法制審議会 第179回会議 議事録 第1 日 時  平成29年9月19日(火)   自 午後2時00分                         至 午後2時54分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題    戸籍事務へのマイナンバー制度導入に係る戸籍法等の改正に関する諮問第105号について 第4 報告事項    民事執行法部会における審議経過に関する報告について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○吉川司法法制課長 ただいまから法制審議会第179回会議を開催いたします。   本日は,委員20名のうち19名に御出席いただいておりますので,法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   初めに,法務大臣挨拶がございます。 ○上川法務大臣 法制審議会第179回会議の開催に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては,御多用中のところ本会議に御出席いただき,誠にありがとうございます。また,この機会に法制審議会の運営に関する皆様方の御協力に対し,厚く御礼申し上げます。   さて,本日は,御審議をお願いする議題が一つ,部会からの報告事項が一つございます。   まず,御審議をお願いする議題は,「戸籍事務へのマイナンバー制度導入に係る戸籍法の改正に関する諮問第105号について」であります。行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律,いわゆるマイナンバー法の附則第6条においては,平成27年10月の施行後3年を目途とする見直しを行うこととされています。   また,各種閣議決定により,各種行政手続において戸籍証明書の添付を不要とする取組として,戸籍事務をマイナンバーの利用範囲とすることについて検討が求められていたところです。そのため,法務省において,平成26年10月から本年8月まで「戸籍制度に関する研究会」,平成27年6月から本年7月まで「戸籍システム検討ワーキンググループ」を実施し,有識者から御意見を伺うなどしてまいりました。   これらの研究会等における検討の結果,現在の市区町村長を戸籍事務管掌者とする制度それ自体は維持しつつ,国が管理する戸籍副本データ管理システムを活用して情報連携を行うことが相当とされたところです。また,現行の戸籍法の規定について,紙戸籍を前提とした規定を電算化された戸籍を原則とした規定に改めることや,戸籍の記載の正確性を担保するための規定を整備することなどについて,検討する必要性が指摘されたところです。   そこで,国民の利便性の向上及び戸籍事務の運営の効率化の観点から,戸籍事務にマイナンバー制度を導入し,届出の際の戸籍証明書の添付省略や戸籍の記載の正確性を担保する規定の整備等,戸籍法を中心とする規定の見直しを要する場合には,その要綱を示されるよう御検討をお願いするものでございます。   次に,部会からの報告事項は,民事執行法部会における部会審議の途中経過でございます。   民事執行法部会におきましては,平成28年11月以降,精力的な調査審議が行われ,今月8日に中間試案が取りまとめられました。今後,この中間試案についてのパブリック・コメントの手続を経て,更なる調査審議が進められるものと伺っております。   本日は,これまでの審議の経過について,同部会の山本和彦部会長から報告がされるとのことでございますので,これに関しましても,委員の皆様方から御意見をお伺いしたいと存じます。   それでは,これらの議題等についての御審議・御議論をよろしくお願い申し上げます。 ○吉川司法法制課長 ここで報道関係者が退室しますので,しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○吉川司法法制課長 それでは,小出関係官,お願いいたします。 ○小出関係官 法制審議会の庶務を担当しております司法法制部長の小出でございます。   本年9月14日をもちまして,会長をお務めいただいておりました高橋宏志委員が退任されましたので,委員の皆様の互選に基づき,法務大臣が指名するという方法により,新会長を選任する必要がございます。   新会長選任までの間,仮議長を選出すべきかとは存じますが,特に御異論がございませんようでしたら,私が進行を務めさせていただきたいと存じますが,いかがでございましょうか。           (「異議なし」の声あり) ○小出関係官 ありがとうございます。それでは,どうぞよろしくお願い申し上げます。   まず,互選の手続に入ります前に,前回の会議以降,本日までの間における委員の異動につきまして御紹介いたします。詳細は,お手元にお配りしております異動表のとおりでありますが,新たに就任されました委員の方が本日出席されておられますので,御紹介させていただきます。   東京大学大学院教授の古城佳子氏が御就任になりました。 ○古城委員 東京大学の古城と申します。よろしくお願いいたします。 ○小出関係官 弁護士の竹之内明氏が御就任になりました。 ○竹之内委員 竹之内でございます。よろしくお願いいたします。 ○小出関係官 東京高等裁判所長官の深山卓也氏が御就任になりました。 ○深山委員 東京高裁の深山です。法制審議会には事務方として長い間関与しましたが,委員として初めて出席させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○小出関係官 東京大学大学院教授の高田裕成氏が御就任になりました。 ○高田委員 東京大学の高田と申します。よろしくお願いいたします。 ○小出関係官 どうもありがとうございました。   それでは,会長の選任の手続に入らせていただきます。   法制審議会令第4条第2項は,「会長は審議会の委員の互選に基づき,法務大臣が指名する」と規定されておりますので,皆様には,会長の互選をお願いしたいと存じます。   御意見がございましたら,御発言をお願いいたします。 ○初宿委員 私は,法制審議会委員としての御経歴からも,学識,御見識,またお人柄からいたしましても,井上正仁委員が会長にふさわしいと存じます。 ○小出関係官 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○八木委員 ただいま,初宿委員がおっしゃいましたように,私も次期の会長には井上正仁委員が適任であろうと思います。 ○小出関係官 ありがとうございます。   ただいま,2名の委員から井上委員を御推薦いただきましたが,ほかに御意見はございますでしょうか。   それでは,ほかに御意見がございませんようですので,会長には井上委員が互選されたということでよろしいでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○小出関係官 ありがとうございます。   それでは,ただいまの議事のとおり,会長には井上委員が互選されましたので,法務大臣に会長の御指名をお願いいたします。 ○上川法務大臣 ただいま互選されました井上正仁委員を会長に指名します。よろしくお願いいたします。 ○小出関係官 よろしくお願いいたします。   それでは,私の議事進行はここまでとさせていただきます。御協力ありがとうございました。 ○吉川司法法制課長 法務大臣は,公務のためここで退席させていただきます。 ○上川法務大臣 失礼いたします。よろしくお願いいたします。           (上川法務大臣退席) ○吉川司法法制課長 それでは,井上委員,恐縮ですが会長席の方へお移りいただきたく存じます。           (井上委員 会長席へ移動) ○井上会長 井上でございます。一言御挨拶申し上げます。   ただいま,会長に指名をしていただきました。大変な重責でございますが,皆様の御指導,御協力を得まして,円滑かつ充実した審議の実現に微力を尽くしてまいりたいと存じますので,どうかよろしくお願い申し上げます。   それでは,まず,会長代理を指名させていただきます。   法制審議会令第4条第4項は,「会長に事故があるときは,あらかじめ会長の指名する委員がその職務を代行する」と規定されております。   私としましては,長期にわたり本審議会に御貢献いただいております岩原委員を会長代理に指名させていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   先ほどの法務大臣の御挨拶にもありましたように,本日は,「戸籍事務へのマイナンバー制度導入に係る戸籍法等の改正に関する諮問第105号」について,御審議をお願いしたいと存じます。   初めに,事務当局から,諮問事項の朗読をしていただきます。 ○渡邊民事第一課長 民事局民事第一課長の渡邊でございます。   それでは,諮問を朗読させていただきます。   諮問第105号,「国民の利便性の向上及び行政運営の効率化の観点から,戸籍事務にマイナンバー制度を導入し,国民が行政機関等に対する申請,届出,その他の手続を行う際に戸籍謄本等の添付省略が可能となるようにするとともに,電子情報処理組織を使用して行う戸籍事務を原則とするための規定及び戸籍の記載の正確性を担保するための規定の整備等,戸籍法制の見直しを行う必要があると考えられるので,その要綱を示されたい。」 ○井上会長 ありがとうございました。   続きまして,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○小野瀬幹事 民事局長の小野瀬でございます。   それでは,諮問第105号につきまして,提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等を御説明申し上げます。   マイナンバー制度は,複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であるということの確認を行うための基盤であり,国民の利便性の向上や行政運営の効率化を図るため,行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律,いわゆるマイナンバー法に基づき,平成28年1月から運用が開始されております。   