法制審議会 民事執行法部会 第6回会議 議事録 第1 日 時  平成29年3月31日(金)自 午後1時30分                      至 午後5時44分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民事執行法制の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本(和)部会長 それでは,定刻になりましたので,法制審議会民事執行法部会の第6回会議を開催したいと思います。 本日は御多忙の中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。    (委員の自己紹介につき省略) ○山本(和)部会長 よろしくお願いいたします。   本日の出欠の状況ですけれども,石井芳明幹事が御欠席です。   それでは,本日の審議に入ります前に,配布資料の確認をさせていただきたいと思います。事務当局からお願いいたします。 ○筒井幹事 事前送付資料として,部会資料6をお届けしております。本日はこの資料を使わせていただこうと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,本日の審議に入りたいと思います。予定された審議事項については前回までで一巡して審議いただいたところで,本日から二巡目の審議ということになります。本日は,部会資料6「債務者財産の開示制度の実効性の向上に関する検討(2)」に基づいて御議論いただきたいと思います。  資料は大きく第1と第2に分かれておりますが,まず「第1 現行の財産開示手続の見直し」の部分につきまして御審議を頂きたいと思いますので,はじめに事務当局から御説明をお願いいたします。 ○松波関係官 資料の「第1 現行の財産開示手続の見直し」の部分について御説明いたします。   はじめに,資料の形式についてですけれども,今回の資料では,検討が必要となる項目ごとにゴシックの部分と明朝体の補足説明の部分に分けて記載しております。   便宜上,このゴシックの部分を「本文」と呼んで御説明させていただきたいと思いまして,本文では,検討の対象となる考え方などを記載しております。そして,それぞれ補足説明の部分で本文の内容や問題点などを補足的に説明することを試みております。  それでは,第1の1から順次,御説明いたしますが,「1 財産開示手続の実施要件の見直し」の部分ですけれども,財産開示手続は,強制執行を開始するための要件が備わっているにもかかわらず,その申立てをするのに必要な財産の特定をすることができないという場面で,債権者に必要な情報を提供するというものですので,その実施要件は,強制執行を開始するための一般的な要件を要求することが基本になると思いますが,平成15年当時の議論では,この手続の特質等を踏まえまして,一定の要件を上乗せしたものであったと思います。この部分では,この手続をより利用しやすい制度とするために,上乗せの部分を撤廃し,または緩和するという問題を取り上げております。この議論の際には,その見直しの必要性の有無に加えて,この制度の創設の際に上乗せ部分を設けた根拠や背景が現在でも合理性を有するものであるかどうかがポイントになるのではないかと思います。  1の中の各項目ですけれども,(1)では,「申立てに必要とされる債務名義の種類の拡大」という問題を取り上げております。平成15年当時の議論では,この手続により債務者が重大な不利益を被るのではないのかといった懸念がありましたため,この手続の特質を考慮して,一定の種類の債務名義については,これに基づいて財産開示手続の申立てをすることができないとされたところですが,この点につきまして,これまでの議論においては,執行証書の活用状況等について一定の社会状況の変化があるのではないのかとの指摘がされたところだと思います。そこで,制度創設後の社会状況の変化等をも踏まえた上で,申立てに必要とされる債務名義の種類を拡大することにどういった懸念があるのかといったことが問題になってくると思います。  資料の2ページ,「(2)先に実施した強制執行の不奏功等の要件の見直し」につきましては,これまでの議論では,民事執行法第197条第1項第2号の要件の疎明が困難であることを理由に,これらを緩やかな要件に改めるべきであるとの意見もございましたが,この要件に関する裁判実務を踏まえますと,その疎明がそれほど困難ではないのではないのかとの指摘もありました。そのため,まずは,その要件の見直しの必要性につきまして,更に検討することが必要であるのではないかと思います。  そして,仮にこの不奏功等の要件を廃止し,例えば,強制執行を開始するための一般的な要件が備わっていれば財産開示手続を実施することができることとした場合には,一定の事由が認められる場合に債務者が財産開示を拒むことができるようにするための新たな仕組みを導入することが考えられますが,その場合には,この一定の事由というものをどのように定めるのかといったことが問題となると思います。また,この一定の事由を審理判断する手続につきましては,例えば,強制執行を開始するための一般的な要件が備わっていれば,財産開示手続の実施決定をするというようにした上で,債務者からの執行抗告などにより,その執行抗告審において,一定の事由の有無を審理判断するといった仕組みが考えられるところでありますし,このほか,例えば,民事執行法第200条の陳述義務の一部免除の仕組みを参考にしまして,実施決定の手続とは別の手続の中で,執行裁判所が債務者からの申立てにより,陳述義務を言わば全部免除するというような判断をするための仕組みもあり得ると思います。  資料の4ページ,「(3)再実施制限の緩和」では,財産開示手続が実施された後一定期間内は,原則としてこの手続の再実施を制限するという現行法の考え方を基本的には維持しつつも,ただその制限される期間を短縮すべきであるという考え方を取り上げております。こういった考え方につきましては,この制度を設けました平成15年から現在までの間に資産状況の変化の頻度について,具体的にどういった変化があったのかが問題になろうかと思います。  次に,資料の5ページ,「2 手続違背に対する制裁の見直し」の部分では,この手続の実効性を向上させるという観点から,その制裁を強化するという考え方を取り上げております。現行よりも強力な制裁といたしましては,例えば,現行の過料の制裁を罰金刑に改めることが考えられますが,その手続の実効性をより一層確保するためには,罰金刑のみならず懲役刑をも含めて検討するという御意見もあり得るかもしれません。また,ここで問題となります手続違背の内容につきましては,不出頭,宣誓拒絶,陳述拒絶,虚偽陳述があるわけですが,これらのいずれを刑事罰の対象にするのかといったことも検討課題になろうかと思います。  資料の7ページ,「3 その他」の部分ですが,これまでの議論の中におきましては,財産開示期日における陳述義務の内容を見直しまして,過去に処分された財産を陳述義務の対象に含めるといった御意見もありました。ただ,このような意見につきましては,財産開示手続の目的を超えるのではないのかというような批判などがあったところでございますので,このような形で取り上げました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。  それでは,今,御説明のあった部分につきまして適宜項目を区切って御議論いただきたいと思いますが,まず第1の「1 財産開示手続の実施要件の見直し」という部分です。この部分には,(1)の債務名義の拡大,(2)のいわゆる不奏功等の要件の見直し,(3)の再実施制限の緩和という各項目がございますが,特に区切らず御議論いただきたいと思いますので,どの部分についてでも,どなたからでも結構ですので,御意見をいただければと存じます。 ○阿多委員 項目それぞれにいろいろあるのですが,全てではなく,一つずつという形で。 本文1の補足説明の2のところで,この対象となる債務名義について理論的なことは,2の御指摘のとおりなのかと思うのですが,平成15年当時は,言葉を違えて言うと,政策的な理由から別要件として新たな債務名義を限定したかと思うのですが,その状況については補足説明の2で書かれているような社会状況の変化はありますけれども,現状はまだ見直すまでの状況にはなっていないというふうに思っています。この1ページ末尾のところで御指摘されている,この手続による債務者の受ける不利益の程度が,財産を不当に差し押さえられて換価された場合と比べて必ずしも重大とは言えないとの指摘についてですが,ここは,従前の議論もこのような発言がありますけれども,よく考えてみた場合に,例えば,一旦執行証書に基づいて財産開示をした後,執行証書自体が法的に効力がないという形になった場合に,あらゆる財産情報を開示したという事実自体は,それはここでいう不利益としては,プライバシーの問題としては相当重大な不利益を被っているわけで,例えば執行証書に基づいて差押えをして財産的損害を被ったけれども,その填補を受けるという財産的損害とプライバシーの開示とでは,相当に実は質的に違いがあると思うのですね。財産開示をしてそれに基づいた情報に基づいて差押えをした,というのであれば後半と同じ議論になりますけれども,もともとの情報が一旦開示させられたということの不利益は相当重たいと思います。   何度も言いますが,一旦開示されたものを元に戻すことはできないわけですので,ここの御指摘のそれほど重大とは言えないというのは,違う見解というのは十分にあり得るわけで,やはり,そういう不利益の大きさを考えますと,まだ現状,債務名義を理論的にそろえるというところまではいっていないんじゃないかというふうに考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○谷幹事 今の阿多委員がおっしゃったことの補足としていくつか申し上げたいと思います。   今のお話で財産の状況が開示されることによりプライバシーが明らかになる,これが回復されない,というのは正にそのとおりなのですけれども,執行された場合と比べてみると,これはやはり保護法益が違う,保護法益の性質が違うということになるんだろうと思います。執行されて財産的な損害を被った場合には,財産的な回復というのが可能ですけれども,プライバシーの場合は回復ができないということで,そういう意味で保護法益の性質が違いますので,これを単純にどちらが重いか軽いかというふうな比較はできないのではないかということでございます。その観点で少し具体的に考えてみますと,今執行された場合に財産的な損害を被ると申し上げましたけれども,執行がされてもそれを止める手続というものがあるわけですね。具体的にここで想定をされている債務名義としては,仮執行宣言付きの判決,それから支払督促というようなものが想定されているわけですけれども,いずれでもですね,仮執行宣言付きの判決であれば,担保を積んで執行停止を取って止めるということも可能ですし,支払督促についても,これは請求異議で執行停止を取るというようなこともあり得ますので,そういう面でも執行の申立てがされたとしても,それが最後まで,財産的損害を被るというところまでいかないというふうな手続が用意されているという意味では,実態でもかなり違うと思います。   それからもう1点,執行証書,いわゆる公正証書ですけれども,これも同じ問題があるわけですが,特に言われている養育費等については特別に執行証書,公正証書で財産開示を認めてもいいのではないかという議論もありますけれども,これも少し具体的な場面を想定してみますと,その必要性というのは余りないか,むしろ逆に相当ではないのではないかなというふうに考えるに至りました。と言いますのは,養育費について公正証書で義務の内容を定める場合には,恐らく一般的には,債務者の側の職業とか財産の状況,双方の当事者が分かった上で公正証書を作るというのが一般的だろうと思うんですね。そうした場合に,執行の準備として財産開示の申立てをするという場合というのがどんな場面かというと,恐らく債務者が仕事を変わって,どこにいるかは分かったとしても,どういう仕事をしているのかとか,財産の状況がどうなっているのかとか分からないという状況だと思います。そういった場合は,むしろその生活状況が変わっているわけですから,養育費の支払義務の中身自体も改めてその状況に合わせて,協議なりあるいは審判手続なりをして定める必要があるという場面ではないかなと思います。   そうだとするならば,単純に公正証書があるからといって財産開示をして執行するということよりも,むしろ家事調停なりをして,養育費の内容を改めてその時点の状況に適合するような形で決めるというような場面が想定されるわけで,その方がふさわしいのではないかなというふうに思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○山本(克)委員 プライバシーということが,部会資料含めて頻出しているんですが,ここでいうプライバシーというのは何なんですか。それ自体,私は前も申しましたけど,理解しかねるんですが,特に弁護士会の先生方は,何をもってプライバシーとおっしゃっているんでしょうか。 ○阿多委員 従前からその御指摘は,余り注意せずに発言して申し訳ありません。少なくとも財産開示の場合は,債務者の全ての財産ですから,債務名義を超えるかどうかもかかわらず,全ての財産に関する情報が有名義債権者の方に知られるということをプライバシーという言葉で言っていて,あらゆる財産情報ということになろうかと思います。 ○山本(克)委員 それはプライバシーの使い方としておかしいんじゃないですか。過剰な開示が必要かどうか,つまり開示の上限の話とプライバシーの問題を混同しているとしか思えないし,法人の場合はどうなんでしょうか。法人にプライバシーを認める立場なんですか。その辺がよく分かりませんでした。 ○阿多委員 法人にプライバシーという議論をするつもりはもちろんありませんが,個人,法人を問わず,あらゆる財産情報が開示させられてしまう不利益,そういう意味です。 ○山本(克)委員 そうするとプライバシーではないということですね。  プライバシーという議論の立て方をした場合に,例えば,勤務先の情報は私企業に勤める場合はプライバシーだと普通考えてますけど,情報公開法上,公務員の場合はプライバシーだとは考えていませんよね。プライバシーという言葉を使う以上は,現行の法制度上何がプライバシーかというのを厳密に詰めていかないといけないはずなんですが,それがなされていないという印象を持ち,プライバシーという言葉を使うのはやはり私は望ましくないと思います。  営業の秘密については,顧客名簿や売掛代金債務の第三債務者が明確になるということは顧客情報の流出につながるので,私は営業秘密の保護という議論があてはまると思うんですけれども,プライバシーという言葉を内容を精査せずに,何か金科玉条のように使うということについてはネガティブでございます。 ○松下委員 一旦開示をするとその情報は,開示がなかった状態に戻すことは難しいという御議論で,特に執行証書等資料に挙げられている三類型については,財産開示の基礎にするのはやはり慎重であるべきだという御意見がございました。ここから先は質問になるのかもしれませんが,現在財産開示の基礎とできる債務名義でも事後的に執行力がなくなる余地があるわけです。というのも,ここに挙げられていない現在財産開示の基礎にできる債務名義とそれから現在財産開示の基礎とされていない債務名義とで類型的に執行力が覆滅される可能性に差があるという御理解なのでしょうか。今伺った政策的な線引きが合理的なものであるのかどうかといったことを確認させてください。 ○阿多委員 先ほど理論的,政策的という言葉の使い分けをさせていただきましたけれども,我々実務家の経験則として,やはり執行証書に基づく債務名義というのは覆滅される割合が高いと,統計は持っておりませんけれども,そういうふうなものをグルーピングはできるんだと。他の裁判所が関与して作成される債務名義と,やはり公証人の場合は,公証することが内容であって,必ずしも中身に関与されるわけではありませんので質的にもそこは違うんだと思いますけれども,少なくとも経験値として執行証書は債務名義が覆滅される可能性が高い類型であると考えております。 ○松下委員 話がそこまで来たのでもう一つ教えていただきたいんですけど,どういう理由で執行証書が覆滅される場合が多いんでしょうか。 ○阿多委員 公正証書の作成過程にいろいろな意味で瑕疵があると。作成能力も,場合によっては当事者の確認も含めてですが,作成の過程に瑕疵が介在する可能性が裁判所が作成する債務名義に比べて高いということです。内容の当否というのはもちろんありますけれども,それは少し外しても作成の現状,公正証書無効確認の訴えの類型を見ていただいても,作成過程に問題がある可能性が高いということが背景だと思います。 ○山本(和)部会長 確認ですけれども,阿多委員と谷幹事で若干ニュアンスの違いがあったように思うのですが,阿多委員は,執行証書だけを問題としておられるという理解でよろしいでしょうか。 ○阿多委員 典型的なものとして政策的な理由としては執行証書ですが,元のものを触る必要がないという意味では,裁判所が直接関与しない支払督促,仮執行宣言付きの判決も,三つとも現状のままでいいという理解です。執行証書だけを残すという趣旨ではありません。 ○山本(和)部会長 そうすると,裁判所が関わっているかどうかは必ずしも重要ではないということでしょうか。 ○阿多委員 理由付けに順位があるということであれば,やはり裁判所が関わっているかどうかというところは重要だと考えてはいますけれども,理論的に差がないじゃないかというところについて,先ほど申し上げた政策,我々が見る限りは差がある,少なくとも支払督促についても類型的に後で争われる可能性が高い類型だとは思っています。 ○谷幹事 今の部会長のお話もありましたので,仮執行宣言付きの判決と支払督促についても申し上げたいと思いますけれども,言うまでもなく仮執行宣言付きの判決というのは上訴ができるわけでございまして,特に地裁から高裁へ上がった場合には,何らかの形で原判決が見直されるのは3割程度というふうに一般に言われております。そういう意味でそれを大して変更される率が多くないんじゃないかというのかどうかは評価の問題ですけど,いずれにせよ3割変わるということで,こういう性質のもので財産開示を認めるのは妥当ではないだろうというふうに考えるのが私どもの立場でございます。   それから支払督促は,これは実務的にも,一般の市民の方が支払督促が来ても何もしないで仮執行宣言が付き,異議申立て期間が経過をするというのは,現にあり得ることですし,そういう場合にこれは内容的なことを争えますので,そこに定められた理由が存在しないということを主張して訴訟で争ってそういう旨の判決が出るということも,これは十分あり得ることだというふうに理解しております。   それから,執行証書の内容が後で覆滅される場合としてどんなものがあるかということなんですが,手続の瑕疵以外にも,そこに定められた義務の内容,その義務そのものが存在しないということで無効となることは,これは十分あり得ることですし,現にそういう経験もございます。それから養育費についても,先ほど申し上げましたように,その生活状況の変化によって,その義務の内容が後で協議ないし審判によって変更されるという意味での,公正証書の内容が変わり得るというのは十分想定されるところだと思います。 ○松下委員 お話を伺っていると仮執行宣言付きの判決とか執行証書とか支払督促を債務名義とすること自体おかしいように聞こえてくるのですけれども,しかし,現行は確定判決と同じ様に債務名義としているわけです。そこがどうしても私は受け入れられないという気がします。 ○谷幹事 債務名義にしているというのはそのとおりですけれども,それに対する手当ても様々な形で準備されているわけでございまして,先ほど申し上げた執行停止では,執行自体が途中で止めることができるということです。それに対して,財産開示手続の場合は,もうそういう手段はあり得ないというふうに思いますので,その点の違いというのはあると思います。 ○松波関係官 谷幹事の御発言に関してですけれども,財産開示手続につきましても,債務名義の内容に争いがあれば,債務者が請求異議を申し立てた上で執行停止の申立てをするということで手続を止めることは当然予定されていると思うのですが,いかがでしょうか。 ○谷幹事 手続的には確かにあり得るんだろうと思います。ただ執行,例えば不動産の執行なんかと比べたら,その期間の余裕の問題とかいうような点で違いがあるところで,一般の方が限られた期間でそういう手続があるということを認識して,自分でするかあるいは弁護士に委任をするかは別として,そういうところまでやることができるかどうかという実情を考えてみますと,なかなか実効性というのも乏しいところがあるのではないかなということでございます。 ○山本(克)委員 扶養料等の変更を申し立てるのは,むしろ債務者側である場合のような事例を挙げておられたと思うんで,それは申立責任の所在が債務者側にあるのを債権者側に不利益を転嫁しているようにしか聞こえなかったんですけれども。