害にはならないのかなと思います。   また,B1②案の場合に,口座管理機関に事務処理コストが掛かるということに関しましては,私としてはそのコストは発行会社に転嫁する,その転嫁する仕組み自体も考えなければいけないわけですけれども,その仕組みができるとすれば,発行会社に転嫁することは合理性があると思います。こうした電子提供の仕組みにより,発行会社のコスト減につながるということがあるわけですから,そのために必要な費用を発行会社に負担させてもよいであろうと思います。これは理論的には,書面交付請求をする株主に負担させるというのもあり得ます。それは,株主が書面交付の受益者であるということからもそういえますし,また,書面交付請求のコストを株主に負担させることで,書面でなく電子的に提供を受けるというインセンティブを高めることができるかもしれません。ただ,現状でほとんどの株主が書面による提供を当然と考えている中で,株主に費用負担を求めることができるかという問題があることに加え,それからこれまでのお話を伺っていると,たとえ費用負担を求めるとしても,どうやってそれを支払わせるかというのもかなり大変であるようですので,私としては,費用の株主負担という選択肢も,ワーカブルであれば排除するまでの必要はないと思いますけれども,発行会社が負担するという仕組みが最も現実的ではないかと考えております。   その上で,三瓶委員からお話がありました現在の日本の株主総会実務のスケジュールが非常にタイトであるということは,これはこれまでも何度も指摘されてきたにもかかわらず,抜本的な改善が必ずしも進んでいない問題と思います。この点について,本来,私は,開催日程がそもそも決算日の3か月以内ということで,お尻が決まっていること自体が問題だとは思っているのですけれども,そこの実務が容易に変わらないとすれば,やはり情報提供の開始日を少しでも早めていただくと,そういうことが必要ではないかと思います。   この点に関して,別紙で提案されている,招集通知の発送を総会日の3週間前から4週間前にするという御提案についですが,これについては,招集通知の発送でなく,株主総会情報の電子提供措置をとる日を総会日の3週間前から4週間前にするということでいかがかと思います。アメリカの制度も,まずインターネットで情報開示をしなければならないという規制が先に施行され,それを前提にして,ノーティス・アンド・アクセス制度ができているという構造でありますので,日本でも同様の制度を導入するとすれば,まず,電子提供措置を行うことになるはずですから,この電子提供の措置の時期について,現在の招集通知の発送期限よりも早い時期を定めればよいのではないかと思います。   電子提供については,印刷や封緘のための日にちは掛からないわけですから,株主総会から1か月前にその措置をとることを求めてよいと思います。1か月が無理でも4週間前ということでいかがかと。そうすれば,機関投資家は,もちろん電子提供されれば容易にそこにアクセスできるわけですし,個人株主もネットが上手に使える場合はアクセスできるわけですから,そこは現行法よりもかなり期間を長めにとることにして,招集通知の発送については,本来,私は,発送期限が総会の2週間前というのも短か過ぎると思っているわけですけれども,この部分については改正をしないということも考えられるのではないかと思います。つまり,電子提供措置の時期と招集通知発送の時期をデカップリングするというか,分離するという選択肢も考慮に値するのではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。尾崎委員,どうぞ。 ○尾崎委員 どうもありがとうございます。   今日参考人の方々の御説明を伺っておりまして,何が問題かがだんだん分かってきました。本日,B案についての具体的な方策ということで,三者の御説明を伺いながら,証券業協会の方の御発言に共鳴しております。   口座管理機関の方々は議決権行使に関与されていないということを最初におっしゃっておられましたが,今回の話は最初の総会関連情報の提供段階でのIT化だけではなくて,将来の議決権の電子行使とリンクしてくる部分というのがあるのかなと思っております。この問題は結局は,三者における費用負担の問題だと思っています。どういうふうにしてやっていけば一番安定的であって,システム構築のための投資が必要なわけですが,それをどういうふうにして配分するのが一番適切かということだと思います。それは三者で協議すべきだというのは三者ともおっしゃっておられるわけで,妥当だと思います。関係する方々が制度実現に向けて,これから具体的にどちらがどれだけの費用を負担していくのか話し合っていきましょうみたいなことを三者ともおっしゃっているように私は聞いたのですが,そのときに従来この議論との関係で余り議論していなかった,議決権行使のところまで考えた投資という観点も視野に入れて検討する必要があるのではないかという感じがするわけです。   ITの利用は,総会前に様々な情報を提供しただけでは終わらないわけで,なぜ,証券業協会の方のご発言に共感したかと申し上げますと,B3案のところに,「諸外国に見られるようなポータルサイト等がなく」とされていたからです。これも実はIT化の一つの問題として,株主さんの利便性という点からすれば,ここまでいくべきではないかということで,そのとおりと思ったからです。個人的には,このような議論をかつてしたことがあった記憶がございまして,そういう広い視野に立ってみてのコスト負担の配分問題ではないかと考えます。   当面は書面交付請求が多いか少ないか分かりませんが,仮に,相当数あるとしても,いずれにせよ,こういう制度が強制される方向にいくとするならですね,上場会社について。そうなっていくと,だんだん書面を請求する数というのは減ってくる可能性というのはあるのではないかと,私は個人的には思っております。   そうなりますと,そのシステムの投資するお金というのは,下手をすると無駄になってしまうという感じもするわけですが,株主さんにとっての利便性というのは,次に必ず,議決権行使であるとか,様々な面でITの活用が問題になってくると想像します。今の議論の段階で,このような広い視野に立って,検討すべきではないかというふうに私は思っています。皆さんのプレゼンテーションを聞いていて,B1案とか2案とかいうことはあるかもしれませんけれども,やはり方向としてはB3案のような方向性ですね,これに賛成します。名簿管理機関の方,管理者の方への負担だけで終わってしまうみたいなニュアンスがあるかもしれませんが,段階的な制度実現の手法としてはB1案やB2案もあるのかもしれませんが,方向性ということだけ申し上げるならば,これは飽くまでも議決権行使の側面もあると考え,あるいは株主さんと直接関わる部分があるというふうなことをおっしゃっておられること,そして簡便で分かりやすい簡素なシステムであるということを考えますと,総会関係で直接コンタクトが取れるような仕組みというのが,究極的には,先ほど前田先生がおっしゃったような,株主さんにとっても一番分かりやすいシステムになるのではないかというふうに感じた次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。青委員,どうぞ。 ○青委員 まず,電子化について義務付けにするのか,任意にするのかという話もございましたが,昨今,会社法関係の制度がかなり複雑化していることに対する批判も多いというところもございますので,株主から見て分かりやすい仕組みにするため,上場会社においては電子提供の採用を一律の義務にするというのがよいのではないかと考えます。   その上で,招集通知の発送期限の早期化について三瓶委員から御意見がございましたけれども,こちらについては私どもも賛成でございまして,3週間か4週間かという点につきましては,実務が回る範囲であることが必要だと思っておりますけれども,可能な限り極力前倒しするということで,基本的には4週間程度がよいのではないかというふうに考える次第です。招集通知の準備には印刷・封入の関係で2週間程度掛かるというところもございますので,その点を踏まえれば電子提供に移行する場合には発送の期限を株主総会の日の4週間前とするのも可能ではないかというふうに考えております。   電子提供制度の目的としましては,株主が議案を検討する期間を十分に確保することが必要だというところがベースにございますので,議案を精査する期間を拡大し,十分に株主と会社との間での意見のやり取りや対話等が進んでいくように,4週間程度のところで,可能な範囲で前倒しをしていくということがよいのではないかと考えます。   それから,その場合には書面請求の実務が回るのかという話も出てまいりますけれども,ここにつきましては,先ほどもございましたように,電子提供として招集通知を出すタイミングと書面請求の方で株主に送らなければいけないタイミングというのは,必ずしも同じでなければいけないということはないかと思います。また,以前の議論では,基準日より前に請求を受けなければならないというところが求められるという御意見もございましたけれども,そこも含めて書面請求のタイミングを後ろにずらすということも視野に入れられるのではないかという感じはいたします。そうしますと,B1の方だけではなくてB3の案につきましても,現実的に更に検討を深める余地があるのではないかという感触がいたします。   それから,あと,三瓶委員のプレゼンの中で,6ページのところでございましたけれども,開示の方法の関係で東証へのウェブ開示ということで出ていたりとか,あるいは調査機関のところでも,TDnetで開示をしていれば調査は不要という話も,案として頂いた次第でございますけれども,こちらにつきましては,やはり法定の手続でございますので,十分に法律で定めるに足るレベルのものであるということが必要かと思います。   そうした意味で,基本的には各社様のホームページで開示することをベースにしつつ,別途法制度の外で,取引所のルールに基づいて取引所のウェブサイトにおける招集通知の電子提供を求めることで,機関投資家の方々が一覧で見られるような工夫というのは,併せてやるということは可能だと思いますし,現にやっているところでございます。   ただ,その場合には,今,電子提供の中で様々な情報の出し方を,フォーマット等々も含め,御検討されているかと思いますけれども,取引所の方で画一的にやるということになりますと,株主の方の書面請求に応じる場合に相当するようなもの,つまりPDF形式のものを提供することは可能だと思いますけれども,それ以外のフォーマットへの対応は難しいというのが現実的な問題としてあるというところを御理解いただければと思います。   また,東証の方でウェブ開示をした場合,調査が必要かどうかという点につきましては,私どもで御用意しているウェブサイトの安全性の保障はできかねますので,ここを唯一の掲載場所という形にした場合に,本当に調査を不要としてよいかという点については,慎重な御議論をお願いできればと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。質問と意見をさせていただきたいと思います。   参考人の皆様方,本日はプレゼンテーションありがとうございました。証券保管振替機構の粟津様か田中様に教えていただきたい点がございます。   今日の書面交付請求の構成について,B1案の①を採った場合の事務フローの問題なんですけれども,この案ですと,株主が銘柄ごとに書面交付請求の行使を特定できるということですが,もしこれが事務フローや負担的に可能であれば,当初は大量に出ることが予想されます書面交付請求について,株主も不要なものはしないということが可能になるわけですから,その意味では望ましいと思うのであります。このことの株主に対する負担という意味で,銘柄ごとに書面交付請求の行使をしなければならないということがあるという御指摘でした。   この点は,口座管理機関で株主から書面交付請求を受け付ける際の事務フローに関係していると思いますが,これは多分データそのもの,書面交付請求の情報そのものはデータで取り次がれていくということだと思いますけれども,店頭では何かの書面に書いてもらって,それをインプットするような作業なのかと思われます。その際の事務フローを,その口座管理機関の全銘柄に交付請求するという欄も設けた上で,あとは個別に交付すると,この銘柄について交付するというような形での受付も可能とすれば,株主としては全部にするか,個別のものにするかということは簡単に選べると思うんですけれども,その辺りの事務フローが可能なのかどうかという点を教えていただきたいと思います。   あと,もう1点は意見ですけれども,議決権行使書面の取扱いの論点ですが,これをもし株主の氏名又は名称及び議決権の数を省略した議決権行使書面フォームをウェブサイトに掲載を義務付けるということにした場合ですが,これはほかの株主もこれをプリントアウトして使用することが皆可能になるということですから,送られてきたものが株主本人による行使かどうかという確認する作業が必要になってくると思われます。そういう意味で,これは課題があるんではないかと,こういう義務付けをした場合ですね。これは意見として聞いていただければいいですけれども,そういうふうに感じた次第です。ありがとうございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,保振の方から,御質問について,もし御発言いただければ有り難いのですけれども,いかがでしょうか。 ○粟津参考人 今回,御提案させていただいた配当金参考案というのは,飽くまでも株主ごとに銘柄単位のデータ授受を想定してございますので,仮に,口座管理機関の方が受けられて全銘柄と言われても,その口座管理機関で保有している銘柄については,口座管理機関の工夫で何とかなる可能性はあると思いますが,他の口座管理機関でも株式を購入しているようなケースも当然あるかと思いますので,そういう点を勘案いたしますと,ただいま御提案いただいた案というのは,なかなか取り得ないと思います。 ○沖委員 口座管理機関ごとでしたら,あるいは可能になるかもしれない。 ○粟津参考人 そうですね。口座管理機関の工夫次第だと思います。 ○沖委員 分かりました。ありがとうございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。梅野委員,どうぞ。 ○梅野委員 「2 議決権行使書面の取扱い」についてですけれども,部会資料を拝見しますと,議決権行使書面を交付する場合には,電子提供措置を採ることを要しないものとすることができるということで,電子提供が原則となるということだと思いますが,議決権行使書面を原則的に電子提供する必要があるのかどうかという点は,少し検討の余地があるように思いました。   といいますのは,現在,電子的方法による議決権の行使というのは広がりつつあるという認識をしておりますけれども,電子投票による場合と議決権行使書面の情報を電子提供する場合とどの程度違うのか,例えば,デジタルデバイドのある人にとってどの程度ハードルが高いかというと,余り違わないのかもしれません。いろいろな制度が並立することは分かりにくく,余り望ましくないのではないかと思います。むしろ,これは直ちにというわけではないのかもしれませんけれども,電子的方法による議決権行使の方に誘導していくといった考え方もあり得るのかと思った次第です。   つまり,制度としては現状と余り変わらないということかもしれませんけれども,電子投票と書面による議決権行使というものを並立させる今の制度というのを維持することも検討の余地があるのかと思います。ただし,その点に関しては,電子化を前提とすると,招集通知の発送と議決権行使書面の発送をどうやって一緒にするのか,あるいはこれは一つの封筒に入れるということになると,事務負担が増えるといったことになるかもしれませんので,その辺りについては専門の名簿管理人の方々の御意見もお伺いしたいと思います。いずれにせよ,余り複雑にするよりもシンプルにしたほうがいいのではないかと思った次第です。   それともう1点は,先ほど沖委員からも指摘があったことですけれども,システムをうまく作ったとしても,議決権行使書面について,その情報を電子提供する場合,何度も印刷できるとか,重複して行使できることとなり,その結果,どちらが真正の意思なのかといった問題が生じるように思います。どちらの書面を意思表示として扱うかということを定めればいいということかもしれませんが,若干,総会実務上は負担が生じるかと思った次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,稲垣委員,加藤幹事の順で,稲垣委員,お願いします。 ○稲垣委員 それでは稲垣の方から,議案の検討期間と,それから招集通知の発送の時期の関係について,一言,簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。   議案検討期間につきましては,御指摘がありましたように,現状,国際的な比較をしても,その期間が日本の場合は限られているということで,これについて見直しをしていく必要があるというポイントについては,三瓶委員の御指摘のとおりだというふうには思います。ただ,日本の制度上は,株主総会の開催の時期について一定の制限がありまして,その中で既に,日単位の分散とはいえども,若干の集中日の分散が行われて,その結果,分散の結果,前倒しをされているというのが現状でありまして,その結果,集中日を外した総会の開催日と招集通知の発送の時期でいきますと,結局,招集通知の発送の時期は若干早目に出している努力をしているというのが現状だと思います。   その中で,やはり実務的な対応ということになりますと,仮に,電子提供という形になっていったとしても,実務の負担を考えますと,やはり法令上の義務を伴う行為でありますから,その辺は発送時期の考え方については慎重に検討していただきたいというふうに考えます。   また,この問題につきましては,単に発送時期をどうするかということだけではなくて,もっと大きな,株主総会も含めた全体のスケジュールの中で,本来検討していく問題ではないかと思います。   私からは以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,加藤幹事,柳澤委員の順で,加藤幹事,どうぞ。 ○加藤幹事 ありがとうございます。   私も振替株式に関する書面交付請求権の仕組みについて,意見と質問をさせていただきます。   まず,私もこの案の中ではB1案の②がよいのではないかと思っております。その上で,参考資料の28について質問なのですけれども,参考資料の28では,配当金参考案と共通番号参考案という二つの案を御提案いただきましたけれども,それぞれの案で,例えば,配当金の受取や共通番号の提出に関するシステムの一部を変えることはできるのかどうかという話です。   どういうことかと申しますと,共通番号参考案で問題として御指摘いただいていますのは,5ページの4にありますとおり,照会の可能銘柄数を制限せざるを得ない可能性があるということだったかと思います。