法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第3分科会第1回会議 議事録 第1 日 時  平成29年 9月29日(金)   自 午前 9時57分                          至 午前11時56分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから,法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第3分科会の第1回会議を開催いたします。 ○小木曽分科会長 おはようございます。本日は御多忙のところお集まりいただき,ありがとうございます。   部会の第5回会議におきまして,分科会の設置が決定されましたが,その際,各分科会長並びに各分科会に属すべき委員及び幹事の人選につきましては,部会長に一任されました。これを受けて,井上部会長において人選を進められた結果,委員である私,小木曽が分科会長を務めることとされました。議事が円滑に進みますよう,分科会を運営してまいりたいと思いますので,皆様方の御協力をよろしくお願いいたします。   議事に入る前に,前回の部会,第5回会議以降,部会の幹事に異動がございましたので御紹介いたします。   小西康弘氏が幹事を退任されまして,新たに滝澤依子氏が幹事に任命されました。田野尻猛氏が幹事を退任されまして,新たに保坂和人氏が幹事に任命されました。新たに吉田智宏氏が幹事に任命されました。幹事の異動は以上です。   次に,第3分科会第1回会議の開始に当たって,当分科会の出席者について申し上げます。   当分科会を構成する委員,幹事としまして,太田委員,羽間委員,滝澤幹事,田鎖幹事,福島幹事,それから保坂幹事が選任されております。併せて当分科会の事務当局としての役割を担っていただく構成員として,今福幹事,小玉幹事,加藤幹事,羽柴幹事がそれぞれ選任されております。   以上の方々が当分科会を構成する委員,幹事ですが,福島幹事におかれましては,本日所用のため欠席ということでございます。   また,当分科会には,必要に応じ,分科会長の要請により,構成員以外の委員,幹事,関係官に御出席いただくことができることとされております。本日は,御欠席の福島幹事に代わりまして吉田智宏幹事に御出席をお願いしております。   また,当分科会における審議の中で,家庭裁判所の実務の実情等について御質問があったときに御対応いただくために,澤村幹事に出席をいただいております。よろしくお願いします。   それでは,異動により新たに幹事になられた出席者の方々から,一言ずつ自己紹介をお願いいたします。 ○滝澤幹事 警察庁少年課長,滝澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○保坂幹事 9月11日付で東京地方検察庁から異動して,刑事法制管理官を拝命いたしました保坂でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉田(智)幹事 最高裁判所刑事局第二課長の吉田智宏でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○小木曽分科会長 では,事務当局から資料について御説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,資料として,配布資料1-1「主要国における少年事件の手続・処分の概要」,1-2「主要国における施設内処遇の概要」,1-3「主要国における執行猶予・宣告猶予制度の概要」,1-4「主要国における起訴猶予に伴う再犯防止措置の概要」,1-5「主要国における若年成人に対する刑事事件の手続・処分の特則の概要」,1-6「諸外国の制度概要」,配布資料2「更生緊急保護及び更生保護における社会復帰支援施策について」,配布資料3「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方(検討項目案)」を配布しております。また,ヒアリング資料として,「検察におけるいわゆる入口支援の取組(例)」を配布しております。   なお,前回までの部会の会議における配布資料は,ファイルに綴じて机上に置いてございます。   配布資料2及び3につきましては,後ほど御説明をいたします。   まず,諸外国の制度等に関する配布資料1-1ないし1-6について御説明いたします。   諸外国の制度等の概要につきましては,既に部会第1回会議において,資料6として,「諸外国の制度概要」という一覧表をお配りしていたところですが,事務当局としては,その後,これらの国の制度について一層の調査を進めました。今回,その調査の結果を資料として取りまとめましたので,本日以降の御議論の参考にしていただくために配布させていただきました。   この資料1-1から1-5は,米国のニューヨーク州,カリフォルニア州,イギリス,フランス,ドイツ,韓国における制度について,事務当局の調査により判明した限りにおいて各制度ごとに概要をまとめたものです。資料1-6は,これらの内容を一覧表に取りまとめたものです。既に,部会第1回会議の資料6として「諸外国の制度概要」を配布しておりましたが,その後,諸外国の制度について一層の調査を進めた結果,一覧表の内容を一部更新いたしましたので,今回,改めて資料1-6として配布いたしました。   資料1-1から順に説明いたしますが,適宜資料1-6も併せて御覧いただきながらお聞きいただければと存じます。   概要を御説明いたします。   まず,資料1-1は,「主要国における少年事件の手続・処分の概要」をまとめたものです。   いずれの国でも,少年については成人の刑事手続と異なる手続・処分が設けられておりますところ,刑事手続において少年として扱われなくなる年齢は,ニューヨーク州の16歳,韓国の19歳のほかは,いずれも18歳とされています。   また,ニューヨーク州,カリフォルニア州,イギリス,韓国においては,一定の重罪を犯した少年について,一定の要件の下で,当該事件を,成人事件を扱う裁判所で審理することができるものとされております。フランス,ドイツについては,基本的に少年事件は少年のための裁判所で扱われることとされておりますが,少年のための裁判所において,少年に拘禁刑を言い渡すことが可能です。   また,いずれの国においても,少年の性格や生活環境等について専門機関による調査が行われる制度が設けられています。   次に,資料1-2は,「主要国における施設内処遇の概要」についてまとめたものです。資料1-6の一覧表では,1枚目の下の部分に記載がございます。   まず,ニューヨーク州では,拘禁刑の受刑者について,行刑法により,日曜日及び祝日を除き,毎日8時間を超えない範囲で作業に従事させることができることとされています。また,各受刑者には,社会化と更生に最も資すると考えられる教育プログラムが提供されることとされています。   次に,カリフォルニア州では,刑法において,拘禁刑の受刑者は,州当局の規則で定めるところにより,できるだけ多くの時間,作業をすることが要求されています。また,受刑者は,割当てのあった課業に従事することが義務付けられており,これには教育,プログラム受講等が含まれています。   続いて,イギリスでは,拘禁刑の受刑者について,行刑規則により,1日10時間以内の有用な作業を行うことが要求されています。また,全ての刑務所において,教育を提供しなくてはならないこととされており,また,特別な教育上の必要性を有している者への教育及び訓練には特別な注意を払うとともに,必要な場合には,通常は作業に割り当てるべき時間帯に教育を行うこととされています。   次に,フランスでは,拘禁刑の受刑者について,行刑法により,刑務所長等が提案した活動の少なくとも一つに参加する義務を負いますが,その活動には,作業,職業訓練,教育,スポーツ等が含まれています。   続いて,ドイツでは,自由刑として拘禁刑が設けられており,ドイツ連邦の行刑法において,受刑者には,割り当てられた作業に従事する義務があります。また,受刑者は,余暇時間においても,授業,通信教育,訓練活動,集団討議等の活動機会が与えられておりますし,中等教育未了者に対しては,中等教育と同内容の教育が作業時間中に提供されています。   最後に,韓国では,自由刑として懲役,禁錮,拘留が設けられており,懲役受刑者は刑法により,定役に服務させられるほか,行刑法により,自身に賦課された作業その他の労役を遂行しなければならない義務があることとされています。また,刑務所長は,受刑者が健全な社会復帰に必要な知識及び素養を習得するように教育をすることができ,義務教育未了者に対しては,教育を行わなければならないものとされています。   次に,例えば,ニューヨーク州やイギリスでは,若年者について自由刑を執行するために収容する施設として特別の収容施設が設けられており,ニューヨーク州では,男性について16歳以上21歳未満の者のための収容施設が設けられているようですし,イギリスでは,18歳以上21歳未満の者は若年犯罪者施設に収容されることとされています。   続いて,資料1-3は,「主要国における執行猶予・宣告猶予制度の概要」についてまとめたものです。このうち,刑の執行猶予に相当する制度については,資料1-6の一覧表2枚目に,宣告猶予に相当する制度については,一覧表3枚目に記載がございます。   まず,刑の執行猶予に相当する制度については,ニューヨーク州を除いて,カリフォルニア州,イギリス,フランス,ドイツ,韓国に存在しています。これらの国の刑の執行猶予は,いずれも保護観察に付し,あるいは遵守事項等の一定の義務を賦課し得ることとされており,裁判所は,対象者が執行猶予期間中に再犯に及んだ場合や,賦課された一定の義務に違反した場合に執行猶予を取り消し得ることとされています。   イギリス,フランス,ドイツでは,対象者が執行猶予期間中に再犯や一定の義務違反に及んだ場合,裁判所は,執行猶予を裁量的に取り消すこととされていますが,イギリス,ドイツでは,賦課する義務の修正,執行猶予期間の延長等の措置を段階的に講じることができるとされ,フランスでは,執行猶予を取り消す際に全部だけではなく,一部のみを取り消す等の措置を採ることが可能とされています。   韓国には,執行猶予期間中に故意に犯した罪で禁錮以上の実刑を言い渡され,判決が確定した場合に,執行猶予の言渡しが効力を失う旨の規定があります。   また,カリフォルニア州,イギリス,ドイツにおいては,再度の刑の執行猶予を制限する規定は存在していませんし,フランスでも,例外的な場合を除き,再度の刑の執行猶予を言い渡すことが法律上認められています。   次に,宣告猶予に相当する制度については,資料1-6の一覧表3枚目の記載にあるとおり,ここに掲げるいずれの国にも存在しています。各国において,その名称や制度の詳細は様々であるものの,いずれにおいても,いわゆる刑の宣告猶予に相当する制度として,裁判所は,一定の刑の言渡しを猶予した上で,一定の期間を定めて保護観察や一定の条件を賦課することとし,その間に対象者が再犯や条件違反に及ぶなどすれば刑が言い渡されますが,条件違反等がないまま期間を経過した場合には,刑は言い渡されないこととされています。   