法制審議会倒産法部会特別清算分科会第2回会議 議事録 第1 日 時  平成16年3月19日(金)  自 午後1時00分                        至 午後4時33分 第2 場 所 法務省大会議室 第3 議 題 特別清算についての検討課題(2)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● まだ若干お見えにならない委員・幹事の方もおいでになりますが,あらかじめ少しおくれるという予告のあった方もおいでのことですし,時間になりましたので,第2回特別清算分科会を開会することにしたいと思います。   前回以降,本日までの委員・幹事の異動は特にございませんので,早速配布資料の説明等に移ることにしたいと思います。 ● それでは,私の方から配布資料の説明をさせていただきます。   本日,御利用いただきますものは,事前送付の資料,特別清算分科会資料2というものでごさいまして,「特別清算についての検討課題(2)」と題するものでございます。   (前注)にもございますように,前回,特別清算の在り方につきましてはいろいろ御議論があったところですが,差し当たり従前御説明いたしました通常の清算手続を厳格化した特殊な清算手続という現行の特別清算の枠組みを維持した上で,個別の論点について御議論いただくということで作成したものでございます。   それから,直接資料としては配布してございませんが,1点報告がございます。   本日,3月19日に「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」,いわゆる整備政令が公布されております。この中の第5条で,民事執行法施行令の改正をしており,今回4月に施行されます先ほどの「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」によりまして,差押禁止財産の範囲が,金銭については,従来の1か月のところから2か月に広がることになります。それに伴いまして,政令で2か月分の必要生計費といたしまして,66万円という数字が示されております。これは,破産法の方に当てはめますと,今回の破産法案では34条第3項で,民事執行法第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭を自由財産とすることとしてございますので,66万円の2分の3倍ということで,合計99万円の金銭を自由財産とするということになるということでございます。本日,公布されましたので御報告いたします。 ● それでは,特別清算分科会資料(2)について,またいつものように適宜事項ごとに区切って御説明をしていただいて,御審議をお願いするということでまいりたいと思います。 ● それでは,特別清算分科会資料(2)について御説明いたします。   内容に入ります前に,誤記の訂正がございます。   最初が16ページになります。下から10行目,項目でいいますと10の(3)の①になりますが,3行目に「競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがあるものと認めるときは」とありますのは,「不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは」の誤りです。正反対になっております。申し訳ございません。   それからもう1点,次の17ページになります。上から10行目,(注1)の6行目になります。これは条文の引用の誤りですが,中ほどに「同法第499条」というのがございますが,これは「同法第449条」の誤りでございます。いずれも訂正させていただきます。   それでは,内容の説明に入らせていただきます。   まず,1ページの(前注)では,先ほど御説明をさせていただきましたとおり「第1 現行の特別清算の見直しについての個別の検討課題」についての趣旨を説明しているということでございます。前回の審議では,株式会社が債務超過の状態にある場合には,特別清算開始の命令があったことを株式会社の解散事由とするということによって,存立中の株式会社であっても特別清算を利用することができるものとするという考え方が御提案されました。しかし,そのような考え方も,存立中の株式会社による利用を中心に考えて,現行の特別清算を大幅に見直すというよりは,株式会社の清算手続の特則である現行の特別清算の枠組みを基本的に維持しつつ,その利用の拡大を図るというものであると理解することができます。そこで,第1では,まず現行の特別清算の見直しについての個別の検討課題を一通り取り上げて,現行の特別清算における個々の制度,手続の見直しについての審議をしていただくことにしております。   また,現行の特別清算の枠組みを基本的に維持するということを踏まえまして,見直し後の手続の名称については便宜上「新・特別清算」としております。   なお,存立中の株式会社による利用については,次回の後半,又は次々回に改めて御審議をお願いする予定です。その場合には,存立中の株式会社による利用と,第1で取り上げます個別の検討課題についての審議の結果とが矛盾することがないかどうかを検討していく必要があると思われます。存立中の株式会社による利用が,個別の検討課題についての審議の結果と整合的でない,あるいは矛盾するということになりますと,一つの制度として合理的な説明をすることができなくなりますので,なお存立中の株式会社についても利用しようとするときは,特別清算の在り方についてもかなり抜本的な見直しをせざるを得なくなると考えられますので,その点についてはあらかじめ御留意いただきたいと思います。   それでは,内容の方に入ります。   第1の1は,「管轄」でございます。本文の国内管轄の問題に入る前に,(注1)では,国際管轄の問題を取り上げております。   この点については,(注1)に記載したとおり,新・特別清算を通常の清算手続を厳格化した特殊な清算手続として位置づける限り,清算に関する事件一般の問題としてとらえざるを得ないと考えられるところです。   なお,商法上,外国会社の取引継続禁止及び営業所の閉鎖命令の制度,これに伴う日本国内にある会社財産の清算の制度が設けられております。それにつきましては,特別清算の規定が準用されておりますが,この点についても清算に関する事件一般の規律に従うことになると考えられます。   さて,本文の国内管轄の問題に入りますが,ここでは甲案及び乙案という二つの考え方を掲げております。甲案は,現行法を維持する考え方であり,会社関係の非訟事件の通例に従いまして,会社の定款に記載された本店の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄とするものです。甲案をとる場合には,特別清算に関する事件の管轄は,それ以外の通常の清算に関する事件の管轄と一致することになりますので,(注3)に記載したような管轄裁判所の拡張を図らない限り,特段の問題は生じないと考えられます。   なお,会社法制の現代化のための見直しが行われても,何らかの形で特別清算以外の清算に関する事件が存続することになり,そのような事件については定款に記載された本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄とされることになると考えられることは,(注2)の第1段落に記載したとおりです。   これに対して,2ページの乙案でございますが,破産手続等の管轄に関する規律に合わせて,実質的な営業の中心地である主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄とするという考え方です。破産法分科会で管轄の問題を取り上げた際には,倒産処理手続として純化する,すなわち株式会社の清算とは切り離して手続を構築するという前提をとっていたこともあり,乙案のような考え方に賛成する意見が多数を占めておりました。今回,新・特別清算については,株式会社の清算手続としての性格を維持するということになり,前提が変わりましたので,なお乙案のような考え方をとるべきかどうかについて御意見を伺いたいと思います。   なお,(注2)の第2段落に記載したように,乙案をとる場合には,特別清算以外の清算に関する事件との間で,管轄裁判所の不一致が生ずる可能性があるという点を考慮する必要があると思われます。現行の特別清算事件の管轄は,株式会社の清算に関する総則規定である商法2編4章9節第1款に基づく特別清算以外の清算に関する事件とともに,管轄に関する通則的な規定であります非訟事件手続法136条に定められており,管轄の不一致の問題は生じません。しかし,乙案をとる場合には,特別清算開始の申立て時ないしは特別清算開始の命令時に係属中の商法2編4章9節1款の規定に基づく清算に関する事件,例えば商法423条2項に基づく弁済の許可の申立てに係る事件や,430条1項において準用する125条4項に基づく鑑定人の選任の申立てに係る事件をどのように取り扱うのかといった問題が生ずることになります。そこで,このような管轄の不一致が生ずることにより,理論上又は実務上,致命的な不都合が生じることがないか,あるいは制度上,運用上の工夫によって対処することができないような問題がないかについて,検討しておく必要があると思われます。   更に,管轄の不一致が実際に生じた場合の取扱いについても検討しておく必要があり,(注2)の①及び②には事務当局の一応の考え方を記載しております。   ①のその後の清算に関する事件とは,商法2編4章9節1款(総則の款)に基づく非訟事件と,2款(特別清算の款)に基づく非訟事件とを含む趣旨でございます。このような手当てをすることにより,破産手続などと同様に,基本となる手続に付随する事件を同一の裁判所で取り扱うことができるようになります。   なお,厳密にはこのような手当てを講ずる前提として,特別清算開始の申立てがされた後に,特別清算の款の規定に基づいてされた申立て,又は職権でされた裁判に係る事件を特別清算に関する事件として個別にカウントするのか,専ら基本となる特別清算に付随するものとして取り扱い,個別にカウントすることはしないのかという問題がありますが,この点についてはなお検討させていただきたいと思います。   次に,②ですが,解散後直ちに特別清算の開始の申立てをするという現在の特別清算の運用を前提にする限り,係属中の清算に関する事件が存在することは希有であると思われますが,制度上は手当てをしておく必要があると思われることから,ここに掲げております。乙案を支持される方がいらっしゃるとすれば,管轄の不一致にかかわる問題についてどのような御意見をお持ちか,お聞かせいただきたいと思います。   更に,(注3)では,管轄の拡張の問題を取り上げております。破産法案5条3項から5項までというのは,親子会社関係又は連結会社関係にある会社の破産事件などが係属している場合の管轄の特例でございます。   5条6項は,会社と代表者との間での管轄の特例でございます。   また,会社更生法5条2項第1号は,乙案をとる場合の本店所在地を管轄する裁判所の管轄の特例でございます。このような管轄の拡張を図るニーズがあるかどうか,管轄の拡張を図る場合の管轄の不一致についてどのように考えるかという点について,御意見を伺いたいと思います。   なお,管轄の拡張を図る場合には,移送の制度も整備することになろうかと思いますが,(注4)に記載しましたとおり,既に非訟事件手続法には管轄裁判所が複数ある場合の移送の制度が設けられているところです。   次に,2では「記録の閲覧等の制度」を取り上げております。   民事再生法以来,倒産法制の整備に当たっては,利害関係人の利益を保護するため,記録の閲覧等の制度を整備してまいりました。特別清算を倒産処理手続として純化するという考え方をとる場合はもちろんですが,現行の特別清算の枠組みを維持する場合でも,3ページの(注2)に記載しましたとおり,記録の閲覧等の制度を整備するニーズは否定されないと考えられます。ところが,現在の特別清算においては,(注1)に記載した非訟事件における記録の閲覧等に関する解釈がそのまま当てはめられて,記録の閲覧等は極めて制限的であると言われております。そこで,新しい破産手続と同様に,事件に関する文書の閲覧等の制度,及び支障部分の閲覧等の制限に関する明文の規定を設けることが考えられるところです。   もっとも,基本となる手続と,これに付随する個別の制度,手続との関係が明確な破産手続とは異なりまして,特別清算については特別清算開始の申立てに係る事件と,特別清算開始の申立てがされた後の通常の清算に関する事件や,特別清算の款の規定に基づいてされた申立て,又は職権でされた裁判に係る事件との関係が必ずしも明確ではありません。また,特別清算開始の申立て前に既に終了している通常の清算に関する事件や,特別清算開始の申立て時に係属中の通常の清算に関する事件についての取扱いも問題になります。3ページの(注3)では,そのような問題点を指摘しているところですが,ここで考えられる一つの極端な制度としては,特別清算の款の規定に基づく清算に関する事件の中でも,特に閲覧等を認める必要性が高いものに限って閲覧等を認めるというものがあり得ます。   他方で,特別清算開始の申立て後ないし開始後は,清算手続の主役は株主でなく債権者であり,また清算段階では企業秘密の要保護性等も低下すると考えられることを踏まえて,極端に緩やかなものとしては,すべての会社関係の非訟事件について閲覧を認めるという制度も考えられないではありません。現時点で事務当局が具体的な案を持っているわけではありませんので,通常の清算に関する事件やその他の会社関係事件も視野に入れて,どのような範囲の文書を閲覧の対象とする必要があるかについて,御感触を伺いたいと思います。   なお,このように考えますと,通常の清算に関する事件だけが係属している状態でも,記録の閲覧の可否や要件等が問題になると思われます。更に,会社関係の非訟事件一般について,記録の閲覧の可否や要件などが問題になると思われます。つまり,記録の閲覧は特別清算のみにとどまらない問題であり,法制化に当たっては会社関係の非訟事件一般,清算に関する事件一般との均衡も十分に考慮する必要があることをあらかじめ御了解いただきたいと思います。   次の(注4)では,(注3)とは別の視点から破産手続との相違点を指摘しております。破産手続に関しては,民事訴訟法の規定が包括的に準用されますので,民事訴訟法第91条等の準用を前提として,閲覧等に関する規定を破産法案中に設けることとしておりますが,特別清算に関しては,現行の非訟事件手続法のスキームを維持する限り,民事訴訟法の規定の包括準用という前提を欠くことになります。仮に,新・特別清算に関しても民事訴訟法の規定を包括的に準用しないこととすると,理論上は保存に支障がある場合における閲覧等の請求の制限に関する規定を準用する個別の規定を設けることも考えられるところですが,民事訴訟法の規定を類推適用する余地もあることから,解釈に委ねるという選択肢もあるように思われます。このような点についても御意見をお聞かせいただきたいと思います。   4ページの(注5)では,記録の閲覧等の問題と関連して,会社関係の非訟事件一般,又は清算に関する事件一般との均衡や,民事訴訟法の規定の準用という問題があることを指摘しております。特に今回は,現行の非訟事件手続法に設けられている総則規定以外に,必要となると思われる総則規定ないしは通則規定をどのような形で補充していくのか,民事訴訟法の規定を包括的に準用すべきか,必要に応じて民事訴訟法の規定を準用する個別の規定を設けるかといった点についても,現時点での御感触をお聞かせいただきたいと思います。   次の3では,「最高裁判所規則への委任」を取り上げております。   再生手続等に倣い,申立ての方式,監督官庁への通知等の細目的な事項については,適宜見直しを行った上で,最高裁判所規則で定めるのが適当であると考えられます。法律に定めるもののほか,必要な事項は最高裁判所規則で定めるものとするとの考え方をここで掲げております。   なお,最高裁判所規則が特別清算に特化したものになるのか,会社に関する非訟事件一般を対象とする規則を設けて,その中で定めることになるのかといったあたりは,会社法制や会社に関する非訟手続の立法形式を踏まえて,しかるべき形式を採用していただくことになりますが,現時点では特別清算,会社法制,非訟手続の立法形式自体が未定ということでございます。 ● それでは,そこでいったん切っていただいて,順番に御意見を伺っていくことにしたいと思います。   まず,「管轄」の点でございますが,これについてはいかがでしょうか。国内管轄について甲案・乙案というのが示されていますが,その前提として,(注1)に国際裁判管轄については前回の基本的なスキーム,特別清算を清算手続を厳格化した特殊なものとして位置づけるという考え方からすると,特に国際裁判管轄についての規定を設ける必要はないのではないかという考え方が示されていますが,この点はいかがでしょうか。 ● ちょっと前提を確認しておきたいのですが。   清算手続の特則だというふうに考える場合においては,やはりもう設立準拠法が日本法である株式会社のみが対象になるということになるという理解でよろしゅうございますでしょうか。 ● そうだと思います。 ● そういう理解であれば,私は国際管轄,特に書く必要もなくて,甲案でいいのじゃないかなという気がするのですけれども。 ● 特に国際裁判管轄について改めて規定を置くということは必要ないということでよろしいですか。   そうしますと,国内管轄について甲案のように現行法のままということにするか,あるいは乙案のように会社の主たる営業所所在地というふうに考えるか,今説明がありましたように,乙案のような考え方をとった場合には,通常清算の場合との不一致が出てきたときに,それをどう処理するかという問題が出てくるわけですが,この点についてはいかがでしょうか。 ● 実務上の利用のしやすさという観点から考えますと,乙案の方が利用しやすいかなと,かつ,(注3)のところでも書かれているように,管轄を広げてもらう方が利用しやすいということは確かだろうと思うのですが,ただ手続上の性格から,新・破産法と同じように広げるのは適していない部分もあるかとは思いますが,できる範囲で管轄は広げていただいて,不一致等の取扱いについては,(注2)のところで触れていただいております①,②のような方式をとっていただければ,解決できるのかなというふうに思っているところです。 ● きのうの日弁連のバックアップ委員会で,今,○○委員のおっしゃったような意見の方が多数で,利用しやすいものは何でも広げればいいという,従来の日弁連の考え方でございますが,ただ特別清算自体が債務超過が原因とはなりませんので,そうしますと株主権を無視できませんから,そうするとやはり本来の管轄というのは無視できないというふうに思われます。   ただ,親子会社のような場合に,双方が特別清算に入ったときに,親会社の方へ子会社を持ってくるメリットはあるのではなかろうかと,子会社の方へ親会社というのは株主権の侵害なりますから,これはいかがかと思いますが,逆の場合はあり得ると思いますので,そういう意味では現行の管轄規定よりも少し緩めるというぐらいのことはお考えいただいてもいいのじゃないだろうかという気はいたします。 ● 今の○○委員の御意見は,そうすると甲案をとりつつ,親子会社,あるいは連結子会社まで入るのかもしれませんけれども,子会社については親会社の本店所在地の方に管轄を認めてもいいのではないかと,そういうことになるのですね。 ● そうでございます。これは私見でございます。 ● どうでしょうか,ほかの委員・幹事の皆さん。 ● 裁判所の方も少し検討してきたのですが,現状の管轄でそうお困りになっているような状況はそれほどないのではないかなと,ただあえて考えてみますと,先ほど○○委員のおっしゃったような親子関係の場合,子会社の整理なんかの場合に,たまたま子会社の本店の所在地が違うというような場合なんかは一緒の方が便利かなと。ただ,そういった場合も恐らく本店を移転された状態で申立てされたりしているようなことでうまくやっておられるのかなというような感じを抱いておりますが,基本的には甲案をベースにしての若干の修正というようなところなんじゃなかろうかと思っております。 ● どうでしょう,これまでの倒産法部会でやってまいりました倒産に関する立法では,乙案のように主たる営業所の所在地というのを基本にするという考え方をとってまいりましたけれども,特別清算については本店所在地というのを基本としながら,今の○○,○○両委員・幹事がおっしゃったように,親子会社について少し広げるという考え方でよろしいでしょうか。 ● その場合に,親会社について係属する倒産事件の種類ですが,これは特に特別清算に限らず,破産,再生,更生すべて含むという御趣旨でしょうか。異種の手続でもいいのかということですが。むしろニーズとしては,そちらの方が多いような気がするのですが。 ● 異種の倒産手続の場合ですね。それはまたちょっと新しい問題かと。 ● 詰めて考えていませんが,それで支障がなければ,その方がやりやすいかもしれないと思っております。 ● 私どももそこまで深く考えていなくて,実は子会社のところもなくてもいいのかなという程度であります。少し,申立てをされている方の御意見等をお伺いしていただいたらどうかと思います。 ● ○○委員,今の点はどうでしょう。 ● 子会社の処理というのは,かなり占めていますので,そういう意味では特別清算に限らないで広めておいていただきたいなと。   それから,裁判所に持ち込むときは,それは現行の規定がありますから,そのように仕組んで持っていくので,支障はないと裁判所の方は思われるのは当然だろうと。担当する方は,やはり広い方がいいなと思うのですが,主たる営業所を甲案につけ加えることはできないのかなという,そういう意味でございます。 ● 甲案につけ加える。 ● 主たる営業所も含むことはできないのかなと。   それから,親会社・子会社の場合については,手続の種類を問わないでお願いしたいというふうに……。また,理論的な点で何か問題があるのであれば,これも管轄の問題ですから,それほどはこだわりませんが。 ● ○○幹事,いかがでしょうか。 ● 弁護士は,なるべく広い方がいいというのが会としての意見でございますし,甲案の修正でそういう手当てができるということがもしできるならば有り難いなと思いますが,何となく私の個人的感想としては,極めて乙案に近くなってくるような,何かずるずるになってくるような気もしますので,ちょっと心配になります。何とか工夫していただきたいなと思います。 ● 広げるということになると,何となく,じゃもう乙案でもいいじゃないかということになりそうではありますけれども。   ○○幹事,何か御意見ございますか。 ● 単純に順序から考えて,特別清算の前には必ず清算があるというふうに,非常にしゃくし定規でありますがそう考えたときは,別にこの制度の枠組みを清算の枠から厳格に一歩も出てはいけないということを言うつもりはありませんが,この管轄の場合には順序が大変意味を持つのではないだろうかと私は意識しておりますので,もし乙案をとるとすると,清算の手続を踏んだときに,管轄というほどのことがない場合が多いのですけれども,裁判所が必ず登場してしまうことがあります。例えば,清算の条文の中でも,清算人の届出は裁判所にしなければいけないということがありますので,それを考えると既にそこで清算手続をしたときは,現行商法で本店所在地の裁判所が出てきているのですね。そこから考えると,やはり最低限基本は甲案から外せないのかなというのが私の意見ではあるのですが。 ● 分かりました。ありがとうございました。   いずれにせよ親子会社,連結も含めて考えていいのかもしれませんけれども,そのあたりのところは一体として処理ができるように管轄を広げた方がいいのではないかと。基本を甲にするか乙にするかということになるのですけれども,甲案でもいいのではないかという御意見の方が若干多いように思いますが……。 ● 経団連でもこの辺ちょっと話したのですが,抽象的な意見なんですけれども,一応通常清算と管轄が違うのはやはり注に書いてあるようにいろいろそごが出るのじゃないかということで,ただ特別清算のみがほかの倒産手続と余り違うと,やはり問題も生じることがあるので,移送手続を柔軟にするとか何とか工夫できないかというような意見がありました。 ● それでは,親子会社等については少し広げるというところは大体共通の御理解のようですので,甲案・乙案どちらを基準にするかということについては,なおちょっと,本日は第一読会でございますので検討させていただくということでよろしいですか。   そうしますと,続いて記録の閲覧等の話でございますけれども,これは現行法をより整備しなければいけないということについては,これも余り御異論はないかと思うのですけれども,どの限度で広げたらいいのか,あるいは規定を整備したらいいのかというふうに申し上げましょうか,その点についてはいかがでしょうか。   何か○○幹事。 ● 今の運用の実情をまず御紹介させていただきます。   この資料にも書いてあるところでありますけれども,今の私どもの記録の閲覧の運用につきましては,非訟事件が非公開であるということと,それから特別に閲覧謄写についての具体的な規定もございませんので,特別清算の記録について閲覧謄写の請求権はないという前提に立った上で,裁量によって記録を開示するという扱いをとっております。その際に,法律上の利害関係があるかどうかという点と,それから閲覧謄写をする個別の必要性があるかどうか,この2点を検討の上,個別に開示するかしないかを判断しているというのが実情でございます。   ただ,特別清算の事件では,清算人の方々が十分債権者の協力を得るために情報提供しておられますので,最大の閲覧請求をされる方々である債権者からの閲覧謄写の請求というのはほとんどございません。むしろどちらかというと,利害関係とか,あるいは閲覧の必要があるのかなと思われるような方から,ごくまれに閲覧請求があるというのが実情でございます。   それから,特別清算の記録自体は申立書等の書類,それから少額弁済や資産の売却についての許可,それから開始決定という決定類のたぐい,それから清算人からの報告書といったようなものがつづってありまして,先ほど御説明があったように,もう既に清算で入っておりまして,営業を継続しているわけでもございませんので,特に支障のあるものが入っているというわけではございません。大体そういった実情でございます。 ● その場合,利害関係人,利害関係があるという理由で閲覧申請をしてくるものが多いというお話ですが,具体的に言うとどういう種類の人たちなんでしょうか。 ● 閲覧謄写の申請はそれほど件数はございません。本来は債権者の方が御覧になりたいという場合であれば,これはもう当然だというふうに思うわけでありますけれども,一つの例としては,例えば売却予定の資産について賃借権を持っておられる方とかが,どういうことになっているのか何か見せてほしいというような形でお求めになるといったような局面がございます。 ● なるほど,分かりました。   特別清算の記録の状況,あるいは閲覧の状況についてお話をいただきましたけれども,どうでしょうかね。 ● 今の○○幹事からの御紹介では,清算人の方が適宜債権者に対して情報を提供しているから特に問題はないと,生じていないということでございましたけれども,制度としてはやはり情報開示するというか,清算人がどのような方であったとしても,制度としてやはり債務超過で債権者の権利が顕在化しているような中での手続でございますので,やはり閲覧の制度はきちんとつくっておく,整備しておく必要があるのではなかろうかなと,こう思います。 ● それはおっしゃるとおりだと思います。ただ,その具体的な範囲,あるいは閲覧謄写を制限できる場合等についてはどうでしょうかね。 ● 清算の申立代理人,あるいは事案によっては清算人に弁護士がなることもあるのですけれども,大阪の場合,複雑な事案ですと検査役が入ります。監査委員じゃなくて。それで作業が進められていくわけですが,それの報告書の中にはやはり破産,あるいは他の倒産手続と同様に,一般の開示に供するのにはふさわしくない資料もございますので,ですからスキームとしては他の倒産手続と同様なスキームというのは,特別清算にも必要なんだろうと思います。   ただ,注でお書きになっているとおり,他の一般の清算との絡みだとか,非訟事件全般との絡みを考えると,条文の立て方は難しいなということがよく分かるのですが,特別清算に限定して言えば,他の倒産と変わらないと思います。 ● どの範囲を対象にするかという点につきましては,当部で行っている非訟事件の中で,株価の決定というのがございます。これなんかは,かなり閲覧すると具合が悪いようなものがたくさん入っておりますので,ですから特別清算の範囲に限ってということであると比較的どういったものが中に入っているからと,そこを念頭に置いた議論がしやすいのでしょうが,非訟事件一般についてというような立て方になりますと,これはかなりいろいろなことを考えないとなかなか決めかねるところがあるのじゃなかろうか,こういう感じでございます。 ● そうですね,特別清算申立て以後だけ別つづりにしておけば,規定としては破産なんかと同じにしておいて,どこまで使われるかはこれはまた別問題という仕組みでもいいのかもしれないですね。 ● 私も同じ意見で,確かに非訟事件の一つの手続という構成になっているわけですが,ただ非訟事件の中でも債務超過の疑いとか,あるいは清算に著しい支障があるという要件でかなり争訟性が強いということが事件のそもそもの前提になっているような感じがしますので,通常清算とか争訟性が基本的には前提にならないはずの商事非訟事件とは相当程度性質が違うと。特に文書の開示というような問題,手続の要するに透明性というのは,やはり争訟性が高い手続については当然透明性が求められてくるということになると思いますので,そこは何か一般商事非訟,あるいは一般の清算手続とディスティンギッシュできる余地はあるのではないかというふうに思いますが。 ● あと,ほかに特に御意見ございませんか。   ○○委員,何か。 ● もう今までの方と大体同じなんですが,やはり特別清算というのは遂行に著しい支障を来すような場合とか,債務超過の疑いがあるというようなことだとすると,やはり情報の開示は広くすべきだろうと。その基準としては,ほかの倒産手続と同じようなものを特別清算に限っては設けた方がいいのではないかと。   ただ,通常の清算手続との関係とかって言われると少し困るのですが,特別清算だけに絞っての制度を設けてもいいのではないか,特別清算に限ってという,そんな感じがしております。 ● そうすると,多くの委員・幹事の御意見としては,特別清算の記録というのを通常の清算と区別して編製して,それについては従来の破産その他の倒産手続と同じような扱いでいいのではないか,またそういう限度では開示をする必要があるのではないか,そういうことでしょうか。   それでは,これで決定ということではなくて,事務当局としてもなおそういう方向で考えさせていただきたいと思います。   (注5)は,それと関連をして出ているのですけれども,一般的な意味もあるのですが,特別清算についてほかの倒産手続のように民事訴訟法の規定の一般的準用というようなことは考えられるのか,それとも必要な事項ごとに個別に準用規定を設けるべきなのか,ついでと言っては何ですが,この点についても御意見があれば伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。   ちょっと漠然としていて,なかなか御意見が出しにくいかもしれませんね。 ● 現在,既に非訟事件手続法の10条で,期日・期間等については準用がありますので,これから漏れているものがあるかということじゃないかと思うのですが,民事訴訟法の総則を見る限り,ほかに特に必要なものは,既に非訟事件手続法に規定がほかにもあるものを除きますと余りないのじゃないかなという気がしますので,改めて民訴の包括準用のような規定を設ける必要性は低いのかなというふうに思いました。 ● それでは,2の「記録の閲覧等の制度」についてはそのぐらいにしまして,3の「最高裁判所規則への委任」で,このこと自体は余り御異論はないと思います。   特別清算規則というような形で最高裁判所規則をまとめられるのか,あるいは会社事件規則とか何かもうちょっと一般的な形でやるのか,そのあたりは最高裁の方で何かお考えがあれば,いかがですか。 ● 先ほど,御紹介いただきましたとおり,これは最終的には特別清算の立法が法律レベルでどういう形式になるかというところに関係していて,恐らく裁判所規則の方のつくり方も法律にあわせて考えていくというようなことになるのではないかというふうに考えております。まだ法務省サイドでも考え方を詰め切っていないということのようでございますけれども,新しい会社法の中で非訟事件手続法の特別清算に関する部分や,商事非訟事件一般も含めた形での単行法ができるということになりますと,その単行法の中に設けられます特別清算,通常清算,あるいは商事非訟一般について何らかの裁判所規則を設けるべき部分があれば,それを単行の規則で設けるというような形になることになるかと思いますし,逆に特別清算,何らかの理由で単行法としてそういった法律ができるということであれば,その法律に対応した裁判所規則を作るということになるのかなというふうに,漠然と考えているところでございます。 ● ちょっと今の段階では,最高裁としても方針をお決めになりにくいかもしれません。   商事非訟事件全体についての規則というようなものができれば,大変一般の国民の目から見て分かりやすくなるだろうというふうには思いますが,いずれにせよ将来の問題ということになると思います。   それでは,また4の「申立権者等」から説明をお願いいたします。 ● それでは,4以下について御説明いたします。   4では,「申立権者等」を取り上げております。(1)の申立権者については,現行の特別清算と同様に,債権者,清算人,監査役及び株主とすることが考えられますが,更に倒産法制に関する検討事項以来,注に記載したとおり,申立権者として会社を加えるものとするとの考え方が掲げられております。   