法制審議会倒産法部会特別清算分科会第1回会議 議事録 第1 日 時  平成16年2月20日(金)  自 午後1時00分                        至 午後4時18分 第2 場 所 法曹会館「高砂の間」 第3 議 題 特別清算についての検討課題(1)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 定刻になりましたので,第1回特別清算分科会を開会することにしたいと思います。   御案内のように,特別清算につきましては,これまで倒産法全体の見直しの一環として,あるいは破産法の見直しと関連させて,何回か御議論をいただきましたが,いよいよ特別清算それ自体を正面から取り上げて,見直しの作業を開始することにしたいと思います。本日はそういう意味での第1回の会議ということでございます。分科会で委員・幹事の数をある程度限りましたので,席の配置もぐっと正面が身近になりましたが,ひとつよろしくお願いいたします。          (委員・幹事の異動紹介省略) ● それから,次は配布資料の説明でございます。   お手元の事前送付資料は,分科会資料の番号1の「特別清算についての検討課題(1)」でございます。本日,主として御利用いただくものでございます。   それから,参考資料といたしまして,「特別清算手続協定型」,「特別清算手続和解型」というペーパーを事前送付いたしましたが,一部訂正がございますので,本日差替えで,席上配布させていただいておりますものを御利用ください。東京地方裁判所民事第8部という名前があるものでございます。   冒頭,実務の御紹介ということで,これに基づきまして,○○幹事の方から御説明いただきたいと考えております。   引き続きまして,特別清算分科会とは直接関係はないところでございますが,破産法案と破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案,いわゆる整備法案という二本の法律案が,2月13日,先週の金曜日に国会に提出されましたので,御報告いたします。いわゆる合本という資料を,本来であれば今日お渡ししたいところでしたが,非常に大部な法案でございまして,まだ作成に手間がかかっておりますので,もうしばらくお待ちいただきたいと思います。でき次第お送りしたいと思います。   それから,法務省のホームページの方には昨日から破産法案,それから整備法案,このいずれにつきましてもダウンロード可能な状態になっておりますので,あわせて御報告いたします。以上でございます。 ● それでは,本日の議事に入りたいと思います。   特別清算の実務について,まず○○幹事の方から御説明をお願いいたします。 ● 本日は,東京地裁の特別清算の運用につきまして御説明の機会を与えていただきましてありがとうございます。お手元に,特別清算の協定型と和解型の進行のイメージを資料にまとめておりますので,適宜御参照いただきながらお聞きいただければと思います。   まず,特別清算は,実務上,御承知のとおり協定型と和解型の2種類がございます。この協定型というのは,集会を開催して協定の決議を行った上で,この協定に基づく弁済を行うパターンでございます。和解型は,集会を開催せずに,会社と債権者との間で和解契約を締結して,この和解契約に基づいて弁済を行っていくというものであります。全債権者と基本的には同一内容の和解契約を結ぶ必要がございますので,債権者の数をかなり絞り込んでいかないといけません。例えば親会社が子会社を整理する場合のように,親会社が子会社の債権を事前に買い集めまして,数を絞り込んだ形で申立てがなされてくるというのが通常でございます。   次に,統計的な数値について若干御説明させていただきたいと思います。   東京地裁本庁で,平成15年の新受件数は,総数で132件でございます。そういう意味では,全国の大体半数の事件が東京地裁本庁に申し立てられていると言っても過言ではございません。   この総数132件のうち,協定型が42件,和解型が90件ということになっておりまして,この分量はここ数年変わりがございません。   次に,事件処理の期間についてでございますが,平成15年に既済となった事件の平均処理期間は,全体で144日というふうになっております。このうち,協定型だけを取り出してみますと,188日,約6か月間で,和解型だけで見ますと99日,約3か月といったところかと思います。   それでは,まず協定型について資料を御覧いただきながら,運用のポイントについて御説明させていただきたいと思います。   まず最初に,事前相談でございますが,これは超大型案件を除いては行っておりません。   次に,特別清算の申立てをする際には,解散していることが必要でございますので,臨時株主総会で解散決議が行われます。清算人は,従前の取締役が選任される場合が通常でございますけれども,場合によってはこの株主総会で清算人の選任手続が行われることもございます。   その後,商法の定めに従って3回,官報公告を行うことになっています。これは債権者に解散の事実等を周知させるというものでありますけれども,どれぐらい債権者の目に触れているのか疑問のあるところでございます。このため,実務上は,3回やらないといけないのを三日連続で官報公告を行って,商法の要件をクリアしております。この官報公告の費用も,行数によるのですけれども,3回の合計で大体8万円から9万円,そういった費用がかかっているわけでありまして,そういう意味では3回の公告を行うことの合理性については,かねがね疑問のあるところでございます。   また,この公告以外に,知れたる債権者に対しても債権の申出を催告することを法律が要求しているところであります。   その後申立てということになるわけでありますが,ほとんどの事件は清算人による申立てでございます。大型案件では,弁護士が清算人に選任されておりますが,そうでない場合も申立代理人が開始命令後に常置代理人に選任されるというのが通常であります。そういう意味では,特別清算手続に精通した弁護士の関与によって,スムーズに手続の進行が図られていると言っていいと思います。   他方で,現行法上,債権者あるいは株主にも申立権が認められておりますけれども,これらの者による申立てというのは非常に数が少のうございまして,年間で数件程度だという感覚でございます。最近,申し立てられた事件の具体例を申し上げますと,例えばゴルフ場が解散をして,清算人が選任されているのですけれども,何もしないで放置をしている,それで預託金会員の方から申立てがなされた場合だとか,あるいは資産超過の場合に解散になって,株主間の内紛がございまして,債権者兼株主から申立てがなされるといったような事例がございました。   この債権者の申立てがなされる場合は,これは会社側と債権者間での対立が前提になっております。そういう意味では,裁判所は,開始命令を行う際に,①現在の清算人を解任して新たに清算人をつけるか,あるいは新規の清算人をいきなり選任しますと会社の状況が分かりませんので,②現在の清算人につけ加えて裁判所で追加的に清算人を選任するか,肢どちらかの対応をとっております。いずれもこういった場合には,選任される清算人は弁護士の中から選んでいるというのが実情でございます。   そのほか,株主による申立てがございますが,これは債権者申立てと比べても更に例が少ないという状況でございます。特に,私どもの感覚からすると,会社が債務超過であることが明白な場合に,株主に申立権を認めることに合理性があるのかという点については,常々疑問を感じているところでございます。   さらに,法律上職権によって開始命令を行うという規定がございます。この例は,債権者申立て,株主申立てと比較しても,さらにまれでございます。いずれにせよ特別清算の手続を進行させていくためには,費用を捻出してこないといけないわけでありますから,きちんとした申立人といったものを想定しない形で制度が果たして実効的に機能し得るのかというあたりについては,疑問があるところでございます。   このような形で申立てがなされた場合に,裁判所はどのあたりに審査のポイントを置いているかという点でございますが,まず開始要件は債務超過の疑いがある場合と清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合とがございますが,ほとんどのものが債務超過の疑いを理由とするものであります。しかも,債務超過の疑いというよりも,明確に債務超過の場合がほとんどでございまして,これは清算貸借対照表を出してもらって,債務超過であることの確認を行っております。   あと,特別清算の見込みがない場合であるとか,あるいは申立てが濫用である場合に,解釈論として却下できるというふうな考え方がございますが,実務においてもこのような考え方に立っております。この特別清算の見込みがない典型例としては,租税債権等の優先債権が多額であるため,一般債権に配当する原資がないといったような場合が典型例として挙げられます。濫用のおそれがある場合については,例えば主要な債権者が否認対象行為があるということで破産の申立てをしていると,こういった場合に,それを免れる目的で申立てをしてきているのではないかということで,こういった事情が分かればしかるべく審尋をして,判断をしているという状況であります。ただ,この点が余り明確でないような事案については,申立段階でぎりぎりと絞るといったようなことではなくて,むしろ破産への出口を確保するということで,申立段階で破産申立費用を前提とした予納金を入れてもらって開始命令をすると,予納金のところでその部分を調整しているというのが実情でございます。   予納金の額でございますが,これは手続の遂行の見込みに依存してくるわけでございます。我々がポイントを置いておりますのは,特別清算の申立てにどの程度の債権者が同意をしているのかという点であります。4分の3以上の債権者が同意をしているというのが,一つのポイントになろうかというふうに考えております。この手続の申立て自体について4分の3の債権者の同意が得られていない場合は,これは途中で頓挫する可能性がありますので,事前に破産予納金に見合うだけの予納をお願いするということになります。   また,債権者の大多数が賛成している場合も,換価すべき財産の中に,特に換価の難しい不動産が入っているというようなことで,手続の長期化が見込まれる場合は,場合によっては破産予納金相当額の予納金を納めさせるといったことがございますし,あるいは今後の清算費用の負担について,親会社に念書を入れてもらうといったような扱いをとることもございます。   4分の3以上の同意が得られている問題のない場合には,これは予納金は一律5万円という扱いでやっております。ですから,かなり低額な費用で行っているということです。   ちなみに,和解型の予納金は一律8,360円ということで実施しております。   このような形で申立てについて審査を行いますが,申立てに特に問題のない場合は原則として即日,あるいは翌日に開始命令を行うようにいたしております。そういう意味では,保全処分というのはほとんど利用されていない,利用する必要がないというのが実情でございます。   開始命令後の手続でありますが,これは債権申出期間が終わった後から弁済ということになってまいります。少額債権の弁済,あるいは担保権のある債権の弁済,その他弁済によって他の債権者を害するおそれのない債権を弁済をするということになります。この少額債権の弁済を活用して,できるだけ債権者の数を絞り込んでいくという扱いをしています。   この少額の額については,これは事案によって異なってまいりますけれども,ただ注意しておかないといけないのは,協定による弁済額の最低限といったものを上回る少額弁済はなかなか難しいというところであります。そこをにらみながら,少額弁済の額を決めているということであります。   それから,100万円以上の価値を有する会社財産の処分,これは監査委員の同意,あるいは監査委員がないときは債権者集会の決議を経るというのが商法の建前でございますけれども,実際は急迫な事情があるときに裁判所の許可による財産の処分は可能だという規定を使って,裁判所の許可を得て会社財産の処分を行っているという実情であります。   開始命令後,清算人からは月報という形で報告書を出させておりますし,必要のある場合には面談をして,進捗状況等を問い合わせているという状況であります。   この債権申出期間が満了すると,債権者が確定してまいりますので,清算人は,速やかに第1回集会を開催するということになります。東京地裁の扱いでは,開始命令の中に債権申出期間満了の日から1か月以内に第1回集会を行うように書いております。ただ,比較的債権者の数が少なくて,手続外で清算人が十分説明をできるというような状況では,第1回の集会を開くことは省略をしております。それは,その場合は,協定の決議集会とあわせて集会を開催するということにしています。   あと,監査委員の選任の例というのは,これはほとんど特別清算ではございません。ただ,非常に大型事件であって,処分すべき不動産の額等が極めて多数に及ぶような場合,この場合は一々裁判所の許可,財産の処分に許可が要るということは大変でございますので,そういった場合には監査委員を選任するというようなこともないわけではございません。   今,商法の規定では監査委員は3名以上というふうにされておりますけれども,果たして合議体でこれを構成する必要があるのかということについては,やや疑問があるのではないかと思います。   その後,協定案を提出してもらうわけでありますけれども,協定案の提出の時期については法律では何も規定はされておりませんけれども,東京地裁の扱いでは,開始命令から6か月以内に協定案を提出してもらうようにしています。これが間に合わない場合は,許可をして,この期間を伸長するというふうにしています。   この協定案については,事前に清算人の方から提出をしてもらって,裁判所の方でも内容をチェックしています。裁判所の方が見るポイントとしては,平等原則に違反するものかどうかという点にほぼ尽きると思います。扱いが不利益な人がいる場合には,その人の同意がとられているかどうかという形で,平等原則違反がないかという点をチェックをしていると。これは,優先債権を一部カットする場合についても同じでございます。その優先債権者の同意があるかどうかという点が,審査のポイントになっております。   ほとんどの事案の場合は,この協定案について清算人が各債権者に十分説明をされています。事前に同意を得ておられる場合が普通であります。そういう意味では,第2回の協定案を決議する集会は,委任状出席の場合が大半でありまして,実際この集会でいろいろな意見が出るといったようになことはまれでありますし,この2回集会というのは債権者の数は少ないというのが実情であります。   その後,協定案が決議された後,債権者集会の招集者,ですから清算人が認可の申請をします。この場合,議事録を提出しなければいけないということになっています。この議事録の作成に時間がかかると認可がおくれてしまいますので,実務ではこの議事録はひな形をあらかじめつくっておいて,必要な事項を簡単に記載をして,速やかに認可の申請ができるようにしてあるという状況であります。裁判所の方は,事前に協定案をよく見させていただいておりますので,決議後,認可をしないといったような事例はございません。常に認可をしているという状況であります。   清算人は,会社財産をその後処分をして,協定に従って債権を弁済し,その余の債権につては,その放棄を受けることで清算事務が終了ということになります。清算手続でありますので,資産と負債を双方ゼロにしないといけないということになります。そういう意味では,換価の難しい不動産なんかが存在する場合は,これが売れ残ってしまうということで清算手続が長期にかかってしまうといったような場合があります。このような場合は,親会社なんかに代物弁済の形で不動産を引き取ってもらうというようなことで,何とかして資産を処分してゼロに持っていっていると,あるいは最近ではバルクセールというようなものも行われておりまして,悪い物を一緒くたにして,とにかく引き取ってもらうということで何とか全部処分してしまうという工夫をしているところであります。   このような形で,資産と負債がゼロになったというような報告を受けて,裁判所の方は特別清算終結決定を行います。   