法制審議会会社法(株券の不発行等関係)部会第5回会議議事録 第1 日 時  平成15年1月22日(水)  自 午後1時30分                        至 午後4時48分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  株券不発行制度の導入に関する要綱第二次試案について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 ● 定刻になりましたので,法制審議会会社法(株券の不発行等関係)部会の第5回会議を開催させていただきます。   本日の会議では,昨年11月の部会において御審議いただいた結果に基づきまして事務当局が作成した要綱第二次試案について御審議いただくことになります。また,本日は,略式質にかわる新たな制度についての御提案が,○○委員よりございます。   この第二次試案はかなり分量があります上に,○○委員の御提案につきましても,十分御説明いただいて,御審議いただきたいと思いますので,場合によりましては4時半までの予定が若干延びることがあるかと存じますけれども,その点をあらかじめ御承知いただきたいと存じます。また,効率的な審議への御協力をどうかお願いいたします。   それでは,早速,部会資料の9についての審議に入りたいと存じます。   この試案は,11月に御審議いただきました結果に基づきまして第一次試案に修正を加えたものでありますけれども,その構成は,第一次試案の場合と同様に,商法の改正関係と振替制度関係に大別されますので,まず,「第1 商法の改正関係」につきまして,第一次試案から変更があった点を中心に事務当局から説明を徴した上で,審議をしたいと存じます。   それでは,お願いいたします。 ● それでは,部会資料9の「第1 商法の改正関係」について,第一次試案からの変更点を中心に御説明をさせていただきます。   まず,「1 株券の不発行の定め等」の「(1) 株券等の不発行の定め」でございますが,ここにつきましては,まず第一に,11月の部会での御審議の結果に基づきまして,各会社が定款自治によって株券不発行制度を導入するという第一次試案当時の案は甲案という形にいたしまして,公開会社については一斉に株券不発行制度を導入するという案を,新たに乙案として追加いたしております。   この乙案でございますが,一斉導入は乙案のbに書いているわけでございます。ここでは,既存の公開会社につきましては,政令で定める日において一斉に株券を発行しない旨の定款の変更を行ったものとみなすということによりまして,公開会社の一斉の株券不発行制度への移行を実現しようというものでございます。   その時期でございますが,システム整備に要する期間を考慮いたしまして,社債等振替法の場合と同じく,政令で定める日を,改正法の施行後5年以内の日ということにいたしております。まず,これでよろしいかどうかということを御議論いただきたいと存じます。   同じく1の(1)につきましては,新株予約権証券の不発行制度も導入するということを,それぞれ甲案・乙案に書いてございます。乙案の方は,「株券等」という言葉になっていますけれども,甲案の方に,「株券及び新株予約権証券」を合わせて「株券等」というということにしているわけでございます。したがいまして,株券について甲案をとるのであれば,新株予約権証券についても甲案をとる,株券について乙案をとるのであれば,新株予約権証券についても乙案をとるという考え方でございます。   ただ,(注1)を御覧いただきたいのですが,11月の御審議の結果,株券につきましては,不発行制度を採用した会社がある種類株式についてだけ株券を発行するというようなことは認める必要はないだろうということになったわけですけれども,新株予約権証券につきましても株券と同じ取扱いでよいのかどうか,あるいは,ある特定の新株予約権を発行する場合だけは券面を発行するというような余地を新株予約権については残す必要があるのかどうかということを今回御議論いただきたいと思いまして,乙案の下の方に書いてあります(注1)を付しております。   なお,これは,もちろん乙案をとる場合にだけ関係してくるものでございます。   次でございますが,前回の11月の部会での御審議では,新株引受権証書の不発行制度を設けるかどうかという点につきましては,設けるべきだという○○委員の御意見と,設ける必要はないのではないかという○○委員の御発言の双方がございましたので,(注2)を付しまして,再度この点を御審議いただければと考えているところでございます。   次に,(注3)でございますが,新株予約権付社債の不発行制度につきましては,11月の部会におきまして,これも設けるということに決したわけですけれども,その方法につきましては,株券や新株予約権の場合のように商法自体に規定を設けるのではなく,社債等振替法におきます一般の社債の場合と同じく,振替制度を定める法律の中で規定する方が望ましいのではないかというふうに考えまして,(注3)に記載しておりますとおり,第3の1の(2),13ページにその案を掲げているということでございます。この点につきましては,第3について御審議いただく際に,冒頭で説明させていただきたいと思っております。   次に,(注4)でございますが,非公開会社につきまして,11月の部会で○○委員から,中小企業の多くは現在も株券を発行していない実情にあるので,公開会社について一斉に株券不発行制度に移行するという選択をする場合には,非公開会社についても一斉に株券不発行制度に移行するということを考えてもいいのではないかという御発言がございました。   その一方で,部会長からは,株主の利益の確保という点を考えますと,公開会社の場合は,口座振替制度によって株式を取得・保有している事実を確実に確保できるわけですけれども,そういう手立てのない非公開会社についても一律に不発行制度とするということには問題があるという御指摘がございました。   そこで,その中間的な考え方なのでございますが,(注4)では,非公開会社につきましては,株券不発行を原則としながらも,株主の定款自治によって株券を発行することができるようにするという,いわば原則と例外を甲案とはひっくり返すような形の考え方をとることはいかがかということで,注を付させていただいた次第でございます。   この(注4)のような考え方をとりますと,現在株券を発行していない,違法状態にある非公開会社の場合には,何もしなくても,一定の時期にそれが適法状態になるということになります。   ところが,他方で株券を発行している現在適法な非公開会社の場合には,改正法の施行が,一定の日,これは政令で定めることになると思われるのですけれども,その日までの間に株券を発行する旨の定款の定めを設けませんと,その一定の日以降は株券不発行状態になってしまうということになりますが,この場合に株券の回収をする必要があるのかどうかと。従前の御議論からすると,あるということになりそうな気がいたしますけれども,あるとした場合に,現在の第1の1の(2)に書いておりますⅠ案のような案は,そのままでは適用できませんので,どのような手続を用意すべきかということについて,あわせて御議論いただく必要があろうかと思います。   これはどちらかというとやや瑣末な問題かもしれないのですけれども,より根本的な問題といたしましては,(注4)の考え方を採用いたしますと,株券を発行する旨の定款の定めを一定の日までに設けるという定款変更の特別決議を,その一定の日までにしませんと,株主は,株券によって自己の法的地位を確実に確保するという機会が失われることになるわけでございます。それがそれでいいのかという問題があろうかと思われますので,まず,この点について御議論いただいて,そこがクリアになったとした場合に,株券の回収について,(注4)のような考え方をとるとすれば,どうすればいいかということを御審議いただければと思います。   なお,仮に(注4)のような考え方を採用しますと,商法上は株券不発行が原則となりますので,乙案のbにつきましても表現の変更を考えたいと思っております。   次に,1の(2)の「株券等の回収の要否等」の部分でございますが,ここはⅠ案とⅡ案は変更はございませんで,変更を加えておりますのは,(注)の2と3を加えたということでございます。(注2)は,1の(1)について乙案,つまり公開会社について一斉移行するという案を採用する場合には,実際問題として株券の回収を行うことは無理でありますし,また,政令の定めによって一斉に株券不発行になるのであるから,株券を回収しなくても問題が生ずる可能性は低くなるだろうという,11月におきます当部会の審議結果を記載したものでございます。   ただ,ここで,公開会社についてはⅡ案を採用するものとする,というふうに書かないで,「公開会社については株券回収を行わない方向で,さらに検討する」と書いておりますのは,政令の定めに基づいて公開会社について一斉に株券不発行制度に移行するという場合にも,公開会社についてⅡ案のような公告と個別通知が必要なのかどうかということには疑問があるのではないかと考えたのが一つの理由でございます。つまり,政令の定めによって一斉に株券不発行に一律になるのですから,各会社が個別に株主へのサービスとして何らかの通知をするということは望ましいことだと思いますけれども,それを必ずしなければならないというふうにしなければならないのかどうかというのを一つ御検討いただく必要があるのではないかと思ったのが,第1点でございます。   もう1点といたしまして,Ⅱ案をそのまま公開会社の一斉移行には適用できないという問題があるということでございます。つまり,2ページ目に戻っていただくことになりますけれども,Ⅱ案のbにおきましては,「株券を発行しない旨の定款の定めの設定は,aの一定の日において効力を生ずるものとする」と書いてございます。こういうふうにしますと,乙案のbのように,政令の定めによって一定の日に定款の定めを置いたものとみなすという場合に,このⅡ案のbをも適用いたしますと,結局,Ⅱ案のaの公告及び個別通知に記載した一定の日が会社によってばらばらになる可能性が生じますので,その場合には定款変更の効力の発生日が公開会社によってばらばらになってしまうということになります。そうなりますと,一斉移行ということにならなくなってしまいますし,株券を回収しなくていいという理由も失われてしまうのではないかと。つまり,一斉移行だから株券回収しなくても問題ないだろうというふうに考えたわけですけれども,定款変更の効力が生ずる日がばらばらになりますと一斉移行ではないものですから,果たして株券回収しなくていいのかという問題がまた再燃してくるということでございまして,したがって,公開会社が一斉移行をする場合には,Ⅱ案をそのまま採用するのはやはり難しいのではないかと考えている次第でございます。   そこで,本日の部会におきましては,1の(1)について甲案を採用するか乙案を採用するかというのは,引き続き並列的に御議論いただく必要があろうと思っているのですけれども,仮に最終的に乙案を採用するとなった場合に,公開会社について何らかの公告や個別通知が必要なのかどうか,もう必要ないということであれば,そこは非常に簡単になりますので,その点につきまして御議論をいただきたいと考えております。   次に,(注3)でございますが,新株予約権証券の回収についての考え方を書いたものでございます。新株予約権証券の不発行制度は,改正法の施行後に発行する新株予約権についてだけ適用し,既に新株予約権証券を発行している既存の新株予約権には及ばないものとするというふうに書いていますが,これによりまして既存の新株予約権証券の回収をしなくていいようにしてはどうかというのが,(注3)の考え方でございます。   株式の場合とそこは違うということになるわけですけれども,株式の場合には既発行の株式をも対象にしないと意味がないということになりますので,既発行の株券を無効にしなければならない。そのために株券の回収をすることが必要なのかどうかという御議論をしてきていただいたわけですけれども,新株予約権証券の場合には,そもそも,現在,保管振替制度の対象になっておりませんので,社債振替制度が既発行の社債を原則として対象としていないのと同様に,既発行の新株予約権証券を対象にしなくてもよいのではないかというふうに考えたのでございます。これでよろしいのかどうか,あるいは別の考え方をとるべきかということについて御審議をお願いしたいと思います。   それから,マイナーなことですけれども,1全体につきましてですが,1について,第一次案で,株券不発行制度を導入する旨の定款の定めを廃止する定款変更をすることはできないものとすることとしてはどうかという(注)をつけておりましたけれども,これを削っております。これは,11月の部会の御審議の結果,少なくとも非公開会社については廃止することができるものとすべきだということになったためでございます。   次に,第1の2の「株式等の譲渡方法及び名義書換」の部分に移らせていただきますが,ここにつきましては,(3)の後ろに(注)をつけてございます。4ページの上から2行目でございます。これを,第一次案では,有限会社についても(3)と同様の規定を設ける方向で検討するというふうにしていたのですけれども,11月の部会での御審議の結果では,有限会社も全く同じ取扱いでいいのではないかということになったと理解しておりますので,結論として,有限会社も同じ扱いにするということを書いてございます。   それから,(5)から(7)までを新たにつけ加えております。これは,新株予約権の不発行制度を設けることになったことに伴う追加部分でございます。   (5)と(7)は,新株予約権証券の不発行会社で,かつ,新株予約権証券について振替制度を利用しない会社についての新株予約権の譲渡に関して,その新株予約権を譲渡する場合には新株予約権証券を交付することは要しないと。これは,(1)の準用ということでございます。   それから,当該新株予約権証券不発行会社の新株予約権の移転は,取得者の氏名,住所を新株予約権原簿に記載することとする。これが(7)でございます。280条ノ31第2項第2号を,ここに書いておりますような形に改めることによって,そういうことになります。   それから,このような新株予約権原簿への記載をしなければ,会社だけでなく,第三者にも新株予約権の取得を対抗することができない。これは,(2)の準用ということになります。   それから,新株予約権原簿の名義書換のやり方も,共同申請を原則とし,一定の場合に単独申請を認める。これは,(3)のアからエまでの準用でございます。   それから,新株予約権証券不発行会社の新株予約権を有する者につきましては,新株予約権証券によって自己の権利を確実に確保することができません。これは,振替制度利用会社でないものが対象ですので,券がありませんから,自己の権利を証明するために,会社に対し,新株予約権原簿に記載された事項の証明書の交付を請求することができるものとする。これは,(4)の準用という形で書いていますが,そういうことにしてはどうかというものでございます。   それから,2の(6)でございますが,これは,現行の商法におきましては,新株予約権を発行する場合に,新株予約権証券の発行は新株予約権者の請求がある場合に限って行うという旨を取締役会決議で定めるということを認めております。これが280条ノ20第2項第9号でございますが,今般,新株予約権証券の不発行制度というものを導入するのであれば,新株予約権者の請求がある場合に限って新株予約権証券を発行するという現在の制度を残す必要はないのではないかというふうに考えまして,この制度を廃止するための規定の手当てをするというのが,(6)でございます。   次に,3の「株券等の不発行の定めに伴う所要の手当」に移らせていただきますけれども,3の(2)につきまして,第一次案では,振替制度を利用する会社における各種公告制度の適用除外等については別途検討するという(注)を付しておりましたけれども,その後,事務当局内で検討いたしました結果,振替制度を利用する会社につきましても,この3の(2)に書いておりますやり方と全く同じでいいのではないかというふうに思いまして,第一次案につけていました,今申し上げた(注)を削らせていただいているということでございます。それでよいかどうかを御審議いただければと思います。   以上が変更点でございますが,あと,御審議いただく必要があるかと思いますのは,4ページの3の(1)の「名簿閉鎖期間の設定」の関係で(注)を付しておりますが,すべての会社についても名簿閉鎖期間の制度を廃止するのかどうかということでございまして,今回は,この(注)もちょっと変えまして,「検討する必要がある」と。前回の第一次試案では,「今後検討する必要がある」と書いていたのですけれども,できれば今回検討いただきたいということで,「検討する必要がある」ということにしておりますので,よろしくお願いいたします。 ● それでは,ただいま御説明いただきました第1の関係について御議論いただきたいと思いますが,順次,前の方から御意見を賜れれば幸いであります。   1の(1)は,甲案・乙案ありますけれども,これは御議論は分かれるところですけれども,一応パブリックコメントまでは甲案・乙案両方載せるということは,これはやむを得ないのではないかと思っております。   それで,今回は乙案が新しく加わりましたので,乙案について詰めた御議論をいただければと存じます。   まず,第1は,乙案のbのところで,「この試案に基づく改正法の施行後5年以内の政令で定める日において」,公開会社は,「株券を発行しない旨の定款の変更の決議をしたものとみなすものとする」ということでありますが,この「5年以内の政令で定める日」というようなやり方,これでいいのかというのが,まず最初に御議論いただく必要がある点かと思いますが,この点いかがでしょうか。これは,もちろん,5年という特定の年数も含めた形で,これでいいのかどうかということでありますが。 ● 質問でございますが,先般の議論というのは,定款変更決議を経る必要があるのかどうかというところで,一斉に強制するか,変更決議を経た上でという議論だったと思うのですけれども,今回も,乙のb案で,いわば定款変更の決議がなされたものとみなす,みなし規定方式を採用された理由についてちょっとお伺いしたいのですけれども。   