その理由について,補足説明をもう一度繰り返しますと,     現行法上特別清算の申立権者は,清算手続中の株式会社の債権者,清算人,監査役及び株主とされており,清算会社には申立権がない。しかし,実務上,清算会社自身の意思として特別清算の申立てを希望する場合も少なくなく,清算会社に申立権を認めていない現行法のもとでは,このような場合であっても清算人が裁判所に予納すべき手続費用を自ら負担して申立てをせざるを得ないという不都合があるとの指摘がされている。(2)は,このような指摘を踏まえて,清算会社にも特別清算開始の申立権を認める考え方の当否を問うものである。   補足説明ではこのように説明されております。   改めて考えてみますと,疎明義務,予納義務といった点に全く差を設けずに,申立権者として単純に清算人と会社等を並べることが本当に合理的かという問題がないわけではないように思われます。必要性の点につきましても,会社の意思として特別清算開始の申立てを希望する場合があるということは事実と思われますが,会社自身に申立権を認めないことによって具体的に何らかの不都合が生じるというのでなければ,制度上の手当てを講ずる必要性に乏しいということもできると思われます。   また,手続費用の負担の点については,特別清算開始の命令があったときは特別清算の手続の費用は会社の負担とするとされていますから,清算人が特別清算開始の申立てをするに当たり,費用のみは会社の機関決定により初めから会社の計算で支出するということも許されないわけではないと考えられます。事務当局としては,ニーズの点についていま一つ理解できないところがございますので,この点について御意見を伺いたいと思います。   (2)の「職権でする開始の命令の制度の廃止」については,破産法分科会以来特段の御異論はなかったところでございます。   (3)の「清算人の申立義務」については,現時点で見直しを行う必要性はないと思われますので,これを維持するとの考え方を掲げております。   5ページに参りまして,5は「疎明」を取り上げております。   (1)の「新・特別清算開始の原因の疎明」ですが,甲案は現行の特別清算と同様とするという考え方であり,乙案は疎明義務を負う申立権者を限定する考え方でございます。   (注1)記載のとおり,現在は会社整理に関する規定を準用する形で特別清算の開始の事由についての疎明義務が定められておりますが,存立中の会社を対象とする会社整理と,清算中の会社を対象とする特別清算とでは大分事情が異なります。したがって,開始事由についての疎明義務に関する規律をそろえる合理的理由はないと考えられます。今回,特別清算の見直しとともに会社整理は廃止されることになりますので,この際疎明義務を負う申立権者の範囲を見直すことが考えられるところです。   見直すに当たっては,疎明義務が定められた趣旨を考慮する必要があります。会社整理については,立法担当者により(注1)記載のような説明がされておりますが,これは清算中の会社を対象とする特別清算には妥当しないものと考えることもできます。   他方で,清算型の手続として共通性がある破産手続における規律も参考になりますが,破産手続については取締役の一部が申立てをする場合には,(注1)記載のような理由により疎明が必要とされております。しかし,特別清算の場合には,その開始の原因,ひいては通常の清算手続を厳格化した特殊な清算手続という特別清算の性格に照らし,清算人の一部が申立てをする場合でも疎明を不要とすることが考えられるところです。   以上のような要素を考慮して,乙案は清算人又は監査役が申立てをするときは,疎明を不要とし,専ら債権者又は株主が申立てをするときに限り疎明義務を課すこととしております。いずれの考え方が適当であるかについて,御意見をちょうだいしたいと思います。   次の(2)の「債権の疎明」については特段の御異論はないところと思われます。   なお,6ページの(注2)は,疎明義務に関する事項ではありませんが,疎明義務と同様に特別清算開始の申立てに関連するものとして,申立ての方式や申立書の審査の点をあわせて取り上げております。   注に記載のとおり,破産法分科会では特別清算を倒産処理手続として純化するという前提のもとに,申立ての方式や申立書の審査についても新しい破産手続と基本的に同様とするものとするとの考え方をお示しし,特段の御異論はなかったものと承知しております。しかし,開始の原因を含めて現行の特別清算の枠組みを維持することとすると,破産手続とは全く同様に考えることはできないと思われます。したがって,先ほど最高裁判所規則への委任に関して述べたような申立ての書面性のような事項はともかくといたしまして,法律で申立書の記載事項を定め,裁判所書記官による審査の制度を設けるというようなことは困難であると思われます。   次の6では,「手続費用の予納等」を取り上げております。   (1)の「手続費用の予納」は,現行の取扱いを維持するものですので,特段の御異論はないものと思います。   (2)の「不服申立て」については,現行の取扱いを見直すものですが,7ページの(注2)に記載しましたとおり,この点については新しい破産手続に倣うべき事項と考えられますので,御異論のないところと思います。   なお,(注1)では,特別清算における不服申立てについて,その対象となる裁判の範囲や,不服申立ての方式が問題となり得ることを指摘しております。   (3)の「費用の仮支弁」については,御意見が分かれ得るところではないかと思います。本文では,費用の仮支弁の制度を新しい破産手続と同様のものとするという考え方を掲げております。その理由は,(注3)の第一段落に記載したとおりであり,一つの考え方として十分成り立ち得るものと考えております。もっとも,新しい破産手続における仮支弁の制度の適用場面を具体的に考えてみますと,主として現行の破産手続では予納義務を課されていない申立人,すなわち債権者以外の者の資力が乏しい場合が念頭に置かれていると思われます。しかし,特別清算では,債権者又は株主以外の者が申立てをする場合でも,既に予納義務が課されており,新しい破産手続における仮支弁の制度と同様の制度を採用しても,実際に仮支弁がされるような場面は想定しにくいということができます。そこで,特別清算においては,仮支弁の制度を完全に廃止するという選択肢もあり得ると思われます。   もちろん,新しい破産手続でも,債権者が申立てをする場合に仮支弁をする可能性は否定されておりませんので,特別清算において仮支弁の制度を完全に廃止するかどうかというのは理論上の問題というよりはニーズの問題,政策的な問題ですが,この点についてどのように考えるべきか御意見を伺いたいと思います。   次の(4)は「費用の負担」です。これは現行の取扱いを維持するものですし,理論的にも当然と考えられますので,御異論のないところと思います。 ● それでは,「4 申立権者等」から御意見を伺ってまいりたいと思います。   まず,(1)の,現在認められている債権者,清算人,監査役及び株主に申立権を認めるということ自体については御異論がないと思いまして,問題は会社自身に申立権を認めるかどうかという点でございます。原案は今の説明のように,その必要はないのではないかということで,この点は現行法どおりでいいのではないかという考え方を示しておりますが,いかがでしょうか。 ● 前提として一つお聞きしておきたいことがあるのですが。   この4ページの(注)に出ているように,かつて取締役と言われた時に,会社の機関を意味するという考え方をとれば,この機関決定というのは会社の意思になるわけで,当然に会社ができるということで,最後に大変意味深な書き方をして,この説をとる者が清算人に関してどのような見解をとるかは明らかではないと振っておられるのですけれども,これはそのように考えればこれが会社の意思になるではないかという含みですよね。ですから,仮に現行の規定でも,「清算人」と書いてあるのをこの説のように,少数説ではあるけれどもこのように考えれば会社と同義であるということになりますよね。   そうすると,逆説的に考えると,現行法の中で「清算人」と書いてあることを,一人の清算人でいいのだと,つまり後で懸念されているように清算人間に対立があったときに,破産手続の場合にはある人がぱっと破産をしちゃって,会社自身はなかったということがある,それと同じような会社の内部の抗争劇といいますか,いずれ最後の段階でこういう抗争をしても余り意味はないわけですけれども,取締役会の中に意見の対立があった場合というのを懸念すべきであるという考え方ですか。それとも,ここで清算人というのは,会社の意思決定であるから,そんなことはあるはずないじゃないかという意味なのか,含みが両方で多過ぎて,どちらを前提としているのかよく分からないのですけれども。   現在,この清算人は一人でもいいと解釈することを許しているということですか。 ● 別に,先ほど言われたような懸念を前提にしているわけではなくて,清算人は各自それぞれ申立権を持っているというのを前提にしています。 ● そうすると,その場合にこういうことになりますね。清算人は一人ずついっていいのだったら,会社に内紛がある場合はある人がぱっと特別清算に行ってもいいということを前提に置いている。 ● そういう状況になった場合には,その可能性はあると思います。   少なくとも現行法の「清算人」と書いている場合は,そういう理解だというふうなことを前提にしていますけれども。 ● そうすると,もちろん機関意思決定として--通常清算手続のときに,清算人は普通であれば取締役が清算人に移りますので,特別な事情がない限り。そうすると,この(注)に書いてあることは私は非常に素直に読めるわけで,取締役が清算人に移れば清算人会になるわけで,それが多数決で決めれば会社自身の意思になるだろうということが非常に素直に読めると思っておったものですから,現行法の清算人もむしろ少数説に言うように機関意思決定がまず前提にあって,というふうに読むと,原案の御趣旨とは変わってくることになりますね。 ● そうですね,そこはここに書いてありますように取締役に関してそういう少数説があって,それが更に清算人に関してどう考えているかというのは必ずしもはっきりしませんので,私どもの前提は先ほど言いましたように,多数の考え方だと思いますが,清算人が各自それぞれの資格を持って申立てをすることができるということを差し当たって前提にしております。 ● 分かりました。では,それを前提として本来の意見ですが,そうするとどちらが先かというと,まず機関意思決定の方が先にあるはずですよね。個々の清算人がそういうふうに申し立てるということは,ほかに特別清算に行きたくない清算人がいるのに一人だけ特別清算に行きたいという対立があっても,そういう御趣旨ですと現行法では一人で申し立てられることになりますね。そうすると,そういう対立があることは特別な場面なわけですから,むしろ普通の場合には,機関意思決定として清算人が特別清算を申し立てるときは普通に会社の意思ということになりますね。いわんや特別の場合だって申し立てるのだったらば,普通の清算人,つまり会社意思決定としてのものは当然にここに含むと考えられることになりますよね。 ● 通常の対立関係がない機関意思決定を経た上で,個人の清算人が申立てをする。 ● いわんやそんなのは当然含むと。 ● そうですね。 ● そうすると,現行の規定のままで当然に会社の意思で申し立てをするのはこの清算人の中に含まれていて,「機関意思決定の場合の清算人」という言葉がまず第一義的にあって,更に特別に清算人間に対立があるときもできるというふうに読むことになりますね。 ● そうですね,説明の仕方によってはそういう説明の仕方もできると思います。 ● これは先の話ですけれども,(3)で清算人に申立義務が課されておりますから,その場合はどうもやはりこれは個々の清算人という趣旨だというふうに従来は理解されていたと思うのですがね。 ● その点,サンクションが課されていますので,清算人の申立義務に対する違反が商法498条の1項7号にございますので,それはやはり債権者保護の観点から,機関決定を経ることなく個々の清算人が債権者保護を図らなければいけないというドイツ法的な発想がここに取り込まれているのだというふうに従来は理解していたと思いますが,機関決定ということは,少なくとも従来のこの構造からすると考えていないと言わざるを得ないのじゃないかという気がするのですが。 ● ただその場合に,お言葉返すようで失礼なんですけれども,2項の申立義務に「会社に債務超過の疑いあるときは」と書いてありますので,その債務超過の疑いがあるときにはすぐに特別清算に移ってもらわなければ困るので,サンクションを設けた申立義務があるということになりますね。そうすると,そのときに非常に懸念するのは,清算人の中にも債務超過があるとは認めたくない一派だっているはずですよね。要するに,こぞって,うちはもう清算に入ったけれども債務超過でどうしてもしようがないという,すんなりいく会社だったらいいのですけれども。そうすると,言いたくないというやつと言わなければならないという,白黒という言い方をすると勧善懲悪劇のようで変なのですけれども,うちはもう債務超過だよ,これ,どうしても言わなければいけないよという清算人が一人いたとして,ほかの清算人が,いやいや待て待てと言った場合には,ほかの清算人はこれはサンクションを受けちゃうことになる。でも一人だけ,申立てをしてくれた人だけが,正に2項に言われていたような申立てをしてくれた人になるという,対立図式があることは考えられませんかね。 ● そういう場合でも,なお債権者保護のために単独申立てをすべきだというのが特別清算の考え方だと従前は理解してきたということだと思います。 ● そうですね,そうすると2項はそういうことになるとそもそも機関意思決定を考えていない場面であるというふうになりませんかね。 ● そうだと思います。 ● ですから,2項はということですね。 ● 2項はというか,それは1項もそうだという前提で2項がそうなっているというふうに従来は読んでいたと。 ● なるほど,1項に戻って当然一人一人であるということ。 ● この会社において,会社の機関決定といいますか,取締役会の決定としてこういった申立てをするのか,あるいは個々の取締役なり清算人なりが申立てをする権限を持つのかというのは,倒産法全般にある問題で,既に前の破産法の議論をしたときにもこの点を一度議論しておりまして,破産法も個々の取締役が申立権限を持つということになっているわけで,それに対して会社更生法の方は申立権を持つのは会社であって,個々の取締役ではないと,そこに考え方の違いがあるわけで,破産法のときに既にそれを議論したのですけれども,やはり破産,さっきの正に○○幹事が御指摘のとおり,考え方としては破産や特別清算のような事態に立ち至ったときは,各取締役がそういったことを申し立てる義務が本来あると,機関決定をしなければ,つまり取締役会で多数を占めなければ申立てができないというようにはしないという理解で現在の制度はできていると思います。その政策の是非については多分議論のあるところだとは思いますけれども,やはり私は特別清算,この点について言えば破産と同じ考え方をとっているし,それでいいのではないかという気がします。   ただ,よく考えてみると,各倒産手続の申立資格がバランスとれているか意味があるかというのを考えていくと分からないところもありますね。特別清算は監査役を加えていますけれども,破産の方は監査役が入っていませんので,何で特別清算だけ入っているのか,それから株主にも認めておりますが,これは当然破産と違って債務超過かどうか分からないということで株主が入っていると思われますが,一方で会社更生法は,株主と言っても議決権の10分の1を超えないと申立権がないわけで,その点で何で会社更生法と違うのかなというのも,よく考えてみるとよく分からなくて,そこら辺,教えていただければ有り難いと思います。 ● 私ども,債務超過が明白なときに株主について特別清算の申立権を認める必要が果たしてあるのかというのはかねてから疑問に思っているところでありますので,一言つけ加えさせていただきたいと思います。 ● もう一つつけ加えさせていただきますと,破産法は理事者,つまり取締役全員で申し立てたときとそうでないときとで疎明の要件を変えておりますが,そういったことはこちらでは考える必要はないのかということも,論点としてはあり得るかなと思います。 ● バランスの問題はなかなか微妙で,今ここですべて御納得がいくように説明をするというのはなかなか大変で,そこは法律ができた後で,商法の先生方もいろいろ考えていただくし,手続法学者の方もいろいろ考えるということにさせていただいて,当面の問題としては先ほど御整理いただいたように,○○幹事のようなお考えもあると思いますけれども,従来清算人それぞれ個別に申立権もあり,債務超過の疑いがあるときには申立義務があるというふうに考えてまいりましたので,そういう仕組みでお考え願いたいと思います。   そうすると,会社についてそれとは別に申立権を認めるという意味は余りないように思うのですが,何か御意見ございますか。 ● 今,○○委員の方でおっしゃったのですけれども,ただ破産の場合,会社自体が,債務者自身が申立権ございますよね。