その後,イメージ図に書いてあるような形で細々とした手続,登記あるいは重要なる資料の保存者の選任決定といったような手続が続いていくというような形でございます。そういう意味で,手続が遅くなるのは,やはり売れない物がどうしても残ってしまうときにどうするかというようなところでありまして,その場合にやむを得ず職権で破産をするというような場合,あるいはどうしても協定がまとまらないといったような場合にも,破産というような形で出口を確保しているというような実情であります。   和解型の進行については,集会を開かなくてもいいという点を除いては,基本的には今申し上げた協定型と大体同じであります。ただ和解型の場合は,もう債権者の数が一,二名とかいうような形で絞り込まれてきているというのが通常でありまして,そういう意味では先ほどの処理期間が物語っておりますように非常に短期間の間に処理が行われているというのが実情でございます。   大体以上でございます。どうもありがとうございました。 ● 大変貴重な実情についての御説明,ありがとうございました。   重要なことでございますので,今の御説明について何か御質問とか,あるいは補足的な御説明を伺いたいという御希望があれば承りますが,いかがでしょうか。 ● 今,東京の実情をお話し賜りましたけれども,大阪では複雑な事案の場合には検査役の選任がなされることがございます。それで,検査役が報告して第1回集会に臨むと。検査役はほぼ百パーセント弁護士で,サブとして公認会計士等の援助を受けて,それをもとにして報告するということが行われております。 ● 東京では,検査役選任という例はほとんどないというふうに考えてよろしいでしょうか。 ● はい,ないということでよろしいと思います。 ● あと,ほかに御質問あるいは補足的な御説明の要望等ございますか。 ● 一つちょっと……。○○幹事から御発言がありました債権の申出の公告の件でございます。いろいろと批判があるところだというふうに先ほど伺いましたが,ちなみに会社法制の現代化に関する要綱試案の中でも,3回の公告につきましては1回にすると,1回で足りるものとするという提案が要綱試案の中でされておりますので,その点だけ念のためつけ加えさせていただきます。 ● それでは,実際の運用につきましていろいろ御説明をいただく必要がある場合が今後出てくるかもしれませんが,その場合は随時伺うということで,本日の議事を先に進めさせていただきたいと思います。   それでは,分科会資料1についての説明並びに審議をお願いしたいと思います。まず説明をお願いいたします。 ● それでは,特別清算分科会資料1について御説明いたします。   以前,破産法分科会資料13では,改正検討事項以来,特別清算手続を株式会社以外の法人についても利用することができるようにするという考え方を支持する意見が多かったことを踏まえまして,特別清算を見直して,協定に基づく清算を内容とする簡易な倒産処理手続である協定破産手続を創設するという考え方をお示しいたしました。   これに対しましては,倒産法部会資料45に記載しましたとおり,倒産処理手続として純化し,破産手続の特則として位置づけることは適当でない,破産という名称は適当でないという意見が多数を占めました。その結果,特別清算の見直しの基本的方向についての認識の一致を見るに至りませんでした。   そこで,今回の分科会資料1では,特別清算の見直しの方向についての御審議をいただく前提として,まず現行の特別清算の趣旨,目的はどのようなものか,現行の特別清算はどのように利用されているのか,現行の特別清算のメリット・デメリットはどのような点にあるのかを改めて御確認いただき,その上で特別清算の見直しの基本的方向や手続の基本構造について御審議をお願いするという流れで作成しております。   そこで,1ページの(前注)でございます。こちらが見直しの方向についての議論の前提となる事項ということになります。   (前注)の1でございますが,現行の特別清算の趣旨・目的はどのようなものかという点でございます。ここでは,(注1)及び(注2)に記載しましたとおり,特別清算の創設前後の文献にさかのぼって,特別清算の趣旨・目的を調査して,その結果を記載しております。   特別清算については,立法当時の資料が少ないと言われておりますが,昭和13年の商法の大改正により導入されたものでございますので,充実しているとは言えないものの,それなりに資料,文献とも存在いたします。昭和13年の商法の大改正は,御案内のとおり昭和6年に法制審議会が内閣総理大臣に対して答申した「商法改正要綱第二編・会社」に基づくものでございます。この商法改正要綱については,その起案者の一人である松本烝治博士による「商法改正要綱解説」というのがございます。これが(注1)の一つ目の丸でございます。   また,議会における質疑をまとめたものとして,「改正商法審議要綱」というのがございます。立法担当者による解説としては,「商法中改正法律案理由書」及び「株式会社法釈義」というのがございます。(注1)の二つ目から四つ目の丸までに該当いたします。   さらに,立法直後の商法・会社法関係の基本書,体系書等でも,現在のものに比べますと詳しい論述が見られます。今回は,代表例として五つ目に田中耕太郎博士,六つ目に大隅健一郎博士のものを記載しております。   以上は商法の立場から書かれたものですけれども,手続法的な観点から書かれた文献としては,七つ目の丸の小野木常助教授の「整理と特別清算」というものがございます。   また,当時の京都大学の「法学論叢」には,毎号のように齋藤教授と小野木助教授によって倒産関係の論文が発表されておりまして,その中には特別清算について言及したものがございます。(注2)に挙げた「牽連破産に就て」というのもその一つということになるわけでございます。   このように,創設の前後には研究者の特別清算に対する関心もそれなりに高く,通常であれば更に特別清算についての理論的研究が進むと思われるところですけれども,残念ながら文献上はその後の研究の進展は見られなくなります。その原因としては,戦争の激化というところが考えられます。   戦後になりますと,商法の分野では,これも御案内のとおりアメリカ法の影響を受けて,株式会社法制の見直しに関心が集中するようになりまして,昭和25年には大改正が行われるに至っております。   倒産法の分野では,会社を中心としまして経済的破たん者の経済的更生のための制度の整備に関心が向くようになりまして,特に法務総裁から法制審議会に対して破産・会社の整理等に関する制度の改善について諮問がされました昭和24年以降は,特別清算に対する関心は薄らいだようでありまして,昭和27年に会社更生法が成立した以降は,倒産法の分野における研究は,会社更生法を中心に進められるようになったようでございます。   なお,後ほど(前注)の2で統計関係を挙げておりますが,戦前,戦中の特別清算の利用状況については,資料の入手が困難でございました。辛うじて昭和16年の数字を見つけることができたのですが,昭和16年には新受件数は4件であったということでございます。その後も,後ほど取り上げますけれども,長期間にわたって利用件数が伸びていないというようなことがありましたので,これが研究者の方が関心を失う原因となったというふうにも考えられます。   さらに,特別清算は商法と倒産法の業際問題のようなものでございますので,これも一因になっている可能性はあります。   以上のように,特別清算については商法の立場,あるいは倒産法の立場からもさほど理論的研究は進まず今日に至っているというのが実情と思われます。最近の文献ですが,商法の分野では,昭和44年発行の「注釈会社法」の特別清算の部分,それからその新版が平成2年に出ております。これ以外に特別清算関係の目ぼしい文献はないと思われます。この「注釈会社法」,それから「新版注釈会社法」の特別清算の部分も,御案内のとおり手続法の研究者が書かれたものということでございます。   倒産法の分野から見ても,研究者の方によるまとまった論文といったものは見当たらないのですけれども,主として実務家の方によって実務的観点から書かれた文献というのは様々存在し,これが現在の特別清算の利用を支えていると言っていいのだろうと思われます。ただこれらの文献は,その性質上特別清算の趣旨・目的について法制的な観点から論ずるというようなものではございませんので,特別清算と破産手続の関係等についても実務的な観点から使い分け,すみ分けを論ずるにとどまっております。   このような経緯でございますので,今回取り上げた文献も,先ほど指摘しました立法担当者,あるいは特別清算が創設された前後の有力な研究者のものということになっているわけでございます。   これらの文献に総じて言えることでございますが,特別清算というのはあくまで株式会社の清算手続であるという認識に立っているということでございます。少なくとも文献上は,破産手続を簡易迅速化したものというような説明はされていないということでございます。立法担当者の解説である「株式会社法釈義」の記述を御覧いただきますと,2ページの中央付近ですけれども,「破産手続其のものに法制上の欠点あることを如実に物語るものである。而して此の欠点の除去には破産法を改正するのみでは不十分且不適当であるので,改正法は商法中会社の清算の規定に大改正を加へ……右に述べた様な特殊の事情ある場合に行はるべき清算手続を特別清算と名附けて之に関する多数の新設規定を第二款に収めた。」というような記載がございます。   破産手続の簡易迅速化ということであれば,これは法制的には小破産のように破産法の改正によって,破産法中に設けることが可能であるはずですけれども,そのような立法形式は不十分かつ不適当であるというところから見ても,特別清算は破産手続の特則としては位置づけられていなかったということは明らかだろうと思われます。   このように,特別清算は破産手続の特則としてではなく,清算手続の公正を確保することによって債権者の利益を保護するために,株式会社の通常の清算手続をより厳格化した特殊な清算手続として構想されたものと考えることができます。その結果,通常の清算手続から特別清算への移行の要件である開始原因についても,債権者保護という観点から定めることとなりますので,必ずしも破産原因と直接関連づけられる必要はありませんし,また破産原因をより前倒ししたものであっても,理論的には問題がないということになると思われます。   さらに,これを破産予防のための制度として位置づけることによりまして,開始原因を破産原因よりも前倒しすることを正当化している点も注目されるところです。(注2)に記載したとおりですが,債務超過の状態にあることが明らかである場合でも特別清算を開始することができるのかどうかという点について,現在ではほぼ学説上は一致して肯定をしておるわけですが,当初は学説上の争いがあったということからも分かるように,特別清算は破産の予防のための制度であることは所与の前提とされていたと言ってよいかと思われます。「株式会社法釈義」では,「会社に債務の超過の疑ありと認むる場合を特別清算開始の原因とするのは,特別清算の制度が株式会社に付ては事実上に於て破産の制度に代るものであり,理論上にも破産手続に先行する手続であることから容易に了解し得るであらう。」というふうに書いておりまして,いわゆるプレ破産としての位置づけを明確にしているということでございます。   後ほど,2の開始原因のところでも触れますけれども,破産と特別清算を横並び的なもの,本則と特則,あるいは一般法と特別法という位置づけをする限りは,開始原因の前倒しということを正当化することはなかなか困難であろうと思われますが,破産の予防という位置づけをとることによりまして,開始原因の前倒しも容易に正当化することができるというふうに考えられるところです。その意味では,破産の予防という位置づけは,現行の特別清算の本質的要素であると考えられます。したがって,(前注)の1の冒頭部分に記載しましたとおり,「債権者の利益の保護を図ること及び破産を予防することを目的とする,通常の清算手続を厳格化した特殊な清算手続であると理解すること」ができるということになります。そして,破産法分科会で多数を占めました破産手続の特則というのは適当でない,破産という名前も適当でないという意見も,現行の特別清算制度の趣旨から見ますとそれなりに納得できる,当然のものであるというふうに言うことができると思われます。   事務当局としては,以上のような理解に立って今後の御審議をお願いするというつもりでおりますけれども,なおこのような理解に立ってよろしいかどうか,御意見があればこの際お聞かせいただきたいと思います。   続いて,(前注)の2でございますが,これは統計でございます。(1)が特別清算の新受件数で,司法統計年報がある昭和27年以降から一昨年までのものを記載しております。   (2)ですが,これは特別清算の新受件数,破産事件の新受件数,それから企業倒産件数をグラフ化したものです。破産事件と特別清算事件については司法統計年報からとっております。企業倒産件数については,民間の信用調査機関の数値をここで借りております。負債額がある程度大きいものということになりますので,実際にはこれよりも多くなるということだろうと思いますが,破産に関してはほぼ企業倒産件数の半分ほどに達しているということになるかと思います。それに対しまして特別清算の方は,このところはほぼ300件前後で推移しているということが分かるかと思います。   (前注)の最後は3で「利用状況についての分析」でございます。先ほどの2で申し上げましたとおり,特別清算の利用件数は長期間にわたって低迷して,しかし最近になってそれなりの利用が見られるようになっているということですが,ここでは様々な文献で利用される理由,あるいはメリットとして指摘されている点,それから利用されない理由,デメリットとして指摘されている点をそれぞれまとめております。   個々の指摘についての御説明は省略させていただきますが,例えば債権の調査確定の手続がないというようなあたりは,ある面ではメリットであり,ある面ではデメリットであるという指摘になっているというところが注目されるところです。ここで挙げました点について,何か御意見があればお聞かせいただくということ,それからここに挙げられていないような事項でメリットあるいはデメリットとして考えられるものがあれば,この際お教えいただきたいと思います。   ここで参照しました文献ですが,必ずしも最新のものとは言えないものもございまして,昨今破産事件については少額管財という運用が定着しておりますし,先ほど御説明がありましたように去る13日には破産法案が提出をされている,近い将来にはこれが施行されるというようなこともございますので,メリット・デメリットについて若干異なってくるというような可能性もございます。その点も考慮して御意見をいただければと思います。   なお,(2)の(イ)でございますが,こちらは事務当局で特別清算の申立て又は職権による開始に着目して利用件数が伸びない原因を分析したというものでございます。端的に申しますと,債権者の利益の保護を図ると言いながら,基本的にDIP型の手続であるということでございますので,債権者にとっても債務者にとってもなかなか申立てがしにくいということだろうと思います。もっとも,債務者と債権者の間で利害が一致するような親子会社のような事案においては,それなりに申立てがされ,開始をすることができるということなのだろうと思います。   他方で,裁判所による職権の開始も理念としては分からなくはないのですが,やや観念的に過ぎて現実には機能しないということだろうと思います。ただ,申立てにしましても,職権による開始にいたしましても,ここだけを見直して利用の活性化を図るということは難しいと思われますので,活性化を図るのであればそれ以外の部分で見直しを行うということになるだろうと思われます。   以上が(前注)でございます。   続いて本文に入りますが,1は「特別清算の見直しの方向」でございます。総論中の総論になるわけでございます。   資料に記載しましたとおり,現行の特別清算の利用状況,それからそのメリット・デメリットを総合的に考慮いたしますと,現行の特別清算によって処理されている事案を引き続き対象として想定して,債権者の利益の保護を図ること,破産を予防することを目的とする株式会社についての通常の清算手続を厳格化した特殊な清算手続という現行の特別清算の基本的枠組みを維持した上で,特別清算における個別の手続,制度の見直しを行うことが適当であるとの考え方をお示ししております。