法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第1分科会第6回会議 議事録 第1 日 時  平成30年3月7日(水)   自 午後 1時24分                        至 午後 3時 9分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  1 刑の全部の執行猶予制度の在り方について         2 社会内処遇に必要な期間の確保について         3 自由刑の在り方について         4 若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内           容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充           実について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○隄幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第1分科会第6回会議を開催いたします。 ○佐伯分科会長 本日は御多忙中のところ,お集まりいただき,ありがとうございます。   まず,事務当局から,資料について説明をお願いいたします。 ○隄幹事 本日,配布資料として,配布資料16「刑の全部の執行猶予制度の在り方(検討課題等)」,配布資料17「執行猶予期間中に犯した罪について2年超3年以下の懲役・禁錮(実刑)が言い渡された事案」,配布資料18「社会内処遇に必要な期間の確保(検討課題等)」,配布資料19「自由刑の在り方(検討課題等)」,配布資料20「法定刑として禁錮が定められている罪」,配布資料21「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実(検討課題等)」を配布しております。   これらの資料は,ファイルにとじずに平積みしています。資料に不足がある方は,いらっしゃいますでしょうか。   配布資料の内容については,後ほど意見交換の際に御説明いたします。 ○佐伯分科会長 それでは,審議に入ります。   本日は,当分科会第4回会議,第5回会議での委員・幹事の方々からの御意見を踏まえ,更に議論が必要と考えられる検討課題等について,引き続き意見交換を行うこととしたいと思います。   論点表に掲げられた四つの論点の議論の順番について,まず,社会内処遇に関係する論点である「刑の全部の執行猶予制度の在り方」及び「社会内処遇に必要な期間の確保」について,順に意見交換を行い,次に,施設内処遇に関する論点である「自由刑の在り方」及び「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実」について,順に意見交換を行うこととしたいと思います。   このような検討の進め方でよろしいでしょうか。                 (一同異議なし)   それでは,本日は,初めに,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」についての意見交換を行いたいと思います。   既に配布いたしました資料12「刑の全部の執行猶予制度の在り方(検討課題等)」を基に行われた議論を踏まえつつ,更に具体的な検討を行うことに資するよう,事務当局に,資料12の記載を加筆・修正したものを作成してもらいました。   まず,事務当局から,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」に関する資料の説明をお願いいたします。 ○隄幹事 本日,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」に関する資料として,配布資料16「刑の全部の執行猶予制度の在り方(検討課題等)」を配布しております。   配布資料16について御説明いたします。   資料16は,当分科会第4回会議で配布した資料12を基に,その際の議論を踏まえつつ,加筆・修正を行ったものです。   資料12からの主な変更点について御説明します。   まず,第1の「保護観察付き執行猶予中の再犯についての執行猶予」については,「考えられる制度の概要」に,要件として,「情状に特に酌量すべきものがあるとき」を記載しました。   検討課題については,この要件に関する議論の状況を踏まえ,「『情状に特に酌量すべきものがあるとき』とは異なる要件とするべきか」と記載しました。   また,「運用に与える効果・影響」として,保護観察付き執行猶予を言い渡す運用の在り方などの議論の状況を踏まえ,「初度の執行猶予を言い渡す際に保護観察に付するかどうか」と,「単純執行猶予の期間内に罪を犯した者に再度の執行猶予を言い渡すかどうか」を追加して記載しました。   第2の「再度の執行猶予を言い渡すことができる刑期」については,「考えられる制度の概要」に,再度の執行猶予を言い渡すことができる懲役又は禁錮の刑期の上限について,2年以下とするA案と,3年以下とするB案を記載しました。   第3の「執行猶予を取り消すための要件の緩和」については,検討課題の「要件」として,「遵守事項違反があった場合,執行猶予を取り消すことができるものとする」A案と,「遵守事項違反があった場合,情状が軽いときを除き,執行猶予を取り消すことができるものとする」B案を追加して記載しました。   第4の「猶予期間経過後の執行猶予の取消し」については,「考えられる制度の概要」に,取消しの要件として,「更に犯した罪について猶予の期間内に公訴が提起されたこと」と,「執行猶予の言渡しを取り消すべき場合において,検察官の請求が一定の期間内に行われたこと」を追加して記載しました。   また,執行猶予の取消しの在り方について,「猶予の期間内に更に犯した罪について,禁錮以上の刑に処せられたときは必要的なものとし,罰金に処せられたときは裁量的なものとする」ことも追加して記載しました。   第5の「資格制限の排除」については,修正した点はありません。   配布資料16の説明は以上です。 ○佐伯分科会長 どうもありがとうございます。   ただいまの御説明に,この段階で,御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見のある方は挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。   では,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」について,配布資料16に沿って意見交換を行いたいと思います。   まずは,「第1 保護観察付き執行猶予中の再犯についての執行猶予」について,意見交換を行いたいと思います。   これまでの議論を敷えんした御意見でも結構ですし,違った視点からの御意見でも結構ですので,御意見がある方は挙手をお願いいたします。 ○今井委員 検討課題の二つ目の「○」,「運用に与える効果・影響」について,少し,質問も含めて意見を申し上げたいと思います。   前回の分科会におきまして,この「運用に与える効果・影響」に関しまして,現行法の下での事案処理について,保護観察付き執行猶予とするのか,それとも単純執行猶予とするのかにつきまして,対象者の行為責任の重さを基準に判断しているのかという質問あるいは問題提起があったと思います。   そこで,その点は,今回この案を考える際の前提ともなろうと思いますので,裁判所の幹事の方に,執行猶予が考えられる事案につきまして,対象者,有罪となる人の行為責任として,実刑に近いものを保護観察に付しているのか,もしもそうでないのならば,どのような判断によって保護観察付き執行猶予が選択されているのか,お分かりの範囲で御教示いただければと思います。 ○福島幹事 繰り返し申し上げていますように,量刑判断は個々の事件における各裁判体の判断事項ということになりますけれども,一般的なところを少し申し上げますと,保護観察付きの執行猶予にするかどうかを考えるときの考え方として,基本的には,執行猶予が相当な事案のうち保護観察に付する必要があるもの,すなわち,被告人の資質や環境等を考慮して,本人の改善更生のために保護観察所による補導援護,指導監督が必要と考えられるものについて,保護観察付き執行猶予にしているというのが現状ではないかと理解しています。   もちろん,事件は様々ですので,個々の事件を見れば,中には別の捉え方ができ得る判断もあるのかもしれませんけれども,保護観察に付するかどうかを検討する際の基本的な考え方が,今私が申し上げたようなものであるということについては,恐らく多くの裁判官が共有しているのではないかと理解しています。   また,仮に今議論されているような見直しが行われた場合に,ではこれがどうなるのかということについても申し上げますと,今議論されている見直しの内容が保護観察制度の大幅な改正ではないということからしますと,恐らく,先ほど私が述べたような基本的な考え方は変わらないのではないかと,私としては思っているところです。 ○今井委員 今の御発言を伺っておりまして,資質,環境という言葉がありましたけれども,執行猶予とする際には,有罪となった個々の対象者が置かれている環境を踏まえて,ケース・バイ・ケースに判断されているという認識を持ちました。敷えんいたしますと,恐らくそれは,行為責任というよりは,保護観察の目的であります,犯罪者の改善更生を図る点に重点があるのだろうと思います。その上で,私も福島幹事と同じ意見ですが,現在考えられている制度を作ったといたしましても,現行の保護観察に対する判断基準が変わることはないのだろうと思います。   もっとも,現行の刑法の下では,保護観察に付する必要があると思われる者も,保護観察付き執行猶予中の再犯について,禁錮以上の刑に処すべきときには,法律上の要請がありますので,いかなる事案でも再度の執行猶予を言い渡すことはできないことになります。   そこで,推測いたしますと,初度の執行猶予を言い渡す際には,保護観察に付することを,ややもすると,ちゅうちょされる場合もあるやもしれないと思います。そういった考慮から,単純執行猶予を言い渡した事案があったかもしれないわけでありますけれども,ここで検討されている制度を設けることによりまして,そのような,万が一あり得たちゅうちょの部分が解消されますと,より適切に,保護観察の目的であります対象者の改善更生,社会復帰のための処遇を確保できるのではないかと思ったところであります。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。   第1の点については,このぐらいでよろしいでしょうか。   それでは,次に,「第2 再度の執行猶予を言い渡すことができる刑期」について,意見交換を行いたいと思います。   