法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第1分科会第7回会議 議事録 第1 日 時  平成30年5月15日(火)  自 午前 9時54分                        至 午前11時45分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  1 刑の全部の執行猶予制度の在り方について         2 自由刑の在り方について         3 社会内処遇に必要な期間の確保について         4 若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○佐伯分科会長 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第1分科会の第7回会議を開催いたします。   本日は御多用中のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。   先日の部会第7回会議では,隄良行氏が幹事を退任され,新たに玉本将之氏が幹事に任命されたことの御紹介がありましたが,当分科会の事務当局としての役割を担っていただく構成員として新たに玉本幹事が選任されておりますので,議事に入ります前に,御紹介いたします。一言自己紹介をお願いします。 ○玉本幹事 法務省刑事局で刑事法制企画官をしております玉本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○佐伯分科会長 それでは,まず,事務当局から資料について説明をお願いします。 ○玉本幹事 本日,配布資料として配布資料22「刑の全部の執行猶予制度の在り方(検討課題等)」,配布資料23「自由刑の在り方(検討課題等)」,配布資料24「社会内処遇に必要な期間の確保(検討課題等)」,配布資料25「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実(検討課題等)」を配布しております。これらの資料は,ファイルにとじずに平積みにしております。資料に不足がある方はいらっしゃいますでしょうか。   この配布資料の内容につきましては,後ほど意見交換の際に御説明します。 ○佐伯分科会長 それでは,審議に入ります。   先日の部会第7回会議において,これまでの当分科会における検討状況について中間報告を行い,様々な御意見を頂きましたが,部会長からは,各分科会において,部会での御意見も踏まえつつ,各論点に関する検討項目の残された課題について,詰めの検討を行い,部会において制度の採否や具体的内容についての議論を深めることができるよう,制度概要案を作成するとともに,部会における議論に資するように検討課題の整理を行っていただきたいとの御発言がありました。今後の当分科会では,各論点に関する検討項目の残された課題について,詰めの検討を行って,次回部会までに,報告する制度概要案等の作成を行う必要があります。   次回部会までの期間が限られていることから,本日の会議においても,当分科会が担当する四つの論点について,部会第7回会議における御意見も踏まえて,制度概要案の作成のための詰めた検討をお願いしたいと思います。「刑の全部の執行猶予制度の在り方」,「自由刑の在り方」,「社会内処遇に必要な期間の確保」,「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実」の順で意見交換を行うこととしたいと思いますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,意見交換に入ります。   意見交換に当たりましては,部会での議論を踏まえた御意見,これまでの議論を敷衍した御意見,異なった観点からの御意見など,どうぞ御自由に御発言ください。   最初に,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」についての意見交換を行います。   まず,事務当局から,資料の説明をお願いします。 ○玉本幹事 本日,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」に関する資料として,配布資料22「刑の全部の執行猶予制度の在り方(検討課題等)」を配布しております。   配布資料22について御説明します。   配布資料22は,部会第7回会議で配布した資料18「刑の全部の執行猶予制度の在り方(中間報告)(2)」を基に,部会第7回会議における御意見等を踏まえつつ,加筆・修正を行ったものです。「中間報告(2)」からの変更点について御説明します。   部会第7回会議では,「第1 保護観察付き執行猶予中の再犯についての執行猶予」に関して,この制度を設けると,初度の執行猶予の際に,より保護観察に付されるようになって,保護観察の活用が図られることとなるのかとの御懸念が示されたことから,検討課題として,「保護観察付き執行猶予をより積極的に活用するためにどのような方策が考えられるか。」を追加しました。   また,「第5 資格制限の排除」に関し,特に若年者についての資格制限の排除を検討してほしいとの御意見が示されたことから,検討課題として,「若年者(特に18歳及び19歳の者)について特別な取扱いをするか。」を追加しました。   配布資料22の説明は以上です。 ○佐伯分科会長 ありがとうございました。   ただいまの説明に,この段階で御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見のある方は,挙手をお願いします。   よろしいでしょうか。   では,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」について,配布資料22に沿って意見交換を行います。   まずは,「第1 保護観察付き執行猶予中の再犯についての執行猶予」について,意見交換を行います。   御発言がある方は挙手をお願いします。 ○加藤幹事 まず,本日追加された検討課題,初度の保護観察付き執行猶予の活用という点について申し上げたいと思います。   部会の第7回会議で,先ほど御紹介があったように,先のこの分科会における福島幹事の発言を念頭に置かれて,裁判所において執行猶予に保護観察を付するかどうかの基本的な考え方は変わらないなどの意見を踏まえると,今検討している制度を設けたとしても,初度の保護観察付き執行猶予が十分に活用されないおそれが高いのではないか,現状がほとんど変わらないのではないかとの意見がありました。   この御意見については,部会の場で福島幹事からも御説明があったところですが,改めて,制度を設けることによって,初度の保護観察付き執行猶予の活用がどの程度図られることになるのかについて申し上げたいと思います。   前提として,現行法上,初度の執行猶予については,刑法第25条の2第1項において「猶予の期間中保護観察に付することができ」るとされているのみで,保護観察に付するか否かという,その基準は明示されていないわけです。実際にどのような考え方で判断されているかについては,既にこの分科会の第6回会議において福島幹事からも御発言がなされたところですが,部会第7回会議において,先ほど申し上げた関連発言があったということを踏まえて,この点を明確にするために,再度福島幹事からお教えいただきたいと思います。 ○福島幹事 この点については,既に第6回会議において御説明したところですけれども,その趣旨が必ずしも十分に伝わっていなかったかもしれませんので,改めて申し上げたいと思います。   量刑判断は,個々の事件における各裁判体の判断事項となりますが,一般論として申し上げますと,どのような場合に保護観察付き執行猶予とするかということについては,大きく分けると二つの考え方があり得るように思います。   一つは,保護観察付き執行猶予を実刑と単純執行猶予の中間的な重さの刑と位置付けて,単純執行猶予,保護観察付き執行猶予,実刑という刑の重さのバリエーションの中から当該事案の責任の重さに応じた刑を選択するという考え方です。   もう一つは,実刑ではなく執行猶予が相当であると判断した事案のうち,被告人の資質や環境等を考慮して,本人の改善更生のために保護観察所による補導援護,指導監督が必要と考えられる者に保護観察付き執行猶予を言い渡すという考え方です。   そして,現在の実務を見ると,恐らく多くの裁判官は基本的には後者の考え方に基づいて判断しているのではないかと思います。 ○加藤幹事 ありがとうございました。   今の御発言を前提として,私の考えですが,今御説明があったような考え方に照らしますと,現在検討されている制度が導入された場合には,その制度の趣旨からして,やはり初度の保護観察付き執行猶予が活用されていくことになるはずではないかと考えます。   と申しますのは,まず第1に,今議論されているこの制度は,現行法上,保護観察付き執行猶予の期間内の再犯について執行猶予を言い渡すことができないので,それが初度の執行猶予に保護観察を付するかどうかを判断するに際して裁判官のちゅうちょの原因になっている場合があるのではないかという指摘があることから,そのような障害がある場合があるなら,それを取り除くということを方向性とするものでして,これは,保護観察に付する必要がある執行猶予者には,その必要性に応じて保護観察に付するようにして,保護観察付き執行猶予の活用を図ろうとするものであるということは明らかです。   また,第2に,第3分科会において検討されている保護観察の内容を一層充実させようとする制度あるいは施策というのは,これも改善更生のために必要な措置として保護観察が実効的に活用されるようにするためのものです。   これらのことからしますと,こういった制度改正がなされた場合には,裁判官としても,もとより個別の事案を前提としての話ではありますが,適切な事案については,より積極的に保護観察に付するようになるのではないかと考えられるところです。検察官においても改正がなされた趣旨を踏まえて保護観察に付する必要があると考えられる事案については,公判において,より積極的に保護観察に付する必要性に関する主張立証を行うことになると考えられるわけでして,そうすると,裁判所にとっても保護観察に付することについて判断に資する資料がより収集されることになりますから,保護観察が必要な事案には,より積極的にこれが活用されることになるのではないかと思う次第です。   加えて,特に若年者については,若年であって一定の可塑性を有するということは被告人の資質,環境等の一部ですから,保護観察に付するかどうかを判断するに際しての積極的な考慮要素とされ得るのではないかと考えられます。この点も,もし裁判所に御知見があれば,若年者であるということは,現行法の下でも保護観察に付するかどうかを判断する際の積極的な考慮要素となり得るのかどうかという点について,教えていただきたいと思います。 ○福島幹事 繰り返しになりますけれども,量刑判断は個々の事件における各裁判体の判断事項でありますので,被告人が若年者であることが積極的な考慮要素となっているかということについて,私の方から明確に申し上げることはできませんけれども,参考として,平成29年に全国の地方裁判所及び簡易裁判所において全部執行猶予付きの懲役刑を宣告された被告人のうち,裁量的保護観察が付された割合を申し上げたいと思います。全体では,その割合は8.0%であるのに対して,被告人が21歳以下の事件に限定すると約1.5倍の12.1%となっており,平成27及び平成28年も同様に1.5倍程度の差が生じているところです。 ○加藤幹事 ありがとうございます。もちろん,今おっしゃっていただいた結果のみから即断するのは難しいかもしれませんが,若年者であるということは,最初に御説明いただいた考え方からしても,今のデータからしても,保護観察を付するか否かを判断する際の一定の積極的な考慮要素とされていると考えて問題はないのではないかと思います。   そうすると,制度の改正があった場合,18歳及び19歳の者についても,その年齢が保護観察に付する必要性を判断する際の積極的な考慮要素とされることが予想されますし,その上,今回の制度の変更が,若年犯罪者に対する社会内処遇の充実もその趣旨の一つとするものであることを考えると,裁判官が18歳,19歳の者に対して,より積極的に保護観察に付する判断をするということも期待できるのではないかと考えます。   もっとも,これらの制度を設けて初度の保護観察付き執行猶予の活用を図ったとしても,なお不十分であるということであれば,初度の執行猶予に保護観察を付する要件等を刑法に規定するとか明文化するといったことの検討も必要になるのかもしれませんが,その場合には,その具体的要件や考慮事情を過不足なく適切に設定することができるか,逆に,かえって書いてしまうことによって活用の幅を狭めてしまうのではないかといった問題も検討しなければなりませんので,慎重な検討が必要になるものと思っております。 ○今井委員 ただいまの加藤幹事のお話に関連してですけれども,今,保護観察付き執行猶予の有効活用につきまして,制度の改正の方向性や前提について議論があるわけですけれども,単純執行猶予の機能も再確認した上で議論を進めるのが望ましいのではないかと思いますので,一言申し上げます。   少年法における少年の適用年齢の上限が18歳未満に引き下げられるとした場合ですけれども,その場合,執行猶予が言い渡される18歳及び19歳の者に対して改善更生,再犯防止の観点から保護観察に付すことが有用と考えられる場合があることは,現在のお二人の意見からも分かるところです。現在,少年法の18歳,19歳の犯罪少年に対する保護処分は少年院送致と保護観察処分ですが,成人の刑事処分における刑の執行猶予に相当する処分は存在しません。保護観察に付されない単純執行猶予にも,再び犯罪を行った場合には刑事施設に収容されるという心理的な威嚇効果により再犯防止を図るという刑事政策意義は当然あるわけでして,その点をここで改めて指摘しておきたいと思います。   犯罪白書を見ますと,平成28年度に単純執行猶予の言渡しを受けた人数は3万952人であるのに対して,単純執行猶予中の再犯を理由として,その執行猶予が取り消された人数は,約11%の3,399人でした。この割合は,近年同様の数値で推移しているようです。このような統計データを踏まえますと,単純執行猶予にも,当然のことながら,相応の再犯防止効果が認められると言えるのではないかと改めて感じたところです。   今後,公訴提起される18歳及び19歳の者の中にも,単純執行猶予を言い渡すことにより,改善更生,再犯防止を適切に期待し得る者も相当数いるのではないかと思われますので,保護観察付き執行猶予の活用を検討する際には,その前提としての単純執行猶予の持つ機能,役割分担ということに留意をしていく必要があると思った次第であります。 ○佐伯分科会長 この程度でよろしいでしょうか。   それでは,次に,「第2 再度の執行猶予を言い渡すことができる刑期」について意見交換を行いますので,御発言がある方は挙手をお願いします。               (一同発言なし)   「第2」につきましては,これまでの分科会で御発言いただいた意見以外に,本日の時点では特に付け加える御意見はないということでよろしいでしょうか。   それでは,意見がなければ,これ以上の議論をしないということで,次に「第3 執行猶予を取り消すための要件の緩和」について,意見交換を行います。   検討課題のうちいずれの点からでも構いませんので,どの点かを明示していただいて,御発言がある方は挙手をお願いします。 ○今井委員 本日の配布資料22の1ページに検討課題としてA案とB案が併記されています。当分科会の第6回会議におきまして加藤幹事からA案及びB案について検討事項が示されたものと理解しておりますけれども,A案はなかなか難しいのではないかというのが私の個人的な感想です。   A案の検討事項として前回お示しいただきましたのは,全部執行猶予が言い渡される者の方が,一部執行猶予が言い渡される者よりも一般的には犯情が軽いと考えられているところ,それにもかかわらず,その取消しの要件を一部執行猶予のものと同じにすることが相当なのか,理論的に説明できるのだろうかという疑問が残ります。そこで,B案をベースとして,今後具体的な制度検討をしていくことが建設的ではないかと思っているところです。 ○青木委員 そもそも「情状が重いとき」という要件を緩和して「情状が軽いときを除き」というところで何か変わるのかという根本的な疑問があって,そういう意味では必要性及び相当性というところで,情状が重いときというのが現在適切に判断されているのであれば,あえて要件を緩和しなくてもよいのではないかとも思いますが,その点はどうなのかという問題があるように思います。 ○佐伯分科会長 もちろん,そもそも変えることが必要かということも含めて今後検討していくことになるかと思います。その際の案として,先ほど今井委員から,今後はB案に絞って検討してはいかがかという御意見がありましたが,やはりA案も残した方がいいという御意見はございますでしょうか。 ○加藤幹事 私も,今井委員から御提案いただいたように,検討の対象としてはB案を残した上で,青木委員から御指摘があったように,では,その必要性があるのかという点を検討するという,言わば検討対象を絞った二択という形で議論を進めるのがよろしいのではないかという意見です。 ○佐伯分科会長 特にA案を残すべきであるという御意見がございませんでしたら,今後はB案をベースとして,もちろん改正の必要性を含めて検討を進めていくということにしたいと思いますが,それでよろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきたいと思います。   そのほかの点について,何か御意見等ございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,次に,「第4 執行猶予期間経過後の執行猶予の取消し」について意見交換を行います。   この点につきましても,検討課題のうちのいずれの点からでも構いませんので,どの点かを明示していただいて,御発言のある方は挙手をお願いします。 ○橋爪幹事 前回の部会におきまして,このような制度を設ける必要性について十分に理解ができないとの御意見があったかと記憶しておりますので,この機会に改めて,この問題について私なりに思うところを申し上げたいと存じます。   これまで繰り返し申し上げてまいりましたけれども,執行猶予の取消しにおきまして決定的に重要な事実は,執行猶予期間中に再犯を犯し,かつ,そのことが刑事裁判において認定,確定されたという事実です。したがいまして,執行猶予期間内に有罪判決の確定があったか否かは,本来は本質的な内容ではないと思われます。しかしながら,現行法におきましては,執行猶予の取消しは,再犯についての有罪判決の確定及び執行猶予の取消し決定が猶予期間経過前であることが要件とされています。したがいまして,執行猶予期間中の再犯であっても,猶予期間中に有罪判決が確定しなかった場合などには執行猶予の取消しが不可能になります。   もちろん私は,実務の現状につきまして語り得る者ではありませんけれども,現行法がこのような制度を採用している以上,当事者の関心が有罪判決の確定時期に向けられることは,言わば必然であるように思われます。このように,本来は執行猶予の取消しの可否において本質的ではないはずの事柄が実務において重要視されているということは,やはり正当化し難いように思います。   さらに,現行法の制度は,執行猶予期間の満了が近付けば執行猶予による再犯防止機能が低下するという問題があるように思います。すなわち,執行猶予期間の満了が近付けば,仮に再犯を犯しても再犯に関する有罪判決の確定が遅れ,その結果,執行猶予の取消しが行われない可能性が高まることになるため,執行猶予取消しの心理的な威嚇による再犯防止の担保的機能は大幅に低下します。これもやはり執行猶予期間中の判決確定を要求することに起因する弊害と言えましょう。   これらの点に鑑みますと,やはり論点第4につきましては,新たな制度について検討する必要が高いと考えます。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。   この程度でよろしいでしょうか。   それでは,最後に「第5 資格制限の排除」について意見交換を行います。   この点につきましても,いずれの点からでも結構ですので,御発言がある方は挙手をお願いします。 ○今井委員 先回の部会におきまして,改めてですが,若年者を中心に資格制限の排除を認めることについて検討を続けてほしいという御意見があったと思いますので,これに関して意見を述べたいと思います。   現在の少年法では,少年のときに犯した罪について執行猶予が言い渡された場合,その猶予期間中は資格制限を排除する旨の規定が第60条第2項において規定されているところです。そこで,今後,少年法の「少年」の適用年齢が引き下げられた場合,18歳及び19歳のときに犯した罪について執行猶予が言い渡されたときには,改善更生の観点から,その猶予期間中,今後も資格制限を排除する旨の規定を設けるということも一応考えられるわけであります。しかし,このような規定を設けることが,仮に改正があった場合,その趣旨との関係で許されるかについては,慎重な検討が必要であろうと思います。   すなわち,18歳及び19歳のときに罪を犯した場合は,少年の適用年齢が引き下げられる前ならば基本的に保護処分の対象となる方ですので,そういった地位を考慮しまして,資格制限について成人と異なる特別の取扱いをするということが正当化され得ると思います。しかし,今後,少年の適用年齢が引き下げられたとしますと,18歳及び19歳の方は保護処分の対象とはならず,他の成人と同様の処理が要求されるものとなります。そうした場合,資格制限について他の成人と異なった取扱いをすることの根拠を見いだすのは,難しいのではないかと思います。   このような法制度上の建前がありますので,この点を踏まえて,更に慎重に検討を尽くす必要があるのではないかと思っております。 ○加藤幹事 この資格制限の緩和という問題提起の背景にある問題意識というのは,犯罪を犯した者の就労を妨げないようにする,むしろ促進するためには資格制限が障害になるのではないかというところが大きいのだと思います。この観点からは,昨年の12月に閣議決定されている再犯防止推進計画においても問題点として,あるいは検討すべき点として取り上げられているということは皆さんも御承知だと思います。そこでは,犯罪を犯した者等の就労の促進の観点から,需要が見込まれる業種に関し,前科があることによる就業や資格取得の制限の在り方について検討を行い,2年以内を目途に結論を出し,その結論に基づき各府省庁が資格制限等について見直しの要否を検討して,必要に応じた措置を実施するといった形で,年限を区切っての検討が要請されています。   ここでの議論でも,資格制限というのは刑事政策一般の問題であると同時に,各個別法がそれぞれの趣旨を持って資格制限を定めているということが指摘されていました。   そうすると,本来的に各法令別に検討していくというのは一つの合理的な在り方であろうと思われるわけでして,この検討が行われている中で,一律に刑事裁判所が資格制限を排除できるとする規定を設けるということについては慎重な検討が必要になるのではないかと思われるところです。   もとより,この再犯防止推進計画に基づく検討についても,刑事政策的な観点というのは重要なわけですので,そこでの議論に役立つような御意見,あるいは検討というのをこの場でも行っていくというのは有用なことではないかと考えます。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。   この程度でよろしいでしょうか。   それでは,ここまでで,配布資料22に記載されている検討課題について一通り意見交換を行いましたが,その他,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」について,現時点で御意見がある方は挙手をお願いします。   現時点では特にないということでよろしいでしょうか。   それでは,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」についての本日の意見交換はこの程度といたしまして,本日の二つ目の論点である「自由刑の在り方」についての意見交換を行います。   まず,事務当局から,資料の説明をお願いします。 ○玉本幹事 本日,「自由刑の在り方」に関する資料として,配布資料23「自由刑の在り方(検討課題等)」を配布しております。   配布資料23について御説明します。   配布資料23は,部会第7回会議で配布した資料18「自由刑の在り方(中間報告)(2)」を基に,部会第7回会議における御意見等を踏まえつつ,加筆・修正を行ったものです。「中間報告(2)」からの主な変更点について御説明します。   部会第7回会議では,指導を受ける義務を刑の内容とすることに疑問を呈する意見が示されたところ,この点については,「矯正に必要な処遇」の具体的な内容として,作業を行わせること,指導を受けることを念頭に置きながら,それぞれを刑の内容とすることの是非について検討を行うことが有用であると思われることから,検討課題の「1 新自由刑の内容等」の二つ目の「○ 刑の内容」について,「矯正に必要な処遇」の後に,「(作業を行わせること,指導を受けること)」を加えました。   また,検討課題の「2 新自由刑の下における法定刑の在り方等」については,これまでの当分科会での御議論を踏まえて,二つ目の「○」として「新自由刑の長期及び短期並びに加減の限度等」を加えたほか,三つ目の「○ 法定刑の長期及び短期」には,これまでに当分科会で御指摘があった二つの考え方をA案,B案として記載しています。   配布資料23の説明は以上です。 ○佐伯分科会長 ありがとうございました。   ただいまの御説明に,この段階で御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見がある方は挙手をお願いします。   よろしいでしょうか。   それでは,「自由刑の在り方」について,配布資料23に沿って意見交換を行います。   まず「1 新自由刑の内容等」について意見交換を行いますので,検討課題「1」のうちいずれの点からでも構いませんので,どの点かを明示していただいて,御発言がある方は挙手をお願いいたします。 ○青木委員 刑の内容なのかどうかという点に関連して,二つの観点から意見を申し上げたいと思います。   一つは,刑罰,制裁として行うのか,改善指導のために行うのかということについて,やはり区別して考えるべきではないのかという点です。   このことを考えるに当たって,被収容人員適正化方策に関する部会で社会奉仕命令について議論したときのことを思い出したのですけれども,この社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否という議論の中で,社会奉仕活動というのを刑罰として位置付けるのかどうかという議論をしたことがありました。その際に,もちろん保護観察として実施するということも一つの項目としてあったわけで,刑罰なのかどうなのかというところとの関係で,やはり社会奉仕活動というのを制裁として行うのかどうかというところが議論されていたように思います。実際,社会奉仕命令というようなことを社会内刑罰としている国もあるわけで,刑罰として位置付けてやるということは理論的にはあり得るわけですけれども,議論の中で刑罰として位置付けるということはやめたわけですね。その議論の過程の中で,やはり社会奉仕ということについての制裁性,あるいは不利益性ということが議論されていたように思います。   社会内処遇である社会奉仕活動というのと,刑務所内で拘束された状態での処遇というのは,もちろん全く同列に論じられることではないとは思いますけれども,やはり処遇というのを制裁として行うものなのか,改善指導として行うものなのかということは,やはり区別して論じるべきではないのかと思います。   その社会奉仕命令の議論の中では,罪刑法定主義との関係などについても議論されておりました。必ずしも直接罪刑法定主義という言葉で言われていたわけではありませんけれども,その議論の中では立法例も調査しておられることですので,法律に書くことができなくはないのかもしれませんが,何となくそぐわない感じを受ける理由は,日本では死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留,科料と,一つ一つの刑罰が,言わばはっきりした輪郭を持ったものとして位置付けられてきたのに対して,今考えている社会奉仕というのは,もっとソフトな,全体として弾力的なものだという感じを受けますので,そこのところが現存の刑罰と並べて扱うことにどうも違和感があるのではないかという気がいたしますということが発言されています。   もちろん社会奉仕ということを一つの刑罰としてということですから,拘禁されている中で処遇を行うということと同列ではないのですけれども,やはり処遇というのは非常に非定型的なものであって,そこで何が行われるというのが分からない状態というのは刑の内容としてふさわしいのだろうかという問題が1点あるように思います。   そして,制裁として行うのかどうかという観点でも,現に改善指導という形で処遇が行われているわけですけれども,今行われているものは制裁として行っているという位置付けではありません。さらに,作業に関してですが,作業に関してすら,今は懲役刑ですから制裁としての側面はありますけれども,実態としては改善更生のために行っているという処遇の部分が非常に大きくなっていて,矯正局の方でとっておられる受刑者の釈放時アンケートを見ましても,作業というのが苦しかった,嫌だったというよりは,むしろ作業が刑務所で行ったことの中でよかったと言う人の割合の方が多いわけなんですね。それは特に女性が多いのですけれども,B級の刑務所でも,やはりその割合があることに変わりはないです。ということは,実際,その作業というのは,制裁として機能しているというよりは処遇の内容として機能していて,しかも受刑者としては,懲らしめられているという受け止めをしているのではない。むしろ,その作業をやることの方が何もしないことよりよほどよいとなっているという状況だろうと思います。   受刑生活で苦労したと思うことということで,受刑者が挙げている最大のものは受刑者同士の関係で,その次が自由がない,好きなことができないことということで,やはり刑務所に入っていること自体が苦しみということなんだろうと思います。それで,受刑者同士の関係というのが非常につらいものですから,あえて作業拒否をして閉居の懲罰を受けるという人も出てくるような状況があるということを踏まえますと,作業というのをそもそも制裁として位置付けてやっていくということも含めて,どうなのだろうかという疑問が生じます。   それから,もう1点は,受刑者像というんですか,それとの関係でどう見るのがよいのだろうかということに関してです。   受刑者像に関しては,いろいろなところでいろいろなことが言われていますけれども,一つ,矯正局の富山局長が「刑政」に書かれている中身で,少年院や刑事施設に収容されている人の多くは,生きづらさを抱えた人たちですというのがあります。だから,そういう人たちが一つは前提になるということです。   それから,前に矯正局長をされていた西田さんが矯正局長時代に書かれた本の中で,受刑者は自己評価が低いと言われています。この理由は,刑務所に入所するまでの間に,社会において様々な失敗を重ね,社会からマイナスの評価を受けてきたためです。さらに,刑務所に入所し受刑者として過ごしたことは,出所後に更に大きなマイナスの評価となります。再犯を繰り返してしまう背景には,受刑者が自己評価の低いまま出所していくことにも原因があると私は考えています。刑務所から出所した後に感じる社会からの疎外感により自暴自棄となり,再び罪を犯すようになってしまうこともあるからです。   法務省にとっては,受刑者処遇の最大テーマが再犯防止です。そのためには受刑者に貼られた前科者,刑務所帰りといったマイナスのラベル(ラベリング)をはがす機会を作らなくてはなりません。そのような機会を与えることによって,初めて受刑者は犯した罪と向き合い,社会や被害者との関係修復を考えることができると思います。   さらに,社会から積極的に評価される機会を体験することによってマイナスの自己評価から脱却し,自己回復を図り,自信を取り戻すことができます。このための機会を提供する一つの手法が刑務所の矯正教育プログラムであり,職業訓練プログラムなのですと書かれています。   それから,昨年の刑法学会において富山局長が矯正の現状について報告されましたけれども,その中で最後に,日本行刑における矯正処遇の課題ということで,実務家の実感として,受刑者は三つのステージに分類することが可能とレジュメに書かれていまして,タイプ1(反省悔悟型),自己の問題に真剣に向き合い,前向きに受刑生活を送る。タイプ2(その日暮らし型),職員の言うことに取りあえずは従うが,自己の問題に真剣に向き合うわけではなく,何となく受刑生活を送る。