確かに,制度が導入された最初の年には,必ず全ての発行会社が照会しなければいけないのですけれども,その次の年からは,例えば,1年間の間に書面交付請求権があったもの,若しくは取り消されたものだけ,保管振替機構の方から自主的に通知するという形にしたら,コストが安くなるのではないかとの印象を持っています。ただ,一部だけ通知するといった取扱いの方がシステムが複雑になってコストが掛かるということもあることは承知しています。繰り返しになりますが,共通番号のシステムを参考にしつつ少しいじるというようなことは可能なのかどうかということが私の質問です。   次に,意見なのですけれども,B3案を御提起いただいておりますが,参考資料の29の3ページで御指摘いただいたとおり,現行法の仕組みを前提とすると,実現可能性がない提案であるような印象を持っております。部会資料の8では,本人確認の方法に問題があるのではないかという御指摘がありましたが,この場合の本人確認には,請求してきた人が誰かという話と,その人が株主かどうかという二つの意味があると思います。   後者の請求してきた人が株主かどうかということですが,株主名簿管理人にも確認するすべがないと思います。なぜかというと,多くの上場会社において株主名簿は,基準日と9月の2回しか書き換えられないので,例えば,3月末が基準日で,前年の9月に総株主通知があった場合,2月に書面交付請求がされてきたときに,9月に名義書換えが行われた株主名簿を基準にして書面交付請求の事務を取り扱うことができるのかが問題となるからです。もちろん株主名簿の名義書換えに関する制度を変えれば話は変わりますが,書面交付請求のために制度を変えることがよいのか疑問があります。現在の制度の仕組みに照らすと,本来,基準日の間の権利行使は個別株主通知に基づき処理するというのが建前なのだと思います。しかし,さすがに書面交付請求権に個別株主通知を要求するというのは,手続として重過ぎるので,そのような手続を株主に要求することは適切ではないと考えています。さらに,9月の名義書換えで株主名簿上の株主となった人であっても,その後に,例えば,住所変更をしていた場合には,その変更は3月の基準日に際して行われる名義書換えまでは株主名簿に反映されません。したがって,9月の名義書換え後に株式を取得した者だけではなく,9月の名義書換えで株主名簿上の株主になりその後株式を継続保有する者についても株主名簿の記載事項が変動する可能性があるので,株主名簿に依拠して書面交付請求を処理することには限界があると思われます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   御質問の部分については,保振の方から,もし何かございましたらお願いします。 ○粟津参考人    御質問の件ですが,システムの対応になりますので,工夫の余地はあるかと思います。ただ,現在,照会のあった全銘柄について一斉に結果を提供するというような仕組みを考えていますが,それに加えて,差分に対しても対応するということになりますと,単純に開発ボリュームが増えますので,一般論としては開発の負荷が掛かってしまうと思います。ただ,実際にこのB1案を導入する際には,関係者の方々といろいろ協議させていただいて,現実的な,より開発負荷の少ない形を検討することは可能かと思っております。 ○神田部会長 ありがとうございました。柳澤委員,どうぞ。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きましてありがとうございます。   今回の部会における直接的な論点ということではありませんが,三瓶委員提出の参考資料27「株主総会・議決権行使プロセスの現状と見直しのポイント」及び部会資料8の別紙に関連した内容,更に席上配布されております古本委員提出の参考資料32「株主総会の招集通知発送期限,基準日について」という内容に関しまして,投資家の立場から意見を述べさせていただければと思います。   国内投資家にとりましても,株主総会が6月下旬に集中する現状の日程におきましては,議決権行使に際しての議案検討期間が非常に短く,タイトなスケジュールとなる状況に変わりはございません。したがいまして,企業との対話機会の充実及び十分な議案精査期間を確保するために,どのような株主総会日程の在り方が望ましいのか,法制面での見直しを含めて検討の俎上に載せていくことが必要と考えております。   三瓶委員提出の参考資料27は,こうした観点に立って,株主総会日程に関わる論点について見直しのポイントが示されており,その方向性を検討していくための課題提起の位置付けという受け止め方ができると思いますので,同じ投資家として,提出資料の趣旨に賛同するとともに,論点に関する議論が可能な限り進展していくよう要望する次第です。特に,提出資料5ページに記載された見直しのポイント「③基準日の変更,または,基準日から株主総会開催期日(3か月)を変更」といった項目につきましては,前回の部会でも発言させていただきましたとおり,株主総会関連の日程に関する重要な論点として,基準日から株主総会開催期日までの期間の短縮について検討を要するものと考えております。   次に,部会資料の別紙8に関してですが,ここに記載された電子提供措置に伴う規律は飽くまで一例ということで,今後,義務付けの仕方や規律の具体的な内容に関して検討がなされていくものと理解しております。投資家の立場からいたしますと,電子提供措置によって議決権行使の検討期間が拡大していく方向性が望ましいと考えておりますので,そうした形で制度設計の議論がまとまっていくことを期待したいと思います。   なお,基本的な考え方としまして,まずはこうした電子提供措置が上場企業全てに対して,任意の選択ではなく一律に義務付けられることが制度設計の在り方として必要との認識に立っております。そのためには,電子提供措置の義務付けに伴って生じる対応要件に関して,上場企業全体で受入れ可能なレベルかどうかにも留意しながら,制度設計の検討を進めていく必要性はあるものと考えております。   例えば,招集通知の発送期限につきましては,上場企業に対する電子提供措置の義務付けを前提とするならば,招集通知の印刷・封入等に要する期間分の削減を考慮し,どの程度の前倒しが可能かといった期間に関しては,その設定がハードルの高いものにならないよう留意していく必要があろうかと思います。仮に,印刷・封入等に通常10日から2週間,若しくは2週間から3週間程度を要するのであれば,少なくとも1週間の前倒しは受入れ可能との見立てができますので,会社法上は3週間前を発送期限として規律付けを行い,そこを基点として更なる早期発送について任意で促していくといった設定の仕方が妥当ではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,尾崎委員,それから松本関係官,齊藤幹事の順で。尾崎委員,どうぞ。 ○尾崎委員 度々すみません。   先ほどB3案について,加藤先生の方から御指摘があったわけですが,私が先ほど「B3案の方は,方向性として」というふうに申し上げたのは,この問い掛けが,振替株式に関する書面交付請求の仕組みについてどう考えるかというものであったからです。こういった点では,B3案が一番シンプルであると。そして,総会関係で株主さんや会社と直接向かい合うのは名簿管理機関ではないかということで,間にいろいろなものを挟むよりかはその方が単純であると。いわゆる将来の方向性を言っているわけでございます。   したがいまして,例えば,初年度とかを考えますと,いろいろなところが関わらないと対応が難しいかもしれないと思うのですが,それからあとの段階では,書面交付請求というのはどれほど増えていくかというのは,どれほどの量があるかということになるかと思うのですが,それはその度ごとに,例えば,保振機関との問い合わせとか,あるいはそこの協力を得ることによって対応し,それでもやはり窓口は名義書換機関というところが一番ふさわしいのではないかという趣旨で,方向性としてB3案がいいと申し上げました。現実問題として,初年度どうなるかというのは,これは大変なことになるかとは思うわけですが,将来の方向性として,この問い掛けからすればB3案が一番シンプルでいいし,適正なコスト負担になると考えてB3案に賛成と申し上げたわけです。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   経産省の松本関係官,どうぞ。 ○松本関係官 ありがとうございます。   関連しまして,B3案につきまして質問させていただきたいんですけれども,信託協会の川島様への質問なんですが,B3案につきまして,フロー自体が成立しないというふうなことを御意見いただいておりますが,例えばでございますが,5000万人個人株主がいて,そのうちの1割が請求するとしてということを考えていった場合であっても,大体証券業協会さんの調査によりますと,8割程度の株主が1年以上は株式を持っているというアンケートもございます。そういった分量感を考えて,その分量感の問題なのか,分量によっては処理できるというようなものなのかについて,もし現時点で何かお考えがございましたら教えていただければ幸いです。 ○川島参考人 先ほど申し上げましたのは,やはり前回の基準日から今回の3月末での基準日までの間に,新規の株主さんとして書面請求をされた方々について,株主について,それが株主かどうかという,我々は確認ができないというところでございますので,例えば,新規の株主に対してのみ特別な,何か別途違う仕組みを考えられるのであれば,そこは考え得るかなというふうには考えております。既存の株主のみであれば,このフローは成り立つのではないかなというふうには考えております。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。 ○松本関係官 はい,ありがとうございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。齊藤幹事,どうぞ。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。   株主総会の招集通知の電子化につきましては,一方では海外も含めた機関投資家のニーズにこたえるという側面,他方で個人株主を置き去りにするべきでないという側面の両方をにらみながら議論するべきですが,書面交付請求は,個人株主の問題といえるかと存じます。   今回提出された案のうち,将来的な方向としては,先ほど尾崎委員がおっしゃったとおり,本来,株主と向き合うべきなのは会社,そして会社の窓口となる株主名簿管理人でありますので,口座管理機関を巻き込むべきではないというのはもっともであるかとは思います。しかし,これもまた,尾崎委員も指摘されましたが,現状はまだそこまで整っていないということで,株主の側からいたしましても,日常生活で,一番身近にあるのは口座管理機関かと存じます。口座管理機関の方も,顧客である個人株主である投資家を念頭に置いて各地に支店などを設けておられると思いますので,やはり制度の導入時には,何らかの形で口座管理機関が窓口となってもらうような仕組みが望ましいのではないかと思います。もちろん,口座管理機関に生じる負担を,他に配分していくことは考えなければいけないと思いますけれども。   また,口座管理機関に不必要な義務が生じるというのは望ましくないわけでありまして,口座管理機関のこのような立ち位置を当初より明らかにして,例えば,株主意思の確認などは口座管理機関の義務とはしないことは必要と存じます。上場会社の株式電子化のときと同じように,各種の広報を使って株主に注意喚起を促すというようなことでも足りるのではないかと思います。   電子提供の時期と書類発送の時期を一緒にする必要はないというのは,私もその方向に賛成です。ただ,この場合,株主の属性ごとに招集通知を手にする時期が異なってきますので,そのような差が生じることについて,何らかの合理的な説明を用意しておく必要があるのではないかと思いますけれども,それは説明の問題にすぎないと思います。   次に,電子化強制の対象の範囲ですが,先ほど小林委員がおっしゃられた,会社ごとに負担感がずいぶん違うという点に配慮が必要ではないかと感じました。これに関連することといたしましては,前回でございましたか,社外取締役の導入について実証研究が報告された折にも,そのようなコストというのは,固定的に,規模にかかわらず生じるものであるので,比較的規模の小さい会社にとっては負担感が大きいというようなお話もございました。今回の問題も,システム導入の費用は小さな会社でも,大きな会社とさほど大きな差はなく,一方で,電子化による費用節約の効果は,株主数や書面を不要とするタイプの株主がどの程度いるかに左右されるといたしますと,似たような問題状況があるのではないかと思います。また,日本では諸外国にも照らして,比較的規模の小さい会社も上場制度を利用しているというお話もあったかと存じます。上場制度というものをいろいろな会社に使えるようにしておくべきだという考えに立つのであれば,その電子化の範囲も何らかの形で,上場会社全てでなくて,一部は除外するということも考えてもよいのではないかと思います。それを法律上条文にうまく書けるか,という技術的な問題があることは承知しております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。古本委員,どうぞ。 ○古本委員 先ほど柳澤委員から御発言があった点ですけれども,私ども,発行会社といたしましても,投資家の方々の非常にタイトなスケジュールというのは認識しているつもりです。御提案は,要するにエンプティ・ボーティングの問題への対応ということで,基準日から総会までの3か月を短縮できないかということに加えて,議案の検討期間の確保という観点から,現行の総会2週間前の招集通知の発送期限の前倒しができないかということであると認識しております。発行会社の立場から申し上げますと,今のような,基準日から総会まで3か月,かつ総会2週間前までに招集通知を発送するという制度は,我々にとってもやはりかなりタイトなスケジュールであり,その中で少しでも早期に招集通知を発送しようと努めているところです。   この3か月を更に短縮して,かつ,招集通知の発送期限を強行法規的に前倒しすべきであると言われてしまいますと,会社として対応できるところもあるかもしれませんけれども,全ての会社が対応できるかというと非常に疑問がありますので,現実的ではないと思っております。   仮に,御提案されたような期間の短縮と招集通知発送の前倒しが義務となると,これは恐らく,今,6月総会を開いている会社は,ほとんどが定款変更をして違う時期に総会を開くことを余儀なくされてしまうことになるのではないかと思いますので,やはりそこまでの法改正というのは,我々にとって厳し過ぎるというところでございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。田原幹事,どうぞ。 ○田原幹事 ありがとうございます。   本日は,株主総会資料の電子提供制度に関する株主の書面交付請求の仕組みが議論の中心とお伺いしておりますけれども,関連する議論が出ましたので,私どもの考え方を述べさせていただきます。書面交付請求の仕組みにつきましては,幾つか御意見がありましたけれども,将来的な姿もにらみながら,どういう形でやるのが投資家の方々にとって分かりやすいかということも考えて,検討していただければと考えているところでございます。   それから,三瓶委員,柳澤委員からも御提案がありましたが,株主総会関連の日程に関して,対話や議決権行使の検討のための期間が非常に限られているという問題につきましては,前回も申し述べましたけれども,幅広い投資家の方々から常日頃指摘をいただいております。機関投資家のスチュワードシップ活動や企業のコーポレート・ガバナンスを充実させるという観点に立ちますと,議案をできるだけ早く示していただくということも重要だと思いますし,他の委員からもお話がありましたが,全体のスケジュールの在り方についても,しっかり検討する時期に来ているのではないかと考えます。是非御提案を受け止めていただいて,検討いただければと思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   ちょっと私からも若干質問させていただいてよろしいでしょうか。三瓶委員に一つと,それから川島参考人に一つ。   三瓶委員にお伺いしたいのは,仮に,期間に余裕ができたとしても,助言会社の反対推奨がぎりぎりに出されると,結局そこから対話が始まるとすると,そこに相当依存すると考えていいのでしょうか,実務的には。   それから,川島参考人への御質問もさせていただきたいのですけれども,今,議決権行使書面というのを送っていますよね。それと一緒に書面を送るのだったら問題なく対応できるというふうに考えてよろしいでしょうか。 ○三瓶委員 お答えが二つあります。   一つは,まず,情報が早く開示されると,待っている機関投資家がいますので,議決権行使助言会社としては議案をできるだけ早く英訳し,きちんと理由を付けた推奨にしてサービスのクオリティーを維持して提供しますので,早く提供することが競争になります。もし招集通知の早期開示が可能になったらどうなるかということを彼らと意見交換したときに,まずこれが答えでした。ですから,助言会社が遅らせるとかいうことはまずないです。   ただ,十分な時間が確保できた場合には,その助言会社のサービスを使う側がもっと詳細なレポートなり推奨理由を求める,又は株主提案も増えていますから,株主提案について,もう少し会社側と株主提案者側の説明を詳細に提供せよとかいうことになってくると,最終的に投資家に提供するのがギリギリになるというような可能性も言っていました。   ただ,今現在,先ほど田原課長からもありましたけれども,一番大きな声は,時間が限られて,十分に検討や対話する時間がなさ過ぎるということですから,時間を確保できるような動きになったところで,例えば,今からプラス1週間というときに,その1週間を詳細なレポートを書けというふうに要求するとはとても思えません。なので,その時間が,情報開示のスピードが早くなった分だけ,平行移動して早くそれが投資家の手に届いて検討が始まると,そういうことだと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○川島参考人 すいません,もう一度,質問事項をお願いできますでしょうか。 ○神田部会長 議決権行使書面を送っておられるわけだから,それに合わせて,書面交付請求をする人にですけれども,送るということは特に問題なくできると考えてよろしいのでしょうか。 ○川島参考人 書面請求用紙を,ということでしょうか。 ○神田部会長 はい。 ○川島参考人 それは可能だと思います,はい。 ○神田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   そうしますと,第1の1については,いろいろ理想型というか,将来の姿とか目指す方向というのはB3だという御意見もありましたけれども,当面というか,少なくとも多くの方はB1の案,それも②の方がいいのではないかという,そこまでおっしゃった方も,複数はいらっしゃったので,そういう感じかと思いますけれども,よろしゅうございますか。今日の御議論をベースに先へ進ませていただきたいと思いますけれども。   