この検討に当たっては,第1分科会第4回会議で御質問がありました,執行猶予中に罪を犯し,2年超3年以下の懲役又は禁錮が言い渡された事案について,調査等の結果の御説明を踏まえて議論いただくことが有益と考えられますので,事務当局からの説明をお願いいたします。 ○隄幹事 この点に関する資料としまして,配布資料17「執行猶予期間中に犯した罪について2年超3年以下の懲役・禁錮(実刑)が言い渡された事案」を配布しております。   配布資料17について御説明します。   この資料は,平成28年中に第一審において判決が確定し,かつ,判決確定時において執行猶予の期間内であったもののうち,執行猶予期間中に犯した罪について,2年超3年以下の懲役又は禁錮(実刑)が言い渡された事案を調査し,宣告刑と罪名ごとに一覧表にしたものであり,併合罪の事案と一罪の事案に分け,後者は網掛けにしております。   まず,一罪とされた19件の事案について,刑法犯と特別法犯に分けて説明します。   刑法犯についてですが,詐欺又は詐欺未遂は6件あり,いずれも,いわゆるオレオレ詐欺などの特殊詐欺の既遂又は未遂のものでありまして,懲役3年の刑が言い渡されたものが1件,懲役2年6月の刑が言い渡されたものが3件,懲役2年2月の刑が言い渡されたものが2件です。   業務上横領は2件あり,3ページ目の66番は,執行猶予中の前科が同種のものであり,複数回にわたり売上金約280万円を着服したもの,5ページ目の116番は,売上金約150万円を着服したものです。   強制わいせつは2件あり,2ページ目の42番は,8歳の被害者に口淫させるなどしたもの,3ページ目の70番は,7歳の被害者の陰部を触るなどしたものです。   傷害は2件あり,3ページ目の67番は,執行猶予中の前科が同種のものであり,スナックで居合わせた客をグラス等で殴打し,回復見込みのない左眼球破裂等の傷害を負わせたもの,5ページ目の114番は,好意を寄せていた職場の同僚女性に対する名誉毀損により執行猶予中,別の同僚女性にスタンガンを数回押し当て,加療約3週間の右上腕・大腿電撃創等の傷害を負わせたものです。   強盗未遂は,2ページ目の27番の1件であり,コンビニ強盗の未遂のものです。   次に,特別法犯ですが,銃砲刀剣類所持等取締法違反・火薬類取締法違反の事案は,3ページ目の65番の1件であり,共謀して拳銃実包240個を所持したものです。   児童福祉法違反の事案は,2ページ目の26番の1件であり,15歳の実子と性交したものです。   常習特殊窃盗の事案は,4ページ目の94番の1件であり,侵入窃盗4件を行ったものです。   覚せい剤取締法違反の事案は3件あり,2ページ目の41番は,営利目的で覚せい剤約9グラムを所持するとともに,自己使用目的でコカインも所持したもの,5ページ目の112番は,同種前科2犯を有する被告人が覚せい剤の自己使用により保護観察付き執行猶予となり,その約半年後に覚せい剤の使用を再開し,更にその約2か月後,起訴に係る覚せい剤を自己使用したもの,5ページ目の115番は,執行猶予中の前科が同種のものであり,覚せい剤を自己使用したにもかかわらず,不合理な弁解をして否認したものです。   続いて,併合罪とされた事案についてですが,併合罪は複数回罪を犯したものですので,一般的には,一罪よりも行為責任が重いと考えられます。   もっとも,併合罪であっても,犯した複数の罪の犯情がいずれも軽い場合など,執行猶予が相当であるものも一応考えられますので,罪の性質上,類型的に行為責任が軽いと考え得るものについて説明しますと,一覧表には,故意犯より行為責任が軽いと考えられる過失犯が含まれているものが4件あります。   この過失犯の罪名は,いずれも過失運転致傷ですが,いずれも併合罪として故意犯も犯しており,1ページ目の14番は,無車検・無保険の車を運転して事故を起こした後,救助や警察への申告をせずに逃走したほか,転売目的のタイヤ窃盗1件,転売目的の化粧品の万引き1件,覚せい剤自己使用1件を行ったもの,3ページ目の53番は,事故後,救助や警察への申告をせずに逃走したほか,酒気帯び運転1件,酒酔い運転1件,万引き1件を行ったもの,同じく3ページ目の55番は,事故後,救助や警察への申告をせずに逃走したほか,速度超過1件,覚せい剤の自己使用1件,覚せい剤の所持1件を行ったもの,同じく3ページ目の62番は,事故後,救助や警察への申告をせずに逃走したものです。   また,窃盗には,様々な類型の事案があり,犯情も様々なものがあり得ますので,併合罪とされた事案のうち,窃盗のみを犯したものについて説明しますと,2ページ目の28番は,換金目的で工事現場からの発電機窃盗7件を行ったもの,3ページ目の51番は,車両荒らし2件,置き引き1件,他人名義のキャッシュカードを用いた現金引き出し5件を行ったもの,4ページ目の80番は,パチスロ店内のメダル窃盗2件,自転車窃盗5件を行ったもの,4ページ目の91番は,他人名義のキャッシュカードを用いた現金引き出し3件を行ったもの,5ページ目の98番は,換金目的でドラッグストアから生薬製剤等の万引き3件を行ったものです。   配布資料17の説明は以上です。 ○佐伯分科会長 どうもありがとうございました。   ただいまの御説明に,何か御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,以上の御説明を踏まえて,「第2 再度の執行猶予を言い渡すことができる刑期」について,意見交換を行いたいと思います。   これまでの議論を敷えんした御意見でも結構ですし,今の説明を踏まえた御意見でも結構ですので,御意見がある方は挙手をお願いいたします。 ○橋爪幹事 私は,以前の分科会で,A案,B案,いずれも一定の合理性があり,これは非常に難しい問題であるとコメントをしたかと存じますが,その後,改めて考えまして,結論としましては,A案,すなわち,刑期の上限を2年とすることが適当ではないかと考えるに至りましたので,その理由を申し述べたいと存じます。   この問題につきましては,執行猶予期間中でありながら,前刑の感銘力が十分に機能せず再犯に至ったという事情を,どのように評価するかが重要であるように思います。すなわち,執行猶予付きの有罪判決は,絶対に再犯を犯してはいけないという強い警告的機能を有しています。その分だけ,一般人以上に反対動機の形成を容易にする状況があったにもかかわらず,あえてその警告を無視して再犯に至ったという事情は,やはり行為責任を加重し,本人に対する法的非難を高める要素であると思われます。刑法第57条が累犯加重の規定を設けているのも,基本的には同趣旨の観点からの刑の加重であると理解しております。   このように,執行猶予期間中の再犯につきましては,行為責任が加重され,その結果,執行猶予を付す余地が限定的になると解すべきである以上,A案が適当であると考えます。   このような理解に対しましては,仮に執行猶予期間中の再犯については行為責任が加重されるとしても,その加重された行為責任を考慮した上で,なお,例えば,懲役3年の量刑評価が適当とされた場合については,初犯であって同様に懲役3年の評価に至った場合と,責任非難の程度においては相違がないことから,この場合についても,執行猶予を付す余地を肯定すべきであるという反論もあり得るかと存じます。すなわち,再犯による行為責任の加重というのは,個別の量刑評価の判断資料にすぎず,執行猶予が可能な刑期の上限それ自体を画する概念ではないという理解です。このような観点からは,むしろこの問題については,初度の執行猶予の場合と同様の取扱い,すなわちB案を採用すべきという理解にも,一定の理由があるかとは存じます。   しかしながら,執行猶予期間中に再犯に至った者については,行為責任が類型的に重くなるという観点は,個別の行為者について量刑評価をするときだけではなく,刑罰に関する制度を設計する際にも,言わば重要な立法事実として意味を持ち得ると考えるべきです。すなわち,執行猶予期間中の再犯については,行為責任が加重され,結果的に執行猶予を付すべき事案が類型的に減少するという事実は,再度の執行猶予が可能な刑期の上限を設定する際にも十分に反映すべきであると考えます。   また,再度の執行猶予については,判断が厳格になるであろうこと,したがって,再度の執行猶予の可能性については安易な期待をすべきではないということを立法段階でメッセージとして具体化することにも,一定の理由があるように思います。   これらの事実を考えますと,やはりA案の方が適当であると考えます。   なお,もう1点,別の角度から申し述べたいと存じます。   もちろん,A案を採用した場合,裁判所が執行猶予を付すことが可能な範囲は限定されることになります。しかしながら,窃盗罪,詐欺罪,傷害罪などにつきましては,法定刑の下限が低いことから,裁判所が再度の執行猶予が適当であるとお考えの事例については,A案からも,懲役2年という量刑評価をした上で,再度執行猶予を付すことは十分に可能であります。したがって,このように,法定刑の下限が低い犯罪につきましては,再度執行猶予を付けたいにもかかわらず,それが付けられないという問題は,A案を採用しても,ほとんど生じないように思われます。   これに対して,問題になり得るのは,法定刑の下限が懲役5年,6年などの犯罪類型です。例えば,強盗罪,現住建造物等放火罪,強制性交等罪などが典型的です。これらの犯罪につきましては,酌量減軽を行えば,懲役3年以下にすることはできますが,懲役2年以下にとどめる余地がないことから,この場合については,A案とB案とで,具体的な結論に相違が生じてまいります。そして,これらの重大犯罪につきましては,初犯であれば執行猶予を付すことが相当な事案があるとしましても,執行猶予期間中に再犯に至った場合についてまで,再度の執行猶予を付すべき事案は,ほとんど考え難いように思われます。   このように,執行猶予期間中の重大犯罪については再度執行猶予を付すべきではないというメッセージを示すことにも重要な意義があると考えますと,このような観点からもA案が適当であるように考えます。 ○加藤幹事 ただいまの橋爪幹事の御指摘は,いずれも説得力のあるものだと思い,伺いました。   一方で,今日御紹介のあった資料17をどう見るかという観点から意見を申し上げます。執行猶予期間内に罪を犯して,2年超3年以下の懲役刑が宣告された事案が紹介されているわけでありますが,一般的には,再度の執行猶予にはなじみにくい事案がそろっているという印象です。   この表の中には,表に載っている執行猶予中に犯した事件だけでも,執行猶予か否かを検討するまでもなく実刑になってしまうものというものが含まれているようにも思われますし,また,個別の事案を見てみないと,御紹介のあった概要だけで判断するのは難しいものもありますけれども,類型的に考えてみると,現行刑法第25条第2項の理解として,前々回も申し上げましたように,犯情が軽くて実刑を科す必要がないというものであって,更生の見込みが大きいというものが,再度の執行猶予に適するとされているようであります。