また,ニューヨーク州,カリフォルニア州には,いわゆる判決の宣告猶予に相当する制度もあり,ニューヨーク州における制度は,裁判所が有罪認定をせずに訴訟を延期し,その間被告人に条件を付すことを可能とするもので,訴訟の再開がないまま一定期間が経過すれば訴追は却下されたものとみなされます。他方,カリフォルニア州の制度は,一定の薬物犯罪について被告人が有罪を認めている場合,被告人に薬物プログラムの受講を義務付けて,判決の宣告を猶予することができるというものです。   次に,資料1-4は,「主要国における起訴猶予に伴う再犯防止措置の概要」をまとめたものです。資料1-6の一覧表には,3枚目の下の部分に記載がございます。まず,ここに記載しているものは,いずれも制定法に根拠が明示されている代表的な措置に限られており,運用によってのみ行われているものは対象としていませんので,その点には御留意ください。   まず,ニューヨーク州,カリフォルニア州には,起訴猶予に伴う再犯防止措置に相当する制度は法律上見当たりません。他方で,イギリス,フランス,ドイツ,韓国には,起訴猶予に伴う再犯防止措置に相当する制度が明文で規定されており,いずれにおいても,訴追官が自ら,一定の期間を定めて,対象者に条件を付するなどして訴追を猶予し,その期間内に,条件違反があれば,訴追が行われるなどという制度が設けられています。   制度の対象事件を見ますと,例えば,フランス,ドイツでは,明文上,対象事件が軽罪以下の事件に限定されています。また,韓国には,家庭内暴力,児童虐待,少年事件に特化した制度が設けられています。   次に,資料1-5は,「主要国における若年成人に対する刑事事件の手続・処分の特則の概要」についてまとめたものです。なお,資料1-6の一覧表にはこの点の記載はございませんので御留意いただければと思います。   ニューヨーク州とドイツには,若年成人について,その他の一般成人と異なる特別な手続・処分が規定されているので,御説明いたします。   まず,ニューヨーク州においては,若年成人に当たる犯行時16歳以上19歳未満の者は,通常の裁判所において,基本的に成人に対する刑事事件の対象となります。ただし,裁判所は,一定の重罪等以外で有罪認定をした後,被告人である若年成人が過去に有罪判決を受けたことがない場合や,過去に有罪認定されていても,その者に前科の負担を負わせず,4年を超える不定期刑を科さなくても正義に反しないと考える場合等には,被告人である若年成人について,その有罪認定をなかったものとすることを宣言した上で,併せて4年以下の拘禁刑を言い渡すことができます。そのため当該若年成人は刑を言い渡されるものの,有罪判決を受けることがなかったと扱われることとなり,このような判決が資格制限事由とはなりません。   次に,ドイツの制度について御説明いたします。   ドイツでは,若年成人に当たる犯行時18歳以上21歳未満の者は「青年」と呼ばれ,少年裁判所において審理されることとなります。そして,裁判所は有罪認定の後,当該青年の精神的成熟度が行為の時点で少年のそれと同等であったと判明した場合,又は当該行為の性質が少年非行のそれと同等であったと判明した場合には,当該事件について,少年刑法,つまり,少年事件に適用される刑法の規定が適用されることとなります。青年の事件に少年刑法が適用される場合には,青年は少年の場合と同様に,教育処分,懲戒処分,少年刑の適用を受けることとなります。他方,青年の事件について,少年刑法が適用されない場合には,一般の成人と同様の刑罰法規が適用されることとなりますが,終身自由刑の緩和,資格制限規定の緩和など,緩和措置規定が設けられています。   配布資料1の説明は以上です。 ○小木曽分科会長 ただいまの説明に,何か御質問はございますか。   特段この時点で御質問がなければ,審議に入ってまいりたいと思います。   初めに審議の進行の仕方についてですが,当分科会は,部会審議を効率的に進めるために,部会の論点表の大項目2に掲げられた論点のうち,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」,「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」,「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」及びこれらの制度との関連で検討が必要になる「少年鑑別所及び保護観察所の調査・調整機能の活用」の各論点について,専門的,技術的な検討を加えて,考えられる制度の概要案等を作成するとともに,検討課題を整理することが役割とされております。   そこで,まず,今回,それから次回の2回程度にわたり,当分科会が担当する論点につき,一巡目の議論,意見交換として,それぞれの論点に関係する従来からの制度,措置の意義,運用,あるいはこれらに対する評価,問題点を把握しつつ,新たな制度を構築するとしたらどのようなものがふさわしいかなどについて,概括的な議論から入ってまいりたいと思います。   基本的には,論点表に掲げられた順序に従って,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」,「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」,「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」という順序で議論を進めたいと思いますが,論点相互に関係のある事項の場合には,他の論点に関して適宜御発言いただいてよろしいかと思います。また,「少年鑑別所及び保護観察所の調査・調整機能の活用」につきましては,これら四つの論点を検討する中で,必要に応じて,関連するところで検討するのがよろしいのではないかと考えております。   このような進行でよろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,1番目の論点,起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方について検討を行いたいと思います。   この論点について検討する上では,検察庁における運用上の取組として現在実施されております,いわゆる入口支援の実情について把握しておくことが有益であろうと考えられます。そこで,まず法務省刑事局の担当部局の方から,その実情等についてヒアリングをしたいと考えますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)               (是木参考人入室)   それでは,最初に,検察庁における入口支援について,ヒアリングを行いたいと思います。   法務省刑事局刑事課の是木誠参事官にお越しいただいておりますので,説明をお願いいたします。 ○是木参考人 法務省刑事局刑事課参事官の是木でございます。本日はよろしくお願いいたします。   本日は,検察における再犯防止策として,取り分け,いわゆる入口支援と呼ばれます取組につきまして,簡潔に御説明させていただきます。   お手元に「検察庁におけるいわゆる入口支援の取組(例)」と書いた一枚ものの資料を用意しておりますので,そちらを適宜御参照いただきたいと思っております。   まず,いわゆる入口支援と呼ばれている取組の概要について申し上げます。   そもそも再犯を防止するために,犯罪に対して適切な処罰をもって臨むことが重要な場面は当然あります。しかし,事件の中には,必ずしもこの点に重きを置くばかりではなくて,繰り返される犯罪に対して,矯正施設内の処遇期間を長期化させるという方向で考えるのではなくて,社会内における更生の可能性について積極的に検討をして,社会復帰を支援,促進することによって再犯を防止するという観点を深く考慮すべき事案もあると考えています。   検察当局でも,かねてよりそのような観点を持ちまして,各事件の捜査・公判に臨んできたところであり,処分を決する際にはそういった事情などを考慮することもあるわけでございますが,特に近年,福祉からの働き掛けでありますとか,あるいは再犯防止対策が政府の重要課題となっていることなども含めて,こういった情勢も相まって,社会復帰の支援・促進に対して,より強く意識するようになってきているような状況だと理解しております。   現在,検察では,検察改革の一環として策定された検察の精神及び基本姿勢を示す「検察の理念」におきましても,「警察その他の捜査機関のほか,矯正,保護その他の関係機関とも連携し,犯罪の防止や罪を犯した者の更生等の刑事政策の目的に寄与する。」と定めており,その観点を再度確認した上で,検察全体を挙げて犯罪者の再犯防止や改善更生という刑事政策の目的に向けた取組を行っているところでございます。そして,その一環に,いわゆる入口支援と呼ばれる取組があるものと理解しております。   ただ,再犯防止に向けた取組につきましては,当然,検察当局のみで行うことは難しいものでありますので,関係機関の協力を得て,連携を図りながら取り組んでいるというのが実情でございまして,そのため,各地の実情に応じて非常に様々な形で取組が行われているという状況がございます。そのような実情の中で,関係機関と連携して取組を行っているところでございますので,これから申し上げるものにつきましても,様々な取組がなされている中の一つの例として御理解いただきたいと考えております。   例えば,起訴猶予の場合を念頭に置きますと,ヒアリング資料にも書いてありますとおり,具体的な支援の内容としては,事案や被疑者の抱える問題などに応じ関係機関と連携をして,被疑者の生活調整・環境調整を行うというような取組というのが,まず一つございます。その前提として,そういった環境調整を行うような土壌が必要だということもありますので,自力で福祉事務所を訪問することができない高齢者の方ですとか,あるいは障害者の方などに対して,検察庁の職員が福祉事務所などに同行して,様々な福祉的支援の申請の手続の援助をするというような「同行支援」と呼ばれる取組なども行っているところです。   また,一部では,勾留中の被疑者を処分保留などで釈放して,一定期間,被疑者の生活状況等を観察するなどしまして,その結果等も踏まえて処分を決するといった取組も試験的に行われていると聞いております。   いずれの取組も,ヒアリング資料の一番下にも書いてありますとおり,高齢者,障害者,ホームレス,それから貧困者など,様々な方が対象になっておりますので,そういった方々の特性に応じて,その支援の内容が変わってくるということが実情です。ただし,いずれの場合につきましても,こういった方々に同意を得て行うということが前提になっています。   次に,関係機関との連携の状況ですが,これらの取組は,検察庁単独で行うことが難しいという場合が多いですし,福祉等の専門家の知見を必要とする場合もございます。そこで,ヒアリング資料の中央に書いてありますとおり,現在,全ての地方検察庁におきまして,再犯防止等の刑事政策的な取組を推進するための検察官,あるいは検察事務官の担当を置いております。具体的な事件ごとに,その担当を通じまして,事件や庁によっては,事件を担当する検察官,あるいは検察事務官などとも協力しまして,関係機関との連携を図っているところでございます。   