マイナンバー法は,平成27年10月から施行されておりますが,この法律の附則第6条におきまして,施行後3年を目途とする見直しを行うこととされておりますところ,各種閣議決定により,戸籍事務をマイナンバーの利用範囲とすることについて検討が求められていたところです。   これを受けて,法務省においては,戸籍制度の在り方を検討する戸籍制度に関する研究会及び戸籍システムの在り方を検討する戸籍システム検討ワーキンググループの二つの有識者会議を設置し,これまで検討を行ってまいりました。それぞれの有識者会議において,本年8月までに検討結果の取りまとめが行われ,その結果,戸籍の正本は引き続き市区町村において管理することとし,現在,法務省が戸籍情報のバックアップとして運用管理を行っている戸籍副本データ管理システムの仕組みを利用して,法務省において,マイナンバー連携のためのシステムを構築することが提言されたところでございます。この提言を踏まえて,更に幾つかの課題を検討する必要がございます。   第1に,国民の利便性の向上や行政運営の効率化の観点から,戸籍事務にマイナンバー制度を導入することにより,国民が行政機関等に対する申請,届出,その他の手続を行う際に,戸籍謄本等の添付省略が可能となるよう,戸籍法等の規定を整備する必要がございます。   第2に,戸籍事務は,現在,大半の市区町村でコンピューターを利用した事務処理が行われているところ,現行の戸籍法は紙での処理を原則とした規定となっていることから,コンピューター処理を原則とする戸籍法の規定を整備する必要がございます。   第3に,マイナンバー制度の導入とは直接関連はしないものの,戸籍の届出に係る審査の在り方や戸籍訂正制度の見直しといった戸籍の記載の正確性を担保するための規定を整備するなど,戸籍法の規定を見直す必要がございます。   そこで,以上のような戸籍法制の見直しを行う必要があると考えられますところ,その見直しの要否を検討の上,規定の見直しを要する場合にはその要綱を示されるよう,法制審議会の御検討をお願いするものでございます。   諮問第105号についての御説明は,以上のとおりでございます。 ○井上会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま説明がありました諮問第105号につきまして,御質問及び御意見を承りたいと存じますが,御質問と御意見を二つに分けまして,まず諮問の趣旨,内容等につきまして,御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。   特に御質問はございませんでしょうか。   それでは,中身に入りまして,御意見がございましたらどなたからでも,挙手の上,御発言をお願いしたいと思います。 ○神津委員 マイナンバーの利用範囲の拡大につきましては,国民への丁寧な説明と合意形成を図ることを前提に,安全性の確保,行政の効率性の向上及び国民生活の利便性の向上が認められる項目のみを対象とすべきと考えております。   特に,戸籍には機微性の高い情報が含まれていることから,慎重な検討が必要だろうと思っています。本件に関わる戸籍法改正について検討を進める際には,個人情報保護を最優先する観点から議論が尽くされるとともに,パブリック・コメントなどを通じて国民各層の意見が幅広く反映されるようお願いをしたいと思います。 ○井上会長 ありがとうございました。 ○八丁地委員 マイナンバー制度の導入に関わります戸籍法の改正に関しまして,経済界としての見解を述べさせていただきます。   我が国の成長戦略の要とも言えますソサエティー5.0,超スマート社会の実現に向けまして,社会全体におけるデジタル化,ここではコンピューター処理という言葉が使われていますけれども,その推進が求められております。マイナンバー制度は,行政分野におけるデジタル化推進の基盤とも言える制度でありますので,その積極的な活用の一環として,戸籍事務に利用範囲を拡大することを歓迎いたします。   デジタル化の推進は,行政内部のコスト削減にとどまらず,国民生活や経済社会の活性化,我が国の国際競争力の発展にも結び付くものであるというふうに考えております。同時に,戸籍は個人のアイデンティティーにも関わる課題でありますので,国民との丁寧な対話を踏まえまして,慎重な検討を重ねていただくことによりまして,国際的なデジタル化の潮流の中で法制の整備に向けた迅速な検討をお願いするものであります。 ○井上会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はいかがでしょうか。 ○山根委員 意見が重なりますけれども,今回の見直しの必要性は理解をいたしますけれども,やはり個人情報の流出や不正使用,そういったことへの懸念は拭い去れないところがございます。