法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第2分科会第6回会議 議事録 第1 日 時  平成30年3月6日(火)    自 午後 1時29分                         至 午後 3時43分 第2 場 所  東京地方検察庁会議室 第3 議 題  1 罰金の保護観察付き執行猶予の活用について         2 若年者に対する新たな処分について         3 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第2分科会の第6回会議を開催します。 ○酒巻分科会長 本日は御多用のところお集まりいだたきまして,ありがとうございます。   本日は,加藤幹事が所用のため欠席されております。加藤幹事からは,本日議論される予定の論点について,保坂幹事が出席し,発言することが充実した分科会の審議に資するとの申出がありましたので,本日は加藤幹事に代わり,保坂幹事に議論への参加をお願いしております。   また,充実した審議のため,いつもは事務当局の役割を担っていただいている保坂幹事の役割は,隄幹事に御出席いただいた上で,お願いしております。   また,本日も,当分科会における審議の中で,家庭裁判所の実務の実情等について御質問があったとき等に適切に対応していただくために,村田委員に出席をしていただいております。   次に,事務当局から,資料について御説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 本日,配布資料として,配布資料9「罰金の保護観察付き執行猶予の活用(検討課題等)」,配布資料10「統計資料2(出院者の在院期間関係)」,配布資料11「統計資料3(保護観察処分少年に対する保護観察の実施期間関係)」,配布資料12「若年者に対する新たな処分(検討課題等)(2)」を配布しております。   配布資料の内容につきましては,後ほど御説明いたします。 ○酒巻分科会長 よろしいでしょうか。   それでは,審議に入ります。   初めに,本日の審議の進行について,当分科会においては,前々回の会議におきまして,検討に時間を要することになると思われる「若年者に対する新たな処分」について先行して意見交換を行い,前回の会議においては,「宣告猶予制度」について意見交換を行いました。   本日は,まずは,残っている「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」について意見交換を行い,その後,検討に時間を要すると思われ,更に議論を深めるべき点があると考えられる「若年者に対する新たな処分」の検討課題等について,2巡目の議論を行いたいと思います。このような進行でよろしいでしょうか。            (一同異議なし)   それでは,「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」についての意見交換を行いたいと思います。   まずは,部会第6回会議において,「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」に関して御意見のあった内容について,事務当局から説明をしていただきます。 ○羽柴幹事 部会第6回会議において,当分科会に属されていない委員・幹事から,「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」に関する御意見がございました。本日の議論に先立ち,その要旨を御紹介いたします。   まず,罰金の保護観察付き執行猶予が現在活用されていない理由について,「現在,罰金の事件は,書面審理だけの略式手続で多く処理されており,その中で保護観察を付けるかどうかというようなことを判断するというのは極めて難しく,困難である」との御意見,「罪体だけではなく,保護観察を付けるのがふさわしいかどうかというような資料を準備する時間的な余裕がなかなかないのではないか」との御意見がございました。   そのほか,全般的なものとして,「現在検討されている罰金の保護観察付き執行猶予の活用を含めた各制度・施策は,現在の家庭裁判所における調査,処遇と比較すると,見劣りがするものではないか,再犯防止という観点から見ても不十分なものではないかと考えられるため,現在の家庭裁判所等において行われている制度との比較を意識して議論することが適当である」との御意見がございました。 ○酒巻分科会長 ただいまの説明に御質問のある方は,挙手をお願いいたします。   よろしいですか。   次に,これまでの分科会における意見交換の内容や,部会での御意見なども踏まえて,「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」について考えられる制度の概要や検討課題等をまとめた資料を事務当局に作成していただきましたので,配布資料9について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 配布資料9について御説明します。   「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」について,これまでの部会及び当分科会における意見交換を踏まえ,「考えられる施策・制度の概要」とともに,検討課題となると考えられる事項を記載しました。   現時点において考えられるものを記載したものであり,もとより御議論の対象をこれらに限る趣旨ではありません。   考えられる制度の概要や検討課題として記載した事項について説明いたします。   まず,「考えられる施策・制度の概要」についてですが,これまでの検討によれば,罰金刑が相当である事案のうち,保護観察付き執行猶予の活用に適する事案について,その活用を図ることが考えられますので,それを記載しております。   次に,検討課題について御説明します。   まず,「1」の「活用に適する事案・対象者」にあるとおり,保護観察が有効に機能する事案・対象者,保護観察付き執行猶予が相当でない事案・対象者が,それぞれどのようなものかが検討課題となると考えられます。   次に,「2」の「活用に適する事案・対象者の判断方法」にあるとおり,「判断資料の在り方」,「保護観察所の調査機能活用」,「少年鑑別所の鑑別機能の活用」が検討課題になると考えられます。   次に,「3」の「活用するための課題」にあるとおり,「略式手続を経る場合」と「公判手続を経る場合」のそれぞれについて,判断資料の提出や科刑意見の在り方,保護観察を受ける動機付けの強化の方策等が検討課題になるほか,「保護観察の適切な期間の在り方」,「良好措置の在り方」等も検討課題になると考えられます。   さらに,このような運用上の課題を解決するために,「活用するための法改正の要否・内容」が検討課題となると考えられます。   資料9の御説明は以上です。 ○酒巻分科会長 ありがとうございました。   ただいまの説明に,この段階で,御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見のある方は,挙手をお願いいたします。   御質問等はないようですので,「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」について,配布資料9に沿って意見交換を行いたいと思います。   まず,配布資料9の「1 活用に適する事案・対象者」について意見交換を行います。   御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○保坂幹事 「1」の一つ目の「○」の保護観察が有効に機能する事案・対象者についてです。   保護観察付き執行猶予である以上は,社会内で,刑が執行されるという威嚇力をもって改善を促すということになるわけですけれども,これまでの議論でも指摘されているとおり,罰金刑の場合,自由刑と比較して保護観察に服する心理的強制力というのは,必ずしも十分ではないということは否定できないだろうと思われます。   実務的にいいますと,活用するときには,この点に留意する必要があろうかと思われますけれども,罰金額の多寡を考慮しまして,保護観察に服する心理的強制力というのが相応に働く事案という場合には,有効に機能する場合があるのではないかと考えられます。   例えば,若年者層で考えますと,就職していない学生という方も少なくないわけですけれども,罰金額というのが相応に高額で,その執行を受けたくないと,こういう心理的強制が働く場合で,また,本人が保護観察に服して改善更生する意思があるという意味での改善更生の可能性があれば,保護観察に服させて,学業を継続させつつ,例えば社会貢献活動に従事してもらうなどして,改善更生を図るということができれば,保護観察が有効に機能するし,したがって,再犯防止にも資するということになろうかと考えられます。 ○池田幹事 今,保坂幹事から御指摘いただいたことと共通することになりますけれども,このテーマとの関係でいいますと,対象となる者は,起訴されているわけですので,検察官において刑事処分が必要だと判断されていることが前提になります。その中での適する事案は,保護観察に付随する遵守事項としての社会貢献活動等を行うのであれば,罰金刑を執行する必要はなく,むしろ再犯防止等の点から,保護観察が有用であるといえるものということになるのだろうと思います。   これを言い換えますと,単にそのまま執行猶予としてしまうというのは,犯情その他の面から適当とはいえないけれども,併せて保護観察に付することで,対象者の改善更生のための積極的な処遇手段としての意義が認められるという場合には,行為責任の枠内で保護観察付き執行猶予に付するということが相当といえる場合があるということになるものと考えます。 ○酒巻分科会長 今,お二人から,こういう事案,対象者は,適する事案,対象者であるというお話が出ましたけれども,むしろ保護観察付き執行猶予はあまり適当ではない,相当ではないという類型は考えられますか。 ○保坂幹事 保護観察付き執行猶予が相当でないと考えられる場合として,これまでいろいろ御指摘があった中で,本人が保護観察に服する気がないというか,拒むような言動をしているという場合,それをどう考えるのかという点でございます。   まず,保護観察というのが刑の付随処分であって,これを刑事政策的措置として活用する以上,本人の言動あるいは本人の意思だけで決まってしまうということは適当ではなくて,やはり保護観察の必要性,有用性,実効性等を考慮して判断するということになるのが筋なんだろうと思われます。   ただ,保護観察というものの宿命として,保護観察官ですとか保護司さんが面接指導等により,本人の内面に働き掛けていって,自発的な改善更生を促すというところになりますと,処遇効果を上げる前提として,やはり改善更生の意欲を喚起できる可能性があるということは必要なのだろうと思われます。それはさらに,捜査,被疑者あるいは被告人の段階から,そういう可能性を有している方が,その後に保護観察に付された場合にも,それが高い実効性を発揮できるということが期待されるのだろうと思われますので,そのことを踏まえて,保護観察付き執行猶予の活用に適するかどうかというのを判断していく必要があろうかと思われます。   それでいいますと,先ほど申し上げた,保護観察に服することを拒む言動を繰り返しているということになりますと,保護観察以前の問題として,自分の問題点について気付いていなかったり,あるいは,反省に至っていないと考えられる場合も多いだろうと思われます。そういたしますと,そもそもそのような事案あるいは対象者について,罰金刑の執行を猶予すること自体が相当でないという場合もあるのだろうと考えられます。 ○滝澤幹事 罰金刑の対象になるものは様々あろうかと思っておりますが,一つの塊といたしまして,道路交通法違反のように,非常に大量で,これまで画一的に処理をしてきているというものがあると思っております。   もちろん,道路交通法違反でも,再犯防止の観点から保護観察付き執行猶予相当のものというのも一部あるだろうと考えられるのですけれども,現在,いわゆる三者即日処理方式,赤切符で処理をしているようなものというのは,道路交通法違反の中でも,特に画一的な処理が優先されてきているものでして,それでもこれまできちんと制度の目的を達成していると考えられますので,保護観察付き執行猶予を活用する対象を考えるに当たりましても,こういう簡易な処理方式については大量に処理を行うに当たって用いられているという実情も踏まえていただく必要があるのではないのかと考えております。 ○酒巻分科会長 ほかに御意見はございますでしょうか。   この程度でよろしいでしょうか。   それでは,次に,「2 活用に適する事案・対象者の判断方法」について意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は,挙手をお願いいたします。 ○池田幹事 資料の「2」に掲げられている点の全体に関わるような話になりますけれども,保護観察の活用に適する事案かどうかということについては,検察官が処分の前に,保護観察官の知見を活用して,その判断のための資料とすることができますと,大変有用ではないかと思っております。例えば,罰金相当事案の中でも,保護観察付き執行猶予の活用に適する事案に関しては,検察官が処分前に保護観察官から聴取をするなどして,そうした方策を活用するかどうかの判断資料とするような工夫が考えられるように思います。   他方で,そういう場合には,保護観察所にも必要十分な資料や情報が与えられることが必要だと思われます。このことも,検討課題に挙げられていますが,そのための方法として,保護観察官による被疑者との面談ないし面接が必要かどうか,どのような資料や情報が必要か,どのような法的枠組みで保護観察所に資料や情報が与えられて,保護観察所からの意見聴取をするのかといったことが,検討を要する課題ではないかと思います。   また,判断をする裁判所においても,事案によっては,保護観察の適否などについて,保護観察所の意見などを判断材料とできる仕組みを検討する必要もあるのではないかと思います。 ○保坂幹事 まず,判断資料の点ですけれども,池田幹事がおっしゃったように,罰金の保護観察付き執行猶予というのを活用していくということになりますと,適した事案を検察官がきちんと選別できる,そして,裁判所が保護観察の適否について,きちんと判断できるということが必要になります。先ほどもございましたが,書面のみで審理が行われる略式手続においては,なおのこと,的確に判断できる資料の在り方というのが問題になり得ると思われます。   ただ,実務上,捜査で収集する証拠というのを考えてみますと,自由刑相当か罰金相当かによって,改善更生,社会復帰に関わる事実関係について,集める証拠,解明する事実について,さほど大きな違いがないというのが実情です。そうしますと,罰金の保護観察付き執行猶予を活用するとしましても,それ以外の場合と比較して,いつも特別な証拠の収集が求められるというのは,相当ではないのではないかと思われます。   その上で,これも池田幹事から御指摘がありましたけれども,保護観察が有効に機能するかどうかについては,保護観察所の意見を聴取するということも考えられましょうし,配布資料にもございますが,少年鑑別所の鑑別機能を活用するということが考えられます。その場合に,少年鑑別所の鑑別機能につき,どういう場合にそれを活用するのか,どのような事項について鑑別して活用することが必要なのか,有効なのかについては,更に併せて検討する必要があろうかと思われます。 ○山﨑委員 私は,ここのところで,具体的にどういうことが想定されるのか,イメージがよくできないものですから,質問なのですが,例えば,保護観察官が面接をしてどういった事項を調査し,面接以外ではどういったことを調査するということがイメージされているのか。それについて,これまでの経験なり蓄積,専門性というものがあるのかどうか,というところが,今一つ分からないところです。   その点に関して,これまで例えば,これに類したものとして,何か行われてきた取組があるようでしたら,御紹介いただきたいと思うのですが。 ○今福幹事 現在,検察官において保護観察付き執行猶予等の求刑を積極的になさるときに,事前に保護観察所に対して,調査などの協力を求められる場合があります。そういった場合に行っていることなどから敷えんして,保護観察官が検察官からの求めに応じて行う調査等についての一般論を申し上げますと,検察官からいただいた本人についての情報を踏まえつつ,本人の面接,これは,場面に応じてできる場合とできない場合がありますが,こういったことをする中で,生活状況ですとか,就労の可能性,あるいは釈放後の帰住先や,今後の生活計画など,普段保護観察を実施する上で調査するような事項に関する情報を入手すると。その上で,どのような処遇が本人に適するのかということについて,保護観察官が考えていることを,検察官にフィードバックさせていただいているという状況でございます。 ○山﨑委員 そうしますと,検察官が保護観察付き執行猶予を求刑するということが決まった後,という時点が想定されているかと思うのですけれども,例えば身柄事件だと,時期的にはいつ頃になっているのかという点と,あと,保護観察官の方が面接する回数ですとか時間,一般的なイメージといった辺りをお聞かせいただければと思うのですが。 ○今福幹事 検察官がいつ求刑を検討しているのかは,必ずしも承知していませんが,検察官において求刑を決められた後ではなく,どのような科刑が適するのかをお考えになるに際して,保護観察所に御照会いただいているものと承知しております。   面接の回数等について申し上げますと,それを行うかどうかも含めて定まったものはなく,状況に応じて行っているというのが実情でございまして,行う場合には通常1回をベースに行っているものと承知しております。 ○山﨑委員 そこで得られた情報というのは,どういう形で資料化をされるのか。それは捜査資料として,供述内容を証拠として資料化し,裁判でも使われ得る資料となるのか。あと,面接するときには,黙秘権等の告知ですとか,検察官や捜査官の調べとの異同というのは説明されているのか,その辺りはどうなのでしょうか。 ○今福幹事 どのように使われているかということについて,私どもの方で必ずしも承知しておりませんので,他の方にお聞きいただく方がよろしいかと思います。   保護観察官が調査等を行った結果を検察官に報告する際には,口頭で報告することが多いものと承知しております。 ○保坂幹事 恐らく,どこでも同じようにやっているということではなくて,それぞれやり方はまちまちなのかなと思います。   1回の面接で得られて聞き取った内容を,わざわざ殊更に証拠化して,何か立証に用いるということは恐らくやっていなくて,保護観察官に意見を聞かせてもらって,それを多分,検察官の論告の中で指摘する,その材料として使わせていただくというのが,オーソドックスなところではないかなと思っております。 ○酒巻分科会長 山﨑委員,ただいまの回答内容でよろしいですか。 ○山﨑委員 結構です。 ○福島幹事 少し前の保坂幹事の御発言と関連して,ちょっと申し上げようと思ったのですが,略式起訴されるものも含めると,罰金刑に処せられる事件自体は相当な数に上ると思うのですけれども,これまでの御議論を伺っていても,罰金の保護観察付き執行猶予が考えられる事案というのは,その中の一部の事件にとどまるということだったように思われます。そうであるとすれば,まず当事者において,罰金の保護観察付き執行猶予がふさわしいと考える事件を的確に選別していただくことが非常に重要なのだろうと思います。   また,これまでは,正式裁判か略式手続かを問わず,罰金相当事案で,保護観察付き執行猶予の相当性等について主張・立証されるということは,ほとんどなかったのではないかと思いますけれども,先ほど申し上げたように,当事者において,罰金の保護観察付き執行猶予がふさわしいと選別した事件については,その罰金の保護観察付き執行猶予がふさわしいことについて,しっかりと主張と立証をしていただくことが重要なのかなと思います。   ただ,今,しっかりと立証と申し上げましたけれども,その立証の内容が,現在自由刑相当事案で行われているような情状関係の立証に加えて,何か特別なものが必要だという趣旨ではありません。そこは,先ほどの保坂幹事と,多分同趣旨のことであろうと思います。 ○山﨑委員 先ほど質問させていただいたことへの御回答を踏まえてなのですけれども,やはり今の福島幹事からの御意見でも,主張と立証という部分がありましたけれども,裁判で保護観察付き執行猶予が相当かどうかを判断する資料として,保護観察官の面接による対象者本人の供述というものが使われるようになる可能性があると思いますので,捜査の中に,そういった保護観察官の面接が位置付けられて,それが捜査資料と一体となって,裁判上の証拠にされるというように考えていいのかどうかといった辺りが,理屈上は検討する必要があるのではないかと思っています。また,事実上の問題としましては,そういう面接や検討することが捜査の長期化を招くことはないのかという点も検討すべき課題だろうというふうに思っております。 ○酒巻分科会長 「2」について,ほかに御意見はございますでしょうか。この程度でよろしいでしょうか。   次に,「3 活用するための課題」と「4 活用するための法改正の要否・内容」は相互に関連すると思われるので,併せて意見交換を行いたいと思います。   「3」及び「4」について,いずれの点からでも結構ですので,御意見のある方から御発言をお願いいたします。 ○池田幹事 ここでは,「3」と「4」とまとめてということですが,その中で,上の二つの「○」にあります判断資料の提出や,科刑意見ないし求刑の在り方について申し上げたいと思います。   これまでの議論では,大半の自白事件が処理されている略式命令の手続は,被疑者・被告人にとって,手続的な負担が大きくないという利点があるといえる一方で,この手続で保護観察付き執行猶予を活用することも現行法上は可能であるとされてきました。しかし,保護観察付き執行猶予を活用しようとする場合は,それが有効に機能するかどうかとか,あるいは,どのような特別遵守事項を設定すべきであるかということについて,個別具体的な様々な事情を考慮して判断する必要があるわけですが,そのことが,書面審理で簡易迅速な事件処理を図るという略式手続になじみにくいのではないかという指摘がされてきたところです。実際,そのような保護観察の有効性を検討する契機がなかったことで,活用がされてこなかったのではないかという御指摘もあるところです。   そのため,判断資料をどのように提出するかということが課題になってくるわけですが,相当な事案においては,そのために必要となる審理を可能にするため,自白事件で罰金が見込まれるという事案であっても,公判請求をするということも考えられるのではないかと思います。また,略式手続による場合は,従前同様ということになりますけれども,その場合であっても,裁判官が保護観察の要否について判断するための十分な資料を提出することが必要不可欠になると考えております。   また,罰金刑の保護観察付き執行猶予がこれまで活用されてこなかったという理由として,裁判所が当事者の主張を踏まえて適否を判断するわけですけれども,そもそもそうしたことを求める主張がなされてこなかったという御指摘もあったところであります。   このことからは,この項目でいいますと,科刑意見の在り方ないしは求刑の在り方として,略式手続の場合には科刑意見において,その旨を明示し,公判の場合は求刑において,保護観察付き執行猶予を求めるという工夫をすることが考えられるのではないかと思います。   以上のような場合に,公判手続によることのメリットとしては,略式手続と比較して,公判手続においては,被告人質問等を通じて,保護観察が有効に機能するということをより一層明らかにすることができるということが,まず挙げられるかと思います。また,次の項目に関連しますけれども,そういう手続を経るということによって,保護観察を受ける動機付けの強化にもつながるということもいえるのではないかと思います。 ○保坂幹事 今の池田幹事の御発言に関連してですけれども,動機付けの強化のための方策という点について申し上げたいと思います。   先ほど申し上げましたが,執行され得る刑というのが罰金刑ですので,それ自体としては,動機付けというのは必ずしも十分でないということを前提としますと,いろいろな手続の中で,動機付けを強化していくということが必要になろうかと思われます。   