法制審議会会社法(株券の不発行等関係)部会第11回会議議事録 第1 日 時  平成15年7月9日(水)   自 午後1時30分                        至 午後5時30分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  株券不発行制度の導入に関する要綱案(第二次案)について         電子公告制度の導入に関する要綱案(第二次案)について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 時間になりましたので,法制審議会会社法(株券の不発行等関係)部会の第11回会議を開催いたします。   本日の会議は,部会資料17の「株券不発行制度の導入に関する要綱案(第二次案)」と,部会資料18の「電子公告制度の導入に関する要綱案(第二次案)」に基づいて議論をし,それぞれの要綱案の実質的な内容についてコンセンサスを得るということであります。   当部会の審議日程は今回と次回を残すだけでありまして,次回は株券不発行制度と電子公告制度につきまして,それぞれの要綱案を取りまとめる予定でありますので,今回の会議で,これまで意見が分かれていた事項も含め,それぞれの要綱案の実質的内容について事実上決着をつけていただく必要がありますので,御協力のほど,よろしくお願いいたします。   それでは,早速議事に入りますが,まず,資料17の「株券不発行制度の導入に関する要綱案(第二次案)」について審議をすることにいたしたいと思います。   まず,事務当局から,この資料17の要綱案(第二次案)の内容につきまして,説明をお願いいたします。 ● それでは,部会資料17の「株券不発行制度の導入に関する要綱案(第二次案)」について御説明させていただきます。   参考資料といたしまして,参考資料9の,第一次案からの変更点という書類をあわせて事前送付させていただいておりますので,変更点の重要なところにつきまして,その内容を御説明することとしたいと思います。   まず,変更点の一番大きなところでございますが,部会資料17の2ページに,第1の3といたしまして「譲渡制限会社における株券発行時期の特例等」というのを新たに設けたところが,一番大きな変更点でございます。これは前回の御審議の結果に基づくものでございまして,第一次案では,第1の1の(1)に,公開会社以外の会社についても株券不発行を原則とするという考え方を(注2)という形で掲げていたわけでございますが,前回,前々回の御審議の結果,この(注2)の考え方は実務上非常に問題点が多いということの御指摘を大多数の委員・幹事からちょうだいいたしましたので,それを削りまして,それとあわせまして,前回の部会におきまして,○○幹事から,ここに書いております3の(1)の「譲渡制限会社における株券発行時期の特例」についての御提案をちょうだいし,前回の御審議の結果,譲渡制限会社につきましては,株主の請求がない限り株券を発行しなくてよいという取扱いにするということに大方の方は賛成でいらっしゃいましたので,いわば(注2)の代替というわけではありませんけれども,あわせてこういう制度を設けるということで,今回,案に盛り込ませていただいたものでございます。   それとあわせまして,前回の部会におきましては,こういう譲渡制限会社における株券発行時期の特例を設ける場合には,既存の株券不所持制度との整合性といいますか調整を考える必要があるだろうという御指摘をいただきましたので,あわせて株券不所持制度についても検討したわけでございますが,その結果,案としてお示ししておりますのが,3の(2)の「株券不所持制度における株券の寄託制度の廃止等」でございます。   まず,アの株券の寄託制度を廃止するということでございますが,これは,前回の部会で○○幹事の御提案によりまして,譲渡制限会社について,3の(1)のように「株主の請求がない限り,株券を発行することを要しない」とした場合に,どの株主さんも請求しないために株券を発行していない会社,これは前回の○○委員のお言葉をかりますと「株券未発行会社」とでもいうことになろうかと思いますけれども,そういう未発行会社についても,例えば株券廃止会社に移行する場合の移行手続としての公告はすることを要しない,通知だけをすればいいだろうと。   それから,第1の4の(1)の「各種公告制度の特例」の部分,3ページでございますが,そこで,株主等に対する通知をもって公告にかえることができる会社の範囲として,株券廃止会社のほか,そういう株券を発行していない株券未発行会社も含めていいだろうというのが前回の御審議の結果だったわけでございますが,あわせて,株券不所持制度を利用している場合に,すべての株主さんが株券不所持にしているという会社もあるわけで,これも,譲渡制限会社でどの株主さんも株券の発券請求をされないというのと全く同じ状況ですから,これもそういう公告をしなくていい会社の範囲に含めることになるという議論になったわけでございますが,更にその後検討いたしました結果,この株券の寄託制度--株券不所持の方法として,株券を不発行にして廃棄するという方法と,株券を寄託するという方法の二つが認められているわけですが,このうちの株券を寄託するという方法を採用した場合,その株券自体は有効なものとして生きておりますので,そのために,寄託を受ける対象は信託銀行等に限られているわけでございますが,万が一,その寄託された株券が流出したりいたしますと,善意取得という問題が起きまして,先ほど申しました公告についての特例の対象にするのにふさわしくないというような問題があることに気がついたわけでございます。   さらに,それに基づきまして実態を少し調べさせていただいたのですけれども,この株券不所持制度は相当多くの会社で利用されているようですけれども,そのほとんどは株券の不発行といいますか,株券廃棄でございまして,寄託自体は件数も非常に少なく,寄託されている株券の数も少ないと。信託銀行の側でも,非常に少ない株券について非常に割安のお金で制度を維持されている関係で,非常に負担感が大きいというようなことも分かったわけでございます。   そういうことから,この3の(2)のアにおきまして,株券不所持制度の一つとしての株券の寄託という制度はこの際廃止してはどうかということを案に盛り込ませていただいたものでございます。   次に,3の(2)のイでございますが,これは,前回の○○幹事からの3の(1)の案を御提案いただきました際に,株券が全く発行されていない時点で株券不所持の申出がされた場合にも,その後株主さんが気が変わって株券の発行の請求をすると,株券発行費用は株主さんの負担となるというのが現在の制度で,それは不合理であるということの御指摘が提案理由の一つとしてあったわけでございますが,翻って考えてみますと,譲渡制限会社に限った問題ではなくて,譲渡制限会社でない会社であっても,まだ一度も株券を発行していない段階で不所持の申出がされて,その後その申出が撤回されて発券請求がされた場合,会社としては初めての株券の発行であるにもかかわらず,発券費用を株主の負担にするというのは,これは譲渡制限会社かどうかで区別できる話ではないのではないかと。あるいは,3の(1)の形で発行しない場合と,不所持申出という形を積極的にした場合とで区別するというのもなかなか説明がつかないのではないかということから,この際,譲渡制限会社に限らず,株券不所持の申出が発券前にされて,その後それが撤回されて発券請求をした場合には,1回目の発行ですから,発券費用は会社が負担するということにしてはどうかという提案をさせていただいた次第でございます。   これとあわせまして,先ほどもちょっと申しましたけれども,3の(1)を入れました関係で,第1の1の(2)の「株券廃止会社への移行手続」のウでございますが,移行についての公告をすることを要しない会社の範囲につきまして,すべての株式について株券不所持の申出がされているか,あるいは譲渡制限会社であって株主の請求がないか,その組み合わせということもあるので,「又は」という形にしてございますが,そういう株券不存在会社については,株券廃止会社へ移行する場合であってもその公告をする必要はないということにするとともに,4の(1)の「各種公告制度の特例」のアのcと,イのaでございますが,株主等に対する通知をもって公告にかえることができる会社の範囲につきまして,この株券不発行会社,これは従前使っておりました「株券不発行会社」ではなくて,株券不発行という定款の定めをした株券廃止会社と,先ほど見ていただいた株券不存在会社,この両方をあらわす概念でございますが,こういうような会社については,通知をもって公告にかえることができるものとして,その負担を軽減するということにしてございます。   ここが一番大きな変更点でございますが,あと順次申し上げますと,今申し上げましたように,「株券不発行会社」と従前言っておりましたのを「株券廃止会社」というふうに名前を少し変えまして,いずれも仮称でございますが,それから,3の(1)の制度を導入することに伴いまして,「株券不存在会社」という用語をつくりまして,両者を合わせる概念として「株券不発行会社」という概念にさせていただいております。   それから,参考資料9でいきますと一番最初の1でございますが,第1の1の(1)につきまして,第一次案--これは中間試案までも同じでございますが--におきましては,株券及び新株予約権証券を発行しない旨の定款の定めをすることができるという形にしてございましたが,今回の案では,定款で定めるのは株券を発行しない旨だけといたしまして,資料17の第4,11ページでございますが,そこに「1 商法の改正関係」というのを新たに設けまして,その(1)で,「株券廃止会社は,新株予約権証券を発行することができないものとする」という形で整理し直しております。それに伴いまして,この参考資料に書いておりますような,規定を移すとか注を削るといった手当てをさせていただいております。これは,従前,4月の部会だったと思いますけれども,株券廃止会社は新株予約権証券を発行することができない一方で,逆に,株券を発行しない旨の定めをしない会社が新株予約権証券のみを発行しないというふうにすることもできないようにするということにしていただいたわけでございまして,それを「株券及び新株予約権証券を発行しない旨」という言葉であらわしていたのですけれども,より明確にこのように分けて書いたということでございます。   もう一つの理由としては,この要綱案自体が,株券の不発行関係から始めまして,その後にその他の証券の不発行関係について書いていますので,そちらでまとめて書いた方が全体がより分かりやすいだろうと思いまして,書き方を改めた次第でございます。   次に,参考資料9の2に書いておりますように,第一次案では,第1の1の(1)のbとcという形でいわゆる公開会社の一斉移行について書いていたわけでございますが,これを第3という新たな項目に出しています。中身は全く変わっておりません。これは,公開会社すなわち保振制度利用会社の一斉移行というのは,株券不発行制度についての商法改正の関係と新たな振替制度の関係の双方の特例になるものがあるわけでございますし,法律で書く場合には附則で書くことでございますので,今まで,一番大きな論点ということで前に出しておりましたけれども,そういうことを考慮して後ろにさせていただいたということでございます。ですから,中身が変わったわけではないということで御理解いただければと思います。   次の参考資料9の3は先ほど御説明いたしましたので,4に移りたいと思いますが,第1の1の(2),「株券廃止会社への移行手続」につきまして,新たにエとオという項目を設けております。   これは,株券廃止会社へ移行する場合に,株券を発行しない旨の定款の定めが効力を生ずる時点,これは1の(2)のイでございますけれども,2週間以上の一定の日で効力を生ずるわけですが,その時点で株券が無効になってしまいますので,略式質権者は今まで持っていた対抗力がなくなってしまうということになります。他方,通常ですと登録質をしなければ質権を対抗できなくなるわけですけれども,現行法のもとでは登録質は質権設定者しか設定できない,名義書換の申請ができないということになっております。そうしますと,場合によると略式質権者は質権設定者の協力を得られないために質権が対抗できなくなってしまって,最終的には質権自体を失うという事態に至るというおそれもあるわけでございますので,そういう問題をなくすために,略式質権者自らだけで株券を提示して株主名簿に記載することができるようにするというのが,エでございます。   ただ,その場合,略式質権者限りでやっているものでございますので,登録質権者について認められております利益・利息の配当,残余財産の分配,商法208条の金銭の支払いを受けることができるという地位まで与えるのは妥当ではないだろうということで,そこまでは認めない,つまり,権利としては略式質権者と同じだけれども,対抗力を確保するために登録ができますという,「特例登録質権」とここでは名づけておりますけれども,そういうものを認めてはどうかということでございます。   次に参考資料9の5,これは先ほど,3とともに申し上げたところでございます。   なお,株式振替制度利用会社を株券不発行会社から除くという形にしておりますが,その理由は参考資料9の2ページ目の上の方に書いているとおりでございまして,株式振替制度利用会社の場合には,株主名簿の名義書換は原則として年2回の一斉株主通知によってしか行われないために,口座簿の振替によって株式を取得したけれどもまだ名義株主になっていないという人が出てまいりますので,名義株主等に対する通知をもって公告にかえることはできないということから,これは公告をしていただくということにしたということでございます。   第1の関係は以上ですが,「第2 株式の振替制度関係」につきましては,まず5ページ以下でございますが,第2の3の「新規記載手続等」のところですけれども,その(6),5ページの一番終わりから6ページにかけてですが,ここに参考資料9に書いております三つの修正を施しております。   まず,第一次案では,略式質権者についても失念株主と同じような特別口座上の略式質権者になれるようにするための措置を設けるというのを(注)に書いていたわけでございますが,それを本文に取り込みました。どういう形で取り込んでいるかと申しますと,特別口座に記載された株式を振替開始日まで,それについて「質権の設定を受けた略式質権者が,名義株主若しくはその一般承継人と共同して請求した場合,又は確定判決若しくはこれに準ずる書類として命令で定めるものを添付して請求した場合その他命令で定める場合」については,振替制度利用会社は,特別口座を管理する口座管理機関に対しまして,略式質権者を名義人とする特別口座を開設してそこに当該株式を振り替えるという,そういう申請をすることができるということにしたものでございます。   このように,略式質権者の場合は振替えという形をとらざるを得ないわけでございます。というのは,設定者が名義人,株主さんが設定者でございますので,その人の特別口座を残さざるを得ないので,名義を書き換えてしまうわけにはいかないということになりますから,別に口座をつくって,そこに振り替えて,質権者として振り替えるということになります。   その関係で,従前,失念株主だけを考えておりました関係で,振替とは別の,名義変更という措置を講ずるものとするということを書いていたのですけれども,略式質権者が振替えになるのであれば,失念株主についても,同じ特別口座内での口座を別に開設してそこに振り替えるという形に整理するのが一貫しているだろうと思いますし,名義変更という振替えとは別の特殊なものをつくらなくてもいいということにもなりますので,そのようにして全体を整理させていただいたということでございます。   それから,もう一つは,第一次案で,後段といたしまして,一定の期間内に株券等売買報告書を持ってきた方については,共同申請とかをしなくても,単独で特別口座の名義変更に応じてあげますということを書いていたわけですけれども,それを,今回の第二次案では「その他命令で定める場合」という形にしてございます。非常に細かい技術的な問題ですので政省令で定めることとさせていただきたいということでございます。中身を変えようという趣旨ではありません。   少し飛びまして7ページでございますが,第2の6の(2)でございます。振替機関が一斉株主通知をした後に消却義務を履行した場合のいわば救済措置の定めでございますが,従前は,2週間以内に振替機関等が消却義務を全部履行しさえすれば(1)は適用しないという形にしていたわけですが,前回の部会におきまして,もう一斉株主通知がされてしまった後ですから,基準日を過ぎていますので,基準日時点の一斉株主通知がされた人に権利行使させなければいけないということに振替制度利用会社はなっていますので,その状態を解消しないで(1)は適用しないことにいたしますと,結局,発行済株式総数以上の株式に対して配当したり,あるいは議決権行使をさせなければいけないということになってしまうという問題の御指摘がございましたので,それを解消するために,この同じ2週間内に,消却義務を履行するだけではなく,履行の対象として,当該株式の口座管理機関への振替に応じてくれた株主さん,この人が既に一斉株主通知がされている株主さんなわけですけれども,その人がそういう消却義務の履行に係る株式については権利を放棄するという旨の意思表示をした場合に初めて(1)の適用を除外するということにさせていただきました。   次に第2の8,8ページでございますが,(1)にウをつけ加えております。これは,昔つけていたものをいったん外させていただいたのですけれども,まだ,「その他所要の場合 所要の日」という,これはもちろん条文を作るときには,所要というわけにはいきませんので,具体的に法律である程度書いて,場合によっては政省令で更に書くということになろうかと思いますけれども,一番典型的なものを一つつけ加えさせていただいたというものでございます。   なお,その関係でちょっと誤記がございましたので,おわびして訂正をお願いしたいのですけれども,この8の(1)の冒頭の2行でございますが,「次のアからウまで」と書いてありますけれども,これは「次のアからエまで」の誤記でございます。2行目にも「当該アからウまで」と書いてございますが,これも「当該アからエまで」で,ウをつけ加えたので,こちらをエに直さなければいけなかったのですけれども,それが落ちてしまっておりまして申し訳ございません。直していただければと思います。   その後ずっと飛びまして,10ページでございますが,第2の11,ここに新たに(1)をつけ加えまして,その関係で,従前,(2)が第2の10の(2)だったわけですけれども,11ということで独立の項目にいたしまして,(1),(2)というふうにしてございます。これは,振替手続の加入者,つまり株主さんとか質権者さんですけれども,その人たちが,その直近上位機関に対して情報の提供の請求をすることができるということでございまして,これは現行法上,社債や国債につきましても,社債等振替法の128条におきまして情報提供請求が認められているわけでございまして,それと同じ取扱いを株式についてもするということを書いたものでございます。   以上が,第二次案の第一次案からの変更点でございます。 ● それでは,この「株券不発行制度の導入に関する要綱案(第二次案)」について御審議いただきたいと存じますが,まず,「第1 商法の改正関係」の部分から御審議をいただきたいと思います。   第一次案からの一番大きな変更点は,先ほど説明がありましたように,2ページ目の3でありますが,この点につきましてまず御意見をいただきたいと思いますが,どなたからでも。いかがでしょうか。 ● 私,委員として前回やむを得ない理由で休ませていただきまして,私が申し述べたいことは実は○○幹事から延々述べていただいて,大変ありがとうございました。結果といたしまして,皆様の御議論で,私どもが主張しておりました実態がカバーされるというような案が今回の案に入ったことにつきまして,大変有り難いということで,お礼を申し上げます。何か私が出ない方がうまくいくのではないかなと思ったりしているのですが,次回以降また出させていただきますので,よろしくお願いします。 ● 実質的にはこの3で,○○委員,前回御欠席でしたけれども,御承認いただけるということでございます。   皆さん,よろしゅうございますか,この基本的な考え方は。前回の○○幹事からの御提案につきまして,大体御賛成が得られたのではないかと思っておりますが,よろしゅうございますか。   それでは,この3の(1)の制度ができましたことの関係で,(2)が出てきているわけでありますが,まず(2)のアでありますが,株券不所持制度の中に株券の寄託制度というのがあるのですが,これを廃止するということでございます。