戸籍は親族や夫婦関係等々,個人の相当高いプライバシーが載っているものでございますので,相当高いセキュリティー体制を十分議論してということを前提にお願いしたいと思います。 ○井上会長 ありがとうございます。 ○岩間委員 直接マイナンバーに関わることではないんですが,戸籍法改正に当たって留意していただければと思うことについて,1点,意見を述べさせていただきます。   戸籍簿,特に除籍簿の保存期間についてです。現在,除籍簿,すなわち構成員のいなくなりました戸籍簿につきましては150年保存ということが,戸籍法施行規則第5条第4項で定められております。幾つかの観点から,これは再検討していただいてもよいのではないかと思います。   私は政治や歴史を専門としておる者ですけれども,欧米の文書館の利用というのは,まず何よりも自分の祖先が誰であるか,自分のルーツを知りたいという人が調査に来るということが非常に多い場所でありまして,日本におきましても,やはり自分の出自を知りたい,祖先を知りたいという願いは当然あるものと思います。そういう観点から,戸籍簿というのは貴重な記録であり,歴史資料であると思いますので,除籍簿になったからといって,その関係者,子孫が生きていないわけではないのですから,これを一律に廃棄してしまうというのは,非常に残念な歴史文書の破壊であるというふうに私は考えます。   また,行政上の観点からも,当時,これは寿命が延びたことから150年になったというふうに聞いておりますけれども,今後,生殖医療技術の発達から凍結卵子,精子,受精卵などで,更に親子関係が長い期間にわたって問題になることもあり得ると考えますので,親族関係を確定する意味からでも,戸籍の保存期間は長くしていただくほうがよいのではないかと思います。実際問題として,デジタル資料化されましたら紙を保存するという大変さはなくなると思いますので,この機会に保存の仕方も併せて検討していただければよいのではないかと思います。   学術上の見地からも,戸籍簿というのは,明治以来の日本国民の姿を伝える非常に正確で貴重な資料であると考えます。もちろん個人情報保護の観点から,開示の手続に関しては慎重で在るべきであり,その点も併せて御検討いただければとは思いますが,貴重な資料であるという観点から,保存の仕方をこの機会に併せて御検討いただければと思います。 ○井上会長 事務当局から何かコメントはございますか。 ○小野瀬幹事 今の御指摘の点でございますけれども,今お話ありましたとおり,平成22年に省令の改正を行いまして,除籍の保存期間につきましては従前の80年から150年というふうに大幅に延長したところでございます。   先ほど,生殖医療等の技術の進展というお話もございましたけれども,個人情報の管理を継続すること,非常に機微な個人情報でございますが,そういった長期間保管し続けることにつきましては様々な意見もあるところでございますので,この問題につきましては慎重な検討を要するものというふうに考えております。 ○井上会長 では,御意見として承っておきたいと思います。   ほかに御意見ございますでしょうか。 ○佐久間委員 今,皆様方が慎重な御検討というお話をされていましたが,それはそのとおりだとは思いますけれども,やはりこのマイナンバー制度の導入による効率化というのは非常に大きい効果もございます。今,内閣府を中心に進められている行政手続の簡素化というか,削減2割という目標のためにも,このワンスオンリーという原則がございまして,それを進める上でも,こういう取組というのは是非速やかに進めていただきたいと思います。 ○井上会長 ありがとうございます。 ○白田委員 皆様方が御指摘されるように,プライバシーの保護の部分は非常に重要かと感じております。   一方で,私は,国交省系の研究所の幹事も務めておりますが,昨今話題になっております所有者不明の不動産が問題となりつつあります。これは,法務省で登記しております不動産情報と個人の戸籍情報が連携されていないために,例えば戸籍上で死亡が確認されたとしても,法務省の登記の方にそれが自動的に伝わるというシステムには今なっておりませんので,その辺のところ,これからの課題かと思いますが,マイナンバーの広い利用という意味で,何がしか連携をとるというようなことも御検討いただければというふうに考えております。お願いいたします。 ○井上会長 ほかに御発言ございませんでしょうか。   ほかに御質問・御意見がございませんようですので,ここで諮問第105号の審議の進め方について御意見をお伺いしたいと思います。 ○内田委員 先ほどの小野瀬民事局長の御説明や,あるいは各委員の御意見などを伺っておりますと,諮問第105号というのは相当に専門的,技術的な論点が含まれているというふうに感じます。   したがいまして,これまでの通例に倣って,新たに部会設置をして,そこで調査審議をしていただき,その結果の報告を受けて,改めてこの総会で審議をしてはどうかと思います。そこで,部会の設置を御提案申し上げたいと思います。 ○井上会長 ただいま,内田委員の方から部会設置等の御提案がございました。   