公判手続から申し上げますと,略式手続と異なりまして,公判廷で裁判官の面前で被告人質問が行われる,これは検察官なり,あるいは弁護人からも行われるわけですけれども,その中で質問を的確に行うことによって,保護観察付き執行猶予が機能するのかどうかということを判断しながら,動機付けを強化していくということも可能になろうかと思われます。   それと,さらに,検察官と弁護人の主張・立証を踏まえて,裁判官が保護観察付き執行猶予とするということになった場合には,判決の宣告のときに被告人に対して,いわゆる説諭の中で,その必要性,有用性について説明をするということによって動機付けを強化していくということも,公判手続であれば,可能になってくるのだろうと思われます。   他方で,略式手続の場合は,こういった機会はございません。したがいまして,動機付けを強化するチャンスがあるとすると,検察官が被疑者の段階で,保護観察付き執行猶予になる可能性があって,そのことを説明しないと,略式手続を受け取ったときに初めて保護観察付きであったことを知るということになってしまい,そうするとやはり保護観察が有効に機能する前提ができていないのではないかと思われます。したがって,検察官にあっては,略式手続で保護観察付き執行猶予を活用するというのであれば,保護観察に付され得るということも併せて,その必要性,有用性も含めて説明をすることが必要になるのだろうと思われます。   ただ,この説明が余り早過ぎますと,また少し別の問題が生じるだろうと思われまして,正に捜査が行われていて,自白調書なりを取っていることとの先後関係で,この説明,つまり保護観察付き執行猶予になるということの説明をするということは,事件の処分見通しを教えることにも近づいてくることになりかねませんので,自白調書との先後関係によっては,利益誘導などといわれるようなことになってしまう可能性もございます。   告知する時期というのは,いろいろ考えられるのかもしれませんけれども,もとより通常の略式手続におきましても,略式手続の説明をした上で,異議がないことを確認するということが刑事訴訟法で定められていますので,自白調書も作成し終えて,捜査が終わった後に,こういった説明手続を普通するわけですけれども,そのときに,いわゆる略式請書と実務ではいっておりますけれども,その請書を作成する前か後か,その辺りで,この保護観察付き執行猶予についての説明というのも行うのだろうと思われます。 ○山﨑委員 私も今,現実的に可能なのかということについて,お聞きしながら,ちょっと首をかしげていた部分があるのですけれども,それを利益誘導という側面についていうと,先ほどのように,保護観察官が面接されるということ自体を対象者がどう受け止めて,どのように理解できるのかということも,更に前倒しで問題になってくるように思われます。なぜ自分の事件には保護観察官の面接が入るんだろうか,ということになると,なかなかそこを説明しようと思えば,検察官の利益誘導にもつながりかねないという辺りが難しくないだろうかということを今考えておりました。   もう一つは,池田幹事の方から,公判手続にすることのメリットということのお話が出ましたけれども,他方で,当然デメリットとして,対象者の負担がこれまでにも増して大きくなるという点をどう考えるかという点は,非常に重要だろうと思います。従前御説明いただいたように,現状の略式手続と公判請求に関する検察官の処理の基準というのは,かなりはっきり,略式手続が原則であって,そうでない場合が公判請求というふうな御説明であったかと思いますので,そのような現状をどれだけ変更することになるのかという意味でも,慎重に検討しなければならないのではないか感じております。 ○池田幹事 配布資料9にも,公判手続による負担を回避するための方策というものがありますので,それに関連して申し上げたいと思います。   前提として,そこでいわれている負担ということの意味について確認しておきたいと思います。今,山﨑委員からも御指摘があったように,罰金刑とされるものは,実務上はその多くが略式手続で処理をされております。そのため,一般にはそのように,略式手続で処理されている事件について,保護観察付き執行猶予の適否を判断するという目的で,特に公判請求をするということになれば,確かにそこだけを捉えますと,手続面の負担が大きくなるという面はあるように思います。   ただ,保護観察付き執行猶予の対象となれば,執行猶予期間が満了すれば刑が科されない,刑の言渡しの効力も消滅するということからいたしますと,罰金の執行猶予として保護観察を付す方が,罰金刑を執行されるよりも,刑罰としての不利益は小さいとも考えられますので,一概に負担が重いともいい切れないのではないかとも思います。   さらに,略式手続によるべきか否かということ自体,手続を請求する検察官がまず判断すべきものですので,その判断において,保護観察付き執行猶予が有効かどうかということを審理するために必要があると考えられます。そしてその上で,略式手続によることが相当でないとした場合には,公判手続を選択することがあり,またそれも許容されるのではないかと考えられます。   言い換えますと,公判手続には略式手続にはない負担があるとしても,そのことは,公判手続による処理を許さないとする理由にはならないのではないかということであります。 ○保坂幹事 実務的にいいますと,前にも加藤幹事から御説明したように,罰金相当事件で自白しているような場合というのは,大半は略式手続によって処理されているのは事実でありますが,否認事件は当然,罰金求刑予定であったとしても,当然,公判請求をするということになるのが通常でございます。   罰金相当事件で,自白しているという事件でありましても,例えば,過失の認定が複雑な事件など,略式不相当と考えられるような事件については,検察官が略式手続ではなくて,正式に公判請求をしているというのが実情でありますし,事件によっては,検察官が略式請求しても,裁判所の方で略式不相当ということで,正式公判に移行していくというケースも,それほど多くはありませんが,あるわけであります。   それを前提といたしますと,保護観察付き執行猶予を活用するということについて,保護観察付きとするかどうかの十分な審理をする,あるいは実効性を高めるための動機付けの機会を持つという,そういう審理が必要だということであれば,略式手続によることが相当でないと考えて公判請求していくということは,必ずしも不相当だということはいえないのではないかと思われます。   ただ,先ほど山﨑委員からもあった公判手続によることの負担で,この負担の多分一番大きいのは,身柄拘束が継続したままであるということだろうと思われますので,身柄拘束が継続するということの負担をなるべく少なくするという方策も,併せて考えておく必要があるのだろうと思われます。 ○山﨑委員 今のお話を伺いながら,他の論点との関係にもなるのですけれども,例えば,前回私の方で申し上げた,宣告猶予ではないけれども,簡易な社会内処遇に付するための手続ですとか,これから議論される新たな処分ですとか,恐らく必要と思われることというのは,保護観察を中心とした社会内処遇に適切に早く付するという方向性だと思うのです。そうであれば,それぞれの制度で,どういうメリット,デメリットがあり,対象者の負担という観点も含めて,先ほど,前科にならないというようなメリットの面も,他の制度でもあり得るところだと思われますので,分科会での一つの整理としては,罰金についてまず検討するわけですが,あとは部会で全体をどう調整するかといいますか,検討することになるのかもしれませんけれども,ほかの制度であればこういうことができるのではないかということも視野に入れながら,検討を進める必要があろうと思いました。 ○池田幹事 先ほど保坂幹事が指摘された,公判手続による負担の軽減を図るための具体的な方策についても,併せて検討しておく必要があるだろうと思います。今,山﨑委員からも御指摘があったように,早く処分することも同時に求められていますので,手続に必要な期間の短縮を図るためには,例えば,適切な事案においては,検察官はできる限り早い時期に証拠開示を行う,裁判所は,早い時期に公判期日を定めるという運用上の工夫をする,あるいは,できる限り即日判決の言渡しが可能になるように,当事者が工夫をすることも考えられるかと思います。   また,罰金の保護観察付き執行猶予が相当であると考えられる事案として,被告人が反省して改善更生をする意思を示しているような事案が典型的には考えられます。そして,このような事案においては,これも一概にはいえないとは思いますけれども,被告人の逃亡や罪証隠滅のおそれの程度はさほど大きくないといえる場合が多いと思いますので,保釈制度を適切に活用することによって,公判に伴う負担を回避ないし軽減をするということも考えられてよいのではないかと思います。 ○川出委員 「保護観察の適切な期間の在り方」について意見を申し上げたいと思います。この場合の保護観察期間は,執行猶予期間ということになるわけですが,懲役・禁錮の執行猶予がそうであるように,執行猶予期間というのは,その期間を無事に経過すれば刑の執行を受けなくなる期間ですので,その長さは,被告人がその期間内に再犯を行わなければ,その後も再犯を行わずに生活することができるであろうという評価に基づいて定められることになるのだと思います。   それを前提に,保護観察を付ける場合は,その間に処遇を行うことになりますので,そして,遵守事項を遵守し,再犯を行うことなくその期間を経過すれば,今後再犯を行うことはないであろうという見通しに基づいて期間を定めるということになろうかと思います。そうだとしますと,執行猶予期間は,必ずしも元々の宣告刑の軽重に対応するものではないことになります。   もちろん,保護観察は,被告人の自由を制約するという面があることも確かですので,罰金刑の場合には,宣告される罰金額と,保護観察の期間の双方を考慮した上で,行為責任の枠内でなければならないという制約は掛かります。そうすると,本体の方で少額の罰金しか科せないような行為責任の場合に,あまりに長期の保護観察に付すことはできないということはあり得ます。ただ,繰り返しになりますけれども,宣告刑の軽重に対応して保護観察の期間が決まるというものではありません。   ただ,実際問題としては,先ほどから,何度も指摘がありますように,罰金というのは,自由刑と比べて,執行猶予を取り消された場合を想定した心理的強制力が劣りますので,余りに長期の保護観察期間を定めますと,被告人によっては,そんな長期の保護観察を受けるよりは,遵守事項に違反して罰金を払ってしまった方がよいと考える人もいないではないだろうと思います。したがって,実際の運用としては,その辺りのことも考えて,個別具体的な事案に応じて,適切な執行猶予期間を定めるということになるのではないかと思います。 ○保坂幹事 先ほども申し上げましたが,罰金の保護観察付き執行猶予というのは,いわゆる不良措置として控えている罰金刑が執行されるというところによる心理的強制というのは必ずしも十分でないとすると,処遇効果を上げていくためには,良好措置を充実させるということが考えられるところです。良好措置についても考える必要があるわけですが,現行法上は,罰金刑か自由刑かということで,保護観察の内容などには区別はないわけです。   これは,先ほど山崎委員がおっしゃるのと共通するのですが,第3分科会の方で,保護観察の充実の中で,良好措置の在り方についても議論がされているということですので,この罰金刑の関係でも,それを視野に入れておくということが必要なのだろうと思われます。   それと,最後の「4」の「法改正の要否・内容」についてもまとめて意見を申し上げますけれども,良好措置については別の分科会で議論しているのですが,その点を除きますと,罰金の保護観察付き執行猶予の活用ということで,直ちに立法措置が必要だというところまでは,今のところ見えていないというか,浮上していないのかなと思われますけれども,様々工夫したりしなければいけないわけですので,そういう工夫を考えていく上で,法改正が要るのであれば,そこはきちんと手当てをしていくという,そういうことの検討になるのかなと考えております。 ○山﨑委員 先ほど,調査機能の活用のところで,いい忘れていたのですけれども,保護観察所を活用するにせよ,少年鑑別所を活用するにせよ,何を調査するのか。どういう対象者を想定するのか。