タイプ3(反抗引きこもり型),職員の言うことを聞かず,処遇に真面目に取り組むこともない。懲罰を科されても意に介さず,仮釈放なども端からもらう気がない。どのようにしてこのタイプ3,タイプ2,タイプ1と変容を促せるのかということを課題として挙げておられます。   こういうことから考えまして,懲罰を科すことによってタイプ3からタイプ2,タイプ1に向かっていって改善更生に役立つのだろうかという点では,タイプ3は懲罰を科されても意に介さないわけですから意味がないわけですし,タイプ2というのは,懲罰を科せば取りあえずは従うかもしれませんけれども,それが本当に改善更生につながるのかという問題があるように思います。タイプ1は,別に懲罰など科さなくても真剣に課題に取り組むということだろうと思います。   それとの関係で,小野義秀さんという,最後,東京矯正管区長を務められた方が書かれているもので,紀律の在り方について書かれているものがあるのですけれども,紀律を幾つかに分けて論じておられるわけですけれども,この中で,隔離拘禁作用確保のための紀律に属するものは懲罰的紀律である。それから,施設生活保全のための紀律のうち,専ら刑務所管理の上からする制限的紀律もこれに含まれよう。生活指導的紀律については問題だが,管理面への結び付きが希薄であれば懲罰にはなじまぬと考えたい。その後なのですけれども,第3に,矯正改善促進のための紀律に属するものとなれば,これは当然懲罰の対象として考えるべきではあるまい。なぜなら,本人の自発的発奮を促すための紀律を懲罰のごとき威嚇の力で強制したところで真の効果は収め得べきもないからである。かかる紀律の遵守を全うさせるには,罰による威嚇より賞による誘導の方が効果的である。   心理学上,罰の理論を説いたのはソーンダイクであるが,彼は動物や児童の実験効果に基づき,次のごとき結論を示している。罰によって反応は弱まるのではなく,一時抑えられるにすぎない。賞を与えれば結合は必ず強まるが,罰してもほとんど弱まらない。抑圧的紀律や制限的紀律は刑務所という異常社会に特有の紀律であり,在監者という特殊な身分の下でのみ厳守を強制されるものであるが,それで足るのである。したがって,その限りで在監中,一時的にせよ抑止されれば十分であって,それ以上のものではない。しかるに,生活指導的紀律や改善促進的紀律は刑務所内で遵守されればそれでいいといったものでなく,いや,むしろ釈放後の生活態度を作り上げるのに意味がある。つまり,一時的なものでなく,永続的,継続的なものでなければならず,その意味から自覚によって守られねばならない。したがって,かかる紀律の遵守をさせる有効な手段は,賞,イコール賞遇こそふさわしく,少なくとも懲罰の効能をここで盲信してはならぬとせねばならぬと書かれているわけです。   それで,現状でも実際,改善指導に関してそれを受けないということは懲罰の対象にはなり得るのですけれども,実際にはほとんど懲罰は科されていません。その理由として富山局長は,実務上,懲役受刑者が作業を拒否する場合には,懲罰をもって厳しく対処するのに対し,受刑者が改善指導や教科指導を拒否する場合には懲罰をもってまで臨まないという運用が一般的である。当局が殊更に指示をしているわけではないが,特に改善指導や教科指導は受刑者自身が自発的に取り組むことで大きな効果が上がるものであり,懲罰により間接的に強制することに大きな意義はないのに対し,懲役受刑者の作業については,刑の執行をしている以上,その内容を実現できないことを許しておくわけにはいかないということが背景にあるのだと思われると書かれています。   これで改善指導なども刑の内容とした場合に,刑の執行をしている以上,その内容を実現できないことを許しておくわけにはいかないということで,懲罰をどんどん掛けるということになってしまっては,結果として改善更生に資する形にはならないのではないかと思いますので,改善更生,先ほどの矯正処遇プログラムを受けるとか作業をやるということを処遇としてやる,それを受けることについて何らかの義務を設ける,それについて何らかの不良措置が仮にとり得るとしても,今あるほかの規律を守るための懲罰と同じレベルのところで守らせるというのではなくて,やはりそれについてはもっと知恵を絞って,良好措置と何らかの不良措置をうまく組み合わせる形を含めて,刑の内容として,とにかくそれを執行しなければならないというようなことでやるのではない形の処遇を行う方が,結果として改善更生に資するのではないかと思いますので,そういう方向での検討をお願いしたいと思います。それとの関係で,やはりどこにどう書くかということが非常に問題になってくるのだろうと思います。 ○橋爪幹事 ただいまの青木委員の御発言に若干コメントした上で,私なりの意見を申し上げ,かつ,それを前提に一つ御質問を申し上げたいと存じます。青木委員の御指摘は,処遇の本質が制裁か改善指導かについては,明確に峻別した議論が必要であるという御趣旨かと理解いたしましたが,むしろ私は,処遇は両者の視点を併有していると考えております。刑罰の本質が非難,応報にあるとしても,その目的は改善更生による特別予防や一般予防にあるという理解が一般的です。このように刑罰自体が非難,応報という契機と再犯予防という契機を併有しているのであれば,処遇の内容について二面性を認めることは何ら問題ではないと個人的には考えております。   青木委員の御発言にも関連いたしますが,前回の部会におきましても,矯正に必要な処遇,取り分け指導を受けることについては刑罰の内容にすべきではないという御意見があったかと存じます。その背景には恐らく,各種指導を刑の内容とした場合については,指導を受けなかった場合には機械的に懲罰を科さなければいけないということになり,かえって受刑者の自発的な改善更生の機会を奪ってしまうという御懸念があったものと理解しております。   このような御指摘は,恐らく二つのことを前提にしているように思われます。すなわち,第1に,懲罰を科すか否かの判断は,それを刑罰の内容とするか否かによって異なってくるということ,第2に,刑罰の内容とする以上は,義務違反があった以上,機械的に懲罰を科す必要があるという理解であるように思います。もっとも,この二つの前提,それ自体について個人的にはやや疑問がございますので,この機会に改めて問題点を整理した上で,思うところを申し上げたいと存じます。   まずは懲罰を科す根拠でございます。刑事収容施設法第74条第2項は被収容者の遵守事項を規定しておりますけれども,第9号では,正当な理由なく作業を怠り,又は指導を拒んではならないと規定しており,作業懈怠と指導拒否を区別することなく同列に扱っております。そして同法第150条第1項は,遵守事項違反があった場合には懲罰を科すことができる旨を規定しております。現行法における懲役刑及び禁錮刑について,指導を受けることが刑の内容を構成するか否かについては議論の余地があり得ると思われますが,いずれにしましても,刑の内容だから懲罰を科すという仕組みではなくて,遵守事項違反であることが懲罰を科す根拠とされているわけです。したがって,各種指導を義務付け,これを遵守事項とするのであれば,これを刑罰の内容とするか否かは懲罰を科す必要性を左右するものではないと思われます。   第2に,それでは,遵守事項違反があれば常に機械的に懲罰を科すのかという問題でございます。この点も刑事収容施設法第150条第2項は,懲罰を科するに当たって,反則行為をした被収容者の年齢,心身の状態及び行状,反則行為の性質,軽重,動機等の事情を考慮しなければならないと規定しております。したがって,仮に作業と指導を共に刑の内容として構成する場合でありましても,違反があれば直ちに機械的に懲罰を科すという結論には至り得ないように思われます。   このような理解を前提としまして,実務的な運用についてお伺いしたいと存じます。現在の実務におきまして,作業懈怠,指導拒否があった場合に,どのように懲罰が科されているか,その具体的な実情について説明をお願いいたします。特に作業と指導で具体的な運用にどのような相違があるのか。また,仮に,指導拒否については懲罰が科されていないのであれば,義務の履行を担保するためにどのような対応が行われているかにつきまして御教示をお願いいたします。 ○大橋幹事 今御指摘を頂いたとおり,刑事収容施設法第150条第2項では,懲罰を科する際に,その者の心身の状態,動機とか違反後の態度とか,懲罰がその者の改善更生に及ぼす影響などを考えて懲罰を科すと規定されておりまして,実務上,違反があれば直ちに,また機械的に懲罰を科しているというわけではございません。   実情につきまして,改善指導,教科指導,あるいは作業についてそれぞれ詳しく御説明を申し上げますと,改善指導,教科指導につきましては,先ほど青木委員から御紹介もありましたとおり,受刑者自身が犯罪の責任を自覚して,自発的な意思に基づいてこれを受けることが重要でありまして,指導を受けようとする自発的な気持ちがない受刑者に対して懲罰の威嚇力でその受講を促したとしても,その実効性を期待できない場合が多いというところで,指導を拒否した場合であっても直ちに懲罰を科すわけではございませんで,その意義などを粘り強く受刑者に指導するなどの対応をとっているところが通常でございます。   指導拒否による受罰の人員,懲罰になった人員等は,統計をとっておりませんので,その数値は明らかではないものの,平成28年の状況について調査しましたところ,改善指導の拒否による懲罰件数が2件,それから一般改善指導の拒否が1件,それから,月に4回の範囲内で作業をせずに指導を行う日というものを設けておりますけれども,その指導の時間中の懈怠について懲罰を科したものは29件でございました。   仮に指導を含めた矯正処遇が刑の内容として規定されたとしましても,指導の意義及び必要性を受刑者に十分に認識をさせて,自発的に受講させるよう努めることが重要であるということの認識は変わらないと考えております。   次に,作業につきましては,規則正しい勤労生活を維持させ,規律ある生活態度を習得させること,それから,共同作業を通じて望ましい社会共同生活への順応性を養うこと,勤労意欲を養成すること,与えられた作業目標の達成を通じて忍耐力ないし集中力を養うことなどの意義,効果があると考えられまして,作業を通じてこれらの意義,効果を実現するために受刑者の自発性,自主性が重要であるということは,改善指導,教科指導の場合と変わるところがないと考えております。   他方で,改善指導,教科指導を拒否する者につきましては,その指導の意義を十分に理解しているとは言い難くて,これらに対して働き掛けを行って,その意義を理解させるということが実効的であると考えているのに対しまして,作業につきましては一般社会における勤労と同様に,極めて一般の社会人にとって基本的な生活規範であるということがございまして,作業拒否の主たる要因が,その作業に対する意義に対する理解の欠如というところにあるとは考えにくいということで,作業の拒否をする者に対して,単にその意義等を説明することを通じて作業への復帰を働き掛けるということは必ずしも実効的ではないと考えております。   