法制審議会会社法(株券の不発行等関係)部会第1回会議議事録 第1 日 時  平成14年9月11日(水)  自 午後1時30分                        至 午後4時32分 第2 場 所  最高検察庁大会議室 第3 議 題  株券不発行制度及び電子公告制度のこれまでの経緯と検討課題についてのフリーディスカッション 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 (開会宣言の後,事務当局から次のように本部会設置につき説明がなされた。) ● 法制審議会会社法(株券の不発行等関係)部会の第1回会議を開催させていただきます。   本日は第1回会議ということで,部会長の互選をまずしていただかなければならないわけでございます。そこで,部会長が選任されますまでの間の暫定的な司会進行を私の方で務めさせていただきますので,どうぞよろしくお願いいたします。   事前に配布をさせていただきました資料が五つございますけれども,その1番目に「法制審議会に対する諮問とその説明」という資料がございます。この資料に書いておりますように,法務大臣から,    会社法制に関する次の事項につき,改正の要否及び改正を要するとした場合にはその要綱を示されたい。   一 会社の選択により,株券を発行しないことができるものとすること。   二 株式会社の行う公告を電子的に行うことができるものとすること。   という諮問が出されまして,この諮問に基づきまして,法制審議会の総会におかれましては,この諮問事項,非常に専門的でございますので,これを審議するための特別の部会を設置するという御決定がありまして,それに基づきまして当部会が設置されたわけでございます。これから約1年余りにわたりましてこの問題について御審議をいただくことになると思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。        (部会長に江頭憲治郎委員が互選・指名された。) ● この株券の不発行制度部会に与えられました問題は,これは技術的に見えますけれども,実際はかなり根本的なところから議論しなければいけない問題も含まれていると思います。しかしながら,そう許された時間は長くはありません。どうか効率的な審議に御協力いただければというふうに存じます。どうかよろしくお願いいたします。   それでは,最初に,当部会の本日及び今後の審議の予定等につきまして事務当局から御説明いただきたいと思います。 ● それでは,御説明させていただきます。   まず,本日のこれからの予定でございますが,当部会は株券不発行制度と電子公告制度について御審議をいただくわけでございますので,これまでの議論の経緯,それから問題点となるべきような事項につきまして,まず株券不発行について御説明させていただきまして,それについて若干の時間をとってフリーディスカッションをしていただき,その後,電子公告についても同じく説明をさせていただいて,ディスカッションをしていただくということにしたいと思っております。   次回以降でございますが,お手元に今後の日程といたしまして第2回から第7回までの部会の日程表をお配りしております。これを御覧いただければお分かりいただけますように,大体1か月に1回のペースで,来年の3月まで今年度分の予定を書かせていただいております。   当部会の審議事項は株券不発行制度と電子公告制度の二つでございますが,この両者は全く別の議論をすべき事項でございますので,回を分けまして御審議をいただければと思っております。具体的に申しますと,まず第2回におきましては株券不発行制度の,本日若干フリーディスカッションをしていただくことになりますけれども,更に突っ込んだ問題点といいますか検討課題の検討をしていただきまして,大きな方向性をお示しいただければと思っております。この第2回の御審議を踏まえまして,11月の第3回の会議におきましては,株券不発行制度につきまして私どもの方で第1次の試案を作成して,これを御審議いただければと思っております。その次の第4回でございますが,この第4回におきましては,電子公告制度につきまして,その問題点,検討課題の御審議をいただければと思っております。それから,年が明けまして第5回でございますが,株券不発行制度につきまして,11月の御審議の結果を踏まえまして第2次の試案を私どもの方で御用意させていただいて,これを御審議いただければと思っております。そして,来年2月の第6回におきましては,電子公告制度につきましての試案について御審議をいただければと思っております。第7回でございますが,株券不発行制度と電子公告制度につきまして中間試案の取りまとめをしていただければというふうに考えているところでございます。したがいまして,この3月26日の第7回の部会で予定どおり中間試案をお取りまとめいただければ,それを私どもの方で公表いたしまして,パブリックコメントの手続をとらせていただきたいと思っております。   その後,まだ具体的な日程は来年度ですので決めておりませんけれども,約1か月に1回の割合で同じように4月,5月,6月,7月と御審議をいただきまして,できることならば7月の末あるいは8月の初旬には当部会としての改正要綱案をお取りまとめいただきたいと考えております。そして,その要綱案をちょうど来年の今ごろ法制審議会の総会の御審議に付しまして,答申が得られれば,来年の秋に臨時国会が開かれるようでありますれば,臨時国会に法案を出すというような日程で作業をしたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。   これは,株券不発行制度につきましても,電子公告制度につきましても,後に詳しく申し上げますけれども,制度全体として,できるだけ急いでその実現を図るべきであるという状況にございますものですから,このようなかなり強行な日程での御審議をお願いしている次第でございますので,どうぞよろしくお願いいたします。 ● 今,今後の審議の予定について御説明いただきましたが,それでよろしゅうございましょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,続きまして,早速本題に入りたいと思いますが,株券不発行制度に関するこれまでの経緯と検討課題につきまして事務局から御説明いただきたいと存じます。 ● それでは,株券不発行制度に関しますこれまでの経緯と検討課題について御説明をさせていただきます。資料といたしましては,事前にお送りさせていただきました資料番号の2番,3番,4番,5番の資料を御覧いただきながら私の説明を聞いていただければと存じます。   なお,資料番号5番の株券不発行制度研究会の報告書でございますが,お送りいたしました報告書にメンバー表が落ちてしまっておりましたので,本日,席上にお配りさせていただいております。当部会の委員にも御就任いただいております○○教授に座長をお務めいただきまして,○○教授にも研究会に参加していただいたわけでございます。このようなメンバーで研究会をした報告書が資料番号の5番ということでございます。   それでは,説明に入らせていただきます。   我が国の現在の商法におきましては,株式会社は,会社の成立後,株券を発行しなければならないということになっております。これは商法226条の1項でございます。その例外といたしまして株券不所持制度というものがございますけれども,これは,株券の所持を欲しない株主の側のイニシアチブでもって株券を会社に戻して,それを所持しないという制度でございまして,株式を譲渡しようと思えば株券を譲渡しなければならないという仕組みになっているわけでございます。ですから,株券不所持制度を利用している株主が、株式を譲渡する必要が生じた場合には,会社から株券を戻してもらって,そしてこれを譲渡しなければならないという形になっているわけでございます。   しかしながら,まず譲渡制限会社,これは定款によりまして株式の譲渡につき取締役会の承認を要する会社でございますが,譲渡制限会社につきましては,株式の移転というものはほとんど行われませんし,また,移転するときには取締役会の承認が必要でございますので,有価証券としての株券を発行する必要性は少ないと言われております。そこで,かねてより,譲渡制限会社につきましては株券不発行制度を採用すべきであるとの意見が強かったわけでございます。そこで,昭和50年代に,当部会のずっと前身になりますけれども,法制審議会商法部会が出されました株式関係の試案におきましても,譲渡制限会社については株券不発行制度を採用するということが提言されていたわけでございます。   ただ,これは様々な事情によりましてその後実現しないで今日に至っているわけでございますが,その後,公開会社につきましても不発行制度を採用すべきではないかという意見が非常に強くなってきたわけでございます。   その理由につきましては,部会資料の3番,昨年の中間試案の解説に若干の記載がございます。ページ番号が下に振ってありますけれども,その15ページというところを御覧いただきますと,まず,公開会社の株式であっても,これは株式が転々譲渡されるわけですけれども,そうであっても,投資家や株主自身が株券を交付して譲渡するということが実際上は非常に珍しいということ,つまり多くの投資家は証券会社に株券を保護預かりに出したり,あるいは株券の保管振替制度を利用するということで,現実に手元には株券を保有しておらず,株券の交付や移転なしに株式の譲渡を行っているという現実がございます。したがって,公開会社におきましても必ずしも株式の譲渡について株券は必要ないのではないかというのが一つ目の理由でございます。   もう一つの大きな理由といたしましては,株券を発行するということになりますと,とりわけ大規模公開会社におきましては,発券の費用,その手間が膨大なものになるわけでございます。したがいまして,株券という制度を残しておきますと,企業再編その他をいたします際に非常に多くの経費がかかる,手間もかかるという問題がございます。   更に,3番目の問題といたしまして,これは会社というよりは証券制度全体の問題でございますけれども,株券というものがありますと,そのデリバリーが証券決済において必要になりますので,大量かつ迅速な取引を円滑に行うための障害になっているという指摘が非常に強くなっているわけでございます。具体的に申しますと,現在の証券取引におきましては,取引行為が行われてから最終的な決済が完了するまでに3日の期間が必要なわけでございます。これは株券のデリバリーが必要なためでして,株券をなくすことによってその期間を短くするということができるようになる,それによって証券取引全体が非常に迅速に行える,しかも手間もかからない,費用もかからないということになるわけでございます。   このような事情は何も日本に限ったことではありませんで,先進諸国がそれぞれ抱えているものでございます。そこで,フランスでは数年前に全面的な株券の不発行制度を既に採用されているわけでございまして,各国におきましても同じような動きが進んでいるわけでございます。   こうしたことから,当部会の前身であります法制審議会会社法部会で本年の商法等の改正のための審議を行っていただいたわけですけれども,その審議の過程におきましても,他の事項とあわせまして,株券の不発行制度の導入についての御審議が行われたわけでございます。その結果が,昨年の4月に出されました「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」の中にも出ているわけでございます。これは資料番号の2番として関係部分をお配りしているわけでございますが,この中間試案におきましては,今申し上げましたような事情を考慮して,譲渡制限会社だけではなくて,公開会社も含めた全面的な株券不発行制度を導入するということが提言されたわけでございます。   その方法といたしましては,「第六 株券の不発行制度」の「一 株券の不発行の定め」の更に1でございますが,各会社は定款で株券を発行しない旨を定めることができるという方法を提案したわけでございます。それから,同じページの注1でございますが,株式の譲渡について取締役会の承認を要しない会社は,その株主に対し,振替制度,これは新しく設ける振替制度でございますけれども,その利用の機会を保障するのでなければ定款の定めを設けることはできないというふうにしてはどうかという提案をしているわけでございます。   この中間試案に対しては,いろいろな意見が寄せられたわけでございます。その結果は,本日の資料番号の4番の「会社法制の大幅な見直しに関する各界意見の分析」の中にまとめてございますが,株券不発行制度の導入につきましては,個々の細かい項目につきましては様々な意見をちょうだいしたわけですけれども,全体といたしましては,公開会社も含めた株券不発行制度を採用するということには圧倒的多数が賛成の意見だったわけでございます。   しかしながら,この中間試案に盛り込まれました株券不発行制度は,最終的な要綱案には盛り込まれなかったわけでございます。それはなぜかと申しますと,この中間試案,昨年の4月に公表されたものでございますが,この公表の時点では,当時,社債についての振替制度が検討されておりまして,ちょうどその年の通常国会に社債あるいは国債についての新たな振替制度を設ける法案を法務省と金融庁,財務省と共同して提出するという審議日程を考えていたわけでございます。そこで,中間試案にも,その次の課題として株券の不発行というものが盛り込まれたわけでございますが,しかし,御承知のとおり,社債・国債の振替制度の完成は今年にずれ込んでしまったわけでございます。昨年は短期社債,いわゆるCPでございますが,それについてだけ新しい振替制度が設けられまして,その後,今年の通常国会におきまして,短期社債についての振替制度をより一般化する改正が行われまして,社債・国債全般についての振替制度が設けられるに至ったという経緯をたどったわけでございます。そこで,社債や国債,これは金銭債権でございますが,それよりもはるかに複雑な権利内容を持ちます株式についてのペーパーレスの制度というのは,社債・国債と同時には検討できないものですから,社債・国債についての振替制度ができた段階で,更に,株式というものの特殊性を考慮して制度を検討するのが妥当であろうということで,その後の法制審議会会社法部会の議論によりまして,この株券不発行制度についての検討を更に進めるということは中断されたわけでございます。   