というのは,この不発行についての理由というのが,公開会社と非公開会社と,見ていまして,全然違う理由で,公開会社の場合は,極論すれば金融商品のような形の,株式を金融商品と見て,他の社債等と同列に扱うというようなところがあったかと思うのです。そうすると,特別法かそういうものでするという方法もあるのかなと思うのですが,商法の枠内で変更決議のみなし規定でされようとする理由がちょっと分からないのと,もう1点は,途中御説明がありましたけれども,これは施行時期の関係があると思うのですが,非公開会社の場合は,極論すれば施行されてすぐに,不発行決議をするということを考えると思うのです。適法な状態にすると。ところが,この案ですと,公開会社については,一定期間は,そもそもそういう定款変更決議は,事実上しないでしょうけれども,しないということが予定されてしまうと。その辺の区別の合理性というか,なぜそういうことになさっているのかというのがちょっとよく分からないので,乙のbというので,みなし決議方式を採用された理由について御説明いただけたらと思います。 ● みなし決議の方式をとりましたのは,まず,aは,商法の本則にこういう形で規定を置いてはどうかということを考えております。ですから,これは商法ですから,公開会社・非公開会社にかかわらない,すべてについてのものでございます。   そこで,それを前提としながらも,更に,公開会社については一斉移行という前回出てまいりました考え方を実現しようと思いますと,この例外を公開会社についてだけ作らなければならないということになります。   そこで,やり方はいろいろまだほかにもあろうかと思いますけれども,単位株導入のときに,一定の日において定款の変更の定めをしたものとみなすのだということでやった,これは経過措置という形でやるわけですけれども,そういう先例がございましたので,それに倣ってやれば,既存の公開会社の部分については,すべて,具体的な決議をしなくても,一定の日において株券不発行制度が採用されると。それで目的は達成されるのではないかというふうに考えた次第でございます。   それから,御質問の第2点でございますが,bをとったからといって,公開会社が独自にaの規定に基づいて定款変更の決議をしてはならないということを別に規定することは考えておりません。   ただ,そうするということは,事実上,保振制度--5年という期間を設定しましたのは,新しい振替制度のシステムが完成して,いろいろ実験とかもあるでしょうから,実際に動かせる状態になるまで最大5年,もうちょっと早くできればその方が望ましいと思いますけれども,ある程度の期間がかかるだろうと。そういう前提で考えますと,そのシステムが実際上動き始めるまでは保振法に基づく振替によらざるを得ないわけで,そうであるにもかかわらず,aに基づきまして不発行制度を自社独自で導入しますと,要するに公開会社でなくなるということと引きかえにならざるを得ないだろうというふうに考えているわけでございます。 ● 御説明をお伺いしまして,単位株から単元株への移行のときは,そもそも会社が単位株を採用していることを前提にしていると思うのですが,今回の場合,既存の株式会社はすべて株券制度を採用していると。   これはやはり,そもそも不発行を導入する理由が,公開会社・非公開会社で違うというところをはっきりさせる方がいいのではないかと。であるならば,bの手法,定款変更のみなしよりも,先ほど少し申し上げましたような,特別法でするか何かした方が,導入の背景の違いというのが出るのではないかなというふうに考えますので,御質問させていただいた次第でございます。 ● その点は,そのお考えをとると後の方に響いていますか。確かに一定の日云々というのはあるのですが。 ● 定款変更というのは,やはりある程度株主の意思の反映というふうな思いがあるものですから,それを,先ほどの背景の,いわば金融商品というような形の位置づけでする場合に,そもそもそれが定款変更という形の方法をとるのがいいのかどうかというところで少し抵抗があるものですから。それであれば,もう割り切って,特別法の方がいいのではないかというふうに考えるわけです。 ● ちょっと補足を。   特別法で,つまり振替制度を定める法律の方に規定を置くということも,実は検討はしました。しかし,そうしますと,公開会社については一律ということになるのですけれども,仮に現在公開している会社は一斉移行でいいのですけれども,その後に公開する会社というのが出てまいりますが,その後に公開する会社が,公開するまでの間は株券を発行していたという場合には,公開に伴って個別に,株券を回収するかどうかは別にして,手続をとらなければなりませんので,それを考えますと,新しいシステムが動き出した後に株式を公開しようという会社は,仮にそれまでに株券を発行していれば,今後株券は発行しないという定款の定めを置いて,株券を回収するかどうかはまた別ですけれども,一定の手続をとって,その上で公開に持ち込むということにせざるを得ませんから,それをできるだけ簡潔に規定しようと思うと,これが一番簡便なのではないかというふうに考えた次第でございます。   ○○委員がおっしゃることは分からないでもないのですけれども,思想を条文にあらわす必要があるのかどうかということ自体も,必ずしもそうではないのではないかと思いますので。   要するに,既存の会社については一斉に不発行が導入できて,そうでない会社については各社ごとにやっていただくと。そのときは定款変更ということをいったんかませざるを得ないということから,定款変更決議をしたものとみなすという形の処理にしたということでございます。 ● よろしいでしょうか。 ● はい。 ● 実際上は,この乙案のbでいかれることが合理的な実務かなとは思うのです。が,この前から申していますように,振替制度となりますと,静的な株主というのですか,取引しない株主の権利関係までもが間接保有形式になってしまうということによりまして,全体的な変動の危険にさらされる可能性が出てくるということでございまして,それをみなしの決議でやってしまうのは,私的自治を超えているようにも思うわけです。   ですから,この前から憲法違反とか過激なことを申しておりましたが,最終的にどうするかというふうなことは私も考えてみましたけれども,それは,ここの研究会の段階から御議論のありました,振替えを欲しない株主の処置というので,特別管理口座というのが今のところ考えられておりまして,今の御提案は,そこから振替えの方に行くばかりの一方通行のような規定になっているのですが,特別管理機関の方にまた戻れると。しかし券はもうないと。券はなくなっているのだけれども,それはあたかも--現在の株券不発行制度というのがございますね,現行法上の。券は一回なくしてください,流通するときは券を発行してもう一回流通させますというような制度がございますね。あれと同じように,それが特別管理機関口座みたいなですね。だから,そういうふうなものを考えることはできないのかなというふうに思います。   ですから,そういう,要するに株主の中に--いつの時点からかはちょっと難しいです。いつの時点にその口座に戻れるか,それは例の全体像のリスク負担の問題が起こっていますから,いつの時点からそこへ戻れるかはまた今後の議論で結構ですけれども,最終的にそちらに戻れてダイレクト保有が継続可能だというようなシステムにしていただければ,後で御議論のようなことが起こってきていろいろ問題が起こりましても,一応合意ベースで確保されていると思いますので,このみなし規定も可能になってくると思うのです。   私の申していますようなダイレクト保有が可能なような工夫を何かしていただけたら,b案にでも賛成できると考えております。 ● 御意見を伺いましたが,特別管理口座においてどうなるかというのは,権利が縮むという,あの○○委員が前から懸念しておられる点は,また後で詳しく御説明いただきますので,その際にまた御議論いただければと存じます。 ● 私は,日本の場合は,戦後,閉鎖会社の理論が多かったものですから,公開会社の話というのは余りしてこなかったのですけれども,もともと株式・株券は金融商品に決まっていると思うのですね,基本的には。ですから,例えば会計年度が1年だと統一されていることも,単位が均一であることも,会社法の中の一つ一つの仕組みは,証券市場を担うような仕組みとしてできてきているのであって,それが,証券市場が大きく変化して,決済が迅速で,かつ,確実に,安全にできる,これはすべての投資家が望むことであります。そのためには,会社法が変化してくるというのは極めて当然のことであって,これは,株主の意思というよりは,一つのマーケットのインフラですので。もし,みなしという規定を置かないのだとすれば,公開株式会社はこうしなければならないという規定を置くかというと,そこまではまだ踏み切れていないわけですよね。「大会社」という言葉も残っておりますし。   ですから,そういう意味では,会社法の条文の中に公開会社の特例だけをまとめるというのがなかなか難しいとすれば,こうした形で実質的に公開会社法制ができ上がりつつあるということですから,私は,非常に肯定的にとらえるべきだと思っております。 ● 甲案・乙案という問題はまた今後も御議論いただくことがあると思いますので,乙案について,今日,新しく注等も加わっておりまして,それらについて,整理できるものは整理してしまいたいと思いますので,この点についても御議論いただければと思いますが,どの点でも,いかがでしょうか。   まず,bについての(注1)でありますけれども,乙案をとる場合に,公開会社が新株予約権証券を発行することができる余地を認める必要があるかどうかということであります。つまり,もちろん公開会社の新株予約権でありましても,振替制度を利用するかどうかは選択の余地がないと困るのですけれども,およそ証券を発行するということを認めなければならないかどうかという問題だと思いますが,これはいかがでしょうか。   前回は,乙案をとった場合,株券についてはもう全部,種類のいかんを問わず,公開会社については発行を認めないということでしたけれども。 ● 原則的な考え方は,現証券といいますか,現株式というのでしょうか,に素直に合わせるという考え方が一番自然ではないかなというふうに考えております。   あわせて,少しよろしいですか。   先ほど御説明いただきました(注2)に関してでございますけれども,私が前回意見を言わせていただきました趣旨は,実際のマーケットでは,日本の場合には,まだ,新株引受権証書というものが発行されて,そのライツが売買されるということは,私が知る限りは見たことがありません。実際には発行日取引というような形でなされております。それは欧米とはちょっと違った状況かと思いますが。したがって,手当てがなされていなくても実務は回るというような趣旨で御説明させていただいたつもりでございまして,効率的な新しい制度が手当てされることを否定しているわけではございませんので,もちろん,使われるようになるということについては賛成でございます。そういうふうに御理解いただければと思います。   いずれにしましても,実務の意見を反映していただきまして第二次試案を作っていただいたことを大変感謝しております。 ● ほかにいかがでしょうか。   この(注1)の点については,○○委員の御意見について,特に皆さん御異論はないというふうに理解してよろしいでしょうか。公開会社については,株券を不発行にすれば,新株予約権についても不発行になるということでよろしいでしょうか。 ● この前も申したのですけれども,その場合,期限とか伝達事項がございますね,予約権の有効期限というのですか,そういう開示項目についての業者の義務というのが励行されることが前提になるということはありますので,そういうこととの関連においては可能であると。 ● 御指摘ありがとうございました。そういうことですね。重要な点かと思います。   今の○○委員の御意見は,新株引受権証書の不発行制度については,なくてもいいけれども,そういう制度を設けることについては反対ではないということですね。 ● そういう手当てをしていただくことには,もちろん反対するつもりは全くありません。 ● 確認させていただきたいのですけれども,今の○○委員のお話ですと,日本の今の実務では,新株引受権証書を転々流通させるみたいなことは行われないということでございますが,そうすると,他方で,この不発行制度を設ける場合には,更に振替制度を設けるということを考えなければいけないわけですけれども,それには当然相当のコストがかかることになります。立法のコストもかかりますけれども,システムのコストはもっとかかるので,その投資対効果は見合うのでしょうか。それを多分参加者の皆さんが負担されることになると思うものですから。 ● それは,私ども証券保管振替機構なり,私どもの振替制度を利用される各会社がどういうシステムを構築されるかということにかかってくるわけですけれども,単独で,例えば株式については株式,それから,今お話がございました新株引受権証書については新株引受権証書について,単独のシステムをそれぞれ作るということではございませんで,そこは制度として想定されるものついて活用できるようなシステムを作るということですから,当然,そのためのその部分ということで,若干のコストはもちろん必要になると思いますけれども,それが非常に莫大なものであって,実際に使われないから収支の上でいかがかというふうな,そういう性格のものではないだろうと思っております。   もっと別の言葉で言わせていただきますと,例えば,今の新しいペーパーレスのものに対応するシステムを立ち上げるときに,制度としてこういうものが法律上認められているけれども現実にはありませんねというときの作り方としまして,二つございます。   一つは,そういうものが流通するであろう,発行されるであろうということを前提にシステムとして作り込むという方法が一つ。   もう一つは,現在はそういうものはないし,しばらくの間想定されないわけですから,最初スタートする時点においては,そういうものを必ずしも作り込まないというやり方があるわけです。   では,その二つ目の方法のときはどうするかというと,現実にそういうものが発行される見込みになってきたときに,既存のシステムに必要な修正を加えるという方法があるわけでございます。ですから,今の状況がずっと続いていく,先ほど○○委員がおっしゃったように,実際の場ではそういうものが発行されていない,流通していないということがこのまま推移するとしますと,新しい法制度に対応したシステムの立ち上げの段階では,それは当面入れずにいこう,スタートさせて,必要になったら入れようという,現実には恐らくそういうことになっていくであろうというふうに考えております。 ● かなり技術的な問題にかかっておりますので,これは今後また少し検討させていただくことにしたいと思います。   (注4)の点でありますが,これは○○委員の前回の意見に基づいたものですが。 ● 意見を取り入れていただいて大変有り難いと思っておりまして,前もお話をしたとおりでございますが,とにかく,現在も数百万ある中小会社の実態を踏まえれば,やはり簡便にすべてが統一されて,かつ,その方がPRしやすいわけでございまして,そういたしますと,一律に株券不発行ということで仕切っていただくのが一番簡単なのではないかと。実際上の混乱も,恐らくそれが,混乱が一番ミニマイズされる方法ではないかと考えております。一々決議せよとか何とかいうことになりますと,これは,やっていたとか,やらなかったとか,もうワアワア大変な問題になる。これは公開会社でも同じかもしれませんけれども,とにかく一律にやるということが非常に大切ではないかと思います。それで,事務負担が減るということだと思います。 ● ほかの委員の方,いかがでしょうか。 ● 前回,私,欠席させていただきましたけれども,どちらを原則としてどちらを例外として考えるかということによるのですけれども,今,○○委員からお話があったように,非公開会社の場合,券を持つ実態上のメリットが余りないものですから。譲渡制限されているし,担保価値もないので。逆に言うと,それに対する発行コストとか,なくなったときにどうするんだとか,そういうトラブルのことを考えると,実態の要請としては,不発行を原則とした方が,細かい点はいろいろテクニカルに詰めなければいけない点があると思いますけれども,メリットが多いのかなと思います。   一方で,有限会社はもともと券がないわけですけれども,有限会社が大きくなって株式会社になると原則発行になって,更に大きくなって上場なり公開するとまた不発行になるということ,これは現代化の方とも関係すると思いますけれども,そういう点を考えると,できるだけ全体として安定的で分かりやすい制度にするということからすると,不発行を原則として……。これは,この次の回収のところの問題も,公開会社についてどうするかという議論もありますけれども,原則として不発行だとすれば,例えば公告とか回収とかの手続も大分簡略化できるのではないかという点もありますので,そういった点を含めて検討していただけたらと思います。 ● 私は,正直言って,何もしないと,つまり定款変更決議をしないと不発行になってしまうというのは,これはかなり乱暴な制度だというふうに思います。   といいますのは,これは,総会にかけない限り,今株券を発行している会社も不発行会社になってしまうわけで,前回も,私,申しましたけれども,非公開会社の場合,公開会社のように振替制度があるわけではありませんので,つまり,経営者が管理している株主名簿だけが株主であることの証拠になってしまいますので,株主としては,やはり株券があった方が安心だと思う可能性が非常に高いと私は思っています。   そのときに,経営者の方で,これはコストの関係からいっても株券不発行にした方がいいというふうに考えれば,総会の意見も何も聞かずに,要するに総会に何も議案を出さなければいいわけですから,出さないと当然に不発行会社になってしまうというのは,これはちょっと乱暴だなというふうに私は感じております。 ● 部会長のイメージされている会社がどういう会社か分かりませんけれども,非公開会社というのは,非常に大きなものから,本当に数名のものから,いろいろございます。基本的には,こういった企業が最初生まれたときに,信頼関係でみんなが出資をして,トラブルになるのはその信頼関係が崩れた場合でございまして,それはどちらが多いかといえば,信頼関係が継続しているケースの方が圧倒的に多数でございまして,例えば,長い間続いて,孫子の代になって分家したり何とかでごたごたするというケースはもちろんあるわけでございますが,しかし,司法の場に持ち出されることも当然ありますけれども,様々な場を通じて最後はやはりまとまっていくという過程を踏んでいるわけでございます。