また,改善指導,教科指導は拒否するものの作業には応じるという者につきましては,作業を行わせながら指導を行うことを粘り強く働き掛けることが可能でございますけれども,作業を拒否する者に対して指導を行いながら時間を掛けて作業への復帰を働き掛けるということは,社会復帰後の自立した生活を念頭に置いて作業を中心に位置付けております受刑者処遇の体制上限界がございまして,何らかの懲罰を科すこととしない場合は漫然と居室の中で生活をさせるということになってしまいます。したがって,作業を拒否する者に対しては,必要に応じて懲罰を科して作業への復帰を働き掛けるということが重要であると考えております。また,このような方法により,まずは継続的に作業に従事する生活習慣を身に付けさせること自体にも,その意義,効果の実現に資する面があると考えております。   さらに,教科指導,改善指導につきましては比較的少人数で行われることが多いということに対しまして,作業は,作業内容等に応じて多数の受刑者により編成された集団において行われることがありますので,作業を拒否した者に対して何らの懲罰をも科さないということにした場合には,他の受刑者に対して悪影響を及ぼす,あるいは施設の規律秩序維持に大きな支障を生じるおそれが否定できないと言えます。こうした理由によって,作業拒否の事案に対して懲罰を科している件数は,改善指導,教科指導の拒否の事案に比較して多くなっていると考えられます。   統計で見ますと,平成28年の受刑者の怠役による受罰の人員は1万3,019人となっておりますところ,作業拒否の事案の中には,先ほど青木委員から御紹介がありましたとおり,単独室への転室を意図して出業を拒否する事案,それから,工場内の人間関係に対する不満等から他の工場への転業を意図して出業を拒否する事案など,様々な背景を持つ事案があるのが実情でございます。このような作業拒否の事案に懲罰を科す場合でありましても,単に刑法に規定があるというのみで機械的に懲罰を科しているということではございませんで,拒否した際の心身の状態,あるいは動機等を聴取するなどした上で,必要に応じて拒否した動機等を踏まえた指導や働き掛けを行っている場合が多いと承知しております。   今,統計を御紹介いたしましたが,作業や改善指導,教科指導を拒否したものの指導で終わり,懲罰に至らなかった違反に関する統計,その全体の母数というのがございませんので,直ちにそういうことがあったときに懲罰を科しているかどうかというところの観点からは比較はできないということになっております。 ○橋爪幹事 ただいま御説明いただきましたように,指導拒否につきましては,懲罰が科される件数は少ないと理解いたしました。確かに改善更生の目的を十分達成するためには,いたずらに懲罰を科すべきではなくて,むしろ本人への働き掛けによって指導の重要性といったものを実感させることが肝要であると思いますので,そういった実務の御対応には十分な理由があると思います。   もっとも,現行法におきましては,あくまでも指導拒否は遵守事項違反でありまして,懲罰の対象事由とされているわけでございます。この点の実務的な意義はどこにあるかについて,重ねてお伺いしたいと存じます。仮にですが,刑事収容施設法を改正しまして,指導拒否については懲罰の対象事由から外すとした場合,実務的に何か弊害が生ずるかにつきましても併せて御教示ください。 ○大橋幹事 改善指導,教科指導につきましては,先ほど申しましたとおり受刑者自身が自主的,あるいは自発的な意思に基づいてこれを受けるということが重要であるということは述べましたけれども,他方で,指導を受けるということは義務となっておりまして,全ての受刑者が必ずしも自発的に指導を受けるとは限りません。その実施を専ら受刑者の意思に委ねるというのは適当ではないと考えております。   刑事施設におきまして,受刑者が義務を履行しなくても何ら制裁を受けないとした場合,その実効性を確保できないということばかりではなく,施設の規律秩序を維持することは極めて困難になりますことから,義務を履行しなかった場合には懲罰を科すことができるということにしております。   改善指導,教科指導を拒否した場合におきましても,その意義などを粘り強く指導するなどの対応をとっているということは,先ほど述べたとおりでございますけれども,指導,説得のみでは期待する結果が得られないケースがあるというのも事実でございまして,義務の履行を担保する手段として懲罰が存在することによって,その履行が促される場合があると考えております。   仮に改善指導,教科指導を拒否したとしても懲罰が科されないとした場合,指導や説得を続けても頑なに拒否する者に対して採り得る手段がなく,また,指導の意義や重要性が低下しているのではないかというような誤った認識を受刑者に与えるおそれがあるのではないかと考えております。 ○橋爪幹事 今の点でございますけれども,指導の拒否を懲罰事由として規定することにつきましては,仮に実際には懲罰を科すことがまれであるとしても,やはり指導の意義の重要性を受刑者に対して明示するという宣言的な効果があるわけでして,そのような意味でも重要な意義があるということかと存じます。   既に以前の分科会でも申し上げましたけれども,作業や指導を義務付けて,これを遵守事項とするべきかという問題と,義務に違反した場合に直ちに懲罰を科すべきかという問題については切り分けて検討する必要があると考えております。新自由刑においては,矯正に必要な処遇等を義務付けて,これらの不履行を懲罰事由として規定することには十分な理由があると考えますが,その適用におきましては,指導はもちろんですけれども,恐らく作業についても懲罰を機械的に適用するべきではなくて,懲罰を科す必要性があるか否かを慎重に吟味する必要があると考えます。 ○青木委員 やはり私は理解できないのは,刑罰の目的の中に改善更生が入るというのは分かるんですけれども,今,大橋幹事のお話を伺っていても,およそその作業とか,そういうものに,改善指導はましてやですけれども,作業を制裁のためにやっているということではないんだと思うんですよね。社会の中で行われている,普通に作業するというのは当たり前ではないかということでやっているわけですし,それによって世の中と同じような形で,それに更に刑務所という特殊なところではあるんでしょうけれども,それなりの秩序が保たれているということで,個人に対して罰として,制裁として行っているものではないと思います。   懲役というのは,元々は,前も同じ話をしたと思うんですけれども,苦役を課して,それを懲らしめとしてやっていたというもので,それは正に制裁であり,正に誰にとっても不利益であって罰なんだろうと思いますけれども,先ほど申し上げましたように,実態としては,今その作業は罰の役割ではなくて,むしろ罰の役割を果たしているのは刑務所の中にいて,その刑務所の中での人間関係を築かなければいけないとか,自由がなくなっている,奪われているということが罰なのであって,その中で行われている処遇というのは,やはり区別して考えるべきなのではないか。それは,もちろん受け止める人にとっては,仕事なんかしたくないという人もいるでしょうし,改善指導を受けたくないという人もいるでしょうから不利益なんですけれども,目的としてそれ自体が制裁なのかというと,やはり今お話を伺っている限り,それ自体が制裁ということではなくて,それは改善指導のために必要なことということでやっているのだろうと思います。   諸外国で,刑罰ではないけれども義務になっているところに関しては,やはり処遇の目的がそういう社会復帰なり再社会化なりというところにあって,そこから義務というのが導かれていて,その議論をどうやってうまく履行していくかということをいろいろ工夫しているわけで,そういう観点で考えると,あえて刑法で今まで作業を,元々は作業を制裁としてやっていたものの実態がもう変わっていて,そういう意味では禁錮と懲役の区別も実態としては,もう禁錮受刑者も,前に御報告がありましたようにほとんど作業をやっているわけですし,懲役受刑者も,先ほど申し上げましたように作業を刑の執行だと受け止めているというよりは,むしろ何もやらないよりは,ずっとその作業をやっている方がよいと受け止めている状況の中で,その実態を踏まえれば,作業も含めて制裁としてという側面はなくて,むしろ改善更生,社会内処遇で言えば,先ほどの例で言うと社会奉仕命令を制裁として,罰として行うのではなくて改善指導のために行うと,それを刑務所の中で行うというのに近い形なんだろうと思うんですね。社会貢献作業は刑務所の中でも行われていますけれども,それはあえて制裁のために行っているわけではないと思うのですよ。だから,そういう意味で,刑法の中に何が何でも書いてということではなくて,要するに刑の内容として,刑罰の罰の内容として書くのではなくて,罰としては拘禁,その中で改善更生に必要なことを行う。作業もそのうちの一つでしょうし,その他の改善指導もそうでしょう。   先ほど申し上げたように,刑の中身というのが,その他の処遇といっても何を指すのか分からないではないですか。そのようなものでいいのでしょうかという問題意識もあります。何でそれをあえて罰の中に入れなくてはいけないのかということについて,むしろどのような説明をするのかというのをお聞きしたいですね。 ○今井委員 1点,今の青木委員の御発言に質問させていただきたいのですが,青木委員のお考えだと,社会復帰は刑罰を科すことで実現を図るべき目的ではないということですか。 ○青木委員 目的であることは否定しません。 ○今井委員 諸外国の例を挙げておられたときに,諸外国では社会復帰,リハビリテーションのためということが多分正面に出て,いろいろな刑務所内での作業の義務付けがあるという御紹介があったと思いますけれども,それも刑罰の目的であるということになりますと,青木委員のお考えは,例えば先の橋爪幹事の理解と基本的には差がないのではないかと思ったのですが,どうですか。 ○青木委員 前にも申し上げた,刑罰というものの,あるいは刑法に書かれている刑罰,死刑というのははっきりしていますよね。懲役というのは,今多少曖昧になってしまっていますけれども,それなりに外枠がはっきりしている中身だと思うんですよ。だけれども,その他の処遇って,では,何でもできるのですかという話ですよね。 ○今井委員 青木委員は二つの点についておっしゃっていると思いますが,私が質問したのは第1点です。どういう根拠で拘禁されているのか,移動の自由が損なわれていることを正当化するのか,移動の自由が制約されている人に何かを科し得るのかというのが第1の点です。第2の点は,科すべき処遇の内容が不明確であるか,という点です。私は最初の点だけ御質問させていただきました。 ○青木委員 だから,刑罰の内容になっていないと処遇ができないということではなく,刑罰の目的の中に,おっしゃったようなことが入っていることは同じ。別に意見が相違しているわけではなくて,そういう意味では,これからやりたいと思っている中身,実現したいと思っている中身は,今の議論の中で一致しているんだろうと思うんですよ。