この関係機関との連携の具体例を申し上げますと,例えば,保護観察所との関係では,従前から,必要に応じて,起訴猶予処分を受けた者に対して,宿泊場所の供与等を行う更生緊急保護を行い,改善更生のための措置が採られていたところですが,現在は,それにとどまらず,全ての地方検察庁におきまして,勾留中の被疑者のうち重点的な社会復帰支援を必要とする者に対して,検察官の依頼を受けた保護観察所が起訴猶予処分前に調査・調整を行った上で,更生保護施設等へ宿泊保護を委託しまして,継続的かつ重点的に生活指導等を行い,福祉サービスの調整,就労支援等の社会復帰支援を行う取組を行っております。これが更生緊急保護の重点実施と呼ばれる取組でございます。   また,庁によりましては,個別事案ごとに社会福祉士に依頼したりとか,あるいは社会福祉アドバイザーを非常勤職員として採用した庁などもありまして,こういった専門家の方々から福祉支援の助言を得たり,福祉機関等との連絡調整等を依頼しているところもございます。その他には,少年鑑別所の協力を得て,被疑者の知能検査を実施して対象者の生活能力等に関する資料の提供を受けるなどといった取組が行われている庁もございます。さらに,福祉事務所等の他の関係機関との連携も地域の実情に応じて行われているところでございます。   例えば,地域生活定着支援センターは,主に刑務所からの出所者を対象として福祉サービスにつなぐというような取組をしていただいているものと理解しておりますが,地域によりましては不起訴となった者が,福祉的な支援を必要とする場合におきまして,こういったセンターに支援をしていただくというようなことができるところもあると聞いております。   このように,各地方検察庁におきまして,事案や地域の実情に応じて再犯防止の取組を行っているところであり,それを支援するために最高検察庁におきましても刑事政策推進室を設置しまして,再犯防止・社会復帰支援のための取組等に関する情報収集,各庁へのフィードバックなどを行い,検察全体を挙げて再犯防止の取組を進めているというのが現状でございます。   私からの説明は以上でございます。 ○小木曽分科会長 ありがとうございました。   それでは,ただいまの御説明に御質問がございましたらお願いいたします。 ○太田委員 2点,お伺いしたいと思います。   こういった福祉的な支援につないだ後に対象者が問題を起こしたり,場合によっては再犯に至るというケースが実際に起きているのかどうかというのが,まず1点目です。   それからもう1点が,検察庁として,ないしは検察官として,こういった支援をつないだ後のフォローアップみたいなものは何かなさっているのかどうかということについて教えていただければと思います。 ○是木参考人 御質問のうちの1点目ですが,誠に申し訳ないのですけれども,正確に,資料として把握しているものはございません。こういった福祉的支援などを求める,そういったいわゆる入口支援という取組はかなり多数ある中におきまして,御指摘いただいたようなケースというのがないかと言われると,恐らくゼロではないかもしれないなというふうには思いますし,委員御承知のとおり,フォローをしっかりしていくようなタイプも場合もあれば,一時的な援助を行うようなパターンもありまして,そういったものによって密度が違うのかなと思っております。   それから,フォローアップという点に関しましては,今申し上げたこととも関連するわけですけれども,例えば,更生緊急保護の重点実施の対象になった場合におきましては,その後どうなっていくのかというところに関しまして,保護観察所などと必要な情報交換をするなどすることはよくあるわけでございます。また,福祉事務所なども含めまして,継続的に関わる窓口が少しずつできてくる中で,関係した方に,「どうなっていますか。」というようなことを確認しているということは聞いています。そういう意味では,一定のフォローアップというのは現状でもあるのだろうと思っております。 ○田鎖幹事 関連して幾つか事務的なことを伺いたいので,ひょっとしたらお答えいただけないこともあるかもしれません。   たくさんの方が書かれている論考などを読みますと,正にうまく社会復帰がいかなかったような場合に,再起というものがあり得るというようなことをお見受けするのですが,実際にそのようなものがあるのか,具体的にはどういうことか,御存じであれば教えていただきたいということが1点。   それから,前提的なことなんですけれども,これは基本的に在宅事件は対象外として実施されているという理解でよろしいんでしょうか。 ○是木参考人 まず,後者につきまして,いわゆる入口支援といわれる取組が在宅事件は対象外かというと,決してそうではないと思います。今申し上げたことをより正確に説明しますと,いわゆる入口支援と呼ばれる取組が一体何なのかということにもよるのかなと思っております。正に身柄拘束されている方につきまして,自らが福祉的な支援を求めることができないので,例えば,身柄拘束中においてもフォローを行うというような部分に関しましては,当然,在宅事件では関与し得ないというようなことだとは思いますけれども,例えば,検察庁内におけます社会福祉士などに関して,いろいろな助言を得ながら最終的な処分の方向性を検討する上で協力を求めていくとかいうような部分に関しましては,身柄拘束中の事件でなくてもできるわけでありまして,それは支援の枠組みによって違ってくるというのが実情だと思います。   それから,再起につきましては,御指摘にありましたように実情としてどうなっていますということを私が正確に申し上げられるわけではございません。もちろん,再起は実際上ございまして,件数としましては,平成28年で統計上,1,505件あると聞いております。ただ,誤解しないでいただきたいのは,この件数は,いわゆる入口支援というようなものを通じまして,何か失敗してしまった場合に再起しているものの数では全くございませんので,中には,例えば,一度不起訴にしたものにつきまして,別個の事情,新たな事情が発生して,これは刑事処罰に値するということが判断されるという事案もございます。そういったものも含めての件数だということで御理解ください。 ○田鎖幹事 今の御説明ですと,基本的にまず事件の担当検察官において,支援の必要性というものを判断し,それから庁によって支援室のようなところがあれば,そこにケースを持ち込むというか,そういう理解でよろしいのでしょうか。 ○是木参考人 それもまたやはり各庁ごと,希望する支援の内容ごとで様々だろうと思います。もちろん,事件を担当している検察官が契機になる必要はありまして,そこからスタートしなければ,この支援というのは始まらないわけでありますけれども,ある種,支援の方向性というところも含めまして,こういったことができないかという形で支援をする検察官,あるいは支援室の方に持ち込む場合もありますし,そうではなくて,ある種,どういった方向性でこの人をフォローしていったらよいのだろうか,その包括的な助言を得たいというようなことを中途の段階で相談するというようなケースもあろうかと思います。これも各庁の規模,それから事案の内容によって様々なのかなと考えています。 ○田鎖幹事 これもかなり実務的なことになるんですが,社会福祉士,社会福祉アドバイザーといった方々が,もちろん助言とか調整にも関わられるほかに,対象となる本人,あるいは場合によってはその親族の方などと面談をする,そういうことも行われているというふうに聞いております。そうすると,その場合の面談というのは,法的にどのような位置付けとして行われているのでしょうか。飽くまでも捜査の一部として行われているのか,あるいは余りその辺のことは明確にせず,支援ということで行われているのかということ。   それから,具体的にはどんな形で,取調室のようなところで,どんな形で具体的には行われているのか。被疑者の取調べのような感じで行われているのか,全く別の形態で行われているのかとかですね。   それから,これも細かいんですけれども,そういった面談の記録というのは,捜査の一部として行われているということですと,当然,被疑事件に関する記録の一部ということになるのでしょうか。 ○是木参考人 まず,最初の点ですが,親族の方などと面会するというようなものの位置付けということですが,恐らく従前から捜査の過程の中で,正に捜査の一環として,そういったお話を聞くというのはよくあるわけでありまして,そのようなものの発展的なものというような意味合いではないかと考えております。起訴猶予とする事案の中には,当然,監督環境が整っているかということでお話を聞く場合もございます。そのような場合に,調書を作成する場合もあれば,調書を作成する必要もない場合もあろうかと思います。もちろん,不起訴処分にした後において,例えば同行支援ですとかそういう場面におきまして,何かしらフォローされていたということになれば,多分これは捜査として行われているというよりは,事実上の御協力というような意味合いを持ってくるのではないかと思います。   それから,お話を聞くというのは御本人という趣旨でしょうか。 ○田鎖幹事 検事さんが書かれたものによると,御本人の場合もあれば親族の場合もあるということで,できればその両方の場合を知りたいのですが。 ○是木参考人 これもどういう場面を見るかということによって違ってくるのかなと思います。事実関係を聞いていくような聴取が行われた後において,プラスアルファとして,例えば更に,今後どうしようと思っているのか,何かしら福祉的支援を受ける気持ちがあるかどうかといったことを取調べの中で聞く場合もありますし,場を移しまして,正に専門の部署があるような場合におきまして,別の者がお話を聞くということもございまして,一概にどちらであるということが言えるわけではないのが実情です。 ○羽間委員 この支援の取組の件でございますが,ヒアリング資料の最後のところに,「いずれの措置も対象者の同意が必要」というふうに書かれておりますが,大体どれぐらいの割合の方が同意をされているかというような数値はおありでしょうか。もしお分かりならば教えていただきたいのですが。 ○是木参考人 大変申し訳ありませんが,なかなか数字で申し上げることが難しい性質のものでありまして,元々こういったものについて,「今後どうしていくつもりなのか。」というふうな問いが,取調べの中でなされるケースというのはたくさんあるわけです。その中で,非常に極端な例を言いましたら,「僕,私は何回でも犯罪をやりますよ。」みたいなことをおっしゃる方もおられるわけでありまして,それを支援の拒絶とみるのかというところもありますので,なかなか数字では申し上げにくいなと思っております。 ○小木曽分科会長 私からも一つ伺いたいのですが,これを担当する検察官,検察事務官は,その一定の期間,専らそれを担当なさるということでしょうか。 ○是木参考人 これは庁の規模,それから取り扱う件数によって異なります。専らそれを担当する者が複数いる庁もありますし,当然,他のことも兼務しているという場合もあります。 ○小木曽分科会長 それを担当することになったとき,何らか特別な研修のようなものはあるのでしょうか。 ○是木参考人 これも各庁の実情に応じて取組をしているところでありまして,当然これまでの取組がどういうものであるのかということは理解してもらう必要がありますので,研修的なことを行ったりしていると思います。