それでは,ここで一旦区切りですので,15分間休憩をさせていただきたいと思います。3時35分頃に再開させていただきます。よろしくお願いします。   参考人の皆様方には何度もお越しいただき,今日も大変貴重な御発言を頂きまして,どうもありがとうございました。           (休     憩) ○神田部会長 それでは,恐縮ですけれども,再開をさせていただきます。   これからは,部会の資料8の「第2 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置」の御審議をお願いいたします。   まず,事務当局からの御説明をお願いします。 ○坂本関係官 それでは,3ページの「第2 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置」について御説明いたします。   「1 株主が提案することができる議案の数の制限」につきましては,第一読会における議論等を踏まえ,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置として,取締役会設置会社において,株主が同一の株主総会に提案することができる議案の数を一定数に制限することを前提に,役員等の選任又は解任に関する議案及び定款変更議案の数の数え方について,どのように考えるかを問うものです。   ここでは,株主が設定された制限を超えた数の議案を提出した場合には,会社法第305条第1項の請求に対する拒絶事由を構成するという考え方を前提にしております。すなわち,仮に,提案することができる議案の数を10とした場合,株主が10を超える議案を提案したときは,会社は10の議案についてのみその内容の適法性を検討し,その中で適法な議案を採用すれば足り,それ以外の議案については拒絶することができることになります。10の議案の選択方法としては,会社と株主とのやり取りの中で,当該株主に特定させる方法が考えられますが,仮に,株主が特定しない場合や株主による特定が不明確である場合には,会社が任意に決定することも許されるものと考えております。   なお,部会資料8におきましては,提案することができる議案の具体的な数を仮のものとして10とさせていただいておりますが,議案の数を何個に設定するかという点については,引き続き検討する必要があるものと考えております。   本文の(1)は,役員等の選任又は解任に関する議案の数の数え方について,どのように考えるかを問うものであり,A案とB案,二つの考え方を記載しております。   A案は,第一読会でも御議論いただいたものですが,役員等の選任又は解任に関する議案については,株主が提案することができる議案の数の制限の例外とし,議案の数として数えないものとするというものでございます。   B案は,役員等の選任又は解任に関する議案についても,株主が提案することができる議案の数の制限の例外とはせず,選任又は解任される役員等の人数にかかわらず,1議案として数えるというものでございます。   株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ,株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり,株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加したりするなどといった株主提案権の濫用事例において懸念される弊害は,役員等の選任又は解任に関する議案であっても他の議案と同様に生じ得ることから,役員等の選任又は解任に関する議案についても議案の数の制限の例外とはせず,候補者の人数にかかわらず1議案として数えるものとするという案でございます。なお,役員等の選任議案と解任議案とは別の議案として扱い,それぞれ1議案として数えるものとすることを前提としております。   本文の(2)は,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を1議案として提案した場合における当該定款変更議案の数え方について,その内容において関連する事項ごとに区分して数えるものとすることを御提案するものでございます。   定款変更議案の数え方につきましては,現在の株主総会の実務を前提とすれば,関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案であっても,株主が当該議案を分けて提案しない限りは,形式的には1議案として扱うことが多いものと思われます。しかし,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を1議案として提案した場合に,これを1議案として数えるものとすると,先ほど申し上げたような株主提案権の濫用事例において懸念される弊害が生じることとなり,株主が提案することができる議案の数を制限する趣旨に反する結果となるため,内容において関連性のある事項ごとに複数の議案が存在すると捉えることで,議案の数の制限を及ぼすべきであると考えております。内容において関連性のある事項であるか否かについては,個別の事情を考慮した上で総合的に判断することになるものと考えております。典型的な具体例につきましては,補足説明の3に記載してございます。   なお,このような基準に基づいて定款変更議案を数えることとする場合には,内容において関連性のある事項であるか否かの判断が難しい場合に,会社としてどのように対応すべきかということが問題となり得ますが,先ほど申し上げましたとおり,議案の数の制限は拒絶事由であると考えておりますので,判断が難しい場合には,会社としては,内容において関連性があるものとして扱うことが望ましいと考えられます。仮に,定款変更議案を含めて10の議案が株主より提案され,会社が当該定款変更議案を1議案として数えて10の議案全てを採用した場合に,当該定款変更議案が内容において関連しない複数の事項を含んでいることが後に判明したときには,会社は実質的には10を超える数の議案を採用したこととなりますが,この場合には,会社が10を超える議案について拒絶せずに採用したと整理することができるため,実質的に10を超える議案を採用したとしても,特段の問題は生じないものと考えております。   補足説明の4では,複数の株主による株主提案権の共同行使がされた場合の考え方について言及しております。株主が株主提案権を単独で行使する場合であっても,他の株主と共同して行使する場合であっても,各株主が提案することができる議案の数は合計で10を超えることができないということを前提にしております。   続きまして,本文「2 不適切な内容の提案の制限」についてですが,こちらは,第一読会における議論等を踏まえ,株主が株主提案を行った場合において,会社が当該株主提案を拒絶することができる事由を再度整理したものでございます。   ①及び②の拒絶事由につきましては,第一読会で御提案させていただいたものと同様の内容となっております。なお,第一読会において,「専ら」という要件は厳格過ぎるため,「主として」などのより緩やかな要件にすることも考えられるとの御指摘を頂きました。しかし,「主として」という要件は不明確であり,どのような場合に要件を充足することになるのかという判断が難しく,また,株主提案権の重要性に鑑みれば,拒絶事由の要件を緩めることについては慎重に考えるべきであることから,「専ら」という要件を維持する方向で考えております。   また,①の拒絶事由につきましては,第一読会において,株主により摘示された事実が真実である場合であっても,会社は当該株主提案を拒絶することができるのか,という点についても検討すべきであるとの御指摘を頂きました。これにつきましては,仮に,株主より摘示された事実が真実である場合であっても,①の拒絶事由に該当するような株主提案を認めることは,株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の制度趣旨に反するものと考えられるため,仮に,株主により摘示された事実が真実であっても,①の拒絶事由に該当する限り,会社は当該株主提案を拒絶することができるものと整理しております。   ③の拒絶事由は,第一読会において,株主提案が権利の濫用に該当し得る場合をより広く規定すべきであるとの御指摘を頂いたことを受け,今回新たに追加させていただいたもので,株主が専ら当該株主又は第三者の不正な利益を図る目的で株主提案を行った場合には,会社は当該株主提案を拒絶することができるものとすることを御提案するものでございます。株主が専ら当該株主又は第三者の不正な利益を図る目的で株主提案を行った場合には,正当な権利行使ということができず,株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の制度趣旨に反するのみならず,株主提案権の濫用事例において懸念される弊害を生じさせるおそれがあるため,このような対応の株主提案を制限することを御提案するものでございます。   なお,③についてはブラケットを付しておりますが,これは,③のような拒絶事由の要否につきましては,事務当局内部でも様々な意見があったところでございますので,拒絶事由の内容のみならず,要否も含めて御議論いただきたいという趣旨でございます。   ④の拒絶事由につきましては,第一読会において,主観的な要件と客観的な要件とを択一的に御提案させていただいたものですが,第一読会における議論等を踏まえ,株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがある場合には,当該株主提案を行うことができないものとする,という客観的な要件とすることを御提案するものでございます。   御説明は以上となります。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,この第2の部分につきまして,皆様方から御質問,御意見をお願いしたいと思います。中東幹事,どうぞ。 ○中東幹事 1の(1)のA案,B案については,現在のところA案がよいと思っておりますが,その観点から,1点質問させていただきたいと思っております。   4ページの3の直前の,「なお」の段落でございますが,議案の数え方について,B案を前提として,例えばですが,取締役,監査役,会計監査人,それぞれについて臨時株主総会で解任した上で選任を提案するという場合には,幾つの議案として数えるという御趣旨でしょうか。 ○竹林幹事 B案を前提といたしますと,解任議案,選任議案というくくりでそれぞれ1議案と考えておりまして,取締役,監査役とか,そういう役職ごとに一つずつ数えるということは,念頭には置いておりません。 ○中東幹事 ありがとうございました。   そうであれば,B案ですと,もしブラケットに入る数が10であれば,10か9か8になるという話でございますね。他方で,今お聞きした例では,議案として2と数えようということですが,議題としては6なので,そのような整理でよいのかとも思えます。元々,役員等の選解任については,1候補者で1議案という理解が原則にあって,それをどうやって勘定し直していくかという話をしていたわけです。その意味では,余りに技巧的なことは避けて,A案にしたほうがすっきりするのではないかと思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。   1の(1)の役員等の選任,解任議案の数え方については,私どもとしては,A案かB案かと問われれば,B案が妥当と考えております。   それから,(2)の定款変更議案の数え方でございますけれども,内容において関連する事項ごとに区分して数えるということですが,やはり,何が関連する事項かという判断は,どこまでいっても難しいのではないかなという気もいたします。経団連内部で議論した時に,電力会社の方から話があったのですが,例えば,原子力発電というキーワードを使って,本来は互いに独立した議案と言えるような,複数の定款変更議案が出された場合に,会社としてこのような提案をどう数えるのかという,非常に微妙なケースが出てくるのではないかということです。数え方に疑義が生じた場合には,御説明にもありましたが,実務としてはどうしても保守的に数えるということにならざるを得ないと思います。   今回,提案個数の上限については議論の対象ではないようですが,株主総会を会社と株主との間の意味のある対話促進のための場であると捉えるのであれば,やはり今,暫定的に記載されている10個というのは,前回も申し上げましたけれども,ちょっと多過ぎると思います。アメリカと同様1個とするか,せいぜい3個とすべきであるということを,再度申し上げておきたいと思います。   それから,株主が提案できる数の上限をどう設定するかということにつきましては,提案の期限と行使要件,つまり,現行の総会8週間前というのを繰り上げるのか,それから,1パーセント又は300個の議決権という要件のうちの300個の方の要件を削除するのかといったことも,併せて考慮すべきだろうと思っております。中間試案では,こうした点にも言及していただいて,広くパブリックコメントを求めていただきたいと思います。   また,上限個数について,先ほどの御説明でも,上限を超える部分については,会社は拒絶できると,こういう構成になっておりますが,実務といたしましては,明確に,上限個数を提案可能な上限の絶対値として,仮に,それを超えるような提案があった場合には,全て不適法,一切取り合わなくてよいという,分かりやすい形にしていただきたいと思います。提案株主と話をして適法とすべきものを選ぶとか,会社が任意に選択するということになりますと,実務上はトラブルの元になりかねないのではないかと考えます。   それから,2の不適切な内容の提案の制限でございます。拒絶事由を明文で設けることに賛成でありまして,③の不正な利益を図る目的での提案についても,加えていただければと思います。   御説明にありました「専ら」という言葉については,改めて考えてみますと,提案者の目的というのは,提案者の主観にかかるものであり,それを専ら,つまり100パーセント不正なものであるということを要件とすると,会社の側で100パーセントそういう不正な目的だと判断できる場合にのみ拒絶できるということになってしまうのではないか,そうなると要件として厳格過ぎるのではないかと思います。したがって,「専ら」という要件は,削除ないし緩和してもよいのではないかと思います。具体的には,①であれば,名誉を侵害し侮辱する目的,②は人を困惑させる目的,③は不正な利益を図る目的と,皆,不当不正な目的での株主提案ですので,それが100パーセントそういう目的であるというまでの判断が会社側でつかない場合でも,そのような不正不当な目的が含まれている,若しくは,それが大半であるというところまで,会社が合理的に判断できるとなった場合には,そのような提案を拒絶できるという形にすべきではないかと考えます。それがもし難しいということになりますと,①から③が本当に実務で拒絶事由として援用できるのかという懸念が生じてしまいます。  なお,④は,キャッチオールの規定なのか,私もよく分からないのですが,例えば,これはどのような提案を念頭に記載されているものなのか,もし事務局の方で具体的な想定事例などがあれば,御教示いただければと思います。   それから,資料には記載がありませんが,実務で問題となっている株主提案の大半が,業務執行に係る事項を定款変更の形で提案されたというケースですので,これをストレートに禁ずるということも,併せて御検討いただきたいと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。   事務当局への御質問がありましたけれども,いかがですか。 ○竹林幹事 ④でございますけれども,①,②,③では判断がなかなか難しいものが入ってくるということでございます。そして,ここで,株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるというのは,例えば,定款変更議案で,1個の議案に不必要に多数の事項を盛り込んでいるような事例で,それら全てを審議していると,時間的にも過大な負担がかかるというような場合を,一応念頭には置いておりますけれども,ほかにどういう事例があるかというのは,具体的な事例が発生したときに御判断いただいていくことになるかと思います。 ○古本委員 ありがとうございます。   経団連の中で議論したときにも,これで一体何がカバーされるのかという疑問が呈されて,皆分からなかったということがあります。これは,ものすごくたくさんの提案がされた場合を想定しているということであれば,ピンと来るのですが,数の議論は別の項目で行っているため,では,ここで一体何が想定されているのかという疑問が呈されましたので,御質問させていただきました。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,前田委員,北村委員の順で,前田委員,どうぞ。 ○前田委員 役員等の選解任議案の数え方としては,私も,中東幹事がおっしゃいましたように,A案の方が考え方として明快なのではないかというように思います。つまり,役員等の選解任は数の制限にはなじまないし,また制限の必要性も必ずしも高くない,したがって,たとえ候補者が十数人いて,議案が十数個あっても,完全に数の規律の外に置くという考え方は,分かりやすいと思います。   これに対して,B案は,候補者が十数人あっても,議案を1個と数えるということですけれども,そのとき,決議はやはり十数個存在するはずであって,その決議の瑕疵などもそれぞれ十数個の決議ごとに考えることになるはずです。決議が十数個あるのに,なぜ議案だけ1個になるのか,B案は中途半端で説明しにくくないかと思います。   それから,定款変更議案についは,内容において関連する事項ごとに数えるという考え方に賛成です。こういう数え方についてまで明文で書くのか,それともこういう解釈をここで確認した上で明文にはしないのかについては,更に検討すべきことになると思いますけれども,考え方に賛成です。   それから,最後の不適切な内容の提案の制限として,③の場合は加えていただくのがよいと思います。例えば,会社から金品をせしめるというような,不当な個人的目的の提案も,これで拒絶することできるようになって,権利濫用のケースを広くカバーできるようになるのではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   北村委員,沖委員の順で,北村委員,どうぞ。 ○北村委員 発言の機会を与えていただき,ありがとうございます。   まず,役員選解任議案について,先ほど中東幹事と前田委員はA案がいいとおっしゃったのですが,私はB案の方がいいと思っています。確かに前田委員の御指摘のように,議案の数と提案議案制限の際の数え方を分けますと制度として複雑化するというのは,そのとおりでありますが,1人の株主によって無駄に時間が割かれて,実質的な株主総会運営ができないようになるのを防ごうという趣旨であれば,選任議案,解任議案が出されますと,それぞれについて議案説明と採決をする時間がかかりますので,そこは割り切って考えてはどうでしょうか。つまり,候補者が何人いても一つの議案と考えて,提案の上限がたとえば10個であれば10の中の1つに数えることに合理性があると思っております。   