やはりそれは,調停の申立義務がむしろ債権者にあるかのような,義務と言うかどうかは別として少なくとも,負担を債権者に負わすというのはいかがなものかと。むしろそれは,手続法の構造としてはやっぱり債務者側が扶養料の変更の審判の申立てをすべき場合なんじゃないでしょうか。 ○谷幹事 債権者に義務を負わせるという趣旨で申し上げているのではなくて,執行証書については,そういう事情の変更によって変わり得る場合があるということを申し上げたかったわけでございます。結果としては,債権者が何らかの手続をとらないといけないんじゃないかというのは,執行証書についてはその通りだと思いますけれども,しかしそれは執行証書である以上は,そういうものだというふうに理解をすべきであろうと思います。要するに執行証書というのは,ある意味では私的な合意を公正証書にしたものですので,審判とはやっぱり性質が違うというふうに思います。 ○山本(克)委員 債務者側の事情の変更があり得るのは,判決による場合,家事審判による場合にも同等のことがあるわけですよね。失職してしまって再就職して収入が激減するとか,やっていた事業が倒産してしまって,その後正規職員としてどこでも雇ってもらえないので,いわゆるフリーターみたいなことをしているというようなことは,債務名義の種類にかかわらず生じるのに,なぜ執行証書のときだけをあげつらってそういうことをおっしゃるのかがよく分からない。つまり継続的な給付の問題であって,執行証書の問題ではないような気がするのですがいかがでしょうか。 ○谷幹事 何かここに焦点化されているようですけれども,要するにどこで線を引くかの問題ですよね,これは。財産開示の申立要件としての債務名義についてどこで線を引くかということで,執行証書が適切でないということの理由として,内容的には変わり得ることがあると。それで養育費については,途中で事情が変更することがあるから,財産開示の要件としての債務名義に入れるべきではないと。それだけで申し上げているわけではなくて,その他にも先ほど申し上げた手続的な問題,それから内容的な問題で確定判決等と比べて変わり得る,その一つの中身として養育費ではこういうことがあるんじゃないんですかと申し上げているのであって,これがあるから養育費は駄目なんだとかそんなことを申し上げているわけじゃなくて,もしそんなことを言っているんだったらおっしゃる反論も論理的に成り立つのでしょうけど,そうではございません。 ○山本(和)部会長 かなり議論になっていますけれども,重要な問題ですので,できれば他の委員・幹事からも御意見を伺いたいと存じますが。 ○青木幹事 余り説得的ではないかもしれませんが,今瑕疵ある執行証書によって誤って財産開示がなされるおそれがあるということが指摘されているかと思いますが,むしろ財産開示手続を強制執行の前の裁判所の関与する手続として捉えることもできるのではないかなと。もちろん,執行裁判所が債務名義の中身を見ると,それで手続を職権で止めるというわけではないんですけれども,債務者に対して適切に手続を教示することで,むしろ不当執行を防ぐということにもなる,その機会にも成り得るのではないかなと考えます。 ○阿多委員 青木幹事の御発言の趣旨は理解できるのですが,実際の財産開示の申立ての裁判所の審査については,御承知のとおり債務名義の中身について判断されるわけではありませんので,後のところで出てくる,裁判所の方が実施決定の要件について諸々検討するというような手続を想定されるのであれば別ですけれども,原則財産開示の実施決定がなされてしまうということを想定すると裁判所の関与があるので,ということは手続保障にはならないんじゃないかと思います。   山本克己委員からの理論的なところで差がないんじゃないかというのは,弁護士会の委員や幹事は承知した上で,ただ実際の,何度も言いますように債務名義の作成の状況において,執行証書の作成における状況と裁判所が関与して作成される他の債務名義とでは事実の問題として認識なりに差があるというところを踏まえて御発言させていただいているんだと私は理解しておりまして,松下委員からも御指摘があった理論的に差がないじゃないかと,いろいろ手当てがされているんじゃないかということを十分承知した上で,実際に作成されている現状を見ますと執行証書の作成についてはかなり問題があるというところを申し上げているつもりです。 ○山本(和)部会長 そこの部分というのは,ある程度何らかのエビデンスみたいなものはあるんですか。 ○阿多委員 公正証書の無効確認の訴えの件数がどれだけあるのか,とかいうような統計的なものがあればいいんですが,それだけの統計というのは知る限りにおいてはありませんので,本当に経験値しかありませんが,かなりの弁護士が経験する事件類型だというふうに思っています。 ○垣内幹事 従前の会議で申し上げたこととおおむね重なることになるのかもしれませんけれども,先ほど阿多委員それから谷幹事の御発言で,情報というものは一旦開示されると開示されなかった状態にすることはできないということは,それ自体としてはそのとおりかというふうに思いますけれども,そのことによる不利益をどの程度深刻なものと見るのかというところについての評価に違いがあるのかなと感じておりまして,谷幹事の御発言の中には一概に軽重を付け難いというような御発言もあり,そうであればこの場合だけをカテゴリカルに,より厳格な要件に服せしめることが合理的なのかと疑問もあろうかと思います。他方,阿多委員の御発言は,恐らくこれは,情報というものの価値がより大きいのであるという理解を暗黙のうちに前提とされているのかなという印象を持ちましたけれども,そのように言い切れるのかどうかということについて,私自身なお疑問が残るところであります。   それから,債務名義の効力が覆滅する可能性の大小という点に関して申しますと,第一審判決に仮執行宣言が付されている場合に関する3割という話がありましたけれども,3割というのは一審判決全体を母集団とした場合の数字だと思いますので,仮執行宣言が付いている場合についてどうかというのはちょっとよく分からないんですけれども,そういう観点から申しますと控訴審判決の場合であったら,もっと少ないのでいいということになるのかどうかという疑問がありますし,仮執行宣言をあえて付しているということは,それだけ権利者の本来であれば実現されるべき権利の実現が遅延するという不利益を解消するための制度として執行停止の制度などもセットとした形で仕組まれているものでありますので,それについて財産開示が必要ないということになるのかと。   御指摘の点はですね,およそ情報に関わるものですので今回の部会資料で掲げられている論点全てに関わる問題ではないかというふうにも思われるところで,その点をこういう形で強調されますと,現行法以上にこの制度の範囲を,射程を広げていくのはどの論点についても難しいという結論になりはしないかという感じもいたしておりまして,もしその辺りについても今の段階でお見通しがあるようであればお伺いできればと考えております。 ○阿多委員 入り口のところで財産情報の重要性ということを強調すると,他のところも実効性の拡大,実効性を強化するという方向に行けないのではという御指摘は,こちらも発言をしつつ意識しているところでございまして,結局はバランス感覚の問題だと思います。戻りますけれども,垣内幹事御指摘のうち,仮執行宣言については,本案裁判所の方が重視しているということはもちろん認識しています。ですから,債権者が財産情報を自ら持っている場合については,当然その仮執行に基づいて執行されると。ですから債務名義全体がおかしいということを考えているのではなくて,債権者が情報を持っていればそれに基づいて執行すればいいわけですが,今回のところは,現時点では債務者が持っている財産情報では全部回収できない,そこで更に債務者財産の情報について入手するためにはどこまでのことを満たさなければいけないのかということで,区別した議論は可能かと考えています。仮執行については,全てではないですが確定という時間的な経過をもって債務者も争わないということになれば,より確実な,先ほどの控訴率の問題と,債務者が争わずに確定してしまうということになれば,より争われる可能性は低くなるわけですし,そういう意味で仮執行,さらには支払督促,執行証書についてはもう少し紛争の発生する確度が低くなるような状況にならない限りは,債務者財産の情報取得の手続に直接入れることは妥当ではない,そう申し上げているつもりです。 ○中原委員 本来であれば,第2のところで議論すべき話かもしれません。私どもの銀行は弁護士会との間で弁護士法23条照会についての協定は締結していませんが,協定では照会の要件としての債務名義は,執行証書は除くが,支払督促や仮執行宣言は弁護士法23条照会の対象としていると聞いています。民事執行法の財産開示手続では,支払督促や仮執行宣言は除外すべきであるという御主張は,弁護士会の協定のスタンスと整合しないような気がしますが,いかがでしょうか。 ○阿多委員 23条照会との関係でこの場でどこまで議論するのが適切なのかはちょっと留保したいところはあるのですけれども,少なくとも一部の大規模な金融機関等と議論するに際しては,23条の発令に際しては弁護士会の方で内容をチェックしているということを前提に,裁判所に代わるほどのチェックをしているということを前提に照会をお願いしているということでしていますので,執行証書うんぬんについても内容をチェックした上での照会という形で現状取り込むことは,そういう扱いはさせていただいている。もう少し細かく言うと,債務名義の種類によって金融機関ごとにどの場合にいけるのかについては,個別にまた金融機関とお話をしているところで,債務名義全て同じように扱っているということは確かなかったと記憶しております。 ○山本(和)部会長 内容をチェックしているというのは,請求権の存否とかそこまでチェックしているのですか。 ○阿多委員 金融機関によってどこまでの債務名義を求めるのか,金融機関自体が主文だけでいいとかいうのもありますけど,23条照会に際しては,必要性なり債務名義の成立も含めて,事情をそれなりに書かせた上で会長名義で中身を審査しており,形式的な審査ではありません。 ○道垣内委員 具体的な話にはそんなに強い見解があるわけではないのですが,説明がどうしても分からないので教えていただけるとありがたいと思います。資料1ページの最後に,「財産を不当に差し押さえられて換価された場合」と書いてあるんですが,これはどういう場合のことを言っているのでしょうか。 ○松波関係官 「不当に差し押さえられて換価された場合」として想定しておりますのは,いわゆる不当執行の場面でして,債務名義が存在し,差押命令が発令され,換価の手続がされたけれども,事後的にその対象となっている権利が存在しないことが判明したという場合を想定しています。 ○道垣内委員 よく分からないのですが,不当な場面を2つ並べて比較しているように思うのですが。 ○松波関係官 御指摘のとおりです。不当に情報が開示されてしまった場合と,不当に財産が差し押さえられて換価されてしまった場合を比べて,どちらが重大な不利益なのかという御議論がされていたのではないかと思いましたので,そのように資料を作成してみました。 ○道垣内委員 そうしますと,資料としては,そのような不利益はよくあるよね,という文章になっているのでしょうか。 ○松波関係官 よくあるということを申し上げるつもりはないのですけれども,ここで議論の対象となっておりますのは,情報が誤って開示されてしまった場合の不利益の評価についてですので,財産の差押えの場面と比較するに当たっては,先ほど申し上げましたような不当執行の場面を念頭においた議論になろうかと思います。 ○道垣内委員 意味がいまだによく分からないのですが,さらに申しますと,「制度創設後の運用状況を見る」というのもよく分かりません。制度を変えるときに,現在のように縛られているときの運用状況から考えることに何か意味があるのでしょうか。 ○松波関係官 この制度の創設の際の議論では,新しい制度を作るに当たって債務者に情報開示を義務付けることに対する様々な懸念があったかと思いますが,資料の1ページの下から2行目で,「制度創設後の運用状況を見ると」と書きましたのは,現在では,この制度が現に運用され,情報開示が行われておりますので,今回の議論では,改めて債務者の被る不利益を評価することができるのではないかという趣旨でございます。 ○山本(和)部会長 いかがでしょうか。 ○阿多委員 先ほどの説明の訂正というか,正確な情報でして,23条の照会に関しては,協定を結んでいるところに関しては,公正証書は最初から除外をしています。仮執行については先ほど言ったような審査手続を理由に対応しているということです。公正証書に基づく本店への照会は行っていないということです。 ○山本(和)部会長 中原委員の御質問も執行証書を除いていることが前提だったと思います。仮執行宣言付きの判決とか支払督促については照会をしているけれどもという御質問だったと思います。 ○山本(克)委員 弁護士会の意見にばっかりいちゃもん付けているようで恐縮なんですが,債務名義を限定するという考え方を維持すべきだということですが,それは第2でこれからこの後に議論する,第三者からの債務者財産に関する情報取得の場合にも同様にお考えになるということですか。 ○阿多委員 第三者からの情報取得についても財産開示と同じような要件は課すべきだというふうに考えております。後ほどまた触れたいと思います。 ○山本(和)部会長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。 ○佐成委員 一読目のときは,この論点について特に発言はしなかったかと思います。一読目では,学者の先生方と実務家の皆様,特に弁護士会の先生の御意見のやり取りなどを拝聴しまして,どちらかというと弁護士会寄りの発言をしたかと思うのですが,本日の議論を今までずっと聞いてまいりますと,やはりこの上乗せをしているということに,今の段階では非常に不自然な印象を受けます。もともと平成15年の段階では,新しい制度ということで慎重にやられたということは非常に評価できると思うのですが,現時点で改めて実効性を高めるということで議論をしている中で,本当にこういった上乗せを維持することに政策的な意味があるのか疑問に思います。これを維持することは理論的にはかなり難しいということが学者の先生方から総じて指摘されているところでございますし,私も素人ながらいろいろ意見を聞いておりますと非常に分かりにくいという印象です。確かに執行証書が濫用的に使われたことが実際にあるということは私も承知しておりますけれども,それはまた別の話であります。債務名義があって強制執行ができるという状況で,その前段階の財産開示手続で債務者の現在の財産状態のみを開示するというときに,その中にはもちろん営業秘密とか,そういった重要な情報が含まれることはもちろんですけれども,これだけ財産状態の変動が激しい世の中で,果たして一回開示されたから取り返しが付かないということで,そこまで極端に保護をするということには,やや違和感がございます。感想的で申し訳ございませんが,重要な論点ということなので一言申し上げました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。大変貴重な御意見だったと思います。 ○谷幹事 この論点もそろそろ終わりだと思いますので,最後に実情がどうなのかというような辺りもお考えいただきたいなという意見を発言させていただきますが,仮執行宣言付きの判決と支払督促について,こういう実情ではないかという観点からの発言でございます。仮執行宣言付きの判決で仮に財産開示を認めるとすると,支払を命じられた側は控訴して,一審判決がおかしいということで争っている状況なわけですね。そういう中で,仮執行宣言付きの判決があるからといって財産を開示しろと言われて,義務そのものは控訴審の判決で決まるわけで控訴審の判断を待つことができるのに,もちろん執行がされればそれを止めるとかいろいろな手段をしないといけないんですけれども,義務の存在そのものを争っているにもかかわらず,財産だけは開示をさせられるというような状況がどうなのか,本当に必要なのかどうなのか,実情を踏まえてふさわしいのかどうかというふうな素朴な観点からみてもですね,実務家としてはなかなかそういうことまでやらせるというのはどうかなと考えております。これが仮執行宣言付きの判決についてです。   それから支払督促は,これは御承知のとおり,債権者側の申立てのみに基づいて,裁判所書記官が発令をすると。それに対して債務者の側で異議があれば異議を述べることができる,異議がなければ,2週間でしたか,一定期間たてば仮執行宣言の申立てをして執行宣言付支払督促が発令される,要するに債権者側からの申立てのみによって発令されるものです。そういう手続の特質からしても,実際はそういう義務が存在しないにもかかわらず,支払督促が発令されて,仮執行宣言が付くということは,これは十分あり得ることです。ここら辺りが確定判決とは違うところだと思います。先ほど理論的な根拠が余りないというような御議論もありましたけれども,確定判決の場合は,あるいは確定した審判でもそうですけど,内容的には確定をしているわけで,そういう意味で確定力があるわけでして,それ以外のものについては,仮執行宣言付き判決にしろ,執行証書にしろ,支払督促にしろ,内容的な確定力がないという意味では,理論的にも全く違うだろうというふうに思っております。 ○阿多委員 先ほど佐成委員の方から,現在の財産状況の変動のスピード感を考えると政策的にこだわる理由があるのかということについて消極的な御意見がありましたけれども,お考えいただきたいのは,ここで開示させられるのは全ての財産に関する情報であって,債務名義とは関係がないものになるということです。例えば,債権額10万円の債務名義で,後でお話が出てきますけれども民事執行法第197条第1項第2号の要件に関して,本社が自社物件でない,財産がどこにあるか分からないという形になると,非常に形式的な説明でありますけれども,197条要件を満たす形で財産開示の命令が出される。その結果,貸借対照表の資産の部の内訳について全て開示しなさい,ということが起こる可能性がある手続,もちろんその途中途中で救済手続はあるわけですが,そのような可能性がある手続でもかまわないというふうにお考えであれば,それは法人の方でも受入れされるんだと思いますが,やはり債務名義の金額にかかわらず全てをさらけ出さなければいけない制度なんだということをお考えいただくと,影響はかなり大きいんじゃないかということも御理解いただけるのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 現行の制度は,開示義務が一部免除される場合がありますので,必ずしも全てをさらけ出さなければいけない,というわけではない制度になっているんだろうと理解しておりますが,御指摘は御指摘として承ります。   それでは,債務名義の部分については,私の理解したところでは,かなりの委員,幹事から部会資料1ページの(1)に記載された考え方と同様に,債務名義の種類で限定を付けないという考え方でよいのではないかという意見が示される一方,弁護士の委員,幹事から,執行証書を中心でありますけれども,仮執行宣言付き判決や支払督促も含めて,現行法上の仕切りを維持するのがよいのではないかという意見が示されたということだと思いますが,よろしゅうございますか。   それでは,この要件のところは,いわゆる不奏功要件に関する「(2) 先に実施した強制執行の不奏功等の要件の見直し」や,「(3) 再実施制限の緩和」という議題もありますので,これらの点についても御議論いただければと思います。 ○阿多委員 不奏功要件について,私は従前全て1号2号撤廃という形の御提案をさせていただいておりますけれども,裁判所の実務の状況を踏まえて今回の補足理由のところで,実情は2号要件の方で,部会資料3ページの補足理由の2の第2段落の「また」というところで,「制度創設後の運用状況に関して,不奏功等の要件のうち上記②(民事執行法第197条第1項第2号)については,それほど疎明は困難ではないとの指摘がされている」ということで,知れている財産についても言わば通常行う調査を行って判明すれば足りると。そうなりますと,現状の運用になるとは思いますが,1号で考えている不奏功と,2号の要件では,必要性に関する判断の中身は相当差があるというふうに思います。私は,2号要件を,だから1号と同じレベルに戻せということを申し上げているつもりはありませんが,現状の2号の運用ということを考えると,特に理解する限りにおいては,近時の財産開示の申立ては,ほとんど2号で申立てをしていて,1号のものはない,逆に言えば,実務家は1号をもう諦めているというのが実情かと思いますけれども,であるならば1号の要件を残すことは問題ではないか。むしろ4ページのところで御指摘あるような一旦開示決定をしていただいて,その手続の当否について債務者側でもう弁済をしているとか,財産はあることは知っているとか,開示決定を継続するに不適当な事由があれば債務者の方に主張立証させるという手続構造がこの財産開示の実効性確保には望ましいのではないかというふうに思いますので,今の運用を踏まえても不奏功要件を残すということは適切ではないと思います。   