破産法分科会資料13とはいわば対極にある考え方でございますけれども,破産法分科会における議論,それから前回の倒産法部会における議論を踏まえますと,このような方向が最も適当ではないかと考えられましたので,これまでの方向を百八十度転換したということでございます。   このような考え方をお示しするに至った理由でございます。これは注にいろいろと書いてございますが,注について御説明いたしますと,まず(注1)でございますが,先ほど,統計のところでも申し上げましたが,企業の倒産処理における破産手続の重要性というのが近時クローズアップされてまいりまして,実際によく使われているという状況になりました。そうなりますと,もともとの特別清算の制度趣旨が,破産手続は使いにくいというところにありましたので,現時点においては特別清算の存在意義は昭和13年当時と比べると相対的に薄れていると考えられるということでございます。   そういう状況の中で見直しを行うということになりますと,まずは現在特別清算で賄っているニーズを見直し後も賄っていくということが第一に考えられるのではないかということでございます。ここには,「私的整理との連続性に配慮しつつ」ということを書いてございますが,事務当局として具体的に考えているわけではございませんで,硬直化した制度にしない,柔軟な制度にするということを申し上げているというふうに御理解いただきたいと思います。   この考え方は,制度の対象となる事件を企業倒産を一つのパイとして考えている,その中で破産と特別清算の切り方を考えている,そういう考え方ということになると思われます。(注1)の3段落目に,「これに対して」以下の考え方を書いてございますが,こちらはどちらかというと法的倒産処理という一つのパイを考えて,それを特別清算と破産でどう分けるかというふうに考えているということです。しかし,現在破産手続で処理できているものを,あえて特別清算の方に持っていくというような改正をするというのは,これは適当ではないと考えられますので,やはり企業倒産全体に着目して,現在私的整理を使っているものにもできれば手を伸ばすという程度の改正が妥当ではないかというふうに考えられるところです。   (注2)でございますが,事務当局の頭の中を整理して,ここにフローチャートでお示ししたということです。   1でございますが,これは今回の分科会資料でお示しした考え方,2の方が破産法分科会資料13でお示しした考え方,これをフローチャートでお示ししたということです。   内容につきましては,テキストベースでも書いておきましたので,これを御覧いただければと思います。恐らく問題となると思われるのは,手続の開始を法人の解散原因事由とすることができるかどうかといったあたりかと思います。仮に,手続の開始を法人の解散事由,あるいは株式会社の解散事由とするためには,やはり開始原因は破産と同一のものにしないとなかなか説明が難しいだろうというのが事務当局の認識でございます。そうしますと,結局その手続は破産の特則として位置づけをせざるを得ないということになりまして,破産という名前が適当でない,あるいは破産手続の特則は適当でないというニーズにはなかなか合致しないということになると思われます。それと,破産手続との整理につきましては,破産手続が重い手続,こちらの手続が軽い手続ということになりますので,軽い手続に乗せるための加重要件をやはり設けざるを得ないということになろうかと思います。民事再生手続における同意再生ですとか簡易再生,あるいは個人再生もそうですけれども,重い手続の例外として軽い手続を設ける以上は,何らかの加重要件を設けざるを得ないということになりまして,なかなか御期待に沿うような手続にはしにくいだろうというふうに現在考えているところでございます。   それから,2の方の破産法分科会資料13の考え方ですが,こちらはとにかく対象を広げるということを重視した考え方でございまして,倒産処理手続として純化すれば,それ自体は非常に容易にできるだろうと思いますが,これはニーズには反しているということだろうと思われます。   最後の(注3)でございますが,本文の考え方,特別清算の基本的枠組みを維持するということにいたしますと,デメリットとして指摘されている点を解消できないという部分もございます。しかしながら,これは現在の特別清算で賄っているニーズを今後も賄うというためには,ある程度やむを得ないことだろうというふうに考えられるところでございます。この1に示したような基本的な方向のもとに見直しを行うことでよろしいかどうか,御審議をいただきたいと思います。 ● それでは,今の御説明を前提といたしまして,御意見を伺ってまいりたいと思います。   まず(前注)の1,要するに現行の特別清算制度の趣旨・目的を,ここに書きましたように,基本的に言えば特殊な清算手続というふうに考えると,その目的は債権者の利益の保護及び破産を予防するという理解でよろしいかという点でございますが,いかがでしょうか。--特に御異論ございませんか。   何か商法の方で……。ここに挙げられている商法の文献は,みんなかなり前のものでございますので,現在はそう考えられていないというようなことがございますでしょうか。 ● ちょっと私もよく分からないところがございますが,やはり奥野先生がおっしゃったように,「破産手続の成績即ち債権者に対する配当率の低劣なることは」というところですね,これが現在でも全く同じことが言えるのかどうかということが一つ大きな分水嶺になるかなと思うのですが。逆に言うと,配当率は低くなってもしようがない,それはなぜかというと,破産の専門家がおられるところで言うのはあれですが,配当率が低くなるのは平等原則を徹底したら配当率は低くなるよということなわけで,それを裏返してみると,破産はしっかり平等が守られているのではないかという美点にもなると思うのですね。その点は,現在ではどうとらえるべきなのかというのを一応明確にしておいた方がいいかなという気がして,奥野先生が破産では債権者が不満だというところはひとえにここの一行に尽きるのではないだろうかと思うのですが,現在ではいかがなのでしょうか。 ● 古い文献を見ても,学者の方たちが破産手続に費用を要するというような批判をしておるけれども,実証されていないというような裁判官の論述もあります。それについては,管財人報酬が高いのではないかというようなことが,どうも当時議論されていたようです。   最近,特に少額管財手続というのが進み始めましてからは,管財人報酬というのは形成された財団に応じて支払っていくというようなことでやっておりますので,かつてのように管財人報酬の相場というところから出発するということではなくなっておりますから,かなり機能してきているのだろうというように思いますが,この破産にどのぐらいの費用を要するから動いているのかいないのかというのは,もうこれは今のような議論もありますので,現状は大変よく利用されてきておるので,少なくとも今はそのような議論はなくなっているというふうに思うのですが,かつてなぜそう言われたのかは,まだちょっとよく分からないのではないかというように思っております。 ● 恐らく,配当率というようなことを言うと,今のように費用に余計に取られていたので債権者に対する配当率が低かったということであれば,これは問題だと思いますけれども,そうでなくて,もともと破産財団に属する財産が少ないという場合には,これはもう配当が低いのはやむを得ないわけでございますね。   時間がかかるという方は,これは今度の破産法改正でかなり改善されたのではないかというふうに,少なくともここにおられる破産法の見直しに関与された委員・幹事としては共通の認識だと思いますので,そこは御理解をいただきたいと思います。   先ほどの関係官の説明にもございましたけれども,やはり破産手続の在り方自体が今後は大きく変わってくるので,この当時考えられていた破産手続というものを前提としたこういういろいろな評価といいますか,御批判というのは,必ずしも今後当たらなくなってくるのではないかというふうに私どもとしては考えているところです。 ● そうすると,私,今日初めて参加させていただきまして,「破産の予防」という言葉のニュアンスでございますが,かつての奥野先生のような言い方をすると,変な言い方ですが,破産に行ったらおしまいだから,その前にやるぞというような,非常に落差の大きいがけのような気がするのですが,現在ではそれほどのことはないというふうに認識してよろしいのでしょうか。   破産に行ったらもうおしまいだから,がけっぷちで何とかとどるために特別清算という気がいたしますね,この資料を読みますと。それがそうでもない,現実に配当,あるいは時間について破産法の改正でかなり改善されたととらえますと,それほど,こっちがどんどん上がっていきますから,がけっぷちというほどでもなく,実は大変恐縮な言い方ですが,ぽんと飛べば飛び降りられるぐらいの高さのところで違っているという認識でよろしいのでしょうか。 ● 実務に携わっている立場から申しますと,例えば破産の場合でも営業継続許可が出していただけますが,仕掛品がある,こういうものを完成してそれでやった方が配当率が高くなる,こういう場合は特別清算に入る。それから,資産の換価について,やはり破産に比べればより柔軟ですから。それと,少額債権の弁済も破産法で今回少し少額債権についていの扱いが入りましたけれども,立法過程ではもう少し柔軟にできないかという議論をいたしましたが,破産法の制約の中でやはり無理だということになりましたが,そういう少額債権を弁済してしまって,大口債権者だけを残して,その上で清算に入っていけると。特に今私が申し上げた最後の部分というのは,我々実務に携わっている人間が特別清算を選択する大きな理由の一つでございます。   そういうような選択をすることについて,大口債権者の方で異論がないという場合でございますと,特別清算をして,債権者を例えば何百何千あるのを数十に絞り込んでしまって,あと協定の方に持っていく,こういうふうなことで使えますので,そういう面では破産とどれほどの落差があるかとおっしゃると,スピード感からいけば大口債権者の方はそちらを望まれることの方が多いと。それで,その間の利害対立が非常に激しい場合は,やむを得ず破産の方に持っていくという形になるのだと思います。   私はそういう認識で実務に携わっておりますが,ほかの実務家,弁護士がおりますから,ほかの方々からもまた御意見いただけたらと思いますが。 ● それでは,お許しをいただいて,現在,子供服の小売店を十数店舗経営している株式会社が清算に入りまして,お手伝いしているそのケースで御説明したいと思います。   十数店舗の店を賃借して子供服を売っているわけですが,それぞれ物件を賃借するについて予告期間を設けて,6か月の予告が必要であるとか,あるいはもう倒産したのであれば早期に出ていってもらってよろしい,ペナルティーは要らないとか,いろいろな賃貸人がございます。したがって,その十数店舗について賃貸借契約関係をどういうふうに終了させるかということを交渉しながら,数か月の間に順番に店を閉鎖していく。したがって,それぞれの店にある商品については閉店セールをしながら十分な価格で売却をする。そして商品が余れば,まだ存続している方のお店に運んで売ると。場合によっては閉店セールをうまくやるためには,継続して商品を仕入れながら,一つのまとまりのある店として運営を続けていきながら終わらせていくということをやっております。   その結果として,全体の配当率が6か月ぐらいですけれどもやはり三十数パーセントの配当ができる。これがもし破産であれば,管財人がそういうビジネスリスクを負うことができませんから,一気にどういうペナルティーがあるにしろ,あるいは保証金返還される,されないに関係なく,一気に賃貸借契約関係を終了させて,一気にバッタ屋さんに商品を売れば,それこそ数パーセントしか配当ができないケースであっただろうと思います。   したがって,破産管財人という全くの第三者,特に弁護士--現在弁護士が中心ですけれども--がやる清算というのと,従前の会社の関係者が従前のビジネスの継続として清算業務をやるという場合とでは,換価,回収金額に大きな差が出てくるということもございますので,一例として御報告させていただきました。 ● 実際は今のような御説明ですが,それでよろしゅうございますか。 ● はい。 ● それでは,一応この現行制度についての認識は,ここに書いてあるようなものであるということを前提にしまして先にまいりたいと思いますが,先ほど○○関係官の方から,利用状況についての分析の中で,特別清算のメリット・デメリットというのをこれまでの文献等から挙げてございますが,なおこれについて追加的に御指摘をいただけるものがあれば御発言いただきたいというようなことを申しました。何か,とりわけ実務に携わっておられる委員・幹事の方々からございますでしょうか。 ● 統計的に,平成5年から6年にかけて急増いたしておりますが,これはたぶん東京弁護士会の方から御報告いただいた方がいいのでしょうけれども,当時の八部の部長が東弁で御講演されまして,特別清算というのは便利な制度なんですよと。それで翌年から事件がふえたという経過がございます。先ほど文献紹介にございましたように,余りに文献がない中で,特別清算のメリットについてやはり実務家の方の認識が足りなかった,そこでそういう御講演をいただいて,東京を中心にして急にふえてきたという面がございます。 ● ○○委員の方から,今の点について補足的に御発言いただくことがございますか。 ● 確かに,裁判所と弁護士会との方で協議をして,なかなか特別清算というのはいいなと思ったのは,私個人もいいなと思ったのは,言うなれば破産の申立代理人と管財人を兼任できるなということから,両方の報酬ももらえるし,両方の仕事ができる,これはおもしろいなというので……。   それまで,結局は文献等も少なかったり事例も少なかったりして,ここの結果にも正にあるのですが,特別清算についての規定も少なかったこともあって,特別清算の運用について裁判所も弁護士の方もよく理解できていなかった,それが弁護士会,それから裁判所と協議して理解できるようになったので,少し増えたのですが,期待したほど--一時は私も講演なんか頼まれると,破産手続さようなら,特別清算こんにちはというところから講演なんか始めたのですが,その割には増えなかったというのが実情で,なぜ増えなかったのか,もう少し増えてもいいのではないかと。やはり,特別清算の規定そのものが少ないということから,運用についてもやはり臆病になるほど非常に慎重に解釈していって,運用も行うという,そしてそれは裁判所も弁護士の方も同じようなことだったので,今回の見直しには期待しているのですが,それに関連してこの資料をいただいたものですから東京弁護士会の方でどんなふうに利用しているのか議論したところ,比較的多くの弁護士から,大口債権者と協議しながら,存立中の,まだ解散前の段階で法的手続をとらないで営業譲渡する,そして抜け殻状態にして,その後で会社の処理のために特別清算を利用するのが,割合倒産を専門にやっている弁護士から例が出ておりました。   これは増えるだろうと思いますし,現在私もやりつつあります。大口債権者と協議しながら営業譲渡する。そして破産やほかの手続でも,営業譲渡はできるのですけれども,譲受人側からやはり破産だとか法的手続をとらない状態でやってくれと,そういう相手からの要望もありますし,それから債権者間でとにかく大口債権者を中心に協議して,不公平な,つまり大口債権者の配当は少なくして,一般取引債権者,これは全部払おうと,そういうことによって譲受人側に対しては破たんした会社でないような状態にして売却する方が,評価も高く売れるという,これは大口債権者全員が理解している状態での売却。   そしてこれは,心配しているのは,動産ですとか債権の担保法制がどんどん強化され,完備されていくと,恐らくすべての会社の資産については担保化されて,そういう意味から破産の場合の配当は非常に配当率少なくなるだろう,あるいは配当なんかできないケースが増えていくのではないか,そうなったとき,事業再生の方式として営業譲渡を組み合わせた特別清算というのが結構クローズアップされてくるのだろうというふうに思いますし,今行おうとしているケースについても,全く事業そのもの,雇用の確保はそっくりそのまま行っていこうというねらいでやっていますので,こういうことについて利用しやすくさしてもらえれば,特別清算も一定の評価をし,かつその利用の余地があるのではないかというふうに思うわけです。   