しかしながら,御紹介された事例を見ますと,まず,相対的に犯情が軽いと思われる一罪であるとされるもの,資料の表では網掛けのものでも,そのようなものとは認めにくいものが多いのではないかと考えられます。   御紹介のあった事案の中でも,特別法犯のうち,銃刀法違反,児童福祉法違反,常習特殊窃盗などは,それだけでも実刑があり得るような事案でありましょうし,覚せい剤取締法違反の事案についても,不合理な弁解を弄して否認をしているというようなものが,再度の執行猶予に適するとは考えられず,また,そのほかの事案についても,常習性が顕著に認められる事案など,犯情が軽くて更生の見込みが大きいとは言い難いものなのではないかと思われます。   一方,刑法犯についても,執行猶予中に特殊詐欺に及んだというような事案が,先ほど申し上げたような意味で,再度の執行猶予に適するとは考え難いですし,傷害の事案についても,いずれも犯行態様が悪質であったり,傷害の程度が重いなど,犯情が軽いとは言い難いものであったと思われます。   加えて,複数の犯罪をしている,併合罪になっているというものについて見ますと,そちらはいわんやといったようなものなのですが,典型的に再度の執行猶予が想定されるであろう過失犯についても,単純に過失運転致死傷のみのものが,懲役・禁錮2年超3年以下という枠に入ってくるものはないようでありまして,いずれも別に故意犯を犯しているものであるということを考えますと,しかもその故意犯が,おおむね交通三悪といわれるようなものであるということを考えますと,これらの事案が再度の執行猶予に適する事案とは思われないわけです。   さらに,窃盗についても御紹介がありましたが,犯情が様々であるということを前提といたしましても,いずれの窃盗も職業的・営利的な事案・態様のものと考えられますので,これら御紹介のあった事案については,いずれにしても,再度の執行猶予が相当な事案とは思われなかったと思われます。 ○今井委員 私も今の加藤幹事と同じような意見を持ちました。この資料17,大変貴重なものでありがとうございます。これを見ますと,直近の運用のデータなのでありますけれども,実刑が言い渡された事案というのは,どれも相当な理由があるものだなということを改めて思ったところであります。   こういった運用,これが実態の大部分を示していると思われますが,それを踏まえますと,仮に再度の執行猶予を言い渡し得る刑期の上限を3年に引き上げたといたしましても,再度の執行猶予とすることが相当な事案,すなわち犯情が軽い,あるいは再犯のおそれが少ないようなものは,こういった資料を踏まえますと,なかなか見付け難いような気がしておりまして,感想になるわけでありますけれども,上限を3年に引き上げる必要性があるとは言い難いように思ったところでございます。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。この程度でよろしいでしょうか。   それでは,次に,「第3 執行猶予を取り消すための要件の緩和」について,意見交換を行いたいと思います。   御意見がある方は挙手をお願いいたします。 ○加藤幹事 検討課題には,A案,B案,二つの案が示されているのでありますが,まずA案について見ますと,これだと取消しの要件が刑の一部の執行猶予の取消しの要件と同じものとなるわけです。刑の一部執行猶予の場合に,「情状が重いとき」という要件を設けなかった理由については,刑の一部執行猶予を言い渡される者は,一般に刑の全部の執行猶予が言い渡される者と比較して犯情が重いと考えられ,刑の全部の執行猶予中の保護観察よりも遵守事項の遵守を一層強く促す必要があるとともに,比較的広く執行猶予が取り消されてもやむを得ないと考えられるためであると説明されています。それにもかかわらず,刑の全部の執行猶予の取消しの要件をこれと同じにすることが相当かどうかということが問題になろうかと思われます。   また,再度の執行猶予を言い渡された者に限って,遵守事項を遵守しなかった場合の執行猶予の取消しの要件を一部執行猶予者と同じものにするということも一応考えられるわけですが,再度の執行猶予者だといっても,それは刑の一部執行猶予者とは異なり,実刑を科されたものではないので,一部執行猶予者と同様に取り扱ってよいのかどうかということは,更に慎重な検討が必要だろうと思われます。   そうすると,B案はいかがということになるわけですが,遵守事項違反があれば,原則として執行猶予を取り消すことができるとしつつ,例外的に情状が軽いときには取り消すことができないとするものでありますが,前々回申し上げましたように,このように定めても,結局,執行猶予が取り消されるのは,重大な遵守事項違反に限られるといったような解釈ないし運用がなされるのであれば,現行法下の運用と大差のないものになってしまうのではないかとも考えられるところでありまして,条文を改めることの有効性,意義といった点から検討が必要になるというものだと考えます。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,次に,「第4 猶予期間経過後の執行猶予の取消し」について,意見交換を行いたいと思います。この点についても,御意見がある方は挙手をお願いいたします。   これまで分科会で御発言いただいた意見のほかに更に御意見があれば,御発言いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○青木委員 むしろ第3のところで申し上げた方がよかったのかもしれないのですけれども,第3のところの後の方に,「併せて以下の仕組みを設けるか否か」というところがありまして,その三つ目の「・」のところに,「刑期の一部についてのみ執行猶予を取り消し得る仕組み」というのがあるのですけれども,猶予期間経過後の執行猶予の取消しそのものは,いろいろ問題があるとは思っておりますが,仮にそういうものができた場合に,全てが取り消されるという状況になるのがいいのかどうかというのは,考えるべきなのではないかと思います。その意見自体は,前にも申し上げたことがあったかと思うのですけれども,その方法の一つとして,刑の執行猶予を取り消す場合において,刑の執行の一部を免除することができるというような規定を設けるということは,検討の余地があるのではないかと思っております。   刑法改正の議論がなされている頃に,平場先生,平野先生などが行っておられた刑法研究会の改正刑法試案,未定稿のままで,固まったものではないようですけれども,その中に,刑の執行猶予を取り消す場合において,特に必要があるときは,その刑の執行の一部を免除することができるという規定が入っておりまして,これは一つには,実際に,例えば保護観察付き執行猶予を受けていた者が,実際上はかなり不利益を受けていたにもかかわらず,また実刑になるということの不利益をどう考慮するかという問題もあるのでしょうけれども,それだけではなくて,刑事政策的に見て,一旦とにかく施設収容が必要であったとしても,その期間が余りに長くなってしまうと,かえって社会復帰の妨げになるという側面もあると思いますので,そういう刑事政策的側面からの必要性も含めて,執行の一部免除というようなことができる仕組みというのはあり得るのではないかと思いましたので,今まで免除という話はしたことがなかったかと思いますので,申し上げました。 ○橋爪幹事 ただいまの青木委員の御意見について,思うところを申し上げます。   青木委員の問題意識は,二つに分けることができるように思いました。すなわち,一つは,執行猶予期間中の大半の期間を無事過ごしてきたにもかかわらず,最後の最後で過ちを犯した場合について,刑の全部について執行猶予を取り消すことが適切かという問題意識,もう一つは,過度に長期の収容それ自体が,場合によっては,本人の改善更生にとって悪影響が生じるという問題意識かと存じます。   もちろん,これらの問題意識については,何らかの対応をする必要はあると思います。ただ,恐らく裁判所は,前刑について執行猶予の取消しがあることを前提とした上で,再犯に関する量刑を行うのではないでしょうか。その際には,前刑について執行猶予が取り消され,その刑と後刑が共に執行されることの不都合,不利益といったものを,再犯に関する量刑判断で一定程度,しんしゃくすることは十分に可能であると思いますので,さらに,青木委員御指摘のような新たな方策を設ける必要性については,やや懐疑的なところがございます。 ○加藤幹事 青木委員のただいまの御提案について一つ御質問をしたいのですけれども,一部の免除ということになると,執行猶予を取り消す段階において,免除するかしないか,どの程度にするかということは,恐らく個別に裁判所が判断する仕組みしか考えられないと思われます。そういう前提でお考えということでよろしいでしょうか。 ○青木委員 それは個別に判断せざるを得ないのだろうと思います。どういうことが考慮されるべきかということまでは,余りよく考えてはいなかったのですけれども,どの程度の期間経過した後の取消しなのかどうかとか,社会内処遇が実際のところ,どれだけ功を奏しているのか,施設内収容がそれほど長くなる必要があるのかどうかとか,そういうようなことも含めて,個別に判断するということになるのだろうと思います。   諸外国の制度で,一部について執行猶予取消しというようなのもあるということでしたので,制度の組み方として,それとどこがどう違うのかというところまで,まだきちんと考えられてはいないのですけれども,いずれにしても,取り消されたものについて全部実刑になってしまうのが,必ずしも適切ではない場合もあるのではないかという問題意識であります。 ○加藤幹事 問題意識はよく分かりました。一方で,別の論点でも議論がありましたが,刑の執行の在り方について裁判所が個別的に判断をするのに,どういう資料を提供して,どういう考慮要素で判断をするのかということについては,またそれ自体も難しい問題があるという指摘がなされておりました。この御提案についても,同じ問題があるのではないかと感じたところです。 ○福島幹事 今の点は,私もちょっと,どういう制度になるのかなと思うところがありまして,なかなか個々の事例ごとに,裁判所にと言われても,そこはしっかり要件なりが立てられるのかどうかとか,どういう考慮要素で,どういうふうに考えていくのかということは,よく検討していただきたいと思います。裁判所にお任せということでは,ちょっと困るということを申し上げたいと思います。   