これにつきまして,皆様,御意見はございませんでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上会長 ありがとうございます。   それでは,特に御異議ございませんようですので,この諮問第105号につきましては,新たに部会を設けて調査審議するということにさせていただきます。   次に,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事につきましては,これまでの通例に従いまして,会長に御一任いただきたいと思いますけれども,御異議ございませんでしょうか。          (「異議なし」の声あり) ○井上会長 ありがとうございます。   それでは,この点は,私に御一任いただいたということにいたします。   次に,部会の名称でございますが,諮問事項との関係から,この諮問第105号につきましては「戸籍法部会」という名称にいたしたいと思いますけれども,いかがでしょうか。          (「異議なし」の声あり) ○井上会長 よろしいでしょうか。   それでは,特に御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。   ほかに部会における審議の進め方も含めて,御意見がございましたら御発言をお願いいたします。   よろしいでしょうか。   それでは,先ほど御注意,あるいはこういう点も踏み込んで検討したほうがいいのではないかという御意見がございました。そういう御発言があったということも含めて,諮問第105号につきましては戸籍法部会の方で調査審議をしていただき,それを踏まえて,その審議に基づいて本総会において更に御審議いただくと,こういうことにさせていただきたいと存じます。   本日審議いただくべき議題は以上ですけれども,引き続き,現在,調査審議中の部会から,その審議状況等を報告していただきます。   本日は,先ほど大臣の御挨拶の中にもありましたが,民事執行法部会の部会長である山本和彦臨時委員にお越しいただいておりますので,同部会における審議状況等を御報告していただき,その後,委員の皆様から御意見を頂きたいというふうに考えております。   それでは,山本部会長,報告者席の方にお移りいただければと思います。          (山本部会長 報告者席へ移動) ○井上会長 よろしいでしょうか。それでは,お願いします。 ○山本部会長 民事執行法部会の部会長の山本でございます。   民事執行法部会におけるこれまでの審議状況などについて御報告をさせていただきたいと思います。   お手元の配布資料,「民2 民事執行法の改正に関する中間試案」を御覧いただきながら,お聞きいただければと思います。   民事執行法は,昭和54年に制定された後,社会経済情勢の変化への対応と,権利実現の実効性を高めるという観点などから,平成15年と平成16年に所要の改正が行われたところですが,その後も手続の更なる改善に向けて,債務者財産の開示制度の実効性の向上,不動産競売における暴力団員の買受けの防止,子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化等の課題が指摘されておりました。   こうした状況を踏まえて,昨年9月,法制審議会第177回会議において,法務大臣より,民事執行法制の見直しに関する諮問が行われ,その調査審議のため,民事執行法部会が設置されました。この部会では,平成28年11月から本年9月までの間,約1か月に1回のペースで合計11回の会議を開催し,今月8日に中間試案を取りまとめたところでございます。今後,中間試案について意見募集の手続が実施されることが予定されております。   それでは,中間試案の概要について御説明いたします。   今回の中間試案は,大きく分けると五つの課題を取り上げておりますので,順次,第1から御説明させていただきます。   まず,「第1 債務者財産の開示制度の実効性の向上」という点でございます。中間試案の1ページを御覧いただければと思います。   勝訴判決などを得た債権者のために,債務者財産に関する情報開示を行う制度といたしましては,平成15年改正で財産開示手続が創設されています。ただ,その後の運用状況を見ますと,情報開示としての実効性が必ずしも十分ではないという指摘があり,また利用件数もそれほど多いとはいえない実情にあります。   これらの状況を踏まえ,部会では,まず,債務者財産に関する情報を債務者自身の陳述から取得しようとする現行の財産開示手続を見直し,これをより利用しやすく,強力な制度にすることを目指した議論がされました。   具体的には,中間試案の第1の1の部分におきまして,申立てに必要とされる債務名義の種類を現在よりも拡大するとともに,(2)の部分ですが,財産開示期日における債務者の不出頭などに対する罰則を強化することなどが提案されているところであります。   また,部会では,現行の財産開示手続に加え,新たな制度として,債務者財産に関する情報を債務者以外の第三者から取得する制度を創設することについても議論がされました。