したがいまして,今年の商法等の改正の中には株券不発行制度が導入されなかったわけでございますが,株券の不発行制度は,社債や国債に続きます証券の無券面化,いわゆるペーパーレス化の大きな内容をなすものでございますので,先ほど申しました証券決済制度の迅速かつ低廉な処理という観点からも,また,他国もそういう処理のためにペーパーレス化を推し進めているという状況があるということ,それから,我が国の政府全体として経済・社会生活のIT化を進めるという強い政策を打ち出しているわけでございますが,株券の不発行,ペーパーレス化もこの電子化の大きな内容をなすという,そういう様々な事情がございます。そこで,この問題につきましてはできる限り早く立法を行う必要があるということから,本日の冒頭読ませていただきました資料番号1の諮問が,法制審議会におきます今年度の商法改正の答申と引きかえに出されたわけでございます。   なお,中間試案の内容は後ほどまた御説明いたしますけれども,その中には新たな振替制度を設けることが示唆されてはいたのですけれども,その内容は具体的には示されていなかったわけでございます。その御議論を当部会でしていただくことになるわけでございますが,その検討の前提といたしまして,問題点の洗い出しや,考えられる選択肢を検討しておく必要があるだろうと考えられましたことから,先ほど名簿を御覧いただきました株券不発行制度研究会というものを法務省,金融庁で協力いたしまして組織し,○○委員に座長をお引き受けいただいて研究をしたわけでございます。その成果が資料番号の5でございます。   以上のような経緯で今日に至っているということでございます。したがいまして,株券不発行制度の導入につきましては非常に限られた期間に成案を出していただきたいということになるわけでございます。   それでは,引き続きまして,昨年4月に出されました中間試案の内容,それから,それに対する各界意見の状況を御説明したいと思います。資料番号の2と資料番号の4を主として見ていただくことになります。   まず,昨年の中間試案では,先ほど申しましたように,譲渡制限会社に限らず,あらゆる会社が定款で株券を発行しない旨を定めることができるようにしてはどうかということが提言されたわけでございます。これに対しましては,今度は資料4の方を御覧いただきたいと思いますけれども,譲渡制限会社に限定すべきだという意見も一つございましたけれども,ほかは皆さんこういう案で賛成でございました。ただ,早稲田大学の意見の中には,すべての公開会社について株券不発行を強制すべきではないかという意見も出されたという記述がございます。ここの要約は若干,早稲田大学全体で「強制すべきである」としたような要約になってございますけれども,具体的にもう一度頂戴した意見を見てみますと,そういう意見もあったというふうに書かれておりまして,必ずしもメンバーの方々全員がそういう御意見であったのではないようでございますけれども,こういう意見もあったわけでございます。したがいまして,どういう範囲で株券不発行制度を導入するのかということをもう一度御議論いただく必要があろうかと思っております。ちなみに,フランスは,先ほど申しましたように,法律で一律に株券の発行を禁止しているわけでございます。   この点につきましては,先ほど申しました株券不発行制度研究会におきましても議論がされまして,これは資料の5の1ページでございますが,そこのⅡの「株券不発行制度の下における振替制度と株券保管振替制度との関係について」という部分の「第1 すべての公開会社に対し株券不発行制度の利用を強制することの是非」ということで書かれてございます。読みますと,フランスのようにすべての会社について株券不発行制度の採用を強制すること,すなわち会社が株券を発行することを一律に禁止することの是非については,我が国の現状としては,株券不発行制度の強制は極めて困難であって,会社に選択させるのが現実的であるという意見が多数を占めたわけでございます。研究会ではこういう結果だったわけでございますけれども,当部会としてどういうふうにお考えいただくかということを御議論いただければと存じます。   どういう範囲で株券不発行制度を導入するかということは,この研究会報告でも触れられておりますように,現在あります株券保管振替制度との関係をどうするかという問題とも絡むわけでございます。すなわち,すべての会社について一律に株券不発行制度にしてしまえば,もう現在の株券の保管振替制度というものはなくなるということになるわけでございますが,中間試案にありますように、株券を発行するかどうかは各社の判断に委ねるということになりますと,株券を発行し続ける会社は現在の株券保管振替制度を利用し,不発行制度を定款で採用する会社は新しい振替制度を導入する。ある会社が株券の保管振替制度を利用していたところが,定款変更をして不発行制度を導入したという場合に,現在の株券の保管振替制度から新しい振替制度にどうやって移行させていくかといったような問題を検討しなければならなくなるということでございます。   続きまして,また中間試案に戻らせていただきますが,次の2から4までにおきまして,これは,株式併合の場合と同じように,株券不発行の定款変更の決議をした場合には,いわゆる株券提供公告を行って株券を回収するということが提言されているわけでございます。この点につきましては,関係各界の意見は余り出されなかったわけでございますが,出された意見といたしましては,日本鉄鋼連盟が,株券を回収せずに株券不発行制度を採用することができるようにすべきだという意見を出されております。その理由でございますが,株券の回収に膨大なコストがかかる,したがってその回収をできるだけ不要にしたいという理由が書かれているわけでございます。   この問題につきましては,それ以外に具体的な指摘はされていないわけでございますが,この点につきましても株券不発行制度研究会において議論がされております。資料5の10ページでございますが,「第5 実務上の課題についての検討」の「1 株券不発行制度の採用時における株券の取扱い」という10ページから11ページにかけての部分でございます。   株券不発行制度の利用を開始する,つまり定款を変更したときには何らかの公告は要るだろうというのが,この研究会の議論の一致したところではあったわけでございます。これはなぜかといいますと,少なくとも名義書換をしていない株主に名義書換をして新たな振替制度への移行の機会を与えるという,その必要性は絶対にあるだろうという議論になったわけでございますが,しかし,その公告の内容として,中間試案に掲げられておるような株券提供公告ということまでしなければならないのかどうかということにつきましては,11ページにありますように,そういう手続を設けるものとするという考え方と,設けないという考え方の両者の意見が出されたわけでございます。そのような手続を設けないという考え方は,要するに,株式併合の場合には,併合後も新株券によって株式が流通するので,旧株券を流通可能な株券と誤信するおそれがありますから,その回収が必要ということになるわけですけれども,株券不発行制度が採用された場合には,株券による権利流通というのは一切その会社についてはなくなるわけでございますので,特別な手続を用意する必要はないのではないかという意見,あるいは,先ほども日本鉄鋼連盟の意見を御紹介いたしましたけれども,株券の回収を必要とすると発行会社の負担が重くなり過ぎるということから,株券提供公告あるいはその株券を提供できない者についての,その請求による異議催告の公告といったものは設けなくてもいいという意見も出されたわけでございます。そこで,この点につきましても当部会で更に御審議をいただく必要があろうかと思っております。   また中間試案の方に戻らせていただきますけれども,資料2の下の15ページと書かれている部分の注1でございますが,先ほども申しましたように,中間試案では,株式の譲渡について取締役会の承認を要しない会社は,その株主に対して振替制度の利用の機会を保障しなければならないという提案をしていたわけでございます。これに対します意見照会の結果は,これについて意見を述べた者は非常に少なかったわけでございますけれども,明確な反対意見を経団連ほかが述べているわけでございます。それから,ここには反対意見として掲げられておりませんけれども,全国銀行協会も,反対とまでは言われないのですけれども,譲渡制限会社ではないけれども上場公開会社でない会社,それについて株券不発行制度を採用する道を開くべきではないかという指摘をされておられます。この注1は,譲渡制限会社につきましては,定款で定めてさえおけば株券不発行にすることができる,そしてその場合の譲渡の手続は,次の16ページに書いていますように,基本的に,現在の有限会社における社員たる地位の譲渡と同じ形をとるという提案をしているわけでございますが,しかし,転々流通することが予定されている譲渡制限会社以外の会社の株式については,株券を不発行とするのであれば,それと引換えに新しい振替制度の利用の機会を会社が保障しなければならない,こういうことにしているわけでございます。そうなりますと,今度は振替制度の利用対象をどうするかという問題がございますけれども,現在の株券の保管振替制度におきましては,原則的に公開会社以外の会社の振替は扱っていないわけでございます。そうなりますと,先ほど紹介いたしました全国銀行協会の御意見にありますように,譲渡制限会社ではないけれども公開会社でない会社は,結局,株券不発行制度は導入できないということになるわけでございますが,それもやむを得ないというか,それでよろしいということになるのか,それとも何らかの手当てを考えるべきかということを更に御審議いただく必要があろうかと思っております。   それから,次の注2でございますが,会社が数種の株式を発行している場合において,一部の種類の株式に係る株券についてのみ株券不発行制度を導入することができるものとするかどうかは,なお検討するということになっておりました。これについては,賛成の意見が若干出されまして,逆に,反対の意見というものは出されなかったわけでございますが,ある種類の株式だけについて株券不発行というようなものを認めるニーズが本当にあるのかどうか,あるとして,これを認めることに何らかの弊害がないかどうかということを当部会で更に御議論いただければと思っております。   次に注3でございますが,新株引受権証書及び新株引受権証券,これはその後の改正によりまして新株予約権証券になったわけでございますが,その不発行制度を設けるかどうかについても,なお検討するということになっておりました。これにつきましても,寄せられた意見は皆賛成の意見ばかりですけれども,寄せられた数は非常に少なかったということでございますので,更に御審議をいただく必要があろうかと思っております。   次に,株券の不発行制度を採用した会社の株式の譲渡の方法と名義書換をどのようにするかというのは,中間試案の16ページに掲げられております。いろいろ書いてありますけれども,要するに,先ほども申しましたように,有限会社における社員権の譲渡と同じような手続,つまり意思表示のみによって譲渡をすることができる,ただし,その株式の移転は,名義書換をしなければ,会社だけではなくて,その他の第三者にも対抗できない,これは2でございますが,そういう考え方をとっているわけでございます。   それではどのようにして名義書換を行うかというのが3,その効果が4でございます。これは,普通の会社ですと株券がありますので,株券を持っている者は正当な権利者,株主と推定されますので,株券さえ持っていけば単独で名義書換に応ずるということになるわけでございますが,株券不発行会社の場合は株券がないわけでございますので,どのようにして名義書換をするか。会社側からいたしますと,どういう要件で名義書換をすれば免責されるかということにもなるわけでございます。その方法が四つ書いてございますけれども,原則としては,譲渡人である,株主名簿に記載されていた株主と取得者が共同して請求する,いわば不動産登記の場合と同じような形をとるというのが(一)でございます。それから,それができない場合には,株主名簿の名義人の意思表示にかわる判決あるいはそれと同一の効力を有するもの,あるいは公正証書を添付して取得者が単独で請求することができるということでございます。(三)は,相続の場合ですけれども,相続の場合は名義人がもう存在しませんので,相続を証する市町村長等の証明書,いわゆる戸籍謄本等でございますが,それを添付して単独で申請ができる。この(一),(二),(三)は不動産登記の場合と同じでございます。(四),合併の場合,この場合も従前の名義人は消滅してしまいますので,相続と同じように,当該事実を証する登記簿の謄抄本を添付して単独で取得者が請求できるということでございます。これは不動産登記法には明文の規定はございませんけれども,そのように解されているところで,同じ取扱いになるということでございます。要するに,名義書換は不動産登記の場合と似通ったような方法で行うということでございます。したがいまして,名義書換の手間は非常に重くなるわけでございますので,先ほど申しましたように,譲渡制限会社以外の会社が株券不発行制度を導入するためには振替制度の利用を保障しなければいけないというのが中間試案だったわけでございます。   名義書換をした場合の会社の免責でございますが,それが4に書かれているわけでございまして,要するに,3に書かれているいずれかの方法によって名義書換に応じた場合には,会社は,もしも新名義人が権利者でなくても免責されるということでございます。この点については,特段問題点を指摘する意見はなかったわけでございます。しかし,当部会でもう一度,これでよろしいかどうかということを議論していただく必要はあろうかと思っております。   引き続きまして,次の17ページから18ページにかけての,「株券不発行の場合の売渡請求等の特例」,それから「株券の不発行の定めに伴う所要の手当」でございますが,これらは,株券不発行制度を導入した場合に当然やらなければならない一種の整備でございます。ただ,一言申し上げておかなければなりませんのは,17ページの四の2の「登録質」との兼ね合いで,略式質について関係各界からはいろんな意見が出されたということでございます。   略式質の取扱いでございますが,中間試案の解説におきましては,解説もちょうど17ページというページの,五という番号の3行目でございますが,株券不発行制度を導入した会社については,株券の交付のみを要件とする,いわゆる略式質の設定はすることができないこととなる,当然そうなるということを書いていたわけでございます。ところが,これに対しましては,各界の意見におきまして,略式質の関係で特別に株券を発行することを認めるべきであるというような意見,それから,略式質にかわる簡易な担保制度を検討する必要があるというような意見も出されたわけでございます。   そこで,この点については,やはり株券不発行制度研究会で議論をいただいたわけでございますが,その結果が資料5の12ページでございます。