それから,もう一つ,橋爪幹事がおっしゃっていたように,確かに再犯の事件の量刑を決める際に,前刑の執行猶予が取り消されるということを量刑の理由の中で考慮するということは,普通に行われているのかなという気がいたしますので,逆に言うと,執行猶予がどの程度取り消されるのかがまだ確定していない段階で,再犯の事件について量刑するとなると,それはそれで,どういう前提で量刑すればいいのかというのも少し疑問に思いましたので,その辺も申し上げておきたいと思います。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。「第4」については,このくらいでよろしいでしょうか。   それでは,最後に,「第5 資格制限の排除」について,意見交換を行いたいと思います。   これまでの意見を敷えんした御意見でも結構ですし,違った視点からの御意見でも結構ですので,御意見がある方は挙手をお願いいたします。 ○青木委員 資格制限の排除の一般的な話は今まで申し上げたとおりなのですが,一つ,それはそれとして,今,第2分科会で,「若年者に対する新たな処分」ということを検討されていると思うのですけれども,そこで検討されている新たな処分というのは,起訴されないものについてということです。それと同じ若年者で起訴された方について,今現在少年で,今後もしかしたら成人になってしまうという方について考えた場合に,現在少年の場合は資格制限というのがないわけですね。   このように,今までだったら資格制限がなかった人が,成人になってしまった場合に,執行猶予になって,資格制限があるという一定の層が考えられるわけです。そういう方たちについて,資格制限を排除する仕組みというのは,どこかで考えておく必要がないのだろうかとちょっと思いましたので,一言だけ申し上げます。 ○保坂幹事 青木委員に確認なんですけれども,そうしますと,18歳・19歳に限って,あるいは若年者に限ってだけ資格制限を外すような,そういう仕組みのイメージということですか。 ○青木委員 そういうこともあり得るのではないかということです。資格制限だけの問題かどうか分かりませんが。いずれにしても,「若年者に対する新たな処分」というのが,起訴前についてはあるけれども,起訴されてしまった人については何もないというのは,やはりちょっとおかしい気がいたします。起訴されていない人については新たな処分というのがあって,起訴されたら,起訴された人の新たな処分の検討というのは,今のところないわけですよね。 ○保坂幹事 それは,刑事処分が相当だから起訴されて,刑事罰を受けるから,連動して資格制限も掛かるという仕組みだと思われますが。 ○青木委員 ですけれども,刑事罰を受けるといっても,今までだったら刑事罰ではなかった人,同じようなことをやっても刑事罰ではなかった人も,今後,刑事罰の中に組み込まれてしまう可能性もあるわけです。そのときの手当てとして,資格制限も含めて,何らかの手当てをしておく必要があるのではないかと思います。   そもそも少年法の適用年齢を引き下げなければいい話で,引き下げないのが一番いいと思ってはいますけれども,それはそれとして,仮にそうなった場合に,今までだったら資格制限がなかった人たちが,例えば大学生とかで,資格制限を受けるというのが適切なのかどうかということへの配慮の必要はあり得ると思いますので,それは,ここの分科会で検討する話なのか,第2分科会で検討する話なのか,よく分からないのですけれども,いずれにしても,資格制限の問題もそこに絡まってくるのではないかという趣旨です。 ○保坂幹事 ありがとうございます。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。「第5」については,この程度でよろしいでしょうか。   それでは,ここまでで,配布資料16に記載されている検討課題について,一通り意見交換を行いましたが,その他,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」について,現時点で御意見がある方は挙手をお願いいたします。   ないということでよろしいでしょうか。   それでは,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」についての本日の意見交換はこの程度とし,本日の二つ目の論点である「社会内処遇に必要な期間の確保」についての意見交換を行いたいと思います。   この論点についても,事務当局に,既に配布した資料13「社会内処遇に必要な期間の確保(検討課題等)」の記載を加筆・修正した資料を作成してもらいました。   まず,事務当局から,「社会内処遇に必要な期間の確保」に関する資料の説明をお願いいたします。 ○隄幹事 本日,「社会内処遇に必要な期間の確保」に関する資料として,配布資料18「社会内処遇に必要な期間の確保(検討課題等)」を配布しております。   配布資料18について御説明いたします。   資料18は,当分科会第4回会議で配布した資料13を基に,その際の議論を踏まえつつ,加筆・修正を行ったものです。   資料13からの主な変更点について御説明します。   まず,「考えられる制度の概要」については修正しておりません。   この「仮釈放の期間についての考試期間主義」に関する検討課題については,これまでの議論を踏まえ,より具体的な内容を追加して記載しました。   「1」の「(1)」の「仮釈放の期間について,残刑期間ではなく,裁判所が改善更生に必要な期間として定め,その間,保護観察に付する」というA案の検討課題のうち,「責任主義との関係」については,「行為責任に応じて決定された刑を事後的に変更することは相当ではないのではないか」を追加し,「確定した裁判・刑を変更することの効果,実務への影響」については,「手続の在り方などによっては,一度確定した裁判の蒸し返しのような様相を呈しないか」を追加しました。さらに,「要件及び期間設定の判断要素等」については,「再犯の危険性の有無や程度を合理的に測定し,それを判断要素等として,社会内処遇の期間を適切に設定することができるか」と,「刑の一部執行猶予制度の事例集積が十分ではないが,社会内処遇の期間を処遇内容などに応じて適切に設定することができるか」を追加しました。また,「現行の仮釈放制度との関係」についても,「現行の仮釈放制度に代わるものとするか,現行の仮釈放制度と並存させるか」を追加しました。   次に,「(2)」の「仮釈放の期間について,残刑期間が社会内処遇のために最低限必要と考えられる法定期間に満たない場合には,仮釈放の期間を当該法定期間とし,その間,保護観察に付する」というB案の検討課題のうち,「法定期間の在り方」については,「改善更生や再犯防止の効果が得られ,かつ,受刑者にとって不当に不利益とならない期間はどの程度か」を追加し,「法定期間の保護観察が必要でない又は必要でなくなった場合の措置」については,「法定期間よりも短い仮釈放期間を定めること又は保護観察中に保護観察を途中で終了することを可能とするか」を追加しました。   「2」の「(1)」の「現行の仮釈放制度の積極的活用」及び「(2)」の「仮釈放中の保護観察について刑法に規定すること」については,修正した点はありません。   なお,「保護観察付き刑の一部執行猶予制度の見直し」については,第4回会議で資料13に検討課題として掲げて行った意見交換において,積極的に必要であるとする御意見はなかったため,記載しておりません。   配布資料18の説明は以上です。 ○佐伯分科会長 ありがとうございました。   ただいまの御説明に,この段階で,御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見のある方は挙手をお願いいたします。   では,「社会内処遇に必要な期間の確保」について,配布資料18に沿って意見交換を行いたいと思います。   まずは,「1 仮釈放の期間についての考試期間主義」について,意見交換を行いたいと思います。「仮釈放の期間について,残刑期間ではなく,裁判所が改善更生に必要な期間として定め,その間,保護観察に付する」というA案と,「仮釈放の期間について,残刑期間が社会内処遇のために最低限必要と考えられる法定期間に満たない場合には,仮釈放の期間を当該法定期間とし,その間,保護観察に付する」というB案について,まとめて御意見を頂ければと思います。   これまでの議論を敷えんした御意見でも結構ですし,違った視点からの御意見でも結構ですので,御意見がある方は挙手をお願いいたします。   これまでの分科会で御発言いただいた御意見以外に,本日の時点で,ほかに何か御意見はございませんでしょうか。   今の時点では,特に付け加えての御意見はないということのようですので,それでは,次に,「2(1)現行の仮釈放制度の積極的活用」について,意見交換を行いたいと思います。御意見がある方は挙手をお願いいたします。 ○青木委員 まだ考えが固まっているわけではないのですけれども,現行の仮釈放制度の積極的活用ということで,社会内処遇に必要な期間の確保という観点からいうと,やはり今の条文上の文言というのは,その部分について,正面から焦点を当てていないという気がいたします。   その点からしますと,改正刑法草案では,仮釈放の要件について,「改善の状が認められ,刑の執行を中止してその更生を期することを相当とするときは」という,「その更生を期することを相当とするとき」というような文言を使っているようですので,例えばそういう文言を入れることなどを含めて,社会内処遇に必要な期間を取るという意味合いも仮釈放の制度趣旨の中にはあるというメッセージを入れるということは,あり得るのではないかと思いました。 ○佐伯分科会長 今の点,あるいはその他の点について,いかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,次に,「2(2)仮釈放中の保護観察について刑法に規定すること」について,意見交換を行いたいと思います。   これまでの議論を敷えんした御意見でも結構ですし,違った視点からの御意見でも結構ですので,御意見がある方は挙手をお願いいたします。   この点についても,今の時点で新たに付け加えての御意見はないということでよろしいでしょうか。   それでは,ここまでで,配布資料18に記載されている検討課題について,一通り意見交換の時間を取りましたが,そのほか,「社会内処遇に必要な期間の確保」について,現時点で御意見がある方は挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。   それでは,「社会内処遇に必要な期間の確保」についての本日の意見交換はこの程度とし,本日の三つ目の論点である「自由刑の在り方」についての意見交換を行いたいと思います。   この論点についても,事務当局に,既に配布した資料14「自由刑の在り方(検討課題等)」の記載を加筆・修正した資料を作成してもらいました。   さらに,「新自由刑の下における法定刑等の在り方」について検討を進めるに当たり,現行法において,どのような罪に禁錮刑が定められているのかを勘案しつつ,議論を行うことが有益であると思われますので,法定刑として禁錮が定められている罪についての資料も作成してもらいました。   