ただ,それを実現させるためにどういう法律の仕組みにして,先ほど懲罰に掛けるという担保がないとというお話がありましたけれども,先ほど御紹介した議論なども踏まえると,その他のもろもろの規律違反と同じ形の不良措置的なものと全く同じでなければならないのかどうかということも含めて,より本当の意味で,先ほどの富山局長の言葉を借りれば,懲罰を科されても意に介さない人,あるいは,自己の問題に真剣に向き合うわけではなく何となく受刑生活を行う人にとっても真に前向きに捉えられるようにするのに,果たして今の懲罰が本当に有効なのかどうか,もっとよい手段があるのではないかということと,その刑法の刑の中身としてそれを書くことによって,それが本当によいのか。そういうことによってそれが実現できるのかというところについては非常に疑問ですという意味で,やろうとしている中身自体について,あるいは刑罰が目的とすること,刑罰の目的自体について,別に争っているつもりはないです。 ○橋爪幹事 恐らく青木委員は,刑罰の本質を罰であって苦役であるとお考えなのだと思いますが,私は,毎回同じことになってしまうのですが,必ずしもそういう前提自体をとる必要はないように考えています。つまり,本人にとってメリットがあっても,本人の意に反する処分であれば,それは刑罰になり得ると思うのです。   適切な比喩か自信がないのですが,例えば勉強しない学生に対してレポートを課すとします。本人の意思に反する強制であり,本人は気分が悪いわけです。しかし,結果的には,本人にとって勉強になり,成績もよくなってプラスになり得るわけです。これは,本人の意に反して怠惰な生活に対する非難として罰を科すという側面があるわけですけれども,結果的には本人が勉強を好きになって成績も上がるというプラスになり得るわけです。このような意味において,改善更生と非難,応報は,併存し得ることだと思うのです。あえて刑罰の内容を限定的に捉え,専ら苦役やデメリットの要素が刑罰の内容を構成すると限定的に捉える必然性はないような気がいたします。   さらに,この点も,既に以前の分科会で申し上げたところですが,仮に処遇が刑罰の内容ではないと考えた場合に,なぜそれを意に反して義務付け得ることができるかという問題がやはり生じると思うのです。刑罰であるがゆえに意に反する強制が正当化できるわけですので,刑罰の内容ではないけれども義務付け得るということは,やはり正当化が難しいような気がいたします。   もう1点続けて申し上げますけれども,先ほど,青木委員が御指摘されたように,確かに処遇の具体的内容は特定されておりません。この点については,刑罰の内容の明確性という観点から御懸念があると理解いたしました。確かに,例えば刑期自体を全く不定期にすることは,罪刑法定主義の観点から正当化し難いように思います。刑罰内容の明確性が必要となるのは御指摘のとおりだと思います。   しかし,処遇といっても何でもできるわけではなくて,あくまでも改善更生,社会復帰にとって必要な処遇という大枠はあるわけです。更に具体的な内容につきましても,恐らくこの点については刑事収容施設法などの関連法規に具体的な規定等があると思いますので,法律を離れて恣意的な対応ができるわけではないと思います。このように考えると,処遇の具体的内容が法律上明確にされていないという御批判は当たらないと考えております。 ○青木委員 先ほど社会奉仕命令の例で申し上げたんですけれども,同じことを刑罰として位置付けるか,そうではない形にするのかというところで,やはり刑罰として位置付けるというのは,それ自体制裁を目的としてという側面がどうしても入ってくるような気がするんですね。そういう意味で,それ自体制裁を目的としてやるのだろうかと。実態もそうなっていないし,そうやろうとしているわけでもない。それ自体を制裁としてという意味でもないのに,何でそれをあえて刑罰に入れなくてはいけないのだろうかというのが一つの疑問です。   それともう一つは,先ほども改善指導を受けないことが遵守事項違反で懲罰が科される。実際に科されている人もいる。正にその改善指導を受けるということが刑収法で義務付けされているわけです。でも,今はその刑罰の中身ではないわけですけれども,義務付けをされていると。では,これは本来あってはいけない法律だったんでしょうか。そこら辺はどういう説明になるんでしょうか。法律として,刑収法は本来の姿とは,本来在るべき姿ではない形で義務を設定してしまったということなんでしょうか。 ○橋爪幹事 確かにおっしゃるとおりで,各種指導が刑の内容を構成しないと考えると,なぜそれを義務付けることができ,その違反に対して懲罰を科し得るかという問題は生ずると思うのです。この点については,刑事収容施設法と刑法の規定があいまって刑の内容を規定していると考えるべきです。ですから,指導を受けることも現在の懲役・禁錮の刑の内容の一部をなすと解すべきだと思いますし,あるいは,刑法第12条,第13条の「拘置」の文言解釈として,拘置のために必要となる処遇を行うことも含むという解釈の余地もあり得ると思います。いずれにしましても,現行法の義務付けの在り方を正当化するならば,指導を受けることは,現行法においても刑の内容をなすと考えるべきだと思います。 ○加藤幹事 刑事収容施設法で指導を義務付けているのが,刑の内容でないのに義務付け得るのかという問題は,確かこの分科会でも前にも取り上げられた点で,今,橋爪幹事が御説明になったように,説明の仕方は幾通りかあったように思われますが,少なくとも広い意味で刑の内容になっているから義務付けられているのだと考えることができるというのが理論的整理だという点で,あまり異存はなかったように記憶しております。誤解であれば御指摘いただきたいと思います。   今の御議論を伺っていて,非常に大きな観点からの議論になっておりますが,青木委員が以前から,制裁と改善指導というのは区別して考えるべきだということをおっしゃっていたのは承知しており,以前から同じことをおっしゃっていたのだと理解しています。ただ,その意味がよく理解できなかったというのが私の理解の行き届かないところで,専らやりたいこと,やるべきことは同じで,目的や,あるいは行刑の在り方といったところは同じところを目指しているけれども,理論的整理が異なるというぐらいのものなのかとも思っていたのです。しかし,本日の議論では,義務付けの担保として制裁,懲罰を用いるかどうかという点,あるいは懲罰の用いられ方に差が出るのではないかという点が,具体的な相違点として立ち現れるのではないかという御指摘があり,その点は理解できました。   ただ,この点に絞って申しますと,先ほど大橋幹事から御説明があったように,現行法で指導の拒否に対する懲罰が少ない理由として挙げられていたのは,働き掛けを行って意義を理解させるということの実効性が作業と指導では異なるという点ですとか,拒否することが施設の規律,秩序の維持に与える影響が作業と指導では異なるという点を大きく挙げられていたと思います。そのような作業と指導の性質の違いは,刑の内容か否かによるものではないのですから,仮に新自由刑を創設して指導を含む矯正に必要な処遇を刑の内容としたと,そのように理解したとしても,指導についての懲罰の在り方,あるいは本人の意欲を引き出す取組の重要性というものそれ自体が変わるというものではないだろうと考えます。   また,少し別のことを申し上げますと,前回の部会で,懲罰という不利益を意に介さない受刑者,あるいはあえて懲罰を求めて義務違反を犯す受刑者という者の存在を念頭に,懲罰が必ずしも義務の履行を担保する機能を果たしていないという指摘もございました。そのような者が仮にいるといたしましても,それは一部の受刑者の問題であり,懲罰制度自体が有効に機能していないということにはならないのではないかと思います。したがって,義務の履行を担保する方策として,不良措置が不要だということにはならないのではないかと考える次第です。理想としては,良好措置によって受刑者の意欲が喚起されて自発的に義務の履行が行われるということが望ましいとは思われますが,良好措置があっても義務の履行を拒否する受刑者が一定数存在し得るということは,先ほど御指摘があったとおりでしょうし,このような者に対して義務を履行させる措置として,懲罰以外には実際には考え難いという点もありますので,いかに良好措置が重要であり,これを活用すべきであったとしても,懲罰の制度を適用しない,廃止してもいいということにはならないものと思われるという点を申し上げておきたいと思います。 ○青木委員 まだ,何がいいかはよく分からないところもあるんですけれども,何らかの不良措置というのがもちろんあってもいいと思いますし,そういう意味で,本当に意に介さない人に限らず,先ほどで言うとその日暮らし的というんですか,そういう人は,懲罰があるから施設内ではやっているけれども,実は全く釈然としていなくて,社会に出たら元の木阿弥みたいな形になってしまっては本当はまずいわけで,そういう人も含めて真に改善指導を受け止めてやっていく制度として,今の懲罰をそのまま当てはめて,今のままの法律のままでよいのだろうかという問題も1点あろうかと思います。だから,それは良好措置とうまく組み合わせるような形も含めて,真に先ほどの富山局長の言葉を借りれば,ステップ1に該当する人を増やしていくために今の制度のままでよいのかという観点もきちんと検討するべきだろうと思います。 ○大橋幹事 実務で申しますと,現行でも懲罰はもちろんございますけれども,良好措置として優遇措置,ここの分科会でも御説明しましたけれども,改善指導,教科指導の取組状況を評価をして優遇の措置を与えるというような良好措置も採っておりますので,実務上は懲罰だけが実効性を担保するものではございません。優遇措置も採りながら,実務をやっているというのが実情でございます。 ○青木委員 優遇措置があることも承知していますけれども,その優遇措置の中身というのも非常に限られているわけですし,その中身をもう少し豊富にすることも含めて,全くこのままでよいとは思っていませんので,それについても是非検討していただきたいと思います。 ○佐伯分科会長 大変充実した意見交換をしていただきましたが,ほかにはいかがでしょうか。今日はこの程度でよろしいでしょうか。   それでは,次に,「2 新自由刑の下における法定刑の在り方等」について,意見交換を行います。   御発言がある方は挙手をお願いします。 ○今井委員 今の「1」の議論の延長でございますけれども,個人的には,この「2」で書かれておりますA案,B案のうちA案でよいのではないかと考えております。   今構想されております新自由刑といいますものは,懲役刑との間では軽重に差がなく,禁錮よりも重いという理解を前提として構想されていると思いますけれども,そうした場合,禁錮が定められている現在の犯罪の法定刑を新自由刑とするに当たりまして,その長期及び短期の数字を変えないと,一見しますと禁錮が定められている罪の法定刑は,新自由刑とするに当たって実質的には引き上げられてしまうのではないかとも思われます。   この点をどう考えるかですが,新自由刑としては作業と指導をその内容として考えているところですが,その目的,あるいは具体的な在り方やその趣旨を改めて考えてみる必要があろうかと思います。