略式質について,株券不発行制度のもとで,その需要をどのように吸収するかという問題として議論をしていただいたのですけれども,その検討結果としては,株券不発行制度の場合には,株券の占有関係から株主,質権者その他の権利者を把握するということは全くできないわけでございますので,権利者の氏名を何らかの帳簿(口座簿,株主名簿等)に記録するということにせざるを得ないわけでございます。したがって,略式質に相当する制度を設けることは不可能であるという結論,つまり中間試案と同じ結論が出されたわけでございます。この点についても,そのような考え方でよろしいかどうか,当部会で御議論いただければと思っております。   もう一つ,この四の関係で申し上げておかなければなりませんのは,中間試案の18ページの「6 各種公告制度の適用除外等」でございます。このうちの(一)は,今日席上に電子公告の関係で,会社がする公告にはどのようなものがあるかという一覧表をお配りいたしておりますが,それを見ていただいてもお分かりのとおり,ここに掲げられている公告というのは,いわゆる株券提供公告でございますので,これは株券を発行しない以上は不要になるということになります。これに対して,(二)の関係でございますが,ここに掲げられています公告は,名義書換を促す公告でございます。これも不要とするというのが中間試案でございましたけれども,これはなぜかというと,先ほども見ていただきましたように,株式の譲渡の方法としては意思表示でいいけれども,名義書換をしなければ,会社だけでなくて他の第三者にも対抗できない,こういう形をとるということでございますので,譲渡を受ける側としては名義書換を直ちにせざるを得ない,あるいは,新しい振替制度を利用する場合には,その振替を受けるということでなければ,これは社債の場合などもペーパーレスの制度では導入されていますけれども,振替をしないと社債の権利の移転が起きない,これと同じような形にならざるを得ないわけでございますので,これは,名義書換に相当する口座簿の振替は当然行われるということになります。したがって,振替制度を採用している会社は当然のことであり,また,そうでない会社においても名義書換を促す公告の必要はないのではないかということで,この中間試案が出されたわけでございますけれども,これについては,中間試案を出す際の法制審議会会社法部会の中には,(一)は当然としても,(二)の名義書換を促す公告については,必ずしもこちらが期待しているように直ちに名義書換をするとは限らない場合もあるのではないか,本当にそれでいいのかどうか,もうちょっと議論した方がいいという留保意見もございましたので,その点について更に御審議をいただく必要があろうかと考えております。   それから,中間試案の関係,最後になりますけれども,注5と注6が付されております。「株券不発行の場合の登録質の設定方法については,株式の譲渡方法と同様のものとするという方向で,なお検討する。」というのが注5でございます。注5につきましては特段の反対意見等は出されなかったわけでございます。   これに対して注6,これは,すべての会社について名簿閉鎖期間の制度を廃止するかどうかについては,なお検討するというものでございます。これは株券の不発行制度そのものの問題ではないのですけれども,現在の実務の状況からすると,そもそも株券を発行している会社についても名簿閉鎖期間というのは要らないのではないか,基準日だけで足りるのではないかという問題の指摘でございます。ただ,これにつきましては,意見照会の結果は,反対の意見を述べるものが三つばかりあったということで,注6を特別に取り上げて賛成というような意見を述べるものはなかったということでございます。もっとも,賛成という意見は,全体について賛成というふうにしか述べられませんので,そこの部分をじっくり考えているのかどうかということが分からないということはございますけれども,そういう意見の状況だったわけでございますので,この点についてもあわせて御議論いただければと思っております。   以上が中間試案の関係についての中身と,これに対する各界意見の状況等の論点でございます。   続きまして,資料5の研究会の報告書の中身を御紹介させていただき,またこれに関する論点について御説明させていただきたいと思います。   この株券不発行制度研究会は,先ほども申しましたように,中間試案には株券不発行制度を導入するということは掲げられながら,導入する場合の非常に大きな検討課題となる振替制度については具体的な提案はしていなかったということから,主としてその新たな振替制度がどうあるべきかということを検討していただくために,研究者,実務家,関係機関にお集まりいただいて検討をしたという研究会でございます。   一つ目の,株券不発行制度の下における新たな振替制度と株券保管振替制度との関係につきましては,先ほども若干申し上げましたけれども,中間試案のように,各会社が定款の定めによって株券不発行制度を導入するという形をとりますと,現行の株券保管振替制度もペーパーレスの制度を導入しない会社について併存させざるを得ないだろうということ,これが1ページから2ページにかけてでございます。ただ,その場合,先ほどもちょっと申しましたけれども,ある会社が従前,株券の保管振替制度を利用する株主がいたところ,その会社が定款を変更してペーパーレスの制度を導入するという場合に,現在の株券の保管振替制度から新しい振替制度にどうやって移行させるのか。できるだけ簡便に移行できる方が社会全体にとって望ましいと思われるわけですけれども,そのために,今回新しく検討される振替制度の内容がどうなるかということとの兼ね合いで,現在の株券の保管振替制度についても何らかの改正をする必要があるかどうかということをあわせて検討する必要があるのではないかという問題がございます。このことを,2ページの一番上のところでございますが,二つの振替制度がある程度類似性を持つものでなければ,一方の制度から他方の制度への移行ということは難しいという形で表現がされているわけでございます。   次に,Ⅲの「株券不発行制度の下における振替制度に関する論点」でございます。   振替制度の適用範囲につきましては,上場会社,店頭公開会社について振替制度による株式譲渡を認めるということについてはどなたも異論はなかったわけですけれども,上場会社,店頭公開会社以外の非譲渡制限会社について振替制度の利用を認めるのかどうかということについては慎重な検討が必要だという意見が出されたわけでございます。そうなりますと,先ほど中間試案のところで御説明いたしましたように,振替制度の利用を保障しなければ,譲渡制限会社でない会社はペーパーレス制度を導入できないということにいたしますと,ペーパーレス制度を導入できない会社というものがあらわれてくるということになるわけでございます。   それから,2番目に,発行会社に対する権利行使の在り方が書かれておりますけれども,現在の株券保管振替制度におきましては,各投資家,すなわち口座の名義人が発行会社に対して株主としての権利を直接に行使する,これは「実質株主」という名で呼ばれているわけですけれども,そういう形,いわゆる直接方式がとられております。また,先般できました社債・国債の振替制度におきましても,各口座名義人が社債権者,国債権者になるという,やはり同じ直接方式がとられているわけでございます。これに対しては,アメリカのような間接方式といいますか,セキュリティー・エンタイトルメントと呼ばれるような方式もありますので,その点が議論になったわけですけれども,直接方式というものを今の株券保管振替制度や社債・国債の振替制度と同じように導入するということには特段の異論はなかったわけでございます。ただ,株主権の行使に対して,間接方式にも一定のメリットがあるのではないかという指摘がありまして,そのメリットを何らかの形で入れられないかというような御意見といいますか,御要望もあったわけでございます。   次に,発行会社に対する対抗要件の関係でございます。これは,後で出てまいります単独株主権,少数株主権の行使についての制約の問題と密接にかかわるわけでございます。これは4ページ以下に書いてございますけれども,4ページの(1)の「問題点」というところを御覧いただきたいと思います。   現在の株券の保管振替制度におきましては,この保管振替制度を利用する場合,株主名簿の名義人は,○○委員が所属しておられます証券保管振替機構になるわけでございます。そして,それとは別に,先ほど申しました実質株主をあらわすための実質株主名簿というものが作られて,その実質株主名簿上の株主が直接の権利者として取り扱われるということになっておりますが,その実質株主名簿の名義書換は,保管振替機構からの実質株主通知に基づいて年に2回だけ行われるということになってございます。したがって,期中,その2回の間に口座の振替を受けて権利を取得した人は,次の実質株主名簿の書換が行われるまでは会社に対してその地位を対抗することができないわけでございます。これが現在の株券の保管振替制度ですけれども,そうしますと,期中に権利を行使しなければならない場合,それが単独株主権とか少数株主権ですが,その場合に,その権利行使ができないという問題があるわけでございます。ただ,現在の株券保管振替制度は,株券があるということを前提にしていますので,期中にどうしても権利行使したいという人は,株券の預託をやめて,株券を取り戻して,それで名義書換をして権利行使をすればいい,そういう考え方で現在の制度はできているわけでございます。ところが,今回のペーパーレス制度を導入いたしますと,現在の株券保管振替制度のような,株券を引き出して,そして名義書換をするという方法はとれないわけでございます。したがって,いつの時点で口座の振替を受けて権利を取得した者が会社に対して権利を対抗できるかということは非常に大きな問題になってくるということでございます。   そこで,また戻って2ページを御覧いただきたいのですけれども,ここに二つの案が掲げられております。一つは,先ほど申しました現在の株券保管振替制度と同じような仕組みを維持するという考え方でございます。要するに,実質株主名簿,あるいは,後でA1案,A2案というものが出てきますので,実質株主名簿とは限らないということになるわけですけれども,何らかの,会社が備える名簿の名義書換をした段階で会社に対する対抗要件が具備されるという,現在の制度に近い制度にしてはどうかというのがA案でございます。この利点は,ここにも書いてございますが,発行会社側としては,自ら備える名簿に記載された者だけを株主として扱えばいいわけですので,非常にその点では便宜であるということが言えるわけでございます。しかしこれは,逆に,口座振替を受けて権利を取得した投資家の側にとってみると,期中での権利行使ができないという問題がそのまま残るということになるということがございます。   そこで,B案という案が別途出されまして,振替口座簿の口座振替が行われれば,その段階で会社に対する関係でも対抗要件を備えるという対照的な案でございます。この案は,ちょうど利点と難点が逆になるわけでございまして,投資家にとっては,口座簿の振替さえ受ければ,その段階で会社に対して権利行使ができますので都合がいいわけでございますが,他方,発行会社の側は,株主として取り扱うべき投資家を株主通知によって把握することしかできませんので,その株主通知が直ちに行われないとなると,自らが知らないうちに会社に対抗できる人があらわれるということになりますので,そこら辺の手当てをどのようにするかという問題が生ずるということでございます。   その関係で,先ほどのA案,B案と対応して,単独株主権,少数株主権の行使に対する制約をどのように解消あるいは軽減するかということが議論されたわけでございます。これが4ページ以下でございますけれども,実質株主通知の頻度を上げてはどうか,あるいは発行会社や株主の振替機関に対する実質株主通知請求権というものを認めて,年に2回ではなくて,発行会社が請求すれば,その時点における,一定の時点における口座の名義人を通知し,投資家が請求すれば,当該投資家の分についての口座振替があったということを,実質株主通知をしてあげる,そういうふうにしてはどうかという意見も出されたわけでございます。   更に,A3という案が5ページに書いてございますけれども,単独株主権や少数株主権については,原則を変更して,名簿の書換がされていなくても,口座簿の記録だけで株主の権利行使を認めるということも考えられないかという意見もございました。ただ,この考え方には,難点として,口座簿の記録だけでは対抗力がないという,そういう考え方をとりながら,期中の株主権の行使だけは別扱いにするということが理論的に説明できるのだろうかというような問題点の指摘もあったわけでございます。   それから,逆に,口座簿の名義書換でもって会社に対抗できるという考え方をとれば,この単独株主権,少数株主権の問題は一気に解消されるということになるわけでございます。ただ,この案をとりましても,一番下の(難点)の②というところを御覧いただきたいのですけれども,一人の株主が証券会社Aの自分の口座から証券会社Bの自分の口座に振り替えたような場合には,株主の同一性が確認できないという問題はなお残るという指摘があったわけでございます。それに対しては,更に米印が書いてございますけれども,加入者の一覧表,加入者番号というようなものをつけるというようなことはどうかという意見もあったわけでございます。   以上,振替制度を利用して口座振替をする,そういう株主の権利行使の兼ね合いで会社との対抗関係をどのようにつけるかという問題でございましたけれども,他方,振替制度の利用の機会を会社側が保障したといたしましても,自分は権利の移転はしないので振替制度は利用したくないという株主も生じ得るわけでございます。今の株券不所持制度を利用している株主に似たような立場と言ってもいいかと思いますが,そういう株主の取扱いをどうするかというのが6ページからの3でございます。   これも幾つもの案が分かれておりますけれども,大きく分けまして,振替制度による株式の流通を希望しない株主については口座開設はしないという考え方と,そういう株主についてもすべて振替口座簿を作るという考え方の二つの考え方に分かれるわけでございます。時間の関係でそれぞれの細かい内容は報告書を御覧いただきたいと思いますけれども,それぞれに利点と難点があるということで,ここら辺の,今申し上げましたような,以上の点についてどう考えるかということをまずお決めいただく必要があろうかと思います。   それから,その他の問題でございますけれども,第4に階層構造の採用がございます。