まず,事務当局から,これらの「自由刑の在り方」に関する資料の説明をお願いいたします。 ○隄幹事 本日,「自由刑の在り方」に関する資料として,配布資料19「自由刑の在り方(検討課題等)」,配布資料20「法定刑として禁錮が定められている罪」を配布しております。   まず,配布資料19について御説明いたします。資料19は,当分科会第5回会議で配布した資料14を基に,その際の議論を踏まえつつ,加筆・修正を行ったものです。   資料14からの主な変更点について御説明いたします。   まず,「1」の「新自由刑の内容」について御説明します。   一つ目の「○」の「矯正に必要な処遇の内容」について,より具体的に,「義務の履行を担保する方策として,懲罰を科す不良措置によらずに,良好措置的な制度のみで足りるか」と記載しました。次に,これまでの意見交換の状況を踏まえ,刑の内容と考えるべきかについて,更に検討する必要があると考えられましたので,三つ目の「○」にあるとおり,「拘禁に加えて,矯正に必要な処遇を刑の内容と考えるべきか(義務付けを正当化する根拠は何か)」を検討課題として記載しました。四つ目の「○」の「根拠規定をどの法律に置くか」については,根拠規定を置くことが考えられる法律を具体的に記載しました。   続いて,「2」の「法定刑等の在り方」については,三つ目の「○」の「刑法総則の規定について」に,具体的な検討課題として,「有期の新自由刑の上限・下限及び加重・減軽の限度」を記載しました。   最後に,「3」の「その他」については,修正した点はありません。   続いて,配布資料20について御説明いたします。   法務省として網羅的に把握しているものではありませんが,この資料は,現時点で把握している限りにおいて,現行法上,法定刑として禁錮が定められている罪について,法律名,条項,罪名(犯罪行為の概要)及び法定刑の内容を一覧表にまとめたものです。   記載の順については,まず,刑法に規定されている罪を記載し,その他の法律に規定されている罪は,その法律が制定された順に記載しました。   一覧表中で,「禁錮」については赤字で,「懲役」については青字で表示しておりますが,法定刑として禁錮が定められている罪には,選択刑として懲役が定められているものとそうでないものがあり,このうち,選択刑として懲役が定められている罪については,いずれも懲役と禁錮の法定刑の長期及び短期は同一となっています。   配布資料20の説明は以上です。 ○佐伯分科会長 ありがとうございました。   ただいまの配布資料19及び20についての御説明に御質問や御意見がありましたら,お伺いしたいと思います。例えば,資料19について,ほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見など,御質問や御意見がある方は挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。   それでは,「自由刑の在り方」について,配布資料19に沿って意見交換を行いたいと思います。   まずは,「1 新自由刑の内容」について,意見交換を行いたいと思います。   これまでの意見交換においては,新自由刑の内容について,拘禁に加えて,矯正に必要な処遇を刑の内容と考えるべきかについて,その義務付け根拠などとも関連して意見交換が行われましたので,さらに,これまでの議論を敷えんした御意見でも結構ですし,違った視点からの御意見でも結構ですので,御意見がある方は挙手をお願いいたします。 ○橋爪幹事 前回の分科会におきましても,新自由刑の刑の内容につきましては議論がございましたので,本日もその点につきまして,改めて意見を申し述べたいと存じます。   結論から申し上げますと,新自由刑の内容としましては,刑事施設への拘禁だけではなくて,矯正に必要な処遇,すなわち刑務作業や各種指導も共に刑の内容として理解すべきであると考えます。   論拠として,三つのことを申し上げたいと存じます。   第1に,刑罰目的論との関係です。刑罰は単に,対象者に対して苦痛を与えたり,不利益を科すだけの処分ではありません。以前にも申し上げましたように,犯罪行為に対する法的非難や否定的評価を本人及び社会に対して明示した上で,その範囲内において,一般予防と特別予防を図るところに刑罰の本質があると解されますが,このような理解からは,刑罰の内容を刑事施設への拘禁に純化させる必然性は乏しく,刑務作業や各種指導など,矯正に必要な処遇それ自体を刑罰の内容として理解することは十分に可能であると考えます。   もちろん,各種指導は,受刑者本人にとってメリットのあることが多いと思いますが,本人にとって利益か否かということが刑罰か否かを決するわけではございません。本人の意に反してでも,一定の義務付けが行われており,かつ,そのような義務付けに法的非難としての否定的な評価が備わっているのであるならば,仮にそれが本人にとってメリットがあるとしても,それを刑罰の内容として理解することは十分に可能です。   第2に,義務付けの正当化との関係です。自由刑の受刑者に一定の義務を課し,また,その反面として自由を制約することは,刑罰目的を実現するために初めて正当化できる以上,受刑者に義務付けを行うべき内容は,原則として,刑の内容として構成すべきであると考えます。もし刑の内容でなければ,それを本人の意に反して強制する正当化根拠が存在しないようにも思われます。   第3に,現行法の規定の解釈について,若干申し上げたいと存じます。   前回申し上げましたように,各種指導については,刑法典には規定がなく,刑事収容施設法で規定が置かれており,それによって,現行法においても義務付けが可能であると理解しております。そのため,各種指導が懲役刑,禁錮刑の刑の内容を構成するか否かについては議論の余地があったかと思います。しかし,これまで申し上げたことからも明らかなように,各種指導というものは再犯防止のための有効な方策であり,かつ,本人の意に反してでも義務付けが行われている以上,これは現行法においても,刑の内容として理解すべきです。   この点につきましては,刑法と刑事収容施設法が相まって刑の内容と執行方法を規定していると考えるのであるならば,両者の規定を併せ考慮することによって,各種指導が現行法においても,懲役・禁錮の刑の内容の一部を構成しているという理解が可能です。あるいは,仮に,刑の内容は全て刑法典で規定すべきであると解するとしても,刑法第12条,第13条における「刑事施設に拘置」するという文言は,刑罰目的を達成するために拘置することを意味する以上,各種指導は,拘置という刑の執行の一内容として,拘置の文言に含まれているという解釈の余地もあるように思います。   いずれにしましても,各種指導を現行法の解釈においても刑の内容として理解することは十分に可能であると考えます。このような論拠から,新自由刑におきましても,矯正に必要な処遇を刑の内容として理解することが適当であると考えます。 ○今井委員 私も今の橋爪幹事と同様に考えております。今,橋爪幹事が整理してくださいましたように,この問題は,刑罰の目的論,それから,刑罰の内容として,どこまでをどういう根拠で義務付けるかということ,更には関連する現行法の解釈であろうと思いまして,私もその整理に賛成であります。   若干敷えんし,また運用面について,少し感想めいたことを申し上げたいのですけれども,刑罰の目的論で,応報と予防ということを,どのような比重でそれらを組み合わせるかは議論がありますけれども,両者を考慮すべきであることについては合意があるところです。   以前,いろいろ御意見を頂いた際に,例えば北欧やヨーロッパ等では,刑罰として拘禁刑だけというのがあるではないかという意見もありました。拘禁だけをして,拘禁中は何もしない,義務付けないというのは,理論的にはどう説明されるのだろうかと考えますと,社会から隔離されて,刑務所等に入っているということで,応報という意味は持ち得ると言えるでしょう。また,彼又は彼女は,一定期間,社会に戻りませんので,その間,彼らが犯した種類の犯罪が抑止され得る,そうした犯罪を犯せば処罰されるということを社会に伝達するという意味で,一般予防に資するとも言えますが,彼らも早晩,社会に復帰されるわけですから,彼らの再犯の予防,すなわち特別予防という,もう一方の重要な刑罰の目的のためには,それに資する政策を考えるべきことは当然でありまして,ここで提案されているもの,すなわち作業と指導というものを新自由刑の刑罰の内容として考え,それを義務付けていくということは,大変理にかなったものだろうと思われます。   その上で,もう少し具体的に議論が前回以来あったのは,刑罰とは,本人の意思にかかわらず行われるものでありますけれども,処遇というものは,例えば今まで行われてきた様々な措置を前提にいたしますと,本人が嫌がっているようなときに,それをさせても無駄ではないか,義務付けるということが処遇と両立するのかという意見があったところであります。しかし,この点についても,私は橋爪幹事と同じように,指導も重要な刑罰の内容であり,これも前回以来議論がありましたが,本来の刑罰の内容を確認する結果として,指導を義務付けることには重要な意義があると思います。ここで議論されている指導とは,受刑者の改善更生,社会復帰の観点から重要であると思われます。   指導をする際,望むらくは,受刑者が自発的に,これは自分が社会復帰する際に再犯を防止するため,例えば窃盗をしないように,いろいろな職業訓練をすることであって,必要な措置なのだと分かってくれて,やっていただくことが望ましいことには疑いの余地がありませんけれども,その際に,現行法の作業と同様に刑の内容として位置付け,それをエンカレッジする良好措置と共に,リバースしていく際の不良措置をも併せて用意することで,最終的には義務付けをして指導を行っていくということが,特別予防の目的に資するものであるだろうと思います。   現在は,先ほど橋爪幹事もおっしゃられておりましたけれども,刑事収容施設法におきまして,作業,各種指導を含めた処遇内容を定める際の方針といたしまして,受刑者の希望を参酌する旨の規定があります。これは,そういった処遇の効果をより効果的に発揮させるためには,自発的な意識を育んでいただくためにも重要であると思いますけれども,繰り返しになりますが,本人が拒否していたからそれでやめるというのは,刑罰目的からして,肯定できない帰結だろうと思います。例えば,受刑者が特定の作業や職業訓練を希望したとしても,必要な能力や適性を欠くという場合には,これを行わない方が適切でありましょうし,あるいは逆に,薬物依存の受刑者や性犯罪の受刑者が,問題に応じて,本来改善指導を受けるべきなのですが,それを拒むという場合には,彼又は彼女の再犯を防止するためにも,強制的にこういった指導を受けさせることが当然必要であろうと思います。   