年齢は限らないというのが,これまでの議論の流れというふうに理解していますけれども,そうしますと,当該対象者のどういった点について調査することを考えるのかを具体的に想定し,それぞれの機関が持っている経験や知見というものが,調査すべき点に関して,果たして十分に能力があるのかといったことも,もう少し詰めて考える必要があるのではないか,というふうに感じております。 ○酒巻分科会長 ありがとうございました。ほかに,全体を通じて,「罰金の保護観察付き執行猶予」について御意見ございますでしょうか。   配布資料9に記載されている検討課題については一通り意見交換を行いましたが,「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」についての意見交換としてはこの程度でよろしいでしょうか。            (一同異議なし)   これで,当分科会が担当する論点に関する考えられる制度概要及び検討課題等について,1巡目の意見交換を一通り行いましたので,引き続き,「若年者に対する新たな処分」の検討課題等について,2巡目の意見交換を行いたいと思います。   意見交換を行う前提として,処遇の実情を確認することは重要であり,また,これは前々回の会議で,処遇期間等に関する御質問もございましたので,意見交換に入る前に,事務当局から,少年院の在院期間や保護観察の期間について説明してもらいたいと思います。事務当局から配布資料10及び11について,説明をお願いいたします。 ○小玉幹事 配布資料10「統計資料2」について御説明します。   まず,表紙をおめくりいただいて,この資料の1ページ目は,平成28年に少年院を出院した者の在院期間を示したものです。一番上のグラフを見ていただきますと,全出院者2750名のうち,一番左の赤色の部分ですが,在院期間が240日以下の者は,全出院者の18.8%であり,人数としては516名となっています。また,240日を超える者の割合は,グラフの右側に示したとおりでございます。   その下のグラフは,この240日以下の516名の在院期間を詳細に示したものです。   なお,このページの一番下の※印にありますように,516名のうち514名は,短期課程対象者となっています。   短期課程対象者の教育期間は,おおむね20週と設定されますが,これに相当する在院期間134日から140日の者,このグラフの左から3番目の水色の部分ですが,ここに入る者が最も多く,全出院者の6.8%であり,人数としては186名となっています。   下の表は,これらのグラフの内容を一覧表にしたものです。   1枚おめくりいただいて,資料の2ページ目は,先ほどの平成28年の全出院者のうち,出院時18歳以上の者に限定して,その在院期間を示したものです。   なお,データの収集に当たって,入院時の年齢ではなく出院時の年齢を基準としているため,出院時18歳以上の者のデータをお示ししています。   先ほどの1ページ目のグラフと比較しても,全出院者の傾向と大きな違いはないことがお分かりになるかと思います。   1枚おめくりいただきまして,資料3ページ目の短期の矯正教育課程ですが,これは短期の矯正教育課程の種類,在院者の類型,基準期間等を示したものです。これらの短期課程は,家庭裁判所において,短期間又は特別短期間の処遇勧告が付された者に指定することとされています。   一番右の欄の基準期間とは,指導を実施する上で基準となる期間のことであり,これを踏まえ,個々の在院者の教育上の必要性に応じて,矯正教育の期間が設定されます。短期課程の基準期間は20週とされていますが,家庭裁判所から特別短期間の処遇勧告が付された者については11週とされています。   その下の短期課程の指定状況は,平成24年から平成28年の新収容者のうち,短期課程に指定された者の割合を各年ごとに示したものです。上の一覧表は,全新収容者を対象としたものであり,下は入院時18歳及び19歳の者を対象としたものです。   年によって若干のばらつきがありますが,全新収容者については,おおむね20%前半から20%弱の者が,入院時18歳及び19歳の者については,いずれの年も20%を切る割合の者が短期課程に指定されています。   配布資料10についての御説明は以上です。 ○今福幹事 続きまして,資料11につきまして御説明いたします。これは,保護観察処分少年に対する実施期間の関係です。   1ページを御覧いただきますと,一番上にございますとおり,1号観察の期間は,「当該保護観察処分少年が20歳に達するまで」とされておりまして,「その期間が2年に満たない場合には,2年」とすると定められております。そして,保護観察所の長は,1号観察において,「保護観察を継続する必要がなくなったと認めるときは,保護観察を解除するものとする」と定められております。   次からの統計は,いずれも審判時年齢18歳以上の1号観察に関するものです。左側の円グラフは平成28年中に1号観察を終了した人員について,終了事由別の割合を示しております。約9割が解除で終了しております。   右側の円グラフは,1号観察の四つの種別ごとの件数を示しております。交通短期が全体の半数以上である5246人を占めている実情でございます。   これらの四つの種別につきましては,もう少し詳しく申し上げますと,最後の4ページを御覧いただきたいと思います。   一番下の交通短期保護観察は,交通事件により保護観察に処せられた少年のうち,家庭裁判所により交通短期保護観察の処遇勧告がなされた者が対象です。   その上の,交通事件の保護観察は,交通事件により保護観察に処せられた少年のうち,交通短期以外の者が対象です。そして,短期保護観察は,交通事件以外の事件により保護観察に処せられた少年のうち,家庭裁判所により短期保護観察の処遇勧告がなされた者,そして,最後に一般の保護観察は,これら以外の保護観察処分少年を対象としております。   また,処遇上の特徴ですけれども,一番下の交通短期は,集団で交通講習を受けさせるなどするものであり,担当保護司を設けないこと,面接の代わりに毎月生活状況報告書を提出させることなどの点で,他の1号観察とは大きく異なります。   その上の交通のところですが,担当保護司を指名し,交通に重点を置いた個別指導を行います。短期は,毎月1回以上,保護観察官又は保護司の面接を行うもの,そして,最後に一般は,毎月2回以上,保護観察官又は保護司の面接を行う通常の保護観察でございます。   最後に,種別ごとの,保護観察の開始から解除を検討するまでの期間に関する運用について概要を申し上げます。   最初に,交通短期は,保護観察開始後3月以上4月以内で,交通は,保護観察開始後おおむね6月を経過したとき,短期は,おおむね7月以内,一般は,おおむね1年を経過したときに,それぞれ他の要件も検討して,解除について判断することとしております。   2ページを御覧ください。   2ページは,保護観察の終了事由が解除又は期間満了である1号観察終了者についての保護観察実施期間をまとめた統計です。一番上の帯グラフは,1号観察全体についての実施期間別の人数を表しております。   中段の帯グラフは,種別のうち一般,短期と交通の三つを合わせたものです。すなわち,一番上の1号観察全体から交通短期を除いたものです。大きく違う点は,一番上の帯グラフでは6月未満の者が全体の過半数を占めておりますけれども,その大部分がなくなっております。これは,先ほど申し上げた交通短期の部分が除かれたことの影響でございます。   一番下の帯グラフは,一般及び短期の対象者の実施期間別の人数を表しております。   1号観察終了者のそれぞれの種別ごとの実施期間につきましては,3ページに掲載しておりますので,御参照いただけたらと思います。 ○酒巻分科会長 ありがとうございました。   ただいまの説明について,御質問等がある方は挙手をお願いいたします。   よろしいでしょうか。   次に,「若年者に対する新たな処分」について,事務当局において,当分科会の会議における委員・幹事の方々からの御意見も踏まえ,考えられる制度の概要や検討課題等を整理して,第4回会議の際に配布した資料を改訂したものとして,配布資料12を作成してもらいましたので,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 配布資料12について御説明します。   配布資料12は,当分科会第4回会議で配布した配布資料7について,その際の御議論を踏まえるとともに,当分科会で更に具体的な検討を進めることに資するようにという観点から,考えられる制度の概要及び検討課題に加筆・修正したものです。   現時点において考えられるものを記載したものであり,考えられる制度の概要を確定する趣旨のものでも,検討課題を資料に記載したものに限る趣旨のものでもございません。   加筆・修正部分を中心に,資料全体について御説明いたします。   まず,「考えられる制度の概要」について御説明します。   「1 概要」についてですが,「(1)趣旨・目的」の一つ目の「○」は従前の資料と同旨の記載となっています。二つ目の「○」ですが,本処分の正当化根拠及び法的性質については「本処分は,対象者が罪を犯し法益を侵害したことについて非難が可能な限度で,かつ,対象者の改善更生を目的として,要保護性に応じて行うものとする」ことに特に御異論はなかったので,その旨記載しています。   「(2)対象者」については,少なくとも,「比較的軽微な罪を犯し,検察官において訴追を必要としないと判断した18歳及び19歳の者を対象とする」ことには御異論がなかったので,それらを記載しています。   考えられる制度の概要の「2 処分の内容」については,保護観察処分を設けることが必要かつ相当である旨の御意見を踏まえ,「保護観察処分を設けるものとする」との記載を追加しています。   考えられる制度の概要「3 手続」については,意見交換を踏まえると,「家庭裁判所は,家庭裁判所調査官の調査機能等を活用して要保護性の判断に必要な資料を収集し,少年審判と類似の審判を経て処分を行うか否かの判断を行う」,「家庭裁判所における審判は非公開とする」と考えられますので,その旨を記載しています。   次に,検討課題について御説明します。   「1 概要」については,「20歳以上の者も対象とするか」という点が検討課題になると考えられます。   「2 処分の内容」の(1)施設収容処分については,前回の資料と同旨の記載となっています。「(2)保護観察処分」については,前回の資料の記載と同旨の点のほか,一つ目の「○」の「保護観察に付する場合」,四つ目の「○」の「保護観察の解除又は取消し」,1枚おめくりいただき資料2ページの一番上の「○」に記載している「対象者が保護観察の遵守事項に違反したときにとり得る措置」として①又は②の仕組みの必要性及び相当性が,それぞれ検討課題になると考えられますので,それらを追加して記載しています。また,「(3)」に記載のとおり,「不処分」を設けることも検討課題になると考えられます。   「検討課題」の「3 手続」には,「考えられる制度の概要」の「3 手続」に記載の手続の大枠を前提とした場合に検討課題となると考えられる事項を記載しています。   「(1)対象及び判断主体」については,本処分の手続の対象となる者に関し,「検察官が訴追の必要がないとして公訴を提起しないこととした者を全て本処分の手続の対象とするか」が検討課題になると考えられます。   また,罪を犯した者について刑事処分を科すべきか否かを判断する主体に関し,家庭裁判所が刑事処分相当を理由として検察官に送致する仕組みを設けるかという点や,刑事裁判所が本処分相当を理由として家庭裁判所に移送する仕組みを設けるかという点が検討課題になると考えられます。   次に,「(2)要保護性の調査」については,「ア 家庭裁判所調査官の調査」について,その下の三つの「○」にあるとおり,調査事項及び調査手法,教育的措置,試験観察が,「イ 少年鑑別所の鑑別」について,その下の二つの「○」にあるとおり,在宅による鑑別,施設収容する鑑別が検討課題になると考えられます。   「(3)その他」には,「(1)」及び「(2)」以外に手続面で検討課題になると考えられる事項を記載しています。改訂前の資料に記載されていた検討課題と今回新たに記載した検討課題とがございますが,具体的には,「調査の端緒」,「調査又は審判への呼出しに応じない者に対する措置」,「証人尋問・鑑定・通訳・翻訳・検証・押収・捜索」,「検察官又は弁護士等の関与」,「本人等による記録・証拠物の閲覧・謄写」,「犯罪被害者等の権利利益の保護のための制度」,「審判不開始」,「審判の方式」,「没取」,「不服申立て」,「本処分の効力」,「処分間の調整」,「処分の取消し」等が検討課題になると考えられます。   