これは,先般の通常国会で成立しました社債・国債の新たな振替制度,これは多階層構造を採用しておりますので,証券決済制度の統一という観点から,株式についても多階層構造をとるべきであるというのが一致した意見だったわけでございます。   次に,8ページに入りますけれども,2の,過大記録に伴う善意取得が生じた場合の責任の分担でございますが,ここは現在の株券の保管振替制度と社債の振替制度の異なるところでございます。現在の株券の保管振替制度は,全参加者が連帯責任を負うという形になっておりますが,先般成立しました社債・国債の振替制度におきましては,過大記録をした機関のみが消却義務を負って,それが果たされないときには,その機関の傘下にある投資家のみが,保有する社債あるいは国債が一定限度会社に対抗できなくなって,いわば減縮する,そういう考え方,これはパーテーションなどとも実務上呼ばれていますけれども,そういう制度が導入されたわけでございます。そのいずれがよろしいかということでございますけれども,研究会では,新たに導入された社債・国債の振替制度と同じようなパーテーションを導入すべきであろうということになったわけでございます。   ただ,この場合,社債の場合には,消却ができなかった場合に備えまして基金という制度を金融庁でお作りいただいたわけでございますけれども,株式の場合にどういうふうにするのか,当該過大記録をした機関が消却できなかった場合にどのようにするかという問題がやはり同じように生ずるわけでございます。そこで,その過大記録をした機関の下位にある機関にも連帯責任を負担させるべきではないかというような議論もあったわけですけれども,そこは時間の関係で詳細な議論はされなかったということが書かれております。   それから,この過大記録関係の場合の,先ほど申しました過大記録をした機関が倒産その他によって義務を履行できない場合に,一体,権利関係をどのように処理するのかというのが8ページの以下の3でございます。ここにもいろいろな案が示されておりますけれども,時間の関係でそれを御説明することは省略させていただきますけれども,こういう問題について議論を深めていただく必要があるということでございます。   あと,実務上の課題については,先ほど申しました,株券不発行制度を採用する際の公告をどのようなものにするかというような問題がございますが,もう一つ問題として,外国人株式の問題というのがございます。これは11ページの2ですが,これは,放送法などの適用を受ける会社について,外国人保有株式数が一定限度に制限がされているわけでございまして,その方法として,株主名簿,実質株主名簿の書換についての数量制限というものがとられているわけでございます。これが,ここに書いておりますように,保有株式数を一元的に把握することができないために,その数量制限を遵守するということが困難で,実務上非常にややこしい問題が起きているという指摘が前からされているわけでございます。ただ,この問題につきましては,研究会におきましては,振替制度の側でその問題を解決するのは困難であって,当該外国人等の株式の制限をしている個別法の方で何らかの工夫をしていただく以外に方法はないだろうということになったわけでございます。この点についても,それでよろしいかどうかということを確認させていただきたいと思っております。   御説明が長くなりましたけれども,以上で説明を終わらせていただきます。 ● ただいま事務当局の方から,株券不発行制度に関するこれまでの経緯と検討課題を御説明いただきましたが,少し時間がありますので,この検討課題について皆様の御意見あるいは御質問でも結構ですが,いただければと思います。ただ,ちょっと時間が,後の電子公告の関係もありますので,あまり今日は詰めた議論はできないかと思いますが,ただいま検討課題を説明いただきましたが,あるいは漏れている検討課題もあるのかもしれません。そういう問題は,もしありましたら是非早く出していただいた方が後々の審議には助かりますので,積極的な御発言をいただければと存じますが,いかがでしょうか。どの点でも……。 ● 略式質につきまして1点御意見を申し上げさせていただきたいと思います。   まずもって,この株式不発行制度につきましては,決済リスクの削減とか,あるいは世界に比べて遅れていると言われている決済制度に追いつこうとか,更には社振法の平仄とか,この立法化については,やはり私ども,速やかに御努力いただきたい,このように考えておるところでございます。   そういう観点から申しますと,基本的にたくさんの会社が株式不発行制度を採用すべきような枠組みにすべきだ,このように考えておるところでございます。   そう考えましたところで,私どもは銀行という立場で申し上げると,略式質をどうするのかというのがやはり大きな問題点になってくるのかなと。略式質が採用できないのは,基本的にはこれは現物がありませんから占有権がないということで,これは当然のことでございますが,基本的に,例えば,今,新法制ができた後で,多分質権を設定できるのは,口座振替移転完了後みたいな形になると思いますから,ほかのところに登録していたところについては,そこと違う金融機関で資金需要が発生した場合は,お客様がどのような担保物の現物を持っているとか,あるいは当該銘柄がどうだとか,それは全く分からない。そういたしますと,金融機関の立場からしますと,例えば中小企業なり個人のお客様がすぐに金融を受けたいみたいな話があって,その担保物が実はほかの金融機関を通して移転登録をしている場合は,その特定すらできないということで,円滑な金融についての妨げになるリスクがあるのではないか。そういうリスクがあるゆえに,上場企業の法人が株式不発行制度をためらうようなことが出てくるのではないか,こういう危ぐがあります。ここで,最終ページの論点のところで,「略式質に相当する制度を利用することができないこととなるが,これは,株券不発行制度を採用する以上やむを得ないというべきである」とバッサリ切られているわけですけれども,そうおっしゃらずに,是非これについての何らかのかわるべき制度はないのかということは引き続き御検討いただいたら,私ども,幸いだなと。それが中小企業なり個人のお客様に対する円滑な金融を果たすというためにも公共の福祉に資するものではないか,このように考えているところでございます。 ● 今のは御意見かと思いますが,何かお答えはありますか。 ● そういう御意見は,中間試案の段階でも全銀協からも頂戴しているということは先ほども御説明したところでございますが,一体そういう略式質に相当するようなものというのはどんなものが考えられるのかという,そこが正に問題だろうと思うのです。研究会でも,どうもそういうものは考え難い,もう口座の振替以外には方法はないだろうということになったわけで,何か名案があれば是非お聞かせ願いたいと思います。 ● もし是非設けたいというのであれば,今後,是非積極的な,こういう制度がいいということを,アイデアをお出しいただければと思います。   ほかの点,どうぞどの点でも。 ● これは後ほどの資料でも結構なのですけれども,今の御説明を頂戴いたしましたところ,過大記録というものの御説明がございました。一見私のイメージでは,商法の枠組みではなかなかなじみにくい概念規定というふうに,私,率直に受けとめております。内容についてまだ理解が行き届いていないということは当然ございます。   前の研究会のときには過大記録についての御研究といいますか御審議が行われたというふうに伺っておりますのですが,私ども,実は発行会社の仲間とも何人か議論したのですけれども,保管振替制度に入りましてほぼ10年近くたつわけでございますけれども,これまでも実質株主通知の受理の際に,過大ないしは過小といったような概念規定というのは,正直申しまして全く耳にした記憶がないものですから,そして,今の御説明をお聞きしますと,今後の御審議ではかなりなウエートを持って過大記録の問題というものを,所与のものとしてどうこれに対応していくかというような御議論がなされるやに予測されるところでございますけれども,もし何か従前の御審議で資料等がございましたら,後日で結構でございますので御提供願えれば,私なりにまた深めることができるのではないかと思いますので,お願いしたいと存じます。 ● 今,資料というお話がございましたのですけれども,今,○○委員がおっしゃられたように,過大記録というもの,これはそうめったやたらと起きるわけではないことはおっしゃられたとおりだと思うのです。むしろ起きてはならないことなわけですけれども,コンピュータを端末で操作して口座を書き換えますものですから,何らかのミスでゼロが一つ多くなってしまうというようなことが絶対起きないかというと,そうとは言い切れないわけでございます。これを過大記録と呼ぶわけで,実はもう現在の株券の保管振替制度もそういうものがあり得るという前提で,いわば無から有が生ずるような善意取得というものを認めております。そして,その場合に,全参加者がその補てんを行う,消却という言葉ですけれども,それを行うという制度になっているわけです。社債・国債の振替制度の方もやはりそういうことが,そうめったやたらと起きるとはもちろん思っていないわけですけれども,そういうことが万が一起きた場合に備えた規定を設けている,こういうことなのでございます。ですから,既にそういう制度が設けられている以上は,株式についても,ペーパーレス化をする場合であっても,そう頻繁に起きるとは毛頭思っておりませんけれども,万が一起きたときのための規定というのは,社債や国債と平仄を合わせて何らかの形で設ける必要があるということでございます。 ● よろしゅうございますか。   過大記録の問題というのは,それがあり得るということを前提にした制度を作るということになりますと,どの範囲の会社にこの振替制度を適用していいかということにも関係してきますね,恐らく。この構想されている制度だとすると,そういうことが生じた機関が責任を負って株式を取得するということなのですが,公開会社以外だとそんなこと簡単にできるのかという問題もあるようにも思いますし,いろんな論点にかかわってくるのではないかというふうに思います。   ほかにいかがでしょうか。   最初に伺えばよかったのですが,○○委員,株券不発行制度研究会の座長を務められましたが,何か付け加えて,検討課題につきまして何かありますか。 ● 特に課題は,今のところ,こういう報告書のとおりではないかと思いますけれども,議論を聞いておりまして,一つは,システムがどのぐらいのものが構築できるかという点があります。これはお金の問題。そういう問題と,今の過大記録の問題もそうでありますけれども。社債までの電子振替の場合は,しょせんお金の問題といいますか,金銭債権の問題として処理できるのですけれども,株式の場合は,株式という,金銭債権ではない,コーポレート・ガバナンスにも関係する問題ということで話が非常に複雑になってきてまいりまして,例えば報告書の8ページあたりで,株主の権利の行使についていろいろ案を考えたのですけれども,どうもこれはまだ決定的な案には至っていないのかなというのが私の個人的な感想でございます。これからもいろいろお知恵を借りられればいいかと思います。 ● ほかに,どの点でも……。 ● 委員の構成からいたしまして,中小企業の仕事に携わる,更には裁判実務の関係者の方が余りいらっしゃらないようですので,一言,希望ということで発言させていただきます。   裁判実務で株券が問題になる場合は,特に中小企業の商事の訴訟というのは,多くの場合,相続の実態があるわけですけれども,そうなりますと,株券が発行されていないものが多い。それは,ある意味で現状を法律的に認めるということになるのかもしれませんけれども,そうなりますと唯一のよりどころが株主名簿ということになるかと思いますが,では株主名簿がきちっと整備されているのかということにつきましては,正直言いまして,我々,病理的な部分を扱っておりますのであれですが,株主名簿すらない,例えば税理士さんのところに預けているとかいうような形で,株主名簿すら出てこないという現状がございます。そういう現状も踏まえて,今後,株主名簿が整備される方法についての,既に何らかの形で強制はあるわけですけれども,その点も御検討いただきたいというふうに思っております。   それと,少し矛盾する方向の話かもしれませんが,今回,名義書換で,いわば不動産登記に準ずるような方式の御提案をいただいておりますが,御配慮いただきたいのは,登記官と異なりまして,株式の名義書換担当事務というのは,一般の,通常の事務の一環でなされております。そのようなところで行われています株主名簿の名義書換について,会社の方でどの程度のことをすれば免責されるのかという点については,やはり専門の登記官とは異なる部分があるのだろう。その点についても御配慮いただいた議論をしていただければと考えておりますので,よろしくお願いいたします。 ● 中小企業の問題は私もずっと気になっておりまして,とかくこういうところでは大企業を前提にした議論しかなされないのですが,例えば中小企業で,内紛があるような会社で,株主が株券は持っていないという状況になったときに,株主名簿は内紛の一方当事者が握っているわけで,本当にそれで大丈夫なのかなという気はしております。有限会社は今までもそうなのですが,有限会社でそういう,勝手に社員名簿を書き換えられたというような訴訟は余りないのですけれども,これはちょっと奇跡的な,なぜないのか私はむしろ不思議に思っておりまして,ないのは奇跡ではないかと思っているのですが,そういう中小企業の問題というのは,まだちょっといろんな問題があるのではないかという気はしておりますので,是非この点も,特に○○委員,それから○○委員の方々,改めて御検討いただければというふうにお願いいたしたいと思います。   ほかの点いかがでしょう。 ● 次回どうしても予定が入っていて参加できないので,一言申し上げさせていただきます。   最初の,フランスのようにすべての会社に発行できない,我が国の現状としては困難である,そこで選択させるのが現実的だという御意見になっているわけなのですけれども,我が国の現状としてはという理由ですけれども,恐らく平成14年の改正にしましても,委員会等設置会社にしましても,大会社という概念を基本にしてやっておりますので,やはり商法から物事の発想がいっているなと。そうしますと,これは公開会社は全部強制するとかではなくて,そこまでやる必要はないだろうと。そうしますと,譲渡制限もなくて,公開もしていない会社の場合も,これは選択でいいだろうと。そうなりますと,大して必要のないものについても株券不発行になって,またいろんな問題が出てくるということになろうかと思います。   今回のこの問題というのは,やはり商法の概念から物事がスタートするのではなくて,マーケットというか,証券市場のスムーズな,円滑な処理といいましょうか,そこから話がスタートしている話ではないかな,そういう感じがします。