実務的なニーズの点につきましても事務局で御確認はいただいたようでありますが,これを廃止するということにつきましてはいかがでしょうか。   この点についても御了承いただけますでしょうか。--よろしゅうございますか。 ● ちょっと1点だけ。   さっき私の説明で言い忘れてしまいましたのですけれども,既存の寄託されている方というのは,数は多くはございませんけれども,いらっしゃいますので,その方については,経過措置として,従前どおりの地位は確保できるようにするということにしたいと思っております。 ● それはもちろん当然の措置だと思いますが,その点も含めて,よろしいでしょうか。   それでは,(2)のイでありますが,これは,前回,いろいろ御意見があったところでありますが,要するに,株券が発行されていないときに不所持申出をしていた場合,株券不所持申出者が株券発行費用を支払うような条文に現在なっておりますが,こういう場合,つまり最初にもらうときは,要らないということにするということだと思いますが,この点につきましてはいかがでしょうか。この点も御了承いただけますでしょうか。 ● 経済界の実務の実態ということを申し上げますと,これ以外にも,株券の再発行についての取扱いというのはほとんどが会社の自治にゆだねられているような実情にございます。具体的には,株式取扱規定の中で,例えば汚損・毀損についての申出があった場合どうするかとか,あるいは喪失した株券についてはどうするかとか,あるいは流通の中で満欄記載になってしまったらどうするかということで,いろいろ実務の中で運用しているのが実態でございます。会社によっては,例えば印紙税相当とかそういったものを,ケースによって,原因によって,株主さんの方にあると判断される場合にはちょうだいしますよといってちょうだいしている会社も若干はあるかと思いますけれども,最近の実務の大勢は,仮にそうであったとしても,ほとんど会社の方で負担するというような実情がございます。むしろこの傾向は株主へのサービスの観点ということから拡大しているように私自身は感じております。したがいまして,この辺は,このケースについても,実務の運用にゆだねていただいても全く問題は発生しないというふうに,私ども実務を担う者からは断言できようかと思っております。   ただ,こういうように決めていただいても決してだめというわけではございませんけれども,費用の帰属ということで非常に細かい話でございますので,これだけを明文化するというのもどうもちょっとなじみにくいかなと。この辺は実務の運用ということでゆだねていただいてもよろしいのではないかなというふうに感じております。 ● 今の○○委員のお話では,実務の大勢はどうもこういうときも株主から費用を徴収しないということのようでありますが,一応は何か,とにかく最初の発行だけは会社の費用になるということを強行規定とするという,そこまで強行規定を置く必要はないという御意見かと思いますが,一応は,公開会社だけではありませんので,置いておく必要もあるかなという気はいたしますので。   よろしゅうございますか。   ほかに,この3の問題につきまして,これ以外の論点につきましても御意見ありますでしょうか。よろしゅうございますか。この3の制度につきましてはこれぐらいでよろしいでしょうか。--それでは,この点につきましては御了承いただいたことにさせていただきます。   それから,最初の方に戻りますと,1の(1)では,これは新株予約権証券を発行しない旨の関係が,後ろの方,第4に回った関係で若干文言は違っておりますが,実質は変わらないということで,この点はよろしいでしょうか。   次に1の(2)でありますが,これにつきましては,まず一つはウですね。株券廃止会社への移行手続として公告を要しない会社の範囲を,株券不所持の申出によるか,あるいは3の(1)の制度によって株券が全く発行されていない会社とするということであります。この点については,これでよろしいでしょうか。--よろしゅうございますか。   そういたしますと,これと並んでエ,オがつけ加わったという点が新しい点でありますが,この点はいかがでしょうか。 ● 済みません,私も先週休んでおりまして,大変申し訳ありませんでした。   「特例登録質権者」というのは,略式質権者の権利がそのまま行くということですので,当然ながら匿名性の問題等がきれいに同じまま行く制度だというふうに理解しておけばよろしいのでしょうか。 ● これは名義書換でございますので,公開会社の場合の新しい振替制度のもとにおきましては,第三者であるところの口座管理機関の口座に振り替える形で質権なり譲渡担保権を保有することになりますから,そこは通知のところ,あるいは閲覧請求なんかを制限することによって匿名性を確保することができるわけですが,ここでは株主名簿に記載することになりますので,どうしても発行会社に対する関係での匿名性は,現在の登録質と同じように,維持はできなくなるということになります。これはもう振替制度がない以上はやむを得ないと思っております。   ですから,それがだめならば,株主さん,つまり設定者さんの方で,発行会社にどうしても担保に供したことを知られたくないということであれば,その担保を差し替えるということになるのではないかと思いまして,いわば,担保を差し替えないのだったら自分で特例登録質にするぞということで,嫌なら担保を差し替えてくださいという交渉を債権者さんの方はされるということになるのかと思います。 ● これは一斉移行ではありませんで,個別移行の場合でありますから,とにかく公告が出て2週間以内に何とか措置をとらなければいかんということでありますので,権利者のことを考えるとどうしてもこういうことにならざるを得ないのかなと思います。法的にはですね。こういう事態を避けるためには,今説明がありましたように,質権設定者の方で何とかこの間に話をつけるということだと思いますが。 ● 制度的に難しいというお話はあるのかもしれませんが,前々から○○委員と私なんかが申し上げておりましたように,略式質というのは実態上結構使われておりまして,それで匿名性の話は大分強くお願いをしてきたつもりなのでございますが,更なる工夫の余地というのは何かございませんでしょうかね。   と申しますのは,やはり株券を発行しないという定めをしたことによって相当影響が広範囲に出てきて,今の御説明によると,質権設定者が知られたくないんだったら担保を差し替えるというようなことになると,相当な波紋が出てくる可能性があるなと。   したがって,何らかのところには登録はして,権利は維持するのだけれども,それは当該関係者,設定者と質権者以外は見ることができないと,そういうシステムの組み方というのはあり得るのではないかなと思うのでございますが。 ● 多分,中小企業が株券を担保に入れているという場合,大体は上場会社の株券等を担保に入れているのではないかと思うのですね。それは一斉移行で匿名性を保ったまま制度の中に乗りますので。ここであれしているのは,上場会社以外の場合であると思います。上場会社以外の株券が略式質の対象になっている場合でありますので,非常に広範囲にこれが起こってくるということはないのではないかと思います。 ● 部会長のおっしゃるとおりで,そういう意味では限定的だと思うのですけれども,相当大きな取引をしてる会社で非上場の会社というのは実際上それなりの数ございまして,ちょっと言い方は悪いですが,取引関係があるので株を持たされているようなケースというのは結構たくさんあるのですね。これを入れたとか,あるいは売ったということになると,ちょっと取引関係にもいろいろ起こりますよというおそれを中小企業者が持っているというときにこれがかかってくると,特に--もっとひどいことを言いますと,上場をしていないような大きな会社というのは,そういうことに厳しい会社が,一般的な傾向として強いのでございまして,「あいつは」というようなことになると怖いなと。そこは何か工夫があるのではないかということなのでございますけれども。請求が,こういうケース,例えば何かのマークがついたこの登録については会社の方から請求があっても見せないという原則で登録をするとか,何かそういうルールはできませんでしょうかね。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   これは一般に株主名簿を使っている会社の話なんですね。ですから,何か振替機関みたいなのがあるとそれはあれなんですが,そういうものがないという前提ですので,技術的には非常に難しいのではないかと。 ● 確かに株主名簿なので,それは当然に分かってしまうというので,そこに何か更に重畳的にもう一つシステムを加えるしか,論理的には可能性がないのかもしれませんが,そこを何か知恵をうまく出せないかなと思っているのでございますけれどね。奇特な第三者をかませるのか。今の場合には,略式で差し入れた金融機関がその機能をうまく果たしてくださっているので,そこのところが全然ぽっかりと,これはしようがないんだということで片づけるよりは,何か工夫を凝らせないだろうかと。非常に限界的な事例であることはよく了解しておりますけれども。 ● 質権者を受益者とする信託を使うということがあるのですね。ですから,もし工夫する必要があるとすれば,それはそういうものを商法上規定を置く方がいいのかどうか,ちょっと微妙で,私,すぐには分からないのですけれども,しかし工夫する必要があるということであれば,例えばそういう形で検討することは可能だと思うのですけれども。 ● それは,個別の工夫というのではなくて,何か制度を作るということですか。 ● これはちょっと信託法との整合性の問題はあると思うのですけれども,一番分かりやすい形で,設定した株主が--今のは略式質ですから,株券だけが債権者に行っているわけですね。それで,債務者の株主の名義なんだけれども,新株だと。したがって,株主は受託者になりまして,配当金はいろいろなものが株主には払われるのですけれども,実質的には受益者である略式質権者のものだというものを作るときに,単に解釈で済むのか,それとも規定が要るかということはあると思うのですけれども,これは私の直感になりますけれども,もしそういう仕組みを作るということであれば,規定を置いておいた方がよいというような話が出てくる可能性がないわけではないと思いますので,そういう意味では安全のようにも思いますけれども。   それ以外の方法もあるのかもしれませんけれども,ちょっと思いつき的に申し上げたということです。 ● ここでの問題は,対抗力といいますか,対抗要件だと思うのですね。   つまり,質権は別に意思表示だけでも,券がなくなってしまえば設定できると思うのですけれども,問題は,それでは対抗できない,株主名簿の記載だけが対抗要件ですから,株主名簿の名義書換をしなければ対抗できないということなわけですよね。   質権についてもそうなるわけですけれども,信託にした場合に,信託に供したということを株主名簿のどこかに書かないとすると--書いたら匿名性が害されてしまいますので。だれに設定したかではなくて,設定したかどうかが問題なわけですから。それで,書かないとすれば,やはりその信託の受益権者となる質権者は対抗力を取得できないということにならざるを得ないのではないかと思うのですけれども。 ● 余り深入りすべきではないかもしれませんけれども,それはですから,対抗力はおっしゃるとおりですけれども,それは受託者に信託--財産が移転したということはもちろん書かなければいけないと思うのですけれども,受益者も書かなければいけないかというのは,これは制度設計の問題だと思うのですね。ですから,受益者の名前まで書く必要はないという制度も--例えば,今,信託の公示が要求されていない動産なんかはそうですけれども,受益者は分からないわけです。それ自体,対抗要件は,いわゆる占有をすればいいわけですから。そこは制度設計の問題になると思います。 ● 株主名簿に,信託に供されたということは書くけれども受益者は書かないというので,果たして先ほど○○委員が言われた問題の解決になっているのかどうかで,一体だれのための匿名性なのかというと,それは担保権者のためではなくて,担保権設定者。つまり,設定者が担保に供したことを会社に知られたくないので,だれに供したかが問題なのではなくて,とにかく供したということを知られたくないということですから,信託に供したことだけ書けば,もうそれで目的は達成されなくなるのではないでしょうか。 ● ですから,そこが制度設計の問題だと思うのですね。   もし,Aという株主が株主名簿に書いてありますと。それが,以後,Aは受託者になりましたということが,それで困るということであれば,それは,振替機関ではないですけれども,何か第三者みたいなものを考えなければいけないかと思うのですけれども,その場合でも,今度は第三者に移転するわけですから,それはやはり分かるわけですね。   ということは,逆に言うと,Aが,仮に信託であれ,第三者名義であれ,背後に常に担保があるとは限らないわけですから。もうちょっと抽象的に言えば,Xという人の名義で株主名簿になっていますといっても,その背後に何があるかはだれも分からないわけです。ですから,その辺までを含めて考えたときにどうかということだと思うのです。   ですから,相対的な話だと思いますし,原案でいいならもちろん原案の方がすっきりしていると思うのですけれども,多少工夫の余地があるとすれば,考えてみる価値はあるかなと。これは信託だけに限定して申し上げていますけれども,第三者名義ということでも同じことが,信託を使わなくても可能かもしれませんけれども,そういう趣旨です。 ● 信託方式なり,どこまであれすれば○○委員のおっしゃったようなことが満足されるかというのは,これは個別のケースごとに違うかもしれませんし,にわかに会社法上の制度として組み入れるのはなかなか困難なのではないかと。ですから,工夫する必要があるとすれば,今後,この会社法の制度外で何か考えていただくということしかないのではないかという気がいたしますが。   そんなに数が多いわけではないですね,その厳しい非上場会社さんというのは。 ● 今,横でこそこそ話をしながら,実はお互い利益が相反しているケースかなと思いながらあれしているのですけれども,確かに,一斉移行の後ですので,非常にまれかなという気もしています。   といいますのは,例えば,残された,担保にとるような非上場の株式の会社,ですから石油会社さんだとか洋酒メーカーさんが,酒屋さんの小売店に持っておけよということで持たせていた株が実は担保に入ってしまったのですということが分かるということなのですけれども,レアケースの中で,金融機関としては保全の必要がありますので,二者択一を迫るというのも一方では分かるわけですけれども,株主さんの利益ということを考えますと,匿名性の確保がぎりぎりできればいいなということなのですが,行き着くところ,持ってはいる,でも担保に入っているということがここの会社で許されるのかどうかというぎりぎりの話だけが恐らく残りますねということですので,確かにレアなケースではあろうと。   ですから,なかなかどこまでをここでお話をしていただいて,よりよい着地点が見つかるのか。しかも移行時期だけということですので,ある一瞬だということですから,その制度のために割り切るべきテーマかもしれないなというふうに金融機関側は思うわけですが,中小企業さんの方のお立場は,まだちょっと頑張りたいのかもしれないと思っております。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがですか。   できればこの会社法の中で御検討するのはちょっと勘弁していただきたいというのが,私の感じですけれども,いかがでしょうか。   なかなか○○委員のお立場としてはあれかもしれませんが……。 ● 今日で一応議論を取りまとめというふうに伺っていますが,ちょっと今日はすぐには確認できないのですが,戻りまして,今週ちょっと金融機関に聞いてみます。   それから,先ほど,お酒とか石油とおっしゃいましたが,皆さん,そう聞けば,あそことあそこかというようなことが大体お分かりになると思うのですが,どちらかというと関西の方の企業だったりして,なかなかきついところがあったりもするかもしれませんし,分かりませんので……。   それと,そういった企業と,もう少し粒は小さいですけれども,同様な例があるのか,どういうものが略式質で入っているのかという実態をまず当たってみて,金融機関の方たちも,実はこういうことが起こると利益相反するようなのですが,実は銀行も面倒なことはしたくないんですね。コストがかかりますから。電話をしたりして時間を使うことがコストなので。我々にしてみると,そっとしておいてくれというのが正直なところものですから,そこら辺,何かいいシステムがあるかどうかも考えてみて……。   ただ,こういうタイミングでございますし,余り無理をごたごた最後まで言うつもりもありませんので,ちょっと実態を調べさせていただいて,あと幹事の方とでも相談させていただきます。 ● よろしくお願いいたします。   ほかに。 ● 質問でございますが。   いわゆる登録質権者と特例登録質権者という制度が入ることになりますが,これは,オで掲げていただいている権利内容の違いというのは,登録に際しての請求主体が違うということに基づくものですよね。これもまれなケースなんでしょうけれども,特例登録質権者の方から登録質権者への移行は,質権設定者の方からの再度の請求みたいなものを要求するということになるのですか。 ● 質権設定者は,請求してくれれば,普通の登録質権者になると思いますが。 ● その場合の請求内容というのは,従前の209条に記載されていた内容そのものをまた請求するという形になるわけですか。 ● そう理解しておりましたけれども。 ● 分かりました。 ● ほかに,この点につきまして御質問・御意見ありますでしょうか。 ● 今の点に関連する質問なのですが。   ということは,株主名簿上,登録質権者と特例登録質権者というのは常に区別されたまま永遠に続くわけですね。 ● そうですね。権利内容が違いますから。 ● そうでないと,後からまた戻ったときに株券をだれに渡すかという問題があるように思ったものですから,私も,そこは区別しておいた方がいいかなと思ったのです。ですから,戻った場合には,株券は,特例登録質権者の場合は質権者に渡し,登録質権者の場合は株主に渡すということでよろしいのでしょうか。 ● それは,利益配当がこの特例登録質権者には行きませんから。登録質だと行くのですね。 ● それはいいのですけれども,後からまた株券発行会社に戻ったときに,だれに株券を渡すかという問題がある。 ● 戻ったときは,どっちも質権者ですから,株券がある世界ですので,株券を持っていないと質権の対抗力を持てませんから,特例登録質権者であろうと通常の登録質権者であろうと,株券は質権者がもらうということになると思いますが。 ● それで特例登録質権者は消すと。 ● そうです。 ● 分かりました。 ● ほかにありませんでしょうか。--よろしゅうございますか。   そうしますと,あとは4の(1)のアでありますが,各種公告制度の特例で,株式併合の際の株券提出の催告をするための公告・通知をすることを要しない会社の範囲が,「株券廃止会社」と「株券不存在会社」,この両者を合わせて「株券不発行会社」というと,この会社の範囲であるということになりますが,この点はこれでよろしゅうございますか。   それでは,この点も御確認いただいたことにさせていただきまして,これで第1については,変更点はすべて網羅されていますね。 ● 第1全体にかかわると思うのですけれども,前にもお聞きしたと思いますので申し訳ないのですけれども,商法上規定が要るのか要らないのかということで,確認の意味で質問させていただきたいのですけれども。   この株券廃止会社というのですか,不発行の定めを置くのは,株式の種類ごとは可能なのかどうかということですね。同じようなことで,戻る場合なのですけれども。   それから,関連して,今日の御説明にある,未発行というのですか,3の(1)ですが,未発行から発行になるときには,もちろん,特定の株主にだけ発行するわけにはいかないと思うのですけれども,株主が不所持を希望していない限りは平等に発行しなければいけないと思うのですけれども,これも種類ごとでいいのか。まず普通株を一斉に発行します,優先株は発行せずにいますという,そういう種類ごとのことが可能なのかどうかという,そのあたりは商法上明らかにしておかなくていいのかどうか。解釈にゆだねますと,相当ややこしいことになるような感じがしますが。 ● まず,最初の御質問の,種類株式を発行している場合に種類ごとに株券を発行するかしないかを決められるかということ,これは大分前に,ここで意識的に御議論をいただいたと思いますけれども,そのときの結論は,定款の定めとしては,もう種類を問わず一斉に全部ということで,ただし,振替制度の対象とするかどうかは,流通性のない株についてまで振替制度の対象にする必要はないので,振替制度の対象になる株式かどうかは分かれ得るであろうと。