この点に関連して,先ほど活発な議論があったところでありますけれども,私が思いますに,その作業,指導というものも,いずれも対象者の自由を拘束するということを前提にした上で,先ほど来,出ておりますけれども,対象者は社会的存在である人であり,社会復帰すべき者でして,社会復帰の実現を援助するためのいろいろな働き掛けという面では共通していると思います。   もう少し具体的に申し上げますと,現行法上もですが,禁錮についても指導を受けることは義務付けられるところでありますが,新自由刑の下において構想されています作業というものは,指導と同様に,矯正に必要な処遇の一内容として課されるべきものと思われます。   繰り返しになりますけれども,作業は,先ほど来いろいろ実務からの御説明もありましたけれども,社会復帰していくべき人としての正しい生活態度,これは自立してというのでしょうか,他人に迷惑を掛けないという意味かと思いますけれども,そういった生活態度を身に付けるための援助として行うものでありまして,指導と,結局のところ,同列同等のものと評価し得ると思います。そういたしますと,新自由刑は,禁錮につきましては広い意味での処遇の選択肢を共通の目的から増やすだけとも言える余地がありますので,刑としての全体としての軽重という点から見ましても,禁錮刑との軽重の差は大きいものとは言えないだろうと思います。   また,このような考えから,今検討されております新自由刑におきましては,作業及び指導を,繰り返しになりますが,矯正に必要な処遇として義務付け,これも既にこの分科会で以前議論がありましたけれども,対象者の特性に応じて作業を全くさせない,あるいは大幅に減らすということなども議論されており,おおむね賛成はされていると思いますが,そういった柔軟な個別的な処遇を行うことで,個々の受刑者の改善更生及び社会復帰を実現することを目指しておるものでありまして,本来,そういった在り方が自由刑としての望ましい姿ではないかと思います。したがいまして,その新自由刑を創設するに当たって,禁錮が定められている罪の法定刑の長期及び短期を変えなくても,被告人,あるいは受刑者にとって不当な不利益を強いるものでないと思われますので,私はA案でよいのではないかと思います。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。本日のところは,この程度でよろしいでしょうか。   それでは,最後に,「3 その他」について,御意見のある方は挙手をお願いします。               (一同発言なし)   「3」につきましては,これまでの分科会で御発言いただいた意見に付け加えて,本日の時点では追加の御意見はないということでよろしいでしょうか。   それでは,「自由刑の在り方」についての本日の意見交換はこの程度といたしまして,本日の三つ目の論点である「社会内処遇に必要な期間の確保」についての意見交換を行います。   まず,事務当局から,資料の説明をお願いします。 ○玉本幹事 本日,「社会内処遇に必要な期間の確保」に関する資料として,配布資料24「社会内処遇に必要な期間の確保(検討課題等)」を配布しております。   配布資料24について御説明します。   配布資料24は,部会第7回会議で配布した資料18「社会内処遇に必要な期間の確保(中間報告)(2)」を基に,部会第7回会議における御意見等を踏まえつつ,加筆・修正を行ったものです。「中間報告(2)」からの変更点について御説明します。   部会第7回会議では,仮釈放の期間についての考試期間主義のA案に関して,仮釈放の許否の判断主体をどのようにするかという点についての指摘があったことから,検討課題の「1」の「(1)」のうち,「現行の仮釈放制度との関係」について,「仮釈放の許否の判断主体も裁判所とするか。」を追加しております。   次に,「仮釈放中の保護観察について刑法に規定すること」というのが「中間報告(2)」には掲げられておりましたが,この点については,部会第7回会議において分科会長から,分科会における検討状況として,現時点において喫緊の必要性があるとまではいえないのではないかとの御意見があったことを御報告いただいたところ,更なる検討を求める御意見もなく,差し当たり,分科会における検討対象から外してよいのではないかと考えられたことから,記載しておりません。   配布資料24の説明は以上です。 ○佐伯分科会長 ありがとうございました。   ただいまの御説明に,この段階で,御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかとの御意見がある方は御発言をお願いします。   よろしいでしょうか。   それでは,「社会内処遇に必要な期間の確保」につきまして,配布資料24に沿って意見交換を行います。   まず,「1 仮釈放の期間についての考試期間主義」について意見交換を行いますので,御発言がある方は挙手をお願いします。 ○橋爪幹事 この問題につきましては,従来からA案,B案を併記した上で検討を進めてきたところでございますけれども,私としましては,今後の検討に際しましては,むしろB案をベースとして検討を進め,制度概要案の作成をするべきであると考えております。以下,理由を申し上げます。   確かにA案につきましては,B案との関係でメリットも存在します。つまり,個別の受刑者のニーズや特性に応じて柔軟に考試期間を設定できるというメリットも存在するわけではございます。しかし,A案を採用した場合,裁判所は改善更生に必要な期間を設定するに際しては,施設内の処遇状況やその効果,あるいは仮釈放後の社会環境や想定され得る社会内処遇の内容,再犯の危険性等を全て考慮した上で判断を下す必要があると思われますけれども,このような判断は,現在の刑事裁判における量刑判断とはかなり異質な内容になってくるように思われます。したがって,裁判所が考試期間を個別の受刑者ごとに判断するというのは,現実的に相当困難な作業であるように思われます。   また,行為責任に応じて決定された刑罰を事後的に受刑者の不利益に変更することは,責任主義の観点から正当化できないことから,残刑期間を上回る考試期間を設定することがあり得るとしても,その場合には,例えば残刑期間の何倍を上限とする等,形式的な制約を付すことが必要となるように思われます。このような形式的な制約を要件とする以上,A案を前提としましても,考試期間の設定はある程度類型的,画一的な判断にならざるを得ず,A案本来のメリットといったものは相当に減殺するようにも思われます。   こう考えますと,本分科会としましては,むしろ今後はB案をベースとして更に検討を進めることが妥当であると考え,その旨を申し上げる次第です。 ○今井委員 私も,今の橋爪幹事の意見に賛成でございます。B案,それ自体についても,今後検討を進めていかなければいけない具体的な課題が多いと思いますが,これまで,この当分科会でも議論を重ねてまいりましたように,A案の方がより課題が大きいと思います。これは,今の橋爪幹事のお話にもありましたけれども,恐らく一つは,刑事裁判だけの問題ではなくて,A案は,行政裁判であるとか,広く司法権という概念が違うような国の下で,よりよく構想可能なものだと思います。日本でA案を主張されている方が,そういった背景を指摘されているかについて,十分に理解しているわけではないのですが,歴史的に捉えると,A案はそういうものだろうと思いますので,ここでA案を取るのは相当な困難があろうかと思います。また,裁判所のこれまでの経験を踏まえた施策という意味ではB案の方が望ましいと思っております。 ○佐伯分科会長 今後の検討に当たっては,B案を検討の素材にしてはいかがかという御意見を頂いておりますけれども,異なった意見はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,今頂きました御意見を踏まえまして,今後はB案をベースとして検討を進めていくということにしたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,御異議がないようですので,そのようにさせていただきたいと思います。   次に,「2 現行の仮釈放制度の積極的活用」について意見交換を行いますので,御発言がある方は挙手をお願いします。 ○橋爪幹事 この点につきましても1点,実務的な運用について確認をしておきたいと存じます。   恐らくこの問題の背景には,現在では社会内処遇に十分な期間が確保されていないという問題意識があるように思われますけれども,まずは現在の運用について確認し,認識を共有することが必要であると考えます。   刑法第28条では,実質的要件としまして改悛の状があることを要件としておりますが,実務におきましては,省令におきまして,この要件を具体化した上で仮釈放の運用がなされているものと理解しております。そこで,まず,この省令上の具体的な基準の運用について御説明いただいた上で,また,この点につきまして実務的な課題がもしございましたら,併せて説明をお願いいたします。 ○今福幹事 仮釈放許可の基準につきましては,省令である「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」に定められております。改めて簡潔に申し上げますと,一つ目に悔悟の情及び改善更生の意欲があり,二つ目に再び犯罪をするおそれがなく,かつ,三つ目に保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めるときにするものとする。そして四つ目に,ただし,社会の感情がこれを是認すると認められないときは,この限りでないと規定されています。   地方更生保護委員会におきましては,合議の中でこれらの基準で審理を行っており,個々の事案に応じて適切に仮釈放の許可の決定等がなされているものと承知しております。このうち,例えば悔悟の情があるかどうかの判断に当たりましては,犯罪による被害の実情と,犯罪に至った自分の問題性を正しく認識していることを前提として,その上で悔いる気持ちがあるかどうかを本人の言動,その他客観的事実から把握し,審理を行っております。   さらに,仮釈放の判断に当たって,社会内処遇に必要な期間の確保がどのように考慮されているかに関して申し上げますと,例えば一定の期間を要する専門的処遇プログラムの受講が必要な者についてですと,先ほど申し上げた四つの基準のうち保護観察に付することの相当性を検討する際に,その受講に必要な期間を確保できるかどうかということが考慮事項の一つとなっているものと承知しております。   次に,関連する実務上の課題について申し上げますと,平成28年の満期釈放者が9,649人おりますが,そのうち親族等の下など,定まった帰住先がないまま刑務所を釈放される者が半数近くを占めております。こうした者の中には,適切な帰住先が確保されれば仮釈放の対象となり得る者も相当数いるものと考えられます。そこで,更生保護施設や自立準備ホーム等,出所後の受皿となり得る施設,住居などの整備や開拓を図るとともに,地方更生保護委員会及び保護観察所において充実した生活環境の調整を行うことで,適切な帰住先を確保していくことがまずは課題であると認識しています。   