配布資料12の説明は以上です。 ○酒巻分科会長 ありがとうございました。   ただいまの配布資料12の御説明について,御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見のある方は,挙手をお願いいたします。 ○山﨑委員 前回も述べたことなのですが,内容として,この四角の中に囲ったもののうち,要保護性という用語について,これが適当かどうかというところは,私としては,まだ若干違和感が残っていまして,今後の検討の余地を残しておいていただいた方がよいのではないか,と考えております。 ○酒巻分科会長 要保護性という言葉の意味内容ですね。 ○山﨑委員 はい。内容の考え方については私も理解したのですが,一方で,保護原理ではなく,保護処分でもないというときに,要保護性という言葉を使うのがどうなのかという点は,若干まだ留保があるというところでございます。 ○酒巻分科会長 今山﨑委員から要保護性という言葉についてまだ留保があるとの御意見がありましたけれども,実質的な検討に入ってもよろしいですか。 ○山﨑委員 はい。 ○酒巻分科会長 それでは,「若年者に対する新たな処分」について,配布資料12に沿って意見交換を行いたいと思います。   まず,配布資料12の「1 概要」について意見交換を行いたいと思います。検討課題として「20歳以上の者も対象者とするか」が記載されていますが,「1 概要」に関連する事項であれば,これ以外の事項でも結構です。   御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○保坂幹事 今,山崎委員がおっしゃった「要保護性」についてですけれども,この概要の「(1)」の二つ目の「○」にも出てきますし,この資料のあちこちに「要保護性」という言葉が出てきますので,やはり議論を進めていく上で,共通の認識というのを持っておく必要があるのかなと思いますので,取りあえず私の考えることを申し上げたいと思います。   少年法でいうところの「要保護性」というのは,私の理解によると,少年の性格だとか環境に照らして,将来再び非行に陥る危険性があり,その矯正が可能であることというふうに,まず考えられておりまして,この二つの要素については,本処分におけるところの「要保護性」においても同様であろうと,まず考えられるところであります。   さらに,少年法の「要保護性」については,保護相当性というのが要素になるという考え方があると承知しておりますけれども,保護相当性に相当するようなものが本処分における「要保護性」の要素になるかどうかというのは,この後の議論になりますけれども,本処分の手続において考慮する必要があろうかと思われます。   具体的には,家庭裁判所が本処分とほかの処分とを比較して,本処分以外の処分を行い得る,こういう手続にいたしますといわば本処分相当性というものが,本処分の要素になってくると考えられる一方,そういう手続的選択肢を設けないということであれば,それは要素になってこないというのが,取りあえず私が考えたところでございます。 ○酒巻分科会長 私も,要保護性という言葉について考えて,気になっていたところなのですが,これは一応,立て付けとしては,18歳,19歳が成人になっているという前提での新たな処分です。そうすると,成人についてはもちろん,普通は刑罰があるわけで,刑事事件における刑罰の目的としては,一般予防と特別予防というのが確立した枠組みである。では,特別予防とは何かというと,これは結局,個別の犯人に対する将来の改善更生,再び犯罪に陥ることを防ぐ目的というような意味ですから,成人における「特別予防」という言葉と,少年の「要保護性」の中の要素というのは,共通しているのであろうか,何か違うところがあるのであろうかということも考えていたのです。これについて,川出委員は何かお考えはございますか。 ○川出委員 要保護性と特別予防の関係について,私が考えているところを申し上げます。先ほど保坂幹事から御説明があったように,少年法における「要保護性」というのは,一般には三つの要素を含んでいるとされています。第1が犯罪的危険性,累非行性という場合もありますが,少年が,性格とか環境に照らして,将来再び犯罪ないし非行を行う可能性があることです。   それから,第2が矯正可能性で,これは保護処分によって,少年の犯罪的危険性を除去し得る可能性があるということです。それから,第3が保護相当性で,これは少年の処遇にとって,保護処分が最も有効・適切な手段であることを意味するとされています。   ただ,この3番目の保護相当性というのは,要するに,処分間の選択をする場面で問題となるもので,第1の犯罪的危険性及び第2の矯正可能性とは質が異なるものですから,これを要保護性の中に含めることには反対する見解も少なくありません。以上が要保護性の内容です。   他方,特別予防ですが,これは分科会長がおっしゃったように,一般には,犯罪を行った者を改善更生させることによって,その者が将来再び犯罪を行うことを防止するという内容を持つものと理解されています。そうしますと,この意味での特別予防の内容は,要保護性の内容である犯罪的危険性と矯正可能性と一致するということになります。   保護相当性については,先ほど申し上げたとおり,処分間の選択の場面で問題となるものですので,取りあえずそれを除いて考えれば,特別予防の中身と,要保護性の中身は同じだと考えてよいのではないかと思います。 ○山﨑委員 私も,三つ目の要素に関する点はおっしゃるとおりだと理解しているのですけれども,二つ目の保護処分による矯正可能性という概念が,特別予防において,これを例えば,刑罰による矯正可能性というふうな観念で取り込んでいるのかどうかが,今一つよく分からないところがありまして,ここは保護処分に特有な要件ではないのかという点が,今でもちょっとよく分からないものですから,そういう疑問を呈してきたところです。   仮にそれが特別予防の中に入っているとしましても,そうすると,従来いわれていた保護処分による矯正可能性というのが,新たな処分による矯正可能性があるかというふうな概念に置き換えられて判断されるという理解でよろしいということであれば,ひとまず私としても,それを前提に考えようと思います。 ○川出委員 少年法でいう少年の健全育成というのが,少年が,将来,犯罪ないし非行を繰り返さないようにすることにとどまるのか,それ以上に,その少年が抱えている問題を解決して,平均的ないし人並みの状態に至らせることを含むのかについては争いがありますが,少なくとも,要保護性の内容とされる矯正可能性というのは,保護処分によって犯罪的危険性を取り除くという意味にとどまると思いますので,そうであれば,刑罰による対象者の改善更生ということと違いはないだろうと思います。 ○酒巻分科会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。   「対象者」の年齢,範囲につきましては,どなたか御意見はございますか。 ○保坂幹事 20歳以上の者も対象にするかどうかというのが検討課題に挙がっているわけですけれども,「考えられる制度の概要」の「(1)趣旨・目的」の一つ目の「○」に記載されている趣旨・目的からいたしますと,まずは18歳及び19歳の者を対象にするということを念頭に置いて,制度概要を具体的に検討していくということなのだろうと思われます。その上で,制度概要をある程度具体化させていって,処遇メニューや手続との関係で,対象者を20歳以上の者にも広げる必要があるのかどうか,それが相当なのかどうかということを検討していくということになろうかと考えております。 ○酒巻分科会長 ほかに,概要と整理したところについての御意見はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,次の「2処分の内容」に移りたいと思います。そして,この「処分の内容」のうち,まず「(1)施設収容処分」について意見交換を行いたいと思います。   「施設収容処分」については,検討課題として,「必要性及び相当性」,「収容期間」,「収容施設」及び「被収容者に対する処遇の在り方」が記載されていますが,「施設収容処分」に関連する事柄であれば,これ以外の事項でも結構です。   御意見のある方は,挙手をお願いいたします。 ○池田幹事 実情についての質問をさせていただきたいと思います。施設収容処分の必要性や相当性や,あるいは収容期間を検討するに当たって,家庭裁判所と矯正局それぞれに実情をお伺いできますと幸いです。   まず1点目,家庭裁判所に関係するのですけれども,少年事件における非行事実の軽重と要保護性との関係について,家庭裁判所がどのようにお考えかということです。特にその上で,非行事実が比較的軽微である者を少年院送致とするというのが,どのような場合なのかということについて,実情をお伺いできますと幸いです。   2点目として,これも家庭裁判所に関わることですが,資料10にも出てまいりました短期処遇との関係で,家庭裁判所が少年院送致を行うに当たって,短期処遇勧告を行うのはどのような場合かということについてです。例えば,犯した罪が比較的軽微であるという者を少年院送致とする場合に,短期処遇勧告を行うかどうかについて,これも家庭裁判所の実務についてお伺いできますと幸いです。   3点目は,矯正局にお伺いできればと思いますが,部会第6回会議におきまして,施設収容が必要になるのではないかと考えられる事案として,再犯のリスクが交友関係や家族関係といった環境面からもたらされるものが挙げられていたわけですけれども,そのような者に対して,少年院において実際に,具体的にどのような処遇を行っているかということをお尋ねできればと思います。 ○酒巻分科会長 ただいまの池田幹事からの御質問は,最初の二つは家庭裁判所の現在の少年事件の実務に関する事柄でございますので,これにつきましては,村田委員に御発言をお願いできますか。 ○村田委員 まず,非行事実の重さ軽さと要保護性についての御質問ですけれども,少年事件の場合には,資質・環境上の問題などを考える点で,非常に個別性が高いので,なかなか一般化して申し上げるのは難しいのですけれども,あえて一般的に申し上げると,非行事実,この場合には犯罪事実になるかもしれませんが,これが重大である場合には,その背後に潜んでいる要保護性,資質・環境上の問題点というのも大きいという相関関係は,比較的認められやすいのではないかなというふうには思います。   もっともその場合でも例外はあり得て,例えば,最近増えております特殊詐欺事案などで共謀関係があって,集団でやっているような場合,その犯罪総体として見ると,計画性があって悪質で,被害も大きくて,社会的に非難される度合いが非常に高いものであっても,それに関わった少年が受け子のような場合で,地方から大学に出てきて,ちょっと小遣い欲しさで入ってしまいましたというような場合だと,要保護性は必ずしも高くないというようなこともあります。そのため,もちろんそういう例外はあり得るという前提ではありますが,一般的にはやはり,犯した罪が重ければ要保護性も高いことが,傾向としては多いだろうかなと思います。   他方,非行事実自体はそう大したことはないといいますか,そう重いことをやったものではないという場合に,では要保護性も低いという相関関係が一般的に見られるかというと,これは,必ずしもそうはいえないのではないかなというふうに思います。分かりやすいかどうか分からないのですけれども,火山に例えると,マグマのエネルギーは非常に大きいものであっても,表面に出てくるものは,大きな爆発のこともあれば,火山性微動だとか,非常に小規模の爆発で済んでいるというようなケースもあるわけです。要保護性は,その背後に潜むマグマのエネルギーの大きさということになると,これはその少年あるいは犯罪者にとって様々であって,犯した罪が軽いからといって要保護性が小さいというふうには,必ずしもいえないかなと,氷山の一角というケースもあるのかなというふうには思います。   