ですから,見直しの方向としてここにまとめられていることについて異論はありませんが,とにかく今度の破産法の改正で,破産手続が今まで以上に利用しやすくなった,これは大変有り難いことで,私なんか早く成立して,施行期間はある一定の期間必要なんですが,早く施行になってほしいなと思っているぐらい期待しているわけで,そうすると特別清算の存在価値はますます少なくなるかなと思うのですけれども,ちょうど破産手続で利用できない,つまり裁判所が監督するDIP型の清算手続,裁判所が監督することによって債権者の利益保護を図ってもらいたい。そういう点と,それからあと,破産では厳格な平等主義がとられているものですから,非常に融通性がないものですから,当事者間の協議によって破産手続よりも簡易に,しかし迅速にとは余り強調したくないのですが,迅速性を要件にされると困るものですから,迅速性よりも実質的な公平・公正さを当事者間で保つように協議しながら進められる手続にしてもらえればというふうに思っておりますので,今まで以上に評価されるのではないか,利用されるのではないかと期待しているところです。そういう方向で改正していただきたいなと思います。   存立中の会社の点については,後でまた御意見申し上げたいと思います。 ● 個別の問題については,それぞれのところで御発言をお願いします。 ● 今の○○委員の御発言に関連して。   確かに,最近長期にわたる不景気で会社の事業再編,広い意味の倒産処理のニーズが大きくなっている中で,営業譲渡を利用したそういった処理というのが非常に増えているのですね。今,○○委員御指摘のとおり,営業譲渡と特別清算を両方併用することによって,スムーズにかなり柔軟なそういった処理ができるというのは確かに魅力であるし,現にそういう使われ方はもうしていると思います。   ただ,一方でちょっと気にかかりますのは,金融界の人がおっしゃるのですが,営業譲渡の場合は他の会社の基礎的変更と違って,債権者保護手続が設けられていないわけですね,債権者に対する個別催告等,あるいはそういった手続がないものですから,いわば見切り発車的に一種の債権カットの手段として営業譲渡を使った処理が行われる場合があって,それが頭痛の種になっているという御指摘をする金融機関の関係者の方がいらっしゃいまして,この手続が全体としてうまくいくかどうか,今,○○委員が御指摘のとおり,大口債権者の人たちの大部分の了解を本当にちゃんと得た上でそういうふうに行われていくということが非常に大事になるのではないかと思います。そういうふうに行われるのでしたら非常に柔軟性を兼ね備えた,メリットのある仕組みとして活用されていくのではないかと思いますので,そこら辺のところをうまく制度の中で担保していけるかどうかというのが重要ではないかなと思います。 ● 御指摘,どうもありがとうございました。   それでは,「利用状況について」の分析のところは以上のようなことで終えまして,いわば本論といいますか,特別清算の見直しの方向,今までの御発言の中にも実質的にはここに触れたものがございましたけれども,正面からこの問題について御意見を承りたいと思います。   いろいろ,これに関連した論点が注のところに書かれておりますが,これまでも議論を重ねてまいりまして,前回の倒産法部会の議論の最後のところでは,現在の特別清算により処理されている事案を引き続きその対象として想定をして,債権者の利益を図ること及び破産の予防をすることを目的とする株式会社についての特別の清算手続,それを債権者保護のために厳格なものにする,そういう意味での特別な手続という,そういう位置づけを維持した上で,この手続にかかわる個別の問題を見直していくという考え方を支持する意見が多かったわけですが,そういう考え方でよろしいか,それとも注の中にも出てまいりますけれども,例えば解散を前提としない場合にもこの手続を認めるというような方向に拡張をする,この特別清算手続の開始を解散事由というふうに考えて,存立中の法人についても認めるというような方向で考えていくか,そのあたりのことについて御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。 ● 見直しの方向についての意見を,私どもの倒産法改正に関する打合せ会というのがあるのですが,そこでメンバーに聞いてみました。この度,改めて聞いてみたところ,一部には極端なものとして清算型の手続としては改正された破産法のみでいいのではないかというような人もいたのですが,多くの意見は,現行の特別清算のニーズ,特に手続構造が柔軟だとか,融通性があるとか,迅速性という人もいましたけれども,それとあと税制上のメリット,この辺に引き続きこたえていくような手続であって,使い勝手のいいものとしてつくってほしいという意見が多かったということです。 ● 基本的には,ここに書いてあるような考え方で見直しを進めていってよろしいと,そういうことでございますね。 ● 弁護士会のバックアップ委員会で議論いたしましたが,やはり存続中の会社についても特別清算の申立てが機関としてできてもいいのではないかと。それは,民再で清算型がございますけれども,そこでは100%減資をして,それで解散という形の再生計画をつくって処理していくという実務がございますから,あるいは破産の申立ては機関としてできるわけですから,そうすると破産によらないで特別清算で行うという選択肢があってもいいのではないかと。ただその場合は,後ほどまた各論で入りますけれども,清算人の選任についてはDIP型が本当にいいのかどうかという論点は残りますが,少なくともそういう申立てをして,開始決定が解散原因になっていいのではないかと。   それで,本来,解散したいけれども株主が多数いて,解散手続をとるのに困難であるという事例が現実にございますから,そういう場合に破産しかない,あるいは清算型の民再しかないというよりは,もう一つ手続があっても別に構わないのではないかというのが日弁連のバックアップ委員会の多数説でございます。 ● 多数意見でございますか。   その場合は,先ほど○○関係官の方から説明がございましたが,手続開始原因は。 ● 破産原因があること。 ● そうすると,入口は二本立てのような格好。 ● 破産原因があるときはそういう申立てができますと,それから解散後はどうぞ御自由にと。だから,当然申立て原因は絞られるのはやむを得ないだろうと。だけど,破産原因があるときに破産の申立てしかできないというのはいかがか,あるいは民再の申立てで解散することが明らかな清算型を選択するよりは,特別清算でもいいのではないかと。 ● なるほど,御意見は分かりました。   ほかにいかがでしょうか。 ● 今の問題ですけれども,開始決定のところでちょうど今話題に出ていたものですから。   現行の特別清算の利用を使っていて,非常に不便だなと思うのは,解散後の会社でないと利用できないために,非常に特別清算を利用したいケースでありながら使えなくなっている。債務超過がはっきりしていながら,非常に株主が多数であって解散決議ができない場合,あるいはまた解散決議やろうと思えばできるけれども,株主が相当いるので,あらかじめ通知をしなければならない。そうすると通知によって倒産するということが分かる関係で,そこで混乱が生ずるというようなことがあるものですから,存立中の会社に利用できるように,やはり開始決定によって解散すると。ただ,原因としては先ほど○○委員の方からありましたとおり,存立中の会社については破産原因があったときに開始すると,解散中の会社については従来どおりでいいのだろうと思うのですが。   一番そこを気にするようになったのは,随分前のことですが,住専問題を処理したときに,あの場合は住専各社についてのスキームが上の方で決まってしまっておりまして,全部の資産を営業譲渡するのだと,それから会社については清算するのだと,それから債権の配分についても母体行は全額放棄,そして一般行についてはあるパーセントカットしてある部分を弁済する,農林系統はもうちょっと,実質的100%ではないけれどもかなり配当する,それから一般取引債権者については全額弁済というようなスキームが決まっておりながら,上場している会社については営業譲渡についての特別決議が得られるのかと大分苦労して,何とか結論から言うと特別決議は成立したのですが,こういうようなときに存立中の法人にも特別清算が使えれば処理が容易になるということです。   同様のケースがほかでもあるものですから,このニーズはあるのではないか,必ずしもすべての清算手続が破産のように厳格な意味での平等原則をとらなくてもいいのではないかということから,破産でできるのだから破産原因を要件とするのであれば,特に不利益はないのではないかということから,入口のところが二つになるかとは思うのですが,そこを何とか利用できるようにしていただきたい。ここでなかなか困難であるという指摘があるのですけれども,そこは東京弁護士会の場合ではほとんど全員が希望したというようなところで,日弁連の方でも圧倒的多数が要望しておりましたので,これは現実的な意味でも是非検討していただきたいというふうに思っております。 ● ほかの委員・幹事の皆さんはいかがでしょうか。 ● 今のような点をどういう結果になるか検討すること自体は当然結構でございます。私どもでは,これまでの議論ではいろいろ意見はあったのですが,現時点では大枠としてはこのような仕組み,仕切り方でニーズは足りているのではないかと。ここで取り上げられるようなことについて基本的な違和感はない,こういうのが現時点の意見でございます。 ● 学者側の委員・幹事の皆さんはいかがでしょうか。 ● 遅れてきて,十分に前の議論をお聞きしないで発言して大変恐縮でございますけれども,前に部会で特別清算の基本方針どうするかという議論がありまして,その前に破産法分科会で従来の破産型とは違う簡易な破産手続,ミニ破産みたいなものをつくろうかという案が出て,それを受けて部会で審議をしたと思うのですね。今回の案は,多分それを受けた原案であると私は了解しているのですが,今,○○委員と○○委員から御説明がありましたように,そういうニーズがあることは私も十分存じていますけれども,もしそういう両方の,存立中の会社についても破産原因があれば特別清算を開始することができると,それから清算中の場合にはそれより前倒しの形で開始することができるということになると,制度目的が二途に譲ることになりまして,あとの処理がかなり複雑になることは間違いないと思うのです。今までは十分それを検討してこなかったように思いますので,私としてはここでの特別清算分科会の回数がそんなに予定されていないということから考えますと,私はこの原案の現行法の基本的な枠組みを維持するということで議論をしていただいて,そしてやはりミニ破産のような構成での存立中の会社についてもこの特別清算を認める必要がある,それが理論的にも十分納得ができるということになれば,その段階でつけ加えるといいますか,そういう議論の仕方はできないだろうかと。今ここで,入口のところで二つのうちどっちかとふうに決めてしまうことができるかどうかということ,若干私は危ぐを抱いております。   私はむしろこの原案で,今度はこれで,前の破産法分科会とは違ってこういうことでいくのかなということで今日考えて,破産原因やなんか全部関係してまいりますので考えてきているのですけれども,そういうことだけちょっと申し上げます。 ● この倒産法部会全体,破産法分科会も含めてですが,全体の流れは,今,○○委員がおっしゃっていただいたとおりだろうというふうに私どもは考えておりまして,それゆえこういう案を用意させていただいたのですが,債権の調査・確定とか,債権調査の問題とか,そういうあたりはどういうことになるのでしょうかね。そのあたりは,今の特別清算のスキームで,始まった後はもうそれでいいということなのでしょうか。 ● 弁護士会の内部でそこまで詰めた議論が今はされておりませんけれども,多くの発言なさる方の感覚は,現行の特別清算と同じであると,それで異論があれば破産に移行すればいいと。債権者としては。だから,特別清算のスキームで処理できる案件について,どうしても破産ないし民再でやらなければいけない理由はないのではないか,特別清算としての柔軟性が利用できる,しかし解散決議をするのには手続的には非常に困難である,ないしは○○委員が先ほど申し上げたとおり総会招集をかければ,それによって非常に大きな混乱が起こる,こういうふうな事態がある場合に,破産又は民再という二つの選択肢しかないよりは,別の選択肢があってもいいのではないかと。異論があればいつでも破産に移行すればいいわけで,という考え方ですね。 ● ちょっとお考えを聞かせていただきたいのですが。   それは,債権者が申し立てる場合もありということなのでしょうか。 ● そこは議論が分かれております。だから,今は少なくとも完全に一致しておりますのは,機関決定で申立てすることができると,取締役会で。それについてはだれも異論がない。債権者申立てができるかどうかについては,日弁連の中でまだ詰まった議論をしておりませんし,意見が分かれているというのが今の状況でございます。 ● 少なくとも債権者が申し立てる場合というのは,かなり特別清算の基盤が失われているような感じがしまして,そういう状況でスタートしていく場合というのはなかなか難しいのかなという感覚がございます。   それともう一つ,私どもも原案のとおりになるというふうに思っておりまして,非常に今の案について虚を突かれた思いで,何が,どちらが得なのかなと今ずって考えをめぐらしているところなんですけれども,何か実際に原案で御整理いただいたような形で破産色を少なくするというようなところには影響は出てこないものなのでしょうか。そういう破産原因があれば,存続中の会社についても利用ができるということに致しますと,そのあたりが少し気になるのですけれども。 ● 原案と違うのは,今の点と,あとはせいぜい可決要件のところでちょっと希望があるのと,そこぐらいのことで,あと債権の届出・調査・確定について,別にそこを織り込んだからといって破産型になるとは思っていなくて,今特別清算で期待している点は,そのような手続が破産型にする必要はないのではないかということの方が多い意見で,特別に確定の手続を設けなくても,特別清算で十分可能だというふうに思いますので,ほかでそう大きな問題が起こるとは思っていないのですが。 ● 私も,正に虚を突かれたような思いが……。   従来の議論は,先ほど正に○○委員が言われたように私も認識しておりましたので,やや意外なお話を伺ったような気がしたのですが,やはり○○幹事が言われたように,私も理論的に見ると破産原因が存在する場合に存立中の会社について清算の手続を行うということになれば,これは紛れもなく破産の特別手続というふうに理論的には位置づけざるを得なくなるのだろうと思っています。もちろん,名前は「破産」という名前をつけないで,手続を作ることはできるのだろうと思いますけれども,性質上はやはり破産手続の一種ということにならざるを得ない。そうすると,今,○○委員が言われたように,その手続の簡易化を図る場合にも,破産ではこういう手続が必要とされているのになぜこの手続ではそういう手続なしに進めることができるのかということを逐一検討をしていかざるを得ないということになるのだろうと。それでいろいろな,この要件があればこうだということを考えていかざるを得ない。それをやったのが,正に何年か前の作業であったというふうに私は認識していたわけです。それが破産の特別手続と位置づけると,現在の特別清算のいいところが失われるという御意見があって,それではもう破産とは違うところで位置づけようということで今回お話が始まったというのが私の認識でしたものですから,ここでまたそういうことになると,やはりもう一度前の作業を私はやっていかざるを得ない,そうでないと理論的に説明がつくような制度がつくれないのではないかというのが私の認識です。 ● 私は必ずしも破産になるとまでは思わないのですけれども,現行の特別清算手続というのは,実際にそういう例というのが現実にあるかどうかは別にして,一応エクイティーホルダーに対して残余財産分配を行うということまで含んだ手続ですよね。清算手続の特則ですから。   