大体,会社法のいろんな概念も証券市場が変化するとともに変わってきたのだというふうに私は思いますし,ですから,そもそも私的自治だとか商法だとかというところから話をスタートしていって,商法,それから大会社法,そして有価証券報告書提出会社,こういう理論でいくのか。証券市場での決済ということが中心で,そこから話がスタートしていって,その限度で合理的な処理ができればそれでよいというふうに考えるのかというあたりが結構大事かなと思うのです。   それから,選択といいましても,選択させるメリットというのが,公開会社の場合は何なのかなと。例えば,委員会等設置会社ですと制度間競争みたいなものがあるかもしれませんし,それから,取引所ですと市場間競争というのがあるかもしれませんが,決済機関間競争というのはないだろうと思います。ですから,そういう意味では,選択させるメリットというのはどういうところを考えられたのか。つまり,現状として困難だということと,選択させることのメリットといいましょうか,その辺どんな議論がなされたのかということをちょっとお聞きしたいと思ったのですが。 ● これはどなたにお答えいただくのがいいのでしょうか。 ● まず私から若干御説明させていただきまして,○○委員あるいは○○幹事に補足をしていただければと思います。   まず,どういうふうな発想で議論したかといいますと,別に商法から始めて議論をしたわけではなくて,この研究会,どちらかといえば証券実務に携わっておられる方々が多かったものですから,率直に証券実務家の感触として,今の段階でフランスのようにすべての会社,あるいは上場会社でもいいのですけれども,そういう一定の会社に強制的に株券不発行を導入するというのはどうかということを議論していただいたわけでございます。というか,むしろ,あるメンバーの方から,そういうフランス型の制度を導入するということはできないものかという御発言があって議論になったわけですけれども,私もちょっと細かい議論はよく覚えておりませんけれども,実務上やはり株券を残して,先ほど○○委員がおっしゃられたことも一つの重要なポイントなのかもしれないのですけれども,株券を残しておきたいという株主が相当いる会社もあるのではないかという御指摘がございまして,証券の迅速な決済という観点からは,全部株券不発行にしてしまった方が便利は便利なのですけれども,それはちょっと今の段階では国民のコンセンサスは得られないのではないかというような議論になったというふうに記憶しております。 ● そういうことだと思います。要するに,制度を移行するときの手間というかコストというのでしょうか,それが非常に大きいというようなこともあって,一概に全部の会社に強制できるのでしょうかという発想ではないかなと思うのですが。 ● もちろん,私が申し上げているのは,すべての会社という意味ではありませんで,証取法適用会社という意味で申し上げているのですけれども。 ● ついでにお伺いしますが,○○委員は,公開会社の場合,会社に選択の自由は認めない,それから,株主に振替口座簿は作るかどうか,この自由はいかがなのですか。これも自由は認めるべきではないと。 ● 私,初めてこの会議に出させていただくことになりまして,この研究会の資料をいただきまして,こんな検討をしているのかと思って,知恵熱が出そうな雰囲気になったものですから確たる意見はないのですけれども,ただ,公開会社の場合の決済の持っている公益性というのは,公開会社を選択した以上は,それはやはり優先するのではないかという気はしたのですが,ただ,確かに日本の今までの会社法の考え方というのは,やはり私的自治といいましょうか,会社自治といいましょうか,そういうところから話がスタートしていますので,いきなり変えるというのは結構しんどいかなと思うのですけれども。 ● 東証の立場としては,流通市場という観点から御意見とか御希望を申し上げた方がいいと思うのですけれども,私ども,ここの中で,一律に株券不発行にしていただくことが望ましいと言っているわけでございますが,その背景といたしましては,私ども今,実際のところ2,150社ぐらい上場会社がございます。仮に選択制にした場合に,不発行を採用する会社と,引き続き発行を採用し続ける会社と二つあるわけでございます。そうしますと,売買制度にせよ決済制度にせよ,いろんなところで二つの制度が併存してくるということになるわけでございまして,これによって投資家のところにどれくらい,流通市場全体に混乱が生じるか生じないかというのは,これは非常に,いい意味で不発行を採用している会社の方に寄せられていけば,制度としてこれはいいと思うのでございますけれども,しばらくの間,制度が併存するということになると混乱の可能性があるのではないかということで,一律が望ましいのではないかというふうに述べさせていただいたわけでございますけれども,ただ,そこはいろいろと,今の株券の発行を前提とした制度の中で種々の課題との比較考量だと思いますので,私ども,上場会社がすべて,例えば規則で縛ってすべて不発行にしなければいけないというところまでは,当然のことながら考えていないわけでございます。   もう一つは,私ども,今,上場会社の方々に対して個人株主の拡大策というのをお願いしているということがございまして,その場合,当然のことながら,投資単位の引下げということでお願いしているわけです。その場合に,株券の発行コストというのが相当今上場会社の方々に御負担になっているという観点から,不発行ということが非常に望ましいのではないかということでございます。   あと一つは,これは御配慮していただければということでございますけれども,正に今の株主が現行の制度よりも利用しづらいような制度になっては,これは後退だと思いますので,その辺のところを御検討の際に御配慮いただければというふうに考えております。 ● ちょっと感想のようなことで大変恐縮でございますけれども,私どもは現在,証券保管振替機構ということで,いわゆる振替機能を担っておるわけでございますけれども,私どもとしては,次回以降,実質的な審議が行われるということでございますけれども,早期に不発行に関する法制が整備されるということは是非とも必要であるというふうに考えております。   ただ,やはりその場合に,これは今日も何人かの委員の方がおっしゃっておられるわけでございますけれども,投資家,発行会社,更には証券会社,銀行,更に私ども,要するに効率的で使いやすいものをつくっていくということが一番大事なのではないかというふうに思っておるわけでございます。次回以降,そういう観点から,私ども,現実の実務がどうなっているか,あるいはこれからどういうふうにすべきかという御意見を申し上げたいと思っております。   それから,恐らくそのときに私どもに関連して一番大きな問題になりますのが,先ほど○○委員からもお話をいただきました,システムというお話をいただいたわけでございますけれども,実際の実務的な対応でありますとか,あるいはコンピュータシステムの対応という,ここが恐らくこの在り方を探る上では非常に大きなファクターになるであろうと思っております。そこのところ,残念ながら今の状況は十分に対応できるようなものになっていないわけですけれども,何ができるのだろうか,これは私どもに限るということではございませんで,今日も御出席をいただいております東証でありますとか,あるいは銀行,信託銀行あるいは証券会社の皆さん方とも関連する話でございますけれども,そこら辺のところもまた積極的に議論に参加させていただきたいと思っています。   それから,時間がないところで恐縮なのですけれども,1点教えていただきたいのですけれども,法制審議会で並行いたしまして間接保有証券準拠法部会が開催されておるわけでございます。実は私もあちらの方に出席させていただいておりますけれども,あちらの方の準拠法の話については整理をされるとして,いずれ国内法についてどうするかという議論が行われるわけでございますけれども,その議論と,それから本部会における検討,ここのところはどういうふうに現時点において理解しておけばよろしいのでしょうかという,そこのところをちょっとお教えいただけますでしょうか。 ● それでは,最後の点,事務当局からお願いいたします。 ● 今御指摘のように,法制審議会には間接保有証券準拠法部会という部会が別途ございまして,○○委員にもその委員になっていただいているわけでございますが,この部会は,現在,ヘーグ国際私法会議において策定作業が進んでおります間接保有証券の準拠法に関する条約に対応するための部会でございます。したがいまして,講学的な分野といたしましては,国際私法という準拠法の問題ということになるわけでございます。将来,その条約が無事できるとなりますと,その批准をするのかどうか,その批准をする場合に国内法をどうするのかということを考えなければなりませんけれども,当面は,この条約は準拠法だけを定めるものですので,準拠法が日本法になる場合には,今回の新しい株券の不発行制度ができれば,その関係の法律の,私法の部分の規定が適用されるという関係になるというだけのことでございますので,当面はヘーグ条約のことはお考えいただかないで,日本として新しい制度を設けるときに,今正に何人かの委員がおっしゃられましたように,どういう制度を作るのが関係者すべてにとって望ましいのかということ,そしてまた,システム的に対応可能なのはどこまでなのかという,そこを見きわめていただくことに集中していただければと思っております。 ● ○○委員,よろしゅうございますか。   それでは,大体予定した時間になりましたが,ちょっと時間がなくて意見を言いそびれたという方もおられるかもしれませんが,次回以降も基本的な点につきまして御発言いただく機会もあろうかと思いますので,一応この検討課題に関する本日のディスカッションはこれで終えさせていただければと思いますが,よろしゅうございますか。どうしても一言という方がもしおられましたらあれですが,よろしゅうございますか。   それでは,休憩をとりたいと思います。           (休     憩) ● それでは,審議を再開したいと思います。   もう一つのテーマ,電子公告制度につきまして,これまでの経緯と検討課題の説明を,これも事務当局からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ● それでは,電子公告の方の御説明をさせていただきます。見ていただく資料は,資料番号2番から4番までの資料でございます。   電子公告につきましても,先ほどの株券不発行と同じように,平成12年から審議がされました法制審議会会社法部会でも審議がされたわけでございます。これまで,株式会社の場合には,公告は定款に定める官報若しくは時事に関する日刊新聞紙に掲載してしなければならないということになってきたわけでございますが,インターネットの発達によりまして,官報,日刊新聞紙以外の,いわゆる電子公告というものも認めてよいのではないか,その場合,電子公告を利用することによって,現在,債権者保護手続などの公告では個別催告といったものが別途要求されているものが多いわけでございますけれども,その省略ができないかというようなことが議論になったわけでございます。   その途中の経過が中間試案の中に出ているわけでございます。これはページが出ておりませんけれども,後ろから2枚目が,株式会社の公告の電子化と有限会社の公告の電子化でございます。   まず,株式会社の公告の電子化でございますけれども,中間試案では,株式会社は,第166条第4項の規定にかかわらず,これは要するに官報,日刊新聞紙による方法以外に,いわゆる電磁的な方法によるもので法務省令で定めるものによって公告をすることができるものとするということにしていたわけでございます。   そして,2でございますが,現在,官報と日刊新聞紙の双方で公告をすれば個別催告を要しないとされております合併公告等につきましては,官報と電子公告という組合せによっても個別催告を要しないとしてはどうかということが,この一の2に掲げられていたわけでございます。   なお,注1にございますように,公告の具体的方法としていかなる限定を加えるかについては,なお検討するということになっておりましたし,また,注2にありますように,情報格差の問題,いわゆるデジタル・デバイドでございますけれども,これについても,なお検討するということになっていたわけでございます。   有限会社の公告の方は次のページでございますが,これにつきましても,合併等の官報と日刊新聞紙の双方の公告をすれば個別催告を要しないという規定が設けられているものにつきまして,官報と電磁的方法という組み合わせによっても個別催告の省略ができるようにするという前提で,その電磁的方法による公告について登記しなければならないということをこの試案は掲げていたわけでございます。   なお,資料に,その後の「資本減少手続の合理化」のところを挙げておりますけれども,資本減少手続の合理化といたしまして,その注2で「資本減少の場合を含む商法中の債権者保護手続の全般について合理化を検討すべきであるとの意見があるが,どうか。」というのが掲げられておりますが,これは,要するに,合併等若干のものにつきましては,先ほど申しましたように官報と日刊新聞紙という二つの公告をすれば個別催告が省略されることになっているわけでございます。どれがそうなっているかというのは,今日席上に「会社が行う公告の種類・内容」という資料をお配りしてございますが,そこに書いてございます。個別催告の省略が認められているのは,合併と吸収分割の場合ですけれども,吸収分割につきましては承継会社の側に限られるということになっておりまして,個別催告の省略が認められていないものというのが,ここに掲げられておりますように非常にたくさんあるわけでございます。そのほかにも,2ページ以下に書いてございますように,公告の方法として官報公告は要求されていないのですけれども,通常の公告,つまり定款で定めた官報若しくは日刊新聞紙による公告のほかに個別通知をしなければならないとされているものも多数あるわけでございます。   このうち,中間試案の先ほどの「資本減少手続の合理化」の部分の注2は,要するに,個別催告の省略が現在認められていないものについても個別催告の省略ができないものかと。これは,個別催告というのが特に大きな会社にとっては非常に大変なことですので,その省略を合併と吸収分割の場合の承継会社以外にも広げられないかという問題意識でこの注が付されているわけでございまして,その具体的な方法として,当時考えられておりましたのは,電子公告を利用する場合には個別催告の省略を,今それが認められないものについても認めるということでありまして,このような取扱いをすることが可能かということを更に検討しようということでこの注が付されていたわけでございます。