次に,定款変更議案について関連性のあるものは1つと数えるというところでございますけれども,補足説明では,論理必然的に,こちらを立てればあちらが立たないというようなものが関連性の例として挙げられております。ただ,個別の事情を考慮した上で総合的に判断するとも書かれております。この問題は,関連性があるとして1つにくくる範囲が広いほど,実質的な提案数が増えることになります。そして,広い範囲を1つにくくったとして,結局それは関連性がなかったとしても,拒絶できたかもしれないが拒絶しなかったというだけで問題はないという御説明だったと思います。確かにそうだとは言えるのですけれども,その場合,会社としては,ある株主には広くくくって,ある株主には狭くくくったとか,そういうことにならないようにしなければいけない。そうすると,かなり保守的に,少しでも関連すれば1つにくくって,実質的にたくさんの提案を認めることになりかねません。つまり,会社としては,関連性がないことを理由に提案を拒絶するのは自由だけれども,株主を不平等に扱ってはいけないという別の縛りがあるので,関連性を狭く解するのに消極的になるということが考えられるのではないか。そうすると,少しドラスティックですけれども,論理必然的なものは一つとするけれども,そうではないものは別々の議案と考えてもいいのではないかと思う次第でございます。   最後の不適切な内容の提案の制限ですけれども,濫用的なものを全て書き尽くすことはできないわけで,どこまで実効性があるか分からないですが,こういう濫用防止規定を設けるということが,一定のプレッシャーを提案者に与えるという点では,意味がないことではないと思います。   なお,第一読会にもありました①ですが,これは現在の会社法施行規則93条1項3号で,提案理由を記載しなくていい場合として挙がっているものの一部と同じです。部会資料の立場では,現在これに該当するとして提案理由に書かなくていい場合は,これからは濫用として提案自体を認めないと,こういう理解でよろしいのでしょうか。最後の点は,確認でございます。 ○竹林幹事 最後の点につきましては,御指摘のとおり,実際上,規則の手当てをどうするかというのは,また別途検討させていただく予定ではございますけれども,基本的には同じようなことを念頭に置いて,そういったものは提案と扱わないというような趣旨でございます。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございました。   それでは,沖委員,中東幹事,そして小林委員の順でお願いしたいと思います。沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   意見が二つと質問が二つございます。よろしくお願いいたします。   まず,意見の方ですけれども,役員の選解任議案に関する議案の数え方ですが,これは,私も北村委員と同じ意見でありまして,B案がいいと思います。その理由としまして,平成24年5月31日に高裁の決定があった事案ですけれども,全部で63個の株主提案が出されて,そのうち58議案が審理の対象になったという事件があります。そのうち,33議案が取締役の選任,解任,選任に対する反対議案などを複雑に組み合わせたものを出しているわけです。ですから,こういった提案に対応するためには,やはり別枠ということでしょうけれども,選解任に関する議案も一つの議案として数えて,制限を加えることは必要だろうということです。   意見の二つ目は,数の制限を超えた場合の議案の扱いです。今回の部会資料で,まず提案株主が議案を特定すると。株主が特定しない場合や不明確な場合には,会社が任意に決定するとあります。これは,提案株主の提案権はなるべく尊重しようという趣旨は理解できるんですけれども,実際,限られた時間の中で,このやり取りをしていたときに,紛争が起きる可能性もあるかと思うんですね。ですから,第一読会では,数の制限を超える株主提案については不適法で全体としては無効にするという提案がされておりまして,これらの提案のうち,どちらがいいかは,今後も継続して検討していく必要があるのではないかと思います。   以上が意見です。   質問ですけれども,まず,第1点目は,定款変更議案の数え方です。こちら,内容において関連する事項ごとに区分して数えるということで,定款変更議案でも,これが多数出された場合に,数の制限を合理的にかけるということは必要だと思いますので,今回の提案は大変意味があると思います。そこで,内容において関連する事項ごとに区分して数えるとした場合に,当然株主提案については別議案で,認められたものは別議案で個別に採決をしていくということになるかと思いますが,他方で,会社提案の定款変更議案については,これは,ほとんどの会社で全体を1個として扱っているんだと思うんですね。分けているものは少数だと思います。そうしますと,その会社提案の扱いについては,特に先ほどのような定款変更議案の扱いは,これは株主提案の数を合理的に制限するための考え方にすぎないのであって,会社提案を処理するときは一切影響を及ぼさないという理解でいいのかどうかというのが1点。   あともう一つの質問は,数で制限をした場合に,その数を超える株主提案が出た場合には,会社の判断で任意に適法として上程することは認められるのか,それとも,それは不適法なので,基本的には認められないという理解でよいのかという2点ですね。よろしくお願いいたします。 ○竹林幹事 まず,一つ目の点ですけれども,ここで御提案差し上げているのは,飽くまで株主提案に数の制限を設けるという前提で,株主の方が出す定款変更議案の数え方というのを,直接的に念頭に置いての御提案ということになります。仮に,そういった法文が設けられた場合に,それが会社提案にどのような解釈上の影響を与えるかということはあり得るかもしれませんけれども,ここで念頭に置いておりますのは,先ほど申し上げましたように株主提案についての数え方ということでございます。   続きまして,二つ目の点ですけれども,拒絶事由と申し上げているのは,仮に,数を超えるものを扱うという,結果的に超えていても,違法の問題を生じさせないということを念頭に置いておりますので,会社の方で判断が難しかったときに多めに採るということは可能という前提で御提案差し上げております。 ○沖委員 分かりました,ありがとうございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。中東幹事,どうぞ。 ○中東幹事 先ほどの数の数え方,役員等の議案の数の数え方について,北村委員,沖委員から御批判を頂きましたので,反論させていただきたいと思います。   両委員がおっしゃることも分かるのですが,1人がどれだけの時間をとるのか,あるいは多くの議案が出されたときに,一定の枠で1個の単位にしようという,その発想はいいと思うのですけれども,最終的にブラケットの中に幾つという数字を入れるかの話になるのかもと思っています。B案で10と入れても,その中に役員等の選解任議案が多く入ってくれば,8として外に出すのと同じことになりそうですので,結局のところ,A案を採ってブラケットの中を幾つにするかの話と似たようなことになるのかもと思います。   北村委員がおっしゃった,内容において関連性がある事項について,こちらは賛成でございます。論理必然的なものは1個として数えるべきであるという点で,古本委員の御懸念については,共有するものがございます。ただ,論理必然的にというと,まだ抽象的ですので,実際に効果的に運用できるかという疑問が残ります。補足説明の例を読ませていただきましても,もしこの議案をばらばらにしてしまって,本来なら一括して可決または否決しないといけないのに,一部の議案は可決,残りの議案は否決という形になると違法な状態が,つまり会社法が予定していないような状態が生じるということが,この内容において関連性がある事項だと理解いたしました。その意味で,そういったものはセットとして1議案とするということかと思っておりますので,論理必然的とは,切り離してしまうとすると,およそ会社法で許されないような定款の内容になるという場合であると思います。立法技術的な問題もあろうかとは思いますけれども,そういう形で,明確に書いていただくと,より実務的には安心できるのではないかと思っております。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,小林委員,野村委員の順で,小林委員,どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   株主が提案できる議案の数の制限でございますが,数の制限について,10という数字は仮置きということでございますけれども,第一読会では,他の株主から賛同を得られないような精度の低い株主提案も多くなるのではないかという懸念を申し上げて,せいぜい3個から5個ぐらいと申し上げていますが,今回の提案について,すんなり読むと,B案の方がよさそうに見えますが,よくよく考えてみると,例えば,B案の役員選解任をそれぞれ1と数えるということだけで言えば,B案の方でまとめた場合,Bマイナス1か2で,A案の方はAプラス1か2というぐらいの違いしか,実はなさそうですので,あんまり本質的な差ではないのではないかなというように思います。   そうすると,やはり数の問題そのものに帰着するような気がするので,そういう意味では,これは,10個を前提とした議論としか見えないので,いかがなものかと,私の個人的な印象としては思いましたので,そういう前提の議論ではないと考えたときに,どちらが本当にいいのかは,先ほど御意見がいろいろあった,実際に役員選解任をどう考えるかというのは非常に難しい問題だと思いますので,もう少し議論を深めていただく必要があるのかなと思います。   もう一つ,一定の議案数の制限を置いたとして,それを超えた場合の選択方法については,やはり株主に特定させるのが1番目で,会社側がその後は,駄目だったら任意ということでございますが,先ほどちょっとお話もありましたように,元々こういう議案が出されたときは,株主とのコミュニケーションが非常になかなか取れなくて,そのやり取り自体が今でも大変だということになりますと,こういう規定になったときに,非常に難しい運用を迫られるということははっきりしていますので,やはり先ほども御指摘がありましたように,議案数,数の基準で超えた場合には,やはり全部無効にできるという形にしておいていただかないと,実際にはなかなか会社側としてはワークしにくいのではないかと思っております。   定款変更議案につきましては,内容の関連性に着目して区分するという考え方には賛成でございますが,やはりその判断基準については非常に難しいところもございますので,これだけで確定させるということではなく,もう少し議論を深めていただきたいと考えます。   それから,不適切な内容の提案の制限につきましては,部会資料では,「専ら」とか「著しく」という文言が維持されていますが,項目が①から④まであるということは結構だと思いますが,商工会議所でもう一度検討したところ,これらの文言によって,「専ら」,「著しく」という制限は,やはり権利内容的に見て,捉える射程が少し狭くて厳しいのではないかという意見が大勢でした。できれば,やはり「専ら」とか「著しく」という文言を削除するなどの扱いを検討していただきたいというのが,要望でございます。内心の専らということについては,やはり会社側としてはなかなか立証するのは難しいので,これで拒絶するというのは実質的にはできづらいのではないかということが,一番懸念としてあるということです。   会員企業が個別の事例として挙げられておりましたけれども,株主提案に関する招集通知の記載のところで,通常その提案の内容とか理由をそのまま記載することが求められているわけですが,その内容が,実は名誉毀損に現実に当たりそうな場合に,招集通知に結果的に記載せざるを得ない状況となると,会社そのものが共同被告で名誉毀損で訴えられる可能性があるのではないかということで,深刻に検討された会社があったそうで,そういう場合にどうすればよいのかという話がございました。そういう意味では,「専ら」をとっていただくと,大分話が軽くなるのかもしれませんけれども,こういうときに,名誉毀損のリスクを負わない,あるいは制度的な担保を考えてほしいというような要望がございましたので,紹介しておきます。   部会資料にはございませんが,第一読会で申し上げましたとおり,古本委員からも御指摘ございましたが,議決権の300個以上の行使要件についてはやはり見直していただきたいということと,株主提案権の行使の前倒しについても,これは検討の俎上には上げていただきたいということは重ねて,これはお願いでございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   野村委員,藤田委員の順で,野村委員,どうぞ。 ○野村委員 最初にまず,役員の選解任の件について申し上げようと思ったことは,今小林委員の方から最初にお話がありまして,余り違いがないのではないかなとちょっと思っておりましたので,この辺は,結局のところ,数が多くもし提案できるんであれば,数えても数えなくてもいいよねという話になると思いますけれども,数がもっとかなり厳格に3個とかってなってきますと,かなりクルーシャルな問題になりますので,そこはちょっと,前提を踏まえた上で議論したほうがいいかなと思います。   もう一つは,同一性のある,例えば,定款変更などにおいて,内容において関連性のある事項という立法の御提案でありますけれども,やはり,先ほど北村委員の方からもお話がありましたように,論理的にもこれは関連性があると,こっちを削るならこれも絶対削らなければいけないといったものは明確なんですけれども,やはりつながっているようでつながっていないというものが圧倒的多数を占めると思うんですね。そこの部分はきっと,恐らく今の立法と,それから今日の御解説だと,コンサバティブになるべく決議取消しにならない方向で,たくさんの御提案の方を受け入れるという方向になっていくというように思いますので,もう一段,何かそこで数を,定款変更の中でたくさん出せるということを少し制限できるような工夫というのも,もう一段考えられないものかなということを,ちょっとアイデアはまた追って御提案させていただければと思いますけれども,やはりちょっとこのままでは,この説明ではほとんど骨抜きになりかねないのではないかなというような気が,ちょっといたしております。   それで,一番伺いたかったのは,実はこの最後の内容の提案の制限のところなんですけれども,これについても,先ほどちょっと北村委員とのやり取りの中で,例の株主総会参考書類のところに,株主提案に係る理由の記載に関連する93条の問題があって,この中に,例えば,権利侵害であるとか名誉毀損とか,そういったようなものが出ていると。これ,同じものではないかと言われたんですが,ちょっと私の理解が違っているのかどうか分かりませんけれども,6ページにあります不適切な内容の提案というのは,この提案内容から見てそういった目的が推断される場合を指すのではないかなと理解していまして,単に動機において,何か困らせてやろうとか,これに絡めて名誉毀損の道具にしてやろうとかという目的を持っているものを,ここで提案内容として排除しようとしているわけではないと思いますので,そうだとしますと,やはり提案理由の方で今度は傷つけてやろうという利用するのとは,違った利用の場面が想定されているのではないかなというような感じがします。そのことを前提とした上で,ここでお話ししたかったことは,飽くまでもここは内容の制限という,そういうくくりで理解してよいものなのかどうか。つまり,提案内容から,そういった目的が推断される場合ということを想定しているのか,それとも,提案をきっかけとして,そういった動機を実現しようとしていることを防止しようとしているのかという点についてだけ,ちょっと御確認をさせていただければと思います。 ○竹林幹事 今,野村委員から御指摘いただいた例につきましては,飽くまで提案そのものの内容といったらよろしいんでしょうか,その提案そのものの内容が専ら人の名誉を侵害するものであるということであって,提案の内容自体は別に名誉侵害になっていないけれども,それをきっかけとした何かを防止するということを想定しているものではございません。 ○野村委員 1点。そうなりますと,よく考えてみると,ここは逆に,会社法施行規則の方の理由のところが,必ずしも十分ではなかったのではないかなということがうかがわれまして,逆に,困惑するような理由をかけてくることも拒まなければいけなかったのではないかなと思いますので,そこは,改めて御検討いただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   藤田委員,田中幹事の順で,藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 何点か申し上げたいと思います。まず1のA案,B案の選択ですが,私の前のお二人の委員が言われたこととほとんど同じです。何人かの委員の方がB案は不自然だと言われたのですが,自然さという点では,どちらも余り差はないような気がします。確かに議案の数と提案の数が違うのは不自然といえば不自然かもしれませんが,提案していても提案していないとみなすというのも,同じぐらい不自然だと思います。ですから,理論的には別にどちらでなくてはならないというような話ではないと思います。選任議案は,普通は選任される人ごとに議案を数えていますけれども,それをそのまま適用すると非常におかしな結果になるので,それを何とかしたいというわけで,その手法としてはどちらの案も十分あり得ると思います。   むしろ実質的により影響があるのは,提案数の上限をどう考えるかで,これも小林委員や野村委員も言われたように,たとえば提案の上限が3というときに,B案をとるのはさすがに抵抗があります。そういう話だとすると,A案,B案のどっちが正しいという議論を抽象的な形でして,それから提案数を決めるという手順で議論することはやめたほうがいいと思います。両者は同時に考えないといけないと思います。   次に,2番目の議案の数え方ですが,そもそもここで書かれている提案の意味が十分分からなかった点があります。つまりこういうふうな文言の条文を書くという御趣旨なのか,それとも,条文を作るわけではないが,提案の上限数を設けるというときには,こういう発想を前提としていますという説明なのか,ちょっとよく分からなかったのです。  考え方としては,関連性があるのはまとめて考えるという発想――それをどのぐらい厳格に考えるかはともかく――は,動かしようがないと思います。もしそうしないのであれば,提案議案数の制限は実質的に無意味になるので,古本委員がおっしゃられたように,定款に書ける事項を限定していくしかないと思います。逆に定款には何でも書けるという前提を採る限りは,定款変更議案としてまとめれば一議案というふうな数え方をするとすれば,この規制は全く意味がなくなります。ですから,何らかのくくりで議案数を数えるしかないのは確かだと思います。   論理必然的に両立し得ないようなものは異なる議案と数えるという基準だけでいいかと言われると,やはりそこまで限定してしまうと,提案数の上限の限定の趣旨が余りにも没却されるような気がします。