資産超過の場合については,株主に対して残余財産分配をこの手続内で行うことが前提になっているはずなのですが,そのあたりについてはどういうふうにお考えなんでしょうか。株主の問題は外の問題だというふうに位置づけられるのか,会社更生法みたいにそこも取り込んだものとしてお考えになるのかということを避けて通れないと私は思っているのですけれども。 ● もし,今の○○幹事の御発言に○○委員なり○○委員なり,何か御意見があれば……。 ● 今の問題は,存立中の会社についてであれば破産原因がある場合ですから,その問題がどういう形で起こってくるか,ちょっとよく理解できないのですが。 ● まれな例ですけれども,バブルのようなことがあればという仮定ですが,開始当時は資産の価値が非常に低かったものが,突然それが一気に値上がりして,資産超過に転ずるというような例もあり得ないわけではないですし,バブル時代に100%配当の破産手続があったというようなことも伺っております。   ただ,私が申し上げたいのはそういうことではありませんで,現行の特別清算手続というのは,これは法定清算の意味における清算が困難である場合にも開始できるわけですね。つまり,資産の売却等が難しかったり,債権者の数が非常に多くて大変だったりとかいうようなことがあってもできるわけで,決して債務超過があって,つまり残余財産が出ないということを前提としていない手続だと理解できるわけですね。そうすると,それを一本化した場合において,存立中の会社について破産原因を前提としてこの手続を使えるというような場合にした場合に,そこの部分がどういうふうに……,外に放り出してしまうのか,それともそうではなくて,株主も取り込んだ形の手続に構築していくのかという問題が出てくるのではないかということです。 ● それは,正に御指摘のとおり現在でも,今の特別清算でもその問題は包含しているわけです。ですから,その意味では確かにケースによっては資産超過の場合が起こってくるでしょうから,それは通常の清算手続ということになっていくのではないでしょうか。これは今でも起こり得ることだろうと。 ● いや,今は特別清算は清算手続の特則だという位置づけですから,その中で,内部で残余財産分配まで行っているわけですね。そういう建前になっているのだと理解しているのですけれども。 ● ○○幹事がおっしゃるのは,例えば破産の申立てをした場合に資産超過になった,そういう場合に基本的と同じなんですよね。ということは,厳格な債権調査・確定手続が行われ,配当が行われているけれども,特別清算ではそこのところは手続がない。 ● いや,そういう趣旨ではなくて,残余財産分配をどの手続が担当するかという問題です。 ● 破産であれは,破産要件があって,手続中に資産超過になれば,100%配当で残余財産分配手続行いますよね。 ● 残余財産の分配は清算手続として行っている,移るというふうに普通は考えている。   ですから,つまり破産の場合ですと事後的にでも資産超過になった場合については,破産手続は終わった後清算手続に入るわけですが,それを一本化する手続として今回の新しい特別清算手続を考えるのか,それとも破産と同じように二段階の手続として考えるのか,どちらなのかということをお伺いしている。 ● 弁護士会の内部では,そこら辺の議論は全然詰まっておりません。○○幹事がおっしゃるとおりの論点があるのは分かっています。ですから,クエスチョン付で言っていますけれども,ただ実務上のニーズとして欲しいという要求がある,それをとりあえず御紹介申し上げて,その上でどう手続が本当に組めるのかというのはこれからの話になるのかと思います。 ● いずれにしても弁護士会のバックアップ委員会の方ではかなり強い御意見だということで,検討させていただきますけれども,これもこれから特別清算の問題を考えていく出発点なものですから,なるべく大勢の,できればすべての委員・幹事の御意見を伺いたいと思うのですが,まず○○委員,いかがでしょうか。 ● 手続を利用する側から,いろいろな便利な手続,みんな利用したいというのは大変よく理解はできるのですが,民事再生法ができた当時にも,これは再生ではなくて,最初から清算ということで使いたいという要望もたくさんありました。実務上大変知恵を絞って,スタートのときには再生だったけれども,結果として清算になるというようなものまでは含まれるというような,いろいろな工夫をしてある程度広く運用してきましたが,真正面から制度として認めるとなると,この特別清算について破産原因がある場合にも使えるという場合のほかに,民事再生手続も再生以外の清算目的ということで真正面からやってはどうかとか,そういう問題も倒産制度全般の問題として引き起こす可能性がありますので,これはかなり慎重に制度問題としてどのような仕組みを作るのかということを基礎的な研究からよくやらなければいけないほどの問題ではないかというように感じるのが1点。   それからもう1点は,破産原因があるときに特別清算を行ってもいいのではないかということで,だめなら破産に行けばいいという,その行き方の問題で議論を呼ぶおそれがある。行き方の問題といいますのは,裁判所の側から見るとだめなら破産に行くというのが,破産手続にその後移行するという問題を意味するのか,あるいは開始決定をした段階で,管理型といいますか,管財人をつけるというようなやり方,あるいは民事再生と同じような様々な選択肢を持っておいて,破産手続への移行というのに実質なるような,そのような制度設計を選ぶのか,事後的に破産手続の移行ということだけを選ぶということにするのかという手続選択の仕組みの問題も,大変大きな問題として出てき得るということですので,これは検討するとなると相当大きな問題であるというように感じながら伺っておったということです。 ● 先ほどの私の発言,ちょっと足りない部分がありましたので発言させていただきます。   分からない点もあるのですが,弁護士会の言われる存立中の会社についても破産原因があれば機関決定によって申立てができるということは,つまり解散しなくてもできるという,そういう御趣旨ですね。 ● はい。 ● ここのところがまだよく分からないのですが,今日の趣旨・目的のところで,「債権者の利益の保護を図ること及び破産を予防することを目的とする」という,その破産の予防という趣旨が,ここまでこうはっきり言ってしまっていいのかどうかということが若干気になるわけです。破産の予防というこの意味ですと,破産状態に陥る,そして破産手続が始まるかもしれないのでそれを予防するという,そういう一般的な問い方なんですが,実際の今の特別清算は破産原因があってもやっているのが大部分ですし,それが普通ですので,「破産の予防」というこの言葉ではなくて,実質的に言うと破産手続による清算を回避するといいますか,破産手続で解体しちゃうと安く売れちゃうものだから,協定によって財産を一括的に売却することによって債権者への配当をより有利にするということが実質的な目的だろうと思うのですね。そのことは,「破産を予防する」という言葉で表現すると,では破産原因がある場合には開始できないのかという,従来のような議論が誘発されるのではないかという気がいたします。   さっきの○○幹事の言われているのも,破産原因がある会社についてはこの手続を行ってはいけないという趣旨でおっしゃっているのではないというふうに思っておりまして,そうであるとすると,一応破産原因がある,疑いがあるという網をかぶせておきながら,しかし実際に調べてみたら破産原因があることがはっきりした,その場合にはこれは特別清算でだめなんだ,破産に行きなさいというのは,非常に実際的ではない。だから,そういうものも含んで特別清算手続というのを作るということで,しかしやはり解散をした会社でないとこれは受けられないという,そういうスキーム,現在のスキームですけれども,それを維持することでそんなに実務の大きな要請をこれで受け切れないというふうには私は思っていないのですが,いかがでしょうか。 ● ほかに,○○幹事は……。 ● ちょっと発言しにくいものでずっと黙っていたのですが。   正直申し上げて弁護士会のバックアップ委員会の結論,余り私自身は賛成ではないのです。 と申しますのは,確かにいろいろ入口があった方が便利だろうということは言えるのですが,今現在の特別清算の持っているメリットが,入口が広くなって利用が増えれば増えるほど薄まってくるというような感じがするのです。破産の対象になるものすべてに特別清算の網をかける必要は全くないのだろうと,むしろその中から非常に弾力性の運用ができるもの,今現在使われているように大口の債権者がある一定の譲歩をしてくれるとか,それから親会社が子会社の債務を整理するとか,そういうふうなことによって少額な債権者,取引先等々に対する一定の保護が図れるような場合に利用できる,そういう制度として仕組む以上は,今の枠組みで私は十分ではないかなと思っているのですが。   バックアップ委員会の結論は,先ほど来,○○委員,○○委員,両大先生が御説明しているとおりでありますのでずっと黙っていたのですが,今,部会長から指名されましたので,一言,個人的な意見として感想を申し上げさせていただきました。 ● もちろんここはそれぞれの個人として御出席いただいているわけでございますから,個人的な意見で結構でございます。   ○○幹事はいかがですか。 ● 私も,まず結論から申しますと,この資料の方向で検討するということで従来決まっていたのかなと私は思っていたのですが,しかし改めて中身をもう一度考えてみますと,二つほどあるのですが,まず第1に,仮に存立中の会社について破産原因と同じものを手続の開始原因とする手続を設けるとなりますと,ある財産状態が悪化した会社について,破産に行くか特別清算に行くか,どっちか選択肢があることになるわけです。より手続保障が簡易な方に行くためには,先ほど御説明がありましたけれども,何か加重要件がないと行けない,どっちでも選べるという制度は多分ちょっと考えにくいのではないかと思います。   一体,どういう加重要件があったら特別清算を選べるのか,加重要件がないのに特別清算を申し立てたものについてどう処理をするのか,後からそれが判明した場合にどう移行させるのかという調整についてはかなり,今ちょっと考えてもいろいろ難しそうな問題が出てきそうな気がいたします。   先ほどちょっと御説明の中で出てきましたけれども,例えば小規模個人再生をやった後,結局通常再生に戻れるかという論点,昔議論しましたけれども,結局だめだということになったと思うのですが,いったん入口に入ってしまってから途中で移ることができる場合とできない場合がやはりあるのではないかということであります。   それから二つ目ですが,開始原因が破産原因と同じだという手続を仮に設けるとしますと,資料の9ページにあるとおりそれをメーンにするかどうかは別にいたしまして,より破産に近い内容の手続構造を必要とするという議論が出てきそうな気がいたします。典型的には,否認権の問題でありまして,簡易な手続として位置づける個人再生に否認権を設けなかったという議論を,ここで想起する必要があるのではないか。あるいは,債権の調査・確定についても同じでありまして,個人再生の場合にはあれは設けないという決めを打ったわけですけれども,先ほどの弁護士会のバックアップ委員会の議論を伺っていて,私の思い過ごしであればいいのですが,便利だから,否認ができる場合を設けてほしいとか,債権の調査・確定があった方がいい事案もあるから,それも選択肢として設けてほしいという議論が出てくるとすると,非常に手続構造としては複雑なものになるだろうという気がします。 ● 商法の委員・幹事の先生方はいかがでしょうか。 ● ちょっとピント外れかもしれませんけれども,破産原因がある,ないということの認定そのものが難しいわけですね。それこそ債権調査をやって,資産評価をやらないと本当の意味での,倒産法の意味での破産原因になる債務超過があるかないかも分からなくて,むしろ普通のゴーイングコンサーンの会社で債務超過のところはいっぱいあって,そういうところでも株価はついているわけですね,現実に。正にさっき○○幹事が御指摘になったような問題は実際面でもあるわけで,そういうときに例えばある機能,バランスシートが債務超過であるからといって,会社側の機関決定で特別清算に入ってしまう,破産原因があるから入ってしまうということになったときに,どういう問題が起きてくるのかなというのが正直怖いというか,いろいろ大きい意味を持つのではないかという気がしまして,やはり慎重にこれは考えた方がいいのかなというのが正直なところで,むしろ特別清算というのはそういうのがはっきりしない,正に破産原因がある疑いのあるときに早めに手を打てるということでつくっている制度だというので意味があるし,またそれで世間も受け入れられやすい,会社も受け入れられやすい広い使い道が出てきているというところがあるのではないかと。   かつての会社整理なんかも同じ面があって,それを使った保険業法の手続なんかもそういう位置づけになっていましたので,そういうことでの意味もあったので,そちらを殺すことが出てこないかなと,別の問題が出てこないからというのが若干気になるところです。 ● ○○幹事,いかがでしょうか。 ● 私の考え方では,商法の404条が解散事由というのを明定しておりまして,404条2項が後に書いてあるけれども株主総会の決議で解散するというのが非常に一般的ですよね。1項の方が,それ以外に例外的に解散する場合だよという中に破産が入っているわけでございますね。その破産になったらもう解散せざるを得ないよというのを極めて強く解釈しますと,今度は破産と同じ原因があって特別清算があったら解散になって,また特別清算,つまり404条で解散をすると417条,条文の置き方からも分かるように,まず404条を読んでくださいと商法は書いてあるわけです。解散で404条を読んでから417条にいくと,解散した会社は清算手続に入りますよと,清算手続に入って,更に読んでいくと431条に特別清算があるわけで,順序からいうと解散,清算,そして清算した会社の中で特別に清算する場合であってというふうに読んでいって,その一番最初の404条の中に破産があるものですから,鶏が先か卵が先かと思うのは,私は卵から鶏が生まれていると思っていたのが,いや,そうじゃないではないか,鶏が先だよという話を言われたようなショックがあったのですね。   やはり商法がこの順序で404条以降の手続で定めているのは,先ほど御指摘にあったように株式会社の機関が勝手にそういうことをやると困るということがあったのではないかなと。つまり,解散手続の本則が株主総会決議であります。この株主総会決議であるということは,特に執行機関,取締役会が勝手に債務超過だね,それでは特別清算に行っちゃっていいよと,404条,417条を飛ばして特別清算に行くということは,恐らく今明確にこうだからというところまで,余りに突然だったもので考えていないのですけれども,恐らく取締役会のモラルハザードにかかわってこないかなという危ぐがちょっとあります。何でもおれたちはできちゃうのだという話になって,うちもちょっと危ないよな,このままでいくと債務超過になってしまうよな,では今のうちにぱっとやってしまおうかというような,そういうおそれが出ないかなと今思っているのですが。ただ,これは間違いかもしれません,私そこまで考えたことがございませんので。 ● 無理に御発言をいただいたことになったかもしれませんが,どうもありがとうございました。   なお御意見があれば伺いますが,よろしゅうございますか。   今の皆さん方からのいろいろな問題点の御指摘,御指摘の方向はいろいろございましたけれども,そういうものを踏まえて事務当局の方としてなお検討させていただきたいと思いますが。 ● それほどショックを与えるとは……。   私は,素直にこれを読んでいて,選択の余地があるし,前回の資料を見てもその考え方があったので,ここまでこういう流れになっていると○○委員からも聞いていなかったので,改めて考えてみたいと思います。確かに我々実務家というのは必要性から判断していくものですから,理論的にたどり着いてこうなったというよりは,特に矛盾しないのではないか,今の御指摘いただいた点も,破産原因があれば破産手続は会社の方で取締役会の決議で申立てはできるわけですから,そこまでは考えていなかったのですが,ただ逆に大変なショックを受けましたものですから,これで今まで利用できない分野が大分拡大できるなと思ったのが,やはりまたもとに戻りそうだなと思って……。   