この制度の創設に当たっては,制度の対象とする第三者と情報の範囲をどのように定めるかが問題となりますが,中間試案の第1の2では,これは2ページの(2)の辺りでありますけれども,銀行などの金融機関から債務者の預貯金債権に関する情報を取得する制度や,一定の公的機関から債務者の給与債権に関する情報を取得する制度を新たに設けることなどが提案されております。そのほか今回の中間試案におきましては,その具体的な要件,手続等についても,一定の提案が示されているところであります。   続きまして,「第2 不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策」でございます。   中間試案の3ページ以下でございますが,近時,公共事業や企業活動などからの暴力団排除の取組が官民を挙げて行われておりますが,民事執行法による不動産競売では,暴力団員であることのみを理由として,その買受けを制限する規律は設けられておりません。このため,暴力団員が不動産競売で買い受けた建物を暴力団事務所として利用するような実例があることなどが指摘されており,対策を講ずることが求められております。   このような状況を踏まえ,今回の中間試案の第2では,1の辺りですが,暴力団員,暴力団員でなくなった日から5年を経過しない元暴力団員,あるいはその役員のうちに,これらの者がある法人などによる不動産の買受けを制限することが提案されております。   具体的な手続といたしましては,4ページの2,あるいは3の部分ですが,執行裁判所が原則として,最高価買受申出人につき,暴力団員等に該当するか否かをまず警察に照会し,その回答を踏まえて最高価買受申出人が暴力団員等に該当すると認められれば,売却不許可の決定をすることなどが提案されております。また,より確実に暴力団員等からの買受けを防止するといったような観点から,これは5ページの4の辺りですが,全ての買受申出人に対し,暴力団員に該当しないことなどを宣誓の上で陳述させるとともに,虚偽の陳述には罰則などによる制裁を加えるということについても提案がされております。   続きまして,「第3 子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化」,中間試案の6ページの部分でございますが,平成25年にいわゆるハーグ条約実施法によって,国際的な子の返還に関する強制執行の規定が整備されたところであります。ただ,国内における子の引渡しの強制執行につきましては,現行の民事執行法には明文の規定が設けられていないことから,子の引渡しを命ずる裁判の実効性を確保するとともに,子の福祉に十分な配慮をするなどの観点から,明確な規律を整備すべきであるという指摘がされております。   このような指摘を踏まえまして,今回の中間試案の第3では,国内における子の引渡しについて,ハーグ条約実施法の規律と同様に執行官の権限等を明確化するとともに,直接的な強制執行の申立ては,間接強制の方法による強制執行の後でなければすることができない旨の規定を設けることや,執行官が債務者による子に対する監護を解くために必要な行為をすることができるのは,子が債務者と共にいる場合に限る旨の規定を設けることなどが提案されているところであります。   もっとも,部会のこれまでの議論においては,これらの規律についても何らかの例外を設けるべきである等の指摘もされておりますことから,そのような指摘があることを中間試案の内容としても明らかにしておりまして,今後,意見募集の結果も踏まえながら,更に検討を進めていく予定となっております。   続きまして,「第4 債権執行事件の終了をめぐる規律の見直し」,中間試案の8ページ以下の部分であります。   部会では,法務大臣からの諮問において具体的に指摘されている三つの課題として,ただいま御説明した事項を中心とした調査審議が行われているところではありますが,これに加えて二つの課題,中間試案の「第4 債権執行事件の終了をめぐる規律の見直し」と,「第5 差押禁止債権をめぐる規律の見直し」についても調査審議を行いました。   まず,第4の部分についてでありますが,現行の民事執行法における債権執行事件の終了は,差押債権者による取立ての届出や差押債権者による申立ての取下げといった,差押債権者の行為に依存しており,他の強制執行事件と比べて事件の終了をめぐる規律が不安定な状況にあり,実際,取立ての届出や申立ての取下げがされないまま長期間放置されている事件が多数存在しております。   これらの状況を踏まえ,今回の中間試案では,金銭債権を差し押さえた場合において,取立権が発生した日から一定の期間を経過したときには,執行裁判所が差押債権者の行為がなくとも債権執行事件を終了させることができるような規律などを提案しているところであります。   