柔軟にすると曖昧になり,リスクを会社に負わせることになる結果,保守的に運用されることになるかもしれませんが,しかし,会社がリスクを負いたくないから保守的にする可能性があるからといって,論理的に両立し得ない場合だけしか別のものとは数えないとまで限定する必要もないような気がしています。議案の数え方については,幾つか異なった考え方がありそうですが,基本的にこういうくくりを設けること自体には賛成で,そこから先の考え方の整理を今後もう少し考えたいと思います。条文にするかどうかも,今決められることではなくて,整理がある程度つくようになってから,条文化できる内容かどうかを考えればいいような気がしています   なお提案株主によってくくりの大きさを会社が違えて扱ったりするという不公平なやり方も生じ得るという指摘がありました。確かに,そういうことが生じる可能性はあると思いますが,しかし根本的に考えますと,それは提案の上限数を提案拒絶事由としてしまっている以上は避けられない問題です。つまり,ある人の提案については上限数以上のものを拒絶し,別の人については上限数以上でも提案を認めるとする扱いを会社がする可能性は常にあって,それと比べると,議案の数え方を提案者によって変えるという話は,どちらかというと小さい問題です。恣意的な拒絶の仕方をした場合に不公正な手続による取消事由になり得るという一般的な規制の問題にするにとどめざるを得ないと思います。   3番目に,不適切な内容の提案の制限の③については,これを入れるなというつもりはありませんが,この条項は役に立たないだろうなという感触を持っています。そもそも,これを満たす場合のイメージがわかないのですね。あえていえば,例えば誰かからお金をもらって提案をするというのがこれに当たるのでしょうが,それ以外は何があるのだろうかという気がします。売名的な動機がある場合ですら,専ら不正な利益を得る目的とまで言えるかどうかも分からない。そうなると,この条項を入れることで,拒絶できる場合がどれだけ増えるかはよく分かりませんし,また,この拒絶事由を加えることで拒絶できる場合についての基本的な考え方が明らかになるというものではありません。ですから積極的にこれを入れたいと思うわけでもないですが,何か弊害があるわけでもないので反対もしないという,そういうスタンスです。   むしろ,④が一番重要な考え方を示すものではないかと思いますけれども,前回も確認したことですけれども,④にいう,「総会の適切な運営」というのは,準備段階も含めたものであるということと,これは提案が採択された場合に会社に損害が発生するという意味において提案の内容が不適切であるということを問題にしているのではなくて,飽くまでそのような議案を検討することが運営との関係での弊害があるかどうかを考慮しているという趣旨の拒絶事由だということが重要です。   最後に,どなたがおっしゃったかちょっと正確に覚えていませんが,300個という少数株主権の基準です。最新の部会資料に書かれていないということは検討事項から落ちている,この要件を見直すことはしないという提案になっているように読めます。最終的に見直しについて賛成するか,反対するかは留保しておきたいと思いますが,アジェンダから落としてしまう前に,もう少し情報が欲しいと思います。情報が欲しいのは,まず第1に,典型的に濫用的な提案と言われているもののうち,どのぐらいこの300個という要件に依存して提案されているかということです。1パーセント要件を満たしている人によって相当数の提案が,なされているのであれば,この要件を削除することは,それほど意味がないということになりますし,逆に濫用的提案のほとんど全てが300個の要件で提案してきているというのであれば,これを削除することの意味は大きく変わってきます。   確認したいことの第2点は,昭和56年改正のときにこれが導入された時点におけるこの300個の意味は,経済的な価値の点で,現在も同じようなものと考えてよいか,それとも,根本的に違ってきているのかということです。3番目に,1パーセントという要件と300個の間には,平均してどのぐらい隔たりがあるのかということです。こういうふうに並列的な要件が規定されているのは,片方を満たすことがあれば,片方を満たすこともある場合に,どちらか満たせばよろしいとするケースが多いと思います。これに対して1%の要件が300個の要件よりもほぼ例外なくはるかに厳しいというなら,こういう要件の書き方としてはかなり異例なことなので,その辺りも確認すべきかと思います。そういったデータを踏まえて慎重に判断すべきではないかと思っています。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○竹林幹事 必ずしも御質問を頂いたというわけではなかったのかなとも思いますけれども,まず,私どもで御提案差し上げました内容において関連するということにつきましては,余りこれまで定款変更議案の数の数え方というものが表に出てきていなかったのかなと思いまして,どういった形で御議論いただけるのかという,今現在の考え方といいますか,そういったものを確認させていただきたかったという趣旨もございます。ここに書いてあるくらいが,ある程度皆様共通の認識でいらっしゃるということであれば,あえて明文化するということは必要ないかもしれませんし,ここでの議論等も踏まえまして,また条文化の要否等について検討させていただきたいと考えております。   また,不適切な内容の提案の④につきましては,前回もお答えさせていただいたとおり,藤田委員から本日も御指摘いただいたとおりの考え方に立っております。最後,300個要件のところでございますが,実際にどういう形で300個とパーセンテージの関係を把握するのか,難しいと思っておりまして,引き続き検討させていただきたいとは思っておりますが,第一読会で席上配布させていただきました資料の中に,個数等については書いてございまして,場合によっては,その個数と,それが何パーセントかというのも,書いてございます。少なくてもそういったものを見ていますと,300個で利用されているということがあるとは認識しているのですけれども,もう少し何か調べられることがあるかどうかを含めまして,検討させていただきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,田中幹事,加藤幹事,そして三瓶委員の順で,田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事    まず,先ほど来議論されている選任・解任議案の数の数え方についてですが,多くの方がおっしゃるように,現実には議案の数そのものをどう決めるかが重要なので,それに沿って調整されていくものですから,本質的には余り重要ではないかと思いますが,しかし,理論的に申しますと,例えば,1回で提案できる議案の個数の上限を5としたとしますと,仮に,株主が既に5個定款変更議案を出しているとします。そのときに,もう1個定款変更議案を出すのは違法なわけですね。   これに対して,株主がもう一つ,今度は役員選任議案を出してきた場合には,B案(役員選任議案は全体で1個と数える)であれば,それも違法であるわけです。定款変更議案であろうが,役員選任議案だろうが,合計で5個を超えれば違法になる。ところが,A案(役員選任議案は提案数に含めない)だと,違法でなくなるわけですね。ですから,役員選任議案何人の候補者を出そうが,あるいは取締役と監査役と会計監査人の選任議案を出して,更に解任議案を出そうが,全然ウエイトが置かれないということになるわけでして,これが筋が通っているのかということが問題だと思います。   役員の選解任議案は,候補者の数だけ議案がありますので,定款変更議案とかほかの議案と同じようなウエイトの置き方はできないということは争いないわけですけれども,問題は,同じようなウエイトは置けないとしても,一切ウエイトは置かないのか,それとも,実際に役員選任議案でも株主のための検討時間を取るわけですから,ウエイトゼロというのはおかしいではないかというところが議論の中心です。これは,ブラケットの数をどうしようが,つまり,提案個数の上限をどう設定しようが,起きる問題であります。私自身は,ウエイトゼロはおかしいと思いますから,B案に賛成ということでございます。   それから,実際にはブラケットの中の数をどうするかの方が,皆さん御関心があると思いまして,それについては引き続き審議ということで,今回は具体的な提案はないというお話しのようですが,具体的な提案がやがてなされるであろうことを予期して申し上げておけば,私も,10は少し多いのではないかと思います。真剣な株主提案をしようとする提案株主にとっては,提案する議案が10もないといけないというのは,ちょっと状況として考えられない,多くても5というのが,私は適当ではないかと思っています。   それから,定款変更議案の個数の数え方については,確かに現在の御提案ですと,中身が不明確なので会社は保守的な対応にならざるを得ないのではないかというのは,そのとおりかと思いますが,仮にそうであっても,これまで何十個という数の定款変更議案として提案してきたものを,全部一つの定款変更議案に押し込めた場合は,会社はこの条項に基づいて拒絶ができるということになるかと思いますので,意味のないものではないと思います。さらに,この条項を明確にする努力は必要かもしれませんが,現在提案されている条項であっても,これを会社法に入れることには一定の意味があるのではないかと思います。   それから,不適切な内容の提案の制限についてですが,私は,この提案の中では,特に④を入れるということが非常に重要だと思っております。④は,客観的要件の下で不適切な提案として拒絶できるということを規定しておりまして,これは,現在の権利濫用の法理ですと,権利濫用について主観的目的を重視するような判例となっていることから,④に規定されているような事情があっても,現行法のもとでこれが権利濫用に当たるのか必ずしも明確でないと思います。それについて,④のような条項があれば,株主提案を拒絶できるということで,ここに意味があると思います。そして,先ほどの御解答にもありましたが,この提案は,一つの定款変更議案の中で,定款条項という形で延々と株主の主義主張を述べるような提案が過去にありましたので,このような議案を念頭に置くと,この④の条項によって拒絶できるということになりますから,これを入れることに意味があると思います。この④が入るのであれば,例えば①や②に関しては,現在の提案のような限定的なものでもいいのではないかと思います。   他の委員,幹事の方から,提案目的に付された「主として」という限定が不明確なので,いっそ限定句は全部とったほうがいいのではないかという御意見もありましたけれども,特に個人株主が株主提案する場合は,何らかの形で経営陣に対して悪感情を持っていることがむしろ普通でありまして,そういうエネルギーがないと個人株主は株主提案をしないと思いますので,何の限定句もなく,とにかく会社を困らせる目的があれば駄目というのは,ちょっと私には支持し難いです。「主要な」目的というのは,例えば,不公正発行についての判例法理でも使われているわけですから,条文に「主要な」という限定句を入れることも,必ずしもおかしくないと思います。ただもし,「主要な」とか「主として」という表現を条文に書くのが難しいのであれば,私は,「専ら」と限定してもよいのではないかと考えております。 ○神田部会長 ありがとうございました。加藤幹事,どうぞ。 ○加藤幹事 1点,不適切な内容の提案の制限について質問いたします。御提案は,株主提案の個々の提案について,それぞれについてこの要件が満たされるかどうかということを判断するという前提で作られているのか,それとも,東京高判の平成27年5月19日のように,一括して全て濫用であると評価する余地もあるのでしょうか。 ○竹林幹事 私どもは,基本的にはやはり個々に見ていくんだろうと考えておりました。ただ,その数が多かった場合とかについて,それがどういうような意味合いを持っていて,全体として専ら困惑させる目的の提案になっているというような解釈の余地がないのかと言われると,ちょっとよく検討しないといけないのかなとは思っております。   ただ,先ほども申し上げましたように,④などはまた違った観点から一つの定款変更議案の中にたくさんのものが盛り込まれているというようなこともあったりしますので,それは全体的に見てどうかというようなこともあるのかと思います。もしまたこの辺りにつきましてお考え等あれば教えていただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございます   三瓶委員,齊藤幹事の順で,三瓶委員どうぞ。 ○三瓶委員 ありがとうございます。   私は,定款変更議案の内容について申し上げたいと思います。   先ほど,古本委員が最後におっしゃった業務執行に関わる事項について定款に定めることについては,ある程度の制限を考えてほしい,これは,正にそうだと思っています。実際に議決権行使をする立場で,ガバナンス改革の中で,取締役会に監督責任をより強く感じて持ってもらうという一連の流れの中で,株主提案で個々の細かいことについて,どんどん制限を加えていくというのは,全体からすると相矛盾することだと思っています。   実際に,定款変更議案がたくさん出てきていますけれども,それ,同じ株主から出ている提案でも,我々から見て相矛盾するというようなものがあります。なので,そういう点からすると,まず,業務執行に関わる定款変更議案については,どうにかうまく,言い方が難しいんですけれども,もう少し内容として提案しにくいというか,それは提案すべき内容ではないというようなことを,どうにか盛り込めないかなということと,同時に,定款変更するときには,やはり一株主からは一つにすると。そうすることで,一つの定款変更議案の中で相矛盾していないものをよくよく考えてみて出さなければいけなくなるわけですね。そうしないと,通りにくいわけですね。そういうことを考えた上で株主提案する。   そういうことを考えると,上限についても10は要らなくて,もう少し絞って3辺りかなと思いますけれども,よくよく考えられた,練り上げた定款変更議案で,そこに必要なことは複数入っているかもしれませんけれども,それを含めて3ぐらいにするということが,トータルで見たときに,きちんと精査すべき株主提案になると思います。是非そういう方向になっていって,今の一連のガバナンス改革というのが意味あるものになっていったらと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。齊藤幹事,どうぞ。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。   最後の不適切な内容の提案の④につきまして,まだ私自身がよく理解しきれていないところがあるかもしれないのですが,この読み方についてコメントをさせていただく次第です。   適切な運営が妨げられることによって,株主の共同の利益が著しく害されると読むということと,それから,提案の内容には踏み込まないということ,これがこれまでに確認されてきたように思うのですけれども,「適切な」と「著しく」という評価を含む言葉が入っているので,このようなものに該当するものは不適切だろうということについては,余り議論の余地がないのかもしれないのですが,実際にそれを判断できるのかというところが,まだ整理がつかないところがあります。というのは,既に問題視されている先例があるような場合には,同様の事案がこれに該当するだろうという点については,多くの方の意見が一致するように思います。しかし,それは,実際には内容まで見ているので,濫用的であるという結論を導くことに躊躇を覚えないですむという側面があるように思いますので,全く内容に踏み込まずに,適切な運営が妨げられるのかを判断するとすれば,その要素は,単に時間が掛かるとか,手間が掛かるというところに尽きていくことになる。そうすると,例えば,「時間が掛かりますので」という理由で,時間というのは株主それぞれにとって大事なものでもありますから,その御提案は御遠慮ください,ということになりかねないのではないかと。実際には,上場会社であれば保守的に運用されるだろうという期待の下に,こういう提案が取り上げられているのかもしれないのですが,そのような前提がない場合も想定して制度は作る必要があるのではないかと感じました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   今日は,もう一つ部会資料がありますが。松井幹事,どうぞ。 ○松井(智)幹事 これ,大したことではないという話なのですが,先ほどのA案,B案について一言だけ。   A案をとっている方というのは,決議の瑕疵に関する議案というものについての学説があるので,ここで議案という言葉を使ってしまうと,いろいろと解釈論上難しいという話だと思います。B案の方は,議事進行において,議案ごとに説明と討議をするといったような議事進行であるとかいったようなことを念頭に,どちらがきちんとした手続でいけるかといったようなことをお考えなのだと思うので,ちょっとここで,議案という概念を使って条文を書くのかどうかということを考えていただければ,多分A案についての懸念の部分というのは,大部分解消するのかなということであります。   あと,先ほど矛盾したような株主提案についてという話がありましたけれども,そういう行き当たりばったり的な議案をどんどん出してくるというのであれば,④のような話に引っ掛けることができるのではないかという,そういう感想を持ったということと,業務執行制限なんですけれども,これ,業務執行を制限する議案が出てくるのが困るのは非常によく分かるのですが,そうすると,多分究極的には定款に株主が書くことができる事項というところに踏み込んで,多分議論をするのだろうなと思って,株主提案権のところで整理し切るのはちょっと難しいのかなと考えたということです。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   大分御意見いただきましたので,先へ進ませていただいてもよろしゅうございますでしょうか。   どうもありがとうございます。   それでは,もう一つの部会資料になりますけれども,部会資料9について御審議を頂きたいと思います。   事務当局からの御説明をお願いいたします。 ○邉関係官 それでは,部会資料9について御説明いたします。   「第1 取締役の報酬等に関する規律の見直し」では,(前注)に記載のとおり,報酬等の内容に係る決定に関する方針の株主総会における説明義務及び取締役の報酬等に関する事項の事業報告における開示につきましては,第二読会における検討の結果を踏まえて検討することとし,第二読会においては,「1 株主総会の決議事項の見直し」及び「2 株式である報酬等を交付するために行う募集株式の発行又は自己株式の処分における金銭の払込み」について御検討いただきたいと考えております。   