ただ,全国的に,担当に命じられたときにどういう研修をしているのかというところは,私は承知しておりません。 ○小木曽分科会長 他はよろしいですか。   それでは,これについてのヒアリングはここまでといたします。   なお,是木参事官には,本日の議事に関する質問等にも対応していただくことがあるかもしれませんので,そのままお残りいただきたいと思います。   次に,既に御承知と思いますけれども,検察庁におきましては,過去にいわゆる横浜方式と呼ばれる取組が行われていた時期があるということです。この点についても,詳細を承知しておくことが今後の議論に資するだろうと思われますので,説明いただきたいと思います。   これについては,事務当局から御説明ください。 ○羽柴幹事 いわゆる「横浜方式」の概要について御説明させていただきます。   いわゆる「横浜方式」とは,横浜地方検察庁において昭和36年から起訴猶予者に対して行われていた運用です。   当時の説明によると,この方式は,従来であれば,あるいは起訴相当と思料される被疑者であっても,犯罪の情状,本人の性格,素質等を考慮し,本人の社会環境等を是正,若しくは調整すれば,本人の更生と再犯の防止が期待できる者については,その起訴を猶予し,保護観察所長に対し本人の事後補導を委ね,保護観察官,保護司の補導に服させて,原則として6か月間,刑の執行猶予期間中保護観察に付された者に対する保護観察に準ずる更生補導を実施し,保護観察所長より更生補導についての通報を得ることとするが,更生補導の効なく再犯のおそれがあるときは,起訴することとするというものとされています。   この方式の対象者は,原則として年齢が満20歳以上25歳未満であること,罪名が刑法犯中の財産犯・粗暴犯で身柄拘束中の者であること等を満たす被疑者のうち,従来であれば起訴相当と思料されるが,社会環境等を是正,調整すれば,その更生と再犯防止が期待できるものとされていました。   具体的には,犯罪事実自体は必ずしも起訴しなければならないほどではないが,環境が悪く,適切な指導保護者もいないため再犯に陥る危険があると認められるので,従来であれば起訴相当と思料されるような場合や,犯罪事実自体の犯情はこれを軽視することができないが,被疑者に改悛の情も認められ,適切な指導により再犯を防止することができると認められるような場合等,起訴と起訴猶予の限界領域を広く含んでいたなどと説明されています。   この方式は,法的には,当時の更生緊急保護法に基づく申出保護,すなわち,現在の更生緊急保護にその根拠を求めるものとされていたため,適用する際には,検察官において,被疑者に対してその意義,目的及び内容について十分説明をした上で,被疑者にこの方式による更生保護を受けることを望むか否かを確かめ,被疑者が希望する場合にのみ申出書を提出させて,この方式を適用することとしていたものです。その際には,検察官において被疑者の更生を図るために必要と認められる遵守事項を定めて,その遵守を誓約書により誓約させた上で被疑者を保護観察所長に委ね,保護観察官,保護司の補導に服させることにより,運用によって,刑の執行を猶予された者に対する保護観察に準ずる処遇を実施することが可能となっていました。その場合,当該事件については起訴猶予処分としておきますが,保護観察所から対象者の成績についての通知を受けて,更生保護の効果がなく再犯のおそれがあると認められるときには,検察官は事件を再起して起訴することを考慮することとされていました。   この「横浜方式」類似の方式は,例えば,昭和44年7月末時点で,横浜地方検察庁のほか,全国22の地方検察庁において,各地の実情に応じた方法により実施されていたようですが,次第に対象者が激減し,やがて消滅するに至ったようです。その理由として,検察官が犯罪者の保護に積極的に関わる仕組み自体に法的根拠がない,裁判所において有罪認定されていない者に対して,司法処分ではない処遇を行うこととなるなどの批判があったことに加え,当時は人的・財政的な制約があったとの指摘があるものと承知しております。   いわゆる「横浜方式」の概要は,以上のとおりです。 ○小木曽分科会長 これについても御質問ございましたらお願いいたします。よろしいですか。   ただいまの御説明にも出てまいりましたけれども,いわゆる入口支援におきましては,更生緊急保護が活用されております。そこで,更生緊急保護の制度概要や実施状況について,また,これに関連するものとして,更生保護における社会復帰支援施策の現状について把握しておくことは,やはり今後の議論に有益であろうと考えますので,それについて説明を伺いたいと思います。   こちらについても,事務当局から説明をお願いいたします。 ○今福幹事 配布資料2を用いまして,「更生緊急保護」及び「更生保護における社会復帰支援施策」について説明をさせていただきます。   まず資料は,大きく分けまして「更生緊急保護」に関するものと,「更生保護における社会復帰支援施策」に関するものとがございます。本日の審議内容は,起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方ですが,この措置の内容として住居確保を伴う支援や就労支援等も関係してくるため,それらの社会復帰支援施策の概要についても説明をさせていただきます。   まず,1ページを御覧ください。上段は,更生緊急保護の対象者や措置内容等について整理をしたものです。「概要」に記載がありますとおり,更生緊急保護は,刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた人,例えば満期釈放や起訴猶予などで身体の拘束を解かれた者が,親族からの援助や公的機関等からの保護が受けられない場合などに,緊急的に必要な援助や保護の措置を実施し,速やかな改善更生を図るという措置です。保護観察とは異なり,措置を行うに当たり,対象者が保護観察所長に申し出る必要がございます。更生緊急保護の内容としては,宿泊場所の供与のほか,食事や衣料の給与等の措置を行っており,保護の期間は原則として身体の拘束を解かれてから6月以内ですが,特に必要があると認められるときには更に6月の範囲で延長が可能です。   下段を御覧ください。対象者からの更生緊急保護の申出人員の統計です。対象者が受けた処分別の構成比と人員を示しております。各年とも刑の執行終了者が約7割を占めております。   2ページは,更生緊急保護の実施人員に関する統計であり,上段はそのうち自庁保護,すなわち保護観察所において食事,衣服,旅費を支給するなどの保護を直接行った延べ人員の統計です。下段は委託保護,すなわち更生保護施設や,後ほど御説明いたします自立準備ホーム等に宿泊を伴う保護を委託した実人員の統計でございます。   3ページの上段は,更生緊急保護の重点実施の試行の概要です。   この取組においては,保護観察所が検察庁と連携し,起訴猶予が見込まれる者のうち,特に支援の必要性が高い者に対し,勾留されている段階から釈放後の支援に向けた調査・調整を行います。そして,釈放後に起訴猶予者から申出を受け,更生保護施設等での宿泊保護を行いつつ,事前の調査・調整の結果を踏まえ,就労支援,福祉サービスの調整や自立に向けた生活指導といった重点的かつ継続的な支援を実施していくという取組でございます。   重点実施の試行状況は下段のとおりでございまして,対象者の属性としましては,ホームレスが全体の6割以上を占め,宿泊場所や食事の提供といった支援以外の支援内容としては,下の表に記載のとおり,就労支援が全体の7割程度を占めております。   4ページは,更生保護法のうち,更生緊急保護に関する条文でございます。   次に,更生保護における社会復帰支援施策について御説明いたします。   5ページの上段は,住居の確保に関する取組について,その法的根拠等を整理しております。左側に記載のあるとおり,保護観察所における住居支援は,保護観察対象者に対する補導援護や応急の救護として行う場合と,満期釈放者や起訴猶予者等に対する更生緊急保護として行う場合とがございます。これらの支援は,いずれも原則として国が行うこととされていますが,民間で「更生保護事業を営む者」,すなわち更生保護施設や,「その他の適当な者」として自立準備ホーム等に委託して行うこともでき,その場合は国から受託者に対して委託費として宿泊や食事等の費用を支払います。   5ページの下段は,更生保護施設についての概要です。   更生保護施設は,住居支援の中核的な担い手として,仮釈放者の約3割を収容保護しており,食事の給与のほか,社会生活技能訓練や酒害・薬害教育の実施など,社会適応力を高める処遇を実施しております。また,平成21年度からは,指定された施設に福祉スタッフを配置して,高齢又は障害により特に自立が困難な者に対する支援体制を強化する取組を行っており,平成25年度からは,指定された施設に,薬物依存からの回復を目指すためのプログラム等を実施する専門スタッフを配置して重点的な処遇を実施しております。   6ページの上段は,自立準備ホームの概要です。自立準備ホームは,更生保護施設以外の多様な受け皿を確保するために,平成23年度から開始された「緊急的住居確保・自立支援対策」において,保護観察所に登録された民間事業者が運営する施設やその一室です。登録事業者は,路上生活者を支援するNPO法人や,薬物依存症者リハビリテーション施設を運営するNPO法人など多種多様です。各法人の特色をいかして住居を提供するとともに,これと一体的に日常生活の支援や自立に向けた支援を実施しております。   6ページの下段は補導援護について,そして,7ページの上段は応急の救護についての更生保護法における条文を記載しております。   7ページの下段は,社会復帰支援のうち,刑務所出所者等に対する就労支援について,施設内処遇のステージと社会内処遇のステージに分けて,実施する機関や事業者ごとに整理した資料です。   上側の緑色の部分は,法務省と厚生労働省とで連携して,平成18年度から実施しております「刑務所出所者等総合的就労支援対策」です。この取組では,各地のハローワーク,矯正施設及び保護観察所が連携し,ハローワーク相談員による職業相談や職業紹介等を実施しているほか,民間事業者の協力を得て,刑務所出所者等に実際に業務を体験させる職場体験講習や,刑務所出所者等を試行的に雇用してもらい,常用雇用への移行促進を図る「トライアル雇用」を実施しております。   左下の部分は,このほか刑務所等で実施されている取組であり,職業訓練や就労支援指導のほか,「コレワーク」と呼ばれる矯正就労支援情報センターを設置し,同センターが受刑者等の職歴,資格,帰住予定地等の情報を一括管理し,受刑者等の雇用を希望する企業の雇用条件に適合する者が収容されている刑務所,少年院の情報を提供するといった広域的な就労支援が実施されております。   右下の部分は,保護観察所で実施している取組であり,民間の就労支援事業者に委託して,矯正施設入所中から就職まで,きめ細やかな寄り添い型の支援を行う「更生保護就労支援事業」のほか,雇い入れた刑務所出所者等が事業主に業務上の損害を与えた場合に,200万円を上限として見舞金を支払う「身元保証制度」や,刑務所出所者等を実際に雇用した協力雇用主に対して奨励金を支給する取組を行っております。   配布資料2の説明は以上でございます。 ○小木曽分科会長 ただいまの御説明に御質問がありましたらお願いいたします。 ○太田委員 更生緊急保護について,平成14年でしたでしょうか,法定期間の6か月の延長が認められるようになりました。   しかし,当初は,かなり抑制的に運用していたということを伺っています。例えば,福祉施設などの最終帰住先が決まっているが,そこに入居するまで,あと1週間ぐらい期間が必要なので1週間だけ延ばすとかというふうな,かなり謙抑的な使い方をしていたというふうに伺っております。しかし,要保護犯罪者といいますか,支援を必要とする対象者が増えてきていると思いますけれども,最近は,この特別法定期間の適用の仕方というのはどういうふうになっておりますでしょうか。 ○今福幹事 特に必要があると認められるときには延長が可能であるということの実情ということだと思いますけれども,それにつきましては,どういう場合に特に必要があると認められるのかということについて,三つ要件がございます。一つ目は,対象となる者の心身の状況,生活環境等に改善更生を妨げる特別な事情があるということ,二つ目は,改善更生の意欲及びそのための努力が顕著に認められるということ,そして最後は,公共の衛生福祉に関する機関その他の機関から必要な保護を受けることができるようあっせんしたにもかかわらず,なお,その改善更生のためには保護をする必要があるということ,それらのいずれにも該当するということで運用しております。   具体的に該当する事例といたしましては,高齢,疾病,障害などのために,一般法定期間の6か月では自立した生活を営むことが困難であるという場合ですとか,あるいは事故,天災等,対象となる者の責めに帰すことのできない事情のために,一般法定期間では自立が難しいような場合が考えられます。極めて謙抑的に運用しているというものではございません。先ほど申し上げたような要件に該当するものについては,必要に応じて行っておりますが,件数はそれほど多くはないのではないかと考えております。 ○田鎖幹事 2点教えていただきたいのですが,まず,1ページの上の措置内容としての宿泊場所の供与の場合,委託先として更生保護施設・自立準備ホーム「等」となっておりますので,具体的に更生保護施設や自立準備ホーム以外としてどのようなところがあるのかというのを教えていただきたいということが1点です。   それから,もう1点は,3ページの下の重点実施の試行状況のところでありますが,特に上の対象者のところを見ますと,障害等のない方が相当数を占めているように思われます。重複計上はあるということなんですが,そもそも障害の部分の数値が小さいので。それで,様々な方がおられると思いますけれども,具体的にはここに挙げられていない類型の方で,どのような方々が重点実施の対象となっているのか教えていただきたいと思います。 ○今福幹事 最初の御質問でございますけれども,私どもの方では,かつて個人委託というものを活用しておりました。個人委託の対象については何らかの縛りがあるわけではございませんので,引き受けて下さる民間団体等に委託しておりました。平成23年度に先ほど申し上げた自立準備ホームという制度ができてからは,これまで個人委託でお願いしていたような民間団体等についてはかなり自立準備ホームとして登録していただきました。従来の個人委託先の多くは自立準備ホームに移行しているのではないかと思っております。   ただ,中には,自立準備ホームの登録まではしたくないけれども,再非行防止等々に協力したいと考えて,宿泊場所も提供できるというような民間団体等があった場合に,そうした団体を委託先とするような事例もあるものと承知しています。   次に,重点実施における障害等状況の欄についての御質問についてお答えいたしますと,先ほども申し上げたとおり対象になっている者は,ホームレスの関係が6割以上ということで非常に多いというのが現状でございます。御覧いただいている欄に記載のある類型以外にということですと,特に今申し上げられるような特色のあるジャンルはないのではないかと思っております。 ○羽間委員 更生保護施設と自立準備ホームの主な相違について教えていただきたいと思います。例えば国との関係,それから職員の資格や勤務体制の違い,あと委託されている対象者の層の違いといいますか,そういったものがあれば教えていただきたいと思います。 ○今福幹事 今,御質問いただきました更生保護施設と自立準備ホームを比較した場合,まず,国との関係で申し上げますと,更生保護施設は,そのほとんどが更生保護法人が運営しておりますまた,その運営自体も国の認可を受けている施設でございますので,事業運営に対する指導監督の関係が国との関係ではあるということです。   一方で,自立準備ホームについては,それぞれの事業主体は様々でありますけれども,一番多いのはNPO法人となっております。そうしますと,例えば都道府県との関係でのNPO法人としての指導監督関係があると思いますが,私ども法務省とは,そのような指導監督関係はございません。宿泊保護などを委託した場合には,その委託した保護の実施状況の報告をいただくという形で実情把握を行っています。   職員の資格等につきましては,更生保護施設においては,規則等で補導に当たる職員等の要件が明記されておりますけれども,自立準備ホームについては,そうした規制はございません。   対象者については,更生保護施設と比べ,自立準備ホームは非常に多様でございますので,それぞれの登録事業者の特色に合わせた形でのお願いの仕方をしているものと承知しております。   例えば,更生保護施設においては少年の定員が非常に少ないですが,自立準備ホームであれば,少年を専門とするところもありますし,あるいは女性の関係ですと,更生保護施設の定員が少ない一方で,自立準備ホームは女性を中心に受け入れているところもあります。また,福祉関係の設置主体であれば,例えば発達障害の関係で処遇力を持っているところについては,そういったところを選んで委託するという活用の仕方をしています。しかし,一般的に申し上げれば,やはり更生保護施設の方は,先ほどの職員の体制ですとか,犯罪者処遇に関するスキルや,ノウハウの蓄積もありますので,特に刑務所出所者等で社会復帰のための指導ですとか,あるいは支援を手厚くする必要性が高い者については更生保護施設に委託して,それ以外の者について自立準備ホームに委託しているということになろうかと思います。 ○小木曽分科会長 他によろしいですか。   それでは,一通り御説明を伺いましたので,次は配布資料3の「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方(検討項目案)」について説明をお願いしたいと思います。 ○羽柴幹事 配布資料3は,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方(検討項目案)」です。   起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方については,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書において,被疑者を起訴猶予等とする場合に,再犯防止に向けた働き掛けを行うため,入口支援や更生緊急保護の運用を更に充実させるほか,現行法上,身体拘束された後,起訴猶予処分となった者等が対象とされている更生緊急保護について,検察官による起訴猶予の処分前にも実施し得ることとするなど,その対象範囲を拡大することが考えられ,併せて,検察官は,起訴猶予等とするときは,被疑者に訓戒,指導等をすることができる旨を明文化することも考えられる。また,被疑者の生活環境や生活態度の改善状況等により,検察官の終局処分の内容が変わり得る場合に,検察官が同処分の決定に際してその改善状況等を把握するため,検察官が,被疑者の意思に反しないことを前提に,終局処分前に保護観察所その他の公私の団体に対し,帰住先の確保を含めた生活環境の調整等を依頼することを可能とする仕組みを導入することも考えられるとされました。   さらに,部会での意見交換において,起訴猶予等に伴う再犯防止措置について,当分科会に属されていない委員・幹事の方からも御発言がございました。詳細は議事録のとおりですが,その要旨を御紹介いたしますと,「現在,地方検察庁では,起訴猶予者等を対象に様々な社会復帰支援が行われているところ,釈放前は支援に同意していても,釈放されると支援を拒んで逃げてしまう者もいると聞いており,そのような実態を踏まえた検討を行う必要がある」との御意見や,「再犯防止措置の「措置」としてどのようなものを想定するのかにより手続の在り方も異なると思われ,例えば訓戒をするというのも一つの措置であろうが,どのようなものを想定するかを考えつつ議論することが適当である」との御意見,また,少年鑑別所の調査機能の活用等については,「少年鑑別所及び保護観察所には様々なノウハウが蓄積され,調査・調整機能を果たしているので,少年鑑別所や保護観察所の機能を捜査や公訴の段階等で活用することについても検討が必要である」との御意見,「充実した処遇をできるようにすることはよいことであるが,的確な判断をするためにはきちんとした材料が必要であり,調査や選別が非常に大事であって,早期に手当てをするため,調査・選別をする機能という観点を取り入れてもらいたい」という御意見のほか,「少年鑑別所の調査機能の活用を考える場合には,対象者を意識して検討する必要があるとともに,調査を行う段階,身柄拘束中の調査,調査により得られた情報の取扱い,手続等についてどのように考えるかということも検討する必要がある」との御意見がございました。   配布資料3の「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方(検討項目案)」は,これらを踏まえつつ,飽くまでも分科会における意見交換の御参考としていただくため,検討項目の案を事務当局において作成したものです。もとより,検討項目がこれに限られるとするものではありません。   検討項目を掲げた趣旨を簡単に御説明いたします。   「1 現在行われている取組の現状及び問題点」は,起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方を検討する上では,現在行われている取組の現状及び問題点を踏まえる必要があると考えられることから,検討項目として掲げたものです。   「2 現在の問題点を解決するための方策として考え得る事項及び検討課題」に掲げている検討項目は,現在行われている取組の問題点を解決するための方策として考えられる制度概要案を検討する上で課題となると考えられるものです。   まず,「基本的枠組みについて(更生保護の活用を含む。)」は,現在行われている取組の問題点として挙げられた課題を踏まえ,更生保護の活用を含めて再犯防止措置として今後どういった取組が考えられるのかといった点を検討項目とするものです。   また,「対象者について」は,考え得る措置の内容によっては対象者が異なる可能性があることも念頭に置いて,考え得る各措置ごとにどのような者が対象として想定されるのかといった点を検討項目とするものです。   次に,「少年鑑別所の調査機能の活用について」は,起訴猶予等に伴う再犯防止措置に関連して,少年鑑別所の調査機能を活用することが考えられるが,活用するとした場合,どのように活用することが考えられるか等を検討項目とするものです。