しかし,いずれにしても,種類株式を発行している場合,ある種類だけの不発行というようなことはできないで,ですから,株券を発行しない旨の定めしかできないと。つまり,ある種類についてということはできないということになっていたと思います。それでこういう形にしてございます。   未発行の方は今日初めて御議論いただくことになると思うのですけれども,3の(1)の譲渡制限会社の場合は,株主の請求がない限り一切株券を発行しないという選択もできるし,会社が,さはさりながら,任意に発行するということもできて,任意に発行する場合は,これは株主平等原則の問題がありますので,一斉に発行するということになると思うのですけれども,種類株式の場合,ちょっと私もそこは考えていなかったのですが,種類が違えば平等原則の問題は生じないので,平等原則だけの問題ですから,ある種類,例えばAという一人しか持っていない特殊な株式なんていうのは株券を発行しなくてもよくて,ほかの種類のものだけ発行するということも,譲渡制限会社の場合はできてもいいのかなと。ちょっと今初めて考えていますので……。 ● そういうふうに考えますと,ちょっと前の方に戻っていただいて,本来違う問題であることは重々分かっているのですけれども,なぜ一斉にしか廃止ができないのかという説明ですね。普通株と種類株を出しているときに,普通株は,何株でもいいのですけれども,一方の方はもう株券不発行にしますということを,定款自治みたいな形になりますけれども,なぜ認められないとしなければいけないのかという説明がやはり求められると思うのです。   どのぐらいニーズがあるかという問題も確かに別途あるとは思います。理屈の問題として。 ● 前のときの議論を今思い出しているのですけれども,種類株式ごとの不発行というものを認めるべきかどうかということを御議論いただいたときに,まず,認めるニーズがないだろうというお話と,そうであるならば明確化のために一律にした方がいいだろうということで,株券不発行かどうかは一斉にして,振替の方はニーズに合わせて,流通性のあるものは振替で,流通性のないものは振替の対象にしないという,そういう議論だったように思い起こしているのですけれども。 ● どなたか,昔のあれを覚えておられますか。   この3の方は,とにかく請求があれば発行しなければいけないわけですからね。   ○○委員の御意見は,実質として,やはり種類ごとの株券廃止かどうかは認めるべきだという御意見ですか。 ● 現時点でそこまでニーズがあるかどうかは,前の議論のときのような問題があると思うのですけれども,ベンチャー企業とか,大体最近,普通株と優先株というのははやりになっていますので,そういうときに,どういう人に持たすかにもよるのですけれども,例えば,譲渡制限があるという前提で物事を考えますと,どっちかを不発行にしてということがひょっとするとあるかもしれない。これは今はないと思うのですけれども,商法で一律と言わなければいけないほど何か混乱するとか,そんなのがあるのかどうかというのはよく分かりませんけれども,いずれにしても,今日,そこまでの確認をさせていただきたいということで。   それで,その場合に,そういうことは商法上明示しなくて,解釈問題でいいのだということで,それに関連して226条の方も,出す場合にどうかというのは,これもこのままいきますと解釈問題ですけれども,こっちは種類ごとに出しますということでいいという解釈であれば,そちらも解釈問題ですと。それを最低限確認させていただければ結構なのですけれども,,そういうことに関連して商法上一定の手当てする必要があるかどうかというあたりの感触を伺いたかったということです。 ● 私もちょっと議論の詳細を思い出せないのですが,どうも結論は,種類ごとには分けないということでずっと来たということのようです。   理由は次回までに確認しておいてください。 ● はい。 ● ほかに,この第1につきましては御意見・御質問等ございますでしょうか。--よろしいですか。   それでは,「第2 株式の振替制度関係」に移らせていただきますが,まず一つの問題は,3の(6)ですね。5ページから6ページにかけてでありますが,失念株主のほかに,略式質権者の関係が本文に入ってきまして,その関係で,失念株主も,それから略式質権者も,両方,他の特別口座への振替を請求すると,こういう制度になるという点がまず一つでありますが,この点についてはいかがでしょうか。--よろしゅうございますか。特に特別な制度を作るという必要がこれでなくなりますので。   それから,この特別口座への振替につきまして,従来は,失念株主は6か月以内にとか何とか細かい規定が書かれていたわけでありますが,ここでは,それを,「その他命令で定める場合」という書き方にいたしまして,6か月以内云々というようなことは政省令で書くということですが,この点もよろしいでしょうか。よろしゅうございますか。--それでは,この点も御承認いただいたことにいたします。   それから,7ページの6の(2)でありますが,これは,前回,どなたからか御指摘があったところかと思いますけれども,振替機関等が消却義務を履行した後,通知された株主が権利放棄を明示的にしてくれた場合には(1)は適用しないことにすると。通知された株主が明示的に権利放棄してくれませんと二重にならざるを得ないことになりますので,こういう(2)のような処理は難しくなるだろうということで,こういう案になっておりますけれども,この点につきましても,これでよろしいでしょうか。 ● 質問でございますけれども,私の聞き間違いかもわからないのですが,口座管理機関等が消却をするために買入れをするわけですけれども,先ほどの○○幹事の御説明ですと,買入れに応じてくれたというか,要するに,取得した者とこの放棄する者というのが同一でなければならないと,そういう聞き方を私はしたのですけれども,そこはそういうふうに限定しない方がよろしいのではないかと思っておりますが。 ● ここで放棄する者は,一斉株主通知において通知された株主となっている人でございます。今おっしゃられたのは,多分,3月31日付でAさんの名前で通知がされて,その後,AさんがBさんに譲渡して,Bさんから口座管理機関が取得して消却をした場合のことをおっしゃっているのだと思いますけれども,その場合はAということになろうかと思います。 ● 要は,もともとAさんという名前で一斉通知がされましたと。それで,そのAさんという人から口座管理機関等が買い入れ,それで消却いたしましたと。   あわせて株主名簿の方はどうするかということですけれども,私がさっき質問した趣旨は,そのときにAさんがここで言う権利放棄に応じてくれないといけないという,そういう理解をしたのですけれども,私は,そういう非常に狭い解釈ではなくて,任意の者といいますか,要するに,一斉通知をされ株主名簿に記載された者のうち,いずれの者であっても,権利放棄に応じてくれる者であれば可とするようにした方が,実務的にも対応が容易なのではないかという趣旨で申し上げたのですが。 ● 必ずしも,その後,その振替機関に売った人ではなくても,だれでもいいからとにかく私は行使しませんよと言ってくれれば,それで処理していいのではないかと,そういう御意見でございますか。   確かにそれでもいいような気はいたしますが……。数は合います……。 ● 自己株式を買い取るという場合もありますよね。そのときに,自己株式については初めから議決権がないはずですよね。だけれども,その分が出てくるとかいうようなことが起こるかなという気もするのですけれどね。 ● 今,○○委員のおっしゃったのは,自己株式はもともと議決権がございませんよね,それを譲渡して,消却した場合にどうするのかという問題があると。   一応,その点につきましては,もちろん,そういう場合であっても,もともと自己株式ですから,ここで言う株主としての権利を放棄した場合に当たるかどうかというのは,文言を考えなければいけないのかもしれませんが,実質的にはここの(1)の適用をしないという効果は得させたいというのが,本来のやろうとしていることだろうと思います。 ● 技術的な問題ではありますが,ちょっと検討を要しますね。 ● あと,○○委員のおっしゃったように,確かに,だれでもいいから株主としての権利を放棄すればこの瑕疵が治癒されるというのが実務的にやりやすかろうという気持ちはよく分かるのですけれども,ただ,実際,こういう消却義務以外の場面で,普通の場面において,Aという株主が,私の株主としての権利だけをだれかに譲渡するとかいうようなものは現在多分認められないのではなかろうかと思いますので,そこら辺の現行法との整合性とか,本当に法理論的にそういうことでいいのかというところはかなり検討しなければいけないのではないかなと考えます。 ● ほかの委員・幹事の方,今の○○委員のおっしゃったようなケースについてはいかがでしょうか。御意見・御示唆,ございますか。 ● 私が申し上げておりますのは,そこは御検討いただきたいと思いますけれども,仮に同一でなければならないというときには,買入消却をする。要するに,自己保有株式,金庫株なんかの場合は別ですけれども,既存の議決権を有している株主から買入れをしようとするときに,買入れすべき対象者が極めて限定されるという問題があるわけでございますね。ということで,こういう要綱あるいは法律の規定になったとしても,これを実現していくのは,過大記載を起こさないというのがあくまでも大前提でございますが,仮に過大記載というものが生じて発行済株式の総数と振替口座簿記載の総数とのそごが生じたというときに,現実問題として,消却をするということがかなり制約されることになりはしないかという,そういう懸念から私は意見を申し上げております。 ● ただ,1点は,全く無関係の人が権利放棄の意思表示をいったんしてくれても,後でもめたりするとどういうことになるのかなと,正直言ってちょっと不安はあるのですが。   これは技術的な問題ですから,次回まで積み残しにして構わないですか。 ● はい,結構です。 ● 今の○○委員が想定されているのは,関係ない人から買うといっても,事実上は金融機関とか市場の関係者といいましょうか,そういう人たちから買えば数が合うという,そういうことをお考えなんですかね。   もしそうだとすると,結局は,市場を構成している人たちが協力し合うといいましょうか,そういう結果になるのだろうかと思うのですけれども。ただ,権利を放棄したという構成そのものがどうかというのは,私,個人的にはありますけれども,でも,一応こういうふうに私法的に構成した以上は,市場での公序に対する協力者みたいな概念をこの中に持ち込むのはかなり違和感があるという感じがするのですけれどね。   実質は,結局,金融機関がみんなで適当に,持っている人の中から買い取るという形でつじつまを合わせようということかなと思ったのですが,もし違ったら,教えていただきたいのですが。 ● 過大記帳したその過大の部分を訂正しなければいけないわけですよ。それを,よそがふえたからこっちはもういいというわけにはいかないですね。その過大記帳のところを減らさなければいけないわけでしょう。それは,要するにトータルで合っていたらいいのだという話だったらいいのですけれども,私の理解してきたのでは,そこの部分を減らしましょうという議論でしてきたと思うのですね。そうすると,よそで買ったものでトータルで合ったらいいでしょうという議論が,そこから買ったのだというふうにするのかどうか知りませんけれども,そこがちょっとよく分からない,確認しておかなければいけないのではないかと思いますけれども。 ● この株主の権利放棄というのは,こういう限定された条件をつけると割とはっきりするのですけれども,そうではない場合は,何をあれしたら株主としての権利放棄なのか,ちょっと何かあいまいさが残るような気がしますね。   ほかに御意見ございますか。 ● ちょっと関連するかもしれませんが,私も間違っているかもしれませんけれども,株主としての権利放棄というのは,株式を譲渡している人は,それはいいと思うのですけれども,例えば,基準日現在で,本来100あるものが101になっていたと。それで,その後,機関が,その101の1を持っていたAという人から譲渡を受けて消却したと。そこでAが,基準日に基づく権利行使を放棄しますというのをここは想定しているわけで,これはぴったりでいいと思うのですね。   ところが,仮にみんな一人ずつ持っていたとして,Aという人ではなくて,基準日現在に名簿に乗っている95番目のBという人が仮に放棄しましたと。権利放棄するのは自由だと思いますけれども,そうすると,Aから買った株式を消却したという意味がどうなるのか。Bさんが放棄したら,これもなくなるのか。ちょっとそこの整合性が私は一番気になるのですけれども,理論的には。 ● 恐らく,○○委員がおっしゃるのは,Aはやはり総会においては株主としての権利行使をしますと。それで,Bがとにかく私はやめますと言ってくれればそれでいいでしょうという御意見だと思うのですが。 ● 総会との関係はそれで済むと思うのです。その後だれが株主になっているかということが,もし,実はAはその後消却してしまっていると。それでBは放棄しているけれども総会との関係でだけ放棄したので,また……。ちょっとその辺を検討する必要があるのではないかと思います。 ● ほかに御意見がなければ,今までいただいたいろいろな御意見を踏まえて,技術的な問題ですから,次回までに検討させていただきます。   今の点はそういうことで。   次は8で,(1)にウが加わったと。ウは,従来はエだけだったのを,重要な問題を一つは挙げるということで明示的に記載したということのようですが,この点はよろしゅうございますか。--特に御意見ないようですので,この点も御了解いただいたことにさせていただきます。   それから,新しい点は,10ページの11の(1)で,加入者にこういう情報提供請求権を認めると。これは,社債等振替法も同じだということから,そろえたということのようですが,この点もよろしゅうございますか。--それでは,この点も御了解いただいたことにさせていただきます。   第2については,新しい点は以上のようなことかと思いますが,第2全体を通じまして,何か御意見等ございますでしょうか。 ● 変更点ではないのでして,ちょっと私が不勉強で分からないだけかもしれないのですが,金庫株というのがありますね。さっきも出てきましたけれども。その金庫株の保有状態は,発行会社は,今までなら自分のところに持って帰ってきたわけですが,どこかの振替機関を通して持っていなければいかんという状態になっているわけですね,多分。そういうときに,その持っている機関というのは,証券会社なのか,名義書換機関というか,特別なのか,その業態は制限的に何かお考えになっているのか,どういうイメージで思われているのかなというのが一つですね。   というのは,証券を発行するというようなときに,その発行会社は持っていないわけですよね。だから,例えば自己株式を処分する場合のやり方とか,自己株式を取得するとき,つまり買取請求権でもいいですけれども,そのときに,そこは機関として持っているだけではなくて,だれかが買ってこなければいけないわけですね。発行会社はもう自分のところでは買えないわけでしょう。そうすると,そのときのお金ですね。それから,その業者はやはり証券会社でないといかんのかとか,そういうようなことがちょっと気になり出したのですけれども。   要するに,少なくとも絶対に振替機関を使わないといかんということになるわけだから,例えば買取請求権ということになって,今までは証券会社に持っていってもよかったようなものを,持っていったら,会社だったらお金要らんからやとかいうような議論があったと思うのですけれどね。そういうような売買手数料みたいなものですね,買取請求権で自己株式を買ってもらうというようなもの,そういうものは,こういう制度では,一体,会社の負担だと考えるべきなのか,やはり制度が変わったのだから,それはみんな動かしたらそれぞれが払わなければいかんのかとか,ちょっとそういう……,権利の帰属は,全部振替機関でどこかで持っているという口座簿になってしまっているから,それとの関連で費用が生じてくると。それを,今まで発行会社が当然に持っていたようなものもどうなるのかというのがちょっとよく分からないなと思いまして。ちょっと私,不勉強で,議論があったのかもしれませんが,教えていただきたいと思います。 ● 私,ちょっと状況が理解できなかったのですが……。 ● 例えば,今まででしたら--これからも,単元未満株があると思うのですね。それを,買増請求とか,あるいは買い取ってくださいというような請求をしていましたと。それは,今までは,会社へ行ったらそれを買い取ってくれたり,あるいは株を売ってくれたりしたというようなことがあったと思うのですけれども,現在は会社は直接持っていなくて,つまりどこかの口座簿を通じて持っているわけですよね。そのときに,手続としては必ずその口座簿のところを動かさなければならないということが起こってくるわけですね。それに伴う費用がどうなるのかということです。 ● 従来だと,単元未満株を,いきなり会社へ行って買ってもらっていたと。 ● 観念的にはそういうことです。 ● そういう例がどれぐらいあったか分かりませんが,確かにそのときは手数料は取っていなかったですよね。会社が直接あれするのであれば。 ● ちょっとそういうことが気になりましたので。 ● ただ,その部分は別に変わっていないので,会社の窓口へ行って買えと言えば……。 ● それでいいんですかね。 ● 名義書換代理人の方のあれは会社で処理するのではないでしょうかね。いや,ちょっと自信ありませんが。 ● 今おっしゃったのでようやく分かりましたけれども,株式買取請求権を行使する,あるいは買増しをお願いすると,口座を振り替えることになる,その場合の口座手数料がどうなるのかということですよね。   一言で言ってしまえば,口座手数料を取るのか取らないのか,どういう場合に幾ら取るのかというのは,すべて民間の自治に委ねるという形ですので,どうなるというか……。 ● 今までは権利なんですよね。「買取請求権」だから。それが,若干割り引いて,もうしようがないのだと,こういうふうになるのかですね。手数料は,これは制度がこうなったのだからしようがないのだと,こういうふうに考えるのか,従来の,人を守ってあげるという考え方ですね。それはしかしどっちも考えなくて,もう自治に委ねると,こういう立場ですか。 ● 従来でも,現在でもあると思いますが,株券が発行されていない単位未満株,単元未満株というのはあったわけですね。それと同じ問題なのではないですか。確かに,株券があれば……。 ● みんな自分のところで把握もしているわけですよね。名簿で。 ● ○○委員が単元未満株を売られる場合は,○○委員の口座にその単元未満株があったわけでしょう。ですから,普通はそれのあるところへ行くわけですよね。 ● でも,この制度ができましても,振替機関,銀行・証券は売買単位で動くと思うのですよ。例えば,100株のところを株式分割,昔でいう無償交付なんかされたら,102株になりますよね。そのときに,2株だけ残っているわけですよ,多分。それは従来なら株式名簿の方で102株になっているんですよね。それが口座簿の方で102株になっているわけです。それで100株は売ると。そうしたら2株は残っているわけですね。その2株を売却するということになるわけだから,今までだったら発行会社で把握できているし,自分のところのを,はい買いましたというのですぐいけるけれども,口座の振替をしてもらって売らなければいかんし,それを買う方も,自分のところでどこかにお金を払うというようなことをしなければいかんというときに,そういう費用が問題にならないかと。つまり,従来と変わっているのは,その2株についての把握状態が本来は口座簿ではなかったのですね。   ちょっと分からないことをぶつけて申し訳ございませんが,その買取請求権とかの,端的に言えばそこの費用がどうなるかというところにおさまると思うのですけれども。 ● 実務に詳しい○○委員,あるいは何か。 ● 恐らく,今おっしゃられているお話は,今の保振制度と同じだと思うのですね。今度,一斉の株主通知が行われますから,恐らくそこで会社の手元でも把握できますので,買取請求なり買増請求には対応できるので,今の保振と同じで動けるのではないかなというふうに感じているのですが。   ○○委員,そういうことでよろしいでしょうかね。 ● それで特に変わりはないと思いますけれども。 ● それならそれで結構です。   ちょっと気になりましたので。済みません。 ● ほかに何かありますでしょうか。   第3,第4につきましては,特に内容的に新しい点はないと思いますが。   それでは,この「株券不発行制度導入に関する要綱案(第二次案)」につきましては,先ほどの○○委員の問題点を残しまして,他の点につきましては御了解いただいたということで,よろしいでしょうか。 ● 私自身,要綱についてはこれで結構だと思っておりますので。