それから,仮にという話になりますが,不奏功要件を維持するにしても今の1号の文言,197条ですと完全な弁済を得ることができなかったということは,配当手続において全額の配当ができない限りという形の解釈運用がされているわけですが,そうしますと,動産執行したけれどもそもそも執行不能になったという場合は,1号要件を満たさないという形になっていますので,1号の表現自体を改める必要があるのではないかと次善の案で考えていますが,そういうことを提案したいと思います。 ○山本(和)部会長 確認させていただきたいのですが,2号について現状で仮にこういう運用がされているとしたときに,阿多委員の御提案は,その現状の運用を今の要件ではうまく必ずしも書ききれていないので,それで違う文言にしたらどうかということでしょうか。 ○阿多委員 むしろ今の運用は,立法当時考えていた要件よりもかなり緩やかな要件で運用している,書ききれていないというよりも運用の方が立法からずれているという理解です。 ○道垣内委員 また自分の意見があるわけではないのですが,よく分からなかったのですで,お伺いします。民事執行法第197条第1項第1号を満たすというのは諦めて2号でやっているという,阿多委員のお話というのは,2号についての疎明ないしは立証の責任を転換すべきであるという御主張でいらっしゃるわけですね。 ○阿多委員 私自身は正に御指摘のとおりで,原則と例外を逆転してはどうかと。部会資料4ページの「第2回会議では」というところで挙げていただいている意見が望ましいのではないかと。 ○道垣内委員 そのような見解にも十分な合理性があると思いますので,特に反対をするわけではないのですが,仮に,疎明しなければいけないというのを債権者側に義務として課すとした場合に,1号は制約要因ではなくて,不奏功ということが完全な弁済を得られないということの疎明に該当するという規律として位置付けられるのだろうと思うのです。したがって,疎明することの責任を転換するという改正をするということであれば,それはそれで理解できるのですが,1号だけ削るというのは,余り意味があることではないだろうと思います。 ○山本(克)委員 私も1号を削る意味がよく分からないんですが,「又は」なので,あってもなくても一緒だということになるし,おっしゃったように動産執行の不能の場合は書き加えるとかして残すということも十分あり得ると思います。2号の方も立証責任の転換をするのであっても,1号要件に該当する場合には,なんと言ったらいいのか分かりませんが,債務者側の疎明による阻止というものが許されない場合の一つとして維持することも可能ですし,おっしゃっていることが別々の余り関係のないことを一緒くたに論じておられる気がするのですが。 ○今井委員 阿多委員と方向性は弁護士会の意見として同じなのですが,私はもう少しすっきりとしたお話をさせていただきたいと思います。   第2回でも申し上げましたけれども,財産開示は,言うまでもなく債務名義に基づく強制執行をする上で財産が分からない,若しくは分かっているだけだと全然意味がない,そういうときにやる国の制度であると。財産開示制度とは,本来そういうものであるのに,それなのに一度失敗しなさい,若しくは一度失敗することが明らかだということを言ってくださいという制度設計自体が既に間違っているというふうに,平成15年改正の時からずっと思っていました。現に,弁護士が財産開示を申し立てる上でだんだん人気がなくなって,まあ当初から人気がなかったんですけど,やっぱりこういうことをやらなきゃいけないというのは制度の立て付けとして論理矛盾若しくは本末転倒ではないかというふうに思うわけで,特に一回失敗しなさいという,強制執行をするための制度なのに,一度失敗しなさいというのはどう考えても制度が矛盾していると言わざるを得ない。また,実際失敗していなくても,うまくいかないんですよということを疎明しなさいということも,疎明自体をですね,厳格にやったらやっぱり同じことになるわけで,この制度の立て付けは余りにも濫用を,濫用防止ということを過度に考え過ぎちゃって,小さく使い勝手の悪い制度になってしまった。ですから,今回の改正は,完全に1号2号全部撤廃でないと意味がないというふうに私はそう強く思っているわけであります。ただ裁判所の方で,2号要件の疎明にかなり配慮していただいているのは,むしろ制度の不備や欠陥を,裁判所の運用の中で工夫してワークできるような配慮をしていただいている,私はそんなふうに考えている次第です。 ○阿多委員 山本克己委員から御指摘がありましたが,1号だけの撤廃ということを申し上げているつもりはなくて,最初に申し上げましたように,私自身は197条要件全体の撤廃です。1号2号のことに触れましたのは,今の運用が法文とは少し離れた運用と,もともとは2号は1号とほぼニアリーの要件を課しているものという形で施行当初は運用されていたんですが,近時は,言葉はちょっと雑な言い方をしますと,保全の必要性と同じようなレベルのもので運用されていると。そうなりますと,運用がもともとの立法当時と違うんじゃないかということを申し上げたつもりです。原則は撤廃で,ただ,全く債務者の手続保障を考慮しないということについては問題があると考えまして,証明責任を転換して手続保障を事後に入れてはどうかという提案の趣旨でございます。 ○山本(和)部会長 事後に手続保障を入れるという提案の趣旨は,発令の要件としては特に何も変えずに,実施決定を後から取り消すという,取消申立ての要件として,この完全な弁済に支障がないことが明らかであるという要件を入れるということでしょうか。 ○阿多委員 取消決定という整理で結構かと思います。執行抗告ではなく,実施決定の取消しという形になると思います。 ○山本(和)部会長 今井委員はそこも要らないということですか。 ○今井委員 はい,そうです。 ○山本(和)部会長 少しそこは違うということですね。ほかに。 ○山本(克)委員 手続保障とそれを呼ぶべきかどうかはかなり疑問です。それは単に必要性要件の主張・立証の責任の分配の問題でしかなくて,手続保障とは何の関係もないと私は思います。   私が申し上げたかったのは,1号というのは本当に撤廃してよいのかということで,仮に,今井委員のところまで行かれるのであれば1号を撤廃するというのは十分にあり得るのですが,なお必要性要件を残すのであれば1号を残しておいて,これがある場合には,もはや取消申立てなり,執行異議なり,執行抗告なりなんでもいいんですが,そういうものは一切許さないという要件として維持する価値はあるんじゃないかということを申し上げます。 ○阿多委員 部会資料4ページのところでは,2号しか挙げていませんので,むしろ山本克己委員の御指摘のとおり,逆に1号を満たすとそもそも取消しにはならないという意味で取り込むということはむしろ望ましい御提案だと思って,反対しているつもりはありません。 ○山田幹事 基本的には,執行を行うための財産等を積極的に調査をするのは債権者の義務であるというのがやはり一番大きな立て付けではないかと思われますし,また先ほど来,弁護士実務の観点からも強調されましたように財産関係の情報を開示するのは債務者にとってそれなりの負担にはなるということでありますので,債務者にそれを開示させるということには一定の正当性が要るとの原則論に立った上で,2号の疎明がさほど難しいものではないという前提に立つのであれば,私は必ずしもこれらを排除するということをしなくてもよいのではないかと,大原則を変えるほどの支障にはなっていないのではないかと思います。 ○相澤委員 先ほど来お話がございますように,裁判所の運用といたしまして前任者も申し上げておりましたとおり,平成28年以降でみますと,少なくともこの2号要件の疎明がないということで財産開示手続の申立てが却下されたという例がないということでございます。2号要件の疎明自体が非常に無理なことをお願いしているものではないということは前提としていただいてよろしいのかなと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。裁判所の運用について御紹介いただきました。ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 同じ話の繰り返しをしてアピールをしたいのかもしれませんが,とにかく一旦強制執行を申し立てて不能ないしは開始できなかったことを経ないといけないという1号がなぜあるのかという,2号でうまく回っているからいいじゃないかということで考えるのではなく,そもそもなぜ1号が設けられたのか,本当に1号が必要なのかということで考えるべきで,1号2号というのは,当初想定していたプライバシーのことは避けますけども,一旦回収できなかった後に初めて債務者財産の情報を取得できるという手続を,手続構造を採ること自体の当否の問題でありまして,運用がうまくいっているから改正の必要がないんじゃないかということにはならないと思います。もっと言うと,ある程度模索的な情報収集ということを考える必要があるかと思っておりまして,今の2号というのは,債権者の方で自社物件でないその他の財産情報について収集できないということを説明して,それで財産開示を求めるわけですが,ここで言っているのは,他に財産があることを知りながら財産開示を申し立てるということが不当だ,不適切だという判断があって,財産情報について一旦執行しなくても分からないと,だから債務名義を持ちながら今の債務者の財産状況が分からないからもう申立てをすると,そういう価値判断の転換があるんだと思うんです。一旦執行できなかったということを要件にしなければいけないという制度の立て付けを改める必要があるんじゃないかと,そういうことを申し上げているつもりです。 ○今井委員 部会資料2にもありましたとおり,財産開示は,発足当初からせいぜい1,000件くらいで,現在は1,000件割っているという統計だったと思うんですが,その最大の原因は私はこの不奏功要件だと思っていますし,理論的にもさっき申しましたとおり,これから強制執行する上で,その財産が分からないから,若しくは不十分だから申立てをするわけでありまして,それなのに1号は言うまでもなく,2号の方もですね,やっても多分駄目だということを,疎明ということを要件としていると。だけど別に要件でなくても,いや分からないんですよと言えばそれで本来だったら申立てができなければ,何のための疎明なのかと。我々の立場で言えば,もう十分にあるなと,あればやりますよね,強制執行。でやりました,それでもし空振りました,それでもう一回じゃあこれで財産開示やってみようかと,そういう制度が実効性があるかどうかです。やっぱり執行の前の制度だということをよく分かっていただきたいなと思うわけであります。ユーザーとしての我々弁護士もこれを使い勝手が悪いと思うわけであります。   それから,なんで疎明しないといけないかという不可解な感じとして,いっぺんやりなさいって言いながら,これから強制執行するのに分からないんだと。自力執行の禁止だからこそ財産開示制度があるわけでして,そういう意味からしても,いっぺんやっても無駄だってことをちゃんと疎明してやれっていう制度は,本来破綻していると思われるし,それがこの制度の大きな弊害,阻害要因になっている。これは私の個人的な見解です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。  意見が分かれているようですが,もし発言されていない委員・幹事の方から御意見があればお願いいたします。 ○成田幹事 阿多委員に質問ですが,取消しの申立てということを想定されているようですが,取消しの要件というのはどういったことを考えておられるのでしょうか。 ○阿多委員 具体的に詰めているわけではないんですが,部会資料4ページのところでも,従前の弁護士会の提言では「正当な理由」というような形の抽象的規範を出して裁判所の判断に任せるようなことを言っていたんですが,そのような抽象的なものでは問題があろうという形で,第2回のときに一つの例として発言したわけです。   先ほどの山本克己委員の言葉によると,逆に197条1項1号,2号で挙がっているのを裏返して要件にするというようなことになると思っています。 ○勅使川原幹事 この部分の不奏功等の要件の上乗せが何のためにそもそもあるかということであり,債務者に属する財産情報の開示として多少は謙抑的だろうという趣旨で入っているかと思います。それについては,やはり有名義債権者である限りは,差がなく配慮すべきであるのだと思います。   先ほどの議論に戻ってしまいますけれども,その意味では,やはり有名義債権に差を付けるというところから,まず出発点がおそらくは違っていて,私は有名義債権である以上に差はなく,現状でもよろしいのではないかと思います。 ○谷幹事 細かい点なんですけれども,先ほど阿多委員が1号2号の要件を裏返して,取消しの要件にするというのも一つの方法だというふうにおっしゃいました。それはそれで,そうだろうというふうに思いますが,仮にそうする場合,先ほどからも出ていたんですけど,現行の1号では配当等がなされたということが要件になっておりますが,これは私の理解では,実際,配当又は弁済金の交付がなされないといけないと,ということは逆に言うと債権執行で取立てをして,それが債権額を満足するものでなかったという場合は当たらないというふうに運用されていると理解しているんですが,それでよろしいかどうか。よろしければ,仮にそうであれば,そこはそういう要件ではなくて,取立て等をした場合であっても,要するに様々な形で何らかの回収はしたけれども債権額を満足させることができない場合というふうに広く定めることが妥当だというふうに考えています。 ○垣内幹事 基本的には情報を取得する必要性がないのに財産開示をさせるということは正当化できないように思いますので,主張立証責任をどちらに負担させるかという問題は理論的にあるかと思いますけれども,何らかの形で知り得ている財産に対して強制執行しても,やはりそれでは不十分だということが前提になる制度ではないかというふうに思います。   現行法はそれを素直な形で債権者の疎明すべき要件として掲げている。それに対して部会資料4ページの末尾,(2)の末尾のところで書かれている考え方は,その点を転換するというもので,そのような考え方もおよそ全くあり得ないものではないように思いますけれども,先ほど今井委員の方からは,これも含めて不要であるという趣旨の御発言があったかと思いますけれども,そこまでいくのは私としてはなかなか難しいのではないかという印象をまず持っております。   4ページに書かれているような形で転換するという,取消申立ての機会を付与するということについてですけれども,これも現在の実務に対する評価等が関連してくるかというふうに思いますけれども,取消申立てという形にした場合には,最初に債権者の方から申立てをして,それについて決定をして,それに対する取消申立ての期間があって,申立てがあればそれについて審理判断をすると,その後で初めて開示がされるかどうかということになるということが,取消申立てでなければ,そこまで待たなくて済むかもしれませんけれども,そういうことになるのではないかと。そうしますと,これも手続の仕組み方の工夫というものはいろいろあるのかもしれませんけれども,一般的に言うと手続が長期化し,財産開示が実際されるということに関して言うと遅延する危険性というのもあるような感じもいたしまして,それによって得られるメリットが現状の実務等の比較においてそれほど大きくない,あるいはほとんどないということであったとしますと,そうした改正をするということの必要性というのは疑問の余地があるのではないかという感じがしております。 ○阿多委員 手続開始後の時間的なことについては御指摘のとおりかと思いますけれど,2号についてもそれなりの調査をするのに時間を要して手続が進むという形になるかと思います。むしろ債務者の方でこういう財産の所在を債権者が知っているんだということを指摘される方がよほど簡便ですし,開始後の時間の経過だけじゃなくて,その前の債権者の負担ということをお考えいただくと4ページの提案も一つの方法として合理性があるんじゃないかなと思います。   少し先取りするような話ですが,(3)で掲げられている再実施制限の緩和についても,一つは数的なところの変更という対応もありますが,前回実際の運用状況について御質問をしたところ,申立て段階では,事実上過去申し立てているかどうかをチェックするけれども,制度的にチェックできるわけではないということでした。そうすると一旦申立てをして何らかの形で債権者が過去3年内に申し立てていることが判明した場合には却下をして手続に移るというお話がありましたけれども,そうであるならば,この再実施制限についても,一旦開始決定をして債務者を情報機関として,直近に開示しましたよとか,財産目録を今度出しましたよという形で制限して,実施決定まで行かないというような解決手段もあり得るわけで,そういう意味では,裁判所に一旦ステージを作ってもらうというか,そういう形で債権者債務者の利害調整をしていただくという方法もあり得るのではないかと,そういうふうに思っています。 ○今井委員 垣内幹事からの御質問,御意見に対する回答にはならないかもしれませんが,悪質な債権者のイメージと普通のオーソドックスな債権者のイメージで全然違ってくるんだと思うんですね。財産があると分かっていて,あえて財産開示をするような方,普通はあり得ないし,する意味がないですから,あると分かっていればさっさと執行やりますので。この財産開示というのは,あくまでも強制執行の前段階で,自力執行禁止と言いながら,だけれども財産が分からない。だけど,裁判所としては申立てがくれば強制執行してあげるよ,だけど自分で探しなさいという中で,財産開示制度が出てきたわけですから,そういう意味でやっぱり探してくださいねということですので,これは濫用だとか正当事由とか,そのことによって債務者に対する弊害みたいな,取消事由になるような場面というのを考えているんですけど,余り想定できない,ちゃんとした債権者が前提ですけどね,という感じがいたします。   それから一貫して山本克己委員がおっしゃっている債務者のプライバシーについて,実は私も一般的なプライバシーではなくて,強制執行を申し立てようとする当該債務者は,払わないのでその財産を開示させるという制度なので,そこにプライバシーという概念がフィットしないという立場に立った場合に,それ以外の何かこの制度の弊害があるのかということについては,すぐには私は思い浮かばないという感じがいたします。 ○山本(和)部会長 それでは(2)の部分につきましては,部会資料4ページにあるような,不奏功等の要件を撤廃した上で,一定の要件が満たされれば債務者に取消申立てを認めるというような制度に転換すべきではないかという御意見や,あるいは,そもそも不奏功等の要件は必要がなく,当然にこの手続から発生し,不奏功ということは関係なくできるようにすべきであるというような御意見が弁護士の委員・幹事からあった一方で,基本的には債務者の財産を調査等するのは債権者の責任であって,更なる開示が不必要な場合にまであえてこの財産開示手続を認める必要はないのではないかという御意見や,あるいは取消申立てという制度を導入した場合には,手続が遅延するおそれがあることや,現在の裁判所の運用では2号要件の疎明をそれほど厳格に求めているわけではないことを考えると,不奏功等の要件に関して必ずしも現行の制度を変える必要はないのではないかという御意見が,何人かの委員・幹事から示されたというふうに思います。   そういう意味では,かなり相違点,違いと言うのは明確になったのではないかと思います。2号要件について現行法を維持するとしても,1号の要件が今のままでよいのかという問題提起もされたかと思います。   それでは,1の部分の最後,先ほど阿多委員からも若干の言及がありましたけれども,「(3) 再実施制限の緩和」の部分についてはいかがでしょうか。 ○阿多委員 先ほど申し上げたことで,解釈の確認をしたいのですが。同じ債権者ではなくて違う債権者について再実施制限が掛かっているのですが,この読み方として一旦開示をしてその開示の結果,先行債権者が全部回収した,取り立ててしまったと,それで実際は空っぽな状況であるにもかかわらず,後行債権者は財産開示の申立ては3年間できないというのが今の解釈ということになるんでしょうか。197条の除外事由は,財産を取得した場合には除外になることになっていますけれども,なくなったという場合には除外にならないように読めるのですが,空っぽになっても3年間は後行債権者は何もできないという理解になるんでしょうか。 ○筒井幹事 先行債権者の手続で全部の財産を開示した場合には,その財産に対して強制執行がされるなどして,現状では財産が残っていないということであったとしても,そのことから後行の債権者について,再実施の制限が外れるということにはならないと思います。 ○阿多委員 すみません,つまらないことを質問しました。逆に,ないんだったら開示を申し立てる意味がないんじゃないかとなるかもしれませんが,その点は別にしまして,お話したかったのは,先行債権者による再度の実施と,全く違う債権者による財産開示の申立てはやはり区別して考えるべきであって,先行債権者への開示結果によって後行債権者が影響を受けるというのは問題があるんじゃないかと。