また,これは第3分科会においても議論されているところですけれども,社会内処遇の内容の充実が図られますと,様々な処遇メニューを受けることを前提として仮釈放の許否を検討することとなりますことから,結果として社会内処遇の期間の確保につながるものと認識しています。 ○青木委員 質問ですけれども,今の許可の基準の中で,悔悟の情とか改善更生の意欲は分かるんですが,再び犯罪をするおそれがないというのはかなりの高い水準のような気がするんですね。実際,本当に犯罪をするおそれがないということを厳密に考えると,相当程度の人がここから外れてしまうような気がするんですけれども,実際にはここの運用はどうなっているんでしょうか。 ○今福幹事 まず,仮釈放期間中に再犯に至るおそれがないかどうかということについては,再犯を合理的に想定できるような事情がありますと,それは仮釈放できないとなります。その意味で,仮釈放期間中においては非常に厳密な予測判断をすることになります。これに対し,仮釈放期間経過後につきましてはもう少し緩やかな基準で再犯のおそれを判断する運用となっています。 ○青木委員 そうすると,仮釈放期間を確保しなければならないのにもかかわらず,この再び犯罪をするおそれがなくという要件があるために期間が確保できないというようなことは余りないという理解でよろしいんでしょうか。 ○今福幹事 はい,ございません。 ○橋爪幹事 今の件を踏まえて1点コメントを申し上げますけれども,確かに社会内処遇に十分な期間の確保といったものは重要な課題であると思います。ただ,あくまでも前提としましては,やはり出所後の受皿を十分に確保すること,また,社会内処遇の内容それ自体の充実が重要な前提であるように理解しました。そうしますと,これはある種,鶏か卵かという問題になってくるのかもしれませんが,まずは前提を十分に整備することが先決課題であるような印象を持ちました。前提が十分に整備されなければ,仮に要件を変更して仮釈放を積極的に運用しましても,かえって逆効果になるようにも思われますので,まずは前提の整備を先決課題として重視すべきであるように思います。 ○加藤幹事 私も橋爪幹事と同意見です。社会内処遇について意義があるということ,そして,そのために必要な期間を確保することが重要だということ,それ自体は否定できないと思っています。ただ,先ほどの御説明にもありましたが,帰住先の確保というのが実務上の課題となっているようであり,仮に仮釈放の要件を変更した,あるいは基準を変えたとしても,出所後の適切な行き先が確保されない以上,実際に社会内処遇の期間を確保するということは難しいように思われます。   また,仮釈放の判断に当たって社会内処遇の期間を確保するという点を重視するといたしますと,次のような問題も起きてしまう可能性があります。例えば,問題性が少なくて社会内の生活基盤も比較的整っているような者については,社会内処遇の期間が短くても足りる場合がある一方で,問題性が大きくて社会生活を円滑に営むためには相応の支援等を必要とするという者については,社会内処遇の期間が長めに必要とされるということになってしまって,極端な例では,問題性の少ない者が長く施設に収容され,大きい者が早く釈放されるというような形で考慮されてしまうというようなこと,これは極端な例ですが,そういう事態も懸念されないではないです。仮釈放を先ほどから議論のある良好措置のいわゆる一環としてどの程度考えるのかという点にも関係するのかもしれませんが,そういう形で受刑者間の公平を欠くことになると,かえって更生意欲を損ねるということにもなりかねないのではないかというところは考えどころではないかと思われます。   いずれにいたしましても,刑法上の要件,あるいは省令上の基準について何らかの見直しを必要とするかどうかという点については,まずは先ほどの説明にありました実務上の課題の改善に向けて,施設内での処遇,あるいは生活環境の調整等に一層努めるなど,既に行っている取組が一層充実させられるということが先決問題となるように思われますし,また,出所後の保護観察の在り方について第3分科会で議論されているところも踏まえる必要があるように思われるので,現時点で直ちに現実的に法律なり基準なりを改正する,どう変えたらいいのかということの検討を行うことは難しいのではないかと考えております。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。   この程度でよろしいでしょうか。   ここまでで,配布資料24に記載されている検討課題について一通り意見交換を行いましたが,その他,「社会内処遇に必要な期間の確保」について現時点で御意見がある方は挙手をお願いします。   現時点ではないということでよろしいでしょうか。   それでは,「社会内処遇に必要な期間の確保」についての本日の意見はこの程度といたしまして,本日の四つ目の論点である若年受刑者に対する処遇原則の明確化等についての意見交換を行います。   まず,事務当局から資料の説明をお願いします。 ○玉本幹事 本日,若年受刑者に対する処遇原則の明確化等に関する資料として,配布資料25「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇内容の充実(検討課題等)」を配布しております。   配布資料25について御説明します。   配布資料25は,部会第7回会議で配布した資料18「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実(中間報告)(2)」と同じ内容のものです。この論点につきましては,部会第7回会議におきまして御意見等はなかったことから変更点はございません。   配布資料25の説明は以上です。 ○佐伯分科会長 ありがとうございます。   ただいまの御説明に,この段階で,御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかとの御意見がございましたら挙手をお願いします。   よろしいでしょうか。   それでは,若年受刑者に対する処遇原則の明確化等につきまして,配布資料25に沿って意見交換を行います。   「第1 若年受刑者を対象とする処遇内容の充実」につきましては,これまでの分科会での議論によると,充実を図ることとしている具体的な処遇の内容についてはおおむね合意が形成されており,また,これらを実施するに当たっては法整備を要しないものと考えられますが,特に御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。               (一同異議なし)   よろしいでしょうか。   それでは,そのような認識の共有が図られましたので,差し当たり当分科会としましては,「第1」については結論を出したということにしたいと思います。   それでは,次に「第2 若年受刑者に対する処遇調査の充実」について意見交換を行いたいと思いますので,御発言のある方は挙手をお願いします。 ○橋爪幹事 1点確認をお願いいたします。   検討課題「1」のところに「法整備の要否」という論点がございますが,処遇調査の充実,取り分け処遇調査の対象者の拡大につきましては,当分科会でもおおむね共通の合意があると理解しておりますけれども,これについては法整備をしなくても実務の運用面で対応できる事柄ではないかという気がいたします。「2」の少年鑑別所の鑑別機能の活用につきましては,法改正が必要と理解しておりますけれども,「1」につきましては,法改正は不要であるという理解で大丈夫か,確認をお願いできればと思います。 ○大橋幹事 処遇調査の充実につきましては,具体的な内容というのは現在検討を進めているところでございますけれども,法改正を必要とするとは考えておりませんで,運用上の措置を講ずることで対応は可能であると考えております。 ○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。   それでは,「1 処遇調査の充実」については法整備は必要ないという御意見を頂きましたけれども,ほかに御意見がないようでしたら,そのような前提で今後議論を進めていきたいと思いますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   ありがとうございます。   それでは,最後に「第3 若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」について,意見交換を行いますので,御発言がある方は挙手をお願いします。               (一同発言なし)   これまで頂いた意見に加えて,本日の時点で特に御意見はないということでよろしいでしょうか。   それでは,ここまでで配布資料25に記載されている検討課題につきまして一通り意見交換を行いましたが,その他,若年受刑者に対する処遇原則等の明確化等について現時点で御意見がある方は挙手をお願いします。   現時点では御意見はないということでよろしいでしょうか。   それでは,若年受刑者に対する処遇原則の明確化等についての本日の意見交換はこの程度としたいと思います。   以上で,当分科会が担当する四つの論点につきまして意見交換を行ったことになりますが,これらの論点につきまして,全体として現時点で更に御意見がある方がいらっしゃいましたら挙手をお願いします。   よろしいでしょうか。   それでは,これで本日の意見交換を終了したいと思います。   最後に,当分科会における今後の議論の進め方についてお諮りいたします。   本日は,部会第7回会議での議論をも踏まえつつ,各論点に関する検討項目について一通り意見交換を行いましたが,今後は,部会に報告する制度概要案等の作成に向け,具体的・技術的な観点から更に検討を深めていく必要があろうかと思われます。そして,そのような具体的・技術的検討を行うに当たりましては,まずは,法律案の立案作業を担当することとなる事務当局において,これまでの議論の状況を踏まえて,検討のたたき台を作成してもらい,それをも利用しながら議論を行っていくことが効率的ではないかと考えられます。そこで,構成員の皆様に特に御異論がなければ,そのように進めさせていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,次回以降の議事はそのような形で進めていくこととします。   事務当局におかれましては,検討のたたき台とする資料の作成をお願いします。   なお,次回の当分科会で取り上げる論点については,事務当局における作業の状況等も踏まえまして追って決定し,皆様にお知らせします。   それでは,次回の日程について,事務当局から説明をお願いします。 ○玉本幹事 次回の日程について申し上げます。   次回の当分科会の会議は,6月5日火曜日の午前10時から予定されております。場所は,この建物の5階にあります会議室となります。 ○佐伯分科会長 本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成し,公表することとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日はどうもありがとうございました。 -了-