社会的な解決の方法というのが別途あるわけでございます。   だから,こっちがどうのこうのという議論をするわけではないのでございますが,自分が持っている株式,株主であることを証明する方法が株券しかないというのも事実でありますけれども,例えば,株主であるということを証する書面を別途発行していただければ,それをずっと金庫に入れて持っていれば何の問題もないわけでございますし,信頼関係が続いている状況の中では,少なくとも株主同士は,あの人は株主だということはみんな認知しているわけでございまして,それが何かごたごた変なことをする特別な人が出てきたときにトラブルになる,そのときの証明手段が株券だと,こういうことなので,そういう意味での使われ方の株券が本当に使われ方としていいかどうかという問題もまたあるわけでございますが,我々の感じは,通常の中小の会社であれば,株券がなくてもさほど,もうめちゃくちゃいろいろなところに問題が勃発するというような状況ではないのではないかと。   したがって,株券がなくなったというときには,私どもがPRしてお勧めするのは,それを証する他の例えば紙切れを1枚ちゃんと出してください,こんな形がよろしいんじゃないですか,こんな判こ押したらいいんじゃないですかということを申し上げれば,そのことは解決されるのではないかなと。やや楽観的過ぎるという御批判もあるかもしれませんが,300万ぐらいある企業で,それでおおむねやっていけるのではないかというような感じを私どもは持っております。 ● いかがでしょうか。   先ほど事務当局からも御説明がありましたけれども,既存の株券を発行している会社について,何もなしに株券が無効になった場合については,これは非常に手続が面倒なことになるといいますか,変なことになるというふうに私は思いますが。やはり総会をして株券提供という手続をしていただかないと,非常に混乱するのではないかと私は思いますが。つまり,非公開会社の場合は,株券を使う,つまり定款変更してでも何でも使う会社と,使わない会社とあるわけですから,これまでのここでの議論だと,株券提供手続はやはり要るということになると思います。それを総会決議なしにやって果たしてうまくいくのかどうかというのは,私は非常に不安を覚えますけれども。 ● 私もたくさん中小企業の方とお付き合いをしていて,親子問題とか,私の知っているところでは,お婿さんを二人とってごたごたするとか,いろいろなケースをたくさん知っているのでございますが,少なくとも株主であるかどうかということについては互いに極めて明確に認識しているというケースでございます。   それで,私ども中小企業団体,商工会議所とか商工会連合会とか私どものような中央会とか,いろいろなところが,こういう制度が変わるたびに,これは融資の関係とかいろいろなものがあるのでございますが,あるいは労働関係の方でもそうでございますが,お役所とも連携しながら,周知徹底を図るために,相当な予算を使って,100万枚レベルのチラシをまいて,講習会をやり,セミナーをやりというようなことをやって周知徹底をいたしておりますし,そこまでやって,それでも,おれは知らんという人は,これは自己責任であろうと,こう思っているわけでございまして,部会長の御心配も私はよく分かる気もするのでございますが,通常は,制度が変わるときは,そういうことで周知徹底を図って十分なのではないかなというのが,我々の世界でございます。 ● いや,株主社員であるかどうかということが争われる事件というのは,裁判例なんかを見ていると,非常にあるのではないかというふうに思っておりますが。 ● 現在でも,不発行の定めについては甲案・乙案が両方あるのですけれども,もともと私は,こういうことは会社の定款自治で,会社が自己のコストとベネフィットを勘案して採用すれば済む問題ではないかと考えていたのですが,前回の御議論で,公開会社については,そういうふうにすると,初めに不発行にしようとする会社が負担するコストが大き過ぎて,そのために,せっかく制度を作っても利用されない,そのために,すべての公開会社が想定されるメリットを受けることはできないということが理由となって,一斉移行,一斉不発行という考え方が出てきたのだと思います。しかし,非公開会社については振替制度を利用しないことになりますので,そういう懸念がないわけですから,やはり原則から考えますと,部会長がおっしゃるように,原則としては株券発行であって,不発行にする場合には株主総会で株主の意見を聞くと。従来から不発行の場合にも,もう一度確認をするという方式が筋が通るのではないかというふうに考えます。 ● 部会長からも御説明がございましたけれども,少なくとも司法の場,裁判の場に出てくる会社の場合,だれが株主かというところがまず入口のところでございまして,株主かどうかというところについての争いが相当ある。もちろん,そういう場に上がってくるのは非常に例外的な場合かもしれませんけれども,そういうときに対応できるものとして株主名簿というのが必要なのですが,一方,裁判をやっている者としては,株主名簿すら作成されていない会社が相当あると。そういう現状で,株主総会決議も経ずに株券を不発行ということになりますと,株主を確定する手段がなくなってしまうのではないかというのを非常に危ぐします。   それから,株主総会決議の内容はもちろん株主名簿の確定ではございませんけれども,ある時点で,株主がだれかというのをはっきりさせる名簿を整備するような代替の方法が--これはまた御検討していただかないといけないことだとは思うのですが--確保されない限り,いきなり非公開会社について株券不発行をいわば法律で強制するというのは,株主の確定という点で非常にトラブルが将来にわたって残るのではないかというふうに危ぐしますので,(注4)については反対だという意見でございます。 ● この問題は,恐らく,今日最終的な結論は出ないと思いますので,ほかにいろいろ,できれば固めてしまいたいという問題もありますので,先へ進ませていただきたいと思います。   それから重要なのは,3ページの(注2)に関係するわけでありますけれども,乙案をとった場合には,公開会社については株券の回収を行わない方向で,更に検討すると。つまり,株券回収は行わないということになった場合に,Ⅱ案のaに出ておりますような,「一定の日において株券は無効となる旨をその一定の日の1か月前に公告し,かつ,株主及び登録質権者に各別に通知しなければならない」と,この通知・公告をしなければならないということにする必要があるかどうか。すると,かえって一斉に公開会社について株券がなくなるということにならないおそれはないかというのが,事務当局からの問題意識だったと思います。 ● 産業界としては,是非,乙案で,公開会社については株券の回収を要しないという方向でお願いしたいわけでありますけれども,その場合においても,やはりばらばらということではマーケットが混乱いたしますので,そういう意味からしても,この公告・個別通知は,政令の定める一定の日というのが定められるわけでありますから,PRも相当なされるでありましょうから,必要ないというふうにお願いしたいと思います。 ● いかがでしょうか。事務当局からの御説明もありまして,○○委員がそれをサポートされたと思いますが,皆さん,大体そういうことでよろしいでしょうか。   もちろん,別途何らかのことをあれして,口座を届けてもらうという手続は必要になるわけですね。それはまた後の方で出てくるというふうに考えてよろしいわけですね。 ● そのとおりです。 ● ここでは,単に,無効となる旨の通知・公告は要らないと。   では,この点はそういうことに決定させていただきたいと思います。 ● 投資家に対する通知・公告は,こういう一斉にマーケットの条件を整備するという話ですから,通知・公告は政府がやる仕事であると。 ● 考え方としてはそうだと思いますが,どうせ何らかの通知が来て,口座を届けてもらうことになるわけですから。 ● それはありますけれども。 ● よろしゅうございますか。   そうしますと,次は,3ページの(注3)についても御確認いただきたいのですが。新株予約権証券を発行しない旨の定款の定めをした場合,その効力は既発行の新株予約権証券には及ばないものとするということですが,この点はいかがでしょうか。この点も,先ほど事務当局から説明があったとおりですけれども,そういうことでよろしいでしょうか。   それでは,この点はそのように決定させていただきます。   それから,4ページの,最後の(5)(6)(7),これが新しいところだと思います。新株予約権について証券が発行されないという定款の定めをした場合の譲渡方法とか,新株予約権証券を発行しないという定款の定めをした場合に,個々の権利者の申出によって不発行にするというような制度は要らなくなるのではないかと,この二つが,(5)(6)(7)で新たに挙がっていることであるというふうに思いますが,この点いかがでしょうか。原案のようなことで特に御異論ありませんでしょうか。--よろしいでしょうか。   それでは,原案のような形で御決定いただいたことにさせていただきます。   それから,4ページの3(1)の下についております(注)でありまして,「すべての会社について名簿閉鎖期間の制度を廃止するかどうか」ということでございますが,この点はいかがでしょうか。これはかなり実務的な問題にかかわってくると思いますが。   ○○委員,いかがでしょうか。 ● 基本的には,もう一律で,閉鎖期間はなしというふうな形の方がよろしいと思っております。 ● なしで大丈夫と。 ● はい。 ● ○○委員もそれでよろしいでしょうか。 ● はい。私も,基本的にはほとんど基準日で実務はカバーしているというふうに認識しておりますので,今,○○委員のおっしゃったとおりで,賛成でございます。 ● 商法から株主名簿の閉鎖という制度は消えるわけですね。中小の場合はそんなに移動は頻繁でないはずですから,そう困らないと思いますが。   よろしいでしょうか。   第1については,これで一応,今日確認したい点はよろしいでしょうか。   それでは,「第1 商法の改正関係」はこの程度にいたしまして,次に,「第2 株式の振替制度関係」の御審議をいただきたいと思います。   これも,まず事務当局から御説明をいただきますが,10月及び11月の審議の際に,8ページの下の方の,「7 振替機関等の消却義務の不履行の場合における取扱い」についての案につきまして,○○委員と○○委員から御疑念が出されたところでありますので,これについては,席上配布資料を用意しまして,詳しく説明をしてもらうことにいたしました。   そこで,事務当局の説明といたしましては,まず,今回の案の第一次案から変更された点について説明をしてもらった上で,次に,この7と,それから,「8 消却義務の不履行の場合における株主の議決権等」について,この現在の案の内容自体は第一次案から変更はないわけですが,別途事務当局から説明をしてもらうことにいたします。   それでは,まず,第一次案からの変更点についての説明をお願いいたします。 ● それでは,第一次案からの変更点について御説明をいたします。   この第2の「株式の振替制度関係」の部分は,第一次案からの変更点は非常に少のうございまして,まず一つ目は,表題を「株式の振替制度関係」に改めたということでございます。これは,第3を設けたことに伴うものでございます。   次に,9まで飛ぶのですけれども,「一斉株主通知」,9ページ以下でございますが,その(1)につきまして,11月の部会におきます○○委員の御指摘に基づきまして,通知事項のうち,第一次案に書いておりました2の(6)の事項,つまり,増減があった場合に,その増減の別,その数及び当該増減があった日を通知するというのは,一斉株主通知の際はしなくていいということにいたしました。この2の(6)の事項は,単独株主権や少数株主権の行使の際に問題になることでございますので,個別株主通知の事項とすればそれで十分ではないかと考え直したためでございます。   それから,同じく9の「一斉株主通知」につきまして,第一次案では(注)を二つつけていたのですけれども,そのうちの(注1)を,本文の(6)にいたしました。これは,11月の御審議の結果で,現在の保管振替制度と同じ一斉株主通知のほかに,振替制度利用機関が費用を支払って通知をしてもらうということはできてもいいだろうというのが11月の御審議の結果だったと思いますので,そのようにしたということでございます。   なお,同じく第一次案についていました(注2)は削りまして,11ページの11の「単独・少数株主権の行使方法等」のところに,それぞれA案とB案に(3)というのを設けました。つまり,振替制度利用会社の振替口座簿の閲覧権について,A案の振替口座簿基準案をとる場合には,これは振替口座簿の中身を知る正当な利益が振替制度利用会社にはありますので,その閲覧等の請求はできるようにする。これに対して,B案の株主名簿基準案をとります場合には,あくまでも株主名簿基準になりますから,振替口座簿に対する利害関係は発行会社の側にはないはずでございますので,その閲覧はできないということで案を整理したということでございます。   最後でございますが,同じく11の「単独・少数株主権の行使方法等」ですが,先ほどの(3)を加えた以外に,A案の(1)のイにつきまして,11月の部会におきます○○委員の御指摘に基づきまして,第一次案では,個別株主通知に係る株式が振り替えられた場合には,常に口座管理機関から振替機関を経由した通知をするということにしていたのですけれども,それを改めまして,当該株式について発行会社から請求があった場合にのみ通知するという,現行法の保管振替法上の減少・抹消通知に似たような形に改めております。   それから,実質の変更ではありませんけれども,A案とB案を対比しやすいように整理をしたということでございます。 ● それでは,続いて,7と8について御説明をお願いします。 ● それでは,私の方から,振替株式の善意取得と消却義務について簡単に御説明したいと思います。   お手元に,カラーの「振替株式の善意取得と消却義務」というペーパーがございますので,それを見ながら,具体的事例に即して御説明いたします。とは申しましても,数字が非常にたくさん出てきますので,作った私も目が回るような感じを受けるのですが,なるべく分かりやすくやりたいと思いますので,よろしくお願いします。   まず,1の「口座管理機関甲の加入者Aの口座に過大記載が100ある場合」というところを見ていただきたいのですが,これが一番最初の事例設定ということになります。   ここでは,一番上に振替機関がございまして,その振替機関の下に口座管理機関甲と口座管理機関乙があるとします。その口座管理機関甲の口座と乙の口座につきましては,振替機関の振替口座簿上にそれぞれ自己口座,顧客口座に分かれて記載がされることになります。甲の方には,A,B,Cの3人のお客さんがいるとします。一方,乙の方にはD,Eの2人のお客さんがいるとします。そして,甲の振替口座簿のAさんの欄には100,Bさんには200,Cさんには300が書かれています。振替口座簿という欄に,100,200,300とありますが,これが振替口座簿の記載ということになります。ここで,事例の設定といたしまして,B,Cさんは普通の一般の方だとしますが,Aさんは,この100というのは過大記載で,実際には株式を持っていないという前提になります。この赤枠部分が,いわゆる100の過大記載,無権利であるにもかかわらず記載がある場合ということになります。一方,乙さんの方のDさん,Eさんにつきましては,400,200の記載がありますが,それぞれ当然株式を持っているという前提になっております。   さて,この事案におきまして,まず,当初の法律関係がどうなるかといいますと,①に書いておりますように,Bは200,Cは300の株式を保有しております。そして,②に書かれていますように,Aの口座には100の記載はありますが,これはあくまで無権利ですので,無権利であることを発行者が証明すれば,何も主張することはできないと。   これを,ちょっと別の側面から,議決権という方向から考えてみますと,(注)と書かれていますが,この時点では,加入者の保有する株式の合計数は1,100です。つまり,B+C+D+E全部合わせれば1,100になります。これは発行済株式総数と同じですので,議決権の縮減などは生じません。単に無権利であるAが議決権を行使できないだけということになります。   さて,次のステップに移りまして,この1から,Aは自己の過大記載を奇貨といたしまして,Dに100の譲渡を行ったとします。この場合には,2の表にございますように,まず,Aの口座は100から0に変更され,それに伴いまして,Dの口座は,当初の数字400から500に増えます。そして,その口座の移転に伴いまして善意取得が生じますので,Dの株式も400から500に増加することになります。   また,こういう振替えが行われた場合には,単に末端の口座が変更されるだけではなく,例えばAの口座管理機関甲の顧客口座を見ていただければ分かりますが,もともと500の顧客口座の記載がありましたが,これが振替えのために400に減り,乙の顧客口座は,自己の顧客分が増えますので,600から700に増えるという,こういう口座の動きになります。   このような場合におきまして,甲の口座を見ていただけば分かるのですが,顧客口座の記載は400でございますが,一方で,その下のBさん,Cさんの保有している権利は500あります。したがって,そこに差額の100というのが出てきます。この100をどうやって補填するのかというのが消却義務の問題でございまして,口座管理機関甲は,その傘下の加入者の合計の株式数である500から記載している400を引いた100について消却義務を負うことになります。   それでは,今度は,Bさん,Cさんなど個別の加入者がどのような権利を持っているかということを考えていくのが,下の①,②でございます。   まず,①で,あくまでもBさんは200,Cさんは300の株式を保有していることになります。ただし,このままでは,全体の合計数が,善意取得によって100増えておりますので,1,200になってしまいますから,発行会社としては,1,200全部を行使させるわけにはいきませんので,どこかでだれかが損をする必要があります。