最後に,「第5 差押禁止債権をめぐる規律の見直し」,中間試案の9ページ以下でありますが,差押禁止債権に関する現行の民事執行法第152条は,給与などの債権について,原則としてその支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分を差し押さえてはならないものとしながら,例外的に債務者の申立てによる差押禁止債権の範囲の変更によって対応することとしていますが,比較的少額の給与などの債権が差し押さえられる場面においては,差押禁止債権の範囲の変更の申立てがされることは少なく,また,債務者が最低限度の生活を維持することが困難となり得ることも想定されるとの指摘がされております。   そこで,今回の中間試案では,給与などの債権の差押えが禁止される範囲を見直すこと,この第5の1の辺りですが,あるいは債務者が差押禁止債権の範囲の変更の申立てをより利用しやすくするための仕組み,これが2,3の辺りですが,そういったものを提示して,引き続き検討するものとしているところであります。   以上が中間試案の内容の概要でございます。   最後に,今後の予定でございますが,冒頭に述べましたとおり,中間試案についての意見募集の手続が今後予定されております。また,部会につきましては,10月13日に第12回会議が予定されているほか,11月及び12月にも部会の開催を予定しており,その中で意見募集の結果も踏まえて,更に調査審議を行っていく予定であります。 ○井上会長 どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの山本部会長からの審議経過報告につきまして,御質問,あるいは御意見等がございましたら御発言をお願いいたします。 ○神津委員 連合として,この間,労働者の立場から部会の方に委員が参画し,意見を述べてまいっております。改めて,二つ,意見を述べたいと思います。   1点目でありますけれども,「第1 債務者財産の開示制度の実効性の向上」についてであります。   現行の財産開示手続の見直しと併せて,第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度を新設するという提案でありますが,新たな制度が,その対象とする第三者と情報の具体的な範囲については,情報を取得する意義や必要性,また情報を取得する側だけでなく,取得される者の立場等を総合的に勘案する必要があると思います。養育費や未払賃金など,生存権に関わるものに限定してはどうかと考えています。制度の枠組み全体について,社会的なコンセンサスを得るということが重要になると思います。   2点目でありますけれども,「第3 子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化」についてであります。   規律の明確化に当たりまして,飽くまでも引渡しは子の福祉のための手続であることを念頭に置き,議論を進めることが重要だと考えます。引き渡すという,ある意味緊急時のルールが,物ではない子供という心を持った生身の人間に関わるものであり,その当事者及びその関係者にとって納得できる制度として構築することが必要であると考えます。 ○井上会長 御意見ありがとうございます。   事務局からコメントはございますか。 ○山本部会長 ありがとうございました。   第1点につきましては,部会でも御指摘のような御意見が出ているところでありますので,債権者の範囲も踏まえて,どういう情報を取得できるようにするのかということについては,引き続き考えていきたいと考えております。 ○井上会長 ほかに御意見ありますでしょうか。 ○岩原委員 中間試案の3ページの「第2 不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策」でありますが,これを読みますと,1の(2)があるのである程度カバーできるかとも思いますが,例えば暴力団が支配株主である企業が買い受けたような場合,この1の(1)から見ますと,役員に暴力団員が就任していなければ,そういう企業であっても買受けができるということになりそうでありますが,このような規定だけで十分に暴力団関係者を排除できるのかどうか,やや疑問のような気がしまして,御意見を伺いたいと思います。 ○井上会長 では,事務局の方からよろしいですか。 ○山本部会長 ありがとうございます。   御意見も,今後の部会での審議で踏まえさせていただきたいと思いますけれども,この範囲を決めるに当たって,一つ考えなければいけないのは,先ほど申し上げたように,手続的に裁判所の方から警察に対して照会を行うわけでございます。その照会の範囲をどういう範囲のものにするか。余りにそれが多くなりますと,手続が遅滞したり,円滑に進まなくなるというおそれも存在するところでございまして,今のところ,役員であれば,それをかなり明確な形で警察に照会することは可能と考えられるわけですが,支配株主といったようなところまでいったときに,それがどの程度この手続に影響を及ぼすことになるのかといった点が,更に考慮しなければいけない点としてあるような気がいたします。岩原委員御指摘のとおり,正に(2)の「計算において買受けの申出をした」というところで,ある程度,カバーできる範囲と,どういう形で仕分けをするかということは,今後考えていかなければならないというふうに私どもとしても考えておりまして,御指摘の点も踏まえて,更に審議を進めていきたいと思います。 ○井上会長 ほかに御意見等ございますでしょうか。 ○内田委員 意見ではなくて,きちんとフォローしていないので純然たる質問なんですけれども,子の引渡しについて,子供の年齢というのはこの手続に何らかの影響があるのか,ないのかについて教えていただけますでしょうか。 ○山本部会長 その議論も,部会ではかなり議論がされたところでございまして,ハーグ条約実施法については15歳以下だったかと思いますが,その一定の年齢の仕切りがあるわけですけれども,国内における子の引渡しの場合には,債務名義がまずあるということが前提になっておりまして,その引き渡せという命令が一応裁判所から出ているという前提で,通常,一定の年齢を超えれば,そういう債務名義は出ないことが多いのではないかというふうには思うので,基本的には出た債務名義を実現するということが観点としては中心になって,執行機関の側で年齢というものを考慮するかというと,そこはどうかという意見もございました。   例外的に,その債務名義が出てからすごく長い年月がたって,子供が大きくなってしまったらどうするのかとか,そういうようなものももちろんあるわけなんですが,今のところは年齢という要素は直接的には子の引渡しの手続の中には出てこないということでありますが,その辺りの議論の中身も,この中間試案と共に公表されるであろう補足説明の中では恐らく一定の言及がされるので,これに対する御意見を伺って,今後審議を進めるということになろうかと思います。 ○井上会長 ほかの方いかがですか。 ○佐久間委員 先ほど岩原委員が言われたことに関連するんですけれども,当然,暴力団員の買受けの防止のときの暴力団員というのは,少なくとも暴力団排除条例など,民間企業であれば守らなければいけないといっている暴力団より狭くなるというのは非常に違和感があります。ですから,そういう意味では,やはり支配していればそれは当然対象になると。捕捉が難しいとかいう問題ではなくて,やはり暴力団員によって経営支配されている法人であれば,それは当然対象にならないと,条例で民間が負っている義務より裁判所の方が緩いというのも,非常に違和感があるという気がいたします。 ○井上会長 御意見として承って,また審議において,そういう御意見があったということを念頭に置きながら議論をしていただければと思います。 ○大塚委員 私は子の引渡しの強制執行に関して,これはルールを明確化するということは非常に大切なことだと思っております。   ただ,その中で,まずは間接強制を経てという硬直的な運用をすると,非常に不都合が生じる場合というのが現実的に起こるのではないかと思います。例えば,ここの(注1)にも書いてあります,「子の急迫の危険」,具体的に言えば虐待を受けている可能性が極めて強いとか,そういうケースが考えられると思いますが,やはりそうした場合に備えて,柔軟な運用をする余地というのは残しておく必要があるのではないかなと思います。 ○井上会長 ほかに御意見ございますでしょうか。   よろしいですか。   それでは,山本部会長,本日はどうもありがとうございました。引き続き部会におきまして,御審議のほどよろしくお願いいたします。   これで,本日の予定は終了となりますけれども,ほかにこの機会に御発言いただけることがございましたら,お伺いしたいと思います。   よろしいでしょうか。   それでは,御発言もないようですので,本日はこれで終了といたします。   なお,本日の会議における議事録の公開方法につきましては,審議の内容等に鑑みまして,会長の私といたしましては議事録の発言者名を全て明らかにして公開することにしたいと思いますが,いかがでしょうか。          (「異議なし」の声あり) ○井上会長 それでは,御異議もないようですので,本日の会議における議事録につきましては,議事録の発言者名を全て明らかにして公開することといたします。   なお,本日の会議の内容につきましては,後日,御発言を頂いた委員等の皆様には,議事録案をメール等の形で送付させていただきまして,御発言の内容を確認していただいた上で,法務省のウェブサイトに公開したいと思います。   最後に,事務当局から事務連絡がございましたら,お願いします。 ○吉川司法法制課長 次回の会議の開催予定について御案内申し上げます。   法制審議会は2月と9月に開催するのが通例となっており,次回の総会の開催日程につきましても,現在のところ例年どおり来年2月に開催し,御審議いただく予定でございます。具体的な日程につきましては,後日改めて御相談させていただきたいと存じます。   委員,幹事の皆様方におかれましては,御多忙とは存じますが,御配意いただきますようお願い申し上げます。 ○井上会長 ありがとうございます。   それでは,これで本日の会議を終了させていただきます。   本日はお忙しいところお集まりいただきまして,また,熱心な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。 -了-