ただ,当時,どういう組み合わせで個別催告あるいは個別通知の省略ができるのかという細かいところまでは議論はされなかったわけでございます。   それに対する意見照会の結果は部会資料の4番にございますが,電磁的方法による公告を行うことにつきましては,先ほどのデジタル・デバイドの問題,あるいはセキュリティーとか情報の享受者の簡便性の点から問題があるとして日本新聞協会が反対意見を述べられたわけですけれども,それ以外はすべて賛成意見だったわけでございます。   ただ,どういう公告であればこれを認めるのかということにつきましては,例えば自社のホームページは妥当でないという意見があったわけでございます。それから,先ほど申しました個別催告,個別通知の問題につきましては,官報と電磁的公告を併用することによって個別催告を不要とするのは時期尚早であるという意見があった反面で,一番後ろの「資本減少手続の合理化」の方に掲げられている意見,経団連の意見でございますが,公告の利便性,実効性を高めることによって個別催告を省略すべきである,こういう意見も出されたところでございます。   中間試案の段階ではそのような状況だったわけですけれども,これも株券不発行と同じように,その審議が中断されて,要綱には掲げられないで終わったわけでございます。それはなぜかと申しますと,実は,今,官報公告があるわけでございますが,官報につきましては,今日○○関係官においでいただいておりますけれども,既に電子化の動きが進んでいるわけでございます。当時から進んでいたわけですが,今はいわば試行ということで電子官報ともいうべきものを出しておられるわけでございます。それが将来的にはきちっとした法的な位置づけのもとに電子官報ができるのではないか,ただ,それがいつになるのかはっきりしないという状況がございまして,電子官報というものができるのかできないのか,これがほかの制度を考える上で前提となってくるわけでございますので,そこが決まらないとそれ以上の検討ができないということから,公告の電子化一般については見送られたわけでございます。そして,平成13年の秋の臨時国会での改正で,計算書類の公告に関しては自社ホームページ等による電子的な公開という方法が認められましたけれども,それ以外の公告の電子化については,当時の会社法部会では将来の検討課題という形にされたわけでございます。そこで,今年の商法等の改正の要綱の答申がされましたときに,資料1にあります法務大臣の諮問があわせて行われまして,引き続いてこの問題も株券不発行の問題とあわせて,できるだけ早急に結論が出るように審議を進めていただく,こういうことになったわけでございます。   これは,最初にも申しましたけれども,政府全体のIT化の推進という中の重要な項目の一つになっているわけでございます。したがいまして,これもできるだけ早く法制化を図る必要があるということでございます。   したがいまして,これから御審議いただく内容でございますけれども,まず,新聞協会の意見のように,デジタル・デバイドの問題というのをどのように考えるかということ,そもそも電子公告というものを認めるのか認めないのかというのが出発点になろうかと思いますけれども,しかし,この点については,従前の会社法部会での御議論では,今認められている官報とか日刊新聞紙による公告,この発行部数とインターネットに接続している利用者の数は,比較にならないぐらいインターネットの方が多いというのが現実でございます。したがって,これは一種の割り切りの問題でございますけれども,デジタル・デバイドということを理由に電子公告を認めないという必要はないのではないかという意見が大勢を占めていたというふうに理解をしているところでございます。それでよろしいかどうかをまず御審議いただければと思います。   そして,電子公告を認めるとした場合に,それでは,電子公告を認める範囲をどこまで認めるのか。先ほども御紹介しましたように,自社ホームページはまずいのではないかという意見もあったわけでございます。そこで,どの範囲に,しかもどのような形で電子公告を認めるのかということを御審議いただく必要がございます。中間試案では,法務省令で定めるという形でそこをいわばオミットしていたわけですけれども,ここが決まりませんと実質の電子公告がどういうふうに認められるのかというのが決まりませんので,そこを御議論いただく必要があるということでございます。   なお,事務当局の内部でも議論しているところなのでございますが,法務省令で定めるという方法は実務上非常にしにくいのではないかというふうに今のところ思っているわけでございます。と申しますのは,法務省令で一定の要件,例えばどんな設備とか,物的な設備,人的な設備,セキュリティーとか,いろんなことを規定しようと思ってできないわけではないかもしれませんけれども,それ自体非常に困難が伴うということが一つございますが,仮にそれができるといたしましても,そういうものを備えておれば自動的に電子公告として認めるということになりますと,そういうものを備えている機関なのかどうかということを,電子公告を依頼する会社側が判断しなければいけないということになってしまいますので,そうなりますと,もしもそういう要件を備えていない機関,公益法人なり会社なりということがあり得るわけですけれども,そういうところに依頼して公告を出しても,その公告が無効になってしまうという問題が起きるわけでございます。ですから,法律あるいは省令など,何らかの法令で要件を定めて,その要件に適合するものを認めるという方法はあまり好ましくないのではないかというふうに思っておりますので,そうであるとすると,別の方法としてどんなものが考えられるのか。そもそも自社ホームページでもいいということになれば要件はほとんど限定されないということになるわけですけれども,実質としてどうあるべきかということとあわせて,その実質を備えているかどうかをチェックする方法をどのようにするかということも御審議いただく必要があるということでございます。   なお,その御議論の際には,後で○○関係官から御説明をいただく予定になっておりますけれども,官報についてどのような動きになるのかということも踏まえて御議論をいただく必要があろうと思います。官報も電子官報ということになりますと,それ自体が一つの電子公告ということになりますので,そこを踏まえて御議論いただく必要があるということでございます。   それから,電子公告の効果の問題といたしましての個別催告あるいは個別通知の省略の問題ですけれども,それをどこまで認めるのか,あるいは,どういう組合せであれば認めるのか。先ほど見ていただきました中間試案では,現在,個別催告が省略できるとされているものについて,官報と電子公告という組合せをすれば,それでも個別催告は省略できる,こういう形にしているわけですけれども,それ以上どこまで広げるのかというのが一つの問題でございます。   もう一つの問題は,官報自体が紙の官報と電子官報と両方あるわけです。後から御説明いただきますけれども,今,印刷局の方でお考えなのは,一つの入稿がされると自動的に紙の官報と電子官報が出されるという仕組みをお考えになっておられるようでございます。そうすると,官報自体が紙と電子という二本立てになるわけでございます。そうなりますと,中間試案では,官報と電子公告を組み合わせれば個別催告が合併などでは省略できるということになっているわけですけれども,その考え方を今検討されている官報の将来の取扱いに当てはめますと,もう官報だけでいいということになるわけですけれども,それでよろしいのかどうかということを御議論いただく必要があるということでございます。   それから,現在,個別催告の省略が許されていない公告あるいは個別通知が必要な公告について,どういう要件で,つまり公告の組合せをどういう組合せにすることによって個別催告の省略を認めることができるのか,あるいはできないのかということも更にその先として進んで御議論いただければというふうに考えております。   とりあえず私の説明は以上でございます。 ● それでは,皆様から御意見をいただく前に,○○関係官から電子官報制度の創設に関する検討状況について御説明いただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。 ● 御用意させていただきました資料を確認させていただきますが,まず「法制審議会用資料」という,「開示」と書かれたA4の横のもの,6ページございます。それから,印刷局でつくっています決算公告用のパンフレットなのですけれども,実は,4月1日に商法が改正されていますので,正誤表を入れさせていただいております。赤字でコピーしてあるところが今回変わったところですので,現在作り直しておりますが,今日間に合いませんでしたので,正誤表で御勘弁願いたいと思います。それから,ピンク色の紙が1枚入っておりますが,この中に公告の料金が書いてありますが,料金を示すのが目的ではなくて,公告にはどんなものがあるかということで,この言葉は本当は法律用語では正確ではなくて,我々がコンピュータで扱うときに便利なようにこういう名前をつけさせていただいているということで,これは法務省と協議した結果決めているものでございます。それから,このパンフレットの一番裏に,公告は取次店を通って入ってまいります。60ございますけれども,こういう取次店を通って入ってくる。こういうこと等が書かれておりますので,このパンフレットの方は参考にしていただいて,本題の資料の方の紹介をさせていただきます。   まず1ページ目ですけれども,官報というものの概要です。これは,先ほど○○幹事の方からお話がありましたように,今我々が官報と呼んでおりますのは,紙の官報です。電子的なものとかいろいろありますけれども,官報と法律的にも,また各府省からも認知されているものではありません。あくまでも附帯的にサービスをしているものです。ここに書かれているものは現時点の話ですので,紙の官報というふうに理解していただいて結構でございます。   官報は,法律,政令,条約の公布を初め,国の広報紙,公告紙としての使命を持っております。国が発行する機関紙として極めて重要な役割を果たしているということです。   官報の発行は,内閣府と財務省の共同命令で行われております。   官報の発行形態ですけれども,毎日発行されておりまして,通常32ページの形態をとっております。そのほかに,本紙附録,号外,政府調達公告版,国会会議録等を扱っております。   販売は,印刷局指定の官報販売所48か所,それから政府刊行物サービスセンター,直営ですが12か所。購読料は,ここに書かれているとおりです。購読者は,やはり官公庁が一番多くて40%,民間・個人が40%,協会・組合・学校等が20%です。発行部数は約4万部となっております。   次に,今話題になっております官報の電子配信でございますけれども,現状におきましては,電子配信は紙の官報を補完する補助的な位置づけとして扱っております。これは配信サービスと我々呼んでいますが,区別をしております。   ここで,官報のサービスには二つありまして,一つは,従来から官報というのは閲覧が可能ということになっておりまして,無料で見ることができます。そのイメージをそのまま取り込みまして,見るだけの官報閲覧サービス,これを無料で行っております。これは平成11年11月15日からスタートしました。内容は,本紙,号外,資料版・目録,政府調達公告版等です。1週間掲載しております。ただし,印刷とかテキスト選択,要するに文書を切り出して張りつけるとか,そういう機能は持たせておりません。これはあくまでも見るだけという概念です。   もう一方で,官報検索サービス有料版というのがございますが,これは先ほどありました定期購読に当たる,そう考えていただいて結構です。基本的には無料のものと同じですけれども,目次や検索機能をつけておりまして,平成13年9月から開始しました。ちょうど1年が過ぎるところです。これには過去分,昭和22年5月3日以降のものが全部配信できるようになっております。これの機能といたしましては,印刷・テキスト選択機能,それから検索機能の付加ということがなされておりまして,料金は,基本料金が1,520円,検索機能は,この基本料金に480円足していただきますとちょうど2,000円となりまして,一応料金は二つ分けております。御覧になってお分かりのように,1,520円というのは,先ほど出てきました1,596円(税込み)の月額の料金を参考に決めさせていただいております。   続きまして,官報業務の現状ですけれども,官報はどのようにできてくるかといいますと,まず指揮・監督は内閣府にございます。それから,国の機関からは公文という法律などが出てまいります。会社とか,国の公告もありますが,裁判所公告等もありますが,これは入稿で入ってまいりまして,現在,法律関係がフロッピーで98%,紙で2%,政令がフロッピーで2%,紙で98%です。裁判所公告はほとんどが電子化されていますが,75%電子化。要するに,取次店から直接,ネットの状態で送られてくるようになっています。受付窓口ができておりますので,ここはパッケージではなくて,ダイレクトに入稿してくるということです。そこで,入力,編集,校正,校了まで行いまして,今までは印刷機を通して冊子版官報というのをつくりまして,掲示板に張ったときに公布,それから一般に発行といいますが,国民に向けて発行している。そして,同じデータを,変換をかけましてPDFにいたしまして,先ほど言いました無料版と有料版を配信サービスしている。ここで,現実には見た目は全く同じなものです。ただ,コンピュータを使っていますので,紙の官報は独特なフォント,文字を使っていますが,コンピュータで見られる文字ということでフォントだけが異なっているということで,体裁等は全く同じです。それから,法令データベースにつきましては総務省がつくられていますけれども,データ提供を行っております。   次に,公告掲載までの流れですけれども,これは公告に絞って書かせていただきました。国の機関からは,これは裁判所も含みますが,直接印刷局に入ってまいります。地方公共団体,特殊法人,会社等は取次店を通って入ってまいります。この場合,紙は8割,版下が2割。版下といいますのは,このまま印刷をしてくださいということで,直取りです。このままのものを原稿にしてくださいということです。これはどうしてこういうことをしているかといいますと,会社のロゴですとかマークとか,会社が持っている体裁を大事にしたいということから,まだ2割くらい残っています。電子化率は数%です。それから,発行いたしまして公告が掲載される。   公告の内訳ですけれども,全体が平成13年度実績で69万件ほどあります。