なお,ここでは少年鑑別所の調査機能の活用だけを掲げていますが,「保護観察所の調査・調整機能の活用について」は,「基本的枠組みについて(更生保護の活用を含む。)」において検討することを想定しています。   「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方(検討項目案)」についての説明は以上です。 ○小木曽分科会長 ただいまの説明に御質問や,あるいはこの段階で,検討項目が他にもあるのではないかといった御意見がありましたら挙手をお願いいたします。   御意見等ないようでしたら,当面この検討項目案に従って議論を進めたいと思います。よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   では,早速,意見交換を行いたいと思います。配布資料3の「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方(検討項目案)」に記載されている順序で検討を進めることでよろしいと思いますので,意見交換は「1 現在行われている取組の現状及び問題点」,「2 現在の問題点を解決するための方策として考え得る事項及び検討課題」という順番で行うこととしまして,2の検討課題につきましても,検討項目案記載の順番,すなわち「基本的枠組みについて」,「対象者について」の検討項目に従って意見交換を行いたいと思います。   それでは,「現在行われている取組の現状及び問題点」から意見交換を行いたいと思います。   以下の検討課題においても同様ですが,「現在行われている取組の現状及び問題点」に関する御意見でありましたら,他の検討項目に関係する御意見を含めて述べていただいてもよろしいと思います。   では,御発言をお願いいたします。 ○太田委員 まず,現状と課題ということですけれども,先ほど説明が是木参事官からありましたように,現在,検察庁の方では,社会復帰支援室などを設けるなどして,起訴猶予となる被疑者について福祉事務所等の関係機関と調整を行って,福祉施設への入居だとか,生活保護などの福祉的支援につなげるという取組が行われており,また,検察庁と保護観察所が連携して,起訴猶予の処分前から帰住先等を事前に調整をした上で更生保護施設や自立準備ホームで受け入れるなどして,更生緊急保護を重点的に実施するという取組が行われております。   これらの取組においては,福祉,あるいは司法福祉的な支援が行われれば,再犯防止や改善更生を図ることができると考えられる者を中心に,起訴猶予の段階で検察において早期の支援につなげるということによって,その再犯防止や改善更生を図るということにおいて一定の成果を得ていると考えます。   もっとも,こうした取組については,今説明がありましたように,明示的に定めた規定がありませんけれども,かつての横浜方式において,その運用が見られなくなった実質的な原因が,先ほど説明がありましたように法的,予算的な裏付けがないということにあったとされていることからも,取組を充実,整備するための財政的な裏付けといったものが重要でありますし,そのためにも法制面での裏付けといったものを強化するということが課題であるというふうに考えます。   さらに,現在行われております入口支援につきましては任意に行われているものでありますけれども,こうした支援が行われれば再犯の防止が期待できるとして調整したにもかかわらず,実際に起訴猶予となって身柄が釈放されますと,それを拒否して職員の説得にも応じず,結果としては更生が危ぶまれるような事態が生じているということもあるというふうに伺っておりますので,それも課題であろうかなというふうに考えます。   さらには,比較的軽い罪,要するに,起訴を要するかどうかの境目というような比較的軽い罪を犯したとはいえ,その者にはその者自身の問題性といいますか,犯罪性があるのでありますから,一定の福祉的ないしは司法福祉的な支援が行われれば再犯を防ぐことができるとは限りませんし,それから,福祉的な支援というものは要しないけれども,本人の改善更生と再犯防止のためには,社会の中において監督を行ったり,それから指導を行うなど,一定の働き掛けが必要であり,また,そうした働き掛けが行われることで,改善更生と再犯防止が十分期待できるという者がいるように思えますので,そうした者に対して,起訴猶予に際して一定の措置を採ることができるようにすることも課題であると考えます。   特に,要保護性が認められるものの軽微な犯罪を行った若年者を単なる起訴猶予とするということは,更生の機会を逃すことにもなりかねませんので,一定の保護的な措置を前提として起訴猶予とするというような仕組みを考える必要があるというふうに考えます。 ○保坂幹事 私からも課題ということで発言させていただきます。先ほど是木参事官から御紹介がありました,検察庁で行われているいわゆる入口支援というものにおいては,保護観察所の更生緊急保護が活用されており,そして,今福幹事から御説明がありましたように,いわゆる更生緊急保護の重点実施ということで,釈放前,起訴猶予処分前から事前に検察庁と保護観察所が連携して調整に当たるということが試行的に行われているということでございました。   関連の規定を見ますと,更生保護法第86条第2項で,検察官が被疑者に対して,必要があるときには制度及び申出について教示をしなければならないという規定や,保護観察所の長は,更生緊急保護の開始に当たっては,検察官の意見を聞かなければならないという規定が第86条第3項にあるものの,その事前の調整については,運用であって明示的な規定はないということでございます。   あともう一つ,更生緊急保護の要件といたしまして,第85条第1項第6号でございますが,「訴追を必要としないため,公訴を提起しない処分を受けた者」を対象とするという要件になっておりまして,起訴猶予の処分をする前の者に対しては行えないということになっております。これはこのままで良いのかどうかというのが課題であろうということでございます。 ○羽間委員 私も太田委員と同様の問題意識を持っております。   措置の対象として,現在この会議で念頭に置いておりますのは18歳,19歳の若年者でございまして,現在,入口支援で対象にしている方とは性質が異なるわけでございます。こういう若年の方たちというのは,自分自身に課せられた約束事を守らなかった場合に,どのような不利益的な措置が待っているのかということ,そういった措置というのがどの程度のものなのか,こういった観点から制度を捉えようとする傾向があるというふうにいえると思います。   なかには,現在の更生緊急保護の枠組みを前提に,補導援護的な措置で対応可能な若年者もいるとは思います。しかし,現行で保護処分を受けているような,要保護性が高い若年者,つまり資質や生活環境に問題を抱えている若年層に対する措置としては,現在の更生緊急保護の枠組みを前提としたものでは不十分ではないかという思いを持っております。   こういった層に対する処遇といいますか,措置としては,遵守事項,あるいはそういう言葉はともかくとして,それに類するものを課した上で指導を行い,指導に従わなかった場合には何らかの不利益的な措置が伴うというような枠組みが必要なのではないかというふうに考えております。 ○田鎖幹事 この問題は,そもそも入口支援とは何かというところが定まっていないというところから始まっております関係で,現状の問題点といっても,その現状が様々であって,どこをターゲットにして議論するかによっても,その様相が様々に異なってくるということですので,前提としてその議論を,これから論点出し等をしていくに当たっては,どの場面で,どういった対象者に対して,どういうことが考えられるのかというのを明確にする必要があるというふうに考えます。   これは前振りなんでございますが,先ほどのヒアリングでも,あるいは太田委員の指摘によっても,適切な支援につなげると。それで,つなげることが結果的に再犯防止に役立つという,大まかに言うとそういうタイプの方と,より積極的な改善更生に向けた働きが必要なのではないかというふうに考えられる方というのがいるわけでして,特に後者の類型に相当する部分について,例えば,過去には横浜方式のような取組が行われたと,こういうふうに理解しております。   ただ,そのときも当時の批判としてあったものとして,やはり一定の事実,犯罪なりの認定をしたとして,それに対して改善更生に向けた一定の働き掛けをするというのは,正に刑罰的な,裁判所が本来担うべき事実の認定をした上で,それに対してどういう処遇が必要なのかと,そういうことを起訴猶予段階で検察庁がやると,そういうことになるということに対して批判が向けられたというふうに理解しておりまして,それは基本的に現代においても同様に当てはまる問題だろうと思います。   現実に,ちょっと場面は違いますけれども,部会の方で資料として配布していただきました法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の中で,社会奉仕を起訴猶予の条件とする制度というものが一応議論されたわけなんですけれども,これについても,やはり有罪が認定されていない者に対して,そういうものを課し得るかというような指摘が1点あった。それから,そこの部分をクリアするために,では同意があればどうかということについても,やはりそこでなされる同意が真の同意と言い得るかどうかは大きな問題だということで,結局,起訴猶予に伴う社会奉仕については,当時の部会では取り上げないということになったという経過があります。ですので,この点については非常に慎重な議論が必要で,第2分科会の方でも制度設計をしているわけですので,議論の結果,起訴猶予段階でやるのはやはり問題があるということであれば,その起訴後の問題として議論することが必要であろうと思います。   それから,先ほど羽間委員の方からも,若年者との関係で,特に18歳,19歳という数字も出たわけなんですけれども,まだ現時点では引下げがあるかどうか分からないということで,もうちょっと幅広く若年者ということになるわけなんですけれども,仮に,ここを若年成人というものを想定した場合に,正に,では,若年ではあるが成人に対して,要保護性のようなものが高いからといって,では,介入が許されるのかという根本的な問題が一般の成人以上に強く出てくると思いますので,ここは慎重な議論が必要であろうと思われます。   それとの関係で,私はやはり遵守事項を付けるということは,一定の自由の制約というものを,なかなか同意の任意性というものが確保できない状況で行うということですので,問題が大きいだろうというふうに考えます。 ○小木曽分科会長 ただいまの御発言は,検討課題の方にも触れる御発言であったと思います。 ○太田委員 田鎖幹事からの話ですけれども,確かにおっしゃるように,裁判所が有罪認定をした上で,犯罪者に一定の働き掛けを行うという,その仕組みが考えられないわけではありません。けれども,何よりも本人に手続的な負担や,それから時間的な負担,要するに公判という負担が掛かりますし,それから,前科に伴う資格制限もあったり,それから日本の場合は特に事実上のラベリングといったマイナスの影響もありますので,確かに,起訴猶予という場面以外の方策があるとしても,その制度の存否にかかわらず,実際に起訴猶予相当の者は存在することになるわけでありますので,採り得る措置としては限界はあるとは思いますけれども,起訴猶予に伴う再犯防止措置といったことを検討することは有意義ではないかなというふうに考えます。 ○羽間委員 ちょっと訂正させていただいてもよろしいですか。   私は,遵守事項という言葉を使いましたけれども,遵守事項を課せということを言っているわけではなくて,そのようなというか,どのような言葉を使うかは今後の課題だとは思いますけれども,約束事というか,類するものというような言い方をしておりますので,そこは訂正をしていただきたいと思います。 ○田鎖幹事 起訴に伴う手続的な負担というのは,これは確かによく考えなければいけないことだと思うんですね。ただ,そうであるからこそ,第2分科会の方で新たな方策はないのかということを恐らく議論されるのであろうというふうに考えておりまして,ここは直接第3分科会のテーマではないわけなんですけれども,12月の部会での議論等を経て,お互いに相互の議論を見ながら論点出しを柔軟にしていくことであろうというふうに考えております。   それから,手続的な負担ということで言いますと,先ほどのヒアリングでは現実問題として,重点実施の対象となっているような事案での再起というのはほとんどないように理解できるようなお話ではあったんですけれども,しかし,例えば約束事を設定するとか,そういうことによって再起の道を残すということになっていますと,最終的には本人が起訴をされるわけですので,それは本人が約束事を守らなかったからという結果ではありましょうけれども,手続的な負担というものは出てくるということ。   それから,更に一定の負担ですね,本人にとっては。もちろん社会復帰につながるという意味では利益な部分もあるでしょうけれども,一方では自由の制約を伴う,そういうことを一定程度行った上で,しかし,約束がきちんと守れませんでしたということで起訴になるということであれば,本来の目的の関係でどうなのかという疑問も生じます。 ○小木曽分科会長 分科会相互の論点については,クロスオーバーするところについてはそれぞれの分科会で議論しつつ,また,全体で統合した議論が部会で行われるということだと思いますので,こちらの分科会に関係する部分についてはここでも議論をするということでよろしいと思います。   それで,今もう既に問題点に対する方策についての議論に入り掛けているように伺っておりましたけれども,では,「2 現在の問題点を解決するための方策として考え得る事項及び検討課題」につきまして,まずは基本的枠組みについて意見交換をいたしたいと思います。   今までも御意見の中に,問題点としては,法制面の裏付けがない,財政的な裏付けがない,更生緊急保護の事前調整が明示的に定められていない,任意で行われているので実効性の確保がない,また,ターゲットを明確にする必要があるといったような関心が示されたわけであります。   そのような問題点を踏まえて,先ほどからもう議論になっておりますけれども,どのような方策が考えられるのかという点,検討項目の2の「(1)基本的枠組みについて」ということについて議論をしたいと思いますが,これについて御意見をいただきたいと思います。 ○太田委員 基本的な枠組みについてですけれども,私は大きく二つの枠組みが考えられるのではないかなと思います。   それは,先ほどの現状と課題というところに対応した,いわゆる福祉的な支援が必要という要保護犯罪者と,それからもう一つは,そういった福祉的な支援は必ずしも要しないけれども,社会復帰に際して一定の働き掛けが必要だという犯罪者,それぞれに応じた二つの枠組みというのがあってしかるべきかと思います。   まず一つ目は,現在行われている入口支援と呼ばれるものを更に拡充・整備していくという枠組みでありまして,これは,事前に,帰住先だとか,それから必要な福祉的な支援というものの整備を行っておいて,起訴猶予の時点で早期の支援につなげることによって再犯防止や改善を図ることで一定の成果は得ているわけですから,本人の同意を得て行っている現在の取組を更に拡充・整備していくことで,早期の改善更生や再犯防止を図るということが考えられます。そのためには,必要な枠組みとしては,起訴猶予の裁定前から環境調整を行うための明示的な規定を設ける必要がありますし,更に身柄事件ではない在宅事件の被疑者についても,更生緊急保護の対象にするような法整備が必要であるというふうに考えます。これが一つ目の枠組みです。要するに,福祉的な支援等が必要な要保護犯罪者に対する入口支援の拡充・整備と,そのための明示的な規定の整備ということであります。もう一つは,一定の社会内処遇と言っていいのかどうか分かりませんけれども,社会内処遇又は保護的な措置を前提とした起訴猶予制度の整備であります。犯した罪が必ずしも起訴を要するかどうか,その境界辺りの比較的軽微なものではありますけれども,本人の改善更生,再犯防止のために社会の中において監督を行ったり指導を行うなど,一定の働き掛けが必要であり,かつ,そうした働き掛けが行われることで,改善更生と再犯防止が期待できるという者がおりますので,検察官が起訴猶予を前提として,何と言えばよいか分かりませんけれども一種の,誓約事項を課した上で,犯罪を行わずに更生に向けた生活が行えるように監督し,あるいは一定の指導を行うといったような,保護的な措置を採ることができるような,こういう法整備を行うことが望ましいというふうに考えます。   先ほどの,むしろ裁判による仕組みがよいのではないかという話については,私個人としては両方あってもいいのではないかと思いますが,第2分科会からどういう意見が出るか分かりませんけれども,起訴して裁判で対応するのが望ましい場合というのは,やはり対象者が違うというふうに考えております。また,起訴猶予者に対して一定の監督なり指導といった対応を採ることに対しては,私は手続的ないろいろな担保をする方法があるのではないかなというふうに考えておりまして,例えば,異議申立ての手続を整備するとか,例えば弁護士が関与するような手続を設けるというようなことで,十分に担保しているのではないかなというふうに考えております。 ○保坂幹事 先ほど,事務当局からも御紹介がありました「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書でいわれておりますことが,このテーマの関連で4点ほどございまして,入口支援,更生緊急保護の運用の充実強化,更生緊急保護の対象範囲の拡大,起訴猶予の際の訓戒指導等の規定の明文化,検察官が終局処分前に保護観察所等に生活環境の調整を依頼する仕組みの導入ということがいわれております。   先ほど是木参事官からも御紹介ありましたように,検察庁におけるいわゆる入口支援というのは各庁の実情に応じて,かつ,どこまでできるか,何が有効か,というのはいわば探り探り,いろいろ工夫して取り組んでいるということでございます。そういたしますと,例えば,今の取組に関して法的根拠の裏付けがあるもの,ないものを精査し,あったほうがよいもの,あるいは運用のままが良いものを精査して,更に拡大・充実するためにはどうすればいいのかということを更に検討しつつ,法的裏付けが必要なものについては根拠規定を整備していくということは考えられるのだろうと思っております。 ○田鎖幹事 今の「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書の記載の部分に関して,まず申し上げますと,起訴猶予処分前の更生緊急保護ということについては,先ほど太田委員にも整理していただいた二つの類型の最初の方,支援につなげるという部分についての手当というふうに理解できると思います。それが,従来の更生緊急保護の内容自体は変わらないものを想定するということであればそうなんでしょうけれども,その保護の内容自体についても踏み込んでいくということになると,もうちょっと慎重な検討も,あるいは必要になるかなというふうに考えます。   それから,取りまとめ報告書の,その次の部分に出てくる,「起訴猶予等とするとき」に,「検察官が被疑者に訓戒指導等をする」と。訓戒というのは容易にイメージできて,現実に今でも行われているのかなとも思うわけなんですけれども,この指導というのが非常に多義的なというか,幅広いものを想定することが可能ですので,指導というものが,それこそ何かプログラムを受講するように勧めるとか,そういったことまで広めてしまうと,積極的な働き掛けということで,また問題は生じ得ると。あと,「起訴猶予等とするとき」というのも,どのタイミングかということを,その時点によってまた考えることも違ってくるだろうというふうに考えます。仮に,指導の内容によりますけれども,そういったものを受けるということが起訴猶予処分の条件になるということになると,任意性,事実上の強制の問題ということは生じ得るのではないかというふうに考えました。   それから,最後の部分ですか,「終局処分前に,保護観察所その他の公私の団体に対し,帰住先の確保を含めた生活環境の調整等を依頼することを可能とする」。ここも,結局,調整等の依頼の中身がどこまで広がるかということが,一つ問題になるだろうということ。それから,訴追裁量が検察官に非常に広くある中で,例えば被疑者の意思に反しないといっても,果たして,その意思に反しないという任意性の確保が本当にできるのかということは問題であろうというふうに考えます。   もう1点。やはり,積極的な働き掛け,改善更生に向けた処遇的な内容を含むというものについては,これは慎重な検討が必要であろうというふうに考えます。そこを例えば異議申立てのようなシステムを作る,そこで,では,異議申立てをする先はどこなのかとか,裁判所の関与があるのかどうかというような問題。そうすると,それを別途,これも第2分科会マターになると思いますけれども,従来の通常の公判請求とは違う形の別ルートのような形で起訴後の手続,ルートを作るようなものと,作り方,設計の仕方によってはかなり似通ってくるのかもしれないと,そこはちょっと慎重な検討が必要だろうというふうに考えます。 ○羽間委員 先ほど,太田委員が御提案された枠組みにつきましては,私も基本的に同じように考えていたところでございます。   つまり,現在の入口支援の枠組みで処遇を行っているような福祉的な措置が必要な層に対しては,更生緊急保護の措置の一つである生活指導という程度の枠組みで処遇を行えば十分であろうというふうに考えますし,それを充実させるためには,勾留されている段階から生活環境調整を行うための明示的な規定,これを入れることで有効であるというふうに考えます。   他方,繰り返しになりますけれども,現行で保護観察を受けているような,あるいは要保護性の高い,そういう若年層,これに対しては,言葉はともかくとして,誓約事項のような枠組みを作った場合の不利益的措置を伴う制度がやはり必要であるというふうに私は考えます。その不利益的措置という点につきましては,更生保護法の改正だけでは限界があるのではないか。刑事訴訟法の改正を伴って,従わなければ何か起訴というような制度も考えられるのではないかなというふうに考えています。 ○田鎖幹事 今の点でちょっと確認させていただきたいのですが,若年者というのは,具体的にはどの年齢層までを今想定されて御発言されているんでしょうか。 ○羽間委員 現在,年齢の引下げをどうするかということに関しては合意が得られているわけではありませんから,そこで明示的に何歳ということを申し上げるつもりはございません。ただ,議論の流れから言うと,想定されている,あるいは考えられているものとしては18歳,19歳などなのかなと,それが主たる対象なのかな,その年齢層を含むというふうに考えれば良いかなと思っております。 ○田鎖幹事 そうしますと,恐らく,一方では,現状の取組におきましても,庁によっては一定,本人の同意の下ではありますけれども,権利制約的なといいますか,不利益的なものも含めて条件等を設定して,その経過を見るというようなことも行われているわけでして,その不利益的な措置といいますか,本人に守らせたいというような働き掛けを若年層を想定して行うのか,そうではなくて,一般のもっと年齢の高い部分も含めて行うのかという点については,きちっと分けて考えないとかなり混乱が生ずるだろうと思います。少なくともこれまでの検察庁での取組というのは,特に若い人をターゲットにしたというものではない。数値的にも20代も少しは出てきますけれども,ほとんどは高齢者とか障害者とかホームレスの方であるということですので,そこを基本的に分けないといけないだろうというふうに考えます。   その上で,そもそもそういった不利益的な措置というものを課して行うことが,起訴前の段階といいますか,起訴猶予に伴う形で行うことが妥当なのかということが別途問題となってくると思います。 ○小木曽分科会長 今のお話は,対象をどのように絞り込むかというところにも関わると思いますけれども,次の対象者についての議論にいく前に,基本的枠組み自体について御意見があれば,まずそれを伺いたいと思います。 ○太田委員 やはり起訴し,有罪を認定した上で,保護観察なり一定の附随処分を課すという方法ももちろん考えられると思いますが,きちんとした改善更生の措置が採られれば不起訴にできるなという事件を訴追するのがいいのかどうかという問題もあると思いますし,起訴したところ,裁判所が単純執行猶予にしてくるという可能性も十分ある。対象者に対する働き掛けの機会が全く失われてしまうという可能性もあって,これは裁判の第2分科会の方の制度設計の仕組みにもよるかと思いますけれども,起訴した後がどうなるかということについては,現状のままだと不透明な先行きもありますので,やはり一定の措置が採られれば不起訴にできるというものについては早い段階で社会復帰させて,だけれども,やはり確実な更生を担保するために一定の働き掛けをするという必要はあると思いますし,それから,不利益的な措置という言葉は非常に強い印象を持ちますけれども,例えば,今の保護観察の遵守事項でも,形式的な違反があったからすぐ取り消すということをやっているわけでは全くなくて,それが本人の更生と,場合によっては再犯ということとの関係でどれぐらい大きな問題性があるのかということを自力で判断をしながら取り消すのかどうか,取り消さない場合でも注意をするとか,指導をするとかというようなことも,場合によっては遵守事項を変更するというようなことをやっているので,この起訴の段階でも誓約事項,名前は分かりませんけれども,こういうものに対しては誓約事項の内容を変更するというものとか,それから海外の制度なんかは期間設定がありますので,期間を変えるとか,そういうことも含めた対応だというふうに考えれば,ただ単に,違反したからすぐに起訴,再起という,そういう仕組みではないというふうに私は理解しております。   対象者については,また後でお話をさせていただきます。 ○田鎖幹事 おっしゃることもよく理解できるんでございますけれども,やはり早く手当てをしたいという側面と,一方で,いかんせん捜査段階であるために,ここでも「対象者」という言葉が出ているんですが,結局,改善更生するのは本人であって,主体的に,最終的には更生してもらわなければいけないと。そうすると,その主体性の確保というものが手続的にもなかなか難しい。どうしても捜査機関対被疑者ということで,そこに弁護人が仮に関与したとしても,中立的な場で,フラットな場で対等な当事者というわけではないわけですし,収集された情報へのアクセスとかが十分でなければ,異議申立て等もなかなか功を奏しないとか,細かく見ればいろいろな問題があるんだろうと思います。   一方で,その起訴後については,今は現行の制度を前提にお話がありましたけれども,これも何度も繰り返して申し訳ないんですけれども,だからこそ,その辺の問題点を第2分科会で議論されるんだろうというふうに理解をいたします。 ○小木曽分科会長 論点は大分はっきりしてきたような感じがいたしますけれども,本日は概括的な議論ということですので,対象者についてもう一度整理しておきたいと思います。これについて御発言をお願いします。 ○太田委員 私の先ほどのイメージとして,大きく,入口支援的なものの拡充と,それからそれとは違う保護措置付の起訴猶予という,こういう二つの枠組みというのを考えるとするならば,まず,拡充・整備を図っていく入口支援については,基本的には要保護性のあるような,例えば,高齢者であるとか障害者であるとかホームレスであるといったような自立支援を必要とするような者が対象となるのに対して,後者の方の一定の保護的な措置が必要となるような起訴猶予については,それにとどまることなく,もちろんこれも含めてもいいと思いますけれども,それにとどまることなく,広く検察官による起訴猶予処分を受ける者が対象になるべきだろうと思います。   あるいは,今後の議論の展開によっては,とりあえず若年者に限定したような制度を作るということもあり得るでしょうけれども,私は特に18歳,19歳とか,26歳までとか,何歳までという年齢に限定されない制度というのはあり得るだろうというふうに考えております。   それから,更生緊急保護の対象者という点について,先ほどの枠組みにも関わりますけれども,私は入口支援といった場合,イコール更生緊急保護ではないので,入口支援というのは更生緊急保護を含めた広い対応,福祉支援的な対応だというふうに捉えております。そのうちの更生緊急保護については,現在,身柄事件のものを対象としておりますけれども,場合によっては在宅のもの,在宅の被疑者についても一定の支援を必要とするというような者がおりますので,そういった者も対象として,起訴猶予裁定前の段階から調整の対象とするということが考えられてよいのかなというふうに考えております。 ○小木曽分科会長 対象者については,先ほどの議論で尽きているということでよろしいですか。   それでは,もう一つ,少年鑑別所の調査機能の活用についてです。   こちらは,起訴猶予に伴う再犯防止措置に関連して,少年鑑別所の調査機能を活用することが考えられるわけですが,活用するとすれば,どのように活用することが考えられるかといったことを検討項目とするものであります。   御意見ありましたらお願いいたします。 ○保坂幹事 先ほど,事務当局から,部会での御意見の紹介がございましたけれども,少年鑑別所には様々なノウハウの蓄積があり,その活用を考えることには意義があるという御意見があったと聞いております。今テーマとなっている起訴猶予に伴う再犯防止措置に関して,現在の検察におけるいわゆる入口支援においても知能検査等ということで活用しているということでございます。考えられる再犯防止措置の内容にもよるわけですけれども,更に少年鑑別所において,どういった措置のために,どういった事項を調査するのか,それをどう活用するのかということについても,併せて検討する必要があるのだろうと思います。 ○太田委員 保坂幹事と全く同じことの繰り返しでございますけれども,こういった起訴猶予に伴う措置の対象になる者の中には,保護観察所が行うような環境調整的な調査,こういったものが必要になる者がたくさんいるでしょうけれども,それ以外に,例えば若年者であろうと,それ以外の成人であろうと,様々な心理的な要因,例えば発達障害とか,いろいろな問題を抱えている人というのはいるでしょうから,そういった者に対する調査というものをきちんと行った上で,適切な対応を採っていくということが必要ですので,それについては現在の既存の資源として活用できるものとしては,少年鑑別所の技官の方にこういったことを調査をしていただくのが有効なのかなというふうに考えております。 ○羽間委員 ほとんど同じですので,同じですという答えで。余り繰り返してもと思いますので。 ○田鎖幹事 少年鑑別所による調査機能という点につきましては,以前の部会のヒアリングのときでも,少年鑑別所の所長の話を伺いまして,少年にフォーカスした調査ということで,今,太田委員の方からも御指摘ありましたように,更にその周りの環境まで含めてというところは現状では行われていないと。そこら辺のスキル,ノウハウの蓄積状況の違いということはきちっと押さえておかなければいけないと思います。   それから,やはり捜査段階ということで,先ほどのヒアリングではよく分からなかったのですけれども,ただ,いずれにしても非常に時間的にタイトな状況でいろいろな調査をしていかなければならないと,そういう制約のある中での調査ということで,そこにやはり,もちろんそれ自体が専門家による調査ということで有用なことは事実としても,そこをやはり余り過大に評価することもできないわけでして,まして,例えば若年層を対象とした場合に,現時点で行われている少年鑑別所,そして家庭裁判所での調査と匹敵できるような,そこまでカバーできるようなものというふうには,やはりなり得ないと思いますので,そこは十分に考えておく必要があるだろうと思います。 ○小木曽分科会長 大体よろしいでしょうか。   それでは,以上で一通り,検討項目案記載の検討項目について意見交換を行いましたが,その他起訴猶予等に伴う再犯防止措置について,今,ここでという御意見がありましたらお願いします。 ○羽間委員 最後の御意見なんですけれども,少年鑑別所の職員は刑事施設へも人事交流で行っていて,大人のアセスメントの経験のある者もかなり増えてきておりますので,そういう意味では成人に対しても蓄積があるというふうに私は理解をしております。 ○田鎖幹事 すみません,ちょっとうまく伝わっていなかったと思うんですけれども,当事者を対象として,中心にして調査をするということと,その周辺の横の広がりを持った調査をするというところで違いがあるかなという観点から,先ほど発言をさせていただきました。 ○小木曽分科会長 よろしいでしょうか。   本日は,起訴猶予等に伴う再犯防止措置について一巡目の議論を行いました。   更なる御発言もないようですので,この程度とし,本日の審議はこれで終了いたしたいと思います。   今後の予定について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 今後の予定について申し上げます。   次回の第3分科会の会議は,10月20日金曜日午前10時から,場所は法務省赤レンガ棟第5教室で行います。 ○小木曽分科会長 本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはないと思いますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   では,そのようにさせていただきます。   どうもありがとうございました。 -了-