そこで,②として,ただし,そのうちBの40,Cの60については,発行者に対して対抗することができないとしているのが,第二次試案の第2の7(1)で,同様の規定は,社振法の81条1項が参照されます。   なお,社振法につきましては,お手元の六法には記載がありませんので,別途席上配布におきまして,「社債等の振替に関する法律(抄)」ということでお配りしております。   一応確認しておきますと,社振法は,振替機関の消却義務の不履行の場合における取扱いと口座管理機関の消却義務の不履行の場合における取扱いとを分けておりまして,社振法81条1項で,7ページになりますが,簡単に読ませていただきますと,   第七十九条第一項に規定する場合において,同項に規定する口座管理機関が同項及び同条第三項の義務の全部を履行するまでの間は--これは,消却義務の全部を履行するまでの間はという意味です--発行者は,社債権者(当該口座管理機関又はその下位機関の加入者に限る。)の有する当該銘柄の振替社債のうち第一号の額が第二号の額に占める割合を同条第一項に規定する超過額(同項の義務の一部が履行されたときは,当該履行に係る額を控除した額)に乗じた額に関する部分について,元本の償還及び利息の支払をする義務を負わない。   とあって,1号,2号ということで,1号が当該社債権者の有する当該銘柄の振替社債の金額,2号が当該口座管理機関又はその下位機関の加入者であるすべての社債権者の有する当該銘柄の振替社債の総額ということで,簡単に申し上げますと,その消却義務について,各社債権者が案分的に元本の償還及び利息の支払いをする義務を負わないという負担をこうむることになると。これが,株式に言いかえますと,こういう元本償還義務というふうには言えませんので,会社に対抗できない額というふうになっていくことになります。   ペーパーの方に戻りますと,具体的な計算としては,2の表の,発行者に対抗できない数のBの欄に書いてありますように,消却義務100に,500分の200,つまりB足すCが合わせて500ですから,それに対してBの200を案分して40という数字が出て,この40分については,発行者に対して対抗することができないということになります。   このような調整を行うことによりまして,議決権,例えば議決権について考えますと,発行会社は,Bに200引く40の160,Cに300引く60の240の議決権を行使させることになり,DとEに関してはそれぞれ500,200なので,総合計は1,100となって,発行済株式総数は一致して,発行会社は,増えるということはないと。要するに議決権数が増えるということはないということになります。   ちなみに,これは,いわゆる間違った,過大記載をした甲の傘下の顧客だけが負担をこうむるという,パーティションの考え方をとったやり方でございます。   それに対しまして,いわゆる株券保管振替法におきましては,パーティションの考え方をとらずに,全体が減るというような考え方をとっております。共有からの性質ということでそのように言われているわけですが,では,もしここで保振法と同じような考え方をとったらどうなるかということを注意書のところに書いておりまして,仮に議決権について縮減しない--縮減しないというか,すべてが案分に減るということに結局はなるのですけれども,Bは200,Cは300の議決権が行使できるという法制をとることになりますと,Bに200,Cに300の議決権を行使させることになって,議決権の合計数が1,200に増加することになります。つまり,もともと1,100の議決権だったものが1,200に増えます。そのため,DとEはもちろん500,200の議決権を行使することができますが,1,200分の500,1,200分の200と,今までよりも分母が大きくなりますので,Dは,自分と何ら関係のない口座管理機関のミスによって自己の権利を減少させられてしまうことになってしまうと。また,B,Cも,一応表面的には200,300と減っていないようにも思いますが,これもまた分母が増えておりますので,当然これは議決権の影響力は従前よりも減ってしまう。   つまり,善意取得というものが生じる以上は,だれかが,一部の人が負担をこうむるか,全体が負担をこうむるかはともかく,必ずだれかが負担をこうむるという法制は,これはもう避けられないというのが,ここでの結論ということになります。   なお,40と60につきましては,減っていて議決権行使ができなかったなどについて,因果関係などで損害が生じれば,それは口座管理機関甲が損害賠償義務を負うことになります。   これが第二次試案の第2の7の(2)で,社振法でいきますと81条2項に該当するようなことで,7ページの81条2項で,「第七十九条第一項に規定する場合において,同項に規定する口座管理機関は,前項に規定する社債権者に対して次に掲げる義務を負う」ということで,社債の場合には,1号で発行者にかわって元本の償還及び利息の支払いをする義務,2号で損害賠償義務という二つの義務を口座管理機関に課しております。   ただ,株式の場合には,かわりに議決権を行使するとか,そういうことはちょっと考えられませんので,恐らくここは損害賠償義務に一本化せざるを得ないなということで,第二次試案の方では,損害賠償義務のみを記載しております。   以上が2番目のレベルです。   次に,更にこの段階から,BがEに譲渡するということを考えております。それが,次のページの「3 その後,BがEに譲渡した場合」というところです。   ここがちょっと分かりにくいところではございますが,Bさんは,40について発行者に対抗できない数があるので,Eに対しては160の完全な権利と発行者に対抗できない40の権利を承継的に取得させることができ,残りは善意取得だと考えるのが普通の考え方であることは重々承知しておりますが,社振法や今回の試案におきましてはそういう考え方をとっておらず,Bさんは200の株式を持っているのだから,Eさんに対しては200の完全な権利を承継取得させることができると考えております。   なぜこのような考え方をしているかと申しますと,先ほどの一番最初に,こうじゃないかと,普通の考え方のように,40についての善意取得というような構成をとっていきますと,まず,どのような順番で取引が行われたかによって計算の数字が全然変わってきてしまいます。それは,単にBとEの取引だけを見ては計算できず,例えば,AさんやCさんや,又はDさん,Eさんとか,すべての人の善悪を確定した上でないと,また,すべての取引の順番を確定した上でないと,ちゃんと計算ができないということになって,これはもう事実上計算ということが不可能になります。   そうすると,善意取得が生じないように,どこかですべての取引を一瞬ストップさせるということも考えられますが,そうすると証券市場というのは全く成り立ちませんので,これはもう計算を,常に,現状の振替口座簿を見たらすぐに計算できる,そして,その振替口座簿の数字に応じて即消却義務も履行できるし,例えば議決権数について縮減を生じさせるところはどこなのかということも,取引の具体的な中身を見ずに,振替口座簿だけで見れるというようにするために,このように,200がきちんと承継取得されていくのだというような法制をとっております。   具体的に申しますと,①に書かれていますように,Bは200の株式すべてをEに譲渡できます。逆に,Eは200の株式を承継取得し,そのすべてについて発行者に対抗することができるということになります。この法制をとることによりまして,先ほど申しましたように,確かに,40,一瞬対抗できないものがありますが,譲渡をするときには,通常,対抗できないものが幾つあるかなどということを余り気にせずにどんどん譲渡することができる,取引に対する影響は非常に軽微であるということが言えると思います。   ただし,Cについては影響がありまして,②ですが,Cは300の株式を保有していることは2の時点と変わりございませんが,③,Cが発行者に対抗できない株式の数は,今まで60だったものが,100対抗できないという形になってしまいます。100掛ける300割る300ということになります。この100増加することにつきまして,また議決権行使等について何らかの損害が生じれば,口座管理機関が損害賠償義務を負うのはやむを得ないと。これは先ほど説明したとおりです。   いわばBさんは逃げたようなイメージがありますけれども,このように途中で売ってしまえば逃げられるということになると,みんな売ってしまって,最後どうなるんだということが若干不安になるわけですが,それについて考えていますのが,4番の「その後,CがDに譲渡した場合」というものでございます。   ここでは,Cさんもこのままでは何か損するような感じがするので,Cさんが300のものを全部Dさんに譲渡しようとします。   ところが,ここで問題になってくるのは,Cは300の譲渡をしようと思っても,口座管理機関甲の顧客口座を見てもらえば分かりますが,既にBさんの譲渡が終わった段階で,残りは200の顧客口座しか記載がありません。したがって,Cさんが振り替えようと思っても,200の限度でしか振り替えることができず,どうしても100残ってしまう。   こうすることによって,甲さんの下のA,B,Cさんが全く全部0になってしまうという事態は,システムとして防御できているということになります。   より詳しく申し上げますと,①に書かれていますように,Cは200のみDに譲渡できます。Cが,残り100の振替申請をしたとしても,甲の顧客口座はもう既に0になっているので,振替えができません。   もっとも,括弧内に書かれていますように,この後,例えばBが100の株式を取得してくれば,甲の顧客口座は100の増額が記載されるので,Cはぱっとその瞬間に振り替えようと思えば振り替えられることになります。多分,Bさんとしてはそんなことはしないとは思いますが,要するに,顧客口座という共通の数字をこの中の顧客が奪い合うというか,そういうような関係になるということになります。   そういうことがない限りは,とにかく100についてはCさんのところに残存しますので,Cさんは,200の株式の譲渡後,残り100の株式を保有することになり,ただし,その100すべてについて,Cは発行者に対抗することができません。また,この100についてCに損害が生じれば,口座管理機関甲が損害賠償義務を負うことになります。   以上が,Cさんがやれることということになります。   そして,最後に,では,その消却義務が履行されるというのは一体どういうことなのかということについて説明したのが,5番でございます。   この場合,消却義務を負っているのは口座管理機関甲でございますので,甲が,まず,だれでもいいのですが,ここではDから消却義務相当分100の株式を取得してまいります。そうすると,今まで自己口座には0だったのですが,それが100に増えることになります。この段階で消却の意思表示をしますと,いったん増えた自己口座の100がまた0に戻りまして,そのかわりに,顧客口座の欄が0だったものが100に増えます。このように増えることによって,まず,Cさんは,Cさんの持っている100の株式をすべて自由に譲渡できるようになります。また,株式の数も,消却の意思表示をしていますので,100減少して,またもとの総額1,100という状態に戻ると。これが,口座管理機関甲が消却義務を行った場合の株式及び記載の変更ということになります。   以上が,振替株式の善意取得と消却義務の説明でございます。   済みません,補足的に。   以上のように,現在の社振法,又は今回の試案というのは,消却義務が生じた場合の負担というものを,パーティション理論ということでやっておりますが,このパーティション理論を採用している理由といたしましては,先ほどもちょっと申し上げましたが,一つは,ほかの口座管理機関が失敗したミスというものを,失敗もしていない口座管理機関が責任を負うのはおかしい,又はその下の顧客が責任を負うのはおかしいという自己責任的な発想と,もう一つは,一部の口座管理機関に過大な,本当に極めて過大な過大記録をしたような場合に,システム全体に影響してしまうのではないか,そういうのはシステムの保守という点で問題があるのではないかと,そういったような点が根拠になっています。   ただ,このようなパーティション理論の採用につきましては,そういった金融政策的な面もございますので,その点につきましては,○○幹事の方から詳しく説明していただければ幸いでございます。 ● それでは,この第2の株式の振替制度に関する御議論をいただく前に,今,○○関係官からも言われましたように,金融庁のお立場としても○○幹事から御説明いただけるそうでありますので,よろしくお願いいたします。 ● ○○関係官の方から大変詳しい御説明をいただきました。私の方から,補足の補足になるのかもしれませんが,簡単に御説明させていただきたいと思います。   まず,こういった,無権利者が存在するような口座の記載があって,それが善意取得されたというような例は,今まで,日本銀行さんの国債の振替えや保管振替機構さんの振替えにおいて,発足当初から一度も起こっていないので,基本的には,こういった振替システムというのはまず安全なものであるということを,まず御理解いただきたいと思います。   それで,このようなパーティションの議論がなぜ出てきたのかという簡単な背景から申し上げますと,保管振替法におきましては,こういった振替株式の善意取得が起こって全体の株式が増大した場合には,連帯して責任をとるという方式になっていたということでございます。ただ,一方,先般成立した社債・国債の振替制度においては,基本的に,過大記録をした機関が消却義務を負うという形になっております。私どもとしては,今回の株式の振替制度についても,先般成立いたしました社債・国債の振替制度と同様な制度設計をお願いできたらと考えております。   その理由は,先ほど,理論的なものというよりもむしろ政策論的なものということで,金融政策上の観点が大変大きいのですが,私ども,当然,口座管理機関たる金融機関とか証券会社,日ごろからリスク管理というのを十分注意するようにというふうに言っております。そういった意味で,金融システムの安定性を確保するというのは大変重要な要素であるのではないかなというふうに考えております。   こういった場合,自分の管理とか,また把握の及ばない事由によって,金銭支払義務を負うような連帯的な責任を負うというようなことは,金融機関自らが負担すべきリスクの上限を管理できないということになりますので,金融行政上も問題があるのかなと思っております。   それから,国際的にも,特に海外から参加される口座管理機関の方から言われますのは,やはりそういった連帯責任というのは,リーガルリスクというのは限定できないんじゃないかと。そういった意味で,日本の証券決済システムというのは,連帯責任をとる限りにおいて,ややおくれたものになっているのではないかというような御指摘も受けております。   そういった意味もあって,今回,やや権利の縮減ということになっていますので,いかにも投資家の方が縮減してしまうようなイメージを与える条文案ではございますが,基本的には,これは連帯責任の場合にも同じような状況は生じるわけでございまして,そういったことも勘案して,今回のようなパーティションの責任のとり方で構成していただけると有り難いなというふうに思っております。   とりあえず,以上でございます。 ● それでは御議論いただくわけですが,いつものようにここで休憩をとりたいと思います。           (休     憩) ● それでは,時間でございますので,審議を再開したいと思います。   「第2 株式の振替制度関係」について,どの点でも御意見をちょうだいしたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 先ほど幹事の方から御説明いただいた変更点とはちょっと違うのでございますけれども,1点,権利の帰属のところで,本来であれば第一次試案のところでお話し申し上げた方がよかったのかもしれないのですが。   実は,株式を担保の目的で譲り受けた場合の取扱いについて,質問というか,お願いなのでございますけれども。現在,御案内のとおり,証券取引所で,先物・オプション等の取引の証拠金として代用有価証券を担保で,これは証券会社さんや銀行さん,もちろん顧客も含めて,いただいて,担保管理しているわけでございます。それは保振さんの口座で担保管理しているのでございますけれども,その場合,株式のいわゆる株主権に係る配当等の取扱いについては,保振法でお手当ていただいているとおり,実質株主通知というような形で,実際の株式の所有者が配当等を受け取るような形で実務が進んでいるわけでございますので,ここのところ,今後振替制度に移行する際にも,その辺の実務の対応が大きくスキームが変わらないように御配慮いただければということでございますので,ひとつよろしくお願いいたします。 ● 問題点は分かったと思いますが,何かありますか。 ● いえ,結構です。 ● それでは,そのような方向でお願いしたいと思います。 ● この権利の縮減のところでよろしいでしょうか。   本日の資料ですと8のところになるのかもしれませんけれども,今の御説明をお聞かせいただきましたところで,どうしてもお願いしたいと思いますのは,やはりそういったことが起こらないと。起こらないけれども万が一起こった場合ということはよく分かるのですけれども,そうであればなおさら,何か投資家保護のセーフティネットのようなものを関係者で,もちろんパーティション理論を前提としてでも結構なのですけれども,あるいは全体的で結構なのですけれども,何か既存のものをもしうまく使えれば,保険のような形で使っていただいて,それで,この8のような規定をできれば設けないでいただくというような,いわば実務の世界で何とかできないかなと。前回も,私,間接方式なんていうことを申し上げておりましたけれども,それを申し上げているわけではございません。何とか既存の,あるいは新規というとなかなか難しいかもしれませんが,保護のためのネットワークのようなものを実務の世界で使えないかなというのが一つです。   もう一つ,どうしても難しいということであれば,いわゆるパーティション理論のもとで,口座管理者の傘下の加入者のものをそれぞれの案分で縮減するというスキームでございますが,それでもちろん結構だと思うのですが,1個未満になる部分は,本則に基づいて0.99の議決権ということではなくて,議決権なしということで,本則で0.98だとか0.99の世界をやっていただくということはできないだろうかと,そういうふうに考えております。