個々の取締役が義務を負っているのとは別に。その場合は,機関決定して申立てするわけですが,特別清算の場合に,そういう形を入れる必要がないというところがよく分からないのですが。   機関決定して,清算人会で機関決定して申立てしても構わないのじゃないかと私どもは単純に思うのですが,それがいけない理由は何かあるのでしょうか。 ● 別にいけないとは何も申しておりませんで,恐らく先ほどの○○関係官の御説明も機関決定の形をとっても個々の清算人としてやっても実質変わるところはないから,特に認める必要がないのではないかという御説明で,もしか違うところがあるとすれば,機関決定の形をとりますと費用の負担が違うかもしれないけれども,それも最終的な費用の負担が会社でどうせやるのだから同じだという御説明だったと私は理解していまして,あとは実質が変わらないのだったら私はどちらでもいいと思っています。 ● 要件が同じであれば,あえて清算会社自身に認める必要はない。ですから,例えばどちらかが疎明義務が課されているとか,そういう違いがあるのであれば意味があるのだろうと思いますが,全くそういう条件が同一のもので,機関決定をして清算会社がしようが,清算人が個人の資格でしようが同じということであれば,清算人だけに認めることで足りるのではないかということだと思います。 ● 今,民再なんかでも濫用事例が少し問題になっているのですけれども,役員の中で意見の対立があって,ある役員は特別清算だと,ある役員は通常清算で十分だと,例えば大口債権者があって,彼が最終的に放棄してくれるので通常清算としても十分に対応できる,特別清算という大きな枠組みを使わなくてもいいというふうな事案がございますが,そういう場合にどう考えるのか。そうすると,機関決定でやった方が内部の争いがすっきりするので,そういった場合に機関決定で申立てをすれば,あとそれを覆す発言というのはできなくなるという意味でのメリットがないことはないので。 ● 機関決定はしていただいてもちろん構わないわけです。 ● そうすると,その場合に会社で申し立ててなぜいけないのかと。   それともう一つは,○○委員が御指摘なさったところですが,破産の場合は全員一致でない限りは疎明が必要でございますよね。そこのところ,後で話題になるところですが,どうお考えになるのか,現行法は疎明のことを考えていませんけれども,各取締役は破産の申立てをする場合には疎明が必要だというところとの兼ね合いの問題もどうなるのかというのが気になるところなんですが。 ● 疎明はすぐ次にまた御検討いただきますが,ここでは一応現行法でいけばいずれにせよ疎明が要ると。その場合に,今のあれからいうと,機関決定をしてやった場合には疎明は要らない,そういう選択肢をとれば意味がある,そういうことになるわけですね。 ● 確かに申立ての段階で考えると,要件は全く同じですから会社でなくてもということはよく分かりますが,弁護士なものですからついお金のことを考えるわけで,気になるところはそこなのですが,開始決定があったときは全部会社の負担ということは分かるのですが,微妙なケースで棄却されたときは清算人や個人で負担するのか,弁護士の費用だとかいろいろなものを負担するのかというのが考えられるのですが,そのときは先ほどの説明ですと,最初に機関決定をしておけば問題ないのじゃないかと。機関決定そこまでしておくのだったら,そのままその機関で申立てができないのかなということを考えたのですが,恐らく機関決定で費用の負担とか申立てをすることを決めても,申立て自体は個々の清算人が複数いれば,その人たちが全員で申立てすればいいという,そういうことで費用の問題は解決できるのではないかということですかね。 ● そうしますと,疎明の問題と絡んで会社自体といいますか,機関決定をした上で申立てをするというルートをもう一つつくっておく実益があるかどうかという話になりましたが,そこはちょっとペンディングにさせていただいて,あとの点はいかがでしょうか。(2)の職権でする開始命令の制度,それと関連して監督官庁の通告の制度は廃止するということで。 ● これも前に申し上げたことなんですが,かつて実際にBCCIの事件において,当時の大蔵省が破たんしたBCCIの活動をとめる手段がなかったものですから,特別清算を使って大蔵省が通告してとめたということがあったわけで,実際にそういうふうに使われてもいたわけですので,こういうふうに廃止して問題ないのかどうか,単に廃止するというだけでいいのかどうか,ちょっとそこの御確認をお願いしたいと思ったのですが。 ● 廃止する理屈はいろいろあると思いますけれども,この通告と職権による開始というのは,やはり通常の手続としてはかなり異例のことだろうと思います。仮に必要性がある領域があるとすれば,それは金融機関の更生特例法のように,例えば監督官庁が申立権を持つとか,そういう手当てをしていくのが筋ではないかというふうに考えております。 ● そうすると,更生特例法の成立等によって,現時点ではもうそういったことが必要になるようなことは余り考えられないという御判断だということ。 ● BCCIは外国会社ですね。ですからそこの問題はあると思いますけれども,ただそれはそちらの根拠法の方で対応していただくことだろうと思います。 ● 一般法としては必要ないのではないかということでございます。個別に必要があるような領域は,個別に手当てをすればいいのではないかと。 ● ちょっと今の点,もう既に議論したのかもしれませんが,ちょっと記憶がないので念のためにお伺いしたいのですが。   485条2項で,外国会社の日本にある財産の清算に特別清算を流用するという仕組みについてはどういうふうにお考えになっておられるのでしょうか。これは,たしか有限会社やほかにも,銀行法上も同じような規定があったと思うのですけれども,本来の清算手続ではない手続ですね,法人の解体を意味しませんので。それをどういうふうに考えていくかというのも,少しもし腹案がおありであればお聞かせ願いたいと思います。 ● 最初の国際管轄のところでも少し触れましたように,特に今回使えないようにするということは考えておりません。そのまま特別清算を使うということは,十分考えられると思います。現時点で,特にこの点についてやめるというようなことを考えているということではございません。 ● 分かりました。 ● 何か御疑問なりが……。 ● そういうことを考えた場合に,開始原因等が若干……。債務超過というのが何なのかというのがこの場合に分からないのですね,そこのあたりが少し気になる。485条の関係では,開始原因をちょっと整備しなければいけないと。仮に残すのであれば,開始原因を整備しなければいけないのではないかなという気がしていると。   そこが,恐らく○○委員がおっしゃった問題と関係してくるのかなという気がいたしております。   あるいは,申立権者も必ずしも株主というものを入れていいのだろうかとかいう問題も,残余財産分配の問題はここでは関係ございませんので,解散法人とは限りませんから。そのあたりも含めてもう少し,仮に残すのだとすれば申立権者や開始原因について整備が必要だと,こういうことでございます。 ● 開始原因の方は,非常に難しい,債務超過の疑いその他判断が難しいという点は同じですね。 ● いや,私が申し上げたいのは,開始原因が本体全体の資産を見た場合には非常に健全な資産超過,すごくいいのですけれども,日本の債権者を満足させるに足りるたけの財産を日本に持っていないという場合だけで債務超過と言えるのかどうかという問題が別途あるということを申し上げたのです。 ● じゃ,そこはなお検討させていただきます。   (3)の清算人の申立義務,さっきちょっと関連して問題になりましたが,これはいかがでしょうか。私どもは現行法どおり,これでよろしいのではないかと考えているのですけれども。--特に御異論ありませんか。   それでは,疎明の方に移りたいと思います。申立権者に会社ないしは機関決定をした上での清算人の申立権を認めるのかどうかということと関連いたしますが,いかがでしょうか。甲案は現行法どおり,だれの申立てによるかにかかわりなしに開始原因の疎明をしなければならないとする考え方,乙案の方は債権者又は株主が申し立てる場合だけに疎明を求めるという考え方ですが。   先ほどの○○委員の御意見ですと,もう一つ乙案の変形のようになるのでしょうか,清算人個人というのもちょっとおかしな言い方ですけれども,要するに機関決定を経ないで申立てをする場合も疎明を必要として,機関決定に基づく場合にだけ疎明は要らない,そういう選択肢もあり得るかと思いますが。 ● 私の意見でございますと,甲案の変形になるのかと思いますが。監査役も当然疎明が必要という形になろうかと思いますから。 ● そうですね,失礼,乙案というより甲案の方の変形ということですね。 ● さっきの破産との比較でいうと,むしろ機関決定だけで疎明義務を不要とすることが適当なのかは疑問であると。破産の方は取締役全員が一致していない限り疎明が必要ですよね,何でそこが違うのか。   別に私も,○○委員のようなお考えでもいいように思うのですけれども,逆に言えばなぜ破産は全員一致でないと疎明が必要なのかということかもしれませんけれども,違いの説明は一応必要だと思いますので教えていただければ有り難いのですが。 ● たしか,あのときも説明したような気もするのですけれども。   取締役個人が行う場合は,いわゆる自己破産ではなくて準自己破産。個別に行うわけですから,ある意味債務者が自らがやる場合とは違って疎明の義務が課されているという説明をされるわけですね。それの合理性いかんというのも破産法のときも一応議論はしていただいたと思いますが,そこは今のような整理で整理されたという記憶でございますけれども。 ● それは分かるのですが,そうじゃなくて,取締役全員が一致しないと疎明が必要とされる理由は何か。多数決でなくて。 ● 若干整理をした方がいいのかもしれませんけれども,破産の話をすると,法人が申し立てる場合には取締役会が多少反対派がいたとしても,法人の意思決定がなされていれば法人の申立てですから,これは疎明は要らない,自己破産の申立てで。それから,取締役個人が申し立てる場合には,全員そろって,しかし機関決定は経ずに来た場合にはやはり疎明は要らない。しかし,取締役が一部で来た場合には疎明が必要だと。これとの並びで考えるということになるのじゃないでしょうか。 ● 取締役の地位についていろいろな議論があることは,それはそうなのですが,清算人について適法要件として疎明を要求すると。もちろん,一人の場合ということですけれども。それは,清算人という者の地位からしてどうでしょうか。現行法はともかくとして,そんなことを要求することの合理性があるのかどうか。通常は取締役が清算人になっている場合が多いと思いますけれども,そうじゃない場合だってもちろんあり得るわけで,そのように等しく適法要件としての疎明を要求するというのは,ちょっとおかしいように思うのですけれども。 ● 現行法はどういう考え方なんですかね。 ● 代表清算人が選ばれている場合でも,ですか。代表清算人が選ばれている場合に,平の清算人が申立てする場合も同様でございますか。 ● それは清算人としての職責がある以上,そうだと思うのですね。その者が解任されているとか,そういうことがなければ。 ● 清算人に申立義務があるわけですから,疎明というのは基本的には濫用を防止する観点から要求されるのだろうと思いますけれども,清算人の場合は義務として各人が債務超過の疑いがあるときは申立てしなければならないと言っている以上,それに疎明を課すというのは,2項との関係でちょっと整合しないのじゃないかという気もしますけれども。 ● 一般の法人の場合に,理事は破産の申立義務がございますね。それと,破産の場合に全員一致でなければ疎明が要るということとの整合性はどうお考えになるのでしょうか。 ● 資料にも書いたのですが,特別清算というのは別に経済的破たんだけを理由として始まるという手続ではないのですね,制度上は。制度論としては,例えば機関決定が円満にできないという場合も正に特別清算をすべき場合であるわけです。そうすると清算人が単独で機関決定を経ずに申立てをしたと,機関決定ができない状況で申立てをしたというのは正に特別清算をすべき場合であると,制度論としてはそういうことにならざるを得ないのじゃないかというのが原案の乙案の考え方ということです。 ● 2項の義務による申立てをするときがベースであっても,先ほどのにこだわるようですけれども,1項でも一人でいいわけですよね。要するに,実質的に疑いがあると思いますからというときに。   そうすると,今のお話ですと,1項で単独の清算人が,しかも○○委員がおっしゃるように言うと,平清算人といいますか,代表清算人が決められているときの平清算人が一人で申し立ててもいいという場合は,十分残された空白の領域ということになりますよね。 ● そういう場合こそ特別清算をすべき場合じゃないのか,制度論としてはそういうことではないのかということです。債務超過の疑いという話ではなくて,清算をうまく進められないというようなときにも特別清算をやるというのが今の特別清算の枠組みですので,機関決定ができないと,要するに少数派だから機関決定ができないけれども,私は特別清算をすべきじゃないかと思うというような事情は,正に清算を円滑に進められないような事情であろうというふうに考えると,単独で申立てをする場合に疎明義務を課すということは合理性があるのかどうかという問題意識で乙案をつくっているということです。 ● そうすると,1項で清算の遂行に著しき支障を来すべき事情あるときというのは,正に○○委員がおっしゃるように,内部に特別清算に行こうか行くまいか迷っていて,それはごく少数派でもいいわけで,一人でも清算人が特別清算に行きたいと思うときを指しているわけですね。で,一人でも清算人が特別清算に行こうと思うときは,今の御意見ですと清算の遂行に著しき支障を及ぼすという事情になるわけですね。そういうことですね。   そうすると,それは2項の申立義務の場面とは違うわけですね。   しかしその場合,逆に考えると,今,○○委員がおっしゃったように,清算人というのは業務執行者とは違うのだと,機関意思決定が非常に重要なものではなくて,私が○○委員がおっしゃったことを誤解していないとすると,清算人というのは立場が,一人が言ってしまうと会社を代表するような立場になれるのだという御趣旨のようにとらえたのですが,誤解があったら申し訳ございません。   そうすると,清算人に機関意思決定というものはもう既に考えなくていいのだというお立場であればそういうことになるかもしれませんが,仮に清算というのはまだ会社の機関意思が働く過程であって,ごく通常の場合は取締役がすべて清算人になるということはそのまま清算人会というものができて,取締役会のように生きるのだとしますと,こうは考えられませんかね,1項の場合に清算の遂行に著しき支障を来すべき事由だと,一人が特別清算にしたいと思っているとき,そういう事情なわけですね。ところが,機関意思決定をするとそうではないという結論になるわけですね。つまり,特別清算には行かないよという結論になるわけで,そうするとそれは,機関意思決定によって清算の遂行に著しき支障を来すべき事情がなくなるのではないですか。そうは考えないわけですか。 ● そういう場合もあるかもしれませんけれども,一律に疎明義務を課す必要があるかどうかという観点から見たときには,疎明義務は課す必要がないのではないかということだろうと思うのですけれども。 ● 大分いろいろ御意見が出てあれですが,破産の場合とのバランス論が一つ御議論のあれになっていますけれども,ちょっとそこは置いておいて,実質的に特別清算それ自体を考えたときに,一体疎明義務をどういう場合に課すべきなのか,そういう実質論で考えたときはいかがでしょうか。現行法のように,どんな場合でも疎明義務を認めるか,それとも清算人が申し立てる場合は疎明を要求しなくてもいいではないかというふうに考えるか,監査役もですかね。   先ほどの○○委員の御意見ですと,その場合はもういいじゃないかと,そういうことになるわけですね。乙案はそういう考え方です。   それに対して,機関決定があって,それに基づく場合は疎明しなくてもいいけれども,清算人が単独で申し立てる場合には,やはり清算人会の意思として特別清算の申立てをしようというのでないのに一人がやろうとしているのだから,疎明を要求してもいいではないかというのが○○幹事や○○委員の御意見ということになるのでしょうか。実質的に言うとそういう対立ということなんですかね。 ● 私は,どちらの御意見ももっともだなと思ってしまいますので,今のところ……。 ● ○○幹事がさっき言われたのは,どちらかというと破産とのバランスで考えればそうなると,全員でやれば,機関決定に基づかなくても疎明は要らない。しかし,一部の清算人の申立てならば疎明を要求してもいいじゃないか,そういうことになるのですかね。   ○○委員や○○幹事の御意見に近いのかな。 ● 私は,どちらかといえば○○委員の考え方に近いのですが,基本的には疎明を要求するというのは濫用防止ということだろうと思うのですが,破産の場合には結局会社,法人の生き死にを決めることになるわけですから,これは非常に濫用防止ということを考える必要が,取締役の内紛ということを考える必要があるということはよく分かるのですが,特別清算がある意味ではもう死んでしまって,あとこういう言い方は悪いのですが,死体をどういうふうに処理するかというレベルの話というふうになると,特別清算か通常の清算を選ぶかということでそんなに清算人の間で内紛があるということ,ちょっと実務を知らない私には余りぴんと来ないところがございまして,そこまで濫用防止を考えなければいけないのかということと,それから先ほど来出ています清算人には申立義務が課されているというような点も考慮すると,あえて疎明まで課す必要はないのかなというような感触を持っております。 ● 私も,そういう気もするのですが,ただ現行破産法の破産法案の清算中の法人の破産申立ての場合についても,取締役と清算人を横並びにしているわけですね。清算人が全員一致のときのみ疎明義務を免除するという仕組みにしているところとの説明がつくのかどうかという,そこさえつけば,私は○○説に賛成したいなとは思うのですが,特別清算の構造と破産法の構造がそこを差別化する決定的な要因があるのかどうかというのがちょっと気になっておりまして,結論がまだ出ないという状況でございます。 ● 分かりました。それでは今のような御意見を伺って,なお検討させていただきたいと思います。 ● これは,特別清算の場合には法人自身の,債務者自身の申立てというのはないわけですね。 ● いや,そこから問題が発したのですけれどもね。 ● 私の考えでは,その場合にはもう清算人が機関決定をして,清算人の名前でするという前提でしているのですが。   そうすると,機関決定というものがあり得るかどうかということなのですけれども,実際には法人を代表するというよりも,結局清算人としてやるわけですから,要するに全員一致でやるか単独でやるかというそれだけのことなんですね。それを機関決定と呼ぶかどうかはともかくとして,その場合に清算人には申立義務は2項で課されていますけれども,監査役みたいなものは課されているわけではなくて,確かにこういう状況で内部割れというのが生ずることがないと思いますけれども,しかしやはり代表清算人という制度はあって,代表清算人とほかの清算人の差異というのは現行法で設けられているわけですから,そうすると代表清算人を差し置いて,別の清算人が,自分はこういうことでやるというふうに単独で申し立てるというようなことは,机上の空論かもしれませんが予想できないわけではない。そういう場合に,やはりそれは一清算人であって,どうして特別清算をしなければいけないかということの疎明をさせてもおかしくはないのじゃないかと。今,○○幹事が言われたように,清算中の株式会社の場合と比べると,整合性がとれるかどうかというと,ちょっと難しいなというふうに私自身は考えているのです。   ですから,債権者と株主と,それから○○委員がおっしゃったように一部の清算人又は一部の監査役というようなものがする場合には,課してもおかしくはない……,おかしくはないという程度じゃないかと思っております。 ● 乙案のような考え方をとった場合に,監査役をどうするかという,乙案の場合には監査役がややブランクになっている感じがするのですが,これはどうですかね。原案の趣旨は,こう書いてあるのだから監査役は疎明しなくてもいいと,そういう考え方ですね。   では,その辺も含めて検討させていただきます。   (2)の「債権の疎明」の方は,これはこれでよろしゅうございますね。   そうしますと,次は6ページの(注2)の申立ての方式や申立書の審査について,この新しい破産法案のような裁判所書記官の審査というような手続は設けないということでよろしゅうございますか。--それでは,そのようにさせていただきます。   「手続費用の予納等」,それから「費用の仮支弁」の問題ですが,これはいかがでしょうか。   まず(1)の「手続費用の予納等」,申立人に予納させる。これは,これでよろしいでしょうね。   それから(2)の「不服申立て」,これも御異論ないかと思いますが,よろしいですか。   (3)の「費用の仮支弁」ですが,これは(注3)にございますように,特別清算の場合に仮支弁というような制度を設けて実益があるのか,あるいはその必要があるのかという点ですが,いかがでしょうか。   これは,申立代理人やなんかの御経験のある方,あるいは裁判所の方から御覧になっていかがでしょうか。 ● バックアップ委員会で余り議論が出なかったのですが,現行法自体は通告あるいは職権の制度がある関係でできている制度だと理解していますので,それがなくなるということを前提にすれば,特別清算で仮支弁の制度を設けなければいけないというのは,私はよく理解できないのですが。 ● 東弁の方でも,破産と違って株式会社が行うということが中心なので,この制度は不要ではないかというのが圧倒的な意見でした。 ● 特に,あと何か……。 ● 私どももそれで結構でございます。 ● それでは,特に仮支弁の制度は設けないという方針でまいりたいと思います。   「費用の負担」については,会社の負担ということでよろしいですね。   それでは,先に進ませていただきます。   7の「特別清算開始前の処分」,お願いいたします。 ● それでは,7の「特別清算開始前の処分」について御説明をいたします。   現行の特別清算においては,開始前の処分として甲案の①から④までに掲げた処分をすることができるとされております。甲案は,特別清算開始前の処分については現行制度を維持するという考え方です。   なお,このうち①から③までの処分は,特別清算開始の前後を問わずにすることができる処分であり,④の処分は特別清算開始前に限ってすることができる処分であるという違いがあることを念のため(注1)に記載しております。   これに対して乙案は,新しい破産手続を参考にして,開始前の処分を拡充するという考え方です。   まず,甲案の①の会社の財産の保全処分については(注2)に記載しましたとおり,具体的には処分禁止,弁済禁止,借財禁止等の保全処分が想定されており,新しい破産手続における債務者の財産に関する保全処分と同内容のものということができそうです。   また,③の発起人,取締役,監査役又は清算人の財産に対してする保全処分についても,新しい破産手続における役員の財産に対する保全処分と同内容のものということになります。   他方で,②の株主の名義書換禁止の保全処分は,株式会社の清算手続である特別清算固有の保全処分であり,破産手続には存在しないものです。したがって,甲案の①から③までの処分については拡充を検討する必要はないと思われます。   そこで問題となりますのが④の中止命令ということになります。新しい破産手続における他の手続の中止命令においては,甲案の④の中止命令の対象となっている破産手続及び企業担保権の実行手続のほか,9ページの(注4)の(a)から(d)までに掲げた手続が中止命令の対象に含まれております。   まず(a)ですが,(注4)の第一段落に記載したとおり,会社の財産に対する強制執行,仮差押え・仮処分,更には財産開示手続が中止命令の対象とされていない理由は必ずしも明確ではありませんが,これらの手続の中止の必要性が認められるような場合には,理論的には速やかに特別清算開始の命令を発するべきであると考えられるところでありまして,実務からもそのような指摘がされているところです。そこで,会社の財産の保全処分に含まれるという解釈で賄うものとするか,制度上の手当てを講ずる必要があるかどうかという点について,御意見を伺いたいと思います。   次に,(b)及び(c)については,現行の特別清算の枠組みを維持し,債権の調査及び確定の手続を設けないのであれば,採用しないことになると考えられます。   (d)については,理論上はともかく,制度上の手当てを講ずるニーズは乏しいと考えられます。   以上のとおりですので,他の手続の中止命令については現行法と同様のものとするということが考えられるところです。   なお,(注3)には,中止命令の対象となる破産手続の範囲の問題を取り上げておりますが,中止命令は特別清算開始の効力を前倒しするものですので,後の10の「新・特別清算開始の効力(3)」の「他の手続に対する効力」での議論に従うことになると思われます。   更に(注3)では,中止命令に対する不服申立てにも触れておりますが,不服申立てを認めるのが適当であると考えられることは(注3)に記載したとおりでございます。   そこで,開始前の処分の拡張についての次の問題は,包括的禁止命令及び保全管理命令の制度の採否ということになります。10ページの(注5)に記載したとおり,破産法分科会資料13では,特別清算を倒産処理手続として純化することを前提として,新しい破産手続と同様に,包括的禁止命令及び保全管理命令の制度を採用するとの考え方を掲げました。これに対しては一部賛成する意見もございましたが,意見の大勢は特別清算にはなじまないというものであったと承知しております。改めて考えてみましても,いずれの制度についても合理的に機能する場面を想定しにくいと言わざるを得ないところですので,今回の資料では採用には消極的なトーンとなっておりますが,なおその採否について御意見をお聞かせいただきたいと思います。 ● では,ここで切らせていただいて御意見を伺いたいと思います。   開始前の保全処分,大きく甲案と乙案というふうにございまして,今,説明をお聞きいただいたように甲案の方は現行法どおりということで,乙案はそれを拡張するということです。乙案の①から④までは甲案と同じで,さらに中止命令の対象を拡大する,それから包括的禁止命令の制度を他の倒産法と同じように設けるか,それから保全管理命令について特別清算についても導入するかという点です。   順番に参りますと,まず中止命令の対象の拡張でございますが,この点についてはいかがでしょうか。「破産手続」と言っているのが,開始後の破産手続まで含むのかどうかというのは,今の説明にございましたように後に出てまいりますので,そちらで御議論いただくということで,ここでは一応現行法も対象になっているので,それはそのままに維持するという前提です。   個別執行について個々に定めていくか,その場合に強制執行,仮差押え・仮処分,それと更に一般の先取特権の実行,それから民事留置権に基づく競売の手続というようなものを入れて考えるかどうか,この点についてはいかがでしょうか。   一般の先取特権,民事留置権はちょっと別にして,その他の個別執行については会社財産の保全処分で読むというよりも,別に定めるという方がいいということについては,余り御異論はないかと思いますけれども,そこはそれでよろしいですか。--はい。   そうすると,一般の先取特権及び留置権ですが,これも後で議論していただいた方がいいですかね,後で特別清算におけるこれらの債権者の地位をどう考えるかという問題で,後ほど御議論いただくということにしたいと思います。   そうなりますと,包括的禁止命令,それから保全管理命令でございますが,包括的禁止命令についてはいかがでしょうか。先ほどのこちらの説明では,特別清算については必要はないのではないかということでしたけれども,いかがでしょうか。必要ないということでよろしいですか。 ● 特別清算の場合には,多くの場合は必要性はないのではないかと個人的には思うのです。ただここでも,不要の理由として包括的禁止命令が必要となるような場合はそもそも特別清算によること自体が困難ではないかと考えられるのではないかということになると。このことから,むしろ開始決定ができるかどうか不明な微妙なケースのときほど審理が長引いたり,場合によると後で破産に行ったりすることを考えると,逆に包括的禁止命令が出ている方が債権者の平等を保てるのではないかということから,非常にケースは少ないとは思うのですが,包括的禁止命令はあった方がいいという意見が出されていますので,ちょっとその辺,検討しておいてもらえればと思います。   ケースは少ないけれども,後で破産へ移行したときのことを考えてというのが理由とされているので,本来の意味ではないのですけれども,そういう意見があったものですから,一応紹介させてもらいます。 ● それはどうでしょうか,○○幹事あるいは○○委員。 ● 私どもで検討したところでは,このようなものまでは要らないのではないかという,事務局の案に賛成でございます。具体的にそういうケースがどのぐらい出てくるのか,もともと開始前の保全処分自体が,前回もお話ししましたようにほとんど使われていなくて,申立て即速やかに開始決定をしておりますので,ちょっと私どもの方でそういう必要性が余り認識できないというような状況でございます。 ● 余りこだわりませんが。 ● 分かりました。   保全管理命令はいかがでしょうか。余りこれも必要ないのかなという気がいたしますけれども,余り予断と偏見を与えてもいけませんので……。 ● これは本当に要らないと思います。 ● それでは,個別執行の中止命令は明示的に認めるというか,定めることにするということで,包括的禁止命令,○○委員の御紹介いただいた御意見もございますけれども,包括的禁止命令と保全管理命令については認めない方向でということにさせていただきます。   それでは,次の問題に入りますとちょっと休憩の時間が半端になりますので,ここで休憩ということにしたいと思います。   では休憩に入ります。             (休     憩) ● それでは,議事を再開したいと思います。   11ページの「8 新・特別清算開始の効力(1)」から,説明は最後までしていただいて,それから御審議をお願いしたいと思います。 ● それでは,8から10まで御説明いたします。   11ページの「8 新・特別清算開始の効力(1)」では,効力を受ける債権の範囲の問題を取り上げております。新・特別清算を通常の清算手続の延長線上に位置づけることになりますと,新・特別清算の効力を受ける債権の範囲について検討をする前提としては,通常の清算手続における取扱いを確認しておく必要があります。   そこで,まず(注1)では,通常の清算手続における債権の取扱いについて検討をしております。   なお,この点は,前回,特別清算開始の原因として支払不能概念を用いることの当否について御審議いただいた際にも若干御議論があったところですので,やや詳細に調査をし,その結果を11ページから13ページにわたって記載しております。   さて,通常の清算手続における債権の申出の制度に照らしますと,当然と言えば当然なのですが,清算手続開始前に生じた債権を弁済の対象としていると考えることができます。もっとも,経済的破たんを前提としておりませんので,債権の全部について本旨弁済をすることを原則的に考えておりまして,倒産処理手続のように清算手続開始時を基準として債権者間の公平な取扱いを図るというような制度は設けられておりません。ただし,清算手続の早期終結を図るため,会社は,弁済期が到来していない債権についても弁済をすることができるとされており,その現在化のための手当てや条件付債権,存続期間が不確定である定期金債権,その他価額が不確定である債権についての現在化のための手当てがされております。そこでは,個々の弁済時,弁済提供時を基準として現在化を図ることが予定されております。   このような取扱いが定められるに至った経緯は,(注1)の第二段落以下に記載したとおりであり,昭和13年の商法改正により特別清算制度の導入と同時に,現行法における取扱いが確立したことになります。   そこで次に,特別清算が開始された場合に,その効力を受ける債権の範囲について検討することになりますが,13ページの(注2)に記載したとおり,現行の特別清算においては明文の規定はなく,その理由を明確に述べる文献等も見当たりません。立法論として,手続の効力を受ける債権の範囲を限定するような規定を設け,あるいは次に取り上げる倒産実体法に関する規定を整備するという余地はないのかという点も考慮して,事務当局において明文の規定がない理由を考えた結果が(注2)の①と②でございます。このような理由づけが十分に説得的であるかどうかについては,必ずしも自信があるわけではありませんが,現行の特別清算の枠組みを維持し,開始原因も同様のものとする以上は,少なくとも①の点は今後も妥当するものと考えられます。   更に,特別清算の基本構造を純然たる法的倒産処理手続として,その手続内で自己完結的に倒産処理ないしは債務処理を行うようなものではないと理解すれば,その効力を受ける債権の範囲を定めていないことはむしろ当然であるということもできるように思われます。つまり,特別清算は,基本的に裁判外で進められる株式会社の清算に対して,債権者の利益の保護及び破産の予防のために裁判所の関与を強化する旨の特別清算開始の命令という宣言をした上で,適正な清算を実現するために強制執行等の禁止等の一定の法律効果を当然に生じさせるとともに,清算人の解任・選任等という各種の処分を行う補完的な制度と理解することもできるということでございます。   以上のような理由から,法律上は効力を受ける債権の範囲を限定するような明文の規定は設けないものとし,原則としてすべての債権が効力を受けるものとするという考え方をお示ししていますので,この点について御意見を伺いたいと思います。   