このように,指導というものは,個別具体的に受刑者の方の特徴に応じて再犯を防止するために構想されているものでありまして,繰り返しですが,自発的にその意義を認め,行っていただくことが理想なのでありますけれども,そうでない場合にこそ,むしろそれをやることによって,社会復帰の効果を上げていただくためにも,刑罰の内容として確認される必要があるだろうと思います。   このように,刑の内容として作業及び指導を義務付けていく方向でお考えいただければと思った次第です。 ○青木委員 刑罰の内容とか刑の内容とかという,刑罰,刑というのを,何をもって刑というのか,刑罰というのかという,ある意味,言葉の問題なのかなという気もしなくはないのですね。   前回も申し上げましたけれども,少なくとも今の刑法上は,作業というのは,改善更生のためになるとはいいつつも,飽くまでそれ自体を制裁として科しているというものだと思います。けれども,今,今井委員もおっしゃったように,作業その他,改善指導も含めて,もちろん制裁という側面が全くないのかどうかは別ですけれども,あえて制裁のために行っているというよりは,やはり元々の刑の目的の中にある再社会化というか,また社会の中で犯罪をせずに生きていくために必要なことを行うというのが正に刑の目的ですから,そのために行うというものだろうと思います。   拘禁そのものは,もちろん隔離するという意味で,刑罰,刑の中身なのでしょうし,自由を奪うわけですから,それ自体制裁ですけれども,そういう意味の制裁,制裁として行う刑罰という意味でいうと,今までは作業は制裁,正にそれ自体が制裁という位置付けだったのが,そうではなくて,その他の改善指導と全く同列かどうかは別としまして,むしろ改善更生のための手段となるのだとすると,今までと全く同じ意味で,刑の中身ということではないのだろうと思います。そういう意味でいうと,刑の内容ではあるのかもしれませんが,罰として,制裁として科すものではないということも,はっきりさせる必要があることなのだろうと思います。   現実に今,我が国で行われている作業はどのような位置付けのものかといえば,あえて罰として行わせているというものではないと思います。そうだとしたら,むしろ処遇としてということをはっきりさせる意味で,今までと全く同じ規定の仕方ではない形の規定の仕方をする必要があるのだろうと思います。   拘禁というのは,本人がどう考えようと何しようと強制的に執行できるものですが,作業とか改善指導というのは,本人の意思に反してでもという部分はもちろんあるのでしょうけれども,先ほど今井委員も言われましたように,それぞれの問題性に応じて行うとか,希望がかなうかどうかは別として,本人の希望も参酌しつつ,本人の自覚に訴えて,どうしたら改善更生を図れるかということを個別個別に判断して処遇をしていくというものですから,一律的に執行するというものとは必ずしも同じではないと思います。ですので,義務付けをしなくていいかどうかという問題と,今まで言われていた制裁としての刑罰の中に入るかどうかという問題とは,区別して考える必要があるのだろうと思います。   先ほどちょっと引用しました平場先生,平野先生の刑法研究会改正刑法試案の未定稿というところでは,「拘禁は,刑事施設に拘禁する。」というので,一つの区切りにして,その後,「拘禁に処せられた者に対しては,作業,職業訓練,教科教育,その他社会復帰に必要な処遇を行うことができる。」としているわけですね。これは,「できる」ですから,義務にはなっていないのでしょうけれども,このようなかたちで「できる」とした上で,刑収法の中で義務にするということもあり得るでしょうし,行刑の目的を達成するためには,確かに拘禁しておくだけではしようがないと,目的達成のために何かやってもらいましょうということはあるのでしょうから,そこで義務にするということも十分,理屈としては成り立つのだろうと思います。刑罰の中身に入れないから絶対義務付けができないかというと,それはそうではないと思います。   適切な例になるのかどうかは分かりませんが,現在の更生保護法の下における特別遵守事項で定められるものは,刑罰という整理にはされていないと思いますけれども,義務付けではありますよね。それと同じかどうかは別としまして,刑罰の中身でないと義務付けができないということではないと思いますので,義務付けをするかどうかということと,刑法の中に今までと同じようなレベルで,作業その他の処遇を入れた形で,それが刑であるという一文に書いてしまうということとは,必ずしも結び付かないのではないかと思います。ですので,拘禁するということと,拘禁されている者に対してどういうことをやらせるかということは,一応区別して考えた方がいいのではないかと思います。 ○橋爪幹事 ただ今の青木委員の御発言につきまして,もしよろしければ1点,御質問申し上げたいと思います。青木委員の御意見は,処遇や各種指導については,義務付けの余地はあるとしても,それは刑罰の内容ではない,飽くまでも刑罰の内容は,罰であり制裁であるという御趣旨かと理解いたしました。この点につきまして,私自身は,指導も処遇も,刑の内容として義務付けが可能であると考えておりますが,義務付けが可能であるものを刑の内容として理解するか,刑の内容ではないが義務付けが可能と理解するかは,どのような具体的な帰結の相違をもたらし得るのでしょうか。この点につきまして,御教示いただけますと幸いです。 ○青木委員 直接そうなるかどうかというのは分からないのですけれども,刑罰は何か決まっていて,執行できるものだと思います。例えば,禁錮刑の例でいうと,執行するのは,刑事施設に拘禁するということで執行はおしまいですよね。それ以外のものというのは,多分執行の中身には入っていないのだと思うのです。今,作業についても多分そうだと思うのです。刑事施設に拘禁して作業させると。そういう意味で,刑罰の中身は決まっていて,執行する中身も決まっているわけですよね。   だけれども,処遇ということになると,改善指導の中身なんて,それこそ個別処遇なのですから,個々別々なわけですし,機械的に,こういうことで執行しますと執行できるものでもないと思います。犯罪をしない生活を送れるようになって社会に戻るという意味での義務はあるわけで,その人がどこまでの自覚があるかを見極め,刑務所に入っている目的は,社会に戻って犯罪をしないことであるということをきちんと自覚させた上で,そういう義務があるということで,それぞれの希望を参酌するなりして作業その他を行わせるということと,悪いことをしたのだから,罰としてそれをやるのだということで行わせるということとは,やはり違うと思うのですね。   罰だということになれば,やらなければ,やらせられなければ,執行したことにならないわけですから,懲罰を科して執行するということになるのだと思います。しかし,これは,逆に言うと,ある意味では「懲罰を科して執行しようとしたけれども,できませんでした」で終わってもいいということにもなり得るわけです。だけれども,本当に改善させるためには,「懲罰を科して,やることはやっています」で終わりにはできなくて,本人がその気になってやらない限りは,本当の意味の改善更生にはならないわけです。むしろ刑事施設の側としては,何で従わないのかということをきちんと調査をして,例えば作業を拒否するのであれば,拒否する何らかの理由があるのでしょうし,この指導には従いたくないというのであれば,それに何らかの理由があるのでしょうから,そこの部分を解明して,本人をやる気にさせなければならないということになるのだと思います。本当の意味の改善更生が刑の目的なのですから,社会に戻ってもきちんとやれるようにするという目的を達成するためには,むしろ罰として,怒られるからこういうことをしなさい,こういうことはしては駄目というのではなくて,本当に自分のためにはこうする必要があるのだということを分からせて社会に戻すというのが当局側の義務でしょう。また,そういう形で自覚をして社会に戻るというのが,入っている人の義務なのでしょう。ですから,それにマッチする形の法律を作るとすると,制裁として作業を科していたときと同じ並びで条文を作るのではなくて,もっと真の改善更生に資するようなものとして,作る必要があるのだと思います。もちろん制裁的側面が全くないとはいいませんし,本人の自由気ままにさせていいという意味では全くないです。むしろ,本人が立ち直るために,義務を自覚させるということをきちんとやって,社会に戻すというためには,罰を与えてそれを行うというよりは,本人がどのようにしたらやる気になるかということを考えるべきで,義務を課すにしても,その義務の課し方と義務履行の担保の仕方を考えるべきなのではないかと思います。そうすると,それはむしろ,制裁としての刑罰という整理ではなくて,別の形になるのではないかというのが私の理解なんです。 ○加藤幹事 青木委員からたくさんの御指摘があったので,十分そしゃくできていないところもありますが,幾つかの点について申し上げます。   まず,御指摘のあった刑法研究会の改正刑法試案において,御指摘があったような提案がなされているのは承知しております。拘禁について,「拘禁は,刑事施設に拘禁する。」と規定した上で,項を改めて,「拘禁に処せられた者に対しては,作業,職業訓練,教科教育,その他社会復帰に必要な処遇を行うことができる。」というように,項を改めて書いているという御指摘だったと思います。   ただ,恐らくこの案は,普通に条文の読み方として読むと,後半の項を改めて書かれた「処遇を行うことできる」というのが,義務付けられていないという意味ではなくて,むしろ国側に処遇を行うことができる権限を付与していて,したがって,拘禁に処せられた者はこのような処遇を受ける義務があるという点では,変わりがない規定であると理解できるのではないかと思います。   それから,この点が,もし青木委員の御発言を誤解しているものであれば,誠に申し訳ないので,御指摘を頂きたいのですが,制裁という言葉ですとか,罰あるいは刑罰という用語が,正にいろいろな意味で使われているようでありますけれども,青木委員の御指摘を伺っていると,制裁であり罰であるものというのは,受刑者に対して苦痛を与えるもの,受刑者が苦痛を被るものを,制裁あるいは罰と捉えておられるのでないかという印象を受けます。   ただ,これは御案内のとおり,現行の刑事収容施設法でも,作業を苦痛を与えるものとして捉えているわけではないということは,恐らく共通認識であり,「作業は,できる限り,受刑者の勤労意欲を高め,これに職業上有用な知識及び技能を習得させるように実施するもの」とされており,懲らしめとしての苦痛を与えることを目的とするものではないというのが現行法の整理なのではないかと考えています。