やはり,ないのだけれども理論的には考えられるのだということでこの議論を突き詰めて,結局制度化いたしますと,どうしても,もう制度の実施時点から,システム開発やらその他いろいろな,諸所かしこに問題が出てくるのではないかと思っておりますので,是非そんなことでお願いしたいなというのが1点。   それから,本当は,最初の第1の導入のところで申し上げればよかったのかもしれませんけれども,やはり私も,乙案ということが,株主への独特のこだわりのところを捨象していただく,あるいは,あすの新しい世界に冠たるマーケットの構築という両方の立場を考えると,ぎりぎりのところかなと,5年がいいかどうかは別として,ぎりぎりのところかなということで,私も乙案を支持するものですけれども,こういった8のような問題が後で控えていますよと。   それから,先ほど○○関係官がおっしゃられましたように,自己責任の世界というようなこともおっしゃられますと,どうしても私は,紙にこだわりというのがあるわけではございませんけれども,紙にかわり得るものとして,先ほど○○委員が冒頭おっしゃられた,直接的に保有していただくと。と申しますのは,株数でいきますと圧倒的に機関投資家の世界なのですけれども,この制度は,全く関心のない,わずかだけ持っている個人投資家もやむなしに新しい世界に,ある一定の期日をもって全員移っていただくという形になりまして,場合によると非常に口座管理費用も年間負担していただく,あるいは,現物はそもそももとからなくなってしまうという,個人株主を考えた場合には幾ら御説明してもなかなか納得し切れない部分がありますので,そこの折り合いをうまくつけるという意味でも,○○委員が先ほどおっしゃられた直接保有の分も,例えば不表示制度に似たようなものという形で残していただいて,そこは会社が,先ほどおっしゃられました特別管理口座のようなものでつなぐというものを担保していただければ,おっしゃられました自己責任で新しい制度に移るか,あるいはそういうこともあるかもしれないので,従来の直接保有の世界に,紙はないけれども,とどまるかという選択肢も投資家の方に委ねられる部分があると思いますので,乙案は乙案で結構なのですけれども,この部分に申し上げて言えば,やはり,失敗をした人の結果を発行会社の方に持ち込まれるというのは,実務としては非常に難儀が予想されますので,できましたら,繰り返しになりますが,何とかセーフティーネットの中で,円満に,実務の世界で運用していただけないだろうかと,それが難しければ,1個未満の議決権というのは本則に戻って考えていただくことはできないでしょうかと,こんなことを申し上げたいと思います。 ● 今,何点かおっしゃいましたが,口座管理機関による消却義務不履行になった場合にはセーフティーネットという,そのあたりから。 ● 消却義務が履行されない場合,特に,今回の案,それから社債等振替法でも既に導入されているわけですけれども,そういうパーティションというものをとりますと,ある特定の口座管理機関,つまり過大記載をした口座管理機関だけが責任を負うということになりますので,消却義務を履行できない事態というのが,論理的にはあり得ることになります。それは,現在の保管振替制度ですと,全員が責任を負うわけですから,それでも論理的にはもちろん履行できないということがあり得るわけですけれども,実際には起きないだろうと考えられているわけですが,パーティションをとるとそういう事態が起き得るということで,その場合のセーフティーネットを設けなければならないとおっしゃられるところ,これは○○委員がおっしゃられるのはそのとおりだと思っております。   したがって,社債等振替法におきましては,パーティションを導入したのとあわせて加入者保護信託という制度が設けられたわけでございまして,私どもといたしましては,それなしにこのパーティションをとるのは非常に問題ではないかと考えております。   ただ,ここから先が○○委員と違うところなのですけれども,基金といいますか保護信託で賄うこと,保護信託という制度になるのか,名前は別にいたしまして,保護信託なり基金なりで賄うことができるのは,あくまでも金の問題になってしまいます。そこが社債と株式のちょっと違うところで,ですから,配当金が少なくなるとか,そういうような問題については,最終的に保護信託なり基金から賄う,あるいは,先程○○関係官の方で御説明しました例で,一人だけ残された人がどうしようもなくなってしまった場合には,それは保護信託なり基金からお金をもらって別途株式を取得するというような,何かそんな形に……。保護信託なり基金自体が消却するとか,そういうことになると思うのですけれども。しかし,議決権については,そうは問屋が卸さないわけで,議決権を行使させなければならないわけです。その場合に,セーフティーネットで議決権の問題を処理することは無理なのではないかというふうに,今の段階では考えております。   そうすると,では投資家保護をどうすればいいかということになりますと,○○委員がおっしゃるようにゼロにしてしまうというのは,これは投資家の側からすると余りにも厳し過ぎるのではないかということで,そうすると,0.98とか0.97という議決権を認めざるを得ないのではないかというふうに考えている次第でございます。   あわせて,○○委員が冒頭におっしゃられたことも援用されて申されたのですけれども,これは前に,11月でしたか10月でしたかは忘れましたけれども,大事なところなので一番最初に御議論いただいたと思うのですが,○○委員がおっしゃり,○○委員がおっしゃったような,振替制度に入りたくない株主は直接保有という形を認めるという問題につきましては,もう前に申し上げたので詳しく繰り返すことは避けたいと思いますけれども,もう直接保有は直接保有で,間接保有には移れない,あるいは,間接保有から直接保有には移れないというふうに決められるのであれば何とかなるのですけれども,先ほど○○関係官が申しましたように,パーティションをとるためには,ある瞬間瞬間で数字が確定できなければならないのですが,過大記録が生じたものから株主名簿の方へ移り,また,株主名簿の方に仮に過大記録が生じたとした場合に,そこからまた振替制度の方へ移ったりしますと,株主名簿自体も振替制度と同じような縮減をしなければなくなる。そうすると,○○委員のおっしゃっている意味は全く達成されなくなるわけでございますし,それを避けて振替制度にだけ負担を負わせて,なおパーティションというのは,実際上とれないわけでございます。ですから,そこは,金目の問題は保護信託みたいなもので確保し,金目以外の事柄については,この8にありますように,少しだけでも認められるものは認めてあげるということでカバーすると。それで不十分な分は損害賠償で補うという以外にはないのではないかというふうに考えております。 ● 私が勘違いしているのかもしれないのですが,現行の制度ですと,1回名寄せしてもらって,私は株主ですと,こうなりますと。では,そのままで来年を迎えましたら,来年は急に100のものが60になっているというようなことも起こるわけですね,この制度でいくと。それが静的安全の関係では非常に問題だと言っているのです。   ですから,そこの制度からダイレクト保有の制度へ戻るときに,一回待ってくださいと。年度末に調節して,今言っているように過重記載がないかどうか確かめた上で移転するというような妥協案でもいいと思うのです。移転時期はですね。だから,ある一定の基準日を中心に,はっきりしてきた段階でこっちが移転するというふうでも,仮にですけれども,そうやって何らかの工夫を加えてでも,ダイレクト保有という道を残してもらわないと,これは自己責任の世界で選びようがないんですよね。全員がみんなリスクを負えという選択なんですよ,ある意味では。   そのときに,今まで認められている制度で商法は随分と手厚い保護をしてきたじゃないですか。つまり,株券によって譲渡ができるというときに,それだったら困るという人に対しては株券保有制度を設けたり,静的安全の保護というのもかなり商法が配慮してきたんですよ。それを急に,ここへ来て,全部動的安全の方で我慢しろという言い方はないと思うんですよ。だから,そこは是非とも,おっしゃるような問題があることは私も分かりますけれども,そのためには,時期を一回ずらして,そのときになった人だけが移転できるとか,そういうような形でもいいですから,何とか静的安全の保護をしてもらわんと,今年は,1,000株ですと認められたと。来年になったら,800株でしたとか,そんな世界はとんでもないなと思うのです。ですから,それを,自己責任で,私は株を売りたいから持っているというのでしたら,それはそれで結構ですけれども,私は当面売りたくないと,ずっと持っているというような人が,安全そうな振替機関はどこだと,毎年期末になったら考えて,そこへぽっと移さなければいけないとか,そこまで要求するのはどうもおかしいんじゃないかと思うのですけれども。 ● 今,移すときにきちっとチェックし終えて,どちら側にも過大記載がないということをチェックしてから移す,そのときだけに一定の期間を限るという案はどうかというお話がございましたが,これも,私から申し上げるよりも,むしろ実務家の方々から言っていただいた方がいいと思いますけれども,今,実質株主通知をするのに相当の日数がかかっているわけでございまして,仮に名寄せを全部して,そこから移すということになると,恐らく証券取引所を何日か閉めなければならなくなるのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ● その点は,また後で実務家の方にお話を。 ● 私,○○委員がおっしゃる趣旨は非常によく分かるのですけれども,これは保振法のもとでもあるんですね。1,000持っていたら実は800になるというのは,起き得るのです。今まで一度もないようで大変結構で,今後もないことを祈りますけれども。ですから,これは,保振法を作ったときに既に踏み切っているのです。 ● 保振法は逃げられるんですよ。券もらって終わりだから。これはだれも逃げられないんですよ。そこが問題だと言っているのです。 ● そこで,保振法というか社振法というか,前の短期社債法ですけれども,作るときに,そこが非常に問題になりまして,そのときに,紙を持っているというか,紙がある場合には善意取得というのを仮に認めるとして,その紙を持っていた人が権利を失うわけですけれども,それは自分で金庫に入れておかなかったので,多少帰責事由があると。それに対して,こういう,紙が完全になくなったような場合には,ある意味では自分の探知し得ない,自分の口座管理機関かもしれませんけれども,他人のミスによって自分が権利を失ってしまうというのは,やはり相当な隔たりがあるのではないかということで,大変議論になりました。   それで,実際,したがってという言い方がいいかどうか分かりませんけれども,イギリスやフランスでは,善意取得というのはないんですね。いわゆる無券面化したものについては。日本のような,あるいは保振法のようなというのでしょうか。フランスは完全ペーパーレスで,一部ですけれども,紙は,○○委員がおっしゃったように,選択肢はない。イギリスは,紙は出せるというシステムなのですけれども,ですから,そこで紙を出して金庫に入れておくことによって自衛できるのですけれども,それはあるのですけれども,しかし,善意取得という制度はないのですね。いわゆる登録証券というか,日本でいえば記名株式とでもいうのでしょうか,「レジスタード・セキュリティーズ」と言っていますけれども,そういう制度に一遍して,その上で無券面化したわけです。これに対して,善意取得を認めているのは,アメリカですね。これもちょっと制度の仕組みが違いますけれども。   それで,さあどっちをとるのかということが大変議論になりまして,これは本当に拮抗だったように思うのですけれども,決済ということからいっても,少なくとも善意者はやはり保護されるべきではないかという決断を法制審議会の部会でしたわけです。今から2年ぐらい前だと思いますけれども。   そうすると,その分はだれかがへこまなければいけないわけですね。それは,今の保振法のように考えますと,全員がへこむと。善意取得者は含まないと思いますが。先ほどの例でいうとA,B,C,Eであって,多分Dは含まないと思うのですけれども。へこむ人は。ちょっとその辺は保振法にも明確には書いてありませんので,解釈の問題になるのですけれども。それか,あるいはパーティションでへこむか。   おっしゃるように,保振法の場合には,私は株券を引き出しますといってみんな引出し始めれば,システムに残っている人だけで全員へこむということになるわけですけれども,実際,しかし,引出しが起きるようではもう全然話にならないわけで。保振システムが動きませんから。   ですから,制度上の理屈としては,それを理由に紙の引出権を残しておくべきだという議論というのは余り現実的ではないように私は思うのです。 ● 私,そんなことは言っていません。株の引出権はなくて,全部サーティフィケートレスでいいと思うのです。ただ,特別管理機関という名前になっていますけれども,あそこのところが,発行会社管理分というふうになって,そこへもうダイレクト保有に行ってしまうと考えて,ただ,おっしゃるように,間接からダイレクトに行くときに問題が起こりますから,そのときのバッファーは要るでしょうと,そういう規定は作るにしても,例えば10年間そこで持っているという人が,今度売りたいと思ったときは,今の株券という制度のようにお金を払って株券を発行してもらうかわりに,振替制度に乗せてもらうという,そういう制度でどうでしょうかと言っているのです。 ● ほかの方いかがでしょうか。   前回は御意見があった○○委員,いかがでしょうか。 ● 私,これを学生に説明するかと思うとぞっとするのですが,ちょっとよく分からないところの確認ですけれども,まず,4のところで,BとCでは大分立場が違うんですね。Bは一瞬40対抗できないけれども,Cはその後100対抗できないと。自分がBかCかというのは分かるんですか。これは偶然の……。 ● 通常,まず何も知らないことが普通なので,先ほども申し上げましたが,顧客口座に余裕がある限りは自由に取引ができますから,恐らく,通常は全く意識しないままやっているということになると思います。ただ,どこかで明らかになれば,顧客として,上が足りないんだなということは分かるようになるということです。 ● だから,急いで売っちゃえという話になるわけですね。 ● そうですね。 ● ここに書いてある案は,そういうことですね。 ● それから,私の印象といいましょうか,前もちょっと申し上げたのですけれども,東証で今のような清算システムでない時代は,渡方指定をやって,そして自己株はみんなで責任を負担するというような申合わせとか,そういうのでやっていたと思うのです。つまり,これは「善意取得」という言葉を使っておりますけれども,いわゆる善意取得によって本来の権利が消滅するという善意取得ではないわけで,マーケットで共通に起こるリスクをだれがどう負担するかという問題ですよね。ですから,やはりマーケットに参加している人たちが共通で埋めるという一種の公法的な義務といいましょうか,ちょっと強い言い方かもしれませんが,そういう義務であって,それを私法の論理の中にはめ込み過ぎているのではないかなと。じゃあどうするのかと言われると困るので,ちょっと分かりにくいのですけれども,そういう感じがちょっとしたということです。   つまり,ほかの機関がミスをしたときに,どうしてミスしなければいけないのかという,それはそういうふうなことは分かりますけれども,しかし,マーケットでは自分の機関だって起こり得るリスク,マーケットのリスクの一つであって,ですから,あの機関のミスはうちは負わないという,そういう話でそもそもあるのかというのが一つですね。   それから,確かに,国債とか社債から始まったのでこういう話になりましたけれども,株から始まったとしたらどういう制度になっていたんだろうかなという感じがちょっとしまして,結局,議決権の問題はありますけれども,最後はお金になるわけですよね,損害賠償ですから。ですから,何となくすとんと落ちるような落ちないような,そんな感じで。現時点での率直な印象です。 ● ○○委員は,最終的には損害賠償が何らかの,加入者保護信託ですか,そんな制度で最終的にはてん補されるということはあっても,一回でも1,000が800になるということならば,これは困ると,こういう御意見ですか。 ● そうです。つまり,それは,政府が健全であり,業界が健全であるときだけ保障されるのであって,私有財産権というのは絶対権があると思います。 ● ○○委員のおっしゃっている案というのは,気持ちとしては非常によく分かるのですけれども,ただ,いろいろ検討して○○委員の案に近いようなことも考えたことがあったのですが,結局,この過大記載というのは,やろうと思ってやっている人もいるかもしれませんが,多くはミスから生じて,そのミスをしたときにどうするかという制度を今作っているわけです。○○委員がおっしゃるように,ある時期を区切って,全部,チェック終わりました,移しても安全ですというときだけ移すということを考え,そういう制度があるとしても,ではそのときにミスしたらどうするんだというのが常に最後には残ってしまいまして,結局,やりとりを認めると,やりとりのときに過大記載があったらどうするのか,チェックしようと思ってチェックでミスがあったらどうするのかと,ミスがあった場合を考え始めると,いつまでたってもなかなか,完全に権利が保持できる制度というのはペーパーレスの世界では難しいというのが,私の考えでございます。 ● 何かちょっと,ここは細切れ的と言っては失礼ですけれども,全体の制度が見えないところがありまして,先ほどおっしゃったように,これは単なる善意取得の問題かと。   私は,記帳することによって証券を発行しているのではないかと思うのですよ。だから,発行者規制がかかってくるとか,そういうふうな規制で,証券取引法上もそういうような位置づけをするのかとか,そういうふうな問題にまで及ぶと。つまり,投信会社とか抵当証券会社が,自分の持っている証券よりもたくさん発行するということがあるわけですね,詐欺として。そういうようなものもあり得るということですよ。ですから,そういうふうな発行者としての規制も要るのではないかと。単なる善意取得の問題ではないというようにも思うのです。   