もう少し考えたみたいと思います。ありがとうございました。 ● それでは,繰り返して申しておりますように,事務当局としても○○委員や○○委員の御紹介いただいた御意見を踏まえて検討いたしますが,両委員におかれましてもなお検討していただければ大変有り難いと思います。 ● 個人的にはやむを得ないと思っていますから。 ● 確かに,○○委員は本日から御出席いただいたので,必ずしも倒産法部会の従来の議論の経緯を御存知ないというのはそのとおりだと思いますが,これまでの流れからいいますと,確かに虚を突かれたとかというような感想をお持ちになる方もおいでになるかと思います。   それでは,最も基本的なスタートの問題でございますが,御意見をいただきましたので,ここで休憩ということにしたいと思います。それでは,休憩に入ります。             (休     憩) ● それでは,審議を再開したいと思います。   では,また資料1についての説明を続けさせていただきたいと思いますが,出発点が今のような御議論でございましたけれども,原案は見直しの方向の原案に沿ってできておりますので,そこは当然御承知だと思いますけれども,御理解の上聞いていただければと思います。それでは,お願いいたします。 ● それでは,2の「手続の開始原因」以下について御説明をいたします。   1で現行の特別清算の枠組みを基本的に維持するという前提をとりまして,2の手続の開始原因につきましては,現行の特別清算と同じものにするという考え方をお示ししております。   (注1)以下で,現行の特別清算の開始事由,開始原因を維持することの相当性について検討を加えております。   (注1)でございますけれども,「清算の遂行に著しい支障を来す事情があると認めるとき」を開始原因として定めることについての当否を検討しております。   破産法分科会資料13では,倒産処理手続として純化するという方向で検討を進めておりましたので,このような開始原因を定めることは理論的に説明がつかないという考え方を示しておりましたが,今回は現行の特別清算の基本的枠組みを維持するという前提でございますので,これを開始原因とすることについて特段の理論上の問題は生じないだろうと考えられるところです。しかし,さはさりながらこのような開始原因を維持するかどうか,更に検討を加える必要はあるだろうと思われます。   具体的には,「清算の遂行に著しい支障を来す事情があると認めるとき」とは,11ページの①から④に該当するような場合というように言われております。現在でも,このような場合に通常の清算よりも厳格な清算手続を行うことについて,一定の合理性は認められると考えられるところです。   さらに,会社法制の現代化によりまして,通常の清算手続について裁判所の関与が弱められるということが検討をされております。そういたしますと,厳格な清算手続を経済的破たんと直接には関連づけずに設けるというニーズはかえって高まるとも考えられるところでございます。したがって,このような開始原因を維持するのが適当であるという考え方をお示ししたところです。   (注2)でございます。現行の特別清算の基本的枠組みを維持するという前提にいたしますと,破産原因そのものを開始原因とするのではなく,それを前倒しした開始原因,「債務超過の状態にある疑いがあると認めるとき」という開始事由を維持するのが適当であるという考え方をお示ししております。   なお,「債務超過の状態を生ずるおそれがあること」を開始事由とすることも考えられるところですが,これは現行の特別清算の沿革に照らしまして,法制的に妥当ではないと考えられるところです。   (注3)では,支払不能を開始原因とどのように整理するかという点を取り上げております。この点につきましても,特別清算の沿革に照らしますと,特別清算の開始事由とするのは不適当ではないかというふうに考えられるところでございます。   なお,先ほど弁護士会で多数の支持を得たという考え方を仮に採用する場合には,開始原因として「債務超過の状態にあること」ということが加わるのだろうと思いますが,更に支払不能の場合をどうするのかという問題が生ずるだろうと思われます。   次は,3の「手続開始の条件(申立ての却下事由又は棄却事由)」でございます。   現行の特別清算におきましては,申立ての棄却事由として12ページの①から③に書いたようなものが定められております。これらについては合理性があると思われますので,今後もこれを維持するということになろうと思います。   更に,現行の特別清算につきましては,学説及び実務では「特別清算の見込みがないとき」,あるいは「見込みがないことが明らかであるとき」,更に「不当な目的で申立てをしたとき」を却下事由として挙げるのが一般的でございますので,明文でこのような手続開始の条件を定めることも考えられるところでございます。   (注1)では,特別清算の見込みにつきまして具体的にどのようなものがあるかということを記載しております。このほかに,否認権の行使が必要であるというような場合にも,特別清算の見込みがない,あるいは不当な目的で申立てをしたという認定になって却下される場合があるという見解もあるということでございます。   12ページの下から3行目のなお書き以下ですが,特別清算の見込みがないとして特別清算手続の利用を拒否することができるのは,ほかに破産手続を利用することができる場合に限られると,理論的にそういうことになるのではないかということを記載しております。   (注2)でございますが,申立権の濫用の問題を取り上げております。これは,もともと規定上も明確にされておったわけですが,余りに当然であるということで現行規定はないということでございます。他の倒産法に合わせますと,これについても明文の規定を設けるのが自然だろうと思われるところです。   (注3)でございますが,破産法分科会資料13で示しておりました消極的条件,債権者の有する債権,債務者の有する財産等についての争いが少なく,早期に協定に基づく弁済を実行することができる見込みがないことが明らかであること,これを設けるかどうかという点を検討しております。破産法分科会資料13でこのような消極的条件をお示しいたしましたのは,破産手続と新たな手続を並列的なものとして考える,特則・本則として考えるという前提をとりまして,それを合理的に説明するためでございました。今回は,現行の特別清算の基本的枠組みを維持するということにいたしましたので,このような条件を設ける必要はないだろうというふうに考えられます。もっとも,実務上特別清算の利用に適する事案であるかどうかのメルクマールとして,13ページの①から⑥までに掲げられたような事情を挙げるのが一般的でございます。しかしこれは,破産手続との比較において意味を持つものでございますので,特別清算の見込みの有無に関する基礎事情というべきものになります。したがって,特別清算の開始の条件,通常の清算手続から特別清算への移行の条件とすることは難しいのではないかと考えられるところです。   (注4)でございますが,民事再生法25条2号に相当する規定を設ける必要があるかどうかという点を取り上げております。   この点につきましては,破産法分科会で認可要件の在り方を踏まえて再検討すべきであるとされていたところでございます。後に,協定の不認可要件のところで,「債権者の一般の利益に反するとき」という協定の不認可事由を設けるという考え方をお示ししておりますが,仮にそのような不認可事由を設けるものとすれば,こちらでも同じような条件を設けるということになろうかと思います。ただ,民事再生法のように,破産手続が係属していることを前提とするかどうかは検討する余地があるだろうと思われるところです。   4の「協定の不認可要件」ですが,現行の特別清算では,協定を可決する決議は裁判所の認可を得なければならないとしております。しかし,認可又は不認可の要件については特段の規定は設けられておりません。   この点に関する学説・実務においては,社債権者集会に関する規定,又は和議,強制和議に関する規定を類推適用するという見解が有力でございます。そこで,明文で14ページの①から④に書いたような不認可事由を定めるということも考えられるところでございます。   現行法が,認可要件,不認可要件を定めていない理由については,不明でございます。しかし,(注1)に記載しましたように,解釈上は,当初は社債権者集会の決議の認可に関する商法326条を類推適用すべきであるという見解が有力でございました。その後,強制和議ないしは和議の認可に関する規定を類推適用すべきであるという見解もございます。今回の破産法の改正によりまして,破産法を類推適用するという余地はなくなりますので,何らかの形で手当てを要することになるだろうと考えられるところです。   具体的な不認可要件の書き方については,これは民事再生法の不認可要件に倣ったものでございます。ただし,①のただし書部分につきましては,認可要件に関する解釈論の変遷を14ページの(注1)に書いてございますが,このような経緯がございますので,別の書き方もあり得るところだろうと思われるところです。   (注2)でございますが,清算価値保障の点を検討しております。   清算価値保障について,特別清算における議論が活発にされたというような形跡は見当たらないようでございます。その理由は定かではございませんが,協定の性質は強制和議ないしは和議と共通する性質を有するというふうに理解することが当然の前提とされておったようですので,債権者の一般の利益に反しないことが必要であるということは恐らく当然の前提とされていたものと考えられるところです。しかし,強制和議などと異なりまして,実質的な平等原則を採用している特別清算におきましては,清算価値保障の問題は一層深刻であるはずでございます。しかしながら,この点の議論が見られないというのは,特別清算においては個々の債権者に対する弁済率が,破産手続における配当率を上回ることが明らかであるという前提をとっていたためか,あるいは特別清算においては協定の条件が実質的平等原則を満たしていれば,それが清算価値保障になるのだというふうに考えられていたのか,あるいはそれ以外の理由によるのかはともかく,結局この点については文献上ははっきりしないということでございます。   (注3)でございますが,協定における清算価値保障と可決要件の問題を取り上げております。   今回は,主として清算価値保障の問題を取り上げておりますので,また別途可決要件について議論する機会はあるかと思われますが,清算価値保障を前提といたしますと,可決要件を引き下げる余地もあるだろうと思われます。しかしながら,可決要件を引き下げることになりますと,裁判所としては慎重に審査をするということになりまして,裁判所の関与あるいは監督を強化する方向に働いてしまいますので,むしろ可決要件は現行のまま維持して,特段の事情がなければ裁判所としては協定を認可するという制度にした方が合理的ではないかという考えをお示ししております。以上でございます。 ● それでは,10ページの「2 手続の開始原因」のところから順番に御意見を伺ってまいりたいと思います。   ただいまの説明のとおり,原案は手続開始の原因としましては現在の特別清算の場合と同じように,そこの①,②という二つの要件を掲げることでよろしいのではないかということでございますけれども,この点についてはいかがでしょうか。   ①,②,それぞれ分けて書いてございますので,まず①の方,「清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があると認めるとき」,こういう原因を定めることでよろしいのではないかという点ですが,いかがでしょうか。   ほかの考え方もあり得るかという検討をしていただいて,結局,結論としてしてはこれでいいのではないかということですけれども。   特に,この点は御異論ございませんか。--それでは,そのようにいたします。   次に,「会社が債務超過の状態にある疑いがあると認めるとき」という,こちらの方についてはいかがでしょうか。債務超過の状態を生ずるおそれがあることというような考え方にするということもあり得る立場だと思いますけれども,そこに書いてございますように,従来からの沿革,あるいは言葉の持っている意味等から,結局現行法どおりでいいのではないかということでございますが。   これも特に御意見ございませんか。--それでは,そのようにさせていただきます。   (注3)のところで,これは結局結論としては特に要件に挙げないということですが,支払不能概念との関係について触れておりますけれども,これもよろしゅうございますか。 ● 「債務超過の状態にある疑いがあると認めるとき」という,これで私は結構だと思いますが,今の支払不能だとか破産原因との関係でいいますと,先ほど申し上げたことの重複ですが,債務超過の状態にある疑いがあると認めるということで申立てをしてきて,調べてみたら債務超過であることが歴然としていたという場合もこの中に含まれるという,そういう解釈を前提としていいのではないかということだけ,確認のために申し上げておきたいと思います。 ● それはそういうつもりでございます。 ● ちょっと支払不能のところの前提がよく分からなかったので,商法の先生にお教えいただきたいと思うのですが。   商法125条1項の解釈は,これは「会社ハ弁済期ニ至ラザル債権ト雖モ之ヲ弁済スルコトヲ得」となっていまして,「ねばならない」とは書いてないわけでして,(注3)に書いてある松本烝治先生の説明が,「ねばならない」でないと成り立たないのではないかなという気もするのですが。「得」と書いてあるのだけれども,これは「ねばならない」というふうに解釈されているものなのでしょうか。ちょっと勉強不足で申し訳ないのですが。 ● 恐縮ですが,もし商法の○○委員,あるいは○○幹事の方から,ただいまの御発言に何かコメントいただければと思いますが。   商法上は,文字通り「弁済スルコトヲ得」だから,しなくてもいいということでしょうかね。 ● この辺,はっきりしないと言われるのはおっしゃるとおりで,履行期が到来しているとまで言い切っていいかどうかは分からないところがありまして,私もこの説明ですべて言い尽くされているかどうかちょっと自信がないのですが,もうちょっと別の目で見ますと,支払不能のような概念というのは,一般的かつ継続的に支払うことができるか,履行期が到来したものが払えるかと考えるわけで,解散した後の清算中の法人には非常になじまない概念だろうと思うのです。例えば,信用ですとか,そういうことも考慮するわけにもいきませんので,この段階にあったらもはや債務超過しかないのではないかという気がいたしますのですが,ちょっとそこが十分整理できませんでしたので,とりあえずこういう理由を挙げましたのですが,実質は今のような点があるのではないかと考えておりますので,それだけつけ加えます。 ● 支払不能を開始原因としないという,結論はそれでいいのだと思うのですが,説明だけの問題ですけれども,支払不能を開始原因とされた理由というのは,債務者の事業継続の利益というのと,債権者側の自分の債権を保全する利益というものの調整点として,現在履行期が到来した債務を一般的,継続的に払えない場合には,もはや債務者の財産管理権を継続するのは不当で,むしろ一般債権者のためにいつも財産拘束が生じると,こういう説明をするのだと思うのですが,もう解散してしまっていますから,債務者の事業継続というのでしょうか,財産管理についての利益はもうなくなっているということではないでしょうか。ですから,むしろそちらの方から説明する方が分かりやすいのではないかなと思ったということだけ。 ● 結論については御異論ないと思いますので,それでは次に「3 手続開始の条件」の方に入らせていただきます。   まず,①から③までは,これは現行法をそのまま維持するということで,特に御異論はないかと思います。   新しく④と⑤を,これまで解釈上認められてきた棄却事由,あるいは却下事由ということになるのでしょうか,それを追加するという点ですが,いかがでしょうか。   まず④の,さっきもちょっと事務局と話していて,「特別清算の見込みがない」という表現がいいのかどうかはちょっとおくとして,そこで意味していることを実質的に考えていただいて,そういうものを棄却事由に入れると。 ● その中で,学説の上でここに書かれているようなことが書かれているのは存じているのですが,債権の存否,額の確定に長期間を要するというのが本当に特別清算の棄却事由でいいのかといったら,これは疑問がございまして,今ノンバンクの事件で現に協定成立しているのですが,額の確定をめぐって今上告審受理中という事件も私やっておりますから,もう何年かかっているのでしょうかという……。だけど,協定自体は成立して,一部弁済どんどん遂行していっているという事案もございますし,あるいは別の案件で,額の争いがあって訴訟係属中なんですが,債権者はわずか数名,それさえ決まれば協定はすぐ成立するというふうな事件もございますので,それが通常訴訟で給付訴訟を起こされているわけですが,それで済めば済むことで,それが却下事由にしなければいけない理由というのは全くないのではないかなというふうに思っていますので,ですからここのところは,表現最終にはどうされるか別にしまして,見込みがないというのとは必ずしもそぐわない。だから,今教科書に書いてあるのはいかがかと私自身は思っていますし,現にやっているということでございますので……。 ● 御指摘のとおりでありまして,ここの部分,「又は」の前後で若干書きぶりが変わっておりますのは,「又は」の前の部分というのはかなりの教科書で一致した見解でございます。その後の部分は,必ずしも通説的とまでは言えないで,こういう見解もあるという趣旨でございます。   実際に条文にするときも,このあたりは解釈になるような形の条文にせざるを得ないと思っておりますので,実務上の支障は生じないのではないかなと思っております。 ● そういうことでよろしゅうございますか。 ● 実務上支障が生じていましてね,こういうことを書いてある本があるものだから。ですから,特別清算の開始をしてくださらない庁があるのですよ。その結果,今現に特別勘定に組み入れられないという非常に不利益を被っていまして。 ● 分かりました。   外に御意見ございますか。--特にございませんか。   実際に棄却事由をどう表現するかということについて,今○○関係官から申しましたように,なおよく工夫をしたいと思っております。その点についても何か御意見がございましたら,お寄せいただきたいと思います。   それでは,実質的にはこういう種類の要件を設けるということでよろしゅうございますね。   その次の,「不当な目的で申立てをしたとき」,これも余り御異論はないかと思いますが,どうでしょうか。--よろしいですか。   それから(注3)のところで,これは念のためみたいな話ですが,破産法分科会資料13にございました「債権者の有する債権,債務者の有する財産等についての争いが少なく,早期に協定に基づく弁済を実行することができる見込みがないことが明らかであること」という消極的条件を入れておりましたけれども,その必要は今回はないだろうと,見直しの方向が変わってきましたので。そういうことでございます。それでよろしいですね。   (注4)のところですが,民事再生法25条2号では,破産手続が係属しているということを前提として,それとの比較で破産によった方が債権者の一般の利益に適合する場合に再生申立てを棄却する,そういうことになっておりますけれども,これは認可要件の方で「協定が債権者の一般の利益に反するとき」というのを入れることを前提として,それに相当する手続開始の条件を設けるということでよろしいかということですが。 ● 民事再生法25条2号の場合には,破産手続が始まっていて,後から民事再生が追いかけるということが前提とされているわけですが,まず問題が同じなのかどうかということをちょっと確認させていただきたいのですけれども。   破産手続の開始決定後に特別清算の申立てはできないというのが,下級審の判例ですがございますが,そうするとここでの前提は,破産の申立てと特別清算の申立て,どっちもまだ申立てで破産の方が始まっていないということが前提の問題だということなのかどうかということをまず確認させていただきたいのですが。   あるいはその前提を,判例法でとられている破産が始まっちゃったらもう特別清算は始められないと,申立てできないという,その前提も動かすこと……。 ● そこまで先後関係といいますか,優先関係を突き詰めているわけではなくて,いわば一般的に破産手続と特別清算手続とという比較にとどまっています。   先ほど申しましたように,手続の係属を要件とするかどうかというのは問題点の一つだと思いますが,私どもの意識していたのは,いわば清算手続の中の二類型ですので,一般的な比較でこういう一般の利益に反するかどうかということが可能なのかなという気はしていますので,そういうつもりで書いております。つまり,ここの段階では,まだ余り手続の係属自体には明示的な意識は持っておりません。 ● 続けてで申し訳ありません。まず簡単な方から。   仮に,現在の判例法を前提にして,破産の申立てと特別清算の申立てがあって,破産の方がまだ開始決定が出ていないという場合ですと,恐らく問題になるのは否認権の行使によって財団が増殖する見込みがあると,特別清算だと,この原案を前提にすれば否認権を使えないので,配当率というか弁済率は下がるというシチュエーションを典型的には考えるのだと思うのですが,それは先ほど「特別清算の見込み」というところで読み込めるのかどうかですね。先ほど事務局から御説明がありましたが,どっちが読みやすいということになるのかなと思います。あるいは,否認権によって弁済率が上がるということが「特別清算の見込み」で読みにくいということであれば,このような再生法25条2号に当たるような条文を設けた方が,あるいは分かりやすいのかなという気がいたします。   それから,二つ目ですが,先ほどの判例法の前提ですね,開始決定の後も特別清算の申立てができるのかというのは,恐らく考え方としては二通りあり得て,現行法では申立てと申立ての場合には,破産の申立てと特別清算の申立てが競合した場合には,破産の方をとめられると,特別清算が始まっちゃったら破産は中止し,確定で失効すると,つまり特別清算をそのレベルでは優位に置いているわけですが,破産が始まったら今度は特別清算でひっくり返せないという,いわばねじれたような形になっているわけですけれども,そのねじれをどちらかに直すとしたらどちらに直すということだと思うのです。仮に,破産が始まった後も特別清算ができるという仕切りをとるとすると,また(注4)の意味も変わってくるのではないかなという気がいたします。そこはちょっとまた私も詰め切れていませんので,問題の指摘ということだけにさせていただければと思います。 ● それでは,御指摘いただいた点について検討させていただきます。 ● 優先関係について,やはり最終的に手続相互でどうなるかということをきちんと一貫して説明できるようにはする必要があると思っておりますので。 ● 今の最後の点ですが,417条1項との関係はどう考えたらよろしいのでしょうか。417条1項は,破産の場合には法定清算手続は始まらないというふうに読むものだと思っていたのですけれども,そうすると法定清算手続の特則として特別清算を考えると,始まりようがないのかなという気もするのですが,そうではないのでしょうか。 ● 開始決定があればいかがですかね。 ● 開始後の話です。申立て時の場合はもちろん関係ありませんので。これはもう法定清算手続は始まらないから,特別清算手続も始まらないという仕組みになりはしないか,つまり結局倒産手続性を認めれば,先ほど○○幹事がおっしゃったような方向性というのがよりやりやすいのですけれども,法定清算手続の特則だと言っている限りここに拘束されてしまうのかなという気が以前からしておったのですけれども。 ● このあたりは,商法の解釈の問題になるのでしょうか。恐らく法定清算手続が開始と同時にとまっているとかという説明をする以外に,なかなかうまい説明がないのかもしれません。   ただ,今の実務ですと,破産手続中でも清算人を選任して,放棄した財産などの処分に当たらせている例がありますので,それを否定するということは難しいと思いますので,特別清算はできるのだと。 ● それは,放棄財産との関係でのみ管理処分権が清算人にあるという前提になるのではないでしょうか。 ● 東京地裁の八部の考え方は,かつてはそうではなくて,清算人である以上はすべての清算事務--財産の処分は別なのでしょうが--をしなければいけないということで予納金も高かったというふうに聞いておりますので。 ● 最近は大阪では安くしていると聞いていますが……。 ● 大阪は,特定事項についてだけ清算事務をやればいいというような,昔からそういう運用だったというふうに聞いています。そのあたりとの整合性も考慮して,遺漏のないようにしたいと思います。 ● 八部の方は,現在は,特定の事項についてだけの清算という形で清算人の選任を行っています。ですから,古い実務のところは変わっているのではないかと思いますが。 ● では,よろしゅうございますか。 ● (注4)の債権者の一般の利益に反するときというのを開始要件にするかどうかという,その点でよろしゅうございますか。   私,2点で疑問ではないかと思っておりますのは,これが認可の要件になるのは協定というものができていますから非常によく分かるのですが,まだこの段階で特別清算の申立てをするときに協定案の原案みたいなものを出すわけではないのに,これが比較できるかという点が第1点です。   それからもう一つは,特別清算が協定だけでやるのではなくて,割合弁済とかほかのやり方もありますから,「協定が」という言葉でない言葉を使うにしても,この段階で債権者の一般の利益に反するということを比較することが困難ではないかという気がいたします。   一方,民事再生法の方は,25条の先ほど○○幹事が言われたのは,そういう破産手続なんかが係属して,ある程度進行中だということであれば,それと,この新しく民事再生始めることとの比較はできると思うのですが,制度一般として特別清算を開始するのにまだ破産の方も分かっていない,それを比較することができるかどうかという点がありますので,これは協定の認可の要件に落としておけば,開始決定の要件としてしなくてもいいのではないかというふうに私自身は考えております。 ● 分かりました。 ● 冒頭で私どもの実務は紹介させていただきましたとおり,申立ての段階で余りぎりぎりと要件審査をするということになりますと,かえって使いにくくなるところが出てくるのではないかと,そのあたりは破産の出口のための予納金の確保という形で実務上不便なくできておりますので,余り細かく入口の要件を書いて,それで運用が硬直化するということにならないように御配慮いただきたいなというふうに思っております。 ● それでは,ただいまの御意見を考慮させていただいて,次の機会にまた改めて案を出させていただきます。   次は,4の「協定の不認可要件」でございますが,認可・不認可の要件,現行法では決めておりませんけれども,今回はそこを,認可要件にするか不認可要件にするかということは別にして,何らかの要件を決めるということ自体には余り御異論ないかと思いますが,それでよろしゅうございますか。   その内容でございますけれども,そこに①から④,これを協定の不認可要件として定めるのはどうかというのが原案でございます。第①が「特別清算の手続又は協定が法律の規定に違反し,かつ,その不備を補正することができないものであるとき」と,そしてただし書で「手続が法律の規定に違反する場合において,当該違反の程度が軽微であるときは,この限りでない」という例外を設けるということですが,この例外の設け方について先ほど説明がございましたように,細かいところでございますけれども,微妙に違いが考えられる,商法の株主総会の方の規定に準ずるような形にするか,それともこの原案のようにするかという問題がございます。   まずこの①の点についてはいかがでしょうか。   本文の方は余り異論はないかと思いますが,ただし書の方はどうでしょう。 ● 私は,この原案でよろしいのではないかという感じがしています。確かに株主総会の関係では,重大でないと,それから決議に影響を及ぼさないというふうな書きぶりになっているかと思うのですが,結局問題になるのは重大ではないし決議に影響を及ぼさないけれども軽微であるとまでは言えないのをどういうふうに扱うかという問題で,そんなことは余りあるとは思えないのですが,理屈から言うと,株主総会の問題というのはやはり会社内部の問題であるのに対して,これは対債権者の関係の問題であるということで,商法の方も社債権者集会については従来こういうものがあったのが,株主総会の方は復活したのに社債権者集会の方は復活させなかったということのようでありますし,そこはやはり社債権者という外部の関係で扱いを変えているのかなというふうにも思われますし,それからやはりこれは最終的な会社の清算の処理ということで,直接債権者の利害に重大な影響を及ぼす決議というふうに考えられます内容の事柄であるというふうに考えられますので,やはり株主総会よりはやや厳しくしてもいいのではないかということから,原案でよろしいのかなというのが私の印象です。 ● 結論として原案でよろしいのではないかということですが,特に御異論ございませんか。--それでは,原案のようにさせていただきます。   ②,③については,特に問題もないかと思いますが,よろしいですか。   ④でございますが,先ほどの○○委員の御意見もこちらの方はこういう要件を定めるのでいいのではないかということだったと思いますけれども,いかがでしょうか。   これもよろしゅうございますか。清算価値保障原則とのかかわりでございますけれども。 ● 私ども,部内で議論していて,この清算価値保障原則のところがよく分からなかったのです。と申しますのは,ある物を全部処分してお金に換えてしまっているわけですね,それを分配するということでありますので,平等原則に違反しなければそれで事足りているのではないかと。あと,不利益を受ける人から個別に同意をしているというようなことになりますし,優先債権の部分をカットする場合も個別の同意をとっているということでありますので,売り方が非常におかしな売り方をしているとか,そういうことが問題になっているのか,ちょっとここの清算価値保障ということの意味がよく理解できなかったのですけれども。 ● もともとの特別清算で想定していたのは,必ずしも協定が最後の方に来るというようなことを考えていたわけではないようでして,割と早い時期に協定をして,その後手続を進めていくというようなこともあったので,あるいは現金化しないで物で代物弁済するというようなこともありますので,一応清算価値保障は問題になるのだろうということだろうと思います。 ● 先ほど,○○幹事が少しおっしゃったように,否認該当事由があって,否認をしていればもう少し弁済率が変わったはずだというような場合などが一つ考えられるのではないでしょうか。それと,東京地裁の実務では,差をつけた場合について,劣後する人については全員同意をとっているというふうなお話でしたが,必ずしも法文が要求しているわけではございませんので,仮に同意をとらなかったときもなおその協定を維持できるかどうかという観点で,この要件がやはり必要になってくるのだという理解でよろしいのかなという気がしております。 ● それで,清算価値を保持する場合には可決要件の引下げにも比較的つながっていくということに。 ● それは,(注3)で記載しているところです。   ただ,今のお話のように,一般の利益というのは必ずしもはっきりしないところもあり,たぶん否認のような場合というのが比較的明確なのかとは思うのですが,それ以外にそう必ずしも明確でないというところもありますし,今言われたように可決要件の問題はそれを前提とした上で,可決要件を下げて清算価値について厳格に考えるのかどうかという見合いの問題だと思いますけれども。 ● 手続とすれば,やはり清算価値についてはそれを要求することで裁判所の審査が非常に過重になるということも,ほかの手続,民事再生その他にも要求されていることから必ずしもそう過重にならないのではないかと。ですから,やはり清算価値を条件にしておかないと,破産よりも不利になる可能性があるということから,利用する債務者の方も清算価値を保障していないとすれば,それではそれに違反してもいいのかということで,間違った理解で利用する可能性もありますし,債権者の方でも,特別清算だと清算価値保障されていないから破産よりも低くなる,それを利用して特別清算申立てしているのではないかなどという疑問も生じやすいものですから,やはりこの要件は是非入れていただきたいなと。