14ページの(注3)では,例外的に手続の効力が及ばないとされる債権があるという点を取り上げております。特別清算に関する通説的見解は,手続開始後も滞納処分が禁止されないいわゆる租税債権と,手続の移行が生じた場合に財団債権又は共益債権とされるような共益性の高い債権については,手続の効力を受けないと解しております。このような点については,現行法と同様に,解釈の手掛かりになるような規定を設けることを前提として,引き続き解釈に委ねるという考え方をお示ししております。   なお,租税債権を手続内に取り込むとすれば,協定のために会社更生並みの重装備の制度を採用せざるを得ないと考えられるところであり,現実的ではないと考えられます。また,租税債権を取り込む場合には,均衡上担保権付債権も手続内に取り込まざるを得ないと思われますので,この点を見直すことは困難であると思われます。   最後の(注4)では,一般の先取特権その他一般の優先権がある債権の取扱いを取り上げております。   そこに記載しましたように,一般の先取特権その他一般の優先権がある債権の全額を弁済することができない状態,すなわち一般債権者への弁済をすることができない状態にある場合に,そのことだけを理由として,必ず破産手続を利用しなければならないとすることは合理的でないと思われますので,一般の先取特権その他一般の優先権がある債権にも手続の効力を及ぼすものとしております。この結果,協定における組分けの要否などが問題となってまいりますが,その点については次回御議論いただく予定です。   15ページの「9 新・特別清算開始の効力(2)」では,倒産実体法の整備の問題を取り上げております。結論としては,現行の特別清算と同様に,相殺の制限に関する規定のみを設けるものとするという考え方を掲げております。   相殺の制限が定められている理由については,(注2)に記載したような説明がされており,端的に言えば強制執行等と同視することができるからということになろうかと思います。   これ以外の倒産実体法の関係規定が設けられていない理由については,先ほどの効力を受ける債権の範囲の問題と同様に,明確に述べる文献などは見当たらないのですが,かつては,特別清算では,財団概念が採用されておらず,財団の管理処分機関である管財人も存在しないということから,手続開始による従来の法律関係との断絶がないためであるといった説明もされていたようです。しかし,再建型の倒産処理手続が整備された現在,そのような説明は必ずしも説得的であるとは言えないように思われます。そこで,倒産法の関係規定を逐一取り上げて,その採否の可否を検討する必要があると思われますが,(注1)では,倒産実体法の関係規定を設けることが困難であることの根拠として,一般性があるものを記載しております。   まず,倒産実体法を整備するに当たっては,手続の効力を受ける債権を画するのと同様に,合理的な基準時を設定する必要があることは当然ですが,特別清算においてはこれが困難であると考えられるということです。   次に,例えば偏頗弁済に対する否認は,手続開始後の偏頗弁済の効力が否定されることを前提としていると考えられますが,特別清算では,清算人が偏頗弁済をした場合でも,清算人に対する過料の制裁や,清算人個人の損害賠償責任といった問題が生じますが,弁済自体は有効と解されていますから,否認制度などを整備する前提を欠くと考えられます。以上のような点を考慮して,専ら相殺の制限に関する規定のみを設けることでよいか,御意見を伺いたいと思います。   なお,相殺の制限に関する規定を書き下ろすのか,破産法の規定を準用するかについては,条文化の作業の段階で検討することになりますが,いずれにしても破産法における規律を特別清算にそのまま適用することについて,何らかの問題点があれば御指摘いただきたいと思います。   16ページの10は,「新・特別清算開始の効力(3)」として,他の手続に対する効力を取り上げております。   (1)の「特別清算開始の命令があったときの他の手続の中止」,及び(2)の「特別清算開始の命令が確定したときの他の手続の失効」は,法律上当然に生ずる効力であり,(3)の「担保権の実行手続の中止命令」は,裁判所による個別の処分の効力ということになります。いずれも基本的に現行の特別清算と同様のものにするという考え方をお示ししていますが,17ページの(注1)記載のとおり,中止等の対象となる手続の範囲を,(1)及び(2)の当然の効力と,(3)の個別の処分との間でどのように振り分けるかという問題がございます。   現行の特別清算では,担保権の実行手続のうち,(1)及び(2)の対象されるものはなく,すべて(3)の中止命令の対象とされております。その一方で,担保権の被担保債権については,債権者集会の招集請求における債権額の算定等の点で,不足額主義的な取扱いをされるのは,破産手続において別除権とされる特別の先取特権,質権,抵当権及び特別の先取特権とみなされる商事留置権の被担保債権だけであり,一般の先取特権及び民事留置権の被担保債権については,特段の定めはございません。このような規律がとられている理由は明らかではありませんが,単純に旧和議法を参照したためではないかと考えられるところです。   そして,(注1)のなお書きに記載したとおり,新しい破産手続では,一般の先取特権の実行による競売の取扱いに加えて,民事留置権による競売の取扱いについても明らかにすることになりましたので,特別清算についても一般の先取特権の実行及び民事留置権による競売の取扱いを明確にする等の見直しを検討することが考えられます。   まず,一般の先取特権の実行による競売については,一般の先取特権その他一般の優先権がある債権についても特別清算の効力を及ぼすこととする場合には,強制執行と同様の取扱いをするのが適当であると考えられますので,(3)の中止命令の対象とするのではなく,(1)の中止及び(2)の失効の対象に含めることになるものと考えられます。他方で,被担保債権について不足額主義をとるということは現実的ではありませんから,債権者集会の招集請求における債権額の算定等の点は,現行の特別清算と同様の取扱いを維持することになると思われます。   これに対しまして,民事留置権関係については難しい問題があると思われます。特別清算を株式会社の清算手続の延長線上に位置づける限り,破産手続のように特別の先取特権とみなすということは困難であると思われます。あるいは,消滅させるということも困難であると思われます。そこで,他の選択肢を探ることになり,まず(1)の中止及び(2)の失効の対象とはせず,現行法と同様に(3)の中止命令の対象とするという考え方があり得ます。   この考え方は,民事留置権の実体法上の性質に変容を加えないものとし,かつ手続外での権利行使を許すという意味で,別除権的な取扱いをするというものですが,このような考え方をとる場合の問題点については,昨年,倒産法部会におきまして破産手続における民事留置権の取扱いの見直しについて御審議をいただいた際の議論を思い出していただく必要があると思われます。すなわち,形式競売により民事留置権者が受け取る金銭については,清算人に対する引渡債務について相殺禁止が働きますので,事実上の優先弁済を受けることができないことになります。そうすると,あえて民事留置権による競売を許容する実益は乏しいと考えられる一方で,これを否定するまでの理由もないということもできます。   更に,別除権的な取扱いを受けるといっても,優先弁済効を付与するものではありませんから,優先弁済効を前提としていると考えられる不足額主義を適用することについて,合理性が認められるかも問題となります。優先弁済効がない以上,不足額主義は妥当しないと考えることもできますし,事実上とはいえ優先的地位が認められる可能性がある担保権である以上,不足額主義の考え方を及ぼすべきであると考えることもできます。   このように,民事留置権の取扱いについては簡単には決めを打ちにくい問題がありますので,実務上民事留置権の取扱いについて特段の問題が生じていないのであれば,一般の先取特権の実行による競売を(1)の中止及び(2)の失効の対象とするという限度で手当てをすることも考えられるところです。そこで,一般の先取特権の実行及び民事留置権による競売の取扱いを明確にするといった見直しを行うニーズがあるかどうか,見直しを行う場合にはその方向性について御意見を伺いたいと思います。   最後の(注2)は,特別清算と破産手続との関係をどのように整理するかという問題を取り上げております。現在の多数説や下級審の裁判例の立場からは,破産手続開始の決定がされた破産手続は,特別清算に優先するということになりますので,これを規定上も明らかにするということが考えられます。他方で,破産手続開始後であっても,特別清算によることが債権者の一般の利益に適合する場合もあり得ると考えられますので,特別清算を優先させるという方向で見直すという選択肢もないわけではありません。もっとも,特別清算の前提となる株式会社の解散状態が,破産手続の開始によってもたらされているような場合に,特別清算を破産手続に優先させてよいのか,債務者,その取締役又は債権者が破産手続を選択し,実際に破産手続が開始されているという状況のもとで,特別清算が成功する可能性は本当にあるのか,特別清算は少なくとも建前上は破産の予防を目的としており,破産手続開始後に特別清算を行うことについて合理的な説明をすることができるのかといったような問題があるように思われます。事務当局といたしましては,破産手続開始後の破産手続は含まれないという多数説を規定上も明確にすることが適切ではないかと考えておりますが,この点についての御意見を伺いたいと思います。 ● それでは,順次御意見を伺ってまいりたいと思います。   まず,11ページの「8 新・特別清算開始の効力(1)」の中で,「効力を受ける債権の範囲」でございます。(注1)に大変沿革にさかのぼって詳しい説明がございますが,結局のところ,特別清算の効力を受ける債権の範囲を限定するような明文の規定を設けるというのはなかなか困難でもあり,設けない,原則としてすべての債権が特別清算の効力を受けるという考え方を維持するということでいかがかということですが,この点についてはどうでしょうか。御意見承りたいと思います。   いろいろ検討していただいて,結局は特に規定を設けないということなんですけれども,特に御異論はありませんか。 ● ここの記述を読むと,本当に沿革から分かって,なるほどとそれなりに理解できるのですが,実際に実務上どう処理するのか,この見解に基づいて,今もそうですけれども,どういうふうにやっているかというと,やはり倒産手続というふうな理解のもとに,破産とか民事再生なんかと類似の倒産処理としては一般的なルールを使いながら特別清算手続を行っているわけで,ここで困るのは共益債権に当たるものについて,これが解釈に委ねられている,そうすると特別清算の利用の中で特に仕掛かり中の半製品なんかがあったりして,これを自分たちで完成品にして,その後で営業譲渡しようなんていうことを考えているときに,通常の取引が行われるものですから,これについての取扱いがどうなるのか。今はだれもが特別清算会社も清算人も,それから取引する相手も,それから一般の債権者も,みんな共益債権だというふうに思い込んでいるものですから,普通に支払っていけるのですけれども,それでだれもが疑いを持っていないのですが,こういう理解だということを誰も知らないものですからいいのですけれども,この共益債権というのは解釈に委ねられているのだということになると,前金で払ったり保証金を積まない限りはなかなか取引ができなくなって,これは随分支障を来すし,かつ特別清算の利用の幅が狭まってしまうなと。細かい弁護士なんかが相手につくと,先に金もらうまで取引するなというようになってくる。   考えてみると,この解釈に委ねられているといっても,非訟事件手続法のここで引用されております138条ノ13,ここでは破産になったらちゃんと財団債権になるよというふうな記載になっているわけですね,そうだとすると,この特別清算のこの手続の中でも,共益債権に当たるものについての何らかの規定は設けてもおかしくないのではないか,破産になったときは財団債権になるという,そちらの方から恐らく解釈で導かれているのだとすれば,そこについての何か正面から手当てはできないものだろうかと,この点が何か手当てしていただけないだろうかというのが,利用する方からの立場です。 ● 今の御意見,14ページの(注3)のところでございますね。国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することができる請求権は,これは別だということで一般に認められている。それから,共益的な債権は別なのだということも,それ自体としては余り異論がないのだと思うのですけれども,その範囲がどれだけかということについては,御指摘のようにここにも書いてありますが,解釈に委ねるということになっている,そこをもう少しはっきり明文で決められないかというのが御趣旨でございますね。 ● 牽連破産の方に置かれているだけなものですから,特別清算の手続の中に定められないのかという……。 ● 例えばどのような範囲でとかという,何かお考えはございますか。 ● 範囲でなくても,共益債権については随時支払うことができるような……。ほかは,原則としては債権額に応じて平等に弁済していくというのは認められているわけですけれども,優先して払っていけるということが何か定められるということはないか,そうでないと,なかなか特別清算中の,例えば不動産売買する場合でも,測量費,あるいは鑑定料等についてもいつも前金でやらないと相手は不安がって,どういう協定案ができるか分からないうちはなかなか取引してもらえないというようなことになるだろうと思うのです。 ● 非訟事件手続法の138条ノ13を,まあ商法になるのか特別法になるのか存じませんが,それを特別清算の手続規定の中に,表に引っ張ってくることはできないですか。 ● それは,牽連破産として財団債権になるということではなくて,そもそも共益債権として定めるという意味ですね。   ○○委員が言われることも含めてですけれども,一種の共益債権として範囲が定まるのであれば,取扱いについて協定とは別に随時弁済できるということを書くことは可能だと思うのですが,さっき言われたようなことも含めて②のような書き方でいいのか,あるいはかえってあいまいな部分を残す余地はないかとか,そのあたりはちょっと気にはなるところですね。 ● あると大分違うだろうと思います。こういう定め方であったとしても。 ● 仮にきっちりやろうと思うと,非常に大変な作業だと思いますので,書けるとしても非常に抽象的なので,それが逆にどういう意味を持つかということは少し心配な点ですね。 ● 御趣旨は分かりました。 ● 今の点に関連して,これはほかにも関係しますけれども,今度の特別清算の場合には商法なり特別法なり,そういうものについて規定を置くと同時に,手続的な部分はやはり非訟事件手続法を活用するという前提なんでしょうね。その場合,今のこの具体的な②の点は,かつて和議法にこういう規定がありまして,和議のために生じた債権及び和議の手続費用は破産になった場合に和議債権ではないとして,破産になった場合には財団債権とするということのためにそれがあったわけですね。それが大正11年ですけれども,この特別清算を立案するときに,そこまでは商法の中で書けないので,全部--本来の手続規定ではないと思うのですね,こういうのは。実体権に関係する規定なんですけれども,商法にそこまで書くわけにいかないので,それで非訟事件手続法の中に入ったと思うのです。だから,当時この規定は和議法というものにあり,それから特別清算については非訟事件手続法に同じような規定があった。それはやはりちょっと整合性を欠いているのじゃないかと私は思っていたのですが,今度全部見直す場合には,非訟事件手続法に今ある規定の中でも実体権に関係する部分はやはり商法なりそういうものに取り込んで,非訟事件手続法は手続的な部分に限るという整理をした上で,じゃどういう書き方があるか,それを「共益債権」という言葉を使うのか使わないのかという大問題がありますけれども,そういうふうに書き換えていただければと思っているのですけれども。   実体的には,私は○○委員がおっしゃるとおりだと思うのですが,今までは全部解釈でやっていて,それが通説で通ったものですから,安心して取引に応じてくれたのですね,だから,同じ規定そのものなら,今までの解釈と変わらないのだからということがあるのかもしれませんし,あるいはせっかく法律を作るのならちょっと実体規定・手続規定を少し書き分けるということもあり得るのかなというふうに思って,今お聞きしていました。 ● そうすると,この非訟事件手続法の138条ノ13と同じように,②に書いてあるのはその文言ですけれども,「特別清算のために生じた債権及び特別清算の手続の費用に係る債権は,随時弁済することができる」とか何とか,そういうふうな表現になるのでしょうか。   共益債権という概念を立てて,共益債権とするとかいうのは,またなかなか大変かなという気がするのですがね。   