そういう意味で,作業と各種指導との間に,差がないというところまで言えるかどうかは別として,大差はないと考えられるのではないかと考えた次第です。   そして,刑の内容というのは,拘禁ないし作業という決まったものとして執行できるものなのではないかという御指摘もありました。確かに拘禁は,何を執行するかは明確です。もっとも,あってはならないことではありますが,逃げる者がいたら,もちろん引き戻すということはするわけです。一方,作業は,作業といっただけで内容が確定的に執行内容が決まるかというと,もちろん作業という枠の中では明確でありますけれども,どういう種類の作業をどういう者に対してさせるかというところについては判断が必要なわけで,懲役刑が科せられれば一律に執行できるというものではないのではないかとも思われます。指導も,作業に比べて更に多様だという意味では,アセスメントと個別の決定が必要だという御指摘は,そのとおりだと思われますけれども,その点は相対的なものなのではないかとも感じられるところであります。   さらに,作業というのは,制裁として科せられているもので,そういう点で指導とは異なるのではないか,仮に今後,作業も指導と同質のものだと捉えるのであれば,制裁ではないということを明らかにすべきではないのかと,そういう御指摘だったと思いますけれども,では,現行法における指導,あるいは今後,新自由刑を設けることとした場合に,刑の内容とするのが私は適当と考えていますが,作業を行わせることその他の矯正に必要な処遇というものが制裁ではないのかという観点で申しますと,これも制裁という言葉の使いようなのかもしれませんが,恐らくここで言っている制裁というのは,行為に対して応報として科されるものという意味なのではないかとも考えています。   そうすると,指導というものを含む処遇が応報なのかどうかということが,実質的には問題になるのではないかと思うのですが,もちろんそれらが,主として特別予防を目的として行われているものであるというのは異論がないと思います。しかしながら,指導を含む処遇についても,ここまでに議論がありますとおり,それ自体として苦痛を科すこと,あるいは懲らしめを目的とするものでないことはもちろんでありますけれども,意に反して行うことが義務付けられるものであって,そういう自由の制約は,それ自体として,犯罪に対する応報であるともいえましょうし,さらに,受刑者がそのような自由の制約を科される状態に置かれることを社会に示すという意味で,一般予防効果も伴うものなのではないかと考える次第です。 ○橋爪幹事 私も加藤幹事の御発言に,補充するかたちで1点申し上げたいと存じますけれども,恐らく青木委員の御指摘というのは,拘禁それ自体は,本人の意向にかかわらず完結できる処分であるのに対して,刑務作業も各種指導も,本人に更生に向けた意欲がなければ,改善更生という刑罰目的が達成できないことから,このように,本人の自発的な意欲がなければ達成できない目的は,刑罰の内容ではなく,それはむしろ,刑罰とは別の処遇の内容であるという御理解かと存じます。   確かに,本人に意欲がなければ改善更生は図り得ないのは,御指摘のとおりでございますけれども,ただ,改善更生することが刑罰の内容をなすわけでなく,先ほど加藤幹事からも御指摘がありましたように,改善更生するために一定の負担を受け入れざるを得ないこと,すなわち一定の義務付けを課すという状況それ自体が刑罰の内容を構成のだと思います。つまり,本人が嫌といっても,刑務作業や各種指導の義務付けが課されるという事実それ自体が刑罰の内容を構成するわけであり,改善更生それ自体が刑罰の内容とされているわけではないことについて,念のため付言しておきたいと存じます。 ○青木委員 やはり言葉の問題かなという気もするのですけれども,そうはいっても,やはり拘禁をするということと処遇をするということは,ちょっと違った種類だと思います。何といっても,おっしゃっていただいたように,作業にしろ,改善指導にしろ,本人が登場せずに,一方的に何か決められて,一方的に命じておしまいになるものではないので,やはり仮に同じ刑の内容だとしても,ちょっと種類の違うものだと思います。   なので,そこは,何らかの区別をきちんとして,もう少しきれいに整理した方がいいのではないかと,印象ですけれども,思いました。やろうとしている中身というんですかね,刑務所の中で何をやるべきか,どうあるべきかということについて,すごく差があるということでは多分ないと思うのです。ただ,そのところについて,どういう規定の仕方をしたら,それが一番その内容にマッチするのかということについては,もう少し固定的にではなくて,柔軟に考えて,どういう形にするのが一番よさそうかというのは,私も考えたいとは思いますけれども,考えた方がいいのではないかと思います。   先ほど改善指導とか,そういうのも一種の制裁であるみたいなことを言われましたけれども,一種の刑罰である,一種の刑であるとかというように,その性質を持っているものということでいえば確かにそうなんでしょうけれども,やはり本質的に違う部分があると思うんですね。改善指導には本人が登場するわけですよ。本人が登場して,本人を無視してはできないというところを,それがなければ意味がないわけですから,それをどういう形で法律に表すかということも,やはり考えた方がいいと思います。そういう意味で,刑の内容であり,義務付けすべきものだと仮にしたとしても,拘禁と同列の中に書くのではなくて,別々に書くようにすることなども,メッセージとしては十分あり得ることだろうと思いますので,そういうことも含めて御検討いただければと思います。 ○今井委員 貴重な御意見,大変勉強になっております。   青木委員がおっしゃるように,例えば,作業の内容自体を更に多様化することは,なかなか困難かもしれませんが,ここでも議論がありましたように,指導の内容,メニューを豊富にしていくということは,十分考えられるべきことでしょうし,実際に現場でもなされていると思います。   また,それも前提として,犯罪を犯したことに対する反作用という応報の基本的なベースに加えて,何を指導するかということですから,どのような犯罪をした人に対して,どのような指導メニューを与えるかということには,おのずから限界というものがあろうかと思います。ただ,青木委員がおっしゃったように,指導という内容が茫漠としていて,あるいは数が少ないものであってはいけないということについては,私もそう思いますので,刑の個別化,対象者に応じた処遇の充実ということについては,一層,ここで検討されるべきだろうと思った次第でございます。 ○佐伯分科会長 この辺でよろしいでしょうか。   次に,「2 新自由刑の下における法定刑等の在り方」について,意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○加藤幹事 先の当分科会第5回会議におきまして,新自由刑の下において,現行法上,禁錮刑が定められている罪の法定刑をどのように定めるかということに関し,新自由刑の下でも,現行の法定刑の長期及び短期を改める必要はないという考え方も十分あり得るのではないかということを申し上げました。そして,その上で,先ほど説明のあった資料20を見ますと,懲役刑と禁錮刑が選択的に定められている全ての罪において,長期及び短期には差が設けられていないということが確認できます。   このように,現行法上,懲役刑及び禁錮刑が選択的に定められている罪において,懲役刑と禁錮刑の法定刑の長期及び短期が同じであるということからいたしますと,自由刑としての軽重を考える重要な要素は,刑事施設への拘置の期間であるという考え方の下,現行法における作業義務の有無によって,法定刑の長期,短期に差を設けていないというのが現行法の在り方であると考えられるのではないかと考えられます。したがって,そのような現行法の体系の下では,禁錮刑を廃止して,矯正に必要な処遇の内容として作業が義務付けられる新自由刑というものを創設するに当たっても,法定刑の長期及び短期を変更する必要まではないという考え方も成り立ち得るという考え方を強くしております。   一方で,先回御指摘のあったように,情状によって同じ刑期でも,懲役にするか禁錮にするかという場合に,情状が軽いものが禁錮刑になっているということもあり得るのではないかという御指摘もごもっともなのではありますが,そちらの方は,例えば,具体的な事案を見てみた場合に,具体的な刑期によって調整するということも可能なのではないかと考えます。 ○橋爪幹事 禁錮刑と新自由刑の法定刑の調整の要否を考える上では,刑法第10条第1項ただし書の規定をどのように理解するかという問題が重要であるように思います。前回の分科会でも申し上げましたけれども,同条第1項ただし書は,「有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の2倍を超えるときも,禁錮を重い刑とする。」しております。   この2倍という評価が,どのような経緯で立法に至ったかについて,個人的には疑問を覚えているところでございます。もし事務当局の方で,この立法経緯について調査がお済みであれば,この機会に御教示賜れますと,幸いでございます。 ○隄幹事 立法当時の政府委員は,刑法第10条第1項ただし書において2倍とした根拠について,次のように説明しております。「定役の有無をもって,これだけの差を付けたのであります,それで果たして2倍が相当であるないかということは,全く見計らいによりますので,別に標準というものはないのであります」と,このように答弁しております。   なお,「見計らい」とは,辞書によれば,おおよその見当を付けること,あるいは,見て適当な時期や物を判断することをいうと説明されております。 ○橋爪幹事 ありがとうございます。   見計らいという鷹揚な話ですので,非常に時代を感じる気がいたしますが,今の御説明を伺った限りですと,飽くまでも見計らいですので,立法者が懲役刑が常に禁錮刑よりも2倍重たいという確固たる信念を持って,これを立法したわけではないと理解いたしました。   また,これも推測でございますけれども,かつては刑務作業は,受刑者に対する制裁,懲らしめの手段という理解が強く,非常に過酷な自然環境の中で,厳しい作業を課すような場合が,かなり多かったようにも思います。これに対して,現在におきましては,刑務作業も,基本的には改善更生,社会復帰のための必要な処遇と位置付けられており,各種指導との相違も,かなり相対化しているようにも思います。   これらの事情を考慮いたしますと,刑法第10条第1項ただし書の規定を今回の検討において,それほど重視すべきではなく,現行法の理解としても,懲役が禁錮の2倍重たい刑であるという理解から出発する必然性はないと思われます。   このような理解からは,先ほど加藤幹事からも御発言ございましたように,懲役,禁錮,いずれにつきましても,その実質的不利益性を考える上では,刑事施設への拘置期間の長短が決定的な要素であると解した上で,懲役刑及び禁錮刑を単一化して,新自由刑を創設する場合についても,あえて法定刑の長期,短期を変更する必要はないという理解にも十分な合理性があるように思いました。