実際の実務の運用についても,先行債権者による財産開示があるかどうかは,後行債権者には分かりませんので,それがために不利益を被るというのはいかがなものかと思っています。ですから別途相対的に,債権者ごとに再実施制限は考えるべきであるというふうな御提案を前回もいたしており,それを維持したいと考えております。   これについては,部会資料5ページの4の「しかし」以下で御指摘がありますけれども,債権譲渡の場合はどうするんだとか,複数債権がある場合はどうするんだとかいうことについては,先ほどの裁判所が設けるステージと申しましたけれども,そのような申立てがあって債務者にしてみれば,他の債権者,譲り受けた債権者が当該債権譲渡については債務者に対して通知があるわけで,譲渡債権者に開示しましたというような形で,再実施要件を満たしていることの疎明に使うとか,同じ債権者がα債権,β債権あって,αで該当したけれども,βにきたというのであれば,元々の債権者に対して開示済みですというような形を債務者からそういう主張をさせるという機会を設けることによって,相対的に処理するということについての問題点に対応することはできるのではないかと。   ですから,整理すると,もともと再実施を求めた債権者と,その他の債権者は再実施の要件は区別すべきですし,後者については,先行の障害は基本的に掛からないと,前者については期間の短縮ということを御検討いただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 債権者ごとに考えるべきであると。ただ,債権譲渡とかがあった場合は,同じ債権者とみなすと。 ○阿多委員 それで,その情報取得は債務者を通じて,その債権者ないしは譲渡人には開示済みですという形の主張を認めればどうかと。 ○山本(和)部会長 という御提案ですね。 ○山本(克)委員 譲渡しの場合の譲受人が申立てをするときの要件として,承継執行文付与は必要があるのかないのかどっちなんですかね。それによって答えが全然違うような気がするんですけれども。 ○阿多委員 承継執行文のことは全く・・・。むしろ債権譲渡で債務者は,情報として認識しているという・・・。承継執行文になるんですかね。実際にどうなんですかね。むしろ手続がどういう形でされているかなんですけど。 ○山本(和)部会長 確認ですけれども,債権譲渡の場合は,前の債権者が開示申立てをすればどのようになるというお考えでしょうか。 ○阿多委員 既に開示をして,例えば一部回収した上で,残りがあれば,債権を譲渡したと,多分そういう場面を想定されているのかなと思ったのですが,先行債権者の方に開示をしているのであれば,債権譲渡に際して実際,譲渡人,譲受人で資料の承継で対応できるだろうとそういう認識です。 ○山本(和)部会長 それは3年間はできないと。 ○阿多委員 少なくとも3年がいいとは思いませんけれども,同じ債権者に対しての再実施制限を残すんであれば,そういう説明になるのではないかなと。 ○山本(和)部会長 そういうことのようですけれども。 ○山本(克)委員 いや債権を単位にするのか,債務名義を単位とするのかという問題を聞いたつもりだったんですけど。債務名義を単位としないと整合性が取れないんじゃないですかね。この制度というものは,債務名義に即して,まあちょっと2項の場合どう考えるかという難しい問題が残されてますけど,少なくとも1項の場合はそうなんじゃないんですか。 ○阿多委員 本来執行手続ですから債務名義を単位にするのは明確にしているんですが,余りそこは意識せずに実際の情報取得の問題としては,取得し得る状況にあるので,戻りますけれども,相対的な場合でもここで御指摘の問題には対応できるんじゃないかという,それのみを回答として意識したということで。 ○山本(和)部会長 ただ債権者が複数の債務名義を持っている場合に,ある債務名義に基づいてやれば別の債務名義ではできないのでは。 ○阿多委員 それについては,私自身は,債務名義の単位の債権者が同じであれば,既に当該債権者に対しては情報を提供したという形で対応できるんじゃないかという整理です。もちろん債務名義は異なるわけですけれども,α債権の債務名義とβ債権の債務名義でも債務者が同じであれば,αで回答していればβでもう一度回答する必要はないんじゃないかと,そういうことです。 ○山本(和)部会長 そこはやっぱり制限が掛かっているんですよね。 ○阿多委員 債務名義と異なる制限,属人的な制限になるんですけれども。 ○山本(和)部会長 債務名義と債権者と何か両方で制約が掛かっているようにも読めますが。 ○筒井幹事 御提案いただいているように,技術的にいろいろな制度を構想していくというのは議論の道筋としてあるのかもしれませんが,現行制度の理解として,やはり再実施の制限というのは,債権者の利益と,それから情報の開示を義務付けられる債務者の利益の適切なバランスを図るという観点から構想されたものでありまして,例えば,請求債権の額に見合った財産のみを開示すればよいという制度にしてしまうと,債権者としては,実際には債権差押えをしても競合して十分な満足を得られずに,更なる開示を求めなければならないという不利益を負う危険がある。ですから,基本的に1回の開示によって必要な情報を獲得できるようにすることが,まず構想されたのだと思うのです。もっとも,請求債権の額にかかわらず全ての財産を開示するのが原則だということになると,複数の債権者から別々に申立てがされた場合に,債務者に多大な不利益を負わせることになる。そこで,基本的には全部の財産を開示しなければならないとする代わりに,全てを開示した債務者は再実施制限による保護を受けることができるという枠組みで,バランスを取ろうとしているのだと思います。ですから,債権者の単位あるいは債務名義の単位で切り分けて考えるということになると,そのバランスをもう一度,一から考え直すということになろうかと思いますので,そこまで含めて御提案いただければと思います。 ○阿多委員 御説明いただいた趣旨は少なくとも読んだ上で申し上げているつもりなんですが,ここで考えている債権者ですけれども,例えば配当手続があって配当に加入していて同じような機会を与えられている債権者であればですが,財産開示後に債権を,有名義債権を取得するケースもあり得るわけで,やはり債権者の個性というか,抽象的に債権者と考えるのではなくて,A債権者,B債権者によって違うのではないかと。今の開示の手続が既に開示されていますよというようなことを債権者で探索できる,既に先行開示がなされているというのでいきなりそれを閲覧できる手続となっているのであれば,債権者の不利益というものはないわけですけれども,そういう機会なく申立てをしてみたら,実はこの方は前に開示されてますから駄目ですと。   それでいいのかという問題意識ですので,御指摘は理解しているのですが,やはり個々の債権者ごとに利益,不利益を考えると後行債権者の不利益は大きいんではないかという問題意識です。 ○成田幹事 山本克己委員から御質問があったところですが,債権譲渡の場合ですと債務名義上の債権者と申立債権者の表示が一致しませんので,通常であれば承継執行文が必要になるのではないかと思われます。 ○山本(克)委員 私も今,筒井幹事がおっしゃったことと同感です。民事執行法第200条をもっと広げろと,陳述人の一部免除をもっと広げろと言うのとセットになればおっしゃる趣旨は分かるのですが,ここがかなり厳格な要件ですよね。つまり,執行競合があってもなお大丈夫だというようなところまで含めて考えられているわけです。後行債権者の不利益というのは,却下されるということで手数料が無駄になるのがけしからんという話なんでしょうか。何なんでしょうか。それで,でも閲覧はできるわけですよね。閲覧と開示の違いというのがどこにあるのか,だから却下で手数料が無駄になるのがもったいないというお話だと理解してよろしいのでしょうか。 ○阿多委員 山本克己委員からそういう細かなお金の話が出るとは・・・。いや,手数料のお話ではないです。基本的には全く情報がないというところを,繰り返しですけど問題にしているわけで,極論すれば利害関係を疎明していきなり閲覧しなさいというのであれば,そういうのもあると思うのですが,少なくとも現状の制度は財産開示の申立てをして,駄目ですよと言われて,そこから行くというこの制度の問題だと思います。   200条について,今回のこの法制審議会の部会でどこまで改正するのかという点は,私自身も200条の扱いとか,そもそも財産情報全部を開示するという今の制度がいいのか,判決自体が債権者平等原則ありますけれども,優先権を認めるような形で債務名義枠だけの財産開示でもいいような制度を考えるのか,いろいろな方法があるとは思うんですが,少なくとも今回の改正との関係で200条を触らずにするにしても開示については,繰り返しますけれども,後行債権者の不利益が余りに大きいと,こういう認識です。その手数料うんぬんではなくて,何も情報がないところで申し立てて,あなた駄目ですよと蹴られるという,そういう制度自体がおかしいんじゃないかと。 ○山本(和)部会長 蹴られるというわけですが,しかし閲覧はできるわけですよね。それと債務者を改めて呼んできて話を聞くというのとでは,通常結果は同じことになるんではないでしょうか。その間にもちろん財産の変動というのはあるのかもしれませんけれども,閲覧すれば全財産開示しているはずだから見れるわけですよね。 ○阿多委員 そこはそうですね。おっしゃるとおりです。 ○山本(和)部会長 そこで債務者を呼んでくる意味がどこにあるのでしょうか。 ○阿多委員 あの,すみません,私自身は,呼んでくるという部分については,先ほど申しましたように債務者の方でもう開示していますよという,変な話ですけれども,という書面を出せば,呼んでくる必要はないというふうにもちろん思っています。 ○山本(和)部会長 そうすると再実施制限はどうなるのかと。 ○阿多委員 全く関係のない第三者が申し立てる場合ですね,それで今の制度を前提とすると,先行債権者による開示がもうなされているという形になると,それで申立て却下で,見に行ってくださいということなんですが。戻りますけれども,債権者は開示されているかないかの情報が全くない,それで申し立てたら却下です,となる手続自体がそれでいいのかということの疑問なんですけれども。 ○山本(和)部会長 それでどこが納得いかないということでしょうか。やはり費用がということになるのかもしれませんけれども。 ○阿多委員 後行債権者は全く関与しないところで,関与しない事情によって他の要件を満たしているけれども却下されるわけです。それが問題ではないかという認識なんです。 ○山本(克)委員 例えば,破産手続開始申立て,一応開始決定があればですね,公告されますから,一応知っていることを擬制されますけども,破産手続開始決定を知らずに債務者に対して債権者が破産手続開始申立てしたら却下されますよね。それとどう違うんでしょう。 ○阿多委員 破産であれば,債務者が破産しているかどうかの情報は,公告か何らかの形で情報が入ってくる可能性が高いわけですが,結局個別執行の場面において債権者が全く知らない事情で却下されるのはいかがなものかと。何度も言うように情報収集ができるのであればそれは構わないんですがと申し上げている点でして。 ○道垣内委員 却下されるのが忍びないという話はよく分かったのですが,では却下されないで認められるということになったときの手続はどうなるのかということが問題なのではないでしょうか。 ○阿多委員 私自身は,この再実施制限はもう削除すべきだということを実は考えているわけですけれども。そうなりますと,申し立てて実施決定が出る,そこの段階では先ほどの不奏功要件のところで申しましたように,いったん裁判所という場を設けていただいて,債務者の方で例えば過去に開示した財産開示の開示書類を提出すればですね,それをその場で債権者が一読してそれで手続としては取り消されるとか,そういうことが考えられるのではないかというふうに思っています。 ○道垣内委員 それは,結局は債務者が自分で紙を出すという手続にするのか,それとも債権者が裁判所に見に行くという手続にするのか,それだけの違いではないのでしょうか。 ○阿多委員 逆に,違いが,意味があるというふうに思って申し上げているつもりですが。 ○道垣内委員 その意味がなんだろうというのが,よく分かりません。 ○阿多委員 債権者としては,通常に手続を申立てをしてその目的を達成するのか,却下されて閲覧に行ってきますというふうになるのか,というそこに違いが・・・ ○山本(和)部会長 その考え方はやはり財産変動が分かるというところに意味があるということですか。 ○阿多委員 状況によっては,先ほど最初の御質問で申しましたとおり,既に3年前のものであっても空っぽということも含めて,いろんな事情があり得ると思いますので,そういう意味でいろいろな情報は入り得ると思っております。 ○垣内幹事 今の御議論を十分にフォローできているかどうかは分からないんですけれども,考えてみますと閲覧ではなくてですね,再度の開示をさせるということに実際の意義があるのがどういう場合かという観点からしますと,立証の問題が実際にはかなり困難な問題としてあるかもしれませんけれども,実体の問題としては現在197条3項で1・2・3号と掲げられている例外要件があるわけですが,ここに示されているような財産状態の変動があった場合については新たに開示をさせるということに意義があるのだろうと思われます。   ただその点については,これは債権者が同一であるか,他の債権者であるかを問わずこのようなことがあった場合にはやはり再度開示をさせる意義というものがあると考えられますので,ただこの1・2・3号のような要件をですね,財産状態について必ずしも情報がないのでこの申立てをしている債権者が立証することは容易でないという問題はあろうかというふうに思いますけど,実体の問題としてはその点で当該債権者と他の債権者を区別するということには必ずしもならないのではないかという気がしているところです。 ○柳川委員 債務者の全財産が開示された場合には,債務名義を有する他の債権者は,再度の財産開示手続の申立てをすることができなくても,その記録を執行裁判所で閲覧することができるということになるのですね。 ○山本(克)委員 筒井幹事がおっしゃったことの繰り返しとなりますけれども,そもそもこの制限が掛かったのは,やっぱり濫用的に威迫の手段として債権者がこの手続を用いるのではないかということを懸念として,確か弁護士会の当時の委員幹事が強くおっしゃったために,3年というのは私は長過ぎると思うんですけど,そういうことになったんではないかというふうに認識しており,そこに根本的に事情が変わるなどということがあったのかどうかということがよく分かりません。   私は平成15年改正には関わってませんので,仄聞するところでしかないのですが,その辺りどういう認識で突如変えようという話になったのかを,私は申立手数料がもったいないか,それとも,財産開示の申立てをした弁護士の面子が潰れるかどっちかしか不利益はないんじゃないとしか思えないんですがどうなんでしょう。 ○阿多委員 もともとこの再実施制限が入った経緯というのは,私もその当時に委員でいたわけではないんですけれども,山本克己委員の御指摘のとおりかと思います。   ただ,それは(1)の債務名義の種類のところの議論とも同じで,その後の財産開示の申立て状況から見てそれを用いて威迫するうんぬんの問題というのは,それほど弊害として実際は問題となることは余りなかったんではないかと。むしろこの再実施制限があることが財産開示の利用の足かせとなっているんじゃないかということで,再実施制限については,要件の撤廃ないしは緩和ということを検討すべきじゃないかとそういうつもりです。もともと言っていたのが宗旨替えしたというようなことではなくて先ほどの話ですけどそれほど弊害が問題になるようなことはなかったんじゃないかと思うんです。   ですから,当該債権者については,期間制限を含めて再実施制限というのは残すのはあり得るのですが,繰り返しますが,これを用いて威迫するうんぬんについては他の債権者は,逆に,一旦開示がされていれば他の債権者の威迫の問題うんぬんというのは少し議論の整理としては違うのではではないか。ここで言っていたのは,債務者が何度も何度も開示というような形のものに巻き込まれてその負担を負うのは問題があるんじゃないかということで,一度開示をすれば,それも全てを開示しますので,開示をすれば足りるんでないかという形で債務者の利益を考慮したのは間違いはないんですが,そこでいう債権者というのも逆に一つにまとめるんじゃなくて,個別に考える,比較するときに債権者という一まとめではなくて個別的に考えるんじゃないかという御提案を私はしているつもりです。 ○山本(和)部会長 財産開示の利用の足かせになっていると今言われましたが,そういう実例があるんですか。 ○阿多委員 それはないということで,逆に財産開示の実施をもっと増やすための先の提案でして。3年があるというのは,3年使えないという意味では足かせになるのかもしれませんけど。もう少し使いやすくする,なおかつ債務者の負担もそれほど大きくないし,3年もたつと財産状況も相当変わっていると,そういうことから期間の短縮をすれば使う人も出てくるだろうと,そういう趣旨です。 ○山本(和)部会長 この期間の短縮については今,山本克己委員からもそういうお話がありましたけれども,一応十数年前にこの立法をして3年ということにしたわけですけれども,その後やはり短くするような事情みたいなものがあったということでしょうか。 ○山本(克)委員 事情はよく分からないんですけど,経済生活のスピードというのがすごく変わっているわけですよね。ですから転職なり失職した場合は再実施ができるということになっていますが,それに類するような事項というのは限定列挙になじまないくらい経済のスピードが速くなっているので,やはり3年は長きに失するんじゃないのかなと,せいぜい1年くらいかなという感じを私は持っています。1年もあれば人によっては財産状況大きく変わりますし,法人であればなおさら事業の再編とかでいろいろと変わったりもしますので,もっと列挙がたくさんできていて,それをまた債権者が確知できるような制度であればいいんですが,現状の3年というのは私は長いような気がします。こういうようなことはむしろ経済界の方がお詳しいと思いますので,私の机上の観念論よりはそちらの御意見を伺っていただくほうがよろしいかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。それでは,佐成委員にお願いします。 ○佐成委員 私が経済界を代表して,そういった経済変動の全てについて申し上げることはできませんし,むしろ中原委員の方が金融業界でいろいろお仕事されている中でお詳しいかと思いますが,一言だけ申し上げます。   実業界におりますと,それはもう本当に日々,議論されております,「意思決定にはスピードを持たせなくてはならない」と言われているのは,正にそういうところで,取締役会などでスピーディーな意思決定を行い,しかも攻めのガバナンスを実現しなさいという方向で今議論されているわけでございまして,実業界,少なくとも事業者の財産状態というのはかなり大きく変動しております。会社によっては,本当に1年前には全く想像できないほど変動していることもありますし,あるいは不祥事があった会社がかなりの業績を伸ばしているということもあるわけです。そういった状況は私が申し上げるようなことではないかと思いますし,皆さんもよく御存じのことかとは思いますが,御指名でしたのでコメントさせていただきました。 ○中原委員 特に中小企業や個人事業主が念頭に置かれていると思いますが,金融界は中小企業や個人事業主の事業再生サポートに注力しています。そして,再チャレンジの結果,短期間で事業再生が成功して復活し,財務内容も改善するケースもあります。もっとも,再チャレンジ途上で強制執行が行なわれた場合は,その後の再生手続がうまく進むのかという別の問題はあると思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   他にこの「(3) 再実施制限の緩和」について御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。  それではこの部分につきましては,特に阿多委員から,債権者が別の場合には,この再実施制限というのは掛けるべきではないという御意見がありましたが,ただ制度全体の枠組みとして全財産を基本的には開示するという枠組みを前提としたときに,やはり債権者ごとに考えるというのは制度全体の趣旨とそぐわないのではないかという複数の方からの御意見があったように思います。  また,再実施が制限される期間の短縮につきましては,短くした方がいいという御意見が,経済状況,資産変動のスピードというのが速くなっているのではないかという観点からの御指摘があったということかと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。  それでは,ここで休憩を取りたいと思います。           (休     憩) ○山本(和)部会長 それでは審議を再開したいと思います。  次に第1の「2 手続違背に対する制裁の見直し」について,これも財産開示実施の課題であろうかと思いますが,これについて御意見をいただければと思います。どなたからでも結構です。 ○阿多委員 一つ教えていただきたいんですけれども,法人の債務者の場合に罰金を導入するということになると,両罰規定というか,基本的には代表者と,それとは別に法人に罰金となるのかなと思うのですけれども,ここで全てに罰金が掛かるということになれば,例えば虚偽陳述という形になると,陳述書を代表者名で出せばそこは問題ないと思うんですが,担当者が,財産がないというふうに説明したけれども実はあったという場合の,法人の場合の後始末というものがどうなるのか,すみませんちょっと教えていただけたらと思うのですが。 ○松波関係官 仮に刑事罰を設けた場合についてということでお答えしますと,その構成要件の具体的内容については別途さらに検討が必要だと思いますが,例えば,開示義務者が虚偽陳述をしたことなどを構成要件とすれば,債務者が法人の場合には,その開示義務者はその法人の代表者ですので,その代表者の行為について,構成要件該当性を検討することとなると考えられます。その上で,法人をも罰するために両罰規定を設けるかということは,さらに別の問題として検討が必要なのかなと思います。 ○阿多委員 そうしますと財産目録を提出する段階で作成者というのは,会社であれば代表取締役,代表理事という形で法人代表者が作成すると。出頭してくる場合は必ずしも代表者が出頭してくるわけではなくて,質問権行使をしても担当者が回答するという形になると思うんですが,その場合はどういう処理になるんでしょうか。   すみません,質問ばかりで申し訳ない。 ○松波関係官 御指摘は恐らく開示義務者が誰になるのかというところだと思いますけれども,民事執行法第199条第1項と第198条第2項第2号によれば,債務者が法人の場合は,その代表者が開示義務者となりますので,代表者が財産開示期日に出頭し,債務者の財産について陳述をしなければならないということだろうと思います。 ○阿多委員 戻りますけれども,法人の場合も開示義務者は代表者なのでしょうけれども,同じような取扱いで単に過料のところに罰金が付くだけという整理になる,そういう理解でよろしいでしょうか。 ○松波関係官 具体的な構成要件をどのように規定するのかについてはさらに検討が必要だと思いますが,その際に現行の過料の規定を参考にするということが一つの選択肢になるかと思います。 ○阿多委員 弁護士会から従前申し上げていることは,こちらで整理していただいていて,弁護士会の現時点での提案は全てについて罰金というものではなくて,虚偽陳述に限定して罰金の導入を提案すると,それは単に出頭しないということと違って混乱させたという非常に悪質性が高まるというところで,他の事由と違う,過料の対象の事由と違うという形の説明はできるのかと思います。   こちらの7ページのところでは,出頭しないということを逆に事実上促すんじゃないかとかそのような御指摘がありますけれども,それでもやはり,悪質性の点で単に出頭してこないのと虚偽の内容を答えるというのとでは,悪質性が違うという理由で説明可能だろうと考えています。   あと罰金を導入することのメリットとして,やはり一般予防的な効果として,事業者によっては刑事罰を受けていると事業継続が困難になるというようなこともありますので,導入の効果というのは法人などを前提とする限り意味があるというふうに思って提案したいと思います。 ○山本(和)部会長 法定刑としては罰金のほか,懲役も選択肢になりますが,どのようにお考えでしょうか。 ○阿多委員 イメージとしては罰金ということを考えていて,懲役などは現時点では特に。 代表者懲役で両罰で法人罰金なのかというような議論もあり得るかとは思いますが,その辺で考えているのは過料はもちろん金銭ですので,それより重たいものとしての罰金というものが刑罰の内容と考えます。 ○今井委員 私も弁護士会からの委員ではありますが,今阿多委員がおっしゃられたことと若干ニュアンスが違って恐縮なのですが,そういう意味では私見ということで。   15年改正に関わらせていただいて,この点について当初の案が罰金であったのが,最終的に過料になったわけですが,ところが過料に賛成していた法制審議会のメンバーはほとんどいなかったということは,本当にずっとそのことが重く今日まで頭に残っておるわけでございます。   先ほどの不奏功要件の話と似たようなことかもしれませんが,その後財産開示が非常に使われないということの原因は,今は不奏功要件の方が大きいんだろうなと思うんですが,やっぱり過料がサンクションとしては弱く,罰金だということは必要なんだろうなと思っておりますし,違ったところで日弁連のシンポジウムの民事裁判をより活性化するためにというところでも事前のアンケートでは多くの弁護士が,私の記憶ですが,罰金にすべきだという記憶がございます。   そういう意味では,罰金を科すべきだろうというふうに思うんですが,ただ,資料7ページに書いてありますとおり,それが不出頭については過料としますと,期日に出頭しなければ過料で済むのに,出頭して虚偽の陳述をすれば罰金になるということになると,やっぱり実効性の確保という意味では,そもそも出頭しないということを誘発するということは容易に考えられる。   そういう意味では,私見としてはこの点についても平仄を併せるべきだというふうに考えます。 ○山本(和)部会長 そうすると,不出頭,宣誓拒絶,陳述拒絶,虚偽陳述いずれについても罰金ということで定めるべきだということなんですかね。ありがとうございました。 ○山本(克)委員 阿多委員に御質問なんですけど,虚偽陳述の虚偽というのは何を指して虚偽だとお考えになっているのでしょうか。 ○阿多委員 客観的事実と齟齬することという形です。 ○山本(克)委員 あるのに隠したことが虚偽に当たるのかということをお伺いするつもりです。つまり,ないものをあると言ったのは確実に虚偽だというんですが,あるものをないと,例えば不動産を持っているにもかかわらず,預金とこれとこれと,というふうに流動資産だけを挙げて不動産を隠していたとき,それは虚偽なんですかということをお伺いしたい。 ○阿多委員 もともとの趣旨が全財産の開示ですから,あるものを記載しなかったら虚偽という認識です。 ○山本(克)委員 それが陳述拒絶とどう違うんでしょうか。今のだと,一部陳述拒絶だというふうにとり得るんじゃないでしょうか。 ○阿多委員 確かに御指摘のとおりですね。余り深く考えてこなかったんですけど。   1億あるのに100万と書けばそこは積極的に虚偽の内容になると思うんですが,1億について全くないと書くのと少額で書くのでどう違うんだというのは,確かに御指摘されるとそれほど差がないんじゃないのと。そこは御指摘の趣旨は十分理解しましたので再検討したいと思います。   趣旨としては,刑罰は導入するとしても広く導入するべきではない,謙抑的であるべきであるということから,一歩踏み出すものとして虚偽記載だけという提案をしたつもりですが,御指摘は十分理解しました。 ○今井委員 今の山本克己委員の御指摘は正にそのとおりだと思います。   基本的にはこの場面では過料,この場面ではというのは実効性確保という点では,いかがなものかという気がいたします。過料にしても罰金にしても取ることが目的ではなくて,結局は出頭を促し財産開示を適正なものとして,正しいものとして発揮させるためのサンクションですので,そういうことを罰金が,これ以上言う必要はないと思いますけれども,罰金を科することの実効性ではなくて,財産開示をちゃんと出頭して,ちゃんと正しいことを言ってもらうことが実効性の目的だということで整理ができるのではないかと思います。 ○阿多委員 実務の状況だけ御報告ですが,財産目録として実際に提出されるもののひな形を今手元に見ながらお話をしますが,基本的にチェック方式で,あるかないかというところが記載になっていて,あると書いた場合はその内容を記載するというのが今の少なくとも書式ですので,戻りますけれども,虚偽陳述というのはこのチェック方式では本来あるにもかかわらずないというのをチェックするというところをイメージして御提案したという次第です。 ○道垣内委員 全く定見はないのですが,裁判所が作るフォームによって,犯罪になったり,犯罪にならなかったりするのはおかしいです。 ○谷幹事 虚偽陳述のみに限って罰金刑をというのは,日弁連の意見で述べていることなのですけれども,それはある意味では,様々な意見の中での調整の結果というところもありまして,一方では,罰金刑にして実効性がある方がという議論もあるわけですね。罰金ということになれば起訴するわけでございまして,訴追裁量が働いて起訴猶予で終わることも当然十分考えられるわけでございますし,そういう意味で考えるとむしろ今の過料の方が確実に処分がされるのではないかとか,あるいは,虚偽陳述であったとして,虚偽というものが立証できなければ当然罰金刑科せられないわけですけれども,立証できるということは財産がないと言っていたのに実際あるんだということが分かるということが必要でして,そうであればそんな処罰してもらうよりも強制執行をすれば目的が実現するわけでございますし,そういう様々な議論の結果,取りあえずは虚偽陳述というのはやはり悪質性が高いのではないかという考慮の結果,そういう意見になっているわけでございまして,細かいところではいろいろと問題点があり,また詰めていかないといけない部分もあるだとうと,そういう意見として述べたということだけ説明させていただけたらと思います。 ○松下委員 余り理論的なことを申し上げるわけではないのですけれども,部会資料6ページの補足説明2の第2段落で,手続違背に関するもろもろの刑事罰の例が並んでいます。似ているというだけなんで必ずしも理論的な話ではないのですが,一番最後に書いてあります破産手続における破産者の重要財産開示義務というのが比較的近いのかなと思います。   確かに個別執行だったら差押えであるのに対して,包括執行の場合は開始決定です。また個別執行の場合には全財産を開示しろですけれども,包括執行の場合には重要財産を開示しろということです。   しかし,重要財産というのは大事なものから並べるということで,実質は全財産だと思うんですね。ですから,これとの並びで考えても,少なくても罰則は必要だろうと思います。ただ,これとの並びで懲役を入れるかどうかは,さらに他とのバランスを考えながら検討する必要があるだろうと思います。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。   非常に重要な問題ですので,感触や感想という程度でも結構ですので,多くの委員,幹事の御意見がいただければ大変有り難いのですが。 ○佐成委員 特に定見とかいうものではないのですが,前回の会議では手続違背に対して刑事罰を科する方向性については,支持できるという発言をしたかと思います。   改めて今お話を伺っておりまして,不出頭で手続を行っても無駄でございますので,そういった部分を是正するという意味では,どちらかというと今井委員の御発言の方に比較的同調したいところであります。 ○青木幹事 感想になってしまいますが,私も,不出頭も含めて刑事罰の対象として罰金とするのがよいと思います。   虚偽陳述が悪質だという話が阿多委員から出ておりましたが,むしろ,出てこないという方がこの手続との関係では悪質というか,好ましいことでないのではないかと。出てきた上で陳述を拒絶するとか,本当はある財産についてないと言うことの方が,悪質性は低いのではないかなというふうに考えております。   それから既に出てきているとおり,不出頭を刑事罰の対象から外すということになりますと,やはり出て行かないほうが逆に勝つということが妥当するのではないかなと考えます。ただ,運用の話になるかもしれませんし,正当な理由なくというところにも関わるのかもしれませんが,先ほど最初の論点とも関わりますけれども,瑕疵ある執行証書に基づいて仮にこの手続を認めるとして,開示決定はされたけれども出て来なかったと。その後,請求異議の訴えによって債務名義の効力が失効し,開始決定が取り消されたという場合には,正当な理由があったというふうに考えていくべきなのではないかなと考えております。 ○山本(克)委員 今の青木幹事が最後におっしゃった点は反対で,これは命令違反ですので,要件を満たしていると裁判所が判断した上で開示を命じた以上,私は,それに対して,命ずる手続自体に瑕疵があればともかくとして,そうでない場合にまで正当理由を認めるのは不適切で,債務者は財産開示期日までの間に請求異議の訴えを起こして執行停止を申し立てていくべきだというふうに考えます。   刑事罰全般の話ですが,これは先ほど阿多委員に申し上げたことでお分かりだと思いますけれども,虚偽陳述が一番軽いんですね,悪質度は。つまり出て行って一部はちゃんと開示していて一部不開示だというのと,全く出て行かない,あるいは行っても何も言わないというのとでは,どちらが債権者のためになっているかと言うと,一部でも本当のことを言っている方が債権者のためになっている,制度の趣旨に沿う行動をしているわけなので,そこだけを刑事罰に処すというのはおかしい。もちろん虚偽の,私どこどこ銀行に何千万貯金ありますとか言って,差押えにいったら空振りだったとか,そういうのは悪質であると思いますが,一部存在するのを隠していたということだけを刑事罰に値するというのは,私は到底許容し難い議論だというふうに思います。 ○垣内幹事 私も虚偽陳述を区別すべきかどうかという点については,今,山本克己委員,あるいはその前に青木幹事が発言されたことに同感でありまして,区別を設けるべきではないだろうという感じがしております。   先ほど青木幹事から,仮に導入した場合の解釈等についての御意見があったのですけれども,私,刑事法に暗くて,この辺りが必ずしもよく分からないのですが,正当な理由というのは過料の要件としてはいいのかもしれませんけれども,刑事罰の構成要件として「正当な理由」というような一般的な要件でいいのかどうかということは別途検討する必要があり,私自身の印象としては刑罰要件としては,より明確性の高い構成要件を定める必要があるのではないかと。ただ,偽証の場合なんかですと虚偽の陳述をしたということでそれ以上に何か正当理由などもちろんないわけなんですが,部会資料の6ページで挙がっております,強制執行を受けるべき財産の隠匿などについては,目的による限定が掛かっておりまして,強制執行妨害目的ということがありますので,その種の限定を設けるかどうかということが仮に刑罰を設けるときには,一つ検討の必要になる点かなという感じを持っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。  民事執行法205条は,「正当な理由なく」という要件を設けておりますが,これも過料から引き上げて,平成15年改正でしたか,刑罰にしたということだったかと思います。ただ一般論としては御指摘の構成要件の明確性に反しないのかという点についてはしっかり考える必要があるかと思います。 ○成田幹事 過料を罰金刑に改めるというふうにありましたが,これは完全に替えてしまうという趣旨なんでしょうか。それとも民訴法における証人の不出頭と同様に過料と罰金は両方置いていくという趣旨なのでしょうか。 ○阿多委員 弁護士会のというか,私の意見としましては,従前の過料を残した上でさらに罰金という形で,過料を全てなくしてしまうということではないです。 ○筒井幹事 ただいまの御議論を踏まえて,過料を維持しつつ罰金刑も加えるということも検討の遡上に乗せていく必要があるのかなと思いました。ただ,罰金刑に替えるという選択肢もあるのだろうと思いますので,併せて検討してみたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。他にはよろしいでしょうか。 ○筒井幹事 こうしたいという話ではなくて,議論を深めておきたいという趣旨なのですが,先ほど部会長から紹介があった民事執行法205条では,売却基準価額の決定に関する審尋の際のことですが,正当な理由なく,出頭せず,陳述を拒み,あるいは虚偽の陳述をした者に対して,自由刑を含む刑罰を用意しております。   罰金刑というのは,確かに現在の過料を刑事罰に改めるというときに,一つの穏当に思える選択肢ではあるのですが,果たして自由刑は要らないのか,あるいは全く適当ではないのか,その辺りを議論しなくてよいのかという問題意識を持っております。 罰金刑であれば払えない者は換刑処分によって自由を剥奪される可能性はある,他方,自由刑であれば払える者であっても自由を剥奪されるという方向に向かうわけですけれども,その違いを,この場面でどう評価したらよいのかといった辺りについても御意見を頂ければと思います。 ○今井委員 思い付きで恐縮ですけれども,さっき申し上げたとおり罰金を課するということが目的ではなくて実効性のためになることが目的であって,実効性が何かと言えば債務者が出頭し本当のことを言えばいいだけのことですから,それがただ,期待可能性という面からするとできれば言いたくないということもある場面があり得るわけです。だけれども,本当のことを言わないと罰金だよっていう頭と,実際に起訴されるかどうかはともかく自由刑もあるよというのでは,全然また違うのかなと,実効性の確保という面ではですね,という感じがいたします。   実効性の確保という意味ではメニューとしては,私,過料をみんな罰金に切り替えるのかと思っていたんですけれども,過料も罰金もあるんだったら全部メニューとしてあって,それを課することが目的でなくて,要するに本当のことを言えばいいだけで,そんなにハードルが高いわけではないので,そういう面ではそういうことがサンクションということは,実効性の確保という面ではあり得るんではないかという感じがいたします。   ただ一方,民事の強制執行について自分の財産を言わないというだけで,実現になるかどうかはともかく,自由刑までそろえる必要はあるのか,他の法律もあるわけですから,そういう御議論は当然あり得るわけだと思うのですが,この辺のところにつきましては,バランスなり国民感情といいますかそういうことも含めて最終的には決めるべきだと思いますが,個人的なことを言えば,私は刑罰を課することが目的ではなくて,実効性をうまく確保,実効性確保はそんなに難しくないわけで,そのための手段ということであれば自由刑はあり得ると,こんなふうに思います。 ○山本(克)委員 何といいますか,可罰的評価の高い低いという点は,先ほど来の民事執行法205条1項各号の場合とどちらが重いかという気がするんですが,私は同じようなものではないかなという気がしなくもありません。これも別に罰するためにやっているのではなくて,適正の価格を売却基準価格に設定し,迅速に不動産の売却を進めていくためのものであって,罰するために決して設けたものではないわけですよね。   実効性確保というのは,確かに起訴便宜主義を採っている下でそれがどれだけうまくワークするかというのは大問題ですが,それを言いだしたら何も日本ではできないという,刑事罰はやっても意味がないということになりかねませんのでそこは置いておいて,実効性確保という点で手続違背の程度はやはり問題だと思うんですが,この205条1項各号の場合とそんなに私は差がないように思いますが,そこがこっちの方が軽いんだよという積極的な論拠があれば教えていただければと。 ○阿多委員 205条の場合は「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」ということで,おっしゃるように違法性が,今回の財産開示で開示しないということによる可罰性等もどう評価できるかというところかと思うのですが,私自身は売却基準価額の決定に関して,正に不動産競売の手続が進行している状況での司法手続に対する妨害と財産開示のところでの妨害では,後者の方が手続の重たさというか,司法手続への影響という点という意味では,後者の方がまだそれほど違法性が高いと言えないのではないかなと。逆に山本克己委員に御質問なんですけれども,罰金にする場合は50万円,これと変わらないというのであれば,罰金は50万円程度が相当だということになるのかと思うのですがそこまでの御意見ということになるのでしょうか。 ○山本(克)委員 そういうことになりますね。もちろん選択肢として自由刑があるからというのが理由ですが,なければもっと高くなってもいいんじゃないかと。 ○道垣内委員 民事執行法205条と比較するというのは,大変実りある議論だと思います。ただその刑罰の目的は,やらせないためにするものなのだからという議論は,刑法一般の話ですので,それが懲役,自由刑を加えるかどうかということの判断には関係してこないと思います。そのことを何らかの意味で理由にするというのは私は避けた方がいいのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   私の個人的な意見を申し上げますと,205条というのは,ある意味ではかなり大胆な,2号とか,1号もそうかもしれませんが,債務者以外の第三者,単なる占有者も含め,それらが協力しない場合も含めて刑罰を課していると。   