ですから,総合的にそういうふうなかぶりが起こらないような状況をもっと,○○委員のいうことはもっともだけれども杞憂だよと,こういうふうに,法制度上納得できるような,ほかにもいろいろな法律も絡めてそういうふうになっているというのであれば,それはそういうことでしょうが,少なくとも今の段階では,そういう調整で何かできないのかと。特別管理口座というものが残るわけだから,そこのところへ戻ってくるということがあり得ないのかなと考えているということでございます。 ● ○○委員からそういう強い御意見があったということは記録しておきますけれども。   大分これに時間を費やしましたが。 ● ○○委員のおっしゃった点については,一つは,新しい制度では,パーティションを移して自衛することはできるのですね。パーティションシステムですので。それだけ申し上げますけれども。保振ではそれはできないのですけれども。   議決権の点なのですけれども,これも繰り返しになりますけれども,現在の保振制度でも起き得るのです。やはり発行会社との関係では100は100なのです。この絵ですと1,100ですけれども,やはり1,200というわけにはいかないと思いますので,これはやむを得ないというか,ほとんど起きないことだとは思いますけれども,今でもある問題ですので,今度の制度によって新しく出てくる問題ではない。その例外の程度がどうかという御議論はあると思いますけれども。   それと,もう一つ,資料の方で,そういう意味では質問になると思うのですが,ここでは,「議決権は」というふうに書いてあるのですけれども,これは,別段の定めがない限り,株主権全部であって,かつ,したがって,いきなり総会で,だれに招集通知がという話ではなくて,当然名義書換というステップが手前にあるわけですから,名義書換請求が来たときに会社がどうするかというところで,実務的には問題になるのであって,いきなり総会で,だれに招集通知を出しますかという話ではないですよね。   ですから,超例外的な場合だと思いますけれども,それを実務的に,100分の1がいいのか,1,000分の1がいいのか,10分の1がいいのかという話をするときは,むしろ,実際問題としては,名義書換,名簿上の株主に招集通知を出すだけですから,そこのところで実務が混乱しないかという点をむしろ詰めていただく必要があるように思います。 ● それから,この8の議決権に関しては,ちょっと私,○○委員のおっしゃったことで分からなかった点があるのですが,単位に満たないものはゼロにとおっしゃったかと思いますが,それで問題解決するんでしょうかね。例えば,1,000株単位で2,000株のものについては,やはり,何で1,000になったんだという問題が出てきて,トラブルは残るのではないかと思いますが。 ● 等しく案分で縮減されるわけですね。2,000を割ると1,000になる,1,000のものが例えば800になる。 ● 1,000のものはゼロになるわけですね。 ● ですから,整数部分のところも,そういう意味では,縮減の結果,加入者一同それなりのペナルティーを持分に応じて払うわけですね。それを同じ場面で見るとすれば,整数未満の部分を,本則に従って,1,000でない800はゼロになるのかなと,素直に考えてそういうふうな考え方をしてはいけないのかなと,ふと思ったものですからそういう申し上げ方をしたので,本則に素直に従うというのが一番問題が少ないのではないかなということで考えたのです。そこを,株主権の侵害ということになるのか,ならないのかというような,ちょっと私も詳細は分かりかねますけれども,整数部分も案分比例で縮減されている,その結果として端数がつく部分が出てくる,それは本則に従ってゼロになるんだと,こういうことかなとちょっと思ったものですから,先ほど,そんなことを申し上げたのです。 ● 発行会社のお立場からすると,それでトラブルの解決になるのかなというのが私の疑問だったのですが。   それから,もう一つ,従来から実務界が,○○委員初め発行会社の方が主張しておられるのは,11ページから12ページにかけましてのA案,B案で,○○委員,○○委員は,前回,B案を御支持になったと思いますが,それに対して,○○委員と学者はA案が多かったように私は記憶しておりますが,その点については,意見は依然それぞれ変わっておられませんか。   ○○委員,いかがですか。このA案,B案については。 ● 産業界は,やはりB案という……。 ● 産業界というか,発行会社サイド。 ● 発行会社ですね。ということでございます。   それに加えまして,12ページのB案の(3),先ほど御説明にありましたように,「閲覧することができないものとする」という規定は,必要がないだろうとおっしゃいますけれども,発行体としては,費用を払ってでも閲覧できるというふうにしていただけないだろうかというのが意見でございます。 ● その合理的な理由をどういうふうに説明するのかという問題が,これは前にも申し上げたとおり,ございます。   こことは別に,一斉株主通知,これは9の部分でございますが,先ほど申しましたように,10ページの(6)で,一斉株主通知をしてもらうということは別途できますので,それである程度問題は解決するのかなという気もいたしますし,本来は,振替口座簿が何であろうが,そんなことは知ったことじゃない,会社に対する権利行使には何の関係もないと言っておきながら,中身だけは見たいときは見れるというのは,どうやって説明するんでしょうか。 ● 要望ということでお聞きください。 ● 11ページにあります11のA案で,先ほど事務局の方から御説明いただいて,修正をいたしましたというところで,あえて申し上げるのは大変恐縮なんでございますけれども,書きぶりといいますか,多分言葉だけのことかなとは思いますけれども,修正していただきまして,現在の保振法に基づく抹消・減少通知と同等の手当てをいたしましたということでございましたが,実は,この言葉どおりで受けとめますと,若干違いまして,「当該株式が振り替えられたときは」という部分からいきますと,引き続きずっとモニターし続けるということなのかなというふうにもとれまして,書きぶりだけのことかなとは思いますけれども,できれば改めて御検討いただければと思います。 ● その点は,また更に御相談させていただきたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● カラーの図の説明の質問ですけれども,消却義務があるのにまだ履行されていないという状態でBからDへ株が譲渡されたという場合,こういうふうに議決権の損失負担割合が変わってしまうのはやむを得ないだろうという御説明を聞いて,何となく,そうかなという気もしてきたのですが,消却義務があるのだけれどもまだ履行がされていないということが判明した後,先ほどの早い者勝ち,早く処分した方が勝ちということで,これはそういうシステムしか組めないのでしょうか。分かった後は売買をとめるとか,分からない間に譲渡が起きてしまったので,損失負担割合が変わってもこれはしようがないよねと。分かった後に早い者勝ちというと,いかにも不公平感を,制度に対する信頼を害するような気がするのですが,そこら辺,何かシステムの工夫というのはないものかどうかと。 ● おっしゃる趣旨は非常によく分かるのですが,ただ,商法とか振替法という私法のレベルで,分かった後は取引を禁止するというのはなかなか難しくて,むしろそれは金融システムの中で,消却義務が生じた場合には,混乱を避けるために一時的にシステムを停止して振替えを制限するとか,むしろ行政面で対応すべきものではないかなと。そこについては,むしろ○○幹事の方からお話を伺った方がいいのかなというふうにも思います。 ● 同感でございまして,基本的に,こういう事故が起こったら,それは実務の立場でなるべく早く処理するというのが基本だと思います。法制度とかの問題ではない,むしろ行政的な問題かなというふうに理解しています。 ● 実際にはあってはならないことなのでしょうけれども,ぎりぎりのところになれば何とか対応可能ということなんでしょうか。 ● ええ,一応そういう……。 ● 2点感想があるのですけれども。   1点は,この分野は,なぜ,証券の受渡しと言わずに,証券決済というふうに今日呼ばれているかというと,膨大な量の証券が動くわけですね。ですから,基本的には,おっしゃるように,必要なときにはとめるというのは金融行政の問題だと思いますけれども,とめることによるシステムリスクというものがやはりある。これはケースバイケースだから,一般的には言えないと思うのですけれども,恐らくそういうものも勘案して金融行政を行うということだと思います。したがって,私法で一律にとめるというのはやはり適当でないと,そういう意味では思います。   それに関連して,私は,今の制度でもし改善できるとしたら,アメリカなんかがそうなのですけれども,自己口座に100あっても,消却義務を履行しない限り,やはり自己口座は100ですよね。アメリカなんかは,自己口座,顧客口座といいませんので,これとの関係では,自己口座に100あって消却義務が100あれば,その100は当然そっちへ回さなければいけないんですね,私法上。ですから,その辺は本当は何か手当てがあってもいいかなというのはあるのです。最後の5番ですかね。   ですから,今までの積み重ねられてきた議論そのものが,もちろんもう一度議論するという余地もあると思いますし,その線は維持しながら若干の改善をするということも更に可能だと思いますし,当初日本は,とにかく社債から議論を始めましたから,株式が入ってきた時点で,やはり両方動くようなことにしなければいけませんので,必要に応じた,微調整というふうに呼んでいいのかどうか分かりませんけれども,この時点でその対応をされることはもちろん一番必要なことだとは思います。 ● 取引所の立場としては,そう簡単に取引はとめられないというところがございますので,それは,御存じのとおり海外の機関投資家が5割を超えているような状況でございますので,程度にもよりますけれども,仮に決済のところで問題が生じて,その場合に,いきなり取引をとめてくれと言っても,なかなかそう簡単には対応できるものではないと。その辺,当然,金融庁と御相談の上ということになると思うのですけれども。   済みません,一言言わせていただきました。 ● 今のような状況ですと,例えば,怪しげなうわさ情報が流れていても,一時売買の停止というのは,むしろしなければいけないわけですね,取引所としては。 ● それは,時間売停という形で,ある情報が開示されるまでの間はやっておりますけれども。 ● この制度を前提にすれば,そういう場合はむしろとめるということの方が取引所の責任ではないかと思うのですけれども,それはともかくとして,私とか○○委員とか,後から入ってきた人が素朴な疑問を投げかけているという構図になっているのですけれども,何となく,今の○○委員のアメリカのやり方なんかを見ましても感じることは,すべての株主の権利は全く微動だにしないけれども,めったに起こらないことなんだから連帯ですというのではいけない理由というのは,株式の場合は特に社債なんかと違うと思いますので,あるのかということと,それから,ほかの機関のミスをほかの機関が負うのはおかしいと言いますけれども,でも,それは,では株主が負うのはいいのかということの説明には必ずしもなっていないのではないかということもあります。   それから,最終的には,先ほど○○委員がおっしゃったように,行政的な措置とか,マーケットでの措置とか,そういうものに帰することになるとすれば,もともと消却義務というのは,そういう行政的な,公法的な義務だということを意味しているのではないかという感じもいたしまして,それを無理やりに私法的に構成し過ぎているのではないかという,これは素朴な感想だけで,大事なことは一言だけ申し上げました。 ● いろいろ御意見をいただきましたけれども,どうも前回から……。 ● 先ほどの1点目ですけれども,基本的に,ミスを起こした機関が責任を負うというのはある意味では当然のことであって,それが投資家の責任,投資家が被害を受けるというわけではないのではないかなと思うのですが。もし理解が違っていたらあれなんですが。全体で連帯して責任をとるという考え方と,パーティションで責任をとるという考え方,どちらの場合であっても,投資家には,一定の損害があれば,損害賠償を行う形になるのではないかなというふうに思っているのですが。 ● 例えば,1,000株持つ個人投資家にしてみれば,最悪の場合,みんなが0.999になるということが起こるわけですよね。ですから,損害賠償すればいいということだとすれば,それは,株も社債も基本的には同じに扱うことになってしまうので,何か釈然としないなという感じが残るのですが。 ● ○○理論からいくと,株と社債は究極的にはそんなに変わらないとおっしゃるのかと思っていましたが。 ● いえいえ,そんな単純なものでは……。 ● 2点申し上げたいのですけれども,一つは,決済リスクの話は,取引をとめる話ではありませんから。今ここでしているのは,決済をとめる話です。取引は,例えば先ほど○○委員がおっしゃったように,何かあれば一時停止とかいうのがあるのですけれども,受渡しをとめるかどうかという話です。もちろん共通した面もありますけれども。   2点目は,今のお話で,釈然としない話は確かにあると思うのですけれども,いろいろな議論が可能だと思いますけれども,基本的にはファンジブルというのですか,どういう日本語になるのか知りませんけれども,そのファンジブルなものというのは,それが増えるという結果を認めた以上,だれかがその負担をしなければいけないということで,それはミスをした業者であるわけですね。これは○○幹事のおっしゃったとおりで。したがって,ミスをした業者が責任をとって回復する。その責任が果たせない場合にだれが責任を負うかであって,日本の保振の制度というのは,御存じのように東証の昔の株式の売買のシステムというのを制度化したものですから,全業者が連帯責任を負うという制度なのですけれども,これはどこの国にも存在しない。古きよき日本で,中でやっている分にはそれでよかったと思うのですけれども,もう業者が次々入れかわって,グローバルな,オープンなシステムにする上では,残念ながら受け入れられないシステムなんですね。   そうだとすると,そのもとでだれがへこむかというときに,これは○○委員がおっしゃったような問題はあると思うのですけれども,逃げ道は常に用意しておける。それは,現在は,独立したパーティションを作ってそこへ逃げ込むという道だけになりますけれども,これをどの程度考えるかということで,あとはもう,へこんだ以上は,端数をどこまで面倒見るかという問題はあると思います,100分の1なのか,もうこれは割り切らざるを得ないので,そういう意味においては,最後は,やむを得ないということを言わない限りは,こういうファンジブルな制度には移行できないということだと思います。 ● ○○委員の御意見,今のようなお立場,お考えで私もいいと思うのです。   その場合に,逆に言うと,こういう条文はもう作らない方がいいんじゃないかと。これを見ると,もう制度の失敗は初めから予定した条文なんですよ。ですから,これは言わずもがなであると。それは当然そうなるので,こういう条文を入れると,初めから失敗していますということをディスクロージャーしたような規制で,投資家はみんなこれでおびえますよ。だから,やはり文化というか,美学というか,ちょっとそこも考えていただいて。一般的な素人の投資家は,これを見ただけで,もうとんでもないんだなと,こう思いますよ。ですから,そういうふうにならないのだというシステムを,逃げ道も含めて作った上で,もうこういう条文は作らないというのがいいと私は思っています。 ● 原案に対して,学者委員からも,○○委員初め実務家委員からもいろいろ御意見をいただきましたが,どうも本日集約することはとても無理のようでございます。いつかは集約しなければいけませんが,今日はこれぐらいにさせていただくしかないと思います。   ほかの点でも,第2の点はよろしいでしょうか。   それでは,次に,「第3 新株予約権及び新株予約権付社債の振替制度」でございます。これが今回新しく入ったところかと思いますので,事務当局から説明をお願いいたします。 ● それでは,第3の「新株予約権及び新株予約権付社債の振替制度」について御説明いたします。   1の「商法の不発行制度との関係等」でございますが,まず,新株予約権につきましては,先ほど,第1のところで御説明いたしましたように,商法自体でも,新株予約権証券の不発行を認めるということにしているわけですけれども,その場合に,新株予約権証券の不発行会社が振替制度を利用するのかどうかということについては,当該個々の新株予約権の発行をする際に,振替制度を利用するか,あるいは利用しないかというのを決めるというのが,(1)でございます。   その理由を(注)に書いていますが,新株予約権にはいろいろなものがございまして,流通させることを前提にしているものと,ストックオプションのように,そういうことを考えていないものがございますので,流通させないものまで振替制度に乗せるという意味はありませんから,個々の発行決議ごとに決める以外にないのではないかというふうに考えた次第でございます。   なお,13ページの上から3行目以下に書いていますけれども,どういう証券について振替制度を利用できるかどうかというのは,これは振替機関の業務規程で当然決まることで,これは株式の場合と同じだということを念のために書いてございます。ですから,発行会社側で乗せてくれと言えば全部乗せるというわけではないということでございます。   (2)の「新株予約権付社債」の方でございますが,これは,先ほど第1の方で申しましたように,商法上の制度として新株予約権付社債の債券の不発行制度というものは設けないことにいたしまして,振替制度の側だけで,新株予約権付社債の発行の決議をする際に,つまり決議ごとに,振替制度を利用する新株予約権付社債なのか,それを利用しない新株予約権付社債なのかを決めることができるようにすると。そして,この定めをした場合には,振替制度の利用,新株予約権付社債の場合は社債券は発行できないという取扱いにしてはどうかということでございます。   その理由は,(注1)と(注2)に書いてございますように,まず,一つの理由としては,新株予約権付社債は無記名式でございますので,したがって社債原簿に社債権者の氏名等が記載されませんから,振替制度を利用しない債券不発行制度,つまり,株式でいいますと非公開会社の株式で株券を発行しないものに相当するようなものを設けることは困難でございます。