内訳は,裁判所公告が88%,会社公告が9.2%,官庁公告が1.7%,特殊法人が0.9%です。会社公告は,社数でいいますと1万5,600社ほどが何らかの形で公告を提出しております。   この9.2%の中身なのですけれども,決算公告から始まりまして,実際には,先ほどピンクの紙に書かれておりましたとおり,たくさん項目はあるのですけれども,上位のものを選択しましてここに記載させていただいています。その他というのは,件数が少なくなってきますので,トータルをしたもの,残りの全部というふうに理解していただいて結構です。   今後の官報発行のイメージ図です。これは,現実に官報の配信サービスというのをやってはいるのですけれども,なぜ官報と同等でないのか,ここが先ほど○○幹事の説明にございましたように議論になった何点かがございます。原理は全く今と同じなのですが,ちょっと書き方を変えていまして,校了後,印刷物と電子版とが全くイコールにしたい。今イコールなのですが,イコールとみなしてもらいたい,みなされるといいますか,ある条件をつけてみなすと。どちらも発行。ただ,メディアが紙の場合と通信回線を使っているということで,配布と配信という言葉に分けてあります。   では,どうすればここがイコールになるのかということですけれども,これは,我々が非常に重視しています情報セキュリティー,要するに原本性の保障,改ざんがなされないというようなこと,それから格差,デジタル・デバイドですけれども,だれもがちゃんと使えるものであるということ,もちろん紙よりも利便性が高いことというのはもう言わなくてもお分かりかと思います。これを満たすには,特に情報セキュリティーなのですけれども,電子認証,電子署名というものを使う必要があるのではないか。すなわち,つくった側が,これは本物ですといって渡して,受け取った側が,それが本当に本物かどうかを確認することができる。現在,政府認証基盤というのでGPKIというのがございますけれども,これは総務省の行政管理局が担当しております。そこで,電子署名を電子官報の中に埋め込んで相手方に送る,相手はそれを認証局に聞きに行って,鍵をもらってきて,例えれば鍵ということなのですが,それで,公開鍵であけて中を見て,確かに本物だったということが確認できるようにしたい,それが①です。もちろん官職署名というのがございますので,例えば,これは国が発行したものですよと,これは担当府省がどこになるかまだ明確ではございませんけれども,現在は内閣府と財務省となっておりますが,どこかの府省が,印刷局は来年独法化しますので,どこかが官報に対しての署名をするわけです。ここでつくった,官報はここで発行させていると。その官職署名も必要ですし,印刷局の場合は,印刷局が印刷してつくりました,入力してつくりましたという製造署名も必要だということで,当然,署名もついてまいります。   それから,②ですが,時刻証明。時刻証明というのはどういうことかといいますと,「官報をもってして」という言葉が,今は使われていませんが,以前,公式令の中では,法律の場合,「官報をもってして公布す」と。そうすると,いつ公布されたのだ,何時に公布されたのだ,又は,そのときに公布されていなかったのか,いなかった,いたという,その時刻を証明する。デジタルですと,日にちを変えてしまって,私はこれを見たからこうしたのだと,そういう時刻の改ざん等が問題になるのではないかということを想定しておりまして,タイムスタンプと呼んでおりますけれども,時刻を証明する方法がございます。これを採用する等々,これですべてというわけではありませんが,できるところからということで,セキュリティーを高めて,電子版と冊子版をイコールにする。これは,どちらかというと技術的な話の方です。認証局には政府の認証局と民間の認証局がございます。   次に参りまして,単に技術的解決だけで電子官報というものはできるのかということなのですけれども,必ずしもそうではございません。まず,今お話ししましたとおり,情報セキュリティーにつきましては,今のような方法で情報セキュリティーを付与する。デジタル・デバイドにつきましては,今後も紙官報と共存を図る,すなわち紙を残すということです。アクセシビリティー向上に向け工夫,努力をしていく。現在,音声対応になっておりまして,目の御不自由な方などでも内容を聞き取ることができるというふうにしてあります。それから,利便性の向上につきましては,冊子ベースでも目次・目録などございますが,同様に縦覧性や検索性,利活用性を高めて利便性を向上していくということを図ってまいります。   ただ,技術論だけではなくて,法律の問題が絡んでおりますので,当然,これらを解決していくためには関係府省と協議の上,実行に向けて努力をしていくこととしたいということで,必ずしも印刷局が決めればそれでできるという問題ではございませんので,今後,法制審議会のこちらの部会又は関係府省と連携をとりながら進めていきたいというふうに思っております。 ● それでは,ただいま御説明いただきました電子公告制度の検討課題につきまして御議論をいただきたいと思います。あるいは,特に電子官報等につきましては御質問もあるかと思いますので,その点もし御質問がありましたら,どうぞ御遠慮なく。 ● 一番肝心な,電子官報を実現する時期の見通しをちょっと教えていただけますか。 ● 印刷局が来年の4月1日から独法化しますので,独立行政法人になると,現在は共同命令というのが出ているのですが,これがなくなってしまう。そうすると,何か手当てをしないと官報がつくれない,何の根拠で官報をつくっていくのかということになりますので,官報に関しての何らかのルール,命令ですね,どういう形になるか分かりませんが,それは3月の末までにはできているだろう。それはあくまでも紙の官報です。   紙の官報の根拠が決まりますと,次に今度は電子官報ということになるのですけれども,電子官報と同等であるといったときに問題になる法律は何かあるのかどうなのか。官報を法的に根拠を作るというのは,作用法か何かでどこかになければいけないのではないかと言われているのですが,現在はそれがなくなっておりますので,官報というのをどこかで位置づけてほしいというのが我々の希望です。   それから,実際に官報というものが定義されて,次に電子官報なのですが,電子官報にして困ることがあるのかどうなのか。それが,問題がなければ,すんなりいく可能性は高いのではないか。   ですから,電子官報と官報を同等とするというような法律を独自に議論するとなるとかなり手間がかかるかもしれませんが,今の電子制度の中では,電磁的方法を紙と同等にと,こういう言い方で包括的に言っていまして,個々の法律を改正するというやり方ではないのですね。ですから,それの一環の中で大きくとらえてしまえば,紙も電子官報も同じものだというふうにも言えますし,それが間に合わなければ,官報は官報だけで独自に整理をしなければいけないということですので,今の時点では,いつまでにということは言い切れないと思います。ただ,いつにしたいという希望はもちろん持っています。 ● よろしいですか。 ● まあ,それ以上あれしてもですが,是非急いでいただいて。 ● それでは,どの点でも御質問,御意見をちょうだいしたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 私からもちょっと確認させていただきたいわけですけれども,電子官報,法律上紙と同等の位置づけにするということについてはまだ御検討されている途中でありますけれども,今のお考えとしては,このイメージ図,5ページに紙の官報の発行(配布)と電子版の発行(配信)というのが書かれておりますけれども,紙の官報は,先ほども御説明いただきましたように,掲示板に掲示されることによって公布ということで,朝8時半に掲示がされるわけでございますけれども,それと同じ時刻に電子版の方も発行といいますか,配信が可能になるというふうに考えてよろしいのでございますか。 ● 我々は,今の段階ですが,こう考えています。冊子を掲示板に掲示したときを,法律の場合ですけれども,公布とする。今,8時半です。8時半以降,オンラインでサービスする。8時半以降ということは,掲示を優先するということです。同時かもしれませんが,掲示という根拠を生かしたい。あえてそこを今変える必要はないのではないか。掲示以降ですから,掲示と同時でもいいですし,数分遅れでもいいかもしれませんが,それは技術的な問題だけであって,掲示した時をもってというのが今までの最高裁の判例の中に出ていますので,それを生かして,紙を掲示した以降すぐ配信するということを考えております。 ● すぐということですから,翌日とかそんなことにはならない。その日の,非常に近接した時間帯に電子版でも見られるようになる,そういうふうに理解していいわけですね。 ● 我々の生活の中で同日,同時刻と言いたいのですが,少量の場合はいいのですけれども,物すごく大量のときがございます。量が非常に多いときですね。それは,配信のところのサーバーにためる時間がございますので,すぐスタートといっても数分おくれということはあるかもしれません。要するにタイムラグというのは,そういう意味での,作業上のタイムラグということだけです。 ● それでは,時間は大体慣行的には4時30分ということになっておりますので,あと30分足らずでありますけれども,どの点でも御発言いただければと思います。   これは先ほどの問題に比べますと論点は比較的限られているように思いますけれども,いかがでしょうか。   一つの問題点は,現在,合併の場合の公告については官報プラス定款で定める日刊新聞紙ですけれども,その公告によって個別催告を廃止できるわけですけれども,それが,この中間試案では,官報プラス電子公告で個別催告不要という,合併及び会社分割のときの承継会社でしょうか,それの電子公告の要件というのが一つ。それから,官報プラス電磁的方法によって個別催告が不要になるという範囲を広げられないかという問題があるわけです。 ● 議論を開始していただくために,ちょっと私の方から御質問をさせていただきたいと思うのですけれども,現在,株式会社に限りましては,定款で定める官報又は時事に関する日刊新聞紙に限って公告媒体として認めるということになっているわけでございますが,電子公告をどこまで認めるかということを考える場合に出発点となるのは,現行法がなぜ官報と時事に関する日刊新聞紙に対象を限っているのか,そこから議論をしていただく必要があるのではなかろうかと思うのです。つまり,どこまでいけば官報あるいは時事に関する日刊新聞紙と同等になるのか,同等であれば認めていいということになるのかなと思うのですけれども,その辺は余りコンメンタール等を見ても書いていないのですけれども,とりわけ学者の委員・幹事の方々,いかがでございましょうか。 ● これ全部の公告については一つ一つ分析する必要があると思うのですけれども,例えば決算公告ですと,私の感じでは,戦前は証取法がなかったですから,これは公告によって,投資家向けといいましょうか,あるいは不特定多数の株主や投資家がたくさんいる場合は,これは公告だ,そして,特定少数ならば通知でいい,そういうことだったのだろうと推測しております。ですから,例えば,こういうのは直ちには無理かもしれませんけれども,公開,非公開で,それから公募か私募かとか,特定少数か不特定多数かとか,そういった切り方で,例えば特定少数に例えば新株を発行するというときに,わざわざ公告にするというのはおかしいですし,その場合はやはり個別に通知でしょうし,債権者もわずかな債権者がいて,特定されていれば,これは基本的には催告とか通知でしょうし,何かそういう切り方ができないかというのが一つです。   もう一つは,そういうふうに考えますと,例えば決算公告の場合には,今現にエディネットで証取法の方でやっていますし,タイムリー・ディスクロージャーもTDネットでやっているわけですね。そうしますと,従来は公告は公開会社向けで,閉鎖会社向きではないと言われましたけれども,むしろ逆に,公告は公開会社にとっては余り,なぜ証取法のディスクローズが全部電子でやっているのに公告が要るのかという,そういう話にむしろなってきて,閉鎖会社の方は,この間の改正でできました,公告にかえるホームページでの開示,あの方が非常に重要になってきておりますので。ですから,極論を言いますと,証取法が適用されて,電子開示を証取法の方でやっているものについては公告は廃止ということだってあり得るのではないかという感じもしております。ですから,これはほかのもの全部一つ一つ検討する必要があると思いますけれども,一律に商法適用会社だからある・ないというよりは,もうちょっとそういう分け方はできないものかなというのが個人的な感想です。 ● 公告と一言でいっても,何に関する公告かによって,今日も席上配布で一つ資料が配られておりますけれども,いろんなケースがあることは確かだと思います。   決算公告なんかと違うのは,例えば株券提供の公告なんていうのは,そもそもは,公告がなされているのかどうかということをどうやって知るかということが問題あるわけですね。決算公告ですと,これは何らかの形でしたに違いない,ある時期にしたに違いないという前提があって,それを探せばいいわけですけれども,株券提供の公告なんていうのは,そもそも,どこかの会社がやっているのかと,債権者保護手続も同じですけれども,そういう,検索といいますか,そういうところが問題になるという面はあると思います。   何か,御意見でなくても,こういう問題もあるという御指摘でももちろん結構ですし……。 ● 質問でございますが,先ほど,電子官報が代替できるかという可能性のことを○○幹事の方から御説明いただいたときに,概念の確認なのですけれども,配信ということを入れて考えるのかどうかという部分なのです。すなわち,公告というのが閲覧に供する状態にできた段階で公告というふうに言うのか,それとも,先ほどの○○委員からの御説明と同じ問題なのかもしれませんが,特定の相手方に電子官報でも配信と,そのために電子キーの問題が出てきているわけですが,配信ということまで含めて公告というふうに考えるのか,これをちょっと御説明いただけたらと思うのですが。 ● それは前者の方だと思っています。つまり,配信とここで書いていただいていますけれども,配信というのは,あくまでも利用者の側がアクセスをして,それに応答して配信--配信というか,要するに,○○委員が仮にアクセスされたとしますと,○○委員の端末,パソコンの画面に官報のページが映る,これを配信と言うわけでございますので,そのためにはアクセスをしなければいけない。ただ,公告というのは,アクセスすれば見れる状態になっていれば公告のはずですから,それは紙の世界でも,官報は販売所に行けば買えるわけで,買えば見れるという,そういう関係で,その官報が出たときに公告があったというふうに考えるわけですから,それとパラレルに考えれば,ホームページにアクセスすればその画面が見られるようになった状態,そのときに公告があったというふうに考えるのだと思います。 ● そうしますと,結局,今回,債権者の個別通知にかわるものとしてということでの御議論がスタートだと思うのですが,その場合は,個別通知の場合は配達証明が要るわけではありませんが,基本的に送達というのが前提のお話でございますよね。それにかわるものとして,閲覧に供せられる状態で構わないのだというところに行く,そこが,差異の部分ですけれども,これは先ほどの立法の経緯の御質問と同じところに行くのかもしれませんが,そこの違いというのはどういう点に由来するのでございますか。 ● 正にそこがこれから御議論いただくところで,今は,会社側が,着くかどうか分かりませんけれども,少なくとも発して,ある債権者なり株主なりにあてて催告なり通知なりをするわけですね。それに対して,将来この部会でお認めになればということですけれども,認めるとしても他の公告と組み合わせることになるのかと思いますけれども,電子公告を行えばそれだけで,つまり名あて人の側は自分から積極的にアクセスをしてそれを見るという行為をとっていただく,それで済ませるという,それでいいのかどうかということを御議論いただくということになるわけでございます。 ● したがって,先ほど電子官報のところでの配信というところでのセキュリティーの問題等が出ましたけれども,必ずしもそこに引きずられる必要はないわけですね,今日ここの場での議論というのは。電子官報ができるのであれば,官報公告の法務省令による電子化と代替できるのかどうかというので最初の際に問題提起いただいたと思うのですが,先ほどの御説明を聞いていますと,電子官報では配信の概念というのがどうしても前提になるようにお伺いしたのですけれども,それは違うのでしょうか。 ● ですから,配信という言葉,あるいは私が申し上げるよりも○○関係官からもう一度御説明いただいた方がいいと思うのですけれども,配信というのは,私が理解しているところでは,具体的にその人のところにメールを送るというのではなくて,その人がアクセスしたときに閲覧できるようになると。その端末で。端末で見るためには,何らかの電子データを端末に送らないと端末で見られないわけですから,それを配信と呼んでおられるというふうに理解しております。 ● 意思を持って自分が見たいとすれば見られる状態になっている。どこにありますよということが明確ですから,そこに見に行くということと,それから,官報がどこに置いてありますよとか,どこで入手できますよということは同じだろうというふうに思っております。ただ,情報というものがどういう媒体でそこに置かれているかということですね。情報は同じ官報の中身なのですけれども,我々,この世界,メディアが違うという言い方をしますが,中に入っている情報は全く同じ。ただ,見る道具立てが違うということですけれども,その状態が同じ状態に置かれているもの。ですから,言葉が,わざわざ括弧書きにはしてありますが,配布と配信が混同するというならば,とってしまっても構わない。要するに発行だということですね。そういうふうに考えていますので,同じものであり,同じ時刻でありという,こだわっているのはそういうところです。 ● よろしゅうございますか。   要するに,現在,合併なんかでは,官報プラス時事に関する日刊新聞紙に公告ということなのですが,官報は,電子官報になりましても,官報そのものは出るわけですね。ですから,文字の官報は依然として続くと。ですから,問題は,時事に関する日刊新聞紙の公告にかわるものがどういう要件かというのが,現行制度を前提にする限り,そういうことになると思います。   それから,○○委員が言われたように,確かに,あらかじめ承諾している者に対して通知をするという形に,それを電子的方法で行う,これも考えられるのですけれども,すべての債権者にそういう形でいくというのは無理でしょうし,ですから,恐らく,公告をする側としては,やはり時事に関する日刊新聞紙の公告にかわるものを何か電子的な媒体で欲しい,そういうことだろうと思います。   何か問題提起,御質問,御意見,何でも結構でございますが。 ● 先ほど私が質問させていただいた,なぜ株式会社の場合は公告の媒体が限られているかというところなのですけれども,私どもなりに考えていますのは,一つには,まず,なぜ官報でなければいけないのかというと,官報には,先ほども御紹介いただきましたように,全国の官報販売所に行けば手に入るという普遍性というのが一つある。もう一つは,官報は国が出しているものでございますし,図書館等にも購入して保管されているわけですから,いつどういう公告が行われたかという証拠がきちっと客観的に,しかも永続的に残るという利点がある。そこで官報というものが認められているのではなかろうかと。   時事に関する日刊新聞紙も認められておりますのは,新聞なら何でもいいというわけではなくて,時事に関して,かつ日刊新聞紙でなければならないとされていますのは,時事に関する日刊新聞紙を発行するというのは相当な資本力も必要ですし,それなりに多くの購読者がいなければできないことですから,地域の限定があってもいいのだということにはなっていますけれども,少なくとも当該地域においては官報に匹敵するぐらいの普遍性が認められると。また,そういうものであれば,そういう新聞紙に公告が掲載されたということは客観的に明らかになるわけですし,それがきちっと残っていくことが期待されるだろう,そういうことで官報と日刊新聞紙というものは認められているのかなと。   他方,合名会社や合資会社のように会社の掲示板に掲示をするということは,これはそういう普遍性とか,あるいは証拠の客観性,永続性というものが認められないので,多くの株主を擁するということもあり得る株式会社の場合には認められていない,こういうことなのかなと考えているのですけれども,そういう理解でよろしいのかどうか伺えればと思います。 ● なぜ時事に関する日刊新聞紙なのかということについて,いかがでしょうか。この場で御発言ありますでしょうか。 ● 私もよく分かりませんが,なぜ合併等の場合にのみ緩和したのかの,そのときの理由というのが問題だろうと思うのですけれども,合併の「知レタル債権者」の意義というのは理論的には非常に重要な問題だけれども,もともと,万一これをし忘れても,あと異議を言ってくればそれなりに対応するという,その程度のものであったのかなという,そういう事実上の前提があって,公告方法を合併等に限ってまず簡素化したのではないかと思うので,やはりこれは,社員なり債権者に絶対知らせておかないと困るというものは,その下にいろいろ並んでいる中にいろいろあると思うのです。そこら辺の類型をどう整理していくかということではないかと思うのです。しかし,余りいけないのですかね,合併の催告,非催告が実質上は軽いということ……。 ● おっしゃるとおりで,時事に関する日刊新聞紙に何がかわり得るかというアプローチと,それから通知に何がかわり得るかというアプローチはかなり違うのかもしれません。   しかし,合併も,最近の新聞によりますと,交付金合併,キャッシュアウト・マージャーを認めるとか言っていますから,そうなると,債権者保護手続は要らないという話でもそうなくなってきて,むしろ実質上の原資に近いということにもなるのですね。かつ,通知といっていますけれども,債権者保護手続における通知というのは,実際は余り行われていない,少なくとも少額債権者に対しては行われていないというふうに聞いております。今,○○委員が言われたように,もし訴訟を起こしてきたらそこで弁済するというような処理がなされているということなのですが,しかしこれも,債権者が起こしてきたときはそういう処理ができますが,内紛等があって取締役が起こしてきたらどうなるのだという問題はあるわけですね。そういう処理では解決できないわけです。ですから,これはやはり何らかの形できちんと制度を整えるべき問題なのではないかと私は思っております。 ● 発言の機会が得られるのかどうかちょっと疑問ではありますが,私は,どちらかといいますとインターネットをふだん頻繁によくブラウジングしている立場から考えてみますと,一般の時事に関して掲載されている日刊紙というものの場合は,公告を見るために読んでいるのではなくて,むしろ,ふだん新聞を読んでいたら公告が目にとまったというのが非常に重要な部分だと思うのですが,インターネットの世界の場合は,何か特定の目的を持って見ないとなかなか出くわさないという,非常に大きな,本質的な違いがある。ここの部分をどうクリアするのかというのが恐らく重要な問題なのだろうというふうに思います。ただ,制度化されていきますと,そういうことを商売とする人たちが出てくる可能性もありまして,日常的にブラウジングをして何かを見つけたら関連の人たちにいろいろ連絡をしますよというような人たちが出てくる可能性もありますが,今そういうような人たちがいない段階ですと,特定の情報というものを設定しないと,ふだんブラウジングしていていろんな情報が入ってくるという状況にはないということはとても重要なポイントなのではないかというふうに感じております。 ● 今の御指摘は非常に大事な御指摘だと思うのですけれども,ただ,日刊新聞紙の場合は,別の新聞記事を見ていて公告に気がつくということが確かにあると思うのですが,官報の場合は,公告を見るために見ないと,そして官報こそが基本ですので,官報をベースに物事を考えると,また違った議論になるのかなという気もいたします。   もう一つは,電子公告の場合は,先ほども検索機能というお話が○○関係官からございましたけれども,どの会社がどこにどういう形で電子公告をするのか,これは今,公告の方法を定款に記載して登記事項にもなっているのと同じように,やはり定款記載事項,登記事項にすることになるのではないかと思っているのですけれども,そうなれば,債権者や株主は登記簿などを見ることによって,その会社がどういう電子媒体で公告をするのかというのが分かりますので,そこに時々アクセスをして,ある会社の名前で公告がされていないかというのを,検索をかければ出てくる。そういう意味では,紙の官報ですとか,あるいは新聞ですと,毎日かなり見ていても,小さな公告ですと見落としてしまうという,その点は電子公告の方が,検索さえかければ確実にヒットするというメリットはあるのかなという気がいたします。 ● 私がお答えするのはどうかと思いますが,官報の場合は,法令がいろいろ変わりますと法律を見るという,そういう意味で,法律の公布媒体として主として官報を購入されている方々というのがおられると思いますが,そういう中でも気がつく場合というのがあるという,そういうイメージ。立法された方はどう考えたのか分かりませんが,公告媒体のために官報というのが主ではなくて,やはり法律の公布媒体であると。ですから,主として法律にかかわりを持っている者たちは官報というものに目を通す機会が多いだろうということでの,そういった公知機能というのでしょうか,周知機能というものがあって,そこに公告を出すことの意味というものがあったのではないだろうか,そんなようには理解しているわけですけれども,ただ,今,検索をかければというのは確かにそうなのですが,検索をかけるという行為は,相当特定の目的を持たない限りは,もうバーッと,深海のようなところに情報がたまっているという状態ですから,そう簡単にはアクセスできないというのが実態で,かなり難しいのかなという感じはします。   ただ,別に私,否定的な趣旨で申し上げているわけではなく,制度の議論の出発点としてはそういったような視点というものもあってよかったのではないかという,それだけです。これ以上の答えは持ち合わせておりませんので,もうこれで勘弁していただければと思います。 ● ほかに,この段階で……。 ● 私もよく分かりませんが,自社のホームページではだめだというのは,おっしゃるように信頼性の問題はあると思うのですが,今おっしゃったような検索可能性としては,非常に関心があるわけですから,だれでもアクセスしようという気になりますよね。それと,今おっしゃったように,なぜ官報であり日刊紙だったのかというのは,権威とか客観性とか,そんなものでしょうから,それとそれを組み合わせたようなものはできないかなというように今思いますけれども,ちょっとそこら辺は実務の問題もありますし,どういう認証機関みたいな,ここに登録されている情報は載っていますよというふうな形とか,何かそういうふうな方法もあり得るのかなと思いますので,そういう方向で,今,○○幹事の言われたようなことも入れて考えてもらうのも一案かなと思いました。 ● 今,○○委員から,自社ホームページはだめだというお話がございましたけれども,私はそう申し上げたわけではなくて,中間試案に対する意見照会の結果の中にそういう意見もあったということでございます。たしか,私の記憶が間違っていなければ,前の会社法部会の議論の中では,自社ホームページで何が悪いかという御意見もあったように記憶しております。   さっき,官報や日刊新聞紙になぜ限られているかということを少し突き詰めて御議論いただく必要があるのではないかと申し上げたのは,その理由の一つが,証拠の客観性の確保,それから永続性の確保ということであるのであれば,自社ホームページでの公告を認めたとしても,別の方法で客観性を確保する手段が講じられておればいいという,そういう選択肢もあり得るのではなかろうかと思いまして,まずそこから御議論していただく必要があるのではないかと申し上げた次第です。 ● いろいろ論点が出てきたように思いますが,そろそろ予定の時間になりましたので,本日の議論はこれで終了させていただきたいと思います。   それでは,次回の日程の説明を事務当局からお願いいたします。 ● それでは,次回の日程について御説明申し上げます。次回は10月16日の水曜日でございます。この部会はいつも水曜日に開くようにしたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。午後1時半から,今日と同じでございますが,場所は今日と異なりまして,法曹会館の高砂の間でございます。このビルの隣のビルでございますので,お間違えのないようにお願いいたします。   次回の予定ですけれども,冒頭に申しましたように,株券不発行制度の問題点,検討課題,今日若干御議論いただきましたけれども,それについて掘り下げた御審議をいただきたいと思っております。事前に検討課題として考えられる基本的な論点の一覧表のようなものをお送りしたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。 ● それでは,本日の議事はこれで終了させていただきます。長時間ありがとうございました。 -了-