その上で,比較的軽微な罪を犯した者を,ではどういったときに少年院送致するかということですけれども,これはもちろん,資質・環境等の問題点を見て,あるいは,少年といろいろ面接等をしたりして働き掛けていく中で,少年がどう変化していくか,そういった点も含めて見た上で,処遇を選択しているということになるわけですけれども,一つには,少年院での教育,これによる改善更生の効果が大きいだろうなと思われる場合でしょうし,もう一つは,やはり社会内での処遇が非常に難しいかなというケースということになろうかと思います。   少年院での矯正教育がフィットするものということでいいますと,少年の資質・能力上の問題が非常に大きいので,それについては,専門的な教育を集中的に受けていただくことが効果的であろうという場合には,その要保護性に応じて少年院送致を考えるというケースが多いかと思います。   また,社会内での処遇が困難だというのは,例えば,家庭,親,保護者の監護能力が非常に低い,積極姿勢が見られないというような場合には,これはちょっと親元に戻したのでは改善更生が難しいでしょうということはございます。あるいは,交友関係を断ち切るということが少年の改善更生にとっては非常に大きな要素になるのではないかという場合には,非行事実が比較的軽微であっても,少年院送致を考えるというケースが多いのかなというふうに考えられるところであります。   ではさらに,どういう場合に短期間の処遇勧告をするかということについてもお尋ねだったかというふうに思います。これは,今申し上げたところからして,非行事実が比較的軽微だというところがポイントになるというよりは,要保護性の観点で考えるということになろうかと思います。その要保護性として考えているところの資質や環境上の問題に対しての手当てとして,法務省で短期間の処遇勧告が付いた場合に想定しておられる矯正教育課程があるかと思います。先ほどの資料10の御説明にもあったかと思いますが,短期の義務教育課程だったり,短期の社会適応課程だったりと。こういった教育が,正にその少年にフィットするなというふうに考えた場合には,そういう処遇勧告をしているということになろうかと思います。 ○小玉幹事 御質問の3点目ですけれども,犯した罪は比較的軽微でありますが,交友関係や家族関係などの環境面に課題のある在院者につきましては,例えば,個人別矯正教育計画において,その課題の克服を矯正教育の目標として定め,専用のワークブック教材等を用いた交友関係指導や家族関係指導などに重点を置いた矯正教育を行っているところです。   また,並行しまして,保護者に対する指導・助言を行うほか,社会復帰支援として,不良交友の相手方が帰住先地域にいるような場合などは,保護観察所などと連携して,出院後に予想される問題について処遇検討会を開催するなど,出院後の自立した生活に向けた支援に力を入れているところです。 ○池田幹事 施設収容処分の在り方についての検討に際して,今お伺いした少年院における矯正教育の実情を踏まえますと,仮に今回,施設収容処分を,再犯リスクが交友関係や家族関係といった環境面からもたらされるものを想定して設けるとした場合にも,その対象者には,現在少年院において行われている矯正教育に近い処遇を行うということが適切であろうと思います。その際に,その処遇が効果を上げるのに,どの程度の期間が必要となるかということについても,先ほどの資料でお示ししていただいております少年院における教育期間というものが参考になるのだと思います。   少年院における教育期間としては,短期課程の基準期間として,配布資料10によれば,20週ないし11週とされています。これに対して,ここで念頭に置いております,犯した罪が比較的軽微な者が少年院送致となるという場合において,先ほど村田委員から,本人の資質・環境等に問題がある場合が考えられると伺ったわけですけれども,そのようなものを,こうした短期の課程に適する,すなわち在院者の類型に示されている,その者の持つ問題性が単純又は比較的軽く,早期改善の可能性が大きいと評価するのは,一般的には難しい場合が多いのではないかというふうにも思われるところです。   また,現状でも,どのくらいの規模かということなのですけれども,短期の矯正教育課程の対象となっているのは,下の表によりますと,20%内外,18歳及び19歳の者でいえば20%を切る規模だとされています。仮に本処分として,短期の矯正教育課程と同程度の短期の施設収容処分を設けたとして,それで資質や環境等の問題に対処するための処遇期間として十分かというと,それは必ずしも多くの対象者に当てはまることではないのではないかというふうにも思われます。   かといって,では長期にすればよいかということになると,これは,通常は11か月又は12か月とされております。ただ,この議論の出発点にもありましたが,行為責任との関係を考えますと,短期であっても施設に収容すること自体が正当化され得るかという問題がありますので,長期とした場合には,その問題がより一層大きくなるのではないかといった問題があるのではないかということを指摘させていただきます。 ○川出委員 収容期間との関係で,少年院における教育期間と教育効果との関係について,2点ほど伺いたいことがあります。まず1点目は,部会で,短期間の収容であっても,その後,社会内処遇につなげていくという形であれば,効果が上がるのではないかという意見が出されていました。この意見について考える前提として,先ほど御説明があった現在の少年院での処遇期間というのは,仮退院した後に保護観察が行われることを前提に定められているかどうかという点を確認させていただきたいと思います。   2点目の質問は,処遇期間と教育効果とにどのような相関関係があるのかということです。最初に,通常の矯正教育課程と短期の矯正教育課程それぞれについて基準の期間が定められているという御説明がありましたが,これは,それぞれの過程において,それくらいの期間があれば,少年院での矯正教育が効果を上げて,仮退院が可能な状態になる,裏返していえば,そこまでの状態にもっていくためには,少なくともその程度の期間が必要だという考え方から設定されているんだろうと思います。   それを前提としたときに,例えば,現在定められている基準期間よりも短い期間を設定した場合に,教育効果はどうなるのかということをお聞きしたいと思います。一般的には,矯正教育の期間が基準よりも短くなってしまうと,教育効果は減少するのでしょうが,そうであっても,短い期間なりの教育効果は上がるのか,それとも,一定の期間がないと,教育効果というのは全く上がらないものなのでしょうか。   結局はケース・バイ・ケースなのかもしれませんけれども,実務の感覚としてどうなのかということを教えていただければと思います。 ○小玉幹事 まず,1点目ですけれども,結論的には,少年院における矯正教育の期間は,出院後に保護観察が行われることを考慮して設定されているところでございます。   2点目についてなのですけれども,まず前提としまして,少年院においては,少年の資質,特性,問題性の内容や程度等に応じて矯正教育の期間を定めておりまして,先ほど資料10「統計資料2」で御説明したような短期の矯正教育課程を指定された者についても,計画的かつ集中的に各種指導を行うことによって相応の効果を上げているものと考えています。その上で,収容期間と矯正教育の効果との関係についてですけれども,この点は,どのような教育目標を設定するか,あるいは個々の少年の資質,特性,問題性の内容や程度等によっても,これは様々でございまして,一概に定量的な形で申し上げることは困難ではあります。   ただ,その上で申し上げますと,少年自身が,まず少年院での生活に慣れて,矯正教育に前向きに取り組む姿勢を持ち,教官との信頼関係が構築されるまでには一定の期間を要すると思いますけれども,それを超えた,その後は収容期間に従って教育効果も上がっていくことが多いというのが,一般的な実務感覚ではないかと考えています。   この点,教育効果が上がり始めるまでに要する期間についても,これも個々の少年によって様々ではあるわけですが,例えば,それに満たないような収容期間が設定されるとすると,必要な教育効果を上げることが困難な場合もあるのではないかと考えられるところです。 ○川出委員 現在の基準期間を下回るような短期の収容をした場合に教育効果が上がるかどうかについては,どれくらいの期間を想定するか,さらには,少年によっても異なるので,一概にはいえないということだと理解しました。   その上で,外国では,短期の収容であっても教育効果は上がるという考え方に基づく制度が実施されているところもありますので,紹介をさせていただきたいと思います。アメリカでは,短期の施設収容と社会内処遇を組み合わせた制度として,「ショック拘禁」とか「ショックプロベーション」という制度があります。制度の大枠は,犯罪者に刑務所での生活という試練を経験させるために,まず短期間施設に収容し,残りの期間をプロベーションに付すというものです。   当初の短期の施設収容は,対象者にショックを与え,それを通じて再犯防止を図ることを目的として行われるもので,ブートキャンプと呼ばれる海兵隊の訓練を取り入れた施設が有名です。こういった制度を根拠に,短期の施設収容であっても,対象者の改善更生と再犯防止にとって効果があるという考え方が主張される可能性もあると思います。   他方で,アメリカのブートキャンプについては,改善更生と再犯防止の効果を疑問視するような調査結果も数多く公表されていますし,そもそも,現在検討している新たな処分の正当化根拠や法的性質等に鑑みて,対象者へのショック効果を狙いとした短期の施設収容処分を設けることが果たして適切なのかは疑問があります。当然のことですが,短期の収容処分であっても再犯防止の効果が上がるかどうかを考える場合にも,新たな処分の目的に沿ったかたちで,その効果を検討する必要があると思います。 ○酒巻分科会長 施設収容処分につきまして,ほかに御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,次に,「(2)保護観察処分」について意見交換を行いたいと思います。   「保護観察処分」については,検討課題として,「保護観察に付する場合」,「保護観察の期間」,「保護観察における処遇内容」,「保護観察の解除又は取消し」及び「対象者が保護観察の遵守事項に違反したときにとり得る措置」が記載されていますが,「保護観察処分」に関する事項であれば,これ以外の事項でも結構です。御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○保坂幹事 保護観察処分については,本処分の手続において,犯罪事実が認定できるという場合には,この概要のところにもありますけれども,法益侵害に対する非難が可能な限度で,要保護性に応じて保護観察処分というのが行われると,こういうことになるわけですけれども,その場合の本処分における保護観察については,現在,18歳及び19歳の者に対して行われている保護処分としての保護観察,いわゆる1号観察と同様の内容の社会内処遇が行われるということになろうかと思われます。   その上で,「保護観察の期間」というのが二つ目の「○」にあるわけですけれども,これについて,これだというのは直ちにはないわけですけれども,幾つかの考え方を私の方から提案したいと思います。   まず,一つ目ですけれども,現行法におきましては,20歳に達するまで,その期間が2年に満たない場合には2年とするとなっております。そうしますと,本処分におきましても同様に2年とするというのが,一つの選択肢として考えられるところです。他方で,少年に対する保護処分というのが,保護原理によって正当化されるということとは違いまして,本処分というのは,先ほど申し上げたように,非難が可能な限度で正当化されるということだといたしますと,想定しているような比較的軽微な罪を犯した者に対して,2年間の保護観察処分というのが適切といえるのかどうかということを更に検討する必要があろうかと思われます。   期間の点について,二つ目の考え方ですけれども,現行法上の保護観察付き執行猶予の期間というのがございます。比較的軽微な罪を犯した者に対して,非難可能な限度として類型的に正当化される保護観察の期間というのが,どういう程度のものなのだろうかというのを,現行法を手掛かりに考えてみますと,罰金以上の法定刑が定められている罪については,裁判で罰金が言い渡され,その際に執行猶予が言い渡されて,保護観察に付されるということがあり得るわけであります。その場合,50万円以下の罰金であれば,1年以上5年以下というのが執行猶予の期間でもあり,保護観察の期間ということになっているわけです。