ただ,解釈の問題,あるいは運用の問題としてどうするかという,そういうことでございますので。 ● いや,解釈の問題としてそこができるかどうかは重要な問題ですので,なお検討させていただきます。   それでは,次の議事に入る前に,休憩にいたします。           (休     憩) ● それでは,審議の再開をお願いいたします。   部会資料18でありますが,「電子公告制度の導入に関する要綱案(第二次案)」につきまして,まず,事務局から説明をお願いします。 ● それでは,部会資料18の「電子公告制度の導入に関する要綱案(第二次案)」につきまして御説明をさせていただきます。   これにつきましても,参考資料10として,第一次案からの変更点を事前に配布させていただいておりますので,これに沿いまして御説明をさせていただきます。   電子公告の関係の要綱案の第一次案からの変更点は,大きく言いますと,第一次案ではかなり注をたくさんつけていたわけでございますが,前回の御審議でそれらのほとんどの部分について決着をつけていただきましたので,それを本文に加えたということ。それから,説明の注はもう落としたというようなこと。それから,一番大きな問題として議論していただきました,第3の「株式会社の各種債権者保護手続における個別催告の省略等」の問題につきまして,従前,中間試案と同じく三つの案をお出ししていましたのを,前回の部会での御審議の結果に基づきまして更にもう少し検討したのでございますが,本案と別案という形でお示ししていると。ここが大きなところでございます。   順次御説明させていただきますけれども,まず,参考資料10の2に書いておりますが,第一次案で注の形でお出ししておりましたものを,前回の部会で御了承いただきましたので,本文にいわば格上げさせていただいているということでございます。   もっとも,そのうち,第二次案の「7 その他」の(1)のc,「株主代表訴訟の場合の公告又は通知以外の訴え提起があった旨の公告」につきましては,前回の部会では,慎重論といいますか,公告を廃止するのは必ずしも妥当ではないのではないかという御意見も複数ちょうだいしたところでございます。   しかし,それにもかかわらず,廃止するという原案を出させていただいているわけでございますが,これは,原案に変更を加えないでお出ししましたのは,前回の部会でお配りしました参考資料8に書きましたとおり,この訴え提起があった旨の公告,これはどうもドイツ法の制度を参考にして設けられたもののようでございますけれども,これは訴訟あるいは判決には何らの影響も及ぼさない,単なるお知らせであるということ。訴え提起をした人は,訴え提起期間があるものであればその期間内に,なければずっといつでも訴えを提起できるわけで,期間の制限があるものについて訴えが提起されれば,その時点で全部が併合されて一緒に審理がされるということになるわけでございますので,いわば単なるお知らせの公告でありまして,それについて,電子公告制度の導入に伴って,調査機関の調査も受けて電子公告をしなければならないとまでするには重過ぎるのではないかと。   他方で,これまで御審議いただきましたように,調査機関の調査が必要な公告と必要でない公告,いずれも公告義務があって,それを満たさないと過料の制裁がかかるという形になっているものを,いわば第一種,第二種みたいな形に二つに分けるというのは非常に説明がつきにくいだろうということで,しかも実態を見てみますと,こういう訴え提起というのは相当数行われているわけですけれども,実際にはその公告は,これは法律違反ではありますけれども,非常にわずかしか行われていないというようなことも考えますと,発行会社に公告を実施する負担をかけさせるだけの実益はなお乏しいのではないかと思いまして,原案を維持して,もう一度御審議をいただきたいということでございます。ここは十分に時間をとって御議論いただきたいと思います。   次の第2の「貸借対照表等の公開の方法の見直し」でございますが,ここは,第一次案でつけておりました注を,本文の4という形で掲げさせていただいております。   この点につきましては,前回御欠席されました○○委員から意見書をお出しいただいているところで,この意見書を御紹介させていただいて御審議いただいたわけでございますけれども,前回御出席の委員・幹事の皆様方は,このような形でいいだろうということでございましたので,本文に掲げさせていただいたということでございます。   次に第3でございますが,本案は,第一次案あるいは中間試案と同じですけれども,それらでのⅡ案でございます。   別案といたしまして,会社分割における分割会社がすべき債権者保護手続につきましては,不法行為に基づく債権を有する債権者に限って個別催告を必要とし続けるという案を掲げております。   この点につきまして,前回の部会では,第一次案でのⅡ案を本案とし,会社分割における分割会社がすべき債権者保護手続については現行法どおり個別催告の省略はしないという御意見を別案とすると。つまり,個別催告を受けなかった者は,分割会社・承継会社の双方に連帯責任を問うことができるものとするという案を別案として掲げるということになったわけでございますが,その後,更に部会長とも相談させていただきながら検討いたしましたところ,参考資料10の2ページ目に少し詳しく書かせていただきましたけれども,多くの債権者は取引行為に基づく債権を取得しているわけですけれども,その債権者のほとんどは商人でございますので,法務省が開設するリンク集にアクセスする,あるいは登記所でURLをチェックするなどして,電子公告を見るということを要求したとしても問題は少ないであろうと。   また,社債権者につきましては,前回も少し議論がありましたけれども,現代化部会での検討に委ねるのが相当であろうと考えられたところから,結局,個別催告がされない限り,会社分割でどのような分割契約あるいは分割計画がされても,なお両方の会社,つまり分割会社と承継会社の双方に責任追及ができるようにする必要がある債権としては,専ら不法行為に基づいて債権を取得した債権者に限られるのではないかと。企業ですから,主として公害とか薬害とか,そういったものになると思いますけれども。この債権者についても公告のチェックを要求するのが妥当なのかどうかということは更に御議論いただく必要があるのかなということで,不法行為に基づいて債権を取得した債権者に限定して個別催告を要求するという案の形に少し直させていただいて,別案として掲げさせていただいた次第でございます。   この別案と本案のどこが違うのかということでございますが,別案を採用する場合には,不法行為に基づく債権を有する債権者は,その債権については,個別催告を受けない限りは,会社分割に異議を述べなくても,分割会社と承継会社の双方に責任を追及することができるということが違うわけでございます。   会社実務上は,不法行為に基づく債権は,会社自身が責任があると認めるか,あるいは原告勝訴の判決が確定したものだけを知れたる債権として取り扱って個別催告をするということにしているようでございまして,係争中の案件については個別催告はしないという扱いだそうでございます。   他方で,会社は,会社が認めたり,あるいは判決で負けた場合には,遅延損害金の問題もありますので,一般には速やかに弁済をなさるということでございまして,したがって,別案をとりましても,不法行為に基づく債権を有する債権者に個別催告が行われるという事態はほとんどないということになります。   したがって,結局は,係争中の案件で後に債権があるとして認められるかもしれないものについて個別催告を受けない限り,その判決確定後に分割会社と承継会社の双方に請求ができるようになるというところが,本案と別案の違いということになります。   本案と別案いずれを採用すべきかを,これから十分時間をとって御議論いただきたいと思いますけれども,前回,○○委員だったと記憶しておりますけれども,資本減少の場合の債権者保護手続と,会社分割における分割会社がすべき債権者保護手続とで違いを設けるというのが別案なわけですけれども,そこまでの必要性と合理性があるのかという御指摘がございましたので,そこらあたりを御議論いただければと思っております。   以上が変更点でございます。 ● それでは,この点も第1から第5までに分かれておりますので,個別に御議論いただきたいと思います。   まず,「第1 株式会社についての電子公告制度の導入」でありますが,ほとんど前回から変わっておりませんで,前回,非常に議論がありましたのは,2ページ目の下の方,7の(1)のcであります。株主代表訴訟の場合以外は公告制度を廃止してはどうかと。つまり,総会決議取消しの訴え等については公告制度を廃止してはどうかという案につきまして,前回,相当御議論があったわけでありますが,この点いかがでしょうか。   今,事務当局からの説明にもありましたように,会社法上の訴えについて公告をしろというのは,これはもともとはドイツ法の制度でありまして,私,その後,ドイツ法がどうなっているか調べてみたのでありますが,現在もあります。例えば,総会決議取消しの訴えでありますと,現在のドイツ株式法246条4項であります。246条4項によりますと,総会決議取消しの訴えが提起された場合には,会社がその訴えの提起及び第1回口頭弁論期日を公告するという制度になっております。   規定はそうなっておりまして,あとはコンメンタールに書いてある解釈なのでありますが,訴えの提起について公告するという意味は,取消しの訴えが提起された対象の決議は何であるかということも特定せよと。それから原告の名前も特定せよということになっているそうであります。というような解釈になっているようであります。   そして,何のためにその公告制度があるのかという点につきましては,私の見たコンメンタールでは,要するに株主にその訴訟提起があったということを知らしめて,そして,いずれかの側,つまり原告側に共同訴訟参加するか,あるいは会社側に参加する場合には補助参加的なものになるかと思いますが,そういう参加する機会を与えるためであるというふうに書いてあります。参加する機会を与えることが究極的に何を目的にしているのかということについてはいろいろ考え方があるかと思いますが,一応それがドイツ法の現在の制度でありますが,日本法上は公告制度を維持する必要があるのかどうかと,そういう点でありますが,いかがでしょうか。   前回は,学者からは割と慎重論が多かったように記憶しておりますが。 ● 前回も発言したのですけれども,今回の改正提案の流れというのは,調査機関の調査まで受けさせるような公告かどうかというような観点から検討されたということなのですけれども,同じ過料の制裁があるのに調査機関の調査を受けるものとそうでないものがあるのはおかしいというのが出発点のようですが,しかし,既に貸借対照表の公告については調査機関の調査を要しない,単なるお知らせということだと思いますが,日本法のこの規定の趣旨として,そういう株主の権利行使の機会の確保というのは直接的には余り重要ではなくて,単なるお知らせにすぎないものであるとすれば,調査機関の調査を受けないでよいという公告事項として残しておく道はないのかなというふうに感じております。   というのは,調査機関の調査を受けることの直接の効果というのは,登記申請書類の添付書類としての適格性を有するということですので,登記に関係なければ,それは必ずしも受けないような制度であっても,あり得るのかなというふうに考えます。 ● 今の○○幹事の御指摘は,実は4月の部会で御議論していただいたときに,私どもの方で,調査機関の調査を受けないものと受けるもの,お知らせ型のものは受けないということでどうでしょうかということで案をお示しして御議論いただいたわけですけれども,そのときちょうだいしたご意見では,むしろ今の○○幹事のお話とは逆で,二つに分けるというのは,理論的な説明も難しいし,実際上も難しいのではないかということだったわけでございます。   そこで案を変更して,そもそも調査機関の調査を受ける必要性のないようなものについては公告自体を廃止するという方向で前回から案をお示ししているわけでございます。   なお,調査機関の調査の直接的な効果が登記の場合にあらわれるというのはおっしゃるとおりでございますが,では登記の際に公告をしたことを証する書面が添付書類となっていないもの,あるいは登記自体が要求されないものについては調査機関の調査は要らないのかということで考えてみますと,登記と直接結びつかないものであっても,公告自体がされたことが極めて重要な意味を持つものというのは多々あるわけでございます。これは,前に,どんな公告があるかという一覧表をお配りしたところでございますが,登記がされる場合に匹敵するようなものも多々あるわけでございまして,そういうものについては,やはり調査機関の調査という形で,適正に公告がされていることのチェックを受けさせる必要はあるだろうということで,これも今まで御理解はいただいてきたものと思っております。   1点,更につけ加えさせていただきますけれども,調査機関の調査を要しない公告として貸借対照表等の公告があるではないかという御指摘でございましたけれども,これは確かに,第2の「貸借対照表等の公開の方法の見直し」の1で,貸借対照表等の公告に限っては調査機関の調査を受けることを要しないとしているわけでございます。しかし,これは,そういう意味では非常に例外なのでございますが,貸借対照表等の電磁的な公示という商法283条の5項の規定が既に設けられている。これには調査機関の調査が要求されていないものですから,たまたま電子公告を採用している会社で,それはもう電子公告してしまえばいいわけですけれども,その場合は調査機関の調査を受けなければならないとするのはバランスがとれないし,他方で,かといって,もう既に認められている電磁的公示の制度,これは調査機関なんていう制度は用意されていないわけですけれども,それについてまでそういうものを要求するというのは,これまたコンセンサスは到底得られない話でございますので,これだけは,どちらかというと,理屈というよりも,もう既にある制度との整合性,必要性という観点から特別の取扱いをするということにしている次第でございます。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● 先ほどドイツ法の御紹介がありましたように,そういうベースでできた日本の商法を習った世代の者から言うと,それをなくしてしまうのは何となく気持ちが悪いのですが,これもいろいろな会社の類型があるかと思うのですが,これは閉鎖会社で,何かドラッグ紛争が起きて訴訟になったと。しかし,こういうときに公告なんていうのを要求する必要は全くないように思うのですね。公開会社で何か会社訴訟が起きたような場合,そういうのは一般にすぐオープンになって割と情報が広まるというふうに,今の社会ではほかの株主も何らかの形では情報は入るだろうから,こういう公告というものを義務づける必要はないというふうに考えていいのか,やはりそこは,しかし従来の建前も重要だということであると,これは,公開会社であれば,証明を受けるにしても,どうせいろいろな関係でサービスを受けているわけですから,この公告を新たに追加したからといってそんなにコストが急に高まるわけでもないように思うので,サービスの一環だろうと思うので,そのあたりを少し考えてみて……。実態がどうも私もよく分からないので,どっちがいいのかよく分からないのですけれども,考えるべき点はそんなところかなという素人なりの感想なのですが。 ● 先ほど,4月の時点の議論のお話が出まして,確かにその当時は,余り公告というのは,その調査対象の区別をしたときに,その処理が困難になるのかなという理解をしておりまして,例外は5年間も掲出する貸借対照表だけと思っていたのですが,ただ,先般の議論で,先ほど登記の話が出ましたけれども,もともとそれが要件なのか,例えば添付書類の位置づけで過料の制裁だけの問題になるのかというところで,多分,公告で調査対象とするものの意味内容といいますか,性格づけが変わったのではないかなというふうに理解しているわけです。   とするならば,もとの議論をぶり返すということになるのかもしれませんけれども,もう一度,調査対象となる公告,そうでない公告というものを区別--ほかのものも認めていいのではないかと。特に,対象が,cのいわゆる会社訴訟に関して言うならば,個々の債権者に対する情報提供よりも株主に対する情報提供というのが主たる目的なのかなと思いますけれども,であるならば,資産とかそういう正確性が要求されるものではありませんので,数字の改変等が問題となるものでもありませんので,私の方は,株主への情報提供はサービスとしてむしろ残していただけたらなと。ただ,調査対象としないというものを再度設けるということでどうかと考えております。そういう意味では○○幹事の意見と同意見ということになります。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● この問題は,訴え提起の公告にどういう機能を持たせるのか,期待するのかということだと思うのですけれども,単になれ合い訴訟防止のために参加の機会を与えるだけなのか,あるいはそれ以上に,前回お話があったかと思いますけれども,会社の行為に何か瑕疵がある可能性があるということを株主に知らせるという機能まであるのかと。現実に現在の公告は事実上そういう機能を持っているということは否定できないかと思うのですけれども。つまり,公告がなかったら訴え提起をしないような株主でも,何か訴え提起されていることを知って,ああ,何か瑕疵があるなら,それなら自分もその瑕疵を攻撃しようというようなことを認めるのかどうかということなのですけれども,今申しましたような瑕疵の存在,あるいは瑕疵の存在の可能性を株主に知らせようというような機能は本来の公告の機能ではないような気がするのですね。   つまり,瑕疵の存否というようなものは,株主が各種の情報収集権を利用して自分で知るべきもので,ここの公告によって,瑕疵がある,あるいは瑕疵のある可能性があるということを知らせることが本来の公告の機能かというと,ちょっと私にはそこは疑問に思われまして,それは本来株主が自分でやることではないかという気がするのですね。ですから,私は,ここはむしろ,なしでいいのではないかという考えの方に賛成でございます。 ● 私が申し上げる話は理論的な話では全くございませんけれども,現実にやはりドイツ法で,今,先生からお話をちょうだいしましたように,補助参加なり訴訟参加という実例というのも特には私も余り耳にしたことがございませんし,対世効ということからしますと,発行会社からしますと,例えば一番ポピュラーな決議取消訴訟等があった場合,私どももございましたけれども,全く恥ずかしいことでも嫌らしいことでもなく,法律の定めがあるから淡々と公告していた,公告しているというのが実務の実情ではないかと思います。会社によっては土曜日の朝刊をねらって公告をするというような会社も,小さい会社では皆無とは言いませんけれども,およそ日本経団連銘柄の会社さんはもう淡々とやっておられるのではないかと思います。   ただ,実情は,ピップエレキバンといいますか,傷ばんそうこう程度の場合はやはりコストというのがございますので,こういった提起がありましたというのを1行か2行,本当にちょこっと例えば定刊紙に載せるだけでございますので,私どものような実務をやっておりますプロでも,なかなか探し当てるといいますか,それを目にする機会はめったにない。よほど時間のある方で,隅から隅まで見る方でないとなかなか……。   という意味では,実効性という意味では,コストばかりかかって,なかなか上がらないという実情はあろうかと思います。したがいまして,私も,実務の立場からしますと,是非おとりやめいただければなというふうに考えているものでございます。 ● 参考のために聞きますが,先ほどのドイツの,少なくとも解釈では,訴えの対象になっているのはこれこれの決議であると,それから,原告まで書けということなのですが,日本の実務の場合はどういう書き方をしていますか。何々を公告の内容には入れるのでしょうか。ただ何月何日の総会について決議取消しの訴えがあったと。 ● 訴訟が起こされましたと。 ● それだけです。ですから,2本ぐらいで。本当に傷ばんそうこう程度。 ● 何が対象であるかもよく分からないという形ですね。 ● ただ,裁判所とか事件番号の特定での記載という形は,私は何度か見たことがありますけれども。ただ,逆に,どこの裁判所にどういうのが係っているのかという,そういう意味では,先ほどの○○幹事のお話にもありましたけれども,アクセスして,その内容について参加するかどうかの判断はできる。だから,単に訴訟提起がありましたという以上の情報は提供していたという記憶でございますけれども。 ● いろいろ御意見は分かれておりますが。 ● 先ほど○○幹事がおっしゃったように,この種の公告が商法の公告の機能かと言われると,そういうものをきっかけにして会社の不正だとかそういうものにアクセスするということは幾らでもあることだし,公認会計士の監査が不正について感想を述べるということも今では普通のことです。だから,私はその点については必ずしも○○幹事と同じような立場ではないのですけれども,ただ,先ほど○○委員がおっしゃったように,公開会社の場合にはタイムリー・ディスクロージャーの対象になっていて,そして,恐らくドイツでこういう制度があるというのは,資本市場が余り発達していなかったドイツでは,こういう会社法の公告制度--例えば日本の戦前の決算公告もそういった機能を持っていたと思います。ですから,公開会社以外の会社の場合は,それは公告というのはちょっと大げさかなという感じもいたしますので。ホームページですから,それほどのコストという感じもしませんし,今まで守っていなくても守れるのかなという気もしますので,無理やりなくせというほどのこともないかなという気もしないではないのですけれども,どうしても必要だというほどの理論的な必然性はないかなという,その程度です。 ● 私が先ほど申し上げたのは,電子公告との絡みでこの公告を廃止するというのではなくて,○○委員がおっしゃったように,公告制度一般の問題として結論を出すべきであるという趣旨で申し上げたものです。   それで,この制度の趣旨としては,株主への告知のほかに,決議取消訴訟もさることながら,それ以外の各種の無効の訴えの提起の公告も対象になっていると思いますけれども,これがもし決議無効判決が下されるということになりますと,利害関係者にとって大変動が起こるわけで,実際にはほとんどそういう例はないと思いますけれども,そういうことの起こる可能性を知らせるという趣旨もあるのではないかと思います。ちょっと切れ切れの意見といいますか,感想を述べているだけなのですけれども。   それから,公開会社ではタイムリー・ディスクロージャーがあるわけですが,ちょっと取引所のものは見てきませんでしたけれども,臨時報告書の提出事由は,これは一定額以上の損害賠償請求訴訟が提起されたということが対象になっていますので,決議取消訴訟とか無効の訴えは対象になっていないのではないかと思います。その点でなお意味があるのではないかということをつけ加えさせていただきます。 ● 確かに,公開会社の場合とそうでない会社の場合とは,同じ決議取消訴訟その他といってもかなり違いがあることは事実だと思うのですが,それぞれについて,いかがでしょうか。この公告が本当に必要なケースというのはどういうケースなのか。   ○○委員は,やはり一定の機能はあるというお立場だと思うのですが,具体的に言うと,どういう場合に一番必要だとお考えでしょうか。 ● いや,どういう場合に必要だという……,逆の発想をして,あえてなくさないといけないのかなというふうに考えて,そこまでの……。使われていないという部分につきましては,それは実務の怠慢でございますのであれなのですが。電子公告が導入されたからということではないのですけれども,非常に低コストでいろいろな形で情報提供の機会というのは多い方がいいのではないかという,非常に一般的な発想で。今あえてこれを削る必要はないのではないかというところです。新たに設けるかどうかというのでしたら別ですけれども,既存のものをなくすということですから。 ● いろいろな御意見があるかとは思うのですが,ある意味で,やはりこういう見直しの機会に本当に必要なものかどうかというのは考えていく必要があるのではないかなと。もちろん,膨大なコストがかかるとは思いませんが,それなりにコストがかかることは間違いないわけですし,現実にどの程度利用されているのか,また,そういう役割を本当に果たしているのかということは,こういう機会に見直してもいいのではないかと思うのですけれども。積極的に廃止する理由がないからというだけで存続して,なおかつコストをかけるというのも必ずしも合理的な判断とも思えないという気はしますが。 ● 中小会社の世界から言うと必ずしも実感がわかないところなのですが,何人かの方から原則論みたいなものが出たので,私の方からお話をしたいと思いますのは,例え話になってピントが外れているかもしれませんが,60キロの首都高速をみんな100キロで走っていて,ほとんどの人は守っていないと。60であることを認識している人も一部にいますが,ほとんど認識しないで,勝手に出している。それと同じようなことが様々起こっているわけでございます。60キロというのを知っている立派な会社さんは,一応守っているふりをするために小さいのを出すと。ばんそうこうとおっしゃいましたが。   商法は,論理も,それから前のものとの平仄を合わせるといったような歴史的なものも非常に重要だと私は思うわけでございまして,そういう論理は十分理解できますが,やはり実態をよく見ていただいて,だれが見ても形骸化しているものというのはあると思うのですね。それについては,これは個別について申し上げるわけではありませんが,このチャンスに整理をしていただくというお話が○○委員からありましたが,それはビジネスの世界から見ると非常に,ああ,法制審議会って分かってるなと。そうでないと,逆のことは言いませんが,ネガティブな反応が来るのではないかということを恐れるわけでございます。 ● いかがでしょうか。   いろいろ御意見が出ましたが,恐らく学者・弁護士以外の方は,なくていいのではないかと思っておられるのではないかと。学者の中でも分かれているという状況ではないかと。   どうしてもこれはこういう意義がありますという積極的な御意見がなければ,この際削るということでいかがでしょうか。   よろしゅうございますか,○○委員。 ● 発言を求められると一番困るのですが,多数の御意見がそうであればということで。 ● ほかに,積極的に,やはり残すべきだという御意見の方がおられましたら。 ● 昔,会社法の勉強をしたときに,これが株主民主主義が非常に守られている一つのあれかなというぐらいに理解していた面もありまして,ちょっと心情的には寂しいなと思うのですが,実際問題としてどれだけ励行されているかとか,それから,それの果たすべき機能ですね。場合によりけりだと思うのですけれども,実際は無効判決がめったに出ないですね。そうすると,あとは総会の決議取消しだと。しかし,あれも今は百害あってぐらいのものです。つまり,公開会社においては参考書類規則とかそういう制度整備がされているし,取消決議で何かしなければならないというふうではないと,進んでいるし,私,ちょっと不勉強だから,こんな場合は絶対要ると言われたら困るのですが,概括的には,なくても仕方がないというか,この際……,そういう実務面で実際上,ある人だけが守っているというようなので,ほとんど守っていないようなものに固執するというのも,それはおかしいと思いますので,仕方がないというか,いいかなと思っております。 ● それでは--いや,必ずしも支持者の数が少ないというだけで処理しようとは思わないのですが,いろいろな御意見をいただきましたが,そういうことで整理させていただければと思いますので。   では,そういうことで,cの公告制度は廃止するということで御了解いただければと思います。 ● それでは,今のところはそのようにさせていただくことにいたしますけれども,1点,冒頭で御説明するのを忘れてしまいましたことがありまして。   実は,前回の部会で○○委員から,電子公告については,いろいろな事態で,電子公告をしようと思っていたのだけれどもできなくなるということが起きるかもしれないと。そういう場合に備えて,例えば別の方法をあらかじめ登記しておいて,その場合は別の方法によることができるようにするとか,幾つかの案をお示しいただいたと思いますけれども,そういうことを検討すべきではないかという御指摘をいただいたところでございます。   この点につきまして,今回の要綱案に明示的には盛り込んでおりませんけれども,第1の7の一番最後に,(5)といたしまして,「所要の規定を整備する」ということにしてございますが,現在,その所要の規定の整備の一つとして,電子公告を公告の方法とする会社は,定款に電子公告をすることができないやむを得ない事由が生じた場合には,官報か日刊新聞紙のいずれかであってあらかじめ定款で定めたもので公告をするという旨の定めをすることができることにして,その旨も,予備的な登記というのですか,そういうことをしておけば,万が一ハッカーにねらわれて,サーバーがぼろぼろになるまで壊されて,復旧するのに物すごい時間がかかって,とても電子公告なんかやれないというようなときに対応ができるという,そういうようなことを,規定を設けるのか,解釈で済ませるのかということもあろうかと思いますけれども,そんなことを考えてはどうかなと思っているのでございますが,この際,御意見を承れれば幸いです。 ● 電子公告を定款で定めていた場合でも,それが使えなくなった場合の措置の必要性というのが,前回,○○委員から御指摘がありまして,この7の(5)として,そういう規定を整備するということはどうかということでありますが,いかがでしょうか。 ● 今の世の中,どういう事態が起こるか分からないようなふうに実務も進歩しておりますので,実務的にはそういう手当てをしていただけると有り難いと思っております。 ● 確認させていただきたいのですが,今の御説明ですと,電子公告についてホームページと定めて,その場合ですと,公告の方法のところは--もともと公告の手法は,電子公告でも,いわゆる日刊紙による公告でも,選択的なわけですよね。そうすると,電子公告が何らかの事情でだめになるということであれば,もともと選択的なわけですから,他の方法による公告というのは可能であるということを前提に考えているのか。今の制度自体,可能であるということを前提に考えていると思うので,それは違うのでしょうか。 ● もちろん選択で,今までは官報と日刊新聞紙という二つの選択だったのが,今度は電子公告が入って三つになるわけですが,その選択は定款でしなければいけないということになっております。したがって,例えば電子公告という方法を選択していた場合に,それによることができない場合,例えば官報で公告しようと思った場合は,普通だと定款変更しなければいけないということでございます。 ● 唯一の方法として電子公告しか公告の方法として定めていない会社の場合の対応という理解でよろしゅうございますか。 ● ですから,唯一の方法としてしか定められないのではなくて,原則は電子公告なんだけれども,電子公告によることができないやむを得ない事情が生じたときは官報でやる,あるいは日刊新聞紙,例えば「日経新聞」でやるということを定款にあらかじめ定めることができるようにするということでございます。現行の解釈としてもできるのかどうかという問題があるわけですけれども。 ● やむを得ない事由という,そういう条件をつける意味がどこにあるのかなというのがもとの疑問なのですけれども。 ● やむを得ない事由と申しましたのは,官報か「日経新聞」かどっちかでやるという公告は多分認められない,そういう定款の記載は多分認められないと今までは考えられてきたのではないかと思います。あるいは,「日経新聞」か「朝日新聞」かどっちかでやるという,そういうのはだめだと思いますので,それと同じように考えますと,何かやむを得ない事情が生ずる--普通,新聞とか官報ですと,そんなやむを得ない事情が絶対生じないように手当てがされているのが新聞とか官報ですから,そういう予備的な公告方法ということを考えなくてもいいわけですけれども,電子公告の場合ですとそういうことを考えざるを得ないのではないかというのが,前回の○○委員の御指摘であり,また,今日の○○委員の御指摘なんだと思います。 ● 第3の本案で掲げているところにちょっと関連するかと思うのですが,今のお話ですと,公告の方法のところで電子公告について定めているということで,やむを得ない事由の場合に官報若しくは日刊紙による公告ということ。先の話で申し訳ないのですが,この第3は,官報公告プラス日刊紙又は電子公告という選択ですよね。そうすると,そこでは公告の方法として官報公告と日刊紙による公告という両方が併記されていることが前提なのかなという理解をしているのですが。 ● それは両方でやるというあれですね。ここで問題になっているのは,予備的な定款の定め方。それは恐らく従来は想定していなかったんだろうと思いますね。 ● 分かりました。では,結構でございます。 ● ほかにいかがでしょうか。   実質的には,そういう形で,電子公告だが,やむを得ない場合は日刊新聞紙というような予備的な定款の記載を認めるという,法律的に言うとそういうことかと思いますが,そういうものをこの規定整備として行うということで,よろしいでしょうか。御了解いただけますでしょうか。--それでは,そのような方向で進めさせていただきます。   第1については,新しい問題,あるいは前回の積み残しはそんなところかと思いますが,ほかに何かございますか。よろしいですか。   そうしますと,第2につきましては,4につきまして,前回,○○委員から御意見があったところなのですが,4のような形で特に会社にとって困るというわけではないのではないかというふうに私は思っておりますが,○○委員,何かございますか。 ● 今度は,前回やっぱり欠席してはいけなかったと思っておりまして。   二つあって,2と4と両方ございます。   まず2の方から言わせていただきますけれども,現在は,要旨でいいと。そこが全文ということになると,規制強化というふうになります。そんな偉そうなことを,ほとんどの者が100キロメーターで高速道路を突っ走って違反ばかりしている人たちが言える義理があるのかと,こう言われるかもしれないのですが,現状は,先ほど,法制審議会が非常にビジネスのことを分かってくださるという前提でいけば,やはり,守っていないというものを何とか少し念頭に置いていただいて……。   それで,この前も申しましたが,私どもは,ディスクロージャーに中小会社が前向きに取り組んでいくための入口,呼び水をきちっとつけてほしいと,こういう意見なのでございます。したがって,この前の前の会で,私,反論を受けて,それはそうだなと思ったところはあるのですが,ワープロで貸借対照表等の全文をつくっているのにわざわざ要旨を作るやつなんかいないだろうと。ところが,これがいるのです。いろいろ聞きますと,やはり,全文を公開するのか,要旨を公開するのかというのは,相当精神的に制約条件が違いまして,一般大衆というか不特定多数の人がすべて見ると。一行でも二行でも少ない方が何となくいいという気分が企業にはあるというメンタルな面も御理解をいただきたいと。   いずれにせよ,現状なかなかこれが守られていなくて,私ども,ディスクロージャーを進めようということには協力してきて,かつ,力がまだ足りないことは反省しているのでございますが,現状が要旨でいいのに,そこを広げるというのはどうかと。広げることによって--ちょっとこの3ページの書き方も,私どもに対して非常にチャレンジングな書き方になっているような気がするのですが,「全文を公告しなければならない」と。今は要旨でいいのに何でですかという感じがちょっとここはあるので,是非御理解をいただきたい。   それから,4の方でございますけれども,実態上は,例えばwebページの中にはいろいろな層がございますので,ある部分についてはチェックをしていただく電子公告の世界,ある部分についてはチェックのない電磁的公示の部分というのは,これは当然,やり方としてはイージーになると私どもは思っております。したがって,同じwebページの中でやるのでも,貸借対照表等の公開とその他のもの,例えば電子公告の対象になるものというのは幾らでも簡単に分けられるというのが私どもの実態だと思っておりまして,ここも,何も「認めない」などと言う必要は全くなくて,全然問題がない,それが実態ではないかと。したがって,ここのところも別にさらりと今までどおりにしていただければ,それで電子公告をする場合もいいのではないかと。   何か理解に誤解があれば改めますので,御指摘をいただきたいと思います。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   恐らく第2の2の点につきましては,実態は,貸借対照表の公開は電磁的公示の方法による場合とそろえようということだと思うのですね。現在,官報又は日刊新聞紙に公告をする場合は要旨でいいと言っているのは,これは明らかにコストの関係だろうと思うのですね。それで,こういう形の電子公告的な,あるいは電磁的公示の方法による場合は,これは前にも議論がありましたように,あえて要旨にする理由は余り考えられないのではないかと。そういうことからこの2のようになっているのではないかと私は理解しております。 ● おっしゃる意味は十分理解しております。   私どもが中小企業者に現実に当たってみて,どう思うかと。例えば,これがこういうふうに変わってきたときにどう思うかという,その感じを私どもがとっているわけでございますが,そうすると,今まではコストの問題があって,要旨でいいという,ある意味でお目こぼしがあったというのは理解するけれども,だからといって,この後,要旨でなくてもいいと,要するに,要旨ではない,全文を出せというのは,なぜそうするんですかという質問がどんどん来るわけでありまして,いや,簡単だからそれでいいのではないかと言うと,前が要旨でいいのに強化する必要はないでしょうと。何か特段政策目的でそこに変わった,それこそルビコン川をまた渡るような政策的な判断の変更があるのですかと,こう聞かれると,うーん,そこは聞いていませんと,こういう会話をせざるを得ない。   したがって,部会長がおっしゃるように,コストの面で要旨でいいと,スペースが小さいということだと思うのですが,実は,そういう規定をしてしまったがゆえに中小企業者の方は違う意味で受けとめているというところがあるので,ここは是非御理解をいただいて……。この次の改正をするときには全文にすることも,それはそっちの方がディスクロージャーとしては十全なわけですけれども,今は前と同じことで,ただでさえちょっと守られていないものをまた規制強化して,100キロで走っている高速道路を,今60キロなのに,これを40キロに下げるというような厳しい規制にされるのは--理屈になっていないということはしゃべっていてもよく理解をしているのですが,理屈ではなくて,中小企業者はそう思うものでございますと。そこは何とか,ここは特段強化する必然性はないのではないかという論なのでございます。 ● ただ,現在,電磁的公示の方法によったときは要旨ではないわけでありまして,それと実態は余り変わらないわけですから,電子公告といっても,あるいは貸借対照表の電磁的公示の方法といっても,そこを違っているというのは,これは制度としてはかなり問題なのではないかというふうに私は思うのですが。 ● ですから,どちらに合わせるかと。   要するに,これまで,やりなさいよと言われていた新聞・官報の世界をそのまま電磁的な世界にも持ってきていいじゃないですかと。それだとすっと頭に入るのですね。それで,いやいや電磁的な話というのは簡単なんだから広げてやりなさいよと言われると,そこまでやるんですかと,こういうところがちょっと,いろいろ説明に私ども非常に困っていると。規制強化なんですかという感じなんですね,そこは。 ● 考え方としては,紙ベースの公告の方法は当然今後も存続する。その場合は要旨でいいわけです。それで,電磁的な方法による場合には,現行法でも,電磁的な方法で貸借対照表を公開する場合には全文で行うという方法が既にとられてしまっている。そういうときに,それ以外の部分も含めて電磁的方法で公告をしようというときに,従来,全文の公告で電磁的な方法でやっていた貸借対照表を,もう一回要旨に戻すというのはなかなか,考え方としてはどうも逆方向を向いてしまうのではないかという気がするわけですね。   それで,ここで,書きぶりも,「できない」とか「ならない」とか書いてあるのですが,要は,電磁的な方法でやるときは現在の方法と同じ方法によってくださいという,そういう限度での考え方ですので,特に規制を強化したということはないだろうと思いますね。確かに,利用する方からすると,電子公告にしたときにも従前と同じ方がいいという,そういうお考えもあり得るとは思うのですが。   だから,そこはある意味では,今後も,紙でやる限りは要旨の公告で済ますことも可能にはなっているので。 ● 繰り返しになりますが,紙でやるときには要旨でよかったと。この商法の世界で,それで結構ですよと言われていて。ですから,逆に,前に電磁的方法を入れたときに私どもの踏ん張りがちょっと足りなかったのかもしれませんけれども,要するに,紙でやるか,電磁的な方法でやるかと。紙でやるときは簡単でよかった,しかしコストがかかったからなかなかできなかったと。今度は,簡単にできるようになった,うれしいな,あ,範囲が広がった,困るなといって更にリラクタントな気持ちにならないようにと。   ここら辺は,今も部会長と○○委員からお話をいただいたことは私も重々承知しているのです。