恐らく時代的な背景としては,執行妨害に対する極めて強い抑止という政策的意思というものが見られる規定になっているのではないかと思います。ただ,刑罰というものは横並びといいますか,均等性が非常に重要な観点ですので,こういう規定を踏まえて今後引き続き検討していくことになろうかと思います。 ○今井委員 今の道垣内委員の御指摘は全くそのとおりなんですが,本件について言うと,財産開示の出頭通知をするとき,そこにやっぱりアナウンスがあると思うんですね,こういう場合にはこういうサンクションがありますよと。そういうふうなところでやるので,刑罰一般がですね,何か刑事事件をやるときにそんなアナウンスって普通はないと思いますので,大枠としてはそのとおりなんですが本件の実効性あるための目的がそのアナウンスによって,債務者に対する通知になって,もしこれに従わない場合はこうなりますよ,お気を付けくださいという意味では,やっぱりこれは法的に違うのか事実上違うのか分かりません,まあ事実上なんでしょうけれど,そういう意味では刑罰一般と本件はそういう面の違いが,実効性の確保という面では,よりそっちにシフトしたサンクションという制度設計になるのではないかというのが個人的な意見でございます。 ○道垣内委員 私は小さい頃から他人の物を盗んではいけない,他人を傷つけてはいけないと言われてきました。 ○山本(和)部会長 部会資料7ページの4のところで刑罰以外の方法,制裁として,身体拘束,あるいは手続違反者について名簿を作成するというような考え方についての指摘があります。最初の資料にもありましたように,諸外国ではこういうものを置いているところもあるわけでありますけれども,前回いろいろ批判があったところだと認識しております。特段この点について御発言がないというのは,この点について支持されるという方はおられないという認識でよろしいでしょうか。 ○阿多委員 日弁連意見ではそのような意見が記載されていましたけれども,現時点でそれを積極的に提案するつもりはありません。 ○山本(克)委員 この2つの選択肢は特に賛成しないのですが,勾引をどうするか,勾引というのがあり得るのかという点は,ちょっとは検討した方がいいのではないかと。正当な理由なく出頭拒絶した債務者を勾引できるかどうか,それは少し考えておいていいテーマではないのかなという気がします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。身体拘束とは違うということですね。証人逃れの勾引というものはあり得るという御指摘をいただきました。 ○佐成委員 筒井幹事が先ほどおっしゃっていた論点としてですが,自由刑の選択というところですけれども,自由刑としてはもちろん懲役が法文上ありますけれども,禁錮もあるかと思います。その辺りも含めて,もし自由刑を設けるとした場合には,懲役がいいのか禁錮がいいのか,他の法令等にもいろいろな形であると思いますし,それぞれの法律によって立法目的が違いますので,その辺は比較しながら慎重に議論していった方がいいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   その辺については,別の部会で,刑事関係の部会でそういう区別についても検討がされているかと思いますが,そういうことも踏まえた御指摘かと思います。   それではよろしければ,「3 その他」に移りたいと思います。これはその他として一般的な項目となっておりますが,補足説明を見ていただければ分かるとおり,主として問題とされているのはいわゆる「過去情報」,過去の財産,過去に処分された財産に関する情報を財産開示手続の対象とすべきかという点,それから8ページの2のところに書かれているのは,営業秘密に関する情報については陳述義務の対象から除外するという考え方についてどのように考えるのかという点が,ここで問題とされているというわけでございますが,今まで議論していた以外の点についてもし御意見があれば承りたいと思います。 ○阿多委員 2で御指摘の営業秘密に関して,従前除外するという形の議論がなされていないかと思いますけれども,これはむしろ他との整合性も考えて営業秘密というのは除外の対象として考える必要があるだろうと思います。   ただ営業秘密を考える場合に全て営業秘密だという形になると,それは逆に財産開示の実効性が阻害される形になりますので,従前から債権の特定ということに関するものについては,どこどこに対するいついつの売掛金とか,それは営業秘密に当たらないんだというようなことが,何らかの形で営業秘密の範囲がはっきり分かるような形の整理ができるのか,逆に営業秘密ということが出てきたときに秘密に当たるかどうか自体をまず手続の中でチェックしないといけないのかというようなことを考えると,相当手続的には重たい話になるのではないかということを危惧しますので,最初からとばすべきだとは申しませんけれども,そういったバランスを考えた上での制度を御検討いただく必要があるのではないかなと思っております。 ○谷幹事 過去財産について補足説明で触れられておりますのでその点について申し上げたいと思いますが,部会資料8ページの2の上のところの「また」から始まる段落の部分で,正確性を担保させるために過去財産を開示させるべきではないかという発言がかつての部会であった,多分私が申し上げたんだろうと思うんですけれども,これについてはこの説明では,財産開示期日における質問や虚偽陳述に対する制裁によって正確性が担保,確保されているという批判があるということなんですけれども,実情としては恐らくこれではなかなか正確性は担保されないだろうというふうに考えております。   まず財産開示期日における質問という点に関して言えば,実際のことを考えてみると,例えば銀行預金,ここの銀行のここの支店に口座がありますということで,例えば複数開示がされたというような場合に,ではその正確性を担保するために財産開示期日において全ての口座について何月何日でいくら残高があったんですかというふうな質問をしないといけなくなるわけでございまして,そういうようなことを質問でいちいちさせるということではなくて,もう一律に過去この時点での財産はどうでしたかということをまず開示をさせると,それを基に疑問点があれば質問をするということの方が実情に沿うし実効性は高いだろうというふうに思います。   それから虚偽陳述に対する制裁で確保されているというのは,これは先ほども申し上げましたけれども,虚偽陳述に対する制裁を科そうと思えばそれが虚偽だったということが判明しないといけないわけですから,それを判明させるための手段が別途やはり用意をされる必要があるのかなというふうに思っておりまして,そのために手段としては過去財産を明らかにさせるということで,それを基に様々な調査をするという,そういう意味で過去財産の開示というものが必要になるのではないかということでございます。 ○山本(克)委員 今の御発言について余計な話ですけれども,残高証明取ってこいとか,そういう話ではないというふうに従来私は理解していました。つまり,定期預金で,例えば現在高が1,000万円の定期預金を組んでいて2年半ほどたちました,利息がいくら付いているか分かりません,でも元本は1,000万円でしたと言えばいいんじゃないですか。その程度の特定性で十分だというふうに思いますので,現在高を言わなければいけないというそんな厳密な話ではないというふうに私は理解してましたし,普通預金についてもカードの代金の払い落とし期日の前の残高を覚えていたからといって,ちょうどその日が引き落としの日で違っていたからいかんとかそういう話ではないんじゃないでしょうか。   預金口座の特定性さえ維持されていればこれは十分に開示したと評価できるというふうに考えていましたけれども,もっと厳密なことを考えてあったんでしょうか。   それと過去財産の処分と言われてもそんなこと覚えていないですよね。昨日の昼飯いくら使ったとか,そんなことを言わなければいけないんでしょうか。不動産の売却とかに限定するのであればまだ分かるんですけれども,過去の財産処分といった場合にそれを限定なしに陳述しろと言われても,私はできません。 ○谷幹事 想定していましたのは,例えば預金であれば一定の期間の履歴,1年にするのか6か月にするのかを明らかにしてもらうというようなことです。さらには,一定期間に不動産の売却,あるいは保険契約等の解約とか,一定の期間内の一定の処分というものを明らかにしてもらうということが有益ではないかというのを想定していました。 預金の履歴が明らかになれば,例えば多額の引き出しがあれば,それはどこへ,何に使ったんですかとかいうふうな質問で正確性を担保していくということになるんだろうと思います。 ○山本(克)委員 そうすると銀行に入れている人と,いわゆる「たんす預金」で済ませている人で大きな差が出てくるということですよね。そんなことまでやらなくてはいけない制度なんですか。今,預金残高いくらぐらいありそうですと,どこどこ銀行の普通預金口座の何番ですということさえ言えばいいし,たんす預金を持っている人はたんすにこれだけありますと言えば十分それでということなので,なぜ預金口座を持っている人だけそんな加重な追跡を受けなくてはいけないんでしょうか。   何か弁護士会がおっしゃっていることが極めて矛盾しているように当初から感じているんですね。第1の論点ではものすごく,こんな不利益を課して,と言っておきながらここではなぜそんなに不利益を課すんでしょうか。私にはちょっと理解しかねます。 ○谷幹事 第1の論点というのは債務名義のことだと思うんですけれども,私どもの考えは極めてバランスが取れておりまして,つまり要件は絞ってその代わりに要件に当てはまれば,実効性のあるような制度作りをしようということでございますので,両方の法益を考えてバランスよく制度提案をしているつもりではございますが,預金の点について言えば,これはいろいろな実務でなされているところだと思います。例えば破産手続においては財産を処分したものがないかとか隠しているものがないか,これは正に預金を追えばある程度見つかったりすることもありますので,実務的に別にそんなに珍しいことではないと。たんす預金だったら隠せるじゃないかというのは,それはもう仕方ないことです。それはそこまでしている債務者に対しては,ある意味では何もやりようがないということなんだろうと思います。 ○松下委員 山本克己委員と谷幹事の議論がかみ合っていないような気がするのですが,谷幹事は預金残高の変動を確認することで他に執行対象の財産があるんじゃないかということを探索するための端緒と考えておられると理解してよろしいですか。 ○谷幹事 そういう意味で現在財産の正確性,陳述された現在こういう財産がありますという内容の正確性を担保することになるのではないかと思います。 ○松下委員 山本克己委員のおっしゃっていることは,その預金の差押えのことを考えておられるような気がして,ちょっとそこがずれているような気がするのですけれども。 ○山本(克)委員 おっしゃるとおりだと思うんですが,破産の場合は否認制度があって債権者全員の利益に還元されると,あるいは配当されるということが目的であって,債権者取消権の場合はそういう制度設計にされていないわけですよね,必ずしも。だからそこの差が私はあるんだということを念頭に申し上げたつもりです。 ○谷幹事 私は,債権者取消権のために,処分した先にどういう財産があるかを明らかにするということを目的にしているものではありません。それは私個人の意見ではそうです。それ以外の意見としては,債権者取消権と関連付けるという意見もあるということは正に資料に書かれているとおりなんですけれども,私が申し上げたのは,現在債務者が有している責任財産の正確性を担保するという意味ですので,預金から引き出して別の形になっていれば,こういうことであるんじゃないんですかということを調査なり質問するきっかけになるということです。 ○山本(克)委員 しかしですね,過去にどのくらい遡るんでしょうか。遡る限度とかそれでいくら引き出されたらどうかとか,そんな基準を設定しない限り,例えば,晩御飯食べに行くのにちょっと足らないなと1万円下ろしたというのと,500万円下ろしたというのとでは全然違いますよね。それを一律に,同じように追跡されるんですか。それがよく分からない。 ○谷幹事 またここも焦点化されているんですけれども,別に一定以上のものを,例えば預金から引き出した,それを明らかにしろとかいうような,開示の要件を申し上げているわけではなくて,そういうことが明らかになった場合にそれを基に債務者に質問する,そういう質問をしていく中で場合によっては別の場所に財産があるという事実が明らかになるということもあるのではないかと。   そういう意味で取引履歴を明らかにするというのは過去財産の正確性を担保するという上で,必要だし,また実効性があるんじゃないかとそういうふうに申し上げたつもりです。 ○阿多委員 実務の,運用だけの説明だけであれなんですが。現在の財産開示の際の財産目録,資産目録と言うところもありますけれども,開示に際しての預貯金の場合は,差押えの特定に必要な銀行支店名だけではなくて,目録作成の段階の残高,金額も一応記入するという形のひな形になっています。   それがそこまで書かないといけないのかどうかは別にしまして,今はそういう形で金銭評価としてどれだけの価値があるのか,それは売掛金等についても同じ形でどこどこにいくらの売掛金があるということで,別に差押えの時にいくらか分かっていなくてもいいわけですけれども,実務としてはそのような扱いをしている。   ですから先ほど谷幹事が申したのは,少なくとも作成段階では通帳を見ながら作成日を入れて今の残高はいくらですということを書く形で実際やっている。まずそこだけ御説明しておきたい。 ○山本(克)委員 私は何もそれを否定しているわけではなくて,そんなに正確な金額でなくてもいいんじゃないかということを申し上げただけです。   投資信託を持っているときに,投資信託を当日解約したらいくらもらえるかなんてことの証明を取ってこなくてはいけないというような制度ではないでしょうということを申し上げただけです。 ○阿多委員 その前提でもちろん生命保険についても解約すればいくらとかそんなことまで書くということはしていないんですが,少なくともある程度の財産価値があるということを示すひな形になっていると。   先ほど過去情報というような形で,谷幹事の意見も共通すると思うんですが,書くだけでありまして,御指摘のとおり破産は否認のための関係もあるので通帳なり決算書なりの過去分を添付しているわけですが,そこまでの法的な効果を意図しているものではなくても,少なくとも記載されている内容の正確性を担保するために資料添付という形で,例えば残高証明ということを求めているわけではなくて,通帳の最後のページを添付するとかそういうふうな方法というのも考えられるのではないかということを一応御提案しておきたいと思います。 ○山本(克)委員 それは何も否定していないんです。私が言いたいのは,過去の金の使い道まで聞かれるのは,これこそプライバシーの侵害だということを申し上げているだけです。 ○道垣内委員 皆さん念頭に置いていらっしゃることが全然違っているように思います。最初に議論になったときは,詐害行為取消権との関係が強く言われて,不動産を処分しているではないか,それは取り消せるんじゃないか,だから開示せよ,ということから始まり,しかし,詐害行為取消にはいろいろな要件があり,不動産を処分したからといって,それが詐害行為取消権の対象になるとは限らないから,かつて処分したという事実を教えないといけないということには直結しない,ということが言われたわけです。   ところが現在話をされているのは,現在の資産というものがいくらあるのか,むしろ,どんなものがあるかですかね,そういったことについての正確性を担保するという話なんですが,預金の履歴を開示するということに関しても,ここで500万円引き出したんだから500万円で購入した財産がどこかにあるはずだという観点からすると,それなりにやっぱり遡る必要があるわけですよね。それに対して阿多委員のおっしゃったのは,本当に現在347万円なのだろうか,それを明らかにするために通帳の最後のページのコピー出しなさい,という話であって,全然違う話だろうと思うんですよ。   500万円引き出したのならば代わりの財産があるのではないかという観点からすると,預金に関しても,何か月遡るんですか,何年遡るんですかという山本克己委員の質問が出てくるわけであって,それがはっきりしないのに過去の預金履歴を出しましょうというのは法制度として成り立たないんだろうと思います。   さらに,確かに預金というのは,とりわけ法人などで考えますと,変動というのが非常に大きな意味を有しているのかもしれませんけれども,そういうことを言い出すと,不動産を売って代金が数千万円入ってきたはずだから,それについての代わりの財産の有無を明らかにしようということになり,やはり過去の不動産の処分についても明らかにせよという話になってなりますが,このように考えていくと,際限なくいくらでも広がっていくという気がします。  阿多委員が最後におっしゃっていたような現在の預金残高出しましょうと,本当にそれで正しいのか分かるようにするために最後のページのコピーを出しましょう,というのはよく分かって,そのとおりだろうと思うのですが,それ以外に拡大するというのは私には現実的にも難しいと思いますし,また山本克己委員がおっしゃったようにどこにいくら使ったのか全部言えというのも無茶な話だろうという気がいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。  おおむね議論の分布といいますか,あるいはその根拠付けということについては,よく分かったということなのかなというふうに思います。 ○阿多委員 1点だけよろしいでしょうか。出頭された際の質問権の行使の関係で,従前から財産目録自体に過去情報について添付するのは,調査したりいろいろな負担があるけどどうかという問題があって,ただ出頭してきた際に実務では質問権行使が認められていて,それで質問して答えればという話が出ていたかと思います。   どこまで質問権が認められているかという形について従前異論は述べたのですが,実際質問権を行使する場面では過去財産についての,大きな財産の移動について質問をし,それが先ほどの話に戻るのですけど刑罰とかの対象で,回答内容が不正確ないしは虚偽の内容であれば,出頭日当日は過去情報についても虚偽の対象となるという整理でよろしいでしょうか。 ○筒井幹事 我々がお答えする話かどうか分からず,むしろ阿多委員の方がお考えをお持ちなのではないかと思いながら聞きましたが,やはりその質問が許されるかどうかには基準があって,それは,あくまでも開示すべきは現在の財産であって,それと関連する質問であるかどうかいうことなのかと思います。 ○阿多委員 質問をさせていただいたのは,質問権行使ないしは質問で対応できるんじゃないかというところで,記載については8ページの2の上4行ですかね,これは現在の財産を特定するために必要な情報の取得は,財産開示期日における質問により対応できるという形になっていて,これは現在財産ですが,従前からこの話は質問日という形になっていましたが,確認したかったのは,質問日においても事実上過去について答えれば回答を得られるけれども,それ自体は回答義務の対象ではないと。過去情報については対象とならないのであればそれについては答えないというのがもともと前提だと,そういう整理でいいのかということの確認なのですが,そうならざるを得ないですよね。 ○筒井幹事 そういうことになるのだと思います。 ○阿多委員 結構です。 ○道垣内委員 営業秘密の方につきましては,阿多委員の方から積極的な話だけが触れられておりましたので申し上げておきたいと思いますが,ここに書いてありますように例えば顧客に対する売掛代金債権は開示しないということになると,ある種の業種においては全く開示しないということと同じになるわけですよね。差押え対象財産であっても顧客が誰かが分かるからといって開示しないということが,当然に正当化されるのかというと,私は必ずしもそうは思わない。それでは,それ以外のノウハウとかそういうふうなものがどうなるのかという問題はあるのかもしれませんが,それに換価可能性があるという場合には,それは差押え対象となり得るわけですから,それは,営業秘密であるといってプロテクトできるということには当然にはならないのではないかなと思います。 ○阿多委員 先ほどの私の説明がぐるっと回った説明の仕方をしておりますので,申し上げたかったのは,営業秘密というのを最初から排除するというのは適切でないんだろうということを申し上げました。ただ差押えの特定に必要な程度のものは営業秘密から外れるという形の整理なり,営業秘密ですという主張が債務者から出たときにそれが営業秘密なのかどうかを確認する手続なり,そういうものも含めて営業秘密を保護するのであれば制度設計する必要があると。債務者がこれ営業秘密ですと答えればそれでもう何もできないという制度はおかしいという前提で,その上での考慮はやむを得ないと,そういう趣旨で御提案したつもりです。 ○勅使川原幹事 営業秘密に関する情報を陳述義務から外さないという前提でいきますと,部会資料8ページ2の最後にありますように目的外利用の制限によって対処するということですけれども,今回議論の遡上には上がっていないようなんですが,206条1項の過料を刑事罰に替えていくというふうになると,2項の方はどうなんだろうかということですね。刑事罰に威嚇されて営業秘密を出しますと目的外利用されたということを懸念すれば,30万円の過料なら安いもんだというのもどうかなという気がしなくもないので,平仄を併せてこちらも刑事罰という要望もあるような気もするんですがその辺はどうなんでしょうか。 ○松波関係官 御指摘ありがとうございました。確か第2回の会議の中でも第206条第2項の罰則を引き上げるという御意見がありましたので,今回の部会資料では,2ページの2段落目の中ほどにそれを記載しております。 ○阿多委員 よろしいでしょうか。20ページにも第三者から情報を取得した場合の目的外使用について罰則を設けることを考えられているような形で,全体で当然,目的外使用の場合もそろえるということは御検討いただければと思います。それについては積極的な意見を述べたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。その辺りは全体総合的に考えて何か方向を御提案させていただければと思います。それではおおむねこの財産開示手続の部分についてはよろしいでしょうか。  それでは,「第2 第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設」の議論に入っていきたいと思います。まず事務当局から第2の1及び2の部分について御説明をお願いいたします。 ○松波関係官 部会資料8ページ以下の「第2 第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設」の1及び2について御説明いたします。   「1 総論」の部分では,新たな制度を創設することについて取り上げております。その上で,9ページ以降ですけれども,「2 制度の対象とする第三者と情報の具体的な範囲」の問題を取り上げておりまして,おそらくここが大きな検討課題の一つになろうかと思います。   まず,このうちの「(1)私人からの情報取得」では,この制度の対象とする第三者と情報の範囲を,情報取得の必要性が特に高いと考えられる場面に限定して,個別的に検討するアプローチに沿って,資料を作成しております。その上で,債権差押えの実務におきまして預貯金債権が特殊な取扱いを受けていることなどに着目いたしますと,まずは,預貯金を取り扱っている金融機関をこの制度の対象とすることが考えられますので,これを本文のアで取り上げております。ここで取得すべき情報としては,債務者の預貯金債権に対する差押命令の申立てをするのに必要な事項を対象とすることが考えられます。   他方で,本文のイの部分ですが,金融機関以外の事業者からの情報取得については,情報取得の必要性や,第三者の情報提供義務の正当化根拠などといった点をどのように説明するのかといったことが問題となろうかと思います。   次に,資料13ページの「(2)公的機関からの情報の取得」につきましては,これまでの議論の中で,公的機関からの情報取得の中でも,債務者の勤務先に関する情報が,特に情報取得の必要性の高いものとして指摘されておりました。ただ,公的機関からの情報取得につきましては,平成15年改正の際に,その情報の目的外利用については個人情報保護の観点からの問題があるのではないかといった指摘がされておりました。特に税務当局が保有する情報につきましては,資料14ページの補足説明のように,申告納税制度との関係が問題となりまして,厳格な保護が要求されているとの指摘もされているところでございますので,これらの問題についても御議論いただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。それでは適宜区切って御議論いただきたいと思います。   まず,部会資料8ページの第2の「1 総論(新たな制度の創設)」について,御意見があればお伺いしたいのですが,前回の御議論では何らかの新たな制度を設けることについては,特段の御異論はなかったようにも記憶しておりますが,そういう理解でよろしいでしょうか。   それでは,その制度の具体的な中身ということで,特にその対象者あるいはその対象の情報というところが非常に大きな問題ですが,ここでは(1)で私人からの情報,(2)で公的機関からの情報と区分しておりますが,まず「(1)私人からの情報取得」について御意見を伺いたいと思います。 ○道垣内委員 部会資料13ページの(注1)なのですが,これひょっとして私の意見を書いていただいたのであるならば,一言申し上げたいと思うのですが,私は,民法の改正において,預貯金債権に対する譲渡制限や弁済に関して特殊な取扱いがなされているのであり,金融機関にその分利益を認めたのだから,ここでは義務を負わせてよいという発言をしたつもりは全くありません。預貯金債権というものが債務者の現金を預かっているものであり,そこに債務者の現金があるというのと同じ状態になっているという財産の性質上,金融機関に開示義務を負わせてもいいのではないかというふうに申し上げたつもりです。こう書きますとなんか非常に私が金融機関に敵対的なような印象が出てしまいますが,そうではありません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。まとめの「取扱いがされている金融機関に対しては」というところが少し書き過ぎたのかもしれません。 ○中原委員 この点については,銀行界として,差押えの実効性を確保するという観点から一定の協力をすることについて異論はありませんでした。   ただし,飽くまでも差押えをするための調査という観点からすれば,照会内容も差押えの申立てに必要な内容・程度にしていただきたいと思います。具体的に言えば,取引のある支店,預金口座の有無,預金の勘定科目,それからここはまだ十分議論が煮詰まっていませんが預金残高くらいと考えております。   それ以外の例えば過去の預金取引推移等については,本来差押えには必要ないと思いますので,照会の対象外としていただきたいと思います。 ○阿多委員 今の御発言に対して質問したいのですが,勘定科目については回答いただけるということですが,具体的には何をお考えでしょうか。 ○中原委員 普通預金とか,定期預金とかという,預金の種類です。 ○阿多委員 整理していただいているもののアの金融機関という意味,対象としての金融機関とそこの財産としての預貯金のようなものであろうと思うのですけれども,いわゆる金融資産という言葉を使う場合には,預貯金以外に債権,投資信託,株式出資金,保険年金等の準備金も含めてもろもろのものがあるかと思うのですけれども,このアの金融機関で預貯金に限定しているのは主体としてですね,銀行なり注2のところに限定した意味で金融機関を使っているのか,さらには生命保険会社,損保,証券会社というものはアの方ではなくてイの方なのか,言葉の使い方を教えていただきたい。 ○松波関係官 アの部分では預貯金を取り扱っている金融機関を念頭に置いております。保険会社などについてはイの方で御議論いただくことを念頭に置いております。 ○阿多委員 そうなりますと,10ページのところの情報取得の必要性というところで,(1)の第3段落で,整理の仕方だけの問題だとは思うのですが,「金融機関からの情報取得については,その必要性が特に高いといえる一方で,これ以外の場面(例えば,生命保険契約解約返戻金や投資信託受益権など)については,少なくとも第三債務者からの情報取得を念頭に置く限り,情報取得の必要性が特に高いとはいえないと考えられる」と一つの御意見を整理されているのですが,ここで括弧書きで生命保険契約解約返戻金を入れられているというのは,アの場面ではなくてイのお話をここでは書かれているということになるわけですか。 ○松波関係官 御指摘の部分につきまして,生命保険契約解約返戻金や投資信託受益権の場面は,預貯金のように支店の特定,限定をせずに差押えができるであろうということで情報取得の必要性が特に高くはないのではないかという考え方を記載しております。これらは本文のイの部分で御議論いただくことを念頭に置いております。 ○阿多委員 分かりました。イの方でむしろ議論すべきなんでしょうけれども,我々としては昔の有体財産が見えなくなって,無体財産化したために情報取得が必要だということを考えていまして,それは預貯金以外の金融資産がこれだけ膨らんでいるということを想定して,証券会社,生保,損保等も含めて広く調査の対象として,どこまで義務を負わせるかは別として,含めるという形で問題提起をしていきたいと思います。   それで現状の補足ですが,生命保険契約解約返戻金については従前,生保協会が回答するんじゃなくて取り次いでいただいて,生保協会から取り次いでいただいた回答をもらうという運用がなされたんですが,近時事務負担等を理由にして生保協会からは回答を受けられないというような運用になりましたので,我々としてはそういうところからの情報取得も現状困難な状況になっているということだけ,現状の説明をしておきたいと思います。 ○山本(和)部会長 部会資料の作りですが,9ページ補足説明2の(1),(2),(3),(4)というのは,ア,イを問わず情報開示の必要性を考えるについての基本的な考慮要素をそれぞれ,ア,イ両方に共通して検討していって,言わばその結論が12ページの3でアの金融機関,4でイのそれ以外,阿多委員から御指摘があった制度の状況を含むそれ以外のものを挙げていると,こういう構造になっているということかと思います。 ○阿多委員 そうなりますと,アの方は先ほど中原委員からも御発言ありましたようにそれほどならないかと思いますので,ア以外の金融機関以外のところについては,先ほど資産がそちらに相当額移転して管理されているという実情と,11ページのところでは,情報提供義務の根拠のところですけれども,4行目から「債務者財産の調査は基本的には債権者の責任で行うのが基本であるから,この考え方のみでは新たな義務を課す正当化根拠としては薄弱であるとの指摘」がなされ,それに対して金融機関以外の事業者のうち第三債務者以外の第三者が「また」で指摘がされているんですが,銀行以外の金融資産を管理しているところについて,かなりの資産があるのに我々としては現時点で情報が取得できない。そういう状況において,必要性があるという議論だけでは駄目だというのは分かるのですけれども,債権者の責任で行うのが基本だからという御指摘はあるんですが,できないという現状を踏まえて何らかの形での情報取得というのが,債権回収の実効性なり今の債権執行の強化という観点では必要だということを重ねてここでは申し上げておきたいと思います。   こう書かれると何か債権者の責任で行うのが基本だから正当化根拠は薄弱だと読めるのですが,必ずしもそのような方法がないということを踏まえて議論していただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 そこで阿多委員が想定されている第三者というのは,具体的には先ほど生命保険協会というものが出ましたが,他に具体的なところはありますか。 ○阿多委員 債務者ではないという意味では生命保険協会だったんですが,逆に協会が回答しなければ,生命保険会社,損保会社さらには証券については証券会社というところが対象になると思うんですが,これらは金銭債務を負うという意味での第三債務者ではないはずなんです。俗称でしょうけど,生命保険口座とか証券口座とかいう形で口座開設はしていますが,必ずしも金銭債務を負うわけではない,第三債務者になるわけではないんですが,それらからの情報取得というのも方法がないとそちらが管理している金融資産について債権回収が実現できない,そういうことになっているのかと思うんです。 ○松波関係官 御指摘のような,証券会社や生命保険会社から情報を取得するという場面を念頭に置きますと,例えば,具体的な証券会社,保険会社を指定した上で照会を掛け回答を求めることになります。しかし,現在の債権差押えの実務を考えますと,そのように具体的に証券会社等を指定するというのであれば,債権者は,わざわざ新たな制度により情報を取得しなくとも,直ちに差押命令の申立てをすることができるのではないかと思います。これまでの御議論では,こういった点を念頭に,情報取得の必要性の議論をしていただいていると思います。 ○阿多委員 その点について従前から実務の状況を踏まえて御説明したつもりですが,銀行に関して言えば,支店の割り付けという形でするわけですけれども,証券会社はもちろん本店を押さえればA支店,B支店含めて証券口座で統一管理しているんですけれども,問題はその証券会社がどれだけの数があるのか。証券会社の本店に送達すれば押さえられるからいいじゃないかと,そういう意味では銀行の支店よりも負担は軽いでしょうと。負担は軽いんですが,実際はA証券,B証券,C証券と証券会社ごとに情報がなければ順次押さえていかなければいけないという形になりますので,支店の特定の話と法人ごとの差というのがやはり事務負担としては相当大きいのが実情という認識です。 ○山本(和)部会長 そうすると個別の証券会社ではなく,どこか全体の情報を持っているところに対して照会をするということですか。 ○阿多委員 私が申し上げたかったのは,証券会社自体に第三者として情報取得のあるなしの回答をもらえれば,現状のように強制執行してもありませんという回答にならずに終わるんじゃないかということです。つまり,第三者からの情報取得の対象として,銀行,ゆうちょセンターだけじゃなくて,証券会社,生保,損保等も対象として含めて考えていただけないかと,そういうことです。 ○松波関係官 御指摘のように差押命令の申立てに先立って例えば各個別の保険会社から情報を取得するというのは,直ちに差押命令申立てをすることとは,何か違うということなのでしょうか。 ○阿多委員 一旦債務名義を使ってまたいちいち還付を受けなければいけないという意味で,現状の債務名義で情報照会,情報があるかないかを取得するのとは,手間,負担としても大分違うし,コストの点でも大分異なる。 ○谷幹事 今の点,補足させていただきますと,先ほどお話がありましたように,生命保険協会は今までの取扱いだったら,協会に23条照会をかければ,全加盟社に取り次いでもらって回答がくるんですけれども,これどれくらい保険会社があるか皆さん御存じですか。大体20から30回答がくるんですね。それを,一つ一つ順番に差し押さえていけなんて言われた日には,どうにもできるもんではなくて,あるいはそのうち,例えば仮に20だとして,債権額の20分の1ずつ取りあえず差押えしたらどうですかというようなこともあり得るのかもしれませんけれども,そんなことをやっていると結局20分の1しか差押えできないわけですし,そんなことよりも全ての保険会社に照会ができて,あるかないかが分かるというふうな結果が出ればあるところにだけ執行すればいいわけですので,実務の実情からすれば生命保険会社にしろ,保険会社にしろ本店で一括管理しているからそんなに不便はないじゃないかというのは全く実情とは違うということだと思います。 ○筒井幹事 おっしゃりたいことは何となく分かってきたのですけれども,それで今回の第三者から情報を取得する手続の対象としたときの具体的なメリットですが,強制執行を生保20社一斉にやろうとすると,請求債権の割り付けが必要になるという点が問題なのだとすると,それに対して第三者から情報を取得する手続を利用するときにどういう改善が図られると想定されていらっしゃるのでしょうか。一つの申立てで同時に20社に照会して,一斉に回答が得られるということなのでしょうか。 ○阿多委員 少なくとも債務名義を1社目の照会のときに使って,回答がくるまで2社目ができないということは考えていなくて,一つの債務名義があれば20社一度に照会できるのかなというふうなイメージを持っていたのですが。 ○山本(克)委員 そういった場合にですね,なぜ保険会社とか証券会社という形でそういう業種だけピックアップされるのか正当化できるんでしょうか。例えば,卸売業者がたくさんの売掛債権を持っていますと,だからそれで取引先でありそうなところに全部照会を掛けると,債務者がちゃんと答えそうにないというのが前提ですけれども,そういうのはなぜピックアップしないで既成業種の一部だけ取り上げるのかというのがよく分からないんですけれども。 ○松下委員 今の御提案は,もう少し突き詰めていくと結局第三債務者の特定を差押え前に便宜できないかという話になるかと思うのですが,そこから先は山本克己委員と意見同じなのですけれども,なぜ特定の業態だけ,一つの申立てでできるのかというのはなかなか正当化が難しいのではないでしょうか。 ○阿多委員 従前から第三者というものを抽象的に捉えるのか,個別具体的に捉えるのかという御議論があったかと思うのですけれども,最終的にどう収まるかは別にして,ある業界なりは従前からそのような対応もされてきているところで,実際金融資産も含めて管理されていて差押えの対象となることに事務処理も含めて慣れていらっしゃる。   ただ,メーカーや流通まで含めたときに,事務負担と回答の実現性などを考えると,場合によっては,この類型のところは対象となる,この類型は対象になるというグルーピングというのはあり得るんじゃないかと思っています。   特定業種を言わば狙い撃ちしてということではなくて,回答が返ってくる実効性を考えると,銀行やゆうちょ以外のグループというのも対象に含めることができるのではないかと,そういう趣旨で申し上げているつもりです。 ○山本(克)委員 私の感覚ではそれでは全然正当化ができていないと。一般義務を課すんだったらともかく,銀行の場合は預貯金に限ってるからアは正当化されているわけですよね。銀行の持っている預り資産全般ではないですよね。だからあくまでも預貯金だからという理由で正当化しているわけで,イのところであらゆる場合に一般義務を課すというのは,私反対ですけれども説得力ある一つの選択肢だと思いますが,その中でこれとこれだけをピックアップするという議論はおかしいんじゃないんですか。それで任意ベースでやってもらっていたことが根拠となるなんてことはもっとおかしいんじゃないんですか。 ○阿多委員 一般義務を課すという,そちらまでいかないと特定事業者を対象としてリスト化することができないのかといわれると,私自身は,抽象論としてもちろん理解しているのですが,実際の実効性なり事務処理を,今まで任意でされていたということ以外に実際の処理能力等を考えて可能なところに義務を課すというのは一つの制度設計としてはあり得るということを申し上げているつもりで,全てのところに抽象的に義務があるから同じようにしろというよりも制度の実効性としては・・・。 ○山本(克)委員 よろしいですか。実効性は何も否定していません。実効性があれば何でもできるんだという考え方がおかしいのではないかということを申し上げているつもりです。 ○阿多委員 実効性があればできるということを申し上げているつもりはもちろんなくて,一定の債務者側の負担なり処理能力を考えて,抽象的には義務を負うところでも特定のところだけを対象にするという整理で申し上げているつもりで・・・。 ○山本(和)部会長 根拠については,やはり一般義務と考えてられているんですか。 ○阿多委員 元々は一般義務で,個々の,例えば従前から証人については,個々の裁判所の判断という,具体的判断が介入して義務が具体化する。そういうのと同じ個々の裁判所の判断前に類型化するという形で対象者を限定するということを考えています。   それから裁判所の判断ということに関して言うならば,先ほどの財産開示のところの共通の開始決定の要件が掛かるんじゃないか,掛けるべきではないかと申しましたけれども,第三者からの情報取得に際しても裁判所としては取得決定というか手続はして,その段階でこれは要件を満たすから発令するんだという形で裁判所の判断も入る。そういうふうなことで裁判所の判断をする際に抽象的に第三者にするんじゃなくて,こういう類型のところが基本的に第三者の対象ですよとリスト化を御提案している,そういう趣旨です。 ○山本(和)部会長 念のための確認ですが,阿多委員の御意見は,金融機関以外では保険会社と証券会社を対象にするという理解でよろしいですか。 ○阿多委員 少なくともそれらを対象にしていただきたいと。現時点ではメーカーや流通を外すということまではあれですが,事務負担から考えるとそれらのところを巻き込んで議論をするのは非常に議論が拡散してしまうんじゃないかということで,典型的なものとして銀行・ゆうちょ以外には今挙げたところを対象に議論していただけたらと思います。 ○垣内幹事 私自身は従来からどちらかというと一般義務的な考え方に親和的な発想を持っているところでありまして,そういう意味では今,阿多委員から御発言があったように,類型化をした上で一部のものについてこういった義務を認めるということそれ自体はあり得るアプローチなのではないかと依然として考えております。   