本処分の方が罰金という刑罰より軽いものだということを前提といたしますと,1年以上5年以下のところの1年というのを一つ,正当化できる,類型的に正当化できる期間として考え得るのではないかということでございます。   期間を具体的にどのような長さにするのかと併せまして,法律の規定や具体の審判のときにどのように定めるかということで,二通り考え得るのかなと思われますけれども,一つは,法律で類型的に必要かつ相当な期間というのを法定の保護観察期間として一律に定めておいて,あとは解除で対応するという考え方と,もう一つは,法律で上限だけを定めておいて,個別の事案ごとに家庭裁判所が具体的な期間を定めて,それを執行していくと,こういう二通りの考え方があろうかと思われますので,それについても議論する必要があろうかと思われます。 ○川出委員 保坂幹事が最後におっしゃった期間の定め方について意見を申し上げたいと思います。類型的に法定の保護観察期間を定めて,必要がなくなれば解除するという方式と,法律上上限を定めておいて,個々の事案ごとに家庭裁判所が保護観察期間を定める方式という2つの方式が示されましたが,このうち,後者の方式は,要するに,個々の事件ごとに,保護観察の期間を行為責任の枠内で定めるということですから,やっていることは刑事裁判の量刑に近くなるだろうと思います。   刑事裁判の量刑については,これまで裁判所が量刑判断を積み重ねてきた中で量刑傾向が形成されており,それに応じて,犯した罪にふさわしい刑の量定を行うことができています。これに対して,新たな処分として,保護観察期間を定めるという場合,それが,類型的に正当化される法定の保護観察期間というのをまず定めておいて,例外的に行為責任が軽微な事案については,より短い期間を定めるというのではなく,まさしく個々の事件ごとに行為責任の上限を判断するというものであるとすると,裁判所が,新たな処分について全く経験がない状態から,この行為責任にはどのくらいの保護観察期間が必要かということを定めなくてはならないことになります。   もちろん,時間がたてば,そうした判断が積み重ねられていって,一種の量刑傾向のようなものができるのかもしれませんけれども,それにはかなりの時間を要するだろうと思います。   その意味で,実務上かなり困難な事態が生じるのではないかという懸念もありますので,保護観察期間の定め方については,そういった点も考慮して検討する必要があるのではないかと思います。 ○池田幹事 期間について,もう少し付け加えさせていただきたいと思います。   処分の時点でどのように定めるかが,なかなか難しいというお話ですけれども,現状の少年に対する保護処分においては,家庭裁判所は処分時に,事件ごとに期間を定めるという仕組みにはなっておらず,他方で更生保護法により,保護観察を継続する必要がなくなったときに保護観察所長が保護観察を解除するという仕組みになっています。それは,どういう趣旨かということを考えてみますと,要保護性が解消されて,保護観察の必要がなくなる時期は,処遇の状況等の様々な要因によって変動するものであることから,処分の時点で家庭裁判所がこれを判断する仕組みとするのではなくて,処遇の状況等を踏まえて個別に解除するという仕組みとしたものと考えられます。   保護観察が処遇効果を上げるのに,どの程度の期間が必要かということが大事なわけですけれども,本処分において保護観察を付することとした場合に,先ほどから御指摘があるように,法律で一律にその期間を定めるか,上限の下で個別に裁判官が定めるかということは,別途検討することになるとしても,いずれにしても,保護観察を継続する必要がなくなったというときには,保護観察所長において保護観察を解除するということができる仕組みとすることが考えられるのではないかと思います。このように解除の制度を設けることで,対象者の保護観察への意欲を高めるという効果も期待できると思います。   保護観察を終了させる仕組みとしては,別に,家庭裁判所が取り消すという仕組みもあり得るわけでありますけれども,現行の少年法や更生保護法の規定するところと同様に,保護観察所長の判断によることとして問題ないのではないかと考えられます。 ○保坂幹事 対象者が保護観察の遵守事項に違反したときにとり得る措置として,資料に二つ,①,②とございます。①というのが,施設に収容して処遇を行うというもので,②というのが,保護観察の見直しのために少年鑑別所で調査,これは在宅,収容,両方書かれているわけですが,二通り挙がっております。   まず,①についてですけれども,保護観察をやってみて,遵守事項違反があったというときに,施設に収容して,その後処遇を行うという仕組みを設けるかどうかにつきましては,前にも議論があったかと思いますけれども,元々最初の審判の段階で正当化される処分なのかどうかということが問題になるわけです。つまり,最初の段階で正当化されないのが,途中の遵守事項違反があったときに正当化されるということはないと考えられますので,まずは先ほどの議論ですけれども,最初の処分,審判の段階で施設収容処分というのを設けることが相当なのかという点について,それを踏まえて,遵守事項違反があった場合についても検討する必要があろうかと思われます。   次に,②の方ですけれども,遵守事項違反があったときに,保護観察の見直し,例えば,更なる遵守事項をどう設定するのかといったことの調査のために少年鑑別所に収容して調査を行うということだろうと思われますけれども,これも同様に,まず審判なり処分の段階で,鑑別だとか調査のために少年鑑別所に収容すると,こういう仕組みを設けることが必要なのか相当なのかということが先決だろうと思われまして,その結果を踏まえて,この遵守事項違反の場合についても,検討する必要があろうかと思われます。 ○酒巻分科会長 保護観察につきましては,この程度でよろしいでしょうか。   次に,「(3)不処分」について御意見をお伺いしたいと思います。御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○池田幹事 少年保護事件においては,保護処分に付することができない又は保護処分に付する必要がないと認めるときには,不処分の決定をするとされておりまして,本処分も要保護性に応じて,改善更生に必要な処分を行うものですので,要保護性が小さくて,本処分に付する必要がないというときには,不処分とすることが考えられます。   また,例えば,犯した罪が極めて軽微であるということから,処分を行うことが正当化されない場合に不処分とする可能性についても,検討する必要があるのではないかと思います。 ○酒巻分科会長 この程度でよろしいでしょうか。   それでは,次に,「3 手続」の「(1)対象及び判断主体」について意見交換を行いたいと思います。   「対象及び判断主体」については,「検察官が訴追の必要がないとして公訴を提起しないこととした者を全て本処分の手続の対象にするか」,「家庭裁判所が刑事処分相当を理由として検察官に送致する仕組みを設けるか」及び「刑事裁判所が本処分相当を理由として移送する仕組みを設けるか」が記載されていますが「対象及び判断主体」に関連する事項であれば,これ以外の事項でも結構ですので,御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○保坂幹事 対象及び判断主体の点で,まず,一つ目の「○」の検討課題ですけれども,検察官が現行法で行っていることとして,いわゆる要保護性の判断というのを行っておりませんし,その調査のための専門の職員というのも抱えておらないわけであります。   したがいまして,検察官において,まず訴追の必要性がないと判断した上で,さらに,要保護性の有無,程度によって,本処分の手続に乗せるかどうかというのを割り振るという仕組みというのは適当ではないと思われ,検察官は訴追の必要性があるかどうかだけを判断をし,検察官が訴追の必要性がないと判断したものは,この家庭裁判所による本処分の手続の対象とするというのが適当なのだろうと考えられます。   そして,二つ目の「○」と三つ目の「○」も同じ理由になろうかと思われますけれども,家庭裁判所が刑事処分相当を理由として検察官に送致する仕組みですとか,あるいは刑事裁判所が,本処分が相当だということで移送する仕組みについてですけれども,成人の刑事事件の訴追の必要性の判断というのは,検察官が専権として判断しているわけであります。そうすると,本処分の手続においても,検察官が判断するというのが適当だろうと考えられます。すなわち,刑事処分の必要があるものはその対象とするのが本処分の基本的な考え方ですので,その判断というのは検察官がやるということが適当なのだろうと思われます。 ○酒巻分科会長 ほかに御意見はございますでしょうか。 ○山﨑委員 私も今,最初におっしゃった点について,検察官が訴追をしない場合には,全て新たな処分というふうに考えるべきだろうと考えております。   その上で,なのですけれども,刑事裁判所が仮に審理をしていく中で,検察官の判断の時点よりも更に様々な資料が出てきたときに,これは刑事裁判において,例えば単純執行猶予なのか,保護観察付き執行猶予なのか,その辺をどう改革するかといったこととの関連ではあるのですけれども,そちらで考え得る刑事処分よりも新たな処分の方が適当だというような場合があったときに,そちらに移送するという可能性を全く考えないでいいのかどうかというのは,若干まだ私も詰め切れていないところです。この点は恐らく,執行猶予制度をどういうふうにこれから改革するかといったこととの兼ね合いで,それぞれ処分の重さをどう考えるか。新たな処分と単純執行猶予と保護観察付き執行猶予の重さをどう整理できるのかというところにも関係するので,一応その点も,また考えたいと思っております。 ○酒巻分科会長 ほかに,今の点につきまして,御意見ございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,次に,「(2)要保護性の調査」のうち,「ア 家庭裁判所調査官の調査」について意見交換を行いたいと思います。   「家庭裁判所調査官の調査」については「調査事項及び調査手法」,「教育的措置(保護的措置)」及び「試験観察」が記載されていますが,「家庭裁判所調査官の調査」に関連する事柄であれば,これ以外の事項でも結構ですので,御意見がある方は挙手をお願いいたします。 ○保坂幹事 これまで何度も指摘されてきたところではございますけれども,家庭裁判所の調査官の方々は,少年の保護事件におきまして,専門的な能力を活用して調査を行っておられるわけで,その能力,経験というのを,本処分においても十分に活用すべき必要があるのだろうと考えられます。   その家庭裁判所調査官の調査につきまして,少年保護事件における調査と特に異なるものとする理由もなかろうかと思いますので,手法なども含めて,同様の手法を用いて,同様の事項について調査を行うことができるとするのが適切であろうと考えられます。   それから,資料の方に二つ目の「○」として書いてあります「教育的措置(保護的措置)」という点ですが,これも家庭裁判所におきまして,裁判官や調査官の方が行っておられる働き掛けとしての教育的措置,保護的措置についても,特に少年保護事件の場合と異なるものとする必要もないと考えられますので,同様でよろしいのかなと思っております。 ○酒巻分科会長 この点について,ほかに御意見ございますか。   それでは,「イ 少年鑑別所の鑑別」について,意見交換を行いたいと思います。「少年鑑別所の鑑別」については,「在宅による鑑別」及び「施設収容する鑑別」が記載されていますが,「少年鑑別所の鑑別」に関連する事項であれば,これ以外の事項でも結構です。御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○池田幹事 鑑別に関しまして,ここで挙げられている在宅による鑑別の内容について,事務当局から御説明を頂けますと,大変有り難く存じます。 ○小玉幹事 まず,少年審判手続におきまして,少年鑑別所が行う鑑別には,少年鑑別所送致の観護措置がとられた者に対する収容鑑別のほかに,今御質問がありました,観護措置がとられず在宅のまま行う在宅鑑別があります。   