それを承知の上で,赤子のような,幼稚園レベルにある私どもがよりディスクロージャーに向かって前向きに進ませていくときに,それは前のレベルに平仄を合わせていただくというのは一つの考え方だということはもうお認めいただいていると思うのですが,そちらをとっていただけないものかというお願いでございます。お願いをしておきますので,あと,よろしく御判断をいただきたいと思います。 ● 質問ですけれども,もしそうしたら,たくさんの会社が公告をするのですか。 ● 私は全国の中小企業を全部統括して監督しているわけではないので,全くそこはギャランティーできません。ギャランティーできませんが,私どもが慫慂するときに説明は非常にイージーになりますね。   実は,今回の商法改正全体についていろいろなところでもう説明をしているわけです。今こういう議論が起こっているから,意見があったら言ってくれ,会社法部会で発言するからということで,いろいろなところに声をかけております。声をかけておりますときに,私どもが売りにしているのは,今度の商法改正はビジネスの実態をしっかり認識した上で,我々が動きやすいように,ある意味では規制緩和の部分も相当たくさんあって,厳しくなるということよりは,自由にできるようになって,かつ,しかしルールは守るという方向に行くんですよという説明をしているときに,その説明ぶりが若干ほころびて--というとちょっと言葉が悪いですけれども,我々の説明がちょっとうまくできないところがあるということなのでございます。 ● お立場は分かりますが。   ほかの委員・幹事の方,いかがですか。特に,○○委員の御意見に賛成だという方,おられますか。 ● どちらでもいいではないかという程度であれば,是非私どもの意見を取り入れていただくということではないかと思うのですが。 ● いかがでしょうか。   やはり,もう既に283条の4項,5項ができてしまった以上はちょっと難しいなというのが一般の方のあれではないかと思いますけれどもね。ここでそれと違うことを規定するというのは,ちょっとここでは難しいのではないかと思います。 ● 283条の4項,5項があるからできないと言われると,ますます,いや,そんなことはないのではないかと。なるべくみんながうまく遵守できるような誘い水をつけていただけるようなことを御理解いただけないのかと。もう私どもはそれを申し上げるだけなのでございます。 ● もう○○委員は何もかも分かっているとおっしゃっているし,赤子だとまで言われますと言いにくくなってしまうのですけれども,仮にホームページで要旨をやったとしても,ホームページは一年中あいているわけですね。今までの公告みたいに一年に一回とかではなくて。そうなってきますと,いつでも更新もできますし,内容は,中小企業庁だとか税理士会のを見ていますと,できるだけ多くの情報をホームページに載せるべきだという意見が税理士会からも出ているし,中小企業庁の報告書にも出ているわけですね。   そうしますと,いきなり全部急にといってもそれは難しいかもしれませんけれども,結局,途中で状況が非常に大きく変化したようなときに何も変えないでいたら,責任問題とかそういう話が将来的には出てくる可能性がある。私は,今まで中小会社は税法だけやっていたけれども,これからは商法が機能してくる場合も出てくるのではないかというふうに言っているのですけれども,そういう将来の変化というのもあり得るだろうと思うのですね。   ですから,法制審というのは実態を知ってやらなければいけないのですけれども,赤子のような実態に合わせることはないのではないかという,ちょっと刺激的な言い方かもしれませんけれども,そんな感じもしまして。   私は,要旨だから,要旨ではないからというよりは,恐らく中小会社にとっては公告という制度自体が今までは手段適合的ではなかったと。それがホームページという形で手段適合的なものになれば,その機能も役割もこれから変わってくるのではないかと思います。それをすべてに,いきなりハイレベルなことを求めることはできませんけれども,恐らくそういう方向に向かって中小会社も--融資をする場合でも,銀行や信用組合は決算を見てやるというような方向になっているようですから,したがって,やはりせめて貸借対照表を電磁的方法の現行法のレベルは維持しておく必要があるのではないかなというふうに思いますが,そこは分かった上でおっしゃっているのでしょうから,あれかもしれませんけれども。 ● ほかに御意見ありますでしょうか。   ○○委員のお立場はよく分かりますが,意見の大勢はそういうことでありますので,是非,中小企業をその線で説得していただければと思います。 ● 余り納得できないのでございますけれども,大体ここにいるビジネスマンの方たちは,それはどっちでもいいのではないのかと。重要なところは要旨で全部入っているということがありますので,重要なところが入っていないものは要旨になり得ないので,余り繰り返しませんが,そういう話と,それから,赤子云々の話は,これは分かっております。赤子ではなくて,私どもはちゃんとした社会人になりたいと思ってやっているので,その呼び水,呼び水と申し上げているので,赤子は認められないということではなくて,いろいろな人が世の中にはいるので,それをうまく包容できるようなシステムをつくってもらいたいと,その御理解をお願いしているということでございます。 ● これは余り言いたくないのですが,最終的なルールとしては採決ということになるのですが,採決も,支持する意見が一つもないと採決にも付さないというのが普通の会議体のルールでありますので,どうか御了解いただければと思います。 ● 援軍がないようでございまして,それでは,そういうことを報告させていただきます。 ● ありがとうございます。 ● 4のところについては,ちょっと理由を教えていただきたいのですが。全然何の痛痒も感じられないのではないかと思うのですが。 ● この部分ですが,まず,貸借対照表等を公開するための公告の場合,それを電子公告で行う場合は,その公告の仕方は現在の商法283条5項の電磁的公示と全く同じ,つまり調査機関の調査も受ける必要はないし,期間は5年で,先ほどお決めいただいたように全文を公開するということになります。それで,電子公告をする場合は,電子公告をする旨とそのURLを必ず登記しなければなりませんから,それとは別に電磁的公示というものを認める必要性は全然ないということでございます。 ● 必要性がなくても,例えば,私どものシステムで今やってくださっているような方が,それはそのままにしておくよということは十分あると思うのですが。ですから,何も認めないなんていうことを書く必要は全然なくて,ここは野放しにしておけばそれでいいだけの話だと思っているのですが。どうして,こんな「認めない」と,must notと書かなければいけないのかと。いろいろな人がいるので,勝手にさせればいい,社会的に何も害はないし,むしろ便宜だということだけなのですが。   それから,電子公告はチェックが入るので,そこのところはいろいろな方法があっていいのではないかと。 ● 電子公告にはチェックは入らないのでございます。これは第2の1で調査機関の調査を受けることを要しないことにしていますから,チェックは受けません。 ● ですから,電子公告というものの定義の問題なのですが,チェックが入らなければ,それは電磁的公示の方法になってしまうのではないですか。実質的に。 ● だから,実質上は同じで,電子公告をする会社は,電子公告をする旨とそのURL,何で電子公告をするかということを必ず登記していただくことになりますので,それで全部をやっていただくと。貸借対照表の公開も,それ以外のものも。 ● 一本化ということは全くなくて,今でも違うやり方でやっている人もいるので,URLの違う人もいるので,そんなことは書く必要はないだろうという,テクニカルにそういうことだと思います。 ● この二つは実態が違うのですか。電子公告でやるか,電磁的公示の方法によっているかは。これは見たところは全く違わないですね。 ● 実質は全く同じです。実質が同じになるように第2の1から3までを設けることにしているわけです。 ● ただ,定款に,電子公告でやりますと書いているかどうかという,ただそれだけの話ですね。 ● だから,webのアドレスが違ったりすることは十分にあるわけですね。これはここでとか。今まで,例えば貸借対照表等の公開を私どもがサービスをしているようなものでずっとやってきて,ではいいよ,これはこのままずっとやるよと。一方,電子公告の方はどこどこでやるよというようなことは幾らでもあり得るので,そういうことまで禁止するような規定は必要ないだろうという,ただそれだけの話でありまして,そういうことを申し上げているだけなのでございます。そんなことは自由にしてあげればよろしいと。 ● 今のお話は,例えば普通の公告は「日経新聞」でするけれども,貸借対照表の公開は官報でするとか,そういうのを認めるのと同じような話になるわけですけれども,今は公告の方法というのは一つということになっているので……。 ● ほかは官報ですけれども,貸借対照表は例えば違うことでやるということはあるのではないですか。 ● それは,官報とか日刊新聞紙でやっているものについて,公告の方法だけは電磁的公示の方法によることができるということになっているわけです。ですから,電子公告をしている会社であれば,その電子公告をするそのサイトで全部をやれば済むはず。 ● 済むはずなのですが,いろいろ経緯があって違うことをやっている人も論理的にはありますし,現実にあるので,そこを,何も官側が,国側が,ここで一本でやらなければだめだと言う必要はないでしょうということを申し上げているだけなのです。ですから,こういう規定をやらなくても,合理的に判断をする人は一本でやるかもしれないし,経緯がある人は違うところでやるかもしれないというだけの話であります。 ● 実際にどの程度の使われ方か,こちらもよく分からない面があるのですが,ただ,電子公告を見る人の立場からすると,その会社の貸借対照表だけ別のアドレスだというのは何となく使いにくいのではないかなという気がするんですよね。 ● そういうこともあるかもしれませんし,そういうふうに組み立てたいという人もいる。 ● だから,それは要は,実際のサーバーを置く場所を限定しているわけではありませんからね。公告ページとして登記したところから,実際に使われている貸借対照表の公示で使われているアドレスへ飛ぶようにしておけば,それは公告の方法でやったことになるので,実務的にそんなに不便になるとは思えないのですけれどね。実際のところ,この登記するホームページのアドレスというのは,具体的なhtmlを指すわけではないので,登記されたところからリンクが張られていれば,多分,公告の方法としては足りるわけですから,現実のページを別のところに頼んでいたとしても,それはできるのではないかと思うのですが。そんなに変えなくても。負担として。 ● リンクを張るという話と,アドレスが一緒か違うかというのはまた全然違う話なので,そこはちょっと違うと思いますけれども。 ● いや,だから,電子公告の登記しているアドレスというのは,具体的なhtmlまで特定するわけではないわけですから。ページを。だから,実際に置かれているファイルは別のファイルになるので。 ● いや,そういうことではなくて,例えば,前回お出しした紙にちょっと書いておきましたが,公告のアドレスは,例えば私であると,taseshoten-kabusikikaisha.jp/kokoku/というアドレスを登記してあって,貸借対照表はもう既にお願いして,www.chuokai.or.jp何々というところでそっちはやっているから,これはこのままにしておくよというようなことが起こるのではないかと。 ● そこにリンクを張れば公告したことになるでしょう。 ● そこはアドレスが違うので,リンクを張っても,ただそこから行けるだけの話であって,違うアドレスに行くということですから,登記上のアドレスとは違うように思うのですが。   ちょっと時間をとって余り皆さんに御迷惑をかけるのもあれですが。 ● 実際の御趣旨がよく分からないのですが,今,全国中央会で貸借対照表については電磁的公示のことをやっていただいていますよね。それを電子公告全般についてやっていただいて,全部そっちでという,そういうことを頭に置いていたのですけれども。そうすれば一つのことでできますので。会社が,これだけはこっち,これだけはこっちというのは,さっき○○委員からもお話がありましたけれども,ちょっといかがなものかなという感じがするのですけれども。 ● 実態はそういうことも起こるのではないかと思うのですね。現実に。自分のホームページアドレスで全部やってしまうというケースもあれば,よその人に頼んでやってもらうというケースもあれば,さっき○○委員が言ったリンクを張るというのは,アドレスが違うので,登記のアドレスが違ってきてしまうのではないかと思うのですけれども,ただそこへ行けるということなので,そういうケースもあるから,何も強行法規として,行うことは認めないと言う必要はなくて,そこはほうっておけば,電磁的公示の方法でもいいと,これまでもいいわけですから,今後もいいということにしておけばよろしいのではないかというだけなのですが。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   一番詳しいのは○○幹事ではないかと思いますが。 ● 非常にクルーシャルな問題は,先ほど○○委員がおっしゃられたように,リンクを張ってそれで処理することができるかどうかということの1点に尽きると思います。   リンクを張ることで適法だというのであれば何の問題もありませんので,○○委員の方も御納得いただけるのだろうと思いますけれども,既にほかのサーバーに用意してあって,ほかのそのサーバーでつくっていただいている文書を,例えば自社,中には中小企業でもいろいろなマーケティング等々の関係で自社でホームページを一生懸命きれいなものをつくっているところがありますけれども,そこを届け出て,そこを公告のURLというふうにした場合に,改めて文書をそこから持ってきてそこに張っておかなければいけないのかどうかということだけなんだと思います。   もし,今おっしゃられた,そういうリンクを張るということでも--私は実質は余り変わらないだろうと,○○委員のおっしゃるように実質的な弊害というのは余りないのかもしれませんが,ただ,制度の仕組みとして考えた場合,登記をあえてさせているということは,そこのURLを直に打ってもすぐにたどり着けるということを保証しなければいけないのだとすれば,やはり手続的には○○委員がおっしゃっているような面倒くささというのが若干出てくるという気はしております。   そういう点では○○委員のおっしゃることも分からないわけではないのですが,ただ,あともう1点だけ申し上げると,ではそこから移すことがそれほど難しいかと言われると,それはそんなに難しい話ではないという感じもしています。ただ単にファイルを転送していただいて自分のところに張ればいいだけですので,それは余り難しいことではないのではないかなというふうにも感じています。もし,中小企業さんの中で自社で本当にホームページをつくっておられる方であれば,この作業はほとんど数秒のうちにできるような作業ではないかと思います。 ● もう少し実態に入って深掘りしてみますと,電子公告で公告しなければいけない義務がかかるものというのは,実はそんなに中小企業にとっては度々あるものではなくて,ひょっとすると社長一代の間にないかもしれないというようなことがあるわけでございますね。そうすると,電子公告で一応登録をするけれども--ここから先はややざれごとに近いことだと思って聞いていただいてもいいのですが,ディスクロージャーはしなければいけない,商法の規制はこれは遵守しなければいかんというのは分かるけれども,自分のところのきれいなホームページに,3年前は赤だったとか,5年前は債務超過だったというようなものがついているのは余り好ましくないという人たちも当然いるわけです,中小企業には。いろいろなそういう配慮もあって,そうすると,例えば,ここの貸借対照表は,こっち側にちゃんと,遵守もするし,法律的には何の問題もない形で,例えば私がやっているところに置いておいてくださいと。私のところはきれいな美しいホームページで,どこまで入っていっても,そんな3年前がどうのこうのなんていうのは出てきませんよというふうにしておいた方がいいなどというような世界もあるんですよ。ですから,○○幹事のおっしゃるように,すべてがクリアな,きれいな,ビューティフルな世界で,イージーでしょう,それがネットの世界なんですということではないんです,実は。そこにはいろいろな隠れたテクニック,隠れた情念が含まれているんですね。そういうことを御理解していただきたいのですけれども。 ● 私,別にこだわりませんけれども,今のケースの場合は,中央会の方を公告ホームページというふうに登録することは可能なわけですよね。自社で幾らホームページをつくっていても,自社ホームページがあるからといって必ずそれを公告ホームページにしなければいけないというわけではないわけですよね。そうすると,自社のホームページは見事にきれいにしておいて,中央会の方の今まで電磁的公示をやっているところを公告ホームページとしておいて,めったに起こらないかもしれませんが,公告すべき事項があったときはそちらの方にという形にすればいいような気もしますので。 ● ただ,そのときに--こんなつまらないことを繰り返し言ってもしようがないですけれども,私に頼むということは,コストがかかるということなんですね。めったに起こらないことだけれども,公告のホームページを私に頼むということは,その分だけ金を取られるわけです。めったに起こらないのだから自分のところでいいんだよねといって登録をしておくと。そのコストは節約して,しかしきれいにしておきたいと。例えば一例だけ挙げて反論すれば,そういうこともあると。そういうことまで我々は議論して,これはどうなんだ,ああなんだということをやっているわけなのです。ですから,さらさらときれいごとで済むことではなくて,いろいろなやり方があって,かつ,こう書かなくても何の害もないということが確認できれば,書かないでいただきたいと,そういうことなんでございます。 ● 公告が必要になったときだけ手数料を取るというような運用にしていただくことはできないですか。 ● 私は強欲なものですから,頼まれたものにはコストはいただくと,そういうことですね。   それから,ニーズがないものについて私どもに頼んでくるというインセンティブは,そこはやはり働かないんですよ。それはもう実態はそうだと思います。 ● 前のときに,両方認めるというのはいろいろ問題が起きるのではないかという指摘を,たしか○○委員からしていただいたと思うのですけれども,その点はいかがでしょうか。 ● 御議論を伺っていまして,よく考えていないというところもあるのですけれども。   貸借対照表の公開というのを,もう今でも紙ベースの世界に戻って考えると,公告というのもいろいろな場合があるわけですから,問題の所在は,特殊な場合として考えるかどうかということだと思うのですね。それと,既にこちらは先行して電磁的な制度をスタートしているという,その二つだと思うのです。   すなわち,紙の世界であれば,今の制度的な考え方は,公告は日経新聞でします,ただし貸借対照表の要旨の公告だけは官報でしますというのはだめなんですね。なぜだめかというのは,それは確かに,翻って考えてみると,そこは再考の余地はあるのかもしれませんけれども,紙の世界では,公告は一つ選んだらそれでしますというワンセットで考えてきたということだと思うのです。その考え方はなぜそうかというのは,定款で両方,Aという公告方法,Bという公告方法,全部書いておけばいいではないかという議論は紙ベースでもあり得るのですけれども,それは恐らく利用者のことを考えて,どちらか選んでくださいということだったと思います。   問題は,電子の世界になったときにどうかということと,貸借対照表の公開が先行している,既に平成13年の改正で14年から道が開かれているというところをどう整理するかという,二重にあるように思うのです。   まず,貸借対照表は別に,電子の世界だけを考えて,紙ベースと同じことが言えるかということで考えてみますと,ややこしいので貸借対照表を除いて考えますと,ある公告はXというURLで,別の公告はYというURLですと。電子公告ではあるけれども,そういうふうに二つ以上のURLを登記していいか。この問題は,私,よく詰めて考えていませんで,それは一つだと思ってきたのですけれども,多分,ここの部会もそういう前提で議論してきたと思うのですけれども,確かに紙ベースのものに比べると,利用者の方も打ち込まなければいけないのは面倒くさいのですけれども,わざわざ「日経新聞」を見に行くのか官報を見に行くかよりは,利用者の方だって負担は相対的には少ないように思うわけです。