1ページ目,「1 株主総会の決議事項の見直し」の「(1)株式又は新株予約権である報酬等」は,仮に,会社法第361条第1項第3号を改正し,株式又は新株予約権である取締役の報酬等について,その数等の具体的な内容を同項の株主総会の決議により定めなければならないものとする見直しをする場合であっても,株式又は新株予約権である取締役の報酬等については,当該具体的な内容と併せて,同項第1号又は第2号に掲げる事項として,当該報酬等の額又はその具体的な算定方法をも定めなければならないものとすることを提案するものです。   第一読会においては,いわゆる相殺構成や現物出資構成により新株予約権や株式を報酬等とする場合であっても,会社法第361条第1項第3号の適用があるものとすること,また,株式又は新株予約権を報酬等とする場合に定めなければならない同号の「具体的な内容」をより明確にすることについて検討を行い,いずれについても積極的な御意見を多くいただいたところです。   本文は,第一読会における議論を踏まえて,仮に,(注)のような見直しをする場合であっても,株式又は新株予約権である取締役の報酬等については,現行法上,新株予約権をいわゆる無償構成により交付する場合と同様に,会社法第361条第1項第1号又は第2号に掲げる事項として,当該報酬等の金額又はその具体的な算定方法をも株主総会の決議により定めなければならないものとすることを提案するものです。   現行法上,新株予約権をいわゆる無償構成により交付しようとする場合には,会社法第361条第1項第3号に加えて,その額が確定しているかどうかに応じて,同項第1号又は第2号に掲げる事項をも定める必要があると解釈されております。そして,当該新株予約権の内容の要綱を,同項第3号の具体的な内容として定め,かつ,当該新株予約権の公正価値を上回る額を同項第1号の額として定めている場合には,有利発行規制の適用はないものと解されているところです。   仮に,(注)のような見直しをした上で,新株予約権をストック・オプションとして,いわゆる無償構成により交付しようとする場合には,その内容の要綱等を株主総会の決議により定めていれば足り,会社法第361条第1項第1号又は第2号に掲げる事項を定めなくてもよいものとするときは,同項第1号の額を基準として,有利発行規制の適用の有無を判断するということが困難となり,また,これに代替する基準として適切なものを定立することも困難になるものと考えられます。そのため,仮に,(注)のような見直しをする場合であっても,株式又は新株予約権である取締役の報酬等については,本文のとおり,会社法第361条第1項第1号又は第2号に掲げる事項として,当該報酬等の額又はその具体的な算定方法をも株主総会の決議により定めなければならないものとすることが相当であると考えられます。   3ページ目,「(2)各取締役の報酬等の内容に係る決定の再一任」は,取締役会設置会社において,取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定を取締役に再一任するためには,株主総会の決議を要するものとすることについて,どのように考えるかを問うものです。   第一読会においては,いわゆる再一任を禁止することについて御議論いただいたところですが,第一読会においては,例えば,株主総会の決議により再一任をすることができる旨を定めた場合にのみ,再一任をすることができるようにすべきであるという意見や,再一任をしている場合には,事業報告において再一任をしている旨等を開示しなければならないものとすべきであるという御意見など,企業実務への影響に配慮して法律上禁止することまではしないまでも,一定の見直しをする必要があるという意見が多く出されました。このような第一読会における議論も踏まえて,御議論いただきたいと考えております。   3ページ目,「2 株式である報酬等を交付するために行う募集株式の発行又は自己株式の処分における金銭の払込み」は,仮に,株式である取締役の報酬等を交付するために行う募集株式の発行又は自己株式の処分について,募集株式と引換えに金銭の払込みを要しないこととすることができるものとした場合における,不当な経営者支配の助長という弊害が生ずるおそれへの手当ての要否について,どのように考えるかを問うものです。   第一読会においては,株式である取締役の報酬等を交付するために行う募集株式の発行又は自己株式の処分について,募集株式と引換えに金銭の払込みを要しないこととすることについて,積極的な御意見を頂いているところですが,他方で,不当な経営者支配を助長するおそれがあるのではないかなどの懸念から,消極的な意見も頂いたところです。   不当な経営者支配を助長するおそれという懸念に対しては,補足説明2で記載しているとおり,既存の規律等が一定程度の歯止めになっている部分もあると思われます。例えば,補足説明2(1)のとおり,指名委員会等設置会社以外の株式会社においては,前記本文1(1)の見直しをすることを前提とすれば,取締役の報酬等として株式を与えるためには,株式の数の上限等やその額又は具体的な算定方法について,株主総会の決議が必要となります。また,補足説明2(2)のとおり,公開会社以外の株式会社においては,会社法第199条第1項の募集を行うためには,原則として株主総会の特別決議が必要ですし,公開会社であっても,有利発行規制の適用がある場合には,同様に株主総会の特別決議が必要となります。また,有利発行規制の適用がない場合であっても,新たな支配株主が現れることとなるような募集株式の割当て等であって,総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が反対した場合には,当該割当て等について株主総会の決議が必要となります。加えて,補足説明2(3)のとおり,支配権に争いがある状況において,株式を報酬等として交付する場合には,当該株式の発行又は自己株式の処分は著しく不公正な方法によるものとして差止めの対象になり得るものと考えられます。   このようなことを踏まえますと,(注)のとおり前記本文1(1),すなわちこの部会資料の一番初めの論点の見直しをすることを前提とすれば,不当な経営者支配を助長するおそれへの手当てをする必要まではないといった考え方もあり得ると思われるところです。   私からの御説明は以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,部会資料9につきまして,御質問,御意見をお出しいただきたいと思います。古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。   前回も申し上げましたけれども,経団連といたしましては,1,2いずれにつきましても,新たな規律を設ける実務上の必要はないと考えております。   取締役の報酬に関する規律の見直しは,内容の如何では,総会の運営を初めとして,非常に多くの会社の実務に大きな影響がありますので,是非慎重に議論していただきたいと考えております。特に,「1(2)」につきましては,経団連としては強く反対であると申し上げておきます。役員の報酬につきましては,上限額について総会決議を経ておりますので,いわゆるお手盛りの危険はないですし,その中での配分は,執行に任されるべき事項だと考えております。前回も申し上げましたけれども,代表取締役を含む取締役,監査役は,この点につきまして善管注意義務を負っておりますし,また多くの会社におきまして,報酬に関する方針に加えて,配分についての計算式等を定めているということも考えますと,代表取締役への再一任について,株主総会の決議を求める必要はないという立場でございます。   それから,「2」の株式の無償交付につきましても,これも前回申し上げましたが,株式報酬の交付につきましては,現行の実務,つまり相殺構成によることに特段の不都合は感じておりません。したがいまして,新たに規定を設ける必要はないと考えております。部会資料にも第一読会では消極的な意見が出されたとありますが,我々企業側の委員は,いずれも見直しには消極的な立場から,規定を設ける必要はない,若しくは支配権に関わる弊害が生じる懸念があると発言したと記憶しております。こうした実務のニーズにも照らして,法制化が必要かを御議論いただきたいと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。神作委員,どうぞ。 ○神作委員 ありがとうございます。   今,古本さんからお話がありました,資料3ページの2の「金銭の払込みを要しないこととする募集株式の発行又は自己株式の処分」について,前回,私も,議決権を伴う点でストック・オプションとは大きく異なっており,経営者支配を助長する可能性があることを申し上げました。この部会は,企業統治の向上という観点から見直しをすることを諮問されていると理解しております。確かに役員の適切なインセンティブを付与するという観点からは金銭の払込みを要しない募集株式の発行等は有益だと思いますけれども,他方で,経営者支配とコーポレート・ガバナンスの向上という観点からすると,不健全な利用がされるおそれがあり,その点についても十分に留意する必要があると考えます。本日の資料では,その点について詳細に御検討いただいており,大変ありがとうございます。   他方,確か,前回このテーマが扱われたときに,資料5ページにも書いてございますけれども,濫用等の懸念から,報酬として交付することができる株式の数について,例えば,事業年度ごとの上限を定めるという御意見も出されたかと思いますけれども,このような規律を置くことによって,十分に対応できるのかというのは,非常に難しいとも感じております。では,どうすれば良いのかということですが,この問題は,もしかしたらある部分はベストプラクティスとかガバナンス・コードのようなソフトローの領域に委ねられるべきものなのかもしれませんけれども,他方で,金銭の払込みを要しない募集株式の発行等は,御提案によれば上場会社以外にも適用されるという前提で書かれていると思いますので,やはり非公開会社のガバナンスにも目を配って議論していく必要があると思います。   資料にあるような既存の規律等による歯止めというのは,法で規制するよりもよいガバナンスを目指すという観点から,払込みを要しない株式の交付を報酬としてなら行えるとすることは,ガバナンスの向上・強化と逆行するようなメッセージを与える可能性もあるのではないかと懸念します。きちんとした論拠に基づいていない発言かもしれませんけれども,そのような懸念を覚えます。少なくとも,法的な歯止めという観点からは,有利発行に当たる場合には特別決議が公開会社においても必要とされるとしても,新株予約権の場合とパラレルの議論で,有利発行かどうかを判断することが適切であるのか,むしろ端的に職務執行の対価として公正かどうかという観点から判断されるべきであると思います。特に,払込みを要しない株式を交付する場合に難しいのが,将来の業務執行の対価まで付与する場合に,現行の規制との関係では,有利発行について委任をするときは,1年間しか効力がないという規律があると思いますけれども,そのような規律との関係で,例えば,相当先の業務執行の対価について株式を払込みなく交付するときに,何か制約と申しますか,株主総会の決議なりを取り直すことになるのか,ちょっとその辺りはまだ十分に詰めておりませんけれども,いずれにしても,報酬として付与する場合については払込みを要しないというルールについては,支配権の公正という観点からの議論も踏まえて,更に議論していただけると有り難いと思います。   それから,1点御質問なのですけれども,前回の資料では,金銭の払込みを要しない募集株式の発行等をした場合における資本の額をどうするかという論点が指摘されていたと思います。この論点について本日の資料では記載されておりませんけれども,既にもう決着が付いたという前提なのか,資本の額について今回取り上げられておりませんのは,どのような理解に基づくものか,教えていただきたいと存じます。どうかよろしくお願いいたします。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○竹林幹事 資本の額についてどう扱うべきかというのも重要な問題であるとは承知しているのですけれども,私どもとしてまず議論いただきたかったのが,この支配についての対応のところということでございまして,決着が付いているというような認識ではございません。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。 ○神作委員 もし資本の額が増えないということだとしますと,少なくとも法形式としては,株式の分割などと少なくとも法形式としては類似してくる面もあると思いますので,そちらの規制等の関係も問題になるようにも思いましたので,一言申し上げさせていただきました。 ○神田部会長 ありがとうございました。小林委員,どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   まず,決議事項の見直し,第1の1の(1)でございますけれども,現行実務で361条第1項第3号と,1号,2号を組み合せて,総会の決議を経てというところが多いということもございまして,各社工夫しながら柔軟に対応しております。やはり商工会議所の内部検討では,実務上不都合はないということもありますし,報酬の相当性を担保するためには,社外取締役の活用ですとか,やはり取締役会にその判断を任せるほうが合理的でしょうと。   ガバナンスに積極的に取り組んでいる会社では,株主説明重視としているということもございますから,今の現在の法定以上の細かい規律を定める必然性には乏しいと考えております。株主総会で細かい技術的な内容を説明させるということは,それ自体が株主を混乱させるというか分かりにくいので,方針だけ説明すればよいということであれば,今の状況でもそれほど問題ないので,むしろ,今はまだ非常に,この株式とか新株予約権の報酬についてはいろいろな設計があって,1回決めてしまったものを全部株主総会に持っていかなければならないという話になると,細かい手直しがなかなか効きにくいということもあるので,今ぐらいの規律の方がむしろ,会社としては柔軟に対応できるし,インセンティブ付けにはむしろ有用ではないかという感じがします。   それから,(2)の「各取締役の報酬の内容に係る決定の再一任」についてでございますが,古本委員から御説明がありましたとおり,ガバナンスという観点からは,わざわざここを株主総会の決議を経るということは必要ないと思いますし,まず,企業負担として非常に重いというのが,我々の印象でございます。   実は,総会決議を経るということは,仮に,否決されるとすると何が起こるのかということですが,少なくとも取締役会内部で個別の報酬が明らかになってしまうということになるだろうと思います。これは商工会議所の内部の検討での話ということになりますが,多くの,特に非公開会社とかそういうところも含みますので,中小企業等においては,前にも申し上げましたとおり,近親者ですとか比較的近い縁故的な使用人兼務取締役という方がたくさんいるというところになりますと,実は,元々再一任については合理性があるという考え方で,あえてこれを株主総会にかけると言われますと,株主構成によっては非常にもめ事が起こりやすいということを認識しておりまして,そういう話をあえてここで取り上げられるということには非常に違和感があるため,株主総会での決議を得るというこの考え方については,強く反対でございます。   もう一つ,2番,株式である報酬についての募集株式,自己株式の処分における金銭の払込みについてでございますが,今,神作委員からも御指摘がありましたけれども,中小企業が多く含まれる非上場企業の場合,元々株式の公正価値というのは何だろうかということが,常に問題になります。職務執行の対価として支払える報酬が,株式報酬として無償交付できるということになると,報酬と資本が一体になってしまいますので,いわゆる上場企業とか資本の非常に大きいところとは全然別なレベル感の問題が発生します。外部的には,先ほどの資本金をどうするかという問題も絡んできまして,もし資本金に入れないとなると,株式分割そのものですから当然に問題ですが,仮に,資本金に入れることにすると,裏付けのない資本ということになりかねないので,本当にこれが公正価値かといわれると,現実の払込みがないものが,新株予約権とかの場合とは違って相当に心配だということがございます。   元々株主構成が限定される中小企業におきましては,支配権については議決権を伴う株式報酬というのは,やはり非常に無用な争いを起こしやすいということもあるので,現在の構成でぎりぎりかなという感じも持っていますので,そういう意味では,この部分は,むしろ有害になるおそれもあるということなので,賛成しかねるところです。また,仮に,いわゆる不公正な発行が行われないということの歯止めということで書いてあるところの差止めというようなところもありますが,差止めは非常に短い時間でやらなければならないので,こういう非公開会社の場合,そのタイミングがきちっとつかまえられるかどうか,非常に心配な場合もあるので,歯止めになっているかどうかについて若干,私どもとしては疑問もあり,これを説明とするにはちょっと使いづらいのかなというのが,商工会議所としての感想でございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。坂本幹事,どうぞ。 ○坂本幹事 ありがとうございます。   経済産業省としての意見は,参考資料の31で提出をさせていただいております。かいつまんで発言をさせていただきます。   まず,取締役の報酬につきましては,経営者への適切なインセンティブ付与ということで重要なものでありまして,特に株式報酬につきましては,中長期の企業価値向上に向けた動機付けということで,効果的な手段と考えております。我が国企業においては,まだまだ固定報酬が中心で,インセンティブ報酬の割合が低水準という中で,その活用に向けて企業が努力を続けていると考えておりますので,そういった積極的な活用に向けた取組を後押しするような形での方向での議論がなされればと期待をしているところでございます。   各論につきましては,1ページ目の下からでございます。第1の1,「株主総会の決議事項の見直し」に関しましては,2ページ目にまいりますけれども,報酬の決定に関しまして,株主が直接関与すべき範囲を明確化するということの意義はあると考えます。一方で,インセンティブ報酬の導入が進みますと,専門的,技術的で複雑なものになる,あるいは柔軟な対応が必要となるということも考えられますので,その内容の決定に当たりましては,株主総会と取締役会の間での適切な役割分担ということがなされれば望ましいと考えております。   2ポツの(2)ということで「各取締役の報酬の内容の決定に係る再一任」につきましては,透明性,公正性確保の観点から,少なくとも公開会社に関しましては,何らかの見直しをするということについて,一定の意義があるものと理解をしております。   次に,三ポツというところで,役員報酬として交付する場合の株式の無償発行に関しましては,先ほど申し上げたような株式報酬の意義を正面から捉えて,その積極的な活用を後押しするという意味での環境整備につながるものではないかと思っておりますので,法務省の案に賛同をしたいと思います。   