かつ,可決要件のところも,これを明確にしていただいた上で,再建型とどうしてこんなに違うのかという疑問もあるものですから,民事再生と同じ可決要件にしていただきたいという希望が出ていますので,是非その辺も含めて検討していただきたいと思います。 ● 実質的に関連はしますが,可決要件の問題はまた改めて御意見を伺いますので ● 協定の条件として,今も平等ではないといけないというところがあり,かつ,公平を害しない限り差を設けることができると。そこの一つの見方としては,形式的に平等かどうかということと,優先債権かどうかということと,それから不利益を受ける人が同意しているかどうか,この3点セットできちんと形式的に見られていると。そのこと自体で,少なくとも先ほどの否認で財源が広がる場合は問題あるのでしょうけれども,何か清算価値を細かくチェックしろというのは,少し大変かなという感じがしているのですけれども。清算価値保障しているかどうかの部分ですね。 ● 必ずしも実際に破産に置き換えて,それと一々細かく検討しろという,そこまで含んでいる趣旨ではないと思うのですけれども。否認できることが非常に明らかであるとか,実質的にはそういう場合でしょうかね。   この注にも書いてございますように,全く破産と同じように形式的に平等という場合ではない場合もあり得るわけですので,原案はそれものみ込んだ上で,一般の利益に反しない場合というふうに言っているのだと思うのですがね。 ● 実務でやられるように,不利益を受ける人の同意をとっているのであれば,もう何の問題もないわけでしょうから,そういうことをしない,制度として今はしないでもできるようになっていますので,仮にしないで清算価値を割ったらまずいということの理念として示すということですので,この要件の意味は正にそこにあるということだと思います。 ● 商法の規定の清算中の会社の性質なんですけれども,清算中の会社というのは営業活動をしているわけではないのですけれども,非常に図形的に言いますと,だんだんデクレシェンドでなくなっていくという考え方をとっております。営業活動ではないのですけれども活動はしているのですね。収束に向かって活動をしているということで,先ほど御意見が出たように,ぱたっとそこでやめるというのを,商法では清算価値というと,そこでもう今売ってしまえという価値にとらえるのですけれども,先ほど例に出ていました営業しながら営業譲渡をしてしまうとか,13店舗あるのを続けながら,どれだけ高く利益を得ていけるのかという,活動していることを考えると,清算価値を例えば破産法的に否認権を行為しなければそれだけ損するとかいう考え方は,会社の活動にはなじまないのかなという気がするのです。   清算人が,この場合どれだけ会社として利益を残していけるかなというのは,営業中の会社でいえば正に経営判断の原則というのがあります。経営判断の原則というのは,取締役に結果がだめだからおまえ責任負えよという話ではなくて,取締役に自由にさせて,仮に結果が悪かったって,あんた自由に経営をしようと思って,もうけようとしてやったのだよねというところが評価されるわけですね。もし破産法的に,否認権を行使したからだめじゃないかというふうにすると,これは会社の清算過程にもそれは合わない概念なのではないだろうかなという気がするのですが。   例えば,否認権の場合にそういうことがあるのかどうか分からないのですけれども,会社を収束させるためにいろいろな事情があるわけで,それを行使しないということは一律に破産法でだめとかいう話ではないのではないだろうかという気がするのです。   否認権の場合は分からないですが,特に営業譲渡の場合にはなるべく高く売っていかなければならないということは,その営業譲渡価格が清算価値として正しいかどうかというのは恐らく分からないだろうと思うのです。 ● ここでの清算価値の概念というのは,究極的な清算手続である破産手続との関係で,そこで実現する利益を清算価値と見て,それとの比較で一般の利益があるかどうかを見ているという概念だと思いますので,今のような営業を前提とするような考え方とちょっと違うといいますか,正に清算型の倒産処理手続の基準としての考え方だと思いますので,ちょっと今言われたのとは違う概念なのではないかという気がいたしますけれども。 ● 債権者の一般の利益に反するという,その反するの内容が,これもし明確に規定されてしまうと,大丈夫なんですかね。いろいろ自由な,正に先ほどから出ている営業譲渡と特別清算の組合せというようなことをやられたときに,これは債権者の一般の利益に反するのではないかという債権者がいたときに,これ非常に認定が困難にならないかなという気がするのですが。 ● 従来,こういう側面で言われていますのは,これは協定で,協定が可決されていますから,各債権者に幾らずつ弁済するかということが決まっている話でございますね。その場合に,協定に従って弁済をするのと,その時点で破産にした場合に各債権者に幾ら配当がいくか,その比較で破産にした方がより弁済が多いのではないかという場合は,その協定の内容というのは一般の債権者の利益に反しているのではないかと,そういうとらえ方なのですが。ですから,そこに至るまでにどういう換価の方法をするか,営業譲渡をどうするかというようなことをさかのぼって考えて,あのときの営業譲渡のやり方では債権者の一般の利益に反したことになるではないかというのとは,ちょっと判断の局面が違うというか,あれが違うように思うのですがね。   ですから,御心配になっておられるようなことを考えているわけではないのだと思うのですが。 ● 倒産法で,そういう意味ではこの概念というのはいろいろなところで使われて,正に破産との比較での清算価値ということで一定の機能は果たしていると思われますので,多分今言われたような御心配は,もちろん解釈の問題としてはあり得るとは思いますけれども,基準としては機能しているというふうに思われますけれども。 ● 先ほど,経営判断の原則という話が出ましたけれども,繰り返しになりますが,恐らく問題になるのは事前の営業譲渡等が否認対象行為になるような場合だと思うのですね。これは,さすがに経営判断の原則がもう及ばずに否認できるということになると思いますので,そことの比較で多分問題になる概念ではないかと。   ですから,ここで破産に持っていって,否認して,否認できることが明らかで,かつ受益者にも資力があり,返ってくれば高い配当ができるということだったら,しかも仮定的な破産配当よりも少ない額を同意していないのに協定で強制されると,この場合に救うという局面としてはかなり限定されるのだと思いますけれども,しかし財産権の保障との関係では落とすわけにはいかない,そういう意味でこの④の要件があるというふうに位置づけられるのではないかと思います。   以上が第1点ですが,②,③にも関係するのですけれども,先ほど後で審議するということですが,可決要件との関係もあるのでしょうけれども,可決要件を高いまま維持するということであれば,例えば先ほどの開始のところでもちょっとありましたし特別清算の見込みのところでもありましたけれども,明らか要件をつけて,より自主性を高めるというのでしょうか,債権者がみんなうんと言っているのだったら明らかな場合以外は認可するという仕切り方も恐らくあるのではないかと思いますので……。 ● 開始要件の方で明らかなと。 ● 開始要件の方で,特別清算の見込みについて明らかであるというのをいわば別案として挙がっているわけですが,同じようなことを認可要件としても考えて,一般の利益に明らかに反するとか,遂行する見込みが明らかにないとかいう場合にだけ不認可にするという仕切り方もあり得るところではないかと。特に自主的な清算という要素を強めれば強めるほど,そういう方向に働くということも考えられますので,御検討いただければと。もちろん可決要件との関係ですけれども,御検討いただければと思います。 ● 私も今の御発言に賛成でして,この債権者一般の利益に反するというのは,やはり極めて例外的な場合であるということがそもそもの前提になっているのだろうと思います。破産の場合の換価よりも,基本的には特別清算の場合に換価される方がそれは高く換価されるということは当然の前提で,その高く換価された分は多数決によって債権者がどのような形で分けるかということは決められると。ただ,破産の場合に得られる最低のラインを下回るということを協定することはできないというのがこの原則の意味だと思いますので,そういうことは通常はないという前提で,この原案の(注2)のところにも書かれていますように,通常は清算価値を保障したものとなっているというふうに考えられるということであれば,「明らかに」というような,これは例外的なものであるという趣旨を示すという文言をつけ加えるということは,十分考えられることではないかと思います。 ● 「債権者の一般の利益に反する」という条項をお入れになること自体は全く異論はないのですが,ただ東京地裁と大阪とで特別清算の運用が少し異なりますので,東京の場合はやはり申立てする前にあらかじめ債権者の相当数の同意書をおとりになっていますね,今も。大阪ではそういう扱いをしておりませんから,そうすると開始要件のときにそこら辺をどう考えるのかと,相当数の同意があれば一般の利益に反しないということで,今の東京の実務の運用みたいになるのでしょうけれども,ないときに,開始要件で協定の成立の見込み,あるいは一般の利益あたりをどう考えるのかというのは,大分異なってくるかと思いますので,それを御配慮いただきたいと思います。 ● この一般の利益に反するというのは,民事再生法の認可の要件にもなっているわけですね。それで,この場合にどういう判断をしているかということ,もし聞かせていただければ聞かせていただきたいということが1点です。   それからもう一つは,先ほどから○○幹事が言っている否認できることが明らかであるという場合に,そして否認すれば債権者にもっと高額な配当ができるというような場合に,この債権者の一般の利益に反するということで協定を不認可にしていいかどうかということは,少し慎重に考えないといけないのかなというふうに私自身は思っておりますが。   つまり,特別清算を申し立てて,その手続が進行してきたと,そして協定ができたという場合に,裁判所の方は職権でそこまで認定して却下しても,ほかの債権者が破産の申立てをすると,手続移行の申立てをするというようなことがあればともかく,そうでなくて,協定をしている間にこれは否認事由があるということを裁判所が果たして認定できるか,それは私は不可能ではないか,それはすべきかどうかということにかなり疑問に思うのです。ですから,ここの「債権者の一般の利益に反する」というのは,非常に抽象的な概念で,破産になった場合,物を一括して,企業の財産を一括して売却するとかいう場合を含めて,その売却価格まで含めてここの配当が,これは破産で手続を進めればもっと高額に売れるというような,それと比較するので,否認ということまで,ここまで考えていいのかどうかというのが,ちょっと私自身は疑問に思っているのですが。 ● その関係で,昨年東京高裁で,民事再生との絡みで否認が明らかにできた場合,否認によって弁済原資が明らかに増える蓋然性が極めて高い場合について,東京高裁が認可決定を取り消したという事件がありまして,実は私,この2月の冒頭にその判例研究をある研究会でやったのですが,そこに大阪地裁の六部の裁判官が何人かお見えになっておりまして,個人再生でも裁判所が把握している限りにおいてはそこはチェックして,個人再生のような場合であっても認可というか,付議の段階だと思うのですけれども,きっちりやっているというような話をお伺いしておりました。私は,これを全部根ほり葉ほりあらゆることを調べてという趣旨で申したのではなくて,明らかにもう手続の過程上明らかになったときにはそういうふうに考えるべきだということで,実務的にもそれは大阪の裁判官のお話では可能だというふうに私は思っておりました。 ● 先ほど○○委員から,民事再生の場合の運用について御存知ならというあれがございましたが,よろしゅうございますか。 ● 一般の利益に反するときというのは,○○委員のおっしゃられたように抽象的な要件ですので,運用をどうするかというのはかなり裁判所の裁量に委ねられているというように考えて運用しておるのですが,民事再生の場合には,監督委員をつけて,そういう意味で比較的厳格に見ておるということ,これはもう和議の手続との対比という意味でも,そこをきちんとやって運用していこうというようなことで,これは一々例えば公認会計士の補助を受けた監督委員の方もそこを見ているというようなことで,ある意味で厳格に見ておるというふうに思うのですが,一方,個人再生になりますと,同じ要件でありながら,そこまで厳格に見て,財産について評定をするとか,専門的に見るかどうかということになると,かなり緩やかな運用をしておる。ただ,現実に何か否認対象行為があったときにどうなのかということになると,これは特別な問題としてよく議論をするということでしょうが,個人再生の場合には,一般的にはかなり緩やかに,いわば一般の利益に反するということが明らかでない限りは手続を進めていくというように進めているようなところもありまして,法律の要件で「一般の利益に反するとき」と,それからこれが「明らかである」というふうに書いたときとをどう区別するかということについても,ちょっと抽象的な要件なのでなかなかそれによって運用の姿を見るということは難しいというふうに思いますので,一般の利益に反するときということであっても,今のように手続の目的に従って運用しておるというようなことになろうかと思います。 ● 明らかに否認対象行為がある場合は,やはりそれは具合が悪いと私どもそういうふうに考えておりますし,もともとの事務当局のおつくりになった前回のペーパーの中に対する意見でも,明らかに否認対象行為がある場合は破産への出口を設けてほしいというのが私どもの方の意見でございますので,つけ加えさせていただきます。 ● そうすると,「債権者の一般の利益に反することが明らかである場合」というのは,「明らか」を入れるかどうかということについては,○○委員のおっしゃるように,そこは解釈でどっちに書いてもそう運用に変わりがないのかもしれません。しかし,そういう御意見もございましたので,なお検討させていただきたいと思います。   あと,全般的なことで,全体を通じて何か御意見ございませんでしょうか。   特になければ,引き延ばしておく理由もありませんので閉会にいたしますが,特にございませんか。 ● 可決要件のところは。 ● 可決要件は,またの機会にいたします。とりあえず今日の議論を前提とした上で,もう一度回ったときに可決要件のところには進ませていただきます。 ● はい,分かりました。 ● 特に御意見がないようでございましたら,分科会資料1についての審議はこれで終えることにいたしまして,次回の予定等につきまして○○幹事の方からお願いいたします。 ● 冒頭申し上げるべきだったのですが,一枚の紙で「特別清算・会社整理に関する審議の予定」という紙がお手元にあるかと思いますので,今回は倒産法部会,6月以降の予定を2回,新しい日程でございますが6月,7月,第3金曜日ということでお願いしたいと考えております。   次回以降の予定でございますが,本日,またいろいろと揺り戻しがございまして,ちょっと予定が変わるかなという感じもいたしますが,差し当たって次回以降,当初予定しておりましたのはもう少し制度設計そのものの細かい部分について入ろうと考えておりましたが,もう一度ちょっと進め方を考えさせていただきたいと思います。   ただ,基本的な進め方といたしましては,1回,2回,3回でおおよそ一読的な位置づけを考えておりまして,4回で幾つか残った議論があればまとめておきたいというふうに思っておりましたのですが,今日の御議論を踏まえまして,もう少し予定も含めて考えさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。   次回は3月19日の金曜日です。場所は法務省の大会議室になります。   テーマにつきましては,今申し上げましたようにテーマも含めて検討させていただきたいというふうに考えております。 ● それでは,特に御発言もないようでございますので,本日の会議はこれで閉会ということにいたします。どうもありがとうございました。 -了-