かなり抜本的に考え直さなければいけないのですけれども,そういうものを認めなければいけないようなニーズもないだろうと考えられるわけでございます。   それから,(注2)に書いておりますように,一般社債と同じ取扱いにするのがいいのではないか,つまり,一般社債であれば,取締役会決議でその度ごとに,振替制度を利用する振替社債なのか,券を発行するものかを決めることができるのに,新株予約権がついただけですべて定款か何かで決めなければいけないというのは,新株予約権付社債の方が重くなり過ぎるのではないかということから,一般社債の場合の取扱いと同じ形で不発行及び振替制度の利用を決めるという案を出させていただいているわけです。   次に,2の「権利の帰属等」でございますが,これは要するに株式の場合と同じ形で振り替えていくということで,第2のうちの必要なものを準用する形にしていますけれども,それによって,株式の振替制度と基本的に同じ--もちろん議決権とかはありませんから,そういうものは抜いていますけれども,同じ形で振替が行われるということでございます。   それから,3でございますが,新株予約権の場合は,新株予約権単独で発行する場合も,新株予約権付社債の場合もありますけれども,新株予約権の行使が必要になりますので,その行使方法を定める必要がございます。その行使方法としては,これは現在の株券等の保管振替制度の場合と似通った形にしてございますが,振替機関に対して,自分が新株予約権を行使するという意思表示をいたしまして,その旨の連絡を発行会社にしていただいて,そして新株予約権から株式に切りかえると。当然のことながら,その株式も振替制度に自動的に入っていくと,そういうことを考えているということでございます。 ● それでは,この点について御議論いただきたいと思います。順次前の方から御議論いただければ幸いです。   まず,1の(1)ですが,新株予約権について証券を発行しないという定款の定めをした場合については,発行決議において,振替制度を利用するかどうかを定めるということですが,この点についてはこれでよろしいでしょうか。   これは,ストックオプションなんかの場合は,振替制度の利用というのはちょっと制度的に矛盾すると思いますので,当然こうせざるを得ないと思いますが,これでよろしゅうございますか。--ありがとうございます。   それでは,次に,「(2) 新株予約権付社債」でありますが,これは,(注)等にも書いてありますように,無記名に限るということになっておりますので,振替制度を利用したときのみ証券を発行しないということができることにせざるを得ないということであります。これについてもこれでよろしいでしょうか。 ● 今の点はそれで結構だと思いますが,この中に記載していない話をお願いしたいと思っています。   既発の新株予約権付社債の話でございますけれども,これは,現在の第二次試案中,取り扱いが明確でないわけでございますが,実は,私ども証券保管振替機構で,新株予約権付社債,従来の転換社債も含めて,相当程度扱っているわけでございます。金額にして約8兆円,割合にしまして発行済みの90%以上というものを持っているわけですけれども,新たにこの不発行の制度が導入されました場合に,既発の新株予約権付社債について,これを不発行にするといいますか,いわゆる社債の世界でそういう制度が既にあるわけでございますので,それと同様の取扱いができるような形にしていただければというふうに思っております。 ● 社債等振替法の方にも,経過措置という形でそういうものが入っておりますので,それについては更に考えたいと思います。 ● ほかに御意見ございませんでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,「2 権利の帰属等」についてはいかがでしょうか。ここにあるようなことで御異論は特にありませんでしょうか。--よろしゅうございますか。   では,「3 新株予約権の行使方法」でありますけれども,加入者の直近上位機関に対する申出によって,振替機関を経由して行使の意思表示をするということですが,いかがでしょうか。--よろしゅうございますか。   この第3については,全体を通じて特に何か御発言ありますでしょうか。--よろしゅうございますか。   この資料は終わりましたが,次に,最初に申しましたように,略式質にかわる株式譲渡予約証書制度につきまして,○○委員から御意見をいただいておりますので,これについて○○委員に御説明をお願いし,それから御審議をいただきたいと思います。   ○○委員,お願いいたします。 ● 皆さん,遅くなりまして申し訳ありませんが,もうしばらくおつき合いをいただければと思います。   お手元の資料で,「株券不発行制度採用後の新たな株式担保利用制度検討について」ということで,私どもUFJ銀行のとりあえずの試案をお示ししている状況でございます。   1枚目に,何でこういうことをさせていただこうと思っているかということにつきまして,若干,4点ばかり御説明をさせていただきます。   一番上から。   株券の不発行制度採用後は株券の現物が存在しなくなりますので,株式担保の略式質という制度が利用できなくなります。しかしながら,株式を担保としたファイナンスの手段として略式質制度が幅広く利用されている事実がありますと。その規模や取扱い件数,又は経済活動における重要性から,法改正に当たって,代替案がないまま制度が廃止された場合の影響は無視できないというような考え方を持っています。したがいまして,同制度を現在利用している株主,あるいは金融機関にとりまして,制度移行後,ペーパーレス化後にも,現在と同程度の簡便な担保方式が確保されることが必要だというような考え方で来たものでございます。   この点に関して,過去にどういう議論が行われたかということにつきまして,商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案に対して,そのパブリックコメントでは,産業界とか有識者及び銀行界から,略式質にかわる簡易な担保制度の検討について要望が寄せられたということもございました。しかし,以後の研究会や当会社法部会におきましては,問題意識は変わらないものの,では具体的にどういう制度を考えるのかということにつきまして,代替案を考案していることがボトルネックになったまま今日に至っているというふうに私どもは認識しております。   当部会の当初の方で議論がありまして,それに基づきまして私どもに要請もございまして,今般,当方より,考え得る代替案として,譲渡予約証書を利用したスキームを本日提案させていただくものでございます。   これにつきましては,新たな法制下での提案内容の合法性,といいますのは,新しい法制度の中で全く新しいことを考えておりますので,私どもは法律の専門家でもございませんので,そうした穴がないのかどうか,穴があるのであれば何をしなければいけないのかというようなことについて,あるいは本スキームの有用性,あるいは利用価値--利用価値につきましては,略式質なるものは株券の存在を前提としておりますので,だからこそ便利とか,だからこそ有益というようなこともあったかと思いますので,それがなくなった段階で,代替的な手段を作るということにつきまして,果たして有用なのかどうかというようなことも,是非,当部会で御意見をいただきまして,審議していただきたいというのが,趣旨でございます。   一方で,代替案の要否,提示スキームに対する評価,移行措置検討の是非については,改めて世に問うことが必要であると考えております。   なぜかと申しますと,株券の不発行制度の一斉導入について検討がされ始めています。過去は,一斉に切りかえるということではなかったというふうに理解しておりますので,現在略式質をもとにファイナンスをしている人たちにつきましては,ややらち外といいますか,少なくとも略式質でお金を借りてくること自体は担保されていた,あるいは,略式質がなくなるのであれば,株券不発行制度に行くのであれば,投票権が少なくとも1回はあるであろうというようなことを前提にお考えいただいていたのではないかと想像しているのですが,一斉導入ということになりますと,現在略式質を使ってお金を借りている人たちは,その制度が全く使えなくなりまして,現在考えておりますと,類似的な方法としては,登録質に非常に近い制度,もちろん電子化されるわけですから便利になることは事実ではございましょうが,そういったことに移行する必要が出てくるということでございますので,そういうことに一斉に移行しなければいけないのであれば,そういうことの是非も問うべきではないかという意味で,利便性の認められる同制度が全く利用できなくなることで起こり得る制度導入時の混乱を回避するためにも,まず,今回の法改正がどういった人たちに影響するのかという点について周知がなされて,その上で,提示案の利便性・合理性についても,様々な立場から広く意見を求めたいというふうに考えているということでございます。   以上4点が,私どもの,今日お時間をいただいて御説明させていただく趣旨でございます。   1枚めくっていただきまして,資料が四つくっついておりまして,その各々について一言ずつ御説明させていただきたいと思います。   まず,資料1でございます。現在の略式質方式による担保利用状況ということでございます。株式担保の市場規模ということで,大変残念ながら,正式な統計数値とかいうものを持ち合わせておりませんので,弊行の計数から市場全体の推定値を銀行ベースでお示ししております。したがいまして,銀行以外のところで略式質で借りている人たちがいるかもしれません。例えば,ノンバンクで株式を担保にしてお金を借りているというようなことも世の中には存在しておりますので,この数字の近しいところにはあると思いますが,どれだけ更に大きいとか小さいとかというのは,少しコメントできないようなことがございますが。   まず,利用されている債務者数でございますが,弊行で約7,000人いらっしゃいます。したがいまして,銀行界全体では10万人ぐらいいらっしゃるのではないかと推定されます。   受入銘柄数は,弊行でいいますと2,300銘柄,上場株式のかなりの部分が担保に供されているということがあります。   担保取得株数は12億株でございます。これで逆算しますと,右のような計数になるということでございます。   担保の取得時価でございますが,私ども,約1兆円ございますので,市場では約10兆円ぐらいファイナンスの担保になっている。もちろん,掛け値がございますから,金額という意味ではもう少し少ないのかもしれないのかもしれませんが。   担保移動件数というのも,これはちょっとあれなのですが,現質,略式質を利用されている方は,担保に供されていて,時価評価が上がると抜いて売るとか,いろいろなことが起きますので,現実問題は担保がかなり移動しております。それが,弊行で1日約100件程度だというふうに数値がございます。これで全体の市場規模を想像していただければいいのかなというふうに思っています。   これ以外にも,有価証券担保としては国債とか公社債とかいろいろございますが,現在の銀行と借主の間でいいますと,上場株式を使った略式質というのが一番大きなシェアになっているのが事実でございます。   下が,略式質方式の特徴ということでございまして,株主の視点からは,利便性が高いと。これは現物を預けるだけで,担保の差入方法が簡便だということでございます。   匿名性というのもございます。これは,発行会社に,それを担保にお金を借りているという事実が知られることが少ないということでございます。   一般性という意味では,現物占有ならば,貸し手がだれであっても当該株の受入れは可能だということでございまして,弊行から借りるときも,あるいは東京三菱さんから借りるときも,同じ株でくるくる借りられると。   コストは,担保差入れにかかる付加費用がないということで,現時点ではコスト有利だということでございます。   金融機関の視点からは,効率性ということでございまして,比較的短時間で行われているというのが,現在の登録質と比べるとということでございますが,あるということでございます。   安全性というのは,これは,どういうふうにお考えになるかというのはあるのですが,現物を占有していれば,一応,担保権100パーセント,フル保全できるということでございますので,営業店の金庫で保管することによって100パーセント安全だというふうな考え方でいるということでございます。   資料2は,譲渡予約証書というのを御説明しているペーパーでございます。6点に分けて御説明させていただきます。   担保口への振替を行わない担保設定方法として,以下の性格を持つ株式譲渡予約証書を利用した制度を提案するということでございます。   1番目として,株式譲渡予約証書は,当該証書の所持人に対して株式を譲渡することを予約した証書ですと。担保権者は,何らかの方法によって証書を発行した口座管理機関に呈示して,口座振替簿への記載を受けることにより,当該株式を譲り受けることが最終は可能だということでございます。   株式譲渡予約証書は,株主及び担保権者の双方からの申請に基づき,株主の口座管理機関が発行して,担保権者に交付すると。発行の方につきましてはいろいろな議論があると思いますが,一応,双方からの申請に基づいてやることによって虚偽の担保権設定を防止するということを担保するために,こういったことを考えてみたということでございます。   かかる証書には,株式数,担保権者,当該証書の発行日等を記載するということで十分ではないかというふうに想像しております。   株式譲渡予約証書は,株式そのものではありません。これを受け入れられた担保権者は,そのままでは株主としての権利行使を行うことができないが,株式譲渡予約証書を利用して株式を譲り受けることは可能となると,そういった意味の証書でございます。   担保権の実行に関しては,担保権者の単独実行で可能です。その意味では,株券を担保として取得したのと同等の効果を得ることは可能だというふうに考えておりますので,これをもとにファイナンスができるのではないかと考えているところです。   株式譲渡予約証書は有価証券ではないというふうに理解した方がいいのではないかと思っています。したがいまして,流通性はなく,これを第三者が取得したとしても,それによって何らの効果も,これは株主としての効果という意味でございますが,得ることはなくて,株主たる地位が,口座振替簿を離れて流通することはないということでございますので,考えておりますのは,一人一人にファイナンスの手段として発行するということをもくろんでいる点でございます。口座管理機関の過失によって事実と異なる譲渡予約証書が発行された場合,当該証書の実行によっても株式譲渡の効果は発生せず,これによる損害は口座管理機関に対する損害賠償請求によって解決するということで,口座管理機関の過失に基づいてこういうものが大量に発行されたらどうするのだというようなことを少し担保する手段を用意した方がいいのではないかということでございます。   株式譲渡予約証書が発行された場合,その旨を公示することによって担保権付の譲渡を認めるか,又は当該株式について当該譲渡証書を返還しない限り譲渡は禁止するということで,これは,更に利便性をどういうふうに担保しますかというようなことでございまして,現在の略式質は,当然ながら株券の現物が存在しているという前提ですので,繰り返し繰り返し行って更に譲渡ということが,可能性としては可能でございます。本件は,それをどういうふうに加工しますかということでございまして,担保権付の譲渡を認めるか,認めないかということはチョイスではないかというふうな考えでございます。これによりまして,株主・担保権者以外の第三者に不測の侵害が発生することは防止しましょうということでございます。   株式譲渡予約証書を発行すること自体は,株主たる地位に影響を与えるものではないため,これが発行された場合であっても,当該株式の発行会社の株主に対する取扱いは特段の変更は生じないということでございまして,これについては,振替制度を利用した場合と同様であるということでございます。   次が,実際に私どもは略式質の貸し手ではございますが,利用者ではありませんので,何がどう起こるかということを少し想像していただくために,資料3で,手続的なところをお示ししております。   現在の略式質をベースに手続的なものを考えておりますので,左側の「「譲渡予約証書」利用スキーム」というのは,簡単に申し上げますと,口座管理機関甲というのがございまして,これが,イメージは証券会社でございます。証券会社に保護預りをされている株券を株主が出して,それを,乙であります金融機関に持っていってお金を借りるという手順を想像しながら,利用して,スキーム図を書いております。   もちろん,現在の略式質と違いまして,振替機関がございます。したがいまして,電子化された制度が前提の手順となっておりますので,現在の,略式質を使って株券を出してやる手続よりも,例えば①番の残証の発行依頼とか,②番の残証の交付だとか,それから,証書の差入れはいいのですけれども,残高証明書の提示,それから,⑤番の証書の発行依頼とか,こういうことは当然ながら増える可能性があるということでございます。   そのかわりということでございますが,現在の関連当事者間でいいますと,甲と乙と株主だけででき上がるという制度を前提に手順を書いてみましたということでございます。   これを作るべきかどうかということになりますと,恐らく振替機関利用スキーム,ですから,今の登録質に非常に近い制度で電子化された世界ができ上がるということで考えますと,「振替機関利用スキーム」と右側に書いているようなことに恐らくなるのではないかと考えておりますので,これでやりますと,甲であります証券会社と株主と金融機関,この間以外に,新たに振替機関:機構というようなことも出てくるというようなことでございます。   単純な話で言いますと,金融機関の手前みそで言いますと,左側は,恐らく,現在の営業店の窓口にお客様が来るというような仕掛けでございますが,右側の方で言いますと,担保取扱い金融機関の乙が窓口だけででき上がるのかと言われると,振替機関との接続を担保する仕掛けを行内で作れば,オンラインでできるということなのですが,そうでなければ,営業店窓口に例えば保振端末みたいなのを置かない限り,なかなかできないということも考えられますので,実は,これに本部というような組織を絡めないとできないかもしれないというようなことが金融機関としては危ぐされるところでございますが,右と左を比べますと,矢印の数は右側の方が少ないというようなことも特徴として挙げられるかということでございます。   