しかし,逆に言うと,先ほどのリンクの問題もありますけれども,二つ以上のURLということになると,二つまでいいのか,三つまでいいのか,四つまでいいのか,10個はいいのかということもロジカルにはあり得ますので,最大二つと限るにしても,一つにするのが素直かな,多分そういう前提でこれまで議論してきたし,その後は,さっきのリンクの話は解釈問題なのかどうかよく分かりませんけれども,そこも技術的に解決できる問題ではないかということだったと思うのですね。   そうしますと,貸借対照表が難しいのは,今まで,ほかは紙ベースだけれども,貸借対照表だけは電子でいいという道を開いたものですから,そこはもう特殊になっているわけですね。つまり,利用者の方も,そういう会社については貸借対照表は電子を見に行かなければいけない。それが中央会のアドレスかもしれません。しかし,ほかの公告は官報又は日刊新聞紙を見に行かなければいけないという世界が既にスタートしているものですから,そうだとすると,そこは一体どういう考え方でそうなっていたんだというのを今反省しなければいけないということかと思います。   しかし,そこは恐らく政策的な判断で,従来の紙ベースの公告というのはなかなか守られていなかったという実態もあるし,そこは何かうまい方法はないかと。そしてまた,紙ベースに比べれば電子の方がより安く済むはずですから,そういうことと,より公開ということは進めていっていただきたいという,そういうはざまの中で13年改正がなされたと思うのですね。   今議論になっているのは大分違う話でして,貸借対照表以外の公告制度一般をおよそどうするのかということをここで議論しているわけです。それで,そのときにも,電子の方が恐らく,考え方としてはですけれども,企業にとってよりコストの節約になる。これは大企業だけではなくて,中小の企業にとっても恐らくそういうことだと思います。必要になることがほとんどないかもしれない公告ということであれば,なおさらそうだと思うのですけれども。   したがって,考え方としては,そのときに従来の紙と同じ考え方をとるのであれば,入口は一つにしておいてくださいと。これは利用者ということだと思うのですけれども。その後は,先ほどからおっしゃっている実態の部分というのは,技術的に解決してくださいということになるし,そこまで貸借対照表の公開だけは公告の中では別なんだというふうに整理するのであれば,それは貸借対照表の公告場所に限って別のURLを登記することを認めるという道もないわけではないと思いますね。ただ,その場合にも,名前はやはり「公告」というので統一しませんと。制度としてはですね。こっちは電磁的公示で,片方は電子公告というよりも,その場合は電子公告というのを定める,そのURLというのは一つが原則だけれども,貸借対照表の公開についてだけは別のURLを登記してもよろしいと。現状と同じということですけれども。そういう余地は,今考えてみますと,2年前にそれが違えたということを引きずっているというふうに考えますと,あり得ない選択肢ではないとは思いますね。   ただ,私は個人的には,制度はすっきりしている方がいいと思いますので,利用者の方から見ても,もし技術的に対応可能であれば--対応可能という意味は,先ほど○○委員がいろいろおっしゃったことをほとんどコストをかけずに解決できるのであれば,それは一本の方が,制度としてすっきりする。すっきりしていれば--だれのための制度かということですけれども,利用者にとってということですけれども,すっきりしているとは思いますので,そこはもう検討した結果をおっしゃっているのかもしれませんけれども,私は個人的には,一本にした方がすっきりしているとは思います。そういう趣旨で前に発言したのですけれども,現時点での感想は,今申し上げたようなことです。 ● ほかの方,いかがでしょうか。 ● ○○委員が近くにいて言いづらいのですけれども,私も中小企業の事情をよく知らないのですが,やはり公告のそもそもの趣旨というのは,投資家なり株主なり社債権者に知らしめるというところからすると,やはり投資家なり株主にとって利用しやすいような対応を会社側はしていっていただきたいと思いますので,そういう意味で言えば,これを契機に,先ほどの○○委員の,中小企業の方もディスクロージャーに積極的になっていただくということがあると思うので,できればその辺を考慮いただいて,会社側の負担は多少あるかもしれないですが,御対応いただければというふうに考えております。 ● ほかに。 ● 先ほど○○委員からもありましたように,従来のいきさつもあって貸借対照表のURLが本来電子公告で予定しているURLと別の場合,その二つを登記することを認めるかということは考えられると思うのですね。電子公告についてはこちら,ただし貸借対照表については従来の電磁的公示の方法によって用いていたURLをそのまま電子公告の公告URLという具合にすると。それで中身は全然変わらないわけですから,それは考えられなくはないと思うのですね。その場合は,基本的には,電磁的公示の方法によっている会社は,電磁的公示としてそのURLを利用していることになりますし,逆に電子公告の方法によったところは,電子公告の方法による貸借対照表の公示としてそのページが使えるということになるのではないかとは思いますが。そういうことは考えられないかなとは思いますね。 ● 恐らく,今,○○委員,それから○○委員が言われたもので,○○委員の指摘された問題は解決するのではないかと思うのですけれども,ただし,それができるのかどうか,もうちょっと検討はしたいと思うのですけれども,そういう方向で考えてみるということでも,○○委員,よろしゅうございますか。 ● おっしゃっておられるのは,貸借対照表等の公開は,電子公告ないしは電磁的公示の方法のどちらでもいいということですか。 ● 制度としては電子公告なんですね。 ● ですから,電子公告を採用した会社は,貸借対照表の方法も電子公告として行っていただく。ただ,中身は従来の電磁的公示の方法と全く同じですから。それで,URLも変えたくないのであれば,それを貸借対照表用のURLとして登記をすればいい。要するに二つのURLを持つと。 ● 私が主張してきたことは,書き方はともかくとして,アドレスが違うものでもいいのではないかということに帰着するわけです。 ● ですから,おっしゃったことをやろうと思えば,登記で,電子公告一般のアドレスと,貸借対照表用のアドレスというのを登記を認めるという扱いができれば,解決するのかなと。ただ,それは検討してみないと分からない。 ● それで,ここの書き方が,前々から,みんなうまく理解できない書き方になっていましてね。何々は認めないと,こうなっているのが,こういう禁止的な書き方ではなくて,もうちょっと……。 ● 今,○○委員から提案があったような趣旨のことをここへつけ加えるということになると思うのですが。注か何かでですね。   私も伺っていて,実質は○○委員のおっしゃる御希望は受け入れられるのではないかと思いますので,これはちょっと技術的な点を検討させていただいて……。 ● 技術的にはまた専門家同士で話し合いをするということにさせていただきます。 ● 今の○○委員の御指摘は全くごもっともで,○○委員の御希望に一番沿う形だと思いますが,先ほど来出ていました,投資家等の側,あるいは債権者側の方からの便宜ということを考えた場合には,制度の仕掛けはいいのかもしれませんけれども,最初の方のURLから入っていって,公告されている内容で全部終わりだというふうに思ってしまう可能性がありますので,本当であれば,やはりリンクは張らせるべきだろうと思います。   ですから,リンクを張ることを条件に二つのURLを登記することを認めるという制度の可能性を是非御検討いただきたいと思います。 ● それでは,その点も含めて検討していただきたいと思います。   それでよろしいですね,この点は。   それでは,予定の時間は過ぎておりますが,本日一番のといいますか,実質的な重要な問題が一つ残っておりまして,第3であります。この本案と別案の内容につきましては,先ほど事務局から説明があったところでありますが,この点について御意見をいただきたいと思います。どなたからでも,どうぞお願いいたします。   まず,○○委員,○○委員,何か御意見をいただけますでしょうか。 ● 経団連の方の意見といたしましては,○○幹事から御説明ございましたような理由によりまして,最後に実態論が書いてございましたけれども,会社分割といったようなことをやります場合には,デューデリジェンスということももちろんやりますけれども,こういう別なものですね,不法行為に基づく債権というのは,こういう場合に大体支払いを済ませてしまうと。あるいは,もし一遍に支払いができない場合であっても,それはもう,その辺はどのような形でいわゆる弁済していくかということを正に債権者とやるわけでございますので……。要するに私が言いたいのは,別案の場合の不法行為に基づく債権者を知れたる債権者として催告するというケースはほとんど実態的にないのではないかということですし,私ども,実務を何回かやっておりますけれども,そういうケースというのは遭遇したことはないことでございます。   それから,そもそもこの催告そのものの制度になるのですけれども,実態的に言いますと,合併等の催告いたしましても,異議というものが出たケースを私は経験したことがないというのが実態でございますので,是非,本案の方を採用していただければというお願いでございます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   前回,今回の別案のような形ではなくて,第Ⅲ案が受け入れられないのであれば,単純に現在の,会社分割の場合は個別催告が必要である,個別催告をしない限りは連帯債務であるという法制にすべきだという御主張をなさった方が何人かおられるのですが,たしか○○幹事がそうだったかと思いますが,いかがでしょうか。 ● 基本的な考え方は変わっておりませんで,本案のままですと,大部分の会社分割は大丈夫なのですけれども,やはり濫用的に,債務逃れのために会社分割されるという危険性はあり得ると思うのですね。   それは実質的な減資だって同じであるというような議論も確かにそうかとは思うのですけれども,実質的な減資の場合は,財産は減っても別に債務者が変わるわけではないですけれども,会社分割の場合は免責的債務引受けの効果を--要するに債務者が入れかわるということで,やはり資本減少とは区別することに合理性はあり得ると思っております。   そして,その濫用の危険ということから言っても,資本減少が濫用的に使われるということは余り想定しにくいかと思うのですが,会社分割の場合はやはり濫用の危険ということには配慮しておかなければいけないというように感じておりまして,私は,できれば,部会長が御指摘になられましたように,会社分割については個別催告の省略を認めないというのがすっきりしていいような気がしていたのですけれども,もうその案は選択肢から外れておりますので,この二つのうちどちらかを選べと言われましたら,別案の方を支持させていただきたいというように思います。やはり,ちょっと本案の方はかなり危険なように感じております。 ● 資本減少と会社分割の場合を区別すべきだというのは,正に今,○○幹事がおっしゃったとおりではないかと私も思っておりますし,こういう会社分割のような制度を持っているヨーロッパの会社法制だって,減資と会社分割の場合のルールは,もともとの債権者異議手続の内容が違いますから単純に比較できないのですけれども,やはり分割の場合は区別しているのではないかなというふうに考えてはいます。   それで,この案で,結局,二つの方法で公告しておけば個別催告は要らないというのはなぜかというと,債権者は普通は商人であるから自衛すべきである,それは可能であろうということだろうと思うのですけれども,それ以外にどうも理由はつけようがないと思うのですが,そうだとすると,商人でない債権者というのはやはり消費者で,いろいろな消費者取引契約をしている人間というのはいるわけですから,不法行為で分けるかどうかというよりは,むしろ債権者の属性で分けるというのが本来の考え方ではないかとも思うのですけれども,実態から考えれば,非常に濫用的に分割が利用されるというふうな場合は,結局,債権者としても不法行為で何かいける場合が多いだろうということで,そのあたりを考えれば,別案のようなところで不法行為を取り出していくというのがぎりぎりの妥協点ではないかなというふうに思っております。   それで,実務上それで何か困るかというと,どっちにしても催告はされないわけで,この別案は何ら実務を阻害しないように思うのですね。そういう意味からも,是非別案でお願いできればというふうに思っております。 ● ほかの方,いかがでしょうか。 ● これですと,第Ⅰ案ですと,商人は,例えば中小企業は,これから商人としての自覚,大人としての自覚を持って,常に公告に注意して,リスク管理を自らしなければならないと,こういうことになるのですけれども,中小企業の立場としてこれでいいんだろうかというのがまず一つあります。ですから,我々,株主の自己責任とか,投資家の自己責任というのは言ってきましたけれども,債権者の自己責任というような概念になってくるのかと思うのですけれども,そういう意味では,Ⅰ案というのはやはりちょっと,特に会社分割のことを考えますと,問題かなというように思います。   そして,知れたる債権者がいて,かつ,相手が公告を見ていないということを認識していて,もし会社分割のようなことがあれば,先ほど○○委員もおっしゃいましたけれども,恐らく不法行為とかそういうことになってきて訴訟リスクが後に残ることになりますので,そうなれば,結局,知らせておかないといけないというのが,実質的なリスク管理の方法として求められることになるのではないかという感じもいたします。   それから,私は個人的にはⅢの--これはもう消えていますのであれですけれども,Ⅲ案の債権者登録というのは,せめて私には教えてくださいと言っている人に教えるだけで,それほどコストがかかるとは思えませんし,前回,これは使い物にならんというようなお話だったのですけれども,しかし,株主に対する招集通知だとか利益配当なんかは,別に相手が株主でなくても払っているわけですし,つまり名簿上の株主であれば,そのとおり扱えれば免責されているわけですから,もう消えてしまったものであれば今更言えないのかもしれませんけれども,債権者登録して,それに通知すれば免責されるということであれば,それで当人が申し出てくれば,債権者でない者に払うなんていうことはないでしょうから,どうしていけないのかなというのがいまだに……,Ⅲの債権者登録についてはまだ腑に落ちない点があります。   ただ,それはもう消えているということであれば,せめてすれすれのところで別案でいくべきだというふうに思います。 ● この別案でいっても,中小企業はもう赤子ではだめで,大人にならなければいけないのだがという○○委員の御指摘ですが,○○委員は何か御意見ございますか。 ● 中小企業はそういうときは全然赤子ではございませんで,自分の取引先がどうなっているかというのは常にウォッチしているのはあきんどとしては当たり前の話で,申し訳ないけれども,ぼーっとしているやつはだめなわけでありまして,ダイエーがおかしいという新聞記事が出れば,その先に何があるのかというのはみんな非常に重要に思っている。ローカルな話であれば,何たら商店が最近ちょっと変だぞというのはぱっと耳に入ってくる。入ってこないような商売をしているやつはだめなやつと,これはもう当然でございまして,商法に頼らないで情報を得るのがベースなんでございます。   ただ,制度としてどこまでギャランティーをしていただくのかというのは,実は,私のところは,情けないのですが,確固とした案がないのでございます,これについては。大同小異だと言うとしかられるのですが,さっき申し上げたように,そこは必ずしも実態とどんぴしゃでリンクしていないなと。やっていただけるのだったらたくさんやってもらった方がいいなという程度の話でございます。 ● 昨日も集まって議論をしていたところなのですけれども,もともと旧第Ⅱ案というのが本案で採用されましたが,この第Ⅱ案は,我々弁護士会の方が賛成した案でございます。その案を検討している従前の中間試案の段階でも,実は会社分割の議論は出ました。選択肢に入っていなかったということもあるのですけれども,それを踏まえてⅡ案というのをして,今回,本案という形になった。昨日も再度議論してきたのですけれども,結論をまず申しますと,本案のままでやむを得ないだろうという結論でございます。   今般,補足の理由でいただきました点で,中小企業者を私どもが代弁するのはおかしいのですが,法務省が開設するリンク集にアクセスするのは電子公告をチェックすると,これはちょっと,実態としてはなかなか無理だと思います。ただ,むしろ,先ほどお話が出ましたように,通常の取引関係で,そういう情報には,接触すると。あいさつ状も含めてですけれども,接触することは可能であるだろうということで,商人等の場合は,個別催告がなくなることによるトラブルというのはさほどないだろうと。   ただ,一方で議論していますのは,多くの場合は,従前の取引債権とか貸付債権等を返済できないような状況で,いわばそれ逃れのために会社分割--簿価としては一応債務超過ではないけれども実質債務超過である会社が責任逃れのために新設分割をするというような場合だろうと。そういう極限状況を考えた場合に,今回,別案で整理していただいた不法行為債権というものでそれが保護されるのかと。先ほど○○幹事がお話しされた,この別案ではなくて,もとに戻るというのであれば別ですけれども,不法行為債権を取り出したことによってそういう場面に対処できるのかというと,それは難しいのではないかと。もとが取引に基づく債権だという理解でございますので。   それと,不法行為に基づく債権と理解すると,我々はどうしても,今訴訟になっているものと,偶発債務というか潜在的に訴訟になり得るものという形で分けて考えるのですが,現在訴訟になっているものについては,ここで御説明していただいているとおりでもう対処しております。偶発の部分はそもそも催告の対象ではございませんので,そういう意味でも,別案ではなかなか,考えられる問題状況に必ずしも対応できないのではないかと。先ほど○○委員の方から,むしろ債権者の属性でというお話,それは議論しなかったのですけれども,分けるのであればむしろそちらの議論で,債権の種類で区別して催告を要求するということでは解決できないだろうと。むしろ詐害行為取消しなりほかの法理で我々現場としては対応することになるだろうと。   であるならば,従前,意見として申し上げた,本案を維持するという形で我々としては意見を述べたいというふうに思います。 ● ちょっと伺いたいのですが,偶発債務的なものについて,これが,別案が一番問題にしているものだと思いますが,つまり,薬害なり環境問題なりで大きな偶発債務的なものがぼんと起こったと。そこで,それが公になる前に会社分割をして,そういう債務は財産のない方に--表面上は債務超過ではないのですが,そういう財産のない方の会社が債務者という形で会社分割をすると。○○委員の先ほどあれでは,そういうときは詐害行為取消しで対処すると言われたのですが,それは本当にいけますか。 ● 偶発債務の場合に詐害行為等で対処するのではなくて,むしろ取引債権者等の対応方法としてはそちらの法理だろうと。偶発債務の場合は,そもそも知れたる債権者に当たらないという理解をしておりますので,催告の対象に当たらないのだろうと。 ● ですから,催告の対象に当たらないというのは,しかし,催告の対象に当たらなくても催告を受けていない限りは連帯債務だというのが現在の法制なんですね。 ● それは,知れたる債権者に当たるという……。 ● 例えば無記名社債,これは知れていないから催告しないのですが,これについても連帯債務だというのが現在の法制です。ですから,偶発債務も全く同じ形で,催告を受けていない限りは連帯債務を主張できると,そういうことでありますが。 ● 済みません,ちょっと法制度の誤解があるのかもしれません。偶発債務という正に債権債務として存在するかどうかの問題で,将来的に,例えば何年か後に裁判が提起されるという段階,その時点では形の上で形式的に債権債務が成り立つわけですが,そういう潜在的な可能性があるというものも偶発債務に入るという理解をするのでしょうか。我々,議論の前提としては,分割の時点で貸借対照表に計上される,ないしはそれがほぼ明らかであるという債務を前提での議論なのかなというふうに理解していたのですが。 ● いや,それはやはり,不法行為の原因となるような,もうそういう薬を売ってしまっていると。それで,被害者も,非常に広くは知られていないが,出ているらしいというような状況でありますと,それはやはり……。 ● つまり,そうすると,どこまで具体的な状況にあるのかということによるかと思うのです。