確かにそれだけでも書いてあれば,手続は動くと,実務は動きやすくなるというのはそれなりに理解はできるのですけれども,たちまち何がそれに当たるのかという問題が出てきそうですね。 ● 私も,結論としてはこの②のような文言を明文で書いた方がいいのじゃないかと思うのです。確かに○○幹事のおっしゃるとおり,範囲が不明確ではないかという問題があるのですが,しかしそれは,現在非訟事件手続法138条ノ13について既にある問題で,牽連破産になったら何が財団債権になるのかということはどのみち決めなければならない問題なわけですから,問題が拡大されるのかもしれませんけれども,しかし異質な問題が発生するわけではないので,そのような規定を設ける方が望ましいのじゃないかと思います。   仮に,こういう規定を設けないと,かえって次のような問題が生ずるのではないかということをちょっと懸念しております。つまり,この種の手続費用みたいなものは一種の共益費用なわけですけれども,民法の306条1号ですか,一般先取特権になってしまって,手続債権に入ってくるという解釈をむしろ生みかねないのではないかと。ですから,はっきり切り出して,この②に書いてあるようなものについては別扱いにするのだと,特別清算の効力を受けないとはっきりさせることの方が望ましいのではないかと考えている次第です。 ● 余りここでは議論することではないのだけれども,法制的にはどうですかね。何か具体的に幾つか挙げて,その他何とかというようなことだと,ほかにも例があって書きやすいとは思うのですけれどもね。   どうでしょうか,大体そういう御意見が多いですか。   ○○委員,いかがですか。 ● もうちょっとこれは考えさせてください。 ● 御趣旨はよく分かりますし,どちらの方が明確かということだとは思いますが,ちょっと考えさせていただけますでしょうか。 ● ずるいのかもしれないけれども,非訟事件手続法にこういう形で書いてある分には余りぎらつかないけれども,これを法律の方に上げてくると,一体こういう書き方でいいのかという問題が出てきそうなので……。   では,いずれにせよ御趣旨は分かりましたので,検討させていただきます。 ● 必ずしも定見があるわけではないのですが,また杞憂かもしれないのですが,この(注4)に関係することなんですけれども,一般の先取特権等もその手続の効力を受けると。これは後の方の話になるわけですけれども,それについて権利実行が禁止されるという前提をとって,それで(注3)の方で,国税については当然に権利行使ができるということになりますと,これは結局国税債権はどんどん権利が実行できる,労働債権は権利の実行が抑えられて,ずっと手続外で見守っていないといけないと。場合によっては,国税の方が残っていた財産からかなり持っていってしまうというような事態が発生しないとも言えないような感じがしまして,会社更生法や破産で一定の労働債権と国税債権というのをバランスをとってきて,民事再生については両方とも一般優先債権という形で手続の外に出して,手続外の話にしたわけですが,ここでこういう形の規律をすることが社会的に受け入れられるのかどうかということに,やや懸念もあるような感じもしたのですが,そのあたりはいかがでしょうか。 ● 10の方の「他の手続に対する効力」で,一般先取特権についての制約を加えるということを前提とした場合ですか。 ● 現在のように,担保権実行と同じような要件をかければ,中止される場合がかなり少なくなるとすれば,両方とも一般優先債権,民事再生と同じような形になるのでそれほど抵抗はないのかなと思うのですが。ですから,後の方の問題かもしれません。 ● もちろんその点は,私どもも十分留意する必要があると思いますし,10の段階で先ほどの一般先取特権の取扱いをどうするかというのを申し上げましたが,その点については,今,○○幹事が言われたような点も十分御考慮の上,お決めいただきたいということでございます。 ● あと,この8の特別清算開始の効力を受ける債権の範囲の点について,御意見ございますか。   そういたしますと,原則としてすべての債権に効力が及ぶとして,先ほど御指摘のあった共益的な債権,これの取扱いを明示的に書くかどうかということ,それから今,○○幹事から御指摘のありました一般の先取特権について,とりわけ中止命令との関係でどう扱うかということについては,なお検討するというか,一般先取特権の問題は後からまた出てきますから,そこで御検討願うということで,先に進んでよろしいですか。   次は,9で「新・特別清算開始の効力(2)倒産実体法の整備」ですが,結論的には現行法のように相殺の制限についてだけ規定を設ける,ほかの点については詳細にそこに記されていますように難しいのではないかということですが,いかがでしょうか。 ● ほかに追加しろということではなくて,もっと削るべきだという意見であります。つまり現行の2号,4号禁止に相当するものを含めていることが本当にこの現行法の立案理由である強制執行と同視できるというところではもう説明し切れなくて,逸脱しているのじゃないかなという気がしますので,法案の71条1項1号と72条1項1号だけで十分なのではないかなという気もしているのです。   偏頗否認を認めない以上,現行2号,4号に相当するものを入れる理由があるのかどうかという気がしておりまして,私はもっと削った方がいいと,こういうふうに考えております。 ● 相殺禁止だけ認めるとして,禁止の範囲をもっと限定していいのではないか,そういうことですね。   この点はいかがでしょうか。ほかの委員・幹事の御意見を伺いたいと思いますが。 ● 私どもでは,相殺制限につきましてはこの理由づけ等についての意見がないわけではないのですけれども,現行法に定められているそういう合理的な範囲であれば,原案でやむを得まいかというのが理解なんですが。   ただ,先ほど○○関係官の方から,破産法の規定をそのまま適用することの問題はないか,御意見を伺いたいという御指摘がございましたけれども,そういう点については今の○○幹事の御指摘もございますし,もう少しちょっと詰める時間をいただきたいということでございます。 ● 同じく相殺禁止だけを認めるということについては結構だけれども,その範囲については今度の新しい--新しいというか,まだ破産法案ですが,破産法案の相殺の制限の規定をそのまま準用するということについては問題があるのではないか,そういう御趣旨ですね。 ● もう少し検討させていただきたいということです。 ● 破産と変えるとなると,今度変えることがどういう意味で合理的かという説明をしないといけないことになるかと思うのですけれども,先ほどの○○幹事の御意見ですと,強制執行に相当するようなものは制限をかけると,しかしそれ以外のものについては,執行が禁止されないようなものについては認めてもいいじゃないかと,そういう御趣旨ですね。   確かに,筋の通った考え方といえばそうかもしれないのですが,何となく現行法より相殺制限を緩めるということになる……。   ほかの委員・幹事の御意見を伺いたいところですね。緩めてよろしいということになるのか。 ● 緩めると,移行時の問題が難しくなるというのがございますので,そこでうまくいくかどうかも御検討いただいてから結論を出していただければと思います。 ● ちょっと,ほかの委員・幹事も……。 ● 一つは,特に他人の債権を取得して相殺するというようなケースを考えると,やはり何か手続開始後だけではなくて,その前の段階でも規制しておかないと,特別清算を円滑に進めるということが難しくなるのかなという感じがするというのが一つ。   それから,これは少し違う話なんですが,開始後でも必ずしも強制執行とパラレルな禁止理由によってこの相殺禁止が説明される場合だけではないのじゃないかという感じがしておりまして,例えば開始後に債権者に対して財産を売却して,その売却代金,債権者から見れば債務とその債権を相殺するというような場合は,実質的には代物弁済なわけですよね。それで破産法改正するときもそういう議論をしていたわけでありますけれども,手続開始後の弁済はできないからというので,それは恐らく相殺を禁止しているわけですが,特別清算の場合は,手続開始後弁済ができるという前提ですと,代物弁済すればそれは弁済として有効だと,しかし今のような形態をとると相殺はできないというような意味での不整合も発生するので……,というわけで,申し訳ない,ちょっと結論が必ずしもあれなんですけれども,他人の債権を取得するとかあるいは債務を引き受ける相殺については,かなり規制する必要は強いというふうに思うのですが,今のようなそういう契約等に基づいて発生する場合には,かなり弁済と同視,あるいは担保設定と同視されるような場合があるので,それを規律していない特別清算で規制するというのは,やや整合性を欠くという……。申し訳ありません,そういう意見です。 ● いろいろこちらで検討する材料というか,視点を与えていただいてありがとうございます。   なお,ほかの委員・幹事の方も,そういう意味での問題の指摘でも結構ですが,御意見があれば。 ● 先ほど○○幹事のおっしゃったとおり,偏頗否認とのバランスは確かに重要な問題ではあろうと思うのですが,他方で,個人再生と同じように手続構造を簡単にすると,形成無効の仕組みをとらないというのも特別清算の仕組みにはなじみやすいのではないかと思いますので,そこはのんだ上で相殺制限だけ置くというのも,立法としてはあり得るのではないかというふうに思います。   それから,先ほど同じく○○幹事から,現行法でいえば104条2号,4号のタイプのものは過剰規制ではないかという御指摘があったのですが,破産法案に置き換えて考えますと,支払不能とか支払停止があった後に債権者が債務負担するような場合には,やはり規制する必要があるだろうと,実質は同じわけですから。残るのは,破産法案でいえば71条1項4号の手続開始の申立てというのが危機時期の設定として本当に適切かと,そういう問題が残るという御指摘になるのじゃないかと思いますので,そのように御検討いただければと思います。 ● 理論的なことはともかく,利用する側から見ると,やはり破産と同じ仕切りでやっていただいた方が,特別清算の利用についてはいいだろうというふうに……。これを変えると,そこを理由に利用したがる方と,それから利用しにくくなるということが起こるものですから,やはりあとの移行のことを考えたりすると原案の方がいいと,そういうふうに感じております。 ● 今の御趣旨は,今度破産法が破産法案のように変わるとすれば,やはりそれの準用のような形がいいのではないか,そういう御趣旨ですね。形の上で準用というか,内容を書くかは別として。   それでは,今のような御意見を踏まえて検討させていただきます。 ● 今の相殺ではなくて,むしろ破産法の倒産実体法の中の一つの拡張というか,方向になるかと思いますけれども,特別清算を進めながら仕掛品を仕上げて処分したり等々するわけでありますので,そういう場合に継続的給付の契約についての,破産法でも継続的給付義務を負わせるというような規定ができたと思いますので,特別清算においてもそういうものがあると非常に実務的には便宜だろうなと思っておりますが,いかがなものでございましょうか。 ● 弁済ができないというのが前提になるのじゃないですか。棚上げされることを前提とした条文だと思いますから,なくても継続はできるのじゃないですかね。 ● 今,○○幹事のおっしゃったとおり,55条は破産債権と財団債権との区別を一つの前提に置き,破産債権については棚上げされることを更に前提に置いた上で,一定のものについては同時履行の抗弁権を残すという仕切りですが,その前提そのものは特別清算ではないということで,ですから特別清算の中では特別に契約で仕組んでいない限りは継続的給付義務を負い続けて,決済をし続けるということになるのじゃないでしょうか。 ● そういう解釈なら……。 ● ではないかと思いますが。 ● ありがとうございました。 ● そうしますと,10の方に移らせていただきます。   開始の効力の3番目,「他の手続に対する効力」で,他の手続の中止・失効等でございます。   (1)で,手続が開始された場合の他の手続の中止については現行法どおりということですが,この点はこれでよろしいでしょうか。   特に御異論がないので,これは現行法どおりでいかせていただきます。   次は,清算開始の命令が確定したときの他の手続の失効でございますが,これもこれ自体は現行法どおりですけれども,これもよろしいですか。   そうしますと,注の方で先ほどから問題になっている一般の先取特権の扱い,それから民事留置権の扱いが(注1)で議論されておりますが,これについてはどう考えたらいいのでしょう。一般先取特権の,いわば特別清算手続上の地位のようなことになるかと思いますけれども。   先ほどの○○幹事の御発言ですと,一応特別清算手続の効力はかぶるけれども……。どういうことになるのでしょう。 ● 必ずしも定見がないと先ほど申し上げたところですが,一つの考え方は手続の効力は一応及ぶと,ただその実行禁止については一般債権とは違った形で扱う現行法の規律を維持するとすれば,抵抗は少ないのではないかということです。   もう一つ考えられるのは,手続から出してしまう,民事再生方式にしてしまうというのも一つ考えられるのかとは思うのですが,そこは必ずしも定見はありません。 ● 手続から外してしまうというのは,ある意味では租税債権等との平仄が合うといえば合うわけですね。ただ,現行法でもそこは区別をしていて,一応協定等の対象になるということになっていますから。 ● 私どもの説明では,先取特権の取扱いをどうするかというのは大分中途半端だというふうに書いておりますので説明いたしましたが,特に変更の要否,必要性がないということであれば,今のように現行法のとおりということは,それはそれで一般先取特権のついた債権の一つの保護の在り方だと思われますので,そういう考え方ももちろん十分考えられる,当然そういう理解です。 ● ○○幹事のような考え方をとった場合に,企業担保権のはどうされる予定でしょう。同じ一般優先権だとすると,企業担保権実行手続も……,ということになると思うのですが,それをやってしまいますと結局は特別清算意味がないということになってしまうので,悩ましいところですけれども。   やはり全体を解体しちゃうのだから,それは止められるのだという説明になるのでしょうかね。同じ一般優先権でも実行手続が違うと。 ● 企業担保権を実行したら,もう意味がないということだと思いますから,どこで切れ目をつけるかの説明は必ずしも理論的じゃなくて,今のような実態に即した説明になるのじゃないかと思います。 ● 私は,どちらかというと,もう一般の先取特権付の債権は外に出してしまう方の民事再生型の方が世間の通りもよさそうですし,後々の協定の内容や可決要件との関係でも,すっきりした制度ができるのではないかなという気がしております。そういう意味で企業担保権も外に出してしまっても,これはもうやられたらしようがないというようなことでいかがかなというふうに思っております。 ● ○○幹事の御意見は,要するに手続の外に出せということですか。 ● はい,企業担保権を含めて。 ● 今の,ちょっと分からなかったのですが。外に出すというのは,実体的な意味ですか。中止なんかはどうするのですか。 ● もちろん実体的にも外に出しますし,中止の対象にもならない。 ● 当然中止の対象にもならない。 ● はい。 ● (3)の中止命令の対象になることはあり得るということになるわけですね。 ● それも外してしまう。再生手続のように,当該資産を売却されるとゴーイングコンサーンは維持できないというような場合に相当する場合があるということであれば,中止命令の対象ということもあり得るのだと思うのですが,しかしちょっとそれを今の現状では思いつかないと。   ただ,会計帳簿が入っているコンピュータを差し押さえられるとか,そういうようなことが全く考えられないわけではないので,中止命令は残しておいてもいいのかもしれませんが,しかしそれは,極めて限定された要件のもとに認められるべきだというふうに恐らくなるのではないかなと。 ● 通常の抵当権等の中止命令もやめてしまうということですか。   抵当権について中止命令,今かけられますよね。一般先取特権や民事留置権の方は外すということを言われたのですが,抵当権の方の中止命令もやめるという前提でないと,何か理論的に整合性がつかないような気がするのです。 ● そこはおっしゃるとおりかもしれません。 ● 民事再生法はそういう形になっているのじゃないでしょうか。抵当権はとめられるけれども,一般先取特権については,先ほど○○幹事がおっしゃった理由で限定的な場合にしかとめられないという形になっているのではないかと思うのですが。 ● 協定への参加との関係でとめるということですので,協定におよそ参加することがないとなれば……,ということで説明できるかもしれませんね。 ● 近年,労働債権についてまでカットを求めざるを得ないような事案が出てきておりますし,特に退職金債権,一時払いするだけの資金がない,あるいはそれをすれば一般債権への配当が全くできなくなるというふうな事案の場合に,労働組合の御理解を得て,それなりのカットの退職金についての労働協約を結んでいる事例が散見されております。