少年に対する鑑別の必要性や方法については,家庭裁判所が御判断されることですけれども,家庭裁判所から在宅鑑別を依頼される事例の特徴としては,例えば,少年の抱える問題性全般の詳細な鑑別を行う必要性までは認められないものですとか,特定の事項に関する鑑別を行うことで足りるものですとか,おおむね安定した学校生活や就労生活を送っており,観護措置をとることで今後の生活設計等に著しい不利益を生じさせるおそれが懸念されるものなどが挙げられるかと思います。   この在宅鑑別にも,少年ごとに行う個別方式と,一部の少年鑑別所において実施されているものですが,交通事犯者に対して運転態度検査を行う集団方式,これは家庭裁判所が行う交通安全講習の一環として実施されているものですが,この二つがありまして,平成28年の実施件数でいいますと,個別方式が169件,集団方式が174件で,合計は343件になります。   このうち,個別方式について御説明します。   まず,鑑別の実施場所は,少年鑑別所であることが多いですが,少年鑑別所の心理技官が家庭裁判所に出張して実施する場合もあります。このような鑑別の実施の際には,一般的に,少年とともに保護者も来所することが多いです。   面接や検査等の所要時間や回数ですが,1回当たり2時間前後で,2,3回に分けて実施することが多いです。複数回に分ける理由としてですが,例えば,初回の面接では鑑別担当者との関係性が築かれておらず,拒否的あるいは防衛的な構えが生じやすいこと,あるいは,長時間にわたる面接や複数の心理検査の実施は少年の負担が大きく,集中力が薄れるなどの弊害が生じやすいこと,あるいは,検査結果のフィードバックを行い,その際の少年の認識や反応等を踏まえながら面接を進めることが,有用な情報を得るために必要であることなどが挙げられるかと考えます。   また,調査方法ですが,少年については,家族関係,生育歴,事件の概要などを自ら記載させたり,面接や各種心理検査を実施したりして調査を行っています。また,保護者に対しても,少年の生育歴や既往歴,事件についての保護者の認識などを記載してもらったり,協力が得られる場合には,少年の発達状況に関する検査に答えてもらったりするなどの調査を行っています。   このような調査を行った上で,鑑別結果通知書を作成して,家庭裁判所に提出するというのが,在宅鑑別の実情ということになります。 ○池田幹事 本処分の対象者は,比較的軽微な罪を犯して,訴追の必要がないと判断されている者ですので,その要保護性も,先ほど村田委員からの御説明では,一概にはいえないということではございますけれども,多くの場合は小さいといえるとすると,家庭裁判所調査官の方によって調査が行われるのであれば,少年鑑別所における鑑別まで必要な事件は多くないとも考えられるところです。その上で,仮に,少年鑑別所の鑑別が必要であるという場合も,今御説明いただいた手法もあるということですから,施設収容するのではなくて,在宅による鑑別を活用するということが考えられると思います。   他方で,要保護性を判断するためには,継続的な行動観察を伴うということが必要であるということからすると,施設に収容して鑑別を行う必要があるという者が存在することも,十分想定されます。したがいまして,少年鑑別所に収容して行う鑑別について,その必要がないということも言い切れないというように思います。   しかし,こうした仕組みは,対象者の権利を制約するものでありますので,必要性や相当性を十分に検討する必要がありますし,設けるとした場合の収容期間や,収容の判断を行う際の手続や,あるいは収容の判断に対する不服申立てについても検討を要するという課題があるように思います。 ○酒巻分科会長 ほかに,イの鑑別,あるいは,アを含めて要保護性の調査に関して御意見ございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   次に,「(3)その他」について意見交換を行いたいと思います。「(3)その他」には,「調査の端緒」から「その他」まで14の検討課題が掲げられていますが,項目の数が多いので,審判が開始される前の手続と審判が開始された後の手続とに分けて,ひとまず「調査の端緒」から「審判不開始」までに記載されている七つの検討課題について意見交換を行いたいと思います。時間の関係もありますが,まずはこれらの検討課題について,御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○池田幹事 調査の端緒について,まず申し上げます。   現行少年法では,審判に付すべき少年を発見した場合には,家裁に通告するとか,あるいは報告するといった規定が置かれていて,これが調査の端緒になるとされています。これに対して本処分は,若年とはいえ,成人を対象とするものですので,成人である以上は,罪を犯せば,本処分ではなくて,捜査やその後の検察官による訴追を経て刑事処分の対象となるというのが原則だということになります。   逆に言えば,捜査の結果,検察官が訴追の必要性を判断し,そこで訴追が必要でないとされた者を対象として,検察官がそのことを家庭裁判所に示すような何らかの手続がとられた場合にのみ,本処分のための調査を行うとすることが適切ではないかと思います。 ○保坂幹事 二つ目の「○」と三つ目の「○」について,併せて申し上げたいと思います。   まず,不出頭に対する措置の在り方ですけれども,少年法は第11条で,呼出状と同行状というものを発することができるという規定がございます。本処分の手続におきましても,調査なり審判なりへの出頭確保というのは重要でありますので,そのための方策を検討しておく必要があろうかと思われます。その上で,先ほども議論になりました少年鑑別所に収容する制度の必要性,相当性とも関連するかと思われますので,その点とも兼ね合いで検討しておく必要があろうかと考えられます。   それから,三つ目の「○」ですけれども,現行の少年法におきましても,適正な処分を定めて,終局の決定を行うためには,事実認定の正確性というのが大前提になります。したがいまして,少年法におきましても,刑事訴訟法にあるのと同様の証拠収集手段としまして,証人尋問,鑑定,通訳,翻訳というのと検証,押収,捜索というのが規定されているわけです。   本処分におきましても同様に,正確な事実認定というのが大前提であることを考えますと,先ほど申し上げたような手法を用いて証拠を収集するということが必要になる場合は当然考えられるわけですので,今申し上げた証拠収集手段をとることできるようにしておくということが必要だろうと考えられます。 ○池田幹事 検察官の関与について申し上げます。   現行少年法においては,検察官関与制度が設けられておりまして,その趣旨としては,三つほど挙げられているところであります。非行事実の認定上問題があるといったような事件については,証拠の収集・吟味において,少年側以外の公益的な観点を含む多角的な視点を確保するということ,また,事実の解明の過程で,裁判官と少年側との対じ状況を回避させる措置が必要だということ,そして,事実認定手続を一層適正化することで,少年審判手続における事実認定に対する被害者を始めとする国民の信頼を確保するという,この三つが挙げられておりまして,一定の要件を満たした場合に,家庭裁判所の決定で,少年審判に検察官が関与するとされております。   他方で本処分について,同等の検察官関与制度に相当する制度を設けるかということについては,少年法におけるそれらの趣旨や本処分の内容,対象者等を踏まえて,その必要性や相当性を更に検討するということになるのではないかと思います。 ○川出委員 記録・証拠物の閲覧・謄写ですが,刑事事件では,裁判所にある記録については,弁護人が刑事訴訟法上,閲覧及び謄写をすることができ,弁護人がいない被告人については,公判調書を閲覧するということができることになっています。   他方,少年事件については,付添人については,審判開始決定があった後は,保護事件の記録又は証拠物を閲覧できるのですが,少年本人には閲覧権は認められておりません。その理由として考えられるものの一つは,少年の健全育成という観点から本人に見せない方がよい資料があるということ,もう一つは,少年本人が見る可能性があるということになると,要保護性に係る調査において,第三者の協力が得られにくくなるということだろうと思います。   その上で,新たな処分についての記録や証拠物をどう扱うべきかですが,最初の本人に見せない方がよい資料もあるという点は,この処分は成人になっている者が対象ですので,必ずしも妥当しないだろうと思います。他方で,要保護性に係る調査について協力が得られにくくなる可能性があるという点は,新たな処分に関しても同じように妥当します。   他方で,そうした要請があるとはいえ,新たな処分というのは,保護処分とは違って,成人である対象者が犯罪を犯したことに対する非難を根拠として科す処分ですので,処分の根拠となっている資料を本人が見ることができないということが,果たして妥当なのかという問題があります。その点と調査の実効性の担保という要請の折り合いをどのように付けるかが,ここでの検討課題であろうかと思います。   それから,形式の問題として,法律で規定するのか,最高裁判所の規則にするのかも検討課題になろうと思います。 ○滝澤幹事 資料に記載いただいているとおりでございますけれども,少年保護事件の関係では,犯罪被害者等の権利利益の保護のためということで,いろいろな制度が定められているということでございます。   本処分は,これまで検討されているとおり,比較的軽微な罪を犯した者に対してということになっておりますので,被害者の感情もいろいろだろうというふうには思いますけれども,それでも様々なケースはあるかと思いますので,被害者の権利利益の保護を図る必要が全くないとまではいえないのではないかと思います。このため,要する場合に活用できるようにということで,制度を設けることについても御検討いただくべきではないかというふうに思います。 ○池田幹事 審判の不開始について,現在,少年保護事件において,家庭裁判所が調査の結果,審判に付することができず又は審判に付するのが相当でないと認めるときは,審判を開始しない旨の決定をしなければならないという規定が置かれております。   本処分においても,同様の要件の下で,審判を開始しない旨の決定をすることとすることが考えられるわけですが,他方で,本処分の対象でない者が本処分の手続の対象となった場合,例えば,対象年齢を下回る18歳未満の者や,あるいは逆に,仮に本処分の対象となる者の年齢に上限を設けるとした場合には,それを超える年齢の者について,手続の対象となった場合にどのような決定を行うかということも,検討の必要があるものと思います。 ○酒巻分科会長 ほかに御意見ございますでしょうか。   よろしいですか。   「若年者に対する新たな処分」の検討課題は,まだこの先の「審判の方式」等について残っておりますが,既に予定時間を経過しており,この後の予定のある方もおられますので,本日の意見交換は,ここまでにしたいと思います。よろしいでしょうか。            (一同異議なし)   本日意見交換を行った論点について,本日中に他に述べておきたい御意見があれば伺いたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,御意見もないようですので,本日の審議はこれで終了いたします。   「若年者に対する新たな処分」につきましては,新しい制度を設けるということで検討課題が多くなっております。本日,意見交換を行うことができた課題もありますので,事務当局においては,本日の意見交換も踏まえて,分科会において具体的な検討を進めることに資するように,考えられる制度の概要及び検討課題について更に改訂を検討していただきたいと思います。   今後の予定について,事務当局から説明をお願いします。 ○羽柴幹事 次回の第2分科会の会議は,3月28日水曜日午後1時30分から,場所は法務省第1会議室で行います。 ○酒巻分科会長 本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することとさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。            (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。本日は,どうもありがとうございました。 -了-