例えば,極端な場合,ある薬を販売して,それから何年か後に問題が生じたという場合,販売したということ自体でもう偶発債務だという判断をするということになるのでしょうか。つまり,もうその場合は連帯債務の対象になると。 ● 問題のある薬を売っていれば,そうなるのではないでしょうか。 ● それは部会長がおっしゃったとおりで,債権かどうかですから,裁判で確定したかどうかが問題ではなくて,実体法上いつ発生するかですので,不法行為時に不法行為債権は発生しますから,売ったときに,その売った物質に何か欠陥があって,人体に被害が生ずるような薬害であるというふうに仮にいたしますと,それをそれぞれの購入者に渡したとき,それを飲んだときですけれども,それが不法行為時ということになりますから,その時点で債権は発生している。しかし,会社にとっては知れていないので個別催告はしませんけれども,その分,連帯債務になるというのが,今のこの分割法制だと思います。   それを,知れていようが知れていまいが一切個別催告は要らないということにしますと,この連帯債務の規定を直すことになりますので,公告さえしてしまえば一切連帯債務にならなくて済むということになるのではないでしょうか。 ● 分かりました。ちょっと誤解があったようですので。   もう一度,今の点を訂正しますと,我々が考えましたのは,不法行為に基づく債権だけを除外するというのであれば,先ほど申し上げたような,極限状況に対する対応策にはならないだろうと。そういう意味では,もともとが取引債権で,実態は債務超過にあると。それを逃れるための会社分割という手法をとられた場合,別案では対応できないのではないかということでございます。 ● その極限状況と言っておられるのが私にはまだちょっと分からないのですが。むしろ,別案が考えている極限状況は,今問題になっている偶発債務的なものでありまして。 ● 極限状況という言葉が不正確であれば,事実上責任逃れのために新会社を設立する場面ということですけれども。 ● 取引債権者が。 ● 取引債権者がです。 ● 取引債権者は,別案では救われません。と申しますのは,○○委員は,消費者かどうかという属性で分けるべきではないかという御意見ですが,取引債権者である消費者が企業の債権者である例というのは,業種は恐らく限られているのではないかと私は思っているのですね。銀行とか,証券会社とか,保険会社とか。それはまた別個の保護措置があるので,分割に対してもここで保護措置を与える必要はないのではないかと。与える必要があるとしたら不法行為債権者ぐらいかというのが,別案の考え方ではないかと思っています。 ● 実態はそうかと思いますけれども,何があるか分からないので,そういうきちんとした,銀行等の監督を受けないような,だけれども一般大衆から金を集めているというようなものがないわけではないと思うので,そういう場合は恐らく,取引行為ではあるけれども,また何らかのビジネスの方法が不法行為に該当するというので,そういうあたりで少しはカバーできるのかなと思っています。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 先ほど,○○委員から,債権者の属性でというお話がございまして,実は,私どもが考えているときに,属性ということが考えられないかなと思ったのですけれども,これは商行為法の問題なのかもしれないのですけれども,今,「商人」という概念が非常に古い概念で,必ずしも一般のいわゆる実務で言う商人が商人になっていないという問題があって,商人かどうかでは区別できないというような問題もあります。ですから,なかなか属性--消費者というのも,ある立場に立ったときのことを消費者といいますので,○○委員も消費者になるわけなので,それが妥当なのかという問題はあるかもしれませんけれども,そうすると,そういう意味では非常に区別しにくいということで……。   不法行為で区別している例としては,相殺と破産免責がございます。それが一つのよりどころではあるのですけれども。 ● 意見と質問とあるのですけれども。   私の意見は,最初にこの資料を見せていただいたときに,別案は何か学者が頭で考えたような案だなと思ったのですけれども,ロジカルにはちょっと違和感があったのですけれども,先ほどから○○委員とかの御説明を伺っていると,これは,これまでの議論の妥協として出てきたというように伺って,そうだとすれば別案でいいのではないかという感じを持つに至りました。   と申しますのは,ロジカルに考えますと,先ほど○○幹事がおっしゃいましたけれども,私には,やはり資本減少と分割というのは実質的には似ているように思えてしようがなくて,先ほど,債務者は交替されていましたけれども,資本減少も分割も,財産はなくなる一方なんですね。人的分割の場合で言いますと。資本減少も。それで,債権者は,分割の方は移ってくれるので減っていくかもしれないけれども,資本減少の方は減らないわけです。ですから,やはり資本減少の場合も,もしこちらに別案を置くのであれば,同じように保護すべきものだと私は思うのですね。   ですけれども,そうではないので,それはいろいろ経緯があって,資本減少の方はまたそれで,分割の方は今あるところからまた出発していますし,これまでの議論の妥協という言葉をあえて使わせていただきますと,せめて不法行為債権者は救うという,そういうのがもし別案だとしますと,その意味では別案でもいいように思います。   実際は,ですから,もう少し考えれば,別案に加えて,取引債権者を詐害するような場合には,何か詐害行為取消権の要件を緩和したようなものをここへ組み込めれば更にいいということなんだと思うのですけれども,そういうのは余りこれまでしてきていないと思いますし,私は,一般論としては,債権者保護というのは詐害行為取消権を少し加工した制度というものが会社法上あってもいいのではないかと。これは私だけが言っていることではなくて,諸外国の論文で言われていることですけれども,そういう実際に取引債権者を詐害する目的でいろいろなことが行われますので,そういうふうに思っていますけれども,しかし,ああだこうだ言っていますけれども,私は,今日,先ほどからのお話を伺っていると,別案も十分成り立つと。いわば妥協というか,これまでの消えた案というのもあったわけで,それを支持する委員の方々もいらっしゃったわけですから,そういう意味で言えば,十分成り立つのではないかと思います。   そこで質問なのですけれども,今の分割の法制度はそのまま維持するということでいいのかどうかということですね。それも含めて,3点,質問があります。   第1点は,ここでいう不法行為というのは,取引的不法行為も含むのか。いわゆる請求権競合がある例えば運送契約でいう商人だと。運送人も,荷受人と荷送人も。それで何かあったと。請求権競合ですと。大債権者で,自分でチェックしろというカテゴリーに入るのだと思うのですけれども--ロジカルに詰める必要はないと思いますけれども,先ほど言いましたようにどうせ妥協なんですから。ですけれども,そういうものも不法行為債権者に入っているのかということです。これが第1点です。   第2点は,それに関連するのですけれども,先ほど御発言がありましたように,現在の制度のように,知れていない不法行為債権者で,したがって個別催告しない,これは全部連帯だと。それは維持するのかというのが第2点ですね。   第3点は,もしそうだとしますと,これは今でも分割法制である問題ですけれども,Aが分割会社で,Bが承継会社だとしますと,結局,そういう--先ほどの部会長の御説明は偶発債務の方の例が多かったと思うのですけれども,あるいはそうでないものも含めて,Bが連帯で負う可能性があるわけですよね。そういう可能性というのは,Bの株主とか債権者に公示・開示しておく必要があるのではないか。これは実は逆に今ある問題なのですけれども。   それで,質問という形で伺わせていただくと,そういう偶発債務をBが連帯責任を負う可能性はあるというのは,法律上はあるのですけれども,開示は現在はされていないんですかね。ですかねという意味は,引き継ぐ債務の開示は,吸収分割の方で言いますと,分割契約書で,307条ノ17の2項の中にありますけれども,多分そこには含まれていない。それから,例の事前開示書類というのでしょうか,各会社の負担すべき債務の履行の見込みあること及びその理由という,そこに書くのかどうか。そういう連帯して負うであろうものを書くのかどうか。そういうのを知って,やはり,今の例で言うとB側の承継会社側の株主とかはそれを承認するか,あるいは債権者は異議を言うかということが決められた方がいいと思うのですけれども,もちろん,法律的には,いや,連帯債務の条文があるのだから,常に相手方の債務の全部が来る可能性が最大限あるのだという話で割り切っているのかもしれませんけれども,もうちょっと,この一部だけになってきますと,この不法行為の範囲についても争いがあるとなると,その辺,何か手当てする余地があるのか,そこはもう現行法維持ですというお考えなのかというのが,3点目です。 ● 細かい点は事務局から説明してもらいますが,別案の考え方の前提は,前回,○○幹事が言われたように,会社分割については個別催告がない限り連帯債務であるという現行法を出発点にいたしまして,そこから取引債権者,社債権者のようなものを抜いて,結局残したのが,不法行為債権者。不法行為債権者についてだけ個別催告がない限り連帯であるという○○幹事の前回のお説,マイナスアルファで,あとは全く変える意図がありません。ですから,Aが分割会社で,Bが承継会社の場合に,ほかの株主・債権者等にとって偶発債務があるのかということについてディスクロージャーがあるのかというと,それはありません。現行法がないからであります。それが私の理解です。 ● 部会長にみんなお答えいただいたのですけれども,三つのうち,まず一つ目の取引的不法行為でございますが,さっき○○委員からもお話がございましたけれども,これは形は取引だけれども,出資法違反とか,実質は不法行為というようなものもございますので,そういうものはここに入り得ると考えないと○○委員の言われたような実質は確保できないのかなと思ってお話を承っておりました。   知れていない不法行為債権者は,これはもちろん個別催告はしないわけですけれども,その場合その取扱いはどうなるかというのは,部会長がおっしゃられたとおりで,連帯債務のまま維持すると。むしろそこにこそこの別案の意味があるということになるのだろうと思います。   それで,その場合に,偶発債務の連帯責任になり得ることの開示なのですけれども,これはもともと知れていないわけですので,開示のしようがないといいますか,会社側は,そういう債務はないと--本当はあると思っていたらどうかということはあるかもしれませんけれども,ないということで争っているわけですので。争っているということは,多分,承継する会社の方はオーディットするのが普通ですから,知ると思うのですけれども。それで,そこでどのぐらい危険性があるかというリスクを見て,分割に応ずるかどうかということを決めるのだと思いますけれども,先ほど部会長が言われたように,開示の対象にはならないと思います。 ● 今の御説明で大体結構なのですけれども,確認的な意味で。別案の趣旨が非常によく分かりましたので。   それで,請求権競合の場合はどうなるのですか。典型的には運送人の責任のような。   それから,第3点について言えば,それは会社が知らないものはどうしようもないのですけれども,争っているようなものはやはり可能性として説明する方が親切ではありますよね。確かに今の制度はないんですよね。これは部会長がおっしゃったことですけれども。今の制度はちょっとどうかなと私は前から思っていたものですから,これを機にどうこうというのはまた別の話なのかもしれません,次のときの話ならそれでも結構ですけれども,ちょっと今の制度が気になっているということです。 ● 請求権競合の場合は,これは裁判所がどう判断するか,ちょっと私は何とも言えませんね。私は,不法行為債権者は認めないということではないかと思うのですが,しかし,不法行為を立証できれば認めていいという説もあるかもしれません。典型的な請求権競合の場合に認める必要はないと,私は個人的には思いますけれども。 ● 実務的には,請求権競合の場合,いずれで主張立証しても構わないという前提で考えているかと思いますので,当事者が不法行為で来ているものを,それで最終的に認められたときに,別の,商法上の問題で,これは不法行為に基づく債権ではないという形でけられることはちょっと考えられないのではないかなと。そうしますと,請求権の立て方によって入る,入らないということにならざるを得ないのかなというふうに,この案を見たときには思ったのですけれども。 ● 先ほどの偶発債務の開示の説明の件なのですけれども,偶発債務は,いつ判明するか分からない,金額もまた分からないということですので,分割契約のときに説明したりというのは性質上難しいと。ただ,そうは言いましても,せっかく分割の後にそれぞれの会社が業績を伸ばして,その後でいきなり偶発債務が分かって全額請求されるというのでは,いかにも気の毒であるということで,現行法では,分割のときに分け合った財産の価額を限度として有限責任を負うということを,例えば374条ノ10の2項で決めているところでして,金額が分かれば説明する方がよろしいのでしょうが,分からないという現状であると,制度としてはこのあたりで,分割のときに分け合った財産の範囲にとどめるというふうな,そういう制度しか仕組めなかったというところでございます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 大変稚拙な質問なのですけれども,先ほど○○委員の方から質問がありました,知れていないものに対する連帯債務というのは,これは本案の方は,全くなくなるという理解ですか。そして,別案の方は,それについては不法行為債権者についてのみ残ると,そういう理解でよろしいのでしょうか。 ● はい,そうです。 ● そうだとしましたら,○○幹事が指摘されているように,少なくとも別案の制度は維持していただかないと困るというふうに感じます。確かに,不法行為という切り分け方をしますと,債務逃れの場合に適用されない,あるいは零細な債権者の保護にはならないということ確かですけれども,だからといって保護を後退させるというのではなくて,それであればもとの方に戻るべきなのでありまして,しかしそれがもう選択肢から落ちているわけでありますから,本案と別案の中では,別案の方を支持したいと思います。 ● ○○委員からは御意見がありましたが,○○委員,いかがでございますか。 ● 本案を支持したいとは思っておりますけれども,先生方に御検討をちょうだいいたしまして,不法行為ということで個別催告の対象範囲を非常に限定していただいておりますので,議論の総意ということであれば,私自身は,先生方がおっしゃっておられる債権者への配慮という程度は必要かなというふうに考えておりまして,別案でも……,是非とも本案でなくてはならないとは考えておりません。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● 先ほど,結論は本案という形で申し上げましたけれども,議論の前提で誤解がございましたので,別案の趣旨というのは十分理解いたしましたので,別案に賛成したいと思います。   ただ,そうであるならば,逆に,頻度として多いのは,取引債権者の保護が欠けるというのが実情なんですね。もちろん究極の場面というのは,薬害等,また土壌汚染等で出てくる,今後出てくるわけですけれども,本当に頻度として多いのは,通常の取引債権者が何ら保護されずに新会社が新設分割等される,その後しばらくたって分割会社がつぶされる,解散等して回収できないという場面でございますので,あえて更にというのもおかしいのですが,であるならば,○○幹事がおっしゃっていた,不法行為債権か取引債権かを区別せずに現行法のままというのも一つの選択肢としてあり得るのかなと思いますので,その点も付加させていただきたいと思います。 ● これは,○○委員がおっしゃったように,全く妥協でありまして,前回の○○幹事の御意見では恐らく日本経団連を始め経済界の方は納得されないだろうということで,そこから何を抜くかということが別案でありまして,その点は○○委員には御理解いただければと思いますが,大勢は,別案ならば何とか妥協が--全く妥協でありますが,妥協は成立すると,そういうふうに考えてよろしいでしょうか。   ○○委員,よろしゅうございますか。 ● 先ほど○○委員からも御指摘がございましたように,それで実務に対応できると思いますので,結構でございます。 ● ありがとうございました。これで最大の懸案は解決したかと思います。別案ということで処理させていただきます。   あと,第4,第5は変わっておりませんが,この点はよろしゅうございますか。   それでは,本当に長時間,予定の時間を1時間オーバーいたしましたが,当初の予定どおり,実質について決着をつけるということにつきましては全部決着がついたのではないかと。非常に形式的な問題が一つだけ残りましたけれども,それは次回検討させていただくことにいたします。   最後に,次回の予定について,事務局から説明があります。 ● 本日は,長時間にわたりまして,決着をつけるための熱心な御討議をいただきまして,ありがとうございました。   次回は,当部会は1年余りに及んだ部会でございますが,その最後の会議でございまして,要綱案の御決定をいただくことになります。   日時は,7月30日,水曜日,午後1時半からでございまして,場所は,本日と同じこの第1会議室でございます。   本日の御審議の結果,幾つかもう少し検討しなければいけない事項ができましたので,それを検討したいと思いますし,また,事務当局といたしまして,要綱案段階での最後のチャンスでございますので,細部について,いま一度検討したいと思っておりますが,次回には,株券不発行制度と電子公告制度に関する要綱案のそれぞれの最終案を作成して,事前にお送りさせていただく予定でおりますので,どうかよろしくお願い申し上げます。   本日,ほとんどの事項について決着をつけていただきましたので,幾つか残った事項と,それから今後の事務当局における細部の検討の結果にもよりますけれども,恐らくは次回の部会は今日のように延びるということはなくて,いつもよりもかなり早く終わることができるのではないかと期待しておりますので,その点もよろしくお願い申し上げます。 ● 済みません,一つ。   新聞に何度か,法制審議会会社法部会の,これは必ずしもこれだけではないのですが,いろいろな記事が出ていまして,審議途中で漏れるということ自体が余り好ましいことではないと思うのですが,これから,例えば要綱案を決定すると,その段階で発表というような段取りになるのでしょうか。 ● この部会で要綱案を御決定いただきますと,記者発表をいたします。実際には,部会が午後でございますので,翌朝の新聞に載せなければなりませんから,実際上は数日前に記者レクをすることになるのですけれども--それはもちろん縛りをかけて記者レクをすることになりますが,それで部会が終わってからもう一度,変更がないかどうかについての説明を記者にいたしまして,恐らくは31日の朝刊--テレビはその日の夜かもしれませんけれども--に報道されるということになります。   なお,この部会につきましても幾つか新聞記事が出たり,それも余り正しくないものが出たりしたこともございましたけれども,一々は申し上げませんでしたけれども,この部会の資料とかは,今の情報公開法のもとで公開対象資料になっているものですから,そういうものを新聞記者が使うこともできますので,あるいは私どもではない,別のところから情報を入手されるということもあると思いますけれども,それで幾つか記事が出たのだろうと思います。 ● それでは,私どもの広報というか,かく戦えりというとちょっとあれなんですが,いろいろ今日みたいに激しくお願いをしたけれども,ここはだめだったと。部会長から厳しく言われて,賛同者がいないので,だめだったねと。採決もとれないよと言われたことも言うかどうかは別にして,いろいろPRしなければいけないのでございますよ。したがって,記者レク資料については,いただける一番早いタイミングで私どもにもまずいただきたいと。これは委員としてというよりは,むしろ関係の者としてお願いをしたいと。それが一つです。   それから,二つ目は,漏れていることについてやはりリアクションがあるものですから。明らかに資料が漏れているだけではなくて,レクチャーつきで漏れているということが,明らかに私どもの目から見ると分かるので,これは法務省さんにお願いをしておきますが,みんな頑張って議論をして,言いたくないことも言っているわけでございますから,是非,縛りをきちっと固めていただけないかなと思う次第でございます。お願いいたします。 ● ほかに,この際,何かございますでしょうか。--よろしいですか。   それでは,本当に今日は長時間,ありがとうございました。 -了-