そういうふうな事案を考えた場合に,やはり協定に参加していただく,それが外に出してしまった場合に,その人を取り込む方法がなくなってしまいますので,やはりそういう人の中でも多数決原理が働く場面はあってもいいのだと思いますから,現行の枠組みの中と同じように考えて,一般優先債権についても協定の対象になるという方が,実務に携わっている者からすれば,より利用しやすいのではないかと私は理解しておりますが。 ● 今の点は,協定に賛成しなかった労働者の賃金なり退職金債権はどういうふうに扱われるという前提なんでしょうか。 ● 労基法上は個別同意が要りますけれども,皆さん多数決で……。 ● 清算価値保障を認可要件として入れた場合に,できていると言えるのでしょうか。 ● 事実上御賛同いただけています。 ● 結局,それは協定という形ではなくて,個別同意を取り付けて一部を何とかしていただくという前提でやるのには私は何の反対もしませんが,協定という仕組みで多数決原理が妥当するのだという,させるということ自体がそもそも問題ではないのかなということになるのじゃないかなという気がするのですけれども。 ● 先ほども説明いたしましたように,協定に取り込まれるとしても,そこから先,優先権をどう確保するかという議論はあると思いますから,今のような斟酌でいいのか,組分けになるのかとか,そういう議論は次回の問題だと思います。もちろん,セットで考えなければいけないということだと思いますけれども。 ● ほかの委員・幹事の御意見はいかがでしょうか。 ● 私は,次回ということですけれども,取扱いについて組分けをするとか,そういう必要はないと思いますけれども。優先権をしんしゃくするだけで十分だと思いますが,しかし手続に協定という形で組み込むことについては,そちらの方がいいのではないかと考えております。 ● 私は,一般先取特権も企業担保権も民事留置権も,中止命令の対象としていいし,それから実体的にもそれを含めた協定みたいなものを考えた方が……。   特別清算というのは,要するに,確かに破産ではそこまでやってなくても特別清算の場合にはそこまでも含んでみんなで話し合って清算しましょうという仕組みだと思いますので,それは少し効力が強過ぎるという印象があるかもしれませんけれども,それは多分次回に取り上げられる組分けとか多数決とか,そういうことで調整できるのじゃないかというふうに考えております。 ● 要するに,優先権確保の方法は別途考えるとして,一応手続の中に取り込むと。 ● はい。 ● それでは,両方の御意見あるようですけれども,なお検討させていただくということでよろしいでしょうか。   何か,○○幹事,御意見ございますか。 ● 今,○○委員がおっしゃったことで妙に納得してしまったのですが,要するに特別清算というのは協定が核心であると,そうすると何でもかんでもそこに入れて,更に○○委員よりも積極的なことを言えば,優先権も話し合いでみんな決めろというところまでいってもいいのかなと思ってうなづいていたのですけれども。 ● 商事留置権について言及されていないのですが,破産じゃございませんから商事留置権も平場でございますよね。それが言及されていないのは。 ● ただ,破産法上の別除権として一定の取扱いを受けると。 ● 特別清算においてもですか。 ● はい。 ● ですから,(3)の中止命令の対象にはなると。 ● という点は,特に現状から変える意図はないのですが。もしそこについても御議論があれば……。 ● 何かあれですか。 ● 不動産の留置権なんかが行使された場合に,特別清算の中でどういう結末になるのかなというのが……。 ● 商事留置権が成立するのであれば,別除権としての取扱いが特別清算の中にも考えられるというのが,前提だと思います。 ● 民事留置権の方はいかがでしょうか。民事留置権そのものを特別清算開始されたからといって消滅させるとか何とかということはできない,そういうことはないということはそれでよろしいでしょうね。   民事留置権実行の競売はどうなるかなんですが,当然中止ということで考えるのか,それとも(3)の方で考えるのかはいかがでしょうか。 ● 現行法は,破産では民事留置権と商事留置権を区別されていますけれども,特別清算で民事留置権と商事留置権を区別する意味はないのじゃないだろうかと。そうすると,民事留置権にせよ商事留置権にせよ,その実行は担保権の実行という形でくるわけですから,担保権の実行としての競売という形でくるわけですから,相当の期間を定めて,一定の期間それをとめる,そして特別清算手続を優先して進行させる,そういうことで特にそこを区別する必要はないのじゃないでしょうか。   当然中止ということになると,これは強過ぎると思うのですね。特に民事留置権だけ当然中止,それ以外の担保権の実行は個別中止なんていうのは,これはバランスがとれないと思いますので,やはり担保権の実行は一定の期間を定めて,必要に応じてとめるという以外にないのじゃないでしょうか。 ● そうすると,民事留置権者は協定に当然に参加をするわけではない。 ● 当然に参加するわけではない。必要に応じてと。 ● そういう意味。そこまで商事留置権と同じ。   そこはどうでしょうかね。○○委員の御意見は分かりましたが,ほかの委員・幹事の皆さんはいかがでしょうか。   民事留置権の問題は難しくて,破産のときに大分議論がありましたが。 ● 現実の問題とするとあれでしょうか,やはり株式会社ですから,民事留置権が問題になる局面は余りないという理解でよろしいですか。 ● 余りないから現行法のままにしておくというのも一つの考え方かもしれませんけれども。   中途半端のままでもいいじゃないかということにするのか,一般の先取特権も中途半端のままになりそうなことだから……。   余り積極的に御意見ございませんか。もし特に御意見がないようならば,今,○○委員からの御発言がございましたけれども,どちらかというと現行法のままでいいじゃないかという御意見が多いようにお見受けしましたので,その方向で考えさせていただくということになりますが,よろしいですか。   そうしますと,あと(注2)の破産手続との関係があるのですけれども,これはどう考えたらよろしいでしょうか。破産手続の方も,開始決定があればそちらが優先するといいますか,破産手続はそのまま進んでいくということでよろしいのか,それとも特別清算の方を優先させることもあっていいということなのか,あるいは特別清算の方が常に優先するというふうに考えるべきなのか。   事務当局の考え方は,さっき○○関係官から説明がありましたように,もう破産手続開始までいっていれば,そちらの方を優先させるということで明文化したらどうかということですけれども,それでよろしいですか。 ● 前提をちょっとお伺いしたいのですが。   この場合の特別清算を優先するかというのは,既に破産宣告がなされているけれども別の意味で清算中の会社が特別清算を行うということになるわけですね。解散している会社であるということが前提になってくるわけですね。破産によって解散している会社という意味ではないわけですね。   特別清算を優先させて,命令が確定すれば破産の効力というのはその時点で失効するということになる。この場合はそうなるのでしょうか。 ● ここで想定していますのは,破産で解散した株式会社について,特別清算の手続を認めるか,その場合に特別清算を優先するか,こういうことです。 ● そういうときに,破産の方はどういうことになるのでしょうか。中止のまま。 ● 多分,やるとすれば中止だと思います。 ● そうすると,存続中の会社について,破産で解散したということで特別清算の申立てというのはできるものなのですか。この考えになったときに。 ● 日弁連のバックアップ委員会の中で,ここの18ページの記載を拝見して,前回日弁連が言ったことに御配慮いただいてこういう考え方を書いていただいたのかなと,そうするとこれは破産後に強制和議に変わるものとして特別清算の申立てができることがあり得ると。破産開始決定後,手続開始決定後に特別清算ができるということは,従前の強制和議みたいなもの。 ● いや,そういうふうに考えていたわけではないのですね。 ● 仮に開始された破産手続に優先して特別清算が進んでいったと,どの時点か分かりませんけれども,破産の方が失効したとなれば,恐らく普通は破産による解散の効力も失われるということですよね。だとすると,制度としてはなかなか仕組みにくいのかなという前提で,多数説の方がいいのではないかという含みもあって書いているということです。 ● 破産による解散の効力も失われるというお考えですか。 ● 今の会社整理について,破産手続開始後に会社整理ができるという学説は,それを前提として理論構成されていますから,それとパラレルに考えれば,そういう結果になる。   もちろん,制度の仕組み方次第ですけれども,破産手続の効力がなくなりましたというときに,解散の効力だけ残りますというのは,なかなか説明がしにくいかなと思っております。 ● 会社整理は,和議の場合であれば存続会社ですけれども,特別清算の場合は清算で解散の効力そのままですよね。仮にそういう制度ができるとすれば,多分立法上の負担が大変なので難しいということは理解しながら,できるとすれば少額弁済だとか破産におけるぎちぎちした制度の枠組みを外れた形で,早期終結ができるからおもしろいなというのが日弁連の中で出た若干の意見です。 ● 申し訳ないのですが,さして日弁連に配慮したつもりはなく,この制度を作るとすれば,先ほど説明申し上げましたように,大分難しいだろうと思っておりますので,具体的にどうなるかということまでは余り検討はしておりません。 ● 今のこの(注2)の点は,○○委員の質問の趣旨がちょっと分からなかったのですが,要するに破産宣告後の会社について特別清算が開始できるかということですね。私は,かつてそういうふうに考えたこともあるのですけれども,それは要するに大正11年につくられた破産法というのはいろいろの点で不備があって,そしてそれに対して昭和13年にできた特別清算というのは,担保権の部分的な実行禁止とか,いろいろなメリットがあるので,それを前提とした解釈論として破産手続の中止というのがあるので,破産手続の中止というのは宣告前の手続だけじゃなくて宣告後の手続も入るのだと,そういう解釈論があったと思うのです。   しかし,新しく今立法するとすれば,この間の破産法でいろいろそういう点はすべて手当てしていると思うのです。そうだとすると,この特別清算は破産宣告後の,もう破産管財人が入ってしまった手続はもう破産手続の中でやって,その中でいろいろな工夫で清算ができるので,こちらの方はそうじゃなくて,普通に解散しちゃって,そして任意清算をしている,だから破産宣告はしていないという会社だけを対象とすると。これは,立法技術的にもこれの方が後の手続が非常に簡単なんですね。だから今度の立法で,破産宣告後の会社まで取り込むということを明文で規定するとすれば,これはもうかなり大変なことになるのじゃないかというふうに思っておりまして,今新しく破産法と時をそんなに異にしないで特別清算を作るのなら,もう破産は破産,特別清算はそうでないものだけをやっていく,つまり任意清算の特別のものだという,そういう姿勢の方がすっきりしているのじゃないかというのが私の考え方です。ですから,この(注2)の考え方に賛成しようと思っている次第です。 ● 確かに,この後手続がどうなっていくのかなと考えただけで,全くわけが分からなくなっているぐらいですから,あればそれは,それで合理的にできるのならおもしろいなというだけで,それ以上のことはありません。 ● 実情の点からも一言ですが,債権者申立てで破産宣告があった後に,強制和議の申立てがあるという事案では,その申立ての濫用ということが大変実務上問題になってまいります。破産管財人も,これは問題だと言っているにもかかわらず,そのような申立てがあって審理をするという事例は,これは債権者申立ての破産事件の場合には多々あるわけでして,そうなると万が一このような手続を作るのであるとすれば,特別清算の開始要件というものについて濫用防止というのを相当考えていかないと問題が生じるというように思います。 ● 特にどちらという定見があるわけではないのですが,先ほどの御説明でちょっと私納得がいかなかった点がありまして,一つはこの資料にある破産宣告による解散の場合には特別清算の対象にはならないということですけれども,同時廃止の場合には,判例上清算人を選任するということになっておりますので,破産手続による解散でも清算手続は開始するということが判例上認められているのじゃないかと思いまして,その場合債務超過の疑いがあれば特別清算にならざるを得ないというのが現行の制度ではないかというのが私の理解でした。   それから,破産手続が特別清算開始等により失効した場合には,解散の効力がなくなるということですが,そこもやや疑問がありまして,現在,民事再生法上は,破産手続が開始後の法人について再生計画案が可決された場合には,法人の継続の手続をとるということになっているわけですが,これは再生計画認可によって破産手続が失効しても,破産手続開始による解散の効力は残るということを前提とした規定というふうに私は理解していたのですが。つまり,破産手続が後で失効しても,破産手続開始による解散の効力は残るということではなかろうかというふうに思っていたのですが。   ちょっと,結論どうこうということではないのですが,その説明の問題かもしれないのですが。 ● 前の問題はおっしゃるとおり実務上はそうだと思うのですが,どうもやはりそのあたりがきちんと整理されていないのじゃないかというのと,今の同時廃止ですから比較的議論がしやすかったのじゃないかと思います。そこはやはり,かなり疑問符がありますので,このあたりを先ほど言いましたように解散事由で分けるというのはややドグマかもしれませんが,難しいということの理由づけの一つです。 ● 難しいということは大変よく分かっております。 ● 破産宣告による解散の場合には云々というのは,多数説がこういう根拠を挙げているという程度の意味合いでございます。   それから,再生手続と破産との関係ですけれども,継続の手続をとった後に破産手続が失効するというスキームになっていますが,それは必ずしも破産手続が失効して存立中の状態に戻るかどうかというのは,直接の関係はないのではないかというふうに考えております。 ● 失効して解散の効力がなくなるのであれば,継続の手続は特にとる必要はないのではなかろうかという疑問ですが。 ● 計画の遂行可能性とかにもかかわってまいりますので,そこはやはり必ずしもリンクはしないだろうということです。 ● なおよく考えさせていただきます。   そういたしますと,「10 他の手続に対する効力」のところ全体について,あと何か御意見ございますでしょうか。   結局,一般の先取特権,民事留置権も現行法ということになりそうですね。破産との関係は,破産の方が開始になっていれば優先すると。今,○○幹事が言われたような問題は,なお検討しなければいけないのかもしれません。 ● 出しおくれで申し訳ありません。私も17ページの(注2)にあるように,このような解釈を明文化するということには異論はないのですが,この破産手続開始という場合,16ページにあるように,開始決定があるだけでいいのか,それとも開始決定が確定している必要があるのか,特に破産決定の開始決定に対して即時抗告が出ているような場合,どういう取扱いかということはなお検討する必要があるのではないでしょうか。確定していないうちに特別清算が始まっちゃったら,そっちを優先させるという仕切りも十分あるのじゃないかと思うのですが,これは多分両様の考え方があり得るのじゃないかと思いますので。   とりあえず私の今考えているところは,この破産手続の開始後というのは,開始決定が確定している場合だけでいいのじゃないかなと思うのですが,両方考えがあり得ると思うので,ちょっと御検討をお願いいたします。 ● こちらのあれとしては,もう開始決定があれば効力が生じているからという前提なんですが,ではその点は検討させていただきます。   それでは,特別清算分科会資料(2)全体について,あと何か御意見ございますか。--特にございませんか。   それでは,資料(2)につきましての御審議はこれで終了ということにさせていただきます。ただ,これはまだ第一読会ですから,今日度々申し上げましたように,御指摘いただいた問題点,残った問題点等についてはなお検討させていただきます。   次回の予定等につきまして,○○幹事の方からお願いいたします。 ● それでは,次回の特別清算分科会の3回目は,4月9日になります。従来と違って第二金曜日になりますので御注意ください。時間は午後1時からで,場所は法務省の第1会議室の予定です。   テーマは,第一読会の第3回目ということになりますので,債権者集会ですとか清算人,あるいは先ほど来出ております協定といったところで,一通り一読的な論点は当たっておきたいというのが一つ。   それから,先ほど申し上げましたように存立中の会社の取扱いをどうするかという点も,可能であれば少なくとも問題提起程度はさせていただきたいと思っております。 ● それでは,以上をもちまして本日の会議をこれで閉会ということにいたします。どうもありがとうございました。 -了-