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。「2」については,この程度でよろしいでしょうか。   それでは,最後に「3 その他」,具体的には「新自由刑の導入前(施行前)にした行為についての新自由刑の言渡し・処遇の時的限界」について,意見交換を行いたいと思います。   御意見がある方は挙手をお願いいたします。   本日の時点では,これまでの分科会で御発言いただきました意見に付け加えての御意見はないということでよろしいでしょうか。   それでは,ここまでで,配布資料19に記載されている検討課題について,一通り意見交換を行いましたが,その他,「自由刑の在り方」について,現時点で御意見がある方は挙手をお願いいたします。   ないということでよろしいでしょうか。   それでは,「自由刑の在り方」についての本日の意見交換はこの程度として,本日の四つ目の論点である「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実」についての意見交換を行いたいと思います。   この論点についても,事務当局に,既に配布した資料15の記載を加筆・修正した資料を作成してもらいました。   まず,事務当局から,若年受刑者に対する処遇原則の明確化等に関する資料の説明をお願いいたします。 ○隄幹事 本日,若年受刑者に対する処遇原則の明確化等に関する資料として,配布資料21「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実(検討課題等)」を配布しております。   配布資料21について御説明します。   資料21は,当分科会第5回会議で配布した資料15を基に,その際の議論を踏まえつつ,加筆・修正を行ったものです。   資料15からの主な変更点について御説明します。   まず,第1の「若年受刑者を対象とする処遇内容の充実」については,刑事施設において,少年院の人的・物的資源やノウハウを活用した処遇の充実が図られるのであれば,少年院受刑について検討する必要性は低いのではないかとの御意見があり,特段異論がなかったことから,「考えられる施策の概要」には,刑事施設において,少年院等の知見を活用して処遇の充実を図る旨を記載しました。   その上で,検討課題である「具体的内容」について,これまでに御意見のあった施策の内容を記載しました。   第2の「若年受刑者に対する処遇調査の充実」については,「考えられる施策・制度の概要」に,「2」として,「若年受刑者に対する処遇調査において少年鑑別所の鑑別機能を活用するため,鑑別の対象となる受刑者の年齢の上限を引き上げる」を追加しました。   これに対応して,検討課題として,「処遇調査の充実を図るための具体的内容」及び「鑑別の対象となる受刑者の年齢の上限」を追加し,前者については,これまでに御意見のあった施策の内容を記載しました。   第3の「若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」については,「2」として,「受刑者に対する社会復帰支援を刑事施設の長の責務として行う旨の明文規定を設ける」を追加しました。   その上で,検討課題として,「若年受刑者に対する処遇原則の内容」及び「社会復帰支援の規定の内容」のそれぞれについて,これまでに御意見のあった内容を記載しました。   配布資料21の説明は以上です。 ○佐伯分科会長 ありがとうございます。   ただいまの御説明に,この段階で,御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見のある方は挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。   それでは,若年受刑者に対する処遇原則の明確化等について,配布資料21に沿って意見交換を行いたいと思います。   まずは,「第1 若年受刑者を対象とする処遇内容の充実」について,意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は挙手をお願いいたします。   これまでの分科会で御発言いただいた意見以外に,本日の時点で付け加える御意見はないということでよろしいでしょうか。   それでは,次に,「第2 若年受刑者に対する処遇調査の充実」について,意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○橋爪幹事 私の方からは,概要の「2」ですけれども,鑑別対象の受刑者の年齢の上限の引上げについて,考えるところを申し述べたいと存じます。   もちろん,このような方法自体,賛成でございます。少年について行われている鑑別調査の対象年齢を引き上げまして,若年受刑者についても,詳密な鑑別調査を実施することは,特に論点「第1 若年受刑者を対象とする処遇内容の充実」,「第3 若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」を具体的に検討する上でも,有益な施策であると考えております。   もっとも,これは法改正が必要な事柄であると思いますので,具体的に,対象年齢を何歳まで引き上げるかについても,考えておく必要があると思います。もちろんこの点は,論点第1,第3との関連性を意識しつつ,更に検討すべき事柄であると存じますが,仮に現行法の制度や運用を前提としまして,何らかの基準を考えるのであるならば,まず現行法の少年院法では,収容継続が可能な年齢として,23歳未満又は26歳未満を規定していると理解しております。また,刑事施設における処遇指標としましては,26歳未満の受刑者をY指標として処遇していると理解しております。   これらの基準を前提にいたしますと,鑑別調査の対象年齢としても,23歳未満や26歳未満などが一つの基準になり得るようにも思いましたので,この機会に申し上げる次第です。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,最後に,「第3 若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」について,意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○今井委員 ここで,概要に「1」と「2」の論点が挙がっているんですが,「1」は前にも意見を申し述べさせていただいたかと思いますので,それを踏まえつつ,「2」の方で,これを肯定する方向で意見を述べたいと思います。   現行の少年院法第44条を見ますと,社会復帰支援に関する規定がございます。これを見ますと,在院者の改善更生及び円滑な社会復帰のためには,出院後を見据えて,その住居,就業先,その他生活環境等の調整を行う,そのような幾つかのことを少年院の長の責務として行う旨,明文規定で規定しております。   このような社会復帰の支援が重要であることは,何も少年院に入っている方だけではありませんで,当然ながら,刑事施設に収容されている受刑者にも共通しておりまして,現在では,既に事務当局からも御説明いただいたと思いますけれども,出所後の住居,就業先の確保に向けた支援に加えまして,高齢者や障害を有する方などについては,出所後,速やかに必要な医療・福祉サービス等を受けることができるようにするための支援などが行われているとのことでありました。   これらの取組をより一層推進していくためには,刑事収容施設法に社会復帰支援に関する規定を設けて,刑事施設の長の責務として,これらを行っていくことを明確にするということが大変意義があろうと思いますし,運用面において,明確性をより高めるものになろうと思います。   こうした明文規定の下,関係する諸機関と連携を図りつつ,受刑者の社会復帰支援に関する取組が一層充実されることになるだろうと思われるわけでありますが,その際特に,若年受刑者の社会復帰支援に当たっては,現在少年院において行われている,きめ細やかな支援内容を参考とするということも考えていただければと思っているところでございます。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,ここまでで,配布資料21に記載されている検討課題について,一通り意見交換の時間を取りましたが,そのほか,若年受刑者に対する処遇原則の明確化等について,現時点で御意見がある方は挙手をお願いいたします。   今の時点ではないということでよろしいでしょうか。   それでは,若年受刑者に対する処遇原則の明確化等についての本日の意見交換は,この程度といたしたいと思います。   以上で,第1分科会が担当する四つの論点について意見交換を行ったことになりますが,これらの論点について,現時点で更に御意見がある方がいらっしゃれば,挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。   それでは,これで本日の意見交換を終了いたします。   今後の予定として,部会第7回会議が予定されておりますところ,分科会における検討状況は逐次部会に報告することとされております。   本分科会は本日までで,考えられる制度等の概要,検討課題などについて一通り意見交換を行いましたので,部会第7回会議での報告においては,本日までの分科会での議論の状況について,その要旨を中間報告として報告したいと思います。   その中間報告のための資料内容については,事前に当分科会の構成員の皆様にお示ししたいと思っておりますが,前回同様,取りまとめにつきましては,基本的に分科会長であります私に御一任いただければと思いますが,よろしいでしょうか。                 (一同異議なし)   ありがとうございます。   それでは,部会に報告する中間報告の内容については,分科会長である私に御一任いただいたということで,私の責任において,中間報告の内容を取りまとめて部会に報告したいと思います。   以上で本日の審議は終了いたします。   今後の予定について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○隄幹事 今後の予定についてですが,部会第7回会議が予定されています。日程については追ってお知らせいたします。 ○佐伯分科会長 本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。                 (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日はどうもありがとうございました。 -了-