ただ,必要性とか,あるいはそういった新たな義務を課すことの許容性というのは,例えばここで挙がっている銀行等の預貯金を取り扱う金融機関とそれ以外の各種の事業者等とではいろいろな違いがあるということも事実でありますので,その点に鑑みてここで御提案がされているように,まず金融機関について制度を創設するということは線引きとしては合理性が非常にあるんじゃないかというふうに考えております。   その際私自身の理解としましては,13ページの注1のところで預貯金の特殊性ということが挙げられておりますけれども,基本的に現在預貯金というものは,ほぼ現金に代替するような機能を社会において一般的に果たしているということがあり,そうだとすると通常債務者はいずれかの金融機関に何らかの預貯金口座を開設しているということがごく一般的であるということがまず大前提としてあるだろうというふうに思います。ですから,そういう意味では預貯金債権というのは存在している蓋然性が高いということが一般的にあるということがあり,他方,これも既に指摘があるところですけれども,預貯金については差押えの際の債権の特定について,現在の裁判例は一時試みられたような緩和された形態については認めていないということですから,基本的に支店を特定する必要があると。   このような事情は他の預貯金以外のものについてはないということでありまして,その点が違うということがありますので,その点からしての必要性というものもとりわけ高いということはあるだろうというふうに思います。そういう意味では,説明としてはそこで線を引くということはしやすいと。他方,生命保険会社とか証券会社まで広げた上でそこで線を引くということになると,その説明というのはなかなか難しいということは確かにあるのかなという感じを現段階では抱いております。 ○村上委員 一巡目の議論では,いろいろな議論がありまして,私は財産開示手続の見直しや第三者からの情報を取得する制度の創設というものについては,基本的にはやっていくべきだろうと思っておりますが,一巡目でも申し上げたとおり,やはり利用場面というものを,いろいろ考えながら制度を作っていかなければならないのではないかと思っております。   今の議論でいえば金融機関の預貯金口座の情報は,広く社会的にも説得力があるもので,必要性もあるものだと考えておりますが,金融機関以外の一定の情報というところでいうと,生命保険であるとか証券であるとかということ,特に生命保険なのですが,やはり個人が対象であるので,債務者が個人である場合は認めるけれども,売掛金債権などについては実務上難しいため,法人については除外するということになりはしないかという疑問や,対象とすることが社会的に許容されるのかというとそこは難しい部分があるのではないかと思います。   労働者の立場からすれば倒産の際などの売掛金債権こそきちんと帳簿を把握したい部分でありますので,今回は預貯金口座というところで考えていくのが妥当ではないかと考えております。 ○松下委員 先ほど証券会社,保険会社という話があったのですが,空振りしない第三債務者の探索というのをそのような形で認めるとなると,ではどこの銀行に預金があるか分からないけど全ての銀行に1回の差押えの前に照会を掛けることを許容するという趣旨ですか。 ○阿多委員 現状は,自宅の近所の金融機関を特定するなりして差押えをしているんですけれども,そのような割り付けをしてするんじゃなくて,A銀行,B銀行,C銀行に口座がありますかということの照会をすると。そういう想定で,回答があるものを差押えするということです。 ○松下委員 そうすると空振りしない第三債務者の探索のための照会で,業態ごとにまとめて照会できるということについては,証券会社,保険会社だけではなくて,預貯金取扱金融機関も含めるという御提案だと理解してよろしいですか。 ○阿多委員 預貯金については今もA銀行本店に照会すればどこどこ支店にあるという回答がもらえると。それに基づいて甲支店,乙支店で空振りしないように差押えをしていると。証券会社の場合はA支店,B支店というような形の支店があっても本店で証券口座の管理をされていますので,本店に照会をすれば少なくともあるかないかは回答はしてもらえると,そういう前提です。 ○松下委員 分かりました。ありがとうございました。部会資料についての質問なんですが,10ページの「(1)情報取得の必要性」の3段落目,「このような債権差押」の段落の3行目に括弧の中で投資信託受益権というのがあって,次の段落にも投資信託受益権というのが出てきます。3段落目では投資信託受益権については情報取得の必要性が必ずしも高いとはいえないとの記述がありますけれども,いわゆる銀行の窓口販売で投資信託を売っていて,あれを差し押さえるときには差押えで解約して解約返戻金を窓口販売した銀行に対する返戻金として執行していくという立て付けになっているんじゃないかと思うんですが,その際には支店の特定というのはいるんじゃないかなという気もします。この辺実務がよく分からないので教えていただければ。 ○松波関係官 正確に御説明できるかは自信がないのですけれども,投資信託のうち,例えば,振替制度の対象になっているものにつきましては,振替制度の執行手続により差押えがされることとなり,その際には支店の特定が不要とされていると承知しております。これに対して,それ以外のものを差し押さえるということになれば,預貯金債権の差押えと同様に,支店の特定が必要となり得ると思います。 ○阿多委員 振替手続に乗せていれば,そもそも保振の振替機関に基づいてするんですが,全ての金融商品が振替手続に乗っているわけではありませんので,振替制度の対象となっていないものについては支店特定で解約返戻金を押さえるという形になる。   ただ,最初に確認しましたように,アが金融機関で,なおかつ対象としているのが預貯金だということになりましたので,松下委員が御質問された投資信託等窓口販売したものについては,イなのかなと思って理解していたのですが。 ○松下委員 もともとの質問の趣旨は金融機関に対する預貯金債権以外の債権といったらアとイのどちらになるんですかというのがもともとの質問だったのです。 ○松波関係官 預貯金債権以外のものはイの方で御議論いただくことを想定しています。 ○山本(和)部会長 恐らく松下委員が指摘された点は,問題としてあるのだろうというふうに思います。 ○青木幹事 問題があるというところについてなのですけれども,私はこの情報取得の必要性という観点からの理由付けからいえば,第三債務者を特定しても債権の特定にならない場合には,アの類型といいますか,情報取得の制度を認めていく方向になるのかなというふうに思います。   今出た話と重なるのですけれども,振替制度を利用しているものについても,口座管理機関が恐らく販売会社なのかなと思うんですが,銀行が取り扱っているものについてやはり同様に支店取扱いの特定が必要かどうかということは問題になるのかなと思うんですが,ここは必要ないという前提で書いていらっしゃるのかなと思いましたがいかがでしょうか。 ○阿多委員 我々もちょっと実務関係者と議論したのですけれども,付随業務で銀行販売の場合は,銀行自体の方でいわゆる証券口座を開設してそこで管理をされていて,証券会社の方の口座で取り扱うとは限らない,銀行の方というふうに理解はしていますが。 ○青木幹事 銀行の場合に支店,取扱店舗の特定は必要がないということでしょうか。 ○阿多委員 振替に乗せていればもちろん支店の特定は不要です。ただ,必ずしも投資信託全てについて,全てが全て振替決済制度に乗っているわけではないということで,そうなりますといわゆる券があるものについては,支店が特定されないとできないと思います。 ○中原委員 保護預かりの場合は支店を特定していただく必要がありますけれども,振替制度の対象となっているものについては,必要ないと思います。 ○佐成委員 特に定見というわけではないですけれども,平成15年改正のときにも議論されたけれども見送られ,今回新たに全く新しい制度として創設するというところで,大風呂敷を広げるというか,余り大きなものを作り込みますとかなり弊害も予想されますので,最大公約数といいますか,預貯金債権に限ってまずはやってみるというのが一番無難なところだと思います。産業界に身を置く者としての感想でございます。イの部分について更にこれもいいだろう,あれもいいだろうと必要性と実現可能性を考えていくとなりますと,かなりいろいろ問題が出てきますし,いろいろな産業界の話が出てくれば,当然その方たちの意見や実情などを聞かなくてはいけません。時間的制約の中でそこまでやるのかというのは非常に疑問に感じております。 ○谷幹事 私どもも,生命保険あるいは証券会社以外にでも本当に必要性があるところは念頭にはあるんですね。例えば,売掛金債権とか請負代金債権なんかは,特に下請が元請から代金を払ってもらえないときに,元請が持っている売掛金を調査したいと,こういうニーズは極めて大きいし,これはこれで中小企業の場合にはそういう形で救済をするという必要性が高い場面というのがたくさんあるんです。   したがって本当はそういうものも含めて幅広く第三者照会の対象にということが望ましいだろうとは考えているんですけれども,ただそうは言っても様々な負担等もありますので,最低限,生命保険会社と証券会社と。   これは先ほど佐成委員から弊害も考えながらというような御意見ございまして,正に弊害があるかないかということを考えないといけないと思うんですけれども,生命保険については,今まで御紹介ありましたように,従前の扱いでは生保協会が取り次いでいただいて,全ての保険会社から保険契約の有無が回答されているという状況を踏まえれば特段の弊害というものは恐らくないだろうと。   証券会社についても本店で全て管理をしておりまして,顧客の個人の特定というものも当然できているわけでございますので,特段それについての弊害はないだろうと。   銀行の預貯金の調査等と比較しても生命保険会社,証券会社の負担というのはそんなにないだろうというふうに考えているところでございます。   ここは最低限制度の対象としないと今回の立法の意味は本当にどこにあるのかなと考える次第です。 ○佐成委員 私が保険業界,証券業界の代表として出ているわけではありませんし,中原委員が出ているわけでもありませんので,もしそちらの方に拡張するということであれば,弁護士会の弊害がないだろうという御意見だけではなくて,実情を本当に分かっている方のヒアリングなり何なり慎重な議論をお願いしたいと思います。 ○阿多委員 我々も逆に業界団体の説明なども含めて働き掛けないといけない。   谷幹事の意見とも重なるんですが,現状も生命保険会社,証券会社は差押えの対象として申立ての名宛人になることが非常に多いわけです。債権であれば陳述催告の申立てをし,保振であれば職権に基づく催告をしてそれぞれの会社が回答をするというのが実務として既に運用されているわけで,そのような差押命令の回答をする負担と,照会を受けて,あります,ありませんという回答負担を考えるのであれば,むしろ照会を受けてありませんと回答する方が私などは事務負担としては相当軽いんじゃないかと。差押えを受けてからそれでミスがあると損害賠償責任があるような形の回答義務を課すよりも,照会レベルで回答される方が事務的な負担ということを考えるとそれなりのメリットがあるということをお話しておきたいと思います。 ○村上委員 谷幹事から御意見があったのですけれども,弊害がないという「その弊害とは何か」というところこそが重要ではないかと思っています。   事業者に対する負担がないから新たな制度による弊害がないということではなくて,債権者・債務者,特に債務者の立場というものをよく考えて制度を設計していただかなくてはならないと思いますのでその点だけ1点申し上げておきたいと思います。 ○山本(克)委員 今の点は恐らく個人が契約者になっている生命保険を念頭に置いておられるのだと思うのですね。つまり例えば,年金保険などが差押えしやすい財産になってしまって,年金保険を解約されたら老後はどうなるんだと,他に財産あるんだったらそっちを差押えしてくれたらいいのに,差押命令をしたとたんに,取立権の一環として解約権行使されたらどうするんだという問題をおっしゃっているんだと思いますので,その辺はやっぱり考えなくてはいけないポイントなのではないでしょうか。つまり差押え可能財産であってもやはりその債務者にとってより差し押さえられても構わない財産というものが他にある場合のことも考えろということではないかと思います。 ○阿多委員 もちろん差押えに際して,弁護士会は他のところでも差押禁止なりのところについていろいろ提案申し上げているつもりですが,情報取得すること自体も入り口の段階で制限してしまうのかということなんだと思うんですね。   それが差押えとして不適当だということは別途の政策なり考慮というのはあり得るわけで,個人についての危惧をして,法人を含めてもろもろの保険契約なり,金融機関の替わりに保険を購入して,定期預金の替わりにと言ってもいいかもしれません,そういう形で金融資産を運用されている一部なのかもしれませんが個人もいらっしゃるわけで,そういう人たちからの債権回収の途を制限するというところまでの意味があるのかということは,併せて御検討していただけたらと思います。 ○山本(克)委員 別途の方途を示さずに言うのはちょっとどうかなという気がするということだけ申し上げておきます。 ○谷幹事 2点なんですけれども,まず他に財産があるかないかというのは,それは分かるのであればそれをどう選択するかというのは債権者の判断になるのでしょうけれども,財産があるかどうか知るためには幅広く照会できるということがなければそもそも分かりませんので,例えば証券会社に口座がありそれなりの資産がある,保険会社にも年金保険がある,その場合にじゃあ年金保険はかわいそうだから証券の方を押さえてあげようかというのは債権者の判断ですが,そのためには広く情報を取得する必要があるということだろうと思います。   それと年金保険をかわいそうだからというのはどういう趣旨なのかよく分からないのですが,それしかないんであればそれも押さえては駄目という趣旨ではないだろうと思います。債務名義がある以上は押さえるしかないわけですから,調査の結果それしかないということであれば,それはそれで仕方ない,あきらめていただくしか仕方ないということだろう思います。 ○山本(克)委員 そういうことではなくて,簡単に差し押さえられる財産になってしまうということを申し上げているだけです。つまり生命保険とか証券に限らず,年金保険に入っている人の範囲と,他の証券会社が取り扱うような金融資産を持っている人の範囲は全然違うわけですよね。ということは生命保険会社から回答を受ける,ああここにあるわと,確実だし,第三債務者の資力も抜群ですから,じゃあ年金保険さっと押さえてしまう行動を取る債権者がいるかもしれないのではないかという懸念をおっしゃったんだというふうに理解しています。他の財産が全部分からないという前提ですよね。 ○山本(和)部会長 恐らく,村上委員は,いろいろな資産構造をいろいろな人が持っている中で,保険とか証券とかに特定してしまうとそこに資産を持っている人,それが個人だとすると,法人の売掛金は対象にならないこととの公平感ということを御指摘なされたのだろうというふうに理解しております。もちろんいろいろ反論などはあるだろうと思いますが。 ○道垣内委員 山本克己委員が最初におっしゃったことに全面的に賛成で,どこで区切るのかという話について,保険と証券会社というところに区切りを入れるということは正当化の根拠がないのではないかということに賛成です。   私が注1について話をしたのも,なぜ預貯金だけを特別扱いするのかという論拠が必要で,その論拠は考え得るのではないかという意味で発言させていただいたわけです。しかるに保険とか証券ということになりますと,形式的論理かもしれませんが,解約返戻金債権を差し押さえてそれによってその取立てとして保険契約を解約するということで,もう一段階入ってきているわけで,預貯金のように現金がそこに置かれているというのと機能的には同じだ,ということと比べて,かなり性質が違うだろうと思います。   ただそれに対する反論として,証券会社と保険会社というのはこれまでもある程度してきていて,しっかりしていて事務負担もそんなにいらないのだと,そこでいいではないかという話なんですが,そういう話になりますと,しっかりしているから,という理由付けはまずいのではないかと思います。どういう意味かと申しますと,私はいろいろな財産は持っていませんが,きちんと管理しているようだから,お前は簡単だろうと言われて,雑な人には課されない開示義務が課されるというのも何かちょっと変かなという気がいたします。 ○山本(和)部会長 色々な御議論がありまして,基本的な対立軸というのは明らかになったのではないかと思います。アについては今の御議論の中では皆さん基本的にはこのようなことでよろしいのではないかということかと思います。中原委員からもお話がありましたとおり,対象となる情報についてもここでは預貯金債権に対する差押命令の申立てをするのに必要な事項というふうに記載しておりますが,これはこれでよろしいということで考えてよろしいでしょうか。   特段の御反論はなかったと思いますので,アの方は基本的にはこのような考え方で今の段階では皆さんの認識は一致しているということですね。   問題はこのイで,弁護士の委員・幹事を中心として,対象としては保険会社と証券会社ということが具体的に挙がり,それは能力的にも必要性においても,制度の対象とする理由があるのではないかという御意見があったわけですが,それに対しては,多くの委員・幹事から,なぜ保険会社・証券会社というところだけを取り出すことができるのかという理由について,必ずしも理論的に十分に説明することが難しいし,また実際的にも村上委員などから,そこだけを取り出すということで果たして社会的に理解が得られるのかという御意見があり,また佐成委員からもこの段階で余りにその範囲を広げていくということだとすれば,それぞれの産業界の果たして同意が得られるだろうかいう疑義が述べられたというところであったかと思います。   もちろんこの段階で結論を出すわけではありませんので,議論の整理として。ただ1点,金融機関が保護預かりにしている投資信託については,やはり支店の特定等が必要なのだとすれば,アのところで預貯金だけに限定されるということでよろしいのだろうかという問題提起があったんだろうというふうに認識をしております。 ○道垣内委員 私は,その点の部会長の整理に必ずしも納得しません。預貯金以外を取り扱う金融機関がイにおけるものに該当するかという話であって,金融機関はイへの該当性を考えなくてもよい,という話ではなかったと思います。 ○山本(和)部会長 そこの認識はアとイの区分をどこに求めるかというところで,青木幹事が言われたように,第三債務者を特定するだけでは必ずしも差押え財産を特定できないものというものをアが指していて,ということであるとするとアの中に入るわけですけれども,道垣内委員がおっしゃるように預貯金とは別のものであり,預貯金替わりのものであって特別の理由があるというふうに考えるのであれば,今の私のあれはイに含まれるのかもしれません。 ○阿多委員 生命保険については今後の議論もあるのかもしれません。余り議論がなされなかったと思っている証券会社ですけれども,証券会社の証券口座にある有価証券などについての情報取得についても,銀行の預貯金だけというのはそれは駄目だということなんだとは思うんですが,生命保険とは大分意味が違うかと思うんですけれども,証券会社に対しての照会をするということも,債務者の不利益うんぬんに鑑み,それほど不利益なのかという気もするのですがいかがでしょうか。 ○山本(克)委員 他の方を代表して,私が申し上げたのは先ほど道垣内委員がおっしゃっていただいたとおりで,なぜ証券会社なのかということが説明できないと。つまり一問一答で書けないということですよね,理由を簡単に言えば。   そういう理屈のない法案を作っていくことが法制審議会の役割なのかどうかという点に私は非常に疑問に感じているということです。 ○山本(和)部会長 先ほど申し上げたとおり,ここで決めるというわけではありませんので,ぜひこれを入れるべきだという委員・幹事の皆様には,今の山本克己委員が言われた問題提起に答えられるような理論武装をした上で,御提案をいただければ大変有り難いというふうに思います。   それでは部会資料の中途ではありますが,本日の議論はここまでといたしまして,2の「(2)公的機関からの情報の取得」以降の部分は次回に回させていただきたいと思います。   それでは次回の議事日程等につきまして事務当局の方から御説明をお願いします。 ○筒井幹事 次回会議は4月28日金曜日の午後1時半から午後5時半まで,場所は東京高等検察庁の17階第2会議室です。   次回会議におきましては,本日の積み残し部分の審議のほか,子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化について,新たな部会資料を御提示して2巡目となる御議論をしていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 それではこれで本日の会議は閉会とさせていただきます。熱心な御審議をいただきましてありがとうございました。 -了-