最後に,関連として,四ポツで書かせていただいております,株式報酬の付与の目的で,子会社が親会社の株式を取得するということについては,特にグループの子会社が非上場会社であるような場合に,上場会社である親会社の株式をインセンティブ報酬として活用するというニーズはあるだろうと考えておりまして,こういった目的の下で,現行の会社法第135条の親会社株式の取得の禁止の原則に対する例外として,こういった場合の保有というところを許容できるような規定を設けていただくことについても,是非御検討いただきたいと思っております。   ありがとうございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,札を立てていただいた順で,前田委員,沖委員,尾崎委員,野村委員,梅野幹事の順でお願いしたいと思います。前田委員,どうぞ。 ○前田委員 1の株主総会の決議事項の見直しのところは,全てここの案に賛成です。   後半の,いわゆる株式報酬についてですけれども,先ほど神作委員からお話がありましたように,いろいろな問題が指摘されている中で,特に経済界からのニーズもないのであれば,無理にこれを導入することはないとは思うのですけれども,ただ,不当な経営者支配の助長という弊害があるのかというと,株式報酬についてだけ,取り立てて濫用の危険を問題にしないといけない理由が,私にはいまだによく分かりません。つまり,報酬規制に従って取締役に一旦実際に金銭報酬を付与して,そして新株発行規制に従ってその金銭を払い込ませて取締役に新株発行することが認められることは,異論のないところだと思います。   確かに,株式報酬の形をとりますと,一瞬たりとも金銭が社外流出しませんので,気前よく大盤振る舞いされやすいということはあり得ますけれども,一時的な社外流出の有無がさほど決定的だとは思われませんし,金銭報酬債権を現物出資させる方法を採れば,全く社外流出はないのですね。そういたしますと,株式報酬についても,報酬規制がかかり,かつ新株発行規制もかかるわけですから,濫用の危険について,株式報酬についてだけ特別に考慮すべき問題はないのではないかと思うのですけれども,ただ,最初に申しましたように,問題点が指摘されている中,特に経済界のニーズもないのに無理に入れるほどの制度ではないとは思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   まず,「第1 取締役の報酬等に関する規律の見直し」の「1 株主総会の決議事項の見直し」の中で,(1)の「株式又は新株予約権である報酬等」に関する部分ですけれども,この点,新株予約権や株式を役員報酬として発行する場合につきまして,361条1項1号,2号により,額又は具体的な算定方法の決議が必要であることを前提に,その額が新株予約権や株式の公正価格を上回る場合には,有利発行規制の適用はないとする考え方が,部会資料の中で示されておりますけれども,このことには賛成であります。   従来,この点は,新株予約権の払込価格が公正価格を下回る場合や,無償であっても報酬等の割引相当のディスカウントである場合には,特に有利な条件や特に有利な金額に該当しないというような見解が示されておりましたけれども,ここで,この職務,役員の職務執行の金銭的な評価が非常に難しいということから,有利発行の決議をあえて採ったり,あるいは有償構成の方が有利ではないかというような運用もあったかと思いますが,今回の部会資料の考え方を採りますと,それぞれの扱いはあえてしなくてもよいということになるかと思いますので,非常に望ましいことかと思います。   次に,(1)の①で,株式報酬につきまして,具体的な決議をする場合の交付の具体的な条件として,交付の条件が記載されておりますけれども,ここには,譲渡制限期間の定めがある場合の期間の定めや業績条件も該当してくるのではないかと考えております。そこまで具体的な決議をしていただけるのであれば,それに見合った株式報酬が利用しやすくなるような効果も考えるべきだと思います。   具体的には,いわゆる株式報酬で,事後発行型のものですけれども,現在のところ,事前発行型のものが,業績連動にしますと損金算入ができないという税制上の扱いになっているかと思います。そうしますと,この事後発行型のものも事前発行型と同じように活用する機会を認めるべきだと思うんですけれども,この事後発行型のものですと,付与の決議から実際の付与まで相当の期間がありますので,せっかく役員がいい仕事をして業績が向上し,それに伴って株価が上昇した場合は,有利発行規制との関係で,実際に付与するときに総会の特別決議が必要になってくるのではないかというようなおそれがあります。お手盛りの防止等の関係では,361条1号又は2号の決議を前提に,3号の具体的な内容の決議がされた場合には,付与までの間に,たとえ株式の時価が上昇しても,それは決議時の公正価格を上回っていると,つまり,1号,2号の決議額が,決議時に公正価格を上回っているということであれば,以後有利発行規制を適用しなくても済むというような扱いが可能か,つまり,基準時を明確にするということだと思いますけれども,そういったことも併せて御検討いただければと思います。   次に,株式報酬の規定ですが,これは,明文化することは好ましいことだと思っておりますけれども,基本的には,役員を対象にしているという理解で,従業員にはこれは難しいかもしれませんけれども,従業員には適用されないということになってしまいますと,株式を付与する場合の決議の構成が,役員と従業員で法律構成を変える必要があるということになってくると思います。一応従業員についても,どれだけ可能かということは御検討いただければ大変有り難いと思います。   最後に,株式報酬の明文の規定を置く場合に,これが不当な経営支配の助長という弊害があるのではないかと,これにどう対処するかという問題についてですけれども,この点は,今回の部会資料で幾つかの対応策が示されていると思います。株主総会の特別決議事項であるとか,有利発行規制もそうですけれども,あと募集株式の割当てで新たな支配株主が現れる場合の最近の改正の普通決議ですね。あと,著しく不公正な発行の差止めについての主要目的ルール,これも,支配権維持が一応推認されるということですと,あとは資金調達の必要性が審査されるということだと思いますが,これと同じように,株式報酬の必要性とか妥当性というのがどれだけ具体的に審査できるかというところは,そこはちょっと問題があるかと思いますけれども,経営権について争いがある場合に,一応このような株式報酬を出せば,支配権維持は推認されて,差止めの可能性が高まるということ自体は,これはやむを得ないことかと思いますので,一応これも機能するのではないかと思います。   ただ,私どもも提案の中で出しております上限規制の必要性ですけれども,これは一応,継続して検討していただいて,あと,これには希釈化の防止目的ということもあるかと思いますので,併せて継続的に検討いただければ有り難いと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。尾崎委員,どうぞ。 ○尾崎委員 どうもありがとうございます。   私も,前回この話について消極的意見を述べた1人でございまして,先ほど来から出ておりますように,これは賛否両論あるということで,まず,私の基本的立場なんですが,これ,役員も株式を持つということ,そういうことについて,役員にこういう株式型の報酬を与えるということ自身は,問題ないというか,むしろあっていいと,私も思っております。   ただ,今回問題にしたいのが,やはり一番最後のところでございまして,払込みはなくても構わないと,こういう株式を募集株式で作ってしまう,つまり,募集株式と引換えに金銭の払込みを要しないという,ここのところが,やはりちょっと何となく引っ掛かってまいります。というのは,やはりこれ,先ほど来から出ておりますように,非公開の会社でこれを,一時的にせよこういうふうな形でどんどん使ってしまう危険性があると。また,上場会社においても,いわゆるファミリー系と呼ばれている会社においても,やはりこれ,議決権株式でありますから,その一時的というのが,先ほど前田先生おっしゃったように,一時的というのがどれほどの意味を持つのか,私もよく分かりませんが,一時的にせよ,先ほど小林委員がおっしゃったように,資金的裏付けのない株式の発行を認めるという,こういう方式はどうなのかと。   前田委員も先ほどおっしゃったように,金銭で渡しておいて,払い込ませればいいのではないかと,私もそれでいいのではないかと。払い込ませれば,従来のバランスからいくと,まだ特に特別のものをやっているわけではないと。相殺方式がどうなのかって,これもなかなか微妙なところではありますが,やはり株式を前提にするならば,払込みというところがやはりないといけない。現物出資,金銭債権の出資というんですか,こういうふうなものだって余り変わりがないではないかというんですが,やはり出資はしているわけで,これを将来の役務をもって出資しているんだというふうなところまで踏み込んでしまうのかどうか,そのときには,労働者にとっては労務を出資することができるのかとか,先ほど沖委員がおっしゃられたようなことなんかも問題になってくるかもしれないわけです。   仮に,百歩譲ってこの方式でやったとしても,これに賛成する株主は,支配がどう変わるのかとか,こういう議決権株式を,例えば,これ,役員なんかに渡すわけですから,現経営者にとって,例えば,有利な議決権状況が発生するんではないかというふうなことを,私は考えてしまうわけでございまして,そういったところの歯止めということが,当然必要になってくるんで,ここに書かれているような歯止め,果たしてどれほど機能するのか分かりませんが,それよりかはむしろ,そもそもそういうことはさせないようにした方がよろしいのではないかという気がするわけです。   また,会社にとって,相続なんかの問題だとか,いろいろな問題が起こってきたときに,そういう税金を逃れるというところで,こういう方法を使うということも,私なんかもちょっと考えたりしたわけですが,まだ十分に詰めておりませんけれども,支配のゆがみという点では,その他の方法だって幾らでもゆがむことはあり得るわけですけれども,やはり一番大きな問題は,一番最後のところにありますように,払込みの裏付けもないというか,その部分についてちょっと引っ掛かってくると。   それと,ストック・オプションの場合ですが,それは,新株予約権を与えるときのプレミアムの計算について,現在価値で新株予約権を渡すと。その場合でも,行使をしたら,一応立て付けとしては,ゼロ円払込みでいいという方式を採るなら話は別でしょうが,そういうところでも,一応払込みをしているという立て付けに従来なっていたのではないかという気がするわけです。したがいまして,無用な争いを生じさせないという先ほどの委員の御意見もあったわけですが,これを正面から認めてしまいますと,上場会社の場合はどうか,ちょっと私も分かりませんけれども,非公開会社であるとか,例えば,ファミリー系と呼ばれているところでも,こういう形のものが使われてしまう危険性があるという,ちょっと危惧をしておりまして,その点,やはり危ないんではないかという感じがしております。 ○神田部会長 ありがとうございました。野村委員,どうぞ。 ○野村委員 二つのことを申し上げたいんですが,先に,一任の方の話をしようと思ったんですけれども,今の尾崎先生の話を伺っていてやや,やはり株式は必ず払い込まなければいけないというのはドグマなのではないかなという感じがちょっとしまして,そこがドグマ化されていることによって機能しない仕組みを,インフラとして必ず払込みをしなければ株式を発行できないというところを一旦解いてみて,それで,その仕組みを使って濫用が生ずるところを生じないようにするにはどうしたらいいのかという議論をすることは,必ずしも悪いことではないのではないかなとは,一瞬思いました。   逆に言いますと,むしろ,例えば,事前に交付してしまって,これから働くので先にくださいというのは,やはりちょっと危ないというのであれば,事後的に,払込みはされないけれども,報酬としては取るというような,一回もお金が社外流出しないような形の報酬の与え方というのはできるのかどうかとか,そこから詰めていって,どこまで許されるのかということを検討していく前提として,そこはもう払込みがなければ株式は絶対発行しちゃいけないんですよというドグマは,一旦ちょっと括弧に入れてみようという議論をしてもいいのかなというのは,個人的にちょっと思ったところであります。   その上で,もう一つなんですけれども,再一任のところなんですが,私は,先ほど経済産業省さんの方からお話がありましたように,やはり,少なくとも公開会社については,こういう議論というのはあってもいいのではないかなと思います。非公開会社が確かにセンシティブな問題をはらんでいるということはよく分かりまして,どうもあそこの家だけたくさん報酬をもらっているのではないかと思う人がいて,これが必ず株主総会で諮られるときには,再一任は駄目だとみんなが言ったら,取締役会で,みんなの今までの報酬がばれてしまうのかというのは,やはりいろいろな問題をはらむかなというのはちょっと分かります。   しかし,他方において,公開会社の場合については,これは再一任ができないと言っているわけではありませんから,再一任しますということをはっきり株主に示すということ,それで了解を取るということの手続を入れることに,何かそれほど大きな問題があるのかという感じはします。恐らく懸念されますのは,それが質問を誘発するということになって,例えば,ある会社で,最近はインセンティブ型の報酬を出しているところは,取締役会でかなりオープンに,みんなが議論しているやつもあるんですね。最近のインセンティブ報酬の実務の中で,特にBIP信託なんかやっているところでは,そういったようなものが実務として出てまいりましたから,取締役会でむしろみんな,胸襟を開いてみんなの報酬を知っちゃうというやつも,ないわけではないんですけれども,他方において,従来の実務をやりたいというのであれば,それはやはり堂々と再一任しますということを言うということなのではないかなと思います。   それに対して質問が出たときに,その質問に対して何を答えていくのかというのは,さはさりながら,例えば,再一任が健全であるために,何らかの報酬についての任意の委員会を作って,そのチェックをしてもらうような仕掛けを導入していますとか,あるいは,社内にはきちっとした規約を設けていて,ある程度の裁量の幅が非常に少なくなっていますというようなことを説明すればいいだけの話ではないかなというような感じもします。   逆に言うと,今のままでも,世の中がだんだん再一任に疑問を持ってくれば,取締役会に一任するという決議のときに,それは,実際は再一任するんですかという質問は出る可能性はあって,それには答えなければいけないので,あんまり変わりがないのではないかなとは思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,梅野幹事,藤田委員,田中幹事,柳澤委員の順で,梅野幹事,どうぞ。 ○梅野幹事 よろしいでしょうか。   第3回の部会において,参考資料10として沖委員とともに提案をさせていただいたのですが,その観点から質問及び意見を申し上げます。   まず,今,神作先生を初めとする諸先生方の御意見をお伺いして,支配権濫用といった問題があるということを改めてよく理解いたしましたし,私どもも元々そういった関心はございましたので,元の参考資料10では11ページになると思いますが,対象会社の範囲は要検討であると申し上げたところでございます。その前提に立った上で,私どもとしては,インセンティブ報酬をより使いやすいものにしておく必要があるのではないかと思い,前回の提案をいたしました。   その観点から,今回第1,1の(1)について意見を述べますと,まず,3号を改正して,株式,新株予約権である取締役報酬について具体的な内容を定めるということについては,基本的に私どもの問題意識,すなわち,従前株式報酬の規定がなかった点,あるいはストック・オプションの実態に即していなかったという点を解消する試みであるということから,方向性として賛同できるものであろうと思っております。また,この改正に伴って,361条4項の株主総会の説明義務として役員報酬等の制度全体の説明がなされるという点が指摘されておりますが,その点についても,株主の意思に基づいた透明性の高い制度になるということから,賛同したいと思います。   この前提に立った上で,まず,事務局への質問なんですけれども,1ページを拝見すると,3号の改正案として,①として,株式報酬については「当該株式の交付の条件」,②として,新株予約権については,「当該新株予約権の内容の要綱及び数の上限」と記載されておりますが,どの程度の相違をもたらすことを意識した記載なのかという点についてお伺いしたいと思います。   例えば,1号に関しては,いわゆるパフォーマンス・シェアとかリストリクテッド・ストックというものも想定されているのではないかと思いますが,リストリクテッド・ストックについては,株式交付の条件よりも,むしろ将来的に勤務条件等が成就しなかった場合の取得の条件が問題になります。ですから,株式交付の条件だけでは,必ずしも十分でないというような考え方もありますので,その辺りはどう考えるべきなのか。また,パフォーマンス・シェアについて言えば,業績条件に連動する,つまりキー・パフォーマンス・インディケーターに連動するということになりますが,それをどこまで,この交付の条件として書かなければいけないのか。余り細かな条件まで記載することを要求してしまうと,株主総会の場において決議を採るということが難しくなるので,実務上どの範囲を想定するのか。あるいはこのような点は将来的な解釈論であるとか規則に委ねられる事項かもしれませんが,このような点をどうお考えになるかという点をお伺いしたいと思います。   ②の新株予約権について言うと,希釈化という観点からは,新株予約権の目的である株式の数とか行使価格という点が重要になると思います。「新株予約権の要綱」というのは,236条の「新株予約権の内容」とは違った文言になっていますが,そういったものも含むことも想定されているだろうと思いますけれども,その点についてお伺いしたいというのが,質問の第1点目です。   続けて質問させていただきますと,先ほど沖委員からも指摘がされましたが,部会資料9の3ページの2などを拝見すると,株式の無償発行を認めるという前提に立っているものと思われます。そうすると,報酬規制の改正として,こういった無償発行を認めていくのか,あるいは199条1項2号の払込みであるとか,そういったところから変えていくのかということについて関心がございます。つまり,これは,飽くまで取締役の報酬としての株式報酬に限るのか,あるいは社員や会社の役職員も含むものとして想定されているのかという点になります。もし後者だとすると,かなり大幅な改正になってしまって非常に大変だろうと思いますけれども,その辺りのお考えについても,お伺いしたいと思うところです。   と申しますのは,仮にこれが,取締役についてのみは無償構成でいけるものの,他方,子会社の役職員あるいは従業員については相殺構成でいくとなると,発行決議も二つに分けてやることになるのではないかと思いますし,あるいは,会計処理も違ってきたりする可能性もあって,非常に実務的には分かりにくくならないかと思いますので,その辺りをどう考えていくのかという問題意識です。