以上を前提に,右と左を対比する表を作ってみました。これはなかなか評価が難しゅうございますので,私どもとしてどちらがいいとか,これがないとだめだとかいうことを申し上げているのではなくて,最初に4点申し上げましたとおり,このスキームが法律的にどうかというような点,あるいは有用性があるかというような点も御議論いただきたいですし,仮にかなり有用性がないのではないかというようなことになったとしても,現在,略式質を利用されている借主の方にとりまして,周知徹底なり何なりの必要があるのではないかというようなことを議論させていただくために,一応比較表を作ってみましたということでございます。   エッセンスだけをお示ししますと,一番最初の,制度という意味では,左側は,譲渡予約証書の法制化必要ということで,紙が一部存在するということでございます。紙は,存在すれば存在するなりにデメリットがございますので,右側の,完全なるペーパーレス化が実現ということに比べるとどうかというようなところがポイントでではないかということであります。   それから,制度が二重化するというようなこともございます。それは,振替機関利用スキームだけに絞ってしまいますと,担保制度もこれ一本になってしまいますので,有無を言わさずこれに一本化というようなことになるということがございます。   それから,振替制度を利用するということになると,どちらにしても口座開設が必要だということでございまして,これは,借りるためには,左側の制度では口座開設は必ずしも必要ではない,そういう意味では,貸し手側が口座がなくても金は貸せるということなのですが,担保権を実行しようと思いますと,やはり口座は要るということですので,それはもうイコールフッティングというようなことですね。   それから,担保株式は株主名義の口座に保管ということでございまして,左側の制度は,株式名義はそのままだということでございます。振替機関利用スキームでは,一応,担保株式は担保権者の口座に保管するということになるのではないかと。それがどれだけ会社にとって周知されるとかということはあるとしても,一応,担保権者の口座に移動するというようなことではないかというふうに考えております。左側は,担保実行時には当該証書発行口座管理機関に対して証書を呈示してやるというような,現行の株券を呈示して口座を移動してというようなことが当然ながら起きるということでございまして,右側で言いますと,担保実行時には質権口から自己口,要するに担保口座から自分の自己口に振り替えるというようなことで,自己の取引口座管理機関への指図だけでいけるのではないかというようなことでございます。   利用者である株主にとってどうかということになりますと,この中に難しい話がございますが,証書発行申請手続は,現在の株券の引出しの手続と同程度ではないかというふうに考えられます。右側の振替制度利用の手続が新たに増加する一方で,株券の引出しとか運搬とか保管の負担は減少するということでございますので,この点では,株主にとってメリット,デメリット,両方ありますねということでございます。   2番目が,譲渡予約口の株式に振替制限をつける場合は,担保利用に関する匿名性は維持できるのではないかと。これも,右側で言いますと,質権口の情報が発行会社に開示されるような事態になりますと匿名性は喪失するということになりまして,匿名性が非常に重要だということであれば,どうにかして,新たな制度でも匿名性を担保するというようなことが必要かもしれません。   それから,左側でございますが,いろいろな意味で,残高証明書の発行とか振替えの費用も発生する。右側は,残高証明書の発行,口座振替の費用が発生するということで,これは,どれがどれだけ安いのかというのは,現時点ではなかなか評価しづらいということでございます。   一番最後は,融資実行に必要な時間は略式質よりは長期化ということではないかと思っております。どちらの制度にしても,今の略式質は,現物さえあれば非常に簡便にできるという制度ですので,そういう意味では,新しい制度に一本化されて振替機関利用スキームだけになったとしても長期化するのではないかと思いますし,それに代替する手段を用意したとしても,略式よりはやはり長期化するのではないかというふうに想像しております。   金融機関にとってはどうかということでございますが,これは,担保実務は現行と同様で簡便というのが,左側でございます。右側は,稚拙な話かもしれませんけれども,恐らく本部事務部門に新たな事務が発生するということで,何か作らないといけないかなというようなことでございます。   左側の方で,譲渡予約証書の受入れ,返戻にかかる店頭の事務体制整備が必要ですということで,新しい制度,新しいものを作ってしまいますので,当然ながらこういうことは必要だということでございます。右側でも,取扱店舗の制度利用を容易にするための社内インフラの構築が必要だということです。   左側の方ですけれども,譲渡予約証書の真正の確認作業とか保管というのが発生します。右側の方は,振替えに必要な書類等の保管は発生しないということでございます。   左側の方ですけれども,株主の申請と同様に証書発行依頼が必要だということで,株主との双方の申請に基づくというような手続を踏んでいるがために,こういった依頼が新たに必要になるということでございます。右側の方だけですと,振替申請は,担保差入時,返戻時とも単独でできるということで,比較的便利な制度ではないかというふうに思われます。   左側の方ですけれども,転質や担保権に付された債権の譲渡は不可ということでございまして,譲渡予約証書利用スキームをして,相対の契約になっておりますので,これを譲渡するというようなことは不可になるということでございます。口座機関の利用スキームでは,これはどういう制度を作るかによってやや変わるかもしれませんが,転質や担保権に付された債権の譲渡が一応可能ではないかというふうに考えられます。この点は,金融機関にとっては,譲渡できるから,譲渡できないから,便利,不便みたいなことがあるかもしれないのですが,株主さんにとっては,譲渡されたくないというようなニーズがあれば,それはそれで,金融機関にとってのプラマイは株主にとってのプラマイになるというような位置関係かなというふうに考えております。   以上で,金融機関としてどうだということにつきましては,なかなか評価がしづらいところでございます。したがいまして,金融機関にとって,一本化したらいいというところも恐らくあるでしょうし,そうは言っても借り手もたくさんいるんだしというような意見もあるかと思いますので,金融機関として,どちらがいいとか,どちらにすべきだということもなかなか言いづらいのですけれども,是非とも利用者を含めて皆様から御意見をいただいて,今日議論していただければというふうに思っております。 ● この部会の最初から議論がありました略式質の関係につきまして,今日初めて,○○委員の方から御披露があったわけでございます。   4時半は過ぎておりますけれども,最初に申しましたように,若干時間を延長して御議論をいただければと思います。御質問等もあろうかと思いますが,御質問,御意見,どうぞお願いいたします。 ● ○○委員にお尋ねしたいのですが,利用者は中小企業が多いのか,それから,約定期間がどれぐらいで,平均の貸付金額がどのぐらいか,ざっと,ごくラフで結構なのですが。 ● 中小企業の方が多いのは事実ですが,済みません,1件当たり幾らとかの数字は持ち合わせていないのですが。 ● 約定は大体どのぐらいですか。 ● 約定というのは,借入期間ということですか。 ● はい。これは平均100件程度担保が移動していて,7,000を割ると,70日で全部入れかわるというふうにも読めますし。 ● 出し入れされるお客さんは,やはり株式投資をされていたりするお客さんですから,必ずしも全部入れかわるというわけではないのですけれども,くるくる回っている人は,物すごく,例えば1か月なら1か月でどんどんかわっていくということです。 ● 続けて申しますけれども,昔は,よく,株券とか公社債なんかを小脇に抱えて,トビケンとって,金を借りて,とにかく手形を落とさなければいかんのでと,そういうことはよく我々も聞いていたのですが,全部調査していないので確実なことは言えないのですが,最近は状況が悪いので,皆さん,売るべきものは全部売ってしまっていて,こんなことをやっている余裕はだんだんなくなってきているという話もあるし,それから,会社が金が足らないので,社長が個人的に持っている株を,いまだに持っているものを,価格も買ったときに比べれば5分の1ぐらいになっているのだけれども,持って駆け込むというのはまだあるとは漏れ聞いたことがあるので,これがなくなってしまって,どのぐらいのマグニチュードになるのかというのは,ちょっと我々も,今,肌で感じることができにくいなという状況なものですから……。もしこれを本格的に利用するとなると,少し調査をしてみるとか,そういった実態把握が必要になってくるのかなと。そのときは,UFJさんだけではなくて,少し小さい金融機関,地銀さんとか信用組合,信用金庫のレベルまで議論をしていただかないといけないのかなという感じがしております。 ● ほかに。 ● ○○委員と違いまして特に準備をしておりませんので,余りきちっとした意見を申し述べられないのですけれども,そういう意味では率直な意見というか言葉になってしまって恐縮でございますけれども,昨年の研究会のときから長い間いろいろ検討してもなかなかいい方法が出なかったというふうに伺っております。   ある程度規模が書いてありましたので,日本中の株券の数パーセントに当たる量があるのであれば,これが振替機関に振り替わってくると,また大分預託率が上がっていいなと思って伺っていたのですが,それはともかく,口座管理機関は証券会社をイメージしているというふうにおっしゃられましたので,そのとおりで意見を申し述べますと,端的に,金融機関が対応できないので証券会社に対応してもらいたいと。以前の,この証書の位置づけが,もちろん法律的に今ないものですから,どう受けとめればいいのかよく分からなかったのですが,例えば預り証のようなものかなというふうに思いますと,せっかく制度的に効率のいい,あるいは国際的に標準化されたような仕組みを設けようというときに,改めて紙を出して,しかも,紙ですから,また,紛失だ,偽造だということもあるものを,しかも制度として日本国中の証券会社が改めて対応する。メリットなのかデメリットなのかというのはどうなんだろうと。   もちろん,例えば,可能性として,相対で,どこかの金融機関さんとか銀行さんが,どこかの口座管理機関とそういういわゆる業務委託契約みたいなことをして対応することはもしかしたらあるのかもしれないという気もしますが,かなり振り替わるというようなことを先ほど御説明なされていましたので,そうであれば,新しい制度に従って,権利質といいますか,きちっと振り替えることがどれだけ確実なのかということと比較すると,金融機関さんのメリット,デメリットはともかく,株主さんのメリットということでいくと,確実に今回は仕組みは担保されるわけですから,どういうふうに評価していいのだろうかというふうに思いましたのが率直な意見でございます。 ● 譲渡予約証書を使うスキームがいいのか,あるいは口座振替えのスキームがいいのか,メリット,デメリットは,御説明いただきましたようにいろいろあるかとは思うのですけれども,基本的に,大きな考え方としましては,せっかく株券についてペーパーレス,株券をなくそうという制度を考えているときに,担保に限ってとはいえ,株券にかわる紙をまた出すということは,よほどの事情がない限りはやめておいた方がいいのではないかと,基本的にはそういう考え方を持っております。   ですから,先ほど御説明がありましたように,メリット,デメリットそれぞれあって優劣つけ難いというのであれば,やはり口座振替えの方でいくと。そして,何か不都合があるのであれば,その口座振替えの方で必要な修正を考えることが可能な限りで加えていくと。   例えば,私が感じましたのは,担保権設定者の匿名性というような問題はあるいは重要なのかなとは思うのですけれども,口座振替の形をとりつつ匿名性を維持できるような仕組みが考えられないかどうか。あるいは難しいのかもしれないのですけれども。   基本的には口座振替の方で考えていくのがいいのではないかと。この新しい制度を導入するためには,やはりそちらによほどのメリットがあるのでないと容易には踏み切れないなというのを,基本的に大きな考え方としては持っております。 ● 匿名性については,何か事務局からありますか。 ● 匿名性の問題でございますが,まず,普通の,今回の第二次試案でいいますと,質権口という形で質権を設定する場合,6ページの第2の2の(4)でございますが,これは,加入者が質権者であるときには,その旨と,質権の目的である振替株式の株主と,銘柄ごとの数が口座簿には書かれますので,一斉株主通知にせよ,個別株主通知にせよ,通知においては株主が誰で何株持っているかが通知されるのですが,その場合に,質権者についても通知するかどうかということを更に考える必要があると思います。   もう一つ考えるべき事柄としては,先ほども御議論がありましたが,11ページから12ページの,単独少数株主権の行使方法としての発行会社の閲覧等の請求権ですけれども,その対象から担保を除くのかどうかというようなこと。そもそも閲覧を認めるのかどうかという問題とも絡むと思います。   それから,もう一つ,実務上,現在の株券の保管振替制度の場合に行われていることですけれども,質権口というのは実際はほとんど使われていなくて,法律上は普通の譲渡口になるわけですが,そこの中に担保口と実務上言われている口座を設けて,譲渡担保なのか質権なのかよく分からないような形で担保権の設定がされるということが実務上は広く行われているようでございますが,その場合に,株主名義があたかも担保権者側に移ったように口座簿上は表示されるわけですけれども,その場合の実質株主通知をする場合には,譲受人であるところの担保権者側の請求に基づいて,担保権者ではなくて,譲渡人である設定者の方を通知するという制度があるようでございますので,そういうようなものを設けることも今後考えたいと思います。 ● 今の○○幹事の御質問と御回答に尽きていると思うので,この振替制度の方で何らかの工夫がつくのであれば,それでよいのではないかと。そうする合理性もあるいはあるのではないかと思いますので,その方向で御検討いただきたいと思います。   仮に,こういう,今日御提案のような方式を認めると,これは,先ほどの○○委員の提案を認めざるを得なくなるような感じもしていまして,ここはやはりみんなそろって電子の世界へ行こうと。それで,あとはそちらの方の制度で工夫するということが,今のとるべき態度ではないかなというふうに思います。 ● 今,○○委員がおっしゃられて,また○○幹事がおっしゃられた問題も一つあるのですが,私,これを今見させていただきまして,譲渡予約証書利用スキームというのは,金融機関にとってみると,確かにシステムを開発する上での初期投資等が軽減されるという問題はやはりあるとは思うのですが,ただ,事務的な処理,とりわけ証書の真正の確認とか,こういったようなところでかなり事務リスクが発生する危険性が高いというような懸念が感じられまして,そうなりますと,共同申請という,担保を設定したいと申し出られますと,常に一緒に申請しなければいけないとか,そういった,信憑性を高めるために金融機関が担保権設定に巻き込まれてくるという部分があって,そのための事務スキームをかなり作らなければいけませんし,そこから生じてくるオペレーショナルリスクというのもそう軽いものではないというような懸念がありますので,そうしますと,どちらが本当の意味で金融機関にとってメリットがあるのかということを考えますと,目に見える当初の初期投資は軽減されるとしても,継続的な長い目で見たところでかかる費用というのはばかにならないのではないかという,そんな気がいたしました。 ● 勘違いなされているようなのですけれども,この制度ができ上がれば両方やらなければならなくなるという前提で私どもは考えておりますので,初期投資はかかった上に,左側も,お客さんのニーズがありますかというふうにお伺いしているのです。 ● そういう意味では了解いたしましたが,そうなればなおさら,そういったような必要性はむしろ避けた方がよろしいのではないかというふうには思います。匿名性さえ維持できれば,今まで利用されていたユーザー,いわゆる担保権設定者の側のニーズはそれほど大きく損なわれないだろうと思いますので,危ない橋は渡らない方がよろしいのではないかという気はいたします。 ● いろいろ御意見がまだあると思うのですけれども,実は,この会場が,今日はそう時間がとれる状況ではないようでございまして,今までの御意見ですと,○○委員の御説明なさった案については消極意見が多いようですけれども,なお次回,議論は続けるということで,○○委員等,何か御発言の希望がありましたけれども,申し訳ありませんが,本日は,この問題に関する議論はここで終了させていただきたい,次回以降続けるということにさせていただきたいと存じます。   これで本日予定の審議はすべて終了いたしましたので,会議を終了したいと思いますけれども,最後に,次回の予定について,事務当局からお願いいたします。 ● 長時間にわたる御審議,どうもありがとうございました。   次回は,2月19日の水曜日,午後1時半から,本日と同じこの場所で開催をさせていただきます。   次回は,今回とは議題が異なりまして,電子公告制度について,前回の御審議の結果を踏まえた試案を作りまして,その御審議をお願いしたいと考えております。まだ試案はできておりませんけれども,事前に作成してお送りすることにしたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。   今日はどうもありがとうございました。 ● それでは,これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。 -了-