これは今後の検討課題かもしれませんけれども,その点についても,もしお考えがあればお伺いしたいと思います。   それから,最後に1点,意見をよろしいでしょうか。   1号において,額の上限規制が本当に必要なのかという点については,改めて考えてみる余地があるのではないかと思います。つまり,株式報酬について,3号で株数の上限を義務付ければ,希薄化の対処としては十分ではないかという点です。多分この問題の背後には有利発行の論点があって,1号の金額上限を付加すれば,有利発行規制の適用がなくなると考えられているのだと思います。つまり,有利発行規制という意味では,払い込む金額の多寡によって決めるものであって,その結果,公正価値を上回る額を定めている場合には,有利発行規制の適用がないという考えになるのだろうと思います。ただ,この点は,私どもの前回の提案で指摘させていただいたところですけれども,株価が上昇して,これに合わせて払込金額を高く設定したとしても,その分高い金銭報酬債権を取締役に付与するだけであって,最終的には混同によって消滅してしまうので,余り意味がない。有利発行規制が本来意図している株式価値の希薄化という観点からは,余りこの上限というのが役に立っていないのではないかといった考え方もあり得ると思っております。今回の提案に引き直して言えば,無償で交付する場合には,株価が幾らであっても関係なく,結局会社にとって資産は増加しないので,余り1号の金額上限を設けても意味がないといった考えもあるのではないかということです。   逆に言うと,1号の金額の上限枠に十分な余裕がない場合には,この1号の金額の上限規制を設けてしまうと,逆のインセンティブが効いてしまうのではないかという懸念があります。つまり,現役の経営陣としては,当面株価を上昇させないでおいて,貰える株式を増やしておいたほうが,後になって株価上昇のメリットが取れるという形のインセンティブとして働きかねない。理論的に詰めて考えると,株数の上限だけでも機能するのではないかなというのが,内部で議論してきたところでございますので,その問題意識を申し上げさせていただきました。   どうも,長い間ありがとうございました。 ○神田部会長 ありがとうございました。   御質問がありましたが。 ○竹林幹事 御質問いただいた点ですけれども,1(1)(注)で書かせていただいているのも,例えばということで,飽くまで例示させていただいたものではございますけれども,私どもといたしましても,余り細かなところを株主の方に決議いただくというのは現実的ではないというのは十分承知しておりますので,これを実際にどの程度株主の方にお示しして決議をとるべきなのかというのは,引き続き検討しなければならないと考えているところでございます。   また,御質問いただいた,仮に,無償発行を認める場合の対象ですけれども,私どもといたしましては,子会社の役員等について,そのストック・オプションを付与するときの議論等があるのも承知しておりますけれども,ここで念頭に置いておりますのは,取締役の報酬でございます。 ○梅野幹事 ありがとうございます。 ○神田部会長 よろしいでしょうか。   それでは,すみません,予定の時間が来ているのですが,若干の延長を今日もお願いさせていただければと思います。藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 私も,1について簡単にお話ししたいと思います。何名かの委員の方が,現在の実務において報酬規制は何も問題は生じていないということを強調されたのですが,そもそもこの1の(1)が何を議論しているのかと関わると思いますので,若干申し上げたいと思います。もし今回の提案が,今の条文が適切なインセンティブ報酬の設計を妨げているから,改正しようということでしたら,現行の実務でうまくできていて問題がなければ,それで話は終わりです。しかし,この提案が出てきているのは,決してそういう議論の流れではなかったと私は理解しています。議論が出てきた動機は,現在の報酬規制が,会社から出ていく財産の総額を抑えるという発想で作られているところ,インセンティブ報酬などが入ってくると,そもそも株主の承認を取るべき対象は,総額幾ら出ていくかということではなくて,むしろどういう性格の報酬であって,それが適切に役員のインセンティブのコントロールに効いているかということではないか,そういうことを分かった上で承諾するという規制でなくてはならないのではないかという発想です。そういう前提で,この議論は始まったと思います。   そういう発想からは,株主に問われなければいけないのは,報酬パッケージが全体として合理的に作られているか,例えば,金銭報酬と固定額とインセンティブ報酬の割合はどうなっているのかとか,どんな範囲の人に与えるのかとか,どんな形でインセンティブに貢献するのかとか,そんな内容だと思いますが,そういう点が明示されて,承認を採るような仕組みになるのが望ましいという議論をしているのだと思います。   そういう観点からは,実は今回の提案は余り問題解決に貢献していない。幾ら3号決議により与える非金銭報酬の中身を具体的に細かく書かせたところで,今言ったような内容を具体的に説明することにつながっていかないので,正直言って,この提案は,あんまり本質的な解決になっているとは思えません。反対まではしませんけれども,あんまり細かくなり過ぎてかえって株主にとって分からなくなることがないよう,適切な内容にとどめてくださることを望みます。積極的に反対まではしないけれども,これは,本来の趣旨に沿った内容とは思いません。   そうなると,むしろ重要なのは,資料の2ページの下のところに報酬等の内容に係る決定に関する方針に関する説明義務への言及がありますが,こういうところをもう少し充実させていくことかと思います。前回の提案ですと,もし方針があれば説明するといった内容だったのですが,これをもう少し強化するような方向で,取り分けインセンティブ報酬との関係で,適切な内容が説明されるようにするべきではないかと思います。前回検討した際に申し上げたのは,固定額の金銭報酬なら,もし方針があればそれを説明するということで足りるけれども,インセンティブ報酬を導入するのであれば,必ず方針を決めた上で,その中身について説明しなくてはならないとするということでした。説明内容としては,先ほど申し上げたような全体の設計や,どういう意図で導入されているものかというのが分かるようなものでなければいけないということになればいいと思います。そういう意味では,これは,(1)の本文で書かれている,提案として書かれているところというよりは,補足説明の最後の方に書かれているところを,今後実質化していっていただければと思います。   最後に再一任の話は,意外に本質に関わる問題を抱えている話ではないかと思います。結論から言いますと,私は株主総会決議が常に必要だというルールが必要かどうかは必ずしも確信を持っていません。そうではない規制でもあり得るのかもしれないと思っていますが,ただおよそいかなる規制も必要ないかというと,それはそうではないと思っています。本質に関わると申し上げたのは,再一任の可否は,取締役会の在り方について,どういうことを前提とするかということに関わるからです。   公開会社を前提としてお聞きいただければと思いますが,取締役会の在り方を大きく二つに分けるとすると,一つの見方は,業務執行者と取締役会構成員が全員一丸となって経営に邁進するというスタイルのイメージですね。こういう発想に立つのであれば,リーダーである業務執行者に,決まった枠の中での報酬の分配を一任しますという発想も割となじむと思うのですけれども,最近はむしろそうではなくて,業務執行者を監督するものとして取締役会というのを想定し,その業務執行者からの独立性というのを強調する見方が強くなってきている。そういう発想に立つと,業務執行者に,社長に分配を一任しますというのは,非常に座りが悪いことになります。   会社法は,取締役会がどちらの性格でなければいけないということを決めていないので,再一任禁止というのは,確かに行き過ぎだと思います。ただ,少なくとも,会社としてどういうタイプの取締役会を想定して,自分たちは組織を作っているのか,それと一貫する形で,報酬の分配の仕方を決めているのか,ということが分かるような状況は作らなければいけないと思います。社外取締役を入れて,独立性の強い取締役会を持っていますと標榜している会社が,報酬の分配の仕方は社長に一任ということをやっていれば,投資家としては不思議に思うでしょうし,又は,そういう当然な疑問が湧くような手掛かりがない,開示もされないためどういうふうな分配の仕方をしているか,再一任をしているか否か,分からないという状況は改善しなければいけないと思います。そういう意味では,私は,本質はむしろ,再一任した場合には,再一任したという事実と,それを誰に一任したかということが明らかにされることだと思います。それを明らかにする方法が,株主総会の承認を要求するという形であっても構いませんが,それ以外の方法でもいいと思います。むしろ株主総会の承認という場合に,何年に1回かしかしなくてよいというルールになるのなら,事業報告で必ず毎年明らかにするという方がいいのではないかと思います。両方要求するというのも,論理的にはもちろん考えられます。やり方として,ここで書かれている総会決議というのが,唯一の方法とは思いませんけれども,少なくとも一任したことと,誰に一任したかということが,上場会社に関する限りは外部から分かるようにする仕組みを望みたいと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 時間も超過していますので,なるべく短くしたいと思います。   まず,部会資料9の1の(2)の再一任に関してですが,私は,上場会社限定であれば,この提案に賛成したいと思います。以前の読会では,事業報告による開示を義務付けるべきではないかと申し上げまして,それは今でも変わっておりませんけれども,株主総会に再一任の可否を問うということは,それに加えて意義のあることかと思います。   先ほど,このような決議をすることが困難であるとの意見がありましたが,再一任の決議を要するというのは,これまで取締役会に一任しますという内容の総会決議をしていたところを,それに加えて取締役会は更に取締役に再一任しますという内容の決議をする,というだけですので,何ら困難ではない,複雑なところもないし,株主にとって理解できないものでもないと思います。仮に,困難であることがあるとすれば,それは,株主がその議案に反対するということしか考えられないわけですが,その場合は,株主が再一任に反対しているわけですから,再一任はすべきではないと考えております。   それから,部会資料9の2番ですが,先ほど来,こういう無償の株式交付に対する消極論が相次いで出されたわけですけれども,繰り返し強調しておきたいことは,もし無償交付を認めることで生じる問題について,この補足説明に書かれているような現行法の規律――私はこれに加えて,特別利害関係人の議決権行使によって著しく不当な報酬決議がされたときは取り消せるという,それも規律に加えるべきだと思いますが――,そういった規律で十分に対処できないのであれば,そのような問題は,現行法下で可能と解され,そして,実際に行われている方法,つまり,金銭報酬債権を現物出資させて株式を交付するということについても,全く同じように起きるということであります。これらの規律で対処できない問題について,金銭債権の現物出資という構成を採らせたときには対処できるというような部分は全くないと思います。   それから,更に申し上げれば,現行法の下でストック・オプションを交付する場合も,行使期間を相当短くすれば,現実的には株式を交付したのと同じになるわけで,これに関しても,現行は特段の規律をしていないわけであります。ですから,仮に,こういった株式の無償の交付というものが,現行法の規律で十分に問題に対応できないというのであれば,このような無償交付を禁止するだけでなくて,金銭債権の現物出資による交付も禁止すべきですし,ストック・オプションの行使期間についても制限を設けないとおかしくなると思います。   ただ,このように申し上げておきつつ,実際にこういった改正を行うべきかどうかということになりますと,確かにこの改正は,現行法で金銭債権の現物出資の形でできるものを,端的に無償交付の形でできるようにしただけであるわけですが,実務に与えるメッセージといいますか,こういうことを好きにやってもいいですというようなメッセージとみなされるというおそれがあるという問題は,確かに考えられなくはないと思います。過去にあった例として,会社法制定時に,会社分割について規制を緩和して,債務の履行の見込みがあることは会社分割の要件でないということにしたことも,詐害性のある会社分割は取り消せるのだという解釈を前提にすれば,必ずしも不当な改正ではなかったかもしれませんが,しかし現実的には,それによって多数の詐害的な会社分割が行われ,最終的に裁判で取り消されたとしても,関係者に多大な被害を与えたようなこともあるかと思います。今回,株式の無償交付を認めることにより,そういったことが起きるかどうかは予想がつかないわけですけれども,関係者が法改正のメッセージをどういうふうに受け取るのかというのは,やってみないとわからない部分があるので,起きないとは言えないと思います。   現行法の下でも,金銭債権の現物出資という形で行えるということで,実務上も別に困っていないから,新たに無償交付のルールを設けることは特に必要ないのだとすれば,あえて寝た子を起こす必要はないといいますか,これについて何も規律を設けないというのも,一つの立場かと思います。   そのように申し上げた上で,一つだけ述べておきますと,今回の御提案の中で,資本金の増加に関するルールが触れられていないのですが,私,資本金の増加については,現在行われているような金銭債権の現物出資の構成でも,資本金の増加に関するルールを何らか設ける必要があるのではないかと思っています。というのは,上場会社の実務では,株式を無償で交付するが,そこに譲渡制限を付けておいて,労務の提供を受けたときに,順次,制限を解消していくという形がとられていると思いますので,このような場合,会計のルールからすれば,役務の提供が行われたものから資本に組み入れていくとなるのが筋であるのですが,金銭債権の現物出資の形にしますと,会社法の規定を素直に読めば,金銭債権を現物出資した時点でいきなり資本金が増えることになるのではないかと思います。この辺り,あるいはもう法務省令で既に委任されている範囲内であって,省令を変えるだけで済む問題なのかもしれませんが,そうでないのかもしれませんで,この点については幾らか検討する必要があるのではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。柳澤委員,どうぞ。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きまして,ありがとうございます。   株式又は新株予約権である報酬等についての株主総会の決議の見直しに関する内容につきまして,投資家としての認識を簡単に述べさせていただければと思います。   確認的なコメントにはなりますが,今回の決議事項の見直しの検討は,投資家にとりましては,役員のインセンティブ付与に際し,企業からどのような説明や開示がなされるのかといった開示情報の内容と基本的につながってくるものと理解しております。投資家の視点から,役員に付与されるインセンティブが適切なものであるかどうかを分析する場合を考えてみますと,その前提としまして,報酬制度全体の決定方針や仕組み等についての企業による開示情報が制度上可能な限り整備されていることが必要ではないかと思っております。その上で,企業の設定した報酬体系の在り方が,役員のインセンティブ設計として中長期的な企業価値向上に資するものかどうか,その効果等に関しての評価を行っていくということになります。   その意味におきましては,部会資料9の2ページにある補足説明3に記載されている内容のとおり,報酬の算定方法や具体的な内容に関する説明義務にとどまらず,その必要性や合理性についても,会社として相当である理由を説明していくことになるといった検討事項は,投資家への開示といった側面に照らしても,望ましい方向ではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。青委員,どうぞ。 ○青委員 恐れ入ります。   この報酬制度の見直しによって,インセンティブ付けのスキームを今後導入していくということでございますので,まずは,スキームそのものがどのようなものになるかという点が,株主にとっては重大な関心事項であろうと思います。また,報酬額の規模に関しましても,現行の水準に比べて大きくなるということが十分想定されますので,一定の制約が必要なのではないかと考えている次第でございます。   払込を要しないで株式を報酬として付与するという形になりますと,希薄化が生じる一方で,直接的な財産の流出がないということにより,安易な付与につながるおそれもあるという面もあるかと思います。一方で,インセンティブ目的で付与する場合につきましては,その付与される株式の価値ですとかスキームがかなり複雑になってくるというところも想定されるところかと思われます。   これらに鑑みますと,株主総会で一定の決議にかからしめるということが重要ではないかと思います。ただ,その際に,過度に詳細な内容を総会に付議するというよりは,むしろスキームの柱になるところを株主にしっかりと御理解いただいて,そうした点について同意を頂くという形にすることが重要ではないかと考えております。その際,大枠がよく分かるような説明を求める仕組みとなるよう工夫することが重要かと考えられますので,そうした観点から,今後の御検討をお願いできればと考える次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   いろいろ御意見をいただき,今日も予定の時間を延長してしまいましたけれども,この辺りにさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。   それでは,本日はこの辺りとさせていただければと思います。   次回の日程等について,事務当局からの御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 次回は,11月1日水曜日午後1時30分から午後5時30分まで,法務省地下1階大会議室におきまして会議を開催させていただく予定でございます。   また,役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備に関する他の論点の第二読会の続きと,社債の管理の在り方その他の規律の見直しに関する第二読会を行いたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○神田部会長 本日も大変長時間にわたり,また熱心に御議論いただきまして,どうもありがとうございました。   これで散会いたします。 -了-